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1950-02-02 第7回国会 衆議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年二月二日(木曜日)     午前十時五十七分開議  出席委員    委員長 植原悦二郎君    理事 池田正之輔君 理事 尾崎 末吉君    理事 上林山榮吉君 理事 小峯 柳多君    理事 苫米地英俊君 理事 川崎 秀二君    理事 川上 貫一君 理事 圖司 安正君    理事 今井  耕君       淺香 忠雄君    天野 公義君       井手 光治君    江花  靜君      岡村利右衞門君    小淵 光平君       角田 幸吉君    北澤 直吉君       小金 義照君    小平 久雄君       坂田 道太君    玉置  實君       中村 幸八君    西村 英一君       丹羽 彪吉君    松浦 東介君       松野 頼三君    松本 一郎君       南  好雄君    山村新治郎君       稻村 順三君    西村 榮一君       北村徳太郎君    中曽根康弘君       林  百郎君    米原  昶君       奧村又十郎君    小坂善太郎君       山本 利壽君    黒田 寿男君       世耕 弘一君  出席国務大臣         国 務 大 臣 殖田 俊吉君         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         農 林 大 臣 森 幸太郎君         通商産業大臣  稻垣平太郎君         郵 政 大 臣         電気通信大臣  小澤佐重喜君         労 働 大 臣 鈴木 正文君         建 設 大 臣 益谷 秀次君         国 務 大 臣 青木 孝義君         国 務 大 臣 本多 市郎君         国 務 大 臣 増田甲子七君  出席政府委員         大蔵政務次官         (主計局長)  水田三喜男君         大蔵事務官   河野 一之君         通商産業政務次         官       宮幡  靖君         経済安定政務次         官       西村 久之君  委員外出席者         会計検査院長  佐藤  基君         会計検査院事務         官       小林 義男君         会計検査院事務         官       綿貫 謹一君         專  門  員 小林幾次郎君         專  門  員 小竹 豊治君 二月二日  委員周東英雄君辞任につき、その補欠として山  村新治郎君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十五年度一般会計予算  昭和二十五年度特別会計予算  昭和二十五年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 植原悦二郎

    ○植原委員長 これより会議を開きます。  質疑に入ります。松浦東介君。
  3. 松浦東介

    松浦委員 私は重要と思われる二、三の問題について質疑を試みたいのでありますが、まず池田大蔵大臣に、簡單に低金利政策についてお聞きをいたしたいのであります。  日本経済再建は、言うまでもなく生産増強にまたなければなりません。この点は現政府の最も力を入れている点であると存じますが、これについて不可欠の要素は、一つ労働能率の強化であり、もう一つは低金利政策でなければならないと考えます。しかるに現在は遺憾ながらそこまで行つていないのであります。それは金詰まりなどの大きな原因もありましようけれども、今の金詰まり状態は少しく度が過ぎているようでありまして、金詰まり即首切りというところまで進行いたしているようであります。大中小企業を営む大部分の人たちは極度の金詰まりに、その事業経営は困難となり、それがために労働者は俸給の不拂いやあるいは延期というようなことになり、生活が非常に窮迫して参りまして自暴自棄となる者、あるいは神経を消耗いたしまして自殺する者などが続出をいたしておりますことは、毎日の新聞紙が報じている通りでございます。この金詰まりも何とかしなければならない。インフレの收束のために一つの道であつたということは認めますけれども、捨てては置けないところの段階に至つているのではないか、かように思うのであります。これらの点につきましては、先般来大蔵大臣からいろいろ御答弁もあつたようでありますけれども、それはそれといたしまして、私はこの際どうしても通貨が一応安定をすれば、金利引下げを強行することが、産業を合理化せしむるところのゆえんであると考えるのであります。先日来同僚の質問に対して、大蔵大臣銀行利子を三厘引下げることに努力をいたしたいというようなお話もあつたのでありますが、もちろんけつこうなことで、その労は多といたしますが、われわれはそれをもつて決して足れりとは考えられません。銀行利子が二銭九厘であろうが、あるいは八厘であろうと、あるいは七厘でありましようが、そういう一般的な普通の措置だけで、これはなかなか低金利というところにはほどが遠いのではないかと考えます。民間ではこれは非常にあくどい方面でありますけれども、十日に一割といつたような、非常にこれは乱暴なことも言われておるのであります。しかしながらこれは事実でありますから、かような点にも、金利引下げということについて、政府一つの思い切つた積極的な手を打つ必要があるのではないか、こういうふうに考えますが、この金利引下げ、低金利政策について、一応政府考えを承りたいのであります。
  4. 池田勇人

    池田国務大臣 低金利政策お話通りに、産業復興に不可欠の要件でありますので、私といたしましては昨年来低金利政策を堅持して参つておるのであります。昨年の八月、二銭八厘の平均貸出利率を一厘下げ、また昨日より原則として二厘下げを実行いたしたような次第でございます。普通ものは二銭五厘に相なつております。何分にもただいまのところ、銀行その他の預金コストがかなり高くついておりますので、ただいまただちにこれ以上を引下げるということは、銀行経営を安泰に導き得ないので、ただいまのところはこの程度で進んで行きたいと考えております。なお預金がふえ、預金コスートが下つて来るようになりますれば、今後も低金利政策を堅持して参りたいと考えております。
  5. 松浦東介

    松浦委員 大蔵大臣の御答弁は、先日来大体同じでありまして、現在のままではこれ以上引下げることは、銀行経営が困難になるというようなことや、またこれは自然にだんだんに解決すべき問題で、今一挙にこれを解決するようなことはできない。そういうような意味に私は受取つたのでありますけれども、私はそういうなまぬるいことでは、とうてい今度の産業面考えましても、もう少し思い切つた手を打たなければならないのではないか、こういうふうに考えるのであります。申し上げるまでもなく、自由主義経済を放任するならば、何もかもそういうように自然にまかせるということになりますれば、結局は国民経済というものは、金融資本に支配されるところの危険性もあるのでありまして、これは否定することのできない事実であろうと思うのであります。そこでよき意味自由経済社会を維持せんとするには、社会的立場から金融資本独占支配性というものが社会の上に公正化しなければならない。こういうふうに私は思うのでありますけれども、御答弁のような非常に消極的な態度では、私は前途に一抹の杞憂なしとしないのでありまして、もう一ぺんもう少しこれは積極的にこの金利引下げという問題、低金利政策という問題をお考え願えるかどうか、御所見を聞きたいのであります。
  6. 池田勇人

    池田国務大臣 銀行の採算もありますので、一挙にむりな金利引下げは、金融の円滑を阻害いたしますので、ただいまの御答弁で御了承をいただきたいと思います。
  7. 松浦東介

    松浦委員 これ以上は議論となるかもしれませんが、私はどうしても大蔵大臣の今のお考えに、賛成できないような気持なのであります。なるほど一歩下りまして、これは大蔵大臣考えるように長期の低利資金の問題を解決するとか、徐々にこの問題の解決をはかりたい。そういう気持はわかりますけれども、しかしながら私は今の日本のごときは、これはインフレーシヨン直後の状態でありまして、自由経済としては一つ異例に属するものではないかと考えます。異例時代にはまたこれは別個な特殊の措置を講ずることは当然ではないかと考えます。言うまでもなく、インフレーシヨンがひとまず牧東いたしましたといたしましても、これからが非常に大事なのでありまして、金利政策について、ここに一段の御注意をいたさなければならない。かように私は考えるのであります。私が特に言いたいのは、インフレーシヨンの急速なる進行中は、物価労金もこれは倍加するとともに、金利もこれに引続いて奔騰するのでございますけれども、いわゆる緊縮政策をとりまして、一応物価あるいは労金というものを下げることに成功をいたしたと仮定いたしましても、金利というものは私は決して下るものではない、かように考えるのであります。なぜならばインフレーシヨンの克服は、基本的には生産増強ということを考えなければなりません。生産増強によらなければならないことはもちろんでございます。それには資本が絶体的に必要であります。ですからつまり需要供給の理論から推しましても、資本はますます必要となるのでありまして、私は金利というものはなかなか自然には下らないのではないか、かように考えるのであります。国家機関を通ずるところのいわゆる政策利子といいますか、そういう方面を下げるだけでは、これはなかなか実際には及ばないのでありまして、どうしても政府は手を打つて、いわゆる自然利子という面まで、何とかここに押えつける必要があるのではないか、こういうように考えるのでありますが、もう一ぺんこれに対して御意見を承りたいのであります。
  8. 池田勇人

    池田国務大臣 預金コストの問題があります。また銀行経営の問題もありますので、そう一拳に下げるというわけには参らないのであります。政府のやつております預金部関係におきましても、三分程度郵便貯金を入れまして、そうしてただいまでは九分四厘あるいは九分二厘あるいは九分の三段階にわけて貸しているのであります。これを昔の状態預金部資金低利であつて三分六厘を原則とし、中には三分二厘の貸出しのあつたころを考えると、いかにも高くなつているのでございますが、こういうようにいたしましても、御承知通り昭和二十三年度には五十億円の補給金を出し、預金部に対する損失補償を出し、二十四年度にも三十七億の補償金を出す。二十五年度にもなお三億円の赤字が預金部から出る、こういう状況であるのであります一従いましてわれわれといたしましては、できるだけ資金を潤沢にし、そうして摂行のコストを切り下げて、低金利を堅持して参りたいと思いますが、何分にも今のような状況では、私は八月に一厘下げ、昨日から二厘下げる、この程度でしばらくはがまんして行かなければならないのではないかと考えておるのであります。
  9. 松浦東介

    松浦委員 それでは方面をかえてお尋ねをいたしますが、先ほど私が、つまり政府がやつておるような銀行利子の一厘引下げ、あるいは二厘引下げというようなことでは、実情にまだまだほど遠いものであるとかように申しましたのは、これは大蔵大臣承知のように、銀行利子を使うというのは、これは国民の中では一部特定の人であると思うのであります。民間金融は非常に高利になつているのでありますが、政府一体認可をしております個人金貸業者あるいは質屋であるとか、これは大体どこまで認めておるのであるか、これをひとつ承りたい。
  10. 池田勇人

    池田国務大臣 所定の貸付金利というものがあるのであります。やみ金利につきましてはいろいろな方法で取締つておりますが、なかなか困難な問題でございます。私の見るところでは、最近はやみ金利は前に比べまして、かなり下つておると考えております。
  11. 松浦東介

    松浦委員 私がお聞きいたしましたのは、政府認可を與えておりますところの民間金貸業者利子質屋利子、それが大体どこまで認めておるかということをお聞きいたしたのであります。また最近やみ金融が非常に下つておる、下まわつているというようなお話でありますが、それはどういう御調査の結果でありますか、あわせて承りたいのであります。
  12. 池田勇人

    池田国務大臣 質屋金利につきましては一政府委員よりお答えいたしますが、やみ金利というものは、私がいろいろな方面から聞きますと、だんだん低落の傾向にあると聞いておるのであります。なおやみ金利のおもなる場合を考えますと、銀行の借入金を一時返済する場合に、やみ金利なんかが行われるのでありますが、金利低下の問題につきましても、今二箇月切りかえの場合よりも、三箇月あるいは六箇月切りかえの方法をとるように勧奨いたしておる次第であります。
  13. 松浦東介

    松浦委員 どうも大蔵大臣は下情に多少お通じにならないようでありまして、質屋金利もまた個人金融も、今非常に詰まつている利子状態についても、あまり詳しくないようでありますことは、まことに遺憾に存ずるのであります。それでは一体今の民間の、今おつしやられるようなやみ金融は、一体月どのくらいになつていると思いますか、大蔵大臣の御所見を伺います。
  14. 池田勇人

    池田国務大臣 聞くところによりますと、やみ金融でも担保のある場合と担保のない場合があります。担保のある場合におきましても、担保の種類によつて違います。まあ月五分というのが普通ではないか、月一割というのもあるでございましようが、昨年の今ごろは月一割五分とか二割というのも聞いておりました。最近はやはり少し下つて来まして、平均が月五分くらいではないかと考えております。
  15. 松浦東介

    松浦委員 どうもこれはいくら聞いても大蔵大臣は、その点は御研究が足りないようでありますから、いずれあとでもう少し詳しく研究の上、御答弁をお願いいたしたいと思います。  そこで今のわれわれの通年から行きますと、大体政府が認めておる金利も月一割五分、質屋も一割五分くらいになつておるのではないか、かように思いますが、そうしますと、これは一年ということになるとたいへんなことになるのでありまして、これは企業経営どころか、生活にそんな金を使えば、元も子もなくなる、こういうのが現在の実情ではないか。最もあくどいところは、十日に一割というような非常にべらぼうな、そういう高金利さえも民間には行われておる、この事実をよくお調べ願いたいと思います。そこで今大蔵大臣が言われるような政策を徐々にやるといたしまして、一体いつごろこれがもう少し引下見込みがありますか。全然そこに手段というものを用いないで、方法を用いないで、自然に下るのを待ちますならば、いつごろ金利が安くなるようなお見込みであるか、それもひとつ承つておきたいのであります。
  16. 池田勇人

    池田国務大臣 やみ金利の問題につきましては、これはわれわれの方でも的確な資料はございません。従つてやみ金利がいつどれだけ下るということは申し上げかねるのでありますが、一般銀行貸出金利につきましては、銀行預金の増加の関係もございます。し、また債務償還関係もありますので、私の見るところでは、この三月から原則として二厘引下げますと、大体三月末の銀行決算は、九月末よりも少し上まわつて利益が出ると思います。しかし四月から九月までの決算期における原則としての二厘引下が、全期間中に影響いたしますから、九月末の決算は三月末の決算よりもある程度つて来ると思います。しこうして今の銀行利益状況は、貸倒れ準備金その他の問題もありますので、相当貸倒れ準備金を予定し得る見込みが立ちましたならば、今後におきましても、なお金利引下げ計画いたしたいと考えておるのであります。いつどれだけ銀行貸付金利が下るかということは、ただいまのところはつきり申し上げられません。きのうから施行いたしました結果を見ないと、申し上げかねるのであります。
  17. 松浦東介

    松浦委員 どうも私は大蔵大臣答弁が満足いかないのでありますけれども、しかしこれ以上同じことを言つてもしようがないようでありますから、これはもう少し民間実情を御研究の上に善処されんことを希望いたします。  次に益谷建設大臣並びに青木安本長官本多国務大臣お尋ねをいたしたいのでありますが、二十五年度予算面を見ますと、公共事業費が増加され、一応十箇年計画の第一歩を踏み出すことになりましたことは、喜びにたえないのであります。言うまでもなく、年年歳々災害に次ぐに災害をもつてするわが国の特異の気候、風土、また長年あまりにも投げやりにされ、閑却されましたところの治山治水の問題は、今日の国内政治の最重点一つであり、これが解決は今日ほど急なるはないと考えるのであります。従つてこれが国民の声となり、国会の意思となつたのでありますが、ようやく現実の問題として二十五年度において予算化されんとすることは、何と言つて一つの善政と考えてよろしいと思うのであります。しかしながら、この治山治水の問題は一年や二年で解決できるものではありません。少くとも十年間はかかるであろうと思うのでありますが、しからばそのスタートというものは、きわめて大事なものであると、かように私は考えます。すなわち政府が今後重点を置かんとするところの公共事業費の使い方、また機構の改善、能率を上げるための運営方法等について、いかにお考えなつておられるのであるか。この点につきまして吉田総理大臣も、たびたび新聞紙その他におきまして、これはもつと総合的な計画をしなければならぬとか、能率を上げなければならぬとかいうようなことを発表せられておるのでありますけれども、まずこの際これらのことに対する政府構想をお示し願いたいのであります。一応益谷建設大臣並びに青木安本長官からお願いいたします。
  18. 青木孝義

    青木国務大臣 二十五年度の公共事業費は、御承知通り昨年の約倍でありますが、このうち特に災害対策等について相当見込まれております。これをどんなふうに使つて行くか、能率をどんなふうに上げるかということの問題は、従来しばしば問題になりました。安本における認証関係、これが非常に遅れるのではないかというような御意見相当あつたと思います。そこでわれわれといたしましては、従来のように、この予算きまり方が非常に遅れたというような場合においては、いわゆる事業計画認証というようなものも従つて遅れるのであります。しかし今回のように予算が早くきまりますれば、われわれの方はもちろんそれに応ずるような準備を整えまして、そしてこの事業計画認証には、早急にこれが運びをつけるような準備をいたしております。さらに進んで大蔵省においても、支拂い認証という問題になりますが、これは双方相まつてできるだけ早くこの認証を実行いたしまして、そしてその事業計画を実施して、その目的を完遂するように、われわれとしては今後大いに努力する覚悟であります。
  19. 松浦東介

    松浦委員 青木安本長官の御答弁は、認証事務簡素化をはかり、また予算が早くきまれば、この施行も早くしたい、また大蔵省支拂い関係の方も急速にやつて能率を上げたい、そういうようなお話のようでありますが、まことにけつこうなことであります。昨年のごときは、五月に予算がきまつて、地方に予算示達が参りまして執行になつたのは、十一月ないし十二月というような、非常に遅れた場合もあるのでありますけれども、この予算が、たとえば予定通り二月中旬に国会を通る場合は、三月中には少くとも各県の区分をきめまして、そして四月早々よりこれを着手できるというようなことについて自信があるかどうか、もう一度伺いたいのであります。
  20. 青木孝義

    青木国務大臣 松浦委員の御意見、御質問はごもつともでありまして、われわれもその点については、非常に深く意を用いておる次第であります。そこでなお一言つけ加えますが、手続の簡素化という問題がありまして、これについては関係各省に対して、どうしたならば簡單になるかということの話合いもいたしておりますので、ただいま御希望のような期間には、ぜひわれわれのやつております仕事から十分能率化がはかれるように努力をいたす覚悟でおります。
  21. 松浦東介

    松浦委員 それでは本多国務大臣にお聞きいたしたいのでありますが、公共事業というものを能率的に運営するには、現在のままの機構で十分であるとお思いになりますか、または改善するとすれば、どういう点を改善すればよいとお考えになりますか。伝えられるところによると、公共事業省であるとか、あるいは国土省ともいうような幅の広い性格、すなわち過去、現在の日本官界一つの宿弊であるところのセクシヨナリズムを打破して、そうして大いにやつて行けるようなこういう公共事業省あるいは国土省をおつくりになるつもりであるかどうか、この見解を承りたいのであります。
  22. 本多市郎

    本多国務大臣 公共事業費に関する各省分担が、非常に複雑になつているのはお話通りでありまして、ことに治山治水利水、この関係仕事は、それ相当の理由があることではありますけれども、建設省、農林省、通産省あるいは厚生省というふうにその分担がわかれておりますために、でき得る限りの連絡はとられているようでありますけれども、しかしそのために一貫した治山治水利水計画ということにつきまして、遺憾の点もあるようでありますので、これらを総合的に分担する行政機構に直したらいかがであろうかという考えも持つておるわけであります。今日までの公共事業の中で、建設という方面のことは建設省というふうに、実は建設という名目で横に仕事をずつと受持つような機構なつておりますものを、今後は縦に責任を一貫して明確にするために、治山治水利水というようなものも、一貫して分担するというような方向に行つたならば、いかがであろうかという観点から研究をいたしておるのでございます。一日も早く結論を出したいと政府研究を進めておるのでございますが、せつかく行政制度審議会におきましても熱心に研究を煩わしておりますので、その結論を得ました上で、政府といたしましても方針を決定して、お諮りいたしたいと存じておるのでございますが、今日の進行状況では本国会にこれをお諮りするということは、少しく困難ではないかと考えておる次第であります。
  23. 松浦東介

    松浦委員 公共事業省的な性格のものをつくつてやることは理想であるけれども、行政制度審議会関係もあり、おそらくは今期の国会には間に合わないだろう、こういうような御答弁のようにお聞きいたしたのであります。必ずしも私どもは今すぐ公共事業省をつくれというわけではないのでありますけれども、先ほど申し上げましたように、今年は十年計画の第一年でございますから、どうかひとつ能率を上げるような組織に、これは部分的なりともひとつ御勘案願いたい、かように考えるのであります。  次に益谷建設大臣にお聞きをいたしたいのでありますが、公共事業失業対策とを結びつけて考えることは当然でありまして、今年の公共事業費はそのまま即失業対策費と、かように考えてもよろしいと思うのでありますが、ぜひこの際建設省主管大臣として、失業対世のためにも、公共事業費をより有意義に使用なさるように希望いたしたいのであります。しかしながら治山治水事業、並びに特に最も急を要しますところの災害対策は、どうしてもこれは能率を上げてもらわなければならぬのでありまして、失業対策としてもこれが重要であることは言うまでもないのでありますけれども、その主たるものはどうしても治山治水対策であり、災害対策でなければならぬ、かように考えるのであります。そこで失業対策とは少し違うかもしれませんけれども、能率を上げるという意味において、機械力を活用するということは非常に大事なことであり、ぜひそういうくふうをしなければならない、かように考えるのでありますが、この昭和二十五年の予算の中に、政府はこの方面機械化ということについて、どれほどの予算を盛つているのであるか、予算化せんとしているのでありますか、どういう機械を買わんとするのであるか、これをお示し願いたいのであります。
  24. 益谷秀次

    益谷国務大臣 事業を進捗せしめますのには、どうしても機械によらなければならぬ部局があるのであります。今回の御審議を願つております予算中、道路予算のうち約三億を機械購入に充てております。それから百十七億の河川費でありますが、そのうち六億かと存じておりますが、やはり機械方面に充てる考えでございます。
  25. 松浦東介

    松浦委員 先ほど青木安本長官から、いろいろ能率を上げるということについて、支拂い認証の問題であるとか、あるいは事業認証の問題であるとかという面の簡素化をはかつて能率を上げたいというようなお話があつたのでありますが、これはぜひ徹底的に能率を上げてもらわなければならぬと思いますから、もう少しこまかくいろいろお聞きしてみたいと思うのであります。  第一、現在の認証制度というもの、これが非常に能率を阻害する原因になつているのであります。第三には、金の支拂いが非常に悪い。これも大きな非能率の原因になつていると思うのであります。それで財政法や会計法の一部にも、どうしてもかえなければならぬような面もあるようでありますし、この予算執行までの手続の点において、あまりに時間を取過ぎるということは、これはどうしてもかえてもらわなければならない、かように考えるのであります。私は試みにこの問題について、中央と地方と両方調査してみたのでありますが、一例をとつて言いますと、最も簡便なるべき建設省の直轄河川等について調べてみましても、非常に煩瑣なものが多々あるようであります。河川局から認証申請書を官房会計の経由で安本に出し、安本から閣議、閣議ではまた認証を決定して安本安本から来た官房経由で河川局ということになるのであります。さらにまた支出負担行為契約書とか、あるいは支拂い契約書とか、そういうものを提出して安本から大蔵省に参つて大蔵省から安本を経由して河川局の方に来るようでありまして、実に煩瑣をきわめているようであります。その間、あるいは認証示達であるとか、あるいは予算の示達であるとか、認証額の内示であるとか、実にたいへんな手数を要するようであります。こういう煩雑な手続のために、書類つくりが非常にめんどうであつて、おそろしい時間を要するのであります。これで経済安定本部の事業認証事務から地方建設局の各工事事務所までの予算示達が、三十日ないし最高八十八日を要したというのでありますから、これはどうしてむ改めてもらわなければならないのでありまして、一朝災害が起つたような場合、とうてい間に合わないということが現実になつているようであります。地方ではこういうことに非常に不服でありますけれども、非常に予算が少い。その予算がほしいために、非常な不満もあるのでありますけれども、これを申し述べていないということになるのだろうと思います。そうしてまた、このことがどういうことになるかというと、これが地方の末端にだんだん伝つて参りますと、この地方建設局の末端の事務所ということになりますと、事務官というものがいないのであつて、技術官すなわち技官がそういう事務をとつております。技術者としての本来の能力を発揮するによしなく、不得手なそろばんはじきや、あるいは書類をつくるということに勢い没頭しなければならない。まことにみじめなことであり、適材適所ということの逆を行つているようなことがあるのでありまして、現下これより不経済なものはない、かように考えております。政府はこれらに対しても十分お考えをお願いしなければならぬと思うのであります。  また一年を第一・四半期、第二・四中期というように四期にわけてやつておりますことも、これは非常に私は能率を害する一つの原因ではないかと思うのでありますが、この四期にわけることを、何とか一期もしくは二期に縮めることができないものであるかどうか、これを青木さんにお聞きしたいのであります。
  26. 青木孝義

    青木国務大臣 われわれも一年を二つに割つて、そうして半年ごとにするというようなことは、日本人としては大体の考え方であります。しかしながら御承知かと思いますが、クオータリーにわける習慣といいますか、そういうようなことが大体今日は原則的なことになりまして、これはわれわれといたしましては、もしおつしやるように半期ごとにきめるというようなことができれば、その方がかえつて手数が省けてよろしいという考えは持つております。但し関係筋の意向からいたしますと、どうしてもこのクオータリーという考え方が原則的になつておりまして、ただいまのところ容易にそれになりそうな見通しがございませんが、私どもとしてはできるならばそういうふうに直したいという希望を持つております。
  27. 松浦東介

    松浦委員 私は関係筋のことはよく知らないのでありますけれども、能率を上げるという点から行きましたならば、この四期にわけることは今お話通りでありまして、非常に非能率なものに相なるのではないか。たとえば工事の請負契約というようなことになりましても、これは分割契約が行われなければならないというようなことにもなるかもしれませんし、また年間事業がこれによつて寸断せられるというような結果にもなるのでありますが、せめてこの認証事務だけは、何とかこれをもう少し縮めるわけには参らぬのであるか、この点も伺いたいのであります。またわれわれが今のお話関係筋のこともわかりましたが、公共事業の四中期別認証制慶というものは、昭和二十一年九月三日の閣議決定の公共事業処理要綱に基くものであつて、その当時の、終戰直後の経済界の不安定の時期にとられた応急措置である、こういうようにわれわれは解釈しておつたのでありますが、安本長官の御意見は一体どうでありますか、もう一ぺん伺いたいのであります。
  28. 青木孝義

    青木国務大臣 災害対策等につきましては早く処理しなければならぬ、そういうことは各般の情勢から当然な希望であり、当然な要求であります。われわれもよくわかつておりますが、ただいまのやり方を改めるということについて、われわれとしてもいろいろ研究をいたしてはおりますが、まだ理想的には参つておりません。ことに中期ごとというようなことは、ちよつと今のところ見通しはございません。ことにこの観念等についてはわれわれが考えますと、これはすべてのものがほとんど四半期ごとということに考えられております。ことに外国あたりには給料等も週給といつたようなことがありますので、われわれの半年ごとという観念は、どうも今のところ十分徹底いたしかねるような次第でございます。なお全般についての能率化ということについては、安定本部として今後一層研究をいたし、すみやかに簡單方法でできるような措置を講じたいと思つております。
  29. 松浦東介

    松浦委員 まだわからないのでありますが、最初の四半期別認証制度は応急的なものである。終戰当初の経済界の不安定の時期にとられたところの応急性を帯びたものである、こういうように解釈をするならば、今後これは能率を上げる意味において、また総理大臣並びに大蔵大臣がたびたび言われましたように、一応安定した時期において、官僚事務簡素化のために最もならない、この事務繁忙な短期認証制度に対して、もう一ぺん関係筋なり何なりに御交渉になることが当然ではないか、こういうように私は考えるのでありますが、一段の善処を希望する次第であります。  なおこの能率を害する一つの法律といたしまして、例の法律第百七十一号の改正もしくは廃止をなさるような御意向があるかどうか承りたい。これは單に手続がめんどうなばかりでなく、客観的な情勢がもはや廃してもよい時期に達しておるのではないか、かように考えるのでありますが、能率を向上させるという意味において御答弁を願いたいのであります。
  30. 池田勇人

    池田国務大臣 公共事業費認証制度につきましては、お話通りわれわれも早く自由な姿にいたしたいと今努力しておるのであります。早晩解決すると思います。  次に不正手段防止に関する百七十一号の問題は、本議会に廃止の法律案を提出いたします。
  31. 松浦東介

    松浦委員 百七十一号の廃止は、まことにけつこうなことであると思います。せつかく大蔵大臣が御答弁になられましたから、もう一つお伺いいたしたいのでありますが、二十四年度の災害における緊急融資という問題をよく調査いたしてみますと、現地に到着するまでに、これは各官庁の調査によりますと、大体五十二日を要しておるそうであります。このことは政府建設委員会もしくは経済安定委員会において認めておるのであります。この五十二日のうち、実に四十日というものは大蔵省の地方財務関係において空費せられておる、こういうことになるのでありますけれども、これが公共事業執行のための能率を害する一つの原因であろうと思うのであります。大蔵大臣はこれに対してよく地方の財務関係を押えまして、もう少しこの事務を簡素化なさる御意思がないかどうか、この際承つておきたいのであります。
  32. 池田勇人

    池田国務大臣 国家予算で認められました公共事業費の支出の問題でございますか、あるいは予算にない緊急の災害復旧のための預金部の貸付金の問題でございますか、その点はつきり承りたいと思います。
  33. 松浦東介

    松浦委員 私がただいま申し上げたのは、緊急の融資の場合をさしたのであります。
  34. 池田勇人

    池田国務大臣 預金部から緊急災害対策として出しますものは、異例の問題でございまして、予算に認められたように迅速に出すわけには行かないのであります。やはりいろいろな調査をいたしまして、そうしてまた貸付限度も考えなければなりませんし、また予算で認められていない特別の融資でありますから、これは短期間の融資で三月末までに、その年度の終りまでに回收ができるかどうか、いろいろな調査がありますので、相当の日数を要することはやむを得ないものと思います。ただ、今一件の融資が大体原則として一千万円ということにいたしておると思います。従いまして災害が大きい場合につきましては、書類を二枚も三枚も五枚もつくるような場合がありますから、日数をとると思うのでありますが、できるだけ早くするようにはいたしたいと考えております。
  35. 松浦東介

    松浦委員 この問題については大蔵大臣が部下を督励されまして、できるだけ短期間において事務をとつてもらうように希望しておきます。  次いでもう一点大蔵大臣にお伺いいたしたいのは、見返り資金公共事業関係に百十億ほど充当する予定のような風聞があるのでありますが、事実でありますかどうか、お聞きをいたしたいのであります。
  36. 池田勇人

    池田国務大臣 百十億円を予定いたしております。出します時期につきましては、ただいまのところはつきりきまつておりません。
  37. 松浦東介

    松浦委員 この百十億の見返り資金は、直轄事業だけにお使いになるおつもりであるか、またこれを各府県の補助事業等にも活用せられるおつもりであるか、この機会に承つておきたいと思います。
  38. 池田勇人

    池田国務大臣 これはわが国の経済界の動向を見まして、必要なときに必要な額を使おうという、いわば予備あるいは後備的のものでありますので、一般予算の使用状況災害の情勢を見まして、使つて行きたいと考えておるのであります。ただいまこの金をどの方面に使うとはつきりきめていないのであります。
  39. 松浦東介

    松浦委員 大体説明はわかりましたけれども、私は直轄事業施行だけに使うとすれば、能力に限りがあるのでありますから、そのせつかくの資金の効果的活用は不可能ではないかと思います。できるだけ生産効果のあるような大きい各府県の補助事業にも、この見返り資金を活用せられんことを希望するのであります。青木安本長官並びに大蔵大臣から公共事業能率を上げるという点については、できるだけその趣旨に沿うようにやりたい、こういう御答弁があつたのでありますけれども、いろいろな法律やいろいろな手続の簡素化をはかることは、実際上の問題としては非常にむずかしいと思うのであります。青木安本長官の御意見をお聞きいたしたいのは、非常に誠意があつても、これが途中から非常にやりにくくなり、むずかしい問題、煩瑣な問題が起きて来るのではないかということを私はおそれるのであります。国策として公共事業をこれから十箇年間も重点的に施行するというならば、簡便化をはかるために、何か公共事業施行法というような一つの法律をおつくりになる御意思があるかどうか、この際承つておきたいと思います。
  40. 青木孝義

    青木国務大臣 ただいまのところ別にそういう法律をつくる考えを持つてはおりませんが、なお一層検討いたしたいと思います。
  41. 松浦東介

    松浦委員 それではこの問題の質問を打切りますが、昨年五月に通つた予算を十一月ないし十二月ごろ執行するというのでは、地方の不便はこれ以上のことはないと思うのであります。特に北海道、東北、北陸のような積雪地蔕になりますと、春にきまつた予算を十一月ごろから執行というようなことになれば、非常に不便が多くなりますから、どうかこの点よく御注意願いたいと思います。この予算が年度内において通過いたしますならば、必ず年度内においてその予算の配賦方法その他を決定せられまして、来年度の初めから早急に仕事能率的に執行できますように要望してやまないのであります。  次に森農林大臣に、二三お聞きをいたしたいのであります。  まず食糧自給度の増強策についてお尋ねをいたしたい。元来農業は他の鉱工業と比較いたしまして、機械化による能率増進が、急速にはできがたい事情にあるばかりではなく、計画生産も思うにまかせぬ性質の産業であります。しかも国民食糧の生産に絶対不可欠の産業たることは申し上げるまでもございません。しかしてわが国は国土が狭小で、加うるに人口が非常に過多でありますから、狭い国内で多くの人口を養わなければならないのであります。従つて政治上からも、また経済上の理由からも、食糧の問題は実に重大であります。たとい国外から主食が入る目安がつくといたしましても、国内の自給度を高めるという基本線にかわりはないと私は思います。まずこの自給度を高める方策を伺いたいのであります。
  42. 森幸太郎

    ○森国務大臣 お答えいたします。わが国の食糧事情の重大性はお述べの通りであります。できるだけ自給度を上げまして、よしんば外国食糧の輸入の道が開かれましても、輸入をできるだけ少くして、他の産業資材の輸入を考えなければならぬことは当然であります。しこうして自給度を高めるということは、結局において増産するということでありますが、食糧増産にもいろいろの方法がありまして、簡單にこれを説明することは容易なことではないのであります。まず考えなければならぬことは、わが国は年々天災に見舞われるという欠点があります。これはいかんともいたしかたない日本の地位であります。できるだけ天災を少くするということ、間接的の事業でありますが、これが根本的に考えられなければ、耕作の安全性を保持することができ得ないということになるのであります。それでこの荒廃した国土を一日も早く復興いたしまして天災の防除をはかりたい、こう考えまして、治山治水ということに最も力を入れ、戰争以来荒廃している山林復興に努力をし、また河川等の改修に力を入れているのであります。しこうしてその次の問題は、日本は非常に長い形をいたしておりまして、地区的に事情が非常に違つておるのであります。水田の多いところ、あるいは畑地の多いところ、あるいは寒冷地帯、亜熱帯というふうにいろいろの地区にわかれております。しかも單作地帯が相当あるので、この單作地帯に特別なる処置を加えまして増産をはかり、土地の改良によつて二毛作のできるようにすることも一つ方法であります。また寒冷地につきましては、温床苗代あるいは温床折衷苗代の施設によりまして、増産をはかるということも一つ方法であります。また肥料の面におきましても、戰争以来、御承知通り化学肥料に依存して参つたのでありますが、労力の増加と相まちまして、今後は有機質堆肥、厩肥、緑肥等の肥料によりまして土地を改良して行く、いわゆる地方を増進して行くということが最も重要な問題でありますので、ここに有畜農業ということも、おのずから重要性を加えて来るわけであります。そのほか品種の改良——長い間品種の改良が遅れておりまして、従来は質のよいものに專念したのでありますが、食糧事情から質よりも量という方に品種の改良を向けて来たのであります。それも永年の間純系分離等の特別なる選択をいたしておりませんので、品種が非常に低下いたしておるのであります。従つて米麦、いも類等の品種の改良に一層の力を加えてその能率を高めて行きたい。また科学の滲透も非常に遅れておりますので、科学の滲透をはかり、耕種栽培の技術の指導等も一層普及いたしまして、増産をはかる手段といたしたいと考えておるわけであります。増産の重要なことは申し上げるまでもないので、直接、間接あらゆる面から日本の食糧の自給度を高めて、海外依存の程度をできるだけ少くして行きたい、かように考えて施策を立てているわけであります。
  43. 松浦東介

    松浦委員 ただいまの農林大臣の御説明によれば、災害に襲われるところの日本農民の耕作の安全性を確保するために災害問題に手をつけて、あるいは土地改良、有畜農業の奨励、あるいは品種の改良あるいは肥料問題、そういうので一応増産策をとりたい。こういうようなお話のようでございますが、もちろんけつこうなことでございますけれども、これは多少のことはいざ知らず、今非常に思い切つた増産をするというわけには参らないと思うのであります。そこでそれを望むことが至難と申してもよろしいとすれば、さしあたり現実の問題として、その不足分はどうしても国外からの輸入にまたなければならないことは申し上げるまでもありません。そこで二十四年度の輸入食糧の数量と価格調整費との関係、また二十五年度に予定せられておりますところの輸入食糧は一体何ほどであるか、これに要するところの価格調整費は何ほどかお示しを願いたいのであります。
  44. 森幸太郎

    ○森国務大臣 お答えいたします。二十五年の会計年度におきまして食糧の需給計画を立てておりますが、前年度の米穀年度よりの持越し等も含めまして、供給高が米において四千三百七十九万三千石、これは国内産であります。麦類におきまして八百五十七万四千石、雑穀で三百六十四万六千石、その他いも類で三百七十二万七千石、米換算であります。合計で五千九百七十四万石。外国に依存を予定いたしておりますのは二千六百九十万七千石、合計八千六百六十四万七千石という供給高を予定いたしておるのであります。しかし外国産につきましては、この六月で米国の会計年度が打切られますので、米国の国会において日本に対する米の輸入量等が、予算等においてどういうふうに変更されるか、予測できないのでありますが、大体この程度の供給を受けまして、そうして従来通りの配給計画にのつとつて行きたいと思つておるわけであります。  なお補給金等の問題については今ここに材料を持つておりませんので、後ほど調べてお答えいたすことにいたします。
  45. 松浦東介

    松浦委員 資料の持合せがなければ後ほどでけつこうでありますけれども、大体今年予定せられておりますのは今お話の輸入食糧は約二千七百万石、これは俗に言う三百七十五万トンでありますかどうか、一応お伺いいたしたい。
  46. 森幸太郎

    ○森国務大臣 この当時の計画では三百四十万トンを食糧として考えております。
  47. 松浦東介

    松浦委員 三百四十万トンの輸入食糧のその三十五年度の価格調整費が、予算説明書の四百五十六億五千万円に相当するのでありますか、そうすれば單価はどのぐらいに当りますか伺いたい。
  48. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 これはお手元に差上げてある予算の説明書にございます。食糧の関係で四百五十六億程度になります。それからこれは食糧の輸入補給金でありますが、食糧輸入補給金は三百四十万トンということで計算をいたしております。その価格は、これは予算の説明にもございますが、小麦で申しますと、輸入価格は一トン当り——これは月によつて違いましようが、一応三万四千二百円とし、補給金は一六四のパリティーのときと、一六八のパリティーのときと違いますが、一六四のパリティーのときにおきましては一トン当り九千三百円、一六八になりますと八千七百円ということになります。大体月によつて違いますが、輸入価格は九十五ドルぐらいと考えております。
  49. 松浦東介

    松浦委員 私がお聞きしたいのは、昨年よりも今年、二十五年度の方が輸入食糧の数量がはるかに増すのである。こういうことに考えておつたのでありますけれども、この予算の説明によりますと、二十五年度の方が減つておるようでありますが、これは單価が下つたのであるかどうかということをお聞きしたいのであります。
  50. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 大体さようでございます。
  51. 松浦東介

    松浦委員 大体そうであるというような主計局長答弁でありますが、それでは将来大巾にこれをかえるようなととがあるかどうか、もう一ぺん伺います。
  52. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 昨年の輸入のころにおきましては百ドルないし百五ドル程度でございます。今年の予算に組みましたのは九十五ドル平均でありますが、小麦協定に入るとしますと、四月から六月ぐらいまでは九十五ドル、それ以後八十一ドル五十セント、平均八十六ドル五十セントということであろうかと思います。予算は小麦協定に一応入らないという計画で組んであるのでありまして、小麦協定に入るといたしますと八十一ドル五十セント程度で入る予定であります。もし小麦協定に入れるということになりますと、補給金におきまして五十七億程度の減少に相なるかと思つております。しかしこの小麦協定に入る問題はまだ確定いたしておりません。その点未定でありますので、予算としてはそのことを見込まずに一応組んだ次第であります。
  53. 松浦東介

    松浦委員 食糧輸入のために、ともかくも四百五十億円の価格調整費を使わなければならない。価格調整費は九百億の予定でありますが、そのうち半分以上というものを、この食糧輸入のために使わなければならないということは、食糧不足の今日の日本段階としては、やむを得ないことではありますけれども、一面まことに遺憾なことであると思うのであります。将来はどうしても農林大臣が言うように、国内の自給度を高めることにわれわれは努力をしなければならぬことはもちろんでありますが、これについてもどうしても農村保護政策というものをとつてもらわなければならない。かように考えるのでありますが、保護政策として金庫のための施設で特におもなるものはどういうものであるか、重点的に農林大臣より御説明を願いたい。
  54. 森幸太郎

    ○森国務大臣 少しはつきり承りたいのですが、保護政策といたしましては、現在におきましては食糧増産ということに、農家が再生産するに迷惑をしない、困らないということを主眼として考えて行かなければならぬのでありますが、将来これが自主的な立場に置かれたときにおきましては、農作物の最低価格の持保ということも、当然考えなければならぬと存じます。これは輸入食糧の価格に対して、またこの輸入食糧の価格いかんによりましては、関税政策を用いることも当然考えるべきことと思うのでありますが、現在におきましてはそういうことは許されない事情にありますので、今日再生産を償い得る農作物の価格を維持し、そうして農家の経営が成立つように考えて行くということを、主眼といたしておるのであります。
  55. 松浦東介

    松浦委員 何だかよく御答弁がわからないのでありますが、これはあとでもう一ぺんお聞きすることにしまして、ちよつと肥料のことをお聞きしたいのでありますが、戰時中硫安肥料に片寄つたような関係で、過燐酸分の欠乏は事実であろうと思うのであります。石灰は石炭が高いために非常に価格が高過ぎまして、一俵百円以上の裏ではなかなか使い切れないという実情にあると思うのであります。この際過燐酸の石灰肥料の入手については特に政府考えてもらわなければならぬ、特段の措置をしてもらわなければならぬと思うのでありますが、特にこのカリはドイツから来るのであろうと思うのでありますが、今年の予算説明を見ますと、非常に必要であるにかかわらず、価格調整補給金が減つておるようであります。これは輸入の状態が悪くなつたのであるか、また国内生産見込みでもあるのでありますかどうか、この点も大きい問題でありますから農林大臣から御説明願いたい。
  56. 森幸太郎

    ○森国務大臣 肥料の問題につきましては、電力、石炭等の事情がよくなりまして、化学肥料の生産相当能率を高めて来たのであります。お話の燐酸肥料、カリ肥料はその原料を日本に持つておりませんので、当然これは輸入を受けなければならぬのであります。この過燐酸石灰の原鉱につきましては、今日の状態では選択の自由が日本に許されておらないのであります。従つて戰前におけるような良質の過燐酸石灰を生産することは、今日なお望み薄いのでありますが、これもある時期を経過しなければやむを得ないことと考えておるのであります。カリ肥料のごときも、御承知通りその全部を国外に仰いでおるのでありますが、この肥料に対しましては、窒素肥料いわゆる硝酸アンモニアの輸入をできるだけ押えまして、そうしてこの過燐酸石灰の原料カリ肥料の原料を輸入するという方針をとつておるわけであります。これも本年度から貿易が自由にせられまして、民間の輸出入ということも考えられることが許されるようになつたのでありますが、しかし政府がこの統制をいたしております以上、十分なる輸入をなすことははなはだ困難でありますが、従来よりはその輸入量を増し得る機会も、おのずからできて来るのではないか、かように考えておるわけであります。
  57. 松浦東介

    松浦委員 予算説明書の十八ページによりますと、輸入補給金の中のカリの分が昭和二十四年度よりも約半額に減つておるのでありますが、これはカリの輸入がだんだん困難になるのであるか、それとも国内において何か適当の措置があるのであるか、これをお聞きしたのであります。
  58. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 国内における肥料の状況がよくなりますために、カリの輸入が多少減ります点が一点と、価格改訂の関係がございます。
  59. 松浦東介

    松浦委員 農村の金詰まり状態は、一昨日上林山君からもいろいろ説明があつたようでありますけれども、この金詰まり状態は、今ではほとんど営農資金にも事欠くような状態なつておると思うのであります。そこで大蔵大臣は農村の低利の長期資金というような関係で、農林中央金庫の拡大強化というような御答弁があつたのでありますが、これは一体どういう構想であるか。これは農林大臣からでもけつこうでありますから、御説明願いたいと思うのであります。
  60. 森幸太郎

    ○森国務大臣 お答えいたします。御承知の農林中央金庫の資本金は今四億円でありますが、十倍の四十億円しか貸付のわくが許されていないのでありますから、今回これを八億にいたしまして、そうしてさらにそれを二十倍して百六十億円の融資をすることを計画いたしておつたのでありますが、政府の立場といたしましてさらに八億をここへ加えまして、三百二十億までのわしを中金に與えまして、農村に対する中金長期の資金の融通に利用いたしたい、かような計画を持つておるわけであります。
  61. 植原悦二郎

    ○植原委員長 松浦君、樋貝国務大臣に対する質疑を留保されており、その他全部終つたものと解釈してよろしゆうございますか。
  62. 松浦東介

    松浦委員 けつこうです。
  63. 植原悦二郎

    ○植原委員長 それではこれにて休憩いたしまして、午後は一瞬半より開会いたします。     午後零時九分休憩      ————◇—————     午後一時五十六分開議
  64. 植原悦二郎

    ○植原委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  これより質疑を継続いたします。西村榮一君。
  65. 西村榮一

    西村(榮)委員 昭和三十五年度の予算案につきまして、大蔵大臣質問したいと思うのであります。まず第一にお伺いしたいと思うことは、今回一般、特別両会計において、債務償還費が千二百八十六億円計上せられておるのでありますが、その償還しなければならぬところの法的根拠、あるいは財政的な法的根拠、これらの根拠を一応お知らせ願いたい。
  66. 池田勇人

    池田国務大臣 昭和二十五年度におきまして予定いたしております債務償還費は、お話通りに千二百数十億円でございます。そのうちの法的根拠と申しますと、財政法によりまして前年度剰余金の半額を償還すべしというのが法的根拠のおもなるもので、これによるものが二百六億円と、そしてまた財政法に基きますところの国債発行額の万分の百十六の三分の一、これが二十億円程度に相なつております。その他個々の問題僅つきましてこまかい規定もありまして、それによつて繰入れるものもありますが、これは金額において微々たるものでありまして、大部分は見返り資金によりまする五百億円の債務償還と、一般会計におきまする五百億円の債務償還であるのであります。
  67. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうしますと、法律的に義務を負うておるものはわずか二百七、八十億円、こういうことになりますね。そうすると今法律的に義務を負う償還の国債は、剰余金がありとしても二百七、八十億ということになると、他の金額は、ただこれだけを財政上、ときの政治的な観点から償還したいという希望、すなわち腰だめ的な数字である、こう解釈してさしつかえありませんか。
  68. 池田勇人

    池田国務大臣 予算におきまして、見返り資金より、また一般会計より、それぞれ五百億円ずつ償還いたしますことは、わが吉田内閣の財政方針の基本であるのであります。腰だめではありません。
  69. 西村榮一

    西村(榮)委員 吉田内閣の基本的な財政方針ということは、政策であつて、法制的な義務ではない。これは区別して解釈したい。だから私のお尋ねしているのは、法律的な責任があるのかどうか、この点なのであります。
  70. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほどお話した通りでございます。法律に基くものが二百数十億円であります。あとは吉田内閣の財政経済方針に基く政治的なものであります。
  71. 西村榮一

    西村(榮)委員 しからば、これは政治的なものであるといたしますならば、政治的な事情に新しく何らか変化か生じて来るか何かすれば、その千二百八十六億円を償還する予定は変更されることも法律上さしつかえない、こういうことですね。
  72. 池田勇人

    池田国務大臣 吉田内閣の財政方針でありますから、変更する気はございません。
  73. 西村榮一

    西村(榮)委員 私のお尋ねしておるのは、変更する御意思か御意思でないかということでなしに、法律上変更してもさしつかえないものか、こういう点です。
  74. 池田勇人

    池田国務大臣 御質問の点がどこにあるかわかりませんが、それは当然のことであると思います。
  75. 西村榮一

    西村(榮)委員 そこで話がやや軌道に乗つて来たのでありますが、これは財政家である池田大蔵大臣に申し上げるまでもないことと存じますが、わが国のこの償還された後における国債の保有高は、わずかに国民所得の一割二分であります。アメリカは——アメリカと今日の日本国民経済と比較するということは少しどうかと思いますが、しかしアメリカの国債保有高は国民所得をやや上まわつておる。二千三百六十四億ドルの国民所得に対しまして、国債の保有は二千五百二十七億ドル、イギリスはまた九十八億ポンドの国民所得に対して二百五十二億ポンド、約三倍の保有高であります。日本荘けが国民所得の一割二分しか国債を保有しておらない。償還前にいたしましても二割とは持つていないのでありますが、これをどうして急に今日の財政窮迫の中から、かくも莫大なものを償還しなければならないか、この点非常に国民は疑問に思つておりますので、こいねがわくば国民の理解し得る程度において、納得し得る程度において、親切なる答弁を煩わしたいと思います。
  76. 池田勇人

    池田国務大臣 お話通りにアメリカ、イギリスにおきましては、国民所得に対しましての国債の総額はそういうことになつておりましよう。また租税收入に対しましての国債の現在高は、英米仏通じて大体五、六倍になつておることは承知いたしております。しかるに日本は租税收入の半分にも足らない。外債を入れましても租税收入の七、八割だということは、私も十分承知の上でやつておるのであります。なぜこうなつたかと申しますと、敗戰後の日本の特殊事情、いわゆるインフレーシヨンの結果であるのであります。これによりまして、財政は、国債面から申しますと、非常に健全なようなのでありますが、日本の経済財政の中にはアメリカの援助ということがありまして、それでようやく今糊口をしのいでおる状況であるのであります。日本の将来の経済自立を考えますと、私財政演説で申し上げました通りに、この際できるだけ資本の蓄積をいたし、また国民生活水準の急激なる上昇ということは望み得ないけれども、徐々に国民生活の水準を上げると同時に、一朝援助がなくなつた場合のことを考えて、かく債務償還計画いたしたのであります。
  77. 西村榮一

    西村(榮)委員 今の大蔵大臣の御答弁は本会議においても、その他においてもしばしば承つたのであります。昨日の苫米地氏の質問に対する御答弁にも、そういうふうな点があつたと思うのであります。しかし私はただいまの御言葉の中に、二点根本的な大蔵大臣の誤りがあるのではないかと思う。すなわちインフレーシヨン收束せしめるためには、あえて国民経済を破壊するがごときところまで追い込んで債務償還をしなければ、これはやつて行けないというのではないのであつてインフレーシヨンの抑圧というものは結局消費生活の抑圧と同時に、普通の均衡財政から抑圧できると思うのであります。そこであなたはきのう苫米地氏の質問に対してもおつしやつたのでありますが、今の私の質問に対してもその答弁をなすつた。アメリカの援助がなくなつたときに日本が困らないように、徐々にそのときの態勢を整えて行くんだ、こういうお話でありました。もちろんアメリカの援助というものが受入れられればけつこうであります。しかしこの際においてあなたが手放しにアメリカの援助々々とおつしやる中に、国民が大いに錯覚を起す一つの危險性があるのではないか。ということは、われわれがアメリカから援助を受けておる。これはポツダム宣言によつて日本の封鎖経済たる間は、日本国民生活を保障するという義務が連合軍にある。同時に敗戰国たるわれわれは、占領軍費を負担しなければならないという義務を負うておる。従つて占領軍費すなわち終戰処理費と援助費は、性質は違うけれども、相互関連を持つものであります。一体アメリカの援助費が漸次なくなれば、終戰処理費はそれと相並行して漸次減額されて行くかどうか、こういう点において見通しを承りたい。
  78. 池田勇人

    池田国務大臣 アメリカの援助費は、御承知通りに一九四九年から五〇年の予算では、四億二千三百万ドルになつておるのであります。しかして五〇ないし五一年の予算におきましては、四億三中三百万ドルから三割程度減るのではないかと予想せられて脇るのであります。かくして来ますると、私はいつまでもこの援助を長く期待するわけには行かないと考えておるのであります。しかして終戰処理費の問題につきましては、これは予算にもあります通り、だんだん減つて来ておることは御承知通りであります。しかし直接の関連性はないと考えております。
  79. 西村榮一

    西村(榮)委員 アメリカの援助費と終戰処理費の問題につきましては、あとでほかの点を処理した上で、またあらためて御質問申し上げたいと思います。  次に御質問申し上げたいことは、大蔵大臣は先般来しばしば予算上のデフレーシヨン的な弊害を、見返り資金の運用や国債償還資金の放出によつてその埋合せをして、財政から来るデフレーシヨンを緩和するという主張を、しばしばお述べになつたのでありますか、私はそれについて納得の行かない点がありますので、その具体的な方策についてお示し願いたい。
  80. 池田勇人

    池田国務大臣 御質問の点がよくわかりませんが、予算上のデフレーシヨンと申されると、財政規模が小さくなつたことを、予算上のデフレーシヨンと言われるのでありますか。私はその意味においては、予算上のデフレーシヨンとは考えておりません。経費を節利いたしまして、有効需要を喚起するように、いわゆる有効的に予算を使つておるのでありますから、予算上これがすぐデフレーシヨンであるという断定は、早過ぎるのではないかと考えております。いま一度御質問の点をはつきりさしていただきたいと思います。
  81. 西村榮一

    西村(榮)委員 いろいろありますが、先ほど御質問申し上げましたように、法律的根拠に基かざる国債償還費の莫大な金額あるいはその他の過大な税金等を含めて、国民からは多額の税金が吸い上げられる。これは古い借金に返還される。しかしてそういうふうなところから民間資金あるいは経済能力が不足しておる。こういうふうなことを緩和するところの方法について、先般来大蔵大臣金融的な処置によつてこれを緩和するのだという御説明がしばしばあつたのであります。そこで私はそういうふうな点を、財政面における金融的な引締りを、今度は金融操作において処置されるという点を、具体的に承りたいのであります。
  82. 池田勇人

    池田国務大臣 国並びに地方を通じまして、アメリカの援助というものを除外した場合に、昭和二十五年度におきます債務償還というものは、大体バランスしておると私は考えておるのであります。法律に基きまして二十三年度の剰余金の返還は、二十三年度における財政の問題でございます。二十五年度におきましては、国の方では五百億円の債務償還をいたしますが、地方の万では三百億余りの公債を発行することに相なつておるのであります。そういたしますと、差額の二百億足らずにつきましても、これは予算に現われておりますように、アメリカの援助によりまして償還いたしました復金の貸付金の回收というものが百八十七億も載つておるのであります。税を取上げ、そうして償還に充てるということは、国と地方とを通じますと、大体とんとんに行つておると考えておるのであります。
  83. 西村榮一

    西村(榮)委員 別な観点からお尋ねいたしますが、見返り資金の運用によつて金融難を緩和するということをしばしばお述べになつたのですが、見返り資金のその後の運営の方法はどうなつておるのですか。
  84. 池田勇人

    池田国務大臣 見返り資金の運営につきましては、他の機会に申し上げましたように、ただいま貿易会計より見返資金特別会計に繰入れた金額は、千百三十億円ばかりに相なつております。しかしてそのうち使用したものが七百四、五十億円になつておるのであります。四百億円足らずの金が今見返資金勘定にあるのでありますが、この金はただいまのところ食糧証券に運用いたしております。しこうしてこの三百数十億円の今の糧券に運用しておる金は、三月末までにこれ以上の金を使う予定に相なつております。しかして一——三月に入つて参ります金は、大体四百億足らずと考えておりますので、私の見込みでは千四百億円余りの見返資金特別会計への收入金、来年度に繰越すものは二百億程度ではないかと考えております。
  85. 西村榮一

    西村(榮)委員 国債を千二百億幾ら、昨年度は千五百億円、それを償還をいたすのですが、それは一体どういうような形において金融機関から再放出されて産業資金となるか、その構想をひとつ承りたい。
  86. 池田勇人

    池田国務大臣 来年度千二百数十億円の債務償還をいたしますが、これは交付公債の支拂いとか、特別の用途にきまつておるものもありまして、一般に国債償還に充てられる額というもりは大体九百九十億と予定いたしております。しかうしてこの九百九十億は、預金部の保有しておる国債が六百三十億円、市中銀行の所有しておる国債が八百三十億円、こういうものから償還して行きたいと考えておるのであります。しこうして預金部に対しまして償還した金額につきましては、預金部郵便貯金その他簡易保険、厚生年金等のフアンドと償還になつたフアンドとを合せまして、地方債の引受とか、あるいは興銀、勧銀、農林中金で発行を予定いたしております金融債の引受に充てようと考えておるのであります。市中銀行の所有国債の償還された金額につきましては、市中銀行がいわゆるコマーシャル・ベースに対しまして産業資金に投下する場合もありましようし、また長期資金的のものにつきましては、先ほども申しましたが、興銀、勧銀、農林中金の債券を引受けまして産業資金に充てることとなると考えておるのであります。
  87. 西村榮一

    西村(榮)委員 ただいま預金部に対して償還されるものは別として、日銀に還流されるものは、それを通じて市中銀行資金が潤沢になるという御答弁であります。その市中銀行資金は、一般産業を潤すのだというように解釈される御答弁があつたのでありますが、ところが残念ながら現在の状況から行きますならば、あまり市中銀行にもどつて来ない、同時に特にもどつて来ても、それは非常に信用力の厚い大産業が主として利用されるのであつて、中小商工業というものはこれに対して利用されていない。この中小商工業に対しての金融に対しては、大蔵大臣はどういうふうに将来救済策を講ぜられるのか、お尋ねいたします。
  88. 池田勇人

    池田国務大臣 ただいま金融債を発行する金融機関は興銀、勧銀、農林中金とを参考としてお答え申し上げましたが、商工中金につきましても検討を加えておるのであります。中小商工金融に対しましてのあれは、これは今までの状態で申しますと、興業銀行などは主として大産業のようでありますが、農林中金、商工中金になりますと、相当中小商工業にも行つておるのでありますが、また一般の金融機関におきましても、できるだけ中小商工業金融の方に金をまわすよ、に指導いたしておるのであります。しかし何分にも中小商工業に対しましては、経費の関係その他の点でむずかしい点がありますので、私は前国会の初めにおきましても一つの構想を改めまして、ほんとうの中小商工業に対しまして融資をすることを本旨とするような銀行ができることを期待しておつたのであります。幸い最近ぼつぼつ申請が出て来るような状況でありまして、徐々にそういう方面への融資ができると考えておるのであります。
  89. 西村榮一

    西村(榮)委員 大蔵大臣は御承知だと思いますが、先ほど松浦君の質問で、質屋の利息を御存じなかつたので、下情に通じないというお話がありましたが、しかし中小商工業は今日いかに金が詰まつておるかということは、これは御存じだと思います。そこで昨年におきまして中小企業庁が、中小企業方面からの意見を総合いたしまして、大体運転資金並びに設備資金として必要なる金額は、四百六十億ぐらいと、こうふんだのであります。これを厳選圧縮いたしまして、最低所要額は二百八十億円必要だと発表いたしました。その中で緊急処置として百五十億円だけは必要だ、こう認められて、昭和二十四年八月八日に閣議において、この百五十億円の中小商工業者に対する融資対策をなすということを決定されたのでありますが、この閣議決定における百五十億円の融資対策というものは、その後どうなつておりますか、一応承りたいと思います。
  90. 池田勇人

    池田国務大臣 私は昨年八月、中小企業に対しまして百五十億円の金融をなすという閣議決定は覚えがございません。欠席いたしておつたのか、閣議決定をいたしたという記憶はございません。もうしばらくお待ちを願います。ただ問題として、今お話通りに、四百億円いる、緊急対策として百五十億円を要するというふうなことは聞いておりますが、その根拠につきまして、私はまだ十分あの際に検討を加えておらなかつたのであります。私といたしましては、中小商工金融の問題について、八月ごろは十二億円程度日本銀行の別わく融資をやつておりました。年末までにこれを三十億円に増加いたしまして、商工中金、あるいは勧銀方面から出さしております。また中小商工金融方法といたしまして、中小商工金融自体に出すのも一つのいい方法でありますが、大企業に密着しておる中小企業があるのでありまして、この金融の問題は全般的に一応手を打つて、足らないところを個々に手を打つということが適当であろうというので、先般申し上げたと思いますが、見返り資金からとりあえず四半期に三億円の計画を立てております。しかしこの三億円も要すればどんどんふやしてもいいという考えで行つておるのであります。
  91. 西村榮一

    西村(榮)委員 通産大臣に簡單にお聞きしたいのですが、ただいま大蔵大臣は、百五十億円の中小商工業者に対する融資が、八月八日に閣議において確認せられたということを聞いておられないというのですが、通産大臣はこれに対してお聞きですか。
  92. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 今御指摘の問題は、閣議で決定したという記憶は私もございません。但し今お話のように、中小企業庁におきまして、大体四百億円いる、これをしぼつて——普通出て来るところの答案は、たいがい西村さんも御承知のように、五倍とか六倍とかかけてありますので、これをしぼつて二百八十億と押えた。その押えたものに対して、百五十億程度を何らかの形で融資してもらうべく、それぞれ関係の事務的な折衝をいたしておりますという報告はあつたのであります。
  93. 西村榮一

    西村(榮)委員 両大臣とも御存じなければ、これはやむを得ませんが、中小企業庁振興部金融課で、閣議決定された、こう出ております。これはあとでけつこうですから、統一して御答弁願いたい。通産省からお出しになつたこれが誤つておるのか、両大臣がまだお聞きになつていなかつたのかその点はあとで御説明願えればけつこうだと思います。  先ほどの本筋にもどりますと、私はそれを両大臣が御存じなくても、別にそれがためにどうのこうのと申すのではありませんが、要は現在非常に苦しんでおる中小商工業者に対して、四百六十億円の所要資金がいる。それを圧縮して二百八十億円、同時に、この通産省からお出しになつておる公式な書物においても、おそらく通産大臣も目を通されたと思うのですが、この中には、ちやんとそのことが閣議で決定されておるのにかかわらず、三十二億円ではとうていやつて行けないということが明記されておるのであります。従つて中小商工業の今日の苦悶というものは、政府はつとに御存じのはずでありまして、一体これに対しまして、今大蔵大臣は、十二億円とりあえず融資した、あと三十億円は年末に出した、これ以上いるならばまた考慮してもいいとおつしやるのですが、現在の財政の余力をもつてして、この苦悶しておる中小商工業者に対して、大体どの程度まで救済の腹をお見せになるのかどうか、これを御明示願えれば、中小商工業者はたいへん池田氏に敬意を表するだろうと思います。
  94. 池田勇人

    池田国務大臣 中小商工金融につきましては、全般的の考えでやつておるのでありまして、御承知通りに、昭和二十四年度におきまする運転資金並びに設備資金につきましては大体行つておるのであります。中小商工金融についてどれだけ、大企業についてどれだけ、金をわけてどうこう言うわけにはなかなか行かないものなのであります。企業というものは、みなつながりがあるのでありまして、大体私の今の予定では、昭和二十四年度中におきましては、運転資金として四千二百億円、設備資金として千百億円程度を予定いたしております。その程度の金が動いておるのであります。一般の金融としてやりました上に、なお中小金融に特殊のあれとして、先ほど申し上げましたような別わく融資とか、見返り資金融資とか、こういうことをやつておるのであります。従いまして百五十億とか二百八十億いる、そのうちで特に手を打つたのがこれだけだから、あとをどうするのかというのは、これは机の上の議論でありまして、金融というものはそういうふうにわけ得られるものではないと考えておるのであります。中小商工金融の必要のことは十分われわれもわかつておりますが、しからば中小企業金融が言うがままに金を出しますことが、いいか悪いかという問題もあるのであります。たとえば昨年も私は聞いたのでありますが、印刷工場をふやしたい、ここで千五百万円の融資は受けられるのだが、千五百万円では足りないのだ、三千万円いるのだ、ここで何とか融資をあつせんしてくれ、というお話でございますが、それでは印刷工場を今この上に日本にふやすことが必要かどうか、こういう問題になつて来ますと、個々の業者が自分の企業意欲によつて要求するものをのべつに出すというわけに行きません。そういうところから考えまして、あの中小企業庁で計算せられた金額を別わくとしてこれだけ出すのだということは、財政金融政策としてなかなかできないことでありまして、そうすることはかえつて健全な金融でないと私は考えておるのであります。
  95. 西村榮一

    西村(榮)委員 一昨日でしたか、大蔵大臣並びに安本長官は、日本の経済は安定せりということをしばしば主張せられ、あるいは安定に向いつつあるということを主張された。私は日本経済の構造並びに日本社会不安については、別な観点から申し上げたいと思います。中小企業者に対してだけは、やはりこれも安定していると御両氏は御考えになるかどうか、この点御両氏にお伺いしたい。
  96. 池田勇人

    池田国務大臣 私の安定と申しますのは、今までの不安定が安定に向つて来たと言うのであります。しかして中小企業は安定しておるかという問題でございますが、インフレを急速にとめました場合におきまして、大企業にも不安定のものもありましよう。中小企業にも不安定のものもありましよう。しかし国の全体といたしましては、安定に向いつつある。その歩を一歩々々進めておると考えておるのであります。
  97. 青木孝義

    青木国務大臣 西村委員にお答えを申し上げます。これはわれわれは経済が日本経済全体として安定に向いつつあるということを申し上げております。中小企業についてはどうか、こういうお話でありますが、中小企業の限界とか、大企業の限界とかいうものを経営規模等から考えて一応きめておる向きもあります。しかしわれわれが現在申し上げておるのは、日本経済を全般的に見てそれぞれの要素から判断して安定しつつある、こういうことを申し上げておるのであります。
  98. 西村榮一

    西村(榮)委員 ただいま大蔵大臣は大なる企業においても不安定なるものあり、小なる企業においても安定しておるものがあるし、またその逆もある、こう言われた。私はそういうような個々の問題をとらえて言うのではないのであつて、私は同時に今の大蔵大臣のお言葉に対し、また安本長官のお言葉に対して、あげ足を拂うような三百代言的な討論はしたくないと思うのであります。現実に即して正しい国策のあり方を示してもらいたい、こう思つておるのであります。それから大蔵大臣は今安定せりというお言葉でありましたが、政府が発表されておる統計の中にこういう点がある。中小企業の中で事業所を一時閉鎖したものが三六%、全然廃業したもの九%、企業の縮小せるもの五五%、これが通産省でお出しになつた「中小商工業者の現実の姿」という中の報告書でありますけれども、安本長官並びに大蔵大臣は中小商工業者は安定せりとお考えなつておられるかどうか。
  99. 池田勇人

    池田国務大臣 日本の中小商工業者の全体の数字から見ていただきたいと思うのであります。それは企業の縮小をしたものとか、あるいは廃業をしたものとか、とにかく企業をやつて行けなくなつたものの分析であつて中小企業全体の数字ではないと私は考えております。
  100. 西村榮一

    西村(榮)委員 私はただいま冒頭に、お互いにあげ足とり的な、そうして、一時のがれの応答をしてはならない、しかもそのことを差控えると申し上げておいた。一部分と申されたのでありますが、通産省のこの数字は、全国六大都市に向つて百件の代表的なものを集めて、その中から摘出された政府の責任ある統計であります。これが部分的とあなたはおつしやるが、今日の輿論調査においても、あるいはアメリカにおいても全国民を対象としてすることはできません。知識階級何人、商人何人、政治家何人、労働者何人、農民何人という中から摘出して輿論の動向というものを察知して、これを政治の指針とすることが今日のすなおな政治の見方だと思う。これは決して部分的なものではありません。もしもこの問題についてあなたが異論がおありになるならば、それは現内閣の出された統計において私が今お尋ねしておるのでありますから部分的ではない。部分的という根拠に立つて一体これでも安定しておるとあなたはお考えになるか、お答えは簡單だ、お尋ねしたい。
  101. 池田勇人

    池田国務大臣 その問題につきまして私は今聞いたところでは、事業を拡張したものが一つもないように聞き取つたのでありますが、その統計を調べてからお答えを申し上げることにいたします。一〇〇%のうちに事業縮小したもの五五%、一時閉鎖したもの三六%、こういうふうな計算のようでございますが、日本の中小商工業者で事業の拡張をしたものが、一つもないというようなことは私は考えていないのであります。ただ問題は中小商工業者のうちには、大産業よりもこの経済安定への過渡期におきまして、かなり経営不如意のものがあるということはもちろん認めておるのであります。今のように全部が縮小したり、廃業したとは私は考えていないのであります。いずれこの問題はその資料を見てからお答えすることにいたします。
  102. 西村榮一

    西村(榮)委員 資料をごらんになるなら、通産省がお出しになつた十一月一日の報告書によつてお調べ願いたい。  それでは別な観点からお尋ねします。ただいま大蔵大臣並びに安本長官は、日本の経済は安定せりという立場に立つてお話でありますが、広く全般的に見ますと、現在の経済の苦悶がこういうふうなところに現われておると思います。昭和三十三年度は一年中を通じまして不渡手形が全手形の四%でありました。ところが昭和二十四年度はまだ統計が全体的になつておりませんが、八月だけの統計から見ますならば、発行数の一七%になつております。これは前年度の四倍以上になつております。私は経済のことについてはきわめて浅学でありますが、不渡手形が平素の二倍を越えたときには、それは経済恐慌の前ぶれとして警戒せねばならぬ。三倍を越えたときには完全なる恐慌状態であるということを若いころに教えられたのであります。今残念ながらその不渡手形の率は一七%、まごまごするならば二割近くが不渡手形である。池田氏は今首をかしげられたが、これは東京手形交換所の調査であります。この状態に対して池田さんは一体どういうふうなお考えをお持ちであるか、伺いたい。
  103. 池田勇人

    池田国務大臣 私の記憶いたしておりますところでは、最近の不渡手形は相当ふえて来ておることは承知いたしております。九月からふえ始めまして、十月、十一月、十二月とふえております。しかして不渡手形の枚数から申しますと、一万分の七と記憶いたしておるのであります。金額にいたしまして一万分の四と記憶いたしております。あなたのおつしやるように不渡手形が一割七分にも二割にもなつたらたいへんなことでありまして、單位が違うのではないかと思いまして今頭をかしげた次第でございます。
  104. 西村榮一

    西村(榮)委員 大蔵大臣の御記憶の通りで私が誤りであれば、日本経済のためにまことに慶賀にたえないと思まいす。しかし残念ながらあなたのは記憶で、私のは手形交換所の統計であるのであります。もう一度よくひとつお調べを願いたいと思うのであります。あなたがおつしやるように件数にして一方分の七、金額にして一万分の四ということでありますならば、これは私は大したことはないと思う。これは昭和五年から九年までにおける平均の統計でありまして、そのときは各銀行では不渡手形というものは自分の銀行の信用上隠している。その結果が非常に実際より少くなつておるのであります。私も十八年銀行で飯を食つて来たのでありますから、現在はいろいろな形において手形交換所のこの数字が大体において見当違いはなかろうと考えております。一応お調べを願います。しかしこれは水かけ論になりますから、私は別な観点から、あなたに社会不安があるかないかということについて、一応御見解をただしたい。  安本長官もいろいろな観点から生産は上昇を示し、かつ雇用量は増大しておる。こうおつしやつたのでありますが、これも私は出所を明らかにいたしますが、あなたの内閣の労働省の統計によつておるのであります。私が聞きますところによりますならば、昭和二十四年七月には製造工業においては雇用量は一二%減少いたしております。建設工業において三〇%減少いたしております。鉱山業において二五%減少いたしております。その反面農村労働者は五百万人の増加を示している。この五百万人の農村の労働者の増加の中に特筆すべき項目が加えられたのは、農業労働者の中において家族従業員の数が四百万人増加しておる。製造工業において一二%の減少になり、建設工業において三〇%の減少になり、鉱山業において二五%の減少になつて、反面農村の労働者は五百万人ふえて、しかも五百万人の中に四百万人という家族労働者がふえておるのでありまして、この四百万人の家族労働者の一箇年の激増というものは、実に家族従業員の五〇%の激増になつておる。これが一時農村に潮のごとく押し寄せたのであります。しかし今日の農村はそれだけの人口を扶養することができずして、これが再び都市に逆流して来ておる。一体これに対しまして大蔵大臣は、この数字から見てもなおかつ社会不安がないという楽観論の上にお立ちになるかどうか。
  105. 池田勇人

    池田国務大臣 農村におきまして一時人口が激増いたしましたことは、引揚げあるいはその他住宅関係の問題等があると思いますが、経済の変転しますときに、都市と農村に移動のあることは当然のことであります。これをもつて社会不安であるとは私は考えておりません。
  106. 西村榮一

    西村(榮)委員 私の懸念する社会不安と、池田君の考えられる社会不安とは少し感覚が違うようであります。それならば私は別な観点からお伺いしたいのでありますが、これは先ほど安定本部長官も、大蔵大臣も同じく、わが国の経済は安定している、その証拠には生産は上つているのだ、こうおつしやつたのでありますが、私の知る統計によりますとい先ほどの手形の問題は手形交換所、それから人口の労働力の移動の問題は政府の労働省の統計。この次の統計は私はGHQの経済科学局の統計によつてお伺いするのでありますが、それによりますと、日本生産の上昇は、二十四年三月までの一箇年間において四一%上昇しておる。二十四年三月を契機として停滞に転じた。四月には九・五二、五月には九・三六、大月には九・五三、七月には九・六五、八月には九・二四、九月には九・三二と生産は停滞状態に入つておると、GHQの経済科学局は統計によつて公表せられたのでありますが、これでもなお生産は上昇して、経済は安定せりとお考えなつておるかどうか、お伺いしたい。
  107. 池田勇人

    池田国務大臣 GHQの統計がそうなつておるどいうことは私も知つておりますが、安本の統計はある程度ふえでおるのであります。しこうしてこういうもののとり方は数量だけではありません。質も考えなければなりません。しかし大体二十三年度に比べまして、二十四年度は相当つているということはお話通りであります。
  108. 西村榮一

    西村(榮)委員 池田氏はなかなか円転滑脱軽妙に御答弁なさるが、あるときにはGHQの絶対命令であるからこれはやむを得ないと主張され、あるどきにはこれはやむを得ざる不可抗力であると言われる。特に国債の償還——今日中小商工業と一般経済界の苦悶と怨嗟の声を無視しつつも、なおかつこれはやむを得ざる問題であるというので、威たけ高になつ国民に対されるのでありますが、都合が悪くなると、安定本部の統計もそうだと言うのです。これは私は一応安定本部長官にお聞きしたいと思うのですが、あなたはGHQの統計に対して信頼を置かれるのか、安定本部の統計に対して信頼を置かれるのか。このことを私が問うことはやぼだと思いますが、私が安本長官でも、いや、それは安定本部の統計が正しいということを主張したいのでありますが、しかし一体この両者の中に食い違いが来たときに、日本の現実の力と日本の国政のあり方からいつて、どの統計に基本を置いた方が、日本の国政が円滑に行くのかということを承りたい。
  109. 青木孝義

    青木国務大臣 私は経済安定本部の統計を信頼しております。
  110. 西村榮一

    西村(榮)委員 まことに御明答であります。私も日本政府の権威のためにさようありたいと思うのでありまして、どうか今後もその趣旨で一貫して答弁していただきたい。もしもその答弁が逆転すると承知しませんぞ。  私は先ほど大蔵大臣が部分的な統計ではたよりない、こうおつしやつた。同時に日本の統計の中に、中小商工業者の経済安定策に対して、完全な数字がないということもおつしやつたのです。ところが今度は別な数字が出ております。これはごく圧縮した中で、従業員五名以上二百名以下の中小工業百件の中に、今日生産が下降しておるもの四九%、やや上昇しておるものが一四・二%、変化なしというのが三六%を示しております。非常に下降しておるもの四九%、半分が悪く、やや上昇しておる——この中に註釈が加えられておるのでありますが、やや上昇している中には、二百人前後の大工場の中にやや上昇しておるものがあるということが書いてある。これが一四・二%。変化なしが三六%。これまた私は、事商工行政に関することでありますから、この統計の出所を明らかにいたしますと、これまた通産省の発表でありますが、これでも大蔵大臣は、日本の統計、中小商工業者に対しては安定しておると考えるのですか。
  111. 池田勇人

    池田国務大臣 どこの統計で、どういう見方でやつたのかわかりませんが、今ここで国会に資料が出ましたから、GHQの鉱工業生産の指数とそれから安本の指数とを私の持つておる資料で申し上げます。昭和七年から十年を一〇〇としまして、昭和二十二年十二月は四四、二十三年十二月は六八・九、二十四年一月は六七・二、二月が六九・五、三月七六・二、十月が八〇・一と相なつております。これはGHQであります。安定本部の総合は二十二年十二月の四九・四、二十三年十二月が七〇・七、二十四年一月が六三・三、二月が六九・七そうして十月が七九・〇、こうなつておるのであります。西村君はいろいろな統計をそこへお持ちになるようでありますが、とにかくその出所と目的とを見ないことには、今ここでぽつと出されましても、判断を間違つてはいけませんから、一々の統計を前もつておつしやつていただけますと、御満足の行く答弁ができるものと思います。
  112. 西村榮一

    西村(榮)委員 私が今示した統計は政府の発表された文書による統計とGHQの統計でありまして、それ以上の統計は使用しておらないのであります。統計に対する論議は、時間の制限がありますので飛ばします。  しからばほかの観点からお伺いしたいと思うのでありますが、大蔵大臣はわが国の株式証券並びに株式市場の地位を、将来投機市場として指導されるおつもりであるか、あるいは投資の対象としての証券並びに市場として指導されるおつもりであるか、その根本方針を一応承りたいと思います。
  113. 池田勇人

    池田国務大臣 取引所の所期しておりますところは、投機市場ではございません。純然たる投資市場を予定しておるのであります。
  114. 西村榮一

    西村(榮)委員 私もそうであろうと思います。投機市場として日本の市場を育成するという大蔵大臣はないと思いますが、それとは別にシヤウプ氏が先般帰るときに、勧告書の中に資産の匿名所有に対しては、これを徹底的に捕捉して課税の対象にしなければならぬ。それがためには株式の名義書きかえというものは、一箇月以内になすことが適当であるという勧告をして帰られたのでありますが、これは一体どうなつておるのでしようか、一応承りたい。
  115. 池田勇人

    池田国務大臣 シヤウプ博士の勧告案は、大体われわれはあの線に沿つて行く考えでおるのでありますが、日本実情に合わないところは私は取入れる気持はありません。しこうして隠匿資産の表現方についてはいろいろな方法がありましよう。無記名定期預金についてはシヤウプ勧告案の線に沿いまして、大体今年九月ごろまでになくしたいと思いますが、株式の名義書きかえを今ただちに一箇月以内に励行するということは、とうてい不可能なことでございますから、この四月とか、九月に実行しようという考えは持つておりません。あの勧告案は無期延期にいたしたいと思つております。
  116. 西村榮一

    西村(榮)委員 株式の名義書きかえを無期延期して、しからば日本の証券市場が約一千七、八百億円から二千億円というものが動いておのでありますが、この莫大な財産の移動に対して、いかなる方法によつて課税を期待されるか、名案があれば承りたい。
  117. 池田勇人

    池田国務大臣 名義書きかえを励行いたしまして、課税の充実を期することは夢想でありますが、今のような状態ではこれを励行することはむりであるのであります。徐々に私は実行に移して行きたいと考えておるのであります。しこうしてこれがためにはやはり簡易書きかえ機関を設ける必要があると思いまして、名義書きかえの簡易な制度を今議会に提案いたしまして、御賛成を得たいと今考えておるのであります。
  118. 西村榮一

    西村(榮)委員 ただいま私の質問に対してはお答えがなかつた。私は名義書きかえをシヤウプ勧告の一箇月以内でしたらいいじやないか、それは隠匿財産に対する課税を捕捉するためであるという理由がついておるにかかわらず、それを無期延期にして、しからば他の方法でいかなる方法において隠れた所得を捕捉せられるかという点をお聞きしたのであります。その点を明確に答えていただきたい。
  119. 池田勇人

    池田国務大臣 株式ばかり隠れておるのではありません。預金に隠れておる分は今申し上げた通りであります。株式に隠れる分も産業界に重大なる影響を與えることは一にできませんので、徐々に改めます。そうして行きたいと考えておるのであります。
  120. 西村榮一

    西村(榮)委員 かつて国会において、この予算委員会において大蔵大臣は利益のあるところ必ず課税するのだ。これが課税の原則であるということを、税の取立ての名人である池田さんが明言された。今でもそのおつもりですか。
  121. 池田勇人

    池田国務大臣 所得のあるところに課税するのは当然であります。
  122. 西村榮一

    西村(榮)委員 私はここに驚き入つた結論に到達するのでありますが、所得のあるところに課税するというならば、なぜ一箇月以内に名義書きかえをして、その名義の移動において所得をとるというのを、なぜそれを無期延期されるか、手続が煩瑣であるとおつしやいますけれども、株式を所有して、その人がその会社の本社なり、あるいは特定の支店並びに出張所、銀行にそれを持つてつてやるのに、はたして一箇月以上かかるかどうか。私は簡單だと思う。一箇月でむりだつたらあるいは二箇月という手もあるでしよう。日本の交通関係その他事務的な能力において三箇月という手もある。これをなぜ無期延期されなければならぬかということについて、私は理解に苦しむのでありまして、明確に答弁していただきたい。
  123. 池田勇人

    池田国務大臣 西村君は実業家の出身でありますから、今の実情を御存じであろうと思つておるのでありますが、私の見るところでは、千九百億程度の株式のうちで、昔のような株式を発行しまして名義の書きかえなどを書き込むような株がどれだけありますか。昭和二十四年の四月から十二月までに大体六百数十億の新株が出ております。しかして二十三年度においても四百数十億は出ておるのであります。これがほとんど預かり証で行つておるじやありませんか。これを名義書きかえのできるような普通の株式に書きかえるのはやたいへんなことであります。しかしてまた一箇月とか二箇月とかおつしやいますが、今は株主名簿を——たとえば関東配電にしても、日発にしても十数万人の株主がある。これを福岡で取引した人が東京へ持つて来てやるということはかなりな手数であります。しかも新株についでは預かり証だけで行つておる。これをどうやつてやりますか。しかも一箇月なり二箇月で名義を書きかえなければならぬとした場合において、取引所で取引いたしますときに、きのう書きかえた人はあと二箇月間は書きかえなくてもいいが、一箇月半前に書きかえた人はあと十五日でやらなければならぬというときには、相場はどんな相場が立つとお考えでしようか。いろいろな事情を考えてみると、所得のあるところに課税しなければならぬが、課税し得るような経済の機構、態勢を整えなければむりが行く。従つてこの問題はそう急ぐ必要はない。徐々に日本の経済機構の確立を待つてつてもおそくはないという考えのもとに、私は早くはやりとうございますが、今無期延期と言つたのは、簡易書きかえ機関を設けたり、いろいろな手を打つて、しかる後にやるのが経済界に波瀾を起さない方法だと思つております。シヤウプ勧告案にありますが、日本実情に沿わぬということを強く関係方面言つて、ああいうふうにいたしたのであります。
  124. 西村榮一

    西村(榮)委員 ただいまの御説明の理由の根本的なものは手数がかかる、こういうことです。私も株式の実情は若干知つておるが、そんなに手数はかかりません。株の裏に紙を添付して、そこで取締役代表が判を押して株式書きかえの名簿を追加すればいいのであつて、何もそんなに煩瑣なものではない。同時に手数がかかるからと言うが、それでは将来手数のかかる税金をとらなくて済むかどうか。農村あるいは中小企業、勤労者に対して、金額にしても郵便料ととんとんになるような僅少なものでも、今日課税の対象になつでとつておる。手数料を引いたら結局国家が損ではないかと思われる点も税金をとつておる。その建前は何かというと、金額の大小にかかわらず、所得のあるところには必ず課税するという税の根本方針を、国家の財政政策に貫くために、煩項な手数をかけて税をむりしてとるのでありまして、金額の大小にかかわらない。この所得のあるところに必ず課税するという原則から行きますれば、今日の株式の取引の煩項というものを冒しても、これは当然とるべきではないか、私はこう考えますが、もう一ぺん御答弁を煩わしたい。
  125. 池田勇人

    池田国務大臣 所得のあるところから税をとることは当然であります。しかし税のとり方はむりをしてはいけません。経済界に非常な悪影響を與えるようなことをしてはいけません。従いましてとり得るような制度をこしらえて後にやらなければならぬのであります。あなたがお話になりました課税の充実を期するためということは、譲渡利得の問題と、そうして今までの課税漏れの所得と二つ問題があると思うのであります。譲渡利得の問題は、今ごろのように株が下つておるときには、あまり多くを期待できません。しかもまた片一方の今までの隠れた所得が株式にかわつておるものは、そう二月や五月を急ぐ必要ばありません。いつでも出て来るのであります。
  126. 西村榮一

    西村(榮)委員 あまり株のことを論議しておると、ほかの時間を食いますので、私は切上げたいと思います。  しからば最後に結論としてこの問題についてお聞きしたいと思うのですが、大蔵大臣が証券市場を投機の場所とせずに、投資の場所として育成して行くということでございますならば、名義書きかえの無期延期というものは、投機市場としての便利な面は十分持つのであつて、投資市場として育成するというところの方針に相反するのではないか。少くとも投機家のねらうところは、頻繁にこれを取引売買するというところに投機家のねらいがある。投資というものはやはり長期資金を供給するという、遠大な計画をもつて証券市場に入るのでありますから、入手したら必ず名義書きかえをして、子孫にまで伝えるというような考え方で持つのが、大体投資家の考え方であります。投機家はきよう買つても、あした利益があれば売るという立場から言えば、名義書きかえのような煩瑣なものは、避けた方がいいのであります。この名義書きかえを無期延期するという底意においては、これは投資市場として育成するよりも、投機市場として発展するの危険性があるのではないか。
  127. 池田勇人

    池田国務大臣 西村君の御説には賛成できません。取引所が昔のように差金決済でやるような制度を置いておる場合には、投機市場ということもございましよう。しかし今は差金決済は認めていないのであります。でありますから私は投資市場と言つておるのであります。名義書きかえをどうするかという問題で投機とか投資とかに関係することは私は議論にならぬと思います。  なおこの際先ほどの不渡手形の問題でございますが、統計をもう一度調べさせましたので数字を申し上げます。二十四年九月でございます。三百八十万七千枚の手形交換枚数でありまして、金額は五千六百八十億円であります。しこうして不渡りは千百二十枚、その金額は一億二千万円であります。——よろしゆうございますか。あの表を見ますと、單位を一つつております。交換枚数と金額の單位を減しておりますから、今十七と見ましたが、これは單位が違えたところをごらんになりましたらわかります。私の話が間違いではありません。枚数の一万分の七と申しますのは、十二月の計算でありまして、金額の一万分の四というものは、これまた十二月の分であります。これは九月の分でございますから御了承願います。
  128. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は株式取引所の問題に関してはこれで打切ります。ただ先ほど大蔵大臣が言われた中に、税のとり方はむりがあつてはならぬ、こうおつしやつたのでありますが、これは私はきわめて同感であります。むりが生ずる税金をとつてはならぬ、これはあたりまえである。しかし一面から見るならば、今日の金力を持たない、権力を持たない者は、かなりむりな税金の圧迫をこうむつておる。私は株式取引所の問題につきましては、私の時間も乏しいのでありますから、別の機会に論議して行きたいが、私の有する資料に基いて今度は別な観点から十分に御意見を承りたいと思うのであります。世間はこの大蔵大臣の証券取引名義書きかえ無期延期というシヤウプ勧告案を無視するこの行き方に対しては、きわめて不可解な感情を持つておるのであります。なぜ大蔵大臣は現在のかくも全力を豊富に持つ証券業者に対して便宜をはかるか、あるいは権力を有する者の便宜をはかるか、私は不審に思うのであります。この点はまたいずれのときか明らかにしたいと思うのであります。ただ先ほどの御答弁の中から私は結論に入りたいと思うのでありますが、大蔵大臣はアメリカの援助によつて今日の日本の経済をささえておるのであるから、従つて財政收支の均衡のためには、千二百八十七億円の国債償還もやむを得ないということをお述べになつた。同時に昨日苫米地氏の質問に対しましても、同様なことをお述べになつて、日本国民生活水準をこれ以上豊富にすることは、どうかと思うというふうな御答弁があつたのでありますがそこで私はアメリカの援助資金の問題について疑問と思うところをお尋ねしたい。  昨日の苫米地氏の、債務償還費の一部を減税、公共事業費等にまわしてはどうかという質問に対しまして、大蔵大臣は、現在対日援助を受けておる関係もあり一かつ急速に日本国民生活を向上させることは将来いかがかと思われる、同時に私の財政政策の基本は、近い将来対日援助が打切られた場合に、国民生活を急激に塗炭の苦しみに陥れないように考慮しておるのである、こういうふうな御答弁があつたのであります。そこであなたにお尋ねしたいと思う点は、対日援助物資はアメリカのワシントン政府で組まれた予算通り日本へ輸入されておるのかどうか、この点をお伺いしたいと思うのであります。
  129. 池田勇人

    池田国務大臣 日本の会計年度と向うの会計年度のずれがございます。また船積みその他の関係である程度のずれがございますが、大体向うの予算通り盡しておるのであります。
  130. 西村榮一

    西村(榮)委員 大蔵省がお出しになつておる数字によりますと、大分狂いが来ております。これはまた統計のことで時間がかかるといけませんから、御親切にお配りくだすつた昭和二十四年の「国の予算」、これの二十ページに書いてある、「終戰処理費は連合国軍の本土進駐に伴う直接の日本側負担であるが、米国政府においても占領地域の救済(ガリオア資金)と復興(エロア資金)のために年々巨額の経費を支出しており、」こういうふうに書いてあります。大体終戰処理費と救済費とは別個の性格のものでありますが、大体その金額をにらみ合せているようにここに説明が加えてある。その説明の中に援助費が約十億ドルに達していると言われておりますが、アメリカの会計年度によりても、四十六年、七年、八年この三箇年の間において、輸入物資が十億六千四百万ドル、四十八年から四十九年は、この統計は昨年の四月までですから、九箇月とこれを見ても、政府の統計の間においては約四億ドルほどの食い違いができている。この食い違いは一体どういう理由によつて発生したのか、御説明願いたいと思います。
  131. 池田勇人

    池田国務大臣 御質問の点がはつきりいたさなかつたのでありますが、アメリカの議会において承認を受けた占領地援助費は日本ばかりでなしに、琉球も韓国も、ドイツも入つておつたかと思います。日本へ向けられる分にしても、進駐軍が日本で使う費用がその中に入つております。大体二千万ドルくらいが入つております。そういう関係から、向うの予算と実際に対日援助見返り資金に入る分とは狂いのあることは当然であります。お話の点がアメリカの予算でおつしやつた金額でございますか、その点がはつきりいたしません。そういうわけで、これには日本、琉球、韓国、ドイツも入つておつたかと思います。そうして日本に割当られた分のうちの大体二千万ドルくらいは、進駐軍関係日本における費用でございます。それを差引いたのが輸入物資でありまして、これは見返り資金に入るのであります。
  132. 西村榮一

    西村(榮)委員 大蔵省の統計によると日本だけの援助資金と書いてあります。第一年度が三億ドル、第三年度が三億一千四百万ドル、第三年度が四億五千万ドル、第四年度が五億一千百万ドル、第五年度が四億九千五百万ドルこれはまだ年次に達しておりません。その前年度も四月の統計になつておりますから、何ですが、これはドイツや朝鮮が含まれておりません。日本に対する援助資金です。そこでこの援助費の中に日本だけと書いてありますが、対日援助物資の中から沖繩に対する費用が支出されておるのですかどうか。
  133. 池田勇人

    池田国務大臣 沖繩に対する費用は出ていないと思います。その金額から引くのは主として進駐軍の行政費等かと考えております。詳しいことは主計局長から御説明申し上げます。
  134. 西村榮一

    西村(榮)委員 金額の大小ではないのでありますから、主計局長答弁はけつこうです。私は政治的にお伺いしたいと思います。これに対してこの日本政府の統計では四億ドルほど実際に入つているものが不足している。安定本部の貿易局の統計によつても、大体総額において——年度によつて違いますが、七%ないし一〇%が相違しておるのであります。しからば一〇%相違しているといたしますれば、莫大なものでありまして、日本の金額にいたしますと、約五百億円であります。これは一体どういうふうな意味で不足しているか、同時にこの不足していることは、大蔵省で発表されているのですが、しからばこれが不足しているということがわかれば、大蔵大臣はいかなる手段を講ぜられるか、ということをお聞きしたいと思います。
  135. 池田勇人

    池田国務大臣 占領軍の行政費も入つていることでございますし、また輸入その他の時間的ずれもございましようし、また向うで物資を買つて、こつちへ持つて来るときの差もございましよう。なお琉球の問題は入つている場合もあるし、入つていない場合もあるとかいう話でございます。そこはつまびらかにいたしておりませんが、この問題の管理は、御承知通りに進駐軍自体として従来やつているのでございます。主計局で十分わからないところもありますが、原則として今の差額は、その時間的ずれと占領軍の行政費等の差額がおもなるものと考えております。
  136. 西村榮一

    西村(榮)委員 時間的のずれはありません。アメリカの会計年度において示されている統計によつても、時間的なずれはありません。ただ私の質問したい点は、この中に沖繩に対する支出が入つているかどうかという点と、アメリカの管理に対してその費用が入つているかどうかという点だけなのであります。私から言わせますならば、この点は單に主計的な立場でなしに、政治的な大きな問題です。対日援助費の中から、沖繩の費用を支拂つているのかどうかということは、政治的に見て大きな問題であつて、もしも対日援助費の中から、沖縄に対する費用が拂われておるということであれば、これは将来講和会議のときにおいて、われわれは大いに考慮しなければならないのであります。この点大蔵大臣はお調べになつておるのか。  同時に第二点においては、アメリカの進駐軍の費用を拂つているというお話でありましたが、これは一体いかなる根拠において、この対日援助費の中から支拂わなければならないのか。少くともアメリカの費用というものは、終戰処理費の中に見積られておる。同時にアメリカ占領軍費というものは、アメリカ国家の予算の中から支拂われておる。一体なぜ対日援助費の中から、その一〇%近い莫大な金額が、その費用に充当せられなければならぬのかという点を、もつと合理的に明らかにしていただきたい。
  137. 池田勇人

    池田国務大臣 琉球における費用は入つている場合もあるし、入つていない場合もあるということを聞いておりますが、これは私は今つまびらかにいたしておりません。しかして占領軍の行政費につきましては、各国ともその占領軍費の中から出すことにいたしておるのであります。従いまして占領軍のこちらへ来ております軍人あるいは軍属、その他の文官に対しましても、月給は対日援助費の中から出ているのであります。こちらの終戰処理費は、日本人で向うの労務に従事している者の給料、あるいは土木工事や鉄道、通信の費用等であります。
  138. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は今の御答弁でまことにびつくりしたのであります。日本の金額にして五百億円、大蔵省のこの統計によりますと、約四億ドルの相違を来しておる。これは莫大な数字です。安定本部が示された統計の中においても、約一〇%の相違を来しております。最低五百億円、この金額が一体どこに使われておるかということが、いまだに大蔵大臣にわからない。沖繩に使われておる場合もあるし、使われていない場合もあるとか、五百億円の金がどうなつておるかその実体がわからぬということで、大蔵大臣がはたして勤まるのですか。失礼だが、ドツジ氏の祕書官ならば勤まるけれども、日本大蔵大臣としては絶対不向きだと思うが、御見解はいかがですか。
  139. 池田勇人

    池田国務大臣 対日援助費の使用はアメリカの自由であります。従いまして、これをどこへ使つておるか、使い方のいい悪いという問題をわれわれは申し上げることはできません。
  140. 西村榮一

    西村(榮)委員 対日援助費というものは日本を援助する費用であります。使い道がアメリカの自由であるというならば、その法律はどこにありますか。法律の根拠を明らかにしていただきたい。
  141. 池田勇人

    池田国務大臣 アメリカの議会で協賛を経たものから、アメリカが自分で使います対日援助費を引きましで、しかる後に対日援助費として日本へ出すものを向うで計算して出すのであります。
  142. 西村榮一

    西村(榮)委員 しからば予算額と実際に輸入された額が、かくも莫大な数字の差があるということについて、これを研究し、かつまた先方に照会するということも、日本政府には権限がないのですか。
  143. 池田勇人

    池田国務大臣 向うで割当てられた金額を向うが先取りいたしまして、しかる後に日本の援助資金に充てるのであります。この問題につきましては、技術的な問題でありますから、主計局長からお答えいたさせます。
  144. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 西村さんは、対日援助の向うの予算お話なつておるようでありますが、一九四六年の七月から翌年の六月まで、それが三億一千四百万ドル、それからその次の一九四七年度が四億五千万ドル、それから一九四八年度が五億一千百万ドル、それから昨年の七月から今年の六月までの分が四億四千五百万ドル。「国の予算」という本に四億九千五百万ドルとなつておると思いますが、これはミスプリントかと存じます。これが年度の関係がありまして、実際日本の会計年度に入つて参ります場合には、ずつと様子がかわつて参ります。二十四年度で申し上げますと、向うから輸入されるものは四億九千七百五十万ドル、しかし実際にこれは輸入されまして、二月末までに繰入れることになつておりますから、二十四年度で申しますと、この繰入れの額は四億一千五百万ドルということで、違うのでありまして、金で申しますと、千四百九十四億、その差額の分は翌年に、日本の金で申しますと二百九十六億というものがずれる。二十五年度でこれを見ますと、前年に輸入されておりますけれども、ずれる分が今の二百九十六億ある。それから前年度の見返り資金で二十五年度に繰越されるものが二百三十八億——前年度の見返り資金で、一応会計に入つておるけれども、翌年に繰越されるものが二百三十八億ある。それから年度内の輸入が三億三千五百万ドル、年度内繰入れが一億七千九百万ドルで、これが千七億、それから運用収入というようなことで計算されておるのでありまして、アメリカの予算の今年の七月から来年の六月までの分は、一応新聞には報道が出ておりましたが、いまだ決定いたしておりません。今決定しておりますものは、去年の七月から今年の六月までの会計年度の分、これをおつしやつておるわけでありますが、現実に日本の会計年度に入つて参ります関係は、先ほど大臣が申し上げられました通りに、時間のずれ、向うの買付の関係、そういつたような関係で非常に違つて来るわけであります。
  145. 西村榮一

    西村(榮)委員 これがミス・プリントだというならば、ミス・プリントがきわめて丁寧過ぎます。同時に前後の状態からいつて、これは誤りではありません。同時に、この金額に若干の相違はあるけれども、経済安定本部の輸入された実績においても一〇%の相違が来ておる。こういうふうな点を考えると、私はこれはぜひとも大蔵大臣並びに安本長官は、この莫大な数字は、アメリカの政府、アメリカの国民日本国民を援助してやろう、救済してやろうという意味において予算を組まれたのでありますから、これが実際に入つておるかどうかという点は、一応照会し、かつまたその使途についてお伺いされるだけの義務が日本政府にある。特に私が問わんとするところは、この費用の中から沖繩に向つて、その費用が流用されておるかどうかということについて、将来国政を論ずる上において、あるいは講和会議において、われわれがものを考える上において、重大なポイントであるから、これを問いただしておくことは、日本政府の当然の責任だと思う。ぜひお願いしたい。同時に私は、先ほど大蔵大臣は、私の出した不渡手形の件数に対して、統計が誤りであるということをおつしやつたのでありますが、同じような資料が、今私のところにまわつて参りましたが、大蔵省の発行しておる財政金融統計月報第三号に同じような数字が出ている。主計局長に申し上げておきますが、ページは二十九ページであります。これはあなたの方から出した統計であります。よくごらんなさい。これは誤りですか。これが誤りであれば、世人を惑わすような統計は、通産省といわず、大蔵省といわず、お出しにならぬ方がよろしい。これは手形交換所の統計とぴつたり一致しておる。これは大蔵省の方に上げましよう。  最後に私は、私の先ほど来の質問の中ではつきりいたしたことは、千二百八十六億円という本年の国債償還資金というものは、何ら法的に根拠がないものである、あるいは財政上の根拠がないものであるということが明らかになつたのであります。同時に、日本の中小商工業者のみならず、社会全体が不安と動揺の中にあり、特に労働者、中小商工業者の状態、一般の雇用量の減退からいつて、実に日本は縮小再生産の過程を急速に歩んで、まさに経済恐慌の前夜にあるということが明らかになつたのであります。アメリカは国民所得に匹敵する国債を保有しておる。イギリスは国民所得の三倍の国債を保有しておる。しかるに日本は、この貧弱な中に、国民所得の一割二分しか国債を保有しておらない。これは大蔵大臣がしばしば、日本とアメリカとは違う、戰勝国と戰敗国とは違うということを先ほど来お述べになつたのでありますが、この米英両国と日本との相違というものがどこにあるかということは、いくさに勝つた国と負けた国との相違はありますけれども、経済的に見れば、アメリカにせよ、イギリスにせよ、生産施設は無きずであります。国土はそのままであります。しかるに日本は、生産施設は壊滅の状態であり、国土は壊滅的な打撃を受けて、これを復興しなければならぬ、復興するには資金がいる。従つて今日においてわれわれがとるべき均衡財政というものは、この窮迫して窮乏のどん底にあえいでおる多数の国民、あるいは長期の設備改善資金あるいは運転資金に融資を待望しておる日本産業界から、なお資金を取上げて、何ら法制的は、あるいは財政的な必要に迫られない多額の金額を、今日の財政難、金融難の中から、古い債務の償還に充てなければならぬというところの理由はないのであります。こいねがわくは、私はこれらの日本経済の現実を直視されて、大蔵大臣がこの予算案というものを修正して、古い借金を返そうという、この一千二百億円のうち、三分の二あるいは三分の一をさいて、これを中小商工業者の対策におまわしになるということのお考えがないか、あるいは日本産業界の設備資金におまわしになるということのお考えはないか、この点をお伺いいたしたい。  同時に私は、自分も時間がございませんから、結論として申し上げますが、率直に申しますならば、昨年三月、四月、ドツジ氏が日本の経済の方針並びに日本の財政の均衡をとるために、かくあるべしという指針を與えられたのでありますが、私はこのドツジ氏の均衡財政、ドヅジ氏の日本経済の建直しに対する至誠と熱意に対しては、敬意を表するものでありますけれども、これは日本実情を十分わきまえざる結果、善意なる忠告がかえつて悪い結果を今日招来するのではないか。先ほど池田大蔵大臣は、シヤウプ勧告といえども日本実情に適せざるものは、これを拒否するの、だということの、はつきりした御言明があつたのでありますが、同様にドツジ氏の処方箋にいたしましても、日本の現実に適せざるものがありといたしますれば、これを修正するだけの大勇を今日の財政当局は持つてもらいたい。少くともドツジ氏が昨年来られたときのアメリカの情勢と、ドツジ氏が立つた後のアメリカの情勢というものは、アメリカの近来の財政政策というものは一変しております。これは私は、賢明な池田君に申し上げるまでもなく、御存じたろうと思いますが、アメリカは昨年度の予算において五十億ドルの赤字を覚悟いたしております。七十億ドルの増税案を放棄いたしております。同時にアメリカは、戰時中アメリカの国民の戰時利得税七百六十億ドルというものが、そのまま待機されておるのでありまして、これを、戰後におけるパニックを食いとめるために、国民の一大購買力を培養するために、アメリカ政府は五十億ドルという赤字を覚悟し、七十億ドルという増税を放棄し、同時に七百億ドルの潜在購買力を動員する政策をとつて、アメリカの経済は一大転換期に入つて来たのであります。従つてドツジ氏の来られたときの日本経済に対する感覚というものは、アメリカの経済転換前の感覚をもつて日本の今日の牧支均衡を示唆されたのでありまして、しかも今日において、七〇%の現在の生産力から申しますならば、これは戰前の国民一人当り四九%の生産力であります。しかもこの過小生産力の中にあつて日本は国土の復興と設備資金の改善と多くの産業資金がいる中において、莫大な金額を吸收されて行くということは、これは国民経済の根幹を枯らすものであるということをいわざるを得ないのでありまして、この意味において、せつかくドツジ氏が示されたこの均衡財政というものは、私は近く破綻するということをここに断言せざるを得ないのであります。あたかもこれは二十歳の青年に対して、むりに十二歳の子供の着物を着せておくようなもので、必ずこれはほころびる。そのほころびは不渡手形の激増になり、中小企業の倒産となり、金融の行き詰まりとなつて、池田大蔵大臣の楽観を裏切つて、前途はなはだ憂慮にたえざる事態ができる。こういうふうなことを考えますならば、政党政派にとらわれず、ここにドツジ処方箋の修正というものをお考えなつてはどうか。私といたしましては、ただいまの大蔵大臣の御説明、あるいは従来の御説明から申しますならば、このドツジ処方箋を堅持せられるという現内閣の方針は、はなはだ理解に苦しむのであります。これは財政上からいつて、かようなむりな均衡財政——その年度の均衡がとれさえすればよいのであつて、今日国土の回復、生産設備に対しては、古い借金を返すよりもその方に振り向けなければならない、もつて国民経済の将来の基盤を確立しなければならぬということは、これは経済の常道である。にもかかわらず国民経済の基盤を崩壊せしめて、今日の收奪的な均衡財政をとるということは、これは日本の健全な国民生活の発展をこいねがう立場から言えば、常識上私は判断に苦しむものでありまして、ことに日本経済の将来の国際的なあり方について、別な政治的な意図によつて、この窮迫せる財政になお拍車をかけようとするならばいざしらず、財政の健全化あるいは財政の常識から言いますならば、今日のようなこのひどい超均衡財政というものは、私どもは理解できないのであります。従つて私はこの際大蔵大臣に対しまして、以上の点を明らかにして、このドツジ処方箋を修正されるだけの考えはないかどうかを伺いたい。
  146. 池田勇人

    池田国務大臣 大蔵省編集の財政金融統計月報はいらないとおつしやいますが、これをごらんくださいますと、多分あなたのと同じだと思います。確かに單位は枚数千枚、金額百万円と書いてあります。これは総額のところを言つているのでありまして、内訳はこの單位の分が適用になりません。不渡手形が全体の一割七分というようなことは常識上ないのであります。これは西村さんのように、金融界に長くおられた方ならば、不渡手形が一割七分ということは、世界いまだかつてないことでございまして、金融恐慌のような場合はいざしらず、これはひとつ大蔵省の編集をお捨てにならないようによくごらん願いたいと思います。私の申し上げました通りに、財政金融月報をごらんいただくと、金額で万分の七、枚数で万分の四であるのであります。  次に問題の債務償還の問題でありますが、これは今国会の中心問題になつておるのであります。私はドツジ氏にいたしましても、シヤウプ氏にいたしましても、自分の信念に反することは聞いておりません。シヤウプ勧告案を訂正いたしますと同時に、ドツジ氏にいたしましても、日本の自立経済を遅らせたり、あるいは阻害するようなものにつきましては、断固として反対しておることは御承知おき願いたいと思います。今ドツジの祕書官とかなんとか言われましたが、私は西村さんにしてこの言ありやと思います。決して秘書官ではありません。私も日本国民であります。日本の自立のために身命を賭しておるのであります。従いまして、債務償還の千二百八十億円のうち、財政法に基きますほかのものについて、何ゆえこういうようにいたしたかということを私詳しく申し上げたいと思います。  御承知通りに、安本の計算によりますと、輸入が十億ドル、輸出が六億何ぼで、四億ドルに近いものは日本の経済としては向うから借金しておるのであります。対日援助資金でございます。しかしてこの四億ドルを今の間にできるだけ活用いたしまして、日本の経済の自立をはかりたいというのが私の念願であります。十年なり十五年なり四億ドルの援助がありますならば、私は安閑としてこの金を減税に充て、あるいは国民生活の向上に使いだい。しかし国民経済の向上もさることながら、四億ドルのあれがなくなつたことを考えますと、国民生活の向上に全部充てるわけに行きません。今の間に早く産業を復興して、経済自立態勢を整えなければならぬというのが念願であるのでありまする聞くところによりますと、五〇ないし五一年は三億何ぼと計算しておりますが、この七月までの国会でこれが三億ドル切れるかもわかりません。また伝えられるところによりますと、この五〇、五一の年度の分の半分が五一、五二になるということであります。こういうことになりますと、私は二、三年のうちになくなつて来ると思う。もしなくなつたときに、日本国民生活水準を上げたならば、四億ドルの食糧、あるいは原材料をどの金で輸入いたしますか。アメリカの援助がなくなつたときにどの金で輸入するか。その輸入資金は、再び国民に重税を課して、国民生活水準をそのときにうんと下げなければ、拂うことができないのであります。従いまして、私は今援助のある間にできるだけの減税をすると同時に、とにかく早急に自立経済を立つて、援助がなぐなつても国民が非常な塗炭の苦しみにならないように、片一方は徐々に生活水準を上げるべく減税をしながら、片一方では債務償還をして、そうして企業の基盤を確実にしようとするのが私の考えであるのであります。お話通りに、あなたは債務償還を減税に充てろとはおつしやつておりませんから、減税の問題は今の分で御了承願いますが、この債務償還をいたしますのは即産業資金に向けるのであります。銀行を通じまして産業資金に充てるのであります。問題は、債務償還をせずに政府が直接に産業に投資するか、あるいはこれを銀行に渡して国の債務を減らして、銀行をもつて創意くふうによつて産業に投資さすか、この問題であります。従いまして私は、五百億円のこれを償還して、産業の復興資金銀行の創意くふうで出ざすと同時に、政府は直接投資として四百億円以上を計画いたしておるのであります。問題は政府が出すのがいいか、民間が出すのがいいかという点になると、われわれ自由主義、資本、主義を奉ずる者は、原則として民間銀行に出さすのがいい。しかしてその出し方につきましては金融政策でやる、こう言つているのであります。もしこれを税の方に充てろと言つたならば、減税いたしまして生活水準を上げますと、四億ドルの輸入ができなくなつた場合をお考え願いたいと思うのであります。そこで今ここ二、三年のうちになくなることをわれわれ覚悟しなければなりませんが、生活水準を減税によつて上げながら、早急に自立経済の態勢を整えようといたしておるのであります。だから私は、どつちを先にするかと言えば、まずしばらく自立経済を先にして、国民生活水準を徐々に上げるということでがまんしていただきたいと思います。これで御了承を得たと思いますが、もし何だつたらまた詳しくお答えいたします。
  147. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は打切るつもりでありましたけれども、最後の御答弁によつて、簡軍に一、二点、池田氏の考え方の錯覚を指摘しておきたいと思う。私は、対日援助費が打切られたときに日本経済が一体どうなるかということは、あなたほどに心配いたしておりません。万やむを得なければ、これがいつアメリカの都合で打切られても、日本の態勢は整えて行くべきである。同時にこれは軍に強がりだけを言つておるのではないのでありまして、先ほども申しましたように、アメリカが日本の経済を封鎖して、日本を占領して、そうして講和会議の前において、日本の自由なる海外活動に対して制限を加えておる間は、これはポツダム宣言の條項に従つて、対日援助というのは占領軍の一種の義務であるのであります。同時に日本はこの終戰條項の受諾とともに、その占領軍費を終戰処理費の名目のもとに支弁するということも、これは日本の義務であります。従つて対日援助費と終戰処理費とは性質は違いますけれども、大体金額はにらみ合されておるのであります。従つて対日援助費が打切られるときには、当然終戰処理費もそのまま私は減額されてしかるべきだと考えておるのであります。私は日本国民があなたのお言葉によつて、過般来重大なる錯覚を起しておるととは、対日援助費はもらい放しであるという立場。日本国民はやせても枯れてもこじき根性は持つておりません。終戰処理費を拂つておるじやありませんか。この矜恃を日本の政治家がこうして持ち得ない。私はこの点に対して対日援助費がある間に、何とか処理したいというあなたの御苦心を了察いたしますが、むしろ問題は片方において終戰処理費を拂つておるのでありますから、これはとんとん。従つて日本の経済は——この二つの項目はとんとんといたしますならば、今日古い借金を拂つておるだけは、これは日本国民はよけい努力をしておるのであります。その努力をしておるが、その努力の結晶を、将来日本の経済の基盤を養うためにその方へ資金を注ぎ込む方が、対日援助費がなくなつたときに、日本の自立経済を日本国民が汗とあぶらの力によつて、完成しているじやないかということを私は申し上げたいのであります。この点は忘れないように願いたいのとともに、日本国民はこじきではありませんから、対日援助費にいつまでもすがつていようとは思いません。これがなくなるときには、終戰処理費についても相当のにらみ合せのこの減額に対して、要請するところの必要があるのじやないか、同時にあなたが言われた一つの重大な根本的な誤りは、千二百幾らのものは旧債を返す、しかしそれは銀行を通じて産業資金へ再び持つて行くんだという御説明がございましたが、これはあなたは現在の銀行実情を知らないから、そういうふうな楽観論をお述べになる。今日の銀行は場合によつて預金よりも貸出金の方が先であります。越えておる。健全な銀行にしても貸付は預金の八〇%ないし八五%。同町に今度は国債というものの再担保の源泉がなくなりますならばへ銀行は何をもつて取付その他に対する自衛工作を講じますか。これに対して当然銀行はもどつて来た資金を貸出しするよりも、むしろ銀行自体の自衛上預金の内容を豊富にしておきたいということは、銀行業者として自衛上当然なんだ。従つてその額だけが産業資金にまわつて来るとお考えになるならば、これは故意にする楽観であるといわなければなりません。同時にもう一つ申し上げたいことは、今日の銀行業者の能力であります。あなたは先般株を買わない銀行業者はけしからぬ、日本銀行の條例を改正せしめる前に、まず第一に銀行自身が証舞を持つべきであるというお言葉をもつて市中銀行を非難されたのでありますが、これはむりな小言であります。今日の銀行はそれだけの能力がありません。同時に今日の銀行は失礼ながら大体において昔のように日本産業をどうする、こうするという見わけをつけて、それに資金を投ずる、あるいは今日苦しいが三年後、五年後に役に立つ産業であるという識別、鑑別する能力が、今日の銀行経営業者の中にあるかどうか、同時に現在の銀行業者は、十数年にわたる満洲事変以来日本の統制経済のもとに育てられた銀行業者が今日の首脳部を占めておる。この占めている銀行業者が何かにたよつて——政府の命令か、政府の方針か何かによりどころがなければ、貸付することができないというのが従来の習慣である。自由主義経済のもとに育つていない、一夜にして自由主義経済のその昔のそのままの機構銀行業者に與えようとしても、多年訓練した結果、それが日本産業を育成するだげの能力は、銀行には遺憾ながらないのであります。同時に私は大蔵省政策の中においても、この点考慮してないというのは一体どこにあるかというと、金利の策定です。今日の最高金利一割と誉めておる。しかしながら一口一千万円貸すところの大産業に対する融資なり一他に一口五十万円の中小商工業者に貸すところの融資も、大体貸出金利は同じであります。手数料は違い、信用方は違つても、貸付金利は大体同じであります。従つてこの中小商工業者に対する対策、あるいは立ち遅れた産業に対し、信用力の稀薄の産業に対して、危険率と煩瑣な手数を冒しても、銀行は貸出しするというためには、この小さいものにしてかつ信用力の薄いものに対しては、少し高い金利を認めてやるという政策がなければ、今日の銀行はこまかい貸付はきらうのであります。こういうふうなこまかい点を考えてみましても——それは一例でありますけれども、これらの点を考えてみましても、償還されたる国家の財政力は、再び市中銀行を通じて産業界に持つて行くんだ、行けるのだということは、あまりにも楽観過ぎるということを申し上げておかざるを得ません。
  148. 池田勇人

    池田国務大臣 西村君は終戰処理費があるから対日援助はなくなつてもいい、見合いに経済的にはなるとおつしやいますが、終戰処理費の内容をごらんになつたならば、私はそうは言えないと思うのであります。さしむき四億ドルの輸入超過をどういうふうにしてまかない得ましよう。終戰処理費の内容は二十数万人の日本人労務者、汽車賃あるいぼ郵便料金等であるのであります。私はこういうことを考えますと、終戰処理費が減るから、あれで大丈夫だというのは、これこそ楽観過ぎる議論だと思うのであります。  次にまた債務償還した金が民間産業資金にまわるというのは、楽観だとおつしやいますが、これは今まで金融機構がこれにマッチしなか。たからであります。債務償還する以上は、銀行の方は、銀行の償還資金金融債を発行いたしまして、銀行の責任によらず、特殊の金融機関の責任によつて出すのであります。従いましてこれがどんどん出るようになりますれば、預金に対しまする貸出しの割合も低下して来ると考えるのであります。今の私の考えておりますあの金融制度のもとにおきましては、償還した金はほとんど全部産業界にまわることを、私は確信いたしておるのであります。
  149. 西村榮一

    西村(榮)委員 これで結論をつけます。いろいろ御高説を拝聴いたしました。こいねがわくは日本大蔵大臣として、終戰処理費が十五億ドルという莫大な金額に上つておりながら、この中に沖繩に一体幾ら使われておるかどうかというふうな研究も怠り、かつまた一〇%の莫大な費用が一体どこに消えておるかという真相も究明せずして、あまり池田さんも大きなことを言わないように願いたい。同時にそれらを研究していただきたい。こう希望を述べて私は質問を打切ります。
  150. 植原悦二郎

    ○植原委員長 中曽根康弘君。
  151. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 ただいま池田大蔵大臣から名論卓説を承りましたが、私は時間の関係相当重要な問題をこの際申し上げてみたい。私がこれから申し上げることによつて、吉田内閣は顛覆するかもしれない。問題は農林大臣に関係したことでありますから、農林大臣と会計検査院の長官にお越しを願いたい。  農林大臣は昭和二十三年でありますが、あなたの在職中あるいは前の周東農林大臣のときにおいて、農林省が特別会計について違法行為をやつているという事実を御存じであるか御存じでないか、まず承りたいと思います。
  152. 森幸太郎

    ○森国務大臣 抽象的な御質問でありますが、そういうことは決してないと思います。
  153. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 昭和二十三年度決算検査報告というのがあります。その百八十二ページ五百二項に「予算を越えて債務を負担したもの」という農林省の違法事項が摘発されております。その内容は要するに薪炭需給特別会計の五十五億円のわくを越えて、農林大臣あるいはその関係官吏が金を支出した、その額が十億円以上に上つているという事実であります。この金は一体どの期間に出したかということを大体検討してみると、昭和二十三年の十月ごろから翌年の四月ぐらいにわたつている。周東農林大臣とあなたの在任期間にわたつている。その金はどこに使われたかというと、不法に支出された金ほ薪炭業者その他に出ている。しかも聞くところによると、周東農林大臣は金がないということを知りながら、ある目的のために金を出して抑えばよろしいと言つて部下にさしずしたという情報すらある。この間の状況については会計検査院において克明に調べてありますから、会計検査院長においてその内容を詳細にここで御説明願いたい。
  154. 佐藤基

    ○佐藤説明員 ただいまのお話でありますが、薪炭需給調節特別会計につきましてわれわれの方で検査したのでありますが、非常に木炭事情が窮迫しておつた関係で、いろいろ当局者の御苦心のあとは察せられるのでありますが、ただいま申されましたように、検査報告におきまして二十三年度中において予算を越えて薪炭を購入して、その代金が未拂いとなつたものが約十億円あるということは、これに書いてある通りであります。結局国権の最高の機関である国会におきまして議決された予算というものが、適正に行われなければならぬ。われわれは職務上におきまして、それを確保するために努力しておるのでありますが、本件につきましてはさまつた予算があるにかかわらず、いろいろ事情があつたと思いますが、その予算を超過して買うという契約をしておる、そのため予算を越え出ておるので、予算を越えた限度においては支拂いができない。こういう事実がここに書いてあるのであります。
  155. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 ただいまの会計検査院長の説明の通りである。もう一件ある。それは百八十六ページ、資金に関して「法律に違反して資金を借り入れたもの」として、一日最高超過額三十九億五千万円という金が出ておる。しかも五千二百五十八万円という利子を支拂つている。この問題も農林大臣は御存じないのか。農林大臣、今あなたは不法行為はないということをおつしやつたが、会計検査院で摘発されて、足元に火がついている今になつても御存じないのか、それで農林大臣としての職責が勤まりますか。
  156. 森幸太郎

    ○森国務大臣 この問題につきましては、さきの国会におきまして、事務当局とじてその発生した事情を申し上げておつたと存じますが、私といたしましては、その当時の詳細をはつきりと承知いたしておらないのでありますが、前国会におきまして、事務当局、政府委員より、その事情やむを得ず薪炭業者に対して、一時これを支拂わなければならなかつたというその当時の苦況を、この委員会において申し上げた次第と考えておるわけであります。  私といたしましては、検査院の報告が、不当であるということを認識されましたことにつきましては、その責任についても考えざるを得ないわけでありまして、前国会におきましても、事務当局からその点について、適当なる釈明をいたしておつたと存じております。
  157. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 この問題の事情を会計検査院からもう少し克明に知りたいと思うのであります。おそらくあの二月、三月ころは、各県別の木炭の買入れのわくをきめて、ある一定限度を越えて買つてはならぬということを指示しておつた。それにもかかわらず超過して買入れたという事実があるのであります。二十二年の十月から二十三年の四月にかけて、いかなるやむを得ざる事情があつてこれだけの超過したことをやつたか。これば不当行為でありませんよ、不法行為ですよ。法律違反、憲法違反である。なぜそういうことをおやりになつたか。会計検査院からもう少し克明に知らせていただきたい。あなたが詳細を知らなければ政府委員をして説明させてもさしつかえありません。
  158. 佐藤基

    ○佐藤説明員 ただいまの法で定められた薪炭証券買入金一時借入金の限度があります。その限度が五十五億となつておるのでありますが、その五十五億を超過して債務を負担した、その債務に対する利子が先ほど申されましたように五千数百万円であります。この問題は多少法律の解釈にも関する問題でありまして、当時農林省としては薪炭の需給が逼迫しておつたという関係もありまして、どんどん買う、生産者に対してもどんどんつくれという事情にあつたのです。ところが暖冬異変と申しますか、そういう関係も手伝つて、買つたものが右から左に売れない。そこで滞貨ができる。滞貨に対する資金がいるということになつた。その際に日本銀行、農林中央金庫の資金をもつて立てかえ支拂いさせた薪炭購入代金があつたのでありますが、この代金は結局薪炭需給調節特別会計としては借入金ではなくして、商品代の支拂い未済金であるというふうに農林当局は考えておられたのであります。しかしながらこの立てかえ金も、やはり一時借入金を返すべきものでありますから、そういたしますと、薪炭証券なりその他の借入金を通算してこの五十五億に対してどういうことになるかという問題であります。通算いたしますと、先ほど申しました通り五十五億を超過した。従つてその超過額は法に定めた最高限度を越えて借りたという事実になるわけであります。
  159. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 法務総裁にお尋ねいたしますが、ただいま検査院長も申されましたように、これは違法行為であると言つておる。ところが農林省当局の一部の説明によると、これは立てかえしてもらつたのだ、未拂代金になつたのだ、従つてそれは法律違反ではない、こういうような答弁をしておる向きもあるのです。この二つの事犯、一つは法律に違反して資金を借りたという問題と、予算を越えて債務を負担したというこの二つの事犯は、あなたは法務府の総裁としてどういうふうに御解釈になるか、会計検査院が判決したその裁断を正当と認めるか、あるいはしからずと認めるか、御感想を承りたい。
  160. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 ただいまの問題はいろいろ解釈の仕方もあると考えております。しかしこれは犯罪ではないのでありまして、その最後の決定は国会がお考えなつてしかるべきことと思います。
  161. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そのことは当然のことで、何もほかのことを考えておつたのではない。ただ法務総裁として自分の内閣がこういう不始末をしているのを、あなたはどういうふうに判定を下しているか、という参考意見を聞きたいと思つた……。(「自分の内閣ではない、片山内閣からずつと続いて来てい出る。」「社会党内閣じやないか。」と呼ぶ者あり)これを出したのは昭和二十二年の十月から翌年の四月までです。そこでこの事件に関する責任大臣は一体どなたでありますか、会計検査院長にお聞きしたいと思います。
  162. 佐藤基

    ○佐藤説明員 支出の最高限度を越えたときの農林大臣であります。
  163. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 だれです。名前は…。
  164. 佐藤基

    ○佐藤説明員 どなたでしたか、ちよつと名前は忘れました。
  165. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 農林大臣に伺いますが、それはだれです。それからこの責任者になつている関係官吏はだれとだれです。
  166. 森幸太郎

    ○森国務大臣 お答えいたしますが、この薪炭特別会計の赤字につきましては、前国会でも申しました通り、歴代の内閣がたなおろしをせずして、そのままに放置して来ておるという結果であります。私は昨年の二月に就任をいたしましてこの赤字のあることを承知して、さつそく整理に着手いたしたのであります。今中曽根委員の言われる昭和二十二年の十月から四月までと申しますと、周東農林大臣のもう一つ前の農林大臣であつたと思います。そのときにこの問題が発生していたと思います。しかしこの赤字公債というのは要するに長い間、十箇年間の経理が整理されておらなかつたのでありまして、たしか私が就任したときに、この問題の整理に着手したようなわけでありまして、今のお話の責任大臣というと、周東農林大臣以前の大臣であつたと考えております。
  167. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そうではない。赤字が出て来たのはあるいは終戰後の歴代の内閣の罪によるかもしれませんけれども、オーバーして買つたということが正式に表に出て来ているのは、昭和二十四年の三号。昭和二十四年の二月にはそれ以上オーバーしたと書いてある。しかもこの二月はいつであるかといえば、議会が開かれているときです。五十五億円のわくが少いというならば、議会に改正案を提出して、国会の承認を求めてこれを修正してやろうとするならばよろしい。議会が開かれているときに、一大臣、一官僚がこのような国会を無視した態度をとるということは、絶対に国会自体として放任できないことである。民主自由党の諸君はいろいろ言うが、民主自由党のために、私はこれを惜しむものであります。しかもこのように会計検査院から適法に指摘されておる。一時立てかえ金でないというけれども、会計検査院の指摘によれば、一時立てかえ金であると書いてある、借入金であると書いてある。しかも法律違反、あるいは予算を越えて負担したという、予算違反という事態を起しておる。このことに関して農林大臣は責任を感ずると先ほど言われた。国会に対して責任を感ずるだろうと思う。一体どういう処置を自分でおとりになるつもりか、農林大臣に承りたい。
  168. 森幸太郎

    ○森国務大臣 お答えいたします。この赤字公債を発見いたしまして、農林大臣としてはすみやかにこの赤字の内容を整理して、そして国民にこの内容を明らかにし、一日も早くこの特別会計の閉鎖をすべきことが私の責任であると感じて、今日までこれをやつて来たのであります。
  169. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 それだけで責任は解除されるのではない。昭和二十四年の二月にこういうことをやつたとちやんと書いてある。そのときの農林大臣は森農林大臣でしよう。あなたもそうでないとは否定すまい。しかもそのときは国会が開会されているときである。吉田内閣は憲政の常道をつくるとか、議会を尊重すると言つておられたが、総理大臣がやつていることは絶対に議会を尊重しているとは言えない。そういう風潮が下僚にもうつつて、農林大臣がこういうことをやり、官吏がこういうことをやつておる。しかも世の中はどうなつておるかというと、二十四年からは世の中はデフレで、金詰まりで一銭一厘といえども大事にしなければならぬというときです。そういうときに、一農林省やあるいは農林省の官吏が、三十九億に及ぶ金を黙つて使うとか、あるいは十億に及ぶ予算外支出をやるということは、断じてこれは国会の将来のためにも放任することができない問題である。農林大臣はあまり責任を痛感せられないようであるけれども、これは日本の民主主義や国政にとつて大事なことです。基本的な問題である。私はもし森農林大臣がほんとうに憲政の常道を守られると言われるならば、当然適当なる、勇退する程度の責任をとるべきだろうと思う。農林大臣はそういう責任をとる所信があるかどうか。  第二には、それをやつた関係官吏をどういうふうに処置するのか。私は会計検査院に行つて調べてみた。そうすると、なるほど今までの例によれば、ある役所で予算がなかつたのだけれども二千万円の官舎をつくつたとか、そういう軽微な事態は間々あつた。しかし十億円に及ぶ予算外支出をやつたということは前代未聞のことです。こういう前代未聞のことを、今までのような單なる行政事務の間違い程度考えておるということは私は非常に不満である。農林大臣は自分の責任をどうするか、関係官吏をどのように処置するか、まずその問題を聞きたいと思う。
  170. 森幸太郎

    ○森国務大臣 なすべからざることは金額の大小を論ずるわけではありません。しかしそのことの発生いたしましたのは、三十一年、二年の間における事業進行において発生した事柄であつて、それが予算を超過した大量生産を命令する、ことにあの当時は御承知の暖冬異変で炭は売れない、炭はたくさん出て来るというので、生産者が非常に資金の面で困りました。そうして御承知通り、木炭は政府以外にこれを売り渡すことができないという條件のもとに、生産させたものでありますから、その生産状況によりましては、政府として生産者に対して、全部これを買い上げてやらなければならない責任があるのであります。従つて予算関係上これを一時立かえ拂いとしての考え方で事務当局が処理いたしたのは、生産者の苦況を察しての処置と考えるのでありますが、もしこれが法的において責任をとるべきものであれば、当然責任者として処置すべきことはもちろんであります。
  171. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 会計検査院長お尋ねいたしますが、今までこういうような事態がどの程度のことがあつたか、過去の先例、それからそのような先例の場合に、関係官吏や関係省の政治責任者はどういう責任を今までとつて来ておるか。その明治以来の先例について承りたい。
  172. 佐藤基

    ○佐藤説明員 ただいまめ明治以来の先例とおつしやいますが、会計検査院法も大分かわつておりますし、あまり古いことは知りません。ただ現在の会計検査院法、いわゆる新憲法になつてからの会計検査院法でありますが、そういうものにおきましては、国の会計官吏が故意または重大な過失で国損を與えたという場合におきましては、われわれの方でその責任者に対し懲戒要求を本属長官に要求しております。そういうことはめつたにありませんけれども——と申しますのは官吏制度の根本問題に触れるのでありますが、ことに会計等におきましてだれが責任者であるか、責任の所在というものが、遺憾ながらはつきりしない場合が非常に多いのであります。それでだれが責任者かということは、実は非常にわかりにくいのでありますが、若干の事件につきましてはつきりしたのもあります。それである役所の責任者に対しまして、懲戒を要求するように本属の大臣に要求しました。その結果懲戒されたということがお手元にある検査報告だ載つております。そういうふうに法律で定められた権限をわれわれはやつておるので、法律に定められた権限は、今申しました通り故意または重大な過失で国損を與えたという場合であります。
  173. 植原悦二郎

    ○植原委員長 中曽根君にちよつと委員長として申し上げます。中曽根君に発言を許してありますので、ことに予算は総合的のものでありますから、あなたの御質問の範囲を私はしいて制限するということはいたしません。けれどもこの問題はすでに農林委員会においてずいぶんむし返し質問された問題であります。また去る臨時議会においてもずいぶん各所において審議されたものであけます。そうして全体の性質からいえばへ予算の問題にあらずして、むしろ決算において当然取扱うべきものだと思います。そうして事は昭和二十一年度から起つたことでありまして、この問題の責任者を問うならば、決算においてなさることがこの問題の本質であります。あえて私はあなたの発言を制限いたすわけではありませんけれども、予算案そのものの審議に対して——特にこの予算案審議は将来のいい慣例になるようにということを、各議員から申し合せてあるのでありますから、それらのことをよく御考慮になつて、しかるべき御処置をとられることが、中曽根君のためにもまことにけつこうなことだと思います。
  174. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 予算委員長予算委員会の委員長でありまして、民自党の委員長ではないはずであります。そのことは十分御承知と思います。しかもこの事態は正式に会計検査院から検査報告として国会に提出されておる。この主務委員会はなるほど決算委員会でやる問題でしよう。しかし十億円に及ぶ金がわけがわからずに、法律や憲法に違反して使われているというならば、予算審議上重大な問題です。しかもこれは政治責任に関する問題であつて、私は予算委員会で堂々と論じでよろしいと思います。私はそういう意味におきまして遠慮会釈なくやるつもりであります。  そこで、民自党の諸君が大分痛いところをつかれたからいういろいろだらぬことを言うようでありますが、とにかくこの問題が三十九億円超過して使われておるということは、昭和三十四年の三月というときでちやんときめられておる。そういうところを無視して煙幕を張られることは、はなはだ遺憾であります。そこで私は会計検査院長に伺いますが、とにかく十億円に及ぶこのような不法支出をいたし、不当支出をしたことが過去においてあつたかどうか、過去において一番額の多かつたものはどれくらいのものだつたか、先例を知らせていただきたい。
  175. 佐藤基

    ○佐藤説明員 遺憾ながらただいま資料を持つておりませんので存じませんが、十億円というような大きな金はきわめて少いというだけは存じております。
  176. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 会計検査院長にお伺いしますが、このような事態をやつたことに対して、会計検査院は所属長官に対して、懲戒の要求をする御意思があるかないか。研究中だとかいつて逃げないで、会計検査院長個人考えでもよろしいから、ここで率直に申していただきたい。
  177. 佐藤基

    ○佐藤説明員 懲戒要求の問題は、先ほど申し上げました通り、責任者に対する懲戒要求である。国損があつたかどうかという事実は、検査の結果きわめて簡單にわかるものであります。しかしながらその国損を生ずるについて、故意または重大な過失があつたかどうか、たれが責任者かということは、個人の責任にも関する問題でありまして、われわれの方でも非常に慎重にやつております。そこで、ただいま二十三年度の報告に出ております不当事項、これに関する国損であつて、それを懲戒要求するのが至当かどうかということは目下研究中であります。先ほど申されましたように、逃げるというわけではないのでありまして、個人の責任に関する問題でありますから、十分愼重にやらなければならぬ。その前の二十三年度の問題につきましても、二十三年度の検査報告事項のうち、いわゆる国損を生じたものにつきまして愼重審議した結果、国会報告も——もちろんそれのみをやつているのではありません。ほかの仕事も忙しいのでありますから、多少時間はかかりますが、数箇月かかつてわれわれの意見を本属長官に通達したという状況であります。
  178. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 農林大臣に伺います。もし会計検査院から、この不法行為を指摘されて、あなたの部下に懲戒要求が来た場合、あなた自体は責任をどういうようにお感じになりますか。この問題について所信をお伺いいたします。
  179. 森幸太郎

    ○森国務大臣 それは、その事故が発生した場合において考慮すべきでありまして、今ただちにこうすべきだということは申し上げかねます。
  180. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 この問題は私は今議会における相当重要な問題であると思います。この場でこれ以上追究することは避けて次の問題に移りますが、ともかく昭和二十三年の秋から昭和二十四年の春にかけて議会はずつと開かれておつた。従つて政府覚悟して法律案の修正やその他で出せば、このような三十九億とか十億というような不当、不法支出ということは回避された。それがなし得たにもかかわらず、国会を無視して官吏がかつてにやつたということは、私は国会の権威のために惜しむのであります。そういう意味で将来国家の名誉を保持するために、この問題は重大な問題として、私は会計検査院においても、農林省の御当局においても、愼重に考慮されて私は進退を決していただきたいと思うのであります。この問題はこれで打切りますが、打切つたということは、これで問題にしないという意味ではありません。  農林大臣がここにおられますから、私は実は大蔵大臣あるいは安本長官に対して経済の基本政策からお伺いしようと思つていたのでありますか、時間の関係で農林大臣から簡單質問いたします。  今年は農政にとつては非常な転換期であつて、私は日本農業というもの、日本の農家というものが生きるか死ぬかという、その死命を制する年になるのではないかと思います。なぜそういうふうになつているかといえば、一つ池田財政の基本的性格がそこから来ている。それからもう一つは海外の経済環境がそこに日本を追い込んでいる。このことから来ていると思うのであります。この前にも申し上げましたように、池田財政のねらいはどこにあるかというと、三百六十円レート、六千三百七円ベース、あるいは四千二百五十円というものをスタンダードにして、しかも昭和二十四年にはその前の年の七割よけい税金をしぼつて、そうして輸出力を増す。この輸出力を増すことによつて外国に物を売つて生活水準の回復に資しよう、こういう政策であつて、言いかえれば敗戰で荒廃した日本経済に、資本主義の冷酷無情な原則を押しつけようという考えであつて従つて大きなひびが弱いもののところに出て来た。それは何であるかというと、農村である。あるいは中小企業である。あるいは勤労者である。この間の事情については、ただいま西村君が述べたような、そういう状態が現実に出て来ている。そういうようなときに、しかもわれわれがここで注目しなければならぬのは、海外の経済環境の変化であります。御承知通り日本の貿易構造というものは、ドル圏からポンド圏に徐々にかわりつつある。すでに日英通商協定によつて三億九千万ドルのバーターが定められている。日タイ通商協定によつて十五万トンの米が入る。あるいは韓国からも六十万トンぐらい米を入れたいという新聞報道もあつた。このようにして通商協定が南方と多くなればなるほど、向うから入つて来るものは何であるかといえば、ゴムや石油を除いては農産物であります。あるいはまたかりにあの小麦協定に参加することができれば、農産物がさらに入つて来る可能性もある。そういうふうに日本の農業というものは、国際農業の冷たいあらしにさらされるという段階なつて来ている。     〔委員長退席、小峯委員長代理着席〕  そういうときに一方日本国内においては、ローガン構想その他によつて自由経済の波が押し寄せているにもかかわらず、農業だけがパリティーとかあるいは米価であるとかいうものによつて縛りつけられている。従つて価格シエーレは広くなるであろうし、またその余波を食らつて、二百五十万から三百万に上る人間が都会から農村に流れ込んでいる。これをかかえて、今までのようなやみ経済を前提とした税金のとり方や、農業資本の使い方や、あるいは米価のきめ方をやつたら、日本の経済は昭和五、六年以前に逆もどりする。もつと悪い環境になるのであります。こういう間に立つて昭和二十五年という年を、農林大臣はどのような抱負をもつて切り開いて行くか。農村のためにサービスをして行くか。農林大臣のまず基本的な国策を御明示願いたい。
  181. 森幸太郎

    ○森国務大臣 お答えいたします。今日の農業政策といたしましては、食糧の問題であります。この食糧問題が海外としわ寄せをするという段階に臨んでいるのでありますが、御承知の主要食糧等は現在統制をいたしているのでありまして、この統制は生産者、消費者、この両者の立場を考慮いたしまして、統制価格によつてつているのでありますから、海外の農産物の価格に対しましては、補給金等の制度によつてこれを処理しているのであります。現在アメリカより支給を受けております以外に、南方諸国より食糧の輸入が可能になつて来ておりますが、これも一に日本の工業生産力のいかんによつて左右せられておりまして日本の現在といたしましては、この国内の食糧、農産物価格、日本の価格は、この統制いたしている現段階においては、今中曽根議員の御心配なさるような段階にはならないと思うのであります。しかしながら将来この援助食糧がなくなつて、そうして自由な貿易をなす場合においては、もちろん海外の物価日本物価をさや寄せをしなければ、そこに競争が起つて行くのであります。その場合においては自主的な貿易の立場でありますから、この農産物価格の維持にあたりましての適当な方策もおのすから考えられます。また関税政策もその当時においてはこれを行うことはできるのでありますが、現在におきましては、統制をいたして生産者と消費者との両者のことを考えて、補給金制度によつてごの調節をかつているのであります。しかしながらできるだけ日本におきまして食糧の自給度を高める、いわゆる生産額をふやすということに、あらゆる政策を施さんといたしているわけであります。
  182. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私が農林大臣にお聞きしたがつたことは、そういう断片的なことではなくて、農業の基本国策をどこへ持つて行くかという問題であります。言いかえれば、今まではマッカーサー司令部の指示によつて農地改革をやつておつた。ことしはしかしさらに進んで農業改革というところまで進まなければならぬ。つまり農業の近代化まで押し進まなければ、もう時期を逸するという問題であります。そのためには一つには資金的な措置が必要である。アメリカの農業が戰時中あれだけ、あるいは一九三三年の三A法以来、あれだけ発展したというのは、資金的な裏づけがあつたからであります。もう一つは農産物の価格シエーレを防止するために、たとえば農産物に対する保護政策、価格支持というような方策が考えられなければならぬ。あるいはさらに税金の問題にしても、今度の税制改革にあたつて、特に農家保護というような構想もめぐらさるべきである。こういう大動脈に関する政策を伺いたかつたのであります。私はその点について個々的に、農休大臣にしからば聞いてみます。  農業改革という意味は、ただいま申しましたように農地の問題だけではない。農業協同組合が今やつぶれそうになつて、農業会から引継いだ資産すらとれない。四十五億円の金を全部の協同組合連合会が要求している。そのように協同組合自体が今やつぶれそうになつている。あるいは農家自体も税金やあるいは過剰人口をかかえて押し詰まつて来ている。こういう場合にはどうしたつて生産を増大して、近代化するという措置をとつてやらなければならない。そのためには資金がいる。しかし見返り資金を出す出すと農林大臣は前の議会から言われておりましたけれども、一体池田木蔵大臣が放出した見返り資金の中で、何パーセントが農業に行つておりますか。池田大蔵大臣が出した中で何パーセントを農業のためにあなたはぶんどつたか。そのパーセンテージをひとつ示していただきたいと思います。
  183. 森幸太郎

    ○森国務大臣 先ほどのお尋ねに対してなお不十分であつたという御質問でありますが、御質問の農業の実体について、なるほど今日の農業が将来においてその姿をかえなければならぬことはもちろんであります。中曽根委員の近代化とおつしやることはどういう意味かわかりませんが、農地改革は決して土地の改革だけで終るものでありません。しかもこの耕地の再分配いたしました日本の農業の将来といたしましては、どうしてもここに協同組合の力によつて資本主義的な立場において農業経営考えて行かなければならぬのであります。今日の農業協同組合は御承知通りばらばらになつておりまして、独立の力がない。これがためにこの農業協同組合に対しましては、適切なる改正を加えまして、そうしてこれを簡素化し、連合会の組織をある程度なし得るように処置いたしたいと考え、近く御審議を願うつもりであります。なお農業資金につきましては先ほどもここで申しました通り、中央農林金庫が唯一の資金機関になつておりますが、この出資金の増額によりまして三百二十億円のわくをもつて、農業金融の面に処したいと考えているわけであります。
  184. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 話が散漫になつていけませんから、私はまず資金の問題から承ります。昭和二十四年度において見返り資金から何パーセント、つまり幾らの金が農業に投資されたか。昭和二十五年度の予算において何パーセント出ているか。まず数字を承りたい。
  185. 池田勇人

    池田国務大臣 二十四年度において、ただいままで見返り資金から農業関係に直接に出した金額はございません。
  186. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 千百億に上る見返り資金が出ておつて、しかも今やもう危機に瀕している農業に対してはいまだ一銭も出ておらぬ。この状態を農林大別は放任してよろしいのでありますか。
  187. 池田勇人

    池田国務大臣 一銭も出ていないということはあなたの独断でございます。見返り資金から債務償還いたした金額は、銀行その他を通じまして農業にも出ております。直接に行つていないということだけであります。
  188. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 打出の小づちが間接にまわつているという話でありますが、銀行やその他でもつて農業に金がまわつている。——農業はそんなにおめでたい、金のある、力のある農業であると思つたならば大間違いであります。しからば昭和二十五年度においてどの程度の金を、見返り資金から直接に出す予定でありますか。
  189. 池田勇人

    池田国務大臣 いろいろな機会で申し上げているのでありますが、糧券の引受はただいまのところ四百億円ばかり見返り資金が持つているのであります。この金は直接の投資じやございませんで、四百億円の見返り資金で食糧証券を引受け、間接には相当つているというのです。しかもまた一般金融機関に債務償還した分が農業に一つも行つていないとは断言できません。従いまして間接には相当つていると思うのであります。  次に二十五年度におきまして見返り資金からどれだけ行くかという問題であるのでありますが、この直接に出します金といたしましては、農業関係で大体五十億円程度を見ているのであります。しかもまた公共事業として百十億円を計画しておりますものも、これもやはり農業関係日本の経済の相当基幹をなすことを深く考えますと、ある程度行くといわざるを得ないと思うのであります。また農林中金が今後見返り資金から八億円の出資をしまして、債券を発行するということも考え得られますし、またときどきの金融相場によつて糧券を引受ける等、あれこれと考えますと、やはり相当に金が行くということも言い得ると思うのであります。     〔小峯委員長代理退席、委員長着席〕
  190. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 池田大蔵大臣は相かわらず楽観論を言いますが、現在農業にそのような金か入るたるうという見込みがあるならば、農地証券の値段はもつと上つていいはずです。あの農地証券の値段は今どのくらいかというと、大体千円のものは五百円です。農地証券の値段がそんなに下つているということは、もちろん期限が二十五年とか四分五厘とかいう理由もあるけれども、農業に対する不信というものも私は相当働いておるだろうと思う。農業がもつと近代化されて、市場価値が置くなつて来るならば、私はもつと上るだろうと思う。そういう問題もある。あるいは自作農特別会計の中で余裕金があるはずです。昨年度においては、約三十億円の余裕金があつた、これは農業に当然貸していい金です。自作農特別会計の余裕金というものは預金部に預けてある、しからば預金部へ預けたならば、預金部のその金だけは、農業に投下してよろしいはずですが、それは行つていない、こういうことが農業金融には行われておる。森農林大臣はこの自作農特別会計の預金をそのまま放任しておくつもりか、預金部から少しひつぱり出す覚悟があるか、農林大臣の見解を承りたいと思います。
  191. 森幸太郎

    ○森国務大臣 農地証券にあります余裕金は、近くこの証券の回收をいたしまして、これを返すという方針をとつておるわけであります。
  192. 池田勇人

    池田国務大臣 預金部に預けてあります各特別会計の資金につきましては、いろいろな観点からこれをできるだけ早い機会に、できるだけ有効に使おうと計画いたしておるのであります。
  193. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そういうようなあいまいな答弁では農民は納得しないのです。できる限りとか、研究中であるとかいうことは、池田さんのいつもお答えする答弁でありますが、私は納得しない、農民のために私は納得してはいかぬと思うのであります。ただいま申し上げましたように、自作農特別会計の金ですらも預金部に預けて、それが農村に還流していないという事実がある。私はいかに農業というものに対して内閣が冷淡であるかということを、これで知ることができると思うのです。  もう一つ伺います。今度の地方税の改革で、固定資産税であるとか、あるいは住民税、そういうような地方所得税ですか住民税ですか、ともかく改革がある、その地方税の改革で相当な負担というものが私は農家にかかつて来るだろうと思う。たとえば家屋税が上る、あるいは地租が上る、三倍程度上る、これはほとんど全国農村の負担になります。今度の市町村税の改革というものは、私は農業に対して相当の痛手を及ぼしておるだろうと思う。こういう地方税の改革を農林大臣はそのままほつておいてよろしいのですか、農林大臣の見解を承りたい。池田さんの見解じやなくて農林大臣の見解を承りたい。
  194. 森幸太郎

    ○森国務大臣 地方税制の改正は、今法案の作成に着手いたしまして、今お話にあつたように、相当の税額についての変更があるわけです。しかしながらその他税制の上において非常に減額されるということになりますので、決して農家の負担を増額するということはない、かように考えておるわけであります。
  195. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 抽象的に負担が増加しないと言うけれども、その具体的な根拠を私は示していただきたいと思います。伝えられるところによれば、少くとも地租や家屋税というものは三倍くらい上るだろう、あるいは住民税も二・六倍とかなんとか言われておる、それは農家だけとは言わぬけれども、重心は農家にかかつて来ます。そういうように負担が増加して来る。しかも二百五十万とか三百万とかいう人口は農家に流れている、それらはみな農家のおやじさんが負担している。私が具体的な例をもつて調べたところによると、群馬県の長野村というところで、約八百戸の農家がある、その中で、毎日近所の高崎へ出てやみを売つている人間が七十人から八十人くらいいる、おそらく各所においてそういう現象があるでしよう。そういう人たちは、今年の予算の強行によつて、おそらく中小企業その他がつぶれて来れば、都会へ行くこともできない、産業予備軍はますます充満して来ます。そういう者をかかえて、所得税の負担も増加して行かなければならない。私は今年の税制改革については、相当程度の思い切つた農家保護政策が展開されなければならないと思つている、しかしその期待するようなものは出ておりません。たとえば、ここにある地方税の問題にしても、私はその一つの現われであろうと思います。私はどうも農林大臣と池田大蔵大臣考え方が、一致してやつているのか、あるいはまた池田大蔵大臣考え方に農林大臣は反対して、農民のためにがんばつてつているのか、私は疑問だと思うのです。どうも池田大蔵大臣は農林大臣をレモンだと思つている、しぼればしぼるだけ味が出て来るだろうと思つていると考える。農林大臣はそんな気持はないと思うのだけれども、出て来ているところを見ると、どうもレモンに甘んじているように思う。ただいま申し上げましたような地方税の改革というものは、農家の負担増にならぬ、そういう具体的な数字を私はぜひ示していただきたいと思うのであります。
  196. 池田勇人

    池田国務大臣 私の所管に関係しております国民負担の問題でありますから、私からお答えいたします。先ほど自作農会計から預金部への三十億円、こういうことでありますが、この三十億円ぐらいで農村の方々が御満足なさるものさはないのであります。私は金融というものはそんなセクシヨナリズムな考え方を持たずに、とにかく国民の構成の大部分を占めておられる農村の方々に、できるだけ出したいと考えております。  次に農村の負担の問題でございますが、どういう計算でおやりになつておるかはわかりませんが、私の考えでは、国税については大体要綱をごらんいただいておりますが、地方税につきましても、シヤウプ勧告案よりも、もつと課税標準にしても、また税率にしても少くする考えでおります。従いましてシヤウプ勧告案には、不動産税は賃貸価格の千倍だと言つておるが、八百倍で五百七十億円は十分とれると考えております。また住民税につきましても、初年度におきましては一五%の税率でいい、こういう考えをもつて計算いたしてみますと、国税、地方税を通じまして、大体農家の方の所得税並びに地方税は相当つて来るのであります。数字を申して恐縮でありますが、私の記憶するところでは、七万円の所得者は国税はなしになる、なぜなしになるかと申しますと、税率の引下げ、基礎控除の引上げ、扶養家族の控除の引上げ、また專従者の控除を認める関係上、非常に安くなつて来るのであります。また十万円の所得者で見ますと、大体十万円の所得は農家の平均所得と推定し得るのでありますが、扶養家族四人で、従来は地方税を加えて一万七千五百円程度であつたのが九千九百円程度になるのであります。しこうして扶養家族の中に專従者がおられたとした場合におきましては、七千何ぼに下つて来るのであります。それでこの計算では所得税が非常に減つて参りますが、それでも地方税は大体二倍半から三倍ぐらいになるのでありますが、事業税はなくなる関係上、今度の中央、地方を通ずる税制改正の中で、一番負担の軽減になるのは農家だと考えております。それでもしあなたが前年に比べて上るとかなんとかいう数字がおありならば、また後刻見せていただきたいと思います。
  197. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私は資料を向うへ置いて来たので、ここにありませんからあとで申し上げます。  そこで今の問題に関連してちよつと伺いますが、地方税が上ることによつて、現行の小作料の七十五円でしたか、あれは当然改訂さるべきだと思いますが、農林大臣はこれをどの程度に改訂するつもりですか、農林大臣の考え方をお聞かせ願いたい。
  198. 森幸太郎

    ○森国務大臣 近く決定いたします。どのぐらいの程度ということは、今申し上げる段階に至つておりませんが、ここ数日のうちには発表いたすことにいたしております。
  199. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 価格の問題で伺いますが、御存じのように肥料の補給金を撤廃しております。そうすると漸次農業のパリティーが上つて行く。一月の三割値上げによつて、この前のパリテイーよりは現在のパリティーはすでに上つておるだろうと思う。こういう肥料の補給金撤廃に伴つて、農家経済は毎日々々生活しているのだから、あとからバツクペイをやるとかなんとかやつたとしても、現実には間に合わない。それが今年の七月七五%程度肥料の値上げをされれば、パリティーが一六八とか、たしかその程度になると思うのですが、それまで農家経済は持つてか行けない。毎日々々生活してそういうふうに物は上つて行くわけですから、たとい農業手形を出すにしても私は追いつかぬと思う。この間の農家経済の経営をどういうふうにして農林大臣は調節をとつて行かれるか、価格の改訂をすみやかにやるのか、農林大臣の御見解を承りたい。
  200. 森幸太郎

    ○森国務大臣 肥料の補給金の減少による肥料価格の上昇ということは、もちろんバツクペイにおいてこれを修正して行くつもりでありまして、それは食管特別会計に予定されておるわけであります。
  201. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 バツクペイを一年のうち何期にわたつて、どれくらいずつやつて行かれるつもりですか。
  202. 森幸太郎

    ○森国務大臣 お答えいたします。それは六月のころになつてやるつもりであります。
  203. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 六月にやつて、それから七月の肥料の値上げに対しては米価の改訂をやるとか、あるいはさらにバツクペイをやるとか、七月の分についてはどういう政策をおやりになりますか。
  204. 森幸太郎

    ○森国務大臣 バツクペイは年に一回と限つておりません。これを適当な時期になすことが許されておるのであります。
  205. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 適当な時期におやりになると言つておりますが、七月に補給金を撤廃するということはもうはつきりわかつておる。ですから農家が自分の経営をやつて行く上については、一年の計画もつくらねばならぬ、資金のやりくりもやらねばならぬ。六月にバツクペイをやられて、その後米価が今のままにすえ置かれてやられるのか、あるいはバツクペイがいつごろ行われるのか、そういう見通しによつて私は農家経営の差繰りの上についても、相当変化が来ると思うのであります。第三回目の肥料の補給金の撤廃、七月以降どういうふうな措置でこの問題を解決されるのか、農林大臣に承りたい。
  206. 森幸太郎

    ○森国務大臣 それは今お答えいたした通りであります。
  207. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 今お答えした通りと言われましたが、私の聞いている質問に対して答えてはおらない。いつ何回にわたつてどういうふうにやるかということについて明確な御答弁がない。委員長からもひとつ御催促を願います。
  208. 植原悦二郎

    ○植原委員長 森農林大臣お答えがありません。
  209. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そのままほうつておいていいのですか。
  210. 植原悦二郎

    ○植原委員長 お答えがないのはいたしかたがない。
  211. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 しからば答えられないものとして私は進めます。価格の問題について最近新聞によると、御存じのように農産物価格支持というような構想が農林省から出ております。私は当然これは準備されなければならないと思つておる。しかしあの新聞の構想を読んでみると、アメリカが現在やつておるのをそのまま模倣してやつているような構想です。おそらく片柳さんがアメリカから帰つて来たので、その構想であわてて起案したのではないかと思う。こういうような支持価格制度を昭和二十五年からおやりになる考えか、まずこの問題をお聞きします。
  212. 森幸太郎

    ○森国務大臣 お答えいたします。今日配給価格を統制いたしておりますから、さようなことは二十五年度からやる考えは持つておりません。
  213. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 二十五年からやらないと、おそらく私は農家経済に破綻が来ると見ている。これはしかし時間が解決するから、この問題はさらに追究しません。  もう一つ時間の関係で伺いますが、蚕糸の安定という問題もやはり同様な問題であります。御存じのように春は四千掛で、秋は一万二千掛とか非常に変動が大きい。このことは外国のバイヤーにとつても迷惑な話であります。そこで農林大臣も苦労されて、蚕糸価格の安定のために蚕糸公社というものをおつくりになると言われておつた。この問題については植原委員長も本会議質問されて御心配になつております。この問題は何だか最近独占禁止法の関係で、できないとかなんとかいう情報があります。この蚕糸公社案を中心にして蚕糸価格の安定についてどういう状態進行しておるか、農林大臣に承ります。
  214. 森幸太郎

    ○森国務大臣 蚕糸業の全般について自由な立場に置きました以上、その価格を維持するという政策は、独占禁止法に妨げられることはお察しの通りであります。しかし輸出の大宗を誇つた生糸を、将来アメリカに輸出するという上におきまして、アメリカ自体におきましても、日本の絹糸の価格が不安定であるということは、先方で輸入することについてのさしつかえが非常にありますので、なるべく適当な価格に蚕糸価格を落ちつかせたいということは、アメリカにおきましても望んでおるのであります。今お話のような公社によつてやるかという問題につきましては、具体的に研究を進めておりますが、まだ決定の段階まで至つておりません。いずれにしましても、今後繭糸価の安定をいたしまして、そうして輸出を旺盛にすることを考慮しなければならぬのでありますが、これにつきましては、第一にアメリカの消費の状況をよく調べる。今日までのような盲貿易で、先方のバイヤーの自由裁量にまかすようなことになりましてはいけないので、あくまでも先方の消費地の状況をまず第一に把握すること、そうして全世界に対して絹糸の消費宣伝と申しますか、その特質を宣伝いたしまして、その顧客を求める。現にイギリス、フランス方面におきましても、近時絹糸の需要が盛んになつて来ておるのでありまして、今後これらの施策によつて絹糸の真価を知らしめ、そうしてまた先方の機業状態をよく調査いたしまして、この輸出旺盛を期したいと考えておるのであります。いずれにいたしましても、糸価の安定ということは最も重要な問題でありますので、適当な処置によりまして、この統制をはずしました今日、ある程度の価格が常に維持せられるような方法にし向けたいと、今せつかく研究を進めておるわけであります。研究と言うとまたおしかりになるかもしれませんが、今具体的にこれを発表する時期に至つておりませんが、近く具体化いたしたいと考えております。
  215. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 予定の時間が来ましたから、私はもう二問だけお聞きします。生糸の売れ行きが日本の農家の経営にすぐ響くということは今お話通りでありますが、どうも私は宣伝が足りないのだろうと思う。ナイロンその他の圧力もありますけれども、戰時中遮断されておつた関係で、日本の生糸の宣伝が足りない。この日本の生糸の宣伝をやる上について、業者自体にまかしておくということは、かなり困難ではないかと思う。あるいはまた業者にやらしてもいいとは思いますけれども、実際問題として困難ではないか。それで国家が乗り出して生糸の宣伝をやるというようなことは考えられないか、もしそれがだめならば、製糸関係の業者にこの宣伝を欧米にわたつて飛躍的にやれるような構想を農林大臣は持つておらないか、大臣の具体的な考え方を承ります。
  216. 森幸太郎

    ○森国務大臣 お答えいたします。業者としてももちろん宣伝すべき責任があると存じますが、国家におきましても、この宣伝には力を入れてやりたいと考えております。まだまだアメリカ等におきましては、絹糸の特殊性がわかつておらないという点があり、なお博覧会、展示会等をアメリカに開く等の方法によりまして、世界に宣伝をいたすにつきましては、ひとり業者だけにもまかしておくことはできませんので、政府といたしましても適当な処置をとりたいと考えておるわけであります。
  217. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 政府がとられることに関して私も非常に同感の意を表します。そこで昭和二十五年度予算で生糸の宣伝費のために幾ばくの金が計上されておりますか。
  218. 森幸太郎

    ○森国務大臣 政府予算においては計上いたしておりませんけれども、滞貨生糸の処分によりまして、相当資金を得られるという見込みもありますので、適当な処置ができると考えております。
  219. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 それは民間がやることであつて政府が自分で金を支出して宣伝しなければ、政府がやつてたとはいえないじやないですか、そうなると農林大臣がさきに言つておられたことと、今言われたこととは私は矛盾しておるように思いますが、どういうわけですか。
  220. 森幸太郎

    ○森国務大臣 お答えいたします。具体的になりましたときにお諮りいたしますが、決して民間資金のみによつてこれをやるということではなくして、相当政府としても責任をもつてこの事業を行いたい、かように考えておるわけであります。
  221. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 その辺をもう少し明確にしていただきたいと思うのです。ストックの生糸というのはだれが持つておる生糸であつて、それをどういうふうにさばいて、どういう機関をつくつておやりになるのか、明確な答弁をお願いいたします。
  222. 森幸太郎

    ○森国務大臣 重ねてのお尋ねでありますが、ニューヨークに滞貨しておる絹糸があるのであります。これは司令部の保管になつておるのでありまして、この生糸を資金といたしまして、相当の流用ができようとかように考えておるわけであります。
  223. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 最後にもう一つ。先ほど触れました協同組合の問題で伺いますが、現有各地の單位協同組合はほとんど資金難から崩壊しそうになつておる。というのは協同組合の幹部のやり方のまずいところもあります。協同組合に預金するよりも、市中銀行預金するというような農民の悪い心理もあります。しかしこれをこのまま放任しておくわけには行かない。その單位組合に対して今一番圧力になつておる問題は、一つは税金の問題である。この今危機に瀕して崩壊しようとしている協同組合を、普通の今までと同じ程度考え方で税金をとつたならば、おそらく協同組合は壊滅せざるを得ないだろうと思われる。それから連合会を整理するということもまた非常に同感なことでありますが、この連合会の問題についても、現在すでに農業会から引継いだ財産を買受ける資金がないというのは、金融が逼迫しているから、ほかのものに使つているから、その金がおそらく三十億から四十五億程度いる。これの金融を何とかしてもらいたいという痛切な声が協同組合から上つております。この二つの問題に対して農林大臣はさしあたりどういう対策をお講じになるつもりでありますか。
  224. 森幸太郎

    ○森国務大臣 お答えいたします。協同組合もできましてまる二年余りたつたところで、まだ初一歩を踏み出したばかりでありますが、ことに連合会を多くつくらせましたために、はなはだ脆弱な感をいたすのであります。これで今後におきましては、できるだけその状態が不都合な将来を来さないという範囲においてこれを併合いたしまして、その強化をはかりたい、かように考えておるわけであります。でこの実現によりましてその協同組合自体の資金というものの確保を考慮いたしまして、協同組合自体が金融をなし得るところの資本をつくり出すというような措置をいたしまして、この協同組合を相手として金融の道を考えたいと、こう存じております。  なお農業会の資産運営におきまして、約五十億円ばかりの金がいるということを要求されておりますので、政府におきましてもその資金の融資方法について、目下考慮を拂つておるわけであります。
  225. 植原悦二郎

    ○植原委員長 本日はこれにて散会いたします。明日は午前十時より開会いたし質疑を継続いたします。     午後四時五十六分散会