運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1950-02-10 第7回国会 衆議院 予算委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年二月十日(金曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 植原悦二郎君    理事 上林山榮吉君 理事 小峯 柳多君    理事 苫米地英俊君 理事 川崎 秀二君    理事 川上 貫一君 理事 圖司 安正君    理事 今井  耕君       天野 公義君    江花  靜君      岡村利右衞門君    小淵 光平君       角田 幸吉君    北澤 直吉君       小金 義照君    小平 久雄君       坂田 道太君    高橋  等君       田中 啓一君    玉置  實君       中村 幸八君    永井 英修君       西村 英一君    丹羽 彪吉君       松本 一郎君    南  好雄君       西村 榮一君    武藤運十郎君       北村徳太郎君    中曽根康弘君       村瀬 宣親君    林  百郎君       深澤 義守君    米原  昶君       奧村又十郎君    平川 篤雄君       松本六太郎君    岡田 春夫君       世耕 弘一君  出席公述人         東京大学教授  近藤 康男君         復興金融金庫理         事長      工藤昭四郎君         東洋棉花株式会         社社長     前田 保勇君  委員外出席者         專  門  員 小林幾次郎君         專  門  員 小竹 豊治君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  昭和二十五年度予算について     ―――――――――――――
  2. 植原悦二郎

    植原委員長 これより昭和二十五年度予算について公聴会を開会いたします。  開会にあたり、本日御出席公述人各位にごあいさつを申し上げます。  申すまでもなく、目下本委員会において審査中の昭和二十五年度予算は、今国会における最も重要なる案件であります。よつて委員会においては、広く各層の学識経験者各位の御意見を聞き、本案の審査を一層権威あらしめ、遺憾なからしめんとするのであります。各位の豊富な御意見を承ることができますのは、本委員会の向後の審査に多大の参考となるものと期待いたすのであります。各位におかれては、その立場々々より腹蔵なき御意見の御開陳をお願いいたします。本日は御多忙中のところ、貴重な時間をおさきになり御出席いただきまして、委員長といたして厚く御札申し上げる次第であります。  なお議事の順序を申し上げますと、公述人発言の時間は三十分程度といたし、その後において委員より質疑があることと存じますが、これに対しても忌憚なくお答えを願いたいのであります。  なお念のため申し上げておきますが、衆議院規則の定めるところによりまして、発言委員長の許可を受くるととになつております。また発言内容意見を聞こうとする案件の範囲を越えてはならぬことになつております。また委員公述人に対しては質疑することはできますが、公述人委員に対して質疑することはできませんから、さよう御了承願いたいのであります。なお発言の劈頭に職業と氏名とを御紹介いたします。  それではこれより近藤康男君の御意見を御開陳願います。近藤康男君は東京大学教授をされているのであります。ここに近藤康男君を御紹介いたします。
  3. 近藤康男

    近藤公述人 昭和二十五年度予算説明書を拝見いたしまして、私は農民位置自分位置を置いて、この予算を読みまして得た感想を申し上げたいと思うのであります。  非常にわかりいい予算説明をしていだたいてあるのでありますが、その中にこの予算特色が数点にとりまとめて述べてあります。この一々について農民立場農民事情考えながら、私の感想を申し上げたいと思うのであります。  第一の特色につきまして、総合予算均衡財政規模縮減という点は、これは最後にまわしまして、特色の第二点といたしまして、補給金を削減したことと、統制を整理することが述べてあるのであります。これはこの予算について最も重要な特色一つをなしていると思うのでありますが、しかしこれを農業関係から見ますと、この点においてこそむしろ一つの問題があると思うでのあります。それはいろいろな価格差補給金が切られたのでありますが、その中で食糧輸入に対して約四百五十六億円が計上されているのであります。これは食糧需給の現在の事何からこういうことになつたわけではありましようが、これを日本農民の視点から見ますと、これを半分にして、その差額農林予算の方あるいは公共土木事業のようなものへまわして、国内生産を増強するという方へまわすことはできないかという点であります。これを政策観点から申しますと、食糧を完全な自給とまでは言え二せんけれども、せめて戰争の前に自給しておつた程度の、一千万石程度輸入にとどめるという方針をとることはできないだろうか、小麦はかつて日本は満洲その他へ二、三百万石輸出しておつた状態であります。それから米の生産可能性につきましては、多收穫の競争などの結果によりますと、この間朝日新聞で出しましたからみな知つておるのでありますが、たとえば信州であるとか、北海道とか、農業観点からこますと、必ずしも條件のよくないところで相当な成績を上げておる。そういう意味で私は食糧自給の余地は、まだかなりあるということが言えると思うのであります。その方法その他につきましては、ここで詳しく申し上げる必要はないと思うのであります。つまり国内生産を増強するように予算を使うということの方が、日本再建のために賢明ではないか。ことに輸入ドル資金が非常な欠乏であり、輸出が思うように進まないという現状、また国内情勢からいえば、農村に非常な潜在失業状態の人口があり、産業が必ずしも振わないというとさに、なるべく国内のエンプロイメントを多くするという方針、これが予算しおいても強くとられる。同じ金を使うならば、食糧輸入補給金というようなことではなくて、直接生産を増強する方に金を使うことの方が賢明である。大体輸入の半分ぐらいを食糧が占めておる。輸出食糧を買う程度輸出しかしておらないという情勢、これは決して日本経済再建するほんとうの道ではないと思うのであります。これが第二点であります。  それから、第三の特色といたしまして、税制改革――シヤウプ勧告構想によりまして、減税の構想がこの中に盛られておるのであります。この点につきましては、私は二つの点の問題があると思う。一つは、たとえば肥料などへの補給金が減るために、肥料代が高くなるのではないかという点、それからもう一つは、なるほど全体としては税は減る計画になつておりますけれども、これを農村関係から見ますと、新聞などでは、農民の税は安くなるというふうに伝えられておりますが、私きわめて荒つぽい計算をいたしました結果によりますと、そんなに多くは減らないのであります。お手元に御参考までに資料を差上げてありますが、大きな表をごらんいただきたいと思うのであります。この資料そのものは別目的でつくつたものでありますが、その中で、大きな表の前に第二表の小さな表を先にごらんいただきますと、簡單に要約してあるのでありますが、シヤウプ勧告が文字通り実施されるといたしましたならば、農家の一戸当り租税負担額はどのくらい減るだろうという推計をいたしてみたのであります。基本にいたしておる材料は、昭和二十三年度農林省でやりました農家経済調査に出ております租税負担の額であります。これをもとにしまして、これは調査した農家がやや大き過ぎ、一町六反というような大きな農家でありますから、これを一町ぐらいの普通の農家に引下げて累進その他による点を修正いたしました。さらに二十三年度を二十四年度に直しまして、一番右のという欄にシヤウプ勧告による増減を見込んだ場合が出ております。そうしますと、所得税においてはほぼかえないということであります。それから町村税が多くなる。公課、あの寄付金のようなものはこの租税の中へ織り込むという考えでありますから、全部なくなるものといたしまして、二十四年度状態では一万九千四百円でありますのに、一万九千三百八十円と、ほとんどかわらない状態であります。そうして次の大きな第一表というのをごらんいただきたいと思うのでありますが、最後のDという欄に、シヤウプ勧告を取入れました場合の自作農をする農民收支計算がしてあるのであります。これをごらんいただきますと、もしシヤウプ勧告をそのまま取入れて、それから肥料値段がそれに伴つて上るということ――去年の暮に上つたあの程度を織り込んだだけですでにマイナスであります。去年の暮に四千二百五十円と米価が上げられました。そこですべてがストップされて、あとの肥料値上げ電気代値上げもないという状態ならば、これはもうCにありますように、剰余が二百十三円ある。これは私は小作料を一反についてこれだけとりましても、農家自分労働報酬に対して、普通の報酬を得らるる限度以上に小作料が上げられました場合には、農家労働報酬というものが普通以下に切下げられる、こういうことになると思うのであります。そういう意味で、税を上げるならば肥料を上げては困る。いわんや小作料を上げたのでは問題にならない、こういうことになるだろうと私は思うのであります、ここに第三の点につきましても、農村から見ますと大きな問題を含んでおると思うのであります。  次に特色の第四としてあげてあります復興再建の促進ということ、これは非常にけつこうな立て方だと思うのであります。ことに公共事業費災害などの費用が多く計上され、特に私がこれはいいと思いましたのは、災害につきましての本年度分を百億円ばかりあらかじめ計上してあることは非常にいい措置であると思う。これに私がつけ加えておきたいことは、せつかくこれまでに心配されたのでありますから、早く時機を失しないで、ことに災害というようなものに対しては早く出すこと。大体日本災害、ことに耕地などを荒す災害というものは夏分から秋にかけてあるわけです。だから四、五月には終つておらなければ、実はその方にはあまり役に立たない。それが今までの経験では本年度予算は本年度に計上いたしましても、来年の三月ころに実際の支出がされる場合がかなり多かつたのではなかろうか、四月に工事が終つておらなければ今年の災害に間に合わないものが、四月に着工するというのでは、一年ずつずれて来るわけであります。そういう意味でなるべく早く――むろん收入の方とのにらみ合せもありましようし、いろいろ問題はございましようが、とにかくこういう項目については早く時機を失しないということが、せつかく考慮された点をほんとうに生かすゆえんだろうと思うのであります。  それから次の第五の点、教育文化及び社会政策的経費充実、これは私学校に関係いたしておりまして、この点の非常な不足をわれわれ今まで痛感しておるのであります。この計上された分でまだ十分とは決して思つておりません。教育費文化費ということでありますけれども、今までの現状は建物やあるいは事務的な費用、そういうものに出すのに一ぱいで、実際にわれわれが研究や試験をする費用がまつたくないのであります。入れものだけできて、中の活動が事実上できない状態になつてつたのであります。考慮していただいたことではありますけれども、これはもつと内容を、本来の目的活動ができるような内容にしていただきたいということを希望いたしたいのであります。たとえばこれは教育関係が中心になつておるようでありますが、農業関係で申しましたら、農事試験場費用充実して行くことが、これからの日本農業を新しい情勢のもとに組立てて行く基本になると思うのであります。  次に特色の第六といたしまして、債務償還費その他を計上したということがあります。こういう問題は私わからないので意見をさしはさむことを差控えますが、こういう時期になぜ債務償還費をことさら計上せなければならないか、今年なぜ償還しなければならないか、この点私は理解いたしかねた点であります。  最後特色の第七点といたしまして、地方財政充実地方自治の強化ということが、税制改革と結びついて予算の上に出されておるのであります。趣旨としてはきわめて適切であると思うのでありますが、こういう点が農民立場から見ますと心配になると思うのであります。その一つの点は、地方ことに町村独立性が強くなるということは、よく行けば非常にいい場合がありますが、ボス政治という言葉で言われておりますような悪く行きます場合に非常に悪くなる。そういう心配一つと、もう一つの点は町村間の不公平、ある町村なりある府県なりは十分に財源があり、十分な施設ができるのに、貧弱な町村は非常に財政的に困難である。むろんその点の考慮はされておるわけでありますが、平衡交付金というようなものがそれを補うわけでありましよう。また税制の方では地方財務委員会でありましたか、つまり町村の間の税率などがあまりアンバランスのないように、気をつけなければならぬというような点で考慮はされておるのでありますが、それでもなお財源の不平等というものがどうしても町村の間にあり、ある県あるいはある町村では十分な設備ができるのに、片方ではできないところがある。そのことはつまり税の上の非常な不公平になり、しこうして金持は税が安いところに移つて行く。こういうような弊をもたらして、不公平がますます深くなる。そういうようなことを起しはしないか。私はおそらくこの趣旨はきわめてけつこうな原則を、ほんとうにやるためには、町村整理統合ということ、あるいは府県――同じ府県にいたしましても、鳥取県とか島根県というようなところは、この行き方で行きまして一層困難になりはしないか。そういう観点から行きまして、府県統合ということもここで考える。そういうことを前提として初めて趣旨が生きて来るのではないだろうかということを考えるのであります。  以上個々の点について述べてありますことと関連して、農村事情を織り込んでこれを見た場合にどういう欠陥かあるか、むしろ欠陥の方を主として申し上げたのでありますが、最初の第一の特色としてあげておりますところの総合予算均衡を保ちつつ、財政規模縮減したというこの点について申しますと、一体少しむりじやなかろうか、一口に言えば縮減をするということが、こういう時期においてはたして適当であるかどうか、インフレをとどめて安定状態をもたらすということではありますけれども、国内生産を振い起すという点が、究極においてはほんとう国民経済再建の原動力になるりでありますから、そういう意味では比縮し過ぎておるのではなかろうかというような感じがいたします。  一つ途中で申し添えたい点があつたりでありますが、それはこういう点であります。ことに私は公共事業費に関連してこのことを申し上げたいと思つしおつたのでありますが、一つの点と申しますのは、財政的な支出に対する監査と申しましようか、その能率というもの、効果というものの評価、そういうものをする組織なり、その裏づけになる支出なりというものが、比較的少いのじやないかという点であります。たとえば開拓というようなことは食糧観点からしますと、方法については問題がありますけれども、ぜひやらなければならぬことであります。そういう問題につきまして非常な不信任がある。しかしその不信任は、ある意味ではこの金を使いつぱなしにして、いつも十分にその効果をチエツクしておる点が、欠けておるというところから来るのじやなかろうか。たとえば建築のために支出したはずの金を違う方に使つておるというようなこと、これは何も開拓を非難して申しておるのではない。開拓のためにはどういう費用が必要であるか、その必要なものをほんとうに国が支出しておるかどうかということ、つまりパンを求めて石を與えられておるというようなことがあつてはならない。そしてそういうことがあるならばすぐ直すということが、開拓なら開拓という仕事を軌道に乗せ、間違いを直して行くことの基本になると思います。ある意味ではそういうものはやつかいであり、考え方によればそれは非生産的な支出ということになるのでありますが、私は決してそうじやないと思う。そういう調査をし、その調査に基いて金の出し方なり内容をかえるということは、大きな節約を将来にわたつてすることになるのであります。そういう経費が各省の予算の中に比較的少いので、これを将来増す必要があるのではないか。農林省関係農地解放という大きな仕事をやりましたが、その農地解放効果について、統計の方で実態調査をやつた。私はあの仕事の結果を将来農地改革に使うことになりますと、かなりプラスするだろうと期待をしておるので、ああいうようなたぐいの費用を多く計上することが必要ではなかろうかと思うのであります。  以上をもつて私の公述といたしたいと思います。
  4. 林百郎

    ○林(百)委員 近藤教授にお聞きいたしたいと思います。  先ほど輸入食糧の問題が、日本農業に非常に大きな圧迫を加えることになるだろうというお話がありました。これは事実われわれもその通りだと考えておるのであります。大体二十六年度の持越し主要食糧は、二千万石を越えるというように政府では説明しております。そうしますと、日本主要食糧の半分が輸入でまかなわれておることになります。政府日本食糧だけではまかなえないから、やむを得ずやつておると言つておるのでありますが、教授考えでは、日本農民が、農業改革あるいは肥料の適正なる配給その他によつて、大体日本の必要な食糧をまかなえるようになると思うかどうか。またまかなえないとすれば、どの程度輸入で足りると思うか。政府で言うように大体三百何十万トン、二千何百万石をどうしても輸入しなければならないものかどうか。  第二点、農産物価格についてはお話にならなかつたと思いますが、御承知の通り日本のいろいろな農産物価格工業生産品とのシェーレが非常に拡大されておる際、農民としては、少くとも石当り八千円かそこらにしてもらわなければ、原価を補うわけに行かないので、やむを得ずやみで流すというようなことになりまして、農民としてはむしろ公定価格よりも、やみ価格に大きな関心を持たざるを得ないような、変則的な状態になつております。米の値段にしましても、少くとも石当り八千円ぐらいにしてもらいたい。米価審議会の答申も四千七百幾らでありましたが、四千二百円に減らされました。しかもあなたの先ほどの御説明のように、肥料補給金の廃止によつてますます上つて行くということになりますと、シェーレが拡大して行くと思いますので、農産物価格をどういうふうにすべきか。本年度米価四千二百円、これは同時に労働者の低賃金にも関係して来るのでありますが、農産物価格の点をどういうようにお考えになつておるか、お聞きしたい。  第三点は、輸入食糧価格が非常に高くなつております。たとえば米にしましても、入つて来るものは一万円くらいします。そうすると、四千円と一万円の差を今度は税金で出した補給金でまかなうことになるので、日本主要食糧が安く、輸入食糧値段が高ければ高いほど、農民税金を出さなければならないということになります。そこで日本農産物価格について、輸入食糧価格と比較してどう考えられるか、この点をお聞きしたいと思います。  第四点としましては、本年度予算では農地買收は一応完了したというので、農地委員農業調整委員を一本にして農業委員会という形にしまして、予算も非常に減らしました。農地委員会の書記二人も一人に減らして、大体吉田内閣は、これで農地改革は終了したというように見ておるようでありますが、実情はまだ登記事務も終つておりませんし、合理的な交換分合も行われておりません。農家経済が窮迫して現金が欠乏して来れば土地移動がまた出て来る。ただいま申しました税金の点や小作料関係が反映して来ますと、土地移動が非常に起きて来まして、農地委員仕事は重大になります。農地改革は、現状でこれを打切るにはまだ不十分な状態にあると思いますので、この点をお聞きしたいと思います。  第五は、地方税で地租、家屋税が大体三倍半くらい上りますが、この値上りは農民負担にどう転嫁捲れて行くか。以上五つの点を御説明願いたいと思います。
  5. 近藤康男

    近藤公述人 第一の御質問の点でありますが、輸入食糧はどのくらいで済むと思うかというお尋ね。私は大体今計画されておる半分でよくはないか、つまり約一千万石で済むはずだと申し上げたいのであります。それは昭和何年でありますか、朝鮮、台湾から入つてつた量がその程度であつた時代がかなり長く続いたわけです。先ほど申しましたように、小麦などは出してさえおつたような状態であります。ですからその状態まで立ち返ることは、私はそんなにむりなことではない。たとえば二毛作というようなことは、今供出制度によつて、うかつに麦をつくると、麦まで供出を命ぜられて、ひどい目にあうというような制度によつて、たとえば福島県、宮城県、山形県あたりの二毛作ができるところでもやらないのであります。そういうような点。それからもう一つの重要な点は、農民食糧の改善と申しましようか、蛋白、ことに動物性蛋白がないということが、むだに米麦を食べている一つの理由であると思います。農村にいわしとかにしんとかいうものを十分に供給し、あるいは牛乳などを農家が相当飲むようになりますならば、私の推算では五百万石は、食糧合理化ということで、現在農家がむだに浪費しておるそれを浮かばせることができるというようなことを考えておるのでありまして、大体私はそうむりな計画ではないだろうと思うのです。  それから第二の御質問価格の点につきましては、ことに輸入食糧価格との関係が、私先ほど申し落したのでありますが、三百六十円のレートで行きまして、輸入食糧が非常に高い。それで、四百五十六億というような補給金を要しておるわけでありますが、それが同時に、米の買上げ価格が四千二百五十円にしか買えないということの、一つの基底をなしておると思うのであります。消費者価格生産者価格との間の、比較的大きな差額、あるいは公団の能率が悪いとか、むだな費用を使つておるというようなことも、きつとあると思いますけれども、それよりもむしろ農民が、輸入食糧のあの価格差補給金を、全部でないにしろ、実質においてあの低い供出価格でもつてカバーしておる、私はこういう理解ができると思うのであります。そういう意味で、輸入を減らせば減らすほど、農家からの買上げをする価格は、消費者価格に近い――六千二百円くらいになつておるかと思うのでありますが、それに近い値段で買い得るのです。低米価、低労賃というこの線は、農民労働者が、国の再建のために、どうしてもわかたなければならない一つの線だと思うのでありますが、しかし六千二百円の消費者価格に近い値段で買えるような、輸入を減らす方式をとつて行けば、そういうことに近よることができるのであつて、その点は、将来ぜひ取上げなければならぬ点だろうと思うのであります。  もう一つ価格につきましては、こまかい点ではありますが、早期供出の奨励のあの金の出し方、それから超過供出のあの金の出し方、あれは私はやめるべきだと思つております。つまりああいう出し方をすることは、いろいろな意味を持つておる。ことに単作地帯に対する補助というような意味を持つておりましようけれども、私は増産という観点からいたしますと、決してプラスにはなつておらないと思うのであります。これはむしろ価格全体の水準を上げるというふうに持つて行くべきだと思うのであります。ことに超過供出のあの金の出し方のために、生産高などにつきましても、非常な政治的なトラブルを起す。事前割当水準を低くしておけば、超過供出で高く買上げてもらえるという状態では、ああいうトラブルが起ることは当然なのであります。価格についてはこの二つの点があります。  第四に御質問になりました、農地委員会農業調整委員会とを農業委員会にするということ、農地解放を打切りにするというような考え方につきましては、ことに山村、漁村というものを考えますと、私はまだその時期ではないと思うのであります。一般につきましても、お説のように交換分合というようなことがある。ただこの農業調整委員農地委員とを一緒にするということは適切だと思つておるのであります。それはおそらくこれによりまして、むだのない一種の土地管理と申しましようか、そういうような土地管理、同時に供出の管理ということになるだろうと私は思うのでありまして、土地土地、できた米麦は米麦ということで、別々にこれを管理するということは、これを増産の刺激とするという観点から申しますと、適切ではないのであります。むしろこれは一つなつた方がいいと思う。その方が、農地改革の今後に残された問題をプツシユするという意味においても、はるかにいいだろうと思うのであります。それと関連して、地租の値上げになることが、小作料その他にどういう影響を及ぼすであろうかという御質問につきましては、きようおまわししました資料がそれに答えておるつもりでありまして、一口で申し上げますと、私はこう思うのであります。地租が大きな額になつたということは、以前の日本農村の態勢であつたところの、小作料が個人の地主のふところに入つてつたのが消えて、金納小作料でほとんどゼロに近いものになつた。しかもそれが公共のものになつたという意味で、一つの意義を認めていいと思う。とれをもし片方で地租が高くなつた、だから小作料を高くするというのは、これは昔の態勢の日本では当然そうであつたのでありますけれども、今日ではそういうふうにはならないはずだと思う。地租が高くなつた、だから小作料は高くできないということであるはずだと思う。つまり自作農を主に考え、自作農を維持しなければならないという観点からいたしますと、地租を上げたら小作料は上げられない、地価も従つて上げられないということになると思うのであります。古い観念がそのまま残つてつて、地租が上つたのだから、小作料は当然、地価も当然上げるべきだ、こういう考え方があるかと思うのであります。政府にそういう意向があるように、新聞などに伝えられておつたのでありますが、私はそれをやつたら、一方また肥料価格であるとか、米価であるとかいう問題を一緒にあわせて考えてみまして、日本の自作農が、せつかく自作農にしてもらつたけれども、その地位を保つことができなくなる。昭和二十四年の末、四千二百五十円の米価がきまつて、その後の変化が何もない場合に、一反歩の剰余が二百十三円しかない。肥料や石油や電気代が上らないでそうだつた。それが上つた場合には、決定的なマイナスになつて来るということを、この参考資料の中で申し上げておるわけであります。
  6. 上林山榮吉

    ○上林山委員 個々の具体的な問題についてお尋ねすることをやめまして、私はきわめて常識的な立場から意見をお伺いしてみたいのであります。  まず第一は、近藤さんはこの予算をごらんになつて、総じて賛成だと思われるか、あるいは総じて反対だと思われるかという点が一点。  それから第二点はただいまお話になりましだインフレを收束して安定せしめるための均衡予算であるが、財政規模をあまりに縮小した。現状においてはあまり圧縮し過ぎたじやないだろうかというこの一点であります。もし立場をかえてあなたが財政当局であるとするならば、(笑声)財政規模をどれくらいにした方が、あなたの主張に合つた財政規模であると思われるか。私はこれは第三者は岡目八目であるので、きわめて常識的な意見を徴する意味でこれを申し上げるのであります。なお個々の問題について、これをふやしたらよかろう、あるいは減らしたらよかろうというお話も一部ありましたが、あなたの考えるむりのない財政規模という観点から、どういう方面にどれくらい配分をして行つたらいいか、おもなものについてお考えがあるなら伺いたい。  それから第三点は、今日農村が恐慌であるという説をなす者もあるし、あるいは近く農村恐慌が来るかもしれないという考えを持つ者もある。また全然対策いかんによつてはそういうことが考えられないという説もあり、この予算を通じてそれぞれの議論があるのでありますが、これも第三者としてきわめて公平な立場から、どういうふうにお考えになつておるか。私はなるほど共産当諸君の失笑を買いました。また具体的内容についてはそれぞれの主張も持つておまりますが、それよりも公述人にきわめて常識的な、かけひきのない立場からの意見を、聞きたいというのが私の質問趣旨であります。どうぞお答え願います。
  7. 近藤康男

    近藤公述人 この予算に総じて賛成であるか、不賛成であるか、これは私お答えすべきかどうかしりませんが、感じから申しますと、圧縮するのはどのくらいにしたらよいかという第二の御質問と一緒にお答えした方がいいかと思います。税を減らすということになつておりますが、私は税の総額は前年度程度まではとつてもいいじやなかろうか、その程度のことならばむりなしに行くんじやなかろうかという感じを持つております。私のきよう申し上げました全体のことを一口で申しますと、たとえば税などのとり方についてもすぐわかりますように、インフレを牧棄するという場合に、国全体としてとる方法は、この予算程度に圧縮するなり、あるいは私の申す通りにもう少しルーズにするという違いはありましようが、その場合のつまりしわの寄せ方というものが、農業関係に対して寄り過ぎておる。一口に言えばそういう観点であります。その点を修正する必要があるんじやなかろうか、こういう意味のことを申したのであります。  最後の恐慌につきましては、これはいろいろ論議もあることと思うのでありますが、私は農業恐慌というものが来ておるか、おらないかということについては、農業恐慌というものは、農業生産が少くとも今までの規模くらいで再生産ができなくなるような状態になるのを、恐慌と言うのが最も常識的だろうと思うのであります。そういう意味では、現在昭和二十四年度あたりからも、すでに農家農業生産を続けて行くことが困難な状態に直面しておる。それはたとえば昭和五、六年のころの農産物価の下落という場合の、ああいうような形ではなくて、いわば政治的な理由、租税あるいは供出制度、そういうようなメカニズムによる恐慌状態が出て来ておる、こういうふうに私は理解しております。
  8. 奧村又十郎

    ○奧村委員 公述人の方は、先ほど林委員にお答えなさつて、しごく簡單に外国食糧輸入は約一千万石、現在の予定の半額でよかろう、こういうことをお述べになつたのであります。しかし農林省発表の食糧需給の推算によりますと、昨年の十一月一日の持越し現在が千七百七十六万石、昭和二十五年十一月一日の持越しの推定は、林君は二千万石を越えると言いますが、農林省の発表は千九百四十万石、一箇年間に持越しは約二百万石あまりふえます。しかし二合七勺の配給を実行いたしまして、輸入が多過ぎるというのは、持越しがわずか二百万石ふえるからというだけであつて、この配給を実行するについては、どうしても現在の予定量の輸入がなければ、配給の実行はできないというふうに農林省の推算にはなつておるのであります。そこで教授お話は、この持越しを減らしてもいいから輸入を減らす、こういう御意見であるか、それとも全然二合七日の配給とか、供出制度とか、そういうことは抜きにして、先ほどお話しになつたように、全然昔に立ち返つて、昔朝鮮から何ぼ輸入したとか、そういう漠たる事情で千万石で済むと言われたのか、その点あいまいでありますから、もう少しはつきりお答えを願いたいと思います。
  9. 近藤康男

    近藤公述人 私が三千万石でなくて一千万石でいいだろうと申しました意味は、今年の輸入がそれでいい、そういう意味で申し上げたわけじやないのであります。つまり予算をつくる場合の目標と申しましようか、考え方というものが、輸入を減らす、そういう方針をもつて全体の項目を選ぶ、同じ金を使うならば、どちらへ金を使うかという場合の判定にすべきものである、そういう意味で申し上げたのでありまして、あなたのおつしやる意味のように、今年それでは一千万石減らして、それで間に合うと思うか、こういう点をだめをお押しになるなら、そういう意味で申し上げておるのではないので、そういう方針である、私はただ今年でもまだ考える余地はあるんじやなかろうかというふうには思つております。申し上げた趣旨輸入はできるだけ少くて済ますのがいい、こういうのであります。
  10. 奧村又十郎

    ○奧村委員 今年でも何とか考え方があるんじやないか、そういうことについてはわれわれも非常に苦心をしておるのでありますが、今年何とかの方法とは、どういうことがありますか。
  11. 近藤康男

    近藤公述人 どういうことがあるかと言われますと、これはこまかい材料に当らなくては具体的なお答えは私ではいたしかねますが、私前に農林省の統計調査局長をしておりましたその経験から申しまして、米の收穫高の調査というようなもの、ことに麦におきましては非常な検討すべき点がまだあるのであります。国民食糧の問題というものは、單に政府の手持ちということだけで考えられることではないのであります。政府米の数字が示すより、はるかに日本食糧事情はよくなつているのではなかろうかと私は考えておるのであります。どうしたらいいかという点につきましては、私は手をあげてお答えいたしかねます。
  12. 深澤義守

    ○深澤委員 近藤さんにお伺いいたしますが、輸入食糧の増大が国内の低米価を規定つけるものであるという御意見でありますが、われわれもその意見に対して同感をしておるものであります。現在昨年よりも本年度というぐあいに、政府計画しておるところの輸入食糧は非常に増大しているのであります。これに対しまして、今日の世界食糧は非常に過剰の状態になつておる。この過剰の食糧日本輸入されることによつて、内地の農業が非常に圧迫を受けておるということは、今申された通りであります。従つて外国の農業恐慌を日本輸入するような形において、日本農業が圧迫されているのだ。ここに日本農業恐慌の根本的な大きな原因があるというようにわれわれは考えておるわけでありますが、この点においての御意見をお伺いしたいと思います。  第二点は、先ほども農地改革の問題について御意見がございましたが、申すまでもなく、農地改革日本における封建的基盤である地主的な土地所有制度をなくして真に日本を民主化する根本的な施策であるというように考えておるのであります。ところが先ほどお説のように、山村に参りました場合、あるいは漁村に参りました場合におきまして、この農地改革というものはほとんど十分に行われていない。そこには依然として封建的な生産関係が存在しているということをわれわれは事実に見ておるのであります。これではポツダム宣言が規定しているところの、完全な日本民主化の基礎をつくり上げたということは言えないと思うのであります。こういう意味からいたしまして、われわれは農地改革をもつと徹底的に実行することこそ、ポツダム宣言によるところの日本民主化の方向であるというように、この農地改革を重大に考えておるのであります。こういう問題について、吉田内閣農地改革の打切りという方向をたどつたのでありまして、まことにこれは日本民主化のために賛成できないのであります。
  13. 植原悦二郎

    植原委員長 深澤義守君、さような討論は禁じます。     〔林(百)委員「討論じやないよ」と呼ぶ〕
  14. 植原悦二郎

    植原委員長 討論の場所ではありません。林君静粛に願います。
  15. 深澤義守

    ○深澤委員 この点について農地改革の御意見をお伺いいたします。以上二点について御質問申し上げます。
  16. 近藤康男

    近藤公述人 二つの点でありますが、大体先ほど申し上げました中に、お答えと申しましようか、私の考え方は申し上げておると思うのであります。小麦協定などが最も端的に示しておりますように、これはアメリカ、カナダその他ああいう生産力の高い農業を持ち、そしてそれを海外に売らなければならぬ立場の国々から見ますと、これはその値段をなるべく安定し、これを海外に売る道をちやんと立てるというのが当然であります。これに対して日本農村が影響を受けるという場合に、できるだけその影響を少くするように努めるのは、これは日本政府として当然とるべきことだろうと思うのであります。そういう意味で私は一つ国内のエンプロイメントを増すという観点から、一つ輸出がなかなかむずかしい、そういう輸出の肩を軽く、する、そういう観点からしまして、日本経済再建のためには、できるだけ輸入を減らすという大方針、これが予算の中にも盛られなくてはならない。考え方によつては外国の農業恐慌をこちらへ引受ける、そういうことにならないようにしなければならぬ、そういうことを申したつもりであります。  それから第二の点の農地改革を続けなければならぬ、こういう点は趣旨として私全然同感であります。ただ、今までと同じ形をとることが適切であるかどうかということは、私は必ずしもそうは思わないのでありまして、先ほど農地委員農業調整委員と一本になるということが、むしろ適切な措置であると申しましたのはその点であります。私はこの三つの委員会が一本になるということ、そうして不動産税がもつぱら市町村で自由になる税になつたということ、これは将来非常に日本農村につきましては、妙味のある展開場をするもとになると私は見込んでおるのであります。この点を将来は生かして日本農村の民主化のために活用しなければならぬと思つておるのであります。ただ御指摘にもなりました、私も先ほどちよつと申し上げたかと思いますが、漁村や、それからことに山村、これは私も、先般学生と一緒に農村調査に出かけまして、山村に入つてみまして、これはもう少しあの農地改革の線で強く行かなければ、どうにもならないという感じを持つたのであります。そういう意味で形は必ずしもあの国作農創設特別措置法をそのまま固執するということが適切かどうか、私はそうは思わぬのでありますけれども、あの農地改革の精神を一層拡充して行つて、それを補正の態勢に持込んで来るということ、これはぜひやらなければならぬ点だと思つております。
  17. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 近藤教授に四つばかりお伺いしたい。  まず第一には、この近藤先生がお示しになつ税金の表ですが、ちよつとこれは納得の行かないところがあるのですが、この第二表というのを見ますと、シヤウプ勧告によるいわゆる二というところと、それからハ、二十四年度税額推定、これを両方を比較してみますと、結局大差ないようになつておるのでありますが、大蔵省の簡易税額表を適用してみますと、私今計算してみましたら合わないところがある。これは標準農家、たとえば夫婦子供一人という場合の扶養家族の点はどういう基礎になつておりますか。
  18. 近藤康男

    近藤公述人 家族の数という点は全然考慮しておりません。先ほどちよつと申しましたように、二十三年度農家経済調査に出て参つておりますところの家族をそのままとつたわけであります。ですからおそらくあれよりは多いと思います。子供を入れて六、七人の家族だろうと思うのであります。ただ農家経済調査に出て参ります農家というものは一町六反にもなりますし、それを一町程度に切り下げてやるということはしておりますけれども、家族の点はちよつと手のつけようがございませんのでそのままにしております。
  19. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 ちよつと推計してみますと、四千三百五十円になりますと一一八%になつておりますから、十五万九千四百六十円になります。そこで大体一万三千円の税額が出るのは、どの水準かということで調べてみますと十五万円でありまして、夫婦及び子供三人で現行によると三万五千円、それが改正案によると一万六千七百五十円、これにやや接近しております。そうすると――私は野党ですから政府の痛いところをつきたいところですが、実は軽減されておる気味がある。三万幾らというのが一万六千円になつておる。そうするとこの軽減率というものが、この表によるとちよつと軽くなり過ぎはしないかと思いますが、この点はどういうふうになつておりますか。
  20. 近藤康男

    近藤公述人 その点は私当つてみておりませんけれども、たとえば市町村税というようなものが町村によつていろいろなんです。そういうものがどういうふうにかわるかということはよくわからないのでありますが、計算しました仕方は、昭和二十三年を基礎にして二十四年を推計するという方法を、農家経済調査をとるためにとつたのでありますが、それをもとにしましてシヤウプ勧告によつてその増加する率、私は二倍半と見たのでありますが、そういうものを掛算をしましてふやしたのであります。府県税などは全然ゼロになつておる。附加価値税も一般農民には課さないということでゼロに見る。こういうきわめてラフな、そうしてなるべく農家は不利だということをエグザジヤレイとて計算するつもりで取扱つております。
  21. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私はこれはちよつと軽過ぎると思います。事実今年はもつと重くなるだろうと思いますが、所得税と比較してみますと、大蔵省の表によりますと、もつと落差がついておるように思いますので、この点もし資料がありましたら、あとでいただきたいと思います。
  22. 近藤康男

    近藤公述人 今の所得税の件につきましては、シヤウプ勧告による個人所得税については農家は今までとかわりはない、その原則がそのまま実現される、そういうことできわめて大体の目当をつける意味で計算しておるので、そのままにしておるわけであります。
  23. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 次に輸入食糧の問題でありますが、一体日本農村を国際的に安定させるために、現在の米価をどの水準にきめたらよろしいか、やみでは六千円とか言つておりますが、かりに一千万石輸入を減らすとしても、ラフな計算で六千円か七千円の間に入ると思います。一体今後世界経済均衡させて日本農業を安定させて行くためには、昭和二十五年度において米価はどの程度水準をきめて行くか、この問題をお答え願いたい。
  24. 近藤康男

    近藤公述人 これは私そのつもりで計算をしたことがないので、お答えをしない方があるいはよいのかもしれませんが、もし米の統制を全部撤廃して輸入は民間にまかせ、農家は普通に今までのように商人に売るというような態勢にもしなつたならば、これはおそらく現在の六千三百円という消費者価格よりは高くなる、むしろ七千円に近くなるだろうと思うのです。だから七千円にしたらよいと私は言いかねるのでありますけれども、少くとも今の買上げ価格が、ほかの点を適当に考慮しないならば、非常に不十分な再生産農家に許すものだと思う。十分に肥料その他をやつて行けないような状態だということは間違いなく言えると思います。
  25. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 次にお伺いしますが、予算の面で農業関係に対する経費が、非常に減つておることを私らも非常に同感に思います。これは農地改革のみならず、農業改良その他の比率についても大分落ちております。そこでわれわれとして今後考えて行く問題は、農村の金融という問題だろうと思います。アメリカは御存じのように三A法をやつたときも金融という問題からこれを解決しております。ところが日本農村の場合は先生御存じのように、官僚統制というか、あまりにも官に依存させて、農林省の外郭団体というものがどうも変な存在である、こういう弊をどうしても生んで来ておる。その弊を新しい農村を築くために、どういうふうに改革して行つたらよいか、農村金融の問題を民主的に、しかも農業生産力を増大するために、抜本的にどういう、ふうに改革して行つたらよいか。この間アメリカの話を聞いてみますと、アメリカでは商業銀行、保険会社から大体八五%以上投資されておるようであります。アメリカは資本主義的に採算がとれるからそういうことができるかもしれませんが、日本の場合は一挙にそこまでは行かない、これをどういうふうに解決するか、これが第三番目の問題です。  最後にもう一つの問題は、農産物支持価格ということをアメリカでやつておる、農産物支持価格はこれは政治的の問題になつておりますが、日本でも供出とか、税金とか、先生がおつしやいましたような米価の問題とか、農村職済というものは政治的な問題で決定されている、よつて米価の問題も支持価格で解決する以外に解決する方法はないのじやないか。支持価格を私は聞きましたら、森農林大臣は昭和二十五年にはやらないと言つておりますが、農産物支持価格という構想は、日本に対してどの程度適用され得るものか、先生の御意見をお伺いしたい。
  26. 近藤康男

    近藤公述人 金融をどういう建前にするかという点につきましては、たとえば早く農地移動の制限を撤廃してやるというような考えもあるかと思うのであります。私はこの農業金融の問題につきましては、農業生産力を増強するという観点からこれを考えますと、一人々々の農家土地なら土地を担保にして金融をするという行き方は、生産力を高めるという観点からいたしまして、とるべき道筋ではないだろうと思うのであります。どうしても土地に対してということならば、むしろ農地の管理のようなことをする機構を今の農地委員会なり、あるいはもつと小さな部落についてつくりまして、それに対して金融をするという道を将来考えることの方がよいのではない躍ろうかと思うのであります。ただそういう場合にも、御指摘になりましたように末端の農林省の息のかかつているいわゆる農業団体というものが、きわめて不明朗なものであつて、場合によると実際の農民の利害と逆になるという欠点を確かに持つておるわけです。そういう点が改められない場合におきましては、何といつて筋道を立てたところで、本来の目的を達しないのであります。売から農村の民主化ということと金融制度考えるということとは、相並べて行くべきことだろうと思うのであります。この金融は、たとえば水利の設備をするとか、農業用の機械を取入れるとか、またそういう農業の高度化ということと関連して考えるべきでありまして、農家一人々々を対象にして考えてはいかぬだろうと思う。一人々々の農家がりつぱな資本家になつているアメリカの制度をそのまま輸入するということは、日本の場合には適切でないだろうと思うのであります。  それから支持価格につきましては、私不勉強でありまして、これがアメリカでどういうふうに運営されているか、またそれを日本に持込むことができるかどうか研究いたしておりませんから、ごかんべんを願いたいと思います。
  27. 米原昶

    ○米原委員 簡単に二点だけお尋ねします。先ほど国際的な農業恐慌が日本にも波及するような傾向にあると言うことができるが、日本農業を保護するような措置が望ましいという先生のお話でありました。その点で日本の農場村政策の根本を立てるについても、世界農業経済の一環としての日本農業経済を見なくてはならぬと思うのであります。そこでアメリカやカナダの最近における小麦生産状態、それから現地における価格というようなものが、今後どういうふうに動いて行こうとしているかという点、それから国際小麦協定とどんな関連を持つているだろうかという点について、先生の御意見を聞きたいと思うのであります。  第二点は低米価、低賃金の先ほどのお話でありますが、日本農村が結局日本における低賃金の給源地となつており、このことが日本のソーシャル・ダンピングの給源地となつているわけでありますが、そのことが国際的な親善をかちとるために、じやまものになつているのじやないかと思うが、その点についての先生の御意見を聞きたいのであります。
  28. 近藤康男

    近藤公述人 カナダとか、アメリカなどの大きな農産物生産地の状況、それからそれが小麦協定などとどういう関係になるだろうかという点の御質問でありますが、この生産力が非常に高くなつておるということは御承知の通りと思う。すでに一九四八年の小麦については、戰前の水準の七%ばかりを上まわつておるようにわれわれは承知いたしておるのであります。そういう情勢生産諸国の価格に反映していることは、統計が示している通りなのです。それが将来どの程度まで下るだろうかということの見込みをお聞きになつたのだと思うのでありますが、私は多くは下らないと思う。前の第一次世界大戰の後に、やはり国際カルテルができたのでありますが、ああいうものよりははるかに強力である。つまり国際連盟と国際連合ほどの違いをバツクに持つていると思う。これは詳しく御説明しなくてはならぬと思いますけれども、そういう時間がないと思いますので、簡単にお答えを申しますと、あの国際小麦協定というものは、少くとも四年間ちやんと続けて行くほどの力を持つているということぐらいは、われわれ想像してもいいのじやないかと思つておるのであります。  第二の点は農村がソーシャル、ダンピングの基礎になる低労賃の給源地になつており、それが国際親善というものにマイナスの作用をしておるとは思わぬかという御質問つたと思うのでありますが、だからこそ農村民主化ということについて、政府は非常な犠牲を拂つてもやるように指示されておるのであります。その通りにわれわれは理解しておるのであります。
  29. 植原悦二郎

    植原委員長 私の聞き違いであつたかどうか、ちよつと一言はつきりしておきたい点があります。と申しますのは、林百郎君の現在の輸入食糧二千万石は多いように思うが、どうかという質問に対して、かつて日本が台湾、朝鮮を有し、その他すべてフリー・コンデイシヨンであつたときに一千万石くらい輸入してよかつた、現在においてもそれでよかろうというような御答弁でありましたが、非常に人口の差のあることをお考えなつたかどうか。かつて日本の人口は約一千万くらいは海外におつたと思いますが、今日は一千万みんな帰つて来て、さらに人口が多い。その当時は約七千万であつたが、現在においては八千万を越える人口でも一千万石輸入すれば足りるというお考えかどうか。私はそういうふうに聞き取つたように思いますが、そうであるとそこに生ずる疑問もありますので、はつきりした方がよろしいと思つてお尋ねいたします。
  30. 近藤康男

    近藤公述人 私は一千万石にこだわつているわけでは決してないのでありまして、予算の立て方の考え方というものについて申し上げたのであります。これを減らすような方向にできるだけやらなければいけないということを申した意味でありまして、もちろん人口がふえていることも考慮しなければならぬでしよう。しかし国内生産の仕方がはるかに進んでいるという点も考慮に入れられるのでありまして、私は一千万石という数字そのものにこだわつているわけではないということを、委員長にはつきり申し上げておるわけであります。
  31. 植原悦二郎

    植原委員長 減らして行きたいという御意見であるならば、それでけつこうです。  暫時休憩いたします。午後は一時から開会いたします。     午後零時一分休憩     ―――――――――――――     午後一時四十八分開議
  32. 植原悦二郎

    植原委員長 休憩前に引続き、公聽会を開会いたします。  復興金融金庫理事長工藤昭四郎君の御公述を願います。
  33. 工藤昭四郎

    ○工藤公述人 昭和三十四年以来、健全財政の方針がとられており、二十五年度予算案におきましてはさらに一歩前進したように看取いたしております。この問題に関連しまして、海外からも日本財政は健全であるというおほめの言葉をいた美いておりますが、現状では少しくすぐつたいような気がいたします。国民経済が健全になり、その上に健全財政が打立てられまして、初めて真の健全財政と言うことができるのであります。それまでの状態に達しますまでには、今後相当長い期間われわれの非常な努力を必要とすると思います。ただいまやられております健全財政なるものは、どちらかと申しますと、国民経済を安定に導き、健全に導く一つの手段として用いられておると思います。そのために政策に大きな変換が行われ、それを強行いたしましたために、産業界には相当の重圧がかかつており、またそのしわは金融界に寄せられておるというのが実情であろうと思います。従つてこの予算案の実行にあたりましては、説明書にもありますように、「経済基盤の充実輸出貿易の振興とを基軸として、経済の合理的かつ自主的運営態勢を推進する」こういう方針でやつていただかねばうまく行かないのではないかと考えております。  次に国民経済を育成するという考え方、すなわち予算そのものはやや消極的でありますが、これを動かす場合には相当積極性を加えていただきませんと、国民経済が不幸にしてもし破綻するような場合には、せつかくの健全財政も砂上の楼閣になるおそれがあると思います。今度の予算を見てみますと、財政面では資金の引揚げが非常に多額に行われます。従つてこの引揚げた資金を円滑に経済界に還元することが行われませんと、経済界はそのために非常な支障を来すわけであります。ところが従来の実情から申しますと、必ずしもそう行つていないうらみがあります。たとえば対日援助見返資金のごときは、二十四年度の第一・四半期におきましては、ちつとも経浩界に出ておりません。最近やや円滑をとりもどしておりますが、それでも私は不十分であると考えております。またもう一面は、これもだんだん緩和せられておりますが、税金の徴收が季節的に一時期に集中いたしますために、国民経済を非常に不円滑ならしめる結果を招来いたしております。要するにこの予算の運営面につきましては、今申し上げたような点を十分御考慮つてつていただく必要を痛感いたしているわけであります。  産業の面から申しますと、今後日本経済界にはプラス、マイナス、いろいろの相矛盾する要素が錯綜しておりまして、その見通しはなかなか困難であります。この説明書に示されております予算の基礎となつた諸條件には物価ぼ大体横ばい状態を続ける、給與水準現状を維持する、経済統制はだんだん整理して行く、貿易の面につきましては、輸出入合計において約二割の増進をする、こういう考え方のようであります。そのほかの説明は省略されておりますが、おそらく生産面につきましては、例のセメント四百万トン、普通鋼材二百五十万トンという線から、生産も二割くらい増進する計算になつていると思います。こういう要素から国民所得を三兆二千五百億円に計算いたしまして、税額その他が割出されていると思います。租税及び印紙收入四千四百四十六億円は、財政收入全体六千六百十四億円に対しまして、三分の二以上の多額を占めるのであります。前年度に比べまして七百十三億減少いたしておりますが、これは主として基礎控除、扶養控除、勤労控除等の控除額の増大と税率の軽減から来ていると思います。従つてその計算のもとになつております経済條件及び国民所得は今申し上げた金額だろうと思いますが、その基礎になつている経済條件が見通しの通り達成できるかどうかは、今後の運営いかんにかかつて来るわけであります。現在物価面におきましては、生産原価を割つた投売り的な不健全な物価下落が生じております。これが一時的現象にとどまると非常にけつこうなのでありますが、もしそうでないといたしますと、勢いこれは生産意欲にも影響を持つて来るのでありまして、その面からはたして生産が増大して行くかどうかということについても、危惧の念があります。また貿易の問題につきましても、国内だけでなく、海外の事情その他から申しまして、その進展にもなかなか困難があります。また最近の不況から失業者の数もふえておりますので、それらの人の所得も減少するわけでありますから、国民所得についてもこれらの点が考慮に入れられなければならないと思います。従つてもし予想しておりますような租税收入を確保いたしますためには、やはり生産活動経済活動を旺盛ならしめるような、積極的にこれを推進する手段がとられなければならぬと考えるのであります。二十五年度の産業資金につきましては、長期資金は大体千二百四十億、短期資金は三千七百十七億見当が押えられていると私は推定いたしておりますが、もし物価水準、賃金水準等にかわりがなくて、貿易が二割増進し、生産が二割増大するということでありますならば、二十四年度よりも約六百億少い運転資金三千七百十七億では、当然これは足りないのではなかろうかと考えているわけであります。従つて今後の財界の見通しは非常に困難でありますが、もし歳入に盛り入れてあるような税及び印紙收入を確保いたしますためには、どうしても積極的に経済活動を盛んにするような方策が必要であり、それに関連して産業資金等も、もう少し豊富にする要があるように考えます。  歳出の面で失業対策費が約四十億増加せられまして、八十六億六千四百万円になり、また公共事業費も相当増加せられまして、九百九十億円ということになつておりますことは、現状に即して非常にけつこうであると存じます。しかし失業対策費、公共事業費ともこれだけでは満足ということができないのでありまして、昨年一年の間に農村の人口が二百万人増加している点に、よく注意をする必要があるように考えてお力ます。従来のわが国の風習で、失業者ができますと、みな帰農いたしまして、これが農村経済を圧迫することになるのでありますが、統計上はそれは失業者として現われて来ない。こういう点もありますので、失業対策費は、できればもう少し増額していただく必要があるように存じております。終戰処理費が減額になつておりますことは、これはその好意に対しては、われわれは大いに感謝しなければならぬと考ええおります。午前中も近藤教授から問題に出されておりました債務償還の点につきましては、私もまつたく同意見でありまして、債務償還が一般会計において七百三十一億、特別会計において五百五十二億、合計千三百七十六億円計上されております。説明書には單に財政收支の均衡をはかるにとどまらず、消費インフレを押えて、資本の確実な蓄積を促進する目的から、こういうことが行われたということになつておりますが、どうもその説明だけでは私は不十分のように感じておるのであります。と申しますことは、日本の戰後の経済はまだまだ再興の第一歩を印しただけでありまして、そのために要する資金需要も厖大な額に上つております。今後予定せられております生産の増大による資金の需要はもちろんでありますが、電力開発、造船、あるいは国鉄の電化等に要する新しい建設資金が、相当の金額に上つておるのであります。さらに経営の合理化ということが従来非常にやかましく言われておりますが、遺憾ながらまだ不徹底になつております。すなわち設備の補修、改善及び機械設備その他の取りかえがほとんどできていないのであります。この状態では生産原価を安くし、国際的に競争をして行くことが非常にむずかしくなつて参ります。従つてこの方面に相当長期の資金が需要せられておるわけであります。また一面昨年の四月以来安定政策が実施せられますと、経済界はどうしても一応不況に見舞われなければなりません。そういう実情になつて参りますと、普通の金融機関ではなかなか資金が放出しにくくなります。安定政策が進展するに従つて、銀行の融資限界はだんだん縮まつて来るのが常識であります。従つてこういう際に、ノーマルな状態のときのように、普通の商業銀行を動かして産業金融をまかなつて行くという考え方は、産業資金を供給するのにどうしても不十分な点を生じて来るのであります。この点につきましては、アメリカにもその例は歴然とあるのでありまして、一九二九年の世界不況の後、アメリカは景気の回復、購買力の増加等について非常にいろいろ考えたのでありますが、結局その状態においては、普通の銀行から資金を供給することは密易でない、こうい結論で一九三三年でありましたか、三年でありましたか、復興金融会社というものをつくりまして、財政資金をそこから放出して経済の再興をはかつたのであります。御承知のようにこの復興金融会社は現在においても財政資金をリコールして使いまして、大いに活動をいたしております。アメリカの不況後に比べますと、敗戰後の日本経済は雲泥の差があるわけでありまして、そういう実情のもとにおきましては、どうしても特殊の金融機関がありまして、強力な力を持つているものが相当の危険を冒してやつて行くのでなければ、ほんとうの金融はできないのであります。こういう実情になりまして商業銀行の自由にまかしておきますと、資金は国民経済を培養するような方向にはなかなか向きにくいのであります。どうしても資金は安全、有利、確実という原則に従つて動きますから、国民経済にプラスになるというよりも、むしろマイナスになる面の方に資金が動きやすい、こういう結果になりますので、見返り資金等から予定せられております政府債務の返済につきましては、少くともその三分の一、二分の一程度のものは直接産業界に投資せられるようにお考えが願いたいのであります。さつきも申し上げましたように、二十五年度予算は一般的な感覚といたしまして、少し消極性が勝つておるように私どもは感じております。しかし消極的に予算を組むということが、必ずしも健全財政と一致するとは限らないのでありまして、国民経済が健全になり、財政の收入も自然に増加して来る。こういうことが結局において望ましいのでありまして、また戰後の実情から申しますと、そうしなければ国民経済の維持がむずかしいのであります。従つて債務を償還し、それによつて普通金融機関の融資能力を増加して、それから産業融資をやるというこの間接的なやり方では、満足のできるような産業金融はむずかしいと考えておるのであります。援助見返り資金から公債の償還が五百億は計上せられております。私は少くともそのうち二百億円あるいは二百五十億円は直接産業に振り向けていただくようお願いいたしたいと考えております。またそれに加えて最近のような実情になつて参りますと、普通の金融機関は出しにくい面が多々あるわけでありますから、特殊の金融機関、すなわち復興金融金庫のような機能をもう一度生かしで、それによつて日本産業の復興をはかるということがどうしても必要じやないかと考えております。簡単でありますが、私の公述を、これで終ります。
  34. 植原悦二郎

    植原委員長 どなたか質問がありますか。
  35. 深澤義守

    ○深澤委員 工藤さんは今日の日本経済現状からいりて、産業資金をもつと多額に要するような状態であるというようなことを強調せられておるのでおりますが、政府は大体経済は安定復興の方向に向つておるということを強調されておるのであります。工藤さんのような金融界からお考えなつ立場から、はたして日本経済が安定の方向に向つておるかどうかという点についての御意見を承りたいのであります。  それから債務償還の問題でありますが、この債務償還が千三百億以上行われまして、これが産業界に対して、非常な貢献をするというようなぐあいに考えられる向きも非常にあるのでありますが、先ほど工藤さんも申しておりますように、それが国民生活のプラスの方向でなしに、マイナスの方向に使われる危険が多分にあるということを強調せられたようでありますが、その点についてわ具体的な御説明がございましたちお願いしたい。この二点をお伺いします。
  36. 工藤昭四郎

    ○工藤公述人 第一の御質問の安定方向に向つておるかどうかということは、これは認定次第で非常にむずかしい問題になるのでありますが、しかし日本経済が今度の敗戰によつて受けた損害は、推定地上財産の七割三分二厘ということになつております。このうちには国土の保存あるいは工場、鉄道等の修理の不完全等は含んでおりませんので、その受けた損害は非常に甚大であります。従つて戰御まだまだ四年、五年しか経過いたしません現状では、これを急激に安定さすということは、常識ではなかなかむずかしい点でありまして、私は今後五年、十年の長い間には、国民全体が非常な努力をしなければ、ほんとうの安定の城には達しないと考えております。しかし終戰直後行われました産業復興政策については、一応修正しなければならぬ点がありまして、昨年の四月から政策の転換が行われておるわけであります。従つてこの過程はどうしても、一応日本国民経済としては通過しなければならぬことは当然であります。たださつきから繰返し申し述べておりますように、そのやり方いかんによつてはかえつて副作用の方が強力になつて、国民経済は発展どころか後退する、つまり安定をしないで萎縮をするというおそれがあるわけであります。現状におきましては、生産設備その他戰争で破壊せられましたものは、大部分回復いたしております。従つてこういう生産設備その他をうまくこれから動かして行くということと、それから貿易の進展につきましては、海外事情もいろいろあると思いますが、貿易の制度、機構、やり方等を改善してもらつて、ますますこれを伸張するようにやつて行く。こういうことが並行的に行われませんと、ただ予算均衡状態に持つてつたり、金融を極度に引締めるということだけでは、国民経済は安定しないと確信いたしております。  債務償還について具体的には、自由にまかしておけばどんな方向に資金が流れて行くかというお話でありますが、これはいろいろ実例はあると思いますが、たとえば最近はやりの競輪場等をつくる資金も、これは相当の收入がありますし、しかもこれは税金で入つて参りますような関係から、こういう資金は、計画をしておる者が黙つてつても、金融機関から相当資金の使途について積極的に申出があるように聞いております。しかしこういう方面に使われた金は、はたして国民経済にプラスになるか、マイナスになるか、これは明らかに御判断ができることと考えます。
  37. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 工藤さんに四点ばかりお尋ねいたします。一つは現在政府経済政策基本にしている経済計画変数といいますか、三百六十円レートと、四千二百五十円の米価、それから六千三百七円のベース、この三つを昭和二十五年度において、このまま維持してやるのが妥当であるかどうか、まずこの問題をお聞きいたします。
  38. 工藤昭四郎

    ○工藤公述人 なかなかむずかしい御質問でありまして、この問題は論じて行きますと切りがないと思いますが、為替レートの問題につきましては、さきに百六十円と決定せられまして、現在これを維持しておりますことは御承知の通りであります。ところがポンドの実価がだんだん下つて参りまして、そ、のために輸出貿易上相当支障を生じておることも事実であります。それで為替レートの問題につきましては、その変更について賛否両論対立いたしておりまして、しかも双方ともその理由は相当強いのであります。従つてこの問題はただ單にりくつだけで解決のできない問題でありまして、多分に政治性を含んで参りますから、その問題は政治に御関係のある皆様方に決定していただいた方がいいのではないかと考えます。  米価につきましては、御承知のように日本の地勢が非常に細長くて、気候、風土、地味等をことごとく異にしておりまして、土産の数量その他にもむろん影響を持つておるわけすであります。これをもともと一本の値段で押えるということに非常な困難がありまして、毎年米価の問題は深刻な論争を繰返しておるわけであります。従つてこれも最終的にきめる場合には、パリティー計算あるいは生産原価等いろいろ言われていますが、結局これも政治的にきまつて来る問題でございます。賃金ベースにつきましては、最近議会でも深刻な論争の対象になつておりまして、人事院は政治の御意見と対立しているように新聞等で拝見いたしております。これも実質賃金の改善ということを政府は言つておられますし、また昭和二十二年の七月に物価改訂をいたしましたときに、当時の政府経済白書を公表せられまして、流通秩序の確立ということを言われたのでありますが、現在政府お話になつておることと内容は同一だろうと私は考えておるのであります。従つて実質賃金が改まれば、この問題もすえ置きでいいかもしれませんが、その点が前の昭和二十二年当時もうまく行かなくて、結局物価と賃金の悪循環を来したようなことになつております。要は実質賃金の改善ということが可能であるかどうかということに帰着すると思います。
  39. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 政治的にこれらの計画変数をきめるというところに非常にむりがあるのであつて、それが結局経済の合理的循環を妨げているのだろうと思う。それがまた社会的ないろいろな副作用を現に起している。そこで政治的にきめるという問題はわれわれの方が解決しなければならぬ問題ですが、工藤さんは経済人ですから、経済的に見てこれらの問題をそのまま放置してよろしいかどうか、もう一同お尋ねいたしたい。
  40. 工藤昭四郎

    ○工藤公述人 この問題をここで繰返しお請いたしておりますと、時間がいてらあつても足らぬと思いますから、適当の時間で打切りをお願いしたいと思います。  レートの問題は、ポンド貨その他の切下げに追随してこれを下げて行くことになりますと、現在のイギリス経済の実情その他から申しまして、これは私は切りのない深みに陷つて行くおそれがあるように存じます。そうしますこ国内経済もそれに追随して一向安定しない。こういう結論になるわけであります。従つて現状におきましては輸出面に相当の困難を来していることは事実でありましようが、レートの問題につきましては、私はできるだけ現状維持すべきだという考え方を持つておるわけであります。  米価につきましては、さきに米価審議会ができまして、私もその審議会の一委員として、また小委員にも選ばれまして、米価問題と長い間取組んで考えたのでありますが、その答申案の実現ができなかつたことは非常に遺憾に存じております。答申案に私個人の意見もむろん盛り込んでありますから、それによつて御了承願います。  それから賃金ベースの問題は、いろいろ政治的な含みがあると思いますが、二十五年度予算は、私ども拝見しましたところでは、債務の返済も可能なような超均衡的なものでありますので、それが政治的に扱われる場合には、給與水準にも若干改善を加えた方がよいのではないかと考えております。
  41. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 次に有効需要と企業の採算点の問題であります。今年の大きな問題は、おそらく有効需要は足りない、しかも企業は合理化を促進してコストを下げなぐちやならぬ、基礎産業でも何でも相当の増産によつて単位価格を下げて切り抜けて行こう、しかし増産したところが需要がこれに伴わないのじやないか、特に政府の言うところによると、消費生活を一割くらい向上させるとか、あるいは公共事業を起すどか言つておりますが、その程度のことをやつたとしても消化するだけの能力がない。結局それは企業の採算点が割れるというようなことになつて、つまり大企業はあるいはそれでできるかもしれませんが、中小企業は採算を割つて投売りをしてつぶれるというようなことになりはしないかと思う。そこに失業問題の危険性がある。この問題について工藤さんはどういうふうにお考えになりますか。
  42. 工藤昭四郎

    ○工藤公述人 ただいま御質問通り、現在生産は相当に上昇いたしておりますが、たいていの企業におきましては、生産高と販売高の間に相当の差があるのでありまして、それがストックとなつて会社内に留保せられつつあります。こういう状態が長く続きますと、いつかはそれをたなおろしして、それによつて会社は相当の損失をこうむらなければならない、こういうことになるとともに、販売の伴わない、つまり有効需要の伴わない生産の量を、経済指標としてそのまま受入れることは非常に危険であると私どもは考えております。従つて先刻二十五年度予算について申し上げましたように、予算にもう少し積極性を持たせていただいて、国内に対しても海外に対しても、経済活動がもう少し増大するような方向に持つて参りませんと、せつかく均衡予算が成立いたしましても、経済基盤がそのために薄弱になつて来ると私は考えております。
  43. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 第三番目は国債償還の限界の問題でありますが、御存じのように相当数の国債償還が行われます。ところが問題が二つ出て来ると思うのであります。一つはそれによつて償還しても銀行側は日銀に対する借入金の返済に使つてしまつて、産業資金にはまわらないのじやないか。もう一つは銀行側が持つております国債が償還されてしまうと、預金準備率というものがあぶなくなる。私が調べたところによると、昭和十年ごろは二割六分くらい国債あるいは確実なる証券類があつたが、最近はそれが一割三分程度に落ちておる。そういう点から見て、国債償還を大中にやるということは、銀行の準備率を危うくすることである。またそれをかりにやつたにしても、現在の飽和点に達した銀行の状態では、それが民間資金にまわつて行かないという危険性があります。そういうことが昭和二十五年度には一番心配されなくちやならぬと思うのでありますが、工藤さんの御見解はいかがでありますか。
  44. 工藤昭四郎

    ○工藤公述人 国債の償還につきましては、先刻は單に予算に多少積極性を持たせて行くという点から論じたのでありますが、お話通り、今民間銀行が持つております国債は六百億見当で、あろうと考えております。しかしそのうち相当部分は現在日銀借入金の担保にもなつておりますし、これを償還することがただちにそれだけ市中銀行の融資能力をふやすことにはならないと思います。なお今朝新聞に出ておりました通り、さきに預金部からの預けがえをしました百億円の資金の中で、実際貸付にまわされたのはその三割の三十億円ということになつておりますので、現在のような不況の状況のもとにおいては、商業銀行の、すなわち営利的地位に立つてやる金融には、限界があるということは争われないと思います。国債を大量に返すことによつて、預金準備にとつておく有価証券の手持数量が少くなる、これは事実でありまして、もし有価証券の、ことに国債の保有率が少くなりますと、日銀のマーケットオペレーシヨンも実行が困難になるということは考えられます。
  45. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 最後にお尋ねいたします。工藤さんは工業界の事情に非常にお詳しい方でありますが、農業方面については今まであまり御関係なかつに。そこでその点特に御見解を承りたいと思います。日本農業金融という問題は、先ほど午前中私近藤教授質問いたしましたように、非常に行き詰まつておる。政府は農林中金、農林中金ということを口癖のように言つておるが、そんな問題だけで解決のできる問題ではない、戰争前のような弊害を起さないようにして、日本農業金融を抜本的に改革するには、どういうようにしたらよいと思いますか、お答え願いたいと思います。
  46. 工藤昭四郎

    ○工藤公述人 農村経済事情が最近だんだん逼迫しておりますことは、今朝近藤教授からもお話があつた通りであります。そこへ都市の失業者が帰農いたしまして、昨年一年で農村の人口も約三百万増加してお石ということであります。これが農村経済にさらに圧迫を加えますことは当然であります。従つて農村が必要とする農地の改良あるいは治水、灌漑等の資金が現在は非常に行き詰まつておるわけであります。この点について根本的に障害になつております点は、現在農地が金融の担保の対象になりかねるということであると思います。そのために農村金融は非常にやりにくくなる。従つてただいま農林中金のお話が出ましたが、今後の農村金融については、協同組合式な行き方で資金を仰ぐということ以外に、現実の実情としてはやり方がないのではないか、私はこう考えております。
  47. 奧村又十郎

    ○奧村委員 ただいまの農村金融についても、また先ほどお話になりました長期設備資金の金融にしても、私は金利に非常に関係が深いと思います。農村で聞きましても、今の一割を越えるような金利では、とても農村では使いこなせないということが一般の意見でありますし、また長期設備資金についても、これも今の市中銀行の金利の状態であれば、これは問題にならない。そこで商業銀行から長期設備資金を得るということは、金利の問題から困難である。長期設備資金は大体どのくらいの金利がふさわしいかということが第一点。それから市中銀行の金利問題で最近まで盛んに論議が行われておつたのですが、まだまだ銀行の金利は引下げられ得る、私はこう思うのです。ところが預金コストなどを調べてみますと、大銀行でもつて預金の利回りが二分足らず、これに対する経費、おもに人件費などが五分五厘もかかつておる、こういうことはどうもほんとうに思えぬのですが、こういうことをもつと合理的にやつて行くならば、まだまだ金利は下げられ得ると思う、この金利を下げることがこれらの問題の根本である、こう思うのですが、大体どのくらいが下げられるかということについて、簡単にお話を願いたいと思います。
  48. 工藤昭四郎

    ○工藤公述人 ただい一般金利が非常に高率になつておりますことは、御指摘の通りであります。従来先進国に比べまして、日本の金利は、常に相当程度水準が高かつたのであります。これは申し上げるまでもなく、経済が後進性を有しておりまして、そのために資本の蓄積が少かつた。資本の蓄積が少かつたことと需給関係から、どうしても高くならざるを得ないのであります。従つて先進国並に金利を持つて行くことは、日本の過去の最盛期においてもできなかつた問題であると思います。また現状におきましては、資金の需給関係から申しますと、資金の需要が非常に多い。供給の面よりも需要の面が圧倒的に多いので、その点からいいますと、金利はなかなか安くなりかねる、こういうことが言えると思います。しかし金利の重圧のために、産業が非常な圧迫をこうむつておるということも事実でありまして、この点につきましては、最近二度にわたつて金利の引下げが実行せられておることは、御承知の通りであります。戰前長期の資金は、大体八分ないし八分五厘見当であつた考えております。社債を発行します場合にはもう少し安いので、五分見当で資金の調達ができた。しかし社債発行は一流会社に限るものでありますから、信用の基礎の十分でないものは、社債発行はできなかつたわけであります。また戰前におきましては、預金部資金等を特別な用途に放出しておりまして、耕地整理組合とか、あるいは水利組合等につきましては、預金部資金が出たことがありますが、これは期間が非常に長期でありまして、しかも金利は五、六分程度の非常に安いものであつた考えております。ところがこの預金部資金につきましては、現在では資金コストが七分見当についておりますので、一挙に戰争前のような状態に持つて行くことはできないと考えております。銀行の経営の合理化が一向行われていないという御指摘は、まことにごもつともでありまして、われわれ金融業者としては、産業方面に対しては大いに合理化を叫んでおりますが、みずからの合理化ができていない、少くとも怠つておるというきらいがありますので、この点については、金融機関でも今後大いに合理化をはかつて、そうして資金原価を引締め、それによつて金利の引下げに資して行くという方向をたどらなければならぬと考えております。しかし今ただちに合理化をやつて、それでどれだけの金利引下げができるかという計算は、ここではちよつと申し上げかねます。また各銀行々々によりまして、その事情を異にしておりますから、実際合理化が具体化され、それによつて自然金利が下つて来るということを待つていただくほかないと考えます。
  49. 林百郎

    ○林(百)委員 四点ほど質問したいと思います。このたびの税制改革経済界に及ぼす影響ですが、ことに地方税の固定資産税だとか、あるいは附加価値税、それから国税でいいますと、資産の再評価の問題、こういうものが経済界のそれぞれの業種によつても、影響するところが多大だと思います。このたびのシヤウプ勧告並びに政府考えておる税制改革経済界に及ぼす影響、これをひとつお聞かせ願いたい。これが第一点です。
  50. 工藤昭四郎

    ○工藤公述人 シヤウプ勧告による税制につきましては、各方面でいろいろ論議せられておりまして、その結果は、もうすでに決定的のものであろうと考えております。ただ附加価値税、あ、るいは再評価税等につきましては、その実行のやり方いかんによりまして、與える影響が相当異なつて来るわけであります。再評価税につきましては、再評価そのものが相当緩和せられましたし、また税の徴收方法も相当緩和せられましたので、この方はそう大きな影響はないと思いますが、附加価値税の方は、地方にこれをまかして徴收する関係もありまして、地方庁にそういう徴税技術、能力が十分整つておるかどうかに、財界では危惧の念を持つております。従つてこういうものにつきましては、その課税の対象にはつきり一つの標準を設けることか、あるいは地方税として賦課せられます金額について、一つのしつかりしたわくを設けていただくとかいうことが、財界で希望いたしておる点であります。
  51. 林百郎

    ○林(百)委員 ただいまの点について、どうも各経済界の声は、相当深刻な声が出ておると思います。ことに再評価の方は任意になりましたが、固定資産税は地方としてかかりますので、固定資産の非常に多いところは、これが大きく影響して来ると思います。たとえば電気事業だとか、軌道に関する事業が、このために電気料をまた上げなければならない。あるいは私鉄の運賃を上げなければならない。また償却がほとんど不可能というような声も出ておりますが、経済界としては、この固定資産やあるいは附加価値税をこのまま受入れても、そう大した影響はないと思つて、これを安易に受入れるだけの気持になつておるのかどうか、あなたの先ほどの御説明の中に、すでに決定的なものと思うという、この決定的なということはどういう意味か、もう一度この点を御説明願いたいと思います。
  52. 工藤昭四郎

    ○工藤公述人 決定的と申しましたのは、各方面でいろいろこの問題を研究しておりまして、この結論が新聞雑誌等に現われておりまして、それによつて大体の方向がきまつておるということを申し上げたにすぎないのであります。
  53. 林百郎

    ○林(百)委員 その大体の方向をお聞きしておるのです。
  54. 工藤昭四郎

    ○工藤公述人 それは今お話になりました、例の不動産税と申しますか、これについては財界も、相当の危惧の念を持つておるわけであります。そういう税が、もし今われわれが感じておるような方向で課税せられるとなりますと、税の軽減ということにはならない。従つてこれについては、よほど取扱いを考えていただきたい。こういう強い考えは持つております。
  55. 林百郎

    ○林(百)委員 その次に第二点ですが、この一月から三月、その後もありますが、金融が相当梗塞して来るということが、ことに中小企業や産業資本家にとつては大きな関心事である。大体金融と税金の問題が、産業人としては大きな関心になつておると思いますが、そこでとりあえず一月から三月の金融の状態を見ましても、ここで非常な多額な、昭和三十四年度最後税金の徴收があります。それから復金債の引揚げ等もあります。いろいろの点で金融が相当逼迫して来る要素があると思う。それに対して政府としては、国債の償還あるいは公共事業費というような資金を相当流すことも考えておりますが、そうかといつて、銀行かこういう不安な状態で、どこにでも金を貸すわけには行きませんから、いろいろな点で相当金融が梗塞して来ると思いますが、一月から三月、また少くとも来年度の第一・四半期くらいの間の金融の状態について、どういうようなお見通しを持つておられますか、お聞きしたいと思います。
  56. 工藤昭四郎

    ○工藤公述人 この問題につきましては、一―三月の徴税関係その他から、政府勘定は相当額の引揚超過になりますし、また昨年末を経過いたしますために、各企業は相当の手形の発行をしておりますし、その決済期も近づいて来るのでありまして、相当の金融難を訴えておるのであります。これに対して今お話のように、政府はなるべく早く政府支拂いを促進するのと、また政府に保有しております資金、あるいは復興金融金庫の今保有しております資金を市中銀行に預けがえをして、それによつて緩和をはかつて行くというような方針をとられておるようであります。しかしこれにつきましては、先刻申し上げましたように、こういう状態になりますと、單なる営利機関ではなかなか十分な金融がむずかしいのであります。それでこういう際にこそ、復興金融金庫等の機能を再び生かして使つて行く必要が、あるのじやないかということをさつき申し上げたわけであります。
  57. 林百郎

    ○林(百)委員 その点であなたは復興金融金庫の理事長をやつておりますが、この復金の貸出金に対する回收の方針ですが、これは御存じのように、先年の暮に大体復金のこれ以上の貸出しは停止して回收をし、その回收した分は資本の減資に充てて、だんだん政府としては機能を縮小し、停止する方向へ行くというようにきまつたようでありますが、しかし千二百億もの復金の貸出金を回收するということになれば、これは金融界に及ぼす影響は非常に大きいと思う。そこで池田大蔵大臣としてもこの回收にあたつては三つの範疇がある。一つは大体回收できるもの、一つは困難ではあるが大体回收はできそうだ。第三の範疇としては全然回收不可能の分がある。こういう状態のもとで、復金の貸付金の回收を行うということを言つておりますが、これは今宵つた三つの範疇がどういう状態硬なつておるか。またこの回收をどういう見込みで将来進めて行くか、その点をお伺いしたい。
  58. 工藤昭四郎

    ○工藤公述人 その点に関しましては最近の金融事情その他から、復興金融金庫の回收はなるべくむりを避けるという方針で進んでおります。従つて各取引先に対して、自己の判断で回收のできる計画を出してもらつております。その計画に従つて金庫の中に査定委員会ができておりまして、その個々の会社の業態、資産状況その他を勘案いたしまして、今お話になりましたような大体三つのクラスにわけておるわけであります。この作業は昨年の八月から進めておりますが、八月末の復興金融金庫の貸出しの残高は千百億円でございます。このうちもう査定を終りましたのが九百六十億円であります。これについては昨年の暮に一応中間報告を政府及び関係方面に出しておりますが、その結果によりますと、九百六十億円のうち、回收が不能と考えられますものは、パーセンテージにしましてその一・五%、金額にしますと十五億円見当でありますが、これは復金の業務量その他から判断いたしまして、決して大きな数字ではないというふうに考えております。
  59. 林百郎

    ○林(百)委員 それでお尋ねしたいのですが、この一月から三月までに回收される分、それから昭和二十五年度に回收される分がもしおわかりでしたらお聞きしたい。
  60. 工藤昭四郎

    ○工藤公述人 昨年の四月からこの一月末日までに回收しました金は、元金で百三十億二、三千万円であります。年間の回收予定は七十五億であります。から、それに比べますと非常に大きくなつております。利息の回收は、金額は一月末日までに八十三億四、五千万円となつております。これも年間の回收予定額が九十五億でありますから、あと三箇月で十分その目標を突破することができると考えております。二月及び三月の元金回收予定額は、月大体五億ずつくらい予定しております。しかし実際の回收額は、それ以上になると存じております。一月も五億五千万円くらい予定しておつたのですが、実際の回收は九億四百万円という金額になつております。利息の方は、三月は年度末でありまして多少多く予定しておりまして、七億二、三千万円を予定しておると思いますが、二月はもつと少くて五億円見当じやないかと考えます。その数字ははつきりいたしません。それから昭和二十五年度予算に組まれております金額は百八十億円であります。実際の金額は、その金額の上に復興金融金庫の経費が加わつた金額で、大体合計で二百億見当と考えております。
  61. 林百郎

    ○林(百)委員 政府の財政方針は、経済が大体安定し復興したというような方針説明されておるのでありますが、われわれの調査により、あるいは耳にするところによりますと、貿易が非常に自主性がなくて、そう日本で必要でないものも向うから入つて来る。たとえば羊毛のごとき、あるいは石油のごとき、ことに食糧も相当そういう傾向があると思いますが、そういうものが入つて来る。それが相当量日本の有効需要を越したほど入つて製品になる。それが先ほど中曽根君の質問にもありました通り日本の有効需要として消費されればいいが、ストックになる。ストックになれば、これの資金の回転をしなければならぬから、いやでもおうでも外国にソーシヤル・ダンピングする。ソーシヤル・ダンピングするとフロア・プライスを廃止し、さらにたたき買われるというようなことになる。そうなりますと、国内は低賃金、低米価で有効需要がないし、従つてソーシャル・ダンピングの傾向が出て来るという要素も多分にあると思います。そうなると、やはり日本経済がむしろ縮小再生産の方向に行つて昭和三十五年度経済的に楽観を許さない、むしろ日本経済としては、非常に憂慮すべき歴史的危機の状態になるんじやないかというようにわれわれは思うのでありますが、その点経済界におられるあなたとして、また第三者としてどういうように考えられるか、やはり政府の言うように非常に楽観的に見ていいのかどうか、一その点あなたから、ひとつ忌憚のない御意見を聞かしていただきたい。
  62. 工藤昭四郎

    ○工藤公述人 貿易に自主性がないことは非常に遺憾なことであります。早く通商も自由になつて、最恵国の待遇を受けたいとわれわれは念願しおる、わけであります。それで二十五年度以降の財界の見通しにつきましては、今林委員からお話がありましたような見方も一部では行われております。しかしこれは今後の国民経済の育成方法いかんにかかつておると考えるのでありまして、先刻来再々申し上げましたような、予算にもう少し積極性を持たし、経済を盛んにして行くという方向がうまく参りますれば、今お話なつたような御懸念はないと考えております。
  63. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、工藤さんの大体の御結論としては、経済界を積極的に刺激をし、少くともドツジ・ラインのいわゆる均衡財政、デイスインフレというか、デフレというか、こういう非常な緊縮的な財政、收縮的な財政政策に対して、若干の修正を加えないと、どうも日本経済の将来の発展はあり得ないではないか、いわゆるドツジ・ラインの修正的な御意見をお持ちになつておるというように解釈してよいか、その点をお聞きしたいと思います。
  64. 工藤昭四郎

    ○工藤公述人 その点についてお答え申し上げますが、修正という意味いかんが非常に問題になつて参りますが、私は狭義に言う修正という考え方ではなくて、あの基本方針はあれでよろしいが、その基本方針に従つて、もう少し動かし方をうまくやつて行けば、御心配になるような状態は起らないのではなかろうか、たとえば今度の方針に従つてやりましても、財政面で吸い揚げました資金等が一個所に滞留しているおそれがあるわけです。滞留しておりますと、資金はその効用を発揮しないことは申すまでもないのであります。電流と同じように、資金は動きますときにその作用をするわけです。ですから、それは滞留することがないように、円滑に動かして行くということが必要になつて来ると思います。御承知のように現在はセメント、鉄材等も相当荷余りができております。そこで資金を供給することによつて、これらを利用して新しい資本を建設して行くことができるわけです。そういう面がもう少しうまく動いて来れば、御懸念になつたような点は起つて来ないだろうというのが、私の考えであります。
  65. 林百郎

    ○林(百)委員 それで、うまく動いて行くというお見通しであるかどうかということをお聞きしたい。
  66. 工藤昭四郎

    ○工藤公述人 それは動かし方いかんによるのではないでしようか。
  67. 林百郎

    ○林(百)委員 今の内閣ではどうでしようか。
  68. 工藤昭四郎

    ○工藤公述人 今の内閣でも十分やれるのではないかと思います。
  69. 植原悦二郎

    植原委員長 林君、私語を禁じます。  次の公述を、東洋棉花社長前田保勇君にお願いいたします。
  70. 前田保勇

    ○前田公述人 私はただいま御紹介にあずかりました東洋棉花株式会社の前田でございます。本日公述人としてお呼出しになりましたので、大阪から参つた次第でございます。  この昭和三十五年度予算に対する私の所見並びに平素接触いたしております業界の意見も取入れて、これから申し上げたいと存じます。  御承知のドツジ方式以来、私たちが従事しております貿易が、国内諸産業及び国民の生活に直結いたしておりまして、その成否がやがて日本再建の消長を左右するという形になつております。このたび政府が特別会計の外国為替勘定に計上しておられまする、援助物資を除外した輸入五億九千万ドル、輸出六億三千万ドルの計画が達成せられるやいなやということが、一般会計はもちろんのこと、諸産業にも影響するところがきわめて大きいものであるということは、私ども自覚しております。これにつきまして、私ども業界といたしまして、これができる、できないということは、大きなスペキユレーシヨンであります。端的に申し上げますれば、もし客観情勢が、すべてがこのままの形であるならば、すでに契約残二億ドル以上あります現状におきまして、私どもの努力と、産業界に対する政府のしかるべき措置があるならば、できるだろう。しかし輸入ははなはだ困難の状態に現在逢着しておるという事実を率直に申し上げます。と申しますのは、せつかくポンド・ブロツクに対しまして、日英協定というものができましたが、その通商協定の実行にあたりまして、ポンド協定国の各国が、やはり大きな経済計画を立てておるのであるし、手取り早く実例を申し上げるならば、最近日本輸入としては、相当大きな金額であります綿花の輸入を、インドに対して申し込んだのであります。と同時に、現在日本としてはぜひ買つてもらいたい人絹、これも人絹調査派出員からの報告によりますと、インドの企業界からも、ぜひ輸出してもらいたいという具体的の話にぶつかつたのでありますが、綿花は残念ながら三分の二見当以上は、国内事情、いわゆる計画経済のために輸出はできぬ。また人絹は、大体インドの経済から見ても、資本財は大いに日本から歓迎するが、消費財はしばらくお断りするというような実例が最近起つておるのであります。実際問題といたしまして、この輸入の面は、ポンド・ブロックに関する限り、必要な物資を入れる、しかも民間輸入なるものは、政府輸入と違いまして、一々消費者の姿をそのままに映しまして、そこに採算点というものがございますので、季節だから、計画だからといつて入れるわけには参らない現在の事情にありますので、この輸入の数字は、よほど勉強しなければ、この数字にはなかなか到達しないだろうというのが、大体業者の意見でありますが、業者といたしまして、輸出産業に携わる者は、ほとんど全部でありますが、とにかく一生懸命やろう、そしてこの数字まで何とか到達させようという結論に達しております。つきましては、この予算面全体を通じて私どもが感じられますことは、非常に均衡に重点の置かれることもけつこうでありますし、絶対額が減つておられることもけつこうでありますが、この輸出振興というものに対する国内的の援助と申しますか、援助という言葉が悪ければ奨励と申しますか、その配慮が何も出ていないではないかというのが業者の声であります。申すまでもなく、貿易なるものは、大体自主性のある国家をバツクにいたしまして、そこにメーカーと貿易会社、そのわきに銀行、保険、船会社、この総合力が輸出の自主性になつて現われるのであります。現在におきましては、わずかにメーカーと貿易業者というものだけが動いておるわけであります。従つて国内での予算面におきましても、輸出産業の働きにくいような形はぜひ直していただきたい。また働きいいような方向に進めていただきたいというのが、大体業界と申しますか、輸出産業中心の大阪並びに東京の意見でございます。  それではどういうポイントが願わしいかということになりますと、第一に価格差補給金の大中削減、これは貿易の自由というものを考えております私どもとしては、それだけ多くの物資がこの輸出入の面で民間に委譲せられるという業界の総意も生きることでありますし、また日本の商品が国際経済のレベルまでさや寄せするのだというので喜んでおりますが、しかしこの打切りによつて深刻な影響を受ける国内産業といたしましては、ここに一応考えさせられるところがあるのではないか。なるほど打切つても、先ほど工藤さんのおつしやつたような金融面その他で、ただいまの貿易は正常な貿易とは言いがたい。ただいま申し上げましたようなすべての條件を全部備えておるものでないのであるから、この際業者が補給金なしで生きて行かれないというならば、そこに金融措置を講ずるということを一応考えていただきたいと考えております。  第二は税制改革の問題についてでありますが、この均衡予算を原則といたされまして、法人税の引下げ、取引高税、織物消費税の廃止、物品税の軽減を行つていただくことは、貿易産業人として大いに喜んでいる次第でありますが、一方地方税として、私ども寡聞でありますが、日本として初めての附加価値税、また固定資産税を創設しまして、地方財政の強化をはかられるということは、その運用の方法いかんによつては、結局輸出産業の足をひつぱることになりはしないかという危惧を持つております。すべて実業界におる者からしますと、議論よりも実際の面であります。従つてこの附加価値税その他が実施されまする場合ありとしましても、この運用にあたつては、新しい納税であるだけに十分に注意をしてやつていただくことを條件としていただきたい。それでないと、今後あるいは伸びるかもしれないという、産業まで、結局殺してしまうことになるのではないかという心配を持つております。  第三には債務償還についての問題でありますが、債務償還の是非というような問題につきましては、專門家であられます工藤さんその他の皆さんのお話で、私ここへ来て初めて勉強した次第でございます。実際問題として中小工業の立場になりますと、市中商業銀行が先を見通して、円滑に融資をしてくれるということには実際面はなつておらぬのであります。この点についてはただいま工藤さんから十分にお話がありましたので、重複しますから私はお話申し上げることを避けますが、実際問題といたしまして民間輸入の形になり、また輸出の面に当つております。と、非常に大きな金額が融資されねば動かないがつこうになつておるのであります。戰前でありますれば皆さん大体手金でやり得た程度のものも、現在の輸出産業はほとんど裸一本あるいは裸以下になつているのが多うございますので、この面を市中銀行がめんどうを見てくれるべきはずであり、またこの予算の御報告を見ますと、当然見るような形になつておりますが、実際の面で私どもは直接融資並びに長期金融の方法をこの金額をもつてしていただきたい。それでことに私どもが携わつておりまする中の機械輸出のごときに至りましては、長期のものは一年ないし、年半の時日を要するほどの大がかりなものであります。たとえばインドのパワー・プラントのごときはそういうかつこうでございますが、それも全部金をくれるわけではありませんので、全部すえつけて動かしてみて、そこであとの二割は拂おうというのが大体商売の形になつております。現に英国あたりはそれでどんどん売り込んでおるのであります。そうしますとメーカーというものは、その二割はどこからも出るところがないのであります。もちろん貿易業者がこれを補うて行くのには、あまりに厖大なる金額でできません。ぜひその種の長期金融施設をつくつていただいて、そこでめんどうを見ていただく。つまりそういう面で輸出を振興するような制度をつくつてほしいという意味合いであります。  なお第四には輸出信用保険費のことでありますが、政府は一般会計におきまして昨年と同様輸出信用保険費として五億円を計上しておられますが、先ほど申し上げましたように、徐々に民間に委譲せられておりますのと、為替関係もありますが、金額が非常に厖大でありますし、また私どもは相手先を十分に選択しておりますが、いろいろな突発事件も多分に予想されますので、この危險負担をどこかにつながねば、思い切つてどんどん仕事して行けないという意味合いでございますので、この五億円の費用をもつて各種のこれだけの貿易の危険を補償し、また円滑に行くというためには、その金額がノミナルではないか、名目ではないかというような心配を持つております。一歩進めるならば、完全なる輸出補償制度のような措置までとつてもらいたい。そうして思い切つて働きたいというときに、現存する信用保険がわずかに五億円という去年通りの計上は、一体貿易振興というものにほんとうに熱意を持つてくだざるのかどうかということが、業者の心配しているところであります。  なお最後に、今まで盲貿易と言つておりましたのが、ぼつぼつ海外渡航ができまして、またきようはアメリカの中心に四つほどの事務所ができるという朗報がありまして、ぼつぼつ薄目明きになつて参りましたが、まだまだ本格の目明きではないのであります。これがためには十分に海外の市場調査というものを早目にしなければ、手遅れになるという心配を持つております。ことに最近御承知でしようが、シャムのバイヤーが日本から懐中電気を持つてつた。そうするとアメリカからも来ておつた日本のは実に厖大な形式を備えた昔からある懐中電気であるのにとアメリカのはプラスチックでつくつた実にハンデイなポケツト型、しかも燭光は同じである。早く気がつけばバイヤーも未然に損をしなくても済んだのではないか、こつちも悪気で勧めたのじやないかというようなエピソードもありますが、いずれにしましても、海外調査費用なども仄聞しますのに、千五百万円程度を計上しておるようでありますが、あの緊縮財政をとりながら海外に現在あれだけの貿易網を持つておる英国にいたしましても、約十五万ポンドほどの調査費の補助をしております。これは民間会社を利用しまして、それに調査を依頼する方も何がしかの手数料を拂う、政府も補助する、そして商品ができたらその商品をすぐマーケットに持つてつて、業者を集めて、この商品は買いものであろうか、消費者にヒットするであろうかということを一応確かめる、クレームその他についても話合うという会社でありますが、そこに約十五万ポンド出しております。まして現在の日本といたしましては、業者に余裕がありますればどんどん出したいのでありますが、なかなかそれだけの余裕もありませんし、また余裕がありましたところで、えてしてその情報なるものが一社、一社に限定されるので、全体の日本輸出産業という面に寄與する部面が少いのであります。これはどうしても一つの公共的なものをつくつていただきまして、この方の仕事をやつていただくことが必要だと思つておるのであります。  以上が先ほど述べました通り私並びに私の接触いたしておる業界からの、この予算に対する意見並びにお願いであります。  以上簡単でありますが、これで終ります。
  71. 米原昶

    ○米原委員 一昨々日の朝日新聞でありましたか、一月になつてから輸出契約が非常に激減したという問題について相当長い記事が出ておつたのであります。その中にその原因としてこの輸出の見通しがどうなるかということで、これは一時的な不振ではないというような結論を出した記事が出ております。その中で今前田さんが触れられましたような各国のドル不足でポンド地域がブロック経済化の方向に向つておる、そういうことから日英協定がなかなか予定通りに実行されないでおるということにも触れておりました。單にポンド地域ばかりでなしにドル地域、たとえばアルゼンチン、ブラジル、チリーの方面でも一齊に輸入制限を今年になつてから強化しているというような悲観的な見通しが出ておるのであります。それでその点について業界の方でどういうふうな見通しを持つておられるか、一点聞きたいと思うのであります。  それからもう一つは、先ほど工藤さんも話されましたが、ポンドのやみ相場が下落しておる。そのためにポンド地域の物価が上つて採算上なかなか輸入しにくくなつている。たとえば綿花なども二、三割高いという情報が出ておりましたが、こういう点で業界の方が為替レートの問題をどういうふうに考えておられるか、どういう点で為替レートの引下げを希望しておられるかという点を聞きたいと思います。
  72. 前田保勇

    ○前田公述人 アルゼンチンなど中南米と現在のわが国との貿易状態は、せつかく中南米使節が参りましていろいろ協定に近いものをつくつて参りましたが、実際問題としまして、はなはだ成果を上げておりません。これは一つ中南米の国情にもよることでありますが、大体中南米は私ども非常にやりにくいところであつて、昔はブラジルの綿と軍の使用するチリー硝石を代償にしていいお客さんでありましたために、相当むりもきいたのでありますが、現在はその面においてはなはだ十分なる流通を得ていないようであります。しかし私どもはもちろんのこと、通産省、外務省がお骨折りのことでありますから、結局買わねばならぬものは買うようになるのじやないか、いましばらく形勢を観望し、そして御盡力にまかすというかつこうになつております。  次に為替レートの問題であります。先ほど工藤さんがお話なつたと同じ形でありますが、これを商売人の目から見まして、大体為替レートなるものは、昔はきまつた値段一つもなかつたのであります。国際信用の形と貿易のバランスと貿易外の勘定のバランスと、これを組立てまして、そのときどきの事情に応じて毎日レートがかわつたのであります。少くとも十六分の一ポンドあるいは一年の間には相当大きな動きをしたのであります。これは当時いわゆる為替管理なるものがなかつた時代の話でありますが、現在私ども三百六十で仕事をしております。やりにくいものもありますが、また三百六十なるがゆえにできるという商品もあります。それは三百六十でできる商品というのは、輸入物資から輸出までの転換の早いものであります。その半面にほんとう日本の手だけでこしらえて出さねばならぬというものは、三百六十のために相当苦労しております。それじやこの際どうしたらいいかというと、これは私はしばらくお待ちください、なぜかとならば大体この二月末に英国の総選挙の結果がわかるだろうと存じます。現実にやみ相場が二ドル八十セントから二ドル三十に落ち込み、ときに二ドル十五というような話もありますが、今度の総選挙におきましていずれの派が勝ちますかによりまして、この為替問題は両派の大きなキー・ポイントになつております。ここしばらくこのままのレートで努力して参りまして、そして英国の今後の出方を見て、それに対処して行くのが、商売人から見たプテクテイカルな考え方であります。決して三百六十円を固持しなければ日本の国威が下るとは思つておりません、またそれが下りましても日本の国威が下つたとは思つておりません。もつと日本がりつぱな国であつたときも、為替は毎日フラクテユエーシヨンしておりました。
  73. 林百郎

    ○林(百)委員 前田さんの先ほどのお話の中でクレームの問題が出たのです。これについてはやはり日本の貿易業者が大分関心を持つていると思いますが、実際これが一方的に行われるケースが非常に多いように聞いておりますし、相手方のクレームが不当だとして、日本の国の裁判で請求権が確立されましても、具体的に向うの不当に対する賠償の請求ができないというような状態で、泣き寝入りをしておるというような例もあるようでありますが、貿易関係においてクレームがどういうぐあいになつているかということをもう少し詳しく承りたい。
  74. 前田保勇

    ○前田公述人 これにつきましては、すでに東京を中心といたしまする日本貿易会からいろいろ意見が出ております。実際問題といたしまして、不測のクレームに苦しんでおりまして、アービトレーシヨンに欠けておるところも多々ございますが、これは何と申しますか、商売人というものは有無相通ずるかつこうでありまして、まあ次の商売で埋合せしよう、まあそう言うな、というようなかつこうで、多分にそこは円滑に行つている面が相当多いようであります。ことに長年のお得意先であります方々の方からは、クレームについては割合に寛大であります。そのために綿製品初めクレーム委員をこしらえて、その適、不適を見ております。しかしこれはほんとうに商社が拒否権があるのかないのかということになりますと、私商売人でありますが、その点はあるというかないというか、なるべく両方仲よく解決して行くということが私どもの行き方になつておりますので、十分な研究はしておりませんが、今まで関係方面に持つて行けば、相当盡力してくれたケースが二つも三つもあるそうであります。それ以上は私存じません。
  75. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、クレームの問題については大体友好的に行われていて、別に日本の貿易業者としては大した障害にはなつておらないという御意見でよいですか。
  76. 前田保勇

    ○前田公述人 現在までのところは、そういうかつこうになつておりますが、ここで一番大事な点は、相手先の利益というものが、日本品に対してだんだん薄らいで参つている。かつてちようどかわいたところに水をまいたように、日本の綿布が戰後の各地へ大急ぎで広がつた時代は、相手先は大きな利益を得たように私は聞いております。従つてその際のクレームなるものは、これは商売人根性と申しますか、寛大でありますが、もうぎりぎり一ぱいいの線まで追い詰められている商売については、今後は相当クレームの問題が起るのではないかというふうに存じております。
  77. 林百郎

    ○林(百)委員 その次にバイヤーの問題でありますが、これは前田さんの綿糸の問題のほかに、一般的な貿易問題としてお聞きしておるわけなのです。バイヤーは、やはり日本人としてはほとんどサブ、バイヤーの役割しかできない、ほんとうの責任のある取引のできるバイヤーというのは、ほとんど外商がこれに当つておる。民間貿易になり、貿易が自由になつたとは言うけれども、やはり外商が非常に大きな力を握つてつて日本の貿易商としては、全部とは言いませんが、大部分サブ・バイヤー的な役割しか今果していないのではないか、たとえば貿易の割当、あるいは金融問題にしても、やはり外商ですと関係方面と密接な関係もあり、金利も外銀と結ぶと非常に安い金利で金が動くという関係で、貿易の実権の重要なる部分は、外商に握られているようなことをわれわれの仄聞する範囲では聞いておるのですが、実情はどうか聞きたいのであります。
  78. 前田保勇

    ○前田公述人 戰後たくさん来朝せられましたバイヤーのすべてが、純粋なバイヤーとは私は思うておりません。また実際にその方々と大きな商売のできたのも少いように思つております。かえつてただいま外商として十分な活躍をしておられるのは、かつて日本に店を持つていた外人商社、この方々の方が大きな商売をしております。私どもの貿易の姿を二つにいたしますと、一つは通信貿易であります。通信貿易、すなわち昔のお得意さんに対して通信で貿易をしている。ただいま電報でやつておりますが、それから一つは内地のバイヤー相手、あるいはミツシヨン相手、あるいは商館相手の商売、この二つになつております。それではそのパーセンテージがどういうふうになつておるかと申し上げますと、これは徐々に海外に人間を派遣して行くに従つて内地の仕事が減つております。そうして通信貿易等がふえております。こういう観点からいたしますと、外人商社が優先権を得るじやないかという心配は、これからは徐々に減るのじやないかというように私は考えております。また現実に私のところ自体でも減つております。  なお為替問題につきまして、外銀を利用した方がいいとか悪いとかいうことがありますが、建前はそこに特別な扱いをするような建前になつておらぬと私承知しております。しかし向うが大きな預金を本国に持つておる、それを引当にやるというような場合でありますれば、そういうこともあるかもしれません。これは商売人といたしましてはえてしてあることであります。しかしそれがために私どもの発展が阻害されるという、それほど弱い日本の貿易商の形ではないように私は見ております。
  79. 林百郎

    ○林(百)委員 今の問題ですが、たとえば輸出の割当というようなことも、今のところ司令部の方が大体の割当をきめまして、これを通産省なら通産省に伝える、そういうことも外国のバイヤーですと、早くその割当の実体がいろいろ耳に入る。輸入する場合も日本人ですと、たとえば三分の一なら三分の一の一定の保証金を積まなければならない。この金利の問題が相当ある。輸出する場合には別に向うの相手さんからこちらは保証金を積ませるようなことはできないというような状態で、貿易の状態ではやはり外商が相当有利な立場に立つているというのが実情で、徐々にあなたは改善されるとは言われましたが、やはり日本の貿易商というようなものが、サブ・バイヤー的な立場に遺憾ながら現実の姿はあるというようにわれわれは解しておりますが、その点どうですか。
  80. 前田保勇

    ○前田公述人 日本の貿易商が、ある部分がそういう形になつているということは私も認めます。それから外人であるがためにお仕事が円滑に行つておる。それは日本人がはなはだ外語には堪能でない関係もあるので、思うことを十分にエクスプレスできないという点も手伝つているのじやないかというふうに、私は善意に解釈しております。がこの三月以後大体重要物資の買付も通産省を通じまして、日本側に委譲せられるというような話も聞いておりますので、そうなりますれば、今林さんが御指摘になつているような危惧は、これで一掃されるのではないか、早くその日が来ることを私たちは熱望しておる次第であります。
  81. 林百郎

    ○林(百)委員 もう二点お聞きしたい。一つは関税の問題でありますが、実は私長野県で、絹繊維問題が非常に問題になつておりますが、絹織物など、フロア・プライスが廃止になつて、こちらの値段が下ると逆にアメリカの関税が上つてしまつて、こちらが下げれば向うが上る、向うが上るからまたこちらのコストを割らなければならぬというような状態で、関税の問題で日本の将来の貿易が非常に苦境に立つのではないか、ことに日本輸出品として相当有力なもの、陶器だとか、絹織物、こういうものの関税が最近アメリカで非常に速度を早めて上つて行く、そのために日本の方はかえつてコストを切下げなければならないというような状態なのですが、関税関係が相当日本の貿易に将来大きな影響を及ぼすと思うが、この点はどうかということが第一。  第二点としては、やはり日本の貿易の将来としては、スターリング、エリアやドル地域のみではなくして、やはり中共というか中国貿易のことについても真剣に考え、この道が開かれることによつて日本の貿易は飛躍的な発展があり得ると思いますが、この点についてどうお考えになりますか。この二点だけ承つておきたい。
  82. 前田保勇

    ○前田公述人 関税の問題につきましても、ただいま林さんがおつしやつた通り、大きな障害になつております。これは私どもの知つている範囲では、講和が済まねば話にならぬじやないか、さあ講和の済んだときにどうしようか、いつそ日本も全然フリー関税にしてしまつて、お前たちも日本の品はフリー関税にせよというまでの陣取りをつけようじやないかというふうな理想意見もあります。しかしいずれにしても、講和会議の済むまではこれについては私ども何とも処置なし。しかし現実に向うの消費者に対しては、日本の品物は関税分だけ高くうつつていることは確実であります。  それから中国の貿易は、地理的から申しましても、すべてから考えて、日本としてはだれもが持つておる常識でありますが、しかし商売人といたしましては、やはり売つたものはかつちり代金をいただき、お約束した品物はかつちり向うで受取つていただく。また私どもの方がお買いした品はかつちりいただくということが、民間の商売人の形でありますので、その点がはつきりいたしますまでは、私どもは手が出しにくいのじやないか、そういうふうに考えております。ことに私は上海から引揚げて参りました者でありますので、知人も多いし、何とかしてやりたい、昔のお得意様を何とか考えてあげたいと思い、またいろいろ手紙なんかも頂戴しますが、やはり商売の道となりますと、かつちり代金の決済をしていただかなければ私どもは何ともならぬので、その道を早く皆様のお力で開いていただきたいというふうに考えております。
  83. 林百郎

    ○林(百)委員 中国貿易の点ですが、これは従来ですと、むしろ国民政府のもとに非常に政情も不安でありましたが、今度中共の政府になりまして、国情が非常に安定し、国家が保障して日本の国と貿易をし、個人でなく国が保障するというように政情が安定すれば、お考えはどうですか。
  84. 前田保勇

    ○前田公述人 それは日本の特殊事情、はつきり申し上げましたら占領下というかつこうがもつれない限り――国家と国家という形に相なりますれば、これはまことにけつこうなことだと存じます。しかしどこまでもこの占領下という特殊事情に置かれておる場合という、もう一つのものがあるということだけ私どもは頭に入れておきたいと思います。
  85. 小峯柳多

    ○小峯委員 簡単に二、三点伺います。先ほど林委員から外銀、外商の話が出ましたが、私は林委員と少し逆で、外銀がせつかく業務を始めているのは貿易にどういう寄與をしているか、まだ始まつて期間がたちませんから、積極的な寄與はないかもしれませんが、私どもは多少貿易の進展に役立つだろうという期待を持つのであります。外銀の活動の状況をひとつ聞かしていただきたいと思います。
  86. 前田保勇

    ○前田公述人 御承知のように大体日本における外銀なるものはナシヨナル、シティー、チエース、チヤータードがありますが、この三つよりさらにこのたび皆で、シテイーをふやしまして、ポンドと両方で八つになつたと思いますが、すべてのレートのとりきめ、今後のコルレスとの話合いには多い方がより有利だというふうに私どもは存じております。これが一、二行になりますと、日本でこそ、しいて言えば、いわゆるこちらの仕事をよけいしておられるので非常に勢力がございますが、本国にはこれに匹敵する銀行も多数あるようでございますので、その銀行とがコルレスについてもシテイーを通すとぐあいが悪いのじやないかというふうないらぬ考えを持つておりますので、実際問題としては数の多い方がけつこうですという議論であります。
  87. 小峯柳多

    ○小峯委員 今の問題に関連しまして、今の場合、もちろん今までの実績から見ても御不便だろうと思うのですが、今のままで大体やつて行けるとお考えになるか、それとも日本の為替銀行が早くコルレスを持たなければならぬとお考えになつておりますか、その必要の程度をどうお考えになりますか。
  88. 前田保勇

    ○前田公述人 コルレスを各銀行が持つていただく方がやりいいという結論になつております。というのは本国におきましては各コルレスとも、向うの私どもの引合先に対しては、やはり競争でサービスと申しますか、たとえば五割の前渡金をLCとともに六割、あるいは他の勘定の面であとは二割というようにめんどうを見るのが、商売人と銀行との信用のある際の当然の行き方でありまして、コルレスを持つてもらう方が、私どもの相手先がやりいいということを私は申し上げたいと思います。
  89. 小峯柳多

    ○小峯委員 もう一点伺いますが、先ほど貿易の奨励策が非常に鈍いという御批評をいただきました。そういう中で虫のいい質問をしたらいかぬかもしれませんが、長い間の経験から、戰前と戰後を通じて、貿易の内容が地域別、商品別にどういうふうにかわつたとお考えになつておるか。断片的な質問でありますが、総括的にお答えいただきたいと思います。
  90. 前田保勇

    ○前田公述人 ただいまの御質問は、私ども実際に店をやつておる人間のかじのとり方、またオペレーシヨンの本体をついておるものであります。私ども三十二、三年前から約十七年インド、アフリカを中心に働かしてもらつてつたのでありますが、その当時の様相と現在とはころつとかわつて参りました。昔はインド自体が繊維製品の一番大きな消費者だつたのであります。当時インドの紡績機はわずかに六百万錘しかございませんでした。ところが現在は千三百万錘、その生産額は一年に約四十五億ヤードで、大体日本と同じように十億ヤードの輸出計画を持つており、現実に香港、上海はもちろんのこと、シンガポールの近所にはインド品が相当出ております。こういう点から見まして、昔の繊維マーケットはもはや繊維マーケットでなくなつた。それじや何のマーケットになつたかと申しますと、戰時中は各国とも自給自足、ことに軽工業中心、またセミ重工業に移行しまして、結局第二次欧州大戰ということになつて、どうしても工業を持たずに重農主義だけではいけないということになりました。それで現在は、昔一番繊維のお得意さんでありましたインドが、先ほど申しました発電装置、金物、セメント、その他大体建設資材――向うでは資本財と言うておりますが、その資本財中心のマーケツトにかわつた。これが繊維界から見たら大きな動きであります。それじや繊維界はマーケットを失つたかと申しますと、実際問題としては、これにかわる大きなアフリカのマーケツトを得ております。私が二十五年ほど前にアフリカへ参りましたときには、ほとんどの住民がまる裸でありました。それが最近の情報によりますと、もう裸で歩くのは恥で、文化人はゴムぐつをはいておるというので、はなはだ今昔の感にたえないのですが、それだけにアフリカに対する日本の繊維を初め雑貨というものについても、私自体は非常に重点を置いて考えております。現実に繊維は大きな分量が行つております。その他ではシャムもビルマも、どこもかしこもインドに右へならえでありまして、何とかして紡績機械を入れよう、何とかメリヤス機械を入れようというような希望か非常にふえて参りました。これは第二次欧州大戰、また太平洋戰争の結果、東南アジア諸国の持つておる傾向というふうに存じております。しかしインドを除いてはビルマ、シャム、この方面は紡績菜というものは完全に行つておりませんので、こつちはまだまだ私どものマーケットだというふうに存じておりまする
  91. 植原悦二郎

    植原委員長 たいへん御多忙のとこりを御出席くださいまして、有益なる御意見を御開陳くだすつた前田、工藤、近藤の三君に厚くお礼を申し上げます。  この際御報告申し上げることがあります。明十一日の公聽会に、地方財政関係から安井誠一郎君を公述人に選定いたしたのでありますが、同君はさしつかえがあるとのことでありますので、立教大学教授の藤田武夫君にお願いしましたから、御了承を願います。本日はこれにて散会いたします。     午後三時四十八分散会