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1950-02-06 第7回国会 衆議院 予算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年二月六日(月曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 植原悦二郎君    理事 池田正之輔君 理事 尾崎 末吉君    理事 上林山榮吉君 理事 苫米地英俊君    理事 勝間田清一君 理事 川崎 秀二君    理事 川上 貫一君 理事 圖司 安正君    理事 今井  耕君       天野 公義君    井手 光治君       江花  靜君   岡村利右衞門君       小淵 光平君    北澤 直吉君       小金 義照君    小平 久雄君       坂田 道太君    玉置  實君       中村 幸八君    永井 英修君       丹羽 彪吉君    西村 英一君       松野 頼三君    松本 一郎君       南  好雄君    稻村 順三君       西村 榮一君    武藤運十郎君       中曽根康弘君    林  百郎君       深澤 義守君    米原  昶君       奧村又十郎君    小坂善太郎君       山本 利壽君    平川 篤雄君       松本太郎君    黒田 寿男君       世耕 弘一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  吉田  茂君         国 務 大 臣 殖田 俊吉君         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         農 林 大 臣 森 幸太郎君         通商産業大臣  稻垣平太郎君         運 輸 大 臣 大屋 晋三君         建 設 大 臣 益谷 秀次君         国 務 大 臣 本多 市郎君         国 務 大 臣 増田甲子七君  出席政府委員         地方自治庁次長 荻田  保君         (主計局長)         大蔵事務官   河野 一之君         (主税局長)         大蔵事務官   平田敬一郎君         食糧庁長官   安孫子藤吉君         建設政務次官  鈴木 仙八君         経済安定政務次         官       西村 久之君  委員外出席者         專  門  員 小林幾次郎君         專  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十五年度一般会計予算  昭和二十五年度特別会計予算  昭和二十五年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 植原悦二郎

    ○植原委員長 前会に引続きまして会議を開きます。  質疑を続行いたします。尾崎末吉君。
  3. 尾崎末吉

    尾崎(末)委員 吉田総理大臣に対しまして、講和問題そのものでなく、講和問題に対するわれわれの態度に関することと、自衛権に関するわれわれの態度に関すること、この問題について若干お伺い申し上げたいと思います。  その第一は、近く講和会議を迎える機運の中におきまして、現在国会の中で、講和そのものを早く招来せしめるという構想と努力とはさておいて、議論をするための全面講和を唱え、その議論の対象として單独講和というような独立したものを仮定しておいて、それがいけないというようなことを曲説するものがあるのは、私どもが熱望する講和そのもののために、まことによろしくないと私は信じておるのであります。他のことと違いまして、講和問題に関する限りにおきましては、無條件降伏をいたしたわが国民としての議論は、仮定の上に一つ講和の形を立てておいて、これに対して非難攻撃をするという態度をとることによつて、あたかもわが国論講和そのものに対して分裂をいたしておるかのような、また講和受入れ態勢が不十分であるかのような、深い印象を世界に與えるべきではないと信じておるのであります。また現在占領統治下にあるが、講和の結果当然わが国土として所属せしめらるべき希望のある領域、諸小島をおのずから早く放棄して、それがある特定の他国に所属すべきものであるかのような言辞を弄すること、は厳重に慎むべきことであつて、これらの言辞を弄することは、これこそ共産党諸君言葉をもつてすれば、日本人民の敵であると信ずるのでありまして、わが国民は講和に対しては一致態勢をとり、この一致態勢の中から講和に対しての最善を信ずる希望を十分に述べるという、その範疇を逸脱してはよろしくないことだと私は信じておるのであります。これに対する総理の御所信を伺いたいと思うのであります。
  4. 吉田茂

    吉田國務大臣 お答えをいたします。しばしば同じようなことを繰返すようでありますが、私は全面講和とか、單独講和とかいうことの議論のあることが、はなはだおかしいと思うのであります。国民としてはなるべく早く平和関係に入つて、そして交通もできれば、商売もできる。たといそれが一国であつて平和関係に入ることは、国民としては望ましいことである。しかしながら全面講和によつてすべての国と平和関係に入らなければいかぬ、言をかえてみれば、それであればいつまでも戰争関係を持続した方がいい、日本としては対外関係においては、いつまでも戰争状態を持続する方がいい、全面講和は、反面から考えて解釈すれば、そういうふうにもなる。それは変な話であると思うのです。一日も早く、一国といえども日本平和関係に入つて、そうして商売もできる、その国に自由に行けるという関係ができれば、国民としてまことに仕合せである。しかしながら一国といえども反対するならば、これはいわゆる單独講和というものはけしからぬ、すべての人類と交際ができる、そうでなければいつまでも戰争状態というのは、変な話だと思つて、実は全面講和を主張する人の気持が私にはわからないのであります。私としてはなるべく早く日本平和関係に入つて外国との交通ができる、交際ができる、国際団体に復帰する、そして輝かしい昔の歴史を、さらに輝かしい歴史をつくるということに当局者として努力すべきである。さらに私の話がはなはだ簡單であるとか、言うべきことを言わずにおる、こういうのでありますが、どこの国の外務大臣でも、仮定の問題でもつて喋々するということはない話で、現在問題になつておる問題をとらえて、それに対する政府方針を説くべきものであつて国会学術講演会でもなければ、討論会でもないのでありますから、国務大臣として現実の問題、交渉になつておる問題を議論して、これに対する措置ほこうである、考えはこであるということは述べるべきでありますが、しかしながら仮定の問題でもつているく議論することは、ことに外交の関係は微妙な関係でありますから、当局者として愼むべきものである。しかしながら国民として講和に関して意思を発表するこれは自由でありますが、当局者としてはこの微妙な国際関係においては、言葉は恨むべきであると考えますから、いろいろな議論はありましても、私としては仮定の問題にはお答えができない、こういう考えでおります。
  5. 尾崎末吉

    尾崎(末)委員 第二点は、この際量も明瞭にいたしておきたいと思いますために御質問申し上げるのでありますが、わが国連合国占領政策に忠実であるのをさしまして連合国藤高司令官米国マッカーサー元帥であるところからいたしまして、今申します忠実であるというその点を指さして、それが米国偏重であるかのごとき、ことさらに惡意ある計画から出たのではないかと思われるような議論をたすものがあるのは、誤れるもはなはだしいもので、それは日本共産党が明らかにソ同盟に対して隷属的態度であるのに対して、ソ連偏重と言われておるのとは、全然異なるものであるにもかかわらず、日本共産党以外の野党諸君の中にもかような言辞を弄するものがあり、民主野党派北村徳太郎君のごときは、向ソ一遍倒、向米一辺倒などという、第三哲学者でなければできないような言葉を捏造して、これを大声叱呼するがごときは、偏見もはなはだしいものと私は思うのであります。一体民主政治が多数政治であることは 日本共産党諸君を除くほか、これを認めるでありましよう。しからばマッカーサー元帥米国国民であつても、連合国最高司令官でありますから、その占領政策を忠実に守るということが、連合国全体に対して、われわれが忠実であるゆえんでありまして、米国偏重ではなく、向米一辺倒ではないことは明らかであります。かりに連合国中の一国または二国が、個々の問題のあるものについて異論があるといたしましても、連合国多数の意見によつてそれを最高司令官が行われることは、連合国全体のものであることは当然であります。これに対し連合国中の一国であり、連合国軍中の一員でありながら、連合国多数によろ決定の意見に同調しない場合もあるところのソ同盟、それは連合国多数の代表としてではなく、一国の、ソ同盟にだけとして行くところの日本共産党諸君が、ソ連偏重——日本共産党態度としてのソ連偏重、向ソ一辺倒とは同一視すべきものではないことは、おのずから朗らかなことであります。講和を近くに控えての今日以後においては、この基本的の観念と言葉とを明白に区別すべきことが、われわれの態度でなければならぬと信ずるのでありますがこれに対する総理の率直なる御所見をお伺いしたいのであります。
  6. 吉田茂

    吉田國務大臣 お答えいたしますが、降伏文書にある通り日本連合国司令官の指揮のもとに入つておるのであつて、その司書とわれわれが交渉しもしくはその政策に協調する、協力する、あるいはまたその命令を奉ずるということが降伏文書義務として日本政府の負つておる義務でありますから、マッカーサー司令部あるいはマッカーサー元帥指令に従う、あるいはまたその政策に協力することは、当然の條約上の義務であると私ども考えております。従つてまた連合国の一国と、特にあるいは米国であるとかあるいはソ連であるかしらといつて、その国と別の交渉は断じていたしておりませんのみならず、いたさないことが政府としての名誉でもあれば、義務でもある、こう考えて、あえてある国ということを考えておらずに、連合国全体に対して、総司令部がその代表として、私どもはその政策に協力する、その政策を奉ずるということが、ポツダム宣言を遵奉するゆえんであると考えて、日本国の名誉にかけてダブル・ゲームはいたさない、こそこそと裏で策謀するということは断じていたさない。これが日本の名誉であるということを考えて、一に総司令部を相手に交渉もし、またこれに協力することをもつて日本政府義務考えておるのであります。この態度をここに期らかに表明いたしておきます。
  7. 尾崎末吉

    尾崎(末)委員 第三点は、国会内における不当にして不穏当きわまる言葉と行為に関しまして、総理の御所信を伺つておきたいのであります。日本共産党は独裁的であり、暴力的であると思われておるのでありますが、昨年春以来、八月革命説を流布したりいたしておりまして、第五国会中は衆議院会議場で、わが党の小西議員のゆだんしておるうしろから暴力を振い、その暴力を示し、また参議院におきましては、共産党議員中西功君その他多くの議員が、本会議場における議長の、議長としての公務執行に対し、暴力をもつてこれを阻止し、両院の共産党議員が相呼応して、その暴力の見本を示したのを契機といたしまして、同党独特の戰術による平事件三鷹事件等、その他多くの暴力革命に導こうとする戰標すべき事件を惹起せしめたと言われておるのでありまして、これを見、かつ聞いた国民は、日本共産党は形こそ日本政党のようであるが、その実は日本政党ではなく、国際共産党コミンフオルム在日暴力革命前衛除ではないか。その任務は日本政治のために努力するのではなくして、日本民族国際共産党祖国コミンフオルムへ隷属させるにあるのではないかということに気づいて来たようでありました。ところがそれでもまだ一部の国民の中には、彼らが多年煙幕を張つてつた国民に愛せられる政党人民指導者という言葉にいくらかごまかされていたようでした。ところが先般野坂參三君に対するコミンフオルムのはげしい批判を受けるや、日本共産党諸君はただちに拡大中央委員会を開いて、その批判に対し恐懼恭順の意を表し、ここに多年の覆面を脱ぎ捨てて、コミンフオルムヘの忠誠を誓つたと伝えられております。はたせるかな、日本人民に愛せられるよりは、スターリンに愛されることを喜ぶという事実を明白にいたしまして、かつて参議院議長に対する公務執行妨害の懲罰や、国民非難には一顧も與えなかつた中西功君は、コミンフオルム批判にこたえて参議院議員を辞任し、野坂參三君は過日の衆議院会議におきまして、わが政府連合国占領政策に誠実であるという事実に対して、あるいは独立放棄あるいは米英隷属、あるいは売国奴、あるいは奴隷等々の極端にしてしかも事実とは正反対である共産党みずからの姿を政府の姿なりと強弁したかのような言葉を乱発いたしまして、覆面をかなぐり捨てた後の共産党の方向をわれわれに見せつけたのであります。一体民主的平和国家建設を目ざして伸びつつあるところのわが国最高機関である国会内においてかくのごとき粗暴にして極端下劣にして劣惡言葉を弄してもつて国会の威信と品位とを傷つけ、やがてただちに国民の中にこれらの言葉を流行せしめるに至るようなことは、日本国会議員であるならば、日本国民であるならば、嚴に愼むべきことであると私は信ずのであります。これに対しまして総理はいかなるお考えをお持ちになつておるか。また独立放棄売国奴奴隷などと疑われるような節があるのでありますかどうか、率直な御所見を伺いたいのであります。
  8. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは私が民自党総裁として、この前の議会のしまいに談話といにしましたか声明といたしましたか、発表いたしましたが、日本が現に経済的にも政治的にも安定しつつあることは、常識であると思うのでありますが、しかしながら往々にして国会において、日本国政治的にも経済的にも安定しない、はなはだしきに至つては、ポツダム宣言を履行しておらないというような言葉をわれわれが受けるということは、これは外国に対する、外国反響等考えてみると日本が誠実にポツダム宣言を履行しておる日本の政情は安定しつつある、国際経済方面においても復興しつつある、日本の国が安定して、そうして産業が復興して、国際団体一員として、日本国国際団体に迎えられるということが但界の平和を助長するゆえんであり、繁栄するゆえんであると相手方か列国かあるいは世界が信ずるに至つて講和会議なり、友好関係が促進されると思うのでありますが、これに反する言動が国会内に行われるということは、はなはだ悲しむべきことであると考えているのでありまして、さきごろ私がその点に関して意見新聞紙上に発表したような次第で、ことに講和会議を前にしての国会内における言論はもちろん自由でありますが、しかし国際関係考えられて、その言論は愼重にせられたいということを私はくれぐれも切望してやまないのであります。
  9. 尾崎末吉

    尾崎(末)委員 最近権威ある外電の伝えるところによりますと、ハルビン協定モスクワ協定等によつてソ同盟は満洲にも、中共にも、北鮮にも軍事基地を設けることと、軍事協定をいたしているとのことが伝えられておるのであります。着々その侵略を東に進めて来ているように感ぜられる節があるのでありますが、過日の衆議院会議議場において、共産党の神山君は、これらのことには覆面をして、かえつて米国日本軍事基地を持つかのような逆説をいたしたのでありますが、現在連合軍設営をしている日本における基地は、連合国占領政策としてこれをいたしているのであつて、その連合国最高司令官マツカーサー元帥が統轄しているだけであつて米国軍事基地ではないと信ずるのでありますが、総理の御所見はいかがでありますか。
  10. 吉田茂

    吉田国務大臣 これはこの間私は一応お答えをいたしましたが、今日日本において進駐軍が必要とする工事をする、あるいは注文を発する、これは進駐軍の自由でありまして、われわれの干渉できないことであり、またその要求する設営等について日本国政府としては協力する義務のもとにあるのであつて、協力したからといつてけしからぬということにはならぬ、のみならず協力することが今日の日本政府立場であると、こう私は了解しております。
  11. 尾崎末吉

    尾崎(末)委員 簡單にもう三点であります。  次に自衛権に対するわれわれの態度であります。わが国自衛権に対する態度についてお伺いいたしたいことはマツカーサー元帥は去る正月の声明において、わが国自衛権があることを述べられ、吉田総理もまた軍備によらない自衛権がある旨を述べられておるのでありますが、これはまことに当然のことであると信じます。これに対して共産党を初め野党諸君が、その自衛権の是非と内容等に関して、盛んに自衛権などは必要がないかのように思える議論をいたしておられるのは、まことに遺憾なことであると思うのであります。マッカーサー元帥日本自衛権があることを述べられて、そのあとにつけ加えて、高い理想を同じくする米国民その他の国民を信頼せよと勧告をいたしておるのであります。同じ声明書の中につけ加えられているこの勧告を、共産党諸君野党の一部諸君は、ことさらに見落しておられるのではないかとも思われるのであります。米国はあらゆる面において実力を持ち、長年にわたる信用歴史を持ち、さらに終戰後から今日までの占領政策の実施においても、私どもを信頼せしめている。連合国最高司令官米国その他を信ぜよと勧告いたしておるのであります。その実力信用のある勧告に対して、われわれはこれを信じた方がよい、信ぜねばならぬ立場でありながら、これを信じないかのように思われる態度をもつて論難するということは、愚かしいことであり、よくないことであると思うのでありますが、この自衛権に対するわが国民の態度についての総理の御所信をお伺いいたしたいのであります。
  12. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたします。自衛権の問題はしばしばお答えいたしておりますが、日本がすでに独立した後において自衛権がないということは、想像することができないことであります。一国が主権を回復し、そうして国際団体一員として行動をなす場合において、自衛権がないということはむろん考えの及ばないことであり、嚴として在存すべきことである。これほ問題ないことであります。  しからばその自衛権をどういうふうにして行使するか、その内容はいかんというお尋ねを受けたのでありますが、これもしばしばお答えいたす通り自衛権を発動せざるべからざるに至つた状況によつて自衛権の行使の仕方もきまるのであつて、その前提であるところの自衛権を発動せしめなければならぬという状況前提の形がきまらない以上は、これに対応する自衛権内容はこうだ、こうするのだということはお答えができないのみならず、当局者として答えるべきものでないと考えますから、いつも同じようなお答えをいたすのでありますが、自衛権内容なるものは、自衛権の発動を必要とする状況によつておのずからかわるのであつて内容がそれによつて定まるのであるとお答えするよりほか、当局者としてはお答えのしようがないと考えます。
  13. 尾崎末吉

    尾崎(末)委員 簡單にもう二点伺います。  次にソ同盟わが国民のシンボルである天皇裁判を要求した事件に関して、総理所信を伺いたいのであります。去る二日ワシントン電報の伝うるところによりますれば、在米ソ連大使は、去る一日アチソン米国国務長官に対し、日本天皇戰争犯罪人として国際法廷裁判するということや要求したと伝えられておるのであります。私はこのことに関して非常な不快と不審とを抱いたのであります、わが天皇に関する戰争犯罪問題は、去る一九四六年四月二十六日、極東委員会からマツカーサー元帥にあてた指令によつて天皇は起訴しないことが命令されております。さらに一九四九年の一月には、極東委員会において、日本でこれ以上主要戰犯裁判を行わないことを決議いたしております。もとよりソ連もこれに賛成いたしておるからであります。すなわちすでに戰争犯罪問題は終了いたしておると思うのであります。かようにソ連ソ同盟も賛成の上で承認した問題に対し、何がゆえに突如としてかような挙に出でたかということに関し、総理の御見解を伺いたいのであります。もとより全面降伏により、被占領国民である私どもは、占領国たる連合国に対して批判がましいことを申すべきでないことは、重々承知をいたしておるのでありますが、この問題は、今申し述べましたようにすでに終了いたした問題でありますので、その既定の事実であり、許された問題であるところのものに対する論議は、一向さしつかえないものという確信によりまして、あえて総理にこのことをお伺いいたす次第であります。
  14. 吉田茂

    吉田國務大臣 戰争責任の問題については、私も問題はすでに終了いたしたものと考えておるのであります。最近においていろいろ新聞に出て参りますが、私としては新聞以外にここに報告し、もしくは披露する何らの材料も持つておりませんから、この点についてはお答えをいたしかねます。
  15. 尾崎末吉

    尾崎(末)委員 あと一点であります。なおついでに承つておきたいのでありますが、前から問題になつておるわが同胞ソ連へ抑留されておる数及びその状況等に関する調査引揚げ対策とは、その後どの程度まで進んでおりますかを、まずお伺いいたしたいのであります。
  16. 吉田茂

    吉田國務大臣 ちよつとお尋ねしますが、この問題について総司令部との間の交渉ということですか。
  17. 尾崎末吉

    尾崎(末)委員 先般発表せられました後においてのソ連におる同胞の数とか状況とかであります。
  18. 吉田茂

    吉田國務大臣 過去の日本政府の持つております数字から申すと三十七万幾ら、こういうふうに記憶いたしておりますが、むろん御承知通り捕虜としてつかまえられた後、ソ連に入つてか後の状況については、われわれは詳細に承知することができないのであります。それで総司令部等からの報告を受けますけれども、しかしながら日本政府としては直接に取調べをする機関もなければ、ただ帰つて来た引揚者の報告を受けるなり、取調べをするというような間接な調べをして、それによつて数字を訂正してみたりしておるような状況で、その点においてはなはだ不完全な調査のみ持つておるので、いわゆる正確なる数字というものは、つかまえられたとき、あるいは終戰直後において多分これだけの人がつかまえられて、ソ連に送り込まれておるだろうという想像上の基礎数字だけ持つておりまして、その後帰還者等報告あるいは総司令部等報告によつて、今日は多分このくらいの人が未帰還者として残つておるであろう。これも想像にすぎない不完全な調査だけでありますが、私の記憶では三十何万なお残つておる、こう政府考えております。その数字の詳細については取調べてさらにお答え申し上げます。
  19. 上林山榮吉

    上林委員 私はこの際外務大臣を兼ねておる総理大臣に対しまして、韓国に関する諸問題についてただしておきたいのであります。ことにこれに対する政府根本方針についてお尋ねをいたしたいのであります。  御承知のごとく李承晩大統領は、数次にわたつて日韓通商関係の増進について、強い希望を有する旨の談話を発表しおるのでありまして、われわれとしてもこれに対しては、一つの明るい見通しとして期待をいたしておるところであります、しかるに最近対馬の近海におきまして合法的に出漁しておるわが国の漁船が襲撃をされ、拿捕抑留された等の事件が頻発しておることは、まことに遺憾であると考えるのでありますが、マッカーサー・ラインを越えた出漁に対する取扱い等については、私、農林大臣に先般要望いたしたのでありますが、その後これに対する措置発表等もあつたので、これは一応了といたしますけれども、合法的に出漁したものに対する懸案の解決が、いまだはつきりしないということは遺憾に思うものであります。また最近わが国における外国人登録問題に関連をいたしまして、在日韓国人の間には多少の動揺が見られるようでありますが、政府は両国間のこれらの問題をどういうふうに処理しようとされるのか、あるいはどういうふうに処理されつつあるのか。私ども両国間の通商関係の一日も早からんことを希望する意味においてこの際ただしておきたいのであります。
  20. 吉田茂

    吉田國務大臣 李承晩大統領日本に対して好意ある声明をせられたということは新聞によつて承知いたしております。またわれわれとしてはまことに喜ばしいことと考えて、その声明を読んでみておるわけでありますが、御承知通り今日日本は外交関係が停止せられておりますから、外務大臣としてただちにこれに応答をするという自由を持つておりませんが、しかし李承晩大統領日本に対する好意ある声明に対しては、外務大臣としてもまことに喜ばしい声明として、これを歓迎いたしておるわけであります。しかし今申したようにただちにこれに対して応答をするということの自由もなければ、また日本政府に対して直接申し出られたことでもありませんから、何らの措置もとらずに、ただ喜ばしく考えますという感情以上に何らの措置をとつておりませんが、韓国との聞の関係ほ長い歴史上の関係を持つてつて、しかも同種同文であるその国の大統領が、日本に対して好意のある声明をせられた。われわれは政府としても、国民としても喜ばしくこれを迎えるということは、自然の行為であると思います。また将来日本が独立を回復した場合においては、韓国との間に最も親しい善隣の関係が、打立てられるように希望してやまないのみならず、従つて経済的にもまた交通の上においても、最も親密な関係に入るということを私は切望してやまないのであります。  漁船の問題についてはまことに残念なことでありますが、しかし仕合せに総司令部のあつぜん、あるいはマッカーサー元帥のあつせんによることと思いますが、すでに残した問題の船は釈放する、日本に返す、そうして将来についてはなるべく不当な問題を起さないようにする、そしてすでに拿捕しておる船及び船員は日本に返すという円満な交渉が、妥当な解決ができたという報知を受取つております。これはまことに喜ばしいことと思います。
  21. 上林山榮吉

    上林委員 最後にお尋ねいたしました外国人登録問題に関しまして、在日韓国人の間に多少の動揺が見られておるように思われるのでありますが、この問題等に対しても、総司令部を通ずるものは総司令部を通じ、あるいは政府の責任においてできるものは政府の責任において、これが調整をはかつて問題を未然に防ぐべきものである、こういうふうに考えるのでありますが、これに対する総理の見解を承つてみたいのであります。
  22. 吉田茂

    吉田國務大臣 日本に在留しておる韓国人が相当多数に上つておるために、いろいろな問題を現に起し、また将来も起すでありましようが、政府としてはこれに対してごく公正な態度をもつて臨む考えでおります。またその厚生施設といいますか、韓国人に対する待遇の道もさらに公正であるのみならず、できるだけその厚生施設等については、政府としても考えるという方針で進むつもりであり、また進んでおります。
  23. 尾崎末吉

    尾崎(末)委員 大体上林山君の質問せられたことと、私が質問したいことを残しておりました一点とは、同じことでありますので、私の質問はこれで終結いたします。
  24. 植原悦二郎

    ○植原委員長 山本利壽君。
  25. 山本利壽

    ○山本(利)委員 講和会議に対していろいろな論議がかわされておりまして、観念的な研究も一面必要でありましようけれども、平素総理が常に言つておられますよに、日々のわれわれの行動において講和を促進させるように、国民全体が努力するということも、また必要であると私は考えるのであります。  そこで最近米国その他にいろいろな使節が送られましてこれが日本とアメリカとの間の感情を融和しておることは、著しいものがあると考えるのでありますが、この講和会議を促進するための一手段として、この際米国以外の交戰各国に対しても親善的た使節を送つてはどうか、しかもそれを送る可能性があるかどうかどいうことを、総理大臣にお聞きいたしたいのであります。  その私の質問いたします理由は、日本人はとかく終戰後、われわれの苦しさから、日本だけが非常な困難に陥つておるように考えるのでありますけれども、大東亜の諸国においては、今回の戰争によつて非常な被害を受けたところもありますので、これを国民が率直に知るということも必要なことでありますし、またそれらの国の復興状況を視察して、われわれの参考にするということも非常に大切なことであると考えるのであります。なおわれわれは、日本に多く見えておりますアメリカ人の親日的な態度によつて、すべてを判断しようとしがちでありますけれども総理の言われておりますように、対日感情は世界的に見て必ずしもよくはないということもまた実際であると考えるのであります。そこで、これらの多数の諸国に対して日本から使節を選りまして、日本がいかに民主主義的に成長しつつあるか、復興しつつあるか、しかも日本人全体が軍国主義を捨てて、今後は世界の平和のために、特にアジアの人々のために立ち上ろうとしておるということを、日本の使節の口から各国の首脳部に伝えるということは、非常に親善的な感情を起すのではないか、かように考えるのであります。そこでいろいろな方面におきまして、日本の使節が米国以外の交戰各国に向つても行くことが、私は非常に有益なことではないかと考えるのであります。このことが必要かどうか。あるいは必要でも、その可能性かあるかどうかといことに対して、総理の御答弁をお願いいたしたい。
  26. 吉田茂

    吉田國務大臣 お答えをいたします。御承知通り、今日日本戰争関係がまだ終了しておらないので、外国との交通は自由でないのであります。そのために従来国際会議に招請を受けるとか、あるいは相手国から招請を受け、もしくは事業その他でもつて、総司令部の——連合国と申しますか、その許可を得た者だけが参つておるので、自発的にこちらからこういう使節を送りたいというて送り出すだけの自由は、まだ回復いたしておらないのであります。もう一つは為替関係もあります。外貨資金が非常に欠乏いたしておるものでありますから、外貨の面から言つてみても、自由に使節を送り出すということができないのと、また法律上いまだ平和関係が復活しておらないものですから、海外交通が自由でないというようなところから、自由に、われわれが希望するがごとく各国に使節を出すということができないのでありますが、希望としては、まことに御趣意の通りけつこうなことであると思います。われわれが日本国民として、日本立場が自由に説明できる、あるいは了解が遂げられるということは、まことに希望すべきこととしてはけつこうなことでありますが、今のような二点から申して、今のところは自由に選り出すことができないという状態にあることをお答え申します。
  27. 山本利壽

    ○山本(利)委員 ただいまのお答弁でよくわかりましたけれども関係方面に対してそういう了解がなければできないということは、国民一般によく存じておることでありますが、それでは今後関係方面に対しても、そういう機会を與えられるように努力される意思がありますか、また努力されたら、このことは可能だと思われますか、その点をお伺いいたします。
  28. 吉田茂

    吉田國務大臣 私は、今申した通り、なるべく日本国民が自由に海外に行つて、そうして日本の事情を説明するもしくは通商取引等ができるということはまことに望ましいことでありますから、できるだけのことは従来もいたしており、また今後もいたすつもりであります。ただ、今申すような障害があるということを御記憶を願いたい。
  29. 植原悦二郎

    ○植原委員長 総理は御用で、これ以上の時間もお許しになりません。川上貫一君から、後ほど関連質問をしたいという申出がありましたから、後に出席されたときにこれを許すこととして、総理は時間上これ以上ここにとどまれない、午後二時ごろまた御出席になるということでありますから、それを御承知願いたいのであります。奧村又十郎君。
  30. 奧村又十郎

    ○奧村委員 私は日本経済の自立発展のためにはドツジ・ラインを基調とする現吉田内閣の政策を遂行するよりほかに道がないと考えておるのであります。従つて基本的には吉田財政政策を支持するものであります。しかし全幅的ではありません。前国会でも申し上げましたが、金融政策は大蔵大臣の努力にもかかわらずまだ十分でないと思うのであります。今回の税制改革についても、かなり懸念を持つておるものでありますから、まずこれらの点についてお伺いいたしたいのであります。私は明るい面を知つておる。しかもお尋ねするととは暗い面である。その点はなるべく国会を通じて、国民協力してこの暗い面を早く取除こうという意味においてお尋ねするのでありますから、そのつもりで御答弁を願いたいと思うのであります。  今回の予算で申告納税及び源泉徴收で、その徴收見込みがシヤウプ勧告と比べますと、三百九十三億円減らして見積つてある。シヤウプ勧告においては、かなり微細にわたつて税收の根拠を現わしてあるのでありますが、それをなお三百九十三億円減らしてある。この減らされた根拠についてお伺いいたしたいと思います。
  31. 池田勇人

    池田国務大臣 シヤウプ博士が税制案の大綱を勧告せられたときの、昭和二十五年度における財政規模は、もつと大きいものであつたのであります。すなわちシヤウプ博士が勧告案を立てられたときには、昭和二十五年度の財政のスケールというものがわかつておらなかつた。従つてシヤウプ博士はああいうふうな勧告をなされたのであります。しかし私は二十五年度の大体の財政のスケールを御審議願つているように、六千六百億円余といたしました関係上、租税收入におきましても、シヤウプ博士が勧告せられた以上の減税ができたことに相なるのであります。
  32. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それではシヤウプ勧告によりますと、昭和二十三年と比べて所得が昭和二十五年度は一・六五倍になる、そういうふうに見ているが、その点は大蔵大臣も同じように見ておられますか。
  33. 池田勇人

    池田国務大臣 シヤウプ博士は、昭和二十三年度の国民所得に対しまして、二十四年度は一割増し、しこうして二十五年度はその五%増し程度に見ておられたと思うのであります。しかし私はそういうシヤウプ博士の計算方法をとつておりません。二十四年度の国民所得を見まして、どうして二十五年度を推定いたしたのであります。従いまして国民所得の根拠は必ずしもシヤウプ博士と合つておりません。
  34. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それでは今回の予算の税收の根拠を明らかにしていただきたいと思います。
  35. 池田勇人

    池田国務大臣 二十四年度の所得に対しまして、個々の所得には異動がありますけれども、大体五、六パーセントの増を見てやつておるのであります。こまかい数字につきましては、国民所得は安本でおつくりになり、その相談は大蔵省で受けております。なお所得の種類別によりましては、いずれ政府委員よりお答えさせることにいたします。
  36. 奧村又十郎

    ○奧村委員 税收目標は大蔵大臣の言うように簡單につくれるものでない。特に今回は税制を大幅に改正せられて税率の引下げ、控除、あるいはその他の軽減措置をやつておられる。また中小企業あるいは農村方面、これは非常に一昨年及び昨年とは情勢が変化して来ておる。また税制改正によつて所得を新たに捕促するということを考えられておる。そういう点をどういうふうに税收見積りにおいて現わしておられるか、そのこまかい数字についてお伺いいたしたいのであります。
  37. 池田勇人

    池田国務大臣 こまかい数字にわたりますので、主税局長より答弁いたせせます。
  38. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それではほかのことをお尋ねいたします。大蔵大臣は前国会において、一県一銀行主義の弊害は打破しなければならぬと、財政演説に述べられたのであります。この一県一銀行主義の弊害とは、具体的にいつてどういうことをさしておられるのか、お伺いいたします。
  39. 池田勇人

    池田国務大臣 一県一銀行主義の弊害という言葉を使つたかどうかは記憶がございませんが、一県一銀行主義によりますと、どうしても独占的の気持も出て参りますし、競争心が少くなりますので、この際一県一銀行主義の原則をやめまして、適正な規模の銀行ができることを期待して、ああいうふうな声明をいたしたのでございます。
  40. 奧村又十郎

    ○奧村委員 一県一銀行主義と言うたか言わぬか、覚えぬというお言葉でありますが、どうもこれは少し大臣としては不親切な御答弁であると思います。前国会において、金融の適正、特に一県一銀行主義の弊を打破するために、新銀行の創設を許可する方針だこれを財政金融の重点に置いてお述べになつた。そこでその弊害とは独占であるということであるが、その独占ということは具体的にいつてどうなのか、この点について一県一銀行主義によつて銀行が整理されて、たとえば一部市に一箇所、一銀行の支店、出張所が一つしかない。つまり一銀行が預金も独占している。貸出しも独占している。そういうところにおいては預金と貸出しのやり方が独占的に行われる。もう一つ具体的に言うならば、どうしても貸出しが地方的に固まる。つまり地方から吸い揚げて中央に、農村あるいは村落から引揚げて、都会に集中する。そういう弊害が多いと思うのでありますが、この点をお認めになつておられるかどうか。
  41. 池田勇人

    池田國務大臣 一県一行主義という制度はやめるということは、はつきり申し上げたのでありますが、一県一銀行主義の弊害を打破するという言葉を使うたかどうかは、私今記憶にございません。一県一行主義によりますと、大体においてその銀行において集めたものはその地方に流れるのが普通でございます。流れない場合におきましては、国債の引受けとか地方債の引受けということになると思いますが、お話の点は、大体銀行の各県における支店の状況、こういうことを申しますと、おおむね奧村さんの言われたように、支店の集めた分は都会地に流れやすいという事情はあるのであります。従いまして一県一行主義で行くよりも、一県二行主義ぐらいで同じ町にも二つぐらいできますと、そこに競争心も出ますし、またより金融が円滑に行くという考えのもとに、一県一行主義を墨守せずに、新たな、適正な銀行が出ることを期待しているというので、ああいう声明を出した次第でございます。
  42. 奧村又十郎

    ○奧村委員 新銀行の設立を許可するということはまことにけつこうだ。銀行の自由競争を行わせることけつこうでありますが、資本金が三千万円以上でなければ許可をしない、こういうことでありますが、これではなかなか銀行ができにくい。ことに銀行は信用がかんじんであるししますから、資本金だけ集まつても、なかなか預金が吸收できぬだろう、こういうことで親銀行の創設ということは困難であると思うが、あの御発表以来今日までに、新銀行の許可の申請は何件出ておりますか。
  43. 池田勇人

    池田國務大臣 私のところに直接参りませんので、実際の書類か何件出ているかは存じませんが、口頭でもつて私の耳に入つたのは四つ、五つございます。もう一、二件は出ていると思います。資本金の三千万円という大体の心構えは、御承知通りにせんだつての殖産無盡と申しますか、みなす無盡の分につきましても大体千五百万円程度に行つております。無盡の方が千五百万円ぐらいだから、銀行は三千万円というのが適当ではないかと考えております。ずつと前に、昭和十年ごろでございましたか、銀行法の改正のときにおきましても、地方の銀行は、二十五万円から五十万円ぐらいがあれではなかつたかと思います。そういうことから勘案いたしまして、少くとも三千万円ぐらいの資本であつてほしい、こういう考えでおります。今申し出られた分は、ある県におきましては六千万円、ある県は五千万円、こういうふうなことを聞いておるのでありまして、三千万円の資本金は多過ぎて集めにくいとは私は聞いておりません。
  44. 奧村又十郎

    ○奧村委員 この新しい銀行の創設がどこまで進むかということは、この銀行の運営に相当重大な関係があると思うので、実はこれを具体的に何件申請が出ておるかということをお尋ねすべく、政府委員の方に事前に御通知してあるわけでありますから、どうかこの点もあとで正確なものを、資本金あるいはできれば各府県ごとの数字をお知らせ願いたいと思います。  次に、それにしても私は銀行の設立はなかなか困難であるので、むしろそれよりも支店、出張所の増設を許可するということの方が手取り早いし、要領を得ると思うのであります。この点についてはまだはつきり触れておられないのでありますが、この支店、出張所の増設を許可するということははつきりしておるのでありますか、またこれに対して申請が出ておるかどうか、また最近において許可した件数がどれだけあるか、これも数字お尋ねしておきたいのであります。
  45. 池田勇人

    池田國務大臣 一銀行の支店、出張所の増設につきましては、大体原則としては許可しない方針でおるのであります。配置転換というようなことは今までも認めておるのであります。今問題になつているのは、地方銀行が東京へ支店を置くという問題が、爼上に上せられて検討を加えておる状況であるのであります。なぜ支店、出張所の増設を認めないかという問題になりますと、これはまた銀行の経営の問題もございます。私は今の支店、出張所の増設を許可するよりも、新銀行を認めた方が、金融の円滑に役立つのではないかという考えを持つております。
  46. 奧村又十郎

    ○奧村委員 支店、出張所の新設はつまり原則として許可しない。その銀行の支店、出張所の総数でもつて押えるのであるから移転は許可する、こういうお言葉であります。しかしなぜその増設を許可しないかということは、銀行の経理に関係する、こういうことでありますが、この経理については多少経費はよけいかかるでしようが、それでもつて新銀行であれば許可するものが、支店、出張所は許可できぬという理由にはならぬと思います。特にあとからも申し上げますが、零細な貯金を集める郵便局などの資金原価が今回は相当合理化されたようでありまして、六分余になつておる。そういうことから考えたら、支店あるいは出張所を増設させましても、銀行のような多額の金を扱うところはそう大して経理に関係はしない。ほかに何か理由があるなりともかくも、今の御答弁では私はどうも納得ができないと思うのですが、この点はいかかですか。
  47. 池田勇人

    池田國務大臣 大体先ほど申し上げましたような考えのもとに、今までは原則として支店、出張所の増設は認めない方針で来ておるのであります。しかし金融の問題につきましては、そのときどきの地方の情勢その他を考えまして、弾力性を持たさなければならぬことは当然であるのであります。従いまして従来の原則はそうでございますが、今後の情勢によりましては、必ずしもそれを墨守する意味でないということをつけ加えて申し上げておきたいと思います。
  48. 奧村又十郎

    ○奧村委員 ぜひそれはそういうふうにお願いいたしたいと思います。支店の新設あるいは移転を許可した件数をお尋ねしておるのでありますが、これも具体的にあとからお伺いをいたしたいと思います。  これにつけ加えて一つ申し上げておきます。ある地方のある都会に二つの銀行の支店があつた。一つの銀行は預金に対する貸出しの率が二六%、一つの銀行は預金に対する貸出しの率が七〇%、そうすると一方の銀行は、ほとんど預金の七割というものは地方に貸し出さずにほかへ持つてつておる。一方はほとんどその地方に資金を還元しておる、こういうことで市民がこの銀行の行き方を批判して、銀行は相互に競争して、そうしてこの貸出しの惡い銀行が反省してだんだん貸出しをふやして来ておる、こういろ事態が現実にあるのであります。ところが一県一銀行主義によつて、ほとんど一部市に一銀行の支店しかない。こういうところがかなりある。そういうところはそういう比較ができない。銀行は金を貸してくれないものだというふうな観念になつて、そういうところは預金の一割ないし二割しか貸出しをしておらぬ。そうして八、九割のものは固まつた大企業へ持つて行く、こういうことがあるのでこの点を特にお尋ねをしまた要請した次第であります。この銀行の地方的な預金と貸出しとの率について、大蔵省は銀行に対して何かの指示を與えるというか、奬励をするというか、適当な策をお考えになつておられませんか。
  49. 池田勇人

    池田國務大臣 今お話のような点がありますので、一県一行主義をやめたいという考えを起したのであります。しこうして地方の銀行におきまして、その銀行がどの町の支店の預金と貸出しとの割合がどうだ、あるいはかくかくの町の支店の営業状況がどうということにつきまして、一々の監督はいたしておりません。そこまで入り込むということは、なかなか人員その他の関係から申しましても、困難な問題であります。こういうことは銀行の経営者にまかせまして、大局的にやはり地方の金融を円滑にするように、やはり地元に流すべきものだという原則は話をいたしております。
  50. 奧村又十郎

    ○奧村委員 この銀行の支店、出張所ごとの預金及び貸出しの実績を公表するということをいたしますならば、銀行自体が大衆によつて民主的な運営を批判され、監視されるということによつて、非常にけつこうな結果を現わすと思うのでありますが、この点は大蔵省はどう考えておられますか。
  51. 池田勇人

    池田國務大臣 御意見として承つておきましよう。そういう方法も一つの手段かとも思いますが、あまり行き過ぎるともまた弊害もあることでありますので、御意見として承つておきます。
  52. 奧村又十郎

    ○奧村委員 ただいま公表してならぬことになつておりますか。
  53. 池田勇人

    池田國務大臣 公表してならぬことにはなつていないと思つております。
  54. 奧村又十郎

    ○奧村委員 現在の金融機関のたとえば定期当座及び特に匿名貯金と申しますか、無記名貯金の区別によつて、現在の預金のあり高、それから昭和二十五年度の金融機関における預金増加の見通しと申しますか、従つてこれに対する貸出しの見通しもあるわけですか。その数字を承りたいと思うのでありますが、これもどうでしようか。
  55. 池田勇人

    池田國務大臣 今市中銀行と言つておりますが、いわゆる商業銀行の預金は七千億程度になつております。そのうち当座預金は二千三百億円ばかりになつております。通知預金、定期預金、その他の問題でありますが、定期預金につきましても最近は大体増加の傾向をとつております。大体千七、八百億円くらいの定期預金ができたと考えます。総預金の二割ということになつておるのであります。そうしてその定期預金のうちの無記名定期というのが、どのくらいになつているかというお話でございますが、これはやはり定期預金の半分余りが無記名定期と相なつていると考えます。昭和二十五年度の市中銀行における預金の予想というのはどういうふうに考えるかという問題でありますが、今大体資金計画をつくつておるのであります。全体の預金を私は三千三百億円くらいに預金の増加が見られるのではないか、こう考えて参りますと、普通銀行預金は二千五、六百億円を期待し得るのではないか、こういうような考えでありますが、今事務当局に申しましてせつかく作成中であるので、三、四日のうちにはでき上ると考えております。
  56. 奧村又十郎

    ○奧村委員 大蔵大臣は内閣でも非常に博学達識で御記憶がよいのですが、そういう数字を一々頭の中に持つておられるとは考えておらぬので、それであらかじめ資料を要求してある。われわれは野党でありませんから、なるべく内閣に協力したいのです。それで議論をするのではありませんが、なるべく予算書の中に記載してない事実を知りたい。新聞その他で見ると、あれは政府は責任を持たぬ。こういうことであるから、ほんとうの政府の資料を要求しているのです。しかし今の概略の予想では私は納得ができません。四月から廃止なさるという無記名貯金の金額くらいはここではつきりしておきたいと思うので、あとから正確な数字をお述べ願いたいと思います。それから予算委員会としては、二月一ぱいにはこの予算の審議を終りたいという態度でおるのでありますが、まだこの一番重大な関係のある税制の法律案が出ておらぬ、これでは審議が非常にしにくい。それでお尋ねすることも十分にお尋ねできぬのでありますが、しかたがないから税制改正に関する基本要綱によつてお尋ねいたしますが、基本要綱の予定申告に際しては、原則として前年の所得金額を基準とする制度を設けること、これは具体的に言つてどういう法律になりますか。
  57. 池田勇人

    池田國務大臣 今までの税務行政の状況が前年の決定があるにもかかわらず、しかも営業状態が同様である場合におきましても、当初の申告は非常に少いものが出ているのが実情であります、従いまして大体経済状況に変化がないと認められる場合におきまして、特殊の業種においてもそういう変化のないということが認められた場合におきましては、原則として前年の決定の金額を当初から申告していただく、こういう考え方であるのであります。しかしこの所得の状況は相当動くのが常態でありますので、要綱にも申し上げましたように、原則としては、こういう頭文字を入れているわけであります。実際納税者が前年の決定よりも本年は非常に低いというような場合におきましては、特にその旨を申告なされば、前年決定通りということはないよらな考慮を拂つているのであります。これは相当議論のある問題でございますが、シヤウプ勧告案にもはつきり強くそれを主張しておりますし、また今までの税務の実情から申しまして、原則として一応申告していただくことが適当ではないかというので、法案になつている次第であります。今日予算案にも関係のあります税制改正案がただいま出ておらないというお話でございますが、もう法律案はでき上りまして、しかも向うのE・S・Sの方とはすつかり話が済んでいる。ただ予算案とほ違いまして、税制案その他の法律案は、ガバーメント・セクシヨンの方へ行きまして相当長くかかるという状態でありますので、とりあえず国会再開のときに、要綱の大体の原則の分はごらんに入れて御審議願える程度にまでいたしておるのであります。そのうちガバーメント・セクシヨンの方の〇Kも来ることと思います。大体印刷には、もうかかつておりましす。
  58. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それでは重ねてお尋ねしますが、ただいまお尋ねした予定申告に際しての前年の所得金額を基準とすると、これについてシヤウプ勧告によりますと、それによつて六月と十月ですか、三分の一ずつの税金を納める。こういうことになるので、これほ納税者としては重大な影響を受けるのでありますが、その通りの條文になりますか。
  59. 池田勇人

    池田國務大臣 大体シヤウプ勧告案の線に乗つておりますので、前年の決定額に原則としてよつて、六月、十月に納めることに相なると思うのであります。先ほど申し上げましたように自分の六月までの状態が特に惡い、前年決定通りに行かないという場合につきましては、申告をいたしまして例外の規定を置いておる次第であります。
  60. 奧村又十郎

    ○奧村委員 大蔵大臣に食糧管理特別会計に関してお尋ねいたすのでありますが、昭和二十三年度以来食糧証券の発行は千百八十億円に押えられておる、これ以上は出せないということに方針がきまつておるようであります。従つて食糧保有を多くするために昨年の暮のように一般会計から百七十億も繰入れた、こういうことになつておるのですが、この千百八十億の食糧証券の発行限度は今後もこのまま行くものでありますかどうか。
  61. 池田勇人

    池田國務大臣 大体その限度でまかないつくと考えております。
  62. 奧村又十郎

    ○奧村委員 予算では二十五年の産米は生産者の供出価格を四千五百六十二円と見ておる。昭和二十四年産米の供出価格については非常に安い。農民は非常に不満を持つておる。ところが二十五年産米がやはりパリティー計算によつて四千百六十二円、これはまたたいへんな不満を買うことと思うのでありますが、この価格で行くのでありますか、お尋ねいたします。
  63. 池田勇人

    池田國務大臣 その価格は大体食糧管理特別会計の買入れの予算でございまして、その通リに行くか行かないかは、昭和二十五年産米のパリティー計算によつてかわつて来るわけでございます。しこうしてそれが移動がありましたにいたしましても、ただいまのところ予算をどうこういじる必要はないと考えております。
  64. 奧村又十郎

    ○奧村委員 わずかな移動ならともかくも、かなりの移動があれば予算を直さなければ値上げができぬはずでありますが、あるいは消費者の価格をもう一度引上げるならこれはできるでしよう。そういうことになるので一応これが土台となると考えられるのでありますが、予算をいじらなくとも値段を変更できるということは、どういうところで変更できますか。
  65. 池田勇人

    池田國務大臣 予算でございまして昭和二十五年産米の米価が非常に高くなつた。しこうして買入れ代金が足らぬというふうな場合が出て参りました場合におきましては、これは国会を開いて御審議願わなければならぬと思うのでありますが、その程度の資金がありますならば、大体まかなつて行けると考えておるのであります。従来の状況から申しましても千百八十億を全部使つた場合は少いのでございまして、千百八十億の発行限度があれば少々の動きがありましても、予算の執行にさしつかえぼないと考えております。
  66. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それでは消費者価格の方は、二十五年度中すえ置きになさる予定であるかどうか。
  67. 池田勇人

    池田國務大臣 二十五年中は動かさない計算で行つておるのであります。
  68. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それではこれはくどいお尋ねでありますが、消費者の価格は動かさぬ、但し供出価格についてはパリティー計算によつて幾分の変更はあり得る、この程度と解釈いたしておきます。聞違いなければ御答弁いりません。  それから昭和二十三年末に、食糧管理特別会計の書類を見てみますと六十億円の赤字が出ておる。ところが昭和二十五年末の成績を予想によつて見ると、二年のうちにその赤字を埋めてなお二百四十億円の黒字にする。すなわち百七十億円の繰入れを差引いてもなお百三十億円の利益を出す、こういう食管自体において独立採算というか、黒字会計をやろう、こういう方針にかわつたので、特に生産者と消費者の価格のさやがひどくなつて来た、こう考えるのでありますが、食管の会計は今後そういう方針で進んで行かれるのですか。
  69. 池田勇人

    池田國務大臣 昭和二十三年度の食管におきましてはへいもの買入れが多いために、しかもそれが腐敗その他いたしました等の原因のために、赤字があつたのでありますが、その後消費者価格の調整その他によりまして、赤字はたくなつて参りました。二十五年度末におきましては、黒字と言うといかがかと思いますが、大体余裕が出て来るように相なつて参つたのであります。こまかい数字につきましては主計局長よりお答えいたさせます。
  70. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それでは主計局長にお願いします。
  71. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 六十億の赤字が二十三年度に出て来ましたのは、いもの関係でございまして、いもの超過供出数量の多かつたこと、それで腐つたことというふうな関係、それからバツクペイの関係等でありまして、これは二十四年度におきまして消費者価格を改訂いたしましてこの部分を埋めたわけであります。先ほど二十五年度末に二百億幾らというような黒字があるというふうなお話でありますが、これは米の持越しと見合計算でありまして、現金がそれほど余るという節ではございません。二十四年度末から二十五年度にかけまして約三百二十万トンほどの食糧が持越しになりますので、それに相当する部分が先ほどおつしやつた部分でございます。
  72. 奧村又十郎

    ○奧村委員 私は予算書で大体経理内容を調べておるのですが、損益計算書においてそれだけの黒字が出る、何も在庫がふえたから黒字が出た、そういう経理にはなつておりません。いずれこの生産者の価格と消費者の価格と非常なさやがふえて来たということについては、食糧管理関係の方もお越し願いまして、きよう午後十分お尋ねをいたしたいと思いまするそれでは大蔵大臣、先ほどの国税局の方をお願いします。
  73. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 歳入歳出予算の見積りの基礎につきましては、委員会の要求もございますので、目下資料を調製中でございまして、近日中にできるだけ整理いたしまして提出いたす見込みでございます。そのうちで一番御関心の深いのは所得税の関係だろうと思いますから、その分本日御説明申し上げたいと考える次第であります。  所得税につきましては大体昭和二十三年度の課税実績を元にいたしまして、その課税実績に対しまして最近までの生産、物価の指数、それから最近の税務行政の事情等を考慮いたしまして、それぞれ所得金額を見積りまして、それに対しまして改正法によりまする控除、税率等を適用しまして、それぞれ税額を算定いたしたのでございます。大体農業所得、営業所得、それから勤労所得等にわかもまして、それぞれ計算をいたしておるのでございますが、まず農業所得につきましては、結論になりましたけれども先に申しますと、大体申告所得額の全体の額が、二十五年度予算で千五百三億五千百万円ということになつておりますが、そのうも農業関係の分を二百二十二億程度見込んでおります。それから営業の関係の分が千三十億程度でございます。その他を合計いたしまして今申しましたように千五百三億五千百万円になるわけでございます。昭和二十四年度の補正予算におきましては、同じく農薬所得は四百十九億円ほど見込んでおります。従いまして農業所得税に関にましては約半額程度に減少する見込みでございます。営業所得は千百八億七千万円程度二十四年度の補正予算で見込んでいたのでございます。全体は御承知通りその他を入れまして千七百二億二千五百万円でございまして、差引申告所得税全体といたしましては百九十九億の減になるわけでございます。これは税法の改正だけからいたしますと、実はもう少し減るのでございますが、課税所得の増を若干見込んでおりますので、それと相殺されまして、税額の減收は税法の改正によるほど大きくなつていないのでございます。大体さつき申しましたように所得の見積りは二十三年度の課税実績がございますので、それが一番確実でございますから、それをもとにして見込んでおります。従いましてそれに基いて所得の増を見ておるわけでございますが、全体として農業所得は昭和二十三年度に比較しまして四割四分の増、それから営業所得は同じく七割四分の増、全体といたしまして申告所得税の課税所得は六割二分の増を見込んでおります。これを二十四年度の補正予算で見込みましたものと比較しますと、若干基礎にしましたスタートの数字が違つておりますので、若干補正を要する点があるわけでございますが、大体において申し上げますと、農業所得におきましては一割六分の増でございます。営業所得につきましては本来の増と、それから若干の把握の増とを見込んでおりますが、約二割の増、全体を入れますと一割六分程度の増ということに相なるわけでございます。この数字につきましては、先ほど申し上げましたように、なるべく正確を期するために目下プリントを用意いたしておりますので、その際さらに必要に応じて御質問にお答え申し上げたいと思います。
  74. 奧村又十郎

    ○奧村委員 シヤウプ勧告書によりますと、二十三年度の所得の一・六五倍ということでありますから、大蔵省の方においても大体それと同じような見通しをつけておられる。しかしこれはわれわれはどうしてもこういうふうにはならぬと思うので、今の目標の見込みの、申告分の千五百三億をもう二百億も減らさなければならぬと思うくらいでありますので、なおこのこまかい点については、資料を出していただいて十分検討したい、農業においては米のやみ値が下つておるし、供出価格は安いし、営業所得において二十三年度のまだその六割も七割も利益がふえるというようなことはとても考えられぬのですが、これは議論にわたりますから、あとから資料によつてまたお伺いいたしたいと思います。  それからシャウプ勧告書によりますと、二十五年度の申告納税の中に前年度の繰越し滞納額が九百億繰越されて、その中から三百六十億円が実際に金が入る、こういうことを言うておるが、こんなことは私はとても実現できぬと思うのでありますが、この点についての計数をお伺いしたいと思います。
  75. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 先ほど申し上げました数字の中に、それぞれ二十四年度からの繰越しを見込んでおるわけでございますから、その繰越し総額の見込みが約四百二十三億、そのうちの六五%程度が現実に收入になると見まして、二百七十五億程度を繰越しとして見込んでおります。
  76. 奧村又十郎

    ○奧村委員 なお具体的に資料をいただきたいと思いますが、大蔵大臣にちよつとお尋ねいたします。こういう貴重な時間を費してこまかい数字の資料を一々お尋ねすることは、われわれもあまりよくないことと思うので、なるべくプリントその他でいただきたいのであります。ところがどうも大蔵省の方では秘密主義というか何というか、非常な貴重な資料はマル秘をつけてわれわれに見せない。見せないというと何ですが、プリントをくれない。これは非常に因る。総務部の方でもそういう書類ができておるので、私のお尋ねしたいことはちやんとそれに載つておる。この点についてはもつと大幅にわれわれに提供していただきたいと思いますが、方針はいかがですか。
  77. 池田勇人

    池田國務大臣 私は全然秘密主義をとつておりません。そういう予算審議に必要な資料につきましては、どしどしお出しいたしますから、前もつてお知らせいただけばよろしゆうございます。前から資料を注文しておつたとおつしやいますが、実は私は知らないので、そういうのは委員長を通じて御要求になれば、できるだけ早い機会にお出しするようにいたします。
  78. 植原悦二郎

    ○植原委員長 奧村君に申しますが、今大蔵大臣の述べられました通り、そういう必要な資料をあなたが御質問なさる前に入手したいならば、予算総会が始まりましたあるいはその前でも、どうか予算委員長を通して要求していただけば、できるだけ予算委員長政府からその費料を取寄せて、委員諸君にお渡しするようにしようと思います。そのおつものでどうかお願いいたします。なおもう十二時ですが、あなたの質問の御都合がよければここで切りまして、午後継続したいと思いますが、いかがですか。
  79. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それではこの食管の特別会計その他いろいろありますので、まだ相当時間がかかりますから、これで一旦打切つていただきたい。
  80. 植原悦二郎

    ○植原委員長 これにて休憩いたします。午後はなるべく一時より審議を継続いたしたいと思います。つとめて一時に御出席を願います。    午得零時八分休憩      ————◇—————     午後一時二十九分開議
  81. 植原悦二郎

    ○植原委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。奧村又十郎君。
  82. 奧村又十郎

    ○奧村委員 農林大臣お尋ねいたします。外国食糧の圧迫から日本の農業が非常な困難な立場に陥るであろうということは、農林大臣も認めておられる。これに対して、外国食糧と対抗して、日本農村を不況に陥らせないように、いろいろな努力をなさるということも言うておられます。その中に特に土地改良ということによつて、地方を引上げるということを言うておられますが、こういう農村の不況対策で大きく取上げられた土地改良、これは将来においてどの程度の事業をおやりになる見通しであるか。今年だけではなしに、どの程度の土地改良をやりたいという計画をお伺いいたしたいと思います。
  83. 森幸太郎

    ○森國務大臣 お答えいたします。国内産食糧が輸入食糧によつて圧迫を受けているという段階にはまだなつておりません。輸入食糧が自由になつておる立場といたしましては、日本の食糧を極力増産して、そうして外国の食糧の輸入を減らして行くということをもつて政策を続けて行きたい、かように考えております。輸入食糧がどんどん入つて来て、そうして内地の食糧を圧迫するという段階まではまだなつておりませんので、一日も早く日本の自給度を高めて輸入食糧の量を減らしたい、かようなことをもつて政策として行きたいと考えておりますが、食糧の自給度を高めることにつきましては、再三ここで御質問にお答えいたしておりました通り、土地改良もありましようし、また耕作の安全性を保持することもありましようし、各面にわたつての施策を必要とするのであります。土地改良を一つ取上げて申しましても、日本には單作地帶が相当多いのであります。この單作地帯に対しましても、一昨日お答えいたしました通り、気候等の関係から、どうしてもこれかその質を二毛作等にでき得ない、あるいは濕田等の問題もありますが、これは土地の性質を改良するという面と、また寒冷地帶に対しましては寒冷地帶に対する保温街代寸折衷保温苗代等の施策によつて生産を上げて行く、また耕地整理をやりまして、土地の交換分合等によつて生産能率を上げる、あるいは灌漑、排水等によつて土地の利用面を広めて行く、こういういろいろの面があるのであります。従つて予算の許す範囲内において極力土地改良等にも力を入れて行きたい、かように考えておるわけであります。
  84. 奧村又十郎

    ○奧村委員 私のお尋ねいたしましたのは、将来にわたつての土地改良の計画ができておるかということをお尋ねしたのであつて農林大臣のただいまの、予算に許される範囲内においてやるというお言葉は、予算で盛られただけの金でやつて行くのだ、農林省としては計画はないのだ、こういうふうにも受取れるのですが、その点重ねてお尋ねいたします。
  85. 森幸太郎

    ○森國務大臣 お答えいたします。もちろん土地の改良につきましては計画的なことが必要であります。たとえば干拓にいたしましても、所要の干拓し得られる面積がどれだけあるか、それがはたして耕地として将来つくり得ることが農業経営の上において成立つか、成立たぬかということも考慮して行かなければなりません。全国的にこれだけの土地を改良して排水、灌漑をやる、あるいは土地を二毛作田に改良するという計画は、今詳しい数字は持つておりませんが、数字が御必要とあれば後ほど詳しい計画の数字をお示しいたします。
  86. 奧村又十郎

    ○奧村委員 食糧の補給金に四百五十億円も使う、それならば、せめてその半額でも土地改良に金を出してもらいたい、これは全国農民の切なる要望である。ところが二十五年度の予算を見ると、一応土地改良費として見られる金は公共事業費でわずかに三十三億、災害には七十二億出ておりますか、これは土地改良に全部使えるとは考えられぬ。その三十三億、あるいはその他多少の金はあるでありましようが、そういうもので農村の深刻な不況を打開で貸るものとは思えない。農林大臣はこの程度のもので、土地改良が満足にできると考えておられますか。
  87. 森幸太郎

    ○森國務大臣 決してこれをもつて満足だとは存じておりません。しかし予算の均衡等の関係もあり、また公共事業と申しましても、その内容は御承知通り種々にわかれておりますので、重点主義にこの予算の割当を決定したようなわけであります。
  88. 奧村又十郎

    ○奧村委員 ただいまの御答弁ではいかにも納得ができない。しかし、これ以上お尋ねしても議論にわたりますから、これでやめておきたいと思います。  食糧輸入の計画、それから供出の価格、これらは占領政策との関係があつてやむを得ないというようなことを言われておるが、これは私は意見が違うと思うのであります、あくまでも内政は内閣の責任においてやつているはずである。昨年の米価、あるいは今後の、昭和二十五年産米の供出米価、これは内閣の責任においておきめになるのであるか、ないか、これはすでにわかり切つた話であるが、先日来の農林大臣の御答弁によると、多少まぎらわしい点がありますから、それをお伺いいたしておきます。
  89. 森幸太郎

    ○森國務大臣 もちろん政府の責任において決定するのであります。
  90. 奧村又十郎

    ○奧村委員 漁港施設についてお伺いいたしたいと思います。近年漁業のやり方がだんだん科学技術を取入れて、非常に沖合漁業に発展することになりました。従つて船もだんだん大きくなつて来ました。従つてこの船をとどめるための港漁、これがだんだん大きく完全な設備をしなければならぬということになつて来たわけでありますが、今回の予算でわずかに十一億円の漁港施設の計画になつておりますが、これでどの程度のことができるのでありますか、お伺いたします。
  91. 森幸太郎

    ○森國務大臣 漁港の改修ということは最も必要であります。また今お話のように、従来の計画をさらに拡張しなければ、漁船に対する適当な漁港がつくり得ないので、従来の方式も自然かえて行かなければならぬのでありますが、本年度の予算において現在着手いたしておりますものを、大体二十九港でありましたか、三十二港でありましたか、完成いたしまして、そうして新しく漁港を改修しなければならぬものは相当数あるのであらますが、重点的な予算の編成をいたしましたがために、この新規漁港に対しましては十分な手を盡すことができ得ないのでありますが、漸次この方面についての漁港の改修も行つて行きたい。とにかく一日も早く完成して行く、手をつけたものを早く完成して行く。あまり広く手をつけるよりも、漸次完成した漁港をつくつて行くという方針で進みたい、かように考えておるのであります。
  92. 奧村又十郎

    ○奧村委員 そこで最近一般港湾と切り離して漁港だけは別に漁港法という法律によつて、特に漁港の新築あるいは完備をやつて行こう、こういう考えがどうやら議員提出でこの国会に漁港法案が提出される趣であります。これはわれわれとしてもまとにけつこうであつて、一般商港と漁港とは全然性格が違う。この意味においてどうしても漁港法として單独の法律をつくらねばならぬと考えるのでありますが、これに対して農林大臣の御意見を承つておきたいと思います。
  93. 森幸太郎

    ○森國務大臣 漁港と普通の港湾との性質のおのずから違うことは当然でありまして、これが港湾法等によつて総合的な施設をやることは、漁港の性質をゆがめる点がありますので、單独な法律を必要と考えているのでありますが、たまたま議員諸君におかれまして、漁港法というものを議員提出で出したいというような御意見があることも承つておりますので、政府といたしましてはその法案の内容をよく検討いたしまして、御決議によつてその法案の実施に当りたい、かように考えておるのであります。
  94. 奧村又十郎

    ○奧村委員 今度税制を根本から改正されるようであります。その税制改正によつて農業協同組合、漁業協同組合などは法人税によつて、他の営利会社並に三五%の税金をかけられる、こういうことに規定されるようでありますが、これではようやく漁業協同組合、農業協同組合が法によつて出発した途上において、この税の問題について非常な難関にぶつかると考えるのであります。これは私からくどく申し上げるまでもなく、漁業協同組合、農業協同組合は、せつかく日本の農村、漁村を民主化し、また中核体として発展をさして行こう、こういうふうに法律がつくられて、実施されて来てはおるが資金難なり、その他の点において、ほとんど沒落に瀕しておる悲惨な状態にあるということは、農林大臣御存じの通り。従来この漁業団体、農業団体はこれまた申し上げるまでもなく、相当の補助金その他育成によつて成立つて来たものであります。それが今度は補助育成などはほとんど打切つて、民主的に自由にやれというのはいいが、なおその上にほかの営利会社並に三五%の税金をとる。こういうことではもうほとんどこれらの団体は今後成立して行かない。今まで低かつた二〇%の税金においても、税をかけられるということのために資金の蓄積ができなかつた。いろいろな方面に金を使い切つてしまつた。今度は三五%であれば、もうおそらくこれらの組合というものは、資金を蓄積して大きくなることはできぬ。この法人税の方において漁業協同組合、農業協同組合は別な扱いをいたすべきであると思う。この点について農林大臣の御意見を承りたいと思います。
  95. 森幸太郎

    ○森國務大臣 農業協同組合はできまして二年であります。漁業協同組合も最近発足を見たわけであります。今後漁業者に対し、また農業者に対しましては、協同組合を目標としてすべての施策を行つて行きたいと考えて、その助長をはかりたいと思つております。しかし今お話のように、これらの協同組合を助成する上においては、課税を少くするという面よりも、さらにその協同組合の事業に対し、あるいは資金面に対し、特別な考慮をはかつて、その協同組合の事業を推進せしめるということを考えるのが適切でないか、かように考えるのであります。ただいたずらに従来補助政策をとつて来たから、やはり補助政策をもつてやらなければならぬということは、今後日本のすべての経済状態から申しましても、出すものは出す、またその組合に対して政府として援護すべきものについては、あるいは資金の面、あるいは金利の面、あるいは指導の面等、これらの面については極力政府として指導して行く。こういう独立性を持たせた上において、政府は公共的の意味において、こういう協同組合を助成するという政策をとることが、妥当であると考えておるのであります。なおこの課税問題については今地方税制問題等につきまして検討を加えつつあるのでありまして、できるだけ課税の低いことにはもちろん農林当局といたしましても考えて行きたいと、かようにお答えする次第であります。
  96. 植原悦二郎

    ○植原委員長 奧村君、食糧庁長官も参りましたから、関連してお聞きになるならよろしい。
  97. 奧村又十郎

    ○奧村委員 ただいまの法人税は、すでに大蔵省の方において近日中に法律案として出されるということになつておるので、それではこれから閣議にかけられようとしておる、またかかりつつある地方税制について、農林大臣の御意見を承りたいと思うのであります。地方税制で特に漁業に関する点をお伺いいたしたい。漁業に関して、今回の地方税制の改正によつて附加価値税、漁業権税、それから固定資産税、こういうものが漁業に関してかけられて来ることになるようであります。そこでまず漁業権税と附加価値税でありますが、附加価値税は供出の農家にはかからぬ漁業に対しかかる。その漁業にかかるということは、農業においては農民は莫大な地租の税金を受けておるから、また供出その他の関係もあつてかけない。漁民は附加価値税を受ける余裕がある。こういうシヤウプ勧告にも意見が出ております。しかしその勧告は昨年の八月に出された。それから後昨年の十二月漁業法が通過して、漁業法によつてあらゆる漁業権の免許、許可に対しては免許料、許可料がかかることになつて来た。これも水揚げ総收入金額に三%の免許料、許可料がかかるということになつた。これは御存じの通り国に納めることになつた。  そういう漁業権に対しては免許料、許可料がかかる。そこへ持つて来てこの税制によつて附加価値税がかかる。また漁業権税がかかる。これは二重三重になるものであります。シヤウプ勧告についてはこの漁業権に対する免許料、許可料という規定をやつた漁業法の通過しない前であつたから、その勧告は読めるとしても、勧告後の新しい事態においては、二重三重の税金ということはとうてい首肯できない。附加価値税は別としても、まず漁業権税は特にこれは撤廃すべきであると思う。権利に対する税である。これが国と府県と二つ一緒にかかる。こういうことになつておるのでありますから、これは当然かけるべきでない。漁業権税は撤廃すべきである。こういうふうに一応考えるのでありますが、これに対する農林大臣の御意見を承りたいと思います。
  98. 森幸太郎

    ○森國務大臣 この税制につきましては今検討を加えられておるのでありますが、シヤウプ勧告案が示しました内容は、漁業権税等が賦課せられるということを考えての勧告でありますので、その後できたのであるから、これが二重課税になる、いわゆる附加価値税というものと不合理になるということは、私は考えられないと思うのであります。ただその課税の率につきましては、大いに検討を要するものでありますけれども、シヤウプ勧告はそういう実態をつかまえられた上での勧告でありますから、その後偶然に起つた問題ではないと解釈できると思います。
  99. 奧村又十郎

    ○奧村委員 これははなはだ納得の行かぬ御答弁でないかと思います。シャゥプ勧告は全部が全部その通りにわれわれが実施すべきものとは考えていない。少くとも内閣の責任においてやられるものと私は考えておるのであります。先ほども農林大臣はそのような御答弁をなさつたのであります。それで二重課税ということが明らかにわかりながら、しかもシヤウプ勧告には漁業に対する免許料、許可料は一言も触れておらぬにもかかわらず、ただシャウプ勧告に書いてあるからそれを実施するのだ、こういう御答弁では不満足であります。重ねて御答弁をいただきたいと思います。
  100. 森幸太郎

    ○森國務大臣 重ねての御質問でありますが、決して私はそういう不合理な課税ではないということを考えております。
  101. 奧村又十郎

    ○奧村委員 今まで船舶の取得税あるいはその他いろいろな不動産の取得税、そういうものは固定資産税などと二重課税になるからやめるのだということは、シャウプ勧告によつてやめておる。すべて二重課税というものは極力避けるようになつておる。今度の勧告案によると、ほとんど二重課税というものは一つもない。ところが漁業においてのみ、漁業権に対して国の方で免許料、許可料を水揚げ総收入金額に三%かける。それから地方において漁業権税に対してまた相当の税をかける。明らかにこれは二重課税である。その二重課税ということをお認めになるかならないか、お伺いいたします。
  102. 森幸太郎

    ○森國務大臣 漁業権に対する課税と許可に対する課税は、決して私は二重とは考えてはおりません。
  103. 奧村又十郎

    ○奧村委員 漁業法には漁業権の免許、漁業権の許可に対して、免許料許可料を国に拂うというふうに書いてあります。それでは今度の府県における漁業権税はどういうものにかけられるのでありますか。
  104. 森幸太郎

    ○森國務大臣 漁業権税はその許可を受けました漁業の種類によつて、その権利を獲得したことについての課税であります。初めの免許はいわゆる漁業を営むというその資格をつくるについての免許料であります。
  105. 奧村又十郎

    ○奧村委員 だんだん話困つたことになりました。しかし私は農林大臣がこういう漁業の面についても、所管大臣としていま少し御理解を持つて力を入れていただきたい。これ以上言えばもう議論になりますので申しませんが、先ほどの御答弁は全然なつておらぬ。最後に農林大臣お尋ねいたします。これは言いにくいが申しますが、漁業権税は漁業にかかる、免許料、許可料は漁業権の免許に対してかかる、一つもかわらぬ同じ税金です。それが違うことがあつたらお知らせを願いたい。それで、もしそうであるとするならば、農林大臣は閣議においてあくまで漁業権税はやめてもらうように努力願いたい。御所信をお伺いたします。
  106. 森幸太郎

    ○森國務大臣 先ほどお答えいたした通りであります。
  107. 奧村又十郎

    ○奧村委員 漁業法はもうすでに実施されております。漁業法によつて與えられる漁業権に対して免許料、許可料がかかる。今度の地方税制において漁業権税のかかるのはやはり漁業権にかかるはずであつて、同一の権利にかかるはずであるが、違いますか。明らしにしていただきたい。
  108. 森幸太郎

    ○森國務大臣 漁業権獲得のために免許を受ける、いわゆる漁業者としての資格をとるための免許料でありまして漁業権税はその漁業を営む種類によつての漁業権税であります。
  109. 奧村又十郎

    ○奧村委員 農林大臣は昨年末に通過した漁業法の内容を十分おわかりにならぬのではないかと思う。漁業権に対して毎年免許料、許可料を拂うということになつておる。ただいまの御答弁によりますと、漁業の資格者に與えられる、同じことであります。資格者といいますけれども、その漁業権の免許に免許料、許可料をかける。これ以上申し上げてもいたしかたがありません。しかしまだ閣議にかかつておらぬようでありますが、漁業権税はやむを得ないとしてお認めになるのであるか、あるいはこの不当な二重課税に対しては絶対反対をなさるのであるか、この態度を承つておきたい。いかにシヤウプ勧告に書いてありましようとも、今の予算によつて明らかになつておるように、日本の実情に合わぬという点においては相当けつてある、あるいは押えてある。私は不当なことについて農林大臣がこれを認めるというその態度については解しかねる。閣議において漁業権税だけは反対するか、賛成するか、大臣の態度をお伺いいたします。
  110. 森幸太郎

    ○森國務大臣 閣議の進行程度、閣議に対する国務大臣としての態度について、あらかじめ申し上げることはできません。
  111. 奧村又十郎

    ○奧村委員 ちようど大蔵大臣がおられますから、水産に関する今回の税制について簡單にお伺いいたしたいと思います。シヤウプ勧告によりますと、漁業に対する所得ははなだ浮動であるから、五箇所くらいの平均課税をいたしたらどうか、こういうことが出ておるのでありますが、今回の税制改正において漁業の所得に対してはどういうふうにおとりになるか、お伺いいたします。
  112. 池田勇人

    池田國務大臣 漁業の所得につきましては、奧村君御承知通りに、今から十年くらい前までは過去三年間の平均所得で課税したことがあるのであります。しかしその方法は結果から見ますと、実情に合わぬ点がありますので、改正いたしたのであります。シャウプ勧告案の漁業所得につきましては、私不敏にしてよく覚えておりません。しかし私の考えをもつてすれば、漁業において五年間の平均所得でやるということは、今までの実績から考えまして、不適当ではないかという気持を持つております。しかしこの点は事務当局の意見をまだ十分私聞いておりませんが、私見といたしましては、漁業について過去五年間の平均というようなことは、三年間の平均の場合でもやつかいだものであつたのでありますから、私見といたしましてはシヤウプ勧告案にあろうとも反対でございますが、事情をよく聞きましてから、またお答えしてもよろしゆうございます。
  113. 奧村又十郎

    ○奧村委員 農業においては、農業專従者の控除を非常に大幅に認めておるが、今回の税制改正において、漁業者の家族專従者は農業と同じような取扱いをなさるのかどうか、お伺いいたします。
  114. 池田勇人

    池田国務大臣 專従者の控除は農業所得に限つたことばございません。ほかの業種でも原則として取扱います。
  115. 奧村又十郎

    ○奧村委員 漁業に対するはつきりした御方針がまだ立つておられないようでありますが、それでは変動所得として一時的に、たとえば大漁があつた、あるいは一時的災害などで大欠損があつた場合、この変動所得の中に漁業が入るものと思うのであります。従つて特に今回法律案に出ておるところの、欠損の繰越し、繰延べ——繰りもどしと申しますか、この規定の中に漁業が最も適合すると思うのですが、この規定によつて漁業を扱つて行かれるかということをお伺いいたします。
  116. 池田勇人

    池田國務大臣 前年度の欠損に対してまして、繰りもどしの問題は、これは変動所得とは違つた観念から来おるのであります。漁業所得でありましようとも、普通の営業所得でありましようとも、全般の問題であるのであります。変動所得として考えておりますのは、今までの大体譲渡所得、こういうふうなものを主として考えておる次第であります。
  117. 奧村又十郎

    ○奧村委員 先ほど農林大臣にもお尋ねいたしたのですが、農業協同組合、漁業協同組合は今回の税制改正によつて、営利会社と同じように三五%の法人税がかかることになりましたが、これはいまだかつて水産団体、農林団体にこういう過重な税金がかかるということはなかつたのであります。ようやく今これから発足しようというこれらの組合に、この税金ははなはだ重過ぎると思う。それでこれは非課税の法人という取扱いをなさるはずでありますが、この中にこの両団体をお入れになるお考えかどうか。
  118. 池田勇人

    池田國務大臣 農業協同組合、水産協同組合につきましては、従来は沿革的にはある程度安い税率で行つておつたのであります。昭和十五年に特別法人税法を施行いたしましたときは、大体法人税の申分程度の税率だつたと思います。法人税がだんだん上つて来るにつれて、特別法人税も急ピッチに上げて参りました。しこうして今回の税制改正におきましては、今の中間法人であるこういう法人のみならず、今まで全然課税しておりませんでした、いわゆる公益法人におきましても、その経済行為につきましては、一定の制度のもとに課税することにいたしたのであります。従いまして従来課税しておりました中間法人に対しましての課税を今回はずすということは、これは逆転でございまして、免税団体に置く気持はありません。
  119. 奧村又十郎

    ○奧村委員 シヤウプ勧告には、同族会社というものに対して、別の税の取扱いをするということを勧告しておりますが、この同族会社を勧告の記載通りに規定して、別の取扱いをたさるということは、いつからおやりになりますか、またやるかやらぬかお伺いいたします。
  120. 池田勇人

    池田國務大臣 同族会社に対しますの課税の方法は、大正十二年から特別の方法をとつて来ておるのであります。御承知通り加算税というのがありますが、同族会社に加算税という規定がありますのは、それであります。従いまして今後におきましても、同族会社につきましては、留保所得等につきまして特別の課税方法を続けて行きたいと考えております。
  121. 奧村又十郎

    ○奧村委員 従来の同族会社というものの見方と、シヤウプ勧告による同族会社という見方と、多少食い違いがあるように考えられます。それで従来の同族会社という見方を、勧告従つてかえるかどうかということを伺いたい。
  122. 池田勇人

    池田國務大臣 従来の同族会社の規定は、半額以上親族、使用人等が持つている場合を言つておつたのであります。しかしこれが適用につきましてはかなり困難な問題があります。たとえば甲という会社の三分の一の株を私が持つている、しかしてまた別に池田株式会社がありまして、その池田株式会社の株もまた三分の一持つているとします。私が池田株式会社の実権を握つている場合には半分以上としておりますが、池田株式会社というものに対して、私が三分の一しか出資がないという場合に、同族会社の定義をどうするかとか、いろいろ問題があるのであります。従いまして今回のシヤウプ勧告案につきましては、その適用につきまして今までよりもつと詳しく、あるいは広げるような気持で勧告しておられたと考えておるのでありますが、大体そういう方向に向つて行くべきではないかという気持を持つております。
  123. 奧村又十郎

    ○奧村委員 午前中ちよつと伺い漏らしたのですが、銀行の経理に関して貸倒れ準備金をある程度認めた方がよかろう、こういう勧告でありますが、私はこれは賛成であります。政府はいつこれを実施なさるかどうか、お伺いいたします。
  124. 池田勇人

    池田國務大臣 貸倒れ準備金につきましては、なかなかやつかいだ問題があるのであります。従来銀行の貸倒れ準備金といたしまして、法制的に認めたのはございません。銀行におきましても他の事業会社と同様に、貸倒れが起つた場合、その事業年度の損金にしておるのであります。従いまして銀行はある程度の準備金は所有有価証券の格下げによつてつているのであります。しかるに所有有価証券が、ただいまのところでは債務償還によつてなくなつて参ります。たとえば九十八円の国債を普通の銀行は、大体これを九十四円五十銭から九十五円に評価減している、それは、国債につきましては五分の評価減を見ている関係上そうやつておるのであります。従いまして今後この国債を九十八円なりあるいは百円で事前償還いたしますと、その含みが出て参ります。それをただちに課税の対象にいたしますと、非常に酷になつて参りますから、そういう今までの実際上の貸倒れ準備金の分は、私はそつとしておいて貸付金の準備金にしたらどうか。そしてまたアメリカの方におきましては、預金保険制度がありまして、預金の一定額を積立てて預金保險にしている制度があります。そういう制度の趣旨もくみまして——今預金保險制度を設けるわけではありませんが、そういう趣旨をくみまして、一定限度の貸倒れ準備金を課税上保留することを認める方法をとつた方がいいと考えまして、検討いたしております。しからばどの程度の貸倒れ準備金を認めるかという問題になりますと、ある人は預金額の五%、こう言つておりますが、これは私は多過ぎると思います。まあ大体三%から二%ぐらいが適当じやないか。しかもまたその積立て方法は、やはり十年間ぐらい、たとえば三%なら三%で行くような方法で持つて行つたらどうかという気持を持つているのでありますが、ただいま別の関係で審議いたしております銀行の配当問題、あるいはまた銀行の積立ての問題、たとえば資本金に対してどのくらいの積立てを毎年やつて行くか、あるいは預金に対してどれぐらい積立てをやつて行くか、こういう問題を今審議いたしまして、近日中に国会に提案する考えでありますが、そういうものがきまりましてから後に、それより別個の貸倒れ準備金という制度をとつて行きたいと考えておるのであります。従いまして今はつきりどれだけの貸倒れ準備金ということは申し上げることはできませんが、一定の積立金を他の事業会社よりも多くやらせて、その残りにおいて貸倒れ準備金の限度等を検討して行きたいと考えております。
  125. 奧村又十郎

    ○奧村委員 債務償還を行う際に、市中銀行手持ちの国債からまず先に債務償還をやる、こういうお話でありました。この償還された金はひもつきでもつて金融債券を買わせる、こういうことになるように承つておるのでありますが、これはその通りでありますか。
  126. 池田勇人

    池田國務大臣 債務償還をまず市中銀行からとはつきり申し上げたわけではございません。預金部あるいは市中銀行、こう考えておるのであります。日本銀行の手持ち国債はなるべくあとまわしにしたいというのが私の考えで、預金部が先になるか、市中銀行が先になるか、それははつきりいたしません。そのときの情勢によつてやりたいと思います。しこうして国債を償還する場合に、一般市中銀行にひもつきという——このごろひもりきという言葉が非常にはやつておるようでありますが、これをひもつきで償還さすという條件は原則としてつけたくないと思います。先般来いろいろ預金に対して貸出しの率が多いというような議論がある、そのいい惡いは別問題といたしまして、銀行経営者としては金融債券を引受けた方がいいか、あるいは直接の貸付に出動した方がいいか、それは銀行にまかせていいのではないかと思います。
  127. 奧村又十郎

    ○奧村委員 私はこのひもつきを特にお伺いしたのは、この銀行手持ちの国債が三分半ないし四分、しかもかなり額面を割つて帳簿価格は安くなつておる、それを償還されると、この分の資金コストはかなり安いはずである。これほひもつきで金融債にまわさせる。この金によつて銀行が金融債を持つということになれば、金融債の利率はかなり安くできる、こういうことでその考えを持つのですが、金融債はそういうことにからんで、かなり安く利率をきめられるのではないか、利率は今どう考えておられますか。
  128. 池田勇人

    池田國務大臣 ひもつきでやつて一般市中銀行を拘束するということは、私はとるべき策ではないと思います。やはりこれは経済の原則によつて動くのであります。有力なる貸付先がありますれば、その銀行は直接貸付に参ります。またこれだけの余裕金があるとすれば、金融債を引受けることに相なると思うのであります。その点はやはり銀行独自の考えでやつて行くのが至当と考えるのであります。ある銀行が金融債をちつとも引受けずに、貸付ばかりの方に行つたという場合におきましては、広い監督の立場から指導はいたしておりますが、国債を償還するのだから、お前の銀行はこれだけ金融債を引受けろというふうなことは、私は邪道と考えておる次第であります。
  129. 奧村又十郎

    ○奧村委員 食糧管理特別会計に関して農林大臣及び食糧庁長官にお伺いいたしたいと思います。最近米の生産者の供出価格と消費者の価格との間に、非常に差額が多過ぎるという声が高まつておるようであります。それで調べてみたのでありますが、この二十五年度の予算によつて食管の会計を見ますと、なるほどそういうことが考えられる。予算書の百三十六ページを見ますと、食糧の買入れ代金は、前年度よりも五十億円少く買入れておる。それから売上げの方は前年度よりも二百十七億円高く売上げておる。しかも繰越しの食糧は、前年度と比べると七十億円よけいになつておる。これは要するにその供出価格と消費者価格のさやが前年度と比べてそれだけ広くなつておる、これは約三百五十億円になりますが、そういうことになるわけであります。しかもまた食糧公団の方においてもかなりのさやが見られる。合計いたしますと、食糧管理特別会計で生産者の供出価格よりも約五、六百億円経費を見、また公団の方で四百五十億円、約千億円というものは、供出の買收価格よりも余分の利益と申しますか経費と申しますか、そういうものを見込んでおるということになるのであります。予算書によりますと、ただ金額だけが合計で書いてあつて数量は一つも書いてない。また單価も書いてない。この点ひとつ買入れ価格の單価、それから消費者に売り上げる單価、つまり食管から公団へ渡す單価、公団から消費者へ渡す單価及び数量を簡單にお伺いいたします。
  130. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 私から御答弁申し上げます。生産者価格と消費者価格の差額の問題は、従来もいろいろ論議をされて参つたのでありますが、その差額の中には、生産者に還元される性質のものも実は含んでおります。たとえば早場米奬励金であるとか、超過供出奬励金、そういう性質のものも含んでおるわけであります。なおそのほかにいわゆる中間経費としてどうしても計上せざるを得ない金額、運賃であるとか保管料であるとか、さような性質のものもあるわけであります。この差額の中には生産者に還元される部分と、しからざる部分と二者にわかれるのでありまして、ただいまお話のございました点につきましては、新米価についてその内訳を詳細につくつた資料を提出いたしまして、それに基いて御説明を申し上げた方がよかろうかと思います。御了承願います。
  131. 奧村又十郎

    ○奧村委員 あらかじめ一昨日も資料の提出を要求してあるのです。御用意ができておるはずと思うのですが、ただいま承りますと、非常にさやがあるが、そのうち生産者に拂いもどす金かある、しかし早場米奬励金の予算は六十億ですか、それから超過供出の金にしても何ぼでありますか、大したものじやない。あなたは両方にわかれると申されますが、さやの千億円に対して、生産者への拂いもどしは百億にならぬはずです。その明細をお話願いたいと思います。
  132. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 二十五年度産米の中間経費を玄米一俵当りについて申し上げますと、政府関係におきましては俵当り百九十二円十六銭になつております。なお公団の配給経費は百五十七円八十四銭という内訳になつております。
  133. 奧村又十郎

    ○奧村委員 先ほど私のお尋ねしました生産者に還元する価格、生産者への還元は早場米奬励金だけと思うのですが、超過供出の奬励金というものは、予界のどのページに、どれだけ金額が載つておりますか。
  134. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 生産者に還元されると考えられますものは、超過供出の買入れの分と、早場米奬励金、それからバツク・ペイの金額、かようなものであります。先ほど申し上げました百九十二円十六銭と申しますものは、これは純然たる中間経費を申し上げたのであります。と申しますと、集荷手数料、倉庫の保管料、政府の運賃、それから特別指定倉庫の加算額、かようなものを合計いたしますと、百九十二円十六銭となるわけでございます。これが純然たる中間経費でございます。それから年産者に還元される性質のもの、超過供出奬励金あるいは早場米奬励金、バツク・ペイの金額、かようなものを総計いたしますと、俵当り二百六円九十三銭になります。そういたしますと、政府の間における価格差は俵当り二百六円である。これは生産者に還元される性質のもの、それから純然たる中間経費と申しますものが百九十二十円六銭、合せました約四百円程度のものが中間経費になるわけであります。そのほかに食糧配給公団の経費といたしまして、俵当り百五十円程度のものがある。かような構成になつております。
  135. 奧村又十郎

    ○奧村委員 私は提出された予算書で見ておるのですが、この予算の百三十五ページ歳出の経費の中で、早場米供出奬励金の六十億円、それから価格差追拂い五十二億円この価格差追拂抑いというのは、超過供出のことですか、パツク・ペイですか、この二つだけが生産者に還元されて、そのほかには生産者に還元される項目はどこにも見当らぬのですが、項目があつたらお知らせ願いたい。両方合計して百億円余りです。
  136. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 商品費の中に生産者に還元される性質のものも全部入つております。
  137. 奧村又十郎

    ○奧村委員 先ほど約千億円の経費がかかつておると申し上げておるのですから、商品費というものは、生産者に全部渡つておる。だからあなたの御答弁は答弁になつておらぬ。
  138. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 商品費の中にこの差額が入つております。結局生産者にその金が返つておる。こういうことを申し上げておるのです。
  139. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それでは重ねて申し上げますと、その商品費全体、要するに政府の生産者に拂つた金から公団と食管とで、経費が約千億円近く出ておる。こう申し上げております。その千億円の経費というのは多過ぎる、そこであなたの御答弁でほその経費の中から生産者に返しますと言われる。返す金額というものはこの予算書で見ると、六十億円の早場米の奬励金と価格差の追拂いの五十二億円以外には、この項目には出ておらぬ、ほかに出ておるたらお知らせ願いたい。——お答えがないようでありますから、それはあとから申していただくことにいたしまして、食管特別会計は公団以外に物を売られるのですか。売るとすれば今度の予算でどれだけの金額をどこへ売られるのか。
  140. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 公団以外川に売ますものは、原材料等のものにつきまして公団でないものに売るものがございます。これは大体二百億程度見込んでおります。
  141. 奧村又十郎

    ○奧村委員 先ほどの御答弁で話を進めたいのですが、御答弁がありませんから、少し話か先に延びキすか、二十五年度の予算を見ますと食糧の買入費が——これは昭和二十二年と二十五年とを比べると、この三年の間に食糧の買入費は三倍に上つておる。ところがただいまあなたの言われた運搬費、保管料、米麦加工賃、こういうものは運搬費において五倍上つておる、保管費においては五倍半に上つておる。それから米麦加工費というのは百三十億別に出て来た。これは食糧の買入費と比べると特にこれだけふえておるが、これはどういうわけですか。それから米麦加工費についてぬかの売却はどの項目に入つておるのですか、お伺いいたします。
  142. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 ぬかは現在の加工契約においては加工業者に渡すことにいたしまして、その金額は加工賃の方から差引きまして、その差額を加工賃として拂うという建前をとつております。
  143. 奧村又十郎

    ○奧村委員 ぬか代を差引いてなお百三千億の米麦加工費を拂う、これは少し研究してみなければなりません。もう一つ予算書の百三十五ページ、それから特に農林省の明細書百四十五ページ、今年の人件費、事務費は昨年と比べて四億円の減になつております。しかし職員の定員は同じであります、月給を引下げられるのであるかどうか。
  144. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 食糧庁の定員は昨年に比較いたしまして人数が減つております、その関係です。
  145. 奧村又十郎

    ○奧村委員 予算書で見ますと、前年度と定員がかわつておりません。予算書の百三十五ページをごらんになりますと二万八千六百四十人、これは食管特別会計です。両方ともかわつておりません。そうして人件費が減つておる、この点の御説明を願います。
  146. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 前年度は行政整理で退職手当が計上されております。
  147. 奧村又十郎

    ○奧村委員 前年度の予算に、退職手当があらかじめ計上せられておつたと私は考えられぬのでありますが、その点はどうですか。
  148. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 前年度の予算におきましては、当時行政整理をやるということで、普通の年よりは大きな予算が組んであつたのであります。すなわち全收の三箇月分というものが、普通の率で行く退職金のほかに計上されておりました。それが今度なくなりましたから少くなりました。
  149. 奧村又十郎

    ○奧村委員 ほかの予算においては退職手当は別の項目に入れてあるはずですが、食管のこの分だけは特に給料の中に退職手当を見ておられるのか。ほかのどの予算を見ても、定員が同じであれば幾分か給料が上つておるはずです。それが減つておるというのはどうもはつきりいたしません。
  150. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 大体退職手当の予算というものは、手当の中に計上されてあるのであります。もう一つ別のことを申し上げますが、来年の——これは一般会計、特別会計を通じたものでありますが、行政整理後の定員が整理されましたけれども單価が上つておる、そういうところがございまして、必ずしも前年度の予算とすぐ対比しましてどうというふうには参りません。
  151. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それでは食管の方で、買入れと売上げの数量の中に相当の損耗があるはずです。精米、精麦等の歩減りもあり、保管中の盗難腐り等もある。この数量をお伺いいたします。
  152. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 予算上は三%のロスを見ております。
  153. 植原悦二郎

    ○植原委員長 総理大臣が御出席になりましたから、総理大臣に対する質疑をこの場合継続したいと思います。午前中におきまして関連質問として留保された質問があります。これを許します。林百郎君。
  154. 林百郎

    ○林(百)委員 午前中の尾崎議員総理に対する質問の中に、重大な問題がいろいろ含まれておりますので、その点を明らかにしたいと思います。簡單に五つほど総理にお伺いしたいと思います。簡潔に申し上げますから、記憶にとどめておいていただきたいと思います。  第一には、尾崎議員総理に対する質問の中で、国内に單独講和全面講和の二つの意見が対立しているようであり、このことは講和を促進する上に対外的に好ましくないと思うがどうかという意味の発言があつたと思うのであります。これに対してわれわれは明らかに、講和の方式については現在二つの意見が国内にあると思うのであります。一つはわれわれの主張している全面講和、四大国の協和に基く全世界的諾国家との全面講和、これによる民族の完全な独立をこいねがう意見と、もう一つ單独講和——マジヨリテイ・ピースというような言葉もあり、これは要するに單独講和一つの形だと思いますが、單独講和によつて、ある特定国と非常な隷属的な方向に進もうとする危險が多分に含まれておる單独講和、この二つの意見がはつきり日本の現在の国内には対立して存在しておると思うのであります。これはいなめない事実だと思いますが、この点について総理の見解をお聞きしたいと思います。  れから第二としましては、日本共産党暴力革命を意図し、破壊主義的である。この例として下山事件あるいは三鷹事件を起したというようなことを言つておるのでありますが、わが党は一度も暴力革命を主張したこともなければ、破壊主義的な行動に出たことむない。むしろこのたびの下山、三鷹事件については、これは警察国家を実現しようとする一部の反動分子の隠謀ではないかということすら、世間では言われているのでありますが、総理はこの点について下山、三鷹事件が、明らかに共産党が行つたというようにお考えになつておるかどうか、この点が第二であります。  それから第三としては全面講和を主張する者は講和を邪魔する者である。しかも全面講和に対してはむしろソ連こそが妨害しておるというようなことを聞くのであります。このことにつきましては、われわれが常日ごろから主張しておりましすように、ソ連としては常に全面講和を主張しておるのであります。このことは外相としての総理も記憶にあると思いますが、昨年の革命記念日には副首相のマレンコフが、ソ連の五大国策の一つとして、日本全面講和をはつきりと主張しておるのであります。またヴイシンスキー外相も、極東委員会のパニユーシキン代表も、ソ連は常に日本との全面講和を求めているということを主張しておるのでありまして、決してソ連日本との全面講和を妨害しておらないと思います。この点について外務大臣としての総理の御意見を聞きたいと思うのであります。  第四として、右の尾崎議員の質問に対する総理の答弁としては、全面講和を主張する者は、結果的に言えば講和を望んでおらないことになるということを主張されたのでありますが、なぜ全面講和を主張する者が講和に反対することになるのか。全面講和の主張というのは、何もわが共産党のみが主張しておるのではないのでありまして、たとえば東大の南原総長にしましても、あるいは実業界の佐藤帝銀社長らにしましても、真に日本の自由と平和と独立を確保するためには、やはり全面講和よりほか道はないということ上は、日本の完全なる独立を望むあらゆる人々が主張しておるのであります。もし全面講和を主張することが、むしろ講和を妨零することだということになるたらば、これらの人々はすべて講和を妨署するということになるのかどうか、この点も首相の信念を問いたいと思うのであります。  次に第五といたしましては、これも尾崎議員の発言中にあつたのでありますが、共産党自衛権を要しないがごとき言辞を弄しておるという意味のことを言われたのであります。このことにつきましては、わが党といたしましては、單独講和こそ、それを裏づける自衛権を持つために、必然的に戰争挑発的な軍事協定を結ぶよりほかない。むしろこれは実質的には自衛権の放棄になり、他国に隷属する結果になるのだ。われわれの主張するごとく、全面講和によりまして、その裏づけとして世界の民主的な勢力とのかたい提携によつて、平和的な安全保障の方法による自衛権こそが真の自衛権である。いわゆる單独講和自衛権というのは、軍事協定に結び、そのことがわが国を他国に隷属させろ結果になるから、こういう意味の自衛権には反対だということを主張しておるのであります。そういう意味で、わが党としては決して自衛権を要しないというような言辞を弄するものではなく、むしろ單独講和こそが実質的には自衛権を放棄することになるのではないかということを主張しておるのであります。この点について総理のお考えを聞きたいと思うのであります。  以上が総理に対する御質問でありますが、結局講和の問題につきましては、わが党の常に主張いたしますところは、第一にはポツダム宣言の嚴正実地を基本とする公正な全面講和の促進、これによる完全なる自主権の回俣。誰和條約が締結された後にはすみやかに全占領軍の撤退を要求すること。第二としては、米、英、ソ、中国の四大国の協和を基礎とすと世界の平利愛好国によろ日本の安全保障。ポツダム、カイロ、ヤルタの諸協定による日本領土の帰属問題の公正な、しかもすみやかなる解決の要求。第三としては、日本軍事基地に対しては絶対反対している。これがわが党の主張であります。このわが党の主張に対して尾崎議員が、故意か、あるいは過失かしりませんが、これを歪曲するよ方な質問を総理にし、総理もまた一脈それに通ずるような答弁がありましたために、この際わが党といたしましては、わが党の立場を明確にすると同時に、総理所信を問うために関連質問をする次第であります。
  155. 吉田茂

    吉田国務大臣 全面講和單独講和と対立しておるということは、現に対立いたしておるのであろうと思います。しかしながら私は、この全面講和單独講和いずれが可なりやということは、一言も言つておらないのみならず、繰返して申しますが、なるべく早い機会に講和をするがいい、その講和は必ずしも全面講和たることを、必要としない、いずれにしても日本との間の戰争関係を終了する国ならば、喜んでその国と終了すべきである、こう私は信ずるのであります。  それから全面講和ソ連云々というお話がありましたが、これはソ連お尋ね願いたいと思う。私は、ソ連にかわつて、あるいはまたその他のものにかわつて全面講和ソ連といかなる関係にあるかということを、ここで申し上げる自由がありません。  それから自衛権云々のこともお話にありましたが、これは絶えず申す通りに、自衛権が現に問題になつたときは他の意見も述べますが、單に観念上の問題とか法理論に対するお答えはごめんをこうむります。
  156. 林百郎

    ○林(百)委員 二点ほどお尋ねしたいと思います。先ほどの総理の御答弁の中に、非常に重要な発言があつたと思います。全面講和を必要としないということをはつきり明言されましたが、これが総理の御信念なのかどうか。総理は、現段階においては講和の問題について、まだ自分の所信なり態度を言明する段階ではないと言つて、答弁をのがれておりながら、実は全面講和拒否という意図があるのではないかと、われわれは考えておつたのでありますが、ただいまの答弁の中に、はつきり全面講和を必要としないということを言明されているが、これが総理の御信念と考えていいかどうか、これを伺いたいと思います。  第二点は、ソ連のことについてはソ連に聞いてくれと言いますが、あなたは日本の国の外務大臣であります。しかもソ連は、日本講和については最も大きなインタレストを持つておるところの、四大国の一つであります。この動向について、これがどういう動向を持つているかということを私が質問する際に、それはソ連に聞いてくれと言うのは、いかにも外務大臣としては無責任だと思う。あなたは中国に対しては、侮辱的な言辞とわれわれがとれるような意味のことを言われた。いわゆる中国は今もつて国状は安定しないというような意味のことを言い、ソ同盟に対しては、ソ連のことは私は知らぬということになれば、これは明らかにあなたは全面講和を拒否する方向に進むものではないかというように思いますが、このソ同盟の動向について、あなたはどう考えていられるか、一国の外相としての責任ある答弁をお伺いしたいと思うのであります。
  157. 吉田茂

    吉田國務大臣 私は、施政演説の中において申した通り全面講和まことに望ましい、しかしながらこれは客観情勢によることである。こう申しておるのであつて、必要でないとも、必要であるとも、何とも申さないのであります。全面講和が望ましいということははつきリ申しております。またソ連の問題については、今日日本としては外交に対する自由なる報道ができないときでありますから、言論は差控えます。     〔林委員「答弁にならない」と呼び、その他発言する者多し〕
  158. 植原悦二郎

    ○植原委員長 靜粛に願います。奧村又十郎君。
  159. 奧村又十郎

    ○奧村委員 総理大臣にお伺いしたいと思いますが、今回予算が法律通りに出されましたので、これはまことに喜ばしいことでありまして、この法律通りに出されたということについては、政府の努力を非常に多といたすものであります。従つてわれわれも、予算委員会本来の使命を果して、りつぱにやりたいと思つて連日努力しているわけであります。ところがこの予算にからみまして、非常に重大な関係のある税制の法律案がまだ一つも出ておりません。今回の予算は特にシヤウプ勧告に基いて中央、地方に対して非常に根本的な税制の改正をやる。この税制の法律案がされずには、この予算の審議ははなはだ困難であります。承りますと、国の方は大体近いうちに法律案が出されるそうでありますから、これは別といたしまして、地方の税制につきましては、まだほとんど案がはつきり、まとまつておらぬということであります。予算委員会としては、少くとも今月中には本会議で審議をまとめようとするまで努力をしておるのでありますが、今の状態でありますと、かんじんの地方税制の法律案が間に合うかどうかということを不安に思うのであります。せめてはつきり大綱だけでもきまつておればよろしいが、それもはつきりしておらぬ。これでは真実われわれは予算審議ができにくい。こういう事情でありますので、一体地方税制の法律案はいつお出しになるか、見込みをお伺いいたします。
  160. 吉田茂

    吉田國務大臣 これは私ははつきり記憶がありませんガ、近日中に出せる手はずであり、すでに閣議を通つているというふうに聞いておりますが、しかしこれは調べてお答えいたします。
  161. 奧村又十郎

    ○奧村委員 総理大臣の非常にすなおな御答弁は私はありがたいと思いますが、これはしかし国民としてほ悲しい言葉であります。総理大臣が閣議をおまとめになるはずだと思うのですが、閣議で通つたそうだとかいうようなお言葉では、閣議に出ておられなかつたことになる。普通の税制ならともかくも、この地方自治を実現させるための根本的な改革でありますこれほいろいろな方面に非常に深刻な影響を與える。そこでこれは本多国務大臣だけの力で行くものではありません。各省にまたがる問題であります。各方面に影響のある問題であります。総理大臣が各大臣の間に立つてまとめにならなければ、この案は実行できないと思う。それを一体どなたにまかせてこれをおやりになるつもりであるか。本多国務大臣もどうやら新聞を見ますと、京都の方へ応援演説に行つておられる。そうすると一体この重大な法律案をだれがつくつておられるか。一刻も争うのであります。予算委員会としては、委員会の討論を二十三日にやろうというが、いまだにその状態では、法律案は二十三日には間に合わぬ。そういう状態でわれわれは審議をお断りしなければならぬ。この点につきましては、はなはだ不満足でありますが、総理大臣は、この地方税制というものを、どなたにおまかせになつておられるか伺いたい。
  162. 吉田茂

    吉田國務大臣 これは自分で担任しております。今愼重審議をしているわけです。
  163. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それでは二十三日の予算審議までには間に合いますかどうかをお伺いいたします。
  164. 吉田茂

    吉田國務大臣 なるべく間に合わせますが、むろん間に合うと思います。
  165. 奧村又十郎

    ○奧村委員 世評によりますと、吉田総理大臣は非常に人気があるが、少しなまけておられるのが一番の欠点だということであります。シヤウプ勧告による今度の地方税制の根本的な切りかえは、おそらく見ようによつてはいまだかつてない重大な法律案です。しかも各省にまたがる。そこでその地方税制というものは一体だれが行うのか。今まで国税関係については昔からの伝統の税務署とい与力があつてうまく行くから、勧告書もうまく実施されるでしよう。ところが地方税制においては、地方における税務課というものは二、三年前に初めてできたものでほとんど税金に経験の浅い者ばかりがやられる。しかも中央よりも地方税制においては勧告書が日本の実態に合わぬ点がはなはだ多い。これを合うようにいろいろ調整をやろうとすることについては、総理大臣みずからお立ちになる以外に道がない。この総理大臣態度に対して私ははなはだ残念なのであります。特に日本の現実は、はつきりと外国に対して自立ができるという態勢を示さなければならぬときに、この総理大臣の御態度は私ほいささか不満であります。しかしこれは私見でありますから、御答弁は無用であります。そこでこの税制については非常に反対があり、また申し上げれば非常に時間を食いますので申し上げませんが、今早急にこの法律案をまとめて実施するということは危險であります。現在まだ閣議でまとまつておらぬ、それをここ十日やそこらできめて実施するのは危險であります。一年間はこの実施を延ばしたらよかろうと私は思いますが、総理大臣の御意見を承りたい。
  166. 吉田茂

    吉田國務大臣 御意見は御意見でありますが、政府としては愼重審議の後に実施するつもりでおります。
  167. 奧村又十郎

    ○奧村委員 シヤウプ勧告案は去年の八月に出されております。それが今愼重審議ということにおいても私は不満でありますが、これはもうやめておきます。  次にドツジ案によつて昨年から政府政策が均衡財政を中心として非常にかわつた。これは吉田内閣の責任においてやるとはつきり断言せられた。この態度はまことに私はけつこうであると思います。内政におけるあらゆる問題は、吉田内閣の責任においてやる、この大臣の態度を閣僚のお一人々々に至るまで、あるいは末端のお一人々々に至るまで徹底させるようにお願いしたいと思うのです。ややもすると閣僚の中にはいよいよ窮すると、いや司令部が言うのでやむを得ないというふうなことが、現在この予算委員会においても間々出るのであります。従つて国民日本政治ではないような感じを持つている。この吉田総理大臣態度をすみずみにまで行き渡らせていただきたい。昨年の選挙において吉田内閣が圧倒的多数を占めたというのは、政治の目立を取返すのは吉田さん以外にはないということでここまで行つた。それが今や期待を裏裏切れるような趣がある、この点について総理大臣のお考えを承りたいと思います。
  168. 吉田茂

    吉田國務大臣 マッカーサー司令部方針は、しばしばお話いたす通りに、内政については政府の自主権をなるべく尊重するというのであります。しかしながら日本は今日降伏條約のもとに降伏しており、占領されておる国でありますから、総司令部と協力して行くということは当然のことでありますが、司令部としては不必要な干渉はしない方針をもつて臨んでおられますから、御心配はいらないと思います。
  169. 奧村又十郎

    ○奧村委員 私はこの吉田内閣の手によつて経済を自立発展させ、講和にまで持つて行きたいという熱願のために申し上げるのであります。司令部との協調はけつこうでありますが、たとえば米価、あるいは食糧輸入、土地改良等の農村政策の一部面だけを見ましても、かなり日本の現実に即さないむりな政策が行われている。これは司令部との協調のためでありましようが、しかし結局内閣の責任においてやるということであれば、内閣が次第に日本の農民からあいそうをつかされることになる。内閣ばかりではない。せつかく育ちかかつて来た民主政治国民からあいそをつかされる。司令部との関係において、日本の自主性において、もう少し強く当れないものかどうか。今までと比べると吉田内閣総理大臣態度は軟化しているように思われる。たとえば石橋大蔵大臣の時代と比べて、非常に軟化して来たというようなことはこの蔵申し上げたのでありますが、そういう点については、何か総理大臣として御所信があつてそういうことになつているのか。政府としては、相なるべくはこういうことは国会を通じ国民に知らして、国会国民政府三体になつてしやつて行こうという気分を現わしていただければ、日本政治のためにまことにけつこうだと思いますが、この点いかがでありますか。
  170. 吉田茂

    吉田國務大臣 占領治下においては協力すべきであり、またすることが條約上の義務でありますが、先ほど申した通り司令部はなるべく日本の行政に干渉しないという建前をとつているのでありますから、行政全般についてはこの内閣の責任においていたすのであります。これははつきり申します。
  171. 奧村又十郎

    ○奧村委員 総理大臣に対する質問はこれをもつて終ります。
  172. 植原悦二郎

    ○植原委員長 次に今井耕君。
  173. 今井耕

    ○今井委員 私は国会に対する政府の責任という立場から一、二お伺いをいたします。  この問題は第六国会において首相にお伺いをした問題であります。ところが本国会においても再びこういうような意見を伺わなければならぬということは、私のまことに遺憾とするところであります。それは先ほどもちよつと話が出ましたが、昭和二十四年の当初予算におきまして、土地改良に関する予算が大幅に削減された。特に三十年間の歴史を有するこの民間団体に対するところの助成金が、ほとんど削除尽れた。そこで土地改良の促進に関する決議案が、衆議院で満場一致をもつて可決していることは、すでに御承知通りであります。この問題は、実は今申したように、長い間耕地整理組合とか水利組合には助成金が出されておつたものでありまして、これはいわゆるドツジ・ラインによるところの補助金をなくするということとは、性質が違うのでありまして、戰前の健全な時代におきましても、こういうことはあつたわけであります。この点が性格がすつかり違う。のみなららずこういう長い歴史がありましたために、もらえるものとしてすでに借入金をして着手しておるもの、あるいはやつてしまつたもの、こういものについては、ある程度農林省とか府県のお役人なども、公約をしているわけです。幹部はそういうことを引受けて、組合員などに相談して借入金をやつた。ところがそれを一時に打切られたということで、幹部はその責任上、鉄道を枕にせなければならぬという立場に立つている。そういう人が私の知つている人でもたくさんある。こういう非常に窮迫な状態になつでいるわけです。従つて私は二十四年度の補正予算におきましてもせめてこれらのやつてしまつたもの、あるいはやりつつあるもの、こういうものだけについてでも、これは計上してもらいたい、こういうことを念願しておつた。そこでだんだん聞いてみると、この補正予算でもそういうことが見られぬという傾向になりましたから、首相にお伺いした。ところがそれはまだはつきりきまつていないのであるというようなことで済んだわけですが、結果は一文もそういう経費は計上されておらなかつた。そこで二十五年度の予算には何としてでもこれは計上せなければならぬ。またそういうことを心から念願しているわけです。これほ衆議院の満場一致の可決であります。ところが本予算を見てみますと、そういう経費はほとんど計上されておらない。いろいろ内容々伺いますと、最初土地改良の経費も、農林当局で何としてでも百五十億というものを計上して行かなければならぬということをいろいろ力説されたらしいが、それが百二億になり、次に八十五億になり、そして民間団体の補助金などはほとんど全部削除された、こういうことになつております。これはあるいは農林大臣お尋ねすることかもわかりませんが、農林大臣だけのことではありません。これは政府全体の責任であります。いわば首相の責任であります。これはまことに遺憾である。また国会の権威という上から考えましても、何としてでもこれはやつてもらわなければならぬ、こういうことを考えるのであります。ところが事実はそういう状態である。こういう観点に立ちまして、首相がどういうようなお考えを持つておられるか。先ほどからいろいろ首相の御答弁を聞いていますと、そういうことはひよつとするとまたうつかりし、ておられる、そういうことは一向無関心であるというような点もうかがわれる。ほんとうにこうういうことを首相が心配しておられるかどうか、こういうことについていざさか疑問をはさむ次第である。従つてこれに対する首相の御所見を付いたい。
  174. 吉田茂

    吉田國務大臣 お答えをいたします。土地改良は政府としては決して軽軽に付しておるわけではないのであります。総合計画委員会などもこしらえて、相当研究いたしております。このたびの予算においても相当額計上してあるはずと思いますが、具体的の数字等については大蔵大臣から御答弁を願いたいと思います。
  175. 今井耕

    ○今井委員 ただいま御答弁を承つたのでありますが、政府から提出されました資料によりましても、なるほど今年は公共事業費は増加されている。ところがその公共事業に対する土地改良及び農業事業関係の災害復旧に関する予算の割合を、政府から提出された資料によつて調べてみますと、昭和二十三年には全体の二三・六%、二十四年はこれが一二・八%になり、二十五年にはこれが一〇・九に、減つているのです。そういうことは、土地改良全体に対しましてもほんまうに誠意をもつて組まれたいるかどうか、なるほど公共事業費はふえておりますけれども、その割合から言うたら、年々減る一方である。こういうことになつている。こういう点につきまして総理大臣にこまかい数字まであげてつつ込むということはごむりだと思いますが、そういう内容を十分御承知を願いまして、今後格別の御努力を願いたいと思います。  次にもう一点は、これも農林関係の問題でありますが、あまりに問題が大きい問題である。従つて総理大臣の御所見を承りたいと考えます。今日日本の農業は国内的には食糧の不足である。にもかかわらず、非常にたくさんの食糧を輸入いたしまして、そうしてこれに多額の補給金を計上いたしまして一低米価政策を実施されている。これは今始まつたわけではないのでありますが、その結果今日の農村の経済というものは非常に惡くなつている。事変前の農村の経済状態と急転直下の状態にあるのであつて政府から提出された資料によりましても、国民の所得の上から考えましても、本予算によりますと、国民全体の所得は三兆二千億円である。それに対して農林水産業者に與えられているところの分配所得は、六千九百億円ということになつているので、全体の約二割であります。国民は約申分を占めているところの農林水産業者の所得が、国民全体の所得の二割しか分配所得がない。従つて国民の平均所鴛の上から考えると、平均所得の四割しか分配所得がない。こういうことになつている。なおこういうことが農業手形なんかに現われまして、昭和二十三年には二十五億円の農業手形が、二十四年には古五十三億円になり、二十五年にはおそらく三百億再を突破しようというような状態でありまして、非常に経済的に不安であります。それから今後のことを考えてみますと世界の食糧の生産の過剰によりまして、農業に従事しておる者はこれまた非常に不安を持つておる。今日においても非常に不安であるし、また先を見ても非常に不安を持つておる。われわれが地方へ参りましても、異口同音にみなこれを心配するわけであります。従つて政付は安定より復興の年であるというふうに御説明でありますけれども、農村におきましては不安よりより一層不安へ、あるいは不安よわ恐慌へ、こうゆうようなことでこれはどこへ行つてもその通りであります。そこで今日本の農民はいかに対処したらよいか、こういうことに非常に迷うておるのです。従つてこの際政府は、日本農業の進むべき道につきまして、はつきりした方針を示してやる、そうしてこれに対処する具体的な政策を確立するということが最も必要なことである。こういうふうに私は考えるのであります。ところがこの予算を見ましても、その点があるかというと何ら見当らぬわけです。そこで、ではどういうふうに進むべきかという方向のことを考えてみますと、大体二つの考えがあると思うが、ただ日本の国が自立さえしたらよいということであるなれば、今日のような行き方でもいいと思うのでありますが、しかしだんだん貿易が拡大されまして、統制が撤廃になるそして農業経営そのものも、国際的の立場に立たなければならぬということになるのでありますから、農業そのものにももつと自由が與えられるということでないと困るわけであります。それを農業だけかんかんに縛つてしまう。そうしていよいよ食糧の生産が過剰になつて来たそのときにおつぱなされるということであつたならば、これはもう立たぬことになる。従つてとにかく自立さえしたらいいという気になつたら、農業にもそういうような動向ができなければならぬ。それからなお食糧自給ということを前提としてやつて行くなれば、それに対処する画期的な制作がなければならぬ。けれどもこれを予算面で見ますと何らないわけです。従つてこの方向につきまして首相がどういうふうにお考えになるか、こういうことについて御所見を承りたいと思います。
  176. 吉田茂

    吉田國務大臣 日本の農業の将来及びそれに対する政府政策等については、総合国土計画とかその他において予算に相当益つておるはずであります。また現在日本の国としては食糧が不足であるということは事実でありますから、増産をはからなくちやならぬと同時に、外国との競争も将来考えなければならぬ。お話の通わ農業全体の生産は世界的に上りつつあるときでもあります。従つて日本が独立を回復して、そうして国が開かれた場合は、世界の農産物との競争ということを考えて、日本の農業を世界の水準まで高め、もしくはこの競争に耐え得るためには、政府としても相当考えなければならぬと考えておりますから、予算面においてすでに計上せられた以上一層愼重に考えて、適当な施策を施したいと考えて、総合委員会とかあるいは農業委員会とをつくつて、それぞれ適当な措置を講るようにはいたしております。なおその結果については政府の施策の結果について御注意を願いたいと思います。
  177. 植原悦二郎

    ○植原委員長 今井君、演説をなさることもときがありますが、今は質問のときですから、演説と質問を区別していただくように願います。
  178. 今井耕

    ○今井委員 今御答弁をいただきましよくわかりましたが、しかし予算面を見ますとそういう点がありません。そこでこまかいことはまた主管大臣にいたすことにしますから省略いたしますが、どうかひとつこういう点に重大な関心を持つてつていただきたいことを、切に希望をいたす次第であります。
  179. 植原悦二郎

    ○植原委員長 世耕弘一君。
  180. 世耕弘一

    世耕委員 私は総理大臣にできる限り簡單に数点だけお尋ねをしたいと思うのであります。  ただいま他の委員諸君等も質疑応答されておつたようでありますが、シヤウプ勧告並びにドツジ氏が提案された諸案について、われわれ考えてみました場合に、今総理がおつしやつたお言葉の中には、ポツダム宣言その他の状況により、なるべく日本政府に干渉がましい態度をとらないということがマ司令部方針だ、こういうふうにおつしやられたようであります。私もさように承知いたしておるのであります。ところが最近シヤウプ勧告、あるいはドツジ案になるものを積極的に提出されたその反面において、日本政府の怠慢の結果かように内政に干渉されるがごとき態度をとられたのではないか、こういう疑いを実は国民一般が持つのであります。この点について私はごく簡單でよろしゆうございますから、明解な御返答を願いたいと思うのであります。
  181. 吉田茂

    吉田國務大臣 御質問の要点が少し抽象的に過ぎておるようですが、事実こういうことがあつたとか、ああいうことが、あつたとかことであればともかくも、主義原則は今申したように総司令部としてはなるべく干渉したくない。それからまた政府としても行政すべては政府の責任においてやつておることでありますから、かりに干渉があつた場合にも、政府の責任において行政に当つているものと御承知を願いたいと思います。
  182. 世耕弘一

    世耕委員 私の言葉が足りなかつたかもわかりませんが、要するにシヤウプ勧告、ドツジ案というものが来たゆえんは、日本政府の怠慢が原因をなしたのじやないかということが結論なのであります。
  183. 吉田茂

    吉田國務大臣 これは御承知のごとくに終戰後諸事早々の際であつて、戰後の経営をするためにはいろいろな方面において混雑もあり、そしてまた外国から見て日本考え方が遡れておるとか、あるいは学術的でないとか、近代的でないとかいう観点からして、シヤウプ、ドツジ両氏は日本のために懇切にこういうふうにしたらよかろう、ああしたらよかろうといつて勧告をして来たので、これは必ずしも政府の怠慢として——責任を拒否するわけではありませんけれども、怠慢ばかりではなくて、敗戰後の諸事情から考えてみて、手の及ばなかつたこと、あるいはまた研究の足らなかつたこと、また近代の税制その他はこういうふうな傾向になりつつあるのだから、こうしたらよかろうという勧告政府は受入れて、そしてその勧告日本政府としてはまさに受入れるべきものなりと考えて採用したわけであります。必ずしも怠慢を認めて勧告を受入れたわけではございません。
  184. 世耕弘一

    世耕委員 一応了承いたしました。次にまとめてお尋ねいたしておきますが、行政整理の業績がその後どういううになつたか。前回の委員会においても御注文申し上げておきましたが、われわれの研究する範囲内においては、省の廃舎のできそうな場合があると思うのであります。おそらく総理はこの点にお考えが進んでおられると思いますが、この機会に御発表願えればなおけつこうと思います。その他のこまかい点はいずれ所管大臣からお答え願うことにして、今日ほそれをお尋ねいたしません。  それからもう一つは援助物資あるいは見返資金特別会計の問題でありますが、この援助物資あるいは見返資金特別会計のこの経済関係を、一般にはただ米国側から援助してもらつておる。もらつておるのだ、こういうふうな考えが多く考えられておるのであります。ところがこの條約集の阿波丸請求権処理のための日本政府及び米国政府間の協定というところを見ますと、「占領費並びに日本国の降伏のときから米国政府によつて日本国に供與された借款及び信用は、日本国米国政府に対して負つている有効な債務であり、これらの債務は、米国政府の決定によつてのみ、これを減額し得るものであると了解される。」こういう了解事項がここに載つておるのでありますが、そうすると本委員会に問題になつております援助物資並びに見返資金の関係は、どういうふうな勘定に落ちつくのであるか。これも急所だけおつしやつていただけばけつこうであります。
  185. 吉田茂

    吉田國務大臣 だいまの御質問でありますが、阿波丸の問題は御承知通り、前の国会でもつで政府が請求権を処理する。そして日本人に対する賠償等は日本政府がこれを支拂うということになつて、見返資金とは関係はないはずであります。  もう一つ、初めのお尋ねの行政整理は、現在の行政の形において不必要な剰員は淘汰する。そうして行政費の節減をはかり、歳出の節減をはかるため、できるだけの整理はこれをもつて一応終了したわけでありますが、しかしこの十何年間に政府の機構も相当複雑になつており、そのために国民としていろいろな行政面において、めんどうな複雑な手続とかいろいろなものができております。それからまた機関もだぶつておる。いろいろな議関が、統制の問題一つの問題にしても、数省にわたつてこの仕事がまたがつてつて、そして取扱いにおいてはまた民間からある申請をなし、あるいはある希望を述べた場合に、その取扱いが数省にまたがるというような話で、はなはだどうも行政は複雑になつておる。この行政を單純化するということがさしあたつて急務であり、行政の簡素化と経費歳出の節減この二つの面から考えてみて、結局は局課の廃合なり省の廃合なりをいたして、そうして行政を簡素化する、この必要を認めて政府としては主任官を置いて、主管の官庁を置いて、そしてどう改良するか、どう併合するかという行政新機構について、もつぱら研究いたしておりますから、その結果はしばらくお待ちを願いたいと思います。近くその結果結論について御相談のできるときがあると思います。
  186. 世耕弘一

    世耕委員 この間、次官、局長、課長等の官吏の試験を行われたのだが、その間において当然受けるべきといいますか、あるいは受けるべき状態に置かれた官吏で、受験をしなかつた官吏が相当あるだろうと思う。その処理はどういうふうになさるか、おそらくこれは所管大臣からお聞きした方が詳しいかもわかりませんが、所管大臣からはかえつてお答えがしにくいかもわからぬから、むしろ総理から率直な御返答を願えればけつこうだと思います。
  187. 吉田茂

    吉田國務大臣 この問題は所管大臣に御尋ねを願いたいと思います。
  188. 世耕弘一

    世耕委員 了解いたしました。次にお尋ねいたしたいのは、ポツダム宣言を忠実に守る日本国と、ポツダム條約を破る相手国があるやに考えられる筋が事実として出て来るのであります。かくのごとき場合には、われわれが今日の状態において正当な主張をすることはできないのだが、こういう場合、何人によつてわれわれの主張が相手国に伝えられるかということの一点。それからもう一つは、われわれが無條件降伏したのは、日本帝国政府がやつたことであります。将来われわれが講和を結ぼうとするのは、いわゆる民主国になつた新憲法のもとに講和を結ぶという建前で私は進んでいいと思うのであります。この意味において、大事なことだから、私の考えたことを申し上げますが、無條件降伏は軍事であり、今後の講和は民事である。新憲法によるわれわれの生活は米国のデザイン、意匠により、パターンすなわち形によつて、生活指針を與えられた。すなわちこれはとりもなおさず、われわれは完全に民主国民としての生活をせよとの指示に基くものである。民主国民に選ばれた国会である以上、君主国家によつてなぎれた降伏條約が新しく生れた国民を縛ることはできなかろう。来るべき講和は自由国民の輿論によつて成立せしめねばならない、こう私は考えるのだが、総理のお考えはどういうふうな御見解であるか。なぜこういうことをお尋ねするかと申しますと、先般本会議総理の御返答を得ましたカイロ宣言に基きますと、台湾は中国から日本が盗んだ、だから当然中国に返すべきだというその宣言は、内外の著書によつて見ましても、また世界歴史から見ても、盗んだという結論が出て来ない。まつたくミステークである。かようなものを、われわれ民主国の新しい国民がうのみにする義理はありますまいということが、この一点であります。  もう一つ、ヤルタ協定の中にもこれに似た、われわれにとつて最も強く感ぜられる文章があります。一九四先年二月のヤルタ会談において作成され、一九四六年二月十一日米国国務省が発表されたものの中に、文章が長くなるから読みませんが、その急所だけ読みますと、「千九百四年の」——すなわち日露戰争のときであります。「日本国の背信的攻撃により侵害せられたるロシア国の旧権利は左のごとく回復せらるべし——(イ)樺太の南部及びこれに隣接する一切の島嶼はソビエト連邦に返還せらるべし」。かようにヤルタ協定の文章の中に出ております。ヤルタ協定秘密條約であるから、われわれに関したことではないとは言いながら、今日樺太を占領されておる理由から見て、まんざら無関心に見のがすわけには行かないのであります。御承知のように日露戰争はときのアメリカ大統領が日露戰争の終末を適当に見抜いて、ポーツマスであの講和談判を開き、その條約に基いて樺太その他が日本の領有に帰したことは、私は決して不信行為による攻撃によつて、奪取したという事実が発見されないのであります。かくのごとき事柄に対しまして、いわゆる大日本帝国時代の無條件降伏のこの條項を、民主国家を新しく構成した日本国民がこれを遵守しなければならないのかどうかということを、この機会に総理から御見解でもあれば承つておきたい、かように思うのであります。
  189. 吉田茂

    吉田國務大臣 お答えいたしますが、先ほども申した通り、今日日本としてはまだ独立を回復せず、かたがた独立して外交交渉に当る地位におりませんから、従つて、今お話のようなポツダム宣言に違反した事項があるその場合に、政府としては権利として交渉することはできません。しかしながら希望を述べるということは、これはでき得ることと思います。連合国がこれを取上げるかどうかは別として、希望を述べるということはさしつかえないと思いますし、また時々必要に応じて希望も述べております。そこで今日実際から申すというと、連合国司令部日本の利益を自主的に代表して、関係国に交渉するという、事実そういうことになつております。たとえば引揚げ同胞の問題にしても、連合国司令部は自主的に取上げて、これを極東委員会に持ち出しておる。あるいは日本の利益のために主張してくれるということはありますが、政府として権利としてこれを主張するということは、まだ独立を回復せざる以前においては、権利として要求することができない立場にあると思います。  それからまたヤルタ協定——今のお話のような台湾は日本が盗んだのではないかといういうな不都合な問題がある、これはまた日本国政府としては、権利としてこれを非難するわけに行きません。しかしながら国民がこれに対して意見を発表する、これは自由であろうと思います。また独立の回復した後において、政府として、その粗手国の見解が間違つておつたというものがあれば、これに対して訂正を求めることは、独立国の政府として主張し得ることでありましようけれども、占領治下にある日本国政府としては今はその地位にないのである、かように私は解釈します。
  190. 世耕弘一

    世耕委員 これに関連した問題であります。おそらく総理もお読みになつたことと思いますが、最近アメリカ上院議員のタフト氏が——これは御承知通り米国大統領家に生れた名氏でありますが、代々法律家で有名な方であります。現在もタフト氏は有力な上院議員であると同時に、著名な米国の法律家であります。このタフト氏が上院において一月十一日に論議せられたその言葉を要約いたしますと、こういうことを書いておる。一方的な協定宣言、声明によつて他国の領土がかつてに帰属が決定されるとは、国際公法よりも認められるとは思われない。こういうことを言つておるのであります。結局われわれの言わんとする言葉に裏づけしておるように思われて、アメリカの輿論の正しいということに私たちは敬服する次第であります。どうぞ台湾といわず、千島といわず、樺太といわず、国民の意のあるところをおくみとりくださいまして、そろそろ適当な機会をとらえてしかるべき筋に綿密なる御連絡のもとに、御交渉あらんことを特にお願いしてやまないのであります。  それから最後にもう一点お尋ねしておきますが、米国の国防長官、ジヨンソン長官で、ありますが、最近ヴアージニア大学において演説した内容についてわれわれは非常に心打たれるものがあるのであります。国防があつてすなわち平和の維持ができる。そうすると日本の場合はどうかということがすぐわれわれは連想されるのであります。吉田総理自衛権という新しい言葉をお使いになつておるようでありますが、ごもつともだと思います。われわれ人聞に生存権があると同様に、国家にも自衛権が当然あると私はかように考えておりますが、その自衛権の権力の内容をどこに置くかということが、少しぼやけて明瞭を欠いておるのであります。前回の本会議において私はお尋ねした。牛は角があつて自衛し、馬はかみつくとか、けることによつて自己を守る。これも一種の自衛権と言えるでありましよう。武器を捨てた国防のないわれわれが、自衛権をどこに行使することができるか。ベルギー、オランダの第一次欧州大戰当時、その後の状況を見ましても、武力なき弱い国は、最後は敵に両手をあげるよりほかにないのではないか。ただわれわれは永世中立とか、厳正平和を守るとか言つてみましても、結局最後はから念仏に終りはしないか。ヨーロッパの実例ル見ますと、武力のない国には往々ゲリラ戰術をもつてその国を乱す。あるときは政府を顛覆して暴力革命を振うという例が幾らもあるのであります。国民の憂うるところはそこであります。さような場合にいかなる方法をもつて守るかという非常に現実の問題に、われわれは今日ぶつかつて来ておるのであります。この点について、これはあるいはおつしやりにくいかもしれんが、器用な言葉でお漏らし願えれば、国民は満足するだろうと思います。ただそういうことは仮定だからおれは知らぬというようなお言葉ではなくして、国民がなるほど吉田さんの腹の中はそこだなという、観測のできる程度のお漏らしくらいはこの機会にむしろすべきではないか。かように何も遠慮はないだろうということを私は申し上げたい。  それからもう一つであります。もう一つはキーナン首席検事が発表された二日のUP通信によつて伝えられた電報でありますが、もし侵略共同謀議のかどでたれかが裁判されるとしたら、それは日本天皇でなく、スターリン首相である。こう言うておる。スターリン首相とヒトラーこそ世界制覇の共同謀議者である。だからそういう意味なればむしろスターリンの方を先にくくつて処分すべきである。こういう非常に勇敢な言明であります。私はあえてこの言をただちに採用しようとは思いませんが、非常に意味のある言葉ではないかと思うのであります。  われわれはいわゆる民主国家の民主国民によつて選ばれた代議士であります。国民の意のあるととろを率直に言い表わさせようと、先輩国が指導され、ておるのだから、あえてこの点も申し上げますが、戰犯されなくてはならぬというような人の思想に基く政党の構成が、もし日本の国内にあるとしたならば、さようなものに対しては相当手配をしておく必要があるのではないか、こういうこと言える。これははなはだ引延ばした議論でありますけれども、これはいずれあらためて法務総裁に掘下げた御質問をするつもりでありますが、おそらく総理は答弁しないだろうと思います。そう言うたら、あるいは答弁してくれるかもしれませんが、どちらでもよろしゆうございます。ただそういうことが外国電報に載つておつたから記憶にとどめておいていただきたいということをこの機会に申し上げたいと思います。  それからもう一つは、もうこれでおしまいにいたしますが、この間道義の頽廃は、今後は社会教育をもつてこれを是正するというようなことを文部大臣は言われた。まことにけつこうなことだが、これは膏薬張りであります。それよりも私は日本のこの敗戰後の道義の頽廃は、従来の教育に宗教の裏づけがなかつた結果ではないかということを、われわれも責任者の一人として痛感しておるりでありますが、こういう点に対して、何か総理は新しい御構想があれば、この機会に国民思想の善導という建前から、お教えを願えればけつこうだと思います。以上で私の質問を終ることといたします。
  191. 吉田茂

    吉田国務大臣 自衛権の問題についたは、しばしば私この委員会においてても、本議場においても述べておりますが、防備がない自衛権があるか。少くとも防備がなければ自衛権ははなはた不安全ではないか。日本の安全保障ほ防備がなくしてできるかという、これはたれ人も考えるところであります。しかしこれは少し室虚といいますが、哲学的になるかもしれませんが、そう考えることは、一つは従来の思想の惰性から来ておるのではないか。たとえばジャングルにおいて角がないもの、あるいはきばがないもの、弱肉強食のこのジャングル・モラルから言つてみて、きばがなかつたら、角がなかつたら不安心ということが考えられるのでありますが、もし人間世界がジャングル以上の文化国であるとして考えてみれば、きばだけが、あるいは角だけが身を守る唯一の力でないとも考えられると思います。それと同じように、防備がなかつたらということは、この世界が弱肉強食のジャングルであるならともかくも、それ以上の文明国であるというならば、必ずしも防備ばかりが、兵力のみがみずからを守る官衙権の内容をなすものと考えることがなくして想像し得るのではないか、そうありたいものだと私は思うのであります。また例をこの間どこかの委員会で申したのでありますが、明治四年でありましたか、廃刀令が出たときに、当時の士族はこの佩刀を捨てたならばはなはだ不安心と申しますか、とにかく当時廃刀令に対しては相当な反対が起つたのでありますが、廃刀令実施の結果は、人殺しばかりが行われたかといえば、廃刀令後においても一層秩序は保たれたという事実もあるのであるし、防備のない安全保障ということに対する危惧の念は、あたかも廃刀令当時の士族の気持と考えていいのではないか。また防備があつたらば国が安全であるか。戰前において日本国としては相当の防備を持つたと確信しておつたが、そのために内政においても、外交においても、日本に対して、内政においては非常な輸出の圧迫を——世耕君はどうであつたか、少くとも私は感とじたのであります。また外国から見ると、当時私どももそこにおつて、いろいろ外交で治めて行きたいと思つたのでありますが、日本の外交に対する非常な不信があつて日本は侵略国である、日本は中国を支配せんとしているとか、野心を包蔵しているとか言つて、われわれの言う外交に対する信頼がなくて、日本という国は平和の敵であるという世界的な世論——少くとも当時の文明国の多くはそう考えておつた。そしてその結果が遂に太平洋戰争になり、厳然たる防備があつた日本国が敗戰いの今日になつたのであつて、防備のみが国を守るものであるか。あるいはかえつて国を滅ぼす機縁をつくつたものであるとも言われるのであります。でありますから、防備によらずして、日本が真に平和を愛する国である、世界の平和のために貢献する国であるという世界的な信頼があれば、あえて日本を侵すものに対してはこれを治める。すなわち世論の力で、国際的信頼の力で日本はみずから守る。安全保障をここに求めると決心をすることが、国の内政においてもあるいは外交においても、日本の安全を保障するゆえんであると私は確信しているのであります。その他は議論になりますから、この程度でお許しを願いたい。  それから今のスターリン元帥に対しての云々のことは、私としては御想像通り差控えたいと思います。
  192. 世耕弘一

    世耕委員 ちよつと一言。総理の御抱負を承つて、非常に心強く感じます。しかしながら総理の今のお考えは理想、イデーであつて、ポリシーじやない。私のお尋ねするのはポリシーを聞いている。いわゆる政策を土台にして政治を論じようと思つたのですが、お説法を実は聞かされて、特に近代的に申しますれば、ガンジーの思想あるいは仏教の思想が多分に総理の脳裏に詰まつている、かように考えるのであります。ある意味においてあきらめということも想像できるわけであります。いずれにしても、これは議論になりますから、別の機会に譲ることといたします。非常にゆたかな気持で政治にお携わりになつていることは、総理は長く生きられるだろうということが言えると思います。
  193. 川上貫一

    ○川上委員 ちよつと関連質問で…、
  194. 植原悦二郎

    ○植原委員長 あなたは質問をなさる際に林君にお譲りになつたのであります。そして共産党の方は大概みな共通の御質問をなさるので、まだ総理に対する質問の機会があろうと思いますから、その機会に今あなたのお考えになつていることを、林君なり米原君にでもお伝えくださつて御質問なされば、質問なさる機会があると思いますから、総理に対する質問は、今日はこの程度で打切りまして、奧村又十郎君。
  195. 奧村又十郎

    ○奧村委員 私は運輸大臣、建設大臣、大蔵大臣それから食糧庁長官の方々に二十分間ほどの予定で簡單に御質問して、私の質問を整理して行きたいと思います。しかしあと荻田次長には、時間がかかりますから、一番あとまでお残りを願いたいと思います。  運輸大臣にお尋ねいたしますが、国鉄の会計が独立採算制でもつて組み方が非常によくなつて来た。そのうちただ自動車関係が約十二億ほど收支の面において赤字が出ることになつておるのです。それに関連して国鉄の、バスの路線を減らすというようなうわさも出ておるのですが、さようなことがあるかないか、また新たに国鉄の、バスの路線をふやすこともあり得るか、この点をお伺いいたします。
  196. 大屋晋三

    ○大屋國務大臣 奧村君のただいまのお尋ねでありますが、まだ昭和二十四年度の決算ができておらぬのです。二十四年度に大体ハスの方で九億見当の赤字が予算に組まれておるのでありますけれども昭和二十五年度におきましては、まず大した赤字は出ないつもりでおります。ところが、このバスの路線の新設あるいは延長という面に関しまして、二十五年度は予算が十分にとれませんので、従いまして昭和二十五年度のバスの経営は、大体において車輌とかあるいはその他の経費を要せずして延長のでき得る範囲内においては、在来線の延長をいたしますが、経費を要する新建設というようなことはいたさない方針にいたしております。
  197. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それでは在来のをとりやめるというような計画はないかどうか。
  198. 大屋晋三

    ○大屋國務大臣 在来のをとりやめるということも、基本的には考えておりません。
  199. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それから国鉄が独立採算制でもつて非常にもうけ主義にかかつておるのが、かなり露骨に現われて来ておる。たとえば「つばめ」号は、私たびたび利用いたしておるのですが、三等がはなはだ少い、それで二等はがらあきであります。その「つばめ」号に乗りたければ、三等はもう切符の割当がないから二等に乗れ、どうせほつておいても二等に乗るのだからというので、三倍の汽車賃を拂わせて乗せる。議員としてはただでありますが、実は私自身やはり特急は特急料金をとられる、あの三等の四百円が二等に乗つて八百円になる、貧乏代議士としては非常にこたえますので、私は三等に乗つておる、ところがたいてい三等には乗せてくれない、割当がない。そこで二等に乗つて急行料金以外の基本の料金を舞わなければならぬ。一般乗客としても三等に乗りたいが、三等がないからむりやり二等に乗せられる。これでは国鉄の国の機関としての行き方としては、はなはだ心外なことであるので、これを変更なさるか。この「つばめ」号がもう一本ふえるという話でありますから、この際においてもつと三等の比率をふやしてもらいたいということをお願いしておきます。これが独立採算制の惡い現われではないかと思います。  それからもう一つ、最近顧客の少い閑散駅については、その駅の設置を取消すとか、あるいは交通公社に秀託させるとかいうふうな計画のもとに、取調べをやつておるということを聞いておるが、これも国鉄としてはその方がいいかしれぬが、国民大衆としては非常に困る点が多い、それは事情にもよりますが、原則としてそういうことをやられては困る、国鉄全体の財産は国民のものであるから、單に国鉄がもうけさえすればいいというやり方については反対でありますので、こういうことをやるかやらぬか。要するにこの独立採算制のために、今年そういうふうな変更をほかにもおやりになるかならぬか、そういうことをお伺いいたします。
  200. 大屋晋三

    ○大屋國務大臣 ただいまの御質問の最初の分でありますが、この「つばめ」の編成ですが、最初は、御承知の非常にスピードがのろかつた日本の鉄道があの「つばめ」によつて、ともかくも東京、大阪が九時間のスピーディーな汽車ができたというので、非常に世間からほめられ、魅力を與えたと思つておるのです。ところがこの汽車に、最初の考えでは三等は全然つけないというような議論む実はごうこうとありましたが、しかしそういう筋のものではないというので、三等をつけたといういきさつも、ひとつ奧村君にこの際申し上げておきます。それはともあれとして、実はその牽引力の関係で——あれは車が幾つついておりましたかちよつと忘れましたが、あれでもう一ぱいで、三等の車輌を、二等を減して三等にまわせばとにかくとして、できないということになつております。しからば二等の方をまわしたらどうかということになるのですが、これは一等と二等と三等のお客の利用度のパーセンテージを毎列車ずつとつておりまして、スタートいたしましてから今日までの利用度は、なるほどお説のように、最初のうもは二等が非常に利用率が少かつたのでありますが、昨今はこの列車の編成といたしましては、私の知つている範囲では、まずまずあれくらいの編成で、コンビネーシヨンとしては、あの一等、二等、三等のコンビネーシヨンが、まず鉄道の営業政策としては、そうむりではないというふうに心得ております。  さて次に第二点でありますが、山間の閑散駅だとか、あるいはいわゆる利用度の少い駅を請負制度にして、交通公社にさせる云々というような事柄を、ひそかに調査させているということでありますが、考え方としては、利用度の少い、たとえば山間駅の切符を売る職員を減らして、民間に請負わしてやつたら、人間がセーブできていいじやないかとか、いろいろな事柄があるのでありますが、現在のところは、国鉄の能率を向上させるという点に対しましては、いろいろな角度からいろいろなことを実施しかつ考えておりますが、ただいま奧村君の御指摘になりましたように、閑散駅を廃止し、あるいはその駅務の一部を請負にするとか、あるいはその他営利本位に偏重して、そしてもうからぬものはやめるというようなことはしないつもりにいたしております。少くとも閑散を減らすとか、あるいは請負制度にするということは、今考えておりません。ただいかにもこの国鉄の経営が、今までは役人の一点張りで、非常に融通のきかない、同じ停車場を建てるにしても、たとえば大都会の建物様式と、ごくいなかの辺郡な山村僻地の停車場と同じ規格でやるとか、執務の方式も同じ考えでやるとかいつた、そこのところが緩急よろしきを得ないというような点、まだいろいろ能率上に考慮要する点がありますから、そういう点は改善して行きたい。しかしながら国鉄が独立採算制になりましたからといつて、むちやくちやに採算本位で、この満遍ない交通を阻害するというようなことのないように戒めている次第であります。
  201. 奧村又十郎

    ○奧村委員 ただいま運輸大臣のお言葉には、非常に楽観的なお言葉がありましたが、重ねて申し上げますけれども、「つばめ」号はいつ乗つても三等は割当で、前日申込みだが、二等は何どぎでも自由販売であるということになつております。それはどういうお調べをなさつたりかは知らぬがやはり二等は何どきでもがらあきで、少くとも腰かけられるということの証拠でなかろうか。またもう一つは、三等に乗れぬからしかたなしに二等に乗つておるということをもつて、二等がいつも一ぱいだというふうなことでは、御答弁にはならぬと思います。しかしこれは議論にわたりますからやめておきます。運輸大臣に対する質問はこれで終ります。  次に建設大臣にお伺いいたします。これは大蔵大臣にも関連いたすことでありますが、公共事業費が非常にふえて参りました。シヤウプ勧告においても、税というものを非常に強調されており、われわれは税はできるだけ出さねばならぬ。ところが出した金の使い方、これは税の取り方ほどにはまだ十分考えておられぬ面があるのではないか。公共事業費などの使い方において、この際一段と考えを持ち直していただきたい面があるということを痛切に考えるのであります。今度災害復旧のための公共事業費は金額国庫負担にする、これはけつこうであります。これについても、私は意見がありますが、今は申し上げません。そこで全額国庫負担で、たとえばAならAの県に災害復旧の金が渡される。ところが実際請負業者にその事業を渡す場合に入札その他の方法でやる。そうすると、国が査定して下付する金と、入札によつて請負師に渡される金額に相当開きができる。今までの例でもつて見ると、国の査定した金額が入札になるとその六割で請負師に請負わされ、国から携われた金の六割なら六割だけが講負師に携われて、あとのさやはどこかへ行つてしまうことがあるので、そういう問題についてはどういう御方針でおられるかお伺いいたします。
  202. 益谷秀次

    益谷國務大臣 ただいまの御質問のような場合は、原則として剰余金は建設省に返さねばなりませんので還付いたさせておりますが、ただでき上つた工事を維持いたして参らなければならぬとか、その他著しい設計変更とかいうような場合があります。そういう際にはやむを得ませんから建設大臣の認可によつて剰余の金を使わしております。だがただいま申しましたように、剰余金がありますと、精密に計耳をいださせて還付いたさせております。
  203. 奧村又十郎

    ○奧村委員 実際の場合としては、一旦府県に渡された金を国へ還付するということはなかなか困難ではなかろうか。全額国庫負担になりますれば、府県の分取り主義がひどいものだろ、うと思いますので、これを押えて行くことについては、よほどお考えを願いたい、そこで今度は、府県に全額国庫でなしに、半分たり三分の二の補助をやる。そういう場合におきましても、従来請負金額をうんと高くしておいて、実際は請負師との間にはその單価の六割あるいは五掛ぐらいで請負わして地元の負担を免れるとか、あるいは免れるどころか、まだそこで地元がもうけるというようなことも間々あるように聞いておりますが、これについても、実際は絶対にないように考えていただきたい。これに対する何か対策をお考えになつておられるか伺いたい。
  204. 益谷秀次

    益谷國務大臣 災害の査定は従来も厳重にいたしておりましたが、今後も全額負担等の問題が起りますので、これまで以上に厳密にいたしたいと思います。国が助成いたして参ります工事等につきましても、これはたしか省令にあるはずでありますが、剰余のものは還付せしめることにいたしております。
  205. 奧村又十郎

    ○奧村委員 建設大臣に対するお尋ねは、これをもつて終ります。  大蔵大臣にまだ二、三お尋ね残しがありました。青色申告制度を実施なされ、この該当者は一月末までに申込めというのが十五日延びたそうでありますが、これは法律が出まして、法律によつてはつきりきまつてから申込ませて、該当者をそれによつて取扱うのが正当な順序ではなかろうかと思うので、この申告制度の締切りの時日をもつと大幅に、五月ごろまでに延ばされたらどうでありますか。
  206. 池田勇人

    池田國務大臣 所得の計算は暦年でやつておりますので、やはり一年間をなるべくフルに記帳していただきたいという念願であるのであります。この問題については、第五国会にもその準備をするような法案を出しておつたと記憶いたしております。やはり相当周知していただいて、相当たくさんの人にやつていただきたい関係上、一応締切りましても、将来の問題として考えたいと思つております。
  207. 奧村又十郎

    ○奧村委員 酒税と富裕税の見積りの根拠だけ御報告願います。
  208. 池田勇人

    池田國務大臣 ただいまのところ、清酒につきましては、前年と同じように四十三万石の米を用いるので、前年と同様であります。ビールあるいはウイスキーの方も、大体前年と同様でありますが、いもにつきましては、御承知通りほとんど統制をはずしましたので、相当増産があることと考えておるのであります。こういう事情で、大体千三十億を見込んだ次第でございます。
  209. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それでは根拠になりません。もつと精密に、たとえば富裕税で言いましたならば、階層別五百万円以上の財産に対して課税をなさるのでありますから、かなり詳しい根拠ができておるでしよう。これはけさから申し上げておいたのでお願いいたします。
  210. 池田勇人

    池田國務大臣 酒税の見積りだけを言つて、富裕税の答弁を忘れましたが、五百万円以上の所得者につきまして、各国税庁、税務署を通じまして一応調査をさせて二十億円を見込んだ次第であります。いずれこの問題は、けさほどの資料の御注文と同様にできるだけ早い機会に調製してごらんに入れたいと思います。
  211. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それでは大蔵大臣に対する質問はこれでやめます。  食糧庁長官お尋ねしますが、私は食管及び食糧公団が、どうも昨年度と比べても経費をふやして見積つておる。ほかの国鉄とか、あるいはその他いろいろな政府機関が、最近ドツジ・ラインの精神をくんで、かなり引締つて経費を節減しておるが、食管が経費をふやしておると申しますか、利益を見込むと申しますか、ともかく生産者価格と消費者の価格とのさやをふやしておる。これは国民にとつて非常な関心の的である。また薪炭特別会計が非常に失敗しておるから、そういうことのないようにも、ひとつ事前に考えて行力なければならぬ。こういうことからいろいろ研究して見ますと、いろいろお伺いしたいことがかなり出て来ておるわけです。そこでいずれこまかいことは分科会か何かで、十分伺いたいと思うのでありますが、経費の増加した理由を何とふ知りたいと思うのであります。そのらち先ほどお尋ねいたしましたが、経費としての生産者価格と消費者価格と、その間のさやが約一千億円ほどある。そのうも生産者に還元するものはあなたは申分くらいあると言われるが、私が予算書を見ると百億余しかない。その点お尋ねしたら分明しておりません。もう一度お伺いいたします。
  212. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 詳細の点につきましては、分科会等で御説明申し上げたいと思いますが「中間経費の中でも倉庫の保管料でありますとか、あるいは輸送費等はやはり相当上つております。その辺で全体の経費が上うておることは事実であります。それから生産者に還付される分、これは全体を締め合いまして総量を出して御返事いたしたいと思いますが、百億じやきかないと思つております。
  213. 池田勇人

    池田國務大臣 出過ぎたようでありますが、私予算に関係いたしますからお答えいたします。奧村君の計算によりますと、生産者価格は四千二百五十円、消費者価格は六千何ぼ、こうなりまして、その間に相当の幅がある。こういうことでございましたが、食糧庁長官の言つておりますように、早場米の関係で六、七十億出ておると思います。またバツク・ペイの問題でこれまた五、六十億あると思います。ほかに超過供出の問題——大体予算では二百五十万石を組んでおるのであります。そういたしますとこれにつきましても百億円余りが出て来るわけであります。それから今の俵代とかいろいろな問題で二百億円はありますから、三千万石といたしまして相当の金額になります。今日の食管の特殊性は、小麦その他につきまして非常な加工費を加えて、そうして一般に配給しよう。たとえばうどんだとか、いろいろな加工費を出しております。これによつてやはり二、三百億くらい二百数十億ぐらいいつたと思います。そういうので加算があるのであります。もちろん運賃とか倉敷料とかいろいろな手数料がありますが、今年の経費の増加はいわゆる外国食糧が非常に多くなつた。これを加工して出す。このための経費がやはり二百数十億円多くなつておる。こういう関係があるのであります。こういう問題をここで一問一答でやつてもなかなかわかりにくいので、資料を出せば一目瞭然だと思いますから、私が答えた以上のことはあとの資料でひとつごらんいただく、あるいは分科会でお話をする。できるだけ経費の節約ははかつております。ただ問題はここで承つておきますが、超過供出の二百五十万石という問題が問題なのであります。そこで一月の値上げのときにも、超過供出二百五十万石ということになりますと、大体消費者価格は二、三四%引上げざるを得ない。しかしその後の予算をつくあましてから超過供出二百五十万石は多過ぎる。そんなにすることは、私は消費者価格を非常に上げるようになりますから、向うと話をしまして、大体超過供出は百五十万石ぐらいでいいじやないか、こうゆうことになつた。それで予算をかえなければならぬということになりますと、そういうときにはそれだけ減りたんだふら、それじや消費者価格を落そうというので、一月の引上げも一一・三四%を引上げるのを、九、六、七から九・八ぐらいで消費者価格を押えた。そうして常に消費者価格との見合い、バツク・ペイの問題、それからその内容をなすものは早場米の出方、超過供出の出方によつて動きます。動きますが、消費者価格の調整でつぢつまを合わすようにして、しかも昭和二十五年度中は消費者価格は絶対に動かさない、こういうのでやつておりますので、ある程度のゆとりもあるかもしれません。しかもそのゆとりはマイナスになるかもわかりません。今年は外国食糧がたくさん入つて来たということと、加工に相当力を入れるということ等でそういうふうになると思います。
  214. 奧村又十郎

    ○奧村委員 通り一ぺんのことならそれでよろしゆうございますが、超過供出の代金も二百五十万石、百何十億を含んでおると言われるが、それは商品化の中に入つておるんじやないですか。
  215. 池田勇人

    池田國務大臣 超過供出の場合を考えますと、四千二百五十円でございまから、二百五十万石と申しますと、百十億円程度になる、それは商品代を含んでおります。
  216. 奧村又十郎

    ○奧村委員 私のお尋ねしているのは、その超過供出の分も含めた商品代と、最後の消費者に配給する代金と、のさやが約千億円もある。だから大蔵大臣の御答弁は全然間違いであります。私は予算によつて相当こまかく調べてやつつおるのですから、そういう表面のお言葉だけで引下るぐらいなら、何もここまで来てお尋ねはしない。それではこの点は別の機会にとつくりとお伺いいたします。  昭和二十二年度の決算を見ましても、商品代からその経費の方に十二億円も流用しておる。こういうようなところを見ると、食管の経費というのは、どうも予算よりもよけいいつているのではないかと思う、私はこれをうんと切り詰めて、せめて生産者の価格をもつと上げなければならぬということで、詳しくお尋ねいたしたいと思うのですが、これはどうせきようお尋ねしてもきりがありませんし、時間もありません。また別の機会にお伺いいたしたいと思います。
  217. 植原悦二郎

    ○植原委員長 私、委員長として政府当局にお願いいたしますが、国民生活の立場から、今の奧村又十郎君の質問は非常に重要な質問だと思ます。食糧の消費者から言えば非常に重要な質問でこれは簡單にしておくべきものではないと思いますから、奧村君の質問が十分に了解できるように、数字の上ではつきりと御説明願いたいものであります。
  218. 池田勇人

    池田國務大臣 奧村君の千億円の差額というのもはつきりいたさないのでありますが、これはただいま私がお答えしたように、消費者価格と生産者価船との差の内容は、そういうものがおもなるものであります。従つ七千億円の根拠を見せていただきます。あるいは問題は何と申しますか、在庫品が非常にふえて来ましたから、そういうもので五、六百億あるいは六、七百億は入りておるかもわかりません。だから千億円なら千億円と言われる計算の根拠をお出しになつて、そうして政府当局とお話にならぬと、そこに非常に疑問を多くするわけです。あなたがどういう考えで千億円を出されましたか、それをはつきりしていただいて、そうしてこつちからの資料もお出ししたいと思のであります。
  219. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それでは申し上げますが、この千億円というものは、私は予算書によつて明らかに申し上げておるのであります。かねてこの点を御質問するからということも事前に通知してある。そう簡單言葉の上だけのやりとりで済ますのなら、われわれは予算審議をやらぬ。それで千億の基礎といたしましては、公団の方で食管から拂下げを受けて消費者に渡すまでの価格のさやが四百五十億円出ております。これは專門の方は大体おわかりだろうと思う。千億が間違つておるなら、どこが間違つておると言つてくださればなおわかる。あとの五百何十億というのは食管の中に——五百億は四百億かもわかりませんが、要するに予算書を見ればすぐわかる。この件はあとからお尋ねをいたします。  本多国務大臣にお伺いいたします。小多国務大臣は内閣の中で特に地方財政の方を所管しておられると承つておりますが、地方税制の法律案は一体いつ国会にお出しになるかお伺いいたし
  220. 本多市郎

    ○本多國務大臣 今回の地方税の改革は、御承知通りに根本的な改革でありまして、その調査に非常に日時を要し、さらにまとめる段階におきましても、地方公共団体等のいろいろな陳情要望等を聞きましたり、関係方面との折衝がありまして、まだ最後的決定案に至つておらないのでありますが、一日も早く出したいと努力をいたしておる次第でございまして、今週中くらいには最後案に到達し得るという見通しを持つております。
  221. 奧村又十郎

    ○奧村委員 予算審議は二十三日をもつて終る見通しをもつて努力をしておるのでありますが、法律案として国会に出される日はいつになりますか、お伺いいたします。
  222. 本多市郎

    ○本多國務大臣 御承知のごとく関係方面等の承認を得た上でなければ、提案することができない建前に今日なつておりますので、ただいま申し上げましたような関係方面との折衝が終り、決定いたしましたたらばただちに提案するのでございまして、今週一ぱいくらいにはぜひとも出したいと努力いたしておるつもりでございます。
  223. 奧村又十郎

    ○奧村委員 各固定資産税。附加価値税などの課税の率その他具体的な問題は、かなりまだ閣議でもつてもきまつておらぬというのでありますが、もう閣議の方においてはさまつておるのかどうかお伺いたします。
  224. 本多市郎

    ○本多國務大臣 ただいまお話の税率あるいは倍率、そうした課税標準税率等においては閣議では一致いたしております。ただ最後的な司令部方面の承認がまだ得られないでいるだけでございまして、もしお尋ねでございましたならばそうした内容につきまして政府委員より説明させたいと存じます。
  225. 奧村又十郎

    ○奧村委員 もう御発表してよければひとつお伺いします。そうしませんとわれわれの審議ができぬと思います。
  226. 本多市郎

    ○本多國務大臣 この場で詳細な税率を申し上げるのは非常に煩瑣だと思います。これはすでに政府部内で決定している案でございますから、資料としてお出ししてもさしつかえございません。ここで政府委員から説明させた方がよろしければ説明させます。
  227. 池田勇人

    池田國務大臣 この問題は一週間くらい前に私からこの委員会で申し上げております。一番の問題は不動産税で倍数をどうするかということであるが、シヤウプ勧告案では千倍となつておりますが、これを閣議では八百倍に決定いたしました。これが今折衝の重点であるのであります。附加価値税の四彩というのを三、五%にするのは、大体関係方面との話がつきましてきまつております。それから住民税におきましてシヤウプ氏は初年度は所得税額に対して一八%ということを言つておりますが、これは一五%で関係方面と話がついた。これはもう私がここで言つたのみならず、ほかの政府委員からも中曽根君に対して答えております。ただ問題は附加価値税におきまして課税標準の計算の仕方、たとえば銀行業務はどうする、土木請負はどうするとかいうことでありますが、この分も大体の成案を得てはとんどまとまつております。これは地方財政の大体のスケールをどうするかという問題と、それからこの折衝によつて八百倍にするか九百倍にするかがきまつていないので、全体としての問題もきまらないからそう言つておるのでありまして、不動産税が八百倍ということになれば、ほかの分もさつときまつてしまうと考えておるのであります。大体のことはたびたび申し上げておる次第であります。
  228. 奧村又十郎

    ○奧村委員 お伺いしたことはお伺いしておりますが、まだはつきりしておらぬ点がありますので、今お伺いしたわけですが、それはまた政府委員から順を追うてお伺いします。  次に自治庁次長に伺います。今度の地方税制の改革は非常に困難左問題があると思う。私の特に案じておりますのは、市町村あるいは府県ことの貧富の差と申しますか、大きな工場、大きな財産家のある所は非常に税率が軽くなるが、そうでない所は非常に重くなるという点がある。また申し上げればきりがありませんが、第一こういう税制の改革をやるについて、府県の税務課員の素質、市町村の税務担当の人間にはたして適任者があるかということである。税務署は昔からの伝統でずいぶんなれている。ところが府県の税務課というものは、二、三年前に初めてできたものである。市町村には税務というようなものは專門的なものは今ほとんどない。それで今税務署と同じようなことをやる。特に附加価値税たんか法人の帳簿を一々めくつてやるということは、この課員の素質からして非常に問題がある。また府県のそういういろいろな差別があるが、その点にもまた問題がある。こういう点について関連いたしますから二、三お尋ねいたしたいと思うのであります。そこでまずお尋ね申し上げることは、現在の府県の財政は府県によつて非常な差別がある。御存じの通り制限外の非常な高率の課税をしている所もあれば、かなりゆとりのある府県もある。この現在の実情について一応お伺いいたしたいと思うのであります。それからこの事業税の賦課率は府県によつて差別があるが、その府県ことの率、それから事業税の滞納状況、そういう府県の財政の内容に関して現在の事情についてお伺いいたします。
  229. 荻田保

    ○荻田政府委員 まず事業税の府県の賦課率でありますが、これは標準率に対しまして二割の標準率超過課税を行つている県が大体半分程度ございます。こちらの方針といたしまして二割よりも標準率超過課税を認めておりませんから、それ以上のものはございません。  それから事業税の徴收成績でありますが、実はこれはわれわれも早く的確な資料を得たいと思つておるのでございますが、何分にもたくさんの府県を相手にしての話でございますので、最近といたしましても十一月末程度より集まつておりません。この数字によりますと、調定額に対しましての徴收割合は、低いところが二割くらい、高いところで六割くらい、平均三割程度の徴收率になつておりますが、ただこの税は二期に納めるようになつておりまして、まだ第二期分の方の徴收期が来ておりませんから、そのように徴收率が低いのだと思つております。
  230. 奧村又十郎

    ○奧村委員 府県の税務課員が大体今全国でどのくらいおるか。そして今度の税制実施においてどのくらい税務課員がふえるのか。それからこれは税務課に入つてから二年とたたぬ人がほとんど大部分であると思うが、そういう経歴などをお伺いしたい。
  231. 荻田保

    ○荻田政府委員 現在地方団体の徴税吏員の数は、隣県が大体二万人くらい、市町村が四万五千人、六万五千人程度でございます。今後新しい税制が実施せられますと、府県におきましては税額にかわりはございませんけれども、現在御承知のように府県の税の賦課徴收につきましては大体市町村に委任しております。従いまして府県の方の徴税吏員が非常に少いのでございますが、今後はシヤウプ勧告の趣旨によりましてそれぞれ独自の税務機構をとつて、自分の税は自分のところで徴放するというやり方にいたしたいと思つております。従いまして府県におきましては相当の税務職員を増加しなければなりませんが、これは現在市町村に対しまして、徴税を委託する場合に出しております徴税交付金の額を、人件費の方に振りかえることによつてまかなえると思いますので、大体府県におきまして駐割程度の増員をしたらいいのじやないかと考えております。なお市町村におきましては四百億からの税額がふえますので、これに応じましてやはり税額の五%ないし一〇%程度の徴税費がかさむようになると思います。そこでこのよい人を集める問題でございますが、これはおつしやいましたように非常にむずかしい問題でございますけれども、すでに地方におきましてはシヤウプ勧告が出まして以来、この体制の目標に対しまして整備をしておりますので、それぞれ機構の拡充、及び新規採用職員の訓練等を実施しておりますから、税法施行になりますれば、とにかく実行できるものとわれわれは見通しております。
  232. 奧村又十郎

    ○奧村委員 漁業権税を府県に持たせるという案になつておることと思うのでありますが、これはぜひやめていただきたいと思うので、特に本多国務大臣の御所見を承りたいと思うのであります。漁業権税は漁業権を保有するものに対してかかるのであります。ところが昨年の暮に漁業法が通過いたしまして、それによつてこの漁業権を国から受けるものは、免許料、許可料を拂わなければならぬことになつておる。これは総收入金の約三%拂わなければならぬ。そうすると、国の方に漁業権に関する免許料、許可料を拂う。府県の方にも漁業権税を拂う。これは明らかに二重課税になるのであらます。そこでシヤウプ勧告においては漁業権税を書いてあります。しかしこれは漁業法通過以前の、こういう事態の全然なかつた時代に勧告が書かれたのであります。またかりに勧告に書かれてあるとしても、明らかに二重課税であり、不当であるとすれば、これはやめてもらわなければならぬ。漁業権税はぜひ取消していただきたい。しかしそれはこの新漁業法による漁業権の免許、許可に対する免許料、許可料を拂うものに対しては漁業権税をとらない、こういうふうに規定を入れていただきたいと思いますが、国務大臣の御意見を承りたいと思います。
  233. 本多市郎

    ○本多國務大臣 ただいまのところ、とりあえずは、漁業権は府県税としてそのままに存置いたしておきして、漁業法の改正のときに、廃止等についても考慮したい、かように考えております。
  234. 奧村又十郎

    ○奧村委員 漁業法はすでに実施されております。漁業法によつてもうすでに免許、許可が近いうち行われるということでありますから、これはひとつその方針を明らかにしていただきたい。
  235. 荻田保

    ○荻田政府委員 おつしやいましたように、漁業法はすでに施行になつておりますが、これに基きます漁業権の整理はなお経過期間がございますので、この経過期間が過ぎましてから、お説のような方向において考慮いたしたいと考えております。
  236. 奧村又十郎

    ○奧村委員 経過期間と申しますが、二箇年の経過は、最終二箇年であつて、特に許可などについては今年中にも行われるはずであります。すなわち今年の夏には政府において全国的に漁業調整委員会の選挙を行う、その調整委員会において許可、免許などが行われるということになりますから、すでにこれは法律で明らかになつておるので、今の法律通過の際に一応これは新漁業法における事態を盛りこんでいただきたいと思いますが、どうですか。
  237. 荻田保

    ○荻田政府委員 新漁業法が逐次実施になりますので、実施になりまして漁業権のなくなるものにつきましてま、そのような方向で考慮いたしたいと存じます。
  238. 奧村又十郎

    ○奧村委員 どうしてもわれわれは一応この国会において規定や入れなければならぬと考えておるので、その点はこれ以上お尋ねしてもしかたがございません。この辺にいたしておきます。漁業権の中に特に共同漁業権には課税をいたさぬというふうに承つておりますが、これはほんとうでありますか。
  239. 荻田保

    ○荻田政府委員 そのように規定いたしたいと思います。
  240. 奧村又十郎

    ○奧村委員 附加価値税について免税点は九万円ということにきまつたそうですが、これは事実でありますか。特に漁業者に対する例外の取扱いをなさるべきだと思うのであります。シヤウプ勧告によつて、農民には附加価値税はかけない。それは農民は厖大な地租を負担しておるからその力はない。ところが漁民はそういうことはない。しかし漁民についても今の免許料、許可料の問題などは、あとから出て来た。もう一つの問題は、漁業は総收入に対する附加価値の率が非常に多い。たとえばろこぎで海に行かれる人は、とつて来た魚代金がすべてそれは附加価値になる。油も使わずに手こぎでろを押して行くというような場合、あるいは單に油ぐらい使つてもこれは知れたもの、それで普通総收入に対して五割、六割ぐらいが附加価値でないかというのが、漁業は総收入に対する八割、九割が附加価値になる。従つて免税点を同じように九万円とするたらば、これは漁業に対しては特にきつくなる。特に零細漁民にきつくなる。この点漁民に対して免税点は特に何とかおはからいしていただかなければならぬと思いますが、政府にその御用意がありますか。
  241. 本多市郎

    ○本多國務大臣 附加価値税の免税点は九万円といたす考えでおりますが、ただいまの漁業につきましては、企業的なものには附加価値税はかかりますけれども、手こぎで自分で漁業をやるというような零細なものは課税しない方針でございます。なおその詳細については政府委員から説明申し上げたいと思います。
  242. 荻田保

    ○荻田政府委員 ただいま大臣がお述べになりましたように、主として自家労力で行われますような漁業につきましては、附加価値税ほかけないようにいたしたいと思います。ただ従前でも事業税がかかつておりますので、それの負担と今度の新しい附加価値税と比べますと、お述べになりましように漁業におきましては、外部に支拂い得るような金額はほとんどありませんので、利益と附加価値というものが割合に同じような。パーセンテージになります。従いまして課率の下りましただけは減税になりますので、漁業に対しましては相当の減税になることと考えております。
  243. 奧村又十郎

    ○奧村委員 ただいま手こぎなど特に自家労力による漁業者には、附加価値税はかけないと言われる、まことにけつこうであります。そうするとこれは免税点を越えましてもかけないという意味に了承いたします。そうなりますと、その規定は具体的にどういうふうにお書きになりますか。その自家労力をもつて漁業々営むものに対しては、特定に何か條項をお書きになるのでありますか。その点をお伺いいたしたいと思います。
  244. 荻田保

    ○荻田政府委員 法案には自家労力によるものというような言葉を入れまして、なおその範囲を明確にするために政令あるいは規則等におきまして、明確なる規定を置きたいと思います。
  245. 奧村又十郎

    ○奧村委員 今回の地方税の改革によつて特に電力あるいは私鉄、そういうものに非常に負担がかかる。そこでどうしても電気料あるいは私鉄の運賃を引上げなければならぬような事態が生するだろうということを、非常に憂えられておるのでありますが、政府はこれを引上げる御意思があるのかないのかお伺いします。
  246. 荻田保

    ○荻田政府委員 今度のシヤウプ勧告に基きます国税、地方税を通ずる負担の変化につきましては、すべて価格の肝に織り込むという根本的な考えを持つております。お述べになりましたよりな電鉄事業等に対します課税につきまして、通行税等廃止なる税と新しく賦課せられます税とよく計算いたしまして、現在の料金に変更を加えなければならないようでありましたら、その点は改正する方針でございます。
  247. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それではこの電力会社あるいは私鉄などに対する税の規定を具体的にお伺いして、それに対するいろいろだ計算上引上げなければならぬということになると、引上げるという御答弁でありますから、これはまた具体的なことをお伺いしてからお尋ねいたします。そうするとこの電力会社、私鉄、銀行、そういうものに対する附加価値の特殊の取扱いはどういうふうにきまつたのですか。たしか今大蔵大臣はきまらないように言うておつたが、どういうようになつたのですか。
  248. 荻田保

    ○荻田政府委員 昭和二十五年度に限りまして、金融業、倉庫業、運送業につきまして、附加価値の計算の特例を設けます。これは総收入金額に対しまして何パーセントという率を規定いたします。これはすべて納税者の選択にまちたいと思います。つまり納税者が普通の附加価値の計算をするか、あるいは今申しましたような特例の計算を下るか、いずれも納税者の自由判断にまちたい。旧しこれは二十五年度に限りたいと思います。
  249. 植原悦二郎

    ○植原委員長 奧村君、まだたくさんありますか。
  250. 奧村又十郎

    ○奧村委員 いや、もうわずかです。その経過の規定ですが、今年度の実施においては個人に対する附加価値税は、昨年度の実績においてやるのか、昨年度の事業税を基本に置いてやるのか、今年度の附加価値の経過的な実施については、どういうような御方針を持ておられますか。
  251. 荻田保

    ○荻田政府委員 これにつきましては本年の一月からの附加価値の実施によつて課税いたします。但し個人につきましては年三回に納付させますが、初めの二回は前年度の実績から概算納入できるような方法を講じたいと思います。
  252. 奧村又十郎

    ○奧村委員 つまり法人は、たとえばこの一月三十一日の決算期の法人とずると、昨年の二月一日からの帳簿による附加価値を計算して支拂うことになるのか、それから個人についていうと、前年度の実績というと、前年度は附加価値税はかかつておらない事業税であります。そうすると前年度の事業税の三分の一を拂うことになるのか、お伺いいたします。
  253. 荻田保

    ○荻田政府委員 法人につきましては、本年の一月一日以後におきまして、事業年度の終りますその事業年度に対しまして附加価値を課税いたします。但しその場合一月を鏡にしてはさんでおるような事業年度に対しましては、古い事業税の計算と新しい附加価値税の計算、両方いたしまして、それぞれ月数によりまして按分いたしたいと思います。それから個人につきましてでありますが、先ほど申しましたように、これはあくまで本年一月から十二月までの附加価値税によつて課税するのでありますが、初めに五月と九月と思いますが、この際概算納入してもらいますが、この場合には前年度の事業税の実績をもちまして、かりに納めてもらう、こういう方法をとりたいと思つております。
  254. 奧村又十郎

    ○奧村委員 銀行局長に対する質問は保留いたしまして、私の質問はこれで終ります。
  255. 植原悦二郎

    ○植原委員長 本日はこれにて散会いたします。  明日は午前十時より開会いたします。     午後四時四十八分散会