運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1950-02-17 第7回国会 衆議院 労働委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年二月十七日(金曜日)     午前十一時二十五分開議  出席委員    委員長 倉石 忠雄君    理事 大橋 武夫君 理事 福永 健司君    理事 三浦寅之助君 理事 吉武 惠市君    理事 青野 武一君 理事 春日 正一君    理事 島田 末信君       麻生太賀吉君    金原 舜二君       塚原 俊郎君    船越  弘君       前田 種男君    柄澤登志子君       岡田 春夫君  出席国務大臣         労 働 大 臣 鈴木 正文君  出席政府委員         法制意見長官  佐藤 達夫君         大蔵事務官         (主計局次長) 東条 猛猪君         大蔵事務官         (日本専売公社         監理官)    冠木 四郎君         労働事務官         (労政局長)  賀来才二郎君  委員外出席者         日本専売公社総         裁       秋山孝之輔君         参  考  人         (全専売労働組         合中央執行委員         長)      平林  剛君         参  考  人         (公共企業体仲         裁委員会委員) 今井 一男君         参  考  人         (公共企業体仲         裁委員会委員) 堀木  鎌君         専  門  員 濱口金一郎君         専  門  員 横大路俊一君     ――――――――――――― 二月九日  委員竹山祐太郎君が辞任につき、その補欠とし  て岡田春夫君が議長指名委員に選任された。 同月十日  委員小川平二辞任につき、その補欠として天  野公義君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 二月九日  最低賃金制即時実施請願岡田春夫紹介)  (第六二七号) 同月十三日  日本マグネシウム東京工場賃金遅払救済に関  する請願神山茂夫君外一名紹介)(第六四四  号)  婦人少年局愛知職員室職員復職等に関する請  願(田島ひで君外一名紹介)(第六五八号)  公共企業体労働関係法撤廃等請願春日正一  君外一名紹介)(第七〇〇号) 同月十六日  失業保険給付金額失業救済事業における支給  賃金との不均衡是正に関する請願江崎真澄君  紹介)(第八四四号)  失業応急対策費全額国庫負担請願江崎真澄  君紹介)(第八四五号) の審査を本委員会に付託された 同月十五日  失業対策に関する陳情書  (第三三三号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  公共企業体労働関係法第十六峰第二項の規定に  基き、国会議決を求めるの件(内閣提出、議  決第二号)     ―――――――――――――
  2. 倉石忠雄

    倉石委員長 ただいまより労働委員会を開会いたします。  公共企業体労働関係法第十六条第二項の規定に基き、国会議決を求めるの件、議決第二号を議題といたします。本件に関しましては、先般来労働委員会人事委員会大蔵委員会連合審査会におきまして、政府側より趣旨説明を聴取いたしており、委員各位におかれては、十分にその趣旨を御了承のことと存じますので、提案理由説明を聴取することは省略いたし、ただちに質疑に入りたいと存じますから、御了承を願います。春日正一
  3. 春日正一

    春日委員 平林君にお聞きしたいのです。こういうことが言われておるのです。日本専売公社足立工場では、女工さんが約五百名おる。それが三千円前後の賃金で、しかもタバコの葉の粉末と、ほこりのむせるような中で、マスクもかけないで働いておる。煙にむせ、まつ黒なたんを吐くというような、ひどい労働条件に苦しめられておる。去る五月の当局側健康診断でさえ五十四名、大体一割以上の者が病気欠勤になつておる。うち十大名は結核性の疾患で、九月初めには、女子長期欠勤者二十七名が全部結核だ。巻上げと装置の二工程だけをとつても、去年に比べて首切りで六十名も減つておる。装置機一台の受持が、七月まで六人だつたのが、八月から四人半に減つておるのに、昨年より三割多い責任生産量をあげなければならない。そこで当局では、この責任生産量をやらせるために、明治時代紡績女工がやつた賞旗制度というようなことと同じような成績表を掲げて、仕事にかり立てておる。こういうふうにやられておるけれども、七月分の女工さんの平均賃金は三千二百四十円という状態になつておる。そのために小づかい銭もないという昔が約六割に達しておる。それで毎月千五百円から三千円くらい赤字が出る者が四十名以上おる。七十円、一万円という赤字の者もおる。こういうふうな状態になつておるということが新聞に報道されておる。この点についてこういう事実があるかどうか、お答え願いたいと思います。
  4. 平林剛

    平林参考人 それは専売公社東京地方局足立工場の例でありまして、私どももそういう実例のあることを、工場を見に参りまして十分指摘することができるのであります。今御質問にありましたようなこまかい資料は持つておりませんが、組合が先般調査をいたしましたときにおいても、そのような状況が見られまして、施設その他について、なお改善してもらわなければならない点が多いのであります。しかも今のような施設その他関係だけでなくて、労働条件等につきましても、給与の面につきましても、今御質問があつたように、たいへん低いことは、前回の委員会においても申し上げた通りであります。そういうような、状況のなかに、特に女子のごときは、たとえば生理休暇その他につきましても、非常に制約を受けておりまして、これさえも十分とることができないような状態にあります。ことに最近は労働基準法に触れるようなことが多いのでありまして、これらにつきましても、私ども組合の安部といろいろ話をいたすのでありますが、どうも基準法が完全に守られておらないような状態にあるわけであります。御質問のような状況は、一度その工場を御視察願えれば、きわめて明瞭にわかることであります。
  5. 春日正一

    春日委員 さらに念を押しておきたいのです。これは非常に大事な点だと思うのですが、人間減つて、それで責任生産量が三割ふえておるというこの事実について、述べておいてもらいたいと思います。
  6. 平林剛

    平林参考人 人員が少くなつたことは、昨年の定員法の際に人員整理が行われたこと、それ以後において新規採用が少いことで明らかであります。特に、機会のわきに毎日の予定生産量を掲げられまして、そしてその目標を果すような仕掛になつておりますので、小さい女子組合員人たちは、どうしてもそれだけをやらなければいけない、こういうような気持にかり立てられて仕事をやつておるわけであります。この責任生産量といいますものも、私どもと十分協議することなくして、専売益金建前にして製造数量割当られておる。だから機械の設備、労働条性、それから私どもの肉体というようなことをあらかじめ考慮されず、科学的でない製造数量割当てられる。こういう結果になつておるのでありまして、実際に私どもこの生産量の問題についても、もつと科学的な生産量を立てる。労働条件施設機械能力、こういう点から考えた製造数量が必要だと言つておるのであります。そういうような建前でありますが、来年度におきましても、製造数量はやはり専売益金を中心にして割当てられておるような状態であります。しかし今のような労働強化的な、また実際には生産報奨金とか、その他の目の先のもので、いろいろ私ども仕事割当てられておるのでありますが、生産量については、現在のところ、東京におきましても、そんなに減つておらないのであります。参考のために申し上げますと。東京でも七三%の割当を完遂しておるわけで、七五%が一〇〇%でありますから、七五%に三%足りないというところでありまして、これは昨年の最初の予定であつた六百六十五億というような全体の製造数量割当が、六百九十五億というふうにかわつて参りましたために、これが足立工場にも影響いたしまして、そしてややその予定を達せられないような状況でありますが、ただいま御指摘のありましたような苦しい仕事を続けておることは事実であります。
  7. 春日正一

    春日委員 この責任生産量がやれない場合、報奨金とか何とか手当のようなものには、どういう影響があるのですか。
  8. 平林剛

    平林参考人 これは現在の生産報奨金一つの欠陥でもあるわけであります。一定の割当数量が与えられて、それを越えない場合には、それに与えられるだけの報奨額支給されない、こういうふうな不安定な状態にあるわけです。だから、私どもがいくら努力をいたしましても、いくら懸命になつても、不可抗力的なところから、生産が下るというようなことがございます。そういう場合には、生産報奨金支給額もおのずから減らされてしまう、こういう状態になつておるのであります。
  9. 春日正一

    春日委員 そうすると結局、組合と相談なしに非常に高いものが割当てられるような事態が出ると、生産報奨金というようなものが完全に宙に浮いてしまう、こういうように解釈をしていいわけですか。
  10. 平林剛

    平林参考人 割当数量その他については、あらかじめ組合の本部とは相談いたしますが、極端な例を言えば、そういうような傾向にあるわけであります。私どもの肉体的な努力によつて生産が上れば、それだけ能力があるのではないか、こういうような判断を下されるおそれは十分にあります。だからわれわれはそういうことのないように、協議を進めて行くように努力をしておるわけであります。
  11. 春日正一

    春日委員 それで非常に労働が強化されて、能率が上つておることはよくわかりましたが、その次に、ただいまの御意見の中でも、労働基準法違反するようなことが行われているというふうに言われましたけれども、この基準法違反にどういうものがあるかという点が一つと、もう一つはつきりさせておきたいことは、この基準法違反を発見したのは一体だれかということです。基準監督官がやつて来て、それで向うから発見して問題にしてくれたのか、労働組合の方で問題にしたのか。この点を明らかにしていただきたいと思います。
  12. 平林剛

    平林参考人 基準法違反をどちらから発見をしたか、こういうことでありますが、これが最近具体的に問題になつて参りましたのは、昨年組合の機関が、労働基準法を守らなければならない、こういう建前から、労働基準法についていろいろ研究をいたしまして、その結果、現在の作業環境基準法違反するところが非常に多い、こういうところから、むしろ組合側の方から、積極的に法律を守るような運動を行つておるわけであります。そのいろいろ指摘される事項について、基準監督署にお伺いを立てて、そしてそれについての認定を求め、それを専売公社に実施するように交渉に移しておる、こういうような順序をとつております。具体的に申し上げますと、現在までに労働基準法違反として明確に基準監督署から指摘を受けましたところは、仙台工場一つ、それから米子工場一つ、逐次組合工場において検討をいたします結果、具体的には今この通り現われておるのでありますが、これは各工場とも大同小異であります。そしてどういう点が基準法違反しておるか、こういうことでありますが、重要なところは、たとえば労働組合公社の協定の届けがなくて、時間外の労働や休日労働をさせておる、こういう実例仙台に現われております。それから、たとえば仕事をする前に更衣をするのでありますが、その必要な更衣時間を実働時間の中から除外をしておる、こういうことも違反事項だといわれておるのであります。これは就業規則に明らかに、着物を着かえて仕事をしなければならない、こういうふうにわれわれに義務づけておる以上は、当然更衣の時間も実働時間に入れるべきだという見解を、基準監督署から示されているわけであります。これらは労働時間に関することでありますが、そのほか御指摘のありましたような塵埃、それから危険、こういうような条項に当てはまるものが、方々に見られるのであります。たとえば塵埃の予防をするための装置ができておらない、こういうようなところであるとか、あるいは修理工場にあるグラインダーについては、少しもそこにおおいがかけられておらない、これは危険である、こういうような各条項について指摘を受けた。目下仙台とか、米子とか、そのほかでも、交渉によつて解決できるようなものは交渉によつて解決をいたしておりますが、でき得ないものは、基準監督署指示を受けて、改善をするように話を進めておるような状態であります。
  13. 春日正一

    春日委員 ただいま言われましたグラインダー安全装置の不備とか、あるいは更衣の問題とか、こういうものは今始まつたことではなくして相当前からある問題ですね。そうすると結局基準監督官が、何ら専売労働条件に対しては監督しておらぬ、というふうに解釈されると思うのでありますが、その点についてあなた方の感じを表明していただきたいと思います。
  14. 平林剛

    平林参考人 私ども基準監督署に限らず、労働省であつても、労働者のためにいろいろ努力をしてくれるというようなことを、あまり感じておりません。基準監督署においても私どもはこれは全般的なことを通じて、進んでこうした問題について指示をしていただくようなことはなかつたのであります。むしろ私どもから積極的に話に行かなかつたならば、こういう措置がとられませんでした。一年半ばかり前のことでありますが、こういう問題だけでなくして、たとえば前の規定から言いますと、十一条違反という、労働者にとつてはたいへん重要な事項であつた問題についても、たとえば専売公社の方から公文書が参りますと、それをそのままうのみにいたしまして、はたしてそれが労働者に不利益であつたかどうか、こういうことを根本的に見ることなくして、その十一条違反的なものでさえも、認可を与えてしまう、こういうぐあいに、非常に事務的なところがあるように考えます。基準監督署については、かねがね私どもそういうふうに考えておりましたので、今後はそういうことはないようにしたいものだと考えております。
  15. 春日正一

    春日委員 そうすると、その次は賃金の点でありますが、女の人たちが非常に多いところで、手取り三千円から三千六百円ぐらいというのは事実ですか。
  16. 平林剛

    平林参考人 仲裁委員会から出されておる資料組合ももちろんこれらについては資料を提出するようにいたしておつたのでありますが、その表をごらんになつていただいても明瞭でありますように、女子人たちの十八歳程度の人は三千九百円から三千百円の間であります。十九歳ぐらいの女子にいたしましても三千円から三千二百円ぐらいの見当、二十歳にいたしましても三千百円から三千三百円程度、二十一歳でも三千三百円から三千五百円程度、今御指摘があつたように女子、しかも製造数量の直接の担当者であるこれらの女子給与は、このような低賃金であるわけであります。
  17. 春日正一

    春日委員 次に仲裁委員にお聞きしたいのですが、今言われたような二千九百円から三千二、三百円という賃金で、たとい十八、九歳、二十歳ぐらいの女の子でも、飯を食つて着物を着て生きて行けるとあなた方思つておるか、この点をお聞きしたいた。
  18. 今井一男

    今井参考人 ただいま平林委員長から申し上げました数字は、基準内の賃金だと考えます。それに基準外あるいは生産報奨金の類がつきましても、お話通り民間等と比べまして、非常に低い賃金だと考えまして、今回の調停案ができたことは御了察願います。ただこれで食えるか食えないかという問題になりますと、いろいろむずかしい議論になるかと思うのでありますが、とにかく民間の同種と比べまして、確かに著しく低過ぎるということを確認いたした上で、こういう裁定案を出したわけであります。
  19. 春日正一

    春日委員 ただいまのお話ですが、仲裁委員非常にたよりないと思うのです。食えるか食えないかという議論が、賃金問題の根本だと思うのです。その根本をあいまいにしておいて、民間と比べてとか何とか言つておるけれども、この間も大蔵大臣は本会議で非常な暴言を吐いておる。民間平均賃金官公労より高いと言つておるけれども、しかし中小企業の方へ行けば、この平均賃金の三分の一ぐらいで働いておる者があつたという。だから官公労の方が高いという非常に妙な発言をしておつたが、これは暴言であると思う。それは飯田産業なんかただの三十円ぐらいの日給で使つておるところもあるが、これでは食つて行けない。あるいは餓死する人間がいるから、お前たち三千円でも給料をもらつておれば、もらわないよりいいじやないかという議論は、賃金を決定する基準にはならぬと私は思う。やはり労働賃金というものは、少くとも最低の場合でも、労働力の再生産が絶対条件である以上、それに応じた対価が償われなくてはならぬ。それも食えるか食えないかということは――どうも議論がうるさいことになるけれども民間と比べてというようなことでは、仲裁委員すこぶるたよりないと思うし、この仲裁を出された基礎を疑わざるを得ない。その点の見解を、もう一度はつきりさせてもらいたい。
  20. 今井一男

    今井参考人 われわれとしても、一国の賃金基準をきめる、あるいは国家公務員のような特殊なグループの特殊な賃金をきめる場合において、今春日さんのおつしやつた議論は、きわめて重要な点だと思います。しかしながら一つ企業体賃金をきめる場合においては、そういう点ばかりを基礎にして――もつとも組合の方は、今回の問題にあたつてもその点から出発されておられますが、これは公社側の経営にタツチして相ならぬという立場に立つておる関係から、公社経理能力等について、組合としてわからないのはやむを得ないことだとも思われますけれども、われわれといたしましては、それと経理能力関係をかみ合せて案を出す立場に立つておりますので――もちろん食える食えないという問題も、幅のある問題だとは思いますし、私どもも基本的には、個々企業賃金決定にあたつては、一国の賃金水準と、国民の標準生計費関係ということは参考にはいたしますが、しかしながらそれはこの場合基本的な立場にならない、国全体の賃金政策を論ずる場合と趣を異にする。そういう立場に立つておることを御了承願いたいと思います。
  21. 春日正一

    春日委員 そうすると、私の受けた印象では、仲裁委員会というものは、大体今の一般的に行われておる賃金状態、あるいは政府賃金政策、こういつたわくの中で適当にやつて行くという程度の権限しか持つてない、機能しか果していないというように了解するのでありますが、それでいいのですか。
  22. 今井一男

    今井参考人 われわれも個人的には意見がございますが、しかし、ただいまの仲裁委員会の果しておる機能は、専売と国鉄の二つの公共企業体においての賃金問題の平和的な解決というだけでありますので、遺憾ながらお話の点まで、委員会といたしまして手を延ばすわけには参らぬ。国民経済全般的に、所得の再分配というようなことを論ずることも、国家的には必要かもしれませんが、遺憾ながらわれわれの任務じやないということを申し上げます。
  23. 春日正一

    春日委員 それではこの問題は政府の問題であとで大蔵省の方に聞きます。労働大臣にお聞きしたいのですが、ただいま大臣が見える前に、組合委員長からの御意見がありまして、専売で各所に非常な労働基準法違反が行われている。たとえばここにも出ておるのでありますけれども、届出なしに時間外労働、休日労働をやらしておるという事実もあるし、あるいは作業に必要な更衣時間を実働時間からとつてしまつて、自分の時間で着物を着かえさせるというようなことをやらしておる。あるいは水戸工場あたりでは、のりをかわかすヒーターのスイツチを入れる、それをやるために、時間十五分前に仕事をやらせておるというようなこともある。たとえば工場安全衛生施設というような面でも、あの規則違反したものが非常にたくさんやられておる。しかし私は、このやられておるという個々の事実についてどうこうということをお聞きするのじやなくて、非常に重大な問題は、今まで専売公社というものは、もう明治何年か、大正の何年かから、ずつと続いて来たものだけれども、今日この裁定が問題になつて組合から基準法遵法をやれということが指令されて、組合監督署行つて、そこでこういう事実は違反になるか、ならぬかということを聞いて、初めて違反ということが明らかになつておる。労働省は一体基準監督ということをどうしてやつておるのか、てんでやつてないじやないか。ちつぽけな町工場ならともかくとして、専売公社というような大企業に対して、全然監督をやつていない。この責任をあなたはどう感じるか。
  24. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 基準法はあえて官業的な面に限らず、一般の方でも、これを労働者保護の憲法として遵守して行くべきだという立場、考え方に至つては、これは根本的で変動ありません。今の御指摘専売関係につきましては、私自身としては、全然労働省がその方面だ基準監督行政をやつておらないというようなことはあり得ないと思いますけれども、細目の点につきましては、私今ただちにそれはこうであり、その事実はこうであるとお答えできないような画もありますので、御指摘もありましたから詳細調査いたします。ただ原則として概括論ですが、何にもやつておらないという春日委員のおつしやるようなことはないと思います。
  25. 春日正一

    春日委員 これは今言われた事実で、何もやつておらないと断定せざるを得ない。こういうことが長年続けられて来ておる。特に最近強くなつておる。これは今日やつて、明日発見しなかつたということを責めるのじやない。何年も続いておつたということが問題だ。これが一つ。それから労働大臣だから、これは全部に関係するので、ついでに言及しておきますけれども民間一般工場つて非常に多くの基準法違反がやられておる。そのために病人も出、けが人も出ている。炭鉱の災害なんか非常に多くなつている。こういうものに対しては何ら監督しないが、こういうことだけはやつておる。しかも最も重大な、ここでお聞きしたいことは、たとえば三菱横浜ドツクあたりで、守衛警棒をぶら下げさしておる。守衛警棒をぶら下げるということは、基準法にあるように、威嚇によつて労働させちやいかぬということに明らかに該当すると思う。そういうことをやつて労働さしておるものは、横浜ドツクだけじやない。池貝自動車もやつておる。今後そういう傾向がどんどん出て来ると思うが、これでは工場が監獄になつてくると思う。     〔委員長退席三浦委員長代理着席〕  こういうことをあなた方はやらせておる。労働者監督する方では、そういうことをやらせておる。明らかにこれは基準法違反だ。そうしてこういう事実については、何年もほつておく。これは民間一般がそうだ。だからその点で基準監督に対する労働省責任ということを私は聞いておる。決して専売個々の問題について、どこの工場グラインダーのカバーがあつたかなかつたかということを聞いておるのではない。
  26. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 原則的には、先ほど申しましたことを繰返して申し上げるわけでありますが、今御指摘なつたようなケースはおそらくないだろうと思いまするし――そう言うと、それじやお前こういう事実を出して見せろとおつしやるかもしれませんが、その場合でもいろいろなケースがあつたりするでしようから、春日委員のおつしやるような意味でもつてそうであつたからといつて、ただちに私どもとして、そうでございますかというほど、基準行政がそういうふうに警察的に全般的に使われているというふうには考えておりません。そういうことは、今の一つケースは別といたしまして、全般的、根本的の問題といたしましては、そういつた警察的の形でもつて使われるということが、誤りであるという見解は終始持しております。たくさんの中でもつて春日委員が今おあげになりましたことに対して、決してそんなことはないというほど、そういうこまかい個々ケースのその場合の調査は持つておりませんけれども、ありましたならば、是正すべきでありまするし、全般的の根本的の問題としては、そういう方向に基準行政が方向を向けて行くということの誤りであるということは、私にしろ、労働省のその局に当つている首脳者も、もちろん同じ考えでありまして、そういう根本的の考え方は、あるいは傾向さえも持つておらないということだけは、今責任をもつてお答えできます。
  27. 春日正一

    春日委員 今労働大臣はそう言われましたけれども、たとえば届出その他に関する事務を簡略にするといつて基準法の施行規則を改正された。だからその点で、私らもあのときは意見を言つておいたけれども基準法の施行規則を改正して届出がなくなれば、ますます監督というものはおろそかになる。それに対して当局は、そういう事務的なことは省いて、できるだけ広く現場へ出かけて行つて視察する、こういう話だつた。ところが現場へ出かけて行つて視察するだけでなくて、ただいま労働組合委員長意見を聞いても、私ども工場街に住んでおつて、あの辺の労働組合状況を見ておつても、基準監督署基準法の周知徹底のために、ほとんど見るべき努力をしていない。労働者にこの法規の内容を知らせる努力をせずにおいて、それで基準法をやつて行こうということになりますと――こういう事実から見ても、大臣の言われることはどうも怠慢だ、この点を……
  28. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 最初におあげになりましたのは具体的ケースでありますが、この方はさつきも申し上げました通り調査をいたしまして、またお答えをいたします。それからあとの方の御質問は、繰返しての御質問でありますけれども、私どもとしては、もちろん怠慢あるいは放置するというような考えがあるはずはありません。それは現在の国力からいつて基準行政に限らず、拡充したい面はたくさんあるでしようけれども、与えられた条件のもとにおきましては――私たち基準行政労働行政の真髄であると考えておるのでありまして、そういうような意味でもつて臨んではもちろんおりませんし、労働省の各衝にあたる者も、渾身働いていることは事実であります。
  29. 春日正一

    春日委員 もう一つしつこいようだが、周知徹底のためにどれだけのことをやつて来られたかこの点をお聞きしたい。
  30. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 こまかいいろいろな具体的計画を立ててやつているわけであります。私も一応は知つておりまするけれども、今一番当面の基準局長を呼びまするから、基準局長から具体的に周知徹底の方法をどれくらいにやつたかということを、お聞取り願いたいと思います。
  31. 春日正一

    春日委員 それではそれは基準局長からお聞きするとして、先ほど言つた守衛警棒をぶら下げさせるという問題ですが、これは労働者を脅迫し、労働させるという点で、明らかに基準法違反すると思う。この点労働大臣見解をお聞きしたいと思う。
  32. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 さつきも申し上げましたように、いろいろなケース、いろいろな特殊の事情もあるでしようから、一概には言えないと思います。しかし大体論としては、そういうような形でもつて基準行政の強行といいますか、そういう方向をとるということは、誤りであるということだけは申し上げておきます。
  33. 春日正一

    春日委員 それでは三菱ドツクの場合、池貝自動車の場合、これは実情を調査して報告願いたいと思います。  次に賃金の問題ですけれども、今参考人の方々にもお聞きしたのでありますが、大体二千九百円から三千五、六百円という手取りで、食つて行けるか行けぬかという問題です。労働省のあるいは政府当局としては、この賃金労働者労働力を再生産して生きて行けるとお考えになつておるかどうか。
  34. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 その問題はきわめてデリケートな問題になつて来ますし、現在においては労働者諸君のみならず、日本の各層が完全なる形でもつて生活し得るというまでには、国民経済全体が行つておらないのでありまして、そこに至ることに全力を傾倒すべきことはもちろんなんでありますけれども、今の御質問の問題は、私はやはり全般的の国民経済とのつながり、国の財政、のつながり、さらに直接的には公社自体の金融、資金、経理、経営等の問題と結びつけて考えるべき問題であつて、こういう点から言いますとなし得る最大限のところに今いるという考え方であります。
  35. 春日正一

    春日委員 なし得る最大限のところに行つているということなのですが、もちろん生活というものは、そのときの経済状態によるもので、そう夢みたいなことができぬことはわかつておりますけれども、事実労働者が能率をいくら上げても給料が上らぬ。生産をすれば給料は上げると言われて、労働者生産を一生懸命やつて来た。この事実は、日鉄の八幡のストライキを見たつてはつきりわかると思います。あそこは生産予定の三倍になるまで能率が上つた。にもかかわらず増産手当は削られた。だからストライキをやるのはあたりまえのことである。専売の場合でも、去年に比べて能率を非常に上げて来ておる。たとえば私のところで持つておる数字でも、一昨年はもつと多い人数で二億一千七百万本つくつたものが、去年は人数が少くなつておるにもかかわらず二億九千百万本つくつておる。これだけ能率を上げておるのに手当を上げない。一億二千万円のはした金を出さぬという。そうするとあなたの言うこととは話が違うではないですか。その点をお聞きしたい。
  36. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 御指摘のように、生産が上つて行くにはいろいろなケースがある。あえて労働力の活発な活動だけではなく、いろいろなケースがありますが、しかし生産条件の中で、生産手段の中で、労働力が重要な部分を占めるということに対しては、だれも異議がないだろうと思います。従つて――ただちに生産数量そのものの全部を、全的に労働力の向上という問題に結びつける考え方は、現実から相当離れておるかとも思いますけれども、しかし生産が上つた場合に、労働力がその中でもつて重要な意味を持つておるという考え方は、これはどこの場合でも間違いないと思います。ただいまの御指摘の点につきましては、こまかいことは聞いておりませんけれども、私どもの承知しておる限りでは、公社の中でも、ある程度そういつた生産に対する手当というものは、出ておるのではないかと思います。なお将来にわたつては、裁定の何項かに、妥当な報奨制度を樹立すべきであるという一項目があるはずであります。この問題は公労法の建前からいつて――公労法では現実にそのときに公共企業体の資金上、予算上不可能なものだけは政府に拘束力を持たず、国会の承認、不承認によつて決定することになつておるけれども、そのほかのものは政府の意思いかんにかかわらず、国会の承認、不承認の必要もなく、ただちに拘束力を持つというのが、公労法の私どものとつておる解釈でありますから、その報奨制度の問題は、現在も拘束力を持つておりますし、これは今後団体交渉によつて、報奨制度の問題を生かすということは、違法でもなければ、可能だと思つております。ただこの問題について、さらにそれがその団体交渉の過程において、そのときに予算上、資金上不可能というようなケースが現われて来た場合には、また別の意味を持つて来るかと思いますけれども、原則としてはあれは生きておるのであります。そういう意味におきまして、専売公社自体の一つ生産に対する報奨制度、がすでに裁定の中にも示されておるのでありまして、適宜な形でもつて、真に可能なる形でもつて生かし得るならば、これは生かしてもいいと思つております。ただいますでに一方において、給与のベースを上げ得ないという問題に縛られておるのではありませんけれども、しばしば繰返しておりますように、さしあたつて裁定に付されておるところのあの金額というものは、公社の資金上、予算上不可能である。この点につきましては、大蔵省当局について十分おただしになつたと思います。そういう意味でその面は不可能でありますけれども、報奨制度という問題は、検討を十分すべき余地を残して、生きておるということをも考え合せますならば、生産の上昇と、そういつたものとを結びつけることは可能だと思います。ただ繰返して申しますけれども、これは私の考えでは原則的に拘束力を持つておるのであつて、具体的に団体交渉の結果、どういうものが出て来るか。さらに予算をくつがえさなければならないような内容を伴うものであつたたらば、別のケースになつて来ると思いますが、生産の上昇に対する報奨制度というような問題につきましては、原則的には私どもそう考えております。しかし結論的には、いろいろそのときの諸情勢との関係において、具体的の決定が行われるであろうと考えております。
  37. 春日正一

    春日委員 どうもはつきりしないのです。私は報奨制度の問題を聞いておるのではない。もちろん報奨制度というようなことも言い得るであろうけれども、そんなことを聞いておるのではなくて、今言つたように、専売人たちが三千円や三千五、六百円では食えない。これは重大な基準法違反ですよ。基準法の第一条に何と書いてある。労働条件は、人たるに値するものでなければならないとはつきり書いてあるが、これで人たるに値する生活ができるか。明らかに重大な基準法違反である。憲法二十五条は言うまでもなく、基準法の第一条に書いてある。しかも生産がどんどん上つておるのに、それが上げられない。日本一般にいつて民間企業の八幡の場合でも、東芝の場合でも、生産能率が上つておるにかかわらず、生活が苦しくなつて来ておる。なぜそうなるのか。その点を私はお聞きしているのです。
  38. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 生産がよけい上つたから、苦しくなつたのだという原則はないように私も思います。しかし諸条件でもつて、ただちにそれがそのまま名目賃金の上昇になり得なかつたということは、いろいろの個々ケースを取上げて来れば、そういう場合もあるかと思いますけれども生産労働力との関係は、さつき申し上げた通りであります。
  39. 春日正一

    春日委員 大臣は、諸般の情勢だとか、大蔵省の方からその点はよく御説明があつたと思うからとかいうような話だつたけれども大蔵大臣の答弁では、一億二千万円出そうとしないのは諸般の情勢だと言われた。私は、諸般の情勢という言葉じや、具体的のことは何もわからぬ。今あなたの言われた諸条件ということも、その諸条件がちつともわからない。その諸条件の中身を、鉄の生産費がこれだけ上つた、これを幾らで売つてこうなるから、上げられないのだと、その諸条件をはつきり説明してもらわなければ、これはどうも納得が行かぬのです。国全体としても、大きな産業では生産がずつと上つておる。一人単位非常に労働強化されて、上つておるにもかかわらず、生活が楽になるどころでなく、苦しくなつておる。なぜそうなるかということを納得させるために、お前さんたち骨を折つて生産したけれども、この製品は幾らで売られてこういうふうに損をしておるから上げられないというように、説明しなければ納得行かぬ。
  40. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 春日委員のあげ足をとるわけではありませんが、実は専売公社の話が始まつている間に、日鉄の問題になる、その他の一般的の問題になるから、やや聞いている方では頭が混乱しましたが、生産が上つて経理が改善された場合に、それが労働者の諸君にも何かの形でもつてかえつて行くという考え方自体に、反対だと言つておるわけではありません。ただ個々の場合は、それぞれそのほかの要素も加わつて来るから、いろいろな場合があるでしよう、根本的には同じ考えであります、こういうことの意味を申し上げたのであります。     〔三浦委員長代理退席委員長着席〕
  41. 春日正一

    春日委員 それでは私の方から出してお聞きしますが、生産がそれだけ上つておるのに、せつかくつくつたものをべらぼうに安くしてダンピングしておる。損するような値段で売つておる。それからべらぼうに高いものを買つて来る。そういうためにいくらかせいでも苦しくなるのだ。私らそう考えておる。その点はどうですか。
  42. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 自由主義的な生産組織の中では、ある場合にはそういうことのあることもあるが、しかしそれが本体ではなくして、これはもう変則的の場合で、全体を通じては、生産が上つて、そうしてやたらに安く売つて損を大きくして行くというような、ばかげた経営をするはずがないのでありまして、その反対なのが、自由主義的な生産組織の特徴だと私たちは思つております。
  43. 春日正一

    春日委員 それは原則論で、具体的にはこの二十四年度の状況を見ると、そういう変則的な、損して売つて、高いものを損して買うというようなことがやられて来た。これは予算委員会あたりでも相当たくさん出されたと思うのですけれども大臣が今言われた変則的なことがやられて来ておる結果、これが企業を圧迫し、企業の方はしようがないから労働者にぶつかけるということで、労働者の低賃金となり、それをささえる低米価というものが出て来たのだ。その点は大臣も認められますか。
  44. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 いやそれほどの公式論は認めておりません。
  45. 春日正一

    春日委員 その次に、ちよつと、ついでですから公社の総裁に念を押しておきます。先ほど来労働基基法違反の問題は大臣にもお聞きしたし、平林君もお聞きしたのですけれども、たとえば専売公社で今度いろいろな基基法違反が発表され、これが問題になつておるわけです。米子工場でも問題になつておる。水戸にもあるというような状態になつておる。こういう点について、あなたの方では今まで基準法を承知の上でこういうことをやつておられたのか。この点をお聞きしたい。
  46. 秋山孝之輔

    ○秋山説明員 今の米子と水戸の例証について、前に御説明があつたと思いますが、どういうことでありましようか。私案は今参つたので……
  47. 春日正一

    春日委員 それはたとえば届出なしに時間外労働、休日労働をさせておつたというような事実、それから作業のために必要な更衣時間を実働時間から除外しておつた。あるいはグラインダーとか帯鋸の安全装置がやられていない。事務庁舎の二階に非常階段がない便所の一部には男女の区別がないものがあるというような――まだあります。汽罐室に必要な掲示がないとか、あるいは女子労働者の時間外労働を、法定時間以上にやらしておるというような事実です。
  48. 秋山孝之輔

    ○秋山説明員 今の設備の問題につきましては、公社といえども必ずしも完全の設備をまだいたしておるとは存じません目下設備等につきましては――ただいままでは数量の需要に応ずるために忙しかつたので、エクステンシヴな設備の拡張をいたしまして、まだ集約的に改良とか、そういう点は多々残つておるのでありますから、遺憾の点がまだあろうと思いますが、これがたまたま基準法違反になるかもしれません。まあ善意の間違いか、そういうことで不完全の点も多々あるかもしれません。これはさつそくその点において改良をして行きたい。時間外の更衣とか、そういう時間につきましては、私は公社が命令をしてどうとか、さしずをしてどうとかいうのではないのではないか、実はまだ詳しくその点について研究をいたしておりませんが、そういう点があるというお話でありますから、よく研究いたしまして、改良する点は改良する、まつたく故意のことであれば、私はそれは改めなくてはならぬと思つております。
  49. 春日正一

    春日委員 そういうべらぼうな答弁は私はないと思うのですがね。町工場の五人や八人使つておる工場のおやじならば、基準法知りませんということで通るけれども、少くとも日本の専売公社が、まああなたは御存じなくても、ちやんとその方の専門の係がおるのだから、これが基準法を知らないでやつたというようなことは、断じて私は言えないと思う。もしそうだとしたら、これは問題だと思う。やはりこういう事実があつたということについては、率直に責任は認めなければならぬ。そういう点であなたの御見解をもう一度はつきりしてもらいたい。知らぬということは言えないと思う。
  50. 秋山孝之輔

    ○秋山説明員 私はないとも、あるとも、まだ申し上げておらない。私今日ここで明答をあなたに与えることができない。調べしまして、さらにお答えを申し上げます。
  51. 前田種男

    ○前田(種)委員 今の総裁の答弁は、需要に応ずるために、生産能力百パーセントに努力して、設備その他の点がお留守になつたというような答弁であつたと思います。もちろんこれは、私もある程度そういう事情にあることを了解しているのです。しかし総裁の今の言葉を裏から見ますると、生産が上るためには、非常に従業員が酷使されるような状態に置かれながらも、設備その他の点については、いろいろな諸般の事情で、だんだん次から次へ延ばされるというような傾向は、これは改めなくてはならぬと私は考えます。専売公社労働省関係は、普通の民間企業労働省関係でありませんし、また公社になつてから日も浅いという関係のあることも知つております。しかし公社の中で、基準法違反が顕著にあるというようなことがあつても、監督官庁であるところの労働省の所管の当局が、従来国営でやつてつた事業であるから、そういう面におけるところの監督は、ある程度まかしておつてもいい、十分な監督をしなくてもよかろうというようなしきたりもあると私は見ております。しかしそうしたことは許されないと私は考えます。今度のような場合に、一億二千八百万円の問題につきましては、非常に厳重な政府の方針をとわながら、一方当然法律を守つて改善をしなくてはならぬ点が、ややともするとお留守になりがちだという傾向があるわけです。少くとも公社総裁としては、そうした面について積極的に設備の改善をやり、法規違反の疑いのあるような個所は、進んで対策を立てるという積極性があつて、それを予算化し、あるいは大蔵省に申達して善処しなければならぬ。そうすることによつて、初めて従業員がほんとうに国家的に協力できるという態勢になると私は考えます。そういう見地に立つてみると、先ほどの総裁の答弁は、あまりに形式一ぺんというのか、熱意がないというのか、積極性がない。何とかここで言い訳さえすればいいというような答弁に聞えましたので、私はその点でもう一度総裁として、責任者として、はつきりした対策――具体的な事実は御存じないといたしましても、全体としてそうした傾向があるものに対して、どうしてやつて行こう、どういう熱意で臨もうというような、そうした信念をひとつここではつきり聞かしていただきたいと考えます。
  52. 秋山孝之輔

    ○秋山説明員 ただいまの御質問趣旨については、就任当時からそういうような熱意をもつて私はお引受けしたのでありまして、ただ今日までいろいろな事情のために、私の考えておることが必ずしも実現しているとは存じませんけれども、今後においても工場の改良、従業者の福祉につきましては十分に考慮をいたし、同僚とも協議をいたして、その実行に当つて行くつもりであります。また残念ながら、たまたまいろいろ御指摘つたような、基準法違反ということが、もしありとすれば、まことに不本意な話であります。これについではただいまお話のありました通りに、十分実行して行くつもりでおるのであります。これは工場をごらんくだされば、もう一目瞭然わかると思います。ただ中には新設した工場と、古くからある工場との差は若干ありますけれども、これは漸次予算をとつて今改善に努めつつあります。決して私は冷淡に、あなた方にただここで返事をすればいいというようなつもりで、実際にはやつておりません。どうぞ御了承願いたいと思います。
  53. 春日正一

    春日委員 ただいま労働大臣専売の問題から離れた、こう言われたのですけれども労働大臣の先ほど言われた諸般の条件大蔵大臣の言われた諸般の情勢というものは、それきり中身はわれわれに説明されていないのだから、結局われわれはそういうものから考えて行けば、専売賃金の扱いに対する問題というものは、決して単なる今度の専売の一億二千万円がどうこうという問題ではなくて、やはり政府全体の賃金そのものに対する考え方法律そのものに対する考え方、この点に帰着して来るという意味で、たとえば専売が能率をこれだけ上げているのに、なぜ一億二千万再出せぬか。そういう問題に対しても、専売労働者はタバコを食つて生きているのではないので、やはりいろいろな経済関係の中で生きているのだから、ほかの条件に触れざるを得なくなつて来る。そういう立場で私はお聞きしたのですが、そこで政府賃金に対する考え方――今労働大臣も、それはできるだけよけい出して、いい生活ができるようにすることが望ましいと言われておるけれど、実際やつておるところを見ると、先ほどの基準法の例でもそうですが、実際は賃金を引下げるという政策がとられておる。たとえば今まで進駐軍労務者に対していわゆるP・Wというものがきまつてつた。あのP・Wというものは、何も最初から最低賃金の目安としてきめられたものではなくて、実際には政府支払いの不正を防止するという意味でつくられたとしても、現実にはあのP・Wによつて不当に安い賃金というものが押えられておつた。ところがこの法律第百七十一号を廃止するということで、P・Wをとつてしまう。こういうことをして多くの請負業者が安く入札するということになれば、賃金はどんどん下げられて行く。そういうささえになつておる最低のものすらあなた方はとつてしまう。しかもこれについては、進駐軍の労働組合の方から、何回か政府の方にも困るということは通じてあると思うのです。ところがそれでやられていないのです。非常に心配しておる。こういう面から見ても、やはり下げるという作用は平気でやられるけれども、上げるということになると、一億二千万円のはした金すら出さぬということになつてしまう。だから私はさつきそう言つたのですが、この点について、たとえばP・Wというものは、いわゆる労働省の所管でやつておる日雇労働者なんかの基準にもなつておるけれども、あれを撤廃してしまつて労働省はどういう態度をとつておられるか。賃金政策根本的な考え方としてお聞きしたいと思います。
  54. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 P・Wの問題は労働省は――私もそうですが、でき得る限りあの考え方と方式を保持するという考えで進んでおります。ただ例の今廃止になるという不正支払いに関するあの法律案自体は、その基礎になつていたデイレクテイヴがなくなつたのですから、その上に乗つておる法律を廃止することは、これは形式的からいつても異質からいつても、当然だと思います。私はこれは反対ではありません。私はこのP・Wの問題は少し検討が足りないので、最近検討したのですが、あの法律だけを見てみると、労働大臣がきめた職種別の賃金も、高く払つてはいけないということが、ちよつと書いてあるだけであります。しいて形式論で言へば、頭の方のかんぬきになるような意味だけが法律に書いてあるので、一部の人たちが希望するように、あの法律をやめることをやめろということは、今言つたデイレクテイヴの関係上、これは形式的になるかもしれませんが、それではあの法律の中の三行だけ残したならば、頭のかさだけ残つておるということになりかねない。しかし実際には春日委員指摘されたように、下の方にやたらに下げられて行くということをチエツクする働きをしておる。その働きはどうしてしておつたかというと、デイレクテイヴの方をよく読んでみると、そういう意味にとれるというので、両方をにらみ合せて、そういう働きをしておつたわけであります。そこでディレクティヴを出すことをやめるとか、あるいはその一部を残すということは、私たちの関知し得ないところでありまして、こういう場合にはどうするかという問題については、大蔵大臣ともよく話し合つたのであります。大蔵大臣としてはどうしてもあの法律は早く廃止しなければ困る。それではP・Wの問題をどうするかということについては、労働大臣はこれは残したいのだ、何かの形でもつて残して行くことに協力するということは了承しよう。そういう意味でもつて、例の法律だけは廃止の方に賛成してほしい。私も今言つたように、法律の下の方に行くことをチエツクするのは文句はないのでありますが、あながちあの法律の中の三行ぐらいに固執して残してみたところで、意味はない。それよりもP・Wの実体を保持することがよいのだ、そういう了解がついております。それも単独に立法化するか、あるいは政令で行くか、あるいは国会等の関係で間に合わないときには、適宜の処置をとつておいて、次の国会で立法化するかというような具体のことは、まだ決定しておりませんが、方向としては、そういうふうに決定しておるのでありまして、よくあの法律をお読みになつていただけば、あの法律自体に固執することは、今の段階においてはナンセンスだということが御了解できると思います。
  55. 倉石忠雄

    倉石委員長 春日君に申し上げますが、この委員会専売裁定問題をやつているのでありまして、そのためにお忙しい中を、参考人や専売公社の方が見えておるわけでありますから、専売裁定に関すること及びそれに関連の事項について御質疑願つて一般労働問題については、追つて開かるべき労働委員会においてお願いいたします。
  56. 春日正一

    春日委員 私は裁定の結論を出すために、必要な条項を聞いておるのであります。なるべくそれを離れないように聞いておるつもりでありますが、問題の性質上、やはり全般に関係するものがどうしても出て来るわけであります。その最小限度で私は聞いておるのであります。そこで今の労働大臣のお答えで行くとP・Wの方は、大体何とか実体は保持するように措置するということを考えておる。こういうお考えなのですね――それでいいのですが、そういうことで、先ほども私は基準法第一条を持ち出しましたか、実際に食えないという現実なんですね。これは報奨金制度をどうするとか、こうするとかいう先の問題でなく、現在まで赤字が蓄積し、借金奴隷になつて来ておる、この現実をどうするかということが今問題になつておるわけであります。そこでそういうものを要求しておるし、仲裁委員会にも先ほど来私どもお聞きしておる。他の委員も聞いておるが、決してこの裁定というものが十分なものとは思わないけれども、今のいろいろな事情から見て、可能なものというような立場から、これを出しておる。しかもそれすら出せない。その出せないという根拠が、どういう経費かこうで、これだけはどうにも出せぬという、納得し得るものではなくて、ただ抽象的に、諸般の情勢ということ言つておる。たとえば池田大蔵大臣にしても、あるいは法制局長ですか、あの人でも、結局十六条の解釈というもの、この予算上、資金上というようなものは、これは任意裁量なんだから、大蔵大臣の頭次第でどうにでもなる、こういうふうに言つている。そういうことになりますと、この公共企業体労働関係法というものは、実際の運用面から言えば、完全に政府は拘束されない、政府が拘束されないということは、公社が拘束されないということと同じことだ。公社政府に密接な関係を持つている、政府の予算の中に盛り込まれてやつている公社が、拘束されないというのと同じことになりますと使用者側、いわゆる普通の場合で言えば、資本家側が完全に無拘束であつて労働組合だけが全部拘束される、こういう性質の法律だ。つまり私どもの言葉で言えばブルジヨア独裁の法律だ。こう言わざるを得なくなる。この点では、たとえば調停委員会が国鉄問題を投げちやつたというのは、調停委員会もこの法律のもとでは、どうにもならなかつたという意思表示をしておるのだ。そういう点について、政府はそう解釈されるというようなことになつてもよろしいというのか。この点はつきりさせておいていただきたい。
  57. 鈴木正文

    鈴木国務大臣 御質問の点は二点あると思います。一つはさつきから繰返して御質問されておる食えるのか、食えないのか。これはある場合には一般労働者をも含めての、全般的の御質河のようにもとれますが、この問題が一つと、それから公労法の意味はどこにあるのだという第二番目の御質問と、三つ御質問があつたように思います。短かい時間でありますので、詳細は申し上げられませんけれども、私たち労働者諸君の生活の問題の解決は、すでに今まで繰返し繰返し申し上げておりますように、今の段階では実質貝金を充実する、積極的に高めて行くという方式の中にこそあるのだという見解を、今日まで堅持しております。その実質賃金をどう思うかというような詳細の点につきましては、今申し上げる時間がありませんから、必要な際に私どもの考え方と、資料とを見ていただきたいと思います。  それから公社の問題でありますが、これはさつきから諸般の情勢と言つたところで――公労法の建前から行きますと、明らかに法律に書いておりますように、公共企業体の、国鉄の場合には国鉄公社の、専売の場合には専売公社自体の資金上、予算上不可能なるものが拘束力を持たないのでありまして、可能か不可能かという問題は、この二点についてだけ検討すべきものであつて、そうしてそのほかのいろいろな要素を入れて来るという場合は、労使双方に――ときによつては使用者側に都合のいい場合があり、ときによつて労働者諸君の方に都合のいい場合があるかもしれませんが、公労法自体の精神としては、かわりはないのでありまして、あくまでもその公共企業体自体の資金上、予算上、可能か不可能かという一点によつて、決すべきものと思つております。従つて、それらの問題について、政府が不可能という認定を下した――あえて大蔵大臣のみにて認定をしたわけではないのでありまして、もちろん大蔵大臣の流用、移用の点、それからその予算、資金の内容というものを大蔵大臣を通じて十分説明を聞きまして、それで不可能と認めざるを得ないという結論になつたのであります。こういう場合におきまして、その最後的の決定は国会がこれを行う、承認不承認、いずれかを国会が行うことも、明らかに法に書いてある通りであります。従つてその場合におきましてもし国会が承認すべしという議決をした場合にはどうなるか。おそらく私どもの考えでは、まだそのケースに至つたことがありませんけれども、その場合には、政府はあらためてそれに対応すべき政治的責任を持つて来ると考えております。そういうふうに考えますときに今申しましたような判断を政府が下し、そうして大蔵大臣自身が、この際においては流用、移用等によつてやることは不可能である。しかもその説明は、皆様もお聞きになつたでありましようが、私どもも事前に十分聞いたのでありまして、そういう情勢のもと二おいては、これを不可能と認めるという判断を下したのでありまして、そこに決して最初から、公労法を蹂躙しようというような意図があつたわけではないのでありますし、公労法自体の建前では、明らかにそういつたケース予定し、そうして最後的には、そこに一つ国会が最終的な判断を下すという方式が、最初からの基本方式であつたわけであります。三十五条と並んで十六条の存在するゆえんも、そこにあるのでありまして、私どもはそういう考えをもつて国会の公平周密な検討をいただいて、ある場合には、国会が、政府と違つて承認をするという場合もありましようし、そうでなぐ、国鉄の裁定の一部が途中でも可能これは国会がそう言つたんでなくて、折衝の途中で、政府の方で十五億可能になつて来ましたから、これだけは可能ですということで、残りの部分の承認を願いたいということになつて来たわけですが、こういう方式をとつて行く限り、当然公労法に規定された方式をとつてつているのでありまして、仲裁政府が承知しないから、初めからこれは蹂躙だという考えは、公労法の建前からいつてそういう見解は成立たないと思います。
  58. 倉石忠雄

    倉石委員長 この際、一時四十分まで休憩いたします。     午後零時三十六分休憩     午後三時一分開議
  59. 倉石忠雄

    倉石委員長 休憩前に引続いて会議を開きます。春日正一君。
  60. 春日正一

    春日委員 私は先ほど公共企業体労働関係法の扱いについて、労働大臣質問中で時間が切れたのですが、この点非常に今度の問題の係争点になつておるので、これはやはり労働省責任ある者の説明が必要になつて来る。もう一つは、この裁定の問題のかぎを握つておるが大蔵当局に対する質問ができなければ、この裁定の問題について、私どもは結論を出すことができない。ところが、今日は両方とも出席されておらないし、今まででも割合1というよりも、ほとんど出席しない日の方が多かつたというような状態で、この裁定の問題が、日本の労働者にとつて非常に大きな関心の的になつておるとき、非常に不熱心だということを私は遺憾に思うのであります。それで私の質問は大蔵当局労働当局責任ある人が出席しなければ、これは意味のないことなので、私は質問を保留して、出て来たときに発言させてもらうということで、次に質問を譲りたいと思います。
  61. 倉石忠雄

    倉石委員長 前田君
  62. 前田種男

    ○前田(種)委員 総裁にちよつとお聞きしますが、この裁定が承認されないという結論に達した場合に、公社の今後の生産に及ぼす影響、並びに従業員がいかなる態度をもつて今後対処するかということに対する見解を述べていただきたい。と申しますことは、1御承知のように一昨年公労法ができまして、公社が独立するというその経過、またその規定を見ましても、罷業権は持たないが、公労法という法律によつて労働階級の主張あるいはいろいろな希望等は、法的に確認されておるわけなんです。そうした1法的手続を完了いたしまして、最終的な断定が下されたにもかかわらず、その裁定が今日政府の拒否することによつて認められなかつた場合、従業員が今後一体どういう態度をもつて公社に協力して、国家的生産増強のために努力するかという点について、重要な問題が今後に残されると思います。午前中の総裁の答弁の中にもあつたように、今日まで需要に応ずるために、生産増強のために非常な努力をやつて来たというその実績が、数字の上に現われておることは、われわれ確認しておるわけであります。しかしこうした公的機関で、最終的に決定されたものが、政府の意思によつて蹂躙されるということから来るところの今後の動向というものは、重要なものがあろうかと思います。この点につきまして総裁のいろいろな見解等も承り、さらに労働組合を代表するところの平林君の見解も承つておきたいと考えます。
  63. 秋山孝之輔

    ○秋山説明員 この裁定の問題につきまして政府がわれわれの希望をいれられないという場合におきまして、能率に対する影響はどうかというお尋ねでありますが、これは事将来に属する問題でありまして、もちろん想像が大都分を占めるのでありますけれども、私といたしましては、若干の影響があるということは認められるのであります。しかし現在の私ども組合と経営者との関係から申しますと、必ずしも非常に悪い関係になつておらないのでありますから、組合としても法的に許される範囲のことはやられると思いますけれども、それ以上の行動には出ないだろうと私は信じておるのであります。若干の影響のあることはことは想像できるのであります。午前中お尋ねの法律に触れる公社の設備の不備という点につきましても、実はただいまお答え申し上げるはずでありましたけれども、私ども公社の管理を担任しておる者に、裁判所の関係で会うことができませんので、しばらくあの回答は御猶予願いたいと思います。
  64. 前田種男

    ○前田(種)委員 今の答弁は、私の質問が十分でなかつた点もあろうかと考えますが、もし裁定が認められなかつた場合に、端約に労働組合が、法的に許されないところの非合法的な手段に、出は上ないかという点を、私は質問をしておるのではないのです。そうした非合法的な行動に出るか出ないかということは、慎重に労働組合自身が対処すると考えます。私はその点についてここで質問しようとは考えません。そうしたことでなく、今後正常な仕事の上にいかように影響するか。こうした筋道を立てて、公正な立場に立つて裁定されたものが、一方的な政府のむりな解釈によつて拒否されるというようはことから、今後三万八千の従業員が、一体どういう気持で、どういう心情で、公社に協力して今後の仕事にほんとうに真剣に、身を投げ出して協力するという気持になり得るかという点等を、私は多く心配するのであります。私たちはやはり筋道が立つたときには、そうしたものを認めてやるという政府の措置が必要であると思う。すなわち言いかえますれば、人を使う場合には、やはり上手に使う、そうして得心させて、ほんとうに協力させるという態勢にならなければ、能率というもの上らない。極端な例を申します、一人に一人の監督がついて、しりをたたいてみたところで本人にやる意思がなければ、能率は上りません。またよい製品はできるはずはないのであります。真に従業員が協力してほんとうに能率を上げようという気持になつてこそ、初めて生産は上ると私は確信しております。もちろん今日の日本の経済事情のもとにおきましては、労働者全体が満足できるような裁定の下される経済状態にないことも、私はく知つております。しかしそうしたさ中にあつても、何としても従業員の最低労働条件を確保してやりまた今回のような公正な裁定が下つたときには、それをのんで、そうしてさらに生産を増強して、国家的にも、経済的にも、益金をふやすような方針に最善の努力を尽すということが、本筋でなければならないし、また総裁としては、そ態勢をつくつて行くということでなければならないと考えますが、今度のような場合、拒否されるというとになつて来たあかつきに、一体総裁として、三万八千の人々を、どういうような協力態勢でもつて国家的生産に協力させるかあるいはどういう方向によつて得心させて政府は承認しなかつたが、諸君はがまんしてやつてもらいたいということをおつしやると思いますが、一体どうして実際に協力させるような方針なり、対策なりを考えておられるかという点を、実はお聞きしたがつたのであります。この点についてなお総裁の見解を承つておきたいと考えます。
  65. 秋山孝之輔

    ○秋山説明員 私もしばらく生産工業に従事いたしておりまして、この前にもお話申し上げましたように、われわれは常に労務者と同じ釜の飯を食つているという精神のもとに、及ばずながら精神的にも協力を求めるという方針で私はやつて参りまして、今後公社の経営におきましても、できるだけいわゆる官僚気分というものを払拭して、われわれの従来やつてきたような方式でやつて行きたいという念願をもつて現にやつておるのであります。ただいまお話の、具体的にどういうことがあるかというお尋ねにあずかりますと、私もここでは具体的なお話はできかねるのでありますけれども、私はいわゆる財政法の許す範囲内において、できるだけのことをして組合の了解を求めて自分の力の及ぶ限りを尽してやつて行きたい。これででき得ないということであれば、最後の二段の考えをせざるを得ないと私は思う。しかしながら政府の今とつている態度から申しますると、私が考えておりますことは、精神的にできるだけ労務者の了解を求めて私の全力を尽して行きたいと思つております。
  66. 前田種男

    ○前田(種)委員 総裁のその気持はよくわかりますが、端的な言葉で申し上げますと、今度のように裁定が無視されるということになつて来ました結果、三万八千の従業員が、政府がああいう態度をとるというならば、まあ仕事はそこそこにして、服務規定違反しない程度で、そうして言い訳が立つような程度でそこそこにやつてつてもよいのだ、政府がああいう態度をとるならば、ほんとうに汗水をたらして仕事をするのはばかばかしい、むしろそれよりも、そこそこにやつておろう、いわゆる「お日さん西々弁当がらがらと言つて、われわれ若いころ仕事をしております時分には、そういう言葉がはやつておりましたが、朝出勤して弁当箱がからになつて晩の五時か六時に帰つたらよいのだというような無責任な態度でやられることは、国家的にも非常に大きな影響があると憂慮するわけです。今度のように、手を尽し、法に準じてしかも罷業権のない労働団体が、まじめに手続をふんで来たにもかかわらず、今度のような処置を結論として見出されるということになりますれば、私はそういう気持になる従業員が、相当おることを実は憂えるのです。そこで為政者としてあるいは政府としてあるいは公社責任者としても、どうしてもそういうことのないようにせなければならぬと私は考えます。その点について重ねて総裁にお聞きすることはどうかと考えますが、私は真にそういう点を憂慮いたしますので、そういう点に対する態度を、総裁としてはつきりしておいてもらいたいと希望します。もし総裁の答弁がなければ、その点について労働組合責任者として平林委員長は、はたして今度の裁定が認められなかつた場合に一体今後の仕事の上にどういう影響があるかというような点についての見通し、予見、見解等をこの際はつきりしておいてもらう方が、いろいろな点に参考になると思います。     〔委員長退席、福永委員長代理着席〕
  67. 秋山孝之輔

    ○秋山説明員 私の考えにおいては、大蔵大臣に申請をいたしたということは、単に紙を一枚出したということでなく、私の誠心誠意あの申請を出したということの精神をおくみとりくだされば、現在もなおかわつていないということで、私の意中はおわかりくださることと思います。
  68. 平林剛

    平林参考人 今御質問のことにつきましては、しばしば私から申上げているところでありまして、もし裁定が否認されるようなことになれば、それが一時的に重大な影響を与えるようになるかどうか、それはまだ現在の段階では、お答えする段階にないように思いますが、各方面に対してきわめて深刻な影響を与えるだろうということは、言えるだろうと思うのであります。この公企労法の否認は、単にわれわれの生活を無視し、否認したということだけにとどまらず、労働政策の面や、あるいは今後の日本の労働運動の面において組合員がどういうふうに考えるか、とても憂慮にたえないところがあると思うのであります。私がしばしば申し上げましたように、政府そのものに対する不信、これはもう言うまでもないことであります。法律上に対する疑義、こういうものも、もはや今日の段階において――最低条件がこのように時日を経過しても解決しないというような状態には、心の底から組合員は不満に感じ、しかも法律そのものにさえも、いろいろ疑いを持つような段階に入りつつあるということを、申し上げなければならないと思うのであります。特に組合運動の面において、今度の予算総則の中に見られますように、来年度の我々の給與はもうこれだけだといううな、くぎづけにされたような規定がもし定められるようになりますれば、一体われわれは、今後賃金に関する団体交渉をやつて行つて効果があるものだろうか、こういうような考えさえ浮んで参りますし、仲裁委員会裁定委員会裁定が、こうしばしば蹂躙されてしまいますと、その存在価値を疑つて来るようになるだろうと思うのであります。私どもは常に申しているのでありますが、こうした賃金やその他の問題は、交渉でなるべく解決することが理想でありまして、すべて団体交渉を離れて国会へ持つて来なければ何も解決しないあるいはわれわれが一々重大な決意であるであるとか、あるいはその他いろいろな決意を固めなければ、何もできないのだという慣例をつくることは、私ども労働組合の幹部としても、本当の労働運動の本筋ではないように思う。これら私どもにこういうような考えを持たせるようになつているのは、すべて現在の政府の政策の現われだと思つているのであります。今質問の要旨にありましたように、生産の面についてでありますが、私どもこういう例でお答えしたいと思うのであります。私ども生産が上れば賃金がよくなるのだ、こういうことを労働者はまじめになつて考えているのであります。ところが今日のようにいくら生産を上げましても、諸般の情勢であるとかいうような言葉でもつて、その努力が報いられない。いくら専売益金を多額に収める努力を行つたとしても、それはやはりほかの方に関係があるから、こういうことで、企業の特殊性も認めても らえない。こういうことになれば、必然的に生産に対する考え方もかわつて来ざるを得ないと思うのであります。前に私どもに、こういうことを言う組合員がありました。もしもわれわれがわれわれの努力によつて賃金が早く支払つてもらえるならば、今専売公社にいろいろな仕事があつて、日本通運株式会社で葉タバコやタバコなんかの運搬を行いますが、それを私たち自分でリヤカーで運んでもよろしい自分たちはこういう仕事をよその会社に頼まなくても、自分たちが一生懸命になつてそれを運んでもよろしい、そのかわりその経費の節約によつてできたものは、ぼくらの待遇にまわしてほしい。こういうことをひとつつてほしいということを、よく言われたのでありますが、おそらくこういう考えも捨ててしまうだろうと思うのであります。自分たちの職場において仕事ができなくて、たまつてしまつた現在組合員で経理の方を担当している人たちは、非常に業務が多忙であるために、家へ帰つてその仕事をやつております。家へ帰つて書類をつくつておる。こういうこともおそらくばからしくなつてしま。こういうような生産に対する考え方が起きて来ることは、来年度の製造計画が相当の割当を食つているときにあたつて、私は労働組合責任者として竜、今後どういうふうに生産意欲に影響するかということについて、責任を負うことができないように思うのでありしす。もし生産が低下をしたり、その他専売益金予定通りあげられないようなことができたら、私はこれはやはり、専売裁定を否認するような政府の方で、責任を負つていただかなければならないのではないか、こういうふうに考えております。
  69. 前田種男

    ○前田(種)委員 私は、大蔵大臣並びに官房長官、労働大臣にはつきり聞いた方がいいと思いますが、出席でありませんので、佐藤長官に、法的解釈をもう一度繰返してお尋ねしておきたいと考えます。  多数の委員から何回か繰返しで質問したのでございますし、これに対して仲裁委員の方からも、法的解釈に対する答弁も願つておるわけです。私はこの法律の成立当時の論議、あるいは経過、マツカーサー書簡等から見まして、すなおにこの法律を解釈すべきだと思うのであります。今回の裁定のごときは、三十五条で拘束されている、そうして「但し」という問題からもどつて、十六条にかえつて参りますが、一体「公共企業体の予算上」という、この「予算上」という文字には、今まで国会の承認を得ておりますところの既定の予算が、この中に含まれておるかどうか。私の見解では、予算に含まつていない新しい予算補正を要する問題、あるいは資金上不可能な点は、国会の承認を得なければならぬという解釈をしております。言いかえますならば、大蔵大臣の流用によつて可能な範囲内の予算のやり繰りでありますならば、もう十六条の手続は必要ないと私は考えておるのです。この点に対する政府見解は、大蔵大臣の流用できる費目であつても、承認しなければ――もちろん国会の承認は必要ないが、大蔵大臣が判を押さない限りにおいては、国会の承認が必要であるというように、十六条が解釈されるかどうかという点を、もう一度お聞きしておきたいと考えます。
  70. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 先日もこの連合審査会で申し上げたところでございます。またただいま前田委員からもお話のあつた通りでありまして、私どもはこの十六条にあげております「公共企業体の予算上又は資金上」と申しますのは、現に成立て実施されつつある公共企業体の予算の問題を言つてつて、しこうして「不可能な資金の支出」この「不可能な」というのは、当然公共企業体限りで可能であるものを除いた以外のものというふうに考えております。従いまして、ただいまのお話にありましたように、大蔵大臣の承認等によつて初めて支出可能になる部分は、この十六条にいう不可能な支出という範囲に一応入ります。
  71. 前田種男

    ○前田(種)委員 今の答弁ははつきりしませんが、大蔵大臣の権限において流用ができるという点は、予算上不可能なものに入らないと私は考えておるのであります。大蔵大臣自身も答弁しておるのです。自分が判を押せば国会の承認はいりません、大蔵大臣が判を押さないから、国会の承認を求めているのだ、と大蔵大臣みずから言つているのですが、さように十六条が解釈できるかどうか。私は大蔵大臣といえどもそういう法的な解釈はできないと考えております。少くとも大蔵大臣の権限において、国会の承認を得なくて流用ができるならば、はつきりと十六条の適用を必要としない。そういう意味においてこの「予算上」の解釈は、この立法の精神と、今日政府のとつております態度とでは、非常に大きな見解の相違を来しておりますので、もう一度この点を明確にしてもらいたいと思います。
  72. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 ただいま、二度目でありますために言葉を省略いたしましたけれど、もう一度御説明申します。結局大蔵大臣の申しましたところと同じでありますが、この可能、不可能の問題には二段の過程がありますから、いろいろ後疑問が生ずるのではないかと思います。すなわち先ほど申しましたように、本来公社限りでやり繰りできる額というものは、予算上もちろん可能な部分に入ります。それから次の、大蔵大臣政府の承認によりまして支出可能になる部分は、承認がない限りは不可能な部分であります。大蔵大臣が承認をしますれば、もとより公社として支出いたし得るわけでありますから、支出可能な問題になると思います。それで、前回の国鉄の場合もたしかそうだつたと思いますが、後ほど流用の承認ができたということで、国会の御審議になつておりましたある部分は、可能な部分になりますから、あえて訂正を申し上げたわけであります。
  73. 前田種男

    ○前田(種)委員 この法それ自体を解釈されると、今のような見解があるいは説明できるかもしれませんが、少くとも立法の精神から行きますならば、予算上、資金上という、この予算上の問題は、いわゆる政府の行政的に処置においてでき得ない、補正予算を要する、あるいはその他の点を考えていると私は解釈しているのです。これをむりに――政府がこの裁定を拒否するという態度に出て来ておりますために、そういうむりな解釈をしていると私は考えます。今の答弁も、この法律の成立当時の政府側説明、あるいはいろいろな質問に対するお答え等から考えますと、いわゆる行政的な処置、大臣の権限においてやる、国会の承認を必要としないというその範囲内は、これに含まれないという解釈の上に、この法律が成立したと私は信じております。またそう政府側は答弁しております。それにもかかわらず、今になつてそういう見解を用いられるということは、わずかなところにそういうりくつをつけて、そうしてこの裁定を拒否しようとする態度がありありと見えるので、そこで各委員もその点を質問していると私は聞いておりますし、また私自身もそう考えております。なぜかと申しますと、三十五条の「最終的決定としてこれに服従しなければならない。」というような文字が、一体今までの法律にあるかどうか。ないはずです。裁判上のいろいろな規定でも、最終的決定というような文字を使われた法律は、おそらくこれが初めてではないか。それほどこの三十五条で拘束しているわけです。但し政府国会を拘束するものでないということは、まさか仲裁委員会が最終的決定をした場合に、その決定に従わないというような不義理なことを、政府なり国会がやるはずがないから、そこまで十六条で押えなくてもいいという関係におきまして、十六条と三十五条の見解がここに現われていると私は考えます。もし今政府説明しておりますような解釈、この立法当時からそういう見解を明らかにしておられますならば、三十五条の文字の使い方の上においても、最終的決定という字句は、適当に修正されておつたはずであると私は考えます。私はそうした見解、さらに第一条にはつきりと明記してありますように、国家の経済と国民の福祉に対する公共事業体の重要性にかんがみ、この法律で定める手続に関与する関係者は、経済的紛争をできるだけ防止し、且つ、主張の不一致を友好的に調整するために、最大限の努力を尽さなければならない。ということは、大臣といえども最大限の努力を尽して仲裁裁定に対しては、その裁定が生きるようにしなければならぬということが明記してあるわけです。この三十五条の条文、それから第一条の条文から照し合せまして、はたして最大限の努力政府によつてなされているかというと、そうではありません。こうした法全体の建前からいつて、この十六条の解釈、政府の解釈しておりますところの解釈が、むりな解釈をしていると私はあくまでその点、政府を責めなければなりませんが、決全体を流れている精神、第一条、第三十五条の字句等から参りますところの見解について、もう一度御答弁願つておきたいと考えます。
  74. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 三十五条の問題は、前田委員御自身御指摘通り、但書がございますから、結局最終の決定云々は、但書によつて十六条の問題になることは申すまでもないと思います。この公労法全体の精神は、まさに御指摘通り、この法律の最初に掲げてある通りであります。従いまして、この間に処しましての政府の態度は、当然公労法第一条の精神に沿つて行動すべきものであることは、これもやむを得ないことであります。ただ、この十六条の適用にあたりまして、政府が流用の承認をするか、しないかということは、これは申すまでもなく政府としての大きな責任を持つてなさるべき事柄でありまして、全然合理的の理由なくして、この流用を拒否するというようなことは、考えられないところであります。この点については、すでに大蔵大臣その他から十分御説明しておるだろうと思いますが、法律といたしましては、先ほど申しました通りに、一応不可能というようなことになりますれば、ただいま現に御審議になつておりますように、政府が流用すべきではないか、あるいはしてはならないのじやないかという部面も、国会の御審議の対象になつているわけであります。これは政治的に、国会が最高機関として、政府の現にとつておる態度がいかがであるかということを、御批判になる場所を、法律そのものが確保しているわけであります。この法律としてはこういう点を考慮して、重大なる扱いをして、この問題を取上げているということは、申し得ることであろうと考えます。
  75. 前田種男

    ○前田(種)委員 これ以上佐藤さんに質問しようと思いません。賀来労政局長も見えておりますが、きよう労政局長にこの席上で、この解釈についてだめを押そうというようなことを私はしたくありませんから、質問を保留します大蔵大臣労働大臣、官房長官が見えましたならば、私は裁定の内容、さらに法的解釈等につきまして、質問したいと思いますから、私の質問は保留いたします。
  76. 福永健司

    ○福永委員長代理 この際お諮りいたします。委員各位から質疑の通告がまだ他にもあるのでありますが、いずれも大蔵大臣労働大臣等の出席を待つて質疑をしたいとのことでありますので、ただいま要求いたしておりますが、まだ出席がありません。このまましばらく出席を待ちますか、それとも今日はこの程度にしまして、明日労働大臣の出席を求めて質疑を続けますか、いかようにいたしますか――  それでは本日はこの程度で打切りまして、明十八日十時から委員会を開くことにいたしますが、本日御出席の参考人各位には御多忙中御苦労さまでございますけれども、次回にも引続き御出席願いたいと存じます。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時三十四分散会