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1950-03-25 第7回国会 衆議院 法務委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年三月二十五日(土曜日)     午後三時四十一分開議  出席委員    委員長 花村 四郎君    理事 高橋 英吉君 理事 田嶋 好文君    理事 山口 好一君 理事 猪俣 浩三君       押谷 富三君    佐瀬 昌三君       古島 義英君    松木  弘君       眞鍋  勝君    吉田 省三君       石川金次郎君    田万 廣文君       林  百郎君  出席国務大臣         法 務 総 裁 殖田 俊吉君  出席政府委員         検     事         (法制意見第四         局長)     野木 新一君         刑 政 長 官 佐藤 藤佐君         法務事務官         (刑政長官総務         室主幹)    關   之君         検     事         (検務局長)  高橋 一郎君         法務事務官         (矯正保護局         長)      古橋浦四郎君  委員外出席者         議     員 福田 昌子君         專  門  員 村  教三君     ————————————— 三月二十二日  委員小野孝辞任につき、その補欠として北村  徳太郎君が議長指名委員選任された。 同月二十三日  委員押谷富三辞任につき、その補欠として大  橋武夫君が議長指名委員選任された。 同月二十四日  委員大橋武夫君、小玉治行君及び田嶋好文君辞  任につき、その補欠として押谷富三君、伊藤郷  一君及び仲内憲治君が議長指名委員選任  された。 同月二十五日  委員伊藤郷一君、仲内憲治君及び加藤充辞任  につき、その補欠として小玉治行君、田嶋好文  君及び林百郎君が議長指名委員選任され  た。 同日  小玉治行君及び田嶋好文君が理事補欠当選し  た。     ————————————— 三月二十四日  下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の  一部を改正する法律案内閣提出第六三号)(  参議院送付) 同月二十三日  角田町に簡易裁判所設置の請願(庄司一郎君紹  介)(第一七〇九号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の  一部を改正する法律案内閣提出第六三号)(  参議院送付)  少年院法の一部を改正する法律案内閣提出第  七八号)(参議院送付)  少年法の一部を改正する法律案内閣提出第七  九号)(参議院送付)  法務行政に関する件     —————————————
  2. 花村四郎

    花村委員長 これより会議を開きます。  本日の日程に入ります前にお諮りいたしたいことがあります。昨二十四日、小玉治行君、田嶋好文君及び大橋武夫君が辞任せられ、伊藤郷一君、仲内憲治君及び押谷富三君が補欠選任せられ、本日伊藤郷一君、仲内憲治君が辞任せられ、小玉治行君、田嶋好文君が補欠選任せられました。つきましては理事補欠選任を行わねばなりませんが、理事補欠選任委員長において御指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
  3. 花村四郎

    花村委員長 御異議なければ、小玉治行君、田嶋好文君を理事に御指名いたします。     —————————————
  4. 花村四郎

    花村委員長 本日はまず下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。御質疑はありませんか。——御質疑がなければ、これより討論に入りますが、討論は省略し、ただちに採決に入りたいと存じますが、御異議はありませんか。
  5. 花村四郎

    花村委員長 御異議なければ、討論は省略し、これより採決に入ります。本案に賛成の方の御起立を願います。     〔総員起立
  6. 花村四郎

    花村委員長 起立総員。よつて本案は原案の通り可決いたしました。     —————————————
  7. 花村四郎

    花村委員長 次に少年院法の一部を改正する法律案及び少年法の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。御質疑はありませんか。石川金次郎君。
  8. 石川金次郎

    石川委員 少年院法の一部を改正する法律案の十七條の三についてお伺いいたします。これは別に法律條文の意義を明確にしておくという意味ではありません。十七條の三の規定のこしらえ方が、もう少し国民に親切でなければならぬと思います。この考え方からお伺いしたいのでありますが、十七條の三によりますと「少年院又は少年保護鑑別所の長は、收容中に死亡した者の遺留金品について、親権者後見人又は親族から請求があつたときは、請求者にこれを交付しなければならない。」と規定してあります。この場合において、本来少年院收容中の少年が死亡いたしました場合におきましては、その遺留金品は当然親権者もしくは後見人に返すべきものでなければならぬと思います。それを請求を待つて交付すると規定いたしました理由について、お伺いしたいのであります。
  9. 關之

    關説明員 お尋ねの点につきましては、これを民事法建前から見ますると、御質問通りになると思うのであります。それで実はこの十七條の二、三の規定は、監獄法に同趣旨規定がございまして、大体その先例にならいまして、さように一応規定したものでございまして、民法建前から申しますと、当然相続権者にやるわけであります。請求を待たずも当然その人のものになるわけであります。ところが実際の実務の上から見ますると、持つておるものは非常につまらない身辺のものが多くございまして、そうしてそのものの処分に困るわけであります。それで実は相続権者以外のものでも、親族の者が来て、それを持つて行きましようというようなことになると、その者に交付して、その間でしかるべく処置してもらうというようにするのが、少年院のそういうようなものを処理する事務上、妥当であるというふうに考えまして、監獄法当該規定にならいまして、そのように規定いたしたわけであります。
  10. 石川金次郎

    石川委員 おそらくはこの十七條の三の場合は、死亡いたしました者の遺留金品も少いものでありましようから、問題にならないかもしれませんけれども、しかしこの規定がなくても、当然相続人に行くのでありますから、相続人に行くものとしてある民法の原則をこわさない。こわすことはいけないだろうと思います。こわすのにはこわすだけの相当の理由をもつてこわさなければなりません。その相続人がなかつた場合は、請求があつたならばやるというような規定を置くべきものかと思いますが、それをとにかく請求がなければ返さなくてもよい。返さなくてもよくて一年経過後は国庫の所有に帰するというのは、單に手続の上から、取扱いの便宜からなされた法律だと思う。私の問題にいたしまするのは、このような法律のこしらえ方は不親切ではないかと言うのであります。これがいやなのであります。もつと法は親切であつてしかるべきだと思うのであります。少年が死んで、遺族が来た場合、これがありましたから持つていらつしやい、こうやるのが当然でしよう。それを請求しなければ渡さない。こういうような法律規定の仕方があるでしようか。そう言うと、こうおつしやるかもしれない。その場合においては、遺族が来たのだからちやんと返してやるんだと、それならば、なぜ法律をこのように不親切にこしらえるかということであります。またそういうような考えで、この法律をこしらえておきましても、末端に参りますと、やつてもやらなくてもいい、こういう考え方になりがちなのでなります。もつとこのこしらえ方を親切にすることができなかつたか。他方にそういう法律がありましても、世の中がかわつて来ておるので、法律はできるだけ親切なこしらえ方にしたい。そのことを私は問題にしたいのでありますが、どうしてもこうでなければいけないのでありますか。
  11. 關之

    關説明員 お尋ねの点は、もう少し親切にしてくれというような御趣旨でございますが、私はその御意見に対しましては、まことにその通りと考うるのでございます。これをつくるにあたりましても、実は監獄法の五十七條等規定が従前ございまして、実際の運用において、その規定趣旨にのつとつてつておりまして、あまり問題も起きず今日まで参つたわけでございます。なおこれ以外に、今考えてみますのに、民法規定から申しますと、これは当然相続権者に行くわけであります。ところが相続人がどこにいるかわからない。しかし相続人以外の親類の者が来まして、それなら私が預かつて行きましよう。そういつた場合にその者に便宜お渡しする。しかし、さてそれがだれに帰属するかということは、民法の上できめていただきたい。かような考えのもとに規定されておるものと、監獄法規定考えたのであります。大体その例にならいまして、従来監獄法十数年間のいろいろの結果に徴して、問題が起らないからこの程度でよかろうと考えてやつたわけであります。実際の運用におきましては、御趣旨の点は全部下の方に通知いたしまして、そのように運用いたしたいと存じておるわけであります。
  12. 石川金次郎

    石川委員 次に少年法の一部を改正する法律案の二十七條の二の規定でありますが、この点についてお聞きいたします。これが保護処分の継続中に本人年齢を偽つてつたということが明らかになつたために、保護処分を取消す、こういう御説明があつたのであります。つまり二十二歳の成年が十八歳と偽つて少年法に基く保護処分を受けたところが、あとで二十二歳であることが発見せられた場合には、保護処分を取消して今度は刑事手続移つて行つて刑事上の責任を負担しなければならない。そうすると先に受けましたところの保護処分は刑罰ではないけれども、身体自由の拘束を受けるという一つの苦痛を味わつている。その責任本人がそのまま背負わなければならないものかということを伺つておきたい。
  13. 關之

    關説明員 お尋ねの二十七條の二を設けるにつきましては、私どもとしても最も研究し、また議論の多かつた点でございます。それでこれは提案理由説明のときにすでに御説明申し上げたごとく、大体の考え方といたしましては、刑事処分保護処分とは違う。従つて保護処分を取消して、その者にもし刑事処分を科す必要があつて刑事処分を科しましても、いわゆる二重処罰規定の違反にはならない。こういう前提をとるわけであります。この点につきましては国内のいろいろの方面の意見も聞き、また外国あたりの法令も調べて、大体これでよかろうというので結論いたしたのであります。  次にただいまお尋ね保護処分には相当の強制力があるのですが、その意味におきまして、人権を多少なりとも制限する作用があるというのは、お説の通りであります。従つて保護処分を取消しまして、今度刑事処分をしたという場合、従来その者に加えた保護処分、特に人権を制限するところの強制的作用はどう考えるかという問題でありますが、そこで一つ考え方といたしましては、かりにその者の刑事訴追をする場合には、従来科したところの強制力のある保護処分は十分に考慮すべしという意見がございました。ところが大体の考え方根本といたしまして、保護処分刑事処分は違うのだということの根本前提をとりますと、さらにこれを考慮すべしと書くのは、どうもまずいのではないかと考えざるを得なくなつたわけであります。そしてさらにその問題におきましては、刑事訴訟上これらの訴追便宜主義になつておりまして、その刑の状態におきましては、裁判官諸般情状の中に考慮さるべき事項でもありますから、過去に受けました強制力のある保護処分は、しんしやくされて処理さるべきものであろうというふうに法律考えまして、この点についてはかような書きつぱなしの処置にいたしたのであります。
  14. 石川金次郎

    石川委員 そこで明らかにしておきたいのですが、そうしますとそのときの責任本人にはなく、審判の方にあるのだから、あと刑事裁判において考慮されなければならないと私は考えるのですが、その御趣旨ですか。
  15. 關之

    關説明員 考慮されなければならないというふうに考えるものでございまして、おそらく考慮されるであろう。その者の訴追、あるいは処断する上において、諸般情状中の一つとして考慮されるであろうと考えておるわけであります。
  16. 石川金次郎

    石川委員 そこですね。責任本人にないとすれば、審判のときにあつたとしなければならない。そうするとその責任が考慮されるであろうという点で、あなた方がおつしやる基本的人権が守られておりますか。
  17. 關之

    關説明員 この点は二十七條の二におきまして、私ども最も苦心をいたした点でございます。これは保護処分でございまして、本人うそを言つたからといつて、それについて本人責任があるというふうにはちよつと申しかねるわけであります。やはり根本といたしまして、審判をする側にいろんな疎漏があつた考えざるを得ないわけであります。それでこれを考慮しなければならないというふうに法文の上に書くかどうか、あるいはその他の規定において考えるかどうかという点であります。これは先ほど来申しておりますように、保護処分刑事処分とは根本的に相違しておりますので、これを法文の上に書くということは、法律としてとるべきでないと考えまして、一応書かなかつたですが、実際においてはこれはやはりほんとうに考慮さるべきことであると考えるのであります。
  18. 石川金次郎

    石川委員 考慮しなければならないものであるというように、どうしてもならなければならないのですが、考慮されなかつた場合はどうなりますか、
  19. 關之

    關説明員 事案によりまして、あるいは考慮し、考慮されないといういろいろなケースがそこに生ずると思うのですが、それは事柄によりまして、法律的に申しますと違法という問題は生じないと思うのであります。やはりそういうことの当不当という問題は考えられる余地はあるかと思うのですが、法律上はかりに考慮されなかつた場合があつてもそれはそれだけの理由があつて考慮されなかつたということになるだろうと思います。
  20. 石川金次郎

    石川委員 これは当然考慮されなければならないのです。考慮されなければ、皆様が御苦労なさつているところの基本的人権は守られないということになりはしませんか。考慮されない場合は、そこに一応の理由があつたでは済まなくなりはしませんか。これは保護処分で、審判所の方で誤つたのだから仕方がないということになると、一体どういうことになりますか。
  21. 關之

    關説明員 今のお尋ねの点は、私どもといたしましては、少年法における保護処分は、若干の強制的な手続がありまして、その限りにおいてそれが人権の若干の制約になる。その点はその通りだと思うのであります。そうしますと、それをやつたあとにおいて全然考慮しないというのは、人権の尊重上遺憾な点ではないかというお話であります。これは事件によりましては、まことにそのような場合があり得ると思うのであります。そうかと申しまして、法律建前からいたしまして、刑事処分保護処分とが、そこに本質的な相違があるという前提をとつてみますと、法律の上におきまして、それを同等の価値として考慮しなければならないというふうに書くのは、理論としては、法律的にそこに背理というふうなものが考えられるので、非常に表現に困難を来すわけであります。そこで実際上においては、私は十分に考慮さるべきものとは思うのであります。しかし法律の上において、それを考慮されなければならないというふうには書き得ないものではないかと考えているわけでございます。
  22. 石川金次郎

    石川委員 そういう救済方法はどうしても書けなかつたということでありますが、私も刑事処分保護処分とは異なると思います。この立て方、法律押え方は不賛成ではありませんが、その場合には、国家賠償法が入つているか国家賠償法による救済余地はございませんか。
  23. 關之

    關説明員 国家賠償法には、故意または過失ということになつているわけであります。それで審判をなした家庭裁判所裁判官処置が、故意はもとより認められないでしようが、はたして賠償法によるところの過失として認められるかどうかという点は、今日審判の実際に行われている少年うその言い方と申しましようか、それに照し合せて該当する場合があるかどうか、私は非常に疑問に思つているのであります。
  24. 石川金次郎

    石川委員 もう一つ明らかにしておきます。刑事被告人年齢ほんとうに言わなければならない責任がございましようか、また少年の場合においては、ほんとうに自分の年齢を言わなければならないという法律上の責任を持つておりましようか。
  25. 關之

    關説明員 刑事訴訟法においては、被告人の場合においてはそういう義務はないと思うのであります。また少年法においても、進んで言わなければならないという義務は、これは法律上は規定されていないと思うのであります。しかしそれは法律を越えた上におきまして、その少年自体がやはり正直に言つて裁判を誤らしめないというふうなある気持だけは、私どもとしてはぜひ少年にも望みたいと思つているところであります。
  26. 石川金次郎

    石川委員 その法律を越えて一つ責任を求めるということになると、何となく罪刑法定主義にぶつかつて来るような気がいたします。法律上の責任がないといたしまして、年齢ほんとうのことを言わなかつたとしたならば、その場合おいて、年齢がかくかくであつたという誤りは、だれが責任を負うのでしようか。その場合に、故意か何かの過失がなければ、この誤つた審判は起らないのであります。その場合はどうなりますか。
  27. 關之

    關説明員 この点は先ほども申し上げた点でございますが、やはり全体として、審判をする側において間違つたということになると思います。しかしこれからすぐこのあやまちが国家賠償法に言うところの過失に当るかどうかという点については、私は非常な疑問を持つているわけでございます。
  28. 石川金次郎

    石川委員 国家機関のやるべき側が、その場合においてそれをただすべく嚴密にやつたならば、明らかになり得べき場合であつたならば、それでもなお疑問でありますか。その注意は、法律を執行する側においては当然拂わなければならないと思いますが、どうなりますか。
  29. 關之

    關説明員 実際に起ります、年齢を詐称するという事例を考えてみますと、たとえば沖繩生れの少年であるとか、ないしは朝鮮の少年であるとか、または内地の少年においても、裁判所において少年観護所少年の身柄を一応收容して審査する。そこに一定の期間があるわけであります。その期間には、現在認められているところの各種方法をもつてしても、とうていその年齢を正確に確定することはできない。それで一応本人の言うことを真実なりとして送らなければならないという事態になるわけであります。現在の許されている通信方法、あるいは調査方法をもつてしては、その裁判所に認められている期間内ではとうてい果し得ないわけであります。そういうようなことで、年齢詐称をそのまま、どうも現在の審判の終局の段階においては、本人の言うことがほんとうであるというふうに認めざるを得ない傾向になつているのであります。それでいかなる費用も、いかなる期間もかけてこれをやりますれば、そのほんとうのことも調査し得るかもしれませんが、現在の右申し上げたようないろいろな制約のもとにおいては、どうしてもそこまでなし得ない一つの事情があるわけでございます。さような次第から、いろいろ調査の結果、あらゆる方法を一応盡してみて、大体として、この少年言つていること以外にほんとうのことは確かめることができないというような次第で、審判をいたしまして、やるわけでございます。そこでそのようなことによりまして、はたして国家機関において賠償法上の過失という点まで行けるかどうかという点が、非常に疑問があるわけでございます。
  30. 石川金次郎

    石川委員 それでは最後に、この提案説明にありますように、かりに新たに刑事訴追をするといたしましても、その場合には十分にそれまでの保護処分を受けた事実はしんしやくされ、適切妥当に処置されるものであることは申すまでもありません。こうありますが、このような適切妥当の処置をされますために、この法案を離れて、一般裁判所では適用ありませんが、法務府でおやりになるならば何のこともありませんが、裁判所に入つた場合に、適切妥当な方法をどうして具現するとお考えになつておりますか。さらにこれを言いますと裁判権に対する干渉と言われるようなことがあつてはたいへんでありますから、どういう方法をおとりになるか、ただ説明だけこうやつておくと言うのでありますか。
  31. 關之

    關説明員 お尋ねの点につきましては、検察官がその少年を取扱う場合におきましては、さような点は十分に考慮するものと私は確信しております。また裁判所側におかれましても、おそらくさような点は十分考慮いたしまして、処断の上に十分しんしやくされるというふうに考えております。
  32. 石川金次郎

    石川委員 私はこれで終ります。
  33. 花村四郎

    花村委員長 この際お諮りいたします。両案に対し、福田議員より委員外の発言を求められておりますが、これを許すに御異議ありませんか。
  34. 花村四郎

    花村委員長 御異議なければこれを許可いたします。  福田君に申し上げますが、本委員会の議事が他にもありまするので、きわめて簡單にお願いいたします。福田君。
  35. 福田昌子

    福田昌子君 私は最近の青少年の不良、浮浪また犯罪という傾向があまりにも激増の一路をたどつているという状態にかんがみまして、本委員会におきましても、少年法及び少年院法の一部改正に関しまして、お願いのために、委員外質問をお願いいだした次第でございます。簡單にという御命令でございますので、簡單質問させていただきたいと存じます。  私が御質問申し上げたいのはただいま申し上げましたような要旨がございますので、大体青少年保護という意味におきまして少年法があり、兒童福祉法があるのでございますが、それにもかかわらず、現状というものは、犯罪少年は非常な増加の一路をたどつておる。さらにはまた青少年でありながらヒロポン中毒とか麻薬中毒、こういつた青年がふえて来つつある。それがまた犯罪一路をたどつておる現状にございまするので、まずそういつた不良少年浮浪児、また青少年犯罪現状といつたようなものについての概略を御説明願いたいと思うのであります。それと、その不良少年の今日の特徴、またこれに対するところの対策、こういつたものを承らせていただきたいと思います。
  36. 佐藤藤佐

    佐藤(藤)政府委員 ただいまの福田議員の御質問に対してお答え申し上げます。最近青少年犯罪が非常に激増いたしまして、その罪質もだんだん惡質の傾向に向つておるということは、これは各種の資料を総合して申し上げることができるのでありますが、あいにく数の上でお示しすることができないのをはなはだ遺憾に存ずるのであります。御必要とあれば、またの機会に統計をもつて示しすることができると思います。かように激増する、また惡質化して来た青少年犯罪原因について考えてみますると、これは遠くさかのぼつて東亜戰争のころから養育された青少年が多いのでありまするから、その当時の教育なりあるい社会環境、また戰後における思想の混乱、一般道徳観念の低下というようなことがおもなる原因となつておるだろうと思うのであります。従つてこれが対策につきましては、ひとり犯罪の面を取締る私どもの手だけでは負えませんので、現在内閣に設けられておりまする青少年対策協議会におきましても、法務府のほかに文部省、厚生省、労働省、警察関係、すべて関係官庁が協力いたしまして、総合的にこれを検討し、また対策を講じておるのであります。この対策につきましては、犯罪の起きた場合、あるいは不良化青少年が発生した場合、單にこれを取締るというだけではとうてい間に合いませんので、さかのぼつて青少年に対する学校教育家庭教育、また社会教育においても、お互いに連帶してその責にあたるべきものではないかというふうに考えております。
  37. 福田昌子

    福田昌子君 先ほど統計をお示しになるというお話でございましたけれども、どうか統計のお示しを願いたいと存じます。重ねてお願い申し上げておきます。  さらにもう一つ伺いたいのは、こういつた犯罪少年の知能テストの結果がどのような状況であるかということを、概略御説明願いたいと思います。
  38. 佐藤藤佐

    佐藤(藤)政府委員 その点につきましても、犯罪青少年の数を申し上げますと同時に、知能の專門的な統計ができておりまするから、その際に申し上げたいと思います。
  39. 福田昌子

    福田昌子君 先ほど結局不良少年の温床になるものは、今日までの教育とか、思想とか、道徳とか、あるいはまた一般社会環境というお話でございまして、厚生当局、労働省、文部省、そういつた関係官庁と協議の上でその対策をとりたい、またとつておるというお話でございましたが、具体的にはどういう対策をおとりになつていらつしやいますか、その具体的なところをお示し願いたいと思います。
  40. 佐藤藤佐

    佐藤(藤)政府委員 ただいま申し上げました内閣に設けられておる青少年対策協議会は、実は昨年衆議院並びに参議院で不良化する青少年あるいは犯罪化する青少年対策について、政府が総合的に考慮せよという決議がございましたので、その決議の趣旨に基いて、青少年対策協議会というものが内閣に設けられておるのでありまするが、その協議会におきましては、設立以来幾たびか内閣各省の関係官が協議いたしまして、そしてそれぞれ連絡をとつて研究を進めておるのであります。これまでとつた対策としましては、昨年の秋に各道府県に連絡いたしまして、青少年犯罪の防止について一般世人の認識を深めると同時に、青少年犯罪予防について、その教育について推進いたしておるのであります。さらに本年の春においても、第二回のそういう催しをいたしたいというので、目下計画いたしておるのであります。なお研究の途上ではありまするが、青少年対策協議会において、各省の対策を持ち寄つてパンフレツトを作成いたしまして、この前の国会において皆様に御配付申し上げたように、研究の途上ではありまするけれども、一応の対策としてお示しすることができるだろうと思うのであります。
  41. 福田昌子

    福田昌子君 三月の初めから一週間ほど青少年保護福祉週間——名前は少し違うかもしれませんが、そういうものがありましたが、これもその一部のお仕事かと思つておるのでございますが、そういつたその週間に対する成績並びに大衆のこれに対する関心の程度、そういつたことについての御説明を願いたいと思います。
  42. 佐藤藤佐

    佐藤(藤)政府委員 ただいまお話の三月の初めに催された兒童福祉に関する催しでありまするが、承りますれば、これは東京都において警視庁が主となつてさような催しをしたということを聞いておるのでありまして、その催しの効果としてどのくらい世人に認識を深めたか、またそれによつて兒童の犯罪、あるいは不良化をどのくらい防止できたかというような程度については、これは私の方では十分調べができておりません。
  43. 福田昌子

    福田昌子君 では先ほどお願い申し上げました不良少年、こと浮浪兒が犯罪一つの最もはなはだしい温床になつておりまするが、そういつた犯罪者の数、また知能状況、それからまたそういつた週間の成績というものを御報告願いたいと思います。これは先ほど質問申し上げましたことに対する御答弁をお願いいたすのでありますが、ヒロポン中毒麻薬中毒というものが青少年の間に相当に行われており、しかもこれらはまた犯罪の道に通ずるのでございます。それらに対する御調査対策を御説明願います。
  44. 佐藤藤佐

    佐藤(藤)政府委員 御承知のように、ヒロポン中毒少年が非常にふえておるのでありまして、この点も統計をお示しする際に、その数をはつきり申し上げたいと存じます。
  45. 福田昌子

    福田昌子君 刑政長官の御説明でございますが、私は非常に了解に苦しみ、納得が行かないのでございます。あまり御質問をお願い申し上げましても迷惑かと存じますので、あとでゆつくり御説明を承ることにいたしまして、先を急ぎます。  今年三月は新制中学最初の学童が相当多数卒業するのでございます。そういつた学童は約百五十万からに上るだろうと推定されております。そういつた青少年の中の約三割以上が就職を希望しているにもかかわらず、求職者の方では非常に狭き門といつた傾向になつてつて、四十万から五十万の青少年の失業者が出るだろうという推定が新聞紙上に出ておるのでございます。こういつた青少年というものは進学するには学資がない。また勤めるには職がない。本人の希望、本人の性能、知能というようなものは、青雲の志を抱いておつたとしても、それを伸ばすに道がないというのが、新制中学卒業生の四十万から五十万にわたる人に與えられた運命ということになつておるのであります。青少年保護というような観点に立ちまして、これはないがしろにできない大きな問題と思うのでございますが、これに対する政府の御対策を承りたいと思います。
  46. 佐藤藤佐

    佐藤(藤)政府委員 新制中学の卒業生の中に、上級学校に進学しようと思つても学資がなくて、進学することができない。また就職しようと思つても思う通り就職先もない。かようなことが当然青少年不良化の温床になるのではないかという御質問でございまするが、たしかにさように考えられるのであります。しかしながらこの対策につきましては、ひとり法務府の問題のみではないのでありまして、労働省その他とも十分対策協議会においてお互いに研究いたしたいと存じます。
  47. 福田昌子

    福田昌子君 青少年対策審議会というものがございまして、いろいろその対策を御審議中だと承ります。まことにけつこうなこととは存じますが、問題はすでにもう火がついておるのでございます。今ごろ審議する、対策をきめる、そういうのんびりしたことがやれるような時期ではないのでございまして、どうか政府当局におきましては、この点に十分御関心いただきまして、こういつた不幸な立場にある青少年、しかもこういつた青少年は戰争中から学制改革、あるいはまたその前には学徒動員、その他の意味におきまして非常にしいたげられた戰争の最も大きな犠牲者ともいえるのでありますが、こういつた人達の将来の対策ということにつきまして、私は一日も早く政府当局の果敢な対策を望むのでございます。先ほど労働省とか文部省とか、あるいは厚生省当局と御相談の上できめるというお話でございましたが、こういうことは三月の卒業期を控えて当然決定しておらなければならない対策と私は考えるのであります。時期的におきましても非常に不満でありまするが、しかし今からでも遅くございませんので、どうか当局におかれましては早急にその対策をお考えいただいて、不良化を防止し、有為な青年を、国家将来のためにまつすぐお伸ばしになるようお導き下さるよう要望するものであります。  それからさらに大きな問題になりまするが、青少年犯罪または不良化、あるいはまたその他の不良行為というものは、結局、先ほどお話がありましたように、社会の環境、あるいはまた経済状況、あるいは教育、思想、道徳というものがすべてその原因にはなつておりまするが、ただこの際私たちが忘れがちのものは遺伝の問題であろうと考えるのであります。今日、遺伝学の法則におきましては、メンデル、モルガンあるいはルイセンコの法則が言われております。環境というものが多少遺伝というものに対しても支配力を持つておるにいたしましても、遺伝の因子そのものに対するところのメンデルの学説というものは、これはくつがえすことのできないものであろうと思うのであります。そういつた観点からいたしました場合、医学的な、優生学的な見地に立つて青少年対策というものが、今日の日本においては全然とられてない感を私は持つのでございます。青少年のこういつた不良化犯罪というもののパーセンテージをとつてみますると、これは知能テストの結果をお示しいただくそうでございまするから、そうすれば一層はつきりわかると思いまするが、知能指数の低い青少年が多いのでございます。こういつた知能指数の低い人たち、ことに白痴、魯鈍に近いいわゆる精神薄弱者というものは、きわめて遺伝的な傾向が強いのでございます。こういつた人たちに対していろいろな保護対策が加えられておりますが、積極的な対策がとられていないのが日本政府のとつている対策であろうと考えます。外国におきましては、こういつた精神薄弱者に対しましては、一定の保護施設がありますが、さらにそういう青少年に対しましては、登録しておいて、将来青年になつたあかつきにおいて、精神薄弱者に対して強制的な断種手術をする。そうして将来の不良あるいは犯罪に傾きやすい子孫の出生を防止するという対策がとられておるのであります。日本は今日、そうでなくてさえ産兒制限、人口過剰というものが一つの大きな世間の話題として取上げられておりますときに、青少年不良化対策とも関連いたしまして、そういつた精神薄弱兒に対する優生学的な対策を私は政府にお願い申し上げたいと思うのでありまするが、政府のこれに対する対策を承りたいと存じます。
  48. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 いろいろお話がありまするが、大体青少年不良化というような問題は先ほど申し上げた通り、まず第一の原因は敗戰であります。経済も社会もすべて破壊された今日、さような環境のために不良少年が出て来るのであります。單に政府が一片の対策をもつてどうしようもないのであります。国民みずから反省すべきものであります。そのような戰いをしたということは国民の全責任であります。従つて全国民が責任をもつてこれが対策を講ずべきものであります。これを單に政府の施策にまつて、その施策の効果をいたずらに過大に期待するということは非常に間違いだと思います。あなた御自身でお考えになつてもわかります、どういう対策がありますか。それに適当な対策、ペニシリンを刺したり、あるいは新しい薬を刺したりするような対策はないのであります。それが苦しいのであります。それができれば何でもないのであります。国民が全力を盡してもこれはなかなかできないことであります。われわれはまず、これは何としても日本の経済復興、社会の復興ということをしなければならぬ。それが何よりの対策であります。それをやつて、しかる後に具体的にデテールについての対策をやらなければならぬと思います。  また優生学的なお話があります。これはけつこうでありますが、ともすればフアシヨ的な傾向、全体主義の考え方になります。全体主義をもつて個人の自由を制限することになる。これは容易にとるベからざることであります。全体主義的に、社会の多数はそれで利益するかもしれませんが、それの犠牲にされます個人は、どういうふうに、何をもつて報いられるのでありますか。これはフアシヨ的な考え方、全体主義の考え方からはただちに是認をされますが、そうでないデモクラシーの考えでは、そう簡單には参らないのであります。ある国でやつておるかもしれませんが、日本でただちにそのまねをするかどうかは大問題であります。そういうこともいろいろ問題がありまするが、それらをすべてこの国会において御審議を願つて、政府と国会とが協力してりつぱな政策を立てて行くようにいたしたいと思うのであります。
  49. 福田昌子

    福田昌子君 ただいまの法務総裁の御説明はごもつともでございまして、私といたしましても、何も今日の少年不良化または犯罪化というものは、政府の責任であると、すべてを政府の責任に転嫁しているわけではないのであります。当然私にち国民もこれに対して責任を負わなければならない、それはもう私自身もみずからその責任におきまして非常に恥じておるのでございまするが、今日は政府に対しての要望でございますから、これについてお願い申し上げたのであります。  具体的な対策につきまして、何をもつてするかとのお話でありますが、私は具体的な対策をただいま申し上げたのでありまして、それをフアシヨ化である、あるいはまた思想問題につながつて考えになるということは、法務総裁の個人の見解でありましようが、私は優生学的な立場、医学的な立場において言つておるのであります。今日法務庁におきまして、優生学的研究、医学的の研究ということが全然なされていないということに対して、この際非常に不満であるということを申し上げておきます。これは青少年犯罪についての話ばかりではなくて、優生法についての問題であります。今日優生保護法という法律がありますが、それにおいては優生学的の立法から、この不良になる子孫の出生を防ぐということがその法律建前になつておりますが、そのねらいとするところは、精神病院の患者あるいはまた刑務所の重罪犯、ことに精神病的性格を持つている犯罪者、これは非常に遺伝的な傾向が強いのであります。そういう犯罪者に対しての断種手術というものを優生保護法に基いてお願いしたいのであります。優生保護法は現に昭和二十三年九月十一日から実施しておりますが、今日まで法務府が、刑務所関係において何人断種手術をしたかということを私はお伺いに参つたのでありますが、一年もたつにもかかわらず、一名の断種手術もしておらないということを聞いたのであります。これは私の御調査の願いが徹底しておらずにあるいは現実においては何人かそういう犯罪者の断種手術があつたかもしれませんが、それほど政府当局は、今日の優生学に対して関心が薄いということを私は申し上げたいのであります。これは日本に限らず、日本よりももつと民主的である文明諸外国において、優生学の立場から強制断種という政策がとられていることを御反省願いたいと思います。日本民族の将来ということを考えましたならば、科学性のない、後手後手の対策に私は非常に不満であります。あえて御当局の反省をお願いしたいのであります。当然私もこれに対して国民として責任はとるつもりであります。御説明はお願いいたしません。私はただ政府当局の科学的な反省をお願いいたします。
  50. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 科学々々と言われまするが、科学的に徹底すれば、つまり唯物史観になるのであります。唯物史観に立つて国政を論議するということは、私は絶対に反対であります。ですから、そこのところは、科学者の立場はさようでありましようが、科学者の立場即政治ではないのであります。よく御反省になつて考えになることをお願いいたします。
  51. 福田昌子

    福田昌子君 それは非常に飛躍したお話であると思います。しかし話を本筋にもどしまして、私ども考えさせていただきますが、御当局も優生学というものを御考慮いただいて、日本民族の将来に対して御関心を持つていただきたい。また優生学的な面を応用いたしまして、青少年不良化犯罪化の防止対策を立てていただきたいということを要望するのであります。こういう少年法の改正が行われますことは非常にけつこうなことでありまするが、私といたしましては、こういう保護をしていただきます場合において、この法律の精神を生かした運営をしていただきたい。そのためには政府のいろいろな行政的な対策もおありでしようが、また一般大衆、私たちへの啓蒙、宣伝、協力というようなことに対しましても、政府は対策をおとり願いたい。またさらに新しい憲法のもとにおいては、青少年を何よりもまず保護し、大事にしなければならない建前におきまして、私前からお願い申し上げますように、兒童の誘拐事件に対しましては、兒童保護人権尊重の意味におきまして、積極的な犯罪捜査をお願い申し上げたいのであります。誘拐罪に対しましては、私は御当局の御説明に非常に不満でありますが、この委員会で御質問申し上げるのは時間の都合もありますので、個人的にまた刑務当局にお願いに上りたいと存じます。私法務総裁に対しましてはなはだお気にさわることを申し上げたかもしれませんけれども、どうぞ私の真意をごそんたくいただきまして積極的な、後手でない対策をおとりいただきますようお願い申し上げます。
  52. 花村四郎

    花村委員長 ほかに御質疑はありませんか。御質疑がなければ、これより討論に入りますが、討論を省略し、ただちに採決に入るに御異議ありませんか。
  53. 花村四郎

    花村委員長 御異議なければ、ただちに採決に入ります。両案について賛成の方の御起立を願います。
  54. 花村四郎

    花村委員長 起立総員。よつて両案は原案の通り可決いたしました。  本日採決いたしました三案に関する委員会報告書の作成に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  55. 花村四郎

    花村委員長 御異議なければ、さようとりはからいます。     —————————————
  56. 花村四郎

    花村委員長 次に法務行政に関する件を議題といたします。猪俣委員より法務総裁に対する質疑の通告がありますから、この際これを許します。猪俣浩三君。
  57. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 近時いろいろの原因から発生するのでありましようが、官吏、政治家そういう一団の人たちによります疑獄事件というものが、しばしば世間の耳目に響いております。五井産業事件を初めといたしまして、九州の日興殖産無盡会社、あるいは金相哲の不正事件、あるいはやみ金融事件というような大がかりな犯罪が、ひんぴんとして世に伝えられておるのであります。そこで私はこの綱紀の頽廃に対しまして、一、二の具体的事案につきまして、法務総裁の御意見及びその御決心を承りたい。  まず私どもが事案のある程度のことを存じております事件につきまして、それを代表的に選びまして、それに対するところの法務府の御意見をお聞きしたいと存ずるのでありますが、一つは都不動産株式会社に関するところの大蔵官僚の間に起きました贈收賄事件、あるいはまた脱税事件、なお京橋税務署に関係しますところの、私のいわゆる集団贈收賄事件、いわゆる大蔵省及び税務署にも関するところの事案であります。その次には五井産業事件についてお尋ねいたしたいと思います。  まず大蔵官僚に関します事件といたしまして、この都不動産株式会社の事件というものは、一眇たる会社の事案でありますけれども、実に今の大蔵官僚、今の税務署というもののあり方、官紀の紊乱、さようなことにつきましての一つのサンプルとして、概略を申し上げまして、法務総裁の御意見を承りたい。この都不動産株式会社というのは、いわゆる物納不動産といたしまして、大蔵省の管理に属しますところの不動産を拂下げを受けて、これを競売し、その競売代金は国庫に入れるという指定業者の一つであります。この社長は追放者でありまして、名前は田村秀吉氏、この人は戰時内閣時代に石渡蔵相のときに参與官をやられましたる、大蔵省の官吏の経験ある方であります。現在追放者となつておられるのでありますが、この大蔵省の指定会社の社長と相なつておるのであります。現池田大蔵大臣とは、熊本の第五高等学校時代の同窓で先輩であるそうでありまして、非常に懇意な仲だそうであります。この池田大蔵大臣の威勢をかさにいたしまして、大蔵省に出入いたし、なお大蔵省の官僚に饗応いたしまして、この物納不動産のうち最も味のあるところの不動産の拂下げを受け、そうして莫大なる利益を上げておつた。こういう指定業者が東京財務部の管下に十七あるそうでありますが、そのうち最も拂下げ事案が多くて、しかも最ももうけておる第一等に位するのだそうであります。そしてさように相なりましたのは、一にこの田村秀吉氏の手腕にまつたというのであります。しからばいかなる手腕を発揮したかと申しますと、大蔵省の管財局長から、下は單なる平官吏に至るまで、実に驚くべき饗応をやつておるのである。その成果が上つてこの優秀なる成績を上げているというのであります。これは私が内部の人の的確なるところの事案に基きましての言を聞いたのでありまして、決してデマではありませんし、事案は法務府の特審局におきまして実に詳細に調べられているはずでありますにかかわらず、どういうものであるか、事件はやみに葬られそうに相なつておるのであります。  そこで、その饗応の状態につきまして、これは法務総裁の御参考までに申し上げるのでありますが、実に驚くベき状態である。しかもこういうことが他の機関にもひんぴんとしてあるのではないかという推測ができるのでありますから、法務総裁に御参考までに申し上げます。この会社は田村氏が社長になりましてから、大蔵省に深く食い入りまして、まず饗応を官吏にやる。そのやり方もなかなか考えたものでありまして、いわゆる局長級の上級の官吏に対しましては、中野のモナミという料亭及び紀尾井町の福田屋という料亭、これはなかなかわれわれが近寄ることのできない上級の料理屋だそうでありますが、まずここで歓待をやる。それからまず課長級程度の者は、これは台東区の白鬚にあります隅田別館で、中年ごろの者はここで饗応する。なお若い連中は銀座の橋のたもとにありますキヤバレーのハレムという所に送り込む。かように三段階にわけまして、しかも東京の財務部には第一、第二、第三課とあるのだそうでございますが、まず第一課が済むと、その次は第二課、次は第三課というように、少いときでも四、五人、多いときには二十人くらい招待をやつて、それぞれ三階級にわけて饗応をやつたのであります。この費用が平均月三十万円で、年三百五十万円から四百万円かかつているのだそうであります。管財局長を初め、各課長、平署員に至るまで、ほとんど饗応を受けざる者なしという状態だそうでございます。これは本省のほかに、新宿、品川、立川、目黒に出張所があるが、これも御多聞に漏れず、それぞれ所長以下が饗応にあずかる。なおそのほか発展いたしまして、千葉と横浜にある——横浜の方は万栄樓という支那料理屋であり、千葉においては稻毛の浅間屋というのがこの係を仰せつかる、かようにいたしまして、ほとんど饗応を受けざる者なしという状態だそうであります。この拂下げの問題は、東京財務部が所管であり、その上には管財局があるのでありますが、この局長以下がかような状態で、この会社から饗応を受けている。そこでなお御考慮願いたいことは、この会社は、ある拂下げを受けました不動産を売りますというと、その売上げ代金の中から、大蔵省から五分、買受人から五分、計一割のコンミツシヨンをもらう。これは仲介料として正式なものであります。ところがここにふかしぎなことは、田村秀吉氏が社長になりますと、その手腕を発揮いたしまして、大蔵官僚と交渉の結果、特別報獎金制度というものが昭和二十三年度から成立されまして、五万円以下の不動産を売買した場合には、その売拂い一筆ごとに二千五百円均一の特別報奬金というものをもらうのであります。これが三千円に売れたといたしましても二千五百円特別褒賞金として貰う。その上になお一割貰うのでありますから、大蔵省の国庫にはいりますのは、三千円に売れても二百円しかはいらないのであります。こういう制度を確立された。そこでこの特別褒賞金によりまして、十二分に大蔵官僚の招待ができるという仕組みに相なつておる。実に天下の奇観と申すべきものであります。国民が血の涙でもつて金で拂えないで物を、土地を、家を税金として出しておる。それをなるべく有利にさばきまして国庫の收入をはかるべきであるにかかわらず、かような業者と結託いたしまして、かような特別褒賞金制度というものを樹立いたしまして、平均一割七分というもうけをさせた。昭和二十三年度の五月から二十四年度の五、六月ごろまで、約一年間に一億円の売上げがあつたそうでありまするから、一千七百万円の收入が上つて、この接待費を差引きましても六百万円ばかりの純益を上げたというのであります。しかるに税務署の届は逆に百何十万円かの赤字という届をして、それがそのまま通つておるのであります。しかも驚くベきことは、この会社は一年間に四回本社の所在地をかえておる。最初は神奈川県の茅ヶ崎にあつた。その次は有楽町の三丁目に持つて来た。その次は新宿の揚場町に持つて来た。最後に現在は中野区昭和通二十五番地の田村社長のおめかけさんの家に置くというのであります。実際の事務所は文京区湯島三組町二丁目八番地に置いてある。しかるに何のためだか本社の所在地はこういう所に登記しておる。これは何のためであるかというと、脱税のためだそうであります。茅ケ崎税務署が調べかかるとどこかに行つてしまう。今度は東京都有楽町にある。これは神田の税務署だ。それが新宿に行き、今度は中野に行つておる。こういうふうに転々としておつて、結局税金がかからぬ。税金をごまかす意味において本社の所在地を移転するということが、近ごろの脱税の一つ方法だそうでありまして、実に模範的にこの会社はやつておるというのであります。かような実情を聞きまして、私どもは憤慨にたえない。そこで私はお尋ねしたいのは、一体こういう事件はすでに特審局が田村秀吉氏の政治活動問題について調べましたときに、こういうことまでも全部調べ上げたそうであります。特審局長質問いたしますと、自分は追放関係だけであるからその他のことは答弁ができないということでありましたが、こういう涜職事件につきまして、検察庁は搜査をしておいでになるのであるか、ならぬのであるか、これが第一点であります。第二点といたしましては、搜査の結果かような場所でごちそうになつたことの事実があつたとするならば、これは涜職罪として処断される意思ありやいなや。法務総裁の福田委員に対する御答弁を見ますと、ほのかなる人道主義をお持ちになつておるようでありまして、まあこんな一ぱいごちそうになるくらいはよかろうというようなお考えであるかどうか、その点をお聞きいたしたいのであります。  なお立つたついでにお聞きいたしまするが、毎日新聞の報ずるところによりますと、京橋の税務署というものができ上つて、新庁舎ができて、その祝賀会が盛大に行われた。百三十万円ばかりかかつたというのであります。これは百数十軒の業者がみな寄付をしたというのであります。一体喜んで今日税務署にいわゆる寄捨をするような業者がありましようか。税務署はそれこそかたきになつておるはずであります。この税務署に莫大なる寄付金をするということはどういう意味であるか。しかも計理士の何とかという人間が発頭人となつてこの金を集めて歩いた。私はこれは一種の贈賄罪だと思うのであります。このやり方というものは、実に念が入つておる、来た税務署の署員にはみな五百円以上の化粧箱とおみやげを配つて、しかも七十人くらいは第二次会として松志満というところで二次会をやつて、ここにも数十名の芸者が出て、そうして歓待したというのであります。一体かような時世に、かようなはなばなしいことをやるということがいかがなものであろうかと思うのでありますが、それにいたしましても、かような税務署に対しまして、業者がかような行為をするということは、私は先ほども申しましたように、これは一体刑法上の集団贈賄ではないかというふうに考える。さような一体観念ができるかどうか。法務総裁なり、刑政長官なりの御意見を承りたい。全部がそうでないにしても、音頭をとつてこういうような金を集めて、そうして税務署に贈るというその行為、その趣旨は、これは贈賄であることは明らかである。彼らが感謝して税務署にものを贈るというようなことは考えられますか。何とか特典にあずかりたい、顔を売つてきげんをとつて、何とか税金でも負けてもらいたいという考え方以外に想像ができない。それは暗黙の意思表示であり、贈賄の暗黙の意思表示をこの行動によつて表わしたものであると判定するのでありますが、法務総裁はどういうふうにお考えになりますか。この大蔵省の本省及びこの税務署等に関しますところのかかる行動につきまして、法務総裁の確固たる信念を承りたいと存ずるのであります。
  58. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 田村秀吉と申す人の社長であります土地会社の件でありますが、それは田村秀吉という人の政治活動であり、追放者の追放令違反事件であるということで、ただいま検察庁に告発されておる事件であります。検察庁が搜査をいたしております。しかし告発のありましたのは先月の末でありまして、まだ告発を受けまして間もないのであります。そのときにその贈收賄の涜職の告発などは受けておりませんが、今お話によりますと、いろいろな問題があるそうであります。いずれ検察庁においては、それらの点につきましても十分頭において搜査をすることと存じます。  それから税務署のお話でありますが、もし事実とすればはなはだおもしろくないことであります。私はそれについてけさ新聞をちよつと読みましたときに、なるほどさような記事があつたように思いますが、それが具体的にどういうものでありまするやら少しも存じません。検察庁はあらゆる面におきまして注意を怠らないのでありますから、それが問題になるようでありますならば考えておることと思います。また必ず考えるだろうと思います。私に、それがもし事実としたならばどういうふうに考えるかというお話でありますが、私はちよつと刑法のこまかいことはここで御答弁申し上げるほどの知識を持ちません。ひとつ事務当局によく相談をいたしまして、事務当局の知つておることは事務当局からお答えをいたすであろうと存じます。しかしこれは具体的な問題でありません。従つて今むろん搜査をしておらぬでありましよう、搜査すべきものであるかどうか、これは検察庁で考えることと思います。私は直接それを指揮するわけには参りません。これは検事総長なりその以下の組織において十分注意をしておることと思います。
  59. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 なお私は、これは法務総裁でも刑政長官でもよろしゆうございますが、質問いたしました、今私が具体的にあげました福田屋だとか、あるいはその他のところが饗応をしたことがありました場合には、現代刑法の解釈としていわゆる贈收賄罪として処断なさるかどうか。なぜこういう質問をするかと申しますと、近代におきましては官吏の廉恥の精神が非常に衰えていると申しますか、まあごちそうになるくらいのことは犯罪にならぬというような風習が行われているのではないかと思います。私は二、三日前に東京地検のある検事に会いまして話を聞いたのであります。これはある小さい官署の贈收賄恐喝事件を調べている検事でありますが、実に彼は長嘆息いたしまして、日本の官吏は骨の髄まで腐つてしまつて、下は二十歳前後のチンピラから上は相当の人に至るまで、実に饗応を受けたり金を借りに来たりするようなことを平気に考えておる。これが涜職罪になるなんということはあまり考えないような観念になつているということを検事が痛嘆いたしまして、私も実に同感をいたしまして、この過労に陷つている検事に対しまして慰めの言葉をかけて来たのでありますが、これはなお対策として法務総裁にもわれわれの意見を申し上げ、また御意見も聞きたいと思つておることですが、それはさておきまして、その点ですが、福田屋というのは有名な料理店だそうで、ちよつと行つても三千円や五千円ぐらいかかるところだそうでありますが、一体かようなところで業者と飲食するようなことがたとい一回でもあるとするならば、これを贈收賄として現在の通念から処断する御意思であるかどうか、法務府の御見解を承りたいと思います。
  60. 佐藤藤佐

    佐藤(藤)政府委員 御指摘のように、戰後一般の公務員につきまして涜職の数がかなり上昇しておるのでありまして、その涜職罪を犯しました官公吏について調べてみますと、ただいまお説のように、その犯罪を犯した官公吏については道徳観念と申しますか、その涜職の点につきましては、非常に感覚が低いということが一般に認められるのであります。この点につきましては法務府のみならず、現政府におきましても、綱紀粛正の点から一般に警戒いたしておるのであります。ただいま御指摘の料理店において、官公吏が業者と飲食をともにした場合に、ただちに贈收賄罪が成立するかどうかという御質問でありまするが、この点は私は、さような有名だとおつしやいますけれども、名前も聞いたことのない料理店でありまして、どういう程度の料理屋であるか、またどの程度の飲食をしたのであるか、またその業者と会食をした官公吏がどういう関係にあるのか、そういう点は具体的に搜査しなければ、ただちに犯罪が成立するともしないとも断言いたしかねるのであります。要するに御指摘のような事実があるといたしますれば、検察当局においても十分注意して搜査いたすことと考えられるのであります。
  61. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 綱紀粛正内閣のことでありまするから、今私が申し上げました事案に対しましては、法務総裁は検事総長に対して一般的の指示ができるはずでありますからして、嚴重なる指示をしていただき、そうしてこの際かような官僚の、ことに現在税金によつて国民が親子心中をするということが新聞にうたわれておりまするし、この大蔵省及び税務署というものはたいへんな立場に立つている官署であります。片一方国民をして死せざるを得ざらしめるような徴税をやつておりまする反面に、こういうふうに国庫に帰属すべき收入を減らして、そうしてその金でもつて日夜遊興をやるようなことは、実に憎みてもあまりある行動だと私は思うのでありまして、嚴然たる態度によつて法務府がこの綱紀の粛正に乗り出されんことを切望してやまないのであります。私どももこの敗戰の国家をして再び優秀国家たらしめたいがために、それがためにはまずこの綱紀の粛正が大切であると存じまして、人に憎まれるこういう役ばかりやつているのであります。これも国家の御奉公だと思つてつているのでありまして、私どもは何の得るところがないのでありますけれども、今福田議員が指摘されたような少年犯罪、その他日々の新聞紙上におきまして、私どもは実に敗戰の悲哀これにきわまると考えるくらい痛嘆をいたしておりまするが、すべてのことが政府の責任だと申すのではないのでありますし、またすべてのことを政府の責任だとするふうに論ずるということは、これはある程度日本の国民の惡弊だと私は考えるのでありまして、官民一致してやらなければならぬことは法務総裁と私同感であります。しかしながらとにかく国政の指導はまず政府、国会にあるのでありまして、この指導階級が率先して綱紀を粛正しなければ、日本は戰前の満州や支那みたいに、官吏が腐敗するというようなことが起りましたならば、この更正なんということは期することができない。その意味におきまして特に私はお願いをするのであります。そこでかような見地からいたしますると、この五井産業事件というものははなはだ私どもは痛嘆にたえないのでありまして、私ども法務総裁に事を明らかにしていただきたいと思うことが一、二点ある。それは過般参議院の法務委員会におきまして、いわゆる警視庁の搜査当局が、調書に吉田総理の名が出ておるということを自白しておるのであります。これは一体いかなる事実に関して吉田総理の名前か出ておるのであるかということが一点。次に増田官房長官が、いわゆる追放者でありまする特高グループの集団と会見しておるというようなことも述ベているのでありますが、一体かような行動があつたのであるかないのであるか、なおまたその一端といたしまして、増田氏が選挙の際に、その追放者の一人か二人が選挙応援に行つたということも聞いておるのであります。かような選挙に際して追放者が応援に行くというようなことは、これは政治活動だと考えられるのでありますが、それに対する見解及びかような追放者が応援をしておるということを知りながら、その応援を許しておつたとすれば、その増田氏もやはり追放のポツダム政令の共犯関係に立つのではないかと思われるのでありますが、こういうことに対する御見解を承りたいと思うのであります。
  62. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 五井産業の事件と申しますのは、五井産業の会社が詐欺の容疑がありまして、そしてその社長が起訴をされておるのであります。そのほかに涜職の容疑があるのでありますが、その容疑は確立しないのであります。従つてただいまのところ詐欺の容疑だけで起訴されておる。そのほかただいまお話の吉田総理の名前が出ておるとか、増田官房長官の名前が出ておるとかいうことは、あるそうでありまするけれども、それは何ら犯罪の容疑には関係がないのであります。従つてそれ以上問題ではないのあります。それは調書のことでありまするから、いろいろのことを取調べている間に、本体と無関係なようなことも述べるでありましようし、また聞き取りもするでありましよう。そういうことが調書に載つておるのであろうと思います。これは検察当局におきまして十分に調査をしておりまするけれども、しかし犯罪の容疑があるということは微塵もないのであります。それからただいまお話の岡崎何がし、丹羽何がしという追放者の政治活動がその間にあるのではないか、この点につきましては、法務府の当該の当局におきまして、目下愼重に調査中でございます。どういう結果になりますかは、今申し上げかねるのであります。  それからついででありますからもう一つ申し上げますが、追放者の政治活動というものは、非常に広汎に禁止されておるのでありますけれども、政治活動ということの意義に関しまして、国民一般にまだ十分に理解されておりません。従つて追放者の中でも、相当な方であつて、自分の活動が追放者としてあるまじき活動であるやらどうやら認識がはなはだ乏しいのであります。私どもはその点に気がつきまして、なおこれを周知徹底いたさせますように、昨年来もつぱら努力いたしております。しかしながら今日でもそんなことが政治活動になるだろうか、そんなことをやつてもいけないのだろうかというような質問をよく聞くのであります。従つて相当な人でも、思わず知らず法に反した活動をしておることはございます。それらにつきましては、お互いに十分戒めなければならぬと思います。従つてその政治活動の処断にあたりましても、情状においてはいろいろ考うべきことが出て参るであろうと思つております。
  63. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 法務総裁のお言葉もつともでありますが、しかしどういう場合でも、選挙運動に応援に行くというようなことを政治活動ではないと考えるような者は、いわゆる追放者とされるような人の中にはないと思うのでありまして、こういう選挙運動に行くことも政治活動ではないと考えるような者があり得ましようか、ちよつと伺いたいと思います。
  64. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 今の具体的な話になりまするが、選挙運動に行つたかどうかもわからないのであります。  そういうことは具体的によく調べてみませんと申し上げられません。もちろん選挙運動でありますれば、はつきり政治活動であります。具体的の場合の選挙運動に行つておるかいなか、私はまだ承知いたしておりません。それらについてはすべて今調査をいたしております。
  65. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それからこの前法務総裁がおいでになつたかどうか失念したので、なお念のために伺いますが、追放者と追放者ならざる者とがともに政治活動をやつた場合には、追放者ならざる者はやはり共犯関係に立ちますかどうか、法務府の御見解を承りたいと思うのであります。
  66. 佐藤藤佐

    佐藤(藤)政府委員 一般的に申し上げますれば、犯罪の構成要件となるような、そういう身分のある者と身分のない者と一緒に犯罪を犯した場合には、すべて共犯関係が認められるのが普通でありまするけれども、追放者の政治活動というようなことにつきましては、一般の人は政治活動が自由にできるのに追放者だけが政治活動を禁止されているのであります。それで追放者と追放者ならざる普通人とが一緒になつて選挙活動をしたというような場合に、それは多くの共同正犯の関係は認められない場合が多いだろうと思うのであります。ただ普通人が追放者を煽動して、教唆して政治活動をなさしめた、あるいは追放者の政治活動について普通人がこれを幇助したというような関係がありますれば、その普通人が追放者の政治活動、すなわち追放令違反の犯罪について教唆または幇助というような共犯関係に立つことは考えられるのでありますけれども、共同正犯ということは一般にちよつと考えられないのではないかというふうに思われます。
  67. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 今佐藤さんの御返事は私ははなはだ奇怪に存ずるのですが、先般私はここでたしか質問したはずであります。そのときやはり佐藤さんは、それは共犯関係になる。もちろんこの五井産業事件に関して質問したのではなく、ほかのことで質問申し上げた。そうしたところが、それは共犯関係になる。これはすぐ答弁なさつたのじやなく、なお関係の人たちと御相談の上そういう答弁をなさつたことは速記録に明らかであります。しかるにきようは、今度はそうじやないのだ、一般的にはならないのだというような御答弁になつて、答弁が矛盾して来ておると思うのでありますが、一体刑事事件のいかんによつて、ある事件については共犯になるし、今度はある事件についてはさようじやないというような、事件事件によつて共犯理論をおかえになるというようなことは、はなはだ私はふに落ちないのであるが、どういう御心境でさように変遷されたのであるか、変遷の径路を御説明願いたいと思う。
  68. 佐藤藤佐

    佐藤(藤)政府委員 私の説明の仕方がまずいために、猪俣委員の方でさように歪曲して御解釈になつたのだろうと思いまするが、決して刑法理論を私はかえたわけではないのであります。前の速記録ときようの速記録をよくごらんになれば、同じ刑法理論に立つているということはよくわかるだろうと思いますが、誤解のないように、もう一度申し上げます。先般も申し上げましたように、身分のある者と身分のない者とが一緒に犯罪行為をなしたような場合に、その間に共犯関係が認められるならば、それは当然刑法の一般の共犯理論によつて罰せられるべきだということを申し上げたのであります。きよう申し上げるのも同じことなのでありまして、ただ具体的な追放令違反というような犯罪について、ことに通常人と追放者とが一緒になつて選挙運動をしたというような場合には、その共同正犯の関係にはなかなか認めがたい場合が多いだろう、こういう説明なのでありまして、もちろん一般人と追放者との間に共同正犯の関係が認められる実証がありますれば、これは刑法の普通の理論によつて、共犯の責任を負わなければならぬのであります。おそらく普通の場合ならば、追放者と普通人と一緒になつて選挙活動をしたというような場合には、普通人について、追放令違反の共同正犯という共犯関係は認めにくいだろうということを申し上げたのであります。しかしながら教唆あるいは従犯という関係は、これは認められる場合が多いだろう、かように申し上げたのでありまして、一般の刑法理論について、何も説明を二、三にしたわけではないのであります。ただ追放者の政治活動という具体的な事件を例に取られましたので、さような例ならば、共同正犯は認めにくいだろう、しかし教唆、従犯の関係は認められるだろう、こういう結論を申し上げたにすぎないのであります。
  69. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 あなたと法律議論をするわけじやありませんが、あなたの答弁ならば、共犯関係があれば共犯だが、共犯関係が認められなければ共犯じやないという結論だと思います。私はそれでは意味をなさないと思う。私はポ政令というものは特殊な法令であるがゆえに、かような該当者ならざる者が共犯関係に立つた際に、ポ政令というこの特別な法令が、その身分の関係にない者に適用されるかということをお尋ね申し上げた。共犯関係があれば適用されるが、なければ適用されないということは、これは答えにならぬのであります。特殊な法令なるがゆえに、該当者ならざる者がポ政令違反を引起すことがあり得るということで私は質問申し上げたのでありまして、それに対してあなたの答弁は、どうもはつきりしないのであります。しかし私は今あなたとここで法律論争をやつてみましても始まりませんから、これは刑政長官の御見解と聞いて、その結論は、しからば共犯関係があるならば、やはり該当者ならざる者もポ政令違反として認めるということは御承認なさるのでしようね、いかがでございますか。
  70. 佐藤藤佐

    佐藤(藤)政府委員 それは当然のことと思います。
  71. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それでは詐欺あるいは統制令違反によつてある金を得る、その金はいわゆる刑法の贓物收受罪の贓物になるのでありますかどうか、法務府の御見解を承りたい。
  72. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 統制令違反で取得したものは、いわゆる刑法上の贓物にはならないと解釈しております。
  73. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 詐欺罪によつて得たる金は贓物であるかどうか。
  74. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 刑法上の贓物というのは、財産罪によつて不法に取得したものを贓物と言つておるのでありますから、ただいまの詐欺罪で取得したものは、当然贓物と解釈しております。
  75. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 しからば、ある者が詐欺をやつて得た金だと思つてそれをもらいますと、贓物收受罪になると解釈できますかどうか、お答え願いたい。
  76. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 当然贓物收受罪になります。但し金のごとき個性のないものにつきましては、いわゆる贓物の認識の点では、実際検察上たいへん苦労するのですが、理論上当然贓物收受罪になります。
  77. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私はこれで終りますが、法務総裁は私の尊敬している政治家の一人であります。どうぞ吉田内閣が綱紀粛正の旗じるしを掲げて立ち上りましたその意気込みを忘れないようにお願いしたい。ことにその当時、綱紀粛正委員会というようなものを内閣だかどつかにつくつて法務総裁が会長になつて発足したように新聞で見たのでありますが、その後さつぱり何だか幽霊のようになつてよくわからないのですが、この委員会というものは一体どういうふうになつておりますか、法務総裁からお聞きいたしたいと思います。
  78. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 法務総裁に私が就任する以前であります。国務大臣として綱紀粛正の仕事を命ぜられました。どういうふうにして綱紀粛正をやろうか、まず委員会というようなものをつくつて、綱紀粛正のキヤンペーンをひとつやりたいと思いまして、種々立案をして折衝いたしたのでありますが、御承知のように公務員法で人事院というものができまして、その人事院の権限と衝突する点が多々ありましたので、それは人事院の権限としてできることである、従つて特に人事院以外に、政府にさような機関を設けることは控えた方がよかろうということになつたので、私としてははなはだ残念でありましたが、その計画を完成せずに、私は法務総裁に転任いたしたのであります。私の次に無任所大臣になられた方が、まだそれが結論に達していなかつたものでありますから、私の最初の考えを何とかして持続したい、物にしたいというので努力されたようでありまするが、やはりいろいろな障害にぶつかりまして、その方面の形では、綱紀粛正の委員会ができなくなつたのであります。しかしながら、そのために綱紀粛正をやめたのではもとよりございません。人事院においてもその点は十分に努力しておられますし、私どもは検察の面で、その綱紀粛正に貢献することのできるものは、一生懸命貢献しているつもりであります。
  79. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 猪俣委員質問に関連しまして一、二私も質問いたしてみたいと思います。最後の猪俣委員高橋政府委員との間の問答は、私聞いておりましてちよつと理解に苦しむのでありますが、当委員会で何ら法律解釈問題——弁護士でありますところの猪俣氏が、贓物の何たるやを知らぬというようなことはないのでありまして、それを知らないといたしますれば、おそらく法務委員としての価値もないでしようし、弁護士の資格も私はないのじやないか。それがあえてここに持ち出したということ自体に、委員といたしましては一つの疑問をはさむものであります。従いまして、惡意に解釈いたされますと、その問答は、現在参議院で問題になつておりますところの五井産業事件を暗に指したものである、それを暗に中傷せんとするごとき策謀とも——惡い考え方でありますが、とれるのであります。私はそんな考えはないとは感ずるのでありまするが、万一私の惡意の解釈のごときものがあるといたしますならば、まことに私たち総裁と仰ぐ吉田さんに対して、申訳ないような気がするのであります。従いまして、いま少しくその点についてつつ込んでお聞きをいたしますが、この五井産業事件の主人公でありますところの、五井産業の社長の佐藤氏の詐欺事件というものは、金額にして幾らぐらいな金額であるか、内容はいかなる内容を持つものであるか、時期にしていつの時期であるか。もはや起訴されておるのでございますから、それを少し明確にお答え願いたいと思います。
  80. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 五井産業事件に関しまして、社長の佐藤昇という人が現在東京地検に起訴されております。詐欺罪でありますが、時期は昭和二十三年の十月から昭和二十四年の八月ごろまでの間のことであります。被害の総額は額面で約二千万円程度になつております。この中で一番はげしく行われておりましたのは、二十三年中のようでありまして、二十四年に入りましてからは、金額も非常に少くなつておるようであります。
  81. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 二十三年から始まつておりますか。
  82. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 二十三年の十月ということに、私の手控えではなつておりますが、間違いないと思います。五つ事実がございまして、二十三年の十月、これが約四百万円、同年十二月二回ありまして、七百五十万円と九百五十万円ばかり、これは必ずしも現金ではございません。手形や何かもあります。従つて二十四年の六月と八月にはごくわずかでありまして、物品その他で一回に四、五十万円ずつであります。
  83. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 もう一つお尋ねいたしますが、これはお答えになられるかなられないか、ちよつとお答えにくければむしろお答えを求めることはいたしませんが、贈賄罪として取調べましたこの事実というものは、いつごろの事実になりましようか、お答えができましたらお願いしたいのであります。そうしていまひとつわが党の福田君や増田官房長官や吉田総理等の名前が出ている、こう参議院の委員会で答えたというこの事実、これは一体いつごろのことであるか、その日にちがわかりましたら、お答え願いたいと思います。
  84. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 贈賄として送致になりました事実は、商工省の特別資材部長をやつておりました岡田秀男に対する二万円ばかりの贈與の事実であります。これは二十三年の十月であります。その他もいろいろあるかもしれませんが私は聞いておりません。
  85. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 もう一回問いますが、今申し上げました方々に対するうわさでございましようが、そのうわさというのはいつごろのことであるかこれはおわかりにならないでしようか。それをお尋ねいたします。
  86. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 いろいろ新聞や国会の証言なんかを承つておりまして、その結果によりますと、二十二年の四月の総選挙から二十三年の春ぐらいまでのことのようであります。
  87. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 田嶋君と論争する意思はありませんが、何か私が腹に一物あつて、だれでも知つていることを質問した、そんな頭ならもう法務委員の資格はないように極論されて、はなはだ不都合千万な議論であります。田嶋君は頭脳明晰にして碩学かもしれませんから、私は敬意を表しますけれども、私は愚鈍でありまして、贓物というものは相当学者間に議論があるのであります。いわゆるやみ取引によつて得たるものが贓物になる涜職罪によつて得たるものは贓物になるかいうことは、学者間にも議論があるところでありまして、田嶋君はあらゆる学説を消化されて一定の信念をお持ちでございましようが、私はそこまで達しなかつたのであつて、多少の議論があるからお尋ね申したのでありますから、こういう者をあわれんで、御叱責になつて満座の中ではずかしめるようなことは、御遠慮あつてしかるべきものだと思います。
  88. 花村四郎

    花村委員長 林君より発言の通告がありますからこれを許しますが、時間が大分経過しておりますので、質疑は十五分以内にお願いいたしたいと思いますから、さよう御了承を願います。
  89. 林百郎

    ○林(百)委員 質疑を打切る場合に、あらかじめ委員長は注意してくださつて、この前みたいに、質問中に一方的にとめないようにお願いします。私も協力いたします。どうか。この点は刑事事件の追究ということのみではなくして、やはり吉田内閣の綱紀粛正のためにわれわれは聞きたいと思うのであります。
  90. 高橋一郎

    高橋(一)政府委員 佐藤昇の涜職贈賄の事実につきまして私が報告を受けておりますのは、先ほど申し上げた岡田関係の二万円であります。それ以外に調書にあるのかないのか、あるという話であるがどうかということでありますが、私が申し上げたのは、報告を受けておらないということでありまして、具体的に検察庁にかかります事件のそれぞれにつきまして、調書の内容を私どもが論ずるわけではないのであります。調書の方につきましては、ただいまどちらともお答えができかねるのであります。
  91. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、検察当局ではまだ調書を見ていないのか、また調書には吉田首相、福田代議士、増田官房長官のことは一言も載つておらないと断言するのかどうか、あるいは載つているのか、その点をはつきりさせていただきたい。そこでまず第一に、その調書の中にうたわれていることの第一には、昭和二十一年ごろ、当時野党であつた吉田現首相の大磯の自宅で、福田篤泰代議士、当時の吉田首相の秘書を通じて約三十万を贈つた。それから第二として、これは佐藤氏自身がはつきり言つておるのであります。それは三月二十四日の読売でありまして、記者が聞いたのでありますが、あなたの自供調書に吉田首相、増田官房長官の名前が出ているそうだがということに対して、答えとして、さあどうだつたか。首相とは在野時代、福田代議士に連れられて大磯の私邸で会つたそうだが。一度だけだ、それも食事をごちそうになつてつた。それより先福田代議士が訪れて、荻外莊の修理費や賄費がいるといつて金を借りに来たので、あなたはそれに三十万円、福田氏個人に四十万と二回にわけて献金したかという問に対して、都合したかもしれぬが、みんなきれいな金だよ。金をやつたこと自体に対しては否定しておらないのであります。従つて宗像警部補の言によれば、吉田首相と福田篤泰氏と増田官房長官の名前はちやんと調書に出ておるというと、佐藤昇もまた福田篤泰氏を通じて、三十万と四十万の二回、合せて七十万福田篤泰氏から請求されて出したということをはつきり言つておるわけです。これを検察当局が知らないということは、非常に奇怪だと思いますが、この点について、これは将来の吉田内閣の綱紀粛正のために、私はここで検事になつて事件を追究するとか何とかいうことではなくて、少くとも詐欺をしたり、もみ消し專門の人から、首相の秘書ともあろうものが金を要求し、しかも金をもらつておるとすれば、一国の首相として当然責任を負わなければならぬ。首相の関係ないことだから、自分は知らないということにはならない。そういう意味から言つて、私は吉田内閣の閣僚の一人でもある殖田法務総裁から、この点をはつきり伺つておきたいと思う。
  92. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 検務局長事務の関係で、検察庁とはむろん連絡いたしましたが、検務局長にまだ報告しておらぬのだと思います。しかし私は皆さんがこの問題をいろいろ論議されますので、実は検察当局に聞いたのであります。聞いたのでありますが、はつきりここで覚えませんけれども、しかしながら佐藤何がしから吉田総理、当時は在野の人でありますが、その吉田氏に対して金を贈つたということは、佐藤も言うてはおらない。吉田氏のところへ金が行つたんだろうと思うというようなことは言つておるようでありますが、吉田さんに金を渡したとは言つてはおらない。それから大磯で金を渡したとも言つておりません。それから大磯へ行つたということは言つておるようであります。福田氏その他についてはどういうことを言つておりましたか、私は実はそれほど詳しく存じません。それから増田君との関係も何か言つております。しかしながらそのいずれもが犯罪の容疑は少しもないのであります。たとえそういうふうなことを申しておりましても、それが事実としても犯罪の容疑が少しもない。いわんや福田氏の場合は事実であるかどうか、これもはつきり存じません。吉田氏の場合は、世間に伝わつておることはまつたく事実でありません。また佐藤という人も、これは言うてないようであります。それだけ私は検察当局から聞いております。
  93. 花村四郎

    花村委員長 ちよつと速記をとめてください。
  94. 花村四郎

    花村委員長 それでは速記を始めてください。
  95. 林百郎

    ○林(百)委員 殖田法務総裁も大分率直な御答弁をせられましたけれども、私も別にここで検事の立場で、増田官房長官や吉田首相に対して刑事的な追究をするわけではないので、ただこういう人から金が行き来しておるということは好ましくないことである。もしないならない、あるならあるで、やはり適当なる措置なり責任を明らかにするのが政治家としてとらなければならない道であると思つておるわけです。決して私は刑事的な立場で言つておるわけではないのでありまして、そこで先ほど殖田法務総裁の答弁の中で、佐藤が多分首相のところへも金が行つておるだろうと思うというように答えておる。また大磯へは一度行つたことがあるということは、佐藤言つておるそうであるということを、あなたは検察当局から聞かれたというのでありますが、少くともこういう重大な問題になつておる際に、殖田法務総裁としても、責任をもつて一応調書くらいはごらんになつて、とるべき処置を適当にとるということが当然だと思いますが、まだ調書を読んでおらないというお答えでありますが、佐藤氏から吉田首相のところへ金が行つておるだろうと思うということは、どういう意味なのです。
  96. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 佐藤がそう言うておるということであります。  それからこれは、申し上げますが、吉田総理は佐藤というものを全然御存じありません。それからまた吉田総理は、佐藤というものから何らのものももらつたことはありません。これははつきり申し上げます。
  97. 林百郎

    ○林(百)委員 しかし大磯へ行つて食事をしたということもあります。それから吉田首相の秘書の福田篤泰氏から金の請求があり、金を渡したということは、佐藤がはつきり言つておることであります。しかもその金は、当時首相のおる総裁邸の荻外莊の修理費として使われた。また福田氏もそういう意味で要求したということになれば、秘書のとつた行為に対して首相としては、ただ知らないということだけでは通らないのであつて佐藤の首相のところへ金が行つておるだろうと思うということは、吉田首相の住んでおる荻外莊の修理のために金を相当に要求したというように、われわれは考えるのでありますが、この点佐藤の調書にはどう書いてあると殖田法務総裁に報告をしておりますか。
  98. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 荻外莊の修理のために金が行つておるとは言うてはおらぬのであります。そんな具体的なことは何も言うておらぬようであります。ただ福田に金を渡したいということは言うております。
  99. 林百郎

    ○林(百)委員 どのくらいの金ですか。
  100. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 それは私今はつきり覚えません。
  101. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると大体福田に金を渡したということと、大磯へ行つたことがあるというだけは、佐藤の調書に載つておるということを報告を受けておると私は解釈いたします。  時間がありませんから次に移りますが、次は増田官房長官の問題であります。増田官房長官は二十二年の二月まで北海道の長官に在任しておつて、その際佐藤氏もまた北海道の実は繊維協同組合の理事長をしておりました。ともに北海道におりまして、当時佐藤が北海道におるころ、北海道長官の増田氏から種々の便宜を受けた謝礼として、選挙資金名義で約六十万円の金が佐藤から増田へ献金されておるということが、参議院の法務委員会で明らかになつておるのでありますが、この点もどういう報告を殖田法務総裁は受けておられるか。  さらに昨日のラジオ並びに新聞によりますと、増田氏は国会で一度、それから内幸町の増田氏の事務所で——これは在野当時だと言いますが、事務所で佐藤に会つて、部下の者のいろいろおせわになつているという礼を言つたということを、はつきり言つております。また佐藤氏も丹羽、岡崎、この両名には金を渡しておるということを、はつきり言つておるのでありますが、この点やはり丹羽、岡崎を通じ、丹羽、岡崎と増田との関係、また増田氏と佐藤氏の北海道当時の関係からいつて増田官房長官もまた佐藤氏と一連の金銭的のつながりがあるようにわれわれも考えられるのでありますが、こうなると、こうした詐欺事件の被告になつておる者と、首相の秘書だとか増田官房長官が金銭的なつながりがあるということは、これは実にきたならしい感じがする。これは将来の政治家として十分反省してもらわなければなりませんから、この際政界、官界の粛正のために、ひとつ殖田法務総裁がどういう事実の報告をこの点について受けておるかということを聞きたいのであります。
  102. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 増田氏のことであります、北海道長官の在職当時のこととか、あるいはそれにせわになつたとかいうようなことは、佐藤は一切言うておらぬようであります。ただ増田氏の後輩である人たちに金をやつたということを言つております。しかし増田氏に金をやつたとは言うておらぬそうであります。それから詐欺事件の容疑者から福田君が金をもらつたといたしましても、詐欺事件の容疑者から金をもらう人はないので、ただそれが一時盛大にやつてつた人が後に悲境に落ちて、詐欺事件を惹起したということでありまして、どうもそれを詐欺事件の被告から金をもらつたというのは、いかにも詐欺を承知の上で金をもらつたようでありますが、それははなはだどうも同僚議員に対してお気の毒なことではないかと思うのであります。
  103. 花村四郎

    花村委員長 林君。時間が来ましたからひとつ御注意します。
  104. 林百郎

    ○林(百)委員 もう一つ、実はこの参議院の宗像警部補の調書の中にも、増田官房長官と岡崎、丹羽両名が内幸町の事務所で会合した事実については、佐藤の自供により調書をとつたと記憶するとはつきり言つておるのであります。そこで私は、五井産業の問題について殖田法務総裁に検察当局からの報告の中で増田官房長官に佐藤が礼を言われたことがある。これはラジオでも昨日言つておるのでありますから、どうもこれを殖田法務総裁が報告を受けてないということになると、これは今度は殖田法務総裁が職務怠慢というそしりを免れないと思いますが、この点はどういう報告がありますか。とにかく佐藤の調書の中には、増田氏に礼を言われたということと、増田氏が岡崎、丹羽氏と内幸町の事務所でもつてときどき会合したという二つの事実は、佐藤の調書の中にあるという報告を聞いておりますかどうか。
  105. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 私は、佐藤が増田氏から礼を言われたことがあると言つておるということを聞いております。しかしその礼が何の礼であるか、それは言うておらないのであります。それはいろいろ礼を言うこともありますから、それをただ金をもらつた礼であると解釈するのは、私ははなはだ不当であると思います。それから岡崎、丹羽という人と増田氏が会合したというようなことは、それは私ちつとも存じません。そういうことは調書に載つてはないと思います。ちつとも存じません。
  106. 花村四郎

    花村委員長 林君。時間が来たから……
  107. 林百郎

    ○林(百)委員 これで最後にいたします。このことは殖田法務総裁御存じなくも、実に明瞭な事実で問題はむしろ特高グループの岡崎、丹羽氏が、増田官房長官と今もつて政治的な関連があるということ、五井産業の金の問題よりも、こうした追放令の問題で事態が発展しておるということは明らかだ。もしこれを御存じないなら、調書をもう一度読んでいただくか、部下から報告をとつてもらつて、同僚大臣に間違いないようにしていただきたいと思います。念のために申し上げておきます。  最後にこの問題について委員長にも、また国務大臣である殖田法務総裁にも——殖田国務大臣しかお見えになりませんから、念のために御忠告申し上げたいことは、衆議院でこの問題を取上げましたところが、逆に——これは風聞するところでありますが、この取上げた議員に対して逆に逆襲して、何とか議員の資格を失格せしめようというような動きを政府がしているとか、あるいは増田官房長官がそういうことを意図しておるということを聞いておりますが、これを事実とすれば、ゆゆしい問題と思いますが、こういうことがあるかどうかということが一つ、もう一つはこの事件を取扱います各委員会に、必ず部外から将来証人として喚問される人だとか、あるいは搜査に関係している人たちが委員会に入つて来て、いろいろ将来の画策の資料を集めておるというようなことも、これは思い過ぎなら非常に仕合せだと思いますが、こういうことがひんぴんとしてわれわれの耳に入つておる。こうなると、国会におけるわれわれ議員の審議権というものは全うすることができない。この点は委員長並びに政府としても、十分に国会の審議権を全うさせるように、こういうことがないように、また将来しようとしてもそういうことをさせないように、十分の努カをしていただきたいと思います。この点について見解を聞きたい。これで私の質問を終ります。
  108. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 ある議員を失格せしめようとしておるとか、何とかいうことは全然聞いておりません。またさようなことがあるべきことではありません。しかし私は、実は検察当局からこの事件につきまして報告を受けたのでありまするが、ただいま申し上げた程度のことでありまして、実はどうしてかような軽微な事柄をそんなに大きな問題としてお取上げになるのか、私は了解に苦しむのであります。もし犯罪の容疑であれば、それはむろん徹底的にやらなければなりませんが、犯罪の容疑ともだれも考えておらぬことを、さように重大にお考えになることが実は少しお考え過ぎではないかと思いまして、心配いたしております。
  109. 花村四郎

    花村委員長 委員長の名前も出ましたので、一言申し上げておきますが、林君の言われるがごとき事実は絶対にありません。また将来もないであろうことも間違いないと思います。  本日はこの程度において散会いたします。     午後五時五十八分散会      ————◇—————