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1950-02-09 第7回国会 衆議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年二月九日(木曜日)     午前十時二十五分開議  出席委員    委員長 植原悦二郎君    理事 上林山榮吉君 理事 小峯 柳多君    理事 苫米地英俊君 理事 川崎 秀二君    理事 川上 貫一君 理事 圖司 安正君    理事 今井  耕君       天野 公義君    江花  靜君      岡村利右衞門君    小淵 光平君       角田 幸吉君    北澤 直吉君       小金 義照君    小平 久雄君       坂田 道太君    高橋  等君       玉置  實君    中村 幸八君       丹羽 彪吉君    西村 英一君       松野 頼三君    松本 一郎君       南  好雄君    稻村 順三君       西村 榮一君    武藤運十郎君       北村徳太郎君    村瀬 宣親君       林  百郎君    米原  昶君       奧村又十郎君    山本 利壽君       平川 篤雄君    松本太郎君       岡田 春夫君    世耕 弘一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  吉田  茂君         法 務 総 裁 殖田 俊吉君         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         厚 生 大 臣 林  讓治君         農 林 大 臣 森 幸太郎君         通商産業大臣  稻垣平太郎君         郵 政 大 臣         電気通信大臣  小澤佐重喜君         労 働 大 臣 鈴木 正文君         建 設 大 臣 益谷 秀次君         国 務 大 臣 青木 孝義君         国 務 大 臣 増田甲子七君  出席政府委員         人  事  官 山下 興家君         人事院事務官  瀧本 忠男君         外国為替管理委         員会委員長   木内 信胤君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         大蔵事務官         (主税局長)  平田敬一郎君         経済安定政務次         官       西村 久之君  委員外出席者         專  門  員 小林幾次郎君         專  門  員 小竹 豊治君 二月九日  委員神山茂夫辞任につき、その補欠として梨  木作次郎君が議長の指名で委員に選任された。 同日  梨木作次郎君及び黒田寿男辞任につき、その  補欠として林百郎君及び岡田春夫君が議長の指  名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十五年度一般会計予算  昭和二十五年度特別会計予算  昭和二十五年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 植原悦二郎

    植原委員長 これより会議を開きます。  質疑を継続いたします。角田幸吉君。
  3. 角田幸吉

    角田委員 吉田内閣総理大臣にお尋ね申し上げます。総理大臣は過般の施政方針演説におかれまして、地方行政調査委員会議調査と相まつて地方制度を改革し、健全なる自治発達と、地方財政確立をはからんことを期するものであるという御演説をなされておるのでありますが、この地方自治の健全なる発達について、地域的に内容的にどういう御構想に立つておられますか、お尋ねを申し上げたいのであります。聞くところによりますと、二、三の県の統合あるいは何州かにわけてというような御構想があるように新聞などは伝だておりますが、まず地域の点でどういうふうに御構想なさつておりますか、お尋ねいたします。
  4. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたしますが、具体的にこうという構想まではないのであります。しかし大体の方向としては、中央行政簡素化いたしましても、直接に地方人に接触しておる直接官庁が、やはり相かわらず旧態依然たるものがあつて行政が複雑である。あるいは届とか許可とかにしても、数箇所の役所に行かなくてはならぬということになつて来れば、人民の直接の迷惑というものも察すべきでありますから、中央簡素化されるのみならず、地方簡素化されて、行政組織が簡素になつて、そうして人民が何か許可を受けるとかなんとかいう場合に、ごく簡略に、従来と違つて事務が運ぶというようにしなければ、中央だけが簡素化しても同じことでありますから、ぜひとも中央とともに地方行政簡素化をはからなくてはならぬ。そのためには局課廃合とか、あるいは県の廃合まで行つて、そうして地方行政単純化をはかりたい、こういうおよその目標でありますが、しからば何の県をどうということになつて来ますと、今までの歴史の関係もありましようし、地方の直接の利害の関係もありまして、なかなか複雑な問題で、容易に手がつけにくいと思いますが、手がつかないからといつてうつちやつておくわけに行かないから、なるべく公正な地方事情に適合した合理化、あるいは県の併合まで行くということにしたいという理想は持つておりますが、しからばこの点をどうしてというとこりまでの具体案は、いずれ委員会その他でもつて研究さした上で、政府具体案にするつもりでおります。今ただちにこうこうという具体案は持ち合せておらないのであります。研究の結果にいたしたい、こう思つております。
  5. 角田幸吉

    角田委員 もう一点お尋ね申し上げたいのは、地方自治の内容の問題であります。自治制度確立には、一方におきまして財政的確立、一方におきましては治安の維持、こういう両面がありませんと、健全なる自治とは言えないのじやないかと考えるのでありますか、完全なる治安と申しますと、やはり警察制度というものが考えられなければならぬと思うのであります。そこで健全なる自治制度確立するために、警察制度の再編成ということを御考慮になつておらないかどうか、この点を承りたい。
  6. 吉田茂

    吉田国務大臣 警察制度については、御承知の通り国警及び地方警察ができ上つたのでありますが、でき上つて日もなお浅いものでありますから、国警との連絡あるいは地方警察の各警察間の連絡というようなところが、相当欠けておるように思われるのであります。この点は今研究いたしておりますから、成案のできるまでしばらく待つていただきたいと思いますが、現在の組織がよくない、各警察の間の連絡もよろしくない、そのためにいろいろな事件も起つておりますから、今日までの経過に従つて適当な改正をしたいと思つて政府においてもせつかく研究中であります。いずれ何とかいたしたいと思います。
  7. 角田幸吉

    角田委員 総理から答弁がありましにので、私も安心をいたしたのでありますが、小さい町村で自治警察を置きますことは、財政の面から非常に困難である、それから人事の交流の点においても非常に不便だ、こういういろいりの文句があるのでありますから、願わくは地方自治制度確立のために、警察国家警察県単位警察制度に改めてくださるよう、この機会におきまして希望を申し上げまして、総理に対する私の質問打切ることにいたします。
  8. 植原悦二郎

    植原委員長 稻村順三君。
  9. 稻村順三

    稻村委員 私は総理大臣に対して、まず第一に日本産業民主化と、均衡予算の問題について御質問したいと思つております。この問題は直接予算そのものを問題にしているのではないのです。また総理予算に関してはあまりお得意でないと思いますけれども、次の点に関して総理は、総理大臣として一つの抱負を持つておるものどいうふうに考えまして、御答弁を要求する次第であります。  近ごろインフレーシヨンの克服ということが非常に重要な問題になつて参りますと、均衡予算とか、あるいは超均衡予算とかいうふうにして、予算つじつまを合せて、赤字が出ないようにしようという努力が行われておるのであります。私はこの努力は当然に行わるべきものであり、必要であると考えておりますけれども、ややもすると予算つじつまを合せるということに夢中になりまして、それが予算の一番大筋のように考えて、日本民主化ということの基本になつておる産業構造というものを、どうするかというような問題に関しましては、とかく考えがおろそかにされているような感じを非常に強くしているのであります。そこで総理にお尋ねしたいのでありますが、われわれはわが国に民主主義を普及させようとするためには、どうしても現在の産業構造を、もつと近代的なものにしなければならないというふうに考えるのでありますが、この点に関するところの総理大臣の御意見を伺いたいと思つております。
  10. 吉田茂

    吉田国務大臣 日本産業が、世界通商競争をし得るまでに復興するためには、予算均衡もありますけれども、まず各会社自身合理化をされて、そうして生産費が安くなるというところまで持つて行かないと、世界通商あるいは貿易の上において、日本として太刀打ちができにくいと考えます。そうしてその合理化がただちに民主化ということになる場合もあるし、ならない場合もあるかもしれませんが、われわれの理想としては、日本産業が立ち直つて世界各国産業太刀打ちができるまでにするのには、十分合理化もしなければならぬし、同時に減税もしなければならぬし、生産費を安くしなければならぬ。そういうことを国際競争なつた場合に、最も考えなければならぬことと考えて、行政簡素化もし、各会社合理化を促進するようにいたしたいと心がけておるのであります。
  11. 稻村順三

    稻村委員 総理は、経済的な立場から日本産業合理化し、近代化することが非常に重要だという意味合いのことを申しておりましたが、世界政治学者の、たとえばプライスの近代民主主義論のようなものを読んでみましても、近代民主主義は結局近代的な産業構造の上に発達するものであるというような定説があるのであるが、総理大臣もやはりそういうふうにお考えになつておるかどうか。
  12. 吉田茂

    吉田国務大臣 そうであろうと私も考えております。
  13. 稻村順三

    稻村委員 日本民主化のためには、産業構造近代化するということは、われわれにとつて至上命令だと思います。この至上命令の上に立つて考えてみた場合、日本産業構造の中で多く残されている非近代的な要素の、一番特徴的なものは何であると考えておられるか。その考えておられるところをお伺いしたいのであります。
  14. 吉田茂

    吉田国務大臣 お話の趣旨、要点がちよつと私にわかりませんが、あなたの御趣意としては、どういうことが近代化とお考えになるのでありますか。
  15. 稻村順三

    稻村委員 一々そういうことを説明しておると、私が総理意見を聞かせるということになりますが、総理はとにもかくにも一国の政治をつかさどつておるのでありますから、そんなことを一々ここで私が説明しなくてもおわかりのことと思いますが、たとえて申しますれば、日本産業の中には、われわれの見のがすことのできない、日本産業の圧倒的多数を占めているところの多くの零細企業というものがあるのであります。二の零細企業は、單に技術的に遅れているとか、市場競争能力がないとか、資材の獲得に対して能力がないとかいうようなことばかりではなく、それとも関連はいたしておりますけれども、それよりももつと大きな條件として、農業のごとく家族制度が非常に大きな力を持つているとか、都市における零細企業においては、徒弟制度が非常に発達しておるとか、またある場合においては、土建業のごときは、今ポツダム宣言によりまして親分子分関係がなくなつたと申しましても、依然として仁義世界が横行しているというようなことが、日本産業近代化基礎構造を改善することを非常に妨げていると私は考えておるのでありまして、経済財政政策の上において、これを拂拭することが、何よりの急務であるとわれわれは思うのであります。財政つじつまを合せて赤字を出さないようにすることは必要でありますけれども、こういう方針が立つて、その上に立つて日本産業計画を立てまして、それから財政赤字を出さないように努力する、こういう建前が必要だと思うのでありますが、総理大臣はどうお考えになりますか。
  16. 吉田茂

    吉田国務大臣 ちよつと抽象論で、はなはだ議論に走りやすいことでありますが、私としては、今日までただいま御指摘のような家族制度に基いた農業とか、あるいは親分子分の問題とかいう御指摘がありましたが、こういう経済の進歩については漸進的にいたすものであり、また政府が権力を使つて家族制度を破壊しようといつたところで、これは害ばかりであるので、その実際の利益においてどうかという問題もあるだろうと思います。政府としては漸進的に穏健な政策をとつて行くのが、政府としてとるべき政策だと考えますから、ただちに家族制度を打開してどうこうとかいう急進的なことは国家のためにどうだろうか、私は疑問を抱きます。
  17. 稻村順三

    稻村委員 私は急進的にせよとか、あるいはこれを漸進的にせよとかいうことを言つているのでなくて、まだその一歩手前の根本理念を問い工いるわけであります。こういう根本理念のないところに一国の政治は行われないと思う。そこで私が言うのは、たとえて申しますならば、日本産業というものは非常に財政資金に依存している程度が大きいのであります。特に小さいものにおいては、財政資金なしではほとんど自立してやつて行けないというような状態になつておるのであります。従いましてわれわれは一つ財政計画を立てる場合に、こういうものを財政計画の面から経済的に——たとえばある産業発達させるために、資金をどういうところにつぎ込むというようなことによつて、実を言うと家族制度なり、徒弟制度なり、あるいは仁義世界というようなものが、自然に解消されるという方針もあり得ると思う。そういうふうなことを、今ただちに力をもつてやれとかなんとか言つているのでなくして、根本方針として、そういうことをわれわれは考えて行く必要があるのじやないか、ということを総理大臣に聞いているのであります。その点もう一度総理大臣の御意見を伺いたいと思います。
  18. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は今申した通り、漸進的に行く方がよいと考えるのであります。
  19. 稻村順三

    稻村委員 そうしますと、私はことにその点を農業において痛感するのであります。今日農業というものが家族単位生産でありまして、しかも零細な生産をやつておるのでありまして、経済的にばかりでなしに、こういうことが日本民主化の非常な大きな障害になつているということは、総理自身がそれを認めているかどうかということをお伺いしたいと思います。
  20. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は家族制度封建主義であるとか、あるいは民主主義に反するとかいうことは、一概に言えないことであろうと思います。日本農業家族制度でやるというところに、よいところもある、あるいは悪いところもあるのでありますから、それを打破して、やれ民主主義とかなんとか言つて政府が新しい制度を強制するということはよくないだろうと思います。
  21. 稻村順三

    稻村委員 どうも総理答弁はピントがはずれていると思う。というのは、私の言うのは、家族制度を今急になくせよとかなんとかいうのでなくて、家族制度そのものに基調を置いている農業生産様式が、日本民主主義を非常に妨げておる大きな要因となつていやせぬか。たとえて申しますならば、家長制度の問題であります。この家長制度のもとに日本が零細な農業を経営しておりますが、そうすると、その收入は少いのであります。そうすれば家族員自身が、ほとんど家族としての中に人権が尊重されないという傾向が、非常に強く起きて来るのであります。従いまして、こういうものをもつと近代的な——すべての家族の人間が協力して、平等の立場から農業を経営する、こういう形態の農業に行くのを私は近代化だと考えておるのであります。もしこめ近代化のために努力をして行かないで、今のままの農業を残して行けば、結局民主主義発達が妨げられて行く。ことに農村婦人が非常にみじめな状態にあるとか、次男坊三男坊が非常に人権を認められないような生活をしているというようなことは、結局言えば、こういう家族中心生産様式というようなものが残つているからではないか。私どもはこの点を総理大臣に聞くのであります。  もう一つ家族制度でも、よいものがあれば残しておくし、悪いものがあればこれは排除する、こういうような見解は、これは一国の総理大臣としては実に信念のない考え方であると思うのであります。われわれにポツダム宣言の線に沿うて、日本民主化しなけ、ればならぬという一つ至上命令の中に生活しているのであります。この至上命令考えてみますと、われわれは武力を持つているものの中にも、よいものもあるし、悪いものがある。どつちをとるか。よいものは持つて行くし、悪いものはなくするというようなこんな考え方は、実際言うと、われわれは急速に民主主義国家として日本を建設して行く場合には、通用しない論理であります。しかしその点についていつまでも追究しておつてもしかたがないのでありますので、次に総理大臣に聞きたいことは、農地改革の問題であります。農地改革は、第一次吉田内閣のときに、マッカーサー元帥農民解放に関する指令に基いて制定されたものでありますが、その後一度さらに改正されたわけであります。農地解放というような問題が徹底するということは、これは農業近代化一つ前提條件をつくるためであつたかどうか、この点を吉田総理大臣にお聞きしたいと思うのであります。
  22. 吉田茂

    吉田国務大臣 土地制度は、どこの国におきましても、これは長年の慣習とか、あるいはその土地特別の事情もありましようが、しかしとにかく新制度を施行して、そうして地方農民土地を與えて、その農業近代化するという言葉になるか、ならぬか知らないけれども、今まで小作人として土地を持たずに農業をしておつた人土地を與えて、そうして日本農業をして民主的と申すか、あるいは今まで小作人としてあまりよい待遇を受けておらなかつたとか、あるいは地主にしいたげられておつたとかというような弊害を除去したいと思つて、新農地制度を起したのであります。この制度政府としてはこれをもつて一応打切考えであります。
  23. 稻村順三

    稻村委員 農地改革打切るということは、これはいろいろな考えもありましようが、しかし農地改革精神は、あくまでも農民を解放するという立場に立つているのでありまして、この農地改革精神は、吉田内閣農業政策のやはり基本を貫いているものと解釈してさしつかえありませんか。
  24. 吉田茂

    吉田国務大臣 御意見通りであります。
  25. 稻村順三

    稻村委員 そうしますと、今日農地改革というようなもの——これはあとから分科会あるいは農林大臣に私質問したいと思うのでありますが、ただ一言総理大臣に聞いておきたいと思うことは、農地改革は一応打切つたという形になりましても、実はまだまだ跡始末が残つているわけであります。たとえて言えば、売渡しの登記がほとんどまだ二十何パーセントしか完了しておらないという問題がありまして、その完了のために多くの費用を要するということは、これは農地委員会人たちの一致した意見であります。そうしますと、今度こういうふうな問題で、農地改革完了は、おそらくわれわれの義務として考えさせられていることは、この三月までにこれを完了する予定になつていると思うのであります。それまでになかなか完了しないというのが実情でありますが、こういうふうなものが完了できないことになれば、現在の非常に創られた予算を、総理大臣としては、この基本的な農業政策精神を生かしまして、跡始末をただちにつけて、農地改革というものを名実とも完了したということにするために、予算をさらに出すという気持を持つているかどうか、この点をお伺いいたします。
  26. 吉田茂

    吉田国務大臣 農地制度は、新制度なるものは完了いたした。その善後策等については必要な経費は計上いたしますが、現在においては今申した通り農地制度根本改正はこれで打切る。その善後策はまた別であります。
  27. 稻村順三

    稻村委員 農地調整法との関連におきまして、農地調整法精神は、日本民主化の基盤の一つである、そしてこれが吉田内閣基本的精神一つである、こういうふうな答弁伺つたのでありますが、そうすれば、この農地調整法精神にもし矛盾するような、またこれと違つたような、いろいろな政策が出て来る場合があつたとしたならば、これに対して吉田総理は、この問題を農地調整法精神によつて解決するというお考えであるかどうか、この点お伺いいたします。
  28. 吉田茂

    吉田国務大臣 それはお答えするまでもなく、当然なことだと思います。
  29. 稻村順三

    稻村委員 そうしますと、ここで吉田総理答弁がはつきりしたので、こういう場合に当つたならば、吉田総理農地調整法精神によつて修正することになると解釈してよろしいかどうかということであります。それはシヤウプ勧告案によるところの地租改正の問題であります。このシヤウプ勧告案にあるところの地租改正によりますと、現行公債の約二十五倍に土地の評価をするというのであります。これは現在の賃貸価格の約千倍になるわけであります。これに対して地租をかけるということになると、現在の約三倍半になる。ところが農地調整法によれば、小作料は、実を言うと全收入の二五%以上はとれないということになつているのであります。そうすると、二五%以上の小作料はとれないことによつて、これを基準といたしまして、土地価格を評価いたします。これは小作料を今日七倍なら七倍というふうにしてもよろしいが、こういうふうなことにして評価して、平均利子で割つてみる。そうすると、従来の公債の十二倍にしかなつていない。これを二十五倍というふうにしてある。そうすると、これは農地調整法矛盾して来る。農地調整法は、全收入の二五%以上の小作料はとれないことになつている。それに対してもこの調子で行きますと、約五〇%、戰前の小作料にやや匹敵する小作料を予定いたして、そうしてここに土地価格を定めている。その場合に、これはシヤウプ勧告案にあつたのだから……、こういうことになりますと、これは他方でまたマッカーサー元帥農民解放に関する指令、これは極東委員会指令に基いて出されたものであるということを私承つているのでありますが、その場合において、こういう二つのものの間に矛盾が起きた場合に、いずれをとるかということを、総理大臣にお尋ねしたいのであります。
  30. 吉田茂

    吉田国務大臣 はたして矛盾するかしないか、調査した上でお答えいたします。
  31. 稻村順三

    稻村委員 調査しなくても、私どもの資料によつて矛盾していることは明らかなのであります。これを調査の上とかなんとかいう必要はちつともないと思うのであります。私はこの点についても、先ほどから総理大臣にいろいろな点を質問しているのは、こういう矛盾が続々生じた場合に、われわれがどれを基準にしてこれを処置するかという問題が大事なのであります。ややもすると最近均衡予算々々々々と言つて、その均衡予算に目がくれまして、こういう基本的な問題が無視されている。私は財政政策の上においてもしばしばこういう問題があろうかと存じます。あとの点につきましては、それぞれ所管大臣について詳しく答弁していただくことといたしまして、私の質問はこれで打切つておきます。
  32. 植原悦二郎

  33. 川崎秀二

    川崎委員 政府は去る三日給與白書なるものを発表いたしまして、賃金ベースを引上げることは妥当でないという見解を発表いたしているのでありますが、このベースを改訂しないということは、人事院勧告をのむことはできないということを意味いたしますのか、または現行ベースを少しもいじる気がないということを意味いたしますのか、その点について御答弁を承りたいのであります。
  34. 吉田茂

    吉田国務大臣 この点はしばしば説明いたしておる通りに、政府予算、物価その他から考えてみて、勧告は受入れないということにいたしておるのであります。
  35. 川崎秀二

    川崎委員 総理大臣はさきごろいずれの会合でありましたか、私は記憶いたしておりませんけれどもベースを改訂する意思はないけれども、しかしながら行政整理、あるいは公団の整理、その他の冗員の整理によつて浮いた金は、現在の公務員の待遇の改善に充てたいというような意味の御発言があつたように記憶いたすのでありますが、それは一体どういう具体的な方針でおやりになるのか、この点をお伺いいたします。
  36. 吉田茂

    吉田国務大臣 その点は私はまだ決定いたしておりません。しかしながら現在の給料をもつて甘んじないから、何とか給料を上げたいとは考えております。しからばどうして上げるかということについての具体案については、まだきめておりません。
  37. 川崎秀二

    川崎委員 私はこの給與白書を見まして、ぜひとも総理大臣にお伺いをいたしたい点があるのであります。それは六千三百七円の基準人事院は一昨年の七月に置いて、これをかえることに勧告をして、現在やらしているということを言つている。しかるに給與白書の方では、昨年の三月に基準を求めて、昨年の三月から見て現在の物価が低落しているというようなことを申しているのである。この点に人事院政府との非常な食い違いがあるのでありまして、この数字の問題については、また後刻大蔵大臣並びに人事院総裁の当事者の御議論を詳細に承りたいと思うのでありますが、吉田総理大臣が第二次吉田内閣、つまり選挙前の吉田内閣組織された直後にぶつかつた問題が、やはりこの官公吏の賃金改訂の問題であります。御承知でもございましようが、あなたの内閣では、人事院が給與水準を六千三百七円に改訂しよう、当時二千九百三十円でありましたが、それをかえようということに対しまして、六千三百七円ではいかぬ。五千五百三十円の線で、それ以上は一文も出せないということで第三回の国会は非常にもんだと思うのであります。九月ごろからもんで十、十一、十二月の末ごろになつて内閣は五千五百三十円以上びた一文も出せないと言い、われわれは六千三百七円を強行に主張した結果、客観情勢の推移もありまして、遂に六千二百七円の案が決定をいたし、十二月一日にさかのぼつて実施をされたのでございます。このことはよもやお忘れではないと思うのでありますが、実はその間に非常に物価は高騰いたしておる。一昨年の七月に基準をとつて勧告をいたしました人事院勧告は、すでにこれが採用された十二月においては非常なはね上りが行われて、すでに物価にして一倍半、あるいは一倍七というような状態が起つてつた。実施時期の昨年の三月ではおそらく一・八倍に近い物価の高騰が一昨年の七月からあつたであろうと私は考えております。従つてそのときに再び賃金ベースは改訂をされなければならなかつたのである。しかしながらドツジ氏の来訪もあり、また均衡財政を維持する建前から、今ベースに手をつけるということは、インフレを非常に助長することになるという考え方が、政府だけではなしに、人事院にもあつたがために、勧告が遅れに遅れて、そうして昨年の十一月にそれが具体的に出て来たものだと私は思うのです。従つてここにはつきり言えることは、一昨年の七月に基準を置いて、六千三百七円がとられたのでありますから、すでに昨年中には賃金ベースの改訂が行われなければならなかつた。しかるに今回政府が給與白書として発表したものは、昨年三月と昨年の十一月あるいは十二月の物価を比較して、それが上りておるの、あるいは下つておるのというような議論をいたしておる。明らかにこのことは私は不当だと思う。その点について総理大臣はいかなる御見解をお持ちでありましようか。
  38. 池田勇人

    ○池田国務大臣 給與問題につきまして、人事院とわれわれの観測の相違点はそこにあるのであります。一昨年の十二月に六千三百七円べスを決定いたしました。そして実際六千三百七円ベースで賃金が拂われたのは昨年の三月からであります。そうして昨年の三月の消費者物価指数と今の状態を比べてみますと、非常に指数が下りまして、すなわち公務員の実質賃金は上つたと認められるのであります。こういうことを考えますと、今の財政状態経済状態から考えまして、賃金ベースを動かさないという結論に到達いたしたのであります。
  39. 川崎秀二

    川崎委員 私は別に大蔵大臣に答弁を要求いたしておりませんけれども、かつてにお立ちになつて答弁されることは自由でございます。後刻またお尋ねをいたしますけれども、きわめて国政の基本の問題でありますから、総理大臣に常識的にお尋ねをいたしたいと思うのであります。  今度の公班員の給與問題を論ずるときに忘れてならない点は、民間平均賃金との非常な開きでございます。民間工業総平均と申しますか、民間の水準賃金は、すでに昨年の十月に八千六百二十九円になつております。十一月の労働省あたりでの統計は、九千三百二十九円というような数字が出ておるようでありますが、八千六百二十九円と十月に出ておる数字の方が確かだと思つておりますのでお尋ねをいたすのでありますが、八千六百二十九円と六千三百七円ベースでは明らかに二千三百円という開きがあるのであります。しかるに今度の給與白書の内容を見てみますと、その差はきわめてわずかであるというようなことが書いてある。金額においても上昇率においても、両者の開きはわずかにとどまつていると言つておりますが、二千円の開きというものは決してわずかというような一片の言葉で表現されるべき問題ではないと私は思う。五百円、六百円という問題に対してさえストライキが起ろうとしておる。こういう状態において公務員の生活というものは確保できて行くものであろうかどうか、また将来総理大臣のお考えとして、民間の給與と公務員の給與とは、だんだん差を縮めて行く御方針でございましようか。この点をお伺いいたしたいと思うのであります。
  40. 池田勇人

    ○池田国務大臣 民間給與と公務員給與との差額をお調べになるのに、工業賃金をとつておられますが、あの白書にも書いてございますように、今の統計に現われております工業賃金というものがおおむね大きい会社の給與を調べておるわけであります。日本全体の民間の給與を調べておるのではないのであります。しかして統計が古くはございますが、二十三年度におきまして工業平均賃金における会社と中小企業の労務員の給與を調べてみますと、大体あれに対しまして三割程度低めになりておるのであります。そういたしますと、公務員との比較におきまして、大産業だけとつて比較することは早計ではないかと考えます。しかしてまたかりに大産業——私は八千四戸七十七円と覚えておりますが、これと二十五年度におきまする公務員の平均賃金を比較いたしますと、大差はないのであります。大差というものは問題になりますが、六千三百七円ベースにいたしましても、実際の賃金は、省によつて違いますが、六千九百円ベースになつておるところもございます。六千八百円平均になつておるところもあります。しかしてこれに超過勤務手当などを加えますと、七千数百円に相なるのであります。しかして税引きその他のことを考えますと、私は大産業の分と比較いたしましても大差ない、今正確な数字はありませんが、一割程度の差ではないか。全労務員と公務員とを比較いたしますと、大体この際がまんできる程度ではないか。こう考えておる次第であります。
  41. 川崎秀二

    川崎委員 大蔵大臣が横合いから出て来て、工業平均の九千三百二十九円というものは大工業の平均であるとかへあるいは大した差がないとか言うことはよけいなことであつて、われわれはまた別にお尋ねいたしますから、しばらく総理大臣におまかせ願いたいと思います。  もう少し簡単に申し上げます。政府の今度の態度を見ますと、まつた日本経済再建の犠牲というものを公務員のみにしておる、あるいは中小企業あるいは農民というような弱いものにさや寄せしようとしておるところの響き非常に強いのであります。われわれはそういう政策に対しては、どうしても賛成するわけに行かない。そこでこの際ぜひお伺いいたしたい点がございます。それは今度の事態に対しまして、非常に憤激した労働組合が、ゼネスト態勢をもつて闘うというようなことまで発表いたしております。私は今回ゼネストの態勢をしこうというような戰術に出て参りました労働組合が、もしこれがかつての急激なる思想を持つた労働組合の分子によつて指導されておるというならば、事態は決してそれほど驚くことはないと思う。しかるにこれらの人々は、昨年のあの大波瀾の際において、行政整理あるいは企業整備が断行されて、そして一方においてはソビエト連邦から引揚者が帰つて来る、三鷹事件あるいは下山事件というものが突発をして、世の中がどうなつて行くのだろうかというようなときに、敢然として労働運動の健全性を守つた人々から発せられておるということであります。この事態に対して総理大臣はいかにお考えであるか、ぜひお伺いをいたしておきたいと思うのであります。
  42. 吉田茂

    吉田国務大臣 ゼネストが起りました場合には、政府としては適当な処置を講じます。今日こういう処置を講ずるということは申されぬが、しかしながら適当な処置を講ず看つもりであります。
  43. 川崎秀二

    川崎委員 そういう労働組合が蹶起しておるということに対して、どういうふうにお考えになつておるか。むしろあなたの内閣に対しては、彼らは急激なる労働組合運動と闘つて来ておる人々であると思う。それなくしてはあの危機というものは乗り切れなかつたはずであります。そういう人々が今日專売公社の裁定、あるいは国鉄の裁定、すべて公共企業体労働関係法というものを、頭から無視しようとするような政府の態度に対しては、とうていこれを黙過するわけに行かないというので、彼らは自衛権のために立つておると私は思う。そういう穏健なる労働組合がかかる奮起をしたことに対して、どういうお考えでありましようか。
  44. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は労働組合が、わが内閣の政策について了解があるならば、さほど乱暴な態度には出ないだろうと思います。しかしながら、そのために国家治安を乱すとか、あるいは政府産業政策を阻害するような場合があれば、いわゆる適当な善後処置を講じます。
  45. 川崎秀二

    川崎委員 ゼネストの問題はいろいろとあると思うのであります。たとえば今度ゼネスト態勢を発表したところの組合というものは五十三組合でありますか、五百二十万の数に上つておりますが、このうちには、正確に申しまして、罷業権を持たない者もあります。あるいは公共企業体労働関係法または労働関係調整法によつて、一定の闘争期間を経ないでは罷業権を持たない者もあります。また現に使おうと思えばいつでも使える組合もある。ゼネスト態勢といつても、おそらく私はこういうような人々は最後まで法律を守つてくれると思う。従つて世間に言うような、ゼネストというものは来ないということを確信しております一人ではありますけれども、しかしながら、政府の反労働者的性格というものに対しては、これらの人々を除く罷業権を持つておる人々が憤慨をしておる、その人々はあるいは立つかもしれません。これは法律をもつて弾圧するわけにも行きますまい。またあなたがいかに権力を持たれておつても、これを取締るという能力はないと思うのであります。その点いかがでありましようか。
  46. 吉田茂

    吉田国務大臣 これはゼネストが起り、具体的な問題になつたときに、政府は適当な処置を講ずる、こうお答えするよりしかたがない。
  47. 川崎秀二

    川崎委員 どうも驚き入つた答弁であつて、そのことについては、別の角度からまた質問してみたいと思います。  一昨昨年でありますか、マツカーサー元帥は、日本のこの荒廃した国土には、ゼネストというような武器を使用してはならないということを声明いたしております。当時のあの混乱したところの世相から見て、もしゼネストというような凶器が使われたならば、経済はまつたくこんとんのふちに投げ込まれることになり、国民生活はまつたく破壊されることになる、こういうおそれがあつたから、私はマッカーサー元帥はあの当時は声明を出されたと思うのであります。しかしながら、その後マッカーサー元帥は、公務員の罷業権を禁止せられるとともに、その際はつきり、罷業権を禁止をし、団体交渉権を禁止をするかわりには、官吏は世間から公僕として尊敬を受けられるだけの十分の地位を確保し、生活を保障してやらなければならないということを、命令にひとしい書簡をもつて、当時の芦田総理大臣に與えられたことは御承知の通りでありまして、これを実行なされたのは吉田第二次内閣であります。このマ元帥の書簡というものは、今日も生きているものかどうか、すなわちマ元帥のゼネストに対するところの書簡は、生きているものかどうかということが、今総理大臣に聞こうとするところの第一の点。  第二の点は、かりに生きているにいたしましても、第二の問題でありますところの、公務員の生活を確保しなければならないということを言つていることに対して、政府はこの緊急事態に処して、どういうお考えであるかお伺いいたしたいと思います。
  48. 吉田茂

    吉田国務大臣 マ元帥の書簡は、今でもわれわれは尊重しておるのであります。また政府の今日とつている政策は、公務員の生活を保障していることは、これはしばしば政府が説明しているところであります。
  49. 川崎秀二

    川崎委員 生活を保障すると言つても、現に保障されておらないところに問題があるのであつて、それでなければ私はこういうような問題を提起いたしません。  そこで、きわめて最近の問題でありますが、国鉄労働組合を中心にして、国会共闘と、いうものが組織されている、その共蜀委員会の人々は、昨日でありましたか、GHQの労働課を訪問した際、マツカーサー元帥の書簡というものは、今日も生きているか、ゼネストが始まれば、マッカーサー元帥はこれをとめるのかどうかということを聞いた際に、あるいはとめるかもしれない、しかしながら、その以前において、生活を確保すべく、マツカーサー元帥は最善の善処を政府に要望するであろうどいうことを言明いたしておるのであります。このことを忘れて、われわれは今日のこの緊切なる労働問題は語るわけには参らないと私は思うのであります。政府はこの暮にも、国鉄の裁定問題にからんで、何とか給與を改善することはできないかということを言いますと、ないそでは振れない、予算がないのであるから、財源を見つけて来てくれと池田大蔵大臣は言つた。それに対して野党側の者が、このくらいあるじやないかと言つても、それは財源とは認めがたい、ないそでは振れないのだということであつた。ないそでは振れない振れないと言つてつたが、最後には二千九百二十円ないそでを振つたのであります。そういうような事態が私はまた再び起るならば、今政府賃金ベースの改訂は行わないとか、断じて現在の水準を引上げる意思はないとかいうようなことを言わずに、ぜひこの際善処願いたいと思うのでありますが、総理大臣はいかなるお考えでございましようか。
  50. 吉田茂

    吉田国務大臣 ただいまのところは、政府人事院勧告に従わないことに決定いたしておりますことは、しばしば申した通りであります。
  51. 川崎秀二

    川崎委員 それでは、現下の労働問題に対する質疑は一応それで打切りまして、私は先般来当議場でもしばしば問題になりました、内閣の人事と異常との関係について御質問をいたしたいと思うのであります。中小企業庁長官蜷川氏が、先般中小企業は三月には危機が来るということを予測した言説を、ある書物に発表をいたしますと、政府與党の連絡会において、蜷川長官の罷免ということが決定されたように伝えられます。その後この問題は、稻垣通産大臣並びに増田官房長官に聞いてみますと、いまだ最後的決定には至つていない、しかしながら長官については、非常に不穏当な措置が多かつたというような御発言があつたように記憶をいたしておるのであります。その後総理大臣はこの蜷川長官の問題について、どういうような御処置をなさつたでありましようか、今どういうふうに進行いたしておりますか、その点をひとつお伺いいたしたいと思います。
  52. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは所管大臣からお聞きを願います。
  53. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 この問題については、この議場でもこの前お答え申し上げましたように、まだ全然何ら考慮をいたしておりません。その点はこの前はつきり申し上げた通りであります。ただ先ほど御指摘のそれ以外の、あの発表せられた事柄でなく、当時とられました、たとえば国会開会中に政府委員が無断で外出しておつた、無断で旅行しておつたという点についてははなはだ遺憾の点が多い、こういう点については十分考慮しなければならない、かように私はお答えしたのでありますが、今日もその通り考えております。但し今日この人をどう処置するかということについては、まだ何ら結論に達しておりませんし、またさようなことについて、われわれは何ら処置をとる考えを持つておりません。
  54. 川崎秀二

    川崎委員 蜷川長官の問題について、何ら処置をとるつもりはないというような御言明まで伺つたので、はなはだ安心しました。実はこの問題をめぐつて、官界では吉田内閣の恐怖人事が来るのではないかということをかなり恐れておる者があるのであります。申すまでもなく、昨年の七月でありましたか、齋藤国警長官問題に端を発したところの吉田内閣の非協力高官一掃でありますか、あるいは自分の言説とは違つたことを言いまする官吏を片つぱしから首を切るというような風潮が現われまして、かなり高級官吏あるいは中堅官吏において恐怖の念を持つて現内閣の人事を見ておる、これじや官吏は国政の一角に参與して、行政を十分に運営して行くことができないのではないかとおそれておつた次第であります。しかしながら一応基本的な問題をこの際伺つておきたいことは、私は官吏といえども自己の職権に基いて情勢を調査したり、分析した結果得られたところの一応の結論を上司に示し、あるいはこれを発表するということは自由ではないかと思います。しかしながらもしこの問題が起つて、当時の内閣と政策的に相反するというような所見を発表したときに、初めてこれは政党内閣でありますから、気に食わない者があるならば首を切られようとも、これはあなた方の自由である。しかしながら與党と政府との幹部会などにおいてこれが問題になつて、世上遂にこれが漏洩してやかましくなつた。一説には有力方面からかかることを行つてはならないということを言われたという風説さえある。それによつて逆もどりをしたというならばまことにけつこうではありますけれども、私は総理大臣にぜひお尋ねいたしておきたいことは、昔の政友会の人事あるいは民政党諸公をもつてその当時の一切をおおつたような人事が行われるならば、これはまことに時代逆行の行き方ではなかろうかと思うのであります。従つてもし今後官吏の中において、情勢分析をしたということだけにおいて、それが内閣の首脳部あるいは幹部の方々と意見が違つたということにおいて、首を切る御意思があるのかどうか、そういうことは許されていいのかどうかということをお伺いいたしたいと思います。
  55. 吉田茂

    吉田国務大臣 そういう仮定の問題についてはお答えいたしません。
  56. 川崎秀二

    川崎委員 また得意の仮定論が出て来ましたので……。
  57. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 ちよつと今のことについて申し上げます。今お話の中に有力筋からの云々というふうなお話がありましたが、そんなことは絶対ございませんから、はつきり申し上げておきます。誤解を生じるといけないと思いますから、その点をはつきり申し上げます。それから私は意見を発表することは随意だと思いますけれども、しかしながらその意見を発表するのに、われわれは慣例といたしまして、省議で一応討議した上で発表することになつております。ところがこれは省議を経ておりません。これだけはつけ加えておきます。
  58. 川崎秀二

    川崎委員 最後に総理大臣に一点お尋ねいたしたい問題がございます。これは現下の問題というよりは、将来の大きな問題でありますので、ぜひまじめな御答弁をいただきたいと思います。この前の国会でもお尋ねいたしたのでありますが、失業問題あるいは現在の国民の最低生活の保障というような問題に関連いたしまして、社会保障の問題は将来大問題であろうかと思うのであります。現在内閣で組織いたしております社会保障制度審議会においては、今後社会保障を断行するために、憲法第二十五條にうたわれておる、すべての国民は、健康にして文化的な最低限度の生活をする権利を有する、これがためには政府は社会福祉、公衆衛生並びに社会保障について努力をしなければならぬという線に沿いまして、近く社会保障法案を提出しようとしておるけはいがあるのであります。社会保障法案のようなことになりますと、これはかなり厖大な、問題になりまして、あるいは現在の民自党政府にして、この保障法案を受入れる余地ありやいなやということについて、私はいささか疑念を持つておりますけれども、社会保障制度審議会が社会保障法案のようなものを答申しましたときについては、これを尊重する御意思があるかどうか、この点だけを伺つておきたいと思います。
  59. 吉田茂

    吉田国務大臣 それは審議会の提案が出たときに研究してお答えいたします。
  60. 植原悦二郎

    植原委員長 総理大臣に対する質疑は本日はこの程度にとどめまして、次に稻村君、農林大臣に対してあなたの質疑を継続してください。
  61. 稻村順三

    稻村委員 先ほど総理大臣に対して質問した趣旨に従いまして、総理大臣も私の考えておる通りに、日本民主化は、日本産業構造を近代化することだというふうに答弁しておるのでありますが、しかし最も近代的な構造から遅れておるものは何かというと、農業及び林業というようなものであろうかと思うのでありますが、これに関しまして農林大臣は、日本農業近代化基本方針についてどうお考えになつておるか、また今度の予算編成に関しまして、どの点に近代化の主力を注いでおると自信を持つていらつしやるか、その点をお伺いいたします。
  62. 森幸太郎

    ○森国務大臣 お答えいたします。日本農業近代化——ずいぶん新しい言葉が使われますが、日本農業が御承知の通り農地改革によりまして、非常に小さい部分に分割されたのであります。ことに日本といたしましては土地が高低はなはだしく、アメリカのごとく機械力によつてこれを行うということは、はなはだ局限された問題でありまして、一般的にこの問題を取入れることは許されない事情にあるのであります。従つて近代化という新しい言葉をもつて考えるならば、品種の改良、耕種法の科学的操作あるいは病虫害等の科学的駆除等々、こういうふうな面において考えられるのであります。しかしながら一面において考えなければならぬことは、かくのごとき零細農業である以上、零細農業の独立性を考えまして、ここに協同式な、いわゆる協同組合の力によつてとれを資本主義化して行くという指導によつて日本農業は今後商工業に対抗し、対立しで行くべきである、かような考え方を持つておるわけであります。
  63. 稻村順三

    稻村委員 今聞いておりますと、主として主力は病虫害の駆除だの、肥料、耕種の改善などということは、これは従来の農事試験場あたりでも同じことを繰返して来たわけであります。ところが今のことを單にやりますと、たとえば肥培管理の問題などは、農事試験場の者などはポツト試験などをやりまして、労働の生産性ということをきわめて無視したやり方でやつて来ておりますが、病虫害駆除につきましても、そういうような点につきましてはほとんど労働の生産性というものを無視した農業というものがなされておるわけでありますが、これならばむしろ近代化の線に沿うよりも、逆に過重労働による過小農制というような、逆行する傾向が非常に強いと思うのでありますが、この点に関しまして農林大臣はどうお考えになつておりますか。
  64. 森幸太郎

    ○森国務大臣 お答えいたします。決して過重労働というようなことは考えられない。できるだけ労力を少くして、所期の目的を達するということでなければならぬと思うのでありますが、稻村委員も御承知の通りに、日本農業の特異性をよく研究していただきますならば、アメリカのごとくに飛行機で播種をする、飛行機で肥料をまくということは望んでもできないのであります。日本で許されていることは、いわゆる耕作、耕転の方法において機械力を用いるということ、あるいは調製の方面において機械力を用いる、あるいは電化するというようなことが考えられておるのでありまして、近代化という名前がどの程度まで私は定義をお持ちになりますか存じませんけれども、決して農業は過労主義で行かなくちやならぬという考え方でなしに、できるだけ労力を有利に使つて行く、そうしてできるだけ今までのように牛や馬と同じように働くということでなしに、農業の経営の目的を達して行きたい、こういうように考えて行かなければならぬと存じておるわけであります。
  65. 稻村順三

    稻村委員 抽象的な答弁でありましたので、もつと具体的に聞きたいことがたくさんありますが、それは分科会で詳しく聞くことといたしまして、次の問題に移りたいと思うのであります。  農林大臣は、この前の同僚委員質問に対しまして、日本農業の食糧の自給度を高めるということを盛んに強調しておりました。戰後の日本の今日の状態から申しますと、自給度を高くしなければ、食糧の問題が解決できないことは明らかでありますが、しかし日本の今後の農業政策というものは、自給度を高めるということを主眼とするのか、それともまた日本農業を、主要食糧偏重の農業ではなくして、日本農業経営の立場から適地適作、あるいは経済的ないろいろな條件を考慮いたしまして、そうしてあらゆる農産物を一応経済的に農業経営の面に取入れて行くという立場をとろうとするのか、その点を答弁をお願いしたいと思つております。
  66. 森幸太郎

    ○森国務大臣 お答えいたします。稻村委員の仰せの通り、適地適作、いわゆる農業経営が成立つように考えて行かなければならぬのであります。しかし今日本といたしましては御承知の通り、増加する人口を養うところの食糧を持つておりませんから、まず何をおいても食糧の自給度を高めるということが、現在與えられた課題であると考えておるのであります。しかしながらこの自給度を高めるために、農業経営が成立たないということであつては相ならないのでありまして、それにつきましては農業経営が成立つように適地適作、いわゆる従来におきましてはこれをつくれ、あれをつくれという生産計画を立てて参りましたけれども、今後におきましては主要食糧以外は生産計画も立てず。適地適作にその農業者自体の経営の合理的な方針に進んでもらう、こういうことを考えておるわけであります。
  67. 稻村順三

    稻村委員 自給度を高める、自給自足主義をとることと、それから実を言うと先ほど申しました適地適作というようなかつこうで農業経営を中心といたしまして、その経済的な條件に沿うた農業政策というものとの間には、非常に大きな矛盾があると思う。われわれはいずれを主眼としてやつて行くかということが問題だと思うのであります。現状の場合においては戰争経済あとであります。従いましてわれわれとしてはこの限られた條件のもとに生活をしなければ、食糧の供給を仰がなければならぬ、こういう事態でありますので、一応自給度ということが問題になりますが、しかし私はこ、三年の間にこういう條件が消えうせると思いますので、そこで私はこのいずれをもつて農業政策の根幹として立つて行くつもりかは、今からはつきりしておかなければいかぬと思います。それでもう一度いずれをとるかをお尋ねしたいと思います。
  68. 森幸太郎

    ○森国務大臣 御説まことにごもつともと拝聴いたします。卑近な例をとりますと、これは静岡の方面でありますが、静岡県におきましては主要食糧が不足いたしております。ほかより移入しなければ県内の食糧が立ちません。しかし静岡県におきましては非常に気候に恵まれまして、蔬菜栽培、果樹栽培、園芸技術が相当恵まれた條件に置かれているのであります。そういたしますと、静岡県の農業経営にとりましては、主要食糧をつくるよりも、むしろ園芸栽培をした方が農家の経営はいいのであります。しかし主要食糧を仰ぎながら主要食糧以外の園芸栽培をするということは、農家のいわゆる適地適作式の経営で合理的であるけれども、今国家は海外より非常な犠牲を拂つて食糧を輸入しておることを考えますと、この食糧を統制している時代においては、いわゆる主要食糧の自給度を高めるために、農業経営が主要食糧をつくることが不合理でありましても、ある一定の主要食糧を確保してむらうということが、今日の日本においては当然要求せられていると考えているわけであります。しかし将来においては、食糧が国際的に自由になり、日本の力によつて輸入し得られるという段階になつたときには、もちろん適地適作方式で農業経営が成立つようにして行くということを考えるのは当然であります。今日は農業経営の転換期と申しますか、ここ二、三年間は御説のごとくに、合理的に経営のできない部面も相当あると存じますが、今日の食糧事情からこれはやむを得ない段階であるということの御了承を願いたいと存じます。
  69. 稻村順三

    稻村委員 そうすると今後の農業政策の基幹は、結局一品に申しますと、適地適作主義をとつて、いわゆる自給をむりにするという態勢のもとに、農業生産をして行くという建前を捨てることになると思うのでありますが、これと結びつけて、先ほど農林大臣言つているように、また総理大臣言つているように、これを基準として外国の農産物と競争し得る態勢も一応整えて行かなければならない。また日本民主化の上からいつても、日本農業近代化するという方向をとらなければならない。こういうことになりますと、今日の日本農業経営の状態から申しまして、これを農家の自家資金によつて、自発的にこういうような方向に行けといつても、それはむりだと私は考えるのであります。こう考えますと、日本農業民主化というものを急速にしなければならないという任務と、もう一つ経済的に外国の農産物と競争をするというこの二つの建前から申しましても、相当急速に生産コストを引下げるための、いわゆる農業の再編成が必要になつて来ていると思うのであります。この再編成をするために、私は国の資本というものか、あるいは財政資金というようなものか、これに依存をしなければ、農業がとうてい成立つて行かないと考えておるのでありますが、この点農林大臣はどうお考えになつておりますか。
  70. 森幸太郎

    ○森国務大臣 御質問の焦点を把握しかねますが、今日の農業経営については、自家経営において非常に力の弱い農業経営の状態でありますので、この農業経営に対しては、国家はできるだけ資本の注入をいたさなければならないと考えているわけであります。今日農村に資金が枯渇をしている段階において、しからばどうするかという問題については、昨日もお答えいたしました通り、完全なる農業協同組合の発達を助長して、この協同組合の力によつて資金を獲得し、農業経営の合理化を推進させる、資金は必ず国家の力によつてこれをなすという方針をとるべきであると考えております。
  71. 稻村順三

    稻村委員 農業協同組合による云々と言うけれども農業協同組合の今の建前から申しますと、これは主として自己資金の上に立たなければならぬが、私たちは農村の自己資金によつてはほとんど不可能ではないかと思う。こういうものはあるいは財政資金なり、あるいは国家資本というようなものの投入がなければ、おそらく日本農業農林大臣の言うような意味において、急速に近代化して行くということは非常にむずかしいのではないかというふうに考えておるのでありますが、その点農林大臣のお考えをもう一度お尋ねいたします。
  72. 森幸太郎

    ○森国務大臣 商工業におきましても、農業におきましても、その資金がいかに働いて、どうして返つて来るかということがはつきりしなければ、おそらく資金の注入はできないと思います。この事業資金政府が責任をもつて注入するということにつきましては、やはり農業協同組合という唯一の残されたる農業者の機関を通じて、その機関の信用を高めて、この信用によつて資金を注入するよりほかにないと思うのであります。これは中小商工業においてももちろんでありまして、資金を注入することが必要であつても、その資金をどうして働かせるか、どうしてこれがもどつて来るかということを考えなければならぬことは当然であります。協同組合は設立以来まだ二年しかたちませんから力が弱いけれども、この協同組合の精神組織者がよく理解いたしますならば、これを信用相手として政府はもつと力強く資金を融通し得るものと考えておるわけであります。
  73. 稻村順三

    稻村委員長 林大臣の御答弁は、農業協同組合が相当強力になつて、信用ができるまではなかなか国家資本を投ぜられぬという結論になると思うのでありますが、農業協同組合がそこまで信用を得るならば、国家資本の役割が重要になつたといたしましても、それだけ軽減するのであります。われわれにとつて重要なことは、農業協同組合が今日のごとく弱体であるということであり、しかも眼前には外国農産物との競争があるということも一応考えなければならない。その上に日本民主化の建前からいつても、急速な農業の再編成が必要だ。こういうときに国家資本の役割は非常に重要である。この重要性を政府が十分に痛感しているかどうかということを私は聞いておるのでありまして、農業協同組合が信用できるようになつたらなどということを待つておれないところに、日本農業の非常な困難性があると思うのであります。その点を農林大臣はどうお考えになつておりますか。
  74. 森幸太郎

    ○森国務大臣 先走つてお答えいたしたようでありますが、資金の集中が最も必要だと考えております。しからばどういうふうにして集中するかというと、さきにお答えいたしたようなわけでありますが、今日の場合におきまして、農村への国家資金の集中ということは当然必要であると考えておるわけであります。
  75. 稻村順三

    稻村委員 農林大臣がそこまでお認めになるならば、財政資金あるいは国家資金をここへ投下する意味合いにおきましても、たとえば米の価格の補給金の問題だとか、あるいは農家の消費に充てられる方面に、相当資金を投入するということも一つの行き方であろうと思うのであります。同時に生産設備に対して相当の国家資金を投入するということも一つだと思うのであります。そこでどこでも農業問題が出れば公共事業費を大きくしろとか、土地改良に対して相当額を出せとかいうような問題を提起されて、行きあたりばつたりにそういうことだけ多く言われておるのでありますが、これをもつと計画的に掘り下げてみる必要があるのではないかと思うのであります。たとえて申しますれば、今日こういう土地改良とかあるいはまた灌排水の場問題だとか、災害復旧の問題などは、戰争中にたいへん荒廃したものすら復旧してないのであります。近代化どころの騒ぎじやないのであります。こういうふうな問題が今農業にあるのでありますが、さらに眼前に控えているところの外国農産物の競争とか、あるいはその他の諸條件の中を切り抜けて行くためには、今のような戰争の荒廃あるいは戰後における荒廃さえ復旧できないような国家資金の投入の仕方をやつてつて農業近代化などということが言えるかどうか、そういう確信があるかどうかを農林大臣にお尋ねいたします。
  76. 森幸太郎

    ○森国務大臣 戰争当時から荒廃されたもののいまだに回復されないような状態であります。これは漸時回復の緒についていることは御承知の通りであります。戰時中最も荒廃に帰しましたのは山林の状況でありまして、耕地はほとんど回復いたしております。この山林の荒廃はなかなか一年や二年で回復でき得ないのであります。これを一日も早く回復いたしまして——その回復いたしました効果が現われるのは、十年あるいは十五年後でなければわからないような状態でありますが、まずもつて治山治水に力を入れて行くということに、主眼を置かなければならぬと思うのであります。その他の耕地の荒廃等につきましては、これは年々の風水害等によつてつた問題を主といたしておりますので、これに対しましても御承知の通り、できるだけの予算の範囲におきまして、復旧を早くいたしたいということに努力をいたしておるのであります。これが平常な形に落ちついたときにおいてあるとかこうとかいう論議はできますが、今お話の通り、戰争以来の荒廃がいまだに復旧しておらない場合でありますから、一日も早くこれを復興いたしたい。それについては日本農業の耕作に安全性を持たしめるということは、いわゆる天災に対する対抗力を強める、それには山が荒れており、川が荒れておつてはたいへんでありますから、山や川をまずもつて第一に治めて、源を治めて行く。そうして耕地の安全性を保持して、耕地のその年年に不時に起つて来るところの災害に対処して行く、こういうことを今考えなければならぬと思うのであります。
  77. 稻村順三

    稻村委員 農林大臣の話を聞いていると、外国の農産物と競争したり、日本農業もそれに対抗するために、コストを引下げる態勢に再編成するのには、十年か十五年かかるという話になつてしまうのです。実際を言うと、そんな不安なところに日本農業が置かれていいかどうかということです。少くとも農林行政をになつているところの農林大臣は、それならばこの急速な問題に対処する確信があるかどうか。たとえて申しますならば、今日の米価の問題をとらえましても、米価はすでに農民にとつては、実際上を言えば、経済的に相当苦しい立場に置かれております。こういうふうなときに、米価をもう少しコストを引下げて行くというような方針を何とかして急速に立てないと、日本農業というものは持つて行かない。十年、十五年後の問題じやないのです。今年、来年の問題なんです。その今年、来年の問題に対して、コストを引下げて行くという一つ方針をお持ちであつたならばお伺いしたい。
  78. 森幸太郎

    ○森国務大臣 これは見解の相違でありますが、のんびりと考えているわけではありませんが、そう今年、来年において日本農業経営が行き詰まつているということは、私はその観察の相違と思うのであります。昨日も申しましたが、今日本は食糧の生産がふえて来てどうにもこうにもしかたがない、余つて来る、これでは何とかしてアメリカのごとくに減産しなければならない、政府は過剰食糧を買い上げなければならないというような場合に処すという、一つの仮想的な問題でありますが、そういう問題もあります。また日本よりも安い食糧がどんどんと海外かちダンピングされて、日本農業生産が行き詰まつて来るという面と、この二つのことが考えられるのであります。しかし今日本としては御承知の通り自給度を高める高めると申しましても、外国の食糧に幾らか依存しなければ、わずか二合七勺の基本配給さえ困難な状態にあるのであります。また日本の農産物の生産は多々ますます弁じて決してさしつかえないのであります。従つて私は日本農業はあらゆる角度から、生産物の増産をはかつて行くことに意を用いて、決して農村に行き詰まらない。価格の面においても、今御承知の通り海外の食糧農産物は日本より高いのでありますが、今後これが安く生産されてダンピングを受ける場合になりましては、そのときはおそらく日本も自主的な貿易が許されて、ほんとうの独立の国となつているときでありましよう。そういう場合においてはおのずからこういうものに対しての政策は当然行わなければなりません。米価のごときも当然私は行わなければならぬと思います。今は御承知の通りよそから輸入して配給して統制をやつている、この事情をよくお考えくださいますならば、決して来年、さ来年、今年に農村の経営が行き詰まるということは断じてないと私は考えているのであります。
  79. 稻村順三

    稻村委員 農林大臣はその点案外先をのんびり見ているのではないかと私は思います。実は相当自主貿易が行われるような情勢になるのはこの二、三年先の問題であります。二、三年のうちにわれわれはそれに対処する措置を講じておかなければ、それからやつたのでは——今までの農政というものは大体どろなわなのです。問題が起つてからなわをなつているから、どろぼうが逃げてしまつてからなわができ上る、これが日本の農政の特徴なのです。賢明なるところの森農林大臣は、三、四年のうちにはもうそういうことがあることを予想しているのでしようから、これに対するところの一応対策があつてしかるべきだと私は考えております。それを冷考えないというなら——農林大臣は過渡的な転換期にある日本農業だと言つておりますが、転換期というのは、もう近いうちに先はかわるということを見通した農業なのであります。従つてその見通しのないそのときが来たら政策を立てるのでは、それは日本の農政を背負つて行くだけの能力のない農林大臣と言われても、しかたがなくなるのではないかと思うのです。私はその点農林大臣に念を押しておくとともに、もう一つ念を押しておきたいと思うことは、先ほど申レ上げた通りに、今の農林大臣計画のもとにおいては、何年くらい荒廃が平時に復旧するつもりでいるのか、その点をお尋ねいたします。
  80. 森幸太郎

    ○森国務大臣 政治の様態といたしまして、赤裸々に現実を暴露することがいいか、あるいはある程度警告を與えて指導して行くことがいいかということは、これはおのおの考え方があろうと思いますが、日本の現在の農業に対して、農村恐慌来というような言葉を使われる向きもあるのでありますが、恐慌ということの定義はずいぶん広範囲でありまして、なかなか一に帰さないようでありますが、私は今日日本農業がほんとうに自主的に行われていない、食糧問題が自主的に行われていないという現状におきましては、これは自分の思うままにすることが許されないのであります。しかし稻村委員のどろなわ式になつてはだめだという御意見はもつともであります。しかしこの農業政策というものはにわかに転換し得ないのでありまして、すでにそれに着手いたしております。これは昨日申しました通り、食糧というものが、無事泰平な世界であつて、国際間に何らの問題も起らぬときには、需給推算も立ちますし、唯々として生産に従事し得られるのでありますが、国際情勢はいつ変化するかわからぬ、そういう場合に処してもまた対策がなければならぬ。しかし今日日本が食糧について完全なる自給力を持つておらない場合においては、そういう大きなことは今日表へ出して言い得られる場合でもありません。しかし農業経営の上におきましては、外国にいわゆる将来三年、五年の間にどういう問題が起りましても、日本の人口の増加と食糧という問題を考えた以上は、ただひた向きに日本の国といたしましては、食糧の増産より道がないのであります。これが私は農業経営の上において、食糧増産に経営の合理化されるような指導をして行くことが必要である、かように考えておるわけであります。
  81. 稻村順三

    稻村委員 農林大臣はまたどうもあともどりしてしまつたような話で、私の言うのは、農業を一応近代的に再編成する、コストが引合うまでの再編成の方針がなければならぬ、それはいつ出発するかという大体の目安がなければならぬ、その出発は、先ほど言つたように基礎的な條件、たとえば河川が復興したり山が元の通りなつたり、たとえば治山治水がむずかしければ、ダムを築くなりなんなりということによつてそれを防ぐなりなんなり、いろいろな方法があると思います。そういうようなものを計画として平時の状態に復旧するのは、一体何年後に復旧するか、それさえ聞けばいいのであります。その計画はあるのかないのか。
  82. 森幸太郎

    ○森国務大臣 お答え漏れいたしておつたのでありますが、治山治水に対し、ましては、五箇年計画をもつて完全にやつて行きたい。しかし御承知の通り年ふ森林のごときは伐採しているのでありますから、この伐採地に対する補植等を加味しましても、今日の荒廃林に対しましては、五箇年の期間によつて予定通りの植林を終る、そしてこれの保護維持に対してさらに五箇年計画をもつて進めて行く、こういう計画を進めておるのであります。しかし御承知の日本の気候状態が、この計画途中において挫折起しめるというような風水害も起つて来る場合もある、それはそのときとして善処しなければならぬと思います。今日の日本の現況は、五箇年計画において造林計画を立て、治山の目的を達する計画をもつて進めておるわであります。
  83. 稻村順三

    稻村委員 風水害その他のいろいろな予期せぬ災害というようなものを、応念頭に入れまして、しかも工事が新しく出発をする基礎固めをするためには、一体治山治水の方面だけでも、どれくらいの予算で五箇年で完了できるかどうか、農林大臣の御意見を伺いたいと思います。
  84. 森幸太郎

    ○森国務大臣 それはお手元にまわしております予算において、第一年次の計画を途行いたしたいと考えておるわけであります。なお耕地の拡張等につきましても、現在干拓等に手をつけておりますのは、昨日もお答えいたしました予定において、三十九年度においては一応完結をいたしたい。しかし断じく干拓の必要なものに対しましては、二十五、二十六と漸次完成いたして行きまして、そして余力のあるときには、新しいものを計画して耕地の拡張をいたして行きたいと考えております。
  85. 稻村順三

    稻村委員 土地改良などの計画も、この中に入つているわけでありますか。全部の土地改良がなされるという、その計画はこの中に入つているかどうか、その点お伺いいたします。
  86. 森幸太郎

    ○森国務大臣 災害復旧、土地改良、未開墾地の開墾、干拓等、すべて計画的にやつておりまして、予算も要求いたしておるわけであります。
  87. 稻村順三

    稻村委員 五箇年で、大体そういうふうな計画が、予算上全部完了できるという見通しを持つてつておるわけでありますか。
  88. 森幸太郎

    ○森国務大臣 お答えいたします。この事業分量は年次ふえて行くのでありますが、一応五箇年の計画をももまして治山治水の計画を立てているわけであります。しかしその予算は年次御協賛を得なければならぬのであります。財政の都合もありますが、大体政府としては、この期間において、治山治水の事業は一応完結する方針をもつて進めて行きたい、かように考えているわけであります。
  89. 稻村順三

    稻村委員 もう一つ農林大臣に聞いてみたいと思うことは、最近における兼業農家の問題であります。最近兼業農家がふえたことが一つと、それから農地の零細化が行われております。これば先ほど農林大臣も言われたように、日本近代化と逆行する傾向にあると思うのであります。これに対して芦田内閣のときに、家産法とかなんとかいうものを出そうというような考え方もあつたようでありますが、この零細化を防ぐ方法として、農林大臣はどういうことをお考えになつているか、それをひとつ伺いたい。
  90. 森幸太郎

    ○森国務大臣 お答えいたします。農地法がでぎましたときに、民法の問題と関連いたしまして、しまいには一坪農業に落ちて行くというようなことが論ぜられまして、農業家産法を制定して、この農業を経営すべく、たとえば長男でも、次男でも、三男でもいいのですが、それが相続をいたしますと同時に、耕地も相続するということを法制上きめたい、きめなければ、せつかく一町範囲内の農業が五反になり、二反半になり、一反になるということを心配いたしたのであります。しかしながら、この法制化は、その進行の途上においていろいろの問題が起りりまして、現在といたしましては、その相続者の中で耕地を維持する者に対して、当然分配を受ける相続人の甲、乙、丙に、その耕地を讓らしめるということによつて、この問題を解決して行きたい、こういうような方針に今進まんといたしておるのであります。これが法制化については、関係方面との意見のまとまりもできていないのでありますが、せつかくできたこの農地法が、将来も持続するように、かつ最小程度においても効果を維持するようにして行きたい、こういう考えで今その法制化について研究を進めているわけであります。
  91. 稻村順三

    稻村委員 そういうふうな讓らしめるとかなんとかいうような、そういう法的措置を考えるということは、結局先ほど申しましたように、日本の民法というものが家族制度の打破にあるというところから考えまして、私はその精神に違反するというような形は、ちよつとむずかしいと思うのでありますが、この点について、農業協同組合をもつと有効に動かして、農業協同組合の活動を通じまして、分散を防ぐというような方針農林大臣は持つていないのかどうか、その点をお尋ねいたします。
  92. 森幸太郎

    ○森国務大臣 仰せまことにごもつともであります。従つて農業協同組合がほんとうに力があるようにひとつ早く育て上げたい、かように努力をいたしておるわけであります。
  93. 稻村順三

    稻村委員 それからもう一つは、兼業農家の問題でありますが、われわれは兼業農家に対する対策は、歴代の農林大臣農業政策を見ますと、実にこれに対して不徹底だと思う。兼業農家を農業の中に加えてやるというと、專業農家の政策が不徹底になる、專業農家が中心になるというと、結局兼業農家の対策が不徹底になる。それで農林省といたしましては、その両方いずれをとるかというようなことについて、はつきりした方針を示さないものですから、中途半端になつておると私たちば考えておるのでありますが、今後の農業政策の根幹は、兼業農家をある程度含めての農業政策というふうにして考えて行くか、やはり專業農家を中心にして、農業政策考えて行くのか。たとえて申しますならば、農業を社会保障制度といつたような、社会保障の立場から見るならば、あらゆる農民といいますか、たとえば兼業農家でも何でも、これは主要農業としての対象として考えて行かなければならない。農業経営という立場から、農業政策を立てて行くと、專業農家を中心として考えなければならぬ。その点森農林大臣はいずれの方針に重点を置かれるか、その点を御答弁願いたいと思います。
  94. 森幸太郎

    ○森国務大臣 農業の経営状態につきましては、御承知の專業、兼業いろいろありますが、農業政策の相手方といたしましては、もちろん專業者、專業農業を相手方として、これを進めて行くということでなければならぬ、かように考えております。
  95. 稻村順三

    稻村委員 そうすると兼業農家に対するところの対策として、いかなるものをお持ちであるか、大体それをお伺いしたいのであります。
  96. 森幸太郎

    ○森国務大臣 兼業農家に対しては、こうという農業政策についてかわりはありません。專業農家を主としてやつて参ります。兼業農家としては、いろいろ事情がありまして、兼業にも種々あります。でありますから、この兼業農家がその経営の上において、農業のどれだけの分量を持つておるかということによつてかわつて来るのでありますが、政府といたしましては、農業政策を、專業農業を主体として考えて行くのでありますから、兼業農家は、この農業政策にかんがみて、自分の経営を考えて行くべきものであります。政府といたしましては、とにかく專僕農業者を相手としてのすべての政策を行うつもりであります。
  97. 稻村順三

    稻村委員 農林大臣は私が言う通り、両方に重点がぼけてしまうという話で、品でこそ專業農家を重点にしてやつておると言うけれども、兼業農業に対して別な方針というものを持つていないということになつて、同じものだということになれば結局ぼけてしまうのであります。これは言われなくてもわかつておるのでありまして、そこで私たちは兼業農家対策に対して、非常に抽象的なものであつても、方針があつてしかるべきものだと思う。なるほど兼業農家一戸々々において、いろいろ職業も違うでしようし、またその率も違うと思うのであります。しかし私たちの一番重要視しなければならぬことは、たとえば專業農家を中心にして考えるということになれば、結局兼業農家には農業の兼業をやめて、ほかの方面の業務に従事して、そこで生活ができるというようないろいろな方針も一応考えられるのであります。そういうような抽象的な方針でも、私は農林大臣として方針がなければ、現在の農業問題を片づけて行くことができないと思うのでありますが、その点農林大臣意見を聞きたいのであります。
  98. 森幸太郎

    ○森国務大臣 お答えいたします。片手間で農業を営むような農業者に対しては、われわれは考えおりません。いわゆる農業を專業としてほんとうにやる。それによつて経営が成立つように指導して行きたい。かように考えております。
  99. 稻村順三

    稻村委員 また質問が横つちよにそれてしまいましたが、私の言うのは片手間にやつている農家というものは、日本において非常に多いのであります。従つてそれに対してどういうふうな根本的な方針をお持ちであるか。この方針がなければ日本農業政策は実効はないのだ。だからして農林大臣にそれを聞いているのであります。
  100. 森幸太郎

    ○森国務大臣 片手間で農業をしている人を相手に農業政策考えてもむだだと思つております。私は農業を專業としてやつて行くということで初めて農業者としての資格があり、私はこの農業者に対しての経営の合理化をはかつて行くという政策をもつて行くわけであります。
  101. 稻村順三

    稻村委員 農業政策基本はそこにあつてよろしいが、その基本を徹底せしめるために、今日一番じやまになつているのが、片手間農業日本農業の相当の部分を占めているということである。従つて片手間農業をやつている農家に対して、根本的な対策を農林大臣は持つているかということを聞いている。相手にしないということは、そんなものは死んでしまえということでしよう。こういう乱暴な農林大臣はおそらく世界中にもおらぬと思うのであります。だからそれに対して、お前はすきな通りにやつて飢え死にしようか、失業しようが、かつてにせよという政策なのか、それともこれに対して基本的にどういう対策を持つて、これを他の職に従事せしめるような方針を、たとえば農林省としては転業資金をやるとか、あるいはまたそういうものに対して農業を離れる場合には、離作料をやるとか、その人間がどこかで業務につくためのあつせんをやるとか、いろいろそういうふうな基本的な対策を——抽象的でもいいから持つて行かないかということです。それを相手にしないというのは農林大臣の暴言だと思うのであります。もう一度農林大臣からしつかりした御答弁を願いたい。
  102. 森幸太郎

    ○森国務大臣 お答えいたします。暴言でも何でもありません。兼業農家として生活ができるならば、その農業ということのほかにいい職業があるはずです。ほかに職業があるから一部兼業農家で行けるのです。兼業農家は一反歩や二反歩をつくつて、ほかに大きな仕事をしている片手間農業になるわけであります。片手間農業でほかに仕事があるからこそ生活ができるのである。一反や二反では生活できません。私は決して兼業農家を死んじまえとは言いません。しかし農業政策としては、專業農業者としてほかに商売もしない、月給取りもしない、ほんとうに專門に農業を経営して行く人の生活できるように考えて行くことが、農業政策であります。
  103. 稻村順三

    稻村委員 どうも統計を無視した答弁農林大臣からやられるので私も面くらつているのですが、なぜかというと、農村における兼業農家は、主として炭焼きとかいう山林の賃金労働をやつているとか、あるいは農業労働をやつているとか、せいぜいのところ便利なところでは職工をやつているとか、そういうふうなもので、他に大きな事業をやつているというようなのは——あなたがなるほど一反か二反耕しておれば兼業農家の大臣で、大きな事業をやつているから、そういうことは言えるかもしれない。(笑声)しかし一般の兼業農家というものはそんなものじやない。他の職業では暮せないから農業をやつているというのが多い。一反でも二反でも、あるいは半分でもやつているというのが多い。そういうものに対して農業を取上げるというのは、それは農業に対して何らのめんどうを見てやらないということになる。そうなるとこれはこれらの人間は死んでしまえということになるじやありませんか。相手にしませんということは、死んでしまえということでしよう。そうしますと、われわれといたしましては、兼業農家を、たとえば耕地反別を多少でもふやすとか、合理化をするとか——現在ではそれらの人の土地はおそらく日本農業の過半数を占めておると思う。人口からいつても過半数を占めておる。こういうものに対する処置を考えないで、そんなものは相手にしません。ほかに大きな職業をやつておるから相手にしませんということで片づくとすれば、あまりにも農林大臣は、統計も見たこともなければ、農村の実情もよく知らないと思うのです。私はだから暴言と言つたのです。こういう農林大臣と押し問答しても、結局むだだからやめてしまいまして、農林大臣に、対する質問はこれで打切ります。
  104. 植原悦二郎

    植原委員長 これにて休憩いたします。  午後は一時半から再開いたします。     午後零時二十一分休憩     —————————————     午後一時五十分開議
  105. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 休憩前に引続いて会議を開きます。中村幸八君。
  106. 中村幸八

    ○中村(幸)委員 昨日中小企業の問題につきまして、通産大臣より御答弁を得ておるのでありますが、なお大蔵大臣にも二、三御質問したい点が残つておりますので、ごく簡單にお尋ね申し、上げたいと思います。  まず税金の問題でありますが、大蔵大臣におかれましては、二十五年度の予算におきましては、二十四年度の予算に比較いたしまして、七百億円の減税となる。これを一月からの減税額を考慮いたしますと、実質的には九百億円の減税となる。従つて地方税におきまして、四百億円の増税となつても、差引中央地方を通じて三百億ないし五百億円の減税となる。しかも従来半ば強制的にとられておりました寄付金のことを考慮すれば、来年度は国民の負担は非常に軽減せられる。こういうことを申しておるのであります。まさに事実その通りであると思うのであります。ところが私ども地方へまわつてみますと、地方の町村長あるいは町村会の議員というような方々は、日ごろ地方税のことに直接関係いたしております関係で、政府は来年度は減税となる、減税となると言つておるが、それどころではない、これはたいへんなことになるぞと言つておる方がなかなか多いのであります。そこで国の予算につきましては、はつきりとこの国会を通じまして、国民のすべてに徹底するように説明していただく必要がありますとともに、国民の負担が限度に達しております今日におきましては、地方税の増額ということは、なるほど地方財政の充実、地方自治の強化という観点からいたしまして、ある程度やむを得ないことと思うのでありますが、大蔵大臣が繰返し申されますことく、シヤウプ博士の勧告にとらわれることなく、でき得る限り軽く決定していただきたいと思うのでありますが、この点につきましては、大蔵大臣の直接の御管轄ではないと思いますが、ごく大体でよろしゆうございますから、その御構想を承りたい。そうしてその御構想によりますと、シヤウプ博士の勧告の四百億円の増税に対し、金額にいたしまして、どのくらいの減額となるか、この点あわせてお答えを願いたいと思います。
  107. 池田勇人

    ○池田国務大臣 国の予算上並びに地方財政計画予算のうちでの全体の数字は、中村委員から申された通りであります。全体的には減税になるのであります。しこうして地方税について言つておられるように、個々の人に計算をいたしますと、あまり減税にならぬ場合も起るかと思うのであります。実際の問題といたしましては、減税とか、増税の問題は、総体的に言つておるのでありまして、織物消費税の免除とか、取引高税の廃止とか、あるいは物品税の軽減とか、あるいは地方の不動産取得税の廃止とか、こういうものについては、個々の人の負担にはつきり出て来ないから、こういうものを度外視いたしますと、これは全体の数字よりかわつて来ることがあると思うのであります。しかし国民全体の負担といたしましては、お話の通りに軽減になることははつきりいたしておるのであります。しこうして地方税の問題につきましては、ただいま自治庁でせつかく検討を加えておられますので、私の見通しといたしましては、先般この委員会において言つておりますように、シヤウプ勧告案よりも、もつと税率その他課税標準において軽減ができるものと期待いたして、せつかく努力をいたしておるのであります。全般を通じまして、繰返して申し上げますが、七百億あるいは計算によりますと九百億円の国税の軽減になることは、はつきりしておるのであります。地方税におきましても寄付金を加えての四百億円の増税をできるだけ減すようにしなければならぬと思うめであります。これには何分にもやはり地方自治体の方で、できるだけ歳出を縮めてもらうよりほかありません。税率にいたしましても、課税標準にいたしましても、もし歳出がどんどんふくらんで来ればいたしかたがないのであります。税の軽減を望む場合においては、やはります地方自治体が卒先して歳出を軽減するということが、減税の要諦であると考えておるのであります。私は税の問題を論議するにあたりまして、ぜひとも地方財政を極力縮めまして、国民負担の軽減に邁進していただくように、この機会を通じてお願いする次第であります。
  108. 中村幸八

    ○中村(幸)委員 お考えによりますと、シヤウプ博士の勧告の四百億の増税に対して、どのくらい減額になるか、その点をちよつとお漏らし願いたいと思います。
  109. 池田勇人

    ○池田国務大臣 今課税標準の計算の方法並びに税率をせつかく検討中でありますので、はつきりした数字を申し上げる段階に至つておりません。
  110. 中村幸八

    ○中村(幸)委員 それから私ども地方で耳が痛くなるほど聞きますことは、今日税金が重いということはわが国の国情よりしてよくわかる、血の出るように苦しいことはあるが、それはやむを得ないこととあきらめておる。しかしがまんができないことは税が不公平に課せられて、取るべからざるところよりむりやりに取り、取るべきところより取らない、納税者を初めから罪人扱いをして、いくら説明をしても、いくら言い訳をしても、てんで聞いてくれない。これでは納税思想を破壊するだけではないか。昔は警察官が一番こわかつたが、今は税務官吏が一番恐しい。こういうことを言つておるのであります。私の手元にも毎日のように地方の人から血をはくような窮状を訴えまして、何とかしてくれないかというような手紙が再々参つておるのであります。このことは大蔵大臣におかれましても十分御承知のことと思うのでありまして、いろいろ御努力しておられることとは思いますが、今後とも税務官吏の素質の向上、再教育というような点には十分意を用い、また徴税技術、徴税方法の改善等にはくふうをこらしまして、国民がみな納得し、みな喜んで納税ができますように、格段の御努力が願いたいと思うのであります。この点につきましてはすでに他の委員質問に対しまして、ある程度の御答弁を得ておるのでありますが、これは非常に大事なことでありますので、重ねて大蔵大臣のお考えを承りたいと思います。
  111. 池田勇人

    ○池田国務大臣 税務行政の運営につきましては、日ごろ心を砕いておるのでありますが、何分にも税務職員の現状から申しますと、かなり困難な問題があるのであります。従いましてできるだけ税制を簡素化しようという考えのもとに、ツヤウプ勧告案によりまして簡素にいたしたのてあります。先ほど申し上げましたように織物消費税あるいは取引高税の全廃、あるいは物品税につきましての軽減、その他また所得税におきましても基礎控除の引上げ、扶養家族の引上げ等、納税者を相当減らして参りました。従いまして今後は最も問題になります所得税の方に携わる職員が相当多くなつて参りますから、調査も今までよりはよほど充実して来ると思うのであります。また今回の税制改正によりまして、異議が申し立てられた場合に、今の税務職員よりも別の機構によつてその申立てを処理する機能を置きまして、そうして国民の声を十分聞いて行きたい。誤つた場合におきましては、これを即座に訂正するような方法を講じて行きたいと思うのであります。かくいたしますと同時に、またお話にありましたように税務職員の素質の向上等をはかりまして、一層税務行政の円滑適正を期して行きたいと考えております。
  112. 中村幸八

    ○中村(幸)委員 次に中小企業の金詰まりの問題についてお尋ねいたしたいと思いますが、この問題につきましてもすでに他の同僚委員より再三質問がありまして、大蔵大臣より御答弁を得ておるのであります。あるいは融資準則を改正するとか、日銀の中小企業資金わくを三十二億に拡大したとか、あるいは見返り資金より十五億の中小企業設備資金を放出することになつたとか、あるいはまたマーケツト・オペレーシヨンによりまして国債償還による間接投資をはかつておるというように、いろいろの手段方法を講じておる旨の御説明があつたのであります。ところが事実はなかなか思うように金詰まりは緩和されておりません。先月以来三月危機ということが非常に問題になつておるのであります。その言葉の表現方法はあるいは適当ではないかもしれません。しかし私どもはいわゆるこの三月危機なるものは来ないと思つております。またいな来さしてはならない。来ないようにあらゆる強力な手を打つて行かなければならないと考えておるのであります。しかしながら本年度最後の納税期にあたりまして、二月、三月において一千億を越える納税をしなければならないということになりますれば、相当今後金詰まりは逼迫するようになるのではないかと思うのであります。政府におきましては商工中金の増資あるいは債券発行限度の拡充ということをお考えになつておるようでありますが、これは二月、三月の間には合いそうもありません。そこで政府としては、この際即効的に何か強力な手を御用意になつておると思うのでありますが、そういう御用意がありましたら、その点承りたいと思います。
  113. 池田勇人

    ○池田国務大臣 臣三月危機ということが言われておりましたが、これはいろいろ主観的な考え言つておられるので、私の目から見ると杞憂だと思います。危機というのはどんなのを危機と言うのか、よくわかりませんが、私はずつと円滑にこの年度を越えて行けると思うのであります。こういうのはいくら議論したつてはてしのないことで、とにかく三月まで議会があるのでありますから、そのときにはつきり事実が証明すると思うのであります。従いましてお話の通りにわれわれはできるだけのことをして行かなければならぬし、またしておるのであります。何もせずにおつたならば、それは危機なら来るかもしれません。できるだけ納税の円滑あるいは企業の殷盛をはかるように手配をいたしておるのであります。ただその金詰まりという問題も、これは程度の問題でございまして、今までのようにインフレにインフレを重ねて来るときには、これは金詰まりの声は聞きますまいが、デイスインフレの線によつて行きますと、これは相当の金詰まりも覚悟しなければならぬ。それで私は金詰まりの声には決して驚きませんが、しかしできるだけ将来性のある企業、ことに中小企業に対しては金融の円滑をはかつて行かなければならぬと考えまして、今までも今お話の通りの措置をとつておるのであります。なお最近の徴税状況から申しまして、政府において余裕金があるならば、いろいろな方法を講じたいと考えておるのであります。今それならばどういう具体的な方法でやるかということになりますと、いろいろな手があるのであります。それは今までやつたのを強化する方法がありましよう。たとえば日銀のわくをふやすこともありましようし、また見返り資金からの融員をふやす手もあるでありましよう。いろいろな手があるのであります。預金部を使う場合もありましようし、あるいは復興金融金庫とか閉鎖機関の金を市中銀行あるいはまた信用組合、商工中金等を通じて流す手もあるのでありまして、情勢を見ながらいろいろな手を打つて行く考えであります。そうしてまた打つて行く用意もできておるのであります。こういうことから考えまして、金詰まりが全然なくなるような施策は、これはとつていいか悪いか非常に疑問であります。金詰まりの状態すなわち通貨の信用を高めると同時に、非常なデフレにならないように、できるだけ金融の円滑をはかつて行きたいと考えております。
  114. 中村幸八

    ○中村(幸)委員 ただいまの御説明で、いろいろお骨折りになつおるようでありまして、ありがたく思うのでありますが、どうかせつかく御努力いただきまして、一部の人の言ういわゆる三月危機というものは單なる杞憂であると、あとで笑い話になりますようにお骨折り願いたいと思います。私の質問はこれで打切ります。
  115. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 議事進行に関して発言を求められております。この際これを許します。林百郎君。
  116. 林百郎

    ○林(百)委員 実は総理の衆議院予算委員会出席の問題でありますが、これは本年の予算委員会の当初に、同僚の川崎委員から、予算審議に対しては各大臣にできるだけ出席してもらいたい。もちろんこれはやむを得ない場合は当然われわれは了解できるのでありますが、実は本日の総理に対しては、野党の第二陣の諸君が全部首相に質問するということの申合せが大体昨日済み、本日も首相が見えたのであります。大体稻村君、川崎君並びにわが党の米原君が質問する。少くとも午前中の十二時まではいてもらいたいというのを、突然十一時半で首相は所用があると言つて予算委員会から席を離れられたのであります。そこでわれわれはこの総理予算委員会から席をはずざれた理由でありますが、これは最初は関係方面との折衝だというようなことを聞いておつたのでありますが、実はその後のわれわれの得た情報によりますと、保守合同の問題で犬養君に会わなければならない。このために予算委員会などにとても出席しているわけにいかぬということで、この予算委員会を欠席されて、犬養君に会つておるそうでありますけれども、一体首相は、犬養君と六千億に上る昭和二十五年度の国家予算と、どつちが大事なのかということを、われわれは疑わざるを得ないのであります。結局これは総理が国会を軽視している現われで、少くともそういう犬養氏に会う話があるならば、晝の休みにもできます。適当なとこにやつてもらつて、重要な予算委員会にはぜひ出席してもらわなければならないというようにわれわれは考えているのであります。そこで委員長にお聞きしたいのでありますが、一体総理はどういう理由でこの予算委員会に出席されずに、少くとも午前中いてもらいたいというのを十一時半で打切られたか。第二としては、今後総合的な国政を審議する予算委員会に、首相の出席を常に求めなければならないが、これに対して委員長としてはどういう処置をとられるか、この二つの点について、今後の予算委員会の議事進行のためにもお聞きしておきたいと思うのであります。
  117. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 ただいま議事進行に関する御発言がるるありまして、承知いたしました。但し総理大臣について確かめなければお答だのできませんものもありますので、後刻総理について事実を確かめてお返事いたします。なお議事進行に関するその他の問題は了承いたしまして、趣旨に沿うように努力いたします。
  118. 林百郎

    ○林(百)委員 本日保守合同の問題が大分てんやわんやになつているようでありますが、そのために首相がここへ欠席されているのかどうか。第一首相が国会の中においでになるのかどうか。この点を委員長は民自党の方でありますから、お聞きしておきたい。
  119. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 御発言でありますが、事実について精査した上でお答えいたしたいと思います。しばらく御猶予願います。稻村順三君。
  120. 稻村順三

    稻村委員 大蔵大臣に対して三点ばかり質問したいと思つております。第一は最近地方税法の改正政府考えていらつしやるそうでありますが、この地方税法の改正案の中には、地租が現行賃貸価格の千倍、それから現行の土地価格の大体のところ二十五倍ということで評価する、こういうふうに言われておりまして、この価格をもつて地租をかけて約三倍半にするというふうにきまつておるというお話でありますが、それはその通りであるかどうか、御答弁を願います。
  121. 池田勇人

    ○池田国務大臣 先般のシヤウプ勧告案には、お話のような勧告が載つてつたと記憶いたしております。その後評価の方法、すなわち課税標準の計算方法、あるいはまた税率につきましては、自治庁の方と関係方面と話合いを進めておるようであります。私の見るところでは少し動くのではないかと想像いたしております。別に私の所管ではございませんが、ただ国民負担に相当の影響がありますので一自分といたしましては関心をもつて見守つておる状況であります。
  122. 稻村順三

    稻村委員 自治庁の管轄でありまして、大蔵大臣の管轄ではないのですけれども、やはりこれは税制の問題でありますので、ことに大蔵大臣の御意見を伺つておきたいと思うのでありますが、大体土地の評価がえの場合におきまして、シャウプ勧告案に現われたところの、現在の土地マル公価格の二十五倍、賃貸価格の千倍というところでもつて評価するということですが、こういう倍率をもつて評価することが正しい方法である、かように考えていらつしやるかどうか、その点をお尋ねしたいと思います。
  123. 池田勇人

    ○池田国務大臣 田の公債の評定は、御承知の通り賃貸価格の四十倍ということになつております。従いまして、宅地その他のものを賃貸価格の千倍にすれば、当然二十五倍ということになつて来るのであります。しかし宅地その他の土地賃貸価格の千倍にすることにつきまして、今研究を重ねていると聞いておるのであります。私も国民負担の問題につきましては、主管長であります関係上、非常な関心をもつて見守つている状況であるのであります。しかして、別問題として不動産の評価をどうするかという場合におきましては、ただいまのところ、やはり賃貸価格の倍数で行くのが、一番適当しやないか。しかし今の賃貸価格というものは、昭和十一年に調査いたしまして、昭和十三年より施行した案で、十年以上も前のものであります。賃貸価格の適正を期するために、再調査ということは必要でございましようが、これには相当の日数と経費を要するわけであります。従つてただいまの場合といたしましては、賃貸価格の倍数によつて評価するのもやむを得ないのではないかという考えを持つております。
  124. 稻村順三

    稻村委員 賃貸価格というものは、一応時の事情によつてかえなければならぬのでありますが、経済的に実際上の法則としてわれわれが見るときに賃貸価格の何倍という比率は、これは一個の主観的なものになりやすいのであります。これは経済学の法則から見ますと、賃貸価格を確実に決定いたしますれば、あとは、たとえば公債その他でもつて公的な平均利子というものがあるのであります。従つて利子率と賃貸価格があれば、それによつて不動産の評価というものは、おのずから出て来ると思うのであります。これは政府が統制をやかましく言わない平時においては、その法則によつて土地なりその他の不動産の価格なりは、おのずかり決定して来たものだと私は思つておるのであります。この法則を無視して、政府が一方的に何倍々々というふうにして価格をきめ、評価をして行くということは、非常な大きな誤差が生ずるのではないかというふうに考えますが、この点大蔵大臣の見解はどうですか。
  125. 池田勇人

    ○池田国務大臣 土地賃貸価格は、これは公租公課を地主が負担する場合において、通常生ずべき賃貸価格、こういうことになつていることは、稻村君も御承知の通りであります。     〔小峯委員長代理退席、委員長着席〕 しかして田畑、宅地を加えますと、全国で一億二千数百万筆であります。これを個々につきまして賃貸価格をきめることは、非常な至難な問題であります。昭和三年に土地賃貸価格調査法というものができまして、全税務職員をあげて二年かかつてやりましても、なおかつ田畑につきましては、大字主義によりまして、一つの大字によるものは大体原則として一本の賃貸価格にする、こういうふうになつておるのであります。従つて個々の田畑につきまして、今度は時価を見るというとさに、賃貸価格をどれだけの倍数にするかということは、田畑につきましてもかなり困難であります。たとえば、めなたは平均利子ということをおつしやいますが、平均利子を何ぼにとるかごいうことが問題であります。しかもまたその利子は地方によつて利子が違つております。こういうことから考えますと、賃貸価格から時価を評定するということにつきましては、実際にそぐわぬこともあるのであります。しかし今の調査時日といろいろな点から申しまして、大体賃貸価格というものは民間の人を入れてきめたものでありますから、これによつてつて行くよりしかたがないのじやないか。こういうことからこの前の農地改革の場合におきましても、田は原則として四十倍、畑は四十五倍、こういうふうに相なつおるのであります。実際問題といたしまして、早急に時価によつて不動産税をとる、という場合におきましては、ただいまのところ賃貸価格の倍数によつてやるよりほかにしかたがないのじやないか、それがやむを得ない措置じやないかと考えておるのであります。
  126. 稻村順三

    稻村委員 そうしますと、経済的な立場考えますれば、大体賃貸価格の厳密なる調査の上に立つて利子率で除して行くという形が貫徹されなければならぬが、実際上これを適用するということになると、非常に不可能な傾向が生じて来るので、便宜的措置として倍数制をとつて行く、こういうふうに解釈してさしつかえありませんか。
  127. 池田勇人

    ○池田国務大臣 時価を見るのに賃貸価格に対する倍数がどうかということも問題になると思います。賃貸価格の倍数で時価が出るかということは問題になるのであります。時価の見方につきましては売買実例によつて見る方法もありましよう。あるいはまた賃貸価格の倍数で見る方法もありましよう。しかしてその賃貸価格というものはどういうものを賃貸価格というかという問題につきましても、賃貸実例によるものか、評定賃貸価格によるものか、これも非常に問題があると思うのであります。ただいまのところは早急にやるといたしますれば、現在公に認められておりますところの賃貸価格に一定の倍数をかけてやることよりほかにしかたがない。従つて財産税のときに農地の評価についてもこの方法で行つておるのであります。しかして今回もシヤウプ勧告案はこれによつてとりあえずやつて行こう、そこで不動産税というものが地方税になりました関係上、各地方地方でこれを将来徐々に是正して行こう、こういう考えを持つておるのであります。
  128. 稻村順三

    稻村委員 シヤウプ勧告案によりますと、現行地租の三倍半ぐらいになるものというふうな計算が出るのでありまして、これはおそらくいくらか減るかもしれませんが、ややこれに近いところのものが地方税法において規定されるものだというふうに想像しておるのであります。そうしますとこれはやはり大蔵大臣の管轄ではないので、はつきりしたところは大蔵大臣が言えないかもしれませんけれども、私たち考えてみると、これは農地調整法との関係になつて来ると思うのであります。農地調整法によると御承知の通り、農家收入というか、收穫の二五%以上を大体出てはいけない。こういう最高小作料の規定がちやんとできておるのであります。そうしますとこれが今日非常に地租にも満たないような状態であつて、二五%どころの騒ぎではない。たとえば今日では一石とつたつて七十五円ぐらいにすえ置きされておるわけでありますので、二五%にやや近いものにするために閣議では小作料の七倍ということを大体決定したようでありますが、この七倍の決定に対して私たちも意見はありますが、しかし七倍を一応是認するといたしまして、大体政府の国債その他の利子で割つてそして土地価格をわれわれが換算してみますと、大体現在公債の十二倍ぐらいのところに納まるのじやなかろうかと思うのであります。そうしますと二十五倍と十二倍でありますから十三倍だけ多いのであります。こういうことになると、これから換算して小作料の計算をやつてみますと、大体が土地価格の評価から申しますと、二五%でなくて五〇%以上越えると小作料になるのであります。こうなるとどうかというと、農地調整法に対して地租の現在の税率で行くと違反ということになりはしないか。私たちは現行の土地価格というものは先ほど幾たびか総理大臣と押し問答した末に、総理大臣農地調整法がわが国の農業政策の根幹でなければならぬ。これがわれわれの農村近代化前提條件であるということを総理大臣自身が確認している。農地調整法による総收入の二五%を越えることができないという、この立場から農地価格を算定したこと、それからシヤウプ勧告案によるところの農地価格の評価という間においては、先ほど言うように倍以上の差が出て来る。これは大蔵大臣直接でないけれども、やはり税の担当の大臣でありますので、かような場合にはどつちの方をとるのが一体至当であるとお考えになるか。農地調整法を尊重するか、それともシヤウプ勧告案を尊重するか。この二者選一の立場に置かれておると思うのでありますが、この点大蔵大臣の見解を伺いたい。
  129. 池田勇人

    ○池田国務大臣 稻村君の御質問が私はつきりのみ込めませんが、小作料收入金の二五%を越えてはいけない。そうすると田の收入を何ぼに見るかということから計算をして行かなければならぬ。けさも総理に対しての御質問のときに、私もなかなか御質問の趣旨が数字的に頭に入りません。今聞きましてもまた私の頭に入らない。そこでこの数字は收入金に対して、收入金は平均どのくらいを見るかということから二五%が何ぼになるか。片方で米価七十五円で小作料をきめている。そして田の平均小作料何ぼかということから、実際の数字を見せていただかないと御返答できないのでございます。もしかりにあなたのようなお話があつた場合におきましては、それは両者の調整について考慮しなければならぬと思います。しかし私はこんな数字が出て来るのだろうかと疑問を持つておりますから、別に数字をいただきまして検討いたしたいと思います。
  130. 稻村順三

    稻村委員 大体この数字は、私の考えたところは、これまでのものを一石七十五円にやつておりますが、日本小作料は大体中田が一石と見られております。昔からそうであります。それを七十五円として見ましてやはり約二五%にするためには、だうしても七倍くらいに上げなければ二五%にならないと思います。それでそれを七倍かけてみて、それから利子率で割つて土地価格というものを出して、現在の価格というもので割つてみますと、大体十二倍くらいになる。こういうことなのであります。これはきわめて常識的な数字の上から言う推論であります。それから見ましても十二倍というと、二十五倍との間にあまり大きな開きがある。この調整を一体どうしなければならぬかという質問なのであります。これは詳しい数字は私といたしましては、調査や何かという機関を持ちませんので、大体常識的に考えた推論なのであります。
  131. 池田勇人

    ○池田国務大臣 田の収入をどう見るか、そして二五%がどうなるか、こういう問題もありますので、簡單なことでございますから、あなたの計算を拝見いだしましてから御返事することにいたします。
  132. 稻村順三

    稻村委員 しかしこの間において非常に大きな開きのあることだけはお認めになると思うのであります。
  133. 池田勇人

    ○池田国務大臣 お話が私にはわからないので、開きがあるかないかにつきまして御返答ができません。
  134. 稻村順三

    稻村委員 大体地方税の地租の問題はそれくらいにいたします。  次にお聞きしたいと思いますことは、農業協同組合に関する課税の問題であります。農業協同組合を育成しなければならぬことは、農業近代化の上から申しましても、ことに急務を要するコストの引下げというようなことで農業協同組合を育成するということは、非常に重要な問題であるとかように考えておるのであります。ところが農業協同組合はすでに御承知だろうと思いますが、農林省の調査によると、一万五千八百三組合のうち実に六三%がわずかな黒字であつて、三五%というものはまつた赤字だ、こういう状態になるほどまだ弱体的なのであります。ところがこれに対して所得税の問題は、私の先ほど調べたところによりますと、一組合当りの所得税は、これまではたしか四千四十八円くらいな課税であつたものが、今度はそれが大分多くなりまして、約八万一千円くらいなものから——これは七組合の実例の調査でありますが、大体において五万円程度の税金が課せられることになる。この所得税の問題は今度の改正によつて二五%から三五%かけられ、それに留保金の二%をかけられて行くためにこういうことになるのであります。これはやむを得ないことと考えましても、問題は附加価値税であります。附加価値税は利益発生組合であつても、利益のない組合であつても、すべて赤字、黒字にかかわらずかかつて行くと思うのでありますが、この附加価値税は平均いたしますと、利益のある七組合で大体八万五百十六円というものがかかつて来るのであります。昔の事業税は四千二百八十六円しかかかつていない。そうすると平均七万六千二百七十六円というものが出るのでありまして、約二十倍近くの税金が附加価値税としてかけられるということになります。これは単なる八万円程度のものであるからして大したことはないと申しますが、今の農業協同組合の一單位の出資金はどれくらいかというと二十万円くらいしかない。大体この二十万円くらいのものでもつて運転をやるのでありますからして、そこに八万円というような厖大な税金がかけられますと、運営がほとんど不可能になるのであります。しかも欠損組合においても同じようなことが言えるのでありまして、平均の欠損はどうかというと、欠損組合七組合を農林省で調査したところによりましても、二十七万二千七百八十二円という欠損を一組合にみな持つておるのであります。こういうような大きな欠損があるにかかわらず、今度の附加価値税はこれに対してどのくらいかかるかというと、四万一千四百五円かかるのであります。私たちはこういうふうなことを考え、ますと、農業協同組合の育成どころじやない、税金のために農業協同組合の運営が不可能になる、こういうことが続々と出て来る。今まで利益のあつた組合であつても、所得税と附加価値税と二つかけられるとみんな赤字になつてしまう。こういうような数字が出ておるわけでありますが、こういうことに関する政府の原案というようなものに対して、経済閣僚の中心をなすところの大蔵大臣は、こういう事態をどういうふうに收拾しようとお考えになりますか。
  135. 池田勇人

    ○池田国務大臣 先ほど不動産税の問題がございましたが、御承知のように不動産税は土地、家屋並びに償却し得べき固定資産を入れて課税標準にいたしたのであります。従来よりも課税標準が非常にふえて来ておりますから、個々の田とか、個々の宅地についての負担はなかなか計算しにくいのであります。しかもまた今言うように、千倍とするか、九百倍とするか、八百倍とするか、税率の一、七五をどういうふうにするかということを今検討を加えておるところであります。これと同じように農業協同組合に対しての法人税の問題でありますが、一組合当り八万円とかいうあなたのお話の根拠に私ちよつと疑問を持ちます。利益がなければ課税しないのでありますから、もしあなたのお話の通りに、農業協同組合の利益が上らないということなら、法人税はかからないのであります。どういう根拠で一組合八万何ぼということをお出しになりましたか、ちよつと私了解に苦しみます。  次に附加価値税の問題でありますが、これはまだ税率の問題もきまつておりません。しかしてまた課税する場合におきまして、総收入金から仕入代金を引いて、今までのような純益課税でございませんから、人件費その他のものは引きません。こういう関係になつておりまして、計算方法をまだはつきり政府はきめておらないのであります。従つて一組合でどれだけの負担になるというような根拠につきましては私は了解に苦しむのでありますが、もし計算の根拠をお示しくださいましたならば、私の方もお答え申し上げたいと思います。
  136. 稻村順三

    稻村委員 先ほどの所得税の問題でありますが、それだから私は利益のある組合を七組合、利益のない組合七組合を問題にしたわけであります。そして利益のない組合はもちろん法人税は問題にならぬと思いますが、しかし現在のようないわゆる三五%と留保金の二%というようなものを現在の上にさらにかけられますと、それは利益にかけられたものであつても、将来の運営が非常にむずかしくなる、これが第一点であります。  第二点の問題は、これは農林省の大体は十四組合の調査によりまして、私はこういうふうになるという計算を調べて来たのでありまして、この点私はどういう計算で言つておるかというようなことでなく、政府の原案からこういう計算が出て来たのだろう、そういうふうに察しております。  もう一つ重要なことはやはり地方税との関係になると思うのでありますが、附加価値税に対して林業と農業を除くことになつておりまして、この農業と林業はたしか九万円の免税点になつておると思うのであります。ところが水産がこれにないのであります。そうしますと、これは十三万幾ら、十五万くらいの水揚げのあるところならば全部附加価値税をかけられる、こういう結果になるのであります。水産業と申しましても十二、三万から十五、六万円といえば、きわめて小さい水産業者でありますが、こういうものに対しても農業と同じように、あるいは林業と同じように、九万円の免税点を設ける方が適当であるかどうかということを御質問してみたいと思います。
  137. 池田勇人

    ○池田国務大臣 初めの御質問の、農業協同組合におきまして、利益のある組合ならば、これは三五%の法人税を納めていただくことはやむを得ないのではないかと考えております。これは沿革的に申しますと、昭和十五年に特別法人税を施行いたしまして、そのと、きには一般の会社に比べて、農業協同組合の税率は半分あるいは半分以下になつておりました。それがだんだん近くなつて来たのであります。しかして今回の税制改正では、今まで全然課税になつていない公益法人でも、今度利益のあるところには課税しよう、こういうことにいたしたのであります。法人税の三五%が率が高いとか安いとかいうことになりますと議論になる点でございます。利益がありましたときには、農業協同組合でも三五%の負担はしていただきたいというのであります。  次に附加価値税の問題につきまして、農業と林業とは非課税にして、水産業についてはどうとかという問題、並びに免税点という問題について御議論なすつたようでありますが、先ほど乗申し上げておるように、今事務当局で検討いたしておる問題でございます。また私の直接の所管でもございませんので、ここにお答えいたすことはいかがな問題かと考えております。
  138. 稻村順三

    稻村委員 大蔵大臣に関する質問はそれくらいにしておきます。
  139. 植原悦二郎

  140. 川崎秀二

    川崎委員 大蔵大臣に簡單に二、三質問をいたします。総理大臣施政方針演説の中に、社会政策的経費は歳出において五百六億見積つてある、こういう言葉がありました。社会政策的経費五百六億とは一体いかなる内容を示すものでありましようか。
  141. 池田勇人

    ○池田国務大臣 児童福祉法に要しまする経費とか、あるいはいろいろなものがあるのであります。主計局長より答弁いたさせます。
  142. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 五百億の内訳はいろいろございますが、一番大きいものは生活保護費の百五十億であろうかと思います。それから引揚げ関係の約五十億、これが大きなものでありまして、そのほか母子保護、児童保護、厚生省の所管行政の経費は、大体大部分が社会政策的経費になつております。またそのほか労働省にもあります失業保険、社会保険その他の関係であります。
  143. 川崎秀二

    川崎委員 どういう計算をされたか知りませんけれども、生活保護費百五十五億、それから母子関係の費用というようなものと、それからおそらく社会保険の政府負担というものであろうと私は思つたのでありますが、どうも五百六億という数が出て来ないものでありますから、この次の機会にでも的確な数字をお示し願いたいと思うのであります。  それから緊急に伺つておきたい問題は、今議会に社会保険税というものを提案するということが新聞記事などに出ております。これはすでに保障制度審議会にかけられて、審議会の方では、政府部内においても意見が一致しておらないということが第一点。それから第二の点は、事業主、個人等の事務負担が非常に多くなるということ。第三の点は、わが国の保険行政というものはいまだ統合すべき段階にあつて、ことに社会保障制度というものが統一をされるというようなことを目前に控えておるのだから、この際社会保険税のごとき、事態を混乱に導くような税法を制定すべきではないということを答申をいたしたはずでありますが、政府としてはあくまでこれを提案する趣旨であるのかどうか、その点を伺いたい。
  144. 池田勇人

    ○池田国務大臣 ただいま御説のような議論がありますので、検討を重ねておるところであります。
  145. 川崎秀二

    川崎委員 社会保険税を提案するとすれば、予算の修正ないしは組みかえを必要としますか。
  146. 池田勇人

    ○池田国務大臣 そういう場合もあろうかと考えております。
  147. 川崎秀二

    川崎委員 予算の修正ないし組みかえをする場合があるというような御答弁でありましたが、そういうことになりますと、たとい少部分でありましてもきわめて重大でありますので、これは予算委員会として、そのまま黙過しておくわけには行かぬと思うのであります。従つてもし組みかえをするものなら組みかえをする、修正をするものなら修正をする、早くその態度を御決定になるべき時期が差迫つておるということを、この際私は御忠告を申し上げておきたいと思うのであります。  第二に御質問申し上げたい点は、今特に人事官の御出席を願つておるのでありますが、午前中の答弁との関連において、特にお残りをいただいて、一点だけあなたから御答弁を願いたいと思うのであります。本日午前中の私の賃金べースの質問におきまして、六千葦百七円の基準を、給與白書の方は昨年の三月に置いており、人事院見解は一昨年の七月を基準にして計算をしておつて、すでに一昨年の七月から非常な物価の値上りがあるのだから、昨年の三月から多少の低落があろうといえども、これを基準とするのははなはだ不可であるということを私が申し上げたのに対しまして、実施時期が三月であるからこれをとつておるのだという御答弁でございました。一体人事院はこのことについて、昨年三月を不可とし、いかにして一昨年の七月を基準としたか。この点について明快なる御答弁を承り、その御答弁のいかんによつては、大蔵大臣の再答弁を要求いたしたいと思います。
  148. 山下興家

    ○山下(興)政府委員 お答えいたします。私どもが資料によつて研究いたします場合には、決してある数字を予想して計算するのではないのでありまして、すべて政府の機関で発表せられました資料をもととして計算するのでありますから、だれが計算せられても少しも間違いない、すなわち客観性があることをわれわれは大切にしておるのであります。それで一昨年の十二月に給與の改訂をいたしましたときの基準をとりますときに、過去においてそれの一番近くに発表をせられました、すなわち労働省の毎月勤労統計そのほかCPS、CPI、すべてそういうものを基準としてきめたのでありますから、一昨年の七月という古い月をとらなければならなかつたのであります。もう少し近くの基準をとればいいのでありますが、われわれが申し出したときにはそれが一番近かつた。それが実行せられましたのが一昨年の十二月一日であります。大蔵省では昨年の三月と言われますが、その時期は何でありましても、われわれが六千三百七円を計算した基礎は一昨年の七月であつたのでありますから、これを改訂するというときには、中間の月を考えるべきでなくて、その一昨年の七月と比べてどう変化しておるかということによつてきめるべきものであります。それでわれわれがきめますには、今も言いましたように、予想数字は使つておらないのでありますから、いつでも実施は遅れるわけであります。その実施の遅れる間の物価は、全部考えに入れないということであるならば、これから先はまた考え直さなければならぬのでありまして、給與の改訂はその計算をした月までさかのぼつて抗うということの方が、りくつがあるようにも思えるのであります。そういうわけでありますから、どうしても計算をした基礎まで返らないと話にならぬ、そういうふうに私ども考えております。
  149. 川崎秀二

    川崎委員 ただいま山下人事官から答弁がありましたように、客観的な事実によつて示さなければならぬ、また事実に基準を置かなければならぬ、そのためには古いけれども一昨年の七月に基準を置いたのだ、それから過去においてそうだつた、たとえば二千九百二十円から三千七百九十一円ベースにかわるときの基準のとり方もそういうふうにして来たし、三千七百九十一円が六千三百七円に上るときもそうなのだ、今度もそうなのだということを言われておるわけなのです。従つて政府が昨年の三月にわざわざ基準を置いて、それと今日との比較において議論をするということは大きな間違いだと私は思う。しかもそれが七〇%になり六〇%になる、物価が非常な惨落をしているということであるならば、大蔵大臣がけさ言つたことも納得ができると思うのでありますけれども、それがきわめてわずかな差なのです。九三%とか、九七%というような数字を示しておるのでありますから、一昨年の七月から見て物価は明らかに高くなつておる。そのときに基準を置いたところの六千三百七円ベースというものは、改訂されるべきであるという人事院見解は正しいと思う。大蔵大臣はどうお考えになりますか。
  150. 池田勇人

    ○池田国務大臣 六千三百七円ベースは十二月に勧告があつたのでありますが、昨年の一月、二月は五千二百何ぼで行つてつたのであります。三月からようやく六千三百七円ベースなつたのでありますが、その後消費者物価指数はだんだん下落の傾向にあるのであります。私の言うことは楽観的事実だ、申されますが、この現実の事実に対しまして、ただいまのところベースを動かさない方がいいと信じておるのであります。
  151. 川崎秀二

    川崎委員 大蔵大臣にお尋ねしますが、現実の事実といえどもなおかつ惨落の傾向にはない。ただそれはCPSにおいて九七%になつたとか九三%になつたとかいうことであります。それに比較してさらに最近では電気であるとか、あるいはガスであるとか、あるいは米であるとかいうような、直接国民の生活に響くところの物資が値上りを示そうとしておる傾向においても、なおかつあなたは現実に根ざして給與をきめなければならぬと言うのか。一昨年七月の状態を無視し、一昨年の七月に六千三百七円の基準をとつたということを無視してきめようとなさるのか。
  152. 池田勇人

    ○池田国務大臣 先般来説明しておりますように、いろいろな価格の引上げはありましたけれども、それ以上に減税その他をいたしまして、四月からは扶養家族三人の場合につきましては、いろいろな物価の値上り覚ましても減税その他の施策によりまして、生計費は三%ないし四%少くなる、実質賃金が向上することは、大蔵省から安本などに数字で発表した通りであるのであります。従いまして今後は、ことに四月からは実質賃金はよくなると考えておるのであります。
  153. 川崎秀二

    川崎委員 もう一点大蔵省と非常に関係のある問題で人事院に伺いたい点があります。その点を伺つて大蔵大臣の答弁を伺います。それからはどこへ行かれようとかつてです。そこでお伺いしたい点は、給與状態に関して大蔵省が白書を出す前において、すでに人事院では白書を出すといううわさが非常に濃厚であつた。しかるに政府側が白書を出すと、その後何ら音さたもない。これは巷間大蔵省側の牽制によるものだとも言われており、政府側の政治的な牽制というふうに言われておりますけれども、はたしてそうでありますかどうか。
  154. 山下興家

    ○山下(興)政府委員 白書の問題でありますが、実は七千八百七十七円に改訂する理由づけをするために、いろいろな資料を前から国会に提出しておつたのであります。しかしその後まだそれでは足りないと思いまして、いろいろな資料を国会に差上げたいと思つておりました。ところがそれが新聞の方で白書という名をつけられまして、人事院が白書を出すのだというえらいうわさが立つたのであります。われわれは全然そういうつもりではなかつたのであります。ところが政府がいわゆる給與白書といつたようなものを出しましたが、これに対してはいろいろな点でどうもわれわれはふに落ちない点がたくさんあります。しかしそれについて何かわれわれが出しますと、いわゆる白書戰というようなかつこうになりまして、それが人事院政治に干與するのだというような疑いを持たれますと、非常に困るのであります。われわれは決して政治に干與しないのだ、どこまでも中立である。従つてわれわれが数字を出しても、それは政府にも、何によつても牽制されない。われわれの出す数字は百パーセント正しいものとして国民が受取つていただけるために、われわれは中立を守つておるのである。ところがそれが白書戰をやつたということになりますと、人事院政治に干與して、そういう白書戰みたいなことをやるということになつて、国民に信頼してもらえない。われわれの出す数字を信頼してもらえないということになる。そういうことが一番心配なのであります。それですから、ああいう白書というようなものを出すことはやめたのであります。但し国会で何か御質問があれば、もちろんお答えいたします。そうしてわれわれの数字は、どこまでも正しいのだということを国民に納得していただきたいのであります。たまたま人事院が出した数字は誤りであるというようなことが流布されますと、国民は一体どれを信じてよいのかわからぬので、これだけはわれわれは正しいものを出します。それを採用するかどうかということは、もちろん国会でおきめになるのでありまして、そういうところまで干與いたすことは、越権であるとわれわれは思います。従つてそういう意味において、われわれは白書は出さないということにしたのであります。
  155. 川崎秀二

    川崎委員 人事院はまことにつつましくて、大蔵省の方がさきに白書を発表してあとなつたから、政治的な紛糾を避けたいから出さなかつたというのでありますが、実にしおらしくもあり、気の毒でもあります。人事院が設けられたゆえんは、国家公務員法によつて明らかである。すなわち官吏の給與生活についてはこれを確保しなければならぬ。常に精密な科学的な統計をもつて、官吏の生活のために努力するための機関として、人事院というものは設けられておつたと私は思うのである。従つて先に人事院からペースを改訂しろという勧告が出れば、それに伴うところの数字が当然出て来るのでありますから、人事院の給與白書と申しますか、科学的な根拠に基いた数字の発表の前に、大蔵省は何ゆえ政府をしてこのような給與白書を作成せしめるに至つたか。私はそれはあとでよかつたと思う。大蔵大臣は、財政的な見地から、反対であるならば反対であるとあらゆる資料でもつて予算委員会、本会議を通じて説明すれば事は足りたのに、そういう白書を出すに至つた。それは大蔵省が出したとはいわず、政府全体の責任でありますけれども、大蔵省側の越権行為ではないかと思うが、大臣はどう考えておりますか。
  156. 池田勇人

    ○池田国務大臣 川崎君のお話ほとんでもないお話でございます。人事院で給與ペースを変更するという勧告案を出されましたので、政府といたしましては、科学的に、また政治的に考えて、国民に引上げざる理由を示すのが責任であると考えて、政府としては出したのであります。どつちが先だとか、どつちがあとだとかいう問題ではありません。私はあの際といたしまして、大蔵省からは国会へ資料を出しておりますが、政府といたしまして、この重大問題について政府の所信を国民に知つていただくことが必要だと思つて出したのであります。
  157. 川崎秀二

    川崎委員 この問題について質問を続けたいのでありますが、大蔵大臣との関連はもはや終りでありますから、いかがしたらよろしいでしようか。
  158. 植原悦二郎

    植原委員長 あと保留して、大蔵大臣はお時間ですから……。
  159. 川崎秀二

    川崎委員 それでは保留しておきます。
  160. 植原悦二郎

    植原委員長 稻村順三君。
  161. 稻村順三

    稻村委員 安本長官に、二点だけお尋ねいたしたいのであります。一つは農産物の価格の問題であり、二点は農村金融の問題であります。農産物の価格、主として米価に対しましては、従来のいわゆるパリティー計算という形式をとつて来たのでありますが、これに関しましては、すでに国際価格と国内の農産物価格との間に結びつきができたり、いろいろ條件がここにかわつてつております。しかも価格が国際物価にさや寄せするという形勢におきまして大体において一つの趨勢に統一されて来ておると思います。そうしますとわれわれは、昭和九年、十年、十一年を基準としたパリティー計算というものの、いわゆる均衡価格というものがすでに基礎を失いつつあると言うことができると思うのでありますが、この点に関する安本長官の御意見を伺いたいと思います。
  162. 青木孝義

    ○青木国務大臣 農産物価格につきましては、稻村委員の御承知の通り、かねてからパリティー計算を基準といたしております。おつしやるように、農家の收入というものと考えあわせてみますならば、大体農家経営の用品、それから家計用品の購入価格均衡をとつて行くということでありますが、これについての御議論は、主として国内的な問題であつたということは御承知の通りでありまして、これを適正にきめるということについての議論は、前々からございますけれども、大体今おつしやいましたように、九年、十年、これが戰前の最も安定した時期であるということから、これを基準年次をいたしまして、パリティー計算が行われたのであります。ただ国際物価にさや寄せすると申しますが、農産物は御承知のように、特に統制が一般に行われており、しかも配給価格等がきまつておりますゆえ、米麦のようなものを、ただちに国際価格にさや寄せすることの可能性のいかんということは、おそらくわれわれがごく一般的に考えてみましても、ただちにそういうことが実現するというわけには参りません。ことに輸入食糧の価格と国内食糧の価格との均衡を保つという意味で、輸入補給金をも出しておるような次第でございますので、この点は十分御了承が行くだろうと存ずる次第でございます。
  163. 稻村順三

    稻村委員 安本長官は何か見当違いしておるようであります。私は、米価なら米価を国際価格にさや寄せするということは、一つも言つたことはない。米価を構成するいろいろな諸要素があります。この諸要素が国際価格にさや寄せをして来たために、たとえば昭和九年、十年、十一年との間にウエイトが非常にかわつて来ております。それから戰争中の農民生活と、戰争直後における農民生活と、今日の農民生活あるいは農業生産というようなことを考えてみますと、その間にウエイトの上に、各品目の間に非常な変化を来しております。ことに国際価格の上に、それらの多くのものがさや寄せをする傾向が出て来ますと、さらにそのウェイトが、前に考えられたウエイトとはまつたく違つて来るのであります。そうしますと、ここで数字を私は申し上げませんが、ごく常識的に考えてみましても、従来のパリティー計算一本やりの価格で、農産物価格をきめておつたのでは、農家の生活に非常に大きな影響がある、農家の生活が圧迫されるという現状が出て来つつあるので、多少ともそこに修正の余地が出て来るのではないかということを、安本長官に所信を聞いたので、農産物自身が国際価格にさや寄せするとか、補給金がどうとかいうことは、これは私の質問外の答弁であります。
  164. 青木孝義

    ○青木国務大臣 農産物価格につきましては、もしただいまのあらためての御質問のことと考えあわせますれば、今私が申し上げたこともその答弁一つになつておると思います。決して見当は違つていないと思います。なぜなりば、主食の自由価格、それからマル公というものから考えてみまして、多少り影響があるということはわかつておリますけれども、まつたく違つて来ておるという言葉は、少し強過ぎると私は思います。
  165. 稻村順三

    稻村委員 農産物価格を形成するところの各品目のウエイトに、非常に大きな変化が来ておるということはお認めになるわけですか。たとえて申しますならば、農具と肥料との関係一つ見てもわかるのであります。それからたとえば、戰争中におきましては、実際の農業経営の上からいえば、農具のウエイトはきわめて小さく、そうして肥料のウエイトが非常に大きくなるというようなこともあつた。ところが戰争がいよいよはげしくなつて来ると、肥料を買いたくとも買えなくなつて来る。そうすると肥料のウエイトが非常に少くなつて、今度は農村において、木綿であるとか、その他の生活必需品というものが、農業経営の上において非常に大きなウエイトを持つて来る。こういうようなウエイトの変遷があると思うのですが、こういうようなウエイトの変遷を考え、しかもその個々の品物が国際価格にさや寄せして参りますと、従来のような封鎖経済の上に、統制をやるところの品物ばかりであつたということが、さらにくずれて行つて、この二つの方面からいたしまして、従来のパリティー計算というものに対して、何らかの是正を加える必要ができて来ておるのではないか、私はそういう質問なんであります。
  166. 青木孝義

    ○青木国務大臣 もとよりパリティー計算についていろいろと御意見のございますことは、決して承知してないわけではございません。ただ問題は、一体パリティー計算上あげられている個個の農家の購入品目について、それぞれのウエイトがかわつておるが、これは農家経済に対して相当大きな影響があるので、ついてはパリティー計算の計算方式、基準をかえる考えがあるかどうか、こういうことでありますれば、今のところはまだそういうふうに考えておりませんけれども、安定本部としては、いろいろとなお研究はいたしておる次第でございます。
  167. 稻村順三

    稻村委員 パリテイー計算が、全面的にとは申しませんけれども、多少でも従来のパリティー方式に対して修正を加えなければならぬという現実は、これは安本長官も認めておるようであります。それは今でなくとも、あるいは近い将来においてそうしなければならぬということになつて来ると思うのであります。そうしますと、今から考えておかなければならぬのは、安本長官は企画庁の長官として、将来の農産物価格はどうあらねばならぬかということが、一個の問題となつて来ると思うのであります。そういうことについて、生産費税をとれとか、いろいろの説があります。私は必ずしもそういうことを言つておるのでないのでありまして、ごく基本的な問題だけをお聞きしておきたいと思いますが、農産物価格は、主食のようなものは特に自由販売ということになかなかならないように考える、あるいは自由販売になりましても、やはり農産物価格を維持する目標があるのでありますから、その目標をわれわれは考える場合には、どういうところに実施点を置かなければならないか、これは非常に重要なことだと私は思うのです。それにつきましては農産物価格を一体どうするかという問題になりますと、結局いわば農民生活を安定させるということになると思うのであります。しかし農産物の価格をもつて農民を安定させる、これは非常に抽象的だが、一体農民生活をどこに水準を置くかということが、非常に重要な問題であろうと思うのでありますが、企画庁としての安本は、日本農民生活の水準をどこに置こうと考えているか、この点をお伺いいたします。
  168. 青木孝義

    ○青木国務大臣 これはなかなかむずかしい問題ではありますが、国民経済全体から見まして、農民だけが特別に貧困であるとか、あるいは圧迫を感じるということは避けて参りたい、これは抽象的に申し上げます。そういう考え方で取扱つて、いろいろな資料等もそういうことからとりまとめ、またそこから企画を考えるということでありますが、少くともわれわれが現在やつております当面の問題になりましたパリテイー計算におきましても、大体現在の各種目の用品のウエイトを考えながら計算をしておりますので、ただ基準年度をそこにとるということだけでなしに、たえず農家の経済に所要ないろいろな用品の価格のウエイトを考えておりますから、そう他の関係農業経営あるいは農村だけが、かわつた結果になるというふうには持つて行きたくない。そういうことでできるだけ一般的な水準を維持して行くという考えで、各種の資料によりて検討をいたしまして、計画を立てて行きたい、こういうことであります。
  169. 稻村順三

    稻村委員 今の安本長官の答弁答弁になつておらないと思います。というのはどこに水準を置くかというような問題になりますと、日本国民全体の平均水準というものは、ちよつとできないと思うのであります。上は独占資本家から下はこじきに至るまでの平均水準というのは意味ないと思う。一体どこに農民の生活水準を置くか、維持するかということになります。維持するというと、いつごろの農民生活の水準を維持するかということを目標にして、企画を立てて行くかということも問題になつて来ると思うのであります。この点は重要な問題です。農民生活を——たとえばペリテイの問題にいたしましても、農民が必要経費を全部補つてしまつてあとに残つた費用は何を基準にして一体計算するのか、その費用がなければ農民は生活ができないのであります。農民を生活させるために、一定のウエイトによつて必要経費を全部計算して、残つたものをどれくらいまでに押えるということは、きわめて重要なことです。そうしますと、それを一体どれくらいな生活の水準として農民生活を見通して、そうして価格なり、パリティーを使うなり、あるいは生活費説をとるなり、その問題がきまらないと、農産物価格を企画庁として一応目標を置くなり、決定をする場合、ほとんど目途がつかないことになる、こう私は考えておるので、農民生活をどの水準に置くことが目標なのか、それを聞いておるわけなのであります。
  170. 青木孝義

    ○青木国務大臣 稻村委員からどの水準に置くかと言われますと、非常にむずかしい問題で、それならばどの水準といつたようなことを一応お考えになつておられるかわかりませんが、これはなかなかむずかしい問題であります。と申しますのは、大体国民所得というものは、一般に各種の算定の標準を形成しておる。こういろふうに考えられてはおりますが、御承知の通り二十五年度におきまする国民所得は三兆二千億一それでは農民の所得はどういうことになるかといえば、御承知の通り大体七千九十六億ということに多分なつてつたと思いますが、それは国民所得の二二%であります。そこで昨年と比べてみましてやや上つておるという計算でございます。しかしそれならば農民生活の基準がこれだけで定まるかといいますと、決してそうではございません。そのほかに各種の要因がこれに加わつて来て、初めて農民の生活水準というものが描き出されるのであろうと思います。それではどこに置いたか、こう言われれば、やはり日本経済の一般の生活水準と考えられる点が、やはり農民においてもいろいろ集まつて、生活上の要素は違つておりましようけれども、大体そう申し上げられるであろうと思います。
  171. 稻村順三

    稻村委員 私たちはこう考えておるのであります。農民はその業態から考えますと、一応の自立経営者であります。自立経営者であると同時に自分官身が労働者であります。従いましてわれわれは普通経済の場合を考えてみますと、現在のように非常に失業者が多く、都会に就業者が全然ないという場合は特別でありますけれども、一般の場合を考えますと、農民はみずからの農業経営によつて、一切の経費を除いて、それがやや平均労賃に相当したところの收入でないならば、農業を捨てて離村して行くというのが一つの法則であります。従いまして私たちはこの点をどこに置くかということになれば、私たちの考えから申しますと、せめて賃金労働者の水準が、農民において普通にとられておる形であり、その点を維持することは、これは最低線であるというふうに考えてさしつかえないと思いますが、この点安本長官はどうお考になりますか。
  172. 青木孝義

    ○青木国務大臣 日本農業についての生活水準、こういう問題は今稻村さんがおつしやつたような考え方で、はたして行けるかどうかということについては私は確信がないのでありますが、ともかくも條件が非常に違つておるということ及びいわゆるその特殊性ということ、また零細農業というような点から見ましても、一般の鉱工業賃金といいますか、そういう賃金水準で計算が成立つて農業経営がはたしてできるものであるかどうか、これはなかなかむずかしい問題だと思います。  なおこれはここで引用するのもどうかと思いますが、実は私どものところでかつてつておりました五箇年計画の線から申しますと、生活水準は一昭和六年を基準といたしまして昭和二十八年度におきましては、農村が九二、都市が八七、それを合せますと、大体平均八九・五という数字が一応出ております。しかしながらこれは今後とも再検討しなければならない点もあるかもしれませんし、またわれわれとしてはこういうものが一応出ておることを申し上げて、一つ答弁にかえたいと存じます。
  173. 稻村順三

    稻村委員 農産物価格関連いたしまして、先ほど総理大臣に対して、あるいは農林大臣質問したのでありますが、大体において農業政策は、従来のように経済的に引合わぬでも自給するという建前から、実を言うと、農業経営の成立つようた方向に、農作物その他も選択して行くというふうになつて行かなければならぬ。そうなると外国の農産物との間の競争に耐えるということが、非常に重要なのでありまして、これは農業ばかりではなく、すべての産業においてそうでありましよう。従つてわれわれは合理化ないしは近代化という言葉をもつて、これに何とかして対応しようというふうに考えておるわけであります。講和の成立が何年後にできるかわからぬが、自主的貿易がそう五年も八年も十年もとい今ふうに延びて行くとは私たちは思つていないのであります。そうすれば、外国農産物——今の為替関係も、日本国内の経済が安定するに従つて変化をするであろうということも私たち考えるのであります。そうしますと、外国商品と競争するという建前の上に立ちまして、日本農業を一応合理化なり近代化なりへ持つて行くということが、必要だと思うのでありますが、この近代化合理化をどういう方向にして行くか、これはいろいろな考え方がありまして別だと思いますが、ただ大蔵大臣みたいに日本農業合理化はすでにでき上つた、それはすなわち土地改良と、農村もみんな電気をつけているからた、私の質問に対する答弁はそうでありました。こういうふうなことではとうてい解決し得ない問題があると思うのでありますが、私たちはこの点において、財政計画などを企画庁として立てる場合には、おそらく土地改良あるいは災害の復旧、その他河川工事、治山治水というところに費用を多く投ずるということ——同僚議員がみなその要求をしておりますが、こういうふうなことをやつて行くということは、実はこの近代化の前提として、また近代化への一歩前進として解釈してやつておられるのか、企画庁としての御見解をお尋ねしたいと思うのであります。
  174. 青木孝義

    ○青木国務大臣 お説のように、わが国の農業政策という点、あるいは農業近代化とおつしやるような意味での、国際的な競争場裡においてわが国の農業が、ともかくもその生活、経営を維持して行けるという立場を将来確立して行きたいということは、私どもの念願も同然であると思います。なお日本農業政策といいますか、今後の農業対策、こういう問題については私どもまだ寡聞でありまして、あまりはつきりしたものをつかみ得ておらぬのであります。しかし政府としての立場から考えますれば、まず当面の問題としてできるだけそういうことに、その目的に近づいて行くようにということは絶えず考えておりますが、特にわれわれが公共事業費であるとか、これに関連いたしました災害対策、土地改良費、農林政策というものを考えて参りますと、やはりこれは結局日本農業というものの実態を把握しながら、どうしても国の財政をもつてやらなければならぬもの、そういうものをはつきりときめて行くということが、できればしたいというふうに考えておりますし、また予測のできないような問題、あらかじめ予測のできるような問題については、できるだけこれを鮮明にして、国と公共団体とが特に農業問題の解決に当らなければならぬというような、きわめて抽象的な見解は持つでおるのであります。しかし大体におきまして、御承知の通り現在やつて参ります点では、やはり公共事業費等にできるだけ農業部面における必要な国費を支出するということに努力して、農業改良の実をあげて行かなければならぬと思いますが、何にいたしましても、日本農業経営の基礎がきわめて零細であるという点に、非常に至難な点があるのではないかと思います。また農村人口の過剰であるという点も大きな隘路をなしておる。考えるときにおける、あるいは実行上における隘路をなしておるとも言えると思いますし、またわれわれといたしましては、一応当面の問題として農業近代化というようなことを取上げるにいたしましても、まず電力開発であるとか、あるいは電力開発に伴います総合計画としての治山治水、そういう関係をも解決して行かなければならぬというような意味において、少くともわれわれは今後総合計画的な立場で開発事業等は十分やつて参りたい。これは同時に農業近代化ということにも伴つておるだろうと思いますし、またそのほかしさいな問題になりますれば、いろいろ改良すべき点が多々あると思いますが、一応さように考えておる次第でございます。
  175. 稻村順三

    稻村委員 安本長官の企画は私たち非常にけつこうだと思うのでありますが、ただそう思つておるだけでは何にもならないのでありまして、先ほど私は農林大臣に対して質問したときも繰返し述べたのでありますが、すでに一、二年という近き将来を考えての対策が必要なのであります。その際に私たちは、現在でもすでにたとえば米価が、四千七百円を要求したのに対して四千二百円になつてしまつた。こういうことは農家の生活に非常に大きな影響を及ぼしているのであります。しかしそれならば四千七百円という形で行くのが正しいか、四千二百円で行くのが正しいかということになれば、四千七百円でもなお農家の生活——先ほど安本長官が言われましたように、生活水準の一応の目安をきめまして、その水準を維持するためには、農業近代化よりほかにないというその結論だろうと思うのであります。そうするとこれは二、三年のうちにこれを実現しなければならぬとすれば、あるいは治山治水であり、また災害復旧であり、土地改良であるというような問題に対して、ここ五年なら五年のうちに、どのくらいの費用を投ずる計画を安本長官はお持ちであるのか。そういう計画はまつたくないということになれば、企画庁として農業政策に対して、こうしたいああしたいという希望ばかり持つても、具体的な案はちつともないということになるのでありますが、そういう緊急な問題に処するための安本長官の大体の計画があつたら、お知らせを願いたいと思うのであります。
  176. 青木孝義

    ○青木国務大臣 今われわれが取上げておりますのは、それぞれ地方の開発の計画というようなものでありまして、農業直接とは参りませんが、近代化という意味ではそういう点を取上げております。さらに日本の資源開発というものともにらみ合せまして、総合計画を立てたいというように考えております。但し今ここで当面の問題といたしまして、金融対策というようなものについて申し上げますれば、見返り資金等の使用について土地改良であるとか、あるいは造林であるとか、それから魚田開発等に融資を行う方針で、金額についてはただいま検討中でございます。それから農林中金の資本金及び債券の発行限度の拡充というようなことを今計画をいたしております。農林中金の現在の資本金四億円を倍額増資し、さらに新資本金と同額程度の優先株を発行して、見返り資金の引受けとする。これによつて約三百億の農林債券発行余力が出て来るということで、今せつかく計画を立てておる次第でございます。これもなるべく早く実行に移したいと存じておりますが、これはただ当面の金融対策の一つであります。なおここに表にして持つて参りましたけれども、いろいろと農林漁業対策という意味で、今申し上げたようなことを早く実行に移して行くというようなことを、今考えておるような次第でございます。それから農業手形制度改正というようなことも考えておりますし、昭和二十五年における農業手形の利用状況を考慮して、本年を限りまして北海道のばれいしよも適用の対象にする。それから供米報奨肥料を新しく適用して資材に加える、その他借入れ期間の延長であるとか、手続の簡素化であるとか、タバコ、まゆについてもその肥料資金供給の道を考究中というようなわけで、当面の問題としてはそういうことも考えておりますが、やはり財政的には御承知のように公共事業費の増額というようなことで、二十五年度は御承知の通り昨年の大体倍額が支出されるというわけでありますし、なおわれわれとしては、せつかくこの方面についてもできるだけ作業を進めまして、善処いたして参りたいと考えております。
  177. 稻村順三

    稻村委員 工業方面や、その他いろいろな産業方面に行きますと、大体の目標を定めておきまして、その目標への一応の財政資金を投入するなり、あるいは国家資金を投入するなりという場合には、その目標へ何年のうちにどの水準まで行くのだということで大体やつておると思うのであります。そこでたとえば先ほど昭和六年ごろの生活水準を維持するという、その水準が大体できているという話でありましたが、私はこれでは不十分だと思うのであります。しかしそれくらいな水準を維持するために、今日荒廃した農業だとか、あるいは山だとか、農地だとか、あるいは河川だとかいうものを、全部その水準に維持する——ことに非常に農民が多くなつておるのでありますけれども、それを維持するために、一体どれくらいな金額がここに必要であるかどうか。そういう計画があつたら、お知らせ願いたいのであります。
  178. 青木孝義

    ○青木国務大臣 これは前に大体五箇年計画というものの場合には、一応そういうものも算定した経験があると存じておりますが、私はただいまその数字を存じておりません。ただ問題はそういう一応の目標を立てて、今後の施策を実行して行くということは、まことにけつこうなことだと思いますが、何しろ日本経済の自立性ということを考えますと、御承知の通り今日のところではなお外国から、ことに連合国からの援助等が多額にございますような関係で、国際的に貿易の收支並びに貿易外の收支等で均衡を保つような時期、そういう時期も考えなければならぬし、同時にもちろん見返り資金等の減額というようなことも考えなければなりませんので、それは今のところはつきりそういう目標が立つかといえば、なかなかむずかしい要素がそれぞれあると思うのでありますから、今後ともなお検討してみまして、日本がようやく自由経済への移行過程をたどつでおるが、それかといつていまだ完全なものになつておらぬことは、御承知の通りであります。従つて今後ともそういう点から総合いたしまして、できるだけの見通しのできるような、実行可能であると考えられるような政策は、遺憾なく立てて参りたいと存じます。
  179. 稻村順三

    稻村委員 先ほども一つお尋ねしたいと思つてつたのでありますが、それは大体私が質問しないのに大臣の方から答弁してくれたのでありますけれども農業金融の問題であります。農業金融に関しましては、やはりわれわれとしては国の資金が投資されるということは、ことに農業経営自身に投ずる金として、非常に重要な問題でありますが、これは実を言うと資金計画の中に、安本長官としては十分組み入れておるだろうと思うのであります。そうしますれば、今一体農家の農業資金として、長期、短期を合せまして、金融に必要だと思われるような需要は、安本ではどれくらいに見積つて、そうしてまたこれがどれくらいを流用するという計画を立てていらつしやるのか、それをお尋ねしたいのであります。
  180. 青木孝義

    ○青木国務大臣 実は稻村さんの御質問の点で、いわゆる日本の農村で、財政資金を使うことが不可能なら、農村金融に対策があるか、こういう御質問があつたように聞いておりましたので、それについては一応こういうふうな御説明をいたしたいと予定したものがここにございますから申し上げますが、農村に対する金融は、食糧増産あるいは民生安定の上から、きわめて重要でありますことは言うまでもございません。一般金融の対象となる設備資金につきましては、財政の面からも見返り資金からも、それから土地改良、造林等に融資することも考えておりますし、また開拓者資金融通特別会計からも本年度に引続きまして明年度も十二億円を支出することにいたしております。それから次に農村金融機関である農林中金を活用するということについては今申し上げましたが、債券等の発行、それから資本金等については出資金の十倍、二十倍というようなことを考えております。なお見返り資金による優先株の引受けという問題についても、先ほど申しましたように、現在の四億から十六億に増加するというようなこと、新たに二百四十億円の債券発行余力を生ぜしめたいと存じております。かように考えておりますし、このほか必要に応じまして農林中金の手持ちの国債を日銀で買上げてもらう。日銀買上げによる農林中金の融資力を十分に充実して活用したい。こういうことであります。そこでなお先ほど申し上げた手形等は十分これは活用して行きたいと思いますが、なお資金計画につきましては、農業方面の資金計画は多分私のところの資金関係の係の者がおると思いますから、その方からもう少し数字的な御説明をいたしたいと思います。
  181. 稻村順三

    稻村委員 全般的なことでよろしいのです。どれくらいの資金需要があつて、どれだけ充当するかという、それだけ聞きたい。
  182. 青木孝義

    ○青木国務大臣 私の方でこれはまだ実ははつきりと大蔵省の方、その他閣議で多分了解を得てなかつたと思いますが、そういう表をつくりましたから……。
  183. 稻村順三

    稻村委員 資金需要です。
  184. 青木孝義

    ○青木国務大臣 結局設備資金の需要は大体二百億見積つております。それから農林中金より百二十億、見返り資金から六十億、そういう予定であります。
  185. 稻村順三

    稻村委員 資金需要に対して、全部それでは金融するという建前になつておりますか。
  186. 青木孝義

    ○青木国務大臣 この予定の額は供給するという目途で検討中であります。
  187. 稻村順三

    稻村委員 そうすると資金需要の調査はないわけですか。資金需要の予定とか、あるいは何とか、そういうものはないのですか。
  188. 青木孝義

    ○青木国務大臣 資金需要についての調査がないわけではございません。確かに安本ではやつておりますが、今資料があるかどうか調べてみます。
  189. 植原悦二郎

    植原委員長 あとで表をつくつて提出されたら……。
  190. 稻村順三

    稻村委員 私は非常にこまかいことを尋ねたようでありますが、実を言うと、今までは農産物の価格の問題についても、農民の生活というものを基準にして、そうしてどこにその生活水準を置くかということについて、案外みな無関心に、ただ農村問題を論じておるような傾向があつたのでありますけれども、今日の午前中に今後の農業政策は、農民生活の安定ということに基準を置くという、こういう方向に向いつつあるということを、農林大臣から言葉得たので、そこでわれわれとしては、それならば安定とは一体どの線において安定せしめるかということを、一応考えなければ、農作物の価格決定の基準にならぬ、こういうふうに考え質問をしたのであります。  第二にわれわれといたしましては、農村近代化の場面において、農業金融の演ずる役割はきわめて重要であると思います。従つて企画庁であるところの安定本部におきましては、需要と供給との間に、どれだけの実効を上げるかという嚴密なるところの企画が、もうすでになければならぬ、こういうふうに考えております。さらに私たちは、たとえば生産コストを幾ら引下げることができるか、また何年後には外国からフリーな農産物が入つて来ても、これに競争できるか、こういう企画が安本にないということはきわめて遺憾であります。こういうふうなことでは、企画庁である安本がだんだんだんだんと軽蔑されまして、遂に安本廃止論まで起つて来るということはあたりまえだと思います。そういう企画について、今後安本長官の辣腕を振われて、その目標を達せられんことを希望しまして、私の質問を終ります。
  191. 植原悦二郎

  192. 川崎秀二

    川崎委員 私は時間がなくなりましたので、きわめて簡単に質問をいたしますから、要領よく御答弁を願います。まず第一に人事院の山下人事官にお尋ねをいたします。けさほど大蔵大臣に対する質問の際にも、民間賃金と官公吏の平均賃金が非常に開いておるということを指摘いたしまして、答弁を求めたのでありますが、現在の公務員と一般国民ないし勤労者の生活水準に関する資料がありましたら、この際お示しを願いたいと思います。
  193. 山下興家

    ○山下(興)政府委員 私どもが公務員の生活水準をどこに置くかということは、非常に大切な問題でありますが、始終私ども考えておることは、国民の平均よりも上でもない、また下でもない、ちようど平均のところへ公務員の水準を持つてつたらいいということを根本原理としておるのであります。昨年の七月までは攝取カロリーが、国民全体の平均で一千八百五十カロリーであつたのであります。ところが昨年の七月にそれが、一千八百九十四カロリーとかわつておるのであります。それでそれだけ生活水準を上げてもいいのでありますから、それを基礎としてわれわれは計算をして、それで六千三百七円ではいけない、七千八百七十七円でなければならないということになつたのであります。もしもベースを上げる必要がないとなれば、国民平均生活水準よりも、公務員をくぎづけにして下げてもいいという結果になる。これはゆゆしい問題だと私は考えております。
  194. 川崎秀二

    川崎委員 民間平均賃金はどうです。
  195. 山下興家

    ○山下(興)政府委員 昨年の十一月労働省が発表せられました最近の資料によりますと、平均工業賃金は、公務員の四割一分増しになつております。もう一つ申し上げますと、実質賃金の方は——実質賃金と申しますと、これは手取りの月額を物価、すなわちCPIで割つたものでありますが、それによりますと、一昨年の七月から、すなわち六千二百七円を基礎として、一昨年の七月から最近の十一月では、民間給與は三割九分増しになつております。ところが公務員の方はほとんどすえ置きでありまして、六・九%にしかなつておりません。
  196. 川崎秀二

    川崎委員 政府言つております反対理由の中に、ベース改訂を行うと、物価と賃金との悪循環を来し、インフレーシヨンもまた引起すところの基因になるのだ、こういうことをしばしば言つておるのでありますが、この際人事院見解を吐露されたいと思うのであります。
  197. 山下興家

    ○山下(興)政府委員 これはもしそういうことがありとすれば、非常に重大な問題であります。ところが私どもの計算によりますと、公務員の給與が上りましても、全体の購買力は増しますけれども、物を生産するコストが上るということにはならないのであります。それで国家公務員だけが、今度のベースのように千五百七十円上つたといたしますと、購買力増加は〇・六%にしかならないが、しかしそれだけでなく地方公務員も同じように上るだろう、また国鉄の従業員も同じように上る、また專売公社の方も上る、こういう関連したものが全部同じように千五百七十円上つたといたしましても、それの影響は、すなわち購買力の増加は、わずかに一・八%にしかならないのであります。それですから、これは悪循環があろうということは考えられないのであります。現実に、この前六千三百七円を改訂いたしますときは、御承知のようにインフレのさ中であつた、これでは民間の給與も非常に影響するであろうということをおそれておつたのでありますが、こまかく勤労統計によつて計算してみますと、何らの影響を受けておらなかつたということがはつきしております。そればかりでなしに、物価の上昇率のカーブから見ましても、何らの影響を受けておらなかつたのでありますから、こういうデフレの状態のときには、これは何も影響はないものと思います。今申し上げました数字は、これはこういう仮定のもとにやつております。非常にインフレのときで、給與が上つたら、その給與は全部消費財にまわるだろう、そういうことはないのですが、全部が消費財にまわるだろうという仮定のもとでやつているのでありまして、これはインフレに対して多少の手心をいたしますと、全然影響がないと言い得ると思います。
  198. 川崎秀二

    川崎委員 人事院にはなおお伺いしたい点がありますけれども、この程度にいたしまして、労働大臣がお見えでありますから、労働大臣に、けさ総理大臣に聞いて木で鼻をくくつたような答弁をされたところを、あなたからひとつ伺いたいと思います。それは、今度のゼネストに備えるというような見解を組合側が発表するに至つたいきさつは、ひとり今度の人事院の給與勧告だけではないと思います。專売裁定といい、また国鉄裁定におけるところの公共会業体労働関係法の精神の蹂躪といい、一つとして労働問題が組合の言つているように解決された問題はありません。組合の言う通りに解決されないだけではなしに、組合側が調停案を承諾したそれさえも政府はけり、その後において労使双方が従わなければならぬというこのたつとい精神をも破棄して、しかも今度の專売公社の裁定のごとく、財源はわずかに一億二千万円、どこからでも私は財源が出ると思う。また予算資金上不可能な問題ではなくして、実際において独立企業体内部において解決し得る問題であるにかかわらず、それさえ大蔵大臣の認可は得られなかつた。本問題は大蔵大臣が登場して来ないと片がつかぬという状態で、労働大臣は一体どこにおるかわけがわからぬという。あなたが活躍しておるということの新聞記事を私はこのごろ見たことがない。もつとも部内で一生懸命やつておられて、地味に活躍をされておられるのかもしれませんが、しかしながらともかくあなたが労働者に対するサービス政策行つておるというところの面は出て来ておらない。労働省頼むべからずという空気は、全労働者ににみなぎつておると思うのであります。労働大臣の責任というものは今日これほど重大なときは私はないと思うのであります中公共企業体労働関係法をあなたが労働大臣の專管者として通したときには、罷業権を奪うかわりに、公共企業体労働者に対しては生活を確保するのだこういうことを言つてあの法案は無理無体にも通したということは、われわれの記憶に新たであります。私が質問いたしたい第一の点は、今日のこの労働組合の反撃的気勢、全労働者がレフトのラインに立つておる。それは左翼のラインに立つておることではあるけれども、しかし決してそれは極左的なものではなく、全部左翼の方へ追いやろうということは、あなたの政策が間違つておるから、労働者はそれに対して反撥的に今態勢を固めようとしておる。これを放置してよいものかどうか。この点についてあなたの明快なる所信をまず伺つておきたいと思う。
  199. 鈴木正文

    ○鈴木国務大臣 まず公共企業体労働関係法、これが一番直接的の問題の焦点になつておることでありますからお答えいたします。お伺いしておりますと、裁定案は政府は必ずのまなければ、公共企業体労働関係法を蹂躙したものだというふうに解釈をしておるようにも聞えますけれども、私たちは最初からそういう説明はいたしませんし、そういうことはありません。明らかに示しておりますように、裁定の内容が予算資金上不可能であるという部分については、国会の承認不承認にまつべきものであるということが規定されておりまして、もし裁定は必ずのまなければ、公労法違反であるというような考えであるならば、三十五條のみをもつて足れりとするのでありまして、そういうことが予算資金上でき得ないということがあることをも予想いたしまして、十六條の規定ができておるのであります。そうして国鉄の場合におきましても、專売の場合におきましても、そういう見地よりいたしまして、予算資金上不可能であるという見解のもとに、政府は国会の審議を求めたのであります。従つて問題の焦点は單なる法律論よりは、実際の計数上はたして公社の経理の中に、その可能性が存在するかしないかという一点によつてのみ決定するのでありまして、従つて論議の中心が国鉄の場合には運輸大臣、あるいは專売公社の場合には大蔵大臣の見解と、そうして考え方というものに主としてかかつて来るのも当然なのであります。こういう意味をもつて現在裁定問題は、そういう公労法の所定の手続に従つて国会の審議を求めておるのでありまして、決して公労法を蹂躙しておるというような事実はございません。
  200. 川崎秀二

    川崎委員 私は労働大臣と法理論を展開しようとするものでもなければ、財政上の論議をしようとしておるものでもございません。初めからはつきり申し上げておるように、今日労働大臣はどこにおるかわけのわからないような存在になつておるじやないか、それでいいのかという点であります。もう少し具体的に申し上げますと、一体最近の労働組合の情勢は、あるいはほんとにゼネストをやるかもしれぬ。やつても国民は——今まではゼネストをやれば必ずやらせまいとするその空気の方が強かつた。しかし今日国民はゼネストは回避したいという気持は持つてつても、昨年来の打続く政府の労働政策の誤りに、やつてもしかたがないという感じを持ち始めておる。論説の上にも現われておる。新聞の上にも現われておる。私はこの風潮に対して、労働大臣は真に信念を持つて大蔵大臣に迫り、何とかして労働者のために、賃金ベース全額引上げでなくてもいいのだ、しかし何とかしてくれというくらいの迫力を示すべき好機じやなかろうかと思う。そういう活動を示すわれわれに対して何らの片鱗もないけれども、それでよろしゆうございましようかと問うておるのでございます。
  201. 鈴木正文

    ○鈴木国務大臣 政府部内の交渉その他についてお答えする必要はないと思います。労働大臣といたしましては現在の政府のとつておるところの基本政策、それから一般の情勢とにらみ合せて、この方が正しいという考え方をもつて進んでおるのでありまして、政府部内でもつてどういう話をしておるかというようなことは、お答えの限りでありません。
  202. 川崎秀二

    川崎委員 マッカーサー元帥が一昨々年でありますか、二月一日ゼネストに際しまして、荒廃の国土において破壊の武器の使用を許さないと言つたのは、経済の非常な混乱の時期において発せられたと思うのでございます。その当時と今日とは著しく状況が変化をいたしております。もつとも私どもは大蔵大臣や総理大臣が呼号するがごとく、経済が安定したとは思つておらない。しかしあの当時から比ぶれば、経済が無用に混乱をするというようなおそれのない時代に入つたことだけは私は認める。それならばこそ私はあなたに聞きたいのであります。経済が安定をしておる今日の現状において、ゼネストというものが許されるものか許されないものか。マッカーサー元帥の書簡というものは、今日では角度をかえてながめなければならぬと私は思うが、あなたはどうお考えだろう。
  203. 鈴木正文

    ○鈴木国務大臣 マツカーサー元帥の書簡というものに対する解釈が違つておるはずはないはずであります。それからストライキに対する措置とかそういつたものにつきましては、詳細なるものは一切昨年の春御審議を願つて改正した労働関係法規に盛られておるのでありますから、所定の必要の場合に必要な方向をとつて解決して行くべきものであつて、全体的にこのストライキはいいのか悪いのかというような仮定が出て来ないものを、仮定して概括的の御説明はできないと思います。
  204. 川崎秀二

    川崎委員 総理大臣の御伝授みごとであつて、仮定論がまたまた出て参りますので、この内閣は仮定内閣だと思つております。  これは違う問題でありますがお答えを願いたい。まじめにお答えを願いたいのは、もはや経済がやや安定をしかけたと思われるような今日の時代においては、私は最低賃金制というものはまじめに考慮しなければならぬ問題だと思う。先般GHQ関係においても、最低賃金制を考慮せよということが言われておる。あなたの御所管ではないけれども、社会保障制度審議会においては、家族手当と関連をして最低賃金制を確立すべき好機であるということを、その覚書の第六項でありますか、うたつております。従いまして私はもはや最低賃金制というものは最低賃金審議会でも設けて、そうして真剣に取組んで行かなければならぬ問題であると思うけれども、労働大臣は今のところどういう構想をもつて、どういう具体的な方法でこれを進められてお、るか。御答弁を願いたいと思います。それで終りです。
  205. 鈴木正文

    ○鈴木国務大臣 最低賃金制の問題につきましては、簡単に本会議においても御説明したことがあると思います。私自身の見解といたしまして、最低賃金制の問題を真剣に検討すべき段階に入りつつあるという見解を昨年から持つておりました。それに従いまして労働基準法できめられておるところの最低賃金の審議会ですか、そういつたものをつくりたいと思つております。予算的の措置も金額の大小ということは別としてやつております。そういうようにして審議会をつくつて——しかしこの問題は逆に考えて参りますと、現在のような経済情勢のもとで、最低賃金の引く線いかんによつては、逆に大きく失業者を出すというおそれがないではないのでありまして、この問題とにらみ合せて十分な検討を加えて、愼重に対処して行かなければならないという考えを今のところ持つております。いずれにせよ審議会というふうなものによつて、真剣に検討しようという考えを持つております。
  206. 川崎秀二

    川崎委員 具体的にいつごろになりますか。
  207. 鈴木正文

    ○鈴木国務大臣 今いずれにせよ四月以降ということは考えておりますけれども、非常に遅らそうというふうには考えておりません。なるべく予算通りましたならば、検討の期間は十分置いて愼重にしたいけれども、それ自体をつくるということは、そう遅れない時期にいたしたいと思つております。
  208. 川崎秀二

    川崎委員 厚生大臣に対する質問を一、二申し上げます。社会保障制度は将来の問題であると同時に、今日の問題にもなつておるわけであります、すでに社会保障的な経費も、かなりばらばらではありますけれども政府予算の中に組まれておるという状態でありまして、これを早く統合して社会保障に対する観念を明らかにし、実態をさらに鮮明にして、一歩々々社会保障制度確立に向つて行ななければならぬと私は考えておるのであります。社会保障制度審議会においてはすでに社会保障法案というものまでつくつて、国会にすみやかに提出して、憲法第二十五條にうたうところの文化国家建設のために、具体的な巨歩を踏み出そうではないかという議が、だんだんまとまつて来ておると私は観測をいたしております。昨年の十二月には、社会保障制度確立のための覚書というものも曲りなりにもでき、従つて法案を整備ということも近く行われることと思いますが、ここでお伺いをいたしておきない点は、社会保障制度審議会のメンバーには、かなり社会主義的な傾向を持つておられる方々もあり、また一方においては医師会等の代表者でありますとか、またさらには民自党から出ておられる方々もあつて、民自党の大部分の方々が、この社会保障法案の整備に向つて審議会の委員として協力されておるけれども、あるいは最後の段階にあたつて社会保障制度審議会の内部において、政治的な意見の対立もあるかもしれない。しかし私の推測するところでは、大部分の方々は相当広汎な社会保障制度確立のための答案を出されると思うので、現在民自党の考えておられる程度のこととは、かなり違つて来はしないかと私は民自党のために憂えておりますが、社会保障制度審議会がさような答案を出した、社会保障法案を出したというようなときに、厚生大臣はどういうふうなお取扱いをなさるものか。けさ総理大臣答弁は、出て来たら考えるというだけでございましたが、ひとつ明快に御答弁を承りたいと思います。
  209. 林讓治

    ○林国務大臣 お答えいたします。ただいまの社会保障制度の問題につきましては、平素川崎委員はその衝に当りまして非常に御研究を願つておるわけでありまして、私どもの報告を受けました点につきましても、仰せの通りにそれぞれ主義によつて異なるような方々もあると思います。しかしながらその答申の出ました場合において——どういう答申が出るであろうかということにつきましては、よほど私ども考慮しなければならぬと考えております。幸いにして出るようになりました場合においては、その辺の点を十二分に勘案いたしまして、私どもの方から考えれば、いたずらに左の方に行かないように、また右の方に行かないように、その答案を見た上で勘案いたしたいと思います。
  210. 川崎秀二

    川崎委員 そこで特に林厚生大臣に——これは生びようたんのような人で、よくつかみどころのない人でありますが——たいへん恐縮です。率直にお答え願いたいのですが、二月の二十三日にはイギリスでは総選挙を行う。ところがこの選挙で、おそらく保守党が勝つのではないかとさえいわれておりますけれども、しかもなおかつイギリスの保守党は、政権をとつても社会保障制度は後退させないということを言明しておる。しこうして今度の総選挙職には、政策のよくわかるバトラーであるとかイーデンであるとかいうような社会政策の権威者が陣頭に立つて、行き過ぎは是正するけれども、イギリスを後退させないのだといつてつておるほどでありまして、社会保障に対する理解並びにこれが推進については非常に努力を拂つておる。そういう見地にあなたは立たれるのか、それとも池田大蔵大臣のごとく、経済が安定しないことには社会保障なんというものはやつてもしようがない、ことにイギリスはこれがために経済が不安定だなんということを言うような感覚に立たれるのか、その点の明示を願いたいと思う。
  211. 林讓治

    ○林国務大臣 ただいまのお話の点でありますが、私どもといたしましては、決して退歩的な行動には出ないで、答申を待ちまして善処いたしたいと思つております。
  212. 川崎秀二

    川崎委員 いま一点お伺いしたい点は、これは明治以来わが国の国内の問題でありました医薬分業の問題であります。最近医薬を分離しろという声がかなり社会保障制度確立と並行しまして出て来ておるのであります。昨年の九月でありましたか、ジエンキンズ勧告というものも出まして医薬分業をやつた方がいい、サムス准将もこれを示唆しておるのでありますが、しかしながらこれが実施についてはかなり医師会方面において抵抗があるやに考えられる。もちろん医師の中にも医薬分業をすることがいいのではないかという考え方を持つておられる者もあるが、私この際御質問いたしたい点は、医薬分業を全面的に行う行わぬは別にいたしまして、たとえば一つの都市あるいは特定の地域において、薬局並びに医局双方が特定の地域の内部の中にあつた場合には、これは医薬分業を進めた方が、私は本来の思想に合つておるのではないかというふうに考えるのでありますが、その点について厚生大臣の御見解を承つておきたいと思うのであります。
  213. 林讓治

    ○林国務大臣 この医薬分業の点につきましては十数年来と申しましようか、数十年来の問題でありまして、これが解決を見ないことははなはだ遺憾に考えております。厚生省といたしましては、この長年の懸案に対しましては、幸いにいたしまして三志会という会合ができておりますので、その会合によつてこの長年の問題が解決つけられることと実は熱望いたしております。しかしながら昨今におきましてもサムス准将あたりの一つの慫慂もありまして、いろいろ御交渉を願つておるわけでありますけれども、不幸にいたしましてその結論を見るに至つておりません。それで私どもといたしましては、その結論を得られないで、どうしても厚生省としてやらなければいかぬという問題になつた場合においては、ただいま御説のような、一部的に解決すべきものはした方がいいではないかと実は考えております。しかしながらそれにつきましても、その範囲をどれほどまでに限つて行くかということについて、よほどむずかしい問題ができて来るのではなかろうか。たとえば三志会あたりが一つの案を出していただいて、それぞれの意見を出していただきまして、不幸にして解決を見られないという場合におきましては、いかにこれが患者に対して有利であるか、不利であるかということを十分考究すべき必要があるものと考えまして、ときにはまた患者に対して有利であるかどうかということの審議会のようなものをつくつて、ここでむしろ解決をつけるということの方が、三志会におまかせいたしておるときよりも、かえつて道が早いのではなかろうかというようなことも考えまして、都合によりましては御説のように、一部だけでも実行する方がいいのではなかろうかということが問題になりました場合においては、私どもはそういうことを実行いたしたいと考えております。
  214. 川崎秀二

    川崎委員 文部大臣に対します質問を留保いたしまして私の質問を終りたいと思いますが、この際特に植原大委員長に要望いたしたい点が一つございます。けさ吉田総理大臣は何か感情関係でもあろうか、朝から非常に怒られて、キャメラマンをどやしつけたりいろいろなことがこの議場で行われておつた。多くの方々はおられなかつたので、お気づきになつた人は少いかとも思いますけれども、しかしながら私ども質問したことに対して、まつたく木で鼻をくくつたような答弁ばかりしておられる。私はそのときに激怒したかつた。しかし承るところによりますと、吉田総理大臣は、本日は保守合同に対する結論をつける日であつて、そうして昨年来もみにもんだ保守合同が、遂にお弔いのような形式で行われなければならぬその最後の状況であるというニュースが途中で入りましたので、やめた次第でありますが、あのような木で鼻をくくつたような答弁をされておる以上は、野党側は今後質問を十分に続けて行くことはできぬと思う。この点私は十分に警告を発してもらいたいと思います。
  215. 植原悦二郎

    植原委員長 幸いに副総理であられる林厚生大臣がおられますが、ただいまの通りでありますから、どうかそのことをよろしく御伝達を願います。  本日はこれにて散会いたします。明日は午前十時より公聽会を開会いたします。     午後四時十二分散会