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1950-02-18 第7回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年二月十八日(土曜日)     午前十一時九分開議  出席分科員    主査 苫米地英俊君       北澤 直吉君    小金 義照君       玉置  實君    勝間田清一君       川崎 秀二君    春日 正一君       圖司 安正君    平川 篤雄君       世耕 弘一君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 林  讓治君  出席政府委員         厚生政務次官  矢野 酉雄君         厚生事務官         (兒童局長)  高田 正己君         厚生事務官         (会計課長)  太宰 博邦君         厚生事務官         (国立公園部         長)      飯島  稔君         厚生事務官         (薬務局長事務         代理)     星野毅子郎君         厚生事務官         (社会局長)  木村忠二郎君         厚生事務官         (保險局長)  安田  嚴君         厚 生 技 官         (公衆衞生局         長)      三木 行治君         厚 生 技 官         (医務局長)  東 龍太郎君         引揚援護庁長官 齋藤 惣一君         厚生事務官         (引揚援護庁援         護局長)    田邊 繁雄君         労働政務次官  新谷寅三郎君         労働事務官         (会計課長)  三川 克己君         労働事務官         (職業安定局         長)      齋藤 邦吉君  分科員外出席者         厚生事務官   岡林 諄吉君         労働事務官   富樫 總一君         労働事務官   松崎  芳君         労働事務官   宮島 久義君         労働事務官   亀井  光君         厚生委員会專門         員       川井 章知君         厚生委員会專門         員       引地亮太郎君 二月十八日  分科員今野武雄君辞任につき、その補欠として  春日正一君が委員長の指名で分科員に選任され  た。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十五年度一般会計予算外務省所管、文  部省所管厚生省所管及び労働省所管  昭和二十五年度特別会計予算厚生省所管及び  労働省所管     —————————————
  2. 苫米地英俊

    苫米地主査 ただいまより前会に引続き予算委員会第三分科会を開会いたします。  本日は午前中に厚生省所管、午後は労働省所管審査をいたしたいと存じます。  これより昭和二十五年度一般会計予算、及び昭和二十五年度特別会計予算中、厚生省所管議題にいたし審査に入ります。まず政府側説明を求めます。
  3. 林讓治

    林国務大臣 ただいま議題となりました、昭和二十五年度厚生省所管予定経費要求額の概要について、簡單に御説明申し上げます。  昭和二十五年度厚生省所管一般会計予算要求額は三百二十八億五千二百八万二千円でありまして、これを昭和二十四年度予算額二百七十一億六千八百四十九万七午円比較いたしますと、五十六億八千三百五十八万五千円の増加であります。  今右予算のうち、おもなる事項についてその内容を申し上げますと、まず第一は公衆保健衛生並びに予防衛生対策に関する経費二十億一千五百九十三万六千円であります。公衆衛生及び予防衛生行政総合調整をはかるため必要な経費二百八十四万余円と、国民栄養に関する知識を普及徹底するとともに、適切な指導を行い、その改善向上をはかるため、国民栄養調査実施する等のため、三千百三十六万余円と、国民の食生活改善方策を科学的に調査研究する国立栄養研究所経営するに必要な経費一千十三万余円と、衛生行政末端機関である保健所使命は、ますます重要性を加えていますので、現在の六百八十九箇所のほか新たに十五箇所を増加し、さらにその内容充実整備するためと、これが運営に関し、調査企画及び指導に必要な経費八億八百五十一万余円と、伝染病発生未然に防止いたしますため、防疫行政徹底を期するために必要な経費及び都道府県に対するトラホーム、癩、寄生虫、精神病その他の伝染病予防経費補助と、外来伝染病等予防する事務を、都道府県に委託するために必要な経費五億六千三百六万余円と、予防接種法に基き、都道府県市町村の行う予防接種につき企画指導するとともに、都道府県接種事務費及び臨時接種費に対し補助するため必要な経費五百八十三万余円と、結核蔓延現状にかんがみ、これが万全を期するため、予防対策をますます強化する必要があるため調査研究講習会等を行う経費と、本病の予防治療対策に最も有効なストレプトマイシン研究に要する経費結核予防法に基き、都道府県の負担する結核予防費並びに公益法人経営する結核療養所経費について補助するため必要な経費九千九百九十一万余円と、性病は最近ますます蔓延の傾向にありますので、接触者調査健康診断及び治療を行う等、現下必要な性病対策実施いたしますための経費一億五千八百二十九万余円と、疾病予防試験検査研究指導及び日本脳炎の調査研究実施いたします経費百七十五万余円と、海港検疫は、国内の伝染病予防上、きわめて重要なことでありますので、十三箇所の海港検疫所経営するとともに、これを指導監督するため必要な経費一億一千四百十六万余円と、また上下水道現状は、国民保健上寒心にたえないものがありますので、これが衛生的な築造、維持管理につき適切な調査指導を加えるとともに、市町村に対し、上下水道事業助長発達をはかりますのと、伝染病発生の媒介の根源であります鼠族、昆虫の駆除を実施するため、その企画指導を行う経費六百万余円と、食品衛生法によりまして不良有害な飲食物取締りにより、中毒事件等発生未然に防止するのと、輸出食糧品検査取締り徹底をはかり、また入院患者栄養改善のため病院給食実施に関し、適切な指導を行うに必要な経費八百五十七万円と、乳肉衛生及び原皮の衛生が従来きわめて非衛生的でありますので、その指導取締りを要するのと、保健衛生施策調査し、合理的な基礎の上に、新たな企画を立案し、公衆衛生行政を強力に推進発展せしめるとともに、国民に対する公衆衛生に関する知識普及等に必要な経費二百八十七万円と、優生保護法によりまして、悪質な素質を有する者を根絶するための経費二百五十九万余円と、衛生技術者素質向上をはかることが急務でありますので、国立公衆衛生院におきまして、前年度に引続いて医学科衛生薬学科等七科目の養成訓練実施いたします経費四千百四十三万余円と、また疾病治療方法研究細菌製剤検査等研究を行います国立予防衛生研究所経営費一億五千八百五十八万余円をそれぞれ計上いたしました。  次に第二は、医務対策に関する経費四千四百五十六万円でありますが、医療法医師法歯科医師法に基く各種審議会等の円滑なる運営と、医務行政充実をはかる経費四百万余円と、医師歯科医師看護婦国家試験及び実地修練を行う等の経費二千三百七十四万余円と、医療法に基き医療機関整備改善をはかるため医療監視員を設置いたしますのと、病院の合理的な運営によりまして、医療内容向上をはかりますため、病院管理研修所経営するため必要な経費三百二十九万余円と、歯科衛生士法に基く歯科衛生士養成と、歯科医療行政に関する企画指導に必要な経費百九十五万余円と、保健婦助産婦看護婦法によりそれぞれその資格が向上いたしますので、現在の保健婦助産婦看護婦の再教育実施する必要がありますので、これに要する経費七百二十八万余円と、日本医療団清算を促進指導するための経費五十四万余円と、また東京ほか六都市における変死者行旅死者死因究明経費に対し補助するのと、死体解剖保存法に基きます審議会運営に必要な経費三百二十一万余円と、あんま、はり、きゆう、柔道整復術者等営業法に基く経費五十一万余円をそれぞれ計上いたしておるのであります。  次に第三は、国立病院及び療養所経営等に関する経費五十八億七百八十万八千円でありますが、結核蔓延現状に対処いたしまして、結核病床八千五百床を拡充し、約五万四千床を経営いたしますのと、癩療養所は、一千床を拡充し、十箇所一万床を経営いたしますが、癩治療上最も効果のあるプロミンを全面的に使用するための経費を見込んでおります。また精神療養所二箇所、七百床、頭部療養所一箇所二百床、脊髄療養所九十床を経営いたしますとともに、病院療養所経営指導監督機械器具及び建物補修整備経費と、看護婦養成、再教育実施等医療確保のため、所要の経費を計上いたしております。なお、国立病院については、二十四年七月から特別会計を設置いたしましたが、これがため一般会計から繰入金として、九億一千八百十七万余円と、国立病院療養所土地建物等で、清算法人の所有でありますもの、及び日本医療団から経営を移管されましたものを購入するため必要な経費七千万円を、それぞれ計上しておるのであります。  次に第四は薬務対策に関する経費八億一千九十九万六千円でありますが、薬事法運用の万全を期しまして、薬務行政徹底をはかる必要がありますので、薬事審議会の適正なる運営と、薬剤師国家試験施行医薬品等配給及び生産確保不良医薬品及び麻薬等取締り徹底的に実施いたしますのと、薬事法に基きまして、特定医薬品国家検定実施及び製造所指導監督を行う等、国民医療確保向上を期しますための経費七千七百二十一万余円と、ストレプトマイシン並びにコレラ、インフルエンザ、発疹チフスワクチン確保をはかりますための経費六億九千九百四十二万円と、医薬品の創成及び製造方法の効率的な研究食品等試験検定実施いたしますため、国立衛生試験所経営に必要な経費三千四百三十五万余円を計上いたしております。  次に、第五は民生安定に関する経費百五十九億六千五百四十二万九千円でありますが、現下社会情勢にかんがみまして、国民生活を安定し、社会福祉増進をはかる等、すみやかに適切な施策実施いたしますことは、緊要なことでありますので、各種社会事業施設指導と、社会事業に従事いたします者の素質向上をはかりますため、前年度に引続いて東京、大阪の二箇所に社会事業学校経営いたしますのと、生活保護法の適正なる運営指導をはかるため、調査企画等に必要な経費三千三百二十一万余円と、民生委員の活動は、社会福祉増進にきわめて重要な使命をになうものでありますので、これが指導強化をはかり、民生安定施策に寄與せしめます経費一千五百十万円と、傷痍者保護更生施策基本的調査と、傷痍者保護收容施設運営費に対する補助と、国立身体障害者更生指導所経営と、失明者保護更生のため、適当な生活訓練と、職業教育を與えるため、国立光明寮経営いたします等の経費五千九百三十九万余円と、消費生活協同組合法によりまして、国民の自発的な生活協同組織育成発達をはかり、国民生活の安定と、生活文化向上を期するための経費二百八十七万余円とララの救援物資配給及びその他の生活援護物資需給調整をはかるために必要な経費六千四百五万余円と、生活窮迫化に伴いまして、正常な生活から転落する婦人の増加を防止いたしますのと、更生の機会を與える收容施設経営費補助千六百七十一万余円と、また災害救助法に基きましていたします災害救助補助二千三十七万余円と、前年度に引続いて、生業資金を貸付けまして、生活困窮者引揚者等再起更生をはかるための経費五億円と、現下経済情勢にかんがみまして、生活困窮者最低限度生活を保障いたしますことは、きわめて緊要なことでありますので、生活保護法に基きまして、生活扶助医療、助産、生業扶助等各種扶助援護実施いたします経費百五十二億五千三百七十万余円をそれぞれ計上したのであります。  次に、第六は児童福祉に関し必要な経費三億四千八百二十二万八千円でありますが、児童福祉法によりまして、児童の健全な育成愛護等児童福祉増進をはかるため、各種対策実施を要するのでありまして、児童委員児童相談所、一時保護所運営に要する経費一億八百十三万余円と、また保育所母子寮等施設経営と、保母養成所の助成並びに妊産婦、乳幼児の栄養増進健康診断等事業に対し助成いたしますのと、生活困窮家庭及び兒童福祉施設等児童に対し、提供されるユニセフ物資処理に必要な経費一億三千百十八万余円と、強度の変質的不良少年教育教護を加えるため、国立少年教護院経営するため、七百六十七万余円を計上いたしておるのであります。  次に第七は、社会保険対策に対する経費二十一億五千六百四十六万二千円であります。健康保険厚生年金保險船員保険等各種社会保険行政の円滑なる運営をはかりますのと、厚生保險特別会計及び船員保險特別会計給付費及び業務取扱費の一部を、一般会計から繰入れます経費八億九千三百三十六万余円と、また国民健康保險組合は、全国で八千五百組合、被保険者は約四千七百万人を擁しておりますが、組合国民保健衛生向上の基盤でありまして、これが育成強化をはかりますことは、きわめて重要なことでありますので、本年度におきましても、組合運営及び直営診療機関経費に対して助成するため必要な経費十二億六千三百九万余円を計上したのであります。  次に第八は、引揚援護対策に関する経費五十一億二千五百二万五千円であります。外地から内地へ引揚げる者は、本年度約三十六万人と予想せられるのでありまして、これらの人々の援護徹底をはかりますことは、きわめて重要でありまして、引揚港における收容保護、輸送、日用品及び被服の給與医療その他各種援護の万全を期しますのと、未復員者給與法及び特別未帰還者給與法に基きます各種給與と、旧陸海軍残務処理等のため必要な経費をそれぞれ計上いたしました。またその他の経費といたしまして五億七千七再六十三万八千円を計上いたしましたが、国民が健康で、文化的な最低限度生活を保障する社会保障制度企画並びに基本的調査を行いますために必要な経費三千万円と、また厚生行政は御承知のように、直接国民日常生活に至大の影響を持つものでありますが、未だ十分徹底しておりませんので、特にこの方面に力を注ぐ必要がありますので、これに要する経費千五百二十八万余円と、国立公園は御承知のように、国民保健、休養、教化等に幼果ありますのみならず、観光施設としても国の経済に寄與することが大でありますので、現在の十五箇所のほか、三箇所の国民公園維持運営をはかる等のため必要な経費二千四百九十八万余円と、人口動態及び各種疾病の状態を迅速正確に把握するため、衛生祝事務充実をはかる経費一億七千四百七十五万円と、その他官房事務処理と人口問題について、各般の基礎別調査研究を行います人口問題研究経営のために要する経費二億三千二口五十三万余円を計上いたしました。  以上昭和二十五年度厚生省所管一般会計予算大要について御説明申し上げたのでありますが、次に特別会計大要について申し上げます。  先ず第一は、厚生保険特別会計健康勘定においては、歳入歳出とも百四十五億九千六百五十九万五千円でありまして、年金勘定では、歳入が百二十七億三百四万四千円、歳出が十三億七千五百五十六万八千円、差引歳入超過百十三億二千七百四十五万六千円であります。また業務勘定におきましては、歳入歳出とも九億二千百十三万二千円と相なつております。  次に第二は、船員保険特別会計におきましては、歳入において二十億六千八万一千円、歳出において十六億六千八百十五万七千円、差引歳入超過三億九千百九十二万四千円と相なつております。  次に第三は、国立病院特別会計でありますが、歳入歳出とも三十四億五千九百七万三千円と相なつております。  以上昭和二十五年度厚生省所管一般会計及び特別会計予算について、御説明申し上げたのでありますが、何とぞ本予算の成立につきましては、格別のお力添えをお願い申し上げる次第でございます。
  4. 苫米地英俊

    苫米地主査 では次に補足的に大宰政府委員から御説明を願います。
  5. 太宰博邦

    太宰政府委員 お手元にお配り申し上げました昭和二十五年度歳出事項別予算額調、これについて補足的に簡單に御説明申し上げます。  ここに書いてございますのは、先にお送り申し上げております昭和二十五年度一般会計予算の各項目の数字だけを抜き出してあるのでございますが、御承知通り明年度から平衡交付金制度実施に伴いまして、各省の補助予算の中り、あるものが平衡交付金の方にまわしてございますので、前年度予算との比較をしていただきます際に、その点を明らかにしておく必要があるものと思いまして、これをつくつた次第でございます。大きな違いだけを一、二申し上げてみますと、最初のページは九番目のところの厚生統計運営統轄に必要な経費でございます。これは前年度に比べまして約一億ほど増なつておりますが、これは衛生統計に対する機械整備いたします金がおもでございまして、そういうもので増になつております。次に番号で三十七、これは保健所費補助の八億六百五十三万円で、これは前年度比較いたしまして約六億五千九百万円ほどの増になつてございますが、これは先ほど大臣説明にもございましたように、保健所を拡充いたしまして、現在約六百八十九箇所のものを十五箇所増設いたしまして、七百四十箇所に、さらにそういう増設のみならず今まで格の低かつたものをぐつと格を上げる、そういうような拡充整備に伴います増員あるいは施設整備費用でございます。それから三十八、伝染病予防費に必要な経費、四億五千二百六十四万八千円、これは前年度比較して約一億三千四百万円減つておりますこれは前年度の額は、前々年度よりの繰越しの負担額が約二億ほどでございますので、それが今年度においては減つております。その関係でこれが減つているのでございます。  それから次に医務局の方に行きまして、五十三、国立病院指導監督に必要な経費九億一千九百四十二万二千円、これが前年度比較いたしまして約二億七千七百万円ほどの増になつております。これは人件費その他單価の引上げに伴います増でございます。それから五十九、国立病院療養所土地建物購入に必要な経費七千万円、これは前年度と比べまして五億三千万円の減になつております。これは前年度の六億の予算は、日本医療団施設買收に要する費用でございますので、それが大体前年度予算において一段落する見込みでございますので、大巾に減少いたしておるのでございます。それからその次六十七、国立療養所施設整備に必要な経費、これが六千八百九十二万円でございます。これは前年度比較いたしまして一億二千八百四十一万円の減になつておりますが、これは前年度の方におきまして、本来公共事業でなすべき結核病床整備を、諸般の都合で一般予算でやりましたので、非常に前年度はふくらんでおりましたので、それが抜けたための現象でございます。  それから次、薬務局の方に参りまして八十一、特殊医薬品供給確保に必要な経費、六億九千九百四十二万円、これは先ほど説明のございましたストレプトマイシン等購入費用、これがそこに書いてございまして、これがそのうち約六億三千百万円ほどかかつております。さような関係で前年度に比べまして大巾に六億一千二百万円ほどの増になつておる次第でございます。  次は社会局の方に行きまして九十四、生活保護法施行に必要な経費、これが百五十二億五千三百七十万円、これは前年度比較いたしまして三十七億三千三百七十万円の増になつております。これは生活保護基準引上げ、その他医療関係におきましては、最小の人員の増加、そういうものに伴います増加分でございます。  それから児童局の百一、不良兒孤見及び浮浪児等保護に必要な経費一億百二十四万円、これは前年度比較しまして——これは平衡交付金等が増になりまして、合計九億になりましたので、前年度分と比較いたしまして、三億五百七十三万円の増でございます。これはこれらの保護施設の改築、補修などの補助及び保護基準引上げ等に伴いまする費用でございます。なお次の百二番、保育所及び母子寮等に必要な経費、これは平衡交付金に入ります分と合算いたしまして五億四千百四十三万円、これは前年度比較いたしまして一億九千八百万円の増でございます。同じように施設整備及び基準引上げ等による増加でございます。  それから保険局の方に行きまして百十三、社会保険費国庫負担金に必要な経費八億六千六百三十二万円、これは前年度比較いたしまして約一億三千八百三十三万円の増になつておりまするが、これは事務費補助限度引上げに伴いますものでございます。百十四、国民健康保険補助に必要な経費十二億六千三百九万円、これも前年度比較いたしまして約三億四千五百九十六万円の増になつておりまするが、同じようなものでございまする  引揚援護庁に参ります。百二十三、地方引揚援護局事業に必要な経費十億二千六百三十二万円でございます。これは前年度比較いたしまして三億一千五百三十九万円の増でございますが、これは引揚者に対しまする給與内容引上げなどに伴いまする増加でございます。その次百二十四、特別未帰還者給與に必要な経費三億四百五十六万円、これは前年度比較いたしまして二億二千二百五十五万円の増でございまするが、これは先般の臨時国会で改正いただきましたように、一般邦人で未復員者と同様な実情にあるもの、これの適用地域中共地区にまで拡張いたしましたのと、それから内容引上げと、両方相まつての大巾の増でございます。次の未復員者給與法施行に必要な経費三十一億七千九百二万円、これは前年度比較いたしまして九億七千四百二十六万円の増でございますが、これは給與内容引上げでございます。  今度は施設の方に参りまして、百三十五、国立結核療養所経営に必要な経費三十八億五千三百三十三万円、これは前年度比較いたしまして十億七千四百七十二万円の増でございますが、これは先ほどの説明にもございましたように、療養所八千五百床の増床に伴いまするところの経営費の増でございます。続いて国立癩療養所経営に必要な経費五億七千七百九十九万円、これは前年度比較、たしまして一億二千六百九十七万円の増でございまするが、これは癩療養所一千床増床に伴いまする経常費の増でございます。それから国立病院経営に必要な経費、これはゼロでございまして、前年度と比べまして六億八千五百万円落ちたのでございますが、これは特別会計の方に編入がえになりましたので、今年度落ちたのでございます。  大きな増減は以上申し上げました通りでございまして、一般会計の占めましたものが、その一番下に厚生省所管合計三百二十八億五千二百八万二千円とございます。これになお平衡交付金となりまして、所管厚生省から落ちましたけれども、本来厚生省所管のものにつきまして平衡交付金が二十一億二千三百三十八万円ございます。その下の括弧は従来から地方財政委員会の方に組んでおりましたもので、平衡交付金に入りますものが六億三午八百七十三万円ございます。内容補助職員人件費事務費等でございまして、これは従来からも組んでございまするが、前の二十一億の分は、前年度までは厚生省補助予算として組まれておりましたものでございまして、それが前年度は二百七十一億六千八百四十九万円でございまするので、それをもしあわせて考えますと、先ほど大臣の御説明に五十六億ほどの比較増であるという御説明がありましたが、この平衡交付金をそれにさらに加えて比較いたしますと、実質的には前年度比較いたしまして七十八億ほどの増になる。かように御了解いただきたいと存ずるのでございます。  その次にございますのは、所管経済安定本部になつておりまする公共事業費でございまするが、厚生省関係の分をそごに書きましたものでございます。御参考に差上げたわけでございます。おもなものは三番目の保健所機構の拡充強化に要する経費三億八百三十九万円、それから次の上下水道関係で約一億五千万円ほどでございます。それからもう一枚めくつていただきまして二十七番、保育所一母子寮設置に要する経費、これが二千五百七十二万円でございます。それから三十一番の引揚者住宅、これが五億円、さようなものが、さしあたり、金額としては大きいものでございます。合計いたしまして厚生省の分と見られますものが二十一億一千五百九十万円ほどの、公共事業費に相なつている次第でございます。簡單に御説明を終ります。
  6. 苫米地英俊

    苫米地主査 以上で説明を終りました。質疑のお申込順によつて発言を許します。小金義照君。
  7. 小金義照

    ○小金委員 二十五年度予算につきましては、予算総会において相当承りもし、また本日大臣会計課長から、それぞれ要点並びにおもな項目の大事な点について御説明がありましたので、ほぼ了承いたしました。昭和二十五年度予算は前年度予算比較いたしますると、五十六億八千三百五十余万円、なお実質的に見れば七十八億増加になるということであります。国家予算総額においては、一般会計の方で見ましても、前年度比較して約七百億円ばかりの減少になつているにもかかわらず、これだけの予算が計上されたということは、厚生省の行政については私どもはたいへんうれしいことと思います。しかし国の予算が七百億減つているということは、価格差補給金等の二千億くらいのものが九百億になつたという現象でありますので、そう厚生省関係予算だけが著しくふえたとばかりも考えられない。しかしどの行政機構の要求を見ましても非常に厖大なものになつておりまして、それが相当削られております。しかし今あらためて厚生大臣の行政上の抱負を伺いましても、おとなから子供まで、健康な人から病弱者に至るまで、ことごとく社会万般の現象のしわ寄せが来ているのが、私は厚生省の仕事ではないかと思われます。そういうようなことを考えましてこの予算書を拝見いたしますると、非常にたくさんの項目になつておりまして、お骨折りの点は重々私どもはお察し申し上げ、またその労を多といたすのでありますが、これを一たび経済上の変化と申しますか、社会情勢の激変といいますか、この実際の社会の生活から見ますると、厚生省の仕事というものはますます緊急の度を加えて来る。予算増加をもつて足れりとせず、この運用について私は非常な御奮発を願いたい。先般もキティー台風が関東地方を中心に襲つたときに、たくさんの被害が生じました。東海道の海岸で全然知らぬ間に家をさらわれた人たちが押しかけて来た。それを今日御列席の矢野次官のところへ案内したところが、非常に親切な取扱いを受けましてそのために地方的な人心が非常に緩和したのみならず、その結果として県営の住宅までもつくつていただくような結果になつた。こういうように厚生省の行政は、金ばかりでない。ほんとうのパブリック・サーバントの仕事のニュアンスが出るのは厚生省の仕事だ。日々の生活、また現象が一番身近に感ぜられるのが、厚生省の行政のように思うのでございます。そういう点から非常な御努力の結果、不十分ではありますが、この程度の予算の増額ができたということは、私は多といたします。なお私がちよつと疑問を抱きました予算の増減につきましては、会計課長から大体お話がありましたので、ほとんど全部了承いたしました。そこでなおこの際二、三の点について御当局の答弁をお願いしたいのであります。それは前の第六国会において、たしか議員提出の法律だと思いますが、身体障害者福祉法というのが通つたのであります。これはいつから施行されますか。またこの法律の施行にどの程度の経費が計上されておりますか。これは実に気の毒な身体障害者に対する一つの福祉的な施設が盛り込まれている法律でありますので、この人たちの期待も大きいのです。もしわかりましたならば、この施行期日並びにこれらの法律の施行に要する経費が、どの程度に計上されているか。御説明を願います。
  8. 矢野酉雄

    ○矢野政府委員 御激励のお言葉をいただきまして、一層御趣旨に沿うて最も親切に、しかも速急におこたえできるように努力いたす覚悟であります。  身体障害者福祉法は四月一日から発動いたします。その立法精神に立脚いたしまして、それぞれの施設更生指導所は全国に六箇所増設の予算を提案しておりますので、ぜひ御賛同願いたいと存じます。数日前、実は社会局長も同伴いたしまして、国立相模原病院の中にあります身体障害者の指導所の開所式に参りました。それは同時に神奈川県の職業補導所の開設式も兼ねたわけでありますが、各種の設備はまだ十分ではございませんけれども、相当科学的な根拠のある備品等も備えまして、院長がその所長を兼任しております関係上、その運営も万全を期していると私は視察して参つたような次第であ力ます。経費等につきましては局長からお答えいたすことにいたします。
  9. 木村忠二郎

    ○木村(忠)政府委員 身体障害者福祉法の施行に必要なる経費につきましては、身体障害者等保護更生に必要た経費としまして、三千四百二十四万五千円、それからやはりそれと同じ内容でございますが、運営経費として二千百十六万四千円、中途失明者援護に必要な経費といたしまして、三百八十八万二千円、それから先ほど政務次官からお話がありましたが、身体障害者の施設の拡充のために、地方におけるところの收容授産施設二千二百二十九万円、国立身体障害者更生指導所拡充経費四百万円、それから中途失明者保護更生施設経費四十四万五千四百円、合計して約一億という経費なつております。
  10. 苫米地英俊

    苫米地主査 この際分科員の各位にお諮りいたします。質疑通告が現在六名もありまして、すでに十二時で、午別中に済ませるにはきわめて困難に思われますので、質疑は重点的にごく簡結にお願いいたして、進行して参りたいと存じます。何とぞ御了承願います。
  11. 小金義照

    ○小金委員 それはごもつともでありますが、実は厚生省の仕事というのは、ほんとうにデパートメント・ストアーみたいに各方面にわたつておるので、質問を全然しないわけに参りません。しかし御趣旨もありますので、項目だけをごく簡單にお尋ねをいたします。私が実際に調べてみたところによりますと、今相模原の療養所の話が出よしたが、国立の箱根療養所は、これは軍人のひどいけがをした人たちが療養しておるのであります。この人たちには恩給というものがありまして、特症でも月額二百五十円しかもらえない。そして職業と言つてみたところが、すわりつきりで、ただ手先の細工きりで、收入というものは幾らもない、実に気の毒な状況にあります。そういう人は、かつて軍人であつたというために、恩給もふやすことができない。この方はなかなか困難でありましようが、せめて食費なり、また施設の方面で、これらの人たちの療養を助ける以外に私は方法はないと思います。そのありさまを見て私は実に気の毒に思うので、この点について何か今度の予算に措置がございますか、承りたいと思います。
  12. 東龍太郎

    ○東政府委員 お答えいたしますが、御説の通り箱根療養所脊髄療養所と申しまして、体の下半身がまつたく動かないという、まことに不幸な人々の療養所であります。私どもも平素からこの人々に対しては、特に慰安と申しますか、手厚い療養、看護をいたしたいと存じております。今御指摘の食費についてでありますが、これはひとり、箱根療養所のみならず、国立病院療養所、すべて厚生省所管のものについては、食費が十分でないというふうな御非難をこうむつております。私どもも決して現在のままで十分であるとは存じておりませんので、大蔵省方面とは絶えずこれの増額を折衝しております。幸いに二十五年度におきましては、ただいまお話の脊髄療養所につきましては、今まで五十円でありました賄費が、六十三円にまで、二割六分に相なりますか、増額になつたのであります。申すまでもなく、五十円とが六十三円とか申すのは、食費の材料費のみでございまして、これに燃料費知るいは人件費等を加えますと、まず現在社会保険等による一般病院入院患者に給せられます食費と、同等程度のものが給せられるだろうと思います。私どもとしてはもう少し増額を希望したのでありますが、この点で査定を受けましたので、一応了承はいたしておるわけであります。とにかくわずかではございますが、増額になつたことを申し上げておきます。
  13. 小金義照

    ○小金委員 御苦心のほどはよくわかりますし、またあの人たちも当局の御努力には感謝いたしておりますが、何分生命は勘定されるほどきわめて不幸な人たちで、一定の年限が経てば死んでしまうのです。これは脊髄の特別の現象が多々起つているようでありますから、医学的な研究の見地からも、私もよほど力を入れていただきたいと思います。同時にもう一つ、これとほぼ同じような地位にある神奈川県東秦野村にある国立結核療養所なんかについても、いろいろお尋ねしたいし、また御注文も申し上げたいのでありますが、当局としてはそういうふうに非常に配されているし、国費多端の際ですから、むりを申し上げてもできない話ですが、ただそういうふうな学術的な見地からも、不幸な人々を慰めるかたがた、これを材料——と言つては語弊がありますが、医学的な研究もいろいろ進めていただきたいと思います。  次に科学研究費、これは科学技術に関する研究費と私どもは考えておるのでありますが、その中に、厚生省関係人口問題研究所に必要な経費が、前年度は五百八十五万円、それが本年度は八百四十一万円計上されておりますが、これは相当な増額のように思います。人口問題研究所というのは、どういうことをやるのか知りませんが、これは実は非常に大きな問題だろうと思いますから、この程度の経費ではたしていいものか、学術的な研究がほんとうにできるかどうか、お尋ねいたします。
  14. 太宰博邦

    太宰政府委員 ここに計上いたしました金額は、人口問題研究所の人件費とか事務費でありますが、ただいま非常にやかましくなつております、日本の人口政策をいかにするかという大きな問題は、この研究所ではただいまのところ処理し得る限度以上であります。内閣に人口問題審議会というものがございますし、また各省もそれぞれの立場から検討されているのでございます。厚生省といたしましても、これでは不満足に存じておりますが、遺憾ながら前年度比較でそうむりに多く取れなかつたのでありまして、その点御了承願います。
  15. 矢野酉雄

    ○矢野政府委員 先ほどからの御質問に対して、つけ加えてお答えしておきたいと思います。御質問はまつたくごもつともでありまして、物と金を要する面から改善をするのには、どうしても立法府の御協賛を得なければ一銭も処置できませんので、ぜひ一層の御協賛を仰ぎたいと思つております。物と金を要しないで、ああいう不幸な方々に対して明るい人生を見出すことができますように、院長、職員及び常住側近におります看護婦、庶務課長を初め、事務当局、受付に至るまで、ほんとうにあたたかい気持で患者の方々に接するという、精神的部面からもつと何とか改善したいというので、当局はいろいろとくふうをいたしまして、病院長並びに療養所長等の会議にも、この点を力説しておるような次第でありまして、御了承願いたいと思います。
  16. 小金義照

    ○小金委員 政務次官のお答えを私は了といたします。それで問題は人口問題研究所であります。人口というと人の数のようにばかり考えますが、優生学とかあるいは人類学の方からも行かなければならないので、これはひとつ厚生省でもそつちの元からよくして行かないといかぬように思います。それからもう一つ伺いたいのは、国民健康保険ですが、これに入つておりますと、治療した場合に非常に楽なんです。私はこれは非常にありがたいと思いましたのは、自分の子供が腹部切開をしたこころが、非常に安くしかも手当が非常にいい。しかし驚いたことには何日たつても金をとりに来ない。これは私はたいへんなことだと思います。三月たつてとりに来たところが非常に安い。これはまたありがたいことでありますが、保健医の立場からいうと非常に苦しいというお話である。手術手当の早いのはけつこうでありますが、金の方の取立てを早くする、事務の簡素化というか、敏活化ということはできないものでしようか。この点もしおわかりでしたらお願いいたします。
  17. 矢野酉雄

    ○矢野政府委員 ごもつともな御質問でありますが、実は国民健康保険制度の根本問題を、今社会保障制度審議会において御検討を願つております。その御質問の御趣旨に沿うべく、厚生当局といたしましては、国民健康保険税というような一つの税として、取立て等の敏速かつ徹底を期することに案を立てて、いろいろ関係当局とも折衝しておりますが、国内的に大蔵省の十分の了解も得なければなりませんので、はたして今国会中に政府として御審議を願うような段階に進むかどうか、まだ見通しがはつきりいたしません。しかしそうでなくとも事務処理において、もつと敏活にして、それに関係を持つておられるいろいろの方々等に御迷惑のかからないようにいたすことは、こちらの方の行政事務の取扱い方いかんによつてはできることでありますから、局課長を督励してその趣旨に沿うようにいたしたいと思います。
  18. 小金義照

    ○小金委員 今矢野政務次官から総括的に、厚生省関係の職員の気持を非常にあたたかくして、療養者その他の者に接したいということですが、こういうことは非常にけつこうであります。病人あるいは婦人、そういう者相手の行政でありますので、その点を特にお願いしたい。とにかく同じ公務員の立場に置かれながら、厚生省の職員にだけ重い精神上の労働をかけるということは非常に気の毒に思いますが、しかしそれぞれ職場によつてそれだけの心構えが必要だと思います。どうもこのごろ役所に行きますと応接が悪い。これは役所の構造にもよりますが、最も悪いのは運輸省ですこれは受付からして実に横柄な不愉快な応待であります。しかし厚生省はさすがにどこへ行つてもたいへん御親切な取扱いで、ことに私は国立療養所に行きましても、その点はやや改善されておると思います。これは聞違つた自由、主義とか、組合主義というものが、実は若干若い人たちをスポイルいたしておると思いますので、この弊風を打破しなければ、何ぼ金を使つても、私は行政はうまく行かないと思います。幸いに職員の心構えについて、厚生次官がそういうお心を持つておられるということは、非常に私は明るい感じがいたすのであります。受付がいかに大事であるかということは、私は二十年来役所におりましたが、これはたいへん大きな仕事だと思う。どうか厚生省の仕事が反面不幸な人たち、気の毒な人たちを対象にしているものが多々あることをお考えになつて、私は政務次官のただいまの気持を、さらに一そう徹底さしていた、だくことを希望いたしまして、これで打切ります。
  19. 苫米地英俊

    苫米地主査 北澤直吉君。
  20. 北澤直吉

    ○北澤委員 先ほどの厚生大臣の御説明によつて大体了といたしましたが、なお二、三点お聞きしたいと思います。社会事業に対しましては、われわれ国民として非常に希望するのでありますが、要は財政とのにらみ合せにおいて、できるかできないかということに問題があると思うのであります。二十五年度予算においては、先ほど大臣からお話がありましたように、五十六億八千三百万余円の増額ができたと言われますので、これにつきましては厚生省当局の御努力に敬意を表します。今後財政状況のよくなるにつれまして、もつと多額の経費を捻出せられますように、この上とも希望申し上げておきます。  お尋ねしたい第一点は、復員軍人と遺家族の取扱いの問題であります。先ほども小金委員から復員軍人の問題についてお尋ねがあつたのでありますが、復員軍人に対する取扱いいかんということが、私は日本の社会問題として見た場合に、非常に大きな問題ではないかと思うのであります。外国の例を見ましても、ちようど第一回の世界戰争のあとで、ドイツにおいて復員軍人の問題が非常に大きな問題になりまして、この復員軍人に対する取扱いを誤つたために、せつかく第一次世界戰争後、ドイツに民主政治ができたのでありますが、それがまたナチの方に行きまして全体主義になつた。要しまするのにドイツの民主政治がこわれたのは、復員軍人に対する取扱いを誤つたことが大きな原因になつたとわれわれは推察いたします。せつかく国のために織地に出て帰つて来ますと、国民は白い目をもつてこの復員軍人を見る、また恩給もなくなるというようなわけで、どうも復員軍人が世をのろうておるような状況があるのであります。これらの人たちが世をのろうておりますと、そこによからぬ思想を持つておる者と提携するということで、私は日本の社会不安の大きな元をなすのではないかと思いますので、復員軍人の取扱いにつきましては十分の御留意を願いたいと思います。こういう問題について厚生省当局のお考えをお伺いいたしたい。
  21. 矢野酉雄

    ○矢野政府委員 ごもつともな御質問でありまして、厚生省当局といたしましては、もちろん法の前にはすべてが平等であるという、根本的のプリンシプルを破壊するような態度はとられないような実情でございます。しかしながらぜひこれらの人々をほんとうにあたたかくお迎えしたいというので、まず港におきましては、電報も国費をもつて原籍地に御通知申し上げるとか、あるいは入浴その他の一切の設備、それからただいまでは冬外套一着、毛布、洋服二着、総計二十八点かの点数のもとに、いろいろの品物を差上げておりますし、この前の国会で御協賛を仰ぎましたように、旅費も一千円でありましたものを三千円まで、これを支給する範囲を拡張していただいたようなわけであります。また中共地区も合せて在ン中の勤務に対して、それぞれ郷里にお帰りになりましてから、県の世話課から給與金をまとめて差上げることにしております。それから過般御承認を得ました四億二千万円によりまして、各県、各郡市等に、その分散の度に応じまして、新築の住宅あるいは引揚者の住宅として借受けておる建物等の買收、あるいは補修費等、相当程度各地方に潤つておるわけでありますから、それらの方々の住宅の問題も、昭和二十五年度は五億と計算しておりますので、ある程度御要望にこたえることができるのではないかと思います。それから更生資金において、お帰りになつて何かお仕事をしていただくというようになれば、さしあたり資金がいりますので、ただいまのところでは一世帶一万五千円が、借り受けられる程度でございますが、こいねがわくはこれを三万円程度に引上げ、また大蔵省の所管する生業資金も、ただいま一人五万円でありますが、これをなるベく十万円にして、復員された方々が共同で事業をなさる場合にただいまは五十万円まででございますが、これも百万円程度に引上げていただきたいというように折衝しております。それからお帰りになつたらば、なるべくすみやかに定着されて、それぞれ生業につかれるように、労働省方面ともいろいろと折衝をいたしまして、職業を早くお世話申し上げるということに意を盡しておるような次第でございます。
  22. 北澤直吉

    ○北澤委員 復員軍人に対しまする政府のいろいろのお考えについて承つたのでありますが、とにかく文官には恩給がありましても、軍人にはなくなつてしまつた。また軍人は大体において追放者でありますので、なかなか就職がほかに比べてうまく行かぬというようなことで、一般の人に比べて差別待遇を受けるというひがみを持つておる人が多いと思う。従いまして復員軍人に対しましては、おつしやるように法の前には平等でありますから、一般の人と比べて差別待遇を受けておるという気持を與えることのないように、この上とも御努力願いたいと思います。  次にお伺いしたいのは、戰争犠牲者の遺家族の問題でありますが、地方を歩いて見ますと、遺家族の方が非常に困つておる状態のようであります。軍人の恩給がなくなつたと同じように、遺家族の扶助料もなくなつたということで、か弱い未亡人の手でたくさんの子供をかかえて生活しておるというような、実に言うに言われないような事情にあります。これにつきましても、政府の方ではいろいろ手を打つておられると思うのでありますが、私は最近いろいろの地方を見てまわりまして、遺家族の方からいろいろ聞きましたが、こういう希望が多いのであります。遺家族に対する何と申しますか、遺族扶助料でありますか、昔ありましたようなものを、何とか早く復活してもらえないかという希望が、非常に強かつたのであります。私はこれに対しましては、軍人の恩給が廃止になりました事情を申し上げまして、今としてはなかなか困難かもしれないが、あるいは講和條約のできました後においては、そういうふうなことも可能になるかもしれない。しかし遺族扶助料というものはどろしても必要であるという輿論を起して行くことは、非常に必要であるから、そういうふうな国民運動は起していいと思いますが、実現は講和條約ができなければ、なかなかむずかしいのではないかということを申しました。とにかく遺家族の方々は非常に気の毒な状態でありますので、政府におかれましても、戰争未亡人あるいは遺家族に対しましては、課税の面あるいはいろいろな面におきまして、特段のあたたかい御手配を願いたいと思うのであけますが、政府当局のお考えを伺いたいと思います。
  23. 矢野酉雄

    ○矢野政府委員 その問題については、すでに児童局長の手元において、いつでも法案を出せるだけの各種の資料並びに資料を総合いたしました対策については、この前の国会において衆議院並びに参議院が満場一致をもつて御可決になりました御決議の趣旨に沿うべく、実は準備を整えておるような次第でございます。しかしながら何さま国内的にも、その他の関係当局とも、十分了解を得なければ提案の運びに行きませんので、現在の段階におきましては、ただいま御審議を願いつつあります生活保護法の適用によりまして、東京でもし三人家族でありますと、もちろん年齢、学校その他の関係で相違はいたしますが、大体月五千二、三百円程度の生活保護法の支給ができますし、今度の提案では五千八百円かん百円程度になるかと思います。さらに未亡人の方でせつせと働いて自分の生活には困らないが、義務教育等の子供の教育費がない場合には、教育費だけを單独に補助を受けるという、生活保護法の一部を改正する法律案も提出したいという準備も整えておるような次第であります。昨日も成増の未亡人の共同作業所の開所式に次官は参りましたが、それらの方々の御意見をいろいろ承ると、ただいまの御意見の通りに非常に御要望の切なるものがあります。それで減税の問題あるいは遺族年金の問題等も、実は検討はいたしておりますけれども、私たちの考えでは、その水準に一歩々々少しでも近づけようという気持でありますが、考え方に、よつては、法の前に平等でない、特殊の扱いをするのではないかというふうな理解しかお持ちにならないような方々もおられますので、これはそうでなくて、ほんとうに平等にしてもらうための法案であるというふうに、よく了解を得るように今努力中でございます。何分国会の方におかれましても政府を督励していただきまして、これらの政府が考案しつつあるところの遺族救済の法案が成立するように、一段の御鞭撻を仰ぐ次第でございます。
  24. 北澤直吉

    ○北澤委員 ただいまの御説明によつて大体了承したのでありますが、それにつきまして、もしできますならば、関係方面との見通しと申しますか、そういうものが伺えたら伺いたいと思います。
  25. 矢野酉雄

    ○矢野政府委員 実は兒童局長がその折衝中更迭いたしまして、ただいま高田児童局長になつておるわけでありますが、現在の段階においては、まだ本国会中にその独自の法案が提案されるという見通しを持たないのであります。この点むしろ国会の方から大いに推進していただきたいと思つておるような次第であります。
  26. 北澤直吉

    ○北澤委員 次にお伺いしたいのは、少年の不良化を防止する問題であります。終戰後一般に道義が非常に頽廃しまして、特に少年で不良になる者が非常に多いのであります。政府におかれましても、少年の不良化についてはいろいろ手配してあると思うのでありますが、私は少年の不良化を防止するためには、宗教というものをもう少し活用したらどうかという考えを実は持つておるわけであります。先ほど厚生次官からも、精神的な面において物資面の足りぬところを補つて、大いに厚生事業をやつて行きたいというようなお話がありましたが、全然同感であります。こういう少年の扱いにおきましても、精神的な部面でなし得る範囲が相当に多いのじやないか。そういう意味で私は宗教というものを、少年の不良化防止に活用するという点で、もう少し力を入れたらどうかと思う。最近アメリカの雑誌やなんか読んでみますと、アメリカではコース・フオア・クライスト、つまり青年、少年の間に、キリスト教によつて不良化を防止するという運動が、非常に大きな国民運動になりまして、たとえば毎週時間を定めて、全国にそういう放送をするというようなことによつてやつているということであります。アメリカでも戰後この少年不良化防止ということが、非常に大きな問題になつたのであります。私はこういうふうに宗教を活用しまして、少年の不良化を何とかして防止するという方面に、一段の御努力を願いたいと思うのであります。御承知のように民主政治というものは、宗教の裏づけがなければならぬのであります。イギリスにおきましても、アメリカにおきましても、民主政治というものが今日非常な発達の状態にありますのは、宗教の裏づけがあつて初めて今日の姿になつたのであります。私は日本におきましても、青少年の不良化防止につきましては、そういう宗教の裏づけという、精神的方面の活用によつて善導するということが必要だと思うのでありますが、それにつきまして次官のお考えを伺いたいと思います。
  27. 矢野酉雄

    ○矢野政府委員 矢野政務次官といたしましては、ただいまの御主張に全面的に賛成するものであります。ただ宗教は、既成宗教のうちに各種ありますし、特殊の宗教のみにその助力を仰ぐということはできませんので、これはむしろ政務次官の主催というような立場から、ぜひ不良化防止に対する懇談会というようなものを開催したいと考えております。過般来それに直接関係はなかつたのでありますが、都内の雑誌の編集長の参集を求めまして、ヒロポンその他、特にそれらを中心とした懇談会を開きました。不良化防止には、どうしてもジャーナリストの助力を仰ぐことが第一でありますので、この方面の方々の御助力も仰ぎたいと思います。さらに、たとえば岡山の成徳学校のごとき、非常に敬虔な学校長が、職員と寝食をともにして、その成績の向上のために真剣なる努力をせられておるのを見て、私は過般視察して非常に感銘を深くしたのでありますが、そういう方面を担当いたしまする職員の選考等におきましても、なるべく貴意に沿うような人事の刷新をいたしまして、実績をあげるようにいたしたいと思います。いずれまた案を具しましてお答えをすることといたします。
  28. 北澤直吉

    ○北澤委員 二十五年度予算によりますと、平衝交付金の中に二十一億二千三百万円というものがございます。この平衝交付金に織り込まれた厚生施設経費については、全部地方自治体に任せるのでありますか。最近義務教育費について非常に問題がありまして、文部省の方では、平衝交付金のうち、ある標準額をきめて、それをどうしてもまわさなければならぬという場合には、法的措置を講じて地方自治体を縛るというような考えが出ておるようでありますか、厚生省関係におきましてこの平衝交付金に含まれている社会事業につきましては、何かそういうような標準額をきめて、それはぜひもそういう面に使わなければならぬということで、地方自治体を縛るような考えを持つておりますか。
  29. 太宰博邦

    太宰政府委員 お答えいたします。平衝交付金の関係は、不日国会に提出いたしまして、御審議願います平衝交付金法の内容によつて決定いたすのでありますが、大体案として、私どもの聞いております範囲におきましては、地方の各行政につきまして、法律の中において、国から要請する最低限度の規模と内容のものは実施しなければならない。もし実施を怠つておる場合には、当該行政官庁はそれぞれ勧告をする。それでもなお改めないような場合においては、場合によつては平衝交付金の返還を命ずるというようになつております。大体各種の行政につきまして、最低限度の要請は、ぜひともやつてもらうようにいたすつもりであります。従いまして今回の国会に間に合わないかもしれませんが、各種のそれぞれの行政について、どの程度のものを最低限度にするかということを、法律に規定する必要が生じて参るのであります。その規定の仕方が、これもお話のありました文部省の案のように、費用を限つて一人頭幾ら出さなければならないというように書きますか、あるいは費用には触れませんで、この程度の内容の要請はやらなければならぬというふうに書くか、その辺はまだきまつておらぬと思います。
  30. 北澤直吉

    ○北澤委員 もう一点だけ伺いまして、私の質問を終ります。それは厚生省国立療養所の問題であります。この国立療養所におる医者の方から、二、三べん陳情を受けたのでありますが、国立療養所におる医者と、ほかの厚生省の部面におる医者との間に、給與その他で差別がある。同じ学校を出ても療養所の方へ行くのと、あるいは厚生省技官としてほかの面へ行くのとでは、最初は同じかもしれないが、だんだん差が出て来るというような陳情が、療養所の医者の方から来たのでありますが、そういうようなことがあるかどうか。ないことを私は希望するのでありますが、この点をお知らせ願います。
  31. 東龍太郎

    ○東政府委員 同じ厚生省内の医師であつて、勤務が療養所と本省の技官であるのとの間に給與の差があるというお話でありますが、私自身はさようなことがあるとは毛頭、考えておりません。また今までそういうような点についての陳情は、私自身受けたことはございません。もつとも厚生省療養所と他の病院とにおける給與、あるいは他の官庁の人とは給與の差がある、厚生省の方が低いというようなことにつきましては、実際の例をあげて陳情も受けおりますので、われわれもそうしたことの起らないように心がけておりますが、今おつしやられたようなことがあるとは思つておりません。
  32. 苫米地英俊

    苫米地主査 暫時休憩いたします。     午後零時四十分休憩      ————◇—————     午後一時二十一分開議
  33. 苫米地英俊

    苫米地主査 午前に引続いて会議を開きます。  これより質疑を許します。勝間田清一君。
  34. 勝間田清一

    ○勝間田委員 実は今度の厚生関係予算を見まして私は非常に落胆した一人でありますが、去年から今年にかけて、また今年から将来にかけて非常に重大な経済の転換が来ておる。そこに引揚者がおる。まだ戰争の痛手をほとんど回復していない状態でありますので、厚生関係予算がもつと大巾に増額されなければならぬということは、だれもみな私は理解しておるところだと思うのであります。先ほど来、予算が縮小になつたにかかわらず六十数億の増額を見たというようなことも與党の方からございましたげ托ども、これは非常な誤りでありまして、予算の縮小を見たのは、いわゆる価格調整補給金がとれたということなんでありまして、日本の実質的な予算の背景は、縮小條件というものが生れているわけではございません。ましてや国債償還等々に、しかも銀行を通じて千二百七十八億という厖大な金を一面において使つておりながら、他面において厚生予算にわずか三百数十億の予算しか組めないということは、私は非常に遺憾のきわみでありまして、それでまず特に注目しなければならぬのは、社会保障制度に対する要求が国内的にも強いし、社会から、あるいは国際的ないろいろの関係から見て、もうすでに常識になつておるのでありまして、政府も審議会などを設けられたようでありますが、一体これをどの程度本腰を入れてやつて行くつもりなのか。現在の審議会の経過なり、また将来の政府の考え方なり、これをこの際に明らかにしていただきたいと私は思います。
  35. 矢野酉雄

    ○矢野政府委員 社会保障制度充実させるということは御意見の通りでありますが、その充実させる一つの具体的方法として、社会保障制度審議会というものをつくつて、衆議院、参議院からも皆様の御承認のもとに委員を出していただいて、そして内閣総理大臣にその結論を答申していただいて、政府で與えられました予算の発案権等の立場から、それらの民主的に決定せられました結論を、あるいは法案として、あるいは予算化すべく実はお待ちしておるような次第でございます。各部会々々がありまして、それぞれの部会で部分的の結論を得て、今回の身体傷害者福祉法のごときも、その御意見を十分尊重して、この前の国会で協賛を仰いだような次第であります。国民健康保険制度の問題、その他あらゆる問題がこの審議会で相当論議をされまして、そしてただちにこれを政府の案として提出すべきものは早急に提出したい。願わくはその審議会がもつと早く結論を出していただくように、いろいろとお願いをしておるような次第であります。
  36. 勝間田清一

    ○勝間田委員 審議会の報告が出たならば、しかもそれが早急に結論が出ることを厚生省も希望され、その法制化なり、予算化なりをほんとうにやつて行かれるという考えでありますかどうか、それが單なる空文に終らぬようにぜひお願いを申したいと存じます。  それから若干具体的な問題についてお尋ね申したいのでありますが、一つは医薬品関係のことであります。医者というものと、薬というものと、薬をつくる会社というものと、三身一体でなければ、ほんとうの日本の医療関係の社会化なり、公益的な面の助長なんということはできないと私は実は考えるのでありますが、現在は、とかくいたしますと、医療について社会化の面も主張され、ある一は主張もされて行く、あるいは医薬分業等の問題について、薬屋さんについてもかなりのことが言われておる。しかし製造会社についてほんとうに責任ある薬がつくられておるかどうかということは、私は実は非常に疑問に考えておる。ある意味におきましては、薬事法等々によつてかなりの改善を見ておることもわかつてはおりますが、この一番基礎的な條件の薬の製造という面について、私はまだほとんど基礎が固まつておらないと実は考えておるわけでありまして、優秀な薬をつくつて行くために必要な措置というものをどうお考えになつていらつしやるか。私どもとしてはこれの公益化なり、社会化というものを強く主張して参りたいのでありますけれども、その点についての総括的なお考えをひとつ承らしていただきたいと思います。
  37. 矢野酉雄

    ○矢野政府委員 御質問なり、またその質問の中に一つの建設的な御意見も含まつておつたと思うのでありますが、その御意見の面においては、私厚生省といたしましても非常に共鳴する次第であります。製薬会社等の実態はそれぞれ統制管轄する必要のある部面については、それぞれ薬務局長が專任の行政官として監督し、あるいは指導しております。また今回この第七国会に、禁止すべき薬品についてはそれぞれ法案を具して御審議を願うことになつております。それから製薬会社自体をどうして助成してりつぱな薬品をつくるかということについての積極的な面は、総合的計画としてはまだ確立していない、この点は遺憾に思いますが、たとえば直面しておりますストレプトマイシンについては、これが買上げの予算をお願いするとか、あるいは生産促進については見返り資金の導入を要請し、あるいは金融の措置を厚生省当局があつせんする、目下着々その点については進めつつあり、二十五年度のうちには——本年の秋ごろまでに大体五十キロ・グラム程度のストレプトマイシンの国内生産を期しておる。その他各種の薬品につきましては、薬務局内にこれらの審査委員会を設けておりますので、その認可、許可を得ない限りにおいては、かつてに阪元を許さないという制度がありまするので、どんなに各地各処の製薬会社が製品をつくり出しましても、その関門包通らない限りにおいては販売できない。質の悪いものなどが市場に氾濫することのないように、そうした制度を週して十分注意しておるような次第であります。薬品の値段等を社会化するこいう方針についても、それぞれ研究しておるわけでありますが、お説のごとく総合的な一つの企画を立てて、製薬会社の質をよくし、医者と薬剤師と、この三者がほんとうに国民保健の万全を期するために協調して行くという一つの組織と申しますか、あるいは制度と申しますか、そういうものについてもぜひ考えて行きたいと思つておる次第であります。
  38. 勝間田清一

    ○勝間田委員 ストレプトマイシン研究に対して四十一万円ほどの予算が計上されておると私思うのでありますが、この研究費はどういう形で使うというお考えなのでありましようか。
  39. 矢野酉雄

    ○矢野政府委員 ストレプトマイシンの買上げについては、六億三千万円程度の予算なつておりますが、その研究費の問題については、所管の課長から説明させます。
  40. 太宰博邦

    太宰政府委員 この四十一万六千円は、ストレプトマイシンの製造並びに臨床の応用を研究するために、ストレプトマイシン研究協議会というものを厚生省公衆衛生局内に設けまして、大体それを製造の方の研究部門と臨床の方の研究部門とにわけまして、それぞれ年に数回お集まり願つては、その成果を発表し、また研究し合うというような、その協議会の運営に要する費用ということであります。
  41. 勝間田清一

    ○勝間田委員 それから先ほど政務次官からストレプトマイシンのために見返り勘定を使う計画であるということでございますが、今どういう会社が対象になつておりましようか。
  42. 矢野酉雄

    ○矢野政府委員 その問題については、業務局長の代理から答弁させます。
  43. 星野毅子郎

    ○星野政府委員 ストレプトマイシンの生産に必要な設備資金につきましては、本年度においてはマーケットオぺレーシヨンの操作によりまして、生命保険会社あるいは銀行等の持つております国債を日本銀行において買い上げまして、設備資金を出させるということで進んでおるわけでございます。これについては目下審議中でありますが、さらにそれだけでは十分でございませんので、二十五年度の見返り資金にありまする産業資金の中に、厚生省関係といたしましてストレプトマイシンの設備資金の要求をいたしております。ただいま経済安定本部におきまして、各省の要求を調整いたしまして原案を作成中でございます。これに対して厚生省におきましては、まだその金額のわくがはつきり決定いたしておらないわけでありますが、少くとも四つの会社におきまして、この見返り資金を役立てまして、ストレプトマイシン設備資金の一部にさせたいという希望を持つております。会社の名前につきましては、もし具体的に御質問がありますればお答えしてもよろしいかと存じますが、その点四つの会社ということでまだ決定しているわけではないと思います。と申しますのは、会社自体の技術は優秀でも、資本金その他財的の力によりまして、実施を希望いたしましても、具体的の実施につきましては多少その方面からまだ意見があるのではないかと考えております。
  44. 勝間田清一

    ○勝間田委員 こういう重要な新しい薬を新しく日本に取入れてつくつて行く場合に、どういう形でやつて行つた方が一番いいかということは、私は従来からたとえばDDTにしても、その他の薬品にしても考えておつたのでありますが、とかくいたしますると、こういつたものが半面においては非常に濫造になり、半面におきましては、どちらかというと独占事業になるという両方の非常な惡い経験を今まで持つて来たと私は思うのであります。こういうものの行き方については、私は非常に注意を要するのじやないかと実は考えるのであります。将来とも厚生省などで特にお考えをいただきたいと実は思います。  次にお尋ね申し上げたいと思いますのは、薬草関係の問題でありますが、今農村へ行つてみますと、非常に農業の転換期に立つて、適地適作ということが重要になつて来て、山間地などの転換作物として、非常に薬草などが重要になつて来ていると私は考えるのであります。その意味で、その都度今までは私どもなども関係させていただいておつて、厚生省の方にも御関係願つて、事前割当等の供出対象から除外してもらつて、なるべくこれが増加をはかつて参つたのでありますが、二十五年度のこういつた薬草関係の計画をどうされておられるか。それからもう一つは国内需要及び輸出入の関係から見て、どの程度これが日本の経済に役立つと考えておるか、この計画をひとつお尋ね申し上げたいと思います。
  45. 矢野酉雄

    ○矢野政府委員 後段につきましては、当該課長からお答えいたします。その前の御忠告に対しましては十分お説の通りでありますから注意したいと思います。ただいままで政務次官といたしましては、薬務局長に数回にわたつて来席を求めまして、会社の選択及び資金の融資方法の経過、さらにもしも六億三千万円今年二十五年度買い上げましても、その次の年度において全然顧みないという事態が発生しましたならば、これまた非常に次の生産に支障を来しますので、先の見通しもつけて、また会社の設備等についての指導も、專門的に関係方面とも連絡して、国民保健にぜひ役立つような合法的な方法でそれを進められるように、再三注意しておるような次第でございますから、ぜひ貴意に沿いたいと思つております。
  46. 星野毅子郎

    ○星野政府委員 生薬の栽培は、農村の経営の点からも拡張面積をふやしまして、これによりまして必要な医薬品を製造し、ひいては輸入を少くして経済の復興に役立てるようにという御趣旨でございますが、厚生省といたしましては、昨年に比べまして、本年は生薬関係につきましては農村方面のむしろ積極的な希望がございますので、種におきまして配合できます限り、各府県の要望に応じたいという方針をとつております。特に生薬中で、本年になりまして最も要望がございますのは、サントニンの原料であるミブヨモギでございます。この計画は、昨年は国内生産一トンの計画でございました。明年、二十五年度におきましては、一トン七百キロの計画を立てております。すなわち一倍七分の計画を立てまして、それに必要な栽培面積を従来寒冷地のみに限つておりましたわけでございますが、その他のたとえば長野県、山梨県等におきましても、漸次拡げて行く方針を今とつております。ただサ、ントニンにおきましては、国内の需要が非常に多うございまして、輸入をもあとう限りこれを多くしたいという方針をとつておりますので、これらによりましてサントニンの輸入の額が急に減少するという結果にはならないわけでございます。しかし他のたとえば輸出の家庭薬の各種の原料であります生薬等につきましては、漸次国内の栽培面積もふえますとともに、輸入の原料は減少して行くものと存じておりますが、しかし遺憾ながら生薬につきましては、ここ数年間非常に生産方針が中断されるような結果になりました。すなわち食糧の増産の点から奨励がとまつておるわけでありまして、特に明年度におきまして、と口たてでふえるというようなことはないあけでございます。なお輸出に盛んに出ております仁丹等の原料であります阿仙薬は、主として国内、東南アジア等から入つておりますので、急激な変化はミブヨモギを除きましてはございませんが、将来はこの点について御意見のごとき方針で進みたいと思つております。
  47. 勝間田清一

    ○勝間田委員 これは非常にこまかいことで申訳ありませんが、もう一つ最近農村で重要に考えられておりますのは、薬用そばだと思いますが、これもだんだんふえるという状態でありますが、私はそのことをどう厚生省で考えられておるかを御質問したいと同時に、私は厚生省で積極的に指導していただきたいと思う。と申しますのは、農村で薬用のいろいろな作物をつく参る、それで製薬会社と契約をしていろいろやつていられる。ところが途中で製薬会社というものはキャンセルして来るということで、実は農村はひどい打撃を受けております。それでいわゆる生産者と農民と、それから契約者と製薬業者との間において、ほんとうに信用できるような一つの監督をしていただきたいことと、それからもう一つば、間違いなく農村を指導する意味で、ひとつ長い目で見た需要なり計画なりというものを、厚生省が積極的に示していただきたい。そうでないと、農村に非常に大きな打撃を與えるように感じます。特に昨年の作付転換期における農村の傾向かと見まして、憂慮すべきものがあると考えますので、正しい指導と正しい監督を特にお願いしたいと思いますが、これについての考えも承らしていただきたいと思います。
  48. 矢野酉雄

    ○矢野政府委員 ただいまの御意見はまつたく教えられるところがありますので、ぜひその御趣旨に沿うように、農林当局とも十分の連絡をとりまして、二十五年度事業の計画等についても、具体的に研究を進めたいと思います。
  49. 勝間田清一

    ○勝間田委員 次に時間もありませんから簡單にお願い申したいと思いますが、国立病院関係を今度お尋ねしたいと思います。国立病院関係で私は非常に残念に思いますのは、最近国立病院を気がつくたびごとに見て歩いておりますけれども、特別会計という制度を設けたことは、実は非常に早過ぎたのではないかという感じを持つのでございます。というのは設備が拡充もしていない、施設も十分できていないという段階のときに、特別会計というものをつくり上げて、そこで一定の予算のわくをきめてしまうということになると、非常に基礎條件が少しも整わないうちに先走るという傾向になると私は思う。それで現在の国立病院施設、設備というものが非常に不完全であるように私は考えますが、これについて大蔵省に一体幾ら予算を要求して、今度幾らに査定になつたのか、この要求と査定のことをできたらお知らせを願いたいと思います。
  50. 東龍太郎

    ○東政府委員 国立病院特別会計につきまして、これが時期尚早であるという御意見でございますが、これは昨年特別会計法案が国会で審議いたされました際に、この問題については十分御議論になつたところでありまして、結局はこれはその時期の判断、見方に対する御意見でありまして、私どもといたしましては、これを実施いたすにつきましては、その点十分頭の中に置いて運営いたしておるつもりでございます。国立病院施設、設備等は、十分な病院としての施設から見ますと、いろいろ欠点がございます。もともと国立病院というものが、最初から国立病院を建設する目的でつくられたものではなくて、他の違つた目的に合うためにつくられておりましたものを、急に国立病院として性格を変更いたしましたことのために、いろいろと設備の不完全があるのでございまして、その点につきましては、従来も徐々ではありますが充実をはかつて来たわけであります。二十五年度予算上における要求と査定につきましては、今数字を調べてから申し上げます。
  51. 勝間田清一

    ○勝間田委員 それについて最近知つたことでありますが、今度新しく支出官の制度を改めて、前渡金でやつて行こうという制度に改められるようでありますが、この要求は大蔵省の要求なんですか、厚生省の特別の考え方なんでしようか。
  52. 東龍太郎

    ○東政府委員 今お話の院長の支出官を廃して前渡金による方法で運営しようということにつきましては、目下各地区別にそれぞれの病院長協議会等がありますので、その方面に厚生省から出張いたしまして、いろいろと施設の意見等も伺つております。厚生省といたしましては、この支出出目でなしに、前渡金でやるという方法を考えましたのは、昨年以来のことでありまして、もちろん大蔵省とはこれについての利害得失等について相談もいたしておりますが、大蔵省からそういう制度にすべしというふうな御意見を伺つてやつたのではなく、その制度の根本の考え方は厚生省の方から考えついたことであります。と申しますのは、国立病院には本院のほかに相当数の分院を持つております。名前は分院でありますが、その施設は優に一個の病院として独立にやつて行くにふさわしい施設があるのでありますが、これらのものが一つの独立したものとなるためには、それぞれ支出官を置かなければなりません。支出官がふえるということは、これは大蔵省方面の関係でありましよう、支出官をふやすことに対して非常な困難がありますので、そのことからわれわれとしては、病院をそれぞれ独立に運営させたい、りつぱな病院はすべて独立でやらせたいということがもとになりまして、そうするにはいかにすればよろしいかということで、今の支出官制度をやめまして、出張所長を支出官にして、そうして前渡金のやり方で、各病院運営をやつて行く、これならば今の支出官をふやすことなくして病院の独立を見ることができる、この方が便宜であろうというので、それについてのいろいろ利害得失等を数箇月間にわたつて研究いたしておりました結果、かようにいたす方がよりよいという結論を得まして、そうして一応案としてこれを示したわけであります。但しそれに対しましては、各方面からいろいろな御意見がございます。われわれは病院長ができない、あるいは好まないというのをしいて押しつけようという気はないのでありまして、これがよかろうと思つておりますので、今各病院長等とその実績について、これが行われた後にいかなる不便があるか、またいかなるいいことがあるかということについて、十分なる検討をすべく目下折衝中でございます。
  53. 勝間田清一

    ○勝間田委員 目下折衝中であれば非常にけつこうでありますから、この際もう少しお尋ねしたいと思うのでありますが、私は支出官制度というものをふやしても、それは院長なり庶務課長がやるわけでありますから、それはちつとも重大な問題ではないと思う。むしろ出張所長、たとえば私の方で言えば、名古屋なら名古屋の出張所であつて、静岡なり、三島なり、沼津なりという国立病院がその支配下にあるわけであります。そうすると結局中間の出張所長の権限は非常に強くなるかもしれぬけれども、りつぱに病院を預かつている、経験と年齢を経られた病院長等々から見られたならば、これはむしろ非常に弱化される傾向にあると思う。しかも名古屋なら名古屋に一々通つてやつて行く、そのときも前渡金が相当多ければけつこうでありますけれども、前渡金も相当押えられておるということであれば、非常に事務的な官僚主義の干渉は多くなるかもしれぬが、病院はよくならない、私はそう思います。私たちも役人をやつた経験から見て、これはある意味で非常に官僚主義的にはなるかもしれぬけれども、病院運営そのものはよくならぬように私は直感いたすものであります。ましてや東京に通つたり、また名古屋へ同時に通つたりしなければならぬというような状態も出て来る。それから、早く言えば出張所長から押えられて、病院というものの創造性、独立性というものがなくなつて来るというようなことでありますから、研究中であれば、むしろこの制度はぜひやめてもらうように、特にひとつ医務局長にしても次官にしても、この点は真剣にお考えを願いたい。役人としては便宜かもしれぬけれども、病院としては迷惑だろうと私は考えますから、病院主義からひとつお考えを願いたい。私はそう考えます。この点について次官のお考えをひとつ聞かしていただきたい。
  54. 矢野酉雄

    ○矢野政府委員 よく実情を調査いたしまして、できるだけ医療の実績が上るのにふさわしいような制度にしたいと思いますから、お説がそれに合致すればお説の通りにしたいと思つております。よく医務局長と相談いたしまして、各地方々々の責任ある病院長、出張所長等の意見も民主的に総合いたしました上で、結論をつけさせたいと思つております。
  55. 勝間田清一

    ○勝間田委員 もう一つ、今日は病院のことばかり多くて申訳ありませんか、結核関係でひとつお話を聞きたいと思います。今度八千五百ぐらいの病床をふやされるということで、約十億程度の経費の増額もあるようですが、今の結核関係の統計なり、要收容者の数なりから見ましては、これは非常に少い数字だろうと考えております。これだけの増額をされたことはかなりの果論に従つたことではございましようけれども、私はまことに少な過ぎると実は考えております。これも私の方のように、農村をまわつて歩いてみますと、ある地域のごときは、ほとんどもう一軒置きぐらいに病人がおるというような状態、たとえて申しますならば、私は伊東の付近などをまわつて歩きますと、ほとんどそういう状態です。それを收容する場所がなくて実は困つておるような状態です。これは何といいますか、目をおおうべきものがあるといつてよいと私は思うのでありまして、その意味でむしろ今度こういう費用こそ増額すべきだ、ほんとうに思い切つて増額すべきだと私は思うのでありまして、この八千五百ということの出て来たこの基礎をお聞きしたいと思う。必要なる数字というものと、それから八千五百に来た財政的な理由でありましようけれども、来た基礎の数字、これをひとつ聞かしていただいて、こういつたものについてはほんとうに惜しみなく支出すべきだと私は存じますが、その数字をお聞かせを願います。
  56. 東龍太郎

    ○東政府委員 結核の病床数につきましては、お説の通り現在の結核死亡者数、ひいては結核罹患者数に比較いたしまして、現状はきわめて低いのであります。この結核対策につきましては、昭和二十四年度以来、一定の方針のもとにこれを実施いたしておるのでありまして、もちろん最上の方法は、この昭和二十四年度の当初において必要とする最小限度の結核病床をただち院持つ、そうしてこれを百パーセント運営するということにあるのでありますが、いろいろ国の財政上の都合もあつたのでありましよう、私どもが当初立てました結核八万床計画というものは、これを何年度かに割つて実施しな叩ければならないことになつたのであります。そこで私どもといたしましては、これを三年度において実現しようということにいたしまして、二十四年度におきましては最もすみやかに結核病床として使い得るような、そういう未完成の建物整備する、われわれは小整備と申しておりますが、その小整備によつて数千の病床をふやす、そうしてこの昭和二十四年度の三月末におきましては、とにかく四万五千床以上の国立結核病床を持つことができるようになつたわけであります。そこで二十五年度におきましては、四年度よりももう少しよけいに大きな工事をいたしまして、初めて病床となるような既設建物整備、いわゆる大整備という計画をいたしまして、これが今回予算案となつて出ております八千五百床の増床計画でございます。この点につきましても、厚生省といたしまして、結核の増床厚生省の仕事のうちの最も重要なものの一つであるという重点主義に基きまして、特に予算の成立には努力いたしました結果、八千五百床の大整備、一床当り四万円の單価をもつてするこの増床計画ができたのでございます。従つて私どもといたしましては、あと次の年度におきまして、今度はもう整備によつて使い得る建物はないのでありますから、今度はまつたく新しく療養所なりを新設するよりほかないのでありまして、一万数千のものが新設いたされますと、大体当初われわれの希望した八万床計画というものができ上るわけであります。そういたしますと現在の統計に基きますと、大体各府県とも、その府県における一年間の結核死こ者数の半数以上のベットを持つことに相なるわけであります。そこでその新設の計画は二十六年度を待たなければならないわけでありますが、それ以前におきましても、何らかの新設の方法があるのではないかというので、目下とにかくもしもそういうチャンスがありました場合には、一万床以上の新設を要求いたしたいというので、案はすでにつくつて持つておるのでございます。その一万床以上の増床を計画いたしますのは、要するに各府県ことの現在の結核病床数と結核死亡者数との割合を見まして、いかなる県におきましても、これが死亡者数の五〇%を優に上まわる六〇%に近い数になる、全国平均いたしますと、六七%になるように案をつくりまして、これをつまり第三回目の案として、これが完成いたしますれば、大体われわれの必要とする最小限度の病床が確保される。と申しますのは、先ほどからお話のありましたストレプトマイシン、あるいはその他の外科的の結核療法の進歩によりまして、一つの病床が占められておる期間が短くなりますので、病床の回転率をよくすることによつて、これで日本の結核をとにかく減す方向に持つて行くことができる。それ以後は病床がふえればふえるほどけつこうでありますが、とにかくこれをわれわれの第一期の目標として進んでおるわけでございます。
  57. 勝間田清一

    ○勝間田委員 それでは時間が何でありますから、どうかひとつ病床の能率的回転速度を早めるということは、早く死んで回転速度が早まるということでなしにやるように……。どうも現在の状態では遅く治つて手遅れで回転が早くなつておるように見受けるのでありますが、これらについての結核に対する予防から治療に至るまでの総合的な計画で、もし計画がございましたら、資料をお願いしたいと思います。以上で終ります。
  58. 平川篤雄

    ○平川委員 こまかい点は一切省きますが、ただ平衡交付金関係についてお伺いいたしたいと思います。どうもこれは厚生省の方に苦情を言うわけではないでありますが、平衡交付金の問題は一向はつきりしていないのであります。ことに厚生省予算を見ますと、ますます不可解でありまして、これでうまく運用ができるのであるかどうかがまことに疑問なので、その点について少しお伺いをしてみたいと思います。まずこの生活保護法に関する経費でありますが、これの百五十二億というものは本来平衡交付金の中に入れらるべきものがわく外になつたというのでありますが、その理由はどういうところにあるのでございましようか。
  59. 木村忠二郎

    ○木村(忠)政府委員 生活保護法経費につきましては、これを各県の実施の状況を見ますと、各県の人口とか、あるいはその他の既定のいろいろの要素をもちまして各県に必要なる経費がどのくらいになるかということがきめられるのであります。現在でも府県によりましては総人口の五%になつておるところもありますし、援護を受けておりますものが総人口の、全国の五%から四%の間にあるわけでありまして、総額を見ましても、県によりましていろいろと開きがございます。従いまして県單位をもつて計算するということはできない事情から、現在では平衡交付金でもつてやるということについては、相当事務的に困難であるということから来ております。
  60. 平川篤雄

    ○平川委員 ただいまのことはまことにごもつともだと思います。人口とか、何とかいうものできまらないということは、私よくわかるのでありますのところで大体町村單位、都道府県の單位になりますと、従来の経験に基いて大体の数字というものは予想できまずかどうか、その点をお伺いいたします。
  61. 木村忠二郎

    ○木村(忠)政府委員 現在経済界が相当変動いたしておりますので、失業者が急激にふえるとか、その他いろいろの経済情勢によりまして、要保護者の数も変化いたし、従つてこれを予想するということは相当困難ではないかと考えます。
  62. 平川篤雄

    ○平川委員 ただいまの点はごもつともでありますが、同時にこれは特に考えてみなければならないことだと思います。経済力の割合に余裕のございます都市などでは、相当なものに生活保護費を出しておるということは私も認めるのでありますが、農村などに行きますと、当然救恤しなければならないようなものに対してもやつておりません。これは結局最初の法律ができました際の十分の一というものが非常に大きくなりまして、これに耐えることのできない関係から、自然とめてしまうというようなことになつておるのであります。そこでむしろ非常にむずかしいことではありますが、ひもをつけるとすれば、この生活保護費というものにひもをつけるべきだと思います。最初からはりきり大体の見通しというものを立つておいて、予算をある程度組んでおりましても、今おつしやつたように経済界の変動がはげしくて、それでは足らなくなるのでありますが、そこに全然予算を考えていないということになると、ますますそれがむずかしくなるのではないかと思うのでありますが、その点当局の御見解はどうでございますか。
  63. 木村忠二郎

    ○木村(忠)政府委員 国から出します補助関係は大体概算をいたしておりまして、大体三月ごとに、次の三月に必要な経費につきまして地方の状況を見ました上で財源を交付いたします。実際必要な経費については、出し得ないということはほとんどないのではないか、しかもほとんど二割については、地方財政の方においてこれが財源を一応見込むということに相なつておりますので、実際にやる気がありましたら、財源的に困難であるということはあまりないのじやないかと思つております。
  64. 平川篤雄

    ○平川委員 まだ成案になつていないと思いますがへ地方財政平衡交付金法案を見ますと、都道府県から市町村に至るまで更生労働費というものがあつて、その中に社会福祉費というのがありますが、この社会福祉費の中に、平衡交付金としては問題があると思うのですけれども、これと同じようなものを、やはり標準経費として盛り込んでおく必要があるのではないかと思うのです。この社会福祉費の條項を見ますと、人口と児童福祉施設入所者数、この二つだけあげてあるのであります。これだけでは、どう考えましても生活保護関係のものは生れて来ないのではないかと思います。これは交付金ではないのでありますけれども、厚生省としてこれに対して何らかの基準をお示しになる御用意があるのかどうか、それをお伺いしたいと思います。
  65. 太宰博邦

    太宰政府委員 私からかわつて御説明いたします。平衡交付金制度を実施いたします際に、厚生省所管のいわゆる一部補助が総額約二百億ぐらいございますが、その中に平衡交付金に入りましたものが、先ほど申し上げましたように約二十七億、うち六億は従来から地方財政委員会で計上いたしておりました補助職員人件費その他で、実際の補助費は約二十一億、その他の百七十六億は補助金として厚生省の方になお残つたのでございます。その中のおもなものは生活保護費でございますが、この分につきましては、先ほど社会局長から説明申し上げましたような趣旨によりまして、これは特に分離しであるのでございます。しかしながらその分離をいたしましたものにつきましても、地方で何パーセントかの負担分がございます。その負担分は、やはりその地方の基準財政需要と申しておりますが、基準財政需要の中にこれを盛り込まなければいけないのではないか。生活保護のごときは、やつてもいい、やらなくてもいいというような筋合いの補助ではございませんで、それ自体基本行政の一つでございますので、その地方負担分は地方の基準財政需要の中に入れ、国から行きます平衡交付金の一貫として算定して行く。それに対しまして補助金は補助金として行く、かようなふうにやるのが一番よかろう。これは関係当局ともいろいろ相談いたしまして、そういう方針で今進めて行きつつあるわけであります。平衡交付金につきましては一般的に平衡交付金に入りますものの測定標準方式でこれを計算いたすのでありますが、測定標準の方は、何と申しましても十把からげに測定しなければならないというので、大体人口が基本で、その他若干のものが追加せられておりますが、これはいずれもきわめて大ざつぱな測定標準であります。これにある程度補正を加えまして、さらに標準費を付加して総額を出す。しかしただいま申し上げましたように、こちらの生活保護費その他の補助金につきましても、地方負担分については、財政需要の中に見てもらわなければ困るというので、それを見させるような規定が入つてございます。これは基準需要の測定に関する基準の中に入つております。なおこの測定方法は、これはやはり人口その他で測定されたのでは困るのでありまして、きわめて複雑なむずかしい基準をつくり上げて測定しなければいけないと思つて、今研究中でございますので、これは附則の第三項の方にその旨を特に規定してもらうことにいたしまして、厚生省関係のものにつきましては、人口というような簡單なものではなく、別な測定標準を用いてこれをやつて行くということに相談が相なつたわけでございます。大体以上のようなことでありまして、地方の実態を極力正確に把握したい、こういう措置をとつております。
  66. 平川篤雄

    ○平川委員 生活保護法に関する経費については大体了解をいたしました。さてこの平衡交付金が、今おつしやるように二十一億乏、それから従来の補助費六億三千八百万円かを合せて二十七億幾らかあるということになつておるのでありますが、文部省の予算につきまして、大体この予算書の説明を見ますと、二百六十一億三千七百万円余が計上せられておるのでありますが、文部省としては、厚生省のごとくはつきり出していないのであります。というのは、結局千五十億の中にこみになつてしまつて、ひもも何もつけないわくでありますから、従つてそれは文部省の関知するところではないというような態度をとつておる。しかも今厚生省の方ではちやんと一つづつ、たとえば保育所及び母子寮に必要な経費というのを見ますと、交付金とそれから補助願でありますが、そういうものを合せてこの総額を出してある。全部そういうふうな行き方をとつておるのでありますが、これは実際交付金の精神から言いましても、また実際に運用せられる場合を考えましても、当然そういうものに使われるか使われないかわからない。結局都道府県並びに町村の、收入の見込みの百分の七十というものとの差額に対して與えられることになるわけであります。そういう点では厚生省の方における平衡交付金も同じだろうと思うのであります。ところで、かようなことをしておられると、実際にそういう部面に使われるかどうかということは、まず第一に疑問と考えなければならない。ところが先ほどこの生活保護法保護費の関係についてお伺いをいたしましたところ、社会局長は人口とか何とかいう基準ではこれはきまらぬ問題だ、こういうふうにおつしやる。これは当然のことであると思う。ところが平衡交付金の中でも、事務費とか何とかいうようなものは、一般的に今のようにこみにしてやつてもこれはさしつかえないと思う。ところが厚生省のこの予算書を見ますと、たとえば保育所母子寮などの平衡交付金の額でありますが、これを見ると五億三千五百万円ほどのものは、結局保育所の新築が百箇所ですか、百六十箇所ですかはつきりいたしませんが、母子寮の新設が百箇所、職員養成所の新設が六箇所というふうに、これは限られたところに配付せられることになつておる。そうすると、これは先ほどの社会局長のお話以上に一方に片寄つてしまうのであつて、全体にばらまく性質のものではないと思います。こういうようなものが、不良兒、孤兒、浮浪兒の施設もそうでありますし、最もひどいのは更生資金の貸付で、これはほんとうに更生資金を必要とする者のみに必要ではないか、それがやはり平衡交付金の中に入つておる。身体障害者等の保護施設費というものも、やはりそれと同様に、これは奇妙なことになるではないかと思うのでありますが、こういう点の運用はいかが相なつておるのでありますか。
  67. 太宰博邦

    太宰政府委員 御質問の点がちよつとはつきりしておらないのでありますが、ただいま最後にいろいろ引揚者生活資金とかいうお話がございましたが、それは平衡交付金の方には入つておらないのであります。それで一般的に申しまして、厚生省関係補助金を平衡交付金の中に取入れまして、あらかじめ何らかの標準を——しかもそれもあまり複雑なのは不可能でありますので、大ざつぱな標準で出すということが、事柄の性質上非常に困難であるということから、いろいろ関係者と相談いたしまして、そのうち一般的な測定標準ではじいてもさしつかえなかろうというものを選びまして、これを平衡交付金の中に入れました。これがお話の約二十一億の金額でございます。その他のものにつきましては、そういう測定が非常に困難であるというようなことから、これは地方の負担分のみを測定いたしまして、これを平衡交付金基礎となりまする基本財政需要の中に算定する。それから国から行きますものは、やはり補助金として厚生省からこれを流す、こういうことになつたのでございます。それで平衛交付金に入りましたそのものは、ここに申し上げた二十五年度予算の項目別の中に、平衡交付金として何万と書いてございますから、はたしてそれだけそのままその費目のもとに行くと厚生省は考えておるのではないかというようなお話でございましたが、私どもも、これが平衡交付金の方に参りましても、そのままこちらの方へ来るとは考えておらないのであります。平衡交付金制度の趣旨と申しますものは、なるべく地方の自治を尊重して、国があまりこまかいところまで統制することを避ける。従つてこれだけの行政をやつてしかるべきだという、いわゆる基準財政需要と、それからこれくらいの收入があつてしかるべきだという基準財政收入とを、各地方団体について出しまして、その差額を国から交付する、いわば昔の配付税のようなものであります。そうしてあとはなるべく地方団体の意見を尊重して、それを適当に使つてもらう、こういう制度でございますから、ただいま書きました金額がそのままそこに行くとは私どもは考えておらないのでございます。しかしながら何と申しましても、こういう基本的な行政については、まつたく地方団体の恣意によつて、全然使われなかつたり、あるいは必要最小限度を割るような支出の方法をとられたのでは、これはそれぞれ社会福祉並びに衛生に関する責任者といたしまして、所管大臣は黙つておることができないのでございまして、この点につきましては、自治庁等でもその話を進めました結果、国が要請いたします最低限度の規模と内容を持つた行政は、地方団体は必ずやらなければいかぬ。何らか法律もしくは命令でもつてその旨を規定いたしまして、それだけのものは地方に強制する。それ以上の額については、あるいは地方によつてなさつていただけばけつこうでありますし、あるいは地方としては軍点的な方面に使われるということもそれはけつこうだ。こういう建前になつておりますので、金額がそのままそれぞれの項目の使途に使われるとは、私どもも考えておりませんけれども、それぞれの項目につきまして最小限度の行政をやるだけの費用は、この平衡交付金制度によつて財源が確保されておるのである、かような考えをとつておる次第であります。
  68. 平川篤雄

    ○平川委員 りくつはそういうふうになるだろうと思うのでありますが、一つの実例についてお話を願いたいと思います。たとえば児童局関係予算でありますが、不良兒、孤兒及び浮浪兒等の保護に必要な経費というようなものは、これはもう非常に地方的に偏在しておるわけで、東京のような大都市にはそこら中にごろごろいたしております。同じ都市でありましても、戰災を受けていな心大都市には、比較的そういうものはいない。幾ら小さな町村でも、戰災を受けておるところには相当いるものであります。こういうものを、たとい附則の方に定めてあります更生費に対する測定標準は、政令によつて特別なものにするというようなことを考えましても、なおこれは一方に偏したというか、そういうような種類のものであろうと思うのでありますが、こういう種類のものは、この平衡交付金として支出すべきでない、むしろ補助金として必要なところに出す方が間違いがないと思うのであります。それから身体障害者の保護にしてもそうです。あるいはほかにもあると思いますが、保育所、母子寮なぜを公共事業費として見てあるのは、今私の指摘しましたように、百箇所そこいらのことなのでありますが、ここにあるのは結局、その人件費とか、あるいは指導費とかいうような種類のものであろうと思います。そうすると、これは現存の各町村などを考えてみましても、母子寮や保育所を持つているところは少いわけです。総額は五億三千五百万円ほどありまして、道府県では千万円ばかりでありましよう。これを町村に割りますと、いくらにもならない。そういうようなもので、これをどうしてもやらなければならないものとして規定をいたしますことは、非常にむりがあるのじやないかと思うのです。こういうことは、いくら厚生施設が大切だと言いましても、国家が相当積極的な補助をするか、あるいはしないならば漸次にこれを行つて行く、あるいは季節的なものから常設的なものに持つて行くというような段階をつけてやるべきでありまして、そこにやはり地方の自発的な意思を、その前に考えてみなければならぬ点があるのではないか、こういうふうに、自由にさせようと思つて交付金にしましたばかりに、かえつて政府の見なければならない経費を地方財政にしわ寄せをする結果になつて来ることは、考えてみなければならない問題だと思います画こういう点について御見解をお伺いたい。
  69. 太宰博邦

    太宰政府委員 平衡交付金制度そのものは、御承知通り昨年の夏のシヤウプ勧告、それから一番大事な付録の分は秋になつて発表せられまして、非常に広範なものでございますと同時に、日本の行政の機構にまで影響を及ぼすような大きなものであります。あれに基いて、その後鋭意政府の方において実施を進めて参つたのであります。従いましてその時間的な余裕という面もなかなかございませんし、われわれといたしましても初めての制度でありますから、研究しながら進んで来た。従いましてあとから振返つてみますと、もう少しこうすべきだつたんじやないかと思われる点もなきにしもあらずであると思います。ことに御意見の点は私どももうなずける点もなきにしもあらずで、まことにけつこうだと思う点もございます。しかしながら今日の状態といたしましては、なおかすにもう少し時間をもつてしていただきまして、これは自治法の方でも全面的に一度これを検討する必要があるのではないかと考えておりますので、草々の際というところで、いろいろ御意見の違いました点は教えていただくようなことにいたしまして、現在のところわれわれはこういう方針で進んでおるということで、御了承願いたいと思います。
  70. 平川篤雄

    ○平川委員 政務次官にお伺いいたします。ただいま御答弁がありましたことによつて、この予算はあるいは組みかえをしなければならないかもしれないということが予想せられる、また実際今の御答弁によらなくても、私は文部省の関係平衡交付金の問題につきまして、まだ地方自治庁の態度もはつきりしていないということを明らかにしておるのであります。かような点について、平衡交付金法案なんかも現在提出されておらないのでありまして、この予算審議には非常に停滞を感ずるわけであります。ことに場合によりますと組みかえも必要ではないかというような御答弁ではないかと思うのでありますが、その点について政務次官はどういうふうにお考えでございますか。
  71. 星野毅子郎

    ○星野政府委員 さいぜんからの御意見並びに御質問は、結局平衡交付金制度が初めて勧告によつて今法文化しようとしておる際でありまして、ああもしてほしい、こうもしてほしいという御意見は、まつたく私ども同じようなことを、この法案の甲に厚生省関係の方を織り込む場合に、実は率直に申し上げまして、いろいろと意見を持つておる次第であります。現段階におきましては、ただいま社会教育局長並びに会計課長から答弁申し上げましたような段階に達しておりますが、さらに大臣ともよく検討いたしますし、これは関連するところが、御説のごとく文部省の重大な予算、ひもつき予算の問題等もありますので、これは再検討いたしまして、またそれに対するお答えは大臣からもするようにいたしたいと思つております。
  72. 平川篤雄

    ○平川委員 ただ一つだけ申しまして結論づけたいと思います。私は平衡交付金の制度についてああもしてもらいたいとか、こうもしてもらいたいとかいう希望を持つておるのではないのでありますが、うまく運用ができるか芝うかということ臓ついて非常に心配をいたしておるのでありまして、そういう点についてひとつ御検討相なりまして、まだ地方自治庁の方もきまつていないようなことでありますので、なるべく早く態度をはつきりして、それによつて全体の予算をまた再検討せられるならば、これは率直にやつていただきたい。そうしないと、平衡交付金の制度がシヤウプ勧告によつて本年初めて実施せられるのだから、時をかせと言いましても一年間非常に苦しむわけでありまして、ひとつ率直にその点は御反省を願うことを希望いたしまして、私の質問を終りたいと思います。
  73. 苫米地英俊

    苫米地主査 時間が大分過ぎておりますので、まことにあとにまわつた委員各位にお気の毒に存じますが、ごく簡潔にお願いいたします。世耕弘一君。
  74. 世耕弘一

    世耕委員 御注文がありましたから、ごく簡単に要点のみを三、四お聞きして終りたいと思します。最初にお尋ねいたしたいのは、性病に肺病というものは、結局その国の亡国病ともいわれるように考えられるのでありますが、最近におけるこれが厚生省の対策等に対して、まず簡單に御説明を願いたい。
  75. 三木行治

    ○三木政府委員 肺結核並びに性病に関しまする国の対策に関する御質問でございます。簡單にお答えいたしたいと思います。御指摘になりましたように、まず結核につきましては、昭和二十三年度の統計におきまして十四万五千三百というような数字でございまして、往年の昭和十八年におきまする十七万何千という数字に比べますと、幾分改善せられておるのでありますけれども、しかしながらわが国の死因の第一位を占めておるのでありまして、また比率から申しますと万対十八、人口万に対して十八の死亡率でありまして、これはアメリカの万対三・七というのに比べますと、六倍近い数字でありまして、これによる損失も一千億円というような経済的損失も考えられるというくらいでありますから、当面最大の問題であると思います。まつたく私どももさように考えておるのであります。これに対する対策といたしましては、もちろん衛生施策の前に国民生活安定の施策が先行しなければならないことは、言うまでもないことでありますが、衛生施策といたしましては、まず施設と人という問題でございまして、施設といたしましては、予防指導を行います施設であります。これは保健所が中心でございまして、六百八十九箇所、来年度におきましては七百四箇所になる予定でありますが、その保健所に結核專任医及び保健婦を設置いたしまして、なお必要なレントゲンその他の機械類を整備いたしております。そのほか職域病院、あるいは診療所というようなものを指導施設として充てておるわけであります。また收容施設といたしましては結核の療養所、これは国立も私立もございますが、現在七万病床という結核療養所を持つておるわけであります。そのほかに国立病院及び一般病院、あるいは後保護施設というような施設があるわけでありますが、これらの指導施設及び收容施設をもつてやつております。事業と申しますものは、まず健康診断でございます。健康診断によりまして、これは結核予防法に定められておりますところの病毒伝播のおそれのある者、あるいは患者の家族に対する健康診断をまず行い、その健康診断の結果、たとえば結核未感染者につきましてはBCGの接種をやる。このBCGの接種は、予防接種法によりまして、零歳から三十歳までの未感染者にBCG接種をやることになつておるのでありますが、BCGの接種をやりますと、これはわが国の成績で輝かしき成績でございますが、死亡者は十分の一、発病者は二分の一に減るというようなことになつておるのでありまして、結核にかかつておらない者につきましては、BCGの接種をまずやります。すでに感染をいたしておる者につきましては、これの健康診断指導措置といたしましてのいろいろな措置、あるいはその者が結核発病の指導を必要といたしますような場合ならば、日常生活において結核予防に專念できますような指導をやる。またすでに発病しておる者につきましては、訪問看護をやつて行く。それに経済上の問題もございますならば、医療社会事業といたしましての健康保険、あるいは生活保護法との連絡をつけるというような指導をやつております。そして病状によりましては、これを入院せしめる。これは收容施設に收容するのでありますが、そういうふうにやつて参ります次第でありまして、その間におきまして、ストレプトマイシンというような、結核のあるものにつきましては非常に特効を有するものもございます。そういう症状を有する者につきましては、ストレプトマインを使い、あるいは症状によりましては人工気胸療法、あるいは胸郭整形というような外科的な手術をやるというようなことをいたしておるのであのまして、その成積は相当によい成積であると考えられるのであります。ことに私どもが望みを嘱しておりますのは、BCGの予防接種でありまして、昭和三十三年度におきまして、あるいは二十四年度になりましても、依然として成壯年層の死亡率が非常に減つて来ておるという実情は、やはりBCGの接種の成功を示すものではないか、もちろんそれだけではありませんけれども、そういうふうに考えておる次第でございます。こういうふうにして施策を強力に推進いたしますならば、わが国の結核の問題も、結核死亡を減して行くことが可能である。まず私どもといたしましては、これは私どもの希望でございますが、まず五箇年以内において、結核死亡を半分になし得るのではないか。それを目標にして努力を続けておるというような現状であります。  なお性病の問題でございますが、性病もやはり本人のみならず、子孫にも悪影響を及ぼすところの非常に悪質な疾愚でございますので、この現状につきましては、終戰前におきましては認めるべき統計がございません。ただ壮丁検査におきまして、肉眼的な検査をしてみると、約一%罹患しておる、かように言われております。また一般人の血清反応、これは小範囲の一つの村、一つの職場において血清反応をやりました成積は、六ないし七%という数字が出ておるのであります。昭和二十年十一月二十二日から届出制度ができまとて、相当正確だと思われる統計ができるようになつたのでありますが、その数字を見ますと、黴毒に例をとつてみますと、昭和二十一年で七万五千六百人、二十二年で十四万七千八百人、二十三年で二十一万六千八百人、それから二十四年では十八万五千七百人というような数字になつておるのでありまして、これらの数字は、ただいま申し上げましたように、終戰前の数字と比較をいたすことができないのみならず、この届出の成績につきましても、当初におきましては習熟しておらなかつたということも考えられますので、昭和二十一年が黴毒について七万五千人であり、二十四年が十八万であるから、これは相当にふえたと言うことも早計には言えないと存ずるのであります。ともあれこの四年間を比較いたしてみましても、若干下りぎみにあるのではないか、かように考えておるのであります。これらに対する施策といたしましては、まず何と申しましても、性病予防法によります健康診断であります。健康診断をやるということによりまして、疾病を発見することができる。そうしてそれらによつて発見せられたものにつきましては、診療所あるいは代用診療所、あるいは性病病院というような、国が補助いたしております施設がございますので、それらの施設によりまして、外来あるいは入院というような方法によりまして、治療をいたしておるのでありまして、その治療にあたりましては、淋病等につきましては、ペニシリンというような非常によくきく薬が出て参りましたので、これらを使うことによりまして、また黴毒、軟性下疳、第四性病等につきましても、それぞれマフアルセンでありますとか、あるいはチアゾールというような薬が出て参りましたために、治療の方面におきましても相当な進歩あるいは良成積を示しておるということが、言えると思うのであります。一番私どもが性病の問題につきまして、対策として重点を置いておりますのは、もちろんこれらの施設及び人も重要でありますけれども、国民性病に対する理解ということであります。この性病に関する国民衛生教育という面を最も重視いたしまして、健康所あるいは性病診療機関等をあげまして、これらの認識を深める方向に向つて努力いたして、その上に施策を流して行くという努力をいたしておる次第であります。  以上簡單でございますが、お答え申し上げます。
  76. 世耕弘一

    世耕委員 大体了承いたしました。次に、病気にかかる動機等について、どういうふうな対策をとられておるか。たとえば集会所とか、あるいは大きな工場とか、事務所とかいうところでは、一人の肺患者のために、知らず知らずのうちに同僚にうつしたという例か相当多いのであります。こういう点に対して、相当な対策は立てられておるようであるけれども、まだわれわれは満足ということは言えないと思う。この点が一つ。  もう一つは、今局長さんがお話になつておられましたが、性病あるいは結核に対する一つの認識、病気に対する認識が日本では非常に足りない。この教育をまずすることが非常に大切ではないか。それには映画等を利用して、性病にかかつた場合はこういう結果になる、あるいは肺病にかかつた場合にはこういう結果になるということを、フイルムをたくさん製造して、できるだけ学校とか、あるいは映画館なりで、一週間に一回とか何とか必ず映画を見せるというような、積極性を持つことが必要ではないか、こういうふうに私は考えるのですが、こういう点について、何か御計画がおありになりますか。
  77. 三木行治

    ○三木政府委員 まず病気にかかる動機に対する対策でございますが、これはまつたく国民の自覚ということが大切でありまして、ことに性病の場合には、それが一番大切なことになります。結核の場合は多少違つておりまして、都会生活をやつております満三十歳の成年につきましては、八〇%が結核にかかつておるのでありまして、かからないということは呼吸をしないということを意味するがごときものでありまして、やむを得ないと思います。ただ結核の場合におきましては、かかつた後の措置、あるいはかかる時期を知つて、それに対する処置をする。また性病につきましては、ただいま申し上げましたような、自覚であります。さらに私どもの性病対策の根幹をなすものは、接触者調査でありまして、性病にかかつたということがわかりますと、医師保健所に届出なければなりません。そこで保健所は、その患者さんにつきまして、どういう動機で、どういうところで、だれから病毒をうつされたか、ここへ来るまでの間にだれかにうつすような行為をしましたかというようなことを調べまして、そうしていもづる式に調べて行くことによりまして、それぞれの機会におきまして、病気にかからない、そういう動機をつくらないというような教育もやつておる実情でございますが、全然病気にかかつていない者につきましては、保健所あるいは保健所には普及課と申しまして、衛生知識を普及いたしますことを專門の目的といたしておりますものを設置してございます。そこにおきまして、いろいろなプログラムを立ててやつておるわけであります。また私どもといたしましては、それぞれの職域におきまして、ことに船員等につきましては、それぞれの協会等の御協力をお願いいたしておるような次第であります。  なお、御指摘になりました映画等でございますが、これはまことにけつこうなことであり、同感でありますけれども、私どももさような映画を二、三つくつてもらつてやつております。ただ性病の困難さは、あとう限り家族とともに見られるような上品なものにしたい。ろうそくのごとくだんだん減つて行くのであるというような、そういう本を見せて恐怖心を起させるということはほんとうのことでございませんので、問題は映画というものによる教育が非常にむずかしい、どういう階層を標準にしてやつて行くかということ、それからそれが非常に早くまわりますので、やはりこれと連関してあとでパンフレットでも読ますというような精力的な教育を続行いたしませんと、十分な成果を上げ得ません。しかし御指摘の点につきましては、十分努力をしておるわけであります。
  78. 世耕弘一

    世耕委員 大体了承いたしましたが、私は結核とか性病というものが、いかに人生に苦難を投げかけるものであるかということを、若い者にでも頭の中にしみ込ませて行けば、そこにみずから自覚して、予防等になるし、また早期診断を受けることになる。そこが一番重点じやないかと実は私は考えておるので、この際厚生省が進んでそういう方面で、興味と学術と医療方面からいい映画をつくつていただくと、非常に効果的であろうということをお願いしたいのであります。  次にお尋ねいたしたいのは、一般に文明病とも言われておる精神病者でありますが、ある医学者の説によると、都会人は半分精神病者だというような批評までしているのであります。こういう点について日本人の健康状態の最近の統計はどうなつておりますか。
  79. 三木行治

    ○三木政府委員 御指摘になりましたように、精神病は文明病とも言われまして、アメリカ等におきましては、わが国でやかましく言われております急性伝染病のごときものはもうほとんどないくらいでありますが、精神病は相当に多いのであります。わが国におきましては、これに対する対策は、精神衛生強化ということが叫ばれておりますし、私どもも大いにやらなければならぬと考えておるのでありますが、実際は十分にやつていない点は申訳ないと存じます。まず精神病者がどのくらいあるかということでありますが、これは大ざつぱに国民の約一パーセントと言われておるのであります。そのうち公安を害するおそれがあるから入院しなければならぬという者が八万あります。しかも現在入院しておる者は一万八千人という状態であります。この精神衛生対策はこれから大いに努力を要する部門である、かように考えておる次第でございます。
  80. 世耕弘一

    世耕委員 最近売出しの文士の中に、自殺したり、首をつつたりあるいは投身したりして話題を多く投げかけている。しかもそういう文士の書いたものを好んで若い者が読むのでありますが、これは剛健質実という建前から言うと、国家にとつて非常に嘆かわしい現象だと思うが、そういう方面について何か御調査なさつたことがございますか。
  81. 三木行治

    ○三木政府委員 格別そういう特別な調査を行つておりませんが、適当な機会におきましてぜひやりたいと考えておるような次第でございます。
  82. 世耕弘一

    世耕委員 私はいわゆるそういう精神分裂症とでも言いますか、そういうようなものがかなりあると思うものでありますから、そういうところにも観点をおいていただいて、りつぱな文芸並びに芸術の現われるよう御指導願いたいと思います。  時間がありませんから、簡單にお尋ねいたしたいと思いますが、先般の議会で不良薬品の取締り強化厚生省にお願いいたしましたところ、さつそく実行していただいて、私はまことに感謝しておる次第であります。なおこの上ともその点御考慮を願いたいと思うものであります。  一般患者の立場からかりに考えてみますと、かかりつけのお医者さんに診察をしてもらつて、さて入院ということになりますと、開業医では入院の室を持つていない。そのために別の病院へ入つて治療を受けるということで、患者にとつて非常に不安と苦痛を受けるという場合がある。こういうところから欧米先進国では、貸病院というものができておつて、それに万般の施設があつて自分の好きなお医者に、その病院に入院しておつて自由に診察を受け、治療してもらうという例があるのですが、厚生省はこういう点についてどういうお考えを持つておりますか。
  83. 東龍太郎

    ○東政府委員 病院経営の形態でございますが、今お話のような形は、日本では嚴密に申してまだございません。またそういうものが今計画されておるということも聞いておりませんが、それはアメリカあたりで申します、いわゆるオープン・ホスピタルという形だと存じますが、私ども全体の方針としては、将来ますます完全な医療施設を個人で建設経営するのが困難であるという見通しからして、設備の完全な公立あるいは国立病院等が、今のようなオープン・ホスピタルの形態をとることはけつこうであるという考えを持つております。しかしこれがすみやかに実現せられますかどうかについては、多少の疑いを持つております。現在山口県で一箇所さようなオープン・ホスピタルの形態をとつておるものがあるという報告を衛生部長から聞いております。従つてこの過渡的な状態を救いますために、おそらくこの国会で御審議を願うことになると思いますが、医療法人という考えを持つております。数名もしくは何名かのお医者さんたちが共同で病院経営して、それぞれその専門に従つてその病院治療をされるということの便宜をも考えまして、特別な医療社団、あるいは財団法人というようなものを今案をつくりまして目下提案の準備中でございます。
  84. 世耕弘一

    世耕委員 さような場合に政府は補助金あるいは低利資金を貸すという御用意はございますか。あるいはそういう方に持つて行こうと思つておりますか。
  85. 東龍太郎

    ○東政府委員 政府の医療機関に対する補助金といたしましては、医療法の中にもございます通り、公的医療機関に対しては、国がその建設費を補助することができるようになつておりますが、実際問題としてそれが十分活用せられていない。これはいろいろ財政上の問題もございますが、ただ緒についたというだけでございます。従つて個人の私営の病院等に対して国が補助金を出すということは、まつたく考えておりません。ただしかしながら融資等のことにつきましては、便宜を供與するということは考えております。
  86. 世耕弘一

    世耕委員 次に私たちときどきいなかに行つたとき、傷痍軍人の中で片足がなくなつた、あるいは両足がなくなつたというもとの兵隊さんから、いろいろな陳情を受けるのですけれども、今でも傷痍軍人としての手当が将校と兵卒と区別されて補助等をもらつておるというふうに聞きます。これははなはだ不公平じやないか。つまりちよつと足をけがした将校はたくさんの金をもらうが、私たちのように両手、両足を失つた者に対してはわずかの給與しかもらえないという不平を聞くのでありますが、この点はどういうことになつておりますか。
  87. 岡林諄吉

    ○岡林説明員 ただいまのお尋ねは本来恩給局長の方から答うべき筋合いのものと考えるのでありますが、私今まで恩給局長からもそのわけ合いについて聞いたことがありますので、お聞きしたところをお伝えしておきたいと思います。元の傷痍軍人に対しますいわゆる傷病恩給のみが旧軍人に対する恩給制度として現在残つておるのでありますが、それになぜいわゆる階級に応じた恩給が渡つておるか、現在軍人というものはないし、もちろん階級というものはないはずにかかわらず、なぜそういう制度が残つておるか、こういう点でありますが、それはお聞きしたところによりますと、やはり恩給という形態をとつたということが基礎観念でございまして、恩給は従前国庫に官吏がそれぞれ納金をいたしまして、それが一つの恩給の基礎なつておる。それに恩給額の算定の基礎は、退職時の俸給というものが基礎なつておるというところから来ておりまして、ただ軍人の関係は文官と違いまして、退職時の俸給が幾らであつた者に対してはこれだけの金額を恩給としてやるというように、分割拂いになつておりますればあまり目立たない点でございましようけれども、かつての軍人は階級と俸給というものが一致しておつたわけであります。それで俸給といいまして、も、同じ階級の者であつても上下がありますので、そこで一つの仮定俸給というものをきめまして、しかもそれに職名といいますか、官名を持つて来た、その関係で実はこうなつておると聞いております。
  88. 世耕弘一

    世耕委員 それは大体私も了承しておりますが、非常に不公平ではないか。今日の思想から考えると、むしろ本人の傷害の程度において支給するということが最も穏当だと思いますが、この点は今後御注意願つておきたいと思います。  それから生活と犯罪ということが非常に問題になつておるようでありますが、最近は生活苦から自殺者がかなり多く出ておるようであります。これは憂うべき現状だと思います。過去の統計あるいは日本の人情から言いますならば、経済的に食えないから自殺するということは、日本ではあまり例がなかつたように思います。むしろ他人に侮辱されたとか、あるいは名誉を毀損されたというために、みずから潔白を示すために自殺するというのが日本人の特有となつており、ヨーロッパにはそういうものは少かつたのでありますが、最近は日本で食えぬから自殺するという者が多く現われて来たということは、そこに日本人が肉体的に、精神的に欠陷があると私には考えられるのであります。さような実情にもしぶつかつた場合には、厚生省としてはそれぞれの機関を通じて、私は科学的に研究をしていただきたいということを特にお願いいたします。  なお最後に一点お尋ねしておきたいのは、官庁職員の結核の罹病率が案外多いのではないかということを、実は痛感するのでありますが、この点は私の憂えるようなことがないかどうか。あればこれは非常に憂慮すべきことであります。知識階級としてみずから認識し、また世間もそう認めておるその官庁から多くの患者を出すというようなことは、何かこれに落ちがあるのではないかということを言いたい。  それと最後にもう一点、スポーツが非常に振興されておりますが、近ころ自転車競争とか、そういうようないろいろな競争が行われて、自然に健康を害し、いろいろな弊害を一面に残すようになつて来ておりますが、学校関係のスポーツは文部省で管理しておるが、最近流行しておる競輪等はどこの管轄になつておりますか。厚生省が一枚加わるべき性質のものじやないか。むしろ国民運動という建前から解釈してはどうか、その辺の御見解を承りたいと思います。
  89. 矢野酉雄

    ○矢野政府委員 ごもつともであります。ただいまのところ通産省の管轄、通産省の許可のもとにやつておりますが、国民保健上非常に憂慮すべき事態か発生する可能性があれば、よく各省と折衝いたしまして、厚生省所管に腐すべきものでありますれば善処したいと思います。それからその前に質問でなくて御意見の点があつたようでありますが、その御意見を十分検討いたしまして、それにおこたえできるようしたいと思います。
  90. 苫米地英俊

    苫米地主査 厚生省関係が済んだあとに労働省関係がありますので、ごく簡單にお願いします。春日君。
  91. 春日正一

    春日委員 簡單という御注文ですから、御趣旨によつて簡單に質問しますから、当局の方からも要領よくやつてもらいたいと思うのです。一番簡單な問題からお聞きしますが、この予算書を見ますと、甲種看護婦試験の費用云々というのが出ておりますけれども、この看護婦試験は大体九月ごろだそうですが、これをやつて合格しない場合、あるいは受験しない者は乙種になる。乙種になると衛生婦的なものにされて、今までのような仕事ができなくなるというように聞いておりますが、大体その辺はどうなりますか。
  92. 東龍太郎

    ○東政府委員 現在の旧制度による甲種看護婦が受験をして、もし受からなかつたあとの処置についての御質問でありますが、私どもといたしましては、試験を受けるだけの準備をせられた人は、全部甲種になつてもらうように何とかいたしたいと思つております。受験をしなかつた者につきましては、これも新しい制度による乙種看護婦にただちになるのではないと私は考えておりまして、旧制度の看護婦のまよで残るだろうと思つております。
  93. 春日正一

    春日委員 そうすると大体試験を受ければみんな通るということを目安にしておるというふうに了承していいわけですね。それから受けるにしても、やはり試験の準備その他で相当自分で経費を負担しなくてはならぬという状態になつておりますけれども、現在看護婦のいろいろな給與その他の條件を見ても、この負担は非常に辛いもので、実際に持てないものだ。そこでどうしても政府で再教育する新しい制度をつくるんだから、政府の方に責任があるのではないか。とにかく試験を受けて今まで看護婦をやつて来た者を、政府で新しい制度をつくつて転換させようというのだから、当然政府でもつて再教育費用を持つて、そうして試験に受かるようにしなくてはならぬというふうに思うのですが、あの養成所の費用というのは今年は零になつておる。これは非常におかしな話だと思うのですが、なぜそういうふうなことをされるのですか。
  94. 東龍太郎

    ○東政府委員 そういういろいろの困難な事情につきましては、あの制度ができた当初から、特に私どもの方としては国立施設看護婦を通じていろいろと陳情を聞きました。それについてできるだけさような困難を少くするために、われわれとしてはできるだけの努力をいたしたつもりでありますが、不幸にしてそれらの要求を全部かなえるような結果にならず、国において養成所をつくるということも実現しないで済んだ次第であります。
  95. 春日正一

    春日委員 そうすると、結局養成の方はもうほとんど全部やれない、準備は自分でしろ。試験を受けるにも、本人がたとえば地方から出て来るというような場合、経費は自分で出さなければならぬことになるのですか。
  96. 東龍太郎

    ○東政府委員 国家試験でありますし、同時にまた受験生が多数でありますから、受験生の今のような不便を省くように、また旅費等の経費も省くように、受験地をなるべく多数設けるというふうな考慮を拂うつもりでおります。
  97. 春日正一

    春日委員 これで大体質問の要点だけわかつたから、この問題はそれだけにします。  次にちよつとうるさい問題ですが、例の引揚げの問題です。本年度約三十六万と予想せられるということを前提として予算を組んであるようでありますが、未引揚者の特別給與法その他三つばかりそれに関連するような法律がありますが、それによつて二十四年度においてどれだけの人が救済をされておるか。その実数をお知らせ願いたいと思います。
  98. 田邊繁雄

    ○田邊政府委員 一月末現在で、未復員者給與法または特別未帰還者給與法によりて扶養手当を受けております人数は十二万四千人、世帯にして約四万四千世帯になるのですが……。
  99. 春日正一

    春日委員 そうすると四万四千世帶で十二万人ということになると、あとの三十六万人というものは全然身寄りのないもの、こういう推定ですか。
  100. 田邊繁雄

    ○田邊政府委員 あとの数字については、これは御承知通り本人からの届出によつてやるわけでございます。御承知通り扶養手当は妻子供に対して支給されることになつておりますので、そういつた係累のないものには、留守宅があつても渡らないことになつております。
  101. 春日正一

    春日委員 そうするとこの未帰還の三十六万という数字は、この間も問題になりまして、吉田総理の方であれは大体想像の数字であるというようなことを言われたこともあるのですけれども、この三十六万という数字中、四万四千というのは、金が欲上いと言つて届出をして来た人、欲しくない人ももちろんあつたでしようが、残つておる人はどのくらいあるでしよう。この点は調べがありますか。
  102. 田邊繁雄

    ○田邊政府委員 未帰還者の留守家族については目下調査中でありまして、留守担当者がないとか、あるいは縁故者がない、またいろいろな理由によつて不備な点がありますので、目下いろいろと補備に努めております。
  103. 春日正一

    春日委員 そうすると、うるさい議論は省きますが、この三十六万という数字は大体あてずつぼうのものだ。こういうふうに理解していいですか。
  104. 田邊繁雄

    ○田邊政府委員 三十六万の数字の基礎を申し上げますと、これは昨年の四月、つまり引揚げの再開される前でございますが、在外邦人引揚統計によります未引揚げ推定数の四十六万九千人から、二十四年度において帰還を予想せられます未帰還者九万五千、これは軍人軍属でございます。それから一般邦人の一万四千等を差引いた数字でございます。
  105. 春日正一

    春日委員 四十六万という数字は非常に議論があつたわけです。そうしてこれの基礎資料というものが出されてないのです。だから今アメリカとソ連の二つの大きな連合国の中で、片方では九万五千だと言つておる。片方では四十何万だということで、数字が食い違つておる。だからそれを除くものは日本の資料になくちやならぬ。ところがそういう点が今までちつとも発表されておらない。そのために衆議院で懲罰問題まで起きておる。この点はひとしく国民の望んでおるところだから、国際的にみても日本の政府が数字を発表することによつて、この両大国の間の見解の食い違いというものを取除くということは、連合国に占領されている日本政府の義務だと思う。だから日本政府のどれだけやつてどうなつたという資料をここで聞かしていただきたい。そうでないと三十六万という数字で予算を組んだと言つても、あてずつぽうの数字で予算を組んだと言われてもしようがないことになる。
  106. 田邊繁雄

    ○田邊政府委員 先ほどお話いたしましたけれども、四十六万九千人から二十四年度の帰還予定人員を差引いた数字が三十六万人であります。なおわれわれといたしましては、そのうちではたして何人帰つて来たか。こういう点につきましては、帰還者の予定が先方から正式の通報のない今日、正確に判断しかねるような状況にございますので、受入態勢の万全を期するという意味から、予算案に入れたような一応の準備をしておく必要があると考えます。
  107. 苫米地英俊

    苫米地主査 もうこの問題は、本会議においてもまた他の委員会においてもしばしば論議され、繰返された問題でありますから、本日時間のないときに、この重複は避けていただきたいと思います。
  108. 春日正一

    春日委員 それではこれは私の方として納得いかぬということで了解しておいて、その次に引揚げて来た人の援後の問題ですけれども、現在実際ソビエト地区から引揚げて来た人たちで、就職がほとんど東京では二割くらいしか行つてない。こういう人たちの援護をどういうようにしてやられておるか。
  109. 田邊繁雄

    ○田邊政府委員 最近帰つて参ります方の援護の重点は、お察しの通り就職就業の問題、住宅の問題だろうと思います。就職の問題は御承知通り労働省の所管でございますが、引揚げ援護と非常に重要な関係がございますので、地方におきましては引揚援護庁と労働省、県庁におきましては民生部と労働部、市町村と職業安定所とも密接な連絡をとりまして、その点の推進に当つております。御承知通り職業安定法では、区別して紹介するということは禁ぜられておりますが、実際問題としては引揚者に対しては特別に考慮を拂つて積極的に就職あつせんをはかつております。従いまして従来の統計によりますと、一般の人よりは若干就職率がいいように承つております。  なおただ職業紹介所の窓口でお世話するというだけでは必ずしも万全と申せませんので、いわゆる国民援護といたしまして、地元の援護あつせんということを極力勧奨しております。それから今日のような状況でありますので、就職にも歩留りがあるのではないか。しかしソビエトからの帰還者等は年も若いし身体も丈夫でありますので、自分で働こうとする意欲も相当あると考えられますので、特に昨年暮れの国会におきまして、二億円の更生資金の増額と申しますか、追加をお願いいたしまして、これは引揚同胞対策審議会の決議の次第でございますので、主として新規引揚げの失業対策の一環として重点的な貸出をする。こういう方針で各地方に指示をいたしておるような次第であります。
  110. 春日正一

    春日委員 努力をされておるということは労働省の方でも言われますけれども、実際として、今言われたように、一般的に就業が困難な時期なんです。特にソビエトから帰つて来たということで復職さえできぬというようなものも非常にたくさんおるわけです。そうすると二億円の生業資金というのを、帰つて来た人たち全部に割当てるとどのくらいになるのですか。それはいらない人もあるだろうけれども……。
  111. 田邊繁雄

    ○田邊政府委員 二億円の貸出につきましては、一件一万五千円ということに限定いたしております。これはしかし金を貸すのでございますので、確実な施業計画を持つている方でなければ、現実には貸出しができないわけであります。しかしこれは担保であるとか、そういうものの必要はございません。本人の力を信用、本人の人物次第で貸出しをする、こういう考えであります。
  112. 春日正一

    春日委員 それでこの援護の問題に関連しますけれども、生活保護法費用が今度はかなり余分に出されておるのですけれども、あれで大体どのくらいな人をどのように救済するようになつているか、大ざつぱに聞かしてもらいたい。
  113. 木村忠二郎

    ○木村(忠)政府委員 大体現在の予想では百八、九十万くらいの人間は、これで救済できるだろうと思つております。昨年の十一月現在で百七十万人くらいに希望者がふえて行くという見通しをもつて、百八十万から九十万くらいまでの人数ならば、お話のようにできるだろうと思います。
  114. 矢野酉雄

    ○矢野政府委員 ちよつと補足しておきます。先ほどの更生資金の問題では、追加予算の方だけ強調いたしておきましたが、二十五年度の計画としては、厚生省といたしましては皆さんの御審議を仰いでいる五億がありまして、これが返還せられる金額がおよそ四億八千万円と、国民金融公庫は数日前総裁が言明しておりましたので、およそ十億ほど、一世帶一万五千円、願わくばこれを三万円まで増額してほしいということを、今要望しております。さらに生業資金、現在の制度の一世帯五万円の方が多分十二億に、さらに六億くらいの返りがあるとしますと、国民金融公庫の貸出しが総計二十八億かあるいは三十億近くなるだろうと思います。もしそれで不足する場合には、国民金融公庫の当局としては、予備金からさらに十五億ないし二十億を追加予算等の形においてお願いしたいというような要望がありますから、資金面においてはある程度明るい見通しがついたのではないかと思つております。
  115. 春日正一

    春日委員 去年の十一月で百七十万、これは一人平均すると幾らくらいになるのですか。
  116. 木村忠二郎

    ○木村(忠)政府委員 それは場所によつても違つておりますし、時によつても違つておりますから、幾らになるかということは申せません。実際は基準額の範囲内におきまして、收入を差引いた残りを生活保護法によつて給與いたしておりますから、一人あたり幾らという金額は考えられないと思います。
  117. 春日正一

    春日委員 出した金額を百七十万で割つて見るという計算ですが、これはあとから計算すればわかりますから……。この問題はこの点ではつきりされますが、去年の十月、十一月に百七十万だつた、それで現在どうかと言えば、失業者はどんどん出て来ているし、もつと大きな要素で考えてもらわなければならぬことは、もうすでに去年の十、十一月から失業保険の切れた人間が、毎月何万も出て来ておる。これは労働省の方で失業保險の期間を延長しろとか、あるいは制限をとつぱらえというようなことを言つても、それは法律があるからできぬ。だから保険の期限の切れた者は、厚生省の方でやるのだ、こう言つて逃げてしまう。だからこの際はつきりお聞きしておきたいと思うけれども、こう失業保険の切れた人が出て来るし、現実に賃金が不拂いなために食えない人が出て来る。こういうものを予想してこの数字を出されて、予算が組まれてあるのかどうか。
  118. 木村忠二郎

    ○木村(忠)政府委員 従来の生活保護費はだんだんふえて行く傾向があります。これは基準が上つてふえる場合もありますし、そうでなくて、基準が上らなくてふえて行く傾向もございます。これらの傾向を考えまして、その傾向よりも若干よけいにふえて行くという見通しを持つております。大体これで間に合うのではないかと思つております。しかしこれはお話の通り経済界の変動というものが相当ございますから、もちろんこの変動によつて今後どうなるかということにつきましては、予測いたしかねるわけであります。従いまして現在考えておるところでは、これで行けるだろうと思つておりますが、その先になりまして行けないという場合におきましては、必要なる財政的措置を講じなければならぬということに相なると思います。
  119. 春日正一

    春日委員 この点では私はこれ以上お聞きしない、ただこれでは非常に不十分だ、さつき世耕さんが言つたように、自殺が現実にどんどんふえておるところを見れば、救い切つてないということは明らかです。十一月には三十分に一人ずつ自殺しておる、だからこの点は楽観されては困る。  次に厚生年金の問題ですけれども、厚生年金の予算を見ますと、差引歳入超過百十三億二千六百七十万円となつておる。これはあの当時これくらいの率で上つて行くと思うけれども、おそらく年金が発効するのは昭和三十八年の十一月、こういうように考えております。そうすると年々百億以上の金が労働者の今実際食えない生活の中からとられて、ここに歳入超過ということになつておるのだけれども、この資金が一体どういうところに使われておるか、この点お聞きしたい。
  120. 安田嚴

    ○安田政府委員 預金部の資金になりますと、預金部の資金運用委員会の方の決定に従つて使われておる次第であります。
  121. 春日正一

    春日委員 そうすると預金部に入れて、これがこの間の暮れの特別融資のような形で銀行に行つたりいろいろしておるのでありますけれども、こういう状態で、労働者は非常に困つて生活保護も不十分です、失業対策もすべて不十分です。こういう金は本来労働者の住宅資金とか厚生資金の方に使うべき性質のものですけれども、これを使うべく努力したことがおありかどうか。
  122. 安田嚴

    ○安田政府委員 積立金は将来養老年金などがどんどんもらえるようになりますときに支拂う金の準備としてのけておくのでありますから、現在のように積立金の制度をとつております以上は、そういうことになるだろうと思う。ただ今言つた趣旨から、これを全部また勤労者のところへ返して行くというわけには参りませんけれども、一部については私どもは勤労者の福祉のために、ぜひそれがまた貸しつけられるようにしてもらいたいと思つて努力をしたこともありますけれども、いろいろな関係でそれが実現しないような運びになつております。
  123. 春日正一

    春日委員 そうすると努力したけれども、できなかつたということなんですね。いつそのことこんなものはおやめになつたらどうですか、労働者は困つておるし、三十八年というのはずつと先のことですし、経済界はどうなるかわからぬ。自殺するような人間がいるのに積み立ててどうなるか、厚生年金を全部やめて拂い下げる、こういうことはお考えになりませんか。
  124. 安田嚴

    ○安田政府委員 そういう御意見もあるかと思いますが、ちようど今社会保障制度審議会でそういう問題が審議されておるのでありまして、遅くも来年度一ぱいにはそれについての結果が出ると思います。われわれとしてはそれを待ちたいと思います。
  125. 春日正一

    春日委員 最後にお聞きしますが、国立公園予算が出ております。あんな国立公園なんというものは何のためにつくるか、日本の国民国立公園に遊びに行ける者はありません。今一番必要なのは町の小公園で、兒童が健康に遊べる所が必要だ。こういうところへ金をまわさずに国立公園を三つつくつても、国民はどれだけ利用できますか。なぜそういうものをつくるか、これをお聞きしたい。
  126. 飯島稔

    ○飯島政府委員 わが国土は御承知のようにいろいろ多様なる風景を備えておりまして、国土全般の計画から考えますと、土地によつては農耕あるいは商工活動に使う所もあります。また自然の現象を保護して、現代のみならず後代の国民に残して、リクリエーシヨンその他の国民保健、休養のために使うということも、やはり国家目的として重要な問題でありますので、国立公園としての予算を計上しております。
  127. 春日正一

    春日委員 実にべらぼうな話だ。理想的にいえば日本国中国立公園にしたつていいけれども、今とにかくこの食えない時期に、子供が青いつらして遊ぶ所もなく不良化して行つているときに、そんな国家目的の、後代なんということよりも、今われわれの子供をどう健全に育てるかが問題だ。だからそんな国立公園の大きいものをつくるよりも、東京とか、横浜とかいう大都市に子供の遊べる中小の公園をたくさんつくつた方がいいのじやないかと思う。そういう点について政府の考え方をお聞きしているのです。
  128. 矢野酉雄

    ○矢野政府委員 有力なる御意見としてよく拝聽しておきます。もちろん子供の不良化防止、あるいは保健の積極的施設等については、御承知のごとく国家としては相当の予算の増額をいたしまして、御審議を仰いでおります。国立公園予算はわずかに二千数百万円でありまして、これはただいま部長が申し上げました国内的な観点からも、さらにまた貿易外の受取り勘定を増加するという立場からも考うべきところの一つの目的を持つておりますので、御趣旨の点については努力をいたします。また都道府県あるいは市町村のそうした御趣旨の社会施設は、必ずしも国立のみを私は必要としないと思いますので、市町村その他地方自治団体に対して、御趣旨のような点については、当方として大いに今の御要望が貫徹できるように処置したいと思いますから、どうぞ国会におかれましても、それらの趣旨を大いに地方行政の面にプツシユしていただくように、政府からお願いする次第であります。
  129. 春日正一

    春日委員 結論的に言えば、全部の項目に対して答弁はごりつぱなところはあつても、実質は不満だということです。今までやつて来た実績からみて、逆を行つているような面もあるし、引揚げの問題のように、全然納得の行かない問題もありますけれども、私の質問はこれで打切ります。
  130. 苫米地英俊

    苫米地主査 これをもちまして厚生省関係審査は終了いたしました。     —————————————
  131. 苫米地英俊

    苫米地主査 引続いてこれより昭和二十五年度一般会計予算及び昭和二十五年度特別会計予算中、労働省所管議題として審議に入ります。まず政府側説明を求めます。新谷労働政務次官
  132. 新谷寅三郎

    ○新谷政府委員 今回提案されました昭和二十五年度一般会計及び特別会計予算中、労働省所管分につきまして、その概要を御説明申し上げます。  労働省所管の会計は、一般会計のほかに、労働者災害補償保険及び失業保險の二特別会計がございます。  まず第一に、昭和二十五年度労働省所管一般会計歳入歳出予算でございますが、本会計は、歳入におきまして総額八百九十八万四千円でありまして、ほかに郵政省所管郵政事業特別会計歳入に労働省関係分が五千三十二万一千円計上されておりますので、両者の合計は五千九百三十万五千円となります。  一方歳出の総額は、百十二億五千五百七十八万四千円でありまして、ほかに経済安定本部所管公共事業費中に、三千三百四十万円が労働省関係分として計上されておりますので、その合計額は百十二億八千九百十八万四千円となります。  第二に、労働者災害補償保険特別会計予算でありますが、本会計は歳入歳出とも八十二億一千七百六十四万六千円であります。  第三の失業保険特別会計でありますが、本会計も歳入歳出とも百七十五億六千七百十七万八千円と相なつております。  以上が労働省所管に属するもの並びに関係予算の総額でありますが、御承知通り、労働省において所掌する事項は、労働省設置法に定めるところに従いまして、労働組合、労働関係の調整、労働に関する啓蒙宣伝、労働條件、労働者災害補償保険、及び労働者保護に関する事務、職業紹介、指導、補導その他労務需給の調整に関する事務、失業対策に関する事務、失業保険に関する事務、労働統計調査に関する事務をつかさどつておるのでありまして、本予算はこれら一般の事務並びに諸般の事業途行上必要な経費予算したものであります。  今回要求いたしました予算額のうち、おもなるものについて、その概要を御説明いたします。まず第一に、一般会計歳出予算について御説明いたしますと、その一は、大臣官房関係経費二億三千六百七万二千円であります。大臣官房におきましては、各省共通の事務所管行政に関する調査企画及び重要政策の総合調整に関する事務を行うほか、諸般の労働政策の樹立実行のためには、正確なる調査統計に基礎を置くことが最も必要でありますので、労働統計機構を整備し、雇用状態、賃金、労働者家計状況、労働組合等、諸般の調査統計を行うため、必要な予算を計上いたしたのであります。  その二は、労政局関係経費一億三百六十八万九千円であります。労働組合の健全なる発達並びに労働関係の調整をはかりますことは、わが国経済再建上現下の急務であります。従いまして労働組合法、労働関係調整法の適切なる運営をはかるため、必要な経費を計上いたしますとともに、最近の労働情勢にかんがみまして、労働組合、使用者団体等に対する積極的な労働教育を行う必要を痛感いたしますので、これに必要な予算に重点を置くとともに、都道府県労政行政機構をあとう限り充実整備することに努めまして、それぞれ所要の経費を計上したのであります。  その三は、労働基準関係経費六億八千二十万円であります。御承知通り労働基準法は、各般の労働條件について使用者及び労働者の守るべき最低基準を明確にして、労働者の地位の向上をはかり、また産業経営上、労働條件に関する一定の基準を與えて、各産業部門における労働條件を適正ならしめ、ひいては国際貿易への積極的参加等を期待するものでありますので、これが実施に遺漏のないよう、おおむね前年度に引続き所要の予算を計上いたしましたが、なお本法実施の地方機関である都道府県労働基準局、及び労働基準監督署の整備充実に努めたのであります。さらに労務者用物資につきましては、労働者の実質賃金の確保と労働生産性の向上をはかるため、これが適切円滑なる配分を期することが特に必要でありますので、おおむね前年度に引続き所要の経費を計上いたしました。なおまた特に金属鉱山における職業病珪肺の予防対策を講ずるため、前年度に引続き必要な予算を計上いたしました。  その四は、婦人少年局関係経費四千三百五十八万五千円であります。婦人少年局におきましては、婦人及び年少労働者の保護並びに婦人の地位の向上をはかるため、諸般の企画調査啓蒙、宣伝等を行つておりますが、これが事務の円滑なる遂行をはかるた曲め、所要の予算を計上いたしたのであります。  その五は、職業安定局関係経費百一億二千九百四十四万円であります。現下の労務需給の状況が、きわめて深刻なるものでありますことは申すまでもないところでありますが、さらに社会情勢の推移に伴いまして、一時的離職者数が増大し、当該離職者の生活不安を来し、ひいては社会不安を醸成いたしますことも予想されますので、失業対策事業費を計上し、失業対策事業等を強力に行つて、失業者の就労の機会を増加すると同時に、他方従来の職業紹介業務に一層の刷新を加え、これを根幹として職業指導、職業補導をあわせて行い、もつてわが国勤労階級の職業安定に万全を期したいと存じているのであります。さらに本年度におきましては、特に都道府県所在の公共職業安定所における第一線業務の機能を活発ならしめるため、その内容整備充実をはかり、また職業補導の対策として、公共職業補導所の増設をはかり、職業安定に資することを期したものであります。なお失業保険特別会計へ繰入れるための必要な経費として、四十六億二千九百六十三万円を本予算中に計上しております。  その六は、中央労働委員会関係経費二千五百二十九万五千円であります。産業の中和を維持して、生産力の同上をはかるためには、労働関係を合理的に調整する必要がありますので、中央労働委員会の整備をはかり、これに必要な経費をおおむね前年度に引続さ計上いたしたのであります。  その七は、産業安全研究関係経費六百三十二万一千円であります。産業の安全を保持し、労働者保護の万全を期するためには、これらの災害予防に関する各種調査研究実施する必要がありますので、おおむね前年度に引続き所要の経費を計上したのであります。  その八は、公共企業体労働関係調整委員会関係経費二千六百十一万八千円でありますが、御承知通り、昨年六月一日より実施せられました公共企業体労働関係法の施行上、必要な機構の整備並びにこれが運営に必要な経費を計上いたしております。  その九は、国立国会図書館支部図書館の経費百三万一千円であります。国立国会図書館法に基き、労働省支部図書館の図書を整備するため、所要の経費を計上いたしました。  第二に、労働者災害補償保險特別会計について御説明申し上げます。本特別会計は御承知通り、労働者災害補償保險法によつて、労働者の業務上の事由による負傷、疾病、廃疾または死こに対して災害補償を行い、あわせて労働者の福祉に必要な施設をなすことを目的とする保險事業会計でありまして、全額使用者負担の特別会計でございます。本会計は歳入歳出とも総額八十二億一千七百六十四万六千円でありまして、そのおもなる内訳は、歳入につきましては、保險料六十八億三千二百七十三万七千円、未経過保險料八千二百二十四万二千円、支拂備金十二億七千百二万九千円その他三千百六十三万八千円となつております。一方歳出につきましては、保險金五十五億九千二百五十二万九千円、保險施設費九千百九十七万七千円、業務取扱費四億一千五十八万七千円、保險料精算返還金一億三千九十一万七千円、予備費十九億九千百六十三万六千円となつております。  第三に失業保險特別会計について御説明申し上げます。本特別会計は、失業保險法によつて労働者が失業した場合に、失業保險金を支給して、その生活の安定をはかることを目的とする保險事業会計であります。これが費用の負担は、大体政府、事業主、労働者の三者持寄りの特別会計でありまして、うち政府は保險給付に要する費用の三分の一顧と、事務費のうち運用收入、雑收入をもつて支弁できない部分を負担上、使用者及び労働者は、失業保險法に定める保險料不在よつて、おのおの同額を負担する建前と相なつておるのであります。本会計は歳入歳出とも総額百七十五億六千七百十七万八千円でありまして、おもなる内訳は、歳入につきましては、上般会計よりの受入れ四十六億二千九百六十三万円、保險料九十五億七千六百万円、積立金より受入れ二十四億二千四百万円、その他九億三千七百五十四万八千円でございます。  歳出におきましては、保險金百三十一億一千七百三十一万四千円、業務取扱費四億三千十万円、予備費四十億一千九百七十六万四千円となつております。なお先般の本法改正に伴う日雇労働者を対象とする事業分だけから見ますると、うち歳入歳出とも十二億二千九百二十六万円と相なつております。  以上をもちまして、労働省所管一般会計及び特別会計予算並びに関係予算大要の御説明を申し上げました。本予算につきましては、何とぞ愼重御審議の上、御賛成あらんことをお願い申し上げる次第であります。
  133. 苫米地英俊

    苫米地主査 以上で政府の概要の説明を終ります。次いで質疑を通告順に許します。北澤直吉君。
  134. 北澤直吉

    ○北澤委員 時間もあまりありませんので、簡單にお尋ねいたします。労働問題及び失業問題につきましては、本会議及び各委員会におきまして、いろいろ審議せられましたので、大体わかつたのでありますが、ここでお尋ねしたい第一点は、御承知のように最近日本の労働運動は、民主化同盟の線を中軸にしまして、健全な発達を途げておるわけでありまして、まことにけつこうと思うのであります。ところが最近の国際情勢から申しますと、御承知のように最近中ソ同盟條約というものができまして、共産主義勢力の日本に対するいろいろな働きかけが、非常に積極化して来ると思うのであります。従いまして私は、日本の組合運動に対しましても、そういう方面から、いろいろな呼びかけあるいは工作があると思うのでありますが、そういう問題につきまして、政府当局におかれましては、日本の組合運動に対しまして、どういうふうな対策、お考えを持つておられますか、伺いたいと思います。
  135. 富樫總一

    ○富樫説明員 主として労政局関係の問題と存じますが、労政局長が労働委員会その他の問題でおりませんので、私がかわつてお答えいたします。  終戰後一時相当混乱いたしました労働情勢が、お話の通りいわゆる民同——私どもから申しますれば、民主主義的自由なる労働組合主義、あるいは建設的な労働組合ということの自覚が、昨年来特に盛り上りまして、その方向に進んでおることは、非常に慶賀にたえないことと考えておるのでございます。さらにお話のような御心配につきまして、特に対策として申し上げるということになりますと、主といたしましては、何としても健全な組合主義に関する教育、啓蒙、自覚の振起ということが重点になるかと存じます。そのためには来年度予算におきまして、特に労働教育に関する予算は、前年度に比べますれば、飛躍的な金額を計上してございます。要しますれば、あとからその細目につきまして詳細に申し上げる準備がございまするが、これによりまして、政府としてできるだけの教育措置を講ずる一方、自主的な組合教育措置につきましては、各地方におきまして、あるいは労働会館、あるいは労働図書館、あるいは労働センターというようなものを建設し、あるいは各所にできるだけ労働科学研究所といつたようなものの設立の気風を促す、というようなことをいたしますとともに、さらに一方におきましては経営者側に対しましても、健全なる労働問題の理解を期待いたしまして、日経連その他に対しましても、相当の連絡をいたしております。さらにそういう抽象的なことでございませんで、問題が具体的になりますと、労資関係がはつきりと確立されなければいけない、これがいつでも不安定でありますれば、常にそこに不健全な勢力の介入を許すというようなことになりますので、これにつきましては、労資双方が労働権と経、営権とを尊重し合い、対等の立場で権利義務を固める。いわゆる産業平和の基礎ということで労働協約——健全なる労働協約を決定するがごとく、できるだけの協力、勧告をいたして、その方向に進む。さらにいわゆる生産委員会と申しますか、従来経営協議会と申しましたそういうようなものによりまして、対等の立場における全員の経営参加というような方向にも、できるだけの努力をしたい、こういうような状況でございます。
  136. 北澤直吉

    ○北澤委員 ただいまの御説明で了承いたしました。なるべくそういうふうな線によりまして、日本の労働運動の健全な発達を促していただきたいと思います。ただいまお話がありました産業の平和の問題でございますが、かつてイギリスの今の大蔵大臣のクリツプスが、労働組合が賃金の引上げや労働條件の改善のために、経営者と争うというような時代は過ぎ去つて、経営者と組合が一緒になつて生産の増強に邁進しなければならぬ時代になつているのだ、と言つているのでありますが、まことにその通りであります。敗戰日本の復興におきまして、生産の増強が一番大事であります。それがためには、結局労働者と経営者が協力する、お互いに生産増強のために協力するということが、一番大事だと思うのであります。そういう意味におきまして、ただいまお話がありましたような生産委員会が各工場にできまして、労働者と経営者が、対等の立場において工場の生産の増強に協力するということは、まことにけつこうだと思うのでありますか、これはイギリスでも各工場にジヨイント・プロダクシヨン・コミテイーという委員会がありまして、今お話になつたように、労働者と経営者が協力して生産を上げておるということであります。私はこのアイデアは非常にいいと思うのであります。それからまたもう一つ、日本でも行つてもらいたいと思うのでありますが、今のクリツプス大蔵大臣が商務大臣のときに、いわゆるワーキング・パーティというものをつくりまして、各企業におきまする能率の増進ということにつきまして、非常な活動をしたわけであります。これはたとえば紡績業とか、あるいは、くつ下製造業、あるいは家具製造、あるいはくつの製造業、あるいは陶器をつくる業、こういうふうな大きな企業の部門にわたりまして、その企業の中の経営者の代表が四人と、組合の代表が四人、それから一般公共の代表が四人、それから商務大臣の任命する議長が一名、こういうふうなことで団体をつくりまして、その中には、事業家、あるいは組合、あるいは一般の学識経験者というものの中から相当有力な者を入れまして、各事業に当つて、そうして事業の能率を上げる。どういうところにその欠点があるか、そうしてなるべく安く、なるべくよいものをつくるということで、このワーキング・パーテイというものが非常な貢献をしたことを、われわれ承知いたしておるのであります。今日日本の状態におきまして、企業の合理化ということが非常に叫ばれており、そのためには、どうしても経営者と労働者の協力というものが最も大事だと思うのでありますが、そういうような点におきまして、労働省当局においてはいかなる考えを持つておられますか、伺いたいと思います。
  137. 富樫總一

    ○富樫説明員 お話の通り、御意見たいへんごもつともでございまして、終戰直後、労働省といたしまして、また労働関係調整法などにもうたいまして、いわゆる経営協議会が全国的に展開されたのでありますが、その経営協議会が、インフレ途上と申しますか、いろいろな條件によりまして、経営協議会というよりは、むしろ団体交渉の常設機関、あるいは闘争の場というようなことになりまして、他のやむを得ざる條件があつたとは申せ、非常に遺憾に存じておつたのであります。その状況にかんがみまして、先ほど申し上げましたように、昨年からこれにつきまする誤解なり従来の慣習を切りかえるという意味におきまして、名前を労働省としては生産委員会ということに切りかえ、その構成あるいは審議事項、取扱い事項というようなものを、ただいまお話の方向に極力向けるように、指導——と申しますとどうかと思いますが、勧告、協力をしておるのでございます。特にこの方向が、一方におきまして民主的、建設的、労働組合主義の進展と、一方においてはいわゆる賃金三原則、あるいは経済九原則等のわく内において、ことに実質賃金の向上をはからなければならないという絶対的要請のもとにおきまして、どうしても能率向上せざれば実質賃金が上らないという、一方のわくと並行いたしまして、その方向に進んでおると考えております。ただ企業の合理化、労働能率の科学的な分析、隘路の打開ということになりますと、今日まだ十分なる研究なり、そういう空気まで全面的に進んでおらないことは、非常に遺憾に考えております。労働省といたしましては、一般安全衛生その他、さらに進んで能率的方面にわたる労働科学の研究というような方面に、力を入れておるのでありますが、もちろん役所だけではできませんので、民間の有識者、あるいは労資の自覚によつて、その方向に進んで行くことを念願いたしておる次第でございます。
  138. 北澤直吉

    ○北澤委員 もう一点だけ伺いたいと思います。先ほどもお話がありましたが、産業の平和ということが非常に大事であることは、全然同感であります。しかしてこの産業上の平和を確保するためには、やはり私は経営者と労働者の間、それから各産業の間にバランスがとれるということが一番大事であると思います。お互いの間にバランスがないと、そこに自然平和というものが出て来ないのであります。そういう見地から、私は経営者と労働者の間、それから各産業の間にバランスがとれるということが、一番大事であると思います。そういう各部門にわたりまして、産業上のバランスを確保するという見地から申しますと、まだ日本では行われていないのでありますが、私は、第一回の世界戰争のあとで、ドイツのワイマール憲法できめました全国経済会議というような考え方が、非常にいいのじやないかということで、これを前から言つているのであります。これによりますと、その全国経済会議というのは、産業上重要な問題はまずこれにかけて、それから国会に持つて行くという、国会に持つて行く前の一つの諮問機関でありますが、この全国経済会議においては、御承知通り経営者と労働者が大体平等に代表されている。それから各産業の間の割合は、全体で三百二十六名、農業、林業が六十八名、園芸及び漁業が六名、工業六十八名、商業、金融業、保險業が四十四、運輸業、公共事業が三十四名、手工業が三十六、官吏及び自由職業が十六、消費者三十、連邦各邦の代表が十二、ドイツ政府の代表が十二、こういうことで、各方面の産業界及び消費者も入れて、全国経済会議というものをつくつて、ドイツの産業に関する重要問題をすべてここにかける、それからそのあとでドイツの国会に持つて行くということにしたのであります。しこうしてこれが第一回の世界戰争で負けたドイツの産業復興において、非常に大きな働きをしたのであります。こういうように各産業の代表者を網羅している。しかも経営者と労務者などの代表によりてそういう大きい組織をつくつて、そういう産業上の大きな問題をかけるということであれば、自然そこにバランスがとれる。たとえば農村と都会とのバランスがとれる。消費者と生産者の利害が調整されるということになるのであります。こういう大きい組織をつくつて行くということが、現在の日本には必要なことで、日本の生産の増強をはかるゆえんであると思います。こういう点について、何かお考えがありましたら伺いたいと思います。
  139. 新谷寅三郎

    ○新谷政府委員 ただいまドイツのワイマール憲法において行われました全国経済会議のことについて、有益な御意見を拝聴したのであります。ただいまのわが国の状況からいたしますと、あらゆる制度が終戰後急速にでき上つて来たのでありまして、ただいまのところ、こういう事柄につきまして、まだ実施の目的をもつて検討されるという段階に相なつておりませんことは、御承知通りでございます。ただ、これにかわると申しますか、機能的にこれにある程度かわるものといたしましては、官庁ではありますけれども、経済安定本部等が、ただいまのお説のごとく、各産業あるいは各階層の意見を集めまして、そうして全体的に経済政策の根本の方針について協議するというような仕組みになれば、あるいは似通つた制度が生れるかと思うのであります。経済安定本部も御承知通り、あらゆる方面からできるだけ各層の意見を反映せしむべく、努力していると思うのでありますが、お説の通りの全国経済会議のような機構につきましては、ただいまのところまだ考慮される段階にはないのでございます。これは今後他の一般の諸制度等とのにらみ合せもあるかと考えております。私どもといたしましても、有力な御意見として今後検討してみたいと考えております。
  140. 北澤直吉

    ○北澤委員 政府においてもいろいろ御研究のことと思うのでありますが、御承知通り経済安定本部は役所でありまして、これには経営者と労働者が代表されておるわけでもありませんし、また安定本部の役人は、これは役人であります。ところがドイツの経済会議は全部が選挙によるものでありまして、しかも職能代表であります。従つて農業を代表する人もあり、また商業を代表する人もあり、あるいは商社を代表する人もあるというわけで、国民の代表によつてできておるのでありますが、これによつて私は相当各職能間のバランスができて、そこに自然に産業上の平和というものができると思うのであります。どうぞそういう点に御留意くださいまして、今度御研究願いたいと思うのであります。あまり時間もございませんので、いろいろこまかいことも伺いたいのでありますが、一応私の質問はこれをもつて終ります。
  141. 苫米地英俊

    苫米地主査 世耕弘一君。
  142. 世耕弘一

    世耕委員 時間がございませんから、私も数点簡單にお尋ねしておきます。失業者の現状と将来の就業見込数がおわかりであつたら御説明願いたいと思います。それから基準労働の実態と、男子職場への進出の状況、二十五年度予算を通じての労働力の吸收の見込み、それから労働能力の適性検査について、何か新しい方法をとられておるかどうか。それと実質賃金が論ぜられている矢先に、請負制のいわゆる賃金制度については、どういうふうに考えられておりますか。それから労働意欲の向上指導方法と、その能力増進について、どういうことを考えておられるか。もう二点は、ハンガー・ストライキというものは非常に時代遅れの運動ではないか、もつと指導する方法がないか。それから米価と労働賃金に相当の開きがあるやに思うがどうか。この諸点についてお尋ねいたします。
  143. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 私の職業安定局関係事項につきまして、大体お答え申し上げたいと思います。まず最初に失業者並びにそれの見通しというお尋ねがあつたのでありますが、現在失業者がどのくらいあるだろうかということは、非常に困難な問題でございまして、的確なる数を把握することはきわめて困難な事情にあります。失業者数を把握する統計として、最も有権的なものとしてあげられておりまするものは、総理府統計局で行つておりまする労働力調査があるのであります。この労働力調査は御承知かと思いますが、ある地域を抜打ち的に抽出いたしまして、これを全国的に広めて推定する方法でございますが、この方法によりますと、昨年の多分八月であつたと思いますが、完全失業者の数は昨年の八月が四十八万程度でありました。これが逐月減少して参つておりまして、昨年の十一月の完全失業者の数は三十数万というのが出ておるのでございます。この完全失業者の定義でありますが、これは毎月調査いたしておりまするその調査前一週間に一時間も働かなかつたいわゆる完全失業者、こういう非常に嚴密な定義になつておるものでございます。これが全国的な統計としての完全失業者の統計でございます。しかし、はたしてこれだけによつて日本の失業なり、あるいは雇用の現状を把握することができるかどうか、そこに問題はあろうかと存じております。私どもの公共職業安定所の窓口に現われております求職の状況、未就職の状況、これもまた一つの失業の様相を物語つておるものではないだろうか、かように考えておる次第でございます。それによりますと、安定所の窓口に現われておりまする求職の数は、逐月ふえて参つております。御承知のように公共職業安定所は、失業者ばかりが利用するものではもちろんありません。現在職業についておる者でも、よりよき職業を欲して利用する者もあろうかと思います。そういうことでございまして、これが完全失業者というものではないということをあらかじめお断りして申し上げますが、求職者の数は逐月ふえて参つておりまして、たとえば昨年の七月に安定所に職業を求めに参つたのが、六十八万人ほどあつたのでございます。それが十一月になりますと八十六万八千人、これが求職者の数字に相なつております。この求職者のうち未就職者に終つておる数が、大体八月が六十五万、十一月が六十八万という数字になつております。すなわち安定所のおせわで仕事につくことができなかつた者の数は、日雇い等合せまして六十八万人という数字に相なつております。またその数字のうち、失業保險の金をもらつて生活をしておる者の数を申しますと、十一月には、約三十二万人程度が失業保險の金を受けておるような次第でございます。かようなわけで、現在の失業者数はどのくらいか、こういうお尋ねでございますが、最も嚴密な統計で申しますれば、総理府統計局のかくかくの定義による完全失業者数は、三十八万と申すことができると思います。失業保險の関係で申しますれば約三十三万程度、それは逐月増加の傾向にありますが、そういうことが言えると思います。はつきりした数字は申せませんが、失業者の数がそういうふうにふえておる傾向にあるということは、言えるのではなかろうか、かように考えておる次第でございます。  なお将来の見通しの問題でございますが、これもまたきわめて困難な問題であります。御承知のように民間の企業整備は昨年の七、八月を頂点といたしまして、その後も行われておりますが、逐月企業整備の状況は減少して参つております。おそらくここしばらくは続くものと想像しておりますけれども、昨年の七、八月ほどの企業整備は、行われないと私は考えております。なお失業の将来の問題として、考えられまする要因だけを申し上げておきますれば、本年の三月に学校を卒業していわゆる労働市場に出る人々、これもまた相当の数に上ることは、一つの失業という問題を考えますときには、考えなければならぬ問題だろうと思つております。なおそれと同時に、将来の農村経済の状況によつて、ある程度のいわゆる潜在しておりました失業者が、顯在化して来るという問題も、頭に入れて考えなければならぬと思いますが、明年度中にどの程度の失業者が出るか、こういうことになりますと、御承知のように失業という問題は、経済情勢の推移による事柄でありますので、今的確に私どもはこれこれの数が出るであろうということは、申せないと存じておる次第でございます。  なお明年度の失業者吸收の問題でございますが、これについては、いわゆる国の財政によつて、これだけの雇用量はある程度ふえるであろうということからまず申し上げますれば、御承知の明年度公共事業費九百六十億という予算が計上せられておりまして、この予算が成立いたしますとするならば、この九百六十億によります雇用量は、大体百万人近いものに相なるかと存じておる次第でございます。この百万人の雇用量ということは、昭和二十四年度約五百億の公共事業の雇用量約五十々に比較いたしますと、新規雇用量の増加は、五十万というものが推定せられると私どもは考えております。それが一つと、それからもう一つの問題面は、御承知の見返り資金の活用の問題でございます。すなわちわが国基幹産業の振興をはかりますために、見返り資金が放出されるということになるのでございますが、もちろんその詳細の内容はいまだ決定はいたされておりませんけれども、この見返り資金の活用によりまして、わが国の基幹産業等に——大体経済安定本部等とも打合せておりますが、約三十万人程度の雇用重の増加が見込まれる、かように考えておる次第であります。なおそのほかに雇用量の問題といたしましては、財双的な面から申しますと、労働省所管に置かれております四十億の失業対策事業費というものがございます。これほ民間の産業なり、あるいは公共事業なりに吸收することのできない最後の措置として、行うところの失業対策の措置でございます。これによりまして約十万人の失業者を吸收することができるということになつております。なおそれと関連いたしまして、純粋の民需産業における雇用量の問題でございます。先ほど申し上げましたのが、財政的の裏づけのあるものでございますが、民需産業の振興ということによつて、どの程度の雇用量がふえるであろうかということが、やはり失業問題を考えるときの一つの問題かと思つております。これにつきましては経済安定本部とも打合せをしておりますが、結局生産計画等ともにらみ合せまして、鉱工業あるいは建築、土建業あるいは金融業、商業、自由業、すべての産業を包含いたしまして、大体八十万人程度の雇用量は増加するものと私どもは見込んでおります。なお民需産業の傾向もまだ頭打ちの形でありますが、統計的に見ますると、逐月明るい面も多少出ておるような次第でございますので、八十万人の雇用の増加ということも期待できるのではないか、かように考えておる次第でございます。  それから私の方の局の関係で男子、女子の問題でありますが、これはただいま資料を持ち合せておりませんので、後刻資料によりまして申し上げたいと思つております。  それから労働能力の適性検査の問題むございましたが、これも以前から新規就職の場合には、それぞれ本人の適性に応じた職場をあつせんするということが、私どもの就業あつせんの原則でございます。すなわち適職あつせんということでありますので、そうした観点から新規就職にあたりましては、適性検査というものをできるだけいたすことにいたしております。しかし予算等の都合もありまして、思うようには参つておりません。しかしながら私ども職業あつせんということから申しますれば、適職あつせんということが根本でありますので、できるだけこの適性検査ということに重点を入れて、職業のあつせんに努めて参りたい、かように存じておる次第でございます。
  144. 宮島久義

    ○宮島説明員 基準関係の御説明は、局長がちようど要務で出張しておりますので、私がかわつて御説明申し上げます。  主として賃金と物価の関係でございますが、御説の通り実質賃金は、二十四年一年間、だんだん平均的には向上して参つております。なお今後の推移を考えますると、その傾向が続くものと私ども考えられますので、それに対応いたしまして、賃金制度の合理化の問題を取上げて参つております。まず請負制度との関係でありますが、賃金制度はその職場々々によりまして、労働の態様に応じた制度が打立てられなければならないとわれわれ考えているのであります。その意味から申しまして、現在でも請負制度が適当なところと、適当でないところとあると考えております。請負制度が適当なところにおきましても、たとえば基準法上の保障給が必要であるとか、あるいは請負制度の通弊といたしまして、労働の能率が上ると、その單価が切り下げられるということが往々にして起るのでありますが、そういうことを排除しつつ、この請負制度は職場によつては今後も持続されるべきである、こう考えておるのであります。能率賃金の採用に関しましても、同様のことが言い得ると考えておりますが、ただ能率賃金を採用するにつきましては、その職場の賃金水準が相当高くなりまして、この制度は採用でき得ないものと考えております。すなわち生活費と賃金とを比較いたしまして——もちろんこの生活費というのは、現在の情勢のもとにおける労働者の生活費ということになりますが、この生活費と比較いたしまして、遜色のないような賃金の水準を示しているようなところにおきましては、今後賃金制度は、従来の生活給的な色彩から、漸次能率給的な色彩に切りかえられて行かなければならない。ただこの能率給という中には、デスク・ワークをする労働者に対しましては、たとえば職務給、それからピース・ワークが適当なところにつきましては、先ほどの請負制度の賃金制度、こういうものがそれぞれ別々にくふうされて採用されて行かなければならない。そうしてこれが今後の生業政策、及びそれに伴う企業合理化の線に沿う賃金制度である、こういうように考えまして、労働省におきましても、その広い意味の能率給採用の方向を目下研究して、近く一般に流したいと考えておる次第であります。  それから米価と労賃の関係でございますが、米価のマル公は最近も上りましたけれども、やみ価格の方は非常な勢いで下つて来ておる。そうしてその勢いは貿易等の関係とにらみ合せますと、今後もその勢いが続けられるのでにないかと考えられます。そうしてこの米価のマル公と、やみとを一緒にしましたところの消費者実効価格におきましては、下る傾向にある、こういう姿を呈しております。また一方賃金は全国の全労働者の平均について見ますると、少しずつではありますが、生産に伴つて向上しておるのであります。こういうようなことから考えますと、実質賃金は米価のやみ価格の引下げを中心にいたしまして、漸次向上するものだ、こういうように私ども考えまして、先ほどのような賃金制度も、そのような考え方をもとにして考えておるのであります。
  145. 松崎芳

    ○松崎説明員 ハンガー・ストライキは時代遅れであるとは思わないかという御質問に対して、われわれの考えておりますところを御説明いたします。去年の暮れでありましたか、国鉄の星加書記長以下がハンストをやりましたときに、一部におきまして、ハンガー・ストライキは時代遅れな闘争方式であるというような批判がされたのであります。国鉄の組合といたしましては、公共企業体労働関係法によりまして、ストライキを禁止されておるという関係上、当時の国鉄の中闘委員といたしましては、とり得る最大の合法闘争ということで、あのハンストが行われたというふうにわれわれは見ておるのでのります。大体ハンストといいますのは、その前の蚕糸労連の場合なんかにもありましたが、そういうストライキ権を禁止された組合員がとり得る最大り闘争方式と言える場合、あるいはまん政治闘争ということが、経済闘争のわくをはずれるというようなことを考えて、国会とかあるいは政府に対するデモンストレーシンという形で、最近おやりになる場合もあり、いろいろその場合々々の情勢を基礎としまして闘争方式をおきめになるのでありまして、労働省として、ハンガー・ストライキは時代遅れであると、一概に言い切ることはできません。やはりその都度の情勢を判断しなければならぬと思います。そういうハンストをおやりになることの是非は別にしまして、われわれの希望しておりますことは、ストライキ権のある組合におきましては、団結権、争議権というようなものを堂々とお使いになることがよろしいでしようし、ストライキ権のない組合におきましては、調停、仲裁の道、団体交渉の道、あるいは苦情処理の道というようなことで、おやりになる方が望ましいと考えております。ハンガー・ストライキが時代遅れであるからやめさせる、というようなことは考えておりません。
  146. 世耕弘一

    世耕委員 ハンガー・ストライキの説明を承りましたが、私は文化人として、かような原始的な行為はすべきではない。もしさような窮地に陷つたならば、むしろ周囲の関係者が、その意思を体してこれを実現すべきだ、こう考えております。この点はさらに御研究を願いたいと思います。  もうあと二点で終ります。勤労意欲の向上について、何か指導方針をお持ちになつておるかということ、それからもう一つは、サンマー・タイムを実施するのについて、何か見解がおありになるか。この二点で終ります。
  147. 宮島久義

    ○宮島説明員 勤労意欲を向上させる対策という点ございますが、勤労意欲を高揚させる方法として現在われわれが考えておることは、まず第一の点といたしまして、賃金制度が現在のように生活給的なものであると、勤労意欲を阻害する面がある、こういうことを考えまして、一定の賃金水準以上のものについては、この生活給的な賃金体系を、広い意味の能率給的な体系に切りかえることによつて、賃金の支給という面から、生産意欲、労働意欲を高揚させる、こういうことを考えておるのであります。第二の点といたしましては、御承知のことと思いますが、労務用物資を現存加配しておるのであります。労働者の生活というものは、だんだん向上はして来ておりますけれども、なお主食を中心とした労務加配を続けて、生活必需品の不足から勤労意欲を沮喪することのないように、すなわち消極的なものではございますが、加配をすることによつて、勤労意欲を維持向上する、こういうことから、今後もそれを続けて行く、こういうふうに考えておるのであります。
  148. 富樫總一

    ○富樫説明員 サンマー・タイムにつきまして、労働省の立場からお答えいたします。サンマー・タイムが電力節約、及び季節に伴う生活の合理化、あるいは生産の合理化ということに関連いたしまして二、三年前から行われて、いろいろ世間の問題になりました。労働省といたしましても、労働者にいかなる影響を與えたかということにつきまして、一昨年、昨年と相当の調査をいたしたのであります。しかしこの調査の結果は、サンマー・タイム制度がいい影響を與えた部面と、つらいマイナスの影響を與えた部分とが、ちようどちやんぽんに現われまして、その調査から、画一的によかつた、悪かつたというふうに、はつきりした結論が、遺憾ながら得られなかつたという状態になつております。ただサンマー・タイムの始期が四月一日では少し早いということが、実際の生活実験から感じられますので、できますれば始期を一箇月ぐらい遅らしたらどうかと、政府内部で考慮されておるということをもつてお答えにかえる次第であります。
  149. 世耕弘一

    世耕委員 今のお答えの中でなおお尋ねしておきたいことは、労働意欲の向上というのは、賃金をよけいやつて働かせることもむろん労働意欲の向上だと思うが、それは別として、職場における楽しみ、仕事に対する楽しみ、理解、過去の各方面のいろいろ実情を見ましても、ただ賃金のみによつて勤労意欲が向上されるものでないということは、幾多の場合に証明できるのであります。こういう観点において、労働省としては何かいい指導あるいは設備とかいうものがあるべきだと思うので、実はお聞きしたのであります。
  150. 富樫總一

    ○富樫説明員 まことにお話ごもつともでございまして、狭義の労働條件の面だけでなく、厚生、慰安、文化的な面において、もつと積極的な処置を講じたいということは、かねがね考えておるところでございますが、今までいろいろの方面に手がとられまして、手がまわりがねていたことは、率直に認めなければならないのであります。ただ従来までとつて来た方向といたしましては、主体を労働組合に置きまして、これに役所が協力し、経営者が協力いたしまして音楽コンクールとか、勤労者の運動会だとか、ある程度のことはやつておりますが、ここ二、三年の傾向を見ますと、逐年労働者側のこれに対する積極的な参加意欲が進んで来ておるようで、この方向はこの方向として、来年度予算におきまして、相当積極的に押し進めるとい今ふうに考えております。
  151. 苫米地英俊

  152. 春日正一

    春日委員 また一番しりで時間がありませんから、簡單に二、三の点だけお聞きします。  まず失業対策予算の面でありますけれども、先ほどの説明を聞いておりますと、公共事業で実質的に五十万人吸收できる。見返り資金で三十万人できる。あるいは民間企業で八十万ぐらいふえるだろうというような、きわめて楽観的な見込みを持つておられるようでありますけれども、これは第五国会のときに私どもやはりそういう見通しを議会で聞いたが、現在その通りなつていない。たとえば日雇労働者で職安に来るのは、ごく限られた少数の人で、職安に来ない何倍かの人がほかにおるわけです。ところがこの職安に来る人でさえ、現在はほとんど吸收できないで、あぶれる者が多いというような実情になつておる。そういうふうな私どもの経験した事実から見ても、今政府の方で発表された楽観的な見通しというものは、これはきわめて甘いものだ。だからもつと失業対策事業その他について、予算を多くとらなければ足りないのじやないかと思うのですが、どうですか。
  153. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 ただいま春日委員からお尋ねがありましたが、公共事業の方は御承知のように一千億という予算が成立いたしますれば、雇用量としては九十一万、約百万になる。これは私は予算の面から確かに言えると思う。これは楽観ではなく言えると思います。  それから見返り資金の問題、これもいろいろ見方はあろうかと思いますが要するに——おそらく一千億以上になるかと思いますが、それだけの資金が放出されて参りますならば、やはりある程度の雇用量になるということは言えると思います。私どもは失業問題については、必ずしもそう楽観をいつもしておりません。いろいろな材料を見ておりますので、必ずしも楽観はいたしておりません。従つて民間の雇用量も、先般の国会以来ある程度ふえるだろうということも申し上げておりますが、確かにふえておるものはふえておる、その事実が統計的に現われておるということは言えると思います。たとえば安定所の窓口におきましても、求人の要求は、必ずしも逐月そうどんどんふえておるということはありませんけれども、ある程度明るい面も、そのうちに見出し得るという状態が、多少あるということは言えると思います。それから現に就職しております常傭労働者も、安定所の窓口のせわだけでも毎月七、八万あり、春日委員は私どもが非常に楽観いたしておるというお話でありますけれども、楽観ばかりはいたしておりません。けれども、明年度予算というものをにらみ合して、必ずしもそう悲観すべきものでもないではないか。従つて失業対策事業四十億が足りるか足りないか。多いか少いか。これは私は非常に問題になる点だと思います。しかしながら失業対策事業は安定所の窓口に来る者に対して、最後の処置としてやるべきものでありまして、国民全般の経済というものを考え、国民全般の立場から考えて、この辺がまあまあ適当のところではなかろうかと存じておるわけであります。
  154. 春日正一

    春日委員 今の御答弁の中でも、二つの問題があるわけです。なるほどあなたの言われた、これから雇用できる予算の面からの人数というものは、計算すればその通りなのかもしれぬ。ところが同じ労働省で、違つた方向の答弁をしておられる。能率給のようなものにかえなくちやならぬ、そういう方向に行くべきだという意見を持つておる。事実八幡の製鉄なんか、今ストライキをやつておるけれども、あすこは今年度の予定しておる生産というものが、三倍になり、三十六万が百万になる。それだのに従業員が三〇%しかふえてない。しかしここでは三〇%ふえているけれども、八幡と日本鋼管がそういう形で生産がふえたために、ほかの中小の工業者は今年うんとつぶれておる。実質的にうんと失業者が多くなつた。だから、あなた方の見込みが本年度においては違つておる。失業問題が重大になつて来ておる。あなた方が職業安定の立場から見れば、これだけ雇用があると言われますけれども、政府の予算から見て、労政関係から見れば、賃金を能率給にして、能率をうんと上げさせて、人を少くするという方針をあなた方が指導しておるのだ。あなた方が予定しておるよりも、もつと失業者を多くつくり出しておる。労働省の中でこの矛盾がある。だから去年あなた方が私に言われた話が、全然逆になつておる。その点やはりあなた方の方でそろばんに入れなければ、失業対策は立たぬと思う。  それからもう一つの問題は、四十億の問題であります。これは四十億というけれども、二十四年度予算は、最初八億八百万円だつた。これが非常に少いというので、繰上げ使用して、あとから追加して、本年度公共事業費の方から入れるものまで入れると、十三億五千万円が四四半期で使われるというような話だつた。結局二十一億五千万円くらいになるわけです。約倍ですね。ところが上の三期だけは、八億八百万円の予算でやつて来たのだが、今の四・四半期の状態では、もうすでに八万何千かの人間が失業対策事業で働いておる。そうすると四十億来年度出しますといつても、この四十億を平均にならしてみると、九万何千か十万そこそこという数字しか出ない。だから新しく失業救済事業で吸收する分というものは、一万何がしか出て来ないということになる。そんなちやちなことで、いくら窓口へ来るとことんの最後のものだからといつて、救われるか。この点例をあげますと、呉から請願書が来て、もう出してあります。これは職業対策係長が来たので、関係数字を持つて来たのですけれども、それでは十二月末現在で呉市に一万四千二十七名の失業者がおつて、そのうち日雇い四千百七十三名、一月末現在で一万六千六十八名になつて、そのうち日雇いが六千二百六十名。ところが対策事業の方はどうかというと、千百八十名しかない。こういうことになつておる。約二割しか吸收できない。これは青森でもそうだし、日立でもこの間何か問題が起つたけれども、そうなつておる。滋賀県でもそんな問題が起つておる。そこに行くのは、あなたの言われる通り、とことんの、どうにもならない人が行くのだから、この人たちを全部吸收しなければ、死んでしまえということだ。この予算を、四十億円ぐらいならば、これだけあればどうかなると思いますということで、政府の役人が勤まるか。どういうわけでそういうことをやるか。この点ひとつ答弁を願います。
  155. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 先ほど八幡製鉄等の例を引かれて、君たちの言う民間雇用の増加は、当てにならぬということをお尋ねになつたのでありますが、私どもが民間雇用大体八十万というのは、ふえる面だけを申し上げただけでありまして、減る面もあるということ、これはもう確かであります。私どもプラス・マイナスして八十万とは、いまだ申しておりません。先ほど世耕議員のお尋ねもありましたように、企業整備の状況は、やはり依然としてまだ今日でも続いております。しかし去年の七月、八日ほどの大規模のものはない、けれども、ここある程度は続くという前提のもとに——逐月減るだろうということは予想してはおりますが、離職者に対して、一時生活安定というものを考えなければならぬ実情です。今日の失業保險特別会計でも、四十六億という一般会計からの繰入れというものを見込んでおります。すなわち本年度と同じ程度に国庫の繰入れというものを見込んでおる。そのこと自体からある程度の労働者の離職というものが行われるだろうと、これは春日委員おつしやるまでもなく、私どもは考えております。従つて私どもの、数が八十万ふえるということは、プラス・マイナスしてふえるとは、私ども一つも申し上げておりません。その点は御了承願いたいと思います。  それから呉等、いろいろ例をあげられてのお尋ねでありますが、なるほど確かに第四・四半期におきまして、相当きつい面があることは、私どもも十分承知いたしておりますからこそ、いろいろ全国的に、対策事業予算の範囲内において、お互いの都市別に配置転換の可能なものは調整する、そういうやり方はもちろんいたしております。明年度予算ということになりますれば、御承知の失業対策事業のみによつて、いろいろの対策をやつて行くのではない。これは私は春日委員もそういう考えだろうと思つておるのであります。すなわち国の財政、国の経済全般において、失業問題というものは解決されなければならない。究極の点はそこだろうと思います。そういうことを考えて、すなわち公共事業一千億という問題もあり、日本の自立経済の復興という力強い歩みもあります。あるいはまた見返り資金という問題もあります。そういうことを全般的に、総合的に考えて見ますれば、安定所の窓口において、最後の手段として行わなければならぬ失業対策の事業としては、一応この辺がいいのではないかということを申し上げておるのであります。もちろん失業対策事業のみによつて、全失業者を救うということになりますれば、足りないことは、私も足りないと思うのでありまして、国の財政全般を総合的に考えますと、一応この辺で適当ではないかということを申し上げる次第であります。
  156. 春日正一

    春日委員 今の話、議論になりますけれども、私の言うのは、国の財政全般でそうなんだけれども、しかし国の経済政策そのものが、失業者をもつとつくり出す方向へ行つておるし、現に私ども工場を歩いてみて、第二次、第三次の首切りがどんどん出ておる。こういう状態になつておる。これがふえて来るし、同時にあなた方、失業対策の方をやつておられる方ならばすぐわかるけれども、大体十一月、十二月、一月とかけて、今後ずつと失業状態保險が切れて——今までは職安へうるさく行つて、日雇い人夫に出なくて済んだ人たちが、毎年何万かずつ收入の道が絶たれて、日雇いでなくては食えぬという状態が出て来る。この増加をあなた方は見込んでおかなければ、大きな破綻が来ると思う。そういう点から言えば、私は何といつてもこの四十億というものは、最後のとことんを救うものとしても、非常に不十分だ。だから、遊ばせて食わしておくのがいやだつたら、もつと出せばよい。そんなばかな常識はない。日本は貧乏しておる、貧乏しておると言うが、むだ飲食いを出す以上、政府は働かせる責任がある。そういう点から考えれば、もつとあなた方は腰を強くして、失業対策事業予算を多くとつてもらわなければ困る。これは今後大きな問題になりますよ。二十五年度としては、その点をやつぱり見込んでおいてもらいたい。  それからその次にお聞きしたいのは、労働基準局と労政局の問題ですけれども、実はきのうの労働委員会で明らかになつた驚くべきことですが、專売公社の裁定の問題と関連して、專売公社で非常な労働基準法の違反をやつておる。これは大体上つておるわけです。たとえば女子の時間外労働、残業を届出なしに規定以上やらせておるという事実、それから工場安全衛生の方で、ずいぶんいろいろな違反があるというような事実、そういうものが非常にたくさん上つておる。ところが、これが発見されたのは、今度の裁定の問題で、労働組合がしようがないから、基準法遵法闘争をやれということで、労働組合でこれは違反じやないかといつて、基準局へ持つて行つたら、違反になると言われて、初めて違反になつて来た。今まで、とにかく基準法ができて何年かになるけれども、專売公社はその前からあるのだから、違反をずつとやつておつたわけです。ところがこれの監督が全然なされていないという問題が一つある。とにかく專売公社といえば五人、八人の町工場じやないのだから、これが監督されずに、政府事業基準法違反をやつておるのは重大な問題だと思う。こういうことをやつておる。しかも驚くべきことには、專売公社の方で、秋山総裁の答弁によれば、基準法違反ということを知りませんでやつておりましたと言う。私は知りませんじや済まぬと思う。少くとも町工場のおやじなら、知らぬと言えるだろうけれども、日本の一流の大企業の政府事業が、ちやんと労務の担当の係もいるはずなのに、基準法違反を知らずにやつたということは言わせない。そういう点は專売公社ですらあるのです。一般の民間企業でも、ほとんど基準法というものは無視されておる。監督の件数で言えば、年年上つております。しかしこれは努力して上つたのじやなくて、うんと違反がふえて、しかたなしに自然に上つて来たというように思うのです。そういう工場をまわつてみると、基準法違反が至るところにある。しかもこの違反が、資本家によつて公然と行われておるのだけれども、この事実について、労働者は違反であるかないか、何も知らぬという状態になつておる。だからこの基準法というものができても、これが周知徹底せられなければ、何もならない。そういう意味から見て、私基準局の予算が非常に少いと思う。この点どうですか。この予算書を見ても、ほとんど周知徹底費用というものが計上されていない。監督の費用も非常に少い。
  157. 宮島久義

    ○宮島説明員 局長にかわつてお答えいたします。專売関係基準法違反のことが、今回のことで明るみに出たということでありますが、御承知通り、監督官制度というものが発足いたしましてから、比較的日が浅いのでありまして、私どもから申しますと、監督官が基準法を実施し、監督して行く上にも、人員がこれで十分であるというふうには、考えられないのでありますけれども、政府一般の方針に従いまして、これだけの人員しか得られない。これでわれわれ決して満足しているものではありませんけれども、政府全般の予算の上から、しかたがなく現在の人員でやつておるというのが、実情でございます。なお專売関係の違反が、今回の事件を契機に現われて来たということにつきましては、基準法を実施し、監督をやつて行く上におきまして、いろいろ順序を考えてやつておるのでありまして、すべてのものを一時に摘発するということは、物理的に不可能でございます。最も違反の強く行われているようなところから、順々にやると同時に、基準法を実施して行く上におきましては、どうしても労働者自身の御協力がなければ、なかなか完全に、また満足にやつて行けないと考えているのでありまして、そういう意味におきまして、今回この事件が明るみに出たことによりまして、私たちは一般的な線に沿つて監督を強くやつて行く、こう考えているのであります。確かに実施面で御不満の点はあろうかと思いますけれども、物理的に考えまして、何ともいたし方がない。こういう点御承知願いたいと思います。
  158. 春日正一

    春日委員 監督ももちろんあなた方に強化してもらわなければ困るけれども、実際現場で働いている労働者が基準法というものがあつて、こういうものだということを知つておれば、向うから監督官へ持つて来るようになる。たとえば賃金問題なんか、去年の今ごろですか、例の遅拂いの二十四條というものがはつきり出たから、あれで日本の労働者は、みんな基準法の二十四條というものを知つておる。そうすると、基準局にどんどん持ち込んで来る。基準法の中身は、あれで全部というわけにも行かぬから、特に重要なものを周知徹底させるということに、もりと費用をとる必要がある。こういうふうに考える。  もう一つの問題は、私この前の国会の調査団で、七月ごろでしたか、ずつとまわつて見て、どこへ行つても監督署で費用が足りないと言つている。広島のごときは、もう交通費がなくなつて、遠方の工場から検査に来てくれと言われても、工場まで金がないから行けない。三等往復出すからと言われても、工場主から金をもらつたのではこつちが違反になる。だが行つてやらなければしかたがない。違反承知で、実費だけで、私たちの潔白を信じてもらつて行つていますと言つている。そういう状態で——基準法というものは、労働三法の中軸になるものであると、昨日も労働大臣が言つておつた。これを実施するのに、そんな状態でできるかどうか。やはり基準局の費用というものは、労働省の中で一番多くとらなければならない。ところがそれが労政局の半分だ。ここに私は問題があると思う。その点で私はあなた方が現在の状態で満足ですということになれば、あなた方は基準法に対して非常に不熱心だということになる。どうですか。
  159. 宮島久義

    ○宮島説明員 お答えいたします。監督の実施には特に旅費が必要であるということは、御指摘の通りであります。予算が非常にきゆうくつな折柄、この方面の費用を増額することの困難だということについては——私たち決して満足しておるものではありませんが、ただ二十五年度におきましては、監督官の定員が減つたのでありますけれども、旅費の関係は減り方がほとんどないということで、監督官一人当りの旅費はふえておるのであります。その程度でございますが、今も申し上げました通り、多々ますます弁ずるのでありますけれども、国家予算全体の関係で、やむを得ないものと考えておるのであります。
  160. 春日正一

    春日委員 それでは、これ以上あなたを責めるのじやなくして、十分にやつてもらうという意味で言つておるので、労働大臣に言わなければ始まらぬことですから、これだけにしておいて、労政局の方ですけれども、この予算を見ると、大きな問題がある。基準局の予算五千二百万円、労政局は一億三百万円、こういうものをとつておる。労政局は一体何をしているのだ、こういう問題なんだ。そこで私ずつと調べてみると、驚くべきことには、印刷製本費に二千五百八十二万四千円というのが出ておる。これが本省関係で使う予算の約半分になつておる。そこで先ほどあなたの言われた、あの労働組合に対する指導方針、賃金に関する考え方というものが問題になつて来ると思う。私ども労働者が、どんどん印刷製本して、いろいろ出されるのはけつこうだけれども、どんなものを一体出すかということになると、問題だ。出しているのを見ると、ほとんど全部がいわゆる民同の育成ということに使われておる。あなたは先ほど民主的、建設的労働組合と言つた。今日本で建設的労働組合という看板を掲げているのは、いわゆる民主化同盟の連中だ。新自由世界労連に入つている連中だ。こういうものを育成するために、これだけの莫大な金を使つておる。一方では基準法の施行に対しては、その半分だ、宣伝費の倍額しか出ていない。基準局全体としてこういう使い方をしている。ここに私は今の政府の労働政策の根本が、はつきりと予算関係で出ていると思う。あの新自由世界労連というのを一体何か。あれをつくつた人たちは——あなたは專門家だから知つておると思うけれども、世界労連から脱退したきつかけになつたものは、マーシヤル・プランを支持するかしないかという問題だ。そういう立場で分裂した。そうしてそういうものと、現実につながつておる。これはAFLの大会の国際部会の報告を読んでみても、AFLは日本の民主的労働組合を援助して来たし、民主化同盟とは密接に協力し、精神的、物質的の援助を與えているということを、AFLの大会で報告しておる。明らかに国際的な御用組合の組織だ。このものを育成するために、労働者から高い勤労所得税を取上げて、それを使つておる。ここに労政の根本の方向がある。それから先ほど賃金の問題でも言つたが、能率給をやるんだ、こう言つておる。けれども、実際には現在能率を上げるにも何にも、食えない賃金を拂つておる。專売の女の子が、たとい十八、十九だからといつて、二千九百円でどうして食つて行けるか。政府で計算書を出せるかと言うんだ。出せるものじやない。食えない賃金を拂つておいて、能率を上げろと言つておる。そういうことのたのには莫大な金を使うが、保護する面の基準法の関係、職安関係には、金を使わない。ここに日本の政府の労働政策というものがはつきり出ておる。職安局の場合でも、結局やりつぱなしで、あぶれてどうにもしようがない人間は沖縄へやれというので、持つて行つておる。それではどうにもならぬ。そういう点では、私は労政局の事務の中身が大体わかつておるから、あらためて聞きませんけれども、しかしそういうつり合いから見ても、どうしても政府の労働政策は、日本の国の労働力をどんどん使つて、日本の国を早く復興しようとしているとは思えない。基準関係、職安関係、こういうところへどんどん使つて、今の労政局などは、なくなつてもいいと私は思つておる。これで私の質問を終ります。
  161. 苫米地英俊

    苫米地主査 以上をもつて本分科会における審査は全部終了いたしました。
  162. 北澤直吉

    ○北澤委員 動議を提出いたします。質疑もおおむね終了いたしましたので、本分科会の質疑はこの程度に打切りまして、この討論採決は、予算委員会に譲るべきものと決せられんことを望みます。
  163. 苫米地英俊

    苫米地主査 ただいまの北澤直吉君の動議のごとく、本分科会の質疑はこれにて打切り、討論及び採決は予算委員会に譲るべきものと決することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  164. 苫米地英俊

    苫米地主査 異議なしと認めまして、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時六分散会