○稻田
政府委員 法律案の
内容につきまして、補足いたしまして御
説明申し上げたいと思います。
今回の
学校教育法の一部
改正の
骨子は、三点でございます。第一点は、
大学の
名誉教授に関する
規定を新たに設けたことであります。第二点は、
高等学校の
定時制課程に関する
規定を整理したこと、第三点は、
各種学校に関する
規定を整理したことでございます。なおそのほかにも、不用となりました
経過規定を削除するとか、また関連の
条文を整理しております。以下順を追いまして、
改正の
趣旨、
理由に関しまして、御
説明申し上げたいと存じます。
まず、第一点の
大学の
名誉教授につきましてであります。
学校教育法に、新しくこれに関する
規定を設けることにな
つたのであります。元来
名誉教授につきましては、
大臣の
説明にもありましたように、従来は
官公立の
大学高等専門学校等についてのみ、
勅令で
規定せられてあ
つたのでありますが、改廃の措置がここに必要とな
つたのでございます。
一体、
名誉教授というものは、
大学に
教授、
助教授等の
教員として多年勤務して、
教育上の
功績があ
つた者に対しまして、本人の
退職後、その功労を表わすという意味で、
当該大学が授与する
栄誉的性質の
称号であり、
身分上または
給与の上においての特権を伴うべきものではないと
考えますので、この
趣旨によりまして、
学校教育法に新しい
規定を設けたのでございます。
新しい
名誉教授の
要件は、第一に、
大学に学長または
教員として多年勤務した者であるということ、第二に、
教育上または
学術上特に
功績のあ
つた者であること、この二つであります。これらの
要件の認定とか、
称号授与の
方法等については、
当該大学の定めるところにまかせたのでございます。なおこの場合「
大学」と申しますのは、
学校教育法第一条に定める
新制大学であることは当然でございますが、そうなりますと、
教員として多年勤務することを
要件とする
名誉教授は、
新制大学が発足して、これから
相当の時日を経過するまで、今後当分の間は授与できないことになります。そこで
大学の
勤務年数を
計算する場合には、
旧制の
大学、高等
専門学校の校長、または
教員としての
勤務年数を通算できることといたしましたほか、当分の間は、
旧制のまま残るこれらの
学校におきましても、新しい
規定に準じて
名誉教授の
称号を授与できるようにいたしたのであります。
次に、第二点の
高等学校に関する
規定の
改正であります。この点につきまして、三つの点にわた
つて改正いたしたのであります。その第一点は、
高等学校の
定時制課程の
定義を明確単純化いたしたことでございます。すなわち、従来高等
単位には「通常の
課程の外、夜間において授業を行う
課程又は特別の時期及び時間において授業を行う
課程を置くことができる。」と
規定いたしておりまして、前者を「夜間の
課程」、後者を「
定時制の
課程」と呼んで区別して参
つたのであります。しかしながら実際には、時期によ
つて昼間に授業を行い、あるいは夜間に授業を行うなど、その区別ができないことが明らかになりました。そこで今回その
定義を「夜間その他特別の時間又は時期において授業を行う
課程」という一本といたしました。これを「
定時制の
課程」と呼び、従来「夜間の
課程」と呼ばれていたものをこれに包含させるようにするものでございます。
第二点は、
高等学校の
修業年限に関する
規定を明確単純化いたしたことでございます。従来は、特別の技能
教育を施す場合及び夜間の
課程、並びに特別の時期及び時間において授業を行う
課程にありましては、「その
修業年限は、三年を超えるものとすることができる」という
規定があ
つたのであります。しかしながら実情について見ますと、特別の技能
教育を施す
学校の場合におきましては、三年間で
高等学校としての正規の
課程を
終了させ、さらに必要の場合は、専攻科として特殊な
教育を施す方が
新制大学へのつながりを
考えます場合には好都合であることがわかり、また
定時制の
課程は、従来の夜間の
課程においても同様であるのでありますが、三年間で
高等学校として定められた
教育内容を履修いたしますことは、事実上不可能である。これを強行いたしますときには、勤労青年に対して、
教育上、保健上、きわめて憂うべき結果となることが明らかとな
つたのであります。この実情に即応いたしますために、今回の
改正を行うものでございます。
第三の、
高等学校に置かれる職員に関する
規定を
改正いたしました
理由は、従来、
学校教育法第五十条に「
高等学校には、校長、
教諭及び事務職員を置かなければならない」とだけ定められてあ
つたのでありまして、必要に応じて置くことのできる職員に関する
規定を、欠いてお
つたのであります。ところが、実情は
高等学校にも、これらの職員を置く必要がありましたし、また現に置かれておりますので、この実情に即した
改正の措置を行うものでございます。なお第五十八条を
改正いたしまして、
大学に講師、
技術職員その他必要な職員を置くことができるようにいたしたのも、同じ
趣旨でございます。
次に、
改正の第三点といたしまして、
各種学校に関する
規定改正の点であります。まず、第八十三条の
改正は、
各種学校の
定義を明らかにいたしたものでございます。現行法によりますと、
学校教育法第一条に掲げるもの以外のもので、
学校教育に類する
教育を行うものは、
各種学校とするとありますので、たとえば職業安定法に基く職業補導所等も、すべて
各種学校だというような解釈も成り立ちまして、
学校教育法第四条、第九条、第十三条、第十四条等の
規定が、準用されることになるのであります。しかしながら、これらの
学校は、それぞれその
根拠とする
法律で、その管理、
教育内容まで定められておりまして、
学校教育法の適用される余地はほとんどありませんので、
改正法案は、これら当該
教育を行うにつき他の
法律に特別の
規定があるものを、
各種学校の範囲から除くことにいたしまして、
各種学校の範囲を明確にいたしました。そして
各種学校及びこれらの
教育施設は、
学校教育法第一条に定める
学校の名称を用いてはならないことといたしたのであります。
第二に、第八十四条の
改正は、現行
規定によりますと、事実上の
各種学校に対しましては、第八十三条第三項の
規定によ
つて準用される第四条の
規定によ
つて、
各種学校設置の認可を受くべき旨の通告をなすことができるようにな
つておりますが、この通告にもし応じなか
つた場合におきましては、一方的にこれを
各種学校として認定できるという解釈をとらざるを得なか
つたのでございます。そして、この認定をした上で、場合により第十二条の閉鎖命令を発するということが
考えられて来たのであります。
従つて、第八十四条の
規定の実効性は、必ずしも保証されないうらみがありました。本条の
改正は、以上述べましたように、第八十四条の
規定が本来意図したところを、より明らかに
規定しようとするものでありまして、現行
規定に実体的な変更を加えるものではないのでございます。そして、
改正規定による事実上の
各種学校教育の停止命令に応じないものに対しては、閉鎖命令の場合と同じ罰則を適用することといたしました。これは事実上の
各種学校に対する
教育の停止命令は、
学校の閉鎖命令と実体において同じものがあると
考えられたからでございます。
最後に第九十六条を削除いたしましたが、これは、第九十六条は、
中学校の就学義務の逐年延長について
規定したものでありますが、
中学校の完成に伴いまして不要となりますので、この際削除すべきものでございます。その他以上の
改正に伴いまして、私立
学校法の一部を
改正する等
関係条文を整理いたしました。
以上申し上げました通り、今回の一部
改正は、いずれも根本的な
改正ではないのでございまして、現行法に
規定を欠いている事項について補充し、あるいは、現行法の表現では不適切であると
考えられるものを、適切な表現に改めることによ
つて、
学校教育法が本来意図いたしてお
つたところを、より明確に、より適切に実現できるように
所要の
改正を行うものでございます。
以上大体の御
説明といたします。