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1950-01-24 第7回国会 衆議院 法務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年一月二十四日(火曜日)     午後一時五十一分開議  出席委員    委員長 花村 四郎君    理事 角田 幸吉君 理事 北川 定務君    理事 小玉 治行君 理事 田嶋 好文君    理事 石川金次郎君       佐瀬 昌三君    松木  弘君       眞鍋  勝君    吉田 省三君       猪俣 浩三君    田万 廣文君       田中 堯平君  出席政府委員         法務政務次官  牧野 寛索君         (法制意見第一         局長)         検     事 岡咲 恕一君  委員外出席者         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 昭和二十四年十二月二十一日  人権擁護に関する決議案志賀義雄君外三十五  名提出、決議第三号) 同月二十四日  奈良地方裁判所葛城支部甲号支部に昇格の請  願(前田正男君外四名紹介)(第一八号)  戸籍事務費全額国庫負担請願木村榮君紹  介)(第三五号) 昭和二十五年一月十八日  仙台地方裁判所登米支部及び登米簡易裁判所の  管轄区域変更等請願角田幸吉紹介)(第  一三六号)  福島市に仙台高等裁判所支部及び高等検察庁支  部設置請願大内一郎君外一名紹介)(第一  三七号)  広瀬町に簡易裁判所及び家庭裁判所設置請願  (大橋武夫紹介)(第一七七号) 同月二十一日  不良出版物等取締強化に関する請願松野頼  三君紹介)(第二二七号)  大年寺山東北少年院設置反対請願庄司一  郎君紹介)(第二四一号)  中津簡易裁判所岐阜地方裁判所支部及び家庭  裁判所支部併置請願武藤嘉一紹介)(第  三〇二号)  須坂町に刑務所設置反対請願(林百郎君外一  名紹介)(第三二一号) の審査を本委員会に付託された。 昭和二十四年十二月二十四日  戸籍事務費全額国庫負担陳情書外四件  (第五六  号)  戸籍事務経費一部国庫負担陳情書  (第七〇号)  農地改革に伴う登記事務費国庫負担増額陳情  書(第一二五号)  戸籍事務費全額国庫負担陳情書外三件  (第一二  六号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  小委員選任  商法改正に関する件     ―――――――――――――
  2. 花村四郎

    花村委員長 これより会議を開きます。  本日の日程は商法改正に関する件であります。まず政府より商法改正に関する経過並びに現段階における状況の概況並びに要綱説明をお願いいたします。岡咲政府委員
  3. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 委員長の御命令によりまして、商法改正経過と、それから現在の段階におきまして、政府がいかようにこの問題を取扱つておるかということにつきまして、簡単に御説明申し上げ、最後改正法律案の概要を御説明申し上げたいと存じます。  御承知のように、昨年の八月十三日に法務総裁法制審議会に対しまして、商法の一部を改正する法律案要綱なるものを諮問いたしまして、審議会意見を求めたのでございます。法制審議会におかれましては、ただちに問題が非常に重大であり、かつ根本的な法規改正でありまするがゆえに、特に部会を設けられまして、その部会において審議されるということなつたのでございます。部会が開かれましたのは正確に今日にちを覚えておりませんが、九月に入つてからでございまして、九月以降十一月の末に至るまで、部会は三回開会されまして、特にまた部会におきまして小委員会を設けられまして、その間小委員会におきまして、主として技術的な問題を検討されたのであります。小委員会において検討せられました結果、法務総裁諮問案に対しまして、相当修正を加え、その小委員会の方針を部会に付されまして、部会はその答申を採択されて、これを審議会にお答えになり、審議会は十二月二十三日であつたかと思いますが、最後会議におきまして、部会答申採用いたしまして、ただいまお手元に配付いたしておりますような商法の一部を改正する法律案要綱なるものを、要綱として適当であるとして答申せられたわけでございます。政府におきまして、この答申案を基礎といたしまして、さつそく必要なる部分起案をいたし、本月の上旬一応の起案を終えたのでありますが、関係方面との折衝もございまして、いろいろさらに検討を重ね、あるいは関係方面の示唆に基きまして、考えるべき点は考えまして、実は昨日関係方面との最後了解をつけるこができたわけでございます。よつて政府といたしましては、この法律案を来る二十七日の閣議に諮りまして、その御決定を得次第国会に提案いたすつもりでございます。審議会におきまして特に問題になりました点は、後刻法律案要綱を御説明いたします際に讓りたいと存じまするが、法務総裁諮問いたしました原案なるものは、どういう経緯によつてつくられたかということにつきまして、簡単な御説明を加え、その諮問案がどういう経緯によつてさらにこの修正を可決せられたかという点につきまして、御説明をいたしたいと思います。  昨年法務総裁諮問せられましたこの法律案要綱は、実は法務府になる前の法務庁時代に、調査意見長官商法改正の非公式の調査会を設置いたしまして、検討いたしまして得ました要綱を付議いたした次第でございます。その要綱につきましては、関係方面ともいろいろ折衝いたしまして、一応の了解をつけておつたのでございます。ところがその後事務当局におきましていろいろ検討いたしましたところ、この要綱はまだ不十分であるということを認めましたので、さらいろいろ追加要綱検討いたしまして、相当の事項にわたり、新しく要綱をつくつた次第でございます。その関係はお手元法律案参考資料としてお配りいたしております資料の中のその一というところに、私が簡単に要綱の概説を試みておりますが、その要綱番号のうち、この枝番号になつておりますものが、ただいま申しました事務当局におきましてさらに追加せられることが適当と考えたものでございまして、審議会においては基本の要綱、さらに事務当局で追加いたしました点を御検討になりまして、大体この要綱に掲げておりますものは審議会において御決議なつたものでございます。  特にこの要綱に掲げたものと審議会答申とにおきまして、重大の差異のありますものは、後ほど御説明いたすつもりでございますが、簡単に申し上げますと、一番に問題になりましたのは、すでに御承知かと思いますが、会社書類閲覧権でございます。この点は非常に論議を見ました点でございまして、これはお手元に配付いたしておりますような原案に比べますと、相当しぼりのかかつた要綱なつた次第でございます。  それからその次は取締役選任につきまして、累積投票という制度要綱採用いたしておりますが、これも審議会部会あるいは小委員会において、強く論議せられた点でございまして、法律上当然累積投票採用することは、現在の日本企業組織の状態から見ますと、やや行き過ぎの感なしとしないということになりまして、これは定款をもつて累積投票によらないという定めができる。しかし発行株数の四分の一に当る株主から請求があつた場合には、定款規定にかかわらず、累積投票によらなければならないというふうなことに修正をいたされまして、これも重大なる修正であつたかと考えます。  それからその次に問題になりましたのは、新株引受権の問題でございます。これは要綱をごらんになりますとおわかりになることと思いまするが、後ほどさらに詳しく御説明いたしますけれども、旧株主は、原則として新しく会社発行するところの株式に対しまして、持株の数に応じて引受権を有するという原則をこの要綱では採用いたしたのでございまするが、これはやはり重要な問題でございまして、いろいろ論議の末、原則といたしましては旧株主新株引受権を持たない、但し会社定款によつて引受権を與える、あるいは株主総会特別決議によつてその引受権を與えることはさしつかえないというふうに、原則検討いたしまして、審議会では可決決定された次第でございます。この三点が最も重大な問題であつたかと考えております。  そのほかの点につきましては、法務総裁諮問いたしました要綱審議会で可決になりました要綱との間に、多少の修正のある点はございますけれども、これはむしろ技術的なこまかい小さい問題でありまして、根本的な問題につきましては、大体法務総裁諮問せられたもの、あるいは事務当局の考えておりましたものが、審議会において御決定になつたのでございます。  審議会につきましては、私から御説明いたすのもどうかと考えまするが、各方面の権威にお集まりを願いました会合でございまして、特に審議会が設けました商法部会は、この商法問題を検討いたしまするのに十分の資格のあられる学界、あるいは一般産業界、そのほか裁判所弁護士会、あるいは行政機関法務府、それぞれの長官局長というふうなものによつて構成いたされまして、各方面意見をも十分しんしやくせられ、審議会としては、部会とされては十分の御検討をされたものと私どもは考えまするし、また部会があれほど熱心にこの問題を検討いたしましたことについては、法務府の事務当局といたしまして、深甚の感謝をいたしておる次第でございます。関係方面との関係につきましても、いろいろ困難な問題がございまして、部会意見と必ずしも関係方面意見とが合致しないような点もございまして、相当どもといたしましては苦慮いたした点もございまするけれども、幸いその点も大部分意見の一致を見まして、この審議会答申案を得ましたことは、事務当局といたしまして深く感謝いたしておる次第でございます。  以上大体経緯を御説明いたしましたが、この法律案要綱の内容につきまして、重要な点について二、三御説明をいたしたいと存じます。  このたびの改正につきましては、商法と申します基本的な法規改正でありますがゆえに、各方面におかれまして非常な注目をせられまして、いろいろ研究なり御意見が発表せられておりますので、法務委員会におかれましても、すでに相当検討のことと拝察いたしているのでございます。  あまり、くどく御説明をする必要もないかと思いますが、まず第一番に、商法改正をする必要があるのかという問題が根本にあると考えます。商法改正しないでも、現行法のままでも十分りつぱな運用ができるのではないか、この商法改正には賛成できないというような御意見を持つておられる先輩老教授もおられるように承つておるのでございますが、私どもがこの商法改正の問題をとり上げました最初の動機は、第五国会におきまして、商法の一部を改正する法律案を提出いたしまして、株式会社の受ける株金金額拂込制度採用いたしたことに原因を発していると申してもよろしいかと考えます。当時、委員会におかれましても御意見がございましたように、株金分割拂いによるところの弊害は出ているけれども、その最も大きな長所である自己資金会社がそのときの必要に応じて、自由に調達し得るという利点、言いかえれば、未拂込みの株金額の拂込みを請求することによつて会社が容易に自己資金を調達し得るという、非常に大きな利便というものが失われた、これに対して政府は適当な措置を講ずべきであるという御意見にむしろ発足いたしているのでございまして、政府はこの際この御要望に対応いたしますために、アメリカにおいて広く採用されております授権資本制度採用し、同時にあわせて無額面株という制度採用してみてはどうか、かように考えた次第でございます。これによつて、先ほど申しましたように法制意見長官の下に調査会を設けまして、主としてこの二つの問題について検討を加えたわけでございます。ところが、その制度を研究いたしておりますうちに、授権制度と申しますのは、新株発行権限取締役会にまかせることでございまして、これは従来株主総会の持つておりましたところの導資を自治的に取締役会に移管したことと相なる次第でございます。言いかえれば、株主総会というものと取締役というもののあり方について、さらに検討しなければならない、授権資本制度採用するのであるならば、社債の発行ということを取締役会権限にそのままにしておくことは、はなはだ権衡を失するのではないかというような問題も起きて参りまして、どうしてもこの間に調節をしなければならない。一方取締役、言いかえれば会社理事者権限をその程度に強化いたしますると、取締役責任というものもまた同時に考えなければならぬ。取締役責任ということを考えますると、株主との関係におきまして、株主取締役責任を追究するという方法検討する必要があるのではないか。株主取締役責任を追究するということを考えますると、株主会社の実態について、少くとも正確なる知識を持つということが前提になるのでありまして、言いかえれば、会社業務に対して接近することができるという機会を與えなければならないのでありまして、先ほど問題になりました書類閲覧権というものが、この際非常に大きく取上げられなければならないのではないかということになる次第でございます。また一方取締役がそういう重大なる権限を持つておるといたしますと、取締役選任というものも従前通りであつてよろしいかどうか、通常決議によつて株主支配が簡單に行われるような株主総会において、そのままの形で取締役選任されることは、少くとも少数株主には十分な保護が與えられないことになるのではないかという問題。それから取締役自己の手腕を十分振うためには、取締役資格という問題につきまして検討を要する問題があるのではないか。それから、いやしくも取締役として株主の信任によつてその地位についた以上は、特別な重大な瑕疵のない限りは、あるいはあやまちのない限りは、取締役地位にあり得る。言いかえれば、ある程度の地位の保障というようなものも考えられなければならないのではないかという問題。それから今度は、株主利益保護という面から考えまして、現在のように会社株式国民一般の間に広く分散されている現状におきましては、株主の個人的な利益保護というようなことも、あとう限り保護する必要がある。ここで株式譲渡制というものについて、現在の法律譲渡制を制限することを認めておるのは、株主保護において欠くるところがあるのではないか。そうしてまた一方、たとえば営業譲渡あるいは会社の合併といつたような場合、菓子少数株主自己の意思に反して営業が讓渡され、あるいは合併されたという場合に、株主であることをやめたい、そういう場合に、一般株式移転方法だけでは不十分な場合があるのではないか。そこでこの案にございますように、会社に対して株式の買取り請求認めるというような必要があるのではないか。それから授権資本というものを採用いたしますると、会社資本構成というものが、従前のようなあり方でやつて行つてよいであろうかどうであろうか、そういつたような問題が同時に考えられなければならないのでありまして、ここまで考えて参りますると、どうしても現行会社法に対して、ある程度根本的な検討を加えなければならないという必要を強く感じた次第でございます。よつてこの商法改正というものを取上げて、審議会に御検討を願うということにいたした次第でございます。  この要綱に盛られておりまする根本的な問題は、ただいま申しました諸問題につきましての回答でございまして、授権資本採用と、それから無額面株制度採用、それから株主保護という問題、それから取締役会を強化して取締役責任を明確にする、取締役責任に対して株主からの賠償訴訟というものを認める。取締役会というものをつくられますと、従前認められておりました監査役という制度が、はたして存在価値があるかという問題も検討されなければなりませんので、従前のような監査役という制度を、言いかえると業務監査という制度を廃しまして、会社経理監査会計監査役という制度に切りかえることが適当ではないか。それから取締役責任を追究いたしますためには、会社業務に対して十分な知識を持つ、そのために、書類閲覧権というものを取上げなければならない。それに対する適当な措置を考えたのが、要綱で申しますると第三十の問題でございまして、この問題は特に重大でありまするがゆえに、多少立ち入つて説明を申し上げたいと存じます。  法務総裁諮問いたしました諮問の中では、要綱の第二十といたしまして諮問しておるのでございますが、これには、一定資格を有する株主会計帳簿及び書類閲覧権及び謄写権認め、その行使権利の濫用にて、会社業務運営を阻害し、または株主共同利益を害する等の事由がある場合のほか、会社はこれを拒むことができないこと。この一定資格というものが問題になるわけでございますが、この資格を非常に制限いたしますると、この要綱は大した意味を持たないのでありまするが、関係方面との折衝の結果合致した意見では、一株の株主であつても、六箇月前から引続いて株主であれば、この権利認める。そうして発行する株式の総数の十分の一に当る株式を有する株主であれば、きよう株主になつた者でも閲覧権を与えるというふうに、非常に広い範囲の株主にこの閲覧権認めたのでありまして、しかもこの対象になつております書類は、会計帳簿、そのほか会社業務に関する一切の書類を含むのでありまして、この閲覧権行使によつて会社の現在の業態、取締役業務執行の実情というものを、正確に把握することができることはもとよりでありますが、これが濫用されるおそれもまた十分にあるのでありまして、審議会におきましても、この点はひどく危惧の念をお持ちになつたようでありまして、また財界、産業界一般の御意向も、この要綱の二十は絶対に削らなければいけないという強い希望があつたのでございます。また一方関係方面におかれましては、この要綱は絶対に存置しなければいけないというふうな御意見でありまして、その間にあつてどもは大いに苦慮いたしたのですが、結局たびたび折衝をいたしました結果、それではその書類閲覧権謄写権認めるかわりに、会社業務財産状況相当詳細に記載した書類会社の本店あるいは支店に備えて置く、そうして株主は何どきでもこの書類を閲覧し、謄写し、または謄本、抄本の交付を求めることができる、こういう便法と申しますか、一種株主の方にも好都合であり、また会社の方からいつても好都合な書類の作成、備え置きということによつてこれを解決する。もつともそれでも不十分の場合であつて、ぜひ会社のほかの書類を閲覧したいという場合には、発行済株数の十分の一以上に当る株式を有する株主から請求した場合には、これを認めて行く。そうしてその請求会社業務運営を阻害するとか、あるいは株主共同利益を害する等の特定の事由がある場合のほかは、会社は必ずその閲覧調査を許さなければならないという一種折衷案採用いたしまして、この案について関係方面とも御了解を得ることができましたので、審議会はこれを答申案といたされた次第でございます。  その次に問題になりましたのは、取締役選任の問題でございまするが、これは現行法では通常総会において取締役選任され、しかも通常総会には一般定足数規定がありませんので、極端に申しますと、ごく少数株主が出席し、ごく少数議決権行使によつて取締役選任される、そうしてその選任された取締役は、何どきでも通常決議によつて解任される。この制度をこの要綱にございますように、取締役選任、引継ぎにおきましては、定款定足数定めましても、その定足数発行済株数の三分の一未満に下すことはできない、それから会議決議は必ず特別決議によらなければならない、しかし取締役に不正な行為または法令定款に違反するような重大な事実があつた場合には、株主から解任の訴えを起すことができるというふうにいたしまして、取締役職務執行を厳正ならしむるとともに、いやしくも法令定款に違反しないで、誠実に職務執行する取締役の在任を保障いたすということにいたしたのであります。この点は幸い審議会においても、もちろん反対意見がありませんで、お認め願つたのですが、問題は二十二にございまする累積投票でございます。  累積投票制度は、すでに十分御承知のことと存じまするが、要するにこれは一般議決権に、取締役となるべき取締役の数を乗じた数の投票権を持つわけでありまして、その投票権を一人の候補者である株主に集中して投票してもよろしいし、あるいは適当に分散して、数名の取締役候補者に投票してもよろしいという制度でありまして、これは計算上少数株主代表者取締役たらしめる道を開いたものでございます。原案では、この累積投票法律上当然のこととして強行されるということになつてつたのですが、これも先ほど申しましたように、審議会でいろいろ議論もございまするし、また一般会社におきましても、これは行き過ぎで困る、この制度が濫用されると、せつかくこれまでほとんど日本で輝かしい伝統として認められていた取締役協力体というものが破壊されて、異分子が入つて来て、業務執行の上に非常に支障が及んで来るから、この制度はぜひやめてもらいたい、私個人のところにも累積投票制度は絶対にやめてもらうようにということを、強く申された産業人もあられますので、はなはだ不評判な制度であつたのでございます。これもむしろ削除すべきではないかというふうな審議会意見でもあつたのですが、関係方面では、少数株主保護というものは、現在の株式がことに分散しておるという状況と、それから大株主による会社支配というものが、株式会社を健全にするゆえんでない、株式会社民主化ということを考えれば、どうしてもこの制度採用すべきであるというふうな強い意見もございました。これもいろいろ交渉いたしました結果、ここにございまするように一応原則として認める。しかし定款をもつて累積投票によらないように定めをするということが許される。しかしながら発行済株数の四分の一以上に当る株式株主から要求があつた場合には、定款規定にかかわらず、必ず累積投票によらなければならないという手段によりまして問題を解決いたした次第でございます。審議会もそういう妥協をお認めになりまして、この線で答申をせられたわけでございます。  それから株式の買取り請求という問題につきましても、相当反対意見があつたようでございますが、これは審議会においてはしかるべきものとお認めになりまして、原案通り可決されたわけでございます。  次に新株引受の問題が問題になつたのでございまするが、これは学問的に申しましても、ドイツ法時代におきましても、大いに論ぜられた規定でございますが、要するに株式会社の経営、それから利益の配当、あるいは残余財産の分配というものに対する割合的な権利を意味するものである。ところが新株発行いたしまして、旧株主引受権認めませんで、新株を自由に一般に公募するということにいたしますと、旧株主の割合的な権利というものが当然害される。旧株主の持つております割合的な権利を保持するためには、法律上当然旧株主新株引受権を与えるべきだというのが、旧法のとつた原則であつたわけでございます。ところがこれは実際の新株発行というものをなるべく会社に有利に解決いたしますためには、旧株主引受権が固定いたされますと、非常にやりにくいのでありまして、また最近のアメリカにおける立法の傾向から見ましても、新株引受権認めないというふうな立法がだんだんふえておるような関係もしんしやくして、原案原則を変更せられまして、旧株主原則とし新株引受権はない。但し定款をもつて、あるいは特別決議をもつて株主あるいは第三者に新株引受権を与えるということは、これはさしつかえないというふうな御決定をせられたわけでございます。これがこの要綱で申しますと、第三十七にあるのでございます。私どもはこの原則によりまして、一応法律案起案いたしたのでございますが、この点は関係方面におかれても、最後まで旧株主原則として新株引受権を有するのだという線を相当強く主張せられたのでありますが、事務当局といたしましては、審議会のこの結論は熱心なる御檢討の結果得たものであつて、報告といたしましては、簡單にこの原則を放棄いたすことはできないということを強く申し入れまして、いろいろ意見を出しました結果、実は昨日やつと司令部との間に妥協を得まして、それではこの審議会の方針のような原則採用してよろしい。しかし新株引受権に関しては、原始定款に必ず規定を設けなければならない。それから会社授権資本のわくを広げる場合に、必ず新株引受権の取扱い方について決議をしなければいけない。そういう妥協によりましてこの問題を解決いたした次第でございます。  おもに問題になりましたのは、ただいま申し上げました点でございまして、あとは技術的な小さい問題かと存じますので、あるいはお尋ねによりましてお答え申し上げたいと存じます。 まことに簡單でございますが、これをもつて大体の経緯と、この法律案要綱の重要な点に対しましての簡單な御説明を終りたいと存じます。
  4. 花村四郎

    花村委員長 ほかに御質疑はありませんか。
  5. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 一点お伺いしてみたいと思いますが、最近の経済思想として、資本と経営の分離ということが顧慮されておりますが、授権資本あるいは新株権の優先権の指定とかいつたようなものも、多少それに関連しておるように見えるのでありますが、しかし同時に、株主保護という規定相当強化されておるということも承つておるのであります。そういう観点から見て、商法がどういうふうに改正の上で顧慮されたかという問題と、資本の集中排除ということも、いろいろな意味からかなり重要性を持つた問題とされておるのでありますが、その観点から見まして、やはり商法改正というものがいかに顧慮されたかということを、ごく概略でけつこうでありますから、審議会の審議の経過について、どういう点が問題にされたかということとあわせて承つておきたい。
  6. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 佐瀬委員のお尋ねになりました第一点につきましてお答え申し上げます。佐瀬委員の御指摘なさいましたように、企業の所有と企業の経営と申しますか、管理というものが自然分離されて行く傾向があるということは、近代企業の非常に大きな特徴であろうかと考えます。この点を十分顧慮いたしまして改正案が練られたということは、この要綱をごらんになりますれば十分察知せられるであろうと存ずるのでありますが、取締役というものの地位をはなはだ強化した、しかも取締役たるには株主であるということを必要としないという原則は、企業の経営に従前の人をかえるというために、強く要請せられたのでありまして、しかもその取締役を解任いたしますには、特別決議によらなければ解任できないということは、取締役地位を非常に保障いたしておる、そうして取締役権限——この要綱で申しますと、それは取締役会として組織されることになると考えますが、この取締役会権限を非常に強くいたしまして、業務執行原則として取締役会決定による。従来のように、株主総会というものが株式会社における最高機関として、業務執行についても、取締役に対して指示できるというふうな改正は、今度の商法では認めませんで、株主総会は、法令または定款規定されておる事項についてのみ決議をなすベき権限があるので、原則といたしましては、たとえば定款変更、あるいは会社の合併、解放、あるいは特に重大な取引あるいは利益配当、会社の計算書類の承認といつたような、ごく特殊な事項についてのみ決定する権限がありまして、他の業務執行、常業の運営は、あげて取締役会に一任いたすという原則採用いたしたわけでございます。  これは企業の所有と経営を分離したものだと言うことができると思います。と同時に、実際はただ株価の上ること下ることのみに関心を持つておりまして、会社の経営の実態に関しては多く無関心な、いわゆる不在株主というものが大多数であろうと思いまするが、しかし株主が一たび会社の経営について実情を知りたいと思いますれば、先ほど申しました書類閲覧権、あるいはステートメントの閲覧ということによりまして、会社の内容を知り得る。そうして取締役にもし法令、定款違反の行為があるような場合には、この要綱にございまするように、インジヤンクシヨンと申しまするか、業務執行を停止することも求められるし、あるいはあえてそれを執行して会社に損害を加えたような場合には、株主個人として会社のためにその責任を追究するという訴えが起せる。言いかえれば、株主としては何どきでも会社のため、取締役に公正なる業務執行をなさしめるような監視の道を開いておる。ということは、株式会社の機構に一つの民主的な組織を与えたものである、かように考えるわけでございます。一方御指摘のように、企業の所有と経営とを分離すると同時に、なおその内部において、十分の結びつきをつくつたということが、この改正の一つの要点であろうかと考えるのであります。  それから第二点のお尋ねでございまするが、企業の集中排除ということは、これは株式会社という一つの企業組織体の問題としては、実は取上げなかつたのでございます。そうしてその問題は、むしろ公益的な別個の法律によつて解決して行く。株式に投資する一般大衆を保護いたしますために証券取引法がありますると同じように、企業集中排除に関しては、特別法によりまして措置して行くことがやはり適当と考えますので、その点につきましては、商法改正では全然触れなかつた次第でございます。
  7. 角田幸吉

    角田委員 会社には大会社と小会社とがあるのであります。大会社におきましては、実際上事業の経営参加というようなことよりも、株の上げ下げをもつて投機的に株主になるという、いわゆる不在株主というものが多いようであります。ところがただいまのところで言えば、数百万円程度の小会社、これはおそらく不在株主というものがきわめて少かろうと思いますので、そういう会社とこの大きな会社とには区別があるのであります。これらについてどういう構想でやられておるか。取締役権限の強化も必要であります。しかしそれはちよつと拝見すると、大体において大会社というようなものを目標にして構想になつたのではないかという感がいたすのでありますが、その点につきましては、どういうふうな見解のもとにその両会社に共通するもの、あるいは別に見るべきものについて考慮を払われておるかということをお尋ねしたい。
  8. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 角田委員の御指摘になりました点は、まつたくごもつともに存ずるのであります。会社には、ほとんど国家的な事業を企業として営んでおるような大会社もございますし、あるいは家族的な、あるいは同族的な小さい組織のもとで、一致協力して助け合つてつているような組織のあることも御指摘の通りでございまして、これを一様に規律して参りますことは、株式会社法としてまことに困難であろうと思いまするが、この改正は必ずしも大会社のみを目標といたしたのではございませんで、大、中、小会社に通ずる最大公約数をなるべく短くするようにして案をつくつた次第でございます。ただ私ども株式の讓渡制を無制限に保障したという点は、大会社においてはきわめて適当であると考えまするが、小会社においてはたして適当であつたかどうかという点につきましては、やや危惧の念を持つている次第であります。この点は、関係方面との折衝におきましても、大いに力説いたしたのでありますが、これはがんとしてお聞き入れがありませんで、こういうふうな案になりました。ただいま御指摘もございましたが、私どもといたしましては、有限会社法に適当な修正を加えまして、場合によりましては株式会社の組織形態をとりながら、実は同族的な、家族的な、あるいは同志的な企業形態を持たれることを強く希望せられる方は、株式会社から有限会社に簡單に組織変更が行われ、有限会社として存立して行く方法認めますことによつて、その問題を解決いたしてはいかようなものであろうかと考えております。重ねて申し上げまするが、この会社法は大、中、小の会社に普遍的に妥当するようなものにいたしたいと思つて起案いたしたのが、私どもの真意でございます。その点御了承を願います。
  9. 角田幸吉

    角田委員 もう一つ伺つておきたいのは、いわゆる不在株主の実態を御調査になつたかどうかという点であります。というのは、御承知のごとく、株券は発行するけれども、それは最初から株主の手に入らずに、証券会社に入つてからというのが今日大きな会社の実情であります。そういう点から非常に考慮されたような感がするのでありますが、そういうことになりますと、いわゆる新株発行する場合に、全株を旧株主に割当てるということはどうもおもしろくない。大体証券会社が抱いているのだから、証券会社がいらぬということで暴落させたり、そこにいろいろトラブルが起つて参りますので、いろいろな点が考慮されなければならぬと思います。ところが百万、二百万程度の会社であると、そうでなしに、実際株主新株引受権認めませんと、とかく取締役の横暴、まつたく株主を無視した行動による弊害が今後続出するであろうということが予想されますので、大会社の不在株主がどの程度存在するかという実態を調査されて参考に供しているか、この機会に承つておきたいと思います。
  10. 岡咲恕一

    岡咲政府委員 私どもといたしましては、実はあらゆる株式会社の実態をなるべく広く調査いたしたい希望を強く持つておるのでございますが、時間もございませんし、また手足も十分ございませんので、自分自身で——同僚の力を借りて調査をいたすことができなかつた次第でございます。ただこの証券取引委員というものができまして、証券の取引については相当広くいろいろ研究調査していられますので、商法改正委員にその方面代表者にも御参加を願いまして、証券の実際の動きというものにつきましてはいろいろお話も承り、御意見も承りまして、この法案をつくつた次第でございます。しかし今後も機会があれば、何とかいろいろ方法を講じまして、この企業の実態といふものをきわめて参りたい。少くともこの法律の施行までにはその点も研究いたしまして、施行法におきましては相当の手当をいたしたい、かように考えておる次第でございます。  法律案は先ほど申しましたように、今週の金曜日の閣議に提案いたしまして、御決定を得次第国会に提出いたしたいと考えておりますが、法律案の附則におきまして施行のことを規定いたしたのでございますが、閣議の御決定前に申し上げるのも失礼かと思いますが、来年の七月一日までに施行いたすということにいたしておりますので、施行までには相当期間もありますので、いろいろ研究いたしまして、角田委員の御指摘の点に十分沿うように、施行法の上においては十分措置いたしたいと考えております。     —————————————
  11. 花村四郎

    花村委員長 ほかに御質疑はありませんか。——なければこの際お諮りいたしたいことがあります。  商法改正はわが国法制史上画期的な問題でありますので、当委員会におきましても十分研究いたし、法案が提出されました場合にも慎重に審議いたすのに備えたいと存じますので、この際商法改正に関する小委員会を設けたいと存じますが、御異議ありませんか。
  12. 花村四郎

    花村委員長 御異議なければ、商法改正に関する小委員会を設置いたすことに決定いたします。  小委員の員数及び選任方法はいかがとりはからいましようか。
  13. 田嶋好文

    ○田嶋(好)委員 小委員の数は二十三名といたしまして、その指名は委員長に御一任をいたしたいと思いますが、いかがでありましようか、動議を提出いたします。
  14. 花村四郎

    花村委員長 ただいまの田嶋好文君の動議に御異議ありませんか。
  15. 花村四郎

    花村委員長 御異議なければさようとりはからうことにいたしまして、小委員をただいま御指名いたすことにいたします。    角田 幸吉君  北川 定務君    小玉 治行君  高橋 英吉君    田嶋 好文君  石川金次郎君    加藤  充君  大西 正男君    佐竹 晴記君  佐瀬 昌三君    古島 義英君  松木  弘君    眞鍋  勝君  武藤 喜一君    山口 好一君  吉田 省三君    猪俣 浩三君  田中 堯平君    吉田  安君  三木 武夫君    世耕 弘一君  花村 四郎君を小委員に御指名いたします。     —————————————
  16. 花村四郎

    花村委員長 この際久里浜事件について猪俣委員より発言を求められておりますから、これを許します。猪俣浩三君。
  17. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 先般も法務府の政府委員に質問をいたしたのでありますが、旧海軍の海仁会なるものは解散団体として指定せられ、それの財産、動産不動産共に株式会社久里浜会館というものに移されておるのであります。ところがこの解散団体の財産は、そのまま当局に申告しなければならぬはずでありまするのに、ほとんど動産のごときは十分の一も申告してない、相当の物資を隠匿してしまう。なおまた申告した動産につきましても、その売買取得に至る経路に疑義が多々ありまして、たとえば工業用ミシン機械が百五台あつたにかかわらず、これを三十一台しか法務府へ届けてない。しかも三十一台を合計七千円で売買したというようなことであります。常識上われわれは判断に苦しむ。これは国家の財産であります。これをかようなことで一部の野心家に売買するということに相なりますることは、実に国家財政逼迫の今日、私どもは遺憾に存じます。ことに株式会社久里浜会館なるものは、その社長は小田光治と申しまして、浅野物産の専務取締役をやつておつた人で、これは財閥関係に関連して追放をせられておる人物である。なおまたその専務もやはり浅野物産の大阪支店長をやつておつた人で、追放をせられておる人である。こういう人たちが旧海軍関係の動産不動産を手に入れまして、そうしてこの物資を全部申告せずして、十分の一くらいの申告でお茶を濁し、他はやみ売りを盛んにやつて巨万のもうけを得たということであります。法務府からもお調べに行つたようでありまするが、相当刑事上の犯罪が伏在するもののごとき答申が出ておるそうであります。本問題につきましては、両三年以来横浜検察庁に対して岩堀金藏という人物が摘発をしておる。この岩堀金藏という人は、海仁会時代に事務主任として長らく勤めておつた人であり、これが昭和二十一年、昭和二十三年、両度にわたつて動産の調べをしておりますが、今日法務府に届けられておるものはその何分の一もないということを岩掘が立証いたしまして、横浜の検察庁に告発もしたのでありますが、これは粛正前の横浜検察庁の妙な空気から、どういう理由からでありまするか、これが押えられて、今日まで明かにされておらぬのであります。そこで私どもといたしましては、重要なる国家財産でありますがゆえに、いかなる経路でかような久里浜会館というような、一営利会社にこんな安価に所属せしめられたものであるか。及びその所属せしめられたものについて何か不正事件があるのではないか。なおまたこの動産を相当なやみ値で売つたということは、ほとんど久里浜におきましては公知の事実になつておりますから、あるいは物価統制令、あるいは配給違反、いろいろな統制規則に違反しておる行為を、追放者である人たちがやつておつたということにつきましては、やはり調査する必要があるのではないかというふうに思われるのでありまして、これが第一の事実であります。  それから第二の事実といたしましては、先般東京朝日新聞の夕刊にも出たことでありますが、やはり旧横須賀鎮守府の施設といたしまして、追浜飛行場の周辺にケーブル線が埋まつておる。これを掘り出して他に販売しておるという事実があるのであります。これがはなはだ奇怪千万なことを耳にするのでありまして、神奈川の地方経済調査庁の腕章をつけた人たちが、田浦警察署の立入り禁止の立札を立てて白昼公然と掘つておる。しかしその掘り上げたものは、やみからやみへ売り飛ばされておるというのであります。すでに東京高検から横浜の地検に指揮が行きまして、横浜の地検が現場を押えた実情もあるのでありますが、これにはどうも神奈川経済調査庁の係官、あるいは神奈川県庁の係官、あるいは田浦警察署の警察官、こういう人たちの行動にはなはだ疑惑があるのであります。その具体的な一、二の例はすでに自供した人があつてつておるのであります。たとえば横須賀市船越八百六十七番地の中村午治という人間は、このケーブルの切りとつたものを六トンばかり買つておる。だれから買つたということになりますと、多治見製作所というものから買つた。この多治見製作所というのは、大蔵省の所有に属するものだそうでありますが、ところがこの多治見製作所について調べてみますと、はなはだこの男の言うことと符合せないところが多々あるのであります。多治見製作所では、今度は昭和二十二年中に神奈川県の物資課から払下げを受けたものだと称しておるのであります。しかしかような軍用施設の埋蔵したものの掘り出したものを物資課が集荷して、これを他に売るなんということは今の法制上ないと思いますが、さように称しておるのであります。これは一トン二万五千円で売つて、六トンばかり買つてあるというのであります。しかもこの中には大蔵省の財務部の横須賀出張所の係員がタツチしておるということが明瞭になつておる。なおまた横須賀市に船越産業株式会社というものがありますが、ここへやはり追浜の旧航空施設の周辺のケーブル線の掘り出されたものが多数集荷されておりまして、そしてその船越産業株式会社業務主任の言うところによると、経済調査庁の係官の腕章をつけた者が数名出て来て、田浦警察署の立入り禁止札を立てて、早朝かあるいは日暮れに掘り出して、それを持つて来たというような証言をしておる。その中に、この大蔵省の財務部の出張所が元海軍航空廠の跡にあるのでありますが、そこの主任の宮内四郎という人間が、その掘り出すことに立会つたというのであります。その後神奈川の経済調査庁の湯本事務官が来て、この船越産業株式会社に保管せしめた十三トンばかりの掘り出したケーブルを、そつくりどこかへ持ち去つたという事実があるのであります。これもどうも産業復興公団とか、あるいは検察庁が評価をして処分するのが現行法だと思うのでありますが、こういう事務官がいかなる権限を持つてかようなことをやつておるのであるか、実にこれもふかしぎ千万なことであります。のみならずこの元海軍航空廠の中の大蔵省の財務部の出張所には、監視所が設けてあつて、係員が数名巡視しておるはずであるにかかわらず、このケーブルはしよつちゆう盗難にあつておるという届が出ておるのでありまして、これも私どもは、かような係官とどろぼうの一団とが結託してやつておるのではないかという疑いが十分持たれるのであります。  なおまた横須賀の船越町の六百八十八番地の遠藤タバコ屋だそうでありますが、この遠藤タバコ屋の長男の遠藤喜義という人間が、佐藤金属株式会社横須賀集荷所という看板を掲げまして、人夫が毎日十数名働いておるそうでありますが、これが市内の小川町にある杉山組という請負師から、このケーブル線を前後数回にわたつて七十トン、あるいは八十トンも入札の形式で買つたということがわかつておるのであります。これがどういう経路で杉山組の手に入り、その杉山組からこの佐藤金属株式会社横須賀集荷所というものに転々して来たのであるか、はなはだ不可解千万なことだと思うのであります。しかもこの船越産業株式会社というのは、県の経済調査庁の指示する何か一つの会社だそうでありますが、かような会社が常々かような取引をやつておることにつきまして、県の経済調査庁というものの内部に何か不正があるのではないかというふうにも思われるのであります。  かような次第でありまして、こういう地下に埋没されておりますところの軍事施設を、どうも正規な手続によらずしてこれを掘り出し、しかもこれが白昼堂々と時の官憲と結びまして、これが妙なぐあいで処分されておるということに相なりまするならば、国家財政逼迫の今日におきまして、ゆゆしき大きな問題だと思いまするので、当法務委員会におきましては、刑法犯的見解から、この粛正のために御調査を願いたいということを提案いたす次第であります。
  18. 花村四郎

    花村委員長 本事件を本委員会の調査事件として取上げることに御異議ありませんか。
  19. 花村四郎

    花村委員長 取上げることに御異議がないようでありますから、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時十分散会