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1949-12-20 第7回国会 衆議院 労働委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十二月二十日(火曜日)     午後五時五十九分開議  出席委員    委員長 倉石 忠雄君    理事 大橋 武夫君 理事 篠田 弘作君    理事 福永 健司君 理事 三浦寅之助君    理事 吉武 惠市君 理事 青野 武一君    理事 川崎 秀二君 理事 春日 正一君    理事 島田 末信君       麻生太賀吉君    小淵 光平君       押谷 富三君    菅家 喜六君       佐藤 親弘君    田渕 光一君       塚原 俊郎君    中村 幸八君       福田 喜東君    船越  弘君       松野 頼三君    福田 昌子君       前田 種男君    稻葉  修君       柄澤登志子君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 大屋 晋三君         労 働 大 臣 鈴木 正文君  出席政府委員         法制意見長官  佐藤 達夫君         (鉄道監督局         長)         運輸事務官   足羽 則之君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       加賀山之雄君         参  考  人         (公共企業体仲         裁委員会委員) 今井 一男君         参  考  人         (日本国有鉄道         労働組合中央執         行副委員長)  菊川 孝夫君         專  門  員 濱口金一郎君         專  門  員 横大路俊一君 十二月二十日  委員金原舜二君、福田喜東君、船越弘君及び松  野頼三君辞任につき、その補欠として押谷富三  君、菅家喜六君、中村幸八君及び田渕光一君が  議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  公共企業体労働関係法第十六條第二項の規定に  基き、国会議決を求めるの件(内閣提出、議  決第一号)     —————————————
  2. 倉石忠雄

    倉石委員長 ただいまより労働委員会を開会いたします。  公共企業体労働関係法第十六條第二項の規定に基き、国会議決を求めるの件を議題といたします。本件に関しましては、連合審査会におきまして、政府より趣旨弁明を聽取いたしており、委員各位におかれては、十分その御趣旨を御了承のことと思いますので、提案理由説明を聽取することは省略いたし、ただちに質疑に入ります。大橋武夫君。
  3. 大橋武夫

    大橋委員 本件に関しましては、連合審査会において各委員よりの質疑を通じまして、大体その輪郭が明らかになつて参つたと思うのでございますが、まずこの機会に、政府の提案されておりまする予算上、資金上不可能なる裁定部分はどの部分であるかということを、もう一度はつきり確定しておきたいと思います。そこでまず予算上、資金上、不可能であると政府が認められて国会に提出せられました部分は、本裁定案の第一項、第二項、これについては十五億五百万円を除く部分は不可能であるという御説明であつたようでございます。第三項の能率増進に基く予算以上の收入または節約による賞與は、今現実にこの資金の問題が発生いたしますると、本項の賞與もまた不可能であるのでありまするが、しかしながら政府のお考えといたしましては、さような事態は現実には本年度中には予想されない、こういう意味において、さしあたつて予算上、資金上、第三項を不可能とは認められないという趣旨でございますか。
  4. 大屋晋三

    大屋国務大臣 ただいま大橋君の御質問でありまするが、政府は今回の裁定には、予算的の面のことが四箇條載つておりますけれども、第二番目の分を主として問題に供しまして、第三項は国鉄総裁においてこれの義務を受けますが、さしずめ予算上の問題が伴つておりませんので、政府の今回問題に供しました分は第二項の問題であります。従いまして具体的に申すならば、裁定の四十五億円の中から、予算上、資金上、国鉄において可能である十五億五百万円を引いた残額を、問題に供しておる次第であります。
  5. 大橋武夫

    大橋委員 そうしますと、ちようど今井委員がお見えになりましたが、この裁定の三項の能率給の問題は、今日ただちにかかる制度を実施しろという意味でございますか。
  6. 今井一男

    今井参考人 申し上げます。裁定趣旨といたしましてはなるべくすみやかにこの制度の樹立を期待いたしております。
  7. 大橋武夫

    大橋委員 そうしますと、当然この問題は、裁定趣旨公社が実現するためには、すみやかに予算措置を講じなければ、現在の予算では支出できない、こういうことになると思うのでありまして、当然現行予算のもとにおいては、第三項も予算上、資金上、不可能であると認定すべきではないかと思いますが、この点について政府なり、あるいは公社側からお答えを願います。
  8. 大屋晋三

    大屋国務大臣 第三項も、総裁意思発動によりまして、政府に申達して来た場合に、初めてこれが資金を伴う現実の問題になつて参りますが、こういう書き方で、抽象的にこういうものをなるべくすみやかに設けるべしという裁定では、その資金の問題が発生いたして参りませんから、従つて政府はこれを問題にいたしません。
  9. 大橋武夫

    大橋委員 しからば公社加賀山総裁に伺いたいのですが、公社としては第三項をただちに受諾されるおつもりですか。
  10. 加賀山之雄

    加賀山説明員 たびたび申し上げておりますが、公社は受諾も拒否もいたしませんで、これに従わなければならないということになつておるわけであります。この賞與制度を新たに設けるという問題につきましては、日本国有鉄道といたしましては、この裁定がたといなくても、こういう制度を立てて行くことは、今後において望ましいことでございまして、特に仲裁裁定がなるべくすみやかにという趣旨でございますならば、当然これに基いて労働組合とも協議をいたしまして、こういう制度を立てて行かなければならぬと考えております。ただ予算に定められた以上の收入がある、あるいは節約ができたということは今後の問題でありまして、たとえば本年度年度末に行つてみなければ、そういうことははつきりいたさない。現在におきましては、先ほどから運輸大臣が言われましたように、十五億五百万円ということが、最大限の支出ということになつておるわけでございます。なお本年度特殊事情といたしましては、三十億の借入れをいたしておるような状態からいたしまして、予算上の利益があるということも、なかなか期待できないと考えるものでございますが、これらはいずれにいたしましても、たとえば予算上の節約ができたという場合は、やはり流用の問題として、これは予算内の問題になつて参りますから、大蔵大臣の認証の問題になつて参りましようし、予算以上の收入があつた場合ということになると、いわゆる予算総則における彈力條項の適用になつて参る。いずれにいたしましても、それ以上の問題になると、あらためて国会予算補正をいただいてやるということに、相なろうと考えておるわけであります。いずれにいたしましても、この賞與制度につきましては、われわれといたしましては、これを新たに検討し、よい制度を立てますことは希望いたしておるところでございます。
  11. 大橋武夫

    大橋委員 ただいまの加賀山総裁の御意向で大体明らかになりましたことは、現実の問題については、当分これによつて予算上の問題を生ずることはなかろう、しかしながら将来においてはこの趣旨に従つて措置したいという御意向でありまするから、そうなりますと、この裁定條項は、十日以内に国会に提案されるべきものなのであります。そうしてこれが、将来において予算上不可能となつたといたしましても、すでに一旦全体として国会に提案せられて、その国会承認を受けた以上は、第三項はもはや有効になつてしまう。そうすると、将来政府が、これによつて公社側から予算措置を要求された場合には、その予算国会に提案しなければならないという義務義務づけられることになると思うのですが、この点をはつきりと運輸大臣からお伺いいたしたい。
  12. 大屋晋三

    大屋国務大臣 ただいま問題に供しておるのは裁定の第二項でありまして、第三項はもとより明らかに国鉄の両団体におきます限りは、これに拘束を受けるのであります。しかしてその内容の発動、すなわち賞與制度を制定いたし、これに資金の裏づけをつけて政府に申達いたしました場合には、政府があらためてそのときに考える、かような立場だと思います。
  13. 大橋武夫

    大橋委員 そういう論をされますと、第二項そのものも、すでにこれは公社組合との間に当然効力を生じておるのであつて、第二項を実施するために、総裁予算措置を講じられたら、そこでこれは予算上不可能なりとして提案するのだ、こういうことになる。そうすると将来、第三項について国鉄総裁予算措置を講じられた場合に、その予算政府が認めることができないという状態至つて、初めてこれは予算上、不可能なりとして国会承認、あるいは不承諾を求められる、こういう御意思でございますか。
  14. 大屋晋三

    大屋国務大臣 現実に発生いたしておりまするのは、第二項の分でありまして、第三項は将来発生することがあるかもしれない問題に属します。
  15. 大橋武夫

    大橋委員 将来発生すべきそのことについて、国会承認を今求められておるのですか、求められておらないのですか。
  16. 大屋晋三

    大屋国務大臣 求めておらぬのであります。
  17. 大橋武夫

    大橋委員 そうしますと、この提案されましたる議案によりますと、裁定では十五億五百万円以内の支出を除く残余部分、こうなつておりまするが、第三項はこの残余部分のうちに含まれる、こういう御意見でありますか。
  18. 大屋晋三

    大屋国務大臣 残余部分というのは、二項の観念におきまして、四十五億マイナス十五億五百万円の残余だけをさすのであります。
  19. 大橋武夫

    大橋委員 そうしますと、第三項は第二項の十五億五百万円を引いた残余のうちに含まれるのですか、含まれないのですか。
  20. 大屋晋三

    大屋国務大臣 含まれないのであります。
  21. 大橋武夫

    大橋委員 そうしますと、第三項というものは、別紙裁定中とありますが、今運輸大臣の言われた意味によりまして、別紙裁定のうちの第二項に限つて、今回国会承認を求められておる、かようなる意味であると、こう解釈してよろしゆうございますか。
  22. 大屋晋三

    大屋国務大臣 訂正いたしました分に明らかに明示いたしております。大橋君のおつしやる通りであります。
  23. 大橋武夫

    大橋委員 訂正せられたる分には、第二項とは書いてございません。
  24. 大屋晋三

    大屋国務大臣 この予算上、資金上、支出可能分が十五億五百万円に相なつておりますので、裁定金額のうちから、その額を引いた残りの分に対しまして、御審議を願うと理由書に書いてございます。
  25. 大橋武夫

    大橋委員 御答弁については満足できませんが、大体御意向を推測いたしますると、このたび国会において議決すべき部分は、裁定書第二項のうち、四十五億円から十五億五百万円を除いたる残余部分に限る、こういう趣旨と承りました。そこで予算上可能なるところの十五億五百万円についての、予算上可能なりとする理由を少し伺いたいのでございますが、これは公社総裁におかれましても、あるいは運輸大臣におかれましても、予算のいかなる流用によつて十五億五百万円を出されましたか。またこれ以上の金は、現在の予算からは流用が不可能であるということについて、具体的詳細な御説明をこの際承りたいと思います。——ただいまの点については、後に御調査を願うことといたしまして、時間の関係上進行いたしたいと思います。  特に公社にお伺いいたしたいのは、支出予算年額総額は大体どのくらいでございますか。
  26. 加賀山之雄

    加賀山説明員 お答えいたします。本年度損益勘定支出総額は千百五十二億余でございます。そのほかに別に工事勘定がございますけれども、これは百六十三億ぐらいになつております。
  27. 大橋武夫

    大橋委員 そこで今井さんにお伺いいたしたいのは、裁定書の三十三ページを見ますると、大体年額の全予算の一パーセントぐらいの節約繰延べは可能である。これによつて公社としては、この裁定の四十五億中の一部を実施すべき財源は可能であるというふうに、裁定に際してお認めになつておられると存じまするが、ただいま加賀山総裁の言われましたる通り、全予算が約一千何がしということになりますと、その一パーセントは十数億ということになるわけでございまするから、この国鉄において予算上可能なりとして捻出せられましたる金額というものは、大体裁定において期待せられた程度金額に達しておると思いますが、いかがですか。
  28. 今井一男

    今井参考人 われわれ裁定にあたりまして、本年度四十五億が全面的には不可能であるということは、はつきり認めたものでございますが、そのうちどのくらいが可能であり、どのくらいが不可能であるかという点につきましては、裁定のほかの部分に書かれたほどの検討はいたしませんでした。およそ一パーセントと申しますのは、少くともという言葉がございますが、少くともと申しますのは、文字通りおとり願いたいと思います。
  29. 大橋武夫

    大橋委員 そうすると大体一パーセント程度を、公社予算上可能なりとして、既定予算範囲内から流用によつて提出された。これは裁定の期待した程度に達していると思うのでございまするが、この十五億五百万円という金額は、行政上の予算措置、いわゆる流用という処分によつて捻出した金額でございまするから、ここで今井さんにお伺いしておきたいと思いまするのは、もしこの流用という行政処分をする前においては、この流用されるべき部分予算上可能と見るのでありますか、不可能と見るのでありますか。その点の法律上の御見解を伺いたいと思います。
  30. 今井一男

    今井参考人 公労法の制定の精神からいたしまして、仲裁裁定は最終である、ただこれが国会におきましての予算審議権国会特有予算の最高の審議権というものとぶつかる場合が起ります。ぶつかる場合におきましては、これは資金上、予算上、不可能である。従いまして国鉄の本年度千百五十億と申します損益勘定予算を検討いたしますと、これは全体か一つの款といたしまして、国会といたしましてはそれ全体を、いわば白紙委任状的な形で政府に御一任になつております。そういう形式で予算が通過しております。従いましてその見地からわれわれは、その予算内の流用は全部予算上可能なものと、かような解釈をいたしております。
  31. 大橋武夫

    大橋委員 今の今井さんの御説明は、現実予算流用処分がとり得なくとも、とり得る部分があるとすればこれは可能だ、そういう御見解でございますか。
  32. 今井一男

    今井参考人 その通りでございます。
  33. 大橋武夫

    大橋委員 次に予算というものにつきましては、御承知の通り予算を経理する責任者があるわけでありまして、その責任者において、いかなる部分流用可能であるか、不可能であるかということをきめまするに際しては、おのずから予算全体に対するあらかじめ定められたる使用計画——これはその都度改訂されることもありましようが、支出官において使用計画というものを持つてつて、その使用計画に基いて、流用が可能なりやいなやを決定すべきものであると思いますから、流用予算上可能であるかどうかということを、法律上決定しまする場合においても、その使用計画を無視して第三者が、その支出計画に対して明らかに不可能であるものを、可能であると言うことはできないと思いますので、その点についての今井さんのお考えを伺いたいと思います。
  34. 今井一男

    今井参考人 もちろん客観点流用不可能なものを、われわれが可能と考えるわけではございません。
  35. 大橋武夫

    大橋委員 そうしますと、今回の場合においては、まだ資料を拜見しておりませんが、国鉄公社予算支出については、責任者が最近の実情を基礎として、来年三月末までの使途を定めておられると存ずるのでございます。予算上これを不可能だといたしました場合に、国会は別といたしまして、他の機関によつて他日使用計画上不可能なものが可能なりと認定されることはなかろうと思いますが、仲裁委員会その他の機関が御認定になることはあり得るのですか。客観的にきまるという点は、支出責任者予算使用計画を眼中に置いての客観的可能、不可能であると私は理解いたしておつたので、特にその点を確めてみたいと思うわけであります。
  36. 今井一男

    今井参考人 御質問の御趣旨ちよつと拝察いたしかねるのであります。仲裁委員会といたしましては、流用の可能、不可能につきまして詳しいせんさくをいたしておりません。ただ予算のわくを越える場合におきましては、これは不可能になると申し上げたにすぎません。これは先日来仲裁委員長から申し上げた通りで、客観的に定まるべき性質のものであるがゆえに、訴訟の対象となり得る事件である、こうわれわれは解釈いたします。その場合に、裁判所がそれをいかに取上げるか、いかなる考えで、いかなるものを可能とし、いかなるものを不可能とするかといつた問題につきましては、私からお答えできないと思います。
  37. 大橋武夫

    大橋委員 お答えのできない理由を伺いたいと思います。
  38. 今井一男

    今井参考人 これは裁判所裁判所立場でおきめになることでありまして、われわれ仲裁委員会が容喙すべき問題ではないと思います。
  39. 大橋武夫

    大橋委員 予算残額使用計画というものは、これは常に予算執行者が定めるべきものでありまして、その使用計画を無視して、予算上余裕があるかないかというようなことを決するわけには行かない。これが今日の財政法会計法建前であると思うのでございます。今井さんは、財政方面は御堪能のお方でございますので、あなたの常識としてのお考えを伺いたい。
  40. 今井一男

    今井参考人 流用できるか、できないかということは、もちろんその当事者見解も大きな要素にはなりましよう。その点は大橋委員のおつしやる通りであります。但しこの問題で特に私の強調申し上げたいことは、仲裁性質国会予算審議権、こうからみ合した関係から、国会において政府におまかせになつ範囲外のもの、これは国会の御審議を願わなければならぬことはもちろんでありますが、その範囲内のものにつきましては、私は大橋委員のおつしやるように、当事者意見ばかりでも都合のつかない面が起ることと思います。
  41. 大橋武夫

    大橋委員 そうすると、会計法におきまして、予算流用の可能、不可能を予算使用計画に基いて決定するところの行政官庁の権限、権能、そういうものが公労法規定によつて制限せられておるというふうな御意見でございましようか。
  42. 今井一男

    今井参考人 具体的には非常にむずかしい場合が想像されることは、仰せの通りでありますが、先日来申し上げているように、われわれといたしましては、これは客観的に定まるべきもの、かように考えます。従いまして、執行責任者意見だけでは客観的にはきまらない、かように考えます。
  43. 大橋武夫

    大橋委員 ただいまの点は、実は重大な点であります。たびたび繰返して御質問を申し上げるようでございますけれども予算使用計画というものによつて予算を使用するのは会計官吏権能でございますが、それを公労法において制限せられているようにただいま言われました。その制限される理由としては、仲裁性質にかんがみ、あるいはまた国会承認不承認議決権性質にかんがみ、こういう理由を言つておられます。しかしながら、こういう性質にかんがみて予算流用をする場合においては、できるだけ裁定を尊重し、国会の決議を尊重するというような意味において、この予算流用を決定すべきであるという政治上の御意見は、まことにごもつともで、これに対しては私一言もさしはさむものではございませんけれども。しかしながら公労法の結果といたしまして、会計法で認められましたる流用についての行政官庁裁量権が制限されるという御意見を承るのは、はなはだ奇怪に思うので、この点重ねて御説明を願えれば仕合せでございます。
  44. 今井一男

    今井参考人 基本的には、公社予算は国の予算ではございません。明らかに国家の予算とは区別して考えるべきものと思います。ただ、ただいまの国有鉄道法規定によりますと、当分の間国予算に準じた扱いをする、こういう建前になつております。本質的には国の予算とは別であります。ただそれを便宜上特殊の扱いをし、また国会委員会の御審議もお願いする建前になつておりますが、本質的には国の予算でなく、一個の企業体として存在する点からいたしまして、そこにかわる場面が起りましても、私どもはおかしくないと思います。
  45. 大橋武夫

    大橋委員 国の予算に準じてやるべきでありますから、会計法に従い、会計法精神で運用せらるべきものであると私は思うのであります。国の予算に準じてやるのであるが、公社独得のやり方をするのであるというただいまの今井さんの御説明では承服できませんが、これ以上は議論にわたりますから打切りまして、次に、予算上かくのごとく流用その他の手続を経まして、不可能なりということが確定をいたしましたる金額につきましては、裁定効力を生じない。この部分がこのたびの場合におきましては約三十億になつておるのでございますが、これは国会においてこの部分裁定承認するか、あるいは承認せざるかを決定する、すなわち効力を生じさせるか、させないかを決定しなければならない。これが公労法第三十四條、また同十六條の規定であると私どもは解しておりますが、これについての仲裁委員会の御意見を承りたいと存じます。
  46. 今井一男

    今井参考人 これは昨日末弘委員長からお答えしたと思います。率直に申しますと、委員の中においても意見がわかれております。そこで末弘委員長は非常にうまい比喩を用いまして、両説ともにあり得るというようなことを申されましたが、債権債務はそれによつて消滅すると解釈するものと、裁判所におきまして確定するもの、消滅しない。こういつた意見とにわかれております。
  47. 大橋武夫

    大橋委員 私どもは、労働委員会におきまして、後にこの問題について意見を統一するつもりでありますが、ただいまの今井君の御説明によりまして、仲裁委員会におきましては、委員の中で両説にわかれておるということが明らかになりましたから、これ以上はこの点もおいておきたいと思います。  次にこれは合同審査会におきましても問題になつた点でございますが、重ねて運輸大臣にお伺いしでおきたいことは、国会承認を求める際に、政府補正予算をつけなかつた、その理由はどういう理由であるかということを承りたいと思います。特にこれは国会をして、不承認をさせようという、国会意思を拘束する意味であつたか、あるいは事実上政府において努力したる結果、補正予算を出すことができないから出せないのであるか、この点をはつきり伺いたい。
  48. 大屋晋三

    大屋国務大臣 最初に、期限内の十日間に相なるべく政府意見を決定いたしまして、これを国会に送付いたしたいと思いましたが、十二日の期限内には、政府意見を出すべきいろいろな研究がまだ熟しませんので、あの形で出しまして、昨日政府意見を付して出したのでありますが、昨日来の委員各位の御議論で、予算をつけて出すべきである、しかるに予算をつけて出さないのはどういうわけか。ただいま大橋君もこれに対して二つの理由を御質問になりましたが、政府がこれに予算をつけて出すとか、あるいは出さないとかいう裁量は、一に政府自由意思でございまして、政府は正しい意見といたしまして、四十五億の裁定のうち、十五億余は国鉄において予算支出可能であるが、その残余は不可能であるという事実を申達したのでありまして、予算を付する付さないは、政府自由意思であるという解釈に基いて、予算を付さなかつたわけであります。
  49. 大橋武夫

    大橋委員 自由意思であるという御説明はわかつたのでありますが、自由意思ならば、出す場合あり、出さざる場合あり、あえて出す場合を選ばずに、出さざる場合を自由意思によつて選ばれたその動機は、予算を出すことができないから予算を出さなかつた、こういう理由ではありませんか。
  50. 大屋晋三

    大屋国務大臣 予算という形のものを出す必要を認めない意味において、かような意見にしたわけであります。
  51. 大橋武夫

    大橋委員 出す必要を認めないというのは、いろいろな実情考え合せて、この際は予算が出せない、そこで出す必要を認めなかつたのではありませんか。
  52. 大屋晋三

    大屋国務大臣 その動機お答えする限りではないと思います。
  53. 大橋武夫

    大橋委員 今井さんにお伺いしたいのですが、裁定の付議について、予算を付さなければならぬという議論もございますが、委員会の多数の御意向は、これについてはどういうお考えを持つておられますか。
  54. 今井一男

    今井参考人 委員会の多数の意見予算をつけるべきだ、こういう考えのようであります。
  55. 大橋武夫

    大橋委員 今井さん御自身も御同様の御意見と推測して質問を続けたいと思いますが、政府がいろいろ努力をした結果は、予算を出すことができなかつた、またできないということが明らかになつた、こういう場合においては、予算をつけずに出す以外に、方法はないと思うが、どうでございましようか。
  56. 今井一男

    今井参考人 予算は私はいかようにもこしらえ得ると思う。ただこの予算が実際上可能であるかどうかということは別問題といたしまして、形式上歳入歳出をこしらえました予算は、これはつけることは簡單にできると思います。
  57. 大橋武夫

    大橋委員 ただいまの今井さんの御答弁を伺いまして明らかになりましたのは、今井さんが裁定には予算をつけて出せと言われるその予算という意味と、われわれが予算というものについて考えるその予算意味とは、まつたく違うということでございます。私どもは、予算というものは国家の歳入歳出の見積表でございまして、政府がこれを国会に提案をいたしまする以上は、これは国会承認を得れば、必ず実行するという法律上、政治上の責任を負う、また進んでこれをやらなければならぬという意思の表明として、予算をつけて出すのであります。ところがただいまの今井さんの御説明によりますと、仲裁委員会の多数の意見において、予算をつけて裁定を出さなければならぬというその予算は、実行不可能なるものもあろうし、また実行しないでいいようなものもあろう、つまり紙に書いたる数字をくつつけて出せばよろしい、こういう意味でありますがゆえに、これは会計法上また財政法上における予算とは、まつたく根本的に性質が違うというふうに私は印象を受けたのでございます。しかしこの点は、これ以上は議論にわたると思いますから、さらに進行させていただきたいと思うのでございます。  次に法制意見長官がおられますので、この際伺つてみたいのでありますが、国会承認をいたしました場合には、さかのぼつて公社裁定の日から債務が発生するということは、これは明らかでありますが、不承認の場合においては、債務が発生しないということが政府側の見解のようでありますが、いかがでありますか。
  58. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 ただいまお尋ねの点は、法律趣旨から申しましてきわめて当然のことであると思います。発生しない。
  59. 大橋武夫

    大橋委員 先ほど今井委員は発生するという論もある、発生しないという論もある、そうして両論ともにあり得るということを言われました。ことに昨日の合同審査会におきましては、末弘委員長は、法律論として両方あるのは通常のことであつて、もし一方の弁護士になれば、そつちを勝たしてやるし、また他方の弁護士になれば、そつちを勝たしてやる。なるほど弁護士としては両論あるでありましようが、しかし法律学、法律論として一人の人が両方を信ずるということは、しかも矛盾したる二つの法律論を信ずるということは、あり得ないと思うのでございまするが、しかしこの点は御本人がお見えにならないので、遺憾ながらこの程度にいたしまして、次に今井さんに続いてお伺いしたい点は、四十五億を裁定せられましたが、この四十五億の裁定の根拠は、国鉄特有の待遇の切下げであると言われております。そうしてその例といたしまして、いろいろなものを資料によつてどもにお示しをいただいたのでありまするが、私どもこれを拜見いたしますると、たとえば超過勤務手当の切下げ、あるいは旅費の切下げ等のごときものは、これは相当大きな金額に上つておるのでありまするが、これは今日ひとり国鉄職員特有の現象ではなく、公務員一般に、かようなことが各官庁において行われておると思うのでございます。これについての今井さんのお考えをお伺いいたしたいと思います。
  60. 今井一男

    今井参考人 お答え申し上げる前に一言私も弁解さしていただきます。先ほど大橋委員は抽象論でおつしやつたと思いまするから、私も抽象論でお答えしたのでありますが、一昨日来三人の委員からとくと申し上げておりますように、今回の裁定につきましては、こうこうこういうような予算の道があるということは、繰返して申し上げておるところでございます。私どもは支拂い能力につきましては、特別な検討を加えました。ただ抽象的に予算というものをどうするかと言えば、こういうことも言える。出す方法はどのような不可能な金額でも、一応紙に書けば書けると、私は比喩的に申したのであります。その点は人のあげ足をとらないで、誤解のないようにお願いいたしたいと思います。  それからただいまの御質問でありますが、全然ほかの官庁には例がない事項でございます。超過勤務手当の——特に夜勤手当の切下げに至りましては、従来の国鉄労組が持つておりました労働協約を、そのままに適用されるときは、一晩の徹夜勤務につきまして、平均一回に百円以上の金が與えられるのであります。それが今回の制度によりまして、二十円を下まわるのであります。徹夜勤務者が国鉄には毎日五万人以上おります。従つてこの金額は莫大な金額であります。なお旅費につきましても、旅費を切り下げた例は、全官庁を通じまして一つもございません。国鉄特有であります。
  61. 大橋武夫

    大橋委員 超過勤務に対して、超過勤務手当を拂わないという例は、他の官庁にはありませんか。
  62. 今井一男

    今井参考人 それは私も聞いております。しかしながら国鉄職員は公務員ではありません。労働基準法によりまして、支拂うべき義務ある金であるがゆえに、私どもは特にこれを見のがすことができないとして、取上げたのでございます。
  63. 大橋武夫

    大橋委員 国鉄職員が公務員でないという法律上の性質論につきましては、私もまつたく今井委員と同感でございます。現行法上、国家公務員の給與と同一準則によらなければならないという法理上の根拠のないことも、明らかでございまするが、しかし裁定のうちにも掲げてありまする通り公社が国の出資により、また特にこれらの職員の諸君が、最近まで公務員であつたことにかんがみまして、国家公務員との振合いを考えなければならぬということも、当然であると思うのでございます。いわんや今回の年末給與というものが、待遇低下の補償の意味を持つものであるといたしますならば、程度の差は別といたしまして、かかる待遇の低下は、国家公務員の大部分と共通であるということも考えなければならないし、ことにこの年末において、かようなる裁定による給與を出すということは、その給與の算定の基礎、あるいは名目のいかんは別といたしまして、出す時期及び方法というもの、またわが国の多年の慣行であります年末において賞與を出すという、こういうような今までのあり方から考えましても、この場合において公社職員と公務員との振合いを考えるべきであるということは、これは当然のことと言わなければならぬと思うのでございます。国鉄法の二十八條において、国家公務員と公社職員との給與は、つり合いをとるようにという趣旨規定されておりまする点から申しましても、この点は明らかであると思うのでございます。私はこういう意味におきまして、このたび公社の職員に対して、裁定による給與がたまたま年末に行われるに際しまして、同時に一般公務員諸君に対しましても、年末の手当というものが支給されるということの運びになりましたことは、きわめて適切であつたと言わなければならぬのでございます。この点はもちろん今井君としても否定はなさらないと存じますが、いかがでございましよう。
  64. 今井一男

    今井参考人 国家公務員にこの際年末手当を出すのが適当かどうかといつた問題につきましては、私個人の意見はございますが、仲裁委員としてはこの際発言を控えます。仲裁委員の本来扱うべき問題ではございません。ただ、ただいま御発言のうちに、国鉄職員と国家公務員との権衡につきまして御意見がありましたが、私どもはこの裁定のうちに詳しく書いてありますように、国家公務員とは本質的に給與は切り離すべきである。何とならば一方は企業体であります。従つて企業が非常に順調に運ぶ場合には、その利益に均霑するでありましようし、また企業の経理の苦しい際には、またその影響を受けるまでありましよう。従つて国家公務員のように、一定の労働に対しまして、一定の報酬を得るという立場とは、本質的には異なるべきものであります。こういつた考え方をいたしておる。また日本国有鉄道法にもそれが明記してあると考えるものでございます。しかしながら、ただいまお話のように、最近まで国家公務員であつたといつた沿革は、われわれも十分に尊重いたしまして、この意味から、特にこの際積極的に国鉄職員のベースの改訂につきましては、裁定にあたりましてこれを見送る、こういつた態度をとつたわけであります。しかしながら国鉄職員の実質賃金の低下につきましては、国鉄職員実質賃金低下状況調、こういつた刷りものをお配りいたしておきましたが、これをお読みくだされば、明瞭だと思います。先ほどお話がありました超過勤務手当を一部拂つておらない。これは私どもとして、全体の金額の中で千円の中の十一円ばかりにしか見ておりませんが、その部分をのけますと、全部国鉄職員だけの特有の問題であります。従いまして結論といたしまして、大橋委員のおつしやることは、全面的に反対という意見を申し上げざるを得ません。
  65. 倉石忠雄

    倉石委員長 大橋君、よろしゆうございますか。
  66. 大橋武夫

    大橋委員 これ以上は見解の相違でございますから……。
  67. 倉石忠雄

    倉石委員長 福田昌子君。
  68. 福田昌子

    福田(昌)委員 裁定について労働委員会に付せられました案文の——訂正前のものでございますが、これをお出しになられましたのは、公共企業体予算または資金上、可能か不可能かの判定をしてくれという意味でお出しになつた、こういうふうに解釈していいのでありますか。
  69. 大屋晋三

    大屋国務大臣 ただいまの御質問でございますが、本来ならば、早く政府意見を付して出す方が、より完全であるという考えは十分に持つておりましたのですが、予算上、資金上、可能、不可能の分解点が十分判明いたさなかつた。しかるに期限は到来しておりますので、これをああいう形で提出したわけであります。
  70. 福田昌子

    福田(昌)委員 そういたしますと、公社予算上または資金上可能、不可能の決定は、国会でやるという御意向でお出しになつたのですか。
  71. 大屋晋三

    大屋国務大臣 政府は提出しましたときに、伏線といたしまして、すみやかに政府意見を付して出そうと思つたのでありますが、しかしあの形で出しましても、決して違法ではないという考え方から出したわけであります。
  72. 福田昌子

    福田(昌)委員 ただいまの御答弁は、可能、不可能の決定権は国会にある。このように解釈してよろしいのでございましようか。
  73. 大屋晋三

    大屋国務大臣 さように解釈しても、いかように御解釈になつても、それは国会自由意思だと考えております。
  74. 福田昌子

    福田(昌)委員 では最初にお出しになつた案に対しましての決定権は国会にある。このようにお考えになつて政府は御提出になつたものと解釈いたします。次に訂正としてお出しになりました案でございますが、この可能、不可能の決定、ことに十五億五百万円の可能、不可能の決定は、これは公社政府自身においてなされたことになるのでございますが、そのように解釈してよろしいのでありましようか。
  75. 大屋晋三

    大屋国務大臣 公社において意見を付し、政府がこれを認定いたしまして、そこで可能、不可能が明瞭に相なることは、福田さんの御説の通りであります。
  76. 福田昌子

    福田(昌)委員 そういたしますと、公共企業体予算上または資金上不可能、可能の判定は、国会にあつたり、また政府にあつたりということになりまして、きわめて明確を欠く感じがいたすのでございますが……。
  77. 大屋晋三

    大屋国務大臣 国会に提出いたしました議案に対して、国会がいかようにこれを縦横自在に御審議なさるのも、自由であるということを申し上げましたので、私がただいま申し上げる意味は、可能、不可能は第一段に、これは国鉄総裁において決定する問題であります。そして政府がこれを認証して初めてこれが明瞭になるので、国会にあの形で出しました議案に対して、いかように御審議なさるも、かつてだという意味を申し上げたのでありまして、国会に可能、不可能を決定する決定権があると断じたのではないのでありますから、その辺を誤解のないようにお願いいたします。
  78. 福田昌子

    福田(昌)委員 先ほど私は、国会に可能、不可能の決定権があると認めてよろしゆうございますかと言いましたら、そのように認めていいという御答弁であつたから、そういうふうに理解したのですが、ただいまの御答弁で、その点はさようにさせていただきます。次の、政府を拘束するものでない。この拘束は法律上の拘束でございますか、その他一般の道徳、人情というものに対する拘束でございますか。
  79. 大屋晋三

    大屋国務大臣 法律上の拘束でございます。
  80. 福田昌子

    福田(昌)委員 と申しますと、この拘束において、道徳とか人情とか、そういつたような人間的な感情というものは、拘束のこの言葉の範疇には一切入らないと解釈してよろしいのですか。
  81. 大屋晋三

    大屋国務大臣 法律論と道徳論とは別個のものであると解釈いたします。
  82. 福田昌子

    福田(昌)委員 私はこの公労法の十六條だけを考えてみましても、この一両日の答弁において、実に明確を欠いた、あいまい模糊とした解釈が、ことに政府においてされておる感じがするのでございます。こういうような重要な條文が、明確を欠いた判断のもとにおいて——忌憚ない言葉をもつて申し上げますと、いかようにも政府の都合のよいように解釈されて、このことが今後の処理においても残されるということは、きわめて遺憾に感ずるのであります。従つてこの十六條の條文は、私どもしろうとが読んでも正しいという感じを受けるような明確な條文に、御訂正あらんことを希望するものであります。  次に十五億五百万円というものは、政府裁定範囲内で、その一部の履行のつもりでお出しになつた、こういう御意見のように拜承したのでありますが、このように解釈させていただくと、この裁定の要旨から申しますと、七月以降受けたところの待遇の切下げに対しての一部の補填だということになるのでございますか。そのように解釈いたしてよろしゆうございますか。
  83. 大屋晋三

    大屋国務大臣 裁定委員会動機が、ただいま福田さんの仰せられた通りになつておりますから、政府がその中の一部を履行するということは、すなわちそれらの要因の一部の履行ということに相なるかと存じます。
  84. 福田昌子

    福田(昌)委員 税金の問題でありますが、昨年のことを考えてみましても、昨年は一応六千三百円ベースに改正にはなりましたが、年末調整において、非常にベースが切り上げられたにもかかわらず、各組合の各人が手元にとつた金額というものは、人によつてはマイナスになつたというようなことさえあつたのでありますが、今年度においてはこの年末調整に対してどういうお考えを持つておられますか。
  85. 大屋晋三

    大屋国務大臣 これは昨日も質問がありましたが、大蔵大臣に讓つたのであります。私は外出いたしておりましたが、大蔵大臣お答えしたと思いますので、それをもつて政府の御答弁とお考え願いたいと思います。もし大蔵大臣の答弁がなかつたといたしますならば、その処置をとるようにいたしたいと思います。
  86. 福田昌子

    福田(昌)委員 それは大蔵大臣の所管かもしれませんけれども運輸大臣におかれては、そういうことに対して全然関心がないお立場にお立ちになつておられますか。
  87. 大屋晋三

    大屋国務大臣 二つの問題があります。このいわゆる裁定によつて支拂う金額に対する税金の問題と、それから毎年年末に繰返す年末調整の問題とありますが、私が大蔵大臣と話をいたしましたときには、前段の、今回のこの調整金の問題に対する税金の免除、軽減というような点はやれないということでありました。なお一般の年末調整金は昨年ほどひどい率ではないと聞いております。
  88. 福田昌子

    福田(昌)委員 はつきりした御答弁がございませんので、はつきりしたことはわかりませんが、私どもといたしましては、少くとも国鉄の従業員に対しては、実質賃金さえ、当然受けるべき待遇さえ切り下げられておりまして、しかもその切り下げられた分に対する補填さえも、年末においてさえ十分に受けることができない状態にあるこの待遇状況におきまして、昨年と同じような年末調整を政府でやられるということに対しましては、まつたく遺憾な処置だと思うのでございます。従いまして年末調整に対しましては特別な御考慮をお拂い願いたい。分割拂いなりまたもつと特別な恩典をもつてこの職員に臨んでいただきたいということを要望いたすものでございます。私どもは昨日からいろいろと長時間をかけまして質問し、答弁を承つたのでございまするが、結局この四十五億の中から十五億何がしを引きまして、約三十億の分の可能、不可能の認定は、昨日の朝の感じと、まつたく同じ立場に置かれてあるのでありまして、委員会に長時間をかけましたが、結局立法の趣旨に対しての判定は、色めがねをもつて油絵の判定をまかせられたような感じがするのであります。これは私だけに限らず、大多数の委員がそういうようなお感じを持つておられるのではないかと思いますが、結局そういうことは見解の相違でもございましようし、法律に対する解釈の相違でもあろうと思いますから、私はそういつたことに対しましての御意見を承ろうとは思いません。先ほどの政府の御答弁によりますと、この拘束というものは法律的な拘束であつて、人情というものはこれに関與しないものであるという御答弁であつたのでありますが、もし政府当局におきまして、この人情とか道徳とかいうものをお持ちでございましたならば、今回国鉄の従業員、ことに家庭婦人がこのお正月を越すために、いかに苦しんでおるかという現状を十分御同情になりまして、もう少し人情のある態度をおとり願いたいということを私は希望いたしまして、質問を終ります。
  89. 倉石忠雄

  90. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 今井仲裁委員の御答弁の中で、重要な点での食い違いが出ておりましたので、その点でもう一度御答弁を煩わしたいと思うのであります。仲裁委員は、個人的な意見の開陳というものではなく、仲裁委員会の決定という、まとまつた結論によつて、当然この委員会にも御答弁になつて来るべきだと思うのでございますが、債権債務の問題につきまして、昨日から今日にかけまして、末弘委員組合側に立てば絶対勝てる自信があるということを言われ、また公社でも相当闘えるというふうに言われました。私どもから考えますと、組合側が絶対に勝てるというこの御証言によりますれば、債権、債務は残るというふうな御見解であつたと思うのでございます。さように承つておるのでございますが、今日の今井委員の御答弁でございますと、意見が対立しておるというだけの御答弁でございまして、それでは仲裁委員会全体の統一した御答弁にはならないと思うのでございます。その点でもう一度御答弁いただきまして、もし依然として食い違つておりましたならば、この問題につきましては今日ここで決定せずに、あす再び末弘委員を呼んでいただきまして、さらにこれを確かめたいと思うのでございます。なお今井委員の御答弁を求めたいと思います。
  91. 今井一男

    今井参考人 裁定につきましては、途中の経過は別といたしまして、裁定全部に対しまして委員が共通の意見を持つておることは申すまでもございません。ただ法律の十六條の解釈等につきましては、われわれも意見がございますが、この最終の決定権は申すまでもなく裁判所にございます。従いまして、ここで三人が意見を統一する必要もなければ、また承服できないことに賛成もできかねる。こういつた問題かと考えるのであります。それを末弘委員長は昨日巧みな比喩をもつて、ああいう表現をされました。私は債権債務は存続する、こういつた説でございます。しかしながら委員会の中で議論をしてみますと、それは統一という形までは至つておりません。それを私率直に先ほど申し上げたわけであります。
  92. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 裁判所の問題に移るということが結論としての御答弁だと思うのでございます。そうしますと裁定の出ましたあとに、国会が、ただいま審議しておりますところの公共企業体労働関係法第十六條第二項の規定により国会議決を求めるとして、この問題についての結論を出しておりますが、このような処置によりましても、裁定のきめましたあの債権債務は依然として残るのだ、裁定というものは、そのきめられた権威のある決定に対して、何ら侵害されるものでないというふうに了承してよろしいと思うのでございますが、その点もう一度御答弁願いたいと思います。
  93. 今井一男

    今井参考人 裁定はもちろん国会予算に対する審議権を侵すものではございません。また侵し得るものでもございません。そういう意味におきまして、債権債務が存続するという説に立つ者におきましても、公社といたしましてその限りにおきまして、債務不履行が合法化される、債務不履行としてそれが認められる、抗弁権が成立つ、こういつた解釈はとつております。
  94. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 先ほどの質疑の中に、公労法から言えば、仲裁委の裁定というものが最高であつて、ただ予算審議権とぶつかるということがあつたと思うのでございます。この予算審議権というものがここで非常に重要な役割を果しておるわけでございますが、そのことについて加賀山総裁大屋運輸大臣にお尋ね申し上げたいのでございますけれども、さきの臨時国会におきまして、国有鉄道の会計法が来年の四月から実施されるにもかかわらず、非常に急がれまして、まつたく新しい観点に立つたところの、企業体の実績をあげるための準備が、一応不十分ではございましたけれども、整えられたと思うのでございます。その際に、私ども運輸大臣にも、国有鉄道にも要求いたしたのでございますけれども、はたして国有鉄道がこれしか捻出できないかという問題仲裁委は十分できるという確信を持つておる。仲裁委のこの確信というものは、決して單なる予想とか何とかではなく、日本の法律の権威にかけて、政府から委嘱されたところの、政府の権威にもかけてやつておられると思うのでございます。この点につきまして私ども国会といたしましても、審議する時間を十分にほしかつた。たとえばきよう予算委員会が開かれようとしておりますのに、そこに責任のある大蔵大臣の御出席がなく、予算委員会は流れてしまつた。一体これで国会予算審議権というものが十分に尊重されておるかどうか。こういう点の政府としての手段が十分におとりになれたかどうかということは、非常に疑問なわけでございます。その点につきまして、十分手を盡したというその根拠は非常に薄弱でございまして、私どもとしては納得することができないのでございますが、一体予算委員会をなぜ開かれなかつたか。予算審議権とぶつかるという以上は、審議権を十分行使されるのが至当であると思うのでございますが、その点につきまして、一応わかつたことではございましようが——どうせ御答弁はわかつているとは思いますが、一応運輸大臣の責任ある御答弁をいただきたいと思います。
  95. 大屋晋三

    大屋国務大臣 柄澤さんの前段の御質問ですが、言いかえると、日本国有鉄道で捻出し得る可能な金額が相違したのはなぜか、また十分な検討がなされておらぬではないかという御質問でございます。これは私考えますのに、公社におきましても、また委員会におきましても、それぞれの全力を盡して検討をしておることを信ずるのでありますが、それが相違を来した、結局その点の見方の相違という以外には、私は申し上げる言葉がないと思います。柄澤さんの第二点の問題、なぜ予算委員会を開かないかという御質問は、私にはわかりませんので申し上げかねるのであります。     〔委員長退席、三浦委員長代理着席〕
  96. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 加賀山総裁にお伺いしたいと思うのでございますが、国有鉄道が支拂い能力、これを負担する能力がないということにつきまして、国有財産でありました日本国有鉄道が、コーポレーシヨンとしての今の日本国有鉄道に移ります際に、資産その他がそのまま政府の全額出資となつて、今日引継がれておるわけでございますが、私どもといたしましては、堀木委員今井委員の御証言にもありましたように、国有鉄道の資産というものは厖大なものでございまして、十分な余力を持つておると思うのでございます。その点につきまして、今度のような重大な問題を解決いたします際に、国有鉄道は赤字々々ということで、運賃も上げ、いろいろな手段も講ぜられまして、大量の首切りもやつて来られたのでございますが、この資産の引継ぎその他につきまして、十分な措置が講ぜられておるかどうか、こういう点についての御答弁をいただきたいと思います。
  97. 加賀山之雄

    加賀山説明員 当時といたしましては、まだ一般会計からの借入れ、繰入れ等を受けていた状態でございますから、これらにつきましては、マイナスの資産というわけにも行きませんので、一部はそこで打切つて、やむを得ないものだけをいわゆる整理勘定として残しまして、つまり借金を背負つて引継がれた形になつております。引継ぎと申しましても、予算も昭和二十四年度の当初から、運輸省における予算をまつたくそのまま踏襲しておりますし、單に新しい会社ができる場合のように、固定資産を処分するというようなこともありませんで、今申し上げましたように、マイナスは整理勘定に残して、そのままの形で引継いだにすぎないのであります。
  98. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 会計のいろいろな監査につきまして、二十二、三年度あたりでも齟齬ができたりいたしまして、国鉄のこの会計につきましては、はたして実際に力がないものか、あるものかというような点についても、いろいろ疑問があると思うのでございますが、こういう点について、これまた大蔵大臣の権限の御答弁になるかもしれませんが、大屋運輸大臣はこの点につきまして、会計監査に対しましての特別な御処置があつたかどうか。会計監査について政府としての特別な監督をなされたかどうか。お伺いいたします。
  99. 大屋晋三

    大屋国務大臣 会計検査院において、国鉄の経理を検査をしている実情は、柄澤さんも御承知の通りで、かつて運輸委員会でその説明を聞きました際に、昭和二十二年度の分の報告書がようやくでき上つたということを、私は柄澤さんとともに聞いておるのでありますが、もちろん会計検査院がつきまして、所定の規則によりまする嚴密な検査が行われておることは間違いないのであります。しからばその結果を報告せよという段になりますと、私の記憶では、昭和二十二会計年度の分がようやく報告書ができ上つて、昭和二十三年度の分は、まだ報告書ができていないというふうに記憶いたしております。もう少し詳しい説明が必要であれば、政府委員からいたします。
  100. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 先ほどのことにもどるのでございますけれども、今度のこの裁定に出ましたもとはと申しますと、はつきりうたつてございますように、国有鉄道の経理上の都合によつて、当然保障されておつた——六千三百七円ベースを政府が決定しました当時に、はつきり保障されておりました既得権が奪われたのでございますが——大屋運輸大臣予算委員会を開く必要はないと言われました。しかしこの既得権が奪われる、たとえば超過勤務手当が支拂われない、夜勤料が支拂われない、あるいは家族パスが取上げられる、あるいは寮のまかない費が高くなる。一切これらのものは、一体どこがもとになつてこういうようなことが出たのでございましようか。これはみんな大屋運輸大臣の命令で、加賀山総裁が達しをお出しになつて、それが現場に行つておるのでございます。それはどこから出たのでございましようか。
  101. 大屋晋三

    大屋国務大臣 その点は、いろいろな裁定委員会裁定全部を、政府あるいは国鉄において承認するものとは私は思わないということを、しばしば申し上げたのでありますが、第一、本日も申し上げましたが、行政整理をいたしますときに、支出すべき退職手当等の人件費の予算が、われわれが期待している範囲よりも、非常に軽く組まれたというようなことからいたしまして、いろいろな流用が行われたというような事柄と、土台がこの国鉄の運賃というものが政策運賃で、コストをカバーしておる運賃でないというような関係で、非常に経理上に赤字、弱点を来しておつたというような事柄が累積いたしまして、やはり仲裁委員会があそこに記述いたしましたような事柄が、一部発生して参つたということは、はなはだ残念ながら私も認めるのであります。かるがゆえに、今回は仲裁委員会裁定の全額を可能であれば認めて、いわゆる先ほど福田さんのお話のように、人情論も十分織り込みたいのでありますが、これが財政上できないで、やむを得ず一部施行というようなことに相なつたことは、しばしば申し上げた通りであります。
  102. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 ちよつと御答弁がまとをはずれてはおりますけれども、既得権を取上げたのは、これはまつたく自分らの政府の政策の失敗だつたということを、お認めになつたと思うのであります。さように了承してよろしゆうございますか。
  103. 大屋晋三

    大屋国務大臣 それは柄澤さんの御自由でございます。     〔三浦委員長代理退席、委員長着席〕
  104. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 非常にふまじめな御答弁だと思いますが、この既得権を取上げること、つまりこの前人事委員会におきまして、六千三百七円ベースと今日呼んでおりますこのベースをきめますときには、当時の現物給與、たとえば住宅、衣料、食糧、こういう現物給與というものは、一切これは依然として保障されるのだということを、政府はつきり私どもの徳田委員質問に対して証明されておつたのでございますが、ただいまの六千三百七円と申しますのは、当時政府が保障していた六千三百七円ベースとはまつたく違いまして、これらの現物給與の既得権がはぎとられた裸のベースになつております。そういうものをはぎとられるときには、これは運輸大臣総裁の命令で取上げられておるのでございまして、はつきり命令でお出しになつているのでございます。しかし今度お出しになりまするときには、それらのあなた方の御都合で、政府の政策の間違いによつて、御自分たちの命令や達でもつて一方的に労働者の中から取上げた権益を、今日いくらかでも——総額六十億と仲裁委員会裁定しておりますものの中で、わずかに四十五億を出そうという場合には、なぜ国会にかけなければならないか。なぜ国会審議権仲裁委員会裁定というものが衝突するといつて、お逃げにならなければならないか。この点で私どもどうしても納得が行きかねるのでございます。もし審議権ということをお言いになるならば、当然予算委員会でもお開きになりまして、また国鉄の財政というものを、特に会計検査院などを御派遣になりまして、そうしてほんとうに支拂う能力があるかということを十分にお調べになつた結果でなければ、私どもはこの結論が生れて来ないと思う。そうでなければ、政府御自身が職権で委嘱なすつて任命なすつたこの仲裁委員会の決定を、みずからけ飛ばすところの理由にはならない。自分の責任を国会へ転嫁する。労働者の権益をとるときばかりには、命令でもつて出しておいて、今日この自分たちの失策を埋める場合には、国会に責任を転嫁する。もしこれをわれわれ労働委員なり、あるいは今日合同審議されましたところの各委員承認するような場合には、われわれとしてはこの国会の権威に関する、かように考えるのでございます。そこで先ほどなぜとるときだけ大臣の命令でお出しになつて、そして今度は予算委員会をお開きにならなかつたのは、どういうわけなのかという点で御質問申し上げたのでございますが、明確な答弁を聞くことができなかつたのであります。やはりこれは御存じになつていて、お答えにならないのかどうかわかりませんが、非常にこういう点で、このままでございますならば、私どもとしては納得できないのでございまして、もう一度運輸大臣にこの辺について伺いたいと思うのでございます。ですから国有鉄道内部の——もちろん財政についてもまだ不十分ではございますし、政府の政策であるならば、国有鉄道内部だけに責任を転嫁せずに、なぜ借入金を預金部からお與えにならないか、こういうことも出て来るわけでございます。
  105. 大屋晋三

    大屋国務大臣 国鉄従業員の既得権を剥奪して、とるときにはとつておいて、出すときには国会になすりつけるという御議論は、これは少し誤つていると思うのであります。とるときにとつたのではなくして、そういうことに仲裁委員会裁定をしたということでありまして、その一部分は遺憾ながら運輸大臣もこれを認めた、こういうふうに申し上げたのであります。この政府なり——国鉄は拘束されますから問題ありませんが、政府において、もしもできるならば——もちろん国鉄総裁は、四十五億全額を国鉄自身の経理において言うて参りましよう。しかしながら、やろうと思つてもできないから、十六條の規定によりまして、四十五億マイナス十五億の残額を、法律規定に従いまして、政府が処置をとつたのであります。これは決して政府の責任を国会になすりつけるというわけではなく、法律趣旨に従いまして、政府がその法律の実行をいたしたにすぎないのでありまするから、さように怒らないようにお願いいたします。
  106. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 そうすると、まつたく一切を仲裁委員会に転嫁されたように承われるのでございまして、私どもさようには納得も行きかねるのでございます。  それでは最後にひとつ、今の質問の中ではつきりしていただきたいのは、既得権を取上げるときには、何に準拠しておとりになつたかということでございます。
  107. 大屋晋三

    大屋国務大臣 とつたのではありません。仲裁委員会がさように裁定をしたという事柄であります。何にも準拠したのでなく、ただ單純にそれだけであります。
  108. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 それでは、とつたということで御了解ができかねますならば、今までもらつておりましたものを、もらえなくなつたと申し上げたらわかるかと思いますが、実際に国鉄労働者の收入が、経理上の都合で減つたということ、このことは結局労働者がもらえなくなつた。もらえなくなつたというのは、別に労働者がもらつたものを返すのではないのであります。労働者の意思ではございません。これは納得づくでやつたのではなくて、加賀山総裁なり、運輸大臣なりの命令なり、達なりによつて行われたのでございますが、その点がはつきりいたしませんと、何か年末に、特に出さないでもいいものを、よけいなものでもやるような印象がともすれば——今日の新聞をごらんになりますと、はつきり朝日その他の新聞でも、年末賞與というふうにして、この国鉄の労働者の既得権を剥奪された、微々たるものに対しまして、うたつております。そうしますと、一般の市民の間には、それでいいじやないか、こういうような観念が持たれるのであります。そういう点でこの問題の本質が、昨日、一昨日からどうもはつきりしない。その取上げるときということが惡ければ、労働者がもらえなくなつたとき、そのときは何に準拠されてこういうことをやられたのか、こういうことでございます。
  109. 大屋晋三

    大屋国務大臣 仲裁委員会が、この七月以降、一人頭国鉄従業員が一千円だけ減收に相なつた。それを六箇月通算して、一人頭六千円を支拂うべきものである。こういう裁定を下したのでありまして、何に準拠してこれをとつたとか、あるいは減收を招来せしめたとかいうことではなくして、裁定委員会がこのような裁定をしたという事実が、ここにあるのであります。しかしながら私は、裁定委員会のあげる減收を招来いたしましたフアクターに対して、全部否認するものではありません。一部分は、なるほどそういう事実があつたことを認める。かるがゆえに、でき得べくんば、四十五億全部をお支拂い申し上げたいのは、やまやまでございまするが、やはり国鉄総裁も私も、十五億余以外は、予算的、資金的に特別の処置をなさなければ、支拂いができないという事柄でありまして、何に準拠して剥奪したかということに対しては、そういうことがございませんから、ただいまの御説明をもつて申し上げる以外には、申し上げようがないのであります。
  110. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 これ以上御答弁を求めましても、むだだと思いますが、ただ非常に無責任だということを申し上げたいと思います。仲裁委が決定したから事実があるのではなくて、事実があるから仲裁委の決定が生れたのだと私どもは了承しております。この予算の都合によつて支出ができないということにつきまして、国有鉄道の予算は、当初お立てになりましたときの見通しが誤まつて、途中で貨物の運賃もお上げになるような次第になつたと思いますが、今後の労働者諸君の努力によつて賞與をふやすというような項目がうたわれておりますし、そういう御精神で、この企業体である日本国有鉄道というものを指導なさるつもりだと思うのであります。しかし労働者諸君の努力いかんにかかわらず、政府の見通しや方針が誤つた際に生じますところの赤字というものによりまして、罷業権も剥奪されたところの労働者諸君が、ただ一つ命の綱のようにすがつておりました仲裁委というような機関が、今後ともこういう形で蹂躙されて行くおそれが十分あるのでございますが、政府の御方針によつて国鉄の赤字が拡大して行つたという点を、大屋運輸大臣はお認めになるかどうか。これは足羽局長、また藪谷局長などの御説明では、国鉄の赤字は單に運賃が安かつたからではないという御証言が今までたびたびございました。経済九原則の実施によつて、中小企業がつふれて、貨物、旅客の見通しというものが根本的に狂つて来た、いつもの減牧とは異なつているということの御証言が、たびたびあつたのでございますが、この見解大屋運輸大臣見解とは、同じであるかどうかということも、承つておきたいと思います。
  111. 大屋晋三

    大屋国務大臣 国鉄の財政が薄弱であつたという原因の究明でありまするが、これにはいろいろな事柄がございまして、單に一つの原因であるということは、私はやはり当らないかと思うのであります。
  112. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 労働大臣にお伺いしたいと思いますが、こういうふうに経済九原則の政府の大方針のもとに、国有鉄道としての企業体收入が減るということになりますと、かりにこの貨物の運賃をいかに上げましても、旅客の運賃をいかに上げましても、それだけでは問題の解決のできないことがここに残されると思います。そういう場合、企業体の独立採算制の中で、政府のこういう大方針のもとに、大きく左右されますところの国有鉄道の労働者の労働條件というものが、ただいまのように非常に動揺される、罷業権もないし、非常に不安定だという場合に、仲裁委の裁定というものが非常に尊重されなければならないばかりでなく、これは絶対的な権限を持つということを、今までは私ども考えていたのでありますが、この点仲裁委の決定の件は、たとえば債権債務として今後これが残つて、必ず国鉄の労働者はこの裁定によつて保護される、公共企業体労働関係法趣旨、労働者の保護というこの法律精神が生かされる、こういう点は守つて行かなければならないと思うのでございますが、労働大臣として、この点についての御意見を承つておきたいと思います。
  113. 鈴木正文

    ○鈴木国務大臣 公共企業体労働関係法に限らず、労働関係法律をその立法の趣旨に沿つてつて行くという考えは、もちろん持つております。ただ公労法の十五條、十六條、特に十六條に規定されておるところの裁定の効果という問題につきまして、柄澤さん方と相当見解の違つている点があることは、昨日からの討議に徴して私も気がついております。私自身の考え方は、これは同じことを繰返しますけれども、この機会に申しますれば、裁定の中で不可能でない部分は、そのままただちに拘束力を持つが、不可能な部分は、国会審議によつて承認不承認をきめていただくということそれ自体が、公労法十六條の中に明確に書いてあるのでございまして、私どもはその法律解釈に従いまして、所定の手続をとつたわけでございます。気持といたしましては、でき得る限り可能な部分を多くして、国鉄の労働者諸君に報いたいという気持はもちろん持つておりますが、法律解釈におきましては、私どもは私ども解釈をとつております。
  114. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 ここにございます国鉄関係の資料、または公共企業体の法規について、政府の方で賀來さんの書きました御説明は、私ども拜聽いたしまして、この法律ができます当初の十六條の解釈と、ただいまの解釈とは、多少食い違つているように思います。その点労働大臣は当初からただいまのような御解釈であつたかどうか、こういう点を承つておきたいと思います。
  115. 鈴木正文

    ○鈴木国務大臣 少しどうかと思いますけれども、根本的の大略的の解釈は、もちろんつけておつたのでございます。しかしながら、その細目の各部分につきましては、今日まで深く掘り下げて来たのは、正直のところ、この実際のケースが起きましたから、掘り下げて来たのでございます。ただ根本的の考え方におきまして、そう著しく違つておるとは存じません。また賀來君の意見よりは、当該の責任の大臣の私の意見の方が、政府を代表いたします。
  116. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 もう一点加賀山總裁にお伺いしておきたいのでありますが、今度の十五億五百万円を御支出になりますのは、ただいまの予算の中での流用でございますから、当初からあれほどきゆうくつでありました予算流用で、非常に御苦心のものだとは考えております。いろいろ建物の設備その他という点で、流用がなつているようでございますが、私どもの懸念いたしますことは、給與ベースの改訂もございませんし、剥奪された既得権も、実に四分の一にも満たないものでありまして、労働者諸君の苦労というものはたいへんだと思いますが、いろいろな点で労働強化になるような点がないかどうか。また福利厚生施設の点で欠ける点がないか。今度の措置によりまして、そういう労働者の不利益になる点がないかどうかというふうに考えるのでございますが、その点について御答弁願いたいと思います。
  117. 加賀山之雄

    加賀山説明員 今お問いになりましたことにつきましては、まず第一に旅客、貨物の輸送上支障がないかどうか、従業員が働く上において支障がないかどうかは、十分に検討しておるつもりであります。
  118. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 今井さんにお尋ねしたいと思うのでございますが、今度の裁定趣旨は、まつたく政府の独立採算制ができるという建前に立ちまして、政府の方針のもとに、大きな経済政策のもとにおきまして、十分やり得るという裁定だと承ります。そうしてこれはまつたく政府の手腕というものを信頼されておる裁定である、かように私どもはこの裁定を拜見しております。しかし今度のように政府の手腕というものが、とうてい財政的にも生み出すことができぬというようなことになりますれば、予算の捻出できる、できぬということは別といたしまして、債権債務が残る、残らぬということは別にいたしまして、仲裁委員会の一員として、給與ベース、それから既得権の問題、それから働きによつて賞與をふやさなければならない、今よりもいい待遇を保障してやらなければならぬということにつきまして、どういうふうにお考えになつておるか。     〔発言する者多し〕
  119. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。
  120. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 給與ベースを上げなくともよいという考えは、このことを実施してくれるなら、政府の政策でやれるんだ、こういう当吉田内閣に対する御信頼の現れだと思うのでございます。当然実施できるという前提に立つて、おやりになつておると思うのでございますが、それができない際には、給與ベースを当分すえ置いてもいいという御見解に、私ども当然かわりが来てよろしい、こういう見解はかわつてもよろしいという考えでありますが、その点についてひとつ最後に御意見を承つておきたいと思います。
  121. 今井一男

    今井参考人 御質問ちよつと聞きとれない点がありましたので、あるいは失礼するかもしれませんが、われわれ純粹に賃金の権衡論だけからいたしますと、裁定の前の方に書いてありますように、この程度の数字の給與べースに切りかえるのが妥当であるという結論を一応出したことを、お読みくださると御了解くださると思います。しかしながら先程大橋委員にも申し上げましたように、国鉄は独自の給與体系、給與水準であるべきであるが、少くともこの際沿革上の関係も考慮の必要がある。かつまた政府が実質賃金の充実に非常に御努力に相なつておる。それが将来実を結ぶか結ばないかは、議論のわかれるところでありますが、この際としては、一応政府の政策の結果を若干の期間見送るのが適当である、こういう立場に立ちまして、一応ベース改訂の問題を見送る。しかしながら賃金が実質的に引下げられた分は、これは見のがすことができないから、これを支拂い能力の許す範囲内において埋める、これが裁定の骨子であります。
  122. 倉石忠雄

    倉石委員長 先ほど大橋委員の御質疑に対して、運輸省当局から答弁を留保されておりましたが、この際御答弁を願います。足羽政府委員
  123. 足羽則之

    ○足羽政府委員 先ほどの大橋委員の御質問に対しまして御説明をいたします。十五億五百万円に充当いたしまする財源といたしましては、損益勘定総額で十四億二千七百万円でございます。その内容は石炭費からの節約が五億六千四百万円、修繕費から八億六千三百万円、合計で十四億二千七百万円でございます。それから工事勘定から出ますものが七千八百万円、総係費の人件費その他の一般経費の節約でございます。以上を合計いたしますと十五億五百万円になります。
  124. 倉石忠雄

    倉石委員長 次は青野武一君。
  125. 青野武一

    ○青野委員 昨日来連合審査会で各委員からいろいろ質問されておりまするが、一ところだけ御質問を申し上げまして、單に討論のときの資料にするだけでなく、将来の日本の労働運動の行き方、それから初めて仲裁委員会裁定が行われましたときでありまするので、日本専売公社も御承知のように仲裁委員会に付議せられております。法律的ないろいろの解釈はありましようが、この重要な先例が、大きく日本の将来の労働運動の行き方をきめるのであります。そこで一点だけお尋ねいたしたいと思いますることは、昨日から本日にかけ、労働委員会に引続きまして、まだ納得の行かない点が一つありまするのは、国会審議を必要といたしまするものは、裁定に関する予算上の措置であるという信念を持つております。裁定のものをわれわれは審議しておるのではありません。昨日から今日にかけた委員会は、何を大体審議しておるかということを、非常に疑つておるものであります。菊川君は、争議権を奪われた国鉄の従業員は、調停委員会に大きな望みをかけておつたが、これも公社側が拒否するところとなつた。われわれはそれを承諾した。仲裁委員会裁定は、御承知のように、四十五億、年内に三十億、一、二、三月で五億ずつ十五億円、これはおそらく最後的決定であるから、公社政府も無條件で、この裁定通りに服従してもらえるものであると思うておつたが、今日に至りまして正式に、十五億五百万円というものが公社の経理内容でやりくりをして、石炭の節約、修繕費の繰延べで、とにかくこれだけの金は出たが、残余は出せない。これが審議の対象になつておるのでありまして、今のような審議状態を続けて行きますと、先ほど申しましたように、われわれは仲裁委員会裁定そのものを議題にして審議しているようになるのであります。これは明らかに公労法精神に違反する。公共企業体の労働者に対しては、その企業体性質によつて争議権を剥奪しておる、争議をやらせないかわりに調停委員会という機関を設け、最後的には、仲裁委員会の最終的決定によつて双方を拘束するということが公労法の明文にあります。いろいろ法律上の解釈はありますけれども国鉄従業員、いわゆる労働組合側では、この国会に今度行われました裁定について、残余金額予算化して、もしそれがいろいろな事情によつて認められることができなければ、涙をのんでわれわれはそれを承認するということを、組合員を代表して副委員長の菊川君が言つておることは、皆さんも御承知の通りである。でありまするから、この点について政府は何らかの処置を講じて国会にそういうものを出す。但し出しても、関係方面その他いろいろの事情で、これはとうてい見込みがないのでありますが、法の精神に沿うて、政府予算裁定につけて出しましたといつて、そういう努力をしてそこまで持つて行くべきであつた。そうしなければ、公労法をつくつた精神が無視せられて行くのであります。これが通らないと、好むと好まざるとにかかわらず、私は煽動する意味ではありませんが、日本の労働組合運動に一つの転機を與えることになる、また今仲裁委員会にかかつております専売公社も、またこういうようなことになるということを私は非常に危險に思うておるものでありますが、労働大臣にはこの問題を中心にいたしましてどういう考えを日本の労働運動の将来に持たれておるか、また公労法を事実上無視した形に結果はなつておりますが、運輸大臣は、私が今申しました国会審議を必要とする面は、裁定そのものではありません、予算的措置、予算をわれわれは国会審議をしなければならぬと思うが、どういうお考えを持つておるか。これは單にここだけの問題ではありません。私ども立場上いろいろな組合の幹部とも会うし、いろいろな運動にも直接間接に関係を持つておりますので、この点ははつきりひとつお承りしておかなければならぬと思うから、特に発言を求めましてお尋ねする次第であります。
  126. 鈴木正文

    ○鈴木国務大臣 公労法解釈公労法規定してあるところの方式を生かしておるかどうかという御質問と、それからこの問題を通じての労働運動に対する考え方と、二つの御質問があつたと存じます。前の方は、これはすでにしばしば運輸大臣その他から、私からも一部分申し上げましたけれども政府見解公労法の十六條の規定によつて、あれを読めばわかりますように、裁定のうち不可能な部分国会に出して、そうして承認不承認の決定を求めるのであり、それに対する予算的の態度、措置というふうなものは、あの法律の文面から申しまして、必ずつけなければならない條件のものではなく、国会審議に応じ、求められた際には、もちろん政府はでき得る限りの資料を提供して、国会審議を促進すべきであるけれども国会に提出するところの議案そのものは、公労法に書いてありますように、不可能な部分を出すのであるという解釈に終始しておるわけであります。  それからただいまの御質問は、政府公労法精神を蹂躙したという立場の、前提の上に立つての御質問もあつたように思いますけれども、私どもといたしましては、この法律規定に従つて、所定の経過を経て、しかも可能な部分をでき得る限り多くしようという努力を、この一週間、二週間、全力をあげて盡して参りました。その経過は、ただいままで運輸大臣がるる申し上げた通りでありますが、運輸大臣に限らず、関係の大臣も努力して参つたことは事実でございます。なお将来にわたりましての労働運動の動向というものにつきまして、この春以来醸成されて来た健全な、民主的な、自主的な組合運動というものの、将来にわたつての発展をこいねがう心情においては、皆様とまつたく同一でございます。
  127. 大屋晋三

    大屋国務大臣 ただいま青野君の御質問を拜聽いたしまして、あなたの、わが国労働運動の将来にかんがみて、今回のテスト・ケースを非常に重大視し、これをはつきりしておかなければ相ならぬという御意見に対しましては、まつたく私も同感であります。そこで御質問趣旨に対して、ここであらためてはつきり申し上げますが、政府の関與いたします面は、予算的、資金的措置を必要とする面に限局いたされますので、この仲裁委員会のいわゆる職能自体に、政府が何らタッチいたすものではございませんから、この点をはつきり申し上げておきます。
  128. 青野武一

    ○青野委員 今労働大臣と運輸大臣のお話を聞いておりますと、特に労働大臣の御答弁の中の、言葉じりをとるわけではありませんが、第十六條をよく読んで見ろということは、たびたび答弁台に上つた人々がおつしやつておりますが、私は第十六條の「又国会によつて所定の行為がなされるまでは、そのような協定に基いていかなる資金といえども支出してはならない。」この最後の方に、所定の行為が国会によつてなされるまでは、そのような協定は、たとえば一定の期間待たなければならぬと書いてありますならわかりますが、ここには明らかに、いかなる資金といえども支出してはならぬ。国会予算を編成して上程する権利はありません。そういう権限は與えられておらない。だからこの條文を私ども読んでみますと、法理的にも、これを解釈すれば、資金支出してはならないということは、予算というものがつかなければならぬという解釈になるのであります。そのために国鉄の代表者でも、成規の手続をふんで予算書を出して、裁定と一緒に国会に付議せられて、日本の財政からいつてみて、諸般の事情からいつてみて、あるいは関係方面との折衝の結果、どうしても十五億五百万円以外、残余の額は国会承認することができないということになれば、涙をのんでわれわれは承服するということを言つておる。この点について私ども考えは、やはり先ほど申しましたように、仲裁委員会が下しました最後的な裁定そのものを、われわれは審議しておるのでありません。裁定に基く十五億五百万円以外の金を、どうして出すか、出さぬかということが国会の任務であります。国会に付議すれば、それをわれわれは審議せんければならぬ。この手順を私は運んで行くべきが当然だと思いますが、もう一ぺんこの点を明らかにしておいてもらいたい。
  129. 鈴木正文

    ○鈴木国務大臣 先ほどから申しますように、国会に付議する議案は、あれの中の不可能なものに属するものでありまして、予算的な措置というものは、その絶対必要條件ではないのであります。そうして仮定でありますが、これが国会承認される場合と、不承認の場合とがありますけれども、もし承認された場合におきましては、政府予算的の措置を講ずる政治的の関係に立つかとも存じます。それまでは予算的の十分の御説明をもつて、これに当てて行けばよろしいというふうに考えます。
  130. 倉石忠雄

    倉石委員長 前田委員
  131. 前田種男

    ○前田(種)委員 どうもおそくなつて皆さんに恐縮ですが、委員長理事との間の約束では、午前中に連合審査を終つて、午後は十分時間を持つて労働委員会をやろうと言つたものが、労働委員会が開かれたのは五時です。しかも本日中に質疑を終了しようということでありますならば、恐縮ですが、もうしばらくごしんぼう願いたいと思います。しかし私はできるだけ簡單にしたいと思います。特に私は官房長官に質問を要求しておつたのですが、官房長官がおられませんので、両大臣に質問しますが、私は官房長官に質問する内容と、両大臣に質問する内容はかえて質問いたします。私が官房長官に質問しようとした要旨は、少くとも公労法の生みの親は当時の増田労働大臣です。しかも今日吉田内閣の大番頭でありますから、どうしても一ぺんこの委員会に官房長官が出席して、この質疑応答に加わらなければならぬはずです。ほんとうに申し上げますならば、総理大臣みずからがここに出て来て、終始この論議に加わるのが、当然だと私たちは考えておつたのです。しかし私は、最初から吉田さんに出席を請うということは要求していない。けれども少くとも官房長官は、みずから進んでこの席上に来るべきだと私は考えておるわけです。私は大屋運輸大臣に、りくつを言おうとは考えないのです。裁定は、御承知のような審議の過程を経て参りまするならば、そのまま承認されるということには、ならないという見通しがついております。それでありますから、問題は今後の国鉄の運営の問題、経営の問題、国鉄労働組合のあり方が国家経済にどう影響するか、あるいは政府行政の面にどう影響するかという点が、重要な問題として残ると私は考えます。もちろん四十五億の資金的対策が容易でないことは、私は了承しますが、最初からの仲裁委員会審議状態にかんがみ、最終的には十二月二日に裁定が下つたのでございますから、その日からこの問題に対して、吉田内閣がもつと熱意を持つて努力いたしますならばへ私は方法はあつたと考えます。その熱意が足らなかつたと、私は端的に申します。政府はむしろここまで努力して、ようやくこれだけのことになつたと言われます。その労は多としますが、私は依然として熱意がなかつたために、頭打ちをしたと信じておるわけです。それで今ここでそれを論議いたしましてもいたし方ありませんが、今後の国鉄の経営の上において、どういう影響を及ぼすかという点について、われわれはもつと心配をしなくてはならぬ立場に今日置かれておると思います。もしここで三十億、四十億の資金が出ないからといつて、姑息な手段を講じてこの処置をいたしますならば、おそらく一年を出ずして、国鉄は百億あるいはそれ以上の赤字を余分に出すと私は考えます。しかもこの問題を未解決の問題として来年に持ち越せば、ずつと糸を引いて問題が残つて、依然として公社国鉄労働組合の間において、あるいは国鉄労働組合政府の間において、幾多の問題が残されて、来年もまた同じことを繰返さなくちやならぬことは、目に見えておると私は考えておるのです。こういう点の影響、しかもこの経理面における五十万国鉄従業員の協力する度合いが、この裁定承認するか、しないかということによつて、非常にかわつて来るわけです。これは国家の財政上しんぼうしてもらわなければならぬと、いかに熱意を込めてそうしたことを言いましようとも、この裁定が生れて来ました過程を考えてみましたならば、平和的にこうしてやつて来た裁定すら踏みにじられるという結果が、今後の経理の面、作業の面、運転の面において、非常な支障を来すと思います。そういう面においての見通し——あるいはそういう心配はいらない。わしが運輸大臣をやつている以上は断じてそういうことはやらせない。りつぱに黒字を出してやらせるという確信があるかどうか。私の心配することが杞憂に終るかどうかという点について、お聞きしたいと思います。
  132. 大屋晋三

    大屋国務大臣 ただいまの前田君の御質問は、私まつたく同感でありまして、この問題を真劍かつ深刻に考えておる次第でございます。国鉄五十万の従業員の協力なくして、單にいわゆる経営者の面、あるいは政府がいかようにいたしましても、とうてい実績はあがらない。かつまた今回の裁定が出て、その裁定の内容をできるだけ国鉄の従業員諸君に有利に導くために、国鉄の経営者はもちろん、政府におきましてもこれに対していかようの熱意、いかようの手段を打ち、手を打つかということの実績は、国鉄の従業員の多数の人々が監視しておるのでありますから、前田君の仰せられる通り、この裁定が出て以来、国鉄の経営者並びに政府のとりました事柄、かつまたこの国鉄従業員の真の心の中から盛り上る協力の精神が発露いたさなければ、経営はとうていできないということに対しては、まつたく前田君と同感でございます。今回国鉄自身が処理し得る金額は、裁定の四十五億の中で、わずかに十五億余で、これはまことに貧弱でありまするが、その他の面がいかような議決に相なりましても、将来は、ただいま前田君の御心配になりました点を十分意識しておりますので、国鉄の従業員の協力が願えるように、国鉄の経営の面におきまして、心理的にも科学的にも、技術的にも、あらゆる面から国鉄をうんと意識的に盛り上げて、待遇問題というような事柄で、また来年もこんなめんどうな問題が起きないように心がけるという点につきましては、十分に私は責任を持つて努力いたしたいと思います。
  133. 前田種男

    ○前田(種)委員 私が今運輸大臣質問いたしましたそのままのことを、国鉄総裁並びに菊川副委員長にもお尋ねしたいと思います。これは今後の大事な問題でございますから、私は国家の苦しい財政の中からでも、何とかして裁定だけはのまなくてはならぬというように国会の態勢がなりますならば、またこれに対する国鉄総裁なり、組合代表としてのいろいろな措置もあろうと思います。国家の事情等につきましても、よく御了承になつておられますところのお二人が、しかも公労法精神から行きまして、その裁定が蹂躙されようとしておる今日の状態において、今後に及ぼす影響——先ほど運輸大臣に聞きましたそうした点等につきまして、両者から忌憚のない御意見を最後に承つておきたいと思います。
  134. 加賀山之雄

    加賀山説明員 お答えいたします。国鉄は本年度はやはり経済九原則から来ますところの予算におきまして、いわゆる均衡を維持しなければならぬ、收入のあるところだけ支出を認められるということで始めまして、その結果非常に苦しんでやつて参りました。われわれといたしましては、この国会できめていただいたところの予算を忠実に実施いたしまして、支出の面においては、きめられた額を越えないということを実施して参つたわけであります。そのためには、あらゆる困難も克服して参つたのでありますが、現在の従事員はこの趣旨をよく理解してくれまして、業務運営の能率化に協力をしてくれております。しかしながら收入の面で、どうしても歳入欠陷が出るということで、この間ようやく貨物運賃八割の値上げを認めていただいた。これなかりせば、今後の経営は非常に見通しが困難で、いかに経営上努力いたしましても、コストを償わない貨物運賃をもつてしては、われわれがいかなる方策を立てましても、従事員の給與すら、なかなかできないという状態なつたろうと思うのであります。第六国会におきまして、この措置がお認め願えたことは、われわれとしてはまことにありがたいと存ずるのであります。旅客運賃の方ではいくらかコストを上まわつているが、貨物はほぼコストに近い運賃になつた今日といたしましては、この両方の運賃收入をもつて、何としても国鉄の経営を立てて行かなければならぬ立場にわれわれはあるわけでありまして、今まで赤字々々と言つておりましたのは、もちろん終戰後のいろいろな経済事情にもよりますけれども、何と申しましても運賃が合理的基準になかつたということが、私どもはその最たる原因であろうと思うのであります。これが認められた以上は何としても国鉄はこの收入をもつてつて行かなければならぬ。これはいわゆる公共企業体として当然のことであろう。自足自給、いわゆる独立採算をとつて参らなければならぬというように考えているわけでありまして、今後の見通しといたしましても、一般会計のおせわにならないで、この中でやつて行くことは、決して楽ではないと考えております。決して楽ではないが、機構の面においてますます能率的な方策をとつて改善し、また従事員にも能率を上げて協力してもらうことにより、昭和二十五年度以降は、私どもとしてはかなり明るい面を出して行けるのではないかというふうに考えておるのでありまして、この方向に向つて経営者側も労働者側も、双方ともに努力を続けることによつて、私どもとしては、先行きはむしろ明るい希望が持てるというふうに考えております。
  135. 前田種男

    ○前田(種)委員 菊川君の御説明はあとで伺うことにして、加賀山さんにお伺いしますが、この夏以来、国鉄従業員の協力によつて非常によくなつたという点は、一昨日以来のいろいろな質疑応答の中に現われて来ているわけです。これは一にかかつて労使の関係が平和的に、法律的に確保され、最終的には仲裁委の仲裁によつて決定でき得るという、その機関を尊重して、従業員が協力して来たからだと私は考えます。もし法律で確認されているところのそうした平和的機関すら、蹂躙されるという結果に今後なつて参つたら、一体どうなるか、そうなつたら今加賀山総裁の、明るい見通しで二十五年度を迎えることができるというような考え方は、考え直さなくてはならない場面になつて来るのではないかと考えますので、この裁定が蹂躙された後の国鉄の今後一箇年の行き方に、そう明るい見通しが立てられるかどうかという点を、もう一度御答弁願いたいと思います。
  136. 加賀山之雄

    加賀山説明員 仲裁委の裁定にも申しておられますように、政府としても、ペースを上げないからには、いわゆる従事員の生活が実質的に楽になるような方策をとられるでありましようし、われわれもそれを期待しております。ただいま裁定が蹂躙という言葉を使われましたが、これが蹂躙されたということは、私どもとしては言いたくないのでありまして、われわれとしても従事員の立場をよく理解をして、従事員のためになるような措置をとつて行きたいという決心をしておるのであります。これはもちろん、この年末にあたつて支給される金額のいかんにもよることでありますけれども、国有鉄道としては、今後の従事員の働き方いかんによつて、いわゆる経費の節減、さらに收入の増加があります場合には、さらにこれを予算的にお願いするチャンスも必ずあると確信しておりますために、さようなことを申し上げた次第であります。
  137. 菊川孝夫

    ○菊川参考人 これは正常なる労働争議として考えるにはどうかと思いますが、私の方で、ただいま全国でもうすでに七百名くらいハンストに入つております。中には零下六度を越えるようなところで、もうやめよと言つても、どうしてもやめない者もある。この危険な事態をほうつておくわけに行かないから、副委員長はただちに帰つて来いと、再三電話がかかつて来ておりますが、重大な会議でありますので、この帰趨を見守つてから失礼いたしたいと思つております。前田さんの御質問に対して結論的にお答え申し上げたいと思います。  三日間の政府委員諸氏の質疑応答を拜聽いたしまして、政府の財政政策は、われわれの考え方からすれば、ドツジ氏をあまりにも利用し過ぎて、労働階級を圧迫しているのであるという結論を得ました。これははつきり申し上げます。というのは、これは確かな筋から聞いたのでありますが、本年度補正予算と来年度予算をドツジさんに示す際に、今年もまたボーナス的なものを出す必要があるのではないかと念を押されたときに、大蔵大臣は、そんなものは絶対必要ありません、自信がありますと言つた。そのことがこの仲裁裁定実施の大きながんになつているということを、私は確かな筋から聞いたのでありますが、それを最近の新聞では、関係方面に責任を転嫁するような宣伝をしているというふうなことを言われておりました。(「今の発言は責任持てるか」と呼ぶ者あり)確かに持てます。ただ名前を申し上げることはちよつと差控えたいと思いますが、これは責任を持てます。最後に、どこへおいで願つても、これははつきり申し上げます。  次に大屋運輸大臣、鈴木労働大臣の御答弁を聞いておりましても、私らの考え方からいたしまするならば、公共企業体労働関係法の立法精神が、蹂躙されているというふうに考えるのです。特に十六條の解釈問題につきましては、あれが立法された当時に、われわれはたびたび方々の意見を聞き、また労働省の意見も聞いて参つたが、こういうふうにして出され、こういうふうにして付議されるのであるということを繰返して申された、そのことがなされないで、もしそのまま決議されるといたしまするならば、繰返して先ほども申し上げましたように、われわれとしては、立法府の権限を侵すというようなことは毛頭考えておりませんが、これが正しく運営されたかどうかということについては、やはり最高裁判所に訴える権利が、国民としてあるのではないかと思います。その点われわれは十分研究いたしたいと考えております。  昨日も申し上げましたように、この問題は単に日本国内の問題のみでなく、すでに外国の問題にまでなつておりまして、イギリスに本部がございまする国際運輸労働組合の書記長オルデン・ブルグ氏——これは今度自由世界労連の書記長にもなつたのでありますが、彼は国鉄労働組合に、この仲裁裁定が完全に履行されることを期待し、すでに彼からは、これに対して満腔の敬意を表して援助するという電報も参つております。これは国鉄にそのまま保存されております。しかも加藤君が私によこした便りによりますと、帰るのを少し延ばして、アメリカのAFLやCIOをまわつてこの状態を報告して、その援助を求める。これは何も外国人の援助を借りるというやぼな考えでなく、労働組合は国際的たつながりを持つべきであるどいうのが、労働組合の世界的な常識なのであります。しかも私たちは、すでに自由世界労連に加盟いたしておりますので、その一支部とも考えられます。従いましてアメリカのAFLもその一支部であり、CIOも一支部である。そして対等の立場において相互に援助し合おう。特にAFLは、そういうふうな関連において、世界各組合に対し、争議の資金までも貸すということを考慮しておるそうであります。しかしながらここでわれわれは、非合法運動に突入しようとは考えない。相手が法律を守れと、合法を強要する場合には、まずみずから法律を守つてかかつて行かなければならない。こういうふうな観点に立ちまして、私はその線だけは守つて行きたい。しかしながら相手が法律を犯したというふうに考えられる場合には、あくまでも責任を追究するだけの態度は捨てたくない、捨てるべきではない。そういうようなつもりでおるわけであります。  それから、これは最後に申し上げたいのでありますが、新聞等では、国鉄労働組合は、もう三千円で納得するのだとか何とかいうようなデマ放送が、談話やその他の形で伝えられておりますが、決してそういうなまやさしい事態ではございませんで、仲裁がああいうふうに示されたにかかわらず、十五億五百万円より渡らないのだという情報が全国へ伝えられまするや、これに対して反撥いたしまして、本部としてはもうあまりそういう行為は考えておらないにもかかわりませず、どんどんハンガー・ストライキに入つて行くということは、私正常な労働運動としては考えなければならないと思いますが、しかし罷業権を行使するということは、先ほども申しましたように、われわれは愼むべきである。従つてそういう観点に立つて事実を考えるべきである。そういう点から考えまして、ぜひとももう一ぺん最後にお願いしたいのでありますが、われわれが唯一のたよりとして期待していた公共企業体労働関係法の立法精神にもう一ぺん立ち返つて、愼重なる御審議を煩わして、われわれの納得できる結論を出していただく。特に末弘中裁委員長が繰返して申し上げたのでございますが、なぜ出せないか、それを納得の行くように、はつきりとお示し願われんことを特にお願いいたしまして、私の発言を終らせていただきたいと思います。
  138. 前田種男

    ○前田(種)委員 今與党の中からは、菊川君の答弁に対して、見解の相違だという意見がありましたので、私はむしろはつきりしておきたいと思います。私は労働大臣に聞きますが、與党の方で、この法律解釈見解の相違だと言うから、私は質問をやめようと思つておりましたが、はつきりしておかなければならないと思います。昨年立法された当時の説明を明確にしておかなければ、この裁定案審議の本筋には実際には入らぬのです。というのは当時は増田労働大臣でございましたが、現鈴木労働大臣は、当時次官でございましたから、当時から責任がございますので、労働大臣から答弁願いたいと思います。公労法を提案されて説明をされ、しかも論議を盡された中には、明確しうたつております。一昨日来政府はいろいろ答弁をしておりますが、その答弁は、いかにその場のがれの答弁であるかということがわかる。しかもこれは関係方面から指示され、そうした方向に日本の労働組合運動を持つて行かなくてはならないという基本方針が、確立されておるわけであります。その中にはいろいろな点について、今日のような審議経過、今日のような結果になるようなことがあつてはならないということが、はつきりしておるのであります。私は便宜上その一、二の点を速記録の中から拾つてみたいと思います。増田労働大臣はこう言つております。理由の第四として、「公共企業体の職員には、国家公務員に認められるその地位に関する特別の保障がありませんから、これにかえて完全な団体交渉と、適正迅速な調停と、嚴正なる仲裁との制度を確立することにより、職員の生活の安定を保障する必要があるのでありまして、これに関する法制的措置を講ずるを必要とした」から公労法を提案したと言つております。さらにその次には、「やむを得ず争議行為禁止の措置を講ぜざるを得なかつたのでありますが、しかしこの反面におきましては、完全なる団体交渉権の行使と、公正な調停及び仲裁機関の迅速的確なる活動により、職員の地位の向上については、十分なる保障がなされることになつております。」とはつきり言つておるのであります。その次には、「労働関係法規の基本的精神でありまして、強制仲裁のごときことは、この精神からはやや離れております。しかしながら、争議行為の実行を禁ぜられた労働者の地位をよく保全し、向上せしめますには、事案の解決が迅速になされなければならぬのであります。また一方には労働関係の不安をいつまでも残しますことは、公共企業体の正常な運営と、能率の発揮の上から見まして、重要でありますので、かかる強制仲裁制度を設けざるを得ないのであります。」こう言つておるわけです。この説明の中にはつきり言つておりますように、できますならば団体交渉で、それがいかなければ調停機関で、それがいかなければ仲裁において、最終的には強制仲裁もやむを得ないということで、この法規ができているわけでございます。しかもその法規に従いまして、争議権をなくしましたところの国鉄労組は、あくまでも平和的にこの問題を解決しようとする堂々たる態度をもつて、今日まで団体交渉から調停委員会に、さらに仲裁委員会を経まして、最終的には十二月二日に裁定が下つたということになつておるのであります。これは公労法第十六條、第三十五條をいろいろ解釈されますが、その解釈は第三十五條にございますように、この裁定に関しましては最終的決定だということが明確にうたつてあるのでございます。但しこれは相手が公社でありますから、公社との関係におきましては最終的決定であるが、政府並びに国会に対しまして第十六條の規定が設けられておるということは、これは少くとも国会なり政府が、この裁定で決定されたものを否認するようなことはないであろうという点から、第十六條の規定が設けられておると私は信じます。それがこの精神でなければならない。そういう関係から行きますならば、当然この裁定は、万難を排しても採択するという立場にならなければなりませんし、また関係方面に対してもこの経過を十分話しまして、との裁定を尊重するという態度を政府が最初からとられましたならば、私はこの裁定承認するという国会議決は、決して困難でないと思うのであります。そうすることによつて、初めて日本の労働組合は堅実になるし、また平和的に問題を処理しようとする先例がつくられます。もしここでこれが破られたならば、再び仲裁機関というものはもう必要ないのだ、そういうものではだめだということになることを、私は日本の民主化のために悲しむ。そういう見解から、一内閣の法的解釈ではなくて、少くとも日本民主化のために、この解釈はつきりとなさらなければならないと思うのであります。私はこれに対して労働大臣の答弁は、一昨日来聞いておりますが、非常に苦しいことはよくわかります。けれども少くともこの方針は、貫かなくてはならないものであると私は信じますので、もう一度この点に対する政府見解を承つておきたいと考えます。
  139. 鈴木正文

    ○鈴木国務大臣 公共企業体の従業員の人たちは、争議権がなくなつたので、それに対応すべく、権威のある、嚴正な仲裁制度をもつてこれを運用して行くべきであるという、当時の増田労働大臣の答弁をお読みになりました。今日ここに増田さんがおりませんが、おられても同様でありましようが、その意見がかわるはずはないのでありまして、そういう趣旨によつてつくられたところの調停制度であり、仲裁制度であると了解しております。ただ問題は、先ほどから繰返されておるのでありますが、諸般の事情がもし可能であるならば、可能なるものができるだけ多くなり、できることならば全部が可能になつて、この仲裁案が全的にのまれるとしうことが望ましいのでありますけれども、しかし現在の予算上、また諸條件上、不可能なるものというのは、どうしてもあるのでございまして、そういう場合におきましては、この部分国会審議にまつということ自体は、当時つくられた公労法の中で明確に規定されておるのであります。私どもは、その既定の方針に従つて、そうしてこれを国会審議に仰いだのでございまして、その過程において、公労法の立法の精神を蹂躙しようとか何とかいうふうな考えをもつて臨んだのでは毛頭ありませんし、将来とても、そんな考えを持つはずはないのでございます。問題は、ただ現在の與えられた條件のもとにおいて、予算上、資金上、可能というものの範囲がどこにあるかという問題であり、この予算上・資金上、可能、不可能の範囲というものは、時に応じ、情勢の変化に応じ、また国鉄自体の経理の内容に応じても、変化して行くべきものであつて、その変化の情勢に応じて、正確なる可能へ不可能の判断を国会にしていただく。もし国会がそれを承認すべしというのであるならば、政府は先ほども申しましたように、そこに予算上の措置をとる政治的立場が出て来る、こういうことは考えておりますけれども、現在公労法が示すところの範囲内におきましては、この方針をもつて、この解釈をもつて国会にその審議を仰ぐということが、法の精神の蹂躙でもなく、政府の当然とるべき方向であつたということを考える次第でございます。
  140. 前田種男

    ○前田(種)委員 私は鈴木労働大臣に、言葉じりをつかまえていろいろなことを言おうとは考えません。しかし少くともこの最終的裁定というものは、民事で申し上げますならば、最高裁判所の判決と同様だと私は考えております。各人が、いろいろな事情上、判決に従わずして、こういう事情があるから、猶予してもらいたいということの余地はないのです。幸いにこれは政府並びに国会であるから、そのゆとりが法律上許されておるというだけでございますが、少くとも政府は、一昨日来いろいろ論議されておりますように、この裁定に盛られておりますところの予算的措置を講ずるか、資金的方法を講じて、そうして何分の決定を、審議を、国会にゆだねるということに出るのが、ほんとうだと私は考えます。むしろそれを否認するような態度で、国会に議案を提案しておるというその態度が、今日の吉田内閣の現わしておるところの端的な表現だと私は考えるのです。私はそれ以上追究いたしません。  最後に、もう一点菊川副委員長に聞いておきます。昨日成田君は、今日国鉄関係には、非常に労働基準法の違反行為があると言われておつたのです。それに対して労働大臣は、六月に基準法の適用を受けることになつて日が浅いから、十分の監督ができていないということでございますが、この裁定案の内容におきましても、その点が盛られております。私たちも実際に知つておりますところの現実の面、さらにこの夏労働調査でいろいろ国鉄関係の事情を調査した実情から行きましても、実に国鉄の現場には、ああいうきたないところがあるのかというような、不潔きわまるような現場もたくさんあるわけです。こういう点等から、今度のいろいろな問題について、法律違反等を国鉄みずからが犯しておるということを、いろいろ言つておりますが、私はそうしたものの一々のことを聞こうとは思いませんが、全体を見渡してみて、一体国鉄関係で労働基準法が完全に守られておるのか、いないのかということについて、組合側の見解、あるいはこれに対しての総裁としての見解があるとすれば、両者から承つておきたいと思います。
  141. 菊川孝夫

    ○菊川参考人 お答えいたします。特に安全、衛生面におきまして守られておらないというので、私どもの各支部あるいは地方評議会等で所在の基準監督署へ訴えた問題は、おそらく——今ここで正確な数字を申し上げるのは何でございますが、私の記憶しておりまする範囲では、百余件に上つております。しかもいずれもが、基準監督署から、鉄道局長なり、あるいは管理部長なりに対して、注意が発せられたものが大多数である。これは基準法違反であるから、改めなければいけないという指示が與えられたものが大多数であります。特にこの問題は、労働委員会の重大な問題だと思いますので、資料を整えて提出せよという御要求がございまするならば、現在本部では整つておりまするから、整理いたしまして、どこの監督署にこういう問題を訴えましたところ、こういうふうな指示がなされておりますということを、提出してもよろしゆうございます。
  142. 倉石忠雄

    倉石委員長 菊川孝夫君に、委員長から希望いたしますが、ただいまの資料を、今日でなくてけつこうでありまするが、なるべくすみやかに労働委員会にお出しを願いたいと存じます。
  143. 前田種男

    ○前田(種)委員 運輸大臣にお聞きいたします。財源がないから今度の裁定承認できぬという、今までの答弁でございますが、もし年度——来年の三月三十一日になりまして、余裕ができた場合に、一体どういう措置をとられるか。あるいはそのときになつて、もし余裕ができますならば、この裁定に沿うようなことが対処できるかどうかという点を、明らかにしてもらいたいと思います。
  144. 大屋晋三

    大屋国務大臣 余裕ができることは非常に望ましいのでありまするが、本件は、今回の審議によりまして、それで打切りと解釈いたしております。
  145. 前田種男

    ○前田(種)委員 前にも石炭その他の問題で余裕ができましたときに、国鉄にそれぞれの年度末に手当をした例があるそうですが、そういう例がございますか。
  146. 大屋晋三

    大屋国務大臣 そうですな、私わかりませんから、総裁に……。
  147. 加賀山之雄

    加賀山説明員 石炭節約に限らないのでございまして、輸送を増強したとか、あるいは石炭の節約ができたということに対しましては、これを報奬金として出した例はございます。單なる手当ということじやございませんで、報奬金として、そのうちの幾部分を出したということは、従来もやつておることでございます。
  148. 前田種男

    ○前田(種)委員 先ほど運輸大臣が言われましたのでは、年度末になつてみなければ、わからぬというようなことでございましたが、少くとも年度末までは、今度の裁定に応ずるようなことはしない、不可能だということを、はつきり一昨日以来言つておられるのです。もし年度末が参りまして、今日の予測以上の剩余金ができたような場合には、政府は一体どういう責任をとられるか。
  149. 大屋晋三

    大屋国務大臣 今回の事件の処理は、国会に提出し、国会の決議、意思表示があれば、それで打切りであります。さて次に年度末に剩余金が出るということはどうかわかりませんが、出れば非常に仕合せでありまして、これはまた別途の処理がそこに生れる。今回のものとは全然別個な見地でこれを考えるというふうに考えております。
  150. 前田種男

    ○前田(種)委員 もう一点、十五億五百万円を出すということになつておりますが、もし組合側がこれを最高裁判所に提訴いたしまして、裁判で組合側が勝つたといたしまして、それ以上の金額を出せという裁判所の判決があつたと仮定いたしました場合に、国会審議を煩わした政府の責任は、一体どういうふうにとられるかということをお伺いいたします。
  151. 大屋晋三

    大屋国務大臣 大体政府見解が、国会意思表示のいかんによつて——ノーという場合には、債務が残らないという明瞭な見解をとつている建前から申しましても、そういうような仮説がかりにあつても、政府はそういうことはあり得ないと思つておりますし、またその仮説的のことをただいま論ずることも、はなはだ無益であろうかと考えております。
  152. 前田種男

    ○前田(種)委員 実は公社総裁から、十八億可能だということを運輸大臣に申達して来ているわけです。そこには金額の開きがあるわけです。これを政府の権限において査定したわけであつて、少くともその裁定書から行きますならば、公社総裁が十八億可能だということになり、政府がこれを認められますならば、これは簡單で、国会承認はいらぬことになるわけです。もしこの問題が裁判の結果、十八億が可能だということになつた場合、政府に当然責任が生れて来ると思います。政府が十五億五百万円に値切つて議会に提案した責任が生れて来るわけです。この責任を一体どうするかという問題が起きて来るわけですが、この点をもう少し明らかにしてもらいたいと思います。
  153. 大屋晋三

    大屋国務大臣 この三億を削減したのは、政府見解によつて削減したのであります。しかしてこの三億を削減した結果の十五億を、四十五億から引いた差額、それを国会に対してわれわれは意思表示を問うておるのであります。国会においてその意思表示がなされた場合には、政府はこれで御破算だというふうに考えておりますから、あとの前田君の裁判所に提訴して云々ということは、全然考えておりません。従つて責任の発生ということも全然考えておりません。
  154. 前田種男

    ○前田(種)委員 私はこの点は見解の相違でございますから、これ以上申し上げません。しかしもし万一私が今申し上げましたように、公社総裁が十八億可能だということを言つて来ておるにかかわらず、それを十五億五百万円ということにしたために、裁判の結果問題が起きた場合は、国会に対して政府は少くとも重要な責任を感じなければならないということを、明確に私は申し上げまして、その他の点の質問もございますが、時間等の関係もございますから、質問を打切ります。
  155. 大橋武夫

    大橋委員 本案に関しましては、すでに一昨日以来合同審査会を開きまして、また本日労働委員会を開いておりますので、本件に関する質疑は大体終了いたしたものと認めますから、この際本件につきましては、質疑打切りの動議を提出いたしたいと存じます。
  156. 倉石忠雄

    倉石委員長 ただいまの大橋武夫君の動議について採決いたします。本動議に賛成の諸君は起立を願います。     〔賛成者起立〕
  157. 倉石忠雄

    倉石委員長 起立多数。よつて本動議のごとく決しました。これにて本件についての質疑は終局いたしました。関係各位におかれても、御多忙中、長時間御出席くださいまして、本委員会審議に協力くださいましたことを、深く感謝いたす次第であります。  本日はこれにて散会いたします。次会は明二十一日午前十時より開会いたします。     午後八時四十四分散会