○小淵
委員 製糸業の実態は、非常にへんぱな事情にあるわけでありまして、製糸業というものは、昔はその立地
條件——養蚕のたくさんできる所に自分の糸をこしらえるというような
考えからいたしまして、転々として製糸の工場が、全国各地に原料とマツチして合理的にできたゆえんがあるのであります。その自分の土地を働かしてできた農産物の加工品がいわゆる生糸であり、それがたまたまか
つては
日本の
輸出の五〇%以上を占めたというような、非常に重い使命も自然的に現われて来まして、この重要性というものがだんだん認められて、今日では中小製糸業者というものが——大体百ないし百五十あるいは二百かま未満というものが、中小製糸業者というふうに言われるようにな
つて参つたのでありますが、一方巨大製糸業者というものがございまして、現在
日本の国では、大体千かま以上の所有者であるところの六業者が、巨大製糸業者であるというふうに言われておりますが、この巨大製糸業者の資本金等をまず
考えてみますと、百八十一業者の中の六業者だけが、その資本金だけでも二十四億円も持
つているが、この百八十一の中から六つを引いた百七十五という業者がわずかに資本金が三億四千万円、もつともこのほかに個人企業者がありますが、こういうふうな実態でありまして、巨大製糸業者と中小製糸業者というものが、非常にその幅が広くな
つて参
つている現状てあります。なおこの巨大製糸業者というものは、大体全国各地のそれぞれ立地条件のよい所に工場を設置しておりますために、この六業者の平均した工場数が大体一業者に対して十四工場の平均にな
つておるのであります。この業者は巨大な資本を擁しており、そのほかに関連事業として、資本力に物を言わせて、その原料を取入れるところの蚕種であるとか、あるいは生糸の販売面を受け持つところの問屋業者であるとか、あるいは
輸出業者であるとか、織物紡績あるいは製薬、化粧品というようなあらゆる関連産業を持
つておりまして、その中に巨大な事業と資本力を持
つておるのであります。こういうふうな人たちに比較いたしまして、ただいま申し上げた百五十ないし二百未満の業者というものは、資本金の面から見ても弱小であり、大業者と太刀打ちできない
実情にな
つておるのであります。昨年の実績から見ましても、全国的に一番原料の安かつたのが東北地方であります。この東北地方はなぜ原料が安かつたかというと、お蚕は一年を三期にそれぞれわけてや
つておるのでありますが、春繭だけを七〇%も七五%もつくる東北地方においては、春繭だけが四千がけというようなことさら安い値段であつたものが、晩秋蚕にな
つてから一万一千がけというような二倍八分にもなるような値段の変動がありましたために、東北地方に工場をたくさん持
つているところの巨大製糸業者としては、結局その剰余金というものが莫大な金額に上
つて参りますので、その剰余金のはけ口として、実は関東であるとか、信越であるとか、こういう方面に
行つてその剰余口のはけ口を求めて、その地方の繭の値段というものを非常に撹乱した例があるのであります。こういうように巨大製糸であるからこそ平均十四工場も持
つておりまして、適時に応用動作のできます非常に有利な条件下にあるのと比較いたしまして、中小企業者は、一業者一工場というようなことにな
つておりまするので、こういうふうな業者が、ただいま申し述べられたように、百人以上が中小企業者でないというふうに認められるといたしましたならば、この八四・五%の中小企業というものは、どうしてもこの際非常な危殆に瀕するような事態が来る。ひいては多数の養蚕農家の人たちに、来月に迫つたところの繭の受入れに関して、非常に心配をさせるというような結果が生じて参るのであります。この点について、いま少し理論づけて、そういうふうなことがありましても、中小企業者であるというようなにとをはつきりわかるように、ひとつ農林省御当局としては発表をしていただきたいと思うのであります。すでに通産省といたしましては、エード資金の貸付等にあたりましては、
一つの一
基準を示しまして、資本金が三百万円以下、従業員が二百人以下を中小企業者というふうにしまして、金の貸出し
対象とな
つているようでありますが、そういうしつかりしたものを示していただきますと、この問題が、そういうところへ
行つてつつかからないで、スムーズに窮局の打開ができ、あるいは技術の共同研究であるとか、あるいは原料の共同購入であるとか、合理的な仕事がや
つて行けることになりまして、大企業に相対峙して、りつぱな成果があげられて、ひいては製糸業の発展ができるということになりますので、こういう点をいま少し理論づけて発表されるお気持があるかどうかこの点を、お伺いしたいと思うのです。