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1950-04-12 第7回国会 衆議院 農林委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年四月十二日(水曜日)     午後一時五十七分開議  出席委員    委員長 小笠原八十美君    理事 松浦 東介君 理事 八木 一郎君   理事 藥師神岩太郎君 理事 井上 良二君    理事 山口 武秀君 理事 吉川 久衛君       足立 篤郎君    遠藤 三郎君       小淵 光平君    河野 謙三君       寺本  齋君    中村  清君       原田 雪松君    平澤 長吉君       渕  通義君    守島 伍郎君       山本 久雄君    石井 繁丸君       長谷川四郎君    高田 富之君       小平  忠君  出席国務大臣         農 林 大 臣 森 幸太郎君  出席政府委員         農林事務官         (農政局長)  藤田  巖君         農林事務官         (農地局長)  山添 利作君  委員外出席者         専  門  員 藤井  信君 四月十一日  委員米原昶辞任につき、その補欠として高田  富之君が議長指名委員に選任された。 同月十二日  委員大森玉木辞任につき、その補欠として長  谷川四郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  農業協同組合法の一部を改正する法律案内閣  提出第一二一号)  自作農創設特別措置法の一部を改正する等の法  律案内閣提出第一四五号)  家畜改良増殖法案内閣提出第一五〇号)  農業協同組合金融的措置に関する件     —————————————
  2. 小笠原八十美

    小笠原委員長 これより会議を開きます。  それではまず家畜人改良増殖法案議題といたします。なお本案質議は去る三日の委員会におきまして終了いたしておりますから、本日は法案に対する討論に入ります。討論通告順によつてこれを許します。原田委員
  3. 原田雪松

    原田委員 本案はもと種畜法というものを改めて今回提案されたのであつて、まことに内容においてけつこうなものと思うのであります。わが国畜産改良増殖上、基本となる計画的の重要なる法案であると思います。これはさきに制定いたされました家畜衛生法案と並行実施することにおいて、初めて運営が完全になろうと存ずるのであります。わが国農業経営農宝的存在は、畜産であるということを私はこの際強調したいと思います。古き詰まれる農村経済復興のためにも、はたまた困難なる農家経済の打開のためにも、密接不可分重大使命を課せられておることは、いまさら申し上げるまでもないのであります。農村恐慌対策といたしましても、各種農産物の多收穫と経済的増收をはからんとするところの有畜営農法普及徹底本法がいかに役立つかということは、非常なる期待を持たれておるのであります。本法施行の眼目は、国の定める各種の優秀なる種畜確保であるのであります。種畜確保改良生産の原動力でありまして、現在の全頭数が増加することはもちろんのことであるし、各種用途別品質向上能力高度化を期するところにねちいがあると思うのであります。それには本法案中に人工授精施設や、輸出の強化によりまして完全かつ計画的な用意が行われるであろう。さように思うのであります。私はこの際本案賛成はいたしますが、私昨年も政府に要望いたしましたのでありますけれども、これを熟慮討議実施に移されんことを期待しておるのであります。その要項を申し上げますと、本法施行によつて確保するところの種畜は、原則として全国都道府県畜産団体無償貸付をすること、二、政府はすみやかに種畜貸付の規定を制定し、現在の五十頭程度のあまりにも過小なるこの方法を改めて、少くも一府県に五十頭内外の貸與でなければ、完全なる組織的な拡充はできない。さように考えますので、この点を重ねて強調したいと思うのであります。なお三には、優良種畜の購入あつせんを行つて能力的品種改良に努力し、飼料需給調整と牧野の確保をなし、高率利用をはかること、こういうことにねらいを持つてもらいたい。四には、各種畜増産年度計画を樹立して、完全な貸與分布の増強を示唆するとともに、普及徹底をはかつてもらいたい。五には、登録事業面は本法案から除かれておりますが、爾今の処置については、附則において細大漏らさずこれをうたつております。この附則に列記した文面を見ますともまことに時宜に適したことをよく書いてあります。この点私は納得いたすのであります。なお本案は、本委員会において修正案の提案を前回にいたしております。今なおそれがはつきりいたしませんが、私はこの第二條事業を積極的に行わねばならないという点が実に不明瞭な、しかも抽象的な言葉のように考えますので、これにはしつかりした目的を表現する必要があるということで、修正案を提案しておるのであります。これをこの際間に合いませんので、次期国会にでも提案して修正いたしたいと思うのでありますが、提案いたしておりまするその内容をこの際一言申し上げておきたいと思います。  第二條 国又は都道府県は、畜産に関し専門的知識又は経験を有する者の意見をきいて、家畜改良増殖に関する計画を樹立し、これを最善に達成するため第二章以下に規定する事項の外、左に掲げる事項を積極的に行わなければならない。   一 種畜牧場又は種畜場を整備し、家畜改良の原種となるべき優秀な家畜をみずから生産し若しくは購買し、これを貸付し又は配布し若しくは種付の用に供すること。   二 家畜改良増殖に必要な種畜補充淘汰計画を確立し、これを円滑に実施すること。   三 家畜人工授精能力検定又は予託育成その他家畜改良増殖のため必要な施設を整備すること。   四 家畜改良増殖を促進するために博覧会共進会又は競技会等を開催すること。   五 家畜改良増殖に関する知識向上及び技術のしん透を図るため必要な施設を整備すること。  2 国又は都道府県はその財政の許す範囲内において、前項各号に掲げる事項を積極的に行うため必要な予算的措置を講じなければならない。  これだけを修正案として提案いたしてあるのであります。どうか政府におきましては今要望しました部面と、この修正案内容について一層検討を加えられまして、完全なる本法実施をやつていただきたいと存ずるのであります。そういう意味におきまして、私は自由党を代表して本案賛成をいたすものであります。
  4. 小笠原八十美

    小笠原委員長 これにて討論通告者の全部の討論は終りました。本案に対する討論はこれにて終局いたしました。  引続き本案採決を行います。本案原案賛成諸君起立を求めます。     〔総員起立
  5. 小笠原八十美

    小笠原委員長 起立総数、よつて本案原案通り全会一致をもつて可決いたしました。  なおこの際委員会報告書の件についてお諮りいたします。これは先例によりまして委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 小笠原八十美

    小笠原委員長 御異議なしと認めます。それではさよう決します。     —————————————
  7. 小笠原八十美

    小笠原委員長 それでは吹に農業協同組合法の一部を改正する法律案議題といたします。討論に入る前に、遠藤委員より発言を求められでおります。これを許します。遠藤委員
  8. 遠藤三郎

    遠藤委員 農業協同組合法の一部を改正する法律案の審議の経過をながめて参りまして各般の問題についてこの協同組合の問題が論議されて参つたのでありますが、協同組合がまことに多事多難な事態に直面しているということがはつきりして参つたのであります。しかも農業協同組合め使命はきわめて重大なるものがありまして、この際特に農業協同組合保護育成をはかり、その健全なる発達をはかることは焦眉の急であると思うのであります。特に最近におきましては、金融的にも非常に逼迫しております。なおその指導並びに自治監査等の問題についても、政府は特別の助長をする必要があるということを痛感するものであります。私はこの際委員会の決議をもちまして、政府に対して次の事項を要望することを皆様に御賛成を得たいと思うのでございます。   要望事項  現下農業協同組合の危機に際し、政府農協運営に必要なる金融的措置をすみやかに講ずるとともに、指導並びに自治監査助長等に関しても万遺憾なきを期すべし。皆様の御賛成を求める次第であります。
  9. 小笠原八十美

    小笠原委員長 ただいまの遠藤委員の発育の通り政府に要望いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 小笠原八十美

    小笠原委員長 御異議なしと認めます。それでは全会一致をもつて政府に要望することに決しました。  引続き討論に入ります。討論通告があります。これを許します。山口委員
  11. 山口武秀

    山口(武)委員 私は日本共産党を代表して、農業協同組合法の一部を改正する法律案に反対いたします。  政府の説明によりますると、この法律改正を行いまするのは、現在のきわめて憂慮すべき状態にある農業協同組合を改善いたしまして、組合の利益を保護し、農業協同組合全体の信用を高める、このよう言つておられるのでありまするが、現在の農業協同組合経営の不振、あるいは破綻と申しまするのは、單に協同組合内の問題として見られる問題ではあ力ませんで、現在の農村の不況を反映して、この事態が現われているというところに問題の本質があるわけであります。従いまして、法律を一部改正いたしまして、問題が解決できるというよう考え方は成り立たないものであるということを、まず明らかにいたしておきたい。それで現在の政府が、一方でこのようなごまかしの方針を持つてつていながらも、このようなことで協同組合改正するということはナンセンスに近い。もともと農業協同組合目的から申しますならば、農民協同組織発達をはかるというようなことを言われておりましたが、一体こういう目的はどこへ消えてしまつたか、どこにもありはしないじやないか。農林大臣はこれし対して、農業協同組合が誕生間もないから、まだそのようなことしか進まないのだ、このような答弁をされておりますが、それは客観的に農村の情勢を見て、そういうものが全然発達できないようにきめられてしまつているのではないか。そればかりではなくて、農業協同組合は戰後における農村の民主的な団体というよう役割をもつて登場いたしたのでありまするが、一体そのよう役割を果しているかどうか、今言いました協同組織発達をなし得ない点から、根本的な目的がまず否定されてしまつたのでありますが、それ以外に自主的な活動というものはなくなつてしまつたのであります。一体現在の農業協同組合活動と、戰争中における農業会活動とどこに違いがあるか、何らの違いはないではないか。購買事業の問題、あるいは指導事業関係を見ましても、これは政府下請機関ようなことをやつておる状態ではないか。このよう状態において、農業協同組合発達はまりたく阻止され、政府下請機関役割だけを現在までなしている。これは今後もより強められて行くであろう。しかも今後における供出の問題につきましても、官僚統制が次々とはずされて行く段階になつて参りましたときに、農業協同組合は、この官僚統制を基盤として存在し、命脈を保つて来たのでありますが、今後新しく農村米穀商あるいは肥料商、おるいは高利貸というようなものから資本の投下がなされまして、それによつて農民の搾取が深められるというようなことを考えてみますときにおいて、今後一層長業協同組合立場苦境に追い込まれるであろう。そのよう苦境に立つておるときに、一方見返り資金やあるいは預金部資金融資が行われるであろうかということであるが、このよう融資そのものについては、われわれはその融資が無條件なものであれば反対するものではないが、しかしながらこの融資を通じてなされるものは何であろうか。農業協同組合がますます政府に従属する機関としての性格を深めて行くのではないであろうか。このようなことになれば今後農業協同組合は自主的な農民団体活動というよりも政府機関、もつとはつきり申すなれば、内外独占資本農民支配の政治的な道具に使われるであろう。今回の改正というものも、このよう目的のもとにとのような線に沿つて行われて行くのではないであろうか。そのうちの兼営について質問をしましたが、依然としてこれに対する政府側の回答は明瞭を欠いておる。兼営禁止をするということは、旧農業会の復活を阻止するためだというようなことを言つておりまますが、一体兼営禁止そのものが、農業協同組合自主性の侵犯ではないのか。あるいは財務に関する基準については政令を出すということだが、これについても政府の干渉を許す。これは農業協同組合自主性をはばむ。農民団体ではなくして、政府の御用機関化して行く第一歩である、このような観点に立つて、いかに賛成したくとも、われわれはこの改正法案には賛成するわけには行かない。絶対に反対をしなければならぬ。
  12. 小笠原八十美

    小笠原委員長 これにて本案に対する討論は終結いたしました。引続き本案採決を行います。本案原案賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  13. 小笠原八十美

    小笠原委員長 起立多数。よつて本案原案通り多数をもつて可決いたしました。  なおこの際委員会報告書の点についてお諮りいたします。これは先例によりまして、委員長に御一任を願いたいと思いますが御異議ありませんか、     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 小笠原八十美

    小笠原委員長 異議なしと認めます。それではさよう決しました。     —————————————
  15. 小笠原八十美

    小笠原委員長 次に自作農創設特別措置法の一部を改正する等の法律案議題とし、その質疑を継続いたします。
  16. 長谷川四郎

    長谷川委員 私は昨日群馬県に参りました。群馬県下において食糧配給に対してのいろいろな声がありますので、聞き合してみましたところ、要は外米についての問題でありまして、この輸入外米がいかにも粗悪過ぎていて、実際人間食いものにならないというよう実情であるので、あります粗悪な上に、さらにそれが非常な臭みを帶びておりまして、いろいろくふうをいたし、またたいたとき木炭を入れるとか、あるいはいろいろな方法をやりましても、どうしても食いものにならないということを聞いておりますのでも私もそれを食べてみましたところが、どうしてもわれわれ人間の口には入らないということになるのであります。この食糧群馬県に最も多く入つておるのでありまして、ビルマから入つたのが一月の二十四日に千五百トン、二月の二十五日にシャムから千五百トン、来月の十二自までにちようど一万トン入荷しておるのであります。従いましてこれを配給いたしました最初のうちはとつたのでありますけれども、現在ではほとんど配給を辞退しておるというよう状態であります。従つてこの問題に対して政府の御意見を向いたいのであります。この苦しい中から高額な税金を支拂いまして、補給金としてこの負担をしておる貴重な食糧でありますがゆえに、最も有効適切な処理をすることが緊急必要と考えるのであります。この際この米の値段を引下げて、政府責任か、あるいは県の責任によつて、これを拂い下げて御処置を願いたい。     〔委員長退席八木委員長代理着席〕 この米は一般家庭では絶対にとらないから、少くとも菓子の加工か、せんべいの加工か、こういうよう加工業者へまわしてもらうよりほかに道はありますまい。大体この価格といたしまして、内地米が十キロ四百四十五円であり、外米が四百四十五円であり、タイくず米は三百九十一円であります。この価格ではとうてい引合わないであろうから、大体二分の一でも、引取つてもらうことができ万いのではないかというふうにも、県当局も答えております。さらにあまりにこの実情がひどい関係にありますので、ぜひとも本委員会からどなたか、御派遣をなされて、実情調査していただきたいということを、私はお願いするのであります。さらにこのかわり米として、至急群馬県の方へも御手配を願わなければならぬと思うのでありますが、幸いに大臣がおられますので、政府として大臣の御意見を承りたいと考えておるのであります。
  17. 森幸太郎

    森国務大臣 輸入食糧品質につきましては、かつて予算委員会においても相当問題にされておつたのであります。食糧はあくまでも食糧でありますので、食糧にならぬものを配給することはできないのであります。先般もビルマ農林大臣みたいなことをやつておる人が、こちらへ参られまして面接私も会談したのであります、か日本人の米に対する執着は、御承知通り南方で生産される米とは味が大分違う。しかし日本食糧が足らぬために、南方諸国から外米として従来も輸入しておるが、現在もまた輸入をせなければならぬ状態にある。しかしそういう質の違つた米が、さらに古い米であり。虫がついておつたり、また油臭い米であつたりするようなことであつては、せつかく輸入をされましても、日本食糧として取扱うことはでき得ない。そういう実態があるということをお話いたしましたら、先方においても非常に驚きまして、それはまことに申しわけない、油臭いということは、どうもビルマにおいてもはつきりわからない、よく調査をしてみるといつてつたのであります。その後先方においても、今後のためにいろいろな調査をしたようでありますが、御承知の南京袋と申しますか、あの袋が非常に悪い繊維をもつてつてあるそうであります。あの繊維は普通の紡績ではとても織れない。ある特殊な油を注いでそして紡績をやる。そのために移り香があるというような結論が出たようであります。いずれにいたしましても、食糧でございますから、食糧にならぬものを配給することは、政府責任におきましてもでき得ないことでありますので、そういうものはもちろん政府責任においてこれをとりかえる。配給辞退されたものに対しましても。適当な処置をとるべきは当然であると私は考えるのであります。今お述べになりました群馬県等の問題につきましては、すでに食糧庁においてもよく承知しておることと存じます。また食糧公団といたしましても、その実際に当つておるのでありますから、適当な処置をとることは当然と考えておるのであります。
  18. 井上良二

    井上(良)委員 ちよつとそれに関連して……。今長谷川氏からの質問は、何も群馬県に限つたことではないのでありまして、地方消費地で、輸入くず米がほとんど内地米価格と相違しない価格配給をされておりまして、家庭の主婦が非常に不平不満を持つておるわけであります。かくのごとき粗悪なくず米政府輸入します場合、一体品質を検査して入れるのですか、全然検査しないで、入つて来たものは何でもかんでもかまわん、引取らなければならぬということになつておりますか、この点どういうことになつておりますか。  いま一つは、最近新聞の報ずるところによりますと、内地五等米以下のくず米自由処分にする措置政府は講じつつあるということが報ぜられておりますが、さよう処置をおとりになるのでありますか。もしそういうことでありますならば、今長谷川君が御提示になりましたところのくず米は、まつた人間食糧としては役にたたないものでありますから、これを飼料に落すなり、あるいは他の用途に振向けることにいたしまして、至急対策をとつてやりませんと、御存知ように、この輸入に対しましては、四百五十億という莫大な輸入補給金を、国民の負担において支拂つておるのでありますから、またその上に、三重の負担消費者が負わなければならぬということになつたのではたいへんなことになります。幸い大臣がお見えでございますから、緊急に処置を講じてやつていただくように、これは特に私からも要望しておきたいし、そういうことは全国主要都市にありますから、そういう不平不満が起らないよう食糧対策を、至急処置願うことを要望しておきたいと思いますが、これに対する大臣の御所見を伺いたい。
  19. 森幸太郎

    森国務大臣 井上委員の御注意ありがとうございました。至急に善処いたしまして、今後そういうことの起らないように、輸入の場合におきましても、十分検査をして荷を受けるということにいたしたいと存じます。
  20. 長谷川四郎

    長谷川委員 政府の方からどなたか実情調査行つていだだけませんか。
  21. 八木一郎

    八木委員長代理 長谷川君今食糧庁の方がおりませんから、あとで御相談願います。井上委員
  22. 井上良二

    井上(良)委員 それではただいま議間となりました自作農創設特別措置法の一部を改正する等の法律案について、質問をいたしたいと思うのであります。私はまずこの法案の逐條的な質疑に入ります前に、政府基本的な土地に対する考え方を伺いたいのであります。  政府がこの農地改革法を本国会に出しました基本的観念の問題でありますが、耕地所有に対する政府の見解であります。今日耕地というものが、一体どういう利用価値を持ち、どういう立場で国としてはこれを有効に利用しなければならぬかということであります。もちろんこの農地改革意義等につきましては、すでに論議もされたことでありますから私は申し上げませんが、少くとも農地改革基本的な問題は、狭隘な国土におきまして、しかも耕地面積が非常に少い、ここに溢れるほどの人口を養つて行かなければらぬということからいたしましてどうしても土地を個人の所有にして、土地による利潤追求するというよりも、十地を百パーセント利用いたしまして、いわゆる、食糧生産を飛躍的に高めるということが、国家的な要請として大きな問題になつておるのであります。従つて政府は、この土地所有を單なり利潤追求の対象にするか、それとも食糧増産の見地から、あくまでわが国食糧基本的な線を確保して行く、こういう線で土地所有を考えるべきであるか、このいずれを一体政府は考えるかという基本的な問題についで、まず農林大臣所見を伺いたいのであります。
  23. 森幸太郎

    森国務大臣 農地改革は、井上委員もその沿革は御存知だろうと思いますから、あらためてくどくどしく申し上げる必要はないと存じます。今日の農地改革目的は、土地所有によつて利潤追求するということは考え得られない現状であります。従来は農地所有者耕作者というものが違つてつたがために、生産力を高めることに非常に不都合であつた。それで耕作者が百分の土地として愛護し、そうして地方を十二分に発揮するということが、国力の増進の上から言つても必要であるということが、農地改革根本理念でありまして土地に対する利潤追求というものは、決して今日許されるものではないのであります。しかしながら、今日小作制度を設けておりますことは、日本家内労力関係から、変転きわまりなき労力の移動に伴う一つ処置として、これは法の許せる範囲内において認めて行くことが必要と考えて今日その制度を持つておるのであります。利潤追求は許されないが、さりとて公租公課が納められないという所有者であつてはならないのであります。利潤追求というようなことは程度問題でありますが、少くとも公租公課を支拂い得る程度土地というものを所有せしめるということが妥当な考え方と存じております。
  24. 井上良二

    井上(良)委員 その基本的立場はわかりましたが、しからば零細化しております耕地経営において、農地経営をいかに合理化するかという問題が、非常に重大な問題であろうと考えるのであります。その面から政府はいろいろの施策を行つて来ておるのでありますが、しかしながら、今日外国食糧輸入及び有効需要減退等によりまして農家農産物価格というものがどんどん低下しつつある。また一方農家現金支出はどんどんふえて来ており、そして扶養する家族もどんどん増して来ておる。こういう経済的諸條件の影響によりまして、農家経営というものはまつた行詰まり状態にある。この場合零細化したところの耕地に対して、いかに農業経営を合理的に政府はやろうとするか、このことのためには、政府は進んで国家資本農村に投じてやらなければ、とうてい農村はやつて行けないということに私は当面しておると思うのでありますが、これらに対して農林大臣としては、いかにこの零細化している農業を合理的経営に持つて行こうとするかという基本問題、この問題はたびたびこの委員会でも議論をされておりますけれども、はなはだ議論が抽象的でございまして今日の国際的な食糧事情の関係、経済事情の関係から、非常に封建的な生産手段で零細化しているところへもつて来て、農業経営をいかにして維持するかという基本問題について、政府としては明確な説明がございません。この点については、ぜひひとつ政府の方で、至急具体的な成案を早く得られて全国四千万の農民をして、安心できる一つの指示を與える必要があろうと考えますが、政府の御所見を伺いたいと思います。
  25. 森幸太郎

    森国務大臣 農政通の井上委員の御質問とも考えられないのでありますが、合理化、合理化とおつしやいますが、どういう意味においての合理化をお考えになつておるか。零細化いたした農地とおつしやるが、零細化せざるを得ない状態において、今日自作農創完のことが取運ばれて来たのであります。自作農創完の農地改革をやれば従つてここに地主がふえるが、しかし零細農家としてこれが実現して来る。しかしその合理化という場合には七反なら七反、八反なら八反許されている耕地を、どういうふうに経営して行くことがいいかということが、耕地に対する合理化だと思います。それは政府の施策というよりは、むしろその土地を持つて経営して行く農家自体が、どうしたならばこの耕地から最も多く安易に收穫が上げられるかということを、おのおのが考えて行かなければならぬと思うのであります。いたずらに政府の施策によつて、自分の持つておる耕地が合理化されるというような他力的な考え方ではいけないと思います。しかしながら国家の政治といたしまして、御承知通り従来の内閣がとつて来ましたことは、食糧が緊迫いたしておるために、農家にみずから自分の耕地に対する合理化経営を無視させて、それを犠牲にさせて、ひたむきに食糧増産をやつて来たのであります。しかし今日は食糧事情が内地の生産が上つただけではありませんが、輸入食糧等の関係から、よほど緩和されて来た。そうしてまたこのまま農家食糧増産のために犠牲を拂わすことは、農家がとうていたえ得られない。そこでいわゆるおつしやるような農業を合理化的に考えるならば、農家経営がその農家の考えによつて有利に展開されて行く、今までは麦をつくれ、いもをつくれ、こう強要したものがやはり麦をつくるよりこういうものをつくる方がいい、あるいはいもをつくるよりこういうものをつくる方が必要であるというように、その農家個々の経営の面から、農家経営を改善して行くことによつて農家経営が成立つようにすべきであると、かように私は考えておるのであります。また方面をかえて、この零細化された農家が、おのおのその経営の面において考究し、創意くふうをして行くのでありますが正政策の上からは価格の維持をする。あるいは生産資材の確保をする、これは農業政策の面として国家がやるべきでありますが、そういう面によつて私は零細化された農業を経営せしめるものである。しかもこの小さい農業の基盤に立ちましては、資本的な企業は許されないのでありますから、この零細化した農業が、協同組合という一つの大きい組織のもとに、企業的な仕事がなし得るというふうに指導すべきである、かように考えておるわけであります。
  26. 井上良二

    井上(良)委員 大臣考え方は一応ごもつともなところもあると思いますがしかし問題は、わが国農業経営の実態が、農家みずからの努力によつて農業経営の合理性というものが確立されないと、私は考えているのです。今日農家の全体的な行き詰まりの原因は、例の九原則による、いわゆるドツジ・ラインの強行が農村恐慌への前夜をもたらしておるのでありましてもこのことから考えますと、今日農村の行き詰まりというものは、主として農家自体の経営の不手ぎわということではなしに、外的な大きな原因が、農家の行き詰まりを来しておりはせぬかと私らは考えておる。そういたしますならば、これは外的な力によつて対策を講じてやらなければならぬじやないかということであろうと、私は思うのであります。これ以上いろいろ議論をしておるとかんじんの問題から離れて参りますから、申しませんが、問題は今日いかに農地改革の合理的な遂行をはかりましても、自分の所有地になつたその耕地で、農業経営自体が成り立たないというようなことであつたのでは、農業政策としては実に行き詰まりの状態にあると私は思うのであります。そういう面から、何としましても今日農家経営の合理性を確立することができ得るという、いろいろな政治的な力を農村に加える必要が今日あるではないかという考え方を、私は強く持つております。そのことはたとえて申しますならば、酸性土壌の改良でありますとか、あるいは水利、土地の交換分合、いろいろな問題がそこにあろうし、また一方農業経営の必要なる資金資材のあつせんをいたし、あるいは公租公課をできるだけ引下げる、もろもろの政治的な、また予算的な措置が今日必要ではないか。もちろんこれらのことに関しましても、政府はいろいろな点から、できるだけの努力は拂つておると思いますけれども、今日農村の立つております苦境から考えますならば、その政策は非常に力が弱いという点から、私はそうは言えないのじやないかと考えます。  次に伺つておきたいのは、昨年十月二十一日付でマックアーサー元帥の農地改革に関する書簡が発せられたのであしますが、当時のいろいろな動きで、この農地改革の打切りをするのじやたいかというところから、この書簡が発せられたのじやないかと考えておる。この書簡によりますと、農地改革の成果を永久に保持することを要求しておる。しかるに政府は、この書簡の趣旨を具体化することにまつたく熱意を欠いておる。それは今度の農地改革法案として現われております自作農創設特別措置法の一部を改正する法律案で、これが明らかになつて来ておるのであります。たとえば農地、牧野、宅地、建物等の政府による強制買收を打切る、あるいはまた未墾地の買收あるいは土地の移動、あるいは農地委員会の改組、農地改革基本的な立場というものを放棄して、政府としては責任を全然とらない。こういう立場に立つたのじやないか。こう私は考えますが、そうではないのでございますか、その点を明らかにしてもらいたい。
  27. 森幸太郎

    森国務大臣 マッカーサー司令官の手紙が発せられたその直後におきまして、今回の改正法案を出しましてもし司令部としてこの改正案に承認を與えるということは、決してマッカーサー司令官の書面に相反するものじやないということを御了承願いたいと存じます。
  28. 井上良二

    井上(良)委員 しからば政府が従来責任をもつて農地、牧野、宅地、建物あるいは未墾地等の買收をやつておりましたものを、何ゆえにこれを打切るに至つたのですか。その関係を明らかにしてもらいたいと思います。
  29. 山添利作

    ○山添政府委員 マッカーサー元帥の書簡を引用せられましたが、元帥の書簡はせんじ詰めますと、農地改革を恒久制度としてその成果を保持し、また農地改革によつて立てられた諾原則を実現して行く、こういう点にあるのであります。この改正法律案はそういう趣旨によりまして立案されておるというのであります。しからば政府が直接買收をして政府が売渡すという組織、現在の制度改正いたしましたことは、政府責任を放棄したということではないのでありまして、これは法律によりまして、従来ならば政府が買收したものを、農地委員会の決定に慕いて当事者間で直接に農地が移転される、こういうことであります。これはそういう法律に基く規定が、政府法律に基く組織である農地委員会によつて実行せられた、こういう立場にあるのでありまして、その間におきまして政府が介入することを除いたということは、結局農地証券というよう制度、あるいは年賦拂いというふうな制度にかわつて来た、こういうことにほかならないのでありまして、事は技術的な問題である。かようにいたします方が恒久制度として適当だ、こういうのでありまして、井上委員とは解釈か違うのであります。
  30. 井上良二

    井上(良)委員 しからばここで伺いたいのですが、今度のこの改正案によりますと、農地、牧野の強制買收を打切る。そうして形式的には農地法第五條以下に移して、強制譲渡を村内の農地委員会にまかす。こういうことに改めているのであります。そうなつて参りますとここに特に二十五年二月十一日以後と日を切つておるのでありますが、二月十一日以前のものは政府において買う。これ以後のものは農調法に移して強制譲渡を農地委員会にまかす、こういう二段構えになつておるのです。そうなりますと二月十一日以前のものは、これは一体どういう価格で買い上げるのか、それから二月十一日うやり方で買うのか。この点の説明を願いたいと思うのであります。
  31. 山添利作

    ○山添政府委員 本年二月十一日以前のものは、自作農創設特別措置法がそのまま適用になるのでありますから現状の通り。それからそれ以後のものにつきましての価格は、農地調整法によるところの価格、すなわちそのときの価格によるわけです。     〔八木委員長代理退席、委員長着席〕
  32. 井上良二

    井上(良)委員 そういたしますと、同じ土地の移動、買收でやるにかかわらず、甲のものは旧価格、乙のものは新価格、こうなりますとそこで問題が起りませんか。起らぬと政府は考えておりますか。
  33. 山添利作

    ○山添政府委員 こういうふうにいたします方が問題を起さないゆえんなのでありまして、農地改革によつて当然買わるべきものであつたのを、後の高い価格で買うというようなことでありましては、これは農地改革がなまぬるいということになりますので、井上委員はこのような方式に御賛成だろうと私は思います。
  34. 井上良二

    井上(良)委員 それはちよつと逆でありまして私の申しておるのは二月十一日以前のものは旧価格で買うというのです。つまり自作農創設特別措置法において買うわけであります。二月十一日以後、つまり新しいものは時価で買うわけであります。そうなりますと、自作農創設特別措置法において買われる地主は、それはおれの土地をなんでそんなに安く買わなければならぬのだと言つて、ここで所有権の確認に関する問題が起つて参りませんか。
  35. 山添利作

    ○山添政府委員 農地価格が憲法上の正当な保障ということを具現しておる価格であるかどうかということにつきまして、訴訟等が今まで起つておりました事情は、御承知通りだと思うのであります。元来自作農創設特別措置法によりまする買收は、昭和二十年十一月二十三日現在という時点をとらえまして、そのときの状態によることが原則になつております。それ以外のものもございますけれども——、そういたしますと、政府の回收いたしましたものは、実際にはそれから二年あまりの間及び三年間にわたつてつたのであります。今後も買收漏れのものがあればそれを買放して行くのでありますが、観念といたしましてはある時点をつかまえて、そこで政府が買收した、こういうよう考え方をいたしておるのであります。
  36. 井上良二

    井上(良)委員 たとえば甲の田が時価で買われる、つまり二月十一日以後の場合ですが、しかし乙の田は十一日以前だ、こうなりましたならば当然そこに所有地主は、それはおれの所有権侵害だという問題が起つて来て、憲法に規定してある所有権の問題がここに巻き起つて来ると私は思いますが、それは政府はほおかむりで行くつもりですか。
  37. 山添利作

    ○山添政府委員 これはほおかむりではないのでありまして、法律学者等の御意見も伺いまして、こういうふうにやるごとこそ農地改革の趣旨に合致するんだ、それから憲法論等の趣旨にこうしないと合わぬ、こういうわけです。
  38. 井上良二

    井上(良)委員 これはいずれあとで専門家から質問をされることと思いますから私はこの程度にしておきますが、しからば強制買收をやめて強制譲渡にかえる、その譲渡価格という問題がここに起つて来ます。この新価格というものは一体何ぼに政府はきめようとしておりますか。今度の地方税の改革その他によりまして、新しい地価の算定はどのくらいに押えておりますか、これをこの際明らかにしてもらいたい。
  39. 山添利作

    ○山添政府委員 二十五年度からは小作料につきましては、これを七倍に引上げるという政府の方針であります。地価につきましては、これはなお中央農地委員会に諮問をいたしまして、具体的に決定をしたいと思つております。小作料の方は七倍、従つて常識的、に安いところでやつているわけであります。
  40. 井上良二

    井上(良)委員 法律としてこうして正規に出して来ます場合に、これが通りますれば、ただちにこの法律施行されることになると思うのです。それを農地委員会にかけて地価を算定すると申しましても、北海道から九州に至るまで、一々どこをどうする。ここをどうするというようなことが、実際上行えますか。この点を明かにしてもらいたい。
  41. 山添利作

    ○山添政府委員 これは当面細部にわたつての再評価ということはとうていできないのであります。結局賃貸価格の何倍、現在ならば四十倍でありますが、それを何百倍ということになります。
  42. 井上良二

    井上(良)委員 次に伺いたいのは、強制買收に応じなかつた場合は一体どうなりますか。
  43. 山添利作

    ○山添政府委員 応じないと言われますけれども、法律による強制買收でありまして、強制的に移転されるのであります。応ずる応ぜぬという問題は起らないのであります。
  44. 井上良二

    井上(良)委員 問題は、それを決定するのは村の農地委員会及び、八月からできます農業委員会がきめると思います。そこで農業委員会の構成の問題が起つて来ます。問題はそこへ行くのであります。そこでわれわれの調べたところによりますと、少くとも今度新しく選挙しようとする農業委員会の構成メンバー、すなわち市町村の農業委員会は定員が十五名になつている。この十五名の定員のうちで少くとも半数以上がいわゆる地主勢力と言いますか、村の封建的勢力の選挙される情勢に私はあると見ておるのですが、政府はそう考えていないのですか。
  45. 山添利作

    ○山添政府委員 これはそれぞれ主観的な考え方をすれば、どういうふうな農地委員の考えぶりになるたろうどいうことはあるかと思いますが、元来現在の制度は、申すまでもなく農地委員は十名、そのうちの二名が小作的な人で二名が地主的な人、六名が自作農、こういうことになつておるのであります。今回の制度は十五名にいたしまして、その三分の一が小作農及び小作農的の人、その他は自作農的な人、こういうことに相なるわけであります。現実の村の状況から見ますると、農地改革後におきましては、もうみな自作農なんです。その中から小作農もしくは小作的な人を拾い出そうといたしましても、大体全体の二割きりいない、こういう状況になつておるのであります。従つて農地委員会の性格といたしましても、一番当初におけるがごとき階層割合によらず、むしろ全体としてこれは農民そのものの代表である、こういう考え方をするのが、現実に合つた考え方である。また農地委員会そのものの任務も、ひとり農地問題だけでなしに、他の農業問題、農民の利害関係に密接に連なつて行くということを想定いたしますと、農民及び農業の代表の委員、こういうふうに考えるのが至当だろうと考えものであります。ただそういうふうにいたしましても、やはり立場の賜い代表というものは、相当程度これを確保しなければならない、こういう意味合いにおきまして、三分の一に相当する部分は、小作農もしくは小作的な人でなければならぬ、こういうふうにいたしたのであります。
  46. 井上良二

    井上(良)委員 私の調べたところによりますと。政府原案による今の御説明のようなやり方でやりますと、自小作、小作それから小小作、これらの階層が大体百六十七万二千人、全体の約三〇%、このうちから五人出ることになります。それから地主とその保有地、それから自作。この関係から十人の人を選ぶのでありますが、これが三百八十六万三千人、全体の約七〇%になつておるのであります。このことから委員が選挙されるということになりますならば、当然この方からは十人の人が選挙されてもいわゆるあなたの御説明になりました、一番重要な小作、自小作、小小作という面は、全体のわずか三〇%しか占めていない。必然に、ここにおいて表決をいたしました場合は、いわゆる地主階級の人が圧倒的に委員会では多いのであります。そうなりますと、この委員会が強制譲渡を決定する権限を持つのでありますから、いかに協定譲渡をしてもらおうとしましても、実際はできない結果になりてしまうということの現実か、この階層のはつきりした区分によつて明らかになると私は思うのでありますが、政府はそう考えないのですか。
  47. 山添利作

    ○山添政府委員 この第一号の階層に該当しますものは、井上委員の御計算は三割でありまするが、私どもの見方は、大体これは二割程度と思つております。二割程度であるけれども、しかし全体の中で、そのカテゴリーの代表者として出すのには、十五名中二割だと五名になるけれども、三名ではあまりどうかというので、五行にいたしたのであります。  その次は、農地委員会の構成によつて法律にきめられたことが行われないのじやないかという御疑問でございますが、これは一定の、すなわち不在地主の小作地が生じた場合には、これは農地委員会は、強制譲渡の計画を立てなければならぬのでありまして、もし農地委員会がそういう計画を立てません場合におきましては、関係者の方では。農地委員会に対して、さよう計画を立てるように申請をすることができる。それでもやらなければ、これは都道府県農地委員会が、市町村農地委員会計画を立てるように指示をすることができる。それでもやらなければ代執行、こういうことになるわけであります。御疑念の点は、それぞれ手段。方法が設けてございます。
  48. 井上良二

    井上(良)委員 次に、宅地建物の買收を六月の二十日までに申請しないと占買收しないことにする、こういう改正をされておるのでありますが、御存じの通り宅地建物の買收は、その趣旨といいますか、その行為といいますか。そういうものが十分農民に徹底していない。だから実際農業生産力を高め、農業経営をうまくやるための必要な施設としての建物あるいはまた宅地というようなものは、長い間の農民へのいろいろな啓蒙といいますか、そういうことが徹底しませんと、これは行えないのであります。それをただちに一片の法律で打切つてしまうというやり方は、これは非常に現実を無税したやり方ではないかと思います。特にまた土地建物等のどれを買收するか、どれをどうすべきが適当かという問題については、いろいろな粉議の種になつて、その買收の判定にいろいろな問題が横たわつて、なかなか結論を見出すのにむずかしいのであります。そういうことからいたしまして、これは相当長い目で見てやるべきではないか。それを一片の法律で、一定の期限までにやらなければ打切る。こういうやり方は、現実に即さないじやないか、私はこう思うのでありますが、どうお考えですか。
  49. 山添利作

    ○山添政府委員 宅地建物の買收は、改正法律によります前におきましても、農地の買收のときから、一年以内に申請する必要がある、こういうふうにすでに期限が切つてつたのであります。そこでこういうふうに整理をいたしましても、現にあります法規と内容において違うわけではないのであります。たた将来においても宅地建物の買收をやめたという理由につきましては、これはこの前にもちよつと申し上げたかと思いまするが、日本の農業というものは、農業の中に家があるのじやないので、家というものは、村なり町なりをなしてあるのが普通の状況でございますので、これは農地と切り離して扱つても、さしつかえはないじやないかと思うのであります。また宅地建物ということになりますると、これは認定問題が中に入りまして、いろいろ問題が起るのです。従つて恒久的な制度としてはもあまりまぎらわしい問題が起るような事柄は、これを削除したい、こういう意味であります。
  50. 井上良二

    井上(良)委員 次に、未墾地の買收を非常に困難にしておるのでありますが、これの新しい改正によりまするとも未墾地の買收は、実際上はほとんどできないのじやないかという解釈を。私たちは持つておるのであります。     〔委員長退席八木委員長代理着席〕 と申しますのは、今までは未墾地の買收は、大体県の農地委員会で適地を指定して、買收の決定をやることにいたしておつたのでありますが、今度の改正案では、農林地利用計画審議会というものが発議しないと買えない、こういうことになつております。しかもこの農林地利用計画審議会というものは、県の諮問機関になつておる。従つてそこでかりに発議をするにいたしましても、知事なら知事が買うという腹をきめない限り、実際上はも未墾地の買收はできないことになりはしないか。決議機関ではないのです。諮問機関になつておる。そういうあやふやな機関によつて発俵をせいと言つてみたところで、実際はできないことになるではないか、この点どうですか。
  51. 山添利作

    ○山添政府委員 まず最初にお詫びをいたさなければならぬのですが、これによつてごらんになつておると思うのです。ところが農林地利用計画審議会というものは削除になりました。従つてただいまお引きになりました條文は削除になつております。それから内容的に申しますと、農林地利用計画審議会があろうがなかろうが、実は現状と変らないのです。現状におきましては、都道府県における開拓適地審査部会というものがございまして、必ずそこを通過しなければ、農地委員会にかげないのであります。ただ、今まで通牒でやつておりましたことを、法規の表面に出そうという考えであつたのであります。それも出なくなつた、こういうわけでありまして、実体上には何ら変化はございません。
  52. 井上良二

    井上(良)委員 次に農業委員会の問題でございますが、御承知通り、八月に、政府予算的措置関係からか、また納税一元化というか、事務の刷新、簡素化といいますか、そういういろいろな角度から、農地委員会と現在の農業調整委員会を一本にして農業委員会をつくる、こういうことになつている。そうしますと、問題は農地委員会としての活動の必要はなくなつたというお考えでございますか。そうなりますと、農地改革というものの実際の実行ということは、もう必要はなくなる。ただ従来買收いたしましたものの売渡し登記の残務整理を政府はやる、こういう考え方ですか。
  53. 山添利作

    ○山添政府委員 そういう考え方ではないのでありまして、むしろ農地委員会というものの活動分野を広めて行きたいという考えを持つておるのであります。なるほど農地関係においては、仕事の分量は少くなりましたけれども、その他に土地の交換分合、あるいはみずから直接法的権限に基いてやる仕事ではないのでありますが、土地改良の推進であるとか、そのほかの農業に関する——先ほど農業の合理化という言葉を言われましたが、増産なり合理化に関する諸般の問題を、こういう委員会が取上げて、推進して行くという方向に発達することを、期待いたしておるわけであります。
  54. 井上良二

    井上(良)委員 あなたはそうお考えになつているが、実際はそうではなくなるわけです。御存じの通り、県の職員にしても、あるいは末端の職員にしても、もうすでに大幅な整理をされておるわけであります。すでに一万何ぼかが整理をされておるわけなのであります。またさらにそれが整理される段階にあるわけであります。しかし実際の農地委員会活動というものは、今あなたが御説明の通り、いろいろな重大な仕事を持つておる。それで現にまたすでに買收し、売渡しの登記の事務にいたしましても、まだ全体で三〇%ぐらいしか登記事務が済んでないと思うのであります。実際登記完了までのいろいろな事務が残つておりはせぬか、こう私は考える。また農地委員会自身のいろいろ活動がたくさんございまして、特に一筆調査を完全にやることとか、農地、農業施設の買收を徹底するとか、あるいは未墾地牧野の買收の問題とか、あるいは小作契約の文書化の問題、土地改良による交換分合の問題、国有農地整理の問題、自作農に伴う土地台帳の整理の問題、いろいろ仕事の整理がたくさん残つている。しかるにそれを農地委員会に一括して、わずかの予算にしてしまつて、やれと言つたつて、実際やれないんです。やれないことをやれと言うてみたところでむりなんです。あなたは、やらなければならぬ仕事はたくさんある、こういう重大な役目が残つておる、しかし実際はやれない状態に担い込んでおるのです。これはすでに農地委員会全国大会やその他において、あなた方は、いろいろな角度から陳情もあり、要請もされて来たことであろうから、耳にたこができるほど聞いておると思う。しかるに政府は、それをあえて押し切つて農業委員会一本にしようという、そうすると実際上仕事ができないことになつてしまう。それではマッカーサー元帥の農地改革の精神に永久に反してしまうことになる。その点どうお考えですか。
  55. 山添利作

    ○山添政府委員 登記の話が出ましたが、これは買收については約九五%、売渡しについては九〇%、この三月末をもつて進捗いたしておるのであります。この点は御安心をお願いしたいと思います。なお書記の減員についていろいろお話がございましたが、これは財政等の関係もございますので、昭和二十五年度から一名に相なりましたことはやむを得ないと思います。今後における農地委員会活動としては、場面を広くして、事務的なことではなくて、農民の利害に緊切な関係のある問題の解決と推進に当つて行く。こういうことを私は申し上げておるのでありまして、ただ台帳を整理するとかせぬとかいうことを申し上げておつたわけではございません。
  56. 井上良二

    井上(良)委員 この書記の整理にあたつて、大体一万二千人くらい首を切つて、一人当り七千円くらいしか退職手当を渡してないとかいうことですが、それで事を済ますつもりですか。
  57. 山添利作

    ○山添政府委員 これは一月半という割合で、二十四年度予算に計上してあつたのでありまして、大体公務員の扱いはこういうものであります。
  58. 井上良二

    井上(良)委員 公務員の扱いはこういうものですと言えばそれまでですが、大体これらの人々は、少くとも三年から四年くらいの勤務になつておりはせぬかと思うのです。それから行きますと、あまりにも金額が低過ぎはせぬか、こう私どもは考えるわけでありまして、われわれとしましては、歩くとも農業委員会になりましても、政府の方では当分食糧確保の見地から、いろいろ制度はかわつて参りましようとも、相当重要な任務が、食糧の生産及び供出の面に起つて参ると思います。そうしますと、実際の面では農地改革の方面の力が非常に弱まつて来るのじやないかという点を、私どもは非常に心配をいたしておるわけであります。この点に対して、政府の方でそういう心配は全然ないのだという現実が明確にされますならば、われわれ何をか言わんやでありますけれども、われわれいろいろな万両の実情意見を聞きましても、これではまつたく仕事にならぬという意見が絶対でございますから、これらの点については、十分政府は考え直す必要があろうと思うのであります。  最後に私は農地の交換分合の問題について伺いたいのであります。農林省の計画によりますと、三十五年度以降五箇年間に、九十三万町歩を推進をはかる。既往交換分合いたしましたものが七十八万町歩、合計百七十一万町歩のうち、本年度の計画では、一県大体二十箇町村、全国で九百二十箇町村に重点を置いて、年度内に十八万四千町歩を実現したい、こういう計画を立てておるらしいのですが、この交換分合の基礎となります土地調査経営調査、こういうものが完全に進んでおりましようか。この点を伺いたい。
  59. 山添利作

    ○山添政府委員 御承知ように、日本では、どこでも一つ農家が耕作しております土地が七箇所とか、多いのは十数箇所にわかれておるのであります。従つて一般に交換分合ということは必要でございますが、どの程度にやつて行くかという現実の問題になりますと、交換分合は、井上さんに申すまでもございませんけれども、いろいろな関係がありますので、きわめて愼重に、かつ綿密な、間違いのない計画を樹立いたしまして施行しなければならぬと思うのであります。従つて初年度といたしましては、全国九百箇所を選びましてやつて行きたい。だんだんなれますと同時に、そういうモデル地区ができますれば、それによりましてまただんだん広がつて行く、こういうやり方をしたいと考えておるのであります。全体の土地調査、及びそのうちでる交換分合に適する土地が幾らかというような基礎調査はできておりません。御承知ように今土地調査というものが、これはひとり交換分合の問題ではございませんが、研究をされておるのでありまして、その方面の土地調査の実現ということにつきましては、われわれも希望しており、また国会としても室現いたしますように御盡力を願いたいど考えておるわけであります。
  60. 井上良二

    井上(良)委員 これに要する予算は、本年大体四千八百万円ですか、国庫が助成するということになつておりますが、これは計画的にずつと出る予定でございますか。
  61. 山添利作

    ○山添政府委員 これはだんだんふくれて出て参るわけであります。
  62. 井上良二

    井上(良)委員 最後に強制売渡に関連して、農調法第五條ノ二十一ですか、政府の方で資金を貸し付けるということをきめておると思いますが、この資金というのは、一体どういうところから、どれだけのわくで計画をしておりますか、これを明らかに願いたい。
  63. 山添利作

    ○山添政府委員 この点は二十五年度予算におきましては具体化されなかつたのであります。これは関係方面におきましても、熱心な研究はしていただいたのでありますが、結論を得なかつたのでありまして、これは今後に資金源なり、その貸付の方法なりということは具体化して行きたい。とりあえず政府の方針を法律の上に明示しておく。こういうことになつておるわけであります。
  64. 井上良二

    井上(良)委員 そうすると、今年かりに具体的に問題が起りましても、今年は間に合わぬ、こういうことになりますか。それとも次の臨時国会でも開かれますならば、何か予算的、金融的措置政府としてはとるつもりです場か。
  65. 山添利作

    ○山添政府委員 これは私の見込みといたしましては、次の臨時国会は困難だと思います。全体が農地改革によりまして大きく土地異動をいたしましたあとでありますのでここ一年、二年というものは、土地異動の起る機会は非常に少くなつたのであります。従つて臨時国会というわけには参らないと考えております。
  66. 山口武秀

    山口(武)委員 最初にお伺いしたいのは、昨年森農林大臣の所属しておられる自由党内閣は、農地改革の打切りをなされる、このような見解を発表されました。ところがそれに対して総司令部の方から書簡か参り、大分おしかりをこうむつたことになつたというような話でありますが、おしかりをこうむりまして、森農林大臣は、農地改革に対する考え方というものがまずかつたというふうに改心なされたのですか、どうですか。
  67. 森幸太郎

    森国務大臣 農地改革は打切つたとは私は決して申しておりません。第三次農地改革はやらないということを言明いたしておるのであります。第三次農地改革ということはどういうことか、われわれが発見した言葉でないのでありますが、諸君のお話の第三次農地改革はどういうものかと聞いてみますと、日本全部に小作制度というものをなべしてしまい、全部これを自作農たらしめるというのが第三次農地改革だ、こういうことでありますから、われわれはこの第三次農地改革は断然やらない、こういうことを申したのであります。決してマッカーサー司令官の手紙には怒られておるものでも何でもありません。第二次農地改革計画の残つておるものは相かわらずこれを推進して行きます。マッカーサーの手紙にも、よくこういうことができた、よくやつた、どうか農地改革をこわさないように永遠に持つて行け、こういう手紙でありまして、決してしかられたのでも、何でもありません。推奨された手紙であります。
  68. 山口武秀

    山口(武)委員 私は推奨されたとは考えません。第三次農地改革と言われますので、一応第三次農地改革についてお話いたしますが、第三次農地改革というのは、完全な土地の解放であり、農家のために完全に農地を解放する、さらに山林も解放して農業の発達に資した方がよい。これが第三次農地改革です。それで先ほど大臣井上委員との質疑の際にこう言われておつた土地を決して利潤の対象とはしない。やはり農業のための土地として考えて行く、こういうような観点に立ちながら、第三次農地改革というものは、何でもかんでもやらなければならないものである、一体地主の保有地を残したり、あるいは山林もそのまま温存しておくというよう考え方はどうして成立つのか、先ほどの大臣の言葉とも矛盾するものではないか。第三次農地改革をそれでもなおやらないというならば、なぜやれないのか。どういうわけで小作保有地というものをなくしてはいけないのか。山林というものを農業のために解放してはいけないのか。これに対する理由をお伺いいたしたい。
  69. 森幸太郎

    森国務大臣 山林の解放は程度問題であります。決して解放いたしません。国土保安の上から申しましても、重要な山林を解放するようなことは毛頭考えておりません。あなたの今おつしやる土地の無制限の解放ということでありますが、これは井上君にも先ほど申し述べました通り日本の農業は家族労力でやつておるのであります。今家族の労力が相当あるというので、一町あるいは一町五反の自作農ができておる。その家族の労力というものは絶えず変動するものであります。変動するごとに土地を買收しあるいは強制売渡しを命ずるということは、再びその労力の返つたときに、せつかくその土地に執着しておつた農家が再び自作することができないということになるのであります。従つて、不在地主なんかはこれは問題でないのでありますが、りつぱな自作農でありましても、家族労力のいかんによりましては、一時的にこれを小作者に與えるという機会を與えておくということが、せつかく農地改革を永遠に維持する上において適切なやり方と考えておるのであります。労力のないために絶えず土地を解放してしまうというようなことは、決して農地改革の趣旨に沿うものでない、かように考えますから、あなたのおつしやるような第三次農地改革は断じていたしません。ことに森林の解放なんかとんでもない。われわれそういうことを考えておりません。
  70. 山口武秀

    山口(武)委員 大臣の言われることはとんでもないことだ。一体国土保安のために山林を解放しないのだというような説明だけで済ませるかどうか、問題はその反対であつて、山林を解放すること自体が日本の農業を発展させ、農民の生活を向上させることになるのだ。保有地の問題につきまして、日本の農業が家族労働でやつておるからどうこうというようなことを言われておる。しかしながら一体これまでの地主制度というものを考えてみたらよろしい。地主制度というものが、いかに社会的に農民の抑圧的な役割を果していたか。あるいは経済的に農民を搾取してやつて来たか。これをなくさなければ農民が解放されないで、農業の発展がなされないという観点から、農地改革が取上げられたのではなかつたか。もしもあなたの言うように、家族労力がどうで、国土の保安がどうでということを言うならば、その考え方はすでに第二次農地改革以前の考えである。これは戰争中の政府考え方と同じであり、明治以来続いた日本の歴代内閣考え方とどこが違うのだ。これが少くとも戰争後において、民主化された日本政府農林大臣が言われる言葉として受取れるか。今のよう考え方ならば、これは農地改革の全般を否定することになりはしないか。これに対して所見をお伺いする。
  71. 森幸太郎

    森国務大臣 これは意見の相違であります。お答えしてもぴつたり合いますから、お答えいたしません。
  72. 山口武秀

    山口(武)委員 お答えしない。意見の相違だ。それは意見が相違しておる。森農林大臣立場は、できるだけ地主勢力を温存したがつたり、今後においてはそうしたものを残すことによつて日本の農業を植民地的に再編成する基盤にしたい。このよう考え方があれば、これは明らかに違います。しかしながら今言つたよう考え方が許されるとするならば、これは農地改革を全面的に否定することになるのであるし、それから先ほど申しましたが、総司令部から推奨されておるというどころの話でなくして、これはやはり総司令部から怒られなければならないものです。あなた自身はやはり改心していないのだ。このよう考え方で今回の法律を出したとするならば、これは明らかに農地改革を打切る法律である。一体現在農地改革の成果というものはきわめて不徹底なものでありますが、これが今後今回の法律で維持できると思つているのかどうか。この点についてお伺いしたい。
  73. 森幸太郎

    森国務大臣 現在の改革した農地を維持できると考えております。
  74. 山口武秀

    山口(武)委員 維持できると申しますが、事はすでに明瞭になつて来ていると思う。もうすでに土地の秘密の売買が始められているではないか。土地の質入れがなされているではないか。このようにして、現在農民がせつかく手に入れた土地を手放さなければならなくなつておるよう農村の状況というものに対して、全然認識を持たないのか。そのような傾向が出ておるものに対して、農林大臣はまつたく無知でいるのか。これをお伺いしたい。
  75. 森幸太郎

    森国務大臣 決して私は農地問題に無知でありませんが、諸君もほんとうの農村に立ち入つて事情を調べていただきたい。
  76. 山口武秀

    山口(武)委員 農村行つて室情を調べてもらいたいと申したいのは私の方なんです。交情を調べてみれば、質入れの問題、土地の売買の問題がすでに起つておる。これに対してどのようにお考えになるか。あくまでもそれをないと言われるのか。お伺いしたいと思う。
  77. 森幸太郎

    森国務大臣 せつかく自作農になりましても、自作農を維持することのできない面もできましよう。いわゆる転落する者もできるでありましよう。これは今日の経済界の上においてしかたがないと存じます。できるだけそういう者のできないように農業政策を立て、そうして零細農業が経費できるように、あらゆる施策をとつて行きたいと思います。しかしその個人の意見において、いかに政府農業経営のできるような政策をやつても、なおかつ農業を離れた方がいいという観念で離れる人は、これは格別であります。
  78. 山口武秀

    山口(武)委員 なるほど吉田内閣におる大臣は同じようなことを言う。池田大蔵大臣の暴言とまつたく同じだ。これが農民に対する吉田内閣の態度であるということは、きわめて明瞭になつたと思うのです。こういうような態度で、はたして今風自作農の関係法律について改正するのか。書かれておる目的ように、自作農のこれまでの各仕事に対する、その成果を維持するというよう目的から出発したとわれわれは考えられない。しかも先ほど推奨された、あるいはその後においていろいろな態度が表明されたのでありますが、なお農村実情ということを申しますならば、現在やはり農村には地主的な支配というものがあるのではないか、社会的な変革をもたらさなければならなかつたところの農地改革というものが、そういう意味できわめて不徹底不十分であり、山村の温存あるいは宅地の出題等をめぐつて、依然として地主の農民支配ということが行われておることを、農林大臣は御承知なのかどうか。それを御承知ないというならば、さらに、これまで農地改革実施されてから、農村において幾らの土地取上げがあつたのか。この土地取上げというものは、すべて違法の行為としてなされて来た。この違法を許して来たものは何なのか。これは依然として農民が身分的に解放されない、地主支配が行われている。このようなところから起つたのではないか。この事案に対して、農林大臣は目をおおわんとせられるのかどうか、お伺いしたい。
  79. 森幸太郎

    森国務大臣 土地に対する訴訟問題は、相当に上つております。これはしかし法が解決するものであります。われわれはせつかく地主となつた農業者が、その農業を自作として経営のできるように施策を考えて行きたいと思うのであります。あなたのおつしやるように、昔の改革以前のような何十町歩という地主が少いのであります。土地所有が制限せられておりますから、ほとんど九十何パーセントが地主であります。従つて昔のような小作、地主関係はありません。
  80. 山口武秀

    山口(武)委員 九五%が地主だというような分類は、私は日本に生れて来て初めて知りました。土地の取上げという問題が法律で解決してくれるかどうか、そういうことではなくて、法律を無視して、やみからやみに葬られて来たのだ。しかもこれは農林省の統計でも認めざるを得ないではないか。この農林省の統計さえも農林大臣は認められないというのか。一体農林省の統計というものは、農林大臣が認めない形で出されているのかどうか、お伺いしたい。
  81. 森幸太郎

    森国務大臣 統計は農林省がやつておるのは認めますが、今日あなたのおつしやるような地主は、いわゆる昔の封建的な地主というものはほとんどありません。
  82. 山口武秀

    山口(武)委員 封建的な地主はなお存在しているのです。これは森国務大臣がその事実を見まいとしておる、わざわざ言うまいとしておるというだけの話です。依然村におきましては、地主の部落支配、村支配というものは根強く残されております。  さらになお私はお伺いしたいと思うのですが、農地改革目的は、農業生産力を発展させるということが大きな目的一つである。それは、これまで地主制度が続いておりまして、その地主の搾取によつて牧獲物の過半がとられてしまつていた。このような状況をなくして、農民の收入というものを、耕作している農民確保する。それによつて資本の蓄積もはかる。それによつて農業の出産力を発展させるような方向に向けて行く。ここに目的があつたはずだと思うのです。ところが、農地改革が行われましてから、一体農家でこの改革の結果、そのような利益を受けた農家があつたかどうか。これはまつたくなかつたのです。すでに大臣は否定されておりますが、質入れや転売の問題が起つて来ているのです。このような状況において、なお農地改革が成功され、総司令部からほめられたというような、ばかげた考えを持たれるのですか。
  83. 森幸太郎

    森国務大臣 あなたはどういうふうに御批判になるかもしれませんけれども、農地改革は当初の目的通り進行したのであります。
  84. 山口武秀

    山口(武)委員 そういうばかなことを言つてもらいたくないのです。むしろ現在になれば、農地改革のそれぞれの失敗、農業生産力の発展について、何らの役割を果せなかつたという事実、社会上の改革も完全になされていなかつたという事実、これを率直に認めてもらわなければ、今後の農地改革改正するとか、あるいは農地改革の問題について議論をすることは、私はできないと思う。この考えを、ひとつ大臣に改めてもらいたいと思う。
  85. 高田富之

    高田(富)委員 関連して……。今の大臣の答弁の中で、非常に重大な答弁があつた。今の経済状態の中では、農地を放棄する、転落して行くというような者も出るのはやむを得ない、当然だということを言つておるのでありますけれども、これは非常に重大な失言だと思う。失言というよりは本音をはいたとわれわれはとつおるのでありますけれども、こういうふうな農地改革が、農民を自立させ、そうして経営を発展させるために行わるべきにもかかわらず、現在それに逆行しておる現象が現われておるということを、当然であるとあなたがおつしやるならば、私はこれはまつた農地改革を何のためにやつたのかわからなくなつてしまう。さつきも井上委員質問しましたけれども、この農地改革をやつて、それが尊び小作農に転落し、あるいはその他の形で転落することのないように、いろいろ政府が施策を講ずべきであるがどうかということに対しても、あなたはそうじやない、農民当身が合理化すればいい、くふうすればいいというようなことを答えられております。これまた農地改革に対するあなたの考え方を、非常に明白に出しておると思う。結局これは農地改革のしつぱなしでは、問題は何ら解決しないのであつて、これとあわせて、政府の一連の擁護政策がなければ、農地改革をやつたことは何にもならぬ、むしろこれは逆になる。逆にそういう零細な小経営が大きな資本から圧迫されまして、今より以上直接的に搾取される結果になる。大臣は、この今の大きな失言をはつきりここで取消されますか。それとも、あくまでそういうことが正しいあなたの認識であると、国民の前に発表してさしつかえないものでありますか、明白にしていただきたいと思います。
  86. 森幸太郎

    森国務大臣 どういうところを誤解されるか存じませんが、今日は農地改革をやりまして、そうしてその耕地は自由自在にこれを売買することは禁止されております。すなわち、せつかくなつた自作農を、あくまで自作農として経営し得られるように、その制度がつくり上げられたのでありまして、農業政策としては、そういう農業経営が合理的に行けるように、あらゆる施策を持つて行くということであります。しかしながら個人の意思によつて、せつかく地主にはなつたが、ほかによりいい仕事かある、だから農地を離れて都会に出ようという場合には、その農地はほかにかわつて行くでありましよう。これはその人個人々々の経営の問題であります。死んでもいいというようなことは毛頭考えておりません。いわゆる池田大蔵大臣の放言と同じだというようなことをおつしやいましたが、決してさようなことではありません。その場合には、抵当に入れるのは自由でありますが、農地の売買は禁止されております。それは、せつかくできた農地改革をいつまでも継続させるというよう制度をとつており、その制度に合うような政策をとつているわけであります。
  87. 高田富之

    高田(富)委員 それは法律では禁止しております。しかし、法律禁止しているからいいというものではない。それが守れるような、売買しなくても、抵当に入れなくても維持できるような裏づけがなければ、経済の必然性は法律を破る。現にやみ売買をやる、いろんな耕地の放棄が行われる。あなたはそれを、都会にいい仕事があろからというようなことを言つているけれども、命よりかわいい農地を捨てて、出て行かなければならぬほど窮迫した農民実情に対して、いい仕事がおるから都会に出るのはあたりまえだというようなことを、重ねての暴言です。こういう暴言はない。それでは今の農政というものはむちやくちやです。これはまつたく、死にたい者は死ねというのと同じです。法律禁止しているにもかかわらず、そういうことが行われているというところにこそ重大な問題がある。ここに、われわれの手元に配られている参考資料の中に、一九四五年十二月九日農地改革に関する覚書というのがあります。これは敗戰後のポツダム宣言に基く日本農村改革の根本的な指令でありますが、この中にも、小作人であつた者が再び小作人の地位にもどらざるよう、合理的に防止する規定をつくれ、そうして次のことをやれ、長期または短期農業資金貸付、農産物精製業者及び配給業者による搾取から農民を保護するための方策、農産物価格の安定方策、こういうことが書いてあります。これも同時に実行しろということがちやんと言われている。ところが、これを実際やつていない。逆のことをやつている。今でも農民は高利貸にたよらざるを得ない。中間業者からの圧迫、さらに電力料の値上げ、そうして農産物価格が暴落すれば統制を撤廃する。非常な農業恐慌に陷れる。逆なことをやつている。今のような現象が起れば、法律ができている、だからいいじやないか、自分で出たい者は出るのだ、これは暴言です。あなたの言われることは、日本の平和的な復興には今までの農地制度を改革し、農民を保護しようという、根本的な農政の基本であるポツダム宣言に基く指令の趣旨を、完全に蹂躪し去つているとわれわれは考えております。これに対して、もしそうでないという論拠がありましたら、はつきり御説明願いたいと思います。
  88. 森幸太郎

    森国務大臣 御解釈は自由であります。われわれはその覚書よく知つております。その覚書に準拠してあらゆる施策を講じて来ております。
  89. 八木一郎

    八木委員長代理 本日はこの程度にとどめまして、次会は明十三日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後三時四十一分散会