○古橋
政府委員 ただいま御質問でございまする
提案理由のうちで、刑務所はこのまま放置いたしますれば、作業が少いために漸次就業が惡化して、治安上はなはだ困難になるということを書きました点について、参考資料として出しました表における作業收入の漸次高まつたこととにらみ合せて理解ができないという仰せでございます。その点についてまず申し上げます。御承知のように戰争中に刑務所が施設を失いましたのは、全施設の約三分の一でありまして、しかも当時約五万の人間を收容し得る施設であつたのでございます。ところが終戰後非常に收容者がふえて参りまして、現在では十万に達しております。終戰後舎房その他の建築を第一番にいたしまして、それにつれまして漸次工場等に手をつけて参りまして、ただいまようやくその七分
通り、あるいは六分
通りまでの工事を進めておるわけでございまするが、しかしまだ工場に至
つては、戰前程度には復旧いたしておりません。従いまして
昭和二十三年ごろの就業者の数並びにその当時の工場の
関係、また
昭和二十四年度におきまする就業者の数とその工場との
関係などが、この作業收益にも非常に影響して参
つております。なお物価の高騰ということもございまするし、また作業によりましては、たとえば非常に材料の少いマッチ箱を張らせるとか、封筒を張らせるとかいうような仕事をやらしておりますれば、作業收益というものは非常に少いので、表の上では少くなるわけでありますが、これをある程度組織いたしますれば、どうしても材料を注ぎ込みますから、その材料代はそのまま数字に出て参
つております。従いまして、この表でも
つて刑務所の作業
経営が非常に整
つて来たということをただちに断定することには参りませんで、むしろ私どもといたしましては、收容者が倍にもふえましたにかかわらず、作業を與えるということは事実上刑務所におきましては非常な困難を加えておるのであります。現地の刑務所におきましては、毎日ほとんど一万に達するような夫業状態にある人々を收容しておるのでございまして、その数は決して減少しておるというわけではございません。もつとも最近私どもにおきましては、受刑者を遊ばしておいてはいけないので、いろいろむりをして何でもかんでも少しでも仕事をつけろというぐあいに指導いたしおりますために、現地の努力によりまして、ある程度の仕事はつけるようにしておりますが、その仕事を得ることの困難ということにつきましては、非常に大きなものを加えて来ておるのであります。
なお御質問の第二点でございますが、この
法律は中小企業の圧迫にな
つて、この
法律実施のために夫業者を増大するということを考えなかつたか、またそれに対してどういう
措置を講ずるつもりであつたかという御質問でございますが、私どももちろん刑務作業をやります上につきましては、この
法律の必要だけではなしに、中小企業に対する
関係も、われわれの知識の
範囲内において十分考慮いたしました上に、なお
政府部内の各
機関の御
意見も徴しまして、この
法律の草案を進めたつもりでございます。刑務所の作業が
日本の全体の経済にありますその
地位というものは、非常に小さいものでございます。また全国の官公庁に層するいわゆる官用主義の線に入
つております工業に対しまする刑務所の作業の比例、これも数字で申し上げますると、大体私どもは一パーセントぐらいと承知いたしておるのでございます。そうしてこの一パーセントに当る刑務所作業が中小企業に対してどういうぐあいに影響を與えるかということも考慮いたしまするに——これはもちろん刑務所作業が今日民間作業ばかりに依存してお
つて、直ちにこれを官用主義に振りかえるというのではございまんが、すでに刑務所作業の
経営は実質的にある程度官用主義の線に向けられて参りました。今日では全作業を通じますると、約五十パーセントぐらいが官用主義の線に入
つて来ておりまして、そのほかの約五十パーセントが民需ということにな
つております。従いまして将来この
法律を
実施いたして参りまする上に影響があるとすれば、刑務所がこの五十パーセントの民需作業をやめて、官用に振りかえるという点に影響があると思います。私どもが聞いておりますところによると、中小企業庁におかれても、この刑務所作業の官用主義が中小企業にいかに影響するかということつきまして御調査の上、影響がないようにに御
決定に
なつたということを聞いておるのでございます。御必要がございますれば、そちらの方から資料をお取寄せになれば、その点は私が申し上げるよりはつきりいたすと思うのでございます。
それから印刷工と木工について御質問がございましたので、大体の御説明を申し上げたいと思います。印刷作業は約七十パーセントがすでに官需に振りかわ
つております。そのうち約五十パーセントが他の官庁、二十パーセントが自治庁、
法務府
関係というぐあいでございまして、あとの三十パーセントが民需にその道を求めておるのでございます。大体それが今日の作業の状態でございまして、将来においてもこの程度はあまり増大いたしません。
金額で申し上げますと、本年度の印刷の收入は大体一億二千万円程度までになる予定でございまするが、そのうち三千六百万円程度が民需にな
つておりまして、将来これが官需にな
つて来る程度でございます。その金額が印刷工業全体のパーセンテージでどういう数字を持
つておるかと申しますると、大体
昭和二十四年度の全国印刷業は、官需、民需合せて二百四十億と推定されております。従いましてそのうち約三千六百万円程度が将来官需になる部分に当るわけでございまして、パーセンテージから申しますれば、ほとんど問題にならぬ数字のように承知いたしておるのでございます。
木工につきましては、大体これと同じようなことが申し得るのでございまして、民間作業に対して一%にも達しない、〇・三%程度の全作業能力でございまして、その中の約半数の民需の分が振りかわるという程度の影響を及ぼすわけであります。従いまして私どもは官用主義の
法律ができました上において、
社会に大きな経済的な影響が参り、失業者がふえるということは、とうてい考えられないと承知いたしておるのでございます。
なおしかしながらこの
法律の
実施の上におきまして、もちろん刑務所作業を厖大なものにいたしまして、生産本位にいたすということになりますれば、いろいろな影響もあることはもちろんでございまするが、当局といたしましては、矯正を本位にいたしまして、生産作業につきながら職業の訓練ができるようなぐあいに考えまするために、刑務所作業の拡張ということも、私どもといたしましては必要の程度を越さないようにや
つて参りたいと思
つております。そのために私どもがただいま考えておりますることは、官用主義の
法律がもし
制定せられることになりますれば、その
実施のためには私ども
法務府以外におきまして、各
関係官庁並びに業者の代表という方の協議会を持ちまして、それによりまして刑務所作業の運営におきまして、中小企業との
関係を遺憾なく調節するようにいたしたいと考えておるのでございます。