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1950-02-11 第7回国会 衆議院 予算委員会公聴会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年二月十一日(土曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 植原悦二郎君    理事 上林山榮吉君 理事 小峯 柳多君    理事 苫米地英俊君 理事 勝間田清一君    理事 川崎 秀二君 理事 川上 貫一君    理事 今井  耕君       淺香 忠雄君    天野 公義君       江花  靜君   岡村利右衞門君       小淵 光平君    角田 幸吉君       小金 義照君    小平 久雄君       坂田 道太君    高橋  等君       田中 啓一君    中村 幸八君       永井 英修君    松野 頼三君       武藤運十郎君    中曽根康弘君       村瀬 宣親君    林  百郎君       深澤 義守君    米原  昶君       奧村又十郎君    小坂善太郎君       山本 利壽君    平川 篤雄君       松本六太郎君    岡田 春夫君       世耕 弘一君  出席公述人         帝国銀行社長 大坪俊次郎君         立教大学教授  藤田 武夫君         日本国有鉄道労         働組合副委員長 菊川 孝夫君  委員外出席者         專  門  員 小林幾次郎君         專  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十五年度予算について     —————————————
  2. 植原悦二郎

    植原委員長 これより昭和二十五年度予算について昨日に引続き公聽会を開きます。  開会にあたり、本日御出席公述人各位にごあいさつ申し上げます。申し上げるまでもなく、目下本委員会において審査中の昭和二十五年度予算は、今国会における最も重要な案件であります。よつて委員会においては広く各層の学識経験者各位の御意見を聞き、本案の審査を一層権威あらしめ、遺憾なからしめんとするものであります。各位の豊富な御意見を承ることができますのは、本委員会の今後の審査に多大の参考となるものと期待するのであります。各位におかれましては、その立場々々より腹蔵なき御意見の御開陳をお願いいたします。本日は御多忙のところ、貴重な時間をおさきくださいまして御出席いただきまして、委員長として厚くお礼を申し上げる次第であります。  なお議事の順序を申し上げますと、公述人発言時間は三十分程度といたし、その後において委員より質疑があることと存じますが、これに対しても忌憚なきお答えをお願いいたしたいのであります。なお念のために申し上げておきますが、衆議院規則の定めるところによりまして、発言委員長の許可を受けることになつております。また発言の内容は、意見を聞こうとする条件の範囲を越えてはならないことになつております。また委員公述人に対して質疑することはできますが、公述人委員に対して質疑することはできませんから、さよう御了承を願います。なお発言の劈頭に職業と氏名を御紹介願います。   なおつけ加えて申し上げておきますが、帝国銀行社長佐藤喜一郎君が御出席になりまして、御意見を御開陳になるはずでありましたが、御病気のために御出席が不可能となりまして、同銀行の副社長大坪俊次郎君にかわつて出席を願うようにいたしましたから、このこともあわせて御了承を願います。帝国銀行社長大坪俊次郎君。
  3. 大坪俊次郎

    大坪公述人 私はただいま委員長から御紹介をいただきました大坪俊次郎であります。ただいま株式会社帝国銀行社長を勤めておりますものであります。昭和二十五年度予算につきまして、金融に携わるものの立場から、所見を簡單に申し述べて御審議の御参考に供したいと存じます。しばらく御清聽を煩わしとうございます。  第一に緊縮均衡予算についてでありますが、インフレ收束のための均衡予算の編成は当然でありまして、非能率的な統制経済から、自由経済への復帰の見地からいたしましても、予算緊縮につきましては賛成でございます。しかしながら均衡予算は、ただ單に收支じりの金融的均衡のみでは必ずしも完全ではないのでありまして、收支の時間的均衡をはかることが肝要であると思います。その具体策としましては、たとえば一つには供米代金等政府資金放出期徴税期とをなるべく一致させることであります。その次には政府剰余金、たとえば日本銀行における政府預金のごときでありますが、政府剰余金の出ましたときは、市中銀行短期資金として特別預金の形式をもつて放出をいたされまして、支拂超過で国庫不足等の場合には、日銀引受短期証券発行することにされたならばどうかと存じます。この場合におきまして、見返り資金とか、預金部資金等引受をされるのは、あまり好ましくないと考えます。  次にデフレーシヨン回避策でございますが、徴税見返り資金預金部資金等は、まず国民から資金引揚げることであるのでありまして、これを元金に国民の手に再放出するとしても、その間の時間的ずれが、デフレーンヨンの要因であることは否定できないと思います。もし政府におかれまして、デフレーシヨンを回避し、必ずデイスインフレーシヨンの線で財政を運営せられるかたい御方針であるとしますならば、この時間的ずれを充填すべきインフレ要因を用意すべきであると考えます。日本銀行引受による短期債発行のごときは、方法としましては目下の日本経済実情よりいたしまして、やむを得ないものと考えます。  次に金詰まり打開策中小金融の問題であります。金詰まり原因は、資金の絶対量の不足のほかに、資金効率の低下があるのであります。流通秩序の改善と、回転率の向上とによつて資金量不足はある程度カバーすることができるのでありますが、資金量を増すことはインフレーシヨンにつながるものでありますから、ディスインフレの線ではあとの場合のみが最良の対策であると考えられます。金詰りに関連いたしまして中小企業金融の問題があるのでありますが、受信態勢の不備な中小企業が、政府機関または金融機関から直接融資を受けることは、今日の事態からいたしましてそれ自体かなりむりを伴うことがあると考えられます。いかにしてこの問題を解決いたしますかは、相当重要なることでありますが、政府の大きな施策にまつことを大いに期待する次第であります。大企業への融資が、問屋、下請業者等中小企業の大企業への売掛金等を返済して、さらにこれが下部に流れて一般大衆の購買力化する一連の金の動きが大切なのであります。しかるに今日の経済情勢におきましては、諸般の事情からいたしまして、大企業から下部機構ヘリレーすべき資金が中間においてとられてしまう。ときによるとみずからの長期資金増加運転資金に流用せられてしまうところに、金融梗塞一つ原因があると思います。流すべきものはこれを円滑に流しましてそうして大企業国有融資は別途にこれを講ずるということが、国民経済の円満な発展を期する道でありまして、有効需要かくのごとくにしてのみ喚起せしめ得ると考えます。このような流れをせきとめます最大の関門の中に、政府あるいは公共団体等のものが入つているという経験を私どもは持つておりますが、このことはきわめて遺憾に思う次第であります。  第二に価格調整費削減統制撤廃のことについて申し上げます。価格調整費昭和二十五年度予算においては九百億円を計上せられまして、前年度に比較しまして八百九十二億円の減少と相なつているのでありますが、竹馬の足は一度は切捨てなければならないのでありまして、従つて価格調整費削減は、方向といたしましては正しいと思います。かつ今日までの補給金の大半は、統制機構人件費等に向けられる実情でありましたので、統制を撤廃して自由経済に復帰することにつきましては賛成でございます。ただ問題はその程度と時間とにあると考えます。自由価格が自然に調整費を消化するための、金額的並びに時間的調節の用意が肝要であろうと思います。いま一つ統制に携わつていました人員の、生産面への配置転換策が肝要であると思います。一つ統制機構を廃止して名前をかえた他の統制機構ができるおそれもあると思いますので、この点につきまして御留意をお願いしたいのであります。  第三に地方財政の強化につきまして申し上げます。極度の中央集権制から地方分権制に移るということは、事業なり資金なりを直接関係地区に近づけた財政といたしまして、あるいは構想としては正しいものであると考えますが、地方公共団体政治力財政経理力が、はたして十分であるかが問題ではないかと思う次第であります。国の財政中央地方とは不可分でありまして、今日のわが国財政では、特に地方財政問題が注目されなければならないのであります。しかしながら、はたして実質的に地方分権の実が上るかどうかは、今後の運用いかんにかかつているものと存ずるのであります。国家財政地方財政との総合的均衡予算といいますが、地方財政に属する附加価値税固定資産税は新種の課税でありまして、これがはたして地方庁で負担の公平と適量の徴税ができるかどうか、取り過ぎることのないように愼重な企画をなされることを希望する次第であります。貧困な今日の日本経済におきまして、国庫地方公共団体とは比較的富めるものに属するのでありまして、予算以上の歳入上の超過はも財政そのものといたしましては妥当なるものとは称しがたいと考えます。  第四に復興建設的支出増加であります。日本経済の再建を促進するための建設的資金の計上を、前年度に比較いたしまして著しく増加せられましたことは、適当な施策と存じます。問題はその支出が適時適切になされるかいかんにありまして、第一の場合に述べました通りでございます。  第五に国債償還の問題について申し上げます。一般会計七百億円、見返り資金五百億円の国債償還は、政府御当局としてはインフレーシヨン・マネーによる償還で当然のことでありますが、左記條件付であることが望ましいのであります。すなわちその一、償還対象民間資金還流となる部面、すなわち日本銀行預金部所有にあらざる一般銀行手持国債対象とすること。その二は社債をマーケット、オペレーシヨン及び適格担保対象とすることであります。その三は株式暴落の轍をふむことがないように、新規起債額国債償還額との均衡を絶えずはかることであります。その四は昭和二十五年度増資株式の消化は緊要な課題でありますから、株式社債同様オペレーシヨン及び適格担保対象たることを考慮する必要があると思います。  第六に日本銀行市中銀行への貸出しと金融機関健全経営の問題について一言いたします。これは金融機関みずからの問題でありますが、わが国現在の経済界一般認識につきまして、いま一層その認識を深めてもらう必要があると考えますので、この機会に申し上げてみたいと思います。  第一に貸付金の対預金比率が百パーセントに近いことが、きわめて危険な、不健全経営のごとく考えられる向きもあるのでありますが、銀行資金の余裕あるものから預かりまして、必要とする向きへ貸出しをなす本来の機能は平常時の経営でありまして、国民経済が今日のごとく極度に疲弊し、真の意味の貯蓄がほとんどない場合におきましては、資金の供給は信用造出以外にこれを求むることはむりなのであります銀行経営の健全かいなかは、預貸金比率の問題ではなくて、融資対象健全性、換言すれば国民経済実態いかんによるものと考えます。  第二に政府公共機関が集めた資金民間に直接投資ができない場合には、日本銀行経由金融機関へ投資することが、わが国経済の現状よりいたしまして正しいものと考えます。従つてこの根本的認識のもとに、金融機関経理統制令関係法規制定愼重にお取扱いくださるようにお願いしたいのであります。   以上をもつて昭和二十五年度予算に対しまする所見開陳を終ります。
  4. 植原悦二郎

    植原委員長 どなたか御質疑がありますか。
  5. 勝間田清一

    勝間田委員 今のお話の中で、預金貸付との比率の問題で、必ずしもそれが百パーセント近くなつても、結局は経済対象が健全であれば心配はない、こういうことはごもつともな話と思いますけれども、今の銀行融資の状況から見まして、ほんとうに健全融資が行われておるかどうか、特に滞貨融資等関係から見まして、それを強く言つた場合において、あなたの最初におつしやつた中小企業融資の問題がどう調節できるか、この問題をひとつもう少し掘り下げてお話を願いたい。
  6. 大坪俊次郎

    大坪公述人 ただいまの御質問はごもつともなことと存じますが、今日の銀行経営は、敗戰後日本経済が御承知のごとく極度に疲弊しまして、せつかく復興の途中にある非常にむずかしいときでありまして、一方インフレーシヨン收束によります金詰まりと申しますか、これによつて金融機関銀行方面に対する資金需要というものは常に莫大な額に上つております。従つてその融資をなすにつきましては、よほど考慮を要するのでありますが、この資金需要に対しまして、預金のふえます高をもつてしてはとうていまかないきれない状態であります。また考えようによりましては、銀行金融をいたしまして、わが国経済復興を進めて行くということは、当面の重大な問題の一つであるとも考えますので、相当むりをしながらやつて行くということはやむを得ないと思うのです。ただいまおつしやいました滞貨融資のごときは、おつしやるほど必ずしも大きな金額に上つておるとは私は考えませんが、たとえば紡績等につきましては、すでに工キスチエンジ・レートの落ちつきからしまして漸次注文が増加して参りまして、輸出方面はすでに四月ころのものを売り切つておる、こういう情勢のようであります、従つて滞貨の問題も漸次緩和されて行くのではないかと考えます。  なお中小企業の問題は非常にむずかしい問題でございまして、私個人といたしましてはよほど古い時代から、これが金融の円滑を期することにつきまして、ずいぶん研究した時代もあつたのでありますが、なかなか理想通りには参つておりません。ことに敗戰後の今日における中小企業の窮乏は、まことに気の毒な状態でありますが、これは銀行金融というものが貸金安全性ということをまず第一に考える。銀行公共性からしまして、多少の危險を冒しても貸出しをして行つて、その事業を育成して行くという方が大事なのでありますが、まずどうしても貸金安全性ということを考えさせられるのであります。それは一方預金に対する交換準備を完全にしておくという、銀行経営の本旨からいたしましてやむを得ないことと考えます。中小企業に対する融資につきましては、この点と多少そこに矛盾を起す場合が多いのでありますが、矛盾を起すからといつて、これを放擲しておくわけに参らないと思うのであります。私の考えといたしましては、中小企業金融につきましては、できるだけ政府におかれまして資金を出していただく。たとえば今日各府県には信用保証協会が御承知通りありまして、地方庁もしくは都市から相当な基金を出している。それに金融機関も参加いたしまして、もし故障が起りました場合には全額補償してもらうというような制度が行われております。ことに昨年東京都のごときは熱心にこれをやつておられるような状態でありまして、これにつきましてわれわれ金融業者も極力協力いたしておる次第であります、口数、金額等も漸次日増しにふえて行つておるようであります。中小企業の問題はまことに困難な問題でありますが、政府の非常な御援助を受けると同時に、金融機関としても、できるだけ政府に協力して、日本経済復興のために、中小企業の勃興をお祈りしてやまないのであります。
  7. 林百郎

    ○林(百)委員 本年度予算の歳出で、一番大きな要素になつておりますのが国債償還、大体一般、特別両会計十二百億ほどでありますが、法的に今年度期限が切れるのはわずか八億ばかりでありますが、あと期限の来ないのまで全部償還するのであります。ところが大体市中銀行手持ちが六百億くらいと言われておりますが、この千二百億の国債償還することによつて金融界にとつてはむしろ将来担保がなくなつてしまう。もう一つはこの市中銀行国債償還にまわされた金が、はたして産業資金としてさらに市中銀行から各産業資本の方へ流れるかどうか、この点が非常な大きな問題に今年度予算ではなつておるのであります。この点についてあなたの御意見を伺いたいと思います。
  8. 大坪俊次郎

    大坪公述人 ただいまの御質問でございますが、本年度償還されます国債額がかりに七百億といたし、それが銀行の手元に大部分があるのでありますから、これが償還されることは担保力を減殺するのではないかというようなお考えでありますが、これはごもつともなことだと思います。しかしながら今後日本財政からいたしまして、国債発行せられるということは今のところ予想できないのであります。自然償還の場合に国債手持高というものは減つて参ります。従つてそれにかわるべきものとして社債等の堅実なものを手に入れる、こういうことしかないと思うのであります。現在こういうような方法によつて、たとえば復金債などの償還になりました分につきましては、なるべく堅実なる一部社債を購入して行くような方法をとつております。  それから第三の償還になつた金が、あまり貸出し方面に向けられないじやないか、こういう御質問でございますが、それもたいへんごもつともなお考えと存じます。日本銀行に借入金を持つております間は、どうしてもその方に入つて来た金を早く返したくなるというのは、個人の場合に借金があれば多少気になると同じでありまして、一応返すことになると思います。しかしながら先ほども申し上げましたように、日本の今日の事業界資金需要が非常に多いのでありまして、堅実な方面につきましては、しかもその融資そのもの銀行資産に何らの危殆を及ぼすものでないとしますならば、そういう方面公債償還になつた金額をもつてして貸出しをするということも、各銀行ともやつておると思います。償還になりましたもの全部を、貸出しに向けるというわけにも行かない場合があると思いますけれども、相当額のものがそういう方面に向けられておることも事実だと思います。
  9. 林百郎

    ○林(百)委員 国債償還した場合に堅実な社債を保持する方針だ、それによつて国債と同一の保証を確保するつもりだということを言われますが、しかしこの国債にかわるだけの堅実な社債、しかもそれだけの利潤を保証するだけのものがあるかどうかという点ですね。むしろ銀行として国債を持つていた方が安心ではないかとも思われるのですが、この点の忌憚ない意見と、もう一つ産業資金に流れると言いますが、今あなた方が国債を持つているよりは、安心して産業資金として流し得るような企業がたくさんあるかどうか。それは事業はたくさんありますが、今あなたの言われる中小企業はほとんど非常な危機に瀕して、むしろ貸出しが危險と思われるくらいだと言われておることを見ますと、むしろ手がたいことを言うなら、国債でも持つていた方が心配ないように思われるのですか、銀行はこういう政策を心から歓迎しているのかどうか。国家政策としてはやむを得ぬと思われているのかどうかという点の御意見を伺いたい。
  10. 大坪俊次郎

    大坪公述人 どうも今お尋ねの国債の額というものは、御承知通り七百億も本年度償還されるというのでありますから、それにかかるべき堅実な社債同等程度のものが発行せられるかどうかということは非常な疑問だと思います。昨年度の例をもつてしますと公債償還というものは論ずるに足らなかつたのでありますが、御承知のように増資株式の拂込みが一年中を通じますと、八百二十二億の額に上つております。一方社債発行額は数字は多少間違つておるかもしれませんが、百八十五億程度に上つております。本年度も少くとも社債はどの程度、あるいはそれ以上の社債発行せられるのじやないかと考えます。またその程度社債発行はどうしても必要だと考えます。しかしそれだけ発行いたしましても、いくらふんばりましても国債償還額には及ばないのでありまして、自然おつしやる通り銀行手持ちといいますか、資産の一部をなしておりまず国債の額を補う程度の一流の堅実な社債の入手は至難であります。これは御説の通りであります。これでは貸出し方面に国と同様な信用を持つておる会社が多いかとおつしやいますが、見ようによつて日本国家経済よりも非常に堅実な会社もあると思います。しかしそういうものが非常に多いかとなりますと、そうたくさんはありませんが、銀行が安心して貸出しをなし得る方面は非常に多いと思うのであります。その点は御懸念の必要はないと考えます。
  11. 林百郎

    ○林(百)委員 そうしますと、銀行手持公債がほとんど償還されるといたしますと、一体銀行資産の構成が、従来と違つてどう変化して来るかということが一つ。それから国家保証よりはもつと安全な事業があると言われるが、具体的には、たとえば外資が入つて来て、外国資本保証されている事業というような意味ですか。それとも、具体的にはどういう方面を指すのか。非常な異常な御発言だと思いますから、念のために具体的な事例をお聞きしたいと思います。
  12. 大坪俊次郎

    大坪公述人 ただいまの国家財政状態よりももつと堅実な会社があると申しましたのは、少し言い過ぎておりますので、その点はお取消しいたします。しかしそういう方面信用の絶大な事業会社というのは、今日の疲弊した日本経済下におきましても、相当たくさんあると思うのであります。皆さんが御安心になつて株式に投資なすつてもよい方面は多数ある。これは私が申し上げなくても万々承知しておられると思うのであります(林(百)委員「いや承知してない、具体的に言つてください」と呼ぶ)具体的に申し上げるのはとうかと思いますから、御遠慮いたします。
  13. 林百郎

    ○林(百)委員 もう一つだけ……。最近日銀融資で無担保融資を開始したということを聞いておりますが、これがあるかどうか、お聞きしたい。
  14. 大坪俊次郎

    大坪公述人 日本銀行で無担保融資を開始したということでございますか。——それは聞いておりません。それはおそらくお聞き違いではないかと存じます。日本銀行法の定めから行きましても、無担保融資をするということは、よほど特例としてはどうかと思いますが、原則としては認められていないと思います。今の無担保とおつしやる意味が、たとえば事業会社手形を、かりに申しますれば日本発送電会社の振り出した手形日本銀行見返り担保として入れまして、それによつて融資を受けるということはあり得ます。しかしその場合は無担保貸出しではないのでありまして、手形見返りにした貸出し、やはり担保をつけた貸出しということじやないかと思うのであります。今おつしやいます無担保の貸出しというのはどういう意味か、私まだ存じません。
  15. 林百郎

    ○林(百)委員 今の点ですが、実は私の方も異例だと思うのですから、一体こういう異常な貸出しをなぜするかと思つてお尋ねしたのですが、今言つた手形担保にして貸出すというのは、従来も行われていたのか、最近特にそういう傾向になつて来たのか。いわゆる物的な固定資産あるいは流動資産、そういうふうな資産として評価されるものの裏づけなくして、手形とかいうようなものの担保で貸し付けるという形が従来も行われていたのか、また最近とみにそういうものがふえて来たのかどうか、その点をお尋ねしたい。
  16. 大坪俊次郎

    大坪公述人 従来は平常の場合においてはそういう取扱いはあまり行われていなかつたと思います。昨今いわゆる事業手形担保として融資するということが言われておりますのは、今の御質問の点じやないかと思うのであります。それは昨今の情勢が、いわゆる平常状態ではないというような見地からいたしますと、そういう手形が最近ふえて参りましたということもむりからぬ事実だと考えます。
  17. 林百郎

    ○林(百)委員 その点ですが、最近特にそういう異常な、手形担保として日銀貸出しが行われて来たという、その点の御説明の中の異常という意味ですね。どういう異常からそういう問題が起きて来たか、そこをお聞きしたい。
  18. 大坪俊次郎

    大坪公述人 どうもあまりなれませんので、言葉の使い方が下手なのでございますが、今日の日本状態は、敗戰という一大打撃を受けたあとの復活の途上にあるのでありますから、それが平常状態に入るまでは、多少変則的ないろいろなことが行われて行くようなこともあり得る、こう思うのでございます。日本銀行が今の手形担保で貸しますのが、その意味の異常かどうかということは私は必ずしもそうではない。これは私の解釈でありますが、やはり銀行政策はその事態々々に応じた適切な方策を、これは日本銀行法を曲げるわけに行きませんが、とつて行かれるということが国民経済上必要なことではないかと考えます。
  19. 林百郎

    ○林(百)委員 そこで最近特にそういう異常な貸出しが行われているが最近のその異常な状態、これはどういうことかと言うのです。敗戰というのは一般的な情勢ですが、特に最近そういう異常貸出しを日銀がして来た、その最近の異常な経済状態というのは何ですか。
  20. 大坪俊次郎

    大坪公述人 最近特にそういう異常な貸出しが多くなつて来たということを、強調しておるわけではないのであります。
  21. 林百郎

    ○林(百)委員 何だかわからなくなつたのですが、それではもうけつこうです。
  22. 深澤義守

    ○深澤委員 一番最初に大坪さんは均衡予算は非能率的の統制経済から、自由経済への復帰という意味において、これは全面的に賛成である。こういう説明をせられておつたのでありますが、今統制経済から自由経済へというようなことが合言葉のようになつております。そうして国民自体もまたこれに対して一つの幻想を持つておるのでありますが、ところがこういう一般的に経済がへとへとの状態になつておるときに、自由経済ということは実際は考えられないと思うのであります。金融関係から申しまして、そういう自由経済への復帰の確信がおありになつてそういうことを言つておられるのか、その点を伺います。
  23. 大坪俊次郎

    大坪公述人 これは政府のお出しになつております二十五年度予算の大綱の説明を見ましても、漸次政府方針としてやつておいでになるようなことが書いてあります。私どもも戰争を遂行するために、やむを得ず行われました非常時的経済統制というようなものは、漸次平常状態に復するにつれて、そういう統制をはずして行くということは、経済の原則からいつて私は適当だと思うのであります。今日の実情がはたしてそれに適当してれるかどうかということにつきましては、漸次そういう方向にやはりアクテイヴに向けて行く必要があるのじやないか。こういう意味におきまして、統制経済自由経済に移して行くということは賛成だという趣旨で申し上げたのであります。
  24. 深澤義守

    ○深澤委員 その点は議論になりますから、あえて申しません。  次は価格調整費の撤廃について、竹馬の足を切ることに対しては正しい、今までの統制経済の中において、補給金がほとんど人件費として使われておつたのだ、生産面にはあまり使われておらなかつたという実情を説明されておりますが、この価格調整費削減ということによつて国民生活は非常な大きな影響があるとわれわれは考えておりますし、現在あるのでありますが、その点についてのお考えをお伺いいたします。
  25. 大坪俊次郎

    大坪公述人 ただいまのお話通り価格調整費削減は、国民生活にも影響があると考えまして、そこで私は無條件にそれを賛成したのではないのでありまして、これを漸次時間的、金額的にその点を調整して行く必要があるということをつけ加えて申し上げた次第であります。
  26. 深澤義守

    ○深澤委員 もう一つの問題は預金の問題でありますが、経済安定の一つの指標として、預金が非常にふえておるということを政府も強調しておるのであります。大坪さんはこの預金を批判いたしまして、これは真の意味預金ではないというふうに言われておるのであります。われわれもそう考えておるのでありますが、国民は今日の経済の中から預金をするという余裕はないのであります。それにもかかわらず預金総額がふえるということ自体に、これは真の預金ではないというふうに解釈できますので、真の預金ではないという意味において、ひとつ金融機関の方から御説明ができましたら、お願いしたいと思います。
  27. 大坪俊次郎

    大坪公述人 その点でございますが、何といいますか、日本経済が、インフレーシヨンからディスインフレの方向へ沿つて今向つておると思いますが、インフレーシヨン收束の場合に、経済界が種々の混乱を来すことは、過去においてわれわれもいろいろ経験しておることであります。従つてそのインフレの割合が漸次縮まつて行く場合、自由経済に移行する能力があるかといいますと、なかなかわれわれのふところはそうふえないと思うのであります。しかしながら、一方において、敗戰後日本に特有の復興という大きな問題があります。その方面に向けられるいわゆるつくり出された金といいますか、貸金によつて資金をまかなつて行くそのしり、その出ました金がまわりまわつて今日の大きな銀行預金の相当の部面をなしておると思うのであります。平常状態のときのような個人の大きな金がふえて行つておる時代と、その間実情を相当異にしておるのじやないかと私は解釈しております。
  28. 小峯柳多

    ○小峯委員 同僚の諸君から非常につつ込んだお話がありましたが、私も今お話に出ました真の意味の貯蓄という問題でありますが、私の解釈ですと、それは信用造出を伴つた場合の預金、早くいえば今言つたような言ひ方になるだろうと思います。しかしながらこの信用造出というものは、やはり金融政策の根幹でありますから、真の意味預金とかなんとかいうような形式的な考えではいかぬだろうと思うのであります。そこでその線に沿つて伺いたいと思います。両建預金実情はどうでありましようか、実際あなた方がやつてみて、ひところより両建預金の率がふえておると思いますか、その点を伺いたいと思います。
  29. 大坪俊次郎

    大坪公述人 必ずしも両建預金増加しておるとは考えません。
  30. 小峯柳多

    ○小峯委員 私はインフレ・マネーでなくなつたときの貯蓄というものは、絶対のサープラスから出て来た貯蓄でなくて、資金を使う場合のタイム・ラッグといいますか、それが総合的に貯蓄になると考えております。そんな関係でどうも両建貯金がふえておるのじやないかと考えて伺つたわけであります。  そこでもう一つ伺いたいのは、あなたのさつきおつしやつた信用造出の問題であります。この信用造出方法につきまして、あなた方お考えになつておる方法、これは幾つもあるだろうと思いますが、どういうふうな方法があつて、しかもどの手で行くのが好ましいと考えられますか。私どもがしろうとながら拾いますと、たとえば適格担保を拡大する。これも一つ信用造出方法だろうと思います。あるいは近く大蔵委員会に付託になるだろうと思いますが、金融発行限度の引上げ、それから盛んに問題になりました事業手形見返りにする金融、あるいは手形再割引を盛んにやるというようなこともそうだろりと思います。それから無担保融資の話が出ましたが、これは事業手形見返りだという意味で私も了解いたしておりますが、そのほかにこれは関連しての質問でありますが、別わくの融資というものがありますが、これは担保をとつておりましようか。今信用造出方法を伺うかたわら、その点も伺いたいのですが、御見解を伺いたいと思います。
  31. 大坪俊次郎

    大坪公述人 信用造出の問題でありますが、これは日本銀行の御方針とも関係がありますので、一概に申し上げられませんけれども、日本銀行が現在銀行券の発行高を三千億程度で押えるというような強い方針でありますと、今小峯さんのお尋ねになりましたような方針をかりにとるとしますと、ただちに行き当るのではないか。こう私は考えたいのであります。  それからいろいろ信用造出しますためのおつしやつた三、四の方法は、私も意見的には賛成なのでありますが、たとえば預金資金を今日までは国家及び地方団体の債務の引受あるいは貸出し等にお使いになつておりました。しかし今日のような時代には預金部としましても、一般大衆から集められた資金でありますから、これをやはりただ形式的に国と地方団体の債務を引受けるということでなくて、何らかやはり一般的に、たとえば社債引受というようなことも必要であろうと考えます。また民間銀行預金資金を預けていただきまして、それを特定の方面に出すように市中銀行をし向けるというようなことも考えられる、こう考えます。
  32. 小峯柳多

    ○小峯委員 今私のお尋ねした中に残つておりました別わく融資の問題ですが、これは担保をとつておるのでありましようか、御存じでありましようか。
  33. 大坪俊次郎

    大坪公述人 それは私存じないことを御承知なのですが、おそらく日本銀行としては見返り担保としては何かとつておられると私は推測いたします。
  34. 小峯柳多

    ○小峯委員 それから少しりくつつぽい話になりますが、先ほどの御公述のうちで、自由経済になつて、それについて行けるかというふうな意味だろうと思いますが、自由経済に対する自由金融というふうな意味じやなかつたと思いますが、私は自由経済考えましても、あるいは唱えましても、金融という問題に関しましては、手放しの自由はあり得るはずはない。信用政策というのは、御承知通りやはり計画的に進めなければならぬものでありますから、自由経済金融におきましても、計画性があるのだ。そういう意味金融には手放しの自由経済はないんだと考えておるわけであります。ですから自由経済すなわち自由金融とおつしやられると、その点どうも少し齟齬を来すのでないかと考えますが、いかがでございますか。
  35. 大坪俊次郎

    大坪公述人 もし私の言葉をそういうふうにおとりになつたとしますと、それは私も不本意なのであります。決して銀行は、無統制に自由に自分の考えのままにやつておるのではないのでありまして、やはりそのときの各方面意見も参酌いたしまして、政府方針なり日本銀行方針なり、あるいは一般経済界の事情を把握して進んでおるつもりであります。決して奔放に野ほうずにやつておるわけではないのであります。誤解のないようにお願いいたします。
  36. 小峯柳多

    ○小峯委員 それで私は満足なのでありますが、われわれの自由主義経済というものは、金融に関してはそうなのでありまして、わが民主自由党の唱える経済政策は、そういう面をとるということを考えておりますから、それを御了承願いたいのであります。
  37. 林百郎

    ○林(百)委員 先ほどの点でどうもはつきりしない点があるのですが、国債償還の問題でありますが、帝国銀行ともなれば、いろいろ政府などとの関係もありますし、言いたいことも言えないし、いろいろ御遠慮なさつておると思いますが、一体国債償還のこの方式を、金融界としては非常にいい政策だとして、もろ手をあげて歓迎しておるのか、そうした政府方針ならばやむを得ないから、それに対して確実な社債を持つとか、今の政府以上に信用できる会社に投資するというようなことをお考えになつているのか。その本心は、あるいは言えないかもしれませんが、大体どういうことであるのかということを、何とかお聞きしたい。われわれどうも銀行関係はもろ手をあげて賛成していないような気がするのですが、その点をひとつお聞きしたい。
  38. 植原悦二郎

    植原委員長 法廷で言えば、今の林君の質問は誘導尋問として禁止せられますが、この場でありますから特に許します。(笑声)
  39. 大坪俊次郎

    大坪公述人 金融界賛成しているかという問題でございますけれども、その人々、その銀行々々の実情によつて違うのではないかと思いますね。
  40. 林百郎

    ○林(百)委員 銀行によつて違うというようなことをお答えになるところをみれば、必ずしも賛成とは言えぬというふうに私は解釈いたします。あとあまりやると、委員長にまた誘導尋問だとしかられますから……。(笑声)それからもう一つ預金はふえているということを盛んに池田大蔵大臣が言いますが、これも誘導尋問になつてはいかぬのですが、この預金増加は、ただいま申しました通り、正常な経済的な余力があつて預金するのではなくて、非常に異常な形で銀行から貸出しを受けるための歩積みの預金とかいう意味預金がおるということ、預金の絶対額はふえても一方貸出しの絶対もふえておると思う。そこで預金が非常にふえておるのは経済安定の一つのシンボルだという見方は、安易な見方だというふうに思われますが、この点もひとつ大坪さんより忌憚のない御意見を許される範囲でお聞きしたいと思います。
  41. 大坪俊次郎

    大坪公述人 御承知のように経済界がだんだん安定して、物価もだんだん下りぎみになつて来ておりますから、物よりも金を持つておる方がよいという一般の空気は強くなつておるのじやないかと思います。その意味で漸次小口の預金者が今後ふえて行くということは考えられると思います。先ほどおつしやつた貸金手形を割引くために歩積みを幾らかずつして行く、なるほどそういう方法もとつておりますけれども、そういう金高がどの程度に上つておりますか、つまびらかにいたしませんが、そう大きい金額ではないと思います。物よりも金を持つておる方がよろしいという空気は、一般に広く行き渡つて来つつあるということは事実じやないかと思います。その証拠に銀行あたりの小口の預金の口数——金高はあまり上りませんけれども、口数が漸次ふえて来つつあるように思います。
  42. 林百郎

    ○林(百)委員 今の点ですが、そういうように物よりは金の方がよいというので、預金がふえておるから、経済安定の一つの象徴だと言われますようですが、もう一つ、貸出しの方はそれではどうなつておるかということが一つと、物よりは金だというので、小口の預金がふえて来て、産業資金が枯渇し、税金による徴收、復金債による償還、そのほか今言つたような小口の融資までが銀行行つてしまつて産業の方にまわらないということになれば、産業界の方はかえつて金融が枯渇して非常な危機に陷るのじやないか、そういう意味銀行預金がふえておるから経済が安定しておるということが言えるかどうか、それを私はお伺いいたします。
  43. 大坪俊次郎

    大坪公述人 私はそういう意味で申し上げたのじやないのでありますけれども、やはりインフレーシヨン收束しつつある過程でございます。その間に金詰まりの面はどこにあるかというと、ずいぶんあると思うのです。ですからこれは外国の例をとりましても、ドイツのこの前の大戰後の收縮の状態においてもやはり同様の現象があつたと思います。ですから国の財政緊縮されて来ますと、金に対する考え方がかわつて来るといいますか、預金を持つておる方がよいとか、金を持つておる方がよいという空気を醸成することは私事実だと思います。あしたから物価が倍になるからというので何でもどんどん買う場合と逆になる、そうじやないかと思います。
  44. 植原悦二郎

    植原委員長 次に地方財政について立教大学教授藤田武夫君の御意見開陳を願います。     〔委員長退席、小峯委員長代理着席〕
  45. 藤田武夫

    ○藤田公述人 ただいま委員長から御紹介にあずかりました藤田武夫でございます。ただいま立教大学で教職についております。  地方財政の面から昭和二十五年度予算について考えておるところを申し述べろ、そういうお話でございますが、実は昨日初めてお話を伺いましたので、十分な準備もできておりませんが、平素考えておりますところを申し述べたいと思います。  本年度国家予算につきまして、地方財政の面から最も問題になります点は、御承知のように地方財政平衡交付金の問題であります。ここではその平衡交付金を中心に問題を取上げまして、後ほど公共事業費の問題にも少し触れてみたいと思います。地方財政平衡交付金は、御承知のように地方団体の自治的な民主的な活動を確保する、そして同時にそれによつて国内の必要な地方行政を保障して行く、この二つが目的になつております。しかしながら、この平衡交付金の組織なり運用のいかんによりましては、この目的といたしております地方自治、ことに民主的な地方自治の確立を妨げて、民主的な地方自治を脅かし、同時に国内の必要な行政事務に支障を與えるという結果を伴うのであります。そうして本年度提案されました平衡交付金につきましても、そういつた懸念が持たれるのであります。その点について私の考えを申し述べたいと思います。  御承知のように昨年の夏発表されましたシャウプ勧告において、一つの大きな目的とされておりますのは、地方自治の確立のために、地方団体の財源を強化するという点があります。それの最も明瞭な現われは、国税において約七百億円の減税をしておりますにもかかわらず、地方税においては四百億円の増税を企図しておる。そういう点に明瞭に現われております。そうしてシャウプ勧告によつて提案されました地方税制の構成を見てみましても、従来の日本地方税制に比較いたしますれば、ある程度弾力性が與えられているように考えます。しかしながら弾力性は與えられたのではありますが、御承知のように、資本主義が発達するに伴いまして、経済の地域的な発展が非常に片ちんばになつて、大都市が栄え、農村が疲弊して行く、これは一般的にそういう現象がございますが、それとともに、弾力性のある財源を與えられることによつて地方団体間の財政力の不均衡、アンバランスというものが一層強くなる傾向がございます。それでそのアンバランスを平衡交付金で埋めて、貧弱な団体にもある程度の行政活動を可能にする。つまり地方財政の調整ということが、この平衡交付金を必要ならしめた根本的な理由でございます。それで今回の平衡交付金も、その財政調整ということを第一の目的にしております。ところで今回の平衡交付金は、その財政調整という目的だけではなくて、これもシャウプ博士の勧告によりまして、国庫の補助金が大幅に整理されたのであります。約三百五億円ばかり整理されたのですが、この整理されたあとの穴埋めを、この平衡交付金でやろうという意図を持つております。従つて今回の平衡交付金は、その働きから見ますと、財政調整的なものと総合的な補助金としての機能、この二つを兼ねているわけであります。この平衡交付金は御承知のように一千五十億円というものが計上されております。この額は国家予算においては、終戰処理費の一千九十億円に次ぐ大きな経費であります。この一千五十億円をそれではどう使うかと申しますと、そのうちの三百五億円というものを、ただいま申しました整理された補助金のかわり財源に充て、従来の地方配付税に当るものが六百六十七億円で、残りの七十八億円がこの平衡交付金で、実質的に今回地方財源がそれだけ補強されたということになるわけであります。そうして一千五十億円というものが出たわけでありまして、これはシャウプ勧告の一千二百億円というところから押えられて来たわけでありますが、これを各地方団体に配付するということに相なります。しかしこれは今年度だけの特別の措置でありまして、本来平衡交付金というものの建前は、近く平衡交付金法案というものがこちらへも提出されると思うのですが、各地方団体の標準行政費というものを計算しまして、各地方団体の標準行政費と、その団体の標準的な税收入とをにらみ合せまして、それの不足するものを全国的に集めまして、それを埋め合せてそこから総額を割出して行く。だから今度の一千五十億円というのは、そういうところから割出されたのではなくて、シャウプ勧告に基いて従来の補助金とか地方配付税に対する関係でできたわけでありまして、今度のものは本来の姿ではないわけであります。それでただいま地方自治庁で考えておる地方財政平衡交付金の制度について、少し地味な話になつて恐縮でございますが、これを批評するについて、どうしても必要な限りにおいてその骨組みだけを申し上げたいと存じます。  先ほども申しましたように、標準行政費を各地方団体について算出して、それを標準税收入とをにらみ合せ、その足りないものを合計して、地方自治委員会議で定めて、これを内閣総理大臣に提出し、国会にかけて、自治庁の案では、法律で定めるということになつております。そしてそれを道府県交付金と市町村交付金とにわけまして、それぞれ各道府県、各市町村に配分するわけであります。その配分します場合の方法は、前に申しましたのと同じように、各地方団体の標準行政費と標準税收入とをにらみ合せて、それの不足額に按分して各地方団体に配分する。それではその標準行政費をどうしてきめるか、これが重要な問題になるのですが、これを各地方行政の重要な行政項目について申しますと、警察も消防、土木、教育、厚生、産業経済、戰災復興公債その他そういつた費目についてその種類ことに経費の額を算出する標準というものをきめます。たとえば教育費であれば、小学校の児童数とか、人口数、これは一種類ではなくて、いろいろなものを組合せているようです。それから土木費であれば、道路面積とか河川の延長とかいうものを測定の標準にいたします。そうして標準の一単位当り、たとえば児童一人当りについての標準費用というものを算定する。たとえば児童一人当り千円なら千円というふうにきめて参ります。しかしこの千円ということについては、各地方団体をグループにわけて、大都市には多くし、町村には少くするというかげんはするようでありますが、こまかいところは略しまして、たとえば児童が一万人いて、一人当り千円とすると一千万円、そう簡単でもありませんが、そういうふうにして標準行政費を教育について出し、また土木についても出すというように、各種の行政について出して参ります。それを合計して、その地方団体の標準行政費とする。一方標準税收入額と申しますものは、どういうふうにして出すかと申しますと、今度の地方税法によつて、たとえば市町村民税とか附加価値税について標準税率というものがきまつております。その標準税率を地方団体で賦課して出て来る税額七〇%——少し余裕を見て、七〇%の税收入というものをもつて標準税額とする。この標準税收入額と、先ほど申しましたようにして出す標準行政費、この両者をにらみ合せて、それの不足額に按分して府県の交付金、市町村の交付金を各地方団体に配分するということになつております。非常に簡単な説明でありますが、大体の建前はそういうふうになつております。そしてこれによつて財政調整の役割と従来の国庫補助金の役割もいたしますので、もし標準税收入額が標準行政費に超過するというような富裕な団体がありますれば、その団体には全然平衡交付金が参らない——今まで義務教育費の国庫負担金といつたようなものが相当額つておつたわけですが、そういうものが交付されないという結果になります。これが今回の地方財政平衡交付金の仕組みでございますが、これにつきまして私の批評を加えたいと思います。  大体批評の要点は四点ございますが、その第一点は、この標準行政費というような支出面の問題を新しく地方財政の問題に引入れて、従来收入面からだけ扱われておつた地方財政の確立を、この方面からはかつて行くという新しいやり方は、一つのすぐれたやり方だというふうに考えられますが、しかしここで問題になりますのは、地方団体の財政需要というものが、今申しましたような操作によつて、まず第一に地方財政平衡交付金の総額の決定に対して、どこまで的確に反映するかという問題があります。この点についての仕組みといたしましては、市町村長から知事に標準行政費、標準税收入というものを報告する。知事から地方自治委員会議に報告する。地方自治委員会議は国の各省の行政機関に意見を求めて、それをしんしやくして総理大臣に答申する。それを国会に持出して法律できめる。そういうプロセスをとるわけでありますが、この総額をどこまで確保するかということにつきまして、現在でも自治庁の方では法律でそれをきめてもらいたい、しかし大蔵省方面では予算的な措置でいいのだというふうな意見もあるように聞いております。とにかくこの総額の決定におきまして、地方実情を深く考慮しないで、国が一方的にその総額を機械的にきめるというようなことに相なりますと、これは標準行政費を維持するという点から考えましても、地方団体の自治活動に非常に重大な支障を生ずるということになります。昨年の予算委員会でも問題になりましたように、従来は地方配付税を削るか削らないかということが大きな問題になつたのでありますが、従来はとにかく地方配付税といたしまして、所得税、法人税の收入の何パーセントというものは国の方で法律でもつてのけておつた。そういう確実な保障があつたわけであります。ところが今回は、一面から見ますと、そういう特定の税金でくくられないという自由性はあります。そこにいいところもあるのでありますが、一面においてはそういう税金に関係して、そこに確保された財源が出て来るが、全体の標準行政費とか、そういうものの組み方によつて、国の方から一方的にそれが圧縮されるおそれもある。そういう点が非常に注意すべき点でありまして、従来から往々問題になつておりますように、国家財政において予算緊縮したが、それが地方財政の方へしわ寄せされて、地方財政が犠牲になつておつたというようなことも、こういうところから起つて来る可能性が十分見られるわけであります。それから先ほど申しましたように、一千五十億円の中で三百五億円は補助金の身がわりの財源でありまして、結局財政調整として使われますものは七百四十五億円になるわけであります。私の意見を率直に申しますと、この七百四十五億円では少な過ぎるというふうに考えております。その理由といたしましては、昭和二十四年度に最初地方配付税法で要求されました場合には、一千四十九億円という数字が出ておりまして、それでも財政調整として足りないというふうなことも言われておつたわけであります。それから見ましても七百四十五億円は決して多い数字ではない。それからシヤウプ勧告によりまして、なるほどその後地方税の税源が強化されまして四百億円も増税されたわけであります。ところがこれは総体として見まして四百億円の増税でありまして、私の考えではシャウプ勧告によつて弾力性のある税種で地方税をとつて参りますと、富裕な団体と、貧弱な団体との間の財政力の不均衡というものが非常に強くなりはしないか、そういうふうに考えられます。これはちよつと例をとつて申し上げますと、今度府県の主要な税金は附加価値税であります。それと入場税、遊興飲食税、ところが附加価値税というものは農業には賦課されない建前になつております。それで今農村の府県をとつて考えてみますと、一番重要な府県税收入の五割以上を占めるような附加価値税の收入がきわめて少い。そういう府県においては入場税、遊興飲食税というものも非常に少いだろうと考えられます。こういうことだけをとつてみましても、地方団体間の財政力の不均衡というものがはげしくなることが相当考えられます。さらに将来の経済の動き、農村恐慌というふうな問題を考えます場合において、ますますそういう感じを強めるわけであります。  それから私の批評の第二点は、シヤウプ勧告の意図しておりますところは、地方団体で課税いたします今度の新しい税金は、標準税率で各団体が税金を課する。それで足りないところはこの平衡交付金で満たして行く、それで一応各地方団体の最低の国民的な水準を持つ行政活動というものを実現して行く。それ以上の各地方団体の自主的な行政の拡大ということは、標準税率を超過した超過課税でもつて自主的にやつて行く。そういうふうにうたつております。しかしよく検討してみますと、すでに御承知と思いますが、今度の地方税制の改革によりまして、各種の地方税の標準税率というものは相当高くなつております。従つて結局平衡交付金でねらつておりますところの最低の行政事務というふうなものが、富裕な団体はとにかくといたしまして、一般的にはそれが現実の行政の規模なり、内容になるというおそれがあるように感ぜられます。そうしてこの標準行政費を算定いたします場合において、何しろ全国一万五百余の市町村、この市町村は人口一千人くらいの貧弱な農村から、六百万を越える大都市まで千差万別でありまして、非常にいろいろな事情を異にしております。こういう非常に差異の多い地方団体につきまして、標準行政費を單に標準経費というものから割出して算定して来るということにつきましては、よほどいろいろなグループなりいろいろな団体にわけまして、詳細に実情に適したような算出の方法をしないことには、これは非常に画一的な、国からの一方的な決定に陥るということが心配されるわけであります。ことに今回の一千五十億円という平衡交付金の金額は、下からそういう標準行政費を計算して積み上げて、それで算出したのではなくして、先ほど申しましたように、地方財政全体の大きさ、補助金の整理との関係とかいうふうなことから割出して来た額であります。そしてこの額をこれから分配するのについて、標準行政費とか標準税収入というものを持つて来てそれに合せてわけて行くわけであります。従つてそこに非常に一方的な画一的なやり方が行われやすいということは十分に考えられると存じます。もしこういうことが行われるといたしますと、地方団体の行政の実質的な内容においては、形はたとい地方自治という制度をとつておりましても、地方団体の行政の規模なり内容ということにつきましては、非常に中央集権的な、また官僚的な、反民主的なことに陷るのではないか、民主的な地方自治を破壊するような結果に導かれるのではないか、そういう点を心配するわけであります。  それから、第三の批評の点でありますが、この平衡交付金の総額が、先ほども申しましたように、今回はやむを得ないのかもしれませんが、私の考えでは少いように感じられます。それから配分の方法が、これはこれから標準の費用などを自治庁でも考えるようなことを言つておりますが、そのきめ方がどうなるか、まだ将来の問題でありますが、この配分の方法が非常に不適当にされるというふうなことにもしなりますれば、結局は財政力の貧弱な地方団体が非常に財政に困る。その結果は地方税を増税するというふうなことに相なります。今度の地方税制についての問題は、これはきようの公聽会の目的でありませんので省略さしていただきますが、しかし市町村民税とか附加価値税のようなものを通じて見ますと、相当負担関係において不公平な点も見受けられます。そういう税制において地方税が増税されるということになりますと、ますますそこに負担の不公平というものが強化される。そうしてたとえば教育費が十分平衡交付金によつて補給されない。今まで義務教育費国庫負担金でもつて二分の一は国から出しておつたが、それがなくなつてしまう。そういうものに対する補足が十分行われないというふうなことになりますと、またまた教育のための寄付金というふうなものが再び現われはしないか、こういう点が問題になると存じます。  それから私の批評の第四点は、今度の平衡交付金が、先ほども申しましたように、大幅に削られました補助金のかわり財源の役割をしている。そうして先ほど申しましたような仕組みによりまして、国内の重要な、教育とか土木、その他のいろいろな行政を、それによつて保障するということを目的にいたしております。しかしながら、もしこの平衡交付金が合理的に総額がきまり、配分の方法が行われない場合には、この重要な国内行政が維持されないという大きな欠陷を伴うわけであります。御承知のように、地方制度調査会というものができまして、今後国、地方団体間の行政事務の配分を再検討するようでありますが、その場合にも、大体シャウプ勧告によれば、できるだけ国内行政は地方団体に委譲するという方向に行くようでありますが、そうなると、ますますこの平衡交付金の重要性というものが加わつて参るわけであります。  以上の四点をもちまして、私の平衡交付金の批判にいたしますが、それで結局は、この平衡交付金というものが間もなく法案が提出されると思いますが、その場合におきまして、国という上からの一方的な標準行政費というものの決定ではなくて、できるだけ各地方団体の個々の実情に応じたように決定する、それを十分尊重して総額を決定し、またできるだけ必要に応ずるように配分方法を定めなくてはならない。もしそれが一歩誤ると、それを通じて中央集権的な、官僚的な国内行政というものが再現される一つのそこにプロセスが考えられる、そういうことを強く考えるわけであります。これで私の平衡交付金の話を終りまして、大分時間も過ぎましたが、公共事業費の問題について一、二触れておきたいと思います。  御承知のように、公共事業費は、今回昭和二十四年度の六百二十五億円から九百九十億円に、非常に大幅に増額されたわけであります。このうちで、一番地方財政から見て重要な問題は、災害復旧費の国庫負担と、それから六・三制の建築費の負担であります。災害復旧費は四百七十億円計上されております。これは二十四年度は二百三十九億円で、大分増加いたしております。しかしこの場合におきまして、二百三十九億から四百七十億まで、約二倍近く増加したと申しましても、これはやはりシャウプ勧告に基きまして、災害復旧事業は全額国庫負担でまかなうということに改まつたわけであります。従来は二分の一とか、また三分の二という補助金で、それで地方団体に災害復旧事業をやらせ、そうしてその補助金の分だけ国庫が負担しておりましたので、それが二百三十九億円あつたわけでありますが、今度は全額国庫負担でやるわけでありまして、従つて災害復旧事業、そのものの規模が二倍に増加するというふうには考えられないと思われます。それから各府県からの報告によりますと、二十三年以前の災害復旧のためには七百億円、二十四年発生の災害復旧のためには九百億円、それから二十五年の発生のものを約百億円と、これは少いのじやないかという感じがいたしますが、これを見込んで、千七百億円に近い復旧の費用が必要だとされておりますが、それに比べますと、四百七十億円というのはそう十分な額だとも考えられないわけであります。財政状態が今後価格調整費削減とか、いろいろな問題で余裕ができました場合には、どうしても災害復旧費の増額ということを要求されるわけであります。ことに全額国庫負担でやつて全部国の責任に今度はなつたのでありますから、一層国家財政においてこの災害復旧費というものが検討されなければならないと思われます。  それから六・三制の建築費の補助、これは三十五年度において四十五億円計上されております。昨年度はこれが計上されないで問題になつたわけでありましで、補正予算で十五億計上されたのであります。この四十五億円で大体最低基準の面積の六・三制の校舎の拡張が可能だとされております。これで六・三制の校舎は一応整うわけでありますが、ところで、その六・三制の教員の方の問題でありますが、先ほどから申しましたように、教員の俸給は、従来は二分の一国が負担しておりましたのが、今度は平衡交付金によつて援助される、そういう建前になつて来ておりますので、もし平衡交付金の交付の額が少いということになりますと、せつかく六・三制の校舎が建つても教員をふやすことはできない、また十分な給與を與えることができないという問題が起つて参りますので、この点からも平衡交付金の適当な、十分な交付ということが強く要求されるわけであります。  はなはだ雑駁でございましたが、これで私の公述を終らせていただきます。
  46. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 それではこれで休憩いたしまして午後一時から再開いたします。     午後零時二分休憩      ————◇—————     午後一時四十分開議
  47. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 休憩前に引続きまして、公聽会を開催いたします。午前の公聽会におきまして、藤田武夫君から御意見を承りましたが、この際質疑がありましたら、これをお許ししたいと思います。
  48. 米原昶

    ○米原委員 地方財政平衡交付金の標準行政費についての藤田さんの御見解、まことに御同感なわけですが、おつしやる通りに、標準行政費のきめ方いかんによつては、たとえばシャウプ勧告案で、国家見地から見て重要なところに平衡交付金を交付するというようなことがあつたようでありますが、国家見地といつても、解釈のしようによつていろいろな問題が起つて来るわけなのでありますが、その点で、これも法案がまだ出ていないので、実度は今の総予算をわれわれが審議するにあたつても、これが非常に重要な問題なので、われわれは非常に困つておるわけでありますが、少くともこの標準をどういうところに最低限とらなければならぬとお考えになつておるか、その御見解をお聞きしたいと思います。
  49. 藤田武夫

    ○藤田公述人 標準行政費のきめ方につきまして、国家見地からというお話がただいまございましたが、シャウプ勧告には、はつきり国家見地からということは言つてなかつたように思います。私のそれについての考え方は、標準行政費と申しましても、各種の行政事務について、たとえば教育について児童一人当り、ある都市においてどれたけの経費が必要か、そういうことは、具体的にはなかなかここで私が正確にそれを申し上げることはできないのであります。ただ私のその場合における考え方といたしまして、できるだけ地方団体側から、民主的な地方自治を運営するについて、たとえば初等教育の充実について、これだけの標準的な経費は必要だということを、強力に主張いたしまして、そうしてそれに対して、国の方も十分の理解を持つて、そこに一致点を見出す。従来は上からそれがきめられる傾向が、日本地方財政においてはずつと強かつたのでありますが、今後は強力に、下からその必要なミニマムな線を持ち出すという点に、重点が置かれなければならない。非常に抽象的な答弁でありますが、そう考えております。
  50. 林百郎

    ○林(百)委員 藤田さんにお伺したいのですが、シャウプ勧告によりますと、地方財源の相当強力なものにして、地方の自主権を確立するということが、このたびの地方税制改革の一つのねらいだと思いますが、あなたのお話を聞いておりますと、標準行政費のきめ方そのほかが、大体やはり地方自治委員会議を通じて各大臣、総理大臣になつておりまして、かえつて中央集権的になるのではないか、要するに平衡交付金をお互いに各地方が争奪し合うということによつて、かえつて中央がキャスチング・ボートを握るというか、実権を握るような危険があるように思いますが、この点は先ほど藤田さんの御説明の中にもあつたように思いますが、将来非常にはげしくなるのではないか。今でも地方配付税をとるために、地方の行政官は、地方の配付税を幾らとるかということが、地方行政官の腕があるかないかということを認定する基準にすらされておるくらいでありますから、ましてや平衡交付金が、こういう厖大なものになるとすれば、そういう点が多分に懸念されますが、その点はどうお考えでありますか。
  51. 藤田武夫

    ○藤田公述人 お答えいたします。ただいまの、従来地方配付税を自分の地方団体にできるだけ多く持ち来すために、極端に申しますれば、争奪が行われたという点ですが、地方配付税につきましては、きわめて機械的なシステムができておりまして、全面的に争奪が可能であつたわけではないと思います。しかしある点において、そういうことがあつたかとも聞いております。それで、これからの平衡交付金を定めます場合においては、そういつた争奪によつて、できるだけ多くのものを獲得する、その間に中央集権的な、官僚的な勢力が伸びるもそういうことを極力防ぐために、先ほども申し上げましたように、標準行政費のとり方におきまして、できるだけ地方自治団体側からの主張を強力に貫徹するようにいたしまして、そのシステムを、そういつた恣意的な要素によつて左右されることなく、しかも地方自治の貫徹に容易なような、そういう仕組みに地方平衡交付金法というものを国会の方でも検討されて、確立されるということが要点ではないかと思われます。
  52. 林百郎

    ○林(百)委員 このたびの地方税制で、府県は、附加価値税と入場税と飲食税というようなことになりまして、かえつて財政的には従来より弱まつたんじやないか。従来ですと、市町村税、県税附加税を課して、財力を持つておつた。ところが今度は弱められて来る。従つて、市町村は別ですが、府県の中央に依存する度合いが非常に強い。そうすると、これは地方の自主性が確立されるのではなくて、少くとも府県あたりでは、中央への経済的依存の度合いが強くなるし、そういう面を通じて中央の支配力がかえつて高められるというように思いますが、こういう点はいかがでありますか。これが一つと、それから平衡交付金制度というのは、これはシャウプ博士が勧告したのですが、よその国に、特にアメリカあたりにあつて、それを日本に持つて来たのか、この点もひとつ教授にお聞きしたいと思います。
  53. 藤田武夫

    ○藤田公述人 府県の財源が相当弱くなるのではないかということですが、附加価値税と入場税と遊興飲食税で構成されますが、これは先ほど私の公述の中でも申しましたように、富裕な県におきましては、これは具体的に計算したわけではございませんが、場合によつては、附加価値税の方からの関係で、相当財源が強化されるのではないかという気がいたします。しかし、おそらく大部分の府県においては、今お説の通りに、財源が相当きゆうくつになるのではないかというふうに考えられます。それで府県の方から平衡交付金を通じて財源を獲得する場合に、中央集権的な傾向が出て来る。こういうおそれが多分にございますので、先ほどからも申しましたように、平衡交付金の定め方について、十分そういう点において、そういつた弊害の起らないような措置が必要だと存じます。  それから第二点の外国の制度の問題でございますが、これは公述でも申しましたように、こういう財政調整的な制度が心要であるということは、資本主義的な経済組織の発展のもとにおいては、必然的な制度であると考えられます。それでドイツでは、フィナンツ・アウスグライヒという形で大分以前からやつております。それから英国では、ゼネラル・エクスチェッカー・コントリビューシヨン——一般国庫交付金という名前でその役割をしております。それからアメリカでは、補助金も一部そういう役割をしておりますが、一番そういう役割をいたしておりますものは、州から地方団体べ配付されますシエヤード・タックス——分與税というものがございます。これでやはりそういつた役割をやつているわけであります。しかしアメリカのような場合は、まだ地方団体の財源が相当多うございましてそういつた交付金の占める比重は、日本の場合に比べてはかるに低いのですが、ドイツや英国は——ドイツの最近はわかりませんが、大体日本と同じような程度行つております。
  54. 林百郎

    ○林(百)委員 地方税制によりますと、今あなたのお話になりました通りに、非常に都会的な要素を持つている府県、そういうところにやはり飲食税、入場税、附加価値税が非常にゆたかになる。ところが長野県みたいなところですと、企業はどんどんつつぶれて行く。入場税も遊興税も少くて、非常に弾力性が乏しくなる。そうするとやる事業も大した事業ができなくなり、行政的な事務も非常にプーアなものになる。そこで標準行政費も非常に少くなる。そうなりますと、担税力の弱い府県ほど仕事もできなくなる。仕事ができないので、やはりそこへの補助の性格もなるなるということになると、ますます中央の補助が薄くなり、府県によつて非常な不均衡が出て来る。それを補うためにやむを得ず、中央からの補助金が来ないと依然として寄付金を募集するというようなことになると思います。先ほどあなたのお話もありましたように、教育費など引かれて中央の補助が十分でないということになれば、やはり寄付金を募集する。地方民が何とかしなければならないという情勢が来ると思います。そこで私の質問の要点は、府県によつて非常に不均衡状態が出ると思うがどう考えるか。さらに中央からの平衡交付金が十分でない場合に、再び寄付金という形が起るとお考えになるかどうか、この点をお聞きしたいと思います。
  55. 藤田武夫

    ○藤田公述人 府県がたとえば長野県のようなところでは、財源が非常に乏しいために、その行政の内容が貧弱になるのではないか、この御質問に対してはも確かにそういう傾向が強いと思われます。しかしその貧弱な行政内容を少くとも国民的な水準——これは非常に抽象的ですが、その点にまで充実せしめるように、平衡交付金で補つて行く。これは平衡交付金の役割でありますが、そういうつた役割を十分平衡交付金に持たしめ得るように、これは今後の問題でありますが、交付金を構成しなければならない、そういうふうに考えられます。  それから平衡交付金が十分に行かない場合には、寄付金のような形でまた地方財政にいろいろな問題を起すのでないかというお話でありますが、もし平衡交付金の方がうまく参りません場合には、自然やはりそういうふうな形にならざるを得ないのではないかというふうに考えられます。
  56. 奧村又十郎

    ○奧村委員 私はただいまの林委員とは少し違つたふうに考えておりますので、その点をお伺いしたいと思います。林委員は今度の地方税制の改正によつて、貧弱な県はます財政が困難に陥つて、いわゆる寄付金などはもう一層ひどくなるだろう、こういうことを心配しておられるが、これは少くとも現状よりは今度の平衡交付金の制度なり税制改正によつてよくなると思うのであります。すなわち現状においてはどうか。地方においては賦課課率が非常に制限以外に行われている。また実際の税のとり方においては非常に県によつて不同であり、赤字の非常にひどいところがある。ところが今度の平衡交付金の制度においては、そういう赤字のひどいところは大幅に埋められるということが考えられる。今の地方配付税配付金の配付のやり方は、これは通り一片の配付のやり方で、赤字財政の県に対して思い切つて金が行かないという現状でありますから、平衡交付金の制度によつて今後は少くとも今までよりはよくなる、こういうように私は考えるのでありますが、この点いかがですか。
  57. 藤田武夫

    ○藤田公述人 お答えいたします。現在の地方税制における場合よりは、今度のシャウプ勧告によるところの税制改革並びに平衡交付金によつて、寄付金のようなものも少くなり、現在よりはよくなるのではないか、これは平衡交付金が先ほどから申しましたように、十分その目的に沿うような構成を持ちました場合には、確かにそういうことは言われると思います。ただこの平衡交付金が、一方貧弱な団体も出て参りますので、その面を十分に補足し得ない場合には、また寄付金が増大するという状態に逆もどりするおそれがある。そういうことのないように平衡交付金を組立てるべきだというふうに考えられます。
  58. 奧村又十郎

    ○奧村委員 私のお尋ね申し上げたことは、今年のような地方配付金、これは平衡交付金の半額程度でありますが、その配付のやり方は、特に赤字財政の県に対して大幅に埋めるというような行き方には現在行つておりません。それと比べれば比較的いいのじやないか。こういうことなんですが、実際にあたつて何かそういうことについて御研究になつたことはありませんか。
  59. 藤田武夫

    ○藤田公述人 実際にあたつて計数的に研究したことはまだございません。と申しますのは、何しろ平衡交付金の標準行政費の仕組みは一応きまつておりますが、一単位当りの行政費の費用の額をどれくらいにするかというふうなこともきまつておりませんので、実際上実は計算もできないわけでございます。現在配付税が非常に少くて、非常な財政窮乏をしておる。それと比較いたしますれば、一層よくなる可能性は十分認められると存じます。しかし平衡交付金のうちで財政調整的な役割をいたしますものは、今回は七百四十五億円ですが、昨年度は六百六十七億円で、あまり大きな違いもございません。その点いろいろ問題が残つているように考えます。
  60. 林百郎

    ○林(百)委員 地方財政の点でありますが、こういう点を御研究なさつておりますか。実は今地方自治体の末端の市町村では、財政が非常に困難で、各市町村長がほとんど責務を果すことができないというのでやめる人が多い。今度は市町村の税負担が今より非常に増して来るのでありますが、この大きな地方税の負担を、今の市町村が十分背負い切れるかどうか。市町村が財政的な負担にたえ、県がある程度財政的な負担にたえれば、こういう制度もいいでしようが、もし市町村が思うような財政的な負担にたえられないということになれば、こればかりの平衡交付金では、今言われているような、現在よりは地方の貧弱町村の経済的な援助がよくなるということは言えないと思います。もつと事態は深刻になつて、少くとも今のような新しい税制の大きな負担を地方の末端の市町村が負えるかどうか。現在の市町村の財政状態はどうかということを、何か御研究になつておられかどうか、お聞きしたいのであります。
  61. 藤田武夫

    ○藤田公述人 お答えいたします。市町村が今度の新しい税制にたえ得るかどうかという問題は、この御質問の要旨がはつきりしないのでありますが、市町村の行政当局がそれを完全に徴收し得るかという問題と、市町村住民が負担にたえ得るかという二つの問題があると思います。市町村の税務当局が今度の大改革による相当複雑な税制を完全にやつて行けるかどうか、これは現在いろいろ問題になつおりますが、市町村や府県でも、税務吏員をずいぶん大幅に増員するような計画を立てているようでありますが、相当な覚悟を持つてやらなければ、十分な徴税はむずかしいだろうというふうに考えられます。それから市町村住民がその負担にたえ得るかどうか。これは一般的には問題は簡單に判断し得ないのですが、非常に貧窮な農民や中小企業者というふうな人たちは、今度の二倍半にも高められた市町村民税、または附加価値税固定資産税というふうなものには、相当重い負担を感ずるであろうと考えます。
  62. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 よろしゆうございますか。——それでは次に国鉄労組の副委員長をやつておられる菊川孝夫君から御意見を伺いたいと思います。菊川孝夫君。
  63. 菊川孝夫

    ○菊川公述人 私、国鉄労働組合の菊川孝夫であります。現在組合の副委員長をやつております。  ただいまから昭和二十五年度予算案につきまして、意見を述べさせていただきますが、特に私は労働者が、この二十五年度予算がもし国会を通過したならば、こういうふうなことが来るのではないか、あるいは来るであろうということをおそれております点、それからぜひともこういう点を直していただきたい、修正して国会を通過するようにしていただきたいというような希望点等を申し述べさせていただきます。特に私、現在三十五の代表的な組合が集まりまして国会共同闘争委員会というのを持つておりますが、ここに集まつておる組合の代表的な意見も、やはりこの二十五年度予算がこのまま通過するようなことがあつたら、こういう事態が必ず来るのじやないかと非常におそれている点が多々ございますので、こういう点について申し上げることにいたしたいと思います。  申すまでもなく、予算が編成者の意図の通りに執行されますためには、どうしても国民の理解と協力が必要な要件だと思います。それを得るためには、やはり第一にどうしても前途に明るい希望を抱かせるものであつて、かつそのことがやはり理論的にも、また科学的にも証明されなければならぬと思うのであります。ところがこの予算案は、われわれから考えますならば、一部特権階級にとつて明るい希望を持ち得るかもしれませんけれども、労働者はもちろんのこと、農民にも、中小企業家にとつても、きわめて悲観すべき幾多の材料を持つておると考えられるのであります。そこで遺憾ながらこのまま通過するようなことがあつたならば、やはりとうてい積極的に協力するということはむずかしいのじやないか、こういうふうに考えるのであります。  第二に、数字の上では一応收支のバランスがとられておりまして、大蔵大臣はたびたび健全財政であると誇示しておられるようでありますけれども、もしこのまま本予算が国会を通過するようなことがございますならば、本年から来年へかけましておびただしい失業者が出て参りますし、そして農村恐慌もやはりますます深刻になつて来るのじやないか、また中小企業も危機にさらされると思われるのであります。このように国民の大多数を占める勤労階級の生活を脅かすような予算は、われわれから考えますならば、決して健全なものとは言い得ないと思うのであります。もちろん私は敗戰の現実にことさら目をおおおうとするものではありませんけれども、こうした勤労階級の犠牲をでき得る限り最小限度に食いとめて、心から協力して前途に明るい希望を抱いて、苦難の道を切り開いて行くことかできるように、本予算案が国会において修正されることを強く要望するものであります。  そのまず第一点といたしまして、価格調整費は二十四年に千七百九十二億円あつたのが、九百億円に減額し、そうしてその差額が減税の方に振り向けられるようでありますけれども、なるほど税金が減少いたしましても、この調整費削減によりまして物価が上つて来ることになりまして、やはりその負担が勤労階級にかかつて参り、むしろ今までより以上に大衆負担になる危險が多いのではないか、かように考えるのであります。価格調整費の大幅削減によりまして物価が値上りをいたしました場合に、当面いたす問題は、三百六十円レートの維持が、問題になつて来るのじやないかと思うのでありますが、政府の方では、この三百六十円レートをあくまでも維持しようとしておられるようであります。そうなりますと、どうしても労働強化だとか、あるいは低賃金政策というものによつて、労働者がこの犠牲を負わなければならぬことになるのじやないか。このことをおそれておるのであります。そうしてこれは勢いのおもむくところ、やはり労働力のダンピングという色彩が濃厚になつて参りまして、世界の労働者から猛烈な反対をこうむることになるのじやないか。われわれはこのことを最もおそれ、かつ警戒しておるのであります。それで三百六十円レート維持の困難な條件といたしまして、何といつても第一番にはポンドの三割切下げ、この影響をこうむることであります。しかもその三割切り下げたポンド地域におきましても、まだまだドル不足に悩まされておるということが伝えられております。  第二には価格調整費削減による物価の値上り、このレートを維持することの困難な條件を克服するためには、どうしても日本の現在の生産設備を近代化し、あろいは操業度を向上するとともに、技術の導入を行わなければならないとわれわれは考えるのであります。ところが本予算案には、そのことがほとんど考慮されておらないとわれわれは考えるのであります。そして一面金融を通じて集中生産方式をとつて、これを強化して行つてコストの切下げをねらつているという面は、私たちは見のがすことができないと思うのであります。旧臘ロンドンで開催されました国際自由労連に出席した代表者が帰りまして、その議長報告を聴取したのでありますけれども、そこで感じましたことは、アメリカの労働者はきわめて日本に同情的であるけれども、イギリスの労働者は非常に猜疑心を持つておるということを報告しております。それはアメリカの方では技術は世界の水準に比べて、三十年も先に進んでしまつておるからして、日本なんかはとうていついて来られないから、援助をしてやつていいだろうと考えているのでありますが、イギリスの労働者はやはり保守的であつて、特にランカシヤの労働者は宿敵であるところの日本の紡績業の復興を非常に警戒しまして、そしてみずからの技術の進歩だとか、設備の近代化によつて、これと競争しようという積極性をあまり示さずに、現在のままで日本に何とか勝とう、こういうふうな、いわゆる市場競争において勝とうというような考え方から、日本復興ということについて非常に猜疑心を持つておるということを報告いたしておりました。こうした諸外国の情勢から判断いたしましても、日本の産業を近代化するためには、早くこのコースを切りかえなければならぬのではないか。ところがその逆に、金融資本中心の生産方針考えられている。これは私たちから考えますならば、時代錯誤ではないだろうか、かように考えるのであります。その特に一番著しい例といたしまして、債務償還費を見ればよくわかるでありますけれども、政府はこれを説明するにあたりまして、これらの資金を適当に市中に還元して、復興その他最も効率よく活用することは、財政上及び金融政策上の重要な課題である。こういうふうに説明しておられますけれども、この債務償還費は国民が血の出る思いをして納めた税金から大体七百二十三億円、それからアメリカの対日援助見返資金から五百五十二億円、ほかに八億円、合計いたしまして二百八十四億もの金を、なぜ急いで交付国債償還に充てなければならないのであろうかということを、われわれは了解に苦しむのであります。これなどはよろしく先ほどからも論議されておりましたように、利子と期間の満了したもののみに限定して償還を行いまして、あとはやはり国の力が出て来るに従つて、徐々に償還するという方法をとつて、むしろそういう余裕は失業対策の方へまわしてもらいたい。われわれはさように考える次第であります。すなわちこの国債がそのまま拂われるということになりますと、先ほども大坪さんが申されましたように、国債の所有者は大体においに銀行でありまして、その中の約半額ぐらいは現金となつて銀行の金庫へ入つて行く。それによつて当然銀行国債の利率よりも有利な貸出し利率によつてこの金を運用できることは当然でありますけれども、それよりもこの資本の力によつて融資本が、日本の産業を左右する支配力を確立するということは、私は見のがすことができないのではないか。現に銀行企業家に対しまして、金融逼迫の状態を利用いたしまして、まず金を貸してほしければ企業整備を行えないということを強く要求しつつあるのでありますが、私最近わが国でも代表的な自動車工業の生産工場へ参りまして、そこの組合と資本家が対立しております中へ入つて一応様子を聞いてくれというので、労資双方の立会いの上で聞いたのでありますが、そのときにもそこの常務取締役の説明によりますと、どうしても労働組合の方へ一割の首切りという案を示すか、労働協約の改約案を示すか、あるいは賃金の値下げの案を示さないことには、銀行から快く金を貸してくれないのだ。金を貸してもらうには、融資を受けるのには、どうしてもこういう條件を持つて行かなければならないために、君らのところに持ち出したのだ。こういう団体交渉をやつておるのであります。これは大きな資本においても随所に見られることではないか。こういうことを考えましても、どうしても金融資本家の言う企業整備というものは、労働者の首切りであつたり、労働強化であつたり、それから労働協約の改約である。特にこれに呼応いたしまして、日経連あたりは、すでに労働協約の改約案はこういうのを労働組合に示せ。それから賃金の値上げについてはもう絶対応じるな、むしろ下げるようにしろとか、人員整理はこういう作戰でやれというふうな、一連の指導を行つておるのであつて、もう全般的な大がかりな資本攻勢は労働者の上にのしかかつて来ておる、こういうふうな状態であります。そして経営者は金融資本家に迎合いたしまして、反動資本攻勢を展開して来ておるのが、最近におきまする労働問題の特徴でなかろうかと思うのであります。当然こうした金融資本の擡頭は、巨大産業の増大を誘発することはわかつておりまして、中小企業はその下請工場として隷属化することになる。そこにまた中小企業の賃金の遅欠配、低賃金、首切りが起つてつております。特にわれわれはこれを身近に感じるのであります。私の隣におるこれは戰争中は軍需工場へ出ておつた労働者でありますけれども、最近は下請工場の職工をやつておるのだが、月に五千円か六千円くらいより收入がない。しかも子供が三人と家内とで扶養家族は四人であるが、晝は工場で働いて夜は内職をやつておる。それでもどうしても食えなくて、私が給料をもらつて来るのを待つてつて、米を買うのにそれをまわしておる。何とかして貸してくれというので借りに来ておるようなわけで、もう売る物もなくなつたので、今着ているふとんを売らなければならないようになつているのだと涙を流して言つておるのだが、しかし私の家庭でもこれを応援することもできないような状態です。ほんとうに随所にそうした悲劇的な場面が展開しつつある。しかもこの工場はいつ戸を締めるかわからぬというような状態であるけれども、しかし行かざるを得ない。見切りをつけてどこかほかへ働きに行きたいと思つておるけれども、どこへ行つても雇つてくれるような先がないというふうな立場に追い詰められておる。しかも子供が三人もある。こういう労働者はもう町の中には幾らもある。こういうふうに考えるのでありますが、それがなおひどくなるということを考えますと、まことに慄然とするものがあるのであります。一方また農村におきましても、やはり農民は農村恐慌に戰戰兢々としているのではないか。特に最近におきましては、私たち国鉄の小さい駅、寒村の駅だとかあるいは機関区へ、農村の子弟が別に募集をしなくても履歴書を携えて、私はどういう仕事でもやります。どれだけ時間が長くても働きますから、ぜひとも雇つてくださいと費つて履歴書を持つて押しかけて来ているこれなどは明らかに私は戰災者だとかあるいは引揚者、それから過般の行政整理その他によろ失業者が帰農いたしましたけれども農村はもうこの厖大な過剰人口をかかえ切れなくなつて、今生活をますます切下げつつあるんだが、もう切下げは限度へ来て、何とか再び戰を求めて都会へ、あるいはそういうふうな小都市へ出て行かなければならぬという状態へ来ているんじやないか、従いまして今年から来年へかけて、おびただしい失業軒はここからも生れて来る。昭和初頭におきまして——私車掌をやつてつて東北線に乗務いたしておりましたが、その記憶を新たにするのでありますが、東北線の小駅より乗るお客というものは、たいていが十八、九から二十一、二の娘たちで、東北線で上野駅に吐き出される。そうすると土野駅では悪周旋屋が待ち構えておつて、みな淫売窟へ売られて行つたという悲劇がありまして、東京でも東北の娘を救えという大運動が起つたのを、われわれ若いときの記憶を新たにするのでありますが、すでに私の所属いたしております組合の上野支部におきまして、日々見ておりますと、東北線によつて上野駅へ吐き出される旅客の中にはそうした色彩を帶びると申しますか、そういうふうに感じられるような娘が、毎日毎日おりて来るということを言つておるのです。それだけ東北方面の農村が深刻化しておるんじやないかと考えておるのであります。ましてや二十五年度は農地改革がすでに打切られるし、それから農地予算の減少もございますので、いよいよこれは窮迫化することは明らかでありまして、さらに本年三百七十五万トンに上る輸入食糧が日本へ入つて参りますが、これらの圧迫を受けて、いよいよ農村恐慌に拍車を加えんとしておると思うのであります。かくのごとく労働者は低賃金、遅欠配等の犠牲をこうむり、中小企業家は倒壊あるいは隷属化へ追い込められて来、農民がやはり農村恐慌にさらされる、一方において金融資本が瓦大産業と組んで、日本経済を支配する態勢を確立する準備がこの予算案の随所にぼやりひそんでおる。従つてわれわれから見ますならば、勤労階級の犠牲によつて、資本の蓄積がなされようとしているということが、この昭和二十五年度予算の本質的な性格でなかろうか、こういうふうに考えるのであります。  これからの日本は何と申しましても、人口問題に最も悩まされるんじやないかと存じます。従いまして、今からただちに根本的な対策を樹立しなければならぬと思うのであります。人口問題の解決は、一つには国内にあり余つておる労働力を有効適切に活用するということでありますし、第二には海外への平和的進出でありますけれども、まだ講和條約ができておらない現段階におきまして、日本に残されております——戰争に負けてしまつてつておるただ一つの資源である労働力を全面的に活用することが、どうしても政治の根底でなければならぬ。そうして政府は申すに及ばず、国会におきましてもこのことについては一大責任を痛感されまして、この方針にのつとつた予算をお組立て願いまして、国民もこれに協力するという態勢をつくつて行かなけれなばらぬじやないか、私はさように考えるのであります。こういう観点に立ちまして二十五年度予算案が編成されることを特に熱望するものであります。  二十五年度予算の公共事業費を拝見いたしまして政府はこれによつて大体千三百五十三億円の公共事業費があつて、百万人の人間を吸收することかできるというふうに言われておるのでありますが、この千三百五十三億かかりに全部人件費に使われるとすれば、なるほど百万人の人間が吸收できましようけれども、おそらくそのうちの約四割くらいが人件費で、あとは物件費に使われることになりますと、一人当りかりに全額が人件費に使われましたとするならば、一人一箇月一万円くらいの賃金で雇われることになるのでありますけれども、それが四割ということになりますならば、月四千円か五千円くらいの一人頭の賃金しかもらえない。こういうふうな結果になりますので、やはりわれわれの考えからいたしますならば、百万人はむりであつて、むしろこの公共事業によつて救われる人員は四十万ないし五十万くらいではなかろうか。しかも私が先ほど申し上げましたような、方々から——中小企業の面から出て来、農村からも出て来る、それから一方また行政整理も計画されるというような風評も飛んでおりますが、その方面からも失業者が出て来まして、なおデフレ傾向がはなはだしくなるに従いまして、今まで潜在しておつた失業者が、表面に浮び上つて来るというようないろいろな條件がからみ合いまして、おそらく今年末には五百万人あるいはそれ以上の失業者になるのではないか。そういうことになりますと、大体この公共事業費のみによつて救われるのは、その一割にも満たない数字にしかならない。従いましてまだ公共事業には、日本が戰争によつて疲弊した面で復興しなければならぬ事業がたくさんありますので、そういう方面にうんとできる限りの予算を組んで、そうしてこの際にあり余つておる人間をその力価で働かせる、そうして日本復興するという面に予算を組まれることを、われわれは特に主張するものであります。そのことは現に働いておる労働者も、町に失業者ができるとその圧迫を受けまして、当然いろいろな犠牲を拂わなければならぬということになるのでありますから、失業者の問題は單に失業しておるという問題でな上に、働く者の全般的な問題として、深刻に考えておるようなわけでありまして、特にこの予算案がそのまま通過するということになつたならば、それがおびただしい失業者の数になるのではないかということをおそれまして、この予算案の審議の過程を、どういうふうなかつこうで通過するかと、ただいま真剣な眼を開いて見守つておるということを十分お考え願いたいと思うのであります。  次に賃金の問題から本予算案を検討してみまして明らかなことは、すでに吉田総理もあるいは池田蔵相も繰返して言明しておられます通りに、ベース改訂は行わないと言つておられます関係上、ベース改訂の原資がこの予算の中に含まれておらないことは明らかであります。私は最近の労働組合の国会共闘の声明その他をとらえまして、増田官房長官あるいは佐藤民自党政調会長さんあたりは、政治闘争の色彩を帶びて来ておるのは、まことに遺憾であるというふうな談話を発表されておるようであります。また二・一ゼネストの禁止命令をもう一ぺん考えてみようというようことを言われておるよりでありますが、われわれから言いますならば、二・一ゼネストの禁止命令を云々する前に、一九四八年の七月二十二日に出されましたマッカーサー元帥の書簡を、もう一ぺん政府も国会の議員各位もよく読み直して、もちろん労働組合もよく読み直して考え直そうではないかと言いたいところであります。と申しますのは、あの公務員法の改正を示唆する書簡か出されて、ときの公務員制度課長であつたブレイン・フーバー氏は、労働組合と政府の代表を呼びまして、この書簡に示されている精神はこういうふうであるということを説明されるにあたりまして、政府一つの使用者である。それから公務員はこれに雇われる人間であるけれども。やはりすべてがスポーツマン・シップで行かなければならぬ。かりに政府はAチームとするならば、労働者の方はBのチームであつて、人事院がちようどその中に立つところのアンパイヤーの役目を勤めるものだ。そうして今までだつたら問題が試合で解決しない場合に、争議行為というなぐり合いによつて解決しておつたのだけれども、今後はただ試合のみによつて解決して、そうしてどうしても判定の困難なときは、セーフであるか、アウトであるかという判決を人事院が下すのだ、向うの連中はよくこういうふうなたとえ、ことを言うが、そういう精神のつとつてあの公務員法が改正されるのだ。もちろん公共企業体労働関係在によつて仲裁委員会が持たれるのもそういう精神によつて持たれるのである。従つて今後はこの人事院を尊重することによつて、諸君がそういうなぐり合い、すなわち争議に訴えなくても、それに訴えたより以上に保護されるのであるからということを言つておりましたし時の政府の方でもそういう精神に立つて今後行くのであるからということをわれわれに言明されたのであります。とこるが実際にさあ人事院の方から勧告が出、あるいは仲裁委員会の裁定が示されてみますと、その通りにはなかなか実行されなくて、むしろ給與白書というものを政府の方で発表されまして、これに反駁を加えておられるのであります。なるほどあの白書を見まして一応納得のできる面もないではありません。たとえば物価が値下りをしておるということはよくわかるのでありますけれども、その値下りをしておる物価というものは、労働者にはちよつと手の届かない反物であるとか、あるいはワイシャツであるとか、いいくつであるとか、カバンであるとか、こういうようなものはなるほど値下りをしておるのでありますが、実際目々必要なみそ、しようゆ、あるいは新聞代、電気代、ラジオの聽取料というようなものには、まだ響いて来ておらない。日常生活に必要な度合いの薄いものが値下りを示しつつあるけれども、ほんとうに公定価格的な性格を持つておるところの、新聞の講読料にいたしましても、汽車賃にいたしましても、まだ値下りはいたしておらない。従いまして実際の生計費の上にはそうこれが影響しないのであります。特にここで申し上げてみたいのは、今まで私たち生計調査をやつておりますと、今月の赤字は家内の銘他の羽織を売つて、それによつて得た金で赤字を埋めて来たとか、あるいは自分のセビ口を一着売つて、そうしてそれによつて得た金で一月の赤字を埋めて来たとかいう生計費調査が出て来るのでありますが、そういう売る品物は逆に下つてしまつて、そうしてもう売ることもできないというふうな結果になつて、物価の値下りということによつて、そういう笑えぬ打撃——これは決してそのまま高ければよいというわけではありませんか、生活の面においてはそういう点でやりにくい面も出て来いておるということは、率直に認めなければならない。従いまして現在物価は値下りをしておるということは、まだ直接生計費の面には響いて来ておらないということを申し上げたいと思うのであります。従いまして私は率直にあの人事院の勧告をひとついれられまして、今度の予算案の中に、公務員の給與の問題も、何らか双方の顔の立つように、そうしてやはり実際の生計費の問題とも合うような給與ベースで組まれんことを特にお願いするのであります。そうしてこのことが当然民主主義を守り、法律をみなが理解して喜んで守つて行くといういい慣行をつけることになるのではないか、かように考えまして、人事院勧告に従つた給與ペース改訂が、本予算の編成にあたりまして盛られるように、今度の国会において修正されんことを特に主張するものであります。  次にこの給與問題にかんがみまして、国鉄の裁定の問題について申し上げたいと思うのでありますが、これは昨年国鉄の裁定が衆議院と参議院において議決が食い違いまして、そうして最後にはわれわれの考え方からいたしますならば、あれは十二月の三日の状態——再び振出しにもどつたのではないかというふうな考え方に立つて、現在東京地裁に提訴いたしまして司法権の発動を仰いでおるようなわけであります。これは近く明らかにされることと思いますが、かりにあの二十四年度予算上、資金上困難であつたといたしましても、あの裁定の中には明らかに、ベース改訂をするまでは毎月五億円ずつ支出せよ、支出して組合に與えるようにしなさいというのが示されておりまして、もしベース改訂がどうしてもできないとするならば、二十五年度におきまして毎月五億円ずつの、すなわち年額六十億が国鉄予算の中に組まれることを総裁に対しても要求したのでありますが、これは総裁の方でも政府の方で許されなかりたからというので、組まれずにそのまま国会に提案されておりますが、ひとつ国会においてこの六十億が組まれるようにしていただきたいということを私は要求するものであります。  次に、私国鉄に属しておりますので、国鉄の復興予算の面に若干触れてみたいと思うのであります。昨年におきましては見返り資金の方から百五十億の復興費が出ておるのでありますが、本年はこれが四十億に減額され、その反対に損益勘定から二百億の復興費が支出されることになつておるわけでありますが、この損益勘定の面につきましては、特に運賃値上げをしたからこれはそういう余裕が出たのだとおつしやるかもしれませんけれども、最近国鉄の現場を私まわつてみまして感じるのは、どこの駅におきましても今増收をはかるために真剣に戰員は取組んでおるのであります。たとえば休暇の日を利用したり、あるいは勤務の時間の余暇を利用して町へ出まして、鉄道の宣伝、旅客の誘致、貨物をなるべく鉄道の方へ出してもらう、そうして今まであまり鉄道に対して理解のなかつた方面に対しては——今までどうしても鉄道はむずかしいから、あるいは汽車は込むからというので出満つておつたような、輸送需要のありそうな面へ向つて旅客貨物の誘致に出かけまして、そうして收入の増加をはかろう、こういうふうに真剣に取組みつつあるのであります。また一面機関区方面へ参りましたならば、石炭をできる限り節約しよう、何といつても石炭節約ということは一番重大な、国鉄の收支に影響する問題でありますために、石炭の節約には真剣に取組みまして、どこの機関区でも、たとい一粒の石炭でもむだにするようなことのないようにしようではないかというスローガンを、それぞれ職場に張り出しまして、今までとかくルーズに流れつつあつた経営の面につきまして、下部までそういう考え方が滲透して、消費の節約に努めつつあるのであります。こういうふうな努力が蓄積されまして、そうして二百億円の余裕が出るといたしますならば、あの裁定にも明らかに示されておりますように、その一部はやはり待遇改善の面に還元されるのが正しいのではないか、そういうふうな関係から。私はこの二百億の損益勘定から鉄道の復興に組まれておる予算の中から、やはり一部は待遇を改善する方面へ振向けられるように、予算を修正されることを特にお願いするようなわけであります。  以上くどくどと申し上げましたが、要しまするにわれわれ労働者といたしまして、労働者的な感覚から申しますならば、どうもこの二十五年度予算案は、一部資本家階級にとつては非常に朗報であるかもしれぬけれども、労働者にとつては、あるいは農民にとつては、中小企業家にとつては、このまま通過するようなことがあつては——もちろんこれはただ予算ばかりの責任じやないでしよう。世界的な傾向かもしれません。そしてインフレーシヨンがとまつた場合には、安定恐慌に見舞われることは必然でありますけれども、その見舞われる犠牲というものは、こうした資本の力のない者には深刻に響いて来ますので、失業問題に対処するだけの予算的な処置を講じられまして、そうして急激にこの安定恐慌の犠牲が勤労階級に振りかかつて参らないように、ぜひともここで何らかのカンフル注射的な役割を果すのは、やはり国の予算の力でなかろうか、こういうふうな観点に立ちまして、デフレからデイスインフレとよく言われておりますが、そういうふうな傾向を蔕びるように、本予算案が修正されまして、本国会を通過するように析つてやまないものであります。  以上まことに簡単でございますけれども、われわれが考えております一番深刻な問題は、何といつても労働省は、今年から来年におそらく襲いかかつて来るのであろう失業問題に、今戰戰兢々としておるということを最後に申し上げまして、私の意見はこれをもちまして終らせていただきます。御清聽ありがとうございました。
  64. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 ただいまの御公述に対して質疑がありましたら……。奧村又十郎君。
  65. 奧村又十郎

    ○奧村委員 ただいま公述の方は、国会共闘の先頭に立つておられるお方のように承つております。ただいまの供述によりますと、失業問題、その他農村恐慌いろいろ憂えておられます。しかし公述でおつしやいましたように、やはりどうしても、ここで日本は資本を蓄積して産業を近代化し、設備を近代化し、また技術も導入しなければならぬ。こういうことを強調しておられますので、この点はわれわれもまことに同感であります。しかしその資本の蓄積、産業の近代化をどうやつて行くかということが観点の相違になるのではなかろうかと思う。われわれとしては、今の内閣のこの予算に現われておりますような行き方で資本を蓄積し、日本経済を再建するより方法はないと考えておるのであります。これは公述人の方としては、一部の特権階級の利益であつて、国全体のためではないということをお漏らしでありますけれども、これは議論にわたりますが、私どもはそうは考えない。国の産業全体が発展しなければ、失業問題その他は救われない。産業を発展させるにはもちろん資本の蓄積——資本の蓄積はごの形で行くより道がないと考えておるのですが、それでは公述人の方はどういう形で資本の蓄積をやるのがいいのか、あるいはどういう形で産業の近代化をやるのがいいのか、そういうことについては明らかになさつておられぬが、今のやり方が悪いとしたならば、これにかわるべき方法をもう少しつつ込んでお話願いたいと思います。
  66. 菊川孝夫

    ○菊川公述人 私はやはり現在英国の労働党がとつておりますああいう政策が——今これは英国の国内におきましても、これがいいか、悪いかというので、選挙で争われようとしておりますが、端的に申しますならば、英国の労働党がとつているああいうふうな行き方を主張し、われわれは常にそれをまず要求しておるようなわけであります。これはいろいろむずかしい議論にはなると思いますが、最も端的な例としまして英国の労働党が今行いつつある政策——いろいろそれについては批判もございますし、これを言い出して来ると長くなるのでありますが、私はいつも言つているのですが、アメリカの労働組合を見習うよりも、まずイギリスの労働組合を見習う、しかしかもイギリス政府がとつておる政策に対しては、やはりイギリスの労働組合が積極的に協力する、これはそういうものに行かなければならぬであろう。特に英国では労働組合の幹部は、よく言われることだが、インテリ階級より労働組合の労働者の方が右翼的である、右だ。一番右なのは労働組合であるというようなことを言われている、というのは、労働者がやはりそのときの政策に心から賛成しているからだ、私はこのように思う。やはりそういうふうにして、一番大多数の働く人間がそれに賛成して——この間、加藤君が帰つて来て、英国に行つたら、まるで戰争中の日本の大政翼賛会というか、産業報国会のようなポスターが町に張られている。われわれ労働者は今日はほんとうに英国のために働いたかどうか、反省しようじやないかというようなポスターが張りめぐらされてある。やはりそこまで積極的に協力できる政策がとられるのがいいのじやないか、このように考えるわけです。  そこであなたとの考え方の違いになります。これはここで議論するのはどうかと思いますが、私たちの見るところではもうすでに失業者がどこでも出つつあります。たとえばわれわれ国鉄の問題にいたしましても、すでに管理機構の改革ということによつて、人間が余つて来るから、これを何とかしようというような計画が立てられつつあるのですが、それよりむしろ、たとえば米原、浜松間の電化を促進するということになりますと、電化に必要な材料をどこかに注文するということになる。たとえば東芝に対して電気材料の注文をするということになり、それによつて東芝の工場が動き出す。それによつて電気機関車もこしらえなければならぬ。それによつて鉄鋼の注文も起るのじやないかということで、国の産業全般が動き出して来る。そうするならば、国内の有効需要もふえて参りましよう。そういうふうに一つが動き出して来れば、一般に国の資本がそれによつて蓄積されるが正しいのじやないかと思う。労働力の活用ということを先ほどから繰返して申し上げましたが、大多数の人間は一応失業者としてしまい込んでおいて、しばらく苦しい目をさせるが待つておれ。そのうちによくなつたらお前らも雇つてやるから、しばらく失業者として遊んでおれと追いやる方法によつて仕事を少くして行くよりも、そういう犠牲を少くするようにして、私は徐々に復興して行くという行き方をとつてもらいたいと考えるわけです。そこはちよつとあなたと見解が違います。
  67. 奧村又十郎

    ○奧村委員 この問題は非常に厖大な問題でありますので、なかなか時間もかかりますし、議論になりますから、これをお尋ねするのはどうかと思いますが、しかし社会党の方もどうやらやはり英国式の行き方で行こうということを終始言つておられますし、また国会共闘の特に先頭に立たれるあなたもそう言われるので、これぼやはり一番本質的な問題でありますから、もう少しお尋ねしてみたいと思います。英国の行き方と言われますが、これは漠然としております。英国の行き方は……
  68. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 奥村君、ちよつと御注意申し上げます。公述に関してあまり離れないように、御答弁も、その聞かれた範囲で答えらよるように、簡潔に願います。
  69. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それでは簡潔に申し上げます。英国の行き方は、一つは重要産業の国有化です。もう一つは社会保障の徹底、こういうことでありますがそれでは公述人の方はもう一度……。(「完全雇用がある」と呼ぶ者あり)それはいろいろあるでしようが……
  70. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 私語を禁じます。静粛に。
  71. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それでもう一度、日本において石炭の国営と申しますか、国家管理と申しますか、そういうことをもつと強化して行くという方針考えておられるのか。いま一つは社会保際にしても英国と同じようなことを日本の国でやつて行くのか。日本と英国ではいろいろな点で非常な違いがある。政党にしたつて日本の社会党と英国の労働党と一緒に考えつてだめであります。そういう隔たりのあることをどうお考えになりますか。
  72. 菊川孝夫

    ○菊川公述人 隔たりのあることはもちろん認めなくてはならぬ。英国は戰勝国であり日本は敗戰国であることがまず第一番に違う。それから英国はまだ何といつても植民地が独立したというものの、これに対する関連性を相当持つている。日本はそういう関連性のあるところは寸土もないというように、非常に違うところが多くありますけれども、しかし私の言わんといたしますところは、完全雇用というような面を日本で打出せば打出す余裕があるのではないか。ところが先ほど申しましたように金融資本の方に金がまわつてしまつて、もうすでに大きな会社でさえ、お前の方に金をまわしてやるには、労働者の首切りをするとか何なんとかして、実績を示さなければできないというので、やむを得ず首切りを会社の重役はやらざるを得ない。そういり行き方は、私はどうしても賛成できないと考えるのであります。それは国の事情が違うだけでなく、特に敗戰国と戰勝国でありますから、同じようなことを日本がただちに採用することは危險である。そんなことをやつたらむしろ国を滅ぼしてしまうでしよう。しかし理念はその理念に立つて、少くともそれに一歩ずつ近づくようにせらるべきであるにかかわらず、およそそれとは離れつつあるということについて、私たちは反対しているのであります。
  73. 深澤義守

    ○深澤委員 賃金の問題についてお伺いしたいのであります。菊川さんは物価の下落傾向が、まだ実質的に生活費の方に響いて来ないという御見解のようであります。政府もいろいろな政策によつて価格調整費の撤廃とか米価の値上げ、あるいは電力料等の値上げによつて生計費に響いて来るけれどもそれは減税で差引かれるからさしつかえないというようなことを言つておられます。われわれの見解でありますと、なるど物価の下落傾向は、生活に切実に必要でないものはストップされ、あるいは下つているような傾向があるが、実際毎日必要とする米とか調味料、あるいは電気料とかいうものは直接響いて来ております。従つて一般の勤労者の生活は現在の賃金ではどうしてもやつて行けないというような実情に来ていると思うのであります。また将来もますますこういう状態はひどくなつて行く傾向があるとわれわれは考えるのであります。またこの予算が実行されましても、経済安定ということか、決して労働者の生活までも安定するという意味では実行されない。かえつて生活が苦しくなつて行くのではないか。従つてどうしても賃金値上げの必要がますます起つ来るのではないかというふうに考えるのでありますが、この点について御見解を承りたいと思います。
  74. 菊川孝夫

    ○菊川公述人 これはそういうふうに事実はなるかもしれませんけれども、私らの欲するところは、賃上げ闘争は今まで戰争が終つてから日夜やつて来たが、もう賃上げ闘争に追われることのないように念頭しているのであります。そうして私は今後の——今年からの労働運動は賃上げ闘争よりも、首切り反対闘争が一番深刻な問題になるだろう。そういう見通しの上に立つて、賃上げ闘争ももちろんこれは等閑にするわけじやないが、それよりもわれわれは失業に反対するという闘争を展開しなければならぬ。これが一番当面大事な問題だという考え方で、組合はすでにその際はどう対処するかということを、常に一歩先んじて研究しつつある。われわれの見通しといたしましては、これからは賃上げより失業問題であろう、こういうふうに考えております。
  75. 深澤義守

    ○深澤委員 もう一点お伺いしますが、菊川さんたちがおやりになつている国会共闘が、現在のような政府の態度であるならば、今後においてゼネストもあるいはやむを得ないというような声明をされているのであります。もちろん公共企業関係の労働法規によりまして、合法的な立場をとつて今闘つておられる。それにもかかわらず、政府自体は国鉄裁定の問題に対して、あるいはこのたびの專売公社の裁定の問週に対しましても、当然賃金を値上げする余裕が、各公社の経理状態から見ましてあるにかかわらず、これを拒否している。こういうことになりますと、結局まつたく労働者の基本的な人権までが、政府の力によつて押えつけられるという状態の中においては、当然ああした声明を出さざるを得ないということはよくわかるのであります。そこでお伺いしたいことは、従来合法闘争という形においてあくまで遵法の立場からやつて来られたところの労働組合の運動が、非常に大きな転換をせざるを得ないという事情に差迫られている。それは労働者が欲するのではなく、政府がそういう方向に仕向けているのではないかというように考えるのでありますが、この点についての御意見を承りたい。
  76. 菊川孝夫

    ○菊川公述人 合法、非合法の問題につきましては、私は労働運動におきましての合法、非合法は、広義の問題と狭義の問題と二つあると言つて、組合の中でも論議し合つているのであります。と申しますのは、労働組合が存在する以上は、争議行為ということはつきものである。争議行為のない労働組というものは世界歴史始まつて以来ないのでありまして、これはつきものである。しかしそれは法律上禁止されている。しかしながらよく考えましたときに、公共企業体労働関係法を読んでみましても、この争議行為をやつた者には、この法律すなわち公共企業体労働関係法の保護を受けることはできないということと、解雇されるものとする、こういうような制裁規定があるだけであります。たいがいの法律は何々してはならないということがあつた場合には、これにそむいた者は幾らの罰金に処するとか科料に処するとか、何年の懲役に処するというようにあるはずです。ところがこれは、ならないとあつて罰則がないわけです。ただ保護されない。こういうことを見ますならば労働組合が争議行為をやるということは、なるほどあの法律にそむいて首は切られるけれども、しかし司法的な処分は全然する必要がないという考え方に立つて、あの法律の立法がなされていると考えるのであります。一昨年ギブソンというアメリカの労働次官補が参りましたときに、君たちは連合軍の労働政策について意見があつたならば遠慮なく言えというので、私は対談したものですが、時の労働課長も立会いの上で率直に彼に話したのは、大体労働組合が争議をやるについて罰則を設けて、政令二百一号でやつているのはけしからぬ。労働組合が争議をやるのに国の法律でふん縛つて、監獄に入れる法律がどこにあるかと言つたところが、ばかを言うな、今度公共企業体労働関係法ができるが、それにはそういうことがないように日本政府では計画されているのだということを当時言つておりました。そういうことから考えましても、あの法律にそむいて争議をやる場合には、首を切られるという覚悟をすればやつてもいい。これは社会的にも法律的にもやつていいが、しかしなから法律よりこわいのは輿論だ。輿論を敵にしてやつたのでは勝味かないから、やらぬ方がましだ。輿論を敵にして闘うべきではない。法律よりこわいのは輿論だということを腹に置いてかかつたならば、このときの戰いはやり得る。こういうふうに考えるのですが、労働運動における広い意味の非合法というのは、たとえば私の組合の内部に——これはだれがやつたかいまだに裁判中でございまして、はつきりしたことは言えませんので、ここでとやかくの議論は避けたいと思いますが、しかしながらどうも国鉄に関係のある人も一部これに入つているのじやないかというふうに心配される事件が、三鷹事件とか松川事件でございました。これこそは労働争議の非合法運動だ、こういう考えを持つております。しかしわれわれの争議のときには、首切られることは覚悟しましよう、しかしみんな首切ることはない、一部の人間だからこれをみんなの責任において守りましようということで、闘争資金を積み立てて闘争に入り、機関車はいつもきれいに油をさして、必要があればいつでも飛び出して行けるように、きれいに清め、ほこりのかかるものはかからないようにしておいて、静かに休養する、こういう行為ならば労働運動上からは決して非合法ではない、こういうふうに考えておるわけです。しかしその際に政府はこれは非合法であるからというので、おそらく首を切つて来るだろうということは予想されます。争議行為を禁じるといとうことは、仲裁委員会の裁定を双方が誠意を持つて尊重するということが守られてこそ、初めて社会的にも意味があるのだけれども、一方に十七條の禁じることばかりをやかましく言つておいて、そうして仲裁委員会の裁定というものはあまり大して尊重されないという結果になつた場合でも、十七條というものはそのまま生きるのである。これが憲法上からいつていいだろうかというような、憲法問題について裁判に訴えてでもわれわれは再考すべきである、こういう見解に立つておりまして、非常にむずかしい問題だと思うのであります。しかし先ほども申しましたように、繰返して申し上げますが、これは欲してやるのではないけれども、しかしわれわれの言う合法闘争という意味は、そういう広義の合法闘争という意味も含んでわれわれは言つて来たのだから、三十五條の仲裁委員会の裁定を双方が尊重されてこそ初めてわれわれは十七條に嚴粛に服して行こうということを宣言しておつた。たとえば七月二十二日、マッカーサー元帥の書簡が発表されたときに、われわれはマッカーサー元帥の書簡を尊重するということを天下に一番初めに宣明したのであります。政府よりも先に国鉄の労働組合が宣言した。そこでこれは、われらも守るが、政府も尊重してもらいたいということを言つておいた。これは相対的なものであるというふうにお考え願いたいと思います。
  77. 松野頼三

    ○松野委員 一点だけお伺いいたします。給與問題ですが、鉄道は公社に切りかえられまして、一応公務員と切り離された形式になつております。しかし多分国鉄の給與法の中でも、公務員と全然無関係ではあり得ない、現在私はこう考えるのであります。法令を見ますと、生活基準及び国家公務員法の給與と民間事業の給與とを勘案して公社の給與というものをきめるべきだ、こういう法文もあるわけですが、この意見を一点伺いたい。  もう一点は、合法運動、非合法運動の問題でありますが、公労法についてもいろいろ疑問がありましようけれども、最初の十五條あるいは十六條の態勢というものが一つの合法的な運動の方向ではないか。この法律は不変的なものでなしに輿論によつてできた法律でありますから、輿論によつて改正するという道もあるはずです。この法律がまずいからといつてゼネストに行くということは、私は必ずしも輿論を背景とする申分でないように思いますが、この二点だけお伺いしておきます。
  78. 菊川孝夫

    ○菊川公述人 第一点の給與問題ですが、あの法律には大体公務員の給與と民間賃金の標準を考えて、公正にきめなければならぬということで、読んでみますと公務員にもあまり劣らぬようになつておるし、民間にも劣らぬようになつておるのであります。そうすると大体一般の常識的な賃金ということに規定してあると思うのですが、あれは運用によつてはどうでもとれるのであります。あの立法の精神から考えますならば、私は少くとも労働者が喜んで働けるような賃金、食える賃金を與えよというのがざつくばらんに言つて立法の精神ではなかろうか、こういうようにわれわれとしては考えております。公務員と同じということを決して言うておるのではない、多少の違いは当然ある。たとえば危険度から行きましても、夜間作業というような面から行きましても、非常に特殊な性格を持つておりまして、私もずいぶん長い間現場もやつて、車掌もやつておりまして、徹夜などもしたのです。それから離れて非現業へ参りましたときにだれでもほつとする。現業のときは徹夜勤務で、機関士は何にもなしにダブレッを手にひつかけて行つて渡しておるように見えるが、あれなども渡し方一つ違うと、ひどい目にあうという大事な仕事で年中神経を使つております。そういう危険と責任の度合い等を勘案されれば、デスク・ワークをやつておる人と同じようにするということは、決してあの法律の精神ではない。たとえば末弘仲裁委員長も、東急の駅長さんと国鉄の駅長さんとは仕事のぐあいその他を勘案して考えなければならぬだろう、民間の水準を常に注意しなければならぬということを仲裁委員会でよくわれわれに言われたのでありますが、そういう意味からいたしまして、これと飛び離れたものを国鉄が要求するということはむりであるかもしれないけれども、必ずしも一致したものでなくてもいいと考えておるのであります。  次に第二点の合法問題についてでありますが、もちろん法律が改正されるようにわれわれは運動し、いわゆる闘うと申しますとおきらいになるかもしれませんが、闘うというのが一番正しい行き方であるというふうに常に思つておりまして、私どもは機会あるたびに公労法の改正案を、たとえば社会党なりあるいは共産党でありますが、特に私どもは社会党の政調会の方に持ち込んで、何か機会があると社会党を通じて出してもらつております。社会党に大量入党せいと言つておるのは、社会党はこういうふうに改正することは賛成だというから、それは党の力をふやすことによつて獲得しよう、これも私は正しい労働組合の闘争と考えてやつております。しかしこれはこういう例もございます。よく例に引出されるのでありますが、アメリカのCIOやAFLの組合においても合法闘争といつてつておりますが、CIOの議長のフィリップ・マレーがタフト・ハーレーができましたときに、機関紙に政治活動の情報を書いちやいかぬというようなことがあつたそうですが、マレーは敢然として、いや書け、こんな法律をきめたのは憲法違反だという指令を出した。そこでマレーはタフト・ハーレー法に触れて罰金刑に処せられた。あとで向うの最高裁判所に行つて、やはり憲法違反だという判決がきまつて、今ではあの條項は削除されたということでありますが、労働組合の闘争の中にもそういう闘争の行き方もある。これをわれわれは一つの教訓と思つております。あなたの言われるような行き方が一番いいと思うのであるけれども、何でも労働組合はきめられる法律によつて動くものであるというのではなしに、やはりそういう行き方もしなければならぬこともあるのではないか。そこで労働運動で、今の民自党総裁であられる吉田さんも、憲兵隊にひつぱられた当時を考えますと、あの当時は国賊になつておつたはずです。今でこそ一国の総理として、最高指導者としてやつておられるが、四、五年前はやはり国賊扱いされておつた。そういう時代的な感覚によつて考えますと、今われわれの闘うことが、後になつた場合には認められることもあると思う。尾崎咢堂にしても公安條例か何かでひつぱられ二里か三里向うへ行つてしまえと言つて東京を追い出されましたが、あれもそのときからいつたならば非合法闘争で、吉田さんが憲兵隊にひつぱられたのも一つの非合法闘争ではなかつたかと今考えられる。従つて少くとも輿論を背景として闘う場合においては——将来ただこれによつて政府をひつくり返して、国民に迷惑をかけてもかまわぬから、自分たちだけがよくなろうというような意図を持つて働いた場合には危険でありますけれども、そういう意味から、場合によつてはやむを得ぬのじやないか。現に民自党総裁であられる吉田さんも、少くともあの当時の国民感情から言つたら、確かに国賊扱いされておられる。その意味から考えると、非合法闘争をされておるのです。そういうこともありますので、ひとつ御了承願いとたい思います(笑声)
  79. 松野頼三

    ○松野委員 ただいまのお話危險手当というものは、これは国鉄内のいわゆる職階制において定めるべき問題であろうと私は今の御答弁を拝聽いたのであります。運輸省の職員と国鉄の職員の例を端的にとりますと、公社が分裂するまではお互いに同じ給與水準で俸給をいただいておつたのが、今度コーポレーシヨンになつたために、これによつて賃金が上るということはないと思う。私たまたま風評を聞いておりますが、運輸省職員はすでに通勤バスがなくなつたということを聞いておるのであります。しかし国鉄従業員諸君はバスを現在御利用になつていらつしやる。ここにもすでに、運輸省側から申しますれば、国鉄に対して非常に羨望の的であります。また今度の問題に関係しますが、私は全然別個のものであると、ただいまの経営状況では言えないのじやないか、ある程度制約されてもいたしかたがないという、現行法の解釈がいまだに生きておるとしか解釈できません。  第二点は輿論を背景としますれば、現在輿論を代表しておる政党は私ども民主自由党でありますから、どうかひとつ御遠慮なしに民主自由党に、ただいまの御意向を申し述べてくれますれば、私自身にいたしましても、また私たちの周囲の者におきましても、ごもつともな法律的な改正、あるいは現在の法が不明確なので、もつと明確に改正するには、輿論を代表している私たちの方へいらつしやらないとだめですから、この点はひとつあらためて、輿論を代表するわが党にお話合いを願いたい。現在それがほんとうの輿論じやないかと思います。第一点は御意見がございますれば伺いますが、第二点は私の希望で、輿論を代表しておるわが党にお話合いを願いたいということを申し上げておきます。
  80. 菊川孝夫

    ○菊川公述人 ただいまけつこうなお言葉をいただきましたが、実は私どもの今直面しているところの問題は、国鉄の調停委員会に調停を申請しましたところ、もうこんな調停委員会をやつてもだめだということになつて、調停委員会を打ち切つてしまつた。われわれは公正なる輿論によつて選ばれたと考えて、輿論の代表として公正な立場から反対したが、今輿論を代表していると言われた政党の圧力に押えられてしまつた。それで今度は仲裁委員会にかけて、少くとも輿論を代表すると言われる現政府が命ぜられる仲裁委員諸君が裁定されるわけであります。この間も末弘さんが、今アメリカへ行つておられるが、その行かれる際に、末弘さんがやめると言われたら、喜んでやめてもらおう、そのかわりこつちから命じてやると、輿論を代表すると言われる幹事長が談話として発表されましたが、おそらく今度は、輿論を代表する政党としても認めれれる仲裁裁定が今月中に出ると思いますが、それが出た場合には、政府もできる限りそれを尊重されるようにお願いに参りますし、そうすることによつて、このゼネストというようなことも回避されるのでありますから、その節はどうか御援助願いたいと思います。
  81. 松野頼三

    ○松野委員 私の言つたことは、ちよつと簡単過ぎて誤解を招きましたが、私の申した法律改正の問題は、輿論を代表してひとつこの法律改正に応じよう、こういう意味の話でありまして現行法を曲げてくれ、あるいは現行法の解釈を信念上かえてくれということでは、ちよつと論議が飛躍し過ぎますから、御再考をお願いしたいと思います。
  82. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 これにて公聽会を終ることにいたします。  公聽会を終るにあたり、一言ごあいさつ申し上げます。公述人各位におかれましては、御多用中御出席いただきまして、いろいろの点から有益な御意見を拝聽させていただきまして、まことにありがとうございました。予算審議の上に非常に参考になると確信いたします。  これで公聽会を終ります。明後十三日は午前十時から委員会を開き、政府に対する質疑を続行いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時十六分散会