運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1950-03-06 第7回国会 衆議院 予算委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年三月六日(月曜日)     午前十時五十一分開議  出席委員    委員長 植原悦二郎君    理事 池田正之輔君 理事 尾崎 末吉君    理事 上林山榮吉君 理事 小峯 柳多君    理事 苫米地英俊君 理事 勝間田清一君    理事 川崎 秀二君 理事 今井  耕君       天野 公義君    井手 光治君       江花  靜君   岡村利右衞門君       奧村又十郎君    小淵 光平君       角田 幸吉君    北澤 直吉君       小平 久雄君    坂田 道太君       高橋  等君    橘  直治君       中村 幸八君    永井 英修君       西村 英一君    丹羽 彪吉君       松野 頼三君    南  好雄君       山村新治郎君    西村 榮一君       床次 徳二君    山本 利壽君       林  百郎君    深澤 義守君       米原  昶君    竹山祐太郎君       松本六太郎君    岡田 春夫君       世耕 弘一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣         通商産業大臣  池田 勇人君         農 林 大 臣 森 幸太郎君         運 輸 大 臣 大屋 晋三君  出席政府委員         地方自治庁次長 荻田  保君         大蔵政務次官  水田三喜男君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         大蔵事務官         (主計局次長) 石原 周夫君         大蔵事務官         (国税庁直税部         長兼主税局税制         課長)     原  純夫君         大蔵事務官         (主税局調査課         長)      忠  佐市君         通商産業政務次         官       宮幡  靖君         経済安定政務次         官       西村 久之君  委員外出席者         專  門  員 小林幾次郎君         專  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 三月六日  委員立花敏男辞任につき、その補欠として林  百郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員林百郎君辞任につき、その補欠として梨木  作次郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十五年度一般会計予算  昭和二十五年度特別会計予算  昭和二十五年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 植原悦二郎

    ○植原委員長 これより会議を開きます。  質疑に入ります。西村榮一
  3. 西村榮一

    西村(榮)委員 大蔵大臣にこまかいことからお伺いしたいと思います。  退職金会社積立てに対して課税されるかどうかという問題であります。これは戦前におきましては、恩惠的に退職金というものが会社から交付された場合はともかくといたしまして、現在は御承知の通り労働組合法が制定せられて、一つ法的根拠を持つて会社団体契約を結びましたときには、その団体契約によつて、退職したとき、あるいは首を切つたとき、並びに会社が解散したときには、その団体協約に基いて、一定退職金を支給しなければならぬという法律的な義務があるのでありますが、それに対して、会社がその経理から積立てたものに対してこれが課税されるかどうかというところをひとつ承りたいと思います。
  4. 池田勇人

    池田国務大臣 退職金といたしまして会社から支出せられたときには、それは損金計算するということに相なつております。従いまして、いつの損金にするかということが、西村君の御質問だと思います。法的基礎に基きまして一定限度積立てたり、または組合協定によりまして、ある額を積立てるというときに、それを現に会社支拂うときの損金にするか、あるいは積立てたときの損金にするかということが問題であろうと思うのであります。積立てました会社は、別にその金額を別途経理せずに貸借対照表上ほかの資産と同様に運用している場合が多いのであります。かかる場合におきましては、税務の取扱いとしましては、実際支拂われるときの損金にした方が便利がいいというので、今までそういうふうにやつて来ておるのであります。
  5. 西村榮一

    西村(榮)委員 私も大体そうであろうと思うのであります。そうすると、こういうふうに解釈してさしつかえありませんか。会社がそれを他の方面に利用せずに、確定債務として積立てておる場合には、それは課税しない、こういうふうに解釈してよろしいですか。
  6. 池田勇人

    池田国務大臣 別の費目で別途積立てておる場合でも、ただいまの取扱いでは、会社が支出していないというので、損金にいたしておりません。今後特別の課目を置きまして、別途利殖しておる場合につきましては准これは研究題目となり得ると思いますが、今まではそういうふうにしておる会社はほとんどございませんので、一般と同様に会社から出て来たときの損金ということにいたしております。
  7. 西村榮一

    西村(榮)委員 これは研究題目にされるというお話でありますが、私は至急この問題の取扱い上の解釈を明らかにしていただきたいと思つております。そうしないと、会社としては、従来十数年前は恩恵的に出したのでありますから、それに対してやはり課税されることはしかたがないですが、今日やはり法律に基いて積立てしなければいかぬ、しかもその積立てを怠る場合には、せつかく団体協約に基いて義務を買うておるにかかわらず、経済的な裏づけがないという場合においては、会社が倒産したり、破産した場合においては、退職金というものは契約に認められながら、それが実際上行われないという危険が生ずる。これは商法においても退職金その他の勤労收入は、先取り特権資産項目において認められておるのでありますから、これらを考えて至急その取扱い解釈を確定していただきたい。私はこれに対してはいろいろ議論もあるでしようが、今日この積立金を取扱うについて、やはり参考になるのは、一つ退職金というものが契約に基いて確認された上からは、それは会社一つ確定債務である、債務項目であるということと、その支出は経費の中に、織り込まれて、その都度経費として計上する。その計上された経費支拂い現実が発生する日まで会社積立てておくのでありますから、これは確定債務である。同時にこれは他の例から見ますと、保険料ちようど一緒になるので、養老年金並びに生命保険一定の料金をもらつて、その支拂いに充当するために、責任準備金というものを積み立てておる。この責任準備金はちようど債務に該当するのでありまして、これには課税しておりません。こういうふうな点を考えてみると、私は労働組合法に基く団体協約権というものが事実において実行されるよう、各企業会社に向つて積立金制度確立することを奨励するとともに、退職金のような確定債務に対しては課税しないという方針をとつて、今日の労働組合法を生かしてもらいたいと思つております。
  8. 池田勇人

    池田国務大臣 御意見の点われわれもわかるのでございます。会社がその積み立てたものに対しましては、ちようど保険会社責任準備金のように、使用その他につきまして制限を設けるというふうなことになりますれば、ひとつ研究してみたいと前々から考えておつた問題でございます。
  9. 西村榮一

    西村(榮)委員 次にお伺いいたしたいのは、金曜日に国会に提案されました資産評価税の問題でありますが、これはまだゲラ刷りしかわれわれの手元までまわつておらないのであります。それを見ると、課税率は六%となつております。そうして評価シヤウプ勧告によると、一八・六倍に評価するということになつておりますが、そういうふうになつておりますか。
  10. 池田勇人

    池田国務大臣 お話通りに、税率は六%に相なつております。初年度三%、次年度一・五%ずつと相なつております。評価の倍数は今数字を記憶いたしておりませんが、一つ物価指数によりまして伸ばす。しかもそれが最高限度でございます。それ以上は行かない。会社経理状況その他万般のことがら、それ以下に評価くださるのはさしつかえない、こういうことになつております。
  11. 西村榮一

    西村(榮)委員 評価は一八・六倍になつておるのですが、そういうふうに解釈して御質問申し上げます。それから一応疑問のあるところを明らかにしておきたいと思いますが、資産評価税に対しては、大蔵省予算説明書の中には「事業用資産についての再評は、これを任意とする」こういうことになつておるのですが、これはその通り解釈してよろしゆうございますか。
  12. 池田勇人

    池田国務大臣 なかなか問題のあるところでございまして、初め強制的にするというふうなことも伝わつてつたのであります。シヤウプ博士が帰られるときに、新聞記者との会談ではこれをユニバーサル——普遍的にするのだというふうなことを言つておられましたが、いずれにいたしましても、卸売物価指数によつて伸ばして、その限度までやるということになると、たいへんな結果になりますので、先ほどお話申し上げましたように、最高限度をきめまして、それ以上には行かない、それ以下ならば適当におやりになる。それなら一つやらなくてもいいかという問題があるようでありますが、それは行政上の指導をいたしまして、各同業会社の中で不均衡になる場合がございますから、委員会制度を設けまして、その最高限以内でありましても、適当な方法で指導して行きたいと考えます。
  13. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると池田さん、任意という解釈はどう解釈したらいいのですか。あなたが今おつしやるように、最高限をきめて、その範囲内における任意、こういう意味か、それとも再評価するもしないも会社の自主的な意思にまかせるということに解釈していいのですか。
  14. 池田勇人

    池田国務大臣 最高限以下ならば任意におやりになつてもよろしゆうございます。しこうしてその任意がほかの部分と非常に不均衡になるような部分におきましては、委員会を設けまして指導する。一つもやらない場合も業態によりましてはいい場合もあると思います。しかしそこは経営者考えで適当におやりを願いたい。それが非常に不適当であつた場合におきましては、調整する方法をとるわけでございます。
  15. 西村榮一

    西村(榮)委員 どうもそういうあいまいな法律をつくることはどうかと思います。たとえばここにこういうふうにあるのです。これはまだゲラ刷りであるいは訂正されるのかもしれませんが、法律案の第二十一ページには「八月三十一日までに開始する事業年度開始の日のいずれか一の日現在において行わなければならない。」こう書いてあるのです。それから同時に同じく四十八ページの中に、納税者義務として、「この法律により再評価税を納める義務がある。」こう書いてあるのです。法律案には義務づけになつておる。片方の大蔵省予算説明書の中には任意である、こう解釈しておるのですが、この解釈一定しておかないと、将来大きな混乱が来ると思うのですが、こいねがわくばこの解釈一定していただきたいと思うのです。
  16. 池田勇人

    池田国務大臣 最高限以下ならば任意でございます。しかし再評価はしなければなりません。その再評価度合い原則として任意でございます。しかしその度合いが不適当と認むる場合におきましては、委員会において可否を決定することに相成なつております。その度合い任意であるから、一つもしなくてもいいという場合もあり得ると思うのであります。しかし評価が之をしなでても、再評価したという形式はとつていただきます。
  17. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると、予算説明書の中に「事業用資産についての再評価は、これを任意とする」こう書いてあります。これは将来訂正されますね。
  18. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申し上げましたように、原則といたしまして任意としておるわけであります。再評価しなかつた場合におきましても、地方税関係で報告をすることにはなります。
  19. 西村榮一

    西村(榮)委員 時間がありませんから、そういうふうなことについての結論は堂々めぐりしてもしようがないのですから申しませんが、結局文字の上では任意にするということに書いてあるのですが、実際上は最高限をきめて、その範囲内において再評価をしなければならぬということであるならば、これは強制力を持つものだ、こう解釈していいのですね。そうすると法律に書かれておるところと内容が違つて来るわけです。そう解釈していいわけですね。
  20. 池田勇人

    池田国務大臣 最高限以下の範囲におきまして、任意にお取扱い願つていいのであります。ただ先ほど申し上げましたように、不適当である場合におきましては、それを調整する制度を置いておるのであります。
  21. 西村榮一

    西村(榮)委員 再評価税における本年度收入が、百五十九億円というものを計算されておるのでありますが、先ほど大蔵大臣答弁せられたように、この税率が六%ということになつておるのですが、そうすると、この六%という税率大蔵大臣は適当だとお考えになつておりますが、はなはだ愚問のようですが、一応承りたい。
  22. 池田勇人

    池田国務大臣 この税率につきましては、一昨年来非常に議論の的になつてつたのでありますが、いろいろな状況から勘案いたしまして、六%が適当であると私は考えております。ただその徴收の仕方につきましては、今のように初年度三%、次年度一・五%にいたしておるのであります。しこうして納税その他につきまして支障がある場合におきましては、延ばし得る規定を置いておつたかと思います。
  23. 西村榮一

    西村(榮)委員 六%ということになりますと、シヤウプ勧告書によると、大体七百八十億円というものが、現在の法人資産帳簿価格であります。これに対して法人税は、三箇年間において六百億円というものが課税され、ほとんど現在は資産価格に相匹敵する税金がここにかかるのでありますが、これは現在のわが国産業界において、この税金がはたして耐えられるとお考えであるかどうか。
  24. 池田勇人

    池田国務大臣 シヤウプ博士は、資産評価によります評価増しが、一兆億円程度であると言つておられたと思うのであります。全西村君の御指摘になりました分は、現在の記帳価格ではないかと思います。これが相当評価増し、再評価されまして、一兆億円ということを言つておられましたが、私はそこまで行かないだろう、七、八千億円程度に見ましてそうして初年度は、三%、その三%がやはり徴税納税の時間的ずれがございますので、百五十八億円と見込んだのであります。しこうして、これが評価増しいたしますと、それによつて償却が出て参ります。償却が損になります。そこで大体耐用年数二十五年以下の資産で構成されておるものは、その程度納税いたしましても、非常に税金が今までよりもふえて来るというふうな場合は、ごく少いと考えております。
  25. 西村榮一

    西村(榮)委員 シヤウプ勧告によりますと、現在の帳簿価格に対して一八・六倍に評価がえさせることを仮定しております。しこうして現在の帳簿価格は七百八十億円で最高評価価格は一兆四千二百七十九億円という最高額をきめておる、こういうふうに書いてありますが、今一見して、これは一兆四千二百七十九億円の資産に対して六%の課税であるから、ごく僅少のように一応錯覚を起すのでありますが、嚴然たる事実は、現在における法人資産帳簿価格は七百八十億円であります。この七百八十億円に対して課税額は大体六百億円ということになつて、現在の帳簿価格に相匹敵する税金がここに新しくかけられるのでありますが、これは現在の固定資産評価においてさえも、コストが高くて、そして産業界が四苦八苦しておるにもかかわらず、三箇年間において、これだけの税金がかけられて、はたして日本産業界がこれでやつて行けると大蔵大臣はお考えになつておるかどうか。
  26. 池田勇人

    池田国務大臣 固定資産の七百八十億円という数字を出されておりますが、法人利益は相当の価格に上つておるのであります。従いましてこれを評価増しいたしましても、またその金額に対して一定限度まで償却になりまして、今までよりも償却し得べき金額が非常にふえて参ります。従つて今後は超過所得もなくなつて来ておるのでありますから、法人経理にはさしたる影響はないと考えております。従いまして今の評価増しをいかにするかということが問題になるのであります。そこで、私は会社利益状況その他物価状況等を見通しまして、適当に評価なすつてけつこうであると思います。シヤウプ博士は一兆何千億と言つておられますが、われわれのところでは、評価増し金額は七、八千億円と見込んでおるのであります。百五、六十億円の税金法人が納めても、大した影響はないと考えておる次第であります。
  27. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると、こういうことになりますか。先ほどのこれに対する答弁が実にはつきりしないで、あとで混乱を起す原因をこの法案の中に、あるいは大蔵大臣答弁の中に蔵しておるのですが、シヤウプ勧告の中には、一兆四千二百七十九億円と最高評価額はかりにきめられる、こう言つておるのです。そこで大蔵大臣は今、事実上評価がえは七、八千億円だろう、こう言われるのでありますが、そうすると、その評価がえによつて政府予定されておるところの六百億円——ここに法人税だけは六百億円となつており、本年度において税收予定が百五十九億円となつておるのでありますが、今のようなあいまいな答弁になると、税収というものの基礎がぐらついて来ることになるが、そういうふうに解釈してよろしゆうございますか。
  28. 池田勇人

    池田国務大臣 西村君の御質問は、シヤウプ勧告数字を基本にしておやりになるから、あいまいだとおつしやるのでございます。私はシヤウプ勧告数字によつておりません、大体再評価資産は七百何億と言つておられますが、私のところの計算では、法人分が、ただいま再評価し得る金額が八百六十三億円と見ておるのであります。しこうして町評価後の金額を八千二百十七億円と見ております。その差額が七千三百五十三億円でございまして、六%の税率をかけますと、全体で四百四十一億円徴収の見込みであるのでございます。この税の見積り、その他につきましては、シヤウプ勧告の趣旨によつていない場合が多いのでございまして、この点は前もつて、とにかく勧告案とは計算基礎によほど違いがあるということを御了承願いたいと思います。
  29. 西村榮一

    西村(榮)委員 それならば本年度出された百五十九億三千八百万円のこの再評価税というものの予定は、どこに基礎を置かれたのですか。
  30. 池田勇人

    池田国務大臣 ただいま申し上げたように、現在の法人資産が、八百六十三億円、それを個々業態別に見まして、たとえば化学工業はどのくらい評価増しをするであろう、私鉄はどのくらいやるだろうと業態別に一応推算いたしまして、八千数百億円を見込んだわけであります。そして評価増ししました差額、現在の資産との差額を七千三百五十三億円と見たのであります。それに六%の税率をかける。そして四百四十一億円を原則として三年間に徴収する、そしてそれが納税徴税支障がある場合におきましては、五年まで延ばし得る、こういうことにいたしておるのであります。
  31. 西村榮一

    西村(榮)委員 あいまいではありますが、その点を飛ばして次の質問に入りたいと思うのであります。  次の質問に入る前に、私は大蔵大臣にごくわかりきつたようなことでありますが、一応明らかにしておきたいと思いますことは、あなたが所属しておられる自由党は、自由主義経済方向によつて日本の再建をはかられようとしておるのであります。従つてそれには従来の統制経済の否定的な方向に進んでおられる、自分はそう解釈しております。これの是非の批判は別として、方向としては現内閣はそういうふうに進んでおられる。こう解釈しておるのでございますが、それでよろしゆうございますか。
  32. 池田勇人

    池田国務大臣 お話通りに、できるだけ早い機会統制を少くして行こうといたしておるのであります。
  33. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうしますと、この資産評価の持つ意義自由主義経済の持つ意義とは、根本的に矛盾して来るように思うのですが、その矛盾は感ぜられなかつたかどうか。ということは、この改正法律案の中にも、あるいはシヤウプ勧告にも書いてあるごとく、インフレーシヨンによつて通貨価値下落に乗じて、価格現実に即した評価をなすことを目的とし、そこから来る価格体系確立が第二の目的であるというふうな意味シヤウプ勧告においては書いてあるのでありますが、しからばこれは再評価でこぼこを直して、それによつて得るところのねらいというものは、一応物価体系確立ということになる。この点においてはどういうふうに解釈されるのですか。
  34. 池田勇人

    池田国務大臣 物価の上昇の割合によりまして、再評価をいたしますと償却その他で物価体系に非常な影響を及ぼすのであります。そこで私といたしましては、最高限だけを置きまして、そうしてそれ以下ならば自由ということにいたしたのであります。そういたしますことは、今の物価水準——大体各会社物価水準を見合いまして評価し、さしたる影響を及ぼさないと見通上をつけておるのであります。
  35. 西村榮一

    西村(榮)委員 少くとも自由主義経済のねらうところは、各人の能力によつて競争力の培養、強力化ということが自由主義経済の最もねらいです。しからばその競争力を培養するためには、固定資産を非常に安くする。あるいは高い会社はこれをまけるというふうなことが従来の経済の法則なのです。従つて従来から考えて、最も堅実な企業家というものは、自分固定資産を一日も早く償却して、身軽にしておくというのが堅実な経理方法である。しかるに今日インフレーシヨンの波が去つて、むしろデフレーシヨンの危機が生じておる現在において、インフレーシヨンから来るところの通貨価値下落に対して一つでこぼこ調整するという資産評価、しかも自由主義経済を標標しておる現内閣において、むりに固定資産引上げ、それから生ずる万般課税であるとか、あるいは生産コスト引上げであるとかいうようなことになりますと、これは将来のわが国産業の力の上において、非常な悪影響を及ぼすのでありますが、この点は矛盾しないでしようか。
  36. 池田勇人

    池田国務大臣 今の法人の所有しております資産がいかにも低過ぎまして、課税上その他に対しまして非常な支障を来たしておるのであります。今の経済は安定に向つておるのでありますが、今の法人の持つております資産は、今の物価水準からいつて非常にちぐはぐがあるのであります。今の物価水準に大体合すという気持をもつて評価をしておるのであります。
  37. 西村榮一

    西村(榮)委員 それではお伺いしますが、この資産評価目的というものは、一体再評価それ自体に目的を持つのか、あるいはこれによつて税金をとるのが目的になるのか、その目的を明らかにしていただきたい。
  38. 池田勇人

    池田国務大臣 会社資産内容を合理化することにあるのであります。
  39. 西村榮一

    西村(榮)委員 資産内容を合理化することに目的があるとすれば、税金目的としていないのですね。
  40. 池田勇人

    池田国務大臣 資産内容適正合理化という意味に申しておるのであります。税金は今後の償却その他のこと、また今までに売却しておつたならば、売却益をとられる。売却していなかつたたというふうなことから考えまして、資産調整をはかる意味においてとるのであります。
  41. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると税金目的とはしないが、負担均衡をはかることを目的とするという意味は、一体どういう意味ですか。適正資産調整をはかるということが目的であつて、税をとることはそんなに目的ではないというふうに解釈できるのですが、その点はどうですか。
  42. 池田勇人

    池田国務大臣 会社資産内容適正合理化すると同時に、その会社負担力を見ましてこの機会に適当な税金を徴収することにするのであります。
  43. 西村榮一

    西村(榮)委員 資産内容を適正にするが、その会社内容によつて税をとるのであるということになると、問題は税をとることが目的ではなく、資産内容を適正にすることが目的であるとすれば、六%というふうな税金でなしに、資産内容を明らかにするということについて、政府も手数がかかり、財務当局も手数がかかるから、実費の程度において、いわゆる〇・〇〇一くらいのところの税金をとつても、その目的は達成されるのではないか。
  44. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほどお答えした通りでありまして、第一の目的会社資産内容適正合理化するということであります。しかして適正合理化の結果を見まして、会社負担力に沿うものがあるからこれに適当な秘をとろうとしておるのであります。
  45. 西村榮一

    西村(榮)委員 会社負担能力に応じて適当な税金をかけるということであれば、私が今申しましたように、あえて六%というものをかけなくても、もつと安くてもさしつかえないのではないか。しからばそれを一律にきめなくても、あるいは現在において非常な利益をこうむつておる事業、あるいは機械工業のように戦時中からの大きな資産をかかえて、しかもそれがほとんど遊んでおるというような事業も、一緒くたに税率をきめるよりも、むしろ業種別において税率をきめるか、あるいは事業によつてきめるか、あるいは収益によつてきめるか、しかもその根本はもつと名目的税金の安いところできめてもいいじやないかと思うのですが、どうですか。
  46. 池田勇人

    池田国務大臣 税金をこの際再評価に対しまして徴收する問題と、徴收する場合にどれだけの税金にするかという問題と二つあるようでございます。税金を徴収することはどういうところから出たかと申しますと、今まで評価増しをしておれば税金がかかつた、また償却をあまりしなければ相当の税金がかかつた、こういう過去の事例から考えまして、この際税金を徴収した方がいい、しかも昔は評価増しをして、それが資本になつて株主に分配すれば、法人税をとり、あるいはまた個人所得税にも影響いたしておつたのであります。今回はそういうことをいたしませんので、課税するのが適当であると考えております。しこうしでそれでは課税する場合に六%がいいか、あるいはお話通りに手数料的のものでいいかという問題があるのでありますが、これは議論の余地があると思いますが、大体会社状況全般から考えまして、六%程度が適当であると考えます。業種別にやつたらどうか。昔非常に資本を入れておる、それが遊んでおる、こういうふうなときには、私は評価増しを少くすればよい、これによりまして、各産業の統一公平が期し得られると思うのであります。
  47. 西村榮一

    西村(榮)委員 私のお尋ねしておる点は、シヤウプ勧告によると、七百八十億円の現在の帳簿価格法人資産に対して、六百億円の課税が見積られておるのであります。今大蔵大臣の説明によると、帳簿価格が八百六十三億円で、税の収入予定が四百四十一億円と言われておるのでありますが、しからば、現在の会社の張簿価格における資産の、大体においで半額が税金にとられるということになる。この税金に現在の産業界が耐えられるかどうかという点をお聞きしたい。
  48. 池田勇人

    池田国務大臣 八百六十三億円の資産帳簿価格により、ただいまでは御承知の通り五百億円以上の税金をとつておるのであります。これは過年度分その他もありましようが、法人税といたしましては、五百数十億円の徴收を見込んでおるのであります。しこうして再評価後におきまして、法会に対してどれだけの税金になるかというと、やはりこの程度であるのであります。これをいたしましたからといつて法人法人税並びに資産評価税によつて非常に困るということは考えておりません。
  49. 西村榮一

    西村(榮)委員 現在の産業界は今の税金で困つておるのです。これは大蔵大臣がこの問、五人や十人の産業家が死んでもかまわぬということをおつしやつたのですが、しかしその問題は別として、現在の税金で困つているのです。それに帳簿価格に匹敵する税金が新しくとられるということについては、産業界は非常な苦痛です。これは率直に申し上げて非常に苦痛です。そこで私は、以上の税金がわずか六%というから、これは簡單に見のがされるのでありますが、少くともシャウプ励告案によつて資産に匹敵する税金がとられる。同時に大蔵大臣のただいまの御説明によつても、八百六十三億円の帳簿価格によつて、四百四十一億円というものがとられるということであれば、それは今日の資産の半分を徴税される。これは普通の税金ではありません。これは第二財産税的なものであると言える。そこで私は税の権威者である大蔵大臣にお伺いしたいのでありますが、一体税金というものは、あなたがしばしば言われる通り、所得のあるところには必ず課税しなければいかぬ、これはあたりまえである。しかし今日遊んでおる事業に対して、稼働していない生産施設に対して課税されることが、はたして適当であるかどうか、またそこから納税の能力が生れて来るかどうかということをお伺いしたい。
  50. 池田勇人

    池田国務大臣 四百四十一億円の税金を三年あるいは五年内にとつて行くのであります。法人にそれだけの負担力があるか、ないかという問題でありますが、それは先ほど申し上げましたように、昭和二十四年度におきましては五百八、九十億円の税金が入るのであります。このことを考えますと、昭和二十五年度におきましては、法人税は三百五十億円程度であつたと思います。それに持つてつて資産評価税が百五十八億、全体としては法人税は今年度の見込みよりも減つて来るのであります。しこうしてお話通りに、八百六十三億円に対して四百四十一億円を五年間でとることは酷じやないか。その八百六十三億円というものが今の状態に合わないから、八千数百億円に評価増しをしようとしておるのであります。実際西村君は会社経営その他に御経験があると思いますが、先ほど申し上げましたように、評価増しをいたしまして償却金額が非常にふえて参りますから、利益金が減つて参ります。二十五年の耐用年数以下のものであつたならば、やはりこれによつて軽減し得ることに相なるのであります。しこうしてお話通りに、遊んでおる機械がある、こういうものに対しては評価増しをしないと思います。そこが私が言つたように任意の問題でして、そうして状況を勘案しなければならないのであります。例をもつて申しますと、シヤウプの倍数で参りますと、日本発送電なんというものは二千三百億円くらいの金額になる。今三十億円の会社で、二千三百億円の評価増しをして、今度はこれを償却しようといたしますと、何十億円の償却金額が出て来るのであります。そういう場合におきましては、評価増しをしないか、あるいは程度を非常に少くして、そうしていろいろな物価その他に影響のないようにやつて行くと考えております。われわれもそういうふうに指導しようとしておるのであります。
  51. 西村榮一

    西村(榮)委員 ただいま大蔵大臣は、四百四十一億円の税金はあまり苦にならない、八百六十三億円の現在の帳簿価格というものがきわめて不自然なんだ、こういう御説明があつたのですが、私は現実を見ますと、大蔵大臣答弁現実の娑婆の空気というものは違つて来ておる。シヤウプ勧告によりますと七百八十億円ですか、その帳簿価格によつてさえも今日の各企業会社は株主配当はできない。赤字が出ておる。税金攻勢でまさに破産しようとしておる。しかも賃金の遅配欠配。ここに不渡手形の激増となつた。一体こういうような中に、この八百六十三億円というものが、あなたが言われるように不自然なものであるかどうか。なるほど名目的には価格インフレーシヨンによつて生産施設は上つておるかもしれません。しかし企業というものは、短期間のその場において、この機械は幾らするから幾らの評価をするというんじやなしに、長い年月にわたつてこれは評価をしなければならぬ。その会社評価というものは固定資産において評価されるのではない。これは会社が設立されたときにはそれによつて評価いたしておきますが、会社資産評価というものは、一体その投下した固定資本に対してどれだけの利潤が上つて来るか。従つてその経理利潤というものを基礎に置いて逆算的に資産評価をされて行く。その利益率に従つて資産はどれだけ含むかというところにおいて、会社経理の健全か、不健全かがある。従つて私は今あなたがおつしやつたように、八百六十三億円は不当に安いのだ。従つて四百四十一億円というものはそんなに苦痛ではないのだということであるが、現実は株主配当はできていない。会社経理は赤字が出ている。同時に賃金の遅配欠配が出ている。不渡手形が激増している。現実のちまたの現象というものは実に深刻なる地獄の様相を呈している。やはりこの八百六十三億円の帳簿価格においてさえもこれなのであります。これがあなたが言われるように八千二百十七億円と十倍に水増しされて、その資産評価から来るところのあらゆる税金、あらゆる地方税、中央の税金の対象になり、しかもその評価に塞いであらゆる支出が出て行つて日本産業がこれでやつて行けるとあなたはお考えになつているかどうか、承つておきたい。
  52. 池田勇人

    池田国務大臣 西村君は極端な場合をもつて全体を推そうとしておられるのでありますが、單に資産評価が非常に低くくて償却する金額が少いために、非常に重税で困るという議論もあるのであります。これはあるいは配当もくれない会社ももちろんありましよう、賃金の不拂いの問題もありましようが、今の法人の所得の状況をごらんくださいますとおわかりになると思います。これは全体的の問題であります。しこうして收益その他が悪くて、評価増しして六%の税金が納められないというふうな会社は、先ほど来申し上げているように任意でございますから、評価増しをなさらなくてもけつこうであります。
  53. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は現在事業所得税が非常に上つているという現実からいつて、それだけの支拂い能力があるんだというふうな御答弁のように、聞くのでありますが、この上つた事業所得税を支拂うためには、実際の今日の事業界は四苦八苦です。従つてこれを苦にして自殺をする人も出て来るのでありますから、私は今大蔵大臣が言われるようなことにおいて現在の事業界が景気がよくて、そうして、利潤が上るから事業所得税が増加しておるんだというふうには全然解釈できません。ここには非常なむりがある。むりが新しいあらゆるちまたにおける社会不安となつて現出しておるのでありますが、これは見解の相違、また大蔵大臣と私どもの社会を見る目の尺度が違うという点において、いつまでも議論にはてしがありませんから次に移りますが、当然この資産が再評価されますと、地方における附加税その他が非常に上つて来るのであります。特に資産と匹敵する税金を中央でとられる。地方におきましては、これまた来るところの税金はおそらく従来より、七、八倍以上に上るでありましよう。しからばそういうふうなむりな経理は当然どこに来るかと申しますと、コストが高くなり、産業がやつていけない、当然人員整理が行われる。賃金の引下げとなつて現われて来る。ここに社会不安が起きて来るということは、ここに本法の制定によつて当然看取されるのでありますが、これに対して大蔵大臣はいかなる御見解を有せられるか、おそらく私はこういうふうな社会感覚の違う大蔵大臣からは、十分な答弁を期待いたしておりませんが、一応御見解を承つておきたいと思います。
  54. 池田勇人

    池田国務大臣 国税に関する限りにおきましては、非常に適正な課税が行われると思うのであります。地方税におきましては再評価分につきまして固定資産税がとられることになつておるのでありますが、これがやり方につきましては、今具体的に検討を加えておる次第であります。
  55. 西村榮一

    西村(榮)委員 社会不安に対してお尋ねしておるのですが、労働賃金……
  56. 池田勇人

    池田国務大臣 私は再評価任意といたしまして、事情に沿つたようなことが行われると考えております。従いまして社会不安が起るようなことは想像しておりません。ただ今の課税状況等が、そうしてまた会社資産評価が、非常に不適当でありますので、これを適正合理化することが、日本産業経済発達に非常に裨益するものと考えております。
  57. 西村榮一

    西村(榮)委員 私はこの資産評価から来る資産経理の苦しさは、当然労働賃金の圧迫ないしは企業整備による馘首、失業の増大によつて社会不安が起るのであるが、これに対して何らかの対策がおありかどうかということを承つたのでありますが、私が予期した御答弁を得られないということは、はなはだ遺憾でありますが、立場をかえて、私は産業全般についてお伺いしたいのであります。  先ほど来の質問答弁においてもなおかつこの法律案が明らかにならない。あいまい模糊としておる。同時にその根本義においてはなお明らかになつていないのでありますが。私ははなはだ愚問でありますが、もう一度大蔵大臣にお尋ねしいのであります。八百六十三億円の資産に対して、今日の資産額の半分の税金を、たとい三箇年にいたしましても徴税することにおいて、著しく金融あるいは経理日本産業界を圧迫する、この莫大な税金をかけても日本経済はなおかつ安定し、かつ復興するという自信をお持ちかどうか。
  58. 池田勇人

    池田国務大臣 日本経済の安定復興には、この資産評価がぜひとも必要であります。税金が非常にたくさんかかるというようなことをお考えになつておりますが、先ほど申し上げましたように、その資産金額が、耐用年数二十五年以下のものであつたならば、私は当初におきましては課税が軽減になると考えております。その根拠は、二十年あるいは二十五年のものにつきましては、償却が大体一割程度になるのであります。そうして評価増しをした七千三百億円に対しまして、その一割の七百三十億円というものが損金計算される。これに税率の三十五をかけますと、二百三十億円ばかりの税金が減つて来るのであります。再評価せざりせば二百三十億円軽減が行われぬことになる。再評価することによりまして償却すべき金額が非常にく多なつて来る。それだけ法人税の軽減になるのであります。だから法人税の見積りにおきましても、昨年来非常に増資が行われまして、法人の所得は増資の点を考えてもふえて行くのでありますが、こういう再評価方法を講じますために、初年度におきましては、今年度五百七、八十億円の収入の法人税を三百五十億円程度しか見込んでいないのであります。片一方で百五十八億円の再評価税を見ておるのであります。そうしますと、全体的には今年度收入よりも法人税税金が減つて来るわけであります。よく計算なさつてくだされば、とにかくごの評価増ししたものは、それだけ利益から償却金として落されるのであります。その点をひとつ考え願いたいと思います。
  59. 西村榮一

    西村(榮)委員 委員長からも注意がありまして、私の持つている時間がなくなつたようでありますから、結論をつけずにおくということは、はなはだ残念でありますが、資産評価において私ぱ最後に申し上げておきたいと思うことは、インフレーシヨンの変動期においては、各国においてもしばしば資産の再評価が行われております。しかしそれは税を目的としていない。特に企業場所、企業施設に対してはあまり税をかけていない。ただその企業施設から生じた利潤に対して課税はされております。しかし本法を貫くものは、何をどう答弁せられても、これは資産評価目的とするよりも、むしろ税をとるということが目的とされておる。資産評価というものによつて資産評価一定化するという目的であるならば、私は今日においてインフレからデフレに転換して、デフレーシヨンの政策が定まつておるときに、これは必要ない、こう考える。税を目的とする——しかも日本産業はこの税に耐えられない状態であるのであります。大蔵大臣がしばしば日本経済は安定している、しかもこの本法はその経済を安定せしめるために必要なのだというお話でありましたけれども、それはどこを根拠にしてそういうことをおつしやるか、私はふしぎにたえない。結局それは古き国債償還の財源、あるいは通貨の安定のための一つの税の対象として、再評価というものがここに生れて来たということ以外には、解釈ができないのでありまして、従つて大蔵大臣の安定策並びに現在日本経済は安定しておるというこの安定観というものが、一体どこから来るのであるか、私はふしぎにたえない。経済安定とは私が申し上げるまでもなく、御存じだと思いますけれども、物価と賃金と、生産量と、消費量と、しこうして雇用量の総合経済のバランスがとれたときに、初めてそれを経済安定せりという。上がるに現在においては雇用量は二一%減退し、中小企業においては五五%が規模の縮小、閉鎖するものが三六%、全然廃業せるものが九%、しかも雇用量は減退して、滞貨は山のごとくあるという。この政府の統計を見ても、これは国民の消費力が欠如しておるということによるのでありまして、この事実において雇用量は減退し、滞貨は激増し、中小企業は倒産する。この中においてどこに経済は安定せりとあなたはお考えであるか、私はこの点を承りたい。
  60. 池田勇人

    池田国務大臣 資産評価につきましては、私は西村君と全然意見を異にしておるのであります。インフレーシヨン時代にはこれはできません。大体安定の見通しがついたときこそできるのであります。しこうしてこれに対して課税することは不適当だとおつしやいますけれども、私は先ほど来申し上げましたように、負担力があるのでありますから、課税すべきであると考えております。例をフランスにとつてみましても、フランスでは資本繰入れのときに五%の税をとつておることは御承知の通りであります。この法案では資本繰入れを予定いたしておりまして、六%にいたしておるのであります。しかして安定の問題でありますが、五十何パーセントは縮小、三十何パーセントは廃業——これは廃業したり、縮小したりした人の統計でございます。全体の日本経済の動きといたしましては、先ほどあなたもお話がありましたように、生産はふえて行つております。物価は安定をしております。通貨もその状態であるのであります。ただ一時的問題として雇用量その他に思わしくない数字が出ておるのでありますが、これは経済転換期の一つの現象でありまして、今度の予算が施行されますと、これが徐々に是正されて行くということは、私は明らかに言い得ると思うのであります。
  61. 西村榮一

    西村(榮)委員 悪い方面の統計をとつたというのでありますが、この統計はあなたが主管されておる通産省の統計であります。雇用量は労働省の統計であります。そこで私は大蔵大臣の安定せりという主張は、日本産業が安定せりということは、日本の通貨が安定したということに言い改められる方が適当ではないか。なるほど通貨は一応の安定を見ておるようであります。しかし私はしばしば大蔵大臣答弁の中に、日本経済は安定せりということを聞いて、実に噴飯にたえない、吹き出したくなるほど笑いたいのは、現実を無視しておるということであります。この通貨の安定策というものの思想はどこから来るかと申しますならば、それは率直に言えば、常識的に申し上げれば、金属主義の思想的な誤りであります。この金属主義の貨幣観念というものは、これは主として産金国を中心とする貨幣観念であります。金を多く産出する国家においては、この金属貨幣思想というものが中心になつている。しかしながらわが国の産金量から申しますならば、金の産出量は微量であります。国際収支のバランスを合せるには、金はそれほど産出いたしておりません。従つて産金国にあらざるわが国の通貨観念というものは、産金国の通貨観念とは少し違う。これは通貨は社会経済の潤滑油として、円滑に国民経済を媒介するときに効用があるのであつてわが国の微量なる産金量をもつてしては、通貨観念というものは金属そのものではない。わが国における通貨造出の基本的な條件は一体芦何か。それは常識的に言われるように、日本は東洋における工業国だ、工場だと言われている。この東洋における工場たる日本における通貨観念というものは、工場の施設がフルに運転して、そこに労働者が働いて、技術が優秀で、販売組織が優秀だ、この見地に立つて初めて日本の通貨観念というものは確立するのでありまして、この意味における欧米の産金国自体の通貨観念と、日本の通貨観念とは著しく異にする考え方を持たなければならない。同時に欧米から来る、産金国から来る金属主義の貨幣観念の安定というものの尺度をもつて、東洋の工場と言われる日本経済の安定というものを考えられるならば、大きな誤りである。ここに実業家出身の大屋運輸大臣もおられるのであらますが、一体金が重きか、生産が重きかというならば、実業家の観念からは生産が重いのだ。しかもその生産こそは、物をつくる能力こそは、社会全般を潤すものである。金そのものは媒介役であつて、第二義的なものである。しからば日本の安定の目標はどこにあるかといえば、通貨それ自身の安定よりも、日本の生産界の安定に重点を置くべきである。これが私は常識ではないか、こう思うのであります。これは大蔵大臣と私との見解が相違いたしておりますから、議論のようでありますから、私はその点について御答弁は求めませんが、ただお尋ねいたしたいと思う点は、以上の見地に基きまして、私は安定計画というものは、日本の復興計西と結びつけなければならない。すなわち復興計画に基礎を置くところの拡大生産方向をとるにあらずんば、真の安定とは言えない。それがために私は今日日本において最も育成しなければならない企業は、機械工業ではないか。なるほど繊維工業は輸出の大宗をなしておりますけれども、これが労働あるいは附加価値からかせぐところの利潤というものは、高い綿花の原料をもつて国際的は競争をして、安く売らなければならないという状態においては、国民経済を潤すには、あまり将来は期待できない。従つて将来日本の国民経済を潮して行きます上においては、附加価値の非常に多い機械工業に重点を置かなければならないと思うのでありますが、この機械工業を育成するためにば、今日生産施設等に対する資金と技術の保導を必要としておるのであります。技術の補導に対しましては、私は通産大臣にお聞きしたいと思うのでありますが、幸いにあなたは兼任されておりますから、まず第一にお聞きしたいことは、日本の機械工業に対して今待望しておる施設の補修、改善に対する資金を直接融資して、その育成に当るお考えはないかどうか。次に技術的な問題については十分に努力されたいと思うのでありますが、これに対する御見解。それから次に時間がありませんから、私は一括して御質問申し上げますが、中小企業に対しての救済策であります。これは日本の中小企業は、私は贅言を避けますが、経済問題と同時に社会問題でありまして、今日大産業といえども、その下請工場に負うところの生産工程においては三〇%ないし六〇%で、いかなる事業においても中小企業と結びつかなければ、大産業というものはほとんどやつて行けない。従つて中小工業の存否いかんということは、これは日本経済にとつて大きな問題であるのみならず、これは日本の社会問題であります。従つてこれの育成に対しましては、私は政府において万全を購ぜられる義務があると思う。特に昭和二十四年度においては八月八日の閣議において了解せられた事項は、昭和二十四年度中に百五十億円を中小工業に融資するという点が今日そのままになつておるのであります。現在中小工業においては、最も必要とするのは、A級の中小工業に対して七十億円、B級の工業に対しては三十億円の設備資金がいります。同時に運転資金が百億円いります。これはどうしても合計して二百億円というものが今日の中小工業を救済する意味において、あるいはそれを育成して行く意味において、これは絶対に必要だと思うのでありますが、これに対して設備資金百億円、運転資金百億円、これを今日大蔵大臣が支出せられる何か具体策がおありかどうか、承つておきたいと思います。
  62. 池田勇人

    池田国務大臣 いつも出ます安定論でありますが、昭和二十二年から二十三年にかけてのあの不安定な状態から比べますと、二十四年は安定をとりもどし、これから復興に行きつつあるということは、生産の面から申しましても、物価の面から申しましても、また通貨その他の面から申しましても、全体的の指標はこれを示しておると私は考えるのであります。二十二年、二十三年の状態をお考えくだされば、今の日本経済が不安定かどうかということはおわかりになると思います。  次にわが国産業復興の場合、やはり機械工業に相当力を入れたらどうかというく話でございます。これはまことにごもつともな点でございまして、戦争中にわれわれの繊維工業の進出しておつたインド等におきましては、ほとんど自立できるような態勢になつておりますので、今後はやはり機械に力を入れてやらなければならなぬと思うのでありす。機械に力を入れて行きます場合におきましては、何としても鋼材の値をできるだけ安くするようにしなければいかぬ。と同時に、技術面につきまして改良を加えなければならない。こういう点から行きまして、私は見返り資金の出し方につきましても、今後はまず鉄鋼とが石炭の方に出して、そうして機械の方に力を入れて行く。また技術面につきましても、やはりアメリカその他の優秀なる技術者のわが国に来ることを勧奨するようにしなければならぬと思うのであります。  次に中小企業に対しまする金融の問題でございますが、お話通りに通産省並びに府県において調査いたしました設備資金の数字はございます。私は先般来あらゆる手を打ちまして、通産省で調べました中小企業に対しまする長期の設備資金の供給に努力いたしておるのであります。銀行の方の金は相当準備いたし、銀行から流れます場合におきまして私はお話の七十億、あるいはB級の三十億円を優先的に審議するように、今関係の銀行に督促をしておる状況であるのであります。
  63. 西村榮一

    西村(榮)委員 次にお伺いしたいのですが、今日の零細企業は非常に金融との関係がなしに弱つております。そこでこれは各地において自発的に信用保証協会というものができておるのですが、これがあまり十分な法的根拠を持つていないのでありまして、従つてこの信用保証協会に対して、ある程度までの法的バツクを與えるということともに、政府はこれに対しまして国家保証、いわゆる信用保証協会に対して何らかの方法において再保証の制度をとられて、もつて零細企業の金融難の打開に当られたらどうか、こう思うのでありまして、大蔵大臣は各地における信用保証協会に対して、十分なる法的なバツクを與え、同時にこれを国家において再保証するという制度確立される御意思がないかどうか、承りたい。
  64. 池田勇人

    池田国務大臣 お話通りに信用保証協会が最近中小企業に対する金融として特に出て来たのであります。従いまして、われわれとしましてはこれが育成発達に預金部資金を公共団体に貸し付けまして、金融の道をはかつておるのであります。全国で四、五十できまして、保証高も二十億円に相なつておると思うのであります。これを法的根拠を持たして、特に政府の方で育成したらどうかという御意見はまことにごもつともでございます、われわれも考えているのでありますが、事業者団体法等に抵触するところもごごいますし、また政府で特別の予算をつくりまずことは、今までの関係方面等の話によりますと、なかなか困難であろうと思います。しかして今政府が保証するということをせなくても、保証協会ができましたときに、短期の資金を預金部等から融通して行きますれば、相当目的を達し得るのではないかと思います。経験から申しましてもこういうふうな場合に回収不能になるという数字は、非常に少いのでございますから、私は別に法的根拠なしに、ただいまのところは実際的に預金部資金等を流してやつて行きたいと考えております。問題は保証協会で一応調べる、その後をまた銀行で調べるというのが、非常に手数のかかる今のがんであろうと思いますから、この点は保証協会の方と銀行の方と十分打合せて行きますれば、この制度は実質的に十分政府は育成して行きたいと考えております。
  65. 西村榮一

    西村(榮)委員 もう時間がありませんから結論に入りたいと思います。ただいまの大臣の答弁においても明らかでありますが、従来銀行で該験的にやりました中小企業に対する小口の貸付というものは、回収率が非常によい、ただ非常に営業費がかさむので銀行がいやがるのでありますから、政府はこれに保証を與えられて、何らかの方法をもつて比較的貸倒れのない、そうして助けてやれば生きて行くという事業に対し、保有の方法を最善の方法をとつていただきたい、かように思うのであります。ただ時間がありませんから私はここで締め括りのつかないままに質問を打切らざるを得ないのでありますが、先ほど大蔵大臣は、不安定な経済より安定に入つたしかしてこれが復興に入るのだと、こういう御答弁でありましたが、現内閣の施策の中に復興計画というものがどこにあるかということが一点も見当らない。復興に入つた、これから復興だというのでありますが、復興に対する計画というものは現内閣の施策の中にどこにも見当つておりません。従つて現在内閣の超均衡財政なるものは、率直に申しますと、低賃金と低米価と、産業界の犠牲において貨幣価値の安定をはかられただけであります。私は貨幣価値の安定については、先ほど申しましたからここに繰返すことを避けますが、しかし今日のように低賃金による社会不安、低米価による農村の窮乏、同時に産業界における倒産の現状を見て、この三者の犠牲において安定をはかられたところの貨幣価値の安定というものが、はたして永続性があるかどうか。この結果は今より半年このままほうつておきますならば、貨幣価値の安定によつて金融資本が利益を得たように一応見えます、金融資本の地位は確立したように見えますけれども、今日の状態からいいますと、安定せりと見た金融資本それ自体も、多くの貸倒れ、多くの不良貸しの続出、会社の倒産によつて、金融資本それ自体も、私は不安定な状態に入るのではないか。こういうことを考えてみますれば、まことにもつて現在の経済政策というものは、わが国にとつて私は理解のできない多くの問題が含まれていると思う。従つて、この非常識に考えられる従来の状態においても耐えられなかつた状態において資産評価において帳簿価格の約六割、七割のものが、ここに第二財産税的な目的をもつて課税せられるという、この無謀なる強行をあえて何がゆえになさなければならないか、私はこれをふしぎに思うのでありまして、このことは私はいかなる場合においても、日本経済が自立化して行くという方向に向つては、きわめて逆な方向をとつておると思う。かるがゆえに、私は先般の予算委員会において、はなはだ失礼であつたけれども、池田大蔵大臣はドツジ氏の秘書としては適任であるけれども、日本の民族が独立し、日本経済が自立化して行く、その上に立つて国際社会に平和国家として参加せんとする態勢の前に、まずみずから生活する、みずからの経済の自立をはかろうとする日本民族の一大念願とは、大蔵大臣の現在の施策がきわめて逆行しておるということを申し上げたのでありまして、このことは私は他に政治的な目的がなければ理解できません。日本経済をこれほどまでに痛めつけて、さてその後に一体何ができるか。日本経済の民主化をはかつて——私は共産党の諸君のようにソ連邦的立場においてこれを申し上げるのではありません。日本の行くべき道、少くとも日本経済は外国の独占資本の重圧から防衛しなければならぬ。ソ連の独裁政治のこの全体主議思想とは断固として闘わなければならぬ。この上に立つて日本の植民地化を防衛し、日本の国民の自立化を念願するといたしますならば、これだけ痛めつけて、日本産業がなおかつ安定し、復興すると考えられるならば、それは噴飯に値するものの人ならず、五人や十人の中小企業者が例れて死のうが、そのことはじたばたしなくてもいいというこの感覚は肉食人種の思想でありまして、東洋的な日本人の大蔵大臣の頭から来るとは、実に残念にたえない事実であります。私はこれから次から次に来るところの法案の内容を見まして、私が今日申し上げたことが、はたしてこの目的のためにこの財政政策が先駆としてあつたということが、次から次へと法案に現われる問題について出て来るということを、ここに残念ながら予言いたしまして、資産評価税に対する私の質問を打切ります。
  66. 池田勇人

    池田国務大臣 何が復興か、何が安定かというお話でございますが、先ほど来申し上げましたように、昭和二十二年から二十三年へかけて、あの状態をごらんくださつたらわかると思うのであります。しこうして復興という意味は、まず財政規模におきまして、昨年よりもよほど規模を縮小いたしまして、減税に充てますと同時に、復興予算を組んでいることをごらんになつたらわかると思うのであります。しこうして予算面におきましては、減税と同時に非常に公共事業その他をふやしまして、直接事業を興し、そしてまた外国貿易から申しましても、貿易は発展いたしますし、アメリカの援助が少くなつていても、国民の生活水準を下げずに、むしろ上げつつ行つておる状態は、私は復興であるとはつきり言い得ると思うのであります。
  67. 西村榮一

    西村(榮)委員 これで終ります。
  68. 植原悦二郎

    ○植原委員長 次に尾崎末吉君に運輸大臣に対する質疑を許します。なお大蔵大臣に関する質疑は午後に継続いたすことを御了承願いたい。
  69. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 運輸大臣の他の委員会に行かれる時間があとないと承つておりますので、予定いたしました質問の一部だけをここに申し上げて御所見を伺いたいと思います。それは鉄道の建設線についての質問であります。最近特に国土保全とか、国土開発とかいう問題が真剣に取上げられまして、これが重要な国策的の課題となりつつありますが、国有鉄道の来年度予算を見ますと、開発のために最も重要な役割を持つ鉄道の一本の建設線も、計画されておらないのをはなはだ遺憾に思うのであります。国有鉄道が当面だけの独立採算制のみを考慮して、最も重要な公益上の問題を取上げるところが少いかのごとく考えられることは、国民の一員としてまことに理解に苦しむところであります。この前の臨時国会におきまして承認せられました運賃値上げによつてほぼ経営上の見通しも立つた今日でありますから、政府もまた別個の観点から、国有鉄道を指導して行く必要があるのではないかと思うのであります。先般この予算委員会の第五分科会における審議の際、いささかこの問題に触れましたときにも私聞いたのでありますが、国有鉄道が戦時巾着手しておつた路線で中止いたした建設線は三十三線に及んでおる、その中には路盤が完成したものもあり、またそのほかに五〇%以上の完成を見たものを入れますと、相当の数になつているということであつたのであります。こういうものをほうつておきますことは、これこそ宝の持ちぐされてあり、国土開発の力、生産増強の力、文化向上の力の持ちぐされてあつて、このままに放置することはいかにももつたいない話であると思います。国民生活の現状及び国家の将来に顧みて、最近とみに高くなつ経済開発、福祉の増進、文化の向上等の叫びにこたえるためにも、鉄道り新線建設は強く取上げるべきであると思うのであります。なるほどこれらの路線の中には、当面の経営においては採算が十分あるものもあり、また乏しいものもありましようが、直接の面においては採算が乏しいといたしましても、生産開発や、交通利用等による国家及び国民に及ぼす総合的な効果におきましては、十分なものがあると思うのであります。特にわが国においては、狭くて長い土地の形態や起伏の状態等、その他いろいろの点から考えまして、道路輸送が鉄道輸送にかわつて地方開発に重大な役割を演ずることは、困難である点等から考えまして、今日国民の要望にこたえ、国の政策に沿つて、こうした視野から建設線に対し、新たな出発を考慮する必要があるのではないかと思うのであります。ついてはこれに関しまして、重要な点六点を質問いたしたいと思います。  その第一は、経済建設と文化の向上には、資源の開発と国土の有効な利用が絶対に必要であると思うのであります。しかるにわが国の現在の状況を見渡しますと、山間には奥地輸送が困難であるために、林産物や薪炭等の滯貨が腐つておるものもあり、貴重な鉱山資源は眠つてつたり、豊富であるべき水力電気資源等が、未開発のままに放置せられておる状態でありまして、また町の役場や警察に用がある者が往復に一日を費したり、同じ郡内の地方事務所に往復するのに、三日を要したりしておるところも少くないのであります。これら資源の開発と時間の利用には、交通事業なかんずく鉄道の建設が最も必要であることはもとよりであります。しかるに国有鉄道の建設線の現況は、戦時中工事中止となつたままで、経済混乱から来る事情と、国有鉄道の独立採算制維持の見地から、捨ておかれてあるのがありますが、なかんずく路盤が完成したままで放置されておるもの、及び五〇%以上の完成を見ておるもの等が相当にたくさんあると、さき申しましたように先般聞いたのでありますが、これらに対する政府の具体的な御説明を一応伺いたいのであります。
  70. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 ただいま尾崎君から、鉄道経営の根本方針についての御質問がございましたが、それはまたあとの質問にお答えいたすといたしまして、ただいまの御質問の根幹である、戰時中に一応計画をいたしましたが、戰争のためにその工事をストツプしたものの内容を申せということでございますので、その点をお答えいたします。  戰争中に中止いたしました建設線は三十三線でございまして、キロ数が約五百五十キロになつております。そのうち路盤の完成したものが約三百六十五キロ、それから全般的に工事が五〇%以上もうすでにでき上つておるものが、右申しました三十三線、約五百五十キロのうちで、四百九十キロ見当に相なつております。
  71. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 第二に伺いたいのは、鉄道の独立採算制の点から取上げられておるいわゆる営業の收入と支出の割合であります。それは輸送の実費を計上したほかに、資本利子と減価償却費を支出の中に含まれておるというのでありますが、その通りでありますか。
  72. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 その通りでございます。
  73. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 三番目に伺いたいのは、新線の建設が鉄道採算に及ぼす効果であります。この新線の建設が鉄道採算に及ぼす効果は、直接の効果があるのではなくて、特定径路、いわゆる迂回輸送等のことであります。特定径路の廃止等の利益もあるのでありますが、これは計算に入れていないから、投資に対する利益率をも計算して判断をすべきものであると思います。また鉄道が社会に及ぼす経済的効果を考えねばならぬと思うのでありますが、この点についての御所見を伺つておきます。
  74. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 その点でありますが、鉄道のいわゆる営業的面から鉄道を観察いたしますと、直接には鉄道を敷設いたしまして、これが採算的に引合うというのがまず第一に考えられるのであります。第二のカテゴリーといたしましては、鉄道自身の収入といたしまして、採算に合わない。すなわち赤字が出ますけれども、いわゆる資源開発、経済開発というような意味合いにおきまして、この鉄道を敷設することが、国民経済の上に非常に重大である。但し鉄道自体の採算には直接には貢献しないとう、こうゆう二つの観点から、鉄道の敷設が行われるのでございますが、ただいま御指摘の、ある地点からある地点に鉄道をつくりました場合に、従来迂回していろいろな鉄道自体、あるいはその他の運輸機関が鉄道を通じたために、必要がなくなるというような利益があるという点は、私のただいま申し上げました第二点の鉄道自体に対しましては、一応は採算的ではないけれども、国民経済あるいはある特定の産業に対しましては、この鉄道の敷設のために非常に利益があるという観点から、鉄道経営といたしましては、一のものはもちろん、二のものも、これはなるべく入れて建設することに相なろうと考えております。
  75. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 ただいまの御答弁と幾らか重複するところもありますが、もう少しはつきりいたしたいために、第四番目を次に申し上げます。  鉄道が国民経済に及ぼす影響でありますが、鉄道が国民経済に及ぼす影響は、これを大別すれば、大体利用者の運賃支拂いに対する利益、すなわち利益と申しますのは、現在の実情と、トラツクやバス、馬車、そり、索道等による交通及び輸送の実費が、鉄道の開通による低廉な運賃と輸送時間の短縮及び確実な輸送等による利益、さらにまた鉄道開通後、これによつて生産が増加したものに対しての利益がその一つであると思うのであります。  第二は鉄道ができたことによつて、今までの輸送状況では生産できなかつた物資が生産せられて、出るようになり、また水力電気や鉱山、耕地等の開発が可能となるなどの利益がその第二であると思うのでありますが、さらに限を大局に注ぎますならば、国内的なさき申した運賃支拂額が減少するというような利益や、開発増進の効果が大きいというだけではなくて、輸送のために必要なゴムとか、ガソリンなど、いわゆる輸入資材の消費を少くする海外收支の効果、すなわちドルの消費を減少するという偉大な利益がその三であると思うのであります。  かくのごとく、重要な影響があるのでありますが、私が今申し述べましたような、こういう点について政府はどういうお考えをお持ちになつておるか、伺いたいのであります。
  76. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 ただいまの御質問でありますが、昭和二十四年度の鉄道予算の編成の場合、また今回の二十五年度の鉄道の建設の場合におきましても、主たる観点は、いわゆる新規事業は一切見送りまして、主として既存の設備に対して、これが保守、修理をいたすという観点で、明年度予算を大局的に編成いたしておるのでありますが、ただいま尾崎君の御指摘になりました通り、鉄道を建設いたしました場合には、ずいぶん多くの利益が、御指摘のようにそこに生れて参るということがございますので、これはただいま申し上げました、單にひとり国鉄の鉄道自体の経済のみならず、鉄道自体においては不採算的でありましても、日本の再建、日本の国民経済の開発という意味合いからは、どうしてもやらなければならない問題が、鉄道の経営上にあるのでありますが、ただいまの二十四年度、二十五年度には、保守に観点を置きまして、その建設という点は一応中止をいたしておりますが、現在のところでは、私どもはただいま尾崎君の申し述べられました鉄道建設による利益というものは、あなたのおつしやつた通りであるということは、間違いないと確信しておる次第であります。
  77. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 次に建設線を開通せしむるために必要な措置に関して、伺つておきたいのであります。  前に伺いましたように、開発のために重要な路線があるのであります。採算がとれないという新線の特殊なものに対しては、独立採算制維持のために、特定運賃または特定営業キロの設置をすることが、可能であるかどうかという点が一つであります。それと路盤の完成しておるもの、または完成の中途にあるそれらの多くのものの中で、ちよつと例を二、三上げますと、赤穂線の相生・赤穂間の一一・一キロ、あるいは日田線の彦山・大行司間の一一・九キロ、あるいは窪川線の影野・窪川間八・三キロ等は、開通後においては、独立採算が成立つどころか、たいへんな黒字になり、かつ便益を與えることも大きなものがあるように調査をいたしておるのでありますが、逆に直接の採算が成立たない例を申し上げますと、小本線、いわゆる宇津野・浅内間一一・五キロの、ごときは、現在の日本の製鉄業を維持するために、絶対必要な岩手粘土の搬出上必要とするのでありますが、現在これの搬出のためには、索道とトラツクによつて宇津野駅まで小運送をいたしておるので、トン当りの実費は約八百円を要し、粘土原価の約三分の一強を要しておるようであります。これは新しく建設して国鉄で一般運賃として運べば、採算の上からはたいへんな赤字となるが、さき申しました特定運賃を設けて、かりにこれを六百円で運ぶとすれば、独立採算もけつこう成立つし、粘土の方におきましても、現在よりはトン当り二百円ほど少くなる。他面輸送量も増大し得ると思う。通産省化学局あたりでは、しきりにこうした線の実現を要望せられておるようでありますが、かような路線に対しての特定運賃設定は可能であるかどうか、この点を伺つてみたいのであります。
  78. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 第一番の御質問の、いわゆる特定料金を設ける意思はないかという御質問でございますが、これは私の伺いましたところでは、多分尾崎さんの意図はこういう点ではないかと思うのであります。もし間違つてつたらまた御訂正を願いたいのですが、ある地点からの鉄道の建設は不採算的であるが、しかし特別の運賃、いわゆる特定料金、つまり一トン千円くらいが普通の料率であるものを、千五百円くらいの高い運賃をとつても、その鉄道を敷いたために、その運ぶ貨物が負担能力があるというような場合には、鉄道自体が特定の料金を徴収するような考えはないか、こういう御質問だろうと思うのでありますが、もしさような御趣旨であるといたしますならば、鉄道を建設いたします従来の伝統的の方針といたしましては、かりに不採算的でありましても、その結果がある種の産業の開発になるという場合には、ことさらにその鉄道としては特定の料金を設けないで、普通の料金を設けてやつておる次第でありまして、この料金のきめ方は、従来貨物運賃は等級表がありまして、十一のクラスにわけまして、御承知の通り、従来は凡百の貨物を十一のクラシフイケーシヨンの中に割込んで運賃をきめておるような次第でありまして、ただいま尾崎さんの意図は、普通の割合よりも特別によけいとつてもよいから、不採算的の鉄道を敷く意思はないかというようなお考えでないかと思うのでありますが、従来はそういう場合に鉄道を敷設いたしましても、特定の料金はとらずに、あえて十一のクラシフイケーシヨンの中につつ込んだ運賃をとつておるというので、おそらく将来も、もし敷くと一旦決定いたしました場合には、普通の料率の観念内で運賃を設定するということが継続されて行くのであつて、尾崎さんの仰せられるような特定の運賃というようなことは、私としては考えられないのではないかと考えております。  次の二点の御質問ですが、第一の御質問は、御指摘になつた、戦時中放置されてそのままになつておる二線のごときは、黒字であるから、これをやる意思はないかという御質問でありますが、これはよく研究してみようと思います。さらに最後の岩手県の御指摘の鉄道は、粘土の搬出によつて非常に製鉄事業が旺盛になつて、国家経済の上に利益であるというお説でございます。これも鉄道自体の直接の観点から見ますれば、あるいは不採算的でありましても、その粘土自体が、従来トラツクやその他の交通機関によつて搬出されておりますために、いろいろな産業が採算が高くつく。それが鉄道の開通がありました場合には、安い運搬費で粘土が搬出されるかち、従つて大きな観点、国民経済上非常に利益であるという例に該当するこれが好適の例だと思いますので、かような線はこれから十分研究してみようと考えておる次第であります。
  79. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 これでしまいでありますが、御答弁をいただきました前段の方の趣意が、御答弁のような趣意も含まつておるのでありますが、もう一つ今の岩手粘土の問題でありますが、鉄道でやれば、これは二百円程度一般運賃なんですが、これをトラツクや索道でやると八百円かかるものを、鉄道で二百円でやつたのでは、建設をしてみても採算が成立たないが、かりにこれを六百円の特定運賃とする。そうすると現在の八百円でトラツクや索道を利用するよりもうんと安くて、鉄道の方は上るが、独立採算制も成立つ、こういう意味も含まつてつたのであります。ついででありますからその点を伺いたいのと、最後に伺いたいのは、かような重要な路線でありながら、建設のために必要な資本の調達が、目下の国有鉄道の特別会計では困難だ。こういうのであるならば、特例による国有鉄道債券の発行をなして、これを新しく建設する路線の関係地方の地方民及び県民等に応募せしめてはどうか、こういう手段をとつてみたらどうかというのと、一般会計によつて負担をすることはできないかというこの二点、それから先ほご申し上げましたつけたりの質問、これを伺いたいのであります。
  80. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 第一点の、トラツクあるいはそりというようなもので運べば六百円の運賃がかかるが、鉄道による場合には、これを安くしては鉄道が不採算的になるから、特別の運賃を設定しろ、こういうことでありますが、それは鉄道自体としてはその建設費をカバーするべく十分な運賃が、今私が申しました十一階級の今までの思想で貨物運賃を策定いたしました場合には、とれないのでありますが、それよりも特別にもう少し高い運賃をとつてやれ、しかもその結果、運賃はトラツクやその他の運搬方法でやるよりもはるかに安くて、しかも鉄道としては特定運賃である。こういうような場合でありますが、従来の運賃のきめ方は、そういう考え方はほとんど採用していなかつたのであります。もしもそういうような考え方で、ある特殊の産業のために、非常な国家経済の上に、産業の開発によつて利益がもたらされるというような場合が顕著でありますならば、御指摘のような思想を新たに採用するのは、はなはだ伸縮的——経済は弾力性がございまして、鉄道の運賃政策の上にも新しい弾力性のある新規な見方であるような印象を受けましたので、とくと十分に研究いたすつもりでおります。  最後の御質問でありますが、まず新線建設のためのいわゆる資金の調達方法であります。御承知のように、一般の国鉄予算の中には、すでに申し上げました昭和二十四年度、二十五年度におきましても、新線の新工事勘定に資金の計上がなかなかできないのでありますが、これをさらに一転いたしていわゆる債券の発行をして、地方の受益者にその債券の引受をさせたらどうかという問題であります。御承知のようにこの思想は、日本国有鉄道法の中に書いてありまして、運輸大臣の許可を得て、しこうしてこの予算を組んで議会の協賛を経れば、債券が発行できるということになつております。しこうしてこの債券は、日本政府がこれを引受けることができる、こう書いてあるのでありまして、ただいま尾崎君の御指摘のように、この債券の負担一般の国民に、主として受益的地域における国民にこれを持つてもらうのはどうかということは、債券を発行する場合政府もできるし、一般も応募できることになつておりますが、ただいまの尾崎さんの御提案は、具体的な問題となつたときに、研究してみたいと思います。  さらに一般会計からこの建設資金の出資はどうかという問題でございますが、これもただいま交付金という制度がございますのですが、この日本国有鉄道法の中にうたつている交付金というのは、日本国有鉄道が経営をいたしましてそこに損失か生じた場合には、政府はやむを得ざる場合は、これに交付金を支出することができるという、消極的の意味に限局した交付金が規定されておるのであります。しかしさらに一転いたしまして、今回本国会に、日本国有鉄道法の一部を改正する法律案といたしまして、違う意味政府が出資的に日本国有鉄道に出資金をする、その政府の交付金ができ得るように目下法律案を提案せんといたしておるのであります。この場合にはあらかじめ日本国有鉄道の予算においてある一定限度を計上いたしまして、それに見合う、あるいはその範囲内において、政府に交付金を交付願うという思想の交付金をとりはからいできるように、ただいま国会に日本国有鉄道法の一部を改正する法律案を提出せんといたしておりますから、場合によりましては、この種の交付金によつて新線の建設資金に充当することも、可能であると考える次第であります。
  81. 植原悦二郎

    ○植原委員長 尾崎君、もう時間も大分迫りましたから簡單に願います。
  82. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 以上御答弁を伺いまして、冒頭に述べましたような今日の段階において、積極的に建設の方に乗り出していただきたいということに対する御答弁でその熱意と御計画があることを了承できまして、一応満足をいたすものでありますが、なおひとつ十分に御研究の上、申し述べましたようなこの建設について、邁進されんことを希望いたしまして質問を終ります。
  83. 植原悦二郎

    ○植原委員長 これにて休憩いたします。午後は一時半より開会いたします。     午後零時四十三分休憩      ————◇—————     午後二時四十一分開議
  84. 植原悦二郎

    ○植原委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。今井耕君。
  85. 今井耕

    ○今井委員 時間の関係がありますので、大蔵大臣に二、三点につきまして簡単にお伺いいたしたいと思います。  所得税法の改正によりまして、低額の所得者とかあるいは扶養家族の多い国民には、相当負担が軽減されることになつていることは、非常にけつこうなことであると思うのであります。しかし年額二十万円以下の中小企業とかあるいは農民の所得というものも、これはやはわ勤労的な性格を持つた所得である。従つてこれらに対しても勤労控除をするのが当然であると考えるのでありますが、これは以前からの問題でありまして、特に最近におきまして全国の農業協同組合代表者会議などにおきましても、非常に強い要請があるわけであります。従いましてこの点につきましての蔵相の御見解を承つておきたい、こう考える次第であります。
  86. 池田勇人

    池田国務大臣 農家並びに中小商工業者の方におかれましても、二十万円以下のものにつきましては、相当勤労部分が入つておるから、勤労控除をしてはどうかという議論は、前から相当あるのであります。ことに勤労所得に対して二割五分の控除をいたしておりますときには、その議論が強かつたのであります。シヤウプ博士もそういう気持がなきにしもあらずでございました。従いまして勤労階級の二割五分控除をすえ置いて、低額所得者に対して一割五分の控除を認めて行くか、あるいは勤労階級の控除を縮めまして、そうしてほかの控除を認めずに基礎控除あるいは税率によつて調整する、こういう一つの問題だと思うのであります。私はシヤウプ博士が一々そういうことを考えておられたので、二割五分の控除を一割にして他の所得との調整をはかり、そうして基礎控除、税率考えて行こう、こういう考えを持つておられたのではないかと思つておりまするこの農業あるいは中小商工業者に一部を勤労所得と認めて控除するということは、計算上なかなか困難な状態でございますので、私は今の勤労控除として一割五分でやつて行けば、その間の不権衡は非常に是正されるのではないか。ことに計算方法が違います。勤労所得の方につきましては必要経費を見ておりません。片一方は所得を得るに必要な経費を引いておりますから、勤労控除とはおのずからその計算方法が違つておりますので、今の勤労所得一割五分控除で適当ではないか、こう考えております。
  87. 今井耕

    ○今井委員 ただいまの御答弁によりましても、またシヤウプ博士の趣旨によりましても、その勤労控除の幅が狭まつたということは、こちらも大体よく了承しておるわけでありますが、しかしこの際この勤労控除というものについての性格を、はつきりしておく必要があるのでありまして、所得が少いから勤労控除をするのか、あるいは所得が明確であるために勤労控除をするのか、その勤労控除の性格というものについて、ひとつはつきりした御答弁を願いたいと思います。
  88. 池田勇人

    池田国務大臣 勤労所得の控除というのは、いろいろな意味から考えられております。分類所得税を採用いたします場合には、勤労所得に対しましての税率は大分低くしております。すなわち資産所得は負担力が多く、勤労所得は負担力が最も少く、事業所得は、勤労と資産の合体の所得であるというので、中間の税率をとつてつたことは、昭和十五年以来の日本の所得税法に盛られたことであるのであります。しかし考え方によつては、事業所得であろうが、資産所得であろうが、あるいは勤労所得であろうが、千円の所得に何もかわつたことはない。貨幣価値がかわらないというので、税率において区別すべきでないという有力な説もあるのであります。また勤労所得は全部見えるから、わからぬという建前ではありまん。ただ計算方法が違います。事業所得におきましては、総收入金から所得を得るに必要な経費を引いております。しかし勤労所得につきましては、総収入金を課税の対象として、必要経費を引いていないことは御承知の通りであるのであります。今の説明といたしましては、勤労所得と事業所得とは、計算方法が違つておるという考え方と、また負担力の点も考えてやつておるのであります。勤労所得の方につきましても、一定額以上の所得には控除をいたしておらないことから考えましても、負担力の問題と経費の問題とから来ておると私は考えておるのであります。
  89. 今井耕

    ○今井委員 ただいまの御答弁によりまして、ある程度了承できる点もあるのでありますが、なお十分に了解できぬような点もあるのでありまして、必要経費というものを事業所得には見ておる、こういうことでありますが、それはほんとうに必要な経費だけを見ておるのでありまして、やはり日常生活に必要な費用とか、そういうものは見ておらぬわけであります。それでやはり生活をするということになつて来ると、これが勤労所得であろうと事業所得であろうと、その所得の範囲内において生活しなければならぬことは同一であろうと考える。所得の全額という上から考えると、勤労者の所得は、大蔵省から御提出になりました調査によりましても、納税者一人当りの金額が、勤労所得は十万七千円である。農林水産所得は、納税者一人当りの所得が十万三千円である。従つて平均所得からいうと四千円だけ低くなつておる。それからまた所得がはつきりわかるという点から検討いたしますと、なるほど農林水産所得というものについては、不明瞭なものもありますけれども、たとえば供出農産物を生産しておる、それを主とした経営なんかにおきましては、これはもうきわめて所得がはつきりしておるのであります。そのいう点はやはり大蔵当局といたしましても認めておられることでありまして、提出されました資料によりましても、算出所得税額からほんとうの税収見込みを見られる傷台に、勤労所得は一〇〇%、農林水産所得は九〇%、営業所得は七〇彩と目ておられるわけであります。それだけはつきりしておるということは、これは大蔵当局自体も十分に認めておられるわけです。ことに供出農産物というようなものは、より一層はつきりする。また割当が強化されて来ますと、保有しているものにつきましても、はつきりした所得がわかつて来る。そういうことになりますと、いよいよ勤労所得的な性格がはつきりするわけです。従いまして、こういう差につきまして何らかの考慮を拂うことが、必要ではないかと考えられるのでありますが、この点につきまして、もう一度御答弁願いたいと思います。
  90. 池田勇人

    池田国務大臣 御質問の点が私にははつきりのみ込めないのであります。合器話になりました分は、これは税の徴収制度が違つているからそうなつて来るのであります。勤労所得は俸給給料の支拂いのとき源泉においてとりますから、徴収歩合は最もよろしゆうございます。それから農業所得あるいは営業所得になりますと、申告がありまして、それを税務署で調査し決定してそれから納める、こういうことになりますので、時間的ずれが出て来るのであります。それでは農業と営業とはどうかと申しますと、農業は今までの実績から申しまして割にずれが少い。営業の方はずれが多いのであります。それは今までの実績からいつてそうなつたのでありまして、把握力とかなんとかいう問題ではございません。
  91. 今井耕

    ○今井委員 どうも私にはわからない点があります。実は同じ農村におきましても、たとえば年所得が十五万円ある。こういうものについて、かりに扶養家族四人の場合、勤労者と農業者と比較してみます。そうすると、これも大蔵省の資料により計算しましても、所得税で四千四百七十三円の差額ができて来ます。そうしてこれが住民税にはね上つて来ますから、これで二百七十一円違います。結局同じ十五万円の所得のものでも、農業者は四千七百四十四円税金をたくさん拂わなければならぬ勘定になります。その上に、今度の地方税の改革で地租が高くなります。そこで十五万円の所得のものが一町歩の耕作をしていると、大体今まで地租は千円くらいです。それが三倍になりまして三千円になりますと、その分がまたふえる。従いまして、同じ十五万円の所得のあるもので、農業者なるがゆえに一般の勤労者よりは合計七千七百十九円負担が多くなります。これを割合にとりますと、一般勤労者に比べて五割税金がたくさんかかる勘定になりまして、同じ農村の中におきまして、いろいろ問題になることである。これはもう事実の問題です。そうして農村の中におきましても、この問題でいろいろ摩擦が起つているわけであります。従いまして、多少の違いはあつてもよいけれども、同じ十五万円の所得について勘定し、そうして五割も税金が違うということになつて来ると、ちよつと治まらぬようなことができて来る。これは実際なんです。そういう点から考えまして、何とかここに多少の考慮が携われなければ、つり合いがとれないような気がするのです。大蔵大臣はこういうような実情を実際御承知かどうかわかりませんが、実はそういうことに突き当つておりますので、こういう質問を申し上げるわけであります。何とかこの不均衡をもう少し調整するようないい方法がないかどうか、この点についてもう一度御答弁を願います。
  92. 池田勇人

    池田国務大臣 前は勤労所得に対しまして二割五分控除をいたしております。農家の方に対しましては、所得を得るに参画きれたいわゆる専従者の控除を認めておりませんでした。こういう関係から勤労階級と農民の方々との差は多かつたのでありますが、今回の改正によりまして、その差はよほど減つて参ります。勤労階級もやはり一割五分の控除はぜひともしなければならぬと思います。農業とは所得の計算方法が違うのです。今所得十五万円のときに地租が千円もかかる、こういうお話でございますが、その地租が宅地でなくて農地に対する税金ならば、所得に必要の経費として引いておりますから、今の計算のようにはならないと思います。私は今回の税制改正によ。まして、勤労階級と農民の方々との負担はよほど平均化され、よほど近くなつて来たと考えております。
  93. 今井耕

    ○今井委員 ただいまの御答弁におきまして、地租が三千円高くなつた。従つてそれは所得から引くからということであるけれども、それは所得の額から引かれるのであつて、所得の税額から引かれるのではないのでありまして、三千円そのままが高くなるというのではありませんけれども、やはり相当これに近いものが出て来るわけである。従いまして、今度の地方税改革と並行して考えた場合において、この差額が相当大きくなるということは、これはもう間違いのないことです。この点については、こまかく議論をすればいろいろあると思いますが、こういう点に突き当つているので、私は特別の考慮を願う必要があると考えているわけであります。しかしこの問題はこれで打切りたいと思います。  もう一つ法人税税率の問題であります。今日まで農業協同組合などの特別法人に対しましては百分の二十五の税率であつたものが、今度の改正におきましては百分の三十五に引上げになるということです。従来農業協同組合等は、特別の法人として特に軽減する必要があつて、百分の二十五ということになつてつた。それが一般法人同様百分の三十五に引上げるというのは、その特別の事情が解消したためにそういうふうに引上げられるのか、あるいは他に原因があるのか、その点をお伺いしておきたいと思います。
  94. 池田勇人

    池田国務大臣 さきの問題で、やはり裸一貫で働いておられる方と、資産を持つておやりになつている方では、それ以外に物税として地租を納めることはいたしかたがないことだと思つております。次に、従来法人税と特別法人税とで税率がかわつてつたのを、今度一緒にしたのはどういうわけかというお話でありますが、これは前からわれわれとしては、経済活動を営んでいるのであるから、同様にすべきだという考えを持つてつたのであります。昭和十五年以来特別法人税を施行して来たのでありますが、だんだんさや寄せして参つております。今回は御承知の通り、今まで全然課税していなかつた公益法人にも、経済活動を営んでおつて、そこに所得があれば課税することにいたしたのであります。もとより法人とか中間法人というものは、個人の延長として方針をかえましたので、この際税率の区分をする必要はないという考えで法案を提出いたした次第であります。
  95. 今井耕

    ○今井委員 大蔵大臣の御趣旨はよくわかるのでありますが、ちようどここに農林大臣もおいでになるので、農村の経済が非常に窮迫しておるのに対して、農業協同組合の助長、育成をはかるべきであるということを始終答弁しておられるわけであります。従いまして、今までそういうふうに軽減しておつたものを、この際引上げるということは、どうもつじつまが合わぬ。理論的には大蔵大臣のような考え方がかりに正当でありましても、政府の方針から考えて、協同組合を特に助長育成するという誠意があるならば、当分でもこの程度にしておくということがほんとうじやないか、なお他の部面、農林予算面から考えましても、農業協同組合の助長育成に要する費用が、昨年よりも二百万円削減されております。従つて、いろいろと政府の方では、農業協同組合の助長育成ということを主張しておられますけれども、これを予算面から見ると、税金は高うするが、助長育成の予算費用は二百万円も削減するということになつて予算面から考えますと、何らこれについて誠意が現われておらぬ、こういうことが考えられるわけです。従いまして、何かこの予算面におきましても、そういう点が現われるべきである。こういう点から考えまして、なおほかにそういう点が予算の中にあるのかないのか、どうであるか。こういう点をひとつ最後に伺つておきたいと思います。
  96. 森幸太郎

    ○森国務大臣 法人課税について、協同組合を他の法人と同じことにいたしたことにつきましては、一昨日でありましたか、ここでお答えいたした通りであります。政府におきましては、協同組合の健全な発達を期待し、また助長せんといたしているのでありますが、この健全なる発達は、決してわずかの補助をするというような考え方であつてはいけない。真に農業協同組合の使命を達成するように、組織の力を強めて行くということでなければならぬと考えているのであります。予算の面におきましては、この新しく生れました協同組合を、本然の、ほんとうの姿に指導するために、これらの指導員の育成講習ということに力を盡しているわけであります。法人税に対する考え方は、先ほど大蔵大臣答弁された通りであります。
  97. 植原悦二郎

    ○植原委員長 世耕弘一君。
  98. 世耕弘一

    世耕委員 時間がございませんから。簡単に要点だけ、数点お尋ねしておきます。  私の質問の時間を省略する意味においても重要でありますから、大蔵大臣の最近の心境を実は伺つておきたいと思うのであります。それは新聞によりますと、通産大臣を近くおやめになるという話を聞いております。また一説には、この間の新聞記者会談での結果から責任を感じて、大蔵大臣をやめられるというような説も伝えられているのであります。もしさようなお気持であれば、私はこれ以上質問することはやめた方がよいと思うので、その御心境のほどを伺つて、簡単に数点お尋ねしておきたいと思います。
  99. 池田勇人

    池田国務大臣 私は国務大臣に任ぜられました。しかして後、吉田総理より大蔵大臣を拝命し、通産大臣を兼務として命ぜられたのであります。私の進退は吉田総理大臣にまかせております。やめるまでは一生懸命に働いてみたいと考えております。
  100. 世耕弘一

    世耕委員 御心境を伺つて安心いたしました。この間の大蔵大臣の御声明が、かなり国民の間にシヨツクを與えまして、ある意味においては、大蔵大臣を非常に恨んでいる面もあります。もししいて言うならば、多くの希望を抱いて、仕事をしておつた者が、大蔵大臣の声明で、厭世的な気持が起つた場面があるのじやないかと私は考えられる。この意味におきまして、今力強い御信念を発表されたことは、国民が非常に喜ぶことと思います。  しかしながら、ただいま申し上げましたように、中小企業家は、非常にあなたの発表されたことについて、恨みと言つては語弊があるが、まあ、恨みに似たような、ぐちをこぼしているのであります。ひとつこの際、罪滅ぼしの意味においても、中小商工業者の金融その他について、思い切つた御抱負を発表されたら、なお一段と大蔵大臣の御決心がうかがえて、いいのじやないかと思いますが、この点はいかがでありますか。
  101. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、大蔵大臣と通産大臣を兼ねております期間はわかりませんが、少くとも兼ねている間は、中小企業金融につきましては、全力を注ぎたいと考えております。政府資金の使い方、預金部の使い方、あるいはまた信用協同組合、あるいはいろいろな中小企業の育成、発展のために、全力を盡して行こうといたしているのであります。きようも政府の資金を百五十億ばかり民間に出すのでありますが、この出し方につきましても、中小企業の方へ早く流れるように、前のようなこととはかわつたくふうを凝らしているのであります。たとえば百五十億の資金にいたしましても、中小企業の長期資金、ことに不動産金融の意味におきまして、まず二十五億円、すなわち二十億円を勧業銀行に、五億円を北海道拓殖銀行に、優先的に割当てて、残りの百二十五億円の中から、無盡、信用組合に十億ばかり優先的に出します。その後におきましても、地方銀行に相当額を出す。しかる後に都会の大銀行に出すというような方法で、金融の道をつけようと思つております。また今まで通産省の調査にとどまつておりましたA級の中小企業に対する融資、B級の中小企業に対する融資が百億でありますが、これにつきましても、数日前より大蔵省並びに通産省の関係官が集まりまして、そうして長期資金を出しそうな銀行に名簿を見せまして、これから優先的に出します。しかも御存じの通り、見返り資金から一億出すのみならず、二億でも三億でもいいから、これにどんどん出すように、一週間くらい前から話をつけているのであります。私は所管が一応まとまりましたから、この機会に通産、大蔵の連絡を緊密にいたしまして、中小企業のために、金融のみならず、いろいろな点で努力して行きたいと考えている次第であります。
  102. 世耕弘一

    世耕委員 非常に実の入つたお話を承つて、国民の一人として感謝する次第であります。しかし今大蔵大臣が言われている中に、私の一身上は総理大臣にまかしているのだというのは、少し食い足らぬような感じがする。大蔵大臣と通産大臣を兼任している以上、おれの良心に従つて、大いに国政に参画して、明朗な日本経済確立するのだということをつけ加えてもらえば満点だと思う。総理にまかしているのだというようなことだけでは、実はまだ食い足らないと思いますが、これはあえて申しません。ただ希望を私は申し述べておきます。  それともう一点は、池田大蔵大臣は非常に数字に明るい。数字に明るいけれども、われわれがじつと見ているとどうも政治に暗い、こういうことが言える。なぜそういうことが言えるかという例を申し上げますと、この間の新聞記者会見のときのあの結果から見てもわかる。過去において老総理大臣、厖大蔵大臣といわれた高橋大蔵大臣が、よくこの予算委員会や本会議に出て来て数字を間違えて、得々と演説して帰つて来ている。けれども決してそれを責めようとしない。なぜかといえば、多くの人は高橋大蔵大臣の政治力に実は期待しておるからそういうことになるのであります。私はこの間の大蔵大臣の発言をいわば失言という言葉を使いますが、あの失言をわれわれは決して責めようと思うものではない。むしろ大蔵大臣の率直さを表わしているものと私は思うのであります。どうぞ今大蔵大臣のおつしやつたように、実は理想的なポストを二つ持たれたのであるから、ここで大いに政治力を発揮されて、われわれの期待する大蔵大臣の抱負を実現するように御努力願いたいということをお願いしておきます。この点については答弁はいただかなくともけつこうであります。  次にこの間実はあなたのおいでにならないときに局長の方から説明を承つたが、金塊の問題であります。承るところによるとあれは銀塊で、二億円だ。しかも掠奪物資として司令部側に引上げられたのだ、こういう話であるところが私の調べたところによるとそれは金塊である。白金である。金塊であり、白金であるということになれば、銀塊とはよほど額の上に違つて来る。この点については、その後大蔵大臣は報告をお聞きになつたかどうか。これは茶飲み話ではない。私の言うことは数百億に上ることであります。
  103. 池田勇人

    池田国務大臣 せんだつて世耕委員からの質問がありましたとき、私は事情をつまびらかにしていなかつたから、政府委員より答弁をさせたのでございます。その後政府委員の伊原理財局長より、銀塊でありまして、戰略物資として取扱われて、向うの方に接収になつた報告を受けました。
  104. 世耕弘一

    世耕委員 銀塊であつたということは聞きました。その銀塊であつたかなかつたか立会つたかというと、立会いませんので、向うさんまかせである。それはけしからぬじやないかと私は言つた。そのことについて報告はございませんか。
  105. 池田勇人

    池田国務大臣 ただいまお答えしただけの報告しかございません。
  106. 世耕弘一

    世耕委員 はなはだずさんであつたと言いたいのです。なお念のために申し上げましよう。これは最近私はさらに調査したのでありますが、ちよつと読んでみます。 一、右田恒太郎氏千葉県出身(高橋義次弁護士担当)  右本人が引揚げ担当者にしてサルベージ業を営んでおる。なお物資の所在地点を米国側に指示したる者である。 一、榎本榮三郎氏 銀座七丁目演舞場の前、右は外務省の元貴金属鑑定官にして、最近GHQに連絡せる通訳官なり。  しかして米国側から引揚げ許可を受けたる指名人である。  右榎本氏の語るところによれば、(宮東氏と小瀧辰雄二氏立会いの上、聞き取りたる二十五年二月十七日榎本氏宅におけるとき夕五時ごろと思う)金額は時価二兆四千億で金属種類は白金(プラチナにあらず)並びに金にして銀にあらず米国の弁護士で元陸軍大佐と称する者が民間情報係を現任している。同氏は目下米国側へ交渉の代表者として特に法務総裁殖田俊吉氏等   とはかりおると称して、昨年六月ごろより報酬を請求中である。  一、前記弁護士鴨打三津夫は帝国銀行丸の内支店の調査係長三浦曉一氏の調査に基き、本件の真実性なるを認め、もつて本件に関係せるものなり。右調査によれば、白金二百本、金塊千本、公定価格として三百六十億円と推定されたるものなり。    元総理大臣山本權兵衛氏の秘書官村上貞一氏は吉田現首相と戦時中同一獄中にあつた関係上、本件の実際上の責任者後藤幸政氏との間に介在して本件を進めておつたことを私、宮東が昨年七月ころ後藤氏宅浦和市本太において聞き取りたり、このとき中野寅吉氏も同席せり。なお、この問題は中村嘉壽氏がGHQ方面に活動した結果、司令部が信用するに至れり。その後前記後顧氏は死亡せり。    右事件の証拠として石田が宮東に預けおれる三枚の実物写真あり、右写真は引揚げ場において撮影せるもの及び現場において分析せる状況のものなり。  一、右は当時大蔵大臣澁澤敬三氏並びに当時の書記官長楢橋渡氏等はこれを相談にあずかりながら協力せず、これは宮東氏並びに宮東氏の友人久保儀八郎氏を通し談合せるものなり。久保氏は澁澤氏と東大同期生なり、二氏に相談せるも協力せざるため、遂に中村嘉壽氏を起用連絡せるものなり。  一、なお右石田氏は安田信託の不正所持せる問題に関連して現に刑務所に昨年暮れ拘束されたり。  一、右石田氏が本件に関係を持つ動機は石田氏の部下にして板橋区内の石田留守宅に後藤某なるものは元兵隊にして、その部隊長は茨城出身にしてその指揮のもとに隠匿せるものなり。なおハンドルマン氏国際通信東亜総局長はこのトン数は四十トンと言えり。まだこのほかに一千億円ありと石田氏が昨年七月ころ丸の内署において警察立会いの上説明しおり。前期の記述は貴殿国会における資料として小生の知悉上おる事実を陳述したるものにつき、ここに署名捺印申し候なり。かように書いてある。これは軽く見のがすことのできない重要な問題である。実はそのほかに……
  107. 植原悦二郎

    ○植原委員長 時間は経過しております。
  108. 世耕弘一

    世耕委員 簡單にいたします。これは当時引揚げて来るときの写真であります。しかも銀であれば銀でもよろしいと思います。けれども、日本側で立会わないで向う側にだけまかすということは当を得ないのではないか。金額の多少は別といたしまして、こういう点について大蔵大臣はどういうふうにお考えになつておりますか。これをさらに詳細に調査する御意思があるかないか承つておきます。
  109. 池田勇人

    池田国務大臣 賠償庁の調査によりますと、今お話の件は金塊が約五億、銀が約二十億、これらはともにオランダその他よりの奪掠品と認められ、すでに返還済みだそうでございます。これは賠償庁の調査だそうでありまして、ただいま資料が参りました。このことは外務委員会においても賠償庁よりお話したそうでございます。
  110. 世耕弘一

    世耕委員 なおこの点には多くの疑惑が残つておりますから、大蔵省といたしまして、十分御調査を願いたいということを希望いたします。次に時間がございませんから、別の点を二点ほどお伺いしてやめますが、先般お尋ねいたしました米国の援助物資見返り資金の問題であります。大蔵委員会において大蔵大臣は、あれは借款と見ている、債務であるという御説明があつたということを聞きましたが、さようでございますか。
  111. 池田勇人

    池田国務大臣 連合軍最高司令官はさようなことを言つておられます。われわれも借りたものと考えております。
  112. 世耕弘一

    世耕委員 もしそうだとすれば、国民に疑問を與えない意味において、米国援助物資とか、見返り資金とかいう項目を、借款と直されたらいかがでしようか。
  113. 池田勇人

    池田国務大臣 外交上いろいろな問題がありますので、われわれの心構えとしては、債務でございますが、今日本政府において使つておりますので、ただちにこれを直す必要もないと考えております。
  114. 世耕弘一

    世耕委員 御参考までに申し上げます。一九四八年四月のアメリカの西欧経済援助の法律案が議会で通過したときだ、西欧援助の関係においては、ちやんと援助関係と寄贈というのをはつきりしております。五十三億のうちの二十億は寄贈という言葉を使つておるのである。外交上いろいろめんどうなことがあろうと思いますから、しいてとは申しませんが、御参考に覚えてお  次にもう一点伺つて終りにいたします。最近の競馬とか、競輪とかをいろいろな面からじつとながめてみますと、賭博的な傾向ぶ非常に多いように思う。これは戰後の一時的現象として、政府として一応許可したものとして、批評すべきではないと思いますけれども、まじめな経済再建をいう建前から見て、私は相当考慮を拂わなくてはならぬことではないかと思う。なおまたそういうふうな経済再建の指導方針ということも、大蔵省あたりがやる必要があるのではないか、かように考えるが、この点は大蔵大臣はどういうふうにお考えになつているか。
  115. 池田勇人

    池田国務大臣 この問題は昔から議論のあるところでございます。私はただいまの程度であのやり方を厳重に取締つて行けば、さしたる弊害はないと考えておる次第であります。
  116. 世耕弘一

    世耕委員 孔子の言を引用するわけではないですが、孔子は遊ばしておくよりも賭博をさせた方がいいと言つておる。しかしそういう観念で今日の富くじやその他いろいろなことをおやりになるということは、非常にいわゆる公序良俗の発展を阻害すると思われますから、目的範囲を脱しないように善導するように、大蔵省としては御努力を願いたいと思うものであります。
  117. 植原悦二郎

    ○植原委員長 奥村君に申し上げますが、大蔵大臣は司令部の方に四時までに行かなければならないそうですから、その前に行く道の時間を御考慮に入れて、上手にその範囲で切り上げるように御質問願います。
  118. 奧村又十郎

    ○奧村委員 大蔵大臣に対して、公団、特に食糧公団の予算に関して、お伺いをいたしたいと思います。  配炭公団がかなり赤字を出しております。その他の解散公団も赤字を出しております。食糧公団も来年三月で解散するのでありますが、これもこのままで行つたら、赤字を出すのではないかという不安を持つておるのであります。そこで、公団の経理について欠陷があるのではないか、法規の面からいつても欠陷があるのではないかと思いますので、この点を伺いたい。  次に、今提出されております二十五年度の公団の予算は、かなり不備な点と申しますか、まことに粗雑なつくり方になつておるので、ぜひ訂正していただかなければならぬ点がかなりあるのではないかと思いますが、この点についてどうお考えになるか、伺いたい。  それからもう一つは、同じく二十五年度予算には、経費等においてかなり節約できる分があるのではないか。もしこれがあるとすれば、昭和二十五年度の米の生産者価格引上げることができるのではないかということを考えますので、これらの点についてお尋ねいたしたいと思います。これらの点については、特に数字その他については、予算委員会の分科会におきまして、あるいは大蔵委員会におきまして、食糧公団の総裁、その他関係者、大蔵省の説明員の方から、大体承つたのでありますが、大きなまとめた見地において、大蔵大臣から政府の態度を承つてみたいと思つて、御質問を申し上げる次第であります。  まず第一に公団は、余裕金が出た場合は、これを政府に繰入れるべきであるという規定はできております。しかし赤字が出た場合、政府がこれを補うという規定は、どの公団の規定にも出ておのません。しかし政府が全額出資しておりますから、赤字が出れば、結局政府がこれを補うべきでありますが、その規定がないのであります。そこで一体どの規定によつてこれを補うのでありますか。これをお伺いいたします。
  119. 池田勇人

    池田国務大臣 赤字が出ないという建前で行つておりますので、規定がないのであります。従いまして、赤字が出た場合におきましては、他の特別会計と同様に、特別の予算上の措置をとりますとともに、法的措置をとらなければならぬと思います。
  120. 奧村又十郎

    ○奧村委員 赤字が出ないということを前提にしておられるので、昭和二十五年度予算案の説明を見ましても、公団の売上代金において予算よりも黒字が出た場合、予算以上に売上げが増加して利益が出た場合はこれこれという規定があるのであります。しかし予算よりも赤字が出た場合はどうするかという規定は何も書いてない。これは非常に今日の時代としては誤つておりはせぬか。特に食糧公団においても、ことしは予算通りの黒字は出ない、こういうふうに私は考えるので、そこに不備があると思いますが、これは意見にわたりますから、やめておきます。しかしながら、赤字を出した場合、政府がこれを補うということになつており、しかも公団の職員は官吏として待遇されておりますにかかわらず、すべて政府の機関であるこの公団の会計経理において、財政法及び会計法は適用されていない。そういたしますと、公団の会計経理についてはただいま出ておるのは、公団等の予算及び決算に対する暫定措置の法律でありますが、これは予算決算に限られておるのでありますから、それ以外の公団の経理は、法的にはどの法律によつて規定されておりますか。
  121. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 この前に申し上げました通り、公団につきましては現在財政法及び会計法の適用がありません。おのおのの公団におきまして独自の規定があり、あるいは定款その他において会計規定を定めておるわけであります。しかし政府の機関でありますから財政法及び会計法の規定の趣旨に従つてやるのが適当であると考えまして、できるだけそのように指導いたしておる次第であります。
  122. 奧村又十郎

    ○奧村委員 できるだけそのように指導をすると言われますが、国の機関の規定において、法的にこれを規定しなければ効果がないはずであります。その点欠陥がある。そこで予算及び決算においては、一応この公団法と会計法の臨時措置によつて規定されておりますが、それ以外の方面においては一体どうなさるのか。たとえて申しますと公団が物品を販売する、たとえば食糧公団がから俵あるいはぬか等を販売する場合の予算はできておる。しかし予算というものは、あらかじめ一年あるいは二年という将来の見通しであるから、予算通りには行かぬ。その場合に国のものを販売するという観念が、この公団の会計経理の中にははめ込まれておらぬ。政府の財政法、会計法によれば、入札、競売ということによつて公平なさばきができるが、これの規定がないとしたならば、現在でも公団はぬかなどは不当に安く拂い下げておる。現在この予算においても一俵が四十六円である。これが一般の市販においてはこれの五倍、八倍に売れておる。そういうことにおいてすでに欠陷がある。  もう一つ政府の金の出し入れ、あるいは政府の金の亡失その他については出納官に相当重い責任を持たしてある。ところが公団にはこの会計法、財政法が適用されないから、もし公団の金が不当に亡失されても、公団職員にその責任を負わすことが法的に明らかになつておらぬ。この点については一体どうなさるのか。
  123. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 公団というものの成立の沿革からして申しまして、御承知のように商売をいたしておるものでありますから、一般政府の会計法規によりまして、そのまま適用するということは、適当でない面があるのでざざいます。しかしこの面はできるだけ国のものであると考えますならば、会計法の趣旨に沿つてやるべきでありまして、たいがいの公団におきましては、御承知だと思いますが、入札あるいは随意契約等につきましては、会計法の規定に準拠いたしましてやつております。特別の法的な規定はありませんが、できるだけそういうふうにやつておりまして、またその一面を信頼し、監督いたしておる次第であります。しかしお話のような点もございますので、今回予算の執行、職員の責任に関する法律というものを目下研究いたしておりまして、これは国の会計管理のみならず、公団関係にも及び得るように目下研究いたしておる次第であります。
  124. 奧村又十郎

    ○奧村委員 現在の公団経理に対して、法的に欠けたところがあると大蔵大臣はお考えになりませんか。
  125. 池田勇人

    池田国務大臣 これは公団の性質によりまして、経理その他について不備な点はあると思うのであります。目下薪炭特別会計等におきましていろいろやつておりますが、たなおろしなんかなかなか困難でございます。そういうことも今までしていなかつたために、不慮の損失が起るようなこともあるのであります。将来は——ただいまもやつておりますが、われわれの方といたしましても、また安本の経済査察庁におきましても、十分調査をいたしまして、時々その悪いところを指摘して、損の行かないように適当な措置をとりつつあるのであります。
  126. 奧村又十郎

    ○奧村委員 さしあたつてただいまの予算を審議する場合において、この予算通りに財政がはかどらぬと考えられる筋があると思うのであります。現に米の配給におきましても、大臣のお耳に六つでおると思いますが、一部の地方においては米の配給すら、すでに公団の配給価格が高いとして、ほかからやみ米を買つておる地方がある。それはわずかとしても、小麦粉の配給辞退は、もう全国的にひどくなつて来ておる。そうなれば。この公団の小麦粉配給価格というものはすでに高過ぎるということになる。これは全部配給によつて小麦粉が売られるという予算であるら、すでにかなりこの予算に赤字が出ることが私は予想されると思う。この赤字の出た場合に対する規定は何にもできておらぬ。それでよろしいかどうかお聞きしたい。
  127. 池田勇人

    池田国務大臣 私はこの予算で執行できると考えております。それは今ごろの食糧事情から考えまして、たとえば米に対しての麦の比率等は、小麦あるいは大麦の方はかなり高くなつておりますが、ただいまの情勢ではそう心配はいらない。赤字が出るようなことはないと考えております。
  128. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それでは法的な問題はその程度にいたしまして、二十五年度予算に関連いたしまして、この公団の予算ははなはだずさんな面が多いと考えられるのであります。そこでまず昨年の米価審議会において米の配給について、生産者の供出価格に対して石に千円だけの配給経費を見込んで、それ以上高い消費者価格では困る。つまり配給の経費は石に千円でやれるようにやつてもらいたい。こういう米価審議会が希望を申し出たと私は承つておりますが、これを大蔵大臣はお聞きになられたか。またそれに沿うごとく努力をなさつたかどうか、今の予算で行きますと、二十五年度産米の生産者の買上げ価格は四千五百六十二円、消費者への配給価格が六千六百七十五円、約石に対して二千円という経費を見ておる。これば非常に多過ぎる。これは国民的な輿論でありますが、これに対して御努力なすつたかどうか。
  129. 池田勇人

    池田国務大臣 米価審議会におきまして、生産者価格と消費者価格の差は千円にとどめたいという要請があつたということは、他の機会において聞いております。米価審議会と私との直接の関連はございませんから、米価審議会からは私は聞いてはおりません。しこうして生産者の米価の問題、消費者米価の問題は、一応閣議決定をいたしまして、それによつて予算をつくつたのであります。米価審議会において千円の差でいいという論拠につきましては私は聞いてはおりませんが、これは早場米とか、あるいは超過供出等によりまして、できるだけ節約を旨といたしましても、そういう予算になつておるのであります。
  130. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それでは個々にわたつてかなりむだと申しますか、不必要と思われるような経費がありますので、その点を承つておきます。まずこの各公団予定各目明細書五ページ食糧配給公団の支出の内訳、わら工品の経費に一億五千五百万円を見込んでおる。この経費などは、今年の経費でなしに、昨年の経費を拂うことになつておる。それからまた支出の同じく四ページ、商品買入代の中でも、包装資材代として百六十三億円を見込んでおる。百六十三億円も包装資材代がいるわけがない。内容を調べてみると、包装資材代はわずかに三十億円で、前年度のいも類などの代金の未拂金が含まれておる。こういうような政府委員答弁であります。どうも国の予算として、そういう未拂金もその他のものも、一緒くたにこういう予算を組むということは間違いであると思うが、その点大蔵大臣はどうお考えになりますか。
  131. 石原周夫

    ○石原(周)政府委員 私からお答え申し上げます。第一点の、前年度の未拂金が本年度の食糧配給公団の予算に計上されておるという点につきましては、これは本年度におきまする公団の予算の組み方は、本年度における現金支出を支出といたし、現金收入收入といたすという建て方において組んでおりますので、前年度におきまする未拂いも、本年度支拂いますものを本年度の支出予算に計上しておるわけであります。  それから第二点の、包装資材費という名前におきまして、包装灸材費以外あものが入つておる、これが各目の明細書の中にあつたということは、御指摘の通りであります。そういうような包装資材費にあらざるものが、各目明細書の内訳におきまして、包装資材費という名前の中に入つておることは、書類として、はなはだ不整備でありまして、はなはだ遺憾なことでございます。これは今後におきましても気をつけまして、そういうような間違いのないようにいたしたいと思います。
  132. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それではお尋ね申し上げますが、少くとも前年度の未拂金を拂われる場合においては、これを一緒にせずに、せめて目だけでも別に書き上げるのが当然ではないか。それでなければ、この予算書を見まして、損益計算書を見ましても、前年度の未拂金も、あるいは翌年度に対する未拂金の繰越しも、全部一緒くたに書いてあると、損益計算書の意味をなさぬということになる。少くとも目だけは区分すべきではないか。
  133. 石原周夫

    ○石原(周)政府委員 お答え申し上げます。目のうちにおきまして、本年度において発生いたしました分と、それから前年度の未拂いに属します分とわけて、目の下にあるいは節でわけるという点につきましては、今後そういうふうに考えたいと思います。  なお、ちよつと申し上げておきますが、損益計算の場合におきましては、これは発生主義と申しますか、その現金の支出と一応離れまして、費用、収益の生じました時期におきましての計算をいたしておりますので、損益計算は今申し上げましたような行き方と違つております。私が現金主義でと申しましたのは、收入と支出のことでありまして、今御注意のような区分をいたすということにつきましては、今後において明らかにいたしたいと思います。
  134. 植原悦二郎

    ○植原委員長 奥村君、大蔵大臣はもうじきに行かなければなりませんので、大蔵大臣に対する質問がありますならば、この場合に願います。
  135. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それでは、大蔵大臣はお急ぎでありますし、あまりこまかいことについてはお知りでないのでありますから、別の機会にこまかいことは御質問申し上げたいと思います。  ただ一つだけお尋ね申し上げます。貿易会計から食管に拂い下げる食糧の価格と、それから食管が貿易会計から拂下げを受ける価格、これは当然同一であるべきでありますが、この予算を見ますと、これは政府委員も確かにお認めになつたのですが、貿易会計の方では、たとえて申しますと、小麦がトン二万三千七百五十一円ないし二万五千五百十二円に、貿易会計から食管に売ることになつております。食管の方は、二万五千五百四十三円ないし二万六千百六十六円になつておる。甲に小麦だけで、すでにそこに十七億円の食い違いを生じておる。大麦で二億五千万円、米で十五億円、合計で三十五億円ほどの価格の食い違いができておる。これは当然訂正さるべきであると思いますが、この点はどうお考えになりますか。
  136. 池田勇人

    池田国務大臣 先般奥村君の質問がございまして、実は食管と貿易公団は、三十穴億円の差があるが、どうかというような、いろいろな質問があつたのでありますが、私は善き取りまして、事務当局から聞こうと思つてつておるのですが、まだ聞く時間がなかつたのであります。従いまして、政府委員よりこの問題を答弁させていただきたいと思います。
  137. 石原周夫

    ○石原(周)政府委員 お答え申し上げます。御指摘の価格調整補給金、輸入補給金、その内訳におきまする単価積算の基礎、それから食糧管理特別会計の方におきまする積算の基礎、両者の間に御指摘のような違いがあるわけであります。その差につきましては、本年度の七月までの間におきまするパリテイーの見方、この点につきまして、両者の開きは今おつしやつたような金額に相なるわけでありますが、最近きまりました消費者価格に実際上これを合せて実行いたして参るわけでございますので、実行上今御指摘の点につきましては、調整をいたして参ることに相なつております。
  138. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それでは、確かにこの食い違いがある、この三十五億円の金は消費者の価格で見るか、あるいは生産者の価格引上げるか、とにかく流用できるということを確認していただける、こういうふうに思うが、いかがですか。
  139. 石原周夫

    ○石原(周)政府委員 お答え申し上げます。今おつしやいました食管に見ておりまする單価と、それから価格調整補給金に見ております單価の差は、御指摘の通りであります。ただ最近消費者価格を決定いたしましたときにおきまするきめ方は、それと若干異なつておりますし、また今後におきまして、七月におきまする夏作の小麦の価格のきめ方、あるいは十一月におきまする来の価格のきめ方というものは、これらの計算基礎におきまして、いずれも一つの想定をもつて成立つておるのであります。従いまして、今お話になりました金額が、実行上不用に帰すかどうかということにつきましては、なお今後の推移にまたなければなりませんし、それ以外におきまする輸入数量自身の問題もございますので、この金額が不用になるかどうかということについては、まだ申し上げる時期でないというふうに考えております。
  140. 奧村又十郎

    ○奧村委員 私の質問はこれで終ります。
  141. 植原悦二郎

    ○植原委員長 松本六太郎君。実はあなたの質問は、時間を超過していますが、特に大蔵省に対する御質問がおありになりましたならば、水田政務次官がおりますから、それでもし御質疑ができるならばしていただけばよろしいと思います。
  142. 松本六太郎

    ○松本(六)委員 大蔵大臣は出られますか。
  143. 植原悦二郎

    ○植原委員長 大蔵大臣は二つの省を兼ねておつたりいろいろしますので、はつきりとは申し上げられないけれども、もし事実をお確かめになるならば、——大臣に質問したいということであれば別ですが、事実をお確かめになるならば、きわめて有能な水田政務次官がおられますから、十分お答えになると思いますが、いかがですか。
  144. 松本六太郎

    ○松本(六)委員 その点はわかりますが、大臣にお尋ねしないと困るので……。
  145. 植原悦二郎

    ○植原委員長 それでは本日はこれにて散会いたします。明日は午前十時より開会いたします。     午後三時五十一分散会