○川崎秀二君 私は、民主党を代表し、
昭和二十五
年度総
予算案に反対するものでのります。
今回の一般、特別両会計並びに
政府関係機関の
予算案を目して、
政府は
昭和六年以来の
均衡予算と称し、復興と安定の両性格を滞びたものとして自画自賛をいたし、しきりに楽観説を放
つておりまするが、その実体はまつたくこれに反し、二十四
年度予算に引続く
デフレの傾向は依然として濃厚であり、
予算の根底をなす
財政対策は、弱肉強食、冷酷無情の自由資本主義の姿を随所に現しているものと申さなければなりません。(拍手)
反対理由の開陳に先だちまして、わが党初め
国民協同党並びに新政治協議会は、総
予算の性格が、資本の
蓄積に名をかりて、
経済安定
政策の犠牲を、再建のにない手である
農民、労働者並びに
中小企業者に対し、しわ寄せをしていることは、断じてれを許すべからず、
わが国の復興は
国民各層の平等の
負担と
勤労者の福祉を目標とすべきであるという理由から、次のような修正案を作成し、
政府にその
編成がえを要求いたしたのであります。
すなわち、
一般会計歳出のうち、これを減ずるものとして、第一に
債務償還費を五百億
削減し、第二に
価格調整費のうち七百十八億を
削減、その
内訳は、ソーダの
補給金八億、硝安十三億七千万円、粘結炭一九億五千万円、
食糧輸入調整費として百三十六億八千万円、第三に物件節減百五十八億、第四に二十四
年度剰余金
見込みの半額を計上いして七十億、
合計九百六億を財源といたしまして、新たに
歳出費目を、増額するものとして、農産
物価格安定のために百四十四億、
土地改良、
食糧需給対策、
農業保険、
農業科学枝術指導に百億を計上いたしまして、
農村復興費を大幅に二百四十四億計上いしております。次に
中小企業振興費に二百億、この
内訳は、新たに
中小企業金融金棒を興して、壊滅に瀕せる
中小企業の
危機を救う出費をなすことを中心として、諸般の
中小企業対策を包含するものであります。次に
平衡交付金の増額をなし、
地方税の
減税に充つるために二百億、第四に、公務員の
賃金ベースについては、人事院勧告を尊重して七千八百七十七円ぺースにおきかえ、行政の
合理化などの対策を含んでこれを実施することとし、その財源のうち二百億を計上、次に社会保障策費三十九億、その
内訳は、健康保険、
国民健康保険等の疾病保健の赤字の半額国庫
負担十八億、日雇い労務者の失業保險の増五億、母子福祉対策五億、遺家族援護費十億、第六に
教育文化費二十三億を計上、その
内訳は、育英
資金の増十億、科学技術振興の増十億、私立大学建設費貸付三億、以上
合計九百六億をも
つて修正動議を提出したのでありますが、
予算委員会においては、不幸にして多数をも
つて否決せられたのであります。
しかしながら、わが党が、二十四
年度総
予算を
編成あれた際修正案を提出いたしまして、そのことが昨年の
補正予算とな
つて現われたことく、この修正案を潮笑する
諸君は、しばらくして
政府が再び
補正予算を提出をしなければならないことを見て、ぼう然とするであろうということを警告いたしておきます。それゆえに、ここに
自主性なき
政府の原案、ドツジ・ラインのいささかの修正をも懇請することなく、唯唯としてこれに屈従するごとき隷属的
予算に対しくは、以下主として
政策の大筋をいつつ、これに反対するものであります。(拍手)
今日
国民経済は、か
つてない茂縮に直面をいたしております。税金の滞納はおびただしく、不渡手形は
増加し、滞貨は昨年から引続いてふえ、ちまたには店じまいのダンピングの声がやかましく、深刻なる
金詰まり、
中小企業の破産等、
デフレの深刻化と不景気は、
企業といわず、
家計といわわず、これを破滅のふちに追い落そうとしているのであります。加えて、現在の税金攻勢は、
国民の大部分の身辺に脅威を與えまして、特に中産階級の破滅は眼前に迫り、ゆゆしき形勢を招来いたしているのであります。
これらの現象は、一体なぜ起
つて来たものでありましようか。過ぐる昨年の春、
インフレ政策の踏腱者である自由党
政府が、ドツジ・ラインの壁に頭をぶつつけて百八十度転回し、その結果とつた極端なる金融玖策の結果であることは、何人もこれを否定することはできないと思うのであります。(拍手)もちろんわれわれは、盾の半面を見のがすほど片寄つた考え方を持
つてはおりません。されば、われわれは、
インフレーシヨンが解消し、通過の安定が保たれたことの功績は、一応これを認むるものであります。しかし、これは明らかに借物の衣装の成功であ
つて、本物ではない。借物衣装をそのまま拝借したがゆえに、一方
日本経済の実態について、念の入つた、行き届いた、思いやりのある
政策が打たれずして、やせ衰えた慢性胃腸病患者に、ひまし油を飲ませた結果、毒養はさらに低下し、気息えんえんというのが、偽らざる日本の
現状ではなかと考えるのであります。
現内閣の
財政政策は、モネタリ・スダビリゼーシヨン、すなわち貨幣的安定
政策に基本を置いて、単純にこれえを実行したにすぎないのであります。すなわち、ローガン構想による自由
貿易体制への復帰ということ、また
債務償還金をも
つてする
金融機関のペーイング・ベーシスの上に立
つて投資を主眼とする資本の
蓄積の方法、また高額所の得者の属に対する税金の緩和な一連の
政策は、通過の安定さえ得れば、その後は価格機構の自動的な
調節によ
つて自然的成行きにまかせるという、前世紀の古典的資本主義に一貫しておるのであります。この貨幣的姿安定
政策が唯一無二の
政策であり、あとは
統制経済をはずして自由
経済に還元すればよいと、これが金科玉條のように遵奉されておるところに、現下のごとき日本の苦悩の姿が現出をいたしておるのにあります。これは貨幣の安定であ
つても、断じて
経済の安定と復興であるとは申すことはできません。
経済政策に対する現内閣の欠陥は、いま一点、計画性をまつたく軽観しているところにその原因があるのであります。吉田内閣は、いわゆる
経済復興五箇年計画を放棄したようであります。総理大臣は、五年先のような将来の計画まで立てても、情勢の変化によ
つてむだになると言明し、最近五箇年計画の原案をつくつた安定本部案は、閣議へかける前に発禁処分を食つたようである。五箇年計画を捨てられることは、か
つてでありまするが、これにかわるべき何らの復興目標をも立てず、統制をはずして自由に復帰さえすれば万事事足れりというような、イージー・ゴーイングな、その日暮しの
政策で、
国民に耐乏をしいつつ楽観を説くことは、空腹の
国民を暗夜行路にかり立てるものと言わなければならないのであります。
もとよりわれわれは、
企業の自由を強力に要望し、
統制経済の解除を主張することにおいて人後に落つるものではない。戦争中の官僚統制、戦後の諸般の事情から、やむを得なかつたとは言え、人工的な
統制経済を打破することに協力して来たものであります。しかしながら、手放しの自由
経済主義のおもむくところは、弱肉強食、再び勤労
国民大衆をして社会的犠牲に泣かしめる結果を招来するのであ
つて、ここにその幣を排除するための公共的、合理的な諸
政策が織り込まれなければならず、それには
国民経済全体の運営について確固たる計画性が絶対に必要性を帯びて来るのであります。
昨夜、
予算委員会の討論におきまして自由党の討論者小坂善太郎君は、自由
経済こそ
経済の合理性を意味すると申しまして、諭旨まつたく自由資本主義を謳歌する討論をして、か
つての修正資本主義を幣履のごとく捨て去つたのでありまするが、
経済の合理性を説くがゆえに、社会的合理性を没却し、競争の原理を変調して保障の原理を軽視することは、ここに政治の破滅が胚胎することを忘れてはならぬのであります。それにしても、修正資本主義者にはいろいろあります。しかしながら、言論と主張に生きなければならぬ小坂善太郎君が、政党人としての節操を売つた自由主義を謳拂し、
経営と要領をたつとぶはずの故大塚万丈君は、その主義と思想に生涯をとじております。私は、人の信念と処世術を思い合せ、か
つての僚友の態度に憮然たらざるを得ないのであります。
世界の各国において、日本のような古典的資本主義を建前として攻策を行
つておる国がどこにあるか。今年冒頭において発表されたアメリカ大統領の教書をごらんなさい。南半球、カナダ等、保守党が政権を持つ国においてもしかり、世界の大勢は、資本主義に計画性を付與して、公共性、社会福祉性を中軸とし、その大
わくのもとに
国民の自由なる
経済活動を促進いたしておるのであります。
金融
政策における
予算面に現れた最大の問題は、言うまでもなく
債務償還費千二百七十六億の計上であります。何ゆえにこのよう厖大な
国債償還を行わねばならぬのでありましようか。この点について、池田大蔵大臣は、昨年の
債務償還は千五百数十億である。これと比較すれば二百数十億いまだ少いということを弁明し、税金吸い上げの分は結局三百億であるということを強調しております。
国家の信用を維持するために
債務償還の必要を力説されたのでありまするが、二十四
年度の
国債償還の
内容と、二十五
年度のそれとは、明らかにその性質を異にしておるのであります。
まず、昨年の
復金債
償還から、本年は長期公債の
償還に移
つておることを、われわれは指摘しなければなりません。第二の点は、二十四
年度においては預金が予想以上に好調であつたので、二十四
年度は、千五百億の
債務償還のうち大部分は
金融機関に
還流しております。これが間接的に民間に
投資されたことを、われわれは否定するものではありません。しかしながら、二十五
年度に計上されておる千二百億の
債務償還のうち、市中手持の
国債はわずかに八百億円にすぎません。この八百億円を全部
償還されるとしても、
市中銀行の一千億に上る
日銀借入金の返済に向けられるのが落ちであ
つて、この結果は、再び
投資面に現れて来るというよりも、むしろ
日銀劵の縮小の形にな
つて現われて来ることを予想しなければならぬ。明らかに
デフレ要素を醸成することになるのであります。
ことに
市中銀行としれは、支拂い準備して、預金残高の二割ぐらいは
国債をも
つて保有するのが従来の常道でありますから、言うがごとく市中
手持国債の一掃は、
市中銀行の応ずるところとはないり得ないのであります。本年一方、
日銀の市中
手持国債買上げ
予定九十億円は、わずかにその三分の一も実行されないのを何と見るでありましようか。市中手持の
債務償還計画は、この意味において実行不可能であり、大きな破綻を包蔵するものであります。昨年の
債務償還、
インフレをある
程度収束して、
日本経済を
安定化するために必要な点があつたかもしれませんが、本年の
債務償還、ことに
一般会計において
歳出総額の一五%にも達する
債務の
償還は、かえ
つて復興と安定とを阻害するものとして、断じて賛成ででない点であります。(拍手)
一体何ゆえ、この
財政窮乏の際、このような古い借金、しかも期限の来ていない長期公債を、このように多額に繰上げて支拂う必要があるか。国の負債はもと
償還しなければならぬ。それは一国の政治の信用に
関係があるからであります。しかし、未曽有の敗戰と
経済窮乏の際、なけなし財布をはたいて、これをここ一、二年のうちに
償還しなければならない理由は、どこにも見出せないのであります。
予算委員会の論議と、
関係方面との折衝を通じましても、
財政法第六條に基くところの二百六億の計上と
見返り資金の分は別といたしまして、税金吸い上げの五百億の数字の根拠は、まつたく薄弱とな
つて参りました。池田大蔵大臣は、
地方債の発行高とのにらみ合せなどを主張する以外に手がつけられないという状態であります。この五百億は、当然復興費に向けるべきものてあります。こ
債務償還こそ、今回の
予算の最大の欠陥である。衆参両院の
公聽会等において、
経営者といわず、学者といわず、労働者、金融当事者に至るまで、一斉にその
削減を主張したことは当然であ
つて、池田蔵相の
資本蓄積方法が、復興の段階に入
つてもなおかわらぬということは、きわめて不可解な現象であります。
次に、現下崩壊の厄機に立
つておる
中小企業の救済については、何ら積極的な手が打たれておらない。
中小企業の
金詰まりと売れ行き不振、加うるに税金の重圧は、次々に
中小企業の倒産を呼び、
中小企業庁の統計によりましても、二十四年の二月から九月までの間、東京地区において、工場の倒産したるもの四百十八件、大阪では、同じく一月から十二月の間に、整理二百三件、倒産・閉鎖百二件、名古屋地区では、商店の閉鎖したもの一千二百六十五件の多きに及んでおります。これに対し、
政府行つた積極的な融資対策や助長
政策は、何ら見るべきものがない。勝間田君が
予算委員会で指摘しているところの施設補助費は一億六千万十億の融資に対してん迅速なる救済策が立てられないのは、はなはだ遺憾であります。
かかる状況の際におきまして、池田大蔵大臣は、三月一日、全国の
中小企業者の苦悩を潮笑するかのごとき談話を発表し、その思想の底に流るる弱国強食是認の思想を暴露して、天下の指弾を浴びるに至つたのであります。あの感覚は、私は尋常一様のものではないと思う。表現が悪かつたとか、あるいはまた言葉が足りなかつたとかいう
程度の問題ではない。われわれは、まず大蔵大臣の人間性について疑わなければならない。(拍手)その基本的人権に対する考え方が恐ろしいのである。戦争中の軍隊の過酷な指揮官と、これは一体幾ばくの距離があるでありましようか。これは、激流におぼれて死のうとするものを、橋の上から見て笑
つておる姿ではないか。
中小企業は、確かに戦後において潜立した。今その整理時期であることは、率直にこれを認めなければならぬ。しかし、
中小企業者の
危機は、同胞の
危機であります。憲法に農低
生活を保障されている、血をわけた
国民の
危機であいます。
中小企業者の倒壊を
最小限度に食いとめ、これを育成して、
わが国産業復興の一異たらしめるよう、また戦後すでにその役割を遂げて来た
中小企業の一面の功績をも尊重しつつ、これを思いやりのある
政策をも
つて育成すべきであります。
危機はないと池田大蔵大臣は放言しておつたが、結局これを裏から是認するような暴言を吐いたこの池田大蔵大臣よりも、
危機来るの警鐘を乱打して首に
なつた蜷川長官の行動を、
国民ははるかに良心的な行動として感じておると、私は思うのであります。(拍手)
上林山君は、先ほど得々として自由党の
中小企業対策を述べられましたが、先般の
予算委員会においては、
政府の
中小企業対策の貧弱なることを難詰して嘆き、かつ政党人として訓練なき池田蔵相に、融々として政党人のあり方を示唆された。(拍手)その上林山君が、その後
中小企業対策について何らの変化がないのにもかかわらず、ここであのような発言をされるとは、私は筋をとうとぶ上林山君にしてはどうかと考えるのでございます。
わが党の対策を具体的に申し上げるならば、きわめて具体的な
中小企業対策を持
つておる。第一には、
中小企業金融金庫を創設して、その出
資金に百億、
中小企業金融損失補償金に四十億、復興に関し都道府県への
補助金十億、
中小企業合理化のための施設
改善補助金二十億、その他はやめまするけれども、こういう意味合いで、きわめて具体的な二百億の計上をいたしまして、目下の
危機は、この具体策があれば十分に乗り切れるものと確信するのであります。(拍手)幸か不幸か、
政府の暴言問題突発以来、どろなわ的に若干の融資をするよう新聞紙上に敬見いたしておりまするが、古語に言う、天に口なし、人をして言わしむ。池田暴言が、かえ
つて中小企業へのピンチ・ヒツターとなり、災いを転じて福となすならば、われらは党派の立場を超越して、
国民のために喜ぶものでございます。(拍手)しかしながら、その実践を欠くときには不信任案はたとい院内で否決せられましても、ほうはいとして院外に
中小企業対策に対する糺弾の手は高まり行くものであると確信するのであります。
労働問題が現
政府の弱点である、欠陥であることは、これは天下公認のことであります。国鉄、専売の裁定、あるいは人事院の
賃金ぺース勧告、
生産スト、こういう最近の諸問題を通じて見てみますと、私は、従来これは
政府の労働問題に対する感覚の欠加である、無感覚であるというふうに考えておつたが、最近は、やや考え方を改めて参りました。あるいはむしろ、これは本気に労働者を敵視しておるのではないかという疑いをすら抱かしむるほどの反動
政策に一貫しておる。(拍手)まことに驚嘆すべき心臓であります。国鉄の裁定問題において、東京
地方裁判所は、公共金業休労働
関係法制定の精神を強調して争議権を奪われた労働者の給與に対する要求の最終りの裁判権は仲裁委の裁定であることを明示いたしまして、国鉄の債権を確認いたしたのであります。
政府の法律無視の態度に憤慨しておりましたる世人は、司法権まさに健在なるかなと喝采をしたものでございます。しかるに、
政府はこれをも無視いたしまして、上訴の手続をとつたようでありまするが、最高裁判所も同様の判決をなすとき、
政府は何の面目あ
つて国民にまみえることができましようか。
人事院のベース改訂の勧告につきましても、
政府は給與白書を発表いたしまして、これを封殺せんといたしております。この給與ベース決定の基準について、
政府と人事院はまつたく
見解を異にいたしております。人事院の
見解は、
現行給與ベース決定の基準を一昨年の七月に置きまして、その当時に比して生計費が高騰しておる、当然改訂の必要があることに言及いたしておりまするが、
政府は、基準を昨年の三月にずらしまして、消費者実効価格が下
つておることを理由に、
物価の低落によ
つて実質
賃金が
充実工場しておるから
賃金ベースの改訂は必要がないと、つつぱ
つておるでありますが、六千三百七円ベース決定当時のいきさつを多少でも知る者にと
つては、
政府の給與白書は、まず人事院の発表するはずであつた給與改訂資料の先手を打
つてこれを封殺しようとしたことが第一の点、第二の点は、計数の基準を巧妙に移動させた、この二点からいたしまして、明らかに一種の陰謀であると指摘しなければなりません
なるほど、
インフレの絶頂にありました昨年の三月に比べますと、CPIは、当時の指数一四一から、昨年の十二月は一三一に下降しております。おりております。しかしながら、ベース改訂の必要を決定した一昨年の七月に比較いたしますれば、三制の高騰とな
つておるのであります。ベース改訂は、その必要を認めたときにその基準を求めるのが、けだし当然であ
つて、これがぺースの改訂の必要の第一の理由であります。また、民間
賃金は依然八千四百円台を往来いたしており、社会から尊敬を受けるべき
国民の公僕たる公務員との給與の差が二千円近くも開いていること自体、これは公務員法制定の趣旨から見ても、むしろ
政府の恥辱とすベきではないかと考えるのであります。(拍手)
最近に至
つて、いま
一つの驚くべき
政府の方針は、ゼネストの範囲の拡大意図であります。元来争議を好む者はありません。できればこれを回避しなければならない。しかしながら、労働者の基準権利といたしまして、憲法は明確に第二十八條において、労働者の団結権と争議権を保障しておるのであります。もちろん憲法第十二條には、公益の福祉を害する者は憲法各條章の規定も適用せられないという項があ
つて、これは憲法上論議の多いところではありますが、その紛溢を処理するために、すでに労働
関係調整法はりつぱにつくられて、
公共事業の争議は各種の制限を受けておるのであります。また、終戦直後のあの混乱をいたしました社会世相の中では、なるほど破壊の武器を濫用するは、
国民生活を根底から崩壊させる危険があつたのであります。この御旨でマツカーサー書簡は出された。ゼネストは禁止された。
しかし、一
産業のストライキは、あの当時といえども、今までも保障されておるのであります。ましてや、今日事情は一変いたしました。吉田首相の言をも
つてすれば、
経済は安定したという段階に入つた。今日労資の紛争が起きて、労働者が、法律や給與をてんで頭から問題にされないところの
政府や資本家に対しては、当然自衛権の建前からストライキに立つことは当然であると私は考える。(拍手)このことを禁止しようとするのは、明らかにマツカーサー元帥書簡の、か
つてな拡大であります。か
つてな採用は不可であるということを、エーミス課長は、今朝の新聞においても再び指摘いたしておる。
政府の態度は、まさに、とらの威をむりにかりて労協者を封圧しようとしておるのでありまして、これこそ、まさに穏健なる労働組合をか
つて非合法闘争に追い込まんとする態度であります。われらの暫じて反対するところでございます。(拍手)
昨年、食確法の問題以来、
農村改築の混迷はことに農家の
経営を混乱せしめ、この重大な転換期に際しまして、
農業経営の方向というものは少しも明示されていない。非常なめい
わくをこうむ
つております。森農政は、半年間も惑
つている。捜索願を出さなければ、その行方がわかない。いも類統制撤廃、米劵
制度、食確法等に対する
措置は、いずれも
農村の実情に沿わない、むりな考えであり、かつ
政府の
政策は、
食糧の需給ということのみに重点を置いて、
農業経営というものを犠牲にしているということ、この点を徹底的に改めなければ、悔いを千載に残すものと指摘しなければなりません。(拍手)すなわち、日本
農業の置かれている特殊性を考え、
農業の持つ役割というものを正しく表面に出して、適切な
農業復興対策がとられなければならない。
戦後における
農業の苦戦するところは、耕作面積の少く
なつた点であります。
従つて、
農村人口は非常な過剰である。外地引揚者の帰還、あるいは行政整理、あるいは
企業整備等により
失業者の
農村移住等を加えまして、
農村の就労人員は約二千万人と称せられており、戦前一千四百万の人員に比較し六百万の
増加となり、耕作面積は、従来一戸当り二町歩平均
程度であつたものが、現在は七反五畝に落ちておちます。この
経営規模の縮小は、まさに大問題であります。敗戦の
国家的苦しみというべき人口の過剰を一手に抱えて行く
農村の姿、この宿命的な土地の狭小、これらと闘
つて——純朴にして愛すべき日本の
農民が、いかにこれと取組んでも、
生産する農作物の価格は非常に高いコストとなるのであります。諸
外国の合理的な
経済から生れた農作物と、これではたして正面から渡り合えるでありましようか。
そこへ持
つて来て、
食糧は三百七十五万トンも入るという。
国内において千九百万石の繰越米を
予定しておるときに、この広大なる輸入による四百六十五億の輸入
補給金は、はたしていかがなものでありましようか。これがために、
農村には
農業恐慌の前夜のごとき感じが漂
つているのであります。もとよりわれわれは、連合国の好意により、終戦後のあの絶望的な
食糧危機を乗り越えて来たことを忘れるものではありません。しかし、
国内の
食糧自給
程度の低下を招来するような三百七十五万トンという
輸入食糧は、いかがなものであろうか。この上に関税が
廃止されるということならば、問題はさらに重大で、
経済的民族闘争を自由党はあおり立てるものと言わなければならないのであります。(拍手)わが党は、この際輸入量と価格を
調節し、輸入
補給金の
削減を行い、
国内にある
食糧を全面的に表面に出す
政策をとろうとしておるのであります。
二十五
年度予算の中に、率直に
言つて一つの傑作があります。それは
公共事業費の増額ということである。これは明らかに石の中の玉である。しかしながら、
土地改良と開拓事業の
公共事業費に対するパーセンテージを見ますると、
昭和二十一年には三八・六%、二十二年には三五・一二%、二十三年には二三・六一%、二十四年には一九・八%、二十五年には一六・三%というふうに、
土地改良事業に振り向けられる
公共事業費というものが漸次逓減をして来ておるのでありまして、これでは、農家が個々の
蓄積において
増産する母体となる
土地改良が
政策として認められないということを裏書きいたしておるのであります。(拍手)低米価と
土地改良軽視は、税金の過重とともに、現在の
農村の希望を失わしめる三つの要素であ
つて、われわれは、
農民の熾烈な反撃の声としてこれを訴えたいのであります。
子算案と表裏一体をなします
地方税あるいは
国税についても論及いたさなければなりませんが、これはそれぞれ今後討論があることでありますので割愛します。しかしながら、
地方税中固定資産税、附加価値税、住民税等の問題多き法案が依然として未提出であることは遺憾にたえない。本来ならば、
予算案の最終
審議をすべきところではありません。しかしながら、われわれは
国民生活に多大の
影響のある
予算案であるふら、大乗的見地から、
地方税が未拠出でもこれに応じたことを、
與党の
諸君は、
国会運営の上で、しかと銘記してもらいたいと思います。
最後に私は、今次イギリスの総選挙の結果、今後世界史のたどるべき方向について重大な示唆を與えられたものと思うのであります。四年間政権を維持して、
産業国有化
政策、社会保障を断行したイギリス労働党が、非難攻撃の中にも政権を維持したことは、その不人気な社会主義的国営
政策が勝利を收めたのではなくして、アトリー首相が言う、われわれの年代において後世の子孫に残す最大の遺産であると揚言をいたしました社会保障
制度の実地の輝かしい勝利である、平和
政策り凱歌であることは、私どもは疑わぬのであります。しかも一方において、イギリス保守党は、また破れたりといえども百数十の議席を増しておるのであります。これは、
国民のぼつぼつたる
企業の自由に対するあこがれであり、きゆうくつなる
統制経済への反抗であり、保守党への期待でもあつたことを物語るものであります。
そこでわれわれは、ここにひとつの世界史の動向を見る。すなわち
経済政策の基本は、人間本来の欲求と、
経済の合理性に立つ自由競争を尊重するとともに、
国民経済の上から計画性を持
つてこれを運営し、その欠陥は、広汎なる社会保障
制度を実地して、世のシヤドー・サイドを取除くべきであると考えるのであります。(拍手)
今回の選挙で、保守党の
政策立案者じや、社会保障
制度は医療国営を除いては断じて後退させないということを約束して、労働党攻撃の重点を、きゆうくつなる統制の解除に向けたと伝えられておる。
〔発言する者あり〕