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1950-04-13 第7回国会 衆議院 法務委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年四月十三日(木曜日)     午後二時九分開議  出席委員    委員長 花村 四郎君    理事 押谷 富三君 理事 角田 幸吉君    理事 北川 定務君 理事 田嶋 好文君    理事 山口 好一君       佐瀬 昌三君    眞鍋  勝君       武藤 嘉一君    石川金次郎君       田万 廣文君    加藤  充君       世耕 弘一君  出席政府委員         検     事         (民事局長)  村上 朝一君         検     事         (中央更生保護         委員会事務局         長)      斎藤 三郎君  委員外出席者         專  門  員 村  教三君         專  門  員 小木 貞一君     ————————————— 四月十二日  札幌地方裁判所及び同家庭裁判所の各小樽支部  昇格に関する請願苫米地英俊紹介)(第二  三三二号)  矯正保護作業運営及び利用に関する法律制定  反対に関する請願川西清紹介)(第二三五  五号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  土地台帳法等の一部を改正する法律案内閣提  出第一四六号)  更生緊急保護法案内閣提出第十三五号(予)  保護司法案内閣提出第十三六号)(予)     —————————————
  2. 花村四郎

    花村委員長 これより会議を開きます。  本日はまず更生緊急保護法案及び保護司法案一括議題といたし、質疑に入ります。質疑の通告がありますからこれを許します。田万廣文君。
  3. 田万廣文

    ○田万委員 ただいま議題になつております更生緊急保護法案について、少しく政府質疑したいと思います。  大体本法案の出て来ました提案理由を拝見しますると、まことに時宜に適したといいますか、そういう感じを深くする法案だと思うのでありまするが、なおここでまず参考のためにお尋ねいたしたい点は、いわゆる犯罪を初めてやつた、いわゆる初犯者といいますか、その初犯者が刑の執行終つて、ほんとうの意味再犯をやつた者が統計上どのくらいありますか、これが一つ。それから次には、いわゆる累犯になりますが、たびたび犯罪を繰返しておる者、また累犯をやるというような者の数がパーセントにおいてどのくらいあるか、これが一つ。それから次には、刑の執行猶予中の者で犯罪行つた者が、犯罪者の中でどれだけのパーセンテージを占めておるか、これが三です。次には、起訴猶予処分を受けた者にして犯罪を犯した者がどれほどおるか。いわゆる本件の取扱いを受けるべき客体の人々に対する統計学的なものをお知らせ願いたいと思います。もし今すぐにおわかりにならなければ次会でもその点はけつこうであります。
  4. 斎藤三郎

    斎藤(三)政府委員 それでは調査の上申し上げることにいたします。
  5. 田万廣文

    ○田万委員 それではその次に質問いたしたいと思います。大体この法案を拝見しますると、いわゆる提案理由にも書いてあります通りに、強制力を伴わない緊急適切な法的保護措置ということが目的となつていると思うのでありますが、はたしてこの法案目的としておりまするがごとく、本人からの申出によつてこの仕事が円滑に所期した効果をあげ得られるかどうかという点について、お尋ねいたしたいと思います。
  6. 斎藤三郎

    斎藤(三)政府委員 あるいは効果をあげるという点から申し上げますと、もう一歩進んだやり方が徹底いたすのかもしれませんが、新しい憲法建前で刑の執行を受け、全責任を果した人々、あるいは検事認定だけで犯罪ありという嫌疑を受けた人、この人たち犯罪者として遇するということは、新しい憲法精神に反するものと考えまして、本人の自発的な意思によつて保護を行うということにいたしたのでございまするが、なおこの条文におきましては、本人身柄釈放いたします際に、刑務所長本人に、こういう制度があるのだ、またこういう手続があるのだということを知らせなければならないということにいたしてございます。なおまた弁護人方々が、現在でも毎日のように観察所の方においでになりまして、自分が弁論してあるいは執行猶予になつた、こういう者について、身柄の引取人がないというような場合について、いろいろ御相談を受けておるような状況でございまして、相当の成績をあげるまで、また本人が知らないで本法保護を受けないということはないように規定いたしてあるのでございます。
  7. 田万廣文

    ○田万委員 私が懸念いたしまするのは、この法案をずつと拝見しますると、かりに本人申出があつた場合においても、いろいろと煩瑣な手続もあるらしいし、それから飛躍して、本人がこういう更生保護施設を利用したいという申込みが存外少いのじやないか。私はりつぱな法律ができても、これを非常に懸念するわけなのです。それを利用するかつて犯罪者、あるいは執行猶予の者、あるいは猶予処分を受けた者などが、こういうふうにしてほしいという申出を勇敢にして来るかどうか。私の思うのは、おそらく政府考えていらつしやるほどたくさんの申出はないのじやないかと思うのでございますが、この見通しについて御答弁願いたいと思います。
  8. 斎藤三郎

    斎藤(三)政府委員 申し上げるまでもございませんが、この司法保護の発祥を申し上げますると、刑務所満期囚釈放する——仮釈放のない時代でございますが、そういう場合に、行きどころがないという場合に、いかにも忍びない、こういうので、明治の初年におきましては刑務所の構内に別の房をつくりまして、そこに一時収容したことがございました。その後明治二十二年でございまするが、さような別房の制度がなくなりまして、各刑務所が実際に困りますので、刑務所が中心になりまして、刑務所の近傍に民間の有志と篤志家を説いて、保護会というものをつくつてあるのでございまして、現在でも各刑務所が、大体一個以上の保護会刑務所の近くに持つておるのでございます。そして実際に本人釈放になつて、出しても行きどころのないという場合には、刑務所長が進んでさような保護施設紹介して、そこにせわをさしておつたような実情でございまするので、まずさようなことはなかろう、かつて戦争前全国で千以上の保護団体があつたのでございまするが、現在、ことに終戦後、この司法保護のあり方につきまして、一時どういうふうにしていいのかわからぬような状況があり、また経済事情が非常に変革いたしまして、従来この方面に理解を持つておられた方々経済界弱者になられまして、この事業に対して浄財が集まらないというようなことになりまして、現在では二百余り、実際におきましては二百足らずという数になつておりまして、この法案が御可決になれば、全力をあげてさような施設整備充実をはかりたい、そして要望に応じたい、またその必要があるものと考えておる次第でございます。
  9. 田万廣文

    ○田万委員 私が割に申出が少いのではないかという疑念を持つに至りました理由は、本法案の第十三条を拝見しますると、大体これらの人の保護に対するいろいろな費用は、本人及びその扶養義務者がその費用負担するということになつておるように拝見いたします。大体この条文自身から考えて、裕福な家庭の子弟でない気の毒な犯罪者、これらの人の親族、——もちろん金がないから犯罪者になつたのでありましようが、その本人から費用をとるということに至つては、まことにけつこうなお話であるが、申出する人は少いような結果に実際はなつて来るのではないか、こう思うのです。むしろこれは相当費用もいりましようけれども、国家全額負担をしてやるというところまで徹底しなければ所期の目的は達成せられないのじやないか、かように考えるのでありますが、この点に対する御答弁を願いたい。
  10. 斎藤三郎

    斎藤(三)政府委員 まことにごもつともな御指摘でございます。その点につきましても、私ども十分考慮いたしまして、この条文をごらんになりまするとすぐおわかりの通りに、この費用徴収につきましては、強制的に執行する条文をつけておらないのでございます。ただ建前といたしまして、国家せわによつて完全に社会更生して十分余力があるという方は、この法律目的が真にりつぱな社会人をつくり上げる、こういう意味でございますので、さような真に更生した方は進んで費用国家に払つていただきたい。またそれによつてこの事業の盛大を期するという意味合いで、一応の建前としてここにこういう十三条の規定を置きましたが、さような御指摘の点も十分考慮いたしまして、非訟事件手続強制徴収規定条文を置かなかつた次第でございます。
  11. 田万廣文

    ○田万委員 それから法案をずつと拝見しますると、たとえば更生保護は、本人申出があつた場合においては、少年保護観察所長または成人保護観察所長がその必要があると認めたときに限り行うという文言もありまするし、また今の費用の問題につきましても、その費用負担することができないと認めるときはこの限りでないという、この認めるというのが、ある場合においては、今申し上げたように少年保護観察所長あるいは成人保護観察所長、これに検察官とか、あるいは刑務所所長などの意見も加わると思うのでありますが、私はこの点に対しては、さらにいわゆる民主主義国家にふさわしい法案をつくるために、特定した官僚的な人だけの意見で決定するのではなくして、民間代表者意見、たとえば民生委員と申しますか、犯罪をやつた人間をよく知つており、家庭事情をよく知つておる民生委員、そういう人たち意見をしんしやくして、ただ検事とか、あるいは刑務所所長とか、そういう人たち意見だけで決定するということは、私ははなはだおもしろくないと思うのでありますが、この点に対してどういうお考えをお持ちになつておりますか。
  12. 斎藤三郎

    斎藤(三)政府委員 かような規定を置きましたのは、全国多数の保護団体において、しかも国費で支払うという関係でございますので、いつのまにか保護しておつたというようなこと、あるいは全然知らなくて、あとになつてそういうことがわかつたというようなときでも、実際の費用の支給の上におきまして、適否がいかがかというところから、各地責任を持つ観察所長に一応この義務を預けた。しかし実際の運営にあたりましては、最も民主的に各方面の御意向を聞きまして、そして遺憾のないように運営いたして行きたい、かように存じております。
  13. 田万廣文

    ○田万委員 話がころつとかわるようでありますが、過日私は浮浪者いろいろ生活実態上野並びに浅草橋、秋葉原方面を歩きまわつて調べたのでありますが、これらの人は、非常にまじめにあすの生活のために働いていらつしやるのであります。実に気の毒な生活をやつております。まじめなそういう人たちがこういう苦しい生活を営んでおるにかかわらず、間違つた人であつてもそれは更生させなければいけませんが、一方はこういう法律によつて保護せられる。一方はまじめに働いておりながらむしろの家もなく、寒いときに火をたいて、そして道ばたで夜を明かしておる。こういうような皮肉な社会現象につきまして、浮浪者というようなものも、これまたあるいは生活苦のために犯罪を敢行するかもわからない。まじめに働いてもなお働き切れないような場合にはどういうことをするかわからない。そういう危険性がある気の毒な浮浪者人たちに対して、政府はどういう考えを持つておりますか。
  14. 斎藤三郎

    斎藤(三)政府委員 この点については、あるいは厚生省の方からお話を申し上げるのがよいかと存じまするが、私はこの法案に関する関係において御答弁申し上げたいと思います。生活保護一般保護でございまして、これもあるいは生活保護だけでよいのではないかというようなことも、一応厚生省とも十分検討いたしたのでございまするが、現実の問題におきまして、犯罪者であるとはいえ刑務所に収容して、そして満期になつて出て参る。すぐに生活保護法保護の手が伸びるかと申しますると、いろいろな関係で実際問題においては伸びない。それで昨年の七月、犯罪者予防更生法ができまして、仮釈放者については十分の指導と保護ができ、再犯の防止上ある程度の効果をあげて来ているように、またさように努めて参つたのでございまするが、満期釈放者が実際上は保護関係がよくなくて、一番再犯のおそれが多いにかかわらず、犯罪者予防更生法がそれをカバーし得なかつたというような実情にありまして、犯罪者予防更生法が施行直後から、この問題をどうするかということが各地関係官庁の話合いでもいろいろ問題になつてつたのでございます。また実際の統計を見ましても、刑務所を出てから六箇月以内が非常に再犯の率が多いのでございます。一年、二年とたつて行けば、その率が非常に少くなつて参つている。あるいは別個の原因から犯罪を犯したのではないかということも考えられるくらいでございまして、いかがいたしましても、この六箇月の期間がよいか、あるいは七箇月がよいのか、さような点は別といたしまして、刑務所を出て直後の期間刑事政策的な面から適切なる手を打たなければならない。さような点から本法ができて参るわけでありまして、さような刑事政策の点を別といたしますると、御指摘のような人々に対する一般保護と同様に扱つてよいと思うのでございまするが、本法はさような刑事政策の点に十分重きを置きまして、さような点からこの法案が組み立てられておる、かように存じております。
  15. 田万廣文

    ○田万委員 ただいま政府の御答弁によりますと、大体釈放せられてから後半年内に再び犯罪を繰返す、あるいは起訴猶予処分を受けた人間はその期間内において犯しやすいとの御答弁がありましたが、そういう意味から考えまして、この法案は、表面を見ると人間味のある社会政策的な法案ということが言い得ると思いますが、また反面考えると、再びこういう人間犯罪を犯さしてはいけないという刑事政策上の意味が多分にあります。その意味から言つて、これは思い過しかもしれませんが、犯罪防遏のためにことさらに刑務所所長、あるいはその係の検事が、釈放する際こういう制度があつて、ありがたいお説教をして、そしてひつぱり込んで、社会から六箇月なら六箇月隔離するというような行方になりはしないかと思うのです。新憲法のもとにおいて、表面人権の擁護というような点から、あり得べからざる問題でありますけれども、いろいろ出て来る法律を拝見いたしますと、表面はきれいだが、裏面はいろいろおもしろくない法案もありますので、特にこの法案は、私の思い過しかもしれませんが、そういう点があるのじやないか。だから悪く考えれば、検事が話をして、こういう法律があつて、六箇月くらいであるし、これはこういう設備があるのだから、そこへ行けとか、あるいは刑務所所長がそういう言い渡しをして、本人意思がなくても行かしめるようなかつこうをとるというようなことが、われわれとしてはうかがわれる。これがお尋ねしたい根本的な問題です。その点に対してはつきりした御答弁を願いたい。
  16. 斎藤三郎

    斎藤(三)政府委員 御指摘のように、さようなことが起りますると、特に新しい憲法のもとで申訳のない次第でございます。この法律は、規定といたしましては本人の自由なる意思によつて選択するということになつておりまして、その運用におきまして、さようなことの絶対にないように万全の措置をとるつもりでございます。名案等がございますれば十分承りまして、遺憾なきを期したいと存じております。
  17. 田万廣文

    ○田万委員 私の質問はこれで大体終了をいたします。なお疑問が起つた場合には、再質問を留保いたしておきます。
  18. 北川定務

  19. 加藤充

    加藤(充)委員 部分的な条文を追うて質問をさしていただきますが「六月をこえない範囲内において」ということは、更新というようなことはないのでしようね。
  20. 斎藤三郎

    斎藤(三)政府委員 更新ということは考えておりません。
  21. 加藤充

    加藤(充)委員 第四条の「必要があると認めたときに限り、」というのと、第十三条の保護を受ける資格と言いますか、能力の問題との関係はどうなりましようか。私は今更生緊急保護法案条文を引いているのですが……。
  22. 斎藤三郎

    斎藤(三)政府委員 「必要があると認めた」というのは社会通念でございまして、また今日まで長いこと司法保護事業をいたしておりまして、そのあとを引受けていたすものでございまするが、刑務所を出て行くところがない。あるいは場合によつては国へ帰る帰宅の旅費もない。あるいは夏入所いたしまして冬出て行く。そして適当な防寒の衣服もない、かような場合にこの保護が行われるのでございます。なお御指摘の十三条というのはどの点でございますか。
  23. 加藤充

    加藤(充)委員 その費用扶養義務者から徴収しなければならないというようなことが書いてあるでしよう。
  24. 斎藤三郎

    斎藤(三)政府委員 これは、主として考えられますのは、観察所が必要があると認めまして、収容施設に委託して、そして一日百円なら百円という国費保護施設に支給いたしまして、本人をある期間保護いたします。その結果その人が完全に更生し、社会人としてりつぱに成功して、十分そのときの費用国家に支払うことができるという場合に、本人あるいはまたその扶養義務者から徴収するという規定であります。
  25. 加藤充

    加藤(充)委員 必要があるというような認定が先に及んだ場合において、その認定が非常にかつてなことが行われることは、前例に徴して明らかであります。それであとからその費用扶養者にぶつかけて行くというようなことになつて、そのことのために、非常に圧制的な負担がかかる、そのために悩むというようなことが往々にして行われやすいのです。原則的には上の方が必要だと認定しても、それは負担能力のあるということが条件になるのか。もし認定があつて、必要があると認めた場合が条件ということになれば、私は第十三条の「徴収しなければならない。」というような事柄自体が、何か矛盾して来るような気がするのです。これをもつと一元的に、十三条の負担をするというような措置は、むしろ四条規定があり、それが一方的に全民間人関與なしに、官僚がかつてにやられるというようなことであれば、十三条なんというものは、保護という立場から考えれば、削つていいのではないかと思いますが、どうなりますか。
  26. 斎藤三郎

    斎藤(三)政府委員 この事業は、従来の非常に長い歴史を持つておりまする犯罪者の免囚の保護という事業からの新しい形をここに考えた次第でございまして、きわめて高い人類愛人道愛精神からこの事業が行われなければならない、かように存じております。それでこの十三条及び四条規定は、四条はその刑務所を出たという場合に、本人が着のみ着のまま、何ら一人立ちで立つことができない。しかも社会からは刑余者として冷たい目で見られているという場合に、これを保護しようという規定でございます。十三条はその退所者がその後補導を経てりつぱに更生して、そして十分にそのときの費用国家に支払うことができるという場合に徴収するという建前をとつた次第でございます。しかもこの法律は、さような保護精神からできておるのでございますから、あえてこの十三条には、物件を差押えして、競売をしてその費用をとるというような規定は抜いておるのであります。実際の運用においても、さような御懸念のないように、十分に注意して運用いたしたいと存じております。
  27. 加藤充

    加藤(充)委員 第三条の第三号には「六月をこえない範囲内において、その意思に反しない場合に限り、行うものとする。」というのですから、こういうものがやはり原則になつて来る場合、これはどうせ犯罪者の場合でありまするから——まあ扶養義務者言つても法的に言えばいろいろ出て来ましようが、そういうふうな法的な抽象的な扶養義務範囲の限定ではなしに、事実上扶養義務者がない場合が多いと思うのです。従つて十三条は空文にひとしいものだという理由も、説明もすぐ出て来るかもしれません。問題は、本人意思に反しないという一つ拘束です。一つ拘束をそういうふうにここに設けておるにもかかわらず、第四条保護観察所長や何かが必要だと認めたときには、ばさつと押えることがあるのだつたら、しかも今言つた人道愛立場だというようなことになるのだつたら、私は十三条の費用徴収というようなものははずされなけりやならないそうしなければ徹底しない、こう思うのですが、どうですか。
  28. 斎藤三郎

    斎藤(三)政府委員 本人意思に反しないでやるというのは、本人の自由なる意思で、本人意思に基いて保護をする、かように考えておるのであります。決して本人が希望しないのに、何か職権をもつて観察所あるいは刑務所の職員が収容するというようなことは、毛頭考えておらないのでございます。十三条は、国家保護をしても、本人がみずから助くるの精神を持つということも考えなければなりませんので、本人に十分の支払い能力ができた場合に徴収するという建前をここに明らかにして、そしてただ国が恩恵的にやるのではない、本人更生を期し、本人が完全なる独立人として、社会人としてりつぱな人になるということを考えて、かような規定を置いたのでございます。ただ本人が、社会弱者といいまするか、またこの法律はそういつたかどばつたものでないという点から、強制的に徴収する規定を置かなかつた次第であります。
  29. 加藤充

    加藤(充)委員 そうすると第四条の「必要があると認めたときに限り、」というのは、今申し上げたこの第三条の第三号の申出があつた場合という条件が前提になつて申出がない場合には、これは必要と認められない、こういうことに解釈していいですか。
  30. 斎藤三郎

    斎藤(三)政府委員 お尋ねの通りでございまして、本人申出があり、かつ観察所長が各方面の御意見を聞いて、もつともだという場合に、初めてこれの規定が適用される、かように考えております。
  31. 加藤充

    加藤(充)委員 今までの例で、扶養義務者は法的にかつ一般的にあるが、しかも能力がない者だと認められる場合の犯罪者、そういう犯罪者統計数字というものは、全体の何パーセントに当りますか。
  32. 斎藤三郎

    斎藤(三)政府委員 現在さような統計数字は持ち合せておりませんので、調査の上お答えいたしたいと思います。
  33. 加藤充

    加藤(充)委員 私はその点についての質問は終りますが、いろいろな意味で、私は保護観察という言葉自体がどうもきらいなんです。私もずいぶん痛い目を受け、被害を受けた一人であると思つておりますが、こういうような意味で私はお聞きしたのですが、認定が先になつちやつて申出があるとかないとかいうようなことはもうほんのつけ足しになつて、この六箇月の期間実質上延長される。しかも官憲のかつてな独断で、刑務所の中でどうもがらが悪いやつと認定された者が、出て来てからも六箇月お礼奉公をしなければならぬという立場を非常にとりやすいと思います。これは人権保護だとか、更生だとか非常にお題目はりつぱですが実質は恐るべきところの人権の不当な蹂躙なり拘束をやられるのが、今のお役人やり方つたら、いろいろ考えさせられるから、そのことをあえて聞いたのです。そういうことの重々ないように私は注意をしたいのです。しかし条文建前上、今申し上げたような簡単な一、二の条文を拾つて見ただけでも徹底しないところがある。その徹底しないところが運用されて来る、こういうふうなおそれがある。しかも十三条にありますように、扶養義務者が全然ない。あるいは扶養義務者があつても客観的にその負担能力を全然持たない、資的能力を全然持たないという場合は、私はこれは一般的に言えばごく少数じやないかと思います。弁護士のところに弁護料を持つて来ないという者は往々にあつても、ここに言われる扶養義務者、そして負担能力というような問題をお役人が法文上考える場合におきましては、ほとんど扶養義務者というものは一般的にあり、しかも多少幾ばくかの負担能力は持つているという者に犯罪者が多いと思う。しかもその連中は、その扶養義務者にたよつて行くことができないいろいろな事情があつて、やむを得ず犯罪者の中に落ちて行つた人々が非常に多いと思うのです。従つて四条認定して入れるのだつたら十三条はいらないし、十三条というものを持つ以上は、これは非常に恩恵的なものだということを言つておりまするけれども、恩恵を施される者は一人もない。しかもいろいろな形で今まで親不孝、身内不孝をやつた上に、出て来た者がまたやつかいをかけてしまつて、そしてさらに犯罪条件を強めて行くというようなことになつてしまうと思う。ここいらあたりにもこの法案の所期することの不徹底さがある。不徹底なものであることは、そこにお役人が中心になつて、幾ばくかの国家予算をもつて、それでポストについて仕事をすればいいというような考え方が見られる。しかもそれがだんだんやみ行為に入りますから、六箇月の不当人権蹂躪ということが諸所に行われる。私は思想犯についての今までの経験を言つたのですけれども、やはり人権と言う以上は、一般の刑事犯罪も同じようなんです。そういうふうな意味で、刑務所の中で務めて、そして仮釈放にもならないで刑期満期で出て来た者は、どうせ刑務所の覚えもめでたくないやつですから、それが検事局と連絡をとり、保護観察所長とまた連繋のもとに、六箇月のお礼奉公を務めさせられる。今日の刑務所の形態について、刑務所における囚人の自由なと言つては語弊がありましようが、民主的になつて来た条文がいろいろ出て来ております。前よりははるかに明るくなりかけて来ておりますけれども、刑務所内の服役者に対するこれが見えざる圧迫となつて、昔の刑務所制度の再現になる。こういうふうなことに運用されて来ることを、非常に強くこの法案の中から看取し得られる。この法文の中には得心の行きかねる点があるからお尋ねしたわけなんですが、その点はひとつ重々ないようにやつてもらいたいと思う。それで十三条の適用の仕方から言いますると、何か国家予算を官僚や——どうせこんな者になるやつは古手の官僚で、使い道のないやつがこういう者になりやすいでしようが、そういうような予算を組んでとんでもないことをやらかす。こういうことのないように、——犯罪というものの原因なり責任というものは社会的なものなんで、そういうごく例外な、刑務所から出て来たからまた頼みますというようなものは、これはよくよくの食いつめ者ですから、数にしても大したものでもないと思うのです。だからそれはおおらかに国家がその責任の所在を明確にして、そしてこんなちつぽけなことを保護者の負担だというようなことにせずに、全部拾い上げてやるべきじやないか、こう思うのです。そうしないと、繰返し言うのですが、やらずぶつたくりで、六箇月のお礼奉公だけが非常な拘束になつて来やしないかと思う。  それからそれに関連しますが、十四条以下に寄付金の募集の条文があるのですが、これは赤い羽、青い羽、白い羽のいろいろな社会厚生事業団体、昔の社会事業団体、あるいはそれらとぐるになつた官僚等のつながり合いで、そこにもうさたにたえたる腐敗や不正が出て来ております。私はこういうふうな寄付金の募集、さらにこの十三条との関連において、保護負担というようなことにしておきながら、なお寄付金もやる。また国家の予算をそのほかにつぐというようなことでは、これはまた免囚保護を今までの官僚がやつたと同じことになると思う。こういうようなことで赤い羽の良心的な、あたたかい民間の志が、かつてに流用されたら、とんでもない酒池肉林の金になる危険性があると思うのであります。こういうことについて、赤い羽の募集手続なんかの今までの経験なんかで、十四条以下のこの寄付金募集について、あなた方で感ずるところがあつたらこれの対策、腐敗や不正のないような対策も念のために伺つておきたいと思います。
  34. 斎藤三郎

    斎藤(三)政府委員 この緊急保護法の六箇月の期間は、私はお礼奉公ということはまつたくないと考えております。第一これによつて保護をすると言いましても、犯罪者予防更生法で言います保護観察、裁判所の言い渡した刑を務めてないで、残刑保護観察という制度のもとに置かれるのとは違いまして、これは完全なる刑の言い渡しを受け、刑を受けて、刑の執行を終つた者、あるいは執行猶予の人、あるいは執行の免除を受けた人、かような人々に対する保護の手段でございまして、本人申出によつて、しかも客観的にだれが見てももつともだという場合に保護をする。本人の希望でございまして、決してお礼奉公ではない。決してその意に反してお礼奉公をするものでは絶対ないと考えております。また運用の上において、十分さようなことのないように期したいと思います。先ほども申し上げましたように、現在かような法案がないために、満期釈放の人が実際因つておる。あるいは弁護人の方がせつかく弁論をなすつて執行猶予の判決を受けても、本人を本籍地に帰すのに旅費がないといつたような場合に、実際困つておられまして、実は昨日も私のところに台東区のある弁護士の方がおいでになつて、北海道の炭鉱から若い二十歳の者が出て参りまして、わずかの金を持つて来て、金がなくなつて自転車一台のかつぱらいをし、そして未決に入つておる。自分が国選弁護人としてこの事件を受け取つたのだが、十分これについては執行猶予の確信はある。ところが本人と面会した結果、北海道に帰ろうと思うのだが、千二、三百円の旅費がかかるそうでございます。その上食糧費として二、三百円の金を持たなければならない。それで千五百円の金はいると言う。二、三百円の金なら自分が立てかえてもいいのだが、少し額が多いので警察に相談したが、警察にも方法がないというので、だんだん聞いて私どもの方へ参られた。現在はこの法律がないために国費が出せませんので、若干の保護観察所が民間——民間と申しましても東京の弁護士会の方々にいろいろ御援助をしていただいて、協会という名前で多少さような場合の金があるので、その方面にいらつしやつたならば、いいのじやないかというふうに申し上げて、そちらにおまわり願つたのであります。さような刑務所を出て旅費がない、あるいは着物がないというような場合、あるいは実際に行きどころがない。しかも就職先もないという人が相当あるのでございます。昭和二十三年の統計によりますと、全国刑務所を出た人が五万人ございます。このうち約四万人が仮釈放、一万人が満期釈放でございます。そのほか執行猶予身柄拘束されて出る人々も相当数ございます。かようなそれまで社会と隔離されていた人が突然出されたという場合には、これに対して適切なる保護の手を加えなければ、みすみす再犯の泥沼に陥るものと考えてもいいのではないか、さような点からこの法案考えておるのでありまして、運用上につきましては、御指摘のような点のないように万全を期する次第でございまするが、法案精神はまつたくさようなお礼奉公をさせるというような気持ではなくして、実際に困つておる、社会の失敗者としてほんとうに困つている、たれも助けてくれないという場合にこれを保護しようという趣旨で考えられておるのでございます。  なお寄付金の問題につきましては第十七条で、条件に違反して寄付金を使用し、あるいは寄付によつて取得した財産を処分したという場合には、体刑または五万円以下の罰金の罰則を設けてございまして、かような不都合な場合には、大いに検察の手で取締つていただきたい。かように存じておるものであります。
  35. 加藤充

    加藤(充)委員 最後に一点、私はお礼奉公の点と関連して質問するのですが、第十条の「更生保護事業を営むことができる。」という場合と、それから第十六条の「この法律規定は、更生保護事業に関し労働基準法及びこれに基く命令の規定が適用されることを排除する趣旨に解してはならない。」というのは、これはどういうことなのですか。これは労働基準法、その他これに基く命令の規定が適用されるというようなことを、十六条であえて「排除する趣旨に解してはならない」というような表現を用いたことと、さつき読んだ第十条の「更生保護事業」というものの関係を聞きたい。更生事業がやはり免囚保護に名をかりて、搾取の機関になつてつて更生事業というようなことがただ玄関に掲げてある、看板に書かれておるにすぎないという実情にあることをいかんともすることができないと思うのであります。十条と十六条の規定関係を、ごく簡単に一つお尋ねしたい。
  36. 斎藤三郎

    斎藤(三)政府委員 第十条は、現在はございませんが、これはやはりその土地々々の社会浄化と申しまするか、社会をりつぱに明るいものにつくつて行くという意味において、欠くべからざる事業と存じますので、できるだけ将来地方公共団体がかような施設、かような事業をやつてもらいたいという意味合いで「地方公共団体は、更生保護事業を営むことができる。」とし、そうして第五条におきましては、地方公共団体がこの事業を営むときには、所要の事項を届け出るというふうにいたしてございまして、十六条は当然労働基準法が適用になるという趣旨を明らかにしたのであります。普通の営利的な事業でも労働基準法の適用があるのでございます。これはましてそれ以上に本人の救済事業であるから、当然適用になるという意味を明らかにするために、かような規定をいたした次第であります。
  37. 加藤充

    加藤(充)委員 そうすると「排除する趣旨に解してはならない。」というのは、民間一般の営利的な工場、作業場よりは、一段と強く労働基準法、その他の命令の規定が準用というよりも適用されるという意味合いのものですか。
  38. 斎藤三郎

    斎藤(三)政府委員 精神においてはさようなつもりで、本人保護のためにやることでございますから、当然に私は労働基準法の適用と申しまするか、要求するところ以上のものが行われるということを期待しておる次第でございます。
  39. 加藤充

    加藤(充)委員 あなたのつもりを聞くのではなくて、今申し上げたような文言の表示の仕方と「排除する趣旨に解してはならない。」という文言の規定と、どちらが強く響くかという、一般的な客観的なことを私は聞いているのです。  それからなお念のために、今までの刑務所の内部のいわゆる矯正作業について、私は寡聞にして知りませんが、労働基準法の適用準則等はどういうように表現を用いられているか、御存じでしたら、あわせてお聞かせ願いたいと思います。
  40. 斎藤三郎

    斎藤(三)政府委員 刑務所の場合は、法令による刑の執行でございまして、労働基準法の適用外にあります。監獄法において十分な運用を期しておるというふうに私は解しております。またさように行われておるものと考えております。十六条の規定でございまするが、「排除する趣旨に解してはならない。」これはまあ基準法の適用があるのだということです。なおこの第五条の三項をごらん願いたいと思うのでありまするが、これは中央委員会が最低基準をきめます際に、労働基準法及びこれに基く命令の規定を尊重して、これに違反しないような基準をきめるというふうに、わくをきめておきまして、実際にこの事業に当るに際しましては、十六条の規定を適用いたしておりまして、労働基準法の適用があるのだということを二重に明らかにしておるように考えております。
  41. 加藤充

    加藤(充)委員 せつかく刑務所を出て来た人を——さつきの質問に関連しておりますが、経済的な自立の条件を早く備えてやりたいというのだつたら、あの労働基準法だつて不十分ですが、せつかくしやばへ出て来た者に、更生保護事業というような変なものによつて、その中にほうり込んでしまうというおそるべき規定を持ちながら、その待遇をことさらな低賃金に置いて、あの不十分な基準法以下の待遇をするということは、いわゆる免囚保護の趣旨に矛盾して来ると思う。私はこういう点から、さつきから質疑を重ておるような抜くことができない懸念を十六条で見つけたり、こう言わざるを得ないのです。そうなつて来ますと、最近問題になつております——委員会でも問題になつておりますが、刑務所の矯正作業の問題と関連して、実際の人間は、最近のやり方つたら一家心中するか、犯罪するかしなければ、たいがいの者はもうやつて行けないところまで来ていると思う。かつてにそういう施策をやつておきながら、治安がいけないとかいうことを逆手に、今度は本人更生しないというようなことにかぶせて行く。これではまくらを高くして寝られるためには、身体の自由のきく者は一切合財刑務所につなぎ込んでおくか、あるいは高い塀の中にほうり込んでおくかしなければならぬ。それで務めてやつと出て来た者を、さらに六箇月の範囲内において保護観察所の経営するところの保護事業の作業所に入れておくということになつてしまう。しかもそこでは刑務所作業はもちろんのこと、その更生事業作業所でも、一般民間の企業よりも賃金が安い、あるいはまた労働条件が悪いというようなことになつて行けば、これは日本のいろんな労働諸条件、あるいは広く一般生活にも大きく響いて来ると思うのであります。こういうふうなことで、大体恩に着せた保護事業というような形で今度の更生緊急保護法というようなものが適用されては困るし、そういうことを憂えるよりも、こういうふうなものを出して来た本質というものが、どうもそこにあるのじやないか。そうでなかつたら、十六条にこんなけちくさいことを書かずに、それよりも一日も早く経済的な自立への条件を與えて、とつとと国へ帰れるようにしてやつたらよいじやないか。そういうことをやらずに、特別な賃金と特別な強制でこき使うというのでは、こんなものはでたらめで、今までの免囚保護のごとく、再犯囚人、あるいはあの気の毒な立場に、さらにおためごかしで縛りつけておいて搾取をする、あれと同じことになる。これは官僚がやつたことと同じなんです。私はこの点を深く憂えざるを得ないので、しちめんどうくさく先ほどから一貫した質疑を続けておるわけです。それでさつきあなたが言つたように、十六条は特に一般民間の作業よりは労働基準法を強く適用し、施行しなければならないものであると説明しておる。それじやおかしいではないかといつてつつ込めば、大体の基準のわくを越えないように、なるべくそれ以下に飛び離れないように十六条はしておるのだということになれば、これはもちろんだめだと思うのです。一刻も早く六箇月の間に一人前の経済的な自立のできる可能性を與えてやるためには、やはり基準法というものは、保護作業所でも基準法以上の待遇をしてやらなければだめだと思う。その点について、先ほどの御答弁を訂正したような、あらためての御答弁があつたのですが、それではどうも私はこの運営自体がうまく行かない、こう思うのです。十六条をそういうふうに弱い規定じやなしに、せめて労働基準法並の待遇を與えて、一日も早く自力更生を期する経済的条件をつけてやる努力をなすべきだというような意味規定にお直しになれませんか。
  42. 斎藤三郎

    斎藤(三)政府委員 大体四条、五条の説明が足らなかつたのかも知れませんが、最低基準は労働基準法より以下の、それに近いものをつくれという意味ではございません。それに違反しないような条件をつくれ、こう意味でございます。  なお六箇月の期間につきましては、決して六箇月一ぱい置かなければいかんという意味では全然ございませんで、第三条の四項にもあるように、できるだけその期間を短かくするということでございます。  なお刑務所の職員と通謀してお礼奉公というふうなことがごとがございましたが、この規定では、観察所長が必要があると認めても、本人申出がなければ保護はいたしませんので、さようなことは万ないものと考えております。
  43. 加藤充

    加藤(充)委員 私はこれで質疑を終りますが、政府はどうも、あなたの部署まで間違つた考え方を持つておると思う。それは労働基準法についてですが、労働基準法は一番最高の基準をきめたのではなくて、あれは最低の基準ですよ。あれ以下であつてはならないということなんですよ。新しい民主的な日本の再建の基礎になる一つの最低の経済的な生活条件としてきめたものです。だから私は、せつかく出て来た者にそれだけの待遇を與えられないということは、非常に矛盾しておると思う。あれがしやばにおける一人前の人間様の最高の準則であるというのなら、あなたの説明も成立ちましよう。またその立場で、先ほどのあなたの一貫した態度もお聞きすることができましようが、あれは世間において働く人の最低の基準なんです。だからあの最低の基準よりだんだん上げなければならぬという要請があるのです。ところが民間では、やはりあれを最高の水準のように考えて、それよりも以下に落そう落そうという御努力が続けられておる。そういうことでは、民間の者もさつき言つたように刑務所に行かざるを得ない。刑務所から出て来た者に最低の基準よりもさらに低い待遇を與える。自立の能力がないから入れておくところで、一人前に働かせて、強制も加わりましよう。一生懸命に六箇月働いて、世間並の給與よりもなお安い待遇しか與えられない。そうしていろいろな費用もさつ引かれるということになれば、飯場とか、あるいはたこ部屋、監獄部屋と同じようなことになつてしまう。それで働かしただけはもうけだけれども、しやばへ出たら逆にまた刑務所に行く。それでぐるぐるまわつて、結局その中で矯正作業で働き、保護作業で働いて、堂々めぐりをしておる間に、かつおぶしで、しまいには街頭へ出て来て行路病者として倒れたり、あるいは犯罪をしないで行こうとすれば栄養失調でつぶれたり、野たれ死にしなければならなくなる。  私の発言が多くなりましたが、労働基準法というものは社会の、刑務所外の人たちの最低基準だということです。刑務所からせつかく出て来て、ただ経済的な自立能力がないということでもう一回お礼奉公にならなくとも、そういうところで自由を拘束されます。拘束されて働いておる間に、一人前の最低の待遇を與えないという十六条の規定は、私は問題だと思う。それはほかの条文で中央審議会でやるといつたところでこういう精神つたら、中央審議会の標準が労働基準法並にならないことは予測にかたくないのであつて、これじや免囚保護作業、あるいは更生保護作業といつたようなりつぱな看板はおろさなければならぬ。
  44. 斎藤三郎

    斎藤(三)政府委員 中央委員会がきめます基準は、これは最低の基準でございまして、この基準以上の保護施設のできることは、私ども双手を上げて賛成いたしておるのでございます。労働基準法に違反しないような基準というのは、最低の基準でございます。御指摘のように、社会弱者が立ち上るために、これ以上よりよい施設ができることを非常に私どもは心から切望もし、またその方面に努力もいたしたい、かように存じております。
  45. 北川定務

    北川委員長代理 他に御質疑はありませんか。——質疑がなければ、両案に対する質疑は一応終了いたし、参議院より両案が送付されて参りましたら、ただちに討論、採決に入りたいと存じますから、さよう御了承願います。     —————————————
  46. 北川定務

    北川委員長代理 次に、土地台帳法等の一部を改正する法律案議題といたし、質疑に入ります。質疑の通告がありますから、これを許します。田嶋好文君。
  47. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 この土地台帳法等の一部を改正する法律案というのは、これは地方税法の改正に伴いまして、当然提出しなければならない法案だとわれわれは了承いたしております。従いましてその審議も、この法案との関連において考えなければならぬと思うのでありますが、一体この土地台帳法等の一部を改正する法律案は、地方税法がもし今国会を通過しなかつた場合、政府はこれをどういうようにとりはからうおつもりであるか、それを第一にただしておきたい。
  48. 村上朝一

    ○村上(朝)政府委員 この法案の内容自体、土地台帳法の改正案が同時に通過することを前提とした規定を含んでおります。もし通過しないようなことがありますと、この法案の成立を見ますことは困難ではないかという見通しを立てております。
  49. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 成立は困難ではないかということは、どういう意味かわかりませんが、本法案は本委員会にかかつて今審議中でありますので、当然にこの成立、不成立は、もちろん最終は国会の決定するところでありますが、委員会の通過がありますれば、この取扱いというものが問題になつて来るわけであります。それを政府にただしておるわけであります。
  50. 村上朝一

    ○村上(朝)政府委員 委員会で可決になりましても、また衆議院で可決になりましても、結局地方税法の改正案が両院を通過して成立しないようなことがありますと、このままの内容では不都合を生ずると考えております。
  51. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 このままの内容では不都合を生ずると考えておる。従つてこの法案は、できますればその地方税法とにらみ合せて本委員会の審議もはかつてもらいたい、こういう御趣旨になるわけでしようか。
  52. 村上朝一

    ○村上(朝)政府委員 そういうことでありまして、要するに地方税法案の審議と並行して御審議を願いまして、地方税法案が通過いたしましたならば——通過と申しますか、委員会の方で可決になりましたならば、こちらの方も御可決願うように希望しておるわけであります。
  53. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 今の点はそれで了承いたしましたが、次に法案の内容について一、二ただしてみたいと思います。この土地台帳法等の一部を改正する法律案によりますと、今までの賃貸価格というものがなくなりまして、新しく時価評価ということが問題になつて参るのでありますが、時価評価を市町村長がした場合、本人がこれを不当は考える、このときの処置というものは、いかようにこの法案で取扱われるのでありましようか、その点をお尋ねいたします。
  54. 村上朝一

    ○村上(朝)政府委員 土地、家屋の評価は、地方税法によりまして市町村長がいたすのでありますが、これに対する不服申立ての手段等も、地方税法に規定いたしてあるようであります。概略申し上げますと、市町村長がこの価額を評価決定いたしますのには、地方財政委員会によつて示されました評価の基準、評価の実施方法、及び手続に関しまして、都道府県知事の指導を受けます。なお地方財政委員会及び都道府県知事の助言、それから納税者とともにする実地調査、それから納税者に対する納税者の申告書の調査等、あらゆる方法によつて適正な時価を公正に評価するということになつておるのであります。なお固定資産の評価に関しましては、知識、経験を有する固定資産評価委員、または固定資産評価補助員の補助を受けるということになつております。なおそういう手続によりまして決定されました評価額に不服があります場合には、一定の期日内に固定資産評価委員会に審査の請求をすることができる。この固定資産評価委員会の審査の結果いたしました決定については、訴願または裁判所に対する出訴もできるということになつておるようであります。
  55. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 次にもう一点だけただしたいのですが、この法案は、前の土地台帳法による罰則の規定と比較いたしまして、たいへん罰則の規定が厳重になつているようでありますが、これはどういうような意味合いでかくも厳重になつたものでしようか。こうまで厳重にしなければならない根拠をお示し願いたい。
  56. 村上朝一

    ○村上(朝)政府委員 固定資産税の課税標準になりますところの土地、家屋の価格というものは、ただいま御説明申し上げましたような手続で決定されるわけでありますが、この台帳に記載されます土地、家屋の面積なり、種類、構造等、あるいは土地について申しますと、地目というようなことが評価の重要な一つの材料になるわけであります。そこで地方税法におきましても三百五十四条に、固定資産税の賦課徴収に関する調査のための検査を拒んだ者、あるいは妨げ、または忌避した者に対する罰則として、一年以下の懲役または二十万円以下の罰金を科するということになつておりますが、評価の重要な資料になりますところの台帳の記載の適正を期するために、罰則を強化する必要がある、かような趣旨で強化いたしたわけであります。
  57. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 御趣旨のような罰則の強化も必要かと存じますが、やはり法律というものは一つの習慣をもとにしなければならぬものだと考えるのであります。従来こうした台帳の記載事項に対して、わずか五百円の罰金であつたものを、急に六箇月以下の懲役、十万円以下の罰金というようなことになりますと、今までの習慣と申しますか、そうした民衆のなれた気持とかけ離れまして、奇異な感じを與えますし、また社会通念の公平の観念からいたしましても、私はこの罰則はちよつと酷に当りはしないか、こういうように考えるのであります。この点に対して御訂正の御意思はないでしようか。この罰則は絶対にこうして支持しなければならないものでしようか、お伺いしたいと思います。
  58. 村上朝一

    ○村上(朝)政府委員 御趣旨はごもつともだと存じますが、この地方税法の方の罰則が、ちようど有期刑の方も罰金の方も倍額になつておりますが、これは直接賦課徴収に関する調査そのものではないということで、地方税法の罰則の半分にしたわけでありますけれども、やはり台帳記載の正確を期するために、地方税法の罰則との均衡をとるためには、この原案程度の罰則が適当ではないかと考えておるわけであります。
  59. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 御趣旨はごもつともに承りますが、私たちにはどうも五百円という観念、十万円という観念、この罰金の点にも非常にかけ離れがありますし、特に五百円以下の罰金ということで済んでおつたものが今度は体刑となりますと、社会人心に與える影響は非常に大きいと思います。この点いま少しくわれわれも検討いたしますが、政府におきましても慎重に御検討を賜わりたいと思います。これだけ申し上げておきます。
  60. 加藤充

    加藤(充)委員 全体の取扱い方については田嶋委員からの質疑でわかりましたので、私はその質問はいたしませんが、条文について第一条中「明確に把握し、地租の課税標準たる土地の賃貸価格の均衡適正を図る」を「明確にする」に改めるという、この明確にするということの内容をひとつお尋ねしたいと思います。
  61. 村上朝一

    ○村上(朝)政府委員 従来土地台帳は、地租を徴収するための課税台帳であることを主たる任務といたしておつたのであります。なおまた御承知のように、土地の個数は台帳面の筆数によつてきまりますし、一個の土地の所有権の範囲と申しますか、一筆の土地の範囲なども、この台帳及びその付属図面によつてきまる。これが有力な資料として、これによつてきめられるわけであります。従来とかくこの課税台帳としての面が重要視されて参つたのでありますけれども、このたびの税法改革並びに税制改革によりまして、固定費産税は市町村が徴収することになりますと同時に、この台帳事務は権利の対象を明らかにする——不動産登記制度が権利の変動を公示するのに対しまして、権利の対象ないし目的物の範囲及び状況を明らかにするという使命をもつと重く見る必要があるわけでありまして、登記所へ移管することに立案いたしました趣旨もそこにあるのであります。明確にするという言葉は、要するにただいま申しましたような趣旨で、権利の対象ないし目的物の範囲状況をできるだけ疑問のないものにするという趣旨であります。
  62. 加藤充

    加藤(充)委員 それで明確にするという内容について、地積の点などについても、いわゆる明確になさることに相なると思うのですが、地積の点については重大な点があると思うのです。いわゆる農地なんかにつきましても、間伸びというようなものがあつて、地方によつては旧竿というような地積の表示が、今までずつとなされて来ておるわけであります。山林なんかについては、特に地積の点についてはいろいろ技術的な困難もありましようが、長い間放置されておつて、不当な地積の表示になつている場合があると思うのです。それでこのたびの農地開放などにつきましても、ずるい地主は旧地積を新しく測量し直しまして、新しい正確な地積で、今まで一反歩の土地が一反二畝あるいは三畝というようなことになる場合もありましようが、そういうふうにして、一反歩を一反三畝で売つたというような実例もあります。なおそういうような点から考えてみまして未開放農地につきましては、ことさらに一反歩の表示で、実際は一反二畝も一反三畝もあるというようなものが残されておるのが多いと思うのです。こういうふうなところの地積の訂正なり、地積の正確な把握、それから登録というようなことについてはどういうふうになつて来ますか、全文をまだ見ておりませんので、不勉強のいたりかもしれませんが、お尋ねしたいと思います。
  63. 村上朝一

    ○村上(朝)政府委員 地積はもちろん土地台帳に登録する事項になつております。それは土地台帳法の第五条の第四号に掲げてあります。そこで地積を正確なものにするという方法でありますが、この所有者が地積に誤りがあることを発見しましたときは、登録の訂正を申請できることになつております。また登記所が何かの機会に誤りがあることを発見しましたときは、積極的に進んで訂正するということにいたしております。なおその他土地を分筆した場合、それから地目変換をした場合等におきまして、必要があると認めれば、登記所は地積を測量するという規定になつておるわけであります。
  64. 加藤充

    加藤(充)委員 自主的にそういうものは全部出させるというような趣旨のものをそのままにして置いたものに—実際上今までの旧慣では、そういう取扱いを受けて来たのであるが、それはやつぱり登録を正しくしなかつたものというようなことになつて、罰則の対象になるかどうか、その点をお尋ねいたします。
  65. 村上朝一

    ○村上(朝)政府委員 罰則が付せられておりますのは、土地台帳法の四十五条と四十七条の場合だけであります。四十五条は先ほど申しました検査を妨げた場合、それから四十七条の方は過料を課せられるわけでありますが、十八条の「あらたに土地台帳に登録すべき土地を生じたとき」それから「第二種地が第一種地となつた」場合の申告、それから三十二条第一項の第一種地の中で、地目変換をした場合の申告及び四十条の第一項で、土地所有者の変更があつたときに、新所有者がなすべき申告、これらの申告をしなかつたときに、過料の制裁がある、この二つだけであります。
  66. 加藤充

    加藤(充)委員 そうすると一番まつ先に申し上げましたように、このたびのことは土地一般ですから、農地だけに限りませんが、農地などについては、開放の際、ずるい地主の欲ぼけなども手伝いまして、一反歩を一反二畝、三畝にふやしまして、開放して売り渡したというところもあるのですが、そういう未開放として残された農地については、とりわけ条件のいいというようなものは、地主が確保しておるのであります。そのいい条件の中の、実際は一反歩になつておるけれども、一反三畝、四畝として、三割も四割も丈量増しが出て来るようなところは、いろいろずるい操作によりまして、採草地あるいは取上げ農地として、地主等の手に確保されているわけでありますが、そういうものについて積極的に——これは再評価の問題にもなりましようが、今までの通りにこれを残して置くということになれば、この土地台帳法で、単に「賃貸価格の均衡適正を図る」を「明確にする」という条文に、文字をかえただけでは、やつぱりふとい、脱税をやろうとか、少くとも隠し田、あるいは隠し地積を持つというようなふといやつにこれが確保されて参る結果にならざるを得ないのです。「明確にする」ということが、自主的なものにまつとか、そういう罰則のないということでは、ふといやつを保護して、農地開放や何かで、狭く譲與されたというような土地の一部開放者にその犠牲をぶつかけることに相なると思うのです。その点の御配慮がなければ、これは「明確にする」ということにしても、依然として地積の不正というものは残ると思います。由来検地ということは、太閤さんがおやりになつたりなんかして、むずかしい問題だと思いますが、その点をやり切るだけの措置がなければ、こういう条文の改正だけでは、てんで問題にならないと思うのですが、いかがでしよう。
  67. 村上朝一

    ○村上(朝)政府委員 課税を免れるために、地積を事実に反してそのまま隠しておるというような場合の処置といたしましては、地方税法の中に、市町村長は地目——その他地積も入るわけでありますが、台帳に登録されておる事項が事実と相違する場合、課税上支障があると認める場合には、登記所に登録事項の修正を申し出るということになつております。この修正の申出がありますならば、登記所はこれを調査いたしまして、その修正その他の措置をとらなければならぬという規定が、地方税法の三百八十一条に規定いたしてあります。これらの規定運用によりまして、従来よりは正確を期し得るものではないかと考えておる次第であります。
  68. 加藤充

    加藤(充)委員 地方税法等の規定を私全然読んでおりませんからわかりませんが、これも施行されてから期間が非常に短かいのだと思うのですが、いわゆる今言つたような土地台帳と、実測面との坪数が合わないということは、これは公然の事実なんです。そういう規定を地方税法の三百何十条かにお入れになつて、税務署が積極的にそれをおやりになるということですが、新しい測量を、徴税その他の必要からおやりになつた前例がありますか。
  69. 村上朝一

    ○村上(朝)政府委員 税務署が扱つておりました当時の前例については存じませんが、このたびの地方税法の改正案におきまして、従来地方税法になかつた市町村長の修正申出規定が、新たに入つております。
  70. 加藤充

    加藤(充)委員 私はこれでおしまいにいたしますが、今まで申し上げたようなものが、やはり土地台帳法を改正するについては、重大な問題になると思うのです。私は規定の存在ということ自体が問題でなしに、そういう意味合いで、土地台帳法の中に——税法にあつてもなくても、やはりそういう規定を持つ必要の有無、それからもし今のような事実が半ば以上に公然としている以上は、それを明確にするという規定を持つた以上、それについて新しい罰則を設ける必要の有無、それからまた罰則を設けるとすれば、今までの旧慣にそうなつているのに、どえらい罰則を持つというようなこと、ここに規定されているような種類の罰則を持つといたしまするならば、旧慣を無視したということに相なりはせぬか、これは田嶋君の質疑と重なりますけれども、その三つの点について、ひとつ御意見を承つておきたいと思います。
  71. 村上朝一

    ○村上(朝)政府委員 土地台帳法の中にも、登記所が進んで職権で調査をしなければならぬという趣旨のうかがわれる規定があるのであります。たとえば第十条におきまして、土地の異動があつた場合に、地番、地目、地積及び賃貸価格の申告等が不相当と認めるときには、登記所の調査によつて、登記所がきめるというような規定もございます。また先ほどちよつと申し上げました三十八条の第二項に「登記所は、土地台帳の登録に誤があることを発見したときは、これを訂正しなければならない。」これも職権によつて訂正するわけであります。これらの規定を加えておるわけであります。
  72. 加藤充

    加藤(充)委員 私はそういうふうなやり方では、もしそこまでおやりになるというのであるならば、小さい方だけを責め立てて税法の収奪の対象にいたして、ふといようなものは、少くとも土地については間伸び、丈量増しというようなものを見のがして、そうしてそれを課税の中から免れさせるという不公平が出て来ると思う。それは農地などにつきましては、農地委員会その他の一筆調査的なことで、相当厳重に開放農地などについては検査がなされておりますので、この分についてはあまり丈量増し的なたんぼはないと思うのであります。むしろ旧地主にかかえられている未開放農地については、こういうような間伸びがあり、間伸びの特別に強いところを旧地主がかかえ込んでおるという傾向は、全国的に見られておるところなのでありまして、今までのようなそういう措置で税務署が、あるいは登記所がこれを発見したときにはというような形で訂正するとすれば、その不公平は、結局供出が済んで、隠し田というような問題が一応事実上は論議の中心からはずれましたけれども、こういう税法の中における隠し田的な存在は、これによつては抹殺されて来ないと思う。これは重大だと思うのであります。そういう点について十分な御配慮をなさるべきだと思いますが、その点についての御意見を承つておいて、私はこれで質問を終ります。
  73. 村上朝一

    ○村上(朝)政府委員 いわゆる間伸びのあります農地の地積の問題等につきましては、農林当局におきましても重要な農政問題として、ただいま農地調査等の計画をいたしておるようであります。こういう措置によりまして、逐次是正されて行くのではないかと考えるわけであります。
  74. 花村四郎

    花村委員長 ほかに御質疑はありませんか。——質疑がなければ、本日はこの程度にいたし、明日は午前十時より商法の一部を改正する法律案について参考人より意見を聴取いたしますから、定刻に御参集願いたいと存じます。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時四十六分散会