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1950-02-14 第7回国会 衆議院 予算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年二月十四日(火曜日)     午前十一時五分開議  出席委員    委員長 植原悦二郎君    理事 池田正之輔君 理事 上林山榮吉君    理事 小峯 柳多君 理事 苫米地英俊君    理事 勝間田清一君 理事 川崎 秀二君    理事 川上 貫一君 理事 圖司 安正君    理事 今井  耕君       淺香 忠雄君    天野 公義君       江花  靜君    小淵 光平君       角田 幸吉君    北澤 直吉君       小金 義照君    小平 久雄君       坂田 道太君    田中 啓一君       玉置  實君    中村 幸八君       永井 英修君    丹羽 彪吉君       松浦 東介君    松野 頼三君       南  好雄君    山村新治郎君      武藤運 十郎君    稻葉  修君       中曽根康弘君    村瀬 宣親君       山本 利壽君    林  百郎君       深澤 義守君    米原  昶君       奧村又十郎君    小坂善太郎君       平川 篤雄君    松本六太郎君       岡田 春夫君    世耕 弘一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  吉田  茂君         国 務 大 臣 殖田 俊吉君         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         農 林 大 臣 森 幸太郎君         運 輸 大 臣 大屋 晋三君         建 設 大 臣 益谷 秀次君         国 務 大 臣 青木 孝義君         国 務 大 臣 増田甲子七君  出席政府委員         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         証券取引委員会         委員長     徳田 昂平君         通商産業政務次         官       宮幡  靖君         経済安定政務次         官       西村 久之君  委員外出席者         参  考  人         (警視総監)  田中 榮一君         参  考  人         (警視庁刑事部         長)      坂本 智元君         專  門  員 小林幾次郎君         專  門  員 小竹 豊治君 二月十四日  委員北村徳太郎君辞任につき、その補欠として  稻葉修君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  昭和二十五年度一般会計予算  昭和二十五年度特別会計予算  昭和二十五年度政府関係機関予算     ―――――――――――――
  2. 植原悦二郎

    植原委員長 これより会議を開きます。  質疑を継続いたします。北澤直吉君。
  3. 北澤直吉

    北澤委員 大蔵大臣にお尋ねしたい第一点は、日本国際收支の問題であります。御承知のように、現在日本国際収支は非常に支拂い勘定が多いのでありますが、幸いにしまして、アメリカ援助によりまして、国際収支バランスをとつておるのが現状であります。しかしながらこの米国の対日援助というものは、いつまでも期待するわけに参りません。欧州に対するマーシャル計画というものも、大体一九五二年の六月には終了するという見込みでありますので、日本に対しまする米国援助というものも、一九五二年の夏ごろには大体なくなるか、あるいはありましても、その額は非常に少くなると思うのであります。そうしますと、日本といたしましては、アメリカ援助に期待を持たずに、それ以外の方法において、日本国際收支バランスをとらなければならぬということになろうと思うのであります。大蔵大臣も過般の財政演説におきまして、国内経済の安定がその緒についた今日においては、すみやかに国際收支改善を実現することが、今後のわが国経済に課せられた最も重大な問題である、こう述べておりますが、二十五年度の日本国際收支予想を見ますと、輸入が大体十億ドル、輸出が大体六億ドル、その差額は四億ドルあるのであります。それからまた貿易外收入、これが安本あたりの見積りでは大体八千万ドル、観光收入あるいは進駐軍関係の人の使う金でありますが、そういうものによつて大体八千万ドルくらいの見当の貿易外收入がある。そうすると輸出によつて六億、貿易外收入が八千万ドルで、二十五年度の国際収支は三億二千万ドルぐらいが支拂い超過になる。ところが今度アメリカの議会に出ております、アメリカ政府予算によりますと、日本に対する援助は今年の七月以降一年間において一億七千二百万ドル、こういう数字が出ているわけでありますが、そうしますと、日本の二十五年度の国際收支において、アメリカ日本に対する援助を入れましても、そこに赤字が出はしないか、そういうふうな考えを持つのでありますが、これに対して大蔵大臣見通しを伺いたいと思います。
  4. 池田勇人

    池田国務大臣 アメリカ各国に対しまする援助は、お話通りに早晩期待できなくなるであろうということは、私も覚悟いたしておるのであります。しかしてその時期がいつになるかと申しますと、これはわれわヘの想像を許さないのでありますが、お話のように、一九五二年からなくなるだろう、こういうことは、アメリカのみならず、その他の国においても言われておるのであります。私の財政経済政策といたしましては、この援助がなくなつたときに、日本国民が非常に困らないように、生活水準を下げなくても行けるように、また飢餓輸出をやらなくても日本が立つて行くような方法考えなければいかぬというので、昭和二十四ヰ並びに二十五年度の予算を組み、また二十六年度におきましてもそういう存えをもつて検討いたしております。従つて昭和二十五年度の貿易並びに外貨関係はどうなるかと申しますと、大体お話通りであります。十億ドルの輸入に対しまして六億二千万ドル予想いたしております。貿易外收入も八千万ドルを予想いたしておるのでありますが、そういたしますと差引三億ドルになる。この三億ドルというのは、今お話通り新聞では二億七千五百万ドルの援助資金と、こう言つております。しかしこれは一九五〇年から五一年の予算であります。われわれの二十五年度の予算におきましては、前年度の四億二千三百万ドルというものが、半年ずれることになつておりますから、見返資金におきましても、それを計算に入れまして、千五百八十億円を組んでおる次第であるのであります。しかして当初は三億二千万ドル程度予想しておりましたが、新聞によりますと二億七千五百万ドルと言つております。しかしこの二億七千五百万トルをアメリカ国会に出しまして、今審議をいたしておりますが、アメリカ予算を見ますと、歳出が四百二十四億ドル、そうして歳入が三百七十三億ドル、差引五十一億ドルの赤字になりておるのであります。これを埋めるべく増税考えておるようでありますか、何分十一月には選挙がありますかり、増税ばかりによるわけには行きますまい。そうするとしよせん歳出を削つて来るだろう。そのときにやはり対外援助が問題になりまして、われわれは二億七千五百万ドルは少くとも確保していただきたいという気持がありまりけれども、今のところ想像がつかないのであります。しかしいずれにいたしましても、そう大した金額の違いはのりますまいし、また前年のずれがありますので、昭和二十五年度におきましては外貨予算に対しまして、非常な支障を来すことはないと考えておりま
  5. 北澤直吉

    北澤委員 今の大臣の言によりましても、輸入が十億ドル、輸出が六億二千万ドル、こういうお話でありますが、最近の、特に今年に入りましてからの日本輸出貿易状況を見てみますと、どうも順調に参つておらぬようであると思われますので、一体予定の六億二千万ドルの輸出が確保できるかどうか、これにつきまして大体のお見込みでけつこうでありますから、お話を願いたいと思います。
  6. 池田勇人

    池田国務大臣 貿易予想とかいろいろな予想がここで論議されるようでありますが、どうもみんな主観的のようであります。昨年の臨時国会におきましても、ポンド切下げ直後のあのピークを見まして、それが一年度全体をおおうような議論があつたのでありますが、私はそう考えません。今年の一月になりまして、これは少し下目でありますが、これは昨年の十一月、十二月が非常によかつたのでございます。一時的の現象と考えております。見通しと、こうおつしやれば六億二千万ドルはぜひとも確保したい。及ぶべくんば七億ドルを越えるような計画を立つて行きたい。こういうふうに努力いたしておるのであります。どうしても私は六、七億ドルの分は確保できると考えております。
  7. 北澤直吉

    北澤委員 大臣お話、大体わかりましたのですが、輸入お話通り十億ドル、輸出は六億ドルといたしまして、その貿易の増進をはかると同時に、貿易外收入というものにつきましても、これは特段の考慮を拂わなければならぬと思うのであります。大臣財政演説の中にも、貿易外收支改善についても、積極的に各般の施策を推進する予定である。こういうふうに述べられておりますが、戰争前におきましては、日本国際收入において、貿易外收入が非常に大きな額を占めておつたのは、海運收入あるいは海上保険收入、そういうふうに貿易外の、いわゆるインヴィジブル・トレードが非常に日本に幸いしまして、貿易外收入が非常に多かつた。それによつて日本国際收支というものが、いい状況を維持しておつたわけでありますが、大臣はこの貿易外收入改善というものについて、どういう具体的な施策をお考えになりますか、伺いたいのであります。
  8. 池田勇人

    池田国務大臣 私の記憶をもつていたしますれば、お話通り日本輸入超過を続けておつたのでありますが、貿易外收入によりまして、大体カバーいたしておつたのであります。貿易額の大体一割五分程度海運收入、すなわち二億二、三千万円程度海運收入がありますし、また外国人日本の店への送金が四、五千万円、また観光客收入が二、三千万円、こういうふうになつておるのであります。日本はやはり海国でありますから、貿易外收入の第一点といたしましては、どうしても船舶を使うよりほかはないと思います。これは御承知通りに新造船をつくつたり、あるいは標準船、戰標船を改造しますと、今年度におきまして四十万トン程度外航船ができ上ると考えております。また貿易のやり方につきましても、御承知通りCIF価格に改めるのでございますいろいろな海運收入をはかりますと同時に、やはり日本観光国といたしまして、外人の誘致に力を注いで行きたい。しかしてこれがためには今日本ホテルはほとんど接收されておりますので、外人を導くようなホテルの建設に巻力を入れて行きたい。こういう考えを持つておるのであります。ただいまのところ貿易外收入の相当の分は御承知OSSの売上げでございますが、これも日本におきましてドルが円以外に流通しておるということは、私といたしましては実は情ない話でございます。貿易外收入は相当の影響を受けましようとも、できるだけああいう制度を改めて、正常な方法に持つて行きたい。これはマイナスの点でありますか、それを補うのはやはり観光客とかOSSという点でやつて行きたい。そうしてやはり貿易外收入をふやしますと同時に、産金政策を強化いたしまして、今のところは十トンないし十五トンの生産をもくろんでおるのであります。今後は日本国内経済の安定ができたら、次は外貨資金の点について、外国日本との間により以上の力を注いで行かなければならぬと考えておる次第であります。
  9. 北澤直吉

    北澤委員 政府におかれましても、貿易外收支改善につきましては、いろいろ具体的な構想を持ておられるのでありますが、しかしながら敗戰国日本としまして、急激に貿易外收支改善する、貿易外收入の増加をはかるということはなかなか困難であると思うのであります。結局問題は外資導入にあわせて、国際收支改善をはかるということができ得るならば、これは最も簡単な道であろうと思うのでありますが、政府におかれましては、さしあたり二十五年度におきまして、どの程度外貨導入考えておられますか、その点をお伺いしたいと思います。
  10. 池田勇人

    池田国務大臣 日本産業復興には、外資導入が不可欠の條件であります。これは單に国際收支という面でなしに、産業復興上どうしてもなければならぬのであります。しかして外資導入は、敗戰直後から叫ばれておりましたが、何分にも経済安定がないときには、外資導入は望むべくもないのであります。幸いに昨年来日本経済が安定し、外資が流れ込むような態勢ができたということは、われわれ議員ばかりでなしに、先般のウエバーがニューヨークにおいて講演されたように、非常に外国日本経済を信用し始めて、私はこれからどしどし入つて来ると思いますが、ただ経済が安定したということだけでは足りません。どうしてもアメリカ日本投資しようという気持を起すようにしなければならぬ。それにはやはり元利拂いの保証たとか、あるいはこちらにおきますところの資本並びに技術者に対する課税の特免、こういうものを考えなければいかぬと思うのであります。従いまし送金の問題、課税の問題につきましは検討を加えまして、近日中に本国会に提案することとなると思うのであります。こういうものができましてから、本格的に入つて来ると思うのでありますが、今どれだけの外資が本年度入つて来るかということは、ここではつきり申し上げられません。これは、そういう諸般の制度の確立と、日本のり経済の安定の度合いによつてきまるとだと考えております。
  11. 北澤直吉

    北澤委員 二十五年度におきまする外資導入につきましては、大臣のおつしやるように見込みをつけることは困難かしれませんが、それではさしあたり具体的にこの外資導入について、もし話合いが進んでおるものがありますならば、それについて伺いたいと思います。
  12. 池田勇人

    池田国務大臣 ただいまのところ、私にも話を申し込んでおるものもありますし、また通産大臣の方に話があるのもあるようでございますが、しつかりしたものでないのでありまして、こういう帯上で申し上げるところまで行つておりません。しかし政府といたしましては、外資導入に対する強力な機関を設けまして、すなわち外資委員会事務局といたしまして、外資導入に対して各閣僚力を合せて仕事を運んで行こうとしておるのであります。今まででは石油関係に少し入つております。話がありますのは、ホテル関係であるのであります。他のゴムその他の部面についてもあるようでございますか、具体的にどこの会社がどれだけの金額ということは申し上げる段階に至つておりません。
  13. 北澤直吉

    北澤委員 外資導入の問題につきましてさらに伺いたいのでありますが、大蔵大臣財政演説におきましても、経済再建に貢献する優良なる外資が投下されることを希望する、こういうように言われておるのでありますが、私の見るところをもつてしますれば、どうも日本におきましては、この外資導入を敬遠するような思想が相当あるのじやないか。共産党諸君などの宣伝もあると思うのでありますが、外資導入すると、日本の国が外国経済的な植民地になる、こういうふうな考えから、どうも外資に対しましてこれを敬遠するような空気が見受けられるのでありますが、私はこれはとんでもないことだと思うのであります。敗戰後日本再建するにおきまして、最も大事なことは、日本では資本であります。戰争によつて資本が非常に消耗しまして、今日最も重要なことは資本蓄積であります。国内における資本蓄積すると同時に、外資導入し、日本において最も足らぬものをふやして、日本再建することが最も大切であるのにかかわらず、外資導入すると、日本経済外国植民地化するというふうな考えから、ともすると外資導入に対して、警戒的な気分を私は強く感ずるのであります。ことに共産党諸君は、外資導入に対して大いに反対しておりますが、ソビエトロシヤにおいても戰争前アメリカにコンセッシヨンを與えて、アメリカ資本の力によつて国内開発しておるのであります。しかも戰時中におきましても、アメリカに対してソ連は十億ドルの借款を申し込んだところが、アメリカにけられたのであります。結局ソ連においてもでき得るならば、アメリカ資本を入れて、ソ連開発をしたいというのがソ連政策であつたのであります。のみならずアメリカ自体におきましても、これはもともとイギリス植民地であり、イギリス資本によつて今日のアメリカができておるのである。その他南米諸国におきましても、資本の足らないときには外国資本を入れて、自分の国の開発をはかる。また第一次世界大戰のあとにおきましても、いくさに負けたドイツ復興しましたのは、ドーズ案その他によるアメリカ援助によつて、第一次世界戰後ドイツ復興がなされたのであります。それと同じにこの際日本外資導入に対しまして、これを敬遠し、警戒する思想は一掃しまして、日本経済再建のためには、思い切つて外資を入れるというような方針をおとりになることを希望するわけでありますが、それにつきまして大蔵大臣のお考えを伺いたいと思います。
  14. 池田勇人

    池田国務大臣 北澤君の御意見、まつたく同感でございます。吉田内閣といたしましては、外資導入財政経済政策の重要なる部面をなしておるのであります。
  15. 北澤直吉

    北澤委員 外資導入問題につきましては以上をもつてやめまして、次に申し上げたいのは、見返り資金運用の問題について伺いたいと思うのであります。二十五年度の見返り資金特別会計予算を見ますと、債務償還に五百億円を計上いたしておるわけであります。大蔵大臣の御説明によりますと、見返り資金運用につきましては、ある程度債務償還の方に充てなければならないという御説明のように私は聞いたのでありますが、日本に対する米国援助資金とほとんど同じような性格を持つておりまする、アメリカヨーロッパ諸国に対するいわゆるマーシャル計画による援助資金、この例を見ますと、やはり日本と同じように、マーシャル計画に参加したヨーロッパ諸国に対するアメリカ援助資金につきましては、その見返り勘定を設けて、その見返り資金の中からその国のあるいは産業開発、あるいは債務償還というような方面に金を山しておるわけであります。去年の九月末現在の数字によりますと、大体ヨーロッパに対するマーシャル計画の金は三十七億ドルであります。その三十七億ドルの中で生産資金に充てられておるものが十一億七千万ドル、それから債務償還に充てられておるものが十億二千三百万ドル、その他のものが二億五千三百万ドル、それからまだ使わずに見返り資金勘定の中に積み立てられておるものが十二億五千百万ドル、これが去年の九月末現在の数字であります。これを各国の例を見ますと、見返り特別勘定の中から債務償還に充てられでおるものを見ますと、これはほとんどイギリスだけであります。イギリスはほとんどその見返り資金の大部分債務償還に充てているわけでありまして、その他の国における債務償還フランスにおきまして一億七千万ドルだけが出ている。オーストリアが債務償還に四千万ドルというわけでありまして、その他の国においてはマーシャル計画による援助資金見返り資金は、一大体生産方面に使われておる――まだ使われていないで、積み立ててあるものも相当ありますが、そういうふうにアメリカヨーロッパに対する援助資金見返り資金を見ますと、債務償還に相当な部分を充てておるのは、イギリスフランスだけくらいでありますが、私は日本におきましても、この見返り資金については必ずしも当然に債務償還に充てなければならぬというようなことはないと思うのであります。もちろんドツジ・ラインを実行して参りました今日におきましては、日本経済安定、あるいは大臣のおつしやるように資本の確実なる蓄積を実現するという点から、債務償還という方法をおとりになつたと思うのでありますが、しかしながら私は見返り資金性格から、当然にその中から債務償還をしなければならぬというふうなりくつは出て来ないのではないかと思うのでありますが、その点に対しまする大臣のお考えを承りたいと思います。
  16. 池田勇人

    池田国務大臣 アメリカ各国に対する援助資金使いようは、お話通り大体ヨーロツパにおきましては、債務償還が三分の一、経済再建が三分の一、残り三分の一は使わずにあるという状況であります。日本においてはどうかと申しますと、大体ヨーロツパに対しましての全体的の数字が示すと同じ程度行つております心それ以上に産業再建の方に行つておるとも言い得るのであります。イギリスお話のように八〇%余りをやつております。フランスは三〇%やつておる。こういうことから考えますと、私は日本見返り資金使いようは、欧州におけるよりも産業資金にたくさん行つておるという考えを持つております。しかして御質問債務償還に必ずしも充てなくてもいいではないかというお話でございますが、債務償還をみなが問題にする真意が、私には十分わからないのでありますが、この金を減税にあまり使うというわけにも行きますまい。減税に使いまして生活水準を急に上げて行くと、初めの御質問にありましたように、援助資金がなくなつた場合、日本国民生活水準をどうするかという問題があるのでありまするしかしてまた政府私企業に四百億出す。しこうしてまた公企業の方にも四百億出し、その残りの五百億を債務償還として使うのであります。政府私企業並びに公企業に直接投資するのがいいか、あるいはこれは債務償還をして、銀行その他いわゆる民間企業経営として、民間の創意によつて出すのがいいかこれは問題だと思います。私は政府の方がただいま公企業あるいは私企業に対して八百億使うのならば、債務償還として五百億程度使うのが適当でないか。各国の例を見ましても、大体こういう方向で行くのがいいのではないかと考えておる次第であります。
  17. 北澤直吉

    北澤委員 見返り資金運用に対しまする大蔵大臣のお考えは、大体了承いたしたのでありますが、つけ加えてお尋ねしたいのは、債務償還によつて銀行手持ち資金をふやして、そして銀行から一般にその金を流す。そうして産業復興の方に見返り資金を活用するお考えのようでありますが、現在の日本経済情勢を見ておりますと、銀行というものは、御承知のように営利というものを目的としておる。従つて採算ベースに合わない金融というものは、なかなか市中銀行はやらない。元のように復興金融金庫がありますならば、ある程度採算に合わなくとも、国家的にしなければならぬという、そういう金融には金を出すのでありますか、今日の一般市中銀行におきましては、採算ベースに合わない金融にはなかなか出しにくい。そうしますと、大臣のおつしやるように債務償還によつて銀行手持ち資金をふやしましても、なかなか一般の方に金がまわらない。ところが敗戰後の今日の日本におきましては、現在は採算ベースに合わなくとも、少し保護をすれば将来りつばに採算ベースに合うような事業が相当あるりじやないか、こういうものにつきましては、どうしてもやはり国家的見地からこれを金融をして行かなければならぬ。そうしますと、私は見返り資金の中で債務償還に充てるものの中で、やはりその一部は政府から直接投資をして、銀行を通さずに投資をするということが必要ではないかと思いますが、その点に対しまして、大蔵大臣の御意見を伺います。
  18. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申し上げましたように、私企業に対しましての政府投資を四百億と見込んでおります。公企業に対しまする政府投資を別に四百億見込んでおるのであります。しこうして残りの五百億を国債償還に充て、残りの二百数十億円を翌年度繰越し、こういう計算にいたしております。国債償還に充てました五百億が市中銀行行つて市中銀行がその金を使うのに、どうしても国家目的に沿うようにできないではないか。復興金融金庫的なものがあつた方がいいのではないかという御意見でありますが、私はその点はああいう政府の特別機関を置きまして出すということはあまり賛成しない。それよりも、長期金融になれておりますところの興業銀行、あるいは勧業銀行金融債を発行せしめる、あるいはまた農林関係の長期資金といたしまして、農林中金に債券を発行せしめる、また中小企業金融として商工組合中央金庫を使う、それらが專門的に銀行の余つた金を金融債の形によつて集めて、そうして長期資金として使う、こういう制度が民主的であり、合理的であると考えておるのであります。政府が直接投資いたします見返り資金の金は、八百億くらいで十分ではないかと考えております。
  19. 北澤直吉

    北澤委員 大蔵大臣の非常な御努力によりまして、目下非常に要望されております長期設備資金の調達につきましては、大体の政府の案ができまして、興業銀行あるいは勧業銀行、あるいは商工中央金庫、農林中央金庫、こういう機関の活用によつて、それに対してあるいは見返り資金あるいは預金部資金を流しまして、そうしてこの長期設備資金の調達につきまして、特段の御努力をされていることはよく承知しておりますが、私はやはりこれももちろん必要でありますが、このほかに見返り資金の中から直接に産業に投資する部分をもつとふやした方がよいのじやないか、こういうように考えますが、これは意見の相違でありますから、これ以上申し上げません。  次に大臣にお聞きしたいのは、貿易金融の問題であります。まずもつてお伺いしたいのは、御承知のように貿易と為替というものは非常に密接な関係があるのでありますが、日本におきましては為替に関する行政というものが方々に分散しておる。あるいは大蔵省、通産省、あるいは外資委員会、あるいは外国為替委員会、あるいは日本銀行というように、為替に関する行政がいろいろの機関にわかれているというようなことはどうもおもしろくない。やはりこういう為替に関する行政はなるべく一本にまとめて、統一ある方策のもとに実行されなければならぬと思うのでありますが、大蔵大臣は為替行政を集中して統一的に運用するような組織をつくることにつきまして、どういうお考えを持つておりますか、お伺いしたいと思います。
  20. 池田勇人

    池田国務大臣 先般民間貿易に移されましてから、ただいまのところは外国為替管理委員会で処理いたしておるのであります。その下準備は日本銀行がやり、そうしてこれを取扱うのは普通の銀行並びに外国銀行がやつておるのであります。ただいまの措置といたしましては、この制度で当分――当分と申しましてもあるいは限度がありますが、やむを得ないのではないかと考えております。御承知通り外資導入の問題、外国為替管理の問題、いろいろな問題がある今の状態でありますので、どこの省へ一元的に集めるということもなかなか困難だと思います。しかし大蔵大臣といたしましては、国内通貨の価値の問題と、外国通貨に対します日本の円の価値の問題は、大蔵大臣の責任でやつておる関係上、私といたしましては、外国為替管理委員会に相当の関心を持ちましてやつておる次第であります。
  21. 北澤直吉

    北澤委員 次にお伺いしたいのは輸入金融の問題でありますが、御承知のように、外国為替銀行日本に支店を持つておる。従つて日本における外国側の為替銀行と、外国における本店との間は、本店、支店の関係であります。ところが日本の為替銀行は、外国に支店を持たず、いわゆる外国銀行とコルレス契約によつて為替上の取引をやつておるわけであります。そこで問題は、日本における外国為替銀行輸入金融のために信用状を発行するという場合には、これは本店に対しまして一文の保証金も積まずに、いわゆるマージンを積まずに信用状を発行できるのでありますが、日本の為替銀行はコルレス契約によつております関係上、どうしても保証金を積まなければ信用状を出せない。聞くところによりますと、アメリカに対しましては五割のマージンを積む。イギリスに対しましては十割の保証金を積まなければ信用状が出せない。こういうのでありますと、日本側の為替銀行と、外国側の為替銀行との間に相当の開きがある。これではとても日本の為替銀行は、外国の為替銀行と競争はできないのではないかというような心配を私はするわけであります。西ドイツの例をもつて見ますと、西ドイツ外国銀行の支店はありません。信用状はすべてライヒスバンクが出しておる、こういうことを聞くのでありますが、どうも日本におきましては外国銀行の支店があるために、外国銀行の支店はマージンを積まずに信用状の発行ができるが、日本銀行の方は今申しましたように、五割ないし十割の保証金を積まなければ信用状が発行できないわけでありまして、外国銀行日本銀行との問に非常な不公平があるということを、心配するわけでありますが、大蔵大臣はこういう不公平を是正するにつきまして、どういうお考えを持つておられるか、承りたいと思います。
  22. 池田勇人

    池田国務大臣 外国に本店を有しまする外国銀行の支店を内地に設けさせまずときには、そういう議論があつたのであります。心配をしておりましたが、今の実情はそんなに心配はいらない状況でございます。私といたしましては、なるべく早く日本銀行外国銀行とコルレス契約を結ぶように指導をいたしておりますが、どうもいろいろな昔からのやりきたりがあると申しますか、なかなかむずかしいので、今日本銀行がコルレス契約を申し込んでおる銀行は、日本に支店を持つていない銀行に申し込んでおるようであります。従いまして話がなかなか進みにくい。これはやり方として惡いので、やはり向うの一流銀行と、そちらに支店を持つておる銀行とコルレス契約を結ぶ方が、両者がいいのではないひという考えをもつて指導をいたしております。アメリカに対しましては五割とか、イギリスに対しましては十割という保証をしなければならぬということは私は聞いておりません。しこうして片一方は輸入に対しましては十分買手と同じようなやり方で金融をつけつようにいたしております何と申しましても、ただいままでの貿易は、貿易官理特別会計を通じてやつております。貿易会計の方で輸出滞貨ができた、あるいは輸入滯貨ができておりま弔のを早くほどいてやるように、先般も預金部から百五十億を出しまして、金融をつけておる状態であるのでありますが、ただいままでのところでは、外国為替銀行日本に支店を置いたために、為替上非常な支障があるとも考えておりません。
  23. 北澤直吉

    北澤委員 輸入業者が輸入資金の手当をする場合におきましては、信用状の発行によりまして大体目的を達しておるわけでありますが、いよいよそれによつて荷物が外国から来まして、その荷物が日本に着いて、それからそのの荷物をメーカーもしくは一般消費者にくまでの間の資金と申しますか、この金融問題でありますが、これにつきましてはどうもいろいろ考えなければばらぬ問題がある。日本銀行では日歩二銭四厘の利子を拂わなければいかぬ。ところが外国銀行は利子が安い。日歩一銭二厘。そうしますと荷物が日本に着いてからメーカーもしくは消費者に行くまでの期日の金融資金のコストは、日本の業者と外国の業者との間に差がある。ほとんど倍違う。こういうことではやはり日本の業者と外国の業者との間に不公平が起る。それでなくても日本の業者は、外国の大きな資金のバツクを持つております業者と対抗する上におきまして、いろいろと不利不便があるのでありますが、こういうふうな金利の点におきましても、差等があるというふうなことがあるのでありますが、こういう点を是正するようなお考えがあるかどうか伺いたいと思います。
  24. 池田勇人

    池田国務大臣 ただいま申し上げましたように、輸出に対しましての貿手は、一般金利よりも二厘下げております。そして輸入に対しましても貿手と同じような取扱いをいたしまして、できるだけ金利を下げたいと考えております。今度普通金利が二銭五厘になりましたから、二銭三厘になつたと思います。しかして外国銀行が一銭二厘で金を出しておるということを北澤さんはおつしやるのですが、そう大して出ていないのではございませんか。もし外国銀行が非常な金を持つて、そして日本輸入業者あるいは輸出業者に対してやるということになりますと、やはり金利につきましてのある程度の監督をしなければならぬと思うのでありますが、ただいまのところ、お話通り外国銀行が一銭二厘でどしどし輸入手形の割引とか、輸出手形の割引をやつておるとは私は考えておりません。
  25. 北澤直吉

    北澤委員 次にお伺いしたいのは輸出金融の問題でありますが、普通常識では輸出金融は短期資金でいいというふうに考えられておりますが、今日のようにプラントを輸出する、あるいは相当のクレジットをつけて輸出しなければ、日本輸出ができないという状態におきましては、輸出資金も相当長期の資金でなければならない。たとえば先日も通商産業大臣からお話があつたのですが、最近インドの方に日本でブラントを全部つくつてそのまま輸出する。そうするとその資金を受取るのは半年もしくは一年くらいしなければ輸出した代金が入つて来ない。こういう状態を考えますと、私は輸出資金につきましては、相当の長期の資金がいるのではないかと思うのでありますが、今の日本金融組織におきましては、そういう貿易に対しまして、輸出金融に対しまして、長期の資金を調達する道がないのではないか。アメリカにはいわゆる輸出銀行という特殊銀行がありまして、そういう貿易に対する金融をやつておるようでありますが、私は日本におきましても、貿易においてはそういう長期の資金を調達するある特殊の金融機関がいるのではないか。たとえば興業銀行と元の正金銀行を合せたようなそういう性格金融機関が、日本輸出貿易増進のために、必要ではないかと思うのですが、これに対する大蔵大臣のお考えをお伺いいたしたいと思います。
  26. 池田勇人

    池田国務大臣 お話通りでございまして、輸出金融に対しましては長期も短期もございます。そういうものは自然発生的に輸出の長期金融をやるような銀行ができて来ると考えておりまして、今特に昔の正金銀行とかなんとかいつたものを、ただちに設けるという考えは持つておりません。
  27. 北澤直吉

    北澤委員 次にお伺いしたいのは、外聞為替管理委員会ができまして、外国為替の相場をきめておるわけでありますが、外国為替の相場につきましては、一円五十五銭の開きがある。そり中に外国為替銀行の手数料と外国為替委員会の手数料が入つておるわけですが、私はこれを非常にふしぎに思うのであります。外国為替委員会というものは日本の役所であります。日本の役所の経費をこの為替相場の中に織り込んで業者からこれをとるということになつておりますが、そうでなくても今日本貿易はなかなかむずかしい状態にある。この間も総理大臣がここでお話になつたのでありますが、日本貿易の増進のためにはどうしても日本におきますコストを下げなければならない。こういうお話であります。従つて日本輸出品のコストはなるべく下げる。輸出品の生産費ばかりでなく、金融上のコストあるいは海運の運賃のコストあるいは倉庫のコスト、要しまするに輸出品に関しまするすべてのコストを下げるということが、日本輸出貿易を振興する上に最も大事であると思うのですが、そういう点から考えますと、外国為替管理委員会の経費の一部を業者から取上げるということは避けた方がいい、こういう為替管理委員会の費用は、堂々と一般会計かち出した方がいいのではないか、そして業者に負担させない方がいいのではないかと思うのですが、これに対する大臣のお考えを承りたいと思います。
  28. 池田勇人

    池田国務大臣 外国為替管理委員会の方の為替相場といたしましては、お話通りに三十六銭ですか、とつておるのであります。為替管理委員会の経費を業者に負担させているかどうかは私記憶がありませんので、いずれ政府委員から御答弁いたさせます。
  29. 北澤直吉

    北澤委員 大臣にお伺いしたいのは、外国為替管理委員会が三十六銭の手数料をとることを、おやめになるお考えがないかどうか承りたいと思います。
  30. 池田勇人

    池田国務大臣 これは私はやめられぬと思います。為替の売買をする場合の当然の手数料でございますから、これは昔からあつたものでございまして、やめられぬと思いますが、それ以外の手数料をとつておるとすれば考えなければならぬと思います。
  31. 北澤直吉

    北澤委員 時間もありませんから、貿易金融に対する質問はこれをもつてやめまして、次に伺いたいのは、最近いろいろ世間でも問題になつおります自由港の問題でございます。私は第五国会におきましても大蔵委員会において、日本におきましては一体自由港あるいは自由地帯と申しますか、そういうものをつくるお考えはないかと聞きましたら、当時の大蔵省の税関部長はそういう考えはないという答弁であつたのであります。御承知のように日本貿易というものが日本復興の中心になつておる。てこになつておる。ところが最近の東亜の情勢を見ておりまずと、御承知のように中国は共産主義政権の支配下に入つておる。元は大連とか、上海とか、香港とかいうものは国際的な中継ぎ貿易の中心地であつた。ところがこういう地帯が中共の勢力下に入りまして、中継ぎの港としての役割が果せなくなつたのであります。そうしますとアメリカから極旗に物を持つて来る場合には、やはりどこかにそういうような中継ぎ貿易港がなければならない。結局大連もだめ、上海もだめということになりますれば、日本にそういう中継ぎ貿易港というものがなければならぬと私は思う。中継ぎ貿易港が日本にあれば、貿易の発展ばかりでなく、海運收入あるいは保険の收入、倉庫の收入というわけで、貿易上の利益ばかりでなく、先ほど申しました日本貿易外收入をふやす上においても非常にいいと思うのであります。そういう点から見ますと、私は日本のどこかにいわゆる自由港の制度を設けまして、アジア諸方面に対する中継ぎ貿易港を日本につくることが必要ではないかと思いますが、この自由港の制度についてはいろいろ種類があります。最近アメリカでは自由貿易地蔕――フリー・トレード・ゾーンということでたとえばシアトル、サンフランシスコ、ニユーオルリアンスあたりでやつておるようであります。自由港の中の組織につきましては、いろいろな御意見があると思うのでありますが、日本の現在の地位から考えまして、私は日本におきましても、自由港の制度をなるべく早く取入れて行くことが必要ではないかと思うのであります。その点に対しまする大蔵大臣のお考えを承りたいと思います。
  32. 池田勇人

    池田国務大臣 自由港制度の問題は先般来議論せられておるのであります。国内的に重要な問題で、検討はいたしております。しかしこの問題は今の自由港地域の広さの問題、また関税の率の問題、警察権の問題等各般の行政に非常な影響を持つものでありまして、われわれとしては自由港を置く方針でいろいろな点を検討いたしておりますが、なかなか問題が大きいので結論に至つておりません。御承知のように従来は自由港の設定はございませんが、保税倉庫とかあるいは保税工場を設けまして、自由港的の考え方は関税法にも相当織り込んでおつたのであります。これを一挙に自由貿易地蔕を設けてやることは、先ほど申しましたようないろいろな行政面に影響を及ぼしますので、重要な問題として今検討いたしておる次第であります。
  33. 北澤直吉

    北澤委員 あと二点ばかりお伺いしたいのでありますが、その一点は国際通貨基金に参加する問題であります。日本が全面的に国際経済に参加するということになりますならば、日本はなるべく早く国際通貨基金、いわゆるアメリカのブレトン・ウツズで調印されましたプレトン・ウツズ協定に入つて世界の為替の組織の中に入つて行くということが、私は日本貿易を促進し、日本が全面的に国際経済に入つて行くために必要であると思うのでありますが、それにつきましてはいろいろな條件があるのであります。必ずしも、国際連合に入らぬでも国際基金には参加できる。現にイタリアなんかは、講和條約ができる前にこの国際基金に参加しておると私は記憶しておるのでありますが、日本が国際基金に参加いたしますには、これに対しまして日本国内のいろいろな態勢を準備しなくてはいけない。一体今のままで日本はもし外国が許すならばすぐ国際通貨基金に参加できるのか、あるいは国際通貨基金に参加するためには、どの程度の準備が必要か、あるいは今のような日本の為替制度を直して、あるいは金本位制度、ドル・リンク制とか、そういうふうなことをやらなければ国際通貨基金に参加できないのか、そういうふうな国際通貨基金に参加するための日本国内態勢の整備につきまして、大蔵大臣のお考えを承りたいと思います。
  34. 池田勇人

    池田国務大臣 ブレトン・ウツズ協定に参加の可能性の問題につきましては、お話通りに講和條約ができなくても参加できるという前例も知つておるのであります。そうして日本が今の経済状態で参加できるかという問題になりますと、私はなかなか困難な問題ではないかと考えております。何と申しましても今は管理通貨の時代であります。そろしてまた国際貸借から申しましても、先ほどお話がありましたような非常な輸入超過の国でございます。かてて加えて日本復興程度から申しましても、今ただちにブレトンウッズ協定に参加できるだけの能力があるか、資格があるかということになりますと、困難な問題ではないかと考えております。
  35. 植原悦二郎

    植原委員長 北澤君、あなたはかなり時間を一人で独占されておりますが、あなたは大蔵大臣のほかにもう一つ運輸大臣に対する質問がありますが、運輸大臣がお見えになつておるから、大蔵大臣に対する質問がもし何ならばこの程度で……。
  36. 北澤直吉

    北澤委員 私は大蔵大臣に対する質問はこれで打切ります。
  37. 植原悦二郎

    植原委員長 それでは運輸大臣に対する質問を、もう時間も迫つておりますからどうかなるべく簡潔に願います。
  38. 北澤直吉

    北澤委員 運輸大臣に対してごく簡單にお尋ねいたします。申すまでもなく日本貿易振興のためには、日本の商船隊の復興というものが非常に必要でありますが、まずお伺いしたいのは、日本が外洋航路に使用し得る船舶につきまして、それに対しては船舶建造に対する制限が全然なくなつたのでありますかどうか、この点についてまずもつてお伺いしたいと思います。
  39. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 大体制限はなくなつたものと御了解願います。
  40. 北澤直吉

    北澤委員 次に問題は日本の船が外国航路に就航できるかどうかという問題でありますが、この日本船の外航就航の問題につきましては、どういう程度お話が進んでおりますか、伺いたいと思います。
  41. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 数字をもつて説明申し上げます。御承知のように日本の現在の船は、アメリカの船級あるいはロイドの船級というような問題に対して、欠格的の状態が非常に多い船ばかりであるのでありまして、これは昭和二十五年の一月二十六日の調べでありますが、一月二十六日現在でオーシヤン・ゴーイングいわゆる、外洋適格船は十八隻、十万二千トンでございます。さらに昭和二十五年の三月末日現在におきましては、船級取得の見込みのものが多少ふえまして、ただいま十八隻にプラス四隻で二十二隻にふえました。トン数は十一万六千トンに相なつております。さらに昭和二十六年の三月末日現在におきましては、目下第五次造船計画並びに二Aと申しまする古い戰時標準型の船がございますがこれの改造で、この船級の取得の見込みのものも加えまして、こ十六年三月末日には外洋適格船の累計が百三十一隻、トン数は八十六万九千トンに相なる見込みで、これの中にはタンカーも含んでおります。
  42. 北澤直吉

    北澤委員 もう一点伺いたいのでありますが、外国から船を裸でチャーターする問題とか、あるいはアメリカの船会社と日本の船会社との合弁で会社をつくつて、南米、中米あたりの船を使つてやるというふうなことが最近時々新聞に出るのでありますが、こういう問題と、日本の新造船計画との間の調整の問題につきまして、運輸大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  43. 大屋晋三

    ○大屋国務大臣 安い運賃をもつて外国の航路を自由に駆使することは、商業的見地からいたしますと非常にけつこうなことなのであります。しかも最近におきまして、中南米の一、二の国の安い船を裸でチャーターする、いわゆるベアー・チャーターいたしまして、それに日本の船員を乗り組まして、荷物を運搬する計画を持ち込んで来ております向きがございますので、トリップ・チャーター、タイム・チャーターである場合におきましてはさようではございませんが、この裸の船に日本の船員を乗り組ましで、しかもその船が非常に問題の多いところの船を使用するという点につきましては、わが国の造船、これから日本で相当高い金利何と申しますか十分でない造船状態において、しかも日本復興には、日本の造船業を振興して、日本のみずからの力で日本の造船業者に船をつくらせて、日本の外洋適格船をこれからどんどんふやさなければならないという、われわれ日本経済再建の一つの大きな方策と矛盾する面がございますので、この点につきましては、單に商業的見地からこの場合におきましては、これを歓迎するという意見もございますが、運輸行政、船舶行政の見地から見まして、私はこれをあまり歓卸しない。もう少し適当な時期にこれを許したらいい、かように考えている次第でございます。
  44. 北澤直吉

    北澤委員 これで私の運輸大臣に対する質問は終りまして、総理大臣に対する質問、だけ留保いたします。
  45. 植原悦二郎

    植原委員長 これにて休憩いたします。     午後零時五分休憩      ――――◇―――――    午後一時五十八分閉講
  46. 植原悦二郎

    植原委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  通告順によつて総理大臣に対する質疑を許します。米原昶君
  47. 米原昶

    ○米原委員 吉田総理の国会を軽観する傾向については、先日も参議院ですでに問題となつたのでありますが、この委員会においても先日私が総理に対する質問をやる予定になつておりましたところ、民主党の川崎君の質問が終るや、十一時半になりますとさつさと帰つて行かれたのであります。関係筋からの何か用事があるというようなことに最初聞き及んでおつたのでありますが、あとで聞くと、当時保守合同の問題に関連して、吉田首相は犬養議員のところに会いに行かれたということを聞きまして、私は非常に憤激の念を覚えざるを得なかつたのであります。当時委員会におきましても、わが党の林委員から委員長に対してこの点を確かめたのでありますが、今この委員会に議せられておるこの予算は、日本民族の復興がなるか、それとも日本民族が隷属の道を歩んで行くか行かないか、実に重要なる予算案だと思つてわれわれはこの審議に当つておるのであります。日本八千万民族の運命を左右するところの重要な予算案である。この予算案が審議されておる際に、おそらく吉田首相としましてはいろいろ事情はありましよう、しかしながら私人としての犬養議員のところに会いに行かれたということは、私はまつたく了解しかねるのでございます。その点について首相はいかなる見解を持つておられるか、まずそれをお聞きしたいのであります。私としましては今日までその意味で首相のおいでになるのを待つてつたのであります。
  48. 植原悦二郎

    植原委員長 米原和君に委員長として申し上げます。委員長としては、総理大臣が今日までの審議において予算委員会を軽視されたと思つておりません。予算委員会ばかりが国家の政治ではありません。予算委員会が総合委員会として最も重要なるものであり、しかもこの議会においてはこれが最大の案であるということも了解いたしております。それゆえに委員長といたしましても、特に総理の御都合のよろしい限り御出席を願つております。総理は政治百般のことを見なければならないただ一つの身でありますから、ここのいう通りに、だけはできないのであつて委員長としては総理がこれまで委員会を軽視したとは思いませんから、委員長としてこの旨をよく御了解になるように申し上げておきます。
  49. 吉田茂

    吉田国務大臣 いろいろ御議論がありますが、総理大臣としての公務は、先ほど委員長からお話のありました通か多端でありますから、私はここに何時何十分までおれるからという時間の打合せをして、その通り退席いたしたのであつて、軽視したとは私自身は考えておらないのであります。
  50. 米原昶

    ○米原委員 私の聞いているところについては一つもお答えにならないで、顧みて他を言う返事でありますが、これから私の質問することについてはさような返事はしていただきたくないのであります。時間の関係もありますからできるだけ簡單にやります。  第一に本日の各新聞にも出ております、昨日の参議院の外務委員会における首相の答弁についてでありますが、この点については前にこの委員会で尾崎委員からの質問に対しても同様な返事があつたと思います。大体私は新聞を読んだだけで速記録は見ておりませんが、間違いないと思うのです。首相のおつしやつているのでは、現在軍事基地の問題がいろいろ言われているが、占領下にある限り、軍事基地というものができても、それに対してわれわれはとやかく干渉できないというような意味のことを答えられておられるようであります。この点についてでありますが、現在日本は占領下にある。しかし占領軍がどういう意味で今日本に進駐しているか。これは言うまでもなく明らかにポツダム宣言に基いて駐屯しておるのだとわれわれは思います。ポツダム宣言を無條件に受諾した意味においてわれわれは無條件降伏したのであると思うのであります。そうすれば進駐軍の日本に駐屯しておる目標は、言うまでもなくポツダム宣言に載せられておるところの日本の民主化であり、日本の非軍事化が目的であると了解するのであります。それ以上の任務は進駐軍にはないと思うのであります。現在国内で軍事基地とかそういうことが問題になつておるのは、言うまでもなく、新聞紙にも二、三出ておりますが、横須賀の基地が恒久的な軍事基地になるとか、こういうことが出るために――もちろん新聞の記事に何も首相が答弁される必要はないと思いますが、今そういうことが問題となつておるがために国民が不安を感じておるのであります。そういう日本の民主化とか非軍事化という範囲における駐屯ということは、ポツダム宣言に規定されておることである。しかしそれ以上の必要があるかないか。これはないはずであります。日本は現在すでに軍隊も解散されてから何年もたつてしまつた。現在この進駐軍の力に対して、日本国内で武装してこれと戰うというようなものはまずゼロに近いわけであります。国内の治安維持、国内の民主化、非軍事化という意味では、それほど問題になるような軍事基地というものはあり得ないと思うのであります。一般国民が軍事基地を問題にしてるのは、それ以上のものがつくられつつあるのじやないか、この点であります。こういう点について首相は、そういうことに対しては日本として干渉することができない。干渉するというか、それに対して抗議するというかそれはわかりませんが、抗議することができないとおつしやつておるようでありますが、首相がよく言われるように、これはポツダム宣言の範囲を逸脱してるとか、ポツダム宣言の趣旨に違反してるという意味で、抗議する権利はないかもしれないが、そういう意思表示をすることはできるし、またやらなければならないじやないかと思うのでありますが、この点について首相の明快なる答弁を希望するものであります。
  51. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。降伏條約によれば日本国は軍司令官の指揮のもとに入ると書いてあるので、日本がいかに防衛せられるか、日本の治安がいかに守られるか、あるいは民主化を進めるためにこういうことが必要であるとかいうことは進駐軍の判断によるべきことであり、進駐軍がある施設をなす、これに対して政府が協力する以外にしかたがないの場であります。
  52. 米原昶

    ○米原委員 そうではない。顧みて他を言つておられるようであります。先日もそういうことが別の問題で問題になつたのであります。ポツダム宣言を逸脱するとか、ポツダム宣言の範囲を出てるというような問題に関しては、そういうことがあるというふうに思うならば、これに対して抗議し、また申入れするようなことはできる、しなければならぬ、こういうようなことを首相はほかの問題で言つておられるのだ。もしも伝えられるように横須賀の軍事基地とか、これが恒久化するとか、萱岐対馬の問題とかいろいろ伝えられおりますが、そういうことでなくても、日本の治安を維持し、日本の民主化を促進するそれ以上のもので、あまりにもそれが大きなものであるというならば、当然申し入れなくちやならぬ。そうでなければ一国の首相の任務は動まらぬじやないか。国民はそのことを現在心配しておるのであります。この前のほかの問題に対する答弁と全然違うと思う。
  53. 吉田茂

    吉田国務大臣 違つておらぬ、逸脱もしておらぬ、こう考えるから答弁も何もしない。
  54. 米原昶

    ○米原委員 態度は非常に明瞭でありまじて、これによつていくら軍事基地ができましても、おそらくこれは見て見ないふりをするという態度であろうということが推察されますから、問題は次に移ります。  先日本会議でわが党の川上議員から質問がありました際に、在外事務所の設置の問題でありますが、この設置をどうするかこうするかという問題ではなくて、私の聞きたいのは、あのときの首相の答弁に、それは村役場で戸籍を調べるようなもので、外交関係はないというような御返事であつたけれども、これではわれわれは何のことであるかわからない。この点を明快に説明してもらいたいのであります。一体在外代表というものは、日本から向うに旅行者が最近ありますが、ああいう旅行者と同じものであるか、またあそうに長く駐在するものであるか、どういう外交的な意味があるのか、こういう点を説明されたい。
  55. 吉田茂

    吉田国務大臣 これはしばしば説明する通り、外交的意味は全然ないのであります。ただ政府の代表機関として戸籍事務その他を取扱う機関であつて、便宜に置いてあるわけであります。
  56. 米原昶

    ○米原委員 そういたしますと、私の聞いたことに対しては答えられなかつたのでありますが、一時的な旅行者ではなくて、どうもそういう事務を扱う相当期間いるもののようでありますが、それならばこれは外交的な関係はないと言われるけれども、講和條約が結ばれない際に、こういうものを置くところの国際法上の権限はどういうところにあるのか、事実上はそういう関係にあると思う。外交関係はないと言われましても、事実上の外交関係を結んだことになると思う。この点について明答を聞きたいと思う。
  57. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは相互の便宜のためでありますから、外交的意味はないのみならず、相手方が、つまりアメリカが自分のふところに置いてもらいだいという、向うの招請によつてこちらが置いただげの話であります。これは講和関係とは全然問題が違う。
  58. 米原昶

    ○米原委員 招請とおつしいましたので、大分はつきりして来ましたが、そうしますと、これはぜひこちらに来いどいうような命令の形のものでなくて、できたら来てくれという招請である。こういう点はつきりしてもらいたい。こういうものをぜひ日本からよこせという命令的なものが出たのか、または今おつしやつた言葉通り招請であるかどうか。
  59. 吉田茂

    吉田国務大臣 その通りであります。
  60. 米原昶

    ○米原委員 そうしますと、この問題について先日も川上君からその点を聞いたのでありますが、極東委員会で英国やソ同盟からこの問題については反対意見が出たことがある。これはおそらく首相も御存じだろうと思います。そういうことを知つていでやられたか、そういうことを知つていてやられるということになると、極東委員会の決定ではありませんが、そういうような意図にさからつてでも、そういう招請に現在応ぜられる意思であるかどうか、このことを聞きたいのであります。
  61. 吉田茂

    吉田国務大臣 今日日本は総司令部の監督のもとにあるのでありますから、総司令部を通じて招聘された場合には政府はこれに応じて一向さしつかえないと思います。極東委員会その他は連合国総司令部として交渉を持つたであろうと思いますが、政府はこれに関知しておりません。
  62. 米原昶

    ○米原委員 そうではないのであります。総司令部の上に極東委員会があることは首相御存じないわけはない。きようの新聞にも出ておりますが、英国の方では、講和会議に先だつてこのような外交的な事実上の代表、そういうものを設置するのは行き過ぎだというような意見が再び表明されているようでありますが、そういうところにさからつてまでやられるという行き方に私は疑いを持つのであります。しかも聞けば、單なる命令ではなくて、招聘である、こういう形で出ている。これはこれに応ずるか応じないかは日本政府の自由意思であり、責任であると思う。そういう意味で、極東委員会にもそういう反対の意見があるときに、これに応じられるということはどういう意味か。その責任の点についてお聞きしたいのであります。
  63. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは便宜のことでありますから、政府は便宜なりと考えて、これに応じたのであります。また極東委員会と総司令部との関係政府の関知しないところであります。連合国相互の間の話であつて日本政府としてはこれに対して関與はできない。
  64. 米原昶

    ○米原委員 極東委員会と総司令部との関係で、これは全然関知するところでないというようなことは、外交上の常識である。外務大臣としての資格がないものと私は思います。この問題は、そういう反対の意見が極東委員会内の国にもあるにかかわらず、事実上こういう関係を結んで行くこの行き方について、これがいわゆる事実上の講和――こういうことも最近では政府の方も言つているようでありますが、こういう行き方は結局ほんとうの全面講和を妨げることになる。先にそういう單独的な講和を結んで行けば、全面講和がそれからできるというようなことを言うておられるけれども、事実上はかえつてそれが国際間の対立を深め、事実上の講和と称されるものも、日本国民の一番望んでいるほんとうの講和、全面講和を妨げている、こういう意味で実は質問したのでありますが、では次の問題に移ります。     〔「講和を妨げているのは共産党じやないか」、「ソビエトも連合国だ、あえて誹謗するか」と呼び、その他発言する者あり〕
  65. 植原悦二郎

    植原委員長 靜粛に願います。
  66. 米原昶

    ○米原委員 次に今までありました同様の問題について、首相の見解を聞きたいのであります。それは今度の場合、この問題については正式の外交関係はないと今おつしやいましたが、前に、昨年の第五国会で問題になりました阿波丸請求権処理の協定であります。あれは一体どういう意味のものであるか。このときにもわが党の志賀議員から質問があつたことに対して吉田首相は、日本は今日法的に外国と協定は結び得ないが、最高司令官が許す範囲で結ぶ権限があるということを答えられたのであります。そうしますと、最高司令官が許せばどんな協定でも結べる、こういうふうに言つておられるのでありますか。その点を聞きたいのであります。
  67. 吉田茂

    吉田国務大臣 それはどういうお話であるか、具体的にお話を願いたい。
  68. 米原昶

    ○米原委員 第一に聞きたいのは、これは阿波丸協定でありますが、これが国際法上有効かどうかという点であります。  第二は司令部が許せば、そういう協定が結べるという解釈でありますか。たとえば軍事協定が結べるかどうか、このことについて答えてもらいたい。
  69. 吉田茂

    吉田国務大臣 そういうばかげたことはお答えできない。
  70. 米原昶

    ○米原委員 それでは私の聞いているのは、第一はこの阿波丸協定に対して聞いている。軍事協定はたとえで言つている。これによつてそんなに興奮される問題じやないと思う。これが国際法上有効かどうか。この点についてはつきりと説明が願いたい。
  71. 吉田茂

    吉田国務大臣 今回日占領下の日本としては、総司令部との間に権利の放棄はできる。請求権は一種の権利である。その権利を放棄するということは、これはできます。(「国会の承認がいる」と呼ぶ者あり)国会の承認は得た。
  72. 米原昶

    ○米原委員 そうしますと、まだ私の聞いたことにまともに答えられておらぬのでありますが、国際法上の問題とは、一応別個の問題になつているという意味でありますか。そうしてそれが総司令部と日本政府との関係、こういう意味で言つておられるのですか。よくわからない。
  73. 吉田茂

    吉田国務大臣 それは総司令部と日本との関係もやはり渉外関係でありますから、国際法に反しては成立たない。
  74. 米原昶

    ○米原委員 そこで国会の承認の問題でありますが、この問題について、国会の承認を得ていないという点について問題が起つた。首相のあのときの答弁では、決議案として民主自由党その他から出されました。決議案としてその中にあつたものを、そのまま協定の中に取入れたのだから、承認を得た。こういう解釈をされております。しかしこれは議案の議決じやない。これがはつきりした。そういう意味の有効なる承認を得た、国会の承認を得た協定ならば、たとえば衆議院の法制局やその他が、第五国会通過の法律案というのを出した。あれの中にあのときの万国郵便條約に関係ある協定ですか、約定ですか、ああいうものはちやんと載せております。この阿波丸協定についしは載せていない。これは明らかに法制局のような見解は大体こういうものは協定じやないと認めている証拠であります。これが承認を実際に得たと言えるかどうか。この点について明快なる答弁を願いたい。
  75. 吉田茂

    吉田国務大臣 政府としては議会の承認を得たものと確信しております。
  76. 米原昶

    ○米原委員 そこでもう一つ問題になるのは、今請求権を捨てたのであると言われておるのであります。われわれにこれは債権を捨てたのであると思う。この問題についても吉田首相は債権ではなくして、請求権である。請求権が債権になるかならないかは、相手側が了解して後であると言つて答弁ししおるのであります。しかし債権であるからこそ請求権があるのではないかと、この問題について再び志賀議員が尋ねたのに対して全然答えておられない。債権があるからこそ請求権がある。債権額が幾らかきまつていなくても、不確定の債権というものもあり得るのである。この点についてこれは請求権ではない。明らかに債権であると思いますが、首相の答弁を望みます。
  77. 吉田茂

    吉田国務大臣 私はそういう問題についてお答えできません。專門家からお聞きを願いたい。
  78. 米原昶

    ○米原委員 ではそれと関連しまして、もつと問題になるのは、あの協定についている了解事項であります。この点については、当時志賀議員の質問に対しても、全然答えておられない。そこでこの委員会でも先日世耕委員からこの点について質問があつたのであります。この阿波丸協定の了解事項は、見返り資金との関係があるからというので世耕委員質問されましたが、そのときもただ関係がないといつて、顧みて他を言うような返事をして逃げてしまつておられる。これは実に重大な問題を現在残しておると思うのであります。この了解事項を見ますと、「協定の署名者は、各自国の政府のために、次の事項を確認した。占領費並びに日本国の降伏のときから米国政府によつて日本国に供與された借款及び信用は、日本国が米国政府に対して負つている有効な債務であり、これらの債務は、米国政府の決定によつてのみ、これを減額し得るものであると了解される。」こういう了解事項であります。この了解事項の中にあります占領費、これははつきりしでおりますが、その次にある米国政府によつて日本国に供與された借款及び信用というのは、おそらく援助資金のことであろうと解釈せざるを得ないのでありますが、占領費と援助費、結局ここに書いてある有効なる債務というのは、占領費と援助費のことであるかどうか。首相の答弁を聞きたいのであります。
  79. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは取調べてお答えいたします。
  80. 米原昶

    ○米原委員 これは実に重大なる発言だと思います。自分が日本政府を代表してアメリカ政府を代表されましたところのシーボルト氏とこの了解事項を調印されておるのであります。この了解事項に書いてある言葉の意味が大体も理解できない。これは実に不可解なことだと思う。これで外務大臣が勤まるのか。ここに書いてある借款及び信用が、大体常識的にわれわれ考えても、アメリカ政府からこれを戰後に――降伏のときからと書いてあります。それ以後に受けた信用、及び借款といいますと、まず援助費よりほかに考え方がないのであります。これがわからないというのは実に不可解である。まつたく外務大臣の資格がないと思うのであります。もう一度答えてもらいたい。
  81. 吉田茂

    吉田国務大臣 あなたは答弁を要求する資格がないと思うのだが、一々数字を外務大臣としては記憶がない。だから正確を期するため、取調べてお答えすると言つたのです。どこが惡いのです。
  82. 米原昶

    ○米原委員 どこを何を言つているのか、私は数字を聞いているのではない。援助費であるかどうかということを聞いている。援助費が幾らあるかということを聞いていやしない。有効な債務というのは援助費をさしているのかどうかということを聞いている。
  83. 吉田茂

    吉田国務大臣 ゆえに正確を期するために、取調べてお答えする。どこが惡いかと言わざるを得ない。
  84. 米原昶

    ○米原委員 私は総理大臣に今までの占領費、援助費が幾らあるとか、そんなことを聞いているのじやない。数字を聞いているのじやない。大体ほかに借款なんかあるのか。一文も受けていない。借款なんか――このくらいのことが答えられないでどうするか。そこでさらに首相の答弁どうせないと思いますから進みますが、(笑声)占領費とかそういうような占領後の借款、そういうようなものは、今までのベルサイユ條約の経験からしても、イタリアの講和條約の例をとつて見ても、これを有効なる債務とするか、またはある場合には贈與として無償とするか、こういうものは講和條約のときにきまるのが慣例だと思う。外交自主権を現在持つていない際に、こういう了解事項をどういう権限でかわすのであるか。この点を明確に聞きたいのであります。
  85. 吉田茂

    吉田国務大臣 お話でありますが、取調べた上でお答えする。
  86. 米原昶

    ○米原委員 首相はこの問題について全然答えられないのは、これは実に重大な問題で、とんでもない了解事項をつくられたのだということから結果しておるのだと思うのであります。われわれは政府とは違いますから、正確なアメリカ予算がどうなつておるかというような数字は聞きません。方々の新聞社の通信にしましても、または日本政府が発表されておる一部の数字と合せてみましても、大体アメリカ予算がどういうふうになつておるかは推測はつくのであります。われわれが先日そういうものを集めてみた結果でも、占領費は現在までに、アメリカ予算年度で今年度まで、人体十八億ドル近くになつておる。対日援助費も大体十九億ドルくらいになつておる。合計すれば三十七億トルであります。かりに三百六十円で計算してみれば、一兆億円を越えるところの借款になるのであります。これが有効なる債務とすれば、一兆三千億円を越える債務になるのであります。これが有効なる債務でありますれば、実に重大でありまするしかしそういう有効なる債務であるとここに了解事項の了解をかわしながら、その債務の内容についても知らない。もちろん数字は御存じない。借金を外国から負いながら、そうしでそれを負つたということを確認しながら、借金の内容さえ知らない。国民にも隠しておる。これこそまつた日本を借金奴隸にするものではないか。債務奴隸搬にするものではないか。この点について首相が不明確なる態度をとつておられるのは、実にみずからがすでにそういう借金奴隸になつておるからだと解さざるを得ないのであります。(「借金すれば奴隷になるのか」「そんなりくつがあるか」と呼ぶ者あり)幾らかという額もわからず、どういうふうな條件で返すということもわからず、償還期限もきめず、これが借金だという約東をしておる。これではまつたく借金奴隸になるのでありまするわれわれがどういうふうにしてこれを返すか、そういう約束をして、それによつて日本国民自身が計画を立てて返して行く、これならば奴隷にならないかもしれないが、そうでなくてまつたく何も知らない。これではまつたく借金奴隸だ、こう断ぜざるを得ない。しかも…。
  87. 植原悦二郎

    植原委員長 あなたの御断定は御自由でありますけれども、総理も時間を限られておりますから――あなたは総理が長く出席しないで困るという御苦情をおつしやるならば、どうかあなたの断定はやめて、つとめて質問に單刀直入せられることをお願いいたします。
  88. 米原昶

    ○米原委員 それではさらに質問を進めます。先日の川上君の本会議における質問についても、この点は全然答えられなかつたのでありますが、大蔵省の石田税関部長がブラッセルの国際関税会議に首相の信任状を持つて出席して、日本の全権代表として條約に調印して来たということでありますが、これは事実であるかどうか聞きたい。
  89. 吉田茂

    吉田国務大臣 取調べた上でお答えする。
  90. 米原昶

    ○米原委員 十二月九日に吉田内閣総理大臣が信任状を渡しておられる。しかもこの石田税関部長は十二月十六日にブラッセルで條約に調印しておる、これは一部の新聞にも出ておりますが、帰つて来て、たとえば東京商工会議所でこの通りに報告しておる。正式に調印して来たという報告をやつておる。その内容も報告しております。なぜこういうものに調印したかも言つております。協定に調印するのに首相が調べてからでなければわからない。これではまつた国会に対して誠意を欠いた答弁である。またこれは明らかに憲法に違反しておると思うのであります。協定を結ぶならば当然国会の承認を得なくちやならぬ、しかもこれは周会開会中であります。もしも事前に承認を得ることができなくても、当然事後には承認を得なくちやならない。すでに協定を結んで二箇月になつておるではありませんか。正式に調印しておるとはつきり言つておる。これは実に重大問題であります。われわれとしてはこの問題については徹底的に憲法違反行為としてまた財政法違反でもあり、国際法違反の疑いもあるのでありますが、徹底的に吉田内閣に追究するつもりであります。この問題についてはさらに石田税関部長をここに出席させられて、これのはつきりした弁明を私は聞きたいのであります。はつきり外で言つておるのでありますから、ここではつきりした答弁を聞きたい、要求します。  吉田首相はこういう問題については、阿波丸協定の了解事項についても実に簡單なことすら調査してからと言われる。あれだけの協定を自分が責任者として調印しながら、これについて答えられない。この明白なる国際協定についてもこれまた答えられない。これでどうして――祕密に軍事協定を結んで日本を事実上外国の軍事基地にする、日本を軍事的な植民地にするという――を持つていることは、すでに明らかとなつたのであります。これによつて私は首相に対する質問を続けてもむだでありますから、今日はこれで首相に対する質問は打切ります。
  91. 植原悦二郎

    植原委員長 米原君に御注意申し上げます。政府の――だとかいう言辞はすこぶる不穏当だと思いまかすら、速記を見た上取消しを委員長においてとりはかろうことを御了承願います。     〔「異議なし」、「異議あり」と呼ぶ者あり〕
  92. 植原悦二郎

    植原委員長 次に北澤直吉君。
  93. 北澤直吉

    北澤委員 総理大臣に対しまして簡單にお尋ねいたしたいと思います。  お尋ねしたい第一点は国際情勢の見通しにつきまして、国民に正確な認識を與えることについてであります。最近よく世間では盲貿易ということが言われるのでありますが、われわれは單に貿易ばかりでなく、その他の国際関係につきましてほとんど盲状態であります。従いまして外国電報によつて一喜一憂するような状態であります。国民全体が国際関係につきまして、その正確な事実を把握しておれば、そう心配をせずに日々の生活ができるのでありますが、国際情勢に対する見通しにつきまして、国民が正確な判断ができないというところに、われわれ国民のいろいろの心配あると思うのであります御承知のように、世界は大体二つのグループにわかれまして、いわゆる冷たい戰争が行われておる。ところがヨーロッパの方におきましては、一応の安定したような状態になつておるのでありますが、最近におきましては、この冷たい戰争の中心が日本の周囲のアジア方面に移つて参りまして、われわれは国際関係の緊張ということにつきまして、日々非常な心配をさせられておる状態であります。きのうからはタイのバンコックでアメリカの外交官の会議が開かれ、また最近では日本アメリカの軍の首脳者が来られて、いろいろの御相談をされておるあるいはまた中共の毛首席がモスクワに滞在しておつてソ連と中共との間にいろいろの話がされておる。こういう状態でありまして、われわれ国民は国際情勢の見通しにつきまして、いろいろな心配をいたしておるわけであります。総理も、この間の施政方針の演説の中におきましても、国際情勢につきまして憂慮にたえないというようなことを仰せられておるのでありますが、まことにその通りであります。そういうわけで私は国際情勢の見通しにつきまして、もう少し政府の当局者が、国民に対しまして正確な認識を囲えるように、積極的な御努力をお願いしたいと思うのであります。特に外務省の方面におきましては、調査局とかいろいろのものがありまして調査をいたしております。そういうこともありますので、もう少し外務省を積極的に活用されまして、国民に対しまして国際事情の認識を深めるように、格段の御努力をお願いしたいと思うのであります。それに対しまして総理の御所見を伺いたいと思います。
  94. 吉田茂

    吉田国務大臣 それは始終私がここで申す通り、今日日本としては外交を断絶されておるときでありますから、正確な見通しということになると、政府としてはこうこうかくかくこういう証拠があるとか、こういう人がこういうことを言つたとかいう直接な材料がありませんから、見通しをこうだとはつきり言うだけの材料がないということは御了承を願いたい。しかし私としては、これは自分の観念論になるかもしれませんが、大戰争があつたあとには必ず一時平和が危殆に陥るということは、いずれの戰争の場合においても、大なり小なりそういう時代が必ず来るのであります。ナポレオン戰争の後においても、あるいは普仏戰争の後においても――第一次戰争後のルールの問題とほとんど同じような問題について、今日冷たい戰争とかいろいろなことがありますが、これは大戰争が起つて、すべての社会機構、国家機関が破壊せられた後のある時期において、その機構の調和をはかるために、国と国との間に軋轢を生ずるということは、すべての大戰争のあとに起る現象でありますから、今日世界が二つの国にわかれておつて、遂に衝突するに至る、こう断定するのは早急に失するのではないか。大戰争が起つたあとの今日の世界において、どこの国といえども戰争を欲する国はないはずであります。みな平和の維持とか平和の増進とかいうことを唱えるので、戰争をしたいとか主戰論を唱えている国は一国もないと思います。世界の平和を維持したい、世界の平和を増進したいという国ばかりでありますから、一瞬平和が破れるかのごとき事態が生じても、これは戰争なくて列国が治めをつける、これが常識と考えるべきものだと私は思います。ゆえに戰争を前提として、しからぱ日本の国防をどうするかとか、安全保障をどうするかとかいうことは世界的な見通しがない、こう私としては断言したいくらいに感ずるのであります。しかし世界の情勢でありますから、どういうことが突発するかわからないけれども、普通に申せば平和はしばらく維持せらるべきものである。これが大体世界の大勢であろうと思います。しかしながらときどきそういういろいろな風潮が出ますから、これに対しておのおの備えるところがある。いろいろの議論をする者がある。ますますそのために平和が危殆に陷るような感を與えるかもしれませんが、世界の情勢は私は平和は維持せられる、維持したいというのが世界の輿論であると確信いたします。
  95. 北澤直吉

    北澤委員 政府においてはこの上とも国際情勢につきまして、国民にできるだけの情報を與えまして、国民に向うところを示すように、格段の御努力をお願いしたいのであります。  次に今回政府当局の御努力と、マッカーサー司令部の好意あるとりはからいによりまして一日本政府の海外代表事務所がアメリカに設置されることに米国政府の同意がとれました。また近くインド、パキスタン方面でも日本の海外事務所を認める。またカナダの方でも認めるという状態になつてつたのであります。これはまことに喜ばしいことであります。これまで日本外国には何らの機関を持たず、従つてアンテナが持てなかつたのでありますが、今後こういう政府機関ができますれば、これを中心にしまして、日本が、世界の動き、国際情勢につきまして、現在より的確な情報を入手し得ることと思いますので、非常に喜ばしいことと考えるのであります。ただ問題は、従来のように日本の在外公館というものがありましても、これの経費、貧金の点で非常に恵まれないで、栄養小良の状態になつたのが非常に多いのであります。今後できます海外代表部というのは、日本の在外機関としましとは唯一の機関であります。この機関か十二分に目的を達しますように、予具あるいは経費あるいは調査費、そういうような方面におきましても、できるだけの御考慮を拂つてもらいたいと思うのであります。この点につきまして外務大臣の御所見を伺いたいと思います。
  96. 吉田茂

    吉田国務大臣 外務省として希望を申し上げれば、お話通りでありますが、予算をなるべくよけいとつて、海外の公館の活動を十分にさせたいという希望はありますけれども、現在の財政状態からいえば、さしあたりのところ、なるべく規模を小さくして、実効を上げる。そのためには人選を十分に嚴選して派遣することを、当局として用意いたしております。
  97. 北澤直吉

    北澤委員 この海外代表部の件でありますが、西ドイツにおきましては、去る一月からロンドンとパリとワシントンに、西ドイツの領事館を設置することを認められたのでありますが、まだ日本におきましては、この領事館というものはできない。海外事務所ということで米国の承認があつたようでありますが、私は西ドツイと日本の状態を比べまして、同じいくさに負けた国でありますが、いわゆる事実上の講和、講和條約のない講和を進めて行く上におきまして、どうも西ドイツ日本の間にいろいろ差別がある。こういうような感じがするのであります。きのうの新聞にも、西ドイツだけは領事館を認め、日本に対してはそれを認めないということは、どういう理由かということが、アメリカ新聞記者との会見で質問があり、国務省の人が答えておりましたが、それは極東委員会でそういうような決定にならぬから、こういうことであります。私はできれば日本も西ドイツと同じように領事館がなるべく早く設置できまするように、政府の今後の御霊力をお願いしたいと思うのであります。  次にお尋ねしたいのは、講和條約の見通しの問題であります。この問題は本会議もしくは委員会その他におきまして、いろいろ議論があつたのでありまして、総理大臣はあきあきしておられると思うのでありますが、最近の電報によりますと、この講和條約は何だかまた遅れるような電報が大分入つて来るのであります。この機会に講和條約締結に対しまする見通しについて、ごく簡單でけつこうですから、総理大臣の御所見を伺いたいと思います。
  98. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは先ほど申す通り、直接に在外公館を持つておらず、従つて情報の入手等は全然不可能なことでありますから、私も新聞以外にこの講和問題が将来どう発展するかということについて、見通しはかくかくということは申し上げかねます。しかし米国その他は、一新聞でもごらんの通り、早期講和條約締結ということを言つておりますから、できるだけ早い機会に講和條約に持つて行きたいということは、軍に日本国民のみならず、関係国もしくは、連合国のおもなる国としてはそういう希望を持つていると私は了承いたします。
  99. 植原悦二郎

    植原委員長 北澤君に御注意申し上げます。あなたの質問はたいへんいい質問でありますけれども、あなたはずいぶん時間をオーバーしているのですから、これ以上あなたの質問のために、ほかの同僚の質問の時間をとるということもいかがかと考えられますから、およしなさいと申すわけではありませんけれども、あなたも少し御自分でお考えになつて、しかるべくどうが要領だけを簡潔に御質問なさること、さらに他の同僚の質問したことを繰返さないように御注意を申し上げます。
  100. 北澤直吉

    北澤委員 次にお尋ねしたいのは、この講和問題というのは、これは日本にとりましては非常に重要な問題であります。これに関しまして日本の輿論が非常にわかれているというような感じを外国側に與えていると思いますが、政府におきましては、この講和に関する日本の輿論が一致するように、そうして日本の輿論が一致して講和に対する態度を表明するというような方向に行く、そういうふうに仕向ける、そういう方針をおとりになりますかどうか、伺いたいと思うのであります。
  101. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は講和問題については、国民が自由にその意思を発露して、そうしておのずから国民の意思が帰結するところ、自然の帰趨にまつということが政府としてすべきことではないか、指導して、こうとか、あるとかということの希望はなきにしもあらずでありますけれども、そういうことはかえつてよくないのであつて、自由な意見の発露こそ講和を促進するゆえんなり、こう私は考えております。
  102. 北澤直吉

    北澤委員 もう一点で私の質問を終ります。この間もこの委員会におきまして民主野党派からでありましたか、日本はどこまでも中立を守らなければならぬというようなお話があつたのでありますもちろん現在日本は外交機関がないのであります。から外交については発言権はありませんが、講和條約後一体日本が中立を守るべきかどうかということは非常に大きな問題で、われわれ国民が常に考えている問題であります。現在のように世界が二つの陣営にわかれて、いわゆる共産主義勢力と民主主義勢力の二つにわかれて争つているという場合、日本がその中に立つて中立というものが維持できるか。私どもの見るところでは、これはなかなかできない。いうのは、共産主義勢力というのは、共産主義以外の国々はみんな敵だど思つている。従つて共産主義の国から申しますと、今の日本で中立を守ろうと思つても、共産主義諸国が日本の中立を認めないというのが実際であろうと思います。結局日本はポツダム宣言及び新憲法によりまして明らかなように、どこまでも民主政治というものを日本に確立することが日本にとつて至上命令である。従つてこの日本の民主政治をどこまでも守り、民主政治を維持するためには、やはり世界の民主主義諸国と提携してこれを守る以外にないと思うのであります。従つて、ただ單に日本としては戰争に巻き込まれないために中立を守つた方がという議論がありますが、なるほどそれは日本が戰争に巻き込まれないように中立を保つべきでありますが、どこまでも日本が民主主義を守るためには、日本の民主主義に対して同情を持ち、好意を持つている民主主義諸国と提携して、日本の中立を守る以外に方法がないと思うのであります。これに対する総理大臣のお考えを承りたいと思います。
  103. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは今日中立の問題が具体化されておりませんし、また講和問題、講和條約なるものが具体的に提起されているときでもないのでありますから、私としてお尋ねに対して具体的にこうどかあるとかという意見は差控えたいと思います。
  104. 北澤直吉

    北澤委員 以上をもちまして私の質問を終ります。
  105. 植原悦二郎

    植原委員長 再三この問題も繰返された問題ですから……。武藤運十郎君。武藤君に御注意申し上げておきます。総理は三時余までしかきようは御都合ができないそうですから、なお他にも総理に対する質問もたくさんありますし、あなたは初めてでありますからあなたの質問を制限はいたしませんけれども、なるたけお上手にお願いいたします。
  106. 武藤運十郎

    ○武藤(運)委員 私は吉田総理大臣兼外務大臣にこれから数点にわたつて質問を申し上げますが、その前にあらかじめ特にお願いをいたしておきたいことがございます。従来吉田さんの御答弁を伺つておりますと、仮定の問題であるから、お答えができないというようなお言葉がしばしば出て参ります。なるほど清和問題は、具体的な條件等につきましては、仮定の問題というへきものもあるのでありましよう。それからまた占領下におきまして、公の席で申し上げることを困難にするような事情もございましよう。しかしながら講和問題につきましては、民主自由党がすでに一年前の総選挙において、講和問題を担当すべきことを国民に公約しておられますし、その上に立つた吉田第二次内閣の吉田総理大臣兼外務大臣といたしましては、十分にこの講和條約について用意をなさつておることであろうと考えます。またただいまの北澤君の質問に対しましても、講和條約に対する見通しを述べており、総理は従来しばしば講和担任に対する自信を述べておられるようであります。日本社会党といたしましては、必ずしも吉田内閣が講和條約担任の適仕者であるとは考えないのでありますけれども、しかしさような立場におられるところの吉田内閣におきましては、どうかでき得る限り具体的に話をしていただきたいと思うのであります。  第一に私がお伺いしたいことは、主として講和問題についてでありますが、無條件降伏と講和折衝との関係について伺いたいと思います。体か日本が無條件降伏をいたしましたために、講和折衝におきましても、十分に発言をすることはできないのだというような考え方があるようでありますが、それについて吉田さんに伺いたいのであります。まず第一点、降伏文書によつてなされた日本の降伏は、合意による條約と考えるか、それとも命令に対する服従とお考えになりますか、その点について吉田さんの御見解を承りたい。
  107. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをします。日本の降伏條約は、御承知通り條件降伏であります。しかしながら、その降伏は降伏文書によつて確定したものであります。ゆえに命令されたのではなく、同意したものといつてもさしつかえないと思います。
  108. 武藤運十郎

    ○武藤(運)委員 そこで、元来休戰條約または降伏條約は、交戰国の軍と軍との間になされるものでありまして、その内容は軍事的行動に関する軍事的性質を有し、講和に関する政治的性質を有するものではないことを通例といたしておるようでありますけれども、降伏文書を見ますと、御承知通り、冒頭のポツダム宣言受諾の條項と、最後の天皇及び日本政府の国家統治の権限に関する條項とは、明らかに政治的性質のものであり、中間の諸條項だけが軍事的性質を有すると解釈すべきものではないでありましようか。この点について吉田さんの御見解を承りたい。
  109. 吉田茂

    吉田国務大臣 御承知通り、ポツダム宣言を受諾するかしないかというのが第一の発端でありまして、受諾する、従つて休戰するということになり、降伏文書において日本が完全に連合国の指揮のもとに入つて占領を受けるということになつたのでありまして、初めにおいて休戰いたすことを明らかにしたのでありましよう。文書の最後においては、日本は将来において占領下に入る、そして連合国の占領のもとに、総司令官の指揮のもとに入るということを、合意のもとに自由意思をもつて表示したと解すべきものであろうと思います。
  110. 武藤運十郎

    ○武藤(運)委員 そこでいわゆる無條件降伏というのは、ただいま私が申し上げました降伏文書のまん中にあたるところの軍事的性質を有する部分に明らかに限るのでありまして、政治的性質を有する部分、すなわち最初の文と最後の文は、いわば講和條約の予約というように解釈をしてよいのではないでしようか。
  111. 吉田茂

    吉田国務大臣 ポツダム宣言の受諾が、すでに講和條約を予想しての話であると私は解します。
  112. 武藤運十郎

    ○武藤(運)委員 従つていわゆる無條件というのは、連合国の命に従つて日本の一切の軍隊が、一切の軍事的行動を、何らかの抵抗または交換條件なく、一方的に停止するという意味でありまして、それをもつぱら軍事的行動に限るというように解釈をいたしてよろしいのではないでしようか。要点に触れてお答えを願いたい。
  113. 吉田茂

    吉田国務大臣 日本の降伏は單に軍事上の問題だけではないのであります。ポツダム宣言が受諾されたときにこれはすでに端を発しておつて、その結論として降伏文書に至つたのであります。講和條約なるものは、従来の例から申しても、たとえば第一次戰争後のドイツに対する対独講和條件についても、連合国がドイツの全権に対して、この條項において講和するか、しないか、受諾するか、しないか、イエスか、ノーかということを求めたという先例によつて見ても、講和條約なるものも日本が連合国と対等の地位において論議するという立場にはないというのが先例であります。
  114. 武藤運十郎

    ○武藤(運)委員 私の申し上げますのは、無條件降伏という降伏文書の中には、軍事に関する問題と、それから政治的な問題と両方含まれておる、こういうように考える。その点ばただいまの吉田さんのお答えではつきりしたのでありますけれども、私の申し上げるのは、いわゆる無條件降伏というものは、そのうちの軍に関する部分だけであつて、その他の部分については無條件降伏ということはない。言いかえますれば、日本はいわゆる無條件降伏にかかおらず、講和に関しましては、降伏文書によつて予約せられておるところの範囲内、たとえばポツダム宣言、カイロ宣言などにおいて限られている範囲内におきましては、肖由なる意思に基いて発言をし得るというように解釈すべきではないか。たとえばイタリアの例を見ましても、御承知通りイタリアは講和会議に覚書を提出しておりまして、イタリア国民の各種の要求と希望を述べて場おりますし、またデガスペリ首相は講和会議の演説におきまして、いろいろな事情をイタリア国民のために述べまして、平和條約の條項がはなはだ苛酷であることを指摘して、その変更を求めておるが、日本におきましても、やはり無條件降伏とはいいながら、さような立場をとることが可能ではないかということをお伺いしたいのであります。
  115. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは希望として申し述べることは自由で、いかなる場合においても――この前のドイツの場合においても、希望としてのドイツ政府の希望は言い表わされたのであります。でありますから、日本の場合においても、政府の希望として申し述べることは自由である。それを連合国が承諾するかしないかは別でありますが、意見を述べる、もしくは希望を申し述べることをとめられている理由は毛頭ないと思います。
  116. 武藤運十郎

    ○武藤(運)委員 そこで今度は私は第二番目に、講和条約に関する国会及び国民の自由なる論議について首相にお伺いしたい。連合国が軍政をしくことなく、日本の政治は日本政府をして行わせることを原則としまして、日本国民が自由なる意思に基いた選挙によつて選んだ代表者によつて国会政府を持つことを許される限り、最も大きな政治問題の一つである講和問題についても、日本国民は自由に論議することが可能であり、国会はむしろこれを十分に論議する義務があるといわなければならないのではないか。ことに連合国から提示されるであろう講和條約案というものが、いろいろの事情によりまして、あるいは事前に国会の討議に付することが困難な見通しのもとにおきましては、一層今から予見される各種の問題について、国民国会も十分に討議をし、意見をとりまとめておく必要があるのではないか。そして日本の代表はこれを講和会議において演説をし、または意見書を提出する方がよろしいのではないか。このようにすることが民主的な政府国会のあり方であり、さらにまたこのようにすることが、国会における條約の事後承認の場合においても、事後承認を容易にし、かつこれが実行をスムースにするゆえんではないか。この点について政府の所見並びに用意のほどをお伺いしたいのであります。
  117. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは私が始終申している通り国会において講和に関する意見を発表するなり討議するということは自由である。これに対しまして、禁止もしくは拒絶されているということはないのであります。ただこれが占領目的その他に支障がない限りにおいて自由なる討議をすることに、進駐軍といえども異議はないと思います。しかし今度日本の代表者として講和会議に臨んで云々というお話でありますが、これはそのときになつてみないと、今日では私は何ともお約束はできない。
  118. 武藤運十郎

    ○武藤(運)委員 少し具体的な問題に入りまして、これもしばしば論ぜられたことでありますけれども、日本の講和折衝の場合における日本の領土の問題であります。琉球列島及び千島列島は日本の領土として希望ないし要請する意思がございますか。この琉球列島はカイロ宣言に言う一九一四年第一次世界戰争の開始以後において、日本が奪取しまたは占領したものでもなく、また暴力または貧欲によつて略奪したものではないと思いますが、どうでありますか。政府にはこれを証するに足る十分の歴史的資料が用意されているかどうか。もしそれがまだ用意されていないとすれば、ただちに特別の機関を設けて、あるいはその他の方法によつて、連合国のこの領土の問題に関する公平かつ合理的な判断に資する資料を、提供する準備をする意思はないか、の点について伺いたい。
  119. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えします。政府としては十分の資料をそろえてあります。しかしこれをどう取扱うかということはここでもつて明言することはできませんが、政府としてはできるだけの資料をそろえ、また列国の了解を得るすべての手段を盡し、また盡さんとしているのであります。
  120. 武藤運十郎

    ○武藤(運)委員 次に安全保障の問題につきまして、講和條約は戰時国際法に基いて、交戰国が戰争状態を終了させるための條約であり、安全保障條約というのは、平時国際法に基いて、平和独立国家間における安全保障を目的とする條約ではないであろうか。従つて講和條約と安全保障條約とは同時に同一手続によつてなさるべきものではなくして、まず講和條約によつて、戰争状態を終了させて、しかる後に両国は自由対等の立場に立つて安全保障條約を締結するかいなか、また締結するとすれば、いかなる内容、條件の安全保障條約を締結するかということをきめるべきではないか、こういう点について首相の所見を承りたい。
  121. 吉田茂

    吉田国務大臣 もし安全保障條約を結ぶとすれば、まさにあなたのお話通りの手続になると思います。しかしながら、いかなる内容をもつてということは、今日まだ具体化しておりませんから、私からお答えができない。
  122. 武藤運十郎

    ○武藤(運)委員 その次に、私は講和條約案の国会の承認について伺いたい。これは講和條約がどういう形で行われるかわかりませんが、事前にもし承認を得ないということになりますと、申すまでもなく、條約中に承認が得られない場合には、これを取消すという趣旨のことをうたわなければならないのではないかと思います。また事実承認が得られなかつた場合には、一旦締結した條約も取消さざるを得ないと思います。事前に国会の承認を――憲法には事前に承認を得ること、時期によつては事後でもよろしいという趣旨のことが書いてございますけれども、私は事前に国会の承認を得ることは、民主主義の最も大きな原則であつて、事後承認はまつたくやむを得ない場合の例外措置であると考えます。従つて時間的余裕のある限りは、たとい国会が閉会中でありましても、臨時国会を開くことにいたしましても、事前に承認を得るという方法をとるべきではないかと思います。ことに先ほど来申し上げますように、講和折衝において、日本が相当な発言をなし得るという解釈をとり得る限りは、條約案に対しで、国民の代表であるところの国会において、十分にこれを討議する必要があると思います。そこで私は吉田さんが、時間と事情の許す限り、講和條約案は事前に国会の承認を得る意思があるかどうか、この点をお伺いしたい。
  123. 吉田茂

    吉田国務大臣 なるべくそういたしたいと思います。
  124. 武藤運十郎

    ○武藤(運)委員 その次に世界に対する戰争放棄の要請についてお伺いしたい。吉田首相は昨日の参議院外務委員会におきまして、日本の平和を守る道は、日本国民全部が平和死守の決意を持つことであるという御趣旨の答弁をなされたそうでありますが、さようでございましようか。
  125. 吉田茂

    吉田国務大臣 そうです。
  126. 武藤運十郎

    ○武藤(運)委員 私もその通りであると思うのでありますけれども、しかし日本国民が平和死守の決意を持つと同時に、全世界国民が平和死守の決意を持つのでなかつたならば、世界の平和はもちろん、日本の平和もまた必ずしも保障し得るというわけではないのではなかろうか、この点について首相の御意見を承りたい。
  127. 吉田茂

    吉田国務大臣 世界の国家がことごとく平和を熱望するというふうになることは、まことに理想的でありますが、われわれがこれをそうさせるということは、これはできるかもしれず、できないかもしれない。しかしながら日本国民としては、平和に終始する考えを持つて、他の国もいざなつて平和団体に入り、もしくは平和の維持に努めしむるように努力すべきであると思います。
  128. 武藤運十郎

    ○武藤(運)委員 まことにけつこうなお話でありますが、そこで一つ伺いたいのでありますけれども、日本は、かりに吉田さんが講和会議を担当するといたしまして、連合国に対して講和会議において、真に世界平和のために、世界各国日本と同じく軍備を縮小ないしは撤廃して、戰争を放棄すべきことを提唱する意思があるかどうか、お伺いしたいのでありまする
  129. 吉田茂

    吉田国務大臣 これはそうしたいとは思いますが、そうすることが日本のためなりやいなやということは、そのときの情勢によることでありますから、ここで提唱する意思ありとしてもするとは申し上げにくい。
  130. 武藤運十郎

    ○武藤(運)委員 最後に軍事基地の問題につきまして。吉田首相は昨日の参議院外務委員会におきまして、連合軍が軍事上の必要から、占領下の日本に基地を設けることは当然で、日本国民としてはこれを承認する義務があるという趣旨の御答弁をなされたそうでありますけれども、事実でありましようか。
  131. 吉田茂

    吉田国務大臣 私の申した趣意は、進駐軍が軍事上の必要その他からして、ある施設をなすことは、これは占領軍としてなし得る権能の一つであつて政府としてはこれに対して協力はしても、異議をはさむことはできないのである、こういう説明です。
  132. 武藤運十郎

    ○武藤(運)委員 ある種の施設というのは、軍事に関する施設ということも含んでおるのでありましようか。
  133. 吉田茂

    吉田国務大臣 すべての施設であります。
  134. 武藤運十郎

    ○武藤(運)委員 軍事上の施設を含むところのすべての施設というのは、連合軍の現在の敵国である日本に対する軍事上の必要に限るのであつて、連合軍または連合軍のある国の、仮想の敵国に対する軍事上の必要という意味ではないと解釈をしてよろしゆうございますか。
  135. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えします。進駐軍の必要と認めるすべての施設ということの意味であります。これはある国に対するか対しないか進駐軍がきめることであつて政府としてはこれに対して関與いたしません。
  136. 武藤運十郎

    ○武藤(運)委員 これで私の質問を終ります。
  137. 植原悦二郎

    植原委員長 村瀬宣親君。
  138. 村瀬宣親

    ○村瀬委員 最近外電の伝えるところによりますと、講和條約なき講和とか、戰争状態の終結ということが言われ出したのでありますが、かかる客観情勢が生れて来た今日、吉田首相は在外資産の処理につきいかになさるおつもりであるか、御方針を承りたいのであります。吉田首相は、在外資産の処理は講和條約締結後に行わるべきものであるとして、遂に今日まで何らの処置をとられず、この間多くの国民が恐怖と欠乏の中に倒れて行きました。しかしこれは憲法第十一條及び第二十九條に規定せられた基本的人権と、私有財産不可侵の原則とに照して、為政者として心のうずきを感ぜられないでありましようか。六百万人の海外同胞が黙々としてリユツクサックただ一つ一を背負つて、何らのトラブルもなく日本に引揚げて来ましたのは、ポツダム宣言の無條件受諾に伴い、連合国側の特別命令に従つたのでありまして、これらの日本人は長年の間に正当にかつ平和的手段をもつて蓄積せられた財産を、ことことく放棄させられたのであります。これらの存外資産はすべて賠償に振り向けられるのでありますが、これは国家の負担をそれだけ軽減するもので、国民全部が負うべき負担の一節を、特定人の犠牲によつて解消するとととなるのでありますから、早かれおそかれ国家がこれを補償すべきことは当然であります。今試みに連合国の特別命令によりまして、吉田首相の御郷里である四国の全住民を立ちのかしめなければならなくなつた場合に、はたして一千円の現金とリュック・サック一つだけ持たせて移住せしめ、そのまま四年も五年も放任しておかれるでめりましようか。存外資産を喪失した者の数は四国の全住民に匹敵するのであります。もちろん在外資産の最終処理は、講和條約成立後国内立法により補償を完結すべきものでありますけれども、全面講和の早急に期待しがたい現情勢下となりましては、これをいたずらに遷延せしめることは、憲法の精神を擁護しないものと存ずるのであります。従つて政府は在外資産の暫定処理方針を定め、その一部を前拙いすることによつて戰争犠牲を均分化せしめ、基本的人権保障の基盤を確立すべきものであると存ずるのでありますが、これに対する吉田首相のヒューマニズムに徹した御所信を承りたいのであります。
  139. 吉田茂

    吉田国務大臣 存外資産はやがて講和條約の一題目して、われわれが取扱うべき問題であることはお考え通りであります。しかしながらこれの最終処分はまだきまつておらないのでありますから、最終処分がきまらない間に、政府としてはこれに対して予算措置その他を講ずることはできぬと思います。
  140. 村瀬宣親

    ○村瀬委員 かつて第一次吉田内閣のときであつたと思いますが、時の石橋蔵相は在外資産一時拂いのために、百五十億円を予算に計上せんとせられたが、二・一ゼネストが起つて、その方へ九十八億円を支出せねばならなくなつたために、石橋湛山の英断は遂に実現を見ず、挫折したと聞いておるのでありますが、このときの百五十億円は今日の五百億円以上に相当すると思うのであります。通貨も一応安定したのでありますから、在外資産の一部前拂いをするという時機に到達をしたと思いますが、吉田総理はあくまでも講和会議ができるまではこれを放任しておくおつもりであるかどうか、もう一度承つておきたい。
  141. 吉田茂

    吉田国務大臣 石橋蔵相がどういう提案を持つてつたか、それは石橋蔵相一個の案であつて、閣議にはそういう問題が提出された記憶は、私はないのであります。しかして現在の財政状態から言い、また講和條約の関係等から考えてみて、かくのごとき予算措置は今日のところできないと思います。
  142. 村瀬宣親

    ○村瀬委員 今日の財政状態から見てできないと言われるのでありますが、しかし吉田内閣は、今やわが国の産業の興隆は目ざましく、経済は安定したと天下に呼号しておられます。二十五年度予算は、シヤウプ博士が三百五十億円でよいと勧告した債務償還を七百億円も計上されております。それほど財政の余裕があるにもかかわらず、在外資産の支拂いをさらに考えておらないのみならず、すでに国会で決議済みの在外公館政府借上げ金の十億円すら支拂おうとされない。これはこの二十五年度予算の内容を知つておる海外引揚者といたしまして、とうてい承服のできない問題でありますが、單に予算関係だけからお考えにならないという意味の御答弁でありますか。予算が何とか方法がつく段に至つたときに考える、こういう意味なのでありますか。いま一度はつきりしていただきたいと思いまする。
  143. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは両方であります。講和條約の問題となつて、どう取扱われるかということが一つ。その取扱い方が決定せられない前において、政府予算措置を講ずるということは、穏当でないと私は考えておる。現在の財政状態からいつて、決定しないものをやがて決定すると考えて、善後措置を講ずるということは適当でないと思いますから、両方の意味から考えてみて、私は当分の間は存外資産に対する予算措置は講じられないと思います。
  144. 村瀬宣親

    ○村瀬委員 まことに御答弁には不満足でありますが、次へ進むことにいたします。吉田首相はわが国の総合国土計画について、どういう御構想を持つておるか、承りたいのであります。今日わが国が当面しておる緊急問題とし一、経済の自立、民族の独立、これらはいずれも国土の復興開発とをおいて根本的解決の道は見出されないと思います。狭隘な国土の上に八千万の人口を養わなければならなくなつたわが国の現状では、国土の復興再建の大事業を科学的に計画し、生産復興計画に即応する緊切必須な開発事業と一貫的な治山治水事業に重点を置いて、国土の総合開発利用に関する基本的施策を強力に実施しなければならないと思いますが、今日ややもすれば、経済再建の問題を純経済の範囲内に限定して論議する者が多いのでありまして、今日の段階においては、わが国の国民生活並びに国民経済の安定は、資源としての水及び土地の開発、災害防除、住宅、水道、都市計画等による民生の安定、道路、港湾等による輸送の増強など総合的、有機的国土の開発と管理とが基礎とならなければならぬと存ずるのでありますが、本年度予算においてはこれに対する総理の御意向が明らかにわからないのであります。ここで御所見を承りたいと思います。
  145. 吉田茂

    吉田国務大臣 御趣意は私も同感であります。国土総合計画に対しては基本的にまた科学的にこれを立てる。今度の二十五年度の予算においてはとりあえず応急の経費は計上されておつて、将来においては中央、地方ともに審議会を設けて、これと協力して総合的計画を進めて行きたいと思います。
  146. 村瀬宣親

    ○村瀬委員 私の見るところでは、現内閣はあまりに超均衡予算のとり、となつて、国土計画の熱意が薄いという感じがいたすのであります。もちろん健全財政はわれわれの希望するところでありますが、現在の状態では完全雇用の解決も有効需要の振興もなかなか期待できません。アメリカにおいてはあくまでも均衡財政の堅塁を固守して、一歩も出まいとしたエコノマイザー一派のノース、スナイダーの時代は去つて国民所得の増大をはからんとする、カイザー、リングスの思想によつて経済政策の大軟換を行われんとする傾向に徴してみましても、わが国においても、いつまでも均衡財政という妄念にとりつかれて、国土の開発を遅らせてはならないと存ずるのであります。しからばいかなるところから国土計画に着手すればよいかという問題でありますが、これは国際的政治経済から見た国土計画、産業構造から見た国土計画、国土保存並びに開発から見た国土計画、人口、文教問題から見た国土計画等いろいろ考えられますけれども、最も手取り早い方法は、特定地域総合開発計画の即時実施であります。これについてはただいまお話の総合国土開発審議会から答申も総理のところへ出ておるはずでありまして、従来の中央集権的な国家構造は、この狭小な国土のうちにも、なお中央に比して多かれ少かれ後進的な地方を残して来たのでありまして、これを開発すれば、ただちに各種の生産を増進し、人口の收容力を増大することもできるのであります。現在地方において、かかる機運はきわめて旺盛なものがあり、あるいは各都道府県の区域により、あるいは特定の地域により、あるいは数府県にわたる地方の区域によつて、その振興発展をはかるべき総合開発計画が熱心に作成されておるのでありますが、これらは国、地方を通じ、現実の行政の中に反映されて行くという裏づけを得ないために、これらの計画はいたずらに机上に積み重ねられておる現状であります。すでに特定総合地域計画として指定せられておりますのは、石狩地域、奧会津地域、伊豆島嶼地域、能登地域、東三河地域、吉野熊野地域、島根大山地域、四国西南地域、阿蘇地域、南九州地域の十箇所に及んでおりますが、これらの十地域に対しては、ただ指定しただけ、過去二年間何らの予算も計上されておりません。本年もまたわずかに千二百万円の調査費を計上しただけであります。先般本多国務相の視察によりまして、注目の的となつた壷岐対島の開発も、この特定地域総合開発計画の一部として実施せられるものと思うのでありますが、ただいたずらに地域指定の数を増す、だけで、何らの予算的措置を伴わなくては、掛声のみに終り、日本の国土開発は永久に実現しないと思うのでありますが、この地方総合開発計画に対し、地方開発法案さえ上程されんとしておる際に、吉田首相は地方総合開発をどこまでおやりになる御熱意があるか、承りたい。
  147. 吉田茂

    吉田国務大臣 その問題は関係当局においてしきりに研究いたしております。いずれを先にするか、あるいはどういう計画を立てるか、また地方との間の協議もあつて、しきりに計画を進めておりますから、やがて御満足を糧るような計画が立つであろうと思います。
  148. 植原悦二郎

    植原委員長 村瀬君、もう時間が来ましたが、まだありますか。
  149. 村瀬宣親

    ○村瀬委員 まだたくさんあります。
  150. 植原悦二郎

    植原委員長 それではもう三時半ですから、この次に願います。  次に昨日の岡田春夫君の質疑の継続を許します。岡田春夫君に念のために御注意申しますが、岡田春夫君に割当られておる発言時間は三十分でありますから、なるべく簡潔にしてその間に要を得るようにお努めあらんことを望みます。岡田春夫君。
  151. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 きようは警視総監、刑事部長が出席になつておりませんか。
  152. 植原悦二郎

    植原委員長 弊視総監は出席されております。刑事部長も出席されておるそうです。
  153. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 きのう警視総監並びに刑事部長に御出席を願いたいと思い、私の方では、衆議院の事務局を通じて、午前十時に御出席願うように御連絡を申し上げたのでありますけれども、その当時、問題を言つてもらわなければ出席ができないというので、また重ねて私の方から、ある程度問題につきましてヒントを與えまして、御出席を要求いたしましたところ、その問題については取調べ中であるからしばらく待つてもらいたい、かようなお話があつて、御出席を断られたわけであります。その後において、公安委員会があると言つて、警視総監は重ねて別の理由をもつて出席を拒否されまして、最後においては、GHQの関係があるというので、御出席を拒否されたように事務当局から承つております。しかしながら、私の知つておる限りにおきましては、すでに昨日三時半は警視小総監は警視総監室にお帰りになつておる。お帰りになつてから、私が質疑を始めたのは四時を過ぎましてから始めたのでございますけれども、いかなる理由をもつて御出席にならなかつたのかは存じませんが、とにかく御出席はなかつたわけであります。あるいはまた刑事部長は、今日ここにお見えになつておると存じますが、昨日はお晝から歯が痛くてお宅にお帰りになつたそうであります。私は、総監並びに刑事部長のこういう事実は、おそらく真実であろうと想像いたしておりますが、しかし問題が警視庁の内部の問題でありまするだけに、かような行動がとかく疑惑をもつて感ぜられるとするならば、きわめて私は遺憾に感ぜざるを得ないのであります。こういう点につきまして、もしさしつかえなければ、まず第一に総監御自身昨日の御出席のできかねた理由について、お承参りをいたしておきたいと思います。
  154. 植原悦二郎

    植原委員長 参考人として田中警視総監の発言を許します。
  155. 田中榮一

    田中参考人 警視総監の田中榮一であります。昨日岡田議員から私の方に連絡がありまして、十二時ちよつと前に予算委員会に出頭しろというお話がありましたが、私午前中出ておりまして、一時からさらに東京都の方へ、昭和三十五年度の予算編成の問題につきまして、知事、財務局長、予算課長その他を歴訪いたしまして、いろいろ折衝する事項がございました。さらにまた三時から一ぺん庁へ帰りまして、午前中から約束をしておりました他の方面に出向いたところでありまして、なお念のために内容をお聞きいたしましたところが、今お話のような問題でありますので、事件の繋属中の問題でもあるし、途中で出ましても、御満足な答弁を差上げることができない、もしも時間的にずらしていただいたならばまことにけつこうであるがということを、私の祕書を通じて申し上げたのでありまして、別に予算委員会に私が出席を拒否したという事実は毛頭ございません。なお坂本刑事部長は、昨日から歯痛のために引きこもつておりまして、本日もただいまここに来る前に歯科医師のところに参りまして、治療を受けて私と一緒にここへ来たわけであります。どうかその点御了承順いたいと思います。
  156. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 今の総監の御答弁で非常にはつきりして参りましたが、少くとも昨日において、公安委員会があるとか、あるいはまたGHGに用事があるとか言つて、さような理由で御出席を拒否されたということは、これは全然うそであつたということが事実になつて参りました。こういう惡い傾向が特に最近の官僚の内部にあるのであります。問題が非常にむずかしくなつて来ると、昔の言葉で言えば、袞龍のそでに隠れてと同じように、GHQに用事があるからおれは行けないのだという形で、絶えずわれわれの攻撃に対して回避をされるような態度が見えるということは、私は非常に遺憾に存じます。この点につきましては、これ以上私は追究いたしませんけれども、今後においてこういう点は十分慎んで、御出席ができないならば、できないという点を明確にお話願いたいと思います。続いて昨日あなたの部下である警視庁の捜査第二課長が参りまして、佐藤昇という人の逮捕の問題につきまして、いろいろ私と質疑応答をいたしたのでありますが、その中で捜査第二課長の答弁によりますと、こういうことを言つております。捜査課長は、逮捕にあたつて逮捕令状の請求を十二月の七日に請求しているが、実際にこれを執行したのは十五日である、その間一週間の間が遅延されておる。しかもこの遅れた理由について、私がいかなる理由であるかということを伺いましたところが、松本課長は、理由ははつきりわからない、かように御答弁になつている。この点につきましては、松本課長が逮捕令状の請求をいたしました限りにおいて、この請求の遅延しました理由がわからないというのは、おそらく警視庁の首脳部が付らかの理由をもつてこれを押えて、握りつぶして一週間おつたのではないかとわれわれは想像できる。こういう点については新聞紙上においても、一週間警視庁の首脳部がこれを握りつぶしたまま承認を與えなかつたというふうに、新聞に書いているのでありますが、それではなぜ一週間の間警視総監はこれを握りつぶしたままでおおきになつたか、われわれから言うならば、かかる市大な問題を一週間以上も遅らせるということは、証拠保全の建前から言つても、きわめて重大な問題だ、かように考える。こういう点についての総監の御答弁を願いたいと思います。
  157. 田中榮一

    田中参考人 お答え申し上げます。佐藤昇が官公庁に出入りをいたしまして、非常におもしろくないということを聞き込みまして、現に佐藤昇の取調べを命じましたのは、この私であります。私が刑事部長に命じ、刑事部長が捜査二課長に命じたのであります。そこで捜査二課長から佐藤昇の詐欺事件に関して、逮捕状の請求について相談があつたのであります。その事案の内容を私が聞きましたところが、はたしてそれが詐欺事件として成立するかどうかということが、私自身の考えとしても自信が持てぬのであります。従つてさらに佐藤昇については、他に大きな詐欺事件があるやにも聞いておる、これについてさらに徹底的な調査をしろ、その上で逮捕令状の請求をするのが至当であろう、いやしくも人を逮捕する上において、單なる軽微の事件についてただちにこれを逮捕するということは、人権尊重の建前からおもしろくない、こういう考えからいたしまして、私が部下準、逮捕令状を請求するならば、さらにこの件、この件、この件を調査した上で請求せよ。従つてその命令によりまして、さらに一週間ほどかかりまして事件を徹底的に調査して、十分に私自身といたしましても佐藤昇逮捕の確信を得ましたので、逮捕の請求をさしたのであります。上官として部下がそうした相談をいたしました際に、警視総監として私がこの程度の示唆を與え、指揮をするのは、私に当然に與えられたる戰権でもあり、義務であると考えてさようにいたしたのであります。従つて捜査を命令した私が、捜査を遅延いたしまして、証拠物件を隠滅させるというようなことは、全然ないことはこの点でおわかりだろうと考えております。
  158. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 私はこの点につきましても、もつと総監に御意見を伺いたいのでありますが、委員長から最初にくぎを押されておりまして、二十分でやめろ、かようになつておりますので、これはこれ以上追究することをやめまして、このほかの問題に入つて参りたい。  ともかくも総監の今のお話の中にはつきりしておりますように、十二月七日現在において、軽微な問題であるとお考えになつてつただろうと思うのであります。しかしながら事態は総監のお話のように、それほど軽微な問題ではなくて、問題がこのように発展いたしますると同時に、きわめて重大なる問題にまで発展しつつある。きわめて重大な政官界を含めての一大疑獄事件にまで発展しつつある。この事実を十二月の七日に軽微な問題として御判断になつた警視総監が、事件について、その見通しがきわめて不完全であつたという、そしりを免れないのは事実であります。  その次に日野署長の問題であります。日野署長の問題につきましても、昨日捜査課長からいろいろ答弁をしてもらつたのでございますが、日野関係については、すでに終つておるという捜査課長の答弁であります。この終つているという裏づけといたしまして、総監談話を七日の日に御発表になつているが、この総監談話の内容を拝見いたしますと、佐藤事件について、日野中野署長は査察官の調査によつて、刑事上の関係はなかつたという、さような総監談話を御発表になつているのであります。それでは金銭関係による事実関係は、日野署長と佐藤昇との間になかつたのでありますか、どうでありますか、この点についてお伺いをいたしたい。
  159. 田中榮一

    田中参考人 お答え申し上げます。中野署長の日野警視がやめた事情について申し上げたいと思います。日野署長は、終戰直後佐藤昇と個人的の関係でじつこんの間柄にあつたのであります。終戰直後まだ治安も十分に確保されていない、こんとんたる状態の際に、当時警察活動の費用が非常に少いのであります。そこで個人的に佐藤昇にいろいろこういう点を訴えたところが、佐藤昇が、それは気の毒である、まことに些少であるが、かかる点については、自分でできるだけの援助をしてやるというようなことで、日野署長が、当時まだ署長ではございませんが、佐藤昇から若干の金円を受取りまして、これを全部警察活動の一助に充当いたしたのであります。その間日野君が一文も私腹をこやしていることは毛頭ないのであります。これを全部警察活動に充当しておる。今回この佐藤昇事件が発生しまして、日野君としても、非常に新聞等に、あたかも佐藤昇と自分とが職務上の醜関係があることく報道されまして、非常に遺憾に考えておつたのであります。ここで私どもとしても、一応かかることが新聞に出ましたので、監察官に命じまして調査いたしたところが、右のような事実をはつきり本人が自認をいたしたのであります。またさような点からいたして、本人もあえて警察官として職務上金円を收賄したというのではないのでありまして、事実それが全部警察活動の費用の一部に充当されておつたのであります。かような点からいたしまして、今回佐藤昇事件が発生しまして、同人が詐欺罪として検挙されたということを聞いて、非常に道徳上の責任を考えておつたのであります。さらに私どもとしましては、この事実につきまして、警視庁としてはこれが犯罪行為に該当しないという大体自信を持つてつたのでありますが、なお念のために検察当局へ参りまして、この点が犯罪行為に該当するかどうか、率直にひとつ検討してもらいたいというので、事実を検察庁に全部一任いたしました。検察庁としても十分に研究されました結果、この行為が犯罪には該当しない、起訴はできないというように結論されたのであります。そこで日野君としましては、やむを得ず自分としては犯罪にならぬけれども、とにかくこうしたことが世間に疑惑をこうむらしたことはまことに申訳ないので、自分としては辞任をする。こういうことで辞表を提出したのであります。私も諸種の事情を勘案いたしまして一その辞表を受理いたしまして辞任せしめたのであります。ただ日野君は今まで非常に警察上に功労がございましたので、特に私が日野君の将来のことを考えまして、みずから新聞社の方々に談話を発表いたしたのであります。大体以上であります。
  160. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 時間がありませんから、答弁も簡單に勘どころだけお話願うように願いたいと思います。そういうようないきさつで金銭の授受はあつたが、これは警察関係に使われた、こういう点はあとわれわれ衆議院といたしましても、この問題を少くとも野党各派は全面的にごの問題の内容について調べて参りたいと思いますから、もし警察関係に使つているとするならば、そういう形がはつきり現われて来るだろうと思います。今の総監の御答弁が違つているかどうかということは、そのときにはつきりいたして来るだろうと思いますが、時間がありませんので残念ながらこれ以上申し上げられません。ただそれほど異例な総監談話を御発表になつて―日野署長の功労を称賛された談話を御発表になつておる。しかもそれほどに日野さんについていろいろと総監は御心配になつているので、私たちの聞いている限りでは、何でも二月三日佐藤昇が釈放されました晩において、うわさに伝えられるところによると、そういうように日野さんについてかばわれている総監は、新宿の十二社の待合にひそかに総監御自身がおいでになつて、日野さんをお呼びになつて、ここで因果を含められて依願退職の形式をとられたとまでわれわれは伝え聞いておるのであります。これほどまで御親切に日野さんのことについてお考えのことを、私真実かどうかは知りませんが、この点についてもし御必要があれば御答弁願いたいと思います。  それからもう一つ、時間がありませんから簡單に申し上げますが、日野さんは確かに中野署長であつたことは間違いないはずであります。ところが昨年の十一月から十二月にかけて、労働組合の諸君――国鉄の労働組合、日教組の労働組合の諸君が、再三にわたつて総理大臣、官房長官に会見を要求して、総理官邸に詰めかけたことがございますが、そのときにおいて、あの総理官邸の警備監督署というのは麹町署かあるいはこの近辺の署のはずであります。この署長が責任を持たなければならないにもかかわらず、日野さんがわざわざ総理官邸の警備の総主任としてお見えになつておるということが事実において現認されている。こういう点は私警備上の問題からいたしましても、警察上の問題からいたしましても、所轄署以外に手を出して、しかも中野の方はほつたらかしにしてこのような措置をとつておることは、総監が非常に日野さんを信頼されている。そうして現内閣の総理官邸もまた日野さんによつて守られることが最も適当であろうという、非常な総監の御配慮によつて行われたのだろうと思うのですが、かような点についてもしその事実がないとするならば、この点について御答弁を願いたいと思います。
  161. 植原悦二郎

    植原委員長 実は岡田君の時間が制限されておりますから、なるたけイエス、ノーのように御答弁あつてしかるべきだと思います。
  162. 田中榮一

    田中参考人 第一の問題につきましてお答えいたします。私は二日の午後九時の汽車で京都で開催されました全国自治体警察署長会議に出席をいたしておりまして、四日に帰つておりまして、三日には私は東京にはいないのでありまして、日野君とはその後全然会つた事実はございません。  それから第二の問題につきましては、私は全然そういう事実を関知しておりませんから御了承を願いたいと思います。
  163. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 最後に、時間がないので、まだたくさん材料はあるのですが、この程度にしなければならないような状態にありますので、この間読売新聞のたしか昨年の十二月十五日でありましたか、佐藤昇事件についての記事が最初に発表されましたときに、その記事の中に、この問題について必要があれば簡單に読んでもいいのですが、捜査線上に上つておるのはあなたの部下である多くの人々が捜査線上に上つておる。たとえば消防総監の塩谷隆雄氏、あるいはまた上野署の次席警視の吉武辰男氏という人、あるいはまた折田二雄という監察官付であります。また署長数名が上つている、かように書いてある。こういう事実について、少くとも新聞に出た限りにおいて、警視庁はこの事実関係をお調べになつておるだろうと私は想像しておりますが、はたしてお調べになつでいるのかどうか。少くともこのような記事が出ている限りにおいて、国民は警視庁について信頼しないようになりつつある。警視庁の権威を守るためにも、この点は嚴重にお調べになつておるであろうと思いますが、この点についてお伺いをいたしたいと思います。
  164. 田中榮一

    田中参考人 お答え申し上げます。この点につきましては、私どもといたしましても一部調査いたしまして、その事実のないことをはつきり申し上げます。
  165. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 総監にお伺いしますが、一部御調査になつたならば、全部御調査はまだお済みになつておらぬのですか、調査する御意思はないわけですか。
  166. 田中榮一

    田中参考人 まだ一人、二人残つておりますが、これは全然そうした事実のないことがはつきりいたしておりますので、そう急いで取調べる必要がないと考えまして実はまだ取調べておりません。
  167. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それではそういう事実が無根だとするならば、この記事が出ておることについて、なぜはつきりとして疑惑を一掃すべき措置を行われなかつたのですか。
  168. 田中榮一

    田中参考人 お答え申し上げます。この点につきましては、私としましても一応そういう措置をとる予定でおつたのでありますが、ただあまりにも新聞の記事が少し大げさでありまして、まと亀にこれを受ける気がしなかつたのでありまして、多少遅れた点はあるのであ勾ますが、それで私は実は取消しをしなかつたのであります。
  169. 植原悦二郎

    植原委員長 岡田君の時間は超過しております。
  170. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 これで終ります。
  171. 植原悦二郎

    植原委員長 特に簡單に許します。
  172. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 あまりに大きく出でおつただけに取消さなかつたというのは、私は正反対に考えられる。あまりに大きかつただけになぜはつきりと疑惑を一掃するような措置を行われなかつたか、この点は私は非常に不審に感ぜられる。  最後に委員長に特に一言だけお許しを得ておりますので、きのうも質問して捜査課長から回答がなかつたのですが、下山事件の最終報告書に対して、きようここに御列席の刑事部長は、ここに改造という本を持つて来ております。簡単に読んでもいいと思いますが、この改造の中に書いておる報告書は、この全文はまさに捜査第一課の極祕の文書を編集したものであるということを刑事部長は新聞に発表されておる。しかもこの機密漏洩容疑者は捜査第一課におるということを、刑事部長は重ねてお話になつておる。ところがこの容疑者がどうなつたか、いまだに行方不明でわれわれは知らないのであります。しかもこの問題について容疑者の問題が刑事部長から何らお話がその以降においてない。ここで私お伺いをいたしておきたいのは、はたして刑事部長が新聞に発表の通り、これはほんとうに捜査第一課の全文を編集したものであるかどうか。それから容疑者は捜査第一課におつたかどうか。それからもしこの容疑者がこのようにして警視庁内にいるとするならば、これに対していかなる措置をおとりになつたか。それからもう一つ、最後に総監にお伺いをしたいと思いますが、機密漏洩の問題は、公務員法の百條で、はつきりと公務員法違反として、重大な問題として取扱わなければなりません。容疑者自身が、あるいはまたこの犯人自身がはつきりと処罰されると同時に、このように機密の事項が漏洩されるということは、明らかに警視総監の責任であると私は考えますが、この点についていかにお考えになるか、この点だけを御質問しておきたいと思います。
  173. 植原悦二郎

    植原委員長 坂本刑事部長、参考人庁として発言を許します。
  174. 坂本智元

    ○坂本参考人 ただいま改造、文芸春秋に載りました下山白書の問題につきまして、ことに朝日新聞に掲載されたことが事実であるかどうか、朝日新聞に私の談が載つておりますが、さような談は、私はいたしておりません。これは同席の人たちも認めております。これは私の申した内容と違います。御了承願います。
  175. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 この問題に関連しますが、捜査第一課の極秘の機密書類と同様のことを編集をしたのが改造である、そういう事実はどうか。それから捜査第一課内に容疑者がいるという点について、この機密の漏洩をした容疑者をお調べになつたことがあるかどうか。こういう点について、事実関係を御寺弁願いたいと思います。
  176. 坂本智元

    ○坂本参考人 ああいう白書が載りましたことについて、そういう白書を警視庁から出したのかどうかという御質問に対しまして、私はそういうものは出しておらない、こういうことを申し上げていいと思います。そうして、お前の方の記録と同じではないかという御質問に対しましては、私どもの記録とは違う。なおまた最終報告書ということが書いてありますが、最終報告書なるものは私の方ではつくつておらない。しかし下山白書というものは、お前たちの記録の内容が載つておるではないかというお話が出ておりますが、捜査の一部につきましては、新聞社の万は十分御存じであります。従つてわれわれの記録に載つておる、捜査の出ている分もございます。従つてそういう意味において、私どもの記録と無関係ではないと思う。また、捜査第一課の者がこういうものを漏らしたのかどうかという御質問がございましたが、それは目下捜査中なのであります。もし機密を漏らしたのであるならば、われわれとしてはお話通り十分処置をいたさなければならぬ問題でありますし、目下捜査中でありますが、いまだに報告申し上げるまでに至つておりませんので、ただいまは御答弁を申し上げかねます。
  177. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 そうすると、この白書というのは、捜査第一課にあるものとは全然違う、かように解釈してよろしゆうございますか。
  178. 坂本智元

    ○坂本参考人 同じものとは思いません。
  179. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 時間がありませんから、増田官房長官にお伺いしたいと思つたこともあるのですが、私はこれでやめます。
  180. 植原悦二郎

    植原委員長 それでは、時間でお気の毒ですけれども、いたしかたありません。ただ田中警視総監が、あなたの御質問に答えていないところがありますね。
  181. 田中榮一

    田中参考人 ただいまの事実につきましては、坂本刑事部長がお答えいたした通りであります。またかりに警視庁内におきまして、文書等の機密事項かかりに漏洩いたしておるとするならば、これは内部行政処分と申しますか、いわゆる内部紀律の問題であり、私としてもそれは当然……。
  182. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 総監の答弁が少し食い違つております。私のお伺いしたここは、こういう事実があつたとしたなりば、総監御自身の責任をどういうよりにおとりになるかということをお伺いしたのです。しかも先ほどの刑事部民のお話によりますと、これは何でも警視庁の捜査第一課にある文書とは、ほとんど違うものであるというのであります。そういたしますと、改造社と人芸春秋が、こういう看板を立てて、全然違うものを、インチキなものを売ついる、こういうことまで意味されたお話であると私は考えますが、かように考えまして間違いないか、重ねてこの点についてもお伺いたしておきます。
  183. 植原悦二郎

    植原委員長 それは断定でありますから、警視総監はお答えになつてもならぬでもさしつかえないと思います。
  184. 田中榮一

    田中参考人 お答え申し上げます。仮定の上に立つた問題につきましてお害えすることは、私責任問題もありますので、非常に迷惑いたしますのでこの点につきましては、以上をもつてお答えといたします。
  185. 植原悦二郎

    植原委員長 関連質問の要求がありますから、これを許します。林百郎君にあらかじめ御了解を得ておきます。関連質問に対しては、きわめて簡潔に、時間を制限してお進めくださることをお願いいたしておきます。
  186. 林百郎

    ○林(百)委員 私の質疑をする前に、増田官房長官と、宮幡通産次官のお二人を呼んでいただきたいと存じます。
  187. 植原悦二郎

    植原委員長 今呼んでおります。
  188. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは増田官房長官と、宮幡次官のお見えになる前に、田中警視総監にお尋ねいたしておきますが、佐藤昇の身柄について、最初から釈放に至るまでの経過を簡潔に言つていただきたいと思います。
  189. 田中榮一

    田中参考人 お答え申し上げます。この点につきましては、坂本刑事部長の方がなおよく事実を知つておると思いますので、坂本刑事部長にお答えいたさせます。
  190. 坂本智元

    ○坂本参考人 佐藤昇の身柄は、初め詐欺罪に……。
  191. 林百郎

    ○林(百)委員 日はいつですか。
  192. 坂本智元

    ○坂本参考人 ちよつと、私は今正確な日は記憶いたしておりません。詐欺事件として留置いたしたのでありますが、多分一月三十日ごろ、詐欺事件につきましての身柄の拘束が、検事保釈になつたのであります。その際さらに違つた罪名によりまして、一応留置して調べたのでありますが、その内容が容疑きわめて薄いので、これを拘束して調べる必要なしという観点に立ちまして、在宅調べというので、これを釈放した次第であります。
  193. 林百郎

    ○林(百)委員 一月三十日検事保釈をしまして、その後再逮捕をしたと思いますが、その再逮捕の日はいつですか。再逮捕しているかいないか、それだけでいいです。
  194. 坂本智元

    ○坂本参考人 即日逮捕いたしております。
  195. 林百郎

    ○林(百)委員 それからその再逮捕をした容疑の事件名、どういう容疑で再逮捕をしたか。最初は詐欺であつたが、その後新たなる罪名の嫌疑をもつて再逮捕をした。その事件についてその後どうなつておるかということを聞きたい。
  196. 坂本智元

    ○坂本参考人 本事件はまだ捜査としては終了いたしておりませんので、令状の内容等は公表すべき筋合いのものでありませんからお答えいたしかねます。御了承願います。
  197. 林百郎

    ○林(百)委員 昨日松本第二課長の話ですと、涜職罪だということで検察当局の記録はとつて、これを検事局へすでに送致してあるということを言つておりますが、その点を事実そうかどうかということだけお聞きしたい。内容はどうでもいいです。
  198. 坂本智元

    ○坂本参考人 松本課長がそうお答えしたのならばそうかもしれません。
  199. 林百郎

    ○林(百)委員 それから田中警視総監にお尋ねしたいのでありますが、日野中野署長が、金をもらつたがその金は警察に使つたと言つています。その金額ともらつた人は、だれか、これを聞きたい。
  200. 田中榮一

    田中参考人 お答え申し上げます。金額ははつきり覚えておりませんが、十万円程度考えております。それから使途につきましては、先ほど私が申し上げましたごとくに、警察活動の一助に充当いたしたものでございます。
  201. 林百郎

    ○林(百)委員 だれからもらつたかということを私聞いているわけです。
  202. 田中榮一

    田中参考人 お答えいたします。佐藤昇から受領いたしたのであります。
  203. 林百郎

    ○林(百)委員 田中総監にもう一度この点押しますが、佐藤昇というのは今詐欺の嫌疑で被疑者になつている。しかもその後さらに涜職の被疑者になつている。これから十万近くの金を警察の署長がもらつて、それをかりに何に使おうとも、これが刑事事件にならないとは考えられない。しかも異例なことは、警視総監がわざわざ一署長の身分上の問題について新聞紙に声明まで出すということは、われわれの常識から言つて明らかに日野が收賄をしているように認定せざるを得ないのでありますが、この点官界の粛正のためにも、この程度のことであなたは日野に対する処置を済ませるかどうか。この点だけあなたにお聞きしておきたい。
  204. 田中榮一

    田中参考人 お答え申し上げます。先ほど私からるる説明申し上げましたごとくに、私どももこの件につきましては、愼重に法律問題その他につきまして研究討議をいたし、なおかつ検察当局に参りまして、検察当局とも十分に打合せまして、その問犯罪行為に該当なしという断定を得ましたので、日野署長の徳義上の責任からの辞表提出を受理いたしたような次第であります。
  205. 林百郎

    ○林(百)委員 この点は私が喋々と言うまでもなく、すなわち数千万円の詐欺の被告から、しかも警察のもみ消し運動で斯界に名を売つている佐藤昇氏から十三万円もの金を署長がもらつて、これが何にもやましくないというのは、世間の常識からいつてもあなたをこれ以上追究するに忍びませんからこの点でとどめておきます。  そこで宮幡次官にちよつとお伺いしておきます。岡田鉱山保安局長ですが、この人は鉱山保安局長になられる前の前身は何だつたですか。
  206. 宮幡靖

    宮幡政府委員 東京商工局の総務部長だつたと思つおおります。
  207. 林百郎

    ○林(百)委員 その前は……。
  208. 宮幡靖

    宮幡政府委員 その前は、私在任当時でありませんから、ちよつと覚えておりません。     〔林(百)委員「繊維関係の……。」と   呼ぶ〕
  209. 植原悦二郎

    植原委員長 委員長の許可を得ぬ発言は相なりません。(笑声)
  210. 林百郎

    ○林(百)委員 岡田秀男氏が繊維関係の局長をしていたという記憶はありませんか。
  211. 宮幡靖

    宮幡政府委員 直接繊維に関係する局長をやつてつたということは、ただいまのところではわかつておりません。ただ昨日岡田委員からの御質問に対してお答え申し上げました通り新聞に出ました二月二日の夕刻でありましたか、政府委員室へ参りまして、大臣と私の前で一身上の御弁明のあつたことをここで率直に申し上げておきます。それに関連いたしまして、当時の職責上さような疑いをこうむる筋合いがあるかということを、一応省内といたしましては手の及ぶ限り、いろいろな方面の取調べをいたしましたが、さような疑いがないので、本人の一身上の釈明を正しいものと信じておるということは、きのう申し上げた通りであります。
  212. 林百郎

    ○林(百)委員 その際岡田氏は佐藤昇を知つておるということをあなたに話しましたか、話しませんでしたか。
  213. 宮幡靖

    宮幡政府委員 知つておることもはつきり申しておりました。
  214. 林百郎

    ○林(百)委員 それでけつこうです。昨日の警視庁の松本第二捜査課長の――宮幡さん、これもまだあなたにお聞きしたいんです。
  215. 植原悦二郎

    植原委員長 宮幡政務次官、そこもうしろもさじき料は別にかわらぬですからどうぞ……。(笑声)
  216. 林百郎

    ○林(百)委員 そうするとお尋ねしますが、佐藤氏は知つておるということですね。それから佐藤氏から金をもらつたということも言いましたかどうか。金銭の授受をしたかどうか。
  217. 宮幡靖

    宮幡政府委員 それも昨日の速記録をお調べくださいますれば明確に出ております。佐藤氏は中学時代の親友である同級生を通じて知合いになつたのでありまして、そして二年ばかり前に胸の病で療養中、転地を勧められましたけれども、当時の身分ではその費用がないので、佐藤さんから親しい友人を通じて療養費を恵まれたことはある。しかしそれによつて職を曲げたとかなんとかいうことは一切ない。これは昨日の速記録をごらんくだされば、同じ趣旨の弁明をしているわけであります。
  218. 植原悦二郎

    植原委員長 林百郎君、御注意を申し上げます。ただいまのような、昨日ほとんど明瞭になつておることの関連質問をなるべくなさらないように……。
  219. 林百郎

    ○林(百)委員 もう一度確かめたい。そこで金をもらつたことは確かだが、その金額、これは昨日は言わなかつた金額は幾らか。
  220. 宮幡靖

    宮幡政府委員 昨日も金銭をもらつたとはここで述べておりません。療養費を恵まれたその程度金額またその種類等につきましては、その当時岡田君から聞いておりませんので、本人の一身上の弁明であります。から聞き落したので、その通りにお答えいたしたにすぎないのであります。
  221. 林百郎

    ○林(百)委員 大体明らかになりましたことは、あなたがどう言おうと、とにかくもみ消しで、しかも詐欺の被疑者から、こともあろうにあなたの省内の局長が非常に恵まれたとか、あるいは病気の療養とかなんとかここで言つておりますが、金をもらつたことは確かです。そこで問題になりますことは、昨日岡田君の質問に対して、その岡田鉱山保安局長の一身上の弁明をそのまま認められまして、何らその後通産省としては処置をしないというように言われておりますが、ここで重要なことは、昨日松本第二課長の報告によりますと、すでに警視庁で三度目の逮捕事件については涜職罪としての記録をつくり、これを検事局へ送つておるのであります。このことについでは、今坂本刑事部長も、松本課長がそう言うならそうかもしれないということを言つておるのであります。そうするとあなたの省内の一局長が、すでに記録の上では涜職の相手として記録に載せられ、それがすでに検事局行つておる。しかもみずからの品からも、佐藤昇氏から金を恵まれておる。あなたの言葉で言うと病気療養のためのお恵みにあずかつておると言つておるそうでありますが、そうなれば明らかに世間の疑惑としては涜職関係、しかもこれは前に繊維関係の局長をやつている。佐藤氏は繊維界へ出入りしている有名な人物だ昭和二十一年、二十二年、二十三年は繊維のやみが実に横行していたときだ。明らかにここに涜職の嫌疑が十分であります。これに対してあなたは單なる岡田氏自身の身上弁明だけで許されるかどうか。すでに記録の上で、警視庁で涜職の記録が出て検事局に送られている。しかも本人も金をもらつたと言つている際に、病気療養の際にお恵みを受けたんだからとい一う、通り一ぺんの弁明だけであなたはそれを許しておくことができるかどうか。この点をこともあろうに官紀粛正をモツトーとしている吉田内閣の通商政務次官ですから、特にあなたにお尋ねしたい。
  222. 宮幡靖

    宮幡政府委員 お答えいたします。頭脳明晰な林委員の御質問とも覚えません。岡田局長が一身上の釈明をせられた形を、ここで私は岡田君の言つたことをかわつて申し上げるのでありまして、これに対して解釈やいろいろなことを加えて、個人の意見あるいは通産省の政務次官としての意見は申し上げておらないはずであります。のみならず、昨日も岡田委員から御指摘がありましたように、佐藤昇はすでに贈賄したのだと言つておるのにどうだという御追究がありましたが、佐藤昇が贈賄したと説明いたしましても、その自白や調書に対しましては、通商産業省は関知すべきものでないことも私申し上げておきました。いやしくもただ一片の新聞や一片の疑いによりまして、高級公務員を順次に整理いたしますことは、むしろこれは林委員が口癖に言うように、事もあろうに弾圧的な人事淘汰をやる、ということからお考えくださると、論理が間違つておるではなかろうかと私考えます。もし事件となりまして進展いたしますれば、監督者としての当然の責任と義務とにおきまして、国家の公僕であります局長等の処理に関しては、その責任が奈辺にあるかは、その時期と場合において適当に善処することをぞひ御了解願いたいと思います。
  223. 林百郎

    ○林(百)委員 事は裁判にまたなければならぬということになれば……。
  224. 植原悦二郎

    植原委員長 林百郎君に御注意申し上げます。もうここで討論や議論はなさらないように、質問だけに願います。ただいまのことは政務次官の答弁であなたの質問に対してはかなり明瞭だと思います。なるたけ短かく要領だけ関連質問してください。
  225. 林百郎

    ○林(百)委員 一言だけ申し上げます。少くとも金銭を病気の療養のために恵みを受けている相手方が、涜職の嫌疑として記録ができているのです。しかもそれが繊維界の大ボスである。岡田鉱山保安局長は前に繊維局長をやつていたのです。裁判をまたなければ、これを処置したら共産党の言う彈圧になるから首を切りませんなんというような、話にならないことを、私はこれ以上聞く必要はない。そこであなたをこれ以上追究することは私も忍びませんから、これで打切りたいと思います。  そこでその次に増田官房長官にお尋ねしたいと思います。私は増田官房長官とは同郷でありますが、私情を捨ててここであなたにお尋ねしたいと思います。
  226. 植原悦二郎

    植原委員長 林君、前置きは抜きにして質問を單刀直入に願います。
  227. 林百郎

    ○林(百)委員 あなたはかつての元警視総監の官房主事をやつてつた丹羽喬四郎、元内務省保安課長をやつてつた岡崎英城、これを御存じですか。
  228. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 これは昨日岡田君にもお答えした通り私は内務省に長年勤続しておつたものでありまして、後輩は全部知つている勘定です。
  229. 林百郎

    ○林(百)委員 そこで知つている勘定でありますが、その後あなたはこの諸君とお会いになつておりますか。
  230. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 最近会つておりません。
  231. 林百郎

    ○林(百)委員 最近会つておりませんか、いつごろお会いになつたか。
  232. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 去年一、二回会いました。
  233. 林百郎

    ○林(百)委員 その際には岡崎、丹羽君を通じて金銭の授受がありましたか。
  234. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 そういうことは絶対ありません。
  235. 林百郎

    ○林(百)委員 昨日……
  236. 植原悦二郎

    植原委員長 林君、関連質問としてあなたにはかなり寛大の処置をとつております。寛大な処置をとつてあるのに……
  237. 林百郎

    ○林(百)委員 これからが重要な点であります。
  238. 植原悦二郎

    植原委員長 きわめて簡潔に願います。
  239. 林百郎

    ○林(百)委員 そうしますと、丹羽、岡崎君に二、三度会つておる、昨日はもみ消し料としての金を受取つたことはないと言つておりますが、そのほかの名義で金銭の授受をしておりませんか。
  240. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 お答え申し上げます。林君の御質問のうち誤謬がございますから明瞭に指摘しておきます。昨日もみ消し料としての金を受取つたことはないというようなことは一点も言つておりません。いやしくも金銭ということは絶対無実無根であると明瞭に申し上げてあります。
  241. 植原悦二郎

    植原委員長 林百郎君に重ねて御注意申し上げます。関連質問でありますので限度がありますから、あなたが今までのような御質問の仕方をすれば、委員長は遺憾ながら発言をとめなければならないのであります。さようなことのないように、あなたみずから御注意なすつて発言せられんことを委員長は希望いたします。
  242. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは委員長の注意もありまして私の発言が制限されますから……。最後にこの問題はより重要な問題であります。なぜかといえば、岡崎、丹羽というのは前特高の出身者おります。しかもわれわれが聞いておるところによれば、いわゆる涜職の被疑者であるところの佐藤が岡崎、丹羽を通じて、昭和二十二年の九月から十月の間に二十万円、さらに二十三年の春、岡崎を通じて三十万円、さらに一十三年六月丹羽を通じて佐藤はあなたに十万円、計六十万円をあなたに提決しておるということは、すでに言つおるということをわれわれは聞いておる。そこで私は先ほど申し上げましたように、同郷の増田君でもありするから、あなたは知らないかしらぬが、実は世間にはこういう疑惑が相当ある。現に国際新聞にしてもその他の新聞にしても書いておる。こういう事実をすでに佐藤が警視庁で言つておるということすらわれわれは聞いおり軒ますが、この際何とかこれに対して釈明する点があるならば、釈明を聞いておきたいと思うのであります。
  243. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 そういう事実は絶対にございません。そのことはきわめて明瞭に申し上げておきます。
  244. 植原悦二郎

    植原委員長 林君、関連質問は十分だと思います。もうそれ以上あなたにこの予算委員会において尋問的の質問を許す理由はありません。関連質問としてはあなたに十分に寛容な取扱いをして質問を許しております。許しません。
  245. 林百郎

    ○林(百)委員 私の方はそのほかたくさんの事実を持つております。委員長、それを言うことが民主自由党、吉田内閣の致命傷になるという意味で、私の発言を押えられる……。
  246. 植原悦二郎

    植原委員長 林君のただいまの質問のごときは、吉田内閣の致命傷になるとは委員長考えておりません。関連質問として重要な質問だということで、一点だけ稻葉修君に質問を許します。
  247. 稻葉修

    ○稻葉委員 先ほどの岡田春夫君の質問に対しまして答えられた田中警視総監の発言中、不明な点がありましたので、関連してここに明らかにしておきたいと思います。佐藤昇氏に対する逮捕状の執行が一週間遅れた。なぜ遅れたかについて理由をただしましたところ、警視総監は捜査第三課長の報告ではきわめて人を逮捕するのに不十分な理由しか掲げられていなかつたから……。     〔発言する者多し〕
  248. 植原悦二郎

    植原委員長 靜粛に願います。
  249. 稻葉修

    ○稻葉委員 なおこの点とこの点を調べろ。その上で逮捕したらよかろう、こういうことを警視総監が第二捜査誤長に言つたと言いますが、その通りでございますか。
  250. 田中榮一

    田中参考人 その通りでございます。
  251. 稻葉修

    ○稻葉委員 それならば、この点とこの点を調べろというのは、内容的にどういう点を調べろと命じたのですか。
  252. 田中榮一

    田中参考人 本件につきましては、ただいま繋属中の事件でございますので、この席で言うことを遠慮させていただきます。
  253. 稻葉修

    ○稻葉委員 再逮捕の理由としては、先日の松本捜査第二課長のお答えでは、涜職の嫌疑によるものである。ところがこれが三日で釈放されておるのでありますが、逮捕状の遅れた点、しかもこの点、あの点という点が内容的に今申し上げられないと言う。逮捕状の再逮捕の涜職の点で、わずか三日で釈放されているというような前例にない点、これらの点について非常に疑惑を生ずる点は、何か政府高官筋のところにこの事件の関係があるのであつて、その関係から三日の釈放で、この事件をあまり追究してはならないというような示唆を受けた事実は、坂本刑事部長に、あるいは田中警視総監にあつたかどうか。この点をちよつとお答え願いたい。
  254. 田中榮一

    田中参考人 お答え申し上げます。再逮捕の理由につきましては涜職の嫌疑があつたからであります。なお警視庁で取調べをし、さらに検察庁にまわりまして、検察庁でこの事件の内容を取調べました結果、嫌疑が薄らぎまして、警視庁、検察庁、両者十分に協議の上で、本人を釈放してさしつかえない。また必要があるならば在宅調べで調査してさしつかえないという了解が成立いたしまして、それで釈放したのであります。
  255. 稻葉修

    ○稻葉委員 これで私の質問は終ります。
  256. 植原悦二郎

    植原委員長 次に天野公義君に保留してある大蔵大臣に対するところの質疑の継続を許します。
  257. 天野公義

    ○天野(公)委員 大蔵大臣に御質問申し上げる前に、予算委員の一人として、今のような考査委員会で取扱つてしかるべきような問題を、この予算委員会において取扱い、そしてこの重要な予算の審議に何ら関係のないようなことで、時間を遷延するというようなことがあつたことは、まことに遺憾と感ずる次第であります。今後ともこういうことが前例とならないように、委員長の御善処を委員の一人として要望したいと思うのであります。  さて私は大蔵大臣に以下数点にわたつて質問を申し上げたいのでございますが、証券取引委員会委員長の出席を要求しておいたのでございますけれども、いらつしやらないようでしたならば、証券に関する問題について大蔵大臣から御答弁いただいてもけつこうだと思います。
  258. 植原悦二郎

    植原委員長 証券取引委員長は午前中あなたの御質問があるだろうと思つてつてつたそうでありますが、帰られたそうです。あなたの質問大蔵大臣がお答えするそうです。さつそく質問していただきたい。
  259. 天野公義

    ○天野委員 証券市場対策についてまずお伺いしたいのでありますが、昨今一部の有力株を中心に幾分もどり足のけはいにあるのでありますが、これが本格的なもどり足であるか、また政府の今までのいろいろな政策がきいて来た結果のものであるか、また再び昨秋末のような暴落の二の舞いを演ずる性質のものであるか、はつきりまだ私にはわからないのでありますが、ともかく大きて見て、最近株式が非常に暴落したということは事実であります。その結果として投資家が非常な損害をこうむつたわけであります。また証券業者の方においても、手持ち証券の値下りで相当苦しんでおるような状態であります。この際どうしても株式市場を健全なものにいたしまして、そしてこの証券業者の健全化と、また投資家のむだな損害を防ぐようにしなければならないと思うのでございますが、それに対する対策といたしまして、当局はどういうことをお考えになつておるか、お伺いしたいのであります。
  260. 池田勇人

    池田国務大臣 先週初めごろから大分株がもどりぎみでございます。ことに昨日並びに先週の土曜日くらいは、いわゆる値がさ株が相当暴騰いたしまして、今日の午後は値がさ株よりもその他の方に買手がまわつておるようであります。しかし大蔵大臣として、今後株は上るか下るかということにつきましては、申し上げかねるのでありますが、昨秋来とつておりまする財政金融政策の一環といたしまして、私は今後徐々に株価の適正化が期し得られると考えておるのであります。しかして株価対策といたしましては、巷間にいろいろな案が伝えられておるのでありますが、私は今お話にもありましたように、今までの証券業者が単なる証券の売買操作ということだけにとどまつていては、今後の増資新株引受け等につきましても支障がありますので、証券業者をいわゆる引受業者――アンダーライターというような方面にも進ませて行くような措置をとりたいと考え薫るのであります。いろいろな株価対策がありますが、株価対策は何もないのも一つの株価対策であるのでありまする。だからそのときどきによりまして、適正な株価を維持しますように措置したいと考えておるのであります。
  261. 天野公義

    ○天野(公)委員 これはどうしても株価を維持する、また投資家の利益を保護して行くというためには、証券業者の質の向上ということをはからなければならないと思うのであります。また現在の株式市場に対して、大体大蔵大臣投資市場として育成して行くというような御方針であると思うのでありますが、どうしても株式市場には投機的要素が入るわけであります。そこで私は徐々でけつこうでありますが、証券業者の内容の健全化とともに一投資的な注文を受ける証券業者と、投機的な投機專門な証券業者とに機能をわけて行かれるようにするというのがよいと考えるのでありますが、この点に関する所見を承りたいと思います。
  262. 池田勇人

    池田国務大臣 投資的業者であつてほしいのでありまして、投機的にやられるということは相ならぬと考えておるのであります。投資業者としてのやり方といたしましては、先ほど申し上げましたような引受団――アンダーライターというような制度の発達をもつと促したい。産業の復興につきましては、なお今後も相当の増資をしなければならぬ立場でありますので、單なる今までの証券業者の、いわゆる売買業者という関係のものではなしに、引腰業者としてのいわゆる証券業者を育成して行きたいと考えておるのであります。
  263. 天野公義

    ○天野(公)委員 次に場外市場の問題についてお伺いしたいのでありますが、この場外市場の問題は、相当大きな問題を含んでおると思うのであります。昨秋の暴落のはしりをいたしましたのも、この場外から起つておりますし、また今度のもどり足になつておるというのも、場外から起つているような状態であると見受けられるのであります。新株券の権利も落ちないうちに場外で値が出るというような状況は、どうも不健全であると思われます。そこで新株券の発行以前における投機的取引に対して何かお考えはないか。これに対しまして私は、取引所内部の取引として場外市場の取引を吸收するかまた新たに別個の取引所をつくつて、そしてその場外市場を吸收して行つたならばいいのではないかと、このように考えておりますが、この点に関する御所見をお伺いいたしたいと思います。
  264. 池田勇人

    池田国務大臣 場外の不正取引を撲滅いたしますことは、なかなか困難な問題であります。これは昔から相当そういうようなのがありまして、困難な状態であるのでありますが、できるだけ取引所法その他の法律を嚴格に施行して参りまして、取締りをやつて行きたいと考えております。今ここで取引所を別に設けましても、この場外の不正取引というものは、なかなか困難な問題であろうと考えておるのであります。じこうしてこの場外の取引を取締るには、やはり取引の手数料その他につきましても相当考えなければならぬと思つております。権利株の売買等につきましては、これはなかなか技術上困難でございます。増資が早く漏れるとかなんとかいうことによつて行われるのが多いのでありますが、いずれにいたしましても、不正取引につきましては十分取締る考えで行きたいと思つております。
  265. 天野公義

    ○天野(公)委員 次に最近レギュラー・ウエイの方式をとられるというようなお話を聞くのでありますが、この方式をはたしてとられるのかどうかまたとられるとしたならば、どうしても株式担保金融がもつと大巾に行われなければできないと思うのであります。もつとも現在株式担保金融について相当対策を講ぜられているようでございますが、このレギュラー・ウェイの問題と離しまして、株式担保金融がどの程度に進捗しておるか、この点をお伺いしたいのであります。
  266. 池田勇人

    池田国務大臣 昨秋以来株式金融の問題につきまして、いろいろな手を打つたのでありますが、その中で銀行の株式担保金融を丙から乙に、乙から甲に上げましたこと、また銀行業者が証券に対しましての関心を相当深めるような措置をとつて来たのであります。今の株式のレギュラー・ウェイによります分は、理想といたしましてアメリカ式の取引所を設けました関係上、そちらに向つて行かなければならぬと思うのであります。貸株制度につきましても、今までは東京におきましては東京証券金融というのが一千万円でございます。大阪につきましてもその程度以下のものであつたのであります。最近東京証券金融会社を日本証券金融会社といたしまして、二十五倍の二億五千万円の資本の会社にいたしまして、貸株制度あるいは株の担保金融をやるようにスタートいたしたのであります。大阪におきましても一億円の会社を設立し、名古屋におきましても中部証券金融というので四、五千万円だつたと思いますが、会社ができて参りまして、今後徐々にレギュラー・ウエイの方法が円滑に行われるようになつて行くと考えるのであります。
  267. 天野公義

    ○天野(公)委員 次に銀行制度の方向について一点お伺いしたいのでありますが、大体ドツジ政策では短期金融は商業銀行で、長期資金の獲得は株式金融あるいは興業銀行、勧業銀行というようなところで行われるというふうに理解するのでありますが、伝えられるところによりますと、今度商業銀行が社債を発行できるようになると聞いております。すなわち資本金と積立金とから預金と外部負債を引いた差額だけ債券を発行できるというように聞いておるのでありますが、このように商業銀行が債券を発行できるようになれば、これは長期資金の方の調達にまわるわけであります。このようなことがもしも法律できめられるとすれば、そのような方式と前に申し上げたような方式と食い違いが出て来るように思われますが、この問題に対してどういうお考えかお聞きしたいのであります。
  268. 池田勇人

    池田国務大臣 昨年来の金融市場は、短期資金につきましては相当円滑を期し得られたのでありますが、長期資金につきまして少し不如意の点があつたのであります。従いまして長期資金の調達方法といたしまして、従来長期金融をやつておりましたところの日本興業銀行あるいは農林中金、こういうふうなものに見返り資金から出資いたしまして、債券発行限度をできるだけふやそうという方針で進んで行つたのであります。しごうして日本興業銀行、農林中金だけでも実は不十分でありますから、その際に日本勧業銀行あるいは商工中金というふうなものにまで拡張いたそうという考え方で進んで行つておりましたところ、御承知通り勧業銀行は先般来普通銀行にかわつてしまつた。その際に勧業銀行にだけ認めるということはいかがなものか、あるいは北海道拓殖銀行による資金獲得という程度でいいかという問題を討議いたしましたところ、やはり今後の情勢として、要すれば一般市中銀行にも、社債の発行を認める措置をとり得るような制度を設けたらどうかというように考えがきまりまして、最近のうちに銀行法の改正をいたす考えでおるのであります。従いまして、当座の問題といたしましては、日本興業銀行はもうすでに十億の資本に対して発行限度の二百億円をほとんど使い盡す状態でありますので、なるべく早く興業銀行に広め、徐々に農林中金、商工中金、勧銀の方にも認めて行きたいと考えておるのであります。何分にも今の普通銀行は、拂込み資本金あるいは積立金に対しまして四十倍、五十倍あるいは六十倍の預金を持つておるところがあるのであります。かかる銀行に対して、ただちに債券発行をして別にまた二十倍を認めるということは、いかがなものであろうかと思いますので、制度としては全般的に認めますけれども、そのやり方としては徐々に移りがわりをやつて行きたいと考えております。
  269. 天野公義

    ○天野(公)委員 次に債務償還の点についてちよつとお伺いしたいのでありますが、この問題は先ほど北澤委員より質問されておりますので、重複する点を避けましてお聞きします。  大体来年度の債務償還の中で、法律に基く償還以外の償還額は約一千億ばかりと思うのでありますが、本年三月末までの債務償還によりまして、銀行手持ちのものは四百四十億ぐらいになると思うのであります。三十五年度にこの債務償還をやつて行きますと銀行の手持ちはなくなり、どうしても日銀や預金部で償還しなければならないようになると思うのであります。そうなりますと、どうしてもデフレの傾向が強くなるのではないかと思います。政府ではこれに対して預金部資金を指定預金として市中銀行に預け入れるようなことをしたり、また国庫の余裕金を市中銀行に預けたりするような方式をとるということを聞いておるのでありますが、私はこれは応急金融対策であつて、オーソドックスの政策ではないと思うのであります。二、三、四月あたりの徴税時期を切り抜ける応急策としてならいいかもしれませんが、この手を長く用いることはどうかと思うのであります。こういうふうな政策をとらなければ切り抜けられないということは、反面から言えば、債務償還を中心とするデイスインフレ政策が限界に来た、このように私は考えるのであります。またこういうような方式がもしもどしどしとられて行つたならば、市中銀行の資産内容が不安定になつて、また貸出しが預金額を越えるというようなことが起るのではないかと思うので、この点に関する御所見を伺いたいと思います。
  270. 池田勇人

    池田国務大臣 債務償還の問題の御質問でございますが、一――三月の間におきましては、国債債務償還はまず見返り資金勘定からの百二十五億を一応念頭に置いておるのであります。その他のものにつきましては、復興金融金庫の二百四、五十億の分だけでございます。従いまして銀行の持つておりますところの八百億の国債につきましての償還は、一――三月のうちにはあまり行われません。また別に預金部の持つております六百数十億の国債償還も、一――三月のうちには原則として行われないとお考えいただけばいいのであります。しかして来年度の償還は、お話通りに大体一千億円程度のものが、直接国債償還ということになつて来ると思うのでその対象になります。これは先ほど申しましたように、銀行の持つております国債償還された場合には、それ以前に金融債を銀行が引受けるように相なると思うのであります。従いまして貸出しと預金との率は、今の状態では大したことはないと考えておるのであります。預金部資金あるいは復興金融金庫資金を、短期にまわすということはいかがなものかというお話もあるのでありますが、私は今の金融事情を緩和し、ことに中小企業等の金融の円滑を期します上におきましては、徴税の非常に行われるときには、政府から指定預金あるいはひもつき預金等をいたしまして、金融を緩和することが適当な処置ではないかと考えております。
  271. 天野公義

    ○天野(公)委員 次にお伺いしたいのは、観点をかえまして徴税の問題であります。  大体所得税の軽減または間接税の軽減ということで減税が行われたのであります。しかし現存金詰まりその他によつて、この税金は国民に重圧を加えて来ておる状況であります。特に重税を訴えておるのは中小商工業者や申告所得者層であります。先日の本委員会における平田主税局長の御答弁によりますと、二十五年度所得の推定は三十三年度を基礎とし、二十四年度を参照して営業所得では二十三年度より七四%増、二十四年度より三〇%増となつております。そうして申告所得者は課税所得全体として一六%の増加となつております。そういう基礎から三十五年度の予算が出て来るという御紛明があつたのでありますが、これはまつたく現実を無視した机上の計算であると思われるのであります。二十三年や二十四年の前半の状況と、二十四年後半から二十五年前半にかけての状況は、まつたく様相がかわつておるのであります。物価が横ばいであると言われておりますけれども、申告所得者層や中小商工業者のつくる物品の価格は、大体値下りしておると思うのであります。特にある業態においては非常な値下りをいたしておる。また非常に売れ行き不振になつてつておる。物は持つていても、金は全然入つて来ないという状況にありますし、また手形もどんどんその期限が延びておるような状態であります。大臣は二十四年度の税額決定の際に、このような損をして投げ売りをしておるというような状態、また金が全然回收できないというふうな状態、このような状態に対していかなる御処置をとられるか、お伺いしたいのであります。
  272. 池田勇人

    池田国務大臣 物価の点からいいますと、二十三年には一月から十二月まで相当上つて参りました。二十四年は大体横ばいの状況になつておるのであります。卸売物価につきましては、ある程度つておるのであります。課税上の所得は、二十三年度平均と二十四年度平均を見ますと――相当物価は上つておると言い得るのであります。それは二十三年は相当上りました、二十四年は横ばいになつたと言つても、物価の点からいいますと、相当上つて来ておるのであります。国民所得の点から申しますと、二十四年度は二十三年度より一割程度つておる。それから二十五年度はある程度つておる。これは生産の事情その他にもよるのであります。従いまして二十四年度の当初の予算におきましては、二十三年度の申告所得税は千二百億円と見込み、そして二十四年度は千九百億円と見込んだのであります。補正予算でこれを二百億円減額いたした状態であるのであります。三十四年度におきまして補正予算で減額いたしました千七百億円は、徴收できるかという問題になりますと、大体徴收できるのでないかと思うのであります。何と申しましても、申告納税の所得税は徴收その他一番やつかいでありまして、二十三年度におきましても、千二百億円に対しまして、五、六億の赤が出たと思います。二十四年度におきましては、すでに二百億円を当初予算から減らしておりますから、赤は出ないと思いますが、申告の状況、その他によりまして、赤が出るかもわかりません。しかしその他の勤労所得税の徴收状況などは非常によろしいので、全体といたしましては、二十四年度は私は赤が出ないという確信を持つておるのであります。二十五年度の予算におきましては、二十四年度よりも二十五年度は生産その他もふえて参りますので、ある程度の増は見込んでおりますが、減税その他によりまして、申告納税の分は前年よりも少くなつている状態であるのでありま
  273. 天野公義

    ○天野(公)委員 時間がないので少し端折りますが、今お尋ねした点で、もう一度お伺いしたいのは、業者によつて非常に急激に、たとえば昨年の暮十一月、十二月というところで、非常に損害をこうむつた状態もあるのであります。そういうような業態に対して、現実に即した御処置をぜひお願いしたいのであります。  もう一点はいつも問題になるのでありますが非常に中小商工業者、申告納税者層に対して税務官吏が不親切だ、本親切であるばかりでなく、相当不当な課税をしておるというような事例がたくさんあるのであります。こういうところで大臣に言うのはおかしいかもしれませんけれども、氷山の一角として御参考までにお知らせしたいと思うのでありますが、これは東京の某税務署でいついつまでに税金を拂わなければ、差押えにするというような通知書でありますが、ガリ版で書いてあつて、全然見えない。読めないような文書を出しておる。そこにペンでナンバーを書き込んであるというような状況であります。これは一つの例でありますが、いかに不親切なものがあるかという――全部ではありませんが、あるという氷山の一角としての例と思うのでありますが、税務官吏の指導に対して、今後とも大いに御努力をしていただきたいのであります。これは御答弁いりません。  それから物品税の問題でございますが、これは先般シヤウプの勧告以上に政府の御努力によつて軽減されたのでありますが、やはりこれも非常に高率な税金がかかつております。しかも物品税の対象となる物品をつくるものは、中小商工業者や、零細な家内工業家であります。これらの物品は容易に製造されまして、納税の対象となつている。業者はどうしてもこの税金を拂わなければなりません。しかしながら簡單につくれる物品でありますので、脱税してもぐつてごの品物をつくつて、問屋なり小売屋に売るというやみ業者も非常に多いのであります。これはどうしても税率をもつと引下げていただくとか、また免税点を大いに広げていただくというような措置によつて、やみ業者をなくしていただくと同時に、これらのものを生産している者たちは、零細なものが多いのでありますので、これらのものをほつたらかしておきますと、非常に問題を起しやすいのであります。社会政策的な見地からも、これらの製造業者たちをある程度保護して行く必要もあると思うのでありますが、物品税に対してこれからの見通しをお伺いしたいと思うのであります。
  274. 池田勇人

    池田国務大臣 御質問の第一点は、昨年十一月、十二月に相当掛売りその他によりまして、損失をこうむつた方方に対する租税上の処置でございますが、これは所得は暦年計算になつておりますので、昨年の十一月、十二月に御損なすつた方は、一月の確定申告では、その損をお出しになればいいのでありまして、そういう点は落ちのないように指導いたしておるのであります。  第二の税務官吏の態度、その他につきましては、まだ遺憾な点が多いのでございます。われわれといたしましても、極力職員の素質の向上、また納税者に対しての態度につきましては、注意をいたしておるのであります。お手元の税務署から出しましたその文句につきましては、一応検討いたしました上、適当の措置をとりたいと思います。  御質問の第三点については、物品税の軽減についてでありますが、お説まことにごもつともな点がありますので、先般の第五国会におきましても、シヤウプ勧告以上の減税措置を一月からいたしたのであります。将来の問題といたしましては、やはり物品税の税率とか、あるいは課税最低限の問題につきましては、検討して行きたいと考えておりますが、昭和二十五年度におきましては、一月からの減税でしばらくがまんしていただきまして、二十六年度におきましては、相当物品税について考えたいと思つておるのであります。
  275. 天野公義

    ○天野(公)委員 最後にあと一つの問題をお伺いしたいのでありますが、それは保險の問題であります。まず生命保險について申し上げますと、現在非常に予防医学が発達いたしまして、また非常に優秀な薬もできた結果として、死亡率が非常に現在減少しておるのであります。このような喜ぶべき時代に入りながら、この生命保險料というものが、昔の脳溢血でばたばた死んだ、肺炎になればみな死んでしまうというようなときと、少しもかわつておらないというのは、まことにどうかと思いますが、現衣生命保險会社は内容があまりよくない。インフレに弱いので内容がよくないと聞いておりますけれども、社会政策的な見地からいたしまして、この生命保險の率の引下げをぜひ行つていただきたいと思います。もう一つは火災保險の問題でありますが、今度地方税が非常に上ります。特に家屋税というようなものがなくなつて、今度は固定資産税として三倍ぐらいに上ると聞いているのでありますが、どうしても現在自分の住まつている家を焼かれるというようなことは、その者にとつては非常に苦痛であります。またこれを再建するのには非常に費用がかかるのであります。ところが、今度はその者に対して、税金として今までよりも非常な負担をしなければならない。また火災保險の料金は、燃えなければ一年契約で全部会社に取られてしまうというような性質のものであります。いつ燃えるかわからないものに対して、ある程度の保險料を拂うということは、これらの物件を持つているものにとりましては非常な負担であります。国民の所得も非常に少い今日であります。今度地方税がふえまして、地方財政がゆたかになつて、消防という方面も相当完備されるでありましようし、都市計画も進捗して大火ということも少くなると考えますが、この際金利の引下げの断行をなされた大蔵大臣の手によりまして、これらの保險の率の引下げをぜひ行つていただきたいのであります。特に火災保險の保險料の引下げ、また手数料の引下げということについては、火災保險の各会社の内容もいいことでありますので、ぜひ行つていただきたいと思うのでありまするこの点に関する大蔵大臣の御所見を伺いたいのであります。
  276. 池田勇人

    池田国務大臣 御説ごもつともでございます。損害保險につきましては逐次下げて行つております。一昨年銀行の金利引上げのときに相当上つて来たのを、昨年下げております。今後におきましても損害保險は極力下げて行きたいと考えております。また生命保險につきましてもお話通りでございまして、料率はできるだけ低い方が、保險事業の発達の上におきましても望ましいことであります。お説の通りのような気持でもつて進んで行きたいと考えております。
  277. 天野公義

    ○天野(公)委員 これで私の質問は打切ります。
  278. 植原悦二郎

    植原委員長 本日はこれにて散会いたします。  明日は午前十時より開会いたします。     午後五時十一分散会