運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1950-04-11 第7回国会 衆議院 農林委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年四月十一日(火曜日)     午前十一時三十二分開議  出席委員    委員長 小笠原八十美君    理事 安部 俊吾君 理事 野原 正勝君    理事 松浦 東介君 理事 八木 一郎君   理事 藥師神岩太郎君 理事 山村新治郎君    理事 井上 良二君 理事 小林 運美君    理事 山口 武秀君 理事 吉川 久衛君       青木  正君    足立 篤郎君       遠藤 三郎君    小淵 光平君       河野 謙三君    寺本  齋君       中村  清君    原田 雪松君       渕  通義君    村上 清治君       守島 伍郎君    山本 久雄君       石井 繁丸君    坂口 主税君       小平  忠君  出席国務大臣         農 林 大 臣 森 幸太郎君  出席政府委員         農林政務次官  坂本  實君         農林事務官         (農政局長)  藤田  巖君         林野庁長官   横川 信夫君  委員外出席者         農林事務官         (林野庁林政部         林政課長)   奧原日出男君         專  門  員 岩隈  博君         專  門  員 藤井  信君     ————————————— 本日の会議に付した事件  小委員補欠選任に関する件  農業協同組合法の一部を改正する法律案内閣  提出第一二一号)  造林臨時措置法案内閣提出第一六〇号)  小委員長中間報告聽取     —————————————
  2. 小笠原八十美

    小笠原委員長 これより会議を開きます。  議事に入る前に小委員補欠選任を行います。去る八日、公団に関する小委員及び蚕糸価格安定に関する法律案起草小委員でありました寺本齋君委員を辞任ぜられましたので、両小委員補欠選任を行わなければなりません。これは先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小笠原八十美

    小笠原委員長 御異議なしと認めます。それでは公団に関する小委員及び蚕糸価格安定に関する法律案起草小委員寺本齋君を指名いたします。
  4. 小笠原八十美

    小笠原委員長 まず造林臨時措置法案議題とし、質疑に入ります。野原君。
  5. 野原正勝

    野原委員 造林臨時措置法案に関しまして二、三政府見解をお伺いいたします。まずこの法律によりまして、戰時中における過伐、濫伐の結果生じた、いまだ造林できないでおるところの百二十万町歩民有林に対しまして、きるだけ早く造林をするということはよくわかるのでありますが、さてこれはひとり民有林のみならず、国有林に対しましても、まつたく同様のことが言えると思うのでありまして、戰時中におきましては、民有林国有林を問わず、わが国林業は、造林の部面におきましては、ほとんど等閑に付されておつたのでありまして、この法律によりまして、一応民有林に対する対策臨時措置としてとられたわけでありますが、国有林に対する関係はどうなつておるか。たとえば国有林の中で相当伐採跡地があり、これらは造林をすべき場所であるというような條件のものがあつて地方でその開放を受けてぜひとも造林をしたいという熾烈な意図をもつて造林希望する者があつた場合におきましても、この法律からは国有林は除外されておる。従つて国有林はこの対象にならないことになつておるわけでありますが、わが国の現在の林業上から見ますならば、国をあげて池林しなければならぬ段階である。時あたかも、今月の一日から緑の週間が催されております。国をあげていわゆる挙国浩林緑化運動も起きておるような状態でありますので、国有林の今後の造林に対しては、どういうお考えであるか、その点をまず一応伺いたいと思います。
  6. 横川信夫

    横川政府委員 二十四年度末の国有林の要造林面積に三十二万町歩でございます。国有林は特に以前から植伐の均衡ということに重点を置きましてやつて参つてつたのであります。その三十二万町歩のうち、人工植栽を要するものが十六万一千町歩ございます。民有林造林五箇年計画と対応いたしまして、やはり五箇年計画を立てまして、年々四万町歩ないし五万町歩人工造林をいたして参る計画でありますけれども昭和三十年までその人工造林の完成にはかかる予定であります。  なお地元の方々が、国有林造林をしたいというような強い御要望のあることは、私ども承知いたしておりますが、これは部分林規定を広く活用することにいたしまして造林意欲にこたえて参りたい、かように考えております。
  7. 野原正勝

    野原委員 今回の臨時措置法によりまして、大いに造林をしなければならぬということで、その第一條にうたつております事柄といたしまして、造林に対する補助金の交付、資金融通苗木の確保、その他のことをうたつておるのであります。特に寄木を十分確保しないことは造林はできないのでありまして、この問題に関しましては、昨年までは相当額補助金があつたのであります。二億五百万円かの苗木育成のための補助金が、生産業者に與えられておつたのでありますが、これが三十五年度からは一切打切りになつてしまつたのであります。まことに矛盾もはなはだしいといわざるを得ないのでありますが、この打切りになつてしまつた関係上、苗木生産をしております人たちはも今日非常に資金難に困り切つておるのであります。せめてこの資金を十分にまわしてもらつて苗木生産をやりたいという希望を持つておりますけれども、それらに対しましては、一体政府はどういう対策考えておるか。そしてまた苗木生産業者がせつかくつくりました苗木が、もし万が一売れないようなことがあつてはたいへん困るという点を心配しておるのでありまして、できるならば、生産されました苗木を全部国が買い上げてもらいたいということを、強く要望しておるのであります。しかしながら国が買い上げるというようなことは、にわかに困難かと思うのでありますが、せめて生産された苗木が、円滑に各造林者の方にまわつて行くということのためには、あらかじめ予約生産のような形でもつてこれを生産させるというようなことも必要かと思うのでありますが、まずその点はどんな風なお考えを持つておるか。まず融資の問題と、それから生産された苗木処置の問題に対しまして、政府見解を伺いたいと思います。
  8. 横川信夫

    横川政府委員 苗木昭和二十一年度から養成補助金を出しておるのでありますが、ようやく苗木需要のバランスがとれるようになつて参つたのであります。二十五年度におきましては、結局余裕のできるような状態になりましたので、なお苗木養成事業として成立つようになりましたので、苗木補助金打切つたのであります。お話のように、苗木事業というものは、大体三年先の需要を見越しまして養成をするというような事業でもありますので、お話のように苗木商が不安に思うことはごもつともだと思うのであります。本年春から需要者苗木生産者と結びつけまして、予約生産的な処置を二、三講じておりますが、これは全面的にさような処置をいたしまして不安なしに苗木業者養成事業に当るという処置を講じて参りたいと考えるのであります。  なお金融の点につきましては、中金を通しまして、森林組合系統から、約五百万の融資が現在出ておるのでありますが、なおこの点を、さらに多額に出していただくように努力したいと考えております。
  9. 野原正勝

    野原委員 苗木生産に関連しましてもう一つだけ伺いたいと思いますが、国有林特別会計における苗木養成に関しましてこの二十五年度において、見返り資金が約六億八千八百万円が向けられることになつたのでありまして、国有林苗木生産に関しましては、これは非常にけつこうなことであるのでありますが、さて苗木生産をしております諸君は、国有林厖大予算をもつて苗木生産をみずからやることに関しまして、長いことやつて参りました自分たち苗木生産に対して、非常にまた不安を感じている向きも少くないのでありますが、その長年の経験及び技術を十分に生かすために、この民間苗木生産しておつた、こうしたまじめな業者に対しましては、何らかの措置を講じて、この国有林樹苗養成等仕事をも、その経験あるまじめな業者の協力を得て生産を行うということが、きわめて賢明な策であろうと思うのでありますが、林野庁はそれに対していかなるお考えを持つているか伺いたいと思います。
  10. 横川信夫

    横川政府委員 お話通りでありまして、すでに営林局長を通じまして各地の苗木生産業者技術施設とを十分に活用するように、この約六億の苗木養成費を、できるだけ民間技術施設とを活用するようにして、生産するように指導いたしております。
  11. 野原正勝

    野原委員 この造林実施にあたりましては、政府は特に第一條に、補助金を交付し、あるいはまた融資の道を講ずるということを、強く明文でうたつておるのでありますが、補助金の方は先般の全共事業費において、すでに計上されましたものがはつきりしております。しかし造林資金融通の問題につきましては、まだはつきりしていない面もあるのでありますが、どんな見通しであるか、またいかなる方法をもつて融資方法をはかるか、この点をお伺いいたしたい。
  12. 奧原日出男

    奧原説明員 造林に関しまする政府の施策の中におきまして、ただいま御指摘のありましたように、融資に関しまする部分だけが、なおかくのごとく決定され、かくのごとく実施するということを申し上げる段階に至つておらないことを、まことに申訳なく存ずるのであります。しかしながらこの問題は、この造林措置法というものの推進によりまして、今日まで推進されて参りましたし、また今後もこの法律があるということによつて、この問題の解決に、きわめてよい材料になるのではないか、かように存じておるのであります。今日までのこの造林に関する低利長期資金の補給の問題に関しまする経世を申し上げれば、エード・フアンドから産業資金として予定されております四百億、及び予備としてとつてあります二百八十億、この金をそれぞれ産業資金放出するにあたりまして、造林に対しましても同じく放出せられるととを、非常にわれわれとしては要請して参つたわけであります。この額につきましては、第一段階におきましては、十億造林放出されることを要請し、また第二段階におきましては、このエード・フアンドからの放出と、中金の債券の発行によりまする造林に対下る融資を合せまして約七、八億のものをこちらに振り向けるというふうなことを、考慮はいたしておつたのであります。最近に至りまして、この予備と相なつております二百八十億に関しましては、米国の明会計年度における対日援助の額の見通しが立つまで、しばらくこれの使用を見合せる、こういうふうな関係方面意向が漸次強くなつて参りまして、従いまして、四百億という産業資金の中に、造林業に対する融資を、どうしてもつつこんで行わなければならない、こういうふうな情勢に相なつておるのであります。しかしながら、われわれといたしましては希望を捨てずに、その四百億の中で、やはり造林について何がしかのものを獲得いたしたい。司令部の方におきましては、主としてこの金は工場投資に使いたいというお考えのようでありますが、しかしながら造林業に対しよする、長期資金放出によりまする測定設備の拡充ということが、喫緊の責務でありますので、そういう線で、さらに目下交渉を継続いたしておるような次第であります。なおエード・フンドから出ます造林資金に関しましては、大体七分五厘でエード・フアンドからは出るのでありますが、これを造林者に対しましては、四分五厘で融資できますように、大蔵省とも内々は大体了解をつけておる次第であります。
  13. 野原正勝

    野原委員 この造林臨時措置法と、自作農創設特別措置法との関係を伺いたいと思いますが、この造林措置法におきましては、一応従来から、すでに農調油によつて買上げなつたものに対しましては、造林地指定はやらないということになつており、造林地指定をしたものに対しましては、買上げはしないという原則で、あたかも不可侵條約のような形であるのであります。従来から自作農創設特別措置法によるところの林野買上げというものを見て参りますと、中には非常に極端な行き過ぎが多かつたのであります。非常にまだ幼齢造林地が、開墾地としてすでに買上げになつてしまつたという所があるのでございます。これらがいまだに何ら開墾されずに、買上げ目的を達せずにそのまま放任されておる。適当な撫育をし、手入れをしてやる必要のあるような、こういうような林群が依然として放任されておるということは、はなはだ遺憾でありまして、私どもは、むしろせつかく開墾地として買上げをした所であつても、開墾ができないでおる、開墾が不可能であるというものに対しましては、なるべく早く元の所有者にもどすべきではないかと思うのでありまして、今回の農調法改正、特に自作農創設特別措置法の一部を改正する法律案が出ておりますが、この四十六條の二には、買上げをしてから十年たたなければできない、十年たつたものに対しては、農林大臣が元の所有者に時価でもつてもどすことができるというふうになつておりますけれども、十年もこの山が放任されておつたのでは、全然造林地としての価値はなくなつてしまうのであります。少くとも三年または五年、せいぜい五年程度ならばいたし方がないといたしましても、十年もこれをほつておくということは、はなはだ遺憾に考えるのでありまして、今回の造林措置法における農調法との関係は、はなはだ手ぬるいというような感じがするのでございまして、国をあげて造林をしなければならぬというときに、補助金までやつて造林をするというときに、すでに造林をしておつたところに対しましては、今後十分にお考えを願いたい。これは特に農林大臣がたまたまおいででありますから、ひつと農林大臣に伺いたいのでありますが、今度の自作農創設特別措置法改正等におきましては、十年などと言わないで、これを五年くらいにしていただく意思ありやいなや。これに対するお考えをお伺いいたします。
  14. 森幸太郎

    森国務大臣 十年ということに規定するにつきましては、事務当局に詳しく説明をいたさせますが、山林を伐採いたしまして二箇年間そのまま放置しておるものに対して法的措置をとるということは、いかに造林というものか国土保安の上で緊要であるかという証左でありまして、この法案提出いたしたのであります。この気持から考えまして、未開墾地あるいは林野牧野等農地に一応指定いたしながら、三年も三年も捨てておくというようなことは、今回の立法考え方からみましても、許すべからざる事柄でありますので、これはそういうふうな、開墾の意思なきものと認めた場合におきましては、ただちにこれに適当な処理をいたす方針であります。
  15. 野原正勝

    野原委員 ただいまの大臣の言明によりまして、はなはだはつきりいたしたのでありますが、どうぞひとつそういうものに対しましては、英断をもつて、どしどしとやつていただきたいことを重ねてお願いする次第であります。  次に、この法律によりますと、造林地として指定いたしますためには、伐採後二箇年ということになつておりまするが、この点の伐採ということの内容でございますが、もしかりに林内において、一、二割の立木を残して切つておるというふうな場合においては、まだ全部切らないから、これはだめであるというふうなことが言えるようにも思うのでありまして、この点を明白にしておく必要があるのであろうと思いますが、私の考えでは、これは大部分立木伐採したもの、すなわち少くとも立木の七割程度を切つたものに対しましては、これは伐採済みというふうに考えてよかろうと思うのでありますが、その辺に対するお考えはいかがでありましようか、お伺いいたします。
  16. 横川信夫

    横川政府委員 私どもといたしましては、お話通りに鬱蔽度が〇・三、結局立木を七割切つてしまつたものは、伐採跡地というふうに考え処置をいたしたいと考えております。
  17. 野原正勝

    野原委員 この臨時措置法によるところの造林なるものは、人工植栽によるものであるということをはつきりうたつてあるのでありますが、ところが山の経営におきましては、それに類似する行為が相当ある。たとえば人工播種——人工によつて直播をするというふうなことによつて更新をはかる場合もございます。あるいはまた天然力を利用する意味において、天然更新によつて天然に播種されたものと、それの足らないところに対しましては、人工によつと樹植をすることによつてりつば造林地をつくるという、自然の立地環境に応じた適切なる臨時的措置が講ぜられておるわけでありますが、ここでは單純に人工造林人工によつて植栽するものとはつきりいたしております。その点に対しましては、技術的な問題でありますけれども、一応御見解を伺いたいと思います。
  18. 横川信夫

    横川政府委員 お話のように人工播種、あるいは天然更新というようなものは、当然造林法による指定として買い上げまして造林計画においては人工植栽ばかりを行うのであります。
  19. 野原正勝

    野原委員 この法律によりまして、わが国戰時中における過伐、濫伐の跡始末がおおむねできると私は信じておりますので、非常にけつこうだと思うのでありますが、さて問題は、單に造林するのみでなく、今日ややもすると、経済的事情等によりまして、いまだ適正なる伐採の樹齢に達しないような、いわゆる幼齢林伐採がどんどん行われるというふうな状況でございます。従いまして、ある程度あまりに幼齢な林は伐採させない、いわゆる伐採を制限するというような方策、またその制限の間においては、適正なる金融的措置を講じて、最大生長量を持つ時期においては、できるだけ森林を温存するというふうな対策が必要であろうと思うのであります。いわゆる森林施業調整法というようなものの立法が望ましいと思うのでありますが、それに対しましては、政府はいかなるお考えを持つておるか伺いたい。
  20. 横川信夫

    横川政府委員 お話のように、幼齢林伐採をいたしまして、せつかく成長旺盛なる木を切つてしまうというような事例がたくさんあるようでありまして、これに対しましては、昭和二十二年度から、民有林計画化という予算をとりまして、全面的に民有林施業計画によつて、合理的な経営をして参るという方針が進んでおるのであります。予算的措置によりまして施業の合理化をはかり、すでに実現の段階に達しておるような状態であります。
  21. 野原正勝

    野原委員 この法律によりまして、造林地としてこれを指定し、あるいはまたこれを造林せしむる、いわゆる造林者認定等も、これはすべて地方都道府県知事権限と相なつておるのであります。都道府県知事にこれらの権限をまかせて、適正に実施してもらうことを期待するわけでありますが、これらの厖大仕事をひとり知事権限にまかせて、適正にやることができるかどうか、はなはだ疑問とするのでありましてかつてこの法律原案と申すべき案が練られた当時におきましては、この知事を補佐すべき地方造林審議会というような機関を設けて、林業に熱心な方たち意見を参考として、適切な民主的な運営によつてつて行こうというような案もあつたやに伺つておるのでありますが、この法律を見ますと、そういう地方造林審議会等規定は全部なくなつておるようでありますが、知事に一切の権限をまかせてやるということに対しましては、地方知事は、それぞれの機関を動員して適切なる実施をすることと思いますけれども、それに対しましては、できるだけ民主的な方法でやつていただかなければならぬと思うのでありますが、一体林野庁はどういうふうな指導方法をもつてつて行くか、その点を伺いたいのであります。
  22. 奧原日出男

    奧原説明員 この法案の立案中におきましては、ただいま野原さんから御指摘のありましたような、諮問機関といたしましての造林審議会どいうものを考えておつた次第であります。しかしながら、かくのごとき諮問機関をつくりますことが、国の行政活動に対しまして民間人を参與させるという意味におきまして、経済民主化というものに反するという関係筋意向もございまして、制度といたしましてのこういう諮問機関は、この法律から削除いたしたような次第であります。しかしながら、官僚の独占ということは、あくまでも押えて行かなければならないと考えておるのでありまして、この法律に基きますいろいろな処分、あるいは裁定等の場合におきましては、もちろん非公式には関係者意向も十分聽取いたしますとともに、学識経験者等意見をも、参酌でき得るように指導いたしたいと存じております。
  23. 山口武秀

    山口(武)委員 ただいま野原委員森農林大臣質疑応答のときに、私ちよつと了解できない大臣の答弁がありましたので、お聞きいたしたいと思うのであります。それは開墾地の場合に、開墾が現実に進まない場合、開墾地としての指定を取消し、これに即時植林するというようなことを言われたのですが、そういうつもりなんですか。
  24. 森幸太郎

    森國務大臣 自作農創設特別措置法の四十六條の二をよく読んでいただきますれば、私のお答えいたした内容になつております。
  25. 山口武秀

    山口(武)委員 法律案はどうなつていてもいいのですが、開墾が進まない場合には、それを取消して造林をするということをやられるのですか。
  26. 森幸太郎

    森國務大臣 自作農創設特別措置法はこういう條文になつております。農林大臣は、第三條、第十五條と、いろいろな條文がありますが、買牧または第四十一條の五第一項の規定による買收によつて取得した土地権利または立木工作物その他の物件当該取得目的に供しないことを相当と認めるときは、当該土地権利または立木工作物その他の物件を第十六條以下の規定にかかわらず、命令の定めるところにより、従前の所有者またはその一般承継人にその取得の対価に相当する額で売り渡さなければならない。いわゆる農地として買收を認めた。しかしそれをいつまでもいつまでも捨てておいて、開墾もしなければ何もしない。そうすると、この土地は耕地にするよりもやはり林野にした方がいいのだ。いわゆる当初の買收目的失つた場合においては、政府はこれを取上げて、元の地主に渡すことができる。こういう自作農法律がある。これを野原委員にお答えいたしたわけであります。
  27. 山口武秀

    山口(武)委員 御説明でわかりましたが、そういうことをあまり利用されると困る事態が起るのではないか。なぜかと申しますれば、これは今農家全般が困つております。特に開拓者というのは一番逆境に置かれておりまして、開拓予定を持つておりながら、資金関係その他いろいろな支障のために、これをなし得ないというようなこともあるだろうと思う。そういうような場合に、こういう法律使つて、その取消しをやるのではなくて、開拓できるようにむしろ保護すべきではないかペたをすとこれが悪用されて、土地の元の所有者への奪還が行われる。このような傾向を生んではまずいのではないか、これに対する見解を承りたいと思います。
  28. 森幸太郎

    森國務大臣 御心配になるようなことはないと存じております。
  29. 小笠原八十美

    小笠原委員長 他に質疑はありませんか——質疑はないようでありますから、これにて本案に対する質疑は終了いたしました。  引続き本案に対する討論に入ります。討論の通告がありませんので、この際討論を省略して、ただちに本案の採決を行います。本案原案賛成諸君起立を求めます。     〔賛成春起立
  30. 小笠原八十美

    小笠原委員長 起立多数。よつて本案原案通り多数をもつて可決いたしました。  なおこの際委員会報告書の件についてお諮りいたします。これは先例によりまして委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  31. 小笠原八十美

    小笠原委員長 御異議なしと認めます。それではさよう決しました。     —————————————
  32. 小笠原八十美

    小笠原委員長 次に前会に引続き農業協同組合法の一部を改正する法律案議題とし、その質疑を継続いたします。井上委員
  33. 井上良二

    井上(良)委員 農業協同組合法の一部を改正する法律案に関連しまして、農林大臣に質問したいと思うのであります。私昨日、本案をめぐりまして事務当局に質問したのですが、その質問の重点は、今回改正をいたそうとする箇所は、現在農協がその経営の上に非常に困難な実情にある。     〔委員長退席、松浦委員長代理着席〕 これを何とか打開し、また農協の健全な発達を促進しようという考え方から、改正案が出されておるように考えるのでありますか、御存じの通り、農協は発足しましてわずか二箇年にしかなりませんので、いろいろな準備また経済的ないろいろな関係から、健全な発達を遂げておるとは申されません。しかしながら今日まで結成されました農協が、その單位農協におきまして約三分の二、県連單位において約二分の一というものは、まつた経営困難に陥り、動きのとれない状態にある。すでに政府みずからも発表しております通り、純金員から預かりました預金の支拂いさえできない、あるいはまたせつかく買い入れたいろいろな生産用資材、生活必需物資等が、そのまま農協に滞貨して、これが約三百億という巨額に達しておつて、この金融のあつせんも、政府みずから行わなければならぬというような実情になつておる。かくのごとく農協が非常な行詰まりを来しておるということは、農協結成をいたしました、つまり農業生産力の発展、農村における民主的な基盤としての組織、これを目がけて結成をいたしたのでありますが、今日の実情に立ち至りましたのは、何が原因かといえば、これは私昨日も申したのでありますが、農協自身の経営の不手ぎわといいますか、そういう面も一部にはありますけれども、農協が今日のような行詰まりの実情になりましたのは、一にがかつて吉田内閣のいわゆる経済安定政策が、農業経営の合理性を無視して、遂行されておるところに重大な原因がある。この吉田内閣の農業経営合理化を無視した経済政策が、私は重大な原因であると思います。今日わが国の農業が、世界農業の一環として立たなければならぬ実情になつておるときに、政府は現在わが国の原始的生産による零細経営の農業をして、いかに農業の合理性を確保し、その農産物価格を安定化させることの自信があるかどうかという基本的な問題、この問題を明確にせずして、農協の再建や救済にいろいろな手を打つてみたところで、それは何ら役に立たないことです。根本的な農業の合理化を確立する基本的政策というものが打立てられなければならぬ、私はこう思います。ところが最近政府、特に森農政を見ておりますと、非常に中心がぼけてしまつておる。私はこんなことをこの席で、はなはだ申し上げたくないのでありますけれども、先般政府の当局者と與党のいわゆる農政の代表者が湯河原の温泉に集まりまして、そこでいわゆる湯河原会談なるものを行つた。この湯河原協定の内容というものは、まつたわが国の農村の実情、食糧政策の基本的対策というものを、冒涜するもはなはだしい対策が立てられておる。それが今日司令部意向として、一部新聞に伝えられるところによると、まつたかくのごときことは、今日わが国の実情から許されないということを明確にされ、あわてふためいた農林当環は、今まで與党の幹部とせつかく協定をしたものを弊履のごとく踏みにじつて、また別な案を再びこれから考える。一体何という農民、国民を愚弄したやり方であろうか。かくのごとき豹変きわまる対策をもつてわが国人口の半数を占め、わが国経済の重要な地位に立つ農村に対して、こんなことで一体いいかということです。これらの点について、一体農林大臣は、今後のわが国の農業政策をいかなる方針をもつてやろうとするか、この基本的な対策を、明確にこの際されたいと思うのでおります。
  34. 森幸太郎

    森國務大臣 りくつというものはどうでもつくものであります。農業協同組合の振興策、農業政策がはつきりしてないと、何か脱線したような御意見が運ばれて行つたようでありますが、私の農業政策に対しましては、たびたび申し上げて、井上委員もよく了解していただいておることと存じます。しかし立場が立場でありますから、わかつてもわからないとして反対されるのは、これは御自由でありますが、決してあいまいにこたる政策をもつて進んでおるのではないのであります。協同組合に対する考え方も、たびたび申し上げた通りであります。わずか二年余りしか協同組合はたつておりません。完全なる発達をすべき時期はまだ来ておらない。しかるに、この協同組合が、かの解散いたしました農業会の跡始末を背負い込んでできたことが、協同組合の発達を阻止した点なんであります。何とかしてこの協同組合を、完全な筋に乗せたいということに努力をいたしておるのでありますが、その一局といたしまして、今回協同組合法の一部改正いたしまして、いたずらな連合会をたくさんこしらえることをできるだけ整理して、單位協同組合の負担を軽減し、また監査の面も改めて、内容の充実をはかるようにして行く。そうして協同組合自体が、農業者の協同団体としての仕事ができ得る信用を高めて行くというふうに導いて行きたいというのが、今御審議を願つておりまする協同組合法改正法の本意なのであります。これとても必ずしも完全しとは申しませんが、何分自主的にすべての法律を制定し得ない立場の最大限度において、この法案は今日の場合許された範囲のものであると御了承願いたいのであります。決してこれをもつて満足いたしておるとは考えておらないのでありますか、協同組合の自覚によりまして、みずから内部より立ち上つて行くことと、そうしてこの法の面から協同組合を助長し、助成して行きたいということを、御了承願いたいのであります。  ついでにお尋ねでありましたが、食糧の問題に対して湯河原会談までお出しになつたのでありますが、これは過日もここで申し上げた通りであります。あの新聞記事の取扱い方が、政府と與党との政策が一致したという発表がありましたことについて、私は釈明をいたしておつたのであります。政府の政策は、もちろん主管省において立案いたします。また政党の相談すべき機関にも相談をいたしますが、結論といたしましては、閣議の了解、閣議の決定によつて、これをあるいは官房長官の談として発表し、あるいは農林省発表として正式に発表することが、農業政策の表わし方であります。しかし先般来の新聞の取扱い方が、この正当な筋を渡つておりません。そこであの内容について私は賛否はさしひかえております。あの決定されたことは、全然悪い、あるいは全然いいという、可否を加えておりません。ただ政策が一致したということを発表されたことについて釈明をいたしておつただけであります。たまたま新聞記者諸君からも、そういうふうな釈明では農民が迷うから、一応農相談として、農民に農林省の考えておることを発表したらどうだという注意をしてくれる人もありました。しかしその当時私が説明いたしておりました通り、食確法は来年三月三十一日をもつて一応終る。それであるから、今後それにかわるべき何らかの食糧政策を立てなければならない。それには、二十五年産の米はすでに生産計画を立てておる。供出の割当もいたしておる。今後明年の三月三十一日以後において取扱うのは、本年の十月ないし十一月にまく麦より始まるのである。それであるから、遅くとも八、九月ころまでには、現在の食確法にかわるべき食糧政策を立案して、発表すべきである。目下研究を急いでおるのである。こういうことをお答えいたしておつたのであります。ところが、私旅行いたしておりまして、本日帰つて、本日の毎日新聞を見ましたら、いかにも司令部と農林当局との間に了解ができたような記事がれいれいしく掲げられてありましたので、実は驚いたのであります。さつそく責任者を招致いたしまして、その記事の出所等について調査をいたしたのでありますか、これは農林事務当局として全然関知いたしておりません。ただその内容についてあるいはさように考えておる面もあります。また全然さようなことを考えておらない面もあります。いろいろ面もありますが、これは先般発表されました記事と同一で、私の今の立場として、農林省としての根本的政策を確立いたしておらない以上、この記事についてどれがいい、どれが亜いとは申せませんが、この毎日新聞に出ました記事は、農林省といたしましては全然関知いたしておりません。これは明らかに申し上げておきます。ことに司令部とは何らか折衝があつたようなお話がございましたが、これまた全然ありません。その一部においては、司令部の一個人として、こうしたらどうだ、ああしたらどうだという示唆のあつたことはあります。それは末尾に出ております量より質、いわゆる精白度を高めるとか、あるいは製粉の歩合率を下げて行くというようなことは、これはもうすでに発表してもよいことに司令部との了解を得ております。その他の点につきましては、農林省といたしましては司令部と折衝しておりませんし、また折衝するまで農林省は立案いたしておりません。そこで今日も事務当局に、こういう記事が再三出ては国民をまどわすばかりであるから、一日も早く農林省は農林省の案を正式に決定し、そうして相談すべき筋合いには相談して、閣議で了解を求めて発表すべきである、すみやかに立案すべきであるというふうに、命令いたした次第であります。決して新聞記事にうたわれましたからといつて、私が右往左往しておるわけではないのであります。どうか賢明なる井上委員としては、新聞の記事を眼光紙背に徹してお読み願いまして、御批判を願いたいと思います。
  35. 井上良二

    井上(良)委員 詳細な御答弁がございましたか、私の聞いておるのは、今日の協同組合の現状をこのままにしておいたのでは、とうてい協同組合自身の経営が成り立たない。その成り立たないというのは、今日わが国経済全体の動きが、農村へずつと重たいしわを寄せて来ておるからであります。これに対する積極的な手を打たなければ、協同組合だけを特別にどうしたところで、それはどうにもならないという考え方であります。私の考え方が誤つておるのならそれは別であります。たとえば農産物価格をどう維持して行こうとするか。あるいは農業課税は、一部国税においては軽減されましたが地方税では大幅に引上られます。さらに農村金融相当引締められております。農村に対する新しい生産方式の積極的な国家投資は、年々その率が下つております。その全体のしわが農村に寄つて来ておるのでありまして、この問題を根本的に解決しなければ、協同組合だけ特に手当をしても、協同組合自身は農村経済の一環であるのでありますから、それはだめだ。現にあなたがおつしやいましたが、たとえば預貯金の支拂いに困つておる。短期の融通資金さへ、今日まだはつきり目途がついておらない。あるいは滞貨処分についてもそうであります。これなんかを早急に片づけて行かなければ、農協は立つて行かない。この問題を裏づけるものは、何としても農村の再建なんです。農村の生産力を高める基本的條件を確立しなければならないと、私は考えております。そういう面に対して、一番重要なものは農産物価格の問題、特に食糧対策の問題であると思います。これに対して今あなたはいろいろ御説明になりました。あるいは湯河原会談については、おれは賛成も反対もしない、こう言うけれども、少くともあなたの下僚である食糧管理局長なり、食糧部長なり、安本の生活物資局長なり、それぞれ農林、安本の有数の当局者が、この会議に出席しておる。そうして、一方與党の有数の農林の専門家もこれに出席して、そこで一定の協定をやつておる。これが少くともその了解事項として新聞に発表されました以上は、やはり一つの政治的な問題になつて中ると思うのです。これに対して農林大臣として、おれはどういう態度で臨むのだという、大臣としての一定の方針を明確にすることは、当然の責任であります。おれはそれに対して賛否を嘉しないという、そのあいまいな態度が、森農政をして混迷に陷れているのだと思う。御承知のごとく、国内に生ける食糧の生産の基本的対策は、まだ明確になつていない。また外国輸入食糧が、どれほど国内の農村に大きな影響を與えておるかということは、あなたの御存じの通りなんです。この問題が基本的に解決されなければ、私は農協だけをどうしよう、こうしようといつても、農協だけの一人歩きでは上くならないという考え方です。だから私はあなたに伺いますが、いかにして農産物価格を維持しようとするか、国内における農産物市場をいかに確保しようとするか、この問題は基本的な問題であります。これに対する、あなたの基本的な対策を明らかにしてもらいたい。それと同時に、農協に対するあなたの信念の一部は私はわかりますが、それを具体化しなければならかい。具体化するのには、さしあたり預貯金に対する融資こうこうこういうわけでこうする。あるいは滞貨処分に必要なるところの、約五十億なら五十億の金はこうするということを、明確にしなければいけない。そうしなけば問題の解決にならないと思うのですが、その点を明確にしていただきたいと思います。
  36. 森幸太郎

    森國務大臣 どうも私の聞きそこたいか、話が幾つにもわかれておりますので、どこからお答えしてよいかわ九らないのですが、農協がりつぱになつただけでは、必ずしも農村は救えない。もとよりそうであります。私は農協がりつぱになれば、それで農業政策終れりとは毛頭考えておりません。農業政策を遂行する上においては、相手方は農業協同組合が中心である。だから一日も早く農業協同組合をりつばなものにいたしたい。これは先ほど申し上げた通りであります。それに関連して、裏づけ物資であるとか、貯金の問題であるとかいうようなお話か出ました。裏づけ物資に対しましては、ここでお話いたしました通り、大体打つべき手は打ちました。と申しますのは、農協があの物資の配給の責任を持つて、それか売れなかつた。そうしてその代金は手形を発行しておる。売れないからその手形の期限が来ても金が払えない。そして協同組合も困るし、問屋も困る。ますさしあたり打つべき手は、との手形をどう決済せしむべきかという問題であります。それでありますから、一応在庫のものは問屋が全部引受けたという形でとりまして、これに対して十八億の金を融通して、不渡り手形の出ない一石を打つたわけであります。それからの問題は、この報奨物資の性質に立ちかえつて、この報奥物資が市価より高いようなもので配給されては、農業者に対して申しわけないから、何とかしてこれを市価よりもいくらかでも安いというこの考え方に沿うような価格で、一応元通りの配船ができないか、そこに今手を打たんといたしておるのであります。これは農業協同組合の発達でなしに、当面のいわゆる臨時的な問題に対する処置方法であります。なおもう一つお述べになりました融資の問題でありますが、農業会の財産引受けについて、金が少くとも五十億余万円なければ引受けができない。何とかしてこの金を融通せよという話が、連合会からあつたのであります。井上委員も御承知の通り、金は目当なしに貸せるものではないのであります。それで五十億という要求の内容を、大蔵省の銀行局長によく相談して、これこれのものが必要であるという内容お話しなさい。また金としましては、信用と担保の二つの道で行くのでありますが、今日は担保ということを第一に考えなければならない。農業協同組合にどれだけの担保物件があるか、それを提示しなければ金がまわらない、また農機具等の非常な手持ちがある。そういうものはどういう価値のあるものか、現在の価格を帳簿価格でなしに、現在どのくらい価値があるかということをはつきりしなければ、金融の道が立たない。それをはつきりして、大蔵省銀行局とよく御相談になれば、政府といたしましては、決してこの問題について救護の手を延べることにやぶさかではないのであるから、そういう方面に処置をしてもらいたい。こういうことで今協議が進められておる段階にあります。そうして、もうひとつの協同組合の信用問題でありますが、これは私はなるべくは世間に発表したくない。いわゆる臭いものにふたをするわけではありませんけれども、銀行でもあの銀行が取付けた、この銀行が取付けたとなると、取付けなくてもいい銀行も取付けに会うのでありますが、協同組合が金融面に非常に悪い、預金の支払いのできぬものがこれこれある。これの会計年度の行詰まりがこれだけあるということは、これを羅列いたしますことは、協同組合自体の信用を落してしまいます。これはこの間発表していいかどうか、悪いかと思いましたが、すでに発表されておりますが、七十億の金をまわしておかなければならぬ、もう十億の八十億の金をまわして来なければ困るということを要求されて来たのでありますが、しかし表へ出てしまつた以上は仕方がないけれども、決してやまでも何でもない事実であります。できるだけ早く救護の手を差延べなければなりませんが、八十億という金が、そう無條件融資されるものではないのであります。それで今この改正法案を出しておりまするが、監査制度を設けて、組合の内容をよく調査して、この協同組合のやり方ならばこうすれば立ち上つて行くという目途のついた場合には、その協同組合のつぶれないように、資金を何十億でも持つて行く、こういう処置をとつて行きたい、かように今考えておるのであります。その協同組合連合会と協力いたしまして、その内容の立て直し、内容の粛正等をやつて、一日も早く、協同組合が維持でき、発達して行くような姿にもどしたいと考えておるわけであります。なおお話が、協同組合だけやつてはいかぬ、農産物の価格をどういうようにして維持するかという問題でありますが、この問題につきましても、かつて幾たびもお答えいたしました。現在はいろいろ御議論もありますけれども、農産物の生産の過程において必要なる購入資材というものと考え合して、農産物の価格が決定されておるわけであります。これは消費というものと生産というものを、統制の上において責任を持つ今日の段階においてはやむを得ないのでありますが、今後自由な貿易になりまして、外国からどんどんと安い農産物が入つて来るということになれば、たちまち日本の農村は脅威を受けることば申し上げるまでもないのでありますから、そういう場合においては、適当な処置をとることは当然であります。しかも今日までは、従来の内閣がやつて来ました通りに、食糧生産のために農業経営を犠牲にして参つたのであります。農業経営の立場から考えて、こういうふうな経営をいたした方が経営の上において合理的であるということでありましても、食糧増産のためにその犠牲を没却せしめて、食糧増産に努力させて来たという事実、これは御次知の通りであります。しかし今日は、その当時のごとき食糧が、国内の食糧生産がふえたというわけではありませんけれども、食糧確保り獲得の道がよほど楽になりましたために、ここにおいて私は農業経営本位にもどすべきである、かように考えて、養蚕の有利である地方には養蚕を復興いたします。また花卉園芸を農業経営に取入れた方がいいといろ地方においては、花卉園芸なり、いろいろな特殊作物の栽培に経営の面をかえて行くということにつきまして、農業自体の経営を主眼として、合理化に持つて行くということでなければならぬと存じておるようなわけであります。     〔松浦委員長代理退席、委員長着席〕  五年計画、十年計画という計画を持つて進んでおるわけではありませんが、決して場当りでその日暮しの農業政策を持つておるというわけでないことは、どうぞひとつ御了承を願いたいと存じます。
  37. 井上良二

    井上(良)委員 最後にこの点明瞭にしておきたいと思いますが、農産物価格の維持の問題について、一番やつかいな問題は、御存じの通り供出完了後自由販売にするかしないかということが、常に議論の中心になつております。湯河原会談においてもその通り、最近またいろいろ記事に出ておりますのもその通り大臣は一体雑穀は完全に割当通りに買い上げるか、供出後は自由販売にするかしないか、それから麦も供出後は自由販売にするかしないか、この米麦の供出後の問題について、一体どういう考え方を持つておるか、この際明確にしておいていただきたいことを、お願いします。  それから特にこの際伺つておきたいのは、私はこの間農林委員会から農林五公団の視察に参りましたときに、外麦の製粉及び乾麺と言いますか、そういうものが非常にストックをしておるのであります。現状のままで参りますならば、おそらくこの五月末から六月にかけては、相当製品の中に配給不適品が生するのではないかという危惧が持たれるのであります。また一方種ばれいしよが、相当各湾費地に滞貨し工おりまして、これの処置さえ十分にまだついていない。これによる損害も大きい食管の赤字となつて現われるのではないかと見ておるのでありますが、これに対して、大臣は一体これをどういう処置をとられるつもりであるか。一方大臣は、この七月か八月になれば、二合七勺ベースを二合八勺ベースに増配するというようなことも新聞にちらちら報道されておりますが、実際私どもも大事な主食の一部をまつたく腐敗さしたり、あるいは役に立方ないような状態にありますよりも、これを増配の面に振り向けた方が、実際はいいではないか。こう考えるのでありますが、腐らしても増配はできないのですか。この点を明確にしていただきたい。
  38. 森幸太郎

    森國務大臣 雑穀を供出後はずすかどうかという問題、これは二度くらいお答えいたしたと存じております。もしお聞きなかつたら、速記録を読み返していただきますと、確かに私は二度も三度も一委員会で申し上げております。また本年の麦の供出を自由にするかしないか。この間湯河原会談でそういうようなことも記事がありましにが、これは先ほどもお断りいたしました通り、私の明年度における食糧政策が確立するまでは、私の意見としては発表をさし控えたい。かように御了承を願いたいと存じます。なお公団を御視察くださつたそうでありますが、何分八千万の蒼生ののど元を預つておる公団といたしましては、ときには思わさる不調法も勃発して来るわけでありますが、もつたいない食糧でありますから、できるだけ腐敗のないように、ばれいしよのごときも、これが総会配給の面に向かないというものについては、特別の処置として八百屋の方にこれを処理するという方針をとつております。  また粉の問題でありますが、粉は本年の三月まではすでに計画ができておりましたので、色の黒い粉の配給をいたしましたが、今回御承知のように粉の精白度を高めて参りましたので、四月よりは小麦粉のごときは八〇%に引下げまして、いい粉を配給するという方針を持つておりますので、もしこれらの以前の古い粉か余るというようなものにつきましては、適当に加工方面にこれを融通いたしまして、そして食管特別会計に、できるだけ損失を来さないように努力いたすよう、指示いたしておるわけであります。     —————————————
  39. 小笠原八十美

    小笠原委員長 それでは農業協同組合法質疑を一時とどめまして、この際蚕糸価格安定に関する法律案起草小委員長より、その小委員会の経過について特に発言を求められております。これを許します。八木君。
  40. 八木一郎

    ○八木委員 去る三月十五日本委員会におきまして選任決定せられました、蚕糸価格安定に関する法律案の起草小委員会は、すでに法律の立案起草を了したのでありまして、この際私どものこの法律起草にあたつて考えて参りました経過並びに結果について、御報告を申し上げたいと思うのであります。  わが日本の蚕糸業は、一八五九年にわが国が横浜開港以来、輸出産業として格段の発達をして来た世界的産業であることは、いまさら申し上げるまでもありません。この間九十一年、まさに一世紀になんなんとする蚕糸貿易の発達史におきまして、最もその特異性と認むべき点は、蚕糸価格変動の波が非常にはげしく、あるいは高く、あるいは低く、單に日本国内のみならず、世界の景気現象の上におきまして、きわめてデリケートな、きわめて鋭敏な動きを示し、その都度ときの政府や当業者か、最も適切な国際取引の繁栄に資する国内対策を立てまして、万全の処置をとりつつ相当の成果をあげて参つたという点でございまして、このことは歴史の実証するところであります。しかるに現下のわが国蚕糸業は、この宿命的とも言うべき蚕糸価格の異常なる暴騰、暴落を手放しにしておりますので、これが国内的にも国際的にも、大きな関心事となつて論議されるに至つたのであります。すなわちごく最近において国際的問題となつたことを御紹介申し上げまするならば、去る三月二十日のローマ特電、ロイター通信によりますれば、国際シルク協会の運営委員会におきましては、三日間にわた、る討議の結果、三月三十九日閉会いたしましたが、世界の蚕糸業を振興させるため、日本を含む世界各国間に蚕糸価格の安定協定が近く締結されるものと期待せられ、なお本年の十月、ニューヨークにおいて国際絹会議が開催せられる際に、一層具体的に、世界三十二箇国の絹業者の総意をもつて、世界生糸価格の安定運動を展開するものと見られておるのであります。母在の日本は、生糸の生産国といたしまして、世界生糸生産高の八〇%、約八割の生性を占めておりまして、世界の蚕糸需要国たる三十余箇国の国際絹協会員の、熱心にして切実なところの要望にこたえなければならないという立場に立つ次第でありますが、国内的にもすじにこの問題は取上げられまして、政府においても民間においても、いろいろと論議されましたが、まだ実行具体東の見るべきものがなかつたのであります。国会においても、第二次吉田内剛当時に、第四回国会の院議をもちまして、衆議院は「蚕糸業安定緊急対策に関する決議」をいたしまして、蚕糸価格安定制度の早急な実施を期待したりであります。しかるに今日に至りましても、なお本問題の解決を見るに至らざりしゆえんのものは、これが対策立案の経過的措置を検討して見ますご、繭糸価格安定対策の実行の方法論におきまして、たまたま日本経済復興り諸原則にもとる、こういう推論のたのであろうかと思われますが、これは日本蚕糸業のためばかりではなく、世外綿業発展のために、まことに遺憾千万に存じますので、今回私どもはこれらの点を特に深く掘り下げまして、調査研究をいたし、第一には、企業、貿易の自由の原則を尊重し、この制度が正業の自由や貿易の自由を制限したり、これらに政府が干渉したりするここのないようにするのはもちろん、結末において、蚕糸価格の異常ある騰落除去するごとにより、自由経済の運行と、自由貿易の円滑な促進に資すること。第二に国際商品たる生糸に対し、政府が直接にも間接にも、この制度の結果として補助金を與えたり、援助を與えたりするということにならないという原則に立脚すること。第三に、ダンピングや不公正な競争方法を行わないという原則を守りまして、積極的にダンピングを防止すること。  以上の三点は特にわれわれが最善の考慮を拂いまして、深甚の注意と努力を傾けて、立法起草に当つた点でございまして、日本の経済復興は貿易の振興にあり、貿易の振興は、国際商品たる生糸のごとき日本独自の世界的特産品の輸出振興をはかることが、最も捷径であるとの確信から、さらには日本経済の復興を促進することを希望せられる立場に立つならば、何人によつても正しく理解し、認識せらるるであろうという確信をもちまして、蚕糸貿易振興上ぜひともなさなければならない、繭糸価格の安定をはかるこの立法措置をとることにいたしたのでありまして、わが国は、今、国をあげて安定より復興べと努力しております。この際蚕糸価格の安定により生糸貿易切振興をはからんとすれば、一日もゆるがせにすることができない重大問題でありますので、まさに掃き立てられようとしておりまする今年の春蚕からごの法律を施行いたしまして、養蚕にいそし評全国三百万人の農村婦女子の皆様を初め、製糸工場経営者三百人、ここに働く労務者七万人はもとより、横浜、神戸の生糸問屋及び生糸輸出業者等、全国津々浦々から、顏を見ればこの法律案はどうなつたと寄せられて参りまする請願、陳情の輿論にこたえまして、ここに本法律案を国会に提出する一切の用意を了して、起草を経つた次第であります。  次に本法案内容についてでありますが、これは各委員のお手元にプリストといたしましてお配りいたした繭糸価格安定案の要綱に基いて御覧願いたいと思います。  以上、本法案の概要について私ども考えて参つた点を明らかにいたしたのでありまするが、本件は国会において蚕糸業に深い関心を持つておられる衆参両院の議員から組織されております蚕糸議員連盟が中心になりまして、第四国会以来、第五、第六、第七国会の現在まで熱心に調査研究して参つた諸般の客観情勢を洞察いたしまして、衆議院農林常任委員会提出者とする議員提出法律案として、今期第七国会に提案する運びとなり、去る三月十五日以来連日今日までに及んでおるような次第でありまして、ここに立案起草を了したということを御報告申し上げ、各位の御了承をいただきたいン思います。
  41. 小笠原八十美

    小笠原委員長 これにて小委員長の報告は終りました。この際小林委員より発言を求められております。これを許します。小林君。
  42. 小林運美

    ○小林(運)委員 ただいま八木君から蚕糸価安定に関する小委員長の中間報告がございましたが、私は農林大臣に蚕糸価格安定に対する件につきまして二、三御質問を申し上げたいと思いますが、時間もございませんので簡單に申し上げます。  ただいま八木君からお話がありましたように、われわれ国会におきましても、第四国会以来しばしば決議案等も出しまして、この繭糸価の安定について政府を鞭撻して参りましたが、依然としてこの問題が解決されておりません。大臣は、先般もこの委員会で、私並びにその他の委員からもいろいろ御質問を申し上げたのですが、目下この繭糸価の安定について、関係方面とも連絡折衝して、急速に繭糸価の安定の方策を立てたいということが、しばしぱ言明されましたが、依然としてこのことが具体化されておりません。そこでわれわれ農林委員関係者は相寄りまして、われわれ議員提出の形で、現在ここにありますような内容をもちまして、繭糸金融公庫というようなものをつくつてつて行きたいということを現在進行中でありますが、一体政府はこれに対して現在どういうお考えでおりますか。またその数字等の折衝の模様はどういうふうになつておりますか。聞くところによりますと、関係方面意向としては、繭糸価の安定というものは、現在見込みがないというようなお話があつたとか聞いておりますが、そのことは事実であるかどうか、大臣の御見解並びに折衝の経過を、簡單でよろしゆうございますから御報告を願いたい。
  43. 森幸太郎

    森国務大臣 繭糸価安定の問題はまことに重大な問題でありまして、委員諸君の御意見等も再々承つており、また政府といたしましても、かつて輸出の大宗があり、なお今日の臓出の状況から申しましても、これを昔日の域にもどすということの必要なことを痛感いたしまして、この蚕糸業の発達を期待いたしておるのでありまするが、それに従つて、今日なぜこの蚕糸業が振わないかということは、一に価格の不安定であるという点にあるのであります。何とかしてこれをおちつけたいということは、だれもが考えることでありまするが、今日自由な立場におきましては、価格の動きも、これが自然の姿に経済の原則に従つて行くということは、これはいなまれないことであります。しかしこれは相手のある品物でありまして、いわゆる輸出の品物でありますために、内地における価格の変動は、ただちに消費地におけるところの企業の消長に関係いたしまして、これは消費地におきましても、生産地におきましても、その価格の維持されることは望んでやまないのであります。しからばどうしてこれを維持するかということになれば、かつて廃止いたしましたあの統制の時代に持つて来れば、これは思うように価格が維持されるのであります。これを自由な立場において、しかも統制でやつてつたような価格を維持して行こうというところに、特別な操作の必要があるのであります。これをいかにしてやるか、これが独占禁止法等のいろいろの制約があるので、そこに困難な点があるのであります。もとより政府といたしましても、この問題について無為に経過いたしているわけではないのであります。しかし委員諸君が非常な御協力によりまして、今委員長報告がありました通りに、一応の案をお立てくださいましたことは、まことにこの蚕糸業価格維持のために、非常に仕合せに存ずる次第であります。内容等についてはまだ詳しく承つておりませんので、検討を加えなければならぬと思いますが、司令部におきましては、今申し上げましたように、独占禁止浩の立場から、あるいは統制を解除せしめたという立場から、これを強力なる法的措置において行うということは、同意はいたしません。しかしアメリカの企業体から考えますれば、どうしても日本の生糸かある程度安定しなければならない。こういう両道にかかつて考え方があると思います。従つてぜひともこれは安定させるということを強く主張する面もあり、さようなことは自由経済にそむくのだということを考える面もあるのでありまして、司令部考え方が必ずしも一致いたしておりません。こういう内容に処しまして、政府といたしましては、何とかしてここに合理的な価格の安定策がないかということには、今日まで研究を続けて参つておるわけであります。政府において、必ずしもその策なきにあらずでありますが、幸い小委員会において一応の御法論を得られたのでありますから、この問題につきましても十分検討を加えまして、皆さんの立法府の意思に沿うようにいたしたい。また政府考えも皆さんに研究の結果を申し上げまして、さらに御協議を蚕願いいたしたい。かように考えておるわけであります。決して司令部におきましては、全然そういうことをしてはならないという面のみではないのでありまして、してはならないというのもあり、またしなければならないという面もあることを御了承願いたいと思います。
  44. 小林運美

    ○小林(運)委員 ただいまの大臣の御答弁によりますと、政府も繭糸価の安定を痛感して研究もし、交渉、連絡等もやつておるけれども、それに対する関係方面のはつきりしだ意思表示がない。こういうふうに私は聞えたのですが、私が先ほど申し上げましたように伝え聞くところによると、政府が今まで考えておりました繭糸価安定に対する方策に関して、関係方面は不賛成だというふうに私は聞いたのですが、その点はどうでございますか。まだはつきりしていない、これから交渉の余地がある。われわれが立案しておりまするのは、別問題として、今まで政府がお考えになりました繭糸価安定の方策について、関係方面との了解が全然得られなかつた。こういうふうになつておりますかどうか、その点はつきり大臣からお伺いいたしたいと思います。
  45. 森幸太郎

    森国務大臣 政府におきましては、一案、二案、三案、四案と、幾多の案をつくつて折衝いたしておるのであります。しかしいずれの案も司令部において反対であるという意思表示ではないのであります。司令部においても、これは何とかしなければならぬという、先ほど申しました希望を持つておる向もあるのでありますから、それらのセクションの意見も加えまして、ともにともに研究を魅めておるのでありまして第一案よりは二案、二案よりは三案と、漸次了解を得る程度に進みつつあることは事実でありますが、決して全然見込みがないというのではないのであります。
  46. 小林運美

    ○小林(運)委員 大臣の答弁が大体わかりましたが、私はこういうふうに了解したいと思うのです。政府当局では、繭糸価の安定の方策は、一案、二案、一案、四案といろいろあるけれども、現在のところはいずれもまだはつきりしてない。そこでわれわれ議員がつくりましたこの繭糸金融公庫というような形でやつて行く、これに対しても研究してやつて行きたい。これもすでに、大体こういうような形も政府でも御研究のことと思いますが、今後ともわれわれのこの案がはたして関係方面のオーケーが得られるかどうかはわかりませんが、幸いにして得ら即ましたならば、政府は責任をもつてこの繭糸価の安定をやつてもらいたいというのがわれわれの考えであります。そこで私はこれ以上大臣を追究することはやあまして、一応この繭糸価の安定に対するわれわれの案が、現在関係方面等に折衝中でありますが、この際八木小委員長に伺いたいのでありますが、これをすでにG・Sを通じて出してあるのでありますが、依然としてその反響がない。こういうことでは、先ほど小委員長説明の中にも言つておられましたが、すでにことしの春蚕ももう掃き立てております。値段がどういうふうになるか、私は特に最近の食糧問題と関係いたしまして、食糧事情も相当緩和して参りまして、外国の食糧も相当入れるというようなことになりますと、農村はむりをして食糧をつくつていたものを、換金作物に転換をしなければならぬということが、相当強く考えられておりまして、すでにわれわれが経験を有しておる最も手近かな番糸業に、早く移りたいという考えはありますけれども、この養糸業に移つたところがまた値段が暴落してしまうというようなことでは、たいへんなことになりますので、多少異論はあつても、とにかく早く繭糸値を一つの形で安定するという立場において、早くやつてもらいたいというのが農民の声でありますので、この間の消息を早く知りたいのであります。委員長がその方面に関係を持つておられるようでありますが、その点がはつきりいたしませんので、われわれ委員としてはじつとしておられないので、至急この問題を解決したいというのがわれわれの意思でありますから、この間の事情をお考えになりまして、至急やつてもらいたいそこでその間の見通しその他がありましたから、この委員会にあわせて御報告を願いたいと思うのであります。
  47. 八木一郎

    ○八木委員 各委員より御熱心なる御要請でございますし、私どもといたしましても、すみやかなる機会においてこれが立法的措置が取運びがつくように極力努めたいと思つております。どうぞ御了察の上御協力を願います。
  48. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 ただいま小委員長から繭糸価格安定法案の立案の経過並びに趣旨の弁明がありましたが、この問題は全国の養蚕農民から見ますると、きわめて重大な問題であります。ただいま小林委員からも発言がありましたが、すでに春蚕の時期が来ております。一日もすみやかにこの溝案を成立させることが、われわれ国会として最も重要なことであると思うのであります。つきましては、ただいま小委員長から報告がありましたこの法案を、一日もすみやかに本会議に上程できるような運びをつけていただきたい。私ども委員会の一員といたしまして、その日の一日もすみやかならんことを特に念願するものであります。  なおこの問題については、ただいま農林大臣からも、非常に熱心にやつておられるというお話がありましたが、政府当局におきましても、格段の御協力を願ひまして、国会と政府と一体になつて、この問題の解決に突進して参りたい。特に小委員長には、まことにたいへんな仕事でありますけれども、一日もすみやかに本会議に上程せられて、そうしてこの法案が成立されるように御努力をお願いしたいということを、特に要望申し上げておく次第であります。
  49. 小笠原八十美

    小笠原委員長 ただいまの遠藤委員の御発言は、蚕糸価格安定に関する法律案のすみやかなる提出をせられたいとの趣旨であると思います。つきましては、本委員会といたしては本法律案や可急的すみやかに提出するよう小委員長に要望いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 小笠原八十美

    小笠原委員長 御異議なしと認めます。それではさよう決しました。  午前の会議はこの程度にとどめまして、午後三時より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後一時五分休憩      ————◇—————     午後三時十九分開議
  51. 小笠原八十美

    小笠原委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  午前中に引続き農業協同組合法の一部を改正する法律案議題として質疑を継続いたします。吉川君。
  52. 吉川久衛

    ○吉川委員 農業協同組合法の一部を改正する法律案について、農林大臣に二、三の点についてお伺いをいたします。  昨年の春、日本の農業協同組合の現状並びに将来の見通しからいたしますと、きわめて困難なる見通しができるのであかまして、これが救済のためには、農林関係公団をすみやかに解体いたしまして、これの業務を農協をしてやらせたらいかがですかということを申し上げたら、これに対して森農林大臣が、農協は二、三年後には整備拡充されてりつぱになる。現状においては、誕生なお日浅くしてきわめて薄弱なものであるから、かくのごときものにすみやかに公団の業務を担当させることはできない、こういうようなふうにお答えになつたことを、賢明な森農相はまだ御記憶であると思います。私は当時、一年中か二年後には、農協は相当つぶれるものができるであろうということを予見されますがということを申し上げたのであります。不幸にして私の予見と大体一致しておるような現況にあると思うのでありますが、その後の農林大臣の御見解はいかがでございましようか。
  53. 森幸太郎

    森國務大臣 私は農協が今日あるということは、必ずしも予想をせなかつたわけではないのでありますが、しかし農協の今日の現状は、経済関係等によりまして急テンポにその弱体性を暴露して来たのでありまして、これもまつたく予期に反した現状と思うのであります。公団の廃止につきましては、その公団の極数にももちろんよりますけれども、主として農業生産者が売主であり買主であるという公団の方が多いのでありますが、この公団の取扱い事務を民主的にいたす場合において、公団の事務を協同組合にやらすことは、もちろん当然いたすべきことである。しかしながら協同組合に單独にこれを許すことは、御承知の通り、いろいろな制約のためにでき得ないのであります。しかし農業協同組合を有力なる今後の公団にかわる団体と考えなければならぬし、またさようであるべきであるように思うのであります。今日の農協の現状が、いかようになりましても、この考え方においてはかわりはないのでありますから、農業協同組合をこの際一層強化いたしまして、改むべきところほ改め、ほんとうの農業協同組合の姿に、一日も早くとりもどすことを、何をおいてもやるべきだと君えておるわけであります。さきに申し上げた気持も、現在農業協同組合の公団廃止後の事務取扱に対する考え方も、まつたくかわつておらないわけであります。
  54. 吉川久衛

    ○吉川委員 私は、大臣がおつしやるように、農協をすみやかに拡充整備いたしまして、この公団方式にかわるところの、民主的な自主的な統制の方向に持つて行くことが、合後ますます農民の経済を安定させるところの、唯一の道であると考えるので、そのように御配慮願いたいと思うのであります。農業協同組合が、今日のような不振な状況に陥つた原因については、先ほども政府委員である農政局長から二つの原因が述べられました。一つは外からの関係、ということは経済情勢の変化のために、組合の業務が不振になつた、農産物価の下落によるところの、農家の負担が増大したということと、組合内部の関係から申しますと、経営がきわめて適当でない、まずい経営であるということ。統制時代の頭をもつて、まだ当時の考え方で、十分なる熱意を持たなかつたというようなことが、この農協不振の原因を招いているのだというようなことを、言われました。本日午前中も、同僚議員の井上氏から、農協の不振の原僚は、これは政府の農業政策というものが適当でないために、こういう結果になつたのであつて、農協一つの問題を坂上げて考えただけでは、この問題の解決はできないというようなことを、るる申されたのであります。これはいずれも私は肯定せざるを得ないのであります。しかし私の考えるところによりますと、農協の不振の原因をなすものの重要な問題は、ただたいまの日本の農業協同組合というものの持つ性格が問題だと思うのであります。従つて日本の農村経済の振興に非常に貢献されたところの産業組合法は、これはライフアイゼンの農村協同組合、ドイツの農村協同組合の方式を、先覚者である平田東助、品川彌二郎というような人々が日本に持つて参りまして、明治三十年来よりそれが発足を見、政府民間もこの問題に対して非常な情熱を傾けて、これの発展のために苦心せられたことは、史実に明らかであります。しかし、この法の性格たるや、北欧のあの貧しい農村の経済を復興させるために生れたところの、ライフアイゼンの農村協同組合の性格は、あくまでも政府の助成によつて政府の援護によつて発達をしたものであることは、私が申すまでもないのであります。その性格が日本に伝わりまして、日本においても、政府の非常なる援助によつて非常な発達を見て来たのであります。しかるに今回の農業協同組合法は、これはワシントン法案とも言われるくらいに、アメリカ的な、においが強いのであります。申すまでもなく、アメリカの協同組合は、その源を英国に発するのでありまして、英国のドツヂ・デールの協同組合の性格が、アメリカに持ち来され、しかもあの広大なるアメリカにおきまして、アメリカ人の開拓魂にうまく結びついて発展をして来たものであります。そのアメリカ的の性格を持つた、すなわちドッヂ・デールの性格を持つ今たものを日本へ持つて参りまして、日の農業協同組合になつておる、そのドツヂ・デールの性格というものは、ドツチ・デールの町におけるフランネル職工の、二十八人の職工によつて始められたのが初めだと言われておりますが、それに見られるように、これは組合として労働者の間に発達をして来た。そして政府の援助なくして、自主的に、自分たちの生活は当分たちで擁護して行くのだというところから生れて来て、しかもアメリカの開拓魂と結びついて来たものでありますので、これは非常に自主的な性格を強く持つているものであつて、あくまでも自力本願である、他力本願の性格はきわめて薄いのであります。そういうものが今の日本に持ち来たされた。しかるに日本の、特に農村の現況はどうであるかと申しますと、敗戰後四二%からの国土を失い、資源といえば戰夢中にほとんど使い果されて、言うに足りない状況で刈ります。人口のみいたずらに多い日本のこの状況下において、その自主的な協同組合それのみをもつて発展を期待するということは、きわめて困難であることを申し上げるのであります。しかるにアメリカのような非常な広い土地と、ゆたかな資源を持つた国において発展し得るような、そういう協同組合の精神を日本に持ち込んで、そうしてこれをほとんど手放しに日本に発展をさせて、農村経済を安定し、農民の社会的経済的地位の向上を考えるというようなことは、これはきわめて困難な問題であります。それに対して、私は日本は日本として、かつて日本において日本の農村経済に貢献したところのあの産業組合の、あのドイツのライフアイゼン式な、ああいう考え方をもつと日本の今の農業協同組合の中に、取入れて行かなければならないと思います。しかるに政府の組まれておりますところの予算等を拜見いたしましても、その作文は、きわめてりつばな作文か書かれておりますけれども、盛られておりますとろの予算に至りましては、まことにお話にならない状態なのであります。一体政府はどういう考え方で、この農業協同組合の発展、発達をやろうとお思いになるのであるか。農林大臣は、口を開かれるたびごとに、農業協同組合の拡充整備は、農村経済の安定のために、きわめて、重要なものであるということをおつしやるのでありますが、その点について、私はどうも納得が行かないのでありますが、ひとつこの際、大臣の御所見を伺つておきたいと思います。
  55. 森幸太郎

    森國務大臣 いろいろ外国の例をあげての御質問でありましたが、日本の産業組合の発達の径路を考えてみますると、お説の通りの径路を踏んで参つたのであります。しかし日本におきましては、あそこまで産業組合が発達いたしましたゆえんのものは、いろいろの原因もあるでありましようが、あまりにも農業者か商工業者の搾取を受けておるというこの段階において政治の面から、農業者に対する考え方が政治的に扱われて参つたわけであります。従つて産業組合の生れましたことも、またその発達いたしましたことも、決して農業者が産業組合の必要性を痛感して、みずから組織して、みずからの力によつてこれを行つて来たという、正しい道は通つて来なかつたのであります。由来日本の今までの政治のやり方が、官僚政治の典型と申しますか、いわゆる中央集権によつて、あらゆる権利を中央が握つておる。そうして国民に臨むにあたつて、自治体ということを口では言いながらも、やはわ依存せしめる。いわゆる知らしむべからず、依らしむべしというこの式によつて勢力を伸ばして来たというのが、長い間の日本の伝統的の政治であります。従つて産業組合を日本に取入れましたことは、まことにけつこうであるが、この産業組合をこの方面に利用して、そうして一に助成、一に補助、一に指導という、この政府のいわゆる官僚的な支配下に置くということによつて、自己の勢力を伸ばして来たというのが、今日までの産業組合であります。遂にこれが発達いたしまして、反産運動となり、商工業者の反発に面くらつて、さらにこれが農業会、商工会と分離して参らなければならないような、いわゆる商工業者と農業者とが、対立するというような経路をもつて、今日まで来たのであります。かようなことでありましては、なるほど一時的には産業組合もりつぱな発達をいたします、そうしていかにも産業組合ならざれば、夜も日も明けないというような情勢になりましたが、それは絶頂であつて、すでにその当時には病青白に入り、弊害も続出いたしておるのでありまして、組合の幹部と組合員とはまつたく離反しておる、いわゆる組合員の組合でなくして、組合の幹部の組合であるというような姿になつて来て、遂にこれが農業会にかわつて来たのでありますが、しかし農業会といえども政府の一つの機関として、強制加入の方式のもとに農業会を組織せしめ、そうして政府の勢力のもとに、農業会の活動を思う存分にやらして来た、こういうのが農業会のやり方であります。まつたく一つの官僚的な農業団体として認められて来たのであります。これが今日日本の今までの独善的、あるいは保守勢力と申しますか、反動思想と申しますか、その温存地帶となつてつたということは考えられるのでありまして、今度の民主主義の政治を行う上においては、さような気持であつてはならない。ここに根本的にこれを自主的に改めて、そうして農業者が、あるいは商工業者が、みずからの業態を発達せしめるために、自分らの仲間か集まつて、そしてだれからの制肘も受けなくして、法のもとに組織して行くという、この組織に改めたのが農業協同組合であります。従つて今の農業会のことを考え、産業組合のことを考えますと、まことにかつてが違つております。政府は何らの助成もしない、何らの保護もしない、そうして協同組合が農業政策を行う唯一の推進体であるというようなことを言うのは、おかしいのではないかということも考えられますが、今まで、つえをし、柱を立てて、支柱によつてようやく保たれて来たというこの組織ではない。まつたくつえも柱もなく、ふた葉のうちから独立独歩で、自分の力で進んで行くという組織でなければならないと、かように考えるのであります。農業協同組合、漁業協同組合等の協同組合の組織がそこにあるのであります。従つて強制加入ではありません。加入税退官由な立場に置かれておる、まだ一村に甘いても、三つでも三つでも四つでも、その意思の合うものが組合をつくつて行くという、自由な立場に置かれておるのであります。ただ今日までの惰性と申しますか、昔の夢さめずして、そういう労のないものをほつたらかしておいていかぬではないかという御批判も起ろうとは存じますが、協同組合法の根本精神が、そこにあるのでありますから、あくまでも私は今までのような産業観念、農業会というものの編成がえでなしに、新しく協同組合という精神が生まれて来たということでなければならぬと、かように考えておるわけであります。
  56. 吉川久衛

    ○吉川委員 私は農業会が昭和十八年以来誕生いたしまして、それが非常に官僚的なものがあつたということは、大臣のお説にまつたく同感でございます。これは産業組合、農会、畜産組合、茶業組合、養蚕組合、これらの団体が統合されまして、そうして戰争遂行に協力するためには、それらの農業の団体が個々ばらばらにあるということは、統制をやる上に非常にやりにくいというので、戰争遂行のためにこれらのものを一本化する必要があるということで、強引に一本にせられたのであります。それが下意上達の機関ではなくして、上意下達の機関に利用された、そうして戰争遂行のために協力させられた。従つてそれがきわめて官僚的なものであつたということは、まつた大臣のお考えと、私は同感でございますが、そうかといつて、その前身であるところの産業組合は、官僚的であつたとは私は考えません。むしろ産業組合というものを官僚が利用して、そうして官僚の勢力を拡充拡大したということはあり得たと思います。これはひとり産業組合に限らず、農政全般にわたつての官僚性というものは、他の方面に比べて非常に大きいものがあつたと思います。ということは、日本の農業というものが他の産業から非常に立ち遅れている。日本の農業の経営状態が、きわめて零細な、特殊な、貧弱な状態にあることを、国家の力によつて助成育成して行かなければならないというような特殊な條件が、官僚をしてこれに便乗するというような機会を與えたのでありまして、これは非常に官僚の勢力を強大にしたということにはなるでありましようけれども、そのために産業組合が官僚的であつたとは、私は言えないのじやないかと思います。それは官僚的な面もあつたと思います。封建社会における農村の産業組合運動というものに、そういう面はあつたであろうと思いますけれども、しかしそれよりは、産業組合運動によつて、日本の農村の封建制を打破するために、非常に貢献したということを見のがしてはならないと思うのです。ただその産業組合が、今大臣のお言葉のように、遂には反産運動にまで至つたじやないかというお言葉でございましたけれども、反産運動になつたということは、そもそも、産業組合のよつてつておりましたところのイデオロギーが、修正資本主義の上に立つていたということであります。修正資本主義もまた資本主義であります。そこで自分たちの立場だけを盛んにいたしまして、遂にそれか独占化しまして、中小企業の商業階級の人々と対立をするというようなことは、当然でございます。けれども今回生れましたところの農業協同組合は、修正資本主義の上に立つているのではない。零細化された日本の農民が、その零細なる資本と、零細なる労力と、零細なる力を持ち寄つて、そしてその力の集中によつて一つの事業を営んで行こうというのでありますから、これは決して資本主義の修正ではなく、もし資本主義の修正であるとするならば、社会主義の修正をも含んだところの、より高次の協同主義のもとに立つた協同組合であるということを考えれば、私は今後協同組合の発達は、必ずしもこれと対抗して、商人の反産運動を招来するような問題は、絶対に考えられないと思つているのであります。どうか政府もそういう点に十分御配慮願つて、今後ごの運動のますます発展されるように、御配慮を願いたいと思います。従つてこれはあくまでも日本の現状から考えまして、自主的に——自主的にという大臣のお言葉はまことにけつこうではございますけれども、長い間の日本の農政か、上から下へという助成的な、保護的な政策であつたことになれまして、日本の農民は上からの命令、上からの達しならば何でも耳を傾けますが、かれらは今やみずから自主的に、自分たちのために自分たちが立ち上つて自分たちの立場を考えて行くというだけの能力を欠いております。このものに、何でも自主的にという大臣の理想論をもつて臨まれては、日本の農民はとても今後立つて行かれません。どうしても過渡的には、相当強度のめんどうを見ていただくということでなければ、農業協同組合は私のかねてから心配していたところの方向へ、落ち込んで行くであろうと思うのであります。どうぞどうぞこういう点に大臣は特段の御配慮を願いたいと思います。  さて農業協同組合の不振の原因の第二点として考えております問題は、もちろん昨日農政局長も申されたように、私がただいま最初に申し上げた通り、外からの原因としての経済情勢の行き詰まりということは、これは午前中井上委員も御指摘になられた問題でございまして、現政府が非常に責任を感じていただかねばならない問題でありますけれども、その問題はだぶりますから繰返して、申しませんが、ただ政府の今までとられたところの誤つた農政のうちの一点は、農業協同組会法の、ただいまその一部を改正しようとされているところの内容を拜見いたしますと、第一は、協同組合の連合会の整備を考えていられる。第二は、預金者の保護を考えていられる。その第二点の問題について、私は実に不可思議な感を抱かざるを得ない。なぜかと申しますと、そもそも昭和二十二年の暮に、農業協同組合法が公布になりました。そして農業協同組合法実施されましてから半歳を出ずして、法第十條の改正案が議会に上程されたということであります。私どもはこのときに極力これが反対をいたしまして、政府もこの反対をよくおわかりになりまして、とうとうこれはお流れになつてしまつたのであります。ところが続いて出ましたところの行政措置によつて、協同組合の連合会は寸断されてしまつたのであります。農業協同組合の発展を妨げるところの、すなわち不振の重大なる原因がここにあるということを、見のがしてはならないのです。法第十條は、あのとき国会でもつて流産をいたしまして成立しなかつた。従つてただいま施行されておりますところの農業協同組合法に、今回のごとき改正措置をおとりになる必要が全然ないのであります。何を血迷つて、このような改正をおやりになるのであるか。行政的な措置でもつて業種別の協同組合しかできないようになさつた。それならば行政的な措置をもつて、今までのことが誤つていたとするならば、これをお改めになつたらそれで済むことなのである。なぜこの法律改正までして——第十條を現行法のままで行くならば、これは協同組合の連合体は、農村恐慌に対処するためには、どうしても総合的な力をもつて、この恐慌に対処しなければならないとか、あるいはまた業種別に連合会をつくつて進んで行くことの方か能率的であつて、効率的であつて、協同組合の発展のためにはこの方がいいのだと、組合員である農民が考えるならば、組合員の自主的な意思によつて、民主的に組合員が考えて、そしてその適当な好むところを選ふことができる、この任意に選ふことができるような状態に置くことが、きわめて民主的しかも農業協同組合法の精神であります。この精神を蹂躙して、法の改正に手をつけないで——單なる行政的な措置で業種別に分断をさせたということは、協同組合法の精神を蹂躪し、民主的な農民の発達を妨げるところの大きな原因である。従つてこれが農業協同組合の不振の一大原因になつておるということを指摘せざるを得ないのであります。政府はこの法案を御提出になるのをおやめになつて、むしろ行政的な措置をおとりになつても済む問題でありまするが、この問題について、どういうふうにお考えでございますか、その辺の御所見を伺いたいと思います。
  57. 森幸太郎

    森國務大臣 協同組合法の実施以来行政措置をとつてつたにつきましては、私がその内容を詳しく申し上げなくとも、吉川君は御了承になつておることと存じす。先ほど来いろいろ御意見か発表されましたが、ごもつともな次第であります。行政措置で来たものなら行政措置でいいじやないか、何もいまさら法律改正をしなくてもいいじやないかというお話、ごもつともであります。しかし行政措置をせざるを得なかつた事情、また行政措置を続けておつては、かえつてこの協同組合の方針を不明瞭にせしめるということで、許される範囲内において、法的改正によりまして、協同組合の組織の内容をこの際明確にするということが必要と考えて、この提案をいたしたのであります。決して吉川君のお話しになつていることを、こちらが気づかぬのではありません。またそうしてやつても、もともと行政措置でやつて来たということが、これは誤つたやり方であつたかもしれませんが、日本の現在といたしましては、そうせざるを得なかつたのであります。今回の改正につきましても、なおもう一歩進んで、これを簡素化する方法考えられないのではないのであります。しかしながら今日いろいろの事情のために、この程度にしかこれが法律の上に表現し得ないという事情であることを御了承願えれば、この法案提出のやむを得なかつたとということも、御了承願えることと存じます。
  58. 吉川久衛

    ○吉川委員 私はまことに残念に思うのですが、行政的な措置をとらなくとも、了承を得て議会へ提案されて、国会を通過した農協法が、施行されてから半年を出ずして、法第十條の改正を余儀なくされたということが、私にはどうしても解せない。しかもそれが国会で審議未了になるや、それにかわる行政的措置をとられたということが、私にはどうしてもわからない。そもそも日本の農村の民主化のために農業協同組合法が制定されたわけなのです。しかもその元を尋ねてみれば、農地の開放によつて農村は零細化される。零細化されたところの農村をそのままに放置すれば、ユーゴスラビアその他にあつたように、十数年ないし二十数年を出ずして、また地主が台頭し、小作人が生れてしまう。同じことを繰返すような結果になるから、農地開放によつて零細化された人口が、ここに生きて行かれるようにするためには、その裏づけになる方法としてこの協同組会がいいのだということで、これが誕生した。しかも農業協同組合の発達のためには、関係方面では、しばしばいろいろと御注意をくださつて、そうしてこれが発展のために助言をされて来ているのであります。その農業協同組合、農地開放すべて農村の民主化を考えての問題であります。しかるに政府の行政的な措置によつて、農業協同組合は、しかもその連合会は業種別でなければならないということになりますと、各地方のボスが、やれわれわれのよつて立つ場所ができたということで、非常にこれを歓迎いたしました。そうしてその連合会の会長、副会長をねらつて、彼らは会長、副会長に納まつている。彼らボスの温存機関となりはてているこの現実を、政府はどう考えられるのですか。そうして、それらのボスが温存せられることによつて、日本の農村の民主化が非常に妨げられて来たとしうことは、もし関係方面関係であの行政的措置がとられたとするならば、関係方面の御期待とはまつたく矛盾した結果が生れているということを、関係方面をして御認識していただくように、政府の御配慮を願わなければならないと思うのです。そういう結果か生れて来ている。そういうボスどもの温存機関となつていたということは、依然として上の方の連中の言うことに動かされるところの農民、すなわち組合員が、まだ旧憲法時代のような物の考え方を持つているということであります。これら農業協同組合をいかに民主的に運営されようと、いろいろ規定をつくられても、昨日小平議員からも、農村の民主化は協同組合の民主的運営の問題にあると言及されておりますけれども、これはいくらわうぱな法案を作文されましても、農村の民主化ということは、その本質を改めるような努力が佛われない限り、百年河清を待つがごとしだと思います。これに対して、昨日農政局長は、啓蒙宣伝以外にないのだということを御指摘になられましたけれども、この点はまことに同感であります。啓蒙宣伝も必要でありますが、それよりも、行政的措置によつて農村の民主化をはばむということはこれは嚴に慎まなければならない問題でありますから、今後この点に御留意を願いたいと思います。  その次に、私は農業協同組合の不振の原因の第三点といたしまして、これは各議員からも御指摘なつたことと思いますが、日本の農業協同組合の組合員並びに常任役職員、あるいは協同組合に従事する人々も、あげて協同組合のいかなるものかを解しておる人が、きわめて少いということであります。これが協同組合の発展を妨げている。協同組合に、ただいま従事しておられる人々を見ますると、かつてこれにきわめて似たところの産業組合運動に骨を折られた人々は、これはもうたいがい役職員になられるような方々は、村長とかあるいは准郷軍人の分会長とかいうようなことを兼務された人々が多かつたために、ほとんど追放にかかつております。あるいは故人になられております。今残つておる協同組合運動の幾らかわかる人々は、きわめて家々たるものであります。その他の人々といえば、それは大部分、協同組合というもののいかなるものかを解しない人がきわめて多い。そのためにただいまの協同組合の運営を見ておりますと、自分が協同組合の役員になつて、現職中にはきわめて協同組合運動に熱心でありますけれども、一たび協同組合の役員を去られますと、まつたく今度は反農協的の立場をとつて、そうして現在の役職員に対立をいたしまして、協同組合の増資の問題等の妨げをなしておるというような現実を見ましても、明らかな点であります。農業協同組合の本質がわかつたとするならば、おそらくそれらの人々が役員を去られても、協同組合の組合員である限りにおいては、かわりはないのでありますから、協同組合というものに対して、もつと協力的でなければならない。そうでないということは、協同組合というものに対する理解が少いということ、あるいはないということになるのであります。ここにおいて協同組合の発展をはばんでおります。協同組合の発展を考えるためには、私は第一番に農協の性格をよく理解すること、政府の農協に対する不当なる干渉を排除すること、そうして農民の協同組合に対する関心を、もつと高めるような施策を考えるといいこと、この三点がきわめて重要な問題であろうと思います。農民の農協に対する関心を高めるためには、政府が格段の配慮をしなければならない。政府の本年度の農協に対する予算を見ますると、ほとんどお話にならない程度予算であります。これについて私は、農林大臣に特にお伺いしておきたいと思います。アメリカでは、今日農業協同組合の問題について、百家宣伝、教育事業がきわめて熱心であります。三千五百の高等学校の八割は、協同組合の理論と実際との問題について、課目として取上げております。しかるに日本では、全日本国中に、農業協同組合のない町村は一つもない。ある村のごときは三つも四つもある。しかし町村の経済の中心をなしておるこの農業協同組合の問題について、どこの高等学校に、どこの中学校に、協同組合のことを正課として取上げておる学校がありますか。また高等学校の先生や中学校の先生にして、協同組合というものについて、理解を持つておる先生は一人もない。協同組合の組合員の子供を預かつておるその先生たちは、協同組合かいかなるものかを知らないような状態にある。このきわめて重要な問題について、高等学校なり中学校に、正課として協同組合の理論と実際というような学課を取入れるお考えを持たれるかどうか、その点をひとつ農林大臣にはつきりお伺いしておきたいと思います。
  59. 森幸太郎

    森國務大臣 いろいろ御高説を拜聽いたしました。先ほど現内閣の政策が悪いからとか、この法の改正について無定見であるというよいな御批判もあつたのでありますが、御意見を伺つてみますと、オーケーの必要なこともおつしやるし、関係方面ということもおつしやるのでありますが、日本の今日の政治の実態におきましては、やはりオーケーももらわなければなりませんし、関係方面との交渉もせなければなりませんので、御意見にあつたようなこともやむを得ないこともあることは、御了承になつておることと存ずるのであります。  第二点の御質問として、協同組合の役職員がボスである。あるいはまた職員が無能であるというお話でありましたが、中にはりつぱな職員もおりまするし、組合の役員もおります。政府といたしましては、あくまでも干渉はいたしません。干渉すべき性質のものでありませんので、干渉いたしませんが、何をおいても私は組合員の自覚である、こう思うのであります。そういうふうなボス的なものを選挙するところの組合員、また無能な職員を理事、監事にあげるところの組合員、その組合員自体が協同組合の組織と関連がないからであります。これは、私は、まずもつて組合員自体がさような自覚をされた上において、初めてりつぱな協同組合ができるのだと思います。政府といたしましては、職員の事務的な、あるいは協同組合精神の徹底に、講習も開き、指導もいたしておることは御承知の知りでありますが、決して干渉はいたさぬつもりであります。なおこの協同組合精神の教育についてでありますが、これはひとり協同組合関係のみならず、今日の学制制度が非常に画一的になりまして、子弟をしてどこに農業を学ばしめるかということに、非常に私は痛心をいたしております。管の農学校や、農林水産学校等が廃止されまして、画一的な中等学校、高等学校となつたために、初級の専門知識を得ることが非常に困難であります。これは今日の学制制度の欠陥とも言い得られると思います。今後教育制度の緩和の上においては、今お話のような協同組合精神の徹底、あるいは農業知識の徹底ということについて、一段の考慮を、私は政府として考えて行かなければならぬと存じております。
  60. 小笠原八十美

    小笠原委員長 吉川君、大分時間もたちましたし、御意見のところは討論にまわして、質問に重点を置いてください。
  61. 吉川久衛

    ○吉川委員 委員長の注意があけますから、意見はもうやめます。  今のところでちよつとお伺いしておきますが、文部省とお話合いになつて、高等学校に協同組合の理論と実際というような課目を持たせるような御努力を願いたいと思いますが、そういう御心配は願えませんか。
  62. 森幸太郎

    森國務大臣 教育制度のことは私は門外漢であります。今は教育委員会制度になつておりまして、政府自体の意見を現わすことも困難な状態にあるのであります。しかしながら、学制の根本を定めるのは、やはり政府の責任でありますので、今後先ほど申しました——ひとり協同組合のみならず、あらゆる産業方面の知識の徹底ということについては、学制制度の上において、これを実現するように努力いたしたいと考えております。
  63. 吉川久衛

    ○吉川委員 次にお伺いする前に、大臣が今、私が農協にはボスがおり、無能であると言つたというお言葉がございましたが、全部が全部ボスであり、無能であるというわけではございません。そういう人が非常に多いということは事実でございます。それから政府は預金者の保護としての政令を出すということを、條文に制定しようとなさつておいでになるのでありますが、たしかに預金者の保護として考えれば、ただいま組合員の預金を、農協で相当程度農村工業とか、あるいはその他の業務の関係に流用をして、あぶない経営をしているのを私も見ておりまして、非常に危険を感じております。従つてこの問題について政府が憂慮なさることはごもつともであろうと思います。けれどもこの問題は、もしここでこういうような政令を出され、しかも一年に一回やる、あの検査規定が持たれて参りますとどうなるかというと、農業協同組合は相当数つぶれてしまうと私は思います。農業協同組合に関して、このような政令の出なければならないような情勢は、今申し上げた通り金融難から来ておる。だからすみやかに中金を民主化して、そうしてその中金を通じて、農業協同組合の整備拡充のために、あるいはそれの行う事業のために、相当程度融資をなさる御用意をなさらない限り、ただこの政令をつくつて、そうして押えて行くということだけでは、監督官庁としては御安心でしようけれども、協同組合そのものがつぶれてしまうということを考えなければなりません。これに対して、農林大臣は格別の融資方法をお考えであるのかどうなのか。もしそれをお考えにならないでこの政令をお出しになるということであるとするならば、私は農協をつぶしちまうことになると憂慮するのであります。この点ちよつとお伺いいたしたい。
  64. 森幸太郎

    森國務大臣 これは先ほども申し上げたと思いますが、現在の協同組合の状態で推移するならば、おそらく組合員自体が自分の組合を信用せまいと思うのであります。はつきりと考えていただかなければならぬことは、預金者というものは、組合に金を預けないとつぶれるからというので預金するのではない。余裕金を預け、必要な場合にはお互いに貸し合う。こういうことが信用事務でありますので、そこは協同組合の力によつて、ある者は預ける、またない者はその預かつた金をまわしてもらう。そこで相互扶助の道が開けて来るのであります。しかるに預金したその預金が固定資産になり、どこかへ行つてしまつて、通いを持つてつてもスムーズにその預金の拂出しができないというような状態でありましたならば、おそらく余裕金を持つて行く人はありますまい。出資額をふやすか何かしなければ、組合の預金はふえて来ない。それであつては、せつかくの信用事業も行われないことになるから、政令を設けまして、預金者が安心して預金できるような立場に置くということでなければならぬと思うのであります。またそういうことができて、初めて中央金庫は金を貸せるのでありまして、組合を救済するために、中央金庫は幾らでも金をまわしてこれを助けて行くということは、今日慈善事業でない以上はでき得ないのであります。また関係方面においても、この資金の運営については厳重な指令を持つておりますので、もしさような乱暴なことを中央金庫でやるとするならば、おそらく中央金庫はつぶされてしまつて大蔵大臣直轄のさらに嚴重な監督のもとに置かれるのではないか。農林省の管轄下より大蔵省の管轄下に移されるのではないかということが考えられるのであります。金融機関は決して慈善事業ではない。お互いの信用によつて金融をつけて行くのでありますから、組合と組合員、組合と中央金庫、こみ間の信用をもつと高める意味において、政府はこの政令によつて強化せしめることが、この場合も必要であると考えておる次第であります。
  65. 吉川久衛

    ○吉川委員 皆さん大時計をごらんになるようでございますから、きわめて簡單にいたしますが、大臣のお考えと私の考えとは、あるいは見解の相違ということになるかもしれませんが、私は今大臣のおつしやつた、力のない信用のできない農協には、だれも預金する人がなくなる。信用状態を確保するためにも、この政令によつて預金者の保護を考えて行かなければならない。これはよくわかります。よくわかるのですが、今の農協に対して、組合員である農民が信頼できないということは、その運営のまずいところもありましようけれども、私の見ておる範囲内においては、預金者の預金をいろいろの事業にまわしているのです。もしその事業にほかからの金融が得られるならば、その預金者の預金を、さような危険な事業に使わないでも済むのであります。それができない状態にあるのです。中金が慈善事業でな、ことは私よくわかつておりますが、不当な貸付をすることは、それは慈善事業になるかもしれませんが、必要とするところの資金は、これは金融機関であるのですから、融資してもらいたいのです。そうすることによつてその事業の運転がついて行きますならば、そこからまわつて来るところの金は、一部分預金者の預金をこれに流用するとも、必ず返つて参りますから、預金者に迷惑をかけることはなくて済むわけです。ところがそのめんどうも見ないでおいて、ただ政令をもつて押えて行きますと、農協そのものがつぶれてしまう。そういう現状にあります。私も村にいて、農協に関係を持つてつているのですが、これはゆゆしき状態にただいま立ち至つておるわけです。だから私は、慈善事業として融資は決して期待するわけではありませんが、必要とするところの融資はやつていただかなければならないと思います。どうしてそうなるがということは、こまかく説明すると時間がかかりますから、遠慮いたしますけれども、この問題はきわめて大事な問題であります。私はもしこの政令一本で押えて行くというようなお考え方が、預金者の保護であるとするならば、それはむしろ何事もしないことが安全であるという結果に相なるだろうと思います。予見できるところの農村恐慌に対処して、農村を苦境から救つて行こうという積極的な御配慮を、政府でお考えなさるならば、すみやかに相当程度融資の方途をお考えになつていただくことが、喫緊の重要問題であるということを、あえて申し上げたいのであります。  いろいろお伺いしたいことがたくさんございますけれども、時間がありませんから、この辺で私の質問を終ります。
  66. 小平忠

    ○小平(忠)委員 前会大臣の時間の御都合で、途中で打ち切られましたために、最も重要な点を二、三、この際大臣に伺いたいと思います。今度の改正法の趣旨は、現在日本が置かれておる立場から見まして真にやむを得ないということは、大臣以下政府委員の方々の説明によりまして、十分了承いたします。その場合に、この改正法が国会を通過して実際に施行される場合において、やはり大きな問題は、連合国の従来の縦割りを幾分緩和するということになるのですが、その場合にこの改正案の趣旨が、指導、経済、金融の三本建を連合会の場合にはとられるということであつて、特に関連事業以外は相互に認めないということであります。これは大臣がほんとうにこの改正案は、單に関係当局の指示だけでなく、今後農業協同組合の助長発展のために、かくあらねばならぬという真の考えであるのか、それとも関係当局の指示もあつて、こういう措置をとらなければならなかつたのか、その点について、大臣の明快なる御答弁をこの際承りたいと思います。
  67. 森幸太郎

    森國務大臣 これは吉川さんの御質問にお答えいたしました通り、今日の段階といたしましては、この程度改正することが最も適当である、この信念のもとに提案いたしたわけであります。
  68. 小平忠

    ○小平(忠)委員 現在の段階においては、この程度が最も理想的であるという確信をお持ちであるということが明らかになりましたから、そこで次にお伺いいたしたいのでありますが、そういたしますと、私も大臣の御意見には賛成であります。日本の農業の近代化とか、農業協同組合の今後の発展過程なり、その点を考えてみますときに、かつて戰時中の農業会のごとき、相互運営だと言つて、何でもかんでも一緒にやつたことが、いいか悪いかということを私は批判をし、反省をして見たとき、今日の段階において日本の協同組合運動をふり返つて見たときに、やはり事業事業まつすぐ直進して行く、指導機関は指導機関で、これに対する純粋なる批判と、純粋なる啓蒙指導をして行く、金融機関金融機関として、金融機関本来の責務を果すという形でなさらない限りは、私はまだまだ日本の農村は近代的な方向に行かぬと思う。また日本の農村は発展しないというふうに考えるのですが、今度の改正案を見ますと、関連事業という表現で、やはり何でもかんでもやれる。極端に言うと、指導機関が経済事業がやれる、また経済連合会が指導事業をどんどんやり得るわけです。そこで先ほど農業協同組合法の一部を改正する法律中の、関連事業についての参考資料をいただきましたが、その一のイあるいは口の問題、これは私は非常に重要な問題があると思います。たとえて申しますと、イ、品種改良のための優良種牡牛の貸與とありますが、優良種牡牛なり種牡馬の改良ということになりますと、連合会自体が相当資金をもつて、種牡馬牛の改良をしなければならない。もちろん現在の場合においては、第三者から相当融資を受けなければできないと思います。そうした場合に、はたしてこのような関連事業を認めるごとによつて、この三本の行き方が、政府方針として踏襲されるということに、私は非常に疑念を持つわけであります。従つて、あくまでも純粋の指導機関が指導一本で行こうというならば、第三者から資金を求めてやるというようなことについては、これは何ら異議がないと思われる。指導機関の現在の立場からいうと、賦課金だけをもつてやる連合会が、このような事業ができつこない。先ず第三者から資金を仰がなければならないということになる。指導機関そのものが経済事業機関化して来ることによつて、その純粋な指導会にこういうような関連事業をどんどん許すならば、何も今度のような改正をする必要はないと思う。特に昨日農政局長は種母牛、種母鳥の共同利用、あるいは種苗事業、孵卵事業といつたような事業について相当第三者から融資を受けてやるような場合に、これを関連事業とみなしますかという質問を出しましたところが、これに対しては目下検討中であるから、十分検討の上回答するということで保留されました。その点も本日は大臣がお見えになつたことでありますから、はつきりお伺いしたいのでありますが、これは現実の例を申し上げますと、種苗事業のごときは、どうしてもやるとなつたならば、数千万円の資金を仰がなければできません。あるいは種牡牛、種牡馬の共同利用事業の場合にも、やはり数千万円の資金を仰がなければできません。こういうような、他から相当資金を仰いでやる事業も、今度の改正法がもし通過された場合に、関連事業とみなして認めるか認めないかという見解を、この際大臣から明瞭にお答えいただきたいと思うのであります。
  69. 藤田巖

    ○藤田政府委員 その点につきましては、むしろ私からお答えいたした方がいいかと思います。昨日もお答え申し上げましたように、指導事業の連合会が関連事業として行いますものは、指導事業と非常に密接であり、かつまた指導を推進する上に必要であり、さらにまた他の販売、購買事業等では、その性質上扱えないというふうなものにつきまして、それを認めるという趣旨であるわけであります。従つてわれわれの考え方といたしましては、そういうふうな場合の借入金も、当然適当な限度においてはいいと思いますが、本来この団体は賦課金をもつて成立つておるようなものであります。経済事業も営まないわけでありますから、大きな財政的基礎ということも考えられないわけでありまして、それには借入金についてもおのずから限度があるであろうと私は思つております。
  70. 小平忠

    ○小平(忠)委員 その点ただいま農政局長は、限度があるというお話でありますが、相当よく検討されて、今後この点について、万遺憾なき指導勧告をしていただきたいと思います。そうでなければ、單にこういうような連合会を設置いたしましても、意義がないと思います。  次に大臣もお見えになつておりますから伺います。私もたびたび委員会でお伺いしておりますが、例の二十四年度の報奨物資の問題について、その後いかような結論になりましたか。これは農業協同組合にとつては非常に大きな問題でありますので、これが現在の段階においては、どうなつておるかを伺いたいと思います。
  71. 森幸太郎

    森國務大臣 報奨物資の問題につきましては、さいさいこの委員会でも御報告申し上げているわけであります。午前中も申し上げたかと存じますが、急いで打つべき手を打ちまして、協同組合が発行している手形の不渡りにならないような処置を、まず一段としてとつたわけであります。しかして報奨物資の性質に合うような処置によりまして、報奨物資が農家に渡るということを考慮に入れて、第二段の処置をとることにいたしたのであります。すなわち現在商業組合、農業協同組合につつ返えされて、在庫しているというものに対しましては、政府はこれを市価の状態にとりもどすということによつて解決いたす方針を定めております。
  72. 小平忠

    ○小平(忠)委員 この問題も掘り下げていろいろ聞きたいのでありますが、この辺できようはこの問題に打切りたいと思います。  最後に一点資金問題でありますが、これは最近非常に重要な問題が起きていると思います。と申しますのは、農協の最近の経営において、資金難という問題は言語に絶するものがあることは、御承知の通りであります。その原因についていろいろ論究されておりますが、その中で、現在の報奨物資のごときものも非常に大きな問題でありますが、あわせて農業関係の対日援助見返り資金の問題もあります。これは二十四年度は、御承知のように二十六億ほど一応予定をされておつたわけでありますが、この融資が今回單にキユアリング倉庫の七千数百万が承認を得ただけで、九割九分に当る二十五億円余という厖大なものが、まつたく期限切れになつて、二十四年度は融資ができないという現状であります。その内容について、いろいろ関係先にも伺つたのでありますが、これは農林当局の大怠慢であつたと思う。他の関係省においては、積極的に関係当局とも連絡をとつて、資料を提供し、その必要性を説かれておりますから、農業関係以外の面については、相当融資をされるごとになつております。すなわち電気通信においては四十億、国有鉄道においては十一億、海運には十九億、中小企業には三億というふうに承認になつております。しかるに農業関係は、大事な土地改良の十九億、小水力発電の一億、魚田開発の一億が完全に打切りなつたことは、まことに遺憾にたえないのであります。これは農林省当局や、農林大臣の大きな責任だと思うのでありますが、これに対して、農林大臣は今後いかなる処置をされるか、またこれに対する責任をいかにお考えになつているか、この際明確な御答弁を願いたいと思います。
  73. 森幸太郎

    森國務大臣 怠慢と責められ、責任をとれとおつしやつても、農林省としては全力を注いでおるのであります。この見返り資金の性質は、よく小平委員も御承知の通りだと思います。大蔵省の預金部から出してすらくとやるさえ容易に行かない。ことに農地改良に要する詳細なる金額のお持ち合せあろうと思いますが、なかなかこれは複雑な手数がいるのであります。十九億の予算は、わくは一応つくりましたけれども、キユアリング倉庫の七千四百万円が二十四年度として出ることになつたのであります。しかし必要な金はあくまでも必要なのであります。二十四年度で終つたわけではないし、二十五年度においても、その必要度は少しもかわつておらないのでありますから、二十五年度においても、この資金の流用に努力いたしております。従つて怠慢であるとか、責任をとれとおつしやつても、この見返り資金の運用の内容については、小平委員もよく御承知になつていることだと存じますが、なお御研究なさつて、農林当局の施策にこの上ながら御協力をお願いいたしたいと思います。
  74. 小笠原八十美

    小笠原委員長 これにて質疑の通告者全部の質疑は終りました。よつて本案に対する質疑はこれにて終局いたしました。  本日はこの程度にとどめまして、次会は明十二日午後一時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時三十一分散会