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1950-02-07 第7回国会 衆議院 予算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年二月七日(火曜日)     午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 植原悦二郎君    理事 池田正之輔君 理事 尾崎 末吉君    理事 上林山榮吉君 理事 小峯 柳多君    理事 苫米地英俊君 理事 川崎 秀二君    理事 川上 貫一君 理事 圖司 安正君    理事 今井  耕君       淺香 忠雄君    天野 公義君       井手 光治君    江花  靜君      岡村利右衞門君    小淵 光平君       角田 幸吉君    北澤 直吉君       小金 義照君    小平 久雄君       坂田 道太君    玉置  實君       中村 幸八君    永井 英修君       丹羽 彪吉君    西村 英一君       松野 頼三君    松本 一郎君       南  好雄君    稻村 順三君       西村 榮一君    武藤運十郎君       林  百郎君    深澤 義守君       米原  昶君    奧村又十郎君       小坂善太郎君    山本 利壽君       平川 篤雄君    松本太郎君       黒田 寿男君    世耕 弘一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         文 部 大 臣 高瀬荘太郎君         農 林 大 臣 森 幸太郎君         通商産業大臣  稻垣平太郎君         郵 政 大 臣         電気通信大臣  小澤佐重喜君         国 務 大 臣 青木 孝義君  出席政府委員         (主計局長)         大蔵事務官   河野 一之君         (大臣官房会計         課長)         通商産業事務官 大堀  弘君         (財政金融局         長)         経済安定事務官 内田 常雄君  委員外出席者         專  門  員 小林幾次郎君         專  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 二月七日  委員林百郎君辞任につき、その補欠として神山  茂夫君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十五年度一般会計予算  昭和二十五年度特別会計予算  昭和二十五年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 植原悦二郎

    植原委員長 前会に引続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。今井耕君。
  3. 今井耕

    今井委員 私は経済安定本部長官及びこれに関連した問題につきまして大蔵大臣農林大臣にお伺いしたい、こう考えるのであります。なお質問いたしたいことは非常にたくさんあるのでありますが、大体各方面からいろいろな質問も出ましたから、質問の範囲を農村経済問題に限定いたしましてお伺いをしたいと考えます。  そこで最初に私がいろいろお伺いいたしますところの質問観点につきまして申し上げてみたいと思うのであります。昭和二十五年度の予算が低賃金、低米価の上に立つておるということは、衆目の一致するように考えられます。もちろん高賃金、高米価日本経済が行けるとは考えません。そこで要はその程度いかんである。こう考えなければならぬ。そこで日本経済の自立の上におきまして、その犠牲と耐乏と努力は、それぞれ分に応じて国民が公平に負担することになります。そこで賃金問題については人事院という機関もあり、いろいろ專門的に研究もされ、また政府や国会にも勧告をされ、新聞等にも大々的に取上げて行くということになり、相当議論されておりますので、そういう問題は私は省略するのであります。そこで米価の問題でありますが、私の米価と申し上げますのは、供出農産物の全体を全体を含んだ意義である、こう解釈していただきたいのでありますが、その米価の本質を考えてみますと、これは米麦作に従事しておる農民といたしましては、やはり公務員賃金ペースと同じような性格を持つているものであると考えられます。すなわち供出代金によつて生産生活をしなければならぬ。そして公務員と同様に、これに対して団体交渉権とか罷業権も持つていない。またこれに関して専門的に研究する人事院のような性格機関も持たない、こういうものでありますから、よほど慎重審議を期しませんと、農民が一方的に犠牲の負担をするということが、往々にしてありはせぬかと考えるのです。そういう点から考えますと、昨年の秋に一応米価が決定いたしました。ところがその後の情勢考えてみますと、非常に急激な変化を来しておると思うのです。そこでどういう事情で、急激にかわつたかと考えてみますと、第一は農民経済が急激に悪化し来つた。第二には二十四年度の産米が予想外減収であつたということ。第三は、本年中に約九割程度統制が撤廃される、そういう情勢になつておる。そして同時に貿易の拡大によつて国内価格体系自然国際価格に切りかえられるということになつて来ておる。四番目には、非常に多量の食糧が輸入されるということ。第五番目には、そういうことによつて急激にマル公やみ価格とがさや寄せされることになつたということ。第六には、世界の食糧生産が非常に過剰の傾向が見えて来たということ。第七には農村潜在失業者が急激にふえて来たということ。こういうようなことがおもなことであると考えます。従いまして農村に対する政治部面についても従来のように考え方でなしに、もう一ぺん根本的に見直して考えなければならぬ、こういうふうに考えるのです。従いましてこういう点から、各種の問題を取上げてお伺いをしてみたい、こう考えるのであります。  そこでまず第一に国民所得の問題でありますが、これは昨日首相に対しちよつと申し上げておいたのでありますが、昭和二十三年の農林水産所得は四千七百億円ということになつております。ところが昭和二十四年の農林水産所得は六千五百億円ということになつておる。そうするとちようど四割ふえておるということになつております。政府昭和二十四年という年は物価も横ばいでディスインフレだ、こう主張しておられるのでありますが、ちよつと一年の間に農林水産所得が四割ふえたということが合点が行かぬ点があるのでありますが、この点を少し伺いたい。
  4. 青木孝義

    青木国務大臣 今井委員の御承知通り農林水産においては漸次増産を行われて参りまして物価面においてもその点を反映して、特に統制を必要とする一定の価格を必要とするものだけを残して、だんだん統制も解いて参りましたような次第でありまして、その点に関する農林水産上の増産を反映しておるものと信じておる次第であります。
  5. 今井耕

    今井委員 ただいまの御説によりますと非常に増産ができて来たからだということでありますが、二十四年という年はそう増産されたとは考えません。たとえばおもな収入の米でも、予想よりは減収だということが政府から発表されております。ほかの統制撤廃による価格というものも、ほかのものは上つておりますけれども、農民のとつたものの価格統制撤廃でそう上つておる、こういうことにも思えぬと思いますが、その点いかがですか。
  6. 青木孝義

    青木国務大臣 もちろん農林水産関係でどれだけ上つたかという問題になりますと、他のものと比例いたしましてわれわれは考えるのでありますが、御承知通り水産等においては魚類等、の生産が多い、すなわち魚獲が多いというような点からも考えられておりますが、一般に御承知通り、ようやく昨年から今年にかけての物価にしても、あるいはその他経済が安定の方向にあるというようなことから、経済が比較的平均して来るということから来る影響だと思います。
  7. 今井耕

    今井委員 今の御答弁水産方面のことが主として取上げられましたがちよつと私は合点が行かぬのでありまして、これはひとつ二、三日のうちに、この内容について資料を提供していただきたいことをお願いいたします。  それから二十五年度の農林水産所得でありますが、これが六千九百七十三億円でありまして、二十四年よりはまだ増加しているということになります。もちろんこれは今後の米価問題とかいろいろなことに関連しますが、どうも私は今のところでは、この農林水産所得がこれだけふえたということについて合点が行かぬのです。何だが相当過大に見られておるような感がするわけです。ところがこの六千九百七十三億円というものを妥当なものだと考えましても、これを二十五年の国民所得全体、すなわち三兆二千億円に比べてみますと、その割合は約二割ということになります。国民の約半数を占めておりますところの農林水産業者所得が、国民全体の所得の二割、こういうことはたいへんなことだと考えられるのです。そうすると国民平均所得に対して何割になるかというと、四割ということになる。これは非常に重要な問題だと考えるのであります。はたしてこの分配所得におきまして、農林水産所得がどのくらいが適当なのか、こういうことを根本的に考えてみないと困ると思うのでありますが、安定本部におかれましては、いろいろ専門的に御研究でありますから、そういうことにつきまして御見解を承つてみたいと考えます。
  8. 青木孝義

    青木国務大臣 もちろんこの国民所得というものの算定については、いろいろと議論もありますし、また経済安定本部といたしましても、十分これについて検討はいたしております。国民所得の的確なものを得るということについては、われわれとしては最善の方法を講じておりますけれども、なおいろいろと問題があります。私はかつてシャウプ博士が来られたときも、日本国民所得が、その算定の方式その他から考え、あるいは日本経済事情から考えてみて、一体どの程度のものであつたらいいかという問題は非常にむずかしい問題だ、ついてはシャウプ博士は世界的に有名な国民所得研究者であるから、われわれに適当な研究の結果を指示願いたい、特にこの問題について研究をしていただきたいというようなことも申し入れたことがありますが、われわれが国民所得算定をいたしますには、もちろん相当努力をいたしております。従つて二十五年度におきます三兆二千五百五十億というのは、われわれとしては一応この国民所得を妥当なりとして発言しておる次第であります。
  9. 今井耕

    今井委員 ただいまのお答え安本で御発表の国民所得がこれで妥当だ、こういう御答弁でありますが、私はそういうことでなしに、国民全体の所得に比べて、農林水産所得が二割にしか該当しない、その割合が妥当かどうか、そういう点を伺いたい。
  10. 青木孝義

    青木国務大臣 この点の詳細につきましては、財金局長から追つてまた御答弁いたします。
  11. 今井耕

    今井委員 私はこまかいことを聞くわけではありませんで、大まかなことでもよろしいから御見解を承りたかつたのでありますが、これ以上追究して御質問は申しません。ところがいろいろ年度別にずつと前からこの割合を私は調べてみたわけですが、大体昭和五年から九年ごろには、農林水産に従事している人口割合が四割六分ということになつております。そうして国民分配所得割合が一八%——一割八分ということになつておるわけです。今日この人口割合がどうなつておるかということは、はつきりした資料を持ちませんけれども、終戰後約六百五十万人ふえ、昨年だけでも二百十三万人という人口がふえておつて相当ふえておるということが考えられるわけです。そうすると昭和五年から九年、ころの分配所得割合と、今日とほぼ同様な割合になつておると私は考えるわけです。こういうことについていろいろ聞きたかつたのだけれども、資料がなければやむを得ぬと思います。  昭和五—九年というころは相当農民が困つてつた、そうして農村救済というようなことがずいぶん問題になつたものです。それで農民生活水準も、一般国民と比べて非常に低かつたということが考えられるわけです。ところがそのころは国民全体の生活水準相当高つたために、二割の所得でも生活ができた、ところが今日国民全体の生活水準が非常に低い、その低いうちの二割である。こういうことになると生活水準の引下げということについても、そこに限度ができて来ると私は考えるのです。そういう点について長官の御見解を承りたい。
  12. 青木孝義

    青木国務大臣 昭和五、六年のころにわが国の農民生活程度が低かつたが、今日は非常に低いという御意見だと思いますが、日本が戰争によつて経済的に非常に大きなものを失つた国民一般から見て、蓄積資本が破壊されたとか、あるいはその他いろいろな終戰後の経過から見て、そういうことは想像いたしますが、ともかくも当時は五、六十億の農民借金があつたということは事実であつたと思います。今農民の皆さんの生活がだんだん低下して来たということを言われるのでありますが、もちろん昨年の経済安定化方向に向いまする以前の、いわば農家の比較的好況時代——これは短かい期間であつたがもしれませんが、ともかくもその好況時代ただいまと比較して、今日が下つたということは、当時の農業が特に戰後好況であつたことと、戰争被害農村には比較的少かつたからで、今日の農村生活がてんなに低くなつたというふうには考えておりません。
  13. 今井耕

    今井委員 どうも安本長官は私の質問の重点と違うことをお答えでありますが、もうちよつと考えて御答弁願いたい。時間の関係上こういうことは追究いたしませんが、私はそういうことを質問したわけではないのです。  そこで今、そのころは非常にたくさんの負債があつたということがお言葉り中にありましたが、その問題と関連いたしまして、明治二十三年に農業手形の制度ができまして、その年には利用高が二十五億円であつた。ところが二十四年にはこれが百五十三億円にふえた。そして二十五年にはこれが三百億円にも達しようか、こういうようなことが予想されておる。これは過日上林山議員からいろいろ御質問のあつたのと同様に私は考える。こういうことか一体何に原因するのであるかもまたとういうものが出てあとこれをどう処理されるのか、こういうことを考えることが非常に必要なことである。そこで、過日の上林山議員質問に対して、大蔵大臣は、それは今年もふえたら、このくらいは何とかする、こういう御答弁であつたけれども、私は見方が違うのです。ほしければ何でも貸してやるということではなしに、ふえたらあとどうするかということを考えなければならない。従つてこれがなるべくふんないようにしなければならない、こういうことを考える。従つてなぜこういうふうになつて来たかという原因、はたしてこれがふえて、あとにどう処理さるべきものであるかどうか、こういう立場から考えなければならぬと思う。そういう点について御見解を承りたいと思います。
  14. 青木孝義

    青木国務大臣 農業手形の今後の成行き、そういうことについてどうか、しかもそれがふえることはあまり喜ばしいことじやないと思うが、どうか、こういう御質問だと思います。御承知通り日本農業が細分化され、零細化されたということから来る土地の担保とか、あるいはその他の方法によつて金融をするというようなことがなかなか困難だ、しかしながら農業方面においては特に農業手形を利用することによつて金融をつけるというふうな方法考えられる、そういう点におきまして、なぜそれでは農業手形が増加することが悪いかということについて、はつきりした御意見を聞きたいのでありますが、ともかくも今後の問題といたしましても、農業におきましては金融的措置をどうつけるか、季節的な収穫、季節的な収入というようなことを考えれば、その間の金融的な措置をどうするかという問題が残されておりますことはわれわれも了承いたします。そういう関係農業手形等が円滑に流通して行くように努力することは必要であると考えるのであります。
  15. 今井耕

    今井委員 今の御答弁も全然私の観点と違うのです。こういうふうに農業手形がふえる、その原因がどこにあるかということと、それからこれがどんどんふえて、そうしてあとがどういうふうに結末がつくか、ほんとうにふえる一方で行つたらこれはたいへんなことです。だから商工金融つたら、それは物を売つたら返すとかということになりますが、これはそういう性格のものではないのです。従つて金を貸すときには、その貸した人間がうまくやつて行けるかどうかということを考えて貸さなければならぬ。ただほしければ何ぼでも貸すということは真の道ではない。その点を私はお伺いしておるのです。
  16. 青木孝義

    青木国務大臣 全然回収ができないものを何ぼでも貸すというわけのものではないし、また金融ということでありまして、ただ金を出すとか貸しつ切りというようなものではございませんので、その点は何かお考え違いではないかと思います。
  17. 今井耕

    今井委員 どうも安本長官答弁はさつぱり当らぬのですが時間がかかりますから、しかたがないから次に行きます。この農業手形がふえるということは。これは商工金融ならそれによつて円滑にやつて行く、こういうことで、これがあとに処理されるわけです。ところがこの農業手形というものは性格が違うわけです。そこで営業資金としうことでいろいろ肥料代とか、そういうものを貸す、そうしてそれは供米代金から拂う、こういうことで処理されることはわかつているわけです。だから一応毎年返すことになつていることは百も承知している。ところが、一応返すけれども、返したしりから、それをまたすぐ借りなければならぬ。そういうことを政府も認めて、そうして今年は貸す時期を一月早めて、十一箇月貸す、こういう措置を講じておられる。ただ一応米がとれたとき返すけれども、借りたしりから、すぐ借りなければならぬ、こういうことになつている。しかもその内容が、ほんとう営農資金かというと、実はそうじやないのです。やつて行けぬから食い込んでしまう。食い込んでしまうから肥料代が足らぬということになつている。従つてこれを單なる営農資金考えては間違いです。事実は食い込みなのです。いわば、町の人たちがやつて行けぬからたけのこ生活をした。農民たけのこ生活をするかというと、している人もありますが、売る物がない。従つて、それがやれぬから営農資金を食い込んでしまつている。食い込んで営農資金が足らぬから農業手形で借りているのです。たけのこ生活つたら、ある物を売つただけで済むわけです。ところが借金は残つて来る。いわゆる食い込みが残つたわけです。私はこういうことに関係しておりますので、よくわかつております。従つてそれはだんだん積る一方で、そう簡單に、はかの商工金融のように返せる見込みかない金です。そこが私の非常に心配するところです。それで、もうそろそり農村保護というようなことがちよちよい出ている。安本長官は、その時分には五十億からの借金農民にあつて農村救済ということをやかましく言つたのだということを言われておりますが、これがだんだん積り積つてそういうことになる。そういう性格のものです。私はそう見ている。そういう点について御見解をお伺いしたわけです。この点についてもう一ぺん御所見るを拝聽したいと思います。
  18. 青木孝義

    青木国務大臣 今日農業経営の問題は、もちろんたやすい問題だというふうに考えているわけではありませんが、農業経営といえども一つ経営であります。従つてその場合、農家生活がどういうふうになつて行くかというつことについても、われわれは国民経済全般としてこれを考えて行くという立場を主としてとつております。特に農業におけるところの、最近におきましては保護政策といつたような問題も起つて参りましよう、農業政策農業金融の問題、そういう問題が重要な問題であることは、決してわれわれも忘れているわけではありません。しかしながら国民経済全体として見まして、農業だけが特に悪い、こういうふうに言われるような御質問であると思いますが、今日の状況をわれわれとしても決してこのままこれでよいというようには考えておりませんが、少くとも全国農業の将来の立つて行く行き方というものには、政府としても御承知通り農地の改良についても、あるいは公共事業費等においても、災害対策費といたしましても、ともかくも国内における投資をし、またその改善をはかつているわけであります。従つて、特に農業だけをわれわれは圧迫するとか、あるいは考えておらぬということではありませんし、また来年度におきましては大蔵大臣も申しておりましたように税等におきましても農村は比較的有利な立場に置かれるというふうな状況でありますので、今井さんのおつしやるように、農村だけが悪い、こういうことで問題を考えてはおりません。
  19. 今井耕

    今井委員 私の質問が何か農村だけのことを考えたように御答弁されましたが、私はそういう考えで申しているわけではありません。やはりいろいろ政治をやつて行く上においては、あとどうなるかということを十分心配してやるということが必要だと思う。そういう点から御見解を承つたのでありまして、この点もきりがありませんが、とにかく農村の現状がそういうふうになつておる。これは非常に大きい違いでめると私は考えます。時間がありませんから、これ以上やりませんけれども、そこで米価の問題も、米価生産者消費者両方立場から考えなければならぬ、よくこういうことを安本長官あたりは御答弁になつておりますが、それは私もその通りであると思う。そこで生産者消費者両方立場に立つということは、これは両方がそう不公平にならぬようにという意味だ、こう考えるのでありますが、今日の情勢がかわつたということは、国民所得が二割減つた。それは戰後インフレ時代から比べてではないのであつて昭和五—九年ごろの相当悪かつた時代標準にして申しておるわけです。そしてこの農業手形がふえるということは、いわゆる農民たけのこ生活の結果がここに残つておるのである、そういうように一変しておるわけです。また考え方によつては、都市のたけのこ生活農村たけのこ生活にかわつたもこういうようなことが新聞なんかにも出ております。そういうように急激な変化を来しておる。従つてこの米価なんかの見方につきましても、生産者消費者両方立場に立つて考えなければならぬ、こういうことも相当見直して考えぬと、どつちがどつちかわからぬ、こういうことになつておると思うのであります。こういう点について御見解を承りたい。
  20. 青木孝義

    青木国務大臣 政府立場といたしましては、ただ生産のみを考えておりません。もちろん食糧増産ということは絶えず考え続けておりますし、また努力もいたしておりますけれども、また同時に今日なお食糧は配給を継続いたしております。さような関係で、いたずらに消費者米価等が上りますことは警戒しなければならぬし、やはり生産消費また一般的にいえば、分配の面も考えなければならぬということでありまして、その間において物価庁等がいろいろ努力をいたしますのは、やはり消費者の面を十分に考えなければならぬということからでありますして、特に農業経済において今同じようなことをおつしやいましたけれども、やはり農業一つ経営であります。従つてそこで農業手形が流通するということが、すべて将来の借金になるのだというような解釈はいたしておりません。
  21. 植原悦二郎

    植原委員長 今井耕君、私が聞いておりましても申し上げていいか悪いかわかりませんが、なるほど質問答弁とマッチしませんけれども、あなたの質問はこういうようにすればマッチするのではないですか。商家やその他の人がかりたけのこ生活をするならば、物があつてする。しかし農家たけのこ生活といつても、ないのだ。今までいくらかやみなどでまかなつて来たものが、あなたの言おうとするところは、米価標準がその他の一切の経済状態より考えて、安いのだ。そこで今日の米価一つの企業としてもそろばんが持てぬ状態であるから、農業手形は今の状態では先借り借りするような形でまかなつては行くけれども、この状態で、行けば行き詰まるのではないか。これを政府はどう考えでいるか。それらを農産物によつて何とかしなければ、いかにも農産物が安いので、農家が生き立つ道がないじやないかというようなところをあなたはおつしやるのではないでしようか。そういうふうに言えば、いくらか安本長官も答えていいだろうけれども、あなたはただたけのこ生活農家農業手形はやり切れないから、その先はどうなるかと言つて問い詰めておるので、結局どうしても質問答弁と食い違いのようなことができるじやないかと思うが、あなたの質問を少し御注意なさつて、例をあげてわかりやすくすれば、安本長官もかなり答えいいじやないかと思いますが、いかがでしようか。
  22. 今井耕

    今井委員 いろいろありますが、今の農業も営業だからというお話でありましたが、それは農業ただ單なる営業と考えてはいかぬのです。そこが相当観点が違うかと思う。というのは、たとえば私は米麦農民経済という点から考えるともつくるものは全部米と麦とだけをつくらなければならぬということに法律できめている。そしてそのとつたものは、保有米以外は全部供出しなければならぬ、これも法律できめているわけです。そしてそのとつたものの値段は政府がきめるわけです。従つてこれがほかの営業と同じように解釈できるわけのものじやないわけです。いわば国が経営者で、農民は請負のようなものだ。従つてこれは国営に近い農業なんです。そこで私は一番初めたそういうことを申し上げた。だから、米価というものが公務員賃金と同じ性格を持つているということはそこなんです。従つてこういうことについては、政府が責任を持たなければならぬ部面があるわけです。私が質問する観点もそういうことになる。だから、初めにちやんとその観点を私は申し上げておるわけです。だから、そういう点をはつきりしてものを考えなければ、農業ただ普通の営利事業だ、これが実際に経営ができるものならそれでよろしいが、そうじやないと思う。それをはつきりと頭に置いてひとつ答弁願いたい。  そこで次の問題に移ります。この二十五年に非常に心配しますことは、さきに観点のところで申したように、二十四年の産米が非常に減收であつたということは、昨年の十二月三十日に政府の方で予定よりは三百八十二万石の減収である。そしてこれは二十三年に比べて二百三十七万石の減收になつている。そしてこれを予想から比べると、五・八%減つているということが発表された。そこでこの問題が農村経済にどういうふうに影響するかといろいろ計算してみた。そうすると、現在の米価で計算いたしますと、百六十二億七千三百万円の所得が減る、こういうことになるわけです。その結果多少減額の補正もいたしましたが、それが二百四十五万石、その分だけを勘定しましても、約百億円農民所得が減つていることがはつきりするわけです。その上に不作の年には米が非常に悪いわけです。ところが検査が非常、に厳重であつた。そこで一等、二等も三等とかかつたような米がほとんど三等、四等、五等というところに下りましてここに等級格差というものが非常に大きく出て来ておる。それを私もざつと勘定してみたが、これが約六十億円ということになる。そこで大体二十五年の農民所得が二百二十億円ぐらい減る。こういうことが予想されるわけです。これは農民も最善の努力をしたわけです。しかし天候の関係上不可抗力でこういうことになつたわけです。そこで先に申したように、国が請負わせているものである。それで米価もちやんときめて、そうして不作であつたので収穫が少かつたからもその損はお前がみな持たなければならぬ。こういう解釈で行くならば、ここに非常にかわいそうなところが出て来ると私は考える。大蔵大臣なども本年の減税のことをいろいろ申されますが、今年の減税も大体国税で七百億円軽減する、そうして地方税で大体四百億円ぐらいふえるだろう。そうすると純然たる減税が三百億円だ。そこで農民にどのくらいの割合で減税になつて来るかということはまたあとにいろいろ伺いたいと思いますが、かりに三分の一が農民の減税になりましても百億です。一方において二十四年が不作であつたということだけで、二百二十二億ほど減つて来ておるということになりますと、減税ぐらいもう吹き飛んでしまう。こういう結果が生れて来る。だから減税したから楽になるというようなことは全然言えぬ。こういうことになるわけです。その点を私は非常に心配するわけです。そこでこの価格の問題、米価の問題につきましても、パリティー計算でやるということは、これは一応理論的にはよろしい。また工業生産のときにはそういうことが言え る。ところが天候によつて左右される、こういうものは不可抗力であります。従つてそういう場合においては、ここに何らかのかげんがなされるということがなければならぬのでありまして、これが農業生産物に対するところの価格統制の一番大きな欠点であると私は思う。従来自由経済のときには不作の年には米の値は高くなつた。それで生活ができたが、この価格統制のもとにおいて、しかもパリティー計算でやるときにはそういうことができな い。ここにおいて減收した場合において、やはり相当そういう分を見るということが必要であると私は思う。こういう点から考えまして、これは第六国会のときにおきましても、安本長官にもし減收があつた場合においては、その減收というものについてある程度追拂いによつて、それをカバーするようなものを見る意思はないかこういうことをお伺いいたしました。そうしたらそのときにはいろいろ詳細申しませんが、今のところ考えていない、こううい御答弁をいただいたわけです。それでそのときにはまだはつきりした数字で実収高というものがきまつておらなかつた、がその後はつきりした。そこでこういう問題について安本長官がどういうふうにお考えになつておるか、これをひつとお伺いしたいと思うわけです。
  23. 青木孝義

    青木国務大臣 いろいろと御質問がございまして、範囲は非常に広いのであります。今日の米価政府が一応買上げ価格を定める。こういう問題についての根本的なお考え方が少し違うと思うのでありますが、もし戰前のように自由経済のもとで、別に供出制度というものがない場合、非常に作柄がよかつたというときは米価は通常下る。非常に小かつたときには自由経済のもとにおきましては上るということに相なるので、自然的な調節が行われますけれども、現在のように一定の買上げ価格をきめて、さらにその量をきめるという供出制度のもとにおきましては、そういう自由価格というものを考えることは、やはりそこに矛盾が起つて来るということが一点。もう一つはいわば農業保險といつたようなもので、明治十年ごろから日本でもペーマイエツドあたりが日本農業保険制度を指導して参りましたけれども、日本におきましては農業保険制度というものはなかなか確立されません。ただいまおつしやることもおそらく自然的な影響を受けることが大きい農業にとつては、何かそういう保険制度のようなものを設けたらどうかというような御質問でありましようが、そういう点はまだ今のところいろいろ考えてはおりますけれども、一々決定はいたしておりません。  なお日本の米の供出について、先ほどおつしやいました国家がこれを管理しておる国営的な農業だというようなこと御その観念というものについても多少私は考え方が違うのであります。御承知のように農地改革によつて細分化された、しかしながら農家は農地の所有者である。そして同時に農業勤労というか、農業労働を営んでいる。そういう日本農業の特殊性というものから考えて参りまして、たとえば先ほど御質問がございましたように、本年度はどれだけできるだろうか。作柄はよかろうか悪かろうかといういわゆる作柄予想をいたしました場合に、その予想が当らなかつた、あるいは天変地異というか、あるいは自然的な関係その他農家の費用が多過ぎたり少な過ぎたりする。そういうことによつて多少ずつ変化がある、そこでその影響を受けますけれども、大体において年々二千万石、あるいは千八百万石足りない。こういうふうに米の絶対量というものが足りない日本におきまして、そこに予想と実収との差があるということはやむを得ません。すなわち収穫の場合においては、国が少い部分だけ補償してはどうかという御質問であろうかと思いますが、その点ももちろんあなたがお考えになつておるような点を、もつと考える必要があろうかとも思いますが、現在のところそういう考えは別に持つておりません。
  24. 今井耕

    今井委員 保險の制度につきましては現在あるわけでありまして、今後考えてみないでもできておるわけです。それは三割以上減收の場合にそういうことがあるわけであつて、全般的としてはないのであります。全般のものについて保険の制度というものはとうてい私は考えられぬことだと思うのですが、この問題もこのくらいにしておきます。  次に統制撤廃に伴いまして日本国内物価を国際物価にさや寄せをするということは当然のことだと思うのですが、そういうことに対して米価は国際価格にさや寄せしないのだこういう御答弁がときどきあるわけですが、それではいつまでさや寄せせぬというお考えで行くのか、こういうことを伺つてみたい。
  25. 青木孝義

    青木国務大臣 御承知通り、先ほど申し上げましたように、日本食糧のうち特に米価ですが、これは主要食として一定の価格を維持しなければならぬ。そういうことでこれが自由に外国から輸入することになつて日本の米が高くなろうと安くなろうと、いずれにしても国際価格水準に合せる、あるいはまた安い食糧ならば何でも外国から買うという自由な状態が、かりに実行せられるような時期が来れば、これを国際価格にさや寄せするということができるかとも思いますが、今のところではさようなふうな考えておりません。
  26. 今井耕

    今井委員 そうすると今の御答弁では、世界的に食糧が豊富になつて、そうして日本の工業生産も盛んになつて、自由に安い食糧が入つて来るようになつたらさや寄せされる、こういう御答弁であると考えますが……
  27. 青木孝義

    青木国務大臣 ただいまはまださようなふうには考えておりませんと申し上げたのです。
  28. 今井耕

    今井委員 現状としては私よくわかるわけです。今価格相当押えて行かなければならぬということもよくわかつておるわけです。ところが今のように、つくるものもちやんと国が法律できめて、とつたものは全部出さねばならぬ、そうして価格をきめて行くのだということだから、農民はもうその範囲内でやらなければならぬので動きがとれぬ。特に米麦農民という上から考えますとそうなる。だから自由に経営ができぬということが、農業経営の合理化、農業経営の近代化を非常に阻害している。国際経済に対処するにはあらゆる方法があります。ところがそれができぬわけであります。それを押えて国がやらせているわけであります。従つて自由経済になつて来て、一ぺんに世界の食糧が安く入つて来る時分になつたら、もうとうてい競争ができぬ立場に立つわけです。そこを私は心配する。従つて今のうちに統制して行くと同時に、そういう場合に対処することを一方考えておくということが非常に必要だと思うが、安い食糧が入るときまで考えぬということであつたら、これは農村の将来は非常にみじめなものになる。こういうことを私は考えるわけであります。そういうことからお伺いしたわけでありますが、その点どういうふうにお考えになります三か。
  29. 青木孝義

    青木国務大臣 今外国から輸入している食糧が、もつと安く入るということになればそれはけつこうだと思います。しかしながら安い食糧であれば、外国から何でも無制限に輸入するというふうには今のところ考えておりません。まずあなたが仮定せられて、将来そういう自由にかつてに輸入する時期が来たらどうするか、こういう問題であれば、やはりお答えは同じことになると思います。
  30. 今井耕

    今井委員 この問題はこの程度にしまして、次に輸入食糧との関係の問題を取上げてみたいと思いますが、農林大臣がおりませんから、安本長官でおわかりだつたち御答弁願いたい。米穀年度における食糧の持越しは終戰後どういうことになつているか、もし御承知であつたら御答弁願いたい。
  31. 青木孝義

    青木国務大臣 私は存じませんから、農林大臣からお答えいたします。
  32. 今井耕

    今井委員 実はこの問題は私も全然知らぬわけじやたいのですが、はつきりしたことがわからぬからお伺いするわけです。昭和二十一年の持越しが二百二十四万石、二十二年が四百十八万石、二十三年が一千三百六十万石、二十四年が一千五百九十万石、こういうことが食糧長官あたりのお話として前に出ておつたことも私記憶しておるので、ちよつとメモにとつておいた。しかしこの数量がはつきりしませんからお伺いしたわけでありますが、大体平時の持越しは六百万石程度であると考える。それが二十四年度の今は持越しが一千五百九十万石、それに今度食糧輸入が予定通り入ると、二十五年度の持越しは約二千万石程度になるということが発表されておることを記憶している。そこがそういうたくさんの輸入食糧が入つて来るということは、国民生活の安定に非常に貢献することは十分わかりますが、こういう問題がやはり農村経済に、どういうふうに影響するかということを検討してみることは、非常に必要なことであると思う。その点から考え安本長官の御見解を承りたい。
  33. 青木孝義

    青木国務大臣 それはどういうところを御質問になつたのかわからないのであります。
  34. 今井耕

    今井委員 もう一度申し上げます。転入食糧が非常にたくさん入つて来る、そうするとそれによつて国民の食生活の安定というものには非常に貢献するが、一面これによつて農村経済相当影響する部面が起つて来ると私は考えるが、そういうことについて、どういうお考えを持つておられるかということを聞いたわけです。
  35. 青木孝義

    青木国務大臣 おそらく御質問の要点はこういうことじやないかと思うのです。輸入食糧がよけい入つて来ると、日本国内に保留されている食糧が余つておる上に、それがふえるのだから、それが農村に対して影響はないか、こういうことじやないかと思いますが、もちろんそれが次年度に幾らでもまわつて行くように入つて参りまして、それによつて政府の買上げ方をかえるというようなことになれば、その影響はあると思いますが、現在のところでは、御承知通りに大体日本食糧生産の予定を立て、さらに外国からの輸入をそれに従つて一応予定を立てる、こういうことでありますので、大体において、その入つて参ります時期というような問題もございますけれども、余つておるということがただちに農村に影響があるというふうには考えません。
  36. 今井耕

    今井委員 この問題もこれぐらいにしておきます。
  37. 植原悦二郎

    植原委員長 今井君、まだ安本長官農林大臣に対する質問はかなりありますか。今の御質問は、農林大臣の方が答えいいと思いますが、もし何ならそれを讓つて大蔵大臣がおいでになつておるから、大蔵大臣の方へ御質問くだすつてはどうですか。
  38. 今井耕

    今井委員 はあ。この問題をひとつ大蔵大臣にお伺いいたします。
  39. 植原悦二郎

    植原委員長 その問題は農林大臣の方がいいと思うのですが。
  40. 今井耕

    今井委員 いやこの問題についてもです。非常にたくさんな大豆を含めて、三百七十五万トンという食糧を輸入する。それに要する補給金が四百五十六億円ということに予算に載つておるわけです。そこでこの四百五十六億円というところの補給金がいらなければ、もうこれだけの減税ができるわけです。それでこの四百五十六億円というものが国民一人当り何ぼの負担になるか、こういう点から一人当りの平均を出してみますと、五百五十円ということになります。一戸平均にしますと、二千五百円という負担になるわけです。この負担は生産者の一方的に負担するものになると考えるが、大蔵大臣の御見解を承りたい。
  41. 池田勇人

    池田国務大臣 輸入補給金がなくなつた場合に、減税に充てる分もありましようが、またその他の政府の必要な方面への資金に充てる場合もあるわけでありまして、全部これが減税になるとも断定できません。そうしてまた日本米価並びに麦等が輸入品より安い。従つて高いものを安く売るために、そこに補給金を出しておるので、この補給金が農家の方の負担のみであるということは言えないと思います。
  42. 今井耕

    今井委員 そういう点は私も了承しておるわけであります。四百五十六億円というものがなかつたら全部減税になる、そういうことには限らぬことはわかつておりますので、もしそれを減税に充てたらそうなる、こういうふうに申し上げたわけです。なおこの補給金というものは、もし輸入食糧と同額で国内生産価格がきまれば、その補給金というものはいらぬわけです。そこで農民経済から考えて行くと、米価相当押えられている。そうして輸入価格との差額について補給金を出す、こういうのだから、全部が全部でなくても、相当農民の一方的な負担になる性格のものである。こういうことには間違いがないと思いますが、これに対する御見解伺いたい。
  43. 池田勇人

    池田国務大臣 前提が違うのでございまして、今の米価が押さえられておると言われますが、押えられておるということはどういうことなんですか。今のパリティー計算の方法によるものが一番いいと大体認められておる。それによつて米価がきめられておる。押えられておるのか、あるいは上へ引上げられておるのか、その点がはつきりいたさないのであります。
  44. 今井耕

    今井委員 それはほかの物価が国際価格にだんだんさや寄せして来る。そうするとやはりこの物価というものは日本だけできめるのではなしにも世界的にきまつて来るわけであります。そういう点から言うと相当安い。そうするとここに押さえられているという観点に立つて来る、そういう意味から申したのですが、そういう点から考えて、私の申したような性格のものがあると考えるわけであります。そういう見解は私だけではなしに、ほかの方からもずいぶんそういう見解質問などがなされておるわけであります。そこでこれによつて生活の安定というものができて来る。これはまあ非常にけつこうなことです。そこでそれによつて農民がある程度一方的に負担がふえて来る、こういう部面があるということを考えてみますと——それもわかりますが、どうしてもそのやり方がやむを得ぬものでありますなれば、一方生産増強のための方面にもそういう経費を見て行く、こういうことでバランスをとつて行くのでないと、ここに相当農民経済が圧迫される、こういうことだと、ここに公正というものは期し得られぬような気持がするわけです。そういう点について、大蔵大臣は専門家でありますからひとつ伺いいたしたいと思います。
  45. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど来大分いろいろな意見をお述べになりましたが、私といたしまして日本物価を世留の市場物価にさや寄せするという方針にかわりはないのであります。問題の小麦なんかにいたしましても、昨年の初め、ころはトン九十五ドルから九十二ドルぐらいになつておる。小麦協定に参加いたしますと八十二ドルぐらいになるのであります。日本の小麦も、昨年は二千二、三百円、これが三千三百円ぐらいに上つておる。だんだんさや寄せしつつあるわけであります。理想といたしましてはやはり向うのFOB価格とこつちのFOB価格が一緒になるというようなときが、私はだんだん参るのではないかと思うのであります。これは先のことでございますが、なるべく早くそういうふうに行きたいという考えは持つておるのであります。いかにも主食というものは国民生活に重大な影響がありますので、いろいろな施策の完了と相まつて、そういう結論に到達いたしたいと考えております。  次に主食の増産対策につきまして、昨日も今井君から総理に御質問なつたようです。公共事業費は、補正予算を入れまして六百億近いものが九百数十億以上になる。農村関係に使う、すなわち農地の改良は昨年は全体の一二%か一〇%にしかならぬ、こういう議論は私は当らぬと思う。われわれといたしましては農地改良につきまして十分に力を入れてやる。それは災害の復旧が最も重要なる政策の一つでありますから、まず災害の復旧に持つて行きたい。しかし農地の改良にいたしましても、昨年は土地改良と災害復旧を合せて七十七億円、今度は百億円余になつておるのであります。ほかの分と比べまして農地の改良に関する予算はほかのよりも、むしろ全体の割合から申しますと、災害復旧と六・三制のためにふやしたのが相当部分を占めます。その次が農地の改良の増加ぐらいであります。こういうことから考えますと、われわれといたしましては、財政の許す限り農地の改良に力を注いでおるのであります。開拓の費用にいたしましても、昨年よりも相当ふやしておる状況であるのであります。お話の通りの線で農地の改良、主食の増産に力を入れておる次第でございます。
  46. 今井耕

    今井委員 農業増産のための、予算の問題につきまして御答弁つたのでありますが、きのう総理大臣に質問した点にまで及んで御答弁があつたわけでありますが、今日私の考えますのは日本経済の自立ということについて、一番外国の援助をたくさん受け、ているものは、これは食糧である。そこで国内的な食糧増産というものについてももこの際相当ほかの部面より思い切つた国の策をやつて行かなければならぬ、こういう建前を私は考えておりますから、そこにいろいろ見解の相違が出て来る、こう私は思うのであります。これは見解の相違でありまして、私から考えると非常に足らぬと思うし、それから大蔵大臣はそれでまあいいのだ、こういうふうにおつしやることだと思いまして、この点はこれで打切りたいと思います。  そこで時間もだんだん来ますから、大蔵大臣にお伺いします。二十五年度の予算におきまして所得税が源泉徴収におきまして九百八十三億円、申告所得において一千五百三億円、こういうことになつておりますが、その申告所得税の内訳この前の二十四年度の予算説明とかそういうものには、これが勤労者、それから個人の常業所得とか農林水産所得とかいうものにわけて出ておりますが、この二十五年度の予算説明にはそれがございません。それでその内訳がわかりましたら、ひとつお知らせ願いたい。
  47. 池田勇人

    池田国務大臣 昭和二十五年度の申告所得の千五百億円の内訳は、きよう午後詳細に資料を提出することにいたしております。大体千五百億円のうちで営業関係、商工業関係が千億と少し、農業関係が二百億余り、その他が自由職業、庶業であります。農業所得に対しましては、昭和二十四年度は四百二、三十億であつたと思います。それが大体二百十億ぐらい、半分ぐらいに相なると思います。
  48. 植原悦二郎

    植原委員長 今井君、先刻あなたの御質問中の農業所得に関する件については、案本の内田財政金融局長より答弁があるそうであります。それからなお農林大臣がおいでになりまして、あなたが米穀年度の過去数年におけるところの保有米、その影響等についての御質問がありまして、それは安本長官が留保して、むしろ農林大臣の方がよかろうということを私は申し上げたのですが、農林大臣もお見えになつておりますから、まずこの場合、あなたの先刻の御質問中の農業所得に関する件についての内田財政金融局長の答弁を願つた方がよろしかろうと思いますが、いかがでしようか。
  49. 今井耕

    今井委員 けつこうでございます。
  50. 植原悦二郎

    植原委員長 それでは内田財政金融局長。
  51. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 二十四年度の国民所得並びに二十五年度の国民所得の推計の中におきまして、農林水産業の所得が両年度とも、いずれも二二%になつている。今井委員の御質問によりますと、全国の有業者の中で農業者の占める割合は非常に多いのに、二二%というのは少な過ぎはしないかということであつたと思います。これは労働力調査報告というものによりますと、全体で三千七百二十四万人ばかりの総有業者の中で、農業に従事する者は千八百六十二万人、すなわち約五〇%であります。ところが、この農業従事者の中の大部分は、子供を加えました家族労働者でありまして、統計によりますと、農業の家族従業員が、総数千八百六十二万人の中で実に千二百万人の多きを占めている。言いかえれば他の事業におけるのと違いまして、農業においては家族従業員が非常に多いために有業者の数が多くなつている。これは戸数について考えますと、大体今日の人口が八千万人余り、全国戸数が二千万近くあると思いますが、その中の農業戸数というのは大体六百方近く、三〇%程度だろうと思います。従つてさようは両方事情を考慮いたしてみますと、国民所得における農業の二二%というものも、必ずしもとんでもない数字ではない、かように思います。  なお御参考までに、最近の国民所得でなく、昭和五——九年の国民所得の戰前の数字を私はここに持つておりますが、昭和五年の国民所得の年平均は百十五億円になつておりますが、この場合の農林水産業の国民所得は二十二億二千五百万円という数字が事実として出ておりまして、この農林水産業の国民所得の中に占める割合が一九・三%それが今日では二二%、かような数字になつているのであります。さよう御了承願いたいと思います。
  52. 植原悦二郎

    植原委員長 次に今の米穀年度の保有米の問題は、簡單にあなたの質問をこの場合繰返して農林大臣にお尋ねになつた方がよかろうと思います。
  53. 今井耕

    今井委員 本二十五年度におきまして非常に多額の輸入食糧が入つて来る。その参考といたしまして、本年度におきまする端境期の持越しの模様でありますが、昭和二十一年ごろから以降の持越量がわかつておりましたら、御答弁願いたいと考えます。
  54. 森幸太郎

    ○森国務大臣 お答えいたします。二十一年ごろからの持越しという数字は今持つておりませんから、後ほどお答えいたしますが、二十五米穀年度の需給推算についてお答えいたします。これは会計年度を三月末で打切る統計もありますが、御承知の十一月一日から翌年の十月三十一日までを日本といたしましては米穀年度といたしておるのであります。今申し上げますのは、二十四年の十一月一日から本年の十月三十一日における米穀年度の考え方であります。年度初頭の持越し、つまり二十四年の十一月一日に持ち越しましたものは、総計で二百五十九万トンあります。千七百二十六万七千石であります。その内訳は米が六百八十九万四千石、麦類が四百七十四万七千石、いも類——これは加工品も含めたのでありますが、八十四万六千石、雑穀が八万石、輸入食糧が四百七十万石となつておるのでありまして、これを前年同期に比較いたしますと、六十万トンの増加になつております。約四百万石、これは主として輸入食糧の持越しが増加したためであります。昨年同期の輸入食糧の持越しは約十二万トンであつたのであります。国内食糧の買入れにつきましては、昭和二十四年産の作物について米及び米代替、産米以外のものについては一月以降はほとんど買入れはない見込みでありますから、十一月一日以降十二月末までの実績を計上したのであります。それは麦類が三万四千トン、かんしよが三十二万九千トン、ばれいしよが五万一千トン、いも加工品が七万二千トンとなつております。昭和二十四年産米及び代替雑穀につきましては、その最終供出見込みを四百五十万トく三千万石と見込んでおります。これら十月末までの買入れ数量を控除した残余を、昨年の実績を参考として一米、雑穀にわけまして計上したわけであります。なお以前の端境期における持越量は追つて御報苦いたします。
  55. 今井耕

    今井委員 私の持ち時間がなくなりましたので、最後に一つだけこの際御質問したいと思います。  実はあつちからこつちからいろいろ私の方に善処方の希望が来ております。その内容ちようど農林大臣とそれから安本長官大蔵大臣にも関係しておるように考えられますので、ちよつとお尋ねしておくのですが、その問題は飼料の配給公団から配給する飼料が、二十四年の第二、第三四半期に配給すべき飼料を遅らしておいて、それを一月から配給して、新価格で代金が請求されておる。それがためにその差額の、いろいろものによつて違いますが、たとえばふすま一トンについて価格が一千八百二十五円ということであります。そういうことは不当である、こういうことでずいぶん交渉を重ねているが、解決しない。方々で決議なんかもやつているところもある。その後いろいろ何かこれについて公団の赤字補填上から、それをぜひやらさなければいかぬということで、安本や大蔵省あたりも強腰であるというような、これは情報でありますから、何でありますが、そこで事実そういうよつなことがあるのかないのか、あるいはまたそれはどう処理されるべきものであるか、こういうことについて、もしわかつておりましたら、御答弁願いたい。
  56. 森幸太郎

    ○森国務大臣 事務的のことでありますから、内容を詳しく存じませんが、一応私としてお答えいたしますことは、今日の統制物資は、主要食糧は別でありますけれども、配給計画と公団の受入れ計画というものがマッチせない場合が多いのであります。ことに御承知の飼料は海外から輸入を受けているのでありますから、その輸入が予定通り入りますれば、配給計画通り事務がとれるわけでありますが、配給計画を立てましても、そのときに手持ちがないという場合は、せつかく配給を指令しながら現品をお渡しできない、こういうことはお察し願えることと思うのであります。決して近く値上りするから、あるものを押えておいて、これを値が上つてから配給したようなことはいたさないはずであると思つております。もちろん原価の配給価格に対してのマージンというものはさまつているわけでありますから、安い飼料を持つてつて、それを高くする、公団が赤字を埋めるというような考え方はわれわれ絶対にささぬつもりであるし、また決してそういうことはないものである、かように考えております。
  57. 今井耕

    今井委員 この問題はまた分科会で研究する余地もありますから……
  58. 植原悦二郎

    植原委員長 一応あなたの質問は終つたと思いますので、これにて休憩いたします。午後は一時半から質疑を継続いたします。     午後零時十八分休憩      ————◇—————     午後三時七分開議
  59. 植原悦二郎

    植原委員長 休憩前に引続き会議を開きます。質疑を続行いたします。小金義照君。
  60. 小金義照

    ○小金委員 数日にわたる同僚議員質問応答によりまして、大体の問題については了解をいたしましたので、私は、特殊な問題あるいは特にあまり論議されておらない問題につきまして、お尋ねをいたすことにいたします。  まず文部大臣にお尋ねいたしますが、第二次世界大戰及びその戰後を通じまして、いろいろな現象が発生しております。まず経済的にはインフレーシヨンがはげしくなつて来る。日本におきましては世界的現象のインフレーシヨンのほかに、国が非常に小さくなつて人口がふえたというようなことから、特別な現象も発生しておるように思うのであります。戰時中あるいは戰後を通じていろいろな問題のバランスが破れた、通貨と商品、あるいは物資と申しますか、通貨と商品とのバランスが破れて、通貨が多くなり過ぎたのが経済上のインフレーシヨン。ところがこのほかに私はまだ戰時戰後を通じまして、精神文化と物質文化の大きなバランスが破れたのではないか、ややもすれば物質文化といいますか、物質文明のみの方が論ぜられまして、精神文化すなわち人間の気持の安定がなかなか復興しないために、ここに大きな悩みがあるのではないかと私は考えるのであります。これは二つとも世界的の現象でありましようが、日本におきましては特に人口と資源とのバランスが破れた。すなわち資源は非常に少くなつたにもかかわらず、人間の数は非常にふえた。ここにもまた大きなアンバランスが現われた。日本の現状から申しますと、まず通貨と物資のバランスが破れ、物質文明と精神文明とのバランスが破れ、さらに人口と資源のバランスが破れた。この三つの大きな不均衡の上にわれわれは立つておるのである。問題はこれらの点からいろいろ派生して来る。従いまして單に経済上のアンバランス、すなわちインフレーシヨンだけをとめましても、気持の上のアンバランスが除かれない限りは、あるいは除かなければ、真の経済上のバランスはとれて行かない、こういう意味合いにおきまして、私は日本の文教に関する政治が非常に重要な役目を持つものと思うのであります。この点につきまして、文部大臣あるいは文部省当局におかれましてはいろいろその方面について、あるいは教育制度あるいはまた教職員の待遇その他について、非常な御努力をされておることは認めます。しかしながらこの際特に私は文部大臣が、ただいま私が申し上げましたような観点についてどういうお考えをお持ちになつておりますか、大臣の御抱負を伺わせていただきたいのであります。
  61. 高瀬荘太郎

    ○高瀬国務大臣 日本終戰後の今までの経過等から考えまして、日本の再建の仕事が物質方面にもつぱら片寄つておる観がありまして、精神方面の再建については、必要は認められながら十分まだその方面への努力が傾注されるところに来ておらないということは、今のお話の通りであります。私も今の御質問にありましたように、むろん当面緊急の生活問題ということは第一に取上げなければならない問題でありますから、まず物質方面に手がつけられることも順序だと思います。けれども実際に日本再建の土台になるものは精神方面の再建、回復ができなければ、いかに当面の物質方面の解決がついたところで、真の解決にはならないと私も考えておる次第であります。新しい教育制度をつくり、教育基本法をつくり、教育内容にいろいろ改善を加えまして、精神方面での再建、回復に全力は上げておるのでありますけれども、まだ十分の効果が得られないという状況にあることは、私どもはなはだ遺憾に考えているところであります。しかしながら私の見るところでは、何にしても終戰後の精神的な動揺、頽廃というものが非常にはげしく、生活の困窮もはげしかつた、そういう状態のもとで、精神的再建をはかろうといたしましてもなかなか容易なことではなかつたと思いますが、最近それらの問題も漸次安定の方向に向つておる状況にありまして、新しい教育制度もだんだん軌道に乗りまして、その効果も上つて来ておるように私は考えております。私といたしましては、教育基本法にきめられました新しい日本の教育の大方針を土台といたしまして、民主的な教育の完成に小学校から大学までの教育の内容を今後できるだけ充実いたしましてやつて行くということと、社会教育方面は学校教育以外に非常に重要な問題であります。それは前々国会で社会教育法が成立いたしましたし、その社会教育法に基きまして今国会に図書館を提出いたしております。それらの法規に準拠いたしまして、地方の文化の発展に積極的な活動を期待いたしておる次第であります。なお地方におきましては御承知のように最近いろいろの文化団体、婦人団体等が覚醒いたしまして教育運動を起しております。それがかなり活発に最近は動いております。昨年の夏あたりも夏期大学とかいうような計画もずいぶん多くやつております。それらを見ます漸次精神方面での安定、再建というものも進みつつあると考えております。この勢いをできるだけ推進いたしまして、御質問にありましたようにできるだけ早く解決の方向に向つ て行きたいと思つております。
  62. 小金義照

    ○小金委員 私は予算上の数字については分科会等に譲りまして、一切数字の質問は申しませんし、またお答えも要求しないのでありますが、文教関係に関する予算は、国家予算あるいは地方予算を通じて相当な額に上つております。しかしながらこれは運用が非常に大事でありまして、ただいま文部大臣の心構えとしては社会教育あるいはまた一般の道義の振興について非常な注意を拂い、また努力をされておられるありさまを御説明なさいましたので、これを私は了といたします。今御発言中に、図書館法案を提出するということがありましたが、これは公立図書館法のことでありましようか、その点をひとつ伺いしておきます。
  63. 高瀬荘太郎

    ○高瀬国務大臣 今申しました図書館法案は、社会教育法に基いてつくられる図書館についての法案でありまして、地方の公共団体等のつくる公共図書館であります。
  64. 小金義照

    ○小金委員 次に、これは請願が出ておりますのですでに御承知だと考えますが、小学校の家庭科とかいう科目を今度は削除するというようなことで、その削除が実現しては困るというので、小学校関係の教育者が大分心配いたしておるようであります。この点について、大臣はどういうお考えをお持ちでございましようか。
  65. 高瀬荘太郎

    ○高瀬国務大臣 御質問のような家庭科廃止問題ということにつきまして、各方面からいろいろ意見を拝聽いたしております。しかし実際におきまして、今まで家庭科でやつておりましたような授業を全然廃止するというわけではありません。ただ名前を職業科という名前にいたしまして、そうして家庭科を選んでやる者は今まで通りにやれるということでありますから、廃止ということではありませんで、形式的な変更でありますから、そう心配なさるようなことはないと思います。
  66. 小金義照

    ○小金委員 そういう御方針であるならばけつこうだと思いますが、誤解のないように今の御説明の趣旨を徹底させていただきたいと思います。ただいま大臣がお述べになりました学校教育、社会教育あるいは家庭教育に関する御抱負はまことにけつこうでありますが、今世界の評論家の説として大体私は承知しておるのでありますが、世界にはレーニニズムとガンディズム、すなわちレーニンの流れをくむ思想と、ガンディーの思想の流れをくむガンディズム、この二つの大きな流れがある。歴史評論家のトウィンビーの説によりますと、有吉以来二十六の文化が興つて、二十一は滅びている。今世界にまたがつているところの五つの文化が、すでにもう廃頽期に来ておる。新しい文化がここに生れて来なければならない時期になつておる。その新文化あるいは新文明の胎動期がこの二十世紀の中ごろである。従つて世界の動揺はいかんともしがたいのである。こういうときに際して、世界のそれぞれの国をなすものあるいは民族は、大きなレーニニズムとガンディズム、すなわち唯物論と唯心論といいますか、そういうような訳があるようであります。この流れの中にどうしても巻き込まれている。日本は今占領されておりましてどういうふうな精神指導をするとかなんとかいうことは、これは別でありますが、われわれとしては、とにかく一応経済がこんとんから安定へ向つているというならば、これと並行して、心の安住の地を求められるような政治、特に文教に関するそういう施策をお願いしたい。この意味におきまして、宗教の問題がこのごろ方々で論議されますが、私は宗教こいうものはこういうものか、よいか悪いかということを論ずるつもりはありませんが、要するに各人が個人の完成を期するという意味において、常におのれを反省するというような立場から、私は宗教はどうしても必要だと思うのであります。文部省が宗教の問題についてどういうお考えを持つておられますか、その宗教関係の御方針なり抱負経綸が伺いたいのであります。
  67. 高瀬荘太郎

    ○高瀬国務大臣 宗教につきましては、文部省の現在の方針は七特定の宗教を特に奨励いたしましたり、あるいは学校でこれを強制したりすることは、絶対にしないという方針で行つております。しかし宗教というものが社会生活上非常に重要なものである、好ましいものであるということは、文部省としても考えておるのでありますし、健全な宗教の発達ということは——特定の宗教でなく、一般的に健全な宗教の発達ということは、文部省もできるだけ助長したいという方針で行つております。
  68. 小金義照

    ○小金委員 われわれは経済復興のために努力している、その努力の最中に、毎年夏になると台風が盛んにやつて来て、いろいろなものを破壊し国土をこわす。その復旧にまた莫大な金をとられますので、私どもはどうかして文教あるいは芸術振興のために予算の計上を考えましても、なかなかこれは意のごとくなりません。しかし今文部大臣のお答えの中にありましたように、また私の質問の趣旨に申し上げました通りに、経済復興にはどうしても精神復興あるいは文化の同上というようなものを伴わないと、どうも経済とか物質に流れ過ぎた政治が行われ過ぎると、ここにまたアンバランスから来るところの弊害が生ずる。戰時中五大産業とか六大産業とかの重点生産主義政策が行われた。戰後はまた石炭その他について、いわゆる傾斜産業という名のもとにこれに全力を注がれた。これはいずれも非常時的な臨時的な応急的なものでなければならぬが、国民の気持なり精神なりがそれにまだ相当なずんでいる。どうしてもこういう一つのアンバラスになずんだわれわれの気持を打破するには、相当な施設もいりますが、あるいはまた新しい施策もいるでありましようが、限られた国費の中でこのやりくりをしてもらう文部大臣の御苦心のほどはわかりますが、人間はまず食うことが必要でありますから、自然の力から免れるためのいろいろな防災施設というようなことがきわめて大切でありますが、これと同時に、私は文教政策の決してゆるがせにすべきものでないということを考えておりましたが、文部大臣もそういうお考えであるというので、まず私はこの点は御信頼申し上げて、文部大臣に対する私の質疑はこれで終ります。
  69. 植原悦二郎

    植原委員長 今委員長がさようなことを申すのが適当な機会であるかどうか知りませんが、非常に重大なことだと思いますから、この場合文部大臣の注意を喚起しておきたいと思います。と申しますのは、ただいま小学校の家庭科の問題がありましたが、一時中止になつたと承知しておりますが、この議会に文部省は新制中学の家庭科を廃止して社会科一本にするという計画をお立てになつたのでおります。聞くところによりますれば、向うの示唆によるというようなりくつであるそうでありますが、日本の婦人の教育に対し、今日の日本の家族制度のもとにおきましては、家庭科というものは非常な重要な部面を占めるのであります。多く家庭科は婦人の教師によつて指導されておりますが、社会科ということになりますと、ほとんど婦人の教師の指導はありません。のみならず今日の社会科を指導しているところの先生が、社会科の在在の意味さえ知らないで、ただ新しいことをするのが、社会科であるがごとくに考え、子弟を正しく指導することから逸脱して、ややもすれば間違つた社会観念を與えるものではなかろうかと思われるような指導をしていることが、現在日本全国の新制中学の社会科を指導している実情だと思います。ことにまことに重大なる時機における女の子を取扱うにつきましては、日本の特殊な事情に応じて、婦人の先生が非常に重要だと思います。どんなに男が偉くとも、婦人の心理状態、女の子の心理状態を透徹して観察するということはできないことである。それをただ——どこまでも日本を現実に民主化しなければならないけれども、日本には日本の独自の過去におけるところの社会制度、伝統、日本の風習があることを忘れて、親切ではありますけれども、日本国民の伝統、風俗、習慣、心理状態を知らない先方の指導者によつてただそれに迎合するがごときことは、断じて避けなければならぬことと思うのであります。日本国民としてはどこまで日本の特長を維持するとともに、徹底的に日本の社会に通じた民主化をしなければならないのに、家庭科を廃止して社会科一本にするなどということは、これは非常な考慮を要することで、今の小学校の家庭科をいかにするかという小金委員の御質問に対しても、私は少しく不安の念を抱きましたから、この点は深甚なる御注意を拂つてただきたいということをこの場で申し上げておきたいと思います。
  70. 高瀬荘太郎

    ○高瀬国務大臣 御心配になりましたような点はごもつともなことでありまして、私としても十分に考慮しているところであります。こまかいところでどういうふうに時間の割振り等がなりますか、はつきりしたことはここで申し上げられませんが、私が大体聞いておりますところでは、ただ形が違う、先生も従つて今までやつてつた方々がやられるというふうに聞いております。しかし実際どうなりますか、あとでまたお話を申し上げます。それから社会科の授業が実際うまく行つておらないということは、ここでも前にどなたかから質問がありまして、私もそれを認めて、これを十分改善して日本の実情に即し、そうしてほんとうにその趣旨を生かすようなものにしたいというお話をいたしましたが、御注意がありましたような点は十分考慮いたしまして、今後社会科の授業については万全を期して行きたいと思います。
  71. 小金義照

    ○小金委員 質問としてはその程度にいたしておきますが、各国立の大学等の試験、研究費がまだきわめて不十分じやないか。われわれの方へ配付された資料で一応調べてみますと、学者あるいは民間の声との開きが相当あります。これらの点につきまして、今御答弁はいりませんが、昭和二十五年度の予算に計上することができないものは、次の年度にこういう計画でやりたいというようにお考えがまとまるだろりと思いますから、その点は工業技術行政と関連いたしまして、ぜひ重大な御注意を拂つてただきまして、資料かありましたらば、後ほどいただきたいと思います。これだけを要求しておきます。
  72. 植原悦二郎

    植原委員長 小金君、通産大臣、農林大臣も出席されております。
  73. 小金義照

    ○小金委員 農林大臣にお尋ねいたしますが、これはもうあるいはすでに問題として出たかもしれませんが、出たならば、そのようにお答え願えばけつこうであります。  わが国の農村は非常に零細化されて、協同組合組織でできるだけ農家経営をよくして行く、こういう御方針であります。今單位農業協同組合がそれぞれ県單位で連合会をつくつております。その連合会のつくり方が、信用方面を扱いますところの各都道府県の信用農業協同組合連合会の方は、監督その他いろいろな立場から單独でも信用一本で連合会をつくることはけつこうだと思いますが、そのほかの事業を扱うところの組合が、都道府県の販連、購連というようにわかれておつて、それぞれまた畜産とか、あるいはまた林産関係のものがあるというような状態になつております。この事業を行う連合会を一つにまとめてほしいいうような希望が大分あるのでありますが、農林大臣のお考えはいかがでありましようか、お伺いいたします。
  74. 森幸太郎

    ○森国務大臣 お答えいたします。農業協同組合の立法の精神といたしま院てはも地方中央を通じて連合会の組織をなし得るような構想に成立つておるのでありますが、行政措置によりまして、地方においての各種の連合会組総を一応認めないという方針をとつてつたのであります。しかしながらもう二年余たちまして、今日までの協同組合の成行きの状況を見ますと、あまりにも單一なる県連合会をつくらしておくことは、組織いたしておる單位協同組合が非常な不自由と迷惑をしておる点から、この際これを相当統一をいたしたいと考えておるのであります。しかしながら独占禁止法との関連もありますので、近く皆さんに御審議を煩わそうと考えております内容は、地方におきましては、指導連とそれから信用の連合会を置き、あとは販売、購買を一つにいたしましても販購連の連合会をつくる。地方はこの三本建の方針に改めたい。中央におきましては、信用と指導と、販売、購買、この四つの大わけにして行きたいと思います。全国的の連合会の販購連を地方に許して、中央にこれを許さないということは異様にも考えられますが、これは過去の農業会の成績等から勘案いたしまして、ただいまの段階においては、地方は三つ中央は四つ、この方針によつて進みたいと考えているわけであります。
  75. 小金義照

    ○小金委員 中央は全販連、全購連というものがありまして、地方には今都道府県の連合会としては四本建になつております。今農林大臣は大体信用組合連合会、指導組合の連合会と二つ置いて、事業の方としては販連、購連を一本にしたいというお考えのように掃いましたが、さよう承知してよろしゆうございますか。
  76. 森幸太郎

    ○森国務大臣 さようにいたしたいと考えます。
  77. 小金義照

    ○小金委員 しからば、これは今農林大臣の御発言中に、法律上は別であつたが、行政上の指導方面から都道府県連合会を四本建にさしたと言われますが、これは行政措置によつてそうなつておりますので、別段法規を改正しないで、今農林大臣の御方針が実現し得ると思いますが、いつごろからそういうような行政方針にお切りかえになりますか。時期等は説明の時期でないと言われるならば別でありますが、それを実施する時期をもしお漏らしできるならば、漏らしていただきます。
  78. 森幸太郎

    ○森国務大臣 今法文の成案を急いでおりますので、近く国会に提出して御審議を願いたいと存じております。従つて可決になれば、少くとも四月の一日には発足いたしたいと思います。
  79. 小金義照

    ○小金委員 農林大臣に対する質問あと分科会に譲りまして、きようはこれでけつこうです。  次に通商産業大臣にお尋ねいたしますが、いろいろな貿易あるいは国内産業の振興、あるいは工業技術の振興等につきましては分科会においてお尋ねいたしまして、本日はごく大きな大綱をお尋ねいたしますから、数字等は申し上げません。その大きなところだけをお答えを願いたいと存じます。通商産業省の大きな政策として、海外にわが商品を売り出して、工業原料あるいは食糧を買い求めるこういう見地から貿易に関するいろいろな予算も計上されておるのでありますが、そのおもなものは外国市場調査員派遣費、これは五百万円足らずのようでありますがその次に日本貿易振興の団体、これは日本貿易振興会といいますか、何かそういう団体の補助金が千五百万円ばかり、それから海外見本市参加費の補助が六百五十万円、この程度のものが一応あげてありますが、これを一ドル三百六十円で整理いたしますと、きわめてわずかな金額になるのではないかと思いますが、通商産業大臣はこの点についてどういうふうにお考えになつておりますか。
  80. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 ただいま御指摘のように、金額としては、もし三百六十円のレートで換算すると非常に少い金額になる、これはお説の通りであります。ただ承知のように実はまだわれわれが自由に出かけることもできない関係にありますのと、その他の関係上その程度にとどめたのでありますが、しかしながら今海外の派遣費なりあるいはまた貿易団体に対する補給金なりの関係におきましては、実はわれわれといたしまして例のリテンシヨン・システムによつて、海外に出る人に海外の情報収集のお仕事を手伝つてもらうということで、大体それに対する連絡費というような関係でその千五百万円を利用して、あとはその人たちに情報収集その他をやつてただくというようなことで貿易協会を主といたしまして七いろいろ各方面の貿易業者との間に実は話合いを進めておるような次第であります。こういう形でこの点のつなぎをしておく。なお海外へ商務官なりあるいはそういつたものを派遣するという問題もまだ具体化しておりません。これが具体化すればまた別に予算上その他の点について、別途御審議を願わなければならぬ点があろうかと存じます。こういう考えで金額としては非常に少いことは認めますが、今言つたような方法でやりくりをして行こう、こういう考えであります。
  81. 小金義照

    ○小金委員 少い金でできるだけの能率を上げるということはきわめてけつこうであります。またそうしていただきたいと強く希望申し上げておきます。  なおまだはつきりしないようでありますが、千五百万円の補助金はどういう団体に交付されるのですか。通信員か何かを委嘱してその効果を上げるというふうに了解いたしますが、そういう団体に、あるいは団体をつくらしてそれに補助金を與えるということになるのですか、その点をちよつと伺います。
  82. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 これは例の英国のベトロのような関係に持つて行きたいこういう考えを持つておりまして、日本貿易協会、それからその他の貿易業者、それからわれわれの方の顧問の方方にお集まりを願いまして、そうして一つ機関をつくつて助長するという形をとるか、あるいは現在あるところの日本貿易協会なら貿易協会を通じてやるか、そういつた問題についての御研究を、至急とりまとめてもらうように今お願いしておるのであります。遠からぬうちにその回答が来るであろう、かように考えております。
  83. 小金義照

    ○小金委員 今英国のベトロのお話が出ましたが、イギリスのベトロは非常な成績を上げておるようであります。ただその成績を上げておる原因一つとして、おそらく日本の金にすると一億五も六千万円ぐらいの補助金が出ているのじやないかと思うのです。そうなると千五百万円では非常に少い。少いがこれを稻垣通商産業大臣は民間の協力を得てできるだけ効果的に働かそう、その点は了といたしますが、イギリスのベトロの組織並びに活動こついては十分御研究になつておると思いますので、どうかひとつこれに負けないような組織並びに活動をさしていただきたいと希望いたしておきます。  貿易問題についてもさらに同僚の議員から質問がありますので、私はその程度にいたしておきまして、昭和二十五年度に初めて頭を出した問題に、自転車関係の海外貿易の振興策の経費が合計一億ほど上つておるようであります。そのうち一部は国内でいろいろ自転車乗りを教育するとか何んとかいうことに使つておるようでありますが、相当多くの金額が貿易振興のために使われておる。これは自転車競技法の精神から行きまして当然のことであります。おそらく競輪関係収入昭和二十五年度は数億円に上るのじやないか、そうすると一億はきわめて少い金であります。しかし一応予算でああいうふうにでき上つておりますから、まことにやむを得ぬと思いますが、この自転車振興策について具体的な案を業者と一緒に練つておられることと思います。ただ私が心配いたしますのは、自転車は戰前においてはアジアあるいは南洋方面においては、非常に大きな販路を持つてつた。イギリスの方が少かつたのですが、最近その地位を転倒しておる。その原因はいろいろあるように私は承知しておりますが、特に自転車の材料の材質が非常に劣つておるというところにあると考える。技術もまた劣つておるかもしれませんが、材質が非常に悪い。戰時中あるいは戰後私どもが手に入れた自転車はきわめて悪い。いくらいいものが輸出されるといたしましても、国内にあれだけ悪いものが出たのだから、外国へ輸出されるものもおのずからその品質には限度がある。いくらいいといつて国内のものからそうかけ離れたものができるはずがない。それから考えますと、どうしても素材関係にもう少し力を入れなければいかぬ。おそらく今度の二億円の中にその何がしかが使われておることになつておると思うのですが、特に通商産業大臣としては、この材質の向上について十分な注意を拂つてただきたい。具体的にどういうふうに使われるか。これは分科会の方がいいかもしれませんが、ここまで来ましたからちよつとお尋ねいたします。
  84. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 従来東南アジア方面の自転車は日本が非常に優勢で、ほとんどこれを支配しておつた形でありました。戰後イギリスの自転車が非常に優勢でございましてこれに競争ができない。それは今御指摘のありましたようにむろん材質の面もあります。また技術の面あり、いろいろの点において技術的に検討しなければならぬ点が非常に多いと思うのであります。今例の競輪法によつてできた奨励金その他の方法によりまして、自転車振興会と連絡をとりながら、これらの点について十分検討をいたしておるような次第であります。  なおインドの工業化の計画の一つといたしまして、ある場合にはインド内地で自転車工業自体を興し、輸入しないで自分のところで自給し得るというような形があるのじやないか、そういう点につきましても、そういう場合には日本の今持つております技術と、向うの資本家と結びつけて、そしてかの地へあるいは日本のパーツを持つてつて組立をするというところまでつつ込んで考えることも必要ではないか。こういう点につきましてある二、三の向うの人とも、私個人でありますが話合いをいたしておるような次第でありまして、自転車の従来の販路であつた東南アジア方面に対する今後の進出ということにつきましては、十分検討をいたしたいと考えております。
  85. 小金義照

    ○小金委員 競輪法の実施以来、その方面の收入が相当あるということは、收入自体から見ますればきわめてけつこうでありますが、社会的な現象として、競輪のために大事な金を使い果したり、いろいろな悲喜劇が起つておるようであります。今通産省としては、競輪場設置の計画に対してどの程度の実施をされておりますか。今後非常にたくさんふやすという計画でありますか。一定のわくがあると思いますが、その点について御説明を願います。
  86. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 競輪法につきましては、初めの方針は今御指摘のような点も考慮に入れまして、大体一県一場主義というような形で、六大都市といつたような所には特例を設ける。大体人口割で割当てて行くという考えでいたしておつたのであります。ところがこれを一率にやるということは人口の問題は別といたしまして、たとえば関西方面、兵庫県とかあるいは非常に特殊な地域においては、数が多くても十分収入があり得るという方面もあるのであります。そこで一つの競輪場が五千万円以上の收入を上げ得るということが大体確かであります所については、一県一場主義を破つて、これが許可をもするということにいたしております。ただ濫立するということでは困る。もともとあの法案をつくりましたときに、一つは自転車技術の振興ということと、また一方には戰災都市に特にこれを奨励する。そうしてその自治体の収入にするといつたような点がありましたので、その辺も考えあわせて十分検討した上で、これが許可をするという形に考えておるわけであります。
  87. 小金義照

    ○小金委員 一昨日川崎競輪場で起つてごたごたが昨日の新聞に大々的に報道されておりますが、ああいう問題が起るということはきわめて悲しむべき状態でありまして、今大臣がおつしやつたように競輪法の精神は自転車そのものをよくすると同時に、地方財政に奇興するという見地から、健全な発達をさせなければいけない。しかし一昨日の日曜に起つたようなことがもし頻発するならば、恐るべきことなのです。これに対して取締りといいますか、行政方針がどういうふうになつておりますか、御説明を願います。
  88. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 川崎の競輪場で起きました事件につきましては、詳しい報告は受けておりませんが、要するに審判官は内山選手に対して進路妨害ということでありましたが、群衆がこれをやおちようととなえて騒擾を起した。ところが競輪場の警備員一隊があまりよく訓練されていなかつたというようなわけでいろいろな問題が起つ録。なおかつこれを警戒しておりました警官その他も非常に手薄であつた。そうしてああいつたような惨事にまで持つてつたということは非常に遺憾であります。あのときの問題として拂いもどしをしたことがいいか悪いかということは、われわれの考えからいたしますと、そのうちの收入が国家に入つて来る関係からいたしまして、あのとき経理面を見るために立会官が参つておりましたが、立会官としては拂いもどしの不当なることを一応申したようであります。というのは御承知の競輪法の施行規則の中に、拂いもどしは勝負がなかつたときに拂いもどしをするとありますが、これは明らかに勝負があつたのだからというので、その点について責めたわけであります。そういうことについてああいう問題が起きたときに、競輪法の十三條によりまして、実際に今後これをさしとめるかどうかというような問題については、われわれとしても十分ここに実情を調査した上で何分の処置をとりたいと考えております。しかしながらいずれにいたしましても、こういうことは非常に遺憾なことでありまして、今後これについては通産省として十分各競輪経営者に対して、注意を喚起するような通牒を出したいと考えております。
  89. 植原悦二郎

    植原委員長 川崎秀二君から通産大臣に対して関連質問をしたいということであります。これを許します。
  90. 川崎秀二

    ○川崎委員 ただいま小盗さんの御質問に対しまして、通産大臣から競輪問題に対する御所感の発表があつたわけですが、私はこの競輪の昨年来の成行きを見ておりまして、非常に憂慮しておつた者の一人であります。それは自転車競技の振興という点に主点を置いて競輪法が設立を見た。しかしながらその内容を見ておりますと、自転車の品質の改良であるとか、あるいは貿易の振興というような点に大きな眼点がありまして、プロ・スポーツの振興、健全なる発達という点についての考慮が拂われておらなかつたために、各地におきまして騒擾事件が起きております。ひとり川崎においてこれが集団的な暴行放火事件になりましたために、世上の注目を浴びたわけでありますけれども、決してそれは一昨日に始まつたことではございません。昨年の鳴尾事件以来、すでに競輪回数百二十五回のうち二十八回という実に驚くべき事故件数があがつておりまして、これを思いますとき、私は競輪法の規定の中に審判制度の確立、あるいは競技規則の維持ということについての十分な規定をいたさなかつたために、大きな波瀾が起つているように感じておるのであります。近くこれらの問題については十分なる考慮をするということでありますが、そういう点をごしんしやくになつたあかつきにおいては、現在の競輪法を改正する意思があるかどうか。この点について通産大臣の御答弁を願いたいと思います。
  91. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 今の川崎さんの御質問は、自転車自体の技術の振興、あるいは地方財政の面以外にスポーツの面としてこの問題をもう少し考える必要はなしかということが、まず第一の点であつたと思いますが、この点は私まつたく同感であります。スポーツの面からいいますれば、今度の問題でもやおちようというような言葉が出て来たということにつきましても審判官はこれをやおちようではなかつたと判断いたしまして、進路妨害だということを申しました。またわれわれの方の立ち会つておりました者もそのように感知したのであります。しかしながらいずれにしても大宮その他においてもやおちよう問題が起きておりますが、これに対していわゆる自転車連盟の振興会の方々に注意を喚起いたしまして、やおちよう選手その他は登録から除外するという措置を、実はとつておるように承知いたじております。しかしながら今御指摘のような審判についての問題その他について、もう少し検討すある点があるかどうかということについては、これは私もいわゆるこういつた事件が頻発するということは望まないところでありまして、この点についてはもう一度われわれの方でも十分検討いたしまして、審判制度その他について適当なる規定が設け得るならば、これはけつこうだと存ずるのであります。ただこの間のような事件みたいな場合におきましては、法律的にどうにもならない。実際競輪その他に対する実際問題の訓練の問題その他の問題が多分に含まれており、法的には処置ができない問題があるというようにも私は考えますので、この点については十分ひとつ検討いたしたいと存じております。
  92. 川崎秀二

    ○川崎委員 自転車競技は日本においては最近狂熱的に発達して来て、時代の寵児になつておるのですが、自転車競技の世界的な発達の跡を尋ねてみますと、フランスとかベルギーとかいうような国が一番大きな発達をした国であります。こういうような国では従来、もちろんプロスポーツのことであります、賭博行為を伴つてはおりますけれども、かような不祥事が起きたという例はほとんどないというところには、やはり審判制度というものが非常に民間に確立をいたしておる。従つて今後自転車競技振興会というものを、もつと強力に通産省としてはもり立てられる必要があるというふうに感じております。それから今この間の事件を言われましたけれども、ああいう専門家の目から見ますと、セパレート・コースなんかを使用するのも一つの案ではないか。五百メートルとかも千メートルとかいうような短距離は、自分のコースをきめて走らせるというのも一つのやり方ではなかろうかと思うのであります。そういう点で将来もつと自転車競技振興をスポーツの面から取上げる必要がないか。その点について、ちようど文部大臣もおられますから、今監督官庁は、技術の振興も品質の改良という面で、單に通産省だけの監督になつております。スポーツは、もちろん今後官僚スポーツの統制を離れて行くべきが本来であつて、自主的にまかせるべきではありますけれども、しかし賭博的行為がある以上は、これは十分監督をしなければならぬ。競馬はすでに国営になつております。従つて私は文部省方面もこれに対して重大な関心を拂い、必要ならばやはり二重監督もしなければならないんじやないかというふうに感ずるのですが、これらの問題について通産大臣並びに文部大臣の御見解を承つておきたいと思います。
  93. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 スポーツの問題については、先ほどお答えいたしましたように、われわれといたしましても十分この問題について重点を置くべきであることはもちろんであります。ただなるほどフランスその他の例をあげられまして、そういう方面にはなかつたということでありますが、これはその方面の審判制度なり、あるいは競技方法なりについてもなおよく検討してみないとわからぬと思うのですが、十分その辺の検討もいたしてみたいと思いますが、実際問題といたしまして、従来の行き方が、いわゆる競技そのものよりも、競技から起きたちよつとした事件が一つの騒ぎを起す問題になつておるという点に、ちよつと違つた点があるのではないか、かように思つております。スポーツの重要性については、われわれも十分これを認めておるということを申し上げておきます。
  94. 高瀬荘太郎

    ○高瀬国務大臣 競輪の問題につきましては、むろん文部省はスポーツという見地から考えて、精神的、肉体的方面での効果を期待するわけであります。それがいろいろな事情によりまして、スポーツ精神を害するというようなことになりましては、われわれの立場からいたしますと、はなはだおもしろくないと考えますから、そういうおそれのある点については、それぞれ所管大臣において十分に検討され、排除する方法を講じていただきたい、こういう考えでおります。
  95. 小金義照

    ○小金委員 これも他の同僚委員が明日か明後日質問いたしますので、私はただ二、三の点だけを通産大臣にお尋ねいたします。すなわち地下資源の開発、あるいは地下資源の増産の問題につきまして、探鉱費補助金とか、あるいは石油の試掘補助金というようなものが計上されております。試掘補助金はまことにけつこうな制度でありまして、どうしても国がある程度補助をしなければ、鉱物資源の性質から行きまして、なかなかその実態がわからない。従つてこういう制度が前からあるのも当然であります。私は石炭については見返り資金の一部がそちらへ貸し出されたように承知しておるのでありますが、今日本は金が非常にほしい。この前通産大臣は、金は今三トンかそこらだが、目標としては十トンぐらいに持つて行きたいのだという御抱負を述べられましたが、金山その他の金属鉱山、あるいは非鉄金属鉱山について見返り資金を投資するというような計画、あるいはその具体的なお考えがありましようか、その点を伺わしていただきたい。
  96. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 お話の通りに従来、ことに終戰後非鉄金属鉱山に対する重要性について、多少これが軽視されておつたという点が私はあるのじやないかと存じております。今日におきましては輸出振興が必要であると同時に、また国内的には地下資源の開発ということが非常に重要であると存じておるのであります。われわれの方といたしましては、たとえば金山については、今も御指摘のように、大体三年間に十トン託画を立てておりますが、その十トン計画の中で大体十四鉱業所と交渉いたしております。そのうちで自己資金でまかなえない、たとえば中外鉱業の持越鉱山でありますとか、あるいは帝国開発の大口あるいは鯛生といつたような鉱山の選鉱所あるいは製錬所の問題、あるいは目立鉱山の製錬所の問題といつたような問題につきましては、目下これを見返り資金によつてまかなうために、安本との間に実は計画を進めておるような次第であります。またその他の硫化鉱の問題につきましても、御承知のように松尾鉱山に対して見返り資金からこれが支出をいたし、また石油につきましては、帝石の北海道の天塩方面の地下資源の開発について大体われわれは二億五千万円程度を予定して、見返り資金によつてこれの調査を進めて行きたいというようなことで、非鉄金属、つまり石炭以外の鉱業につきましても、できるだけわれわれとしては助成というか、援助の方針をとつて行きたい、こういう考え方
  97. 小金義照

    ○小金委員 なおこの地下資源の開発あるいは増産につきましては、同僚議員からの質問もありますし、また予算の分科会でお尋ねすることにいたしまして、次に私は工業技術の振興に関して通産大臣あるいは関連して文部大臣にお尋ねいたします。  昭和三十五年度の工業技術振興に必要な経費として合計十億九千百七十万円、この程度が計上されております。工業技術庁及び通商産業省で使う金が二億二千五百十八万四千円、各試験研究機関において八億六千六百五十一万六千円もこういうふうに計上されまして、二十四年度予算額の七億四百四十五万八千円に比較しますと、三億八千余万円の増額ということに相なつております。ことに工業化試験費補助が一億円、鉱工業技術研究費補助が三千万円、こういう新規の助成が行われるように承知いたしておりますが、日本は御案内の通り領土が非常に小さくなり、従つて資源も減少しております。私が冒頭に申し上げましたように、世界は一時インフレーシヨンである。通貨と物資の均衡が破れて、私は精神文化と物質文化の均衡も破れていると思う。日本は特に人口と資源との均衡が著しく破れまして、人口と資源との関係から見ますと、これは大きなインフレーシヨンであります。そこで日本経済の復興とかあるいは国力の回復というようなことは、ことごとく科学あるいは工業の技術の向上にまつ以外にない。すでに御承知だと思いますが総司令部の技術顧向のアッカーマン博士は、技術の力によつて資源を増加することは、世界の何人も誤解を指摘しようとしない領土の拡張であると言つている。われわれはこの人口と資源とのアンバランスを直すには領土の拡張ではいけない、しかしながら領土的なものを広げない限りは人口を養うことかできない。その領土的なものは何かというと技術である。この技術の拡大強化については、世界の何人も疑問あるいは誤解をしないのだということになると、日本人がすべての精根を打ち込む余地のある問題は、この技術の向上進歩以外にはない。これは非常な精密な技術から、ごく原始産業的な技術にまたがつて非常に広汎なものでありますが、どうしてもこれを振興する以外に方法はない。これはひとり技術白がいうまでもなく当然考えられる問題でありまして、この点についてこそ私は非常に大きな国費を投じても当然やるべきことだと考えております。しかし全般の国の財政の限度がありますので、その範囲内において三億八千万かを二十五年度はふやしたということで、その点は大いに了といたしますが、工業技術の振興に関する外国の例を見ましても、昨年度アメリカでは国家の総支出に対して一・五〇%、すなわち一分五厘を出しておるようでありますが、日本では一%はおろか〇・二八%しか支出していない。これは国民に復を減らしてはいかぬ、家がなくては困る、暴風が来てはたいへんな災害が起るから、その暴風雨の防備をしなければいかぬ、あるいは災害の復旧をしなければいかぬというときでありますから、やむを得なかつたとは言いながら、アメリカのような資源のゆたかな、領土も非常に広い国におきましてさえ一・五〇%出している、日本はわずかに〇・二八%しか出していない。これは非常に大切な問題でありまして、第二次世界大戰が勃発する前に、各国の軍備の比率を見ますと、ドイツでは総予算の何パーセント、イギリスでは何パーセント、アメリカでは何パーセントであるのに日本ではその率が少いというので、国防関係方面からずいぶんつつ込まれて、だんだんふえて行つてああいうことになつたのでありますが、アッカーマン博士は工業技術費の関係においては、何ぼふやしても大して危険はないと言うのであります。しかしながら言う人に言わせれば、その工業技術があまり発達すると原子爆弾から水素爆弾になつて、遂にはとんでもないものが発明されてしまう心配があると言うのでありますが、そこは先ほど私が文部大臣にお尋ねし、かつ要求申し上げましたように、精神文化——つまり人の気持の方の対策をして行けば、ワッカーマン博士が言われるように国際的な疑惑もないし、また国内の動揺も、あるいは暴力化する心配もないような技術の向上ができると思う。そこでただいま申し上げましたように、日本予算の中で工業技術関係の経費は重要性を持つているのですから、これは何とか増額して、能率をさらに上げていただくようにしなければならぬのでありますが、今通商産業省の所管で、各種の工業試験研究機関がございまして、この技術研究費補助として三千万円ほどあげてあります。これは民間のインスティチュートに出されるものでありましようか。もしそうであるならばどういう予定がありますか、聞かしていただきたいと思います。
  98. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 工業技術の必要なることは、私は最も痛感いたしておるものでありますが、日本の工業技術水準はアメリカあたりに比べまして、おそらく十年あるいは二十年は遅れていると存じております。私のところへ来る人はみな、大体日本の技術は一九三〇年台であるということを言われるのでありまして、もう五十年という年を数えているのに、三十年台だと言われることは、はなはだ遺憾だと存じております。従つて今の御説のように、日本の工業技術というものに対して、どうしてもわれわれが特段の力を入れなければならぬのでありますが、従来は民間でそれぞれ試験研究所を持つておりまして、それが盛んに研究いたしており、通産省自体がやるよりも、民間の研究所の方が実際に工場と直結してやります関係上、能率的にも、また実地に応用してやるにも便宜であつたのであります。ところが最近では御承知のように、民間の研究所というものは微微なるものでありまして、終戰後その経費をまかない得ない関係上、各方面研究所が非常に弱つており、おまけに財閥解体によりまして、それそ、の財閥によつて支給を受けておつたところの研究所が、その補助費をもらえないために、研究も十分できないという状態であります。従つて日本の技術を向上さすという意味から申しますと、通産省自体の工業技術試験所において、これが技術の研究を担当することが、どうしても一方において必要になると思うのであります。それと同時に、今私が言つたように、一九三〇年台だと言われるところの技術は、日本研究するだけではそう簡單になかなか追いつくものではないと思いますから、この点はどうしても外国の技術を、外資導入の形において持つて来なければいけないと思うのであります。そうしてまず日本を技術的に同じようなスタート・ラインに置いて、それから引続いて技術の研究をして行くということが、賢明な方法ではなかろうかと考えまして、技術的の形においての外資導入ということについては、及ばずながらいろいろ各方面に促進を申入れているようなわけであります。そこで通産省の工業技術庁といたしましては、従来とにかく七億円であつたものが普通に予算を組むという形からいいますと、一足飛びに相当多額の金額をわれわれとしては計上し得た、かように存じております。しかしこれで十分だとは決して存じませんので、なお今後とも工業技術に関するところの経費は、よけいの予算をとることが必要であろうとは存じておりますが、全般とにらみ合せまして、この程度でわれわれの方は二十五年度はやつて行こうというふうに考えております。それから先ほど御指摘の鉱工業技術研究補助費というものの三千万円は、大体民間に対する補助費としてこれを利用したい。しかし予定といたしましては、ただいまのところまだ承つていないのでありまして、おそらく実際問題としてぶつかつたときに、出すということになるだろうと存じております。
  99. 小金義照

    ○小金委員 工業化試験費補助が一億円ほどありますが、これは発明の実施にも使うものですか、それとも工業化試験というのはどういう方面にお使いになるのですか。
  100. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 これは一定の実験室の試験ではなくて、中間工業化の試験の補助金にもし、あるいは自分らの方で何かやりましたものについて、中間工業化の必要な場合にはこれを使う。中間工業化の意味であります。
  101. 小金義照

    ○小金委員 かつては商工省といいますか、あるいは農林省というような、官庁方面の試験研究機関、大蔵省の醸造試験所というようなものをくるめましての官庁方面の試験研究機関、それからまた民間の大きな会社が持つておる試験研究機関、これらをいろいろ集めまして、これに各大学の研究室などを加えても日本の工業技術の研究の総合的な向上をはかろうというので、それぞれ打合せをした。たとえば同じここを相当な金をかけてあるいは大学で研究し、あるいは大蔵省の研究所でこれを研究し、あるいはまた農林省の研究所で研究するというような重複を避けて、そうして成果を上げるという意味の連絡会議のようなものを開いたことを私は記憶いたしておりますが、今日そういう制度がありますか、その点をひとつ伺いたいと思います。
  102. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 その点については、私寡聞にしてまだ聞いておりません。おそらく今日それは残つていないのではないか、かように考えております。ただ今御指摘のように、たとえばこのころ御承知のように合成樹脂の研究が非常に盛んであつて、通産省の合成樹脂の方面にさいております研究費にいたしましても、あるいは民間の研究費にいたしましても、それを合計いたしますと大体研究費の四〇%が合成樹脂関係に使われておると私は覚えております。それから二〇%程度の電気関係、たとえばこれはシュタルクの方もシュワッハの方も、いわゆる強弱電流を合せた電気関係に二〇%程度が使われておる、こういうことじやないかと私は思つております。たとえば合成樹脂なら合成樹脂というものが各研究所で実は重複して研究されている、こう思うのであります。そういう点については、今の御指摘のように一つにまとめて研究したらいいではないかという問題も起きますが、民間の方でやつておりますのは、自分の方の商売にも関係がありまして目分の祕密を保持したい、そういう関係がありますので、これを一つにまとめるということはむずかしいのじやないか、むしろこれは放置しておいた方が実際いいものができるのではないかと思うのであります。ただ今お話のようなものが過去にあつたということは承知しておらなかつたのですが、この点はひとつ研究いたしてみたいと思います。
  103. 高瀬荘太郎

    ○高瀬国務大臣 今の研究の重複を避けるという問題についてでありますが、これは稻垣通産大臣の方は全般的な御所管でありませんから、十分にそういう点を御考慮になつているとは言えないかもしれませんが、私どもの方としては一般的にこれを考えなければならない立場にありますので、十分考慮をいたして、できるだけのことはいたしておるのであります。それは日本学術会議というのができておりまして、そこで日本学術の振興についてのいろいろな審議をやるわけでありまして、そこでこれを取上げまして委員会ができて、各部門の研究状況を調査し、重複のないようにしたいというのでできております。そうして文部省の科学研究費、各省の試験研究等についても調べまして、重複を避けるような大方針を学術会議できめまして、さらにその方針に基きまして、学術会議政府機関との中間に科学技術協議会というのができております。これは各省から次官が出ておりますし、学術会議の者も出ておつて研究機関、各省の研究機関等の間の調節もそこでできるだけはかるということにいたしておりますから、相当の重複を避けるということは現在もやつておると考えております。むろん通産大臣の言われたような、その下部におけるいろいろな研究についてはまた特殊なものがあるかもしれませんが、一般的にはそういう方針で、できるだけ重複を避けたいということを実行いたしておりますから、その点御了承を願います。
  104. 小金義照

    ○小金委員 日本にはいろいろな発明家がたくさんおる。そしてまた特許権まではとるのでありますが、さて発明を実施しようということになると、なかなかお金もかかるし、今日の状態、この経済状済ではむずかしい。先ほど稻垣大臣は中間試験に一億円ほどの金をとつてあるというふうな御説明でありましたが、これだけでは実は不十分でありまして、今日ちよつとした工業用のプランツをつくりますと相当厖大な金がかかるのであります。そういうようなことを考えますと、国が一々巨大な予算を計上してこれを與えるということよりも、むしろ何かそこに基本金を設けて——金庫のようなものを設けまして、そこから金を引出して発明、考案を工業化す。工業化すれば特許権がありまた外国特許もとれるのでありますから、相当の收益が上る。收益が上つたものからそれぞれ收益の何割かを拂い込めば、そういう金庫とか基金は成立つて行く、こういうような見地からそういう考え方を持つておる者があります。ことに今文部大臣の御指摘になりました、日本学術会議関係者もそういう考えを大分持つておりますが、今私が申しましたような構想は、政府ではお考えになつておりますか、あるいは実現についてどういう御観測をなさるでありましようか、関係大臣からお答えを願います。
  105. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 これは案としては一応そういつたようなことも考え得ると私は存ずるのであります。ただこれが実現ということになりますと、いろいろな関係で私はなかなか困難じやないかと思う。これがたとえば民間のそういう発明その他に対して、非常に関心を持たれる方々がそういつたような形で何らかの助成会社をつくられる。その助成会社がその発明その他を自分のところに導入して、それから得たところのロイヤルティーなりあるいは権利金によつてなお弁じて行く、こういう形は私は非常にけつこうだと思うのでありますがただ政府としてそういう金庫なり何なりをつくるということについては、ただいまのところ考えていないのであります。なおそういつたようなことも、私は工業技術を進歩さす一つ方法ではある、かように思いますので、私自身としては研究もいたしてみたいと存じます。
  106. 小金義照

    ○小金委員 かく私どもが工業技術の関係あるいは科学技術の方面についていろいろ心配もし、また研究もいたしますのは、要するに日本経済生活を安定させ、向上させる上においては、もう技術が唯一の残されたわれわれの出品であり、講和條約が締結されました後において、われわれは外にまだ多くさん出て働く余地はありましようが、そうだとしても、日本の工業技術科学技術のレベルを上げるということは大切であります。輸出を振興するといたしましても、私は最近の輸出商品の分析をいたしておりませんが、多分機械類とかあるいは化学製品がウェイトを増して来ておるのではないか、そうなりますと、ますます工業技術が大事であります。輸出を振興するためにはいろいろな方策がありますが、根本はいいものをつくる、そうしてコストを下げる、このコストの引下げは賃金の低下によつて引下げることは今後許されない。そうするとどうしても技術の振興にまたなければならない。そうすると私はただいま論議せられております工業技術関係の経費が決して十分とは言えないし、また中間試験といいますか、工業化試験の問題についても、まだ私は十分納得が行きませんが、これらについては特に通商産業大臣あるいは文部大臣、予算関係では大蔵大臣の深甚なる考慮を促すものであります。  なおあとこの問題とか、また中小工業の技術の問題等について触れたいと思いますが、同僚議員から発言があるはずでありますから、この程度で私はこの問題を打切りまして、あとは分科会その他の委員会に譲ろうと存じます。  次に大蔵大臣がお見えになつておりますので、ここで大蔵大臣ちよつとお尋ねいたします。先般この委員会で稻垣通商産業大臣は、日本の金は大体今三トン前後で、これを三年計画ぐらいで十トンぐらいにふやしたいという目標を持つている、こういう説明がありました。今もそれを肯定されたのであります。大蔵省は、完全な国際経済に入つておりませんけれども、金についてどういうウェイトを持つて考えになつておりますか、大臣の御意見をお伺いいたします。
  107. 池田勇人

    池田国務大臣 国際收支の現状から申しましても、ぜひとも私は金の増産の必要を感じまして、今では御承知通りに貴金属特別会計で全部買入れることにいたしております。大体三トンないし四トン、そうしてまた民間の分を二分の一トンぐらい買入れる予定でおつたのであります。できるだけ早い機会に十トンなりあるいは十五トンぐらいの計画を立てて行きたい、そのために政府の助成金は今ほどほどでございましたが、千数百万円これをふやしますということよりも、もつと金融の方でまあ十五億、二十億ぐらいいるのではないかと思つておりますが、何とかそういう金融の方もはかつて行きたいと考えております。値段の点もやはりこれは国際相場が入りますので、私はそれによるよりほかはないと思います。今でもそれによつておるのでありますが、アメリカの方で金山が高いから金を上げようという議論が向うにあるようであります。やはり国際的に認められた金で政府としては買上げるよりほかない、そうすればやはり増産をはかつて、コストを安くするということよりほかにないと思います。
  108. 小金義照

    ○小金委員 こまかい問題は分科会に譲りますが、金の増産は鴻ノ舞あるいは串木野だとかいうような金山そのものを目当にする場合と、バイ・プロダクトなどで生産する場合が相当ありますので、これは通産大臣に他の非鉄金属開発計画について私は後ほどお尋ねいたします。大蔵大臣に対しては、今国際相場を大体標準にして買上げるというお言葉がありましたが、この金の買上げ値段は私の承知しておるところでは、グラム三百八十五円というふうに聞いております。一ドル三百六十円で換算をいたしますと、アメリカの一オンス三十五ドルから見ると、十五円方か二十円方か高くなつて、四百五円ぐらいになるのではないかと思いますが、それが三百八十五円で買上げられている理由は——これは物価庁の方にお尋ねする方がいいかもしれませんが、大蔵大臣もし御承知でしたら、その点についてお答え願いたいと思います。
  109. 池田勇人

    池田国務大臣 四百五円ぐらいに裸で行けばなるのでございます。そこで現送費をやはり見なければいかぬというので——三百八十五円でなしに私は三百九十五円ではなかつたかと思いますが、その現送費を見ております関係上、四百五円から下げておるわけでございます。現送費だけの問題だと思います。現送費をどの程度見るかという問題になりますと、三トンくらい産出いたしました場合には、大体半分が歯医者その他の国内需要になつておるので、その点で現送費の分をどれだけ国内に持たすかという問題がありまして、今正確な数字は覚えませんが、三百九十円か九十五円ではなかつたかと思います。いずれ調べましてお答えいたします。計算の根拠は物価庁と相談してきめておるわけであります。
  110. 小金義照

    ○小金委員 今論議の中心になりました金の値段でありますが、通商産業大臣は先日一グラムが三百八十五円とお答えになりました。要するに三百八十五円とか三百九十五円、これが戰前におきましてはたしか一グラムが三円幾らということだつた。ところが金そのものの一グラムには何ら質的にも量的にもかわらない。しかしこれを唱えるのにわれわれは三百八十五円という大きな数字を唱えなければならぬ。石炭についても鉄についても——鉄は銑鉄が一トン八十一円で数年間落ちついておつた。それでまあ八十一円が銑鉄の一トンの値段である。標準丸棒でも二百何円、百何十円ということであつた。今日は鉄一トンが二万円とか四万円、金が一グラム三円何がしが三百八十何がしかすると、これを取扱う上におきまして、考えてみましても、一グラムそのものは少しもかわらないのに、これを数字で書き表わしますと零が幾つもつく。予算方面から見ましても、三十億でいいものがすでに六千六百億というような数字で、おそらくちよつと見たところではずいぶん零の数が多過ぎてわからない。であるから、この際経済が落ちついたならばデノミネーシヨンをやるべきではないかという意見がある。これがデヴアリュエーシヨンになりますと、たいへんな問題になりますが、デノミネーシヨンならば適当な時期に断行できるのではないかという意見がありますが、大蔵大臣はどういうお考えでおられますか。もし発表してもいいようなことでありましたら、ひとつお答えを願います。
  111. 池田勇人

    池田国務大臣 デノミネーシヨンの問題は私は考えておりません。いろいろなゲインがあることはわかりますけれども、これを実際やります場合には技術的に非常に困難な問題が起きます。私はただいまのところ全然考えておりません。
  112. 小金義照

    ○小金委員 デノミネーシヨンとデヴァリエーションがしばしば間違つて扱われたことがありまして、デノミネーシヨンは大蔵省でやるかもしらぬというようなことが伝えられておりましたが、今の大蔵大臣の言明によりまして、技術的にも非常に困難だし、いろいろ混乱を来すから、デノミネーシヨンはやらないということがはつきりわかつたわけであります。  そこで私大蔵大臣に対する質問はこの程度で終りまして、あと通商産業大臣にもう少しありますが、よろしゆうございますか。もう五分か十分ですが……
  113. 植原悦二郎

    植原委員長 やつてください。あすに残すことは困ります。
  114. 小金義照

    ○小金委員 これは工業技術庁に関係した問題でございますが、工業技術庁でいろいろな考えを持つおります。これは何もわれわれがスパイして聞いたわけでもなく、また特に大臣の意思を無規して、工業技術庁の職員が発表した問題でもないのであります。その点はお断りしておきます。ただ私がかねがねいろいろこういう通商産業関係方面に意を注いでおりますので、先ほどの日本学術会議とか、あるいはその他いろいろな方面のアンテナから入つて来ることを総合いたしてみますと、日本の工業の技術的な方面の行政を、もつと進歩発達といいますか、円滑化するには、どうしてもまだ今のままでは不十分である。たとえば輸出品の包装等が非常に日本は拙劣である、ここでもう少しそういう方面の技術を進歩発達させる機関がほしい、こういうことを私は感知するのでありますが、これに対して大臣はどういうようにお考えになつておりますか。先ほど日本の輸出貿易のウェイトが、機械とか化学製品に相当つておるのじやいかと申し上げましたのは、そこであります。機械類とか、あるいは化学製品、薬品というものがよけい出て行きますと、これは繊維製品や何かと違つて、包装の技術が非常に大きな問題になりますが、通産大臣のお考えをひとつお聞きいたします。
  115. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 ただいま御指摘のいわゆる包装の問題でありますが、これは非常に重要でありまして、ことに輸出に際しましては包装の技術いかんということが、大きな影響を及ぼすのであります。実は通産省といたしましてもそれに対する施設、その他に対する予算を計上いたしたい、さように考えておつたのでありますが、御承知の工業化の問題、工業化に対する助成金の問題、その他いろいろな関連と見合いまして、二十五年度においてはこれが実は予算に計上しなかつたわけであります。この点については計上しなかつただけにも民間において何らかの包装のいわゆる技術協会といつたようなものをつくつて、これと関連をとる。ただ独禁法その他事業者団体法等のいろいろな関係がありますので、今その点も実は研究いたしておるようなわけであります。包装について実は必要なことはもう十分われわれも認識いたしておるところであります。何らかの手を打ちたいと、かように考えております。
  116. 小金義照

    ○小金委員 通産大臣の御所管のもとに、たくさんの工業試験所あるいは研究所がありますが、省内の大臣の管轄の分だけならば、これは自由に研究の重複を避けたり、また指導もできると思います。何かこれを総合的に一箇所に持つて来ることは困難でありましようか。今やつているよりも、もつと総庁化するような、そして能率を上げるように、持つてつた方がいいのじやないかと思いますが、それに対する大臣のお考え伺います。
  117. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 これは今小金委員の御指摘のように、関東地域だけでも非常に分散いたしておるのであります。大阪には大阪の工業試験所、こういつたものがあることが必要だと存じますけれども、関東地区というか、東京都内の関係の工業試験所が分散しておるということは、非常に不便である。これを一つにまとめたいということは、われわれいろいろ考えておるのであります。ただ予算関係とにらみ合せて、これが実行がまだ緒についていないのでありますけれども、この点についてはなおわれわれはそういう点の必要を十分認めますので、今後の予算措置について考慮いたしたい、かように考えております。
  118. 小金義照

    ○小金委員 これで私の質問は終ります。
  119. 植原悦二郎

    植原委員長 本日はこれにて散会いたします。明日は午前十時より開会いたします。     午後四時四十五分散会