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1950-03-08 第7回国会 衆議院 予算委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年三月八日(水曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 植原悦二郎君    理事 池田正之輔君 理事 尾崎 末吉君    理事 小坂善太郎君 理事 小峯 柳多君    理事 苫米地英俊君 理事 勝間田清一君    理事 川崎 秀二君 理事 今井  耕君       淺香 忠雄君    天野 公義君       井手 光治君    江花  靜君      岡村利右衞門君    奧村又十郎君       小淵 光平君    北澤 直吉君       黒澤富次郎君    小金 義照君       小平 久雄君    坂田 道太君       高橋  等君    田中 啓一君       玉置  實君    中村 幸八君       永井 英修君    西村 英一君       丹羽 彪吉君    渕  通義君       松浦 東介君    松野 頼三君       南  好雄君    山村新治郎君       稻村 順三君    西村 榮一君       北村徳太郎君    中曽根康弘君       林  百郎君    米原  昶君       竹山祐太郎君    松本六太郎君       岡田 春夫君    世耕 弘一君  出席国務大臣         内閣総理大臣         外 務 大 臣 吉田  茂君         郵 政 大 臣         電気通信大臣  小澤佐重喜君         労 働 大 臣 鈴木 正文君         国 務 大 臣 樋貝 詮三君         国 務 大 臣 本多 市郎君         国 務 大 臣 増田甲子七君        国 務 大 臣 山口喜久一郎君  出席政府委員         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         大蔵事務官         (主計局次長) 石原 周夫君  委員外出席者         專  門  員 小林幾次郎君         專  門  員 小竹 豊治君         專  門  員 園山 芳造君 三月八日  委員角田幸吉君辞任につき、その補欠として渕  通義君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十五年度一般会計予算  昭和二十五年度特別会計予算  昭和二十五年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 植原悦二郎

    植原委員長 これより会議を開きます。  理事会申合せによりまして、本日午前中は休憩いたしまして、午後一時から予定の通りに開会いたします。  これにて休憩いたします。     午前十時四十二分休憩      ————◇—————     午後一時十九分開議
  3. 植原悦二郎

    植原委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。苫米地君。
  4. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 吉田内閣財政経済政策は、ドツジ・ラインに沿うて推進されておることは、いまさらあらためて申すまでもないのであります。この結果として、さしも荒れ狂つたあのインプレーシヨンも収束され、通貨はようやく安定して参つたのでありますが、他方輸出貿易の不如意と有効需要の減退のために、滞貨の増加、金融の逼迫を来し、その上徴税旋風が吹きすさんで、国民は青息吐息、まことに深刻な苦悩に沈んでおるのが現状であります。この国民的苦悩を反映いたしまして、本予算委員会においても、このたびの画期的税制の変革より来るべき各般の影響、並びに国民税負担軽減等につき、熱烈なる論争が繰返されたのであります。シヤゥプ博士勧告しておりますが、税制改革制度は、ドツジ・ラインの延長であり、またその期するところはその完成にあるのであります。従つて勧告に一貫して流れておるところの構想は、税制合理化税負担の公平とであり、減税という点にはあまり重点が置かれておらないように見られます。もちろん財政の大きさ、税負担軽減を考慮いたしたことは事実であり、政府もまたこの点を深く考慮して、本年一月に始まる十五箇月予算において、約九百億円の減税をなし途げたことは、まことに多とすべきであります。しかし国民はこれをもつて決して満足しておらず、政府もまた決してこれで十分だとは考えておられないことと存ずるのであります。もししかりといたしますならば、この際十分にくふうを凝らし、あらゆる困難を克服して、今後も引続き二回でも三回でも必要な限り、減税を続行されるものと考えておるのであります。しかしてシヤウプ案完成のためには、税負担の公平ということが中心になつて参りますが、この公平ということは、税制合理化のみでは達成されるものではありません。ぜひとも税務行政の適正な執行と、納税者の十分な協力によらなければなら凄いと存ずる次第であります。この二つのうち、前者は同僚小峯議員から総理質問があることと存じますので、私は後者についてのみ一、二の卑見を述べ、総理見解を伺いたいと存ずるのであります。戰時並びに戰後を通ずる経済の混乱と不合理な統制とにしいられ、屋上屋を重ねた悪税法の重圧のために、国民納税意欲が著しく低下したことは、疑うことのできない事実であり、また他方徴税能力も種々の理由によつて低下したこともいなめない事実であります。この徴税能力の問題は、同僚小峯議員に譲りまして、納税意欲を振い起すという点について考えてみますのに、まず第一になすべきことは、財政の大きさを圧縮することであると思うのであります。しかるにこれはなかなかの難事で、容易に達成できない問題であります。なぜかと申しますと、一方には予算の膨脹、拡大を必要とするような幾多の要求が提出せられ、本議場で論議せられておる。他面減税の高らかなる叫びが起つておるからであります。こういう実情に直面してこの問題をながめますときに、よほど大きな決断をもつてしなければ、財政を圧縮し、国民負担を軽くすることはできないものと考えます。首相は財政の規模を小さくし、国費を節約する御意向があるかどうか、これを継続して、国民納税に対して心から協力して喜んで出せるようになるまで、低減を行うところの決意をお持ちになるかどうか、この点をお伺いいたしたいのであります。この減税にあたりましては、現に行われておるところの幾つかの悪税と認められるものがありますが、これをまず廃止していただきたいのであります。同時に射倖心をあおるような宝くじとか富くじとか、その他これに類似する制度を嚴禁いたしまして、健全な勤労精神を育成すべきで昂ると信じますが、これについて総理の御所懐を伺いたいのであります。
  5. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。行政簡素化、また局課廃合その他による合の整理をますますいたしたいということは、私の施政演説の中にも述べておきました。戰前戰後を通じて、あるいは剰員と言わなくとも、復員とダブつてよけい公務員の数がふえたということもありますし、また事情が変化したとかあるいは国土が狭くなつたというようなところから、整理をすべき局課がずいぶんたくさんあるはずであります。台湾を持ち、朝鮮その他に手の及んだ日本が、四つの島に限られた狭小な領土になつただけでも、相当整理の余地があるはずでありますし、さらにまた行政簡素化することによつて国民がまたその恩沢をこうむるので、今日みたいな複雑な行政機構では、これは国民としては迷惑であるのみならず、日本経済発展復興なりに非常な妨害を来しますから、行政は簡素にする、そうして局課廃合をいたして、機構も簡素にするということが、さしあたつての必要と考えますが、それによつて相当の経費を倹約する、そうして将来の復興に備えるということが、政府として、あるいは国として、進むべき道だと考えおりますから、ますます行政整理なり何なりはいたすつもりであります。これは中央、地方を通じていたす考えであります。  最後に富くじその他についてどう考えるかということでありますが、この点は私は專門でありませんから、当局大臣からお聞きを願いたいと思います。
  6. 植原悦二郎

  7. 小峯柳多

    小峯委員 ただいまの苫米地委員の発言に関連いたしまして、簡單に一つだけ総理の御所見を伺いたいと思います。  総理は政治は税金から始まるという意味のことを言われまして、税に関しまして、非常に深い関心をお持ちになつておることは、私どもよく承知いたしております。しかしその総理の主宰する吉田内閣のもとにおきまして、ちようど今は年度末月に当るのでありますが、各地方税務署におきまして、税の徴收を強行いたしまして、そのために、相当の問題を起しておる地方もあるのであります。一体税金というものは、申し上げるまでもなく、インフレ高進期における税金と、安定が進行して参りますときにおける税金とは、納税者の側から見まして、非常にその感じ方が違うのであります。インフレが高進しておりますときには、手持ちの商品は値上りいたしますし、自然に收入も増加いたしますし、金まわりもいいのでありますから、多少むりだと思われるような税金も納めいいのであります。これに反しまして、安定が進行して参ります時期におきましては、今のとはまつたく逆に、適正な税でありましても、手持商品は値下りいたします。收入は自然に減少の傾向をたどります、金まわりも不如意でありますから、納税者に與える影響は非常にきついのであります。そういう意味で、インフレの高進しておる時期、言いかえれば二十三年度までの税金と、安定が進行し始めた二十四年度税金徴收にあたりましては、よほどの頭の切りかえが必要だと思うのであります。地方に行きますと、あるわくがあつて、そのわくを天くだり的に押しつけて税金をとるというふうな言葉をよく言いますが、私はこのことは信じません。しかし収税見積りが、国税局にも、あるいは税務署にありますことも、事実でありますし、また現実業者につきましては、サンプル調査という見本のような調査をいたしまして、その見本調査から期待倍数を頭の中に入れておることは、疑いない事実であります。いわばこの收税見積り期待倍数が、徴税の上における税務官吏先入観になつておるのでありますが、その先入観が、インフレ高進期には、むしろ納税者にはプラスになるのでありますが、安定の進行いたしますときには、逆にその先入観が実際面よりは先にきめます関係で、どうしても上まわるような傾向があるのであります。そこで私どもは、期待倍数とか、収税見積りというふうな先入観を離れて、あくまで実態に即して、あくまで実情に即して、税法を適正に行使して税をとるべきだと考えておるのであります。大蔵大臣はしばしばこのことを言つておりますが、しかしこの先入観は、どうも税務官吏の頭から離れないと見えまして、この先入観を押しつけて、徴税を強行しておる面も少くないのであります。そこで総理大臣は、税のことに非常に関心が深いのでありますから、総理大臣の口から、あくまで実情沿つて、しかも徴税にあたつては、法の許す限り、どこまでも親心をもつて税金をとるのだという方針が、下部の税務署まで徹底するように、総理大臣でありますから、行政長官である大蔵大臣なり国税庁の長官なりに嚴達いたしまして、安定進行期における納税の非常に苦痛な実情を、緩和するだけの用意があつてしかるべきだと考えるのであります。地方では、先ほど申し上げましたような、期待倍数やら收税見積りから先に頭にでき上つている数字を押つけることに納税者が反撥いたしますと、これは君らが選んだ代議士がきめたんだ、吉田内閣方針だということを、揚言している税務官吏もあるやに聞き及んでいるのであります。総理親心も、吉田内閣方針も、かくては国民に徹底していないわけでありますので、今私の申し上げたような意味で、あくまで実情に即して、実態に即して、あらかじめつくつた頭の中のわくを押しつけるようなことをしてはならぬということを、この機会にあらためて総理の口からはつきりしていただきたいと考えるのであります。年度末でありまして、税金のために非常に国民苦悩をなめておる際でありますから、特にこの点を申し上げまして、総理の所信をただしたいと考えるのであります。
  8. 吉田茂

    吉田国務大臣 御質問の御意見はごもつともであります。ことに最近証券市場といいますか、株式問題が大分やかましいので、その原因の一つ徴税があまりに苛烈であるからというような意見もあるのでありまして、大蔵大臣とも絶えず相談をいたしておりますが、徴税の問題は、シヤウプ博士勧告の中にも、日本徴税吏の能率なり、またその素質向上を十分はかることに、特に意を用いるようにという勧告もありますから、大蔵省としては、徴税官吏の数も増し、また素質もよくするということに特に意を用いるということであります。また年度末において、今日徴税のぐあいがよろしい、成績ははなはだ良好であるから、あまりむりをしないように十分意を用いるようにということは、絶えず地方庁にも嚴達しておるそうでありますから、やがてその結果はわかるだろうと思いますが、なおお話の点については注意いたします。また大蔵大臣ともよく協議いたします。
  9. 植原悦二郎

  10. 西村榮一

    西村(榮)委員 総理大臣に御質問いたしますが、給與ベースの問題につきましては、裁定案が確定し、かつまた判決も下つておるのでありますが、これに対して政府の御意見はきわめてまちまちに承るのであります。そこで政府はいかなる具体的かつ確定的な方針を持つておられるか承りたい。次に、政府は最近において賞與制度実質賃金の引上げになるとか、あるいは等級を改正するとか、いろいろ言われておるのでありますが、それらに対する確たる御見解を一応承りたい。
  11. 吉田茂

    吉田国務大臣 第一の給與の問題でありますが、これは私の施政演説にも述べておきました通り、さしあたりのところ、いろいろな方面に影響があるから一応はこれできめる。しかしながら国家公務員給與は、必ずしもこれをもつて満足すべきでないから、実質賃金向上、その他でもつて十分はかりたいということは、かねて施政方針の中にも申しておつた通りであります。また賞與その他の問題については、でき得べくんばいたしたいと思いますが、これも予算関係がありますから、予算の実施の成績等考えて、できればいたしたいと思いますが、今日のところまだ決定いたしておりません。これが実情であります。
  12. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると裁判所判決実質上否定する。こういうように解釈していいのですか。
  13. 吉田茂

    吉田国務大臣 裁判所判決政府の見るところは違つておりますから、上告その他の方法で争うつもりでおります。
  14. 西村榮一

    西村(榮)委員 時間がございませんから次に参りたいと思います。これはあとから官房長官に他の同僚から十分承ることになつておるのですが、七日付の夕刊によりますと、増田官房長官ゼネストをこう解釈いたしまして、單産といえども産業界影響するときにはそれをゼネスト解釈する、こういうふうに談話を発表いたされております。單産の争議をゼネスト解釈するということについては、一体どこに根拠が置かれておるのか、私どもは寡聞にして了解に苦しむのでありますけれども、このよつて来たるところを、増田官房長官解釈を広汎に広げますならば、すべてのストライキはあらゆる事業に関連いたしておるのでありますから、この増田官房長官解釈によりますと、一切のストライキが禁止せられるという危険が生じて来るのであります。これに対しまして労働課長エーミス氏は、今朝の新聞において、こういうふうに解釈を明らかにいたされております。かつて一九四七年の一月に、マツカーサー元帥ゼネスト禁止の書簡を出したのは、官公庁労組がまさにゼネスト決行の寸前にあつたから、これを禁止したのであつて、今日具体的に上つておる電産ストのような單産ストに対して、これを適用するかどうかということは、法的問題については目下、審査も行わずに言明することはない、こう言われておるのでありまして、しかもその全文を見ますならば、單産ストゼネストと見るということは、行き過ぎであるというように解釈のできるような表現がなされておるのでありますが、総理大臣にお伺いいたしたいのは、増田官房長官見解と、エーミス氏の見解とが根本的に食い違つておるのでありますが、それをどちらが正しいとお考えであるか、これを承つておきます。
  15. 吉田茂

    吉田国務大臣 お話の問題は、私もけさの新聞で見ただけの話で、どちらが正しいかということは研究した上でお答えいたします。
  16. 西村榮一

    西村(榮)委員 この問題は重要でありますから、十分御研究を願いたいと思います。あとからまたこれについては詳しく論及されるものと思うのでありますが、私はここにおいて、もしも増田官房長官ストライキに対するこの見解に、総理が同意せられるといたしますならば、それはわが国の憲法を否定するのみならず、日本における合法労働運動をも否定するという危険が生ずるのでありまして、十分御注意されてこの見解を明らかにせられたいと存ずるのであります。時間がございませんから次に参ります。  私が総理大臣にお伺いいたしたいと存ずる第三点は、近来非常に中小工業が困窮しておるということは、これは日常新聞において総理大臣はつとに御了承のことと存ずるのであります。これを現内閣統計によつて見ましても、全国の主要都市、六千件について通産省が調査されましたところの統計によりますならば、九月十五日現在において事業場を一時閉鎖したものが三六%、規模縮小したものが五五%、全然廃業したものが九%でありまして、この九月十五日よりも、二十四年の末あるいは現在となるに従つて金詰まり、あるいは売れ行き不振、あるいは税金攻勢というようなものが重なりまして、最近ひんぴんとして自殺者が続出いたしておるのであります。この中小工業者窮乏に対しまして、総理大臣はいかなる御感想をお持ちでありますか。一応承りたいと存じます。
  17. 吉田茂

    吉田国務大臣 中小企業の問題もまたその利益のため、政府としては相当支出をなし、また支出をなさんとしておることは、通産大臣からお聞きであろうと思います。その詳細のことは通産大臣からお聞きを願いたいと思います。
  18. 西村榮一

    西村(榮)委員 通産大臣から聞くことができなかつた政治的な大きな問題でありますから、私はあえて今日の時間において、総理大臣にその御感想を承つておるのです。こまかいことはこれは通産大臣に承りましよう。しかし現在、かような政府統計においても明らかなことく、かつまた総理大臣日常新聞ごらんになれば一見明瞭のごとく、中小工業者金詰まりと売れ行き不振と税金で困窮しておるのであります。それがために多くの自殺者を出しておるこの事実をごらんになつて総理大臣はいかなる御感想を持たれるか、このことについて総理大臣の御感想を承つておるのであります。
  19. 吉田茂

    吉田国務大臣 感想を、と申せば、はなはだ心配いたしておるということよりほかに申すことはありませんが、しかし心配いたしておりますから、通産大臣とともに始終この問題については協議いたしておりますので、最近においても通産大臣としては相当の措置を講じたはずでありますから、詳細のことは通産大臣にお聞きを願いたい。
  20. 西村榮一

    西村(榮)委員 御心配くださることはたいへんけつこうでありますけれども、心配だけではこれは追つつかぬのでございます。はなはだ失礼でございますけれども総理大臣官邸並びに大磯において休養されつつ御心配くださりましても、中小工業者の今日の窮乏は救われないのであります。しかし心配されておるということは、これは深い関心と理解を持つておられる、こう私は善意に解釈いたしたいと思うのであります。ところがあなたが心配しておると言われておるところの内閣閣僚の中から、こういう重大なドツジ、ラインという大きな政策の実行の前には、中小企業が倒産して自殺してもしかたがないじやないか、こういうふうな意味のことを述べられたのであります。これはいろいろ問題が起きておるのでありますが、私はこの言葉の中にどういうふうなことが含まれておるかといえば——大きな政策転換の、前にはいたしかだがないという意見はどこにあるかといえば、それはその前段において中小企業が努力を怠つてつたので、倒れるのはあたりまえじやないか、こういうことであるのでありますが、こういう大きな政策転換といい、今日の中小工業者の苦悶というものは、中小工業者それ自体に帰するには、あまりに日本歴史が大転換したということであります。同時にそれは中小工業者が従来の自分の責任の範囲を越えて、国策上において大きな波の中に苦悶しておる。これに対して自殺してもしかたがないじやないかというふうな閣僚が出て来たのでありますが、こういうふうな言葉に対しまして、総理大臣はいかなる御感想を持たれるか、これまた御感想を承りたい。
  21. 吉田茂

    吉田国務大臣 御質問の点は不信任案否決によつて万事解決いたしておると思います。解決しておるから否決されたのであります。すなわち国会としては池田君を信任しておるからして、不信任案は否決されたのでありますから、この問題に対してお答えはいたしません。
  22. 西村榮一

    西村(榮)委員 それではお答えがなければいたしかたがありませんから、今度は総理大臣自身のことについてお伺いをいたしたいと思います。それは通産大臣不信任案が否決されたその晩のできごとであります。これは某有力な一流新聞の報道でありますが、三月七日付の夕刊にこういうことが書いてあります。野党の不信任案を否決した大蔵大臣はとりあえず総理大臣の御前にまかり出て、どうもお騒がせいたしましてと、七重のひざを八重に折れば、そこは不逞のやからで音に聞えた白たび宰相のこと、なに、人間だもの、たまにはほんとうのことを言いたくなるよと悠揚迫らぬさまに、側近ものどもはさすがに勇将のもとに弱卒なしと、あきれたり喜んだりしたというのでありますが、総理大臣通産大臣不信任案を否決された後において、なに人間だもの、たまにはほんとうのことも言いたくなるよ、この数行の文字はきわめて現内閣の性格を端的に表現して余りありと思うのでありまして、何がほんとうのことであるか、何がほんとうのことを言いたいのか、一応このほんとうのこととは何かということを承りたい。
  23. 吉田茂

    吉田国務大臣 新聞の記事に対しては責任を負いません。
  24. 西村榮一

    西村(榮)委員 それではこの新聞うそだとお考えですか。
  25. 植原悦二郎

    植原委員長 お答えになりません。
  26. 西村榮一

    西村(榮)委員 不信任案の問題であるから、不信任案のときには総理が御答弁にお立ちにならなかつたのであります。従つて通産大臣のいわゆる中小商工業者が自殺してもかまわないじやないかというふうな、私は片言隻語をとらえておるのではないのでありまして、中小商工業者が今日困つておるのは、一部は自己の責任にもございましよう。放漫な経営だとかもありましよう。しかしながら、戰争中から戰後にかけて、インフレーシヨンからデフレーシヨンに転換したこの日本経済歴史の大転換の前に立つて中小商工業者が負うべき責任よりも、むしろ国策転換において中小商工業者が今日苦悶しておるという現実をさして、私はこれを理解し、同情もせずして、中小商工業者の弱い者が倒れて行くものはいたしかたがないじやないかという大蔵大臣の放言に対しまして、いまだかつて公式に総理大臣の御意見を承つておらないのでありますから、私はあらためてお伺いしたい。しかしそれは不信任案において否決せられておるということで御答弁がなかつたから、新聞に出たその後の状態において、その後の事実において、これは私は名前をさしませんけれども、某五大新聞一つでありますこの新聞の中に、人間というものはときにはほんとうのことを言いたくなるんだ、かまいはせぬと言つて鼓舞激励したときに、側近の方々がさすがにあきれたり喜んだりしたということであります。この新聞のこの事実を否定されるかどうか。言うたことがないのかどうか。なければないとはつきりしてもらいたい。しからばこの新聞うそを言うているのであるから、これはさつそくお取消しになる必要がある。この新聞記事があなたの耳に入つていないはずはない。私は表面に現われた問題よりも、現吉田内閣の中小商工業ないし産業政策に対する政策の問題をお尋ねしているのでありまして、このことをおつしやつたことがないかどうか、この一点だけでよい。
  27. 吉田茂

    吉田国務大臣 新聞の記事は一切責任を負いません。答弁はいたしません。
  28. 西村榮一

    西村(榮)委員 新聞の記事でなしに、私はこれをおつしやつたか、おつしやらないかをお聞きしたい。しからば新聞記事には現内閣に対し並びに吉田総理大臣に対して、はなはだおもしろからざる記事が出ているのでありますから、新聞記事を取消すことを要求せられるかどうか。
  29. 植原悦二郎

    植原委員長 西村榮一君、新聞記事に対しては責任を持たないということで、全部あなたの御質問お答えになつていると委員長は了解いたします。なおあなたの時間はもうわずかしかありませんから、その問題より他の問題に御進行なさることをお勧めいたします。
  30. 西村榮一

    西村(榮)委員 議会政治多年にわたる功労ある植原委員長のおとりなしによりまして、私は総理大臣に対する追究はこれ以上は省略いたしましよう。しかしながらこの問題を明確にされなければ、池田大蔵大臣の言うた十人や二十人の者は死んでもさしつかえないじやないかという言葉は、ほんとうのことを時には言いたくなるよというこの言葉が、端的に吉田内閣の性格であると誤解されることは、国内に対しても、国外に対しても、おもしろくないのでありますから、吉田総理大臣は真実にこういうことを言うたことがないということであるならば、さつそくこの新聞記事の取消しを要求されることを希望しておきたいのであります。しかし取消しを要求されないということであるならば、私は本日は結論がつきませんけれども、これは総理大臣がおつしやつたということを国民解釈するよりほかしようがありません。  次に私は時間がございませんから早足に……。
  31. 植原悦二郎

    植原委員長 どうかよい質問を……。
  32. 西村榮一

    西村(榮)委員 よい質問か悪い質問かということは、植原委員長に言わせれば、政府の急所をつくことが悪い質問で、政府のおべんちやらを言うことがよい質問になるかもしれませんけれども、私は国民代表として正しいことを承りたいと思うのであります。委員長みずから私の発言中に私語しちや困ります。私はあなたの議事進行に協力しているつもりです。今後お愼しみになつた方がよろしい。  最後に私は総理大臣にお伺いいたしたいのでありますが、現内閣はしばしば日本経済は安定せりとおつしやつたのであります。この問題の安定論については、しばしば論議せられて参りました。これは重複することは避けます。しかし現内閣の安定論の中に、私は総理大臣としての御見解を承つておきたいと思うことは、貿易振興によつて、将来国民経済をまかなつて行くのであるということをしばしば言われたのであります。通産大臣大蔵大臣、安本長官もそれを言われたのであります。そこで現内閣の将来の産業政策というものは、今まで承つておりますところでは、安定計画に結びつかなければならぬ復興計画もなければ、あるいは総合的な計画もない。賃金と物価と生産と消費量と雇用量の安定の上に、安定計画が立たなければならぬのでありますが、それに対する具体的な方策は何ら示されていない。中にただ一点あるのは、貿易を振興して、輸出貿易によつて国民経済をまかなつて行くのであるというこの一点であるのでありますが、総理大臣はこの政府当局、経済閣僚見解に対して、やはり御同意でありますか。
  33. 吉田茂

    吉田国務大臣 貿易振興は国として努めなければならぬ重要な義務であると考えております。
  34. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は貿易振興が重要であることは総理から承るまでもなくつとに知つております。しかし私がここに総理には苦言を呈したいことは、貿易振興のみが日本経済の救済策の活路であると現内閣が言われておる中に、私は是正しなければならぬ一点があると思う。現実はわが国の生産最が貿易においてはけられますのは、僅々四%ないし、五%であります。あとの九十五、六パーセントというものは、国内の需要において日本の産業はまかなつて行くのであります。従つて今日のごとく税金でしぼられ、雇用量は減退し、賃金は下る。政府の安定計画なるものは、低賃金と低米価と産業不振によつて、超均衡財政が組まれておるのでありますが、超均衡財政の超をおとりになつて、普通の均衡財政にする。本年度つた税收をもつて支出するということになりますならば、千二百六十八億円という旧債償却の中には、期限の到来しておるのはわずかに七十六億円であります。一千二百億円近くのものが浮いて来るのでありまして、これを国内産業振興策にまわしますならば、そこに生産財の有効需要をつくり、雇用量の増大において消費生活の充実となつて、ここに初めて日本の産業というものは発展的な再生産方向に向うのであります。私はここにおいて総理大臣にお伺いしたいのは、超均衡財政の超をおとりになつて、普通の均衡財政の立場に修正される御意思はないか。それによつて国内の有効需要を喚起して、現在の日本経済の苦悶を打開したらどうか、こういうことをお伺いしたい。
  35. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は均衡政策ということは申したけれども、超とは申しておりません。
  36. 西村榮一

    西村(榮)委員 それでは私の質問はこれで打切りますが、しかし千二百六十八億円の本年度の旧債の償却の中に期限の来ておりますのは七十六億円であります。あと一千三百億円というものは、期限の来てない古い債券の償却であります。しかも経済の苦悶の中に立つてこれを国民から苛斂誅求することにおいて、自殺者ができる。これが超均衡財政の犠牲である、これが超であるということを御銘記願いたい。私はこれで質問を打切ります。
  37. 植原悦二郎

    植原委員長 川崎秀二君。
  38. 川崎秀二

    ○川崎委員 質問に入るに先だちまして、先ほど以来の西村君と総理大臣との一問一答を聞いておりますと、西村君の質問に対して少しも親切丁寧にお答えをしようという誠意がないのを非常に遺憾と考えております。昨日の晩何か下痢でもなされて上京されたそうだが、そんなしかめつらをしないで、まじめに質疑応答をしてもらいたいと思うのであります。  総理大臣に対して專門的な質問をいたしましても、いつもお答えがないわけでございますので、はなはだ残念ではあるけれども、程度を少し下げてお尋ねをいたします。  第一の問題は、ただいま西村君のお尋ねになりました中小企業に対するところの蔵相の暴言問題は、ひとり院内においては否決をされましたけれども、しかしながらこの問題については、院外の国民大衆は黙過しがたきことだという印象を持つておるのであります。これはかつての民自党、今日の自由党を支持した多くの国民大衆も同感だろうと私は思うのであります。そこでこの点について特にお伺いいたしておきたいのでありますが、総理大臣は蔵相談話のうちにありました、五人や十人この際死んでもいいというような暴言に対して、根本的な問題としてお伺いいたしたいのは、中小企業は今日非常な危機に立つておる、倒産あるいは自殺する者さえ出て来ておるのだが、それに対して蔵相は先般の予算委員会あるいは他の委員会における質問の際、自分の表現の悪かつた点は改めるけれども、しかしながらそのことのためにドツジ・ラインによる政策は改めることはできない。そうして十月までの間には中小企業の犠牲や倒壊というものは相当続くだろうということを言つて、明らかにこういう事件が起ることを黙認しておる答弁をいたしておるのであります。そういたしますと、われわれ憲法で保障されているところの最低生活の保障の線がくずれて参るのであります。ドツジ・ラインが大切であるか、ドツジ・ラインといえども私は最低生活を保障するという考え方のもとに、経済安定政策を進めておると思うのでありますが、一体蔵相の発言には、犠牲が少々あつてもかまわぬ、それにはやはり倒産や自殺も出て来るだろうということを黙認した発言がある。そういうことについて一体ドツジ・ラインと最低生活は、どつちが重いものか、その点についてお答えを願いたいと思うのであります。
  39. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは先ほどお答えいたした通り、この問題は不信任案否決で解決したと思いますから、繰返してこれに対してお答えをいたしません。
  40. 川崎秀二

    ○川崎委員 国会でいかに否決されましても、院外における大衆は、これを断じて黙過しがたい事件として取上げておるのであります。現に近く中小企業振興大会というものが国民の下部から起き上つて、蔵相の暴言問題、あるいは中小企業に対する積極的な振興政策について、政府に建言しようとしておるまことに容易ならざる空気を生んでおるのでありまして、首相の答弁によつて私はすべてが一掃されたとは思いません。しかしながら何べん質問しても、結局この点はお答えにならないと思うので、次の問題に移ります。  現在通産相は大蔵大臣の兼任となつております。私は今の問題に執着して議論をいたしますと御答弁がないと思いますので、違う角度から申し上げますが、大蔵大臣の今日の使命と通産大臣の持つ使命とは、相当性格的に異なつておる部分が多いように私は思うのであります。そこで財政金融の担当者と、産業振興を大いに奨励しなければならぬ立場とは、ある場合においては相当矛盾することが出て来るのではないか、その意味において、通産相に適任者ができるならば、すみやかに補充をされた方が、私は内閣のためにもよかろうと思うのでありますが、この点についての答弁をいただきたいと思います。
  41. 吉田茂

    吉田国務大臣 御意見は御意見として承つておきますが、ただいまさしあたり両大臣は兼任さして行きたいというのが政府方針であります。
  42. 川崎秀二

    ○川崎委員 もう一度念を押しておきたいのでありますが、さしあたりのことであつて、でき得れば近い将来にでも專任通産相を設置する考えはないのでありますか、その方がいいというお考えでありますか、どうでありましようか。
  43. 吉田茂

    吉田国務大臣 むろん両省は別の省でありますから、適当な機会に專任は置くつもりであります。しかしながらさしあたつてのところは兼任で行きたいと思つております。
  44. 川崎秀二

    ○川崎委員 先ほど西村君も簡單に触れられたのでありますが、本日の朝のエーミス課長の談話は、きわめて現下の労働運動と関連をして重大な問題と思います。そこで專門的なことは、あと増田官房長官も来られましたし、また先ほど労働大臣も姿を見せておりましたので、総理大臣に対する総括質問あとでお伺いいたすことにいたしまして、私は基本的な考え方だけを総理にお伺いをいたしておきたいことは、憲法第二十八條では明らかに勤労者の団結権と、それから争議権というものは保障せられておる。それから公益事業のようなものは、労働運動において一つの制限がある。先般の二・一ストのときのように全国的なストライキが起るいわゆるゼネストに対しては、マツカーサー元帥はこれを禁止いたしておるのであります。しかしながら重要産業が、一つ一つの産業がストライキをすることの権利は、私は当然憲法にも保障されておるし、マツカーサ—元帥の書簡にも触れるものではないし、当然許さるべきものと思うのですが、憲法上保障されておる権利は当然保障されるものと思うけれども、現下の情勢から見まして、どういうふうにお考えであるか、この際御答弁を願いたい。
  45. 吉田茂

    吉田国務大臣 先ほど西村君にお答えいたしました通り新聞記事については取調べた上でお答えいたします。
  46. 川崎秀二

    ○川崎委員 先ほどの西村君の御質問の内容は、エーミス課長の談話と増田官房長官の談話とどちらがほんとうかという質問でありましたので、新聞記事に関する限りは取調べて答弁をするというお話であつた。私が聞いておるのは、憲法上許されておる問題で、他の制限規定に触れないものは、これは保障されてよいのじやないかということの基本的な考え方を、お伺いいたしておるのであります。
  47. 吉田茂

    吉田国務大臣 基本的な考え方も取調べた上でお答えいたします。
  48. 川崎秀二

    ○川崎委員 どうもそういうことは取調べて答えるという筋のものではないと私は思うのですけれども、どうもそういうことでは、実際質問をする張合いがだんだん抜けて行きます。困ります。  次にこの際お伺いいたしたいことは、給與の改訂について、政府は依然として給與ベースをかえる意思はないということを言つておられる。しかしながら政府の一部、あるいは與党の大部分におきまして、給與改訂はしなくても、何らかの措置をしたい、増額をしたいということが話題にも上り、真劍に考慮されておるようにも伺つておる、そういう点について何か今日お考えであるのか、こういう問題に対して、どういうふうに基本的にお考えになつておるか、お答えを願いたい。
  49. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは先ほども述べました通り公務員給與は必ずしも今日の現状をもつて満足すべきではないから、何とかいたしたいという考え方は、絶えず持つておるのであります。しかしながら、さしあたりはこのベースを動かす考えはない。動かしません。
  50. 川崎秀二

    ○川崎委員 その際の基本的なお考え方はまた聞きたいのでありますが、給與ベースは動かさない、しかし何らかの措置をしたいというお話でありました。現在の状態では満足をしておらない、何とか改善をいたしたいということについての首相の御弁明でありますが、その際におきまして賞與的なものを出すか、あるいは現在の給與ベースに人事院の勧告そのものをのまなくても、何とか基本給を上げて行くという考え方であるのか、その基本的なお考え方をお伺いしたいと思います。
  51. 吉田茂

    吉田国務大臣 ただいまのところ、何とかいたしたいという考えで、目下しきわに研究調査中であります。
  52. 川崎秀二

    ○川崎委員 別の問題に移ります。先般来衆議院の考査特別委員会は、御承知の通り、五井産業にからまるところの事件を取上げて、これを徹底的に追究するところの方針を野党側は立てて、委員会に持ち込んでおります。しかるにかかわらず、これは與党の多数をもつて取上げるべきものでないということの委員会としての議決があつたようであります。考査特別委員会と申しますものは、言うまでもなく、日本再建を妨害するところの一切の破壊行為についてこれを俎上に載せて審議をする、事態を明らかにするということが、設置の目的であつたと思うのであります。その前につくられたところの不当財産取引委員会も、これの小規模のものであつたと思うのでありまして、これは超党派的な運営をしなければならぬと思う。一つの政党が自分の党に都合の惡いことであるからといつて、臭いものにふたをする、そのために今日考査委員会は、国会自体の問題ではありますけれども、廃止しようという議論さえ出て来ておつて、これでは従来考えられておつた委員会そのものの性格がゆがめられ、そうしてここに廃止の運命に立ち至るのではなかろうかということさえ憂慮されている。国会の使命が一つ失われるのでありますが、これらについて総理大臣はいかなる感想を持つておられますか。
  53. 吉田茂

    吉田国務大臣 この問題はわれわれはまだ研究いたしておりませんから、いずれもう少し事態が発展したらば意見を述べます。
  54. 植原悦二郎

    植原委員長 勝間田清一君から議事進行についての発言の申出があります。当然これはお許しいたしますが、ごらん通り総理は病気を押して出ておいでになることは皆さん方ごらん通りでありますから、国政の上でいかなることをも忍んで御議論なさることは当然でありますけれども、そこに人と人との情味も御考慮くださいまして、どうかなるべく総理の時間を短かくするようにお取扱いを願いたいと思います。これは委員長として特に諸君に対するのお願いであります。勝間田清一君。
  55. 勝間田清一

    ○勝間田委員 病気を押されて総理予算の通過のために、御努力なさつておることについては、非常に敬意を表する者でありますが、ただそれと同時に考えていただかねばならぬ事柄は、現在給與ベースのあるいは改訂といい、あるいは裁定の実施といつて、五百二十万の労働者が生活を守るために、一生懸命な働きをしておるのであります。一国の総理はおそらくこれらの数百万の大衆の生命をも、同時に責任を感ぜられておることと私は想像いたすのであります。時あたかも、これらの労働者の一番の基本的人権であるところの罷業権について、関係方面と政府との間に意見の食い違いを現在来しつつあるやに、われわれはこれを見受けるのであります。その問題について、今西村君及び民主党の川崎君がこれを質問いたしたに対して、しかも現に争議は重大な段階に達しておるのでありまして、その質問に対して調査をして答えるということでありますが、そういうことでありますと、この予算に対しては非常な重大な関係を持つものでありまして、従つてこれに対する調査を至急政府がいたされて、そうして総理大臣の口からその調査の結果を、ここで御答弁をいただくことが、私は予算審議上一番重要なことだと考えるのであります。従つて、この問題をどうか早急にお願いすることを、ここに動議として提出いたしたい。もしそれができないということでありますと、たいへんな問題になり、これからなかなか審議を続けることも困難になろうかと存じますので、ここで調査ができて答弁をされる準備ができるまで、しばらく休憩をせられんことを望みます。     〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
  56. 小坂善太郎

    ○小坂委員 議事進行について……。
  57. 植原悦二郎

    植原委員長 議事進行に関する委員長に対する注文ですか、動議ですか。
  58. 小坂善太郎

    ○小坂委員 動議です。
  59. 植原悦二郎

    植原委員長 小坂君。
  60. 小坂善太郎

    ○小坂委員 ただいま勝間田君から議事進行に関連いたしまして、一時本委員会を休憩すべしという動議が提出せられましたので、私は別の角度から動議を提出いたします。
  61. 植原悦二郎

    植原委員長 今勝間田君の動議が議場の問題になつておりますから……。あなたは反対の意見を陳述するということですか。
  62. 小坂善太郎

    ○小坂委員 別個の意見です。休憩すべしという動議が出ましたから、私は休憩すべからずという……。
  63. 植原悦二郎

    植原委員長 それならばちよつとお待ちください。勝間田君から一つの動議が………。
  64. 小坂善太郎

    ○小坂委員 動議はすべからずという方が先決さるべきものだと思います。
  65. 植原悦二郎

    植原委員長 勝間田君の動議は支持者があります。その動議を採決いたさなければなりません。  ただいま勝間田君の動議がありました。勝間田君の動議を採決いたします。この場合議事の進行を一時中止すべしという御意見に対して賛成の方の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  66. 植原悦二郎

    植原委員長 起立少数。よつて勝間田君の動議は否決されました。  次に林百郎君。
  67. 林百郎

    ○林(百)委員 われわれはこれ以上こういう状態で審議を続けるわけに行かないと思います。従つてわれわれは退場いたします。     〔退場する者あり〕
  68. 小坂善太郎

    ○小坂委員 私はさつき発言しておる最中だつたのですが、ただいまの動議は……。
  69. 植原悦二郎

    植原委員長 小坂君は何ですか。今質問中でありますが、あなたは何か動議を出すという……。
  70. 小坂善太郎

    ○小坂委員 私は議事進行に関しまして動議を提出いたしまして、その後委員長が私の発言中先に出ておる動議を採択すべしということで、動議が採択されたわけですが、私の発言した趣旨は残つておると思いまして、続行したいと思います。お許しがなければやめますが……。
  71. 植原悦二郎

    植原委員長 あなたの発言を許しまする
  72. 小坂善太郎

    ○小坂委員 ただいま勝間田君から動議が出まして、公務員の罷業権に関しての政府解釈が統一していないから、この解釈が統一するまで委員会の審議はできぬというお話でありましたが、私は現在の質問をここで聞いておりまして、まことに横車を押すものであつて、ただいまの質問の趣旨というものは、増田官房長官のけさの新聞における談話がどういう趣旨であるか、あるいはそれがまた増田官房長官の言われる趣旨を全部伝えておるものかどうか、そういうことも全部また聞いてみなければわからぬことであるし、そういうことについて意見の交換をしていないから、こういう趣旨で総理大臣の御返事があつたと思うのであります。それについて、政府解釈が全然固まつていないから、これでは予算の審議もできないのだと、こういう動議を出されることは、まことに横車を押すものと解するほかはない。私ども考え方からいたしまして、この問題については勝間田君の動議を否決して、ここに予算の審議を進められんことを望みます。よつてその動議を提出いたします。
  73. 植原悦二郎

    植原委員長 小坂君の動議に対して御賛成の方は起立を願います。     〔賛成者起立〕
  74. 植原悦二郎

    植原委員長 起立多数。よつて小坂君の動議は可決せられました。  世耕弘一君。
  75. 世耕弘一

    世耕委員 私は簡單に三点ほど総理にお尋ねいたしたいと思うのであります。幸いにここに山口国務大臣もおいでになつておりますから、先般来私が本委員会で取上げました金塊の問題について結末をつけたいと思います。  最初本委員会でお尋ねいたしましたときに、大蔵大臣はそういう話は聞いておらぬから知らぬという御返事であつたのであります。それでは理財局長にお尋ねしたいからというので、政府委員を呼び出して聞きましたところ、東京湾で引揚げた物資は二億三千万円、かように説明されたのであります。そこで私は二億三千万円あつたという話だが、われわれの調査によると、数百億に上る金額と考えておる。大体その品質は何かと聞いたところ、それは銀だ、こういうような御答弁をされたのであります。私の手元に参つておる書類によると、それは白金であり、金である。非常な食い違いがあつた。だからもし銀であるとするならば、その銀であるということの証明をあなたが立会つて見たのかというと、それは知らぬ、こういう話であつた。それでははなはだ心もとないではないかと言うて別れて、さらに精査をお願いいたしましたところ、一昨日でありましたか 大蔵大臣からの答弁によりますと、金塊が五億円、銀塊が二十億円、しかもオランダの掠奪物資であるというので、すでに引渡し済みだ、こういう御説明があつたのであります。ところが賠償庁の報告書を三月末現在で調べてみますと、掠奪物資として返還したものが金塊で約千キログラム、銀塊で二十四万七千キログラム。こうなつております。そうするとこの間にまた一つの食い違いが出て来ることになるわけであります。私はなぜかようなことをしつこくお尋ねするかという理由を一言述べておきたいが、われわれが今日の日本人として掠奪物資があるとするならば、いち早くこれを見つけてその本国にお返しするということが、国際道義を高揚する上において必要である。かように考えてわれわれはこれまでそういう関係の人々を指導して来たのであります。しかしながらはたしてそれが掠奪物資であるか、あるいはその金額がどの程度であるかということをはつきりつかんでおくことも、われわれ国会議員としての義務ではないか、かように考えますので、これはこの機会にあえて国務大臣から御答弁を願おうとも、総理から御返事願おうとも思いません。ただ注意を御喚起申し上げて、今後かくのごとき非難の起らないように、善処していただきたいという一点を申し述べておきたいのであります。  次に第二点に申し上げたいのは、過般来法務府において細胞活動をしたという関係から、十三名が懲戒処分に付せられたということが新聞報道で出て、名前までも発表されております。われわれが細胞活動について多年経験した常識から見ましても、法務府、検察庁にかくのごとき事例がある以上、おそらく各省にわたつても、あるいはさらに国警、地警に至つても、この細胞関係相当伸びておるのではないかという感を深くするものであります。この意味において、私はこの際非日活動委員会というのは言葉の上ではどうかと思いますが、いわゆる国会と政府との間に、かくのごとき細胞組織がはたして組織的に行われておるかどうか、国家の基礎を危うくするような活動かあるかないかということを、この機会に徹底的に調査しておくことが、国策運営の上に必要ではないかと、かように考えるのであります。この点に関して総理の御意見を承りたい。  もう一点、最後にお尋ねしたいことは、いわゆる講和條件の問題であります。平和條件と降伏條件は、はつきり区別してわれわれは考えなくてはならぬことだと思う。すなわちサレンダー・タームスとピース・タームス、この二つははつきり区別して考えなくてはならない。すでに降伏條件は、われわれは過去に属して、今日は平和條件に向つてその完成を期しつつあるとかように考えておる。この意味から見まして、すでに新しく憲法を樹立して、民主国家としての体面もりつぱに維持することができ、大政党としての存立もここに明らかになり、吉田内閣の存在もまた確然となつておる今日から見まして、われわれはすでに全面講和し得る態勢が整つておるということを、世界に発表して少しもさしつかえないのではないか。卑近な例を申しますれば、いまだ内職治まらざる中華民国においてすら、十数国の国家がすでに独立国として承認しておるではないか。今日大西洋憲章並びにポツダム宣言の意義から見ましても、当然日本が世界の外交に乗り出し得る態勢が整つておるということを、私は天下に発表してさしつかえなく、また同時に講和問題を世界に要求して、少しも恥じないのではないかという観念を深く持つておるのであります。この点にかんがみまして、総理はどういうお考えを持つておられるか。もしこのままにしてなお日本の講和が遅れることがありとするならば、われわれの理論をして推し進めたならば、むしろ講和の遅延は連合国側にありという結論を示さざるを得ないのではないか、私はかように考えておるのでありますが、この点について、総理はどういうお考えをお持ちになつておられるか、この点をお尋ねしておきたいと思うのであります。
  76. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたします。第一の掠奪物資につきましては、これはあえてお尋ねではないようでありますが、事実を申せば、掠奪物資であるということが、日本側の調査によつて明らかな場合、あるいは連合国側の調査によつて明らかなる場合は、むろん返しております。さらに御指定になつた問題以外の物資についても終戰以後、しばしば当該関係国に返還いたしております。少しもこれに対しては妨害はもちろんのこと、出し惜しみとか、隠匿するというような気持は全然なくして、絶えずその都度返還をいたしております。  それから非日活動委員会云々のお話は、これは御意見として承つておきます。今日これを設くるかよいか悪いかということについては、なお研究いたします。  それから今の講和の問題でありますが、御承知の通り、連合国は十三箇国の多きにわたつてつて、この連合国の間には日本に対して敵国という考えはないまでも、恨みをなお感じておる国も相当あり、また日本経済的商業的活動を恐れておる国もあるのでありましよう。また日本復興に対して、ある国は戰災を受けたにもかかわらず、なおその復興がおそいのに、負けた日本復興が早いというねたみと申すか、感情を持つておる国もあるようであります。すなわち連合国のうちでも日本に対する感情は、なお区々まちまちであるように見えます。アメリカであるとかイギリスであるとかいう国は、なるべく早く対日講和をいたしたいという感情もありましようし、また通商、経済、政治その他の平和というようないろいろな角度から考えて、対日講和を早くした方がいいと熱心に考えておつてくれるのでありますが、連合国の中の感情は区々まちまちである。さらに日本に対するのみならず、御承知の通りオーストリアその他に対しても、講和條約ができかかつては破れ、できかかつては破れておるという状態でありまして、この講和條約に至るのには、相当国際の情勢なり関係なりが微妙なものがありますから、わが国が非常にこれを熱望する熱意も促進する一つの原因でありますが、また国際関係も他の一つの原因である、ゆえに講和條約は客観情勢に支配せられておるのである。日本だけの独力をもつていかんともしがたいということを申すゆえんであります。以上お答えいたします。
  77. 世耕弘一

    世耕委員 これはおそらく国民の大多数の感情だと思います。連合国側の占領目的はすでに完了したと、私はかように考えておる。それはなぜかと申しますれば、司令部側の好意ある指導によつて新憲法ができ、しかも経済面においても種々なる指導を受けて、今日りつぱに自立し得る態勢がここに整つて来た、また政治面におきまして、二、三いかがわしき活動があることは遺憾でありますけれども国民全体の面から見ましたならば、りつぱな民主国として堂々と世界各国の外交面に立ち働き得る態勢が十分整つたものと私は考える。また大多数もさように考えておる次第であります。しかしながら今総理大臣がおつしやつたように、むしろ日本側にあらずして、外国側にいろいろの事情があるとするならば、まことに遺憾ながらいたしかたないと思いますが、どうぞ一段とこの上に御努力くださいまして、もし全面的講和が不可能であるならば、せめて日本人が自由に世界各国と友好をあたため得られるような地位を、一歩々々確保できるように、この上とも御努力あらんことを切望して、私の質問を終ることにいたします。
  78. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 予算各案に対する質疑はこの程度をもつて終局し、明九日午前十時より委員会を開き、討論採決を行われんことを望みます。  右動議を提出いたします。
  79. 植原悦二郎

    植原委員長 ただいま尾崎君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  80. 植原悦二郎

    植原委員長 起立多数。よつて動議のごとく決しました。明日は午前十時より会議を開き、理事の御決定のごとく予算全体に対するところの討論に入りたいと思います。  本日はこれにて散会いたします。     午後二時四十一分散会