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1950-03-02 第7回国会 衆議院 法務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年三月二日(木曜日)     午後二時九分開議  出席委員    委員長 花村 四郎君    理事 角田 幸吉君 理事 北川 定務君    理事 小玉 治行君 理事 田嶋 好文君    理事 猪俣 浩三君 理事 小野  孝君    理事 田中 堯平君 理事 佐竹 晴記君       押谷 富三君    菅家 喜六君       佐瀬 昌三君    田渕 光一君       畠山 鶴吉君    古島 義英君       眞鍋  勝君    松木  弘君       武藤 嘉一君    石川金次郎君       武藤運十郎君    加藤  充君       稻葉  修君    床次 徳二君       三木 武夫君    世耕 弘一君  出席政府委員         法務政務次官  牧野 寛索君         検     事         (法制意見第四         局長)     野木 新一君         刑 政 長 官 佐藤 藤佐君         検     事         (検務局長)  高橋 一郎君  委員外出席者         議     員 岡田 春夫君         專  門  員 村  教三君         專  門  員 小木 貞一君 三月一日  委員大森玉木辞任につき、その補欠として稻  葉修君が議長指名委員に選任された。 三月二日  委員高橋英吉君、山口好一君、吉田省三君、田  万廣文君及び大西正男辞任につき、その補欠  として菅家喜六君、田渕光一君、畠山鶴吉君、  武藤運十郎君及び床次徳二君が議長指名で委  員に選任された。 同日  理事石川金次郎君の補欠として猪俣浩三君が理  事に当選した。     ————————————— 二月二十八日  民事訴訟法の一部を改正する法律案内閣提出  第六九号) 三月一日  副検事任命資格の特例に関する法律の一部を  改正する法律案内閣提出第一四号)(参議院  送付) 同月二日  裁判所職員の定員に関する法律の一部を改正す  る法律案内閣提出第七六号)  裁判所法等の一部を改正する法律案内閣提出  第七七号)  少年院法の一部を改正する法律案内閣提出第  七八号)(予) 同月一日  商法改正案に関する請願(石野久男君紹介)(  第一二〇二号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  小委員追加選任  国政調査要求に関する件     —————————————
  2. 花村四郎

    花村委員長 これより会議を開きます。  本日の日程に入ります前に、まずお諮りいたしたいことがあります。理事であります石川金次郎君が理事辞任を申し出られておりますので、これを許すに御異議ありませんか。
  3. 花村四郎

    花村委員長 御異議なければこれを許可いたします。  つきましては理事補欠選任を行わねばなりませんが、理事補欠選任は、先例により、委員長において御指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
  4. 花村四郎

    花村委員長 御異議なければ、猪俣浩三君を理事に御指名いたします。     —————————————
  5. 花村四郎

    花村委員長 次に弁護士法による大学指定に関する小委員追加選任いたしたいと存じます。その数及び指名委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  6. 花村四郎

    花村委員長 御異議なければ北川定務君、石川金次郎君、花村四郎の三名を小委員追加選任いたします。     —————————————
  7. 花村四郎

    花村委員長 この際角田幸吉君より刑政長官に対する発言の通告がありますのでこれを許します。角田幸吉君。
  8. 角田幸吉

    角田委員 前回猪俣委員から佐藤昇事件について取調べをされた検事が、しばしばその主任係が交代されたということを述べられておつたのでありますが、そういう事実があつたかどうか、その点たつた一点だけ重ねて刑政長官お尋ねいたしたいと思います。
  9. 佐藤藤佐

    佐藤(藤)政府委員 お尋ねの点に対してお答えする前に、東京地方検察庁組織を一応御紹介いたしたいと思います。東京地方検察庁検事を各係々にわけまして、その一つ特別捜査部というものを設けております。この特別捜査部の運営のしかたは、部長及び副部長そのほか数名の部員たる検事が一体となつて、その職務を遂行しておるのであります。お尋ね佐藤昇事件につきましては、たびたび申し上げましたように、昨年の十二月下旬に詐欺事件について特別捜査部の係が調べた結果起訴いたしたのであります。さらに本年の一月下旬に詐欺事件の追起訴をいたしております。さらに二月の初旬に涜職の嫌疑がありまして、この点はなお捜査進行中であります。その係検事お尋ねでありますが、詐欺事件については稻田検事主任となり、そのほか一名あるいは二名の検事補助をしたように聞いております。さらに涜職事件については二月になつ岩松検事稻田検事補助として捜査したということの報告があります。従つて佐藤昇事件について詐欺事件を調べた検事涜職事件を調べた検事との間には、係検事の違いはありますけれども、ただいま申し上げましたように、この事件については特別捜査部として責任を持つて捜査いたしておるのでありまして、部長並びに副部長主任の係というようなその下の補助係という組織体をもつて調べておるのでありまして、お尋ねのような佐藤昇事件について係検事を途中で交代させたというような事実は全然ございません。     —————————————
  10. 花村四郎

    花村委員長 次に猪俣浩三君より国政に関する調査要求に関し発言を求められておりますので、これを許します。猪俣浩三君。
  11. 猪俣浩三

    猪俣委員 われわれは文書をもちまして調査要求書を提出しておつたのでありますが、五井産業国富産業社長佐藤昇は昨年十二月詐欺事件によつて逮捕されたのでありますが、同人は警察ボスと言われ、昭電その他事件もみ消しに暗躍、政界警視庁消防庁首脳部に多額の金品を贈賄したと言われておる。さらに警視庁においては同事件担当捜査官等の身辺を逆に調査する等、捜査の妨害という不明朗な事態が発生した。またこの間追放された旧特高ボスが依然として警視庁内で勢力を振い、もみ消しに暗躍したとも言われる。本件に関しまして政界あるいは官界に対する贈賄の事実。第二といたしまして警視庁検察庁内で本件捜査をめぐり相当政治的圧力が加えられた件及び首脳部と下部との対立問題、特に捜査官をまた逆に捜査するというような逆捜査の事実。三、旧特高関係の追放せられましたるところの人たちが、現にこの警視庁内の人事問題などまでに容喙をいたしまして、鬱然たる勢力をもつて暗躍しておるという事実、なおこの追放関係者政治活動につきましては、なお重大なるところの事実があると思われる節があるのでありますが、この点につきましては本委員会において調査御決定いただきますならば、次第に事実が明らかになつて来ると思うのであります。今ただちに具体的な事案を提出いたしますることは、証拠隠滅のおそれもあるのであります。事は法務府の特審局に関する問題が非常に重大だと思うのであります。かようにいたしまして、この捜査上のいろいろの疑義及び追放者政治活動及び贈收賄というような官紀紊乱の事実及び警視庁と檢事局との関係、いま局長の言明で、檢察庁においては人はかわつたけれども、何ら他意あるにあらずという弁明もありましたが、世上多大なそこに疑惑もある。そこでなおわれわれの知り得る事案につきましては、詳細に本事件概要なる文書をもちまして委員会へ提出してあるのであります。そこでもうすでに新聞面をにぎわしておりますところの事実であり、事が法務府及び檢察庁警察という一連の対象の調査の問題でありまするがゆえに、本委員会において調査されることが最も適当なりとわれわれは思料して本委員会に提出したのであります。本委員会は歴史的に、今まで超党派的な態度をとりまして今日に及んで参りました。われわれの国政調査は、申すまでもなく憲法上の崇高なる権利でありまして、この国会がこの権利を確保いたしまして、政界官界その他ににらみをきかしておきますることが、いかに政界浄化、あるいは檢察庁、あるいは警察基本的人権擁護、そういう方面に多大な功績をいたしておるかは、今さらるるを要さぬと思うのでありまして、このわれわれの提出いたしましたるところの相当具体的なる事案、これは天下すでに公知の事実のようになつておりまして、相当の批判が行われておる。この事実が調査の結果全然無根のことでありまするならば、邦家のため欣快にたえない次第なんでありますが、これだけすでに世人の疑惑を生じております以上は、当法務委員会がその職権に基きまして公正妥当なるところの調査をするということは、これは憲法上の要請ではないかと考えられるのであります。かかる趣旨に基きまして、願わくは本会一致態度をもちまして、このわれわれの提出いたしました調査要求を御可決になつていただきたい。ことに本委員会におきまして多数を占めておられますところの自由党の方々に特にお願いいたしたいことは、何とぞこのわれわれの提案趣旨を了とせられまして、これに御賛同をいただき、ここに詳密に調べをいたしまして、事の善悪是非を明らかにして、天下に公表されるという公明なる態度をおとりくださらんことを、切に提案者として希望いたしまして、提案理由といたしたいと存じます。
  12. 花村四郎

    花村委員長 ただいまの猪俣君の御発議に対し、御意見のある方はこの際御発言をお願いいたします。
  13. 角田幸吉

    角田委員 私はただいま猪俣議員から提案になりました佐藤昇事件についての国政調査に遺憾ながら二つ理由から反対をするのであります。  まず第一点は、御承知のごとく委員会国政調査衆議院規則九十四條によりまして、議長承認を要することになつておるのであります。しかして本委員会におきましては、昨年の十二月二十一日に国政調査承認議長要求いたしまして、承認された事項はただいまここで申し上げますと、第一に裁判所司法行政に関する事項、二法務行政に関する事項、三、檢察行政に関する事項、四、法制に関する事項、五、人権擁護に関する事項、六、裏日本における福井、武生、米子の各市及び福井県今立の裁判所または檢察庁怪火事件に関する事項、七、商法改正及び刑事訴訟法の運用に関する事項、こう限定されておるのであります。ところで猪俣議員から提出されました本事件概要を見ますと、主として警察行政に関する事項が多いのであります。もつとも先般猪俣議員から佐藤昇事件係檢事を数たびかえた疑いがあるということでありましたが、今日の刑政長官のお答えによりますと、さような事実はまつたくないのであります。しかも特別捜査係責任を負うて、その部において始終一貫して調べられたということは明瞭なのであります。従つてここに檢察行政に関する疑いはないのであります。特審の問題にも触れておりますけれどもこれは具体的に調査すべき事項には入つておりません。さような次第で、事件概要から見ますと、本事件概要として猪俣委員から提出されたものによりますと、むしろこれは委員会としては、考査委員会権限に属するものではないかと考えるのであります。憲法国政調査はきわめて重要な点であります。私は国会はできるだけ国政調査をなしとげ、そうして立法の上に参考にすべきものであることは、猪俣委員とその見解を異にするものではありません。ただ衆議院規則第九十四條によりまして、国政調査をするときには議長承認を要することになつておつたゆえんのものは、その付託された本来の法律審議をなおざりにして、等閑視して、ときに国政調査に名を借りて、こちらの方にだけ熱心になるおそれがあるということを考慮いたしまして、衆議院規則第九十四條によつてきめられておるのであります。かような次第でありまして、すでに本委員会において昨年の十二月二十一日承認されたものの中には入つておりませんので、私はこの際この要求には入つておらないという点から反対をするのであります。  第二の点は、国会は五月の初めで終るのであります。今商法改正その他たくさんの法制審議は、昼に夜を次いで審査いたしましてもなお足らないというほど、本委員会には法律審査がかかつておるのであります。このことをわれわれは無視して、今の佐藤昇事件について国政調査をするということは、国会法規定からかんがみましても、憲法規定から考えましても、当らないものだ、こう考えまして、以上二つ理由から遺憾ながら猪俣議員提案反対するのであります。  なお申し上げたいことがありますけれども、私はこの二点の理由から超党派的な考えをもつて猪俣君のおつしやられる通り、法務委員会は超党派的に進みたい一念から、むしろこの際法律審査の方に専念せられることが適当と考えますので、この国政調査には反対いたします。
  14. 花村四郎

    花村委員長 ほかに御意見はありませんか。
  15. 古島義英

    古島委員 私は遺憾ながら角田君の御意見反対をいたします。いやしくもただいま提案されたような事案が、かりにあるということになれば、天下の一大事であります。しかもこれをやみからやみに葬るというようなことは、真に法務委員会があわれな存在になつてしまいますから、もしこういうことがあるならば、これは進んで調査をいたして、あくまでも真否を確かめるということが、われわれに與えられたる権能だと思うのであります。しかしながらかような重大問題を提案なさつた猪俣君も、もしこれが事実無根であるということになれば、国家のためには利益であるというようなことを仰せになりましたが、国家のために利益ではない。それほど重大な問題を審査いたさずに、深く研究をせずに、軽々しくこれを提案いたして、もし事実が無根であるというならば、猪俣議員はその職を賭してもこれをやるというだけの大決心があるものだと思います。もしその決心があるならば、これを調べることがほんとうにいいことだと思うのであります。また万一これを調べぬということになれば、おそらくはこの事実が宣伝されては困るので、党の幹部の人たちが金をもらつたということが、いかにもそれらしく世の中に伝わるであろうと思うのであります。かえつてその効果こそは恐るべきものでありますから、ほんとうに潔白であるというだけの御確信があるならば、むしろ権限などを争わずに、堂々とこれの審査をするのがあたりまえだと思いますから、角田君の御意見はなるほどけつこうな御意見ではありますが、しかしそれはほんとう事態全体を見ての御意見ではなくして、むしろかえつて逆の損害を受けることになると思いますから、これは調べた方がいいと思います。角田君に反対をいたします。
  16. 角田幸吉

    角田委員 私に古島委員から反対がありましたので、私はこの際一言いたしますが、法務委員会で調べなくとも、もし古島委員のようなことであるならば、これは考査委員会事項に入るのであります。そういうことが主であるならば、考査委員会調査事項に入るのでありますから、考査委員会でやるのが適当だということを私は申し述べたのであります。法律論的には、遺憾ながらこの際こちらの方ではやらない方がよろしい。ことに法律審議について、たくさんの審議をしなければならないものがあるから、考査委員会の方に讓るのが適当だ、こういうことを私は申し上げておるのであることを、この際一言しておきます。
  17. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 私は自由党角田君、それから自由党古島君、両者の意見を聞きまして、いま少しく内容を分析いたしまして、そうして社会党の猪俣委員提案趣旨反対をしてみたいと思うのであります。  私は一応わが党の角田氏の意見というのは合理的な意見だと考えます。これに対して古島さんから反対意見を述べられたことも私はまた意義があると思います。しかし法務委員会にあまり出席されないところの古島委員は、事件内容をつまびらかにしていないおそれが多分にあるのでありまして、つまびらかにした上において、それが正論であるといたしますならば、これは一応古島委員言葉にもわれわれは考えを及さなければならぬものと思います。実はこの事件は第一に、もはや法務委員会に持越されておるところの現段階におきましては、ある程度の終結をしておる事件だということを見のがしてはなりません。労農党岡田委員がこの問題を予算委員会で取上げまして、予算委員会で各関係者が出席されまして、十分なる内容の検討が行われております。そしてこの事実は新聞紙上を通じまして、世間に十分に知らし盡くされておるのでありまして、今回の法務委員会に対する提案というものは、予算委員会で調べ盡くされた以上の事実は全然現われておりません。従つてこの委員会取扱いといたしましても、二重的な取扱いになるのでありまして、それ以上の事実が判明して、新しい事実のもとに国政調査をするということになれば、意味があるのでありますが、新しい事実がそれ以上現われていない現段階におきましては、われわれが国政調査としてここに取上げるためには、あまりにも煩雑な現在の国会委員会といたしましては、少しどうかと思うのであります。また新しい事実が多少くみ入れられておるかのように承るのでありますが、これだとて揣摩臆測にすぎないのであります。何ら具体的事実を猪俣委員はあげていないのであります。揣摩臆測に基くところの事実をわれわれが真劍に取調ベて、しかも国会の権威を世聞に示すだけの価値があるかどうか、この点は私たちは大きく考えなければなりません。詳しく述べることは証拠隠滅のおそれがある、こうおつしやるのでありますが、証拠隠滅のおそれがあること自体は捜査段階に属するのであつて、それは証拠隠滅をされないように捜査当局にあなたたちが申達すること、これが最もいい方法だろうと思います。本委員会に現われますならば、証拠隠滅どころか、公開の委員会でありますから、ただちにその事実は流布されてしまいます。むしろ私はこれは捜査の問題として捜査当局が担当されるのが適当ではないかと思います。またいま一つ、この事件捜査の問題に入りますと、捜査当局が答弁されておりますように、十分に捜査がし盡くされておるのであります。それを新しい事実の発見なくして再び国会が取上げるということは、捜査の二重性になりまして、国家機関濫用、要するに国政調査濫用のおそれが多分にわれわれには見られるのであります。この点からいたしまして私は反対せざるを得ません。むしろこの事件はその意味からしても、第二に述べましたように、捜査当局捜査の発動を促すという点において明らかにされますことが最も合理的であり、最も徹底したところまで取調べが進められるのではないか。国会におきましていつも国政調査をいたしておるのでありますが、その国政調査は、とかく証拠隠滅というおそれの点から申しますと、まことに不完全でありまして、常にわれわれは苦んでおることは、これまた皆さん十分にお認めになつていただいておる点だと思うのであります。しからばこの事件野党側において、取上げた点をいろいろ考えてみますのに、この事件野党側がいたずらに與党に難くせをつけて、現在の與党に何らかのきずを負わせんとするところの悪性な野党攻勢のような気がいたします。次に片山芦田内閣があの涜職事件で倒れましたその経過をたどりますと、片山芦田内閣の要するに仇討である、それと同様のきずをわが吉田内閣に負わして、ひとあわ吹かせんとするところの片山芦田内閣以来の野党の、自分たちのきずを少しでも少くせんとする悪辣なたくらみのような気がするのであります。またいま一つは、野党與党とも参議院選挙を前にしまして、たいへんな闘いをやつております。そのためには野党はどんな材料でも取上げて、與党にひとあわ吹かせなくちやならぬということが、常識的に考えられるのでありまして、その参議院選挙事前運動である。そうしたものを国政調査の目的とせんとしておるような様子が見られるのであります。以上要しまするのに、私は政治信用というものは與党のみの信用ではございません。政治信用與党信用であると同時に、野党信用でなければならぬと思います。反対政治が不信用を招くということは、與党が不信用を招くばかりでなしに、また野党もその不信用を招くことでなければならぬと思います。私は国政調査として、お互いに不信用を招くような事件を取上げる場合には、超党派的に最も高いところからその事件内容を検討いたしまして、最も高いところから事実を明らかにいたしまして、間違いないという線に持つて来て、初めて国政調査にかけるべきではないかと思います。私たち地方の一事件を取上げてやるというような問題ではございません。わが政府に対してきずを負わそうというがごとき事件であり、なおさら私たち與党野党ともに真劍な考えをもつて政治信用を保つために、われわれ国会信用を保つために、国会議員信用をあくまでも守るためにやつて行かなければならぬと思います。その趣旨本件にはどうしても認めることができません。現われておりません。その意味からいたしましても、私は角田委員並びに古島委員意見に附加いたしまして、以上反対理由を述べる次第であります。
  18. 猪俣浩三

    猪俣委員 田嶋君は一体本事件概要とわれわれが書いて出したのを読んだのですか、読まぬのですか。  そうして何か荒唐無稽なデマみたいなものを出しておるというような言をなすということは、——これ以上詳しいことがわかつておれば調査などは求めません。わからぬから調査してくれと言うのではないか。それをまるで検事局調書のようなものを出さなければ調査できないと言うならば、国政調査などはできやしない。のみならず私に、古島委員から責任を負うかというような趣旨言葉がありましたが、荒唐無稽のことであるならば責任を負います。はつきり申し上げます。これは福田篤泰代議士をお呼びくだされば全貌がわかります。この金額よりは多い、四十万円よりよけいもらつたんだと公言しておる。何が荒唐無稽なことだ。そんなことは天がこれを知つておる。天にかわつて国政調査をやつてくれというのである。そういう検察調書みたいなものを出さなければ捜査ができないならば、国政調査などはできない。なおまた角田君は、これは法務委員会権限ではないようなことを言つておる。そんなことがどこにあるか。こと犯罪事実に属すること、あるいは法務府の特審局に関する事案、あるいは政界その他財界の腐敗事実というものこそ、法務委員会が本来の任務として粛正工作にまず第一に立ち上らなければならぬ委員会である。議長承認がいるならば、あらためて承認を求めていただければよろしい。そんなことは何でもありません。そういうことに藉口してこれに反対なさるということは、私は反対いたします。ことに岡田鉱山保安局長の問題、これが刑法上の問題になるかならぬか知らぬにしても、ほとんどこれは確定の事実になつておる。そういうことをわれわれはここに書いて出してある。何も荒唐無稽のことを言うているんじやない。なおまたわれわれとまつたく考えが違うことを田嶋君は述べられて、初めて自由党諸君がこれに反対する真意がわかつた。これは内閣をきずつけるのだろう、選挙に利用するのだろうというような思惑から反対しておるのじやないかと思われる。これは私どもは、今田嶋君から言われるまで気がつかなかつた。あなた方の反対する理由がそこにあるのだということが今知らされたのでありまして、それならばなおさら公平な立場、超党派的な立場に立つてやらなければならぬ。それこそわれわれの信用を高め、政治信用を高めるゆえんなんであります。皆いいかげんなことをやつても、だれもこれを監査するものがないから政界腐敗が起るのであるから、そういう心配があるならば、それこそ、われわれの信用を高めるために十分なる活動をいたしまして、事の真相を国民に明らかにする。これが民主国家の最も大切な点であると思うのでありますから、諸君反対理由は、私としては理解できないことを付言しておきます。
  19. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 角田さんから、この委員会審議するよりも、考査委員会でやるがよかろうというお説がありましたが、しかしこの委員会でやつて惡いということはちよつともないと存じます。ことに昨年十二月に決定いたしました範囲に属さないとおつしやるけれども、私どもは深い関係があると存じます。ここに具体的に示しております通り、政界人に関係のあるところの犯罪に関する事項でございます。綱紀粛正の上においても、またその綱紀粛正をなすべき当該官憲の行動について、どうも時の勢力に何か左右せられるのではないかという疑いのありますような時分には、これはもう衆議院が立つよりほかにはないのです。国会が立つよりほかにはないのです。警察や検察当局にまかしておいたのではこの腐敗をいかんせんといつたようなときに、国会が立つときは、法務委員会がまず率先してやるべきだと私どもは考えます。しかして昨年十二月の決定いかんにかかわりませず、新しい事項についてここで新しく調査を求めるということは、一向さしつかえないことでありまして、これに基いてお互いがこれは許すといたしましても、何も法規的な根拠をもつてこれを否定する理由はごうまつもないと存じます。  次いで先ほど田嶋さんのお話によりますと、現段階においてはもはやこれを審議するに値しないものである。すでに前からこの問題は論議されておつて、終末に近い事件である。かようにおつしやつたのでありますが、しかし私どもの承知するところによれば、本案件は前に一回提出をいたしましたところ、これは具体的でないとおつしやつたために、ここにあらためて具体的事実を指摘いたしまして、提議いたしたのであります。従つてこの問題が具体的でないとして取上げなかつたといたしますときに、これは具体的に示されたならば、具体的でないからいけないと排斥なさいました人々は、具体的に指摘された本事案に対しては、満堂一致御賛成あつてしかるべきものであると私は存じます。次いで岡田君が予算委員会においてこの問題を論議したので、すでに論議し盡くされておるとおつしやいますけれども、これはたいへんな間違いだと私は思う。予算委員会は御承知のごとく質疑応答以上に出ることを許しません。しかしこの国政調査に関する当法務委員会における決定がもし許されることになりましたならば、証人喚問を許されます。証人を喚問して、具体的の証拠その他具体的根拠を示して尋問を進めてごらんなさい。どのような事実が出るかわからぬという疑いは、だれもが私は持つておると思う。さればこそ、古島君におかれましても、政界に疑問を投じたような事件は、卒先して調べてもらつたらよいではないか。これはお互いに政界人としての共同の被害でありますために、かかつて来るところの火の粉はお互いに協力して拂つてよろしいと私は思う。予算委員会でもう問答が済んでおるからなどと言うて投げる事件ではございません。さらに国政調査をいたしまして、この委員会の職権を十二分に活用いたしまして、証人を喚問し、具体的に掘り下げて調べようではないか、こういうのでございますから、予算委員会における審議が済んでおるというだけによつて、決してこの委員会におけるわれわれの職責を放擲すべきでないと私は存じます。  次いで田嶋さんからは、揣摩臆測をなさると、かようにおつしやつたけれども、犯罪の被疑者がその取調べ官憲に対して自白をした、その事実によれば、福田代議士に対して四十万円、吉田総理大臣に対して、これは民自党総裁という名目かもしれませんが、三十万円、増田官房長官に対して六十万円、その他に対してあるいは三百万円、あるいは百万円など贈つたという事実がここに明らかにされておる。すなわち取調べ官憲に対して自白をいたしておる。荒唐無稽でもなければ、揣摩臆測でもない、嚴然たる事実であります。その嚴然たる事実を根拠といたしまして、はたしてその自白のごとき事実があるかどうかということを取上げ、それだけの事実があるのにかかわらず、検察当局が何ゆえにやらぬのであるか、検察当局を叱咤し、綱紀粛正をはかるということは、当国会の責務であり、法務委員会をおいてその職責を果し得るものはないと私は考える。従つてこのことをやるがために、何も與党に対して難くせをつけてみたり、参議院選挙に有利ならしめんとするがごとき、そんなけちな考えをもつてつておるものは一人もないと私は思う。さきに昭電その他について、あるいは芦田さん、あるいは西尾さん、そういつた人々の問題を提議したときに、だれがおやりになつたか。今の與党の方々が必死におやりになつただろう。しかし私どもはそのときに、そういう次の政権獲得をねらつていたずらに敵をきずつけるなどとは私どもは許しませんでした。まことによくおやりになる。そんな不正が存在するならば、爬羅剔抉すべきであると私どもも協力した。人をたたくときはたたいておいて、今日たたかれそうになつたら、おれにやるのは何かためにするものだと言う。何も逃げることはない。なければ、堂々とやつてもらつたらよいではないか。古島君のおつしやつたことは、私は男らしい当然の意見であると思う。與党をきずつけようとか、参議院をどうしようとか、そんな考えはいささかも私は持つておりません。いやしくも一人の被告が、明らかに総理大臣にこんな金をやつた。増田官房長官にこんな金をやつたと自白したならば、政界人に対するこれは侮辱であります。事実あつたとするならば、その人は徹底的に葬るべきである。まず事実を調べなければならぬ。しかし証人喚問を許さない限りできない。よつて法務委員会において証人を喚問して、徹底的に調べてもらいたい。何の拒む理由がありましよう。徹底的にお調べをいただきたい。あやしい何かすねにきずを持つような人でなければ、必ずこれに賛成するでございましよう。ぜひこれは万場一致賛成せられんことを私は希望いたします。
  20. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 今私の述べました反対意見に対しまして、猪俣委員、佐竹委員から熱烈なる御反対の御趣旨を承りまして、私も大分勉強させていただいたのでありますが、私ども民主自由党といたしましても、與党といたしましても、事実そういう問題があるという疑いを持ち、事実それが存在いたしますならば、むしろ野党よりも進んでこの問題は自由党において取上げるでありましよう。ただ今までの新聞紙上の発表を見、委員会における討論を拜聽しておりますのに、そうしたことは、いたずらにきずを求めようとしておるところの野党の姿が、われわれにはありありと見てとれるのであります。事実この事件概要と書かれたこれを見ましても、何ら今まで現われた以外の、新しい事実として取上げられる点は一つもないのであります。これ以上掘り下げたところで出て来ないということがわかつておる事件を、何がためにこれ以上掘り下げる必要がある。それよりも国会はいま少し大きな目的を持つて進まなければならぬ段階にある。まだたくさん調べなければならぬ問題があると思います。われわれ国政調査をいたす上においては、やはりそうした重大問題から先に取上ぐベきだと思います。現在まで調べ尽くされた問題を再び取上げる、しかも捜査が完了した問題を、捜査当局においてもそうした不正事実が認められないようなことを、なお捜査の二重性を主張するようなことは肯定ができない。私たちはどうしても捜査の二重性ということは、国会調査としては愼しまなければならぬと思います。捜査の二重性をやり、裁判の二重性をやつて、われわれ国会としての威信を最後まで保てるかどうかは疑問であります。不正がわかればそれは大いに追及すべきでしようが、しかし二重、三重の捜査はただ煩雑さを増すのみであつて、何ら国会としての効果をあげないということを、私はここに主張したいのであります。佐藤氏が自白したといいますが、この自白は、われわれ同志でありますのでよく存じ上げております。こうした事実は自白したと言つておるのですが、自白した事実をわれわれ知りません。自白した事実が捜査当局によつて提出されておるか、また捜査当局がどう陳弁したかそれは知りませんが、われわれが知る限り、こうした政界腐敗、福田君がもらつた、総裁がもらつた、増田官房長官がもらつた、江花氏がもらつたという事実は知りません。ないと断言できる。特にわれわれが反対して、さきに参議院議員の選挙だと申し上げました。また片山芦田内閣のかたき討ちだと申しました。これはなぜかと申しますと、福田君なり江花君の名前をあげることはよろしいが、わが党の総裁の吉田茂の名前をあげ、わが党の官房長官の増田の名前をあげておるだけに——われわれはそうしたことがないということを確信しておるがゆえに、われわれはそうした野党の惡辣なる反対攻撃であるという点を主張せざるを得なくなるのであります。私たちは冒頭申し上げましたように、決して国政調査に対する熱意を欠くものではございません。進んで国政調査はいたします。またわれわれいたす覚悟でおりますし、またいたしております。新しく構成された国会後の法務委員会が、本件に限つて反対したのであります。今まで提案されたものを、ほとんど異議なく與野党ともに協力してやつております。われわれ與党として本件になぜ反対せざるを得ないか。われわれが今までそうしたことに対する経歴があるならば、それは與党野党の対立で、與党反対するとも言えましようが。今までそうした過去のない、今までそうしたきずのない法務委員会が、特にこの事件は取上げぬ。特に與党としては皆さんに一戰を交えてもこの事件は通さないという覚悟をきめておる。ここに皆さん方に一つ御反省をお願いしたいと思います。
  21. 稻葉修

    ○稻葉委員 ただいま田嶋君がこの事件を取上げないという反対理由を述ベられ、猪俣委員からも佐竹さんからも取上げるべきであるという主張がなされましたが、私はやはり取上げるべきであるという主張をするものでありますが、重複を避けまして、主として田嶋委員反対される理由理由なつていない点を申し上げ、また角田委員反対される理由理由なつていないという点を取上げてみたいと思うのであります。  まず第一に角田委員が、これは考査委員会で取上げる問題であつて法務委員会としては、申合せ事項の範囲外であると、こう言われますけれども、その申合せ事項の中に警察行政に関する事件、人権蹂躙に関する事件、こうあげてありますことは、先ほど述べられた通りであります。本件警察行政が不当に行われている。つまりこの点は岡田春夫議員が予算委員会において、田中警視総監、坂本刑事部長、松本捜査第二課長を呼びまして、参考人としてこれに質問をいたしましたその答えの中に、警察行政がいかにも不明朗に行われていたという事実が明らかになりましたことは、当時の速記録をごらんになれば明白であります。ごく簡單にその内容を申し上げますと、ここにも書いてありますように、逮捕状が請求せられて後、一週間をおいて初めてそれが実施されたという異例な状態は、その間に何らか松本捜査第二課長に対する警視総監の捜査妨害の事例があつたのではないかという問いに対しまして、警視総監はそういう事実はない。むしろ佐藤昇を逮捕しろと命じたのは、警視総監は自分であると申しております。その理由として一週間遅れたのはなぜかというと、警視総監の言によれば、單にそれだけの詐欺容疑事件でただちに佐藤を逮捕するということは、人権蹂躙の疑いがある。この点、あの点、その点、こういう点についてもなおよく十分に事情を調査して、その点でなお疑いがあるならば、初めて逮捕を許すということを言つておりました。私は当時予算委員でありましたので、関連質問をいたしまして、この点、あの点、その点というのは單に詐欺容疑のみならず、涜職の容疑も入つておつたかということを警視総監に尋ねましたところ、警視総監は目下事件捜査継続中でありますから、その点についてはお答えできませんという答えでありました。従いまして本件田嶋議員の言われるように、捜査が完了してすでに知り尽くされている問題ではなくして、目下捜査継続中、しかもその継続中にわかつてつても答えられないような事案も含まれておるということは、田中警視総監の当時の答弁からすでに明白なんであります。そういう点並びにその後一旦釈放いたしましたが、即日再逮捕をいたしております。その再逮捕の逮捕状は詐欺容疑事件ではなくして、今度は涜職容疑ということで逮捕いたしておるのでありますが、逮捕した後三日にこれを釈放しております。涜職容疑というふうな重大な事案について、三日でこれを釈放するということもきわめて異例であります。この点についても、第一には捜査妨害があつたのではないかという疑いがあり、第二にはもし三日間で釈放することが正当であつたとするならば、そういうふうに一月も調べておいて、そうして即日再逮捕するというような軽率なこと、三日間で釈放しなければならないというような軽微なことについて再逮捕するということは、反対にはなはだ佐藤昇君に対して人権蹂躙の疑いさえある。そういう意味から言つても、人権蹂躙に関する事案として、昨年の申合せ事項として、法務委員会で取上げるという十分な根拠があると思うのであります。なおここにあります具体的な事案のうちには、総理大臣、官房長官というような、国の重要な政治の中枢人物が入つておる。これはきわめて国の威信から申しましても、こういうような事案があるということは、われわれ国会といたしましても、十分にその疑いをこの際晴らして、そうして国民の国政に対する認識を回復しなければならないと思うのであります。決して私どもはこの事件について、初めから党略的な考えで出発したのではありませんで、たまたま警察行政に関する事件として、あるいは人権蹂躙に関する事件として取上げつつ調査を進めておつた進行の過程において、こういうような重要な人物が登場して来たというだけの話であつて、決してこの人を目的に目をつけて、この人を目標に問題を取上げておつたわけではありませんので、この点はどうぞひとつ誤解のないようにお願いいたします。要するにすでに知り尽くされて、全部明らかにされた事件であり、捜査の二重性を招くものであるという見解には、いまだ全部捜査が明らかにされていない事案であつて、決しておつしやるような問題ではない、捜査の二重性ということを決して招来すべき問題ではないという点から、角田さんの議論も、田嶋君の議論も理由なつておりませんから、ここであらためて私はこの調査要求書を取上げられることをお願いいたす次第であります。
  22. 加藤充

    ○加藤(充)委員 角田君も、田嶋君も反対理由がないと私どもは思う。いろいろな点については、それに対して反駁の意見を申し立てた人たちがおりますから重ねては申し上げません。田嶋君も弁護士をやつておられればわかると思うのですが、やはり捜査機関に問題を持ち出せという意見ですが、捜査機関そのものに疑惑を持たれておる場合に、捜査機関に持ち出す方法がないじやないか。無実の罪で、警察並びに検察庁の圧制のために泣かされておる人たちがたくさんあることは、田嶋君の職業的な経験から見ても明らかなところであります。この佐藤昇事件については、そういう疑いがきわめて濃厚であるといういろいろな事実があげられておるわけであります。しかももう一つ特捜部の岡崎検事の二月の二日かに釈放したという問題につきまして、民主党の方がおつしやいましたように、今までは全部詐欺事件取調べておつて、その詐欺の取調ベの最中に突然一月三十日になつ裁判所側から保釈が出てしまつた。詐欺の調べの中に佐藤が各方面に——政界官界その他にばらまかれた金額というものが相当具体的になつて来て保釈になつてしまつたので、涜職の問題を調べ中に釈放されたのでは困るということで、一月の三十日になつて急遽その逮捕状が出たわけなのでありますが、その逮捕状が出た理由というのは、涜職の問題であります。しかも佐藤の自白の中には、先ほど申し上げたようにいろいろあつたにもかかわりませず、警察側から出された、送局された事件の立て方というものは、岡田の分だけだつたということなのであります。しかしここに私は問題があると思う。その点は検事局側、検察庁側にもやはり問題が移つて行くと思うのでありまするが、やはり岡田の分だけを証拠不十分でやつたというのは、岡田の分は証拠不十分だから不起訴にしたのかどうかわからないのであります。証拠不十分だと言うが、岡田の分だけでなしに、たくさんの問題が一件記録の中に相当明らかなのであります。世の常の場合であるならば、検察庁相当の勾留状を出して、疑いのある事件については積極的に取調べ、そのことについては、職権だと言いながら、ずいぶんひどい人権蹂躙の事実さえ各地に起されておるのですが、この事件に限りそういう事実なしに逮捕して、二日間だけで釈放してしまつた。しかも岡田事件だけのことにしてしまつた。こういう事柄なのでありまして、その点についても、私は検察庁の特捜部長の釈放は大いに問題があるところだと思うのであります。なぜほかの事件を調べなかつたのか、他の事件について、佐藤の報告書によれば三十万円を岡田に渡したというようなことまで、涜職の分について言われておる。メモがあげられたということも聞いておりますが、そのもらつた方の者を調べずに、証拠不十分というようなことで釈放するということは、何かそこに陰の暗いものをわれわれは感ぜざるを得ない。しかもそういうことについて世間の疑惑が巻き起つて来るのは当然だと思うのであります。そういう点がまだ明確になつておらない。しかも田嶋君はみなわかつておると言いながら、先ほども明らかにされたように事が全部済んでしまつたというようなことを言つておりますが、済んでおらぬで、調査中である、起訴処分の留保のまま一応の釈放になつたにすぎないということは、田嶋君自身が全部知つておる。あるいは確信しておるというようなことで、みずから反対理由を裏切つて否認しておる問題だと思うのであります。そういう点からも、田嶋君の意見はりくつが成立たないと思うのであります。  もう一つは松本捜査第二課長の問題ですが、これなども全然一発のもとに却下されて、不起訴、あるいは起訴等々のことが右から左に折れるような事件を、何で五十日も佐藤昇君を勾留して調べておつたのか、私はこの点でいわれなく松本が佐藤事件をでつち上げて、涜職にまで波及させて行つたのであるならば、その結果が一発のもとに検察庁の特捜部から帰れと言われるほど簡單なものを、それほどひまをかけ手間をかけやつたおつたとするならば、松本捜査課長のこのやり方というものはまさしく私は人権蹂躙であり職権濫用であり、そのこと自体が大いに問題になる余地があると思うのであります。また逆に松本といえども、かりに相当な者であるとするならば、長い間かかつてやつたこと、しかも幾多の被疑事実を調べ上げてやつて来ておるのに、検察庁がわずかに逮捕状の期間の二日間で釈放してしまつたということになれば、これは考え方からするならば、検察庁側がえらい圧力をこうむつたのじやないかという疑いが反面から深く成立つと私は思うのであります。こういう点で予算委員会などの問題になつたようでありますけれども、われわれはまた得心しきれないところがある。私個人だけでなく、当法務委員会はその疑いを強く持つたのでありましよう。また国政調査要求は、その気持を正直に強く表白したものであると思うのでありまして、しかもまた法務委員会でこの問題を問題にするというのは、やはり一番いいところで一番いい調ベをでき得るものであるという性格を法務委員会が持つていることを、私は法務委員会の一人として肩身広く思うし、また責任も重大であることを感ずるのであります。田嶋君は問題が大きいというようなことを言つておる。問題の小さいことは、今まで法務委員会與党野党なしにやつて来たと言うが、問題が大きいというのであるならば、大きい問題こそ法務委員会が、国会が御調査に当らなければならないのであつて、今までは小さいことはみな一緒にやつて来たけれども、問題が大きいからやれないということは、その点からも成立たないと私は思うのであります。ここで私は田嶋君にもう一点重ねてお尋ねしたいのですが、何か自由党側の委員発言の中に、考査委員会で取上げるのが至当だということ。それでは考査委員会で取上げるについては、自由党側ではこの問題について意見はないのか、私はその点を確かにしなければ、考査委員会に持つてつて、また考査委員会でも異議があるというようなことでは、どこでこの問題を処理していいのか、調査をなすべき機関というものが明確にされて来ない。また予算委員会ですでにやつたんだから一事不再議である、法務委員会でやる必要はない、あるいは考査委員会でもやる必要がないというのであるならば、これはまつたく田嶋君の反対意見は、ただ反対するための意見であつてまつたくのこじつけだと思う。私は反対意見を持たれている方にお訴えしたいのですが、ここにあげられました調査要求申立ての中にあります本事件概要というこの事実、これについてはこういう概要を持つものを国政調査の結果明らかにすべきであるという一つの事例にすぎないのでありますけれども、ここに問題になつている事柄を見て、だれもそれでは国政調査の必要を感じないというのか、いろいろ新聞その他を通じて、国民の大部分がこの問題について強い深い疑惑を持つていると私は思うのであります。新聞紙があれほど問題にしているというのは、やはり国民の輿論の一部のりつぱな表白だと思うのでありなたことを反対の人が考えておるとするならば、その人たちの頭というものは、こういうような犯罪的な事件にあまりに麻痺し過ぎていると思うのであります。私はこれだけの事件を見て、国民の一人であり国会議員の一人であるならば、ぜひ調べてみなければならないという意見が当然出て来べきものだと信じます。しかるにそれが出て来ないというのは、まさしく耳をふさいで鈴を盗むのたぐいで、手前さえ聞えなければ何でもやつてもかまわない、何もがんがん鳴らすやつだけは押えておけというようなやり方であつて、私は私どもの国政調査要求反対する人々こそが、惡く言うならば、春秋の筆法をもつてするならば、何らかの関連があるから、手前の痛いところに探られるのはかなわぬからというようなことを世の常の人が思つたとしても、何としてそのことわりを明らかにするか、こう私は思うのであります。こういうようなことで、調査の方法についても疑惑があり、しかもいろいろな委員の方が述べられた通りの問題がありますので、ぜひひとつ法務委員会で取上げることを、切に私どもは正当なものとして主張するわけであります。
  23. 小玉治行

    ○小玉委員 私は簡單に猪俣氏の提案に対して反対理由を申し上げます。吉田内閣は御承知の通りに、政界官界、財界の浄化ということは、内閣成立の当時の基本綱領の一つなつているわけでありまして、かかるがゆえにこの粛正の本元でありまするところの法務総裁というものは、党籍を持たせずにいたしまして、嚴正公平に粛正をやらせるという建前をとつているのでありまして、昭電事件であるとか、あるいは石炭国管問題であるとかいうような問題につきまして、嚴正公平、與党と言わず野党と言わず、疑惑のある者は爬羅剔抉して参つたのが、これが吉田内閣の検察行政に対するところの根本的なやり方であつたのであります。今日問題になつておりますることも、要するに検察庁を信ずべきか、信ずべからざるかということに立論の根拠があると思うのでありまして、いわゆる現下のこの検察権がいかにも疑惑にとざされ外部の圧力に屈しておる、あなた方のおつしやるところでは、おそらく與党であるとか、あるいは内閣方面の圧力に屈して、臭いものにふたをしているのじやないかというのが、あなたがたの本委員会提案した根本的理由であろうかと私は考えるのであります。これは要するに検察当局、法務府というものに対して信頼をされていないところから出発するのではないかと私は思うのでありますが、しかしながら吉田内閣の成立の根本的性格と、それからその後に法務府並びに検察庁が、政界、財界、その他官界に起りましたもろもろの疑獄事件におきまして、はなはだ與党に甘く、野党に辛いような、そういう検察の方法をとつて来ておるかどうかということは、あなた方が十分に、もろもろの疑獄事件をごらんになればわかることだと私は思うのであります。私どもといたしましては、今の検察当局あるいは法務府のこの検挙方針については、いささかの疑惑も持つておりません。党籍を離脱して、そうして最も公平に、しかも占領下におきまして、最も公平に職務を遂行されておる、かように考えるのであります。まず法務府と申しますか、検察庁に起りましたところのその疑惑の一点は、検事が入れかわり立ちかわり事件捜査をした、それが何かの外部の圧力によつてやつたんじやないかということを、第一点に申しておりましたが、それはすでに刑政長官の御答弁によつて、明確にさようではないということが、明白に相なつたと思うのであります。残るところは、警視庁におけるところのいわゆる警察ボスなり、ないしは特高を追つ拂われた追放組か暗躍したかどうかということが問題でありますが、今の法務府の特審局、これの追放者に対するところの検挙というものは、実に峻烈をきわめておる。われわれから言わしむるならば、少しは行き過ぎではないかと思われるくらい、嚴重にやつているのが実情であります。私、弁護士をやり、各種の事件にタツチしまして、痛切に感じておる。少しやり過ぎじやないか、少しの疑惑があると、法務府の特審局の事務官が飛んで行つて、そうして調ベるというのがその実情であります。私はむしろ少し追放者には行き過ぎじやないかというぐらいに思つておるのが、特審局の現実であります。その特審局が、かりに特高の連中の古い追放組にもしも疑惑があるならば、私の見るところからすれば、ただちに爬羅剔抉するであろうということを疑わない。また警視庁諸君涜職があるならば、何を今の法務府、検察庁が恐れるでありましよう。まつたくこれはあなた方が疑惑を、一種の恐怖症と申しまするか、ひとつの與党に甘く、野党に辛いというような一種の疑惑症と申しまするか、そういうふうなものに陥つておるのではないか。私としては現下の法務府、検察庁の職務の取扱いが公正である。その結果がはたして事実の見方が誤つておつたか誤つておらぬかということは、裁判の結果でなければわかりませんけれども、少くとも検挙の方針におきまして、與党に甘く、野党に辛いというようなことは絶対にないと、私はかように確信しております。私は決して法務府あるいは検察庁のやり方について、ちようちんを持つものではありません。私は多くの疑獄事件に弁護人として担当して身をもつて経験しておるのでありまして、嚴格と申しまするか、むしろ苛烈に過ぎるくらい嚴正にやつておるというのが、これは法務府なり検察庁の仕事のやり方である。何で警視庁の者を恐れましようか、国家警察を恐れましようか、絶対にありません。さような意味におきまして、かような事件は検察当局ないしは法務府というものにまかせ切つておいて私はしかるべきものである、それで十分であると思うのであります。本件のごときものはそこにまかしておいてよろしいのであつて、この法務委員会がこの事件を取上げて、そうして検察当局を鞭撻するとかいうようなことは思いもよらぬことであつて、さようなことをしなくても、日本の法務府、検察庁は嚴然として、官界、財界、政界の浄化のために邁進しておるのであります。さような点から私はまず反対したい。  それからまたもはやこの事件はこれだけ世の中に明瞭になつた以上は、これは検察当局としても疑問のあるところはとことんまで徹底的に調べ上げるでありましよう。さような事件をこの忙しい法務委員会に持つて来て、そうしてさらに調べ直して、そうしてじやんじやん新聞に書かしてやるというようなやり方をするだけの価値なし、私はかように考えている。私の反対理由は、要するに法務府は嚴然としている、検察庁は粛然として本件のようなものに当るであろう。さような事件については、当法務委員会においてこれを取上げるところの価値なし、かような見地から、私はこれを本法務委員会において審議することには絶対反対いたします。
  24. 花村四郎

    花村委員長 岡田君より委員外発言を求められておりますが、これを許すに御異議ありませんか。
  25. 花村四郎

    花村委員長 御異議がなければこれを許します。岡田春夫君。
  26. 岡田春夫

    岡田春夫君 簡單に、予算委員会で取上げました関係に触れて申し上げたいと思いますが、先ほど民自党の田嶋君から、あるいはその他の議員から、予算委員会において、この問題は徹底的に追究されて明確になつているはずである、かようなお話があつたのでありまするが、この点につきましては、当日予算委員会にもしおいでになつた方があるとするならば、野党與党を問わず、これは明確になつておらないという結論がはつきりしているはずであります。あそこにおいて私が問題を取上げましたのは、綱紀粛正の立場からこの問題を取上げて参り、この綱紀粛正の立場から取上げて参りましても、多くの点において疑義を残したまま未解決になつておる。その点を簡單に例を申し上げましても、たとえば岡田鉱山保安局長事件にいたしましても、通産省の宮幡通産政務次官の言によつてすれば、この金は確かにもらつておる。しかしこれは療養費の恵みとしてもらつておると言つておる。殖田法務総裁あるいは法務庁の関係の答弁をもつてすれば、恵みとしてもらつておるというような答弁を、なぜか避けられているという事実をもつても明らかであります。あるいはまた逮捕令状が出ました場合において、何ゆえか十二月七日から十五日に至りますまで、一週間逮捕令状が執行されないで、そのままになつておるのですが、これにつきましても、田中総監の答弁をもつてすれば、この点については証拠不十分であつたと考えられる。かような答弁があつたのみであり、松本捜査第二課長の言をもつてすれば、この点については何ゆえか逮捕令状の執行がそのまま押えられているという点で、きわめて不明確な形になつておる。特に最後の問題として、日野前中野署長が十一万円の金を佐藤昇からもらつているということは、これは田中総監から明らかにされておるのでありますが、この点につきましても、田中総監の再三の答弁をもつて明らかになりましたことは、個人の名儀をもつて日野署長がもらつて、これを警察の経費のために使つておる、かように言つております。しかもこの警察のために使つているならば、いかなる帳簿の上に具体的に載つておるかということを重ねて追究しましたところ、こういう点については私はわかりません。こういう田中総監の答弁でありました。こういうような一々事例をあげておりますと、この点は綱紀粛正の立場から申しましても、明らかに不明確なまま、未解決のままになつておるということがはつきりいたしております。しかもこの法務委員会でこの問題を取上げるということは、私たちはこの問題を取上げる根拠として、あくまでも司法権、検察権の権威を守り、検察権の権威ある執行を守るという立場から取上げられて行かなければならないと思う。ところがたとえば岡田鉱山保安局長の問題にいたしましても、田中総監、あるいは松本捜査第二課長が、この事件については検察局に事件は送つてあると明確に答弁しておるにかかわらず、岡田鉱山保安局長をいまだかつて警視庁あるいは検察庁において、これが出頭を命じて調べた事実すらないという事実をもつてしても、この事実はほんとうに明確でないまま、われわれの懸念をもつてすれば——幸いに懸念であつたらけつこうでありますが、このまま証拠が隠滅されてしまうおそれがある。こういう点からいつて、あくまでも検察権あるいは司法権の権威を守るためには、この際その事実を明確にする必要があると私たち考えておるわけです。先ほど田嶋君のお話によつても、いたずらにきずを求めるとか、これ以上きずが出ないとかいうようなお話がありましたけれども、しかしこれ以上きずが出ないとか出るとかいうことは、いかなる根拠に立つてお話になつておるか。私たちが調ベただけでもこれだけの事実が出ているのに、もしここで徹底的に、法務委員会の権威にかけて調べて行くならば、出ないという断定はできないはずである。こういう点についても、ないという確信に立つて田嶋君はお話になつているが、私たちはあるという確信に立つて申し上げておるのであります。先ほど猪俣君は、あるということを政治的な確信に基いて言つておるのだというお話をされておるのでありますけれども、私も予算委員会では、この点があるという政治的な確信の上に立ち、あくまでもこの問題を取上げるという前提に立つてお話をいたしました。その限りにおいてないという立場と、あるという立場二つがあるならば、これをなぜ法務委員会において、はつきりとあるかないか明確にされることを民自党の諸君が拒否されるかという理由がわからないのであります。私たちはこれがないならばない、あるならばあるということについて、司法権の権威のために、検察権の権威のために、はつきりしなければならないと思います。ことさらにわれわれとして感じられますことは、何か検察権なり、司法権が一部の力によつて濫用されるのではないかという懸念すら感じられておる。これに対して、ことさらに民自党の諸君がこの問題を取上げないということならば、このようなことを政治的な多数の圧力によつて押えつけようとする、そういう政治的な陰謀すらあるのではないかと感ぜざるを得ない。こういう問題について申し上げて参りますならば、幾多の事実がございます。私が初めて予算委員会で取上げました二月十三日のときにおいても、この神聖なるべき国会の中に、ある検察関係のこれと緊密なる連絡をとつたとおぼしきスパイ的存在が入つていた。こういう事実すらあるのです。私は名前を言えといえばはつきり申し上げてもよろしい。予算委員会の中に、この関係に連絡をとつているようなものまでが配置されているという事実がある。あるいはまたその後において、陰に陽にこの問題をもみ消さんがために、幾多の陰謀的な行為が行われようとしている事実もある。これを言えというなら私は申し上げてもよろしい。こういう事実があるだけに、われわれの疑惑は決して明白になるのではなくて、かえつて深まる一方である。この時において、なぜ法務委員会がこの法務委員会の権威のために、この問題の黒白を明らかにしないか。ことさらに臭いものにはふたをしろといつて上から押えつけるならば、この問題は疑惑のままに包まれてしまう。司法権、検察権が一部に濫用されるというような疑念に、ことさらに上に輪をかけて、民自党の諸君が多数をもつて押しつけるという結果になるならば、これは濫用を結果において認めるというような結果すら感ぜざるを得ないのであります。大体増田さんにしても、予算委員会においては、火のないところには煙がないという林君の質問に対して、煙もないが、火もないのだと増田官房長官は言つた。煙もないし火もなければ、なぜここで煙もない火もないということをはつきりしないか、この点を重ねてわれわれは要求いたしたいと思います。追放令違反の問題に対しましても、これは明らかに法務委員会の問題である。こういうような多くの問題を持つておるだけに、ここで法務委員会諸君が、国会の権威にかけても嚴重に審査され、国政調査をやられんことを特に要望いたします。
  27. 花村四郎

    花村委員長 ほかに御意見ありませんか。——御意見がなければ、猪俣君の発議に対し採決いたします。猪俣君の発議に賛成の方の御起立を願います。
  28. 花村四郎

    花村委員長 起立少数。よつて猪俣君の発議は否決いたされました。
  29. 花村四郎

    花村委員長 暫時休憩いたします。     午後三時三十五分休憩      ————◇—————     午後四時十二分開議
  30. 花村四郎

    花村委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  先刻の宣告はやや明確を欠きましたやに感ぜられますので、もう一度申します。猪俣君の御発議に賛成の方の起立を求めます。
  31. 花村四郎

    花村委員長 なお念のため反対の方の起立を求めます。
  32. 花村四郎

    花村委員長 起立十二名、よつて猪俣君の発議は否決いたされました。  本日はこの程度において散会いたします。     午後四時十四分散会