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1950-02-14 第7回国会 衆議院 法務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年二月十四日(火曜日)     午後二時三分開議  出席委員    委員長 花村 四郎君    理事 角田 幸吉君 理事 北川 定務君    理事 石川金次郎君 理事 加藤  充君       佐瀬 昌三君    眞鍋  勝君       山口 好一君    猪俣 浩三君       田万 廣文君    田中 堯平君       三木 武夫君    世耕 弘一君  出席国務大臣         法 務 総 裁 殖田 俊吉君  出席政府委員         検     事         (法制意見第一         局長)     岡咲 恕一君         刑 政 長 官 佐藤 藤佐君         検     事         (検務局長)  高橋 一郎君  委員外出席者         專  門  員 村  教三君         專  門  員 小木 貞一君     ————————————— 二月十三日  鳥取地方法務局米子支局燒失に伴う戸籍再調製  費全額国庫負担請願米原昶紹介)(第六  九九号)解散団体名儀個人所有財産接収解除  に関する請願加藤充紹介)(第七二一号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  小委員及び小委員長の選任に関する件  法制に関する件  団体等規正令の適用に関する件     —————————————
  2. 花村四郎

    花村委員長 これより会議を開きます。  まず裏日本における福井、武生、米子各市及び福井今立署等の裁判所または検察庁怪火事件に関する報告書提出の件を議題といたします。この際加藤委員より発言を求められておりますから、これを許します。
  3. 加藤充

    加藤(充)委員 この前の委員会で私が少数意見について申し述べるという希望を持つておるということになつておりましたが、不幸にして調査に参加できません者として、少数意見ということもどうかと思われる節もありますので、そういうふうな形式を整えないかわりに、私ども意見を申し述べておきたいと思うのであります。  簡單に要点だけを申し上げてお許しを願いたいと思うのですが、まず第一点は、報告内容ないし結論に関する部分におきまして、日本共産党に関する文句が出て来ておるのでありまするが、これについては私どもはあからさまな誹謗であり、しがも非常にちよこまかした部分的な、外面的な、形式的な点を取上げて、しかもいやしくも天下公党に対する批判の材料としては非常に権威がないにもかかわらず、党の批判をしておる。それでこのことについては、私どもは党の批判をしているからいけないというようなせせこましい考え方は絶対に持ち合せておりませんけれども、この調査団は前後二回にわたつて国会から派遣されたのであります。御承知のように第一回のときには、民自の田嶋好文君、社会党の田万廣文君、それから民連大西正男君、第二回目は同じく田嶋好文君とそれに民自が新しく一名加わりまして武藤嘉一君、社会党猪俣浩三君、それから民連大西正男君、共産党は不幸にして一回もこれに参加できなかつたということなのであります。もちろん私どもは、派遣されました委員がいろいろ御苦心くださつたことについては、その労をねぎらいますのにやぶさかではございませんし、その点については厚く感謝の意を表明するものでありますけれども、二回も派遣された中に、しかも第二回目には民自党が二人もお加わりになつたにもかかわりませず、共産党が除外されておつたということ、しかし経過的、結果的にも共産党誹謗に対する問題が出て来たということについては、私はこの調査の派遣の仕方から見て、もう少し民主的の方法で調べ上げて、そうして権威ある、共産党のそこらのやつが文句言つて文句を言わせぬ体の手続が欲しかつた。またそうでなければ、いやしくも天下公党に対する批判的なものは、国会権威をもつてしてもなされてはならないものだと確信いたす次第であります。その点が一点。  第二点は、第一回の報告書にも、なるほどエトセトラ、市会議員ども関係したというようなことも書いてありますが、この点につきましては、相当な肩書きのものでありますにもかかわらず、これが中立のものであるか、いかなる政党的な背景を持つたものであるかということが、少しも明瞭にされておらないのであります。第二回目の調査報告によりますと、朝鮮人であつて、しかも御承知のように共産党党員であるという確認は、党本部が、政党本部がなすべきものであつて、それは規約綱領に徴して明らかなものであります。ただ共産党員だとか言つていたとか言わぬとか、一介の朝鮮人、一小市民の非常にあやふやなものであると思いますけれども共産党員であるとか、入党を申込んだとかいうような事柄からはつきりと指摘しておるのである。概略と称せられるプリントのその点の不確かさは、前回も申し上げたと思うのであります。この点は報告者からも明らかにミステークであることを是認されましたので、繰返し申し上げませんが、そういうようなことになつておりますのに、共産党に対してだけ今申し上げたような手続内容の結果、明らかにこれを因果づけているということは、これは一回と二回の報告書を比べまして非常に不公平である、公正を欠いている、私はこう思うのであります。この点が第二点であります。  それから第三点は結論部分ですが、結論には三つあげられていると覚えておりますけれども、その第一項には、某政党、某解散団体並びに暴力団が、本件に関係あるなしは別問題として、同様に捜査線上に浮び出ているという事実、この事実の認定については、私が最初に申し上げた通りなのでありますが、それはさておきまして、結論の第一は、故意か作為か、あるいは無意識か知りませんけれども、この結論自体の表現の仕方が非常にあいまいである。こういうふうな点がありますので、私が先ほど申し上げましたような理由も加えまして、この一点はひとつ結論の中から削除していただくのが、正当にして公平な、同時に妥当な結論でないかと私は思うのです。こまかい事柄についての私ども調査もありますけれども調査に参加しておりませんので、幾ら言つたところで、それはお前たちのかつて報告だと言われ、調査だと言われてもしかたがありませんから、私はそのことをここで一々あげつらいはいたしませんが、以上の三つの点について、私どもの方から意見が開陳された旨を、でき得べくんばというよりも、ぜひとも適当な形式をとつて、作成されます報告書の中に加えていただくようにしていただきたいと思うのであります。
  4. 花村四郎

    花村委員長 ただいまの加藤君の意見を参酌し、先日の田嶋君の報告に基いて、議長に報告書を提出することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 花村四郎

    花村委員長 御異議なければさようとりはからいます。     —————————————
  6. 花村四郎

    花村委員長 この際本委員会において法律案起草のため、小委員会を設けたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 花村四郎

    花村委員長 御異議なければさようとりはからいます。  小委員会鉄道犯罪に関する小委員会株主総会招集規定等に関する小委員会弁護士法による大学指定に関する小委員会司法書士に関する小委員会といたし、小委員の氏名は委員長において御指名いたしたいと存じますが御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 花村四郎

    花村委員長 御異議なければ小委員を御指名いたします。  鉄道犯罪に関する小委員といたしましては    佐瀬 昌三君  田嶋 好文君    花村 四郎君  大西 正男君    猪俣 浩三君  世耕 弘一君    加藤 充君   田万 廣文君  株式総会招集規定等に関する小委員といたしましては    佐瀬 昌三君  角田 幸吉君    高橋 英吉君  山口 好一君    眞鍋 勝君   松木 弘君    花村 四郎君  武藤 嘉一君    三木 武夫君  田中 堯平君    世耕 弘一君  石川 金次郎君  司法書士に関する小委員といたしましては    北川 定務君  小玉 治行君    田嶋 好文君  花村 四郎君    田万 廣文君  猪俣 浩三君  弁護士法による大学指定に関する小委員といたしましては    小玉 治行君  鍛冶 良作君    猪俣 浩三君  山口 好一君を、おのおの小委員に御指名いたします。  なお小委員長の互選は、その選挙の手続を省略いたし、委員長において御指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 花村四郎

    花村委員長 御異議なければ、鉄道犯罪に関する小委員長といたしまして佐瀬昌三君、株主総会招集規定等に関する小委員長といたしまして花村四郎君、司法書士に関する小委員長といたしまして北川定務君、弁護士法による大学指定に関する小委員長といたしまして、小玉治行君をそれぞれ御指名いたします。     —————————————
  10. 花村四郎

    花村委員長 次に猪俣委員より法務総裁に対する発言の通告がありますから、これを許します。猪俣浩三君。
  11. 猪俣浩三

    猪俣委員 憲法第九條に関しまして法務総裁にお尋ねしたいと思います。申し上げるまでもなくわが憲法の第九條は、世界類例のない條文でありまして、日本が徹底的なる平和主義憲法に採用し、われわれはこれを遵法徹底せしめまして、世界にさきがけて世界人類に平和をもたらすように努力する。これが敗戰日本に課せられましたる最も文化のにおいの高い、われわれの働きがいのある点であろうと存ずるのでありまして、その意味におきまして、いやしくも第九條の精神を阻害することのないように、われわれは努力しなければならぬと思うのであります。その観点から一、二御質疑申し上げたいと思うのであります。  第一点は自衞権の問題でありますが、この憲法を読みますと「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戰争と、武力による威嚇又は武力行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」ところが説をなすものがありまして、この條文形式的に理解いたしますと、武力による威嚇または武力行使は、国際紛争を解決する手段としては用いないというのであるから、国際紛争を解決する手段ならざる場合においては、この條文からするならば、武力行使もまたでき得るのだという説も成立たないことはないというのであります。そこで国際紛争を解決する手段にあらざる、たとえば自衞のために武力行使をしてもいいとの解釈政府はしているのであるかどうか。国際紛争解決手段じやない、自衞の手段として武力行使は許されるのであるかどうか。まずその点についてお答えいただきたいと思うのであります。
  12. 殖田俊吉

    殖田国務大臣 自衞権があるには相違ないのでありますが、憲法第九條の規定によりまして、わが国は武力行使を放棄しまして、一切の戰力を保持し得ないのであります。従つて衞権と申しても武力による自衞権行使はできないものと考えております。
  13. 猪俣浩三

    猪俣委員 吉田総理大臣もさような答弁をなさつているように見えるのでありますが、一体武力を用いない自衞ということはいかなることであるか。その内容がわれわれどうもはつきりしないのであります。人がなぐり込んで来た際に、これを防ぐ手段として、一体力を用いないでいかなる自衞の方法があるのであるか。たとえば竹やりやなた、かまを持つて立ち向うのは武力行使になるのであるか、ならないのであるか、武力を用いざる自衞ということはいかなる方法があるのであるか、「その点について承りたいと思います。
  14. 殖田俊吉

    殖田国務大臣 いわゆる武力を用いないのでありますから、自衞権行使は非常に狭いものとなりましようけれども、それはやむを得ないことでありまして、武力以外のあらゆる方法を用いて自衞いたすのでありますから、それはそのときになりまして、いろいろな知惠がわいて来ることと思います。ただいまから予定はできないことと考えます。
  15. 猪俣浩三

    猪俣委員 われわれ常識としてはちよつと判断ができないのであります。いやしくも自衞の権利、自衞権としてこれを保障する以上は、実力がなければならぬと思う。実力行使せざる自衞の権利ということを、ことさらぎようぎようしく言うということは、理解できないのであります。私は自衞権ありと保障する背後に、この憲法の九條にそぐわないところの思想がひそんでいるのではないか。自衞権行使するならば武力行使する、従つてそれは一種の戦争になるというようなことは想像にかたくない。一体日本憲法の九條が世界類例のない規定であるということは、自衞権発動ということを強調しない、自衞権発動による戰争をも否定しているということが、この日本憲法の最も特色とするところであるということは、いかなる識者も説明しております。なおまたこの憲法のできました議会におきまして、自衞権があるのであるか、ないのであるかという問題で、衆参両議院において質問戰が展開せられましたときに、吉田総理大臣は、実に明瞭にして決定的な答弁をなさつておる、これは読み上げると長いのでありますが、とにかく正当防衞とか、国家防衞権による戰争認むるということは、たまたま戰争を誘発する有害な考えであるのみならず、もし平和団体が、国際団体が樹立された場合におきましては、正当防衞権認むるということそれ自身が有害であると思うのであります。かように答弁されておつて、自衞権というものを徹底的に拒否されておるのであります。これは戰争に関することだということになるかもしれませんが、武力行使しないところの自衞なるものを、何がゆえにそういうものがあるのだということを天下に声明しなければならぬか、私どもははなはだ疑惑を持つものであります。  そこで次にお尋ねいたしますことは、ある一箇国とここに特別なる條約を結びまして、その一箇国に基地を提供する、そのかわり外国から攻められた場合には、その国から守つてもらうというこのことが、いわゆる総理大臣答弁なさる自衞権内容をなすのではないかと思うのでありますが、かようなことが自衞権の範囲の中に入るのであるかどうか、それについて御答弁願いたい。
  16. 殖田俊吉

    殖田国務大臣 これこそたびたび問題になりましたことでありまして、総理からもお答えをたびたびいたしておるのでありますが、それは一つの仮説でありまして、そのような話が現実の問題としては一切起つておらぬのであります。起つておりません問題をとらえまして、仮説をとらえて論議いたすことはいかがかと思うのであります。もしそういうことが起れば、そのときにまた十分論議をすべきことでありまして、ただいま何らの現実の問題がない場合に、仮説を設けて論議することは差控えたいと思うのであります。
  17. 猪俣浩三

    猪俣委員 仮説というようなことでいつも答弁なさつておるのでありますが、これは現実の問題であります。御承知通り、アメリカの軍部の最高首脳日本を視察し、帰つていろいろのことも発表せられておる。巷間横須賀が最も適当なるところの軍事基地であるというような発表も、われわれ承知しておるのであります。さような現実の問題に相なつておるのに、それは仮説言つて、その現われたときにまた考えるということでは、はなはだ心もとないのであります。今からさような問題が起きましたときに、どういうふうに政府は処置せられるのか、その点を承つておきたいと思う、あらかじめ事が起つてからでなしに——現在私ども見解からすれば、事が起つておると思いますけれども法務総裁の御見解のように、これはいつのことやらわからぬ、そのときはそのときで考える。そういうことではいけない。われわれ国民心構えといたしましても、また先ほど申しました九條の精神を貫く点から考えましても、この点につきましては、はつきりした政府所信がなければならぬと思うのでありますが、もしさような日本領土内に基地なるものができる、これは常識可能性があることではないかと考えられる。その際にわれわれは憲法精神上どういう心構えを持つべきものであるか、それに対して政府所信がなければならぬと思うのであります。そのときになつて考えるというようなどろなわ式の御答弁では、滿足いたしかねるのでありますが、どうでありましようか。
  18. 殖田俊吉

    殖田国務大臣 つまり猪俣さんの仰せになりましたように、巷間伝うるところでありまして、やはりこれはまだどこの政府からも、日本基地を設けたいから、どこそこに基地を設定したいから、お前はこれに応じろとか何とかいうお話を受けておるのではないのであります。そういう重大な問題が、現実に話も何もない先にそれをあそこの国からこう言つて来るかもしれぬ、この国からああ言つて来るかもしれぬということを予想いたしまして、ここで日本政府考えなるものを披瀝しますことは、私はよろしくないと思います。従つてそれは差控えたいと思うのであります。
  19. 猪俣浩三

    猪俣委員 しからば憲法解釈として承りたいと思うのであります。憲法九條の二項には「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戰力は、これを保持しない。」こういう條項であるのであります。この意味日本領土内において戰力を保持しない、これが日本戰力のみならず、いかなる国の戰力をも日本領土内に置かないということが、決定的な平和を守らんとするこの九條の精神だと解釈するのでありますが、この日本領土内の一部に半永久的な軍事施設をつくるということがかりにあつたといたしますならば、この九條の二項の規定と違反するのではないかと本員は考えますが、法務総裁憲法上の解釈をお聞かせ願いたいと思うのであります。
  20. 殖田俊吉

    殖田国務大臣 憲法上の解釈は、読んで字義の示す通りでありますけれども、それを具体的に応用した場合の今のお話は、私はその場合になつてみないとはつきりした御返事が申し上げられないのであります。
  21. 世耕弘一

    ○世耕委員 今の問題でちよつと私は政府側に聞きたいのです。自衞権という権利なるものが公法上の立場から言われるのか、あるいは私法上の立場から言われるのか、その点の見解はつきりして来ると、今の猪俣君の問題もはつきりして来るのではないかと思います。
  22. 殖田俊吉

    殖田国務大臣 むろん国家権利義務の問題でありますから、公法上の問題であろうと思います。
  23. 猪俣浩三

    猪俣委員 私の九條二項についてのお尋ねは、陸海空軍その他の戰力を保持しないということは、日本領土内において自国が保持しないことはもちろんであるが、他国の戰力も保持しないという意味でないかと質問をしたのでありますが、それに対する御答弁じやないと思うのであります。憲法の九條二項の解釈です。戰力を保持しないということは、この憲法精神から行きまして、日本の国の戰力のみならず、他の軍事施設をも日本領土内には認めないということが憲法精神ではないかということの質問であります。
  24. 殖田俊吉

    殖田国務大臣 日本武力を持たないということははつきりしております。ただ外国武力を持つて来たときに、それをどう考えるかということは、持つて来ない以上はちよつと今から申し上げるわけに行かないのであります。
  25. 猪俣浩三

    猪俣委員 法律論です。憲法解釈です。どう解釈なさるかということです。憲法解釈はあらゆることを想定して幾多の解釈ができる。この憲法解釈日本戰力のみ言うのであるか、外国軍事施設をも含むのであるかという憲法解釈を、あなたに聞いておる。仮定のことじやない、法律解釈としてどう解釈なさるかということを聞いておる。その法律解釈を一定しておいて、そうして事件ができたときには、その法律を適用しなければならぬことは申すまでもない。その法律解釈というのは、あらゆる場合を想定して生れるのであつて、そういう具体的な事実を想定し、それに対し九條の二項がどういうふうになるか。つまり日本軍力のみならず、外国軍力日本領土内においては設定しないというのが、九條二項の精神ではないかということを、あなたにお尋ねしておるのであります。
  26. 殖田俊吉

    殖田国務大臣 日本に関する限り明瞭でありますけれども、そういう事態が出て来ない先に、それを想定することは、私はよろしくないと思います。現にわれわれは外国戰力のもとにおるのではありませんか。
  27. 猪俣浩三

    猪俣委員 私は法律解釈をあなたに求めておる。事実の有無にかかわらず、あらゆる事実を想定して、この憲法はどういうふうに解釈なさるべきかを求めておるのでありますが、御答弁がない。これ以上追求してもしようがないと思いますが、なおきようの新聞かきのうの新聞か見ますと、吉田総理大臣は、占領されておる国家であるから、外国軍事基地をつくつても、連合国側軍事基地をつくつても、やむを得ないというような答弁独立国家なつたときには、それはまた考えがあるが、現在ではやむを得ないというような答弁がある。それとあなたの今の答弁とが連関しておると思うのでありますが、これは全面講和あるいは單独講和との問題とも関連するが、一体われわれがポツダム宣言を受諾し、そうしてこの憲法をつくつた。このポツダム宣言精神がずつと連続せられまして、今日及び将来の講和に連続される大方針だと思うのであります。連合国といえども、この精神に反したことを日本に強要できないはずであります。またわれわれといえども、このポツダム宣言こそ無條件に受け入れたのでありますが、この精神に反することを連合国の中から日本に強要した場合には、これを拒否する権利があると私は思う。なぜならば昔の戰争のように実力によつて占領せられておるのじやないのであります。今日文明国家状態といたしまして、いわゆるポツダム宣言という宣言が発せられ、それをわれわれが受入れ、今日は法律関係、ノルマとしてこの宣言が存在しておる。法律関係として支配せられており、暴力によつて支配せられておる関係じやないと思う。連合国日本との関係法律関係である。ポツダム宣言規範となつて存在しておる。しからばこの規範に違反するような要求をある国が提示する場合に、日本はそれに対して拒否する権利があると私は考えるのでありますが、法務総裁のお考えはいかがですか。
  28. 殖田俊吉

    殖田国務大臣 ポツダム協定によりまして、われわれは現在のような状態にあるのであります。その連合国が、日本にその協定精神に反するようなことを要求するであろう、そう想像いたしまして、それに対して考えを立てるということは、私は差控えねばならぬことと思います。
  29. 猪俣浩三

    猪俣委員 内閣総理大臣国会におきまして、占領国家であるから、向う軍事基地を設けるとすればやむを得ないであろう、拒むことができないだろうという答弁をしておりますので、そこで私はこの質問なつたのであります。法務総裁もさような御見解であるか、私ども実力関係と見ない。すでに法的関係として支配せられておる。しからばその規範というものはあるはずであるから、連合国といえども、この規範に違反したことはすべからざるものであり、われわれはそれを拒む権能があるのだというふうに私は解釈する。しかし総理大臣は、被占領国家であるから、向う基地を設けることはしようがないというお考えであるが、これは私は昔の征服者征服者、暴力的、実力的支配の行われた時代には通るかもしれぬが、今日法規範の前に支配せられておる時代におきましては、被占領国家であるから、このポツダム宣言精神に違反したある一箇国のために軍事基地を設けるというようなことを、そのままわれわれがうのみにしなければならぬのであるか、彼らが実力をもつてやることはやむを得ません。やむを得ませんが、法の解釈からわれわれはこれに対して拒否権があるんじやないか。こう質問を申し上げておるのであります。仮定のことでないのであります。法の解釈に関することであります。その点についての答弁をお願いしたい。総理大臣が昔の実力支配関係のような御答弁をなさつておる。占領されておるんだから仕方がないじやないか、こう御答弁なさつておるが、近代の法的支配という感じからしますと、これは間違いじやないか。われわれは言うべきことは主張でき得るのじやないか。こういう見解であります。それに対しての法務総裁の御見解を承りたいのであります。
  30. 殖田俊吉

    殖田国務大臣 それを申し上げておるのであります。連合国ポツダム宣言精神に反するような強制をするわけはないと思うのであります。従つてまたただいまのような想定をされまして、それをその精神に反すると断定することは、われわれは差控えたいと思います。
  31. 加藤充

    加藤(充)委員 今の問題に関連して簡單に質問したいと思います。殖田さんは仮設だ仮設だと言つて、吉田さんのまねをして半ば得意になつておりますが、吉田さんは軍事基地の問題については、みずから最近までは仮設だと言つてつたが、最近の新聞では仮設じやない。また仮設だとするならば、仮設に立つて意見を述べることは差控えたいというヴェールをかなぐり捨てて、軍事基地の提供も占領下ではいたし方なしということを答弁し、天下に声明しておるのであります。それからまた吉田さんは単独講和全面講和と騒ぐけれども——最近は少しかわつて来ておりますが、全面講和はもちろん望ましいことだ、こういつておるのであります。最近はまたいわゆる講和の問題がいろいろ、宣伝されて、巷間の問題になつてつて、それは非常に差迫つておる問題のように言われておるのであります。軍事基地の提供ということは、おそらく常識的に考えて、半永久的なものであるということは間違いがないと思うのであります。そうしますると吉田さんの考え方は、巧みに仮定のことについては答弁しないと言つてみたり、みずからまたヴェールをかなぐり捨てて、仮定のことについてもあえて発言している。しかもいやしくも半永久的な問題について、講和が差迫つたふうに言われておるときに、そういうことを言つておるということになりますと、吉田さん自体が特定国に対する軍事基地の提供——特定国から離された全連合国国家の人々は、そういうふうなことを好ましいとは思わないのは当然でありましようが、結局こうなつて参りますと、今までの吉田さんの何だかんだといつたことが、一切合財全部でたらめだということになるのでありまして、その本心——全面講和をみずから妨害し、みずから破壊する最も重大な一点であるところの半永久的な軍事基地の提供、あるいは特定国の永久占領をみずから天下に声明したというふうにわれらは見ざるを得ないのであります。そこで今までの仮説のもとには答えられぬという吉田さんの考えを、殖田さんは後生大事に言つておりますが、私たちはそういうふうな仮説という衣の下に、全面講和を妨げ、特定国との單独講和という本心、本体、魂胆、よろいそでをのぞかせるどころではなしに、最近では大びらに振りまわすところまで行つておるのだと断ぜざるを得ないのであります。こういう点から見て、殖田さんがさつき仮説には答えられぬと言つたけれども、親方はもう仮説に対して発言をしておるのですから、いま少し進んで御答弁を願いたいと思うのです。私どもはそう思うので、殖田さんにあらためて御見解を問いたいと思います。
  32. 殖田俊吉

    殖田国務大臣 私は総理新聞で何を申しておるか存じません。しかし議会の公の席において、まださようなことを申したとは聞いておりません。私は事外交、政治に関することは、自分で申し上げるだけの資格を持ちません。ただ法律の運用につきまして、仮説の問題について答弁申し上げることはいかがかと思いまして、さよう申し上げた次第であります。
  33. 猪俣浩三

    猪俣委員 参議院で明瞭に御答弁なつたということが新聞に出ているのです。新聞記事がでたらめだといえばそれまでですが、私は参議院の外交委員会に出席しておりませんからわかりませんが、参議院の外交委員会におきまして、各委員質問に対しまして、日本は今占領国家であるからして、ある国が軍事施設を設けるといえば、われわれはそれを拒むことはできないと答弁したということが、一齊に各新聞に出ておるのです。そこでこれが拒否できないということは、いかなる点からいうのであるかということを質問申し上げたのであります。なお今加藤君からも質問が出たのでありますが、あるいはこれも仮説になりまして、御答弁がないかもしれませんけれども、われわれの意見を内閣の法律顧問としての殖田さんに申し上げておくことは、あるいは参考になるがしらんとも考えられますので申し上げたいのでありますが、一体全面講和——單独講和もあるやも知らないような客観情勢だというふうに吉田総理大臣は答えておられる。しかしわれわれはすべてさつき申しましたように、ポツダム宣言の線に沿つて——これは講和條約までの一つのノルマとして存在しておるという前提をとりますならば、このポツダム宣言なるものは、これは一箇国でつくつたものではない。少くとも四大国においての合同の行為であります。またわれわれのミズリー艦上における降伏文書にも、四大国に対しましてこのポツダム宣言を受諾する旨を表明しておる。ここに連合国側の拘束力、及び日本連合国との間の法的機関というものが存在しておる。さればある連合国の一箇国と特別なる軍事協定を結び、日本領土内に半永久的な軍事施設を施すということは、これはポツダム宣言から逸脱したものであつて、四箇国が共同し、あるいは連合国全部が共同して提案された場合には、また考え方もあろうかと思いまするけれども、一、二の国から提案されたことに対して、ただちにわれわれがそれを実行しなければならない義務はなし、またさような提案を連合国のある国がする権能があるかどうか。さようなことをするとするならば、結局日本戰争に巻き込むことに相なるのでありまして、ポツダム宣言の大原則及び降伏文書の大原則及び極東委員会におきますところの声明、これにみな違反するのではないかと考えられるのであります。私は法律的の解釈といたしまして、どうしてもこの際には一箇国に軍事基地を提供するような約束は日本はできないし、またそれは拒否すべきものであるのではないかという見解を持つておるものなんであります。そういう方向に政府がやはり進んで行きませんと、憲法九條の世界に輝かしいこの條項がはなはだくずれて来る。われわれは死力を盡してこれを守らなければならないという見地から、この質問戰を展開しておるのであります。一体法務総裁は、法律解釈といたしまして、ある一箇国との間に軍事基地を設定するような約束をすることが、ポツダム宣言のノルマに違反するとお考えになるかならないか。仮定かもしれませんが、くどくど申し上げるように法律解釈憲法解釈としてこれを承りたい。
  34. 殖田俊吉

    殖田国務大臣 連合国のある一箇国を單独講和を結ぶか結ばないかというような問題は、現在にはございません。また連合国が、今お説のごとく日本ポツダム宣言を受諾せしめまして、そのポツダム宣言に反するようなことを日本に持ちかけて来る心配はなかろうと私は考えております。従つてそれに反するようなことがあつた場合のことを今論議する必要はない。
  35. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると法務総裁見解は、ある連合国の一箇国が軍事施設を設定するようなことを、日本に持ちかけて来るようなことはまずなかろう、なかろうことを前提としてのことを進められないという御答弁と承つてよろしゆうございますか。
  36. 殖田俊吉

    殖田国務大臣 私はポツダム宣言精神に反するような事柄を強制はしないであろうと申し上げたのでありまして、それがいかなる形をもつて現われるものでありますか、それは存じません。従つてお話のごとく、基地の設定ということがその精神に反する事項であるやらないやら、それは今ここでそれこそ仮説の問題になりますので、私は申し上げられないものと考えております。
  37. 猪俣浩三

    猪俣委員 どうも幾ら聞いてもはつきりしないのであります。ある一箇国に対して軍事基地を設定することは、ポツダム宣言のノルマに違反するのではないかということを先ほどから私はあなたに質問しておる、さようなことがなければ幸いであるが、あらゆる場合を想定して憲法解釈を確立して行かなければならぬという意味において、御質問をいたしておるのでありますが、どうも仮説論で押しまくられて御答弁はなさらぬ。一箇国に軍事基地を提供することがポツダム宣言の違反、あるいは憲法の九條の違反であるかどうか、そういうことがあるかないかは私は別問題といたしまして、政府解釈をお聞きしておるのでありますが、御答弁はございません。そこでなおしからば展開いたしますが、横須賀が近く軍事基地になることに対して、反対運動を展開しようという動きがあるそうでありますが、かような軍事基地設定に対する反対運動ということに対して、政府は何かお取締りになるお考えがあるかないかを承りたいと思います。
  38. 殖田俊吉

    殖田国務大臣 そういう話のあることも存じません。しかしながらただいままだ占領下にありますので、占領政策に違反する行為がありますれば、それは取締らなければなりません。
  39. 猪俣浩三

    猪俣委員 しからば横須賀を軍事基地にするであろうことに対して、さようなことには反対だということが占領政策に違反でありますか違反でありませんか。
  40. 殖田俊吉

    殖田国務大臣 横須賀を基地にするという占領軍のまだ意思表示が何もないのであります。それこそ仮説でありまして、かようなものをとらえて論議するわけには参りません。
  41. 猪俣浩三

    猪俣委員 地元民が、あるいは不明のいたすところか存じませんが、かような言葉におびえて、軍事基地の提供には反対だという運動をしたならば、占領政策に違反するのかしないのかという法律解釈をお聞きしているのでありますが、これも御答弁がないことになりましようか。
  42. 殖田俊吉

    殖田国務大臣 その運動が占領軍に反抗し、または抵抗するような性質を蔕びて参りますならば、考えなければなりません。
  43. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると軍事基地に反対というだけで、別に連合軍に反対をするものでも、その政策に反対するものでもない場合には、別にこれに対して政府が干渉する御意思がないものと承つてよろしゆうございますか。
  44. 殖田俊吉

    殖田国務大臣 具体的にその運動をつぶさに分析いたしまして考えなければわかりませんけれども、ただお話のごとくであれば、取締る余地はないように思います。
  45. 猪俣浩三

    猪俣委員 次に九條二項のやはり問題でありますが、日本の国内において、飛行機あるいは毒ガスその他の兵器を製造することができないことは申すまでもないと思うのでありますが、外国会社が日本においてかような兵器製造をすることは、これは、憲法九條二項の解釈上許されることであるやいなや。
  46. 殖田俊吉

    殖田国務大臣 国内におきまして、ただいまお話のごとく兵器を製造することは許されておりません。従つてこれは何人であろうとも、その適用は公平に受けなければならないと思うのであります。
  47. 加藤充

    加藤(充)委員 その自衞権の問題に関連して質問しますが、殖田さんは、自衞権というのは軍隊による武力行使を中心にしておられるようなんですが、その問題から、それでは警察や町の博徒がピストルを持つたりするというようなこと自体は、これは暴力ないし武力というようなものとどういう関連を持つておるとお考えになりますか。
  48. 殖田俊吉

    殖田国務大臣 ピストルを持つて戰えば、これはやはり武力行使になるだろうと考えます。
  49. 加藤充

    加藤(充)委員 それではいろいろ問題が出て来るのです。あなたはまだ御存じないかもしれないですが、町では警察あたりがピストルをたくさん持たされたことについて、いろいろな誤発事件とか、思い上つたやつが意識的にやつたりいたしておる点もあると思いますが、迷惑がたくさん起きておるのであります。それからまた、この前の委員会で私どもが申し上げたいと思つた、ピストルを博徒の一味が持つておるというような事柄もあるのでありますが、そういう御趣旨のもとに、徹底的に、こういう問題の扱い方については、殖田さんは責任を果してもらいたいと思うのであります。そのことに関連しまして、この前に花村さんが法務委員会委員長として談話を発表されたのですが、これは個人の発言だということになりましたから、花村さんに対する文句は言えませんが、その中に、暴力団あるいは密輸入、密入国を徹底的に取締るというようなことを言われておるのであります。これについては法務総裁文句はないだろうと思うのですが、そこで私は言葉だけではなしに、最近日本の在郷軍人の軍隊化というような問題について、いろいろ問題になつておることがあると思うのです。これは白晝堂々と、トラツクで時価五億円の物資を横浜の埠頭に運びつけて検挙された、いわゆる海烈号の問題、しかもこの事件の中心人物は、あの五・一五事件の三上卓であつた。伝えられるところによりますと、自分の念願を果すつもりで、かねての所信を実現するために、資金調達が目的でこの密輸をやつているということが陳述されたと言われております。去年の十月の十三日の香港の華商報に、いわゆる日本の募兵、密輸工作機関のいろいろな暴露記事が載つておりますが、町では、やはり去年の六月二日に首相官邸でその第一回の発会式をあげた、準備会を持つたという、いわゆる密輸に関係がある新亜通商株式会社というものがこの背後におどつており、それには相当な政府の與党の幹部も参加しておるというようなことが伝えられております。こういうふうな問題は、密輸とそれから密入出国、これが日本の古い軍関係、あるいは凶器を持つた連中と一連のつながりがあるということは、明らかな通りであります。しかもさらに、これも先般来殖田さんも当委員会答弁されたと思うのでありますが、日本人の台湾募軍の問題であります。これについては、やはり旧軍人団体の集まりの中に日本の相当な軍部が動いておるということが明らかになり、しかもそのことについては適切妥当な取締りをやる、対策を講ずると殖田さんは言われておると思うのであります。これは二月十三日の朝日新聞の記事ですが、台湾から帰国した吉川元中佐と語るという見出しで、日本人義勇軍説の真相というようなことが言われておるのであります。しかもそのことについては、吉川さんが結局去年の六月下旬に宮崎県の某小港から十数トンの漁船に便乘しておるということと、それから義勇軍の募集ということと、密輸ということとは非常な関連がある問題だということを言つておるのですが、私は裏日本朝鮮人の密入国が非常な重大問題であつて、法務委員会としてもこれを取上げるということについては、別に反対をするものではございませんが、今申し上げましたような、表玄関から白晝公然と、堂々と、しかも首相官邸を舞台にし、有名な軍部あるいは政党あるいは政党の実質的な支配者がそれに介在しておるとうわさされておるというのです。しかもそれが新聞紙に、台湾から帰つて来た者が新聞記者につかまつてこういうことを明言しておるというような状態がありますときに、殖田さんの責任を問いたいと思うのです。まず第一点は吉川元中佐が帰つて来て新聞記者につかまつておるという場合に、殖田さんは処罰すると言つておるが、これをつかまえて処罰をするのか、これをつかまえた事実があるのか、それを聞きたい。
  50. 殖田俊吉

    殖田国務大臣 吉川と言うのだそうでありますが、元中佐であります。その措置につきましては、私はこの前はただちに嚴重なる措置をしたいと思つたのであります。そう申し上げたのでありまするが、よくよく具体的の事実につきまして調査いたしますと、複雑なる渉外関係がありますので、ただちにその措置に出がたいのでありまして、目下折衝中でございまして、そのことを申し上げておきます。  それからもう一つ前の新亜通商ですか、あれを調べたことがありまするが、あれは決して政府の何人も、與党の何人も、関係しておつたわけではないのでありまして、たまたまあの新亜通商の仕事をやつてつた人が政府の某氏と友人でありまして、その人が巧みに利用されまして、ここへ来たついでにちよつとあなたの部屋を貸してもらいたいと言つたので、そこで何か書きものをするのかと思つたところが、そうでなしに、人を集めて評議したということがあつたそうでありまして、はなはだその人に官邸の一室を貸しましたということにつきまして、その方も非常に恐縮しておりまして、私まで十分わびを言つて来たのであります。その仕事自体には何らの関係がなかつたことが明瞭になりました。
  51. 猪俣浩三

    猪俣委員 今加藤君の話が出ましたから、ついでに一ぺんお確めしたいのですが、今御承知のように世界が二大陣営にわかれておつて、暗雲低迷しておる時代であります。そこでいずれかの国の求めに応じて、日本国民が義勇兵として応募するということが憲法九條の精神から妥当であるかないか、妥当でないとするならば、義勇兵として応募せんとするもの、あるいはかような募兵計画を立てて募集運動をやるようなものに対して、何か取締る意思があるかないか、この点をひとつ伺いたい。
  52. 殖田俊吉

    殖田国務大臣 外国のために、日本の国内で、募兵活動をなすということをよく聞くのでありまして、これは多くの場合取締りを受けるのであります。たとえば海外渡航をいたしますにつきまして、ただいまでは連合国最高司令官の許可を受けなければなりません。また占領軍の占領目的に有害な、つまり今のように無許可で海外に旅行をしますときには、占領目的に有害な行為といたしまして罰せられるわけであります。それから外国のために日本国内におきまして募兵活動をなすものに対しまして、ただ黙つて募兵活動をして、外国へ行きませんかと言うだけのことであれば、これはちよつと取締れぬと思いますけれども、しかし連れ出すには今のような難関が一つある。但し外国人が国内で募兵をいたしまして、そうして向うで役に立つ兵隊をつくるために軍事的な訓練なり、あるいは純軍事的訓練をする。あるいは軍国主義、もしくは軍人的精神を存続するように活動する。こういうことになりますと、団体等規正令に違反するというようなことで、実際におきましてはいろいろの点で突き当るのであります。そこで多くの場合注意をして、これを捜査しますれば取締られると思うのであります。外国の傭兵となるにとどまらず、自分から主体になつて外国に対して私に戰争をする場合には、これは刑法にも罰する規定があります。ただ外国同士で戰争するに際しまして、国民中の各個人がその外国に雇われまして、たとえば兵士となつて戰闘に従事する。または募兵に応ずるということだけでは刑法の規定罰則は適用できないように思うのであります。
  53. 猪俣浩三

    猪俣委員 それ以上のことは国会の責任でありまして、国会が立法すればよいのでありますから、やめますが、次に政府新聞の何か統制法を出し、新聞紙法のようなものを復活させるというような意思があるやに聞くのでありますが、さような意思があるのか、ないのか、あるとすれば憲法二十一條とどう調和するのか、それをお答え願います。
  54. 殖田俊吉

    殖田国務大臣 私が先般参議院におきまして、新聞紙法のようなものをつくりたいと申したことから始つた議論と思いますが、統制法をつくるとか、新聞紙を取締るとかいう意味合いのものではないのであります。ただいまのごとく、何らの新聞のよりどころとする法律がありませんために、新聞とは何ぞやという問題すらもまだ解決ができずにおるのであります。そういういろいろの不便がありますので、これはあるいは何かそういうもののよりどころとする法律があつてもよくはないかと考えて申し上げたのであります。
  55. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、まだその具体案をお持ちになつておるわけではないのですね。
  56. 殖田俊吉

    殖田国務大臣 さようでございます。ことにそれの取締りのためにする具体案は持つておるわけではありません。
  57. 猪俣浩三

    猪俣委員 それではこれに対しては私も意見がありますけれども、お急ぎのようでありますから、次の問題に移ります。  国会共闘委員会なるものがあつて、その委員会が声明を出したようでありますが、ゼネストの問題であります。公共企業体あるいは公務員は、これは別に規定がありますが、民間の普通の労働組合、これがゼネストをやることに対して、政府は何かこれに対して干渉する御意思があるのかないのか。ありとすれば、いかなる法的根拠をお持ちであるか承りたい。  なおついででありますから、一ぺんに御答弁願います。昭和二十一年一月三十一日の二・一ゼネストを中心に、これに関する連合軍最高司令官の声明なるものは、今日まで法源をなしておるものであるか、單なる声明であるか、この点についてもあわせて御答弁願いたい。
  58. 殖田俊吉

    殖田国務大臣 先般の二・一ゼネストに対する指令は、政令三百十一号によるいわゆる指令と解釈すべきものであると考えております。
  59. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、憲法二十八條の団体行動の自由に対しては、超憲的な最高司令官の指令であるから、これに対して取締りの政令が出せる、こういう根拠でありますか。
  60. 殖田俊吉

    殖田国務大臣 政令第三百十一号によりまして、これのいわゆる指令でありますから、従つて、この指令に反しますゼネストが行われました場合には、ただちに三百十一号の適用を受けまして処罰されるのであります。
  61. 猪俣浩三

    猪俣委員 昭和二十二年一月のゼネスト中止に関する連合軍最高司令官の声明なるものは、私どもが冷静に読んでみまして、これを指令としておとりになるということに対しましては、はなはだ不可解千万に考えるのでありますけれども政府解釈がそこにあるとすれば、それは政府の反動性をわれわれ非難するだけで、ここに議論にならぬと思うのであります。こういう声明を法源として、憲法二十八條の団体行動の自由を抑圧するというようなことは、私、民主的じやないと思うのであります。この司令官の声明をよく読んでみますと、具体的な二・一ゼネストに対するいわゆる労働組合の幹部に、ゼネストを中止せしめるという連合軍最高司令官の声明にすぎないのでありまして、これが法規的な法源をなすものではないと私どもは確信するのであります。これは意見の相違になりますが、そうすると、政府として民間労働組合でもゼネストをやるということになれば、ここに三百十一号を発令して処罰するという御意向であるか、それをはつきりもう一ぺん御答弁願いたいと思います。
  62. 殖田俊吉

    殖田国務大臣 その争議行為が、先般の指令にいうゼネストと認められるものでありますれば、さようになるのであります。しかしながら名前は何でありましようと、その実質によつて判断するよりほかはないのであります。
  63. 猪俣浩三

    猪俣委員 しからば、労働組合の罷業権とゼネストとの区別はどういうところで区別をつけるか、つまりいわゆる三百十一号指令に該当するゼネストと、そうではない憲法三十八條に基く団体行動、争議権というものとの区別は、どこにあるのであるか承りたいのであります。
  64. 殖田俊吉

    殖田国務大臣 その惨害が非常に大でありまして、いわゆる一般的に惨害と認められる場合であるか、あるいはまた罷業権の濫用であると認められるような場合は、ともにこのカテゴリーに入るのではないかと思います。
  65. 猪俣浩三

    猪俣委員 なおもう一点で私は今日は終りたいと思うのでありますが、法務府におきましては、共産党の六細胞について告発をなされた。同時に極右の敬愛同潤会に対しては解散を命ぜられたというのでありますが、一方は解散のみならず告発なさつておる。ところが極右の敬愛同潤会はただ解散だけで、取扱いがちよつと違うように思いますが、これはどういう根拠でありますか、承りたいのであります。
  66. 殖田俊吉

    殖田国務大臣 解散の方がさらに一層重い処置でございます。
  67. 加藤充

    加藤(充)委員 急ぐようですから簡單にいたします。特審局の最近の動き方については、いろいろ質問を申し上げ抗議を申し上げたいのですが、それはあとの機会に讓ります。今猪俣君から質問がありましたことに関連して一点、だけお聞きしたいと思うのですが、熊本県の水俣市役所の総務課の政党団体係では、今月の七日に共産党の水俣細胞に党の行動月報の提出方を申し出て来た。細胞ではただちにそれに対して質問したところが、わからぬところがあつたと見えて、係は県と連絡の上回答するということであつたそうですが、何かこういう問題について、特審局あるいはあなたのところで指令を出したかどうか、またこういうふうなところまでのやり方は、いわゆる団体等規正令の問題もありましようけれども、私どもは行き過ぎである。昔の秘密警察の復活であり、それはあなたが金科玉條と心得ておる、進駐軍関係の占領政策の根本にもとるものであると思うのですが、この点についてお尋ねしたいと思います。
  68. 殖田俊吉

    殖田国務大臣 団体等規正令は、御承知のようにかなり重い罰則のある法令でありまして、これが運用につきましては、正確を期したいのであります。従つていろいろ問題の所在につきまして、精密なる調査をいたし、また質問をいたすことがあろうと思います。決して昔の思想彈弾圧というようなためにやつておるものではございません。従つて、もしさように質問がありましたらば、十分にお答えを願いたいと思うのであります。そのため何も彈圧するのでも処罰するのでもないのであります。
  69. 加藤充

    加藤(充)委員 行動月報というようなものの提出は、これにこたえなかつたら処罰されるとか、あるいはこういうふうなものを求める権限があなたの方におありになる、こういうふうにお考えですか。
  70. 殖田俊吉

    殖田国務大臣 多分そういうものがあると思つて、出していただきたいと申し上げたのだろうと思います。法規に規定しております手続さえふんでいただけば、一々毎日々々監督をし、監督される必要はないと思います。
  71. 加藤充

    加藤(充)委員 あなたのところの見解はそうですが、それに関連して思い出しましたが、あなたはさつき吉川元中佐が帰つて来たら取締れると思つてつたので、議会でああいう発言をしたけれども、帰つて来たところが、渉外関係があつて取締れなくなつた。こう言われたのですが、あなたが取締れると思つてつたその根拠、なお帰つて来ていよいよとなつたら取締れなくなつた理由を、渉外関係ということではなしに、さしつかえない程度でいま少し明確にしていただきたい。というのは水俣細胞に対する党の行動月報の提出については、今御答弁をいただきましたが、そのときに今回総務部長を通じて、熊本軍政部より政党団体勅令第百一号届出のものの行動につき調査を命ぜられたから云々と言うのですが、こういうような問題になりますと、あなたの御見解はわかりましたが、内地の日本の機関に軍政部の方が直接命じて、こういうことをおやりになることもあるのですか。
  72. 殖田俊吉

    殖田国務大臣 かつてはさようなこともあつたように聞いておりますが、ただいまはそういうことは、もうないと思います。  それから先ほどの吉川のことでありますが、取締れなくなつたわけではないのでありまして、ただいま折衝中でありますから、さよう御承知おきを願います。
  73. 花村四郎

    花村委員長 本日は、この程度にいたしまして、次会は明後十六日午後一時より本日の質疑を続行いたしたいと思います。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時三十一分散会