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1950-04-19 第7回国会 衆議院 労働委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年四月十九日(水曜日)     午後二時十一分開議  出席委員    委員長 倉石 忠雄君    理事 大橋 武夫君 理事 島田 末信君    理事 福永 健司君 理事 三浦寅之助君    理事 吉武 惠市君 理事 青野 武一君    理事 春日正一君       麻生太賀吉君    天野 公義君       金原 舜二君    塚原 俊郎君       船越  弘君    柄澤登志子君       岡田 春夫君  出席政府委員         労働基準監督官         (労働基準局         長)      寺本 広作君  委員外出席者         労働基準監督官         (労災補償課         長)      池邊 道隆君         労働事務官         (川崎公共職業         安定所長)   梅津好二郎君         労働事務官         (足立公共職業         安定所長)   上島 菊造君         労働事務官         (澁谷公共職業         安定所長)   坂田虎七郎君         労働事務官         (大森公共職業         安定所長)   金井 完之君         参  考  人         東京事務吏員         (東京労働局         長)      林  武一君         参  考  人         (全国公共職業         安定所職員組合         連合会執行委員         長)      熊川 廣衞君         参  考  人         (全国公共職業         安定所職員組合         連合会執行委員         長)      後藤 克巳君         参  考  人         (全国公共職業         安定所職員組合         連合会書記長) 野々山敏夫君         專  門  員 横大路俊一君         專  門  員 浜口金一郎君     ————————————— 四月十三日  委員柄澤登志子辞任につき、その補欠として  林百郎君が議長指名委員に選任された。 同月十四日  委員柳澤義男辞任につき、その補欠として中  野武雄君が議長指名委員に選任された。 同月十五日  委員中野武雄君及び林百郎君辞任につき、その  補欠として柳澤義男君及び柄澤登志子君が議長  の指名委員に選任された。 同月十九日  委員中原健次辞任につき、その補欠として岡  田春夫君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  労働者災害補償保險法等の一部を改正する法律  案(内閣提出第一六二号)  労働事情に関する件     —————————————
  2. 倉石忠雄

    倉石委員長 これより会議を開きます。  労働者災害補償保險法等の一部を改正する法律案議題といたします。これより質疑に入ります。春日正一君。
  3. 春日正一

    春日委員 質問したいのですが、労災保險の掛金の滯納状況、そうして大体主として滯納が多いところは、どういうところが多いか、産業部門別経営規模別、これをひとつ説明してもらいたいと思います。
  4. 池邊道隆

    池邊説明員 滯納状況について御説明申し上げます。二十四年度の本年二月まで、中央でわかつておる点について、おもに御説明申し上げたいと思います。  大体牧納決定をいたしましたのは、全国で五十六億でございます。その中で二月末までで牧納いたしましたのは、四十八億ということになつておりまして、約八億円の收入未済があるわけでございます。八億円がどういうような産業におもに滯納を見ているかということについて、これから申し上げますと、工業では大体全般として二十五億、その工業の種類で言えば、金属製錬業、金属工業機械器具工業、ガス、電気、水道、化学工業、窯業、石工業紡織業、食品、印刷、製本、その他の工業、こういうようになつておりますが、これが大体二十五億の保險料調定に対しまして入つているのが二十二億ということになつております。それから鉱業でございますが、これは調定が十七億に対しまして、十五億入つております。交通運輸事業につきましては、一億八千万円の調定に対して、一億六千万円入つている。それから土木建築事業でございますが、これは五億七千万円の調定に対して、四億四千万円入つている。それから貨物の取扱い事業でございますが、これは四億三千万円の調定に対して、三億四千万円、その他のものといたしましては、二千五百万円の調定に対して、二千万円ということでありまして、最も滯納の多いのは、一般工業が多いという現状でございます。
  5. 春日正一

    春日委員 そこでこれを取立てる方法ですね。滯納原因と、取立てる方法、これはどういう方法をやつておられますか。
  6. 池邊道隆

    池邊説明員 われわれの労災保險法は、大体国税と同じようなぐあいに、申告納入制度をとつているわけでございます。大体一般産業につきましては、四月三十日までに概算保險料を納めていただき、年度末におきましては、精算保險料をこれまた四月三十日までに納めてもらうということになつておりまして、大体四月中に申告によつて納入していただくという原則を立てておりますが、それまでに拂つて来ないものにつきましては、まず第一に督促状を発する。それから督促状納期限内に拂えないものにつきましては、こちらから参つて、いついつかまでに納めていただくということにして、誓約書をいただく。誓約書を出しましても、その期限内に拂えないような場合につきましては、差押え処分をするというような方法を、現在徴收方法としてとつているわけでございます。
  7. 春日正一

    春日委員 大体、差押えはどのくらいでやつておりますか。
  8. 池邊道隆

    池邊説明員 差押えの件数につきましては、中央ではとつておらないのでございますが、これはもし何でございましたら、後刻資料をとつてみたいと考えております。
  9. 春日正一

    春日委員 そこで金の方はそれだけとして、最近災害が非常に多くなつている。そしてそれの労災保險支拂いが非常に遅れているということがいわれておりますけれども、大体そういうふうに、ひどいのになると、三月も四月も遅れるというような状態が事実あるかどうか、どういう状態なつているか、そういう場合に一体けがをした人たちをどういうふうにして救済しようとしているか、その点をお聞きしたいと思います。
  10. 寺本廣作

    寺本政府委員 ただいま御質問の中にもありました通り、昨年度一般工業におきましても、それから鉱山方面鉱業におきましても、災害相当頻発いたしております。そのために昨年度まで予定いたしておりました災害率に基く保險料率で間に合わないというような状況になりまして、昨年度半期から保險料支拂いが一月ないし二月、おそいのは三月も延びて来ておるということは、御指摘通りであります。これにつきましては、保險料率計算が的確でなかつたという点もございますが、この保險が始まりましてまだ三年も経過いたしておりません。保險料率計算では、大体過去五年の統計をとつて、その統計に基いて料率を出すのが適当であるということになつておりますが、いまだそういう的確な資料を持ち合せておりませんので、過渡的にはやむを得ない事情であらうかと思います。ただ災害が増加の傾向にありますので、これについては防止方策を講じますとともに、現在発生しております災害率に合せて保險料率を上げる必要があるということで、去る三月労災保險審議会の御審議を得まして、この四月一日から相当の業種にわたつて災害率に合せた保險料率の引上げをやることにいたしております。その間現在支拂い遅延になつておるものをどうするかという問題がありますので、これはただいま大蔵省と折衝いたしまして、国庫余裕金の繰りかえ使用を認めてもらうということで、この年度初めに現在遅れておりますのは全部拂いたいと思つております。大体大蔵省の内諾を得ておりますので、今月中にはこの国庫余裕金の立てかえで皆済できると考えております。
  11. 春日正一

    春日委員 災害がふえておるというお話ですが、このふえておる状態、これは今ここで数字をあげてもらわなくてもいいのですけれども、大体の材料をひとつ見せてもらいたいと思うのであります。  それから災害防止するということを言われましたけれども、あなた方の方ではどういう方法防止をしようとしておられるか。特に炭鉱災害が非常に多い、率からいうと一番多いのですから、そういうものを防止するのにどういう手を打つておられるか、この点をひとつ説明していただきたい。
  12. 倉石忠雄

    倉石委員長 春日君、炭鉱災害通商産業省関係管轄になりますので、労働省としてはお答えをできません。
  13. 春日正一

    春日委員 そうすると私は、炭鉱災害が一番こう多くなつたというのは、あそこの保安その他の問題が、通産関係でやられておるので、結局金をもうけるという方が主になつて、人聞を大事に使うということが、従になるという面からも、相当出ておるのではないかと思うのです。それで通産関係だから、今説明員がおらぬので説明できぬというのなら、これは出て来たときにやつてもらうよりしようがないけれども、そういう点から見て基準局長意見として、やはり労働の保護という面では、労働省が担当すべきものであると私は思うが、あなたの方ではどう考えておいでになるか、非常にむずかしい注文で、返事がしにくいかもしれないけれども……。
  14. 寺本廣作

    寺本政府委員 災害の予防をどうやつておるかというお話でございますが、この産業災害法律の面から見ますと、法律規則違反によつて起る面と、そうでなく法律規則に規定された以外の事由で起る災害とありまして、それが相当に多いのでございます。最近新聞紙上に掲載されておりますいろいろの事故も、大体現在の労働安全規則で間に合わないという問題が相当あるのであります。鉱山を除きまして一般産業災害の二割が、基準法規則によつて防ぎ得る部分で、その他の部分は大体法律規則関係なく発生するという災害が多いのであります。それで災害防止につきましては、現在定められております法律規則巖格に励行してもらうように、監督して行くということが第一要件であると思いますし、昨年並びに一昨年の傾向を見ておりますと、法律規則違反災害は、漸次減少しつつあることが統計の上で明らかになつております。ただ法律関係ない、いわば関係者の気持のゆるみから起るというような災害相当つて災害全体としてはふえつつあるというのが、私たちの担当している部面の災害傾向だと思います。これにつきましては労使双方の安全問題に対する関心を喚起いたしましてその御協力によつて、この安全運動を延ばしてこれを防止するよりほか方法がないのではないかと考えております。  なお鉱山保安の問題につきましては、これは一昨年の十二月閣議決定で、ああいうふうに鉱利と保金と切り離せないということで、通産省に所管がえになりました。その後鉱山保安法ができまして、目下鉱山保安局でも法律の施行に一生懸命やつておられるように思いますので、今までのところでは傾向としては災害が増加いたしておりますが、いましばらく様子を見るべきであつて、われわれの方から今ただちに批判するというのはどうかと存じております。
  15. 春日正一

    春日委員 法律規則違反のものが二〇%、これはだんだん減じつつあるという話ですけれども法律規則違反ということにならなくても、今の常識から言つたら、違反ではないけれども常識はずれであるというようなことが行われて、そのため病人とか、けが人が非常にふえる傾向があるというふうに私どもは聞いております。たとえば残業なんかでもべら棒に長くやらせる。この間も沖電気に行きましたら、一箇月二百時間超過労働をする人がおるということです。二百時間ということになると、一日六時間、晩の十時まで残業して、一箇月三十日働いても百八十時間しか時間がないわけですから、どうしてその二百時間を働くかといつたら、それは徹夜をやる、日曜出勤をやる、こういう形で二百時間かせぐ。だから造船なんかでは現在すでに十四時間労働というものが復活しておる。こういうふうな形で、一人の人間が非常に長い時間働かされるというために出て来る疲労、これがやはり事故原因なつておる。ところがそういうものを、疲労して事故が起つたのだから本人の責任というようなことで片づけておるけれども、こういうものは、今の世の中のように人がうんと余つておるときに、十四時間も十五時間も働かせる必要はない。八時間労働なら八時間労働ということにしてやらせれば、災害なんかもずつと少くなるというふうに考えるのですが、基準局として、法律にそういうものがないからといつて、ただ無制限にやらせるということでなくて、何か手を打つ考えがあるか。
  16. 寺本廣作

    寺本政府委員 法律に規定された安全規則安全基準違反するという問題でなく、法律では認められておる残業というようなことが極度に行われる、そのために相当健康をそこね、災害が起つて来るのではないか、それを防ぐのにどういう方法があるかというお話でございますが、この問題はやはり現在の制度では、八時間労働というものを巖格制限するという建前を、日本の基準法ではとつておらないのであります。労働者団体意思による同意、それと二割五分の割増し賃金を拂えば、残業させられるというのが原則の規定になつております。法律趣旨といたしますところは、個人々々の労働者同意でなく、労働者団体意思によらなければ、残業ができないというところが、ねらいでありまして、結局労働者団体意識自覚による同意によつて残業同意するか、非否するかをきめるべきだという法律趣旨なつております。それで法律趣旨を説き、結局は労働者労働組合のそういう問題に関する認識が高まるということでなければ、今の法律執行官として、これをどうこうするというわけに参りがたい問題ではなからうかと思います。ただ法律執行に当ります私ども労働基準監督官としては、法律趣旨がそういう趣旨なつておるということを説いて、労働者自覚を高めて行くという—まわりくどい道ではありますが、そういう方法で問題を解決するよりほかないと考えております。
  17. 柄澤登志子

    柄澤委員 ただいま春日さんから質問がありました中で、実は一昨日災害統計について資料提出方をお願いしていたのでございました。本日それが私ども手元にまわつておりませんが、どうなつたのでございますか。
  18. 倉石忠雄

    倉石委員長 労働省から提出されてあるそうでありますから、ただいま配付いたさせます。
  19. 柄澤登志子

    柄澤委員 資料委員会が開かれましてから配付されますので、検討する時間がないのでございますけれども委員長としてこういう点についてのおとりはからいをもう少し十分にやつていただきたいと思います。  前に配られました労災資料を拝見いたしますと、失業保險労災保險とも月々延滯がふえているように見受けられるのでございますが、政府としては今後こういうこれが見通しをお持ちになつておられますか、またどういう対策をおやりになるおつもりか、承りたいと思います。
  20. 池邊道隆

    池邊説明員 御質問に対しましてお答え申し上げますと、大体ただいまお手元に差上げました二月末の月報から申しますと、滯納件数相当あるようになつておりますが、われわれ最近の速報から受けました年度末までにおける概況を御説明申し上げますと、大体收入決定済み額は五十七億、もうあと一億ばかりふえるのじやなかろうか、それに対しまして、実際收入されるのが五十六億程度あることの確信を持つに至つておりますので、この間年度末における滯納額として計上されますのは一億足らずのものである。そうして見ますと、この保險事業におきまする滯納額というものは、年度末におきましては相当良結果を得ておるといわなければならないようなことでありまして、ふえるという見通しは、われわれのところでは、ただいまのところは数字の上においては現われていないということでございます。
  21. 柄澤登志子

    柄澤委員 労災資料には、これは政府資料でございますけれども、備考によると、厖大な赤字、約十億近いものがあると思われるのでございます。今度のこの改正の、延滯の百円に対する二十銭を八銭に切り下げるという目的は、国税徴收法改正伴つてということでございますけれども労働省としては、これがどういう結果を及ぼすか、ただ單に国税徴收法改正するからということに引続いての、事務的な手続としてお取扱いなつておられるのかどうか、承りたいと思います。
  22. 寺本廣作

    寺本政府委員 ただいま池邊労災課長からも御説明申し上げました通り労災保險といたしましては、年度末の見通しとしては相当徴收成績はよくなるという見込みを持つております。赤字が九億あるのではないかという御指摘でございますが、これは先ほども申し上げました通り、今までの保險料率災害発生率に比較いたしまして安かつた、そのために新年度になりましてから料率を上げておりますので、この点は赤字が解消できると考えております。赤字がでましたのは、滯納のためというよりも、保險料率災害率がマツチしなかつたということに原因があるのです。延滯金引下げるために、使用者相当保險料率納入を怠りはしないかという懸念がありはしないかという点につきましては、先ほども申し上げました通り労災保險といたしましては、大体第一線の監督官相当苦労いたします関係もございますが、年々收納成績国税よりははるかにいいわけでございます。この前延滯金の利子を二十銭に上げましたときも、国税徴收法に歩調を合して上げたようなわけでありまして、労災保險といたしまして、今度国税徴收法並に下げましても、このために保險料徴收に特別の支障が起るとは考えておりません。
  23. 柄澤登志子

    柄澤委員 そういたしますと、これは失業保險保險料のことも含まれると思いますが、その徴收率がよくなつて来る見通しがあるというお話でございます。しかしこの労災補償金基準局が拂わないで、労災保險金獲得促進大会というようなものをやつておる地方もあるように聞いております。山口県では大会が開かれて、労働者基準局に要求に行つたというようなことも承つておりますが、そういう事実はないかどうか。もし徴收率がいいのに、基準局がそういうことをやつたのだつたら、基準局はけしからぬではないかと思うのでございますが、その点どうでございますか。
  24. 寺本廣作

    寺本政府委員 山口県には御指摘のような事実があるのであります。山口県は炭鉱関係保險料があそこの保險料收入の大部分でございますし、また支出は、炭鉱災害に対する災害補償が大部分でございます。ところが先ほど申し上げます通り、今までの保險料率は、過去の災害率を基礎にいたしておりまして、非常に不正確でございます。一昨年の後半から昨年上半期、不半期ずつと災害がふえておりまして、山口県だけを例にとつてみますと、こちらで徴收いたしました保險料の倍以上を災害補償として拂つております。つまり滯納のためでなく、保險料率災害の率のバランスがとれないために、赤字が出るというようなことが、山口県では最も端的に現われておるわであります。それでその点は先ほど春日委員からの御質問のときに申し上げました通り、この四月から保險料率を上げますので、それの徴收の金が入つて来ますまでのつなぎといたしまして、一般会計余裕金で繰りかえるように、大蔵省に折衝いたしまして、これが大体まとまつていますから、今月中には全部拂える。あとは値上げした保險料率で入つて来ます金で、一般会計の方へ返して行きたい、こういうふうに考えております。
  25. 柄澤登志子

    柄澤委員 先ほど炭鉱災害がふえたということについて、管轄が違うから答弁できないというようなお話でございましたが、これは私どもちよつと納得できないのでございます。保安事故が年間十六万件ぐらいに上つていて、一箇月の死亡者が六十三名からに上つているのでございます。これは去年でございます。これはそこの地域の労働者保險料でまかなうことができないから、支拂いが遅れるというのでは、この法の精神は生かされないと思うのでございますが、労働者に対する未拂金は現在どのぐらいあるか、おわかりになつておりましたならば、御答弁願いたいと思います。
  26. 寺本廣作

    寺本政府委員 ただいま山口県の例を県だけの数字で申し上げましたために、若干説明が足りなかつた点があるかと思います。労災保險全国一本でございますので、大体余つておる県から足りない県にまわすように、しよつちゆう中央操作はいたしております。しかし山口県で起つておるのは極端な例で、全国的に同じようなことがありましたので操作がきかなかつた。そのためにああいう事態が起つたわけであります。ただいま未拂いになつておる金額は約九億と見当をつけております。
  27. 柄澤登志子

    柄澤委員 失業保險、特に日雇い労働者失業保險につきまして私どもにもたびたび陳情がございます。日雇い労働者失業保險を差引かれておりますが、いろいろな制限がありまして、保險料がとられつぱなしだというような形なつておるように聞いております。これは総額でどのぐらい徴收してどのぐらい日雇い労働者に実質的に支拂われておるか、御答弁願いたいと思います。
  28. 倉石忠雄

    倉石委員長 柄沢さんに申し上げます。ただいまの質問失業対策のことのようでありますが、きようは職業安定局長が見えておりませんから、この次の機会におやり願つたらいいと思いますが……。
  29. 柄澤登志子

    柄澤委員 今日の議題は、労働者災害補償保險法失業保險法と両方だと思うのでございますが……。
  30. 倉石忠雄

    倉石委員長 本日は労働者災害補償保險法事の一部を改正する法律案審議でございまして、失業保險法審議ではございません。
  31. 柄澤登志子

    柄澤委員 第一條はそうでございませんけれども、第二條に「失業保險法の一部を次のように改正する。」という條文があるのでございますが、委員長はこの條文を御存じないのでしようか。
  32. 倉石忠雄

    倉石委員長 一昨日の理事会で、柄沢さんもおいでになりましたときに、本日は職業安定局長が大阪に出張するということを申し上げておいたと思います。従つてその点は、職業安定局長のおられるときの方が十分な答弁ができるだろうと思います。
  33. 柄澤登志子

    柄澤委員 職業安定局長がおらなけば、答弁ができないというような委員会動き方は納得できませんが、御答弁が願えなければやむを得ないの、質問を打切ります。
  34. 倉石忠雄

    倉石委員長 では機会を見てまたやるようにいたしましよう。質疑は終了いたしました。これより討論に入ります。討論は通告順によつてこれを許します。大橋武夫君。
  35. 大橋武夫

    大橋委員 ただいま議題なつておりまする労働者災害補償保險法等の一部を改正する法律案につきまして、自由党を代表いたしまして賛成の意見を申し述べるものであります。  本案は、労働者災害補償保險法による保險料並びに失業保險法による保險料滯納に際しまして、その延滯金を、従来二十銭でありましたものを八銭に引下げるという内容でございます。この点につきましては、従来国税徴收法によりまして、国税滯納の場合にも二十銭でありましたが、先般これを八銭に引下げられたのでありまして、これとまつたく同じ措置を保險料延滯の場合に適用しようという趣旨であるわけであります。元来国税についても言われましたと同様に、二十銭の延滯金と申しますものは、今日の企業経理状態並びに一般の金利の実情から見まして、きわめて高きに失することは申すまでもないのでございます。これを引下げることは当然なすべきであろうと思います。ことにこの保險料を出すべき義務者には大企業ばかりでなく、多くの中小企業があるのでございまするが、これらの中小企業は今日きわめて困難な際でございまして、これが引下げによりまして、その経理を幾分なりとも楽にするということは、負担の軽減の趣旨にもかなうと存ずるのであります。あるいは滯納に対する延滯金引下げということによつて保險料滯納整理を困難ならしめるということが考えられないわけでもありませんが、これについては、政府といたしましては別途の方法を講ぜられまして、保險経営に支障のないよう御注意を願いたいと思うのでございます。  以上の理由をもちまして、わが党はこの案に対しまして賛成いたす次第でございます。
  36. 倉石忠雄

    倉石委員長 青野武一君。
  37. 青野武一

    ○青野委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、今上程せられておりまする労働者災害補償保險法等の一部を改正する法律案に対して、反対の意思を表明いたします。  延滯金の利子日歩二十銭を八銭に引下げるという点については、われわれも異存はありませんが、今大橋委員も言つておりましたように、経済界の実情にかんがみまして、いろいろな税が滯納がちである。税金を拂えばその日からの生活ができないという中小企業のこの実情の上に立つて考えまするときに、かりに延滯金の利子二十銭が八銭に下りましても、ほかの税金が高ければ、たとえば国税が二百億円減額せられましても、地方税が四百億円新しくできることになりますれば、それだけ別の方面でそれぞれの中小企業者は脅威を感ずるのであります。従つて延滯金の日歩二十銭が八銭に下りましても、生活の苦しさの点においては結果は同じであります。私どもの党といたしましては、数字をあげて詳しく申し上げる時間がありませんが、三月三十日の本会議の日程第六で、国税徴收法の一部改正法律案が出ましたときに、大蔵委員長の報告に対しまして、代表者を送りまして詳細なる資料でその内容を説明いたしまして、国税徴收法に反対をしております。この国税收徴法の国税滯納に対する率と、今提案せられて括りまする労災法のこの二十銭を八銭にする率は同じであります。この内容が同一でありまするために、日本社会党といたしましては、その内容を具体的には申し上げませんが、三月三十日の本会議におけると同様に、反対をいたすものであります。
  38. 倉石忠雄

    倉石委員長 春日正君。
  39. 春日正一

    春日委員 共産党を代表してこの案に反対いたします。青野君もいろいろ反対の理由を言われましたけれども、これが滯納なつておるということの一番大きな原因は、ずるくて納めないということじやなくて、もう納められないというところまで来ておる者が非常に多いということであります。従つてそういう面の責任を單に—この前言つたように、滯納が多いから、二十銭に上げたら納まるだろうというので上げてみた。ところがそれでもむりだという声が出て来たので、今度は下げてみた。このことは明らかに政府がこういう問題の解決に、しつかりした定見を持つておらぬということの証拠になると思う。そういうことでこの労災保險改正してみたところで、それで滯納がなくなる、あるいはどうとかいうことにはならぬと思う。だからむしろ改正すべきなら、そういうところをつつくのではなく—もちろん二十銭が八銭になることは、青野君が言つたように、私は決してそれが悪いというわけではないけれども、しかし、そういうことをいじるのではなくして、もつと中小企業に対する振興策を講じて、その保險料ぐらいどんどん納められるようにする、あるいはもつと基準を徹底的に実行して、労働災害を少くする。特に職業病などに対して、現在基準法の保護が與えられてないために、みすみす職業で倒れながらも、自分の病気として自己の負担になつておるというような例が非常に多い。こういう点をむしろ改正すべきである。ただ二十銭を八銭にする、だから改正だというようなことは、労働政策の失敗に対する一つの欺瞞である。そういう意味で反対いたします。
  40. 倉石忠雄

    倉石委員長 討論は終局いたしました。  これより採決いたします。労働者災害補償保險法等の一部を改正する法律案について賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  41. 倉石忠雄

    倉石委員長 起立多数。よつて本案は、原案の通り可決いたしました。  なお、報告書の作成については、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  42. 倉石忠雄

    倉石委員長 御異議がなければ、さようとりはからいます。     —————————————
  43. 倉石忠雄

    倉石委員長 ただいまより労働事情に関する件を議題といたし、日雇い労務者の求職運動の実情について調査を進めます。本日は、川崎、大森、五反田、澁谷、足立の各職業安定所長を招いて、その事情を聽取いたすことになつております。なお、この際お諮りいたします。去る十七日の理事会で決定いたしました通り、参考人として東京労働局長林武一君、全国職業安定所職員組合執行委員長熊川廣衞君、同執行委員長後藤克已君、同書記長野々山敏夫君をそれぞれご出席願い、本日あわせて説明を聽取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  44. 倉石忠雄

    倉石委員長 御異議がなければ、さよう決定いたします。  これより日雇い労務者の求職運動について実情ないし説明を聽取することといたします。この際委員長といたしまして、本日御出席の関係各位に一言ごあいさつを申し上げます。目下本委員会におきましては、労働事情に関する件につきまして、国政調査を実施いたしておるのでありまして、本件については多大の関心を寄せ、鋭意調査研究中であります。この調査を推進するにあたりまして、直接その実情を精査し、本委員会の調査に遺憾なきを期するため、本日この挙に出た次第であります。本日御出席の関係各位は、公務員といたしまして、また組合の幹部といたしまして、本件についての直接応接の立場におられまするので、深い認識と御体験ないし這般の実情について体験を有せらるる方々でありまして、各位の貴重なる御意見は、本委員会の調査に多大の参考と相なると信ずるものであります。つきましては各位におかれては、あらゆる角度から忌憚のない御意見を御開陳願いたいと存ずる次第であります。なお発言の時間は十分程度にお願いいたします。次に委員諸君より質疑のあることと存じますが、これに対しても腹蔵なきお答えを願いたいと存じます。御多忙中御出席をいただきまして、委員長として厚くお礼を申し上げます。  それでは最初に東京労働局長の林武一君より御発言を願います。
  45. 柄澤登志子

    柄澤委員 委員長、議事進行について発言を求めます。
  46. 倉石忠雄

    倉石委員長 委員長は林君に発言を許しました。—あとで許します。
  47. 林武一

    ○林参考人 私ただいま御紹介にあずかりました林武一であります。     〔発言する者あり〕
  48. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。続行を願います。
  49. 林武一

    ○林参考人 日雇い労働者の職よこせ鬪争につきましては、すでに昨年の五、六月ごろから非常に活発をきわめて参つたのであります。これらはいずれも失業対策事業のわくの増大の面における鬪争と、賃上げの要求並びに年末における越年資金の要求が、昨年におけるその運動の主眼点であつたのであります。しかるに本年に入りまして、東京都内の実情としては一月から二月の二十三日までは、やや小康を保つていたのでありまするが、二月の二十四日に澁谷の安定所におきまして、職よこせ鬪争が行われまして、爾来三月の二日に新宿、同じく三日に池袋、八王子、四日に三鷹、三月七月に池袋、それから九日に足立、十三日五反田、大森、王子、十五日澁谷、板橋、十七日は都庁に参るというふうに、大体連日のごとく職よこせの鬪争が活発に行われたのであります。しかもこれの動員の方法といたしましては、昨年九月の鬪争には一部自然発生的な面もあつたのでありまするが、今回の二日の二十四日以降の各安定所における職よこせ鬪争については、事前に相当用意周到な動員がなされておるのであります。一例を申し上げますならば、池袋安定所における三月三日の動員にあたりましては、池袋の駅前にスピーカーを備えつけまして、そうして各新聞に折込みをいたし、さらにまた電柱にもビラを張りつけ、あるいはビラを配る等をいたしたのであります。その内容といたしましては、従来失業対策事業がある一定の数によつて限定されておりまする関係上、労働省における実施要領によつて制限されておる、国庫支出による失業保險の受給者あるいは生活保護法の適用者、もしくは全然労働力を持たないところの老人、子供にまでも、このビラの内容にはこれを明記いたしまして、二百四十二円ほしい人はすべて安定所に三月三日午前九時までに集まりなさい、という形のビラを配つておるのであります。この形は多かれ少かれ、その他の安定所におきましても、東京都の一般労働組合の職安分会、あるいは地区におきますところの共産党地区細胞の名前によつて、足立においては柳原細胞、あるいは中野におきまする細胞、もしくは澁谷における同様な組織が、それぞれ働きかけまして集めているのであります。従つて東京都の失業問題に対します方針といたしましては、いわゆる町方の仕事、公共事業及び失業対策事業の三本立てで日雇い労務者は、就労していただいているのでありますが、なおその他生活の極度に困窮をきわめております面については、生活保護法によりまして民生局がこれを扱つておのであります。その他民生局関係の授産所に働く、内職を現にやつていらつしやる方々も、生活困窮の度合いはもちろんはげしいのでありますが、それらの人も、この表面に掲げた、二百四十二円ほしい方は安定所へ、というきわめて率直な表現の仕方によつて、安定所に数多くの人たちが参りまして、いずれも組合の指導者、もしくは政党に所属いたしますところの指導者の方々によつて、所長に対して登録の要望あるいは就労の要求をいたすのであります。     〔委員長退席、三浦委員長代理着席〕  しかもその形たるや、職業安定所に参る方でありますから、安定所としてはこれを拒否することができませんので、つとめてお会いしているのでありますが、昨年来その傾向の中には、多分に精神的な暴力を加えるがごとき、威圧的な言動等もあります。代表に対する面会は昨年来行つているのでありますがそれがたまたま—安定所は御案内のごとく、ただ單に日雇い労務者の方々のみの安定所ではございません。失業保險受給者も、あるいは一般窓口に参ります失業者も扱つておりますので、常に門戸は開放しております。そこへ間々戰術といたしましてはすわり込みをかけまして、そうして所長に対しましては、相当長時間にわたりまして軟禁同様な状態に陷れることが非常に多いのであります。ことに澁谷におきますところの二十四日の日、あるいは足立におきまする三月九日の日、もしくは八王子の三月三日のごときにいたしましても、あるいは十三日の五反田、大森等におきましても、相当長時間にわたりましてこれが行われている実情なのであります。  これに対しまして、都といたしましては、できるだけ失業対策事業の増加と同時に、国費三分の二、都費三分の一によりますところの失業対策事業以外に、約六千三百人分の全額都費によつてまかなつておりまする失業対策の仕事も計画いたしましてこれをもつてすでにまかなつているのでありますが、いかにせん、眠つた子を起すような形において、事前におきますところのビラの散布、あるいは先ほど申し上げましたようにポスターを掲げ、もしくは通行人にスピーカで呼びかけるというようなことによつて、参ります方々でありますがゆえに、これらはいわば乏しきをわかち合う失業対策事業の精神から行きましても、そう数多くの方を收容することができません関係上、やはりこうした一部の方々の、ためにせんがための行動によつて相当尖鋭化されたところの場面が常に現われておるということが現状なのであります。そうした実情をもつて今日まですでに小さな安定所に対しまするところの要望、たとえば日曜就労でありますとか、あるいは現場直行、メーデーの有給休暇もしくは生理休暇等の要望等も加えて参りますれば、連日のごとくこれが繰返されているというのが、偽らざる現状でありまして、この形はいずれ後ほど、それぞれ安定所長より詳細に申し述べることと存じます。  なお昨年と異なりまして、今回この運動にあたりましては、相当有力な方方が常にお見えになつております。それは澁谷の場合には風早代議士、あるいは世田谷区の西尾区会議員、それから八王子、立川の場合は土橋代議士、大森の場合には伊藤代議士等もお見えになりまして、この間に安定所長との交渉を行つておりますし、区会議員に至りましては、先般の減税鬪争によつて品川で問題を起しました品川区の高本会議員、あるいは板橋の丸山区会議員等も、常に活発に先頭に立つて安定所長との交渉に当つているという面が、昨年とは非常に異なつた形で現われているという状況であります。  以上たいへん簡單でありますが、與えられた時間も非常に短かいので、なおその他につきましては、委員長のお許しを得て御質問に答えたいと存じます。
  50. 柄澤登志子

    柄澤委員 議事進行について—この間の理事会において、失業者の実情について労働委員会が参考人を呼んでいろいろ調査したいということであつたのでありますが、失業者の実情を調査するという建前ではございますけれども、当時お集まりになりました自由党の方々の有力な理事の方の発言の中には、最近非常に失業者がごたごたを起しておる、乱暴を働いておる、こういう問題をどうしても明らかにしなければならないから、この労働委員会で参考人を呼んで行うのだということでございました、労働委員会は、失業者の問題に対して政府答弁を求めることは、今までもたびたびやつてはおりますけれども、まだ的確な、責任のある、見通しのある委員会審議が十分に行われたことは今までなかつたのでございまして、いつもしり切れとんぼに終つてつたのでございます。失業者の問題が非常に重大になつて来ておるということは、これはわれわれだけではなくて、世間の注視の的になつておるわけでありますが、その問題を審議いたしますのに、当事者であります失業労働者をまず呼びまして、実情を調査するならば当を得ておるのでございますけれども、ごたごたが起きたり、乱暴ができたというようなことを調査するために、労働委員会がまず開かれるというのであれば、これはまるで考査委員会のような問題でございまして、そういう取扱い労働委員会がいたしますことにつきましては、そういう意図のもとに開かれます労働委員会というものは、国際的に申しましても恥辱的な問題だと思います。イギリスにおいても、アメリカにおいても、少くとも労働委員会というものは、もう少しは労働者の立場に立ちまして、その問題の解決に努力するはずでございますけれども、自分たちが首を切つて何十万も失業者を出しておいて、その対策も十分でない、しかも輪番制の指令などを出しておるような状態のもとに行われるこの紛争というものを、失業者を呼ばないで、一方的に労働委員会がこれを聞くというようなやり方に対しましもては、私賛成ではなかつたのでありまして……。     〔「討論のようですよ」と呼び、その他発言する者あり〕
  51. 三浦寅之助

    ○三浦委員長代理 柄澤さん、要点だけを……。
  52. 柄澤登志子

    柄澤委員 ぜひ失業者の代表を入れるようにということを当時提案したのであります。その提案に対しましては、自由党の方でも一応御承認になつたようでありまして、もし御承認になつたのでございますれば、今日参考人をお呼びになりますときに、なぜ正式に失業者の代表をお加えにならないか、ぜひ正式に失業者の代表をお加え願いまして—今日は傍聽者として見えております。この中からでもけつこうでありますから、参考人をお出しになりまして、所長や職安の職員と同時に、ぜひその点をやつていただきたいと思います。そうでありませんと、この議事の進行というものは非常に一方的になりまして、紛争がよけいに大きくなると思うのでございます。重要な議事進行上の提案だと思つて、確信を持つて発言するのでございますから、各位におかれましてもこの点をお取上げ願いまして、ぜも失業者の代表の発言を求めていただきたい。これは最低の線であります。そうでない、先ほど申しましたような野心のもとで行われる陰謀的な労働安員会であるならば、私どもに賛成できないのでございます。     〔発言する者あり〕
  53. 三浦寅之助

    ○三浦委員長代理 ただいまの問題については、委員会終了後……。     〔「委員外の発言を注意しろ」「進行進行」と呼ぶ者あり〕
  54. 三浦寅之助

    ○三浦委員長代理 今発言した者には退場してもらいます。  柄澤さんの御発言の問題については、本委員会終了後において理事会を開いて決定することにするそうですから、御了承願います。なおまた本日呼んだことは、理事会の決定に基いておやりになつたので、決してあなたの言うように独断專行でもなく、別にそういう專制によつてつたことでもないから、御了承願います。
  55. 柄澤登志子

    柄澤委員 理事会あとで、委員部の方に要求したわけでございます。この要求はできるそうでありますので、労働者代表をぜもお呼びくださるように要求しておりますが、その点についてどうおとりはからいになりますか、皆さんにお諮り願います。
  56. 三浦寅之助

    ○三浦委員長代理 その問題について、委員会の終了後において、理事会で相談してきめたい、こういうことです。  傍聽人に注意いたしますが、傍聽席から発言された場合においては、ただちに退場を命じなければなりませんから、静粛に願います。  それでは説明員川崎職業安定所長梅津好二郎君、お願いします。
  57. 梅津好二郎

    ○梅津説明員 それでは御指名によりまして、私から川崎の労働攻勢の状況を申し上げます。  川崎市におきまして労働攻勢が行われたのは、まつたく以下述べるような実情に基いておこつておると考えられるのであります。それは十月半ばごろまでは、日雇い労働者は全員就労しておりました。十一月の末にはこれが六〇%になつております。十二月末になりますと四九%、一月になりますと二九%になつている。こういうところから紛争が起きておると考えられるのであります。しかしながらこの十月末まで一〇〇%就労したという事実を検討しますと、当時失業対策事業費第三・四半期の—県の失業対策の状況でありますが、これが第三・四期、十二月まで当然仕事をしなければならぬ実情であるにかかわらず、まつたくあの攻勢にあつて、当時の安定所はどうしてもこれを防止できなかつた従つて十月二十七日には、全部わくを食いつぶしてしまつた、こういう実情が起きておるのであります。それで当時の安定所は、どうしてもこの労働攻勢を押えることができないというので、十一月二十八日に、当時私は県におりましたが、お前はピンチ・ヒツターであるから、どうしても川崎へ行つて再建するように、秩序を回復するようにという命を受けて川崎に参つたのであります。なお私ばかりでなく、全部の課長が参りまして、決心を新たにして再建にかかつたのでありますが、当時参りましても、まつた労働者の意のままと言いますか、そういう要求があると、押され押されて仕事をしておつた。しかしながら私ども赴任した当時でありまして、よく実情をつかんでから仕事をいたしたい。十一月二十八日赴任以来その状況を把握するのに、十日くらいは何もできないのではないかというので、各課長以下がかかりまして実情を見ておつたのであります。しかしながら当時新たに市の失業対策事業が始まりまして、市の方で紹介するにあたり、やはり県の場合と同様に、わくでは押えられないほど熾烈な攻勢にあつたのであつたのであります。そういう事情から、市の方では何としても県の方でこのわくで押えてもらいたい、そういう要求がありまして、今まで押され押されておつたのでありますが、十二月の六日には、どうしてもこれは六百名に押えなければならぬという実情になりまして、当時私どもは組合の幹部に諮りまして、こういう事情で、十二月八日からはどうしても六百名で押えなければならぬ、協力してもらえないかということを要請したのであります。ところがこれに対して組合の首脳—私どもは首脳と思つたのでありますが、この者が、そういう事情であつたら、とにかく六百名で食いとめるのに協力しよう。ところが十二月八日の朝になりますと、労働者が数百名囲んでおります。私が労働課に参りまして、どういう事情だということを言いますと、私どもが組合代表ということで諮つたのは、実は代表ではない。彼ら一部の者がやつたのは、われわれ新たに選ばれた執行委員は知つたことではない。現に執行委員は二十一名選ばれておるにもかかわらず、これには何も相談しなかつたじやないかということで、もんちやくが起きまして、六百名のわくに対して四百八十名までは紹介したのでありますが、あとは就労をえんじない。しかも一旦紹介を受けて現場に向つた者も、組合の者から呼びもどされて、そうして今度は私どもに、今まで出した紹介票は全部無敷とし、新たに六百名を出せ、それから、その要求事項でありますが、安定所の機構を充実し、会社側に対する紹介機能を発揮する、また全員を就労させろ、本日もし就労できないならば、あぶれ一人につき百円ずつ、出せ、これから市長の所へ行つてわくを広げる運動をしろ、こういう四つの事項を最後通牒として突きつけられたのであります。しかしながら私は当時赴任したばかりでありまして、こういう交渉にはなれないものでありますから、代表だけを選んでその者と交渉するということはしなかつたのであります。当時大体交渉する場合には、人員を制限し、時間を制限してするようにという指示がありましたが、私自身としては、とにかく新しい私どもの方針を全部の労働者に納得していただこうということで、全部のいる所に行つてお話したのでありますが、今のような要求を突きつけられてどうにもならなかつた。それで私は、第一の、すでに紹介票を持つてつて就労しておる者があるのに、紹介票を持つたままもどつて来て本日のデモに参加しておるからといつて、これを無効にすることは断じてお断りする。このとき、私はたといこの身を八つ裂きにされても、すでに行政官庁の長として紹介したものは絶対に有効だということを言つたのであります。二の安定所の機構充実については、県と真劍に取上げておる。六日の所長会議のおもな議題はこれであつた。しかし他の安定所から当所にいすを持つて来るわけには行かないから、もう少し待つてもらいたい。あぶれに対し賃金を出すことは、ぼくの権限にはないことだから、相談には応じかねる。市長の所へ行つてかけ合うことは、筋違いだからお断りする。すなわちアベック戰術を追られて、こういう応答を重ねて当時十一時—実際には十時半でありましたが、当時全部引揚げたのは十一時、とにかく第一回にはこういう猛烈な攻勢を喰つたのであります。それから十二月九月にまた、この日は雨模様であるので、切つたらいいか、切らないがいいか、交渉したのでありますが、雨がやみそうだから紹介してくれという連絡がありまして、紹介した。ところが運悪く紹介しているうちに、これが本降りになつた。それで川崎市の失業対策事務所長が私の方に参りまして、せつかく切つたのだが、今日は雨で不可抗力だ。失業対策事業は屋外で仕事をするのが大部分だから、むりだ。残念ながら今日はとりやめてもらいたい。私の方に来た者もすでに事情を訴えてやめにしております、と言うので、そういう点から、広場にまだ残つておりましたが、私どもが出かけまして、まことにやむを得ない事情だ、こういうふうにほんとうに雨になるとは思わなかつた、不可抗力であるからやめてもらいたい、ということをお願いしたのであります。しかし、前には所長はすでに紹介した者は絶対、有効だと言つているではないか、君は詐欺をするのかというようなことで、これも朝から五、六名の者にとりかこまれて、につちもさつちも行かない事情になり、当時一般の紹介に支障があるので二階に上げたのですが、そのうちに映写班が来まして、その状況を攻めたという例もあるのであります。しかたありませんので、午後失業対策事務所の者と一緒に川崎市に行つて、事態收拾のために、今後十二月末まで、今日のあぶれを含めて何とかわくを広げていただきたいという交渉もしたことがあるわけであります。  時間が短かいから省略いたしますが、こういう事例はたくさんありますし、また失業対策事業は八時間就労という建前から、どうしても私どもは八時までに就労の態勢をとりたい。そこで就労時間を制限しておりますが、その規定の時間以後に遅れて来た者は、どうしても切れぬということで、これを断つたために暴力行為が出て、所長がなぐられて、新聞をにぎわしたという事例もあるのであります。またこれは新年に入つてからでありますが、中原という安定所から離れたところ—この地区からも労働者がたくさん来ているが、わざわざそこから安定所に出向いて来て、紹介を受けるのでは気の毒である。何とかこの方に寄り場を設けて、そこに職員を派遣してもらつて労働者のために、そこで紹介をし、その近くで就労できるようにしたいということで、とりはからつたのでありますが、結果的にはそれが各個撃破という形になりまして、出張している職員がことごとく、場合によつては食事もとらせられず、あるときはタバコも吸わせられない。なお便所に行くのにも軟禁状態に陷つて、自由に行けなかつたという事例も訴えて来まして、中原派遣の職員の六人くらいかわつております。次々にかえたのでありますが、そういう事例から事情やむを得ずと見て、各自治体と協力の上、県に連絡し、さらに県を通じて本省にまで連絡して、一日就労を中止して、そのあと組合との折衝の模様によつた復活したいということで、そういう非常手段をとつたこともあるのであります。組合の方も折れて来まして、安定所から派遣しておる職員には交渉は持たない、交渉するなら所長の要求しておるように、本所でやるということをのんでくれまたので、再開した事例もあります。その他私以外の職員か幾多暴行された事実もありますが、時間がたちますから、この程度で大体の当所の模様の御説明を終ります。
  58. 三浦寅之助

    ○三浦委員長代理 次に説明員足立職業安定所長上島菊造君。
  59. 上島菊造

    ○上島説明員 足立安定所長の上島であります。御指名によりまして発言を許させていただきます。足立安定所管内におきます日雇い労働者の攻勢の概要を申し上げます。三月六日に大体六十五人くらいの人員の方が、それから三月七日には大体七十人くらい、三月八日には三十五人くらい、三月九日には百人くらい、三月十日には五十人くらい、三月十一日には七十人くらい、それらの方々が大体先ほど労働局長からお話がありましたような形におきまして、私にお話に見えたのでありますが、それらの具体的の状況につきましてお話することは、相当時間もかかりますので、このうち三月九日の問題につきまして話をいたしてみたいと思います。  三月九日に私が出勤いたしたのは朝の八時ごろだと思います。そのときに所長室へこれらの人がどやどやと入つて来ました。従来私といたしましては、もちろん過去において相当苦い経験もありましたし、少くとも紳士的にお話ができないような人たちが多かつたものですから、特にその当日につきましては、面会の用件、それから代表者の氏名、住所を明らかにしていただきまして、その用件について、面接時間、それらのものを定めまして、紳士的にお話ができるような誓約書をとつて会談を始めたわけでありますが、その会談が結果におきまして—私その当時の状況をうまくお話ができないのでございますが、非常に混乱状態になりまして、最後におきましては、それらの労働者の方々が、いかにも暴力的行為、あるいは私に対する脅迫感というようなことが非常に私に強く映じましたので、やむなく退場を要求いたしまして、警察権にたより、自分の身の安全をはかつたというような非常事態になつて来たわけであります。私非常にしやべることが下手でありますので十分に申し上げかねますが。説明はこれくらいにさせていただきまして、もしそれらのことにつきまして御質問があればそれに応じたいと思います。
  60. 三浦寅之助

    ○三浦委員長代理 次に参考人、全国職業安定所職員組合執行委員長熊川広衞君に願います。
  61. 熊川廣衞

    ○熊川参考人 御指名によりまして御説明申し上げたいと思います。職業安定所の職員をもつて組織されております組合員の全国委員長の熊川であります。前のお二方の御説明によりまして、それぞれの内容は、個々的にはおわかりになつたと思いますが、これを全国的な立場から、どういうような数字にこの事件が現われておるかというようなことを御説明申し上げてみたいと思います。もちろんこのことにつきましては、まだ組織の中から私たちの手先の方に報告が参つておらないところもありますので、その点あらかじめ御了解いただきたいと思います。  大体私たち安定所の職員といたしまして、非常に全国的に広まつておる日雇い労働者の方々に対して、どういうような仕事のごあつせんをするかということにつきましては、日夜寝てもさめても忘れていない。きわめてまじめに、この問題を自分たちの與えられた任務の立場から考えておるわけであります。しかしながら反面、職よこせ鬪争が非常に熾烈になつて参りまして、ややもすればまじめに考えている私たちの職務が、そのために機能の一部が中止されるといつたような現状であることを、残念ながら率直に皆さんの御参考に供さなければならないのであります。全国的なトータルを申し上げますと、昨年の五月以降十二月までの間におきまして、この職よこせ鬪争が大体六百一件に上つております。それから一月になりまして九十六件、二月が百十四件、三月が二百二十二件、すなわち一、二、三とこの攻勢が累進状況にあるということを申し上げたいのであります。従つて今年に入りまして、この三箇月間の合計が四百三十二件でありまして、昨年の十二月までの攻勢の度合から行きますと、まさに月平均二・四倍というような数字なつております。その中に職員が傷害を受けたといつたような件数がすでに二十四件、暴行、脅喝あるいは脅迫、業務妨害は、ほとんどの場合において何らかの形で現われておるということが言い得るのではないかと思います。この中には、すなわち職員の名誉毀損が入つております。それから侮辱が入つておると思います。そういうようなかつこうになつて現われているのであります。最もはげしい所は、地域的な立場からいいますと、東京、愛知、大阪、京都、神奈川、福岡、こういつた所において最も多くこの問題がアピールされておるようであります。それからこの方々のおもな要求はと申しますと、大体九つになります。まず第一に職をよこせということ、それに伴つて完全就労をさせろ、第二番が失業対策事業の拡大をやれといつたようなこと、三番が賃金を上げろ、それから日雇い労働者に対する物資の配給をしろといつたようなこと、第四番が失業保險金の増額を考えろ、それから支給手続の簡素化をやつたらどうかといつたような問題、第五番が朝鮮人の優先並びに完全就労をさせろ、これは朝鮮人の方々の代表によつてよく現われて来ております。六番があぶれあるいは雨天の際の手当を支給しろ、七番が輪番制就労の反対、すなわちこれは第一番の完全就労という問題と結びつきまして、輪番制には反対だというようなことが、要求として常に安定所の方に参つております。それからわれわれは現在失業しているのだという失業証明書を交付しろといつたようなことも要求の内容になつております。八番が安定所職組と共同鬪争をやらないか、すなわち日雇い労働者の方々によつて組織されておる自由労働者組合と、安定所職員が共同戰線を張つて、今後やつて行こうではないかといつたような申出があちらこちらで出ております。九番が労働出張所、これは皆さんも御存じの通り、主として日雇い労働者の方々をあつせんするという立場で取扱つている場所でありますが、この労働出張所を増設しろ、以上大体私の手元に入つております資料は九点になるようであります。  これらの要望をどういう形で要求して来るかということになりますと、大体労働攻勢に向けられる特異の戰術—私たちは、言葉は妥当かどうか自信がありませんが、これを一応戰術と解釈させていただきたいと思うのであります。まず第一にすわり込みをやつております。これは先ほど東京都の労働局長さんと、それからお二方の所長さんによつてお話があつた通りであります。このことは全国的にもほとんどやつているのであります。それから新聞をにぎわしているところのつるし上げ、三番目が器物破壊、これは安定所のガラス窓の破壊、あるいはいすをぶちこわす、そういつたようなことであります。それからこれは非常にこつけいな戰術なんですが、最近某安定所におきましては、しらみ戰術というものが行われております。と申しますのは、人間にたかるしらみを封筒に入れて参りまして、所長あるいは職員と交渉をする際に、しらみをふつ飛ばしまして、非常にいやがらせをやつているというようなことが行われているようであります。それからその次がスコツプ戰術と私たちは名称したのでありますが、これは安定所の職員出て来い、中に入つてはいけないというのであれば、出て来いというようなことで、八十名あるいは百名という労働者の方々が安定所の職員を外に出しまして、ぐるつと囲むわけです。前の人がスコツプを持つてつて、そのスコツプに足でたわむれるという形になるのであります。そのたわむれられたスコツプが安定所の職員に当り、足にはれ物を出したといつたようなことが行われているのであります。それから最近また一、二箇所でガス戰術、私たちはガス戰術と名称したのでありますが、これは涙を催すような薬品、あるいはくしやみを催すような薬品、あるいは非常に臭気を催し、非常に嘔吐を催す、そうしたような薬品を安定所の窓口あたりに散布いたしまして、いやがらせをやるというようなこともあります。それから暴行とか傷害、業務妨害や、業務停止といつたようなことは、たいがい安定所の占拠という問題と結びつきまして、再三やられているところであります。大体戰術として私たちの方に参つております資料では、こういつたようなことが行われているようであります。それから安定所の機能というものはこういう方々の攻勢によりまして、一時停止、あるいは危險な状態に常に置かれているといつたようなことが現状であります。なお東京都、神奈川のことにつきましては、先ほど説明がありましたので、後ほど私たちの組合の幹部が二人見えておりますから、その方々によつて、大阪の実例と名古屋の実例を詳細に御参考に申し上げることにいたしたいと思います。大体以上のことによつて戰術についての私のお話は終りたいと思います。  それからこれを県別に、三月中のものを御参考までに申し上げますと、千葉県が三月中九回やられております。それから北海道は一月に十回ほどありましたが、三月になりまして少し低調になつて一回であります。これは札幌になつております。それから青森県が三月二回、岩手が四回、宮城が七回、秋田が七回、山形が四回、福島が十一回、茨城が三回、栃木が三回、埼玉が十九回、東京が三十七回、神奈川が四回、新潟が十回、山梨が二回、長野が五回、岐阜が六回、静岡が七回、愛知が五回、三重が一回、それから滋賀が三回、京都が一回、大阪が十九回、兵庫が五回、奈良が六回、和歌山が一回、岡山が一回、広島が十一回、山口が二回、徳島が一回、福岡が四回、熊本が一回、大分が十六回、宮崎が五回、こういつたような数字なつております。しかしながらこれらのすべての場合、先ほど申し上げましたように暴行脅迫といつたものが含まれておるというのではありませんが、大半の場合、所長出て来い、きさまのようなばかなやつはやめろ、といつたようなことはしきりに聞くところでありまして、私たちがほんとうに業務を遂行するために、影響するところが甚大であります。  こういつた中におきまして、私たち安定所の者たちは、自分たちの職責上、何としてもおせわしなければならないという立場から、朝は六時には安定所に到着するような態勢にしておるわけであります。そうしておせわするわけでありますが、何といたしましても完全就労ということになりますと、現在の実情といたしましては、できない状況にありますので、その面につきましては一般日雇い、民間の方の求人開拓、あるいは公共事業の方面にも現在求人開拓事業を見出しまして、一人でも多くお世話しなければならないというような気持で大わらわであります。現在のところは以上申し上げたような実情であります。いろいろ申し上げたいのでありまして、われわれ組合の立場から、現在のこの職員の苦哀といつたようなものも十分皆さんに御参考に供しまして、善処方をお願いしたいのでありまするが、あまり時間もありませんので、以上申し上げて私の参考事項を終りたいと思います。
  62. 三浦寅之助

    ○三浦委員長代理 次は参考人 全国職業安定所職員組合委員長後藤克巳君にお願いいたします。
  63. 後藤克巳

    ○後藤参考人 先ほど東京都の局長さん、それから関東の二、三の所長さんから、東京付近の状況について御説明がありましたので、名古屋付近の状況について一応お話いたします。  昨今名古屋は非常に求職者がふえて参りました。昨年末まではそんなに大してなかつたのでありますが、現在では登録労務者が約一万五千名くらいだと思います。そのうち毎日求職に現われる人が約八千名、就職いたします数が、大体五千名くらい、これを市内三つの労働出張所で毎日取扱つているわけであります。このあつせんの過程は、いつも相当混乱いたしまして、各安定所ともたいてい私服の警察の方が二、三名お見えにならなければ、紹介ができないとか、職員が非常な危險に遭遇するというようなこともあるのであります。それからそうした労働者の方の中に、やはり日雇い労働者労働組合組織が三所ともありまして、その幹部の方が—向うでは交渉と言われますが、私の方では、安定所が交渉権を持つとかということはありませんので、勧告とか、陳情とかというふうに受取つているのでありますが、毎日そこから何らかの要求を持つて来られるという状態であります。一月はこの攻勢が、そんなに全般的にというか、積極的な動きはございませんでしたが、二月に入つてから非常に積極的になつて来たのであります。そのうちで特に今から申し上げますことは、非常に大きな内容で、これは本省の方にも報告が来ていると思います。  これは二月二十二日ごろの事件でありましたが、笹島の出張所の職員が、城北公園という現場に監査に参りましたときに、百五十名ほどの労務者に取巻かれてしまつて—これは二名、その他警察の方が二名行かれたのでありますが、警察の方が全然そばへ近寄れなくて、百五十名に二名がとじ込められてしまつた先ほど委員長が申しましたように、スコツプでけられて、足をはれ上らして帰つて来たという事実があるのであります。  それから二月二十八日に、大曽根出張所で、約千人の労務者の方が直行制の問題で—直行というのは、本省から、すでにやつてはいかぬという御指示を受けているのでありますが、現場からの要望によつて直行する者は、これは前日紹介になつておりまして、直行制を認められるものは、毎日就労するという特権があるのであります。ためにその直行を切るという問題のために、騒擾が起りまして、庁舎の中へなだれ込んで、窓ガラス破壊、それから所長がカン詰めにされてしまい、職員は全然仕事ができなくて、紹介伝票をたくさん盗まれてしまつた。そのあげくに、その千人の人は全部直行へ野放しに行つてしまつた。こういう状況が起きたために、後ほど收拾に参つた職員が、おどかされて帰つて来て、とてもその日は收拾がつかなかつた。結局全員の圧力で就労してしまつた。その翌日は再びその問題で朝鮮人の方が六百名、これはもう完全に庁舎の中へ入つて直行を求め、結局野放しでこれも行つてしまう。ためにそれ以後大曽根労働出張所は—寄り場というのがありますが、これは労務者の方が朝寄つて職を選定するところであります。その寄り場を全部人間の高さほどある大きな柵で囲んでしまつて整理をつけなければ、どうしても紹介ができないというような状態で、まるで監獄へ行つたような状態だという言葉が漏れてもやむを得ないという形で、現在でもそういう形でやつております。それから三月八日ごろに、矢田川の現場があります。これは約五百名就労しているのでありますが、不正就労の防止のために、各安定所、それから県から二十五名の者がトラックに乘りまして、現場へ参つて不正就労を取締る。これは帳簿と人員とを対照して調べるわけであります。ちようど矢田川の川底を高くする工事をやつているわけでありますが、この川の中へ入つて来い、お前たち調べるなら調べに来い。こんなようなかつこうで、長さが二キロほどの現場で、職員が散つてしまつたのでは危險でありますし、これは非常に困つた問題でした。しかし不正就労が百五十名あるという問題まで出まして、およそつかめたのでトラックに集合して帰りかけたところが、今日はお前たち、そのままでは帰さないぞ、今日は矢田川の水は濁つているぞというようなことを言われて、青くなつて帰つて来ました。それ以後三月八日から三月十七日まで、この問題で、すつたもんだいたしましたが、結局この矢田川の現場の直行を切つたということに対して、箱番を壞されてしまつて、以後現場を閉鎖したというような事件があるのであります。それから庄内川も約六百名ばかり就労する現場でありまして、ここも職員が二、三人おりましたが、おどかされて帰つてしまつた。中村署という市の警察がありますが、結局この応援で近く大々的にやらなければならぬというようなことになつております。  それから先ほどのガスをまかれたというのは三月十七日でありまして、これは農業薬としての麦の消毒薬か何かでありますが、紹介が大体六分通り済んだところで一人の男が窓口に来まして、この薬品を散布したために紹介ができなくなつた。結局その男は検束されましたが、そのようなことになつております。  それから現在までに職員がオーバーを盗まれたとかそういう問題が三件か四件かすでに起つております。なおこのほかに知事公舎とか、それから市長のところに押しかけたというような問題の前提には、必ず安定所で一もんちやくを起している。それからでなければ市の方とか県の方へ行つておりませんので、こういう問題で安定所が政治的な解決を求められまして、もう大衆に対しては、とてもどういうように條理を盡して話してもわからぬ。そうしてあなた方がこうして騒がれることは、求人数を非常に少くして、かえつて自分で自分の首を絞めるような結果になるということを、いくらお話してもわからないような状況で、愛知県にしてもほつておけないで、県費で多数の職員を別に入れて整理をするというような結果が出ております。またそうした大府県で、そういう能力のあるところは臨時職員でも解決がつきますが、この能力のない府県では非常に困つておるという実情が現在現われております。簡單でありますが名古屋の実情を申し上げます。
  64. 三浦寅之助

    ○三浦委員長代理 次に参考人全国職業安定所職員組合書記長野々山俊夫君に願います。
  65. 野々山敏夫

    ○野々山参考人 御指名によりましておもに大阪方面の実情を申し上げたいと思います。  まず一月十八日淀川の安定所を最初にして、暴力的行為を加えて来た。すなわち職員が日雇い労働者紹介業務に従事中、たまたま労働課長の岡田氏に対して、石を頭に投げて二週間にわたる傷害を與えた。このことはいわゆる安定所の職員に対して、お前らの紹介方法では気に入らない、われわれが行うからと、すなわち安定所の事務所を貸せというような要求を持つて来たのでありますが、安定所としては断固としてこれを拒否いたしたのであります。  次に二月十四日に、阿倍野の安定所に朝鮮人約二百名が参りまして、鮮人優先就労をさせろというような要求を行つて来たのであります。また二月十三日には、西野田労働出張所において完全就労を申し入れ、安定所としてその実情を説明したところ、了解しがたく、たまたま和田富太郎氏の頭部をげたをもつてこれまた二週間にわたる傷害を與えて帰つたのであります。  それから二月の二十八日には、淀川安定所に同じく完全就労を要求し、職員の門脇雇員、この者に約一週間の傷害を與え、折柄警戒中の警官によつて四名が検束されたのであります。  それから三月二十日には、西野田労働出張所に同じく完全就労を要求して、職員の説明にも了解しがたく四名を検束したのであります。このときもやはり棒等を持つて暴行を加えた。その他こうしたような集団的に、しかも脅迫的な行為は、連日のごどく大阪の各安定所に行われておる現状であります。  日雇い労働者の自由労働組合が結成されまして以来、安定所に対する職よこせ鬪争は日とともに熾烈をきわめ、安定所本来の機能を麻痺状態に陷れんとしていることは周知の通りで、実情はすでに委員長あるいは副委員長からも報告のあつた通りであります。われわれはみずからの任務を完全に遂行するために、これらの無謀なる暴力に対して職場を防衞し暴力的勢力を断固排除して職場を死守する決意をもつて、毎朝六時から事務を開始し、粉骨碎身、就労あつせんの完璧を期しておる次第であります。この決意の悲壯なることは筆紙に盡しがたいものがあり、またその意思については容易ならざるものがあるのであります。しかしながらある一部には、暴力的な行行動によつて危險性が連日身の周辺にあるために、一日として安堵感を持つて日常の業務に精進しがたいわれわれのあることを、率直に認めざるを得ないのであります。労働者がたまたま作業現場において職員に暴力を加える、そうした実例は枚挙にいとまがないほどでありまして、こうしたわれわれ職員の苦境を十分察知されまして、何らかの善処をされんことをお願いする次第であります。簡單でありますが、大阪の実情とあわせてわれわれの苦しい状況を御報告して私の説明を終ります。
  66. 三浦寅之助

    ○三浦委員長代理 これをもちまして説明を終ります。これより質疑を行いたいと思います。天野公義君。
  67. 天野公義

    ○天野(公)委員 今参考人及び説明員の方のお話を聞いておりますと、何といつていいかわからないような実態にあるのでございます。これから参考人及び説明員の方にいろいろお伺いしたいと思いますが、参考人説明員の方に率直に、ありのままの実情を御説明願いたいと思います。  まず東京都の労働局長にお伺いしたいのであります。いろいろ研究してみますと、大体昨年の四月ごろから全国的にこの職よこせ鬪争が行われ、それから一時休みまして、今度は年末攻勢、越年攻勢という形で行われ、最近において二月中旬以降に東京都を中心として、また新たに熾烈な求職鬪争が行われておるのでありますが、特に最近の鬪争は非常に特色があると思うのであります。それで最近いろいろな求職鬪争の起つた件数を見まして—そのいろいろな騒動が起る場合の指導者、またこれを応援しておる者は、大体共産党が多いように考えられるのであります。全件数の約半数が共産党員または共産党の地区細胞、これらの指導によつて行われておるようでありますが、この点に関する御説明を願いたいと思います。
  68. 林武一

    ○林参考人 お答えいたします。最近の鬪争の特色といたしましては、先ほど申し上げましたように、特に完全就労の要求をして参つております。従つて東京都の場合におきましては、登録の要求がなされるのでありまするが、この登録の要求をいたしまするところの方々が、概して登録労働者であるという事実があるのであります。このことの一番いい例といたしましては、去る三月三日に八王子の職業安定所におきまして、職よこせ鬪争が行われまして、この際に、たまたま百五十人ほどの安定所に集まりました労務者のうち、夜八時ごろ安定所になだれ込みまして、すわり込みをかけましたところの七十何人かの方が、八王子の市警並に三多摩の国警によつて検束されたのでありますが、この中のほとんどが登録労働者であることは事実まであります。翌日は、従つて町田地区におきますところの作業現場が臨時休業の余儀なきに至り、浅川地区におきまする作業現場も同様、臨時休業の余儀なきに至つたのであります。このことは、職を與えろ、登録をしろと言つて参つておりながら、職場離脱をいたしましたところの町田、浅川地区におけるところの登録労務者が参つていたという事実であります。この他同様な事例は各所に見受けられるのであります。それともう一つ、今御指摘になりました共産党の地区委員会、あるいはまた各居住細胞等が、相当活発に指導しているのではないかというお尋ねの点につきましては、残念ながらそれはそうだとお答えせざるを得ないのであります。と申しますことは、私どもがすでに手に入れておりますところのポスターあるいはビラ等を見ましても、そのほとんどが東京土建一般労働組合、もしくは地区におけるところの共産党の細胞による呼びかけであります。と同時に、安定所と話合いをいたします際に、常にその先頭に立つて交渉の任に当る者は、地区の委員長でありますとか、あるいは共産党選出の、先ほど触れましたように、区会議員もしくは国会議員という方々であります。そういう方々によつてこれが行われているという事例等から見ましても、昨年の五月ごろの自然発生的な面から、逐次計画的に、しかもそれが共産党の方々の指導によつて行われているという事例を認めざるを得ないのであります。以上のような状況は、これはただ單に東京都内にとどまらずして、おそらく私は全国的にそういう傾向が見受けられるのではないか、かように考えております。以上で、簡單でございますが、お答えをいたします。
  69. 天野公義

    ○天野(公)委員 局長さんにまたお尋ねしたいのです。今のお話は大体了承するのでずが、これらの共産党及びその細胞、また共産党の勢力によつて指導されているような組合によつて、大体この鬪争というものが行われているようでございますが、この鬪争の一般的な計画性、すなわち事前工作は、大体どういうふうにするか。それから、その交渉は大体どういうことをやるか。交渉の内容ではなくて、具体的なあり方。それからもう少し注意しなければならないことは、こういう事例があるのでございます。いよいよ事態が紛糾をして参りまして、警察の援助を仰がなければ、安定所の所長及び職員が、身に非常な危害を感ずるというところで、警察に連絡をするということがあるわけですが、警察がいよいよ出て来た場合には、この指導していた共産党の連中が、いつの間にかどつかへ行つてしまつて、そしてそうでない、それに附和雷同して騒いでいた者たちが検束をされる。いざという場合には逃げて行くというようなこともやつているように見受けられるのでございますが、この点に関することをお伺いしたいと思います。
  70. 林武一

    ○林参考人 交渉のあり方につきましては、先ほど来しばしばお話がありましたが、東京都内の実情から行きますと、まず二月二十四日以来活発に行われている点は、登録の要求であります。登録要求と同時に考えられます点は、それは既完全就労なんであます。ところが現在安定所におきましては、先ほども少しく触れましたように、国からいただいておりますところの失業対策事業における数は、必ずしもこうした呼びかけによつて、眠つた子を起すような形で—失業保險の受給者なり、あるいは生活保護法の適用者もしくは労働力の全然ない年をとつた方、あるいは給料の遅欠配に悩みますところの工場労働者は、実施要領に基きましで、登録をすることはできないのであります。従つて失業対策事業は、それらの條件から、いわゆる適格なものを選びまして、そうして国から與えられた、約二万二、三千と記憶いたしますが、それに東京都の六千三百人ほどの数をプラスしたものがし毎日稼働しておるのであります。従つてたまたまこの問題が起りましたところの二月の末日から三月末までの期間というものは、いわゆる第四・四半期として、すでに国におきましても、あるいは都におきましても、予算の操作は終つておりまして、赤字財政を許されざるわれわれ役人といたしましては、このわくをはずして、これらに就労させることは、事実上不可能であります。にもかかわらず、完全就労を要望いたしまして、所長に対しましてはもしわれわれが働かなければあしたは死んでしまうのだが、それでもいいのか、死ねと言うのか、あるいはどろ棒しろと言うのかというふうな、相当暴言に近い面で登録を要望をして参るのであります。さらにまた、先ほど安定所職員労働組合の方々が申し上げましたような、いやがらせのあらゆる手段が講ぜられまして、足立の安定所長あるいは王子の安定所長のごときは、朝の九時ごろから夜の八時ごろまでの間、便所にもあるいは食事ももちろんさせないというふうな、私どもは俗につるし上げと言つておりますが、つるし上げ状況にこれを持ち込んで行くという傾向が多分にあるのであります。従つて安定所といたしましては、こうした要望に対しましては、交渉の持つて行き方を、あくまで限られたる時間、限られたる人数の代表者によつて話合いを行うという建前をとつて参つておるのでありますが、いかにせん安定所自体は、開放された建物でありますので、ついこれが安定所内に入つてしまう。そこで問題はそうした際におきまする措置でありますが、私どもはできるだけこれを警察ざたにいたしますことを避けて参つております。と申しますことは、安定所は失業者に対しまして仕事をあつせんするところでありますし、また安定所に参ります方々の中には、ほんとうにお困りになつておる方もありますので、一つとめてそうした事態を避けているのでありますが、ただしかし、足立の所長のように、上着をずたずたに裂かれて、そうして單に精神的な面のみではなく、やや暴力に近い軟禁状態に陷るということになりますれば、これはやはり何としても何とかその危機を脱出しなければ相なりませんので、それぞれそれらについては、所長の良識によつてこれを措置するということを行つております。従つて時間的に申しますると、つい勤務時間を延長いたしまして、夜八時、九時、大森安定所のごときは、午前三時までもかかつてこれを解決するというような状況に相なつておるのであります。ただしかし三多摩地区におきます八王子の例のごとく、安定所の何ら要請なくして、たまたま大挙のゆえをもつて送致された際におきましては、これは警察が自発的に行つておるのでありまして、これらにつきましては、いずれもその地区地区において多少趣を異にしておると存じます。それから先ほど質問になりました、そういう際に指導者格の者が、最後には逃げてしまうのではないかという点でありますが、そうした面はあるいはあろうかと存じます。これは立川にあつた例であります、立川の際は、たまたま労務者の中に、徳田君という立川の自由労働組合の指導者がおりますが、その方が最後に相当身の危險を感じた際に、多数の人が、徳田書記長、そんなところにいてはずるいじやないかということで、正面に出たために、これが検束されているということで、あるいは場合によりますれば、そういうこともあろうかと存じます。しかし大体において都内におきましては、検束の回数も少いことでもありますし、そうした際におきますところの、そういう指導者を行います人たちの行動等については、必ずしもそれが背後からどうこうという、交渉経過においての具体的な戰術等について、私どももそれ以上存じませんので、その程度でひとつごかんべんをお願いいたします。
  71. 天野公義

    ○天野(公)委員 概略的なことはわかつたのでありますが、具体的な問題についてお伺いしたいと思います。まず足立の所長さんにお伺いいたします。先ほどお話ですと、九日のことだけきりおつしやつておられないのですが、六日にも相当の事件が行われておりますし、七日もちよつともんだ。九日はさつきおつしやられたようでございますが、その事態の実態にはほとんど触れておられないようでございます。実際所長さんが体験された交渉の経過を、詳細にお述べ願いたいと思います。
  72. 上島菊造

    ○上島説明員 お答えいたします。三月六日の様子を申し上げます。この日は私は朝八時近くに出勤しておりました。そのとき二、三十人の労働者の人が私の部屋へいきなり入つて来ましたので、私は職員以外の方、それらの方の面会用件については入室してもらつては困るのだから、庶務課長を経由するようにと—部屋の前に大体標識も掲げておりまするので、入つてもらつては困る、どんな用件か知らないが、ともかく庶務課長を通じてもらいたいということを再三申し上げましたが、労働者の人は、全然ぼくの部屋から出て行きませんでした。私はもちろん公式にお話をする必要もなししますから、自分は自分の所長室から出てしまつたのです。そうして庶務課長、あるいは労働課長等がその部屋にいまして、代表者を定めなければならないというようなことについて、いろいろ話し合つたようですが、結論的に言いまして、私は従来監督官庁の方からいろいろ指示を受けておりますので、集団的な求職相談については全然やる意思も持つていませんし、やる必要もないと考えております。少くとも個人々々の就職相談でしたら、もちろん職業安定機関としては十分相談に応ずべきだと思いますので、それらのことにつきまして、あとからまた、今いらした集団の方の代表者と思われる方々が、所長、ともかく何とか会つてもらいたい。いや、ぼくとしては個人々々の就職相談には応ずるのだけれども、集団的な求職相談はやらない、だから今日来た方がどうしても手帳をほしいということならば、もちろん個人々々についていろいろお話をして安定所としての相談をやるのだ、しかし集団的に所長室に入られても困るし、ともかくあなたが代表者ならば、もう少し秩序ある職業相談のような形式をとつてもらいたい、少くとも安定所といたしましては、個人々々に十分話し得るような態勢をとつてもらいたいというようなことを話し合つた結果、それでは個人個人に求職表を書いていただいて、いろいろゆつくりお話することができるような態勢に私たちがしよう。じや私たちは所長室の前に代表者がおつて、一人ずつ所長室に入つてもらうというような話が大体きまりましたので、それでは私といたしまして、もちろんそういうふうな御相談でしたらやりましようということで、労働課長、それから労働課の紹介係長、事業係長に私の部屋に入つてもらつて、個人々々の就職相談を始めました。たしかそのとき職業相談をやつだ人の計数は七十三人だと思います。一応そういうふうな形で相談をしておるときにも、やはりほかの方々が入つて来るわけです。代表者の方もときどき入つて来る。それでは初めに約束したことと違う。ともかく個人々々相談をやつているので、もう少し靜粛に相談ができるようにしてもらいたいということで、一応やりつつあるのに、また労働者がどんどん入つて来るような形が再三繰返された状態であります。それで結論的には、一応個人個人の職業相談を解決したような状態で、その間ともかく今日登録手帳を出してもらいたいというような要望があつたのですが、私といたしましては、相談が完了しても、具体的な内容についてはまだ各課長から聞いていないから、これについては今すぐ態度をきめることができないM一応個人々々の求職相談は済んだから、全部帰つてもらいたいということを申し上げたのです。その間いろいろすつたもんだしまして、なかなか出て行かれなかつたのですが、結局において、ともかく各個人個人の内容、失業対策事業についての適格者とか、それらについていろいろ相談にあずかつた係員から直接状況を聞いて、それについて態度をきめなけばならないという話を再三して、今すぐ返答を求められてもどうにもならない、ともかく一応出てもらいたいということで、全部外へ出てもらいました。それから私たち係員が個々の状態をいろいろ調査いたしまして、どうしてもこれらの方々には登録手帳を出さなければならないと判定をした者が三十名くらいできましたので、労働課長、各課長といろいろ協議した結果、その者については安定所として大体手帳を出そうというふうに態度をきめましたが、それらの者についてはさらに再審査をしなければ—各個人々々の実情、家庭環境それらのことについて、ただ本人の陳述のみでは不明であり、はつきりしませんので、さらに調査をすることに方針をきめました。そうしている間にまた今、調査をしてもらつたのは、どういうことをしてもらえるかというようなことで、先ほどぼくが代表者だというようなことで一応きめた代表者の方々以外の者も、全部また所長室へ入つて来られて、結論はどうなつたかということを尋ねられましたので、私といたしましては、三月中の計画と申しますか、方針と申しますか、それらの数をいろいろ相談した結果、三十人だけは明日手帳を出して明後日から就労してもらうようにする、それ以外の者についてはさらに調査をしてあれをするからと申し上げたところ、誠意がない、何とか全部の人に手帳を渡してくれというような要望がありましたが、ともかく私といたしましては、それ以上のことはできない。あなた方の困つておられる実情もわかりますが、役所といたしましても一定の方針かあり、行政官庁の指示もあるのですから、それに基いてやらなければならないので、どうしても今日はこれ以上は上げられないということで、その間—その当時の記憶が今はつきりしておりませんが、私といたしましては、その日はそれほど暴行、脅迫というような観念を抱くことなく、安定機関に対して秩序を乱すようなことについては多少感じておりましたが、暴行あるいは脅迫というような観念に襲われないで相談をし、労働者の代表の方々も非常に……。
  73. 天野公義

    ○天野(公)委員 今のお話概略わかるのですが、どうも六日のやつがはつきりしないのです。それで所長さんのところに直接交渉に来た者は、共産党員であり、朝鮮人系の大山洋男というものが主となつて、中澤という事務局長、それから今野、和田、金山という者たちが直接に所長さんのところに交渉に行つたと思うのですが、その交渉のときに所長さんはどういうようなことをやられたか。私の聞きますところによりますと、所長さんは腰かけておつて、そしてその所長さんの机の上に、これらの代表者たちが飛び上つたり、腰をかけたり、机をたたいたりしていろいろ交渉をし、上着の中に手を入れて、刀を持つているというようなかつこうをして、これをしなければ殺すぞというような暴言までも所長さんに吐かれていたはずなのであります。その点をひとつ正直に、簡潔におつしやつていただきたい。
  74. 上島菊造

    ○上島説明員 そのときは三月六日ではないのです。三月九日なんです。三月九日のことは、少くともその場の空気といたしましては、私の印象では暴行、脅迫というふうに十分感ずる。例をとりまするならば、日本語の十分でないような朝鮮人の方が、非常に乱暴狼藉と言いますか、挙動的に—顔を見ても非常に脅威を感ずるような—それから中には洋服でこういうふうなかつこうをされまして、この中にはたしてあいくちがあるかないか、私には要るあれがありませんが、少くともこのあいくちでもつて所長と刺し違えようというふうなこと、あるいはまた、私のいすのまわりを取巻き、私の上着を現実に握り、それからひつぱる、そういう事実はありました。
  75. 天野公義

    ○天野(公)委員 その事実が六日であろうと九日であろうと、問題ではない。そういう事実があるかないかということが実は問題なんです。所長さんとしては、そういうような暴力を伴つたつるし上げにあつて、生命の危險を感じられたと思うわけでありますが、その点ももう少し率直に言つてください。
  76. 上島菊造

    ○上島説明員 千住の警察署長の代理の警部がいらしつて、少くとも君たちは、足立安定所長から退去の要求が出ておるのじやないか、そういうことを十分知つてるか。十分知つてる。それならばぼくたちはこれから実力行使に移るのだから、ここの部屋には時計がないが、ぼくの持つている時計で十分以内に立ちのくように。もし立ちのかなければ、実力行使をするからというような発言をされましたときに、その発言が終るか終らないに、そこにいた方の、もちろん共産党と常日ごろ言つておられる人もありますし、共産党の方だと思いますが、いきなりスクラムを組んで、私と署長代理とをスクラムの中へ入れて、私そのとき非常に身体的に脅威を感じたものですから、署長代理の警部の陰に身を寄せて行つたような状態があります。それで非常に自分といたしましては、生命的に十分危險性を感じておつたような状態なのでございます。
  77. 天野公義

    ○天野(公)委員 その際所長さんの要求で、警察から来て四名検束されて、結局今野、金山、金城という三名がとめられたような状態のように聞いておりますが、事実でございますか。
  78. 上島菊造

    ○上島説明員 そのときは非常に混乱状態でありますので、しかも名前については十分はつきりと、そのときにだれがどういうことをやられたかということについては、区別がつきかねるのでございます。
  79. 天野公義

    ○天野(公)委員 先ほど所長さんと交渉された大山、中澤という、これは共産党員ですが、このほかに足立の土建組合長として、秋和松五郎というのがおると思うのです。その秋和さんという人は、もと東京都の職員組合の執行委員をしていて、行政整理になつた方と聞いております。この方が裏にあつていろいろやつておるというように私は聞いておるのですが、所長さんはその点御存じありますか、ありませんか。お伺いしたいと思います。
  80. 上島菊造

    ○上島説明員 この三月九日の事件についてですか。
  81. 天野公義

    ○天野(公)委員 いいえ、それとちよつと離れて、これも関連しておりますけれども……。
  82. 上島菊造

    ○上島説明員 秋和君につきましては、私のところへ東京土建一般労働組合足立職安分会の分会長という形において、要請書を持つて見えたこともありますので、十分顔も知つておるのですが、私たちとしては、陰にまわつていろいろやつておられるように考えておるわけです。しかしはつきりその事実につきましては確信を私持つておりません。     〔三浦委員長代理退席、委員長着席〕
  83. 天野公義

    ○天野(公)委員 足立の所長さんはそのくらいにして、次に澁谷の所長さんにお伺いしたい。先ほど説明員の方に御説明願うときに、澁谷の所長さんには御説明つておらなかつたようでございますから、澁谷の所長さんには事件の発生前の状況、それから事件それ自体の状況、及びその後の状況について要点を簡略に御説明願いたいと思います。
  84. 坂田虎七郎

    ○坂田説明員 澁谷の所長の坂田です。東京におきまして、いわゆる職よこせの集団的な交渉といいますか、要求を受けたのは澁谷が初めてです。先ほど局長からもお話がありましたように、二月二十四日にその波が押し寄せたのでありますが、その二、三日前の二月の二十日ごろ、澁谷区内の比較的登録労働者の集中するような居住のところに、東京土建一般労働組合の西南支部の名称をもちまして、二月の二十四日、澁谷の安定所に登録要求に行く、それで組合事務所の方に集まれというような内容のビラが張られたのです。それと前後しまして、毎朝澁谷の安定所に約二千名からの日雇い労働者が集まりますが、その集合所の場所で職安で働いておる自由労働者は新規登録の先頭に立とうという題目のもとに、ともかく二月二十四日の朝八時半までに、東京土建の支部へみんな集まるようにというビラがまかれたのであります。これの日付は二月二十四日で、日本共産党澁谷区委員会という名称でまかれたのでありますが、ともかくこういうふうに日本共産党の澁谷区委員会と、それから東京土建の一般労働組合西南支部の両方の名称で、二月二十四日の集団的な職よこせの鬪争が展開されたのであります。その日、朝の八時ごろから夜の八時までかかつて、全員約二百五十名ほど集まりましたが、この二百五十名の全員の登録を認めよというような御要求だつたのです。しかし安定所としましても、失業対策事業の建前上、全部の登録はとうてい不可能である。しかも集団的のそうした要求に応ぜられないため、個々に面接すると言つて、約二百五十名の人に求職票を渡して、個々に面接をしたのでありますが、組合幹部あるいは地区の共産党の細胞の方々からは、全員でなければだめだというような強い要求があつたのであります。結局交渉も、そういう点で成立せずに、夜の八時になりまして、ともかく現在の安定所の職員数では、毎日朝六時から早出しておりまして、夜の八時過ぎまでも勤務をするということは、翌日の勤務にも直接影響することであるし、そういう長い時間の勤務はできない。八時になつて、ともかく退去してもらいたいと言つてつたのでありますが、今日はスクラム組んでも完全な登録をしてもらわなければ帰れないというのですが、職員の手前もありますし、職員の勤務の点もありますので、警察の方へ要請して、その日は退去してもらつたのであります。翌、二十五日の朝の九時ごろ、共産党の代議士の風早さんと、それから共産党の澁谷地区委員長の御前さんが来られまして、昨日はとんでもないことをやつた、警察を動員して解散をするということは非常に不届である。われわれとしてはそういうやり方をすればますますこの運動は発展して行くのだ、所長としても十分覚悟してもらいたいというお話であつた。私も東京においては初めてのこうした強い要求であつたし、しかも風早さんは国会議員でもあるし、学者でもあるので、相当心配したのです。昨日のことはそうであつたが、ともかくも全部の登録はとうてい不可能であるという事情を言いましたけれども、そのときにもすでに二百名以上の求職者、あるいはその関係の人が来ておりました。ああいうふうに大衆はたくさん来ているので、ぜひひとつつて話してくれというお話であつた。昨日もそのことについて詳細に話して、結局お互いの立場が違うので、今日話してもだめだと申したのでありますが、とにかく一応会つて大衆によく話してもらいたいというお話があつたので、私の部屋は二階でありますが、下におりまして皆さんに前日のことを繰返して申したのであります。しかし結局それが聞き入れられないで、私も長時間外の方でいわゆるつるし上げと言いますか、相当の罵詈雑言を浴びまして、ともかくこれではいつまでたつてもらちが明かない。風早さんにお願いしまして代表五名と会うことになつた。そうして代表五名と所長室で会つておりましたが、結局同じことを繰返すのみで、結論は得られない。そのうち二百数十名の人が階上になだれ込んで来た。そこでまた事務遂行もできないので、警察に要請をしたような次第であります。二十六日は日曜でありましたが、二十七、二十八と続きまして、それから三月は十一日、十五日、四月が五日、六日それから十日、この約十回にわたる集団的な要求を受けた次第であります。指導者といわれる人たちの大衆に対するいろいろな宣伝といいますか、大衆に対して話しておることを私の方の職員がよく聞いてみますと、こういうことを言つておるのであります。所長と交渉するだけではなくて、こうやつて労働者がたくさんおるだけでも職安の職員は気にしておる。だからみな毎日のように押しかけて、係の職員を疲れさせて、これではたまらぬと音をあげるまで、いやがらせをやろうではないか、こうすることがおれたちの要求を通す先決問題である。ともかく間断なく進むことが戰法の一つであるとか、あるいは皆さんが帰つたら、近所の人に呼びかけて、一人でも多くこの運動に参加してもらうように專念をしてくれ、新しい強い力をもつて、あすは今日以上にたくさんの同志がやろうじやないか。結論としておれたちは所長との面会は問題ではない、職員を徹底的に疲れさせて事務に支障を起させることが、自然とおれたちの要求が通ることになるし、これがわれわれの圧力である。みな協力して鬪おうではないか。こういうことをしやべつておる幹部の人もあつたそうでります。これはその中に入りまして、職員が概要だけ筆記した事実であります。それから三月十五日は、皆さん新聞紙上でもごらんの通りに、ああいうバリケードを築いて一部の事務を停止したような状態でありました。あれは主として登録労働者の人によつて行われた運動でありまして、つまり現場直行あるいは日曜就労、賃金三百円にしろというような要求をもちまして、ああいう形になつたのであります。そのときに正面のガラスあるいは机とか、いすは相当数被害を受けて、結局職員はああいうふうにバリケードを築いて、労働者の乱入を防いだような次第であります。毎日われわれもこの鬪争につきまして非常に心身を悩まして、先ほど来からいろいろお話がありましたように、こうした状態がいつまでも続けば、結局われわれとしても仕事の遂行上非常に困る。ぜひともこの点善処方を特にお願いしたいと思います。
  85. 天野公義

    ○天野(公)委員 所長さんにもう少しお伺しいたいのですが、つるし上げの状況、器物破壊の状況、それから三月十五日の状況は、現場直行の問題で午後から現場にいた者が全部安定所に来た。そうして騒動を起したというような状況だと思うのですが、その点も簡單に要領よく御説明願いたい。
  86. 坂田虎七郎

    ○坂田説明員 つるし上げと言いましても私としましては身体上の危害は受けなかつた。ただ完全登録をなぜしないかという問題について理論的に追究されたのであります。こちらとしましても事務上の関係をるる説明し、それが納得されずに、ばかやろうとか、あるいは所長としての資格がないからこの際ただちにやめろとか、そのほか首かこわいのだろうとか、いろいろやられた。応答ましても、われわれの説明にはあくまでも納得しないし、ともかく黙るほかはないような状態なつて、あとでは答弁もしなかつたという状態でつるし上げを受けている。それから器物破壊は、三月十五日の場合は先ほども申し上げましたように、現場直行の要求を、約二千人の労働者に幹部の人たちが呼びかけたのでありますが、中には現場の方へただちに行く人たち—その日行かなければ、賃金をもらえないということを私の方でも申しましたので、現場の方へそういう運動をせずに行く人たちがいて、結局あとつた人は五、六百だろうと思いますが、そういう人たちが所長に会わせろということで、正面の玄関の方へ殺到された。ところが朝の紹介を終つた直後で、まだ一般職員も出勤しない八時ごろだつたので、玄関の方は締つてつた。それを大衆の圧力で押し破つて入ろうとしたので、職員たちがそれをとめた。そのときに正面のドアの大きなガラスが二枚とも割れるし、それからそれを防ぐために、職員たちが一緒になつて机、いすでふさいだが、その破れたところから机、いすがひつぱり出された。そういうふうで、どういうふうにこわされたのかは知りませんが、そのときに職員の一人が手をけがしたりして、ともかく机が三脚、いすが八脚こわされた。まあ五、六百人の人がやつたので、だれがそれをやつたかということはわからない。ただガラスを割つた人はすぐわかつた。そのときには警察の私服の人も来ておられたので、そのガラスを割つた人はだだちに検束されましたが、その人は普通のいわゆるやじうまと言いますか、雷同的に参加したような人、そういうことであります。
  87. 天野公義

    ○天野(公)委員 共産党の代議士の風早氏が来て、所長さんと交渉されたということですが、その具体的な経過、どういう話で、どういう態度で、どういうふうになつたか。
  88. 坂田虎七郎

    ○坂田説明員 先ほどもちよつと触れましたが、ともかく前日に警察に要請したことについての抗議と、それから今日みんなが生活に困つておる。これの登録はただちに認めてくれというような要求を繰返された。それ以外別に取立てて話すようなことはありません。ともかく自分と一緒に外へ出てくれということで、先ほども言いましたように、国会議員の方でもあるし、一緒に出れば私も多少安心だと思つて出ましたが、それから大衆からつるし上げられたわけであります。
  89. 天野公義

    ○天野(公)委員 十五日のときに所員の方が聞いた中で、幹部が言つておる話の中に、いくら幹部が一生懸命やつても、エキストラが気魂に欠けておるからだめだ、と言つてつたのを聞いた職員がおりますか。
  90. 坂田虎七郎

    ○坂田説明員 それはおります。それはつまりこういうことじやないかと思います。十五日に約二千名からの労働者に、土建一般の西南支部として、スピーカーをもつて呼びかけましたし、こちらもスピーカーで本日現場に行かなければ賃金は支拂わないから、その覚悟でいてもらいたいというような放送をしましたので、先ほど申しましたように大半は現場の方に行つたのでありますが、そのときに現場へ行つた者をまた連れもとして、そうして晝からきた相当数来るのだというような情報か私たちに入つたのであります。一応現場へ行つてその日の就労の手続をして、そうしてその日の賃金をもらうような形をとつて、きた晝から来るのではないかというような覚悟でおりましたけれども、結局は集まらなかつた。その意味を言つておるのではないかと思います。
  91. 天野公義

    ○天野(公)委員 大体事件の起きたときは共産党の人が指導しておつたようですが、指導してないときにはそう大した問題は起きなかつたのですか。
  92. 坂田虎七郎

    ○坂田説明員 そういう感じはあります。
  93. 天野公義

    ○天野(公)委員 澁谷の所長さんに対する質疑はこの程度にして、次に大森の所長さんにお伺いいたします。先ほど大森の所長さんは御発言なさらなかつたのですが、大体大森の場合の方は三月十三日だと思います。簡潔に事件発生の状況、たとえばつるし上げになつたときの状況、そういうようなことを御説明願いたい。
  94. 金井完之

    ○金井説明員 御紹介にあずかりました大森安定所長の金井であります。小さい事件は常時あつたわけでありますが、一番大きな、御質問の要旨であります十三日のことにつきまして、その前後の状況から完結に至るまでの状況につきまして、きわめて簡單に要点を申し上げてみたいと思います。  三月九日に、これは主として糀屋、下丸子、入新井一丁目から六丁目附近に張り出された狩り出しびらでありますが、それには、  日当二四二円の仕事あります  仕事がなくて遊んでいられる方え  男でも女でも年よりの人でも若い人でも子持ちの方でも—結構です  誰でも出来る—カンタンな—仕事です  朝八時から午後二時まで働けば良いのです  御希望の方は三月十三日午後一時左記へお集り下さい   場所 大森職業安定所    大森失業者同盟 こういうようなビラ及びポスターが張り出されまして、十三日には予定通り相当多数集まつて来られました。そうして十一時半ごろには約四、五十名の婦女子の方が来ておられました。そこでどうしてお集りになつたか、その内容を聞いてみましたところが、こういうビラが張り出してあつたので、からだが悪くても、年寄りでもだれでもいい、一日働いて二百四十円もらえる。ことに八時から二時までやれはよいのだというようなことを言つて、早く受付を開始してもらいたい。遅くなれば受付はしてもらえないのではないかというふうに言いました。ところがその内容を見ますと、まつたくそれとは反した仕事なので、当所としてはその実情を説明いたしましたところ、非常に多数の人が来たが、この失業者同盟に対する憤りの声を残して立ち去つて行きました。そこでさつそく当所はそのビラとは関係ないということを話をして、周知をさせました。その間労働課長に対しまして、組合の幹部と称する者が、そのビラの撤去を要求して参りました。しかし私たちはそれに関知しないから、撤去に応じませんでした。実は失業の方の求職者が多数ありましたのと、一般求職者があのすわるだけの狭いところに、さながら滿員電車のように押しかけて、平常の業務執行に非常な障害がありますので、その理由を話しまして、裏に誘導いたしたのであります。ところが表の方では盛んに一般大衆に呼びかけまして、これらに賛成方を慫慂し、また裏の方に対しましては、労働課長が直接には一番初めに折衝に当つたのでありまするがその間即時登録を要求いたしまして、どうしても所長に会わなければならぬということで、非常な怒号をするに至りました。午後二時三十分ごろ、私がその答弁の陣頭に立つたわけであります。しかしながら各所に見られますような登録の要求ではなくて、集団的に全部をあつせんせよ、登録手帳をただちによこせ、こういうことであります。そこで私といたしましては、失業対策事業の実施要領に示されます内容に基かなければ、これをなし得ませんので、個々に面接して極力ごあつせんを申し上げるということを、再三繰返したわけでありますが、その間まつたく罵詈雑言のうちに立たされました。これをさらに具体的に申し上げますれば、このばかどか、畜生とか、人でなしとか、あるいは、お前は命があると思つているからそうしたことが言えないのだ、命がないと思つたらそれくらいのことは言えるだろう、帰りにはきさまの命はないのだということを相当強く言われました。しかも右側のしりを突かれましたので、現在になつてもなお痛みを覚えておるという状況でございます。そこで大体私の方は一般官庁の執務時間と違いまして、安定所は職員が日雇い労働者の事務に従事しますのには、午前六時までには現場に到着して、職業の紹介をしなければなりませんし、またやらなければならぬ明日の準備もあるというので、大体五時十分ごろ、職員が私を中へ入れまして、局へは即時電話連絡その他をやつたのであります。労働課長からは、すでに所長は退庁したから、あすあらためて継続して話をするということで、通達をいたしました。すでに執務時間が相当経過したので、一応話をこれで打切つてもらいたいということを再三言つたのでありますが、どうしても結論に達しません。そこで七時ごろになりまして、当日全金属の会議がございまして、その会議に参加しておりましたところの、全日本機器、それから全金属を主体とする大田労連傘下の日本特殊鋼、日本起重機、東京軽合金、石井鉄工、大谷重工等の各産別系労働者代表が続々と応援に参りまして、これらの者を合流して約四百名程度に達しました。その間突如インタナシヨナルの歌を歌い、いよいよ気勢を上げ、その事態はますます險悪になつて参つたのであります。七時三十分ごろに至りまして、衆議院の伊藤憲一代議士が、警察出動を聞きまして、事態の收勅のために来られたという話でありますが、労働課長に直接状況を聞きまして、お前はそれくらいのことができないのか、大体国会議員をきさまはなめる気かと言われたそうでございます。さらに午後九時二十分現在、芝浦屋外労働者の応援者が数名詰めかけました。午後十一時現在では、警察から伊藤代議士に対して、事態が早急に解決しない堤合には、実力手段で解決するほかいたし方ないから、何とかして收拾してくれという申入れが行われたのであります。そこで最後の妥協案であるところの、二十名だけそれならば受付をしようということで、参りました者のうち二十名の受付を開始することにしたのであります。ところが彼らの論拠は、きよう五反田では二十名の登録を許し、また先日は澁谷で非常に多数の者、百四、五十名もやつている。大森では何人やつてもらえるのか。しかし当方としては本局との連絡もあり、絶対にそうした予算超過のことはやらぬということを言いましたところ、あすから働かせろ、食わせろ、という問題の線もいろいろありました。私は極力民間企業、公共事業に吸收して、完全協力するという線で努力するということにいたしまして、二十名を一応登録と申しますか、職業紹介することにしたわけであります。ところが事実は、その二十名を集めるのに—相当強い要求があつたのにもかかわりませず、二十名の職業紹介をするから、それだけ出てもらいたいと言つておりましても、二十名がなかなかまとまらないのであります。働かせろ、あしたから食えないのだ、この事実をどうするのか、どろぼうしろと言うのか、死ねと言うのかということを、再三繰返した結果において、どうかといいますと、その二十名の希望者がない。ようやくにして各方面からかき集めて、二十名近くの者に対して登録をいたしたわけであります。さらに午後十一時四十分現在、長時間の交渉を寒気に、当所もようやく心身ともに疲労を感じましたので、事態の早急解決のために、労働課内の会議を開きまして、二十名の者に対しては、あしたから、就労させてやるからということをやつたわけであります。さらに一時になりましてともかく私どもは、好んで事態を紛糾に導きたくないのだ。局の方からも御指示がありまして、なるべく警察に要請をしないようにという話もありましたので、極力押えておつたのでありますが、しかし先ほども申し上げました通り、特命によりまして、午前六時より正常な業務をやらなければならぬ、われわれも労働者であるから、何とかここで保護をして私どもを帰してくれ、帰すというだけはしてもらいたい、ほかのことは何らかの処置をしてもらうから、帰してもらいたいということを、警察に要請したわけであります。しかしながら警察の方としては、もうしばらく時をかせがしてくれ、こういうふうに言つておりまして、なかなかその間解決がつかなかつたわけでありますが、大体午前二時三十分ごろ、二名の子供連れの求職者を除きまして、ようやく職業紹介を終了して、三時ごろには正常に帰つたわけであります。翌日二十名の人たち、すなわち男子十五名、女子五名の人たちが就労いたしました。それから二日後の実際においては、男子わずかに二名で、女子は一名も就労しておらないというような状況であります。これらの点から考えてみますると、まつたく従来の自然発生的なものではなしに、あくまでも計画的なものであり、さらに單なる経済的要求のものではなくして、まつたくある一つの政治的に発展する面が見られる。なお私どもといたしましては、こうした状況が常に続きますならば、職員が心身ともに疲労いたします面、また正常の業務がはなはだしく阻害されます面などを、御賢察いただきたいと存ずるのであります。簡單に要点だけを申し上げました。
  95. 天野公義

    ○天野(公)委員 時間の関係もありますので、あと質問は留保して今日はこの程度で打切ります。
  96. 倉石忠雄

    倉石委員長 天野君の御質疑継続中でありますが、それでは本日はこの程度にとどめたいと存じます。場合によりましては、本日御出席くださいました参考人の方々にも、さらに御出席をお願いいたすかもしれませんが、どうぞ御了承願います。  それでは次会は公報をもつてお知らせすることにいたしまして、本日はこれにて散会いたします。     午後五時十二分散会