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1950-01-31 第7回国会 衆議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年一月三十一日(火曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 植原悦二郎君    理事 池田正之輔君 理事 尾崎 末吉君    理事 上林榮吉君 理事 小峯 柳多君    理事 苫米地英俊君 理事 勝間田清一君    理事 川崎 秀二君 理事 川上 貫一君    理事 圖司 安正君 理事 今井  耕君       天野 公義君    井手 光治君       小淵 光平君   岡村利右衞門君       角田 幸吉君    北澤 直吉君       小金 義照君    小平 久雄君       坂田 道太君    玉置  實君       中村 幸八君    丹羽 彪吉君       西村 英一君    松浦 東介君       松野 頼三君    南  好雄君       西村 榮一君    水谷長三郎君       武藤運十郎君    北村徳太郎君       中曽根康弘君    村瀬 宣親君       林  百郎君    深澤 義守君       米原  昶君    奧村又十郎君       小坂善太郎君    平川 篤雄君       黒田 寿男君    世耕 弘一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  吉田  茂君         国 務 大 臣 殖田 俊吉君         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         文 部 大 臣 高瀬荘太郎君         農 林 大 臣 森 幸太郎君         通商産業大臣  稻垣平太郎君         郵 政 大 臣         電気通信大臣  小澤佐重喜君         建 設 大 臣 益谷 秀次君         国 務 大 臣 青木 孝義君         国 務 大 臣 本多 市郎君         国 務 大 臣 増田甲子七君        国 務 大 臣 山口喜久一郎君  出席政府委員         (主計局長)         大蔵事務官   河野 一之君         海上保安庁長官 大久保武雄君         経済安定政務次         官       西村 久之君  委員外出席者         專  門  員 小林幾次郎君         專  門  員 小竹 豊治君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  昭和二十五年度一般会計予算  昭和二十五年度特別会計予算  昭和二十五年度政府関係機関予算     ―――――――――――――
  2. 植原悦二郎

    植原委員長 これより会議を開きます。  質疑に入ります。上林榮吉君。
  3. 上林山榮吉

    上林委員 まず総理大臣に対しまして、虚心坦懐に見解を求めたいことは、講和に関する問題であります。言うまでもなくかくのごとき厳粛な問題は、ためにせんとする論議を愼み、またいたずらに政争の其にせんとするようなことに対しては、断固として国民とともに排撃しなければならぬと考えておるものであります。ことに独裁的な思想ないしは暴力主義的な立場を持つておる一部の諸君が、口に最も相矛盾する愛国を説き、ことに全面講和を唱道して、その実際はいかなる講和であろうとも妨害せんとしておる態度に対しましては、真に平和を愛好し、自主独立を熱望しておる国民大多数の健全なる輿論によつて、これを排撃せねばならぬと考えておるのでありますが、この重大なる時局を担当しておられる総理大臣としてこれらの見解に対してどういう考えを持つておられるのであるか、まず伺つておきたいのであります。
  4. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。従来の国会において現われた議論を総合してみますと、まず反対党諸君からは日本状態が不安である、安定を欠いておるということをしきりに唱道せられておるが、私どもから申せば、これは必ずしも国民意思代表しておるものとは考えられないのみならず、講和條約の締結を前にしてはなはだ遺憾に思うのは、しばしば申すようでありますが、列国、少くとも連合国は、日本の国が安定し、復興して、そして連合国としてはともに世界の平和なり繁栄なりの増進を、討議し得るだけの資格のある力を回復しつつある。あるいは日本の従来の超国家主義とか非民主主義などの気持は克服されて、ともに世界の平和を語るに足るという国になりつつあるということを世界確信しない限りは、講和は自然遅れるのでありますが、しかしこれは、国民の中からそういう不安定な声が出るということは、それは国民の一部の声であるか、あるいは一部の声でないとしても、外国から見ると内輪からこういう声が出ておるじやないか、安定と政府が言うのは、これは楽観に過ぎはしないかと、しきりに政府楽観論を攻撃します。私は楽観すべき材料があり、終戰以来日本復興しつつあり、安定しつつあると考えるのでありますが、それさえも国民の中から、否定するということは、講和を遅らせるということになるので、はなはだ遺憾であると私は思つて、昨年の臨時国会のあとでもつて声明を出して各政党の注意を促したようなわけであります。現在戰争状態の継続として各国との間に国際交通もできがたいという状態を早くやめて、講和に持つて行く、そうして日本の興隆を助ける、自由なる交通を持ち来すということを一日も早くしなければならぬので、そのためには国があげて安定しつつある、復興しつつある、また国民もその復興意思に燃え、また各国との間に国際的協力努力するという決意を、国をあげて外国に示すように持つて行きたい、こう私は念願する次第であります。以上お答えをいたします。
  5. 上林山榮吉

    上林委員 総理講和態勢の強化のために、できるだけ建設的な方面に向つて国家があげて協力して行かなければならぬとする態度には、私どもも全面的に賛成でありますが、御承知通り国民は平和主義的な憲法をすでに確立いたし、しかもこれを実践して来つつあることは総理みずから御承知通りであります。しかし国内には極左的な一部の分子がある以外に、これに迎合せんとする一部の者があることは御承知通りであります。それを除いては、おつしやるように国民は全面的に講和を待望しておるのであります。ただ私ども考えることは、経済的にわが国が十分自立し得るという見込みがなければ、講和は促進できないのであるから、私ども経済的独立に対しては、積極的に国民努力しなければならぬし、相当成果を收み得る確信はありますけれども、これがここ一年や二年の間に、連合各国がどういうふうに見ておるか知りませんが、どの程度経済的独立ができた場合を講和に導き得るというのであるか。われわれは相当成果を改め、より以上の努力はしなければならぬと思いますが、経済的独立はここ一年やそこらでは不十分な面が相当見られる。しかし敗戰国民としては、今日まで謙虚な気持平和的独立を待望し、しかも文化国民として生きて行けるような講和を望んでおるのであります。これに対していわゆる経済的独立は、相当成果を収め得るが、それでもまだ不十分な点があると思います。これに対して世界各国はこれを原因にして講和を遅らしめる、こういうようなことがあるのでありましようかどうか。その経済的独立程度いかんによつて講和が左右されるかという、この一点についてまずお伺いいたしたいのであります。  さらにそれに次いで申し上げたいことは、敗戰国民としては一部の分子を除いて、それこそ謙虚な気持講和を待望しておるのでありますが、そこで平和を愛好する健全な国民の中から、事実平和促進国民運動が起らんとしておるのであります。すでに起つておるのでありますが、この日本国民の熱烈なる要望を、政府として最高司令部を通じて、連合各国に率直に取次ぐ用意があるかどうか。この点は私は被占領国家であつても、国民の健全な運動であるならば、政府は勇敢に――勇敢にというと語弊があるかもわかりませんが、率直にこれを伝えてしかるべきものではないか、こういうように考えるのでありますが、せつかく健全なる国民運動が起りつつありますので、この際総理見解をたたしておきたいのであります。
  6. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えします。日本の国がどこまで復興をし、もしくは日本経済独立がどこまで進んだならばということでありますが、これは結局列国から考えてみて、日本復興をどれだけ認めるかという、客観的な観察に資料を與えるだけの事実を生ぜしめるということに、努力するというお答え以上はできないと思います。しかしながらすでにマッカーサー書簡にもある通り日本経済的復興なり独立なりが、まことに有望であるということは書簡の中にも明らかでありますし、また事実において、たとえば日本が再びダンピングをやりはしないかというような危険を感ずる程度に、日本復興したということも、日本の現在復興の事実を列国、少くともイギリスあたりは認めて、再びダンピングを起しはしないか、これに対して私はさつそくそういう考えはないのだと言い、これはフロア・プライスをとつても、よつてつてダンピングをするという考えからとつたのではないということをさつそく否定しましたが、否定しなければならぬほど、日本に対して関心を持つておるという事実を示すものと思います。その他こまかい例をあげればたくさんありますけれども列国は決して日本の今日の現状をもつて悲観的に考え、もしくは復興の事実なし、退歩しておるとは認めておらないことは事実であると思います。  それから今の国民運動の話でありますが、私は始終申しておる通り日本国民としての意思発表は自由である。また日本独立希望し、講和の一日も早からんことを希望しておることは、これはたれ人も認めるところであり、その輿論傾向等については常に私は連合国に認めてもらう、あるいはこれは宣伝ではありませんが、こういう事実、ああいう事実といつて国民希望するところは手落ちなく伝えておるつもりでありますが、しかしながらこういうことをした、ああいうことをしたということはちよつと申し述べにくいのでありますけれども、しかし国民希望するところ、意思のあるところは、その都度手落ちなく連合国に通じておるつもりでおります。
  7. 上林山榮吉

    上林委員 国民の健全なる要望に対しては、常に連合国最高司令部に取次いでおられるというお話でありまして、まことにけつこうでありますが、先ほども申し上げましたごとく、国民としては真に敗戰国民として、今日まで謙虚な気持でおつたのであります。しかも最近に至つて講和促進熱意が非常に燃えて来ておるのでありまして、これが国民運動というような組織的な運動にまで展開されんとしておる時期に至つております。でありますからこの熱烈な組織的な国民運動に対して、当然これはやつてしかるべきものであり、この熱意最高司令部としても、率直に好意ある気持をもつて見るべきものである、こういうふうに私ども確信しますが、この点に対しては、そういうふうに考えていいでありましようかどうか。この点は国民運動が熱烈に起りつつありますので、参考のために承つておきたいのであります。
  8. 吉田茂

    吉田国務大臣 先ほど申した通り国民意思発表は自由であります。またそういう運動が起ることについて、政府として特に妨害をすべき理由はないのみならず、と言つて奨励することのできにくいということは、あたかも政府講和を促進するために、宣伝もしくは意あつて講和運動故意といいますか、作為的にしつつあるという印象を與えることはおもしろくないと思いますから、政府としては積極的に国民運動を奨励するとか、激励するとかいうようなことはいたさないつもりでおります。しかしながら国民の間に自然に起る運動については、これは阻止することもよろしくないのみならず、と言つてこれに対して作為的にどうこうするということは、政府としては列国に疑惑を與え、もしくは誤解を與えるおそれがありますから、これは差控えたいと思います。
  9. 上林山榮吉

    上林委員 次に領土の問題についてただしておきたいのでありますが、われわれは米国あるいは英国、インド、フィリピンというような民主的な国家が七アジアの民主化についで相当努力しておるし、またその民主化の見通上は、われわれとしては確信を持つてこれを見ることができるのでありますが、この際領土の問題でお尋ねいたしたことは、三年前の第一次吉田内閣のときに、私は幣原外相に対してこの問題を質疑をいたし、しかもそれを連合国軍最高司令部に幣原外相から取次ぐとのお答えがあつたのでありますが、その問題は言うまでもなく、ポツダム宣言あるいはカイロ宣言等によつて、当然わが国領土たるべきものであろう、こういうような意味合いにおいて、沖縄あるいは奄美大島、小笠原諸島あるいは千島、こういうような島は当然わが国の歴史的な事実、あるいは地理的な條件、あるいは経済的な問題、あるいは法的にないしは民族的にこれを考えてみましても、当然日本領土たるべきものである。こういうような意味合いにおいて、当時私は幣原外相に対して、この熱烈なる国民希望を、最高司令部に取次いでもらいたい、しかもわれわれはこうなるべきものであると考えるがどうであろうか、こういう質問をしたのに対しまして、幣原外相は、私どももそういうふうに希望し、おそらくは理解ある連合国としては、そういうような態度に出ずるであろう、というような答弁があつたのであります。今日私どもは、先ほど申し上げたことく、敗戰国民として謙虚な気持でおるのでありますが、いずれにしても、最小限度日本が生きて行くところのこの領土の問題については、私どもは重大なる関心を持つておるのであります。国民もまた熱烈なる希望を持つておるのでありますが、これに対してどういうような見通しを持つておられるのでありましようか。ことにこの領土の問題に対しまして、共産党あたりが、ドイツの失地回復の例になぞらえて、いろいろと逆宣伝をいたしておるようでありますが、私どもとしては、中和愛好国民としてこの問題をそういうふうにとつていない。これに対しまして、われわれといたしましては、どうしても、これが日本が生きて行く最小限度である、こういう意味においてこの問題を取扱いたいと考えておるのでありますが、これに対する総理考えを伺いたいと思います。
  10. 林百郎

    ○林(百)委員 関連して質問……
  11. 植原悦二郎

    植原委員長 まだ総理答弁が終りません。適当なときに考慮いたします。
  12. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたしますが、幣原外相吉田外相の間違いだろうと思います。多分幣原総理意味だろうと思います。領土の問題でありますが、これは政府としてもかねてから調査するところがありますし七また国民輿論なり議論なりというものは、その都度司令部でも相当調査し、そしてまた報告もしておるように承知いたしております。但し私がここでも政府としてはこういう考えを持つておる、あるいはこういう調査をして、そうしてそれをどうしたというようなことは、これはまだ講和問題が具体化されておらないときでありますからして、説明は差控えたいと思います。いずれ適当な時期において、政府の所見なり調査資料等発表いたしますが、本日のところはしばらく差控えたいと思います。
  13. 上林山榮吉

    上林委員 この問題は総理としては差控えたいという御意見でありまして、了といたします。しかしわれわれ平和を愛好する健全なる国民の熱烈なる要望であるということは、総理も御了解の上、さらに許された範囲内の積極的な努力をしていただきたいと考えるのであります。  そこで私はこれに関連して、とりあえず政府努力をしていただきたいことは、沖繩あるいは奄美大島との自由なる交通、あるいは貿易の簡易なる方法による取引、こうした問題について、講和会議が来ない前におけるこの不便を取除く努力を要請したいと考えます。これに対しまして、政府としては方法その他についてはいろいろ御配慮になつておりますが、今日私ども身近かにこの問題を考えておる者としては、先ほど申し上げたことく、交通にしても非常に不自由であるし、あるいは貿易にしても、手続が非常にめんどうであるために、自由な取引ができない、こういうような関係にありますので、この地方の特殊事情考えて、これに対する努力と、その後における見通しとを、この際関連して伺つておきたいのであります。
  14. 吉田茂

    吉田国務大臣 沖繩ことに奄美大島の問題は、この前の内閣のときにも問題になりまして、そうして交渉をしたことを記憶しております。その結果については今ちよつとはつきりいたしませんが、終戰直後よりは相当自由になつたのではないか。ことに沖縄との交通はますます開けておるように思いますが、事実はつきりしたことをお答えするだけの資料がありませんので、取調べた上でお答えいたします。
  15. 上林山榮吉

    上林委員 この問題に対しては一段と努力要望いたしておきますが、最後に私は総理大臣に伺いたいことは、衆議院の総選挙についての総理見解をただしたいことであります。一部の政党におきましては、ためにするがごとき宣伝をして、講和の前に総選挙をやるべきであると言つて政界を一部不安に陷れておるようでありますが、御承知のように去る衆議院の総選挙は、各政党とも講和に臨むための選挙であると強く主張し、なかんずくわが民主自由党におきましては、講和内閣をつくるための選挙であることを国民に明らかに示しまして、そして国民協力を得て、今日の政界を安定せしめる動機をつくつたのでございましたが、こういう立場から考えて、立憲的にしかも責任政治という立場から考えまして、われわれは当然一部のためにせんとするがごとき説には、くみすることができないのでありまして、当然に講和を担当してしかる後に総選挙を行うべきものである、かように考えておりますが、この問題に対する総理見解をただしておきたいのであります。
  16. 吉田茂

    吉田国務大臣 この問題もこの前の国会等において、しばしばお答えしたと思いますが、この前の総選挙においては、むろん講和という問題を選挙民としては眼中に入れて、講和問題をどの政党に取扱わしむべきかという観点から、投票いたしたものと考えるのであります。(「ノーノー」)とにかく講和問題は重大なる問題として取上げられて、総選挙に臨んだものと私は考えます。ゆえに今日において講和問題のゆえに総選挙をするという理由はないと私は思います。でありますから政府はその考えはありません。
  17. 林百郎

    ○林(百)委員 私の方の党で代表のまだ質問がありますから、きようは簡單上林山君の質問がわが党の政策に対する非常な誤解、または故意の曲解、か、誹謗があつたと思いますから、この点だけを首相にお尋ねしたいと思うのであります。  第一点は、先ほどの上林山君の首相に対する質問のうちで、共産党講和を望んでおらないというようなことを言われた。いわゆる国内の一部極左分子講和を望んでおらない、他の国民は全部望んでおるというような質問があつたのであります。この面についてはしばしばわが党の講和に対する方針は、すでに表明されておるのでありまして、すなわち四大国協和による即時公正なる全面講和ということは、野坂氏の代表質問、神山氏の緊急質問にも明らかになつておるのであります。わが党は終始一貫、四大国協和による公正なる即時全面講和を主張し、このために広汎な民主民族の戰線を結成し、国民運動を展開したいということを主張しているのでありますが、この点について首相は、共産党が常に全面講和を望み、このためにあらゆる努力をしておるということを認められるかどうかということが第一点。  それから第二点としましては、領土失地回復問題について、この運動はあたかもナチス失地回復運動のような逆宣伝を、共産党はして弄るというのでありますけれども、われわれはポツダム宣言の第八項にあります通りに、日本の国の主権は本州、北海道、九州、四国及びわれわれの決定する諸小島に局限される。われわれの決定する諸小島というのは、明らかにヤルタ協定の内容に含まれておると思うのであります。(「千島をやりたいのか」と呼び、その他発言する者多し)われわれはそう解釈する。従つて失地問題については、明らかに四大国が決定するものであつて、われわれはこの際、われわれの要求を出し得るものでないというように解釈しておる。そういう意味において、ここでわれわれの権限外失地回復問題、あるいは失地回復要求をするというようなことは、これはナチス失地回復問題と同一の軌を再び犯すことだという誤解を受ける危險もあるから、われわれはそういうことを言うべきでないということを、わが党としては主張いたしておるのであります。こういう意味でわれわれは決して失地問題について逆宣伝をしているのではなく、ヤルタあるいはポツダム、そういう諸協定の精神の中から、この領土の問題は、当然四大国が決定すべきものと解釈し、今まで主張して来たのでありますが、この点について首相見解をお聞きしたいと思うのであります。
  18. 吉田茂

    吉田国務大臣 全面講和についての共産党としての御意見は、しばしば伺つておるもので、私は賛成はいたしませんが、御趣意は了承いたしております。領土問題については、先ほど申した通り、これを論ずることは今のところ差控えたいと思います。いずれ講和條約等において具体的問題になつたときに、政府として見解を述べますが、今日は差控えたいと思います。
  19. 植原悦二郎

    植原委員長 総理は参議院から呼びに来ておりますから――上林榮吉君。
  20. 上林山榮吉

    上林委員 では続いて農林大臣にただしてみたいことがあります。現在私は農村恐慌が来ておると言うのではございませんが、近い将来農村恐慌なる可能性があるという立場から、もらかじめこの観点に立脚して、これが対策を農林大臣としては、考えなければならないものと考えます。御承知通りに、世界食糧事情は、終戰直幣欠乏状態から一転いたしまして、生産過剰の状態であります。この影響を受けて、わが国への輸入食糧の増加と、その値下りの傾向もはつきりして来たようでありますが、外国食糧の圧力が、直接日本農業に加わる時期も、そう三年も五年も後ではない、こういうふうに考えておるのでありますが、これに対する農林大臣確信の歩る御答弁を願いたいのであります。差たその時期が何年後に来るか、大体来年来るのであるか、再来年来るのであるか、全然来ないのであるか、この点についてもあわせてお答えを願いたいのであります。
  21. 森幸太郎

    森国務大臣 お答えいたします。今日の日本状態におきまして、農業政策ということは、結局食糧政策とも言い切れないのであります。占領政策のもとにおきましては、その重要な施策の性格、位置を持つ食糧政策といたしまして、軽々しく表明できない微妙な問題の点を多く持つておるのであります。最も慎重に考えなければならぬと思うのでありますが、農村恐慌と申しますと――恐慌という言葉か非常に簡單に使われますが、私は決してさような心配はないと考えておるのであります。(「恐慌は来ているぞ」と呼ぶ者あり)しかし絶えず農業政策弾力性を持たせまして善処するということは、一日もおろそかにしてはならないのであります。今日本食糧は御承知通り、その量が不足いたしておりまして、外国依存をしておる状態でありますが、この外国依存状態が、占領政策のもとに恩恵的になつておる面があるのでありますが、これがいつまで継続されるかという問題であります。外国食糧事情は近年よほどよくなつて来まして、食糧が余つておるという見通し考えられるのでありますが、しかし今日為替レート関係から、輸入食糧といたしましてはも国内食糧を圧迫するほど安く輸入ができ得ないのであります。従つても上将来におきまして、価格の面においてさや寄せをする場合に、外国食糧が非常に安くなつてそうして日本食糧生産に非常な圧迫を加えるというような場合が来ますとすれば、適当な措置を政府といたしましては当然とるべきでありますが、現在はたとい外国食糧を安く買つて参りましても、関税政策を許されておらない今日の状態といたしましては、これに処しまして補給金等の面から国内食糧を維持して行く。また食糧といたしましては、生産者のことも考えなければならないことはもちろんでありますが、消費者の面も当然考慮に入れて行かなければならぬと思うのでありますから、今後日本食糧ができるだけ生産費が安く仕上がるよう、いわゆる反收を上げるということと、生産費をできるだけ切り詰めるということと、この両面から指導して行かなければならぬと思うのであります。ただいまの段階におきましては、農業政策に対しましては、占領政策のもとにおいて心場合といたしまして、特に愼重な表現を用いなければならぬような、きゆうくつな事態にあることを御了承願いたいと思うのであります。
  22. 上林山榮吉

    上林委員 私は先ほど申し上げたように、現段階においては農村恐慌はまだ来ていない。しかし近い将来、先ほど申し上げた理由によつて外国食糧日本食糧を圧迫する時期が来る、こういうような立場から、それに対する見解を求めたわけでありますが、主として農林大臣は、外国食糧輸入の状況が、占領下にあるのでというような意味で御議論をなさつたようであります。そういう、意味ではなしに、私は現段階でどういうような処置をとるか、あるいは消費者の側に高く買わせてはいけない、といつて農村の生産者の生産価格をあまり圧迫してはいけない、こういうような点はもちろん当然のことでありまして、私どももその点は了とするのでありますが、はたして農村恐慌が来ないのであるかもこれは占領政策とは別に、率直に一応別途の問題として私は研究し、あるいは、対策し、場合によつては占領国の了解を得るというようなことを考えて行かなければならぬと思うのであります。総理大臣は二十七日の衆議院の本会議におきまして、供出制度はなお現状では続行するというような答弁をしておられますし、なお施政演説においても、農産物の最低価格維持などについて、農家経済の安定をはかるつもりだ、こういうようなことを明言しておられるのであつて、これは言うまでもなく、国民所得と同時に、農村の所得をよく調和させる意味観点に立つての御主張かとも思いますけれども、解釈のしようによりましては、今まで消費者偏重とまでは申し上げませんが、消費者の保護に重点を置いた政策から、生産者を保護するところの政策へ重点を置いて行くような、政策転換のきざしが含まれているように、私ども考えるのでありますが、農林大臣としてはこれに対してどういう見解を持つておるのか、これは單に普通の意味答弁というふうにやはり解釈しておられるのか、その点を伺つておきたいのであります。
  23. 森幸太郎

    森国務大臣 今日の場合におきまして、主要食糧、油糧、砂糖、この三品目につきましては、統制を継続せなければならないような実情にあります。今後農産物の最低価格を保障するという問題でありますが、これは統制をやることが全然いらなくして、自由な立場なつたときにおいて、政府といたしましては相当これに処する政策を持つて行かなければならぬと思うのであります。占領政策は特にこの食糧問題について、日本国民一般に対しての考慮を主として行われておるのであります。従つて今後におきましてこの統制をはずして自由な立場なつた上におきまして、農産物の価格、いわゆる農業の再生産が危うくされるというようなことがありましては、日本として重大な危局に臨むわけでありますから、そういう場合におきましては、政府といたしまして農産物の価格を保障し、日本農業経営が成立つて行くということの手段も、おのずから講じ得る品山が與えられると考えておるのであります。今日の段階におきましては、今申しましたが総理の申しましたように、主要食糧油糧、砂糖の三品種に対しましては、当分の間統制を継続するの余儀なき状態にあることを御了承願いたいと思います。
  24. 上林山榮吉

    上林委員 実際面についての農林大臣の処置ないしはお考えというものは、私了解することができるのでありますが、先ほどから申し上げているように、農村恐慌の要素を含んでおる状況は、近い将来全然ないというふうにお考えになつておるのか、私は実際に農林省の現実面の処置に対する立場というものは了解できておるのであります。その点をお伺いいたしますが、近い将来全然農村恐慌が来ない、あるいはこれに類似した状態は全然来ない、来たときに考える、こういうような御答弁のようであります。来たときに考えるのは当然でありますけれども、来ない前に実際面とは別途に、研究あるいは対策を考えなければならぬという意味で申し上げているのでありますが、そういう点は何もございませんか、その点をさらに尋ねておきたいのであります。
  25. 森幸太郎

    森国務大臣 お答えいたします。農村恐慌という言葉はできるだけ私は避けていただきたいと思うのでありますが、このまま経過いたしまして、農村恐慌が絶対来ないとは保証されないのであります。それでありますから、恐慌の来ないように施策を進めて行く、この信念のもとに私は農村恐慌はおそらく来ないと考えているのであります。
  26. 上林山榮吉

    上林委員 農村恐慌は来ない、同時にそういう言葉は使いたくないということは私もわかります。しかし私は現実に今来ていると言つているのではありませんが、近い将来外国食糧日本食糧とのさや当てによつて必らずそういう状態が来る、だからこれを事前に一体どういうふうに処置すればいいか、この予防策について政府見解を伺つておきたいというのが、私の質問の趣旨であつて、決して現在がどうである、あるいは将来も絶対に来ない、こういう意味で私ども議論をしているのではないのであります。率直に物事を判断し、しかもその判断に基いて事前に処置をする、この事前の処置、あるいはそういう状態は来ないであろうか、そういう予想はないか、こういう意味で申し上げているのであります。そういう意味合いにおいて私は別の面から少しお尋ねをいたしますが、しかしそういうような状態なつた場合には、農産物価格の最低の保障をする、幸いにこういうようなお考えがあるので、力強く思うわけでありますが、それでは最低価格の保障制度というようなものをお考えになる準備かできているかどうか。この点について事情の許す範囲内で御答弁願いたいと考えます。
  27. 森幸太郎

    森国務大臣 最低価格を保障し、関税政策を行うということは、これは最後の段階であります。今日はこれが許されない事情でありますが、この恐慌を食いとめるためにも日本農業の一番欠陷とするところをまずもつて是正して行くということか、今日の問題と考えているのであります。この面から日本農業生産の状況を見ますと、第一に困つたことは、年々歳々天災に冒されることであります。これはいまさら言つてもしかたがありませんが、国土が非常に荒廃いたしていることが一つの大いなる原因となりまして、いわゆる耕作についての安全性が薄い、せつかくつくつたのに台風が来、雨が来、川が切れるというような、年々歳々のこの状況を見ましても、まずもつて恒久的な施策に手をつけることが第一であります。今日日本には單作地帯も相当ありますが、土地の改良によつて生産力を増して行く、いわゆる單作地帯を二毛作にする、あるいは開墾、灌漑等の事業をいたしまして、耕作面を上げて行く、こういう積極的な増産の方面を考え、また一面には消極的ではありますけれども、品種の改良、あるいは病虫害の防除、あるいは技術の指導等、これらの面に向つて増産をやつて行く、また農村の労力の利用面、いわゆる繁閑の度のはなはだしい農村労力でありますから、この遊んでいる時期における労力をうまく経済利用いたしまして、そして経営を合理化して行く、また土地の改良等におおきましても、今日まで化学肥料に依存し過ぎておつたことは御承知通りでありますから、今後有畜農業によりまして、土地の力を増して行く、こういう積極、消極両面から、あるいは直接、間接の両面から、日本農業生産力を高めて行く、いわゆる自給度を高めて行くことによつて日本農業の生産費ができるだけ安くなる、そして農家の收入がふえるという体制を整えて行く。今日外国食糧状態は、増産はいたしておりますけれども、いろいろな事情によつて、内地よりははるかに高い価格で入つて来るのでありますが、もしこれが日本内地にダンピングされるというような時代におきましては、すでに講和條約が結ばれておりましようし、また自主的な貿易も進められるような時代でありましようから、そういう場合においては、最後の手段として最低価格を保障する、あるいは国家食糧管理を強化いたしまして、そうして関税政策等も行うところの自由も與えられると思いますが、今日ではそういうところはまず将来の問題として、とりあえずの問題として日本の国土の生産力を上げて行く、それは直接、間接、消極、積極の面がありますが、あらゆる面から総合的に日本の生産力を高めて行くということが、私は今日の場合における進むべき道、かように考えておるわけであります。
  28. 上林山榮吉

    上林委員 国内の生産力を高めて、自給度を高めて行く、積極、消極の面からこれに対して努力をして行くことが、当面の重大な問題だ、こういう農林大臣答弁でありますが、もちろんその通りであります。しかし別の面からこれを考えてみますと、われわれはもつと積極的に考えておかなければならないのではないか。御承知通りに、農村の金融は今日非常に金詰まりであつて、今まで金融がよかつたのは、いろいろ理由があるが、その一つには、結局産物のやみ売りが相当できておつたために、金まわりもよかつたというようなこともあつたのであるが、これはすでにマル公を割つておるものもあるし、マル公にさや寄せしておるというような状態である。一方においては肥料等、農家購入品の値上りも来しておる。しかも農業の人口は、戰前に比較しましと、人口にして六百五十万人、戸数にしまして二十五万戸程度がふえておるということになつておる上に、農地改革等の関係で、経営規模が、戰前の一戸当りは約一町歩であつたものが、今日では八反余り、こサいうふうになつておる上に、先ほど申し上げた農村人口の激増、こういうことのために、規模はさらに小さくなつて来ておる。さらに考えられることは、生産物の八割以上を自家消費しておるところの飯米農家の数は、全農家の四七・六%というように増加しておりますし、しかもまた、この飯米農家の約二〇%程度のものが專業の農家である。こういうような実に規模の小さい、貧弱な日本農業形態を考えてみますときに、私どもは近代農業がいかにわが国に浸透して来ましても、その増産の率ないしは生産力の率というものは、これは思つたほどは期待できない。現状よりももちろん生産力は上げ得るのでありますが、それにはやはり限度がある。こういうふうに考えられるのではないか。これを考えますときに、国際小麦協定にもし参加できるといたしましても、それでさえも約二割方輸入食糧が安くなつて来て、国内の小麦にさや寄せして来る。こういうことは現実に見られるのでございますが、進歩じた近代農業を持つている外国農業の生産力と、わが日本の貧弱な経営規模から来る生産力との調和を、どういうふうにお考えになつておるか。この点から考えても、私ども農村恐慌が、現在来ているとは言わないが、近い将来、積極的な予防対策を講じなければ、そういつたようなはめに陷る可能性が強くなつて来た、あと二、三年後にはおそらくそういうような状況が来るのではないかということをおそれるわけなのでありますが、そういう意味合いにおいて、私は農林大臣の御答弁要望いたしたいのであります。
  29. 森幸太郎

    森国務大臣 従来の日本農業が、戰前まで地主、小作の段階にわかれまして、まことに不合理な経営規模であつたのでありますが、農地法の改正によりまして、これがほとんど九十何パーセントまで自作農になつたわけであります。しかしその結果は非常に規模が小さくなりまして、従来の大規模的に耕作することができないのみならず、日本の地勢の関係から申しましても、外国のような機械力をもつてぐんぐんやるというようなことは、局部的にはありますけれども、許されないような情勢にあります。従つて、まず第一に現に困つておることは、農村に担保力のないことであります。農地改正の結果は、これを他に売買するとはできぬことになつておりますので、担保力が全然なくなつて、これが金融面について非常に詰まつておる原因だと思うのであります。こういう点から金融面が行き詰まつておりますから、政府といたしましては、短期ではとても農業経営資金になりませんから、長期で、できるだけ金利を安くいたしまして融資をいたしたい。今日農業手形、漁業手形等の利用をやつておりますが、さらに中金の規模を拡張いたしましてそうして金融の面を一層拡大強化いたしたいと今考えておるわけであります。  なお、再分配された農業経営はどうして行くかという段階に入りますと、これは協同組合の力によらなければならない。協同組合も皆さんの御審議になりましたところによりますと、いろいろ連合会が組織され得ることになつおるのでありますが、いろいろの事情のために、行政措置として連合会を許さないということになつておるのであります。しかしこの状態では單位組合として非常に活動力を阻害いたしますので、近く御審議を願おうと考えておるのでありますが、地方に、あるいは中央に、相当連合会の数を整備いたしまして、協同の連合会か、相互的な連合会がつくられるようにして行く、そうしてこの協同組合の力によつて、零細化いたした農業が、資本的な経営を協同の力によつてやるという一つの機関といたしたいと考えておるのであります。  農地調整の今後の行く道といたしましては、土地改良、耕地の交換分合等が行われなければ、その耕地の価値も上つて来ないのでありますから、こういう面におきましても、協同組合の力によつて行わせたいのでありまして、また従来やつておりました水利組合あるいは耕地整理等の事業につきましても、土地改良法をもとにして、協同組合の力によつて事業を行わしめる、かように指導して行きたいと考えておるわけであります。
  30. 上林山榮吉

    上林委員 先ほど申し上げました農村経済の苦境打開問題につきまして農林大臣がそういうような方向に向つて行く、こういう点は、私先ほどから了解しておるのでありますが、そこで一歩下つて農林大臣に伺いたいことは、恐慌と言うのがいやであるなら、それでもけつこうであるが、近い将来日本農業は、外国農業の非常なる圧迫を受ける。だから事前にこれが予防の対策を強力に考えておかなければならない。この点をお認めになりますかどうか、それを簡單答弁願いたいのであります。
  31. 森幸太郎

    森国務大臣 最悪の場合は、いずれの場合、事柄につきましても、考えておかなければなりません。恐慌は絶対来ないとだれも保証できるものではありませんが、恐慌の来ないように処置いたして行くということを考えまして、万全の政策を行つて行きたい、かように考えておるわけであります。
  32. 上林山榮吉

    上林委員 この問題は多少不満でありますけれども、この程度にいたしておきます。そこでそういう時代が来てみなければわからない。農産物の最低価額の保障制度にしても、あるいは関税政策にしても、そのときが来なければわからない、こういうようなお考えでございます。それも一応それでいいと思いますが、それならば先ほど申し上げましたように、そのときでなければ準備、研究あるいは対策、こういうものがないと言えばそれまでですが、農林大臣考えておられる農産物最低価格の保障制度というものは、大体どういうような構想であるか。もしそういうものがすでに準備せられておるものとするならば、この際その輪郭なり、その方式なりを承つておけばまことに幸いだと思うし、日本の農民も安心するだろう、こういうふうに考えますが、その点について、何かありますならば、この際承つておきたいのであります。
  33. 森幸太郎

    森国務大臣 応急策といたしましては、その事柄の発生したときに処置するのが応急措置であります。従つて今からこういうことを心配してこうもする、ああもするということは、今日の食糧事情は御承知通り、わが日本政府の一方において、すべてが解釈しない事情があるのであります。価格の面においても御承知通りであります。それでありますから今万一恐慌が来て、そのときに米の最低価格を保障するのはこういう制度である、関税政策はこういう措置であると言うことは、考えておりましても、これは発表し得ない事情にあることは御了承願いたいと思います。
  34. 上林山榮吉

    上林委員 その問題は大いに善処していただくことにいたしまして、これを打切りたいと思います。  そこで角度をかえまして、私は農村金融の問題についてお尋ねいたしたいのでありますが、この問題はすでに同僚小峯君からも相当触れらられたので多くを申し上げません。ただ一つ農業手形の利用度は、昨年度は約百五十億円ぐらいであつたと思いますが、本年度は相当大幅にこれを利用されなければ、農村金融としては非常に困る、こういうふうに考えておるが、一体幾らぐらい農業手形の利用がされると思われるか。またその準備があるならば、その準備をお尋ねしておきたい。この二点についてお伺いしたいのであります。
  35. 池田勇人

    池田国務大臣 農業手形の昨年の利用度は、四月からとつておりますが、春肥ので大体百億近く、それから農機具関係で四十七、八億と一応覚えております。しかし将来いろいろな点でこの金融は十分ふやして行かなければならないので、農業協同組合の預金を利用することはもちろんでございますが、農林中金の増資等によりまして、活発に、多量にやつて行きたいと考えております。従いましてその手続とか範囲等につきましても、要望にこたえまして十分広げて行きたいと考えておるのであります。それで幾らぐらいになるかという問題は、これは多々益々弁ずでございまして、何も今からこれだけの金額という見込みはございません。できるだけやりたいと思つております。
  36. 上林山榮吉

    上林委員 多々益々弁ずで、今年は百五十億円であつたが、来年度は三百億円になつてもけつこうである。それぐらいは確かにやれる、こういうようなお見通しであるか。私の考えでは、少くとも来年度は三百億程度以上のものがいるのではないか、こういうふうに考えるのだが、それでも十分やれるから大いにやつてもらいたい、こういう非常に明るい自信のある御答弁のようでございましたが、そうすなおに拝聽していいものかどうか、簡單答弁を願いたいと思います。
  37. 池田勇人

    池田国務大臣 三百億というその根拠にちよつと困るのでありますが、私といたしましては、先ほど申し上げましたように、その範囲、手続等を拡張し、簡素化いたしまして十分出して行けると思うのであります。金額の点につきましても、たとえば肥料公団について下部機構を七月からやめるということになると、これに要する費用もこれは相当の金額であるので、私から何百億といつたことは申し上げかねますが、とにかく農業手形の拡充強化、農村金融の円滑ということにつきましては、私は最も力を入れて行く点であるのでありまして、この点は全力をあげて農村金融に盡したいと考えております。
  38. 上林山榮吉

    上林委員 三百億の計算的基礎を時つておりますが、それ以上でもやれるというような非常な力強い御答弁であるので、これ以上は申し上げません。  そこで農林大臣に最後にお伺いしておきたいことは、最高司令部の非常なる御理解だよりまして、二回にわたつて漁区の拡張されたことはまことに幸いなことでございますが、最近御承知と思いますが、朝鮮近海方面において日本の漁船が非常に拿捕されておる。しかもその拿捕した漁船はこれを返さない。人間だけ追つ拂つてこれを返す、こういうふうに聞くのでありますが、これはいわゆる漁区以外に出て、そうして拿捕されたものもあると思いますが、聞くところによりますと、それの処置についても非常に不穏当なものが感ぜられる。こういうことを聞くのでありますが、そういう事実がどの程度にあるか、農林大臣承知程度答弁希望いたします。
  39. 森幸太郎

    森国務大臣 以西底引の拿捕問題は、昨年の春以来やかましい問題になりまして、その当時はマッカーサー・ラインを向うが越えて拿捕したということが、日本の一方的な発表であつたのであります。事故の起ることに司令部に対しまして善処方を要求いたしたのでありますが、司令部といたしましても、一体マッカーサー・ラインを越えたか越えないかだれが保証するのだ。はつきりしないことにお前たちの方から――かりにラインを越えたとすれば、拿捕されるのは当然ではないか。そういうものに司令部としては手の盡しようがない。マッカーサー・ラインは絶対に出ないという処置をすべきであるということが司令部からも説明があり、また政府といたしましても当然のことと考えまして、昨年の八月十五日にこの問題ついての処置方を尋ねまして、八隻を巡視船としてこのマッカーサー・ラインに配置いたしたのであります。漁業者の国際信義を守る上から申しましても、また今日日本の領海が占領下にあるという、この気持を失わないことによつて、ようやく許されたるこのラインの内部において漁撈にいそしむという誠実さを示して、初めてこのラインの拡張等も許されることになるのでありますから、拿捕問題と切り離してでも、このマッカーサー・ラインを日本の漁業は厳守しておるという誠意を表明することが必要と考えまして、昨年の八月十五日に行きまして、二十二日でありましたか、八隻の監視船を備えまして、そうして漁撈を続けておつたのであります。今回たまたま済州島が今漁期に来ておるのであります。あそこは、私も詳しくは存じませんけれども、潮流関係でなかなか船の操作も困難なように聞いておりますが、新聞等に発表いたしました通り、近時二回にわたりまして国籍不明の船のために、日本の漁船が拿捕されたということが、このライン内に起つたという事実を確認いたしまして、政府といたしましても外務省の立場といたし、また農林省はもちろんでありますが、司令部に善処方を要求いたしまして、司令部におきましても飛行機、軍艦等を派遣せられて、適当な処置をとつてくれることと思うているのでありますが、われわれ日本政府といたしましては、あくまでも誠実にこのマッカーサー・ラインの内部において漁撈をするということをいたして、それ以上の彼ら国籍不明の船がそのラインの中に入つて来る場合においては、これ体もうりくつで行けないのでありまと、ただ司令部の善処方を要求するより道かないのであります。日本側といたしましても、あくまでもこのライン内で漁撈を続けて、決して誤つてラインの外に出ないということに注意を促しているようなわけであります。何分武力を絶対持たない漁船のことでありますので、今後何とかして護衛の上においても適当な処置を許されたいと存ずるのであります。今日では監視船においても何らの武器をも許されていないような情勢でありますので、まことに残念な結果を見まして、せつかくの漁船を失い、漁獲物を失い、また場合によつては人命をも失うような危険にさらされていることは、まことに心外にたえませんけれども、今日の事情では司令部の善処方を要求するよりほか道がない。われわれはただ誠実にそのライン内で漁撈を続けるよりいたしかたがないと考えておるわけでありますが、司令部に対しましても、できるだけ適当な措置をしてもらえるように、政府としては交渉を続けているようなわけであります。
  40. 上林山榮吉

    上林委員 この問題は單に漁獲高を上げるという問題にとどまらず、私は重大な問題だと考えるのでありまして政府が自分たちはマッカーサー・ラインを守つているのだという意味において、監視船を配置されたことは適切な処置だと思いますが、相手方は機関銃を持ち、相当の武器を持つて相当のことをやつている。場合によつてはマッカーサー・ラインを出た者もあるでしよう。あるいは今おつしやるように、ライン内における事件も起つているのでありますが、私どもとしてはこれでは非常に不安であるし、また国際正義あるいは大きな意味の人道主義から考えても、いけないことであると思うので、これが対策については、一段の強化をば司令部を通じて、政府努力をすべきものであると考えるのでありますが、現在政府でわかつている被害の程度はどの程度であるか、その点を承りたいのであります。
  41. 森幸太郎

    森国務大臣 あとで書類をもつてお答えいたします。
  42. 上林山榮吉

    上林委員 あとで正確な数字を承ることにいたしますが、この問題を解決する方法としては、私は二つの方法があるのじやないかと考えます。  一つは第三次のマッカーサー・ラインの拡張の問題であります。つまりもう少し日本の実情に合つた漁区の拡張を最高司令部に要請して、これが了解を得べきものであると考えておるのでありますが、その後この問題に対して政府はいかなる手を打つておるか、これをまず第一に伺いたいのであります。  第二点は、最高司令部のあつせんによつて、韓国政府あるいは韓国の人たちとの共同経済による漁獲の方法政府において考えたことはないか。あるいは韓国の人たちとの共同経営による漁獲の方法政府において考えたことはないか。あるいは韓国方面からそういう申出はないかどうか。この問題は政府が進んで努力をしてしかるべきものであり、それこそ平和的な解決の一つの方法であると私は考えております。またこの方面の識者で、そういうようなようことを言つておる人も相当あるのでありますが、これに対して農林大臣はどういうふうに考えておるか、この二点について伺つて農林大臣に対する質疑を終りたいと思います。
  43. 森幸太郎

    森国務大臣 漁区の拡張が去年の問題であつたのでありますが、どうしても今日許されているライン内では、あの政府が許可したたくさんな船では漁撈ができない、收支償わないので、との漁区をできるだけ拡張してもらいたいという要請があつたのであります。政府におきましてもその要求の当然なことを考えまして、司令部に対しても、マッカーサー・ラインの拡張を要求いたしておつたのでありますが、その後たまたま拿捕問題が起り、これは現にラインを逸脱しているのだというようなことが論ぜられまして、これは司令部に対して要求いたしておる当時、お前たちは正直にラインを守つて漁耕しておれば、将来司令部としても考えるのであるが、むしろ侵しておる。さらにラインを拡張すると、またそのラインを逸脱する。こういうようなことが繰返されるのであつては、断じてラインを拡張することはできないというような問題が起つて参りました。それで今申しましたように、そういうようなことで、昨年日本は自主的にこの漁船の数を整理し、そうしてラインを監視して、このラインを逸脱せないという処置をとらざるを得ないようになつて来たのであります。しかし第二段にお話になつた、ある国との共同経営ということも考えられるのでありますが、相手国がはつきり資本漁業であるというふうに問題がかかつておれば、また共同で合作的にやれるのでありますが、今日の場合においては、はつきりそういう相手国を見出すということはなかなかむずかしいような情勢にありますので、将来においてはもちろん韓国、中共等との事業の合弁ということも考えられるのでありますが、今日の場合はまだその実現の段階に入つておらないのでございまして、漁業経営の上からそういういうことは将来に残されたる方法、手段と考えているわけであります。
  44. 植原悦二郎

    植原委員長 これにて休憩いたします。午後は一時より開会いたします。    正午休憩      ――――◇―――――     午後一時二十四分開議
  45. 植原悦二郎

    植原委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。上林榮吉君。
  46. 上林山榮吉

    上林委員 本年度の予算の性格とその特徴については、すでに二十四年度補正予算審議の際に、私は詳細に質疑を試みたので、この際は簡潔にいたしたいと考えるのであります。  さしものインフレをば收束せしめて、シャウプ勧告以上の減税や公共事業を公約通り拡大し、六、三予算を両年度を通じて六十億円を組み、国鉄や電気通信の建設勘案、住宅建設費、失業対策費等を相当大巾に増額をし、さらには価格調整費を半減して財政規模を縮小し、前年度に比して約七百億円の国民負担を軽減せしめたことは、名実ともに健全な均衡予算を編成したという意味において、私ども率直にこの労を多としていいと考えるものであります。また各種の公約を実施し、統制を撤廃して、しかも健全にして実際的な自由主義経済に移行せしめつつあることも、意を強くする大きな点であります。しかし私は與党の責任において気づいた点をきわめて率直にただしてみたいのであります。  私もまた安本長官や大蔵大臣が説明をしておるように、一部にとなえられておる反対論のごとく、決して三月危機も来なければ、本予算がデフレ的予算であるとは考えませんが、これをもつて安定から復興に向う復興予算であるとも單純には考えられないのであります。もちろん御主張の方向に向つておることは、率直に認められるけれども、安定から復興に向うためには、さらにさらに一段の努力をば要望しなければならぬのではないかと考えます。すなわち批評されるごとく、決してデフレ的予算ではないが、確かにデフレ的要因も散見できると思います。今その例を申し上げますならば、一般会計、特別会計、見返り資金等を通じまして、千二百億円の債務償還を行うことになつておりますが、公債償還によつて日銀や市中銀行に入つた金が、それぞれ市中銀行を通じて産業資金として市中に還流して行くということは、預金がほとんど貸し出されておる市中銀行の資産内容から見て、困難になつておるようであります。従つて従来とられておつた予算のデフレ要因を、金融機関を通じてしりぬぐいをして行くという方式は、一応限界に来ているのではないかと考えます。このために、デフレに持つて行かないためには、見返り資金の放出が従来のように遅れたりせず、すみやかに市中に流れ、あるいは国債の償還によつて預金部にできた余裕金が、すみやかに民間に還元されるなど、よほど強い、思い切つた処置が必要であると考えるのでありますが、これに対して大蔵大臣の率直な御意見をただしてみたいのであります。
  47. 池田勇人

    池田国務大臣 お答え申し上げます。債務償還千二百数十億円はデフレ的要因であるということを言う人があるのでありますが、私は必ずしもそう考えておりません。千二百数十億円の債務償還をいたしました理由につきましては、またの機会に申し上げますが、この千二百数十億円のうち、国債を償還する予定額は大体九百九十億でございます。このうち使途のきまつている借入れ金の返債等がありますので、国債償還は九百九十億程度を見込んでおります。しかして今持つている国債の機関別の状況を見ますと、普通銀行が八百数十億円、預金部が六百数十億円になつております。この国債償還をいたしまして、これでデフレ的要因を生み出す危険性は、この金を早く民間に放出しない時間的のずれと、もう一つはこの金をもつて日本銀行の所有国債を償還して、しかも日本銀行が貸出しをしなかつた場合のことが考えられるのであります。従いまして私といたしましては、まず債務償還につきましては、市中銀行あるいは預金部の保有証券を償還することにいたしました。早急に市中に出しますと同時に、また日本銀行のマーケット・オペレーシヨンをもつと活発にさすために、市中銀行の持つております国債にかわるに金融債をもつてしようとしていることは、財政演説で申し上げておる通りであります。この施策をやつて行きますならば、デフレ的要因は容易に避け得られると考えておるのであります。従いまして債務償還をいたします時期並びに方法につきましては、大体のことは財政演説で申し上げておるのでありますが、今後の金融の情勢を見ながら、適当な措置をとつて行きたいと考えておるのであります。  なお見返り資金の運用につきましてお話の点もありましたが、決して見返り資金は遊んではおりません。ただいま貿易会計より見返り資金特別会計へ繰入れました金額は、一月の二十六日までで千百三十億円になつております。しこうしてこのうち六百二十億円ばかりを復金債の償還に充てまして、市中銀行並びに預金部が運用いたしております。また別に鉄道、通信等につきまして年額二百七十億円のうち二百二十数億円をもうすでに使用済みであります。しこうして一般私企業に対しまする直接投資は六十四、五億円も出ております。きようまた日鉄その他の製鉄関係並びに造船関係に十四億円ばかりを出してお力ます、こういう状況でありまして千百三十億円のうち七百数十億円を使つておる。手持ちにありまする四百億円程度のものも、預金にして遊ばしておるのでなしに、糧券を引受けまして、もし見返り資金が引受けなければ、市中銀行その他が引受けるものをかわつて引受けておる。ただこれが直接投資とかあるいは債務償還にまだ行つていない、あるいは国鉄の方へ出してはいないというだけの問題でありまして、一―三月のうちにおきましては、復金債の償還を二百三十五億円、また国鉄、通信の方に五、六十億円、また面接投資の方に向つてもなお二百億円近い金を出す、こういう予定であるのであります。そういたし山ますと、千五百億円の見返り資金のうち繰越される金額は二百億前後で、多くても二百五十億くらいになると思うのであります。これを各国の見返り資金、エイド・フアンドの状況を見ますと、これはほとんど使われていないような状況であります。イギリスなどにおきましては、ほとんど全部を債務償還に充てておる。割によくやつているのが日本とフランス。イタリア、ギリシャその他の国々におきましては、まだ半分も使つていないような状況であるのであります。関係方面の好意ある御努力によりまして、大体ほかの国に比べますと、できるだけ早い機会にやることはいいのでありますが、見返り資金の運用の状況が非常に悪いとも実は考えていない。しかし適時に適当な金額を出すことは、経済再建に最も必要なことでありますから、今後も努めて行きまして、ただいま申し上げたような計画で本年度を越したいと考えております。
  48. 上林山榮吉

    上林委員 債務償還の内容について大蔵大臣から答弁があつたのでありますが、大体において私どもも了解ができるのであります。そこで一言お伺いしたいのでありますが、現在のような市中銀行の資産状態で――非常に悪い資産状態でも、大蔵大臣の見解によれば、大丈夫である、こういうふうにお考えになつておるか、あるいはこれには相当の懸念があるから、さらにこういうふうに手当をして万全を期するのであると、こういうようなお考えがあるかどうか、これをただしてみたいと思います。
  49. 池田勇人

    池田国務大臣 最近の市中銀行の状況につきまして、危惧の念を抱く向きもあるやに聞いておるのでありますが、私はこれは今のわが国の金融事情を知らざる人の議論だと思うのであります。その金融機関の内容がよくないということを想像いたしまする理由といたしまして、預金に対しまして貸出しの率が多過ぎる、こういうことであるのであります。戰争中並びに戰後におきまして、政府が国債を発行したり、あるいは千億円に近い復金債を発行いたしました場合におきましては、これは銀行の資産内容が、預金に対しまして貸出しは六〇%乃至七〇%程度で済んでおつたのであります。しかるに健全財政を堅持いたしまして、また復興金融金庫の貸出しを停止いたしまして、急激に復金債の償還あるいは国債の償還に充てますから、銀行の方では復金債償還に充てられた金額を遊ばせておくわけに行きません。日本経済復興に必要な金であるからどんどん貸出しをしなければならない。従いまして預金を投資すべき相手方がなくなつた、国債並びに復金債証券あるいは地方債証券がなくなつた、遊ばしておくわけには行かないから、産業復興に必要なる方面に貸出しをいたしておるのであります。従つて預金に対して八三%くらいの貸出しになつております。これは何も不健全というわけに行かない。復金債を持つたかわりに、必要なる会社に金を債しておるのは何らかわりはない。従いまして過去の歴史を見ましても、預金に対しましての貸出しは、昭和元年から五、六年くらいまでは八〇%前後を占めておるのであります。当時は健全財政で国が国債を発行いたしません。地方債もあまり出していなかつた、そういう割合になつているのであります。銀行は国債を持つたらいいか、あるいは産業資金を貸し出したらいいかと言つたら、今の場合に何人も産業資金に貸し出すことがいいというのは、十人のうち九人だと思うのでありますが、銀行はそれをやつているので、内容が何ら不健全になつているのではないのであります。従いまして私は外国の例を引いて心配する人がありますが、先ほど申し上げましたように、興銀なり勧銀なり農林中金が金融債を出して、これを銀行が引受けるということになりますれば、預金に対しての貸出率は低下いたします。それだからといつて銀行が確実になつたとも言われないわけであります。銀行は預金を確実なる方面に運用するのがその使命であります。確実なる方面は何も国債に限つたことはありません。しかも政府が国債を償還する立場に立つた以上は、必要なる貸出しに持つて行くのが銀行の適当の運営であるのでありまして、私は決して銀行の経営が不健全であるとは毛頭考えておりませんし、今のやり方が適当であると信じておる次第であります。
  50. 上林山榮吉

    上林委員 この問題はもう少しお尋ねしてみたいのでありますけれども、次に移つてみたいと考えます。ただいま見返り資金の運用のことについて、大蔵大臣から答弁があつたのでありますが、おつしやるように各国の見返り資金の連帯の状態に比較してみて、相当日本の見返り資金の運用状態はよろしい。あるいはまた見返り資金を直接投資しないでも、それぞれその金は遊ばせていないのであるからそれでもいいし、さらに政府は一段とこういう方向に向つて努力しつつある。この答弁に対して私は一応了とするものでありますが、言うまでもなく、見返り資金の運用いかんというものが、しかもその運用の時期いかんというものが、この予算の執行の上から見て、あるいはまたよく言われているわが国経済的独立を早めるという意味からいつて、できるならば最高司令部等の了解を得て、予算の前半期に大部分の資金が出て来るように、放出がなされるようにすることが私は最も適切である、こういうふうに考えるのでありますが、ただいまの見返り資金の申請などを見ますと、非常に複雑であります。しかも厖大なる資料を出して、それを一々検討している。まことに能率が上らない組織になつておるようであります。こういうような意味からいつて政府として、もう一段と見返り資金の放出の時期を早める意味において、総司令部の了解を密接に得ることも必要と同時に、こういう複雑なる煩項なる手続を簡略にいたしまして、そうして見返り資金運用の妙味を発揮してもらいたい。こういうような要望が非常に強いのでありますが、これに対しましてどういう考えを持つておられるか。いわゆる見返り資金はできるだけ早く出した方がいい。それはあたりまえだが、実際はそうは必ずしも考えないという見解か。あるいはまたこれが遅れておる理由は一体どこにあるのか、見返り資金は遊んでいないのだから、それでいいのだ、こういうように言われるのだが、これに対してもう少し能率を上げなければならぬが、その大きな障害になつておるものがあるかどうか、その障害になつておるものを特に承つてみたいのであります。
  51. 池田勇人

    池田国務大臣 見返り資金の特別会計のフアンドは、毎月々々入つて来ることになつておるのであります。来年度の予算におきましては、千五百億円になつておるのでありますが、過去の実績から申しますと、六月に四月並びに五月の半分くらいの輸入分が入つて参る。毎月輸入して、そうしてそれが換価せられたのを貿易特別会計から見返り資金に入れるのであります。従いまして、千五百億円と申しましても、毎月大体百二、三十億円ずつ入つて来るのであります。従いまして来年度において使用いたします千五百億円の分も、ただちにというわけには行きません。毎月入つて来るやつをずつと使つて行くわけでございます。従いまして、本年度の千四百億円のうちでも、三月末までに全部使つてしまうというわけにも参りませんで、やつぱり一月分なり一月半分は繰越されるというのが、常態であると思うのであります。年度がかわるから三月三十一日で今までのを全部使つてしまう、四月一日には何も見返り資金のフアンドがなくなるということはとりたくないと考えております。従いまして来年度におきましても、大体月平均的に使つて行く、ただ月平均的に使つて行きます場合においても、なるべくフアンドを少くして早日々々に使つて行くことが必要だと考えておるのであります。従いまして、その意味におきましても、一時にできるだけたくさん金を使つて行くという方針は、堅持して行きたいと考えております。今まで見返り資金の運用が遅れたということは、初めてのやり方でもありますし、また金利の問題につきましても、関係方面の方では大分うまく行かなかつた関係もありますし、またお話の通りに申請をいたします書類その他が非常に煩雑であつた点、いろいろな点があつたのでありますが、大体運用にもなれて参りましたし、書類その他の手続も非常に簡素になりつつあるのであります。今後におきましては、借入れ申込者、大蔵省、そうしてまた関係方面と大体意見の一致を見ておりますから、今後はスムー久に行くと私は考えておるのであります。
  52. 上林山榮吉

    上林委員 昨年度の見返り資金は、おつしやるように初めてのことであつたし、金利の関係などで、話が妥結に至らずに、ああいうふうに遅れたんだということをお認めになつておりますし、また手続も簡略化されて、今後は能率的にこれが解決される、こういうことでありまして非常に見通しとしていいのでありますが、昨年度ははなはだしくも十二月になつて――年度末になつてこの金がようやく放出された。しかも民間投資などを見てみますと、わずかに日本窒素と飯野海運に合計五億何千万円かのものが放出されただけでありまして、こういうような状況では、それこそ大蔵大臣も非常に期待しておつたのであろうし、国民関係者もまた非常にこの問題に対して、重大な関心を持つておつたわけなんでありますが、これがそういうふうに遅れたということは、私どもまことに遺憾に存じておるのであります。今後この方面の問題については、それこそ大蔵大臣は見返り資金は打出の小づちだというように申しておられたのでありますし、私どももそう考えておつたのでありまして、でありますから、そういう意味合いでこれが能率的な運用ということについて、一段の努力を私ども要望しておきたいのであります。  そこで見返り資金の二十四年度の予算では一千四百億円となつております。それが二十五年度の予算案では二十四年度から二百三十八億円が繰越されることになつておりますから、二十四年度中の見返り資金は、差引千百六十三億円となりまして、実際放出されたものを見ますと六百六十五億円でありますから、見返り資金の積立てが順調に行くということになりますと、三月までの間に四百九十七億円程度のものが放出できる計算になりまして、こういう点から考えますと、一―三月間に予想される二千億円の徴税額とあわせて考えますときに、金融の逼迫しているこの際、相当にこれが緩和ができるのではないか、こういうような見方もあるのではありますが、これに対してどういうふうに考えているか。この点をただしておきたいのであります。
  53. 池田勇人

    池田国務大臣 大体一―三月におきまして見返り資金から解除される金額は、五百億円内外と考えているのであります。このうち二百三十五億円は復金債の償還に充てることに相なつております。しかして、その他の分は直接投資の方に向けたいと考えております。当初、すなわち昨年の暮ごろは、直接投資二百五十億円とこう予定しておつたのでありますが、ただいままでに七十数億円、きようでとにかく八十億円近い金が出ております。従つて、二百三十五億円の復金債償還に加うるに百七十億円程度のものが入つて参ります。しかして、そのほかの分につきましては、大体この金を繰越しに充てるか、あるいは国債の償還に充てるか、こういうことになるのでありますが、私は一―三月の金融状況を勘案いたしまとて、できれば百億円前後の国債償還をこの金でいたしたい、こう考えているのであります。当初の予算では、昨年四月に御賛成を得ました予算の審議のときにおきましては、大体見返り資金から七百五十億円程度を債務償還に充てる、その内訳は六百二十五億円の復金債の償還と、百二十五億円の国債の償還ということになつているのであります。従いまして、私は復金債の償還と直接投資のみならず、国債の償還にも百二十五億円程度を一―三月には充てたいと今折衝を重ねておる次第であります。しかして一―三月の金融の問題でございますが、お話の通り今年五千百億円の租税収入のうち、大体千九百億円余り租税がございます。しかしこの租税を引揚げましても、他に政府の支拂いがあるのであります。予算の執行上、終戰処理費にいたしましても、価格調整費にいたしましても、また地方交付金にいたしましても、相当政府から出て参ります。こういう政府から出るもの、引上げるもの等を差引きますと、いろいろな計算はありますが、私は一―三月における政府の引揚超過は大体千億円内外、実は千億円よりも以下にしたいというように考えておるのであります。今の見返り資金から百二十五億円の国債償還をいたすということになりますと、政府の引揚超過は九百億円を割ることと計算をしておるのであります。そうすると昨年度の状況を見ますと、大体一―三月の引揚超過は千二百億円程度つたのであります。今年は昨年度の千二百億円に比べまして、大体私は二百億ないし三百億ぐらい引揚超過が少くなる、こういうことから考えまして、一般にいわれておるような非常な金融の梗塞はないというふうに考えておるのであります。従いまして八百億円とか九百億円とかの引揚超過になりますと、三千五百五十三億の年末通貨額が、どのくらいになるかということが問題になるのでありますが、引揚超過の八百億円に対しまして、日本銀行がマーケット・オペレーシヨン並びに貸出超過をやることになりますと、大体三月末が三千億程度、去年と大差なく行くのではないかという想像をつけております。
  54. 上林山榮吉

    上林委員 見返り資金の問題はもう少しお尋ねしてみたいし、さらにまた租税の問題について少しお尋ねしておきたいのでありますが、参議院との関係でお急ぎになつておるようでありますので、これは保留いたしまして最後に一言だけ大蔵大臣の見解ないし政府見解をただしておきたいのであります。  総理大臣及び安本長官、大蔵大臣は、口をそろえて給與ベースの引上げは当分絶対にやらない、こういう御演説をなさつておるのであります。そしてそのかわり実質賃金の向上によつてこれをカバーして行く、こういう立場をとつておられるのであるし、われわれも均衡予算の立場から考え、あるいは国民全体の負担の均衡という点から考えまして、一応その点に対しては了解を持つておるのでありますが、ことに今回実質賃金の引上げの点から食糧の増配が考えられ、さらに勤労所得税の減免というような問題が取上げられておるのでありまして、政府の方針がそういう方向に事実向つておることを、私どもも了としておるわけであります。だがそういうような実質賃金を引上げるという点から、いわゆる給與ベースの引上げではないが、実質賃金を向上せしめるという何らかの方法によつて、給與ベースにかわる改善を考えてはいないかどうか、たとえていいますと増俸をするとか、あるいはその他幅利施設をば向上しめるとかいうような意味において、政府は何か代案を考えてはいないかどうか、今日給與ベースの問題は非常に国民の注視の的になつておるので、この点を私最後にただしておきたいのであります。特に給與ベースを直接には引上げないが、実質賃金を引上げるという意味において、増俸などを考慮する用意はないかどうか、あるいはまたこれを考慮した場合、予算その他の関係から、実施できるかどうか、あるいはできるのではないか、こういうようなことについて、大蔵大臣の政府代表しての答弁をひとつ要望したいのであります。
  55. 池田勇人

    池田国務大臣 賃金ベースは総理、安本長官、私からも本会議で申し上げました通りに、ただいまのところ、このまますえ置きで行きたいと考えまして予算もそれで組んでおるのであります。しかし公務員の状況から考えましてできるだけ実質賃金を上げるべく、いろいろな施策を講じておることは、上林山君も御承知通りでありますが、われわれの計算によりますと、この一月から主食等はある程度値上りいたしましたが、減税その他をいたしました関係上、大多数のものは実質賃金が向上し、生活は幾分楽になつたと考えておるのであります。これは所得の階級別あるいは扶養家族の数によつて一概には申し上げられませんが、十五万円の所得者で扶養家族三人の家族につきましては、大体月に三%程度実質賃金の引上げになるという計算が出ておる次第であるのであります。かてて加えまして、経済安定復興のためには、いましばらく公務員の方々に、がまんしていただきたいというのが念願であるのであります。しかしわれわれとしても、このままでほうつておくわけではございません。お話の通りに消費者物価指数がだんだん下つて来ることをますます助長しますと同時に、また一方給與の問題につきまして、増俸はいたしませんが、超過勤務手当を昨年よりふやしますとか、あるいは公務員の住宅につきましてそれの一助にもと思いまして、公務員の住宅建設に大体十二億円を予定しておる。こういうふうなことで、あれこれでとにかく給與ベースを動かさずにしばらくがまんして、再建のために国民全体が協力していただくように希望しておる次第であります。
  56. 上林山榮吉

    上林委員 福利施設として住宅の建設に十二億円、あるいは主食糧二合七勺を二合八勺に増配し、さらに加配米を増配して行くというようなやり方、ただいま御説明になつ通り勤労所得税の免税点の引上げというような意味で、実質賃金の向上をはかつておる点は、われわれよく知つておるし、当然のことだと考えておるのでありますが、ただいま超過勤務手当を増額上、あるいはその他の方法でやるけれども、増俸はやらない。増俸はまだ考えていない、こういう話でありますが、増俸の時期に、あるいはまた増俸を全面的にやるという意味で、能率とかあるいは信賞必罰とか、こういうようなことを参考にして、政府においては調査研究していいのじやないか。もう少しこういうような観点から、実質賃金を引上げて行くというような方向に進んでいいのじやないか。ことにところによつては、たとえば專売局あるいはその他の方面では財源を持つているところもある。ただしかしこれは公務員全体のバランスを考えて行かなければならぬから、思うように行けないというところに悩みがあるわけでありますが、何らかここに能率賃金とか、あるいは信賞必罰による意味を含んでの増俸とか、何らかの方法でさらに政府が善処されんことを要望すると同時に、この見解に対して何らか研究を続けておるかどうか、あるいは何らかの準備はないか。これに対する大蔵大臣の答弁を伺つて、この問題を打切りたいと思います。
  57. 池田勇人

    池田国務大臣 私からこういうことを申し上げるのほいかがかと思います。が、主食の加配とかあるいは二合八勺というようなことは、まだきまつていないようでございますから、上林山さんのお話に対して、私がそれを肯定したという意味でないようにおとり願いたいと思います。  次に増俸の問題でございますが、全般的の増俸はいたしませんが、給與準則によりましての個々の人につきましての増俸は、もちろんいたします。しかして今お話のありました專売局その他におきましては、これは公務員に準ずるものでありますが、公務員ではございません。従いまして先般の仲裁裁定にありまする專売公社と職員間の今の待遇改善と申しますか、こういうものにらきましては、公社でしかるべくおやりになると思うのであります。一般公務員につきまして、今信賞必罰という観念から昇給を特に早めるとかいうことは、私は人事院その他でお考えいただくよりほかにないのではないかと考えておる次第でございます。しかし私といたしましては、できるだけ公務員の方々の実質賃金を上げるようにに、あらゆる努力をいたすことは、ここにはつきり申し上げていいと思います。
  58. 上林山榮吉

    上林委員 安本長官に少し質疑を試みたいのであります。組閣以来統制を順次撤廃しまして、しかも自由主義経済に移行して来たのであります。私は統制が大幅に撤廃されたときに、安本長官に当時本会議においてこの問題について、質疑を試みたのでありますが、さらに今回少しこの問題について質問をいたしてみたいのであります、御承知通り、経済統制が相当大幅に撤廃され、今また続いて大幅に撤廃されようとしておるのでありますが、この際に安定本部の縮小ないしは性格についての再編成、こういうものについて、どの程度検討が続けられておるものか。私はどうしてもそういつたような客観情勢から考えまして、安定本部を縮小しなければならぬという見解を持ち、さらに性格もまた、私をして言わしむれば、かつての官僚統制的な考え、ないしは社会主義的感覚によるいわゆる統制、こうしたような考え方はこの際排除して、健全なしかも実際に合つた自由主義経済の考えを基調にした性格にこれをかえると同時に、しかもさらに考えなければならぬことは、單に今までは、ことに経済安定本部の下部組織は、大体において経済警察と同じような感覚で仕事をやつてきた。われわれは安定本部としては、これは現業庁ではない、企画庁である、こういうような考えから、どうしても安本の性格を、縮小して残すならば、そうしたようないわゆる企画庁としての性格、あるいは経済参謀本部というもの、そうしたような性格にこれを切りかえざる限り、私どもは存置の理由はない、こういうふうに考えておるのでありますが、これについての安本長官の考えを伺つておきたいのであります。
  59. 青木孝義

    ○青木国務大臣 お答え申し上げます。上林山君から経済安定本部の機構の改革と、その性格についてというような御質問と思いますが、これは今経済安定本部についての上林委員の御認識が少し違うのじやないかと私は思うのであります。というのは、経済安定本部は決して査察的な性格を持つておるとか、警察的な性格を持つているというようなものではございません。御承知かと思いますが、経済安定本部の外局には、物価庁と中央経済調査庁というものがございます。しかしこの経済調査庁はそのできました当初において、民主自由党相当反対をいたしましたけれども相当に査察的性格を持つておる、そういうものであつたことは私ども記憶をいたしております。経済安定本部それ自身といたしましては、現在やつておる仕事として、大体総合計画、総合調査、各省にわたる総合調整、それから国土計画、あるいは外資輸入、そういうふうなものをやつておりますので、これまでの統制経済のもとにおける安定本部の仕事としては、何といつても物調法に基きました物資の割当統制、それから配給統制に対する割当といつた仕事を主として、そして補給金の問題であるとか、そういう問題はもちろん物価庁と経済安定本部との両者でそれは関連的に取扱つて参りましたが、大体において統制経済下におけるわが国経済の計画性というものに、重点を置いてやつてつたのであります。しかしながら今日の段階になりますと、ただいまおつしやいます通りに、経済安定本部としては今後どういう仕事をやつて行くか、性格的にどんなふうにかわるか、こういう意味で私の構想として申し上げますれば、大体私は総合経済施策の立案、それから各省庁の経済事務の調整、内外の経済動向に関する総合調査、それからまた短期及び長期の経済動向に関する予測といいますか、見通しといいますか、そういつたもの、あるいは国民所得に関する調査、国土開発計画に関する事項の研究調査、そういつたふうなものを今後主としてやつて行くようなものに、性格がなるのではないか、こう思います。そこで御承知通りに、この前統制が解けました状態について御報告いたしましたときにも御説明いたしましたが、大体統制経済を行つて参りましたわが国経済として見ますれば、その場合の統制は物資の統制、資材の統制、こういう方面で大体割当統制は三分の一に谷目減つております。それから価格統制におきましては、ようやくこの一月に入りまして、大体これも半分以上も価格統制が解けて参りました。そこでそういう点を必要であれば具体的に申し上げますけれども、そういうようなわけで、今までのように経済安定本部は統制をやつておる官庁であつた、すなわち俗に申せば経済安定本部があるから統制があるのだ、こういつたような誤解はまつたくなくなつて来ておると思いますし、また従いまして当然経済安定本部それ自身としても、性格と機構の改革ということは起つて来る問題だと思いまして、われわれも十分その点について検討をいたしますし、また続けて参りたいと思つております。そしてまたその点についても、できるだけ早い機会にお示しする時期が来るだろうと考えておる次第でございます。
  60. 上林山榮吉

    上林委員 私が経済安定本部と言つたのは、もちろん下部組織あるいは外郭組織まで含めての意味であつたのでありますが、おつしやるように安定本部の問題についての考え方は、ただいまの御答弁でわかつたわけではありますけれども、ただ今までの運営の仕方は、この出発当時はそういう方向で進んでおつたのでありますけれども、どうやら二重の手間を国政の上に與えて、非能率的な考えを與えておるかのようであります。そういう意味からいつて、あるいは統制撤廃をしたために仕事が少くなつた、こういつた意味からいつそ私は縮小、あるいは性格を、さつき申し上げたような方向に進めて行くならば存在の価値があろう、こういうように言つたわけであります。これに対する見解をさらにただしたいのでありますが、特に私は縮小に対しては何か用意があるかという点。  第二には経済警察と地方の経済調査庁、この二つのものがほとんど経済の取締りに終始しておる。ことに地区においてもそうであるしあるいは中央本部においてもそうであるかと思いますか、長官としては今おつしやるような方向にこれを運営しておると言われるけれども、末端においてはほとんど経済警察以上の取扱いをしておる。経済警察との摩擦も、事務的に、感情的に非常に起つて滞るし、その中にはさまれて取締られる国民はまことに迷惑である。でありますから、私はこの際、経済警察と経済調査庁とあるが、どちらか一つやめてもらわねばならぬと思う。やめてもらわねばならぬと思うが、特に私としては経済調査庁がやめるのがほんとうだ。中央における單なる企画庁として、今言われたような性格としての運営、将来もそういうようにして行きたいということならばなおさらのことだ、こういうふうに考えるのでありますが、大臣は末端の事情を御賢察になつて、この問題に対する一つの考え方を示されたい、こういうふうに考えます。
  61. 青木孝義

    ○青木国務大臣 経済調査庁の問題は、私もすでに就任以来御説のようなことを十分勘案いたしまして、末端におきまするその活動につきましても、漸次経済警察的な活動については、その方向をもつと緩和するということの方針を実行に移しつつあるのでありますが、なおその点についても誤解を免れないようなことがしばしばありまして、絶えず注意はいたして参つた次第であります。しかしできました最初の過程におきましては、何と申しましても隠退蔵物費の摘発であるとか、それから経済統制から起つて来るところのいろいろな不合理であるとか、あるいは犯罪的なもの、そういうものについては、やはり取締るというような方向でできた官庁であるために、その点がなお残存しておることが、ただいま上林委員からお話があつた点であろうかと思います。しかし今日経済調査庁につきましても、これをどういう形のものにするか、またその人員等につきましても、せつかくただいま検討いたしておりますし、また近き将来におきまして、その形も明らかに申し上げ得る時期があると思いますので、ここではつきりまだ確定いたしませんから申し上げられませんが、ともかくも今おつしやるような経済警察的な面は、まずこれを――やむを得ない部分については多少は残るでしようけれども、その方向は改められる、こう御了承を願いたいと存じます。  それからなお経済安定本部といたしましても、それから物価庁にいたしましても、それぞれその仕事の面で、少くなつた仕事の分量を対象といたしまして、定員等についても考えておりますし、現にその設置法等につきましても、今閣議で検討中に属しております。  かようなわけで、われわれとしては、われわれが従来考えて来た目標なり、あるいは今まで考えて来たアイデアを、そこにともかくも具体的に実現して行くような努力を、ただいませつかくやつておりますので、どうかさように御了承を願いたいと存じます。
  62. 上林山榮吉

    上林委員 われわれが期待する方向に進んでおる、特に経済安定本部の性格の持つて行き方、あるいはこれが縮小の方針、この点は私ども了としたのであります。ことに長官は、ただいま経済警察的性格を経済調査庁から除くと言われているので、これもわれわれの考えに近いのでありますけれども、私をして言わしむれば、先にも申し上げた通り、こういうものはもうみずから進んで――ことに長官が言われるような安定本部の中央の性格を持つて行くとすれば、こういうものはみずから進んで廃止をする、どういう方向にはつきりと持つて行かなければならないと私は考えるのであります。そういう方向に進んでいるからしばらく待つてくれ、こういう意味であつたと理解しておるのでありますが、そうとつていいのでございましようか。ただあまり含みのあるお言葉であるので、とりかねたのでありますが、こういう程度の問題は、率直に見解を披瀝してもいいのじやないかと考えられますので、さらにお尋ねをいたしてみたいのであります。
  63. 青木孝義

    ○青木国務大臣 経済調査庁を今のところ、ただちに廃止するというふうには考えておりません。
  64. 上林山榮吉

    上林委員 われわれは廃止する方向に善処してもらいたいという要望をいたしまして、これはこの程度でおきたいと思います。  さらにこの問題には、長官の答弁にすでにあつたとも思いますが、大体価格の統制あるいは割当の統制、これは三月までにどういうようなものが統制が解かれるか、この点があります。また一年たつたならば、そうしたような統制はほとんどなくなるじやないか、こういうふうに考えるが、これに対する見解を伺いたいのであります。三月までにどういうものがどの程度統制が解かれるか、あるいはまた一年後にはほとんど一部を残して、もう九分九厘までのものが統制が解かれるか、こういうような方向に進む見通しはどうか、この点をただしておきたいのであります。
  65. 青木孝義

    ○青木国務大臣 今年三月までに統制が解かれると予定されております。もの、それからまたその他今後の見通しについてお答えいたしますが、指定生産資材については、一月一日に六十八品目の統制を解除いたしましたが、その後さらに十三品目の解除が可能になりまして、一月末日――本日より実施をしておる次第であります。それから三月までには板ガラス、それからステーブル、フアイバー、それからスフ糸、スフ織物、スフ、メリヤス、それから、コム、タイヤ、チューブといつたようなものを解除いたしますために、関係方面とただいま連絡中でございます。  なお指定配給物資については、主要食糧品のほか、肥料、それから石油製品、油脂製品、それから綿製品、これらは二十五年度においても統制を継続する必要があると考えられるものであります。それから生鮮魚介、それから水産加工品、薪炭、飼料、魚かす、氷、それからゴム製品の類は、本年三月末までには統制を解除できる見込みであります。  それから、物価の方の統制については、昨日小峯委員にもお答えを申し上げましたけれども、大分類で今年一月初めに千八十品目を統制しておりましたが、四月の初めには約四百を整理し、それから二十五年度末には約二百を残すという程度で、他は全部撤廃する見込みであります。  それから、結局お考えをいただいておかなければならぬと思うのは、食糧のような国内において自給が満たし得ない、外国輸入依存するといつたようなものは、どうしても今年中に解くというような、ことはむずかしかろう。それからもう一つは、重要原材料の一部、そういうものが残るのではないかというように考える次第でございます。
  66. 上林山榮吉

    上林委員 次に、この統制撤廃に関連をいたしまして、私は法務総裁にお伺いいたしたいのであります。この問題はすでに私、本会議において法務総裁に質問をし、総裁がこれに対して答弁をせられたのでありますが、その後の客観情勢上、さらに私はこの問題を新たにお尋ねをしてみたいと考えます。と申しますのは、経済事犯に対する取扱いの問題でありますが、当時の法務総裁の答弁は、既決されたものはやむを得ないが、いまだ判決のない事犯に対しては、判決にあたつて判事が相当考慮するであろうし、あるいはまた起訴、不起訴を決定する場合、検事がこれを相当考慮するであろう、けれどもこの問題は今までの既決との関係があるから、免訴の取扱いをするという段階には至つていないし、そういうふうには解釈をしない、こういう趣旨の答弁であつたと考えるのであります。それにしても、統制撤廃に伴うそうしたような実際上の取扱いを強力にされたということに対しては、私は政府考えを支持するものではありますがただここに、私はもう一歩進めて考えてみなければならぬことは、既決事犯との均衡上免訴の取扱いをすべきものではない、こうしたような解釈法学的な、形式的な、解釈の仕方はやめて、少くとも実情に合つた、自由法学というか、あるいは社会法学というか、そうしたような意味合いにおいて、既決との均衡上などという、そういうことにとらわれないで、私はこれは免訴すべきものだと思う。これは公平の観念から言つて、これが適当でないという考え方はいかぬと思う。だから犯罪の過去の事実はあつても、それが今判決や起訴されないものは、これは免訴するのが当然だと考えますが、私の見解と同じような見解を仙台の高等裁判所であつたかしれませんが、すでに最高裁判所に、これが免訴すべきものであるという見解のもとに最高裁判所の指示を求めておる。この状況を考えますときに、私は当然今言つたような意味合いにおいて、これが免訴をして行くべきものである、こういうふうに考えるのでありますが、これに対する法務総裁の明快なお考えを承つておきたい。もちろんこれは最高裁判所と高等裁判所との間で現在研究されておる問題でもありますが、どちらに解釈してもよいような問題は、これは国民に利益のあるように解釈し、そうしたような運営をすることが、立法の精神に合致することであろうと考えられますので、私どもはそうしたような方向に今後進めていただかなければならない。そうでないならば、私ども国会考えによつて、そういう取扱いをする法案でも出して、そうしてこの矛盾せる、全国の何十万という被害者をこの際救つてやるべきだと考えますので、それも含んでの御答弁要望したいと思います。
  67. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 上林山さんの御質問は、まことにごもつともでありまして、昨年の本会議におきまして、実は実際の場合にあたつて相当に考慮をする、簡單に言えば手心をするということをお答えをいたしたのでありまして、單に以前の者との均衡論ばかりではないのでありまして、法律解釈の理論上、なかなかめんどうな問題がありますので、その理論が最終的に決定を見ておりませんので、これがだんだん判決例が出るということになりますれば、最終的な決定を見るだろうと思いますが、それは最高裁判所にまで至らなければ、その時期に達しませんので、その以前におきまして、なるべく実際の行政的措置として、同じような目的を達したい、かように考えておるのであります。そういたしますと同時に理論上におきましても、何とかそれをもつと積極的に決定する道はないかと存じまして、それも鋭意研究さしております。それから昨年、御質問がありましたにつきまして、お答えをいたしたのでありますが、その趣旨を徹底いたさせますために、実は昨年の十二月二十七日でありますが、刑政長官の名をもちまして、全国の検事長並びに検事正にあてまして通牒を発したのであります。それはこういうことであります。明年一月一日より指定生産資材に対する経済統制が大幅に撤廃されることになつたが、右統制の大幅撤廃に伴う経済事犯の処理に関し、本月二十三日衆議院会議における上林山議員の質問に対し、法務総裁より――先ほど申し上げた通り上林山議員にお話いたしました通りの文句をここに挿入いたしまして、右の発言があつた、よつて今後この種事犯の処理にあたつては、右総裁発言の趣旨に沿いこれを行うようせられたい、こういう通牒を実は発したのであります。大体趣旨におきましては、今申し上げました通りの趣旨で実際に処置されておると思います。しかしただいまのお話のごとく、法律上の解釈論が最終的に決定しておりませんので、何となく奥歯にもののはさまつたような気がするのであります。私もその点は非常に心配をいたしております。そこで今のお話もありましたので、もう一層事務当局を督励いたしまして、積極的な解釈に到達するようにいたしたいと思います。
  68. 上林山榮吉

    上林委員 大体において私の質問の趣旨に沿つた御答弁があつたのでありまして、了としたいのでありますが、法務総裁は、仙台の高等裁判所から、これは免訴すべきものであるという指示を仰ぐために、最高裁判所に打合せになつておる事実は御承知であるかどうか、あるいはまたそれに対してこれは行政庁としてとやかくのはつきりした意見は述べられないと思うが、しかしこれが見通しについては、大体法務総裁というからを脱いで、いわゆる法律学者あるいは法律実際家としてのあなたの見解は、一体どういうふうに考えておられるか、参考のために、これは軽い意味でお尋ねをしておきたいのであります。
  69. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 私も仙台の高等裁判所の措置については多少承知をいたしておるのであります。まだ最高裁判所における最後の決定がないわけであります。その決定がありますれば、その決定の趣旨に沿うて行政の方も並行し得ると考えております。法務総裁でなしに私個人は、もつと積極的に解釈できるものではないかと実は考えておるのでございます。私はほんとうの專門の法律家でありませんので、それは專門の法律家の十分な論議の上にきめたいと思つております。
  70. 上林山榮吉

    上林委員 通産大臣に大きな問題を一つだけお尋ねしておきたいのでありますが、それはあなたも御承知通りに、電源の開発及び電力の再編成の問題であります。電源の開発に対しては相当努力をされておるのでありまして、われわれ敬意を表しておるのでありますが、電力の再編成の問題、これもまた言うに言われない苦労をされておることも承知しております。そこで私ども考えたいこ上は、この再編成が七つか九つのブロックにわかれるということになりますと、せつかくの電源開発にも非常なる支障を来しやしないか、あるいはまた電力事業の独立採算という点から考えて、たとえば九州あるいは中国、こうした方面、あるいは二、三の地域を除いた大部分の全国のものが、非常に高い料金を拂わなければならぬということになりて来るのであります。この問題は国民生活あるいは産業の開発等に及ぼす影響が、非常に大きいと考えて私ども心配をしておるのでありますが、主管大臣である通産大臣としては、そういう懸念は多少はあるが大したことはないのだ、こういうような見解であるかどうか、ひとり率直なる意見を聞きたいのでございます。
  71. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 電気事業の再編成の例題につきましては、御承知のように再編成委員会をこしらえまして、そこで目下検討いたしております。近いうち――といつても一両日のうちに、あるいはその報告が私の所へ来るのではないかという事態にまで意見がまとまつておるようであります。ただしこの意見がまとまつたということは、この委員会内の意見がようやくまとまつたということでありまして、なお関係筋その他との調整は、今後に残されておる問題なのであります。そこで分割ということが実行されます場合におきまして、今御指摘の電力料金の問題なり、あるいはまた電力量の問題、電源開発の問題、こういつたような問題についても、相当いろいろな問題が起き得ると思うのであります。分割することによつて得るところの利益と同時、に、即時に遠慮なく理論的に自由な立場で分割するということに相なりますと、今御指摘のような電源開発にいたしましても、あるいはまた料金の問題にしても、いろいろな支障が起きると思うのであります。この辺はどうしても――これはまだ委員会の報告も来ておりませんから、委員会の意見はわかりませんが、私個人として申し上げた方がよろしいかと存ずるのでありますけれども、その辺の調整については、何らか一気に各方面に衝動を起さないような形に持つて行きたい、こういうことについて実は考慮を拂つておる次第でございます。もつともこの委員会の報告についても、これらの点が取上げられてあるやに聞いておりますので、なおこれらのものを参考としてそういう方向に持つて行きたい、かように考えます。
  72. 上林山榮吉

    上林委員 あなたの考えなり、最高司令部の意向なり、あるいは委員会の考えなりは、七つのブロックであるか、あるいは九つのブロックにわけた方がいいという意見であるか、そのブロックはどういうように編成されるか、その点を伺つてみたいのであります。
  73. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 まだ報告を受けておりませんから、はつきりしたことは申し上げられませんが、委員会の審議過程におきましては、大体九ブロック案ということが委員会の意見のようであります。なお関係筋におきましては、新聞に伝えられておつたように十ブロック案といつたような案も出ております。しかしこれは大体委員会の九ブロック案と調整がつくものであろう、かように存じておりますので、大体関係しております者の意見は、九ブロック案で進行するものではないかと存じておりまする
  74. 上林山榮吉

    上林委員 もし九ブロック案にまとまるということになれば、二、三のブロックを除いたほかのブロックは非常なる打撃であります。ことに地域的はことを申し上げて済まないのでありますが、九州等は極端なる影響を受ける。その次には中国地方がさらに非常な影響を受けて来る。こういうことであつて、電源開発いわゆる電力量の問題、ことに電力料金の問題、これなどの負担は非常なるものであるが、そこで経過的処置として段階を設ける、こういうことを言われているので、これもきわめて適切な考えだと考えておりますが、その段階を置くというのは、たとえば電源開発については、これはプール計算なりあるいは国家が何らかの処置をとるなりするのか、あるいはまた独立採算という意味において料金が非常に高いところ、現在の数倍になるようなところがある、こういうような場合に、これの負担を何らかの方法で処置する、こういうのであるか。委員会の審議なり、あるいは通産省の考えなり、この段階というものをもう少し具体的に、そしてわれわれがその程度ならばこれはこういう時期だからやむを得ないという、何かそこにもう少し納得の行くような、重大な問題であるだけに、通産大臣の個人としての意見よりも、ひとつ政府考え、そうしたようなものをこの際最後に承つておきたいのであります。
  75. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 これは先ほども申し上げましたように、なお関係筋の意見との調整か非常に残されておりますので、ここで私が通産省の意見を申し述べることもいかがかと存ずるのであります。その交渉に支障を起すことを非常に心配いたしておるのであります。そこで私、さつき個人の意見という言葉を実は使わしていただいたのであります。それで今お話のように、実際に電力料金が今日すぐ分割して、その地域のコストのままで行くということになりますと、これは一本の日発のもとにプールされて施行されたことによつて、産業の分布ができておりますだけに、非常な影響を及ぼすということも、私はさように存じておりますが、この影響を及ぼすということは、日本産業の全体のために決して得策ではない、かように考えておりますので、その辺の調節はぜひいたしたい、かように私個人としては考えておるのであります。それからまた電力の融通の問題にいたしましても、また電源開発の問題にいたしましても、この点も同じようなわけでありまして、これらにつきましては、できるだけ大きな打撃を一気に與えないという立場から、考えて行くのがしかるべきではないか、かように考えております。
  76. 上林山榮吉

    上林委員 次に、私に海上保安庁長官もしくは運輸大臣に伺いたいと思います。御承知通りに、海の悲劇が相次いで起つておることは、当局の御承知のところであります。この、一年間、ちようど一昨年の八月から去年の七月、ころまでの損害額を見てみますと、大小の船舶の隻数にいたしまして五百四十隻、これらのものが沈没あるいは火災あるいは坐礁というような損害のために失われております。しかもその損害高は幾らであるかといいますと、四百二十六億円の巨額に上つておるのでありまして、これはわが国船舶保有量の約二六%に匹敵しておる。往々にしてこれを見のがしがちでありますが、これを考えてみますときに、非常に私はこれは重大な問題だと考えております。どういうわけでこういうような大きな被害が起つておるのであるか。原因は台風によるものが四〇%、あるいは運航上の不注意によつて起つたものが三五%、船体の老朽と設計の不良のために起つた災害が二五汚、その他が一〇%というようになつておるのでありますが、こうしたような事実に対して、海上保安庁もしくは運輸省においてどういうような具体的処置をとつておるか。この災害をもう少し小さくすることはできなかつたのか、この点につしてまず伺つてみたいのであります。
  77. 大久保武雄

    ○大久保政府委員 ただいま上林委員からお尋ねの日本の海難は非常に大きな損害があるのでございまして、損害の状況はただいま御指摘になりました通りでございます。そこでこの海難の発生、それに伴う船舶、積荷並びに貴重なる人命の救助につきましては、海上保安庁といたしまして最も力を入れているところであります。海難の起ります原因を、ただいまお述べになりましたような点を十分検討いたしまして、これが根本的な対策を立てなければならないのでございますが、そのためには、ただいまお述べになりました諸原因のうち、取扱い上の不注意に基くものに対しましては、何といいましても、船員の技倆を向上することが必要でございまして、この点につきましては、ただいま船舶職員法を改正したしまして、全面的に船舶職員の技偏向上をはかる法制の立案をいたしているような次第でございまして、できるだけすみやかに国会に提出いたしたいと思つている次第でございます。なおまた船舶その他の面の安全上の諸法規に関しましても、できるだけすみやかにこれが整備をはかりまして、物的の方面から参ります原因の除去に努める方針でございます。  なおまた実際海難が起りました際に、これを救助することは最も必要な点でございます。このためには何と申しましても、救助するに必要な能力を持つた船舶を持つことが必要でございます。御承知のごとく、海上保安庁は一年ばかり前にスタートいたしましたが、当時は約百トンの木造船、しかも非常に老朽しましたものを主力にして出発いたしました。現在におきましても、大体これらの船舶が主体をなしている次第でございます。これらの船舶はいずれも航続距離約八百海里でございまして、荒天における難破船の救助は、はなはだ不十分でございますので、海上保安庁といたしましては、一日も早く優秀なる船舶を保有いたしまして、海上における難船の救助に努力いたしたいと考えている次第でございます。
  78. 上林山榮吉

    上林委員 運航上の不注意によるものは、ただいま法的処置をしてこれが善処をはかり、あるいは実際海難が起つた場合に、救助船を活用してこれが救済に当るように万全を盡しつつあるという話でありますが、美島丸事件などを見てみましても、これはまだよくわかりませんが、船の検査あるいはそうしたような指導というものが拙劣であつた、不十分であつた、こういうような意味で災害が起つているのじやないかと考えられますが、こういう方面の処置は一体どういうふうにしているのであるか。それから災害の大きな原因が台風によるものであつて、これが約四〇%になつているようでありますが、これに対する処置、たとえて言いますと、燈台など各国の比較を見てみましても、日本が一番少い。日本は海の国でありながら、日本の海は一番暗い海である、こういうことを権威ある人たちから聞くのであります。燈台の増設等に対する処置、あるいは無線電信の増設あるいは設備、あるいは救助船の問題につきまして、ただいま実に貧弱なる御構想を承りましたが、一年間に四百二十六億円海の中に投じておる、しかも船舶保有量の二六%というものを海にみすみす投じておる。先ほども朝鮮海峡の拿捕の問題について私質問をしたのでありますが、これはそれ以上の莫大なる損害であります。この損害に対しては政府として救助設備な力、これが予防の対策について、私はもう少しく積極的にこれが対策を講じなければならぬのではないか、こういうふうに考えておるのでありますが、さらにこれらに対する具体案、あるいは二十五年度、二十六年度に対する一つの処置、そうしたものをどの程度考えておられるか。この際国民に知らせ、お互いが反省する意味において、ひとつ率直なる意見を私は伺いたいのであります。
  79. 大久保武雄

    ○大久保政府委員 海難に対する船舶検査の事務の問題でございますが、御承知のごとく船舶検査に関する行政は、戰争以来ほとんどこれを放擲しておられまして、実際上船舶行政はあつてなきがごとき状態を続けておつた次第であります。そこでかような状態でははな、はだよろしくないというので、昨年の一月からこの行政を海上保安庁の所管に移されまして、海上保全の全面的な行政の一環として進むことに相なつた次第でございます。海上保安庁に所管が移されましてから、長年の伝統的な問題を断ち切つて、この行政に革新をもたらしたいということで鋭意努力しておる次第でございますが、いまだ改革の途上に上つたばかりの次第でございまして、なお今後になすべきことがたくさんございます。船舶行政の確立につきましては、今後大いに努力をいたしまして、いやしくも海難にあたつて、船舶検査が不十分であつたということのないように努力いたしたいと考えておる次第であります。  なおまた海難の発生に対するところの燈台の役割というものは、非常に大きいのでありまして、御指摘のごとく英、米、オランダ、ドイツ、その他の諸国と比較いたしまして、わが国は最も海難が多く、しこうして最も燈台の数は少いのでございます。少くともこれらの国々に匹敵する燈台を持ちますためには、現在海上保安庁は約千箇所の燈台を持つておりますが、もう千箇所くらいの燈台は必要でございます。しかしながら現在日本の持つております燈台に関しましても、これは戰災のため非常に大きな部分が損害をこうむりまして、現在その損害復旧に最大の努力をいたしておる次第でございまして、新設はなかなか思うにまかせない次第でございます。現在の海難が最も多く小型船、特に漁船に起つておるということに留意をいたしまして、従来顧みられなかつた小型船舶や漁船に対する燈台の建設、あるいは改修には最大の努力をいたしておる次第でございます。なお無線に関しましても、暗夜における船舶の方向を知らせるために、これまた十分努力をいたしまして、燈台の施設に即応するようにいたす決心でございます。  なお船舶の充実につきましては、私どもが最も重視をし、努力を拂つておるところでございまして、今回国会に提案されております予算案の中には、千二百トン、クラスの警備船一隻、七百トン、クラス二隻、四百五十トン・クラス六隻を計上しております。そのほか警備短艇約二十七隻を計上しておるような次第であります。これらの船が逐次整備するに伴いまして、海上における安全確保の努力が実を結んで来ると考えます。
  80. 上林山榮吉

    上林委員 現在保有しておる救助船の総トン数、あるいは各一隻ずつの能力、これは一体どの程度になつておるか、あるいはなお二十五年度の予算でおつしやるように約九隻の船をつくるわけでありますが、これでまだなおどれくらい足らないか、この点についてもう少し具体的に承つておきたいのであります。
  81. 大久保武雄

    ○大久保政府委員 海上保安庁は当初二十八隻の木造船警備で出発をいたしました。この総トン数二千二百四十トンでございます。昭和二十五年一月現在保有しております巡視船と申します警備救難船舶でありますが、これは五十九隻、七千三百四トンでございます。現在二十四年度予算で建造中でありますものが五隻でございまして、これが合計二千五百九十トンでございます。これを合計いたしますと、年度末には六十四隻、九千八百九七四トン、約一万トンになるわけであります。昭和二十五年度に新造予定がただいま申しました九隻、四千総トシでありましてこれを加えますと七十三隻の一万三千八百九十四トンになる次第でございます。現在海上保安庁の船舶は法律で一つの制限を附加されております。総隻数百二十五隻、総トン数五万総トンを越えてはいけない、速力十五ノットを出るべからず、一隻の最大排水トンは千五百トン、かようにとりきめられておる次第でございますから、私どもはこの余裕トン数は一日も早くこれを充足いたしまして、法律で附加された職責を全ういたしたいと考えておる次第でございます。
  82. 森幸太郎

    森国務大臣 さつき上林委員の御質問に、資料を持つておらなかつたのお答えできなかつたのでありますが、最近朝鮮側に拿捕された漁船の問題について御報告いたします。本年一月九日に第十一億広丸、これは徳島水産株式会社の船でありますが、第十一、第十二と二隻拿捕されました。一月十一日に第二十七喜久丸、これは井筒喜平の所有でありますが、拿捕されました。一月の十二日に第三大洋丸、第三大漁丸、これは大洋漁業株式会社の漁船でありますが、これが拿捕されました。そのほかに追跡を受けても難を免れて逃げきつたのが二隻あるわけであります。これが本年一月からの実際でありますが、昨年までの調査の内容を申し上げますと――これは底引協会の調査報告でありますが、中国側とみなされる拿捕された底引、トロールの船でありますが、合計が三十四隻、そのうち帰つて来ない船がトロール一隻、底引二十八隻、撃沈二隻。韓国側と見られる被害が合計でトロール船二隻、底引二十五隻でありますが、うち帰つて来ないのが底引十六隻、トロール一隻、これが昨年中の状況であります。
  83. 上林山榮吉

    上林委員 次に文部大臣に対しましてしばらく質疑いたしたいと思います。まず六・三制予算でございますが、この問題は補正予算で十五億、今年度の予算で四十五億という担当大幅の予算を計上したわけでありまして、私ども協力した国会として敬意を表しておるのでございますが、この予算の建築に関する補助といいますか、あるいはこれを算定した基準といいますか、これはテント張りあるいは馬小屋式の教室、あるいは二部教授等を解消するための基準によつて組まれたものであつたと考えますが、現実に私どもが各地方をまわつて見ますと、バラック――そのバラックもまことにそまつなバラック、しかも馬小屋を改良した程度の教室、教室を三つ四つについ立をただ立てて隣の教室が見え、授業の音が聞える。こういうようなものを考えてみますと、なお全国には数十万坪の対象になるものがあるのではないか、こういうことを考えるのでありますが、もちろん財政の苦しい中から六十億という予算を組んだことは、確かに一歩も二歩も前進したわけでありますけれども、現実に地方をまわつて、今申し上げたことく調査してみますと、まだまだこれに近いところの基準になるものが相当多い、これに対しまして、二十五年度内において何らかの対策を講ずる考えか、言うまでもなく二十六年度には当然この問題は、文部省としてお考えになると考えるのでありますが、その辺の文部省としての意見を私は伺いたいのであります。
  84. 高瀬荘太郎

    ○高瀬国務大臣 六・三建築補助の予算が、補正予算と二十五年度予算で六十億とれる見込みでありまして、大体根本の要求の原則は、生徒一人当りの教室の坪数〇・七坪というものが最小限度ぜひとも必要であるという原則で、それに達しないものをまず建てよう、それに補助するという原則によつておるのであります。しかし〇・七坪まで達せしめるというだけでありますと、六十億の予算は余るだろう、それほどは今の建築費から申しますと、いらないだろうという見込でありまして、従つて〇、七坪現在ありましても、いろいろの状況によりまして適当な調節もはかりますし、またすでに建築の済んでおるものにつきましても、特殊な事情を考慮して調節をはかるということをやりたいと思つております。今お話になりましたような〇・七坪あると認められておるものでも、その條件が非常に違つておると思います。りつぱな建築でもつて〇・七坪あるものもありますし、ごく仮普請ですぐにもつぶれそうな状況で〇・七坪あるという状況にあるものもある、非常に違つております。ですからこれは今後むろん考えて行くつもりでおりますし、また六十億の予算の範囲においても、ある程度考え得る余地があると思つております。しかしそれで十分ではありませんから、そういうような非常に不完全な点につきましては、今後議会に予算の提出される機会のあるごとに、できるだけの要求をして参りたいというつもりでおります。
  85. 上林山榮吉

    上林委員 六十億の予算の範囲内において、すでに一応の基準はあるけれども、でき上つたもの、ないしはこいう基準に合つたと同じ状態にある、非常にみすぼらしい学校や校舎に対しては、相当調節をとつてもいい、実情に応じてそういうような方向に進みたい、なおそれについては多少の調節も予算的な範囲内でできるという実際的な答弁を伺いまして私ども意を強くするのでありますが、ことにそうしたようなことさらに一歩進めますと、戰災あるいは災害を受けている学校の補助率あるいは起債の認可、こうしたようなものは、一船のものとは別途な基準において政府は善処すべきである。こういうふうに考えておりますが、戰災学校あるいは災害を受けた学校等に対する補助額の率ない上は、起債、これに対しては今度のあの基準をしやくし定規には適用しない、これも実情に応じて、そうしたような方向において努力をする。こういうふうにわれわれは希望しておるのでありますが、文部大臣これに対してどういうお考えであるか、この点を伺いたい。
  86. 高瀬荘太郎

    ○高瀬国務大臣 学校の戰災復旧、災害復旧の補助も、むろん地方の財政の実情を十分に調べまして、適当にやつておるわけでございます。これも予算としましてはむろん十分ではありませんからして、思うようには参りませんけれども、今お話のあつたような趣旨で、最も合理的にこれを処置して行く方針であります。
  87. 上林山榮吉

    上林委員 そういう実際の面について一つの基準を当てはめない。ことに戰災及び災害を受けた学校に対しては特別に考慮する。こういう御意見を承りまして、さらに私は文部省のこの方面に対する努力要望してこの点はこれでおきたいと思います。  次に特に文部大臣の方針を伺つてみたいことは、現在中学校あるいは小学校の教員を養成する学校、あるいはこれらに入る生徒の待遇の問題、これについて伺いたいのであります。われわれが聞くところによりますと、教員養成学校というか、この種の学校に入る者は非常に少い。ところによつては定員に満たないところもあるそうであります。これは言うまでもなく、学資のないという点もありましよう、あるいは阜校を出てからの、たとえば教員の待遇、こういうような問題もいろいろからんでいると思うのであります。これら生徒の入学が非常に少いこの事実に対して、将来まじめな、優秀なる教員を養成する、こういう見地から、われわれは非常に関心を持つているのでありますが、これに対してはどういう具体策を講じておられるのか、この点を明らかにして、そうして優秀なる生徒を集めることに最善の努力をしてほしい、こう考えるのであります。
  88. 高瀬荘太郎

    ○高瀬国務大臣 教員志望者がこの数年来非常に減少しているということは事実でございまして、その点義務教育を延長までして、日本の教育を向上させようという建前から申しますと、非常に憂慮すべきことであると思つております。それで文部省といたしましては、何とかして具体的にこれを改善する方法考えたいと思つて、いろいろと対策を講じているのでありますが、第一は先ほどおつしやつたように、学生の経済状態が非常に悪い。非常に学資に困つている学生が多い。特に教員志望の学上の家庭が、経済的には非常に困る状況になつているというようなところから、志望者が減つているということも考えられますので、その点を何とかして考慮しなければならないというので、二十五年度におきましては、日本育英会の予算を六億増額して十五億にいたしました。そしてその中の大きな部分を学芸学部だとか教育学部に入つて教員を志望する学生に、学資として奨学金を貸與する方面に使おうといたしております。ですから二十五年度の予算が通過いたしますと、学芸大学、学芸学部、教育学部学生の教員志願者に対しましては、相当の学資が毎月奨学金として貸與されるということになります。その金額を、最初文部省といたしましては、全部の学生に対してせめて月二千円くらいにしたい考えでおりましたけれども、これは予算の関係からその通りには参りませんで、全学生の半数に対して月二千円くらいの補助をつけるというような予算になつております。実際に半数に二千円くらいやつて、あと半数には全然やらぬのがいいか、そうではなくてやはり事情に応じて二千円のもの、千五百円のもの、千円のものというふうにして学生、層をふやして行く方がいいか。これは今検討しておりますが、とにかくその程度の予算が計上されておりますので、来年度からはこれらの教員養成学校への志望者――現在の大学生というものが相当優遇される結果になりますから、志望者の数も漸次ふえて来るのではなかろうか、こう考えております。  それから志望者が少いということは、卒業後の待遇の問題もむろん関係がございます。しかしこれは一般公務員と現在は大体同じ待遇になつておりまして、特に教員だけよくするということも、なかなか困難な事情にあるということから、まだ具体的に決定はされておりません。しかし仕事の性質から考えまして、一般公務員の行政事務というものと、教員の教育の仕事というものは違つておりますから、将来は俸給表についても特別な考慮をしたいというふうに考えております。
  89. 上林山榮吉

    上林委員 教員養成の問題に対して、文部省は相当考慮しておるのでありますが、われわれはこれではまだ不徹底だと考えておるのであります。ただいま育英資金の問題を御開陳になりましたが、育英資金が年々増額されまして、本年度は十五億円になつた。これはわれわれ了とするのでありますが、この十五億円のうち教員養成の方に向けられる額は総額幾らであるか。なおまたそれ以外の学校の生徒に貸付けるものは実際上どういうふうになつているか。われわれがある大学、ある高等学校などを調査してみますと、大体三〇%ないし五〇%のものが、それぞれ高低はありますけれども、学資に相当つておるのであります。そういうような点から考えまして、漸次増額しつつあることは私ども了としておりますが、この育英資金の額をもう少し引上げることを考えていただかなければならぬと思うのであります。われわれは育英資金の増額と同時に、経済的に迷つて勉強のできない学生を健全な文化国民として育てるために、国家相当額の費用をこういう方面に出してよいと考えるのであります。その比率と、実際の状況はどういうようになつているか伺いたい。  それからついででありますが、実際に貸出して、卒業して行つたものの償還はどういうふうになつている。これは單にそのままになつているのか、相当の額はまじめにこれを償還しておるものか。それによつてはこれらの通常について、また相当考えていいのではないかと思うので、この点を私は特につけ加えておきたいのであります。
  90. 高瀬荘太郎

    ○高瀬国務大臣 現在のような学生の生活状況から申しますと、お話のありましたように、育英資金はもつとずつと増額する必要があると私も考えております。しかし二十三年度は育英資金がわずかに六億でありまして、二十四年度はこれを九億にふやし、二十五年度は十五億にふやしておるのでありますから、まあ増加の割合から申しましたならば、相当の増額になつているわけでありまして、現在の財政状態から見れば、一応余儀ないものと思つております。それで十五億に予定されている二十五年度の育英資金のうちで、教員志望の学生に対する奨学の貸付が約三億四千二百万円くらいになると思います。ですから六億ふえまして、そのうちの五割以上はそつちへ行くことになります。他の学生に対しましては、おもに大学――今までは專門学校及び大学でありまして、今度は新制大学に行きます高等学校の学生には、ほんのわずか月五百円ずつ、ほんとうに困つておる者に給與するという状況であります。これをどういうふうに実際に学生に割振るかということは、これは育英会の方でもつて方針を立ててやつておりまして、文部省は直接やつてはおりません。大体のところは各学校から志望者を選んで、推薦して来るわけなのであります。本部の方でこれを見て、家庭の事情とか学校からの申請の書類とかというものを調査して、最も必要だと考えられる者にやるというふうな選抜の仕方をやつておるわけであります。
  91. 上林山榮吉

    上林委員 育英資金を單純に考えておる向きもあるかもしれませんけれども、私はこの問題は非常に重大だと考えますので、文部省の一段の努力をば希望しておきます。  次に戰時中あるいは戰争直後も含むと思いますが、小学校を国立の学校に転用しておる。こういう問題が相当あるようでありますが、この問題について、文部省の見解は、一体どういうふうに処置した方がいいと考えるのか。どちらも教育は大事であるけれども、義務教育の性質から考えて、われわれはどうしても小学校に優先せしむべきである。こう考えておるのでありますが、これに対する文部大臣の見解を伺いたい。同時にこれは広く所々に行われておることでありますから、この際疑問を一掃する意味において、ひとつはつきりとした御答弁を私は要求したいのであります。
  92. 高瀬荘太郎

    ○高瀬国務大臣 ちよつとお尋ねしますが、今の御質問は小学校を官庁が使つておるという意味でありましたか、国立の学校が使つておるという意味でありましたか。
  93. 上林山榮吉

    上林委員 それは国立の学校が使つておる、こういうのであります。あるいはまた官庁の使つておるものもあります。これは両方とも解決すべき問題だと私は思うので、見解をただしたいのです。
  94. 高瀬荘太郎

    ○高瀬国務大臣 小学校を国立の学校が使つておるという実例については、私はあまり知らないのでありますが、そういう実例がありましたならば、ひとつあげていただきたい。
  95. 井手光治

    ○井手委員 実例をということでございますから、関逃して私東京都下におきまする一、二の例を申し上げたいと思うのですが、文京区におきまする追分小学校は、学芸大学の校舎に転用しております。それから四谷小学校は、ただいま大蔵省の本庁舎に使用しております。それで学芸大学に、これは地域的に校舎の存在に制約を受けない。ところが小学校に関します限りは、通学区域の関係で、絶対にその学校でなければならぬという強い制約を受ける。これが各方面の地元の要望が非常に強い。小学校は教室が不足しておつて、二部教授、三部教授を現に行つておるにかかわらず、国立学校がこれを転用して占有しておるという事実に至つては、これは地元民の希望として早く移転してもらいたいという熱望があつて、いろいろ私どもに対しても問題が生じておるのでありますが、これは今日のように大きな予算が通過いたしましたときに、できるだけそれらの処置を円滑に運んでいただいて、この問題を解決していただきたい。かように思います。
  96. 高瀬荘太郎

    ○高瀬国務大臣 お答えいたします。追分の師範学校の問題でありますと、少し意味が違つておるのじやないかと私は思います。東京都で所有されておる小学校を国立学校として使つておるという意味ではないのであります。あれはすでに寄付されておりまして、国有であります。ですからかつて小学校の建物であつたというものであります。ですからお話が少し違うのだろうと思います。しかし東京は焼けておりまして、小学校設備に困つておられるということはわかつておりますから、そういう点について、一旦は寄付したのだけれども、まあ何とかこれをもとしてくれと、こういう御希望なんで、これは実際の事情相当お困りの状況もわかつおるので、いろいろ考えてはおります。しかし使つておりますのは追分師範というやはり教育養成の学校であります。これを他の施設に移さなければならないというような事情もありますので、そう急速にすぐというわけには行かないのでございます。今後いろいろと考慮はして行きたいと思います。
  97. 上林山榮吉

    上林委員 ただいまの問題はいろいろな事情があろうとは思いますけれども、小学校の教育の重要性にかんがみて私は政府の善処を要望いたしておきたいと思います。  次にお尋ねいたしたいことは、私立学校に対する政府の方針、ことに文部大臣の方針を私はこの際明確に伺いたい。というのは、本会議の席上において私立学校と国立の学校は、それぞれ同じ国家的教育をしておるのであるけれども、経営主体が違うから、予算的措置も当然違うべきものであると認める、こういう趣旨の御答弁であつたと思います。これは私も原則としてはそうなければならぬと思いますが、この考え方は、私は私学振興の立場から考え政府の思いやりが足りない、こういうふうに考えるのであります。ただ幸いにして、今回は私学貸付金というものが三億二千万円ですか、組まれておるし、私立学校法案を通過せしめて、私立学校の今後のあり方を明示したということは、私は一歩前進したとは思いますけれども、こういうような考え方では、私立学校は私立学校の方針があり伝統があり、また経営主体も経営方針もそれぞれ特徴をもつて考えて行かなければならぬけれども、この特徴やこの環境を生かすために、相当国家がこれを援助して行く、協力して行く――援助が悪ければ協力をすると、こういう根本方針をもつと持つてもらわなければならぬとこういうふうに私は考えるが、この根本的な方針、私学振興に対する文部大臣としての根本的積極的な考え、これは何もないのだ、この程度でいい、こういうふうに世間並に考えておられるか。私はどうも本会議のあの答弁を聞きまして理解ある文部大臣のかねてのことを知つておるがゆえに、どうもさびしく考えたわけなんですが、これに対する一つのはつきりした答弁をされて、それぞれ国家のために盡瘁している全国の私学の諸君の元気を振起せしめたい、こう考えるので、これに対するひとつ明快な答弁を私は要望したいのであります。
  98. 高瀬荘太郎

    ○高瀬国務大臣 私学の振興につきましては、文部省としてもむろんできるだけの盡力をしなくてはならないという考えは少しもかわらないのであります。ただ過日の本会議における世耕代議士の御質問あるいは御意見は、私学と官学とは少しも違わないのだから、国家予算の上においても少しも違わない方がいいのじやないか、国家の予算を、官学と私学に同じように分配すべきではないか、こういう御意見であつたのです。そこで私はそれは根本的に違う、こういうふうに申し上げたのでありまして、原則としてはやはり私学というものは、財政の独立を極力はかるということがぜひ必要だ、こういう意味で申し上げたわけであります。しかし何といいましても戰災による打撃が非苗に多い。またインフレによる経営上の困難も非常に多いという特殊な日本の実情から考えますと、やはりそういう特殊な場合として、相当国家的補助はぜひ必要だと考えておるわけであります。二十五年度予算には相当の計上をされましたが、むろんこれで足りておるとは思いません。現状から申しましたらば、できるならばもう少しよけいの貸付はぜひ必要だと考えておるわけで、私学を冷淡に考えておるつもりは決してありません。しかし一方で財政的基礎を確立させるという根本方針はぜひ必要智ありますから、そういう意味では寄付金に対する税金免除というようなことが、根本的には一番必要なことだろうと私は思います。現在でも相続どか遺贈についての寄付金でありましたら、免税になつておるようであります。また戰災復旧についての寄付金であつたら免税でありますが、その他の場合についても、そういう篤志家の寄付でもつて私学の財政を強固にするというような場合については、税金その他いろいろな方法でもつてできるだけ便宜を考えて、文部省は援助をして行きたい、こういう考えでおります。なお建物についても、軍の特殊物件を使つておる私立学校が相当、あります。それの使用料等については、現在でも特殊な扱いをしておりまして、一般とは違つた使用料をもつて便宜を與えたりしておる。こういうふうに補助はむしろ臨時的特殊な事情から必要であると考えますと同時に、原則的に私学の助成には、文部省としてはあらゆる方法考えなければならないというつもりでおります。
  99. 上林山榮吉

    上林委員 二、三年前の状態と今日とを考えますと、文部省の考え方が相当進んで参りまして、私学に対して非常に理解ある態度をとつておられることは、私も了承いたしますが、ことに一番困つておるのは戰災学校であります。戰災学校は、人によつては二十年、人によつては五十年経営をして来ておつたものが、一朝にして灰燼に帰してしまつた。この復興に対しては、相当の痛手であり、廃校の運命にあるもの、あるいは廃校せられたるものも相当多いわけであります。そういう状態から考えまして、私学の貸付金のごときは、われわれは二十億ないし三十億円は最小限度ほしかつたわけでありますが、あれが補正予算と本予算を合せてわずかに三億何千万円、こういうような一割にも満たない状況では、私は理解ある経済的援助とは言えないと考えます。こういう意味合いにおいもて、どうしても私学貸付金の増額を、今後文部省が努力されてほしいというふうに私は考えます。なおお互いが共同組織によつてそれぞれ私学が生きて行く道も考えなければならないが、その一助として、たとえば私立学校金庫法案、あるいは教育金庫法案、何でもいいのでありますが、こういう種類の金庫法案を政府は出して、間接的にこれが援助、協力するという考えはないか。この点を伺つておきたいのであります。
  100. 高瀬荘太郎

    ○高瀬国務大臣 教育金庫の問題については、もう長い間懸案で相当研究もされておるわけであります。この実行についても文部省はいろいろと具体的に考えております。ただ政府の出資の問題、それから生徒から集める募金の問題、いろいろな点でもつて技術的にまだ解決のつかない点があるのであります。それらをなお検討いたしまして、できるならばそういうものをつくつて、私学のために援助したいという方針で進んでおります。
  101. 上林山榮吉

    上林委員 見返り貴命の問題についてはもう少しく承つてみたいのでありますけれどももこれは要望だけにしておきたいと思います。先ほどから申し上げますように、大蔵大臣は見返り資金はいつも遊んでいないのだから、いつ出してもよろしい。あるいは一年間に予定されたものはその年度内に使われなくてもいいのだというような考え方は改めていただきまして、できるだけ年度内に、しかも年度の前半期に多くの消化ができるように、努めていただかないと、産業の開発が遅れる。たとえば電源の開発について見ましてもその通りです。電源の開発はものによつては三年、ものによつては五年かかるわけでありますが、そういうようなものを一日も早く態勢を整えしめる、ためには、どうしても私は見返り資金が早急に放出されることが必要だと考えますので、政府としても昨年末以来、早きは昨年の九月ごろから相当努力をされまして、相当の効果を収めておるものも知つておるのでありますが、この点一段と努力をされるように要望して、見返り資金に関する問題を終りたいと思います。  次に大蔵大臣に伺いたいことは税金の問題であります。御承知通りに国税参は公約実施の点からいたしまして相当に減額された、その量は御承知通りに実質的には九百億円、あるいは本年度は七百億円というような減税をしたことは事実でありまして、私ども公約を実施したという意味から、この点将来の第二段の減税の構えといたしまして、非常に力強く考えておるのでありますが、一方これが約四百億円だけ地方税に振りかわつた事実を見まして、一部の世間では税金は減つたのではない。政府が税金は減つたと説明しておるけれども、実際は税金は減つたのではない。むしろ加重されるのだというようなことを、しかもあなたの所管の出先の税務署員が、一部ではありますけれども、これを納税者に向つて宣伝をしておるというに至つては、まことに遺憾にたえないのであります。これはこの議場を通じて、あるいは本会議場でもいろいろ説明はされたわけでありますが、これを明瞭にせられたい。  第二点は、確かに地方税が四百億円増額になつたから、人によつては、ところによつては増税になる人も出て来ることと考えるのであります。そういう意味合いから、シャウプ勧告の地方税に対する線を何らかの程度に変更する意思はないか。地方税の率の変更に対して、ちようど勤労所得税に対して一〇%免除したらいいだろうというあの勧告を一五%に引上げて勤労所得税の免税点を引上げたと同様の努力を、私どもはこの地方税のシャウプ勧告案以上の減税、私どもはシャウプ勧告案の基準よりも、もう少し低目に租税体系をつくるという方向に、大蔵大臣は、努力をされなければならぬし、政府はこぞつて租税を通じての地方の負担軽減の意味からそういう方向を要望したいのでありますが、これに対して最高司令部とけ交渉なり、あるいは政府見解なりを、この際本議場を通じて国民に知らせるという意味において承りたいのであります。
  102. 池田勇人

    池田国務大臣 昭和二十五年度の税の軽減の問題につきましてはお話の通りでございまして国税におきましては実質的には九百億円、補正予算を考えに入れますと、国税において七百億円の減税になることははつきりいたしておるのであります。次に地方税につきまして前年度千五百億円の租税收入でありましたのを、シャウプ博士は千九百億円と見積つておられます。しかもその四百億円を増加する理由の一つに、今までは税にかわるべき寄付金が相当地方にあつた。こういうことは不明朗だから、この寄付金――大体推定四百億円と認められるが、このうち三百億円までは税としてとる方がはつきりしており、それが公平であるという考えのもとに、地方税制をおきめになるときに、千五百億を千九百億円と考えられたようであります。従いまして形式的には税として四百億円増税になりますが、これは寄付金を三百億減らすという考えのもとに、計画を立てられたようであります。従いまして寄付金は三百億減る。そうして形式的の税は四百億円ふえる、こういうことに相なるのであります。従いまして国税、地方税を通じまして、実質的に申しますと、国税の方で九百億円減り、地方税の方で百億円ふえる、こういうことで八百億円という計算もできるのであります。しかし形式的に申しますと、国税の方では補正予算を考えに入れますと、本年度は七百億円の減税、しこうして地方税においては実質的には寄付金がなくなりませんと四百億円の増税ということになりますから、形式的には差引通じて三百億円の減税ということになると私は思うのであります。そこで寄付金の問題がどうなるか、寄付金がなくなつてしまえば、実質的には八百億円の減税と言い得ると私は考えておるのであります。しこうして中央地方を通じて本年度五千百億円、そうして地方税において千五百億円と申しますと、六千六百億円になる。そこで形式的に三百億円減るということになりますと、全体としてはお話の通りに中にはふえて来る入もありましよう。しかもまた私の計算では農村におきまして、農家の方は非常な減り方でありますから、他の場合においてふえて来る人も中にはあるかもしれません。しかしこれは例外的の問題だと考えます。全体といたしましては以上申し上げましたように、国民負担は相当つて来ると思うのであります。  次に地方税の税制の問題で、シャウプ博士の勧告案にあります通りに、不動産税について課税標準を千倍とし、税率を一・七五にする問題、また附加価値税を四%にするという問題、それから住民税の初年度の課率をどうするかという三点の問題があると思います。私は職掌柄この地方税の税制につきましてはタッチする権限を持つておりません。持つておりませんが、事いやしくも国民の負担に関係いたしますので、関係方面に参りましたときには、私はこの問題を特に取上げまして論議いたしております。私の見込みでは附加価値税の四%は三・五%でけつこうだと思います。また不動産税につきまして千倍というのがありますが、私は一、七五の税率を採用した場合においては、八百倍くらいでけつこうだという考え方を持つております。また住民税の初年度の賦課率は一八でなしに、もし二十四年度の課税を対象にするときには初年、度は一五でいい、平年は一八でいいという考えをもちまして、直接の責任者ではございませんか、そういう考えのもとに関係方面と別個に話を進めておりますが、私の想像では大体通るのではないかという気持を持つております。
  103. 上林山榮吉

    上林委員 国税の減税、地方税の増税、それを差引いても、なお相当額の減税になることはわれわれも承知しております。ただ先ほど申し上げたように、自分の所管ではないけれども努力しておるという点は了としますが、政府全体の問題でありますので、所管大臣あるいは総理大臣などとも協力されまして、地方税の四百億円の増税がさらに減額される基礎的な交渉、そうしたような方向に向つて一段の努力をされまして、そうして地方、中央を通じて相当の減税になつたのだという納税意識を高めるという意味合いにおいて、今後の努力要望しておきたいと思います。一段の御奮闘を希望いたしましてこれで質疑を終りたいと思います。
  104. 小峯柳多

    ○小峯委員 私の保留しておいた質問を二、三申し上げます。  ただいま上林山君から地方財政の問題に触れてお尋ねがあつたようでありますが、やはり地方財政の問題で、非常に関係のあります平衡交付金の問題なのでありますが、その平衡交付金の割当に関する基準をすでに御用意なさつておると思いますが、その基準はどういうところを主にしておられるか、その基準について伺つておきたいと思います。
  105. 池田勇人

    池田国務大臣 この問題は私の所管でございませんので、お話申し上げることはいかがかと思いますが、実は地方財政委員会の組織等につきましても、今国会の御審議を願うことにいたしまして、今その点につきまして内閣においても検討いたしておるのであります。シャウプ勧告案には千二百億円と言つておりましたが、厚生保険を出さない関係上千五十億円になります。内容につきましても、やはり今までの配布税と大体同じような建前で一応行つて、そうして今後の地方財政審議会守として恒久的なやり方を考えるよりはかにはないじやないかと考えております。具体的の内容はまだ閣議においても決定しておりませんので、御了承願いたいと思います。
  106. 小峯柳多

    ○小峯委員 直接の御所管ではないというお話でありましたが、いずれこの平衡交付金に関する法律は、大蔵省の所管で立案されるのじやないかと思います。もしそうだとすればもちろん関係がありますし、そうでないといたしましても、割当の基準の中に地方の財政力ということだけでなしにその土地の災害に関する問題が相当大きく響いて来なければならぬと思うのであります。災害県は全国に非常にたくさんございますが、その利子の負担のために、実は相当災害県は困つておるわけであります。本年災害自体でもつて非常な打撃を受けております上に、その元利、ことに利子の負担でもつて地方財政の不堅実になつておるような点もあるのでありまして、平衡交付金の割当基準の中に、この災害県の利子負担の問題をぜひ考慮に入れてしかるべきだと考えるのであります。御所管が違えば御答弁を保留になつてけつこうで、すが、お伺いしたいと思います。
  107. 池田勇人

    池田国務大臣 平衡交付金のわけ方につきましては、自治委員会できめることになりまして、大蔵省の所管ではないと考えております。問題の災害県におきまして、既往の災害に対しまして発行した地方債の利子につきまして、いわゆる財政力の点に加味するという問題でありますが、これは私は当然加味されてしかるべきものだと考えております。
  108. 小峯柳多

    ○小峯委員 やはり地方財政に関係があるのでありますが、これは御所管だろうと思いますが、災害復旧費の全額国庫負担の問題でありますこの基準というふうなものも、すでに事務当局で御用意があるだろうと思います。事務当局でけつこうでありますから、一応御発表願いたいのであります。
  109. 池田勇人

    池田国務大臣 災害の全額国庫負担の問題につきましては、シャウプ勧告案の次第もありますので、その後検討いたしておるのでありますが、まだ最後的にこまかい点はきまつておりません。原則はきまつております。それはほんとうの意味の災害、いわゆる天変地異というふうなものから起りましたもので、従来法律をもつて負担をきめておりました問題、すなわち道路、河川、港湾というものについては、全額負担をする考えでおるのであります。また一般の災害の中でも小額の災害、たとえば一災害が十五万円以下というふうなものは、国庫で負担をしないというようなわけ方にいたしたいと考えております。しこうして災害の全額負担の問題は、昭和二十五年度だけで考えておるのであります。既往の災害と昭和二十五年度の災害についてのみ考えておるのであります。昭和二十六年度からは別に地方財政委員会というものが新たに発足いたしますので、そこでそれを十分検討していただきまして、将来の大綱をきめたいと考えておりますが、とりあえず昭和二十五年度についてはシャウプ勧告案の次第もありますから、一応今申し上げたような考えで全額負担の問題を解決して、予算案を組んだような次第でございます。
  110. 小峯柳多

    ○小峯委員 ただいまの御答弁で非常に不思議に思うことは、昭和二十六年はいまだきまらぬという御答弁でありまして私は検討してまだなくすとはきめなくてもよいと思いますが、二十五年度は今の方式でやり、二十六年度は別なやり方でやるということになりますと、いずれこれは継続事業でありますから、非常に混惑するのではないかと思いますが、そういうふうに考える根本的な理由は、災害の全額負担というような問題で、シャウプ勧告に多少修正すべき点があるとお考えになつているのか、私ども考えでありましても、全額国庫負担なら地方の熱の入れ方、あるいは工事の能率の問題で多少問題があると思うのですが、今のシャウプ勧告に対して多少考え方の違う点があるのか、その辺の消息を伺いたいと思います。
  111. 池田勇人

    池田国務大臣 全額負担の問題については、先ほど申し上げましたようにシャウプ勧告案がああいうふうにきめておるのであります。しこうしてこれに基いて平衡交付金をきめたわけであります。従つてこの予算案をつくります場合に、平衡交付金の問題と全額負担の問題は、もう密接不離の関係があります。しかし別に将来永久に災害復旧に対しては、国家が全額負担することがよいか悪いかということの根本問題を検討いたしますと、必ずしもシャウプ勧告案が絶対的によいというわけのものではないのであります。それでは昭和二十五年度ももつと検討したらどうかという問題になりますが、時間の余裕がございませんので、一応二十五年度については、こういうふうに全額負担にしました。二十六年度からは今度地方の行政組織の変革とか、財政のやり方の国庫負担の区分問題とか、いろいろな問題がありますが、二十五年度中に十分に検討を願い、二十六年度からは新たにシャウプ勧告案を取入れたり、あるいは将来の財政負担を考えてよい案をつくろうというのであります。
  112. 小峯柳多

    ○小峯委員 金融の問題で聞き残した商工組合中央金庫の増資の問題についてお伺いします。  昨日の御答弁で興銀や勧銀の増資の問題については、非常に具体的に時期の近いことを思わせるよろな御答弁があつたのでありますが、商工中金の方は、何か少しずれているような感じがしましたが、なぜずれているのか、ずれている理由があれば承りたいと思います。
  113. 池田勇人

    池田国務大臣 興銀、勧銀、農中については、私は確定的になつたということの報告を受けております。商工中金の問題は、実は前々からもやもやしているのであります。実は商工中金、農林中金と言うと、いかにも名前が同じようで、実態が同じように聞えますが、農林中金は御承知のようにたいへんな仕事をしております。商工中金は組合との直接の連絡も非常に漸うございます。また自分の自己資本もほとんど一億前後のもので、一般の預金はございません。貸付金も日銀からの別わく融資でようやくやつている。こう言うと変でございますが、農林中金や興銀、勧銀とはほとんど問題になりません。今の全体の貸付金が二、三十億程度でございましようか、最近別わく融資をやつて四十億になつているかどうかという状態ですから、私今はつきり申し上げられませんが、しかし小さいなら小さいながらも、やはり商工中金というものは、今までの通りに債券を発行し、中小商工業に金融することが必要でありますから、私としてはやりたいと思つております。しかしこの点についての検討は、私どもとしてはまだはつきりとしておりません。もう一、二日お待ち願いたい、しかし方針としては農林中金と同じように私は小さいながらもやつて行きたいという考えを持つております。
  114. 小峯柳多

    ○小峯委員 商工中金の活動の現況に対する御指摘はその通りでありますが、同じような名前を持つてつて、同じような仕事を予想させながら、農林中金と非常に違うということの根本は、この商工中金に関する組合の系列が実はできていないからだと思います。そういう意味で、市街地信用組合とか、あるいはその他の信用組合を傘下に攻めて、いわば商工界の農林中金を商工中金につくるというお考えがあつてしかるべきだと思うのであります。現実の活動が非常に弱いということは、そういうことから来る盛り上げ方が少いということがあるのであります。そういう現実の問題をお考えなつたことがあるかどうか、伺つておきたいと思います。
  115. 池田勇人

    池田国務大臣 これはたいへんな問題でございまして、商工中金と市街地信用組合、その他の組合とのつながりをどうするか、預金の受入れ方についてどういうふうにするかということは、従来からやつかいな問題であつたのでありますが、今までの惰性もあつてなかなかうまく行つておりません。しかしそれにはやはり上の方の機構を大きくいたしまして、確実なものにして、下からそれに得りつくような方法も講じなければなりませんし、また下の方を強くして、上からもひつつくようなかつこうもしなければなりませんし、お話の点はわれわれもよくわかつているので、とにかく商工中金に、中小商工業関係のいわゆる中央銀行としての実体を備えさせたいという念願があるのであります。その意味におきましても、やはりこの際見返り資金からある程度の出資をして、債券を発行するというような方法をとりたいと考えております。
  116. 小峯柳多

    ○小峯委員 商工中金の活動に関連いたしまして、貸付の対象が現在は組合だけになつております。それをもし組合の構成員自体に及ぶようにいたしますと、今御指摘のような業務活動がよほど積極的になるだろうと思うのであります。それから出張所の設置は銀行の支店と同じように扱いまして、戰時中からとめておるのだと思いますが、なお全国で七、八箇所は出張所のない府県があるのであります。実際はなかなか商工中央組合は活動いたしておりまして、企業組合がだんだん発展している過程に即応いたしまして、この問題も軽く見てはいかぬと思うのであります。そういう意味で、上も大きくし、下も大きくする、両方からの歩み寄りにするというなかなかうまい御答弁を今いただいたのでありますが、その問題に関連して、今の支店、出張所の増設の問題、あるいは貸付対象を直接組合構成員にまで持つて来るということは、お考えの中に入り得ないだろうか、伺つておきたいと思います。
  117. 池田勇人

    池田国務大臣 御説の通りでありまして、私は昨年来まず商工中金の人的関係を刷新しようということで、刷新しつつあるのであります。あれやこれやで、先ほど御答弁申し上げましたようなことに向つて行くと考えております。
  118. 小峯柳多

    ○小峯委員 中小企業金融の一環として無蓋の問題を二、三伺つておきたいと思います。  年末に預金の金を百億動員いたしましたことは、年末金融として非常に効果があつたと考えるのでありますが、なおその内容を検討してみますと、一般の市中銀行に出ましたものは、日銀と取引がありますがゆえに、必ずしも喜ばれなかつたのではなかろうかと推測するのであります。しかるに無盡の方へ流れました金は、私は一つの無蓋会社を調べてみましたが、わずか一千万円の金を二百何軒かに実は年末融資をやつておりまして、文字通り中小企業の急場を救つております。この無盡会社に流れた金は非常にフルに活動したと思いまして、将来ともこういうことは大いにやつていただくようにしなければならぬと思います。昨日の御答弁の中でも、この問題は将来とも考えて行くということを承つて、非常に愉快に思うのでありますが、それとは一応離れまして、無盡会社が中央銀行、中央機関を持たないのであります。無盡会社も日本銀行と取引する銀行と甲乙のないような、内容のいい会社もあるのでありましてこれを中央銀行と取引させるという問題が、やはり中央機関を持つという意味では必要だろうと思います。この問題はときどき風が吹いて来るのですが、それが最近とまつていると思います。どういういきさつになつておりますか、承つておきたいと思います。
  119. 池田勇人

    池田国務大臣 速記をとめて。
  120. 植原悦二郎

    植原委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  121. 小峯柳多

    ○小峯委員 ただいま翻訳のできいなというお話がありましたが、この翻訳のできない無盡会社を、翻訳のできるように、言いかえれば通りのいいようにして、預金の扱いも、あるいは先ほどちよつと触れました中央銀行の取引の問題もやれという意味で、無蓋銀行の構想というものも一部にあるやに実は聞いておるのであります。この問題について大蔵大臣はどんなふうにお考えになつておりますか。
  122. 池田勇人

    池田国務大臣 無盡銀行の構想と申しましても、やはり今やつているのが実は銀行業務でありまして、名前をかえたからどうこうというわけのものでもないと思います。やはり実質的に庶民金融機関としての本領を発揮し得るように指導して行きたい、名前は末だと考えております。
  123. 小峯柳多

    ○小峯委員 それから同じ中小企業の金融の中に、これも大奮発であると思いますが、見返り資金から設備融資をするということになつております。見返り資金がなかなか難航をしております折から、どういう行き方からでもこれが動くようになることは、まことに御同慶にたえないのでありますが、その見返り資金を使う中小企業の設備金融が、現在月大体一億ぐらいだと記憶しておりますが、この金額があまり少いことと、これをうらはらにして一般銀行との運転資金云々ということがありまして、割合進まないと思います。始まつて間もないことでありますから、実績云々はむりかと思いますが、この問題はもつと拡大発展させるお考えなり、お見通しがないかどうか。
  124. 池田勇人

    池田国務大臣 大体中小企業に対しましての見返り資金の運用は、月一億ということになつておりますが、大体一・四半期に三億円、こういう考えで行つております。月一億円と申しますと、七十九銀行にわけまして、一銀行で百二、三十万円ということになります。無盡の方に関係せしめると、ほとんど問題にならない。一億円のわけ方で困つている。それで一、四半期三億円というので、少し思い切つてやろうとしても、三億円ですからなかなかやつかいなのであります。私は三、四日前、何とかこれを早くしろ、金額が少ければもつとふやしてもいいから、思い切つてやれということを言つておるのでありますが、おとといの報告では、四銀行くらいで八百六十五万円出ております。これを出した銀行には追つてどんどん出してやつて、ぐずぐずしている銀行には出さなくてもいいから、熱意のある銀行にはどんどん出して行くように、足りなければまた何とかするからというので、この中小企業に対する見返り資金からの設備資金の供與ということにつきましては、これはますます拡大して行きたいという考えを持つつておるのであります。
  125. 小峯柳多

    ○小峯委員 私は中小企業の設備資金を一般の銀行に重点を置いたというところに、実は運転の間違いがあるのじやないかと思います。金融機関というとどうも市中銀行市中銀行、と言いますが、中小企業金融は、実際のところ、むしろ小企業の金融であります。先ほど来お話申し上げた商工組合中央金庫なり無盡が、担当している率の方が多かろうと思いますので、こういう金こそむしろそつちの方に重点を置いてお考えつてしかるべきだと思います。先ほどもお話がありましたように、翻訳のできにくいようなもので、あちらもなかなか理解が行きにくいだろうと思いますが、せつかくこれはあなたも啓蒙なさつて、そういうふうな重点移行を将来考えて行くべきだと思います。重ねてこの点の御意見を伺つておきたいと思います。
  126. 池田勇人

    池田国務大臣 御意見として承つておきます。できるだけ実態に沿うような金融をやつて行きたいと思います。
  127. 小峯柳多

    ○小峯委員 それから外銀の問題であります。御承知のようにすでに常業を開始しておりますが、外銀が対邦人事業を開始します。銀行といたしましてはまつたくイコール・フッテイングをもつて大蔵当局が取締りも監督もする。同時に内地の外国為替銀行に対してもコルレスを開かなければならぬと考えておつたのでありますが、実際の関係からいいますと、コルレスが遅れたまま今日に至つておりますが、コルレス取引開始問題、これはこの前の国会においても愛知局長から比較的近いというお話であつたのであります。このコルレス開始のお見通しはどうか、承つておきたいと思います。
  128. 池田勇人

    池田国務大臣 外銀に対しましての措置はお話の通りでございます。われわれもコルレスの開始を一日も早くやりたいと思つておるのでありますが、何分にも向うとの話がまだ進捗いたしておりません。いつごろになるか、努力は十分いたしておりますが、見通しはつきません。
  129. 小峯柳多

    ○小峯委員 私前段に申し上げました取締り、監督、これもまだ開始して間もないのでありますが、内地銀行と同じような取締りなり、監督なりおやりになつて行くつもりか、またやつて行けるとお考えになるか、承つておきたいと思います。
  130. 池田勇人

    池田国務大臣 内地銀行と同じようにやることになつておりますし、また実際やつて行けると確信いたしております。
  131. 小峯柳多

    ○小峯委員 もう一点、これは先ほど同僚上林委員からお尋ねがあつたのでありますが、一三月の金融の問題であります。大臣のお話ですと、割合に楽観しておられるように思うのでありますが、なるほど税金の徴収あるいは政府支拂いの関係などから申しますと、一応そういう数字が成立ちますが、実は町の中小企業金融はからからだと思うのであります。昨年の今ごろに比べて、より以上深刻な手詰まりを実は来しているのでありまして、それだけにこの一三月というものは、そういう数字の上だけの楽観ではいけないのじやないか。しかも昨年は政府支拂いが一三月に至るまでの間、割合に遅れておりまして、一三月でこれを追いかけて出したように記憶するのでありますが、本年は政府支拂いも割合に順調に行つております。そういう応急の救援の手段もないのじやないかと考えますが、この点重ねて御意見を承りたいと思います。
  132. 池田勇人

    池田国務大臣 政府支拂いの方はできるだけ促進いたしておりますが、今政府支拂いの少し遅れているのは終戰処理費でございます。大体終戰処理費は一月を四十億と計算しておりましたが、四十億参りませんで、三十億足らずしか行かずに、そして計画では翌年度に二百八十億繰越すようになつておるのでありますが、これでは繰越しが多うございますから、二月、三月で極力出すようにいたしておるのでございます。税金が前より非常に多くなつたと申しますが、やはり全体の税金は三月までに徴收するのではないので、締切りは五月でございますから、四月にも徴收し得ることになります。政府の支拂いのやり方、あるいはまた税金のとり方、そして日銀からのマーケツト・オペレーシヨンあるいは貸出しの状況あるいは見返り資金の出て行き方等を考えまして、私はあまり心配していないのであります。しかしいろいろな御議論もありますので、私はこの点につきましては、毎日々々の政府の出資状況を検討して、打つべき手は打つようにいたしておるのであります。
  133. 小峯柳多

    ○小峯委員 政府支拂いのお話がありましたが、その政府支拂いに関連しまして、例の法律百七十一号でございましたか、あの法律は私ども政府支拂いの促進をやつて参りまして、非常な支障になるものだと考えておりましたが、これを廃止するようなお考えがあるか、またそれの関係方面との折衝の程度をお伺いしたいと思います。
  134. 池田勇人

    池田国務大臣 これを廃止する法律案を本国会に提案いたします。
  135. 小峯柳多

    ○小峯委員 最後に通貨の問題でもう一つ伺いたいのでありますが、年度末の通貨を大体三千億と大臣は押えておつたようでありますし、またしかるがゆえに特に年度末の金融はむずかしくないとおつしやつたと記憶いたします。しかし問題は通貨の量よりも、流通の速度であるだろうと思うのであります。そこで同じように昨年とことしが三千億台の年度末通貨を維持し得たといたしましても、通貨の速度が非常に最近は落ちておるのじやないかと思うのであります。その通貨の速度が落ちておることを考えますと、形式的に持ち越すこの通貨の量、その通貨の量が示す以上に、深刻な響きをどうしても與えるような気がしてならないのであります。金融面を上手に繰りまわせば、ディスインフレになると私は繰返し繰返し申し上げて参りましたが、かりにそういうふうに上手にできましても、やはり中小企業の金融にしわが寄つて来るのであります。最初の質問でも申し上げましたように、私は確かに安定化の道をたどつていることはよく承知はいたしておりますが、しかしその中でいろいろな面の犠牲がある、その犠牲の一つに、中小企業金融があるのだということをよくお考えになりまして、單に数字にとらわれずに、年度末、この一―三月の金融の措置に万全を期していただきたいと考えるのであります。かように要望いたしまして私の質問は終りたいと思います。
  136. 池田勇人

    池田国務大臣 お話の点はごもつともで、日本銀行券の問題よりは、いわゆる預金通貨の問題が大きな問題であるのであります。このお考えはしごくごもつともでございまして、私も同感であります。しかし結論において預金通貨は非常にふえて参つております。当座預金は毎月々々ふえて参りまして、しかも回転率は昨年の八月ごろは十回転くらいでございましたが、昨年十一月は十三回転以上になつております。この回転率が非常にふえて来たこと、手形の交換高も非常にふえて参つておりますから、預金通貨は非常なふえ方で、しかも回転率が非常によく行つているので、私はあまり心配はいらぬと言つているのであります。だからお考えの点は十分注意いたしまして、預金通貨全体として見ましても、銀行券は減りましても、いわゆる運転通貨というものはあまり減つておりませんから、この二点をまた数字でごらん入れてもいいと思います。私はこういう点から言いまして実は心配いらぬという結論になつているのであります。
  137. 小峯柳多

    ○小峯委員 ちよつと付言いたしますが、今あなたがあげた預金通貨の増加の問題、あるいは手形の発行が非常にふえているという問題は、私は今のところいい面というよりも、やりくり算段の現われのような感じが実はするのであります。あなたと私は非常に金融に対する見方が、悲観と楽観で、違うようでありますが、私はどうも中身の伴わないようなやりくりが預金通貨にありはせぬか、手形にありはせぬか、しかるがゆえに不渡力の件数も激増しているかと思います。くれぐれもそういう意味で、金融の点だけは特にお考えを願いたいと思います。ほかの点では非常に優秀な大臣でありますが、特に金融にお気をつけ願いたいと要望いたします。
  138. 植原悦二郎

    植原委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後四時十六分散会