○石田(一)
委員 私は新政治協議会を代表いたしまして、今回
政府より提案されましたところの「
公共企業体仲裁委員会の別紙
裁定中、十五億五百万円以内の
支出を除き
残余について
公共企業体労働関係法第十六条第二項の
規定により、
国会の
議決を求める。」というこの
案件に対しまして、
仲裁委員会の
裁定事項の第二項に記載してあります「
公社は
総額四十五億円を支払うものとする。」という四十五億円から、
政府が数字を示しましたただいま申し上げた十五億五百万円を差引きましたその
残余の額についても——すなわち四十五億円を
総額政府は
承認すべきものであるという
意見を述べまして、その一部を今
国会で葬り去ろうとする、すなわち
政府に免責の言質を与えようとしておることにつきまして、いささか所見を述べて
反対したいと思うのであります。
過日来本
会議あるいは
委員会等におきまして、
政府当局に対していろいろと説明を求めております。昨日の合同審査におきましても、私は
政府当局から二、三の重要なる点の御答弁を得ておるのでありますが、その点に関しましては、この
残余の
部分について、附帯
条件をつけて
不承認の
討論をしておられます
政府与党であるところの
民主自由党の、この附帯
決議などというものは、まことにこれは
労働者を欺くもはなはだしい、幼稚な欺瞞であります。昨日私は、
運輸大臣並びに法務総裁に対してとの点ははつきり
質問をいたしまして、法務総裁は明らかに、第三項、第四項は、たとい
政府の
提出したこの
案件によ
つて、その
残余が
不承認と
なつたあかつきでも、当然に効力を存続しており、
当事者双方を拘束するものである。こういうことを申されておるのであります。しかもこの第一項の末尾にありますところの「
経理上の都合により
職員が受けた
待遇の切下げは、是正されなければならない。」この第一項の末尾も、もちろん第三、第四項と同じ性質を有する
内容でありますので、これも今回の
議案の
残余の額が、
国会において
不承認となりましたあかつきにおいても、これは当然、効力を存続し、
当事者双方を拘束するものであります。だといたしますと、ただいま民自党側がつけました附帯
決議というものは、すでに昨日
政府が
解釈においても
承認をしておることを、いまさらここに附帯
決議をつけて、われわれはこれだけのことをしたという
一つの欺瞞的な、幼稚なトリツクであるという以外の何ものでもないのであります。私はここにこの問題がかく紛糾し、かく論議がわかれる、しかも
政府与党並びに野党側において、
公労法の
解釈の点におきまして、まことに正
反対とも見えるような
解釈の
意見の対立が生ずるということは、少くともただいま労働大臣をしておられる鈴木さん、あるいは今
政府委員として出席なさ
つておる賀來さん、この人たちは現に本法が昨年の十一月二十日ごろでしたか、立法当時審議の過程において、直接これに参画をされておるのであります。しかも
政府を代表して答弁をされておる
立場でありますが、これを審議した
委員の怠慢というのか、見落しというのか、この三十五条の但書と十六条の関連においての質疑応答というものは、
速記録を見ましても、ほとんど発見することが困難なのであります。ただこの点に関して、賀來
政府委員が明らかに、この三十五条に言うところの
仲裁委員会の
裁定なるものは、これは行政官庁の最終的
決定であ
つて、これは
当事者双方を拘束するものである。但し裁判所の裁判権を阻害するものではない。こういう説明を一言なされておる
速記録を見ることができるのであります。私はかかる点から考えまして、立法論的には、この
公労法の三十五条の但書と十六条の関連において、まことに不備きわまるものがあることを指摘しなければならないと思うのであります。しかもこの不備が、現内閣のいわゆる第二次内閣のときにこれが立法され、審議され、法制化されたということに至りますと 私たちはことさらに臆測をたくましくするものではありませんが、むしろこの
公労法は、一方において十七条で、この
公共企業体に従事する
労働者諸君の、憲法に認められた権利であるところの
争議権というものを剥奪し、その代償としてといいますか、
仲裁委員会の制度を設けて、苦情あるいは不平、不満等の紛議を処理する。こうした
一つのえさを掲げて、しかも今いざ実際に
解釈するというときになりますと、何らこの
仲裁委員会の
裁定なるものが、最終的
決定でないという今回のような結果にな
つて来ますことは、まことに遺憾であると私は思うのであります。しかも
解釈論におきましても、私はこの法の
精神ということから考え、第一条に明記してありますところの本
法律の目的という観点から考えてみましても、少くともこれは
公共企業体における労使の
紛争というものを事前に予防し、あるいはもし
紛争が現実に起つた場合に、これを平和的に
解決する、この大きな題目を持
つておる。すなわち
職員のいわゆる労働争議というものの権利を一応停止するとともに、一方救済をするという大きな保護を含んだ
法律である。こう
解釈すべきであります。私は
政府の
関係当局が今回の
裁定案の問題に対して、冷たい、いわゆる字句の
解釈のみに終始いたしまして、この法の大
精神であるところの、
労働者諸君を保護する、救済するという立法
精神を没却して、ただ単に表面に出た字句を
解釈すれば足りるという態度をも
つてされるということに関しましては、まことに遺憾であると思うのであります。しかもこの問題こそは、本年六月一日から実施された本
法律の、まず最初の
解釈の適用の問題でありますので、慎重にいたさなければならないはずであるのに、
政府は与党の多数をたのんで、これを一方的に自己に有利に
解釈しようとしたうらみが、なきにしもあらずであります。しかも私の明らかにここに指摘いたしたいと
思いますのは、三十五条の但書によ
つて十六条に帰るといたしますと、この十六条にある
協定という文字は、すべて
裁定と読み直さなければ、全然
解釈がつかないということになるのであります。そこで私はこれを
裁定と読み直すということにいたしまして、第二項の但書以下「
国会が閉会中のときは、
国会召集後五日以内に付議しなければならない。
国会による
承認があつたときは、この
協定は、それに記載された日附にさかのぼ
つて効力を発生する」とありますが、これを
裁定と読み直す場合には、実際的には——この間これを
国会に
提出した。二日目に
提出して、残つた三日間に事案
協定がなされた場合—この
協定にある日付が記載されているにもかかわらず、
裁定と読み直すために、もし
国会がこれを事後承諾の形で
承認した場合には、
仲裁委員会が
裁定をしたその
裁定書の日付にさかのぼ
つて仲裁委員会の
裁定が効力を生じ、一方においては、かわつた日付の
協定がなされておるというような、実に不合理きわまる、実際においてはどう
処置をしてよいかわからない結果が起きて来るのであります。しかも私は、この
法律の十六条の条文を静かに読んでみますと、
国会が
仲裁委員会の
裁定を
承認した場合という意味を、何らこれは含んでいないということであります。私は昨日も
政府当局に
質問したのでありますが、いわゆる既定の
公共企業体の
予算上、
資金上、
支出の可能な
仲裁委員会の
裁定があり得るかという
質問をいたしましたところ、理論的にはこれはあり得る、また実際問題として初めてのことであるから、具体的な例は示されないと労働大臣はおつしや
つたのでありますが、少くとも
経済問題等に関する、いわゆる
労働組合と
国鉄当局との間の紛議におきまして——おそらく
仲裁委員会が
裁定する紛議において、現在の既存の
公共企業体の
予算上、
資金上、
支出可能な
資金の面でこれが
裁定されるということは、実際問題としてはあり得ないと私は思うのであります。これはすでに
予算を組んで、これこれのものはこれだけでいいと確定された
予算であり、またもし固定された
資金であるとするならば、この範囲を必ず
仲裁委員会の
裁定なるものは越えるものである。そこでこの越える
部分の
支出も禁止しているのではありません。この十六条は、その
支出をする場合の、
支出の時期についての
手続的な
規定である、こういうふうに私は
解釈しておるのであります。すなわち
裁定が既存の
予算上または
資金上
支出が不可能な
内容を含んでおる場合には、この
裁定を下され、あるいは十六条の本然の姿のまま
協定がなされたとしても、それによ
つて政府がただちに拘束されて、そのままで
政府が
予算あるいは他の財源を見つけて来て、この支払いをするという拘束はないのだ。すなわちそのことによ
つて、ただちに
政府に支払いの義務を負わせるものではない。但しこれは
国会の
承認を求めて後に、この支払いを開始していい、こういうふうな
規定であると私たちは
解釈するのであります。にもかかわらず、
政府当局は強引に、この十六条の第一項、第二項にいうところの
国会の所定の行為であるとか、
国会の
承認という言葉で、その裏には
国会が
承認するか、あるいは
不承認するかは、
国会の自由意思であるというように、保護の
規定を、ことさらに一般
規定と同じような冷たい
解釈をいたしまして、
労働者諸君の
主張をここに強引に排除するという態度は、先ほど来各
委員からの
討論がございましたように、今後の
日本の
労働組合にと
つて、まことにこれは悲しむべき
政府の態度であると言わなければならぬと思うのであります。しかも私はこの問題に関しまして、
政府がみずから、これは既存の
予算、あるいは
資金の上においては、かくかくかくかくの
予算上、
資金上の数字を示して、この
理由によ
つて支出が不可能な
内容である。但し
公共企業体が支払いしようとしておるところの十五億五百万円というものは、これだけは
支出支弁できるけれ
ども、
残余の二十九億九千五百万の額は、これこれしかじかの
理由によ
つて、既存の
予算、
資金では絶対に不可能であるという数字を明らかに示して説明をし、しかも
日本の
財政的な見地から、財源あるいは
予算の操作等の数字を明からに示して、この点で新たなる
補正予算あるいは
追加予算を出すことは、これはかくかくの数字によ
つて証明するごとく、これで不可能なのである。これを要するに、具体的な
予算的、
財政的な数字による説明も、資料も与えずして、ただ大ざつぱに、
裁定中十五億五百万円以内の
支出を除き、
残余について
公共企業体……こういう
議案として
国会に出されたことは、昨日来議論にな
つておるように、少くともこの
仲裁委員会の
裁定には、
国鉄当局から
政府に対して、この
裁定の
精神の
内容を履行するための、いわゆる
予算的数字、
金額を具申し、
提出してある。それによ
つて政府は財源を見つけ、あるいは財源が見つからなければ その
理由を明記して、これをこの
裁定書とともに
国会に
提出して審議を求めるというのならば、まことにこれは堂々として、その点に何ら一点として非の打ちどころはないのでありますが、そうした明らかな事実の証明に供される資料も
提出せず、
予算も
提出せず、こうした大ざつぱな観点で、ただ
裁定書のみを最初に出して、これを
公共企業体労働関係法の十六条二項の
規定に基いて、
国会の
議決を求めるというような体裁で、出しまして、しかも
政府はこれどをうしようとするのかと
質問すれば、
国会の御意思で御自由に
承認でも、
不承認でもしてくだされ、こういうような態度をと
つておる。しかももしこれを、自分たちの与党が多数であるから、この多数に意を含めておいて、
不承認とすれば、結局
政府は何ら拘束をされない。こういうふうな甘い考え方で、まるで
国会を無視した、多数ならば、どんな不法不当なことでもなし得るのだというような態度で、この
案件に対して臨んで来られた
政府の態度というものは、少くともそこにいらつしやる各
政府委員以下お若い方々の、いわゆる政治良心を持
つていらつしやる方々の、私の言うことは相当痛いところをついておると思う。私は現在
日本が置かれておる客観情勢を絶対否認するものではありません。肯定しております。しかしながら少くとも実施されておるこの
法律を
解釈する場合に、もちろん占領治下という
一つの——いわゆる
財政的にはそういう問題もあるでしようが、
法律の
解釈論的には、占領治下にあるから、それで結局これこれが不可能であるから、この
法律はこう
解釈するというふうに、曲げて
法律が
解釈されるということになりましたならば、私はこれはまことに矛盾もはなはだしい結果を生ずるものであると思う。なぜかならば、
公共企業体労働関係法なるものの提案
理由の中に、「昭和二十三年七月二十二日附内閣総理大臣宛連合国最高司令官書簡に基き国有鉄道事業及び専売事業を
公共企業体の事業とするのに伴い、
公共企業体とその
職員との間の労働
関係を規律する制度を確立する必要がある。これが、この
法律案を
提出する
理由である。」すなわち昨年
政府がこの
公労法を
国会に
提出いたしましたのは、連合国最高司令官の書簡に基いてお出しに
なつた。この
法律を、現在
日本が最高司令官の
占領下にあるからとい
つて、これをあまりに
政府に有利に曲げて
解釈をするということがもしあつたとしたならば、私は最高司令官の名前をも
つて最高司令官の命令を葬り去ろうとするような、実に矛盾撞着のはなはだしい結果になると考えるのであります。少くとも私は
政府の今回の
措置は、
日本の現在健全な発達を遂げる過程にあるところの
労働組合を、昨日末弘博士のおつしやつた
通り、また再び破壊的な
労働組合、非合法的な
組合運動にまで押しやることがなければ、まことに幸いであると思うのであります。
こういう観点からいたしまして、私はまず
討論の最初に述べましたように、今回
政府が
提出した本案の
残余についても、すみやかに
政府はこれを支払うべまである。
裁定案の第二項の四十五億全額を
支出する義務を
公共企業体は負い、この
公共企業体の
予算的、
資金的な
措置においてこれが不可能ならば、その具申を求めて
政府はみずからその
予算を
国会に
提出をしてこの
承認を求め、この
裁定によ
つて課せられたる義務の履行をしなければならぬものである。こういう観点に立つとともに、ただいま与党側より
提出されておりますところの、いわゆる附帯
決議だか、ごまかしだかわからないような、あんなものをつけなくても、当然に昨日の
政府の言明によりまして、これは効力は存続しているものである。こういう
意見を私は述べまして、ただいま最初に申し上げました
通りに、今
政府が、
残余について
公共企業体労働関係法第十六条第二項の
規定により
国会の
議決を求められたこの
議決は、
残余についても
総額を支払うべしという態度を表明するものであります。(
拍手)