○
猪俣委員 法務総裁から
係検事に対して、特に
注意を促してい
ただきたいから申しますけれ
ども、この
告訴人加藤金次郎氏は
ただの一ぺんも金銭で
解決しようということは言
つたことはない。現在に至るまで
自分の
心血を注いでつく
つた現物を返してもらいたいというのが、終始一貫たる熱情であ
つて、これは
日発でも、
検察庁でもわか
つておるはずであります。
ただ金の問題を言い出しては
事件を今日まで延引して来て、
解決されておらぬというのが実情であります。
加藤氏はこの
水力電気の堰堤をつくるのに対しまして、英、米、仏の特別な特許をと
つておりまして、英、米、仏の
法学博士の称号も持
つておる
わが国水力電気界の元老であります。この人が
自分の持
つておる
私設鉄道から全部売り払いまして、この
大牧発電所に、ときの
戦時下電力需要に応ずべく、
心血を注いで一万四千キロしか出ないものを一万八千キロ出るように改造した、そのとたんにとられて
しまつたのでありますから、その
恨みは察するに余りあると思うのでありまして、かような
人たちに対しましても、もつと
政府といたしましても、懇切丁寧にこの
善後策を講じてやるべきじやないか、しかるに今日
足かけ三年にな
つても、まるで取
調べをしておらぬで、これを放置しておる。それにおいていろいろの
疑惑——日発に買収せられておるのではないかというような
疑惑さえ飛び出して来ておるのであります。そこで私
どもははなはだ遺憾に存ずるのでありますが、こういう
戦時中の
事件に関しまして、申し立てられたるものに対しましては、すみやかに
政府も特別な
配慮をいたしまして、
民事にしろ刑事にしろ、特に
検察庁のごときは
法務総裁が最高の
責任者であられるのでありますから、
係検事に対しまして、すみやかに事を善処するように御指示願いたいと思います。それには何よりも
本人の
恨み骨髄に徹しますところの
告訴の事実につきまして、事の
真相をすみやかに糾明するように特別なる御
配慮を願いたいと思うのであります。この
事件に対しまして、この
意味を
法務総裁に要望いたしまして打切りたいと存ずるのであります。
次に同じ
日発に関するところの
事案でありますが、これは過
日日本社会党に正式に
陳情書を持
つて参りました。それは長野県
木曽谷における
中国捕虜虐殺事件調査書、この
調査書に基いて
国会においてしかるべく善処してもらいたいということを
華僑商会、
留日華僑民主促進会の
代表者が四、五名参りまして私に
陳情したのであります。そこで事が
国際関係にもなりますことでありますし、われわれとしてはあることはある、ないことはない、とにかく
政府といたしましそも事の
真相を明らかにして、そうしてこういう
疑いを持
つておるところの
中国人に対しまして事を秘さないで、明々白々に
答弁し、また非は非と認めて陳謝し、慰藉を講ずる道があるならば慰藉するというような道をとらねばならぬのではないか、われわれは
シベリア引揚げ同胞の問題を熱心に
調査しておるのでありますが、
中国から見ますならば、
戦時中における
中国捕虜の待遇につきましては、多大なる
関心を持つことは理の当然でありまして
真実なりやいなやはわかりませんにいたしましても、かような団体からこういう正式なる文書が出て参りまして、
国会に
陳情に参りましたからには、われわれもこれを否認することができないがために、一言御質問申すのであります。この件につきましては、先般も
田中委員から質問せられたのでありますが、いずれ
調査の上というような御
答弁があ
つたかと記憶しておるのでありますが、この
華僑商会の
代表者が参
つて訴えました事実は、これは
戦時中の一九四二年から一九四四年の間のことであるそうでありますが、
中国人の
捕虜千五百名が、
日本発送電株式会社木曽川水系の
御嶽水力発電所建設工事に使役せられた。そうしてこの
御嶽発電所は
土建業者である
間組、
飛島組及び
鹿島組、熊谷組というような
人たらに
工事を請負わされたそうでありますが、そのうちこの
中国人捕虜が千五百名、内訳は
間組が四百名、
鹿島組が八百名、
飛島組が百名、このほかに
木曽の上松の
工事関係者が百八十名、約千五百名であります。これらがおのおのこの
発電工事に使役されてお
つたのだそうでありますが、
うち終戦後帰国した明らかなものが約五百名であ
つて、残りの千名というものが今日行方不明であるというのであります。そうして当時のこの千五百名のうちで、正式に
工事現場の役場に
死亡者として届けられておる者が四十三名にすぎない。あとは
やみから
やみに葬られてしま
つておる。そうして当時の
捕虜の
返還業務に当
つてお
つた木曽福島の
勤労動員署においても、
捕虜に関する書類は一切焼き捨ててしま
つてわからぬという
答弁を言
つておるのであります。しかるに
付近の多くの
人たちの証言によりますれば、ほとんど毎日数人ずつの
死亡者が出ておる。しかしその
死亡者の大
部分は届け出ない。しかも毎日数人ずつ出てお
つたにかかわらず、
死亡届では同じ日に死んだように書いておるのは一人もない。その事由についても
あいまい模糊としておるというふうなことを
付近の村民でも言
つておる。その他トンネルの中で殺されたのを見たという者もあるというふうな
事情でありまして当時の
食事についても、詳細な
調べは出ておるのでありますが、非常に
食事が貧弱で、そのために夜盲症や
皮膚病患者がほとんど大
部分である。宿舎も疊がなくて、
砂糖袋の
アンぺラを敷いて寝て、
夏冬を過してお
つたというようなことが詳細に出ておるのであります。
患者につきましても、医者はほとんど見てくれない。死んでから死亡診断書を書くだけだということも出ておるのであります。そこでなおこういう生活に耐えかねまして、暴動を起したことがときどきあ
つたそうでありますが、この首謀者といわれる者はどこかに連れ去られて、そのまま帰
つて来ない。なおまた集団逃亡が前後三回あ
つたそうであるが、その都度これは失敗してつかま
つた。
付近の人の言いますところによれば、そのうちの三人の俘虜の様子は見てお
つた者があ
つて、警防団か何かが取締りに出てお
つてつかま
つたそうでありますが、これは大震災時代と同じように、とび口で頭をぶち割られてお
つた者があるということが報告されております。その他非常にこまかい報告が出ておるのでありますが、かような事実につきまして、
政府においてはお
調べにな
つたことがあるかないか。
調べたことがあるならばどういう実情であるか。彼らが訴えますことが荒唐無稽のことであるかどうか、もしまた多少事実なりとすれば、これに対して
政府はいかなる
態度をとろうとするのであるか、これは
国際関係にわたりますはなはだ重大な問題でありますがゆえに、
政府の所信をお聞きしたいと思うのであります。