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1950-02-15 第7回国会 衆議院 予算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年二月十五日(水曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 植原悦二郎君    理事 池田正之輔君 理事 尾崎 末吉君    理事 上林山榮吉君 理事 小峯 柳多君    理事 苫米地英俊君 理事 勝間田清一君    理事 川崎 秀二君 理事 川上 貫一君    理事 圖司 安正君 理事 今井  耕君       淺香 忠雄君    天野 公義君       井手 光治君    江花  靜君      岡村利右衞門君    小淵 光平君       角田 幸吉君    北澤 直吉君       小金 義照君    小平 久雄君       坂田 道太君    田中 啓一君       玉置  實君    中村 幸八君       永井 英修君    丹羽 彪吉君       西村 英一君    松浦 東介君       松野 頼三君    南  好雄君       山村新治郎君    中曽根康弘君       村瀬 宣親君    林  百郎君       深澤 義守君    米原  昶君       奧村又十郎君    小坂善太郎君       平川 篤雄君    岡田 春夫君       世耕 弘一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         文 部 大 臣 高瀬荘太郎君         農 林 大 臣 森 幸太郎君         建 設 大 臣 益谷 秀次君         国 務 大 臣 青木 孝義君  出席政府委員         外国為替管理委         員会委員長   木内 信胤君         大蔵政務次官  水田三喜男君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         通商産業政務次         官       宮幡  靖君         経済安定政務次         官       西村 久之君         経済安定事務官         (貿易局次長) 湯川 盛夫君  委員外出席者         專  門  員 小林幾次郎君         專  門  員 小竹 豊治君     ――――――――――――― 二月十五日  委員稻葉修君辞任につき、その補欠として北村  徳太郎君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  昭和二十五年度一般会計予算  昭和二十五年度特別会計予算  昭和二十五年度政府関係機関予算  分科会設置に関する件     ―――――――――――――
  2. 植原悦二郎

    植原委員長 これより会議を開きます。  質疑を続行いたします。米原昶君。
  3. 米原昶

    米原委員 最初に外国為替管理委員長木内さんが見えておりますから、政策の点ではなくして、この前この委員会川上委員から質問があつて安本長官答えのなかつた問題について数字的な説明を承ります。  この前問題になつたのは、さきの十一月に例の為替管理法案が本院にかかつた折の委員会で、木内さんよりたしか当時コマーシャルアカウントは八千万ドルでしたか、八千五百万ドルでしたか、それを下らない。そのほかにもオープンアカウントその他を合せてたしか一億二千万ドルでしたか、そういうようなお話がありました。一月一日から出発した外貨予算は、六千七百万ドルである。この点はどういう理由でこういうふうに非常に少く、約半分になつているのかということであります。これはコマーシャルアカウントオープンアカウントの両方を含んでいるのかどうか、この点をお聞きします。
  4. 木内信胤

    木内政府委員 今の点に対してお答えいたします。十一月の国会において八千万ドルという数字を私が申しましたときには、実はまだ外貨記帳というものを全面的に移管を受けておりませんでしたので、ほんとうの数字はわからない、また司令部からそういうことを言うことが許されていなかつた、言えない数字であるが、当時記帳の一部分を担当しておつた関係上、ある程度の推測はできる。今度外貨予算がスタートするについて一体資金的な準備があるかというようなことがあの法案の審議をするについて必要であるから、その点をぜひやつてくれということでありましたので、それでは十分根拠のある数字ではありませんが、推測を持つていないこともありませんから、申し上げますということで申し上げたのが八千万ドルであります。ですからこれは何も的確な予想を申し上げたのではなくて、ただそのくらいはあるだろうと思つて申したのであります。しかもその数字はわれわれの手に移管されるであろう、という数字を予測したものではなくて、貿易を繰りまわして行くための運転資金という言葉が当るかどうかわかりませんが、大きな意味運転資金と称すべきものがそのくらいあるはずだということを申したわけであります。そこで今度移管を受けたのは、御承知の通り六千七百万ドルでありますが、これはこういうことになります。司令部移管をするについて、その全額を移管してくれたのではない。すでに司令部許可に基いていろいろ輸入が計画され、あるものは信用保証が出ておる。これをコミットメントと申しておりますが、そのコミットメントをすでに自分の名においてしてしまつたものは、十分に決済するだけの資金を別にしておき、そうでないこれから新しいものをスタートして、それを決済して行くものとして、別除した残りをお前の方にわけてやるということにいたしたわけであります。そこで別除されたものが幾らであるかということは、私どもはつきり知らされていないのでありますが、移管を受けた方は六千七百万ドルであつたわけでありまして、それがあのときの予想よりも少かつたわけであります。実はあのときは予想内輪に見てもごのくらいと申したわけで、事実はもう少したくさんあつたものと見ております。従つて相当多額であろうと想像されるものを別除しても、なおかつ六千七百万ドルというものの移管を受けることができたわけであります。あのときも先ほど申しましたような意味で、何も的確な予想ということでなかつたのでありますが、あのとき考えた予想というものはそうひどく違つてもいない――内輪に申し上げたつもりでありますが、やはり内輪のものでもう少しあつたものと解釈しております。大体そのくらいのことで右の事情御了察願います。
  5. 米原昶

    米原委員 内輪に見込まれたものよりも少し少かつたという事情はわかりましたが、当時のマ元帥声明の中で、オープンアカウントはたしか含んでいないようになつてつたようでありますが、これは含んでおりますかどうか伺いたい。
  6. 木内信胤

    木内政府委員 オープンアカウントは含まない数字であります。あれは現なまをもらつた数字であります。
  7. 米原昶

    米原委員 そうしますとあの声明の中に、オープンアカウントの中には未拂金があつて、その支拂いが済まねばその方の移管は行われないとあつたようでありますが、その未拂金というのは何でありましようか。その合計はどのくらいのものでありましようか。
  8. 木内信胤

    木内政府委員 オープンアカウントの中に未拂金があるということはないと思います。先ほど私がコミットメントと申しましたのは、オープンアカウントとは関係がないのでありまして、そうでない部分についてすでに輸入許可を出したというものについては、それだけの資金を用意しなければならぬわけでありますから、それを別除して残りをするというのでありましてオープンアカウントとの関係は無関係であります。
  9. 米原昶

    米原委員 大体の話を伺つておりますと、あの十一月ころから十二月、移管されるまでの間に相当輸入許可があつたということはわかるわけでありますが、そういう輸入契約相当大きなものができたと思いますが、どういうものであつたかわかりませんか。
  10. 木内信胤

    木内政府委員 輸出入とも移管ということがなされるまで、従来の通り行われておりましたが、輸入相当ありましたし、輸出相当つたわけでありましてその状況というものは格別今までとかわつたことはなかつたわけであります。
  11. 米原昶

    米原委員 それではあの当時非常に輸入契約がそれまでよりも増大したということは絶大ないとおつしやるわけですか。
  12. 木内信胤

    木内政府委員 そういうわけではありません。事実十一月、十二月は割合輸入は多かつたと聞いております。しかしその事情はどうであつたか。またその金額はどうであつたか。私はつまびらかにしておりません。
  13. 米原昶

    米原委員 全然そういうことがわからないとすれば、もう一つ聞いておきますが、あの声明の中にこの未拂金を今後の輸出代金の中からも差引くというふうに書いてありますが、これは実際に差引いておるのですか。またこれから差引くようになつているのですか。この点を聞きたい。
  14. 木内信胤

    木内政府委員 未拂代金を今後の輸出代金の中から差引くということは、私はつきり記憶いたしません。今度移管を受けましたと申しましても、実は向う責任は解除されたわけではない。私どもはスキャップ・アカウントとして移管されておるわけです。ですから司令部は依然として全責任を持つておるという意味であります。重要なものをリザーヴしてわけたつもりであるが、もしもそれが足りないものがあつたならば、今後の輸出代金、すなわちわれわれの移管を受けたものの中からでも――あるいは今後の輸出代金のたまつたものは、全然司令部の手から離れたものではないという意味をおつしやいましたところはうかがつておると思いますが、私その文章ははつきり覚えません。しかしその事情は、われわれの移管を受けたと申しますのは、司令部アカウントとしてやつておる。もし必要があるならば司令部はそれを使うということを、どこかでリザーヴしてあつたものと了解します。
  15. 米原昶

    米原委員 為替管理権の問題でありますが、今の点はこの前の安本長官の御返事とちよつと違うのでありますが、川上委員から所有権移管していないではないか、ただ管理を移されただけじやないかという質問がなされたのに対して、非常にそれがあいまいであつたのであります。実際にはこちらが実質上全部握つてしまつたのだという返事であつたわけでありますが、そういうことはないわけですね。安本長官は実質的には全部こちらのものになつたのだという返事であつたのですが、今の返事だと全然違うわけでありますが、その点を明確にしておいていただきたい。
  16. 木内信胤

    木内政府委員 安本長官の御答弁を私伺つておりませんので、どういう食い違いがあるか存じませんが、その管理というものは、つまりどう使うかということは、われわれにまかされたわけであります。しかしながらまかされたと申しましても、日本は全般的に司令部の監督を受けております。その意味ではそれに制限がある。こうなるだろうと思います。
  17. 米原昶

    米原委員 所有権移つたということは絶対にありませんですね。
  18. 木内信胤

    木内政府委員 所有権ということはどうなりますか――その金は外国の銀行に預けてあるわけです、預け主はわれわれでありますから、委員会名前で預けてあるのですから、その意味において所有権移つたという解釈をすることにさしつかえはないのではないかと私は思つております。
  19. 米原昶

    米原委員 そこが何回もこの前から問題になつたのですが、声明には委任とあつて委讓とは全然なつていない。この点なんです。どういうわけでそういうふうになつているか。声明には管理権を移したということは書いてあるけれども所有権を譲つたという意味は書いてない。     〔「委任だよ」と呼ぶ者あり〕
  20. 植原悦二郎

    植原委員長 私語を禁じます。
  21. 木内信胤

    木内政府委員 常識的には私ども名前で預金ができまして、私ども名前でそれが動かされるのですから、所有権移つたものと思います。声明には管理委任するということが書いてあつても、要するに自分でやるということなんであつて、そのやらせるための主体が、法律的の嚴格な意味において所有権移つたことになるかならないかということについては、多少の疑問があるかもしれませんが、事実においては所有権移つた解釈していいのではないかと思います。
  22. 米原昶

    米原委員 先ほどの十一月以降に相当輸入契約があつたということは大体事実であると認められますが、一体その契約はどのくらいあるか。それから品目が何であるかということをはつきりと聞きたいのであります。
  23. 木内信胤

    木内政府委員 それの数字及び品目ともに私は今記憶しておりませんからそれは調べてからお答えいたしま参す。
  24. 米原昶

    米原委員 もう一つもこの移管された総額は六千七百万ドルで、木内委員が初めに低目に見られたよりももつと少なかつたのは事実のようであります。ことにポンドが非常に足りないということは事案問題として現われて、ポンド借款という問題も起つておるようですがそうしますと移管されたときにポンドはどのくらいあつたかということを聞きたいのです。六千七百万ドルのうちにポンド貨ドル貨とはどういう割合になつてつたかということです。
  25. 木内信胤

    木内政府委員 六千七百万ドルのうち、ドルにしまして千四百万、ポンドにしまして五百万、これがポンドであります。従つてドルは五千三百万になります。
  26. 米原昶

    米原委員 では木内委員長に対する質問は、これで打切ります。あとでこの問題については安本長官に聞きます。
  27. 植原悦二郎

    植原委員長 それでは大蔵大臣が来おられますから、大蔵大臣質問し川しいただきたいと思います。
  28. 米原昶

    米原委員 大蔵大臣質問します。実はこの問題を大蔵大臣に聞くつもりはなかつたのでありますが、昨日首相質問しました際に、阿波丸事件了解事項、あの中の米国政府により日本国に供與された借款及び信用、――これの詳しいことを私はあのときに聞いたのではなく、日本に與えられておる今の援町費、米国の対日援助、こういうものはこれに含まれてあるか、含まれていないかということだけを聞いたのでありますが、この点も調査してから答えるということでありました。これはしかし調査といつても、ごく簡單なことだと思いますが、大蔵大臣はこの係の大臣でもありますから、この点ただ一言はつきり答えていただきたい。
  29. 池田勇人

    池田国務大臣 昨日私はあなたの御質問を聞いておりませんので、今のお言葉ではわかりかねます。
  30. 米原昶

    米原委員 それでは説明します。阿波丸事件のあの協定、あれのあとで、あれに付属した了解事項がついておる。その中に、占領費並びに日本国の降伏のときから、米国政府によつて日本国に供與された借款及び信用は、日本国米国政府に対して負つている有効な債務であり、これらの債務は、米国政府決定によつてのみ、これを減額し得るものであると了解される、こうなつております。そこで占領費の方は、一応米国国防省の組んでおるとこりの陸軍予算、対日占領費のことでめろうと思いますが、そのほかの借款及び信用というのは、大体終戰後のことでありますから、そう範囲がたくさんあるものではないし、はつきりわかると思うのでありますが、対日援助費というのはこれに当るのではないかということを聞いておるのであります。
  31. 池田勇人

    池田国務大臣 阿波丸事件了解事項を、私一度は読んだことがございますが、今はつきりした記憶がありませんので、いずれ調査いたしましてからお答え申し上げます。
  32. 米原昶

    米原委員 こういう国際的な協定、しかも首相は、これは国際法的にも協定として成立つものであるということをはつきり言つておられるわけであります。これは日本国の負つておるところの有効な債務ということがはつきり了解されておる非常に重要なものだと思うのです。それも私はそう詳しい数字を聞いておるのではなくて、どういうものがこれに当るかと聞いている。大蔵大臣がこれくらいのことがわからないでいいでしようか。大体ほかに疑問の点があるのでありましようか、何かはかにこれに相当する借款とか信用というものがありますか。何をさしておるのか。これを聞きたいのであります。
  33. 池田勇人

    池田国務大臣 よく読んで調査してからお答えいたします。
  34. 米原昶

    米原委員 では端的に聞きますが、対日援助費は、この問題とは別に、米国政府日本国に與えたところの債務――貸したのであるか、もらつたのであるか。この点を明確に聞きます。
  35. 池田勇人

    池田国務大臣 米国政府日本にやつたとは言つておりません。
  36. 米原昶

    米原委員 そうすると、やつたと言つておらないとすると、何に当りますか。やはり債務ではありませんか。
  37. 池田勇人

    池田国務大臣 ただいまのところは、債務と考うべきものであろうかと存じますが、これは他の国の例を見ますと、結果からいえばもらつたところもあるのであります。ただいまのところは、米国政府日本政府にやつたという考えは、向うでは持つていないと思います。
  38. 米原昶

    米原委員 それだからこそ昨日問題にしたわけでありまして、今大蔵大臣は、イダリアの場合のことを言つておられるのだと思いますが、こういうものは、イタリアの場合のごとく、講和條約によつてはつきりすべきものだと思うのであります。それが阿波丸協定で規定されているということについて疑義があつたので聞いたのであります。しかしながら、この阿波丸協定でも、米国政府決定によつてのみこれを減額し得ると書いてあるので、これは将来の問題であつて、あくまでも有効なる債務と考えるのが至当であるというただいまの大蔵大臣お答えが正しいと思うのでありますが、それでよろしゆうございますか。
  39. 池田勇人

    池田国務大臣 私はただいま日本が負担している債務という答えはいたしておりません。ただ向うがやつたということは言つていない、こういうことを申し上げただけであります。
  40. 米原昶

    米原委員 そうすれば、非常に言葉を濁しておられますが、やつたと言つていない以上、しかもそれは将来はどういうことになるか。借りたとなつていても、これは先に貸した借金を棒引にするかもしれないということが起るかもしれないという意味であるとすれば、少くとも今は有効な債務であるということを了解したのが、この了解事項じやないかということなんであります。
  41. 池田勇人

    池田国務大臣 協定をよく読んでおりませんので、調査いたしましてからお答えいたします。
  42. 米原昶

    米原委員 まつたくあきれ返つたものであります。国際協定であると昨日もはつきり首相は言つておる。それをその内容すら大臣が研究をしておらない。しかもそれは有効なる債務という非常に重要な問題であります。それを日本が負つていると書いてあるのに、その内容すら知らない。だからこそ昨日私は、借金を負つて声つてその内容幾らあるかも知らない、何が借金だかも知らない、どういうような條件がこれについているかもしれない、これなら日本は全部このために束縛されるじやないか、借金倒れになるじやないかということを言つたのであります。しかしながら、この中にもう一つはつきりしているのは占領費だと思います。占領費はつきり有効な債務を書いてある。この占領費の点でありますが、アメリカ陸軍省予算は、私は向う政府の出している資料を読んでいるわけではありませんから、わかりませんが、いろいろな共同通信その他の伝える資料を集めてみましても、今までに大体十七、八億ドル占領費が出ておるようでありますが、こういうようなものが有効な債務となつておるのであるか、その数字は何であるかということを、これもはつきり占領費と書いてありますから、この点を大蔵大臣としてはつきり答えてもらいたいと思う。
  43. 池田勇人

    池田国務大臣 御質問の点がわかりませんが、向う予算で十何億と出ている、こういうことですか。
  44. 米原昶

    米原委員 そうです。
  45. 池田勇人

    池田国務大臣 その程度のものは出ております。しかしそれは向う予算で出ている占領費でございまして、日本にばかり来ている金額でもないと考えるのであります。
  46. 米原昶

    米原委員 私はそれは正確な向う予算書を見ているわけではございませんから、わかりませんが、日本占領費南鮮琉球とわけて書いてある予算の写しを見たのであります。その中で大体それくらい出ているのじやないかということを聞いた。しかしこれは正確じやないのでありまして、この有効な債務を負つている政府責任者たる大蔵大臣は、この数字を知つておられるはずだ。当然これは有効な債務はつきり了解しているのでありますから、しからばその数字はつきり正確に答えてもらいたい。
  47. 池田勇人

    池田国務大臣 はつきり背負つている債務と私はお答えしていないのであります。そうして私が大蔵大臣になる前の数字につきましては、向う管理いたしておりますので、わかりません。昨年の予算から、この対日援助費見返り資金として載つている数字予算書に載つている通りであります。
  48. 米原昶

    米原委員 ただいまの御答弁では、阿波丸協定によつて、あの了解事項として書かれております。あれは、日本国代表として吉田国務大臣、それから米国政府代表としてシーボルト氏、この二人がはつきり調印しておられる。この了解事項にあるところの占領費が有効なる債務であるということを確認しておるのでありますが、これを池田大蔵大臣は否認されたものであると了解いたします。  そこでその次に聞きますが、先日社会党の西村君から見返り資金に関連して援助費の問題について質問がありまして、そのときに何か援助費との間に狂いがある、七%ないし一〇%くらいも狂いがあるということを聞きました。これにはもちろん援助物資の来る時期的なずれ会計年度の相違などから来るずれがあるということはわかる。そこでお答えになりましたところのこの中に、占領軍行政費というものが含まれておる。それから琉球南鮮その他の方に行つたものもこの援助費の中に含まれておるか、それはわからぬとおつしやいましたが、これは間違いありませんかどうか、もう一度はつきり答えてもらいたいと思う。
  49. 池田勇人

    池田国務大臣 向う予算に載つております数字のうちには、こちらに進駐軍の来ております行政費その他が入つておることは聞いております。しかし個々の琉球の分がどれだけ入つておるか存じません。しこうして予算を組む場合の分は、こちらに来る予定の金額向うと話をして予算を組んでおるのであります。
  50. 米原昶

    米原委員 発表されておりますアメリカ予算を見ますと、琉球の方に出ておる援助費、それから韓国に対する援助費などは――この前も新聞にも出ておりますが、アメリカの下院で一度は拒否され、その次に通過した。ああいうふうに日本の対日援助費とは一応別個のものである。ところが対日援助費として出ておるものの中で、これがそちらの方にも行つておるというこの前の答弁であります。この点は非常に重大だと思うのであります。この点を明確にしてもらいたいのであります。
  51. 池田勇人

    池田国務大臣 向う予算で区別していないそうであります。従つて私に僕する限りにおきましては、対日援助見返り資金というものは、向うからこれだけ組めということで組んでおるのであります。
  52. 米原昶

    米原委員 私が調べたのでは、それが狂つております。そうしますとみな一緒になつておる。それはまだもらつたとも何ともきまつていない。有効な債務という点も大蔵大臣は否認されております。この点を確認されてはおらない。了解事項には有効なる債務として了解しておる。少くとも米国政府が減額を認めるまでは、有効なる債務として確認したとあるにもかかわらず、大蔵大臣はこれを否認されておるわけであります。しかしながら常識から考えて、これは当然有効なる債務であろう、そのほかにこの了解事項についてはどうにも解釈がつかないのであります。ところがそれが日本では幾ら来ておるものかわからない。そのうちの幾ら南鮮に行つているのか、幾ら琉球に行つているか、これが一緒になつていてわからない。それから占領軍行政費であります。これは確かに含まれております。あの予算を見ても含まれておりますが、たとえば向うから来ている軍属でありますか、シビリアンの給料とか、旅費とか、自動車の維持費とか、そういうものは含まれておるようであります。これはおそらくこの来ておる対日援助費金額の中に入つておると思うのでありますが、このことはやはりまだ借りたのか、もらつたのかわからぬと言われるのでありますが、その金の中にとにかく入つておるものでありませんか。このことをはつきり聞きたいと思います。
  53. 池田勇人

    池田国務大臣 阿波丸協定の問題につきましては、調査してお答えすると言つておるのであります。あなたが独断で私の言葉を判定なさることはいかがかと思いますから、調査の上お答えいたしたいと思います。  それから向う予算に組まれた金の中には行政費が入つておると私は聞いております。しかし日本予算におきましてはその分は入つておらないのであります。日本に日対援助費として送られました全額から行政費は出しておりません。
  54. 米原昶

    米原委員 そうしますと、この占領費と関連しておりますが、終戰処理費であります。さてこの終戰処理費と占領費とは性質が違うと思いますが、この相違点はどういう点にあるかということを説明してもらいたい。
  55. 池田勇人

    池田国務大臣 全然別個のものでございまして、終戰処理費というのは、占領軍日本において必要な経費をわれわれが負担する費用であるのであります。
  56. 米原昶

    米原委員 明確なようで非常に不明確でありますが、日本において占領に必要なる経費は、占領費も終戰処理費も共通のものであります。違うのはどの点か聞いておるのであります。
  57. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 アメリカ占領費日本の終戰処理費と違いますのは、降伏のときにあとでいろいろとりきめがあつたのでありますが、その際に向う占領軍の要求によつて日本側において施設すべきものは日本側の経費でやる、こういうことになつておりまして、兵員の維持でありますとか、そういう経費はアメリカでありますが、当方におきまして、たとえば住宅をつくるとか、あるいはいろいろな日本の国の用員を置くとか、それから施設関係通信、交通関係、そういうような日本の施設を利用し、あるいはこちらで協力して施設するというようなものは、これは日本側の負担であつて日本側の予算でやる。これが終戰処理費との実体の相違であります。
  58. 米原昶

    米原委員 そこで聞きますが、終戰処理費でつくりました飛行場もありますし、宿舍ありますし、いろいろのものがありますが、そういうものの所有権はどこにあるか、このことをはつきり聞きたいのであります。
  59. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 所有権は、住宅その他の所有権日本であります。国有であります。
  60. 米原昶

    米原委員 いろいろそれについております軍事的とも言えるところの施設もあります。飛行場その他もあると思います。こういうものの所有権日本のものでありますか。
  61. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 飛行場その他については元の軍の飛行場がほとんど大部分でありまして、これはもちろん日本のものであります。ただ向うからいろいろ施設を持つて来られたものがあるかもしれませんが、それはまだどういうふうな措置になりますか、その点はもちろん国有財産となつておるわけではありませんが、大体において日本の施設でやつておるものでありますから、その分は国有であります。
  62. 米原昶

    米原委員 これについてはまたあとで聞くとしまして、そうしますとこの有効債務でありますが、占領費はつきり含まれておる。その他のものは調査しなけばわからない。こういうふうに大蔵大臣はおつしやるのであるかどうか、もう一度はつきりしてもらいたい。
  63. 池田勇人

    池田国務大臣 阿波丸協定を読んでからお答えいたします。
  64. 米原昶

    米原委員 自分が一番痛いところになると、当然この点についてははつきりした答弁をすべきものであり、しなくちやならぬにもかかわらず、いつでもぼかしておられる。そして疑義に対しても全然発言されない。将来の問題とか仮定の問題には答えない。今度は事実の問題だついて聞いても、調査して答える。これが昨日からの吉田内閣の性格となつて来たようであります。それではこの援助費がさらに見返り資金となつているわけでありますが、これについて先日川上委員が追究しましたときに、例の見返り資金特別会計法について、大蔵大臣はすつかり思い違いしておられた。こういうことを本委員会で認められたわけであります。これは私はことさら大蔵大臣のあげ足をとつて喜ぶつもりで言つているのではないのであります。実にこの点は私たちとしては重要な点だと思う。あの会計法のあの項目を削除したいきさつについては、大蔵大臣もよく御存じのはずだつた。あの当時、総司令官の許可と承認を要するという例の項目を削除した場合には、少くとも日本国法の自主性を貫くという見地から、與党の諸君もすべて満場一致で、その点では削除されたわけであります。ところが博学多識の大蔵大臣がこれを忘れておられた。非常にこれは悲しむべきことだと思うのであります。そこで私は繰返すわけではないけれども、この点をはつきり伺つておきたい。あの箇條があの法文の中にはつきりあつたものとして、この一年間見返り資金の運営に当つておられたのであるということを、はつきり言つてください。
  65. 池田勇人

    池田国務大臣 初めは四條の第六号にあつたのでありますが、議会でこの條文は削除することになつた、その部分を忘れておつたのでありますが、削除すると同時に委員会並びに本会議でそれと同じような決議がありまして、私はその決議を尊重してやつておるのであります。実際問題といたしまして、この見返り資金の運用につきましては、向うと特に緊密な連絡をとりましてやつております。
  66. 米原昶

    米原委員 問題の本質を全然ぼかしておられる、決議と――しかもこれは附帶決議でなく、別個の決議になつておりますが、決議と法律の中の條文との違いぐらいはつきりした問題だ。決議は少くとも道義的に守るべきもの、法律は義務的にどうしても守らなくちやならぬもの、この二つの相違は明らかである。実際にこの議会にいろいろな法案が通る、その場合に附帶決議がついている。しかし附帯決議の精神が踏みにじられた例はたくさんあります。決議と法案とは別個のものである。ところが決議にあつたものを法案にあつたものとして、その通りにやつて来られたかどうかということを私は聞いておるのであります。
  67. 池田勇人

    池田国務大臣 見返り資金の運用につきましては、あの決議通りにやつておるのであります。(発言する者多し)実際問題といたしましては、この問題については決議通りにやつておるのであります。
  68. 米原昶

    米原委員 そうしますと、はつきりわかつたわけであります。先日もこの委員会で同僚議員から、日本大蔵大臣はミスター・ドツジの秘書であるとかいう皮肉な言葉が出たのであります。ところがあの條文の削除は、ミスター・ドツジも承認されたのであります。その点ではまことに大蔵大臣は、あの国会で法案が通過したいきさつに全然おかまいなく、まつたく卑屈な奴隷根性であると言わざるを得ない。そういう考え方でやつておられたということがこれではつきりしたわけであります。  それからもう一点、あの見返り資金について繰返し繰返し大蔵大臣の言つておられるのは、これは元来はアメリカの納税者の負担である。だからこそ向うさんに相談しなくちやならぬという点を非常に強調しておられる。元来はアメリカの納税者の負担である。このことは一応明らかでありましよう。援助費が出る、その援助費用が物にかわり、そうして日本に来る、日本でこれを拂い下げる、これは日本国民はその代金を拂つておるわけです。それの価格の差を輸入補給金として、また税金として拂つておるのであります。あの見返り資金の会計を見ると、そのほかにも、援助物資でなく、一般物資の方からもこれが入つているという実情であります。結局この代金というものは、見返り資金に積み立てられた代金というものは、全部日本国民としてはすでに拂つてしまつている。政府が返さぬのであります。一言で言つたら元来は向うの負担である、こう解釈されるのでありますが、しかしながら日本国民にとつては、すでに返してしまつたではないか、こういうことであります。この点についてどうか、見解を承りた。
  69. 池田勇人

    池田国務大臣 何も向うの奴隷としてやつているのではありません。そういう言葉は、お互いに使うことを愼まなければならぬと私は思います。  次にこの分は向うに拂つているという言葉でありますが……。(「国民が政府に拂つておる。」と呼ぶ者あり)国民と政府は一体でございます。拂つておりません。     〔発言する者多し〕
  70. 植原悦二郎

    植原委員長 私語を禁じます。
  71. 米原昶

    米原委員 国民はすでにその金は拂つている。それを政府が拂わぬだけであります。しかもこれは結局もらつたということははつきり言つてしなしから、これは認められておらぬ。これが有効な債務であるかどうかという点については、阿波丸協定のあれをよく研究しなければわからぬと逃げておられますが、しからばもう一ぺん聞きます。博学多識な大蔵大臣でありますから、よく御存じだと思いますが、一昨々年の二月二十二日、例の総司令官のアメリカのコングレスにあてた手紙であります。あの中にこの資金日本に対する慈善、贈與ではないこれは貸付であると書いてある。この担保に対する先取り特権があるということも書いてある。さらに強調して、アメリカの納税者にはびた一文も損失をかけないと書いてある。これはもう日本の新聞に当時出ております。こういう点と関連して、あの総司令官の手紙の中にも、日本に対する貸付であるという言葉が使つてある。だから当然ここにあるところの阿波丸協定についての了解事項も、これをさしておるのであろうと思つて、われわれは聞いておつたのでありますが、しからばこの総司令官の手紙に出ているこの意味であります。アメリカの納税者には結局はびた一文の損失もかけない、究極は負担をかけないという言葉があの中にありますが、あなたはこのことを否認されますか。
  72. 池田勇人

    池田国務大臣 その声明を読んでおりませんのでお答えできません。
  73. 米原昶

    米原委員 もう痛いところになるといつでも逃げてしまわれますが、結局はあの声明にもあります通りに、この解釈において、結局は日本が返さなければならぬ。今のところ返さなければならぬことになつている。そうすると、今代金を拂つた、税金を拂つた、これを積み立ててある。しかしこれは向うには行つていない、これは返さなくちやならぬ。そうするとその負担はだれが負うのか。この見返り資金について、日本国民はもう一ぺん負担しなければならぬ、そういうことになるじやありませんか。究極の負担は日本国民が負うものである。このことははつきりしておると思う。この点について異議あるならば、異議を言つてもらいたいのであります。
  74. 池田勇人

    池田国務大臣 債務なりやいなやにつきましては、調査してお答えいたしますが、究極の負担が日本国民にあるということについては、賛成できません。なぜかと申しますならば、それは小麦代であり、石炭代であるのであります。それを拂う金を、今日本政府責任においてやつておるのでありますから、国民の負担であるなんということは言えないと思います。
  75. 米原昶

    米原委員 その代金を、日本国民としては一応買つてつておる。しかしこれを借金してやつておるのであります。もとは向うから来たのである。われわれはまだ向うの方に返していない。これは返さなくちやならぬのでありますから、究極は一度拂つて、もう一ぺん拂わなくちやならぬ。しかも輸入して来ておる物資の中には、この委員会でもしばしば指摘されましたように、日本の農業恐慌を促進するような役割を果しておる物もある。今度の公団の拂下げ物資の問題もありますが、あのように、日本ではもう輸入しても使い切れない、こういう物が押しつけ輸入になつて日本の農業恐慌を促進している。こういう面でも実は日本国民の負担になつておる。そうしますと、日本国民は三重の負担をもつて返さなくちやならぬ、こういうことになるのじやありませんか。
  76. 池田勇人

    池田国務大臣 向うから来た物の代金を積んでおくのでありますから、二重の負担にもなりません。しかしてこれをいつ返すかどうかという問題につきましては、先ほど来お答えした通りであります。
  77. 米原昶

    米原委員 そうしますと、これはもらつたのであるか、借りたのであるかもまだ明言されないわけである。もらつたのだとはまだ言えないということを言つておるので、どちらにしても、たとえばかりにもらつたとすれば、これを使うのは日本国の自由なはずであります。借金したのであれば、この金を日本国が自由に使う、これは自由であります。これに條件をつけられるいわれはないと思います。いかなるわけでこれを一々相談しなくちやならぬか。もらつたならもらつたで、はつきり日本が使えばいいのである。借りだなら借りたで、これは返せばいい。これも自由に使えばいい。何ゆえにこれを一々相談しなくちやならぬのか、この点を伺いたいのであります。
  78. 池田勇人

    池田国務大臣 その金はただいまのところアメリカの納税者の負担において出ておる金であります。しかして日本は占領治下にありまして、その金の使い方につきましては、向うと緊密な連絡をとることに相なつておるのであります。借りた金ならばとこうおつしやいますが、その点は借りたやら何やらわからない、調査して答えるという前の答弁通りであります。     〔「わからないなら教えてやれ」と呼ぶ者あり〕
  79. 植原悦二郎

    植原委員長 川上君靜粛に願います。
  80. 米原昶

    米原委員 それじや借りたでもない、もらつたのでもない、要するに日本が縛りつけられる金である、こう解釈するよりほかないのであります。実はもらつたにしても、これを一々相談するのは問題がある。ヨーロツパにおいても同様に、見返り資金が問題になつております。しかしこの場合はもはつきり贈與になつておる。日本のようにあいまいなものになつておりません。そこで贈與になつて双務協定が結ばれて、それについて一々相談しなてちやならぬというふうになつております。しかしまだ日本のように贈與だか貸付だかわからぬというような状態しやないのであります。しかもこの額から見ましても、昨日も北澤委員かり、この問題について、ヨーロツパと比較しての問題が出ておりましたが、ヨーロツパに今まで出た見返り資金の総額をとつて日本の額と比べてみて、日本の額は実に大きな割合を占めておる。ヨーロツパ全体に出ておる援助資金の三分の一ないしは二分の一近いものが出ておると私は見ております。しかもヨーロツパでは、しばしばそのことが問題になつておるのであります。これは借りたということでなくて、もけつたという形になつている。そこでもらつたのだから、ただで使つたらいいのじやないかという意見と、それに対してこれを双務協定を一結んで、いろいろ相談しなくちやならなくなつたという結果において、この経済の自主性が失われるという問題について、これはヨーロツパの何も共産党ばかりじやない、保守党や労働党の陣営からもこれに対する、その国の民族の経済の自主性を守る問題が、最近やかましく論議されておるのである。ところが日本においては、それよりもはるかに大きな分量であり、しかもこれが貸付か贈与かわからないというような状態で入つておる。しかもそれを日本において管理しておられるところの、責任者である大蔵大臣が、何ら自主性を持つていない。見返り資金会計法の條交すら忘れておられる。こういう形で運営されるからこそ、われわれは実に危險だと言わざるを得ない。ヨーロツパにおいてもこれは問題になつた。今年のニューヨーク・タイムズ・ウイークリーの一月十一日号を見ますと、この点についてさらに敷征して、日本の時事通信の電報を載せております。たとえばイギリスは、債務償還を見返り資金でたくさんやつておるということが、アメリカの方から問題になつた。アメリカでは、イギリスにこれ以上金をやることは、イギリスの社会主義に注射をするものだという声が、ウォール・ストリートの方面から起つている。そうしてそれに符を合するごとく、十月三十一日以来、見透り資金が凍結されておるという問題が、時事通信にも出ておる。借金をすることによつて国政が左右される。イギリスにおいて政権を握つておる労働党の国有化政策を遂行して行くために借金を負つて行くという、そういう意味で干渉せざるを得なかつたという点に、非常な問題が起るのである。ところが日本の場合においては、今も言いましたように、はつきりわかつていないという、しかもその分が非常に多い。これで経済の隷属が行われるのでなくて、どうなるか。私はこの点に非常な危惧を感ずるわけであります。こういう意味で私は聞いておるのであります。しかしながら一番重要な点は、その点が、あるいは贈與なのか、貸與なのか。――阿波丸協定ではこういう了解事項が出ておる。この点については、政府はつきりした見解を国民に知らせる義務があると思う。今になつても、お答えができないから、調査して答えるとは、一体何であるかと言わざるを得ないのであります。それで私は質問を続けますが、この見返り資金がどのくらい日本の経済全体に、大きな役割を演じておるかということは言うまでもないのであるが、これを数字的に育つてみると、もつと明瞭になるのではないかと思うのであります。私も大体調べてみましたが、見返り資金が、今度の予算に出ております国民所得総額に比べると、大体四%、総貯蓄額の二五%ぐらいを占める割合になつている。私は計算して出したのでありますが、この年間に形成される資本の六二%、これは今度の見返り資金の予定に出ている公企業の方に出る四百億と、私企業の方に出る四百億とを合せて八百億円を新たに形成される資本として見ましても、それは年間新たに日本において形成される資本の六二%を占めるのじやないかと私は計算しておるのであります。そうすると、日本の経済に対する決定的な役割を演ずるものが、この見返り資金であるということが明らかである。その問題が借金であるのか、もらつたのであるかわからないという態度でいいかどうか。この点については十分調査をして、国民に対してはつきりした答弁を、急速になさるべきだと私は思うのであります。この点についての御所見を伺いたいと思います。
  81. 池田勇人

    池田国務大臣 ヨーロッパにおきましていろいろな議論がありますが、それはイギリス、フランス、イタリアみな独立国であります。しかし日本は今占領治下である。従いましてこの問題につきましては、相当の調査もいりますし、またいろいろな関係がありますので、ここでただちにお答えすることク遠慮いたしたのであります。もちろんイタリアにおきましては、初めは債務ということがありましたが、講和條約では免除せられました。私どもといたしましては、これは愼重に考えなければならぬ問題だと思つております。  次に見返り資金が公企業並びに私企業に八百億出すからといつて、これが日本の産業の決定的なフアクターになるというふうには考えていないのであります。
  82. 植原悦二郎

    植原委員長 米原君に御注意申しますが、あなたのお言葉は感情に走つて、ずいぶん不穏当な語があることもあります。たとえば池田大蔵大臣米国の奴隷だとか、これは議員として愼むべきことだと思いますので、どうか、お言葉の御注意を願います。
  83. 米原昶

    米原委員 それならば委員長にお願いしておくことがあります。私の聞いているのは仮定とか予想とかいうことではない。総理大臣も、国際協定として結んだその協定の中に、はつきり書いてある文句が何に当るかという解釈すらおわかりにならない。たとえば昨日なんかは関税協定の問題について聞いたときに、その信任状を出したのは総理以外にないのに、その問題すら調資するとおつしやる。総理大臣しか知らないことを総理大臣が調査すると答えろ。こういうような答弁委員長が黙認されておるということでは困ると思う。そういう答弁をされるからこそ憤慨せざるを得ないのであります。そういう場合百には委員長が特に大臣に対しても忠告を與えられるように私はお願いします。
  84. 植原悦二郎

    植原委員長 お答えいたします。阿波丸事件に関することは現在起つていることでなくて、過ぎ去つたところの議会の問題であります。その問題に対正してあなたが突如質問される場合に、大蔵大臣としてはきわめて愼重を期するために、取調べてお答えするというのは当然の答弁だと思います。またただいまの大蔵大臣答弁のうちで、あなたはイタリアや英国やフランスの実例をお引きになりますけれども見返り資金の取扱いにつきましても、日本はまだ連合軍の占領治下にあつて講和條約もできておらない国であります。それゆえにこれらに対しては日本としてまだ独自の行動をとり得ないというきわめて明瞭なるお答えがあるのであります。それをあなたが混同して、イタリアや英国と一緒にならないのはけしからぬと言われるのは、あなたの独断で――あなたの独断は御随意でありますけれども言葉をお愼みなさることを私は切に希望するという意味であります。
  85. 米原昶

    米原委員 委員長から私の発言に大分お小言をいただきましたが、それでは一応了承しまして次に進みます。  見返り資金の運用について二、三聞きたいと思います。見返り資金の運用について、最近新しい今までと大分かわつた面が現われて来たと思う。それはこの委員会でもたびたび問題になつておりますところの設備資金の問題に関連して、勧銀や興銀、その他の増資を引受けて、そうして長期資金の金融をやるという点でありますが、これについて今までいろいろ説明があつたことは一応聞きましたが、それとは別にあの條件はどうなるのか、ことにあの優先株はどういうふうになるのか、ひとつ明瞭に説明してもらいたいと思います。
  86. 池田勇人

    池田国務大臣 日本興業銀行あるいはその他の銀行が、債券発行のために増資する場合に、見返り資金から出資することを予定いたしておるのであります。これにつきましては近く法案を出します。その折に詳しく御説明いたしたいと思います。
  87. 米原昶

    米原委員 これははつきり伺つておざたかつたのであります。今後法案を出すときに説明をされるというのでありますが、今度の商法が改正されます中に優先償還株というのがあります。今までの優先株とは性格が違つて来ているようでありますが、あれと大体同種類のものであるかどうかをお聞きしたいのであります。
  88. 池田勇人

    池田国務大臣 商法の改正案は見ておりませんが、大体見返り資金から出し得る優先株につきましては、優先償還の考え方を入れるようになると思つております。
  89. 米原昶

    米原委員 そういう点はやはり明細に答えられないので、あまり聞いてもしようがないと思いますが、私の聞きたいのは、この商法の改正案のようなもので伝えられる優先償還株というようなことになりますと、今までは配当だけ優先的に受けるというようになつていた優先株が、今度は元本まで返すということになる。それから今まで以上個々の株主の権利が強くなつて、一人の株主でも会社の実態についてどんどん調査し、帳簿なども全部調べるというような権利が今度の商法には出ている。そうしてまた株主総会の権利が弱くなつてしまつて、重役会が非常な権限を持つことになるという形になつている。こういう形で見返り資金が入つて来るというところに私は問題があると思う。見返り資金の問題だけでなく、外資導入の問題その他の問題にも関係がありますが、この商法改正の問題については、資本家団体の方では、労働組合の方が株を持つて会社の内情を全部探るようになるというようなことで、相当危惧の念もあるというように聞きましたが、そういう面ばかりではなく、外資が入つて来て日本の会社は全部かきまわされ、ひつくり返され、実権をとられてしまうという点も大いに関係があると思う。そういう意味で私は商法の改正案は愼重に審議しなければならぬと思います。優先株といわれるものが、配当だけ優先的に受けるのではなくて、元本までとつてさつと逃げてしまうというような形になれば、見返り資金は非常に大きな役割を演じておるから、そういう形で運営されるということになると、日本の産業の実権を自由自在にかきまわすことになります。見返り資金が、今まではマーケット・オペレーシヨンという形で、日銀や市中銀行を通じて短期貧血の面を握つて動かしておつたということが言えるとすれば、今度はこういう形で長期資金の面が見返り資金で支配され、日本の経済が支配されることになるのではないかということを私は憂えて聞いておるのであります。この点についてはつきりした御答弁がないので、さらに問題になつたときに追究したいと思います。  それから今度の見返り資金から国鉄の方に百五十億、電気通信の方に百二十億を今までのような形ではなく直接投資されるようでありますが、これはどういう理由でこういう形をとることになつたのでありますか。
  90. 池田勇人

    池田国務大臣 銀行の出します優先株の性質等につきましては、法案提出のときに御審議願いたいと思います。それから見返り資金から昨年国鉄に百五十億、通信に百二十億、合計二百七十億出したのでありますがこれは国債の引受等にやつております。しかして国鉄、電気通信は利子を負担しておつたのでありますが、来年度からは見返りから無利子で出資するということにいたしたのであります。その理由は、国と国との会計の間でありますから、これで適当だと考える次第であります。
  91. 米原昶

    米原委員 無利子は無利子でよいのですが、出資をするという形をとるわけですね。そうすると出資する場合には、出資した方にいろいろな発言権が生ずると思うが、これはどういうことになりますか。
  92. 池田勇人

    池田国務大臣 発言権は生じません。貸しただけであります。
  93. 米原昶

    米原委員 時間が非常に少いようでありまりし、安本長官にも聞きたいのでありますから……。ただこの点は、先日も国有林野特別会計の方に三十億投資されることについて百上君が言いました点と、同じ意味でこれが運営されることをわれわれは憂えて聞いておるのであります。今まででも、たとえばこの前の予算委員会でも私は運輸大臣に聞いたのでありますが、この点でもはつきりされなかつたのであります。たとえば戰前は日本の貨車は十トンが普通であつた。ところが今度三十トンの貨車をたくさんつくつておる。これは戰前は軍事川のものであつた。ところが最近はこういうものばかりつくらしておる。それから国鉄の電化の問題にしましても、電化をやめさせる理由などはないはずだ。ところが何ゆえか電化を阻止されておる。これは軍事的な理由ではないかどうかということについて、答えられない。こういう形で、発言権が強化される意味でこれが使われるというならば、私は問題があると思う。そういうことが絶対にないという保証ができ、そしてこういう軍事的な要素であると疑われるようなことを、絶対にやらないという保証ができるならばいいと思うのですが、そういうものは現在全然ない。こういう意味で私は聞いておるのであります。  さらにもう一つ伺いたいのは、昨日建設委員会はつきりしたわけでありますが、今度の見返り資金の中から占領軍の将校の宿舎を建てるために五十億円出ることになつておる。この点であります。別にこの予算に書いてあります住宅国民金融公庫から百億円の金額が出て、五十億円予算のほかに出て百五十億円です。そのほかに別個に、公企業の方の百十億余つておるものの中から、五十億円占領軍の宿舎に充てられるということを政府委員の方ではつきり答弁しておられますが、これは事実でありますか。
  94. 池田勇人

    池田国務大臣 その問題につきましては、ただいま検討を加えておるのであります。出しますにいたしましても、百十億円のうちから出るのではありません。
  95. 米原昶

    米原委員 今の最後の答えがわかりませんが、百十億円のうちから出るのではなくて、見返り資金の中から出るのであるかどうかということは非常に重夫だと思うので、聞きたいのであります。
  96. 池田勇人

    池田国務大臣 その問題はまだ決定いたしておりません。
  97. 米原昶

    米原委員 決定するもせぬもない。これは原則的な問題だろうと思います。何ゆえにこういうことが問題になるか。終戰処理費とは別にこういう費用が出るのか、こういうことを聞きたいのです。
  98. 池田勇人

    池田国務大臣 見返り資金の運用につきましては、先ほど来申し上げましたように、向うと緊密な連絡をとつてつておるのであります。そういうものを出すようなことがあつたならば。あなた方に御審議願うことになると思います。
  99. 米原昶

    米原委員 見返り資金の運営について、御審議を願つたことがありますか。そういうふうにはなつておらないと思う。大体のわくがここに書いてあるだけであつて、これをどこに出すかということは審議されてはおらない。議会に見返り資金の使途について、全部を審議する権限を與えられるのであります。見返り資金の運営についての自主権を、日本の議会にはつきり與えられるということを確認されるならば非常にけつこうだと思います。
  100. 池田勇人

    池田国務大臣 見返り資金から住宅その他を特に建てて、お話のようなことが実現する場合におきましては、他の特別会計その他の形をとつて出る場合があると考えられますので、案件の問題は、もし実現するとすれば特別会計とかあるいは公団的のものができると思うのであります。従いまして公団とか特別会計というものの審議のときに、関連して御審議を願うことに相なると思います。
  101. 米原昶

    米原委員 昨日建設委員会でその点が問題になつたときには、これは日本の所有になつて将校に貸すのである。家賃はとるからというようなことが言われたそうであります。しかし先ほど主計局長の御答弁によりますと、終戰処理費で建てたいろいろな日本における進駐軍の宿舎その他も、所有権日本にある。これがはつきりしておるのであります。問題はちつともかわつていないと思う。これは終戰処理費から出るのが当然である。もう一つそれに関連して聞きますが、ここで家賃を日本がとるからいいと言いますが、しからば日本所有権があつて今まで兵舍が建つておるのでありますか。それで一体家賃をとつておるのでありますか。聞くところによれば、兵舍にとまつている向うの兵隊さんたちは、やはり家賃は拂つているそうでありますが、それは日本政府に拂つておるのでありますか、別の方に拂つておるのでありますか。この点を明確に御答弁を願いたい。
  102. 池田勇人

    池田国務大臣 見返り資金から進駐軍の方々の住宅を建てる問題につきましては、まだ説明する段階に至つておりませんので、もしそういうことになりました場合に御審議を願うことにいたします。  なお今終戰処理費で建つておりまする進駐軍関係の宿舎料は、とつていたいと私は記憶しておりますが、はつきりしておりませんから主計局長から答弁いたさせます。
  103. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 終戰処理費で建てました進駐軍住宅につきましては、入つている人から日本政府は家賃をとつておりません。接收住宅に対しての、日本政府がその接收住宅を持つている人に対しての家賃は計上しておりますが、進駐軍の将兵の宿舍は、家賃はとつておりません。
  104. 米原昶

    米原委員 もう一つ見返り資金の支出で壱岐、対馬の特別開発地区に相当の額が出ることになつたと言いますが、この点について説明を聞きたいのであります。
  105. 益谷秀次

    益谷国務大臣 建設常任委員会という話が出ましたし、ただいま大蔵大臣答弁にもありましたが、私が関係あるようにお聞きになる議員諸君もありますから、一言申し上げておきます。  何か政府委員の方から進駐軍住宅の話があつたそうであります。私責任者として砂間委員から聞かれました際に、いまだ閣議決定の事項でないからわからないという答弁をいたしておきました。  ただいまの対馬のことでありますが、これも昨日砂聞委員から、政府は公共事業費のうちから二十億をさいて対馬に軍事基地をつくるということを聞いたがどうかということでありましたが、私はまつたく初耳で、唖然といたしておりますというお答弁をいたしたのであります。実は昨年の暮に、本多国務大臣が御承知の通り長崎県の出身でもありますので、対馬の視察をいたした際に、私の方からも特殊地域の関係をいたしてお効まする技官を随行せしめたのであります。これは長崎県から対馬が海上に見られないから、対馬を特殊地域と指定して総合開発をいたすようにという熱心なる要望がありましたので、今回は視察をいたして若干の補助金を交付する。対馬の総合開発計画を立てる助成金を渡すという計画をいたしております。そうして特殊地域の総合開発計画を樹立いたし、安本その他と連繋をいたして、特殊地域にあるいは将来指定する時期が到達するだろう、あるいはまた地方の要望に沿うて、さようにとりはからつて行きたいという考えを持つておるのであります。そうしてこれは総合開発計画ができますと、そこに公共事業費――あるいは道路費、河川費という公共事業費を重点的に、資源開発の何と申しますか、呼び水というような意味合いでその方面に使おう、こういう計画であります。二十億の軍事基地という問題は昨日以来問題になりましたが、私は昨日建設委員会で開いて、まつたく驚いて唖然といたしておる次第であります。
  106. 植原悦二郎

    植原委員長 米原君どうですか。あなたは午後までまだ質問が残るでしよう。
  107. 米原昶

    米原委員 残ります。
  108. 植原悦二郎

    植原委員長 それならばここで休憩するようにして……
  109. 米原昶

    米原委員 今の問題について一言……。私の聞いておるのは、私は最初軍事基地なんていうことを聞いておるのではなくて、見返り資金がこの特別開発計画としてこれに出るかどうかということを聞いておる。それから今軍事基地計画で唖然としたとおつしやいますが、それはまことにかつてゲーリングが言つたのと、まつたく同じ言葉を今おつしやつたのを非常に遺憾と思います。かつてドイツでヒットラーが、この第二次大戰の準備をしましたときに、当時軍備は全然制限されておる。公共事業費の名目によつてこれをやつた。(発言する者あり)だからこそ、そういうことでなくて、私は実態を聞いておるのであります。はたしてどういうところに使われるか、そういうことをはつきり知りたい。そういうことを聞いておるのです。どういう計画で大体どうものができようとしておるのか、これさえわかればいいのであります。
  110. 益谷秀次

    益谷国務大臣 私の申しましたのは、昨日建設委員会において、米原君の同志である砂間君が聞かれましたから、お答えをいたしたのであります。しかして対馬に対しては巨額の公共事業費は出ておりません。なお見返り資金から対馬に対しての土木事業を起すという計画もございません。
  111. 米原昶

    米原委員 大体において今のように、出ないなら出ないとはつきりおつしやつてくだされば問題ないのであります。絶対に出ない、今後も絶対に出ないということを今おつしやつたと了承いたします。そこで問題は今までの答弁でわかりましたように、もう援助費の性格はわかつていない。完全に奴隷的にこの運営をやつておられる。(発言する者多し)そういうものによつて日本の経済の……。(発言する者あり)やろうとしておられるということがはつきりわかつておりますので、これをもつて大蔵大臣に対する質問は打切ります。
  112. 植原悦二郎

    植原委員長 米原君に御津意申し上げましたさような言葉は、御注意ください。(発言する者多し)私語を禁じます。     ―――――――――――――
  113. 植原悦二郎

    植原委員長 この際お諮りいたしたいことがあります。予算各案に対する総会の質疑も近く終了することと存じますので、近日中、分科会の審査に移すため、分科会を設置いたしたいと思いますが、分科の区分、分科員の配置、分科主査の選定につきましては、先例によりまして委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  114. 植原悦二郎

    植原委員長 御異議がないようでありますからまず分科の区分を申し上げます。第一分科、皇室費、国会、裁判所、会計検査院、法務府及び大蔵省所管並びに他の分科の所管以外の事項第二分科、内閣、総理府、建設省及び経済安定本部所管第三分科、外務省、文部省、厚生省及び労働省所管第四分科、農林省及び通商産業省所管第五分科、運輸省、郵政省及び電気通信省所管以上の五分科を設定いたします。次に分科主査及び分科員を御指名いたします。  第一分科主査 小峯 柳多君  分科員は   井手 光治君  角田 幸吉君   中村 幸八君  松本 一郎君   南  好雄君  西村 榮一君   中曽根康弘君  林  百郎君   奧村又十郎君  岡田 春夫君  第二分科主査 松浦 東介君  分科員は   淺杳 忠雄君  天野 公義君   上林山榮吉君  永井 英修君   武藤運十郎君  北村徳太郎君   米原  昶君  松本六太郎君  第三分科主査 苫米地英俊君  分科員は   北澤 直吉君  小盗 義照君   高橋  等君  玉置  實君   勝間田清一君  川崎 秀二君   川上 貫一君  圖司 安正君   平川 篤雄君  世耕 弘一君  第四分科主査 池田正之輔君  分科員は  岡村利右衞門君  小淵 光平君   坂田 道太君  松野 頼三君   山村新治郎君  稻村 順三君   村瀬 宣親君  深澤 義守君   今井  耕君  第五分科主査 尾崎 末吉君  分科員は   江花  靜君  小平 久雄君   田中 啓一君  西村 英一君   丹羽 彪吉君  水谷長三郎君   山本 利壽君  小坂善太郎君 以上御指名いたします。     ―――――――――――――
  115. 植原悦二郎

    植原委員長 ただいま議事進行に関して中曽根康弘君からの申出があります。これを許します。中曽根君。
  116. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 議事準行に関して申し上げたいと思いますが、御存じのように、今まで予算委員会の例といたしまして、予算関係する重要法案関係委員会を通過しない間は、予算委員会においては討論採決をしなかつたのであります。今回も委員長御存じのように、税法特に中央並びに地方に関する重大なる税制改正があります。これが大蔵委員会並びに地方行政委員会等において審議されるのでありますが、不幸にしていまだ提案されておりません。提案がいつになるかによつておそらくこれはその委員会において重要法案として取扱われて、かなりの審議経過を要するだろうと思います。それに伴つて当然予算委員会における取扱いも遅れるのは、これはまた理の当然であるだろうと思うのでありますが、今回も前回あるいは前々回の慣例に従つて、ほかの委員会において最終決定しない間は、本予算を本委員会として最終決定しない、この原則を守られたいということをまず第一にお願いいたしたいと思います。  もう一つは、それによつて幸い時間が浮きました場合には、なるべくこれを有効に使うために、各党に対して時間の再分配をしていただいて、十分質疑を明らかにし、本予算に対する討議を盡されるように、委員長においてはかられんことを望みます。
  117. 植原悦二郎

    植原委員長 委員長よりお答えいたします。ただいま中曽根康弘君からの議事進行に関することでありますが、関連するところの重要な法律案が審議を終らないうちにも本案だけは、予定通りに進行された慣例は幾多あります。それゆえにこの問題については、すでに御承知の通り、本国会においては、予算も適当なときに出たのだから、予算審議の実行状態はなるべく他の委員会のいい慣例になるようにという理事諸君のおはからいで決定した予定もあります。どうか理事諸君は必ずや御自分で御決定なされたことは愼重に御考慮くださることと思いますので、それらも考慮いたしまして、理事諸君にお諮りいたして、委員長はとりはからいたいと思います。  この場合これにて休憩いたし、午後一時半から開会いたします。     午後零時九分休憩      ――――◇―――――     午後一時四十五分開議
  118. 植原悦二郎

    植原委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。米原昶君。
  119. 米原昶

    米原委員 私はもう持ち時間もあまりありませんから、要点だけをごく簡單に安本長官質問します。  午前中外国為替管理委員長から説明を聞きまして、十一月、十二月に相当大量の貿易が行われたという話を聞きましたが、どういうものを大量に輸入したのであるか、どういうところからどういう品物をどのくらい輸入したのであるか、重要な点だけを話していただきたいと思います。
  120. 青木孝義

    ○青木国務大臣 まだ私の手元までその数字ば出ておりません。従つて私はどういう物についてどのくらい輸入したかということについては、まだ詳細承つておりませんから、それが参りましたならば、さつそくわかるだけのことはお答えいたじたいと思います。
  121. 米原昶

    米原委員 相当大きなものがあつたというのですが、その総額くらいでもわかりませんか。
  122. 青木孝義

    ○青木国務大臣 私のところへは二回目の閣僚審議会で報告されておりまする為替予算というものの中の数字は参つておりますが、まだどこがどれだけという報告は参りませんので、ちよつとお答えいたしかねますが、しかしあかるだけのことはなるべく早くお答えをいたします。
  123. 米原昶

    米原委員 ほとんどそういうこともわからないでやつておられるということになりますれば、為替移管されるその直前に、相当大きなものが輸入されたということは世間一般でも大体知つておりますし、それが再び今問題になつております公団の滞貨を今度放出する問題が起つておるようでありますが、ああいう形で大童に放出しなけれぱならぬ問題が起るのじやないか、その点を心配するのであります。そういう意味で私はもつとそういう点について、大臣が正確につかんで貿易の基本方針を立てて行かれることが望ましいのであります。  次にこの一月になつてから非常に貿易が激減しているということ、それは一体どういうような状態であるが。十一、十二月から比べてどういうふうに激減しているか、それが今後どういうふうに伸びて行く見通しであるか、この点について伺いたいと思います。
  124. 青木孝義

    ○青木国務大臣 それは十一月、十二月に比べまして、多少沈滯しておるということはわれわれも聞いておりますけれども、しかし御承知かと思いますが、大体コマーシャルアカウントを中心といたしまして、アジア貿易というところが重点的に相なつております。ことに協定国がすでに十八箇国に及んでおりまして、あと三箇国ほどとも今話合いを続けておるような模様でございますから、こういうことがだんだんきまつて来次第、その範囲での契約をさらに実行に移されて来るというふうに期待をしておる次第であります。
  125. 米原昶

    米原委員 すでに十八箇国と協定を結んだとか、前から、ローガン構想、貿易協定、これで大丈夫だ、これで見通しがよくなるのだということばかりおつしやいますけれども、事実今協定貿易が始まつて、実行されようとしておる。ところがそのとたんにこれが一月になつて激減している問題が起つているのです。協定貿易そのものがはたして予通りに行くか行かないか、まだ実行上始めの最初にあたつて、ローガン構想が行き詰まつておるではないか、この点なのです。協定を結ぶからうまく行くだろうと安易に考えられないのです。その協定すら実行されない現状になつて来つつあるのじやないか、その点なのです。十一月と比べれば、この前、朝日新聞にも出ておりましたが非常に激減している。約半分に激減している。こういうような状態で、今協定貿易が実行できるかどうかということをわれわれ不安に思つているので、協定を結んだからよくなるだろうという、今まで言われた言葉では満足できない、これではたしてよくなる見通しがあるかどうか、自信のある言葉大臣から聞きたいのであります。
  126. 青木孝義

    ○青木国務大臣 もちろん一箇年を通じてわれわれとしては一応計画を立てるのでありますが、しかしながらこれもまた御承知の通りクォータリーの一つの計画が立つておりまして、外貨予算がきめられております範囲で輸出入が行われて行くということであります限り、その協定に基いた取引関係から、大体自分たちの予定しているだけの取引ができるというふうな考え方で進んでおる次第でございます。
  127. 米原昶

    米原委員 今おつしやるような、今までも言われたようなただ抽象的なお話では、これは話にならぬのです。協定を結んだとかなんとか、ローガン構想でうまく行くとかいうことは初めの予測であつて、実際に実績として今起つているもので行き詰まりが起つている点なのです。実際に一月の貿易は行き詰まつて来た。これは一時的な不振であつて、今後はよくなるということが言えるなら、その点についての説明を願いたいのです。たとえば最近ではスターリング地域の方がブロック経済の方向を示している。だからたとえばインドと協定を結んでいても、この協定が実行されないうちに、インドの方ではアフリカとやつている。こちらの輸入の方は許可しないというような問題が起つで来ている。そういう問題なのです。またはポンドのやみ相場が下落して来た、こういう面で、こちらの貿易も日英協定の方は実際に実行できない面が出て来ている、こういうことは一時的な問題ではなくて今後恒久化して行くのじやないか、そうすれば協定貿易とかローガン構想といつても、初めの出発点からこれの行き詰まりが出て来るのではないかというのでわれわれは不安に思つているのであつて、これをはたして好転できる見通しがあるかどうか、この点を聞きたいのであります。
  128. 青木孝義

    ○青木国務大臣 今あなたのおつしやいますことも抽象的でございまして、われわれはポンドのやみ相場というようなものの動きのありますことは、決して知らないわけではございません。世界経済の動きに従つていうお考え方については、私どもも考え方を違えておるわけではありません。しかしかりに十二月によかつた、一月には少し鈍調だ、こういうことがありましても、ともかくもそれが時々のそういう事情によつて動くということは、経済界の常のことでありまして、それが常に予定通りに、きちつと国際間にきまつた月に、きまつた日に行くというものではなく、大体において経済の状況というものは、その動きが御承知の通りの事柄であつて、今一月は少し落ちた、今度は二月はどうか、こういう問題になりますと、やはりわれわれはわれわれの計画に基く協定貿易を中心にして考えるということが、一番いわば間違いのない考え方だ、こういうことになると思います。
  129. 米原昶

    米原委員 そういう抽象論をやつていては切りがありませんが、それならば、私聞きたいのは、だからこれは一時的な不振じやないということを具体的に説明してもらいたいのです。たとえば今言いましたポンド地域の方でブロック経済化の傾向が起つておる。少くともインドなどでは、日英協定に基く日本輸入許可しない先に、アフリカの方とやつておるという問題が実際に起つておる。こういうものをどういうやり方で打開されようとしておるのか、このままほつておかれるのか。それからたとえば中南米の方でもそういうきざしが起つて来ておる。これはドル地域の方であるが、そこで日本輸入を制限する問題が起つて来ておる。こういうものをどういうふうに打開して行くかというような見通しを聞かなければ、そんなにおつしやつても簡單には承服できない。  それからたとえばポンドのやみ相場が下落した問題でありますが、綿花なんかが、そこで二、三割上つて来たという問題が起つて来ておる。これはどういうふうに今後いい見通しが持てるか。最も重大なのは、実際日本の手持ちのポンドが不足しておる問題です。これはけさほど木内為替委員長からも聞いたのでありますが、この六千七、八百万ドル外貨予算のうちに、最初五百万ポンドしかないということをはつきり今日おつしやつた。五百万ポンドで日英協定が実行できるか、ポンドの足りないという問題が最初から起つておると思うのです。これでは予定通り協定貿易に行くなんて言えないと思う。このポンドの不足はどうされるつもりでありますか。何かドルポンドを買うというようなことでも考えておられるのですか。その点について具体的に御意見を聞きたい。
  130. 青木孝義

    ○青木国務大臣 日本から輸出をいたしておりますし、またかねてから輸出超になつている点もあつたと記憶いたしておりますが、当面の問題として、今おつしやいますように、外貨を現にその名義で持つております外為替委員長から午前中に御説明があつただろうと思いますが、そういうことでありますれば、やはり貿易のことでありますから、輸出輸入関係、それから貿易外の受取勘定とか、そういうような関係が絶えず発展しつつあるのでありまして、ある時期をとらえて、ただちにこれが悲観である、こういうふうな断定を下されることは、はなはだ早計であるというふうに思います。ことに世界経済の今日の状況を考えてみまして、アメリカの景気がどうか、あるいはイギリスの景気がどうかというようなことは、ただちに日本に対しても影響があることは免れません。従つて将来惡くなるだろう、たとえば滯貨がふえたからすぐ惡くなつた、そういつたふうに惡い材料を集めて参りますれぼ、悲観的な結論が生れるのでありましよう。しかしわれわれは必ずしもそんなふうには考えておりません。大体の予定した線で進んで行けるだろう、こういうことであります。
  131. 米原昶

    米原委員 今のような説明では全然合点が行かない。私は独断的にこの問題を言つておるのじやない。この前の公聴会でも貿易業者の方々からどういう状況にしろ、とにかく業者としては一生懸命やらなくちやならぬと言われましたが、だんだんと楽に行くということは、決しておつしやつておられない。そのほかの人でも、輸出がそう簡單にうまく行くというような見通しは持つておら、れないのであつて独断的に私は言つておるのじやない。現実にそういう障害が起つておるのだから、これを打開する方法を聞いておるのです。ことに今言いましたポンドの問題はポンドが最初から不足しておる。この形で輸入優先のローガン方式をやつて行けるか、最初から問題だつた。このポンドの不足をどういうふうにして解決して行くか。ドルでもつてポンドでも買うようなことを考えておられるのかということを聞いておるのですが、その点についてでもお答えいただかなければ、全然これは答弁になつていないと思う。
  132. 青木孝義

    ○青木国務大臣 これはもちろんそう簡單に解決できないことはたとえば世界におけるドルの不足とか、あるいは田本におけるポンドの不足であるとか、そういうようなことは結局貿易の推進いかんということにかかつておりますので、輸出がその相手国に増加すれば、おのずからそれに対価として支拂われるということでありますので、われわれとしては輸出を増進するというところに重点を置いて進んで行かなければならぬ、こういうことであります。
  133. 米原昶

    米原委員 その輸出が、現在こういう障害が起つておるのだ。だからそれをどういうふうに打開されるか聞いておるのであつてそれについて具体的にどういう見通しが持てるか、どういうふうなやり方を政府として考えているかをおつしやらないで、いくら抽象的におつしやつても、合点が行かない。ポンドの問題にしても全然触れられませんし、五百万ポンドでもつてローガン方式を実行できるはずがない。そのローガン方式そのものでも、たとえばドイツの場合をとつてみても、ドイツはローガン方式で非常に成功したといわれたにもかかわらず、すでに行き詰まつておるびドイツでは決して成功していない。ローガンさん自身が辞職をされたじやないですか、そういう問題が起つておる。ところが日本の場合は、ローガン方式が実行される第一歩のときに行き詰まつておる現象が出ておる。この点が心配で私は聞いておる。いくらそういうことをおつしやつても、これでは何もできないと思うのであります。これが一体できるのですか。
  134. 青木孝義

    ○青木国務大臣 もちろんポンドが少いということで、ローガン構想をそのまま達成することはできないであろう。そういう場合におきましても、われわれがただそうしてほつておくというわけではございませんが、なおそういう点については今後も十分検討して参りたいと思います。
  135. 米原昶

    米原委員 そういう答弁が繰返されるのでは何にもなりません。たとえば一月になつてから、機械の輸出なんかでも、ドイツやベルギーの競争のためにぐつと少くなつてしまつた。沖縄向けの機械が少しふえておるそうでありますが、その意義についてはなかなか重大であつて、こういうものにたよることができないのは明らかであります。日本が今後平和産業を推進して行くためには、そういうものにたよることはできない。雑貨でも十二月と比べると七分の「に下つておる。一番輸出のかぎであつた綿布だつてつてお百る。そういうふうな事態が起つておるのであつて、そう簡單に楽観的に、輸出を増進すればといくらおつしやつても、輸出が実際に減退しておる。どういう一体方策があるか、こういうことなんです。
  136. 青木孝義

    ○青木国務大臣 貿易政策の上では、たとえば東南アジアの開発計画とか、いろいろな問題が持ち上つおるのであります。そういうような点でだんだん打開して行けると考えておりますが、なお昨年度におきまする輸出超過等も百五十万ポンドぐらいある。そういうことも考えの中に入れて行けば、何とかその間に打開して行けるというふうに考えております。
  137. 米原昶

    米原委員 輸出超過があつたとおつしやいますけれども、それが今ポンド不足になつておるのですよ。そのポンド不足の問題をどういうふうに解決するかもおつしやらないで、こういうことは言えないと思う。
  138. 青木孝義

    ○青木国務大臣 ポンド不足とあなたがおつしやるのは、向うポンドが不足しておるので、こちらでは向う輸出超過になつておるから、受取る分がある。従つてそういうものを加えれば、この際当面の状況としては、そういうもので補いがついて行くだろう。ざらに東南アジアの開発計画というようなものの線に沿いまして、さらに輸出増加をして行くということも考えておる、こう申し上げておるのであります。
  139. 米原昶

    米原委員 ところが、実際にはポンドが不足しているのです。五百万ポンドしかない。けさ外為の委員長が言われた。だからポンド不足の問題をどういうふうに解決するかということを言つてください。
  140. 青木孝義

    ○青木国務大臣 これは今も申し上げましたように、九百五十万ポンド協定差額が残されておりますから、そういう点でできると思います。
  141. 米原昶

    米原委員 その協定差額というのは、これに入つているのじやないですか。それが結局、実際には五百ポンドにしかなつていないのじやないですか。だから聞いているのですよ。
  142. 青木孝義

    ○青木国務大臣 もちろんこれはこちらの輸出を増加するということにならなければなりませんが、しかしその現在の特高の数字については、なお貿易局から答えることにいたします。
  143. 植原悦二郎

    植原委員長 湯川貿易局次長から、ただいまの件について説明があるそうです。湯川貿易局次長
  144. 湯川盛夫

    ○湯川政府委員 ポンドのイニシアル・フアンドが五百ポンドしかないのに、スターリング協定がそれで実行ができるかという御質問かと思いますけれども、イニシアル・フアンドとして移管を受けましたのが五百万ポンドでありますけれども、そのほかに輸出の見返り代金というものが入りますので、その最初のフアンドと、それから輸出の見返り代金を合せました分で、輸入ををまかなつて行くということで、大体バランスがとれるというふうに考えております。
  145. 米原昶

    米原委員 それだけのことなら……
  146. 植原悦二郎

    植原委員長 米原君に御注意申し申しますが、あなたの時間はもう非常にわずかしか残つておりませんから、議論はやめて、どうか質問だけをなさるようにしてください。
  147. 米原昶

    米原委員 それは輸出代金りことなら知つている。しかし今輸出が非常に行き詰つておるのに、イニシアル・フアンドが五百ポンドしかないという、このことを聞いている。だから全体として困るじやないかということを聞いているのです。それをいくら議論しても、これでは全然妥当なる回答とは思えません。それじや、実際に貿易で、とにかく日本の経済が再建でき、安定するということ自体が、根底から動揺しているんだということは明らかだと思うのです。これでは全然なつていないと思うのです。この外貨予算の問題にしましても、外貨予算を公表することができない。なぜ公表されないかこの点、一点だけ言つてください。
  148. 青木孝義

    ○青木国務大臣 外貨予算につきましては、これを発表することになりますと、いろいろ貿易上の利害係が生じますのでそういう点について詳細な発表はできないことは、はなはだ遺憾でございます。
  149. 米原昶

    米原委員 その点についてはこの前も議論があつたようでありますが、シンガポール電報なんか入つて来て、日本外貨予算がどうなつているか、みな向うに筒抜けである。日本の商人なんか通産省からプリントをもらつて来ているものがいることは聞いております。だから全然そういうことはないだろうと思います。事実上は、この前、日本がこの外貨予算の実権を握つていると言われた安本長官のお言葉は、事実と違うということだろうと思います。事実上は自主権がなない。そのために日英協定も根底から、始めからできぬ相談なんです。大体日英協定をやるのに向うの通貨、ポンドでやるわけでありません。こういうこと自体が初めがらむりな相談なんです。そういうような自主権を全然持つていない貿易、このやり方で行くために、もう貿易よりほかにないという、その貿易が行き詰まつておるこれが姿だと思う。これでは日本の再建も、経済の安定も全然できないものだということはわかりましたから、これでもつて私の質問を打切ります。なお石田税関部長に対する質問が残つておりますが、これは税関部長がおいでになるまで保留しております。
  150. 青木孝義

    ○青木国務大臣 おつしやることは、たびたび今まで御質問で私どもお答えをしておるのでありますが、大体発表することのできる範囲のものだけは発表いたしたのであります。問題は、どの地域から、どういう品目を、どれだけ買うか、そういふうなことを公表いたしますと、先ほども申し上げましたようにいろいろと貿易上の利害がございますから、それで発表できないのでございます。決してわれわれがわかつていることを隠蔽しておるわけではなく……     〔発言する者あり〕
  151. 植原悦二郎

    植原委員長 林君御靜粛に願います。
  152. 青木孝義

    ○青木国務大臣 また先ほどおつしやいました向うから言つて来ておるのは、ごく概念的なことであつて、われわれの立場といたしましては、日本の不利益になるようなことは考えないという立場から考えておるのであります。その点は御了承願いたいと思います。
  153. 米原昶

    米原委員 その問題にいたしましても、そういうふうに弁解なさることはわかりますが、たとえばゴムにしても、アメリカが十トン買えば、日本は一トン十分の一くらいの割合なんです。だから日本がそういうことを発表したからといつて相場にほとんど影響しない。そういうことは事実なんです。そういうことは口実にならぬ。事実上は日本貿易がほんとうに日本人のものになつていないという姿が、はつきり現われているということを確認しまして私の質問を終ります。
  154. 植原悦二郎

    植原委員長 次は圖司安正君に質疑を許します。圖司君に申し上げておきますが、大蔵大臣は二時半にまた御用だそうですから、それまでにあなたの大蔵大臣に対する質問を簡潔に縮めていただければたいへんけつこうです。圖司安正君。
  155. 圖司安正

    ○圖司委員 それでは大蔵大臣質問いたします。  昨年の十二月一日に、衆議院では満場一致をもつて東北振興に関する決議案を通過せしめたのであります。そのうちに税に関する問題といたしまして、決議案の第四項ですが、「昭和二十一年度以降二十三年度までの国税收入は、独り仙台財務局だけがいわゆる徴收目標額の一二〇%乃至一三〇%の実績なるについては、その一〇〇%を超過せる部分について還付するか又は昭和二十四年度以降の減税額に充当するの措置を請ずること。」ということをはつきりうたつてあるのでございますけれども、前の国会におきまして、その点について大蔵大臣に私は質問をいたしたのでございますが、はつきりしない部分があつたのでございますから、その点をあらためて御明答を得たいと存じます。
  156. 池田勇人

    池田国務大臣 徴税目標額を越えた過年度分の税金を還付してはどうか、こういうお話でございますが、税は税法によりまして適正にとられたものでございます。徴税目標額というものは権威のあるものではございません。従いまして還付することはできないと考えております。
  157. 圖司安正

    ○圖司委員 大蔵大臣は前の国会からこの点を繰返し範、還付はできないとお答えになつておるのでございますが、実際を見ますと、各財務局によりましては一〇〇%に達しない所もあり、一〇〇%を越えている地方もきわめて明瞭になつておるのでございますから、一〇〇%に達せざる財務局につきましては、もとより大蔵省といたしまして最善の御努力をなさるのでありましようけれども、いや丸くも徴税目標額を全国的にな努めまして公平適正の見地から決定せられ、よしんばそれが事務的な措置であろうとは申しましても、これを財務局を通じて税務署までお示しになつて、その目標額に向つて税務官吏を動員して目的達成に邁進せしめた以上は、やはり一〇〇%を越えた地方におきましては、昨年度におきまして二百億、本年度において七百億の減税をなさる、こう申されておる大蔵大臣が、その減税額に優先的にその部分を繰入れるということは、政治上の措置としてきわめて必要なことであろうと考えちれるのでございますが、それに対してもう一回承つておきたいのであります。
  158. 池田勇人

    池田国務大臣 税制を改正して国民の質担を軽減する問題と、予算額に対しまして自然増收が出た場合の措置の問題とは違うのであります。お話の通りに、昭和二十三年度におきましては、三千百億円の予算額に対し三百億近い自然増收があつたのであります。しからばあなたのお話をもつてすれば、この三百億をすぐ返さなければならぬことになるのでありますが、そういうことをいたすことはできないと考えております。なお目標額を突破したとか、突破しないとか申しましても、その計算が法人税で目標額を突破したのか、あるいは酒税で突破したのか、取引高税で突破したのか、申告納税で目標額を突破したのか、こういう問題があるのであります。たといそれが申告納税の分で予想額を突破いたしましても、それは目標額が少かつたか何かによるものでありまして、税法で適正に徴收すべかりしものは、予算額とかなんとかいうものを越えましても、これを還付すべきものでない。しかしてまた税法が適正に行われなくて、むりな税金をとつた場合には、税法に基いてこれは還付する手続をとるべきだと考えております。
  159. 圖司安正

    ○圖司委員 税種によりまして目標額を突破したどうかというようなお話でございましたが、私の御質問申し上げておるのは、申告所得税を中心としてでございます。申告所得税について見ますと、明らかに目標額を突破いたしておるのであります。なお具体的な税務署の調査を見ますと、大蔵省が示しました目標額に対して、賦課する場合に水増し課税というものをやつておるのでございます。この点に対して大蔵大臣は水増し課税をやつておるとお認めになられるかどうか、お伺いしたい。
  160. 池田勇人

    池田国務大臣 水増し課税なんかありつこないことであるのであります。目標額は、各地の課税の適正を期しますために一応の相談には乗るのでありますが、これは決して権威のあるものではございません。税金というものは個々の人が税法に従つて納めるのでございますから、目標額はあつてもなくても、そんなことは私は問題ないと考えます。
  161. 圖司安正

    ○圖司委員 賦課する場合に水増しはやつておらぬというお話でございますが、東北の税務署なりあるいは現に手元に持つておりまする新潟県の某税務署の調査を見ましても、明らかに水増しをやつておるのでございます。さればこそ東北地方だけがひとり一二〇%以上を超過するなよう好成績を示しておると思われるのでありまして、その点に対して税参法上はできない、このことは私もわかります。しかしながら何分にも生産の低い、所得の少い東北地方が、かような重税にあえがなければならない現状に置かれておることに対しまして、大蔵大臣としては特別の措置をお考えになつておられるかどうか。税法上においてはできないのでございましようけれども、幸いにして昨年度第四・四半期から本年度にかけまして、約九百億の減税を見込まれておるのでございますから、その場合に特に東北地方の減税ということに対して、政治上の施策をお考えになつておられますかどうか、あらためてその点をお伺いいたしたいのであります。
  162. 池田勇人

    池田国務大臣 東北地方に対しまして特に減税の措置をとることは考えておりません。
  163. 圖司安正

    ○圖司委員 税というものは地域によつても私は公平を期さなければならないと思うのでございます。しかも応能負担の原則は、嚴にこれを守らなければならないと思うのでありますが、東北地方の実情を見ますと、特に他の地方と比較いたしまして積雪、寒冷による事業費の増嵩と生計費の損耗は、莫大な数字が現われておるのであります。これは新潟県高田税務署の税務官が調査いたした資料でございますが、それを見ますと、製造業者の場合におきましては、昭和二十二年度において一万二千五百六十二円、昭和二十三年度において二万五千三百五十八円、昭和二十四年度において一万九千百六十九円、すなわちそれは事業費全体に対しまして一割内外を占めておるのでございます。それに対して税務署が経費の控除額として認めたるものは、わずかに昭和二十二年度において二千二百六十二円、二十三年度において六千五百五十八円、二十四年度において五千五百九円と相なつておるのでございます。生計費におきましては寒冷、積雲による被害は二十二年度は四万五千円、二十三年度は十万円、二十四年度は十八万円という計算をいたしております。物品販売業者によりますと、二十二年度は一万二千二百九十二円、二十三年度は二万一千五十二円、二十四年度は一万三千七百十二円、これに対して雪害額として控除いたしましたものは二十二年度は一一・四%、二十三年度は一六二彦、二十四年度は一八三彦にすぎないのでございます。さらに生計費に至りましては、二十二年度は二万五千円、三十三年度は七万円、二十四年度は十二万円、かように相なつております。最後に農業の調査でございますが、農業者の二十二年度における雪害は一万四百四十円、二十三年度は一万九千四百五円、二十四年度は一万七千六百十円、これに対して控除いたしておる点は明らかになつておりません。これはわが国において最も降雪地帶であるといわ拠る新潟県の高田税務署の直接調査でございますけれども、東北地方におきましても、およそ同工異曲の雪害が調査の数字となつて現われておることは明瞭でございます。これに対して大蔵大臣は税率におきまして、あるいはまた特別控除の方法におきまして、どのような措置を講じておられますか。お伺いいたしたいのであります。
  164. 池田勇人

    池田国務大臣 所得税法は所得を得るに必要なる経費しか控除しないことに相なつております。他の税、たとえば家屋税とか土地につきましては、横雪地方につきましては課税標準によつて適当の措置を講じておるのであります。現行の所得税法で生活費がたくさんかかるところ、生活費が少くて済むところを税率その池で区分することは、とうてい困難な問題だと考えるのでありまして、各国ともそういうことはとつおりません。実際上なかなか困難な問題であるのであります。従いまして積雪地方につきましては、特に所得を得るに必要なる経費という名月で見ておるのでございます。
  165. 圖司安正

    ○圖司委員 それでは逆にお伺いいたしたいのでありますが、官公吏の給與に対しまして、特に寒冷積雪地帶に対しましては、三割ないし六割の特別の増加を認めておるようでございますが、この点に関する大蔵大臣の見解を承りたいのでございます。
  166. 池田勇人

    池田国務大臣 この問題につきましては従来議論があつたのでありますが、職員の生活の状況を見て出すことにいたしておるのであります。従いましてそれは営業者あるいは農業者について、先ほど申し上げましたような地方によつて生活状況によつて、所得の税率を区分したらよろしいじやないかという議論が立つと思うのであります。しかしこれは一つの議論でございまして、実際問題としてそういうことをやることは非常に困難な問題だと考えております。
  167. 圖司安正

    ○圖司委員 ところが実際におきましては官公吏の寒冷積雪による特別手当に対しましては、ずいぶん各府県にわりまして、しかも詳細な調査の上でその給與の率を決定いたしておるのでございます。もう少し大蔵大臣に熱があつて、地方の実情に対して、ひとり官公吏のみならず、一般商工業者及び農業者に対して御理解を持たれましたならば、こうした特別控除の方法を講ずること、あるいはまた税率の上でこれをはつきりと三分の一なりあるいは五分の一なりを軽減する措置を講ずることは、あえて技術的にも私には不可能ではないと考えられるのでありますが、この点に関して大蔵大臣はいかがお考えでございますか。
  168. 池田勇人

    池田国務大臣 私は非常に困難な問題でございまして、技術的に名案を特つておりません。そういう議論があることは、これは衣料切符の問題についても、また米価の問題につきましても同様の議論があるのであります。そういう問題につきまして、ある程度の緩和ができましたにいたしましても、所得税等につきまして地方別に税金なり控除の点を考えるという案は、なかなかできないのでございます。東北地方が少くなれば、今度は九州の方で税率を高くするとかなんとかいう問題も起つて来るのでありますが、私といたしましてはその区別を税法に織り込むだけの案を持合せておりません。
  169. 圖司安正

    ○圖司委員 ただいま大蔵大臣の、成案を得られておられないということは私もよくわかるのであります。しかしこれは将来の問題といたしまして、しかもきわめて近い将来の問題といたしまして、特に日本の南北に細長く、しかも東西に狭い地勢のもとにおきまして、気候條件、生活條件のことことく差別のある日本の特殊の事情のもとにおきまして、さらにこれを大きくながめましたならば、講和会議以後における日本経済が世界経済の中に飛び込んで参りまする場合に、一番経済の脆弱面が大きくしわを寄せられるというような観点からいたしましても、大蔵大臣としてはこの点に対して、私は課税標準ということよりも、むしろ税率の上ではつきりさせるということが、税の官吏をして適正な徴税を行わしめることにもなり、また納税者に対しても、きわめて納得の行く徴税方法でもあろうかと思いますので、近き将来において御考慮なさる御意思ありやいなや、その点を念を押して承りたいのであります。
  170. 池田勇人

    池田国務大臣 ただいまのところ、近い将来にそういうことを考慮する考えは持つておりません。
  171. 圖司安正

    ○圖司委員 安本長官にお伺いいたしたいのでありますが、ただいま大蔵大臣にお伺いいたした十二月一日の衆議院満場一致の決議になる東北振興に関する問題につきまして、政府としては総合施策の立場から、どのような方途を実際におとりになるかどうか。その点をお伺いいたしたいのであります。
  172. 青木孝義

    ○青木国務大臣 経済安定本部は、従来国土総合開発ということに重点を置きまして、いろいろと研究はいたして参つております。従いまして、さらに国土開発審議会等の御意見をも十分くみとりまして、東北地方に対する特別な開発計画をなるべく早く策定いたしたいと考えておる次第であります。
  173. 圖司安正

    ○圖司委員 本年度の予算を見ますと、北海道の開発につきましては、あるいは農林省の予算に、あるいは建設省の予算に、あるいはまた経済安定本部の予算に特別のわくをもつて相当額を計上いたしておるようでございます。すなわち政府の施策をもつて北海道の開発をはからんとしておる意図がきわめて明瞭に現われておるのであります。ところで積雪寒冷地帶、特に東北地方の開発につきましては、何ら予算面には具体的に現われておりませんが、その方策についてどのようなお考えを持つておられるか、お伺いしたいのであります。
  174. 青木孝義

    ○青木国務大臣 御承知かと思いますが今年度の公共事業費においても、東北地方の分については相当考慮いたしておるつもりであります。
  175. 圖司安正

    ○圖司委員 安本長官の御答弁はきわめて抽象的で、満足しがたいのでございます。それでは具体的ほお伺い申し上げますが、かつて政府は東北振興のために東北興業株式会社と東北振興電力会社の二つの会社を興して、総合的な開発計画を立て、これを実施面に移されたのでありましたが、現在政府といたしましては、東北興業は開店休業のような、いわば仮死状態のままに放置されておるのでございます。これに対して監督官庁は建設省であると思いますけれども、建設大臣の御方策を承りたい。  さらに何と言いましても、電力の開発こそ東北の総合開発の基幹であると存じますが、東北振興電力会社の自発に統合せられたる現在におきまして新たにそうしたかつての東北振興電力のような会社を興される御意思があるかどうか、また現実に準備せられておるかどうかその点をお伺いいたしたいのであります。
  176. 益谷秀次

    益谷国務大臣 東北振興株式会社は、御承知の通り昭和十二年に発足いたしたのであります。終戰後は特殊経理会社に指定せられましたのでその関係と、またいろいろの関係から制約を受けまして、現在は企業整備の途上にあるのであります。しかるに幸いにして昨年八月から、この社会の特殊性と申しますか、存在価値と申しますか、これを認められまして、そうして今企業再建整備計画も認められたのであります。しかして今後東北振興株式会社の運営はどうして行けばいいか、これも御承知の通り財政上の国家の援助が打切りになりましたので、会社も監督官庁の私どもも愼重に、真剣に検討をいたしておるのであります。しかもこれまでは投資事業があつたのでありますが、今後は主として直営事業の方面に重点を置いて進まなければならぬという考えで、その方向に会社を仕向けて参るつもりであります。しかも現在国土総合開発ということがやかましく叫ばれておりますのみならず、国家の要語でありますので、この観点から東北振興会社の長年の経験と、また地域的のつながりを生かしまして、東北地方の未開発資源の総合開発計画、これを十分に検討立案いたして、将来の東北振興会社の発展の基本事業といたして参りたいと存じております。しかして目下東北振興株式会社におきましても、この立場から現在政府が北上川水系において治水事業としてダムその他を建設いたしておるのであります。これを利用いたしまして、あるいはまた政府の治水事業と関連して発電をいたすとか、またその発電を利用して、たとえば石灰窒素工業を起すとかいうので、大規模の計画を今立てて、熱心に研究いたしております。政府におきましてもこの計画立案等を十分に愼重に検討いたしまして、でき後る限りの助成と援助をいたす考えであります。
  177. 圖司安正

    ○圖司委員 東北興業会社の中途における性格はまるで投資会社のような、しかも利益を追求するに汲々としておつた醜い姿をさらしておつたのでありますが、今監督官庁である建設大臣が未開発資源の開発、すなわち生産面に重点を置かれるということに関しましては、私ども心から賛意を表するのでございます。同時にそのことは、現在の東北興業の資本力をもつてしては十二分に目的を達成することが困難ではないかと考えます。従つてその資本のおそらく過半数を持つておられる政府は、さらに増資をするお考えがあられるかどうか。あるいはまた見返り資金その他の外資を導入するに対して積極的な方策を持つておられますかどうか、お伺いいたしたいのであります。
  178. 益谷秀次

    益谷国務大臣 東北振興株式会社は、先ほど申しました通り企業再編成の計画を立てて、むだなことをなくするようにし、また投資事業方面におきましても、有利な企業條件のあるもののみを残しまして、その他を整備するこいうように再建整備の計画を確立いたして、あるいは融資の方法、あるいは見返り資金の方法等を大蔵大臣その他とも協議いたして、この計画を実行せしめるをもつて東北振興会社の基本事業としなければならぬという決定をいたしますれば、さような方面に努力をいたしたいという考えであります。
  179. 圖司安正

    ○圖司委員 東北興業の再建と関連いたしまして、政府が一昨年来実施せられております特定地域の総合百開発との関連でございますが、政府といたしましては、特定地域の開発という問題を、單に建設省にだけおまかせになつておる傾きが見受けられるのでございますけれども、それに対して建設大臣の御所見はいかがでございますか。そして東北地方において特定地域と指定せられております地方の開発計画と、東北興業の事業とをいかにマッチせられるお考えでありますか。その点をお尋ねいたしたいのであります。
  180. 益谷秀次

    益谷国務大臣 特殊地域を指定いたしまして、総合開発計画をきめるのでありますが、これはどこまでも地方総合開発の前提といたしまして特殊地域を指定して、総合計画を樹立するのであります。政府昭和二十三年度から現在に至るまでに経済安定本部と連絡をとりまして、全国において十四箇所指安いたしております。関係の各所と緊密な連絡をとりまして、今公共事業費を地方の資源開発の呼び水として、重点的に計画の線に沿つて使つておるのでおりまして、これは先ほど申しました通り、地方総合計画の前提でありますから、行く行くは地方の総合開発の計画あるいは東北の総合開発、日本国土全体の総合開発計画ということに及んで参ると存じておるのであります。
  181. 圖司安正

    ○圖司委員 どうも質問に対する答弁がちよつとぼけておるようでありますけれども、東北振興というものは北海道開発に次いで、私どもは国策として大きく取上げなければならないと考えておるのでございます。その開発方策が、北海道に対しましては政策の施策をもつてやるということでありましたならば、東北に対しては半官半民的な施策をもつてやられるのであるかどうか、そうしてそれは現在政府が特定地域の開発計画を立てられて、その実施を進めておられるのでございますけれども、優先的に特殊地域というものを東北地方に設定して、政府の力と東北興行の半官半民の力とをマッチさせて、急速に東北の開発をはかられる御方針を具体的にはどういうふうに立てておられるか、その点をお伺いいたしたいのであります。」
  182. 益谷秀次

    益谷国務大臣 東北振興株式会社の点については、先ほどお答え申し上げた通りであります。それから特殊地域の問題も先ほどお答え申し上げた通りであります。東北全般に対する総合開発計画は、先ほど安本長官お答え申し上げました通り、これは国全体の国土総合計画が決定いたしますれば――むろん東北関係については、東北の立地條件もございますし、特殊性もあるであろうとと思います。それを十分に加味し、東北特有の計画が樹立せられることと信じております。ただ北海道につきましては、今回閣議決定におきまして、北海道開発庁とかなんとか申しましたが、国務大臣がこれを主管するという庁ができることに決定いたしたのであります。これは従来からの歴史的の関係がありますので、北海道は、広汎なあの地域が内地のごとく小さく嚴重に分割いたしておりませんので、北海道全体を対象といたして、おのおの公共事業費を使つておりますから、特に今回も北海道総合開発審議会というものを設けまして、北海道は北海道として取扱つております。東北は別個に、北海道のごとく総合開発計画の審議会がございません。ただいま申し上げました通り、東北地方の特殊性を生かし、国土計画の一環として近く計画が樹立せられることと思います。
  183. 圖司安正

    ○圖司委員 北海道には昔から開発事業というものが推進されて参つたのでございます。東北地方に関しましては、東北の凶作だとか、あるいは飢饉だとか、経済悲況に陷つた場合においてのみ、救済的な意味において東北振興計画を立てられ、そうしてそれが結論を得ずして、うやむやの間にわけがわからなくなつてしまつたとういうのがこれまでの状態でございます。この際日本経済がどうしてもデフレの線を下降しようと、ておる場合に、特に経済面において脆弱である東北に対して、北海道と同じような、もしくは北海道に次いでの開発計画を立てられるということは、ひとり東北を振興せしめるばかりでなく、日本国の経済発展に大きく寄與貢献せしめるゆえんであると考えるのでございますが、私は東北振興の総合計画に対して、もう少し高い見地から安本長官の総合的御意見を承りたいのであります。
  184. 青木孝義

    ○青木国務大臣 圖司委員も御承知のことと思いますが、経済安定本部は従来この国土総合開発計画というものに力を入れて参つたのであります。今回特に各省ともいろいろと連絡検討をいたしまして、一応中央におきまして日本全体の各地方計画というものをとりまとめたいというので、その目標試案というものを作成いたしたのであります。これをきつかけといたしまして、それぞれ地方には地方のどうしてもやらなければならぬという計画がございますので、経済安定本部といたしましても、これを了解し研究いたしまして、日本全体の総合計画というものの中で、特に特殊開発地帶とか、あるいはまた特に東北地方のような――おつしやるような意味での重要性につきましては、十分今後とも取入れて参る覚悟でございますが、やはり総合計画全体として、中央と地方との緊密化を十分はかつて参りたい。こういうことで今せつかくそのとりまとめを急ぎつつある次第でございます。また今日の御主張等も十分今後とも考えまして、ともかくも日本の再建復興計画に件つた国土開発計画というものを完全なものにして参り、すみやかにこれが実行に移して行くことを目途しながら、努力いたして参る覚悟でございます。
  185. 圖司安正

    ○圖司委員 問題は消極面ど積極面の二つにわけ得ると思うのでございますが、消極面におきまするいわゆる負担の軽減という問題は、特に東北地方においてきわめて緊急かつ重大なるを私どもは認めるのであります。何と申しましても、事業費の上におきましてあるいは生計費の上におきまして、他の地方とは比較にならない寒冷、積雪に要する特殊な経費は、海常的に毎年毎年負担せしめられておるのでございます。これは單にいわゆる臨時突発的な災害と認めるわけには行かないと思う。それだけ立地條件におきまして非常に惡い状態に置かれておるのでございますから、特別の税率を設定して、それによつて負担の軽減をはかり、生産の基盤を安定せしめるということが、きわめて重大だと考えるのでありますけれども、国税におきましても、あるいは地方税におきましても、あるいは地方税におきましても、この点はまことに画一的な方法をとられておりまして、その画一的な方法は、東北地方に関する限りにおいてきわめて不平等なる面に現われておるのでございます。安本長官といたしましては税率の面において、あるいは補助率を増加せしめるという点において、地域によつて弾力性のある御措置をとられる御用意があられるかどうか、その点をお伺いいたしたいのでございます。
  186. 青木孝義

    ○青木国務大臣 ただいまも申し上げましたようにその特殊地域の開発と、総合計画の一環としての東北ということを考えますと、治山、治水におきましても、それぞれ特殊的な部面が現われて来ると思います。ことに公共事業費等においても、それぞれ多少特殊事情が現われて来るということは当然だと思います。経済安定本部としては、国民生活全体を考えまして、その生活の安定向上ということを目途として努力し、かつそういう検討をいたしておりますので、この際東北地方について生一括関係で特殊な措置を講ずるかどうかと言われましても、たとえば租税において特殊な措置を講ずるという件ようなことは今のところ考えておりません。御承知の通り国民生活の安定と河上ということは、所得と税という問題をにらみ合せまして、適正な措置を講じて行くということがやらなければならぬ事柄だと考えておりますので、そういう観点からも国民生活金体の安定と向上ということを実現いたしたいと考える次第であります。なおわれわれは国民生活全体として考えてみる場合にも、所得と税ということをにらみ合せて考えます際にも、やはり御承知のように工業賃金指数であるとか、消費者の実効生活指数であるとかいうようなものを勘案いたすのでありますが、それから得た結果からいたしますれば、昨年の三月と十月とを比較してみますれば、工業関係における賃金指数は、消費者の立場における実効的な面と比べまして、漸次その所得が増加しておるのであります。その指数から見ますと大体六%くらい実際上の收入がふえているという計算になつております。しかし今後もなおそういう点から国民生活の安定と向上のために努力いたし次第でります。
  187. 圖司安正

    ○圖司委員 それでは文部大臣にお尋ねいたします。文部省におかれましては、積雪寒冷地帶の教員に対する特別の手当を出しておられるということ、あるいは積雪寒冷地帶の体操場に対して特に坪数をよけい認められているということ、あるいは〇・七坪の基準面積を一割程度増しておられるということ、その他冬季分教場だとか、冬季寄宿舎のような施設をかつて講ぜられたことがあつたということ、そうしたことはことことく寒冷積雪地帶、特に東北地方の実情に即した施策であると考えるのでございますが、その点いかがでございましようか。
  188. 高瀬荘太郎

    ○高瀬国務大臣 ただいまお話がありましたよめに、いろいろな点で寒冷地については教育上特別な考慮をしておるわけであります。今度の六・三制建築費補助の問題が当面の一番重要な問題になつておると思いますが、それの割当につきましても、お話にありましたように大体の原則は〇・七坪までということで割当をいたしておりますけれども、寒冷地に対しましてはいろいろな事情から、やはり教室の坪数を多くしなければならないということがわかつておりますので、〇・七八という標準にいたしております。これでもむろん不十分でありまして、文部省は〇・八か〇・八五まで寒冷地はする必要があるということを考えておりますほれども、現在のところ予算が十分でありませんので、〇・〇八ふやしたということでがまんしてもらうというふうに考えております。
  189. 圖司安正

    ○圖司委員 体操場の件はどうですか。
  190. 高瀬荘太郎

    ○高瀬国務大臣 もちろん体操場のことも、他の寒冷地でない地方では雨天体操場がございませんでもがまんできますけれども、寒冷地ではがまんできないという事情はよくわかつております。ですから建築費補助の場合でも、もちろんその点も考慮しているつもりであります。
  191. 圖司安正

    ○圖司委員 雨天体操場の面積でございますが、二十八坪とか聞いておりますが、間違いないでしようか。
  192. 高瀬荘太郎

    ○高瀬国務大臣 こまかい数字は、私ここに持つておりませんから、必要がありましたらあとで差上げます。たが文部省の計画は、補正予算の十五億と二十五年度予算の四十五億、合せて六十億で計画しております。ですから予定されていても、行き渡るものは十五億で、六十億の中の四分の一で、これだけで見ると少しも考慮されていないというようなことになるかもしれませんが、しかしあとの四十五億というものと合せてお考えいただくと、大体文部省の方針通りつているのではないかと思います。こまかい数字は必要があればあとで差上げます。
  193. 植原悦二郎

    植原委員長 圖司君に念のために御注意申し上げます。あなたの持ち時間はあと十分で終ります。
  194. 圖司安正

    ○圖司委員 承知いたしました。農林大臣に御質問いたしたいのでありますが、従来寒冷積雪地帶、特に東川北地方に対して、あるいは農村工業の奬励施設、あるい骨軟症の治療施設、あるいは雪害桑園の特別施設、あるいは稻作の冷害地に対する特別施設、そうしたものについて実情に応じて試験研究機関、さらに経済調査機関なども設定されておつたのでございましてこれことごとく実情に即する農林省としての施策であつたかと思いますけれども、その点いかがでしようか。
  195. 森幸太郎

    ○森国務大臣 お答えいたします。今お述べになつたような各種の試験機関が施設されまして、大体これらの試験についての結論を得たようなわけでありまして、これを目下実際の面に指導して行くということにいたしているわけであります。
  196. 圖司安正

    ○圖司委員 ただ前ままで文部大臣あるいは農林大臣の御答弁によつて、社会施設、教育施設、また産業施設方面においては、東北地方の特殊の事情政府が認識せられていることが明らかになつたのでございますが、かんじんの大蔵省所管の税の面においてだけは何ら考慮せられていないということは、いかなる理由にはるのでございましようか。農林省や文部省その他の省においては、寒冷積雪地帶及び東北地方に対して特殊の考慮が拂われておつて、実情に即した政治を推進する上において、それはきわめて適切応あると思うのでございますが、ひとり国民生活に最も重大な関係を持つ税の面においては、單に課税面において手心を加えられているというだけではわれわれは納得しかねるのであります。どうしても税率の上にはつきりと現わすということこそ、徴税面を担当している税務官吏におきましても、また納税者の側から見交しても、当然かくあるべきだと私は思うのでございますが、大蔵大臣がおられませんから、安本長官よ力それに対する御所見を承りたいのであります。
  197. 青木孝義

    ○青木国務大臣 圖司委員のおつしやいますのは、東北地方のような特殊地域に対しては、特別な税率でも課したらどうかという御意見だと思いますが、これはなかなかむずかしい問題でございまして、私どもといたしましても、東北地方の特殊事情ということについて冷淡な気持を持つているわけではございません。しかしながら日本の国内で税率を特に別にするというようなことは今のところ私どもも考えておりません。なお関係各省の方面とももちろん話合いはいたしてみますけれども、おそらくそういうことは今のところむずしかろうと存じます。なお特殊事情という点が、少くともわれわれの担当いたしておりまする公共事業費等におきましては、それぞれの事情等をも勘案いたしまして、多少のそういう措置はとれると考えますけれども、税率等の問題については、私どもも大体今のところ大蔵大臣と同じような考え方を持つている次第であります。
  198. 圖司安正

    ○圖司委員 昨年の十二月一日にわれわれは満場一致で以上のような趣旨を含んだ決議をいたしておるのでございます。それに対して総合企画庁である安本の長官が、きわめて冷淡と言つては言い過ぎかもしれませんが、冷やかな態度を持つているということは、われわれが納得しかねる点でございます。特に税の面におきましては、昔から税の適正を得なかつた場合には、政治は乱れて参つたのであります。税が適正を得、納得の行く負担であつた場合において、初めて善政は実を結んだものであると考えます。そうした意味におきましても、特に東北のような所得の幅の狭い、種類の限られた、しかも立地條件として生産面に大きな惡影響を持つておりまする地方におきましては、税の問題は特に重大性を持つものであると考えます。安本長官におかれましては、現在は経済の安定を先にしなければならないときであるから、地方々々による実情を考慮している余地はないとお考えになるかもしれませんが、現在のように中央地方を通ずる税制を根本的に改革しなければならない場合におきましてこそ、地方によつて適正化をはかることがきわめて重大だと思いますので、この点最後に念を押しておきたいのでございます。
  199. 青木孝義

    ○青木国務大臣 ただいまのお言葉はまことにごもつともな点が多々あると存じますので、われわれももちろんそういうことについて考えなければならぬと思いますが、御承知の通り日本民主化の根本義であるとさえ考えられている地方自治の確立ということが当面の問題になつておりますし、それは同時に税制の問題に大きな関係がございますので、これらの点からも、おそらくそれぞれの地方自治体の実情に即した、生活への影響を考えながら税制等も勘案されて参ると思います。また一般的な税率でありましても、地方々々による実情は当然その收入なり支出なりに反映して来ることが考えられますので、この点は御心配もごもつともだと存じますけれども日本の自治制の確立によつてそれらの点もおのずから解決されて行くのではないかと考える次第であります。
  200. 植原悦二郎

    植原委員長 この際小平久雄君の文部大臣に対する留保しているところの質問を許しますが、念のため申し上げておきます。あなたはずいぶん長い時間を使つておりますから、簡潔に願います。
  201. 小平久雄

    ○小平(久)委員 文部大臣に若干の点につきましてお尋ねをいたしたと思います。まず最初に六・三制のことでありますが、六・三制の予算が本年ももらえたことはたいへんけつこうであります。特別に六・三制の義務教育費が今回地方平衡交付金のうちに入るにつきまして、標準教育費とも申すべきものを確保する意味において、文部省が法案をお出しになられるということも、たいへんけつこうだと思うのであります。ただその補助の基準でありますが、従来当局から説明を承つておるところによりますと、中学校及び小学校の職員費の補助につきまして、二十四年度におきましては、生徒五十人につきまして小学校では職員が一・三五の割、中学校では一・七の割であつたものを、二十五年度におきましてはそれぞれ一・五〇及び一・八にお引上げになられる。こういう話でございます。しかし実際問題としますと、この兒童五十人につき何人という規準は実情にそぐわない点がありますために、地方におきましては一学級につき職員何名、こういうふうに現実にはやつておるようであります。言うまでもなく兒童が五十人未満の場合でありましても、一学級を編成すればやはり先生一人はいるという実情なのであります。そこで実際の模様を見ますと、昨年度あたりは小学校の場合に当局では一・三五という標準を設けておりましても、ようやく一か一・一くらいにしか職員の数はならぬ、こういうわけで、非常に職員の欠乏を来しておるようであります。現にある小学校によりますと、兒童数は千二百人でありまして学級数が二十八、職員の定員は小学校校長を含めて三十二人、こういうことだそうでありまして、若干の病気欠勤等がありますと、もう授業のできないというのが現状であります。この点につきまして、今回二十五一度の予算において職員費を補助するにつきましても、従来の兒童五十人につき何人というのではなく、一学級につき何人というふうに改めるお考えがないかどうか、この点をまずお伺いいたしたいと思うのであります。  次にもう一点伺いますが、現在の中小学校の先生を見ますと、男女職員の比率におきまして、非常に女子職員が多いのであります。この点はもちろん小学校において特にしかりでありますが、そのために学校の運営上非常に困つておるようであります。将来小学校におきます男女職員の構成比率というものは、当局としてはどの程度のものを目標としてお進みになられるのか、あわせてお伺いしたいのであります。
  202. 高瀬荘太郎

    ○高瀬国務大臣 お答えいたします。定員の問題については前国会、今国会を通じてたびたび御質問を受けました。そして今までのやり方の五十人に対して一・三五とか、二十五年度予算のように一・五というようなきめ方で行くと、級の数というものが考慮されたいということから、今御質問にありましたような非常な不便が生ずる、こういうようなお話はたびたび伺いました。一・三五とか一・五というのは平均でありますから、自然地域的な条件等によつて、級の編成も五十人にできない、二十人、三十人の級をも相当つくらなければならないというような場合におきましては、どうしてもそれが一・二になりましたり一・一になるというような結果になつて、お話になつたような不便が生ずるわけであります。それでは級を單位にしてやつたらどうだろうということも考えられるのでありますがそういうやむを得ない場合についてだけはそれが必要であることが考えられますが、一般的に申しますと、教育の上からいうと、なるべくならば生徒の数を少くした小さい單位の級をつくる方が非常に効果が上るわけでありまして、四十人にする、三十人にする、やむを得ざるいろいろな必要によるのでなくて、教育的な効果というところから、そういうクラスを編成することも考えられるようになるのではなかろうか、そうなりますと計算が全然できないような結果になる。五十人ととつているのは実は五十人を一クラスという原則と考えて言つているわけです。だから五十人をもつて一クラスを編成するとして計算されておるのでありますから、級は全然考慮しないというわけではない。ただ五十人を一クラスという点が、いろいろな條件からいつて破れる、こういうことになつておるわけであります。それで小学校を一・三五でやつては非常にその点で融通がつかないということから、来年度は一・五に引し上げますし、中学校も一・七を一・八に引上げる、その上今までは一・三五の中に結核教員で病院で休んでおる者を含まれたのも別に考慮するというようなことにしましたり、また女子教員で産前産後の休養をとるということも別に考えるということに、二十五年度の予算ではなつておりますから、いろいろ地理的に不便かてきましても、今までよりはずつと緩和されまして、そう大した不都合なくやつて行けるのじやないかと考えております。今度の平衡交付金でもつて計算されます標準教育費についてはそういう点は今までの国家の俸給の補助の場合よりは、ずつと実際に即した計算ができるということになりますからその点でも今後はよくなつて行くだろうと考えております。  それから各学校における男女教員の構成比率という問題でありますがこれは現在は教員は教員たる資格が問題でありまして、男女の別ということは全然問題にしておらないわけであります。ですからその比率は文部省として河も考えません。ただ資格のある教員をもつて全部拡充して行かなければならぬ。現在は仮免状というような資格の人がずいぶんあるわけでありますか、これを再教育するなり、あるいは今後新制大学からの卒業生をどしどし補充するなりしまして、ほんとうに資格のある教員で全部やつて行けるようにしたい、こういう方針でやつておりまして、実際問題としますれば、女子の教員がそういう資格の低い方が現在は非常に多いというところから問題が起きるかもしれませんが、それは男女の別から来るのでなくて資格の問題であります。今後はそういう方針で行くという考えでおります。
  203. 小平久雄

    ○小平(久)委員 それでは次に六・三制の建築費の補助について伺いたいと思うのでありますが、現在補助の基準は児童一人につき〇・七坪ということになつておるそうであります。ただこの際児童一入につきということが、小学校と中学校と両方通算しておやりになつておるやに聞いておるのでありますが、すなわち中学校を独立のものとしてお考えにならないで、中学校でかりに十教室必要だという場合に、小学校の方に二教室あいている、こういう場合には、その二教室分につきましては、中学校においては中学校新築においても補助をしない、つまり八教室分きり補助をしないというふうにやられておるやに聞くのでありますが、実際問題としまして、中学校を新築する場合には、やはり独立校舎として、そこに児童全員を集めて教育するという建前でやるのが事実であります。そういり点からしまして、これまた実情にそわないというふうに考えますし、この点で地方においては相当つておるようでありますので、はたして中学校、小学校通じて、その過不足を論じしおられるのか、もしまた事実さようとするならば、今後中学校だけ独立したものとして、必要な教室に対して補別をなして行くという御方針をとられないかどうか、お伺いいたしたいと思います。
  204. 高瀬荘太郎

    ○高瀬国務大臣 お尋ねにありましたように、現在補助の対象として立てておる原則は、小学校、中学校また高等学校のあいているところまで入れまして〇・七坪ということに考えておるわけで、お話にあつたように、これを独立の一つの小学校、中学校として〇・七坪を持つという場合に比べては非常な不便があるのでありまして、〇・七坪といいましても、質的に各地によつて非常に條件違つておる。ですから同じ〇・七坪ありましても、その点を十分考慮いたしまして、補助の場合には特殊な調整を加える方針で、補助の割当の点も考えております。それからまた特殊な事情によりまして、〇・七坪も非常にむりをして今までつくらせられたという場合があります。また文部省としても、独立校として〇・七坪を持つことがぜひ必要だということで、今まで行つておりましたから、これを非常に強く奬励したわけであります。そういう点でかなりむりの点もあつたかと思います。そういう実情も考慮して調整をしておるわけであります。それからまた今後の方針としては、むろん独立校舎としての〇・七坪ということが方針でありますし、また〇・七坪では校長室とか事務室というようなものもとれないような坪数で、ほんの教室だけであります。それで一つの独立校としての整備ができるわけではありませんから、少くとも〇・八五くらいは独立校として持たせるという方針でおります。
  205. 小平久雄

    ○小平(久)委員 その点は今後の御努力をお願いいたしまして、次に高等学校の関係でお伺いしたいのであります。現在高等学校につきましては、全国ではあるいはないかもしれませんが、いわゆる学区制というものを設けております。この関係で従来非常に教育機関の整つてつたところはよろしゆうございますが、従来恵まれなかつた地方におきましては、高等学校の設備が非常に貧弱であつて、しかもその通学区域の生徒は、何でもかんでもその高等学校に通わなければならぬというようなことでありまして、いわゆる教育の機会均等という点からしましても、非常に不便を来しておるわけであります。かような点から考えまして、もちろんこれはいろいろ学区制についてよいところもあるかもしれませんが、根本的に申して、どうもわれわれは間違つておるのじやないかと考えるので、将来こういう学区制といつたようなことを廃止するお考えはないかどうか、この際承つておきたいのであります。  それから第二には、定時制高校の問題でありますが、いわゆる働きながら学ぶという宏時制高校の制度は、大いに今後奨励すべきものだと思うのでありますが、これまた大都市等におきましては、相当普及いたしておるようでありますが、地方の小都市とか農村とかにおいては、ほとんどまだ実施を見ておらないのであります。県によりましては、大体さつき申しました一学区に査定時制の高校というくらいでありまして、大部分の者はなかなかそこには通い切れないというのが現状であります。従いまして私の考えからしますならば、以前ありました青年学校といつたぐあいに――もちろんその性質は違いますが、少くとも一箇町村には一校ぐらいこれを設けて行くということが、将来ぜひとも必要であると思うのでありますが、その点につきまして当局の御方針を承りたいと思います。
  206. 高瀬荘太郎

    ○高瀬国務大臣 高等学校の学区制につきましては、現在のような状況では、確かにお話にあつたような不便が非常に多いと思つております。しかし公立の高等学校でありますと、地方教育として公費を使つてつておるのでありますから、学区制で地域的にわけて入学して教育を受けるというのが原則で、これがやはり原則としては正しいと思うのであります。ただ現在の実情がそれに沿うように施設が十分できておちないというところに、不便があると思うのでありますから、今後はそういう地域的な條件とか、施設とかいうところで十分考えまして、その原則を生かす方向に行きたいと思つております。現在非常に不便があるというような点については、原則はむろんかえられませんけれども、特殊な考慮は加えられると思つております。  次に定時制の高等学校については、文部省も現在のような経済状況から申しまして、非常に重要な問題と考えて、できるだけこれを普及したいという方針で行つておりますが、まだ十分には普及できない状況で、その点遺憾であります。ただこの問題は中央の予算だけでできる問題ではありませんので、大部分が地方財政の負担になる問題であります。従つて地方財政が非常に困難であるというような点からも、現在はその十分な普及を困難にしておるという状況だと思つております。現に昨年はそうでもありませんでしたが、一昨年あたりは国庫から補助する予算の方はありましても、地方でもつてこれを実施しない、従つてその予算を十分要求して来られなかつたというような状況でありますから、地方財政の方ももう少し何とかして参りませんと、思うような普及が困難な状況ではないかと思うのであります。
  207. 小平久雄

    ○小平(久)委員 時間の都合がありますから…
  208. 植原悦二郎

    植原委員長 松野頼三君。
  209. 松野頼三

    ○松野委員 簡單に農林大臣に供出問題と土地改良の問題についてお伺いいたします。  世界の食糧も大分緩和されまして、ある国では農作物の投売り的現象も示しておりますが、まだ日本の農村ではどうしても供出の重圧から拔け切れない現状であります。具体的にまず二十四年産米の現在割当補正を二次、三次やられたと称しておりますが、まだいかに補正されましても、昨年は予想以上の減收だつたために、現在の最終補正割当でも供出できないという地方が、必ず出て来はせぬかという不安を持つておりますが、これに対していかなる方策をとり、いかなる態度をとられるか。  もう一つは、ここに二十四年産米の供出責任免除措置という言葉が出ておりますが、これをひとつ具体的に御説明願いたい。
  210. 森幸太郎

    ○森国務大臣 お答えいたします。二十四年産米の供出につきましては、当初事前割当をいたしておりました数量に対しまして、その後調査の結果によりまして二百四十五万石の補正をいたしたのであります。しかし今では大方共出が完了いたしたわでありますが、局部的にどうしてもこの供出ができないという事情にあるものに対しましては、供出する責任を免除する方針によりまして、自治的な委員会を設けまして、その要求によりまして裁断を下しておるのであります。その結果によりましても、なおどうしても完納できない場合におきましては、その実情によりましては還元の措置によりまして農家の再生産を期したい、かような処置をとつておるわけであります。
  211. 松野頼三

    ○松野委員 そういたしますと、第四次、第五次というなしくずし的な補正をもうやらないで、あとは供出責任免除措置によつても三十四年の供出は終了する、こういうことになりますか。
  212. 森幸太郎

    ○森国務大臣 再び補正はしないつもりであります。どうしても再生産は迷惑するものに対しましては、還元措置によつてこれを補つて行きたい、かように考えておるわけであります。
  213. 松野頼三

    ○松野委員 その供出責任免除措置というのは、最終的にいつごろとられる御予定でありますか。
  214. 森幸太郎

    ○森国務大臣 いつごろということは予定いたしませんが、おそくもこの月末においては大体供出の完了を期待しておりますので、なお補正に対しましても、府県別についてこれを指示いたしまして、その実行についての結論を得たく考えておるわけであります。
  215. 松野頼三

    ○松野委員 次に昨年はもみにもんだ食確法をポツダム政令において一年停止されましたが、二十五年は当然これか自然に有効となりますが、食確法は二十五年には全面的に有効として適用これますか。
  216. 森幸太郎

    ○森国務大臣 食確法はさきの国会においてもおし上げました通り、ああいう法律を出しましても、二十四年度におきましては特に考慮を拂うということを国民諸君にお約束しておつた結果、これを執行しないことになつておりますが、もちろん法の執行でありますから、二十五年度におきましては、その必要な場合においては当然発動されるものと御承知を願いたいのであります。しかしながらよくあの政令を研究していただけば御了承を得ることと存ずるのでありますが、あの政令はその年の作況が非常によかつた場合、事前割当にいたしておりますけれども、それ以上とれた場合においては、政府はさらにその供出を定めて各地方長官に指示する、いわゆる超過供出であります。御承知の通り今の食確法によりまして指定いたしました食糧は政府以外に売ることを許さない、こういうことになつておるのでありますから、事前割当をいたしました以上、とれたものに対しましては、当然政府がこれを買わなければならぬ責任があるのでありますが、今日まではそういう法的措置を講ずる方法がなかつたわけであります。それで作況がよかつた場合、事前割当以上の收穫高を認める場合に、これをさらに供出せしめる。またその年の食糧事情によつて、事前割当だけでは、どうしてもその食糧事情がまわり得ないというような場合におきましては、超過供出のでき得る地方に対してその供出を要求する、これがあの法文の解釈で、そう御承知を願いたいのであります。従つてあのポ政令を出したからといつて必ずこれを発動するということは、その年の作況、食糧事情等によつてこの法の執行をいたすわけであります。今後はこの超過供出も本年補正をいたしましても、なお地方によりましては超過供出を希望し、また超過供出のでき得る農家も相当あるのであります。そういうものに対しましては、別途超過供出の奨励金を出しまして、超過供出をなさしめたい、かような考えを持つておるのであります。
  217. 松野頼三

    ○松野委員 ただいまの食確法の法文を通読いたしますと、作柄のよかつたこと、あるいは食糧事情に応じてという今の御答弁の中の食糧事情に応じてという方篠農林大臣の御判定であるいは間違いなかろうと信じますが、ただ作柄がよかつたという点になりますと、これはいかなる判断に基くものか、非常に議論の中心になろうと思います。あの食確法の法文の中には、市町村におきましては市町村長が作柄がよかつたと認めたときにし長長官に申し出、あるいは知事が作柄がよかつたと認めたときに農林大臣と協議するというふうにも解釈できるのであります、か、この実行が本年の論議の最も中心になりはしないか、この解釈について一応森農林大臣の御見解を承りたいと思うのであります。
  218. 森幸太郎

    ○森国務大臣 お答えいたします。食糧の供出につきましては、農林省において正当なるいわゆる作報事務所の報告によりまして、これを基礎として行つて行くことになつております。
  219. 松野頼三

    ○松野委員 食確法のうちに作物報告事跡所の報答を基礎とするという條文もないように思います。しかしこれは農林大臣、地方長官、市町村長が作柄がよかつたと認めるのか、あるいは農林大臣が独断的に作柄がよかつたと認めろのか、この二点のどちらをおとりになるのか、もう一度御答弁をお願いいたしたいと思います。
  220. 森幸太郎

    ○森国務大臣 主務大臣がこれを認めた場合であります。
  221. 松野頼三

    ○松野委員 法文の精神はただいま大臣の御答弁に帰するのでありますが、主務大臣が食糧の事情を判定する、主務大臣が作柄のよかつたことを判定し、主務大臣が買入れ価格をきめるということは、なお農村の重圧を加重するのではないが、来年あたりからぼつぼつ世界の食糧に応じて、日本の食糧の緩和、明るい希望を持つ農村にとつて、どうしてもこの一つの金縛りだけは、私はいまだに承服できないのでありまして、食確法の審議のときに、そういうふうな解釈のもとに私はこれに賛成したという意味はいまだに持つておらないのでありますが、これは今後の運用について大きな問題になることでありますから、どうか森農林大臣も運用面において、なお御考慮をお願いいたします。  なおもう一つは、多少話が大きくなりますけれども、世界の食糧が日本輸入される。日本の農村は、現在外国食糧の輸入の量に応じて恐慌を感じもまた逆に供出数量において日本の農村はまことに寒心にたえない。世界にたくさん食糧ができても、なお日本の農村は苦しめられる。また逆に食糧が不足しておるようなときにも供出によつて圧迫され、どちらにころんでも得はないじやないか、どちらにころんでも生活は立たないじやないかという点から、将来の日本の農村問題に非常な不安を持つのでありますが、供出制度というものが、いつごろなくなるであろうかということについて、農林大臣の御見解をただしておきたいのであります。
  222. 森幸太郎

    ○森国務大臣 食確法は御承知の通り、二十六年度において、さらにこの法案について根本的に考えなければならないことになつておるのでありますが、今日の食料事情としては、どうしても日本の食糧の自給度を高めまして、できるだけ国外の食糧の輸入を防遏する、こういう政策を持つて行かなければならぬことは当然であります。しかし今この供出制度を根本的に廃止するということは考えられないことでありますが、今日の供出制度そのものは、決して私は完全無欠なものとは考えておりません。生産意欲を阻害するような面もありますし、また経済的の白鷹を許さないような面もありますので、これは今後大いに検討して、その内容については修正をしなければならぬと存じますが、まだ今日の場合、国土の状況と人口増加率等を考えますと、主要食糧に対しましては、なおしばらくの聞の統制を必要とし、また将来において自由な立場になりましても、価格操作の面においては、あるいは政府の大きい力によつて、これを管理しなければならぬというようなことも考えられますので、供出制度はここしばらくの間、やはりこれを持続しなければならないような段階にあると存じます。
  223. 松野頼三

    ○松野委員 もう一点お伺いいたしておきますが、世界経済に仲間入りするためには、日本の経済が補給金を廃止し、世界経済と太刀打ちできるときになつて、初めて日本の経済の自立ができるという経済の復興の目標がありますが、これを農業に当てはめますと、現在の外国食糧に太刀打ちできる日本の農業生産物の価格ということになりますと、あるいは上にあげた方が世界経済に太刀打ちできるような場面も、ただいま出て来ておるように思いますが、森農林大臣は世界農業と日本の農産物価格との太刀打ちにおいて、いかなる御構想をお持ちでありますか。
  224. 森幸太郎

    ○森国務大臣 価格の面におきましては、なお国内産の食糧か安く定められておるのであります。ただしかしこの価格を自由にした場合において、どういうふうなことになるかという問題につきましては、この食糧需給が自主的に行い得るという段階に入つてから考えなければならぬと思うのでありまして、今日はなお外国の食糧に比較して内地食糧をある程度安くいたしておりますことは、この食糧問題、賃金問題という非常な原則に支配されて、今日これを維持して行かなければならぬという段階にあるのでありまして、生産者に対しましても、その生産に必要な資材の購入ということを基礎にして米価を定め、そして消費者、生産者両者の立場において統制をいたしておるのであります。従つて自然価格にもどす場合においては、当然統制ということもこれを廃止して、自由な立場において初めて行えることと考えておるわけであります。
  225. 松野頼三

    ○松野委員 まだ大分論議があるのでありますが、大臣の御都合もありますので、別な問題をもう一点お伺いいたしておきます。しかしただいまの御答弁のように、森農林大臣は農林大臣でありますから、所管の農産物価格の維持については、各経済大臣との関連もありましようが、どうかひとつ農産物価格一本において森農林大臣の今後の御主張と御活躍を期待いたしておきます。  次は土地改良の問題でありますが、おそらく日本全国土中百四、五十万町歩は土地改良を必要とし、または農産物の收益の増大をはかり得る土地としてただいま計画されておりますが、はたしてどの程度本年度において土地改良の実際的な予算の事業計画が行われておりますか。この点をもう一点お尋ねいたしておきます。
  226. 森幸太郎

    ○森国務大臣 土地改良につきまして、二十五年度に計画いたしております点は、災害復旧ということが重大なる問題になつておりますが、これが災害復旧費を除きまして八十五億円でありますが、その三九%に当る三十三億一千六百七十万円が土地改良事業に、四六%に当る三十八億八千三百三十万円が開墾事業に、一五%にあたる十三億が干拓事業費に充てられておるのであります。これが二十五年度におきまする土地改良に対す予算内容であります。
  227. 松野頼三

    ○松野委員 土地改良事業が長年叫ばれ、その必要性の十分あることは、関係者も認識しておりますが、いかにせん日本の現在の経済状態では、完全な施策ができない。従つてここに私はいずれ土地改良を民間の企業においてやり得るような態勢をとるべきではないかと思う。すなわち土地開発会社的なものをつくつて、なおかつその会社が利潤が上り、土地改良を要求する農業者が増收によつて利益を上げるというふうな面にまで行かなければ、日本の財政の逼迫から、財政の重圧から、いかなる時代におきましても、土地改良は年々歳々本年で打ち切られやせぬか、来年はどうだろうという、まことに見通しのつかない、あるいは計画性の立たない点において、不安があり、実績も上らないのじやないかと思つております。従いまして、土地改良開発会社的なもの――ただいまある地方では、農地証券の資金化をはかりまして、農村工業の発展とともに、土地改良にもこれを及ぼすならば、お互いの農民の利益と土地の開発が非常に促進されるのではないかと考えますが、現在の農業におきまして、土地改発的な利潤の上る投資をすることは不可能な現状であります。  これは基本的な政策に話が及びましたが、農業に投資して利益が上るような日本の土地開発についても農林大臣はどういう御見解か、お伺いいたしたいと思います。
  228. 森幸太郎

    ○森国務大臣 お答えいたします。土地が自由になつておる場合におきましては、そういうふうなことも株式会社等において考えられないこともないのでありますが、農地強制買上げによつて土地が担保力を失つている今日の段階におきましては、そういう企業的な土地改良はどうしても行えないと存ずるのであります。従つて土地改良組合によつて農耕者自身が共同の力によつて土地改良をいたして、これに対して国はできるだけの助成をいたして行くということによつて、その実効を期すべきであると考えておるわけであります。まだ御質問があるようでありますが、私は時間が来ましたから失礼いたします。また明日申し上げたいと思います。
  229. 松野頼三

    ○松野委員 これに関連して大蔵大臣にお尋ねいたしたいことがございますが……
  230. 植原悦二郎

    植原委員長 大蔵大臣はおりませんが、建設大臣がおります。
  231. 松野頼三

    ○松野委員 それでは主計局長でけつこうです。農業の税金のことですが、先日配付されました「昭和二十五年度租税及び印紙收入予算の説明」の十二ページに本年度收入見込というのがあります。この中に本年度課税收入歩合というのがあります。これを見ますと、本年の收入歩合は、農業が九〇%、営業が七〇%、その他が七九鬼、平均して七四%弱の收入歩合を見込んでおります。この数字のことに弱してですが、農業に九〇%の歩留りを認めながら、営業においては七〇%ということになると、ここに約三〇%ばかりの開きがありますが、これはどういうわけでこういう歩合見込を見込まれましたか。
  232. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 私ただいまつまびらかにしておりませんので、後ほどお答えいたします。
  233. 松野頼三

    ○松野委員 それでは保留いたしまして、建設大臣に関する点を二点だけお尋ねいたします。それは災害復旧の金額国庫負担という制度が今度とられまして、まことにけつこうなことであります。しかし予算面と実施面と比べますと、三分の一ぐらいの災害復旧費しか見込まれておりません。そうなると、今までならば少い予算を配分して地方の援助を待つて行われておつた事業が、今度は箇所別に三分の一に削られる、三箇所の災害のうち一箇所しかできないという現実面に立ち至るのであります。一つの上流、下流、中流と災害があつた場合に、本年の予算及び災害の実情から申しますと、三分の一では下流しかできない。中流、上流は何ら手が出ない。下流になるほど全額国庫負担でまかなわれるでありましようが、中流、上流には一銭の補助もできないという現実面に立ち至るのであります。一つの災害に関連して、下流だけの補助では中流、上流はいかなる方法でも手が出ない。結局地元全額負担で何らか応急対策をやらなければならぬという現実面に立ち至るのではないかと思いますので、この災害復旧費の使用方法について建設大臣の御意見をお尋ねいたします。
  234. 益谷秀次

    益谷国務大臣 二十五年度におきましては、御承知の通り全額国庫負担ということに決定いたしておるのであります。もとより軽微な災害はこれを除きまして、大体一箇所十五万円以上のものを対象といたして考えております。従つて今回の予算では災害復旧費はもとより、昭和二十二年度分を含む過年度分の災害費は、おそらく昭和二十二年度以外は相当残ることと思います。しかしながらこれは従来の三分の二国庫補助をいたしておつた際においても同じことでありまして、今回災害復旧費を交付いたしますについて、従来と同じく最も取急いでやらなければならない部分、緊急を要する重要な地点を選定いたし、そこに重点を置く従来通りの考えをもつて進みたいと思つておるのであります。
  235. 松野頼三

    ○松野委員 重要地点に対しては国家の全額負担でまことにけつこうでありますが、その他の点においては全額地元負担という観念を抱きますので、なお御答弁がありますれば承りたい。  もう一つは災害の場合でありますが、昨年の台風によつて被害を受けたところの九州地方の実情を見て参りますど、とにかく衣料品については何らかの政府の補助があつた。食糧についても何らかの増配を受けた。しかし個人の住宅については、政府は何ら資金的援助も資材的援助もしてくれなかつた。結局衣食の食まで参りましたが、個人の住宅問題については、何ら政府の救済衆が講ぜられなかつたという点があるのでありますが、衣食住はともに国民生活の基礎でありますから、住宅問題の災害にも、何らかの政府資金的あるいは資材的救済笹があつてもよいだろうと思いますが、この御構想があるかどうかをひとつお伺いいたします。
  236. 益谷秀次

    益谷国務大臣 個人の住宅については今日補助をいたすことができないのであります。しかしながら一昨年でありましたか、北陸地方の大震災のときのように、非常に範囲の広い住宅が災害をこうむつた場合には、御承知の通り特殊の方法をもつて一時を救済しておるということもいたしておりますが、大体個人の住宅については助成の方法は今日ありません。またただいまこれについてどうするという考えは持つておりません。
  237. 松野頼三

    ○松野委員 個人の災害を補償することは、国家財政上不可能であろうと存じますが、資材の貸下げをしていずれ復興してから支拂うという制度くらいは、日本の災害の多い現状から、ひとつこういう法律くらいは御構想になつてもおそくはなかろうと存じます。これももう一度建設大臣の御構想について御答弁を願いたい。  次には道路の問題であります。一昨年でしたか道路に関する覚書が出まして、多少国道に力を注がれておることは十分わかりますが、まだ全国的に産業道路として、観光道路としての国道の復旧あるいは進行状態が非常に遅延しておりますので、この国道問題について政府の今年の計画と方針をひとつ伺いたい。なおこれに関連いたしまして、地方財政が逼迫し、県道、市町村道というものもほとんど手がつけられないというのが現実でありますが、道路行政の本年度の計画及び益谷建設大臣の御構想をお伺いいたしたいと思います。
  238. 益谷秀次

    益谷国務大臣 道路の事業費として今回御審議を願つております総額は、五十一億五千万円であります。その内訳として直轄道路の改修費が十三億三千三百万円、道路事業調査費も若干ございます。そのほかに三億の道路機械整備費がございます。なお北海道の道路改修費といたしまして十一億二千四百万円、これが大体直轄並びに北海道の道路改修に対する予算であります。なお一般の助成金の方面では、道路改修費補助といたしまして二十二億八千三百万円、これは地方の県道に対する助成費でございます。一昨年十一月御承知の通り、連合軍総司令官から政府に対して道路改修に対するメモランダムが参りまして、それに基いて昨年五月二十七日までに道路網に関する五箇年計画を立てまして、連合軍と協議いたしておる次第であります。その昨年提出いたしました五箇年計画に基いて、今計画を実行いたしております。本年は道路費は河川費のごとく著しい増額と申すことはできない、二十四年度から見ますと、ほとんど増額なしと申し上げてもいい僅少な程度の増額で、総計五十一億五千万円、これでは五箇年計画を十分に施して行くことはできませんが、私どもといたしましては、公共事業に対する見返り資金百十億から、でき得る限り道路費の方へ多く交付してもらいまして、主として橋梁あるいはその他幹線道路あるいは観光道路というような方面に、充当して参りたいという計画を今立案中でございます。詳細な計画については今材料を持ち合せておりませんが、非常に詳細な計画であります。その計画に慕いて順次実施いたして参つておる次第でございます。
  239. 松野頼三

    ○松野委員 ただいまのお話で、北海道地方は十分な道路の開発ができるように承りましたが、どうか北海道と同様に、今までの産業道路が破損している地方も多々ありますので、今後とも御考慮をお願いいたしたい。  もう一つは先ほどの質問者に関連しますが、総合開発計画というものが全国で数十箇所出ていると思いますが、この総合開発計画は名前と構想はりつぱにできておりますが、現実面においてこれに対する裏づけがない。あるいは総合開発に対する軍行法でもつくつて、法的に裏づけをしなければならないのじやないか。北海道開発には十分力を入れてなかなか進行している状態に私拝承いたしますが、北海道ばかりでなしに、関東地方にも群馬あり、九州にも阿蘇あり、どうか全国的に総合開発の構想と、これに対する法的基礎を裏づけなければ、現実面においては総合開発の期成会をつくり、あるいは宣伝パンフレットをつくる経費さえもまかなえないと思うのでありますが、総合開発に対する裏づけと、政府の積極的な御構想をお伺いいたしたい。
  240. 益谷秀次

    益谷国務大臣 国土総合開発計画についてはたびたびお答え申し上げまする通り、目下国土総合開発審議会において鋭意研究しておられるのであります。近く成案ができ上るかと思つておりますが、成案ができ次第十分に検討いたしまして、実施の面に移したいという政府の考えでございます。なお今日、国の内外の経済情勢等にかんがみまして、国土総合開発計画、未開発資源の開発ということが、最も緊急を要することと存じますので、建設省といたしましても、他の官庁と連絡をとつて立法措置に出るべく、今検討いたしております。
  241. 松野頼三

    ○松野委員 内閣に国土開発審議会をおつくりになつて大いに努力されておられることは、はなはだけつこうであります。私もその一員でありますが、御承知のごとく国土開発審議会におきましては、経費としてわずか三十万円くらいしかありませんので、事務員を一人、二人雇いますとあと何もできない。これは国家財政の都合にもよりますが、どうかひとつせつかく芽ばたえ審議会を御発展なさいまして、なお有効に御活用あらんことをお願いいたします。  もう一つ最後に先ほどの質問者と関連いたしますが、東北振興の開発としまして、ただいま見返り資金の御構想があるようでありますが、この見返り資金の対象は東化振興全体に対するものでありますか、あるいは東北振興の肥料部門、電力部門という部門を対象とする見返り資金の御構想であるのか、その点をお伺いいたします。
  242. 益谷秀次

    益谷国務大臣 先ほどお答え申し上げたのは、東北振興株式会社に関連するものでございまして、東北振興株式会社の今後発展を期して行くためには、基本的な事業を東北の未開発資源の開発をやるということ、それを基本的の事業として、将来東北振興会社は伸びて行かなければならぬ、そういう建前から目下、東北振興株式会社におきましては、政府がいたしております、たとえば北上川水系の治水事業とか、これに関連して発電の仕事をいたし、発電の後にこれを利用いたして、あるいは石灰窒素肥料の事業を興すということに、今大体計画を立てまして鋭意検討いたしておるのであります。そうして東北振興株式会社の企業再建整備計画も樹立いたしまして、そういう大事業が実施の面に移されるという時期が到来いたしますならば、政府といたしましても、また私といたしましても、融資の方面ひいては見返り資金等をこの方面に交付してもらうように努力いたすということを申し上げましたので、東北の特殊の地域の総合開発のために、資源開発のために、融資あるいは見返り資金云々ということは申し上げていないのであります。
  243. 松野頼三

    ○松野委員 大蔵大臣に対する質問だけを留保しまして、私の質疑を終ります。
  244. 植原悦二郎

    植原委員長 次に小淵委員でありますが、あなたは通産大臣に御質問がおありであるようであります。御承知のような事情で通産大臣の御出席はきわめて困難ではなかろうかと思いますが、有能なる通産政務次官がおられますから、それに御質問なさつてはいかがでしよう――。小淵光明君に質疑を許します。
  245. 小淵光平

    ○小淵委員 私は蚕糸の問題を中心として通産大臣関係のある部分をお尋ねいたしたいと思うのです。農林大臣がおいでになれば非常にはつきりすると思つてお待ちしていたのですが、ちようどお帰りになりましたので、断片的な質問になるので残念ですがお伺いいたしたいと思います。  蚕糸の問題は言うまでもなく、内においては日本の農村経済の上に相当大きい影響を持つており、国家といたしましても貿易の面で非常に大きいウエイトを持つておることは、よくおわかりのことであるのでありますが、大体戰前におきましては日本輸出総額の九〇%以上を蚕糸において占めていた例もあるのですが、戰争直前の状態を見ましても、昭和四年、五年、六年の日本全体の輸出のパーセンテージから見まして、一七%から二五%までの間に上下しておつたようでありますが、戰後、現在は大体一〇%以下に下つておるようであります。これにつきましては結局日本の内地の蚕糸業の問題にも深い関係があります。こういう面からいたしまして、通産省といたしましては海外宣伝あるいは海外販路の拡張というようなことについて、どういう施策をおとりにたられるか、まずお伺いいたしたいと思います。
  246. 宮幡靖

    宮幡政府委員 お答えいたします。御承知のように蚕糸及び生糸と申しますか、この問題は農林省の所管でありまして私の方であまり詳しいことを申し上げてもどうかと思いますが、ただ貿易の問題にわたります海外販路の拡張につきましては、かねがね御承知のように従来盲貿易の中に追い込まれておりまして、昨年下半期におきましてようやくにして日本人の海外渡航が認められ、また優先外貨の制度も設けられましたが、最近伝うるところによりますと、海外に通商事務所式のものを設けることも許されるような段階になつて参りまして、かつてのごとき領事館という施設を許されるものかどうかは別といたしまして、日本人の自由渡航及びこれらの設置機関を通じまして、ぜひともかつて日本が把握しておりました生糸市場に積極的な進出のできますよう、あらゆる施策を考案して参りたいと存じております。もつとも戰前の生糸の主要消費地でありましたアメリカにおきましては、御承知のようにナイロンの時代からすでにオーロン時代に入つておるというようなことが伝えられております。オーロンそのものがいかなる性質のものかは、つまびらかに存じておりませんが、しかしながら單なる宣伝や、いろいろ従来考えられました小さな施策では、御期待に沿うような生糸の輸出振興ということは、困難であろうと思いますので、海外の状況を知り得ます都度、できる限り広範囲にこれを集めまして、農林省とも協議の上、抜本的な対策を立てたい、かように現在考えております。
  247. 小淵光平

    ○小淵委員 ただいまお話のありましたように、問題は他の繊維との関係になつて来ると思うのです。大体アメリカで消費する繊維の全体を見ましても、戰争以前には大体三十億ポンドといわれておつたのが、現在は六十億ポンドも消費しておるわけです。ついこの間アメリカのバーゼスという商会のハソーンという人が、木下記者を通じて通報してよこしたところによりますと、これは新聞記事にあつたのですが、大体アメリカで使うところの人絹、これは女の人のはだ着だけの人絹が大体七億ポンドあるそうですが、日本の国で一番輸出をした昭和四年、五、年の時代であつても、日本の生糸は七千万ポンド日本の俵数で六十万俵くらいが、一番多かつたのでありますが、大体女の人のはだ着の七億万ポンドの約一割の数量を海外宣伝において獲得することができるならば、かつての蠶糸業の一番旺盛な、一億万貫も繭がとれて輸出した時代を持直すことができる。これについてはどうしても日本輸出に対するところの海外宣伝ということが、一番重要なことであるという記事がこの間載つておりましたが、私はさような面から考えましても、この海外の宣伝ということについては実に貿易の面から心してかからなければならない面だというふうに考えておりますので、この面は大体どのくらいの予算を考えて、どういうふうな方式で進むつもりであるか、大体の構想だけでもお聞かせ願いたいと思うのです。
  248. 宮幡靖

    宮幡政府委員 繊維界に対しまするいろいろの御心配の点、またお考えの点につきましては、ことごとく同感であり、敬意を表するものであります。海外へ宣伝いたしまする問題は、予算の点につきましては、これは円資金ではどうにもならぬわけで、結局ドル資金をもつて宣伝等もいたさなければならない、かようなことで、先刻も申しましたリテンシヨン・フアンド、前貸制度のドル資金を、海外の宣伝、製品、商品の見本、あるいは通信さようなものにまで使わしていただくことを交渉いたしまして、ただいまはそれに成功いたしておりますが、資金の総額が幾らであるか、これは前貸の制度でありますから、その都度交渉によつて成立いたしますので、あらかじめ予算を持つておるとは申し上げかねるのであります。でき得る限り前貸制度を利用いたしまして、海外の宣伝等をいたしたいと考えておるわけであります。
  249. 小淵光平

    ○小淵委員 もちろん予算を伴う問題ですが、海外販路の拡張ということについては、いま一面その商品を海外で合理的に消化してでなくてはならないということが大切なことであると思うのでありますが、それにつきまして、日本からこれに対するところの技術者等の派遣、それから生糸は他の繊維との交織、混紡、染色というような面が、非常に消費の面に大きい影響があるのですが、これらのことについて相当研究を遂げたり、技術者の派遣というようなことについて通産省ではお考えになつておるかどうか、お伺いいたしたいと思うのです。
  250. 宮幡靖

    宮幡政府委員 御指摘の点でありますが、この点ではもちろん考えたいと思つております。しかしながらただいまのところでは、繊維に関しまする技術者は、民間の方で、特に積極的においでになりたいという方のごあつせんをいたしておりますが、通商産業省としては実はさようなプランは持つておらない次第であります。それよりももつと大きな繊維の輸出不振という問題は、御承知のフロア・プライスの問題でありまして、ローガン構想によつて輸出自由の原則にかわりましても、絹製品に対しましては一応フロア、プライスが残されたというような特殊事情があり、国内価格がかりに低減いたしましても、ドル最低価格で押えられまして、かつてローガン構想以前におきましては、いかに生糸の生産面におきまして合理化が行われ、コストの切下げがありましても、フロア・プライスの目を切り抜けることができなかつた。ローガー構想の実行によりまして、合理化された、フロア・プライスで押えられない、ダンピングでない、不正競争にならない価格をもつて、漸次現品を送ることが何よりの宣伝であり、何よりの行き方であろうと存じまして、最近御承知のように飛行便をもちましてフランス方面に生糸が送られているが、かような方面で怠らず現在の事情におきまして、できますだけの手配のもとに、いろいろ市場を調べて販路開拓に努力いたしております。  技術者の渡航はどうかという問題は、ぜひとも民間からの積極的なお申出をいただき、通商産業省といたしましては、これに沿いまして最大の努力をいたす用意があることだけ申し上げておきます。
  251. 小淵光平

    ○小淵委員 蠶糸業の中で製糸工業がだんだん昔の工業から近代工業に進んで参りまして、あるいは自働繰糸機であるとかあるいはコーン巻であるとか、生糸がだんだん外国へ出て参るようになつたのでありますが、コーン巻の生糸については、ただいま非常な障害が実はあるわけであります。これは糸をかせにしないで、そのままコーン巻として、アメリカの機屋さんがすぐ使えるようにして、日本から出そうということになつておるのでありますが、そのローン巻はいわゆる税金のかかる対象となるのだということで、この関税障害の問題が解決をしないばかりに、実はコドン巻の糸が出て行くに非常に障害となつておるわけであります。こういうふうな問題について、この関税障害の面を早急に解決できる見通しがあるかどうか、この点をお伺いいたしたいと思うのです。
  252. 宮幡靖

    宮幡政府委員 ちよつとお尋ねいたしますが、関税は相手国の輸入関税でありますか、こちらの輸出関税でありますか。
  253. 小淵光平

    ○小淵委員 先方の輸入関税です。
  254. 宮幡靖

    宮幡政府委員 その点につきましては、ただいまそれぞれ例のクレームの問題とあわせ考えまして、現在の国情の許す範囲におきまして交渉をいたしておりますが、もし割安なものが出て参りますと、かつてダンピング税というものが戰前に設けられたと同じように、これは自国の産業を保護すると申しますか、当然の処置といたしまして、相手国の輸入関税を阻止することは困難だと思うのであります。同じ価格の国内品と輸入品との競争になりましたときに、最後の勝利というものは、結局質の問題と、嗜好に適することであろうと思つております。それで御指摘のようなかせに巻きかえない糸をお出しにな力たい、その方がアメリカでも非常に便利であろうかと思うから、そうすればかような価格であると申しまして、はたしてそれに関税をかけていただかないようなことができるものかどうか。ただいまの事情におきましては、通産省としても断言ができないところであります。しかしながら、御趣旨はごもつともであります。これは要するに国際親善の関係で、日本に対しまする一つの残虐的な憎しみがまた各地区に残つております。これが日本人を愛する好意ある相手国が順次ふえて参りますならば、精神的にも解決される問題ではなかろうか、かように存じております。
  255. 小淵光平

    ○小淵委員 先ほど申し上げましたように、日本の生糸に対してアメリカの魅力というものは、かつての時代は非常にあつたのですが、戰争のために一時輸出が杜絶されまして、実は生糸に対してのしつかりした認識を持つていないわけなのです。そこで、アメリカ日本の生糸がいいということは、大体伝え聞いておられるようにわれわれ推察しておるのでありますが、現在スキャップのニューヨーク事務所にあるところの日本の生糸は、最近まで大体一万八、九千俵あつたと思うのです。その糸は、実は非常に脂分のあろごく悪い糸なのです、その糸をアメリカの機屋が使うということになりますと、大体昔の日本の生糸に対する認識のある人々が全体であるならば、こういう糸も日本の生糸の中に幾分かはあるのだということが認識できるのですが、この認識のない、初めて日本から来た生糸を見た人たちは、この不良な生糸が機屋さんに使われるということは、日本がこれから輸出する生糸について非常にいやな感じを持つと思うのです。ついてはこの生糸はぜひこちらに逆送して、もつといい糸が日本にたくさんあるわけですから、それらの糸を早く送つてアメリカの機屋さんに使つてもらわなくてはならないということを非常に考えておるわけですが、これらについて通産省といたしましては、この生糸を早くもとして、いい糸を早く向うに送つて日本の生糸の認識を改めてもらうような考えについては、いかように考えておられるか、お伺いいたしたいと思うのであります。
  256. 宮幡靖

    宮幡政府委員 アメリカの市場におきまして、日本の生糸に対する認識を新たにしていただくということの措置については、小淵委員の御意見の通りであります。しかしながら具体的に御指示になりましたあぶらけの多い生糸で、二ユーヨークに滯貨となつておる物をこちらにとりもどす考えはないか、こういう御指摘の点は、ただいまの貿易方式から申しますと、政府ではさようなことはいたすべきではないと考えております。しかしながら業界におきまして、もしかような逆輸入的な措置によりまして、生糸の輸出振興のために抜本的な構想をお持ちになつておるならば、それを伺いまして十分御相談の上、対策を練つて参りたい、かように考えております。ことにもし一万八千俵のニューヨーク市場の滞貨を、これは粗悪品にしろ、日本国内に持つて参りますと、政府が手出しいたしますれば、やはり公団の中に受入れなければならぬ。しかし公団は近く廃止すべき運命にありまして、公団の滞貨は現在非常にやかましく言われております。実際のランニング・ストック、通常ノーマルな滯貨でありましても、総括して滯貨と申すように、この問題を何らかの意味に使つておるわけでありますが、これを公団に引取りますと、滞貨として市場に出さなければならぬ。そうしますと、これを放出することによつて市場を圧迫しはしないか、それでは中小企業は成立たぬとか、あるいは生糸の業者は成立たぬというような御非難を受けるおそれも多分にあります。ですからこれを逆輸入いたしましても、その消化の面までことごとく民間でおやりになるというならば、そのお手伝いをやりますことは、おさしずに従つて十分やつて参りたい、かように考えております。
  257. 小淵光平

    ○小淵委員 蚕糸の関係は行政の面から言いましても、農林省それから通産省と非常に輻湊している部分があるのでありまして、農林省の所管になつておりますところの養蚕、製糸というもののうちで、製糸の部面は通産省の絹業行政、貿易行政との関係が非常に深いのでありまして、この工業部面をいかように解決して行つたらいいかということは、蚕糸業のうちで非常に問題とされている部分であります。そこで通産省の予算の部面を見まして、工業化試験補助費という補助金の面が一億四千五百万円ばかり計上されておるようでありますが、この予算のうちに工業化試験補助費というのが一億三千万、それから自転車工業研究補助費というのが千五百万円計上してあるようでありますが、この工業化試験補助費というものは、製糸工業の技術改華の面に、いわゆる農林省の所管になつておる方の面についても使うようにでき得るものかどうか。これをひとつお伺いいたしたいと思うのです。
  258. 宮幡靖

    宮幡政府委員 小淵委員の御質問に対しましてお答えいたします前に、工業技術の振興について通産省の考えておる大綱をごく簡單に申し上げます。  工業技術の振興と申しますことは、小淵委員の御質問の中にも数々現われております。日本が戰争の期間、技術的に遅れましたことを十年と申し、二十年と申しておりますが、事実におきまして技術の陳腐化ということは、おおえないものであります。また戰時中は軍の祕密として温存されたいわゆる隠れた技術というものも、これを掘り出さなければなりません。そこで通産省といたしましては、本年度の予算におきましてぜひ総合試験所の制度を確立いたしたいと思いまして、所要の予算として十億を申し出たのでありますが、残念ながら現下の財政事情によりまして、これを削減せられまして、残りましたものが、ただいま御指摘になりました一億四千余万円の数字なつたわけであります。従いましてこれらのことによつて、御指摘のようなことができるわけはない――と申すと、はなはだ言い過ぎにたりますが、そう申さざるを得ないような状況になつております。この一億の使用目的は残念ながら繊維工業のためでなくして、これは地下資源、鉱工業のための目的に使われるようになつておる費用でございまして、自転車の方は、例の全国にはやつて参りました競輪の国庫納付金の使途が法律によつてきめられておりますので、自転車の技術振興のために補助いたす、かようなことになつておるわけであります。
  259. 小淵光平

    ○小淵委員 そうしますと、この工業技術の面に関する工業化試験補助費というものは、繊維全体についてはこの補助費の対象とはしないというふうに了解してよろしゆうございましようか、お伺いいたします。
  260. 宮幡靖

    宮幡政府委員 ただいまの一億は鉱工業に関する補助費として計上してあるものであります。
  261. 小淵光平

    ○小淵委員 次にお伺いいたしたいのは、繊維公団の買上げの三万俵の問題でありますが、この三万俵の生糸の買上げについては、大体買上げ数量のきまりがついたように聞いておるのでありますが、さようでありましようか、お伺いいたしたいと思います。
  262. 宮幡靖

    宮幡政府委員 当時の公団の手持ちと買い上げました三万俵とを合せまして、大体三万八千俵程度でありまして、二月十日現在において千二百俵残つておるのであります。滯貨はその程度でありまして、これも不日契約がありますので、さばけるものと確信いたしております。従つて公団にあります滯貨は、おそくとも本年度内には一掃されるものでありまして、途中買上げ代金の遅滞等もありましたが、それは見返り資金の積立てを急ぎまして、貿易会計からの繰入れをやりました関係支拂いが少し遅れまして、たいへん御迷惑をおかけしたかと思いますが、ただいまは順調で、一月下旬に買い上げました分だけが支拂い未済になつております。
  263. 小淵光平

    ○小淵委員 この三万俵の買上げが大体きまりがついているというお話で了解いたしましたが、この支拂いの状況をつぶさに検討いたしてみますと、昨年度末のごときは、大体において引取つてから十億円もの金が実は支拂い未済になつておるわけであります。現在われわれの聞いておるところによりますと、神戸の方が一億三千万、横浜が八千万、大体二億円ということを聞いておるわけでありますが、この金は大体貿易資金の特別会計にあつた金を、この公団買上げの方へまわして使つて行けるという今にわれわれは聞いておつたので、こういうふうな未拂いができるということは、われわれは考えておらなかつたわけであります。なおとの金は公団の三万俵買上げの期間を別して、平均二箇月半という支拂い未済の期間があるのでありますが、これらの経緯につきまして、どうしてそういうふうに支拂いの日が遅れたかということについて、お伺いをいたしたいと思うのです。
  264. 宮幡靖

    宮幡政府委員 ただいまの小淵委員の申された一月下旬の買上げ分は、大体千三百俵、一億八千万円程度のものが未拂いになつております。その期間におきましては、さきに私の方からおわび的に申し上げましたが、二箇月中も遅れまして御迷惑をかけたことは恐縮に存じております。ことに年末の金融困難の折柄かなりの御迷惑だつたと思いますが、事情は先刻簡単に申しました通り、対日援助見返り資金特別会計に繰入れるべき援助資金の積立てをいたさなければならないので、その積立てをやはり貿易特別会計から繰入れます関係で、これはあるいはおしかりになるかもしれませんが、現在の事情としてはまつ先に繰入れを行わなければならない、そうして債務償還費その他の面接投資に使う、かような方面に使われましたもので、公団の金繰りの上におきまして遅延するということもやむを得ないような事情にあります。これは業界の陳情を待つまでもなく、とくと手を打ち、いろいろくふう勘案をいたしまして、通産省としても異常の関心をもつてこれに努力し、ただいま解決のできるような状況にまでなつております。途中遅滞いたしましたことは、事情ただいま申し上げましたような次第でございますが、業界の方々に非常に申訳ないと思つております。しかしながら生糸買上げの問題と関連いたしまして、御承知の軽目羽二重の民間滞貨等を、いわゆる滞貨融資の面において、公団が引取つてクリスマスの前までに完全に処理することができたというような、いささか貢献いたした面もあります。今後は公団がなくなり、民間貿易になりますので、かようなこともないと存じますが、ぜひとも功罪相殺の意味で御了承願いたいと存じます。
  265. 小淵光平

    ○小淵委員 この公団買上げの生糸は、為替レートの変更が余億なくされたことによつて貿易公団が三万俵の買上げをするということに相なつたわけでありますが、この三万俵の買上げをするにつきましては、四百二十円レートが三百六十円レートにわかりますから、当然そこに一定の不足金が生じて参るので、大蔵省からこの三万俵について五億六千万円の差金の大体のわくが與えられてあるわけであります。この三万俵が、ただいま次官から申されましたように、二億円未満の金できまりがつくことに相なるわけですが、そうするとこの金が五億円を幾らか下まわつたところで、この問題は解決できるのではないかというふうに考えられるわけであります。そこで当然初めのわくから行きますならば、そこに余剰が生じて参るわけでありますが、この余剰はまあ別といたしましても、この二箇月半にわたるところの引取について遅延した分は、実は多大の犠牲を業者が負担しておるわけであります。一箇月一俵について大体千二百円、二箇月半、三万俵の引取遅延をした場合、大体換算いたしますと、一億円近くの業者負担をここにしなければならないという状態になると思うのであります。このものはもとよりレートの変更によつて七万俵以上の政府が持たせたものの損失を、この三万俵の買上げによつて解決いたしたわけでありますので、これは当然犠牲の上にも犠牲があるわけであります。この一億円の業者の負担については、公団はどういうふうにされる考えであるか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  266. 宮幡靖

    宮幡政府委員 公団の方の支拂いが遅れまして、二箇月半もむりな金策をさせた、従つて金利諸掛等の御負担があつたということは、私はその事実をまともに拝承するものであります。従つて公団の売掛金に対しては金利を徴收する制度になつておりまして、こちらの未拂いに対してのみ金利を拂わないということは、たといそれが実際の損害を補償するに足りないものであつても、制度として欠陷のあるものだと思います。いろいろ交渉いたしました結果、御承知のように本年一月から遅滞の分に対しましては、金利の分を差上げることにいたしました。しかしながら昨年の七月から十二序までの損失はどうするかと申しますと、これははなはだ言いにくいことでありますが、法律とか命令とか規定というものは、とかく事実に遅れて存在発生するものでありまして、いろいろ交渉等の期間におきましてそういうようなずれができまして、ただいまのところ国家がこれを補償する措置のないことを特に御了解願いたいと思います。
  267. 小淵光平

    ○小淵委員 ただいまの次官のお話大体了承できるのですが、年度内のことでもありますし、たとえば六千万円と一億円との差はそこにありましても、――一億円に満たなくても、六千万円のそれだけは何とか方法を講じてこの負担の一部分にでも充ててやろうというふうに処理でき得るとわれわれは考えているのですが、この点について御見解をお伺いいたしたいと思います。
  268. 宮幡靖

    宮幡政府委員 国家の財政及び政府機関の資金の取扱い方につきましては、御承知の通り大蔵省の方の管轄でありまして、その規定に従つて処理いたしまして現在公団みずからの発意をもちまして、御指摘のような措置を講ずることはまことにできにくいものである、かように考えております。せつかくのお言葉でありますから承りまして十分大蔵省と御相談の上検討いたしまして、適当の機会にまたお答えすることにしたいと思います。
  269. 小淵光平

    ○小淵委員 通産大臣にお伺いするのは大体以上の点で、これを打切りたいと思います。
  270. 植原悦二郎

    植原委員長 安本もおりません。大蔵省は主計局長がおりますが農林省もおりません。まことに困つたことでありますが、政府に対する質問政府の当局者がおらない限りは、本日はこれにて散会するよりいたしかたがありませんけれども、この際政府委員から特に政府にお伝え願いたいと思いますことは、予算審議の予定日も非常に追つております。ゆえに政府委員において御出席なければ質疑ができない、従つてその遅延の責任政府でおとりくださることを御了解の上で委員長は進行いたしますから、さよう政府にお伝え願いたいと思います。  本日はこれにて散会し、明日は午前十時より開会いたします。     午後四時三十九分散会