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西村(榮)
委員 悪い方面の統計を
とつたというのでありますが、この統計はあなたが主管されておる通産省の統計であります。雇用量は労働省の統計であります。そこで私は
大蔵大臣の安定せりという主張は、
日本の
産業が安定せりということは、
日本の通貨が安定したということに言い改められる方が適当ではないか。なるほど通貨は一応の安定を見ておるようであります。しかし私はしばしば
大蔵大臣の
答弁の中に、
日本経済は安定せりということを聞いて、実に噴飯にたえない、吹き出したくなるほど笑いたいのは、
現実を無視しておるということであります。この通貨の安定策というものの思想はどこから来るかと申しますならば、それは率直に言えば、常識的に申し上げれば、金属主義の思想的な誤りであります。この金属主義の貨幣観念というものは、これは主として産金国を中心とする貨幣観念であります。金を多く産出する国家においては、この金属貨幣思想というものが中心にな
つている。しかしながら
わが国の産金量から申しますならば、金の産出量は微量であります。国際収支のバランスを合せるには、金はそれほど産出いたしておりません。
従つて産金国にあらざる
わが国の通貨観念というものは、産金国の通貨観念とは少し違う。これは通貨は社会
経済の潤滑油として、円滑に国民
経済を媒介するときに効用があるのであ
つて、
わが国の微量なる産金量をも
つてしては、通貨観念というものは金属そのものではない。
わが国における通貨造出の基本的な條件は一体芦何か。それは常識的に言われるように、
日本は東洋における工業国だ、工場だと言われている。この東洋における工場たる
日本における通貨観念というものは、工場の施設がフルに運転して、そこに労働者が働いて、技術が優秀で、販売組織が優秀だ、この見地に立
つて初めて
日本の通貨観念というものは
確立するのでありまして、この
意味における欧米の産金国自体の通貨観念と、
日本の通貨観念とは著しく異にする
考え方を持たなければならない。同時に欧米から来る、産金国から来る金属主義の貨幣観念の安定というものの尺度をも
つて、東洋の工場と言われる
日本の
経済の安定というものを
考えられるならば、大きな誤りである。ここに実業家出身の大屋運輸大臣もおられるのであらますが、一体金が重きか、生産が重きかというならば、実業家の観念からは生産が重いのだ。しかもその生産こそは、物をつくる能力こそは、社会全般を潤すものである。金そのものは媒介役であ
つて、第二義的なものである。しからば
日本の安定の目標はどこにあるかといえば、通貨それ自身の安定よりも、
日本の生産界の安定に重点を置くべきである。これが私は常識ではないか、こう思うのであります。これは
大蔵大臣と私との見解が相違いたしておりますから、
議論のようでありますから、私はその点について御
答弁は求めませんが、ただお尋ねいたしたいと思う点は、以上の見地に基きまして、私は安定計画というものは、
日本の復興計西と結びつけなければならない。すなわち復興計画に
基礎を置くところの拡大生産
方向をとるにあらずんば、真の安定とは言えない。それがために私は今日
日本において最も育成しなければならない企業は、機械工業ではないか。なるほど繊維工業は輸出の大宗をなしておりますけれども、これが労働あるいは附加価値からかせぐところの利潤というものは、高い綿花の原料をも
つて国際的は競争をして、安く売らなければならないという状態においては、国民
経済を潤すには、あまり将来は期待できない。
従つて将来
日本の国民
経済を潮して行きます上においては、附加価値の非常に多い機械工業に重点を置かなければならないと思うのでありますが、この機械工業を育成するためにば、今日生産施設等に対する資金と技術の保導を必要としておるのであります。技術の補導に対しましては、私は通産大臣にお聞きしたいと思うのでありますが、幸いにあなたは兼任されておりますから、まず第一にお聞きしたいことは、
日本の機械工業に対して今待望しておる施設の補修、改善に対する資金を直接融資して、その育成に当るお
考えはないかどうか。次に技術的な問題については十分に努力されたいと思うのでありますが、これに対する御見解。それから次に時間がありませんから、私は一括して御
質問申し上げますが、中小企業に対しての救済策であります。これは
日本の中小企業は、私は贅言を避けますが、
経済問題と同時に社会問題でありまして、今日大
産業といえども、その下請工場に負うところの生産工程においては三〇%ないし六〇%で、いかなる事業においても中小企業と結びつかなければ、大
産業というものはほとんどや
つて行けない。
従つて中小工業の存否いかんということは、これは
日本の
経済にと
つて大きな問題であるのみならず、これは
日本の社会問題であります。
従つてこれの育成に対しましては、私は
政府において万全を購ぜられる
義務があると思う。特に
昭和二十四
年度においては八月八日の閣議において了解せられた事項は、
昭和二十四
年度中に百五十億円を中小工業に融資するという点が今日そのままにな
つておるのであります。現在中小工業においては、最も必要とするのは、A級の中小工業に対して七十億円、B級の工業に対しては三十億円の設備資金がいります。同時に運転資金が百億円いります。これはどうしても合計して二百億円というものが今日の中小工業を救済する
意味において、あるいはそれを育成して行く
意味において、これは絶対に必要だと思うのでありますが、これに対して設備資金百億円、運転資金百億円、これを今日
大蔵大臣が支出せられる何か具体策がおありかどうか、承
つておきたいと思います。