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1949-12-21 第7回国会 衆議院 本会議 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十二月二十一日(水曜日)  議事日程 第五号     午後一時開議  第一 自由討議     ――――――――――――― ●本日の会議に付した事件  国家公務員に対する臨時年末手当支給に関する法律案内閣提出)  公共企業体労働関係法第十六條第二項の規定に基き、国会の議決を求めるの件(内閣提出)   広島地方專売公社調停委員会委員衆議院議員中原健次君を充てる件     午後三時十一分開議
  2. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) これより会議を開きます。      ――――◇―――――
  3. 山本猛夫

    山本猛夫君 議事日程追加緊急動議を提出いたします。すなわち、内閣提出国家公務員に対する臨時年末手当支給に関する法律案議題となし、この際委員長報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  4. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 山本君の動議に御異議ありませんか。     「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  国家公務員に対する臨時年末手当支給に関する法律案議題といたします。委員長報告を求めます。人事委員長星島二郎君。     〔星島二郎登壇
  6. 星島二郎

    星島二郎君 ただいま議題となりました国家公務員に対する臨時年末手当支給に関する法律案は、人事委員会におきまして、かねて問題であつただけに、非常に熱心に審議を重ねられました。各派からいろいろな議論が出ましたが、結局において、多数決をもちまして、不満ではあるけれどもこの際通すべきだ、かような結論を得た次第でございます。詳しいことは、議長の許可を得て会議録に載せていただきたいと思います。  しかし、この際に税金は何とかならぬものだろうか、かような議が各委員から一様に起りまして、委員長といたしまして政府当局にお尋ねをいたしましたところが、税制体系を乱るゆえに、とうてい免税は行えないが、しかし、年末に際して、せつかくの金なるがゆえに、何とかいたしたいものだと、含みのある御答弁を得ました。委員会におきましては、これをもつて決した次第でございます。  以上、簡單ながら御報告いたします。(拍手)     ―――――――――――――     〔参照〕  本法案は、国家公務員に対し、昭和二十四年度に限り臨時年末手当支給することを目的として、十二月十九日、人事委員会に付託されたものであります。  本法案要旨のおもなるものを御紹介申し上げますと、先ず第一に、臨時年末手当支給を受くべき国家公務員の範囲でありますが、国家公務員法第二條規定してあります一般職に属する職員で、検事総長次長検事及び検事長を除く全員並びに特別職に属する職員で、最高裁判所長官最高裁判所判事及び高等裁判所長官を除く裁判官、侍従、国家公務員法ニ條第三項第八條及び第十二号に掲げる秘書官、食糧配給公団職員連合国軍の需要に応じ連合国軍のために労務に服する者で、この法律施行の際現に在職し、かつ常時勤務に服する者、以上の国家公務員該手当支給を受けることを規定してあります。  次に該手当の額であります。その額は、給與支給月額の三分の一に相当する額に七百円を加え、その合計額に、勤務期間に応じ、六月以上の場合は十分の十、三月以上六月未満の場合は十分の六、三月未満の場合は十分の三を乗じた額に相当する金額であるが、但し五千円をこえることがでないことを規定してあります。その他給與月額支給の細目についての規定がございます。以上が、本法案のおもなる要旨であります。  以下、質疑応答のおもなる点を申し上げますと、給與ぺース改訂と本手当との関係、並びに本手当の性質、本手当に対する税法上の特別措置地方公務員並びに教職員に対する政府措置等についてそれぞれ質疑があり、これに対する政府答弁を申し上げますれば、池田大蔵大臣からは、さしあたつて給與ペース改訂は行わない、また本手当は多分に褒賞的意味を持つものであり、税金を徴收するのが建前であるから課税はやむを得ない旨、また増田官房長官からは、教職員については半額は国庫負担であり、できるだけすみやかに措置を講ずるが、地方公務員に対しては、政府には直接責任はないが、国家公務員の例によるべく指示をする旨、それぞれ答弁がありました。  次いで、本日午前討論入り藤枝委員民主自由党を代表して、本法案による手当支給は、国家公務員勤務状況並びに年末の特殊な経済事情にかんがみ、均衡予算実質をくずさぬ限度における賞與的な意味をもつもので、頗る時宜に適したもりであるとして、これに賛成成田委員日本社会党を代表して、本法案国家公務員給與引上げ並びに民間給與との不均衡の是正を前提としておらず、しかも、かかる少額の手当に対して税金分割拂い許されておらぬものとして、これに反対中曽根委員土橋委員は、それぞれ民主党第九控室日本共産党を代表して同様の趣旨のもとに、これに反対逢澤委員民主党第十控室を代表して、本手当課税分割拂いを要望して、これに賛成平川委員は新政治協議会を代表して、本法案における手当のごとき賞與的な給與政策はとるべきではなく、むしろ給與ペース改訂を行うべきであるとして、これに反対、以上をもつて討論は終了いたしました。  討論終了後、委員長は本委員会を代表いたしまして、政府に対し、本法案における臨時年末手当については、徴税上何らかの考慮を拂う用意ありやいなやをただしたところ増田官房長官より、税法改正するごとき措置を講ずることは、はなはだ困難なことではあるが、徴税時期等については十分研究の上善処いたしたき旨答弁がありました。  続いて採決に入り、起立多数をもつて、本法案は原案の通り可決すべきものと議決いたした次第であります。     ―――――――――――――
  7. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 質疑の通告があります。これを許します。赤松勇君。     〔赤松勇登壇
  8. 赤松勇

    赤松勇君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま星島委員長から御報告がございましたこの報告と関連いたしまして、主として星島委員長吉田内総理大臣大蔵大臣人事院総裁、この方々に対して若干の質疑を行いたいと思うのでございます。  わが日本社会党が、昨年十二月、六三ぺース改訂努力いたしましたのは、給與引上げ目的でもあつたのでございますが、そのほか重要な点は、ここに近代的な、科学的な、かつ合理的な給與制度を確立することも、その目的一つであつたのでございます。この適切なる給與制度権威を保持し、さらに有効なる給與制度がありますならば、国家公務員保護のために、人事院計画立案をして政府勧告すべきであるにもかかわらず、今回の臨時年末手当支給に関しましては、政府は七八ぺースのすりかえの目的をもつて人事院に何ら相談することなく一方的に決定したことは、国家公務員法及び新給與実施法立法精神を蹂躙し、科学的、合理的給與制度を破壊するものであるといわざるを得ないのであります。(拍手)これに関し、淺井人事院総裁は、かかる特別法的な給與制度が行われたことに対しまして、いかに考え、またいかなる責任をおとりになるか、その所信をお伺いしたいのでございます。また吉田内閣総理大臣は、今後どのような給與体系をおとりになるかということも、この際、今後のためにお尋ねしておきたいと思うのでございます。特に私は、本日人事院総裁出席要求したのでございますが、山下人事官が出て来ている。山下人事官に、ただいまお尋ねいたしましたら、淺井人事院総裁は御病気の由でございます。私どもは、淺井人事院総裁が、本日この本会議出席できないその理由を、十分に了承することができるのでございまするから、それゆえにこそ、われわれは、この際たつて人事院総裁責任を追及しなければならぬのでございます。  それはなぜかならば、言うまでもなく、今回人事院総裁国会及び政府勧告をいたしました七八ぺスは、これは本年七月までの物価民間給與、あるいはCPSその他りの経済條件の変化に伴いまして、百分の五以上の増減があつた際には、これは政府及び国会勧告しなければならぬという、国家公務員法第二十八條に基いて勧告が行われたのでございます。従つて、当然これは七月が物価及び民間給與CPSり調査の基礎になつておるのでございますから、私どもは、七八ペースはバツク・ペイすべきである、すなわち八月からこれを支給すべきである、実施すべきである、かように考えておつたのでございますが、諸般の情勢を考慮いたしまして、星島委員長を通じて、しばしば人事委員会の開催を要求し、かつは浅井人事院総裁に対しまして、勧告案国会及び政府に提出することを督促して参つたのでございますが、しかしながら、勧告案国会及び政府に出されましたのは、御承知のごとく十二月に入つてからでございます。十二月に入つてから突如としてこういう勧告案をお出しになるといたしまし、ても関係方面との折衝、あるいは国会内における法案提出手続等に関しまして、とうていこの十二月の会期中において実現することは、何人が考えましても不可能であるといわなければならぬのであります。  今日、科学的にして合理的、かつ近代的なる給與制度が破壊されまして、これにかわる、いわゆる特別法的なこの年末手当法案が本会議にかかつたということは、はなはだ遺憾千万でございます。その責任はもとより吉田内閣にございますが、その責任の一半は、淺井人事院総裁が当然負わなければならぬと、われわれは考えているのでございます。しかも淺井人事院総裁は、私ども人事委員会における再三にわたる質問に対しまして、こう答えている。人事院は、国家公務員法規定従つて、單に勧告をすれば十分だ、こういう態度をとつて来ている  しかも、われわれの解せないことは、この勧告の行われます前に、淺井人事院総裁は、吉田総理大臣としばしば会つているのでございます。このことは、人事院独自性、すなわち人事院権威を著しく傷つけるものでございまして、人事院人事院独自の立場からこれを国会及び政府勧告するのが当然でございますが、その前に吉田内閣総理大臣となぜ会う必要があるのであるか。すなわち吉田内閣は、人事院総裁に対して政治的圧力を加えることによつて国家公務員法規定するところの、人事院勧告する義務を根本的にこわそうとする、そのねらいがあつたといわざるを得ないのでございます。昨年十二月、給與制度ができまして、爾来今日までの給與制度に基いて、国家公務員に対するところの給、與が行われて参つたものでありますが、この合理的なる給與制度を破壊いたしましたのは、一つには吉田内閣であり、二つには人事院それ自身であるといわなければなりません。私は、こういう点につきしまして、吉田内閣総理大臣及び淺井人事院総裁に対しまして、いかにこれをお考えになつておるか、また淺井人院総裁は、その責任をどのようにとろうとされておるか、また人事委員会委員長でございまするところ星島二郎氏はどのようにお考えにないておるかという点質問してみたいと思うのでございます。  次に大蔵大臣にお尋ねしたいことは、先ほど私が申し上げました国家公務員法第二十八條精神は、人事院国会及び政府に対して勧告のしつぱなしをしろという、單なる規定ではないのでございます。人事院は、一方におきまして人事院規則を、いわゆる国会の承認を得ることなく――昨年十二月から、人本委員会におきましては、あの人事院規則、政治的自由を制限する人事院規則発表に対しましては、これはあくまでも人事委員会了解を得て出すということが付帶條件になつてつたのでございますが、淺井人事院総裁は、国会人事委員会に何らの了解を得るとなく、これを單独で発表いたしまして、今日わが国の百万に近い国家公務員は、その持つておる基本的人権でありまする罷業権を奪われたほかに、いわゆる政治的自由の大幅なる制限、いな、むしろ禁止的な彈圧を受けておるのでございます。  一方において、国家公務長に対しましては、かくのごとき苛酷な、かくのごとき近代民主国にあるまじき封建的な彈圧を加えながら、他面におきましては、当然国家公務員法よりて保護しなければならぬところ義務を放棄し、保護しなければならぬところ立場を忘れ、保証しなければならぬところのその責任を回避しようとしておるのであります。(「よけいなことを言うな」と呼び、その他発言する者あり)この意味からいたしまして今日、国家公務員法権威は地に落ちたのであります。  わが日本社会党は、近き将来、この国家公務員法の廃止もしくは根本的な改正要求する考えでございまするが、このように国家公務員法規定いたしまするところ保護規定に対しまして、政府は何らの積極的な努力拂おうとはしていない。すなわち、今日問題になつておりまするところは、人事院勧告案にもありまするように、單なる実質賃金充実の問題ではありません。実質賃金充実の問題は別個の問題である。すなわち、本日、民主自由党諸君が、国鉄裁定に関して出された附帶條項の中には――諸君やじつておるが、何と書いであるか。諸君みずからが、民間給與ペース政府職員給與ベースには著しい相違があるから、近き将来これを直さなければならぬということを、諸君ら自身が、本日の国会に出そうとしておるではないか。この一点を見ても、今日の国家公務員に対するところ給與は、單なる実質賃金充実でなく、基本的な、民間給與政府職員ペースとのつり合いをいかようにするかということが、問題であるのでございます。  しかるに、昨日、社会党松澤兼人君が、人事委員会におきまして、池田大蔵大臣に対し、しばしばこれに対する質問行つたのでございまするが、池田大蔵大臣は、これに対して何らの積極的な意思表示をしないのみならず、この国家公務員法規定いたしまするところの、当然の給與ペース引上げにつきましては、現在のところ政府考えていないというようなことを申したそうでございますが、私は、あらためて池田大蔵大臣に対して、この国家公務員法人事院勧告を尊重し、七千八百円ペースに関するいわゆる追加予算をすぐお出しになる御意思があるかどうか、もしそれが不可能であるといたしまするならば、二十五年度予算のうちにおきまして、これをお組みになる御意思があるかどうか、また一つは、この年末手当として支給されますところのものから、勤労所得税を全面的に差引かれるか、それとも分割拂い措置をおとりになるか、あるいは全免の措置をおとりになるか、かような点につきまして、池田大蔵大臣の明確なる御答弁要求いたしまして、私の質問を終りたいと思います。(拍手)     〔星島二郎登壇
  9. 星島二郎

    星島二郎君 人事委員会といたしましてはこの人事院より勧告されましたる給與ペース改訂の問題につきましては、まだ審議中でございます。従来の大蔵大臣並びに官房長官等よりの御答弁及び政府発表のいろいろな数字より見ますれば、今回の年末手当給與に関して、大よそ否定的には表示されておりますけれども、まだ断定には参つておりませんので――次に当りまして、ことに民主自由党政調調会等より常に発言されておりまする、かりに物価指数によらざることにいたしましても、行政整理等の断行させたる場合には、十分考慮すべきだ等の問題もありますので、慎重審議いたしたいと思つております。どうぞ赤松君のごとき熱心なる方は、委員を辞職されないで御審議なさることをお願いいたします。(拍手)     〔国務大臣増田甲子七君登壇
  10. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 赤松君にお答えいたします。この臨時年末手当支給に関する法律案は、御説のごとく一種の臨時的の給與体系を打立てたものでございます。しかして、この法律案提案は、内閣責任において出しました。但し、人事院とは折衝はいたしております。しかして、法律案一般の他の法律案と同様でありまして、政府あるいは両院が提出するのでありまして、人事院みずから提出するということのないことは、これまた赤松君のお話の通りであります。     〔国務大臣池田勇人登壇
  11. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答え申し上げます。  公務員賃金ペースにつきましては、経済安定の点から申しましても、予算を緊縮する点から申しましても、また他面、消費者総合物価指数が低落の傾向にあります関係から、かえる意志はございません。従いまして、追加予算を組む必要もないのであります。  その次に、今度の年末手当に対しまする勤労所得税を軽減する気持はないか――軽減する気持はございません。所定の法律通りに実行いたします。     〔政府委員山下興家君登壇
  12. 山下興家

    政府委員山下興家君) きようは淺井人事院総裁出席するはずであつたのでございますが、病気のために出席のできないのを、まことに遺憾とする次第であります。  赤松さんからおつしやいましたように、われわれの勧告が相当遅れましたことに対しては、まことに相済まない次第でありますが、しかし、勧告をする時分には、実はそれだけで勧告ができるのではなくて、地域給改正と、いうようなものがあるのであります。地域給をもう少し合理化しなければならない。そうすると、ある地域は下るところもあつたりして、非常に御迷惑。をかけるのだから、給與改訂と同時にこれを行わなくてはならない。それには、非常に合理的にやるために、たとえば各地の物価や何かを十分調べる必要があります。それで、特別にCPSといたしまして、三百八十一部市についてこれを研究したのであります。そうして五月のが、ようやく最近になつてまとまつた次第でございまして、いろいろなことで勧告が遅れたことは、まことに相済まない次第でございます。しかし勧告をした以上、それをわれわれできるだけ合理的なものにいたしまして、どこをつつかれても怪しいところ一つもないということを、私は自信を持つておるのであります。それがすなわち人事院のあり方でありまして、もしも政治的に怪しい点があつたら、これは人事院存在理由がないことになるのであります。それで、もしも怪しい点があるならば、数字その他において十分に説明することが私はできると思います。但し、これは発表いたしました以上は、できるだけ早い機会においてこれを実行していただきたいのであります。しかし実行をするのには、いろいろ予算その他にも関係がありましようけれども、これだけの金はどうしても公務員に必要でありますということを国民に訴えまして、この国会において十分御審議願つて、できるだけ早い機会において公務員があたりまえの水準になるように御努力が願いたいのであります。  今回の年末手当支給のことにつきましては、これは御承知のように、日本として十二月には非常に金がかかりますから、こんな苦しいときに、幾らかでも冗費をここにまわしていただくということは、まことにけつこうなことであります。しかし、これは一時のお金であり、そして私どもの申しまする給與ペースは毎月の話でありますから、これは全然別のものでありまして、何ら給與ベースには関係のないものと私は理解しております。ぜひ、これはこれとして、今度給與ペースについて極力御盡力くださるように、ここでお願いいたします。
  13. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 土橋一吉君。     〔土橋一吉登壇
  14. 土橋一吉

    土橋一吉君 ただいま委員長報告せられました、国家公務員に対する臨時年末手当支給に関する法律案につきまして、私は委員長並び関係閣僚皆さん質問をしたいと思うのであります。  御承知のように、本日人事委員会におきまして、われわれはこの問題について討論したのでありまするが、政府説明によりますると、提案理由の中にも書いておりまするように、国家公務員勤務状況及び経済状況にかんがみて臨時的な年末手当措置を講じた、かように申しておりますが、今日り公務員諸君が受取りまする実質賃金の低下ということ及び生活の困窮というものは、民間の諸給與に比べまして、すでに三〇%降下しておるのであります。従つて、もし政府が申しておりまするような年末賞與意味でありまするならば、私は、来年度におけるところの盆にも、また歳末にも、当然このような事由が出て参りますので、政府は、お盆なり歳末に、今度と同じように手当支給する考えであるかどうか、この点を明確に聞きたいと思うのであります。御承知のように、これに対しましては、政府はきわめてあいまいなる答弁をしておりまするが、人事委員長として、将来人事委員会の運営にあたりましても、この点については明確な御答弁を願いたいと思うのであります。  第二点といたしましては、国家公務員に対しまして、その労働運動におけるあらゆる制限が付せられ、人事院政治活動の禁止をやり、あるいは職員団体における登録の制限を行い、あらゆる制限を行つておりまするが、そういう場合には、政府はむしろ人事院のこの規則の制定については賛意を表し、側面的に援助するような態度をとつたのであります。ところが、このたび、十二月四日には、人事院の、きわめて寡少なるものでありますが、七千八百七十七円の勧告案が出たのであります。この問題につきましては、政府は、また人事委員会におきましても、民主自由党を絶対多数とするこの委員会においても、去る七日に政府及び人事院説明を聽取したのみで、いまだ実質的な審議はいたしていないのでありまするそういたしますると、国家公務員法というものは、公務員自身のあらゆる賃金値上げ運動、さらに諸般運動に対する制限こそすれ、実際的には、給與に関する基本的な引上げ等についても熱意を持つていないということを証明するものである。  御承知のように、人事院がこの勧告をすることは、すでに十一月四日の新聞によりましても、淺井人事院総裁は、吉田内閣総理大臣と会談をされておるのであります。当時民主自由党政府においては、追加予算及び昭和二十五年度予算の編成中であつたのであります。従いまして、真に人事院国家公務員給與改訂する熱意がありまするならば、当然この当時に勧告をするのが至当でありまして、その資料におきましても、昨年の六千三百七円べースのときには、七月の生計費基準として算定したのであります。従いまして、今年度におきましても、七月を基準といたしておられまするから、九月、少くとも十月には、当然この勧告を行うことが、国家公務員法第二十八條が明記いたしているゆえんであるのであります。  さらに政府職員給與実施に関する法律におきましても、この点は第九條で明記いたしているのでありますから、私は、人事院政府が、両者とも公務員諸君実質的賃金引上げ給與ペース改訂、その他民主的にして科学的、合理的な給與の改善を行つていない、かように断ぜざるを得ないのであります。特に超過勤務手当に関しましては、御承知のように、第六国会におきまする最終日に、皆さん方が一致して決定した問題であります。この決議せられました内容ですら、今日いまだ拂われていないのであります。  こういう観点にわれわれが立つならば、人事院政府は、常に勤労階級の正当なる要求なり運動制限するためには狂奔いたしておりまするが、給與引上げに関しましては、お互いに相反撥し合いまして、そして実質的な待遇の向上をはかつていないということを完全に証明しておるのであります。(拍手)  なお給與ペース引上げの問題につきましては、これは人事委員会においても十分討論をしたいと思いますが、現在のこり九千七百円ペースは、これはきわめて最小限度要求でありますので、われわれ、公務員諸君に対しましても、この要求はぜひとも鬪い取つてやりたと思うのであります。しかるに政府は、人事院勧告が出ている七千八百七十七円自身も、これをもまた澁滯せしめ、この審議すら完全に行わないのであります。もし諸君が行う熱意がありまするならば、絶対多数を持つているこの人事委員会においても、給與ペース引上げの問題について真劍に討議する態勢を、なぜ民主自由党諸君はとらないのか。こういう点を見るならば、明らかにこの年末手当によつて給與ペース改訂をすりかえんとするところの、きわめて惡い陰謀が、全勤労階級の前に提示せられたのであります。  なお年末調整金につきましては、皆さんもすでに新聞で御承知のように、今年の一月、二月当初におきましては、二十五箇年勤続で、百三十五円というような金をもらつたのであります。あるいは中には十五、六円というような諸君が現におるのであります。従いまして、今度の年末手当支給に関しましては、おそらく調整金が――ただいま大蔵大臣答弁いたしておりまするように、非人情にもこれを取上げんとするのでありますから、公務員諸君の窮状は察するに余りがあるのであります。従いまして私は、年末調整金は免除すべきものと思うのであります。大蔵大臣はどう考えているか、こういう点を御答弁願いたいと思うのであります。  第五点といたしましては、御承知のように、公務員諸君、国鉄労働者諸君につきましては一応の解決がつきましたが、諸君の地元におりまする地方公務員諸君及び教職員諸君は、今日どういう状態であるか。なるほど地方配布税が九十億決定したのでありますが、これも実質的には五十四億しかないのであります。この五十四億のうち、さらに十八億を引かれまするならば、三十五、六億程度の予算であります。ところが、今日は地方財政が逼迫いたしておりまするので、地方の教職員諸君公務員諸君の窮状は察するに余りがあるのであります。従つて、地方公共団体は、今日この財源をまかなうことはできないのであります。そうすれば、政府はこれの予算的裏づけをどうするか、大蔵大臣の明確なる御答弁を願いたいと思います。  この内容が央実現しない場合には非常な問題である。進駐軍労働者諸君につきましても同様でありまするが、特に私、この議場におきまして声を大にして強調したい点は、失業対策費によりまするところの日雇い労働者諸君のとである。この諸君は、この規定によりますると、常勤を旨とするものでありまするから、もしこの日雇い労働者諸君が右公務員と同じように均霑をしないということになりまするならば――今日、百八十円あるいは二百三十円程度の給與で、非常に苦しんでおるのであります。従いまして、これら数万の日雇い労働者諸君のためにも、ぜひこの規定を適用し、これを準用する意思を持つておられるかどうか。これは星島委員長にも、官房長官にも、さらに私は大蔵大臣にも質問したいと思いまするが、これが行われなければならぬと思うのであります。     〔発言する者あり〕
  15. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 静粛に願います。
  16. 土橋一吉

    土橋一吉君(続) もし諸君の方におきまして、この規定の真の内容を考えてみるばあいには、あるいは適用しないかもわからない。そうなつて参りますると、同じ国家の費用で働いておりまする労働者階級に甲乙の差ができるのみならず、乙はほとんど食えないというような生活に追いやられているのでであります。これに対して、私は明確なる御答弁を願いたいと思うのであります。  最後に私は山下人事官にお尋ねしまするが、人事院は、ただいまのような政府の状態で、この給與ぺース引上げについても、ほどんど考慮をしないでいるが、もし国家公務員法規定によりまして、諸君が、忠実に人事官として、給與ぺース勧告に関するこの問題を真劍に公務員のために考えておられるならば、どういう措置をこの国会に対してなし、人事院政府になさんとするのであるか、この点を明確にお聞きしたいりであります。重ねて私は、今度ののの臨時手当に関する件について、人事院はどういう勧告をし、どういう意見の具申をし、どういう相談をしたかということを、明確に御答弁願いたいと思うのであります。以上。(拍手)     〔国務大臣田勇人君登壇
  17. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 来年のお盆、年末に賞與を出すかという御質問であります。来年は相当程度減税をいたします。また、物価も横ばい、あるいは低落の傾向に行くと思います。また将来、政府は、公務員に対しましても、できるだけ福利施設を講じまするから、来年のお盆、年末に賞與を出すような事態は起らぬと確信いたしております。  次に今回の賞與に対しまする免税の点は、先ほどお答えいたしました通りであります。免税はいたしません。  次に、地方の公務員並びに小学校の教員等に対しましては、一応地方で財源を捻出していただき、足らざるところにおいて政府は考慮いたしたいと考えております。  進駐軍労務者は、政府が雇い、常勤しておれば、当然出します。しからざる者に対しては支出いたしません。(拍手)     〔政府委員山下興家君登壇
  18. 山下興家

    政府委員山下興家君) 土橋さんに御返事申します。人事院が、もしも大蔵省の給與局のごとき状態でありましたならば、あるいは予算に縛られまして、どれだけが給與であるべきかという、ほんとうの数字を世の中に発表することを、はばかつたかもしれないのであります。しかし、幸いに人事院は独立の状態にありますから、これはほんとうに、きれいに計算いたしまして、世の中に、かくのこと数字給與ぺースとしては必要であるということを公表して、はばからないのであます。それで七千八百七十七円という数字が出ました。だからして、これから先は、できるだけこれを実現するように御努力を願いたいのであります。これは人事委員会にもすでに先日資料を差出しましたように、この給與ペースが千五百七十円上りましたがために、決して民間給與に達するものではないのであります。民間給與より少し下まわつておるくらいでありまするからして、民間給與をこれによつて押し上げるという心配は、さらにないのであります。そればかりでなく、これが物価に影響をしないということは、こまかな計算を差上げてあります。それをごらんになりますと、かりに最惡の場合になりましても、それによつて物価は二%の増加に達しないということが明らかにしてあるのであります。物価も上らないし、給與民間給與をつり上げるということにならないということであるならば、これに対しては十分に予算の面において御考慮を願うということが、私は当然であろうと思うのであります。(拍手)このことを重ねてお願い申し上げておきます。
  19. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) これにて質疑は終了いたしました。  討論の通告があります。これを許します。成田知巳君。     〔成田知巳君登壇
  20. 成田知巳

    ○成田知巳君 ただいま上程されました国家公務員対する臨時年末手当支給に関する法律案に対しまして社会党を代表して絶対反対意思を表明するものであります。  申すまでもなく、年末を前にして生活苦に悩む国家公務員に対し年末賞與を出すことそれ自体に対しては反対するものではありませんが、後に申しますごとく、実は年末賞與の名にも値しない、すずめの涙ほどの少額の金を出して、これを年末賞與であると称し、しかも、人事院内閣及び政府に対し人事院権威にかけて勧告いたしました賃金ペース改訂とすりかえんとするところの、この政府の政略的な意図に対しては、断固反対するものでございます。(拍手)  ペース改訂を拒否し、年末手当支給せんとる本法案は、昨年新給與実施法の施行と同時に、六千三百七円ペース確立の際に決定されましたところ国家公務員給與体系を、根本から破壊するものであることを考えなければなりません。給與改訂を拒否いたしましたところ政府理由といたしまして、第一に、政府は減税その他の政府施策によつて実質賃金の向上を期待し得ると申しておりますが、私の観測をもつていたしますならば、少くとも勤労所得税は、昨年と比較し、年の貨幣価値の五割以上低下しておる事実を見ると、形式的には減税になつておりますけれども実質的には増税となることを認めなければなりません。さらに地方税の増徴、地代、家賃の値上り電力料、主食の値上り等を考慮いたしますと、実質賃金の向上どころか、切下げ必至と見ざるを得ないのでありまして政府の観測は、まつたく希望的観測であり、近き将来において事実をもつてくつがえされるということを指摘したいのであります。  一歩譲りまして、政府の言うがごとく、実質賃金の向上が万が一あるといたしましても、政府は重大な点を見落しております。すななわち、今回人事院は、ペース改訂を必要とする理由といたしまして、その一つは、物価上昇によるところ実質賃金の低下をあげ、第二には、ただいま赤松議員の指摘したことく、国家公務員給與民間給與のはなはだしい不均衡にあることを、はつきりと指摘しておるのであります。たとい政府並びに民自党の諸君の妄想するがごとくに、万が一、奇跡的の実質賃金の向上を見ることがあつたといたしましても、これをもつて国家公務員民間給與とのアンバランスは絶対に解消しないのでありまして、この問題に対する解明を與えずして、給與ペース改訂の要なしとする政府の見解は、まつたく独断もはなはだしいものといわなければなりません。(拍手)  次に政府は、ベース改訂反対理由といたしまして、均衡予算立場から、ぺース改訂物価と賃金と悪循環を来し、インフレ再発の危險ありと言つておるのでありますが、この政府の見解は、日本経済の実態に対するはなはだしい認識不足の上に立つておると申さなければなりません。人事院勧告にもあつたこどく、昨年の六千三百七円―ペスの改訂のときにおきしても、民間給與に対し何らの影響を及ぼすことなく、物価と賃金の悪循環は見られなかつたのであります。インフレ進行途上における昨年において、しかりであります。  政府のとるいわゆる超均衡予算の結果、国内の有効需要が激減いたしまして、深刻なデフレ恐慌に突入しておるとは、政府並びに金融機関の懸命なてこ入れにもかかわらず、株価は暴落の一途を続けておる事実を見てもわかるのでありまして、この状態において、相かわらず、ばかの一つ覚えのごとく物価と賃金の悪循環を説き、給與ぺース改訂反対する政府態度こそは、経済知識に対するところの貧困である。この貧困のために、みずから描いたところの幻想におびえておるか、あるいは給與改訂反対のために、ことさらに、りくつにならぬりくつを並べ立てておるといわざるを得ないのであります。(拍手)もし政府にして、虚心坦懷に日本経済の実情を直視するとともに、国家公務員勤務状況、生活状況に思いをいたされるならば、ただちに人事院勧告に基き給與ペース改訂をなすべきでありまして、今回の措置のごとく、二千九百二十円の年末手当をもつて給與ぺース改訂にすりかえんとする政府態度、口に公務員の生活安定を解きながら、公務員の生活安定に対しては一片の誠意の持合せもないことを表明したものといわなければなりません。(拍手)  聞くところによりますと、年末を控えまして、悲壯なる気持で、給與ぺース改訂と、年末給與に関する陳情に参りました国家公務員諸君に対しまして、民自党の諸君のうちで、かん酒代を出したのだから文句を言うなという暴言をはいたそうであります。はたして公務員の生計に、今回の年末手当を酒代にまわすだけの余裕があるとお考えでありましようか。この暴言こそは、さきに労働者を不逞の徒呼ばわりした吉田総裁の言と思い合せまして、民自党の対労働者観を示して余りありといわなければなりません。(拍手)  国家公務員法及び公共企業体労働関係法によりまして、労働者は、その公共性のゆえに、罷業権、団体交渉権を剥奪され、あるいは大いなる制限を受けておるのでありますが、この反面、法律政府に対し、国家公務員及び公共企業体職員の生活安定に対して重大なる責任を負わしておるのであります。しかるに吉田内閣は、この法律規定に基いてなされましたところ給與ぺース改訂に関する人院院勧告を無視し、あるいは国鉄仲裁委員会権威ある裁定を拒否いたしまして、今や法律蹂躪をあえてせんとしておるのであます。かくのごとき、みずから法律を無視する政府態度こそは、せつかく民主的労働組合運動の軌道に乗りつつあるわが国労働組合運動を、合法から非合法に追いやるものでありまして、政府及び民自党の諸君が口を開けば非合法鬪争を一部政党の責任だと言つておるが、今回の政府法律無視の態度こそ、組合運動を非合法に追いやるものでありまして、政府並びに民自党の諸君こそ非法運動責任者だといわなければなりません(拍手)もし政府にして、口頭禪に終ることなく、真に国家公務員の生活安定、ひいてはわが国労働組合活動の民主的発達を祈念ずるならば、だだちに給與ベース改訂を行う旨を確約いたしまして、その上に年末賞與支給措置を講すべきであります。  最後に申し上げたいことは、野党各派の強い要望にもかかわらず、遂に年末賞與に対する課税措置について何らの具体的な措置が打たれていないことであります。昨年の六千三百七円ぺース改訂の際におきましても、年末調整のために、はなはだしきは数千円に上るところの給料手取り赤字という奇現象を呈したことは、皆さん承知通りであります。二千九百十円の手当に対して重い税金がかかりますならば、わずかばかりの年末手当の恩典に浴することも、ほとんど不可能となりまして、年末賞與は名ばかりとなるのであります。もし、真に政府が年末手当を出す意思があるならば、当然免税措置、少くとも分割拂い措置をとるべきであります。  次に地方公務員、教育公務員手当につきましても、單にしかるべく支給すべしというだけでありまして、困難なる地方財政に対して何らの予算措置を講じていないのでありまして、これでは、貧弱なる財政の地方府県におきましては、事実上支給不可能という事態が発生することも想像しなければなりません。  これらの二点を勘案いたしますと、公務員は実際上年末手当の名に値するところの金額をとることは不可能でありまして、この年末手当の名にも値しない賞與を、ぬけぬけと年末手当と称しまして、しかもこれをもつて給與改訂とすりかえんとする本法案に対しましては、わが社会党は絶対反対いたしまして、昨日わが党の提出いたしました給與ぺース改訂に関する法律案をば、公正なる世論の支持のもとに、公務員の生活安定のために、これが貫徹をはかる決意あることを最後に申しまして、反対の意見とする次第であります。(拍手
  21. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 藤枝泉介君。     〔藤枝泉介君登壇
  22. 藤枝泉介

    ○藤枝泉介君 私は、民主自由党を代表いたしまして、ただいま議題になりました年末手当支給に関する法律案賛成の意を表するものでございます。  本法案に関して政府の明らかにせられました意図は、今回の給與が多分に褒賞的な、賞與的な色彩を有するものであつて、最近における職員勤務状況並びに年末を控えた経済事情を考慮した措置であるということであるのであります。先ほどの反対の御討論の中に、このやり方が給與体系を破るというようなことを言われておるのであります。もちろん、公務員給與体系はなるべく簡單であることが必要ではありますけれども、褒賞的な、賞與的な給與については別個に考慮すべきものであろうと考えるのでございます。特に、本年における特殊な事情、すなわち画期的な行政整理のあとにおける公務員勤務状況考えますときに、その精励に対しましては、褒賞的な給與をなすことは十分考えなければならぬと考えるのでございます。また、年末におけるわが国の特殊な経済事情考えますならば、公務員の目下の給與の状況とにらみ合せまして、何ほどかの賞與支給することもまた当然考慮しなければならぬと考えるのであります。  わが党といたしましては、この観点よりいたしまして、国鉄仲裁委員会の裁定の取扱いと関連いたしまして、仲裁委員会の裁定を尊重するとともに、一般公務員に対しましても三千円程度の年末の手当支給すべきことを政府に強く要望し、しかも決議案をこの国会に上程して可決せられたような次第であります。政府はまた、これにこたえまして、非常な努力の結果、今回のこの処置となつたのでありまして、かくのごとき支給に対しまして反対の御意見のあることは、私には何とも納得できないところであります。(拍手)  反対論の要旨の中には、給與ペース改訂を行わないで、それとすりかえておるというようなことを言つておられるのでありますが、先ほども申しましたように、ぺース改訂の問題と本給與とは、別個の問題でございます。もちろん私は、ペース改訂に関しましても、最近におきます実効価格の下落の状況、政府のとりつつあるところ実質賃金の維持向上の施策より見まして、また民間賃金との均衡問題、民間の賃金の最近の支拂い状況から考えまして、名目的な不均衡は漸次解消しつつあると考えるのでありまして、ペース改訂はこれを避けるべきだと思つております。この問題は、先ほども繰返して申しましたように別個の問題でございますので、詳細に論ずることをとどめたいと思います。いずれにいたしましても、ぺース改訂とからみ合いまして、この給與支給にすら反対せられるということには、どうしても納得できないのであります。ことに、この給與には反対だと言いながら、税金をまけろというような御議論をなさるに至つては、その矛盾もはなはだしいものと考えるのでございます。(拍手)またもし支給の額の問題でありますならば、安定経済推進の基盤でありますところ均衡予算実質をくずすことなく支給いたしますならば今回の処置がその最大限であろうと私は信ずるのであります。  かような意味からいたしまして、私は、この法律案に全面的に賛成をするものでございます。(拍手
  23. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 春日正一君。     〔春日正一君登壇
  24. 春日正一

    ○春日正一君 私は、日本共産党を代表いたしまして、この法案反対の意見を表明したいと思います。  二千九百二十円ずつくれるというので、非常にありがたい法案のように見えますけれども、中身を調べてみると非常に迷惑な法案であります。ありがたいに迷惑がつく。  大体、最近の公務員の生活について言いますと、今年の八月の、ある官庁の百九十五人の調べでも、大体一人世帶の平均收入が五千五百円、支出が七千七百五十円、二千二百五十円の赤字になつております。二人家族で、收入が七千五百円、支出が九千円、千五百円の赤字であります。さらに五人家族になりますと、收入一万五百円、支出が一万三千六百円、三千百円の赤字であります。こういう赤字の生活の中で、実際に労働者がどうやつておるかと言えば、借金をする、内職をする、売り食いをする、それもできなくなつて、現在食費を削るという生活をしておるのであります。こういう事実を土台にして物を考えていただかないと、この問題の根本はおわかりにならないと思う。  しかも、この六千三百七円ぺースが実施されたころから見まして、超過勤務手当は未拂いになつておる。あるいは家賃を上げるとか、交通費を削るとかいうような面で、今まで本給以外に拂つておつたものを大幅に削減しておる。こうして食えなくし、現に病人がふえて行つておるという状態のもとにおいて、公務員諸君が賃金の引上げ要求することは当然であります。  九千七百円という数字は、これらの生活の実態、その後の生計費の上昇の状態から考えても、まだ非常に少いものである。全国平均するならば、一万二千円くらいは出さなくてはならないものだと思う。九千七百円という数字では、よほど條件のよいところのものでなくては、やつて行けないと思う。しかも、この九千七百円の要求が出されておる。さらに年末資金、越冬資金という形で出されておりますところの本給の一箇月あるい二箇月分という要求は、これによつて決してよい正月ができるというような意味要求ではなくて、先ほど申しましたような、毎月二千、三千の赤字によつて生じております、全国平均して一家族二百円に近いところの借金を暮れに返して、十二月の給料で年を越したいという最低の要求であるということを、あなた方は考えていただく必要があると思う。  しかも、民間の企業ならば、ストライキもかけよう、サボタージュもやろう、しかし国家公務員諸君は、国家公務員法によつてそれが押えられておる。それができないという状態に置かれておる。ところで、この公務員法をきめるときに、あなた方は一体何と言つたか。われわれは、公務員といえども労働者だ、ストライキの権利を奪うということは憲法の違反だと言つたときに、諸君は一体何と言つた。公務員法によつて、この権利は抑えるけれども人事院というものができて、これが生活のめんどうを見てやる、生活費が五%上つたら、給與改訂勧告するうになつている、これがその権利を奪う代償であると言つておつた。しかし、六千三百七円がきまつて、二月の月には、すでに生計費の指数が五%以上上つておる。それを人事院はすでに勧告すべきものを、現在まで勧告を延ばして来て、この十二月四日というぎりぎりになつて、わずか七千八百七十七円というものを勧告しておる。  この勧告自体が、一般民間ぺースの賃金計算の基礎に比べても――一つの例を言えば、最低生活保障給として三千百五円という計算をしておる。ところが、産業別理論生計費のそれから言えば、一人男子で六千七百七十三円ということになつておる。この基礎で、すでに半分というようなことで計算して、そうして七千八百七十七円を勧告しておりますけれども、その後における物価の上昇、こういうものを考えるならば、これはペースを上げたということには断じてならない。  しかもこういうごまかし的な七千八百円ぺースをすら、これを政府はやろうとは言わない将来物価が上つてインフレになるとか、妙なおどかし文句を言つて上げないと言つておる。そうして、その代償として二千九百二十円をくれると言つておる。二千九百十円と一概に言いますけれども、これは全部を平均してのことだ。大多数を占める下級官吏諸君は、大体二千円――ここのエレベーターの人に私は聞いてみた。私らの仲間で最高千二百円くらいでしよう、こう言つておる。この千二百円から税金を二割引いたら、一体どうなる。千円に足りない金頭になる。  諸君、今の世の中で、十円札くらいやつたつて、少し大きい子供なら、ありがたい顔をしない世の中だ。この世の中に、年を越すのだからといつて千円や千五百円出して、これを褒奨の意味だと言つて恩に着せて、当然上げるべき賃金をこまがし去るというようなことは、欺瞞もはなはだしいものと言わざるを得ないのであります。(拍手)  この点について、増田官房長官は、今年の四月に一〇〇であつたものが今九五くらいになつておるから上げる必要はないと言つておりますけれども政府の統計のでたらめは、吉田さん自体も認めておるというように、新聞も伝えておる。  実際に、去年と今年の生活がどうかということは、あの第六回国会のときに、インフレが收束し、生活が安定して来たという話を、私が工場のおかみさんたちのところに持つて行つたとき、飛んでもないことを言うと言つて、皆怒つておつた。いかなる言葉を使おうと、この生活の現実は、増田官房長官の言うように、生活費が安くなつて、暮しが楽になつたというようなことは示しておらない。これはすべての国民が知つておる。ただ増田官房長官がこう言う、池田大蔵大臣がごう言うということは、超均衡予算とか何とかうまいことを言いながら、結局するところ、低賃金と低米価と重税によつて、いわゆる大企業、銀行家を儲けさせるという方針を貫こうとするためにほかならない。  しかし、あなた方が、低賃金をやれば何とか日本が立ち直ると言つておつたけれども、あの第五国会の論争において、われわれは、首切りや低賃金をやつたら、日本は必ずえらい不景気になるということを言つておいた。まさにその通りだ。この九月、十月から、どうにもならなくなつて来ておるところの貿易の不振と、さらに滯貨の増大、商店及び農村の不景気を考えて見られるがよろしい。諸君の政策が明らかに破綻し、日本を破滅に持ち込んでおることは明らかである。従つて、今日この政策を堅持することは、日本を破滅させる道である。  今日、商人でも農民でも望んでおることは、購買力の増大である。しかもそれが、今までなされたことく、銀行その他につぎ込むための金を出すことではなくして、直接国民のふところに給料として拂い、あるいは税金の軽減として拂つて、国民の購買力をふやすこと、このことによつてのみ今日の不景気の状態が解消されるし、さらに産業の復興ということが考えられる。こういうことを考えるならば、こり二千九百二十円という、わずかなものによつて国民をごまかし去るという政策が、いかに迷惑至極のものであるかということは、だれにも明らかになると思うのであります。  諸君はマッカーサー書簡を引用し、さらに人事院公務員法の活用をうたつておつた。しかし現在、諸君がマツカーサー書簡にある、公務員の生活を保障しなければならないという條項を思い起すならば、さらに公務員法によつて規定された公務員給與を、世間並あるいはそれより少し高いものにあげるということを、はつきりと考えるならば、断じてかかる欺瞞によつて片づけるべき問題ではないと思う。即座に、九千七百円の黄金の引上げと、さらにこの暮れを越すために、今まで積つた借金を返すための越年資金を一箇月分あるいは二箇月分與えることによつて、この危機を打開することに諸君が協力することを心から希望して、私ども反対理由を開陳した次第であります。(拍手
  25. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 島田末信君。     〔島田末信君登壇
  26. 島田末信

    ○島田末信君 私は、民主党連立派を代表いたしまして、ただいま議題となりました国家公務員に対する臨時年末手当支給に関する法律案に対しまして賛成意思を表明するものであります。(拍手)  吉田首相の談話にもありますように、国鉄の裁定案の趣旨を尊重し、それを敷衍いたしまして、国家公務員経済生活を深く考慮いたした結果、この年末手当を出すことにしたということであります。私は、今日の窮乏せる国家財政から見まして、かつまた健全財政を堅持しなければならぬこの実情から推しまして、臨時に出すべき年末手当は、いわゆる国民の血の出るような税からまかなわれたる予算の中から、なけなしの財布を投げ出して、ここに支出して来たところ予算である、かように考えて全面的に賛意を表するものであります。(拍手)  もとより、今日の国民の生活から申しまして、三千円足らずのこの金が、決して満足すべき越年資金だとは思いません。しかしながら、ほんとうに血の出るような金を出した、この金額に対しましては、額の多い少いではなく、その誠意と努力は買うべきであります。(拍手)私は、これに対して反対する理由がわからないのであります。金額は少くて不満であるが、しかし一応賛成しておいて、今後にゆとりのある限り大いに出してもらいたいというなら話はおかりますが、この越年しかければならぬという差迫つたときに、金額は少いからいやだと投げ出したのでは、せつかく越年資金を、ほんとうに首を長くして待つておる国家公務員が、一体どうなるのか。私は、これに反対して、いやだどいう諸君は、真に国民を思つておるのか、あるいは労働者を思つておるりか、公務員皆さんのためを思つてつているのか、まことに疑わしいのであります。(拍歩)いま少し迷設的な気持でまずとるべ、ものはと。それから足らざるところばへ褒に何とか補つて行こうとする、この建設的考え方なくしでば、反対せんがための反対に終るのであります。(拍手)  同時に、この案の旅行につきまして、大蔵大臣は免税はできないと申しております。まことにそうであろうと考えるのであります。しかしながら、何とかして、徴税の原則をみだらない範囲内で、また税の体系をぐずさない範囲内で、制度の許す限り、分割拂いでもしろしいから、まことに一円でもおろそかにはならないところのこの越年資金に対しましては、税金をここでとることは河とかゆろやかにしてもらいたい、かように強く要望して、方法をお考え願いたいりであります。(拍手)さらに、国家公務員は直接生産に従卒しておりませんがゆえに、大いに能率を上げ、努力をいたしましても、その結果が、数学的に利潤を上げるとか、あるいはその能率を数字的に説明できない立場にありますがゆえに、おのずからその待遇も、それみずから改善して行くことは数学的にはむずかしいがゆえに、これはどういたしましても、民間産業であるとか、あるいは公共企業体であるとか、そういつた他の産業あるいは企業の待遇改善とにらみ合せて、今後それに並行した改善を必要とするのであります。幸い国鉄が、今回裁定案に華いて、政府も大いに努カした結果、十五億五百万円を支出することになりましたが今後この国鉄と従業員とが一体となつて大いに業績を上げ、その月目とする独立採算制に十分拍車をかけて、ここに余裕を見出すならば、将来従業員の待遇改善もおりずからなすべき努力義務を持つものと信じますが、そういつた場合に、同時に国家公務員に対しても、なるべくこれと見合いにして、並行した待遇改善が行われるように、私は特にお願いしておきまして、本案に賛成するものであります。(拍手
  27. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 平川篤雄君。     〔平川篤雄君登壇
  28. 平川篤雄

    ○平川篤雄君 新政治協議会は、本案に反対の意見を表明いたします。(拍手)  ただいま大蔵大臣の御答弁に対しまして、すなわちぺース改訂は絶対に行わないという御答弁に対しまして、異常の諸君拍手をもつてこたえられたりであります。政府としてはペース改訂をやらないと言いますが、先般來、いろいろ国鉄その他の労組の諸君の待遇の問題について相当御理解があるやに見えました民自党の諸君の方では、まさかペース改訂反対ではなかろうと期待いたしておつたのでありますが、遺憾ながら、はつきりその様子が見えまして、私どもは、さような意味でこのたびのボーナスが支給せられるりであるならば、まつたくこれには反対せざるを得ないのであります。(拍手)  そもそも、ただいま與党の代表の方から、恩恵的な質與であるという御意見があつたのでありますか、これはまつたく私もの意に反するところである。大体皆さん方は、ただいま銀座その他の目抜きの場所におきまして、数十万円のデコレーションを飾り立てて、そうして混雑しておる、あのありさまは、一つの繁栄であるとはお考えになつてはいないだろうと思う。これは、中小企業その他が血みどろになつて生活苦にあえいでおるのである。しかも、その一角におきまして、命をかけたハンストが行われておつた。これまた皆さんが御承知通りであります。(「胃腸が治つていいのだよ」と呼び、その他発言する者あり)さようなことを言うような冷血な感じが、この給與を成立さしたのである。  大体、そのような命がけの要求をいたしておりますものは、賞與要求しておるのではない。それは、昨年の七月以来集積せられました生活の足らず前を、血みどろになつて要求しておるのであつて、決して皆様方に恵んでもらうような賞與要求しておるのでない。(拍手)それを、そのような意味でおとりになつておるならば、皆様方の感覚はきわめて誤つておる。さような感覚をもつて、この日本経済状態をつかまえでおるならば、それでは放流はできないものだと断言せざるを得ない。  また政府並びに與党の諸君から、しきりに均衡予算の問題を持ち出されておるのでありますが、大体この給與にからみますところの労働問題が、年末にかけて発生するということは自明の華人である。しかも、人事院の方ではちやんと勧告案が出るような様子も見えておつたのであります。しかるに、その最後の最もいい機会でありますところの補正予算について何らの考慮がなされていない。しきりに均衡予算均衡予算とおつしやるけれども、われわれが聞いた均衡予算というのは、もう動かすことのできない――農民がほしがつておる米価も低いところに切り下げて、やらなければならない災害復旧も、六三制予算も全部切り詰めて、もう動かすことのできないものであるというふうに、われわれは聞いておつた。  運賃の値上げにいたしましても、お前たちは反対したじやないかと、皆さん方自党の諸君は言われますけれども、なるほど反対をいたしました。それは給與に充てるべき金だとはわれわれは考えておらなかつた。国鉄の後輿であるとか、あるいは日本の運輸事業を向上させるためのものであると思つておつた。しかるに皆さんが、その一枚看板のようにおつしやつておる均衡予算というものは、一体何ものだ。それが成立をいたしまして二週間もただないうちに、ちよつとそろばんで勘定してなれば、事務費だの何だのといつて、たくさん今度の給與のようなものが出たじやないか。さような、ずさんな予算が、皆様方が大事がつておられる均衡予算の正体である。私どもは、さようなものをたてにして、この給與の問題について反対をせられるのは、まつたく筋が違つておると考えておるものであります。  ただいま、金額の多寡にはかかわらない、その誠意と努力を買うべきだと言われましたが、私どもは、補正予算を組むときにやつておらなかつたために、この際になつて、うろたえた状態しか見ることはできないのであります。  以上のような観点をもちまして、皆さんがこの年末給與の問題をお考えになりますならば、いつまでたつて日本の労働事情というものはよくはならないし、また軌道に便りつつある健全なる労組運動を指導することは絶対に不可能であります。私は、さような意味において、この給与自体について政府並びに與党の諸君考えておられます思想そのものに非常な疑惑を持たざるを得ないのであります。かかる意味給與支給せられるというよりも、むしろ積極的にペース改訂するという決意を、おそらく私は日本公務員諸君要求をいたしておると信ずる次第であります。そのような意味におきまして、私どもは、こたびの年末臨時手当に対しまして編対に反対の意見を表明するものであります。(拍手
  29. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 中原健次君。     〔中原健次君登壇
  30. 中原健次

    ○中原健次君 私は、ただいま議題になつておりまする国家公務員に対する臨時年末手当支給に関する法律案に対しまして、労働者農民党並びに社会革新党を代表いたしまして反対の意見を申し述べるものであるます。  もとより、この手当は、もはや何らの議論の余地もなく、あまりにも当然の給與であり、あらかじめわかりきつた問題であつたのであります。従いまして、この手当支給意味するところには、もとよわわれわれは賛成するものでありまして、その意味するものを反対するのではない。要は、その内容を検討いたしまするときに、その内容が、はたして年末手当意味するものとこたえるべきものであるかどうか、問題の焦点は、まさにここにあるのであります。  現在いろいろ問題になつておりまする論議を聞けば、その額がよし小さかろうとも、出そうというものなら受取つたらいいではないか、こういう論もあるようであります。もとより、この給與意味するものが、当駅一般公務員の生活の足らざるものを補填するところにある以上は、受取るべきものほ必ず受取るべきであるし、また、よしその額がどうであろうとも、受取つたらいいではないかというような論もあるかもしれない。しかしながら、そのことのゆえに、その金頭の妥当性を無視して、問題の焦点を、ただ渡すということでのみごまかし、焦点をぼやかすということは、われわれのとらざるところであります。かかる意味から、年末賞與は、労働者の年間を通しての生活の赤字補填に充当せしむるための意味合いを内容とせなければならないことは、申すまでもございません。  ことに、全官公を初めといたしまする各関係労組は、そのゆえにこそ年末資金の給與方の要請をいたしておるのであります。その要請によれば、大体全官公給與額一箇月、あるいは全専売一万円、あるいは全農林一万一千円、配淡公団、日教組その他大要一箇月分の年末手当要求しておるるのであります。また、民間の各秤企業について資金獲得の状況を調べてみますると、日本石油におきましては一万三千円、地下鉄が一万一千円、日本証券が一万五千円、あるいは正栄印刷が一万八百円、共同印刷の九千二百五十円、あるいは東洋高圧の七千円等、大要一箇月に見合いする程度の年末手当給與されておるのが現状なのであります。しかるにもかかわらず、公務員に対する給與の場合は、その額ははるかに少く、年間の赤字を補填するに役立つには、あまりに少額であることを、われわれは、はなはだ遺憾に存じておる次第であります。(拍手)  政府は、しばしば、今日の賃金問題に関しましては、いわゆる物価の横ばい状態を口にいたしておるのでありまするが、はたして現在の物価事情が、政府の言わんとするような状態に置かれておるかどうか。ことに私は、この給與問題を論議いたしまする場合に、お互いに注目を要する、きわめて重要なる点を申し述べておきたいと思うのであります。  今日、全官公関係給與六千三百七円なるものを、昨年十二月、本会議において決定いたしましたときに、その六千三百円の基準を決定するための、いわゆる物価基準時といたしましては、昨年の七月現在における生計指数、消費物価指数が問題になつておるわけであります。その指数によりますと、昨年七月現在の状況から、これが決定いたしまするまでり十二月、すなわち、その間六箇月の時間が経過いたしております。さらに、大蔵大臣等の口を通じて、しきりに喧伝せられておりまするのは、四月に至つて、この新賃金が、ようやくその軌道に乗るに至つたというのでありまするが、その四月に及ぶまでの岡は、十箇月を経過いたしておるわけであります。従いまして、その十箇月間の長まにわたる時間のずれ、すなわち十箇月間の長さ時間の間、労働者は、その前の三千七百円ベースにとじ込められておつたというのが現状なのであります。そうであるならば、その間の時間のずれかち生ずる勤労者の収入減、この問題は、いかようにして埋め合さんとするのであるか、われわれは、このことをまず政府に聞きたいのである。  そればかりではない。それからのち今日まで、すなわち十二月の今日まで、総計十八箇月間の長きにわたり、いわゆる足らざる給與の中に苦しい生活を続けて参りましたこれらの関係労働者が、この十二月の年末に迫りまして何を要求しておるかということは、いまさら論議の必要もないほど、あまりにも明らかなるところであります。  さらに私は、政府が最近好んで使いまする、また政府が計算上の便宜からり、いわゆるCPIの指数――取扱い上の計算を変更いたしました、いうところのラスパイレス式によりまする指数に基いて考えましても、昨年の七月から翼在り十二月までの、この長き十八箇月間における勤労階級関係労働者の收入減は、実に大幅なるもののあることを、遺憾ながら指摘せなければならないのであります。この長き十八箇月間にわたる時間のずれと給與の差頼りずれを総合舞いたしまするならば、大よそ三箇月間の給與に匹敵する額に相なつておるのであります。しからば、その三箇月間に匹敵する給與の穴埋め、これは一体いかようにして、れにこたえんとするのであるか。われわれは、あえてこの場合、政府にこのことをただしたいと思う。  そればかりではないのでありまして、これらに関連いたしまして、昨年の十二月、給與ペース改訂に際し、少くとも減税の措置が講ぜられなければならたかつたはずでありまするが、政府は、その場合、これをほおかぶりいたしまして、減税措置を講ぜず、今日に撰延いたしているというのが現状であります。従いまして、その間から来る税金の過重、このことも、またあわせて、本年度末の手当に関連する問題として、われわれは計算に入れてなければならないことを指摘いたしておきます。
  31. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 中原君に申し上げます。時間が参りもしたので簡単に願います。中原健次君(続)このような諸関係から、今日置かれておりまする労働階級の消費生活の実情は、まさしく赤字続きであつて、その続く赤字の補填に値するための年末手当が十分に出され得ないとたしましても、少なくともそれに近き額の支給がこの法律案の中に織り込まれるべきはずのものであつたということを、われわれは言いたいのであります。  ただ、最近このような諸状況の中におきまして、ひとり金融資本を中心といたしまするいわゆる大資本家の現状を最も代表的に表現するものといたしましては、七大銀行の上期営業状況のそれがあります。それによりますならば、償却前年換算利益は、前期の二割ないし三割に対し、当期は四割ないし五割という、まことに一段の好況を呈しておりというのが現状であります。なお、この実情かた見れば、政府並びに與党諸君の申しますように、景気がよくなつておるということは、いなみがたいのであります。これは、金融資本を中心とするこららの独占企業の手に、この好況が独占されておるということをわれわれはあわせてここに指摘しておきたいと考えます。このような意味から、この法律案については少なくとも誠意をもつて、その赤字補填に役立つための金額を内容とする年末給與を決定しなければならないし、同時にまた、人事院総裁から勧告されております新資金給與に対しましても、しかるべき考慮を、少なくとも本年度の補正予算を通して証明すべきであるということを強く指摘いたしまして、本法律案反対の意見を申し上げた次第であります。
  32. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) これにて討論は終局いたしました。これより採決に入ります。この採決は記名投票をもつて行います。本案を委員長報告通り決するに賛成諸君は白票、反対諸君は青票を持せられんことを望みます。閉鎖。  これより指名点呼を命じます。   〔参事氏名を点呼〕   〔各員投票〕
  33. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 投票漏れはありませんか。――投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開匣。開鎖。投票を計算いたさせます。     〔参事投票を計算〕
  34. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 投票の結果を事務総長より報告させます。     〔事務総長朗読〕  投票総数 二百八十七   可とする者(白票) 百八十六     〔拍手〕   否とする者(青票)   百一     〔拍手
  35. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 右の結果、本案は委員長報告通り可決いたしました。     〔拍手〕     ―――――――――――――     〔参照〕  国家公務員に対する臨時年末手当支給に関する法律案委員長報告通りに決するを可とする議員の氏名       阿左美廣治君    足立 篤郎君       安部 俊吾君    青木  正君       淺香 忠雄君    麻生太賀吉君       天野 公義君    有田 次郎君       井手 光治君    飯塚 定輔君       池田 勇人君    池見 茂隆君       石田 博英君    石原 團吉君       稻田 直道君    今村 忠助君       岩川 與助君    宇野秀次郎君       内海 安吾君    小川原政信君       小澤佐重喜君   小野瀬忠兵衞君       尾崎 末吉君    小関 義一君       越智  茂君    大石 武一君       大泉 實三君    大上  司君       大澤嘉平治君    大野 判睦君       大橋 武夫君    大村 清一君       岡延右エ門君    岡崎 勝男君       岡田 五郎君    岡西 明貞君       岡村利右衞門君    押谷 富三君       加藤隆太郎君    鹿野 斉吉君       鍛冶 良作君    風間 哲吉君       甲木  保君    門脇勝太郎君       神田  博君    川西  清君       川野 芳滿君    川端 佳男君       川村善八郎君    川原伊三郎君       菅家 喜六君    木村 公平君       菊池 義郎君    北川 定務君       北澤 直吉君    金原 舜二君       倉石 忠雄君    黒澤富次郎君       小金 義照君    小平 久雄君       小玉 治行君    小峯 柳多君       小山 長規君    佐々木秀世君       佐藤 榮作君    佐藤 重 君       佐藤 親弘君    坂本  實君       志田 義信君    清水 逸平君       塩田智四郎君    篠田 弘作君       首藤 新八君    白井 左吉君       周東 英雄君    鈴木 仙八君       鈴木 善行君    鈴木 正文君       瀬戸山三男君    關内 正一君       田口長治郎君    田嶋 好文君       田中 角榮君    田中 哲一君       田中  元君    田中 萬逸君       田渕 光一君    多田  勇君       高木  章君    高木吉之助君       高橋 英吉君    高橋  六君       高橋  等君    高間 末吉君       竹尾  弌君    玉置 信一君       辻  寛一君    坪内 八郎君       占米地英俊君    冨永格五郎君       奈良 治二君    中川 俊思君       中村 幸八君    中村 純一君       中山 マサ君    仲内 賢治君       永井 英修君    永田  節君       夏堀源三郎君    丹羽  吉君       西村 英一君    西村 直己君       西村 久之君    根本龍太郎君       野原 正勝君    橋本 龍伍君       畠山 鶴吉君    花村 四郎君       樋貝 詮三君    平澤 長吉君       福田 篤泰君    福田  一君       福田 喜東君    福永 健司君       藤枝 泉介君    渕  通義君       降旗 徳弥君    星島 次郎君       本多 市郎君    眞鍋  勝君       前尾繁三郎君    前田  郁君       前田 正男君    牧野 寛索君       増田甲子七君    益谷 秀次君       松浦 東介君    松田 鉄蔵君       松野 頼三君    松本 一郎君       丸山 直友君    三池  信君       三浦寅之助君    三宅 則義君       水田三喜男君    水谷  昇君       南  好雄君    宮幡  靖君       村上  勇君    村上 清治君       守島 伍郎君    森 幸太郎君       八木 一郎君    柳澤 義男君       山口喜久一郎君    山村新治郎君       山本 猛夫君    山本 久雄君       吉武 恵一君    龍野喜一郎君       若林 義孝君    渡邊 良夫君       亘  四郎君    逢澤  實君       犬養  健君    大西 正男君       久野 忠治君    小坂善太郎君       島田 末信君    鈴木 幹雄君       田中伊三郎君    團司 安正君       坪川 信三君    寺島隆太郎君       寺本  齋君    中村 又一君       永井 要造君    長野 長廣君       保利  茂君    山本 利嘉君  否とする議員の氏名       青野 武一君    淺沼稻次郎君       井上 良二君    猪俣 浩三君       石井 繁丸君    石川金次郎君       稻村 順三君    今澄  勇君       受田 新吉君    大矢 省三君       加藤 鐐造君    勝間田清一君       上林與一郎君    川島 金次君       久保田鶴松君    佐竹 新市君       鈴木茂三郎君    鈴木 義男君       田中織之進君    堤 ツルヨ君       土井 直作君    中崎  敏君       成田 知巳君    福田 昌子君       前田榮之助君    前田 種男君       松澤 兼人君    松本 七郎君       三宅 正一君    水谷長三郎君       森戸 辰男君    米窪 滿亮君       荒木萬壽夫君    有田 喜一君       稻葉  修君    川崎 秀二君       坂口 主税君    笹山茂太郎君       志賀健次郎君    椎熊 三郎君       清藤 唯七君    園田  直君       高橋清治郎君    中曽根康弘君       並木 芳雄君    長谷川四郎君       舟山 重男君    林  好次君       藤田 義光君    塩田 連也君       柳原 三郎君    井之口政雄君       伊藤 憲一君    池田 峯雄君       江崎 一治君    風早八十二君       春日 正一君    上村  進君       神山 茂夫君    柄澤登志子君       川上 貫一君    河田 賢治君       苅田アサノ君    聽濤 克巳君       今野 武雄君    砂間 一良君       田島 ひで君    田代 文久君       田中 堯平君    高田 富之君       竹村奈良一君    土橋 一吉君       中西伊之助君    梨木作次郎君       野坂 參三君    林  百郎君       深澤 義守君    山口 武秀君       横田甚太郎君    米原  昶君       渡部 義通君    井出一太郎君       今井  耕君    岡山 勢一君       金子與重郎君    小林 進一君       河野 金昇君    竹山祐太郎君       中村 寅太君    平川 篤雄君       船田 享二君    岡田 春夫君       黒田 寿男君    玉井 祐吉君       中原 健次君    松谷天光光君       小林  進君    佐竹 晴記君       早川  崇君    高倉 定助君       中野 四郎君      ――――◇―――――  公共企業体労働関係法第十六條第二項の規定に基き、国会の議決を求めるの件
  36. 山本猛夫

    山本猛夫君 議事日程追加の緊急運議を提出いたします。すなわち、公共企業体労働関係法第十六條第二項の現定に基き、国会の議決を求めるの件を議題となし、この際委員長報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  37. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 山本君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  38. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  公共企業体労働関係法第十六條第二項の規定に基き、国会の議決を求めるの件を議題といたします。委員長報告を求めます。労働委員長倉石忠雄君。     〔倉石志雄君登壇
  39. 倉石忠雄

    ○倉石忠雄君 ただいま議題となりました、政府提出にかかる、公共企業体労働関係法第十六條第二項の規定に基き、国会の議決を求めるの件の、委員会における審議の経過及び結果を御報告いたします。  本件の発端は、本年八月三十日に、国鉄労働組合から国鉄当局に対し、現行給與ぺースを九千七百円に改訂することと、年末賞與金を一箇月分支給すること等の要求を提出いたしたことにあります。この要求に対し、国鉄当局は、国鉄財政の現状その他諸般の状況を勘案いたしました結果、組合の要求に応ずることができないとの理由で拒否いたしたのであります。そこで組合は、九月十四日、この問題を国有鉄道中央調停委員会に申請いたしたのであります。同委員会は、十月十二日に至りまして、給與ースは八千五十八円とし、年末賞與金は支給しないという趣旨の調停案を提示いたしました。ところが、この調停案を組合側は受諾いたしたのでありまするが、国鉄当局は依然として、財政上並びに諸般の事情から、これに応ずることができないと拒否いたしたのであります。  ここにおいて、組合は、さらに問題を公共企業体仲裁委員の仲裁によつて解決しようといたしまして、十月二十八日に仲裁の申請をいたしたわけであります。よつて仲裁委員会は、審議の結果、十二月二日、次のように裁定をいたしました。すなわち一、賃金ベース改訂はさしあたり行わないが、少くとも経理上の都合により職員が受けた待遇の切下げは、是正されなければならない。二、前項の趣旨より本年度においては、公社は総額四十五億円を支拂うものとする。右のうち三十億円は十二月中に支給し、一月以降は賃金ベース改訂のあるまで、毎月五億円を支給する。三、組合の要求する年末賞與金は認められないが、公社の企業体たる精神に鑑み、新たに業績による賞與制度を設け、予算以上の收入、又は節約が行われ、それが職員の能率の増進によると認められる場合には、その額の相当部分を職員賞與として支給しなければならない。という内容であります。  この裁定は、公共企業体労働関係法第三十五條の規定によりまして、国有鉄道当局及び国鉄労働組合の双方をただちに拘束するものでありますが、ここで問題となります点は、同法第十六條に規定されておりますところの、予算上、資金上不可能な資金の支出を内容とする場合であります。この規定によりますると、このような場合は、国会の承認を得なければその効力を発生じないことになります。また、そのような場合には、裁定を国会に十日以内に付議しなければならないことになつております。よつて政府は、国鉄当局の申出に基きまして、四十五億円という支出が予算上、資金上不可能であるかどうかを検討いたし、この金額のうち十五億五百万円以内の額を支出することは不可能であるとの結論に到達いたしました。このような場合には、公共企業体労働関係法第十六條第二項の規定によつて国会の議決を求める必要がありますので、国会意思を表明されたいとの理由で、本月十二日、本件が国会に提出され、十六日に労働委員会に付託されたのであります。  よつて労働委員会は、十八日に会議を開き、すみやかに裁定について審議をすることとし、運輸、人事両委員会との連合審査会を十八、十九、二十日の三日にわたり開催し、引続き労働委員会を開催いたしました。参考人として、公共企業体仲裁委員会より委員長末弘嚴太郎君、委員今井一男君、同堀木鎌三君、日本国有鉄道より総数加賀山之雄君、国鉄労働組合より副委員長菊川孝夫君の出席を求めて事情を聴取し、政府よりは運輸大臣、労働大臣、大蔵大臣、法務総裁の見解を聴取いたしました。  かく質疑を打切り、本日討論に入りましたところ民主自由党大橋武夫君より、附帯條項を付して、仲裁裁定に示された四十五億円のうち十五億五百万円を除く残余を支拂うことについては承認すべきでないとの意見を開陳せられ、民主党第十控室島田末値君よりは、大橋武夫君の意見に同調する旨の意見があり、日本社会党青野武一君、民主党第九控室稻葉修君、日本共産党春日正一君、新政治協議会石田一松書よりは、仲裁裁定に示された四十五億円全額を支拂うべきであるという意見が述べられました。よつて採決の結果、多数をもつて、公共企業体仲裁委員会の裁定中十五億五百万円以内の支出を除き、残余については承認すべきものでないと決し、附帶條項については、採決の結果、多数をもつてこれを付することに決しました。  なお、附帶條項は次の通りであります。一、裁定に関し予算上又は資金上支出不可能面たる部分の金額については、日本国有鉄道は、その公共企業体たる性質に鑑み、将来企業内部における経営の健全化により、独立採算上現実に余裕が生ずる場合において、あらためてその支給につき考慮すること。二、政府は公社の企業体たる精神に鑑み、将来業績による賞與制度を設け、予算以上の収入又は節約が行われ、それが職員の能率の増進によるものと認められる場合には、公社が職員賞與支給し得るよう適当な措置を考慮すること。三、政府一般公務員の待遇についても、現存民間給與に比べて相当低い実情に鑑み、適当なる措置を併せ講ずること。という内容であります。  以上、簡単でございますが御報告いたします。(拍手
  40. 岩本信行

    ○副議長岩本信行君) 質疑の通告があります。これを許します。青野武一君。     〔青野武一君登壇
  41. 青野武一

    ○青野武一君 公共企業体労働関係法第十六條第二項の規定に基き、国会の議決を求めるの件につきまして、ただいま労働委員長から委員会の内容を御報告になりましたが、倉石労働委員長に対しまして、私は一点だけ御質問を申し上げたいと思うのであります。  それは、十二月十七日の本会議におきまして、野党側は、仲裁委員会によつて決定いたしました、あの当事営双方を拘束いたしまする裁定に示されておる四十五億――年内三十億、年を越して新賃金ベース決定まで毎月五億円ずつ支拂うべしという、総額四十五億円を全額支給すべしという野党側の一致いたしました決議案が少数否決になつたのでありますが、與党派の絶対多数は、この裁定の精神を極力尊重すべしという決議案をよせられまして、文字通り絶対多数でこれを決定せられたのであります。  しかるに、公共企業体の今回の新賃金ベース及び年末賞與に関しまする紛争は、調停委員会から仲裁委員会に移されまして、十二月の二日に裁定が下つたのであります。この裁定の下りました十二月二日より十日間の期限内に、これを国会に付議しなければならないのでありますが、政府は、何らの予算措置を講ぜずに、一昨日の午後四時四十五分になりまして、初めて大屋運輸大臣は、十五億五百万円という数字を持ち出して参つたのであります。しかしながら、院議によつて、裁定の精神は極度にこれを尊重すべしという與党派の決議があるにもかかわらず、政府は遂に、公社の内部におきまして、公社それ自身の経理内容において、石炭の節約あるいは修繕の繰延べ等によりまして、公社経営者側と労働者側が一致努力して初めてなしとげる、そういつたやりくりによつて、十五億五百万円というものをせり出したのでありまするが、不可能に属する部分については、與党の裁定尊重の決議文すらも無視して、一銭たりとも、政府予算措置を講じなかつたのであります。この点につきまして、民自党の幹部級であり、重要なる労働委員長を勤めておりまする倉石委員長から、あなたたちの與党が決定した院議を無視せられ、しかも公労法の精神を躊躇したこの政府の行き方につきまして、率直なる御意見が承りたいのであります。(拍手)同じ民自党の諸君と廊下で会いましても、これはわれわれ一部の者は非常に困つておるのだ、大体池田大蔵大臣ががんこで、わからぬから、こういうことになつた、ということを言つておるのであります。(拍手)その点について倉石労働委員長にお尋ねをいたしたいのであります。  今日の労働委員会におきまして、大橋武夫君が附帶決議として出しました、いわゆる三つの事項――裁定の支出不可能の分は、将来国鉄として黒字の出たときには、これを十分考慮するということが第一、第二は、新たな業績による賞與制度を設けようということ、第三は、国家公務員民間給與との均衡をとるために政府は極力善処すべしということ、大橋委員は、十五億五百万円の決定以外の残余額については支出反対だという意見の中に、ただいまの三つの附帶事項をつけて出されましたが、こういうごまかしで、国鉄五十万の労働者に納得するものではありません。この点につきまして、労働委員長の倉石氏の與党が中心になつてやつた院議無視に対しまして、政府に対する率直なるお考え方を承つておきたいと思うのであります。  実は、野党派の要求によりまして、吉田総理において、願つて質問する予定でありましたが、相かわらず議場に総理は出て参りません。どういう御都合があるかしりませんが、国鉄五十万の労働者の死活問題に関するような、この重大案件が付議せられておりまするときに、責任ある総理大臣の出席を見ないということは、はなはだ遺憾であります。従つて私は、労働大臣並びに大屋運輸大臣に、重ねて本会議を通じてお尋ね申し上げたいと思いますることは、あとに残つておりまする(発言する者あり)黙つて聞け。――二十九億九千五百万円の残余額について、関係方面とどういう折衝をなさつたか、この点は、大屋運輸大臣が大蔵大臣とともになされたことでありまするが、発表のできる範囲で――公社の経理と大蔵省の預金部の金が一千数百億円もありながら、これを借り入れてこの問題を片づけるべく、どういう形で努力をしたか。やろうと思えば幾らでも金はある。それをやらないといいことは、政府が労働者の利益をあくまでも守り抜こうとする誠意のない証拠でありまするが、この点について、関係方面との折衝、あるいは経理内容を、発表のできる範囲で発表していただきたいと思うのであります。  なお、国会に議決を求めなかつた十五億五百万円の残余額である二十九億九千五百万円というものを、どうして予算措置をとつて国会に付議しなかつたか。これは法律上の解釈がまちまちでありますけれども、われわれは、あくまでもそれを予算化して、国会の議決を経るべきであるということを考えておりまするがゆえに、本会議を通じて、この点も明らかにしてもらいたいのであります。  なお、右の二十九億九千五百万円という残余額は、これは債務として、あくまでも私どもは残ると思う。この債務として残つたものは、国鉄五十万の労働者が、自分たちの月一千円ずつの赤字――あるいは超過勤務手当が遅れておる。夜勤まかない料が遅れておる。その他物価騰貴等によつて、他の公務員に比較いたしましても、月一人当り千円の損害受けておるのであります。これは、あくまで労働者がもらう権利がある。従つて、これらに対して、本会議を通じて、政府当局に、はつきりこの点を――われわれは債務が残ると思いますが、残るか残らないかを、あらためて言明してもらいたいのであります。  第二は、公労法を御承知通り事実上躊躇した、しかも裁定をも事実上否認しようとしておるのが、この衆議院内の空気であります。公労法ができましたその理由は、御承知のように、公共企業体の従業員が争議権を剥奪せられたかわりに、調停委員会あるいは仲裁委員会を通じて平和的に問題を処理する、そのためには、十六條、三十五條に、はつきり当事者を拘束するということが規定せられておるのでありまするが、一方的な政府法律解釈によつて、結果は公労法を躊躇し、しかも仲裁委員会のこの裁定をも無視しようとしておるのが今日の国会の空気でありまするが、これが日本の労働組合運動に将来與える影響は、はかるべからざるものがあります。單に国鉄五十万の労働組合員だけではありません。組織されておる六十万の労働者だけではない。日本の一千万の労働者が、自己の最低生活権を守るために、合法闘争を通じて闘つてすらも、政府の一方的解釈によつて何ものをも與えられないということになりまするならば、日本の労働組合運動がもし合法運動の線を一歩越えまするならば、それは当然吉田内閣責任であり、與党の責任であると私は考えます。(拍手)この点について、吉田総理に、内閣責任者として、私はお尋ねいたしたいと思いましたが、出ておりませんので、増田官房長官に対しまして、この点をお尋ねしておきます――おらなければ、鈴木労働大臣にお尋ねをいたしたいと思うのであります。  最後に、私は鈴木労働大臣にお尋ねをいたしたいと思いまするが、総合的財政経済政策の一環としての労働行政の給與政策の具体案を示してもらいたいのである。     〔副議長退席、議長着席〕 御承知のように、国鉄の従業員は現在六千百円ベースでありまするが、実際は千円の赤字でありまするから、五千三百円ベースに落されたのと同じであります。しかも、民間の類似産業、私鉄の労働者諸君は、本年の七月に、一万一千七百五十九円の給與をとりております。本年の同じく八月には、私鉄の諸君は一万二千四百円からとつておる。駅長、助役級でも三〇%ぐらいの開きがあるのであります。これらにつきまして、この国鉄従業員と民間の類似産業の労働者との給與均衡をとるためには、一日も早くそれに対する適切な手を打たなければならぬと思います。  なお日雇い労務者のごときは、東京の例をとりましても、約二万人の諸君が、ほとんど五千人程度職にあぶれて失業者でありまするが、二百四十五円の一日の給料から、十円の所得税を引かれ、三円の保険料を取られて、手取りがわずかに一日二百三十二円では、絶対に二、三人の家族で食われない。しかも、国鉄の従業員諸君は、きのうの労働委員会におきまして、今井一男仲裁委員発表によりますると、今日、夜勤手当を百円もらうはずのところを、二十円しかもらつておらない。その差額は八十円であります。一日五万人の諸君が葬夜勤をやつておりますことを考えますると、一日国鉄の労働者が夜勤手当を八十円減額せられておる数字は、一日に四百万円、一箇月に一億二千万円、夜勤をする人たちが差引かれて実際に損害を受けておる数字は、一年に十四億四千万円という数に上つておるのであります。  こういう不公平なことを無理押しにやらさしておいて、出せば出る大蔵省預金部の金さえも出さず、しかも苦しい国鉄公社の経理内容から十五億五百万円を繰出させて、そうして政府は、それ以外は何らの処置か講じないということは、明らかに公労法というものを無親したものであると私は考えまするが、このあらゆる労働政策の面から行きまして、日雇い労働者、国鉄の公務員国家公務員地方公務員、公共企業体の労働者、民間産業の労働者の給與の標準というものを均衡化させるためには、鈴木労働大臣は、労働政策の中で、給與に関するいかなる具体案を持つておられるか、この点をあわせてお尋ねいたしまして、私の質問を終る次第であります。(拍手)     〔倉石忠雄君登壇
  42. 倉石忠雄

    ○倉石忠雄君 青野さんにお答え申し上げますが、ただいまの御質疑は、労働委員長としての私に対する御質問としてはどうかと思いますが、お名ざしでありますからお答えをいたします。  私どもは、先般提出いたしました、このたびの裁定の趣旨を尊重しろという決議案の提案者に相違ございません。そこで、このたびの裁定を尊重する意味において、できる限りあの線に沿うように、党といたしましても政府を督励いたしたのであります。しかしながら、今日の経済の段階においては、あの政府の提出いたしました程度のもの以外はやむを得ないということで了承をいたしたのであります。そこで、私どもが先般提出いたしましたような趣旨に――、あの決議案の趣旨に沿うように、先ほど私が委員長報告の末尾で朗読いたしましたような希望條項を付した次第であります。  なお、私どもの根本理念をお尋ねでありますけれども、私どもの根本的な考え方といたしましては、国民の一部の職業、一部の階級の人々のみの利益をはかるということは、われわれには、できないのでありまして、大局から見て、国変体の経済の状態を勘案いたしましたときに、このたびの政府措置を今日の段階においては適当であると存じて、これに賛意を表した次第であります。(拍手)     〔国務大臣大屋晋三君登壇
  43. 大屋晋三

    国務大臣(大屋晋三君) ただいま青野君の御質問の第一点は、今回のこの裁定案の実行に対して、政府関係当局といかような交渉をしたか、その経路を話せ、こういうことであります。詳細忙申し上げるわけには参りませんが、国鉄の予算の範囲内で、まずどの程度の流用が可能であるかという点に対しまして、当局と熱心にこれを研究討議いたしました点を申し上げてお答えといたします。  第二点は、なぜ予算を付してこれを国会に提出しなかつたかというお尋ねてございますが、これは国鉄の総裁の方からは、政府に対しまして予算を付して参つたのであります。すなわち、十八億は流用が可能で、残余の分は不可能であるというふうな予算が参つたのでありますが、政府におきまして、十分各方面の角度から検討いたしました結果、政府は十五億五百万円が支出可能である、残余は不可能であるという見解に到着いたしまして、それを意見といたしまして、これを付して国会に提出して、付議承認を求める形をとつた次第であります。  なお第三点は、もしも二の十五億余を差引きました残りが、かりに議会において。不承認になつたような場合には、その債権が依然として残るかどうかという御質問でありますが、もしもこれが国会において不承認と相ならました場合には、これは、いわゆる国鉄の両当事者間におきまして、債権も債務もともに削減して、御破算と相なると考えております。(拍手)     〔国務大臣鈴木正文君登壇
  44. 鈴木正文

    国務大臣(鈴木正文君) 公労法の精神を躊躇云々という御意見もありましたが、公労法の十六條によりますと、支拂い可能なものはただちに効力を生ずる、不可能なものにつきましてては、国会の議決をまつて承認されれば効力を生ずるのであつて、一定の手続上の方式も書いてあるのでございまして、その方式に従つて政府措置をいたしたのでございます。でき得る限り可能な部分を多くしようという努力はいたしました。その結果、十五億ということが、この條件のもとにおける、なし得る最大であつたというのが事実でございまして、躊躇というふうなことはございません。  それから、国鉄の賃金、将来の問題につきましては、大屋運輸大臣も言つておりますように、今後その経営を充実することによりまして……     〔「議長定足数が足らぬ」と呼び、その他発言する者多し〕
  45. 幣原喜重郎

    議長(幣原喜重郎君) 静粛に願います。
  46. 鈴木正文

    国務大臣(鈴木正文君)(続) この賃金を充実して行くという方向をとると言つておりますので、その方向をとるべきものだと存じます。
  47. 幣原喜重郎

    議長(幣原喜重郎君) 林百郎君。     〔「定数が足らぬ」「休憩しろ」と呼び、その他発言する者多し〕
  48. 幣原喜重郎

    議長(幣原喜重郎君) 林百郎君。     〔発言する者多し〕
  49. 幣原喜重郎

    議長(幣原喜重郎君) 定足数はあります。審議を進めます。林百郎君――林百郎君の御発壇を求めます。     〔林百郎君登壇
  50. 林百郎

    ○林百郎君 私は、ただいま議題になつております国鉄の裁定に関する件につき、政府に対して次の質問をしたいと思うのであります。  まず政府は、このたびの裁定に対する。国会の承認を求むるにあたりまして、全然その予算的な措置を伴つておらないのであります。このことは、政府の言明いかんにかかわらず、政府は最初より裁定を拒否する意図を持つておつたことは明らかだと思うのであります。ただこの裁定拒否の責任国会に転嫁しようとする惡辣きわまる意図を持つておるものと、われわれは断ぜざるを得ないのであります。そもそも国鉄従業員は、公労法によつて、憲法に保障せられた構築権を剥奪されております。しかるに、これにかわるに調停、仲裁の制度が設けられたものであることは、一九四八年七月二十二日のマ書簡中に「普通公職の場合に與えられている保証に代えるに調停、仲裁の制度が設けられねばならぬ」とあることによつて明らかだと思うのであります。また公労法の一條によりましても、紛争の友好的且つ平和的調整を図ることを目的とするものであり、関係者は最大限の努力を紛争の平和的調整のために盡さなければならないということは、公労法の第一條に規定されているところであります。しかも、このたびの裁定は、六千三百七円ベースという既得権を実際上侵害されているのを補うための補給金の意味での四十五億であります。  そこで私は、こういう前提のもとに、まず第一に増田官房長官に、政府の代表者としてお聞きしたいことは、政府のこのたびの態度は、まつたく紛争の平和的処理を意図しておるところの公労法の精神を躊躇するのはなはだしいものと思うのであります。かくては、将来紛争の平和的な処理を、労働階級がこの公労法によつて求むることは、木によつて魚を求むると同一だと思のであります。従つて、長官はこの点に対していかに考えられておるか。今後の労働者の紛争がいかなる形態になろうとも、その麦責はあげて一切政府の負うべきものであると思うけれども政府の所信はどうか。現に、前日の二委員会の合同審査におきまして、未弘委員長すら、もしこのたびの政府態度のごとく、裁定が躊躇されるようなことが繰返えされるならば、自分は戰を賭さなければならないということを言明しておるのであります。この点について、政府の確固たる所信をお聞きしたいと思うのであります。  その次に、この裁定承認を国会に提出する予算的な処置の裏づけの問題でありますけれども、このたびの政府提案の様式は、明らかに公労法並びに国鉄法に違反すると考えるのであります。それは、まず第一に、裁定の内容におきまして――これは裁定書の十ページに、「公社は経理能力で独自に処理し得べき分は直ちに準備に着手して所定の時日で鵬これを履行し、経済能力を超える部分については、国鉄法第三十入條以下の規定により速かに予算を作成し、所定の手続をとられたい。」ということが明記されておるのであります。また、労働省の賀來労政局長も、協定の承認を求むるのみでは協定の履行は不可能であるから、当然予算改訂案があわせて承認されなければ、実質的に国鉄当局が裁定に拘束されたことにならないと言つております。この裁定の承認には、明らかに予算的な裏づけが必要であることは、政府当局並びに仲裁裁定によつて、従来言明されて来ておるのであります。(拍手)しかるにもかかわらず、これをまつたく無視した裁定の承認を国会に上程した、このたびの形式は、明らかに公労法に違反した上程の仕方と思うが、この点について増田官房長官にどう考えられるか。  第三番目といたしまして、企業の既定の予算上、資金上支出の可能な分に対しては、これは当然支拂わなければなりませんけれども、この既定の予算上、資金上支出可能の分というのは、これは客観的に決定されておるのであります。加賀山総裁は、十八億を、去る十二月十日に大屋運輸大臣まで提出しておるのであります。しかるに、政府は一方的に、これを十五億五百万円に減少させておるのであります。私は、次の点を質問したいのでありますが、いかなる理由に基いて、国鉄の企業の責任者である加賀山総裁が十八億出せると言つておるのに、政府自体がこれを十五億五百万円に削つたか、この点をお聞きしたい。  その次には、この既定の予算上、資金上支出可能の分については、この最高決定権は最高裁判所にあると考えますけれども、将来この最高裁判所の認定が政府の認定と異つた場合に、政府責任並びに措置はいかにとられるか、この点を増田官房長官にお聞きしたいと思うのであります。  その次に、大屋運輸大臣に対しましては、このたびの四十五億の裁定内容のうち、十五億五百万円を除く他の部分に対しては、国鉄当局はいかなる義務を負うかという点であります。先ほど大屋運輸大臣は、公労法の十六條によりまして、政府を拘束するものではないというこの規定を使つて、労働組合の当事者であるところの国鉄当局までが責任を免除されると誓われるのでありますが、ここには大屋運輸大臣の論理の飛躍があると思うのであります。  この公労法の十六條は、もし国会の承認のない場合には、政府は拘束しないけれども、この当事者であるところの国鉄自体を拘束することは、これは公労法の三十五條に、よつて明らかであります。また公労法の三十五條のみではなくして、労働協約によつて、当事者は明らかに仲裁裁定に従うということは、労働協約自体に認められておるのであります。(拍手)すなわち、国鉄並びに労働組合が、仲裁裁定に拘束されるということは、労働協約と、この公労法との、二重の拘束を受けておるのであります。もし大屋運輸大臣が、この労働協約の当事者の協約にまで干渉するということになるならば、明らかにこれは越権行為であると思うのであります。そういう意味で、われわれは、政府は一歩譲つたとしても、一方当事者であるところの国鉄自体は、この裁定によつて国会の承認不承認にかかわらず債務を負うというように解釈しますが、この点について大屋運輸大臣の考えをお聞きしたいと思うのであります。  その次に、大蔵大臣についてお聞きしたいのでありますが、大蔵大臣は、わずか三十億円の融資ができない、貸付ができないと言つておるのであります。ところが、あなたは、口では仲裁の裁定に忠実だと言つている。そして仲教の裁定を読みますと、この経理の内容において、企業の内容において、十分償還は可能である、一部だけ政府から融資してもらえば、この償還は十分可能であるということが明言されておるのであります。すなわち、貨物運賃の値上げによつて、来年度においては、国鉄の企業の中から二百三十億、二百四十億の余裕が出てくる。また石炭の節約によつて四十七億の余裕が出てくる。その他民間団体との契約を節減することによつて十一億出てくる。しかも、国鉄の資産は一兆と考えられております。  しかも日本銀行は、首切り、企業の合理化のための融賢は、民間企業に幾らでも認めている。幾らでも許している。しかるに、国鉄が首を切り、彼らの宿泊料まで上げ、彼らの行く病院の治療代まで上げて経営の合理化に苦心しておるのに、わずか三十億の金が融資できないということは、われわれまつたく納得できないのであります。  しかも政府は、復金の融資に対しては、一千百億円の金を貸し付けたまま、これがこげついておる。しかも法人税は、脱税を追求することによつて二百二十七億もとれておる。また薪炭赤字のごとき、まつたく政府と薪炭卸業者がつうつうで、不正に使われた五十四億の金を、一言も言わずに、これを通しでいるではないか。五十万の労働者に対して、わずか三十億の融資ができないということは、明らかに池田財政そのものは、一切の犠牲を労働者に転嫁し、低賃金と低米価の、この勤労階級の犠牲によつて日本の国をソーシャル・ダンピングの基地とし、日本の国を植民地化するところの池田財政であり、一池田の財政政策のためには、日本勤労階級は白骨に化してもかまわないというのが、池田財政の本質であると思うけれども、この点について池田蔵相の所信を問合いたいと思うのであります。  以上をもつて私の質問を終ります。(拍手)     〔国務大臣増田甲子七君登壇
  51. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 林君にお答え申し上げます。  第十六條第一項に該当する部分につきましては、政府を拘束せずと書いてあるのでございまして、予算措置を講ずべしとほ書いてないのでございます。その意味におきまして、われわれは、末弘委員長法律上の所見には断じて首肯しがたいということは、この前の機会において私が明言した通りでございます。なお、末弘委員長が辞職するとか、いなとかいうようなことは、委員長といたしまして、私はどうかと思うのです。そういうことは、おそらく発言されたのではないと私は確信しております。すなわち、裁定に関する関係の理性的の発言はあるでしようが、感情的の発言にあり得べからざることであると私は思つております。  その次に、この予算上、資金上可能であるか不可能であるかというようなことは、政府の決定すべき、いわゆる行政上の事項でございます。もつとも、客観的事実を認定するということは政府の職責でございまするが、その政府が、客観的に、予算上、資金上、裁定の一部が不可能であるという認定をした場合に、その認定自体の妥当、不妥当は、もとより国会が決定されます。しかしながら、裁判所は、御承知のごとく権利の存否あるいは範囲については、もちろん判断を下されます。権利の存否あるいは範旧が、アソビギユアスである場合、不明瞭である場合、当事者に争いがある場合には、その不明瞭な雲をとり去りまして、客観的事実の探求はいたしますが、権利の発生変更には何ら関知しがたい、そういう権能は全然司法にはない、というふうに、われわれは考えております。(拍手)     〔国務大臣大屋晋三君登壇
  52. 大屋晋三

    国務大臣(大屋晋三君) ただいま林君の私に対する御質問は、四十五億の金額のうち、国鉄の総裁が自己の裁量において支出可能以外の分に対しては政府は拘束されないが、国鉄似総裁は当然拘束されるという御議論でありまするが、これは林君の論理の飛躍でありまして、あの法律をよくごらんになるならば、やはり国鉄総裁は、予算上、資金上支拂い不可能のものに対しては、政府を経て国会の承認がなければ、国鉄の経営当事者も絶対に拘束はされないのであります。(拍手)     〔国務大臣池田勇人登壇
  53. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 林君は、借金をして月給を増してやれと、こういう議論でございまするが、昨年の経済九原則、あるいは経済三原則におきまいては、賃金を上げるための借金は認められておりません。まして、国が借金をして賃金を上げるといことは、経済三原則に反するものであります。もし、そういう放漫なやり方をいたしましたならば、労働者ばかりではございません。中小商工業者も、農民も、みな白骨にならざるを得ないのであります。(拍手
  54. 林百郎

    ○林百郎君 議長、再質問を……(発言する者多く、聴取不能)
  55. 幣原喜重郎

    議長(幣原喜重郎君) 林君の質問は時間を過ぎておりますから……(発言する者多く、聴取不能)自席から簡単に願います。
  56. 林百郎

    ○林百郎君 増田官房長官に私が聞きましたのは、十五億五百万円の範囲が、最高裁判所によつて、支拂い可能の分がより以上ありと認定された、いわゆる債権の範囲が政府の認定より拡大された場合、政府責任の処置をとるか。  また大屋運輸大臣は、国鉄自体はこれに拘束されておる。従つて、国鉄の経理の中で、予算上、資金上支拂いが可能の場合は、当然このたびの三十億は支拂いの義務を国鉄自体が負うものではないかということ。  それから大蔵大臣に対しては、償還が可能だ、経理の内容は堅実だということは、仲裁裁定書にある。十分償還が可能だから、わずか三十億くらいは貸付ができないはずはない。それに対して、国鉄の償還が不可能だと言うならば、国鉄の企業がどんなに不健全かということ。この三点をお伺いいたします。(発言する者多し)     〔国務大臣増田甲子七君登壇
  57. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 林君にお答え申し上げます。十五億五百万円が予算上、資金上可能なりやいなやというようなことは、行政権の範疇に属することでありまして、資本経理の範囲の知ることにあらずとわれわれは確信しております。     〔国務大臣大屋晋三君登壇
  58. 大屋晋三

    国務大臣(大屋晋三君) 国鉄の経理で、国鉄総裁が支拂い可能以外の分に対しましては、これは国会の承認がなければ支拂えないのでありまするから、それですべてのことが林君に御了解願えると思います。(拍手)     〔国務大臣池田勇人登壇
  59. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話の通りに、国鉄は千億円以上の資産があります。資産があるから、措入金をして月給をたくさんにする、こういうことは健全財政の意味からできません。(拍手
  60. 幣原喜重郎

    議長(幣原喜重郎君) これにて質疑は終了いたしました。  討論の通告があります。これを許します。前田種男君。     〔前田秘男君登壇
  61. 前田種男

    ○前田種男君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程になりました公共企業体労働関係法第十六條第二項に基き、国会の議決を求める件に関し、裁定書の通り承認を與えるべしとの意見を強く堅持いたし、以下数箇條の理由により、委員長報告反対の意を表明するものでございます。  今回の裁定は、本年九月、国鉄労働組合が、国有鉄道公社を相手に、国鉄中央調停委員会に申請したのに始まり、同委員会が調停に努めたが、十月二十八日に調停は打切られることになり、組合側は、公労法に基き、仲裁委員会に仲裁を申請し来つたのである。委員会は十分審議の結果、十二月二日裁定をなし、労使双方を拘束する最終的決定をなすに至つたのでございます。裁定の内容は、賃金ベース改訂を認めつつも、政府の対処を見送るため結論を見出していないが、経理上の都合による従業員の受けた貸金切下げ等は是正されなくてはならないと、明確に言つておるのでございます。その意味におきまして、四十五億の支拂いを決定し、年内三十億、一月以降賃金べース改訂まで毎月五億を支給することを決定しておるのでございます。しかるにもかかわらず、政府は、公労法第三十五條の規定に基いて、拘束された部分につきましては、すみやかに公社をして受諾せしめる方法をとらしむべきであつたにもかかわらず、政府は、裁定を発表されるや、暗に裁定を拒否するところの冷淡なる態度をとつて来たのでございます。  今も、増田官房長官は、法律の解釈につきましていろいろ言つておりますか、公労法の解釈は、三十五億において明記されておるのでございます。三十五條の規定を受けまして十六條の規定があることは了承いたしますが、この十六條の規定というものは、言うまでもなく、決定されましたところの――決定に基くところ政府当局の手続を事務的に示しておるものにすぎないのでございます。少くとも、政府並びに国会を拘束するようなこと遠慮しても、最終的に仲裁裁定が確定いたしますならば、その確定の線に従つて政府が忠実に国会に対して予算を提示するということは、当然公労法の示すところの大方針であると言わざるを得ないのでございます。(拍手)  しかも国鉄総裁は、裁定に従つて、支出可能の金額として十八億円を提出し、不可能たる金額二十七億は、追加予算として、借入金をもつて支弁すべく、法規によるところの所要の手続を申請して来たのでございます。しかるに政府は、当然この申請を受理して、予算措置を講じて国会の議に付さなければならない義務があるにもかかわらず、十八億を十五億五百万円に削減し、法規の末梢に、えてかつて理由を付して、みずからの非をのがれて、責任国会に転嫁しようとするところの愚劣きわまる態度が、今回の態度と言わざるを得ないのでございます。  (拍手)  そもそもこの公労法が、昨年審議されるに至つた経過は、いまさら私がここで多くを申し上げる必要はございません。昨年七月、マ書簡によるところの指示によりまして、公労法が形成されるに至つたりでございます。能業権を禁止される反面に、労働者の主張は、団体交渉により、あるいは調停により、あるいは最終的には仲裁の判定によつて法律上確保されるに至つたのでございます。その法律があればこそ、今日国鉄労組は、隠忍自重して、平和的に、法律の命ずる方針に従つて、団体交渉から調停から仲裁と、堂々たる態度をとつて来ておるのでございます。  政府は、昨年公労法の成立いたします当時におきましては、増田官房長官が当時の労働大臣として、罷業権は禁止されるが、その反面に、労働階級の権利は平和的に、最終的には権威ある機関の主張によつて完全に守り得るものであると、幾たびか答弁をしておるのでございます。しかるにもかかわらず、今回のような措置とつたことについては、いかに政府が今回の裁定に対して不誠意な結論を見出したかということは、多く言う必要はないのでございます。裁定に対するところ政府態度は、まつたく法律を無視する無謀の態度と言わざるを得ないのでございます。  国会は、本月十七日、院議をもつて裁定を尊重すべしと議決になつたにもかかわらず、ただいまの委員長報告は、裁定が全然無視されたものと言わざるを得ないのでございます。すなわち、十五億五百万円並びに裁定の三項ないし四項は、すでに公労法三十五條にまつて拘束されたものであるのでございます。この部分に関する限りにおいては、国会審議は必要がないのでございます。国会審議を求めて来たものは、それ以外の点でありまして、その点につきましては、民自党は、希望條項を付して、いかにも裁定案を考慮したかのごとき態度をとつておりますが、結局委員長報告政府與党の態度は、院議を無視するものなりと言わざるを得ないのでございます。(拍手)  国鉄の使命は、いまさら私が多くを申し上げる必要はございません。わが国経済の中心をなすものであり、その経営がよくなるか惡くなるかは、国家経済に及ぼすところの影響大なるものがあるのでございます。去る七月以来、国鉄従業員が協力態勢をとりまして、わずか数箇月の間にしかすぎませんが、経理の面、サービスの面、その他の面に顕著なる実績を現わしたことは、委員会を通じて、政府、国鉄総裁がはつきりと答弁しておるところの内容によつても明瞭であるのでございます。このようにして参つたところの原因は、罷業権は奪われたが、先ほども申し上げましたように、正しき主張はあくまで法律によつて守られるであろうというところの希望があつたからでございます。しかるに、その希望がもし今回の裁定が踏みにじられるようなことになりますならば、何を目標として、五十万の国鉄労働者は、今後進むでありましようか。国会並びに政府が裁定を認めたいという態度は、五十万の国鉄労働者ばかりでなく、全日本の労働階級をどん底に突き落したよ同然でございます。私は、とれから来るところの今後の日本の労働組合運動が、国家の再建の上に、国家の経済の後興の上に、いかなる動向を示すかということについて非常に憂慮せざるを得ない今日の事情であると言わざるを得ないのでございます。われわれは、国家財政の上に、あるいは予算上、資金上において困難なことを知つております。しかし、この困難を克服して、裁定を全面的に承認することによつて、初めて今後、全日本勤労階級が、協力態勢の上に立つて日本再建のために努力するものであるということを、かたく信ずるものでございます。私は、そうした観点に立ちまして、今回の十五億五百万円は、そのうちの内拂いとしての支拂いであると了承いたしまして、債務は依然として継続さるべきものであると信ずるものございます。国家の財政上負担が過重になつた点は、今後労使双方が平和的に従業員の協力態勢を整えて参りますならば優に補い得るものであり、かくしてこそ日本の労働組合運動が建設的になり、労使関係の調整も、平和的に調停、仲裁の制度が確立され、わが国民主化の基礎が着々と築かれて行くものなりと私は信じます。  最後に、政府は、去る七月、行政整理のためには五十四億の金を使つております。しかも、五十四億の金は、国会の承認を得なかつた三十七億という石炭費を流用しているのでございます。吉田内閣は、労働階級を首切るためには費目を流用いたしまして、国会了解も得ることなくして首切りを断行しておるのでございます。しかるにもかかわらず、現内閣は、今回の裁定の内容でありますところの待遇改善ではなく、むしろ既得権の低下の一部の補填にすぎないところの三十億の借入金すら許されないということは、いかに吉田内閣の本質を遺憾なく暴露しておるものであるかと言わざるを得ないのでございます。  重ねて私は申し上げます。裁定を不承認にすることは、わが国民主化の途上、一大汚点を残すもりであり、吉田内閣の反動性を露骨に現わした顕著な事例なりと言わざるを得ないのでございます。(拍手)さらに、公正な裁定が躊躇されんとする、きようのこの日こそ、永久に労働階級は忘れないでありましよう。私は、全日本の労働階級が、この裁定を不承認にしようとするところのあらゆる勢力に対して今後徹底的に抗争することを宣言するであろうことを期待するものでございます。私は、この意味におきまして、委員長報告に対しましては絶対反対意思を表明するものでございます。(拍手
  62. 幣原喜重郎

    議長(幣原喜重郎君) 篠田弘作君。     〔篠田弘作君登壇
  63. 篠田弘作

    ○篠田弘作君 私は、民主自由党を代表いたしまして、本日ここに上程いたされました公共企業体労働関係法第十六條第二項の規定に基き、国会の議決を求めるの件に関し、十五億五百万円の支出を除く残余の裁定については承認すベからずという委員長報告賛成の意見を表明するものであります。(拍手)  国鉄従業員に対する年末手当支給に関する仲裁委員会の裁定が、去る十二月二日、国鉄並びに同労組に対してなされたことは皆様も御存じの通りであります。国鉄当局においては、公共企業体の性質にかんがみ、独自の立場におきまして、鋭意予算の捻出に努力いたしたのでありますが、今日の国鉄の経常内容からは、どうしてもこれに必要なる財源を得ることは不可能であつたのであります。そこで、国鉄当局は、やむを得ず、財源の捻出につき、法律の定むところによりまして、政府に対し必要なる措置とつたりであります。政府は、仲裁裁定の趣旨を十分に尊重するとともに、国鉄従業員諸君の生活の実情を察し、誠心誠意これが実現に努力いたしたのでありますが、公共企業体労働関係法第十六條第二項に定むるところの期日までには、予算上、資金上の具体的措置をとることが不可能であつたため、去る十二日に至りまして、遂に同法第十六條第二項の規定によつて、その裁定を国会に上程いたしたりであります。  この措置が合法的であるということにつきましては、野党各派におきましても相当の異論があつたのでありますが、公労法の定むる期日までに処置するためには、これ以外に方法がないということは明らかであります。わが民主自由党といたしましては、仲裁委員会の裁定の趣旨を尊重するとともに、政府と同様の見解に立つて、国鉄従業員の逼迫せる生活の実情にかんがみまして、これが実現に真剣なる努力を傾倒したのであります。もちろん、政府といたしましても、與党といたしましても、当然の措置でありまして、率直に私たちの心境を申し上げるならば、年末に迫つたこの深刻なる従業員の要求に対しましては、われわれもまた、みずから自己の生活を通じて共感を持ち得るのでありますから、もし企業体そのものの経営が健全であり、あるいは予算上、資金上その支出が可能であるならば、われわれは、国鉄従業員からそういう要求をされる前に、むしろ積極的にこれを支持したでありましよう。(拍手)特にわれわれを深く感銘せしめておるものは、現在の民同を中心とするところの国鉄労働組合運動のあり方であります。六千八百円程度の平均資金が、必ずしも国鉄従業員の満足し得るものでないことは、われわれも十分に承知いたしております。しかるにもかかわらず、従業員諸君は、よく国家の現状を考慮せられこの不満足なゑところのベース問題に触れることなく、年来越冬資金の支給方を懇請しておるのでありますから、われわれもまた、身にしみて同情を禁じ得ないのであります。従つて、組合員のいらだつた気持や、あるいはまた非常なるところの犠牲を拂つて組合の主導権を獲得し、合法的、民主的なる労働運動に向つて漫進しつつあるところの民同派幹部の苦しい立場にも十分なる理解が持てるのであります。特にわれわれが憂慮いたしましたことは、万一ここで処置を誤るならば、せつかく合法的、民主的労働運動に向つて立直りつつある、全国組織労働者 ○八〇%に上る五百三十万の組合員も、また左翼の暴力主義者の扇動によりまして、急進的、破壊的労働運動に追いやられるおそれがあるということであります。従つて、たとい、いかに大なる困難がありましても、政府異常協力一致いたしまして、あらゆる努力と誠意を傾けて、従業員の窮状打開に万全の方策を講ずることこそ、われわれの偽らざるところの願望であり、その心境であつたのであります。無責任なる野党の議のごとく、不誠意であるとか不熱心であるとかいうとは、微塵もないのであります。  野党各党の諸君は、先ほど来、今回の政府の処置をもつて不誠意である、あるいはまた熱意が足りない、ごまかしであるということをしばしば言つております。しかし諸君、もし諸君にして、ほんとうに国鉄の労働者を救うだけの誠意があり、かつまたマツカーサー司令部のオーケーをとるだけの確信があるならば、なぜ四十五億円をそのままにのむという修正案を提出しないか。君たちは、ただ政府、與党の攻撃をするのみであつて責任ある政治家として何もやつておらないではないか。(拍手)政治家の責任というものは、のら犬のごとく、やせ犬のごとく、君たちのごとく、ほえることをもつて終れりとするものはない。みずからが信ずることを、はつきりと政治行動に表わしてこそ、初めて民主政治家ということができるのである。  私は、この際国鉄従業員諸君一般公務委員諸君並びに全国数千万の勤労者諸君に告げたいのである。共産党、社会党、労農党、その他労働者の味方であると称するところの、もろもろのこれらの政党は、すべて―――――である。(拍手)彼らは修正案を提出する一片の誠意も確信もないのであるということを、この際はつきり申し上げたいのであります。  政府並びに與党が、いかに今回の処置に苦心を拂つておるかということは、鬪争に立ち上つておるところの労働組合員諸君自身が、よくこれを知つておられると私は思う。(拍手)また、全国国民もひとしくこれを認むるところであります。しかしながら、以上の努力にもかかわらず、敗戰日本のになう困難というものは何ら軽減されるものではありません。まずわが国の経済を復興し、国民生活を安定せしむためには、どうしてもインフレを克服しなければならないということは自明の理であります。ドツジ氏のいわれた、いわゆる竹馬経済から一日もすみやかに脱却して、地べたにしつかりと足のついた、安定せる経済導かないならば、八千万国民の生活は、それこそまつたく破局であります。しかして、この経済安定の基本的なわくこそ、すなわち昨年十二月、マツカーサー元帥から発せられましたところ経済九原則であり、ドツジ氏の均衡予算であることは、諸君も御存じの通りであります。  われわれも、ここしばらくは苦しきを耐え忍ぶことが妥当であると考えるのであります。従つて今回の問題は、仲裁委員会の裁定と九原則とをいかなる点において調和させるかということに最大の重点があつたのであります。すなわち、政府も與党も、国鉄従業員並びに一般公務員給與ベースが、一般民間給與に比較して低い点は認めながらも、また裁定の趣旨を十分に尊重しながらも、裁定の示す、年内三十億、残り十五億を一月から三月までに分割支給するという案を全部承認し得ない実情は、実にそこにあるのであります。もし、しいて裁定全部をのむとするならば、おそらくドツジ・ラインの変更を求める以外に方法はないのでありましよう。しかし、これは言うべくして行い得ないことであります。  しかしながら、私たちは、何もいつまでも国鉄従業員の給與が現在のままでいいと考えておるものではありません。たとえば、今回不承認となつた分の金額につきましても、債務として残るものではございませんけれども、国有鉄道の企業体たる特質にかんがみ、将来企業内部における経営の健全化により、独立採算上現実に余裕が生じた場合におきましては、あらためて考慮すること、また公社の企業体たる精神にかんがみ、将来業績による賞與制度を設け、予算以上の収入または節約。が行われ、それが職員の能率の増進によると認められた場合におきましては、職員賞與として支給するよう適当なる措置を考慮すること、また一般公務員の待遇につきましても、現在民間給與に比べ相当低い実情かんがみまして、適当なる措置をあわせ講ずることについては、双手をあげて賛成いたしておるのであります。しかし悲しいかな、目下の国鉄経営の実情は、さきに行政整理を断行したにもかかわらず、赤字は依然として続き、第六国会においては、遂に貨物運賃の八割値上げを断行したほか、一般会計から三十億の繰入れすら行わなければならぬ窮状にあることは、従業員諸君が最もよく承知し、理解されておるところであります。  これを総括するならば、日本の現状はひとり国鉄従業員並びに一般公務員のみならず、農民も、中小工業者も、企業家もひとしくそれぞれの困難に直面しておるのであります。敗戰日本経済を復興するということは、口では容易であるが、それは実にはげしいいばらの道であり、水火の道であります。その犠牲と困難に、国民ひとしく勇気をもつてこれを甘受し打開するのでなければ、わが民族の運命を開くことは永遠にできないのであります。幸いにして、関係方面の深き理解と同情により、国鉄職員三千一円、公務員二千九百二十円平均という結果を得ましたことは、政府としても、與党としても、真に最善の努力を盡したものであつて、従業員諸君としても、不十分ながら一応了承していただかなければならないところであります。私は、国鉄従業員並びに一般公務員諸君が、日本経済再建の責任者として深くその責任を自覚せられ、希望と勇気とをもつて日本経済復興に奮起されんことを希望いたしまして、私の賛成討論を終るものであります。(拍手
  64. 幣原喜重郎

    議長(幣原喜重郎君) ただいまの篠田君の発言中不穏当の言辞があつたという申出があります。いずれ速記録を取調べの上、適当の措置をとることといたします。  稻葉修君登壇。     〔稻葉修君登壇
  65. 稻葉修

    ○稻葉修君 私は、民主野党派を代表いたしまして、仲裁委員会の裁定を全面的に承認し、すなわち四十五億全額を支拂うべし、従つて、先ほど報告されました委員長の内容には反対をいたすものであります。  政府及び與党が、十五億五百万円以外は不可能だとし、残余は打切りだ、こう申しますのは、第一に、法律的に見まして違法であり、第二に、財政的に見まして非合理的であり、さらに政治導縣的に見まて、責任きわめて重大であると断ずるものであります。  第一に、裁定の法律的取扱いは、こうなろうかと存じます。裁定は最終的決定であるとは、公労法第三十三條の明定するところであります。従いまして、国鉄公社は裁定に拘束されまして、四十五億の債務を負う。そこで、公社といたしましては、日本国有鉄道法第三十九條第一項の、いわゆる予算作成後に生じた事由に基き必要避けることのできない場合に該当いたします。従つて、同じく同條第一項後段によつて追加予算案を作成することができきることになりますから、国鉄総裁は、それを借入金によつてまかなうという予算をつくつて、十二月十日に、運輸大臣を経由し大蔵大臣に提出いたしたのは、きわめて妥当な措置でありました。そこで政府は、第三十八條第三項により予算を決定して、そしてこれを国会に提出しなければならぬはずであります。それをわれわれ国会は承認いたしまして、そして四十五億を全額支拂う、こうなるのが、法的にきわめて自然であり明白であると思うのであります。  しかるに、これに対してとりました政府の本件の取扱い方は、きわめて形式的であります。公労法第十六第二項は、国会の承認を求めることを要することになつておるけれども予算をつけて出せとは書いてないから、予算をつける必要はないというのが、政府の解釈であり、與党の解釈であります。そういうことは、公労法の精神を忘れた、きわめて上つらな解釈でございます。国鉄の公企業たる性質、すなわち公共性にかんがみまして、争議権を剥奪しているけれども、裁定に最終決定権を與え、そして労使の紛争を友好的かつ平和的に解決しようというのが、本法り根本目的であります。政府のごとき解釈をとつて、ただ形式的に、予算上不可能であるから、これを裸で国会出して、国会が自由に審議してもらいたい、すべて責任国会にあり、政府は知りません、そういうやり方は決して許せないと思ろであります。そういう上つらな、形式論的な解釈のいたし方をいたしましても、それでわが国の労働問題の実質的解決には断じてならねと思うのであります。(拍手)八月三十日以来の国鉄の紛争に関しまして、決定的な解決にはなりません。  紛争の調停ということは、労働者が納得して、そしてよく働き、労働の生産性を高めまして、国民経済の再建に寄與する方向にこれを導くのでなければなりません。しかるに、このたびの政府の公労法第十六條の取扱い方は、本法の重要な制度であるところの裁定委員会の制度を、まつたく無意味に帰する結果を来すのであります。裁定の趣旨、理由を無視し、国鉄労働者に対しましても、また仲裁委員会に対しましても、まつたく必要もないところの戰いをいどむ態度であります。かつて増田官房長官が労働大臣をしておられた時に、この法律はつくられたのでありまするが、そのとき予算をつけて出すべきものと解釈すべきことは、当時言つておられたはずであります。今日いかなる心境の変化を来されたかしりませんけれども、先ほどの林君の質問に対しても、まつたくその解釈は形式的であり、前面を翻しておるのであります。(拍手)  しからば、財政的に見て四十五億出せるか、支拂も手段があるかと申しますならば、あると存じます。十五億五百方円は、国鉄経理の範囲内で可能な部分でありますから、これは問題では、ありません。国会の密談を要せざることであります。問題は、残余の三十余億円である。それが出せるかというのに、出せると思うのであります。国鉄法第四十四條によつて借入れをなせば簡單であります。大蔵省預金部におきましては、資産はすナでに千四、五百億円を越えておるということは、昨日の委員会における大蔵大臣の言明によつて明らかなことであり、そのうち百億を越える部分が自由に流用し得ることも申すまでもありません。従いまして、三十億ぐらいは、私は何でもないと思うのであります。そうすれば、先ほども述べました通り、国鉄法三十九條以下によつて手続をすれば、あとは手続上の問題であります。国鉄総裁がその手段を取つたことは妥当である。しかるに政府が、出せないという理由を掲げるにあたつて、いわゆる九原則、賃金三原則、ドツジ・ラインに衝突をすると言つておりますのは、ま。つたく誤解でございます。まず賃金安定に妨げない理由から申しましよう。  今回の四十五億円は、その性質を見まするに、年末賞與や年末手当のごときものではありません。すなわち、六千三百七円べースを上まわる、プラスの給與ではありません。仲裁裁定にいうところの、待遇の切下げられた部分に対する是正でございますから、いわば過去の穴埋めであります。この点につきましては、裁定書の理由に明記されている通りであります。従つて、何ら新たなる賃金引上げという性質のものではありませんから、三原則に矛盾しないということになる。また国鉄経理の内容は、いわゆる企業の合理化という首切りの結果、明年度以降十分独立採算がとれまして、企業体の経理内容は改善され、黒字となつて参りますから、償還能力は十分あるのである。これも政府は認めており、與党の諸君も認めているはずである。(「それなら修正案を出せ」と呼ぶ者あり)。しからば、借入れをなすということは、まつたく一時の処理でございますから、インフレを促進することにはなりません。決して九原則にもドツジ・ラインにも衝突をいたしません。  かくて、財政上から見ましても十分支出の可能性があるわけでありますから、修正案を出せというお話でありますが、私どもは修正案を出す必要はない。四十五億の裁定案を全部のむということによつてできるわけであります。(拍手)それを出したからとて、決して吉田内閣の賃金政策とさえも矛盾するものではありません。影響を與えるものでは毛頭ございません。  以上のように、法理的に見ましても、財政的に見ましても、四十五億を全額支拂うという私ども立場は正しいものと思うのでありますが、さらに。第三に、私は、政府のこのたびとつ態度が、きわめて無誠意なるものであり、政治的責任を断じて糾弾しなければならねと思うのであります。(拍手)  紛争の発生以来、国鉄労働組合がとつて参しりましたところ態度が、まつたく徹頭徹尾合法的であり、しかもきわめて謙虚であり、最後の望みを、悲壯な決意をもつて仲裁委に託したことは、これも諸君の御承知通りであります。公社も裁定を尊重いたしまして、予算を組んで出しておるのであります。しかるに、ひとり政府及び與党のみが、まつたくそういう裁定を無視いたしまして、無誠意、乱暴きわまりない確度をとつておるのであります。去る日国会に決議案が上程されまして、裁定を強く尊重すべきことは、皆様方の御提案によつて議決されておりますが、政府の懸度は、これに誠意を示しておるとは、私どもには毛頭考えられないのであります。このことは、冒頭述べました通りであります。今日、不安におののく労働者たちが国会につめかけて来ておる。昨日は民主自由党の議員と衝突を演じたということでありますが、外には、この寒空にハンストが行われておる。まことに労働界に一抹の不安を投げかけている次第であります。しかも、このたびの公共企業体労働関係法の適用は、初めてテスト・ケースであり、国際的注目の的ともなつておる次第でありますが、そういう際に、政府情のとつ態度が、かくのごとき法秩序無視の態度であつては、わが国の将来はまことに憂慮すべき状態に立ち至らなければならぬと思うのであります。(拍手)  昨日の委員会におきましても、仲裁委員長辞職の発言があり、事はきわめて重大であります。公共企業体労働関係法存在の意義は、かくのごとくしては、まつたく無意味に帰すわけでありまして、最小限の道徳でありますところの法秩序さえも、政府及び與党は、みずから非合理的にも踏みにじつてしまおうとしておるのでありますが、かくては、社会道義の混乱から、労働力の生産性の低下から、経済再建が不可能に帰することは申すまでもありません。これらの責任は、あげて私は政府及びこの四十五億を全額支拂えないというところ民主自由党諸君にあると断ぜざるを得ない次第であります。(拍手)  最後に、附帶決議のごときは、まつたく子供だましと言うよりほかはありません。この三つの條件は、いずれもこれは裁定内容のうちに盛られておるものであつて、その部分は、国会がこれを議決しようと、否決しようと、そういうことは無関係な部分で労ります。(拍手)しかるに、三つの附帶條件出して来て、いかにも労働者たちに、裁定には盛られていないところの新しい権利を、新しい給與を、われわれの力によつて付與してやるのであるという。がごとき態度をなすのは、欺瞞もでたらめもはなはだしい次第であると思うのであります。(拍手)  以上の理由から、私は、この仲裁裁定を全面的に承認し、四十五億を全額支拂うべしとなすものであり、政府及び與党の諸君の、十五億五百万円で、あとは全部本国会において否決して打切るという感度に対しましては、断々固として反対をいたすものであります。(拍手
  66. 幣原喜重郎

    議長(幣原喜重郎君) 奧村又十郎君。     〔奧村又十郎君登壇
  67. 奧村又十郎

    ○奧村又十郎君 私は、民主党連立派を代表いたしまして、ただいま上程にかかる議案に対し、委員長報告通り附帶決議をも含めまして賛成の意を表し、その意見を述べるものであます。(拍手)  公労法第十六條などの法律の解釈につきましては、この議場においても、意見がはなはだわかれております。また政府と仲裁委員会との間においても、意見が完全に対立いたしております。これら法律の解釈は、どちらが正。しいかと申しますならば、これはどちも正しいという所論が成立つのでありますが、私といたしましては、現在の法律解釈上のいろいろな環境からいたしまして、政府の解釈が正しいといたさざるを得ないのであります。すなわち、予算上、資金上支出不可能として、この国会が議決した場合は、その分については、公社はその債務を免責されると解釈いたすものであります。  しかし私は、ここで法律論を述べようとするのではなく、むしろ問題は、政治的な、また財政的な面からこれを論ずるのが至当であると考えるのであります。すなわち、仲裁委員会がその権威にかけて、ぎりぎり精一ぱいの裁定を出したにもかかわりませず、その一部を資金上、予算上支出不可能なりとして、政府が、これを国会に提出いたしましたその不可能な理由、またわれわれが、この議場において裁定の一部を不承認せざるを得ないその理由、これら政治的、財政的な理由を明らかにいたしまして、国鉄の従業員はもちろんのこと、これら調停または仲裁に携われた方々、国民一般の方々に対して十分に納得させることが問題であると考えるのであります。この納得の行くような説明ができるかどうか、これが本議題の論争の核心であります。この点を明確にすることによつて初めて政府の政治的責任が明らかになるのでありますし、また政府法律の解釈も妥当と言えるのであります。このことは、本院における連日の連合審査会におきましても、仲裁委員長末弘氏、また国鉄の副委員長菊川君からも、ともどもに大いに力説されたところであるのでありまして、私は、まずこの点を明らかにしておきたいと思うのであります。  裁定書に記載されてあるところを読みますと、公社は四十五億円を国鉄従業員に支拂うべしとあるのでありまするが、国鉄公社の本年度の会計において、四十五億円を支拂うということは、これは困難であると、裁定書も認めておるのであります。したならば、この四十五億円を支出するためには、またぞろ運賃を引上げるか、あるいは一部分公社が借入金をもつてまかなうか、二つのうちの一つ、あるいは両方を実行しなければならないのであります。裁定書によりますれば、公社は三十億円を借入金をもつてまかなうべし、この事情をいろいろと述べてあるのでります。また野党の諸君は、これを盛んに主張せられておるのであります。この三十億の金の借入れを政府が認めるか、またこの議場で認めるどうか、この問題が核心であると思うであります。  そこで、来春来政府が実行し、また今後も強行せられんとするところ経済九原則を中心とした均衡財政、経済安定の政策が、いかに徹底的であり、いかに峻嚴であるかということ、これはわれわれは、ときとして忘れることがあるのでありまするが、この認識の度合いによりまして、この議題に対する考え方がかわつて来るので、私は一言せざるを得ないのであります。  すなわち政府は、対外貿易がいまだ正常とは言えず、国内経済また正常とは言えないこの際において、国債、復金債等政府の債務を、一挙に、今明年度を通じまして一千億円以上一般会計から償還せんとするがごとき行き方、また米価において、米価審議会の決定よりもはなはだ安く、酷使食糧の価格と比較すれば不当に安いと思われるような価格をきめようとするこの行き方、こういう実に徹底した安定政策をとろうとしておるのであります。この政策は、従来の財政上の観念からいたしまするならば、とうてい理解のできない底のもおであります。従つて、国内において、農民、労働者を問わず、中小企業者等、あらゆる階層にわたつて相当のむりと困難を受けつつあるのであります。かかる極端とも思われる経済政策が妥当であるかどうかという議論はしばらくおきまして、外国から多額の援助を受けて急速に経済が自立を果たさんとするわれわれとしては、どうしても避け得ない政策であるということは、諸君すでに御存じの通りあります。(拍手)またこの政策は、講和條約を前にして、日本を急速に自立させようとする占領政策に、直接つながつておるということも、御存じの通りであります。(拍手)  われわれに與えられた、この至上命題たる安定政策から考えまして、この国鉄の借入金がはたして容認されるやいなやというのが問題であります。私は、端的に例証を申し上げてみたいと思います。過ぐる第六国会におきまして、われわれは補正予算を議した。その補正予算の中で、食糧管理特別会計に対して、一般会計から百七十億円を繰入れることを議了したのであります。民主党野党の諸君や、また社会党諸君から、この管理特別会計繰入金は外国食糧の増加による一時的にふえる運転資金であつて、この食糧が国内に拂下げられるならば、その資金は回收され返済されるのである、従つて、かかる一時的な資金こそ金融上の操作をすればよいのであつて、直接国民の税金につながる一般会計から支拂わるべきものではないという、当然の理論が出たのではありまするが、あくまで健全財政を強行しようとする立場から、一般会計によつて支拂われたものであります。かほどまでにきびしい安定政策から考えまするならば、来年度、再来年度の利益を見越して、借金をして今年の給與増額に充てるということが、とうてい不可能であるということは、とうてい不可能であるということは、御了承できると思うのであります。(拍手)  社会党諸君は、給與ベース引上げとか、あるいは社会保障の徹底実行とか、反対にまた税金を引下げろと、国民大衆の生活安定について盛んに論議をいたされます。しかし、国民生活の安定は、窮極において国家財政の安定について一言も力説せられないのは、はなはだ遺憾と考えるのであります。(拍手)もつとも社会は、今まで内閣をお持ちになつたことはありますが、残念ながら大蔵大臣をなさつた方が一人もありませんから、今日この政府の財政上の困難と苦痛に対して十分に御理解がないのもやむを得ないかもしれませんが、しかし、内閣打倒を叫んで次期政権をねらわれる社会党としては、私は、これはまことに遺憾であると思うのであります。(拍手)  次に、裁定書の中に特に一貫して強調されておりまする点は、国鉄は公社となり、一個の企業体となつたのであるから、国鉄の従業員諸君は、公務員とは法的にも性格が違う。従つて公務員の給与からは切り離して、企業体として独自の給與考えるべきであるという主張であります。それは、公社が民間企業と同じ企業体であるならば、三十億くらいの金を借りて当然支拂わるべきであるという主張であります。国鉄が公共企業体になつた以上、国鉄従業員の給與が、その従業員の労働の質と量に応じて拂われるという制度、これは法の精神の示すところでありまして、それは当然であり、私もまたこれに賛成するものであります。しかし、公社となつて、また半年たつたか、たたぬ間に、しかもまだ、会計においては公共企業体としての会計法にも確立されていない暫定的な間に、また赤字経理から脱していない国鉄の現状からして、今ただちに公務員と離れた待遇改善を求めるということは、これは容認できないのであります。  裁定書の中に、なお強調しておりまするのは、本年度の国鉄従業員の給與は、実際において月一千円程度の実質賃金の低下であるということであります。この点を共産党の諸君は盛んに言われるのであります。私は、これは一部は了承するのであります。しかし、この裁定書に書いてあることが正しいといたしましても、公社が支出減となりまして節約せられました五十八億円の金は、決して公社から外へ持ち出されるものではないのであります。むしろ、さきの寒冷地手当十数億円の財源として、あるいはまた退職給與金の不足金の赤字埋めに、一般会計から三十億円を持ち込んでおるのであります。また国鉄内の不用不急の財産を一部売却したり、石炭や修繕費を極度に切り詰めまして、ようやくしぼり出したのが、この十五億五百万円であります。要するに、独立採算制を確立した国鉄の会計からは出せるだけしぼり出して行つておるのが、今の従業員の待遇の事情であります。これをもつて諸君が待遇の切り下げたと言われるならば、これは国鉄が、この六月に公社となつて独立したがための、むりの、苦痛の一部を従業員が負担しておるものと言わざるを得ないのであります。しかし、この点は建設的に考えるべき必要があると思われるのであります。  裁定にもあります通り、来年度においては、貨物運賃の引上げと、一方において人員縮減における影響で、相当黒字が出るということを、裁定は申されておるのであります。国鉄が正状態に復旧するならば、戰前のように相当黒字の状態が出現することは、火を見るよりも明らかであります。しかし、それがためには、国鉄従業員諸君の協力にまたなければならぬ。その協力を得るためには、その勤労にこてえるための制度こそ今回の公共企業体の形態であります。従いまして、国鉄の再建が達成され、また正常になればなるほど、従業員諸君は……
  68. 幣原喜重郎

    議長(幣原喜重郎君) 奧村君――奧村君、時間がきました。
  69. 奧村又十郎

    ○奧村又十郎君(続) はつきり公務員とは切り離れて、その熱意努力が直接給與として報いられてくるのであります。この国鉄の独立のための一時の苦痛を、従業員諸君もいばらく忍ばれるならば、国鉄が健全財政になつたときには、国鉄が健全財政になつたときには、諸君の生活を国鉄が守る日が必ず近いと考えていただきたいのであります。  共産党の諸君は、この問題を、ここぞとばかりに取り上げますが、共産党の気持はこの際私はよくわかります。しかし、春日君の言われるごとく、このきゆうくつた財政から出した金を、ありがた迷惑というような破壊的な人間によつては、労組の健全な運営はできないと思われるのであります。(拍手)どうか共産党の諸君は、この労組の苦衷に――このときにおいて、どうか労組を誘惑しないようにお願いいたしておきます。  繰返して、遺憾なことではありますが、仲裁裁定の権威が失われた……     〔「時間だぞ、注意しろ」と呼びその他発言する者多し〕
  70. 幣原喜重郎

    議長(幣原喜重郎君) 奧村君――奧村君、もう時間が来ましたから、演壇からおりてください。
  71. 奧村又十郎

    ○奧村又十郎君(続) 私は、この際に非常に残念に思いまするのは、政治的道義上からいたしまして、かくも仲裁裁定の権威が失われる不安であります。この政治道義的に遺憾な状態は、私として、いまだかつて遭遇したことがないのであります。また、民主的に立ち上がつた労組の合法的の最後の望みであるこの仲裁が、この程度で踏みにじられるとすれば、これまた国鉄五十万の生活のために、まことに不安であり、今後の国鉄労組の動きに対して不安なきを得ないのであります。しかし、この間にあつて、健全財政を立てるならば、仲裁裁定が立たず、一方を立てれば一方が立たず、政府の苦衷また察すべきであります。われわれはまた、この議場で最後の決定を迫られておるのではありますが、あれを思い、これを思い、進退きわまり、政治として、まことに悲哀今日に過ぎるものはないと思うのであります。しかし、この矛盾と悲哀と苦悩こそは、占領下日本が自立するがためのいばらの道であつて日本再建の実現ということを期待して、この案に賛成するものであります。
  72. 幣原喜重郎

    議長(幣原喜重郎君) 聽濤克巳君。     〔聽濤克巳君登壇
  73. 聽濤克巳

    ○聽濤克巳君 国鉄裁定案を否認しようとするような委員長報告に対しましては、日本共産党は絶対に反対しておるのでございまして、われわれは、逆に、あの裁定案の全面的な即時実施を要求するものであります。  国鉄裁定案の今後の議会におきます問題は、最初から非常に――な計画をもつて行われました。第一に、政府は、この裁定案につきまして、いわゆる予算措置を全然伴わない裸提出をいたして参りましたが、その魂胆たるや、初めから明らかでありまして、つまり政府は、自分がこの予算措置に対する責任をとりたくない。しかし、そうかといつて、これを自分の名前でつぶすほどの勇気はない。結局、これを国会に持つて来た。しかし、国会にとりましては、あの予算措置の伴わない、裸提出のこの裁定案なるものは、実際審議のしようのないような状態、こういう形で、迷惑千万にも国会に汚名を着せて、そうして事実はどうかと言えば、国会の中で二百何十名という多数があることに安心しまして、これで何とか政府意思を通そうとする、初めからこういう――計画をもつてつたのが、この度の裁定案だ。(拍手諸君、あれは明らかに国会に対するところの――だと私は誓言いたします。そうして、こういうことに援護射撃を行つたところ民主自由党諸君責任は、きわめて重大であります。  しかし、それにも増して、このたび諸君の意図しておるところの、国鉄裁定を不承認にして、結局のところ、わずか十五億五百万円だけ出そうというこの案は、実はもう一つ重大な問題がある。それは何かといえば、労働者が基本的に要求しておるものは何かといえば、一時金の支給はなくして、九千七百円ベース要求であつた。ところ諸君は、これによつて九千七百円の要求を全部たな上げいたしまして、結局一時金の支給にすりかえて――行こうとしておるのである。しかも、仲裁案にありますところの四十五億のうち十五億を差引いた残りの新たな債務につきましては、あとは――をきめようというのが政府考え方だ。こういうのは、まつたく労働者をペテンにかけるやり方だ。これが第二のやり方であります。  さて、この十五億五百万円ということでありますが、一体、この十五億五百万円というものの出所はどこだ。この出所を考えてみますと、この前に政府は、あの六千三百円ベースの内容になつておりますところの実際の現物給與的なもの、あるいは超過勤務のような手当てのもの、こういうもので当然労働者に支拂わなければならないものを、なんと今までに、仲裁委員会の話すところによりましても、約六十億取り上げているのであります。そうでありますから、六十億のうち、かりに四十五億というものを全額――これは單に年末の六千円だけでなくして、来年の一月以後、月々一千円ずつ拂うという案これを全部支拂つたところで、その実は、政府がすでに取上げた六十億の八割にしかすぎないのであります。  こういうやり方は、国鉄の労働者諸君の窮状を考えて新しい年末賞與支給したというのは、まつたくのうそであります。実はそうではなくて、そのほかにも、七月以降は当然給與ベース引上げなければならぬ。このことは、事実人事院が、一般公務員に対しまして、ベース引上げをとにかく勧告しておる事実によつても明らかでありますが、こういうものによる赤字、一切合財取上げた中から、わずかな、はした金を、一部元へもどすにすぎないのだ。これは新しい支給でも何でもございません。  こういうふうなやり方でもつて労働者を不当に八日しておる今日の状態こそが、事実労働者全体の非常な急迫の状態になつて現れて来ておるのであります。こういうふうにいたしまして、ここに吉田内閣は、明らかに労働者諸君に対しまして、まつたく無慈悲きわまるところの低賃金政策を強行しようとしておることは明らかであります。  ところ諸君吉田内閣は、あるいは国民経済の安定がどうの、あるいは九原則の実施がどうの、あるいは金融財政政策がどうの、貿易政策がどうのと、大きいことを言つておりますが、吉田内閣の実際の政策というものは何かというと、実は労働者に対する低賃金政策以外の何ものでもありはしない。これが民主自由党並びに吉田内閣の一枚看板。しかしながら、この問題は非常にじゆうようである。なぜかというならば、戰争前に、日本の帝国主義者――が、実際に植民地で、低賃金を土台にして、あの侵略的な貿易政策を遂行したことは、今や有名な事実である。事実戰後におきましても、今や吉田内閣の手によつて、これが復活しつつある。だからこそ、吉田内閣の、こういう労働者に対する低賃金政策を、世間では――批評しておる。(拍手)  しかしながら、この吉田内閣の、たつた一つの、とつておきの労働者に対する低賃金政策に対しましては、このたびの年末賃金闘争が明らかに示しましたように、全国の労働者諸君は、もはや、がまんならなくなつて来ておる。事実、国鉄や一般公務員だけではございません。今や、これと並行しまして、民間のあらゆる工場にわたりまして越年資金の闘争が起つていることは、皆さんがお考えになつておるように、この裁定問題が決定したら事態が静かになるどころの騒ぎではなくして、新春とともに、この賃金問題を中心として労働者の一大攻撃が開始されることを明らかに物語る。(拍手)しかも、この労働者の賃金問題を中心にする攻撃の中には何が入つておるか。つまり、吉田内閣の全政策に対する反撃が入つておるのである。私は、こういう裁定案を否認するようなやり方に対して絶対に反対いたします。  最後に一言申しあげたいことは、與党の民主自由党諸君でも、今日労働者諸君に対して、かりに六千円を全部拂つたところで、とても生活の足しには足りないぐらいのことは、よくわかつておるところだ。しかしながら、それにもかかわらず、議会の中で、こうやつて横車を押して、手をたたいて喜んでおられるけれども、一体これは、だれの利益のためにこんなことをやつておるか。それは諸君自身の利益になることですか。あるいは、天下の公党であるところ民主自由党の名誉とになるとお考えですか。決してそうではあるまい。今や、ワン・マン・パーテイの名前にはずかしからぬ、明らかに諸君は吉田茂君の御ためにこれをやりつつある。(拍手)  こういうふうなことになつておるのでありますが、諸君は今でも議会内の絶対多数をただ一つのたのしみとして、絶対多数だといつて喜んでおる。しかし、諸君の背後を見たまえ――諸君の背後を見たまえ。今や食確法の問題だけで、諸君は全国の農民に顔出しができなくなつてしまつた。このたびの問題で、全国の労働者諸君に顔出しができなくなつてしまつた。このたびの問題で、全国の労働者諸君に顔出しはできなくなつたじやないか。(拍手国会におきましては、民主野党派から共産党に至るまで、全部手をつないで諸君反対しておるじやないか。また新聞の論調だつて、決して諸君には有利ではないはずだ。あの吉武君や、あるいは鈴木労働大臣が、しきりに敬意を表しておるところの民同派の諸君つて諸君には反対して来ておるじやないか。(拍手)こうなつたならば、一体絶対多数だと言つたつて諸君を支持しておるのはだれなんだ。なるほど、たつた一つあります。これは民主連立派であります。しかし、これがどんな用になりますか。この問題を中心にして、今や民主自由党並びに吉田内閣と国民の全階層との闘争が迫つて来ておることを、これは明らかにしておる。しかも、この――勝利がいずれの側に上るか、これも、今や私がここで言うまでもないことであります。  これで私の反対討論を終ります(拍手
  74. 幣原喜重郎

    議長(幣原喜重郎君) 石田一松君。     〔石田一松君登壇
  75. 石田一松

    ○石田一松君 私は、新政治協議会を代表いたしまして、ただいま議題となつております、政府より議決を求められた、公共企業体仲裁委員会の裁定中、十五億五百万円以内の支出を除き残余について、公共企業体労働関係法第十六條第二項の規定により、国会の議決を求める、この案件につきまして、十五億五百万円以内の支出を除いた残余の金額全額に対して、すみやかに政府はこれを支拂うべし、こういう観点に立ちまして、ただいまの委員長報告通りに議決することについて、まつこうから反対意思を表明しようとするものであります。  さて、今回の案件を審議いたします過程において、われわれが明らかにすることができました点は、政府並びに政府與党は、公労法の第十六條並びに三十五條を、議員の多数という横暴をもつて、まことに不当に解釈をし、政府與党のいわゆる自由意志によつて、理不盡な解釈をしておるという結論を得たのであります。  なぜかと申しますと、ここに三十五條にいうところの書の規定は、先般この壇上から私も関係当局に質問いたしましたことく、第十六條の第一項のみをさすものと解釈するのが妥当であります。しかも政府は、この案を出して議決を決めておるのでありますが、どう議決しようとするのか、意思がわからない。しかも、現在政府が支出しようとするところの十五億五百万円というものは、明らかなことく、公共企業体労働関係法における十六條の條文にはまつたく該当しないどころの既在の予算あるいは資金の面で支出可能なものでぼございます。であるとすると、残余の面の、いわゆるその他の残額は、政府が拘束され、公共企業体がこの裁定に拘束されて、労働者に支拂おうとする意思があり、支拂い現実に行おうとするときに、初めて本案を国会出して承認を求めれば、それでいいのであります。まつたく政府が、この支拂い可能な部分だけは、国会の承認を経ずして支拂う能力を持つておる。  しかも、この十六條においては、予算上、資金上不可能な支拂いの内容を含んでおるものは、国会の議決を求めてこれをやらなければならぬ。こういうのであります。にもかかわらず、政府は、これを強引に、不当に、多数をたのんで解決した結果、現に、もし諸君が今この残余の額を支拂うべからずと議決したといたしますと、政府が議決を求めて来た案件は、本衆議院において、今わずか三十分か四十分の間に否決されて、この議案というものは、衆議院で消滅してしまうのであります。消滅したこの案そのものを、衆議院に今参議院に送付しようとするものであります。消滅した案件、否決された衆議院の案件を参議院に持つて行くという、実に衆議院開関以来、奇々怪々、まつたく驚き入つたる衆議院の法的無知、手続の無知を暴露する結果になるのであります。  私は、こうしたむりな解釈をすることによつて、最後の最後まで、修正であるべきものを訂正だと、強引に数をもつて押し切り、しかも、いよいよここで諸君がこの案件をそつくり否決し去り、不承認となつたあかつきには、この議案がなくなつたものを、そのまま参議院に持つて行くという、まことに醜態を演じなければならぬ。私は、まことに悪いことはできないものだという昔からの古い言葉を、ちよつと政府與党に承りたいと思うのであります。  さて私は、この案件の審議におきまして、最初から政府並びに與党は、まつたく全額を支給するとか、この裁定を尊重するというような意思もなければ誠意もなく、その努力すらなされなかつたということを、はつきり知つたのであります。なぜかと申しますと、ここに提出されております政府意思は、支拂い可能なる部分の十五億五百万円についての支拂いのみでございまして、その他の残額については、何らの誠意を持つた努力がなされていないという事実であります。(「うそをつけ」と呼ぶ者あり)うそをつけというお言葉がありましたが、もし政府並びに與党において、この全額を支給するという誠意と努力があつたのでございましたならば、先日のこの議場において、われわれ野党各派が連合いたしまして共同提案した、裁定の全額を支給すべしというこの決議案に対して、自分の名前が書いてある青い名札を持つてこの壇上に来て、反対意思表示をわざわざなすつたのは、今尊重しておるのだ、初めから全額支給努力したのだという政府並びにその與党の諸君ではありませんか。(拍手)それにもかかわらず、この国鉄の予算の中でやりくりのつく範囲の十五億五百万円程度をこの年末に支給するだけで、裁定を尊重し、誠意を持つて全額支給努力をしたと、はたして言い得るでございましようか。日本語の、尊重とか誠意とか努力とかいう言葉は、そういう意味で使用すべきものではないということを、はつきりこの際銘記せられる必要があると私は考えるのであります。  さて、本案を法律的に申しましても、本裁定の四十五億円のうちから、可能なる支出の十五億五百万円を差引いた残余の金額全額をも支給すべきでありまして、政府は、すみやかにその予算措置を講ぜられて、国会にこれを提出し、その審議を求める義務を負うものであると、私たちは確信をしておるのであります。  私は、賃金の安いために生活にあえぎつつも、合法的な手続と手段によつて闘い続けて来た国鉄労働組合員諸君に敬意を表しますとともに、他の一般公務員よりも、はるかに低い安い賃金に甘んじて、過去において忠実に自分の職務を全うし、しかも、この全うした国鉄従業員諸君が、二の年の暮れにあたりまして、ただ一つ――唯一の頼みでありました仲裁委員会の裁定をまで、この国会において否決され、しかも減額され、一人頭三千円ばかりの、わずかな金額を支給されるだけでは、これこそまつたく、すずめの涙であり、焼け石に水というような性質のものであります。私は、労働者諸君の窮状に対して、心から同條を禁じ得ないものであります。  彼らの法律上與えられたる権利を守れ、労働者が法律上與えられたるところの権利を、国会は国民の代表の機関として守らなければならぬということを絶叫いたしまして、私は、ただいまの委員長報告に対して反対をし、十五億五百万円を支給した残余の金額全額をもただちに支拂う措置を講ずべきであるという意見を申し述べて、われわれ新政治協議会委員長報告に対する反対討論にかかるものであります。(拍手)     ―――――――――――――     〔参照〕  本案の審議の課程において明らかになつたことは、国鉄の今年度の予算中、今年の残り十日と、来年の一月、二月、三月の、国鉄総予算の四分の一しか残つていない予算の中でさえ、人件費以外の費目から、十五億五百万円を人件費に流用できるという事実を暴露したのである。これは、ドツジラインによる変更不可能の予算であると、かねがね政府説明した本年度予算中には、あにはからんや、節約可能なる冗費を含めて編成してあつたという国民のそしりは免れません。  さて、民自党の附帯條件なるものも、これは自己の理不盡なる今回の言動について、さすがに良心的に悩んだ結果、この不必要な條件をもつともらしくくつけて労働者諸君を欺滿しようとしている、幼推なるトリツク以外の何ものでもありません。この附帯條件の内容は、先ほど稻葉君が指摘したことく、仲裁委員会の今回の裁定の四つの項目、第一項の後段と、第三項に、附帶條件より以上明確に記載してあります。附帯條件として、附帯決議としなかつたことでも、その誠意が疑われる。この点は、昨日の合同審査の際、私より、運輸大臣、労働大臣、その上念のため法務総裁から答弁を求めたのに対して、法務総敷から、今回の裁定を国会が艇決することに関係なく、これらの項目の効力は、裁定の効力として当事者を拘束するものであるとの、明快なる答弁を得ている問題で、民自党の諸君の中のある委員は、この答弁をさえ、あいまいなるものにしようとするがごとき意味質問をしていたのであります。     ―――――――――――――
  76. 幣原喜重郎

    議長(幣原喜重郎君) 小林進君。     〔小林進君登壇
  77. 小林進

    ○小林進君 私はただいま上程されておりまする案件に対し、農民協同党、労働農民党、社会革新党を代表いたしまして、反対の意見を申し述べんとするものでございます。  この歳末の寒空に、争論権さえ奪われた、働く官公労企業体の労働者諸君が、まさに最後の、生くるための死の抗議を続けておりまするうこうした問題について、われわれが、今この国会において、こういう賛否の意見を申し述べなければならぬことを、はなはだ悲しく存ずる矢第であります。まさに民主政治の国会は国民の生活に直結するというのでありまするが、これがはたして国民に直結いたしておりまする国会の姿でございましようか。  私は、これらの上程せられました案件について、そもそも政府が本件に対し重大なる違法行為をあえてしている点を、まず第一に断じて承認しがたいのであります。すなわち、公労法第三十五條、同十六條により、政府は仲裁委員会の裁定案を国会に付議してその承認を求めたが、その後、企業体内部において、一部、十五億五百万円の支出がが可能になりまするや、この部分を除外いたしました三十億円のみについて国会の承認を求めて来たのであります。しかし政府は、この一部上程をもつて、修正にあらす訂正なりと強弁いたしておるのでありまするが、これは詭弁もはなはだしいのであります。  訂正とは、單に字句その他内容にわたらざるものの眠臨を正すことであり、修正とは、その内容に関するものであります。四十五億を承認するか、三十億承認するか、実に六・三制の学校設備費に該当する厖大な数字が浮き上つておるにもかかわらず、あえて国会法第五十九條を無視してこれを上程しているがごときこり違法性について、われらは断じて承認することができぬのであります。多数の威力を借りて法律を無視し、国会を軽視するこの政府態度に対し、われらは、民主主義擁護の立場より断固反対せざるを得ぬのであります。  そもそも労働問題に関する限り、政府態度には一貫せるものが二つ含まれておるのであります。その一つは、憲法無視、法律軽視の態度であり、第二は、働く労働者の犠牲の上に国家を再建せんとする方策であります。  吉田内閣は、政権をとりますやいなや、公共企業体労働関係法なる法律をつくつて、働く労働者に與えられた三つの基本権利――団結権、交渉権、争議権の三つの中の最も重大なる争議権を奪つてしまつた。しかも、その言い訳としてその代償として、仲裁委員会あるいは人事院等の法律を制定いたしまして、あくまで仲裁委員会の中立性と超党派性あるいはその尊厳を裏づけして、もつて労働者の権利を守ることを約束いたしたのであります。しかるに、一つを奪えば二つを奪う、あくまで徹底的にしぼりとらんとする独占資本主義的の凶暴性を発揮して、このたびは、みずからつくつた仲裁委員会人事院等の構成と中立性と立法の精神を踏みにじつて、單にこれを政府の詭機関であるかのごとくに軽視して、もつて勤労者諸君の生くる最後の権利をも奪わんといたしておるのであります。  かつてギロチンは、みずから絞首台を発明するととむに、みずからがその絞首台の第一番目の受刑者となつて死んで行つたのであります。今の吉田内閣は、みずからつくつたその法律を、みずから無視し、みずすからその尊嚴を奪わんといたしております。(拍手)遠からず吉田内閣はギロチンと同樣の運命に陷らんことを、私は、はなはだ恐るるものであります。  今や労働者諸君は、年越しの生活不安に、国をあげて悲痛の叫びをあげております。これに対し、政府は一貫して冷たい目を向けておるのでありますが、この内閣の性格こそ、いわば王者の立正像でなければならぬのであります。六千三百円ベースで、はたしてこの物価高の中に暮して行けるかどうかは、あなた方みずからの胸に手を当ててお考え下されば、よくわかるのであります。しかるに、某省の某職場で、現在の実態黄金をよく調査いたしましたら、六千三百七円ベースは、その案態は四千二百四十円である。その平均年齢は二十五・五歳である。これが現在の賃金ペースの実態であります。しかるに、年越えんとする今日、わずかに與えられんとする四十五億円までも、これを否定しているのであります。わずかに十五億円の金を用意したからといつて、それを、さながら路傍のこじきに数枚の金を投げ與えた王者、貴族のごとく、いわば恩義を着せておる。あるいは、この與えた金でかん酒を飲め、故郷へ帰つて餅をつけなどということは、これすなわち、こじきにわれみを與えると同等の気持であります。  われわれ勤労者は、こじきではありません。政府にあわれみを請うておるものではありません。憲法で定められた当然の権利として要求しておるのであります。四十五億の裁定は、仲裁委員会権威を維持する意味において、働く者の法律に根拠した当然の要求に対して支給さるべきであると思うのであります。今や、年越しの不安に投げ込まれた組織ある労働者諸君の怒りは、真に最高潮に達しております。しかも、農村においては、食確法等に基いて、真に声なき農民の怒りが大地にしみ込んでおります。しかも都会では、中小商工葉者は、この重税と不当なる課税のために、半分は倒れ、なおかつ倒産の瀕死の状態にありながら、生くるための最後の憤りを、声なき声で今政府に向つてつております。おそらく二月、三月には、この中小高工業者の重税課税の面から、ほんとうにわれわれの予想せざる重大なる事態が惹起するであろうことを、はなはだおそれているのであります。  怒れる農民、怒れる中小商工業、その先鞭を勧めて今立ち上つたこの労働者、勤労者諸君の正当なる要求に対し、せめて政府は、深い反省のもとに、ただちに四十五億の支給に着手せられんことを切に要求いたしまして、  私の反対演説にかえておく次第であります。
  78. 幣原喜重郎

    議長(幣原喜重郎君) 聽濤克巳君から、先刻の同君の発言中不聽当の言辞があれば、その措置議長に一任するとの申出がありました。右御了承を願います。  これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。本件の委員長報告は、公共企業体仲裁委員会の裁定中、十五億五百万円以内の支出を除き残余について承認すべきものでないと決したものであります。本件の採決は記名投票をもつて行います。本件を委員長報告通り決するに賛成諸君ほ白票、反対諸君は青票を持参せられんことを望みます。閉鎖。  氏名点呼を命じます。     〔珍事氏名を点呼〕     〔各員投票〕
  79. 幣原喜重郎

    議長(幣原喜重郎君) 投票漏れはありませんか。――投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開匣。開閉。  投票を計算いたさせます。     〔参事投票を計算〕
  80. 幣原喜重郎

    議長(幣原喜重郎君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。     〔事務総長朗読〕  投票総数 二百四十五   可とする者(白票) 百五十六     〔拍手〕   否とする者(青票)  八十九     〔拍手
  81. 幣原喜重郎

    議長(幣原喜重郎君) 右の結果、本件は委員長報告通り決しました。(拍手)     ―――――――――――――     〔参照〕  公共企業体労働関係法第十六條第二項の規定に基き、国会の議決を求めるの件を委員長報告通り決するを可とする議員の氏名    阿左美廣治君  安部 俊吾君    青木 孝義君  青木  正君    淺香 忠雄君  淺利 三朗君    麻生太賀吉君  有田 二郎君    井手 光治君  伊藤 郷一君    飯塚 定輔君  池田 勇人君    池見 茂隆君  石田 博英君    石原 圓吉君  稻田 直道君    今村 忠助君  岩本 信行君    宇野秀次郎君  植原悦二郎君    小川原政信君  小澤佐重喜君   小野瀬忠兵衞君  尾崎 末吉君    尾関 義一君  越智  茂君    大石 武一君  大泉 寛三君    大澤嘉平治君  大橋 武夫君    大村 清一君  岡延右エ門君    岡崎 勝男君  岡田 五郎君    岡西 明貞君 岡村利右衞門君    加藤隆太郎君  鹿野 彦吉君    鍛冶 良作君  風間 啓吉君    片岡伊三郎君  甲木  保君    上林山榮古君  神田  博君    川西  清君  川野 芳滿君    川端 佳夫君  川村善八郎君    菅家 喜六君  菊池 義郎君    金原 舜二君  倉石 忠雄君    黒澤富次郎君  小金 義照君    小平 久雄君  小玉 治行君    小山 長規君  佐々木秀世君    佐藤 榮作君  佐藤 重遠君    佐藤 親弘君  坂本  實君    塩田賀四郎君  篠田 弘作君    首藤 新八君  周東 英雄君    鈴木 仙八君  鈴木 善幸君    鈴木 正文君  瀬戸山三男君    關内 正一君  關谷 勝利君    田口長治郎君  田嶋 好文君    田中 角榮君  田中 啓一君    田中  元君  田渕 光一君    高木吉之助君  高橋 英吉君    高橋 權六君  高橋  等君    竹尾  弌君  玉置  實君    中馬 辰猪君  塚原 俊郎君    辻  寛一君  坪内四八郎君    苫米地英俊君  中村  清君    中山 マサ君  仲内 憲治君    永井 英修君  永田  節君    夏堀源三郎君  西村 直己君    根本龍太郎君  野村專太郎君    橋本 龍伍君  畠山 鶴吉君    林  壤治君  原 健三郎君    原田 雪松君  樋貝 詮三君    平澤 長吉君  廣川 弘禪君    福井  勇君  福田 篤泰君    福田  一君  福永 健司君    藤枝 泉介君  渕  通義君    降旗 徳弥君  本多 市郎君    眞鍋  勝君  前田  郁君    前田  正君  牧野 寛索君    増田甲子七君  益谷 秀次君    松永 佛骨君  松野 頼三君    丸山 直友君  三池  信君    三浦寅之助君  三宅 則義君    水田三喜男君  水谷  昇君    宮幡  靖君  守島 伍郎君    森 幸太郎君  八木 一郎君   山口喜久一郎君  山村新治郎君    山本 猛雄君  吉武 惠市君    龍野喜一郎君  若林 義孝君    渡邊 良夫君  亘  四郎君    逢澤  實君  犬養  健君    大西 正男君  奧村又十郎君    久野 忠治君  小坂善太郎君    田中不破三君  圖司 安正君    坪川 信三君  寺本  齋君    中垣 國男君  長野 長廣君    保利  茂君  堀川 恭平君    山崎 岩男君  山本 利壽君  否とする議員の氏名    青野 武一君  淺沼稻次郎君    井上 良二君  猪俣 浩三君    石井 繁丸君  石川金次郎君    稻村 順三君  大矢 省三君    加藤鐐五郎君  勝間田清一君    上林與市郎君  久保田鶴松君    鈴木茂三郎君  鈴木 義男君    田中織之助君  堤 ツルヨ君    戸叶 里子君  土井 直作君    中崎  敏君  西村 榮一君    前田榮之助君  前田 種男君    松澤 兼人君  三宅 正一君    水谷長三郎君  森戸 辰男君    山口シヅエ君  荒木萬壽夫君    有田 喜一君  稻葉  修君    金塚  孝君  川崎 秀二君    坂口 主税君  笹山茂太郎君    園田  直君  高橋清治郎君    中曽根康弘君  並木 芳雄君    畠山 重勇君  林  好次君    増田 連也君  村瀬 宣親君    井之口政雄君  池田 峯雄君    江崎 一治君  早風八十二君    春日 正一君  上村  進君    神山 茂夫君  柄澤登志子君    川上 貫一君  河田 賢治君    苅田アサノ君  聽濤 克巳君    今野 武雄君  砂間 一良君    田島 ひで君  田代 文久君    田中 堯平君  高田 富之君    竹村奈良一君  土橋 一吉君    中西伊之助君  梨木作二郎君    林  百郎君  深澤 義守君    山口 武秀君  横田甚太郎君    米原  昶君  渡部 義通君    井川一太郎君  石田 一松君    金子與重郎君  小林 信一君    河野 金昇君  笹森 順造君    竹山祐太郎君  平川 篤雄君    船田 享二君  岡田 春夫君    黒田 寿男君  玉井 祐吉君    松谷天光光君  大石ヨシエ君    小林  進君  佐竹 晴記君    早川  崇君  小平  忠君    高倉 定助君      ――――◇―――――
  82. 幣原喜重郎

    議長(幣原喜重郎君) お諮りいたしたいことがあります。内閣から、広島地方專売公社調停委員会委員に中原健次君を委属するため議決を得たいとの申出がありました。石申出の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  83. 幣原喜重郎

    議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつてその通り決しました。     ―――――――――――――
  84. 山本猛夫

    山本猛夫君 日程第一、自由討議はこれを延期し、明二十二日定刻より本会議を開くこととし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
  85. 幣原喜重郎

    議長(幣原喜重郎君) 山本君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  86. 幣原喜重郎

    議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。  本日はこれにて散会いたします。     午後七時四十五分散会。