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1950-01-30 第7回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年一月三十日(月曜日)     午前十一時二十三分開議  出席委員    委員長 植原悦二郎君    理事 池田正之輔君 理事 尾崎 末吉君    理事 上林山榮吉君 理事 小峯 柳多君    理事 苫米地英俊君 理事 川崎 秀二君    理事 川上 貫一君 理事 圖司 安正君    理事 今井  耕君       淺香 忠雄君    天野 公義君       井手 光治君    小淵 光平君      岡村利右衞門君    角田 幸吉君       小金 義照君    小平 久雄君       坂田 道太君    玉置  實君       中村 幸八君    丹羽 彪吉君       西村 英一君    松浦 東介君       松野 頼三君    南  好雄君       稻村 順三君    西村 榮一君       水谷長三郎君    北村徳太郎君       中曽根康弘君    村瀬 宣親君       林  百郎君    深澤 義守君       米原  昶君    奧村又十郎君       小坂善太郎君    平川 篤雄君       黒田 寿男君    世耕 弘一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         通商産業大臣  稻垣平太郎君         国 務 大 臣 青木 孝義君         国 務 大 臣 本多 市郎君         国 務 大 臣 増田甲子七君  出席政府委員         (主計局長)         大蔵事務官   河野 一之君         (主税局長)         大蔵事務官   平田敬一郎君         通商産業政務次         官       宮幡  靖君         経済安定政務次         官       西村 久之君         (総裁官房長)         経済安定事務官 平井富三郎君  委員外出席者         專  門  員 小林幾次郎君         專  門  員 小竹 豊治君 一月二十六日  委員庄司一郎辞任につき、その補欠として丹  羽彪吉君が議長指名委員に選任された。 同月二十七日  委員岡村利右衞門君、丹羽彪吉君、山本猛夫君  及び神山茂夫辞任につき、その補欠として福  永一臣君、今村忠助君、周東英雄君及び林百郎  君が議長指名委員に選任された。 同月三十日  委員今村忠助君及び福永一臣辞任につき、そ  の補欠として丹羽彪吉君及び岡村利右衞門君が  議長指名委員に選任された。 同日  理事庄司一郎君の補欠として尾崎末吉君が理事  に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  昭和二十五年度一般会計予算  昭和二十五年度特別会計予算  昭和二十五年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 植原悦二郎

    植原委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたしたいことがあります。理事庄司一郎君が去る二十六日委員辞任されましたので、理事補欠をいたしたいと思いますが、これは先例によりまして、委員長において指名することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 植原悦二郎

    植原委員長 御異議がなければさように決定いたします。尾崎末吉君を理事に御楯省いたします。
  4. 植原悦二郎

    植原委員長 なおこの際委員長として一言申し上げておきたい、と思います。あえて言わなくても皆様方承知のことではありますが、新しい憲法によれば、委員会中心の議会であります。そればかりでなく、あらゆる委員会の中で総合的な委員会というものは、予算委員会あるのみであります。従つて民主主義を実現しようとするならば、口で言うよりも、御同様に第一にこれを実行しなければならないことだと思います。そうして新憲法のもとにおきまして、委員会中心であり、委員会を通じて、すべての審議の結果を国民に明らかにすることが、民主主義国の義務であると思います。予算委員会が総合的な委員会であるならば、予算委員会においては、いろいろの御都合もありましようけれども、各大臣が御出席つてしかるべきものと思うのであります。本日は総理大臣の御出席もあつてよろしいものと思いますが、これは参議院において施政方針演説に対する質疑がまだ継続中とのことでありますから、総理大臣はからだが一つしかないために、二箇所に出ることは、いくら民主主義でも不可能だと思いますから、今日総理大臣出席されないことは、委員諸君においても御了承くださることと思います。参議院施政方針演説質疑が終了次第、総理大臣にもここへつとめて出ていただくことに委員長より申し入れるつもりであります。どうか各大臣もそのことをよく御承知くださつて大臣からも総理によくお伝えを願いたいし、御同様に民主主義の実現、新憲法の実行に御努力あらんことを、委員長としては切望するものであります。  これより昭和二十五年度一般会計予算昭和二十五年度特別会計予算及び昭和二十五年度政府関係機関予算の各案を一括して議題に供し、質疑に入ります。小峯柳多君。
  5. 小峯柳多

    小峯委員 二十五年度予算各案に対しまして、総括的な質問をいたしたいと思いますが、その前に二十三日から始まつた会議質疑の中で、中心的に問題になりました安定か不安定か、デイスインフレデフレか、また経済政策の面で自由経済計画経済かというふうなお話がありましたので、しかもその質疑に対しまして、各大臣の御答弁は、本会議の性質であるかもしれませんけれども、少し言葉が足りないように痛感いたして聞いておつたのであります。非常な御自信で大蔵大臣安定本部長官も御答弁なさつておられるのを拝聽いたしましたが、言葉がもう少し補足されませんと、誤解されるような面もあるやに気づかわれますので、本論に入ります前に、以上三つ質問を申し上げますから、少しきめをこまかく御答弁願いたいと思うのであります。  最初に安定か不安定かの問題でありますが、大蔵大臣の御答弁の中にも、あるいは財政演説の中にも安定の問題をきつぱりと言い切つておられます。また経済安定本部長官経済演説の中にも、その点に触れてお言葉がありましたが、野党諸君は一斉に安定じやない、不安定である、安定でなくてむしろ非常に経済は不安定なんだという言い方をいたしております。国民全体の感じからいいますと、インフレ経済とは趣がかわつて来ておることを、めいめいの生活を通し、事業を通し、よく承知いたしております。それが安定という言葉で呼ばれようとも、また呼ばれないにいたしましても、様子がかわつて来た。そうしてこの様子かわり方は悪いかわり方でないので、ますますこの傾向が強化されて、生活も楽になるだろう、事業経営もやりやすくなるだろうという期待を持つておるだろうと考えるのであります。しかし野党質問を通じますと、そうじやない、不安定なんだということを盛んに言われておりますので、実は期待を持つて見守つておるその心中に、一抹の暗い影を投げないではないと思うのであります。そこでその点を明確にするために、安定の問題を根本的に伺つてみたいのでありますが、一体安定経済とか、経済安定とか申しますが、どういう内容をもつて安定本部長官や、また大蔵大臣安定経済の問題をお考えになつておるか。現在の安定経済という問題を、私どもから少しきめをこまかに見ますと、通貨の安定は一応できておるように思います。しかし通貨の安定ということと、経済全体の安定とを混同いたしますと、これは本会議の短かいお言葉ならいいのでありますけれども委員会等の御答弁ではこれは少しおかしいと思うのでありまして、安定経済内容というものを、どういうふうにお考えになつておるか、根本的な問題でありますが、それをまず宏定本部長官から伺つておきたいと思います。あなたのお仕事のこれは一番の暇日でもあると思いますので、どうかひとつ明快な御答弁をお願いいたしたいと思います。
  6. 青木孝義

    青木国務大臣 小峯君にお答えを申し上げます。おつしやる通り経済安定ということはわれわれの最も中心の問題として考えて参りました点でございます。従いまして、この経済安定ということについて、どんなフアクターをもつて安定をしておるということを説明するか、あるいは安定がどんなふうに成立つておるかということについてお答えを申し上げたいと存じます。  御承知通り経済諾指標の示しておりますところによりますれば、経済は安定しつつある、こう申し上げてさしつかえないと思うのであります。第一に物価、それからその次には通貨発行高、第三には生産指数、それから賃金、それから輸出入、こういつた要素を私どもはあげまして、そしてこれがどんな状況にあるかということを一応見てみる必要がある、この点から安定しつつある、こう申し上げておるのであります。つきましては、物価は御承知通り補給金削減等によりまして、一部値上りを生じておりますが、他面やみ物価であるとか、あるいは自由価格低落等によつて、横ばいの傾向にありますることは事実でございます。御承知通りに、今全都市におけるCPIをとりますと、昨年一—三月を一〇〇といたしますれば、昨年十一月は九七という指数が出るのであります。この点から見ましても低落しておるということが言えるし、また通貨発行高につきましても、昨年四月末三千百五十九億円、十一月には三千三十八億円、十二月は御承知通り三千五百五十三億円、そういう数字を示しておりまして、さらに最近は約三千百億円という数字であります。ほぼ安定を示しておるということが、この点においても言い得るのではないか。また預金も昨年末におきましては、本年度の貯蓄目標の二千五百億円を突破しておるというようなことでございまして、この点から見ましても安定しつつあると申し上げることができる。それからまた生産指数でありますが、鉱工業生産指数昭和七—十一年を一〇〇といたしまして、四月は七八・七%、その後逐次漸増いたしまして十一月には七九・八%という数字を示しております。鉱工業活動におきましては、四月が九四・八、十一月は九六・二と堅実な足取りを示し、上昇を示しておる次第であります。それから賃金に関しましては、工業平均賃金も二十四年の四月は八千二百二十九円、これは昭和二十二年平均を一〇〇として四五八でありましたが、逐月増加して、十月には八千六百二十六円、指数としては四七四と上昇いたしておりますし、それから実質賃金指数も四月は一八四、その後おおむね上昇を示しまして、十月には一九六となつておる状況でございます。それから輸出入の問題でありますが、昨二十四年は輸出が暦年で計算をいたしまして五億一千九十四万三千ドル、それから輸入が八億六千五百五十一万八千ドル、こういう数字を示しておる。輸出は一時の沈滞を論議せられましたにもかかわらず、おおむね堅実な足取りを示しておる、状況であります。輸出は二十三年二億五千八百万ドルの約二倍に上つておる、こう申し上げてさしつかえないかと思います。  以上申し上げましたように物価通貨量生産指数賃金貿易等経済指標の主要なものについて検討をいたしますのに、安定施策実施の結果、多少の紆余曲折はありましたけれども、総じて経済は堅実な足取りを示しておると申し上げることができる。こういう意味で安定しつつあると私は信じておる次第でございます。
  7. 小峯柳多

    小峯委員 ただいまいろいろの数字をあげて御説明がありましたが、実は私が伺いたいと思いました点は、少し角度が違うのであります。なるほど数字につきましては、お話のように安定化をたどつておりますことを認めます。しかし数字に現われておりますものは、いわば経済表面現象でありまして、経済中身についても考えが及ぼされなければならぬと思います。私は安定経済の一番内容的な姿というのは、物価が一応安定いたしまして、すなわち通貨が安定したという言い方でもよいと思いますが、その安定した物価を基礎にいたしまして家計のバランスかとれる、赤字なしで大体生活がやれる、できれば黒字がほしいのでありますが。それから事業経営赤字がなくなるのだ、そうしてまた国の財政でも地方公共団体財政でも赤字なしにやつて行けるのだ。また大きくは国全体の国際収支の上でも、一応バランスがとれるという姿が、内容的に見て安定経済じやないかと私は考えておるのでありますが、今お話の諸指標安定化をたどつておりましても、今私の申し上げましたような内容に立入りますと、多少お寒い感じがするのであります。そこで、確かに指数の安定はあり、またそれが経済安定化を示して、おりますことは、私どもも認めるのでありますが、今申し上げましたような内容的な意味に立つて安定をお考えになる必要はないかどうか。私は、この点が安定経済中身といたしまして、経済政策を担当される経済閣僚においては、特に考えを深めていただきたいと思うのでありますが、私の今申し上げました安定経済に対する内容までに対して御意見を伺いたいと思います。
  8. 青木孝義

    青木国務大臣 小峯委員の御質問はごもつともであり、また御希望の点もそうであろうと思うのでありますが、御承知通り予算は何人も強過ぎると考えられるほど均衡予算として赤字のない、借金のない予算ができております。この点から見ますと、国も地方公共団体もこの線に沿いまして、きわめて適切なる、いわばアメリカにおけるフェア・ディールといつたような立場も考えられますが、ともかくも赤日字のない財政ということを基本としてでき上つております関係と、またその財政がもたらす国民生活への圧迫ということも、われわれ決し無視しておるわけではありません。従つてその点から見て先ほど私が申し上げました点等とにらみ合せてみますれば、経済は確かに安定化した、こういうことが言えるということを申し上げておるのでございます。
  9. 小峯柳多

    小峯委員 三つの御答弁を通じまして、安定したと断定的におつしやらずに、安定化したとおつしやつていただきましたことは、実は非常に明確になつたと思います。そうでありませんと、少し中身をひねくつてみますと、安定したのだと断定的におつしやられると、首をかしげたくなるのであります。また国民諸君も、むずかしい経済を担当しているのでありますから、一挙に安定経済が実現するとも考えていないわけでありまして、その安定化が始まつて、その安定化期待が持てさえしますれば、苦しい生活にも、苦しい経営にも、しばらく耐え得るというふうに考えるのでございます。従つて私は安定化をしつつあるのだというふうに承知いたしますし、その安定化も、まだ先ほど申し上げましたような内容安定に相当時間がある。そしてその内容の安定までしなければ、ほんとうの安定にはならないというふうに承知いたしまして、その内容的な安定まで持つて行くのには、どういう筋道で持つてつたらよいか。大蔵大臣は御演説の中で、今後一箇年間の経済見通しともにらみ合せて云々のお言葉があつたように承知いたしておりますが、今日つた経済安定化だというふうに承知いたしまして、その安定化がなお進んで内容的な安定まで至る道順をひとつ安定本部長官とともに大蔵大臣からも伺いたいと思います。
  10. 池田勇人

    池田国務大臣 経済の安定か不安定かの問題でございますが、小峯君のお話通りでありまして、これが絶対の安定ではない、安定化した意味である。これは比較論でございます。敗戰後の三箇年間は実に不安定を重ねつつあつたのでありますが、昨年来ようやく安定に向いつつある。そうしてまあ安定の見通しがついたということであるのであります。これを国際的に見ましても、また本質的に見ましても、安定にはなかなかの努力を要するのであります。まず第一にアメリカの援助を受けておるということは、これはもうそのこと自体が、ほんとうの安定でないことを証明するものであります。しかして私どもといたしましては、まず経済の不安定を安定化するためには、どうしても国から始めてやらなくちやならぬ。そこでいろいろな議論はありましたが、政府のあらゆる部面を絶対均衡化をはかる。これがまず第一に行われて、安本長官から言われましたように、経済指標が非常に安定の数字を出しているのであります。内容に至りましては、今までの施策をこれから強力に遂行して行きまして、政府赤字を出さぬと同時に、事業会社個人ふところぐあいも黒字になるようにして行かなくちやならぬ。こういうためには非常な努力がいるのであります。まず財政面におきましては、二十五年度においてはほんとう財政だけは安定いたしまして、減税もできるし、債務償還もできるようにする。そうしてまた将来の見通しといたしましては、二十六年度におきましても、私は今の六千六百億の歳入歳出一般会計の計数は相当減つて参る。大体私の推算では、六千六百億がかなり減つて行くのではないか。余剰財源にいたしましても、うまく行けば千億円くらいの財源が出て来るのではないか。そして、その財源減税に充てたり、復興資金に充てたり、あるいはまた債務償還にも今後充てて行く。こういう状況になつて行きまして財政面がまず第一に安定して行く。そこで個人あるいは事業会社の安定に向つて、強力な施策をとろうとしているのであります。その施策内容が今度の予算案に出ているのであります。復興資金も相当出しまして、そうして金融も民主化して行く、こういう考えを持つているのであります。
  11. 小峯柳多

    小峯委員 安本長官は……。なければ私の方から質問いたします。ただま大蔵大臣から、このままの施策を強力に推し進めるというように伺いました。中身のきつかけの点も伺つたのでありますが、私心配いたしますのは、国の財政の安定と個人生活の安定とが、これは税金を通して背反するような関係にもなるのでありまして、今私の申し上げました生活事業経営、それから国家や地方団体財政バランスというような問題は、必ずしも同じ方法では行かない。筋道が問題です。これを解決する道というのはいろいろ考えてみますと、どうも事業会社黒字を出させて、その黒字でもつて賃金を上げて、生活にゆとりをつけて行く、納税力をふやして行くという道が、一番きつかけとしては筋道が立つのではないか。ところが、事業会社黒字というのは、ただいわゆる産業合理化というのでは行かないのでありまして、生産を拡大する。大量生産から来るコストの引下げというものを一つのきつかけにする。大量生産考えれば、やはり貿易に関連して来て、どうしても市場の拡大ということが必要になつて来る。これはお互いに因となり、果となることもあるのでありますが、内容的な安定の口火を、事業経営からつけるということが、私の考え方では道筋ではないかと思うのでありますが、この点のお考え安定本部長官から、また大蔵大臣から承つておきたいと思います。
  12. 青木孝義

    青木国務大臣 経済安定本部といたしましては、もちろん今おつしやるような事業計画というようなものからもそれらを考えているのでありまして、実は価格評価であるとかあるいはまた合理化という線を強く出しまして、その意味におきまして、二十五年度におきましては、ぜひ貿易の促進をはかりたい、こういう考えであります。それには産業方面におきまする相当強力な合理化の線を、指示しなければならないという考えで進んでおる次第でございます。
  13. 小峯柳多

    小峯委員 経済に対する考え方各人各様でございまして、なかなか私が聞いている線に乗つて来てくれないのでありますが、とにかく今までのままを強力に推し進めるだけでは、なかなか内容的な安定まで行きにくい。今安定化をたどつておる方向は、決して悪い方向ではなくて、非常に期待の持てる方向でありますが、この方向に少し内容的なくふうをしないと、内容安定まで行きにくいという意味のことを、私は結論で申し上げたいのであります。どうかそういう意味のことを、ひとつ謙虚に実際の経済現象について御検討願つて案化の導ますく実らせるようにしてもらいたい。繰返して申上げます。いろいろ本会議で御意見はありましたが、安定化をたどつておりますことは間違いありませんけれども、しかし今までの方法だけを推し進めて参りますと、安定化内容の比較的空疎なものになる懸念がありますので、どうかその点に思いをいたされまして、特に財政経済政策の推進に御留意願いたいことを要望したいのであります。  次にデイスインフレデフレかという、これも大蔵大臣はきわめて明瞭にディスインフレとおつしやつておりますが、デイスインフレでないデフレなんだ、すでにデフレから来る恐慌にまで来ているのだという御意見を本会議場でも伺つたのでありますが、私の考え方では、今伺つたような経済的な諸指標については、デイスインフレの線が明確に実は読み取れます。しかしその線は必ずしも政府経済財政政策とは一致していない。少しおかしい言い方に聞えるかもしれませんが、私は経済財政政策を、あるいは財政金融政策伺つておりますと、これはデイスインフレよりもデフレ傾向になつておると思います。しかし現実の経済の諸指標デイスインフレになつておると思うのであります。どういうことかといいますと、一体二十四年度の予算でも二十五年度の予算でも、これが非常にデフレ的傾向を持つておる。予算自体といたしますれば、デフレ的傾向を持つておりますことは、申し上げるまでもありません。シャウプ氏が超均衡予算とおつしやつておる意味も、そこにあるだろうと思います。予算自体デフレ的な性格ではありますが、予算を実施しながらなおかつデイスインフレの線を堅持しようとする点になりますと、これは一に金融政策のかじのとり方にあるだろうと思うのであります。おそらく大蔵大臣のお考えも、この予算を実施しながら金融政策を上手に繰りまわして行けば、デイスインフレの線が出て来るのだとお考えになつておると思うのでありますが、予算デフレ性は実施されましたが、それをカバーする金融の繰りまわしが、今まで寺分でなかつたと私は思うのであります。いろいろ御事情はありましよう。しかしおそらく大蔵大臣が当初に予定したような金融の繰りまわしができなかつた考えるのであります。そこで私は財政金融政策は、どうお言葉はあろうとも、これはデフレ的な性格を持つてしまつたというふうに見ておるのであります。ただその財政金融政策か、日本経済に対する現われ方といたしましては、今の諸指標でもうかがえますように、デイスインフレ的な様相を呈しております。どうしてそういうことか起つたかといいますと、私はまだインフレ惰性というものが残つてつて、そのインフレ惰性というものが、あるいはまた補給金をはずすことによつて物価が上る傾向になつて来ておりますから、そういうことものりましよう。また三百六十円の新しい為替を、将来は平価になるような為官相場をきめて、これは安定の水準を昔に返す安定でなくて、現状中心とする安定物価水準というものを考えておるような施策を取つておりますがゆえに財政金融政策を総合いたしますと、デフレ化になつておるのであります。その今までのインフレ流れというか、また今申し上げましたようなものが加味されてディスインフレになつておるのだ、こういうふうに見ておるのであります。ですから日本経済現状ディスインフレである、しかし政府財政金融政策の方はどうもデフレになつている。従つて政府は、ここで上手に財政金融政策を改めて参りませんと、インフレ流れが消えて、経済自体デフレになつて来る心配もある才思うのであります。かような見方に対しては、大蔵大臣は御意見もあろうと思いますので、ぜひ伺つておきたいと思います。
  14. 池田勇人

    池田国務大臣 ディスインフレデフレかという問題でありますが、大体そのデフレというのはどこに一本の線を置いてデフレとおつしやるのか、これはなかなかむずかしい問題であると思うのであります。私の考えでは、今経済指標がそういうふうになつて、いわゆるディスインフレの線を出している。しかしこのディスインフレの線を出しますと、インフレの波に十数年間、ことに最近三、四年非常にインフレの波になれている八は、あるいはデフレのように感ずるのでありますから、どこへ線を置くか、こういう問題があります。そこで政府財政経済政策は超均衡予算で、非常にデフレだとおつしやいますが、アメリカの援助というものを考えに入れて行きますと、もしかりにある人の言うごとくデフレだとしても、これなかりせぱ非常に困窮の生活を続けなければならない。私は日本経済ほんとうにその線を引いて、これがインフレなり、これがデフレなりという線を引けるか引けないのか、その点がまず第一の問題だと思うのであります。そこで私がディスインフレというのは、経済安定、経済復興へ行く一つの手段の状態を言つておるのであつて、これを本質的にインフレなり、これを本質的にデフレなりと、言うことは、なかなかむずかしいことであります。今の輸入十億、輸出五億という状態を続けてやつている点を見て、デフレとかインフレとか論ずるのは、私はなかなかこれはむずかしい問題であると思う。今までの観念にとらわれて、インフレにならされた人は非常に金詰まりになつたから、これはデフレだ、たいへんだ、こう言うのは、私は日本経済の実相を把握しない議論ではないかと考えております。そこで私はアメリカの援助のある間に、ディスインフレの線によつて早く復興して、アメリカの援助がなくなつた場合にも、非常なデフレの起らないようにやつて行こうと思つておるのであります。そこでデフレとかインフレとかいうことを論ずる前に、日本経済の今の姿をわれわれは研究して行かなければならぬものだと考えております。それはインフレからデイスインフレ施策をとる場合におきましては、内容的にいろいろな問題が起つて来ると思いますが、私は今の程度の問題ならば、そうデフレ、安定恐慌という心配はないと思うのであります。  そこでこの二十四年度と二十五年度の予算を比較して見ますと、これを復興一持つて行くようないろいろな施策をやつております。またその間におきましても、私は金融的にあらゆる措置を講じたいと考えております。もちろん見返り資金が非常に問題になるのでありますが、今でも見返り資金に入つているのは一千百億円余りでありますが、その一千百億円のうち七百億円はもう完全に使つております。四百億円は糧券を引受けることにしましてこの一—三月においても相当使おう、こういう考えでやつております。各国の見返り資金の使用状況を見ますと、日本の見返り資金は大体われわれの念願するほどではございませんが、よそに比べて相当使つております。それで今一部に摩擦とかしわ寄せがあることによつて経済自体が非常にデフレだ、安定恐慌だと言うのは、私は少し取越苦労ではないかというふうに考えております。
  15. 小峯柳多

    小峯委員 お考えは一応わかるのでありますが、デフレインフレというのを、どういうところに線を引くかというお話でありましたが、私はインフレというものはインフレインフレを呼ぶ、デフレデフレを呼んで、いわば拡大再生産が継続的に行われる状態を——これは貨幣の点も、原価の点も伴いますが、インフレ考える。それから経済界のサークルが連続的に縮小して行く、これはやはりデフレであると思うのであります。私は日本現状デフレだとは認識いたしておりません。ディスインフレというような見方の方がよかろうと思うし、正しかろうと思いますが、しかしさつき申し上げましたのは、どうも財政金融政策が今のお話でこれから大分直るのだと思いますけれども、今までの財政金融政策は、少くとも総合的にデフレ的な傾向を持つた、また事実デフレ的な傾向を持ちませんと、今までのインフレもとまらなかつたのでありますから、当然ではありましようがそういう傾向を持つて来た。それがそのまま出なかつたのは、今までのインフレの蓄積が残つてつて、今までの生産の余贏というものがあつたからだ、そういうふうに考えております。しかしもうそろそろ金融の繰りまわしに対しましても、もう一段とお考えならなくちやならぬ時期に来ている。今お話もありましたが、この金融の問題は後ほど詳細に承りたいと思います。そういうような認識で少し分析的に見て参りませんと、今までのやり方だけを押して行くと、逆に今度は心配ないといつておられるデフレの面が出て来はしないかという懸念がなきにしもあらず、こういうふうに申し上げたのであります。あるいは今の私の考え方には反対かもしれませんがそういう意味で私はくれぐれも金融の問題を、よほどしつかり考えていただかなくちやならぬのではないかと考えております。重ねて大蔵大臣の御意見を伺わしていただきます。
  16. 池田勇人

    池田国務大臣 お話の点ごもつともでございます。幸いに昨年の四月ごろ予定いたしておりましたよりも、預金も非常にふえまして、年度内二千五百億というのが、十二月末で三千百八十億にもふえて参りました。そして流動資金の方はかなりうまく行く。設備資金、長期資金の方に、少し復金その他が誤つた関係で足りないところがあつたのでありますが、この分は財政演説で申し上げましたように、今後は長期資金の方に相当のいわゆる金融機構の改革と申しますか、職能の改革をいたしまして、潤沢になり得る見通しもついております。やはり非常な変革期でありますので、一々ものがびたつと行くわけのものではありません。ただ私といたしましては、昭和二十四年度の資金計画につきましては、国民の協力によりまして預金が非常に増加したというので、大体予定通りに越え得るのじやないか、しかもまだ一三月の問題もありますが、これにいたしましても、今度私の考えておりますのが早く国会を通りまして、長期資金の方にどんどん出るようになり、あるいはまた見返り資金、預金部の金を適時有効に使える見通しもついておりますので、まあうまく行くのではないかと考えております。いずれにいたしましても、財政の方はよほど順調に行つております。残る問題はお話のように金融の問題でございますから、私としては全力をこの方に傾けている次第であります。
  17. 青木孝義

    青木国務大臣 ただいま承つておりましたが、大蔵大臣のおつしやつたこと、まことにごもつともですし、あなたの御質問の点と総合して考えますと、小峯さんの言われるのは、財政から生ずる経済状況あるいは経済生活への圧迫をどこで食いとめて行くか、こういう点ではないかと私は思うのであります。この点はわれわれも当然考えなければならぬところだと思います。従つて主として金融にしわ寄せせられて参りますが、当然の財政から来る圧追、こういうものに対しては御承知通り第一にオープン・マーケット、オペレーシヨン、こういつた一つ日本銀行におけるポリシー・ボードの政策もございますし、また今大蔵大臣が言われた金融諸機関に対する財政的あるいは経済的操作によつて、その点を緩和して行こう、こういうところに重点があるかと思います。
  18. 小峯柳多

    小峯委員 両大臣の御答弁を拝聽いたしまして、野党派でおつしやるようにデフレには持つて行かずに済むという結論を得たように思いますので、どうかこの上とも金融その他の政策について努力していただきたいと思います。  もう一つ会議で問題になりました点で、私どもの自由経済政策に対して、古典的という言葉をつけて御批判なさつた演説があつたのであります。もういまさら取上げる問題でもないかもしれませんが、今私どもが自由競争原理を導入して、産業の合理化その他たとえば安本長官経済演説にもありましたが、そういう線でやつておるさ中でありますので、特にこの問題を取上げてみたのであります。  私ども考え方では、近代政治の中で古典的な自由放任経済があり得ようとは考えません。従つてそういうお言葉は、あるいはそれこそためにする言い方だと考えるのでありますが、この点を明確にしていただいた方がよろしいと思います。安定本部長官がさきごろの経済演説の中で、政府としては今後企業合理化を一層推進するために、自由競争原理の導入によつて、各企業が競つて経営合理化を進め、その成果を攻め得るよう万全を期して行きたいというふうな意味のことをおつしやつておりました。そこでその場合の自由競争原理なのでありますが、私どもはさきに独占禁止法というような法律も、率先して審議通過させておるようなこともあつて、自由放任の経済では絶対になく、ただ、今の場合長い間の不合理、非能率の統制経済あるいは長年のインフレで、いわば中毒を起しているような日本の産業経営を、この自由競争原理で一応洗濯をするのだという意味でこれを考えておるのでありますが、その場合の自由競争原理が、手放しの古典的なものでないことは言うまでもないと思います。そういう意味安定本部長官から、その点をひとつここで明確にお考えを聞かせていただきたいと思います。
  19. 青木孝義

    青木国務大臣 経済安定本部といたしましては、もちろん終戰後引続いての統制経済のきわめて悪い面を、できるだけ早く是正する、こういう方針でありまして、ことに統制の緩和撤廃ということを目ざしておりますが、しかしそうかといつて、われわれは決して今小峯委員の言われましたように、手放しの自由経済というか、ともかく放任的な自由経済といつたようなものを考えておるわけではございません。これはしばしば申しておるところでありますが、現在の統制経済のもとにおきまして、まことに不合理であり、またやつてむだであり、やることがかえつて国民生活を圧迫するといつたようなものは、すみやかに統制を緩和し撤廃する、こういう方針でありまして、現在われわれはそこにできるだけ自由競争を織り込むことによつて経済の発展と推進とをはかつて行くということにあるのでありまして、その点を明確に現わしておりまする事柄について、一例を申し上げますならば、たとえば物価統制の面におきましても、だんだん一般的な意思の表現とでも申しましようか、ともかくも大きな分類等がその方法としてはございますが、昭和二十年の一月の初め現在として、大分類という分類の仕方で千八十というような統制種目がありまして、そこで四月初めに六百七十、十月初めに三百二十、こういうふうにわれわれは考えて大体の目標を置いて、これを漸次価格統制等もはずして行くということの方針であります。そこで昭和二十六年三月末において約二百くらい残る。これはどうしてもわれわれとしては今後残さなければならないであろうと考えるようなものを、残して行きたいというふうな方針を持つております。これは一つの例でございますが、たとえば公団の問題におきましても、われわれの考え方は現在の各種の情勢からごらんをいただきましても、みだりにこの統制を撤廃する、見通しもなく撤廃するというのではなくて、少くとも二箇年くらいの先を見通して、しかもその見通しが可能な範囲であると考えられる点からいたし、かつ実行可能であろうと想像せられるところの点から考えまして、適当にその間の計画を立てて参る方針でありますので、この点は明瞭に申し上げておきます。ただ問題は資本主義経済そのものに対するある一つの理論的な範疇とでも申しますか、そういうものを置いて、そうしてこれが資本主義経済であるというようなことで、それに対して資本主義経済そのものに、徹底的にメスを当てるというようなことで考えられる向きも、二面にはあるようでありますが、われわれはそういう立場よりも、むしろアメリカにおけるフエア・ディール的なきわめて公正な立場に立つて、資本主義は発展しつつあるという観点からこれを推し進めて参る所存であります。
  20. 小峯柳多

    小峯委員 御答弁を伺いまして私どもと同じ考えでありますが、自由経済も、返代的な自由経済というものは、自由経済の能率性を生かして、反面弱肉強食といいますか、弊害をためつつ、公正にして自由な経済を保障する経済政策が、近代的な自由経済考えておるのであります。それでその自由経済経済計画との関係でありますが、先般の本会議質疑の中にも、自由経済をやつて計画性がないというふうなお話もあつたと記憶いたしますが、私は自由経済経済計画とは、矛盾抵触いたさないと考えておるのであります。計画経済というものとは違いますが、自由経済をとりながらも経済計画というものはあり得る。経済計画を立てて、その経済計画を能率的に実施するために、公正な自由経済を生かすのだ、そういうふうに考えているのでありますが、そういう意味安定本部やなんかで策定せられます経済計画に対しても同じお考えだろうと思います。ただ経済計画を安本でやつておりましたが、この前の国会でもやめたのじやないかというふうなお話もありましたが、情勢が非常にはかるべからざるものがある場合には、そういうこともあり得るのでありますが、全体としてのお考えといたしましては、自由経済をとりながらも経済計画を立てておるというお考え方だろうと思いますが、その辺のお考え伺つておきたいと思います。
  21. 青木孝義

    青木国務大臣 大体におきまして小峯委員からの御意見、御質問と同様な自分たちは考えを持つております。今後とも現在の立場からの経済の進行過程における計画性は、依然として維持しながら進めたいと考えております。
  22. 植原悦二郎

    植原委員長 この間に川崎秀二君が議事進行についての御意見を述べたいそうですから……。川崎秀二君。
  23. 川崎秀二

    ○川崎委員 委員会開会を前にして、予算委員長から政府側に対し、きわめて適切な要望がありましたが、野党側としても、ぜひ委員長並びに政府側に要望いたしたい点がございます。それはさきころ予算委員会の円滑なる運営と進行のために開かれました理事会におきましては、今国会における総予算案の論議は、国会の中心問題である。また予算案が適切な時期に出て来たことは、終戰以来初めてのことであるから、政府側もまた予算委員側も、これに対しては慎重な論議と十分なる分析をしなければならないという委員長の要望があつて、その際二月二十三日に本会議で討論採決を行うということをあらかじめ内定するほど、野党側も委員長並びに與党側の要望にこたえて来たわけであります。しこうして公聴会も日程がきまり、また分科会の日程もほぼ内定をいたしておるという、準備がきわめて整つてつたにもかかわらず、その際強い野党側の要望でありました、委員会冒頭においては総理大臣初め各閣僚は必ず出席をして、予算委員会の権威のためにも、名実ともにふさわしいところの委員会を開くということであつたにもかかわらず、本日前国会と同じく総理大臣初め重要閣僚の出席がない。経済閣僚中心である安本長官並びに池田大蔵大臣は、十一時を過ぎてようやく姿を現わすという状態では、私は今後の審議に対して、十分なる責任がとれないのではないかと思うのであります。従いまして本日は当然散会をいたすべきところ、與党側の委員諸君質問には、総理大臣に対するところの答弁要求というものがない。従つて三人だけは質問さしてくれという内々の交渉もありましたし、諸般の事情を考え野党側これに応じたわけでありますが、明日の委員会においては、おそらく野党側第一陣の質問があると思うのであります。その際においてもし総理大臣並びに重要閣僚の出席がないということになりますならば、野党側は質問に入るということができないということを、われわれとしては意思表示をしなければならぬと思います。この点委員長においても分に野党側の要望を聞かれて、善処ありたいということをあらかじめ申し上げておきたいと思うのであります。  いま一つの点は、参議院の本会議が引続いて開かれておりまして、二月二日までかかるという予定だそうでありますが、そういたしますと、ほとんどその方に重要閣僚並びに総理大臣等の出席がとられるために、事実上午前中の審議というものはできないのじやないか、この点については後刻理事会を開いて決定をされることが必要ではないかと思います。  また参議院に対する要望を委員長を通じて申し上げたい点は、参議院は常に事前審議というものを開始をいたしておりますが、今回の予算案の審議期間は、これから数えて一月半もあるわけでありますし、また二月二十三日には大体衆議院の本会議を通るということも、ほぼ目測のついておることでございますから、従いまして参議院があまり早き期間において事前審議を開始するという必要性は、私はないものと考えるのであります。その点委員長におかせられて、十分参議院側に折衝されるよう要望いたしておきます。  これを要約すれば、第一点は明日野党側第一陣の質問が順番になるならば、その際において総理大臣出席のない限り質問に入らない。第二点は参議院の本会議が開かれておる間は、午前中の審議は事実上できなくなるのではないか、その点について理事会を開いて運営の方針をきめてもらいたいということ。第三点は、参議院の事前審議について、委員長から適切なる要望をすべきである。  私の要望は以上であります。
  24. 植原悦二郎

    植原委員長 委員長からお答えいたします。  重大なことでありますから、ちよつと政府の方にもお聞きおきを願います。川崎君の第二の点につきましては、実は民主主義民主主義と申しましても、あたかも口頭禪のごとくでいろいろの理由がありましようし、またあつたと思いますが、終戰以来予算案がちようど時期に提出されたことがありません。それゆえに予算の審議というものは徹底的に審議をされないで、会期のために成立せしめなければならないのでというような意味で、通過したような実例もないではないと思います。大蔵大臣の少からざる御努力もあつたかと思いますが、本議会において初めて議会開会の劈頭に予算案が提出され、たのであります。先刻も申し上げた通り予算案だけは総合的の法案であります。これに対しては一部の者ではなく、直接すべての国民に非常な利害関係のあることだから、予算審議は徹底的にやることが、議員としても適当なりと思いまして、今まで事前審議の名のもとにおいて、参議院は衆議院と並行審議をいたしたのであります。御承知通りいろいろの点で衆参両院の権限は同一でありますけれども予算に対してはすべて衆議院が先議権を持つておるわけであ力ます。ゆえに事前審議の名のもとにおきまして並行審議をすることは、ある意味から行けばある場合においてはやむを得ないといたしましても、ほんとの予算案取扱い、マネー・ビルの取扱いの上から申し上げますならば、変則な行き方だと思います。それゆえに、この議会、においては、予算案政府の御努力によつて、劈頭に出るような状態になりましたから、ここでほんとの民主主義の議会の運営をするようにいたしたいと思いまして、委員長からあらかじめそのことを参議院に申し込んであります。参議院に、予算に対しては事前審議という名をかりて大臣を要求して、衆議院の予算の済まないうちにするようなことは、なるべく差控えてむらいたい、もし取調べがあるならば、政府委員でおやりになることならば、これはあえて苦情を申さない、なおさらにもし並行して行きたいということであるならば、衆議院で審議をいたさない日、衆議院で公聽会をいたしますときは大臣出席を求めないのでありますから、その公聽会の日をあらかじめ向うへ通知しまして、二月の十日と十一日だと思いますが、この二月の十日と十一日は、全部向うで使用くださつてよろしいのだから、そういう場合を利用してなるべく衆参両院が、国民の代表として、財政経済の案に対しては、愼重に取扱うようにしたいということを申し込んでありますから、その点川崎君御承知を願いたいのであります。  次に総理大臣その他の出席につきましては、本日につきましては委員長からあらかじめ申し上げた通りであります。なおさらに政府といたしましても、私はできるだけ予算委員会を尊重して、全員こぞつてお出かけくださることと思いますけれども、特定の大臣は一人よりないのでありますから、両方ある場合に両方出るわけに行かないのでありますから、その点は寛大なる、野党諸君も十分御了承くださつて、万やむを得ない場合にはしかるべきように、なるべくその他の大臣によつて審議を御進行願うようにしたいと思います。  なおただいま御説の総理大臣に対することにつきましては、理事諸君において一応お諮りを願つてしたいと思います。このことはどうか政府の国務大臣として御列席の大臣より、この予算委員会の状態をよくお伝えくださいまして、これに対して審議が円満に進行し、私どもの職責を全うするように御協力を願うように、政府の閣員においても十分の御配慮を願いたいと思います。  これにて休憩いたしまして、午後は一時半より開会いたします。     午後零時二十六分休憩      ————◇—————     午後二時九分開議
  25. 植原悦二郎

    植原委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。小峯柳多君。
  26. 小峯柳多

    小峯委員 午前中は予算案を離れまして一般問題でお話伺つたのでありますが、これから予算案についてお話を伺いたいと思います。  最初に大蔵大臣は二十五年度予算案の特徴を御自身がどういうふうに読んでおられるか。先ほど来のお話経済が安定の軌道に乗つて来ておりますことは、私どもも認めますが、しかしその安定化の陰に非常な犠牲を甘受しておる人たちも、あるいはまたそういう面もあるのでありまして、そういう人たちは、日本経済再建のためには、今の耐乏、今の犠牲、今の苦痛はしかたがない、しかし一日も早くよりよい生活を、よりよい経営を待望しておることは間違いがないのであります。そういう意味で、二十四年度の予算案に比べて、二十五年度の予算案がどういう特徴を持つておるか、それが日本経済に、あるいは国民生活にどういう響きを持つと考えておられるか。二十四年に比べまして、二十五年度の予算の特徴を一応伺つてはありますが、なお詳細に承りたいと考えます。
  27. 池田勇人

    池田国務大臣 二十五年度の予算案の特徴につきましては、財政演説で八項目にわたつてお話申し上げた通りでございます。例年の予算と違いまして、今年は前年度よりも八百億も少い予算にした。すなわち財政スケールを非常に小さくしまして、財政国民経済に及ぼす影響を極力減らしたことであるのであります。総理昭和六年以来初めてのことだと言つておられましたが、昭和十年の予算は前年度に比べまして、予算では大体八百万円ばかりの減少になつておりますが、決算ではふえております。しかしまた昭和十年にはやはり赤字公債を出しておつたのであります。従いましてもつとさかのぼつて見ますと、昭和四五、六年はやはり前年に比べて減つたのであります。総理昭和六年以来と言われたのは、昭和四、五、六年が前年に比べて予算が減つたということで言われたのでありますが、四、五、六年においても赤字公債はやはり出しておつたのでございまして、そういう意味から申しますと、本年度の予算はこまずほとんど数十年間にな、うな均衡予算であるのであります。しかも減税もするし、債務償還もする、これがまず第一の特徴であると考えておらます。第二の特徴といたしましては、財政スケールを小さくしたにもかかわらず、復興その他につきまして前年度以上に出した。すなわち公共事業費として相当出しまして、いわゆる安定から復興へのきざしをはつきり見せた。こういうところが主たる点であろうと思うのであります。、
  28. 小峯柳多

    小峯委員 私の一番伺いたい点は、その安定から復興への具体的な推移なのであります。御承知のように、予算日本経済に影ぼす影響というものは、非常に大きなものでありますから、この予算で安定から復興へのきざしが出て来ると思うのであります。先ほども申し上げますように、経済再建のために通らなければならぬ関門だと考えて、国民が、あるいは産業経営者が、非常に耐えておるのでありますから、昨年に比べると財政面から見れば、これだけこの面が明るくなるのだというふうなものを、具体的にどういうふうにお読みになつておられるか。一年間の経済見通し云々という言葉財政演説ではなすつておりますので、重ねて具体的に、この予算日本経済再建のために、どういうふうに展開して来るだろうかということを、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  29. 池田勇人

    池田国務大臣 具体的な数字主計局長から申し上げた方が適当かと思いますが、とにかく昨年の予算で非常に問題になりました公共事業費の少い点、こういうことなんかにつきましても、昨年補正予算を加えまして六百三十億円であつたのを一千億円も出しておる。また一般会計、特別会計を通じまして、復興資金としては二千二百億円余りを出して、昨年の七割増くらいになつておるのであります。しかもまた一方では国税においては実質的には九百億円、地方税を通じましても五、六百億円の減税をいたしまして、国民の間に蓄積資金のできるようにする、こういうふうなことも今回の予算が、復興予算であるという一つの現われであります。また今までは債務償還その他といたしまして、一般会計から特別会計に繰入れておる。その繰入れの原因は運転資金にしたり、債務を返還したり、いろいろな方法、いろいろな理由のために、千二百億円ばかりを一般会計から繰入れておりましたが、今回は二百億円程度しか繰入れあるいは出資をいたしておりません。すなわち千億円も一般会計が特別会計に背負わされる負担が少い。こういうことで今度の予算一般会計の負担が非常に少くなつておる。これは国民の負担とかあるいは一般の経費、あるいは復興べ向う必要な資金を満たし得る材料になるものと考えるのであります。なお財政演説で申し上げたように、文化的方面などにできるだけのことをし、また地方財政に対しましても、昨年に比べまして平衡交付金として相当ふやしておる。こういうふうなことを考えるのであります。
  30. 小峯柳多

    小峯委員 大臣は非常に專門家でありますので話がかたくなりますが、私は国民に対して大臣から、もうこういうふうに明るくなるぞ、今に日本経済は復興するぞという六号令を実は聞きたかつたのであります。御專門の立場でかたい御答弁のようであります。しかし安定の問題も、復興の問題も、りンフレ収束の問題も、非常に大きな問題でありますので、三十五年度予算だけで片づくはずではありません。また減税にいたしましても、もう戰時中から年が明ければ増税々々でやつて来たのでありまして、この減税もことし一年くらいで、おそらく大臣のお考えの理想のところまで行きそうにないと思います。そういうことで二十五年度の予算をおつくりになるときに並行いたしまして、私は大臣の頭の中には二十六年度の骨格予算もあるのではないかと思いますが、この機会に二十六年度の予算が一応頭にありましたら、伺つておきたいと思います。
  31. 池田勇人

    池田国務大臣 今国会におきまして、多分参議院でございましたか、二十六年度の財政について骨格的にはもう大体でき上つておるということを申したのでありますが、私の胸算用といたしましてはできておるのであります。せつかくの御質問でございますので、單に私の胸算用の点を申し上げてみたいと思うのであります。  今年の歳入歳出は六千六百十四億円でありますが、歳出の方におきましては、価格調整費の九百億円が大体四百億円くらいで済みましよう、従つて五百億円くらいが出て参ります。また国債償還の八百四十七億円が来年は百二十億円程度で済むと思います。そういたしますと、七百二十億円出て参ります。その他一般会計から特別会計への出資が二百数十億町ございますが、これからも百億円ばがりは浮いて来ると思います。また引揚げ関係でも、二十五年度には五十六億円程度計上しておるのでありますが、これまた二十五年度中に引揚者が帰つて来られるとしますれば、この金は大部分なくなつてしまう。こういうふうに見ますと、千四百億円ばかりの歳出減が出て来ることに相なるのであります。しこうして歳入の方では、今の税の四千四百四十六億円をそのままにいたしまして、歳入の方での減が立つのは、まず二百六億円の前年度剰余金はないものと見なければなりません。しこうしてまた公団納付金とかあるいは価格差益金——これが六十五億円くらい歳入に見込んでおりますので、これもなくなると思います。その他官業収入である程度七、八十億の減がありましよう。そういたしますと、歳入の六千六百十四億というものは、六千二百億円程度に相なると思うのであります。歳入の減が四百億円、歳出の減が千四百億円くらい見込まれる。こういうことになりますと千億円というものが基本予算としては減つて来ることに相なるのであります。この千億円をどういうふうに使うかということが、二十六年度の予算の問題になります。何と申しましても、これは減税に使い、あるいはこれ以上復興さすための公共事業費にまわし、また経済状況によりましては、債務償還にも使う、こういうふうにし得ると思うのであります。私の考えでは、税をそのままにして、歳入が今年度に比べて四百億くらい減るだろう。歳出が千四百億、差引千億ばかり余りますので、これは減税あるいは復興、債務の償還に使う。これが二十六年度の予算の根本問題だと考えております。但しこの千億の予算の使い方は、一に二十五年度をいかに切り盛りするかによつてかわつて来るのであります。私の大体の構想としては、以上のようなことを考えておる次第であります。
  32. 小峯柳多

    小峯委員 非常にいい明るいお話を承つたのでありますが、どうかその線がきつばり出ますように、二十五年度の予算の切りまわしについては御努力願いたいと思います。  なお二十五年度の予算の特徴を伺い、また二十六年度の見通し伺つたのでありますが、現実にこういう予算の遂行で、日本経済がどう展開されて来るか、これはひとつ青木安本長官に聞きたいのであります。先ほど大蔵大臣は非常に内輪に言つておられますか、こういうような予算の実施でもつて日本経済がどう展開されて来るか。どの面で積極的な面が出て来るか。あるいは見返り資金の活用で復興して来る産業もありましよう。とにかく今はいろいろな面で非常に消極的になつておりますが、これが復興的な杉で出て来る面もあると思いますし、また国民生活もそれだけ楽な面も出て来ると思うのであります。それで数字でなしに、あなたの感覚でいいのでありますが、これからの経済はこうなるという、国民が明るい希望が持てるようなお見通しをお伺いいたしたいと思います。
  33. 青木孝義

    青木国務大臣 池田大蔵大臣数字に根拠を置いた財政方針と、さらに進んで二十六年度の構想についてもお話があつたようでありますが、そういう予算の実行によつて、一体どんな姿が日本経済に現われて来るか、こういう御質問のようであつたと思います。これは財政がまことに均衡をとり得たものであり、そしてようやく昨年から本年にかけて安定化へ向つて来た。こういう点について、先ほど来各種のフアクターを並べて、その点から申し上げたのでありますが、大体今年度において出て来る姿は、生産の面において、貿易の面において、それから物価は、これも大体横ばいの状態を続けて行くであろう。ことにやみ価格等については、それぞれの価格において大分下つて来ておるというような数字も示されておると考えますし、またわれわれが計算をいたしておる場合においても、実効価格——マル公と自由価格というような面は組み込まれて、物価の面は維持されておりますが、やみ価格の下落ということについてはあまり深く取上げておりませんというようなことからも、だんだんいい方向に向つて行くということが考えられますが、御承知通り二十五年度におきましては昨年度とかわりまして、公共事業費は大体倍額になつているというようなことから、その面でも就業者を増加することもできると一応考えられますし、それからまた貿易の面でありますが、われわれが予定しておりまする二十五年度の貿易は、輸入につきまして約十億ドル、場合によつては十億二千万ドル、輸出におきまして大体六億二千万ドルというような予定を立てておりますが、今われわれが調査し、考えておりまするところからいたしますれば、大体その目的が達成せられるのではないかということも考えておりますし、それからまた石炭であるとか、セメントであるとか、その他重要物資につきましても、大体においてその線に沿つて、予定の生産が上つて行くのではないかというように考えておりますので、二十五年度におきましてはわれわれとしては、主として貿易の振興と国内におきますところの生産の増強を企図し、質の向上とか、操業度を高めるというような点を中心とした合理化を促進し、これが実現に努めております。またそういう方面におきまするわれわれの努力もその効を奏して、有効需要等においても漸次それが好転しているというようなこと、これはまた金融の面における各種の操作等がそこに集積されて、その目的を達成し得られるのではないかというようなことから、先ほど申し上げましたようにまず二十五年度は、全般的によくなつて行くのだという考えを私どもは持つておる次第であります。  さらに二十六年度におきますことは、大蔵大臣お話等から見まして、これは先の先でありますから、今からはつきりと申し上げることはできませんけれども、たとえば私どもの方に関係のあります価格調整費が四百億くらい削り得るであろうというお話でありましたが、この点も御承知通り大体食糧関係を見込んでおけば、あとの方は価格調整費を削減してもよかろうというようなお考えから、そういう御説明をなさつたことだろうと思います。私どもにおきましても、大体大蔵大臣の言われるような構想に対しても同感の意を表する次第であります。
  34. 小峯柳多

    小峯委員 今度は大蔵大臣金融の問題を伺いたいのでありますが、財政金融が密接不可分の関係にあることは申し上げるまでもありません。しかし二十四年度の予算以来、特にこの金融意味が重くなつていると思います。午前中の質問でも申し上げましたように、予算自体は超均衡予算になつておりますが、それを上手に繰りまわすことによつてディスインフレの線に引きもとして行くのが、二十四年度の予算あるいは二十五年度予算案の特徴でなければならないと思います。そういう意味金融政策お話を伺いたいのであります。第六国会で池田金融の構想を伺いました。二箇月ちよつと経過した今日、また本会議金融構想を伺つたのでありますが、前の金融の構想は日銀のマーケット・オペレーシヨンを積極的にするのだとか、融資あつせん制度を活用するのだとか、いろいろ平板的に並べてありまして、正直のところそのしんを貫くところの点が、少しあいまいのように私どもは拝承して参つたのでありますが、しかし今回は率直に申しまして、これは非常に進歩でありまして、金融の盛り方を、本会議演説で伺いますと、積極的な意図と深い考慮が拂われておるように思われるのであります。さもあるべしとは思いますが、その線に沿いまして金融お話を御質問申し上げたいのであります。その前に金融の一般論といたしまして、二十四年度の金融を貫くところの構想、精神は、どつちかというと自由金融に近かつたのではないか。これは関係方面の御意向もあつて金融をコマーシャル・ベースで運転させて行くことが、日本の産業経済を洗い直して行くことになる、そういうお考えであつたと思うのでありますが、しかし残念なことには、まだコマーシャル・ベースの金融でまかない切れるほどに、日本経済は均衡がとれておらないと思うのであります。そこで私は総体的な意味で、もう少し計画的な金融というものを打ち出さなければ、まかなつて行けないんだというふうに考えて参りましたが、実は私のそういう見方のせいか、大臣の第六国会の金融構想に比べて、今回の金融構想は計画性がよけいにできておると思うのであります。そこで今申し上げましたように、少しりくつつぽくなりますが、まだ自由にコマーシャル・ベースでまかなえないで、計画的なくふうといいますか、ポリティカルな金融というものが必要だと大臣もお考えになつておりますか。その点を最初に伺つておきたいと思います。、
  35. 池田勇人

    池田国務大臣 コマーシャル・ベースと申しますか、金融にあまり政府がタッチすることを私は好ましくないと考えます。日銀に政策委員会を設けまして、日銀を中心とする各市中銀行がこれに協力して、そうして円滑なる金融をはかることが理想であると考えておるのであります。しかし何分にも終戰以来復金が中心でありまして、相当の設備資金のあるところを急にかえまして、金融機構全体につきましての整備態勢が少し手遅れだ、こういうことか一つの原因をなしますので、政府があまりタッチしない限りにおきまして金融機構を整備して、そうして民間において計画的な機構と申しますとあれでありますが、昔から日本でやり来つたような制度を加味して、そうしてやつて行けばまかなえるのではないか、こう考えております。何と申しましても、金詰まりの問題は主として長期資金でありますので、先般の財政演説で申しましたように、長期資金の調達にまず万全を期して行きたい、こういう考えで興銀とか勧銀、あるいは農林中金を中心に、長期設備資金の金融に力を注いで行きたいと考えておる次第であります。
  36. 小峯柳多

    小峯委員 長期金融の構想にも触れられたのでありますが、私はその前に政府部内にたまる金、政府部門に蓄積される資金というものの使い方が、日本金融政策を決定するだろうと思います。大臣もそういう意味のことを演説で言われております。そこで最初に伺いたいのでありますが、政府部門に蓄積される資金は相当巨額に上るとおつしやつておりますが、その相当巨額というのをどのくらいに見ておるか。一般会計、見返資金特別会計、預金部、もちろんこれは予算でわかりますが、たとえば預金部などは、国債買上げをもし預金部手持ちでやりますれば、ふえて来るわけであります。そういう意味で、政府の部門に蓄積される相当巨額な額というものを、大臣はどのくらいに押えられておるか、お伺いしたい。
  37. 池田勇人

    池田国務大臣 政府部門にたまります金は、預金部と見返り資金でございますが、預金部につきましては大体郵処貯金、簡易生命保険あるいは厚生年金等で、大体月に三十億程度とお考えいただけばけつこうと思います。また見返り資金の方は輸入関係によりまして移動がありますが、昨年の四月から十二月までは、大体百五、六十億円程度毎月入つておりました。多い月は百八十億円ぐらいでありました。一、二、三月の間は少し減りまして、百二、三十億円ぐらいの平均で入つて来るのではないかと思います。来年度の預金部につきましては、大体預金部の資産は千七百億円ばかりございますが、そのうち国債が六百数十億円、地方債も大体同額の六百数十億円、食糧関係五公団に対しまして二百数十億円融資しております。その他短期証券を持つております。こういうのが千七百億円の内容であるのであります。従いまして来年度預金部資金の運用計画といたしましては、月に三十億円程度入つて来る金で、一応やはり地方債の発行見込みの三百億円を引受けることになると思います。その余りの六、七十億円から百億円前後——これはまあ貯蓄の状況によつて違いますが、その余りが一般資金の方へ振り向けられて、しこうして債務償還で償還いたします予定の千二百億円のうち、預金部の国債の六百三十億円を、どの程度いつの時期に償還するかによりまして、預金部資金の運用がきまつて来ると思うのであります。私といたしましては、この金をでき得るだけ全般の国民の利益になるようにいたしますと同時に、また一方では産業開発資金にも使いたい。今まで預金部の金は、地方債の引受け等に実は限定されておつたのであります。昨年の七月ころ食糧関係の五公団に融資することに話がまとまりまして、二百三十億円出しておるのであります。今後は私は地方債並びに食糧関係五公団に限らず、昨年末一般の市中銀行に百億円預託いたしましたような考えのもとに、金融債券の引受けも預金部でやりたいというような考えを持つておるのであります。これは昭和二十五年度のことでございますが、この二十四年度の一、二、三月の問題にいたしましても、興銀とか農中の見返り資金による増資ができて、金融債が発行できるということになりますれば、今年度見返り資金から国債償還に予定しております百二十五億円につきましても、早く殖余部の国債引受けをするとかなんとかして、金融方法をつけたいというような考えを持つておるのであります。  次に見返り資金の金の集め方でございますが、これは御承知通り予算には二十五年度千五百億程度になつておる。大体百工、三十億ずつ入つて来ると思うのでございますが、これも予算を組みまして御審議を願つておりますように、債務償還が五百億円、公共事業に四百億円、私企業に四百億円と、大体のあらましのことをきめております。この見返り資金の金の使い方も、そのときどきの金融状況によりまして、インフレにならざる程度——もちろんデフレになつてはいけませんが、インフレにならざる程度に、適時適当な額を使つて行く計画をいたしておるのであります。
  38. 小峯柳多

    小峯委員 預金部と見返り資金の使い方が、二十四年度に比べて、よほど積極的になるというお話でありますが、非常にこれは愉快であります。この金を上手に使いません限り、先ほど来申し上げますように、日本の現在の金融の梗塞は、打開されないと考えられるのでありますが、その御構想を承つて非常に愉快であります。なお一般会計のものも、これは国債償還に引当てられておるわけでありますが、これもあわせていわば政府の自由になる金でありますから、上手に繰りまわされんことを要望するわけであります。  なおそれに関連しましてマーケット・オペレーシヨンでございますが、マーケット・オペレーシヨンの対象になる国債が、非常に減つておるわけであります。市中銀行は長年の習慣もありましようし、何といつても一番信用の置ける国債というものに愛着もありましよう。日銀で、おい買つてやろうと言つても、なかなか売つて来ないようなところまで来ておるのではないかと私は考えるのでありますが、その場合、今の政府資金と一般銀行の結びつくひもを、どうお考えになつておるか。私の考え方では、あるいは日銀のものでも買い上げるようにして、日銀からひもでもつけてその金を使うということも、あるいは考えられるのではないかと思うのであります。とにかくマーケット、オペレーシヨンの対象が、非常に減つているということを基調にいたしまして、そのオペレーシヨンの新しい考えがありましたら、伺つておきたいと思います。
  39. 池田勇人

    池田国務大臣 日銀のマーケット・オペレーシヨンの対象が、減つているというお話でございますが、大体市中銀行の持つております国債は九百億円程度であります。これが今相当に日銀からの借入金の担保になつております。来年度債務償還をいたしますと、この八、九百億円の市中銀行の持つておる償還国債がどの軽度になるか。二十五年度において減るから、マーケット・オペレーシヨンの対象がなくなるだろう、こういうお話でございますが、他に御承知通りに昨年度におきましては、増資以外に社債の発行が非常に盛んでございまして、昨年の六、七月ごろから十五億ないし二十億あるいは月によつては三十億ぐらいの社債が出ました。今大体今年度内には二百億を越えるのではないかと考えております。この社債が、償還されました国債のかわりになつて日銀に持ち込まれるようになりましよう。しかしてまた片一方では金融債が、農林中金、勧銀、あるいは興銀からどんどん出るようになりますと、これはしよせん普通銀行が持つことになると思うのであります。ところで私は長期資金を調達する上におきましても、また日銀がマーケツト・オペレーシヨンをやる対象をふやす上におきましても、できるだけ金融債の発行をたくさんにして、長期資金の円滑と日銀のマーケット・オペレーシヨンに支障のないようにやつて行く。しかも一般の会社の長期自己資金調達の上におきましても、増資もさることながらやはり社債の発行を勧めて付きたい。これには今商法の制限がございまして、一般の会社は自己拂込み資金以上にはできませんが、何とかこれをもう少しふやすか、あるいは最近やります資産再評価によりまして、特別資本のふえる場合、そのふえる特別資金を社債発行の見返りにできるだけいたして行きたい、こういう考えで日銀の市場操作に支障のないような方法をとつて行きたい。こう考えておる次第であります。
  40. 小峯柳多

    小峯委員 ただいまのお話で社債の発行限度の問題が出ましたが、その社債の発行限度を緩和する問題は、今国会の問題にするおつむりでありますか、お伺いしたいと思います。
  41. 池田勇人

    池田国務大臣 昨年十一月ころから関係方面と折衝しておりますが、非常に意見がまちまちでございまして、できれば私は今国会に出したいと考えております。ただ問題は、今の資産再評価によります資本金の増加を、どの程度社債の上に認めるか。われわれとしても七掛半ぐらいは認めたいという気持を持つておりますが、そういうところとの兼ね合いがございまして、私は資産再評価による分のみならず、今の状態としては、拂込み資本金の限度をふやしたいという気持で、考慮をめぐらしておる次第であります。
  42. 小峯柳多

    小峯委員 日銀のオペレーシヨンの問題と直接つながりはありませんが、先般大蔵大臣は市中金利の二厘下げをかなり強引におやりになつたようでありますが、それに関連して、日銀の高率適用を緩和するお考えはないか。二厘下げておりますので、高率適用の基準を下げなければならぬように思うのですが、お考えを承りたい。
  43. 池田勇人

    池田国務大臣 高率適用の問題につきましても、私は一つ考えを持つておりまして、これは全廃したらどうかという点につきまして検討を加えております。しかしそれにはなかなかいろいろな議論があるところでありまして愼重に研究をいたしておるのであります。先般の金利引下げに伴いまして、高率適用の金利を下げました。これは私としてはなるべく早い機会にやめたいという考えを持つております。
  44. 小峯柳多

    小峯委員 先ほどの御答弁の中でも長期設備金融お話がありましたし、今の政府資金の問題も実は長期設備金融と裏表でありますが、長期金融の問題でひとつ具体的にお伺いしたいと思います。日本興業銀行でありますが、この興業銀行が長期金融中心になつておることは申すまでもないのであります。今の状態ですと、おそらく二月一ばいくらいで資金が枯渇する状態であろうと思います。従つて先ほどのお話で増資の問題あるいは社債発行の限度の問題等があるのでありますが、どのくらいの拡大をお考えになつておるか。そしてそれを本国会で実現するおつもりであるか、政府の見込みを伺いたい。
  45. 池田勇人

    池田国務大臣 ただいま日本興業銀行は十億円の出資で二十倍の債券発行を認められております。今未発行のものが四十億程度しかないと思います。しこうして興銀が大体長期設備資金に供給いたしますのは月二十億平均であります。十二月には四十四億円に及びました。従いまして四十億円くらいの余力では一、二、三月はなかなか困難でございます。従いましてただいまのところは見返り資金から十億円を出資いたしまして、二十倍で四百億円、そういたしますと、二百億円でできるのでありますが、なかなか法律案を提案いたしまして、それが通過して興業銀行で増資の手続をとるということになりますと、三月までにはなかなか間に合いにくい、そこでその間のやり方をどうするかという問題でありますが、長期設備資金の供給を減らすわけに行きません。従いまして私は興業銀行が日本銀行への再割引の適当な手形を持つておりますれば、それによりまして一時的の融通を考えたいと今計画をいたしておるのであります。長期設備資金を供給します興業銀行としては、なかなか適当の手形がないかもわかりませんが、いろいろな方法で長期設備資金に支障のないような方法をとつて行きたいと思います。しかもまた大体今のところでは見返り資金の出資が十億円でありますが、こういたしまして二十億円の資本で二十倍の四百億円にしましても、来年度興業銀行の二百億円程度では足りない。従いまして興業銀行の民間資本の増資ということも私は計画すべきだと考えます。御承知通り初めの五億円のときは、一般の地方銀行が主として出資いたしたのでありますが、二度目の増資の五億円は事業会社の方の出資が非常に多かつた。しかもまた今の興業銀行の株価から申しましても、将来性から申しましても、興業銀行が見返りによる増資以外の増資はそうむずかしいことじやない、そういう考えを持つておりますので、まず興業銀行は見返り資金の増資並びに一般の増資を計画したいという気持を持つております。  また勧銀のことにつきましても十億円で三十億の預金でありますが、見返り資金から十億出しますと、これにつきましても相当の長期資金が加わりますが、また農林中金にしても四億円を八億円に増資し、同時に見返り資金から八億出資が期待し得られますので、相当の長期資金金融債の発行が見込まれるように考えておる次第であります。
  46. 小峯柳多

    小峯委員 ただいま勧銀の話が出ましたが、勧業銀行は特殊銀行に復元させるお考えで諸施策を進めておられるのか、その点伺つておきたい。
  47. 池田勇人

    池田国務大臣 勧業銀行を特殊銀行として復元さすという気持は持つておりません。私はただいままだ結論には達しておりませんが、一般市中銀行でも債券の発行を認めてもよいのじやないかという気持を持つております。しかし何分にも今一般市中銀行は自己資本金に対しまして非常な預金を持つております。債券を発行いたします場合におきましては、債券発行銀行の預金につきましては、制限というふうな気持がある程度あるのでございます。さしむき見返り資金から出資して、金融債を発行するのは——まず第一に候補に上るのは、資本金に対して割合に預金の少い勧銀などが上つておる。こういうので勧銀を言つたのであります。別に勧銀を特殊な昔の銀行のようにするという考えはただいまのところは持つておりません。
  48. 小峯柳多

    小峯委員 大蔵大臣は第六国会のときに、不動産金融機関のことを演説の中で言つておられます。最近仄聞するところによると、その不動産金融機能を勧銀にあわせ持たせるというようなことを伺つておるのでありますが、その辺はいかがでありますか。もしそうだとすれば、今あなたは特殊銀行にしないとおつしやつたが、私は明らかに特殊銀行になると考えますが、承つておきたいと思います。
  49. 池田勇人

    池田国務大臣 不動産金融につきましては、全般的に考えなければならないのでありますが、今問題になつておりますのは、一般会計から出資いたします五十億円と、見返り資金から出す予定になつております百億円、これを元にいたしまして、不動産金融金庫をつくり、そうして住宅建設資金を供給しようかという考えを持つておるのであります。従いまして勧銀にこれを独占的に取扱わすというふうな考えは持つておりません。住宅金融金庫の持つておりまする百五十億円を、いかに運用するかという場合におきまして、一般の銀行に下調査をやらすということはあり得ると思います。そういう場合におきまして、勧銀が従来不動産金融、住宅金融に相当の経験を持つておりますから、しよせん勧銀が取扱うのが多くなもということは考えられますけれども、勧銀にその不動産金融金庫の融資の独占をすというふうな気持は持つていないのであります。
  50. 小峯柳多

    小峯委員 そうしますと、不動産金融の別の機関はおつくりにならない。住宅金融金庫以外には不動産金融をお考えにならないということでありますか。
  51. 池田勇人

    池田国務大臣 これはまだはつきりしたことは申し上げられませんが、住宅金融金庫が百五十億の資金を持つて、そうして下調査の機関は全然持たずに行くか、今のように一般の銀行を使うということは一つの研究問題だと思います。住宅金融金庫の金を使うために、不動産金融を取扱う下の機関を多く設ければ、便利がいいということになれば設けるかもしれませんが、ただいまのところでは考えておりません。
  52. 小峯柳多

    小峯委員 実は追究するようでありますが、この間の演説で言つておられますので、私どもは実はこれを期待しておつたのであります。なぜかといいますと、單に住宅金融だけでなしに、中小企業の金融というものは、実はほんとうの対人信用か、さもなければ店とか、その持つておる不動産が担保なのでありますが、そういう意味で今度の金融ども、中小企業金融へしわ寄せが来ておるのでありますから、この中小企業の金融を疏通するためにも、私は不動産金融機関が必要だと思う。單に新しい住宅を建てるために必要なのではなくて、既存の店舗や工場などを担保に扱うような場合には、財団抵当権の設定でできるのでありますが、中小企業者の金融のために、不動産金融というものをよほど考えなくてはならぬじやないか。もしあなたの御答弁のようにまだはらがきまつておりませんでしたならば、百尺竿頭一歩を進めて、中小企業金融のためにも、不動産金融機関をぜひ設けていただきたいと思うのでありますが、重ねて御意見を伺いたいと思います。
  53. 池田勇人

    池田国務大臣 ただいまは住宅金融金庫の問題を主として申し上げたのでありますが、勧銀が増資いたしまして、長期資金を取扱うという場合におきまして、昔の経験からいつて、不動産を担保に長期資金をまかなうということはあり得ましよう。しかし今ここに住宅とかあるいは土地を担保としてり金融をする別の機関をつくる考えはないのであります。これは先ほど申し上げましたように、自然にその分野ができて来るのでありまして、興業銀行は主として大産業に行く用意もありましよう。また勧銀は昔不動産担保の長期融資をやつてつたのでありますから、勧銀が増資して、そこに長期資金の余裕ができれば、不動産担保の長期資金の融資ということでまかなえるということもあると思います。ただお話のように、不動産を担保としてのみ融通する金融機関というものは、なかなか採算上むずかしいので、特にそういうものを設ける気持は——おのずから勧銀とかあるいは農林中金がその方面の分野に出て行くようになると考えておるのであります。
  54. 小峯柳多

    小峯委員 興業銀行、勧業銀行の増資の資金を、見返り資金で引受けるというお話でありましたが、これも非常な進歩であります。ただ心配いたしますのは、見返り資金が入ります場合に、どんな形で——また伝えられるところによると、優先株式の引受をやるというふうなことも伺つております。そうしますと、ことにこの優先株の配当保証が率が高ければ、資金コストにすぐ響いて来るのでありますが、そういう方面の見通し、それからこういうふうに見返り資金から勧銀や興銀の株式を持つようになると、政府の発言権も多くたるのでありますが、戰争中特殊銀行扱いとしてようやく政府の手から離れた、また政府のにおいがする銀行になつてはかなわぬ、というような意向も業者の方にはあるようであります。以上二つの問題を合せて政府の御意向を承りたいと思います。
  55. 池田勇人

    池田国務大臣 お話の点のような非難の起らないように、今優先株式を発行する場合のいろいろな條件、決議案等につきまして、検討を加えておるのでありまして、今ここで申し上げる段階には至つておりませんが、もう四、五日のうちに固まると考えております。ただ優先株式の配当で、七分五厘とか何とかいつたのでありますが、この見返り資金の金利というものは、一応七分五厘ときめまして、将来永久のものではございません。二十四年度鉄道通信への貸付金は五分五厘というようになつておりますが、二十五年度においてはそれはもうほとんど全廃になるかもしれませんので、金利の点はあまり心配はいりますまい。またあまり政府が銀行の株主になつてひつかきまわすということは、私も望んでいないことでございます。そういうことにならないようにいたしたいと思つております。
  56. 小峯柳多

    小峯委員 見返り資金の使い方は株式引受だけでございますか。それとも金融債の引受まで見返り資金を使う考えでありますか。またそういう見返り資金を使うことで、興銀なり勧銀の資本充実はできますが、それを基盤としてどれくらいの長期資金が——興銀、勧銀あるいはあなたの御構想の農林中金、商工中金を含めて、見返り資金を基礎にしてどれぐらいの資金の量が予定されるか、伺つておきたいと思います。
  57. 池田勇人

    池田国務大臣 見返り資金から金融債を引受けるかどうかという問題につきましては、ただいま申し上げる時期に至つておりません。一応出資いたしまして、これによつて金融債を発行し、私は大体一般市中銀行が国債の償還金をもつてそれを引受けるようになる、預金部も国債の償還傘をもつてこれを引受けるようになると考えております。今度は興銀、勧銀も農林中金、商工中金、こういうものでどれくらいの金融債の発行があるかという問題でありますが、これは興銀二十億円、勧銀二十億円、それから農林中金八億円、商工中金はわかりませんが、他の銀行も先ほど申し上げましたように発行し得る機会があるのでございます。見返り資金からたとえば三十五億円出しますと、これによる金融債が二十倍とすれば、七百億円あることになるのであります。しかもまた銀行自体が増資して発行限度をふやし得るのでありますから私は相当の長期資金がこれによつてまかない得ると考えておるのであります。
  58. 小峯柳多

    小峯委員 興銀、勧銀の問題は伺いましたが、それと非常に関連があつて、また当面の問題になつております旅券対策の問題で御意見を伺いたいと思います。  大臣は証券の対策につきましても昨秋来非常に御心配になつて、だんだんいろいろの手を打つて来られておることは承知いたしておりますが、現在の市場をごらんになつて、このままでいいとお考えになるか、それとも何ほどかその対策らしいものをしなければならぬとお考えになるか。あるいはぜひ早急にしなければならぬとお考えになるか、今の市場に対する見方を伺いたいと思います
  59. 池田勇人

    池田国務大臣 他の機会にも申し上げたと思うのでありますが、いわゆるデイスインフレヘの線が、悪いところが証券の方にみな寄つたような状態であります。昨年の夏以来証券対策につきましては、いろいろな手を打つておることは小峯委員も御承知通りであります。一般に株の下落の問題は、株もたれの問題、そしてまた名義書きかえの問題、こう二つに大別できると思うのであります。株もたれの問題につきましては、株式担保の金融を丙から乙に、乙から甲に上げるとか、銀行がもう少し株券の保有に積極的になるとか、あるいは株式担保の金融にもつと進んで出るように勧奨しておりますが、なかなか十分ではございません。従いまして私といたしましては、できるだけ株もたれの緩和に資するために、先般も東京証券を日本証券金融会社に改めまして二億四千万円の会社をこしらえてあるいは大阪、名古屋にもこの種のものをこしらえて、そうしてこの証券金融会社に対しまして、シンジケート団といつたら語弊がありますが、ある程度の金融の道を講ずるように今努力いたしておるのであります。また名義書きかえの問題も、わが国の現状から申しまして、いかにもクラシック過ぎる案でございますので、これを無期延期いたしまして、シヤウプの勧告の案のようにいたさないことにいたしたのでございます、しかしそれでも株価の現状はあまりに低落し過ぎておる観がありますので、私といたしましては、この上とも株価の上昇に、できるだけの努力を拂つて行きたいと考えております。何と申しましても一般証券界の方々などはすぐ、株もたれだからここに百億とか二百億の保有会社をつくつたらどうかという議論をなさるのでありますが、具体的の問題になりますと、ほとんど案を持つておられないようであります。私としては保有会社をつくるということは最後の手段と申しますか、一番あとからとるべき策という考えのもとに、いろいろの手を盡して来たのでありますが、今までの手が十分でありませんので、今後保有会社的なものをつくつてはどうかというので、今想を練つているところであります。
  60. 小峯柳多

    小峯委員 市場が不当に低落しておるという御認識、そして何か手を打たなければならないという御認識を伺いましたが、それの原因のところで、單に株式がもたれているとか、名義書きかえ問題だけでなしに、大臣もちよつと触れられましたが、根本の問題は、株式市場というものは、そのときの経済の状態の集中的な表現でありますから、あなたのデイスインフレの反映ともいえるわけであります。従つてこの市場対策というものは、今お話のような市場に即した対策だけではどうにもならぬので、結局デイスインフレ政策、最初に私が申し上げましたように、金融のやりくりを上手にして、文字通りデイスインフレを色揚げするということにしなければならぬと思うのであります。しかしそれは別といたしまして、証券対策の問題、今お触れになりましたが、私の考え方では非常に株券が激増しておる、いわば株式の大洪水を起しております。この大洪水をのむ河川改修ができていない。またその河川にダムもできていない。あるいはまた水源の調節もできていない。たとえて申し上げますが、戰前は安定株主という層が——財閥あるいはその他の金融機関が、相場のいかんにかかわらず、株式の処分をしない安定株主というものがあつたのであります。これが私はダムだと思います。それから証券金融が、戰前は非常によく疏通しておつたように思いますが、これが河川の流れだと思います。そこで今度の株式のふえ方というものは、大臣もすでに御承知のことでありましようが、これは通産省の数字で調べた数字でありますが、非常なふえ方であります。二十年十二月、戰争の終つた年の年末でありますが、その年の拂込み資本金が三百五十九億六百万円でありますが、昨年末には二千一億二千四百万円になつております。たいへんな激増なのでありまして、もう普通のふえ方という言葉では表現のできぬほどたいへんなふえ方であります。いわば株式の洪水であります。この洪水をのむようにするためには、昔安定株主がいわばダムの役割をしておつたのでありますから、河川にダムがほしい。しかも河川改修をしつかりやらなければ、この洪水をのむわけに行かぬ。しかも水源をよく涵養して、治山の仕事をしつかりやつて、株式発行に対しても適切な手を加えなければならぬという考え方になると思います。株式の株もたれの点から来る発行の調整は、すでに取引委員会の事務局などで大臣の御意向もあつたでありましようが、だんだんやつております。問題は河川の流れとダムをつくることにあると思います。その河川の流れ金融でありますが、この問題は、先ほど大臣のお触れになりました貸出金利を引上げるという問題、あるいは株式担保の金融を一般銀行に慫慂するというような問題、これもよく言われるように、馬を水辺に連れて行つたが、水を飲ませることができないという現状だろうと思います。あるいは証券金融会社の構想についても今お触れになりましたが、これも新しい考えではありますが、証券金融の一環としか受取れないと思います。またそれに関連して信用供與の問題というようなこと、これは大蔵大臣の認定でできますから、信用供與も早急に実現していただかなければならぬと思います。なお先ほどの勧銀、興銀の問題に触れて、大蔵大臣が発表された談話の中で、勧銀、興銀の増資によつて、資金が充実できれば、株式金融なり、あるいは株式の買出動に利用できるのだというようなお考えがあつたと思います。その証券金融問題で、信用供與の問題と、勧銀及び興銀の資金充実後における株式金融対策について、お考えがあれば伺つておきたいと思います。
  61. 池田勇人

    池田国務大臣 お話通りに、昨年急激に株がふえたのであります。正確な数字ははつきりいたしませんが、とにかく二千億近い株があるのですが、この株は日本通貨の面からいつても、あるいは預金の面からいつても、国力として多過ぎるかということになりますと、私はそうは考えていない。お話通りに、戰前は四百億円くらいと私は記憶しておりますが、通貨に対しましての株式の状態ということになりますと、今の状態で二千億円の株が多過ぎるというわけのものじやないのです。なぜこんなに株が下つたかと申しますと、昨年の春から夏にかけましては相当秋高見越しがありまして、何でも買えばいい、それから増資すればどんどんもうかる、こういうかつこうで、行き過ぎの傾向があつた。これが見込み違いになつた点もありましよう。それからまたあなたのおつしやるように、ダムの点も株式の保有、金融がなくなつたという点もありましよう。しかし結局いずれにいたしましても、銀行の株式担保の金融が、戰前は貸出しの大体二、三割程度あつたのです。そういたしますと、現在は七千億近い貸出しがございますから、これの三割というと二千億ばかり。これを銀行が株式を担保に貸出しておるのが、現状では八、九十億しかございません。こういう関係で、お話通り馬が水を飲むような方法で行かなければならぬという考えのもとに、昨年来銀行の方の方々に、株に対してもう少し注意を向けるように努力いたしているのであります。私は、これ以上の暴落はもちろんあつてはならないし、ないと考えておりますが、いろいろな施策をし、今度の予算案が通過しまして有効需要が起り、経済も復興するということになれば、徐々に上つて行くということを期待し、また上つて行くことを信じているのであります。  次の御質問の興銀とか勧銀が株式を買うとか、あるいは株式担保の金融をやるとかいう問題は、これは興銀、勧銀に限つたことではございません。銀行全体がとにかく株の値が適当な価格を保持しておるということは、経済再建に最も必要なことであり、そしてまた会社が自己資本を得るためにも、株価が適当な価格を維持するということがぜひ必要であります。これはまた銀行も非常な関必を持つ重要な問題でありますから、勧銀も興銀に限らず、他の銀行もだんだん株式金融ということにつきまして、熱意が入つて来ることを私は期待し、信じてある次第であります。     〔委員長退席、上林山委員長代理着席〕
  62. 小峯柳多

    小峯委員 馬の話が出ましたが、大蔵大臣川まで銀行屋さんを連れて行つおるのでありますが、なかなか水を飲まぬようでありまして、水を飲ませる方法がいるのであります。先ほどの御質問で御答弁が漏れておりますから、重ねて伺いますが、証券金融会社をつくりまして、その証券金融会社を株式金融の窓口に使うということのためには、実は信用供與の問題が必要となつて来ると思うのであります。その証券金融会社は、御承知のようにレギュラー・ウエーという方法が始まつておりながら、まだそのレギュラー・ウエーが十分に充実いたしておりません。そのために一応証券金融会社というものはできたのでありましようが、それを金融に使うためには、どうしても信用供與が必要であろうと思います。これは大蔵大臣が認可すればできるということになつておるのでありますから、もう御用意があつてしかるべきだと思いますが、これをいつごろ、あるいは法律には五五%ときめておるようでありますが、どのくらいまでお考えになつておるか、伺つておきたいと思います。
  63. 池田勇人

    池田国務大臣 信用供與の問題は微妙な関係がありますので、つとめて答弁を避けたのでありますが、私は今考慮をいたしております。それはレギュラー、ウエーの方法で行く、いわゆるアメリカ式の取引方法日本の取引がなりましたので、しかもアメリカは昨年の株価の下落以来五〇%でやつておるのであります。しかし今日本がこの状態で、規定上大蔵大臣の認可でできるのだから、いつやるかとおつしやいましても、なかなかそうはうまく行かないので、お考えの点は十分わかつておりますが、いつからやるかということは、ちよつとただいま申し上げられません。今までの経験から申しますと、私は株式対策につきましては、一ぺんにいろいろな手を打つよりも、徐々に手を打つて、そうして人気をよくした方がいいという考えのもとにやつて来ておるのであります。しかしあまり徐々に出し過ぎますと、人気が沸き立たぬ。そこで今度は方針をかえまして、いい材料から一ぺんに出そう。こういう考えを持つておるのであります。従いまして信用供與の問題は、いつどれだけの割合でやるかということは、しぼらくお待ち願いたいと思います。
  64. 小峯柳多

    小峯委員 馬が水を飲みませんのは、これは根本的には日銀の担保に株式か使われないということであろうと思います。日銀で株式担保で株式金融の資金を左右しておる。この方法が実現できません限り、私は馬か水を飲まぬと思うのでありますが、その日銀の株式担保制の問題を大臣はどうお考えになつておるか。あるいは伺うところによると実現はむずかしいようでありますが、先ほどお話がありましたように、国債がなくなり、その次は社債に移る。と言いますと、何か日銀と一般の銀行との結びつくひもといたしましても、株式を考えてもいいと思うのでありますが、これもなかなかむずかしい機微な問題があろうと思いますが、この点をおさしつかえなき範囲において御答弁願いたいと思います。
  65. 池田勇人

    池田国務大臣 日銀の株式見返り担保貸出しにつきましては、御承知通り明治時代もやつてつたのでありまして、制度自体としてそう悪いものではないと思います。しかし中央銀行が株を担保に貸出しするということは、各国の例を見ましても、これは邪道とは言い得ませんが、違例であるのであります。しかして市中銀行が株式担保の金融を相当程度やつておる。昔のように貸出しを三割程度もやつておるということならば、日銀へ見返り担保に持つて行く道もあるのでありますが、今の現状では市中銀行は株式担保金融をあまりやつておりません。しかもまた昔のように株式を保有していないのであります。で市中銀行は日銀が株式担保の金融を認めれば自分も株式担保の金融をやるし、株を買う。いわゆる水も飲む。こういうのでありますが、片方からいうと、そんなら君の方は日銀へ持つて来るほどあるか、腹が減つておるか、のどがかわいて船るかというと、かわいていない。そこで私は昨年の十二月の初め以来、水を飲むように、銀行家を集めまして、株式金融あるいは株式保有につきまして、注意を喚起しておるのであります。その後だんだん株式金融も出て参りましたし、また銀行の株式保有もふえて参つておりまして、徐々にそういう方向へ向つて行くと思うのであります。しかして私の考えといたしまして、もし今市中銀行が日銀から融資を受ける際に担保に困れば、株をいわゆる見返りとは申しませんが、手形の追い担保にして持つてつた場合に、日銀は欣然として割引くと信じております。どうも日本金融家、実業家はそういう情勢をつぐらずにおいて結論をすぐ出す。これが日本人の弊害でございまして、株式担保の金融日本銀行に認めさせようとすれば、まずみずから株式担保金融をやり、株を保有すべきだ、こういう考えのもとに、銀行が水を飲むように実は努切をしておる次第であるのであります。はつきり申し上げますが、もし市中銀行が日銀から融資を受けるのに、資金化させなければ困るというときには、追い担保として株を持つて行くということはあり得ると思います。そういう場合に日銀は、必ずや金融をつけると私は確信いたしておるのであります。
  66. 小峯柳多

    小峯委員 ただいままで証券金融の問題、あるいは河川会社の問題を伺つ出たのでありますか、今度は芸の問題を伺います。先ほどこくふんわりとお触れになつておるたようでありますが、もう少しだめ押しをしておきたいのであります。お話伺つておりますと、今までは小出しにやつて来た方がいいと思つたが、今度はそうでなくなつたとおつしやいました。これは大進歩であります。どうも見ておりますと、大蔵大臣あまりにもティミッドであるように考えておつたのでありますが、こういう問題は実は構えの問題であるのであります。小出しにいたしましてもきき目のないものでありまして、ほんとうに対策が必要であります。必要ないとお考えになれば、小さく置くことも絶対禁物であります。必要あれば大きな構えでものを大胆に決行しませんと、ものは効果がないのであります。  そこで最後にダムの問題、保有会社の問題でありますが、多分相当腹をくくつて、今度は決心が違つておるようですから、私ども期待しておるのですが、その実現する時期あるいはその規模なんかの問題で、なかなかむずかしいかもしれませんが、腹の中にあつてさしつかえなければ一応伺つておきたいと思います。なおもしそれがむずかしいようでありますれば、何かそれがわかるような頭のいい御答弁を願いたいと思います。
  67. 池田勇人

    池田国務大臣 構えの問題で、大上段に構えた方がいいというふうなお考えでございますが、株価の問題はなかなかむずかしい問題で、最もやつかいな点だと思うのであります。小峯委員はダムをこしらえれば、それでみな水がとめられると申されますが、株の流れのダムは普通のダムではむずかしいのでありまして、すぐ裏をかかれてしまいます。そうして株式のためのいろいろなてこ入れなんというものは、おおむね裏をかかれて、胴を切られたり骨を切られたりなんかするのが通例なのであります。これは戰争の前あるいは戰争が始まつた当時、戰時復興金融金庫でしたか、あるいはいろいろな方法でやりましたが、なかなかむずかしい問題であるのであります。しかも今お話通りに二千億近い株を、ダムをつくるにはどれだけの資金がいるか。しかもこの資金の調達方法、こういうことから考えますと、なかなかやつかいな問題であるのであります。そこで私はよほど愼重な方法で行かないと、ふりかざして、あとどうにもこうにもならぬものになつては困るというので慎重に考えておりますが、とにかく株もたれということが下落の非常に重要なフアクターでありますので、適当な時期に、適当な方法考えたいと思つておるのであります。しかし何と申しましても、値がさ株がどうこう言つておるのであります。値がさ株の分は資本金も少いし、一般大衆にあまり影響がないのでございますが、実業家の方の人も、あまりに昔のように、たとえばある会社は五十円拂込みに四百円の場合、聞くところによると、一割四分にしようか、一割五分にしようかということですが、こういうような実業家の考え方では、なかなか株は上つて参りません。四百円で買つて、年一割五分で七円五十銭の株式の配当では、株価の維持はできない、これはやはり経済の安定、復興とにらみ合せなければならぬ。ここで保有会社ができればさつと株が上るということも、またあまりに甘過ぎる考えです。やはり資産再評価の問題、復興予算の問題、あるいはいろいろな点を見合いながら、やはりダムを考えないといけないと思つておるのであります。
  68. 小峯柳多

    小峯委員 胴を切られる話が出ましたが、構えが悪いから切られるのでありまして構えを愼重になさることには賛成であります。しかしやはり保有機関というものは、どうしても考えて行かなければならぬということは、大臣も御同感であろうと思いますので、一応これは了承いたします。しかし今株価のお話が出ましたが、私どもは株価を上げることは考えておりません。今日ただいまの状態ですと、企業再建整備がこのためにとまつておるのであります。試みに二十一日の、これは東株でお調べいただいた数字でありますが、上場数六百三十一のうち六十円に満たない——六十円ぐらいありませんと、どうしても増資ができぬそうでありますが、五四%は実は六十円未満であります。そうしますと、日本経済日本の産業の骨格をなすような会社が増資が不可能だとしますれば、これは株価の問題ではないのであります。日本の産業の合理化も、これは人減らしをしたり、賞盃の引下げやるべきではありません。設備の更新、新しい設備で、能率のいい機械を使うということになりますと、設備資金の問題になる。     〔上林山委員長代理退席、委員長着席〕  設備資金の問題になれば、長期資金の限りにおいては株式によらなければならないのでありまして、そういう意味で、私は国民経済的な意味から取上げておるのであります。どうか大臣もそういう意味合いで市場の問題としてお考えになり、国民経済全般の問題として、この問題を愼重にお取扱い願いたいことを要望いたしたいのであります。  次に農林水産金融の問題は、先ほど農林中央金庫の問題でお触れになりましたが、これもどうせ後ほど同僚議員から詳細な質問があるだろうと思います。ただ農林金融の特徴といたしましては、長期低利のものが必要だと考えますが、この農林中央金庫の増資をなさる御予定をさつき伺いましたし、また債券の発行のお話も伺いましたが、さてどのくらいの資金になるか、またそれがいつごろ実現するか、また漁業金融に充てなければならぬ長期低利のものが、これで確保できるか、その点を伺つておきたいと思います。
  69. 池田勇人

    池田国務大臣 興銀、勧銀と同様に、今議会のなるべく早い機会に、農外中金のあれを出したいと考えており戻す。お話通りに、農林、水産関係り方はできるだけ低利にいたしたいという考えのもとに、先般も一般金利の切下げをやつたのであります。しかしこの金利の問題は非常にやつかいな問題でございまして、二厘引下げにつ己ましても、かなり異論があつたようは状況でありますが、今後におきましても、私は金融機関の合理化をはかりまして、できるだけ下げて行きたいと考えておるし、なおごく低利のものが必要な場合につきましては、私は日本銀行からの別わく融資なんかも考えてもいいのではないか。これは農林ばかりではございませんが、中小商工関係で今別わく融資として三十億程度やつておりますが、これも情勢によりましては、私は農林、水産関係の低利の貸付といたしまして、債券以外に考える余地があるのではないか、こういうような気持を持つております。なおまた見返り資金から中小商工業者に出しておる金も、これは七分五厘ということで出しておるのでありますが、二分の銀行の手数料においてそれをやつて参りますから、今の状態では七分五厘ぐらいで当座が使えれば、まあがまんしていただけるのではないか。預金部の方も御承知通りに九分ないし九分四厘くらいの貸付になつているのであります。できるだけ農林、水産には低金利の金を融通するように努力して行きたい、またできることだと私は考えるのであります。
  70. 小峯柳多

    小峯委員 特にこの農林、水産の部一門で、林業に関する資金でありますが、総合国土計画を政府も取上げておりますし、山を治めなければ水が治まらないという言い方からいたしますれば、この遅れている造林を積極的に進めなければならぬと思います。何にいたしましても、これは一番年限のかかる仕事でありますが、林業に関する資金の問題、場合によつては、林業金庫——金庫々々と言つてはいかぬでしようが、そういうふうな考え方をとなえる向きもあるのでありますが、林業造林資金に関するお考え、農林中金の中でまかなえるお見通しを持つておられるか、伺つておきたいと思います。
  71. 池田勇人

    池田国務大臣 造林資金につきましては、公共事業費の方に相当見込んでおりまして、私はあの程度でよい、あの金を使うのに苗が足りるか足らぬかというくらいの気持を持つているほど、思い切つて出している次第であります。お話通りに、ごく低利な長期なものでありますが、私たちとしては、こういうふうなものはやはり国の方で出すのが至当じやないか、こういうので、公共事業費から相当思い切つて出しているはずであります。
  72. 小峯柳多

    小峯委員 公共事業費で出ておりますことは承知しているのでありますが、その金利の條件はどうなさるおつもりですか、伺つておきたい。
  73. 池田勇人

    池田国務大臣 公共事業費というのはほとんど補助でございますから、金利の問題はございません。民間の方でおやりになる場合につきましても、私は今の公共事業費の方を使えば相当できるじやないか。もしこれでもなお苗があつて、自分でまだやつて行きたいというふうなところがありますれば、それを考慮していいじやないかと思います。
  74. 小峯柳多

    小峯委員 次に中小企業金融の問題であります。これは実は非常に影響をこうむつている問題であります。デイスインフレの線がむしろ大企業に及んでおりますが、中小企業金融の面では、明らかに相対的な意味デフレだと思います。そこで中小企業金融の問題、これも始終言われているのでありますが、これをしつかり取上げて行かなければならぬ段階に来ていると思います。それは中小企業金融の建前にはいろいろありますが、組合金融でやつて行こうとするのか、あるいは信用保証金融でやろうとするのか。先ほど勧銀の場合に触れましたが、短期金融で使うのか、あるいは長期金融で使うのか、いろいろ組合せなければならぬと思いますが、その中でも中小企業金融における信用保証金融というものが相当注目されているのであります。つきましては、中小企業金融の骨格として、政府の方ではどれに重きを置いて行こうとするのか。この問題は非常にいろいろ言う人があるし、少し筋の通つた考え方で行きませんと、いつでもはじき寄せられてしまうだろうと思います。
  75. 池田勇人

    池田国務大臣 お話はもつともでございまして、われわれもあらゆる手を講じているのでありますが、昨年来やつております公共団体の保証協会、これも相当成績を上げているところもありますし、あまり成績の上らぬところもあり、また組合金融にいたしましても七今のように組合の経費がかかりますときには、十分には行つておりません。必ずしもみな非常によくやつているということもないのでありますが、やはり市でやつております保証協会あるいは信用組合あるいは無盡なんかも、相当中小金融には役立つているのではないかと思いまして、先般の百億円の預金部の融資についても、相当無蓋の方へは出しておりますし、また余りの金も少しありますので、最近また無蓋の方へ出そうという気持を持つているのであります。やはりこの中小商工金融は上から行く金融と、それからまた中小金融自体金融もあります。大体大産業に金がまわつて参りますと、それが中小金融に非常に役立つ場合もあり、それからまた金融組合あるいは無蓋等から出て行く場合であるとか、さしむき本来の使命といたしましては商工金融でありますので、これにつきましても、ただいま農林中金と同様な方法でやり得るように検討を加えておる次第でございます。
  76. 小峯柳多

    小峯委員 昨年末預金部が百億の金を流しましたことは、私は政府のやつた金融政策の中で、一番いい方だつたと思うのでありますが、その資金の回収の期限が多分一箇月と聞いておりましたが、現在どうなつておりますか、その点を伺つておくことと、今重ねて出すことも考えるというお話でありましたが、それなどの融資の條件をどんなふうにお考えになつておるか、伺つておきたいと思います。
  77. 池田勇人

    池田国務大臣 ただいまのところ、先般の百億のうちで七、八億円まだ余つております。従いましてその余つた分を、今特定の長期資金を扱つておる銀行、そしてまた無盡の方に流しております。しかし今後におきましても、金融の情勢によりましては、預金部の方になおただいまのところ三十億円ばかり、あるいはまた証券を引受けておるのが六十億円ばかり、都合百億円余りの余裕がありますので、情勢によりましては、この百億円のうち相当部分を使つてもいいと考えておる次第でございます。
  78. 小峯柳多

    小峯委員 信用保証協会のお話が出ましたが、信用保証協会を法的にきめるお考えはないか。現在は法的な根拠がないように承知いたしておりますが、この信用保証協会というものを、法律をつくつて裏打ちをして、守り育てるというふうなお考えはないか、伺つておきたいと思います。
  79. 池田勇人

    池田国務大臣 いろいろな関係がございましてある人は信用保証協会はもつてのほかだという議論が強かつた。ところがだんだんそうい議論も衰えて参りまして、ようやくああいうふうな状態になつた。もう一歩進んで法的にするということになりますと、また非常な反対を受けたりいたしますので、今のところは、このままで法的でなしに行つた方が、効果的ではないかと考えております。
  80. 小峯柳多

    小峯委員 なおその保証協会の運用の問題で、どうか大臣に御承知願い、御注意願いたい点は、銀行と保証協会が二重調査をしておるようであります。いやしくも銀行にまかした以上、銀行の調査を信頼し、保証協会では盲判を押すくらいのつもりでありませんと、事務が進捗いたしません。また見方によりますと、保証協会の方から言いますと——私どもの方から言わせると、銀行というのは非常に保守的なんだというふうな言い方をしておりますが、何しろどつちから持ち込みましても、二重調査がないようにしませんと、緊急の金がいつて、もうじりじりしている業者が、非常に困つているような実情なのであります。私は保証協会は中小金融に対するヒットの一つだと考えておりますが、運用の事情を調べてみまして、非常にその感を深くしておるのであります。どうかその点をお取調べくださいまして、そういうことのないように御監督願います。
  81. 植原悦二郎

    植原委員長 小峯君、大蔵大臣にまだかなりありますか……。
  82. 小峯柳多

    小峯委員 まだ二、三十分あるのですが……
  83. 植原悦二郎

    植原委員長 大蔵大臣は向うの関係で三時半からお出かけになるそうですから、安本長官に集中して願います。
  84. 小峯柳多

    小峯委員 それでは保留しまして、安定本部長官経済演説の中に触れておられる。貿易の問題のおもなる点についてだけ伺いたいと思います。  貿易を振興する方法といたしまして、貿易協定の範囲をさらに拡大し、戰前わが国貿易の五〇%以上を占めていた、アジア諸地域との貿易の増大をはかりたいとおつしやつておりますが、これは具体的にどういう地域をさし、またそのお見込みやお見通しがあるのか、本会議でも御質問がありましたが、詳細に見解を伺いたいと思います。
  85. 青木孝義

    青木国務大臣 貿易の伸張の問題でありますが、御承知かと思いますが、協定貿易の点で非協定国と協定国がございます。その点から考えまして、大体われわれの考え方としては、できるだけ協定貿易を促進して行きたい。世界経済の態勢に応ずる建前として、そういう考え方でありますが、御承知かと思いますが、非協定国というような点で、もちろんドル地域、それからスターリン地域と両方あります。しかしその協定等につきましても、アジア地域の部面で、できるだけ協定関係を広めて行くというわれわれのアイデアでありますが、それはいろいろ国際情勢、そういう関係もありまして、だんだんそういうことに移して行かれるのではないかというようには考えておりますけれども、昨年の十二月から輸出が民間貿易に移されたり、一月一日から輸入が移されるというような関係で、ただいまのところ、せつかくそういうような事務的な処理等も多少残されておりますし、また四半期ごとにこれをきめて行くというような事務上の関係からも、だんだんそういう点に押し広められて行く可能性がある。ただわれわれとしてはそういう戰前の状態にもどつて、ぜひそうして行きたいということを申し上げた次第でございます。
  86. 小峯柳多

    小峯委員 非常に大切な問題でありますが、まだお見通しがはつきり立つていないような感じがいたします。関連いたしまして今朝の新聞でしたか、エスクロ貿易という方法で、中共貿易が近く実現するというような新聞記事がありました。それに関する問題で御承知になつておりましたら、御事情を承つておき、またお見通しもあわせてお聞きしたいと思います。
  87. 青木孝義

    青木国務大臣 私はその点については、まだ別段正式に承つておりません。
  88. 小峯柳多

    小峯委員 演説の中で非常に大きく触れられた問題なのでありますが、御承知なければ先へ参ります。  貿易條件の改革ということを言つておられますが、どういうことをさすのか、輸出CIF輸入FOBさすのか、あるいは商務官の問題なども聞いておりますが、実際問題はどうなつておりますか。貿易條件改善の具体的な見通し、お考えを承つておきたいと思います。
  89. 青木孝義

    青木国務大臣 貿易條件等につきまして、いろいろと理想的な問題を提起されておりますが、たとえば商務官を派遣する、そういう場合において、どういうところから出て行くというような問題でありますが、すでに一部分は通産省とそれらの関係者が出て行くというようなことも行われておりますし、また今後とも民間の商社等が逐次海外へ出て行く、すでに一部分は出て行つてもおるというような状況であります。もちろん海外送金であるとか、あるいはその他為替資金等の関係考えなければなりません。そういうような事務上の問題等をそれぞれ決定をしたしまして、問題を解決いたしたいと思いますが、ただいまおつしやいましたCIFであるとか、FOBの問題、それらも当然その條件の中に入つておる問題であります。
  90. 小峯柳多

    小峯委員 私は最初の質問でも申し上げたように、安定化内容づけて行くためには、どうしても貿易でひつぱらなければならないと思います。そのために貿易の問題を非常に重要視いたしておりますが、しかし伺いますと、どうも見通しがはつきりいたしておりません。これも相手のある話でありますから、しかたがないかもしれませんが、どうかこの問題はせつかく十分御研究になつて一日も早く実現するようにお考え願いたいと思います。  なお輸出生産について資金、資材を優先的にあなたは扱うということを言つておられますが、具体的にそれができるという、何かお見通しを持つておられますかどうか、伺つておきたいと思います。
  91. 青木孝義

    青木国務大臣 資材等につきましても、輸出関係等につきましては特に考慮を拂つておりますが、資金等につきましても、たとえば中小企業金融の中でも輸出対策の商品等の生産関係にうきましては、十分考慮をいたしておる次第でございます。
  92. 小峯柳多

    小峯委員 貿易の問題が政府側は非常にお弱いように考えますので、通産大臣とも御会議になつて、どうか貿易を展開する問題を真剣にお取上げになつていただきたいのであります。  関連いたしまして、外資導入の問題についてお伺いしたいのでありますが、これも今日の新聞に、外資導入促進のために委員会を改組して、もつと強いものにするのだという記事を承知しましたが、主管大臣である安定本部長官から、その辺の消息、またお見通しをあわせて伺いたいと思います。
  93. 青木孝義

    青木国務大臣 外資導入の問題でありますが、従来経済安定本部中心となりまして、外資委員会というものを組織いたしております。これはまず外資導入につきましては、われわれは外資導入の阻害の原因について、税制の改革であるとか、あるいは統制の緩和とか、為替管理制度の整備、集中排除賠償の取立て不安の解消といつたようなものをあげまして、そうして順調にこれらの問題は解決の方向にあると考えます。それから国内経済全体も、インフレの収束で遜るとか、あるいは経済安定化の前進、これらによつて外資導入の態勢は、着々整備しているというような状況にありますし、さらに国際情勢の関係でありますが、これも大体落ちついておる。そうして米国の景気回復と相まつて、対日投資に関する内外の諸條件というようなものが、だんだん整備されるに連れまして、本格的な民間外資の導入の将来というものは、期待すべきものがあるという確信をいたしております状態であります。かような国内のもろもろの懸案が解決をいたしますとともに、政府はさらに進んでこれに妥当するような外資の導入を促進いたしますために、総合的な対策を樹立すべきであるという考え方で、一月の半ばごろから、実は関係方面の協力と指導のもとに、その具体化を進めているような次第であります。この大綱につきましては近く決定を見る見込みでありますが、要するに外資の導入に関する諸般の事務についての機構とその手続、そうしてその簡素化と申しますか、簡素明確にいたしまして、日本の再建と自立に有効な外貨の導入ということを考えもかつこれに伴つて送金等の円滑化をはかるということを目標としている次第でありますが、これらの問題から考えまして、今問題になつて参りました、たとえば大蔵省が独自で社債等の点はこれを考え、また処理することができるというような問題もありますし、また外資導入に関する各省関係各般の項目等がありますが、大体において外資委員会がこれを取扱つております。従つて今後とも外資委員会中心といたしまして、安定本部からの勧告に基いて、各省ともやつていただくというような段取りをつけて行くことが、貿易を促進するための統一的な考え方であるというふうに考えますし、また処理方法であると考えますので、そういう線に滑つて今後やつて参りたいというので、せつかくそれらの問題の解決に当つている次第でございます。
  94. 小峯柳多

    小峯委員 受入れ態勢の問題でいろいろお話がありましたが、そのほかにこれもちよつとお触れになりましたが、外債償還の問題とか、外国人課税の特例の問題があります。あるいは利子利潤、送金、これもお話がありましたが、正確にはこれはおそらく大蔵大臣でなければいかぬだろうと思いますから、後日に譲りまして、この前臨時国会のときに、やはり安定本部長官から外資導入の実績を一応伺つたのであります。その後何か新しい発展が実績の上であるかどうか、その点を伺いたいと思います。
  95. 青木孝義

    青木国務大臣 昨年から今年にかけまして多少出ておりますから、政府委員をしてお答えをいたさせます。
  96. 平田敬一郎

    ○平田(敬)政府委員 外資導入につきまして私から御説明し上げます。現在までの民間外資につきましては、従前に比し大きな進展はございません。従来主として商業、サービス業の財産権取得は、個人の株式取得のような小規模のものが多いような状態であります。最近までの実績で、やや本格的な外資導入として考えられますものにつきましては、石油関係、造船、機械関係、化学関係、合せまして十三件が今日までの実績であります。なお内容は、株式を取得して資本投下をしようとするものもございますが、一番大きいケースといたしましては、技術の輸入の関係が多い現状であります。
  97. 植原悦二郎

    植原委員長 ちよつと速記をとめて……     〔速記中止〕
  98. 植原悦二郎

    植原委員長 速記を始めて……、
  99. 青木孝義

    青木国務大臣 ただいま私のお答えをいたしました点について、委員長から、もう少し具体的に話ができないか、こういうことでございましたが、御承知通り、外資導入の問題は、特に外資委員会としていろいろと書類が提出されて参ります。そういうものについて一応吟味をいたしまして、そして外資関係の、しかも外国人がどういう国のどういう立場の人であるかというような問題もありますので、先方とも話合いをいたすというような関係にあります。元来安定本部といたしましては、大体において公共事業費以外、及びその他割当統制等の問題以外のものは、計画を立てまして各実施省に流すという形にありますために、たとえばただいま委員長のおつしやいましたホテルが、どんな程度にできておるかというようなことについては、これは通産省が直接担当いたしておりますので、通産大臣はまだお見えになりませんが、おそらくその具体的な問題の経過ないしは程度等については、通産大臣からお答えすると存じますので、さよう御承知を願いたいと存じます。
  100. 小峯柳多

    小峯委員 外資導入に関係するのでありますが、外銀の活動の問題であります。これもあなたのところであまり御存じないのじやないかと思いますが、お正月から外銀が活動を開始いたしております。私はこの外銀の活動が外資導入のきつかけになるというふうに最初見ておつたのでありますが、この外銀の活動と外資導入の関係で何かお気づきになりました点、あるいは最近の活動なり御存じでしたら伺いたい。またなければ通産大臣がらでもお伺いすることにいたします。
  101. 青木孝義

    青木国務大臣 これは御承知かと思いますが、閣僚審議会等でその事務上の、たとえば為替予算というような問題についてはわれわれも一応承つておりますが、しかし外銀の活動状況については、まだつまびらかにいたしておりません。
  102. 小峯柳多

    小峯委員 それでは通産大臣がお見えになりませんとやはり話ができませんから、あとは大蔵省の関係になりますから、保留いたしたいと思います。
  103. 植原悦二郎

    植原委員長 通産大臣は今参議院答弁が終ればすぐ来るそうでありますから、ちよつとこのままお待ちを願いたい。速記をやめて……     〔速記中止〕
  104. 小峯柳多

    小峯委員 通産大臣に外資導入と貿易の問題について伺いたいのであります。実はただいままで安定本部長官に御質問申し上げたのでありますが、企画官庁のお立場上、あまり材料をお持ちになつておらぬようであります。貿易の問題と外資の問題でありますが、先般の本会議演説安定本部長官が、貿易協定の範囲を拡大する、それでアジア貿易に切りかえて行くのだというようなことをおつしやつておりますが、具体的にそのお見通しなりあるいは進みぐあい、特にその問題に関連いたしまして、中共貿易の問題が——今日の新聞紙上によると、エスクロ貿易という形でやるのだという記事も見えております。アジア貿易の問題、中共の問題を含めて、具体的なお見通しなり、進みぐあいなりを伺いたいと思います。
  105. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 御質問の点でありますが、われわれは貿易の目途を一体どこに置くか、あるいは地域はどこに置くか、こういうような問題が実は本会議でも議論されたと思うのでありますか、しかしながらわれわれはどこに限る、こういつた考え方を持つべきではないので、できるだけ広い範囲において貿易をやつて行く、但し今日各国ドル不足の状態でありますので、従つてその貿易は協定貿易になつて行く、協定貿易になつて来ます場合におきまして、大体において今日の情勢からいつて、東南アジア方面が主として浮び上つて来るのは事実であります。しかしながらあるいはスエーデンにいたしましても、あるいはまた最近の西独との貿易協定、その他ヨーロッパ各地に対しても、コマーシャル・アカウントもできますし、また協定もやつて行く、こういうことになると思います。南米も最近はアルゼンチンとの間には、はつきりと協定もでき上りましたようなわけであります。各方面にわたつて貿易の協定をして行くということになると思います。  なお対中国の問題でありますが、これは御承知のように、われわれ占領下にあります関係上、主として司令部の意向に従つて動いて行かなければならぬことは、これはもとよりであります。ただ実際問題といたしまして、先版来香港を通じての貿易が主として行われメおつたのでありますが、最近血は、あるいは青島のバイヤーを通じ、あるいはまた天津のハイヤーを通じまして、しかもそれらの人たちが中共の許可を得ているという形において、われわれの方へバーターあるいは特に日本にあるところのドル資金とか、あるいはポンド資金とかいうようなもので取引をやりたい、こういうような話も相当あるのであります。ただ御承知のように、この地方にわれわれの方から出します物資につきましては、いわゆるわれわれの方で一応の査定をいたさなければならぬという点があります。俗にいう戰略物資といわれているものでありますが、これについては一応の査定をいたさなければならぬような点があります。従つてこういう点について、普通の貿易というか、それよりも多少の支障があるという点は、われわれ認めるのでありますけれども、しかしながら英国が中共を承認したという観点から、今後香港貿易も、従来よりもより多く活溌になつて参ると存じますし、また北支方面におけるところの青島なりあるいは天津あたりの、バイヤーも、あるいは英国のバイヤーあたりもこれに加わることと存じますので、今後対中国貿易も、相当従来よりも進展して参るのではないか、かように考えておる次第であります。
  106. 小峯柳多

    小峯委員 ただいま貿易の相手国を狩足しないというお話がありましたか、それは実は当然のことでありまして、それを伺いたかつたのじやないのであります。安定本部長官経済演説の中に、今私が申し上げた文句がありましたから、それをどういうふうに見ておられるか、その中で中共貿易を相当重く見ておるのではないかという関連で伺つたのです。私も貿易は特定の国と行うべきでないことは承知しております。昔ならば大臣演説に対する見解が違うと問題でありますが、これは不問に付します。そういうものではなしに、アジアの貿易がどうすれば展開するか、何といつてアメリカ中心でアジア貿易は現在進めておるようでありますが、私どももこの隣邦との間の貿易問題が進みませんことには、貿易もそうはかばかしく参らぬと思います。しかも先ほど来ずつと質問して参つたのでありますが、貿易によつて日本の産業再建をはかる、それ以外に私は安定に中身の入る方法はないと考えるのでありますが、そういう意味伺つたのですから、どうかその辺は誤解のないように私も貿易のプリンシプルを全然知らないわけではないことを釈明いたしておきます。  それからこれも先ほど安本長官伺つてはつきり上なかつた点でありますが、外資導入の問題であります。実際にこれを扱つておるあなたとしては、外資導入がどの程度に進んで、しかも日本の産業再建との関連において、現実にどの程度に進んでおるか、この問題でひとつ具体的にお聞かせ願いたいと思います。実は外資導入の問題は、念仏としましては耳にたこのできるほど聞いて参つておるのでありますが、実際問題ははなはだはかばかしく参つておりません。貿易がはかばかしく行かないならば、どうしても外資導入による以外はない。そういう点で外資導入の問題を重要現しておりますが、そういう意味で最近の見通しを伺いたいのであります。
  107. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 外資導入の問題でありますが、従来障害になつてつた点については、おそらくすでに安本長官なり、大蔵大臣からお話があつたと思いますので、その点はわざとお答えを避けるといいますか、申し上げないでおきます。  そこで実際はどうなつておるかという問題に移るのでありますか、これはいろいろ考えなければならぬと思うのであります。まず従来日本へ投資しておつた会社の状態がどうなつておるか、言いかえれば三菱軍機とウエチング・ハウスの関係でありますとか、あるいは東芝とGEの関係、あるいは日本電気とウエスタンの関係であるとか、そういうものがどうなつているかという問題、これらは従来関係があつただけに一番入りやすいのでありますから、まず問題になると思います。  大体私の承知している限りにおきましては、三菱電機の関係におきましては、ただ送金の問題が難点となつて残つておると承知いたしております。いわゆる利潤その他をコンヴァートして送り得るかどうかという問題、しかもそれを送ることに対しての一応の保障をもらいたいというような問題が、一つの難点として残つておりますので、その問題が解決されますれば、これは復活いたすと存じております。  それから東芝の問題でありますが、これも従来の関係を復活しようという方向に向つておるようであります。ただこれにはなお多少の手間がいると思いますのは、東芝自体のいわゆる再建整備がまだ完全に進んでおりませんので、これが完了するまでは、その問題は延びるのではないかとかように考えております。  日本電気とウエスタンの関係、あるいは住友の関係、こういつたものにつきましては、住友電線との間には技術的な面、いわゆる技術の導入といつたような形において、ウエスタンからいろいろな教えを受ける従来の関係が復活いたしたようであります。これは自然そうなると、またこれに伴いましてある程度の投資なり、あるいはある程度の借款といつたようなものが、進行いたすのではないかと察しておるのであります。大体古い関係につきましては、そういうようなことが言えると存ずるのであります。  それから新しい問題につきましても、これは單に技術を入れるという問題と、技術と同時に資本が入つて来るという問題と、第三には單に借入金、いわゆるクレジットをもらうという点であります。こういう点についての投資者側の考え方は、まあ技術を導入するというだけの問題は、パテントを買うとか、あるいは。パテントに対して料金を拂うとかいつたような契約でありますから、これはすこぶる簡單であります。それから第二の、技術とともに資本が入つて来るという問題なり、あるいはクレジツトが入つて来るという問題につきましては、いろいろ従来考えられておりますところの障害によつて、なかなか困難があると思うのであります。また投資されるところの相手方の事情につきましても、たとえば電気事業について、それがいつナシヨナルライズされるかもわからない。こういつたようなものについては、投資するについて何らか補償がない限り、はなはだ困難である。従来投資されたものを一方的に日本政府が肩がわりしたといつたような電気事業の経験がありますので、そういう点について危惧の念を抱いているので、電気事業に対する投資は、入つて来るのがなかなか困難ではないかと考えられておるのであります。ただ電気を原料としてやるところの仕事、たとえば化学工業でありますとか、あるいはアルミニウム工業とか、そういつた電気を主として原料として使うという工業に対しては、投資する意欲が非常にあるように私は存ずるのであります。しかしながらまだ具体的にこれが実行を見てはいない、目下話が進展中である、こういう程度に御承知願いたい。但し私はそのうちのある種のものは、事実上投資の問題が実行に移つて来た、かように存じておる次第であります。
  108. 小峯柳多

    小峯委員 外資の受入れ態勢に関するお答えはなさいませんでしたが、実は私も詳細に承つていないのであります。一般的な態勢については伺いましたが、特殊な態勢といいますか、外資の償還措置をどうするのだ、あるいは利子利潤の海外送金の確保の方法はどういうふうに考えているか、あるいは外国人課税の特例をどうするかというようなこと、これは大蔵大臣ももちろん御関係がありましようが、通産大臣として今外債の問題、利子利潤の送金の問題、外国人課税の問題などについて、どうお考えになつておるか承つておきたいと思います。
  109. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 私は先ほど安本長官その他がお答えなつたと思いまして、お答え申し上げなかつたのでありますが、まずやはり先ほども例に一つ引きました三菱電機の場合につきましても、送金の問題が、コンヴアートして送金するということが大きな問題になるのであります。これにつきましては、やはり為替予算のうちで、ある程度の金額を保留しておくということをわれわれは考えなければならぬ。しかもそれに対して今年一年の為替予算には組んであつたが、来年は組んでないというようなことでありますと、向うが安心いたしませんので、二年なり五年——私は五年か十年ということを考えておるのでありますが、五年あるいは十年というものを、一つの期間としてコンヴアートして送金することに対して、われわれは為替予算の中に一つのわくをとつて置くということを保証することが必要ではないか、かように考えております。この点についてはつきりした措置をとらないと、おそらく外資は全然入つて来ないのじやないか、私はこのように心配しておるのであります。  その次に問題になります点は、先ほど申し上げました中に一つつたのでありますが、従来契約したものが一方的に破棄されたという事実、言いかえれば日本の電気事業が、日発という一つの会社に統一されたために、その債務が全部政府に肩がわりされた。ところが向うの人に言わせますと、日本政府を信用しないわけではないけれども、実際に自分らが契約をした相手方そのものに対して担保を持たない。その担保を持ち得ることの方が、自分らとしては非常に有利だと考えておるのであつて、われわれの意思を聞かないで、一方的に廃止されたということは困るから、今後かかることがないように何らか補償する措置をとつてもらいたいというような希望がありました。言いかえれば、今言つたような国家管理が行われ、あるいは国営になるというような場合に、投資された資本に対して、どういう措置をとるかということを明示することが、必要であろうと思うのであります。これは法的措置によつていたしますか、あるいはまた実際に何らかこれを補償する基金を置いて、そうしてそういうことが起つたときに、この基金で補償する措置をとるか、それらの点についてはなお検討を要すると思うのであります。この点はまだわれわれの考え方も、いずれがいいのか、どうしたらいいのかという点についてまとまつておりません。  第三には、これは大きな障害というよりも、実際に技術を教わる上におきまして、向うの技術者が日本へ来たときにおいて——向うの技術者は月に千ドル以下ということはおそらくないと思いますそういたしますと、年に四百万円の收入ということになりますので、これに日本流の所得税をかけられたときには、来る人も来る意欲が全然なくなつてしまうということで——これは生活の條件が違うのでありますから、これらの人に全部日本人の所得税のあれを適用するということは、生活の標準が違うということ、また特殊技術指導のために来るということで、どうしても特別な何らかの措置を講ずることが必要ではないか。基礎控除をうんと多くするとか、あるいはレートを低くするとか、そういつた問題について考慮する必要があろうと考えるのでありましてこの点は大蔵省において目下検討されておるところであります。  そのほかの問題といたしまして、従来外国の投資家が問題にいたしておりました、たとえば日本の統制法規の問題、これらも大部分はもうはずされてしまいましたので、もはや問題は大体においてなくなつたと見てよかろうと思うのであります。  それからまた従来申されておりました法人税が非常に過重であるというような問題も、今回提出してある予算案によりますと、法人税の超過所得に対する分はとらないということで、法人税もそう過重でないと考えられますので、この点の障害も大体排除されたと考えていいのではないか。それから従来心配された労働不安の問題も大体落ちついた、こう見てよいのではないかと思うのであります。それで先ほど述べました三つの問題が障害となつて今現われておる、かように考えております。
  110. 小峯柳多

    小峯委員 いろいろお話を承つたのでありますが、具体的なものは少いようであります。しかしお立場もありましようから、またあらためてもたとえば分科会なりあるいは祕密会みたいなところで詳細にお話を承らしていただきたいと思います。私自身御答弁には不満足でありますが、事情も察しがつかぬわけでもないので、控えておきます。  最後に一つ承りまして通産大臣に対する質問は終りたいと思います。  外銀活動はお正月から始まつているはずであります。外銀の問題を考えます場合にいろいろ問題はあるが、銀行が活動してくださることが、結局日本の外資の問題を積極化する上に、関係方面で実業人に取次ぐよりは、外銀を通じて日本の産業を見てもらつて、取次をしてもらつた方が、きつかけができて来ると見ているのであります。まだ時間がありませんからその効果の出て来ているものがないかもしれませんが、通産大臣は今申し上げたような意味で、外銀がお役に立つとお考えになるか、あるいはその徴候か何かそういうものがあるか、これをひとつ伺つておきたいと思います。
  111. 稻垣平太郎

    ○稻垣国務大臣 ただいまの御質問の点は、非常に小峯さんがいいところをついておるようであります。実は外銀が活動しておる、これは外銀がほんとうに為替取引だけの活動に終りますと、実はわれわれの期待にはずれるので、外銀が来て活動されることが、自然外資その他の問題とも関連を持つて来ると存ずるのであります。ただ今日始まつたばかりでありますから、これを通じて道が開けたということは、私はまだ聞いておりませんけれども、しかしながら外銀が参りましたために、たとえば一例を申しますならば、ある会社に対して、ある会社が外資の三五%の投資を得て、これの支拂いは外銀を通じて日本にもたらされたわけでありますが、この場合にそれから先この会社が増資するにつきまして、非常に急激に増資する、こういうために実はその相手の投資会社は、むしろ躊躇いたしておつたのでありますが、中に入りました外銀の人のあつせんによつて、むしろ進んでこの全部の割当分だけを引受ける、こういつたことが最近きまつた事実もあるのでありまして、今後私は外銀の活動にまつところが非常に多いのじやないか、かように考えております。  また今の例のホテルの問題なんかにおきましても、おそらくはこれが外銀の活動が、正式にホテルを東京の丸の内にこしらえたら、それから続いて京都、大阪、名古屋、神戸へもやる。あるいは貿易館もつくるというような計画をしております。今ではロスアンゼルスで百万ドルの会社をつくり、日本日本で五百万円の会社をつくつて、これがやがて増資してやつて行く。この増資の活動に対しても外銀が相当間に入つてこれを援助し得るのだ、かように考えておるわけであります。
  112. 小峯柳多

    小峯委員 大蔵大臣への質問を保留いたしまして、本日はこれで質問は打切ります。
  113. 植原悦二郎

    植原委員長 本日はこれにて散会いたします。明日は午前十時より予算委員会を開会いたします。     午後四時三十三分散会