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1950-03-06 第7回国会 衆議院 法務委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年三月六日(月曜日)     午後二時六分開議  出席委員    委員長代理 理事 角田 幸吉君    理事 北川 定務君 理事 小玉 治行君    理事 高橋 英吉君 理事 田嶋 好文君    理事 猪俣 浩三君       佐瀬 昌三君    松木  弘君       眞鍋  勝君    山口 好一君       石川金次郎君    加藤  充君       世耕 弘一君  出席政府委員         法務政務次官  牧野 寛索君         検     事         (法制意見第四         局長)     野木 新一君  委員外出席者         專  門  員 村  教三君         專  門  員 小木 貞一君 三月三日  委員菅家喜六君、田渕光一君、畠山鶴吉君及び  床次徳二辞任につき、その補欠として高橋英  吉君、山口好一君、吉田省三君及び大西正男君  が議長指名委員に選任された。 同月六日  委員武藤運十郎辞任につき、その補欠として  田万廣文君が議長指名委員に選任された。 同日  高橋英吉君が理事補欠当選した。     ————————————— 三月三日  少年法の一部を改正する法律案内閣提出第七  九号)(予) 同月四日  矯正保護作業運営及び利用に関する法律案(  内閣提出第八八号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  小委員補欠選任  民事訴訟法の一部を改正する法律案内閣提出  第六九号)  裁判所職員定員に関する法律の一部を改正す  る法律案内閣提出第七六号)  裁判所法等の一部を改正する法律案内閣提出  第七七号)  少年院法の一部を改正する法律案内閣提出第  七八号)(予)  少年法の一部を改正する法律案内閣提出第七  九号)(予)     —————————————
  2. 角田幸吉

    角田委員長代理 これより会議を開きます。  委員長が所用のため、理事の私が委員長職務を行います。  今日の日程に入ります前に、委員の異動を御報告しております。去る三月一日委員高橋英吉君、山口好一君、吉田省三君、田方廣文君、大西正男君が委員辞任せられ、その補欠として同日菅家喜六君、田渕光一君、畠山鶴吉君、武藤運十郎君及び床次徳二君が議長指名委員補欠選任され、三月三日委員菅家喜六君、田渕光一君、畠山鶴吉君、床次徳二君がそれぞれ委員辞任され、その補欠として同日高橋英吉君、山口好一君、吉田省三君、大西正男君が議長指名補欠選任いたされ、また今日武藤運十郎君が辞任され、田万廣文君が補欠選任されたことを御報告しておきます。  つきましては委員辞任せられました高橋英吉君は理事でありましたので、理事補欠選任を行わねばなりませんが、理事補欠選任は選挙の手続を省略して、高橋英吉君を理事に御指名したいと存じますが、御異議ありませんか。
  3. 角田幸吉

    角田委員長代理 御異議なしと認めます。     —————————————
  4. 角田幸吉

    角田委員長代理 次に小委員補欠選任を行いたいと存じます。鉄道犯罪に関する小委員といたしまして大西正男君及び田万廣文君が去る三月二日委員辞任につき、その補欠として大西正男君及び田万廣文君を、株主総会招集規定等に関する小委員として高橋英吉君及び山口好一君が去る三月二日委員辞任につきその補欠といたしまして高橋英吉君及び山口好一君を、弁護士法による大学指定に関する小委員といたしまして去る三月二日山口好一辞任につき、その補欠として山口好一君を、司法書士に関する小委員として田万廣文君が去る三月二日委員辞任につき、その補欠として田万廣文君をそれぞれ小委員補欠選任いたしたく存じますが、御異議ありませんか。
  5. 角田幸吉

    角田委員長代理 御異議なければさよう決定いたします。     —————————————
  6. 角田幸吉

    角田委員長代理 これより今日の日程に入りますが、今日はまず去る二月二十八日本委員会に付託になりました民事訴訟法の一部を改正する法律案及び去る三月二日付託されました裁判所職員定員に関する法律の一部を改正する法律案裁判所法等の一部を改正する法律案少年院法の一部を改正する法律案及び少年法の一部を改正する法律案につき、それぞれ政府提案理由説明を求めたいと存じます。牧野政務次官。     —————————————
  7. 牧野寛索

    牧野政府委員 ただいま議題となりました民事訴訟法の一部を改正する法律案提案理由説明いたします。  新憲法は、裁判所違憲審査権を認めるとともに、広く一切の争訟について裁判権を與えたのでありますが、特に最高裁判所は、違憲審査を行う権限を有する終審裁判所であるほか、訴訟手続等に関する規則の制定及び裁判所全般にわたる司法行政を行うものとされ、その職責は旧大審院と異なり、重かつ大となつたのであります。最高裁判所のこのような重大な職責にかんがみ、裁判所法は、その裁判官を識見の高い法律の素養のある者十五人に限定したのであります。しかるに旧大審院は、民事及び刑事事件のみを処理するのに三十数人の裁判官を擁して、しかもなお十分でないと言われていたのでありますから、最高裁判所がこのような構成をとるに至つた以上、その裁判権範囲調整に関する問題は、裁判所法制定当時からあつたわけなのであります。  その後、刑事事件につきましては、昨年一月一日から施行されました新刑事訴訟法において、最高裁判所への上訴範囲を、憲法違反判例牴触及び法令解釈に関する重要な事項制限し、刑事事件についての最高裁判所裁判権範囲に関し調整が行われたのでありますが、民事事件については、いまだ別段の措置が講ぜられておりませんために、最高裁判所に対する上告は、年々激増の一途をたどり、民事事件についても、すみやかに最高裁判所裁判権調整を行うことが必要となつて参りました。  しかし民事訴訟における審級制度及びその訴訟手続根本的改正を加えるには、なお相当の日時と研究を要しますし、特に国民の正当な権利の保護に欠けることのないよう、愼重に考慮いたさなければなりませんので、今回は、民事事件につきまして上訴範囲を一般に制限することなく、最高裁判所への上告についてのみ、新刑事訴訟法における上訴制限趣旨を取入れ、当事者の主張した上告理由に対する調査を、原則として憲法違反判例牴触及び法令解釈に関する重要な事項に限ることとし、これによつて民事事件に関する最高裁判所裁判権調整をすることが、最も妥当であると考えた次第であります。  これがこの法律案を提案いたす理由であります。何とぞよろしくお願いいたす次第であります。  次にただいま議題となりました裁判所職員定員に関する法律の一部を改正する法律案について提案理由説明いたします。  この法律改正要点は次の二点であります。すなわち第一点は、家庭裁判所における事件増加そ他の理由により、裁判官その他の裁判所職員定員増加する点であります。家庭裁判所は、御承知のように家事審判法で定める家庭に関する事件審判及び調停並びに少年法で定める少年保護事件審判等を取扱うために、昨年の初め設けられた裁判所でありますが、現下の社会的経済的事情を反映して、これらの事件予想外増加を示し、昨年中における全国家庭裁判所受理事件数家庭事件三十二万余件、少年事件十万余件の多きを数えているのであります。しかるにこれを担当する職員は、判事百数十名その他という少数でありまして、判事一人当り負担は、これらの新受件数のみで年間家庭事件二千八百余件、少年事件九百余件という多数に上つております。このような状態ではとうてい適時に事件を処理して行くことは困難でありますので、すみやかに裁判官その他の職員を増員して、家庭裁判所の陣容を整備する必要があるのであります。またその他にも專門的知識を要する行政事件増加民事訴訟法及び刑事訴訟法改正に伴う裁判所書記官負担の増大、財政法改正に伴う裁判所経理事務増加等により、裁判所調査官裁判所書記官裁判所事務官等をそれぞれ若干増員する必要があるのであります。  次に改正の第二点は、裁判所法改正に伴い、新たに裁判所に置かれることになりました職員定員を定める点であります。別に今国会に政府から提出されました裁判所法の一部を改正する法律案により、裁判所書記官研究及び修養並びに養成をつかさどらせるため、最高裁判所裁判所書記官研修所教官を置き、また従前少年保護司制度を改めて、各家庭裁判所少年調査官及び少年調査官補を置くこととしました結果、これらの職員定員を定める必要があるのでありまして、これらは予算上新たに認められた若干の人員のほかは、大部分裁判所事務官等定員から組みかえたものであります。国家財政の現状から見れば、職員の増員は極力これを避けなければならないのでありますが、以上の定員改正は必要やむを得ないものと存ずるのであります。  以上この法律案大要説明いたしました。何とぞよろしく御審議をお願いいたします。  次に裁判所法等の一部を改正する法律案提案理由を御説明申し上げます。  この法案要点は次の三点であります。すなわち第一は、最高裁判所に新たに裁判所書記官研修所を置くこと、第二は、少年保護司制度を改めて、少年調査官及び少年調査官補とすること、第三は、法廷等における秩序維持に遺憾なきを期するための措置として、裁判長または裁判官は必要と認めるときは警察官等派出を要求することができるものとすることがそれであります。以下改正要旨について順次御説明をいたしたいと存じます。  先ず第一は、裁判所書記官研修所の設置に関する点であります。民刑訴訟法等改正により、民事及び刑事訴訟手続について公判中心主義が徹底強化されました結果、裁判所書記官職責従前に比し一段とその重要性を加え、またその事務は質的に複雑困難となつたのでありまして、裁判所書記官がその任務を完全に果たすためには、相当高度の法律知識のほかに、一般社会常識をも備えることが必要であり、これに対しましては十分な研究及び修養の機会が與えられなければならないのであります。のみならず、最近における裁判所受理事件数の急激な膨脹増加に伴い、その負担は量的にも著しく増大したのでありまして、裁判所書記官素質向上に関し適切な処置を講ずるとともに、有能な裁判所書記官を養所してその充実をはかりますことは、裁判事務を迅速適正に処理し、司法機能を十分に発揮させる上において緊急の要務であるといつてさしつかえないのであります。このような理由から、最高裁判所に新たに裁判所書記官研究及び修養並びにその養成に関する事務を取扱わせるため、裁判所書記官研修所を設け、これに一級または二級の教官を置き、かつその所長は一級の教官の中から補することといたしました。裁判所法第十四條の二、第五十六條の二及び第五十六條の三の改正規定がこれであります。なお裁判所書記官研修所教官には、裁判官または検察官の実務の経験を有する者をも必要とするのでありますが、現在裁判官または検察官から裁判所書記官研修所教官への転官がきわめて困難な実情にありますので、司法研修所教官の場合と同様に当分の間、特に必要がある場合に限り、裁判官または検察官を、その地位にありながら裁判所書記官研修所教官に充てることができる道を開くため、裁判所法附則第三項の改正を行いました。そのほか、裁判官検察官及び弁護士となる資格に関しては、裁判所書記官研修所教官在職年数は、司法研修所教官のそれと同一に取扱うのが相当でありますので、裁判所法第四十一條第二項、第四十二條第一項第五号、第四十四條第一項第四号、検察庁法第十九條第一項第三号及び弁護士法五條第二号にそれぞれ所要改正を加えた次第であります。  第二は少年保護司少年調査官及び少年調査官補に改めることに関する改正であります。少年保護司は、現行法においては、裁判所事務官または裁判所技官の中から補せられることになつているのでありますが、裁判所事務官一般司法行政事務を、裁判所技官裁判所における一般技術をつかさどるものでありますのに反して、少年保護司は、少年保護事件審判に必要な調査その他少年法で定める事務をつかさどるものでありまして、その職務内容において前二者とはまつたく異なつているものでありますから、さきに裁判所書記裁判所事務官の中から補する制度を改めて、裁判所書記官及び裁判所書記官補を置くものとしたのと同様の趣旨から、裁判所法第六十一條の二を改正し、裁判所事務官または裁判所技官少年保護司に補する制度を廃止して、新たに家庭裁判所少年調査官を置くことといたしました。少年調査官は、現在の少年保護司職務をその職務内容とし、一級及び二級の二階級といたしましたが、少年調査官職責は、少年事件についての調査、観察を初めとし、家庭裁判所における手続全般にわたり、独自の創意と工夫とによつてその職務を遂行しなければならない部面が少くないばかりでなく、最近における不良少年問題の深刻化は、少年調査官職務をますます重要かつ困難なものといたしておりますので、裁判所法に第六十一條の三の規定を追加して、各家庭裁判所を通じて一定員数の二級または三級の少年調査官補を置いて、少年調査官事務を補助させることにいたしたのであります。この少年調査官補制度の新設は、それだけ少年調査官地位を現在の少年保護司のそれに比して一段高いものとしたのでありまして、技能、経歴等関係から現在の少年保護司たるものが、ただちに全部少年調査官になり得るとは限りませんので、附則第二項においてその点の経過的な措置を定めたわけであります。以上の次第でありますから、少年調査官充実は、即時には期待することができませんので、本法施行少年調査官が充員せられ、その事務が本格的に軌道に乘るようになるまでの間における少年調査官事務の澁滯を避けるため、当分の間少年調査官補をして少年調査官職務を行わせることができる措置附則第三項で規定したのであります。また裁判所法第六十五條勤務裁判所指定に関する改正及び少年法中に「少年保護司」とあるのを「少年調査官」に改める点は、右に申し述べました第六十一條の二及び第六十一條の三の改正規定に伴う当然の改正でありまして、特に御説明するまでもないと存じます。  第三は警察官または警察吏員派出要求等に関する改正であります。現行法第七十一條等におきまして、裁判所または裁判官職務執行を阻害する者がある場合においては、裁判所または裁判官はこれに対して所要措置をとり得ることとなつておるのでありますが、場合によつて裁判所関係職員のみではさばき得ないこともあり得ますので、このような場合には、警察官等派出を要求し、その協力を求め得ることとする必要があると考えられるのであります。従来これらの点に関しましては、明治十四年十月の太政官達第八十六号が存したのでありますが、何分にも古い規定でありまして、明確を欠く点もございますので、この際この点についてはつきりした規定を設けて置くのが相当であると存ずるのであります。裁判所法第七十一條の二の規定及び第七十二條に追加される第二項の規定は、この趣旨から立案いたしたものであります。  なお以上御説明申し上げました以外に、司法研修所教官は、定員上すベて一級官とされましたのに対応して、裁判所法第五十五條第二項及び第五十六條第一項を改正するほか、検察審査会法第六條に掲げる検察審査員職務につくことができない者の中に、最高裁判所判事秘書官裁判所書記官研修所教官高等裁判所長官秘書官裁判所書記官裁判所書記官補少年調査官及び少年調査官補を加え、犯罪者予防更生法施行に伴い同條第七号に所要改正を加えた次第であります。  最後に本法施行期日につきましては、少年保護司から少年調査官及び少年調査官補制度への移行には、相当準備期間を必要としますので、この法案少年調査官及び少年調査官補に関するものは、公布の日から起算して三十日を経過した日から、その他の部分は、本年四月一日から施行することといたしたのであります。  以上本法案大要の御説明をいたしました。何とぞ愼重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  次にただいま上程になりました少年院法の一部を改正する法律案提案理由説明いたします。  この法律案は、昭和二十三年法律第百六十九号少年院法の一部を改正するものでありまして、その要旨は同法実施一年の経験を取入れ、これを合理化し、実際化するため所要改正を加えるものでありまして、以下改正趣旨をその重要性の順に従い、説明申し上げることといたします。  まず第一には、少年観護所少年鑑別所とを一つにいたしたのであります。少年観護所少年鑑別所とは少年院法第十六條、第十七條規定により、別の機関として設けられていたのでありまするが、一年の運用の経験に見まするに、これは一つ機関に統合することが合理的であり、実際的であると考えられるのであります。観護所少年法規定により家庭裁判所より送致された少年收容するところであり、鑑別所は、保護の対象をなす少年資質鑑別する所でありまして、機能的にはまつたく異なつ事務をとり行うものでありまして、もし人的、物的に十分なる施設を整備することができますならば、別々の機関として設けることも理由のあることでありまして、少年院法制定のときは、かかる考えに基いて、別々の機関としたのであります。ところが実際にこれを運用してみまするに、鑑別所は、観護所に附置され、各地その職員は、一人ないし二人程度の定員を有するのみにて、この実情にては、独立の機関として存立せしめることが事実上不向きであり、かつまたすべて運営事務観護所協力を得ているのでありまするから、むしろこの二つの機関は、機能はそのままとして一つに統一することが、官庁機関としての運営上、当を得ていると考えられるにいたつたのであります。かかる理由によりまして、これを統一し、その名称は少年保護鑑別所とすることといたしたのであります。本法律案第十六條、第十七條は、すなわちこれに関する規定であります。なお今回の改正にあたり、新たに第十六條の二を設け、少年保護鑑別所は、家庭裁判所少年院の長及び地方少年保護委員会以外の公私の者からの依頼により、少年資質鑑別をなし得ることといたしました。これはせつかくのこの少年鑑別施設社会利用に開放することは、まことに有意義なことと考えられるからであります。この場合には実費を徴することといたしました。  第二には、第十條の收容少年を他の少年院に移送する場合の手続を改めたのであります。従来は少年院の長は、矯正保護管区長の承認を経て、地方少年保護委員会認可を得て、移送することができることになつておりますが、事務の実際より見ますれば、この手続は必要以上に複雑でありまするから、移送には矯正保護管区長認可を得るのみにて足ることとし、移送した後において、家庭裁判所及び地方少年保護委員会等にその旨を通知することと改めることとしました。  第三には、第二條第四項の十八歳を十六歳に改めたのであります。これは特別少年院收容し得る少年最低年齡制限でありまして、今日までは、この規定上十七歳の少年は、特別少年院收容することができないのでありますが、実情を見ますると、十六歳、十七歳という年齡少年の中にも、相当に悪質の度の進んでいるものがありまして、他の少年に対する矯正上より、これを特別少年院收容する必要のある者が少くないのであります。それで今回は十六歳の者でも、特別少年院收容し得るよう改めることといたしました。  第四には、第八條第一項第三号の但書を削除したのであります。規律に反した收容少年に対して、二十日を越えない期間單独謹愼をさせることができますが、この場合この但書により、十六歳未満の者については、この事ができないことになつておりますが、しかし実際を見るに、十六歳未満少年でも、單独謹愼処置を必要とする者が少くないのでありまするから、これをなし得るよう改めることといたしました。  第五には、少年院または少年保護鑑別所から退院または退所した者にして、旅費や衣類を持たない者に対して、これを支給し得る規定を新たに設けました。  第六には、少年院または少年保護鑑別所の長は、收容中に死亡した者の遺留金品親権者等に交付し得る規定を新たに設けました。  第七には、少年院または少年保護鑑別所收容者にして、逃亡した者の遺留金品は、逃走の日から一年以内に本人の居所が分明しないときは、国庫に帰属することといたしました。これら第五、第六、第七の規定は、監獄法に同趣旨規定がありますので、これを参酌し、実際の必要に応じて定めたものであります。  今回の改正においては、以上申し上げた諸点が重要なものでありまして、その他この改正に伴い、関係法令條文字句整理等をいたしておるのであります。  以上が本法律案の概要であります。何とぞよろしくお願いいたします。  次に少年法の一部を改正する法律案提案理由説明いたします。  この法律案は、昭和二十三年法律第百六十八号少年法の一部を改正するものでありまして、その要旨は、同法実施一年の経験を取入れ、これを合理化し実際化するため、所要改正を加えるものでありまして、以下改正趣旨をその重要性の順に従い説明申し上げることといたします。  先ず第一には、家庭裁判所にて適法審判をなし得ない年齡の者が誤つて送致されたり、さらに保護処分の決定を受けたりした場合の是正手続を新たに設けたことであります。家庭裁判所適法審判し得ない年齡の者とは、昭和二十五年末までは十八歳以上の者、その後は二十歳以上の者及び十四歳未満の者であります。ところがこれらの者が種々の作為をなして年齡を僞り、家庭裁判所少年として送致され、さらに審判まで受ける事例が相当多いのでありまして、その処置法律上より申しまして誤つた取扱いでありますから、これを是正することが必要なのであります。ところが少年法にはこれに関する規定を欠いておるのでありますので、今回新たにその規定を設けたのであります。本法律案のうち、第十九條第二項、第二十三條第三項及び第二十七條の二として規定しているものがこれであります。第十九條第二項は、家庭裁判所調査の段階において、本人が二十歳以上であることが判明した場合、第二十三條第一項は、家庭裁判所審判の結果本人が二十歳以上であることが判明した場合につき、それぞれ規定し、いずれも権限を有する検察官に送致することといたしたのであります。第二十七條の二は、年齡を僞り保護処分を受けた場合について規定したものでありまして、このときは家庭裁判所は職権により、その保護処分を取消し、事件権限を有する都道府県知事もしくは兒童相談所長または検察官に送致することといたしました。この場合保護処分執行に当る少年院の長等は、その取扱い中の少年について右に当る年齡の僞りがあることを発見したときは、家庭裁判所に通知しなければならないことといたしました。この規定により、家庭裁判所事件検察官に送致するに当り、その少年少年院收容中のときには、三日を限り、さらに少年院收容しておくことができることといたしました。これは身柄取扱いの必要上よりまことにやむを得ない措置であります。なおこの第二十七條の二の新しい規定につきましては、法律上の問題があるのであります。それは憲法第三十九條に規定するいわゆる二重処罰の禁止との関係であります。すなわち二十二歳の者が十八歳と僞り、保護処分を受け少年院收容せられてより本人のほんとうの年齡が発覚した場合これを取消し、さらに刑事訴追とすることは、右の憲法規定に反するのではないかという疑いであります。この点につきましては、外国の判例も参照し、十分論議を盡しましたが、結局憲法の右の規定刑事上の処分のみを意味しているものであること、刑事処分と保護処分とは本質的に相違していること、従つて右の場合保護処分を取消し、さらに刑事訴追をいたしましても、憲法のこの規定に反するものでないという結論になつたのであります。法理論はこのようでありますが、かりに新たに刑事訴追をするといたしましても、その場合には十分にそれまでの保護処分を受けた事実はしんしやくされ、適切妥当に処置されるものであることは申すまでもありません。  第二には、第二十六條第四項に、新たに保護処分の決定を執行するとき、少年保護上必要であると認めるときは、その少年に対し、呼出状を発せずに、ただちに同行状を発し得る規定を設けました。現在はこの場合、まず呼出状を発しこれに応じなかつた場合、初めて同行状を発し得ることになつておりますが、これではときに逃走等のことがあり、少年保護の目的を達し得ないのでありますから、第十二條同様、ただちに同行状を発し得るものといたしたのであります。  第三には、少年少年院收容のため同行状を執行する場合、必要があるときには、かりにもよりの少年保護鑑別所收容し得るものといたしました。これは第二十六條の三として規定するものでありまして、実際の必要に基くものであります。  第四は、司法保護委員または兒童委員に第十六條第一項の調査及び観察の援助をさせた場合、その費用の一部または全部を支拂い得ることといたしました。これは第三十條の二として規定するものでありまして、これらの委員は民間人を委嘱したものでありますから、費用の弁償をするのが正当であると考えられるからであります。  第五には、少年保護鑑別所鑑別機能家庭裁判所との関係を明らかにしたのであります。これは第九條の改正でありまして、従来少年鑑別所家庭裁判所との関係は、法文上明記されなかつたのでありますので、新たに家庭裁判所は、少年保護鑑別所鑑別の結果を活用して、少年調査をしなければならないという趣旨規定を設けたのであります。  以上の改正を中心といたしまして、その他関係法條の字句の整理、その他若干の改正をなしているのであります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことを希望いたします。
  8. 角田幸吉

    角田委員長代理 以上をもつて政府提案の提案理由説明は終りました。  質疑は次会に行うことにいたしまして、本日はこれにて散会いたします。     午後二時四十二分散会