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1950-04-07 第7回国会 衆議院 法務委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年四月七日(金曜日)     午後二時十五分開議  出席委員    委員長代理 理事  角田 幸吉君    理事 北川 定務君 理事 小玉 治行君    理事 田嶋 好文君 理事 山口 好一君    理事 猪俣 浩三君       押谷 富三君    佐瀬 昌三君       眞鍋  勝君    石川金次郎君       田万 廣文君    加藤  充君       世耕 弘一君  出席政府委員         検     事         (法制意見第一         局長)     岡咲 恕一君  委員外出席者         專  門  員 村  教三君         專  門  員 小木 貞一君     ————————————— 四月六日  佐賀地方裁判所唐津支部甲号支部に昇格の請  願(保利茂君外二名紹介)(第二一九三号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  商法の一部を改正する法律案内閣提出第六四  号)  参考人より意見聽取に関する件     —————————————
  2. 角田幸吉

    角田委員長代理 これより会議を開きます。  本日は委員長が所用のため、理事の私が委員長の職務を行います。  本日の日程に入ります前にお諮りしたいことがあります。民事訴訟法の一部を改正する法律案について、参考人より意見を徴したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 角田幸吉

    角田委員長代理 御異議なければさよう決定いたします。参考人の指名につきましては委員長に御一任を願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 角田幸吉

    角田委員長代理 御異議なければさようとりはからいます。
  5. 角田幸吉

    角田委員長代理 これより昨日に引続き商法の一部を改正する法律案を議題といたし、質疑を続行いたします。質疑の通告がありますからこれを許します。田嶋好文君。
  6. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 それでは私から政府委員に対しまして、商法の一部改正に関する法律案について、二、三質疑をいたしたいと思います。昨日も申し上げておきましたように、私の本日の質問は各条項にわたつて質問ではないのでありまして、この商法一部改正に関する法律案の総論的なものと申しますか、大きな立場からこの改正の問題を取上げまして、その意見をただしたいと思うのであります。  この提案理由説明書にも冒頭に書かれておりますように、私たち太平洋戰争によつて敗戰を喫した国家といたしまして、ポツダム宣言受諾をいたしたのであります。このポツダム宣言受諾に基きまして、当然わが日本占領軍のもとにおきまして、政治経済社会全般にわたりまして民主化されなければならないことになつたのでございます。従いまして今回の商法の一部改正も、この民主化の線に沿うたものであると私たちは理解するものでありますが、その理解をするに先だちまして、経済ポツダム宣言受諾以来いかようにして民主化されておるか、いかなる線をたどつて経済民主化に向つて突進されておるかということは、この商法の一部を改正する論議にあたりまして、最も大切なことであると私は考えるのであります。その意味からいたしまして、まず政府お尋ねをいたしたいと思いますのは、ポツダム宣言受諾後、経済の面におきましてわが国が今までいかよう民主化の線をたどつて来ておるか、これが第一であります。  第二といたしましては、今回の商法の一部改正民主化のための改正であるといたしますなれば、いかような点において、いかよう条文内容において民主化の線に沿うているものであるかということを、具体的に承りたいと思うのであります。  もう一度申し上げますと、第一はわが国経済はいかなる面において民主化の線をたどつて来たか、それを御説明願いたい。次に商法の一部改正民主化であるといたしますならば、いかなる点においていかなる条項において民主化実現のために努力しておるか、そうした点を承りたい。
  7. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 ただいま田嶋委員からお尋ねがありました問題はきわめて重要な問題でございまして、私が政府委員として御答弁することは、やや出過ぎたことになるのではないかと恐縮に存ずるのでございますが、他に政府委員がおりませんし、法務総裁も在席いたしておりませんので、便宜僭越ではございまするが、私の考えておりまするところの意見を申し上げまして、お答えといたしたいと存じます。  仰せのごとくポツダム宣言受諾に伴いまして、わが国政治経済万般におきまして、徹底的な民主化の線に沿うべく、一切の施策をいたさなければならないということは御説の通りでございまするが、いかにすればその民主化の線に沿つた施策実現できるかという問題は、わが国経済従前いかなる形において経営されておつたかという、歴史的な事実に対する深い検討を必要とするのではないかと考えますけれども、すでに田嶋委員も十分御承知のごとく、明治維新以来わが国の行いました政治経済の指導的な方針と申しまするものは、中央政府に一切の権限を集中いたしまして、中央政府による強力なる政治指導であつたのではないかと考えます。政治の方はしばらくおきまして、経済方面におきましては、当時勃興しつつありました日本資本主義的な傾向、ことに財閥を中心といたしました資本主義的経済機構というものが、中央集権と密接に連絡いたしまして、政治的な援護、庇護のもとにその財閥企業経営というものが発達をいたして来たということは、まぎれもない事実であろうかと考えます。従いまして、終戰後におけるわが国経済の再建といたしましては、この中央集権と密接なる結びつきをもつて発達をいたして来たところの財閥、しかもその財閥によつてほとんど自由自在に支配されておりましだ経済活動というものを根底的に打破いたしまして、企業国民的な基礎の上に盛り立てて行くということが要請されるのではないかど考えるのでございます。その線に沿いました措置といたしまして、十分御存じのことと存じまするが、私的独占の禁止及び公正取引確保に関する法律、あるいは過度経済力集中排除法といつたような一連の法律の制定並びに実施によりまして、明治以来わが国に深い根底を持つておりました財閥機構というものが徹底的に排除されたということが、その一つの大きな現われであつた考えるのでございます。現在は財閥機構が解体いたしました結果、株式会社について申しまするならば、株主が数個の支配的な大資本家の手中から開放せられまして、国民全般にこれが分散いたしたということが言えるのではないかと考えます。従いまして株式会社法といたしましてまず考えなければなりませんのは、新しく株主として企業の面に登場いたしました多数の零細な株主をいかに取扱うか、その株主によるところの日本企業というものをいかにして経営して行くかということにあるのではないかと考えます。ただいま申しました財閥解体によるところの傾向をさらに助成いたしまして、株式会社によるところの企業を徹底的に民主化いたしまするために企図いたしましたのが、このたびの株式会社法改正でございます。そこにありまする根本的な、思想は、分散された新株主、おそらくかつて株券を見たこともないような国民の大多数の者が株式を所有するということになりました新しい事態に対応いたしまするために、株式会社組織を根本的に検討いたすということ、その株主の意向を正確に反映いたしましたところの会社理事機構をつくり上げるということ、その理事者経営上の権限を強化いたしまして、企業の適切妥当な運営というものの実現をはかるようにいたしましたこと、もし万一理事者がその信託に反しまして株主の意表に出るような措置をいたします場合に、株主をしてその理事者の行動を嚴正に監督せしめるところの機構を認めました。かようなことが今回の改正商法におきまして取上げられました最も重要な点ではないかと考えるのでございます。  重ねて申し上げまするならば従前企業、ことに国家的な大企業は、おそらく指に屈することができる程度のごく少数財閥によつて支配されて、大多数の株主は、ただその支配的な大資本家隷属者たる地位しか有しなかつたのである。ところが新しい企業形態におきましては、大株主であろうと、小株主であろうと、一様に株主たる地位において会社企業所有者である。この現実の事実に即した合理的な、妥当な、民主的な株式会社法をつくり上げるというのがこのたびの改正の大事な目的であるのであります。かように申してさしつかえないのではないかと思います。
  8. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 今の御説明によりまして、その根本的な改正趣旨がわかつたような気がいたします。なおこの点につきましては、本改正の最も重要なる点についての国民への意思表示だとわれわれは考えますので、局長のお言葉で満足をするものでありますが、政府のこうした方面に対する最高責任者答弁を留保いたす次第であります。  次に私は、外資導入と本法案関係についてお答えを願いたいと思うのであります。私たちは、日本資本主義経済をたどつて行く限り、日本経済復興はどうしても外資導入ということにすがらなければできない相談のように考えるものであります。また国民全体といたしましても、おそらく涸渇した現在の資本のもとにおきましては、外資導入を一日千秋の思いで期待し続けておるではないかと思うのであります。外資導入日本経済復興のために最も必要なものであり、なくてはならないものであることを、今申し上げましたようなことでお認め願えますならば、本法案改正というものは、当然に日本産業復興のために必要であるところの外資導入の面も、またあわせ考えて立案すべきものと考えるのであります。この法案外資導入に対してどういうような観点から対処しておるか、また本法案の成立によつて外資導入いかようにとりはからわれることになるのか、この点を承りたいと思います。
  9. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 ただいまのお尋ねも、まことに重要な問題でございまして、私からお答えいたすのも多少僣越にわたるのではないかと考えまするが、私の確信いたしておりまするところを申し上げまして、とりあえずのお答えといたしたいと存じます。  現下における荒廃したわが国産業を復興いたしますために外資が必要であるという点につきましては、私は全然田嶋委員と同様の見解を持つものでございます。このたびの商法が、しからば外資導入に役立つだろうかというお尋ね、あるいは外資導入のことを考慮しつつ立案したのであるかどうかというお尋ねでありまするが、その点についてお答え申し上げます。  このたびの改正外資導入に役立つであろう、かように考えております。しからば、外資導入のために特に考慮を拂いつつ立案したのであるかというお尋ねにつきましては、わが国株式会社組織民主化するということを第一の目標といたしまして、さよういたすことが、わが国の荒廃した産業を復興せしむるために、法律的に適切なる措置である、かように考えまして立案いたしたのが、第一の立案の趣旨でございます。さよういたしますることによりまして外資導入が促進されるであろう、あるいは外資導入に寄與するところがあるであろうということを考えなかつたわけではございません。しかし、かつてこの点につきまして他の委員お尋ねお答えいたしましたように、もつぱら外資導入をいたすために商法改正をいたしたものでないことは、重ねて申し上げておきたいと存じます。この商法改正案が、外資導入にしからばいかなる点において役立つと考えるかという点でございまするが、これはすでに十分御了解をいただいている点と考えまするが、このたびの商法改正は、主としてアメリカ法制度にならつたものでございまして、アメリカ法における最も大きな特長は、資本調達についてきわめて機動性のある、彈力性のある制度を持つておるという点でございます。  第一次欧州大戰後に、ドイツがやはりドイツの荒廃した経済復興をいたしまするために、アメリカ資本導入を企図いたしまして、ほとんどそのためと申してもよろしいかと考えまするが、認許資本主義というものを採用いたしましたことは、すでに御承知通りでございます。私どもといたしましては、昨日もお答えいたしましたように、資本調達の便宜のために認許資本制度をとるか、それともアメリカの方式にならいまして、授権資制度をとるかということを考えたのでございまするが、むしろ認許資本制度の不徹底な状態よりも、理事者に十分の責任権限を與えるところの授権資制度の方がより合理的である、日本の実情にかえつて適応する、かように考えて、授権資制度を採用いたしたわけでございます。授権資制度は、アメリカの最も特色ある制度でありますがゆえに、わが国におきまして、この授権資制度が実施されまするならば、少くとも法制的にはきわめて、親しみのあるものとしてアメリカに受入れられまして、アメリカからの資本導入には比較的容易になるであろうということは十分推察し得るのでございます。そのほか取締役会権限強化の問題、あるいは株主権利の拡張の点、これらはほとんどアメリカ法制にのつとつたものでございまして、アメリカ資本家にとりましては、十分慣熟したアメリカ制度日本に取入れられておるという、その点から考えましても、比較的容易に外資日本に輸入せられるであろうということを予想し得るのでございます。しかし、これは僣越でございますが、外資導入はただ法制的な制度の完備のみによつて行われるのではございませんし、他の政治経済のもろもろの条件が具備いたさなければならないことは、もとより申すまでもございませんけれども、少くとも会社法アメリカ人にとりましてきわめて親しみのある、合理的な制度になり、アメリカ資本わが国への導入に寄與するところが多いであろうということは、言うまでもないと考えておるのでございます。
  10. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 第三といたしまして、私は現下日本の労働問題と本法案についてお尋ねをいたしたいと思うのであります。  本法案が、先ほどお答えのように、ポツダム宣言受諾による民主化の一環といたしまして生れたものである、しかも今回改正内容を見ますると、その民主化の線が株主擁護、しかも少数株主に対して擁護するという形によつて現われているということも了承をいたしたのでありますが、私たち考えといたしましては、いまだ成熟しないところの日本労働運動と、この少数株主擁護によるところの民主化という線とは相いれない点があり得るのではないかという懸念もまた生れるのであります。現在日本では労働組合におきまして、経営者への、生産管理というような名のもとにおきまして、非常なる労働力の圧迫を示しておるような状況が見られるのでございます。このようなことが今後とも続いて行くといたしますれば、私は、一部少数株主を保護することによつて、結局労働問題の成熟しない今日では、これが惡用されて、資本の涸渇を来し、結局のところ産業面の崩壊というような面にまで行きはしないかということを非常におそれるものでありますが、この点に対しまして、私の懸念をいたしておりますようなことは、考えられないものであろうかどうか、現下のような状態においては、この点を民主化の線は認めるものでありますが、そうした面からいま一度検討する必要があるではないか、それらの点につきまして御意見を承りたいと思うのであります。
  11. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 企業民主化と申しますか、あるいはもつと当面の問題であるところの、株式会社民主化という問題が、いかような形式において実現せられるかということは、いろいろ検討しなければならぬ問題であろうかと考えますが、このたびの改正におきまして、まず取上げました問題は、しばしば申し上げますように、国民大衆企業所有者になる。言いかえれば会社株式を広く国民の間に分散させるのであるという前提に立ちまして、会社組織民主化的にならしめるということに大きな重点を置きたいのでございます。従いまして、たとえば一株の株主であろうとも、大株主と対等の法律上の地位を享有し得るというようにいたすことが強く要求せられるもの、かように考えまして、いろいろ苦心いたしたのでございますが、多少権利濫用にわたる場合を防ぐ意味におきまして、株主の資格を限定いたしまして、あるいは発行済総株数の百分の三、あるいは十分の一というふうな制限を置いた点もございますが、原則といたしましては、各株主に平等に権利を與えるというふうにいたしたのでございます。その結果、あるいは会社従業員と申しますか、あるいは労働者と申しますか、労務を提供いたしております者が株主になつた場合、株主としての正当な主張、言いかえれば企業所有者としての正当な主張でなくて、自己の労働者としての立場を擁護するための方便として株主権主張することがあるのではないか、この労働者としての立場における株主権行使と、株主としての株主権行使との間に明確なる限界を持ち得られますならば、田嶋委員仰せの疑問は簡單に氷解し得ることと存じますが、実際問題といたしましては、この点の限界がきわめて困難であろうかと考えます。実際問題といたしますと、あるいは表面上いかにも企業所有者としての権利主張するような形をとりながら、実は企業をぶつつぶしても労働者としての立場を保持せんがための権利主張であるということもあり得るかと考えますが、結局この点の合理的なしかも妥当な判断は、終局的には裁判所において行われなければならないであろうと考えるのでございます。私どもといたしましては、株主としての権利主張機会法律が保障したのでございまして、労働者としての権利主張株主として主張いたさせることは、むしろ権利濫用ではないか、かように考えているのでございます。それはたとえて申しますと、会社の決算の書類閲覧権のところにございますように、二百九十三条の七でございますが、その第一号にございますように、「株主株主権利確保ハ行使ニ関シ調査ヲ為ス為ニ非ズシテ請求ヲ為シタルトキハ会社ノ業務ノ運営ハ株主共同ノ利益ヲ害スル請求ヲ為シタルトキ」この場合に取締役書類閲覧を拒み得ることにいたしているのでございます。この第一号の規定は、株主権利行使すべき目的限界を示したものと考えるのでございまして、新法を適切に運用いたしまして、事業の円満な発展を企図いたしますためには、株主権利行使につきまして誠実であることを当然要求しなければならないのでございます。株主が地の目的のために権利行使することは、権利濫用として裁判所において拒否されるという取扱いにおきまして、新法は円満な運用を見るのではないか、かように考えているのでございます。
  12. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 最後に一点お伺いいたしたいのであります。それは、今回の改正商法の一部を改正する法律案になつているのでありまして、全般的な商法改正ということにはなつていないのであります。私たち今回の改正によつて商法の一部であるところの会社法民主化をたどり、かつ日本経済発展のためにたいへん貢献するという意味において喜ばしく感ずるのでありますが、やはり民主化を最終的に求めるために、どうしても一部の改正にとどまらずして、商法全般改正ということも考えてみなければならぬ問題であると思います。特に、言われておりますように、日本商法は大陸法的な商法であつて、米英法的なものでないといたしますならば、その点は当然考慮すべき点であり、当然考えなければならぬ点と思います。また商法と同様に、民法改正ということも、民法が大陸法的なものであつてみますれば、取上げなければならない問題だと考えるのでありますが、この点に対しまして、政府商法の一部の改正をもつてすべての民主化なれりとお考えになつておられるのか、さもなくして、それで満足せずして、商法全部の改正、ひいては法の大改正というようなことまで民主化のためにはやらなければならぬ、またこれに対する準備等もしなければならぬとお考えになつているか、この点を承つておきたいと思うのであります。
  13. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 このたびの改正法律案をもちまして、すべてをなし遂げたとはごうまつも考えておりませんのでございまして、政府におきまして法制審議会を設置いたしております大きな目的は、この改正を手始めといたしまして、他の商法の諸章の規定につきましても検討いたしたく考えますし、またただいま御指摘のありました民法につきましても、さらに深い検討をいたしまして、遠からざる将来に、改正法律案としてまた国会の御審議を煩わしたい、これを深く期待いたしつつ、現に研究に着手いたしている次第でございます。
  14. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 岡咲局長からまことに明快な、非常に気持のいい御答弁を承りまして、私感謝をいたすものであります。この趣旨に沿いまして、今後各条文につきまして各委員から説明を求められることと思いますが、十分に満足の與えられますような御答弁を期待してやみません。なお私も、本日は先ほど申し上げましたように、総括的な質問をいたしたのでありますが、機会を得まして、各条文につきましての質問をいたすことを留保しておきたいと思います。  なおいま一つ注文をいたしておきたいと思いますことは、今私がお尋ねをいたしました点は、非常に重要だと考えます。特に国の政治運営上根本的な問題になると思いますので、委員長におきまして、適当な時期に、これに関係するところの責任長官の御出席を願いまして御答弁を願うことができますれば、この重大な意義を持つ、また光輝ある商法改正ということに対して、非常に好結果を得られるのではないか、こう思うのであります。これを一言委員長にお願いをいたしまして、私の質問を終えさせていただきます。
  15. 世耕弘一

    世耕委員 ちよつと一言だけ伺つておきたい。あるいはどなたかお聞きなさつたかと思いますが、この商法改正と同時に、先般予算委員会でも問題になつたと思いますが、見返り資金等外国資金が入つた場合に、優先的に取扱われるような問題が起り得ると思いますが、そういう場合のことをこの条文の中に考慮された点がおありになるかどうか、この関係ちよつとお聞きしたいと思います。
  16. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 世耕委員お尋ねになりました点は、この改正法律案では全然顧慮いたしておりません。
  17. 加藤充

    加藤充委員 私は大体総括的な質問と、それからやや条文についての各論的な質問とにわけて、質問を続けて行きたいと思うのであります。  まず第一番に、商法の一部を改正する法律案提案理由の御説明を承り同時にその文字を見ますと、改正案はよくわが国情に合致するものと存ずるのでありますということが言われております。私はその点について次のような質問をしたいと思います。  まず第一番には、前の本委員会において、実態調査等について欠くるところがあつて、十分な調査はいたしておらないという御答弁がありました。なお法律時報二十二巻の三号に、改正会社法の諸論点という座談会記事が載つております。それには東大教授石井照久、それから日本鋼管取締役伍堂輝雄、それから東京高裁の判事の松田二郎三菱倉庫社長大住達雄、それから東大教授鈴木竹雄、御承知のように、前東大教授で、商法の泰斗で現在弁護士をやつておられる松本烝治氏、こういう人たち出席した記事であります。その中のものを拾い読みして見ますと、鈴木氏が今度の高商改正根本性格は、何といつてアメリカ法化の一語に尽きると言つております。それから松本氏は、どうも実際の必要がない改正が多いような気がする、日本の実際ということからまつたく目を離して、別個の見地で新しい制度にしようということで立案されているかのように実は考えられる。それから大住氏は、中には外国からの強制によつて、やむを得ずやつておるという向きもないではないと思う。それから石井氏は、私も個人としては無額面株は実は反対していたのです、ここにおられる方々も多く反対したのですが、ついに採用することになつたというようなことが言われているのですが、こういうことでは、どうも存ずるというのは主観的なことでありますから、かつてに存じてさしつかえないですが、わが国の国情に合致するものと存ずるというようなこの提案の理由は、諸般の事情から見まして、はなはだ行き過ぎのような理由であるように思うのですが、この点について御見解を承りたいと思います。
  18. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 座談会の席上で述べられた点でありますが、このたびの商法改正につきまして、私ども満足いたす程度の徹底的な実態調査をいたすことは、遺憾ながらできなかつたのでございますが、一応の実情というものは検討いたしまして、この程度の改正であるならば、わが国の実情に適応して、少くともわが国が課せられているところの企業民主化の線には、きわめて合理的に適応するであろう、かように確信いたしまして、本法律案を提案いたした次第であります。加藤委員の御指摘になりますように、法律時報には、松本先生を初め諸先輩がいろいろ御意見を述べておられますが、見解の相違と申し上げるほかはないのでありまして少くとも松本先生の今の御批判に対しては、私自身十分納得し得ない点が多分にあるのでございますが、ここは討論会の席上でもございませんし、そういう点は御遠慮申し上げたいと思つております。少くとも現下わが国情を考えますと、この程度の商法改正をいたしますことは、きわめて妥当である、かように確信いたしている次第でございます。
  19. 加藤充

    加藤(充)委員 先ほど読みました中に、大住氏が、外国からの強制によつてやむを得ずやつているという向きもないではないと思うというようなことを言つておりますし、石井氏は、その問題について何も商法をかえなくても、臨時措置でよいのではないかというふうにも考えられる、結局はこれは政治立場の問題であり、政治問題であるというふうな発言も、さつき申し上げた座談会の中にたしかにあつたと思うのですが、こういうふうなことであるならば、それは見解の違いというのは、法律のりくつの見解の違いではなくて、政治立場の見解の相違だと、こうおつしやられる意味でしようか。
  20. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 多少さような点もあるだろうと考えます。法律時報を私はざつと読みましたので、こまかい検討をいたしておりませんが、座談会に御出席になりました鈴木石井、松田、大住の諸氏は、法制審議会商法部会の各委員であられまして、本改正法律案につきましては十分御検討を煩わし、また大体において御賛成を得てこの改正法律案を起案いたした次第でございます。石井先生は、あるいは個人として多少御不満の点がおありになつたことは私も認めますが、法律時報に出ているように強く御反対であつたかどうか、私は疑問にいたしておるのであります。松本先生は、加藤さんも仰せのように、わが国商法学における大先輩でございまして、鈴木石井、松田の諸氏はいずれも先生の学統を継いでいられる方と考えますが、その松本先生が真向うから改正商法に御反対であられますために、鈴木石井、松田の諸氏も多少先生のこの意見に、何と申しまするか、引きずられがちであるだろうという点も推察いたすのでありますが、熟読玩味いたしたわけではありません。あるいは私の読み間違いといたしますならば、非常に恐縮に考えておる次第でございます。松本先生もちろん大先輩であられまして、ことに旧来の商法改正はほとんど先生の手を煩わしておるのでございまするし、大陸法系の造詣はきわめて深くあらせられまするし、また戰争前における日本企業会社経営にも実際にお当りになつておられますので、先生の御意見には大いに私ども教えを受ける点が多いのでございまするが、このたびの改正案に対する先生の御批判については私は、遺憾ながら必ずしも先生の御意見に賛同し得ないのでございます。私は少くとも日本のまさに行かんとするところの新しい企業再建ということを考えまするならば、大陸法をそのまま墨守して、そのわく内で事が足りるものとは断じて考えません。先ほど申しましたように、大株主を中心といたしました企業経営というものは、必ずしも現在の事態に適応しないのでございまして、会社組織、その運営というものを根本的に検討いたさなければならぬとかように考えるのでございます。
  21. 加藤充

    加藤(充)委員 個人的な立場説明や、何かいろいろ承つて何ですが、それで御答弁をお聞きすることよりも、松本さんは、一体無額面株という制度は、アメリカでも近ごろできたものです。たしかまだこれは全部で行われていないはずです、それからイギリスその他にはないと私は記憶しております、続きまして、無額面株アメリカの大多数の州にしかないのだから、それをとることは世界の他の多数の国とは違うことになつてしまうということを言つております。授権資本制についても発言をされて、引続いて、何でもかまわずアメリカ式とか、あるいはイギリス式にして授権資本にしなければならないというりくつはないではないかというようなことまで言われておると思うのですが、このことについては見解の相違ですから、質問ということにはいたしませんけれども、いわゆる大家なり実勢の経験者がこういうことを言われているということは、商法改正が突如として問題になつて来た。そうして鈴木さんがおつしやつておるように、商法改正の性格は、何と言つてアメリカ謳歌の一語に尽きる。松本氏の言われるような問題を含みながら、今短期間の間にこれを法制化して施行するという問題はそういう意味合いにおいて、單に私どもが観念的にごちやごちやと言うばかりでなく、いわゆる日本の国情、実情に沿わないものとしての問題の所在点を私は明確にしておるという意味で重要だと思うのであります。それで大体外資導入のためというばかりでないということが言われておりますが、右の座談会におきましても、やはり何といつて外資導入ということがおもな主眼だろうと思うのですということは、出席されている松田二郎氏が述べております。そのことについて私は御質問するのですが、これは大体において第二次世界大戰後におきましては、これは数字や何かをあけるまでもなく、アメリカ資本主義というものが残された資本主義の諸国家の中で、資本主義経済組織の中で一番特別きわ立つて離れた発達なり、一応の成長を遂げまして、その反面、それらの資本の世界制覇、すなわち各国の株式会社法を通じ、英米における会社金融制度の世界的な普及、こういうものがやはりそれ自体の要請として生れて来ていることは、これは経済的に見ても、その他の点から見ても、これは明かなことなのであります。いい惡いということよりも、そういうふうな事実が実現されて来ているということは明かなことなのでありますが、このたびの商法改正もその世界的な環境なり、仕組みの変化に伴つて日本においてもその資本の自主的な導入というよりも、その受入れ態勢の整備というものが急速に、客観的に、ないし主観的に要請されるに至つて、ここに商法改正の問題が日本においても問題になつて来たものだ。従つて商法の一部改正というような問題は、本質的に商法の一部改正というような簡單ななまやさしいものではないということを、われわれは客観的に確認しなければならないと思うのであります。前に田嶋委員からも言われていたのですが、それと関連いたしまするし、それとはまつたく同じ意味じやありませんが、商法というものが、いわゆる技術的な手形法や小切手法と違つて、社会生活の実質問題ときわめて広い、深い関連を持つたものであるということ、しかもとりわけて英米法などにおきましては、特にアメリカ法におきましては、いわゆる会社法商法というものと一般私法というようなものとの分化が、今までの日本で概念されているように明確になつていない、混淆して一体化しているということから考えますならば、田嶋委員民主化という点から言われたのですけれども、しかしその反面に、先ほど申し上げたように松本さんのああいう御意見がありますように、これはなまやさしい簡單なの商法一部改正ではないと私は思う。そういう点について一つあまたの御見解を承つておきたい思います。
  22. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 授権資制度の採用は、必ずしも私どもだけで観念的につくり上げたことではございませんで、法務総裁提案理由の中でも御説明申し上げましたように、株金分割拂い制度を廃止いたしました際に、各方面にいろいろ意見を求めたのでございますが、そのときに東京商工会議所、生命保險協会、あるいは損害保險協会、東京銀行協会、持株整理委員会、証券取引委員会、あるいは通商産業省、あるいは財界、実業界などの各方面から採用を要望されたという事実もございまして、これは見解の相違でございまするが、松本先生はその必要がないとお認めになりますけれども、ただいま申しましたような各方面では、授権資制度の採用はきわめて適当である、こういうふうにわれわれに御進言になつたのでございます。特に東京商工会議所におきましては、田中耕太郎先生が委員長であられましたが、商法の研究会を開かれまして、そこでたびたび御研究の結果、こういうような意見を発表されたのでございます。先日国会におかれまして、大阪で非公式の公聽会を開かれましたが、大阪の商工会議所におきましても、授権資制度の採用については全面的に賛成でございまして、私はこれはきわめて合理的である。アメリカのプラグマテイズムといいますか、そういう考え方を基礎といたしたことは事案であろうと思いますし、これはきわめて合理的であるし、実際的であつて、私は観念的な増資制度よりもはるかにわが国の実情にも合致するだろうと考えるのであります。  次にお尋ねの問題は、これはきわめて重要な大問題でございまして、私ごときものが御答弁するのは差出がましいのではないかと思うのでございますが、加藤委員と私その点多少所見を異にいたしておるのでございます。なるほど資本主義の勢力というものが、怒濤のごとく世界をかけまわつておることは一つの事実かと考えまするが、必ずしもアメリカ資本に仕えるために商法改正というきわめて技術的な改正をいたしたのではございません。お手元に資料としてお届けいたしたかと思いまするが、日本における株式会社組織というものは、実に零細な組織が多いのございます。いつかも加藤委員仰せになつたと思いまするが、民族資本などというものを当てにしてみたところで、それは何にもならないというようなことを仰せになりましたが、あるいはそれを裏書きするのではないかとも思うのでございます。資本の総額、いわゆる資本金が二十万円未満の会社が、株式会社のうち八一%を占めておるのでございます。外資導入してそれによつて経営をいたすであろうような会社は、十数万ございますわが国株式会社の中で、まず数える程度しかないのではないかと考えます。私どもはその外資導入を期待いたしております会社のために、本法律考えたのではございませんで、十数万ありまするごく零細な日本企業形態としての株式会社のあり方を、なるべく合理的に、運用上のむだというものを省いて、きわめて経営を能率的にいたさせるために、よい会社をつくりたい、かように考え改正を企図いたしたのでございます。
  23. 加藤充

    加藤(充)委員 これは質問ではありませんが、民族資本を当てにしても、どうにもならないと言つたようなことは私はないと確信します。確信といつたところで、どうもはつきりしないというかもしれないが、そういう話をした記憶を私は持たないのです。むしろこういうような商法改正のときには、田嶋委員が言われたように、いわゆる少数株主権の保護ということ——それは生産管理に対して労働組合や労働対策の一端としてこれを採用する場合の懸念などをちよこまかしく考えておるよりも、むしろ大きく外資に対して、民族的な立場でこの案件を検討する必要があるのである。幾ら大きな資本家といつたところで、総体的にごく少数のものしか、日本ではいわゆる大会社というものはない。そこでどうしても強力な外資が入つて来るような場合、それは商法の技術面のわくの中で、どういうふうに改正するかということを考える必要がある。そういうことを言つたのでありまして、ましてやあなたの言われておるように、ちよつと気がきいた大資本家がないという、それはそれなりにして、それぞれの会社なり企業を営んでおるものが多いことは、かえつてこのたびの商法改正などが、外資という問題を民族的な立場に立つて考える、そういう意味合いで民族資本というものを考えなければ、外資のために荒涼たる日本企業なり、産業界というものが出現してしまう。そういうことを言つたことはあるのですが、それ以上の話をした記憶はないと思います。  それはさておきまして、明治の初めに民法編纂があつたときに、われわれの先輩は、内容のよしあしにかかわらず、あの有名な法典論争ということをやつたことを、民族の歴史の中にわれわれは持つておる。また最近では御承知のように、第一次世界戰争後におけるドイツ経済の建直しという意味で、あそこでもやはり英米法系統の商法導入の問題があつたのを、世界的な、歴史的な経験としてわれわれは持つておるのであります。で次のような事柄をわれわれは考えて見る必要があるのではないかと思うのです。やはり第一次世界戰争後におけるドイツ経済というものは、資本の窮乏に悩んで、生産の維持と、能う限りの増強に必要な資本を獲得するかせぬかということが死活問題であつた。しかもその当時どこの資本が入るかということになりますれば、諸外国よりの外資導入でしようが、何といつてもいわゆるポンド・レートの引下げ問題がドル相場に対してありました以前のことでありますが、あの当時においても、英仏とドイツとの資本主義の対立という問題で、英仏の資本導入というものを、いろいろな面からやはりそのものとしては受取れなかつた事情もありましよう。いずれにしても、あの当時やはり米国に外資導入を期待せざるを得なかつた。こういう状態があつたと思うのです。それで私はちよこまか読みましたことをここでごひろうするつもりもありませんが、一九二四年の第三十三回のドイツ法曹大会では、株式による資本の調達を容易化するために、立法の変更をなすべきかどうという問題で大論争をやつたことがあります。その中に、いかに外国投資家を顧慮するにしても、われわれはドイツ株式会社保護を外国人たちのために放棄しようとはしないという発言をした人もある。またフレヒトハイムという人だそうですが、問題は米国資本を得られるかどうかということではなく、いかなる条件をもつて得られるかということが問題である。こういうようなことが活発な討論になりまして、そこでまた無額面株というのは採用に至らなかつた。それから二年ほどたちまして、一九二六年の第三十四回の法曹大会では、株式法の将来の改正にあたつて、根本的な問題について英米法に接近すべきかという論争がテーマに取上げられた。そしてその結論は、ドイツ株式会社法の一般的改正は現在その必要がない。英米法の規定ドイツ状態に移すには適当ではない。それは尊重すべきであつたにしても、一般的に模倣すべきではないということが結論づけられたということをわれわれ聞いておるのであります。そういう点をわれわれはここで十分に考えなければならないと思うのであります。もちろんあの当時と今とは全然時代の隔たりもあり、世界的に政治的な経済的な環境も違うことは違うにいたしましても、さきに読み上げました法律時報座談会記事の中に石井さんが発言しているところですが、何も商法をかえなくても、臨時措置法でいいのではないかと考えられる、結局は政治の問題に帰着する。こう言われております。しかも引続いて、こういうような大立法だから一年か二年おいて、大いに検討することが望ましいのですが、その時間的な余裕もいろいろな事情から制約されるということになつてしまつたという趣旨の発言がありまするが、私は聞くところによりますれば、この商法は来年の七月一日以降実施することはできない。それ以前に施行しなければならないという規定もここに加えられておりまするし、しかも承るところによりますれば、至急に上げなければならぬということが急遽この委員会の雲行きあるいは国会の雲行きの中に出て来たかのごとく見受けられるのです。以上申し上げましたような、歴史的な日本人の経験、あるいは世界の経験、そしていろいろな人の発言をつまびらかにいたしまして、私どもは先ほど申し上げましたように、商法の一部を改正する法律案というようななまやさしいものではない、一大立法だ、こういう点から私は民族的な立場、同時にその歴史的な転換の中に、われわれはいかに善処して将来の民族の発展をこいねがうかという点から、慎重に審議さるべき性格のものだと思うのです。質問がたいへん長くなりましたが、急遽これを上げなければならないという雲行きが政府にあるとすれば、政府はその責任をみずから背負い切るだけの勇気と自信があるのか。また国会や当委員会においてそういう雲行きがあるとすれば、将来ゆゆしき問題だと思いますので、その点についての御見解をひとつ承りたいと思います。
  24. 角田幸吉

    角田委員長代理 この際委員長として希望を申し上げておます。なるべく討論的なことはあとの討論の際に譲つていただきまして、一問一答、簡潔なお答えを双方願いたいと思います。以上希望しておきます。
  25. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 加藤さん仰せのように、ドイツにおける法典論争、あるいは明治時代におきまする民法の起草につきましてのわが国の法典論争は、だれしも非常な興味と感激を覚えるのでございます。またドイツ法曹大会におきまして、ドイツ株式会社法改正することの論争がきわめてドイツ人らしい民族的な自負心と申しますか、非常に高邁な民族の自覚のもとにおいて、ドイツ株式会社法が論議されましたことは、私は非常に興味深く感ずるのでございます。先ほどもお話がございましたが、ドイツにおいて採用されましたような認許資本制度を採用することをもつて足りるのではないかというような御意見がありますが、これは私は認許資本制度よりも、授権資制度の方がはるかに合理的である。かように考えるわけであります。商法、あるいは民法のような国民の生活あるいは企業と非常に深い結びつきを持つところのこの法典は、事情が許しますならば、加藤さんの仰せのように数年間みつちりと研究をして、十分の検討をして、そうして完璧な案をつくりたいと考えますが、わが国が置かれております現在の状態から考えまして、私どもとしては能う限りの努力をいたしまして、そうして法制審議会をつくり、その法制審議会におきましても長い期間たびたび会議を重ねまして、検討検討を加えました結果、最初法務総裁が提案いたしました要綱に相当重大かつ適切なる修正を加えられました要綱ができ上りまして、その答申せられました要綱を基礎といたしまして、法律案を立案いたした次第でありまして、現在私どもの置かれております状態のもとにおいては、一応最善を尽したつもりでございます。希望といたしましては、数年間みつちり検討いたしたい。それだけの期間が持ちたかつたのでありますが、その期間を持つだけの余裕が現在の政治的な、あるいは経済的な状態を前にいたしましてはない、かように申し上げざるを得ないのであります。企業民主化のためには、多少このたびの商法は不完全な点があろうかとも思いますが、これでも日本産業の再建、企業民主化に役立つと私は固く信じておるのであります。
  26. 加藤充

    加藤(充)委員 今の御答弁を伺つて質問したいのですが、わが国の置かれている諸般の事情が許さないということなのですが、それだけの言葉ではどうも理解がしにくい。あなたが答弁されているように四年でも五年でも、そうして幾多の国々において重大な立法についてはそういうことをやつて来たのにもかかわらず、事情が許さないからこれはできないということを言われたのですが、それだけでは私ども了承いたしかねますので、いま少し事情の許す限り明確にしてほしい。
  27. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 先ほど田嶋委員お尋ねに対してお答え申し上げました過度経済力集中排除法、あるいは私的独占の禁止及び公正取引確保に関する法律といつたような一連の法律によりまして、財閥が解体せられまして、わが国企業国民大衆のものとなつたという事態、その事態に適応いたしまするためには、会社法をなるべくすみやかに改正しなければならないということが、私は差迫つた必要と考えるのであります。数年間みつちりと研究いたしまして、完璧な、理想的な法律案をつくりたいということは、私どもの希望ではございますが、その差迫つた必要に応じるためには、必ずしも完全ではありませんけれども、可能な範囲における可及的、理想的な法案を出すということによつてこの問題を処理しなければならない、かように考えているのでございます。それがただいま申しました、事情が許さないという点でございます。  それからもう一つは、これは加藤委員も十分御承知でございますが、わが国政治経済全般は占領軍の支配下にあるのでありまして、司令部当局からも強く私どもに要望がございますので、これもむげに退けるわけに参らないわけであります。これも差迫つた事情でございます。
  28. 加藤充

    加藤(充)委員 まあわかつたような、わからないようなことで、事情が許さないのでしようがないということでありますが、商法の立法についてわれわれ世界のどこの経験も、あるいは間違つているにしてもよいにしてもいろいろな御意見を参酌するにやぶさかであつてはならないと思うのです。この占領下にあつて、こういうふうな重大な商法の立法、これはさつきから繰返して申しますように、商法の一部改正だけにはとどまらないほどの、非常な性格を持つた立法事業だと思うのですが、そういうことについて、御意見は御意見として承りながらも、われわれはやはり自主的に、熱情を込めて、責任のある立法の準備なり、あるいは立法への仕事なりを続けることは、占領下においてもできるのだと思うのですが、何か七月一日までには必ず施行しなければならぬという制約を、現在占領下における日本は受けなければならぬかどうか。その点をひとつ明確にしていただきたい。
  29. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 私どもは、このたびの改正日本産業復興に大いに寄與するであろう。かように考えるのでありまして、そのためにはなるべく早くこの改正法律実現いたしまして、実施いたすことを希望いたす次第でございます。ところがこの法律を実施いたしますためには、まだ関係法令も整備いたさなければなりませんので、その関係法令等の整備の期間と、法律国民全般に周知せしめるための適当な期間を考えまして、来年の七月一日までには大体それが行い得るのではないか、かように考えて七月一日という施行期日を考えたわけでございます。  それから今回のこの改正法律案の立案でございますが、これもかつても申し上げたと思いますが、一昨年の夏あたりから研究に着手いたしまして、まことに手不足ではございましたけれども関係者は鋭意検討いたしましたので、まず私どもといたしましては、完全とはもとより申すことはできませんけれども、少し自画自讃のようで恐縮でございますが、相当程度まで成果を收めた改正案ではないかと考えている次第でございます。
  30. 加藤充

    加藤(充)委員 その点について、一般に知らせるためにも、熟知せしめるためにも、来年の七月一日くらいで十分だということなのでありますが、それは見解の相違だと言われればおしまいですが、私はこれは非常に不十分だと思う。しかもあなた方は自画自讃で、まことに恐縮と言いながら、いろいろ御苦労になつたこと、そうして御苦労をまとめ上げた成果というものについては、総体的にりつぱなものだ、それを買えとおつしやられるのですが、そういうような苦労のあるいろいろな準備が一般の国民に知らされない。そういうふうな努力が拂われずに、実体的な調査が不十分だということをあなたが認めながら、今まで役人の人たちがひとり占めにして、しかも国民に知らさないで、秘密裡にこういう一大立法事業が進められているということは、新しい憲法下におけるこういう種類の立法事業については非常に官僚的な、独断的なやり方である。そういう今までの立法準備計画をあわせまして、今これからやつたところで、来年の七月までに一般国民に熟知、なれしめるということの時間的な不足が、そこからも出て来ていると思うのですが、そういう点はいかがでありましようか。
  31. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 この法律案につきましては、私どもはなるべく皆様の御意見国民の直接の御意見を承るように努力をいたしたつもりでございます。一昨年、授権資制度を採用するという方針をきめまして、大体の構想をつくり上げましたのは一昨年の暮れでございました。たしか一昨年十二月に商法改正の根本方針というものを広く発表いたしまして、各方面意見を求めたのであります。当時は授権資制度と無額面株制度の採用が中心問題でありましたために、この二つをひつさげていろいろ御意見を求めたのでありますが、私どもの手元には当時それに対して反対的な意見の発表はほとんどございませんでした。それから昨年になりまして、なお引続きましてさらに検討いたしまして、一応の結論を得ましたのが昨年の七月でございまして、八月十三日に正式に、法制審議会商法改正の要綱を付議いたしたのでございますが、この要綱はただちに発表いたしまして、広く意見を求めたのでございます。ところがこの要綱の中には、株主権利を非常に強くするということが取扱われておりましたために、現状ではやはり行き過ぎではないかというような意見が相当私どもの手元に参りまして、この意見は全部法制審議会にごひろういたしまして、そうして法制審議会でもそういう各方面の御意見を十分御検討の上、この答申案を作成いたされましたわけでございます。少くともこの改正の根本方針あるいは、改正の眼目というものはなるべく早い機会に発表いたしまして、国民の批判を仰ぐというふうにいたして来たのでございます。幸い今国会におきましてこの法律案が可決いたされますならば、加藤委員仰せのように、十分とはもとより申し上げることはできませんが、来年の七月一日までならばまだ相当期間もございますので、これを広く国民に周知させるようにいたしたいと思いますが、また国民からこの法律に対しまして強い要望がございますならば、実施されます前にこれを改正いたすことについて、政府といたしましては毫も躊躇いたすものではございません。
  32. 加藤充

    加藤(充)委員 あなたはさつき私的独占の禁止及び公正取引確保に関する法律との関連においてこの商法改正も進められなければならないと言つたのですが、その点について私はお伺いしたい。  政令五十一号の改正、それから昨年の六月十八日から施行された今申し上げたような独占禁止その他に関する法律改正、こういうような問題が、外資に対しては特別な例外緩和の規定になつておることは明らかなのであります。こういうときに外資が入つて来ます場合において、外資のためにかえつて独占を強化するような懸念はないのだろうか、その点をひとつお尋ねしたい。
  33. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 商法改正法律案に直接の関連はございませんが、私はその点につきましては、実は十分事情を存じておりませんが、懸念はないのではないかと考えております。
  34. 加藤充

    加藤(充)委員 それで私は次に一、二質問して一般的な問題は終りますが、先ほど私はドイツの第一次世界戰争直後の外資導入のあり方について問題にしたと思うのですが、あれは結局第二次世界戰争のきつかりになつたナチズムの発生という問題ですが、これの基盤になつたものは、第二次世界戰争に至るいろいろな諸文献をひもといてみれば明らかでありますけれども、ベルサイユ体制のもとで、賠償の重荷で破産しかけたドイツ外国からいわゆる外資導入されて、それが直接、間接にドイツの軍需工業の発展を通じて、そして結局ドイツの独占資本の復活強化となつて、ヒトラーがたくみにそれと結びつき、それの手先になりはてて、これが第二次世界戰争に爆発して行つてしまつた。従つてドイツのナチズムの基盤である経済関係については、ドイツに投資していたイギリスやその地の国々の資本家陣営からは、ヒトラーのある程度の抬頭を黙認し、あるいは進んで奨励されておつた外国の投資資本とナチズムの政策とが合致している面が多々あつた。そのために非常に複雑な第二次世界戰争が勃発して来たということをわれわれは知るのですが、先ほど聞き知つておらないからはつきりしないと言うのですが、独占禁止その他の法律が、日本の国内事情にありましても、導入される外資に対してこういうものが緩和されたりいたしますと、こういう点において日本のいわゆる巨大産業、あるいは軍事産業というようなものに重点を置かれた政治経済的な活動を通じて、たいへんな問題に相なると思うのですが、その点についてあなたの御見解を承りたいと思います。
  35. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 私もどうも專門外にわたるようなお尋ねで、十分確信ある、責任あるお答えができないのでございますが、外資導入商法改正案とは直接の関係はもとよりございません。この商法改正が実施されるならば、外資導入にも役立つ面があろうということはかねがね申し上げた通りでございます。独占禁止法の適用が外資について緩和される面があるのじやないか、その結果、日本民族が外資によつて支配される、ひいてはドイツのような悲惨な結果を招来するおそれはないか、これに対する所見いかんというお尋ねかと考えますが、十分な研究をいたしませんで御答弁することは失礼かと存じますが、私の現在知り得ている知識によりましては、そういうことはないだろう、こう申し上げるよりほかないのでございます。
  36. 加藤充

    加藤(充)委員 どうも局長は立法技術屋なんで、質問がしにくいですし、またあなたに質問するのは必ずしも妥当でないということは今自分でも考えますが、商法改正というのは、さつきから繰返して申し上げているように、單に一般的、抽象的な技術なり資本の活動する管を形式的に通したのだというだけでは、とうていこれは納まらない問題なのであつて、そういう面からだけわれわれはこの商法の性格なり、将来の影響、従つてまた今度の立法の重大性というものを考えるのでは理解が不十分だと思う。われわれはあくまでこの商法改正日本経済再編成、日本の民主的な経済、あるいは民主的な日本の再建、こういう問題にたいへん重大な影響を実質的に持つておる、これを私ども主張するのでありまして、その点についての質問をひちくどいくらいにあなたにしているわけなんですが、あなたがそうは思いませんというような事柄だけだつたら、あなたはどうも答弁の資格が、あなたが認められる通り、あまり十分じやないと考えますので、あなたに対する質問はこれで打切りにいたします。
  37. 角田幸吉

    角田委員長代理 本日はこの程度にとどめ、明日は午後一時より通商産業委員会と、商法の一部を改正する法律案について連合審査会を開き、引続き法務委員会を開きたいと存じますから、さよう御承知を願います。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時五十一分散会