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1950-02-13 第7回国会 衆議院 予算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年二月十三日(月曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 植原悦二郎君    理事 尾崎 末吉君 理事 上林山榮吉君    理事 小峯 柳多君 理事 苫米地英俊君    理事 勝間田清一君 理事 川崎 秀二君    理事 川上 貫一君 理事 今井  耕君       天野 公義君    井手 光治君       江花  靜君   岡村利右衞門君       小淵 光平君    角田 幸吉君       北澤 直吉君    小金 義照君       小平 久雄君    坂田 道太君       高橋  等君    玉置  實君       中村 幸八君    永井 英修君       西村 英一君    丹羽 彪吉君       松野 頼三君    南  好雄君       山村新治郎君    水谷長三郎君       武藤運十郎君    村瀬 宣親君       山本 利壽君    林  百郎君       米原  昶君    奧村又十郎君       平川 篤雄君    岡田 春夫君       世耕 弘一君  出席国務大臣         国 務 大 臣 殖田 俊吉君         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         文 部 大 臣 高瀬荘太郎君         農 林 大 臣 森 幸太郎君         通商産業大臣  稻垣平太郎君         運 輸 大 臣 大屋 晋三君         国 務 大 臣 増田甲子七君  出席政府委員         刑 政 長 官 佐藤 藤佐君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         農林政務次官  坂本  實君         通商産業政務次         官       宮幡  靖君  委員外出席者         参  考  人         (警視庁捜査第         二課長)    松本  彊君         專  門  員 小林幾次郎君         專  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 二月十日  委員林百郎君辞任につき、その補欠として梨木  作次郎君が議長指名委員に選任された。 同月十一日  委員梨木作次郎辞任につき、その補欠として  林百郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十五年度一般会計予算  昭和二十五年度特別会計予算  昭和二十五年度政府関係機関予算
  2. 植原悦二郎

    植原委員長 これより会議を開きます。  質疑を続行いたします。北澤直吉
  3. 北澤直吉

    北澤委員 まず最初に文部大臣に対しまして二、三点伺いたいと思います。  第一点は、御承知のようにわが日本は領土が狭くて、しかもその上に非常にたくさんの人口をかかえておるのであります。でありますので日本といたしましては、どうしても貿易立国産業立国というわけで、貿易の振興というものに最も大きな重点を置かなければならぬと思うのであります。従いましてわれわれ日本国民全体が、なるべく国際的教養と申しますか、感覚と申しますか、そういうものを持つことが非常に大事と思うのであります。昔のように日本武力を持つておる時代におきましては、この武力によりましてわが国民海外発展することもできたのでありますが、今日のように完全に武力をなくした日本におきましては、われわれ日本人人格の力によつて海外発展する以外に道はないのであります。ところが戰争以来今日まで約十年の間、日本はほとんど鎖国の状態にありまして、外国との交通というようなものも杜絶されておりました。従いましてわれわれ日本人の頭には国際的感覚というものが、非常に乏しくなつておると思うのであります。そういうわけでありますので、私は日本教育におきましても、国際性をとりもどすような点につきまして重点を置かなければならぬと思うのであります。たとえば各大学等にも国際講座というようなものを置きまして、日本教育におきまして国際性を回復するように、特段の御考慮をお願いしたいと思うものであります。その点につきまして文部大臣の御所見を伺いたいと思うのであります。
  4. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 お答えします、現在の日本といたしまして、国際性を各方面でもつて重要視じた教育をしなくてはならないという点は、まつた同感であります。そうしてそれをいかにして実行するかということにつきましては、いろいろの方法があると思いますが、学科の上でもつて国際関係に関連する学科をいろいろと利用するというようなこともありますし、外国の事情、外国地理外国歴史というようなものを、もつと十分に教え込むというようなこともありましようし、いろいろ学科の上でやることもあると思います。それらが直接にぜひ必要なことでありますが、もつと根本的にはやはり日本人教養、徳性を十分に高めて、外国から鶴敬を受けるような人間をつくるということが、根本的に最も必要なことであろうと考えておりまして、十分その点は注意してやつておるつもりであります。御承知のように最近国際団体べいろいろな方面日本が参加する傾向になつて来ておりますので、そういうこともお話にありましたような国際性々強化する上において、非常に役立つて行くのではないかと考えております。
  5. 北澤直吉

    北澤委員 政府におかれましても教育方面におきまして、なるべく国際性とりもどすようにいろいろ御努力になつていますことは、ただいまの文部大臣お話によつて大体了承いたすのありますが、われわれの国際的感覚をもつと拡充し、そうしてまた日本人に対する世界の理解を進める上にお議しても、いろいろの方法はありますが、まず語学の点が非常に重要だと思うのであります。ヨーロッパの小さな国などに参りますと、大体七つの国語くらい話すのであります。その小さな国は力によつて外国と競争できませんので、結局そういう個人の力、人格の力によつて外国競争して立つて行こうというふうな気持がありまして、語学ども非常にたんのうであります。普通の人でも数箇国語ぐらいは話すのでありますが、そういう点を考えますと、われわれ日本人におきましては、戰争以来この外国語教育々非常に軽蔑されまして、たとえば英語教育なんというものは、ほとんど無税されたという状態でありますので、私はこの国際性を回復する意味におきましても、外国語教育につきまして、特段の御配慮を願いたいと思うのでありますが、その点に対しまする文部大臣の御考えを伺いたいと思います。
  6. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 外国語教育は、戰争中あやまつて非常に軽税されておりましたが、終戰後文部省といたしましても、十分重要税しなくてはならない、ことに今おつしやつたような意味で、今後日本国際社会に参加して行くにつきましては特に重要でありますので、学科課程の上でも現在非常に重要視しております。
  7. 北澤直吉

    北澤委員 この問題はこの程度にいたしまして、次に私は日本宗教の問題につきまして、文部大臣にお考えを伺いたいと思います。私ども戰争中外国行つておりましていろいろ見ておりますと、どうもわれわれ日本人宗教というものがないために、道徳観念の上において欠けておるところがありはせぬか、戰争中日本軍人が各方面におきましていろいろな虐待行為をしたということが世界で問題になつたのでありますが、そういうものを見ましても、われわれ日本人道徳観念はどうも低過ぎはせぬかと思う。学校教育を見ましても、われわれ小学校、中学校におきまして修身というものを教わつたのでありますが、われわれの道徳観念学校で教わつた修身以外になかつた。ところが外国の例を見ておりますと、宗教というものが国民生活に直結しておりまして、たとえばキリスト教の例をもつてみましても、子供のときから毎日曜には親と一緒に教会行つて毎週牧師さんの話を聞く、あるいはまた南方の仏教国、たとえばビルマ、ダイ等に行きましても、とにかく生活中心宗教にある。お祝いことでも何でもお寺でやる。こういうふうに国民生活宗教が直結しておるというところに、自然に国民道徳観念が涵養されておるのであります。一つの例をとつて申しますと、私がヨーロッパのある町を旅行しておりましたときに、子供ボールを投げた、そのボール教会の境内に入つてしまつた。それでその子供に対して、どうしてお前はそのボールをとらぬのかと言うと、神様が見ているからとれぬのだと言う。われわれ日本人から見ると、だれも見ていないからかつてにとつてもいいと思うのでありますが、外国子供神様が見ているから教会の中に入れない、こういうふうに常に神をおそれる心、そういう宗教心があるから、そういう外国の人々の日々の行動におきましても、ある種の批判と申しますか、わくがあるが、従来日本人生活というものは宗教がない、ほとんど無宗教にひとしい。それでありますからわれわれの道徳観念というものはどうも弱い。学校で教わつた修身だけでわれわれの道徳の基礎ができておる。こういうのでありますので、あの戰争中日本軍人虐待行為というふうなものができたと思うのでありますが、今後日本が今大臣がお述べになりましたように、外国人から尊敬されるような日本人をつくり上げるという点から申しましても、私はわれわれ日本人生活宗教というものが直結するように、これまでのように死んだときだけお寺におせわになるというのでなくて、われわれの日々の活動宗教と直結するような方向に持つて行くことが、世界から尊敬されるような日本人をつくり上げるゆえんだと思うのでありますが、その点につきまして文部大臣のお考えを伺いたいと思うのであります。
  8. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 宗教というものが個人の精神的な生活の上におきましてもまた社会団体的な生活の上においても、非常に重要なものであるという点はまつた同感であります。ことに今日のような精神界思想界に非常に不安な状態のあります時代には、一層それが必要だと考えておりますし、お話になりましたよりな今日の道義の頽廃というようなものも、一つは堅実な宗教的信仰というものが、日本国民の間に十分に確立をしておらないということも、一つの重要な原因であろうと思つております。ですから文部省といたしましては、健全な宗教というものを一般的に国民の間に普及させたいということを考えて、できるだけの指導をいたしておるわけであります。それに対しまして一つの大きな根拠を與えるものとして、宗教法人法というものを今準備しておるわけであります。けれどもまだこの国会には準備が完了いたしませんので提出に間に合いません。しかし次の国会あたりには提出ができるかと考えておりますので、それらを中心にして、お話のありましたような意味でもつて、健全な宗教発展に、文部省としても十分努力をして行ぎたいと考えております。
  9. 北澤直吉

    北澤委員 政府におかれましても、宗教の問題につきましては、非常な関心を持つておられることをよく了承いたしたわけでありますが、学校教育宗教と何かの形において連繋をとらせる道はないかという点について、私はお伺いしたいと思うのであります。アメリカなどの大学の例をとつてみましても、官立大学にはないのでありますが、私立大学というものは大体宗教のある種の団体との連繋がありまして、どこの大学に参りましても、学校の中にチヤペルー教会があつて、毎朝学生はそこに行つて一応の宗教のサービスを受けてから学校の講義を受ける。アメリカなどは私立大学が非常に発達しまして、すべて私立大学でありますが、そういうところに行きますとすべて立派な教会がありまして、学生は毎朝一応教会に行きまして、そのあとで学校教育を受けるというわけでありまして、学校生活におきましても宗教というものと直結しておるのであります。日本のように官立大学におきましては、憲法の規定によつて宗教との関係をつくることはできないと思うのでありますが、何かの形におきまして学校においても宗教との関係をつけて、そうして学生道徳心を養うような措置ができないものかという点につきまして文部大臣のお考えを伺いたいと思います。
  10. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 宗教は、信仰の自由ということによりまして、特定宗教学校でもつてむりにしいるということは、絶対によろしくないと考えておりますので、普通一般学校においてはこれは禁止されておるわけであります。しかし私立学校で、特に宗教的な目的をもつてつくられているような学校で、特定宗教についての教育をやることは、むろんさしつかえがありません。それから一般学校におきましても、学校教育活動として宗教活動を入れるということは禁ぜりれるのでありますけれども学生が自発的に、宗教的な団体自分たちでつくつて、いろいろ宗教についての研究をいたしましたり、お互いに信仰を深め合うというようなことは、むろんさしつかえがないことでありますから、それは相当方々の学校で行われておると思つております。そうして終戰後のこういう状況から、私どもが見るところでは、各学校ともそういう意味での宗教的精神というようなものは、学生の間に相当強くなつておるのではないかと見ております。
  11. 北澤直吉

    北澤委員 宗教の問題につきましてはこの程度にしておきまして、次に日本におきまする青年指導につきまして伺いたいと思うのであります。申すまでもなく、将来の日本国を背負つて立つ青年を善導するということは、今月最も大事だと思うのでありますが、現在の日本社会情勢を見ておりますと、若い八で前途有為な人が、失業等のために惡い方に向つておるものが相当あると思うのであります。私はこういう青年をよく導きまして、将来の日本を背負つて立つりつぱな国民をつくり上げることが、ぜひ必要であると思うのでありますが、その点につきましてひとつ申し上げたいのは、ルーズベルト大統領がいわゆるニュー・デイール政策を実行しました際に、大統領青年指導青年運動というものにつきましても、非常に重点を置いてやられたわけであります。特に合衆国政府の中にユース・アドミニストレーシヨン——青年局というものを設けまして、全国の青年指導につきまして、非常な大規模活動をさせたわけでありますが、そのほかにも失業したたくさんの青年を集めて、これをりつぱに訓練し、そうしてりつば青年に仕上げたことが非常に多いのであります。国民保存団と申しますか、CCCシヴィリアン・コンサーヴエーシヨンーコースという運動を展開しまして、そうして非常な効果を上げたことは、御承知の通りであります。このルースベルト大統領ニュー・デイール政策の中でも、今日非常に世人から注意を受けておりますのは、いわゆるTVA、テネシーの渓谷の開発計画と、今申しましたCCC、この二。がルーズベルトニユー・デイール政策の中で、最も世人注意を引いたものでありますが、この国民保存団の実績を見ますと、このキヤンプに入れて訓練を受けた者は全部で百五・六十万であります。大体年々三十万ぐらいの青年をそこえ入れて訓練しまして、これをりつぱな青年に仕上げるということで、これは厖大な予算使つてCCC運動を展開したのでありますが、私は日本におきましても、りつぱな第二の国民をつくり上げるというふうな意味から申しまして、失業などに悩んでおります若い前途有為青年を、こういうふうな運動によつてりつぱな国民に仕上げるという運動を、ひとつ規模に展開する必要があるのではないか、こう思うのであります。昔は日本には徴兵制度というものがありまして、二十歳になると徴兵検査を受ける。その中で優秀な者は兵役に服すということで、それによつてわれわれ日本国民一つ筋金が入つてつたと私は思うのでありますが、今日は徴兵検査もなく、徴兵もないというわけで国民筋金を入れる組織が非常に弱いのではないかと思うのであります。そういう点から考えまして、こういうような青年運動あるいは青年を訓練するような制度というものを、取上げる必要があるのではないかと思うのであります。もつとも現在においてもボーイスカウト運動、あるいはガール・スカウト運動というものがありますけれども、さらにそのほかに、ちようどこのアメリカニユー・デイールの中でやりましたような思想も、取入れて、日本青年指導というものにつきまして、格段の御注意をお願いした方がいいと思うのであります。それに対する文部大臣のお考えを伺いたいと思うのであります。
  12. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 奇年指導の問題で、アメリカCCCに似たようなものを日本でやつたらよくはないか、こういうような御意見のようでありますが、むろん青年指導ということは、日本としても十分重帆して考えて行かなければならない問題で、文部省といたしましても、自発的に青年団発展して行くことに対しての指導助言は、ぜひともやつて行かなければならないと思つております。アメリカCCCにやや似たものとしては、4H運動といわれておりますものが日本では相当行われているようでありまして、これは最も農林省との関係が深い植林その他農林事業の方と関連しての運動でありますが、これらもむろん非常にけつこうな運動だろうと思います。最近は学生の間で自発的に緑化運動というようなことが行われまして、やはり同じような意味での運動は起きております。こういうようなものは、すべて自発的に起きて来たものでありまして、非常にけつこうなことでありますから、文部省としてもできるだけ支持をして参りたいと考えております。しかし文部省が先に立つて積極的に青年団体というものをつくつたり、積極的に指導するというようなことは好ましくないと考えておりますので、やはりそれぞれの領域及びそれぞれの地域におきまして、青年みずからの考えでもつて自発的にこれが起つて来るように、そうして自発的な考えでこれが発展して行くように、文部省としては指導助言をして参りたいというつもりでございます。御承知のようなボーイスカウト運動あるいはユネスコ協力会等も、かなり青年団体としての運動関係が深いと思つております。また地方の青年文化団体というようなものも、最近は盛んになつて来ております、そうしていろいろな行事等もありますので、文部省はそれについて十分関心を持つて助成をいたすつもりでございます。何にしてもこういうような運動が健全に発展して行くのにつきましてはやはり青年団体の中での健全なりつば指導者を得るということが、一番大事であると考えておりますので、その指導者養成というような方面へも、文部省は十分力を入れて参るつもりでおります。
  13. 北澤直吉

    北澤委員 お話はわかりましたがただいまのお話の中で、文部省としましては積極的にはやりたくない、下から盛り上る運動があつて、それに対して助言指導を與えて行きたいというふうなお話のように了解したのでありますが、そうしますと、こういう運動のたびに相当額予算をとつてこれを援助するということは、好ましくないというお考えでありますか、それともそういうものをやつてもさしつかえない、政府として相当予算をとつてこれを助成してもさしつかえないというお考えでありますか、それをちよつと伺いたいと思います。
  14. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 今申しましたような意味での文部省指導助言ということにつきましても、十分やりますのには相当予算がやはり必要になりますし、また青年運動指導者養成というようなことを考えましての教育方面活動をするにしても、相当予算がかかりますので、できるだけは文部省のそういう方面予算も計上いたしましてやつて行きたい、こういう考えでおるわけであります。
  15. 米原昶

    米原委員 先ほどの文部大臣の御答弁に関連しまして、若干質問します。先ほど、今後外国の知識を豊富にするために、外国語教育を十分にやるということと、外国歴史地理をますます多く教えるということ、それから外国状態を知らせるようにするというようなことについて御答弁がありました。この第一の問題について、もちろんわれわれは外国語を十分にやるということには賛成でありますが、その外国語が、現在英語が最も多く教育されておるわけでありますが、そのほかの外国語も将来日本民族が進んで行く上には非常に大切だと思うのであります。先日外国日本の代表として行つて来た人の談話をある新聞で見ますと、そこにもやはりヨーロツパの方に行つても、外国語としては依然としてフランス語でなければ通じないというような談話が出ておりましだが、そういう点、それからまた今後の日本貿易のことなどを考えましても、中国語ソ連言葉——ことにそういう国で新しい社会主義制度が建設されつつあるというような点も、真にそれの中からいいものを攝取して、日本民族が進んで行くべき道を知るようになつて行かなければならぬと思う、そういう意味英語以外の外国語についてどういうような方針を持つておられるか、そういうものをますます普及するよう教育をやられる方針であるかどうかという点が一つ。  第二に、外国歴史地理をやるとおつしやつたのでありますが、もちろん外国歴史地理を大いにわれわれは知らなくちやならぬが、それと同時にことに日本民族歴史地理ほんとうに正しい、科学的な教育をやつて行かなくちやならぬということが先決問題だと思うのであります。ところが現在日本歴史教育小学校において行われてない、地理教育どもほとんど行われてない、こういう点についてどういう見解でそういうことをやつておられるのか、ほんとう日本民族の将来を考える場合に、かつての軍国主義的な歴史教育とか地理教育、超国家的な国家主義的な教示見こういうものではいけないので、日本民族の過去の人民大衆歴史社会の動き、ことに民主主義日本における発展歴史、こういうようなものに対してもほんとうに教えなくちやならぬと思うのでありますが、そういう点についていかなる見解を持つておられるかということであります。  第三に外国状態を知らせる問題でありますが、たとえば中国またはソビエトのような国の新しい形の民主社会主義、こういうような国の状態を客観的に科学的に知らせるような教育をされるかどうか、こういう点についてもしも片寄つたやり方をやるならば、非常に間違つた、かつての軍国主義的な教育と同じような危險が十分にあると思うのであります。こういう点についての文部大臣の所信を伺いたいのであります。
  16. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 お答えいたします。まず語学の点でありますが、むろん語学につきましては、どこの国の語学はいけないというようなことは一切やりません。ただ実際上の必要ということを考え学科課程では各学校がおもに課しております。そういうところで片寄ることはあるかと思います。現に大学等ではロシヤ語中華語もやつているところが相当あると思つております。  それから外国歴史地理を十分正確に教えなければならないということと関連して、日本歴史地理というものをもつと十分正確に教え込むことが必要ではないかという御意見でありますが、私もまつた同感であります。ただしかし今までの歴史教科書とか資料というものを、そういう意味ほんとうの正確なものにするにつきましては、十分検討を要するわけであります。それがためにほかの学科のようには手取り早く、迅速に資料教科書ができにくい状態にありますために遅れておりますけれども、これも近く正確な資料教科書ができまして、御希望のようになると考えております。それから外国状態を知らせるということについて、ソ連とか、中華民国等状況も教える必要がある、確かに正確な資料状況が得られまして、それが教科書その他に使えるとすれば、それも必要であります。しかし現在では正確な実際の資料が得にくい状況にありますので、その点はなはだ困難があるかと思います。
  17. 米原昶

    米原委員 ただいまの歴史地理の問題でありますが、正確なものがなかなかできにくいとおつしやつておりますが、これは一つの逃げ口上だと思うのであります。日本にそれほど科学的な歴史家地理学者がいないかどうか、私はいると思います。現在ならばそういうものがそんなに長くかかつてできないものではないと思います。明らかにこの点文部省はサボつているのであります。この重要な教育としては民族の歴史地理について教えることが一番大切だと思う。こういう点につてもつと真劍に文部省がこの事業を促進してもらわなければならぬと思うのであります。  それから外国状態を知らせるという問題でありますが、この点についても初等教育、中等教育の範囲において、こういう状態は知らせられない程度状態かわからないというようなものではない。それがわからなくて第一政府として国際的な政策が立つわけでも何でもないのでありまして、この程度のことが教育できないという道理はないのであります。そういうことを言われて事実上サボられるということはけしからぬ。その点についてもう一度明確にしてもらいたい。
  18. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 歴史地理は教えておらないわけではございません。十分にできないというわけで、やはりやつております。それから外国状態でありますが、これももちろん全然やつていないわけではないのであります。やつてはおりますけれども、十分正確に検討のできなや点があるだろうと思います。
  19. 植原悦二郎

    植原委員長 なお坂田道太君が質問の最後に文部大臣への質問を保留しております。文部大臣がお出かけになるので、この場合に坂田道太君に文部大臣に対する質疑を許します。
  20. 坂田道太

    ○坂田(道)委員 二、三の点を御質問申し上げたいと思います。東大の総長の南原さんがアメリカに行きまして、日本教育制度について演説をされたその中に、何でもかんでもアメリカ教育制度をそのまま移すのではなくして、日本には日本流のよき伝統がありその伝統の上に新しい日本教育制度を打立てることを、アメリカ国民も了解してほしいというような意味の演説をされたことを私は新聞で知つておるのでありますが、この演説は占領下の日本におきましては考えるへき幾多の問題があると考えるのでありますが、日本教育制度を自主的にやるという点について、文部大臣の御見解を承りたいと思うのであります。
  21. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 いろいろの新しい教育制度の内容等につきまして、アメリカ制度相当に取入れておるということは事実でございます。しかしながら文部省といたしましては、むろん日本の実情、日本の必要も考慮してやつておるのでありまして、何もかも向うの通りやつておるというわけではございません。
  22. 坂田道太

    ○坂田(道)委員 従来の内閣でできませんでした六、三制の予算が最小限度ではございますけれども、今度できたことは国民といたしましてまことに喜ばしいと存ずるのであります。そうしでこの六二二制度の普及ということが、教育の普遍化という意味におきまして、重大な問題を提起しておるということは承知しておるのでございますが、最近のたとえば日教組の調査によりましても、相当に学力が低下しておるというような事実が見受けられるのであります。たとえば小学校の生徒については五五%が落第点をとつておる、読み書きができない人がある、あるいは計算ができない人が非常に多いということが調査をされております。またその他の調査によりましても、近ころの若い青年学生というものが知識をただ覚えるというようなことはやつておるけれども、しかしながらものの本質をきわめて行くとか、あるいは思索をするとか、そういうような点に欠けておるというようなことをよく言われるのであります。これは一体六・三制の制度が惡いのか、あるいはそれに盛られた内容というか、あるいはこれを取扱うところの指導者であるところの先生の指導が惡いのかというようなことに対して、文部大臣は何か研究をし、あるいは調査をし、欠陷を欠陷として反省されたことがあるかどうかという点をお伺いいたしたい。
  23. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 新しい教育制度になりましてから、生徒の学力が非常に低下したのではないかということは一般によく言われております。それで私といたしましてもその点は十分関心を持つていろいろと聞いておるわけでありますが、全国的には正確な調査はまだできておりませんが、しかし私の聞く範囲におきましては、むろんこの教育制度の根本的な転換期であるし、また義務教育延長の結果として、施設方面でも非常な欠陷があるというようなことから、一時的に特殊な場合におきまして、そういう目につくような低下ということもあるかもしれません。しかし一般的に見て今御指摘になりましたような、非常な学力の低下が、生徒の間にあるようには私聞いたことはありません。けれども終戰後の生徒の精神状態や先生のいろいろの不安というようなことも影響しておりますので、新しい教育制度によつて、期待しておるような十分の学力を養成するというところまではとうてい行つておりません。その点ははなはだ不十分だと考えておりますので、今後は六・三制の建設が大分進捗すると同時に、一方では先生の養成方面も十分心がけますし、また再教育も十分やりまして、新しい教育の効果を十分発揮するようにぜひとも努力して行きたい、かように考えております。
  24. 坂田道太

    ○坂田(道)委員 文部大臣の今後の御努力を要望いたしまして、その点については、これ以上申し上げません。ここで一つ申し上げておきたいことは、標準教育費の問題が先般の閣議で保留になつて、その後きまつたとか、きまらぬとかいうようなことを伝え聞えておるのでありますが、一体どうなつたか。これは地方の六・三制を実行して行きます上において、まことに重大なる問題であると私考えますので、お伺いしておき参たいと思います。
  25. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 標準教育費に関する法工案は、新しい平衡交付金制度と関連して文部省はぜひとも必要と考えておりますので、これを提案したいという考えであります。
  26. 坂田道太

    ○坂田(道)委員 次に抽象的な問題ではございますけれども、よく文化国家ということが言われるのでありますが文化国家の具体的内容というものが床どういうものであるか。われわれが努力し、獲得せんとするそういう文化国家のあり方について、文部大臣の所信を承りたいと思うわけであります。しかもその文化国家を象徴しておるところの予算的の措置をどういうふうに考えておられるか、その点についてお伺いいたします。
  27. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 御質問が非常に大きな問題でありまして、お答えするのにちよつと困難でありますけれども、むろん教育基本法できめられましたような文化国家としての国民養成の大方針のもとに教育を進めて行くつもりであります。むろん文化と申しましても、定義はいろいろありましようし、教育を学術に入れるものもあるし、入れないものもあります。しかし学術、科学、文化、教育等にわけるから、その意味から言えば別かもしれません。文化の発展ということについてはむろん予算的にも文部省としていろいろ考えておりますが、まだ今日の財政状態から考えますと、十分の予算をととのえるわけに参りませんので、思うような活動はできておりません。しかし今後は日本状態も漸次落ちついて回復して財政的にも余裕もできるかと思いますので、科学技術の発展と同時に、一般文化の振興につきましても、できるだけの努力をして参りたいというつもりであります。
  28. 坂田道太

    ○坂田(道)委員 文化国家の定義につきましては、いろいろ問題があると存ずるのでございますが、まずやはり国民経済が安定をして、そうして経済的に国民生活を安定させるということ、が、第一であるということはよく了承できるのでありまして、その上に、たとえば科学技術の進歩であるとか発展であるとか、あるいは芸術活動が非常に活発に行われる。あるいはまた国民一般教養が高まるとか、精神科学の方面においても非常に深くたま広く高くなる。そういうような面が考えられると思うのでございますが、こういうような文化国家を象徴する一つ予算的な措置として科学研究費の問題について、文部大臣に御質問を申し上げたいと思うわけであります。御承知のように科学の基礎的な面において非常な進歩をしておる、世界的な水準にあることは御承知の通りでございますが、どうも日本はこの基礎的な調査に対する費用を戰前戰後においてもあまり注意を向けなかつたのではないか。ところが経済の再建のためにも、また今申しましたような文化国家の発足のためにも、科学研究費の必要ということは論をまたないところでございます。ところが現実の科学研究の費用はむしろ戰時中よりも劣つておるのではないだろうかという気がするのでございます。私国民所得と科学研究費との割合を見て参りますと、戰前におきましてその占むる比率は〇・一五%でありましたのが、最近になりまして昭和二十三年度で〇・一二%、二一十四年度で〇・一四%、二十五年度でやつと〇・一五%に実はなつておるようでございます。しかしながら物価が二百倍に上つておる、あるいは国民所得の実質的な低下を二、三十パーセントと考えますならば、実質的には科学研究費は非常に低下をしておるということが言われるのではなかろうかと思います。しかも湯川さんのノーベル賞をもらわれましたあの中間子の理論にいたしましても、あれは十年ばかり前に完成されておる。つまり戰前のあのような状態において出て来たのである。それで今日のような状態であのような基礎的な研究ができるかどうか、われわれははなはだ疑問に思うのでございますが、この点について文部大臣の御見解を承りたいと思うのでございます。  それからこれは二十三年度の資料でございますけれども、東大の法学部において図書購入費がわずかに十二万九千円である。一人当り六百円にすぎない。あるいは京大の医学部につきましても年間基礎講座について一万八千七百三十六円、臨床講座について一万二円、これで機械器具その他雑誌図書、そういつたものを買えといつても、顯微鏡を買う金さえもない。一人でこれを使うというようなことさえできないというような状態で、これで一体基礎的な研究ができるかどうかということを、私はなはだ疑問に思うのでございますが、この点に関して文部大臣の御意見を承りたいと思います。
  29. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 日本の科学技術の水準が、現在世界的なレベルから見て非常に劣つておるということは、これはどなたも認めておるところであると思います。従つてこれを何とかして引上げなければならないということは、文部省としても十分考えて、できるだけの努力はいたしておるのであります。科学研究費がそういう意味から申しますと、予算の上ではなはだ不足であるということも御意見の通りであります。しかしさつき御指摘になりました昭和二十三年は、たしか科学研究費は二億七千万円くらいであつたと思います。それから二十四年はこれを四億五丁万円にふやしまして、二十五年の予算では五億にふやしてございます。文部省が何とかこの程度ならば相当やれるだろうというのには、その倍くらいは少くとも必要だらうと思つておりますけれども、現在の状況ではまだそこまでしか行つておりません。しかし科学研究というのは、ただ科学研究費に計上されました一般研究者あるいは民間研究団体への補助だけの問題でありませんので、さつきもお話にありましたような大学の講座に付属した研究費というもの、それから大学付置の研究所の費用、これがやはり同じ役割を果すわけでありまして、その方面では二十五年度の予算におきましては、大体二十四年度の倍額になつておるはずでありますが、それでもむろん現在の物価から申しましてはなはだ不十分であります。けれども今まで射つておられたのに比べれば相当楽になりますので、大学での研究費は二十五年度予算では相当に計上して来たと考えております。従つて一般研究費の方の十分の増額まで手が届かなかつたという状態であります。しかし今後はこの方面もできるだけ予算を計上いたしまして進行して行きたいつもりでおります。
  30. 坂田道太

    ○坂田(道)委員 今度の予算で—まあ予算の前提でございますか、電力料金が上つたのでございますが、この電力料金が上つたがために、研究費だけで国立大学をとつてみましても、一億数千万円の増加になるということを聞ておるのでございますが、しかもこれに対する金を持つておらない。これに対して文部伏臣はどういうような処置をされるおつもりでありますか、お伺いしたい。
  31. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 お話がありましたように、今度の電気料金の改訂によりまして、今までの実験に必要な電気料が非常に高くなるということで困つたわけであります。その点は文部省も十分に考えまして、安定本部及び通産省と交渉いたしまして、できるだけ便宜な措置が講ぜられるようにしたいというつ、もりで現在努力をいたしております。
  32. 坂田道太

    ○坂田(道)委員 予算の許す範囲内において、行政的な措置として許す範囲の努力を要望しておきたいと思います。  次に研究に携わつておる人たちの俸給はまことに安いのでございますが、そういつた生活難のために、有能な、つまり持つて生れた才能を十分に生かすべき才能を持ちながら、自分の生活のためにこの研究室を出て行かなければならない人がずいぶんたくさんあるのであります。私の友人の中にもそういう人がありますが、こういうことでは結局真の研究はできない。そうしてただ金持のむすこだけが研究室に残るあるいはやみ屋の子供だけがこういう研究をし得る人たちであるというようなことでは、日本の科学の水準の低下を来しますだろうし、また一面において教育の普遍化というような趣旨にも反すると私は考えるのでありますが、こういう人たちを何とか救うところの制度考えられておらないかどうか。もちろん学生の人たちに対して、育英制度というような問題がありますけれども、こういつた制度文部省としてお考えなつたことはないかどうか。もしあるならば承つておきたいと思います。
  33. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 ただいまの研究者という意味は、大学の教授あるいは助教授という身分をもつての研究者、こういう意味と、また大学の特別学生という意味で将来教授、助教授の候補者になつて研究しておる人、そういうものを含まれておるかと思いますが、教授、助教授である研究者につきましては、やはり一般的な俸給表の問題と関連して参りますので、実際生活は困難だと思いますけれども、またその方たちだけをどうするというわけにも行かないだろうと思います。将来日本の経済が改善されるに従つて、公務員の待遇改善と同時に改善されなければならない問題だと思います。けれども、私ども教育公務員については、仕事の性質や職階との関係から、別途の俸給表というものが必要ではなかろうかということで、この点は人事院とも話合いをしております。それから特別研究生につきましては、やはり今までの助手に近いような待遇でやつておるわけでありまして、助手とか助教授の待遇がよくなりませんと、やはり特別研究生だけを特によくするというわけに心行かないということで、非常に生活上困難な状況ではありますが、今後はできるだけそういうことも改善して行きたいとは思つておりますが、特に現在どうということは考えておりません。
  34. 坂田道太

    ○坂田(道)委員 次に研究の工業化というような問題につきまして御質問申し上げます。この点につきましては、すでに同僚議員からお話があつたのでございますが、アメリカあるいはソビエトその他の国々におきましても、研究を工業化するという連繋が非常にうまく行つているように思うのであります。しかもそのために国としても相当予算的措置を講ずるし、同様に実業界においても、アメリカなどのごときは相当な援助をさし伸べているように承知しておるのであります。しかもこの研究が日本ではどうかというと、研究室は研究室でとじこもつている。また工業家の方は全然そういう方に金を出してやるというようなことはしないというようなために、基礎的な研究はできておつたけれども、試験研究をし、あるいは応用研究をし、それを工業化するということができなかつたがために何ら実際の役には立たなかつたということが非常に多かつたと思うのであります。こういうような意味におきまして、私は何か科学研究金融金庫法案というようなものを文部大臣としては考えておられないかどうか。この前通産大臣は今は考えておらない、また他の同僚議員の質問に対して、森後研究はしてみようというようなお話でありましたが、文部大臣としては一体こういうような金庫法案のために、何とかひとつ努力をしてみようというようなお考えはないかどうか。
  35. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 科学研究金融金庫というような案につきましては、日本学術会議でも、ことに工業化方面での技術研究費の資金を案として考えられまして申し出られて来ておるわけであります。もちろん文部省としてもこれを検討いたしております。ただ御承知のようにこれを実行するとなりますと、いろいろなめんどうな問題がある。それで資金を貸し出すということになるとすれば、やはりその研究の効果が現われて、返済の道がつくようなものでなければいけないわけなのです。ですからこれが活用されるにつきましては、借りる方の側で一体そういうようなことができるものかどうかということを考えないと、意味がなくなつて参ります。補助金でなくて貸すわけであります。それから貸せる方の金庫の側とすれば、一体資金をどうして得るのかということも問題でありまして、なかなか簡單に参らない問題でありますから、十分検討はするつもりでおりますが、今のところはつきりした成案は得られません。
  36. 坂田道太

    ○坂田(道)委員 最後に予算を拜見いたしますと、芸術文化の費用といたしまして三億二千五百万円組まれておるように見るのであります。国宝保存について二億三百万円、あるいは美術文化的施設費に三千百四十九万円、それから国立博物館に若干の問題で費用が含まれておると思うのでありますが、やはり文化国家として芸術活動を活発に行われるような状態でなければ、文化国家の資格はないというふうに私考えるのであります。また一面において実際国民の情操教育と申しますか、あるいは美的教育と申しますか、あるいは社会教育というような面から見ましても、こういうような芸術活動というものが必要なことは論をまたないのでございます。ことに演劇であるとかあるいは音楽であるとか、あるいは映画であるとか、そういうようなものの普遍性と申しますか、あるいはそういうものの直接性というようなもので社会教育を行う、情操教育を行う、美的教育を行うということが最も必要であると思うのであります。英国におきましてもこれは労働党内閣になつてからと思いますけれども、非常にいい映画については国としてある程度これを資金的に応援し、そうして低俗なる商業映画を駆逐する一助にしておるというようなことも聞いておるのでございますが、日本においてはまだ国民大衆劇場とか、こういう国立劇場と申しますか、そういつたものの設立がないように思うのであります。こういうようなものを国としてやるというような考えはないかどうか、あるいは芸術活動を活発にずることについて、文部大臣の御見解を承つておきたいと思う。
  37. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 文化国家といたしまして、芸術かきわめて重要な意義を持つという点は全く同感であります。その奬励につきましては、いろいろな方法は計画いたしておるわけでありますが、文部大臣賞等も出しまして、各方面でそういう刺激は與えております。なお国立劇場という問題でありますが、これは今までの内閣で計画をされたことはあるようでありますけれども、具体化されなかつた文部省としては御承知のように芸術祭というのを実行しておりまして、国有ではないし、文部旨直接やるわけでありませんが、芸術楽に参加した演劇、映画、音楽等について審査いたしまして、賞を出すというようなことはやつております。今後むろん財政が許しますならば、日本としても演劇、映画等の発展の上からいりて、国立劇場のようなものもほしいものと考えております。しかしなかなか今日の財政状態では、そう簡單には実現はむずかしいであろうけれども芸術祭と関連いたしまして文部省が計画しておりますのは、今度は予算で六百万円芸術祭について予算が計上されておりますから、これがきまりましたれば、劇場そのものは国有ではありませんけれども、劇場を借りまして文部省として採算の観点には合わないが、しかし芸術的にはぜひ必要でりつぱなものである演劇、映画を芸術祭と関連してやりまして、まあ国有の劇場がないところから来る欠陷を、幾分でも補おうというようなことを考えております。
  38. 坂田道太

    ○坂田(道)委員 これをもちまして文部大臣に対する質疑を打切ります。
  39. 植原悦二郎

    植原委員長 六・三制について関連質問をしたいという松野頼三君からの申出がありますが、その点に限つて関連質問として許します、松野頼三君。
  40. 松野頼三

    ○松野委員 六、三利建築補助金の件について、基準面積学童一人当り〇・七坪というこの配分の方法についてでありますが、これは実は全国一律に行われますと、はなはだ現実面においてただいま行き悩んでおる点が多々あるのであります。と申しますのは、地方り中心一つの町がある。その町はそり地方としては文教の中心地であるたのに、今まで中学校あり、女学校あり、あるいは專門学校の蚕糸学校、農業專門学校が存在しておる。そのような都市におきましては、今度の〇・七坪の学童平均で参りますと、この都市めたりでは全然補助金がないという現体に立至るのであります。田舎の方に珍りますと、その都市が文教の中心地である。こういうところは、今度の〇・七坪で全然補助金の対象にならないという現実が出て来ております。またその逆に、小さな村に小学校で四つ、五つの分教場を持つておる寒村に参りますと、今度はその分教場に対して補助金がせいぜい百二、三十坪程度の建築費しかない。〇・七坪は当然廊下、便所もあるいは職員室も入つておりましようから、そうすると三つぐらいの教室で、職員室も便所も全部兼ねてやらなければならぬというまことにへんぱな現実も出て来ると思います。両方の現実が、この補助金の基礎面積の算定におきまして、全国おそらく多々出ておると思いますが、この点の調整を文部大臣はどうやつてやられるか、この一点をまずお伺いいたします。
  41. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 ただいまのような御質問は、ここでも今までたびたびあつたのでありまして、決して文部省としては、画一的な標準によつてこれを配当するということは考えておりません。〇・七坪ないというところは、むろん原則としてどうしても何とかしなければならぬ。しかし〇・七坪と申しましてもいろいろな事情がありまして、〇・七坪あるについては、もうこわれかかつたようなバラックも〇・七坪の中へ入つておるというようなのもございましようし、高等学校の教室を借りてやつている、そうでないという場合もこいざましようし、また〇・七坪あるといつても、地域の状況から申しまして、いろいろ違つたところもて来るというようなところもありますから、そういう実情を地方の資料に基いて参照しながり、実情に沿うように文部省は配当するという方針でやつております。
  42. 松野頼三

    ○松野委員 そういう御方針かと存じますが、現実面においてそういう予算の配当を受けておるのであります。これはあと各府県でそれを調整しろとおつしやるなら別でありますが、文部省で、そういう指令で配付されたかどうかということは疑問に存じます。もしそういう指令が出ておりますれば、こういう方法で、こういう勘案をしたのだということの御答弁を、この次でもけつこうですが、お伺いいたします。  もの一つ六・三制に関連しておりますが、教員の適格審査の方法であります。文部省は教員の適格審査の件について、はなはだ等閑に付しておる。おそらく三年間いまだに未解決の分が相当あるだろうと思う。教員の適格審査こそは、終戰以来長年の間、ほかに転業すべき機会も逸して、いまだに教壇の職務を慕つて適格審査を待つておる者が全国にたくさんあるだろうと思います。この点においてはなはだ文部省が教員適格審査を等閑に付しているという言葉を申し上げたい。また、この間において不適格な者ができた場合においての就職あつせんも、文部省において御準備なさるべきだと思いますが、この点をひとつお伺いしたい。六・三制の関連という委員長のお言葉でありますから、この点だけひとつ答弁願いたい。
  43. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 教員の適格審査につきまして、お話の審査は、第二次審査としての文部省の審査であるか、あるいは第三次審査としての文部大臣への特別審査でありますか、その点はつきりいたしません。とにかく文部省はできるだけ迅速にやつております。しかしこれにつきましてはいろいろ各方面との関連、打合せがございますので、十分迅速に行つておらない点も確かにございます。それは今後できるだけ早く進めるように促進したいと思います。
  44. 植原悦二郎

    植原委員長 なお川崎秀二君が文部大臣への質問だけ留保されております。この場合に川崎秀二君に文部大臣に対する質疑を許します。川崎秀二君。
  45. 川崎秀二

    ○川崎委員 一九五二年にはフインランドのヘルシンキにおいてオリンピック大会が行われることは御承知の通りであります。わが国は終戰後ロンドン、オリンピツク大会にも不幸にして参加ができませんでした。しかしながら、スポーツマンの多くは、今度のオリンピック大会には参加ができるものと期待をして、練磨に練磨を重ねている状態でございます。そこで御質問いたしたい点は、将来オリンピック大会に参加が許された場合において、大量の選手団を派遣して、日本が国際文化社会に復帰をしたという姿健康に出さなければならぬと思うのでありますが、その場合におきまして一番問題になりますのは、派遣費の捻出の方法でございます。アメリカにおきましてはこれを民間において一切まかなつておりますし、そういう国も世界において一、二はございますけれども、北ヨーロッパの各国、南米、日本はもとより、従来派遣費の捻出については、政府が半額以上これを負担をいたしておるのであります。従つてヘルシンキ、オリンピック大会に参加が許された場合において、政府は今日の民間の経済状態からして、当然多額の経費を捻出しなければならぬと思うのでありますが、それらの点について文部省としてはどういう計画と準備を持つておられますか、御答弁を願いたい。     〔委員長退席、小峯委員長代理着席〕
  46. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 ヘルシンキのオリンピック大会に日本がぜひとも参加するようになりたいということは、文部省もスポーツ奬励の見地からいたしまして希望しておるところであります。それが実現された場合に国家として補助を與えることができるかどうかという問題でありますが、私がいろいろ事情を聞いておる範囲におきましては、いろいろな関係からなかなかむずかしい状態にあります。金だけの問題でありません、いろいろな関係からむずかしい状態にありますので、お約束はできないと思いますが、民間団体方面での資金も相当どうしても必要でありましようから、そういう方面へのできるだけの便宜を文部省として考えて、協力申し上げたいということは当然でありますけれども、国庫の金を支出できるかどうかということについてはまだ疑問だと思います。
  47. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 北澤直吉君。
  48. 北澤直吉

    北澤委員 それでは法務総裁に二点ばかりお伺いいたします。一昨日の本会議におきまして、日本におきまする共産主義運動につきましてはいろいろ論議の対象になつたのでありますが、私のお尋ねしたいのは、日本共産党と外国の共産党との連絡、連繋の問題につきまして、お尋ね申し上げたいのであります。これまでの論議におきましても、日本共産党がコミンフォルムとの間に相当の連絡があり、それについてはある程度の証拠があるというようなことを法務総裁は御答弁になつているのでありますが、十日の台北発の電報によりましても、中共と日本共産党の間に相当の連絡がある。それによりますと、中共が党員を派遣、日共の闘争を助ける、また中共は日共に活動費用の一部を補助する、活動資料を提供して出版交換、いろいろこういうふうに出ておりまして、中共と日本共産党との問にも相当連繋がある、こういうふうな新聞なのでありますが、私はこういうふうに日本共産党が外国勢力の第五列という性格を持つて、しかもこれまでのような平和革命の主張を一働しまして、そうして暴力革命の線を表面に出して来ました。ここにおきましてはわれわれは日本におきます共産主義運動というものにつきましても、最大の関心を拂わなければならぬと思うのであります。そこでまずもつて大事なことは、この日本の共産党と外国の共産党との間の連絡、連繋というものは一体どういう程度であるか、こういうことについてあるいは議会の考査委員会なりあるいは適当の機関において、十分これを調べて、それに基いて、もしもそういう関係日本共産党と外国の共産党との間にあるならば、そういうふうな外国の第五列的な団体日本にあつて、そうしてこれが日本政府の転覆をはかるということがありますならば、これに対しましてはその解散とかそういうものにつきましての立法的の措置、あるいはその他の措置をとる必要があると思うのでありますが、この点につきまして法務総裁の御見解を伺いたいと思います。
  49. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 一昨日本会議でお答えをいたしました通りに、外国の共産主義の団体でありますコミンフオルムと、日本の共産党とに関連があるだろう。これはいろいろな資料から予想されるのであります。それからまた、ただいまお話の台湾からの電報によりますと、中国共産党と日本共産党とに関連があるだろう、これはまだようやく昨日電報で承知しただけでありまして、その内容については深く存じません。しかしながら共産党は、各国の共産党ともに国際的な性格を持つておるものでありますから、いろいろな点において関連はあることと思います。しかしながらこれはいわば思想上の関連でありまして、具体的に日本において何らかの行動を起すということがない限りは、今日の憲法のもとにおいては單にこれを見ておるのほかないのであります。団体等規正令というものがありまして、反民主主義的な団体の結成を禁止いたしておりますけれども、それも目的が反民主主義団体の結成を禁止するというにあるのでありまして、具体的にはどういう団体を結成せしめないか、あるいは結成しておるものを解散せしめるかということは、その団体等規正令の第二條に列挙いたしております。その列挙はかなりコンタリートでありまして、そうしてそんなに広範囲なものではないのであります。そのために今日におきましては考えとしてかなりひどい考えを持つておる団体があるといたしましても、それが具体的に行動を起すという程度になるか、あるいはまた団体等規正令の第二條に列挙しております具体的の範疇に入つて来るということのない限りは、これを放置するほかはない状態であるのであります。しかしながら法律上の措置はともかくといたしまして、国民の多数がそれらの思想に向つてこれを断固排撃するという決意をされ、その態度を明らかにされますならば、私はそんなに問題はない。それをなくすることができるではないかと考えておるのであります。
  50. 北澤直吉

    北澤委員 過般のコミンフオルムの野坂理論に対する批評、それに対する野坂氏の自己批判というものが出まして、とにかくこれまでの野坂理論を訂正しまして、今後は従来のような平和革命の考えをやめまして、そうして暴力革命の線で進んで行くのだというふうな思想的な転換があつたわけであります。まだそれを基礎にして具体的の行動に出るかどうかわかりませんが、とにかく思想的にはそういう転換をして来た、しかもそういうふうな日本の共産党の活動に対して、外国かち資金の援助を受ける。たとえば中共と日共との連絡の上に活動費用の一部の補助を受けるというふうなことでありますならば、私はこれは許しがたいと思うのであります。実際上行動を起さぬにしましても、そういう日本の再建に反するような思想をもつて、しかもそのために外国から資金の援助を受けるということがもし事実でありましたならば、これに対して何らかの措置をとる必要があると思うのであります。これについての法務総裁の御意見を承りたいと思います。
  51. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 資金の援助がありましたからと申しまして、ただちにそれが違法ということになるかどうかは、まだまだ研究を要する問題多々あるのであります。しかしながら第一に資金の援助を受けておるかどうかというその点も、もつと具体的にはつきりいたして参りませんければ、具体的なお答えもできません。
  52. 北澤直吉

    北澤委員 政府におきましては、こういうふうな、日本の共産党と外国の共産党との間の連絡につきまして、積極的に調査をするというふうなお考えはありますか、お尋ねをいたします。
  53. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 それらの点に関しましては常に研究をいたしております。
  54. 北澤直吉

    北澤委員 共産党の問題につきましてはこれで打切りまして、もう一点総裁にお伺いしたいのは、これは全然別の問題でありますが、今われわれは進駐軍占領下にありまして、いろいろの問題があるのであります。特に日本人の多くの人が家屋を接收されまして、そうして進駐軍の住宅に提供しておるわけでありますが、われわれはやむを得ないものと今思つておるわけでありまして、また占領中におきましては、これに対しまして措置をとるわけにはいかぬのでありますが、国際法の関係から申しましても、個人の私有財産というものは尊重されるのが普通であります。それからまた私有財産も軍事上の直接の必要がある場合には、これを接收するということもあり得るのでありますが、今日戰争状態が終つて、休戰状態に入つておる日本におきましては、軍事上の必要でそういう私有財産を接收するりくつが立たぬと思うのであります。そういうわけでありますので、私は接收家屋につきましは、将来講和條約を結びました後においては、ある程度の補償というものをアメリカの方へ私は要求し得るのではないか、こういう考えを持つておるわけであります。この前例を申しますと、ちようどアメリカ陸軍がメキシコの一部を占領しまして占領行政をしいたわけであります。そのときにもやはり同じようにメキシコ人の私有財産を接收して軍の使用に充てたわけでありますが、その後いろいろ問題が起きまして、とうとうアメリカの方ではクレーム・コミツシヨン、そういうものに対する損害賠償を処理する委員会をつくりまして、そうして関係のメキシコ人に対しまして損害の補償をした例もあるのでありますが、私は日本におきましても将来講和條約ができた後におきましては、こういう不当な国際法上例のない、従つてこれに対して補償を要求し得るような問題につきましては、今から十分調査を進めまして、そうして適当の補償をとるように私は研究する必要があると思うのでありますが、それに対する法務総裁の御意見を伺いたいと思います。
  55. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 家屋を接收されました人に対しましてただいまお話がありましたが、家をいためられた、あるいは不当な損害をごうむつたということで、いろいろクレームの申込みがあると思います。日本政府としてはそれらのもつともなる要求に対して相当考慮したいと考えております。いずれ本国会に提案されまする特別調達庁設置法の一部改正において、その中に不動産審議会というものを設置いたしたい。その不動産審議会でそれらのクレームについて考究をすることになるだろうと思います。しかしそれは国内的な問題でありまして、ただいまお話のごとく、占領軍に対してクレームを補償してもらうことができますかどうか、これは外交上の問題でありまして、はつきり私からお答え申し上げかねます。
  56. 北澤直吉

    北澤委員 以上をもつて法務総裁に対する質問を打切ります。
  57. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 米原昶君。
  58. 米原昶

    米原委員 先ほどの北澤委員の質問に関して、外国の共産党と思想上の連絡があるという言葉は非常にあいまいだと思うのであります。たとえば思想上同一の考えを持つておる政党がある、これは何も共産党に限らず、社会党にしましても、英国の労働党なりまたはフランスの社会党と思想的に共通な点がありますし、また民主自由党にしましても、ヨーロツパ諸国における資本主義政党と多くの点において共通の点があると思うのであります。そこで思想上の関連ということに対して、それだけで外国の共産党と——先ほどは第五列というような、何かフアシヨ、ナチスを思わせるような言葉を使われましたが、そういうもので一つの政治団体を解散することができないことは、法務総裁のはつきり申されておるところであります。ところが日本共産党の場合には、明らかに外国の共産党と思想的に多くの点において、関連がある思想を持つておることは事実であります。しかしそれだけの問題であつて、その問題を何か一つの政党を弾圧するために使うという行き方は、明らかに全体主義的な考え方じやないかと思います。そこで関連して、ただいま法務総裁は、資金の問題とかそういうものに関して調査をやるということをおつしやつたが、その調査とは具体的にどういうことであるか、たとえば法務府の特審局においてやられる調査においても、明らかに禁止されておる秘密警察的行動が見られるのでありますが、一体どういうような調査をされようとするのか、それは憲法違反ではないかどうか、その方法に関する限度について、はつきりした御答弁を承りたい。
  59. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 特別審査局だけではありませんが、特別審査局は、団体等規正令の——いわば法律の適用に当てはまつておるかどうか、あるいは団体等規正令だけではなしに、ほかのたとえば追放令適用の適否というようなことの調査にも当つております。それからただいまの資金の問題、ほかの国の共産党と日本の共産党との思想上の関連はもちろん問題はありませんが、しかしながら資金の援助を受けるということがありますれば——、資金の援助が必ずしも不当であるというわけではむろんありませんが、資金の援助を得たならば、それは団体等規正令によりまして、ただちに届出を必要とするのであります。従つて資金の援助を受けておるといううわさがあつた場合に届出がないならば、そのうわさが事実であるかどうか、あるいは届出の必要があるかないかということは、常に注目をして研究をしておらなければならない問題であると思います。ただそれだけであります。
  60. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 世耕君。
  61. 世耕弘一

    世耕委員 私法務総裁にごく簡單に二点ばかりお尋ねしたいと思います。従来の共産党の野坂君の理論は、総括的に批評してみますと、いわゆる平和革命をもつて社会改革をやろうという意味のように私は解釈するのであります。この理論ならばわれわれは大いに共鳴するところがある。ところが最近の野坂君のアカハタによる説明を見ると、そういう平和手段による革命は誤りであつたというふうに訂正されておるようであります。アカハタの論旨をそのまま引用しますと、武力革命、暴力革命で理想を達成するというような、はなはだ穏やかならざる結論が出て来るのであります。この点について法務総裁はすでにアカハタをお読みになつたか、もしお読みになつたとするならば、その理論は正しいと思うかどうかお伺いいたします。
  62. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 私はアカハタを読みました。私はむろん共産党ではありませんが、共産党の理論としては、野坂君の新しい理論の方が徹底しておつてほんとうだと思うのです。しかしながら野坂君は、平和革命の方式を主張しておつたのは誤りだ、これはやめるということは言われますが、積極的に今度は暴力革命になつたのだ、しかしてこういう具体的な方法でやるのだという意図は表明されておらないので、従つて理論的に申し上げますならば、平和革命をやめたということ、その反面においては暴力革命を是認しておられるとは思うのでありますが、御自身がただちに暴力革命に着手するのである、という意思表示であるとは思えないのでありまして、はなはだ理論的ではありますけれども、私はその程度考えております。
  63. 世耕弘一

    世耕委員 法務総裁は共産主義の新しい戰術を御存じないから、そういう判断を下される。もつと研究していただきたいと思います。アカハカの理論を検討すれば、共産党の行く将来の方針というものは確定的なものである。火をつけるべきよその家に石油カンを持ち込めば、すでに放火する意思があるということは大よそ想像がつくのであります。犯罪の捜査というものを考えてみた場合に、常にそういう観点から行くべきであつて武力革命が起つて、大体国内が混乱したときに、初めて団体等規正令をお使いになるということは、はたして団体等規正令の目的でありましようか。もう一ぺん私は法務総裁の御決意を伺いたい。今のお考えによると、どうやら法務総裁御自身に容共の御気分がおありになるように思いますが、私は法務総裁のお気持、御経歴かう見て、さようなことがないことを確信いたしますが、世間に誤解を多く生じ、のみならず、あなた御自身のお立場もいかがかと考えますので、一応この点はもつとはつきりした御説明を承る方がけつこうじやないかと考えております。
  64. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 新しい憲法におきまして、思想の自由、言論の自由を認めておりますから、どういう凶惡なる思想を持つておられましても、これを禁圧する道はないのであります。ただそれが実際に具体化しまして行動に現われ、いろいろな問題を惹起するということであるならば、それはそのときに法によつて断固処断すべきものでありまして、野坂君も共産党も非常にりこうな人たちでありますから、思想程度においてはあれだけの表明をされましても、さて実行の部面においては、私は多分従来通りの平和革命の態度を堅持しておられるものと思うのであります。今占領下の日本におきまして、もし実際その思想に抱懐しておられるごときことを実行に移されましたら、ただちに共産党そのものの壊滅を来すのでありますから、おそらくそういうばかなことは考えておられないであろうと思います。従つてそういうばかな行動に出られるかどうか、それは私は十分観察しておりますけれども、ただいまのところ従来のあの中和革命方式を実際はそのまま実行しておられるのではないかと思うておるのであります。従つて世耕さんの心配される、容共のような形に実は見えるのではないかと思うのであります。
  65. 世耕弘一

    世耕委員 今の御説明によつて大体了承いたしましたが、もう一ぺんアカハタをゆつくりお読み願いたい。しかもあのアカハタ新聞紙が一般の新聞紙と違つて、共産党の機関紙であるということは言うまでもないことだろうと思います。また一般政党と異なつた共産党の行き方であるということも御承知だろうと思うのであります。私は共産党が実行運動に入つておるから逮捕しろという意味ではない。弾圧を要求しておるわけでもない。しかしながら刑事政策上から見た要視察人というのがありましよう。これに当てはまるかどうか、この点がすなわちこういう微妙な問題を取扱う上に苦労なさることだろうと思うのであります。もちろん思想的な行動に対して、弾圧を加えろというようなやぼなことは私は申しません。法務総裁は相当愼重な態度で善処されておるような顔つきは十分了承いたしますが、ヨーロツパにおけるいあゆるゲリラ戰術、いろいろな戰法はすでに御研究になつたあとだから、くどいことは言いませんが、この上とも国家のために御善処されることを希望いたします。同時にかような公平な法務総裁を持つたということは、わが思想界においても、また当面問題にされておる共産党の諸君も意を強くして可なりだと思います。
  66. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 午前はこれで休憩いたします。午後は一時半から再開いたします。     午後零時十三分休憩      ————◇—————     午後一時五十六分開議
  67. 植原悦二郎

    植原委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。天野公義君。
  68. 天野公義

    ○天野(公)委員 まず私は農林大臣に御質問を申し上げたいのでありますが、今までの予算委員会や本会議における大臣の御答弁によりまして、大体政府の農業政策というものがわかつたのでありますが、私はその観点をかえまして、主として行政上の観点よりお伺いしたいのであります。  政府がその成立以来行政の簡素化をとなえ、その実現に努力し、またその成果を上げていることは敬意を表する次第でありますが、政府の不要な経費機構をなくして財政を縮減して、そうして国民負担の軽減及び日本の復興に盡すということは政府の義務でもあるわけであります。昨年行われた行政整理も、そのとうとい犠牲の上にこり大目的を達成するということにおいて、認められるものだと思うわけであります。農林大臣はかかる政府の立場に立つて行政の簡素化、経費の節減に努力容れておるのでありましようが、今後もやはり同じ立場に立つて国民のためになることならば、どしどしと欠点を改めて行かれる御方針と思うのでありますが、まずこの点について大臣の御所信をお伺いしたいのであります。
  69. 森幸太郎

    ○森国務大臣 お答えいたします。行政の整理は、公務員の能率を高めて事務の簡素化をはかる、従つて国民の負担を軽減せしめるという考え方で、昨年度途行いたしたのでありますが、統制を撤廃いたします結果は、自然事務の剰員等も考え得られる面も生じて来るのでありまして、統利撤廃に伴いまして、これらの整理も漸次行つて行く方針であります。しかしながら政治は生きものでありまして、将来や現在におきましても、昨年に考えられなかつた仕事をしなければならない、いわゆる事務の新しく増加いたしておる分も出て来るのであります。またそうなければならぬと思いますが、そういう面に対しまして行政整理というよりも、むしろ人員の増加もしなければならぬと存ずるわけであります。しかし従来あまりにも複雑多岐であり、行政がはなはだ国民の意思に沿わないものがありますので、今後はできるだけ簡素化いたして、そうして国民に迷惑のかからないよう、また行政事務の効果の上るようにいたして行く方針を持つておるわけであります。
  70. 天野公義

    ○天野(公)委員 この問題に関連するのでございますが、食糧配給公団が、今後どういうぐあいになつて行くかについての御見解を伺いたいのであります。食糧配給公団は、大臣も御承知のごとく、食糧営団、日本甘庶馬鈴薯株式会社、日本澱粉株式会社というものの業務を引継いで、二十三年の二月から発足しておるのでありますが、その中心は食糧営団であります。聞くところによりますと、米穀卸商業組合から営団にかわり、営団から公団にかわるという機構の変革のたびことに事務が複雑化して行つているようであります。今日いろいろの公団が整理をされており、今後その存続を続けて行く公団というものは非常に少くなつて行くと思うのでありますが、食糧配給公団は今後事務の簡素化と機構の簡素化という面からいたしまして、どのようなふうにかわつて行くか。私はその配給機構の末端機構は、民間会社にその業務を移しまして、公団はその元締め機関となつてつた方がよいのではないかと思うのでございますが、この点に関する大臣の御所見、またお見通しをお伺いしたいと思うのであります。
  71. 森幸太郎

    ○森国務大臣 公団の整理につきましては、関係方面からの慫慂もありますので、漸次これを撤廃いたして行く方針を持つておるのであります。しかし主要食糧、油糧、砂糖、この三種類につきましては、まだ日本の現状が全然これを自由になすことの許されない状態でありますので、この三つの問題については、公団の形式でなくて、政府の手によつてこれが統制を強化して行くという方針をとつて行きたいと思うのであります。従つて食糧公団の現在の様式もこれを根本的に改正して行くつもりでおります。お説のように末端の配給につきましては、従来米穀商を営んでおりました人のその意思を尊重いたしまして、そういう人人にこれをもとして、自由な競争のもとに配給の段階をつくつて行く。しかしながら今申しました通り、食糧の重要性から、その根本におきましては、政府がこれを強く管理をいたして行くという方針に改めて行きたい考えを持つておるわけであります。
  72. 天野公義

    ○天野(公)委員 次にお伺いしたいことは、先日の本委員会におきまして、奧村委員から指摘された米の買入れ価格と配給価格の差額の問題にも関連しておるのでありますが、私は、主として食糧管理特別会計の問題をお聞きしたいのであります。予算書の食糧管理特別会計のところを見ますと、歳入のところで食糧売抑代として三千五百八十八億、歳出のところで商品費が三千百十七億と出ており、その差額が四百七十億ばかりであります。この中間経費のうちの大部分を占めておるものが役務費となつておりまして、三百五十三億計上されておるのであります。公団の方の予算を見ましても、同様に商品の売拂代三千八百二十億、買入代が三千三百八十三億、その差額が四百三十七億となつておりまして、ここで奧村委員の指摘されたことく、九百億という中間経費が出ておるのであります。私はこの中間経費が非常に多額に上つておりますので、この経費ができるならばもつと節約できないものかという観点に立つて御質問を申し上げたのでございますが、またその運営につきましてもいささか意見を有するわけでございますので、お伺いしたいのであります。食糧配給公団関係資料は前に要求しておいたのでございますけれども、まだ手元にいただいておりませんので、その数字についてこまかく当る余裕がありませんでしたから、食糧管理特別会計の役務費のところを中心にお伺いしたいと思います。数字がこまかくなりますから、事務当局の方に御答弁つてけつこうであります。まず政府は二十五年度として内地米として買入れる米の総量がどれくらいなのか、これをお伺いしたいと思います。
  73. 森幸太郎

    ○森国務大臣 公団の経費のこまかい問題につきましては、今事務当局が参りましてお答えいたすことにいたします。昭和二十五年度の主要食糧の需給の見込みについては再々ここでお答えいたしておるのでありますが、御承知の米穀年度と申しますと十一月の一日から翌年の十月三十一日までが米穀年度になつております。従つて普通の歴年度における米の生産並びに買上げをやるというと符合しないことになるのであります。二十四年度におきましては、米の生産を事前割当いたしましたのは、六千三百二十一万八千石、雑穀が四百五十一万四千石、合計して六千七百七十三万二千石という生産数量を予測をいたしまして、これに供出として三千二百三十二万九千石事前割当をいたしたのであります。昭和二十五年度分につきましては、米を六千三百四十一万八千石、雑穀を四百六十八万八千石、合計六千八百十万六千石というものを割当いたしまして、そのうちから三千七十八万一千石、これを事前割当として供出してもらう、買上げる、こういう方針を持つておるのであります。これはいわゆる二十五年度につくります米並びに雑穀の生産の見込み並びに供出の割当であります。しかしながら今お答え申し上げましたように、二十五米穀年度として考えますと、昨年の十一月一日から二十五年の十月三十一日まででありますから、昨年の十一月一日以後に買入れましたところの米、麦、いも等、またこの二十五年になりましてから買いますところのばれいしよ、麦、また早場米、いわゆる十月三十一日までに買上げるこれらのものが二十五米穀年度としての需給の関係に入つて来るわけであります。従つて二十五米穀年度の需給推算といたしましては、供給高に、つきましては米、麦、かんしよ、ばれいしよというふうに、そういう計数によりまして計画を立てておるのであります。今お尋ねのは、二十五年の産米に対する事前割当並びに買上げの数量のお尋ねでございましたが、今お答えいたしました通り、二十五年度におきましては、三千七十八万一千石を事前供出割当をいたしたわけであります。
  74. 天野公義

    ○天野(公)委員 私のお尋ねした点と大臣の御答弁と少し食い違いがあるのでございますが、私は予算書及び予算の基礎となつている農林省からいただいた資料に基いて、その的確な数字の点を大臣にお伺いいたしたような次第でございます。農林省からいただいた資料によりますと、二十五年度に米を買い入れるものが、普通供出のもの一と、二十四年度の超過供出の分と、二十五年度の超過供出の分が三千五十万石となつておるのであります。これだけのものを集めるといたしますれば、当然それに要する集荷手数料というものも、これに見合つた数字が出ておつてよいと思うのでありますが、別の米の集荷手数料というところを拝見いたしますと、三千二百万石と出ておるのでありまして、またこのところに相当の食い違いがあるのであります。予算に集めない米に対する集荷手数料というものを計上してあるように見受けられるのでありますが、その点に関して、どういうわけでこうなつているか、お伺いしたいのであります。
  75. 森幸太郎

    ○森国務大臣 今事務当局がお答えいたしますが、こまかい数字ですから、後ほどお答えいたします。
  76. 天野公義

    ○天野(公)委員 後ほどでけつこうでありますが、この集荷手数料として予算に計上されておりますものの食い違いが百五十万石あります。また保管料が三千二百万石と見合つて計上されておるのでありまして、保管料と集荷手数料というものが、買い入れたものよりも余分に出ております。これを金額に直して計算いたしますと、集荷手数料として約九千万円、保管料として約九千万円、合計して約二億に近いものがここに余分に計上されておるのでありますが、あとからこの点を御答弁願いたいのであります。  それからもう一つ、今申し上げたような問題でありますが、やはり農林省の資料によりますと、精米加工賃として一千二百五十万俵、二億七千五百万円が計上されておりますが、同じ資料のところを見ますと、食糧の売抑代のところに精米三百二十五万九千石、二百一億六千二百四十五万五千三百円が計上されておるのであります。この三百二十五万九千石は俵に直しますと、八百十五万七千俵であります。大体政府は自分で精米したものは、食糧配給公団に売る、そして玄米で公団に渡したものは、それを公団で精米すると思うのでありますが、政府で精米したものと、精米を売却した数量とこれだけ差が出ているのはどうしたわけか、お尋ねしたいのであります。もちろん玄米を日栄にすれば少し口減りがするということは当然でありますが、この差額というものがどうもふに落ちないので、この点お伺いしたいと思います。
  77. 森幸太郎

    ○森国務大臣 繰返して申し上げるようでありますが、数字にわたる点であり、もちろん減耗量も見ております。また精米で買入れもいたしておるのでありますが、その予算面に対しましての内容等は、分科会において十分事務当局より御納得の行くように説明申し上げることにいたします。
  78. 天野公義

    ○天野(公)委員 大臣に分科会ということで、逃げられているのでございますが、これは集計するとなかなか大きな問題になるのでありまして、この食管特別会計の厖大な費用をどうしたら節約できて、そしてわれわれの負担軽減されるかという観点から、私はこの農林省の資料に基いて、そこの納得の行かない点をお伺いしているのでございます。こまかい点はあとからでもけつこうでございますかり、納得の行くように御説明願いたいのであります。  もう一つ食糧の運営の問題につきまして、これはこの費用に大きな関係を有するものがあるのであります。この資料によつて拝見いたしますと、おもに運賃のところでありますが、貨車乗りということをやつております。すなわちオン、レールで公団に引渡すのでございますが、大体この貨車乗りというものを除いて、政府のやつておりますものは、産地で米を買い、倉庫に入れて、消費地に持つて来て、駅から倉庫に入れて、それをまた公団に売るというわけでありますが、ここにおい丁駅から直接公団に売つて、一旦倉庫に入れるという仕事をやらない。この面の食糧というものが、私の計算では約八十万石ばかりあるようであります。貨車乗りと、それから入庫して公団に売り渡すというような方式をとるのとでは、輸送賃の節約が相当にはかれると思います。先ほどお尋ねした精米の五百万石という問題は、この貨車乗りと倉入れという問題にも関連しているのでありまして、現在ある程度つているものはいいことはどしどし実行し、悪いところは改めて行くというのがいいことだと思うのでございますが、政府といたしましては、この輸送の面について、貨車乗りを建前とするか、倉入れを建前とするか。これはある一部は現在貨車乗りでやつているようでありますが、今後これをどういうふうにやつて行かれるか。この点一応お聞きしておきたいのであります。
  79. 森幸太郎

    ○森国務大臣 事務的なことでありますが、米の集荷配給は、地方的にいろいろ違つておりますので、できるだけ経費のかからぬような方式を選んで行く、また行くべきであるという方針のもとに、経営を指導して行きたいと考えております。
  80. 天野公義

    ○天野(公)委員 今の大臣の御答弁で大体了解するのでありますが、倉入れと貨車乗りの一儀の差額は二十三円六十四銭であります。これを精米全体について消費地であり、また管内輸送の場面でもとりますれば、ここに相当の金額の節約がはかれるわけであります。玄米の場合にいたしましても、精米の場合にいたしましても、原則として貨車乗りというやうなことをとる、そしてどこの消費地においても、大体において消費量がきまつておりますから、その消費量を超過した食糧を倉入れにする、足りない部面は倉から出すというように方式を改めますれば、私の概算でございますが、食管特別会計だけでも私は十億や二十億の費用の節減は優にできる、このように考えるものであります。食糧配給公団と両方考えますときに、相当の金額の節約がそこではかられる、私はこのように確信して疑わないのでございます。また数字的に資料を当りましてもそうなるわけでございまして、この点に関しまして、今後農林大臣の御善処と申しますか、今までの方式をもつとよい方向に振り向けるように、御要望申し上げる次第でございます。農林大臣に対する質問はこれで終ります。
  81. 植原悦二郎

    植原委員長 岡田君に御相談ですが、北澤直吉君が質問の継続中でありましたが、時刻に遅れて、御出席なかつたために、今農林大臣が出席されておつたから、天野君より農林大臣に対する質問だけしてもらつたわけですが、あなたが御了解くだされば、北澤君の質問にもどつて北澤君が済んだ後に、あなたの質問を願いたいと思いますが、いかがでしよう。
  82. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 けつこうです。
  83. 植原悦二郎

  84. 北澤直吉

    北澤委員 通産大臣にお尋ねいたしたい。まず第一に、申すまでもなく、日本のような国柄では、貿易立国と申しますか、貿易第一主義と申しますか、外国貿易によりまして足らざるところを補う、結局外国貿易に依存する部分が非常に多いと思います。満州事変以来の情勢では、なかなかこの貿易第一主義ということができなかつたので、ある程度いわゆる自給自足といいますか、アウタルキーの思想があつたのでありますが、今日のように、貿易第一主義というものを全面的に行つて行くという場合には、満州事変以来戰争中まで行つた、いわゆる自給自足的な考え方をやめて、そうして外国貿易というものにもつと大きな重点を置かなければならぬ、そのためには日本の産業構造につきましても、そういう観点から考えなければならぬ、こう思うのでありますが、その点に対して、通商産業大臣の御意見を伺いたいと思います。
  85. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 貿易に関しましては、それと関連して産業構造、こういうことも考えられるのであります。同時に日本の産業構造が日本中心といたしました、言いかえると日本貿易半径に対する商品の需要といいますか、それと、その市場における国際競争によるプライス・フアンクシヨン、こういうふうな観点を考えに入れて、おのずから日本の産業構造がきまる、こう考えなければならないと思います。いずれにしましても、結局、東洋、南洋、主として東南アジアを中心としたところの範囲における需要と、そうしてそれによるところの国際市価というようなものを中心といたしまして、われわれの産業構造というものをおのずから考えて行かなければならぬ、かようになるだろうと思つております。
  86. 北澤直吉

    北澤委員 大臣のおつしやる通り、現在の日本貿易は、その大部分がいわゆる協定貿易でありまして、相手国との間に貿易上のバランスをとつて行くというのが主たる原則となつております。従いまして日本の産業構造を考えるにあたりましても、日本の協定貿易の相手国である国々の需要あるいは産業構造、そういうものとにらみ合せまして、日本の産業構造を考えなければならぬことはもちろんであります。特にまた将来、日本世界の繁栄に貢献し、特にアジア諸地域の繁栄に貢献するという立場から申しますと、日本だけの利己的な立場ばかりでなく、やはりわれわれは、アジア全体の開発にも貢献するといつたような大きな見地から、アジア全体の国々の産業構造というものに、日本の産業構造をマッチさせるようにいたしまして、利益相反せず、お互いに共存共栄ができるような基礎の上に、日本の産業構造を考えて行くことが、将来日本に対します諸外国の、何と申しますか、考え方を善導する上において、非常にいいと思うのであります。その点について大臣のお考えを伺います。
  87. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 その点はまつたく御同感でありまして、たとえばインドは、最近五箇年の工業化計画を立てている。こそでインドからは、消費財よりもむしろ生産財の要求が多い。おそらくインドの今後の問題は、需要は消費財をできるだけ押えて生産財に移行して行くという形が起きるのではないかと思つております。通産省といたしましても、先般から見えておりますインドの使節の人たちのために、今通産省に一室を設けて、日本のそれぞれの産業人に次々に寄つていただきまして、インドの五箇年工業化にマッチするような日本の産業のあり方、それからまたこれにどのような御援助を與え得るか、あるいは技術的にもどのような援助を與え得るか、あるいはまた向うの方々が、日本に来て技術を習得するのについて、どういつたような便宜を供與し得るか、こういつたような問題について、各業種々々—各業種々々ということは、向うの五箇年計画に入つておりますところの各業種の製造業者の人に来ていただいて、今それぞれお打合せを願つておるようなわけであります。インドについてはそういうことが言える。あるいはほかの国につきましては、主として原料をもらつて、われわれの方からは消費財を持つて行く。こういう観点もあると思うのであります。この点はドル資金不足の今日、通商協定をもつて商売をやつておりますので、自然、先方の要求するものが、生産財か消費財かといつたような点についても、それぞれの国についてこまかく検討いたして、日本の産業に対する力の持つて行き方を考えて行かなければならぬと存じまして、そういう意味で、通産省としてそれぞれ指導しておるような次第であります。
  88. 北澤直吉

    北澤委員 日本の産業構造に対します通産大臣の御意見を伺つたのでありますが、特に輸出産業につきまして、御承知のように日本は、現在も繊維工業、繊維貿易というものが、輸出の相当の部分を占めるわけでありますが、繊維工業というものは、インドにしても、あるいはそういうような後進国においても、だんだんとこういうものができて来る。従つて日本貿易産業のあり方としましては、だんだん軽工業よりも重工業といつたようなものに進んで行くべきが当然のことと思うのであります。ところが最近の貿易状況を見ておりますと、繊維貿易の方は相当順調に進んでいるようでありますが、機械類とか雑貨とかいう方面におきましては、どうもいろいろレートの関係もありましてなかなかうまく行つていません。そういたしますと、今のような状態を放任しておきますと、日本の輸出産業というものはやはり繊維工業が主になりまして、将来大いに発達さすべき重化学工業というものが、あまり発達できないというふうな状況になると思うのであります。こういうことでは将来後進国におきまする軽工業の発展考えますと、非常に憂慮にたえないというふうに私は考えるのでありますが、通商産業大臣は、日本の輸出産業の構造、特に重化学工業の発達というものにつきまして、どういう御所見を持つておられますか、伺いたいのであります。
  89. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 大体昨年度の輸出の割合を見ますと、繊維工業が五十%程度を占めております。それから機械並びに金属製品が二十二、三パーセント占めておるのであります。これは大体その前の年から比べますれば、一〇%ぐらいふえておると私は存じております。どちらかと申しますと、戰前六、七十パーセントを占めておつた繊維工業との割合から言えば、だんだん今後機械あるいは金属工業が、その方に幅を伸ばして行くという形になるだろうと私は存ずるのであります。ただ後進国におきましても、繊維工業、軽工業はだんだん発達して来ております。インドにしましても、パキスタンにしましても、その他の国におきましても発達して来ておりますが、しかし必ずし心繊維工業、軽工業というものが、それがために日本の輸出というものが減ずるのだと考えるのは早計であつて繊維工業自体も、今度はいわゆる低級品か高級品にだんだん進めて行く、こういうことに繊維工業は努力してもらわなければならぬ、かように考えて、そういつた方面—にいわゆる低級な品物から高級の品物に移つて行くという形に持つて行きたい、かように考えております。それから今お話の今後生産財的な機械工業であるとかあるいは金属製品、そういつたものの輸出を特に奨励しなければならぬということはもとよりであります。ところがこれは技術白書をごらん願いますとおわかりと思うのでありますが、こういう方面に対しましては、私はどうしても機械設備その他の技術改良というものがまた徹底的に行われていないと思う。いわゆる技術面の経営の合理化というものが今日遅れておる。そのために価格の面において引合いがなかなかつかないということと、それからして、製品それ自身の優劣ということが大きな問題になると思うのであります。そういう意味におきまして、機械工業なり金属製品というものについては、われわれが一段とこれが合理化、いわゆる技術、機械、設備その他の改善についてできるだけのおせわをいたさなければならぬ、かように考えておる次第であります。
  90. 北澤直吉

    北澤委員 次にお尋ねしたいのは、日本貿易市場の転換の問題であります。御承知のように日本は戰前におきましては、日本の輸出輸入とも東亜地域が日本貿易の面におきまして、半ば以上の地位を占めておつたわけで反りますが、終戰後におきましてはこれが非常にかわりまして、輸出輸入とも米国に依存する部分が非常に大きくなつて来ている。最近では輸出の方は大体戰前にもどりまして、東亜地域が輸出の面におきまして相当の部分を占めるようになつたのでありますが、まだ輸入の方におきましては、あいかわらず合衆国が相当の部分を占めておるという状況であります。これは日本の国のアジアにおきまする地位というものを考えまして、非常に不自然な状態だと思うのであります。歴史的にもあるいは地理的にも、日本と東亜の市場との関係はきわめて密接でありますので、私は日本貿易政策を推し進めて行く上におきましては、どうしても輸出あるいは輸入とも、従来の東亜地域の関係というものを復活して、そうして東亜地域の貿易重点を置いて行かなければならぬと思うのであります。特に貿易お寺ましては、運賃というものは非常に重要な意味を持つております。従いまして日本のようにアジアの諸国との距離の低い国におきましては、運賃において非常な有利な地位を持つております。そういうわけでありますから、日本はどこまでもアジア市場との関係を復活する必要があると思うのであります。輸入の画において、昔のようなアジア市場との関係を一体どう切りかえて行くかということについてお伺いしたいのであります。最近ではアメリカの方でも日本とアジア地域との貿易関係を、どうしても増推して行かなければならぬということで、現にアメリカの陸軍次官の補佐官のウエストという人ですか、それと農務省のスタンドレー・アンドリユースという余事に行つて、いろいろ研究しておるようでありますが、その目的も結局南方にできます食糧を日本に蔵人する、従来アメリカから輸入していた食糧を切りかえて、今度は南方から食糧を入れる、そして南方に購売力を與えて日本の輸出をふやすというようなことで、現にその三八が現場に参りまして、いろいろ現地の調査研究をしておるようであります。それに対しましては、あるいは国際復興開発銀行というものを使つて、その金融を利用して、日本と南方との貿易を促進しようというふうなことも考えておるようであります。最近ではアメリカが南方地域に対しまして相当の経済上の援助を與えて、きのうでありましたか、インドネシアに一億ドルの経済上の援助を與える、あるいは仏印のバオダイ政権にも経済援助を與える、あるいはまたビルマにも與えるというようなことで、南方諸地域におきましては、例のトルーマン大統領の後進国開発計画というものにより、また一般的には共産主義が南方東南アジアに出るのを阻止するという意味で、南方諸地域の経済上の開発を促進するということもあると思うのでありますが、そういうわけでいろいろな形におきまして、米国の東南アジアに、対する経済上の援助というものが、だんだんと具体化しつつ、あるわけであります。そういうわけでありますので、日本としましてはこの上とも日本貿易の主たる対象を南方に置きまして、そして日本貿易の進展をはかることが必要と思うのでありますが、先ほど申しましたアメリカからの輸入を南方に切りかえるということにつきまして、通産大臣の御所見を伺いたいと考えます。
  91. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 ただいまの御意見ごもつともでありまして、私まつた同感であります。輸入の面におきましても、われわれの輸出は主として東南アジア方面に行くのでありますから、その輸出をふやすという意味からいいましても、東南アジアからできるだけ原料、食糧その他を入れなければならない立場におります。そういう関係で今まで——これは援助資金の関係もありましたが、アメリカから買つてつたところの食糧を南方地域に振りかえて、ただいまたとえばシヤムとの間に三十万トンの米の輸入の話をしておる、あるいは韓国との間に十万トンの話をしておる、ビルマも二十万トンというような話が出ておりますが、またオーストラリアの小麦、こういつたようにできるだけ東南アジア方面に食糧その他を振りかえるということは、最も望ましいことだと思うのであります。また従来ドル地域から参つておりました粘結炭にしましても、最近開らん炭を入れるようなことにいたしまして、これを振りかえることにいたしております。最近撫順炭の問題につきましても、今値段の折合いをやつておる。これができるかできぬか、まだ交渉の途中であります。そういうようにしてできるだけ輸入を近くに持つて来る、こういう形で進んでおる次第であります。
  92. 北澤直吉

    北澤委員 東亜市場との貿易の問題につきまして大臣お話がありましたのですが、これに関連しまして、たびたび本会議もしくは予算委員会におきましても、問題になりましたが、中共との貿易問題につきまして、一点だけ伺いたいと思います。日本の内部におきましても、中共の貿易に非常に期待をかけている向きもあるのでありますが、私の考えをもつてしますと、この中共貿易には大きな期待は持てないと思うのであります。と申しますのは、中共の支配下におきましては、結局ソ連のように、自給自足の経済政策をとると私は想像するのでありますが、そうしますと、そういう貿易という面おきましては、われわれの期待するほど大きな貿易ができぬ。それからまた大きく考えまして、共産主義がアジアの地域に伸びて来るのを防ぎ、一線を画して、そうして共産主義の蔓延を防ぐという見地から申しますと、中共と貿易をして、中共に対して経済上中共を強くするというふうなことは、共産主義勢力の蔓延を阻止するという大きな政策に反するのであります。そういうようなことを考えますと、今後アメリカ方面におきましては、アジアにおきまする共産主義の蔓延を防ぐという大きな見地から、着々今いろいろな手を打つておるわけでありますが、そういう点から考えますと、中共との貿易というものにつきましても、アメリカ方面におきましては、相当制限する。貿易で中共に経済上の強味を與えるというようなことは、大きな政策から矛盾する。こういう考えが。私はアメリカの方にあるのではないかと思うのであります。そういうことから最近日本におきましても、戰略物資の輸入の統制をまたするというようなことになつておりますが、そういう点から考えますと、中共の貿易に大きな期待を持てない。そうしますと結局日本中国以外の東南アジアのマーケットに依存、あるいは期待する部分が非常に大きいと思うのでありますが、その点につきまして、通産大臣のお考えを承りたい。
  93. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 これはたびたびこの委員会でも、それから本会議でも論議された問題であります。私はそのたびことにお答えいたしておるわけでありますが、ことに中共貿易は、従来日本が対中国に輸出入とも依存した関係からいつて、できるだけこれは私は促進いたしたいと存じておるのであります。政治的問題と、経済的の問題とはこの際はつきり区別いたしまして、経済的にはこれにできるだけ力を入れて行きたいと考えております。ただ実際問題としまして、いろいろな障害があることは、北澤さんのお話の通りであろうと思います。いろいろな障害があると存じます。従つてわれわれは最近中共貿易について、十分経済的に力を入れる。大体最近におきましては、エスクロー方式によりますところのバーター協定が、相当香港だけでなく、天津なり、あるいは北京なり、また青島なりを通じまして相当行われておるのであります。一月は二十日までの資料しか覚えておりませんが、二十日までの資料によつて、そういつた方式で六十七万八千ドルと記憶しておりますが、六十七万八千ドルも実は取引が行われております。こういうような状況でありますので、この方面の取引も全然ネグレクトできない。しかしながら、これは今お話の通り、いろいろな障害があることはもちろんでありますから、それだけの取返しをできるだけ東南アジア方面に力を入れて行くということも、同時に必要であろうと考えております。
  94. 北澤直吉

    北澤委員 次に日英通商協定の締結後の状態につきまして、お伺いいたしたいのでありますが、昨年日英通商協定が事書てわれわれ非常に喜んだわけでありますが、この協定ができたあとの情勢見ますと、なかなか思うように運営されていない。たとえば日本からスターリング地域に物を輸出するというので、契約ができましても、その輸出契約におきましては、ほとんどそのすべてにわたつて、現地で輸入許可を受けるという條件で契約ができている。ところがこの輸入許可がなかなか出て来ないというわけで、契約しても品物は輸出滯貨になつて出て行かない。そうして向うの現地かり輸入許可の出るのを待つておるというような状況で、なかなか輸入許可が出ないというわけで、業者も非常に困つておるという話も私は聞いております。そういうわけでありますので、日英協定ができましてから今日までの実際の実施の成績と申しますか、その点につきまして通商産業大臣の御説明をお願いいたします。稻垣国務大臣 日英通商協定ができましてからの半期間の輸出入の状況を申し上げますと、輸入の問題は割合に順調に参つております。五千五百万ポンドに対しまして三千八百万ポンド、前半期だけでこういつた形で進んでおりますかり、私は相当にいいと思つてるのてあります。それから輸出につきましては四千五百五十万ポンドに対して二千二百万ポンドと私記憶いたしておりますが、これはどちらかというと、半期間の成績としてはあまり良好じやないと考えております。これは今御指摘のように輸入許可がなかなかおりないという実情であります。もう輸入許可がおりるということで昭積みの準備までいたしておりますところの商社が相当たくさんおられました。たとえばヤンマー・ディーゼルを出すんだといつて準備までされている。あるいはその他の機械類を出すんだといつて準備までされているのに、許可をして来ないというので困つているものが非常にたくさんあるのであります。この点についてはわれわれも相当先方に対して督促をいたしております。同時にただいま開かれておりますところの中間審査会議におきまして、この問題を提起して、できるだけバランスを合せるようにしてもらうように交渉中であります。
  95. 米原昶

    米原委員 だたいま北沢委員のお説で、中共貿易は共産主義を蔓延させるおそれがあるから、そういうことはまことに望ましくないとしうような点に対して、通産大臣が政治と経済は別ものである、経済的には大いに中興貿易をやるべきであるという非常に明快な御答弁のように思いましたが、しかしながら実際には障害があるだろうということを言つておられる。その障害とは一体何であるか。現在新中国に対して英国政府もソビエト政府も承認している状態であります。これに対してどういう政治的な問題から障害があるのであるか。その点の説明を聞きたい。
  96. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 私がいろいろな障害があるだろうということを申しましたのは、御承知ように、今われわれは管理下にあるわけであります。従つてたとえば英国が中共を承認されておる、ソ連は承認しておられる。ところがアメリカは承認しておられない。その管理下に日本が今おりまして、そうしてわれわれといたしましては、いわゆる一国に対して対等の通商その他をやつておる立場にないのであります。従つてそういつた面からして、われわれは今日この問題については相当の障害もあるだろうということが予想されるということを申し上げたのであります。しかしながら政治問題と経済問題とはおのずから別々であるということから、経済的にはできるだけ努力をいたしたい、かように私はお答えしたのであります。
  97. 米原昶

    米原委員 ただいま日本が管理下にあるということを理由に申されましたが、日本は一国の管理下にあるのではなくて、連合国の管理下にあると思うのであります。そういうところでどういう政治的な障害が起るか、非常に不可解である。たとえば貿易管理令が出まして大分輸出が制限された。たとえばブリキの輸出ができないというような、実にこれは不都合なものであるように思いますが、そういうものがアメリカ行つている対ソ区禁止令、あれも大体リストと同じようなものを出しているのはどういう意味であるか、しかも一方ではこういうことを業者から聞いております。たとえば香港貿易の大半は現在アメリカが占めている。このままで中共貿易が遅れるならば、事実上はアメリカの商売人に新中国の市場を全部とられてしまうだろう。一日も早くこの問題を解決しなければならぬという声さえ、業者から聞いておるのであります。どういう意味でこれが障害になるかどうか、この点をもつと明快に説明していただきたいと思います。
  98. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 私は連合国の管理下にあることを承知いたしておりますから、連合国の中で英国、ソ連は中共を承認しておりますけれども、米国は承認していない。だからそこに統一した一つの政策の間には問題が起るであろう、これがわれわれの方に影響を與えるであろう。こういうことを申しておるのであります。それからまた私が申しますのは、いずれにいたしましても、われわれは管理下にあつて、その方針に従つてできるだけやつて行かなければならぬ。その間におのずから障害が起るのであろうということを申し上げた次第であります。それから今戰略物資のお話がありましたが、これは特に中共なら中共だけに対して適用されておるのではありませんので、この指定許可物資はすべてどの国に出します場合も一応の指定許可を得ていることを申し添えておきます。
  99. 米原昶

    米原委員 今戰略物資は形の上ではおつしやる通りになつております。しかし事実上今までの中共貿易の実績の面で見るならば、たとえばほかのところなら禁止されてないのに、鉄線の輸出が禁止されている。また電線なんかでも千メートルまでは許して、それ以上は許さない。こういうような実例があるじやないか。事実上は中共貿易を禁止するようなことをやつているじやないか、こういうことが障害である。こういうことをやつているのは政府である。何がためにこういう束縛をされておるのか。これが全然わからない。先ほど通産大臣が政治と経済は別々である。日本の経済的な発展を促進するためには、たとえば新中国政府と現在の日本政府とは全然別個の政治的な立場にあつたとしても、経済的にはこの関係を結んで行かなくちやならぬ、こういうことをおつしやりながら、事実上やつておられることは違うじやないか、その点についてもつと明快に説明してもらいたいと思う。
  100. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 私は政治と経済とは別々だということをはつきり申し上げました。しかしながら同時に日本が占領下にあるということはたびたび申し上げました通りであります。これらをあわせてお考えくだされば私の答弁になると思います。
  101. 植原悦二郎

    ○植原委員 長以下は意見の相違と思います。北澤直吉君。
  102. 北澤直吉

    北澤委員 昨年末以来いわゆるローガン方式による新しい貿易の方式が実行されまして、まず輸出をふやすためには輸入をふやす、貿易全体のヴオリユームを、ふやすというのがローガン構想でありますが、それでまずもつて輸入をするというわけでありますが、どうも最近の状況を聞いてみますと、輸入をしようと思つて輸入資金の手当をしようと思いましても、輸出しないからして外貨資金がないから輸入を許可にならぬ。ところが先ほど申しましたように、日英協定をやつたのでありますが、向うでは輸入許可がないから日本の輸出ができぬというわけで、輸入も輸出も両方ともうまく行かない。こういうわけで大蔵省と通産省の間に少し意見が齟齬をしているということを聞くのでありますが、私は通産省の主張せられるように、大蔵省の方におきましても、この輸入資金の手当等につきましては、十分好意をもつてしてもらうようにいたしたいのでありますが、その実情をお伺いいたしたいと思います。
  103. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 それは大蔵省とかどことかという問題ではありませんので、御承知のように為替予算の上におきましてわれわれはこれが審議会を開いております。これは大蔵省、通産省あるいはこれに関係の各省の大臣をもつて閣僚審議会を開いて、そこで大体為替予算をきめております。その為替十算の範囲内において実行いたしておりますから、その点について行き違い云々ということはないと存ずるのであります。あらかじめ査定されております為替予算に従つて、われわれはその範囲内で操作しておる、こういうことであります。
  104. 北澤直吉

    北澤委員 次に貿易に関しまする制限の緩和の問題につきましてお伺いしたいのでありますが、昨年の十二月から輸出が自由になり、またことしの一月から輸入が民間に移管されたわけでありますが、今日の実情は輸出におきましては品目別に見生すと、大体三割方まだ政府の統制下にある。それから輸入の方はいろいろの関係で七刷程度政府の統制下にあるというわけで、まだ貿易に対する制限というものが十分に緩和されておらないようにわれわれは見るのであります。貿易というものはなるべく自由競争さしてやるということが、貿易発展の上に最もいい方法と思うのでありますが、いまだにそういう寄りに輸出輸入とも相当程度の統制と申しますか、管理があるのであります。それからまたいろいろ支拂い問題等もありましてたとえば信用状がなければとかいうふうなことで、支拂い問題に関連しましても、いろいろの統制があるというわけでありますので、せつかくローガン構想による新貿易方式が実行されましても、まだ貿易に関する制限が相当にある。こういうふうにわれわれは見るのでありますが、私は貿易増進の大きな目的から考えまして、こういう貿易に関する制限はなるべく早く廃して、ほんとうに自由貿易の主義を貫くようにお願いいたしたいと思いますが、それに対する通産大臣のお考えを伺いたいと思います。
  105. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 北澤さんのただいまの御意見つた同感でありますが、ただ御承知のように輸出に対しては二〇%程度の制限があります。これは非常に需給が緊迫した物資について、特に通産大臣が指定するという形をとつておるのでありますが、これは順次そのわくははずされて行くと私は期待いたしておるのであります。それから輸入の方は大体七〇%許可品目があると思うのでありますが、これは一部分は御承知のエイド資金によつて来るものをこの中に込めております。この分はどうもしようがない。それ以外のものにつきましては、これも需給の上において繰作することが必要であるという観点から許可制に相なつておりますが、これもできるだけ早い機会に自然な形に持つて来ることが望ましいとわれわれも考えております。
  106. 北澤直吉

    北澤委員 輸出入につきましては、エイド荒金によるものはもちろん統制の必要がありますが、それ以外の部面におきましては、なるべく早く統制あるいはそういうものをなくするように、この上とも御努力を瞬いたいと思うのであります。  次にお尋ねしたいのは、これに関連いたしまして、日本の業者と外国の業者との関係につきまして少しお尋ねしたいと思います。日本が各国と通商協定を結んでおりますが、それに附属しましていろいろのいわゆるプログラムと申しますか、そういうものがついておるそうであります。それからまた本年度から輸入が民間貿易になりまして、いわゆる政府が外貨予算をつくりまして、その範囲内で民間に貿易をさせるということになつたのでありますが、どうも通商協定附属のプログラムとか、あるいは外貨予算の内容というものにつきまして、日本側の業者と外国の業者との間に差別待遇があるということを聞くのであります。外国の業者はそういうことは全部知つておる。ところが日本の業者は知らない。もちろんそれは発表されれば知るわけでありますが、外国の業者は発表の前におきましても、どういう筋を通るか知りませんが、内容をよく知つておるというわけで、日本の業者との関係におきましては、日本の業者が競争上非常に不利な立場に立つ場合が多いということを聞くわけでありますが、この点に関しまして御説明を願いたいと思います。
  107. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 今御指摘の問題については、ときどきわれわれも日本の輸入業者からそういつたようなクレームを実は承るのであります。どういう形でそういつたようなことが実際に先へ外商が知るということがあり得るのか、その点についてはわれわれ不明でありますが、できるだけそのような差別的な形はないように、その間を調節して行かなければならぬ、かように考えておる次第であります。われわれは発表は同時にいたしておりますので、この点は外商と日本の商社というように何ら区別をいたしていないことは、御承知の通りであります。
  108. 植原悦二郎

    植原委員長 関連の質問を苫米地英俊君から申出ております。これを許可いたします。苫米地英俊君。
  109. 苫米地英俊

    ○苫米地(英)委員 通産大臣に前にお伺いいたしたのでありますが、すべて制限を撤廃して行くというようなことであり、すべてが公平に行われる。ただいまの質問でも、内外人の間になるべく公平にやつて行く。内外人の間で公平に行つておらぬという事実はありますけれども、これは今私お尋ねいたしません。私のお尋ねいたしますのは、通産省から近ころ通牒が出て、タバコの輸入については五つの社を指定しておられる。これは決して公正でもなければ、必要なる制限でもない。こういうところにいろいろの疑惑がかかつて来ますし、また事実そういうような疑惑がすでに起つておるように承知しておりますが、その点についてお伺いしたいと思います。
  110. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 この点はこの前苫米地議員の御質問のときにありましたので、事情を調べまして、直接係からお答えさすように、その当時お答えいたしたと思いますが、まだお手元にその資料が参つておりませんか。
  111. 苫米地英俊

    ○苫米地(英)委員 参つておりません。
  112. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 それではさつそく調べまして、資料をお届けいたします。
  113. 北澤直吉

    北澤委員 日本の業者と外国の業者との関係でありますが、御承知のように、外国の業者は海外に本店なり支店なりたくさん持つている。日本の業者は海外にそういうものがない。いわゆる盲貿易でありましてもそういう点で、外国のマーケットの事情というものは日本の業者は知らないが、外国の業者は知つている。日本の業者の人が外国に出張する場合においても、現在は最高三箇月程度のものであります。そういう、わけで十分の調査もできない。そういうわけで日々げ業者は外国の業者に比して、非常に不利な立場に立つているということは争えないのであります。西ドイツの例を見ますと、去年一月から十月までに西ドイツの業者は海外に千人ぐらい出ているということでありますが、日本ではせつかく外貨優先制度ができましても、去年一ぱいで百人ぐらいしか出ておらぬというようなわけで、西ドイツに比べましても、日本の業者の海外に出るものは非常に少い。こういうわけで非常な不利な立場にあるということは否定することができないと思います。そういうわけで、たとえばインドなり、あるいはパキスタン方面におきまして、日本の業者が行つて入札するという場合においても、非常な差別待遇を受けている。こういうことをよく聞くのでありますが、もちろんそれは日本の商社の支店なり、出張所なわが向うにできますれば、十分の工作なり運動もできますから、だんだんとそういう不公平はなくなると思うのでありますが、それまでの間におきましても、こういう方面において外国の業者と日本の業者との間の不公平、不平等というものは、なるべく取除くことが必要だろうと思うのであります。その点につき、ましで、通産天川の御意見をお伺いいたします。
  114. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 これは北澤議員の御指摘の通りでありまして、できるだけ盲貿易という弊を除きたい。例の外貨システムによりまして、仁たいままでに通商産業省を経て行かれましたものは、大体二百件に上つております。それから最近は例の技術雇用契約の形で、パキスタンだの、インドだの、シャムだの、そういう方面に出かけて行く人も相当ふえて参りました。それからまた為替予算の委譲によりまして実業家でありますとか、あるいは技術家の方方が、新しいアメリカの技術を研究するということで、今度一団をつくりまして出かけることになつたことは、御承知の通りだと存ずるのあります。そういう形でできるだけ海外へ人を派遣するということについてわれわれは努力いたしております。しかしながら御指摘のように、従来日本の商社が各方面に網をめぐらしておつた、出張所ある、ま常駐員がおつたとう形から比べますれば、まだまだわれわれの希望するところと遠いのでありまして、その点についてはこの上とも十分努力いたしたい、かように考えておるのであります。最近発表いたしましたように、通商産業省の職員がニユーヨークと、サンフランシスコのスキャップ事務所に常駐する、これはよほど向うの事情調査に、そうしてまた通商促進に役立つであろう、かように存じております。
  115. 北澤直吉

    北澤委員 次にお伺いしたいのは輸出組合の件でありますが、戰前日本貿易が非常に発展した時代におきましては、あるいは三井物産とか、あるいは三菱商事とか、大きな財閥を背景とする大きな貿易会社がありまして、これが国際的に非常な通商網を持ちまして大きな役割を持つてつたわけであります。ところが終戰後はいわゆる財閥解体によりまして、こういうふうな世界的だ規模を持つ大きな貿易商というものがなくなつた。従つて小さな貿易業者が多くなつたというわけでありますが、こういうふうなことでは、とうてい外国貿易に対抗できない。外国側におきましては、相当大きな規模を持つた業者がやつている。ところが日本では独占禁止法や何かの関係で、大きな業者ができない。それでなかなか太刀打ちができないのあります。これを救済するためには、どうしても小さな輸出業者を打つて一丸とした輸出組合をつくつて、その共同の力によつて対抗して行くという以外に、私は道がないと思うのであります。そこで政府の方でも、そういう輸出組合の結成ということにつきまして、いろいろ御盡力の跡はわかるのでありますが、なかなか実現しない。いわゆる独占禁止法とかあるいは事業者団体法とかいう関係で、なかなかできないのが現実の実情のようであります。ところがアメリカにおきましては、独占禁止法はあるのでありますが、ウエツプ・ポメリン法というものがあつて、独占禁止法の例外として、輸出組合については、それができるという立法があるのであります。そういうわけでありますので、ひとつ日本におきましても、これはアメリカの本国でもやつておりますので、輸出組合についてはそういう例外的な立法措置を講じまして、輸出組合の実現を可能にして、日本の輸出貿易におきまして、外国の業者と堂々と競争ができるような状態を実現していただきたいのであります。その点について、もしできますならば、これまでの交渉の経過あるいは大臣の御抱負を承りたいと思います。
  116. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 輸出組合をつくるということは、ことに海外に対するダンピングの防止、その他不正競争の防止といつたような面から見ましても、輸出組合の結成というものが実は非常に希望される点であります。ただ輸出組合法というものをつくります場合において、これが独禁法に触れるところがあるかないかの問題、また日本の事業者団体法にこれが抵触するかどうかという問題、この点が非常に輸出組合を結成するについての障害に実はなると思うのであります。それでそういう点について通産省といたしましても、相当長い間研究を続けているのでありますけれども、いまだ実は結論に達していないのは、はなはだ遺憾に存ずる次第であります。
  117. 林百郎

    ○林(百)委員 ちよつと関連して。簡潔にお尋ねしますが、通産大臣は先ほど、外票いろいろな点で優位な地位にある、それに対して日本貿易商から苦情がある、そのことを自分はよくわかつているので、その調整について適当な方法を講ずると言われましたが、その調整の方法、具体的にどうなさるのかということが一つ。そういうことが日本政府の力によつて可能であるかどうかという問題、それに関連しまして通産大臣は参議院で、外貨予算の点ももし国会で求められるならば、発表してもいいということを答弁なさつておりますが、発表なされるならば、それをひとつ発表していただきたい。実は香港あたりの貿易は、外貨予算をちやんと見抜いた上で、あるいはスキャップの方の割当を見抜いた上で、早耳でいろいろな取引をするという、非常に有利な立場にある。このために日本貿易商が非常な苦境に立つていて、結局外商のもとに従属的な立場に立たざるを得ないような状態にあるのであります。従つて先ほど申しましたように、通産大臣としてはいかなる調整をするか、また外貨予算国会で発表するならしてもいいと言われましたが、どういうことか、その内容を発表願いたい。
  118. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 私がさつき言つた点をちよつとおとり違いになつているようですから、まずそれから御訂正申し上げておきます。私が申し上げましたのは、北澤委員の御質問に対して私もそういうことを輸入業者から承つておりますと申したのです。その事実を認めるとか認めないとかいうことは申したわけではありません。もしそういうことがありますならば、何らかの調整の方法をとりたいと存じます、かようにお答えいたしたのであります。その点ばはつきり申し上げておきます。従つて御質問の趣旨と、少し違いますが、調整の問題をどういうように考えているかという御質問として、私御返事申し上げます。この点は私ここでどうする、こうするということを申し上げるわけには参りかねます。私は実際問題をとらえまして、それによつてそれぞれの場合について処置いたしたいと存じます。その点は御了承願います。  それから為替予算の問題を参議院で云々というお話ですが、参議院の予算委員会でしようか、何でありましようか、私まだ実はどこでもそんな御返事をしたことがないのですが、その点は何か間違いじやないかと存じます。その点をはつきりいたしておきます。
  119. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、通産大臣としては、日本貿易商と外商とが対等な立場で貿易ができるのであつて、別に従属的な不利な立場に立つておらないというように認識されているのかどうか、それは單なる日本貿易商の声だけであつて、事実は通産大臣としてはお認めにならないのかどうか、こがれ第一点。  第二の外貨予算の点については、あなたの先ほどのお言葉に、たしか外貨予算の委譲を受けているのだから、これを適当に操作するというようなお話がありましたが、たしかこれは向うから委任を受けているにすぎない。従つてもし日本貿易商あるいは日本貿易について自主性があるならば、外貨予算をどうなさるのかということについて、懇切なる説明を、この際していただきたいと思います。
  120. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 私は今それを認めるとか、認めないとかいうことを、ここで申しているのではありませんから、それとまた同様な立場にあるのかどうかということについてのお尋ねでありますが、そういつたことを訴える日本の輸出入貿易業者がありますならば、調整するという考え方は、今日同じでありますから、私はさようであるとかないとか、さようなことは申し上げられません。はつきりここで私の態度を申し上げる段階に達していないということをお答え申し上げます。  それから外貨予算云々とおつしやいましたが、私の外貨予算と申し上げましたのは、外貨予算効委譲によつて、実業家、機械関係の人、それから技術者を派遣することができるようになつたと申し上げたのでございますからその点は誤解のないように願います。
  121. 林百郎

    ○林(百)委員 通産大臣は、日本貿易商が外商と比べて非常に不利な立場にあるという声は開いているが、まだ声だけであつて、実情についての自分の判断は申し上げられないと言つていますが、それはすでに実際そうなつていると思う。声ばかりじやないと思う。もしそれをも通産大臣の地位にある方が、事実まだそうでないとお考えになつているならば、これははなはだ認識不足だと思う。その職責を果しておらない。むしろ現実がそうだから、こおをいかに調整するか、調整の具体的な方法考えて、これをわれわれに説明しなければならぬ時期だと思います。そこであなたの言われるように、日本貿易がそれほど自主性があつて、そんなことは單なる業者の声だというならば、外貨予算についても、具体的にどういう内容があるのか、また委譲を受けたと言いますが、その委譲を受けた外貨予算の運用の点も、明確に国会で讃明してもらいたいということを私言つている。あなたはどうも単なる業者の声だけであつて、実情は自分はまだ判断を示さないと言われておりますが、それは一種のごまかしじやないかというように考えますから、もう少し責任のある答弁を求めたいのであります。
  122. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 何度繰返しましても、同じことを繰返すのでありますから、私は意見の相違といたしておきます。
  123. 北澤直吉

    北澤委員 日本貿易の大部分は、いわゆる通商協定を中心として行われておるわけであります。ところがどう見ましても、二つの国の間で輸出と輸入の貿易のバランスをとるということは、員非常にむりなのであります。もちろん易現在のようなドル不足の時代におき十にしては、そういう方法をとらなければ、貿易は進展できないと思いますが、むいりに二つの国の間だけで貿易のバランスをとるということでは、なかなか日本貿易の進展は期し得ないと思うのであります。そこで日本の立場から申しますと、なるべく自由貿易の姿にしまして、日本の品物が世界の至るところにおきまして、いわゆる最恵国の待遇を受けるということが、日本貿易進展におきまして、最も望ましい状態であろうと思うのでありますが、そうするためには、日本がいわゆる国際貿易機構、その一部であります国際関税協定というものに参加すれば最恵国の待遇を受けることになるわけであります。もちろん国際貿易機構、国際関税協定に参加するということは、必ずしも講和條約ができなくても参加し得るのであり、また参加した例もあるのであります。もし外国側におきまして、日本の国際貿易機構あるいは国際関税協定に参加を認めるとしまして、その場合に日本はちやんとこれに参加し得る国内の準備態勢というものが整つておりますかどうか、まずその点を伺いたいと思います。
  124. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 できるだけそういうようなこれに参加し得る機会をとらえることを、まず第一番に考えなければならぬと思います。従つてまた同時にこれが態勢を整えておく準備をしておくことが必要であると存ずるものでありますが、通産省といたしましても、りこの点については、それぞれ担当にきまして検討をいたしておる次第でありまして、できるだけそういつた機会を一日も早くとらえるようにいたしたい、かように考えております。
  125. 北澤直吉

    北澤委員 政府の方でもいろいろ御準備中であるということでありますが、その中で最も大事なことは、私は関税の問題だと思います。昔は関税としいうものは非常に大きな役割を持つおつたのでありますが、終戰後は関税はほとんどなきにひとしい状態であります。ところが貿易も民間貿易になりますと、関税というものがまたもとの重要な役割を持つて来るわけであります。それからまた日本が国際関税協定というものに参加することを考えますときに、この協定に参加すると、今度は関税の引上げというものは非常に困難になりますので、私は将来国際関税協定、国際貿易機構に参加するということも考えて、なるべく早く日本の関税制度につきまして、新しい観点からいろいろ検討を加えて、この関税制度を確立する必要があると思うのでありますが、これにつきまして通産大臣の御意見を伺います。
  126. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 まつた北澤委員の御意見同感でありまして、関税の率その他の問題ついてわれわれの方として検討を加え、大蔵当局とも目下協議中であります。
  127. 北澤直吉

    北澤委員 通産大臣に対する質問はこれをもつて打切ります、  次に農林大臣に二、三点だけお伺いしようと思うのであります。第一点は、世界の食糧事情の見通しにつきまして伺いたいのであります。御承知のようにアメリカ、カナダ、濠州等におきましては、非常に戰中戰後を通じまして食糧の画期的な増産が行われまして、ことにアメリカの例をとつてみましても、一九四九年度におきましては、戰前の一三九%というわけで三割九分増加しておる。一九五〇年度におきましては、さらにこれを上まわつておるといとうわけで、アメリカにおきましても、食糧の生産状況は非常によくなつて心る。むしろ過剰状態を来しておるといわけでありまして、アメリカ政府におきましても、農村問題についてはいろいろ手を打つておるわけであります。こういうわけで私は世界の食糧事情というものが非常に好転しまして、ここ数年の後には私は世界的に食糧過剰の状態が来はせぬかと思うのであります。もしそういうふうな状態になりますと、私は日本の農村との関連におきまして、非常に考えなければならぬ重大な状態が来ますので、まず世界の食糧事情の見通し、次にそういう食糧過剰の状態は大体いつごろ来るのか、その点につきまして農林大臣のお見通しを伺いたいと思います。
  128. 森幸太郎

    ○森国務大臣 お答えいたします。お話の通り世界の食糧事情は大戰当時から見直して参つたのであります。しかし何年先に食糧が過剰になるということは予想はでき得ない問題でありまして、各国の人口の増加率に伴つて、食糧の生産が上つて行くということも考えなければならぬと存じます。アメリカにおきましてはなるほど戰前に比しまして三割ないし四割の増産をいたしておる。今では増産に対する政策を特にり行つておるようでありますが、世界国民が平和当時のごとくに十分なる糧をとつておるわけではないのであります。日本のごときもカロリーを制約れているような状態でありますので、別食糧の増産を、人口の増加が停止してもやれば、別問題でありますけれども、私は、そう食糧が世界に増産されて、それがためにその始末に困るというようなことは来るべきことではないと思うのであります。ただ日本にとりましては、生産過剰になつている合衆国等からダンピングを受けるような和合において、日本の農業を保護しなければならないという問題がここに生じて来るのでありまして、決してアメリカの農産物の増産が、日本を目当てになされるものではないと思うのでありますが、ただ価格の面において、今後世界の動きをわれわれは考えて行かなければならないと思うのであります。今通産大臣に御質問がありました関税等の政策の問題も、そういう場合においては考えなければならないと思いますし、またこの増産された外国の食糧を日本に輸入するということは、ただもらうわけではないのでありますから、これに対する見返りの物がなければならないということになるわけであります。従つて日本におきましては、この農産物の価格の維持等も、そういう場合においてはおのずから講じて行かなければならぬと存じますが、世界の食糧があり余つて世界の人間が非常な迷惑をするというようなことが、そう近く来るべきことではないと私は信じております。
  129. 北澤直吉

    北澤委員 問題は将来そういうふうな食糧過剰の状態の場合におきまして、今大臣がおつしやいましたように、安い食糧が日本に入つて来て、日本の農村に大きな影響を與える場合があり得るという点を心配するのでありますが、そういう場合におきまして、日本におきまして、現在のように主食の統制管理をやつておりますれば、これの操作によつて、少くも統制に入つておる農産物につきましては、ある程度価格を維持するということができるわけでありますが、統制をはずした農産物につきましては、もし将来安い食糧が入つて来た場合には、この価格が非常に下つて来るということをわれわれは心配するわけであります。将来、政府におきましては、主食の統制はどこまでも維持して行つて、そうしてそういうふうな安い食糧が入つて来る場合には、統制農産物については、その統制組織の運用によつてその価格を維持する、それから統制をはずされた農産物につきましては、何かアメリカでやつておるような支持価格と申しますか、最低価格を維持すると申しますか、そういうふうな方法をお考えでありますか、その点を伺いたいのであります。
  130. 森幸太郎

    ○森国務大臣 お答えいたします。外国の農産物で、特に日本として関心を持たなければならぬものは麦、米であります。麦は、生産の状況から申しまして、日本の麦は合衆国等の麦の生産には、その技術の上においても、また生産費の上においても対抗はできない立場にあります。しかしながら、現在におきましては、価格が非常に近寄つては参りましたけれども、まだ合衆国の麦は高いのであります。米につきましても、南方の米と日本の米とはおのずから性質がかわつて来ておりますが、これも民度の低い南方諸国におきましては、なお運賃等の関係から非常な高まわりをいたしておるので、今価格の面において圧迫を受けておるわけではありません。統制をはずしましたものといたしましては、別段海外の農産物と大して競争らしいものはないのであります。ことにいものごときは、日本におきましては特異な地位を占めております。ことにカロリーを同じ反別から上げるについては、いもが最も重要性があるのでありまして、このいもの生産につきましても、ある程度の奨励をして行かなければならぬと考えております。従つてもし将来において、先ほど申しましたような場合に処しましては、国家の手によつて食糧の管理を行う。国内の農産物ももちろん、外国から輸入せられんとするところの農産物に対しましても、国家の力によつてこれを管理して行くという制度に出ることが当然だと考えているわけであります。
  131. 北澤直吉

    北澤委員 次にお伺いしたいのは、国際小麦協定に対しまする日本の参加の問題であります。これにつきましては日本とドイツ—西ドイツでありますが、日独両国が参加を認められるような状況にあつたのでありますが、なかなかこれが実現しないというわけで、今日に至つているわけであります。それにつきましては、いろいろ事情があるようであります。特にイギリスの方ではそれに対しまして、いろいろの理由を並べて躊躇しているような状況でありますが、もしできますならば、この国際小麦協定に対する日本の参加につきまして、どういうところに支障があつて、なかなかこの参加ができないのかという点について、お伺いしたいと思います。
  132. 森幸太郎

    ○森国務大臣 この会議が開かれましても、日本とドイツの参加がまだ決定いたしませんのは、ドル地域とポンド地域との経済的関係と複雑な問題があるようであります。なお伝えられるようなことも存じないではありませんけれども、これもはつきりした問題でないのでありますし、ことに国際関係の問題にも及びますので、申し上げることを差控えたいと存じます。
  133. 北澤直吉

    北澤委員 もう一点、農林大臣にお伺いしたいのであります。農林大臣はたびたび、日本の食糧政策といたしましては、できるだけ食糧の自給度を高めるということをおつしやつておられるのでありますが、私ももちろんできるだけ日本におきまする食糧自給を高めるということについては全然賛成であります。そこで、これがうまく行つた場合、一体どの程度まで自給できるか。今の日本の人口状態考えますと、これはとうてい日本だけで、食糧の自給自足はできないわけでありますので、ある程度はどうしても外国から食糧を輸入することが必要であると思いますが、日本ができるだけ食糧の増産をいたしましても、一体どの程度まで自給できるか、その自給度の限度と申しますか、それを逆に申しますと、日本が全力を盡して食糧増産をやつた場合におきましても、一体どの程度まで外国食糧の輸入が必要かという点を伺いたいのであります。実はせんだつてこの委員会におきまして、近藤康男教授の公述がありました際に、近藤教授は、大体一年に一千万石くらい輸入すればいいのじやないかというようなことをここで述べられたので、私も実はそれに対して質問しようと思つたのでありますが、時間がなくてとりやめたのでありますが、一体一千万石くらいで輸入が足りるのかどうか。どうも私の考えでは、それくらいでは足りない。特に日本の人口増加の割合を見ますと、終戰以来今日まで四年間に九百五十万もふえている。そのうち五百万が復員、引揚げで、自然増加が四百五十万であります。そうすると、一年に百万以上ふえている。従つて食糧を増産しても、むしろ人口増加の方がよけいである。こういう状態考えますと、日本において相当程度食糧の増産をしましても、私はどうしても食糧の輸入が必要であると考えるのであります。そこで、日本における食糧の自給度の限界、あるいは日本の食糧の増産がうまく行つた場合、一体どのくらいまで食糧を輸入しなければならぬかという点について、農林大臣のお見込みを伺いたいのであります。
  134. 森幸太郎

    ○森国務大臣 お答えいたします。これはまことにむずかしいお尋ねでございまして、食糧は増産する程度に限界があります。お話の通り百二、三十万の人口が増加し、しかも現在におきましてはその基準量を規正いたしておりますから、まず人口の増加がそれほどにも食糧の需要量をめちやくちやにふやさないということにもなるのでありますが、これが自然の姿になつて来ますと、もつともつと一人当りの食糧の需要量がふえて行くのであります。従つて人口は増加する。一人当りの攝取量はふえて行く。そうして耕地の増産力を高めて行きましても、どうしてもこれを自給自足するということは、御説の通りとうていでき得ないのであります。従つて日本は人口がどの程度まで増加するのだ、それよりは増加しないという一つの目途がはつきりしますれば、その所要量も定められます。また定められれば、それに対して日本の生産力を推定してこれだけのものが不足する、こういうことが推定できますけれども、この限りなくふえる人口をつかまえて、自給度はどの辺だということは、私は判定に非常に苦しむと思うのであります。しからばどうしても自給することができない。そこで私が申し上げましたように、自給度を極力高めますと同時に、日本の自給力を旺盛ならしめる。いわゆる余る人口をして食糧を輸入する力を持たして行く。いわゆるそこに過剰労力と申しますが、人口が増加したその力を輸出貿易の方に投じまして、海外から食糧の輸入をするその力を高めて行くということでなければいけないのでありますが、今御質問のように、どれだけ、何パーセントまで自給できる、何パーセントまでは自給度が高められる、それ以上はできない、つまり一人当りの食糧がますます増加するということ、そうしてその單位の人間が数限りなくふえて行く、こういうものをつかまえて、どの程度が自給度であるということを申し上げることは私ははなはだでき得ない、かように考えるわけであります。
  135. 北澤直吉

    北澤委員 いろいろお話のように食糧の自給度などということは、人口の増加ともにらみ合せなければいけないので、算定はむずかしいのでありますが、一点だけお伺いしたいのは、結局先般近藤教授は輸入食糧は一千万石でたくさんだ、こういうふうなことをここで述べられておりますので、どうもこれは非常に誤解を招く、どうも私はその辺ではとてもとまらぬと思うのであります。何も確固たるものでなくてもいいのでありますが、大体のお見込みでけつこうでありますから、大体この辺くらいはどうしても食糧は輸入しなければいかぬ、あるいは日本におきまする食糧の需要量は、大体この辺の見当は輸入に仰がなければならなぬ、こういうことは私は見当がつくと思います。それによつて日本の食糧政策を立てなければならぬと思いますが、その大体の見当でけつこうでありますから、その点をお伺いしたい。
  136. 森幸太郎

    ○森国務大臣 一千万石と言つたそうでありますが、御承知のように二十四年度、一年度においては百八十万トンの輸入によつてようやく二合七勺の基準配給ができたような現実から考えまして、今後食糧の増産をいたしましても、今申しました人口の増加率等から考えまして、一千万石くらいの輸入食糧においては、日本の食糧は維持できないということは御了承願いたいと思うのであります
  137. 北澤直吉

    北澤委員 以上をもちまして農林大臣に対する質問を打切りまして、総理大臣、大蔵大臣、運輸大臣に対する質問を留保いたしまして終ります。
  138. 植原悦二郎

    植原委員長 農林大臣は時間が少しあるそうですから、次に農林大臣に対する質問がありましたらお許しいたします。平川篤雄君。
  139. 平川篤雄

    ○平川委員 私の質問は地方財政平衡交付金の問題に関連をしてお尋ねしたいと思つてます。  まず一番に、公共事業費の中の農業災害に関する補助について全額国庫負担の原則が適用されないと聞いておりますが、それの理由、また農林大臣としての御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  140. 森幸太郎

    ○森国務大臣 お答えいたします。災害復旧に対しまして二十五年度に限り国庫が全額負担するという方針をきめまして、近く御審議を願うということになつておるのでありますが、この考え方は地方公共団体が維持管理し、地方公共団体が施行し、また政令で定められるものについては、従来国及び地方公共団体が負担して来た部分を全額国庫で負担する趣旨になつておるのでありますが、農業については従来は何割の補助ということにしておりましたので、全額国庫負担のその趣旨に沿わない。こういうことで除かれておるものであります。
  141. 平川篤雄

    ○平川委員 これは農林大臣の方の御管轄ではないのでありますが、例の河川港湾等の災害復旧に対しまして、十五万以上の件に対して全額国庫負担する、それ以下のものはやらないというような御方針であると聞いておりますが、ところがこれは農村におきまして十五万というわくは、あまり大して大きなわくでないように見えましても、これをもう少し下げることによつて、いろいろ農村の方は大きな福音がもたらされるように思うのであります。これは農林大臣の直接の御所管ではありませんが、この程度をもう少し下げることによつて、農村にもその利益が受けられるように努力をしていただく御意思があるかどうか、ひとつお伺いいたします。
  142. 森幸太郎

    ○森国務大臣 この十五万という基準を置かれたことについては、いろいろ研究、検討を加えられておることと考えておりますが、十五万円というと、大したことでなしに、災害で一反歩の耕地がすつかり土砂になつてしまつた。それをもとの方へもどすにいたしましても、今日は労賃等が高いから、十四、五万円はかかるということも聞いておりますし、災害として十五万円といえば、大体のものが潤うのではないか、かように考えておるわけであります。農林省関係につきましては、他の方法によつてこの漏れたものに対しての助成をいたしたいと、今検討を加えておるわけであります。
  143. 平川篤雄

    ○平川委員 それから今度は全然別の方面でありますが、土地改良法が施行をせられたわけでありますが、それと同じような必要性をもちまして、国有林野の問題について農林大臣の御計画を承りたいのであります。すなわちこの薪炭林野、採草林などとして要求をしておりますものの拂下げ、あるいは農用林として非常に便利の惡いところにあります私有林を、田畑に近いところの国有林と交換分合するというようなことは、各地の農民が非常に要求をしておるのでありますが、かような点は土地改良法によつて交換分合を指導しておられる政府として、やはり率先やつていただきたいことのように思うのでありますが、この点について農林大臣の御意見を承りたいと思います。
  144. 森幸太郎

    ○森国務大臣 これは現実の問題によつて考慮しなければならぬかと思いますが、農業に必要な林野というような程度ですと、ほんとうの森林として密植されておるような林でないと考えるのであります。あるいは下草を刈るとか、あるいは放牧もできるというような林野として考えられるのでありますが、国有林もこれを必要なものに対しては国家が管理して行かなければなりませんが、その実情によりましては、どんどん民間に拂い下げている場合のものも相当あると存じまして、現実の問題について検討を加えたいと存じております。
  145. 平川篤雄

    ○平川委員 ただいまのことについてもう一度お伺いいたします。それは何と申しますか、営林署等の調査とか、あるいは許可によつてできる範囲にあるのでありますか。それとも全然新しく拂下げの問題について、政治的に、一般的におきめにならなければ実行できない問題なのでありますか。
  146. 森幸太郎

    ○森国務大臣 これは管理いたしております営林局等の方針によつて処置できるものもあると思います。しかしこれは学校の経営いたしております国有林、いわゆるある局部的にまとまつているというので、その管理が相当合理的に行われるというのに、学校の方へこれを拂い下げるということも考えられますし、これはその実情によつて農林省内において決定できることと考えております。
  147. 平川篤雄

    ○平川委員 これは大蔵大臣に主としてお聞きしたいことなのでありますが、農林大臣にも非常に大きい関係がございますので、聞きたいと思います。たびたび言われておることなのでありますが、どうもその都度聞きましても、納得ができないのであります。現在の政府があらゆる物価を国際価格にさや寄せして、それによつて企業の合理化を促進するという大方針を示しておられますが、国内の米価につきましては、この方針をまつたく放擲せられております理由について、いくつ聞いても明らかでないのでありますが、納得できる程度お話を願いたいと思います。
  148. 森幸太郎

    ○森国務大臣 お答えいたします。御納得が行くかどうか知りませんが、今日の日本におきましては、賃金諸物価が安定するということが、すべての産業の安定するもとだということの考え方から、それが堅持されているのであります。それで米の価格におきましても、生産費のことはたびたびここで申し上げますように、種々まちまちでありますので、どれがほんとうの生産費かということは、農林省の統計によりましても、なかなか把握が困難であるのであります。ただ多数のものの結論から得ました統計によつて、大体の平均を定めているような次第でありますが、今日定めております米価のやり方は、米を生産するに必要な資材を買いました物価を基礎として定めるということにいたしており、消費者の立場もまた生産者の立場も大体それによつて満足し得られるというこのパリテイー指数によつて算出しているのであります。今後統制をはずしまして、これが自由になつた場合には、おそらく海外の食糧が、今日のような情勢を続けておりますれば、これにさや寄せいたしまして日本の食糧も高くなると存じます。高くなつて来る場合には、労賃等にも影響を及ぼすことになると存じますが、その場合におきましては、いわゆる自然の成行きによつて物価が上つたり下つたりするということが、おのずから生じて来ることと考えるのでありますが、現在の場合におきましては、消費者、生産者ということを考慮いたしまして一定の価格を定め、そして外国の高い食糧が入りましたものについては、消費者の迷惑にならないようにこれを処置して行くという制度をとつているのでありますが、今後において経済界の動きによりましては、おそらくそこにかわつた現象が起つて来ることと考えるのであります。そういう場合において、先ほど申しました日本の農産物が非常に高い、しかも外国から安い農産物が輸入される場合には、これに対処する適当な政策を行つて行くことはもちろんでありますが、今日の場合といたしましては、そういう気持で消費者と生産者の立場を考慮して、今日の価格を算出しているわけであります。
  149. 平川篤雄

    ○平川委員 ただいま農林大臣の言われることは、それとしては大きなりくつであると思いますが、しかしそういうことは、結局結論において外国食糧の価格が日本の価格にさや寄せされるのを手をつかねて待つているということが実現したときには、もう立ち上りがたいときが農村に来ているということになる。それでは農業の合理化をやることはできないのでありまして、私どもとしては、今やらせないではいつできるか、こういうふうに聞きたいのであります。かような点については、政府筋にももはや最低価格の支持制度の問題などについて、いろいろお考えになつているように聞いているのでありますが、こういうふうなさや寄せをしなければならないときに、わざわざ押えているようなことを一方でやりながら、最低価格支持制度を設けることを考えるということには、大きな矛盾があるように思うのでありますが、その点はどうですか。
  150. 森幸太郎

    ○森国務大臣 先ほど申しました今日日本が賃金等の安定を持続しなければならない際におきまして、今申しました政策をとつているわけであります。米価に対して安いとか高いとかいういろいろの御議論もありますが、これは見方によりまして、すでに地方によつては、公定の価格より下まわりしてまで売るという向きも聞かされているのであります。少くとも今日の価格は消費者と生産者との立場を考慮して行き、また生産もこれを基準としての農業経営を考えて行く、また奬励して行くということに、政府はしばらくの間は持つて行かなければならぬ、これを自由な立場に置くことはまだ時期尚早であると考えているのであります。
  151. 平川篤雄

    ○平川委員 ただいま農林大臣の言われるマル公に近い、あるいはそれを下まわつて売られているという事実は、むしろこういう米価が安いということに原因をしているように私どもは理解しているのでありますが、この点についてはまた大蔵大臣にお伺いすることにいたしまして、他のことについてお聞きをしたいと思います。  これも大蔵大臣にお聞きしたいことなのでありますが、二月二日に米国の陸軍省筋が日本向け援助費は二億七千二百万ドルになるであろうと言明したということが伝えられているのでありますが、この確実性について農林大臣のお聞き及びになつている範囲でお聞かせを願いたいと思います。またこれが真実をであるとすると、邦貨に換算いたしまして、見返り予算の上で三百六十四億ばかり不足になると思う。このことは食糧輸入等に相当影響するのではないかと考えておりますが、その点の見通しはどうでございましようか。
  152. 森幸太郎

    ○森国務大臣 御質問のような措置が新聞記事に現われたことを記憶いたしておりますが、これは正式な通告を受けたわけではないのでありまして、私はそれがほんとうであるか、あるいは一つの想像であるか、はつきり私としては承知しておりません。
  153. 平川篤雄

    ○平川委員 それでは最後に一点だけお伺いして終りたいと思います。本年度の農業関係の災害ついていろいろ予算が組まれているのでありますが、しかし予算書の説明にもありますように、それがごく一部分にすぎないのであります。今後の地方財政のことを考え、あるいはここ当分の日本の経済復興がかなり遅々として行くのじやないかということを考えますときに、一体ただいままでの災害——今後起る分は別といたしまして、それを何年かかつて修復するのであるか。こういうことについて御計画は当然あるべきだと思うのでありますが、その点に年次計画がございますならば、お開かせを願いたい。
  154. 森幸太郎

    ○森国務大臣 過年度の災害に対しましては、二十二年度まではその全額、二十三年度の災害に対してはその三割、こういうふうに災害を復旧するということになつておるのであります。二十四年度の農地復興事業の中で、経費の関係上、二八%二十五年度にやる。その残り七二%はこれを二十六年度に持ち越してやる。これが予算の上において計画を立てているのであります。
  155. 平川篤雄

    ○平川委員 ただいまのは二十五年度と二十六年度の計画で全部が完了するという計算でございますか。そうではないのですね。さしあたり、本年度はそうなさるというだけであつて、災害について明年度、明後年度というような年次計画というものは、まだはつきりしていないわけですか。
  156. 森幸太郎

    ○森国務大臣 災害の二八%を二十五年度において達成する。残りを二十六年度に七二%完成するという計画を持つているわけであります。
  157. 平川篤雄

    ○平川委員 それはいつの災害ですか。
  158. 森幸太郎

    ○森国務大臣 二十四年度の災害であります。
  159. 平川篤雄

    ○平川委員 二十三年度は本年三割やられるということになつている、その分が残るわけでありますが、それはどうなんですか。
  160. 森幸太郎

    ○森国務大臣 二十一年、二年、三年と災害がありましても、それが完成しておらなかつたのであります。二十五年度にそれらのものに対して、ずつと二十年度のも残つてつたと思つておりますが、そういうものを二八%二十五年度にやる。こういう考え方であります。
  161. 平川篤雄

    ○平川委員 よくわからないのですが、これはまた分科会で詳しくお聞かせ願いたいと思いますが、はつきりこれは資料を御提出願いたいと存じます。農林大臣に対する御質問はこれだけにしておきます。
  162. 植原悦二郎

    植原委員長 平川篤雄君に具体的にどういう資料を分科会のときまで必要であるか書いて、委員長の手元まで至急にお出しを願います。——林百郎君
  163. 林百郎

    ○林(百)委員 法務総裁にお尋ねしたいのでありますが、午前中の北澤議員の質問中、日本共産党に対する取締りの問題について、法務総裁の答弁があつたのであります。それにつきましてわが党から米原君の関連質問があつたのでありますが、実はこの際さらにわれわれとして法務総裁にお聞きしたい問題があつたのであります。それは本日特審局から出たのでありますが、共産党の六団体団体等規正令違反の容疑をもつて先発されたという事実であります。まずとりあえずこの事実がどういうことかということから御説明願いたいと思うのであります。
  164. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 それは団体等規正令によりまして、届出をしなければならない細胞がありますのに、届出をしておりません。従来たびたび細胞も届出をするように御注意をしておるのでありますが、なかなかそれが十分に行き渡りませんので、もういつまでも待つておれませんから、今後は届出をしない細胞はただちに告発いたしまして、そうして犯罪の捜査をする。その上でそれが犯罪になれば起訴をいたします。まだ起訴をする、せぬの段階には達しておりませんが、特審局の手を離れまして、検察庁の手に移すという段階に至つたのであります。
  165. 林百郎

    ○林(百)委員 この問題につきましては、私が実は党の方の連絡者となりまして、しばしば特審局と連絡をとつたのである。その際特審局との了解の事項としては、正式な共産党員というのは、中央委員会の承認を経たものが正式な日本共産党の党員である。従つていわゆる党員と言われる者の中にも、中央委員会の承認を経ないところの、いわゆる正式な党員でない者もありますし、それから正式な党員もある。その問いろいろ複雑な事情がありますから、可及的すみやかに特審局の方へ届出をする、それで十分である。特審局の方もなるべくそういうように努力をしてもらいたいということの了解、われわれの方もなるべく届出をさせるようにという了解が従来あつたのであります。それでもし将来こういう問題がある場合には、一応共産党へ連絡をし、しかも党の中央委員会なり、あるいは本部の責任者に連絡をしてから、万一情状許すことのできないような問題がある場合には、適当な処置をとるけれども、そういう場合には一応党へ連絡をするという了解があつたのであります。しかしこのたび突然この細胞に対して直接告発され、何ら党本部へ連絡がない。御存じの通りに、共産党というのは一つの政党でありまして、その最高の責任は明らかに党本部にあるのであります。少くてもこうした細胞なり末端の組織に対して、団体等規正令違反の嫌疑があるならば、本部に十分の御忠告してから後に、こういうことをすべきでありますが、突然末端の細胞に対して、こういう処置をなされた理由はどういうわけか聞きたいと思うのであります。
  166. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 原則的にたびたび党本部に連絡をいたしまして、御注意を申してあつたのでありますけれども、それが徹底をいたさないと見えまして、なかなか御注意しておるような手続が行われませんので、今度はもうよくよくのものだけを告発いたしたのであります。御承知のように、なるほど党の細胞ではありますけれども、それが党員であろうとなかろうと、細胞自身が国または地方の政治に影響を及ぼす目的をもつて、何人かの人が団結をしておるというならば、それが共産党の細胞であろうと、あるいは細胞でなかろうと、あるいは共産党員であろうと、なかろうと、やはりそれ自体が団体等規正令によつて届出をする義務がある。従つて実ば林さんのいろいろ御暴力を得ておるのでありますけれども、なるべく協調いたしまして、摩擦のないようにいたしたいと思つて、これまで盡力いたして来たのであり辛けれども、なかなか徹底いたしませんので、思い切つてごく数箇のものでありますが、告発をいたしまして、検察の手に移しまして、これがほんとう団体等規正令の違反になるかどうかということを、もつと厳格に調査をいたしまして、そして最後の決定をいたしたい、こういう考えであります。
  167. 林百郎

    ○林(百)委員 まず第一に、これらの細胞があるということと、この細胞に中央委員会の承認を経た正式な党員があるにもかかわらず届出をしなかつたということになれば、団体等規正令に違反しますけれども、中央委員会の承認を経た正式な党員がここにあつたかなかつたかという事実についての調査はどうなさつたか。またこれらの細胞が正式な中央委員会の承認を経た細胞であつたとするならば、その証拠がどこにあるかということをお聞きしたいと思います。
  168. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 正式の党員であるかないかを調査すればなおけつこうでありますが、調査しなくてもよろしいのであります。共産党だから届出させるのじやありませんので、一定多数の人間のグループが政治活動を目的とする、だからそれは届出をしなければならぬ、何も共産党員でなくてはならぬことはないのであります。(「党員でなければ細胞ではない」と呼ぶ者あり)共産党細胞であるから、ないからということは、大した問題じやないのであります。
  169. 林百郎

    ○林(百)委員 私たちの了解するところによれば、共産党の正式の党員であるにもかかわらず、正式の党員として党活動をしておるにもかかわらず、その届出がなかつたから、これは団体等規正令違反だということで告発されておると思うのであります。ところが今法務総裁の言葉を聞くと、党員だかどうかわからない、それでも団体等規正令違反だということになるとまつたくこれは意味をなさなくなる、切り捨てごめんになると思う。こういうことがあるから、私が責任者として特審局と連絡をして、共産党はそういうような手続を経ないと正式な党員にならないから、その辺はいわゆる世間で見て共産党員と言われても、これは党内において正式な党員であるかどうかということはむずかしい問題であるから、その辺は十分愼重に取扱うように、特審局もその通りだという返事をちやんと得ておるわけであります。だからわれわれの間にそういう了解があるにもかかわらず、この六団体を告発したということになるならば、特審局としては、これは正式な党員である、中央委員会の承認を経た正式な党員であるにもかかわらず、これが届出をしなかつたという有力なる証拠、動かし得ない証拠がない限り、こういうことはできないはずである。この点について総裁の考えをお聞きしたい。
  170. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 共産党の細胞だと考えてやつておるのでありますけれども、しかしながら共産党員でなければそれは届出をさせてはならぬということはない。民自党員であろうと、民主党員であろうと、地方あるいは中央において一定多数の人間が集まつて政治活動をするという団結であるならば、それは届出をしなければなりません。それが共産党であろうとなからうと、それは問うところではない。但し共産党のさような細胞は、共産党の本部でよく統轄をされて、政府とよく協調されて、法律に違反しないようにやつておられることはよく承知しております。しかしながらさればといつて、全部共産党におまかせしておるわけではないのでありますから、政府政府の見るところをもつて、適当に処置するほかはないと思います。
  171. 林百郎

    ○林(百)委員 この問題については、私は殖田法務総裁自身ともお話して了解を得ていたはずであります。あなたは非常に答弁を逃げておりますが、民自党であろうと何党であろうと届出をしなければ違反である、それはわかります。そこでわれわれはこれが正式な共産党の細胞であり、共産党員であつたという証拠、ここに何人の共産党員がおり、それが中央委員会の承認を正式に経ているにもかかわらず、届出をしなかつたという証拠があるなら、ここに見せてもらいたいということを私は言つているのであります。
  172. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 これは何もそこまで嚴格に共産党員である、中央の承認を得ているかいないかということを吟味する必要はないのであります。(「それを吟味しなければわからない」と呼ぶ者あり)何でもないじやありませんか。何人か集まつて政治活動をしているということであるなら、それは届出をしなければならない団体であるのであります。ただ共産党の細胞であるならば、共産党自身がふだんから違法のないように注意をしておられますから、それはなるべく共産党と協調して手続を進めたい。従つてその原則論は何べんかこれは御相談しておるのであります。しかしながら、その共産党の誠意ばかりに依頼しておられないような事態に立ち至りましたから、そういう届出をしていない団体が陸続出て来るものでありますから、その中の最も顕著なもののみを告発したのであります。
  173. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、これらの六団体というものは、法務総裁は共産党かどうかわからないということですが、しかし何らかの政治活動をしておるから告発なすつたというのですか。
  174. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 私は共産党の細胞であると心得ております。しかしながら嚴格に共産党の党規に照して、それが共産党の細胞であるかどうかということを私は確かめる必要はないと思います。
  175. 林百郎

    ○林(百)委員 非常にあいまいな答弁だと思うのであります。明らかに共産党員であり、共産党活動をしているにもかかわらず、共産党員としての届出がなかつたから告発するというのならわかりますけれども、共産党員かどうかわからない。しかし何らかの政治活動をしていたから、それを届けなければ団体等規正令違反だ。それで告発したというなら、何も共産党の六団体じやないのです。一種の政治活動をしていたものの団体なら、共産党の六団体として告発すべきものでないと思いますが、そうすると、あなたの方の告発はどういう名義でされているかという点。  それからもう一つ、もしこのような者までも共産党員であると一方的にあなたの方が見なして、届出をさせるならば、今特審局に届け出ている各党の党員の数——共産党、社会党、民自党の党員数をここで発表していただきたいと思います。
  176. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 私は共産党の細胞であると思いましたから、共産党の細胞といつて世間に発表したのでありますけれども、それはただいまの団体等規正令の適用におきましては、共産党員であるかないかを絶対的な要件としていないのであります。それはあつてもよい。なくてもよいのであります。私ども共産党の細胞と考えて告発しましたが、林さんは共産党でないとおつしやつても、それは告発の正否に何ら関係するところがないということを申し上げておるのであります。  それから今の数字でありますが、これはただいま持ちませんから、追つて御報告いたします。
  177. 林百郎

    ○林(百)委員 大体の数でありますが一体団体等規正令で各政党のうちで届出数の一番大きい政党はどこですか。
  178. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 もし正確を失するといけませんから、今すぐ数字を取寄せてお知らせいたします。
  179. 林百郎

    ○林(百)委員 ここで法務総裁と討論しても限りがありませんから、私の方も実情調査をしてもう一度あなたにお聞きしたいと思いますが、われわれが納得できないことは、先ほども申し上げました通りに、あなたは共産党であろうとなかろうと告発できるのだということ、われわれは正式な共産党員であり、共産党の活動をしているにもかかわらず、これが届出をしなかつたということに、団体等規正令違反の嫌疑ありとして告発されるなら、わかりますけれども、何をしているかわからないが、何か政治活動をしておるから、これは団体等規正令違反になるといつて、共産党を告発するが、よその党、ことに民自党のごときは、最もいろいろなことをしている。しかるにこれに対しては、一つも告発も何もしておらない。共産党のみを告発するというのは、明らかにあなたの弁解いかんにかかわらず、共産党を彈圧するものだとわれわれは解釈して、その問題ついては私の質問時間に正式にあなたにお尋ねしたいと思いますが、そういう共産党に対する弾圧こそが、かえつて国の将来を傷つけるということを、ひとつあなたに御忠告しておいて、この問題に対する私の質問を打切ります。
  180. 植原悦二郎

    植原委員長 次に岡田春夫君に質疑を許します。
  181. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 官房長官どうしたのですか。
  182. 植原悦二郎

    植原委員長 官房長官は四時に来るはずでありましたが、今渉外局へ行つて手間取つているそうですが、何時に来るか今問い合せております。
  183. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 至急出席を督励してください。
  184. 植原悦二郎

    植原委員長 ただいま殖田法務総裁と松本捜査第二課長が参つておりますから、その方面に対して御質問を願います。
  185. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 私は綱紀粛正の問題について今日は総理大臣並びに増田官房長官に特に伺いたいと、かように考えておつたのでありますが、総理大臣並びに——特に増田官房長官は私との約束があつた四時までにお見えにならない。こういう状態では、綱紀粛正の問題について徹底的にお伺いすることは、増田官房長官がお見えになつてからにしたいと考えております。しかしながらこの問題につきましては、当然検察庁の関係にもなりますので、法務総裁にもここでとくとお話を伺いたい。かように考えておりますけれども、その前にまず第一に先ほど林君が質問をいたしました団体等規正令の違反の問題につきまして、右翼の解散団体の件についても、今日は発表になつているのであります。現内閣は共産党あるいは左翼団体についてはとかく積極的に私たちの考え方をもつていたしますならば、むしろ彈圧的な態度までもつて臨まれているにもかかわらず、右翼の団体については、必ずしも積極的な措置を講じておられるようには、今まで見ておらなかつたのでありますが、特に昨年の十一月参議院の本会議におきまして、根本元中将が台湾に日本人の義勇軍を組織してこれを連れて行つたという問題につきまして、このことが参議院の一議員かち質問せられまして、法務総裁はそのような事実があつたことを認められている。しかもこの事実に対して、帰つて来たならは厳重に処罰をするということを明確にお話になつているはずであります。ところがこの根本元中将と行をともにいたしました吉川元中佐という兵隊が、去る一週間前に宮崎県の延岡というところにひそかに上陸をいたしております。この点につきましては今朝の朝日新聞にも吉川元中佐に対しての会見談が明確に出ておりますが、殖田法務総裁は上陸と同時に嚴重に処罰するということを、参議院の本会議で昨年の十一月にお約束をされているにもかかわらず、いまだにこれが処罰もされておらなければ、逮捕もされていないという実情が暴露されたのであります。この点につきまして私はまず第一にお伺いをいたしたいと思いますが、特に最近において戰争の危機がだんだん感じられるときにおいて、国内において旧軍人あるいは軍国主義者、あるいは特高の追放組の諸君が、ひそかに戰争の危機の中にその間隙に乗じて地下組織をつくつて、これが策動をしているというような事例が相当ひんぴんとわれわれの耳入つて参るのであります。こういう事態に対して法務総裁はいかなる措置を講じられているか。まず第一は吉川元中佐の問題と、この追放組の問題についていかにお考えになつているかを伺いたいと思います。
  186. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 左翼に対しましても右翼に対しましても、極端なものは断固取締る方針でありまして、特に左翼が非常に弾圧をされておるようなことをよくおつしやるのでありますが、そんな事実はありません。現にほとんどないのであります。たまたま今度告発した程度のものであります。右翼につきましても十分に注意をいたしまして、これが取締りにはうんと力を入れたいと思つております。しきりにいろいろなルーマーにつきまして調査をいたしております。いずれその結果がどんどん出て参ることと思うのであります。それからただいまの根本元中将の問題、吉川、元中佐の問題でありますが、これは私が細川君の質問に対して、今岡田君のおつしやつた通りの答弁をいたしたのであります。そしてこの吉川は帰つて参りました。ところが吉川の措置につきまして渉外関係の面で考慮を要すべき点を発見されたのであります。実はその点につきましてただい、折衝中であります。従つて処置が遅れておるのでありまして、はなはだ申訳ありませんが、そういう事態であります。
  187. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 吉川中佐の問題につきましては特に不明確なのでありますが、われわれの解釈する限りにおいて、憲法第九條においては日本の国が戰争の中に参加することを禁止されておると同時に、日本国民がこのような戰争の渦中に入つてはならないという趣旨が毒かれておりますし、あるいはまた現在連合軍の占領下におきまして、日本の国外にいかなる理由があるにせよ、何らの許可なくして根本一行がひそかに脱出したという限りにおいて、日本の現在の憲法並びに国法のもとにおいては、連合国あるいは関係方面とどのような関係があろうとも、法務府としては断固たる措置をとり得るはずであるとわれわれは解釈をいたします。にもかかわらず、いろいろな関係をもつてこの点がいまだに延びているというお話でありますが、これはきわめて不明確であります。こういう点をもう少しはつきりしたお話を願いたいと思います。もう一つは今申し上げた途中においても申し上げた通り、日本国民である限り、他のいかなる国家間における戰争においても、これに対して参加するということは、明らかに憲法違反であるとわれわれは解釈をしている。この点について法務総裁はいかに考えられておるか。この二点だけをまずお伺いしておきたいと思います。
  188. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 ただいま申し上げました通りに、渉外関係があると申しますことは、日本の国外に出ますときには許可がいる。それがつまり渉外関係でありまして、その点に不明確な点がありまして、そこでただいま折衝を続けておるわけであります。それから憲法の問題でありますが、その通りでありますが、憲法に違反するからと申しまして、ただちにこれを犯罪として処罰するというわけにも行かないのでありまして、ほかの刑法その他の法令にまた特別な規定がありまして、それに触れて初めて処罰をされるのであります。ただいまのところ吉川という人たちの処置は、その渉外関係の問題が解決いたしますれば、自然解決するものと考えております。
  189. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは次に進んで参りますが、先ほど戰犯追放者の地下組織の問題につきまして、非常に明確でない御答弁があつたと思うのであります。私がここでこういうことを申し上げましたのは、私自身一つ資料を持つているから申し上げたのであります。必要があれば資料を申し上げてもよろしいのでありますが、ここで一般的にひとつお伺いいたしておきたいと思いますが、少くとも戰犯追放の該当者である限りにおいて、これらが政治的な活動を行つた場合に、これは裏面であろうと表面であろうとにかかわらず、断固たる措置をとるべきであると考えますが、これについてはいかがお考えですか。
  190. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 それは断固たる処置をとるのであります、現に数日前に四人の人を告発しておりますことを発表いたしました。ただいまお話のようないろいろな事実の聞き込みもありますし、ルーマーもあるのであります。それに基いて鋭意調査をいたしております。しかしこれはいずれも調査あるいは捜査の範囲に属しますので、私がここでああいうことをやつておる、こういうことをやつておるということを申し上げることはできかねますから、御了承願います。
  191. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それではこの問題についてはあとで私から具体的にお伺いをいたして参りたいと思います。——官房長官まだでございますか。
  192. 植原悦二郎

    植原委員長 今渉外関係から帰つて来られる途中ですから……。
  193. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは官房長官が参りましてから、法務総裁にもまた一緒に伺いたいと思います。綱紀粛正の問題についてお伺いいたします。これは昨年われわれも反対をいたしましたが、現内閣は行政整理の名前で下級職員をどんどん首を切つておられる。ところが今度の総理大臣の施政演説を拜聽しても、これは意識的ではないのかもしれませんが、ともかくも綱紀粛正の問題については一言もお触れになつておらない。ところが最近官吏、特に高級官吏の間において不正事件が相当続発いたしております。少くとも新聞の上で続発の傾向にあるとわれわれ拜見をいたします。しかしながらこのような不正事件は、当初新聞の上できわめて大きく取上げられながらも、その後において行方が不明になつてしまつておるのが相当あるように感ぜられる。あるいはまた検察庁においても、何かこれは手控えているのではないかと感ぜられるようなことが再三にわたつて伝えられ、あるいは聞いておるのであります。特にここでお伺いしたいことは、起訴になりました者が、ある一定のときになつて釈放をされても、もう一人の起訴になつた者と相対の者が——これは高級官僚でありますが、全然取調べられないでそのままになつて、しかもその事件は最近に至つて追起訴が行われて、検事局において事件の進行をわれわれは想像されることがあります。こうなつて参りますと、この二人の間の事件というものが全然両方が釈放され、あるいは調べられておらないために、結局証拠の隠滅でそのままうやむやになつてしまうというような危險が非常に感じられるのであります。これは非常に奧歯に物のはさまつたような言い方でありますが、私率直に申しますと、この間新聞にでかでかと出ておりましたが、通産省の資源庁の岡田鉱山保安局長が、贈賄事件として近い中に召喚されるであろうということが、二月二日の記事にどの新聞においても明確に出ておる。しかもこの事件の相対の佐藤昇という——これは一月四日に起訴になつている男でありますが、この男は二月三日に釈放になつておるのであります。そうなりますとこの二人の関係において、娑婆において相当いろいろな取引が行われて、証拠隠滅の危險性があるとわれわれは考えておるのであります。この点についてあとあと続いていろいろ伺つて参りたいと思いますけれども、このように被疑者並びに起訴になつた者がそののまま放置されておつてよいか、これが特に起訴になつて検察当局の手に渡つておる場合において、われわれとしてこういうことけ常識的に考えられない。こういう点についてはいかに法務総裁はお考えになつておるか。まず第一にこの点からお伺いをいたして参りたいと思います。
  194. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 私はその事件の具体的なことについて詳しくは存じません。多分法規に照して適当な措置をとつたものと思います。今日の刑事訴訟法においては、非常に民主的にできておりますために、従来の日本の刑事訴訟法のごとく、検察庁の都合によつて容疑者をことさら長く監獄に引きとめるとかいうようなことはしないのでありまして、その点では実ははなはだ寛大に見えるようなうらみがあるのであります。しかしそのこまかい点については、幸い刑政長官が来ておりますから、刑政長官から御答弁いたさせます。
  195. 佐藤藤佐

    ○佐藤(藤)政府委員 ただいまお尋ねの事件については、私の方もまだ具体的に報告を受けておりませんので、新聞を見ておる程度であります。なお御疑問になつておられます、新聞に出た事件が、そのまま検察庁へ来て消えてしまう事件があるかというふうに拜聽したのでありますが、新しい刑事訴訟法及び警察法においては、検察庁と全然関係なく、警察において独立して捜査する制度になつておりますので、あるいは警察において嫌疑をかけて捜査したけれども、そのまま嫌疑が十分に認められないで、検察庁においてこれを起訴するというふうな、濃厚な相当な理由がなかつた事件が、警察限りにおいてそのまま消えてしまうということもあり得るのであります。警察で十分嫌疑があつて、その嫌疑が相当事由があるのに、検察庁においてこれを故意につぶしてしまおうというようなことは全然ないはずであります。
  196. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは通産政務次官がお見えになつておりますのでお聞きいたしますが、鉱山保安局長の岡田秀男という人は、現在鉱山保安局長の現職のままでありますか。
  197. 宮幡靖

    宮幡政府委員 ただいま資源庁の鉱山保安局長をいたして、在職中でございます。
  198. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 この問題につきまして、通産省内において、このような新聞が出たことについて何らか岡田局長に対してお調べになるというか、事情をお聞きになるというような事実はございましたかどうか。
  199. 宮幡靖

    宮幡政府委員 ただいま岡田委員からお示しになりました新聞の日付と思いますが、二月二日の日でございますか、ちようど国会内の政府委員室へ岡田春自身現われまして、夕刊の記事をお持ちになり、かような記事が出ておつたので、一応釈明さしていただきたい、かような申し出がありました。幸い稻垣大臣も一緒におりましたので、その席で伺いました。新聞記事のことは事実と全然相違しておる、しかしながら佐藤某というのは非常に親しい関係の者とつながつた親しい者である。これも新聞に書いてあると思いますが、さような関係で二年前に胸の病気をして、生活もあまり余裕がないので療養もできなかつたから、箱根あたりべ転地したらよかろうということで、友情としてその療養費の援助を受けたことがある。その事実はあるが、その他ついて、これをかまていろいろな想像せられるような不正を働いたつもりはない。何とぞ私の立場を御了解いただきたい、かような釈明がございました。これは一応本人の釈明でありますから、そのまま承つておきまして、通産省といたしましては手の、及ぶ限りこの問題につきまして、一応各方面を取調べてみました。現在までのところ本人の申します通り、これに関連しまして何らの不正等は行われていない。かような状況にあります。万一この事件がら何かの形になつて参るとか、参らないとか、ただいま想像はいたしておりませんが、現況はその通りであります。しかも岡田君の釈明の点につきましては、ただ承つておきましたが、その態度、報告の状況等から覚えまして、ぜひとも岡田君の釈明を信じたい。かようにただいま思つておる次第であります。
  200. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 ただいま常幡政務次官は金銭の授受については明確に本人がこれを認めておる。しかしながら、これが單なる本人の言う通りの金銭の授受であつて、何ら怪しいものでないということを期待しておるという意味のきわめて同情的な御答弁があつたのですが、しかしながら新聞に出ておりまする限りにおいて、これは非常にはつきりいたしておりますが、東京新聞の二月二日の中に、かように書いてあります。「同氏の取調べの結果、」同氏というのは佐藤氏のことであります。「同氏の取調べの結果、数日前から資源庁岡田秀男鉱山保安局長(前東京商工局長)に対する数十万円の贈賄を自供するに至り、」云々と書いてある。金銭の授受があつたということは、お認めになつておるけれども、一方では友人の関係で借りたんだというようなお話を承りた。しかしながらこれが贈賄であるということを自供するに至つたと新聞に書いてありますが、この点について先ほど法務総裁、あるいは法務庁関係の方では、警視庁の関係で調べている事実があるからというお話でありますから、この点について本日警し庁の捜査第二課長が参つておりますのでかような自供をしたかどうかということについてお伺いいたしたいと思う。
  201. 宮幡靖

    宮幡政府委員 金銭の接受があつたことは認めておりますが、それは借りただけだというような答弁だということでありましたが、速記録をお調べいただきますれば、よくわかると思いますが、借りたとは申しておりません。療養費として恵まれたものであると申しておるのでありまして、新聞にありまする警視庁なり、その他の調べの場合において、その贈賄を自供したという事実はないということを、本人ははつきり申しておりますので、将来間違いのないために、一応つけ加えさせていただきたいと思います。
  202. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 これは非常におかしいことをおつしやるのですが、岡田さんが自供したことはないというようにおつしやつたということを、宮幡さん、おつしやるのですが、私は佐藤という人が自供をしたのである。かように質問をいたしておる。この佐藤という人が自供したことはないということを、岡田という人が言つたんだというお話ならば、事前に何か佐藤という人と、岡田という人と、そういう自供の問題について打合せがあつたということをお話になるのですか。
  203. 宮幡靖

    宮幡政府委員 事なかなか微妙な問題でありますので、言葉のあやからいろいろな御想像をいただきましても、これはあるいは相互に迷惑になるかと思います。岡田君が大臣と私の前に参りましての釈明の中に、自分はさような覚えもないし、いろいろ新聞に出ておるけれども、もらつたということもない。ただ療養費を箱根へ転地するために恵まれた、これは友情として恵まれたものであつて、それ以外の事実はない。こういうことを申したのでありまして、それが言訳的に療養費を恵まれたけれども、これは借りたものであつて、もらつたものでないというような口振りで話しておつたものではないということを申し上げたのであります。それから佐藤さんという方が新聞で自供しておつたというのは、それは佐藤氏の立場で、また新聞紙が報道したとであつて、通産省はこれと何ら関連を持つべきものではないと考えております。
  204. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 先ほど警視庁の方に、この事件についてさような自供があつたかどうかということを質問いたしましたが、これに対する答弁がございません。
  205. 植原悦二郎

    植原委員長 参考人として松本捜査第二課長。
  206. 松本彊

    ○松本参考人 ただいまの問題は非常にデリケートな問題でありまして、まだ捜査が終つておるのではなく、少くとも検察庁では、岡田、佐藤の関係は調べておる段階でありますので、その内容についてははつきり申し上げたくないと思います。
  207. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それではもう一つ捜査課長にお伺いいたしたいと思いますが、警視庁は岡田氏を召喚して取調べられたことがありますか。
  208. 松本彊

    ○松本参考人 涜職の容疑で逮捕しましてから、三日間しかありませんので、贈賄と思われる方を調べただけでありまして、收賄の方は警視庁としてはまだ調べておりません。
  209. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 佐藤昇という人は二月三日に釈放されている。ところが岡田という人は全然調べられておらない。しかもこの事件は進行中であるという警視庁の話であります。しからば法務総裁にお伺いいたしたいのでありますが、こういう事態においてこの証拠の保全を保つことができるかどうか。一般的な御答弁でもけつこうでありますが、こういうような事態において証拠の保全を保ち得るがどうか。この点についてお伺いいたしたいと思います。
  210. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 私は具体的な事件について詳細に存じませんが、検察当局はおそらく証拠保、全ができると考えて逮捕もせずにおるものと思います。
  211. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 時間をかけてこれをあまりやつていますと、ほかの問題に入れませんので、次に移りますが、このように岡田氏の問題にいたしましても、容疑のきわめて濃厚なるものとわれわれ考えるのであります。にもかかわらず反面において、たとえばこの間の蜷川長官、飯山長官のごとく、現内閣の意見に従わない者はどんどん首を切つて行くが、こういう容疑者についてはあまり問題にしないで、そのままで置いておくというようなお考えで、はたして綱紀粛正がこういう形でやり得るものかどうか。この点について増田官房長官にお伺いをいたしたい。
  212. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 私は初めからおりませんから、よくわかりませんが、事柄については、今せつかく調査中であるということでありますから、その調査