○星島二郎君(続) そうなることが、
日本復興のため多大の財的
犠牲を
負担しておるところの米国納税者の心情にも適合することと信ずるのであります。(
拍手)一、二の国々を除きまして、連合国の大多数の国々は、すでに対日早期平和を希望し、早く
日本の独立を回復せしめ、国際社会に名誉ある地位を與え、早く
日本民族を世界の平和と文化の照沢に浴せしめようと企図するときに、ある国りために、いたずらに遷延するよりも、できる部分よりして行くという、すなわち多数
講和と申しましよろか、ベルサイユ條約の一面から言えば、マジヨリテイ・ピースであります。このチヤンスを失わず努力していただくことは、
国民の輿望に沿うゆえんであると信ずるりでありますが、
総理大臣は、いかにこの点において感ぜられますか。
連合国のうち一国でも対日中和に同調しない場合、いつまでも占領下の生活だ耐えるか、一、二国をあとまわしとしても、大多数の国々と
早期講和するがよいか。これをすぐ、いわゆる單独と独断し、
單独講和を主張する者は売国奴ででもあるかのごとき言を弄した人もありますが、(発言する者あり)大多数の
国民の輿望にこたえるのが売国か、ある一国のために
国民の心を裏切ることが賣国的か、大衆の判断にまかせたい。(
拍手、発言する者多し)連合国の大多数が、
日本の独立が回復し、国際社会の一員として光栄ある復帰を期待する機運が譲成せられ、
国民もこの年こそはと喜んでいる際に、全面平和でなければならぬと主張して、燃えつつある火の中に冷水を浴びせて、独立の火を消さんとする行為こそ、
わが国民を最期の占領下に閉じこめて、これを奴隷化する暴挙であるといわなければたりません。(
拍手)
ことに野坂君が、
全面講和でなければいけないと出張するのは、米英両国の対日
講和の提唱に、あろ国らが参加しないだろうということを予想して、
日本人のある国に対する惡感情を防禁せんとする底意があるのか、しからずんば、
日本人の対米感情を故意に惡化せしめんとする下心であると申さなければなりません。(
拍手)これらの議論も、共産党の諸君が言われるのは、その性格上まだしもでもありますが、私は、民主党の北村君のごときがこれを言われるに至
つては、はなはだその真意が那辺にあるかを疑うものであります。(
拍手)私は、
全面講和が困難の場合において、長期占領下より一日も早く独立し得て、自由なる国交の再開、自由なる
貿易を
振興し、一日も早く自主独立の
日本の姿を見たいと思うのでありますが、
総理大臣の御所信を開陳して、
国民の前に明確にしていただきたいと思うのであります。(
拍手)
次に、
講和を締結した場合、各国との関係について、今かりに今日の世界の情勢から、対日
講和に参加しない国が不幸にしてできた場合、
講和を終了しない国と
わが国との関係は今日よりも悪化し、原子爆弾でも飛んで来るのではないかというような恐怖の念を抱かしめる、いな、これをまことしやかに
宣伝する人があると聞きますが、しかしこれは、一九四五年九月二日、ミズーリ艦上において、降服文書に、
戰争をしていたすべての国々が調印をし、完全に停戰し、それが成立しておりますから、かりに
講和不参加国があ
つたとしても、この協定が現存している以上、その国とは今日の
状態と同様の関係が続くのであ
つて、その関係が悪化するということばないのでありまして、さような心配は無知から生ずる
憂か、ためにする
宣伝に乗
つたものといわなければなりません。この問題につきまして、
総理大臣の見解を伺
つてみたい。
次に領土問題についてお伺いしたいのでありますが、将来の
日本国のあり方は、
カイロ宣言、ポツダム宣言及びミズーリ艦上降伏文書によ
つて定められている原則に立脚すべきものでありまして、この確信の上に立
つて、われわれは、
終戰以来、最高司令官の指導のもとに
日本の民主化と平和国家の建設に努力し、新憲法下
幾多の革命的変革を行
つて参りました。連合国最高司令官も、しばしばの声明において、いつでも平和條約を締結し得る
段階にあることを声明し、認められておるのであります。(
拍手)しかし、もしこれらの文書に規定された條項について完全な履行を怠
つている者があるならば、それはポツダム宣言の第九項にある「
日本国軍隊ハ完全ニ武装ヲ解除セラレタル後各自ノ家庭ニ復帰シ平和的托且
生産的ノ生活ヲ営ムノ機会ヲ得シメラルペシ」、この義務、これは
日本に対する義務でなく、連合国間の約束で、連合国が世界に対して公約したるものであります。(
拍手)——————————————————————野坂君の言うごとく、ポツダム宣言の嚴正実地を吉田内閣に迫る前に、なせソ連に向
つて嚴正実施を叫ばれないか。(
拍手)ソ連圏内に残留する近親の身の上を気づかうわれわれは、この同胞のために、ソ連に対して共産党としての努力をしたらよかろろと思う。
なお野坂君が、
日本が嚴正に実地すべき国際文書、その中にヤルタ協定をあげられておる。これは驚いたことで、ヤルタ協定は、世人の知る
通り、一九四五年の二月、
英米ソの指導者の間に秘密に締結され、四六年二月、モスコー、ワシントン、ロンドンで公表されました。きわめて少数の三国の指導者間のみに知られたことでありまして、
日本がミズーリ艦上降服文書に調印した際は、だれも知
つていなか
つたのであります。(
拍手)同文書に明記してありますのは、カイロ及びポツダム宣言のみであります。ヤルタ協定は三国間の協定でありまして、この協定の実施は、ま
つたく三国間の問題で、わが領土問題に対する唯一最高の指針は、ポツダム宣言第八項の「「カイロ」宣言の條項ハ履行セラルベク又
日本國ノ主権ハ本州、北海道、九州、四国及吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セクルベシ」、こういう規定のあることを明らかにしておきたい。右諸小島については、
わが国民は、昔から平和裡に、諸小島あるいは南千島等の島々——長い間平穏に暮しておる
わが国のこの千島に対しまして、
わが国の帰属に決定されることを期待し熱望しておるものであります。(
拍手)
従つて、ヤルタ協定は、米、英、ソの三国のことである。かかることであるにかかわらず、野坂君は、これを取上げて吉田
総理に迫るごときは、まことに奇怪しごくと申さなければなりません。(
拍手)
次に
安全保障に関する問題でありますが、平和問題に関連しまして、
わが国の将来の
安全保障をいかにするかということにつきましては、
総理から
政府の確信のほどを承りました。にもかかわらず、各党各派から各様の意見が開陳されまして、思想の混乱を来しておるような印象を外国に與えはしないかと懸念いたしたりであります。
戰争を放棄し、軍備を持たない
日本は、
永世中立の立場をとるべきであるという主張が一部にあります。一応もつともな議論であります。今日世界で
永世中立国は、ただスイス一国のみであります。前に
永世中立国であ
つたベルギーも、
戰争後、
永世中立国たらんとしてもできないようであります。イタリアの
講和條約を見ましても、ただイタリアの国連加入を連合国が支持する旨が記載されてあるのでありまして、かりにイタリアが
永世中立国たらんとしても、今日の場合できないことと思うのであります。
日本は、憲法第九條によ
つて、永久に
武力による国際紛争の解決をせないことを宣言し、
戰争を放棄し、一切の武器を捨てました。
従つて、
日本の
安全保障問題につきまして、
講和條約はいかにこれを取扱うか、お互い非常な関心を持つわけでございます。私は、外国の一部に、
日本が再び侵略国になりはせぬか、こういう危惧の念を抱いておる者がまだありや、
日本が全体主義、軍国主義のとりことならぬよ、な
保障の意味で、いろいろな問題が論議されておることは事実であります。しかし、ようやく最近
日本の真意を理解され、連合国間におきまして、
日本の安全をどうして確保すべきかという点も、あわせ
考えられるようにな
つた情勢を
考えるときに、
総理のしばしば明言された、わが新憲法の精神に徹し、平和を愛好する世界の輿論を背景とし、正義と秩序とを基調とする国際平和を誠実に希求し実施することが
安全保障の第一の道なりという信念には、われわれ無條件に賛意を表するものであります。(
拍手)この信念こそ
安全保障の中核をなすものと信じます。單に
中立的立場をとるのみで
戰争の渦中より脱することはできません。それはベルギーの例をと
つてみてもわかることであります。
今日の国際世界は、
国際連合のような平和機構ができまして、
戰争を否認し、相互間の紛争を
武力行使以外の方法によ
つて解決しようとする方向にあり、
わが国を取巻く諸国は、みた国連の加盟国であるゆえに、今日まで連合国最高司令部が
わが国にいたされたる好意を信じ、
わが国も新憲法に徹し、将来国連参加によ
つて安全保障は得られるものと信じますが、これに対し
総理はいかなる所信を持
つておられまするか伺いないと思います。(
拍手)
戰後に、平和の受入れ態勢整備に関して伺
つてみたい。ポツダム宣言は、
日本の非軍事化と民主主義の徹底化を要求していますことは、いまさら申すまでもない。
わが国の
講和を招来し、国際社会に復帰せんとするならば、国内の民主化を一時に深めるとともに、
経済的自立に向
つて上下一致の大努力をせなければなりません。ポツダム宣言違反をあえてせる国あるを指摘せずして、故意に
わが国政府の
施策をポツダム宣言違反なりと言うに至
つては、その国籍いずれにありや、疑わざるを得ない。(
拍手)アメリカの対日援助に難くせをつけ、せつ
かくの外交導入に反対する者は、
日本の
経済の
復興を妨害し、暴力革命を譲成せんとする底意ある者といわざるを得ない。(
拍手)コミンフオルムの批評に屈従し、中共機関紙の批判のもとに叩頭屈従する人々こそ植民地的奴隷根性であり、(
拍手)かかる人々が、いかに愛国を唱えようとも、
国民は決して、それを信じません。(
拍手)そういう行為こそ国を売るものであ
つて、野坂君か、さきにわれわれに向
つて売国奴的な言辞を弄されたが、この売国奴の三字は、そのまま野坂君に返上する。(
拍手)少数の独裁と恐怖政治をしかんとする一切の企図、陰謀に対して、
わが国民は、自由と人格の尊厳を守
つて一歩も譲らざることを信じて疑いません。(
拍手)
総理大臣は、その所信を盆濫し、輿論の喚起に資せられんことを望みまして、私の
質疑を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣吉田茂君
登壇〕