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1950-01-27 第7回国会 衆議院 本会議 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年一月二十七日(金曜且)  議事日程 第十二号     午後一時開議  一 国務大臣演説に対する質疑(前回の続)     ————————————— ●本日の会議に付した事件  国務大臣演説に対する質疑     午後二時開議事
  2. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) これより会議を開きます      ————◇—————
  3. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 国務大臣演説に対する質疑を継続いたします。竹山祐太郎君。     〔竹山祐太郎登壇
  4. 竹山祐太郎

    竹山祐太郎君 私は、新政治協議会を代表して特に国民の半数を占める農山漁村人たちのために、総括的な質問をニ、三申し上げたいと思います。  最初に総理に伺いたいのは、先般施政法針演説の中に述べられました、農政方審議会をつくられるということでありますが、これに関する構想を伺いたいのであります。  次に外務大臣として、今農民が、ことに若い人たちが、人口の圧迫から非常に熱望しておる、海外移民の問題について所見剱を伺いたいのであります。次に、まず第一に食糧問題について先般首相の施政方針演説の中に、政府あとう限り食糧増産して、自給度向上をはかるべき根本方針を堅持すると申されましたが、この具体策はいかがなものであるか。方針だけでは農民の信頼は得られません。政府は、昨年以来、土地改良の削除、いも混乱輸入食糧激増等、事実は常に農民を混迷と憤慨の中に追い込みつつありいます。政府供出制度の全廃をなさるる意思はありませんか。昨年までの欠乏経済は一転して満腹経済に切りかえられた今日、農家だけに供出制度を強制する根本理由は失われたものと考えます。これを廃止することによつて初めて食糧増産は推進せられ、農家経済は安定するのであります。まわりの経済を全部自由放任をして、農家だけに強制供出をせしむることがいが、いかに多くの不合理と残酷な政策であるかは、いよいよ明日となりつつあります。米国の援助にこたえる道も、今日はむしろ供出制度によらずして、農家を苦しんで増産協力せしむることが、はるかに有効なることは、万人の認めるところであります  政府は、本年三百七十五万トンの食糧輸入計画しております。私が、昨年の臨時国会において、国際小麦協定に関する緊急質問を行いました際の政府答弁は、この議場における物笑い“になつたほどでありますが、今日まだその参加が承認され得ない理由がどこにあるのでありますか。当時政府は百二十万トンを求めたようでありますが、今回の計画には百九十万トン——協定線をはるかに七十万トンも突破しております。日本農業が、南方の米と、この協定による小麦との板ばさみにあつことが、日本農業の根本問題でありまして、この具体的な方針を伺わなければ、方針の堅持だけでは安心ができないのであります。おそらく、南方の米は期待通りには困難であろうと思いますが、小麦はこれ以上入ることも決して困難ではないと思われます。その場合、国内産の麦といもとが問題となるのであつて内地産の米の生産には大した心配はありません。米だけで農業を守り得ると考えるところに大なる間違いがあるのであります。  かつての大戰争のあとにおける農業恐慌のときに、内地の麦は一千万石に減少をいたしました。農林省が小麦の五箇年計画を強力に実行した結果、四年にして三千五百万石を突破いたしましたことは、決して国内農業生産的な條件がなかつたのではなくして、結局農業恐慌は、自由貿易主義の犠牲となつ農業生産の最低への圧縮であつたことは明白であります。今日の日本が、かくのごとき結果を見る場合、農村人口はどこに向け得るのか。  日本時給度向上維持は、米とともに麦、いもを含まなければならないところに重点があるのでありまして、私が国際小麦協定を重視するゆえんも、ここにあるのであります。政府は、すみやかに供出制度を全廃し、農産物の安定価格を定めて、買入れ制度を強化し、今日供出のために使う四十億足らずの経費を、あげて食糧増産全国農業倉庫網拡充整備にまわして、輸入食糧とのプールによつて配給を行うならば、関係公団も無用となり、中間経費も著しく減少して、生産者消費者ともに、その得るところはきわめて甚大であると思いますが、これに対する政府所信を伺いたいのであります。(拍手)  第二は金融問題であります。もともと銀行金融に緑のない農山漁村が、株屋ばかり気にしている政府金融政策によつて救われないことは当然でありましようが、今日の農村が、インフレの夢破れて、今年の肥料税金で完全に破産する状態は、蔵相は御存じないとも考えられます。肥料欲しさの農民に、前渡しで、農村の金は完全に枯れ果てつつあります。このままの供出割当制度では、いつまでも肥料資本の前に農村をささげるものであります。今日までの農業手形制度も、すでに限界に達しております。農業金融致命的欠陥は、農地改革により、五百億円以上に上るべき農地担保力を完全に喪失したことでります。その跡始末は、吉田内閣責任であります。すみやかに農地担保金融制度確立をはかるべき のであると考えますが、政府所信を伺いたいのであります。  政府農業中央金庫法改正は、われわれは早くから主張し努力したことであつて、賛成であります。これに対して、一部エード資金八億を入れることもけつこうでありますが、その拡大する債券引受については、農村、山村、漁村特殊性から見まして、長期低利資金を要することは論をまちません。従つて、これの引については、エードまたは預金部資金にまたなければ、その効果をあげることはできないのであります。株価維持のたえめに預金部資金の動員をする蔵相は、農村にこれを出される御意志があるかどうかを伺いたいのであります。  一体、土地改良を初め、山林、漁業エードを出すことは、前々国会以来、放はしばしばありましたが、いまだ一文も出ておらないことは、農相に熱意がないのか、蔵相が反対なのか。細々ながら中小企業に申訳に出たことから見ましても、どこまで農林漁業をばかにするのであるのか。これは現内閣の本質といえば、それまででありますが、私が前々国会において、見返り資金の使い方に対し、農山漁村立場から、まずこの方面に出すべきことを要求いたしましたのも、ことあるを考えたからであります。  第三には税制問題であります。蔵相は、口を開けば減税を叫んでおりますが、農民はそれを信用しておりません。審議会事業所得税減税をほおかむをし、水増しした結果、今末端に現れておる徴税は、古今を通じてかつてない苛斂誅求のはげしさであります。農民は、ぼう然として憤激をいたしております。かつてない、鶏一羽、庭の木一本にまで所得税を課しておる暴挙は、蔵相は御存知あるかどうか。農業災害保険金にも、あとから税金を追徴するために、保健制度廃止論を叫んであります。  しかし、この際強調したいのは、国税より地方税の問題であります。氷山の頭を少し削つて、水の中のますます膨脹をする足の方に問題が大きいのであります。地方税財は、單に一々の税の性質や、その率だけの議論では満足できません。これによつて何割かの村がつぶれるようなことがあれば、たいへんなことになります。この実情を、横によく検討しなければたりません。幸いに、最も民主的な、尊敬する本多君が、民主党の正面からの責任においてこれを当てられることは、われわれは大なる期待を持つております。  今日は、ただ一つの例として、附加価値税について伺いたい。シャウプ博士は、不動産税土地負担の増加から、農林業事業税を廃止したのだということを言つておりますが、昨今の動きを観しますと、飲食税入場税は都市の税金であつて農産漁村にはかからないと誤解をして、その結果、農山漁村にも特別な事業税的附加を課せようとする動きがあるやに感ぜられますが、かくのごときことは、このシャウプ原則を誤るものであつて、いかなる形におきましても、農山漁村にこの附加価値税的なものをかけることは、断固反対をせざるを得ません。これに対する政府所見を伺いたいのであります。農林業に対し水産が除かれておりますことのりくつはわかりますけれども、沿岸または淡水等小規模な漁業は、農業と同様に扱うべきものと考えますが、これに対するお考えを承りたい。  なお、一般平衡資金によつて教育費がこの中に含む結果、農産漁村貧弱町村は、教育独立性を危うぐすることを十分考えなければならないと思いますが、これに対する文相の所見を伺いたいのであります。  以上で私の質問を終ります。(拍手)     〔国務大臣吉田茂登壇
  5. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 竹山君にお答えいたします。  農政審議会目的は、人口の半ば以上を占むる農民利益保護増進については、国政の上において重大な事項と考えますから、農政審議会をつくりまして、学識経験を持つそれぞれの有識者に委員会委員になつていただいて、その意見愼重に尊重したい。その愼重なる審議を得て、その意見政府としては政策の面に織り込んで行きたい、こういう趣旨塩設けたのであります。その構成、運營等につきましては、主管大臣からお答えをいたします。  また農産自立供出統制についての御意見がありましたが、農産自立について政府はいかたる方策を持つておるかということは予算面において御承知願いたいと思います。また供出は、日本農産が自給自足に足らざる今日においては、供出もやむを得ないのであります。日本が真にこの農産業食糧において自立ができた場合には、われわれといたしましても、なるべく供出統制のごとき制度は廃したいと思つておりますが、現状においては、いかんともできないのであります。  農業金融その他の問題については、主管大臣からお答えをいたします。(拍手)     〔国務大臣森幸太郎登壇
  6. 森幸太郎

    国務大臣森幸太郎君) お答えいたします。小麦協定加盟に御質問が及んだようでありますが、政府におきましては、増加する人口を将来どうして養つて行くかということにおきまして、食糧自給度を高めるということを申し上げておるのでありますが、自給度ということは、日本の国でできたものを日本人が食うのだ、よそのものは食わないのだというような、そういう島国根性の意思でなしに、(笑声)あらゆる努力をいたして日本食糧増産いたしますとともに、日本の力によつて外国から食糧輸入する。これは当然自給度を高める。つまり、小麦協定をいたしましたことについて、百二十万トンの輸入を約束いたすことは、日本はどうしても、日本の自力において、内地生産において食糧はで得ない、当然小麦の将来においても、ある程度輸入を要求するわけでおりまして、小麦の百二十万トンを約束いたしましたがために日本農業生産を圧迫するというようなことは断じてあり得ないのであります。     〔「圧迫しているじやないか」と呼び、その他発言する者あり〕
  7. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 静粛に願います。
  8. 森幸太郎

    国務大臣森幸太郎君)(続) なお供出制度におきましても、今総理大臣お答えなつたように、今の場合、この自給関係から申しましても、供出制度を今ただちに撤廃するということはでき得ないのであります。また将来におきまして、自由貿易によつて食糧を自由に確保する、いわゆる自主的な立場に立ち至つたときにおいては、この食糧統制を撤廃することも考えられるのでありますが、現段階におきましては、この統制は続けなければならぬと考えておるのであります。  なおこの機会に、昨日勝間田議員三木議員の御質問に、席におりませんでお答えできなかつた点を、お答えをいたしたいと存じます。  勝間田議員の御質問の中に、農地改革の今後の見通しについての御質問があつたようであります。これは、日本食糧事情から申しまして、耕作し得られるところの土地は、一坪も余さずこれを耕地にいたして行くということは当然のことであります。当初、農地改革に対しまして、これが封建主義であるということから、これを適当な農業状態にもどすということから、この制度が行われたのでありまして、予定いたしました耕地に対しましては、大体その整理を終つたのであります。今後地主が、あるいはその土地を放棄しなければならないというような場合におきましては、国家はこれを強制的に耕作者に與えるというように、法の改正を今後いたして行きたいと考えております。それで、せつかくできた農地改革は、どうかしてこれを将来に維持して行かなければならぬのでありますから…(「後退しておる」と呼ぶ者あり)決して後退はいたしておりません。ますます今後この農地改革等によりましてその目的を達して行きたいと、かように考えておるのでございます。  次に、輸入食糧が大量に輸入を予想されるのであるが、そのときに、いものごときものをはずして行くということは、食糧に対して一貫性がないのではないかという御質問であつたようでありますが、あくまでも食糧自給性を高めて行くという上から、従来のように主要食糧考えておりますものは、主要食糧としてこれを取上げて行きたいと考えております。ただいま竹山議員も、米、麦、によつて日本農業は経営できないというお話でありましたが、その通りであります。決して米、麦によつて日本農業経営はでき得ませんし、今日まで発達したところのいも類は、農業に主要な比重を持つておるのでありますから、これは将来ともその栽培を指導いたしまして、そして農業経営安全性に導いて行きたいと考えるのであります。  なお協同組合についての御質問がありましたが、協同組合はご承知組合法によりますと、相当連合会が組織し得られるのであります。いろいろの事情のために、行政処置として、その連合会組織がまちまちになつてつたのでありますが、ここに満二年を迎えまして、協同組合の基礎もややおちついて参りましたので、この際適当な連合会組織のできるように指導いたしまして、協同組合目的達成にかなうようにいたしたいと考えておるのであります。  大体ご質問の点はお答えいたしたようであります。(拍手)     〔国務大臣池田勇人登壇
  9. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 竹山君の御質問お答え申し上げます。  まず第一、農業金融の問題でございますが、農業金融は、原則といたしまして、農林中央金庫をしてその衝に当らせております。問題の短期資金につきましてはご承知通りに、昨年来農業手形漁業手形制度を創設いたしまして、春肥においては九十五億円、あるいは農機具におきましても五十億円に近い融通をいたしておるのであります。今後におきましても、この農業手形は、その範囲を拡張し、あるいはまた手続を簡素化いたしまして、極力農業金融をはかりたいと考えておるのであります。なお長期金融に関しましては、お話にもありましたように、農林中金を増資いたしまして、長期金融円滑化をはかろうといたしておるのであります。預金部より長期農業資金を供給する点も考えられますが、原則といたしまして農林中金をして行わしめる考えでおるのであります。  第二の、農業者に対します減税の問題でございます。われわれは、日ごろより農家負担状況考えまして、極力減税に努めまして、シヤウプ博士勧告案よりも、もつと減税いたすことにいたしました。この機会に、農家減税がどの程度になるかということにつきまして、数字で御説明申し上げます。  大体農家平均所得は十万円でございまするが、十万円の平均所得で、扶養家族四人ある場合において、現行税法では、所得税が一万五千六百円、地方税が千七百円でございます。合計一万七千四百円の税金がある。今度の税制改正によりまして、国税が四千六百円、すなわち三分の一になります。地方税は三倍の五千三百円になります。合計九千九百円になるのであります。一万七千四百円が、九千九百円に減額するのであります。ことにまだ、問題になつております農家専従家族に対しまする控除をいたしますと、一万七千四百円が、七千円程度に下つて来るのであります。今回の税制改正で最も国税地方税が軽減するのは農業所得者であるということを断言してはばからないのであります。  次に事業所得税附加価値税の問題でございます。農家には今まで事務所得税がかかつておりましたが、これはかからぬことになりました。しかして、そのかわりに附加価値税がかかるという御心配でございますが、原則として附加価値税は、昔の営業税あるいは営業収益税のかかつていない者にはかけないのが本筋であります。従いまして、原始産業のうち農業林業にはかけません。ただ水産あるいは牧畜の問題につきまして、農業場を設けて、ほんとうの専業として成り立つようなものにつきましては附加価値税のかかる場合もあるのでございますが、原則として原始産業にはかかりませんので、御心配はあまりいらぬと思います。(拍手)     〔発言する者多し〕
  10. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 自席の発言を禁じます。     〔国務大臣高瀬荘太郎登壇
  11. 高瀬荘太郎

    国務大臣高瀬荘太郎君) お答えいたします。新しい予算編成の方式に基きまして、平衡交付金の中に算入されることになりました教育費国庫補助金につきましては、合理的かつ公平に実地されるために適当な方策を立てなければならないと考えております。それにつきましては、標準教育費、あるいはそれに準じますような適当な計算基準を設けまして、地方教育の水準をぜひとも維持いたしたいと、目下その準備を進めている次第でございます。しかしこの問題は、地方自治確立、あるいは地方財政運営の問題と密接な関係がありますので、それらとの調節につきまして慎重な考慮を拂つております。(拍手)     〔国務大臣本多市郎登壇
  12. 本多市郎

    国務大臣本多市郎君) 農業林業漁業に対する附加価値税の点についての御質問は、大蔵大臣から答弁いたした通りでございます。今回の地方税府県税として附加価値税市町村民税として固定資産税が設定せられるはずでありまして、この両方が権衡をとるように考えられているのであります。農業のおもなる資本である土地固定資産税というものは相当額に達しますので、附加価値税農業林業に対しては課せないことにいたしたいと考えております。ただ農業につきましては、固定資産税関係が、ほとんど影響がないと言うでもよかろうと思われまするし、農業のごとく大きな固定資産を持つている場合とは違つておりますので、零細な農業を除いては附加価値税を課したいと考えております。(拍手
  13. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 竹山君、よろしゆうございますか。  それでは前田種男君。     〔前田種男登壇
  14. 前田種男

    前田種男君 私は、日本社会党を代表いたしまして、以下数項目にわたつて吉田総理大臣以下各大臣に御質問を申し上げる次第でございます。私は社会党全体を代表して質問いたします。  まず第一点は、昨日増田官房長官は、記者団会見の席上におきまして、單独講和やむを得ないという発言をされておられるのでございます。しかも、そのあとで、その発言を取消しておられるのでございます。数日来、本会議を通じまして論議中心なつたものは、講和会議の問題並びに自衛権の問題であつたのでございます。この点に対しまして、現内閣は、ややともすると單独講和の線に押しつめられてしまうのではないかと言われておるのでございます。しかるに、そうしたさ中において、官房長官の重責にある者が、簡單に單独講和やむを得ないという発言をされたこと、しかもそれを取消さなくてはならなかつた真意について、明確なる総理大臣答弁をこの席上において求めておく次第でございます。(拍手)  第二点といたしましては、最近、東支那海中心にするところの日本漁船が、本年に入つてから、すでに十隻前後拿捕されておるのでございます。日本漁業権の問題の上におきましても、海員、従業員立場から考えましても、この問題は、ゆゆしい問題であるのでございます。しかも、マツカーサー・ラインの範囲内においてそれぞれ作業をやつておりますところの日本漁船が、そうした事情が不明確な間に不法拿捕されるというこの事実は、重要な問題でございます。現に、昨日も拿捕されたという電報が入つているという現状でございます。私は、この問題に対しましては、外務大臣運輸大臣農林大臣のそれぞれの立場から、わが日本の今日の立場を明らかにし、その対策を緊急にとられんことを要望いたしまして、答弁を求める次第でございます。(拍手)  今日まで、経済問題、物動問題その他の問題につきましては相当論議をされましたので、私は、この席上におきましては、日本経済を立て直す中心基盤でありますところの人的問題、労働問題を中心にいたしまして、以下数点に対して質問を続けて行きたいと考えるものでございます。  私は、今日の日本現状におきまして、しかも敗戦後の日本は、皆さんすでに御承知のように、国土は半減され、町は焼かれ、工場はつぶされ、経済的に廃墟になつております今日の現状において、ただ一つ残つているものは、八千万の人口である。この労働力をいかに活用するかということが、日本の生きる唯一の道であるのでございます。(拍手)この問題につきましては、過去数回にわたつて総理みずからが、労働力を百パーセント活用するようにしなくてはならないと言明されておられるのでございます。しかし、吉田内閣の今日の労働政策の大綱を見ますと、現内閣が一番貧弱だといわれておるものは、労働対策の具体的な案がないということであります。(拍手)私たちは、この重要な問題をいかに取上げて行くかということが、今日の重要な問題でなくてはならないと考えます。  過去四年間におけるところの労働組合運動のあり方につきましては、いろいろな角度から意見もあるでありましよう。見方もあるでありましよう。希望もあるでありましよう。しかし、今日組織されました七百万の労働大衆は、四年間の経験によりまして、ようやく成長して参つたのでございます。この成長いたしました日本労働組合運動が、今後の日本民主化の上に、今後の経済再建の上に、いかなる役割を果すかということは、いまさら私がここで多くを申し上げる必要はない。どうしても政府は、この労働組織の積極的な協力を求めなければ日本再建はあり得ないという結論になると、私は信ずるものでございます。私は、そうした観点から、一体現内閣は、積極的に労働大衆協力を求める施策を行つておるかどうかという点について、二、三質問を申し上げたいと考えます。  まず第一点は、今日の労働階級が、しかも労働組合が、国際的にいかなる重要な役割を果しておるかということは、言うまでもありません。日本独立を前にして、講和会議を目睫に控えまして、労働組合が世界的に相提携いたしまして、日本の不遇の地位を打開するために努力しなくてはならない、その役割があるのでございます。この役割を、現政府はいかように活用しようとお考えになつておられるか、そうした点に対しての明確な御答弁をお願いしておく次第でございます。  さらに国内本制の問題につきましては、積極的に労働階級協力を求めるところのこの対策につきましては、いろいろな方法があるでありましよう。しかし、労働階級が積極的に協力でき得るような対策を立てて行かなくてはならないと私は考えます。その方法といたしましてはいろいろあろうと思います。しかし、今日労働者が、積極的に生産の増強に、日本民主化のために心から協力できるような体制が確立されなければ、絶対に日本経済的建直しは不可能であると私は信ずるものでございます。そうした観点に立ちまして、吉田内閣は、一体どういう施策をしておるかということを考えてみますならば、何らそうした労働階級の積極的な協力を求め得るような対策を立てていないということが結論的に出て来るのでございます。一例をとつて申し上げますならば、今回の公企法に基くところの国鉄、専売の制定の問題もしかりであります。  さらに労働階級協力を求めるためには、どうしても労需物資を職域を中心にして配給するという問題を大胆率直に解決つけなくてはならないと考えます。今日、職域を通じて安いものを流すというやり方に対しましては、食糧が豊富になり、衣料が豊富になり、経済的に幾らかゆとりができて参りますと、そうしたものがおろそかにされまして、何もかにも町に氾濫しておるから、それを買えばいいというような施策でございますが、今日日本現状におきまして、労働階級が、はたして一升千円の酒を、一箱五十円のタバコを簡單に買うて飲めるような生活状態でおるかどうかということを考えてみましたときに、私は、どうしてもまじめに働く労働階級と、やみ行為をやり、働かない国民との間には明確な一線を画して、働く人々に対しましては、加配来にいたしましても、あるいは作業衣にいたしましても、酒、タバコにいたしましても、少いものを職域に配給するという施策が大胆に大幅に実行されなくてはならないと信ずるものであります。(拍手)私共そうした問題が実行されなければ、労働階級協力する体制というものは確立されないと考えます。  実質賃金を確保せなくてはならないと言われております。しかし、実質賃金を確保するために一体どうするかという問題が重要でなくてはならないと私は考えるものであります。しかも、そうすることのためには、国家に多くの資金がいる、財政がいるということを言われるのでございます。私は、相当の経費がいりましようとも、予算を組んでそうした問題が取上げられ、大幅に安いものが配給されるという計画が、具体的に実行されなくてはならないと考えるものであります。  私は、次に賃金ペースとソーシヤルダンピングの問題につきまして、数字をあげて大蔵大臣答弁を求めたいと考えます。大蔵大臣は、昨日来、物価と賃金の惡循環を断ち切らなくてはならないと言つておられます。しかし、今日の物価と黄金の実際の実情がどうなつておるかというようなことについて、私は数字をあげて意見を申し上げまして、大蔵大臣の具体的な答弁を求めたいと考えます。  基準年度でありますところの昭和九年の内閣統計局の発表によりますと、平均賃金は六十四円七十四銭になつております。昭和二十四年の七月、昨年の七月の民間工業標準賃金は、労働省の調査によりますと九千五百十二円十六銭になつております。この九千五百十二円十六銭は、一般の黄金べースから申しますならば上まわつておるのでございます。しかし、昭和九年に比べますと、ちようど百四十六倍になつておるのでございます。ところが、これを裏づけるところの実効物価指数は、昭和九年に比べまして、昨年の七月は三百四十一倍になつております。答弁の中に、昨年来物価は横ばいをしておると言われておりますから、一応昨年の七月を押えますと、三百四十一倍になつておるのでございます。そういたしますならば、昭和九年を一〇〇といたしますと、昭和二十四年は四三%にすぎないのでございますから、昭和九年の六十四円七十四銭の賃金は、月給にいたしまして二十七円八十銭になるのでございます。しかも、六千三百七円の公務員は、それより低くなつて十八円五十八銭になります。しかも、昭和九年には税金がかかつておりません。昨年の九千五百十二円十六銭には千円前後の税金をとられておりますから、税を引きますならば、月給が二十三円六十六銭になります。公務員は、わずか十四円四十四銭の月給になるのでございます。昭和九年の物価が安かつた現状においても、どうして公務員は十四円四十四銭の月給で生活がてきたでありましようか。ここに賃金ベース改訂の問題があるのでございます。(拍手)この数字は政府の出した数字でございますから、動かすことのできない数字でございます。  昭和九年と昨年の、賃金の上昇と物価の騰貴に対するところの具体的な例をあげますならば、こうした数字になつて参るのでございます。もし昭和九年の六十四円七十四銭に、物価の上つた三百四十一倍をかけますならば、二万二千七十六円三十四銭の標準貸金ベースにならなくてはならない数字が出てくるのでございます。物価の上つただけ賃金を上げますならば、二万二千七十六円三十四銭と賃金ベースは出て来ます。しかし、これは昭和九年に比べまして、敗戰後の日本経済事情がいかようになつて、おるかということは、労働階級みずからが知つております。みずからが知つておりますから、二万円の賃金ベースを要求している労働団体は今日ございません。国鉄は九千七百円を主張し、総同盟は九千五百円を言つております。人事院は七千八百七十七円を勧告しておるにすぎないのでございます。一体、賃金ベースを改訂せない、くぎづけにする、悪循環を断ち切らなくてはならないと、努めて大蔵大臣は言つておられますが、この数字の上に立つた現実の姿を、一体数字的にいかように大蔵大臣答弁されるでありましようか。その答弁を明確にお願いしたいと私は希望するのでございます。(拍手)  さらに、外電の報ずるところによりますと、依然として今日の日本状態はソーシヤル・ダンピングの傾向が顯著だと言われております。昨日来、総理大臣大蔵大臣も、決してわが国はソーシヤル・ダンピングではないと答弁されております。しかし、ボンド地域その他の諸外国から流れて参りますいろいろな情報、あるいは講和会議の事案の内容のいろいろな問題に織り込まれて参つておりますダンピング問題というものは、その根拠は、今申し上げました低貸金から来るのでございます。一万円の給料は非常にいいようでございますが、今申しましたように戰前と比較いたしますならば、ほんとうに低賃金の上の低賃金であるということが数字的に出て来る。その根拠からソ—シヤル・ダンピングの問題が議題になるということを考ましたときに、はたして総理大蔵大臣も、今日の賃金の状態がダンピングではない、低質金ではないと明確に言われるかどうか、明らかなる答弁を求めておく次第でございます。(拍手)  私は、次に国鉄裁定の問題、專売裁定の問題について、いろいろ当局の所信をただしたいと考えるものでございます。この問題は、皆さん御承知のように、他の内閣が法律をつくつて、そうして公企法、公社法のもとに今日独立したのではございません。吉田内閣の手によつて公企法がつくられ、その公企法に基いて国鉄並びに專売の今後の労働組合運動のあり方、労使関係のあり方が明記されたのでございます。  当時労働大臣でありました増田官房長官は、言葉を盡して、労使関係は平和的に調整されなくではならない、国鉄と專売から罷業権を剥奪いたしましても、決して従業員の主張なり待遇は剥奪されるものでなくして、法律上確保されておると、何回か名言されておるのでございます。そうした内容の上に立つて、今日合理的、平和的に、労働団体が法の命ずる通りに、団体交渉から調停機関、仲裁機関を経て今回の最終的な制定になつたのでございます。  この問題に対する政府考え方は、全面的に拒否する態度をとつて来ております。昨年の暮に国鉄の裁定を審議して、今なお未解決で、今後に問題が残されております。さらに今回の專売裁定の問題は、国鉄裁定に比べますと内容が強化されまして、あの内容に、はつきりと、公社の資産上あの程度のものは能力があると裁定を下しておるのでございます。その裁定を下しておる限りにおきましては、公労法三十五條によつて完全に拘束されまして、事務上大蔵大臣の裁量によつて問題は解決するものなりとわれわれは信じておつたのでございます。議会の審議を煩わすべき問題ではございません。しかるにもかかわらず、大蔵大臣は、資金上、予算上そうしたことはきけないということで、国会に議案として提案されておられるのでございます。これはちようど、どろぼうにも三分の理があるという、その三分の理を当局はたてにとりまして、十六條第二項のりくつを三百代言的に活用して、そうした裁定を蹂躙しようとする態度にほかならないと言わざるを得ないのであります。(拍手)  しかも大蔵大臣は、塩の購入のためには予算内の金額を流用しております。十四億五千万円という多額の金を、国会の承認を得ることなくして、大蔵大臣の権限にいて流用して塩を購入しております。專売の裁定のわずか一億三千万円の金が、大蔵大臣の権限において、裁量において承認されないはずはないのでございます。この問題は、国鉄と專売のただ二件の問題だけではございません。将来における日本労働組合運動の根本をトするところの大問題であるといわざるを得ないのでございます。私たちは、この問題に対しましては、政府と徹頭徹尾闘い抜いて行かなくてほならないと決意しているのでございます。  しかも大蔵大臣は、この問題につきまして、何らの考慮をすることなく、拒否する態度をとつておられるのであります。私は、日本民主化のために、日本の労使関係の平和的あり方のために悲しまざるを得ない現実が、專売公社の裁定、国鉄裁定に対するところの政府の処置なりといわざるを得ないのでございます。  さらに年庫末が参りますと、專売公社の内容、予算面から、人件費の中で四千万円ないし八千万円の剰余金が出るだろうと言われております。もし三月の年度末が参りまして、專売公社の経理の内容においてそうした剰余金が出た場合に、これを特別手当として支給する親心が総理大臣にあるかどうかということを、私は総理に聞きたいのでございます。さらに国鉄の問題にいたしましても、裁定が解決されず、今後に残されております。もし国鉄公社が、三月末が参りまして、事業が好転して、いろいろな経理面がよくなつた場合に、裁定の内容を少しでも補うという意味から、国鉄公社自身をして、三月末においては特別手当を出さしてやるというような考慮があるかどうかという点も、あわせて総理に承つておきたいと考えたるものでございます。  私は、次に減税の問題と国民生活の問題に触れておきたいと考えます。政府は、言葉を盡して、今日の減税は国民生活の上に非常に楽になりたと言つております。大蔵省が出しておりますところの数字を拾つて参りますと、その数字が出ておるのでございます。私は、この数字には多くの疑問を持つておるものでございます。大蔵省の発表の数字の一つを取上げますならば、親子四人の家族で月収一万二千五百円の人が一体どうなるかという数字をここにあげておりますが、今後の減税によつて浮いて来る金額が六百三十四円、地方税の増で負担が果汁になるものが百九十一円、それから織物消費税、あるいは物品税、取引高税等々の廃止、減税等から負担が軽減されるものが二百九十二円、この反面に、補給金の打切りから米価、電気料その他のものが値上りになりました数字が三百十六円増になるという数字を出しております。プラス、マイナスいたしまして四百十九円の黒字が出ると大蔵大臣答弁をしておられるのでございます。  しかし、この数字の中には、私は第一、地方税の百九十一円が甘すぎる、少額過ぎると言つておるのでございます。シャウプ勧告によりますところの、地方の四百億の交付金を今日廃止して地方の税金にしなければならないということが実現されますならば、さらに地方の税というものは負担が過重になります。一昨年よりも昨年、昨年よりも今年、地方税がいかに過重されておるかということは、皆さん自身がよく知つておられるところの現実」でございます。私は、大蔵省が押さえておりますところの数字の三倍は地方税が過重になると見ております。  さらに、減税になりましたところの金額の費用の押え方につきましても、一体余裕のある国民生活をしておられる人々は、減税なつたがために、いろいろなものを購入するためには、それだけ便宜が與えられるでありましよう。しかし多くの勤労大衆は、服がほしい、着物がほしい、シャツがほしい、ワイシャツがほしいといつても、はたしてそうしたものを買い得る余力が今日あるでありましようか、ありません。われわれは、そうした減税はまことにけつこうでございますが、勤労大衆の立場から申し上げますならば、そうした面には手が届かないというのが今日の現実の姿なりといわぜるを、得ないのでございます。その反面に、補給金打切りから参りますところの米価の値上り、運賃、電気代、ガスしていただきたいと考えます。  さらに私は、今日つぶれようとするところの多くの事業を救うためには、直接産業に対する見返りの資金の融資の問題その他の金融対策に積極的に立てられなくてはならないと考えます。工場を整理そて、首を切つて、失業者を出してから多くの失業対策の費用を計上するよりも、工場が閉鎖されない間に、縮小されない庸にその工場を積極的に盛り育てて行くことが政府施策でなくてはならないと信ずるものでございます。そうした観点から、国鉄の電化の促進の問題、今日の産業をいかにして守つて行くかという具体的な対策をいかように建てておられるか、それぞれの関係大臣から御答弁を願つておきたいと考えます。  さらに今日、賃金の遅配欠配の問題は相当深刻な問題に一体どう対処して行くかという対策が、今日政府において立てられているかどうか、お聞きしたいのでございます。悪質な業者に対しましては、法務総裁として、あるいは監督官庁の労働省として、いかなる対策を立てて行こうとしておわれるか、そうした点につきましても、明確なる答弁を求めておきたいと考えます。  さらに社会保障制度がいかに急務であるかということは、いまさら私が多く申し上げる必要はございません。  大蔵大臣は、社会保障制度確立よりも経費の安定が優先すると先日答弁されたのでございます。ほうとうに国内の経済が安定し、社会秩序が確保されますならば、社会保障制度というものは、ある程度いらないという議論も立つのでございます。われわれは、今日のような経済の不安のもとに、今日のような社会秩序の不安定のもとにこそ社会保障制度が急を要するものなりと主張しているのでございます。(拍手)私は、この点につきまして、社会保障制度に対していかなる熱意を持つておられるかという点をお聞きしておきたいのでございます、  さらに労働者の住宅問題、あるいは労働者がかけておりますところの厚生年金は、今日百数十億の金が、預金部の中にそのまま置いてあるのでございます。百数十億のこの金というものは労働者の零細な掛金でございます。百数十億の厚生年金のこの掛金は、少くとも労働大衆の福利厚生の事業のために当然融資されてしかるべきものなりと私は考えます。大蔵大臣は、預金部の金を扱うためには非常な制約をうけておられると答弁せられるでありましようが、しかし、労働者のこうした零細な金は、労働者の福利施設のために何とかして使う道を講じてやるという方法をぜひともとつてもらいたいと熱望するものでございます。以上の点を申し上げまして、それぞれの大臣の御答弁を煩わしたいと思います。(拍手)     〔国務大臣吉田茂登壇
  15. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 前田君にお答えをいたします。  現在講和問題に対して、いまだ政府は具体的提案を受取つておりません。従つて交渉もないのであります。ゆえに、政府單独講和に追い込まれつつあるということは、全然根拠のないことであります。  漁船問題については、不幸にしてマツカーサー・ラインの附近においていろいろな問題が起つておりまするが、これは海上保安庁及び総司令部等において、その都度奮向なり、あるいは抗議なり、その他臨機の処置を講じております。  労働対策その他につきましては、予算案あるいは主管大臣等について御承知を願いたいと思う。(拍手)     〔国務大臣鈴木正文君登壇
  16. 鈴木正文

    国務大臣(鈴木正文君) 前田議員にお答えをいたします。  国鉄裁定、専売裁定等に関しましては、政府といたしましては、公務法の定めるところに従つて可能なものは最初から拘束力を持つ、予算上、資金上不可能なものは国会審議によつてこれを決するという考え方を堅持しておるのであります。専売その他の資金的な面における可能か不可能かの問題は国会の委員会その他を通じまして、当該の大臣その他から内容を十分検討していただきたいと存します。それから御質問にありました、年度末になつて余裕が国鉄の方に出て来た場合はどうするかということでありますが、この問題は、政府の解釈といたしまして、不可能なる部分につきましては国会の承認を持つて効力が発生するのであり、承認を得られない場合においては効力が発生しないのであるからして、その拘束力はあとに残らないというこの解釈を終始持つておるのでありまして、従つて、国鉄裁定が四十五億のうち十五億を除いたものが可能であるという承知が得られないという現状におきましては、この問題はあとに残らない。もつとも別個の問題として残るなら別でありますが、この関係からは出て参りません。  それから失業対策として五百万を対象とすべきである云々という御意見でありました。この点につきましては、日本の現在持ち得るところの資料におきましては、この会議で前にも御説明申し上げました通りでありますけれども、総理府の統計によりますると、四百万ちよつとの、完全失業者に不完全就業者を加えたところの一群がある。そのうち二百万人以上は三十五時間以上働いておる人たちであつて、この人たちの問題はむしろ生活充実の問題であり、残りの二百万の中に、完全失業者及び三十四時間以下、十九時間以下という段階によつて存在しておる。これが経済の情勢によつて失業者対策の対象になつて来る層である。これに対して政府は、二十五年度において二百二、三十万ないし七、八十万の吸収の計画、消極、積極いろいろありますけれども、総合して、そういう計画を明確に二十五年度の予算に絞り込んでおりますことは、有田議員かの御質問に対して、やや詳細にお答えした通りであります。  それから賃金の遅欠配、この問題は、根本的には経済界の融資につながる問題でもありまして、中小商企業の金融その他の問題が根本になつて参りますけれども、さらに表面に現れましたこの問題といたしまして、労働行政としは、すでに昨年も、検事総長官をもつて、賃金税金以外のあらゆる債務に優先する債務であるから、ぜひ支拂わなければならないという基準法の精神を指示したのであります。これに従つて問題となつたところの七十数億円の遅欠配のうち、三月から十月の間でありましたが、その間に五十数億円は、政府のこの方針従つてすでに解決済みでありまして、将来にわたりましても、この問題は労働基準法の精神を堅持いたしまして善処して参りたいと存じます。(拍手)   〔国務大臣池田勇人登壇
  17. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 前田君の御質問お答え申し上げます。  ます第一の点は、昭和九年に比べて物価は三百数十倍に上つた、賃金はそう上らない、このアンバランスをどうするのか、こういうことでございますがこういう考え方は、戰争によりまして傷手をこうむらない国か、あるいは非交戰国における議論であります。日本は常な傷手をこうむりまして物資は不足するし、人口は、ふえている、物資の需要供給のアンバランスによる結果であるのであります。従いまして、平時の状態を続けた場合の賃金と物価との比較は、わが国においては、ことに非常な負け方をいたしましたわが国においては適用にならないと思います。従いまして、この物資の供給と人口の増加によります需要の増大とのアンバランスを是正するためには、国民の生活水準を引下げるよりほかにはないのであります。これは、いやなことではありますが、負けたのだからしかたがありません。われわれは、できるだけこのアンバランスを直すように、できるだけ物を増産し、実質賃金を上げようとするが、われわれの努力すべきことであります。今ただちに平常な状態におけるところの数字を持つて来て、こういう日本のよう負けないところに適用することは当たらないと私は考えております。  第二段に、大蔵省の発表した減税の結果負担がどうなるかという問題について、数字をお持ちのようでありますが、もしあの数字に誤りがあるとすれば、あなた方より、数字を私に見せていだきたいと思います。大蔵省の数字は、あれは勤労者の平均家庭における状況を調べたのであります。あの数字に誤りがありましたら、あとで、あなた方の数字を見せていただいたら比較いたします。  次に、産業復興には見返り資金あるいは預金部資金をできるだけ活用しろというお話でございます。これは財政演説に申し上げた通りでございます。(拍手)    〔国務大臣大屋晋三君登壇
  18. 大屋晋三

    国務大臣(大屋晋三君) 漁船の拿捕問題につきまして、ただいま総理からお答えがありましたが、私から少しく補足いたします。先般の済州島方面におきまする日本船舶の拿捕事件に関しまして、その後関係方面にも依頼いたしまして、漁船の保護に万全を期しておりましたのですが、実は韓国の政府におきましても拿捕の事実を認めまして、昨二十六日に、先般来拿捕いたされまして船のうちで一番大きな漁船でありまする第二十八大洋丸の船員を返還するという声明がございましたことを申し上げておきます。さらに一昨二十五日の夜に、済州島の附近、マツカーサー・ラインの中で、またまた日本漁船の第十一芙蓉丸から、韓国整備船の追跡を受けて逃走中であるが見込みがないという救助の信号が参りまして、これに対しまして、漁業の監視船を二はいこの方面に配置いたしまして、また関係方面にも依頼いたしまして、保護に目下努力いたしておりまするが、それ以後の詳報がございませんことをつけ加えておきます。
  19. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 前田君、再質疑疑があるのですか。——ちよとお待ちください。あなたのために……(発言する者多し)時間をすでに過ぎております。しかしながら、自席からただ簡單に質問をされるならば議長は許します。
  20. 前田種男

    前田種男君 今大蔵大臣答弁のうちで昭和九年と昭和二十四年の関係というものは、戰争という大きな打撃があつた日本には採用されないという答弁でございます。しかし、私もはつきり質問の中で繰返し申し上げましたように、もし物価の上つた指数と、賃金の上つて指数を、そのままとりますならば、二万二千七十六円三十四銭という賃金を要求せなければならないと私は言つておるのであります。日本の敗戰後の経済が底を突いておるということを、かく承知しておればこそ、二万円の賃金ベースを要求しているところの労働組合はございません。国鉄にして九千七百円、総同盟にして九千五百円、人事院はわずか三分の一の七千八百七十七円を勧告しておるのにすぎないのでございます。この事実は、日本が戰争によつて打撃を受けたということを十分知りつつ、最低の労働階級の生活を守つてやらなくてはならないという事情にあるということを、政府は明確に認識すべきであります。(拍手)     〔国務大臣池田勇人登壇
  21. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答え申し上げます。公務員の給與ベースは、昭和二十二年以来、六百円から千二百円、千二百円から千六百円、そうして二千九百円、三千七百円、六千三百円になつたではありませんか。こういう事実が、日本経済にインフレを持ち来す相当な理由であつたのでありす。われわれは、過去三年間において繰返された賃金と物価の悪循環は絶対にいやでございます。(拍手
  22. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 春日正一君。     〔春日正一君登壇
  23. 春日正一

    ○春日正一君 日本共産党を代表しまして、政府の施設方針に対して質問をしたいと思います。  施政方針を見ますと、政府労働政策は、賃金を上げないということ、首を切るということ、大体この二つに盡きると思います。これは、日本経済の隷続化から来るところの一切の犠牲をあげて労働省と農民に転嫁しようとする政策である、こう言わざるを得ないのであります。政府の無謀きわまる合理化が、もはや限界に来ておるの状態にもかかわらず、現在の賃金では、大企業の労働者ですら毎月三千ないし四千円の赤字であります。中小企業労働者に至つては、大企業の労働者の三分の一しかとつてないということは、先日大蔵大臣もここで認められたことであります。しかも広汎な賃金の不拂いが行われておつて、労働省はまさに借金奴隷になろうとしておるのであります。一体、このような非人道的な低賃金を、食える賃金まで引き上げるということを、なぜ政府は反対するのか。このような低賃金の引き上げを、政府みずからの判断で反対しておるのか、あるいは、いわゆる客観情勢によつて反対しておるか、まずこの点から明らかにしてもらいたいと思うのであります。政府は実質賃金の充実ということを言つておりますけれども、みずから実質賃金を切り下げておるではないか。国鉄従業員の実質賃金が毎月千円以上切り下げられておるという事実、これは政府自身も認めざるを得ないところであります。民間企業における福利厚生費の大幅な削減、さらに健康保險の初診料百円、家族半額負担、医療の制限と、こうして政府自体が労働者の実質賃金を引下げておるという事実について、政府は一体何と考えておるか。大蔵大臣、労働大臣、厚生大臣の明確な答弁を要求します。  次に、首切りによつて労働が強化されております。八幡政策所では、二十三年度に比べて二十五年度においては生産が三倍に上つておりますけれどを、労働人員は三割しかふえておりません。これはあらゆる産業にわたつて共通な傾向であつて、しかもこのような労働強化が安全衛星規則を無視して強行されておるために、労働災害あるいは疾病が未曽有の増加を示しておるのであります。これは賃金の不拂いとともに、明らかに労働基準法の違反であるが、政府は基準法施行規則を改悪して、ことさらにこの事実から目をおおおうとしておるのであります。基準法の実施について、政府はいかなる情報を持つているか、労働大臣にお聞きしたいのであります。  さらに政府は、国際物価水準へのさやよせをする、あるいは国際金利水準へさやよせするというような、労働者にわけのわからぬ、ぺてんにかけるようなやり方で、これ以上の労働強化と首切りをやろうとしておる。今年度の失業は非常な大きなものになると思うのであるが、政府はいかなる覚悟を持つているか。  政府は、常に失業対策については、新規事業によつて失業を吸収する、こういうふうに言つて来たけれども、二十四年度の実績を見ますと、完全に失敗であります。失業、生活苦を主因とする自殺、心中、犯罪の増加というものは、警視庁創設以来の記録をつくつております。朝日新聞によりますと、昨年十二月には、全国で、三十分に一人ずつ自殺をしておる状態になつておおるのであります。これは、明らかに吉田内閣の破壊改革によつて労働階級の生活がこれ以上に窮迫し、これに対する闘争が激化する、これを予定し、これを鎮圧しようとする政治的意図に基くものであるということは明白であります。  さらに政府は、国鉄、全通等の統一派を首切つて、民間うを育成しておるのであります。これは單に鈴木労政や日経通だけの方針によつて行われているものではないと考えるのであります。国際的なつながりを持つものであるということは、AFLの大会において次の報告がなされておるのであります。AFLは、過去一箇年、日本の民主的組合を強化して来た、AFLは民主化同盟と密接に協力し、日本の労働運動に大きな物質的並びに精神的援助を與えて来た、こううたつてある事実によつても明白であります。この事実とは、世界労連その他民主的な国際団体に日本の代表を派遣するということ、この許可を得るあつせんに、日本政府がいかに冷淡であつかつたという事実をあわせて考えならば、労働対策の面にも、明らかに、奴隷化と事実上の單独講和、この方向が現れておると言わざるを得ないのであります。これについて、吉田総理及び労働大臣の所を聞たいと思うのであります。だが、このような政策、こういうものは決して成功するものではないのであります。  最近、日本の巨大銀行、巨大企業の独占利潤でさえがだんだん少くなつて来る傾向にある。これは国際的に買いたたかれておることが原因であります。外資導入、貿易振興という政策は、このようにして、労働省、農民、すべての働く人民の血とあぶらだけでなくして、資本家の事業そのものまでも外国資本の利益に供する政策であるということ、このことは明らかであります。  吉田総理は、ダンピングはやりませんと言つた。しかし、外から買いたたかれたら、ダンピングにならざるを得ないではないか。しかも、この場合のダンピングは、決して労働力のダンピングだけではなくて、それは日本経済そのものもダンピングであるということ、このことをわれわれはしつかり考えなくてはならぬと思う。現在すでに、資本家といえども労働者協力しなければ、企業そのものを守つて行けまいという状態が、至るところに現われて来ております。  こういう状態に対しては、わが党は、労働省の賃金を引上げる闘争、労働組合を統一さすための闘争……〔発言する者多し〕
  24. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 静粛に願います。
  25. 春日正一

    ○春日正一君(統) その他の労働者のすべての闘争こそが民族の独立を守り、日本経済の隷属化を防止し、これを再建する運動の筋金であり、農民、商人、漁民、民族資本家の一切の力がこれを中心として結びついたときに、この政策を破つて日本自立と発展を実現できる、こう信ずるものであります。さらに、このような民主民族戰線こそが日本の全面講和を促進することができると考えるものであるし、これこそが極東委員会十六原則労働組合の上に課した大きな民主的任務の精神である、こう考えるのであります。これについて吉田首相はどう考えるか、この点をお聞きしたいと思うのであります。(拍手)    〔国務大臣鈴木正文君登壇
  26. 鈴木正文

    国務大臣(鈴木正文君) ただいまの御質問の中の実質賃金論の問題は、全政策を総合的に考えていただきたいのでありまして、総合的に見たときに、実質賃金は上昇の傾向をたどつておるということは、しばしば申し上げておる通りであります。(拍手)  それから基準法の施行の問題であります。基準法の施行規則は改正いたしました。これは労使双方が事務的に迷惑をこうむつておる、めんどうな規定を簡略化したのにすぎないのでありまして、基準法をどうこうという意味ではありません。基準法自体に対しましては、労働基準の憲法といたしまして、これを変更するとか、あるいはその運営をゆるめるというふうな考えは持つておらないのであります。  次に失業対策の問題であります。これはしばしば申し上げた通りでありまして、さらにこまかい点につきましては、委員会において私どもの資材をも提供いたしますから、皆さんの資料も提供して検討いたしたいと考えます。  それから労働組合の根絶をはかつておる云々というような意見はまつたく当りません。昨年の組合法改正以来の足取りを見ていただけばわかるのでありまして、民主的、建設的な労働組合の発達をわれわれは衷心こいねがうと同時に、破壊的な組合運動、純政治的な組合運動には断固反対だというのにすぎないのであります。(拍手)民主的な組合が民主的な世界の労働団体と提携して行くということは、一方的な——片一方どうこうという問題ではないのでありまして、私たちは、将来もこれを歓迎し、この線に沿つて進んで参りたいと思つております。(拍手)     〔国務大臣池田勇人君〕
  27. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国家公務員の給與を上げない理由は、国民の負担を増大し、賃金なつたということは、先ほど末申し上げた通りであります。  なお御質問の点に、物価を国際物価に引寄せることはよくないのではないかというふうな御説があつたようでありまするが、日本経済を、今までの温室経済から本然の姿に立ち返らすことが国民全体のためになると、私は信じておるのであります。(拍手)     〔「総理大臣はどうした」と呼ぶ者あり〕
  28. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 総理大臣は別に答弁申し上げることはないそうであります。(拍手)  高倉定助君。     〔「定足数がない」と呼び、その他発言する者あり〕
  29. 幣原喜重郎

    議長幣原喜重郎君) 定足数はあります。  高倉定助君。
  30. 高倉定助

    ○高倉定助君 私は、農民協同党を代表いたしまして、国務大臣演説に対する質疑を行わんとするものであります。  敗戰によつて、あらゆる武器を捨て、戰争を放棄いたしましたわが国は、一日も早く講和会議が持たれ、日本自立によつて、平和にして明るい文化国家の建設を国民が念願しておつたのであります。幸い本年は講和という朗報が伝わり、特に休会明け冒頭の吉田総理の施政方針、青木安本長官の経済、池田蔵相の財政演説に対しましては、全国民が大いなる関心を持つていたのでありまするが、三大臣とも、わが国の現状を無視せる手放しの楽観論に終始いたされて、国民の期待をまつたく裏切つたことは、まことに遺憾にたえない次第であります。一昨日以来、野党各派より真剣なる質問が展開されておりまするが、総理を初め各大臣答弁はきわめて抽象的であつて、誠意を欠き、政府の確たる施策のなきことは、まことに遺憾に存ずる次第であります。私は、最も重要なる点を端的に伺い、政府所信を明確にいたしたいと思うのであります。  まず第一に、講和に処する政府の態度であります。     〔議長退席、仮議長着席〕  総理大臣は、過般来より、講和條約に備うる国民の心構えは、一に一日も早く国民すべてが民主主義に徹することであると言つておられるのであります。しかし、すでに講和條約締結の曙光が見え、貿易も着々好転しつつある重大なときにおいて、一方国民に心構えをしいる以上、政府といたしましても、今や全世界注視の的たる全面講和か單独講和かの問題、自衛権をいかにして行使するかの問題、あるいはソ連の残留同胞の引揚げ促進の問題等、外交的問題の重要性にかんがみ、この際專任の外務大臣を設置して総理外務大臣兼務を解き、今より研究と心構えをいたすことが当然であると信じるのでありますが、総理大臣はいかなる考えであるか、その所信を承りたいのであります。  第二点は、わが党の最も重要視している農業政策であります。総理大臣は、過般の施政演説中において、国内の食糧増産して自給度向上をはかるべく、根本方針はあくまでこれを堅持するものである、また新たに農政審議会を設け、農地の改良保全、農産物の最低価格維持等、農家経済の改善安定に資する施策に万全を期したいと考えているということを言つておるのであります。これは農業政策として、吉田内閣成立以来初めての発表であつて、おそまきながら、ここに気づかれたことは、一応敬意を表するものでありますが、その内容及び構成につきましては、先ほど竹山君に対しお答えがありましたが、いま少しく詳細に承りたい。予算措置がどうなつているかについて、総理大臣にお尋ねいたしたいのであります。  現在わが国の農村の実情は、すでに同僚議員より申し述べられましたので、時間の関係上これを避けますが、食糧政策、すなわち農村政策のいかんがその国の興亡を支配すること、戰勝国と戰敗国のいずれを問わず重大事であることは、いまさら申し上げるまでもないところであります。すなわち、国民の食生活に重大なる責任を負わされている農村、その農業政策樹立のいかんが平和国家建設への一つの道であることは申すまでのまりません。しかるに、現内閣経済再建方式は、あくまで独占資本中心政策をとつており、農民及び勤労者の一方的な犠牲と負担を強要し、しかも昭和二十五年度においては三百七十五万トンの過度の食糧輸入計画し、一方実情を無視した天くだり的供出の強行、他物価と均衡のとれない低米価、さらに苛酷なる農民課税等、まつたく農業を閑却したその結果は、今日の農村恐慌、いな農村危機に直面した最大原因といわねばなりません。現政府があくまでも収奪的農民弾圧政策を持続せんとするならば、やがて農村を滅亡へと導き、わが国の経済復興はとうていなし得ないのであります。ここにおいて、政府は刻々と迫り来る農村恐慌に対していかなる対策を持つておられるか、総理大臣農林大臣にお伺いいたしたいのであります。  民自党が、昨年の総選挙に当つて農村に呼びかけたただ一つ農業政策は、主食糧供出完遂後における自由販売の実現の公約であつた。この魅力ある政策は、低米価と強制供出に悩み〇けで来たところの農民をつる最もよきえさとなつた。農村より多数の得票を獲得したことは、すでに周知の事実であります。しかるに、一たび政権にありつくや、自由販売どころか、食糧法の改正案を提出して、さらに供出の強化に導かんとし、この悪法が否決されるるや、間髪を入れずして、ポツダム政令という伝家の宝刀を抜いてこれを強行した事実は、農家を欺瞞することなはたしき行為といわざるを得ないのであります。  今度の農政審議会なるものも、全国農村を襲いつつある農村恐慌で信を失いつつある現政府は、これが挽回の一つのえさとして、昨年の選挙のときのごとく、来るべき参議院議員選挙において再び多数の農村の票を獲得せんとする一つの手段であつてはならないことを、この際強く警告するものであります。もし今日の農村の重大性がおわかりになつたなら、この際思い切つた予算を計上して、食糧自給自立の建前のもとに、三箇年ないし五箇年の計画で、大きく国策として農業計画確立実行する意思ありやいなやを、総理大臣にお伺いいたしたいのであります。  第三にお尋ねしたいのは税制改革についてであります。政府は、明年度予算編成にあたつて本格的な税制改革を実施すると言われた。所得税その他国税においては、ある程度の軽減は認められるが、その反面、地方税及び地租を相当額引上げ、農民の負担を過重ならしめておれれる。さきに申し述べたように、今や日本農業は崩壊の危機に直面しておるやさき、かかる税制の改革をなさんとする意図は那辺にあるのであるか、了解に苦しむものであります。この危機に直面せる農村を救うために、農民負担を大幅に軽減することが、この際当然のことと思うのでありますが、大蔵大臣はいかなるお考えであるか、お伺いいたしたいのであります。  第四点としてお伺いしたいことは、主食糧統制撤廃の問題であります。政府は、さきにいも類統制撤廃を断行せられました。そうして、今年はさらに米、麦を除く雑穀、豆類の統制を撤廃せらるる意図あるやに聞くのであります。これに対し、春の播種期を目前に控え、耕作農民、特にその主産地である北海道の作付反別約十万町歩を有する雑穀單作地帶の農民は、来るべき作付計画に相当迷わされておる実情であります。いも類のごとく、收穫期に入つてからの統制撤廃は、農家のまことに迷惑千万なことでありまして、従つて農家経済に及ぼす影響もまた甚大なのであります。いずれにいたしましても、かくのごとき問題は、おのおの作付前において決定発表せられることが当然であると同時に、農家の混乱を防ぐ道であると思うのでありますが、撤廃なされるところの意思ありやいなや、この際森農林大臣にお伺いいたしたいのであります。  次に地方行政機構の改革の問題であります。聞くところによりますと、政府は、現在の地方行政機構を改廃いたしまして、北海道には県制を実施する、その他の府県におきましては、地理的に、あるいは経済的見地より見て、新たに県を廃合し、合理的な地方行政機構の整理統合をはからんとする意図あるやに聞くのでありますが、かような考えがおありであるかどうか、この際本多国務相にお尋ねするのであります。  最後にお尋ねしたいのは北海道開発の問題であります。敗戰によつて多くの領土及び外地を失つたわが国は、北海道こそわが国に残されたただ一つの宝庫でありますことは、いまさら論ずるまでもないところであります。この北海道を一日もすみやかに開発いたしまして、多くの資源を敗戰日本の復興に役立たせることは、刻下の急務でございます。この問題は、第一国会以来、それぞれ同僚議員より、北海道の総合開発の急速なる実地は失業問題、人口問題等の解決の一翼であるとして強く叫ばれて来た点であり、現下の国情より見まして最も重要な問題であると信ずるものであります。  さきに増田官房長官は、この重要性にかんがみられまして、片山内閣当時設立いたしました協議会の組織をさらに強化いたして、昨年、第五国会開会中において、北海道総合開発審議会なるものをつくられたのであります。この審議会においては、これを真剣に検討し、着々成案を急いでおられたようでありますが、昨年末において、ようやく政府に対しまして答申を行つたことと承知しているのであります。政府は、この答申に基いて、今国会に北海道開発法案を提出する運びになつておるとお聞きしておるのでありますが、その経過はどうなつているか、官房長官にお尋ねしたいと思うのであります。  幸い吉田総理は、本年一月元旦号の北海道の新聞紙上の年頭のあいさつにおきまいて、本年は必ず北海道開発法案を国会に提出いたして、北海道の未開発資源の開発を急速に推進せられることを明らかにせられたことは、まことに同慶にたえないところでありますが、これらも、から念仏に終つてはならないのでありまして、これを推進するただ一つの道は、予算の裏づけがなければならないのであります。この点について政府の明確なる所信を承りたいのであります。  以上をもつて私の質問を終りまするが、われわれの質問は、時間の制約があるために詳細を言い盡すことはできませんが、大臣答弁は時間の制約がございませんから、ゆつくりと詳細に御答弁を願いたいと思うのであります。(拍手)     〔国務大臣吉田茂登壇
  31. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  政府は、ただいまのところ、専任外相を置く意思はないのであります。  その他の問題については国務大臣からお答えをいたします。     〔国務大臣森幸太郎登壇
  32. 森幸太郎

    国務大臣森幸太郎君) 高倉議員にお答えをいたします。  決して現政府は、農民を弾圧するような政策は行つておりません。その点は、よく誤解なさようお願いいたしたいと思います。  審議会の問題は、重ねてのお尋ねでございましたが、これは行政庁設置法に基く審議会ではありません。御承知通り、農林行政は各般にわたつておりますので、農林政策を制定いたします参考のために各部門の専門的な学識経験者の意見を徴する範囲のものでありまして、行政庁設置法に基く審議会ではないことを御承知願いたいと存じます。  食糧統制を撤廃するかどうか、米麦のほかは雑穀等を撤廃するのではないかというようなお疑いが質問の中にあつたのでありますが、今日の食糧は今なお海外の援助をもらつておる現段階におきまして、できるだけ食糧は国内においてまかなうということは、当然の日本国民の義務と考えるのであります。従つて、大豆のごときは、今日の国際情勢の関係から、非常にその量を減じておりますので、やはり大豆等の雑穀は、ある一定の時期まではこれを統制しなければならないと考えておる次第でございます。  なお農業政策の広範囲にわたつての説明をしろということでございましたが、農業政策と申しましても、広汎にわたつておりますので、短時間にこれを申し上げることは、はなはだ不可能でありまして、またの機会において十分申し上げたいと存ずる次第であります。     〔国務大臣池田勇人登壇
  33. 池田勇人

    ○國務大臣池田勇人君) 今回政府は、中央地方を通じまして画期的の税制改正減税案を考えておるのであります。従いまして、国民全般におきまして負担は相当軽減されまするが、特に農民の人々につきましては、国税地方税を通じまして、前年に比べて半分あるいはそれ以下になることを御承知願いたいと思います。     〔国務大臣本多市郎登壇
  34. 本多市郎

    国務大臣本多市郎君) 行政機構に関する御質問お答えをいたします。現行の都道府県の区域が、地理的にも経済的にも、その区域と符合していないというような点もあり、そのために各般の不都合が生じているというようなことが指摘せられておりますことは、御承知通りであります。政府といたしましても、この問題に関しまして、多年種々の視点から考究を加えておる次第でありますが、たまたま最近、御承知のシヤウプ勧告におきましても、広く現在の地方公共団体の区域の廃合について一般的に示唆せられておるのでありまして、この問題について解決の機運が急速に高まつてつておるのでございます。従つて、この際としては、シヤウプ勧告に基く行政事務の再配分の検討が行われますので、その際にあわせてこれを決定することが適当であり、かたがた地方行政調査委員会議において調査することになつておりますので、その委員会での結論を得たして政府としての公的な方針を決定いたしたいと考えておる次第でございます。  さらに北海道開発法の問題につきまして、私が所管を命ぜられておりますので、この際御答弁を申し上げたいと存じます。北海道開発法の制定については、目下政府においても検討を加えている次第でありますが、まだその結論に至つておらないのであります。政府といたしましては、審議会の御答申の次第もあり、また北海道の重要性、また輿論というものも十分考慮いたしまして、すみやかに結論を出したいと考えておる次第でございます。(拍手
  35. 庄司一郎

    ○仮議長(庄司一郎君) 高倉君よろしゆうございますか。  岡田春夫君。     〔発言する者あり〕
  36. 庄司一郎

    ○仮議長(庄司一郎君) 岡田君に申し上げますが、あなたはやらないのですか。     〔岡田春夫君登壇
  37. 岡田春夫

    ○岡田春夫君 私は、労働者農民党を代表いたしまして、吉田総理大臣以下関係閣僚に率直な御意見をお伺いいたしたいと思います。  まず講和問題でありますが、講和問題につきましては、すでに質疑が始りましてから三日間にわたつて、再三質疑が続行されたのでありますけれども、遺憾ながら総理の御意見は、かんじんなところに参りますと、いつも仮定であるという論拠に立つて、その仮定の論拠をもつて、われわれの聞かんとするところを絶えず避けておられるのであります。そこで、私のお伺いいたしたいことは、きようは仮定の問題ではございません。実際の問題を、ごく簡單にもう一度吉田総理大臣にお伺いをいたしたいと思います。  第一に、施政演説の中において、総理大臣は、全面講和を何人も希望すべきことはもとよりである、しかしながら、これは第一に国際の客観情勢によることであつて、この客観情勢は、わが国の現状においては、いかんともしがたいことであると、かような演説をされているのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)ただいま、その通りであるという御意見もありましたが、この演説によつて国民の感じましたことは、全面講和を期待するけれども、客観情勢によつて單独講和になる可能性が非常に強いという、かような判所をいたしておるのであります。  少くとも吉田総理大臣は、昨年の第六国会において、講和問題については相当強気の発言をされておる。たとえば、講和会議の席において、わが国に不利な條約の強要を受けたような場合においては、席をけるもやむを得ないというような、きわめて強い発言をされておるのであります。にもかかわらず、このような強気な発言が、いかなる事情かは知りませんけれども、今国会の劈頭の施政演説において、突如この強気の態度を改められて、きわめておとなしい、率直に言うと、きわめて追随的な、何らかの意図を感じさせるがごとき態度にかえられているということについては、われわれとして解しかねる問題であります。  あらためて申し上げるまでもありません。敗戰は、われわれに対してポツダム宣言を受諾させ、交戰国の全連合国に対して、われわれは降伏をいたしました。この点は、あらためて申し上げるまでもないのであります。そこで、この戰争に敗れた日本の国民として、われわれに再び戰争に巻き込まれては絶対にならないという悲願を持つて再建に立ち上つたのであります。私たちのポツダム宣言受諾のときの精神というものは、この占領が済んだならば、日本の国は再び戰争を起さない。あくまでも戰争を放棄した国家として、その具体的な現われとしては、憲法の第九條において、戰争の放棄の理念を明確に打出して参つたのであります。  私たちは、その意味においても、現在降伏をいたしました全連合国のうちの一部の国家と單独講和をやるがごとき態度によつて單独講和を結ばざる残余の国家との間に戰争状態を今なお継続せしむるがごとき結果を招くというようなことは、われわれがポツダム宣言を受諾いたしましたときの精神と著しく異なるばかりか、明らかにこれは憲法の精神に反するものと言わざるを得ないのであります。(拍手)私たちは、この意味において、一部の連合国との單独講和を行うことによつて——現実に全世界が二つの世界にわかれておる、この一方の世界に結びつくことによつて新たなる戰争の渦中に追い込まれるということを、われわれは絶えず押えて行かなければならない。  私たちは、新たなる戰争から日本国を救うためには、あくまでも全面講和を明確に日本国民全体が打出さなければ、これこそが憲法に明確に現われている戰争放棄の理念でなければならないと思う。この理念こそは、全国民の強く要望しておるものである。この機会において、総理大臣に重ねてお伺いをいたしたいことは、総理大臣は、全面講和の明確なる意思をもつて国民に対して方向を與えるところのお考えがないかどうか、この点をまず第一にお伺いをいたします。  第二は自衛権の問題であります。自衛権の問題についてお伺いをいたしたいと思いますが、新しい憲法が制定されました当時の議会におきまして、当時の吉田総理大臣は、同じこの衆議院の本会議におきまして、戰争放棄の理念について、あるいは自衛権の問題について、かように発言をされておるのであります。すなわち、第九條第ニ項において一切の軍備と国の交戰権を認めない結果、自衛権の発動としての戰争も、また交戰権も放棄したものであります——第九條の解釈として、明確に総理大臣はこの演説においてお話になつておる。自衛権の発動とはすなわち戰争であるという観念の上に立たれて、あくまで自衛権までも憲法の第九條においては放棄しなければならない、戰争はあくまでも放棄する限りにおいて、日本の国の憲法においては自衛権もいらないのであるということを明確にお話になつておられる。ところが、この間の施政演説におきましては、自衛権は依然として存在するものであるという意味の発言がありましたことについて、今日吉田総理大臣お話になりておる自衛権とは、一体いかなるものをお話になつておるのか。少くとも自衛権の内容については、国民に明確ではありません。この点をここでもつと明らかにされることが望ましいと考えるのであります。  第三の点につきましては、昨日参議院の本会議において、自衛権の内容について、吉田総理大臣は、あたかも明治維新におけるさむらいの帶刀論のごときのであると、かように御答弁されたそうであります。私、この御意見を新聞で拝見して感じましたことは、古田さんのお考えというのは、吉田さんの自衛権とは武士の帶刀論であるというのは、われわれに、あくまでも自衞権という形で、吉田さんは刀を持つことを望んでおられるということの意味であろうかいなか、この点を明確にお話願いたいと思うのであります。帶刀論という言葉は、あまりにも封建的であり、かつ武力的てある限りにおいて、この言葉は、今後の問題としてきわめて重大な問題てあります。この点について、再度明確なる御答弁を願いたいと思う次第てあります。  次に、貿易の問題について、安本長官にお伺いいたしたいと思います。安本長官の演説によりますと、二十五年度におきまして、輸出の部面においては今年度よりも約八千六百万ドルの輸出の増加をはかるという、かような趣旨の演説をされているのであります。ところて、昨年の貿易の状態を見ますと、世界経済の不況が漸次日本にも押し寄せて参りまして、輸出の面においても決して楽観を許さないのであります。昨年よりも八千六百万ドルの輸出増というのは、一体いかなる根拠の上にお立ちになつてこの計画を樹立されておるのであるかという問題であります。  たとえば、輸出の四割を占めております繊維の問題につきましても、昨年の十一月に、国際農業機構、FAOにおきましては、日本の繊維製品のドル建の売上げは、来年においては増加の見込みが全然ないということを発表いたしております。あるいはまだ、輸出の第二の地位を占めております金属の部面におきましても、たとえば鉄板等は、ポンドの切下げによつて、オーストラリア附近における輸出の見込みはだんだんと減退をいたしております。現在繊維と金属を合せまして輸出の六割をしめておるのでありますが、このようにして、これらの製品の輸出の可能性が減退いたして参りました場合において、去年よりも八千万ドルの輸出の増加を希望しておられる安本長官は、具体的にいかなる品目について主として輸出の増加をはかられようとしておるのか、この点をもう少し、具体的に明示されたいのであります。  そればかりてはありません。大体現在の日本の貿易の仕組みというのは、今年の一月元旦より自由貿易になりましても、実際はきわめて不自由な貿易の体制になつておる。たとえば輸出先の問題にいたしましても、日本の貿易の六割までが、今までは東洋貿易をもつて行われて来た。この東洋貿易は、占領下であるという事情はともかくといたしまして、現実において、中国貿易あるいは東洋貿易というものは許されておらない。従つて、それ以外の地域における貿易によつて維持されなければならないのである。ところが、世界経済状態から見ました場合において、このような貿易が続けられることは、やがて日本の貿易が大きな危機に陥らざるを得ないことを明確にいたしております。その打開策として、最近伝えられるところによると、バーター回転資金の設定によつて、新たな形で中国貿易をやろうという、このような努力が行われておると伝えられる。安本長官は、このバーター貿易回転基金制度の問題をいかようにお考えになつておるか、この点についてお伺いいたしたいと思います。  最後に予算の問題でありますが、本年度の予算を見ますと、吉田内閣の性格が非常に明確に出ておると私は考えるのであります。それは、どの点にはつきり現れておるかというと、一千三百億の国債〇〇の面において、非常にはつきりと現われておる。国が銀行その他大資本家に対して借りた国債をこの機会において支拂つてしまわなければならないという点であります。  ところが、昨年の国会において、民自党あるいは吉田内閣は借金を踏み倒しておる。労働者の賃金については、これを踏み倒しておるのであります。国鉄の裁定をごらんなさい。国鉄の裁定は、あれは一箇月千円ずつの借金であるということは、仲裁委員会で明確にいたしておるのであります。ところが、この勤労大衆の借金に対しては、わずかに半額で、あとは債務の義務を負わないということを明らかにいたしながら、大資本家の国債の償還については全額を償還しようというのが吉田内閣の性格であると思います。この性格が、予算の上に明確に現れておる。言葉をかえて言えば、減税という名目いよつて、実際には税金を減らさないで、しかも勤労大衆から税金として集めて、これを一千三百億の国債償還に充てるというところに、勤労大衆の犠牲の上に大資本家の資本の蓄積を強行しようというのが、今年の予算なのであります。(拍手)  この予算の性格から見て参りますと、再三にわたつて、この本会議演説において、日本経済は安定しておるということを言われておるが、これはわれわれから考えますると、まつたく誤りである。今後の経済の見通しは、安定どころか、危機への道をまつしぐらに進みつつあるのでございます。  具体的に申しますと、シヤウプ勧告によつて七百億円の減税であると言つておりますけれども、地方税においては増税が行われておる。この結果において、勤労大衆にとつては決して減税になつておりません。しかしシヤウプ勧告によりますと、無記名預金の廃止、これを行うことになつており、資産の再評価を行うことになつている。あるいはまた、株式譲渡についての手続も行わなければならないことになつているにかかわらず、これらの問題については、一切合財非常に緩和された形で、池田大蔵大臣はシヤウプ勧告を緩和されているのであります。ところが労働者に対しては、徴税機構の強化をもつて税金をどんどんとる態度を教化するばかりか、地方税の増徴によつて、独身者の場合においては最低四円の減税にしかならない場合があるのであります。こういうような実例を見ましても、先ほど申し上げた大資本家、財閥に対しては、無記名預金の廃止、あるいは資産の再評価、これらの点で非常に楽な処置を行いながら、勤労大衆に対しては、シヤウプ勧告よりも、より苛酷な措置が行われようとしておる。  問題はそればかりではありません。物価の問題についても、物価はこのまま横ばいをして行くであろうということを演説されておるにもかかわらず、たとえば米価の見通しにいたしましても、ここではつきりいたしておりますが、農林省の調査によると、米価の基礎になつておるペリテイ指数は、今年の予算り編成において、昨年の四月を一四三として、二十五年の春は一六四になろという算定をいたしております。あるいはまた、今年り秋には一六八に適するであろうと言つている。この一つの指数を見ましても、物価は今後ますます上るであろうというその裏づけと見て間違いないはないのであります。米価の問題にしてもかく通り。電気料金の問題にしても、貨物運賃、あるいは補助金の撤廃によつて、鉄、肥料、ソーダの基礎生産資材の値上り等によりまして、今後の物価は、決して横ばいか、あるいは低落、さような状態を続けるのではなくて、むしろ今後漸次上つて来るであろうということが考えられます。  このようにして、物価が漸次上るにもかかわらず、資金は依然として六千三百円の資金ベースにくぎづけされている。しかも、この六千三百円の資金ベースのくぎづけの根拠としては、昨年の四月と現在とは、実質賃金がそのまま横ばいであるという理由をもつて、しかも今後において、減税によつて実質賃金はますます充実確保されるであろうということをもつて、六千三百円の賃金べースをくぎづけされているのでありますけれども、昨年の四月六千三百円という根拠は、これは池田大蔵大臣、安本長官もおわかりの通りに、六千三百円の賃金ベースは、一昨年のであります。それが昨年の四月との間によつて、相当の物価の値上りその他の問題によつて、人事院の勧告通りに、これは賃金ベースを上げたければたらない状態になつていることは、きわめて明白であります。  この点については、労働省においても、昨年の九月に、二十四年度の六月を調査した場合において、一昨年の七月に比校して、大体物価は一倍の値上がりになつているという労働省の算定をいたしております。ここで鈴木労働大臣にお伺いしたいことほ、六千三百円の賃金ベースが、現在においてもなおかつ最低生活を保障し得るとお考えになるかどうか、この点についてお伺いをいたしたいと思う次第であります。
  38. 庄司一郎

    ○仮議長(庄司一郎君) 岡田君、時間が超過しておりますから、結論を急いでください。
  39. 岡田春夫

    ○岡田春夫君(続) 時間がなくなりましたから、最後にお伺いしますが、伝えられるところによると、労働省においては、最低賃金制の法律案を提出するという話でありますが、この最低賃金制の内容についてお伺いをいたしたいと思います。労働省の関係機関で調査をいたしております最低賃金制の調査は、もつぱら三十人以下の繊維工業の女子労働者を基準にし最低賃金の計算を最近調査いたしておりますが、この調査の根拠と言うのは、結局ソーシヤル・ダンピングのために、繊維工業の女子労働者を最低賃金にくぎづけして、この最低賃金に労働者の全体の賃金のしわ寄せをしていこうという意図のもとにつくられているのではないかと、われわれは考えているのであります。この最低賃金が、このような意味で行われるとするならば、われわれがかねてからてから提唱いたしておりました最低生活の保障を要求する最低賃金制とはまつたく正反対の、労働者を最低生活にくぎづけして、食えない状態に近い込むための、最低賃金のストツプ令であると、かように考えざるを得ないのであります。このないようについて、鈴木労働大臣はいかなる法案をお出しになる考えであるか、この点について最後にお伺いをいたしておきたいと思います。(拍手)     〔国務大臣吉田茂登壇
  40. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答をいたしたます。講和は相手国があるのであつて、ひとり演説や、ひとり相撲ではないのであります。従つて観客情壁においてと私が言うゆえんであるのであります。また自衛権とは何であるかといえば、読んで字のごとく、みずから守る権利でもあります。しからば、その内容はいかんと言えば、これは自衛権を発動しなければならぬ状態が前提をなすものであつて、その状態がすなわち自衛権の内容をなすものである、こう私は考える。(拍手)また武力なき自衛権は何ぞやと言えば、武力をも使わざる自衛権と言う意味であります。(拍手)     〔国務大臣青木孝義登壇
  41. 青木孝義

    国務大臣(青木孝義君) 岡田議員にお答を申し上げます。私が貿易の振興ということについて申し上げましたことは、それは一…三月の貿易の収支勘定、そういう点で、あなたがおつしやいました数字の支拂い勘定において一億四千八百万ドル、それから受取勘定におて一億七千百万ドルということを申し上げたのでありまして、なお二十五年度におきます貿易のわれわれ推定に基く予定は、今年度輸入が十億ドル、輸出が約六億二千万ドル、こういう予定でございます。     〔国務大臣池田勇人君〕
  42. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) いろいろな御質問がありましたが、まず第一政府は借金を踏み倒して国債償還をやるというお話はございません。われわれは決して借金を踏み倒したことはございません。国会の議決に基いて適当の処置をとつておるのでございます。また債務償還の問題につきましては、二十四年度、二十五年度を御検討くださつたら、あるいは私の今までの御答弁をごらんくださればおわかりと思います。  次にシヤウプ勧告案に対して、あるいは名義書き方の問題とか、無記名預金の問題とか、いろいろな事を言われましたが、無記名預金は停止いたします。源泉課税はやめます。しかし、問題の名義書きえは、千四百億円の株式発行で、今はみな領収書が大部分であります。名義書きかえをどういうようにしてやるか、こんな無理なことは、私は、いかにシヤウプ博士が言われてもやりません。日本の実情に沿つたような政治を行うかが私の信念であります。従いまして、税の問題でも、シヤウプ勧告案よりも、勤労所得に対しまして、控除額一割を一割五分にしたために、百億円の減税であります。あるいは基礎控除を上げたことによつて六十億円の減税をやつている合計百六、七十億円の減税をやつておるのであります。私は、ここに日本の財政の自主権があるということを、はつきり申し上げます。(拍手)  次に物価の問題で、米のパリテイがだんだん上つて来るので物価が上るだろうという御議論でありまするが、私は、一月に米価を決めますときに、ああいう生産者のバリテイでございまして、消費者のはバリテイは一月にきめたので、来年中動かしません。これは、はつきりしておるのです。生産者のパリテイが上るからといつて、米の消費者物価が上がるとは限らないのであります。十分御研究を願いたいと思います。  なお最後に、賃金の問題で、人事院が一昨年の七月を基準にとり、そうしてまた昨年の七月がどうこうということは、先ほど来申し上げましたように、これは形式的な議論でありまして、公務員の実際の生活状況を考え、国民全体の利益のために上げないという決心をいたしたのであります。(拍手)     〔国務大臣鈴木正文君登壇
  43. 鈴木正文

    国務大臣(鈴木正文君) 最低賃金の問題について御質問がありましたが、政府が今考えておりますることは、労働基準法で定めたところの最低賃金の審議会を設けて、そうして慎重に、十分の時と調査とを重ねてこの調査にとりかかる方針をとつておるのでありまして、それ以上、ただいま御質問になりましたような内容にまでは進んでおりません。三十人未満の調査というような問題は、従来も別の角度からしばしばやつたことでありまして、最低賃金制とは何らの関係がございません。(拍手)     —————————————
  44. 山本猛夫

    ○山本猛夫君 国務大臣演説に対する残余の質疑は延期し、明二十八日定刻より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
  45. 庄司一郎

    ○仮議長(庄司一郎君) 山本君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  46. 庄司一郎

    ○仮議長(庄司一郎君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時三十三分散会