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1950-04-06 第7回国会 衆議院 法務委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年四月六日(木曜日)     午後二時二十七分開議  出席委員    委員長 花村 四郎君    理事 角田 幸吉君 理事 北川 定務君    理事 田嶋 好文君 理事 山口 好一君    理事 猪俣 浩三君 理事 田中 堯平君       高橋 英吉君    眞鍋  勝君       武藤 嘉一君    石川金次郎君       田万 廣文君    加藤  充君       世耕 弘一君  出席国務大臣         法 務 総 裁 殖田 俊吉君  出席政府委員         検     事         (法制意見第一         局長)     岡咲 恕一君         刑 政 長 官 佐藤 藤佐君         検     事         (刑政長官総務         室主幹)    關   之君         検     事         (検務局長)  高橋 一郎君         法務事務官         (矯正保護局         長)      古橋浦四郎君  委員外出席者         專  門  員 村  教三君         專  門  員 小木 貞一君     ————————————— 本日の会議に付した事件  商法の一部を改正する法律案内閣提出第六四  号)  矯正保護作業運営及び利用に関する法律案(  内閣提出第八八号)  検察行政に関する件     —————————————
  2. 花村四郎

    花村委員長 これより会議を開きます。  本日はまず昨日に引続き矯正保護作業運営及び利用に関する法律案を議題といたし質疑に入ります。質疑の通告がありますからこれを許します。田万廣文君。
  3. 田万廣文

    ○田万委員 第一にお尋ねいたしたい点は、多少重複する点があるかもしれませんが、その点簡單に御答弁していただいてけつこうであります。  この矯正という言葉意味は、わかつたようでわからぬ点があるのでございますが、その点まず最初に承りたいと思うのであります。この提案理由のうちにおきまして、本法案説明においてこういうことが述べられておるのであります。すなわち矯正にふさわし仕事という点と、それから職業指導にふさわしい業務ということが明らかに書かれてあるのでありますが、私たち考えでは、矯正という意味は、それ自身がすでに受刑者に対する精神的な矯正を含むと同時に、やはり受刑者が出所した時分において、職業指導に適当なるものを與えて生活の安全をはかつてやるという施策がそこにあろうと思うのでありますが、その使いわけをしておるという意味矯正ということを、簡單でよろしうございますから、御説明願いたいと思います。
  4. 佐藤藤佐

    佐藤(藤)政府委員 御承知のように、以前は裁判の結果に基いて刑務所で刑を執行するのであるから、その執行作業行刑あるいは刑務という言葉で現わしておつたわけでありますが、最近におきましてはこの行刑あるいは刑務ということは、その目的とするところは受刑者を改善して、つまり受刑者惡いところを直して、釈放後健全なる社会人として更生し得るようにするということを行刑目的としなければならぬ、そういう目的の点を強く現わしまして、最近は行刑あるいは刑務と言わないで、なるべく矯正保護という言葉で現わしておるのであります。従つて矯正保護作業法律に基きまして刑役を科するのでありますが、その刑役はどこまでも受刑者を改善し、更生せしめで、将来健全な社会人として独立の生計を営み得るようにする、その目的に対する手段として矯正保護作業をするのであるから、その作業もおのずから矯正保護にふさわし作業種類を選んで、受刑者に一定の技能を授け、そして職業訓練によつてその者の精神も矯正し、また勤労に対する意欲も向上させようということを考えておるのであります。矯正保護にふさわし作業は、その中に当然将来更生し得るような技能を授け得るような職業訓練が含まれておるのであります。
  5. 田万廣文

    ○田万委員 職業指導に必要なる訓練を施すという御説明があつたのでありますが、この点は私よくわかりますが、その限度につきまして、必要以上な限度を越えて矯正職業補導作業をさすことがあり得るような場合は、これはゆゆしき問題だと思います。この御提案になつております矯正作業の運用及び利用に関する法案というのをよく拜見いたしますと、なるほど目的としておるところは実にきれいなお話でありますが、現実の問題としては、刑務所なるものが一つ企業体として、受刑者をその仕事に就役せしめ、相当利益を上げ、国家財政を助ける意味においてこの法案が出ておるかのごとき印象を多大に私たちは受けるのであります。昨日のお話によりますと、そうでもないというお説もあつたと思うのでありますが、この点については、これはおそらく受刑者のみならず、一般中小企業印刷業者が非常に関心を持つておる問題でありますがゆえに、その点なお念のために刑政長官から明らかな御答弁を願いたいのであります。すなわち本法案ほんとうの趣旨はどこにあるのだということを、率直に言うてもらいたいと思います。
  6. 佐藤藤佐

    佐藤(藤)政府委員 お尋ねの点はまことにごもつともなことでありまして、この点については昨日も御説明いたしましたように、受刑者に対してこの矯正保護作業を通じて勤労の風を養い、将来の職業技術を修得させて、釈放後は健全なる社会人として更生し得るようにということを目的として作業を営ましめるのでありますから、一般社会における企業体とは、全然その趣を異にしておるのであります。従つてこの矯正作業によつて得たる收益国家財政の足しにするとかいうことは、全然考えておらないのであります。御承知のように、收益があつても、それは全部一般の会計として国庫に入るわけでありますけれども、その国庫の歳入をふやそうというような目的で、收益の上るような作業を営ましめるということは全然考えておらないのであります。
  7. 田万廣文

    ○田万委員 ただいまのお話でありますが、この提案理由のうちにこういうことが言われておるのであります。矯正保護作業は、仕事が手に入ることができず、ために受刑者中に不就業者が続出してというような文句があるのであります。これを見ると、今のお話とは実際には食い違いができて、仕事をとるために非常に熱心に刑務所が走りまわる。その目的は、刑務所受刑者仕事がなくてはいけないという意味言葉にもとれますが、しかしながら一般に対する響きは、刑務所においてことさらに多くの仕事をとつて受刑者仕事をさせ、そして收益をうんと上げるというように受取れるのです。私どもはそういうように解釈をいたすのであります。だからこの法案ほんとう受刑者矯正並びに職業補導に役立つ法案たらしめるためには、その限度内にとどめるべきものである。これをことさらに仕事をたくさん集めて、その仕事に專念させ、そして收益をうんと上げるというような事実が、明らかにこの提案理由のうちに明記せられてあるように私は考える。これは私の考え違いかもしれませんが、その点について、提案理由のうちにそういう事実がありますが、なお詳しく御答弁を願いたいと思います。
  8. 佐藤藤佐

    佐藤(藤)政府委員 その点は提案理由の表現の仕方がまずいために、あるいは誤解を受けたのかも存じませんが、まつたくそういうことは考えておらぬのであります。不就業者が続出しておる現在、受刑者仕事がないからといつて、そのまま刑務所の中で自由を拘束して、仕事をさせない状態で置くということは、これは受刑者矯正保護の上から見てはなはだ遺憾なことであり、言葉を強く申し上げますならば、むしろ人権蹂躙状態なのであります。受刑者は好んで仕事をしたいという方が多いのでありまして、仕事をしないで、ただ部屋に押し込めておきますと、これは衛生上もよくありませんし、本人の勤労の風を養うという点においても、はなはだ好ましからざるものでありますし、また仕事をしないで、一箇所に大勢をただ入れておくというようなことになりますならば、悔悟の点から申しましても、治安維持の上において非常に憂慮すべきことが予想されるのであります。かように受刑者をして仕事をさせようと思つても、これに仕事をあてがうことができないという状態をなくしたい、全部仕事をして、労役に服せしめて刑の執行を行いたい、その労役に服しておる間に勤労の風を養い、職業技能を修得させ、将来健全な社会人として更生せしむることにしたい、こういう希望にほかならないのでありまして、決して刑務所作業による收入を増さんがために仕事をさせる、こういう意味ではないのであります。
  9. 田万廣文

    ○田万委員 私はこれを印刷という点から申し上げますが、従来印刷設備費その他についてはどのくらいかかつてつたか。またこのたびの法案によつて予定しておるものは、二十億というふうに私は聞いておるのでありますが、そういう飛躍的な大きな差がなぜそこにできたか。刑務所の囚人が一ぺんに何十万とふえたようなことは私は聞いておらない。そのパーセンテージを一応お示し願いたい。
  10. 佐藤藤佐

    佐藤(藤)政府委員 最近の各年度における刑務所作業費予算は、二十三年度は二億九千万円余り、二十四年度は八億五千万円、明二十五年度予算は十二億円になつております。明年度予算だけで申し上げますると、十二億の刑務所作業費の中で、機械器具その他一般整備施設費としては一億七千八百万円を予定しております。その中で印刷器具を購入したり、あるいは補修したり、そういつた整備に要する費用が三千九百八十万円計上されております。ただいま御質問印刷だけで申し上げますると、これは昨日も申し上げましたが、印刷機械が現在二百九十三台あります。それにさらに明年度は七十台ふやすという予定になつております。今までの機械が全部そのまま残るものとして、さらに七十台を加えますと、合計三百六十三台になることになります。七十台全部購入しますれば、これが全国印刷機械の総保有高になるのであります。それからかように刑務所作業費が二十三年度より二十四年度がふえ、二十四年度より二十五年度予算がふえておりまするのは、これは昨日も御質問がありましたが、なぜかように著しい数字の増加が見られるかということになりますれば、それは戰災によつて全国刑務所施設が約三分の一なくなつてしまつた。三分の一減の施設に対して、收容力から見ますと、戰前は收容者が五万に達しなかつた。ところが二十三年度からこの方十万になんなんとしております。約倍の收容者があります。かように收容者が倍にふえて、施設が三分の一減になつておる。こういう状態でありまするから、その三分の一減になつておる施設をだんだん元に復旧させ、そうして二倍にふえた受刑者に対して相当な仕事を與えるというためには、舎房もふやさなければなりませんし、工場施設も充実させなければならぬ。そういう関係から、非常に刑務作業費予算の上において増額しておるのであります。なお言うまでもなく、二十三年度から二十四年度は、これはインフレの関係購入費も自然に厖大になつておるのでありまするから、さような関係で、数字の上では非常に刑務作業費がふえて、刑務所一般企業形態に比ベてだんだん大きくなりつつあるように思えるのでありますが、現実はさよう戰災によつてなくなつた施設を復旧し、さらに倍加した收容者に対する收容費用としては、当然増額を予定されるのであります。
  11. 田中堯平

    田中(堯)委員 ちよつと今のことについて、関連して質問したいと思います。  二十五年度印刷機が七十台増設される予定だということですが、これはどういう種類印刷機であり、かつその七十台の予算はどのぐらいになつておりましようか。
  12. 佐藤藤佐

    佐藤(藤)政府委員 二十五年度に購入する予定になつております七十台の印刷機械でありますが、私はその方の專門でないからただ読み上げるだけでございますが、四六版の三十二インチというのが五台、四六版の十六インチというのが十台、四六版の四インチというのが十五台、それから菊版の十六インチが十台、菊版の八インチが十五台、菊版の四インチが十五台、合計七十台購入しようという予定になつております。
  13. 田中堯平

    田中(堯)委員 予算は総額どのくらいになつておりますか、大体でよろしゆうございます。
  14. 佐藤藤佐

    佐藤(藤)政府委員 これは今数字合計すればすぐわかりますが、先ほど申し上げました三千九百八十余万円という中には、この七十台の印刷機と、そのほかの付属器具が全部含まれておるのであります。印刷機七十台だけの価格は今計算してお示しいたします。
  15. 田万廣文

    ○田万委員 この法案提案理由によると、もつぱら官公庁の用に供する、要するに官公庁仕事を主としてやるというような御説明があり、なおこの間佐藤さんのお話では、民間仕事は全部やらないというふうな御説明もあつたように記憶しているのであります。この点もつぱらそう説明しておられ、また法案を見ると、結局「優先して国及び地方公共団体機関需要に供することを原則とする。」ということがありますが、民間仕事もやれないことはない。法の解釈上私はそういうふうに考えますが、この点をちよつと……。
  16. 佐藤藤佐

    佐藤(藤)政府委員 その点は仰せの通りでございまして、民間仕事はやつてはならぬということは、法文には明記してございませんが、この法案理想としては、官公需に限るような姿にしよう。官公需全部に切りかえられない間は、これは余力がありますれば、民間に手を延ばして仕事を求めるということもあると思います。しかしこれは附則の第二項にも掲げておりますように「すみやかに、国及び地方公共団体機関需要のみに供せられることになるように、努めなければならない。」こう明文もありまするように、私ども理想としては、官公需のみにたよつて行きたい、こういう考えであります。
  17. 田万廣文

    ○田万委員 ところでいずれの説を信用していいかわかりませんが、刑政長官お話では、現在の刑務所における印刷に対する仕事、それをパーセンテージで現わすと、官公需のものが四〇%ある、民間のものは六〇%ある。そうして中小企業者印刷業者に対してはこの六〇%というものが業者に流れて行くようになるんだから、いろいろ業者は心配しているが、その間心配する必要はないんだという御答弁が昨日あつたように私記憶いたしておる。しかしながら現実の問題として見れば、業者間の話を聞きますと、七割ないし八割が官公庁仕事であるというふうなことも承つておるのでありますが、この実体調査はどういうふうになつておりますか。
  18. 佐藤藤佐

    佐藤(藤)政府委員 昨日私どもの方で申し上げましたのは、刑務所作業の中で、官公需仕事が約四〇%、それから民間仕事が六〇%になつているということを申し上げたのでありまするが、この印刷については、刑務所で引受けている印刷の中で約三〇%が民間仕事で、七〇%が官公庁からの注文の仕事でございます。
  19. 田万廣文

    ○田万委員 法務総裁にお伺いしたいのでありますが、法務総裁は去年の十二月二十日に通産省雑貨局木製品課長から、おそらくこれは各地方団体の長にあてられたもののようでありますけれども刑務所生産物販売及び労務供給等に関する法律案要綱解釈その他についてという文書が出ておるが、これを知つておられますかどうですか。
  20. 殖田俊吉

    殖田国務大臣 それは通産省から出したものでございましようが、存じません。
  21. 田万廣文

    ○田万委員 それはただいま申し上げましたが、「刑務所生産物販売及び労務供給等に関する法律案要綱解釈その他について」という見出しで、内容は次のようになつている。首題の件については先般来これが対策について研究されており、それぞれ業界においても各種の運動が展開されておることと思われるが、本件について過日法務矯正保護局作業課詳細打合せ行つた結果、木製品(特に家具)については左記のような事由で最初考えられていたような影響は受けないものと予想されるので、念のため通知するから、貴官においてもそれぞれ各業界に対して連絡されるようとりはからわれたい。     記  一、本法案は第七国会に提出して通過することに法務委員会並びに衆、参議院とも了解ずみであるから、大体本法案は可決するものと思われる。  二、本法案司令部からの指示によるものを若干修正したもので、ほとんどそのまま提出されるらしいからその意味でも訂正は困難と思われる。  こういうような文案が流されているということを法務総裁御存じないのですか。しからばこの文案が事実出ている。しかも法務矯正保護局作業課と連絡して、こういうものが出ているという事実があるとすれば、総裁はどういうふうにこの文章を御解釈になるか。この文章の中においては、重大なる意味が含まれておる。第七国会に提出して通過することに法務委員会並びに、衆、参議院とも了解済みであるというこの法案を、見たことも聞いたこともないのですか。
  22. 殖田俊吉

    殖田国務大臣 それは私はちつとも聞いておりません。長官も知らぬそうであります。それは通産省の、しかもどこかの課でございましよう。でありますから、通産省の省議を経たものでもないでございましよう。どういうわけで出ておりますのか、まつたくわからない。また内容もおそらく違います。そういうことはないはずです。第一法案も出ていないんですから、通すとか通さぬという問題もないわけです。どういうわけですか、私は了解に苦しみます。
  23. 田万廣文

    ○田万委員 了解に苦しむとは思いまするが、事実こうじやないか。まだ委員会においても論議せられておらない。全然未知の法案の名前を掲げて、そうして通過することは間違いないと書いている。この法案は小さな一課長が出していると言えば、それまでかもわかりませんが、この法の中に、法務保護局作業課という文字がある限りにおいては、これは私は相当考えさせられる問題だと思う。事実こういうでたらめなものが各地方団体に流されるということは、ゆゆしき問題である。その監督に当つていらつしやる法務総裁としては、これは御存じないらしいかもしれませんが、事実こういう場合があつたら、どういう処置をされるか。その点を最後お尋ねしたい。
  24. 殖田俊吉

    殖田国務大臣 それは法務作業課と相談したでありましようが、流すことを相談しておるとは私は思わない。流す方は通産省の問題と思います。おそらく通産省影響を受けると思われる方面に、緩和をするつもりで言つたのかもしれませんけれども、そういう問題を他の省がかれこれ言うべきことはありませんし、もしまた言うことがあるならば、それは大臣同士で相談をすればよろしい。それは少し行き過ぎだと思いますが、さて出ておるのを、私の方で通産省の回文に向つて法務総裁がかれこれ口を出すわけにも参りません。通産大臣にそういうものが出ておる、少し困つたということを言う程度で、あとは通産大臣にお考えを願うほかないと思います。
  25. 花村四郎

  26. 武藤嘉一

    武藤(嘉)委員 私は刑政長官お尋ねしたいのは、婦人の受刑者矯正保護作業の問題に関連しまして、岐阜県にありまする笠松女子学院、これはもつぱら女子受刑者收容いたしまして、織物工業をやつておる工場だと思いますが、最近新聞紙の伝えるところによりますと、女囚脱走がひんぴんとして行われておる。この地帶織物中心地でありますので、かような工場ができた当時におきましては、民間企業を圧迫するというようなことはお考えになつて、この学院を設立されたものであろうとは思いますが、その辺の御考慮が十分なされたものであるかどうか。大体これは相当大きな工場を、女囚さんによつて毛織工業であるか、綿工業であるか営んでおるのでありまして、私のお尋ねしたいのは、民間企業を圧迫することの可能性があるかないか、こういうことをひとつお尋ねしたいのであります。  それからその問題と関連いたしまして、新聞が伝えておるところでは、温情主義のために、あまりに寛大なる扱いのために、これになれ過ぎたところの女囚脱走をするのではなかろうか。ここは永久の受刑者ばかり收容してありましたために、待遇が非常によろしい。いわゆる格子なき牢獄であつたので、従来は非常にほめられておつたように聞いております。最近ひんぴんとして脱走があるということの理由がどこにありまするか、今すぐおわかりになりませんでも、次の機会にでも御返事を願えばけつこうだと思いますが、ただ地元の意向としては、温情主義けつこうであるが、看守さんが非常に足りないそうであります。看守が足りないためにこういうことになるのではなかろうかというのでありまするから、定員の増員ということは問題でありまするが、その辺をひとつこの機会に御考慮願つておきたいと思うのであります。
  27. 佐藤藤佐

    佐藤(藤)政府委員 岐阜の郊外にただいまお尋ね笠松女子学院というのを設けまして、そこに成績のよい女の受刑者收容いたしておるのであります。一昨年の秋に初めて開設いたしまして、その当時は五、六十名の收容者であつたのでありまするが、設備もだんだん整いましたので、和歌山の刑務所その他全国から成績のいい女囚を集めまして、現在では百六十九名の成績のよい部類の女囚收容いたしておるのであります。この受刑者に対しましては、紡績その他毛織物機業等を覚えさせまして、将来更生の道を講じておるのであります。ここに收容いたしておるのは全国でも割合成績のよさそうな者を選んで收容しておりますので、新しい試みでもあるし、なるべく自由の拘束を少くして、そうして明るいいわゆる格子なき刑務所にしたい、こういう理想をもつて建てたのでありまして、塀も周囲の塀が約十尺の高さでありまして、普通の刑務所とは全然趣を異にいたしておるのであります。さような関係から、しいて逃走しようと思えば逃走できないことはないのでありまして、入るときには成績のいい者を選んで入れましても、仰せのようにときどき逃走者も見るのであります。私の方に報告が来ておりますのは、最近六箇月の間に三回、合計五名の逃走があつたという報告になつております。ごく最近におきましては、三月二十七日が最後報告でありまして、二十七日の朝二名逃走したということになつておりますが、これは四月二日に至つて全部逮捕せられておるのであります。この逃走原因でありまするが、塀の高さが十尺では逃走しやすいのではないかというようなことも一応考えられるのでありまするが、その点につきましては、もう少し研究いたしてみたいと思うのであります。職員の手不足ということも確かに一つ原因であると思うのでありますが、先ほど来申し上げまするように、收容施設がまだ全国合計して六万の收容力しかないところに今十万を收容して、いわゆる過剩拘禁の姿であります。そうしてそれに対する職員は六万の收容力に対する職員の配置しかないのであります。従つて職員は逆に申しますれば、六人を見守るところを十人見守らなければならぬというような現状になつておりますので、職員の手不足ということは確かに一つ逃走原因になるものではないかというふうに考えられるのでありまするけれども、塀の高さを低くして明るい空気にしたということが一つ原因になつておるとすれば、その点はさらに研究いたしたいと考えておるのであります。なおこの笠松女子学院におきまして矯正作業として課しておる仕事は、紡績その他の毛織物仕事でありまするが、これによつて岐阜県一帶の民間作業にどの程度影響を及ぼしておるかということになりますと、全然その刑務所がなかつた時代に比較しますれば、その刑務所においてある程度作業をなすために、それだけ民間に行き渡るべき仕事が、新設の刑務所に吸い取られたというふうにも考えられるのでありますが、全国的に見ますれば、全国から集まつ成績のいい受刑者が百六十九名入つておるのでありまして、岐阜県にその学院を設けなくとも、全国に散らばつておられるべき百六十九名でありますから、全国各地において仕事をしておつたものが、今度百六十九名が岐阜県で仕事をするということになりますれば、岐阜県における仕事は、官需、民需合せて相当な仕事がそれだけ影響を受けておるのではないかというふうに考えられるのであります。
  28. 花村四郎

    花村委員長 ほかに御質疑はございませんか。——御質疑がなければ次に移ります。     —————————————
  29. 花村四郎

    花村委員長 次は商法の一部を改正する法律案を議題といたし、質疑に入ります。質疑の通告がありますから、これを許します。猪俣浩三君。
  30. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 商法の問題につきまして質疑をいたしたいと思つてつたのであります。今回の改正法は根本的な改正でありまして、ことに日本の商法の系統がドイツ系であつたものを、英米法系を取入れて、ちようど継木したような改正でありますがゆえに、いろいろな論点があると思うのであります。その一つの現われといたしましては、英米法の株式会社の本質に関します理念といたしまして、組合契約的な思想に立つておる。しかるに日本の現行法はドイツ系統でありまして、社団的な理念に立つておる。この組合的な理念と、社団的な理念の二つのものを一つ企業法的な株式会社法としてまとめようというのでありますがゆえに、相当論議が多いと思います。私も根本的に研究いたしまして御質問申し上げたいと思つてつたのでありますが、どうも党務やらその他のことに追われまして、まだ十分研究が積んでおらないのであります。今日多少の疑義をお聞きいたしまして、なお明日にも続行さしていただきたいと思つておるのであります。  そこでまず根本的な問題といたしましては、私の考えるところによりますと、新しい経済組織に順応いたしまして、企業法としての單行法をつくる。そうして小企業と大企業というものをわけまして、ここにおいて英米法と、それからドイツ系との調和をはかり、大会社におきましては社団的な本質を持つものとして規定し、小企業におきましては組合的な色彩を持つものとして規定を統一する、こういうふうにいたしましたならば、この企業法たる色彩の商法の理念が一貫し、また実際におきましても非常に有効適切の規定になるのではないか。しかるに今回の改正案は、大きなるところの改正であるにかかわらず、結局既定の法律の中に一部改正の形で織り込んだのでありまして、そこにちぐはぐな点が多々あると思うのでありますが、政府におきましては、今申し上げましたような趣旨で小企業と大企業にわけ、企業法としての色彩を持つ單行法を出すような御意思があるのかないのか、さようなまた研究を政府部内においてしておられるのであるかどうかということにつきまして、御意見を承りたいと存じます。
  31. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 今回の商法の一部を改正する法律案の立案につきましては、法務総裁提案理由にも触れましたように、現行の商法に英米法の体系を取り入れますために、非常に苦心をいたしまして、なるべく従来の体系をこわさないように、しかも英米法の長所を取り入れまして、完全な調和のある法律といたしたいと考えまして、非常に苦心いたしたわけでございますが、今猪俣委員お尋ねになりましたような企業法というものについて、政府は研究立案する意図があるかどうか、あるいは現にそれを研究しているかどうかという点のお尋ねでございますが、商法は、ことに会社法におきまして取扱つております問題は、資本の調達、会社の経営の問題、それから株主の権利の問題といつたようなものが中心になつております関係上、主として今申しました資本の調達、会社の経営、株主の権利、その三点につきまして改正をいたした次第でございまして、企業法ということになりますと、これは單に株式会社のみならず、あるいは合資会社、合名会社、その他の企業につきましても当然検討されなければならない問題でございまして、経営の面と同時に労務の面というものももちろん入つて参りますし、将来一つの新しい立法といたしまして、この企業経営という面の立法は十分検討に値するものではないかと考えております。現に研究いたしておるわけではございませんが、なるべくすみやかなる機会に、これを研究いたしたいと考えておる次第でございます。     —————————————
  32. 花村四郎

    花村委員長 法務総裁が見えられておりますが、やむを得ざる用事のため退席せられますので、この際田中堯平君より検察行政に関する法務総裁に対する質疑の通告がありますから、これを許します。
  33. 田中堯平

    田中(堯)委員 まず第一にお尋ねしたいことは、終戰直前から終戰時に至るまでの間に、中国人捕虜が所々方々において非常な虐待、さらには虐殺をされたという事実があるようであります。たとえば昭和十九年から二十年にかけて、当時建設中であつた木曽川の御嶽発電所工事、これに中国人捕虜が約千五百名労役に従事せしめられたのでありますが、終戰時までに生き残つた者はわずかに五百名、他の一千名はみないろいろな理由で死んでおるのでありますが、役場に届けられておる死亡届並びに死亡診断書によりますと、わずかにそのうち四十三名だけが届け出られておるのです。その死亡診断書の理由は、爆死か縊死自殺、後頭部複雑骨折、慢性胃腸炎、衰弱症というような病名が載せられておるのでありまして、これらの病名からしても、食事その他の待遇が非常に惡かつたとか、あるいは物理力を用いて殺されたのではあるまいかという推察にかたからざる死因であるのでありますが、附近村民の多くの人々が語るところを総合しますと、たとえばトンネル工事中にトンネルの中で惨殺された捕虜もあり、これらの死体はトンネル内のセメントの中に埋め込まれたというようなことも言つておる。また食事にいたしましても、一日たつた三個の粗惡なる。パン。縦横の寸法も三センチに七センチ、厚さが三センチ、小麦粉が六〇%にぬかが四〇%というような、とても人間として生きて行くことはできないような食事、しかも副食物は何らついてはいないというような事実が、実は單に近所の人の語り伝えではなしに、電産労働組合の長野県支部木曽川分会の相当責任ある調査によつて、今日明らかにされておるのであります。これば單に木曽川の御岳発電所工事に使役された捕虜の問題でありますが、その他一々説明は省略いたしますけれども、たとえば北海道の平和炭鉱におきましても、大体似たような虐待と虐殺が行われておるのであります。また秋田県の花岡鉱山におきましても、終戰直前、七月一日に中国から送付された捕虜が九百余名、そのうち終戰までに生き残つた者はわずかであつて、四百十六名が殺害されておつたというような事実、その他常磐炭田とか、あるいは九州炭田、あるいは別子銅山というふうに、全国あちらこちらにおいて、このようなまことに国際的には日本として申訳のない、はずかしい行為が行われたことがあるのであります。ところで戰争犯罪の裁判のときには、この種類の戰犯につきましては、ほとんど追究をされておらないのであります。在日華僑総会の人々の言をもつてしますれば、これは明らかに人種的偏見による取扱いである、けしからぬということで、非常に憤激をしておられる。思うにこういうふうな事件が大なり小なりあつたという事実があるならば、これは捨て置きがたいことだと思います。われわれはこれから中国とも、あるいは種々の国々、朝鮮とも、南洋諸国とも、その他全世界の国々とよしみを結んで、善隣関係を進めて行かなければならぬのでありまするが、しかしこういう事実をただほおかむりをしていつまでもほつたらかしておく、臭いものにふたをしておくというような、かりにそういうような態度であるとするならば、将来の日本の対国際関係は非常に重大なる問題になり、非常に不利であるということを考えまして、このような事件を調査されたのであるか、あるいは調査中であるか、どういうことになつておるのかということについて、まずお伺いをしたいのであります。
  34. 殖田俊吉

    殖田国務大臣 木曽川の事件と申しますのは、私は最近新聞で実は承知したのでありまして、そういう今田中さんのお話のような事実はちよちよい耳にいたしております。法務府内の話によりますると、さようの事件は随所にあつた従つてそれを手のつけられるものは手をつけて、相当の処置をしておるのであります。しかしながら何分にも終戰直前のことでありまして、ことに日本はかの横暴なる陸軍の手によつて自由に政治が行われておつた時代であります。いろいろなこともあつたでありましようが、外部からこれに対して何ら干渉することも関與することもできなかつた従つて今となつてその調査が非常に困難だそうであります。今まで起りましたいろいろな事件につきましては、はなはだ困難であつたそうであります。しかし調査しておるのでありまして、今のようなお話のことがありますれば無論調査いたしますし、そしてまた犯罪があるならば、これは十分に処断をしなければならないのであります。何も国際関係だけではないのであります。国内の問題としても、当然これは処置すべきであろうと私は考えております。
  35. 花村四郎

    花村委員長 田中君に念のために申し上げますが、法案審査の日時もあまりありませんので、質疑簡單にお願いいたします。
  36. 田中堯平

    田中(堯)委員 実は法務総裁がそういうようなお考えならばたいへんけつこうなことだと思うのでありまするが、そういうお言葉にもかかわらず、これを裏切るような事実があるのではなかろうかと私は考えるのであります。と申しますのは、これはごく最近起つた、すなわち台湾にある中国国民政府軍隊に日本人が参加する、いわゆる日本人募兵問題につきまして、新聞紙上相当騒がれた事件があつたのでありますが、その首謀者等についての捜査は、過ぐる日たしか参議院法務委員会においてだつたと思いますが、総裁みずからこういうものは徹底的に処罰する、帰つて来たならば嚴重に処罰するというお言葉であつたにもかかわらず、この関係者のたとえば吉川源三なる元中佐、これは世田谷の某所に堂々たる住宅を持つて、実はこの事件の元凶である根本元中将を一人残して東京へ舞いもどつて来て、のほほんとここで生活しておるということが三月十七日の日本夕刊に出ておるのでありますが、こういうものについても、その後何らの処罰も、また捜査も行われたということを聞いておりませんし、またソビエト政府が最近戰犯の一人としてあげている石井四郎元中将その他につきましても、これらが国内におるや国外におるや、おそらくその当時には国内におつたと思われる節が多いのでありますが、今や沓としてこの存在がわからない。これら石井四郎元中将にしましても、あるいは日本人募兵関係の、現に目の前におるはずの吉川源三、こういう者に対してどういう処置が講ぜられておりましようか、その点についてお答え願います。
  37. 殖田俊吉

    殖田国務大臣 私も詳しくは存じませんが、吉川源三は問題でありまして、私は先般の、多分参議院であつたと思いますが委員会で申し上げました通り、ただちに処置をいたしたい、帰つて来たらすぐ処置をすると申したので、私もそのつもりでおつたのであります。その後調査いたしました結果、渉外関係におきまして、ただちに処置ができない点がありまして、その問題につきまして実はまだ折衝中に属するのでございます。その以上のことは実は申し上げかねるのでありますが、そういうわけであります。決してこれは全然不問に付しているわけではないのでありまして、十分に監視はしておるわけでございます。  それから今の石井四郎の方は、連合国から要求があれば、むろんこれに対して相当の手配をいたすわけでありまするけれども、まだ要求がないのであります。連合国同士の間でお話があることは新聞等で承知しておりますけれども、さればと申して、御承知のように戰犯関係でありますと、戰犯関係についてはわれわれは権限を持ちませんので、われわれの権限によつてこれをどうすることもできません。ただ連合国から処置を命ぜられればただちに処置をいたすのでありまして、その後何らの命令がないために、そのままになつております。
  38. 田中堯平

    田中(堯)委員 戰犯の捜査については占領軍がやるのであるから、日本政府としては責任も権限もないというようなお言葉ですが、しかしわれわれはポツダム宣言を受諾して、そして今敗戰の苦しみをしておるわけでありますが、このポツダム宣言を嚴正に実施することについては、もちろん主体は占領国が指導するのでございましようけれども、これに協力する義務は、当然日本政府にも日本国民にもあると考えるべきだと思います。その点についての御見解と、それからなおポツダム宣言の第十だつたかと思いますが、第十に、われわれはわれわれの俘虜を虐待したものを含むすべての戰争犯罪人に対しては嚴重な処罰を加える、その下に今度は引続いて、日本国政府は日本国民の間における民主主義的傾向の復活強化に対するすべての障害を除去しなければならない。この前の文章とあとの文章とはピリオドで切つてありますけれども、一貫せる精神が盛つてあると解釈すべきであろうと思います。すなわち前文の方では、嚴重に処罰を加えるとありますが、なるほど文字通りに解釈すれば、占領軍が嚴重に処罰を加えるというように読まれますけれども、しかしその下に引続いておる、日本国政府は、日本国民の間における民主的傾向の復活強化に対するすべての障害となるものは除去しなければならないという義務が課せられておるのであります。これは一体をなして占領政策の第十をなしておるのでありますから、処罰をすることは、これは占領軍でありましようが、しかし処罰可能なる状態に日本政府、日本国民は協力しなければならぬ義務が明らかに規定せられておると解釈すべきだと思います。この点に関しての御見解を承りたい。
  39. 殖田俊吉

    殖田国務大臣 それは田中さんのおつしやる通りでありまして、戰犯であるかないかは連合国が御判断になりまして、そして日本政府に対して、これについての協力を求められることはむろんであります。ただ日本政府みずからが戰犯であるかないかを判断する権限がないのであります。連合軍と同じ立場に立つて、ある人間を戰犯と目して、日本政府がそれに対して行動をとるというわけには実は行かないのであります。従来も多数の戰犯についてことごとぐ指示があり、それに対しては十分な協力をいたしております。  それからまたその民主的云々ということは、たとえば追放令の制定がそれに該当するのであります。つまり戰犯というような重大な者は連合軍が処置する、それからその次に当るものは、連合軍の指示によつて日本政府が法を制定する、その処置をするというふうにやつているわけであります。しかしながらむろん日本政府は連合軍に十分に協力するのでありまするが、連合軍の御指示のないのに、連合軍にかわつて判断をし、自分が連合軍のごとき態度をとつて処置するわけには参りません。いろいろうわさがありましても戰犯として御処置なさらぬのは、連合軍で戰犯とお認めにならぬからであります。その場合に日本政府がこれに協力するといつて、連合軍で認めないものをみずから戰犯として判断、処置するわけにも行かないので、その立場をよく御了承願いたいと思います。
  40. 田中堯平

    田中(堯)委員 それではさらに、これもごく最近先月の二十日だつたと記憶しますが、台東会館なる朝鮮人諸士の所有にかかるものが、強制的に団体等規正令に基いて接收されたのであります。この接收の仕方については、多くの不審、疑問、異議があるのでありまするが、それは後日の問題といたしまして、この台東会館の接收以後、世間で盛んにうわさされていることがあるのであります。今日本政府は在日朝鮮人に対して非常に手きびしい態度に出ているが、近い将来に、十ぱ一からげに在日朝鮮人を本国へ強制送還する処置をとるのであろうという意味の記事が新聞にも出ておりまするし、また警察官がみずからこういうことを公言した事実も二つ、三つあるのであります。そこでお伺いしたいのは、一体今日本における朝鮮人は日本国民であるのか、外国人であるのかということと、それからこれを強制送還なさるつもりがあるのかどうか、この二点についてお伺いしたい。
  41. 殖田俊吉

    殖田国務大臣 朝鮮人の問題はなかなかむずかしい問題があるのでありまして、朝鮮人の国籍という問題がございます。朝鮮人は純粹な日本人として取扱われておらぬことむろんであります。しかしながらさらばと申して、連合国人といえども中華国人のような、あるいはイギリス人とかアメリカ人とかいうような連合国人と同じ待遇で取扱われているかと申しますと、そうではないのであります。ただいまのところやや不確定な状態に置かれているのであります。これは朝鮮の方に対しても、また日本人にとつても、いろんな問題を生ずるゆえんであるのであります。これは講和條約によりまして、最後的な決定を見ることと思うのでありますが、ただいまのところ、日本政府だけでこれを最後的の決定をなすことができない状態に実はおるのであります。  そこで強制送還の話でありまするが、この間から実は強制送還をするという話であるが、朝鮮の方でそういう話をしておる、そういう事実があるかどうか、事実ではないかというお話でありますが、朝鮮で何と申しておるか存じませんが、日本政府においては、朝鮮人をただちに強制送還をするという考えは少しもございません。大韓国からさような交渉を受けてもおりません。日本国は大韓国と直接取引をする権限はないのであります。もしさような事柄を韓国政府が考えておるとするならば、それは総司令部の方へ交渉をされるべきであります。しかし総司令部を通しても、まだ何らそういう交渉を受けておりません。これは私は事実ではないと考えております。しかし実際は強制送還をしておるではないかというようなお話もあつたのでありまするけれども、ただいまのところ、外国人登録令というものに規定しておりまする條件に従つての送還はいたしております。それはずつといたしておりまするが、その以外の強制送還なるものを考えたこともなければ、したこともないのであります。今後もさようなことはないと考えております。
  42. 田中堯平

    田中(堯)委員 ごく最近大阪で、朝鮮人民共和国の国旗を掲げたために、二年半の獄中生活を大阪の刑務所で送つて、そうしてその刑期が終るや、安民殖ほか四名の人々が、ものものしい警戒のもとに、手錠をはめたまま貨物車に入れられて、本国へ強制的に送還されたという事実がありますが、これはいかなる法的根拠によつてやられたのでありますか。
  43. 殖田俊吉

    殖田国務大臣 それは私どもはちつとも存じないことでありますが、多分お話によりますと、それは占領軍の軍法会議の処置ではなかつたかと思います。われわれの方の問題ではないように考えます。
  44. 田中堯平

    田中(堯)委員 この間韓国大統領李承晩氏が日本にやつて来て、吉田首相とも面談をした向きが新聞に出ております。伝え聞くところによれば、そのときのいろいろな協議協定の中に、やはり在日朝鮮人がいろいろと秩序を乱し、あるいは革命勢力の中枢ともなりそうなおそれがあるので、これをひとつ韓国へ引取つてもらいたい、引取ろうというような協定が行われておるというようなうわさがもつぱら行われておるのでありまするが、そういう事実がございましようか。
  45. 殖田俊吉

    殖田国務大臣 その問題であります。私はその当時総理に伺つておりませんが、李承晩氏からさような話は何にもありません。総理は李承晩氏と面会はしておりますけれども、これはごく儀礼的な面会でありまして、さような国交に関する問題などは一度も議したことはないそうでありまして、またさようなことを議する権限は、実は日本政府にはないのであります。従つてごく儀礼的な話でありまして、それは外部からさようなことがあつたのではあるまいかと揣摩臆測をしておることのようであります。
  46. 田中堯平

    田中(堯)委員 それではこれで最後にしますが、朝鮮人問題にせよ、また中国人問題にせよ、今日本の政府のとつておる態度を見ますると、何といつてもまことにけしからぬ点が多いと私は考えます。そこでわれわれは国家百年の利益を考えなければなりませんし、今のような状態、占領治下における状態が永久に続くものではなし、ことに一衣帶水であるこれらの諸民族、諸国家とは善隣関係を結び、貿易も結び、そうして彼我相助け合つて行かなければならぬという地理的また歴史的な運命にあると思うのであります。これを一時のいろいろな困難なる事情のゆえに、国家百年の利益を忘れて、これらの大東亜の兄弟ともいうべき諸民族に対して、まことに申訳のないような、そういう行為の数々があるように思うのでありまするが、これはひとつ将来とも政府においては十分考慮されて、そういうことのないように、国家百年の利益を思うて、大所高所からりつぱな態度をとられんことを希望します。     —————————————
  47. 花村四郎

    花村委員長 次に商法の一部を改正する法律案に対する質疑を継続いたします。
  48. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 企業法的なものは現在はまだその緒についておられないような形でありますが、御承知の通り日本の経済民生化に照しまして、生産の要素でありまする労働との問題も非常にやかましくなつて来ておる際でありまするがゆえに、こういう労働という方面からも企業の一要素として取入れまして、ここに企業法的なものをつくつてもらいたいということは、これは希望として、またわれわれもそれを研究いたしまして提案しなければならぬと思うのでありますが、これは政府に対しまする希望として申し述べておくのであります。今回の改正案を見ましても、資本の調達という方面の改正は相当大胆にやつておりますけれども、こういう新しい経済民主化の線に沿いました改正というものは、ほとんど見られないといことをわれわれは遺憾に思うのあります。これはいろいろな事情で間に合わなかつたかも存じませんが、将来とくと御研究を願いたい。そこでこの改正案の根本的の問題についてはまた他日に讓りまして、具体的な案の一、二につきまして御質問を申し上げたいと思うのであります。  第一は授権資本制及び無額面株式の採用の問題でありまして、これが今回の改正案の最も重要なる点であるのではないかと思うのであります。この授権資本制度というものも、うまく運用するならば、資本調達のためにたいへんけつこうではないかと思うのでありますけれども、こういう大いなる権力を取締役に持たせましたというところにいろいろの行き過ぎが起るのではないか。われわれは現在のいわゆる会社の経営者を見ておりまして、もちろんりつぱな人もありますけれども、どうもアメリカあたりの資本家と比べまして、日本の企業経営者は自己の利益追求に熱心であつて、全般的の意味におきまして、どうも感心せざる節も多々あると思われるのであります。かような人々にこの授権資本制、無額面株のこの法律を惡用せられますと、たいへんなことが起ると思うのでありまして、これはドイツなどにありますところの認許制度というものにした方が堅実ではないか、すなわち資本の全額にわたる額までの増資を三年または五年の期間を付しまして、その間にこの取締役に授権する、こういうことを法制上つくる。いわゆる認許制度というものが日本の現段階においては適応したものではないか。これは松本烝治先生の意見でありますが、私もさように思われるのであります。この認許制度をとらなかつた何か理由がありますか。また認許制度というものはあまりおもしろくないものであるか、その辺の御意見を承りたいと思うのであります。
  49. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 ドイツ法で採用いたしております認許制というものも、一応検討してみたのでありますが、結局一定の期間を限り、あるいは一定の資本額を限りまして増資の権限を取締役会に一任するという点につきましては、実質的には授権資本制度と大差はない。言いかえれば程度の問題であるということになりましたので、それであるならば、むしろアメリカの法制のように、取締役の善良な管理者としての誠実と手腕というものに期待いたしまして、取締役会に資本調達の裁量権というものを全面的に悉託するという制度の方が合理的である。その取締役会の権限行使につきましては、また別途株主をして監督せしめるという態勢をとることの方が合理的であろう、かように考えたのでございます。  もう一つは、これはしばしば公聽会その他におきましても意見が開陳された点でありますが、株主総会というものが実際会社の経理の面において、あるいは業務執行の面において、十分の監督的の機能を持ち得るかどうかという点になりますと、まことに疑わしいのでございまして、形式的に権限を持ちながら、しかもその運用の面においては、まことに形骸化しているという点が、株式会社法における大きな一つの欠陷ではないか。法律の企図しているところと現実とが乖離すること、遊離すること、株主総会におけるほどのものはないのではないか、かように考えますと、株主総会への授権という考え方は、私は少くとも日本の現実においては適当でない、かように考えましたことも、認許制度を採用しなかつた一つ理由であります。
  50. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そこで今授権資本制度につきまして取締役の権利の濫用を防ぐ方法は、株主の監督というようなこともあるというような御説明でありましたが、それと第二点の、どうも日本の株主は大した監督もできないのじやないかということは少し矛盾すると思うのでありまして、私どもは日本の個々の株主が、取締役の不正について一体どれだけ追究の権能があるかに対して不審があるのであります。  いま一つは、取締役それ自身に対しまして、英米の発達いたしました資本家と非常に違うような、信用が置けないような部類の人間があるというようなことから、ここに一つのわくをはめた方がいいのじやないかという考えに相なつたのでありまするが、これは議論にわたりまするので、質疑質疑としてこれでやめます。  次に無額面株の採用につきまして、これにも非常に取締役の権限が強大に過ぎまして、不正をやる可能性があるのじやないか。たとえば発行するときはごく安く発行しながら、何かの株の操作によつて——てこ入れと申しますか、さようなことによりまして、安く発行した時分は、自分たちがみんな縁故者でもつて占めてしまつていて、そして今度それをつり上けたときには高く売りつけるというような操作をすることによりまして、非常に暴利を取締役がふところに入れるというおそれがあるのではないかというふうにも考えられるのでありますが、さようなことについてはどういうふうなお考えでありますか、承りたいと思います。
  51. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 授権資本の運用につきましては、私は取締役会というものを十分信用してよろしいのではないかというふうに考えまするが、無額面株の発行という点につきましては、ただいま猪俣委員仰せのように、私も少からざる不安と心配を持つておるのでございます。法律案におきましては「二百八十條ノ十」あるいは「二百八十條ノ十一」というものを設けまして、取締役の不当発行というものに対する措置を講じ、また半面取締役の責任追究という制度を認めまして、その不当発行によるところの責任を追究するという道も講じておるのでございまするが、この点は、はたしてこれだけの法律上の措置を講ずることによりまして十分であるかという点につきましては、少からざる危惧を持つておる次第でございます。しかしながら私の承知いたしておりまする範囲におきましては、猪俣委員は日本の取締役はずいぶんいかがわしい人もいるようであるというふうな御意見でございまするが、数多い会社のうちには、もちろんそういう取締役もおることを否定できないと思いまするが、少くとも名をなしておる大会社におきましては、株主の信託によるところの責任を十分自覚せられまして、誠実に着実に刻苦精励して事務に当つていられるところの誠実なる仰ぐべき取締役も、決して少くないことを承知いたしておるのでございます。このたびの改正法におきまして強く要請されますのは、一方において法律上の責任を追究する、あるいは法律上不当発行措置を禁止するという手当をいたしてはおりまするけれども、その根底には学者の申しまする授託者偏理と申しまするか、相当高い取締役としての倫理的責任というものが要求せられておるのでございまして、こういう倫理的責任を究極において実現せしめまする道は、国民全体が会社の企業あるいは会社の経営に対して、強い道義的な関心を持つという点にあるのではないか。結局それは株主の個々の権利の実現という方法によりまして法律的には保障せられるとは考えまするが、改正法の根底には、特に取締役に対して高い倫理的な責任というものを要求しているということを御了解願いたいと思うのでございます。
  52. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 今度の改正法が非常に倫理性を強調しておるものである、その根底の上に立つものであることは、高柳賢三氏の論文を読みましてもうなずけるのでありまするが、われわれは不幸にして過去におきまして、日本一流の大会社の重役が、実にこの株の操作ということにつき身をやつしておりまして、相当驚くべきことをやつておるという事実を実は知つておるのであります。大きな生命保險会社の重役が、株式市場へうんとその豊富なる資金をひそかに持ち出して、株の買占めをやつてつり上げをはかる。そしてつり上つたところでぽんと売るような芸当をよくやつておるというようなことを見せつけられておる。これは大会社であります。それがゆえに、さような人たちによつてこれが惡用せられるということになると、実に困つたことになると思うのであります。そこでお尋ねいたしますが、アメリカにおきまするところの投資会社法のようなものを制定し、そういう監督は実際は投資会社が行うことにするような制度をつくることについて、立案者の間に話合いがあつたことがあるかどうか、承りたいと思うのであります。
  53. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 立案者の間において投資会社法をつくるというふうなことまでは話合つたことはございません。将来の問題として、投資会社というようなものは考えられていいのではないかという話は出たことはございます。投資会社法をつくることは考えたことはございませんが、国家あるいは公の監督による投資大衆の保護というものは、現在でも証券取引法によつて十分企図されている、あるいは証券取引委員会の適切な活動によりまして、ただいまお述べになつた重役による株式の価格の操作、あるいは不当発行というものも、ある程度は監督し得るのではないかと期待いたしておるわけでございます。
  54. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 少しこまかいことになりますが、この二百五十九條の二に取締役会のことが書いてありまするが、これを見ますると、取締役会の招集の通知は会日より一週間前に発することを要すということになつておるのであります。これは実情から申しますると、持ちまわり決議のようなことをやつている会社も多いのであり、もしさような決議でありますと、この條文から見ると、みなこれは無効に相なるのでありますが、この二百五十九條の二のような嚴重な制限をつけて、実情に沿いますかどうですか。その辺の御意見を承りたいと思います。
  55. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 二百五十九條の二によりますると、取締役会は会日一週間前に招集通知を発しなければならないということにいたしておりますが、この期間は定款をもつて適宜短縮いたすことができるわけでありますので、会社の定款によつて、適当と思われる期間を定めることによつて、ある程度まで運用は自由に行くのではないかと考えます。  持ちまわり決議でございまするが、私ども考えておるところでは、現在一般に行われておりまするような書面決議というものは、改正法律の認めないところである、かように考えておるわけであります。これは他の機会にもしばしば触れたかと思いまするが、現行法と違つておる点はこの点でございまして、なるほど改正法律案によりますると、取締役会は非常に強い権限を持ち、新株の発行あるいは発行価格の決定、そのほか業務の執行について実に重大な権限を持つ、かような権限を與えておりまするのは——取締役個々の人の能力あるいは経験、識見、才幹というふうなものに法律が期待いたしておる理由は、その取締役によつてつくられた取締役会において、取締役が自分の豊富な経験、知識を傾けて論議をする。その論議の結果到達したところの総合的な知識を集結した結論というものは非常に価格が高い。初めはごく不用意にある意見を述べたところ、これがいろいろ取締役と意見の交換をしているうちに、さらにすぐれた結論に到達する。衆知を集め、論議を闘わして、隔意なく意見を交換して得たところの結論というものは非常に高い価値がある。このために取締役会という制度を制定いたしたのでございます。かようにいろいろな方面から論議を盡されるような取締役会であれば、不正も行われないであろうし、不適当な措置もとられない、あるいは定款、法令違反ということも阻止されるであろう。この会議を通しての結論というものに法律では非常に高い価値をおいている次第でございます。これをかえまして、ある代表取締役が意見を書いて、そうしてその書面を取締役にまわして、いわゆる捺印をとるといつたような従前のやり方は新法のとらざるところであるという考え方で、かような案をつくつた次第でございます。実際上の運用においては、非常に煩瑣にたえないということも事実あろうかと思いますし、ことに会社においては、各地に支店が分散している、あるいは工場がいろいろ分散している。その支店長、工場長が取締役である場合に、これを一々招集するということは事実上不可能であり、非常に困難であるという場合もあろうかと思いますが、かような場合において、ある特定の取締役にある事項を委任する、ことに代表取締役を選任して、この代表取締役に会社の常務に属するような事項の決定を委任するということは、これはもちろん法律の禁ずるところではございません。さような委任ということによつて、個々の会社における業務執行の円滑をはかつて行くということは、もちろん法案はこれを禁止しておりませんし、さしつかえないのでありまして、この方法により、支障は十分除かれるのではないか、かように考えておるわけであります。
  56. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、従来行われておりましたような持ちまわり決議というものがあつたとすれば、これは改正法から見ると、無効の決議と認められるというわけでございますね。
  57. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 さように考えております。
  58. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それから二百三十條の二「総会ハ法令又ハ定款ニ定ムル事項ニ限リ決議ヲ為スコトヲ得」という條項について、これも松本博士の設例を私は引用するのでありますが、かような制限を設けると非常に困ることが起るのじやないかというのであります。たとえば取締役が死んだようなときに慰労金を出すというような決議は、法令にもきめてない。もしさようなことを定款にちやんときめてあればよいけれども、きめてないとするならば、これは一体どういうふうにして決議になるのであるかというふうな設問があるのでありますが、これはどういうふうにお考えになりますか。
  59. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 二百三十條の二のような規定ができますと、会社におかれましては十分注意をして、株主総会が決定することを適当と考える事項は、定款に掲げられる必要があると思う次第でございまして、その点は国民一般に徹底いたすように、もし法律案が幸い成立いたしましたあかつきには、その趣旨が国民に十分徹底いたすように、私ども努力いたしたいと考えておる次第でございます。ただいまお尋ねになりました退職金の問題、あるいは重役に支拂うべき賞與というものが、もし定款に何らの定めがない場合には、どうなるという点のお尋ねでございますが、現行法の第二百六十九條は、取締役の報酬の決定の事項であります。これは株主総会の決議事項になつているという点から類推いたしまして、何も規定がない場合でも、二百六十九條を類推して、株主総会が決議することは、必ずしも不当ではない、かように私個人は考えております。
  60. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 次に二百三十九條でありますが「総会ノ決議ハ本法又ハ定款ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外発行済株式ノ総数ノ過半数ニ当ル株式ヲ有スル株主出席シ其ノ議決権ノ過半数ヲ以テ之ヲ為ス」この議決の方法でありますが、これは定款に別段の定めがあれば、その定款の定め通りに従つてよろしいわけになるのですか。
  61. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 さようでございます。現行法においては、特別決議につきましては、定足数の定めがございますが、通常決議については、何らの規定がない。従つて一株の株主あるいは数名の株主のみ出席して、株主総会を開くことが法律上許されるわけでございますが、議決権を尊重いたす立場をとりますと、会議体における定足数ということを当然考えなければならないことでございますので、原則として二百三十九條のように「発行済株式ノ総数ノ過半数ニ当ル株式ヲ有スル株主出席シ其ノ議決権ノ過半数ヲ以テ之ヲ為ス」という原則を定めたわけであります。もつとも会社によつて、大会社で、しかも株主が日本全国に散在していることもございますし、あるいは小会社で株主が一定の都市にほとんど全員居住しているというふうな場合もありますので、その点は会社の自治にまかせまして、定款によつて定足数を重くすることも許されるし、あるいはうんと下げまして、十分の一というような定足数を定めることもさしつかえない。この点は会社の自由にまかせることにいたした次第であります。
  62. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、会社が千人の株主がある。しかし二人でも三人でも成立するような定款を書いた。そうしますと、通知だけは千人分出さなければならぬが、実際は一人でも二人でも集まればそれでやれる。極端な場合はそういう場合でも合法で開けるということに相なりますか。
  63. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 さようでございます。
  64. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それから二百五十四條「会社ハ定款ヲ以テスルモ取締役ガ株主タルコトヲ要スベキ旨ヲ定ムルコトヲ得ズ」これはどういう意味でこういう制限規定を設けられたのでありますか、もう常識上株主であろうがなかろうが、適任者が取締役になればいいとも考えられるのですが、どういう立法趣旨であるかをお聞かせ願いたい。
  65. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 猪俣委員の御意見のように、適者経営という原則を貫くために、かような規定を設けたわけであると、御了承いただいてよろしいと思います。あるいはこれも会社の決定にまかせるという意味で、定款によつて、特に取締役の持つべき株式数を定めることを許してもさしつかえないとも考えられますが、さようにいたしますと、定款をもつて資格株を高めるということになると、小株主が取締役になる機会を奪われることになりますし、これは会社における民主主義の徹底という面で、相当支障があるのではないか、あるいは一株の株主をもつて足れりという規定をしておくことが許されるならば、さようにしてもよろしいかとも考えますが、むしろさような規定を置きますよりも、完全に株主総会の選択にまかせることにいたしまして、適者経営の原則を掲げておく方がよろしいかと考えたわけであります。
  66. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それから今度の改正法を見ますと、配当をやる場合には、特別決議ということに相なつているのであります。ところが法定準備金を資本に組み入れて、それに対して無償で株式を発行して株主にやることは、取締役会の決議でできる。こういう二つに決議のやり方をかえました根拠はどこにあるのでありますか。
  67. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 利益配当をいたします場合に、現金の配当にかえて、株式による配当をいたすということを、改正法律案は採用いたしたのですが、配当は株主の固有権ではないかというふうな議論もございますし、また現行法においても、改正法律案においても、配当の決定は株主総会の事項になつているという点も考えまして、株式による配当は株主総会の決議による。しかも株主の固有権を奪うという解釈も、学者によつてはいたしておりますので、特別決議ということにいたした次第でございます。ところが準備金を資本に組み入れるという点は、むしろ会社の経営の問題でございまして、これは取締役会の決議でよろしいのではないか。これをしも株主総会の決定にまかす必要はないであろう、かように考えまして、準備金の資本組み入れは、取締役会の決議といたしたわけでございます。この場合に、必要によつては株式を発行して株主に割当てるという措置をとることが、経営上必要な場合もあろうかと考えまして、この場合でも、株式発行は、本来新株の発行は取締役会の権限でありますゆえに、それも取締役会の権限といたした次第でざざいます。
  68. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それからこの決議取消しの訴えを三箇月としたということにつきましても、いろいろ議論があるのでありますが、三箇月というふうにおきめになりました何か根拠があるのでありましようか、お聞かせ願いたいと思います。
  69. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 現行法では一箇月になつておりまして、一箇月にしぼつておきます理由は、なるべく総会の決議の不安定状態をすみやかに決定するということが必要でありまするがゆえに、一月という期間を定めたかと考えます。実際問題といたしましても、一月はやや短かきに失するのではないか、関係方面におきましては五年といつたような意見も出ておりましたのが、五年というのではとんでもないことになりますので、いろいろ折衝いたしました結果、まず三箇月程度ならば、少くとも株主の正当な主張を貫徹するには十分の期間であると考えまして、三箇月といたした次第であります。現実の訴えになりますと、一月といたしておりましても、あるいは三箇月といたしておりましても、相当問題は重大でもございまするし、いろいろ証拠調べの範囲も広くなろうと考えられますので、判決があり、それに対して上訴するということになりますと、やはり相当の期間がかかることとなりますので、訴えの提起期間を一月から三月に延長したということにより、はなはだしく大きな弊害と申しますか、不利益な結果は生じないだろうという点も考えまして、三箇月といたしたわけであります。
  70. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私の質問は本日は留保していただきまして、明日またもう少し御質問申し上げたいと思います。
  71. 田嶋好文

    ○田嶋委員長代理 他に質疑はありませんか。——なければ、本日はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時二十三分散会