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1950-02-04 第7回国会 衆議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年二月四日(土曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 植原悦二郎君    理事 池田正之輔君 理事 尾崎 末吉君    理事 上林山榮吉君 理事 小峯 柳多君    理事 苫米地英俊君 理事 川崎 秀二君    理事 川上 貫一君 理事 圖司 安正君    理事 今井  耕君       天野 公義君    井手 光治君       江花  靜君   岡村利右衞門君       小淵 光平君    角田 幸吉君       北澤 直吉君    小金 義照君       小平 久雄君    坂田 道太君       玉置  實君    中村 幸八君       永井 英修君    丹羽 彪吉君       西村 英一君    松浦 東介君       松野 頼三君    松本 一郎君       南  好雄君    山村新治郎君       西村 榮一君    北村徳太郎君       中曽根康弘君    林  百郎君       深澤 義守君    米原  昶君       奧村又十郎君    山本 利壽君       平川 篤雄君    松本太郎君       黒田 寿男君    世耕 弘一君  出席国務大臣         国 務 大 臣 殖田 俊吉君         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         文 部 大 臣 高瀬荘太郎君         農 林 大 臣 森 幸太郎君         通商産業大臣  稻垣平太郎君         運 輸 大 臣 大屋 晋三君         郵 政 大 臣         電気通信大臣  小澤佐重喜君         建 設 大 臣 益谷 秀次君         国 務 大 臣 青木 孝義君         国 務 大 臣 本多 市郎君         国 務 大 臣 増田甲子七君  出席政府委員         人  事  官 山下 興家君         地方自治庁次長 荻田  保君         大蔵政務次官  水田三喜男君         (主計局長)         大蔵事務官   河野 一之君         経済安定政務次         官       西村 久之君         (財政金融局         長)         経済安定事務官 内田 常雄君         (大臣官房長)         通商産業事務官 永山 時雄君  委員外出席者         專  門  員 小林幾次郎君         專  門  員 小竹 豊治君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  昭和二十五年度一般会計予算  昭和二十五年度特別会計予算  昭和二十五年度政府関係機関予算     ―――――――――――――
  2. 植原悦二郎

    植原委員長 これより会議を開きます。  質疑を許します。中曽根康弘君。
  3. 中曽根康弘

    中曽根委員 時間がありませんから簡單質問だけいたします。  きのうちよつと総理大臣にお尋ねしたのですが、地方行政区画変更、つまり府県統合ということに関して、本多国務大臣の所である成案を練つているという話でありますが、どういう理由に基いて、どのように改訂をやる御所存でありますか。
  4. 本多市郎

    本多国務大臣 行政区画変更につきまして、何か具体的に案を練りつつあるということで御質問でございますが、実はまだそこまでは進んでおらないのでございます。ただ御承知のごとく、一般的に今日までの行政区画が、地理的経済的な地域と符合しない点があつて、いろいろの不都合も生じておる。さらにまた行政区画があまりに小規模なところもあつて、それが自治体弱体化の原因にもなつているから、これを統合等方法によつて適正規模に改むべきではないかということは、一般からもよく指摘されるところであつたのでございます。この点につきまして、歴代内閣も種々なる観点から考究を続けて来たのでございますが、いまだ成案を得るに至つておりません。しかるに今回シヤウプ勧告によりまして、これと同趣旨の示唆が與えられておりますし、今回国の事務都道府県事務市町村事務の三段階に、行政事務の再配分をするということを目的に、地方行政調査委員会議というのが設置されたのでございますが、ただいまの行政区画の問題につきましても、この地方行政調査委員会議にあわせて研究していただき、結論を出していただきたいということになつておりましたので、そこで十分研究していただいて、その結論をまつて政府方針決定いたしたいと考えておる次第でございまして、今日の段階におきましては、いまだ政府として具体的な成案について進めているわけではないことを、御承知願いたいと存じます。
  5. 中曽根康弘

    中曽根委員 こまかいことに移りますから、局長ちよつと御答弁願いたいと思いますが、先般来の災害によつて全国都道府県相当起債をやつております。全国都道府県起債総額が現在までにどれくらいになるか、また利子年度別にどの程度になつているか、この数字をお示し願いたいと思います。
  6. 荻田保

    荻田政府委員 ただいま正確な、資料を持ち合しておりませんが、起債総額は大体七、八百億だろうと思います。利子は最近のものは相当つておりまして、九分以上でございます。その部分が大部分だろうと思います。
  7. 中曽根康弘

    中曽根委員 池田大蔵大臣ちよつとお尋ねいたしますが、この前私はやはり予算委員会で申し上げたのですが、全国都道府県災害関係起債利子というものが相当高くなつている。群馬県の例を見ますと、来年から約三億円程度利子を県民が負担しなければならぬ。大体大きい県では三億から七億程度負担になります。これは非常な負担になつておるのであります。考えてみますと、この災害関係経費というものは、実は国費で負担してもらわなければならぬ経費であります。シヤウプ勧告によつて災害経費国庫負担に切りかえられておるのであります。従つて過去の災害についても、その精神は推し進めらるべきであると思うのであります。従つて少くともこのような利子に関しては、ある程度の特別の措置を講じていただく必要がある、この問題が第一点。第二点は、現在預金部利子を――災害関係は大体において九分くらいで出しております。が、とりあえずこの預金部利子をもつとぐつと引下げるということ、それから過去に発生した災害利子をある程度免除してもらうとか、そういう特定措置を講じていただくこと、この二点についてどういうふうにお考えでありますか。
  8. 池田勇人

    池田国務大臣 災害復旧費全額国庫負担というシャウプの勧告案もございまして、いろいろ検討をいたしました結果、二十五年度以前の分につきましては、二十五年度予算においては全額国庫負担ということにいたします。将来の問題といたしましては地方自治委員会議で十分検討しよう、こういうことに相なつておるのであります。従いまして過去の災害の非常に多かつた県に対しましては、利子負担相当重くなつて参つております。この利子負担の重い分を、財政平衡資金でいかに考えるかということは問題だと思いますが、私は相当考慮に入れるべき問題ではないかという私見を持つております。しかしこれは地方自治委員会議の方でおきめになることだと考えております。  次に預金部利子につきましては御存じ通り非常に経費がかかりまして、二十三年度では五十億円、あるいは三十四年度では三十七億円を一般会計から補給しております、なお相当利子を上げましても、二十五年度は三億二千万円の赤字補槇ということに相なつているのであります。しかし一方では低金利政策をとつております関係上、こういう事情はありますものの、私といたしましては、九分あるいは九分四厘の貸付利子につきましては、なるべく早い機会適当な引下げをいたしたいと思います。大体来年度当初くらいからやりたいと考えております。預金部の採算がついて行きますれば、とにかく卒先して金利を低くするようにいたしたいと考えております。
  9. 中曽根康弘

    中曽根委員 利子を引下げるというお話を承つて、同感でありますが、二十五年度の当初からどの程度まで大体引下げる見込みでございますか。
  10. 池田勇人

    池田国務大臣 これは郵便貯金のふえる状況、それから今預金部で持つておりまする国債は六百三十億ばかりございます、地方債が大体同程度になつておりますが、この三分五厘の国債償還の時期的関係等から、予算で見込んでおります三億二千万円の赤字があまりふえないように、あの赤字程度で、郵便貯金の増加の状況、あるいは国債償還関係等を見まして、適当にいたしたいと考えております。少くとも一般金利は二月より原則として二厘引下げておりますから、それ以上増加いたさないようにいたしたいと思います。
  11. 中曽根康弘

    中曽根委員 時間がありませんから飛ばして質問いたしますが、荻田局長質問いたします。  地方税の改正を今進めておられるようでありますが、固定資産税市町村民税、それから附加価値税、この三つの税金は今国民が一番関心を持つている税金であります。そこで具体的にただいまの構想を承りたいと思うのでありますが、固定資産税について本年度徴收目標をどのくらいにするか、固定資産評価方法をどういうふうにするか、たとえば市町村議会構成議員を利用するとか、あるいは議会の推薦によつてその評価人団を選ぶとか、そういう評価方法の問題、第三番目は評価基準、たとえば特殊建物であるとか、あるいは庭園、果樹園、あるいは陳腐化した資産、未稼働資産、こういう問題について複雑な問題があると思うのであります。この間をどういうふうにさばくかという問題、それから課税範囲をどの程度まで広げるか、以上の五点について御説明を願いたいと思います。
  12. 荻田保

    荻田政府委員 お答えいたします。固定資産税に対しまする法案は目下提案中でございまして、最終的なことはきまつておりません。大体現在考えております程度を申し上げます。  固定資産税の二十五年度徴收見込み額は五百二十億と考えております。  第ニにこの評価を行いますのは、市町村におきまする評価員というものの意見を聞いて市町村長がきめることになります。この評価員固定資産評価に関しまして、特に経験知識の深い者の中から、当該市町村議会の同意を得て任命いたしたいと考えております。  第三に評価方法でございますが、三十五年度に関しまする限り、土地家屋につきましては特例を設けます。その場合農地以外の土地及び家尾につきましては、大体現在の賃貸価格の八倍くらいをもつて時価とみなすようにいたしたいと思います。農地につきましては、現在あります公定価格の二十倍を超えない範囲内におきまして、各府県別にきめまする倍数を乗じたものをもちまして、二十五年度時価とみなすようにいたしたいと思います。それからそれ以外の資産につきましては、時価基準にいたしまして、今申しました評価員が算定いたすことになります。その場合陳腐化、未稼働というような問題につきましても、十分考慮いたしまして、時価がきまるようにいたしたいと思います。  それから課税範囲でございますが、これは土地家屋は全部、それ以外の償却資産につきましては、所得税法人税におきまして、減価償却の対象になります資産を全部入れることになります。ただ自動車税自転車税荷車税等がございますので、これは除外いたしたいと思います。なおそのほかに軌遵税、電柱税も残りますので、これも重複いたさないようにしたいと目下考えております。なおそのほかに申されました果樹というようなものは、立木は一切固定資産税から除きますから、除外されることになります。
  13. 中曽根康弘

    中曽根委員 その中で一番問題になるものは、陳腐化資産と未稼働資産評価方法であると思います。この陳腐化資産や未稼働資産評価について、どのような基準地方に対してお示しになるのか、もし構想がありましたら、お聞かせ願いたい。
  14. 荻田保

    荻田政府委員 ただいまいまだはつきりした基準を持つておりませんが、国税の方におきます資産評価の問題と関連いたしまして、適当に考えたいと思つております。
  15. 中曽根康弘

    中曽根委員 その次に市町村民税について伺いますが、やはり徴收目標課税方法等について御説明願いたいと思います。
  16. 荻田保

    荻田政府委員 市町村民税課税月、標はシヤウプ勧告では六百億となつておりますが、幾分これを下まわるような額を目標にいたしたいと考えております。徴收方法でございますが、納税義務者は大体個人だけに限りたいと思います。ただ法人につきましては、均等割を一部徴收いたしたいと思います。  次に税率でございますが、今度の市町村民税均等割所得割の二つだけになります。均等割の方は、これは市町村人口の大きさによりまして、三段階を設けまして、人口五十万以上の市と五万以上の市とそれ以外の市町村というように三段階にわけるわけでありますが、その標準率を大体八百円、六百円、四百円、制限満度を千円、七百五十円、五百円といたしたいと思います。法人につきましては、その三倍ということにいたしたいと思います。  次に所得割の方でございますが、これは所得税標準にいたすのが大部分であると思いますが、その場合標準率を二十五年度に限りまして、大体百分の十五とし、それ以後は百分の十八といたしたいと思います。なお制限率はいずれも百分の三十といたしたいと思います。  それから徴收方法でありますが、これは前年度所得税基準にいたしまして市町村の方で賦課課税をいたしたいと考えております。
  17. 中曽根康弘

    中曽根委員 第三番目に附加価値税について伺います。附加価値税徴收目標、並びに巷間伝えられておりますように、賃金地代家賃附加価値を算定する場合に收益から差引かない、これでは業種によつて非常な差別が出て来る。たとえば証券業者であるとか、交通機関であるとかいうものに対しては非常な重税になるというこの不公平をどういうふうにするか。それから財産購入をした場合、それから財産売却をやつた場合、これによつてもまた非常な不公平が生じて来る。こういうような問題をどのように解決するか。それから税率の問題あるいはまた今のような不合理から、場合によつて純益がなくても企業税金がかかつて来るということが出て参りますが、こういうものをそのまま放任しておくのかどうか、この附加価値税についてお伺いいたします。
  18. 荻田保

    荻田政府委員 第一番の附加価値税徴收目標は四百四十億足らずと考えております。附加価値性格は、御承知と思いますが、利子地代、利潤及び労賃に課税することになるわけでありますが、計算方法といたしましては、総元上げ金額から他の企業に支拂いましたものの購入費、サービスの代金というようなものを控除するという方法をとりたいと思います。その場合、おつしやいましたような労賃をたくさん支拂つているような企業に対しまして、あるいは現在まで利益の上つていなかつたような企業に対しましては、一躍負担が大きくなるものも出るかと思いますが、従前の事業税徴收額は二十四年度が五百億、二十五年度見込みになりますと、七百億ぐらいになつておりますが、それが四百四十億に減るのでございますから、事業税だけを計算いたしましても、全体的にやは相当安くなると思います。なおこのほかに取引高税のこともあわせて考えますと、産業に対します負担相当安くなると思います。ただ、今申し上げましたような特定事業に対しましては、ある程度負担が重くなると思いますが、これは附加価値税をとつて行く限りやむを得ないことだと考えております。  それから財産を購入いたしました場合、これは全部当該年度におきまして附加価値より控除いたします。それからまた売却いたしました場合には、その額は売上げ金額の中へ入りますが、但し附加価値税を実施する以前に購入いたしましたような財産売却する場合には、これは売上げ金額の中には入りません。従いまして、これによりまして、当該事業に対します附加価値負担は、年度によりまして相当増減があるという欠点はございますけれどもシヤウプ勧告に言つております固定資産の新規の資産ということが、日本の経済にとりまして重要であるということを考えまして、やはりシヤウプ勧告通り計算方法をいたしたいと思います。  それから次に税率でございますが、標準率シャゥプ勧告では百分の四ないし六と示されておりますが、なるべく負担を軽減するというような趣旨で、できれば百分の三・五にいたしたいと思います。なお原始産業及び自由職業に対しましては、これより一%下げたいと思つております。
  19. 中曽根康弘

    中曽根委員 私が質問いたした賃金地代家賃、それに非常な重圧がかかつて来るという問題や、財産購入売却の場合の不合理の問題、あるいは純益なき企業にかかる場合もあり得る、こういう問題が依然として打開されていないというのは、私は国民負担の均衡の上から、相当愼重考えなければならない問題だろうと思います。こういうような性格税金に対しては私は反対の意思を表明いたします。時間がありませんからこの程度でこの問題は打切ります。
  20. 上林山榮吉

    上林委員 関連して……。政府国税地方税を通じて減税の方向に努力していることは認めるのでありますが、さらに地方税負担を軽減する意味において、ただいま問題になりました附加価値税あるいは住民税、並びに固定資産税に対する税率を安くするために、努力せられておることも私ども了とするのであります。そこでその他の地方税配分の問題について、今日府県当局市町村とが対立して、政治問題化しておるいわゆる電気ガス税について、私は政府方針をこの際ただしておきたいのであります。この税金はその性質から私ども考えまして、市町村に均霑し得る税金である、こういう意味から市町村税とするのが妥当である、こういうふうに考え、ことに自動車税等のごときは徴收その他において非常に困難が伴うから、こういう種類のものは府県にこれをまかせるのが最も妥当ではないか、こういう見解を持つておるのであります。これに対してすでに閣議において論議されたというようなことを聞いておるが、どういう方向政府は持つて行く考えであるか、この点を所管大臣から承つておきたいのであります。
  21. 本多市郎

    本多国務大臣 御承知のごとく、今回の地方税改革案によりますと、府県税市町村税を合せまして、十九種目ばかりの税があるのでありますが、このうちで附加価値税入場税遊興飲食税府県税であるということが決定いたしております。さらにまた固定資産税市町村民税、このニつも市町村税であることが決定いたしておるのでありますが、その他の税目につきましては、税の性格とさらに財源調整という見地から、ただいま研究中でありまして、大体の方針といたしましては、偏在する税につきましてはこれを大きなブロックの府県税の方に持つて行く、さらに普遍的なものをできるだけ市町村税に持つて行くという方針をとつております。さらにその財源調整につきましては、府県税は前年度程度徴收額にとどめる。すなわち七百億円程度にこれを抑制いたしまして、財源をもつばら市町村に振り向けるという方針研究中でございますが、御指摘の電気ガス税につきましては、これは財源が普遍的であると言うこともできますが、しかしまたその電力、ガス等消費量の点から行きますと、都市の方面相当偏在するという点も見られます。さらにまた課税技術の面におきまして、市町村税にする場合に、この分割計算のために非常な経費を要するであろうという点も考えられるのでありまして、そうした点につきまして、いずれに決すべきか、ただいま愼重研究中でありまして、いまだ最後的決定に至つておらないのであります。
  22. 上林山榮吉

    上林委員 市町村税はその性質から考えて、全国に均霑するような税種を選びたい、この方針は私は了とするのであります。その立場から考えまして、電気ガス税のごときは全国的に市町村に均霑するものである、こういうふうに考えられますので、府県市町村が対立をいたしまして、非常に大きな政治問題化しておるこの際でありますから、政府としては單に事務的な考えによつてこれが決定をせられないように、もし決定をするなら、お説の自動車税のごとき、これは市町村にはほとんどないといつてもいいような種類のもの、あるいはこれに類似したものを権能の大きい府県に割当てる、こういうような方向で善処せられんことを私は要望したいのであります。これに対してはいまだ政府方針決定していないという際でありますので、私は愼重に、しかも新し自治体の基礎である町村、これを財政的に強化する意味において、もつと積極的な配慮を願いたい、こういうふうに考える次第であります。御答弁があれば承ります。
  23. 本多市郎

    本多国務大臣 十分研究いたします。
  24. 中曽根康弘

    中曽根委員 安本長官に伺います。時間がありませんので、はなはだ残念ですが簡單に伺います。この問の経済演説をお聞きしますと、非常に明るい楽観論をお述べになつておる。しかし安本長官がお立てなつ基本的な考え方は、世の中がバイヤー・マーケットになつたら、本年度有効需要がどの程度になる、そこから算定して経済理論をお立てになつておると考えます。そこで昭和二十五年度における有効需要は昨年に比べてどの程度になつておるか。有効需要が起きるのは、御存じのように輸出国民消費投資であります。そのおのおのについて昨年とどの程度の差があるがということを具体的にお示し願いたい。
  25. 青木孝義

    青木国務大臣 お答え申し上げます。安定構造基本といたしまして、一ドル三百六十円の現行レートを維持する、従つて国内物価水準の安定のもとにおきまして、輸出の促進とかあるいは建設投資の拡大、国民生活の安定という三点に政策重点を置きまして、一方なるべくすみやかに経済の自立を達成するということを目的としておるのであります。従つて経済規模はこの基本から割出された輸出、それ存から財政及び国民消費というような点から、有効需要が中心となつて決定されておるのであります。昭和二十五年度は大体この点については輸出とそれから国民消費関係、そういう点に重点が置かれると思いますが、大体昭和二十五年度の輸入は十億二千万ドル、輸出が六億三千万ドル、こういう大体の予定でございます。さらに個人消費につきましては、われわれの推算によりますと、支出は二兆二千六百五十億、それから財政支出が八千五百六十三億、民間資本の形成が六千二百十四億、この整をわれわれは大体予定いたしております。国民所得につきましては御承知と思いますが、三兆三千五百二十億、これで海外収支の差を加えたものとバランスするようなことになつてつて、そして価格補給金企業合理化価格内部調整とによつて一般的な水準には影響を與えることのないように解決されることを予定いたしておるのであります。以上のようなわけでありまして、その基本をなす有効需要の点につきましては、繰返して申し上げますけれども国民消費輸出の増進という点から、確保し得られるというふうに考えております。
  26. 中曽根康弘

    中曽根委員 それらの輸出力の中に、未開発地開発計画によるものや、あるいは沖繩需要がかなり見込まれておるのではないかと思うのでありますが、この点についてどの程度の金を見積つておられますか。
  27. 青木孝義

    青木国務大臣 沖繩等のことははつきりいたしませんが、ともかくも東南アジアの開発というような計画につきまして、われわれも多少承つおりますし、またそういう方面でわが国の生産物に対する需要が増加することを期待いたしております。
  28. 中曽根康弘

    中曽根委員 来年度財政計画立てる上においては、具体的な数字をもとにしてやつておるだろうと思うのです。われわれが聞いおる範囲では、未開発地開発計画や、あるいは沖繩需要を大体四千万ドル程度期待しておるという話でありますが、はたしてその通りであるかどうか。
  29. 青木孝義

    青木国務大臣 四千万ドルというような数字は、まだ私ども承知いたしておりません。
  30. 中曽根康弘

    中曽根委員 それだけの有効需要が起るという前提で経済を進められておるのでありますが、この有効需要を起すために必要な燃料であるところの資金というものが、はたしてそれにマツチして回転して行くかどうか、ここに一番大きな問題があります。  もう一つは、それだけの物資ができた場合に、これを消化し切るだけの能力が国民にあるかどうか、あるいは輸出にあるかどうか、ここに大きな問題があるだろうと思います。そこでそれを運転して行く燃料である資金計画は、はたしてどのような計画でやつておいでになるか、けさの新聞に出ておりますが、安本の正確な計算をお示し願いたい。
  31. 青木孝義

    青木国務大臣 ただいまの御質問、われわれはただそれだけにたよつておるわけではありませんので、輸出増進という点と、それからさらに協定貿易の拡張というような点に、大きな期待を持つておる次第であります。しかしそれについて、生産なり輸出が可能であるかということに関連いたしまして、一体総合資金計画というものを立てておるかどうかという点でありますが、大体のわれわれの見通しは立てております。今日の段階において、嚴密な意味での資金計画というものはあり得ないのでありますが、安本といたしましては、基礎的な資料として総合的な資金需給見込み立てております。これによりますと、明年度の新しい資金の供給源泉としては、金融機関の預貯金、それから政府国債償還金、それから見返り資金の新規繰入金、政府予算内における金融的な出資金、並びに株式などの証券投資などを通算推定することといたしまして、一応約五千八百億円、この程度見積られるので、この総資金をディスインフレを目標といたしまして算定をいたしております。そしてそれに伴つた大よその計画立てておる次第でありますが、所要の分への配分を想定いたしてみますと、産業資金として新規に供給し得る金額は約五千億程度となつております。またそのうち長期設備資金に充当し得る金額は、かたく見積つて見て千三百億くらい、この程度は確保し得る見通しとなつてつております。本年度よりも改善し得られる基礎的なデーターが得られる次第でありまして、この需給推定は平面的な算定でありますから、明年におて生ずるこの資金源泉の全体をデイスインフレの線に沿つて運用して参りたいというのがわれわれの考えであります。
  32. 中曽根康弘

    中曽根委員 資金計画を見ると、昭和二十四年度よりトータルにおいて減つておる。産業資金においても減つております。設備資金が百五十億程度ふえている。これも今後の景気の動向によれば、必ずしも保証し得るとは限らないのであります。そういうやさきに、しかも来年度状況を見ると、ローガン構想によつて相当の貿易資金がいります。たとえば補償金にしても、新しく相当な額がいつてくる。あるいは滯貨をなくすと言つているけれども、現在の状態で企業がコストを下げて行くとすれば、どうしても増産によるよりしようがない。そうすれば物がふえる。しからばふえたものを吸收する能力が国民消費から出てくるかというと、おそらく出て来ない。六千三百七円で締めつけられ、しかも農村需要というものはここからは全然起つて来ない。そういうふうにして企業が増産したものは消化し切れないので、そういう過程にあつて滯貨資金がいらなくなるということは考えられない。滯貨資金もいる、貿易資金もいる、設備資金は、それほど直接投資その他がふえるとは考えられない。そういう点から、すると、昨年以下の資金計画であり、しかもその構想し先資金計画自体やれるかどうかというところに、はなはだ疑問の余地があると思うのであります。そういう点について、安本長官はいかにお考えになりますか。
  33. 青木孝義

    青木国務大臣 今日の事態の下におきまして、われわれは今申し上げたような資金計画でやつて参りますれば、われわれの考えとしてはディスインフレの線を大体堅持して行けるというふうな確信を持つている次第であります。
  34. 中曽根康弘

    中曽根委員 確信をしているという信念を聞いているのではなくして、具体的な数字を私はお聞きしているのであります。運転資金及び設備資金、運転資金のうちで貿易関係資金その他の資金等一体どれくらいを予定しているのか。それによつて私はあなたの考えが正しいかどうかを判定しようと思つているのです。
  35. 青木孝義

    青木国務大臣 実はけさほど新聞に、資金計画の内容が出ておつたと思います。これは実はまだ閣議決定をいたしませんので、閣議決定をいたしました上でまたあらためて申し上げたいと思います。
  36. 中曽根康弘

    中曽根委員 閣議決定の有無によるのではないのです。あなたがこの間本会議で大みえを切つて演説した背景が、どういう足場に基いてやつているかということを聞いておるのでありまして、閣議決定などという形式的なことを聞いているのではありません。具体的な資金の繰りまわしをどういうふりにして、あなたの構想している二十五年度の経営ができるかということを聞いておるのであります。
  37. 青木孝義

    青木国務大臣 私の考え方としては一応まとまつておりますけれども、これはなお検討中に属しておりますので、私がそう数字をここではつきり申し上げるわけに参りません。
  38. 中曽根康弘

    中曽根委員 検討中のまだ未確定なものを基礎にして、なぜあんなふうに大みえを本会議において切つたのですか。どうしてああいう大みえが切られますか。
  39. 青木孝義

    青木国務大臣 もちろんその数字等におきまして、多少の違いはありましても、方針はわれわれとしては決定されておりますので、申し上げた次第であります。
  40. 中曽根康弘

    中曽根委員 方針なら、あえて青木安本長官といわず、私といえどもきめられる。しかしあなたが、安本という厖大な機構を持つて、精緻な計算をして、秘めてあれだけの大みえが切られるのだろうと思う。その内容なくしてあれだけの大みえが切られないと思う。單なるはつたりにすぎないと私は解釈せざるを得ない。遺憾ながら時間がありませんから、私は次の問題に移ります。
  41. 青木孝義

    青木国務大臣 ただいま中曽根委員は、あれははつたりだというお話であますが、決してはつたりではございません。はつきりお断り申し上げます。
  42. 中曽根康弘

    中曽根委員 はつたりでないなら、具体的な数字をぜひここで示してください。昨年よりも資金計画が減つておる。産業資金も減つておる。しかも今申したように貿易の資金にしても、あるいはその他の資金にしても、滯貨金融を減らすといつても、実際はストツクがふえて来て、ますます金詰まりがひどくなつて来る。そういう状態が当然予想されると私は論証しておる。従つてそれに対する合理的な反駁なくしは、あな先の考え方ははつたりだと言う以外にはない。
  43. 池田勇人

    池田国務大臣 資金計画のことにつきましては、私にも重大な関係がありますので、お答え申し上げます。けさの新聞に出ました資金計画は、私は一箇月ほど前に、安本の計画だというので見たことがあるのであります。私の記憶によりますと、貯蓄が二千九百億になつておつたと思いますが、こんなことではございません。非常に緊縮政策をやりました昭和二十四年度において、予想をうんと突破いたしまして、四月から十二月までで三千百八十億であります。二十五年度は一―三月の分が引当等になりますから、そう大した期待は持たれませんが、大体四、五百億ぐらいの貯蓄増が予定できるのであります。そういたしますと、昭和二十五年において、われわれが経済の復興計画立ててやつております関係上、実績から申しましても少くとも三千三百億とか三千五百億とかの貯蓄は期待し得ると思う。こういうことから考えますと、資金計画全体がわかつて参ります。しかしてまたあれには長期資金は千百億とか千三百億とか載つておつたようであります。しかし二十三年度において長期資金が千十億円、二十四年度計画では千百億円、来年度におきましては、金融機構の改正をやりまして、千五、六百億の長期資金は必要だと思う。しかもまたそれには四千億程度の運転資金を見込んでおります。昭和二十四年度の運転資金は大体四千二、三百億であります。しかも昭和二十四年度がこんなふうに行つたのは、物価が前年に比べて上つて来ましたから、運転資金相当いるのでありますが、二十五年度においては物価は大体横ばいと思います。そうすると運転資金の増は生産の増によるものばかりだと考えるのが普通であります。お話の通り貿易資金とか、あるいは生産増によりますある程度の滯貨金融というような、いろいろの問題がありますが、四千億円程度の運転資金はいらないから、これは設備資金の方にまわす。私はこういう考えをもつて今検討いたしております。あなたは今日の新聞のあれをごらんになりまして、すぐこれで政府資金計画がきまつたとお考えになつてはいけない。これは安本と大蔵省がとくと検討をいたしまして、いずれこの国会中に発表いたします。  なおこの機会に中曽根君にお答えいたしておきたいのは、昨日、申告納税の数字が非常に上くない、こういうお話でありましたが、前年すなわち昭和二十三年の十二月末の申告納税の徴收ぐあいは三三%、二十四年の十二月末の分は四〇・八%でありますから、一〇%上昇いたしております。これはやはり国民が納税に協力せられた結果でございまして、納税成績としては、申告納税につきましても非常によろしゆうございますから、この際はつきり申し上げておきます。  次に滯納の数字でございますが、滯納は十二月末で五百六十二億ございます。五月一日は七百六十億であつたのが、五百六十億に減つております。前年の二十三年の十二月末は五百十億円、程度であつたのであります。
  44. 中曽根康弘

    中曽根委員 池田大蔵大臣から資金計画もまだ未確定だというお話を聞きましたが、そういうような未確定な要素をもとにしてあれだけの大きな演説はできないと思う。もつと確定した確信ある材料によつて演説というものはなさるべきであると思うのであります。また預金が非常にふえたと言つておりますが、なるほど預金はふえた。しかしそれはインフレがやんで、通貨に対する安心感が出て来たその余波で預金は今年はふえた。しかし昭和二十五年度というものはその余波はもうなくなつている。従つて昭和二十四年度程度の預金を考えるということは私はできないと思うのです。それほどのものを期待しているならば、明らかにその資金計画はくずれます。また昭和二十四年度において二十三年度より物価が上つたというお話がありましたが、物価が上つたならば官吏の給與ベースをなぜ上げない。生活は苦しくなつているに違いない。こういうこともまた一方からは出て来ると思うのであります。しかし時間がありませんから、あまりこの問題が追究できないのは残念に思います。  稻垣さんがおいでになりますから、有効需要の問題とひつくるめて貿易の問題を伺いたい。伝えられるところによると、政府は今秋以後に来るいろいろな海外からの需要その他に合せて、いろいろな作業やつているということを闘いでおりますが、一体日本の貿易構造というものを、どの辺に持つてつて安定させるつもりか。中国貿易ということが昨日も論議されておつたのでありますが、中国貿易に対してはどの程度のパーセンテージにするか、東南アジアに対してはどのくらいにするか、西欧あるいはアメリカ大陸に対してどの程度に持つて行くか。それに対して最終的に日本の貿易構造というものをある程度に安定させたい、こういう御構想がありましたならばまず承りたい。
  45. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 お答えいたします。今各国がドル不足の関係経済復興の関係で、貿易上いろいろな制約を加えておりますときに、何年先かの貿易の構造がどうなつて行くかということをはつきリ申し上げることは、非常に危險なことだと私は存じております。しかしながら、われわれ今日貿易を促進しなければならないのでありますから、今日の状態において、できる限りの方面に、できる限りの貿易をやつて行くという立場以外には、今日はないと私は思つているのであります。もと、より戰前の貿易構造は、大体において対中華貿易というものが輸出入とも三〇%前後を占めておつた。こういつた形はわれわれが正常の形として、最も望むところでありますけれども、それではこれが今日すぐ実行できるかというと、いろいろな制約があつて実行できない。従つて今日どういう構造になるかということを想定することは、私は非常に早計に失すると思うのであります。ただ今日においては、今日の各国の貿易対策から考えまして、われわれといたしましては、できるだけ各国に対して通商協定を結んで行く。相互的な通商協定という場合が普通でありますが、あるいは場合によつては、多角的の通商協定も必要であると存ずるのであります。従つて今日におきましては、われわれはヨーロツパ方面に対する通商協定も結んでおりますれば、あるいは南米に対しても通商協定を結び、また今日の主力は東南アジア方面に向けられておりますが、その方面におきましても、通商協定の改訂あるいは新設の面に力をいたしております。どういう構造になるかということを今日あらかじめ想定することは、私はむしろ避けるべきである、かように考えておひます。
  46. 中曽根康弘

    中曽根委員 もう一つ大きな問題として、現在電力再編成の問題がありますが、この電力再編成の問題の一番ポイントは、料金の調整とカーレントの調整であろうと思います。この問題がどうきまるかということが、日本産業の死命を制する。特に九州その他の電力の足りない所では大きな問題であります。これを調整するのにどういう構想を稻垣さんはお持ちでございますか。
  47. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 この問題は先般この委員会で上林委員からも御質問がありました。多少重複いたすかもしれませんが、お答え申し上げます。電力再編成の問題は、これは日本産業全体にとつて非常に大きな問題であります。ことに日本産業の分布というものが、十年あるいは十数年この方日発という一つのプールされたああいつた会社を基礎といたしまして、産業の分布ができ上つておる。こういうことでありますから、従つてこれが再編成というようなことは、非常な影響を各方面に及ぼすことはもとよりであります。そこでただ問題は二つの観点、いわゆる集中排除の問題と、もう一つは企業の自主性というか、あるいはほんとうの意味において電力事業というものがどういう形であるへきか、こういう観点と、二つの点から再編成という問題が持ち上つて来たわけであります。そこでこの問題を解決いたしますために、御承知通りに再編成審議会を設けまして――これは決定機関ではありません、通産大臣の諮問機関でありますが、この再編成審議会の答申を得たわけであります。その答申の大要については、すでに新聞等に載つておりますから、この点についてはもはや御承知で、説明を申し上げる必要はないと存ずるのでありますが、大体の案といたしましては、いわゆる九分割であり、そして同時に、これが御指摘のようないろいろな料金差の上において、あるいは需用の差の上において影響をできるだけ寡小にする、つまり現状に置いておいて、片方電源開発を待つて、順次にこれを調節して行くという意味合いにおいて、調整会社案なるものが答申されておるのであります。そして一方に同時にレギュラトリー、ボデイによつて、料金の問題あるいは電力量の分布の問題について、これが決定をさせるという形の答申案になつております。しかしこの電力の再編成というものは、一方において集中排除法から出発しております関係上、関係筋との間の折衝が、まだ多分に残されておるのであります。伝えられるごとくあるいは十分割案というものがあり、あるいはその他の案が一つの集排という観点から、いろいろな案が関係筋にもあるのでありまして、この間の調節に相当の時間を要するだろうと私は考えております。なおかりに分割案が決定いたしましても、この間の調節をどうするかということが大きな問題であり、日本の工業の分布というような問題を中心といたしまして、できるだけ電源開発と並行しながら、影響を少くして、この再編成をやるべきだと考えておりますので、その方向に向つてつて行くつもりであります。
  48. 植原悦二郎

    植原委員長 委員の方に申し上げておきますが、今の電力再編成の問題は、先日も上林町君の質疑がありまして、ただいま通産大臣の御答弁はほとんど繰返しであります。これは委員の方がつとめてこの委員会に御出席にならないで、御自分の質問のみに気をとられておる結果だと思いますが、これは委員諸君のためにも、また政府のためにもなるべく御出席くださりまして、同じ質問を繰返さないように、両者の方にお願いいたします。しいて諸君の言論に干渉しようとするわけではありません。
  49. 中曽根康弘

    中曽根委員 私が稻垣さんにお尋ねしたのは、上林山君と同じ趣旨でお尋ねしたのではないのです。稻垣さんは有名な修正資本主義論者です。修正資本主義の原理はどこにあるかというと、均衡ということが最も大きなことです。現に稻垣さんは自分の横浜ゴムで実際やつておられる。その実際やつておられる稲垣さんの一番重要な問題は、電力のような国家の重要産業に対して、どういう構想を持つておるか、実際どういう政策をやるかということです。稻垣さんが犬養連立派の連中がくずれて、また木村さんがやめてもおいでになるというのは、この電力事業はおれ以外にはやれないという大自信でもつてつておられるからであると私は考える。私はそれを確信して、まだ大臣をやつておられるその御抱負を聞きたい。もう一つは貿易構想という問題も計画資本主義というか、この観点から当然出て来る問題です。その修正資本主義のキー・ポイントについて実は伺いたかつた。しかしややその片鱗を見せてくれましたから、私はこの程度でやめますが、何とぞその政策を御実現くださるようお願いいたします。  その次に伺いますが、時間がありませんから、簡單に要点だけお願いしたいと思いますが、貿易外收入の内訳がどのくらいになつておるか、七千万ドルくらいあるはずですが……。これは国民の目に見えないところでかなり多くのものが入つておる予定でありますから、詳細に御説明を願いたい。
  50. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 貿易外收支の点についての御質問でありますが、私の持つおります統計は、昨年の一月から七月までの貿易外收入の総額が出ておりますが、それは二千三百三十六万九千ドルに相なつております。そのうちおもなものはレヴオルヴイング・フアウンド、CPO、OSSであるとかが出ております。これはもし必要ならば後ほど申し上げますが、別に詳しく申し述べる必要もなかろうと思いますが、コンストラクシヨン、FNS、そういつた方面の收入であります。これに対してこの期間の貿易外の支出の主なる数字は五十万五千ドルであります。これはポート・チャージとかコンシュラー・フィーとかテレグラフ等で占めておるわけであります。
  51. 中曽根康弘

    中曽根委員 その中で観光による分はどのくらいになつておりますか。
  52. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 観光によるものについてはここにはつきり数字が出ておりませんから、特に観光の点について御希望ならば調査してお答え申し上げます。
  53. 中曽根康弘

    中曽根委員 外資導入について稻垣さんはたいへん御苦労なすつておられるようですが、伝えられるところによると、外資導入委員会をつくるとか、外資導入促進法という單行法をつくつて税金の問題とか利潤の保証、こういう問題を一括してやるというお話があります。あるいは最近外貨予算の編成がえを、最近の状況変化についておやりになるということも聞いておりますが、それらの外貨予算の問題や外資の導入について、どういうような構想をお持ちでありますか、伺いたい。
  54. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 外資導入に関しましてのいろいろな障害、そういつた問題については、この問題をこの前の委員会のときに小峯さんの御質問でありましたか、お答えを申し上げたつもりでおりますが、その障害として考えられることは、利潤なりロイヤルテイとかプロフイツトとか利子とかあるいは元本もそれに含まれますが、それの返還に対してこれをドルにコンヴアートすることが保証されないと危險である、こういうことも一つの大きな原因であります。あるいはまた日本へ技術を導入する場合において、これが指導のために技術者を、よこさなければならぬ、そういうところの技術者に対して、日本の生活標準と向うの人の生活標準が違うと思います。そこで所得税をかけるということになると、税率の上において非常に大きな難点がある。あるいはまた従来の電気会社のごとく、せつかく投資はしたが、その会社が日発に一つになつて、一つの国家管理になつた、あるいは国営になつた、いわゆるナシヨナライズされるということの危險に対する何らかの補償がないと、非常に危險があつて投資しにくい。こういつた問題も難点の一つであります。そのほか従来は法人税の問題であるとか、あるいは統制法規の問題であるとか、あるいは労働不安であるとか、いろいろな問題が提起されておつたのでありますが、これらの問題は今日大体落ちついて参りました。前に申し上げましたような観点について、われわれは今検討いたしておるのであります。この点については、今の税務関係あるいは送金関係その他の点がありますので、大蔵省において、できますればひとつ起案いたしまして、今議会に提案いたしたいと考えておるようなわけであります。
  55. 中曽根康弘

    中曽根委員 そうしますと、利潤やあるいは利子の保証とか、あるいは税金の問題について、外資導入に関する特別法を一括して今議会にお出しになるという意味ですか。
  56. 池田勇人

    池田国務大臣 いろいろなフアクターを持つておりますので、一括した法律案にならないと考えております。問題々々で、たとえば税の問題ならば、特別の措置法をこしらえる、送金の問題で法律を要する問題、また法律でなくてもできる問題とか、いろいろな問題がありますので、個々別々に出すようになると考えております。
  57. 中曽根康弘

    中曽根委員 稲垣通産大臣に最後に伺いますが、国際経済再開に備えて、特に今秋以後東南アジアその他に対する日本のプラントの輸出の問題が出て参ると思います。もう一つは、ブレトン・ウッズやその他の関係もあつて、産金の奬励も始めなければならぬ。この二つについて、具体的にどういうような政策をおやりになりますか。
  58. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 その前に中曽根さんにお答えいたしますが、観光収入は二十四年一月から十二月まで三十四万九千八百八十二ドルであります。  御質問の産金政策と、それから東南アジア方面よりのブラントの計画に対する対策をどうするかという御質問についてお答えを申し上げます。  まず産金政策の問題でありますが、この点につきましては、今日日本の産金額が大体三トンあるいは少しくそれを上まわつておりますが、そういつた昨年度の産金の状態であります。本年度は鴻ノ舞の選鉱場が完成いたしましたので、おそらくは四トンを越すだろうと存じております。われわれは今後三年間に、これが年間十トン程度まで行くようにいたしたいというように考えておるのであります。そこで今ちよつと名前を言いました鴻ノ舞以下十三金属鉱山につきまして、その選鉱設備、あるいは青化製錬設備といつたようなものについては、通産省においてそれぞれの業者といろいろ協議をいたしておりまするこれらの人たちに選鉱場なり、あるいは青化製錬場を設けさせるというためには、この十トン計画を遂行するためには、大体十二億円の資金がいるものと想定されるのでありますが、そのうち、たとえば帝国鉱発とか、あるいは持越鉱山であるとか、あるいは千歳鉱山であるとか、こういう方面については、企業体自身が、資金の融資を市中銀行から受けることは困難なような点も見受けられますので、この点については見返り資金から、これが転用いたしたいということで、今研究をいたしております。その他のものは大体市中銀行との間に、われわれの方であつせんすれば、十分融資を受け得るのではないかと考えております。  それから問題は金の買上げ価格でありますが、御承知のように国際金の価格、これは一オンス三十五ドルでありますが、これにさや寄せするという観点から申しますと、ただいま一グラム三百八十五円で日本は買入れておりますが、これが四百五円程度になりますと、大体さや寄せされる。但しこれに対するチャージその他を考えますれば、四百円程度というようなことで買上げ価格についても目下検討いたしておる次第であります。それから最近の探鉱費につきましては、大体本年度千四百万円の補助金をわれわれ通産省で予算にとつております。これは大体一メートル九千円といたしまして、一メートル四千五百円の半額の補助をするという想定から出ておるのであります。そういつた形で今後三年間に十トンの産金を計画いたしたい。そういう品形で参つておるのであります。戰時中非常に多く出しましたときが二十何トンであつたのでありまして、大体その見当で日本の産金ということからいえば、それ以上は今度は採算点の問題でいろいろ検討しなければならぬ。採算点が引合うのは大体十三事業所というようなものではないか。かように考えておるのであります。  その次に。プラントの問題でありますが、中曽根委員の言われる。プラントという意味範囲ちよつと私にははつきりしないのでありますけれども、今東南アジア、たとえばパキスタンからプラントの設定をしてくれという場合には、いわゆる一つの紡績工場を向うへ建てるという意味のプラントもあります。あるいはシャムあたりから来ておるところの、あるいはインドあたりから来ておるところの電気施設、これはゼネラル・デイヴエロツプメントとか、あるいはこれに対するところのプラントとかいうようなものを一括いたしまして、プラントと言つても電気施設なら電気施設のいろいろなものがあり、ちよつとそれはどの程度をプラントというのかわかりませんが、大体プラントというものは非常に広義にも、狭義にも解釈できますので、通俗的に御返事をいたしたいと思うのであります。そこで今言つたようなプラントが南方方面、あるいはその他の国から、たとえば最近に受けましたものでも、紡績工場を全部建ててくれ、あるいはシユガー・プラントを全部建ててくれというような希望があるのであります。それに対してしかしながら全部すぐ拂うわけには行かないから、これをある程度五年のインスツルーメントとか、あるいは十年のインスツルーメントでひとつよこしてくれないか、といつた問題が提起されておるケースがあるのであります。こうなると、問題はまず二つ難点がある。一つは従来はたとえば日本でも三井物産とか、三菱商事とかいうものは、ロンストラクシヨン・デパートメントというものがあつて、ひとつそれができるようにやつてくれと言つても、すぐそれができ託る。ところが今は紡績工場は紡績工場、建築の方は建築、あるいは鉄鉱は鉄鉱というように、ばらばらになつております。これを一つのホール・プラントとして計画することは、なかなか国難であります。こういつたものに対する一つの計画を持つたところの会社か日本に一つもない。何かデイヴエロツプメント・コンパニーといつたような一つの会社の設立も必要ではないかということも考えられます。そういう受入れ態勢が必要ではないかということも考えられると思います。  それからまた第二の難点は、今申しましたように、インスツルーメントでやるということであります。一つの大きなプラントを建てる場合には相当の金額がいるのであります。これをインスツルーメントでやるということで、はたして日本の商社が一体応じ得るかという大きな問題があるのであります。この点についてはある場合によれば外資を持つて来まして、その外資によつてまかなつて行くという方法ができれば、一番いいと思つておるのであります。あるいはまた先ほどちよつと安本長官も御質問に触れでおられました、南方開発に対するアメリカの資金というようなものが、ここでうまく何か利用できるという方法があれば、なおけつこうであります。しかしながらその点については、なお私といたしましては、米国の民間のデイヴエロツプメント・コンパニーといつたようなものとの間の交渉も実は続けておりますし、あるいはまた何らか外貨をこれに利用できるかどうかということについも、いまなお研究を続けておるような次第であります。  それから、今のは狭い意味のプラントでありますが、もう少し範囲を広くいたしまして、たとえば先般インドヘわれわれの方で通信ケーブルを出しました。これなんかたしか三十二万ドル何かしであつたと思いますが、これのごときは商売ができております。今後われわれがたとえばインドのインダストツアライズというような問題に対応いたすためには、本年度においておそらく五百万ドルの電気設備というものが商売できるのではないか。それからまた通信方面においては、百万ドルないし三百万ドルの商売ができるのではないかということを想定しておりますが、それがために、実はそれの関係の住友とか、あるいは古河とか、そういう人たちに特に技術者を派遣してもらつておるのでありまして、その技術者がこれの指導に当つております。はなはだ話が余談になりますけれども、たとえば今度とりました通信ケーブルのごときも、実際はインドのスペンフイケーシヨンは全部英国になつておりましたので、全部英国へやるということに決定しておつたのであります。ところが日本の技術者を送り、これが説明をいたしました結果、千七百三十万にあたるところのアルミニウム送電線は、全部住友というか、日本側に決定したというわけでありまして、こういう方面についてはむしろ技術者をまず送り、われわれの技術の内容に対して十分知識を得さしめることが必要だと存ずるのであります。シヤムしかり。とにインドは今工業化を考えましその方向に進んでおりますので、われわれとしては、日本の会社が技術をもつて、ある程度日本からパーツを送つて、向うで組み立てるという工場設備に対して、今二つほど計画立ておりますが、それをおせわしてこれは多分できるのではないか。工業化のおせわをする、そして日本の技術者をこ送り込む、また向うの技術者も日本工場に入れて教育する、従つてまた日本の生産財に対する注文がふえて来る、こういうことがむしろ貿易を促進、する一番実際的な力強いやり方かと存じて、そういう方法で進行しておるわけであります。
  59. 中曽根康弘

    中曽根委員 安本長官に次に伺いますが、物価の問題であります。昭和二十五年度経済を予想いたしますと、上る原因と下る原因と、いろいろ考えられるのであります。それで上る原因を考えてみると、一つは補給金の撤廃によつて、基礎産業あるいは主食その他の値段が上つて来る。これは下層階級といいますか、賃金その他の少い人たちに相当な重圧がかかつて行く、もう一つは、かりに輸出が促進されて六億二千万ドル程度まで伸びれば、この面からも物価の上る要因が出て来る。しかし一方下る要因を見ると、一つは世界的な物価の下向趨勢の影響が出て来る。第二に、債務償還を厖大にやられる結果、デフレ気味がますます濃化して行く。その次には輸出を促進するためには、どうしても企業合理化というところへ行く以外にはない。賃金や価格に影響を及ぼさないように合理化をやろうとすれば、どうしても大量生産に行かざるを得ない。そうすると物が氾濫して来る。しかしこれがさばけるかというと、現在の需要や現在の資金計画をもつてしては、さばけないと私は思う。あなた方はなるほど、海外需要と、本年度国民消費支出が約一〇%ふえる、こういうことを言つておられる。しかし六千三百七円をそのまま固定しておいて物がふえた場合、あるいは多少自由経済的な気味によつてやみは下るかもしれませんが、それによつて出て来る購買力の増出と、増産による下落の要因とを比較してみると、下落の方があるいは多いかもしれない。そのことは結局何であるかというと、企業が採算点を割つてしまう。大企業はあるいはこれをささえることができるかもしれないけれども、中小企業はもう破産、倒産の危機に瀕するということが出て来るということが一つあります。その次は、今申し上げたペースを不変にするというところから、デフレ気味がますます濃化して来るのではないか、最後に農村の需要というものは、今年はほとんど期待することができない。現在の吉田内閣の農業政策がそうである。そういう面から見ると下落のおそれもある。根本的な問題としては、企業の採算点を割るような有効需要の過小、あるいは生産の過剰というふうになつて、それが滯貨になり、それがまた金詰まりの原因になつて、実際生産を拡充することが、有効な面、すなわち生産の近代化とかなんとかいう面に使われる金よりも、むしろそういう副作用的な面に使われる金が、今年は多いのではないかということがおそれられる。結局物価の傾向を見るとどの方向になるか、できたら具体的の数字をもつて示されたいと思います。
  60. 青木孝義

    青木国務大臣 中曽根委員は、いろいろの面から物価がどうも上るのではないかという結論を出されておるように思います。私どもの調査と観察からも申し上げますならば、二十五年度におきまする物価は、予算の面からいたしましても、また二十四年度の経過からいたしましても、二十四年度同様にまず上らない、横ばいであるという観点からこれを申し上げておる次第でありまして、二十五年度予算案は、本年度におけるような安定計画を引続いて実行して行くという眼目からいたしまして、物価面においては大きな変化はない、こういう結論を出しておるのであります。御承知通り三十五年度予算は、補給金の総額を九百億円と見積つておりますが、これは二十四年度の半額に当つております。そうして本年度中においても、この補給金の削減が行われることが予想されておるのでありますが、しかしこれの影響は、生産の上昇や合理化等によつて吸收されることを考えあわせますならば、公定価格水準については大して上昇することはあるまいと考えるのであります。そしてこの物価の面で、自由な物価面とやみ価格水準というものは、強く通貨量に規制せられますので、通貨量のわくが問題でありますけれども、これも本年度同様デイスインフレ政策を堅持いたしますれば、むしろ自由とやみ価格水準は、あみ程度値下りを生ずるのではないかと考えられるのであります。そして実効価格水準としては、生産財も消費財もともに本年度水準とまず大差はなかろう、こういう観点から御説明申し上げておる次第であります。
  61. 中曽根康弘

    中曽根委員 安本長官は、自分の信念を結論的に言つでいるだけであつて具体的にどういうふうになるかという数字をお示しにならない。これでは私ははつきり納得することはできないのです。ただいま申し上げましたように、いろいろ複雑な要望今年は入つて来る。それがどのような影響があるかということを一々明確に示して、その結果を具体的に示すことが私は良心的な態度だろうと思うのであります。物価の問題についても、相当申し上げたいことがあるのですが、時間の関係上申し上げません。  もう一つこれに関係して伺いますが、池田蔵相は西村君の質問に対して、債務償還はそんなに多くない、今年は千二百億だ、昨年は千五百億見当と言われておる。なるほどその面だけはそうである。しかし昭和二十四年と昭和二十五年の前半を、あらゆる会計について比べてみると、あの数字によると、合計してことしの方が結局債務償還、要するに吸い揚げ超過が多くなる。昨年は九百億程度であつたのが、ことしは千五百億程度になる。それはなぜであるかというと、特別会計の剰余金とか厚生保險積立てであるとか簡易保険年金積立金、貿易会計予備費その他の要するにかような政府機関以外のもの、あるいは一般会計、特別会計以外のもの、こういうものが総計して計算されると、吸い揚げ超過になるのではないか、こう言われております。この問題はいかにお考えになりますか。
  62. 池田勇人

    池田国務大臣 債務償還の問題と財政関係の、民間と国の收支の関係とは、別箇にお考え願わないと、これは考え方がはつきり違つております。債務償還の問題につきましては、予算参考書に記載しておる通りであります。昭和二十四年度よりも二十五年度の方が三百億ばかり少いのであります。  それから政府の民間收支の関係につきましては、私が今まで申し上げておることは、政府関係のあらゆる機関を通じての問題でございます。預金部の收入金も入ねておりますから、厚生年金とかあるいは簡易保險がみんな加わつた問題であります。従いまして来年度の――今度は債務償還でなしに、財域の民間からの引揚げその他につきましては、今数字を持つておりませんが、全体といたしましては過不足のないような考え方にいたしております。
  63. 中曽根康弘

    中曽根委員 これは新聞の記事でありますから、確実かどうか私はわかりませんが、少くとも財政收支の、つまり吸い揚げ超過という面については、昭和二十四年度よりも二十五年度の方が、この資料によればはるかに多くなる。少くとも百億円以上吸い揚げ超過が多くなると私は考えるのであります。大蔵大臣は手元に資料を持つていないと言われますから、時間の関係で打切ります。  最後にもう一つ伺いますが、人事院の人事官がおいでになつておりますが、きのう政府は給與白書なるものを発表した。その給與白書に対して人事院の見解が新聞に散見しております。われわれは人事院の見解を非常に正当だと思うのであります。というのは先ほどいろいろ申し上げましたように、大体昭和二十三年から昭和二十四年にかけての一般工業賃金、民間賃金の上昇ぐあいから見て、ことしにおける政府が予想するような物価の下落とかあるいは実質賃金の上昇、こういうものは政府が楽観するように認められない。この点に対して私は人事院の勧告を支持するのでありますが、人事院は政府のいわゆる給與白書に対して、具体的にどの点を遺憾な点として指摘されますか。――給與局長でもけつこうですから具体的にお答え願いたい。
  64. 山下興家

    ○山下(興)政府委員 中曽根委員にお答えます。いろいろありますが、そのうちで私が最も遺憾に思う点は、給與の六千三百七円ベースが実施されたりは昨年の三月で、その三月を基準として物価が上つた下つたということになつておるのであります。しかし六千三百七円というのは、あれにはつきり書いてありますように、一昨年の七月なんです。それですからいやしくも六千三百七円を改訂するということならば、その基準から比べてどうなつておるかということを言わなければ、意味がないように私は思うのであります。いろいろありますが、その点が一番遺憾と思う点であります。
  65. 中曽根康弘

    中曽根委員 今の点について池田大蔵大臣はいかに考えますか。
  66. 池田勇人

    池田国務大臣 六千三百七円ベースが実際に行われたのは昨年の三月でございます。そのときにやはり公務員は一定の生活限度水準で行つておつたのであります。その後CPIは御承知のように下つておるのでありますから、今の状態においてはがまんしていただきたい。いただけると考えております。
  67. 中曽根康弘

    中曽根委員 この問題については依然として食い違いがありますが、私は人事院の勧告を支持いたしまして、この点は打切ります。  最後に今までいろいろ私が質問いたしたところによりますと、どう見てもことしの財政というものは、政府が楽観するような甘い余裕のあるような財政のやり方ではない。一番ことしの問題としてわれわれが提起しなければならぬ問題は、まず第一にこの放任的デフレ政策の結果、補給金の撤廃によつて、日本の輸出産業の国際競争力が非常に衰えて来る。現に鉄鋼なんか値上げしたために売れないというものが出て来ている。それがたとえば造船にすぐ響いて来て、日本の造船関係輸出力がまた非常に衰えて来る。こういう問題があります。  第二の問題は長期資金すなわち資金計画がはつきり立てられておらない。しかもその資金計画の内容において、将来のための近代化であるとか、あるいは合理化資金というものが、ほとんど余地がなくなるであろう。再建資金やあるいは貿易資金の大部分は奪われてしまうに違いない。一番大事な蓄積という面についてほとんど力が用いられない。この問題は債務償還についても言われるのであつて、たとえばエイド資金による見返り資金政府は何に使うかというと、将来の国債の償還に使つておる。しかしあのエイドによる資金はアメリカの税金である。アメリカの税金によるものを、日本が戰争しておつた前後の国債償還に使うということ自体が、論理的にこれは合つていない。むしろ日本を復興させる、近代化させるためにこの金は使われるべきであつて、アメリカと戰争したときの国債やその前の国債の償還に使うことは、アメリカに対しても筋の通つた話ではない。むしろこれは日本の復興のために、近代化のために、これらの国債を償還する金は当然使われるべきものであると思うのであります。  第三番目に、有効需要企業の採算点という問題が必ずここに破れて来る。企業の採算点で、特に中小企業に重圧が加わるために、中小企業は倒壊の危機に瀕するであろうということを予想される。その次は農業に対する資金というものがほとんど手当されていない。一昨日私は池田大蔵大臣、森農林大臣にお伺いいたしたのでありますが、ほとんど対策らしいものはありません。農業の近代化、土地改良、生産力の拡充高揚という面について、ほとんど考慮されておらない。もう一つの問題は、デフレ政策によつて、生活の落差が非常に大きくなつて来る。つまり組織労働者と無組織労働者との間、失業者と就業者との間、あるいは都会と農村の間の均衡が非常にとれなくなる。これは自由放任政策の結果、当然出て来る問題であります。最後に出て来る問題は、地方税の混乱であつて、今申し上げましたように、附加価値税上いうような惡税のために、税務署に押しかけた大衆が、今年は地方市町村役場に押しかけるに違いない。こういう政策の稀釈面を憂えなければならぬ。さらに根本的に考えますれば、まず第一に経済に関する基本的な国策ということを私はうかがうことができない。たとえば日本の貿易構造の問題にしても、あるいは日本の産業構造の問題にしても、国際的にどの程度まで安定されて行くか。工業的安定のスタンダードをどこに置くかということを考えなければならぬ。あるいは貸本の蓄積にしても、自由経済で放任的にやつて資本の蓄積ができるか。私はできないと思う。あのドイツが一九二三年にやつたインフレによる強制節約によつて資本の蓄積をしたあのやり方はいけないと思う。また共産主義がやるような強制の伴うものもいけない。ドイツ流のやり方は結局不公平が出て来る。共産主義のやり方は、自由に対する侵害ということが出て来る。そのバランスをとるのは何かというと、生産の自由、生産の発展という計画によつて調節するよりしようがない。そういう点に一ついて現在の内閣の自由放任政策のもとでは、私はできないと思う。最後に残る問題は、雇用の問題であつて、たとえば就業者に対して三%程度の普通の摩擦的失業というものが出て来るのはいい。しかしこのようなデフレ放任政策をやるならば、必ず毎年百万や二百万の――短時間労働者を加えるならば、七百万から一千万にわたる失業者が構造的に日本経済に付着して来ることになる。その失業者を放任しておくということは、社会問題になる。現に農村の問題がすでに社会問題になりつつあるりこの失業雇用という問題を、現在の自由放任デフレ政策によつては断じて解決することはできない。こういう点において、内閣の政策に遺憾の意を表しながら、一応私の質問を終ります。
  68. 植原悦二郎

    植原委員長 今の中曽根君の質問に関連したことで、上林山君から質問したいということでありますから、ごく簡單に御質問あらんことを希望いたして、発言を許します。
  69. 上林山榮吉

    上林委員 ただいま日本経済の安定ないしは貿易の安定について言及さ、れたのでありますが、御承知通り民間貿易が再開されまして、しかもこれについて最も重大なる関心をお互いが持つことは、外国為替の予算の問題でございます。政府はこの問題について相当準備があるものと私どもは期待しておるのであるが、とれに対する構想がありますならば、青木安定本部長官から承りたいと思います。
  70. 青木孝義

    青木国務大臣 為替予算の問題でありますが、これは御承知のように、昭和二十五年度の一――三月の外国為替予算に関してでありまして、一――三月の外国為替予算は、昨年末の閣僚審議会決定したのでありますが、その内容は大体次のようなものであります。  この最初の予算は、昭和二十五年一月から三月まで、の期間の輸出による受取りの見込みと、輸入による支拂いの計画であります。総額はドルとポンドとの取引にわかれますが、申し上げる便宜上、すべて米ドルで表示してございます。  受取額は一億七千百二十万ドルを見込んでおりますが、その内訳といたしましては、司令部から移管を受けたコマーシャル、アカウントの六千七百万ドルのうちから、非常予備金用として一千五百万ドルを保留し、差引五千二百万ドルを受取勘定に繰入れてございます。それから貨物の輸出代金の受取額は一億四千九十万ドルを見込みましたが、そのうち綿花借款の返済のために三千万ドルを差引きまして、一億一千九十万ドルを純受取りとして見込んでおります。それから貿易外の收入は八百二十万ドルを見込んでおります。  それから、支拂額は一億四千八百二十万ドルを見込みましたが、その内訳は、貨物の輸入代金が通常予備費をも含めまして、一億二千七百七十万ドルであります。それから貿易外の支拂いは、通常予備費をも含めまして、三千五十万ドルを見込んでおります。  以上の結果、バランスとしては、二千二百九十万ドル余の受取残を生ずることとなるわけでありますが、右は非常予備費とともに次期に繰越されるはずであります。  この予算は、輸入貨物に対する日本の必要な需要愼重な検討に基いているのでございます。すなわち輸入は、手持在貨と、将来の入着を考慮して計画されたものであります。この予算に基いて行われるべき民間のみの貨物は、品目別、それから仕入地域別に逐次通商産業省から公表されており、その第一回は昨年十二月二十九日、第二回は一月三十一日に公表せられました。なおこの予算は、コマーシャル・フアンドによつて取引される日本への輸入についてのみの予算で、ガリオア、エロア等の米国の援助勘定で買付けられるものは、この予算の外のわくに相なつておる次第であります。  以上をもちまして大約を御説明申し上げた次第であります。
  71. 植原悦二郎

    植原委員長 これにて休憩いたします。午後は一時半より質疑を継続いたします。     午後零時二十六分休憩      ――――◇―――――     午後一時五十五分開議
  72. 植原悦二郎

    植原委員長 内憩前に引続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。川上貫一君。
  73. 川上貫一

    ○川上委員 まず最初に大蔵大臣にお尋ねいたしたいと思うのであります。この税制改革全体については、非常にお聞きしたいことがあります。しかし時間の関係もありますので、わが党としてはこの点をあとに残しておいて、そのうちの一部分だけについてお聞きしたいのであります。  その一つは外国人の税金の引下げの問題であります。これは前の委員会においてもそのことはやるつもりであるという御答弁であつたのでありますが、個人所得税等の控除を幾らになさるお考えであるか。法人税はどういう形で軽減の措置をおとりになるつもりであるか。これをまずお聞きしておきたいと思います。
  74. 池田勇人

    池田国務大臣 特殊の外国人並びに特殊の外国收入に対しまして、軽減の方針でただいま検討を重ねておりますが、今控除の方式で行くか、どうするか、まだ結論に達しておりません。従つてお答えするところまで行つておりません。
  75. 川上貫一

    ○川上委員 個人所得税の控除は五〇%、法人所得税に対しましては五〇%の外資が入つておる場合には、その所得から五〇%天引して、その残りにかける。こういうことにお考えがまとまつておるということを承つております。またこういう一票いろいろ進んでおるということを承つております。こういう形で行われるのであるかどうか、お尋ねいたします。
  76. 池田勇人

    池田国務大臣 御質問の点が非常に荒つぼいので、ちよつと御返答に困るのでありますが、法人に関しまする外国資本の免税は、日本産業復興に必要な方面にそれが投下された場合に、一定期間その投下せられた資本から生ずる所得に対しまして、減免税の規定が適用になると思うのであります。そのやり方は日本の現在の税法におきましても、重要物産製造業に関係しておるものにつきましては、事業開始の事業年度及び翌事業年度から三年間免税する規定があるのであります。そういうような方法考えておるのであります。今のように資本金の半分を持つたときには、利益の半分をどうこうというような荒つぽいやり方ではなくして、ごく精密な規定を置きまして措置いたしたいと考えております。なお外国人の所得に対しましても、今の状態はドル所得に対しましては課税になつておりません。今後ドル所得が円所得になつた場合において、今までのドル所得の一般人に対しての経過的な考え方と、日本の産業復興に特に必要なる技術者等におきまして、どういうふうなやり方をするかという問題につきましては、控除の点で、生活費その他を考えた控除で行くか、あるいは所得の何割という点で行きますか、いずれにしましても重要な検討を要する問題でありまして、ただいませつかく研究中であるのであります。
  77. 川上貫一

    ○川上委員 せつかく研究中でたいてい逃げられて、出た時分には目をむいたようなものを出されるのがいつでも手なのでありますか、今私か申しましたような、こういうくらいな程度の軽減になりますかどうですか。そのお考えをお聞きしたい。
  78. 池田勇人

    池田国務大臣 ただいま申し上げる段階に至つておりません。
  79. 川上貫一

    ○川上委員 大蔵大臣は税金を取立てることがまことに名人だということと、木で鼻をくくつたような答弁をすることが実に心臓だということは、天下周知の評判であります。今の御答弁などがその代表的なものだと思いますが、おそらくこれはいくら聞いても言わないだろう。それだからこれはこれで打切ります。  現在この税金の問題が起つていることについてもう一点聞きますが、この減税の問題は、かつて全米貿易審議会の租税と日本委員会で問題になつたことがあると思うのであります。これによると、日本に駐在をする外国人実業家の所得に対する課税を軽減せよ、特に連合国人の会社には資本課税にひとしいような新税を免除すべきである。第二には恒久的に日本に住居する外国実業家の所得に対する課税は、次のようにすることを勧告する。  一、預金の課税は引出額内を対象とすること、  二、給料は五〇%の控除、  三、一時的勤務する外国人には、一二年間所得税を免除すること、 こういうことがあつたと聞いているのでありますが、また事実あつたはずでありますが、大蔵大臣のこの軽減のお考えは、こういう要請に応ぜられるものでありますか。これだと思うのでありますが、それを承りたい。
  80. 池田勇人

    池田国務大臣 木で鼻をくくつたような答弁と言われますが、私のところでお答えするだけの結論が出ていないものを、おろそかにお返事するわけには行きません。重大な問題でございます。きまりましたら御要求がなくても議会に出しまして、御審議願うのであります。  外国人が日本において負担する税金についての論議は、お話のようなのも聞き及んでおります。またある方面では、別に差別待遇をする必要はないじやないか。こういう議論も、外国においてもあるのであります。こちらへ来ておられる各国人の間にもいろいろな議論があるのであります。そうして私はこういう議論はまあ参考として聞きますが、とにかく日本の復興のために租税上どういう措置をとるかということは、私の独自の考えできめたいと思うのであります。従いましてせつかく検討をいたしております。いろいろな説はただ説として私は聞き流す程度にしかいたしておりません。
  81. 川上貫一

    ○川上委員 日本以外で、外国人に対して特に減税の、あるいは税金に対する控除の措置を講じている国があるということを、前の委員会で大蔵大臣御答弁になつていると思うのでありますが、これはどこどこの国であつて、そうして概略でけつこうでありますから、どの程度の減税が行われているか。国別とそれからその特別措置のごくあらまし的な内容でけつこうでありますから、お聞かせ願いたい。
  82. 池田勇人

    池田国務大臣 ニ国間で協定をしているようなところはございます。アメリカとカナダには特別の協定をいたしていることを私は記憶いたしているのであります。なおアメリカの資本が出て行つた場合に相当の減免、ほとんど課税外に置くというような考え方でやつているので最も有名なのはポルト・リコなんかだろうと思います。しかして特別の減税をいたしていなくても、国によりまして非常に税率がアメリカよりも低いところがあるのであります。こういうところはしいて減免しなくても、資本が流れて来るように考えられるのであります。やはりこの問題は、アメリカあるいはイギリスの税に比べまして、非常に高い国に問題が起るのであります。これは各国の税率負担の事情が違つておりますので、一々申し上げる資料を持つておりませんが、大体の考え方は以上申し上げた通りであります。
  83. 川上貫一

    ○川上委員 外国から言えば高い国で問題が起るのでありましよう。しかし高い国は高くしなければならぬ、それだけの事情があります。その国の産業を興し、その国の財政立てて行く上に必要な点があつて――まあ日本なんか不必要なほどとつておりますが――やつているので、外国から見れば非常に高いかもしれぬが、国内においてはやむを得ぬという場合があり得るのであります。この外国人の税金を特別に取扱つているという国が、今の御答弁ではほとんどないらしい。よく知らぬとおつしやいますが、この特例を知りもしないで大蔵大臣が、こんな税制を考えられるということはあり得ないことだ。外国の例も調べない、そんなことはない。どこの国がどういうぐあいに下げているかということをお聞きいたしたい。
  84. 池田勇人

    池田国務大臣 最も顯著な国はポルト・リコであります。しかしこの問題は外国同士でどうやつているとか、こうやつているとかという問題でなしに、私は日本再建に必要な手段であるならば、ほかの国でやつておろうがおるまいが、私は独自の見解でやつてさしつかえないと考えております。
  85. 川上貫一

    ○川上委員 私が外国の例を聞きますのは、大蔵大臣は自分の考えでやつていると言われますが、都合のいい時分には自分の考えでやつていると、いつも御答弁になる。少し都合が惡くなるというとその筋が……と、こうおいでになる。外国の例を私が聞いておりますのは、かようなことをやられている国は、またやつている国は植民地以外にあるまいということを考えるからこれを聞いている。ところがこれを明確に御答弁になりません。時間を食うばかりでありますから、私はこれ以上追究いたしませんが、私の問うた意味はそこにあるのであります。りつぱな独立国はそんなことをしているはずがない、こう考えるだけであります。それにつきまして、こういう特例をお考えになることは、今の御答弁によつて明らかなように思うのでありますが、外国の資本導入の問題、つまり外国人が来て日本で業務を行う場合、あるいは資本を導入して来る場合、こういうようなことの必要、それによつて日本の産業を興さなければならぬのだからという理由、これでこの特例が行われるものだと考えますが、これはこう考えてよろしいですか。一口でけつこうであります。
  86. 池田勇人

    池田国務大臣 日本の産業の復興に必要な資金を導入する場合を前提にいたして考えているわけであります。
  87. 川上貫一

    ○川上委員 そこで少しくやつぱりわからない。一体外国から資本が入つて、いわゆる俗にいわれております外資導入でありますが、この外資導入という問題が盛んにいわれている、またこの必要がある、こういう前提に立つておられるというのでありますが、一体今まで外資導入がどんな形で入つて来ているか。私は何の必要があつて、こういう不利益な外資導入のために、税金まで下げなければならぬかということを考えざるを得ない。たとえば日窒にいたしましても、これはオスカー・コーホン等から入つておりますが、その資本が三億六千万円中、一億二千万円が外資で渡つておると思うのです。私はしろうとでありますから、多少の数字の違いはあるかもしれません。この数字の違いはあげ足をとらぬようにしていただきたい。その代償としては醋酸特許、青写真ばかりじやないかと思う。あるいは東亜燃料にいたしましても、これはたしかスタンダード・バキユーム・オイルだと思いますが、株の五一%を渡しております。外資は社債を二千万円引受けているのではないか、そしてその代償として重役八名がこのスタンダードから入つております。これが外資導入の代償であります。たしかこの会社は月産五万トンぐらいの原油を処理し得るのではないかと思いますが、この利益というものは相当大きな問題だと思います。ところが、この外資導入によつて得たものと失うたものが、一体どういうことであろうか。五一%の株を渡し、重役八名を入れたら、完全に押えられてしまつておる。石油にいたしましても、これは私が言うまでもなく、今日石油販売系の九〇%を外資関係によつて押えられておるということは周知の事実であります。一方においては、帝石などはこのために今日二十一万三千キロを突破するものを持つております。もちろん全消費量の一〇%ぐらいにしかなりませんけれども、これは唯一の日本の石油の会社であります。最近では新油層が相当できて、あるいは自噴なども開始しておる。これが今外資によつて見殺しにされようとしております。そこへ持つて来て政府株を四百六十万株放出する。帝石はかないませんから、企業合理化を強要されて、あるいは採油と製油との一貫作業の許可方を政府に申出ておりますが、これはおそらく認可されない方向に向つておるらしい。あるいは探鉱にも援助を求めておるが、これが一向行われておらぬ。これは明らかに外資の犠牲であります。製油の方はこれは加工方式で太平洋沿岸でやつておりますけれども、これはしろうとの私が言うまでもなく、今日の石油は世界恐慌の前奏曲をなしておる。近東の石油の進出状態を見ますと、今に必ず過剰生産が来るのはわかつている。だから、外資は現状ではほとんど恐慌に見舞われたら、さつとその前に引揚げるようになつておりまして、賃金の加工賃式のものがちやんとでき上つておる。あるいは清水の茶にいたしましても、清水の茶の六〇%は外商が握つておるということを言われております。今度貿易商社が日本に進出して参りますと、これはあとで通産大臣にもお尋ねいたしますが、日本の全貿易というものは、相当程度は外商に握られるであろう。これは実に重大な問題であります。こういうことになつておるこの外資を多々ますます持つて来なければならぬために、税金まで下げなければならぬ。そこで東洋経済新報さえも、これは占領約四箇年間にはぐくまれた奴隷根性ではないかとさえ言つております。これはどうも合点が行きません。これは将来長く禍根を残すであろうと思うのでありますが、こういうことについて大蔵大臣はどうお考えになつておりますか、お考えを承りたい。
  88. 池田勇人

    池田国務大臣 外資導入についてのいろいろな措置に対しましては、私が先ほど申し上げました通りで、あなたとはまつたく見解を異にしております。
  89. 川上貫一

    ○川上委員 政府側としてはまことに名答弁だと思います。それ以上はおそらく言えないだろうと思う。時間もありませんから、言えないのだと認めて、私は次に移ります。  外国人がとうてい仕事ができぬほどの日本の税金だ。外国人が来てやつてはとてもやれぬくらい高い税金が、日本には行われているのだということをお認めになりますか、お認めになりませんか、これをお伺いいたします。
  90. 池田勇人

    池田国務大臣 外国人がとうていやつて行けないほどの高い税金とは思いません。しかし外国人が日本の産業に必要なためにどしどし来ていただくためには、これは必要な措置だと考えております。
  91. 川上貫一

    ○川上委員 どうしてそんなにどしどし来てもらわなければならぬのでありますか。私はさきに外資が一向利益になつておらぬじやないかということを言うている。
  92. 池田勇人

    池田国務大臣 日本にはただいま産業資金その他が非常に下足しているのであります。輸出関係と申しましても、今ではガリオア、エロア等の援助資金があるから、ようやくつじつまを合せているのでありますが、日本のこの破壊せられた産業設備、あるいは原動力、動力発生の設備等につきましては、まだまだ資金が足らぬのであります。あなたは今昭和石油か何か石油会社のことを言われたのでありますが、その数字につきましては、私はつまびらかにしておりません。過去の歴史を見ましても、日本が水力電気の国としてあれだけの発電設備をやつた、あるいはまた電気機具の製造につきまして相当の発達を示して来たことは、これは外資にまつところ大なるものがあるのであります。私はこの過去の経験を考え、また現在の日本の産業設備その他から考えまして、資本にいたしましても、技術にいたしましても、必要な金は当分の間借り入れたいと考えているのであります。
  93. 川上貫一

    ○川上委員 内閣総理大臣初め大蔵大臣、安本長官まで日本の経済は安定していると言われます。その資金のことで、さつき中曽根君の質問に対して、は、資金考えてあるのである。そして中曽根君が、あまりはつきりしないのに、大言壯話して演説されるのはどうかという質問に対して、そういうことは心配いらぬ、ちやんと考えている、こういうことなんだ。ところが、今大蔵大臣のお話によると、資金が足らぬから、外国から持つて来なければならぬ。それじやまるで何ともしようがない。そうしますと、私はこれは了解に苦しむのです。もしも日本の経済が安定しでおりますならば、あるいは資金が潤沢で、生活が向上しており、先の見通しがあるということであるならば、いまさら税金を下げて、特別な取扱いを外国人にして、そうしてまで入れなければ、日本の復興ができないのか、日本の産業は安定しないのか。この点が矛盾していると思う。それで私はあえてあげ足をとるようなことを言うているのではありませんから、この点についてもう一度お考えを承りたい。
  94. 池田勇人

    池田国務大臣 宏定論でありますが、今までの不安定が安定に乗つて来た、こういうのであります。しかしこの安定が日本国民として満足すべき安定か、いわゆる高度の安定か、こういう問題になつて来ます。そこで日本の国民の生活水準は、御承知通り非常に低く安定しているのであります。これをもつと高度な安定、そして国民の生活水準もどんどん上げて行こう。こういういわゆる高度の安定の歩を進めているのであります。安定というものはやはり程度の問題があるのでございます。今までの不安定が今度安定になつた。一応落ちついた。しかしこの落ちつき方では足りないから、もつと上のところに持つて行きたい。それには国民の生活水準の向上をはかると同時に、高度の安定に持つて行く、こういうのであります。その点は十分お考え願いたいと思う。
  95. 川上貫一

    ○川上委員 程度の低い安定とか、高い安定とかいうものは、これはまつたくお話になりません。これは日本の人間は今食えないのです。しかしこの問題について今時間をとりたくありません。およそこの外国人の税金につきましては、これは大蔵大臣の御答弁によつても、さきに申しましたような外国の要請によつて、日本の産業、日本の全体というものを犠牲にしてもかまわぬ、向うの都合のいいようなこういうような法律をこしらえるということは、吉田内閣のくせなんだ、本質なんだ。そういうことでできておるものだと思います。時間の関係がありますから、私は次の問題に移ります。  次は見返り資金の問題でありますが、吉田総理大臣は、日本における経済は自主でやつておる、こういうことを本会議で御答弁になつております。見返り資金の問題について、まず第一にこの見地からお尋ねいたしたいのでありますが、日本経済の大きな二つのかぎは、今日のところでは何と申しましても、見返。資金の外貨予算であると思うのであります。この二つが日本の経済を左右するところの大きなかぎであります。これが一体自主でやられておるのかどうかという点をひとつ聞きたいのであります。見返り資金の使用が昨年度において非常に遅れておる。十一月末ごろまでになりましても、産業資金のごときは五百億のうちわずか二十一億くらいしか出ておりません。これは一体どういうわけであつたのか、この点を簡單でけつこうでありますから、お聞かせを願いたい。
  96. 池田勇人

    池田国務大臣 日本の経済は自主的にやつておるのであります。それから見返り資金の運用につきましては、たびたび答えましたように、直接投資に至つては時間的に遅れて参りましたが、その他の復金債の償還あるいは国鉄、電気通信への貸付につきましては、予定以上に行つておるのであります。全体といたしましては大体円滑に行つておると考えております。
  97. 川上貫一

    ○川上委員 お尋ねいたしましたのは、なぜこんなに遅れたかということをお尋ねしたのであります。
  98. 池田勇人

    池田国務大臣 遅れるとか早目になるということは程度があるのですが、復金債の償還とかあるいは国鉄、通信への繰入れを早目にいたしましたのが、直接投資が少し遅れた原因であります。しこうしてまた借入金の申請が出て来るのが非常に遅れたということも、直接投資につきまして月平均に行つていなかつたという一つの原因でございます。見返り資金の運用といたしましては、先ほど申し上げたように、大体予期通りに行つておると私は考えております。
  99. 川上貫一

    ○川上委員 電源開発についても非常に遅れておつたのでありますが、昨冬シーツ氏が来られたときに、見返り資金について電源開発への積極的な意見を述べられたように承知しております。そうするとすぐ十八億というものが出たように私は考えられる。日本の貿易構造、建業構造というものがなかなかきまらなかつた。この以前には一向にどうも見返り資金が使えなかつた。計画のやり直しもあつたのではないか。このために見返り資金がどんどん遅れておつた。大体ドツジ氏が来られるまで方針が立たなかつたのではないか。これで一体どこが自主か。金利もきまりやしなかつた。そこでぐずぐずしておつた。そこで十一月末になりましても、やつと産業投資には二十一億しか出なかつた。こうわれわれは解釈せざるを得ない。一向遅れてはならぬとか、これは手続が複雑であつたからということは單なる詭弁にすぎない。われわれはしろうとでありますし、大蔵大臣の方はまことに言い抜けとずうずうしさにかけてはくろうとでありますから、どういう言いまわしでもなさいましようが、こういうことをわれわれは考えざるを得ない。こういうことは実際にないのだということを、私どもが納得の行くようにひとつ御答弁をお願いいたします。
  100. 池田勇人

    池田国務大臣 見返り資金の運用につきましては、対日援助見返資金特別会計法におきましても、関係方面の了解を得ることに相なつておるのであります。しかして今御指摘のありました金利の問題についての話でありますが、初めは一割程度というので話を進めておりましたが、どうしても一割程度ではいかない、まあ五六分から七分程度にまでがんばりまして七分五厘になつたのであります。七分五厘がきまりましたのも、大体八月の初旬か七月の終りころであつたと思うのであります。電源開発の二十三箇所の問題も、このごろ金利がきまりましても、発送電から借入れの申請が出ましたのは、十月の中ころか終りであつたのではないかと思います。なぜそんなに申請が遅れるかと申しますと、事業会社の方で償還計画その他を立てて来るのでありますが、償還計画立てます場合において、他からの借入金の償還の問題もあります。そしてまた今後の会社の経理状況の見通しもございます。民間の方から出て来るのが非常に遅れたのでございます。そういう関係で十二月になつてから出るように相なつたのであります。それはお金を借りますときには普通の銀行でも、申請いたしましてニ、三箇月くらいかかるのが普通なのであります。ことに厖大な金額になりまして、しかも水力のような長期設備になりますと、なかなか計算がむずかしいのでございます。これはやむを得なかつたことと考えております。
  101. 川上貫一

    ○川上委員 今また大蔵大臣から御返答が出たのでありますが、どうも大臣は本会議においてもそういうことを言われました。また今言われました。私は本会議で言われたときは聞き間違いかと思つておつたくらいであります。この自主性の問題については、どうも国会においてきめた見返資金特別会計法にきまつておるからとたびたび言われます。特に本会議においてはこう言うておられます。この自主性の問題であるが、これはあなた方に御審議を願つた対日援助見返資金特別会計法第六條をごらんになりましたらおわかりになりますと言つております。この特別会計法の第六條というものを私はいろいろ調べましたが、そんなものはございません。これは一体何でございましよう。
  102. 池田勇人

    池田国務大臣 私の記憶間違いかもしれませんが、多分そういう規定があつたというような気がいたすのであります。
  103. 川上貫一

    ○川上委員 見返資金特別会計法の原案には、第四條の第六項と第七項にこれに類した規定がありましたが、それは国会において削除されました。この法にはこういうものが一つも載つておりません。そこで大蔵大臣がこの第六條とおつしやるこの意味をはつきりと御答弁をお願いいたしたい。
  104. 池田勇人

    池田国務大臣 私の記憶が間違つていたかもしれません。前にそういう規定があつたのを削除して国会の決議になつておつたかと思いますが、実際問題といたしましては、見返り資金につきましては向うと特別の関係がございまして協議することに相なつておるのでございます。
  105. 川上貫一

    ○川上委員 国会で制除されて、ちやんとかわつておるものを大蔵大臣が今まで忘れてしまつておる。そういうようなお考えであるから絶対に自主性は保てません。これが大蔵大臣の本性です。日本に自主があるとかなんとかおつしやいますけれども、ちやんときまつてありもしないものを、今日に至る一年間これがあるように思つて、その筋その筋と言つて人民をおどかしておられるようなこの精神、これがそもそも売国的なんだ。これは簡單な問題じやありません。  続いてお聞きしますが、西欧における見返り資金の運営はこういうぐあいになつておるのではないかと思う。国際通貨財政問題中央諮問委員会及び一般諮問委員会と協議をして行われる、こういうことになつておると思う。この諮問委員会は米国の最高諮問会議であるように承つております。日本の見返り資金もこれと同様に取扱われておるのであるということが、官庁筋の文書の中に出ておりますが、こういうぐあいになつておるのですか、どうですか、これをお聞きいたします。
  106. 池田勇人

    池田国務大臣 私は向うの内部規定は存じません。
  107. 川上貫一

    ○川上委員 この重大な日本の産業の使命を制するような見返り資金の運用という、これこそがさきにも申し上げます通りに、今の日本経済再建の上にとつての二つの大きなかぎであります。このかぎの一つであるところの見返り資金の運用がよそではどうなつておるか、これを知らぬというようなことで大蔵大臣運用ができましようか。これはお知りになつておらぬはずはありません。博学であり、記憶力のよいということについては、まことに天下周知の事実である大蔵大臣が、これを知らないでやるというようなことはあり得ない。また知らなかつたらこれはとんでもないことなんだ。だからそういう御答弁をお願いしたくないので、それが木で鼻をくくつた答弁であるということをさつきから私は言つておるのである。こういうような形と同じような形で、日本の見返り資金も使われておるのであろうということは、われわれしろうとはうすうす察しますけれども、実際のところはわれわれ外の者ではわからない。その点をひとつ国民大衆の前に明らかにしていただきたいというのが、質問趣旨なんであります。
  108. 池田勇人

    池田国務大臣 向うの内部規定は私は知らないのであります。私が知つておかなければならぬことは、自分の考えでこれだけの金をこういうふうに使いたいというときに、向うがどういう態度をとるかということを知つておればいいので、向うの人がどこと相談して返事する、そういうことはさしむき私には用のないことだと考えております。
  109. 川上貫一

    ○川上委員 大蔵大臣はこの前の本会議における御答弁において、見返り資金は日本納税者の負担によつて積み立てられておるということに対して、そういうことをいまさら考えるのはまことに心外であるということを御答弁になつておつたのであります。われわれの考えではどう考えましても、これはドル建からいたしますれば、なるほどその形の上でアメリカ納税者の負担の形をとります。しかし円建から考えますならば、どう考えましても、われわれは日本人民の負担による積立金と考えざるを得ないのであります。この点について明らかな御見解を承りたいのであります。
  110. 池田勇人

    池田国務大臣 事柄自体がドル建とか、円建とかによつて違うはずはないのであります。これは小麦なり鉄鉱石が参りまして、そうしてこれを日本国民に主食として売り渡したり、あるいは製鉄材料として売り渡すのであります。その金を小麦を買つた国民、あるいは鉄鉱石を買つた製鉄会社から出すのであります。その出す値段を低くいたしましたために、その差額は国民の税か、あるいは国の保管收入金かで埋めておるのであります。来ました小麦、鉄鉱石の金は、アメリカの納税者の負担において来たものであるであります。そこでこの小麦なり、鉄鉱石が、日本内地の小麦、鉄鉱石と同じ値段であつたならば、何も国民負担にはなりません。これは税にはならないのであります。こうお考えいただきましたならば、おわかりと思います。
  111. 川上貫一

    ○川上委員 国民税金がちやんとこの見返り資金の中には入つております。これは円に考えましたならば、国民が出しましたものが積み立てられる勘定になるということが一つと、それから一第にはアメリカの援助を受けておる形になりますけれども、決してこれは慈善事業を受けておるものではないと了解しております。これは阿波丸協定の覚書によつて、将来日本の負担として残つておるわけであります。これはいつかは返さなければならない金であります。借りた金であります。日本の負債であります。お恵みを受けてもらつておるものではないことは、マッカーサー元帥が米国の納税者に対して申しておられることによつて明らかであります。それを大蔵大臣はいつまでもたてにとつて、これはアメリカの納税者の負担であるから、日本人民などというものはこれに対して何もかにも言つてはならぬ、さような考えを持つことはまことに心外であるというようなことをおつしやる、このこと自体が非常に危險だと思います。日本国民はかくのごとくにして、数箇年間の占領下にまことに卑屈な奴隷的根性が養われておると私は思うのであります。将来この運用をなさるときに、今の法律などをお忘れにならぬように、こういうような形が起らぬように、私は特に希望いたしたいと思うのであります。どちらの負担かという問題は水かけ論になりますから、これ以上私は申しません。してみると、この見返り資金は大蔵大臣のお考えによると、一も二もなく、これはとにかく自分の一存では行かぬことになつてしまいそうだ。そうしてこの金が今度は国有林野特別会計へ三十億も入つて来る。何ともかつこうのつかぬような、大蔵大臣自身で処置のできぬようなものが三十億も国有林野に入つて来るということ、これはわれわれは危險を感じますが、大蔵大臣はどうお考えになりますか。これが一つと、第二番目には国有林野は非常に安く見積られておると思います。そこへ三十億という金が入りますと、これはまつたくひものついた見返り資金で、国有林野事業は押えられてしまうと、私は考えます。この点についてのお考えを承りたいのであります。
  112. 池田勇人

    池田国務大臣 見返り資金国民の税で成立つておるという考え方が、かなり一般に広がつて誤解せられておるようでありますから、もう一度お答えして誤解を解きたいと思います。もしアメリカから参りました小麦が大体トン九十五ドルといたしますと、一石五千円程度に相なるのであります。これを公定価格の石三千三百円で売らておるのであります。その差額の千七百円はたれが出すかという問題になつて来ます。そこでこれを五千円で売れば何にも税にはなりません。しかし実際の価格より安く売るために、その差額を補給しなければならない。それが一般会計から繰入れておるから、その分の繰入れの内容には相当税が入つておるだろう、こういうことになりまして誤解を招くと思うのであります。もしこれを五千円に売れば税負担はないのであります。それを特に安く売つておるから、一般会計から繰入れておるのであります。これは税によつて成立つておるということは、経済論としては成立いたしません。  次に国有林野の方に三十億円出すということ、これは今国有林野を伐採いたしまして、そうして一般市場に拂い下げておるのでありますが、索道その他いろいろな施設に必要のであります。一般会計から出してもいいのでありますが、やはり一般会計の方では減税その他でいろいろな経費がいりますので、水力発電とかあるいは造船の促進のために、国有林野の伐採を容易ならしめ、そうしてできるだけ早くこれを排下げ、その施設に使いたいと考えておるのであります。従つてこれによつて日本の国有財産がどうこうなるだろうということは、杞憂にすぎないと考えております。
  113. 川上貫一

    ○川上委員 見返り資金が、国民負担に属する性質を持つておるものであるかどうかということにつきましては、はなはだ異論があります。しかし私にあてがわれた時間の制限がありますので、他のわが党の議員がこのことについては、あらためて納得の行くまで質問する予定でありますから、私はこれは留保しておきます。  次に国有林野事業でありますが、これはこういうことに使うのだから、一向心配ないとおつしやいますが、私はこれは心配だと思う。たとえばこの見返り資金の借入れ條件などを見ましても、ここに日発の特約條項がありますが、これはひどい條項であります。いまだかつて金を借りるときに、かような條項をもつて金を借りた例は日本には歴史がありません。おそらく外国にもないだろうと思います。ここに私は時間もありませんから、この一々を述べませんけれども、大蔵大臣がどんなにでもすることができるような契約で自発は金を借りております。たとえば預金を別品に預金しなくちやならぬ、この預金の引出しについては政府の指示に従わなければならない、これはまるで握つてしまつておる。復金の場合においてさえも、かようなものは一つもありません。またほかの場合にもあつたことがありません。ちよつと違うとじきに債務を取消されるのです。一部または全部を償還しなければならない。また資本の増加、收益の増加、社債発行等によつて、借入金が少しでも返済されるようになつたら、すぐ返さなくちやならぬ。あるいはまたこの特約の中には、復金などが貸しております分、こういう分は先取特権がなくなるのです。見返り資金を借りましたならば、これが完全に先取特権になる。あるいはこの担保は第一順位に担保権を設定いたしますから、まつたく見返り資金を通じて借りたところは、完全に大蔵大臣を通じて握られ、しかもこ」の金が大蔵大臣の御一存では行かないという意味の御答弁であるとしたならば、こういう性質の金が国家の財産へ入つて来るということについて、私は危險を感じておるのであります。大蔵大臣の御答弁は、こういうことに使うのだから何ともないとおつしやいますが、私のお尋ねしておるのは、こういうことに使うのだからではなくして、こういう性格の金が国有財産にまで侵入すること、こういうことが危險ではないかということを私は言うておるのであります。
  114. 池田勇人

    池田国務大臣 日本政府の金でございまして、これを一般に貸し付けるときには、できるだ確実な方法をとらなければならないのであります。しこうして国有林野への見返り資金からの出資は、どうせ国と国との間でございますから、何も心配はいらぬと思います。
  115. 川上貫一

    ○川上委員 大蔵大臣はこの見返り資金を、国会であの法案を修正いたしました精神によつて、見返り資金の運用というものを、これは重大な問題でありますから、完全に日本国民の手に握るために御努力をなさる意思がありますか、ありませんか、また従来いかなる御努力をなさつたことがありますか、これを承りたい。
  116. 池田勇人

    池田国務大臣 見返り貸金の使用につきましては、私が主導性を持つておるのであります。
  117. 川上貫一

    ○川上委員 主導性を持つておるということは言えない。都合のよろしい時分にはアメリカの納税者の負担であるからいかぬ、また今のような時分には、私が主導性を持つておると言う。これはまつたくお話にならぬが、私はこれ以上この問題を追究いたしません。大蔵大臣はこの見返り資金の運用、国会であの法案を修正いたしました趣旨従つて、完全に日本国民の手に握るために、何らの努力をする意思がないということを明らかにして、大蔵大臣に対する私の質問を打切ります。なお大蔵大臣に対しては、わが党の他の委員からいろいろ御質問いたすはずでありますから、全体は留保しておきます。  次に安本長官にお聞きいたしたいのでありますが、安本では国民所得といううものをよく御発表になるのであります。これは課税所得と何らの関係がないというわけではありません。もちろん課税所得とは同じものではないのでありますが、この国民所得をお調べになる役所が何人使つておられるか、これをお聞きしたい。
  118. 青木孝義

    青木国務大臣 直接には八人ほどでありますが、間接には二十人くらいであります。
  119. 川上貫一

    ○川上委員 実際には一人でほとんどやつているというように聞いておりますが、これはいかに。
  120. 青木孝義

    青木国務大臣 さようなことはございません。
  121. 川上貫一

    ○川上委員 非常に御自慢のように八人とおつしやいましたが、日本のこの複雑なこういう時分の国民所得、この経済状態の上で、七人や八人でそろばんをして、なかんずく実際その仕事を担当している主任者は一人であります。事実一人です。そんなことはありませんと言つてもあります。そんなことで国民所得などが決定されるものじやないと思います。安本長官はこういう形で、国民所得決定などをどんどん御発表なさいますが、これがまことにりつぱな調査であるとお考えになりますか。七人や八人の調査で、なかんすく一人ぐらいでやつて、そして国民所得と発表はするけれども、あれはいいかげんな数字とお考えになりますか、この点をお聞きしたい。
  122. 青木孝義

    青木国務大臣 御承知のように、経済安定本部は各省との連絡もございますし、大蔵省などでもそういう点について研究をいたしております。私どものところでは、大体これで適当であるという確信を持つてこれを発表いたしておるのでありまして決していいかげんなものだというふうな考え方はございません。
  123. 川上貫一

    ○川上委員 それで安本長官のお考えはわかりました。これでいいと思つているなどというお考えを持つているから、総合計画は一つもできません。こんなことじや日本の復興なんか絶対にできません。それじや安本長官としては困る。いろいろ事情があるから、なかなかできぬのだ、この調査ははなはだ不十分であるとおつしやるに違いないと思つておつた。ところがこれでけつこうだと言われる、実にあぶない仕事だと私は思う。これはひとつ考えなつた方がよろしい。こんなことで国民所得決定していかにも政府がありとあらゆる努力を盡して研究した結果を発表したのだと人民は思つているのです。ところが五人や八人でちよちよことやつて、それで国民所得が何ぼある、だから税金を拂わなくちやいかぬのだ、こんなことをおつしやるが、ここのところに私は今日の内閣のインチキ性があると思う。  続いてお聞きいたしますが、外貨予算についてお聞きしたいのですが、ドレーパーとの会見で、こういうことが青木安本長官とともに話がかわされたはずだと思うのです。第一に、外資の安全を保証するために、外貨予算に外食保証基金制度を設ける必要がある。第二に、貿易外收支の面に外資の元利償還のわくを設ける必要がある。第三に、かつその利子はほかのものよりも高認める必要がある。第四に、セントラル・モーシヨン・ピグチユア・エキハチェンジ会社あるいはダンロツブ工業、帝国酸素、東洋パプコック等の既存外資の元利金の償還を認める必要がある、こういう御会見があつたのじやないかと思う。しかし将来この外貨予算――ほかのことは聞きませんが、外貨予算の中に外資償還の特別のわくをおつくりになる予定がありますかどうかということを、はつきりお聞きしておきたい。但し前国会の予算委員会総理大臣は、貿易收入で外債を支拂うということを、はつきり述べておられますことを申し添えておきます。
  124. 青木孝義

    青木国務大臣 ただいまのところでは、まだそういうわくは設けておりません。
  125. 川上貫一

    ○川上委員 それは私も知つております。そうではなく、今後これを設ける御意思があるか、ありませんか。近い将来にはこれを設けないのでありますか、これをはつきり聞いておきたいのであります。
  126. 青木孝義

    青木国務大臣 そういうことが必要になれば、あるいは設けることになるかもしれません。
  127. 川上貫一

    ○川上委員 明らかになりました。いつでも必要があるというて設けるのだという御答弁だと解釈いたします。  その次に外貨予算の六千七百万ドルでありますが、これは前国会において木内政府委員は、日本の外貨が八千万ドルを下らぬと御答弁になつております。ところが一月一日からスタートいたしました外貨予算は、六千七百万ドルになつております。ここにこれだけのずれが来ておりますが、この差は一体どうなつたのでありますかということが一つと、この六千七百万ドルの中には商業勘定、清算勘定が両方含んでおりますか、含んでおりませんか、この二点をお聞きしたいのであります。
  128. 青木孝義

    青木国務大臣 その点につきましては外為委員会の方から答えさせていただきます――外国為替から来ておらぬそうですから、後ほどお答えをいたします。
  129. 川上貫一

    ○川上委員 高木安本長官はこのことをお知りにならぬのでありますかどうか、その点をお聞きしておきたいと思います。
  130. 青木孝義

    青木国務大臣 私ども範囲で発表してよろしい程度につきましては、自分は承知をいたしております。
  131. 川上貫一

    ○川上委員 このずれがどういうわけでありますかということが、青木安本長官は発表することのできぬ事項だとお考えになりますか。
  132. 青木孝義

    青木国務大臣 もちろん御質問の内容がただそれだけでなしに、それに関連した事項がありますので、その点について専門にやつております者に答えさせた方がよかろうと思つて、そう申し上げたのであります。
  133. 川上貫一

    ○川上委員 それではほかのことは青木安本長官には聞きません、このことだけ御答弁願いたい。
  134. 青木孝義

    青木国務大臣 これは木内外国為替委員長からお話があつたそうでありますが、その八千万ドルということは、私に責任がありません。
  135. 川上貫一

    ○川上委員 これは青木長官にはもうこれ以上聞いたらお気の毒でおりますから、この問題については重要な点がまだあり、非常にこの点に不明な点がありまして、しかもマツカーサー元帥の御声明になつておる点と、政府の御答弁になつておる点に、どうも合点の行かぬところがありますので十分に聞きたいのでありますが、きようは外為の方もおいでになつておらぬようでありますから、この問題については私が留保しておきます。  次にやはり青木長官にお尋ねいたしますが、外為予算の自主性の問題であります。外貨の割当それから輸入等の許可、これにつきましてはどの程度の自主性が委員会並びに日本機関にあるのでありますか、一々伺つてきめるのでありますか、最終決定権はどこにあるのでありますか、これをお伺いいたします。
  136. 青木孝義

    青木国務大臣 川上さんも御承知だと思いますが、これは昨年末から今年にかけまして御承知のように、外国貿易については、特に輸出について十二月一日から、輸入については一月一日から自由貿易という形でこちらえ移されておりますので、当方においてこの外貨、主として為替予算決定いたしまして、それによつてわれわれが閣僚審議会にかけ、さらに内閣に報告いたしまして決定をいたします。
  137. 川上貫一

    ○川上委員 それは少し違うのじやないかと思います。文書によりますと移されておらぬと思う。操作は代理人として行うものとすると規定してあると思います。代理人であります。管理権は委任でありまして移譲ではありません。この点を明らかにして、どちらに決定権があるのかということをお聞かせ願いたい。
  138. 青木孝義

    青木国務大臣 一定のこちらに移されました外貨につきましては、それはこちらで決定をいたします。
  139. 川上貫一

    ○川上委員 移されておりません。移讓となつてはおりません。委任となつておりますから、その点を明らかにしていただきたい。
  140. 青木孝義

    青木国務大臣 外貨そのものとしては、向うの一つの委任ということになつておりますが、これは日本政府において決定をいたしておる次第であります。
  141. 川上貫一

    ○川上委員 安本長官の御答弁はこれでけつこうでありますが、外貨予算というものには自主性はないということを結局御答弁なさつておる。日本の国の復興、日本の国の産業、これの再建、これの二つの大きなかぎであるところの見返り資金と外貨予算が、日本に自主性がないということには、吉田内閣総理大臣が日本の経済は自主性があるといくらおつしやつても、われわれはこれを認めることができません。日本の産業経済における自主性の喪失、これを吉田内閣はやつておられる。ここのところに現吉田内閣の政治が、はなはだ日本の将来の独立にとつて危險であるということをわが党が主張している理由であります。このために私は昨日総理大臣に対しては外交問題について御質問申し上げたのです。本日はまた大蔵大臣並びに安本長官に対して、この産業経済の自主性についての御質問を申し上げたのであります。このことについては私時間がありませんので、この問題はこれで打切りといたしますが、私の考えでは、はなはだこういう形こそが将来日本にとつての重大問題であるということを申し上げて、通産大臣に次にお聞きいたしたいのであります。  通産大臣とは通産委員会以来多少のおなじみでありますが、(笑声)まことにぬけぬけしい答弁をなさることについては、御名人であるということは私かたびたび申し上げておるので、よく御承知だと思うのです。どうか御親切に御答弁をお願いいたしたいのであります。  まず第一に通産大臣は日本の貿易がソ同盟、中国の市場その他の人民民主主義国家、これをボイコットする方向、こういう貿易政策で日本の貿易の振興と、国の産業の繁栄が期待されるとお考えになるかどうか、この点をまず第一に承つておきたい。
  142. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 お答え申し上げます。川上さんのお話の通りに通産委員会以来のおなじみで、この問題はたびたび通産委員会で繰返された問題であります。しかし繰返して申し上げます。一体貿易をどこに限るという御質問自体が私には解せないのでありまして、われわれといたしましては、どこの国とも喜んで、でき得る條件で、でき得る範囲内においてやつて行きたい、こう考えておるのであります。従つて質問のソ同盟云々とか、あるいは対中華貿易云々とか、そういつたような区別的な考えは全然持つておりません。ただいろいろな四囲の情勢によつてでき得ない範囲があり、またでき得ないような條件もあるわけであります。しかしながらわれわれといたしましては、少くとも貿易をあずかつております当事者の私といたしましては、ヨーロツパでもよろしい、あるいは南米でもよろしい、中米でもよろしい、あるいは東南アジアでもよろしい、そうして御指摘のソ連であり、あるいは中華民国であつても、どこであつても、私はでき得るところに貿易をいたしたい、かように考えております。
  143. 川上貫一

    ○川上委員 それをお聞きいたしたのではありません。できる、できぬというのではなしに、今の客観條件がどうだという前提ではなしに、それがどうであろうとも、中国との貿易、ソ同盟との貿易をしないでも日本は復興いたしますか、どうですか。これをお聞きしておるのです。
  144. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 これはどうも御質問の方がごむりな御質問だと私は存じます。ということは、私さつき申し上げしたように、どこの国とも喜んでやりたい。しかしながら現在はできない国をのけた範囲においてわれわれの貿易がバランスがつくように、できるだけ努力するというのが、私らの立場でなければならない。決して私は制限して考えていない。だからむろん喜んで――川上さんには耳にたこができるほど対中共貿易の問題についてはたびたび申し上げた通りであります。私としても喜んでこれをやりたい。許す範囲において、また許す條件が整うならば、喜んでやりたいという考え方において少しもかわりがない。しかしながらそれができない。條件がない。これはいわゆるソ同盟あるいは対中共ばかりではありません。あるいはポンド・ブロツクにおきましても、いろいろな條件で支障が起きておる、あるいはドルが不足だということからいろいろな條件で支障が起きている。しかしながらそれを許された範囲において、われわれはできるだけ貿易を促進して行きたいというのでありますから、これはむろん中共でもソ同盟でも喜んでこの中に取入れることは、最もわれわれの希案するところであります。
  145. 川上貫一

    ○川上委員 状況上やむを得なければ、中国を除外してもしかたがないという御答弁にすぎません。そこで私は先に進みます。私の質問いたしましたことは……。     〔発言する者多し〕
  146. 植原悦二郎

    植原委員長 靜粛に。
  147. 川上貫一

    ○川上委員 條件がどうこうというのではなしに、私の聞きたかつたことは、條件のいかんにかかわらず、中国との貿易をしなければ、日本の復興はできないのではありませんか。もしそうであるならば、いかなる條件、ほかの條件がありましようとも、この條件を改めて行くことの方が第一條件であつて、一つの條件があるから中国とは貿易をしないでもやむを得ないという、こういうところに落してはならぬのではないか、という質問をしたのでありますが、通産大臣の御答弁はやはりしかたがない、できなければやむを得ぬのだ。できるところでするのだという御答弁でありますから、四囲の状況によれば中国との貿易、ソ同盟との貿易を放棄してもしかたがないという御答弁と解釈いたしまして次に進みます。
  148. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 私は今の川上さんの発言には承服いたしかねます。私の御返事申し上げたのは、決してそういうことではありません。おそらくほかの諸君もその通りにお聞きくだすつたと思う。私はさようなことを申していないのです。ただ條件の許す範囲においてやりたい。われわれはむろん中共貿易においては努力しておるのであります。現に実際に中共との取引というものは、中共との……。(「ちつともできていないじやないか」と呼び、その他発言する者あり)ほかの委員の方は御発言を御制限願います。
  149. 植原悦二郎

    植原委員長 私語を禁じます。靜粛に願います。
  150. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 そこで中共の貿易につきましても、たびたび川上さんに申し上げましたように、香港を通じて相当の商売ができております。昨年度におきましては、大体三千万ドルの輸出を香港貿易でやつておりますが、その大半というものは、対中共貿易であります。またそれ以外に、日本におきましても、最近はいわゆるエスクロー方式、エスクロー・バーター制によつて天津あるいは青島、こういつたようなバイヤーとの取引をやつております。たとえば香港をのけましても、かりに一月の数字を今記憶いたしておりますから、申し上げますと、二十日までの数字におきましても、六十七万八千ドルの取引をエスクロー方式によつてつております。決してやつていないのじやない。それははつきりいたしておきます。努力していないのじやない。またソ同盟という問題でありますが、ソ同盟におきましては、われわれは二百六十万ドルの貸しがあります。輸出超過があります。これに対してぜひひとつ何か向うから入れてもらいたいといろので、私の方はいろいろ苦労しております。苦労しておるが、何か條件を出すと、それは値段が非常に高い。パルプが出て来る。マグネサイトが出て来る。高い。今しかたがないので東ドイツのポタツシユを日本に入れるか、入れないかという問題を話中であります。かようにわれわれは努力しておるのでありまして、そういう違つた考え方で物を議論されないようにお願いします。
  151. 植原悦二郎

    植原委員長 ちよつと御注意申し上げます。質問の要旨を明らかにするために、その前提のために、相当の御議論をなさることは、これを認めます。しかし答弁に対して一方的な結論を申して、そうして断定的で、ややもすれば宣伝になりはせぬかというような疑問を生ずる……。     〔林(百)委員「そんなことはない、どこがそうだ」と呼び、その他発言する者多し〕
  152. 植原悦二郎

    植原委員長 林さん、委員長の言うことをお聞きになりませんか。     〔林(百)委員「聞きますよ」と呼ぶ〕
  153. 植原悦二郎

    植原委員長 それでは結論までお聞きください。さようなことは誤解を招くおそれもありますので、できるだけ討論のときになさるのはいかような御討論をなさつても御随意であります。質問中においてだれが聞いてもさような結論には到達しないというようなことのために、多くの時間を費さないように御注意を願うわけであります。     〔林(百)委員「そんなこととはだれが聞いた。こつちが聞けば川上君のような結論になる。立場が違えば結論が違う」と呼ぶ〕
  154. 植原悦二郎

    植原委員長 林君、靜粛に願います。川上君に発言を許します。他の方は私語を禁じます。
  155. 川上貫一

    ○川上委員 通産大臣は中国との貿易について努力しておらぬように言うたのが、たいへん心外だ、そういうことを言うているのではない、こう申されました。ごもつともだと思います。私はこういうような意味で言うておるのじやないのであります。第一に、政府はローガン構想なるものによりまして、協定貿易形態をとつておられます。私の申しますことは、この政府の貿易形態それ自体は、ソ同盟あるいは中国との貿易、これを推し進めるような方式ではありません。この貿易方式それ自体中国貿易等を阻害する方向をとらざるを得ない形態をとつておるのであります。それゆえに、中国からの注文にいたしましても、たとえば機関車のごとき一台も出ておりません。電線のごときもはなはだ出澁つております。その他のものも行つてはおりません。政府はこの貿易政策、貿易組織そのものを、民主国家をボイコットしてもかまわないというこの形の上にお立てになつておるのではないか。それでは、努力々々とおつしやいましても、ほんとうの努力ではないではありませんか。口先だけの努力ではありませんか。こういう意味なんです。香港について貿易が行われておるということをおつしやいましたが、それも知つております。しかし直接貿易でなければ、香港を通ずる貿易がいかに日本にとつて不利益であるかということは、業者のだれでもが知つております。こういう貿易ではなくして、日本と中国との直接にして公正なる貿易が行われるように通産大臣は御努力をなさらぬ、こう言うておるのです。政府政策それ自体が、これを推し進めて行く方向と違つた政策をとつておるのじやないかということを私は言つておる。この意味で私の質問をお聞き取りを願いたい。
  156. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 私には一向わかりません。なぜならば、一体今とつている自由貿易という形でありますが、これは自由貿易という以上――多少の制限もありますが、そういつた方式が対ソ同盟、あるいは対中国の貿易の形式の上に影響を與えることについては、私は少しもわからないのであります。現に現在の方式におきましても、青島なりあるいは北京なりのバイヤーによつて、エスクロー方式の貿易は行われておるのであります。またソ同盟に対しましても、オープン・アカウントにおいて貿易は続けられておるのであります。その点は今の方式がこれを阻害する方式なりというお考え方には、私は同意いたすことはできません。
  157. 川上貫一

    ○川上委員 政府は商務官派遣、その他領事館等の設置についてもお考えになつておるようでありますが、これはソ同盟にも中国にもちやんとこういう方向に向つて考えを進められておられますか、どうですか。
  158. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 この点は私にお聞きになるよりも、極東委員会において――こういつたいわゆる貿易状態を、戰争終結前の形に持つて来たいというときにあたりましての極東委員会の論議によつて、川上さん御自身が十分御承知のはずであります。
  159. 川上貫一

    ○川上委員 これでは論議が盡きませんから、ほかの面からこれを明らかにして行きましよう。まず第一に、今日の貿易のやり方、このやり方は、はたして私の言うたことが間違いなのか、通産大臣のおつしやることが正しいか、具体的な現実でこれを明らかにしなければ水かけ論になつてしまう。  まず第一に、日本の食糧輸入についてひとつお聞きいたしたい。これは他け議員諸君からも出ましたから、重複するところは避けますが、本年の主食食糧輸入が三百四十万トンでありまして、大豆その他を加えまして三百七十五万トンを御計画になつておると思う。ところが前国会における森農林大臣の御答弁によると、二十五年度の輸入はアメリカの食糧生産事情によつてきまるのであるとはつきり言つております。池田大蔵大臣は前議会において、二百九十万トンくらいが適当であろうと思うと御答弁になつている。ところが三百四十万トンないし三百七十五万トンの輸入になつております。この点前国会の御答弁とあわせて、どういうことでこの食糧輸入の額をおきめになつたか、森農林大臣にお聞きしたい。
  160. 森幸太郎

    ○森国務大臣 お答えいたします。日本に対する食糧輸入量の決定は、もちろんアメリカの食糧の生産事情にもよるのでありますが、日本の占領国としての援助の程度によつて、アメリカにおいて決定されるわけであります。
  161. 川上貫一

    ○川上委員 そういう答弁はいけません。商業勘定で入れているのではありませんか。何もアメリカの援助によつてきまるなんというばかなものじやない。ちやんと今度は民間貿易に移すと言つている。商業勘定を加えて三百四十万トンないし三百七十万トン入れるのだ、こういうことにすぐ問題を持つてつてアメリカと持つて行く。これははなはだいけない。もう少しかわつたほんとうの答弁をしてもらいたい。
  162. 池田勇人

    池田国務大臣 ただいま大蔵大臣は三百九十万トンと言い、森農林大臣は三百四十万トンだというお話でありましたが、私に関係しておりますので釈明いたします。二百九十万トンは二十四年度の輸入食糧、三百四十万トンは二十五年度予定の輸入食糧でありますから、違うのは当然であります。三百七十万トンというのは、主食が三百四十万トンで、大豆が三十何万トンあるのであります。違いはございません。
  163. 川上貫一

    ○川上委員 農林大臣は御答弁ありませんか。
  164. 植原悦二郎

    植原委員長 農林大臣はお答えありません。
  165. 川上貫一

    ○川上委員 農林大臣はお答えがありません。アメリカにおいては、昨年一五%の作付制限をしているはずであります。しかし実際の減收は僅かに一%くらいであろうと言われております。カナダ及びアメリカを中心として、世界に小麦の過剰生産が起つているということはもう周知の事実であります。森農林大臣は前国会において、二十五年度の食糧について、これはアメリカの食糧事情によるということを言われたが、これがほんとうなんであります。すなわちこの食糧輸入の実際の決定は外国の食糧事情によるということは、この二つのことによつて明らかだと思う。結論をつけちやいかぬと委員長が言われましたので、結論はつけませんが、この結論がおかしかつたら森農林大臣からひとつ御答弁願いたい。黙ることはいけない。日本に実際の食糧輸入の完全なる実現がありとするならば、何ゆえにわざわざこの恐慌輸入をなさるのでありますか。さつまいもの買上げをやめ、そうして四百五十億という厖大なる補給金をつぎ込みながら、どういうわけで三百七十五万トンに至る食糧輸入をしなければならぬか。これを少し聞きたい。農業恐慌の輸入にあらずして何ぞや。こういう貿易方式こそが、民主国家の貿易を阻害するものであるというのである。そこで農林大臣は、これを農業恐慌輸入でないというならば、その点をはつきり御答弁願いたい。
  166. 森幸太郎

    ○森国務大臣 日本の食糧の自給度、いわゆる生産の数を定めまして、そうして日本国民に二合七勺という基準量を配給する上において、その不足分が輸入されるのであります。日本の食糧によつてまかない得ないその程度が輸入されるのでありまして、この数量によつて二合七勺の配給ができることになつておるのであります。
  167. 川上貫一

    ○川上委員 食糧農業の問題だけで長く時間をとるわけに参りません。参りませんが、今の政府の貿易政策を中心として考えても、全体の政府のほんとうの日本の植民地化政策が典型的に現われておるのは農村であります。食糧が足らぬからということをおつしやいますが、食糧増産のことは何一つなさつておりません。今年の予算を見ましても、農業に対する予算がどれだけ増しておりますか、これは幾らよく見てもほとんど無視されております。農村における災害復旧がいかになつておるかということ、米価がいかに押えられておるかということ、今の農村の人々が何を要求し、何を苦しんでおるかということ、これはほんとうに政府の方が、特に農林大臣がごらんになりましたならば、この際にこういう莫大な食糧を輸入して、日本の農業恐慌を増すようなことができるはずはありません。これは明らかに世界農業恐慌を日本の政府が引受けておるのであります。この結果どういうことが起つておるか、農村は四千二百五十円の米価で押えられておる。これで押えられておるからこそ、食糧輸入の税金を出さなければならぬのです。お百姓の身になつてごらんなさい。米価が安いから税金を出すのです。これが補給金なんです。米代が安いおかげで高い税金を拂わなければならぬというのが農家のふところなんです。これが一体日本農村保護の貿易政策でありましようか。私はかような貿易政策こそが、中国並びにソ同盟に対する貿易を阻害する方式であるということを言うておるのです。ところがこれが何だか通産大臣の方ではごきげんが惡かつた。そこで農林大臣に私は聞いておる。これが実際に農業恐慌の輸入でなぜないかということを、農民が納得する形でひとつ御答弁を願いたい。今の御答弁では決して納得いたしません。
  168. 森幸太郎

    ○森国務大臣 日本の食糧の基準が三合七勺というのは、必ずしも満足するものではありません。しかしながらあらゆる努力をいたしましても、この二合七旬を日本においてまかなうことは、今日まだ生産が起つておらないのであります。従つてその不足分はこれを輸入しなければならないのでありますが、将来食糧増産をいたしまして、できるだけ輸入食糧を少くするという方針は、決してゆるめておるわけではありません。決して私は日本の農業の増産に何らの手も打つていないというのではありません。あなたの方におまわししております三十五年度予算をよくごらんになれば、いかにこの農業のために、食糧増産のために、政府が努力をいたしておるかということは、おのずから御了解が行くことと存じます。
  169. 川上貫一

    ○川上委員 食確法のような国会が決議いたしませなんだ法案を、ただちに政令でもつて農民に押しつけるようなことをして、これで農業意欲が起り、増産意欲が起り、日本の国の農民が楽しんで食糧の増産にそしむ政策だとお考えになりますか。農林大臣はかような政策をおとりになつておる。増産計画はどんどんやつておるとお考えになりますか。そういうことで日本の全農民諸君が納得すると思いますか。言葉の先ではなくて腹の底から日本の困難をしておるこの状態に対して、誠実なる御答弁をお願いしたい。今のような御答弁では農民は決して納得いたしません。具体的に農村をいかに保護しておるか。一つも保護してない。農村をこわしておる。そうしておいて莫大なる食糧を輸入しておる。これで農村保護、増産奬励になりますか。これはどうお考えになりますか。
  170. 森幸太郎

    ○森国務大臣 あなたと私とは農村に対する見解が食い違つておりますから、満足な答弁をすることはできないと思います。食確法にお触れになりましたが、今申したように日本で自給自足ができ得るならば、あえてああいう法律はいらないのであります。日本は今アメリカの負担によつて、幾分の食糧を輸入しておるのであります。この食糧を輸入しておる関係から、日本にもしも計画以上の生産をした場合においては、これは政府の手において確保しなければならない。これは当然アメリカに対する責任であります。今この占領治下にある国民といたしましては、司令部より指令されたことについては、政府としてまた国家として服従して行かなければならない責任があるのであります。あの食確法の政令をよくごらんになればわかりますが、一様に事前割当をいたしまして、しかもその年が豊作であつた場合に、政府は食糧を政府以外に売り渡すことを認めておりません。従つてその食糧の売渡しをほかに許さない以上、政府としてこれを集荷するという当然責任があるのであります。あの豊作の場合において、また食糧事情によつて、この政令に基くということになつておるのであります。これはアメリカより食糧をもらつておる日本といたしましては、当然この措置をしなければならぬ。また先方よりの指令によつて政府の当然行う義務と考えておるのであります。  なお農村対策に対しましては、あなたの見解と私の見解と違つております。いろいろ農村に対して保護しおらない、冷淡であるというようなことは、あなたの見解と私は解釈いたします。
  171. 川上貫一

    ○川上委員 ただいま承つたのでありますが、食確法の政令は指令によるというお言葉でありましたので、ここであらためてお伺いいたすのでありますが、どういう指令が政府に出ておるのでありますか。お聞かせを願いたい。
  172. 森幸太郎

    ○森国務大臣 これは昭和二十三年の十二月二十五日に、日本に対する食糧確保の強化に対する指令が出ております。
  173. 川上貫一

    ○川上委員 食糧確保の政令を出せという指令でありますか、どうでありますか。この点をはつきりお聞きしたい。
  174. 森幸太郎

    ○森国務大臣 日本においては国内食糧の確保を強化すべしという指令があります。
  175. 川上貫一

    ○川上委員 それは食確法を政令で出せという指令ではありません。あの食確法は国会において決定しなかつたのであります。決定しなかつたものを政令でお出しになつたのであります。それなら何ゆえに国会におかけになつたのでありますか。国会にかけないで、初めから出したらいいじやないですか、それができるなら。国会で決議をしなかつたから、国会の済んだあとですぐ政令で出す。なぜお出しになつたかというような意味のことを聞いたら、これは指令だ、その指令はどういうものでありますかと聞いたら、それは政令を出せという指令ではないという。これはまるでぺてんです。これは私がこう聞きましたから明らかになつたのであつて、あなたのお言葉だけを農民諸君が聞いたらどう考えましよう。この食確法は命令によつて出たのだからしかたがないと思うでしよう。こういうことをおやりになつては政治になりません。なぜ国会で通過しなかつたものを政令でお出しになつたか。これを明らかにしていただきたい。
  176. 森幸太郎

    ○森国務大臣 お答えいたします。指令によりまして食確法の強化修正をいたしたのであります。参議院はこれに対して一部修正をして通過いたしたのでありますが、衆議院においてはその通過ができ得なかつたのであります。従つて政府といたしましては、この指令に基いて食糧確保をさらに強化せなければならない指令を受けておる以上、この食確法の改正を要求いたしたのでありますが、遂に審議未了になつたのでありますから、これを第六国会に継続審議を願つたわけであります。しかし国会におきましては、衆議院においてはこれが通過されたのでありますが、参議院はこの審議が遂にでき得なかつたのであります。従つて第六国会において、政府といたしましては、この食確法の改正をどうしてもこの指令に基いてせなければならぬ責任がある以上、さらに第七国会にこれを継続審議することを許さないのでありまして、ここに政令として出したわけであります。決して国会の審議を無視したというようなことは断じてありません。
  177. 川上貫一

    ○川上委員 国会が決議をしなかつたらどうしても政令で出さなければならぬ、ときまつておるのなら、頭から国会にかける必要はありません。また国会が決議にならないとしても、ただちに臨時国会を召集したらよろしい。国会を無視して政令を出されたということは、袞龍のそでに隠れてまつたく東條と同じようなやり方をなさつておると言わざるを得ない。この点についてはもうこれで問題は明らかだと思いますし、時間を食いますから、この問題は一応打切りますが、しかしわが党としてはこれには問題を持つておりますから、留保して次の質問に移りたいと思います。  次には通産大臣にお尋ねいたしますが、やはり貿易の問題であります。これは今の食糧と同じ見地でお尋ねいたしたいのであります。従つて一番最初に質問いたしました中国、ソ同盟等の貿易、これに関係してお尋ねいたすのでありますから、そういう意味でお聞きを願いたい。まず羊毛の輸入でありますが、現在羊毛業における操業度は二割ないし三割五分ぐらいではないかと承つておるのであります。二十五年度に濠毛をどのくらい輸入なさる御予定になつておりますか。これが輸入せられましたならば、今の設備の操業度がどのくらいになりますか、これが第二点。第三点にはこの中で内需用としてどのくらいを予定しておられます。か、これが第三点。第四点には輸出をどのくらいにお見積りになつておりますか、これが第四点。この点をまずお聞きしたいのであります。
  178. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 羊毛の本年度の輸入の問題は、昨年度大体十四万俵買付をいたしましたので、本年度は濠州から二十万俵、アルゼンチンその他を入れまして大体三十万俵見当の輸入を予定いたしております。従つて大体倍以上に相なりますので、操業度は六〇%から七〇%に上つて行き、採算も非常によくなる。従つてコストも低下する、かように考えております。大体従来の羊モはほとんど内需用に向けられておりたのでありますが、そういつたように倍以上にいたしました関係からして、大体昨年度に比べまして五割以上の円需を見て、その残りが輸出というよりに考えております。この点につきましては輸出はもつとも取引の相手があることでありますので、はつきり申し上られませんが、われわれの計画としてはさように考えております。
  179. 川上貫一

    ○川上委員 現在二割五分ないし三割程度の操業で輸出は行き詰まつております。これは今後非常に簡單に開けるというような状態では決してないと思います。そこでこのうちで非常にたくさん内需用に向けられなければならぬのでありまして、政府の毛糸の計画よると、内需用は服地約九百万着となつておると思います。またその他は七布用、じゆうたん用、メリヤス用を除いて洋服約五百万着分となつておるはずであります。これが内需用の予定で御発表になつた。そうするとわれわれが計算いたしまして合計千五百万着の洋服地が内需にまわります。これは一体だれが買うでしようか。一千五百万着分の洋服地を買う者が日本に出て来るでしようか。またこれほどの物を何ゆえ入れなくちやならぬか。ここにわれわれは食糧輸入と同じような貿易計画というものの姿を見ざるを得ないのであります。この羊毛が恐慌輸入であるかないか、われわれ明らかに恐慌輸入であり、一千五百万着分の津服地を国内に持つて来るこの内需計画というものが、いかに無謀なものであるかということを感ぜざるを得ないのでありますが、通産大臣のお考えを承りたい。
  180. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 今第一に現在の操業慶においてはコストが高くて輸出は不可能だというお話であります。川上さんもお認めのように、かりに倍のものが輸入され、操業度が七割になる、こういう、ことになりますと非常にコストが下ります。三割の場合と七割の場合においてはコストの上において非常に大きな違いが起きることは、川上さんも御承知だろうと存ずるのであります。従つて三割操業のときに輸出ができなかつたからといつて、七割の操業のときにも輸出ができないという結論相なりませんので、その点十分御考慮を願います。今お並べになつ数字でありますが、私ははつきりした数字を持つておりませんから記憶いたしておりませんけれども、しかしながらこの数字の点につきましても、先ほど申し上げましたように輸出の問題とからんでの問題でありまして、われわれの方での一応の策定と私は存ずるのであります。一応の策定についてとやかくの御批評があるということは了承いたしまして、これがはたしてそれだけの内需があるかいなやということについては、なおさらにわれわれの方で検討いたします。いたしますが、御承知のように洋服はずいぶん長い間みんな不自由して参つております。私は内需においてよけい洋服が供給されるということは、皆さんとともに喜びたいと存ずるのであります。
  181. 川上貫一

    ○川上委員 今通産大臣の御答弁がありましたが、一千五百万着分の洋服地を内需に向けようというような計画をなさつたことそれ自体が、一体正気のさたであるかどうかを疑わざるを得ない。これだけ厖大なる税金をとられ、これだけ安い六千三百円のベースで賃金は押えられ、四千二百五十円の低米価を押しつけ、それに食確法等によつて強権によつて飯米どんどんと取上げるという政策を行いながら、中小企業をつぶしながら、この上に洋服地だけどんどん輸入して来る。これは決して全体の国民生活を総合した輸入計画ではありません。これは羊毛の押しつけ輸入を受けておるのであります。これが今日のローガン構想による政府の貿易政策の当然の帰結なのであります。私どもは前国会以来、この貿易政策の危権を指摘し、の貿易政策は日本のための貿易でなく、外国のための貿易ではないかということを前国会以来われわれは質問しておるのであります。この貿易政策それ自体が、中国との貿易を阻害するのではないかということを先に私は質問したのであります。  そこでさらに私は御質問いたしたいのでありますが、日本には今外貨が六千七百万ドルよりないのであります。この六千七百万ドルで私ども考えでは今輸出入の計画をなさつても、あの貿易の資金の操作はきわめて困難だと思います。一箇月に五千万ドルいるといたしますと三箇月分の、一億ドルの資金に足りない。もつともこの外貨の中には今の六千七百万ドル以外に残つたものが少しあると思いますから、やや一億ドル近いのがあるのじやないかと思いますけれども、しかしこのわずかな外貨でもつて貿易をしなければならぬときに、何の必要があつてこれほどの莫大な羊毛を持つて来なければならないのか。これは了解することができない。この点が一つであります。  ついでにお尋ねいたしますが、この外貨予算の中で一体ポンド外貨が幾らあるかということをあわせて御答弁願いたいと思います。これが明らかになりませんというとポンド地域からの貿易のわくがわからぬ。私の考えではこれだけの外貨予算のわくでは、しよせん普通おつしやつておるような貿易はできない。そのためには飢餓輸出をしなければならぬ。これほどの大事な外貨です。日本にとつて生きるか死ぬかの外貨、これを何の必要があつて、この厖大なる羊毛を入れて来なければならないか、この点を御答弁願いたい。
  182. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 まず第一の問題にお答えいたしますが、これは私は見解の相違と申し上げるよりほかいたしかたがない。私はこれがいわゆる押しつけの輸入だという御議論には御同意申し上げるわけには参りません。われわれはできるだけ少しでもよけいとつて操業度を上げて、そうして輸出の方に向けて参りたいと考えております。私はことさらにこれを押えることによつて、われわれの方の操業度を低め、コストを高くするというような愚をしないで、むしろこれ以上に輸入して、操業度を高め、コストを安くして、輸出いたしたいと存じております。それから外貨予算はドル建に相なつております。ポンドは御承知のようにバーター制に相なつておりますし、今はつきりした数字を私覚えておりませんが、もしはつきりした数字が必要ならば後ほど申し上げます。
  183. 川上貫一

    ○川上委員 ポンド貨で五百万ポンドよ与ないというように承つております。これは今通産大臣は御記憶がないということでございますから、これでとどめますが、これは日英協定でスターリング地域との貿易ということを宣伝なさつておりますが、これだけの外貨をもつてしては、あの大げさな貿易はできませんので、外貨獲得その他のためにどうしても飢餓輸出、ダンピングの貿易をしなければならぬ、そういうような重大なときに、これほど莫大な羊毛を入れるということは恐慌輸入だということを私は言うておる。ところがこれは見解の相違だとおつしやいますから、これでこの問題は私は打切りたいと思いますが、以上三つの点――私は実は非常にたくさんの質問事項を用意しております。用意しておりますが、私にあてがわれた時間が残念ながらないのであります。まことに残念ながら質問を打切らなくちやならぬのでありますが、以上私は貿易についてその一部を承つただけであります。いま一つは大蔵大臣に見返り資金その他について承つただけであります。これを承わまして、どうしてもわれわれの理解できないことは、日本の産業、日本の貿易というものが、決して日本それ自体のための自主的な形で行われて事らぬということが第一点。第二点はこの貿易政策にいたしましても、第一に日本それ自体の独自の発展という見地でなくて、外国のための利益、外国のための貿易、こういう形がきわめて濃厚に出ておるばかりでなしに、場合によつてはこのために立案されておるような形態があるということであります。こういうことが全体の政策を通じて行われでおるごとそれ自身、ここのところに今日の財界、産業界、金融界、労働、あるいは市民農民の間における一大不安、日本産業の崩壊の方向が現われておると思う。この崩壊だけではなしに、日本全体が国をあげて、貿易においてはダンピングをされ、政治においては隷属化する方向に向つて、一日一日と吉田内閣の政策によつて推し進められておると私は思います。     〔「独断的な議論はよせ」と呼び、その他発言する者あり)
  184. 植原悦二郎

    植原委員長 靜粛に願います。
  185. 川上貫一

    ○川上委員 この点を私は質問いたしたいと思います。  経済は安定しておると言われますけれども、アチソン国務長官も明らかにそのお言葉の中に、日本の経済はそううまくなつていないとはつきり言われております。あるいはアメリカの世界経済研究家として有名なバーナード・デヴイス氏のごときも、日本経済は崩壊に向つてまつしぐらに進んでおると言つております。日本は決して安定はいたしておりません。ことに日本の中では腐敗堕落は政界に行われ、上から下までが実に腐敗と堕落、あらゆる悪事が横行しておるのが今日の日本の状態であります。しかもその上において日本は独立の危險にさらされておるのであります。日本がこの……。     〔「独立の危險じやないよ」と呼び、その他発言する者あり〕
  186. 植原悦二郎

    植原委員長 私語を禁じます。私語を禁じます。川上君、あなたの発言は済みましたか。
  187. 川上貫一

    ○川上委員 いや、まだ……。こういう形において行われておるこのことが、先ほど来いろいろ質問いたしましたことによつて明らかになつたと私は考えておるのであります。このことについてはなお十分に御質問もし、われわれの考え方について当局の意見も聞きたいのでありますが、繰返して申し上げますように、私に許されておる時間がありません。この問題については、さらにわが党の他の議員から、許されるときの時間においてもう一度徹底的に御質問申し上げたいと思います。これがわれわれ国会議員といたしまして微力ながら国に盡すゆえんであり、日本人の血の流れておる者のいたすことであると思います。それだけのことを申し上げて私の質問を打切ります。
  188. 池田勇人

    池田国務大臣 川上委員の御説がありましたが、これは事実を認識せずに、あるいは曲げた御議論だと思います。占領治下におきまして、今まではいろいろな制約がございましたが、経済が安定に向うと同時に、われわれは占領治下におきましてもなお自主権を確立しつつあるのであります。言い訳ではございませんが、見返り資金の問題にいたしましても、国会の決議によりまして関係方面も承認を得るという決議にも相なつておるのであります。また貿易の問題にいたしましても、従来は管理貿易だつた。われわれは今までは何ら関係していなかつたのがこちらの方に参つて来まして、民間貿易にかわつた。こういうことを見ましても、われわれが日一日とこの自主性を回復しつつあることは事実が証明いたしておるのであります。従つてただままの川上君の御議論には、われわれは全然正反対であることをここで表明いたしておきます。
  189. 植原悦二郎

    植原委員長 尾崎末吉君。
  190. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 大蔵大臣に対する質問は、大方私が準備いたしておりましたのは終つたようでありますが、ただ一つだけお伺いいたします。それは昨年の第五国会におきまして、大蔵大臣に繰返し質問申し上げた税金の減額ができ得るかどうか、所得税が減るだけで、全体の税金はふえるのじやないか、こういう心配を繰返し申し上げたのでありましたが、その際大蔵大臣は、決してそうではないので、総体の税金が減る、こういうことをしばしば言明されたのであります。おつしやつた通りに、すべての税金が今回の予算に出た通りに少くなりましたことに対しましては、まず敬意を表しておきます。與党であるというのでなくて、敬意を表しておきます。  そこでお伺いいたしたい点は、大体経済が安定をいたした、なお安定いたすことの有力な見通しがついた、こういうことについてはよく私ども了承いたしておるのであります。ただしかしながら三月危機とか言われるような、生活の面において、企業の面におきまして、困つた状態が相当にあることは、ひとしくこれを認めざるを得ない次第でありますが、こういう状態は国民の努力と、一面におきましては、大蔵大臣がしばしば申されるようなあらゆる手を打たれることとが相まつて、大体本年の七、八月ころになりましたならば、これらのことが相当安定するのではないか、こういう希望を私は抱いておるのでありますが、その点につきましてのお見通しを一点だけ伺えればよろしゆうございます。
  191. 池田勇人

    池田国務大臣 お話の通りに、財政的には大体予定通りつておりますが、金融的にはいろいろなまだ残された問題がございます。一―三月の問題にいたしましても、ちよつと考えますと、このまま捨て置きますと、また心配な状態が出て来るのでありますが、私はまず一―三月の施策を立てまして、ここ数日中には数百億円――と申しますと相当大きいのでありますが、一、二百億円あるいは二、三百億円程度の金をぐるつとまわしまして、それが間接あるいは直接に中小企業あるいは困つた方面に行くような方策を今考えておるのであります。この三月を切り抜けますと、四月からは非常に直接需要もふえて来るのであります。予算面で、見ましても私は鋼材などでも、昭和二十四年度におきましては二十一万トンくらいでございますが、二十五年度におきましては公共事業費と特別会計――見返り資金を除きまして、三十五万トンくらい要するようになります。また七メントにいたしましても二十四年度は百万トン程度であつたのが、百五十万トン程度になりましよう。木材にいたしましても、千五百万石くらいが二千万石近くの需要になるのであります。公共事業費、通信、鉄道、この関係だけでも、そういうような需要の増加になつて来るのであります。見返り資金その他一般の方から申しますと、かなり直接需要がふえて参ります。経済界は一段と明るくなつて来ると考えておるのであります。どうしても復興予算の建前から、予算の運用はできる限りその方面に使つて行きますが、金融政策にいたしましても、早急に資金計画を立まして、もつともつと明るい希望に満ちた経済に持つて行きたいと努力いたしておるのであります。
  192. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 大蔵大臣に対する質問はこれでおきまして、通産大臣に質問したいと思います。第一点は、燃料が非常に不自由になつて参りまして、機帆船その他交通機関を初めといたしまして、非常に燃料不足を感じておるのでありますが、これに対しましては、通産大臣とせられましては相当方法立てておられるであろうと思うのであります。二十五年度におきましては一体どのくらいの燃料を輸入せられる計画を持つておられるのか、その結果によりまして、今よりは相当燃料下足ということが緩和せられる見込みがあるかどうか、この点についてまず伺つてみたいと思います。
  193. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 今輸入燃料の額につきましては、これはガソリンにしましても、あるいは軽油、重油その他の問題につきましても、まだ実ははつきり決定をいたしていないのでございます。しかしながら御指摘のように非常に燃料不足であるという問題はあります。まず第一には、御承知のように太平洋岸で八箇所のレフアイナリーを今回開始することになりました。これで原油を入れる。実は同じ金を使いましても、原油で入る場合は工賃だけ安くなりますので、それだけよけい油が入れられるという問題が一面にあるのであります。そういう点を勘案いたしまして、実は計画をきめたいと思います。数字につきましては鉱山局長が擬つておりますから、あとでその方から御報告申し上げます。
  194. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 鉱山局長の御説明は、あとまわしに願いまして、そこで伺いますことは、そういうやり方によりまして、今日の不自由な状態から相当緩和される見込みがあるかどうかというそのお見込みと、かように燃料のきゆうくつな状態が長く続きますならば、はなはだ国民は困窮をいたすのでありますから、国内において代用燃料等を生産することを、御奬励になるような計画もしくは研究等があるかどうか、このことを伺つておきたいのであります。
  195. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 代用燃料についてはいろいろな方面の代用燃料があると思います。そこで重油代用のたとえばメタノール、これは大体需要がまず二万五千見当ではないかと存じておるのでありますが、設備といたしましては二万七千の設備を持つておりますので、今日動いておりますのは約四〇%程度ではないかと、存じておるのであります。これは主として電力の問題が大きな隘路になつております。そういう点について特に代用燃料としての問題として、この点に特別な措置をとることが必要ではないかというので、われわれ今考えておるるうなわけであります。なおクレオソートは大体一万トン穫度供給できるのではないか、かように考えております。それから代用燃料としてのアルコールでありますが、これはわれわれのところでは大体年に三万五千キロリツトル程度であつたと記憶いたします。ただこの方は御承知のようにガソリンと比べまして非常に値段が高く相なるのであります。トンあたり十万円見当になりはしないか、かように存じますので、その点について代用燃料としてどうかという問題もあると思います。それから今度は方向を違えまして、炊事用の燃料その他の意味から、あるいはガス用の燃料の意味から、例の天然ガスを利用することの問題もあると思います。天然ガスの埋蔵量についたはいろいろの説がありますが、大体百十億キロリツトル、そんな見当じやないかということでありますが、これは御承知の新潟方面、あるいは最近は静岡、それからまた千葉の大多喜、こういう方面相当の量があります。これをパイプ・ラインを通じて東京まで持つて来るという計画もいろいろ行われておるのであります。あるいは千葉の天然ガスを、東京ガスが一緒になつて東京に持つて来るというような計画もあるようでありますが、しかしいずれにいたしましても、二百億円あるいはそれ以上の相当の多額の資金を要するということと、それからこれをつなぎますところのパイプ・ラインが、プレッシャーその他に耐えるやいなや、そういう技術的な問題もあると思います。それよりさきに新潟方面の天然ガスは現地においてアセチレンをつくつて、あるいはアセチレンから種の酪酸ビ二ール、こういつたようなものを工業に振り向ける方が、一体全体的から考えて効率がよいのではないかということの研究もいたされておるようなわけであります。そのほかわれわれの方の仙台の研究所におきましては、例の亜炭からコーライトの問題、また最近北海道で膨潤炭という形においてカロリーの非常に低いあるいは三千カロリー、あるいは四千カロリー程度の石炭を木炭代用のものにする、しかも臭気を発しないで火つきもよい、今これは研究が進んでおりますが、これは実際成功しますと低品位の石炭を処理する上において、非常なよい結果をもたらすのではないか、かように考えております
  196. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 その次に伺いますことは、電力事業の再編成の問題でありますが、電気事業再編成審議会から二月一日でありましたか、その答申が出たということが新聞に発表せられておつたのを見たのでありますが、かようなやり方による電力事業の再編成の結果が、経済界にどんな影響を與えるかということについての、通産大臣の御見解をまず伺つてみたいと思うのであります。
  197. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 これは先般も上林委員、けさも中曽根委員にお答えをいたしたのでありますが、これは日本の工場の分布が日発という一本の事業会社――しかも電力量においてプールされ、また電力の料金がプールされておりますが、そういつた一社化のもとにおきましての工場の分布が計画されたわけであります。従つてこれが分断されるというような場合におきまして、いわゆる電力のコストの安いところに事業が興る、ことに電力を原料として使うところの工事が興るという形には、日本の工場の分布がただいまは参つていないのであります。従つてこれをただちに実行するということになると、そこにいろいろな摩擦が起ることは当然な次第であります。どうしてもある段階的に電源の開発、その他を待つて需給がバランスしたところでだんだん切り離して行くことが、一番支障を起さない点でありますが、ただ問題は、この問題が起きました理由は二つでありまして、一つはむろん電気事業が発送電から配電に至るまでを一本の筋においてやつて行く、これがいわゆる電気事業の改善を促すゆえんであり、また健全化をいたすゆえんであり、また同時にそれがいろいろな意味において一つの單位となつて外資導入の道にもなるのだということが一つの理由であります。他の理由といたしましては、いわゆる集中排除法の関係から起つて来ておるわけであります。そこで集中排除法の観点から言いますと、一社が少くとも日本の電力事業の一定のパーセンテージ以上を持つてはいけないというのが集中排除の建前でありますので、その意味から言いますと、どうしてもこれは分割しなければならぬ、こういう問題が起つて来るのであります。そこで分割する一つの前提といたしましてこの分割を摩擦が起さないように分割して行くということが、われわれの非常に苦労の存するところでありまして、この点については、なお関係筋との折衝も残つておりますし、またこの再編成審議会の答申案も参考として今後の折衝を続けて行き、われわれの案を具体的につくりまして、皆様方の御審議を願いたい、かように存じておる次第であります。
  198. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 私が不安に思つておりましたことが、通産大臣の御説明において大体わかつたのでありますが、そうしますと、結局集中排除の問題と、外資導入という二つの大きな観点から、こういう計画がなされたのであるが、しかしながらその前提として電源の開発その他に努力をしながら、それらの事柄とにらみ合せて、適当の時期に再編成をやりたい、こういうお考えであると了承してよろしゆうございますか。
  199. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 今の尾崎さんのおつしやつたことは少し前後すると思いますが、私の言いたいのは、やはり集中排除の点から言つて、一応分割するという建前を通さなければいけない。分割はいたしますが、分割をいたしましても、そこに摩擦が起きないような形においてやはり分割する。あの厖大なものを、資産の再評価といいますか、資産の分割の計算をするだけでも、私は一年や二年かかるのではないかと実は思つておる。そういうようにいろいろなその辺の点はなかなか今後の折衝に――あまり詳しく申し上げますと支障が生じますので、その辺は触れたくないと存ずるのでありますが、要するに一応今日分割をするが、しかしながら摩擦ができぬ形においてこれを持つ行きたい、かように考えておるわけであります。
  200. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 御事情の許す範囲内での御答弁で大体了承いたしたのであリますが、ここに問題はこの前の地域差による新しい電力料金の設定によりまして、九州地方のごときは非常に大きい影響がこれによつて生じて、化学工業初めかなり大きな惡い影響が製造部面に起つておるということを聞いておるのであります。従いまして九州各県の知事たちが連合して再編成に反対をしておるということを聞いておりましたが、そのことは別といたしまして、九州地方に起つておるような新しく設定せられました地域差による電力料金によつて非常に大きな影響を與えておるという、このことを何とか緩和する方法を、通産大臣はお考えになつていらつしやるかどうか、伺つてみたい。
  201. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 新電力料金が地域的にいろいろな影響を與えて来ることは承知いたしておるのであります。これはしかし地域的ということにも、全般の産業の上におきまして一応の割当の筋――アロツトメントの筋をいたしまして、その筋以上のものを今度は使うという場合に、大きな影響を及ぼすということに相なつておるのであります。これは一九州に限らないで全般的に影響を與えることと思うのであります。ただ電力を原料とするというような産業つきましては、これはできるだけ特別の考慮を拂う必要があると思うのであります。たとえば化学工業のごときは、割当は他の産業に比べまして非常に多い割当をもらつておるのでありまる。ただしかしながら従来のように夜間電力あるいは深夜電力というものにつきまして、特別の扱いがしにくいというような点がありまして、その点で大きな影響を及ぼしておると思うのであります。ただ本年は非常に出水の状況がよろしくありましたので、こういた状態が続く場合は、何らか緩和の方法はないかというような点につきまして、いろいろ関係筋とも交渉をいたしておるりでありますが、いまだ始めたばかりであり、ほんとうに影響がどういう形において現われるかということについて、なおいま少し検討をしたいということであります。われわれの方といたしましては、これによつて産業が大きな影響をこうむらないように、できるだけ緩和する方法について、努力をいたしておるような次第であります。
  202. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 大体今までの日本発送電並びに配電会社が国民から非常な不評を買い、非難を浴びましたもとは、あの発送電会社をつくる当時の逓信大臣の永井柳太郎さんが、口癖のように言つておられた、豊富にして低廉な電力、こういうことを言つておられたにもかかわらず、料金の点におきましては、他の物価と比較いたしまして比較的安かつたようでありましたが、いわゆる豊富な電力という点に欠点があつた。そのために非常に国民が非難をし、非常に不満であつた。こういうのが実情であつたのでありますから、この御苦心になつておるような再編成の実行にあたりましては、まず第一にさつき申しましたように、電源の開発がその前提でなければならないと思うのでありますが、それにつきましては、この電源開発の御計画についてどういう計画、たとえば地域的にこの間の答申案によりますと、九つに分割する計画があつたようでありますが、電源の開発も地域的に何らかの計画を持つておられるかどうか。ただ電源があるところであれば、これを優先的にやるというお考えであるか、あるいは地域的に電源の開発について何らかの御計画があるかどうか。たとえば九州等のごときは――えらく九州のことを申しますが、例を引きますと、九州のごときは非常に電力が少くて、他の地域よりも困つておるのであります。そうした地域のこともにらみ合せて、電源開発ということについての計画があるかどうか、これを承つておきたいと思います。
  203. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 これは当時の逓相永井氏が、豊富にして低廉な電気ということを言われました。その考え方には、やはりどうしてもああいつた形態のものでは、電源開発その他についての熱心さが足らなくなると私は考えておるのであります。私はそういう意味において、この際やはり日発といいますか、電気事業は再編成さるべきものだと思つております。先ほど申し上げましたように、これに対しては日本の産業分布がそうでなくできておるので、これに対する影響を勘案しなければならぬ。影響を勘案する場合にやはり一番考えられますことは、結局電力の足りない地方の電源開発を、まず第一に考慮に入れて行かなければならないということであります。これはたとえば御指摘の九州地区もしかりであり、また四国もさようであります。あるいは北海道もそうであります。中国もそうであります。こういうことになりまして、どうしても再編成ということを論じます場合には、同時にそれとあわせてその再編成の場合に、できるだけ電力の少い方面開発を先行せしめる、こういう方策をとるべきであろうと考えておるのであります。
  204. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 大体了承いたしましたが、その次に小さな問題でありますが伺つておきたいと思いますことは、従来長い間電力の使用超過に対しましては、懲罰的な意味における強制停電をやつたり、あるいはまた超過料金というものが懲罰的な意味で非常に高いものをとられたりしまして、非常に国民の不満を買つておつたことは、お互いが経験をいたした通りであります。ところが逆に発送電会社なり、配電会社において、争議やその他の故意によるかまたは怠慢、過失等による停電に対しましては、どうも一向これに対する適当な処置がなかつたために、国民は気持の上からも非常な忿懣の情を持つておつたことは事実であります。しかるにそのままにしておいて、さつき申しますような新しい電力料金の設定がなされたと言われましたが、今申すような故意または怠慢、または重大な失態等によるところの停電に対しまして、何らかの処置をおとりになる計画があるのか、これをひとつつておきたいと思います。
  205. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 超過電力量は、今回の新料金改正のときにこれをやめましたことは御承知通りであります。それから故意、過失、あるいは何かの場合で電力会社が停電した、あるいはとめた、こういうものに対して処置をとるかどうか、こういうお話でありますが、これは実際問題としまして私は不可能だろう、かように存ずるのであります。さような御迷惑をかけておるということは十分察せられますけれども、しかしながらそういうものに対して特別な懲罰的な何らかの規定――警告は発することはできますが、懲罰的な規定もありませんし、またさようなこともできにくいことだと考えております。
  206. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 次にお伺いいたしますことは、わが国の現状に照しまして、医療、衛生、工業等のために使われる優秀な外国製の薬品の輸入が必要であることは申すまでもないのでありますが、二十五年度におけるそれらの薬品の輸入計画があることと思いますので、その計画の内容と申しますか、薬の種類とか数量とか金額とか輸入の方法とか、そういつたことについて、おさしつかえのない程度の具体的な御答弁を煩わしたいと思います。
  207. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 お尋ねの医薬品の問題でありますが、私ここに詳細の数字は持つておりませんけれども、医薬品の本年度の輸入は百五十万ドル程度考えております。そのうち約三分の一は民間輸入になるかと存ずるのでありますが、他はガリオアによる輸入となつております。品目につきましては民間輸入と思われますものは、甘草あるいはラクトーゼ、リジン、海人草、ジアトール、アミノ、フェタノール、そういつたようなものであり、それからサントニンあるいは麻黄、ラノリンといつたようなものは近く発表する予定に相なつております。ガリオアによりますものは、ストレプトマイシンあるいはワセリン等があるわけであります。以上は計画品目でありますが、このほか計画品目以外に、私薬のことはよく存じませんが、雑品目として考えられておるものがあります。
  208. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 輸入の点に関しましてはわかりました。そこで大事なことでありますので伺つておきたいと思いますことは、そうした優秀なる外国の薬品を輸入いたします結果、内地の製薬会社が相当に恐慌を来しておるように思われるのであります。従いましてそういう輸入薬品の数量がふえて参りますれば、当然内地の製薬会社に影響があると思うのでありますが、大体内地における製薬の状況、たとえばあの品質がいいとか悪いとかいう状況及び製薬の数量等の状態について御承知になつておるだけの程度をお伺いいたしたいと思います。
  209. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 製薬関係のことは厚生省所管になつておりますので、私ちよつと数字を覚えておりませんが、御必要ならばそちらの方に問い合せまして、後刻お知らせいたします。
  210. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 先ほどの局長さんがいらつしやれば、ちよつと数字を伺つてみたい。
  211. 永山時雄

    ○永山政府委員 先ほどお尋ねの油の輸入の問題でございますが、本年の一月から六月まで日本側として買付を希望いたしております。量は、ガリオアで九十六万バーレル、それから商業勘定で約三百二十万バーレル程度の買付を希望いたしておりますが、現在までに資金の割当等で買付の計画の進んでおりますものは、そのうち九十万バーレル、これはポンド圏からの輸入でございます。大体その程度の進行を見ておる程度であります。
  212. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 通産大臣に対する御質問はこれで打切ります。  次に建設大臣にお伺いいたしたいと思います。住宅の問題でありますが、終戰後最も国民に重大な問題であつたとともに、非常に困難を来しておつた衣食住のうち、今日の状況においてはいまだ不十分ではあると申しますものの、食生活がまず緩和せられた。特に衣料の方が、現内閣の努力によりまして、統制撤廃その他によつて大体楽になつて参りましたが、残された問題の住宅問題について、見返り資金その他を合せて大体百五十億の予算を持つておる。いわゆる住宅を建設をさせるという御計画があることを承知いたしておるのでありますが、その御計画の内容をおさしつかえのない程度伺いたいと思うのであります。
  213. 益谷秀次

    益谷国務大臣 御承知通り、住宅難を緩和いたします一つの手段として、今回――これまでの庶民住宅は継続いたして参りますが、同時に住宅建築の隘路である資金の面の解決の一端として、住宅金融公庫というものをつくる予定であります。これは政府出資五十億円、なお見返り資金を百億、総計百五十億、これは主として今日最も住宅難に困つておる勤労大衆の方面に、長期、低利の資金を貸し付けようという計画であります。ここ四、五日のうちには法律が立案できると思います。近く御審議を願うことになると存じますが、大体百五十億のうち、百五億は、個人の住宅建設の希望者、もしくは住宅組合の方面に予定いたしております。そして戸数としては大体六万八千戸、さらに残りの四十五億については、これは未だ確定いたしておりませんが、貸家経営の方面に充てるつもりであります。たとえば地方公共団体または貸家経営をする法人等に貸付をいたします。そしてこれは主として鉄筋コンクリートの高層アパートで、大体一万二千戸を予定しております。その他この運用についてはいまだ決定しておりませんが、ここ四、五日お待ちを願います。
  214. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 法案が出るとはつきりなるでありましようが、ついでに関連して伺つておきたいことは、長期とおつしやいますと、大体何年間くらいで、また金利等の関係はどうなるか。それだけ御答弁願いたい。
  215. 益谷秀次

    益谷国務大臣 早く償還をしてもらえば一層けつこうなのでありますが、大体三年ないし十五箇年、金利は五分五厘、建設費の大体七割を貸し付いたそうという考え方であります。
  216. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 そういたしますと、これは、たとえば戰災地にはよけい貸し付ける乙か、非常に住宅に困つておるところには貸し付けるというような、そうした地域事情等を勘案しておやりになるわけでありましようか、希望者の多い方におやりになるというお考えでございましようか。
  217. 益谷秀次

    益谷国務大臣 住宅に困つておる方面へ社会政策を十分に加味してやつて行かなければならぬと存じておりますので、住宅の困難をいたしておる方面はむろん力を注がなければなりませんが、今日大体御承知通り全国いずれの方面におきましても、それぞれ住宅の不足に困つておる状況でありますから、おのずから政府といたしましても、地域的にある程度配分いたして行かなければならぬと考えております。しかしながらこれも適当なる希聖者のない場合にはその通りにも参りませんから、希望者、あるいは住宅下足の両方面から勘案して参りたいと思つております。
  218. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 次に治山、治水の問題は災害の防止の点から申しましても、また食糧生産の上から考えましても、あるいは農村漁村の電化、工業化というよな点か考えてみましても、非常に重大なことであることは申すまでもないのでありますが、政府は治山、治水、電化等に対する総合計画立てておられるのであるかどうか。総合計画立てておりますならば、その大体をお伺いいたしたいし、もしまたいまだ十分な計画が立つていないといたしますならば、その総合計画の前提として、それらの基礎的の調査を行われるような計画があるかどうか。この点をお伺いいたします。
  219. 益谷秀次

    益谷国務大臣 国内資源の開発、治山、治水は今日日本再建のためには、最も取急いでいたさなければならぬ重要なる案件であります。従つて治山、治水を根幹といたしまする総合計画、あるいは未開発の資源を包蔵いたしております地区の総合開発、これは国土の総合開発計画の一端として政策を確立いたして、すみやかに強力にこれを実施いたさなければならぬことは、今日最も急務であると私ども考えておるのであります。従つて建設省といたしましては、御承知通り、この面から各都道府県別に、地方の総合計画を樹立するように慫慂指導いたして参つております。なお地方の総合開発の先駆といたしまして、これも御承知だろうと思いますが、特定地域を指定いたしまして、総合開発計画立てまして、それを私ども経済安定本部と連絡をとりまして、すでに昭和二十二年度から今日までの間に全国十四箇所の特殊地域を指定いたしました。そうして総合的にあらゆる計画施策を立てまして、従来のごとくややもすれば各事業各施策が関連性がなくて、まちまちにいたし、経済的効果を十分発揮することができなかつたのみでなく、はなはだしきに至りますと、事業相互の間にいろいろの摩擦じまして、経済的の効果を減殺いたしておるという場合があるのであります。     〔委員長退席、小峯委員長代理着席〕 これをやめまして、総合的におのおの事業に関連性を持たして行きたい。そのためにはただいま申しました通り、各地域ごとに指定いたしました特殊地域については、まず公共事業費を呼び水として、重点的に公共事業費をその方面に使つて地方開発に資したいという考えで進んで参つております。  なお治川治水の計画についても建設省といたしましては、すでに計画は持つてお力ます。そうして昭和二十二年度からその計画の線に沿つて、仕事を進めて参つております。
  220. 森幸太郎

    ○森国務大臣 ただいまの治山治水の事業に関連いたしまして、私の関係いたしておることをお答えいたしたいと思います。従来山林行政等が、まつたく建設の事務とかけ離れておりましたので、今建設大臣がお答えになりました通り、相互連絡をとるということが、最も緊密でなければならぬと考えまして、経済安定本部に十分なる総合的な計画立てまして、その総合的な計画に基いて、それぞれその事業の完遂をはかつておるわけでありますが、農林省関係といたしましては、昭和二十五年度の植林計画は公共事業費として造林が十九億を計上してあるのであります。これは人工栽植によつて二十三万町歩の予定であります。人工栽植に天然更新を加えれば二十五万五千町歩植林される計画であります。  なお見返り資金よりの金融六億四千万円を予定しておりますが、これによつて植林される面積は約三万町歩であるのであります。なお従つてこの造林計画と相伴いまして、林道の必要が考えられますので、公共事業費は五億五千万円でありますが、これは民有林道九百三千キロメートル、奥地林道が六百三十三キロメートル、北海道林道が大十キロの事業内容であります。なお治山事業に対する公共事業費は十九億でありますが、これは国有林の崩壊林地二百五十町歩、民有林の崩壊林地復旧が八百大十五町歩、県費に対する補助が四千八百六十五町歩を予定いたしております。これらの事業は農林行政の特殊的な意味もありますが、建設大臣の答えられました国土計画の総合計画と相まつて、実行いたしたいと考えておるわけであります。
  221. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 非常に力強い御計画を伺いました。なお数日前から総理大臣に御質問申し上げてみたいと思つておりましたが、ちようど建設大臣と農林大臣がおいでになりますので、ついでに伺つておきたいと思います。それは北海道総谷開発の法律案が出されるということをちよつと耳にいたしたのでありますが、そういう御計画がありますか。
  222. 益谷秀次

    益谷国務大臣 北海道総合開発計画を樹立するという、北海道開発庁と申しますか、国務大臣を長官とするという法律案は今政府において審議中でございます。
  223. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 北海道総合開発が長年唱えられたのでありますが、法律案となつて出ることをまことに欣快に思うのであります。私どもの九州、特に南九州に当る大分県、宮崎県、熊本県、鹿児島県、これらの方面は、御承知通りに山にいたしましても、水にいたしましても、あるいは土地にいたしましても、開発をされなければならないところが非常に多い。いわゆる大きな資源を持つておるのでありますが、南九州総合開発に関する御計画はいまだ立てられていないかどうか、お伺いいたしたいと思います。
  224. 益谷秀次

    益谷国務大臣 南九州の総合開発という南九州に特定いたしました総合開発計画というものは特にございません。しかしながら日本国土全体の総合計画を今審議会等で検討いたしております。従つて南九州もおのずから資源開発、総合開発ということの研究の対象になると考えております。
  225. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 北海道総合開発が具体的になつて参りましたから、ただいまの御答弁のようにぜひともただいま審議中の南九州総合開発――これはひとり私どもの地域的な考えから申すのでなくて、国家全体の上から考えてみて、南の方を総合開発するということは絶対に必要であると思いますから、その御計画はぜひとも力強く推進をしていただくよう希望申し上げておく次第であります。  それからついででありますが、これはもう数回予算委員会のたびに、しばしば私が御質問申し上げ希望もいたした問題でありますが、鹿児島県の川内川は九州で一、二を争う長流でありますが、昨年のごときは六回に及ぶ大洪水があつたのであります。これは政府の方々にも非常に御配慮を願つた次第でありましたが、昨年のごとく一箇年に六回も大洪水があるということは珍しかつたのでありますが、少くとも一年に二回くらいずつは大洪水が出ますために、その流域にある川内市を初め十箇町村に及ぶ所が、非常な災害を受けるのであります。従いましてこの川内川の流域に対するところの災害復旧ということが、年々政府も県も地方町村も最大の努力の一つとなつて参つておるのでありますが、復旧と申しましても元々通りにはならない。元々通りにならないうちにまた災害があるというような状態で、だんだん荒廃いたして参つておるのでありますから、その拔本的の対策といたしまして、川内川の上流に一大ダムをつくつて、この水害と早書とを調節するということとダムの水によつて電力を起す。こういうことについての御計画を願いたいということを、本委員会におきましてもしばしば私は質問と希望と申し上げておいたのでありましたが、この川内川の上流にダムをつくるという御計画が進められていないかどうか。あるいはまたその全体としてこれらに対するところの具体的な調査等をなさる御計画がいまだできていないかどうか。そのことを伺つておきたいと思うのであります。
  226. 益谷秀次

    益谷国務大臣 私の方は河水統制の面から上流に堰堤を築造するのであります。しかしながらこれは洪水の際は河水を貯溜いたしまして洪水を軽減するという面と、同時に利水の面、すなわち発電をいたしますとか、灌漑用水に使いますとかいうような方面、河水統制と用水を利用するという面とあわせて堰堤が役立つのでありますから、でき得る限り根本的治水計画という上と、もう一つは川を利用するという面から堰堤をつくりたいという考え研究をいたしております。また現に今日すでに堰堤をつくり、また本年度から着手するという川もあるのであります。ただいま御指摘の鹿児島県の川内川は御承知通り、昨年のごときは六回も犯濫いたしたという川でありまして、これに対してはやはり根本的抜本的に治水計画を樹立して参らなければならぬという考えでございますが、建設省といたしましては今日いまだ堰堤の計画は遺憾ながらございません。しかしながら鹿児島県地元の人たちの非常に熱心なる御要望がありますので、十分に地質その他の調査を取急いで、そうして御希望に沿うようにいたしたいという考えでございます。
  227. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 建設大臣に対する御質問はこれで終ります。時間の関係がありますから、農林大臣にごく簡單に、先御答弁を願つた以外のことをお伺い申し上げてみたいと思うのであります。  干拓事業関係でありますが、干拓の仕事は干拓をやつた結果により効力を上げる点から考えましても、またその進行途上において、風水害等のためにこれらの工事が破壊される等の点から考えてみましても、できるだけ急いで完成をすることが必要であろうというふうに考えられておるのでありますが、現在継続中の干拓で二十五年度に完成をしますものが、どのくらいありますか。また終戰後ただいままで完成されたところの干拓がどのくらいあるか、数字がおわかりになつておればここで伺いたいと思います。おわかりになつていなければあとでもけつこうでありますが、その二つをまずお伺いいたしてみたいと思います。
  228. 森幸太郎

    ○森国務大臣 お答えいたします。終戰後完成いたしました干拓の総面積は今ここに数字を持つておりませんが、干拓事業は、その投資いたしましたことから考えましても、あまり広く拡げずに、重点的にできるだけ早く完成をしたいという方針をとつておるのでありますが、現在継続いたしております事業の地区数は八十七、面積は二万二千八百五町歩であります。そのうち二十四年度に建設工事を完了する予定のものは数が八つであります。面積が九百四十九町歩でありますが、ただいま継続中のものについては、昭和二十九年度でその全部を完了する計画立てております。二十五年度にはそのうち八つ完成する予定であります。二十五年度以降におきましては、早く継続事業の完成を期することはもちろんでありますが、次の新しき計画もまたこれが適当なものなら考えて行く予定であります。本年度までに完成の分を考えますと、本年度末までに十一地区を完了することになるので、ある程度の新規事業に着手しても、そのために現在やつております継続事業の完成を遅らせるというようなことはないと考えておるのであります。
  229. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 最後にやはり関達した問題でありますが、この干拓事業のために大体二十五年度にはどのくらいの予算を上げておられるか。  それからもう一つはいわゆる見返り資金の中からどの程度干拓の方にまわしてもらえるお見込みがありますか。それをひとつ関連をして伺つておきたいと思います。
  230. 森幸太郎

    ○森国務大臣 二十五年度予算案におきましては、干拓関係経費は十三億円であります。干拓事業を能率的に進めて行くためには、少くとも二十五億の経費を必要としますので、この不足分について見返り資金の使用を懇請いたしたいと、目下各方面と折衝中であります。
  231. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 私が今質問することは、あるいはお漏らし願うことが困難であるというならばさしつかえございません。もしさしつかえないようでありますならば、どのくらいの程度見返り資金の中からまわしてもらえる見込みがあるかどうか。おさしつかえがあればこれけ伺わなくてもよろしゆうございます。
  232. 森幸太郎

    ○森国務大臣 ただいま申し上げました通り、能率的の数字では二十五億円くらいは必要と考えるのでありますが、公共事業費等の関係で十三億円しか予算を獲得することができ得なかつたのでありまして、この残余の十二、三億というものを見返り資金の方からまわし得ることができれば非常に都合がいい。かように努力を続けておるわけであります。
  233. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 大体農林大臣に対する質問をこれで終ります。申出ておきました総理大臣に対する質問を保留をいたしまして、これで打切ります。
  234. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 本日はこれにて散会いたします。明後日は午前十時から開会いたします。     午後四時四十七分散会