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1950-04-10 第7回国会 衆議院 農林委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年四月十日(月曜日)     午後一時三十九分開議  出席委員    委員長 小笠原八十美君    理事 安部 俊吾君 理事 野原 正勝君    理事 松浦 東介君 理事 八木 一郎君   理事 藥師神岩太郎君 理事 山村新治郎君    理事 井上 良二君 理事 山口 武秀君    理事 吉川 久衛君       青木  正君    足立 篤郎君       遠藤 三郎君    河野 謙三君       寺本  齋君    中村  清君       原田 雪松君    平澤 長吉君       渕  通義君    村上 清治君       守島 伍郎君    山本 久雄君       大森 玉木君    坂口 主税君       小平  忠君  出席政府委員         農林政務次官  坂本  實君         農林事務官         (農政局長)  藤田  巖君         農林事務官         (農地局長)  山添 利作君         林野庁長官   横川 信夫君  委員外出席者         農林事務官         (農政局農業協         同組合部長)  打越顯太郎君         農林事務官         (農政局農業協         同組合部農業協         同組合課長)  平木  桂君         專  門  員 岩隈  博君         專  門  員 藤井  信君 四月八日  委員寺本齋君辞任につき、その補欠として田中  豊君が議長指名委員に選任された。 同月九日  委員田中豊君辞任につき、その補欠として寺本  齋君議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 四月七日  農林物資規格法案内閣提出第一五九号)(  予) 同月八日  造林臨時措置法案内閣提出第一六〇号) の審査を本委員会付託された。 同月七日  蚕糸業振興に関する陳情書  (第七〇三号)  地方競馬勝馬投票拂戻控除率引下げに関する  陳情書(第七〇五号)  早場米奨励金に関する陳情書  (第七〇八号)  蚕業技術員給與に対し国庫補助陳情書  (第七三二号)  桑苗生産農家救済対策確立陳情書  (第七三八号)  農業政策確立に関する陳情書  (第七  四八号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  農業協同組合法の一部を改正する法律案内閣  提出第一二一号)  肥料取締法案内閣提出第一五四号)  造林臨時措置法案内閣提出第一六〇号)  農林物資規格法案内閣提出第一五九号)(  予)  地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、  動植物検疫所出張所設置に関し承認を求める  の件(内閣提出承認第四号)(予)     ―――――――――――――
  2. 小笠原八十美

    小笠原委員長 これより会議を開きます。  議事に入る前に、議案が付託に相なりましたから御報告いたします。去る八日、内閣提出による造林臨時措置法案が本委員会付託になりました。以上御報告いたします。     —————————————
  3. 小笠原八十美

    小笠原委員長 まず肥料取締法案議題とし、その審査に入ります。政府提案理由説明を求めます。坂本政府委員
  4. 坂本實

    坂本政府委員 だたいま御審議願います肥料取締法案提案理由を御説明申し上げます。  現行肥料取締法は、明治三十二年に制定せられ、同四十一年に全面改正が行われて今日に至つているきわめて古い法律であります。従いまして、時勢の推移に照し、同法には新憲法下情勢に沿わない点がかなり見受けられ、解釈運用でその欠陥を補つているような現状でありますので、この際その全面改正を行うとともに、肥料取締りのもう一つ法規である間接肥料販売制限規則臨時物資需給調整法に基く不安定なものであるので、これを同法に統一して新しい法律を制定し、もつて肥料取締りを新憲法下の諸情勢に沿うように改めつつ、その簡素強化をはかりたいと思うのであります。このことをもう少し敷衍して申しますと、  第一に、現行肥料取締法ではいわゆる直接肥料については製造、輸入販売の各営業とも知事免許制で、また間接肥料については農林大臣許可制をとつておりますが、これら免許可権者である農林大臣知事自由裁量の余地が相当大きくありますので、これを改め、肥料公定規格設定して、生産業及び輸入業については、農林大臣または都道府県知事への登録制とし、公定規格の定められていない新肥料については仮登録制を設けました。また販売業については、單に都道府県知事への届出制としました。  第二に、現行肥料取締法規には條文化されていない事項のうち、業者の虚偽の宣伝等を禁止すること、業者肥料の施用上の注意等を表示せしめること、農林大臣知事は収去せしめた肥料分析検査の結果を公表すべきことのほか、前述しました肥料登録や仮登録をしたときまたはその取消をしたときには、農林大臣知事はその登録番号、仮登録番号肥料の名称、保証成分量業者住所氏名等を公表すべきことをも規定して農民の保護に遺憾なきを期しました。  第三に、現行肥料取締法罰則はあまりにも軽く、ひとり体刑規定がないのみならず、罰金刑もわずか最高二千円と規定しているにすぎないので、これを強化する必要があり、体刑罰金刑の併科もできるようにいたしますとともに、罰則規定を設けました。  以上がこの法律案提出した理由の大要でありますが、何とぞ慎重御審議の上、御賛同あらんことを切望いたす次第です。
  5. 小笠原八十美

    小笠原委員長 これにて本案に対する提案理由説明は終りました。     —————————————
  6. 小笠原八十美

    小笠原委員長 次に、地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、動植物検疫所出張所設置に関し承認を求めるの件を議題とし、提案理由説明を求めます。坂本政府委員
  7. 坂本實

    坂本政府委員 動植物検疫所出張所設置承認につきましての提案理案理由を御説明申し上げます。  海外より危険な病害虫が侵入することを防止して、国内農業生産確保をはかるとともに、外国の要求する輸出植物検疫を実施するために、従来より輸入植物検疫法に基いて輸出入する植物検疫を実施しているのであります。この検疫は戰前二十三箇所の主要港や飛行場検疫機関において実施されたのでありますが、終戰後はその場所を十二箇所に減少し現在に至つているのであります。最近貿易がとみに活溌になるに従いまして、提案いたしました清水、四日市ほか五港にも検疫を必要とする植物輸出入が急激に増加し、現在では検疫の万全を期することがきわめて困難な状態に立ち至つております。詳しく申し上げますと、これらの港へ植物が到着いたしますと、その都度もよりの検疫所より職員をそれぞれに派遣しまして、検査取締りを実施させておるのでありますが、検疫業務が非常に繁忙になつたため、円滑に業務を遂行いたすことができない状態になつたのであります。しかも地元業者もきわめて多大な不利不便を感ずるようになりましたので、この方面からも出張所を早急に設置するよう請願、陳情が少くないのであります。また羽田飛行場においては、最近空路輸入する植物や、航空便輸出する植物の数がはなはだしく増加し、航空機の発着が毎月百ないし三百機に達する状態となりました。しかもその発着はほとんど夜半でありますから、必要な都度植物検疫官を派遣するということは不可能なのであります。検疫機関設置要望は、関係方面、税関または業者からも強く要望されておるのであります。以上八箇所の検疫所出張所設置は、病害虫の侵入を阻止し、植物輸出を円滑に行う上から見ましても、地元業者要望から見ましても、真に時宜に適した措置であると信ずるのであります。  以上が出張所設置に関する提案理由であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御承認あらんことを御願いいたします。
  8. 小笠原八十美

    小笠原委員長 これにて本件に対する提案理由説明は終りました。     —————————————
  9. 小笠原八十美

    小笠原委員長 次に、農林物資規格法案議題とし、まず提案理由説明を求めます。坂本政府委員
  10. 坂本實

    坂本政府委員 農林物資規格法案提案理由を御説明申し上げます。  わら工品特殊農作物、木材、加工水産物及び加工食品等重要農林物資につきましては、全国的に統一した規格を定め、これを普及させることによつて、これらの農林物資品質の改善、生産合理化、取引の單純公正化使用または浦賀の合理化をはかることが必要であります。これがため古くからこれらの物資については規格統一検査の制度が存在し、昭和二十三年以降指定農林物資検査法に受け継がれまして今日に至つているのでありますが、同法の規定するごとき強制検査は、統制の逐次撤廃されつつある現在の事態に適合しない点がありますので、この法律は廃止することにいたし、これにかわつて規格統一都道府県格付規定する本法案提案することどいたしたのであります。この法律案要点を要約して申し上げますと、農林大臣が重要な農林物資について、農林物資規格調査会の議を経て、日本農林規格を制定することといたしたのであります。調査会審議は公正な手続によつて行い、かつ利害関係人意向を反映させるため、公聴会を開催することといたしました。都道府県日本農林規格に基いて格付を行つたときは、その品質を保証するため、日本農林規格に該当する旨の証票を付することができることとしてあります。都道府県日本農林規格に基く格付を行うかどうかは、都道府県自由意志によることといたしました。日本農林規格を定めた物資については、都道府県でこれと異なる規格を制定することを制限しておりますが、都道府県その他利害関係人から、日本農林規格を制定するように申出のあるときは、農林物資規格調査会にはかつて、必要なものについては日本農林規格を定めることといたしたのであります。  以上がこの法案要点であります。  各位におかれましては慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことを切望いたします。
  11. 小笠原八十美

    小笠原委員長 これにて本案に対する提案理由説明は終りました。     —————————————
  12. 小笠原八十美

  13. 坂本實

    坂本政府委員 ただいま議題となりました造林臨時措置法案につきまして、その提案理由を御説明申し上げたいと思います。  すでに多くの人によつて指摘されておりますごとく、わが国森林は、戰時及び戦後の過伐、濫伐により、年々森林蓄積への食込み伐採を強行して参りました結果、資源は漸次縮少化の一途をたどり、現在民有林だけでおよそ百二十万町歩を越える造林未済地が累積しているありさまでありまして、このような森林の再生産過程における著しい不均衡が、国土保全はもとより、将来の林産物需給の上にも重大な支障を招くに至ることは、多く申し上げまでもないことであります。植伐の均衡をとりもどし、さらに森林資源長期維持確保して参りますことは、当面のわが国林政、今後のわが民有林行政において最も重要にして、かつ困難な問題でありまして、あらゆる施策を結集してこの問題の解決に当らねばならないのでありますが、なかんずく再造林確保し、林業成立の基礎を確立することが、その重要な課題を達成する第一歩であると存ずるのであります。これがため政府は、昭和二十四年度より民有造林五箇年計画を樹立し、これが実施の裏づけとして、補助融資樹苗確保対策を講じているのでありますが、これとともに、森林所有者自身造林意欲を起させることが緊急の要務でありますので、ここに造林臨時括置法案提出した次第であります。以下本法案の主要な内容について概略御説明申し上げます。  第一は、造林地指定であります。この法律の施行の時から今後五箇年間現に存する伐採跡地、無立木地または散生地たる森林原野であつて国土保全上急速に造林を必要とするものを造林地として指定いたします。造林地指定するには、その造林計画を定めてすることとし、造林地指定があつたときは、その所有者又は使用収益権者が、造林計画に定められた期限までにその計画従つて植栽を完了することが期待される次第であります。  第二は、造林者指定についてでありますが、造林地所有者または使用収益権者造林計画に基いて植栽を行う意思があれば、その旨をあらかじめ一定期日までに申し出させることとし、その申出がないときは、別に造林者指定し、その者がかわつて造林を行うのであります。また造林地所有者または使用収益権者酒林をするつもりでその申出をした場合でも、造林計画に定められた期限までに植栽を完了しなかつたときは、同様に造林者指定することとしております。  第三は、地上権設定であります。造林者指定を受けた者は、造林計画に定められた期限までにその植栽を行うために、造林地所有者に対して造林地地上権設定に関する協議を求めることができるものとし、協議が整わないときは、都道府県知事が裁定することとしたのであります。指定造林者植栽した林木は、地上権設定の際とりきめた割合で指定造林者造林地所有者との共有となるのであります。  第四に、農林地調整についてでありますが、自作農創設特別措置法により開拓適地として指定され、または未懇地もしくは牧野として買収されたものについては、造林地指定をすることができないこととするとともに、造林地については、自作農創設特別措置法による指定または買収の処分ができないこととし、林地と農地牧地との土地利用調整し、かつ造林地の経常の安定を確保するよう措置したのであります。  以上が本法案内容でありますが、森林の荒廃が災害の頻発等、公共の福祉に大きな支障となつている現在において、この法案趣旨は、森林を所有する人々にも十分理解さてれおることと考えるのであります。何とぞ御審議の上すみやかに可決あらんことをお願い申し上げます。
  14. 小笠原八十美

    小笠原委員長 これにて本案に対する提案理由説明は終りました。引続きこれから各案件の質疑でありますが、これは後刻行うことといたしたいと思います。     —————————————
  15. 小笠原八十美

    小笠原委員長 それでは前会に引続き農業協同組合法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を継続いたします。渕君。
  16. 渕通義

    渕委員 農業協同組合が今日の悲境に陷つておることにつきましては、先般来農林大臣ともいろいろ質疑をかわしたのでございますが、一点だけ農政局長に伺つておきたいと思うのでございます。     〔委員長退席山村委員長代理着席〕  農業協同組合がこの苦境に陷るというのは何ゆえであるかという、その根本にさかのぼつてみますと、農協自体資本蓄積というものが少ない結果、いろいろな問題が起つて来るのではないかということを考えざるを得ないのでございますが、農協の健全な発達をはかるために、理想的な形態の資本はどの程度をもつて標準とされるのか。この点を承つておきたいと思います。
  17. 藤田巖

    藤田政府委員 お話のように、農業協同組合出資額はきわめて低くなつているのでございます。模範定款と申しますか、農政局協同組合設立を当初促進いたしましたときの定款例が、たしか百円だつたと思います。そういうふうな例にならいまして、これは一方加入脱退が自由だという原則からいたしまして、あまり多額のものは加入制限する結果にもなつてはいけないということで考えたのでありますが、それがその当時の情勢と現在と比べますと、非常にかわつてつております。御承知のように、現在の出資額は全体を通じまして約四十億であろうかと思います。きわめて事業を行うにつきまして出資金が少いということは、私どもも痛感をいたしております。ただいまどの程度出資総額が理想とするか、こういうふうなお話でございますが、私ども考え方といたしましては、少くとも協同組合の持つておりますところの固定設備は、出資金その他の出資額中心といたしましたもので、これをまかなうというようなことにいたさなければならぬと思うのであります。現在百五十億の増資運動をやつておりますのも、さような趣旨であります。現在の固定設備総額が約七十九億くらいであります。出資金が四十億くらいであります。そのほかのことも勘案して、こ百五十の億の増資運動というものを強力に展開いたしまして、将来組合事業を運営する上に、必要な資金をできるだけ自由にやつて行くというような方向に、進めたいものと思つております。
  18. 山口武秀

    山口(武)委員 この間農政局長は途中まで答えられたのですが、これまで行政措置によつてつていたのだが、今回法律によつて農協連合会兼営について云々されましたが、この兼営禁止はこの間の藤田農政局長の話によりますと、日本政府意向でやるのだ、その理由としては、農業会復活になつてはいけないからやるのだ、こういうふうな説明があつたのですが、これだけでは少しわかりません。一体農業会復活というのは、具体的にどういうことを示しておるのか。この点についての説明をお願いたしたいと思う。
  19. 藤田巖

    藤田政府委員 これは速記を止めて率直に御説明いたしたいと思つておりますが、お許しがあれば……
  20. 山口武秀

    山口(武)委員 速記を止めるというなら、それはけつこですが、この前のときに、政府が自主的にやるということを明らかに言明されたのは、どういうことになるのですか。
  21. 藤田巖

    藤田政府委員 もちろん日本政府は、政府において決定いたしましたことは、みずから適当なりと判断いたしまして、これを決定するのであります。その間の経緯においていろいろのことがございましても、最終的に日本政府の決定でいたすべきものであります。やはり各関係方面の御意向もございますが、日本政府においても、これは現段階においては適当と認めて、これを最終的に決定いたした。こういうような趣旨で御答弁いたしましたので、御了承をいただきたいと思います。
  22. 山村新治郎

    山村委員長代理 ちよつと速記をやめて……     〔速記中止
  23. 山村新治郎

  24. 山口武秀

    山口(武)委員 大体言葉の意味はわかるのですが、そういう意味農協を自主的にやつて行きたいということ、それから農業会の再編成になりたくないということ、それが兼営禁止という形で、法律で禁止しで来る方法であろうかどうであろうか。ここに一つの問題があるのではないだろうか。それから、なお農協を自主的にして行くということを言いますが、今後の融資の問題、あるいはその他の指導の問題、それから現在の農協がきわめて苦境にあるという問題などがからみ合いまして、今後農協自主性が失われ行てくことになるのではないだろうか。このような懸念が持たれるのですが。これに対して政府見解を明らかにしておいていただきたい。
  25. 藤田巖

    藤田政府委員 私ども考え方といたしましては、協同組合はあくまでも農家の自主的な団体でありますので、私どもはその自主積極的な活動に期待をいたしまして、農民の方々の協同組織によつて農家の社会的、経済的地位の向上をはかつて行く、そうして生産力の増強をはかつて行く、これがやはり骨子になると考えております。従つて従来のような、何でもかんでも小さなことまで干渉する政策で、これをいたずらに庇護するということは、指導としては正しくないのであつて、あくまでもそれが一本立ちになるようにして行かなければならぬ。できるだけみずからの力で歩き、みずからの力で問題を解決して行くという考え方で、協同組合がやつていただくということを期待いたしております。従つてわれわれの方針といたしましても、できる限り協同組合自分の力で解決するということを考えております。いらざる干渉でありますとか、おせつつかいということは、極力慎しむべきであると思います。ただ農業協同組合設立後二年にしかならないのでありまして、まだ一人歩きがなかなかできないのであります。できだるけ一人歩きはさすのすでありますが、それだけの力で、かりにどうしても切り開けないようなところがありますれば、国としてはやはりそれを見てやる。しかしながら、あくまでも個々の小さな干渉をするのではなくて、大きな面から協同組合の育成ということを考える。つまり協同組合自分で歩くのに手を引いて行くというような考え方ではなくて、協同組合歩きやすいところの道を切り開く。その道に石ころがたまつておるとか、大きな川があるとかいうような場合には、歩きやすいように、できるだけその障害を除去するという点に、考慮をして、進み方としては、協同組合自分の力で歩いて行くという方向に持つて行きたいと思います。
  26. 山口武秀

    山口(武)委員 今御説明のような話でありますが、今回の改正につきまして、農業協同組合組合員の利益を保全するため。政令をもつて組合財務処理を適正ならしめるために必要な財務基準を定めるというのでありますが、その政令内容につきまして、何か御説明があつたのでしようか。なかつたとすれば、多少それについてお聞きしたいと思います。
  27. 藤田巖

    藤田政府委員 これはたしか差上げました資料の中に、農業協同組合法の五十二條の二の規定による農業協同組合及び農業協同組合連合会財務処理基準を定める政令案というのがお配りをしてあると思います。その政令案の大体の骨子は、大蔵省その他の関係方面と、まだ完全には打合せをいたしておりませんが、おもな内容を申しますと、先ほど渕委員からもお話がございましたが、自己資本額基準をきめる。つまり固定設備のごときものは、できるだけ出資金準備金あるいはその他の積立金合計額を超えないようにする。固定資産はできるだけ自己資本でまかなうという原則をうたう。それからまた貯金等運用基準を定めまして、長期にわたるところの資金は、一定の全額の合計額以下にするというようなことにいたします。あるいはまた貯金等拂いもどし準備金基準を設けまして、一定定期貯金及び定期積金一定額以上の金は、必ずこれを貯金等拂いもどし準備のために、系統機関への預金、または国債、証券、もしくは金融機関の発行する債券として運用をしなければならぬというふうな規定を置きます。あるいはまた、余裕金運用基準というか。業務上の余裕金運用についての一定制限を設ける。こういうことがこの政令内容になつておる次第であります。
  28. 山口武秀

    山口(武)委員 先ほどの御説明でございまするが、農協を自主的に進ませて行く、それから政府としては、これに対する無用な干渉指導を避けて歩くのに便利にして行くというような御説明があつたわけですが、そういたしますると、これはきわめて重大なる問題に当面しているにもかかわらず、はたしてその対策があるのだろうか、どうであろうかということで、私疑問に突き当つてしまつたわけであります。と申しまするのは、農協のそもそも生れた目的から考えてみますならば、これは協同組織によりまして、農業経営を合理的にして行くということでありましたし、それは單に流通面における協同事業を行うばかりではなくて、生産面においての合理化方向がとられなければならぬはずではなかつたか。ところがこれが行われるような情勢が、現在農村には許されていないのだ。それから日本現状においても許されていないのだ。これは言うまでもなく独占資本の収奪、重税の問題、あるいは低米価の問題です。そこでこういうような根本的な問題が解決されない限り、農業協同組合というものも、本来の役割を果すという段階にはとても進み得ないのじやないか、何もできないで單に流通面のごまかしの仕事をやつているくらいで事が終つてしまうのではないだろうか。しかも将来において、一体協同組合というものが本来の目的に向つて発展できるという見通しすら持てないのではないだろうかと思うが、これに対する見解をお伺いしたわけです。
  29. 藤田巖

    藤田政府委員 農業協同組合が堅実に発展するのには、もちろん農家自身の積極的な心構えというものが中心にならなければならないと思いますが、同時に農家自体が、やはり農業経営の安定と申しますか、少くとも再生産を保障せられるような、いろいろの施策が中心になつて行かなければ、なかなか農家の出資あるいは賦課金の徴収による農業協同組合も、むずかしい点が経営上起つて来るというように考えている。従つて根本的には、お話のございましたように、農産物価格の問題でありますとか、あるいは農業部門に対する国家の財政的な出資でありますとか、あるいはその他農業部門に対する長中期の資金の融通の機構を考えるとかいうふうなことが、国家として根本的にやらなければならぬことであると思つております。しかしながらそれ以外にやはり農家自体の手によつて、なお改善すべき余地はたくさんあろうと思います。協同組合がもつとほんとうに農家の自主的な団体として、よくその農業経営と有機的な連繋のもとに事業を行い、またほんとうに農家の経済的利益を守るように各種の協同事業をやつて行くということに、もつと積極的にやりますならば、これはなお余地があると思つております。これは全然国がめんどうを見なければ、そういう余地がないということではなくて、やはり農家自身協同組合を利用することによつて協同組合の力によつて農業経営の安定をはかることができるということを、われわれはまず今後とも農業協同組合に期待をいたしたいと考えている次第であります。
  30. 山口武秀

    山口(武)委員 私ただいまの意見には納得できないのであります。そのような小さなことを改善するということで、根本的な問題をごまかしてはならないだろうと思う。それから日本が他の産業部面において、近代国家としての進歩を遂げているときに、農業だけかきわめて遅れた形で出発している。そういつたときにおいて、今言つたようなことでは何ら根本的な問題は解決できないと思いますが、その点をお伺いいたしたい。  それから本月の五日に湯河農林中央金庫理事長を一万田日銀総裁が呼んで、農協にも再建資金だけではなく、農業近代化のための合理化資金も出す、こういうことを言明されたという話を新聞で見たのですが、これは御存じでしようか。
  31. 藤田巖

    藤田政府委員 最近協同組合が貯拂い資金の問題について、相当憂慮すべき状態に立至つていることは御承知の通りであります。つまり組合の貯金を扱つておりますが、その貯金が事業資金として流用されておる部面もあるわけであります。ところが農家としてはまだ金が入つて来ない、しかも支出すべきものが出て来るというときに、貯金の拂いもどしをして来るわけであります。従つてその貯拂いの資金に非常に問題を起しておりまして、御承知の通り、若干の組合においては、貯金の拂いもどしを停止しなければならないというふうな状態が起つております。それの対策をわれわれとしては真劍に考えなければならぬということで、現在やつております。おそらくそれに関係してのことであろうと思つております。中金及び日銀の御意向としては、金融機関としてはあくまでも金融ベースに乗るというもので考えなければならないということであるけれども、ひとつできるだけ再建計画というものを立てて、そうして金融のベースに乗るものについては極力援助しよう、なおまた生産資金を出すことについてはやはり極力援助しようというようなことに相なつておりまして、今そのために具体的な対策を、関係方面協議中でございます。おそらくそれに関係しての御意見だというふうに考えております。
  32. 山口武秀

    山口(武)委員 一万田日銀総裁が、農協再建資金だけでなく、農村近代化のための合理的な資金も出すということを言われておるのはたいへんけつこうだと思うのでありますが、このように農村近代化のための合理的な資金を出すというような動きがあり、意向がある場合、一体政府はこれについてどのようなお考えを持たれておるだろうか。と申しますのは、農業近代化のためにこの資金をもらつてもらうわけでもないでしようが、とにかく受けて、それを具体的にどんな計画で、どのようにして農業近代化というものを進め得るか、これに対する対策、あるいは見通しというようなものが考えられるかどうか、その点お伺いいたします。
  33. 藤田巖

    藤田政府委員 農業近代化のために必要な資金を出すということもございましたが、率直に申しまして、現状はもつと悪くなつております。むしろ貯拂い資金確保するということ、この困難な端境期の時期を乗切るということが根本問題で、それに重点が注がれているわけでありまして、それ以外の新しい生産事業部面への進出のための資金ということについては、それだけの資金の余裕というものは、率直に申しましてちよつとむずかしいのであります。そういうふうな生産資金でございますれば、短期の資金としてまかなうということよりも、むしろ長期、中期の、長きにわたつたところの資金でなければならないというふうに思うのであります。そういうふうな資金については、別途方策が進められております。そういうふうな点についての資金はわれわれはきわめて必要であると思つておりますが、差当りの問題といたしましては、そういうふうな点までの資金はなかなかむずかしいじやないか、短期の資金としてはむずかしいじやないかというふうに考えております。
  34. 山口武秀

    山口(武)委員 率直に事態を言つてもらつたのでたいへんけつこうだと思うのでありますが、今後へたをすると、農協は活動がまつたくなくなるか、あるいは何らかの意味政府の下請け機関になるか、どつちかではないだろうか、と申しますのは、いわゆる貯金の支拂いの問題で困つているというのは、根本的に何が原因かと申しますと、これはやはり農業恐慌の深化というものに存在するのであろう、そこから問題が出て来るのであろうと思う。それを緩和する事態がない。しかも今後におきまして、政府の方では、供出制度の改廃というような問題を出して來まして、あるいは肥料の問題につきましても、統制の解除が出て来た。こういう場合に当然米穀商、あるいは肥料商というものの農村進出が、再び考えられるわけであります。これは現在の農民状態、その上に乗つて行く農業協同組合は、これらの資本の進出の前につぶされてしまうじやないだろうか、これらの資本の農村における跳梁を、そのまま許すようなことになつてしまうのではないだろうか、これに対して、政府はどのようにお考えになつておりますか。
  35. 藤田巖

    藤田政府委員 私は率直に申しまして、従来産業組合というものがあり、その当時いわば金融資本、商業資本農家が苦しめられておりましたときに、産業組合が立ち上つて、商業資本なり金融資本と対抗いたしまして、農家の経営安定のために、保護のために、非常に困難な努力をして、一歩々々切り開いて行つた実例があるのであります。私は現在の協同組合が、再び、元の産業組合がそういう気魄を持つて立ち上つたときと同じ心構えで、ひとつやつていただきたい。     〔山村委員長代理退席、委員長着席〕  裸になつて、ほかのものと何ら協定もなく、自力で農家の信用を得て、だんだんとその力をつけて行つたという経過を繰返さなければ、ここに国が保護をするとか、あるいは特典を與えるということで、あくまでもそういうふうなことに頼つておる限りは、健全な成長は見られないと考えております。だから根本的な考え方といたしましては、あの当時の困難な情勢にあつて、あくまでも協同組合がみずからの力で立上つて、一歩々々解決して行つた自分らの地盤をふやしたというふうな意気込みを持つて進まれることを、私どもとしては指導者の方にも期待をいたしますし、それからまた農民諸君も、自分らの組合でありますからして、協同組合がそういう動きをすることについて、大いに積極的な意見を展開して、内部的にだんだんと機運を盛り上らせでいただきたい。そういうふうな方針が、むしろ政府は冷淡であるとか、何にもしないじやないかという非難があるかもしれませんが、これはやはり協同組合運動をまじめに、正しく、強く成長させるゆえんである、というふうに、私は考えております。
  36. 山口武秀

    山口(武)委員 政府意向はよくわかりました。私は今のお話では問題は解決しないと思う。それは精神訓話ならたいへんけつこうだろうと思います。それから政府は何もしていないり言う、政府が何かしているからこの問題があると思います。と申しますのは政府独占資本の収奪機関の役割を果されるから、このような農村恐慌が進行すると思う、それからさらに、日本の農業が自立性というものを守らないから、こういうような問題が起つて来るのではないか、私はそういう見通じに立つて、こういうものを見たときに、きわめて悲観的に見ざるを得ないということを申し上げて質問を打切ります。
  37. 原田雪松

    ○原田委員 この際政府にお伺いしておきたいのであります。事業経営の制限に関する規定のことでありますが、この範囲についてどうお考えであるか、もう一応伺いたいと思います。たとえだ指導販売、購買、信用という三つ、この前データーをもらつたのですが、そのときにその性格についてお導ねしたときには、はつきりしなかつた、この際局長にもう一度お尋ねしたい。
  38. 藤田巖

    藤田政府委員 指導連が指導事業のほかにこれに関連して行う事業というふうなもの、これについて私どもはこの程度はさしつかえないだろうと思つておりますのは、たとえば品種改良のための優良種牡牛の貸與というような問題、あるいはまた優良種苗、新しい生産資材普及の初期の段陷における当該物資の供給、あるいはまた病院を経営する連合会が行います医薬品の購買の仕事、あるいは一般市場取引の対象となるに至つていない新品種生産物の販売のあつせん、こういうような申さは経営事業とも言えるのでありますが、やはり初期の段階といたしましては、当然指導連がこの指導事業を行いますに関連してやつた方が、きわめて適切であるというようなものについては、関連事業としてこれを認めて行くというようなこともできる、その程度においてはさしつかえないものであると思います。
  39. 原田雪松

    ○原田委員 今お話を聞きますと、医薬品の取扱い等をやられるごとになりますと、こういうのは経済行為でないかと私は思うのであります。なお過般お伺いしましたのは、養鶏、養蚕、畜産の面も三つの示される団体に吸収する意図があるかどうか、こういうことをこの前聞いたのでありますが、はつきりしたお答えがなかつたようでありますので、あらためてお伺いしておきます。
  40. 藤田巖

    藤田政府委員 さつき申しました医薬品の購買と申しますものは、指導連が同時に厚生事業である病院を経営いたします場合に、その病院の必要といたします医薬品を購買する。その仕事についてはこれは当然関連事業として行つていいのではないかというように思います。それからなおある程度の車業の統合は支障のないということは、法律上認められておりますが、決してこれを強制すべきものと考えておりません。これは漸次農家が自主的な自己の判断に基きまして事業を運営して行く場合に、むしろ一緒になつた方がいいこういう機運から、当然農家の自発的な意思から生れて行く場合に、法律としてはこの程度まで認め得る、こういうことであります。
  41. 原田雪松

    ○原田委員 その点がどうもはつきりしないのです。大体国の気持をそのまま販売連であるとか、購買連は、地方に通牒いたします場合は統合が是なり、統合すべしというようなかつこうの通牒を出しております。そのために養蚕組合であるとか、畜産組合の業種別に活動しておる団体を吸収しなければならない、こういうねらいを持つた処置をしておる県がたくさんあるのであります。これは少くとも日本の農業経済復興の上に、畜産は畜産の特異性がある、養蚕は養蚕の特殊性格を持つておるのであります。そういうものはその一本でその内容を充実してこれを推進することが、非常に役立つ、こういうふうに思われる。そういうものに対して、吸収の考え方を地方では盛んに伝えておるようであります。私どもその点において非常な不満を持つておるので、そういうことをすることにおいて、従来の農業会形態になるのではないか、その傘下にそういうものを吸収して一本化するということは、関係方面がきらつておるところの、戰時体制の農業会法による形にしてしまうのでないか、こういうことで、実はわれわれは不満に考えておるのであります。しからば畜産団体とか養蚕団体が経済行為というものを認むるか認めないか、それは認めていいようになつておるのでありますけれども、一応この際はつきりした御答弁を求めておきたいと思う。
  42. 藤田巖

    藤田政府委員 ただいまお話がございましたように、私どもといたしましては、決して一つになれとか、そういうふうな干渉は全然ありません。これは全部農家の自主的な意思に基いてこれを判断せらるべきであるというふうに考えております。また指導者におかれましても、賢明に農家意向を測定されまして、そうして御処置いただきたいというふうに思つております。  それから畜産とか、養蚕の団体の経済事業も当然やれるかということであります。指導部内の団体としてできましたものが、いわば経済事業をを行い得る範囲というものは、先ほど申し上げましたような程度であれば関連事業として当然行えるわけでありますし、なお経済事業を本来営むものとしてそうしてそういうふうな団体ができております場合、当然これはやれるわけであります。また逆に申せば、その経済団体がその経済事業に関連いたしまして、いろいろ指導的な面にタッチされるということ、これも関連事業として認められる限りはさしつかえないわけであります。
  43. 原田雪松

    ○原田委員 地方においては、指導販売購買、信用と三つにわかれておるが、中央では販売、購買を別に切り離して、連合会で認められておるわけであります。これも私はどうもおかしいと思う。むしろ中央から末端まで、同じく一元的でなければならない。何ゆえに購買と販売というのを地方では認めたのか。これに疑点を持つておるのであります。要するにこの問題を解決する前には各種の団体の一応意見を聽取したいというこの前の局長の話でありましたが、われわれの団体が何らそういう交渉にあずかつていない。そうすると販売、購買のみの意見を聞かれて、そういうことをやられたのじやないか、こういう一抹の疑惑を持つておるのであります。その点私どもの団体ではそういう交渉を受けておりません。そういう二団体の意見を聞れかて、その二つの団体だけが地方で生きるということはおかしい、さように考えます。その点について御意見を伺つておきたいと思います。
  44. 藤田巖

    藤田政府委員 各団体の意見を聞きます際に、できるだけ急速を要しましたので、至急お集まりをいただく範囲において、そういうふうな点があつたかもしれぬと思いますが、気持といたしましては、何も特にそういうものだけに相談して、ほかのものは全然無視するという気持でないこと、これを御了承いただきたいと思つております。たえずそれに対しての御意見もお聞かせいただきまして、われわれといたしましては、間違いのないように今後ともして行きたい。決して特定の団体だけこれを無視するというふうな立場では考えておりません。
  45. 河野謙三

    ○河野(謙)委員 農政局長に対する原田委員の質問に関連して一点お伺いしたいのですが、今協同組合の統合の場合に、産畜、要蚕それらのものを統合した方がいいか悪いかという御議論がありましたが、これは政府の方は、もちろん農民自体の自由意思にまかのておるのですから、政府干渉すべきでないと思いますけれども、ただしかし、そうとは言うものの、私は政府見解を伺つておきたい。統合するが是か否かということは、私は要するに事業分量の問題、もしくは取扱いの地域の広さ、狹さの問題だと思う。要するに経済單位の問題であると思う。大きすぎて経済單位をはずれる。小さ過ぎて経済單位をはずれる、ここにねらいがあると思う。そこで農林省としては、一体農業団体の統合にあたつて、いかなる程度の地域を一つにし、いかなる事業分量をもつて経済單位と考えておられるか。たとえば一口に県と申ましても、新潟県のように大きな県もあります、島根県や、鳥最県や、また神奈川県のような小さな県もあります。非常にその差が違うのであります。これらの県と同じように扱うことは、これは私は非常に経済單位から言つて違うと思う。その点はどういうふうにお考えになつておるか。同時にそれらに関連して、私は将来一番恐れるのは、農林協同組合と商人系統を考えました場合に、たとえば購入物資にしましても、農業協同組合が全国の全購連、県購連、郡支部、單位組合、この四つの段階を必ず通ります。この四つの段階だけで今後協同組合物資を扱う。一方において商人は、今後だんだんに時勢のしからしめるところによつて、商業資本の活動の幅が狹くなる。おそらく商人は生産から消費者の間に、昔のように四人も五人もの人は入らないで、極端に言えば生産者からただ一人の商人が入つて消費者に行くことが考えられる。またそういうふうに一般の業界は動きつつあります。そういたしますと、協同組合と商人の方を比較しました場合に、農林省は農業協同組合の保護育成をやつているが、はたして今までのような形の農業協同組合を、四つの段階を流すというようなことで、協同組合がほとんどうに育成できるか、保護できるか、私はそれを疑問に思う。それと農業協同組合の過去の農業会当時の失敗に徴して、一体経済單位はどこを押えたらいいかということも、私は十分御検討になつておると思う。ただ同じ農業者の資材を扱うのだから、同じ農産物を扱うのだから、全国のものを一つにしたらよい、農業も、畜産も、また一般企業も一つにしたらいいというような、簡單な取扱いでは経済行為に能率的には行かないのであります。経済行為をやるには、農業団体に経済行為を最も能率的にやらせる。農業協同縫合をほんとうに育成させるためには、どういう理想の型を考えておられるか。これをひとつ伺いたい。私はかように思います。
  46. 藤田巖

    藤田政府委員 お説のように、事業団体は一つの適当な経済單位でやつて行くことが、事業運営上能率的である、または合理性か確保されるという点については、私も率直にそうだと思いますが、しかしながらはたしてしからば、具体的の事例に当てはめて見て、どこの県ではどれだけのものが適当であるか、それ以上は大き過ぎる、小さ過ぎるという判断は、これはいろいろの條件を見なければなりません。これはたとえば従来の各事業の状況でありますとか、あるいは扱います種類によりますとか、あるいはまたそれの実際の指導者の能力と申しますか、あるいは知識経験というか、または資本蓄積その他いろいろの條件が総合されて、判断されるわけであります。私はこれは抽象的には言えますけれども、農林省といたしては、具体的にはしからばこれが適当だ、あれが適当だということは、なかなか決定ができない。従つてやはりこれは自主的に考えまして、これを決定していただくという以外には、われわれとしてはそういうあらかじめきまつた尺度をもつて、認可、不認可を決定する、指導するというような考え方は持つておりません。そこは全部自主的に決定していただくということで、われわれとしては特別な方針というものは出さないつもりであります。
  47. 河野謙三

    ○河野(謙)委員 もちろん自主的にやるものでありまして、農林省が強制的に押しつけるものではありませんけれども、一応農林省にも協同組合部までできておる。一体この協同協同組合部は何をしておるのか。少くともかくかくの場合はかくかくにすべきであるという、ひな形くらいは示してよいと思う。そういうことをいろいろやるための農林省であり、特に協同組合部であると思う。くどいようでありますけれども、経済單位の問題は、少くとも大所、高所から一つのひな形を示して、農村を指導すべきである。強制ではいけません。強制と指導とは違います。かつての財閥の三井なら三井が、一つ資本によつてあただけの大きな事業をしても、決して事業部門を一にしておりません。船舶なら船舶部門、造船なら浩船部門、運送なら運送、化学なら化学と、同じ資本系統でありながらそれぞれの部門にわけておるということは、能率的に、経済的に事業を活動させるために、一つ経済單位の限度を越えてはいかんということなのであります。これらのことは、何も民間の営利会社だけの問題ではないのでありまして、これは農村の今後の指導にあたりましても、農林省は、これらの経済單位はかくあるべきであるという、ひな型を示すくらいの熱意があるか。そのくらいのことをするのが、私はほんとうに親切な指導だと思う。一体先ほど申し上げました四つの段階をとつてつて、今後協同組合が成り立つか成り立たぬか。一般の業者と対抗し得るか。対抗し得なかつた場合はどういうふうにするかということも、とうにお考えになつて、いなければならぬ。私は、ほんとうに協同組合を育成して行くならば、この場合はこう、この場合はこうというお考えがあるべきはずだと思う。先ほど原田さんからお尋ねの、畜産とか、養蚕とか一般農業とかいう問題も、その問題が片ずけば、みずから一緒になるべきものは一緒になつつてもよいし、別れて別々になるべきものは別になるのも、これは自由でよいと思う。しかし一応のひな型は示していただいてもよいと思う。この機会にさようなことについての御構想がなければ、あらためて別の機会でもけつこうでありますけれども、農林省として、専門家の立場でお考えくださることを希望いたしまして、私の質問を打切ります。
  48. 小平忠

    ○小平(忠)委員 農業協同組合法の一部改正について、私は基本的な問題とあわせまして、具体的な内容の問題についても、この機会に局長、部長、課長の方々が御出席でございますから、お伺いしたいと思うわけであります。  日本の戰後における農業協同組合運動は、最近の組合経営の実態から見て、大きな転換期に遭遇しているではないかと深く考えるわけであります。と申しますのは、最近の組合経営の実態というものは、單に資金難あるいは経営難といつた問題だけでなく、組合経営者の実態、また組合事務を行います職員、こういつたものの実態から見て大正の末期、昭和の初期から産業組合運動が非常に伸びて参つた当時のあり方を、もう一ぺん繰り返さなければならないのではないかということを、特に考えるのであります。戰後農地開放と関連いたしまして、農村の基盤として新発足した農業協同組合設立の過程において、町村に單協ができ、都道府県連合会ができ、全国に全国連合会ができたが、その連合会設立に際して、政府のとられた指導方針は、私はまことに遺憾にたえない。と申しますのは、私はあえて政府を攻撃するわけではありませんが。この実情については、今度のこの改正もいかなる理由によつてなされたか、先ほど藤田局長から、速記をとめて懇切な御説明があつたので、その点は私も了とするのでありますが、しかしながら今日、日本現状として、法令によらず、政令やあるいは場合によつては統制によつてなされている事項がありますが、少くとも農業協同組合が厳然としてあつて、この法令に従つて連合会設立の認可申請を出した場合、政府指導方針だからと言つてそれを蹴る理由はないのです。だから村の末端に行くと非常に誤解がある。特に国会議員あるいは公務員にこういう解釈をする人がある。農業協同組合法によれば、連合会というものは自由にできるじやないか。たくさん連合会をつくれば役員になれるから、村のボスどもでたくさん連合会をつくれという説をなす人がある。というのは、こういう指導方針は別に書面によつて出されたわけでも何でもありません。やはり例の都道府県組合課長会議、あるいはそういつた会議において指導をし、あるいは連合会方面指導をしたものであるから、徹底を欠いているわけであるが、そういつたような行為をなされているものが、ほかの面であるのでありましようか。この点特に農林省の関係当局においては、どうお考えになつているか。先般大臣に対して、改正法が国会を通過したならば従来の指導方針を撤回される御意思があるかないかということを伺いましたら、大臣は、撤回する方針であると言明しました。ですからけつこうであると思うのでありますが、もし国会を通過しなかつた場合にはただいまの御説明の中にもありますように、従来の指導方針を改める考えを持つていないということになりますと、こういつたような処置をなされてはたしてよいのか悪いのかということをおもんぱかるわけであります。この点について、従来なして来た政府の処置、またこれが国会を通過しなかつた場合に、従来のような徹底を欠く指導方針をとられるお考えでありますか、お伺いしたいのであります。
  49. 藤田巖

    藤田政府委員 従来の取扱いは、法律上は自由でありながら、指導方針によつてこれを制限して来ておることは、御指摘の通りであります。われれれといたしましても、非常に苦しいやり方でやつて来たのであります。従つてわれわれといたしましては、やれるべきものはやらせ、またこの程度以上はやれないというふうに、はつきりさせる必要があるということから、今回この法律によつてその限度を明らかにしたいという趣旨であります。なお将来の考え方といたしましては、やはり協同組合が健全に育ち、協同組合法の精神がその通り行われるというような段階になつて行くのでありますならば、やはり法本来の考え方からいたしまして、これを自由にとれるような方向に、できるだけ早く持つて行きたいと考えております。
  50. 小平忠

    ○小平(忠)委員 ただいまの農政局長の御説明は了といたしますが、連合会設立当初から今日に至るまでのいろいろな経過を見ますると、従来とられて来た指導方針が、結局事業別にするということにあつたので、現在県においては、その種類が六つ七つから十を越えているのであります。県におきましても、そういつたように連合会をたくさんつくることによつて、市町村の單位農業協同組合組合長ほとんど全員が連合会の役員になつたという事実、そこにもつて来て県の職員はどうでありましようか。かつて農業会当時非常に職員が多く、これを整理しなければならぬというような声がありましたが、連合会が八つできれば、人件費もかさみその他の経費もかさむのは当然であります。連合会設立当時とその後におきまするいろいろな実態を見ますると、縦割というものが農業協同組合の健全な発達を阻害している。一部分その特殊性を生かして積極的にやつたという点もあるのでありましようが、全体的に見ると非常な支障を来したのではないかと思うのであります。さて今回のこの改正は、一昨年、特に連合会設立当初から、連合会の合体、総合運営を全国農協の大会においても決議されて、ようやくこの三段階、金融、経済、指導の三本建という形に統合できるという方針であるのでありますが、その場合に私はここに一つの疑問といたしますことは、しからばこういうような三本建にもつて行こうとする政府の御意思も、従来の縦割から見ると、一歩前進であるとは思うのでありますが、しかしそうすることによつて、その連合会それ自体の経営が、非常に困るような場合が起りはしないかという点であります。その点を具体的に申し上げますならば、今度の改正案によりますと、教育指導事業を行う連合会は、関連事業を除いては、経済事業を行うことができないという、その禁止條例をつくつた根本的なお考えであります。いかなる御方針によつて、こういうような制限をなされるのか、これをまずお伺いしたいのであります。
  51. 藤田巖

    藤田政府委員 これはいろいろの考え方もあるわけでありましようが、私どもの考えといたしましては、指導事業というものは、その本来の性質上、そのときどきの経済事業の損失あるいは収益——収益のある場合はけつこうであると思いますが、かりに経済事業が非常に行き悩みをしただめに、それに関連して指導事業がおろそかになつてしまう、やれないというようなことでは、非常に困るのでありますが、指導事業はどうしてもはつきりとやつて行かなければならぬというような考え方から、むしろ別個の建前にいたしまして、それに対して指導部門の連合会が必要とする経費は、これを他の経済事業連合会なり、あるいは下部の団体が負担してやつて行く。そういうことによつて指導事業が乱されずに、専念してやれるというような態勢を確立することが、現状においては必要であるというようなことからいたしまして、これを他の経済事業部門とは切離しておくというような、考え方をとつたのであります。
  52. 小平忠

    ○小平(忠)委員 ただいまの局長のお考えには、私も同感であります。少くともその経営のあり方は、私はそうでなければならぬと考えるわけであります。なぜかというに、これはかつて日本の産業組合運動を見ましても、事業機関と指導機関がはつきりとわかれてなされて来た。ところが戰時中の農業会から戦後における農業会のいきさつを見ると、事業機関であるものが指導事業を行う。事業というものは、特に自由経済下においては、非常に熾烈なる自由競争をいたすわけであります。事業を行う上においては、その間にいろいろなミスもありましよう。その場合に、事業を行つておるその機関が指導をやることになれば、純粋な批判ができない。そういつたような観点から、私はこの指導機関というものはやはり別個に切り離して、そうして純粋な批判性を持つて、また純粋な指導教育をするというものでなければならぬということを、私は常に考えるわけであります。そういつたような観点から、今回のこの御措置は、非常にけつこうだと思うのであります。しかしその場合には、徹底してやらなければいかぬと思う。関連事業だとか、あるいは連合会の経営が成立たないからといつたような形において、ある程度は経済事業を関連事業として行つてもいいのだということにいたしますと、これは特に指導機関というものが、苦しまぎれに、購買、販売事業を関連をつけてやる。指導連あるいは教育連が、こういうことをやつておきながら指導をするなんということは、とんでもないことだと思う。そういうような観点から、私はやはり指導機関というものは、厳然として組合経理の実態や、経営の内容を鋭く批判し、鋭く指導するという形のものでなければならぬと思う。ことに私は、戰後における組合経営の実態を見ますと、戦時中に養成された職員はどうであつたかと申しますと、あるいは大正の末期、昭和の初めごろの産業組合の職員と比較するときに、雲泥の差がある。と言いますことは、大体帳簿をつける方法も知らない、簿記も完全には知らない。かつて組合運動に携わつた者は、百姓はくわをとるのだが、くわをとりながらペンはとれないから、くわをとるかわりにペンをとるのだという気持で組合に奉職したものだ。ところが最近はまつたくサラリーマン根性で、ほんとうに機械的にやるという形になつて来ておる。そういつた観点から、私はもう一ぺん組合運動は逆もどりしなければならぬと考えますが、そういつた観点から申しますと、まず組合経営の点から、職員の養成、指導教育が非常に大事だということを痛感する。その場合に、関連事業の経営が苦しいからといつて、経済事業をやらせるのはいかぬと思う。それでなければ私はただいまの局長の御意見に賛成であります。  それから今度の改正案によりますと、第十條の第七項として一項が加えられ、その第一号の末尾の方、すなわち関連事業内容でありますが、「第三者から資金を借り入れる必要のないものを併せ行うこと」というのは、これは私は非常にいいと思う。その次の第二号において、「当該事業目的を達成するためにこれに関連して行うことを通常必要とする範囲内において、経済的事業を併せ行うこと」という、こういつた表現でありますが、むしろこの号もやはり指導連、教育連の実態から考えてみるときに、こういうふうな関連で行うことが通常と、あとはぼやかすことによつて、これは非常に範囲が広くなりますし、指導方針を明らかにいたしましても、また関連事業として経済事業を行うような形になると思う。なぜ一号と二号を同じように——この考え方は、私は一応わかるが、第三者から資金を借り入れてやるような、そういう事業はいけないのだというふうに、第二号をなされてはいかがかと思うのでありますが、政府の御所見をお伺いしたいと思います。
  53. 藤田巖

    藤田政府委員 御趣旨は私どもも同感でありまして、ただ事業の性質がちよつと違いますために字句が異なつておるのであります。と言いますのは、この一号はいわゆる土木事業であります。土木事業については、これは協同組合連合会自体が、第三者から金を借りて土木事業をやるというふうなことはいかぬので、單協なら單協がそういう事業を行います場合に、これをとりまとめてそういう資金を借りるのも單協でありますが、これを個々にやらないで、連合会事業としてやるような場合に土木事業を訪める、こういうふうな趣旨であります。  それから二号の場合に、指導連がいわば関連事業として経済的事業をあわせ行う、これは先ほどちよつと申し上げましたように、指導をいたしますのに、やはりただ單なる指導だけでなしに、その品物を他の購連等が扱つてくれるものであれば、共同でやれるわけでありますが、非常に少い異色的なものであつて、購連も扱つてない、單に指導するだけでやれないというような場合もおそらくあるかと思います。たとえば先ほど例に申しました優良種苗とか、あるいは新しい生産資材を普及するという初期の段階において、これは必要なものだから、これでひとつ生産の増強をはかれという場合に、御承知の勝連にしても、販連にしても、その取扱い物資がある程度事業分量を伴なわなければ、なかなか扱わないであります。そういうふうに非常に普及をいたします場合は、これは経済団体として扱えるということがありますが、初期の段階においては、そういうものをほかで扱つてくれない、購連も扱つてくれないというような場合には、ただ単なる指導だけでなく、その初期段階において、その物資を便宜指導連が購入して、これを供給して、そうしてそれによつてつてみようというふうにすることが必要でないか。また販連の関係で考えてみましても、一般の市場取引の対象になつておりますような、ある程度の扱い数量のきまつておりるものは購連が扱つてくれますが、販連は扱つてくれない。しかしながらそういうふうなものであつて一つ新しい品種をつくてみようというときに、その指導と相まつて、その取引先でありますとか、売り方についても、ある程度のめんどうをみなければならぬのは当然であります。そういうふうな新品種の生産品ができまして、販連も扱わないという場合に、便宜指導連がこの取扱いを行い、その品種の普及をはかつて行くということは、当然であろうと思います。従いまして、経済事業というものは、購連の問題にしても、販連の問題にしても、初期の段階において、——これが相当普及をいたします場合は、当然購連なり販連で多く計画的に扱うという、こういうような段階に来てしかるべきであろと思います。そこらのことをお互いが相談いたすなり、各団体の間を摩擦なくやつて行くということが必要ではないかということで、例外的な事項として、これが加わつておるという趣旨であります。この経済事業というものは、通常販連なり、購連でやつて行くべきである。従つて指導連が、非常にたくさん扱つて、そのために非常に損をするとか、得をするということでなく、何と申しますか、その経済事業に専念して指導を怠るということがあつてはならぬことはお説の通りであります。そういうふうなわけで、ただいま申し上げましたような考え方で、若干の例外を認めて行くことが必要だということで、この規定を置いたわけであります。
  54. 小平忠

    ○小平(忠)委員 非常に御親切な御説明で、その趣旨は了とするのであります。ところが関連事業というものは、先ほど私が申し上げましたように、はつきり区分することが非常に困難な面があるわけであります。先ほど局長が例を挙げられて、品種改良とか、あるいは新しいものを扱うための新品種の販売、あつせんというようなものはよいのだということを申されたのでありますが、さらにこの機会に一つの例を挙げて、政府当局の見解を明らかにいたしておきたいのであります。と申しますのは、指導連が、組合の会員の指導教育のために当然必要な事業として、家畜市場を開設するということがこれが一つであります。その次は種牡牛、種牡馬の購入あつせんをすることと、さらに種牡牛、種牡馬の共同利用施設であります。これは品種改良といつたような関係において、連合会一つの共同利用施設を持つわけです。さらに鶏卵の優良品種というようなものを広く宣伝するために孵卵場の開設、さらに優良種苗の購入あつせんといいますか、いわゆる種苗事業でありますが、こういつたような事業は、大体指導機関それ自体の形からみると、自己資金ではなかなかできないのであります。ですからこういつたような事業を、会員が満足するようにやろうとすれば、第三者から資金を借りなければ、できないのであります。指導事業に関連する事業として、以上のような基礎事業を、第三者から資金を借り入れてやるような場合には、これを関連事業とみなすかどうか、政府の所見をお伺いしたい。
  55. 藤田巖

    藤田政府委員 ただいまお話のありましたような問題については、なお具体的な計画内容、それから事業計画の大きさというふうなものも、当然考慮に入れて考えなければならぬ問題であろうと思つておりますので、單にそれだけではちよつと判断のできない点もあると思つております。たとえば家畜市場の開設でございますとか、あるいは孵卵場の開設というものについては、私どもといたしましてなお考究の余地があるというふうに考えております。なおこういうふうな点については、さらに関係当局とも相談いたしまして、具体的に指示をいたしたいと思つております。なおこの優良品種改良のための、優良種牡牛を購入して貸與するというようなことについては、私どもは、関連事業としてさしつかえないのではないかというような見解を持つております。
  56. 小平忠

    ○小平(忠)委員 ただいまの点は、私はこの席上で明らかにされるのではないかと思つたのでありますが、すでに主任管会議や課長会議においても、その点を指示されておられたような点なんです。私が申し上げたのは、関連事業として以上のようなことをやるために、第三者から資金を借りて、そうして指導事業としてやる場合に、これを関連事業とみなすかどうかという点をお伺いしたのであります。局長の御説明によりますと、その点なお考慮の余地があるということでありますが、その点は本改正法案審議の最中でありますので、早急に政府見解を明らかにしてくれませんと、何のために経済事業を禁止するのかぼやけてしまうのであります。二号、三号の問題とも関連するのでありますから、その点をすみやかに明らかにしていただきたいと思います。  さらに先ほどの局長の御説明によりますと、原則として指導連には経済事業を営ませないという考えをもつておりながら、従来の医療施設というもの今度第十條の第一項第九号にもつて来て、この医療に関する施設を教育指導連にやらせるというふうにいたしましたその理由であります。特に医療施設といいますれば、これは古く産業組合時代から、組合医療というものは相当発達いたしておるのでありますが、戰後におきましても、文化、厚生面等において、診療所、あるいは病院等を経営しておるものが多いわけであります。そういうような病院経営を指導連にやらせるという根本趣旨をお伺いしたいと思います。
  57. 藤田巖

    藤田政府委員 病院のごときものは、これはいかなる事業とみるかということでありますが、これはわれわれの立場から考えますと、むしろ農家の福利、厚生と申しますか、それに関係する仕事であるわけであります。従つてわれわれからいたしまと、これは單なる経済事業というふうには考えるべきものではなく、むしろ指導部門の教育指導と関連をいたしまして、もし考えるとするならば、その方と一緒にすべきものであるというふうな見解になつておるわけであります。経済事業必ずしも収益を上げるものとは限つておりません。経済事業といえども、そのときの情勢で非常に赤字になつたりすることも当然あるわけであります。従つてわれわれといたしましては、経済事業にひつつけておいて、それによつて得た収益でもつてこういうふうな病院を経営するということが、実際問題としては逆になることも考えられるわけでありまして、経済事業が赤字になるために、せつかくやりたいところの厚生施設もやれないというふうなことも、当然考えなければならぬと思います。むしろこういうふうなものは厚生事業であります。農民の福利、厚生に関係する事業であります。もちろんその事業自体は、その事業自体としてまかない得るようにいろいろ考慮して、計画して行くべきだと思つております。指導連と厚生連とが、必ずしも一緒になるということをわれわれは強要するものでもございません。別別の団体で成立つ、またやつて行く、たとえば病院経営の連合会だけでやつて行くというのならば、それでけつこうでありますが、ただ指導連と一緒になりたいという場合に、これと一緒になることを認めるという考え方で、この案はできておるわけであります。それから先ほど指導連が関連事業として経済的事業を行う場合に、第三者から金が借りられるかというお話でありました。これは先ほど申しましたように、第一号に該当する場合、つまり土木事業と申しますか、土地改良をやる、こういうような大きな金を、指導連が第三者から借りて直接をやるというふうなことは禁止をいたしております。しかし第二号に関係するような事業でございまして、先ほど例にもあげましたように、そう大きな金額になることも私どもは予想しておりませんが、かりにそれが指導連でやります場合に、どうしても借り入れる必要があるという場合には、これは当然われわれとして借り得る、借りてやつてもさしつかえないというふうに思つております。
  58. 小平忠

    ○小平(忠)委員 前段の病院経営の問題、これは当然農民の厚生福祉施設という見地から、一緒に持つて行くというお説でありますが、指導、経済、金融の三本建に一応整理区分をするという観点から見た場合に、それはもちろん病院あるいは診療所の経営それ自体が、農民の厚生福祉施設ということは言えるでしようが、しかし反面に、それはすべて大きな意味からいうと、購買品の購入あつせんにしましても、あるいは生産物の販売にしましても、これは結局農民の生活、経済に関連して来て、問題は同じわけなのです。結論は事業それ自体が、これは経済事業に、これは指導事業にと区分するという趣旨であるならば、最も近い面でやらせることが必要である。ことに病院経営のごときは非常にむずかしい、必ず経営上赤字が非常に多く出るものである、そういう危險な、赤字の出るようなものを指導連がやり得るような規定をすることはどうであろうかということを、私は伺いたいのです。その点も、これはいかに問答いたしましても、見解の相違ということになると思いますのでその点はそれにいたします。結論は以上局長が御説明されたような観点から、こういうように一応指導、経済、金融の三本建にして——これは必ずしも法律がそうあつても、自由ですからしなくても結構ですが、なし得る道は開かれるわけですが、その場合に一番問題になるのは、最近購連、販連の実態を見ますると、特に購連は、滞貨物資や金融上の問題で非常に行き悩んでおる。さらに販連にいたしましても、現在では事業の関係から見て、そう大きくは出ておりませんが、最近の食糧事情から見ますと、本年度の販売事業は非常に問題が山積しておるからたいへんだと思います。同時にそういうような観点から指導連を見て来ると、指導連も最近は、すでに農林省においても、全国の実態を把握されておると思いますが、最近指導連それ自体も経営が成立つて行かない。それは賦課金だけにたよろうとする連合会としては、当然のことと私は思うのですが、最近は指導連が解散をする、あるいは事業休止をするというものが続出するという現状でありますが、そのことは一に農村の最近の金詰まり、農業協同組合の経営不振を如実に物語つておると思うわけです。従来は指導連や教育連が町村の單位から賦課金を吸い上げ、さらに力のある購連や販連から賦課金を徴収するという筆法は、購連にしても販連にしても、経営難から賦課金が拂えないということによつて指導連の最近の経営実態は非常に苦しい。それでもう解散をするという状態にある。これを一体農林省はどういうお考えになつておるか。もつとも最近の組合経営の実態から見て、先ほど私が指摘いたしましたように、組合の経理、経営の紊乱というものは、非常に危險な状態である。これを何とか未然に防がなければならぬ。さらに組合職員の養成といつた見地から、指導機関というものは非常に大事だと思う。これに対して農林省はいかに考え、今後いかなる指導方針をもつておられるのであるか、率直な御意見を承りたい。
  59. 藤田巖

    藤田政府委員 御指摘のように、最近農村の金詰まりからいたしまして、また経済情勢の急激な変化がだんだんと影響をいたして参りまして、協同組合の経営がきわめて困難な状態になつておることは、御指摘の通りであります。われわれといたしましても、協同組合が一番しつかりしなければならぬ時期に、協同組合自体がこういう状態になつて来ることは、非常に憂慮すべき問題であると考えております。極力これの建直しをやらなければならぬということで、それぞれ再建計画を立てさせまして、これを建直しいたしたいということで、現在進めておるわけであります。そういう意味合いのことにつきましては、政府として極力打つべき手は打つて、再建に資したいと思つております。それでいろいろ、協同組合が今後仕事をする上についての問題について、お話が出たわけでありますが、われわれといたしましては、先ほど申し上げましたように、協同組合がまず自主的な団体として、積極的に活動をしなければならぬ基礎を早く建て直したい。それに御指摘のような、たとえば役職員の教育事業はきわめて必要なことであると思つております。申さば従来の協同組合の役員なり職員は、統制になれて、経済的な観念については非常に薄いと申しますか、つまり積極的に物を買うとか売るとかいう努力をしないでも、従来は統制の関係で物が扱えたわけです。それがだんだんと統制経済がなくなり、物の統制がはずされて来るに従つて自分らの力でこれを売り、また買わなければならぬ、こういう状態になつております。それからまた、協同組合の根本的な目標、進むべき道についても、十分徹底した認識を持たせることが必要である。従つで教育事業はきわめて必要であるというふうに考えております。私どもといたしましても。この役職員の練成と申しますか、教育事業については、国家においてそれの必要な講習等についても、できる限りの予算上の援助をいたしております。今後ともこの種の仕事については、極力国もめんどうを見て行きたいと思つております。なお教育事業については、毎年度の事業の剰余金から一定金額の積立てもするということになつておりますのも、教育事業をきわめて重視しておる一つの現われであるわけであります。今後とも、その点は大いに私どもといたしましては力を入れて、予算的あるいはそのほかの措置も講じまして、やつて参りたいと思つております。
  60. 小平忠

    ○小平(忠)委員 ただいまの御説明で、教育事業については、非常に政府自体も積極的な方策を講じ、また政府自体が予算的な措置をとつて、万全を期したいという御趣旨はわかりました。しかし農村省さらに都道府県協同組合の観がございまして、これの指導監督のよろしきを得ておることは承知しておりますが、なかなかこれを全般に普及するということは至難であります。その場合にやはり政府指導監督の行き届かないところは、自主的な民間団体が、自主的な指導教育をやるということも、私は非常に重要な問題だと思います。その場合に、現在のような指導機関の実態では、こうもしたい、ああもしたいといつてもできない。そうかといつて、やたらに農業協同組合補助政策をとつて、かつてのようないわゆる補助政策をとることによつて、その機関が政府の官僚の権力下に敷かれるという行き方はいかぬと思います。しかし現段階においては、どうしても私は日本の農業、日本農民、あるいは農業協同組合日の実態は、まだまだ政府みずからが積極的な保護政策をとらなければいかぬと思います。その保護政策をいかにとるかということについても、この保護政策をとることによつて、その団体や機関や農民を、権力によつて押えつけるようなことはいけないと思いますが、農民が、農業協同組合が十分な機能を発揮するような方策をとつていただけばよろしいと思うわけであります。その場合に、現在の全国指導連のごとき、あるいは畜産の全国指導機関、あるいは業種別の指導機関については、農林省が指導できない面は指導機関によつてやらしめるような観点において、政府は思い切つた予算的処置をとらなくてはいかぬ。さらに都道府県指導機関においては、国費の一部並びに地方費の一部をもつて、経常困難な指導機関の財政をある程度補助をするといつたような政策を、政府はお考えであるかどうか、この際お伺いしたいわけであります。
  61. 藤田巖

    藤田政府委員 指導連の経費は、先ほど申し上げましたように、会員の賦課金並びにその他の負担金で充当することを原則とすべきことは、私もそうだと思います。そういうような建前で私どももやつて行くわけでありますが、御趣旨のような事情もございますので、われわれとしては、たとえば委託事業、国がみずからやるべきであるけれども指導団体を通じまして、この指導教育事業の徹底をはかるというような場合には、国の委託事業としてこれをやらせるような面もあるだろうと思います。そういうような点については、今後財政的にもできる限り考慮して参りたいと思つております。
  62. 小平忠

    ○小平(忠)委員 ただいまの局長の御答弁によりまして大なる期待を持つております。そういうような点において、最善の御配慮、御努力を願いたいと思うわけであります。  次に、今度の改正によりますと、第五十二條の二といたしまして新たに一條を加えられ、その内容は、組合員の利益を保全するためにも、政令をもつて組合の財産の処理を適正ならしめるために必要な基準を示すということについて、先ほど他の委員からも発言があつたのでありますが、先ほど局長は、これは参考資料としてすでに配付になつておるという御説明をされましただ、これは私はどなたの委員にも配付されていないと思います。それで少くともこういつたような一條を新たに加えて、政令をもつて示す。政令というやつは御承知のように、これは閣議できめるのであつて法律ではございませんから、これは休会中かつてにいくらでも政府はできる。ところが、その内容たるものは、やたらなことを制限されては困る。そういう意味から、まずこの政令内容を明らかにしていただきたい。どういう内容のものをお出しになるのか、それによつて、この一條を加えることが妥当であるかないかということを検討しなければならないので、その点もしその資料がありましたならば、今ただちにでも御配付いただきたいと思うわけであります。
  63. 藤田巖

    藤田政府委員 これは何も秘密でもございませんし、御審議をいただくこともけつこうだと思います。参考資料として御配付いたしてあるつもりでございましたが、もしもございませんければ、これは部数が完全にそろうかどうかわかりませんが、至急にお手元までお届けするようにいたしたいと思つております。ただいま調べに行つておりますから、ちよつとお待ち願います。
  64. 小平忠

    ○小平(忠)委員 その内容について、私仄聞するところによりますと、政令案の第一條には、先ほど局長から御説明のように、組合の財産について、自己資本イコール固定資本というような原則論、こういつたような御説明があつたわけであります。その点は私は組合経営の健全な運営から見て了とするわけでありますが、はたしてこういつたようなことを政令をもつてきめた場合に、この通り実行されればいいですが、最近の組合員の実態は、出資金さえ出せない現状です。そこでその出資金がどういうようなことにやつてつておるかというと、まず貸付金によつて組合から出資金に相当する額を借りてこれに充当しておるといつたような現状から見て、組合経営の健全なあり方から見て、自己資本イコール固定資本であるという考え方は、私否定するものではありませんが、その場合に、附則によつてこれを一応一箇年猶予されておるわけであります。もし一箇年間猶予された後において、その政令の定むるところによる方法、その規定による内容が実行されない場合に、どのような罰則を加えるお考えであるか、その点を明らかにしていただきたいというのが第一点、その次に、同じく政令の二番目には経理の区分を明らかにされるという観点から、これは非常にむずかしい規定をされるのでありますが、これは私は十分に考えてもらわなければならぬと思います。なぜかというに、農業協同組合の町村の経営実態を考えると、職員を一人でも少くして、なるべく経理事務の煩瑣を避けて、最も簡便な方法でやることが必要ではないかという場合に、その経理事務の区分をして、資金関係やあるいは業務関係を明らかにするということはけつこうでありましようけれども、それがあまり極端な、度を越して煩瑣になることによつて、職員をさらにふやさなけれぱならぬ、そういつたようなことを農林省は真に必要であるとお考えであるのか。あるいは仄聞するところによると、大蔵省方面の強い示唆によつてこれを強制的に——農林省がまずやむを得ぬだろうといつて、これに服従をしておるというようなことも、実は聞くのであります。その根本的なお考え方、さらにこの場合もやはり一箇年間の猶予規定があるのでありますが、一箇年間経過後において、さらにそういつた経理区分がなされていない場合にはいかなる罰則を適用されるのか、この三点についてお伺いいたしたいと思います。
  65. 藤田巖

    藤田政府委員 自己資本額基準にいたしましても、あるいは経理の区分にいたしましても、そのほかの点にいたしましても、この規定そのままをただちに実行することになりますと、組合としても相当困難な点がたくさんあると、私どもは承知をいたしております。そのために、たとえば今申しましたような点につきましては、現にこれらの規定に定める基準に合致しない組合につきましては、一応一年間の余裕を置きまして、一年内にそういうふうなことに適合するように持つて行くべきだというように、考えております。かりにそれが一年経つてもできない場合にどうするかという問題であります。できなかつた原因は、これはいろいろあるだろうと思いますが、ただこの政令についての罰則はございません。この政令に違反いたしました場合に、たとえば罰金を科せられるとか、懲役の刑に処するとかいうようなものはないわけであります。しかしながらわれわれといたしましては、そういうふうな場合に立ち至りました場合はその原因をよく追究いたしまして、行政的な措置によつて、これが何か補える点を考慮して参りたいと思つておりますし、それがまたどうしてもそのときの状態においてむりであるという場合は、さらにあらためてまた考えまして、一定の期間余裕も見なければならぬと思うわけでありますが、われわれとしては、できるだけ早く協同組合がこういうような趣旨によつて財務処理基準に適合するような組合になつて行くということが、組合自体の信用を高める上にきわめて必要であります。罰則をもつてこれをどうするこうするという問題ではないのであります。やはり組合自体の健全と申しまするか、あるいは対外信用を高めるような見地から、極力こういうふうな方向へ、早く持つてつていただきたいと思うわけであります。なおこの経理の区分につきましても、細目の点については、なお考究をいたさなければならぬと思います。たとえばどういうふうにやるかという具体的な問題については、これはよく実情等を考えまして、お話のように、このために非常に人がたくさんかかつて、そして経費が増すというようなことのないようには、いたしたいと思つております。しかしあまりに乱脈になつておりますものは、やはり経理をくふうして、最小限度にこれを処置して行くというようなことは、必要であろうと思います。
  66. 小平忠

    ○小平(忠)委員 ただいまの説明では了解をすることができない点が多々あるわけでありますが、私一人があまり時間をとりましても迷惑しますから、本日は重要問題を先にお伺いしまして、あとは後に讓りたいと思います。  この政令内容余裕金運用を禁止する事項があるのでありますが、この余裕金運用の禁止の條項は、株式の取得を禁止することになるという解釈であるか。すなわち企業参加はよろしいが、余裕金運用は禁止する條項をどうしてここに入れたのか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  67. 藤田巖

    藤田政府委員 余裕金運用については、現在も、定款をもつてある程度自主的にやつておると考えるのでありますが、ただ企業参加の問題については、原則としては、やはり協同組合協同組合の組織の形で行くべきだという根本観念を持つております。しかし協同組合が他の事業団体に参加するために必要なる株式の取得という問題については、なおよく実態をきわめまして研究いたしたい。結論にはまだ達しておりません。
  68. 小平忠

    ○小平(忠)委員 株式の取得は現にやつておるわけなんです。農協連で、これは農業会から引継いだ関係もありまして、やつておるので、一日も早くこれを明確にしてもらわなければならぬと思うのであります。さらに政令が出されることについても明確になつておりますが、この場合に、政府指導方針として、何でもかんでも企業参加を許すことはいかぬと思います。農業協同組合としてはどうしても適当でないという関係があるが、しかしこの会社には企業参加することがいいという場合には、あえてこれを制限すべきではないと思いますが、その点は局長のお話でよくわかりましたから、速急に方針を明かにしていただきたい、こう思うわけであります。  次に監督権の問題であります。今回第九十四條の第三項の規定を追加いたしまして、少くとも金融、すなわち信用事業を行う組合連合会については、毎年一回常例として検査をすることになつておりますが、私はこういつたような改正案をつくつて、はたして農林省あるいは都道府県が、このような検査を実際行い得るかどうかという点に疑問があるわけであります。それでこの組合指導機関、あるいは監督官庁の組合に対する検査については、私は古くから次のような見解を持つておるわけであります。もし不正事件があつたという場合においては、徹底的に検査をすることが必要でありましよう。また組合が事務を紊乱をし、あるいは不正事件を惹起しないように、未然に防止するために、常に指導的な検査をなさるという基本方針を、監督官庁においても持つべきであるというふうに考えるわけであります。特にこの場合、今度の改正規定によりますと、毎年一回常例として検査をしなければならない。これは絶対的な規程であります。こういつた規定をつくつて検査をするといいましても、やはり出向いて行つて検査をしなければならぬ、旅費もかかる消耗品費あるいは事務費もかかりますので、この点の予算措置はどうなつておるか、伺いたいと思います。
  69. 藤田巖

    藤田政府委員 ちよつと先ほどの御質問に対して補足をいたしておきます。現在組合が持つております株券については、附則で例外的な措置をいたしておりまして、今後の余裕金運用といたしましては、株式の取得は認めないが、現在持つております株券については、ここに書いてございますように、余裕金運用として認められる、こういう規定を附則の一番最後に置いております。だから現在持つておる株式については、これは問題はなかろうと思う。しかし今後の余裕金運用としては、株式を持つことは禁止したい、こういう趣旨であります。  それからただいまの検査の問題でありますが、今後の金融機関に対する検査の方針といたしまして、大蔵省においても、今後は大蔵省所管の金融機関について毎年一回検査をする、こういう建前で考えられておるわけであります従つてわれわれといたしましては、農林省所管の信用事業を営むもの、つまり協同組合についても、やはり建前といたしましては、毎年一回常例として検査をするというふうな建前を、それと相呼応いたしまして置きたいということであります。しかしながら御指摘のように、現在の陣容及び予算をもつてして、直接に全部の組合に出張をしてこれをやることは、とうていできるものでないことは当然でありますが、検査のやり方については、いろいろ方法があると思います。たとえば報告の書面によつてこれを検査する。そうして必要なる所へは出向いて行つて、さらに詳細に調べる、こういうふうなやり方もできようかと思います。そういうふうな点については、なお考えて行きたいと思つておりますが、それにいたしましても、現在の予算、人員等ではとうていむずかしいわけであります。われわれといたしましても、この法律の施行に伴いまして、今後できるだけ早い機会に、これに必要な経費を要求いたしまして、一日も早く検査に必要な態勢を整えて行きたい。それによつてできる限り完全な検査を進めるように漸次持つて参りたい、かように思つております。
  70. 小平忠

    ○小平(忠)委員 検査規定の前に、局長から先ほどの件をさらに具体的に説明されましたが、株券の問題をさらに確認しておきたいと思います。今度の政令によると、政府考え方は、現在取得をいたしております、すなわち現在所有しておる株券は認めるけれども、今後新たに取得することは認めないということでさしつかえございませんか。
  71. 藤田巖

    藤田政府委員 今後余裕金運用として株券を取得する、こういうことについてはこれを認めない。政令が出ました以後はそれを認めない、こういうふうに考えております。
  72. 小平忠

    ○小平(忠)委員 余裕金運用としての株券の取得を認めないというと、これは解釈の問題であるが、組合の経理において、どうしても企業参加をする必要があるのだということで、これは余裕金運用じやなく、別の資金を出すのだという場合に、禁止するのかどうかということを、伺いたいのであります。
  73. 藤田巖

    藤田政府委員 先ほども申しましたように、何らかの企業参加をいたしますために、一定数の株式をどうしても持たなければならぬというふうな場合、その企業参加がどうしてもやむを得ないというふうなものであります場合は、それについては株式の取得を制限する趣旨ではないわけであります。
  74. 小平忠

    ○小平(忠)委員 その点は了承いたしました。意見はありますけれども、意見は申し上げないで、次に例の監督権の問題でございます。これは局長は非常にお上手な発言で説明されたのでありますが、法律というものは、検査をやらなければならないときめたならば、検査をやらなければならない。そういつたようにきめて、そうして何らそれに対する人員の配置とか、予算的な裏づけがないのは、それほどむてつぽうな考えはないということがまず第一点であります。同時に根本的な問題として大体強制的に毎年一回検査をするといつたような考え方それ自体が、私は依然として政府が自主的な発足を見た農業協同組合に対して、監督権を行使しようという考え方で、これを私は打破してもらいたいと思う。そうではなくて、やはり民間団体あるいは指導機関等が自主的に検査をし、さらに不正事件がここに勃発した場合には監督権を発動して検査をするといつた場合はけつこうでありますが、事前に非常に厳格な意味で、強制的な検査をするといつたような考え方は、私は絶対に排すべきものであると思うのであります。これに対して、あくまでも政府農業協同組合に対して、強制検査をやつて行くのだというお考えを強行されるのか。もう一回その点を御説明願いたいと思います。
  75. 藤田巖

    藤田政府委員 私どもは、毎年一回常例として検査をしなければならぬという規定をおきました趣旨は、決して自主的な組合に行政完庁が強制的にいろいろ干渉したり、また非違を摘発したり、あばいたりする趣旨ではないのでありまして、むしろ組合自体の対外信用を高める、そのために検査をするという態勢をとり、またそれによつて組合の気のつかぬところを直して行くということによつて、おのずと組合も健全になり、対外信用も高まつて行く、そこの効果を私どもとしてはねらつておるわけであります。そのように協同組合が信用事業をやり、ほかの販購の経済事業もやるということについては、いろいろの批判が加えられておることは御承知の通りであります。まず單協で預つておる預金をほかの事業資金にいろいろ流用する。そのために諸支拂いの資金に困るというような問題が起りますと、それだから信用事業というものはむしろ別にしなければならぬじやないか、信用事業というものは、ほかの事業と切り離して、金融は金融だけでやる單営の団体をつくるべきじやないか、こういう議論が非常に起りかけて来ているわけであります。私どもとしては、それについては、従来の單協の四種兼営の形というものが、日本の農村の実態に即しておるということを主張して来ておるわけであります。しかしながら最近の單協の事業運営のやり方からいたしまして、さらにそういうふうな新しい問題が今日起つて来ておるわけでございます。われわれとしては、この際やはり四種兼営事業でありますけれども、その間の経理も明らかにし、また財務に関する適正な基準を定め、検査も確実に行う。こういうことによつて金融事業も健全にやれる。また貯金者に対する利益の保全もできる。こういうふうな主張をいたしませんければ、問題は思わざる方向に走つて行く、また思わざる結果になることを非常に憂えております。従つてそういう意味から、私どもといたしましては、やはり態勢としては、あくまで四種兼営事業で行くべきであるが、事業の経理については、はつきりとして、そういう心配を起さないために、検査も嚴重に行うのだ。こういうふうな方向で進んで参りたいと思つておるわけであります。
  76. 小平忠

    ○小平(忠)委員 監督権の問題については、非常に懇切な御説明がございましたが、これについては私了解をしがたい点が多々ありますが、その意見は申し上げないで、一応局長の御意見を承つておくことにとどめたいと思います。あまり時間も長くとりましたので、次の発言の方に御迷惑をしてもいけませんから、最後に一点お伺いいたしまして、私のきようの質疑を打切りたいと思いますが、今回のこの改正規定で、何といつても一番大きな点は、連合会の縦割りについて、ある程度緩和をしようという緩和策であります。同時にもう一点は、あの政令によつて組合の経理区分とか、あるいは固定資産や、あるいは自己資本についての適正の問題、あるいはさらに余裕金等の運用についての、あくまでも組合員の利益を保全するという観点からする問題、さらに監督権の問題になるのでありますが、やはり基本的の問題は、連合会の縦割りについての制限にあるのではないかと思います。この場合に、先ほどもどなたか発言されましたように、全国団体と都道府県団体を区分したということであります。私はもちろん現段階において、全購連、全販連が個々に発生し、特に畜産や養蚕が業種別に個々に発足しておることについては、その点は了とするのであります。しかし、はたして業種別に連合会の縦割りを認めるか認めないか。あるいはさらに購買、販売事業についても、一緒の方がいいか、あるいは別々の方がいいかということについても、いろいろ意見はあるでありましようが、あくまでも農民の自主的な意思によつてこれをやることについては、私は一向さしつかえないと思うのであります。今度の改正で、依然として全国団体を制限しておる。こういう制限をしないで、都道府県団体と同じように、購販事業というものを分離しない形にして、同じ形でやることがいいんじやないか。しかしそれは必ずしも一緒に購販事業をあわせ行うことができ得るように規定しておりましても、全国団体における自由意思によつて、それを別別にやることはさしつかえないのであるが、農林省は一体いかなる見解でこういう規定をされたのか。これは関係当局の強い意思のもとに、どうしてもこうせざるを得なかつたというのでありますれば、また別でありますけれども、その場合においても、私はあまりまぎらわしい規定改正するということは、あとに非常に悔を残すと思う。だから、すつきりとした形の改正をまず行うべきではないかというので、その点をお伺いしたいのが一点であります。  その次は、今度の連合会の縦割りの制限について、この合併の手続等につけてのいろいろ改正條文があるのでありますが、ただ今度の場合は、会員すなわち組合員個々の農民の意思を問うようになつておるわけであります。そうなつておる点はわかるのでありますが、しかしこういつたようなことを最近各県において聞くのであります。連合会設立当時は、政府指導方針だから事業別につくらにやならぬといつてつくつたわけです。ところが、設立当時においても、すでにこの指導方針が解けて、総合運営ができる場合には、ただちに総合連合会をつくるという決議をして、農林省にも、あるいは関係当局にも強く要望されておるのは事実であります。ところが現実に連合会が幾つもできてしまつて、幾つも頭ができてしまうと、一城の主になつて、さて合併するとなると、頭の問題、役員問題、ポストの問題、何だかんだで策謀をなされて、真実の農民の意思の方向に行かないような問題があるのであります。つくるときにはしかたなしにつくつたが、さて今度は合併してもいいということになると、いやこれは合併することは、個々の実力を発揮しない。購買なら購買、販売なら販売、別別の方がいいのだ。大体おれの方の組合員が皆そう言つておるのだといつて、村のボス連中がそういう指導をして歩いて、あたかも農民の意思であるかのごとくに運動をした場合、今度でき上つた連合会は、農民の意思でないわけだ。これに対して政府はいかなる指導方針、監督方針あるいはお考えをもつて臨まれる方針であるか、その二点についてお伺いいたしたいのであります。
  77. 藤田巖

    藤田政府委員 統合のやり方が、府県段階のものと、全国区域のものとのやり方が違つておる。全国区域のものについては、全販連、全購連の統合ということが法規上認められない。これは理論が一貫しないというふうな御趣意であろうと考えております。理論としては、まさしく私どももさようであると思つておりますか、こういうふうにいたしましたのは、現状から考えまして、先ほど申しました独占禁止法の精神から考えまして、やはり全国において、あまり厖大なものになるということについては、現状から考えまして、これを制限するというふうなことと、もう一つは、やはり事業分量から申しましても、全国的には非常に厖大なものになるのであります、そうしてまた各部門々々が、やはりそれぞれその部門だけの経理によつて、確実にまかなわれる。確実に立つて行く。それからまた農業会の資産の引継ぎ等のいろいろ問題もあるわけであります。そういうことから考えまして、全国の団体といたしましては別におきましても、相当の分量のものもあり、またそれぞれの事業を遂行する上に、むしろ離れておつた方がよくはないかという見解を持つておるわけであります。この点は府県と全国ではその規模が違いますので、これを実際問題として、一律にすることの必要はないというふうに思つております。それと法律的には独占禁止法の関係からいたしまして、あまり全部の総合的なものは避けたいというふうな気持があるのであります。  もう一つ連合会の統合の場合に、農民のほんとの意思でない、つまり役員の方々の私的な考え方から左右されるというふうな場合に、これを何か監督するとか、あるいはどういう方法で指導するかというふうなお話でございましたが、連合会の統合について認可をいたします場合に、先ほどお話のございましたそれぞれの連合会の総会の決議のほかに、その構成員であるところの單協におきましても、それぞれその合併に支障なしというふうな書類も全部つけて、あるいはまた孫の会員でありますところの農民の意思というものを十分聞いて、それの三分の二の異存のないという、承諾したという書類をつけて行うということになつておりますので、その点は認可の際に、十分はたしてこれが真に農家の意思によつて統合されるかどうかということは、判断できる。それによつてどもは誤りなくやつて行きたい。こう思つております。
  78. 小平忠

    ○小平(忠)委員 ただいまの連合会合併について、会員の三分の二以上の意思をとるのだから、真に農民の意思を組み入れて、この連合会の合併をなさしめるという御説でありますが、これは私は非常に甘い考え方であると思う。市町村の農業協同組合の運営がどうなされておるか、組合長や役員方がどういう実権を持つておるか。やはりまだ日本の農村は封建性が強い、農協組合長や幹部諸君の音頭で、組合員なんかどうでもされておる。だから、これは合併することはいかぬもあるいは合併する方がいいのだといつて組合長や、組合の幹部諸君が、これが好ましいのだということを一席やつてまわると、やはり村の顔役であり、親分であるその人の言うことなら、間違いないのだというので、右にならえでさつと行つてしまう。まだまだ私は日本の農村は、民主化の度合いは低いと思う。そういう現段階において、そういう三分の二以上の議決のあつた書面をとるのだから、真に農民の意思が反映されて、連合会の合体がなし得るのだという考え方をしては、甘いと思う。この本法の改正は相当研究されて、こういつた方法をとられたと思うのでありますが、さらに私は、この改正をなされる場合に、もう少しこれに対してはこうだ、これに対してはこうするのだという、真に農民の意思が反映された連合会の合体がなし得るような方針を、承りたかつたのであります。これは私の希望でありますが、たいへん長く申し上げて失礼しました。以上申し上げて私の質問を終ります。
  79. 藤田巖

    藤田政府委員 最後の点でありますが、私はこれは率直に申しまして、やり農民の自覚、農民に対する啓蒙運動、これが行われて、ほんとうに農民自分らのつくつた協同組合なり運命会に、さらに積極的な関心を持ち、もつとそれをよりよくするための努力を拂われなければ、いかに官庁がどうしようとしても、できるものでないと考えます。従つてわれわれといたしましては、法律上それに対する考慮というものは、先ほど申し上げました程度以上に、いかに法律で書こうといたしましても、これはできないことであります。あとは、農民の自覚の問題であります。農民に対する啓蒙、宣伝の問題、従つてこの法律ができましたときには、よく趣旨を徹底するような方策を講ずる。いろいろのラジオその他パンフレット等によりまして、法律制定の趣旨をよく農家に徹底をさせまして、その後農家が自主的な意思で、連合会をどうするか、こうするかということを判断させる。そういうふうなやり方に進めて行きたいと思つております。
  80. 井上良二

    ○井上(良)委員 この際特に重要な点を二、三点承つておきたい。それはさいぜんからの質疑応答を開いておりますと、今回提案されました協同組合法の一部改正法律案が、全体的に見ておりますと、農協の行き詰まりを何とか打開しようとして、またこの事務的な運営において、監査を厳重にして行きたいということが、大体の主要点でないかと思う。従つて何ゆえに農協が、今日かくのごとき行き詰まりの状態になつたかということについて、政府は根本的な検討を加える必要があるのです。この問題につきましては、いずれ明日農林大臣が見えますから、大臣にその基本方針について伺うつもりでございますが、しかし事務当局として、さいぜんからの答弁を伺つておりますと、農協の今日の行詰まり、これは農協自身の経営の不手ぎわであつて、もう少し合理的に経営する方法があるということに、結論をつけておるようです。従つて農民自身の力において立ち上る方途を講じ、いわゆる一人歩きのできる農協にしたい、こういうことを御答弁されておるのでありますが、私どもの考えますのは、もちろん今日わが国農協全体が、合理的に経営されておるとは思いません。しかしこの農協が単位農協において約三分の一、県単位の農協において約二分の一は、まつたく行詰まりの状態になつて、開店休業の状態にある。そこへもつてつて組合員から預かつた貯金さえ、支拂いができないものが厖大な金額に上つておる。かくのごとき経営の大きな行詰まりを生じたのは、原因はどこにあるのか。單に組合経営者の責任や、またこれに関係しております農協組合員。すなわち農民の責任だけにこれを負いかぶせて、政府はそのことについては一向責任はないんだ、こういうことを事務当局はお考えになつていいのですか。この問題は農林大臣に聞くべき問題ですか、事務当局がそういう考え方では、これは重大な問題ですから、伺つておきたいのですか、その点についてあなたの御意見を伺いたい。     〔小笠原委員長退席、八木委員長代理着席〕
  81. 藤田巖

    藤田政府委員 あるいはそういう印象を與えたとすれば、私の言葉が足りなかつたかと思つておりますが、私は現在の協同組合の行詰まりの原因は、これは二つの要素がある。一つは、この組合経営の悪化が一両一般の経済情勢の変動による影響、つまり最近だんだんと農家経済というものが非常に苦しい立場に情勢上押しつけられておりまして、そういうような事柄から、組合事業が不振を見なければならぬ。あるいはまた、農産物価格が、一時インフレによつて相当有利に売れたものが、だんだんと物価が下落をして来る、こういうようなことから、組合に対する農家の負担が困難になつて来るために、行詰まつて来ている。そういうふうな、いわば一般の経済情勢の変動がだんだんと農民にしわが寄り、そのしわがまた組合経営に寄つて来た。これは当然外からの大きな原因であります。その原因が非常に大きいであろうと思います。しかしまたただいま申しましたように、この組合内部のやり方自体の不健全な運営方法、これもやはりあつたということは言わざるを得ないと考えます。従来の統制経済の頭になれていていわゆる他と大いに競争をして、そうして、有利に経済事業を営むというところの努力というものを、拂わなくてもよかつた時代から、それが最近急激な情勢の変化を見たということ、それがやはり大きな原因である。そうしてまた組合役職員の、協同組合運動に対する経営能力の問題、あるいは積極的な熱意というふうなものがいろいろ重なり合いまして、そういう二つの原因によつて、現在の協同組合の不振の問題が起つて来た、こういうふうに考えるわけであります。従つて私は、現在の状態になつたのは、協同組合自身の責任であつて自分らだけでやらなければならぬということを言つておるわけでは決してないのでありまして、そういうふう大きな原因については、政府みずからこれを打開して行かなければならぬ。将来基礎になる農家の生活安定ということか根本でありますから、農家の生活安定が保障されれば、勢いまた協同組合の問題についてもよくなつて行くわけであります。それが根本でありますから、その方の施策はもちろんやらなければならぬと考えますが、また同時に協同組合というものが、やはり自主的な団体でありますから、いたずらに政府の施策ばかりにたよつておるというふうなことは、これは是正しなければいけませんので、あくまでも組合自体の内部の問題として、自分たちの力でやるということを極力やりまして、そうしてそれによつてどうしてもできない部分を、国において考えるというような態度で、この組合の経営自体をやらせて行くべきだと思つておるわけであります。
  82. 井上良二

    ○井上(良)委員 大体わかりましたが、組合内部の経営の不手ぎわということは、それは非常に部分的な原因でないかと思うのです。根本は、あなたが今御指摘になりましたように、やはり政府の農業施策というものが、根本的に農村を圧迫するもので、少しも積極的な手を打たなかつたというところに、私は原因かあると思う。その問題が解決されない限り、ここにいかに新しい農協の再建対策を考えてみても、それは何ら効果を現わすものではないということを、一応言えるのではないかと思うのです。問題は、いかに今日の農産物価格を維持し、農家経済を安定するかという、その基本的な問題について今日政府に確固たる方針が明らかにされてないのです。この農産物価格を維持し、農業生産力を拡大して、農家経済を安定する基本線というものが明確にされてない今日、農村における民主的な組織としての農協を健全化さすということは、およそナンセンスです。あなたはそうお考えになりませんか。
  83. 藤田巖

    藤田政府委員 ただいまお話のございましたように、根本問題としては、日本の農業というものの今後のあり方をどうするか、新しい農業政策をどう置くかということにあると考えます。その問題は、あくまでもやはり食糧増産ということを積極的にやらせると同時に、その食糧増産ということが、また同時に農家の所得を安定さす、それによつて農家の所得がよくなるという方向に、いろいろな施策を持つて行くべきだと考えております。われわれといたしましては、財政その他の関係から、思つた通りできない点がたくさんあるわけでありますが、現在の農村の非常に重大な時期にもかんがみまして、今後とも極力そういうふうな方向に具体的に施策を立てまして、実現するように努力いたしたいと考えます。
  84. 井上良二

    ○井上(良)委員 これは農政局長ですから、基本的に政策を立案する重大な立場においでになりますから申し上げておきますが、あらゆる農村関係も農業関係の資料を集めてみましても、御承知の通り、農村の農家収入というものはどんどん減つておる。反対に税金の面はどんどんふえておる。つまり現金支出がどんどん大きくなつておる。そういうことから、都会の市場へ依存すると言いますか、商品市場への依存度がどんどん高まりつつある。このことはますます農産物価を低落に導き、農家収入を減退せしめており、逆に貯金の引出し等、貸出しが多くなる傾向を示しておるのです。この基本的な農村の対策というものが明確にされない限りは、どんな規則や法律を設けましても、何の役にも立たぬと私は思つている。そこであなたの方で、農協再建緊急対策なるものを、省議か何かで三月二十三日ですか、きめたということが報道されておりますが、これは事実ですか。この農協再建緊急対策なるものを、農林省として御相談になつたことがありますか。御相談になつたことがあるとすれば、その内容について詳細に御報告を願いたい。
  85. 藤田巖

    藤田政府委員 この農業協同組合業務の健全化をはかるための緊急対策、これは私どもも非常に早急に実施しなければならぬと考えまして、省議も決定いたしました。それからこの数字については、すでに農林大臣からお話をしていただきまして、閣議においても根本的な考え方について了承を得ております。現在はすでにこれを実行に着手をしなければならぬということで、日銀、大蔵省、農林中金、それからわれわれというふうなものが集まりまして、会議を開いております。その幹事会も開いておりまして、具体的にその方針を今決定をしようといたしておるわけであります。なおこれは中央だけの組織でなく、県に対策協議会というものをつくりまして、その県の対策協議会において、そういつた具体的にいろいろ憂慮すべき問題を起しておるような組合を、個々に拾い上げまして、その組合のそれぞれの再建計画というものをはつきりさせて、そうしてその再建計画に基いて、今後政府としてもやるべきことを考え、また今後組合の進むべき方向も明らかにしたいということで、着々やつておりますわけであります。
  86. 井上良二

    ○井上(良)委員 その案によりますと、預貯金の支拂い資金組合再建資金、こういうものに農林中金から約四百億を融資するということが言われておりますが、事実でございますか。
  87. 藤田巖

    藤田政府委員 われわれとしては、そんなに大きな金が急にいるとは考えておりません。大体一応の腹づもりといたしましては、これまた正確でございませんが、信連に対する金といたしまして、信連の諸拂い資金に充てるために約七十億、それから単協に対しまして、つまり預金を持つておらない單協で、その單協自体の諸拂い資金が必要だというので、従つてそれを直接中金でめんどう見なければならぬというふうに考えておりますのが、約十億、それからなお購連系統購買品が相当滞貨になつておりまして、そのために購連系統が行詰まつておりますが、それに対する資金というものが約二十億、合計いたしまして一応百億見当のものが、何か手当がつけば何とか生きるのではないかということで、相談をいたしておりますが、これはなおさらに詳細に検討いたしませんければ、まだ金額は確定しないと思います。あるいはこれほどいらないかもしれませんし、あるいはさらにこれよりいるかもしれません。従つてその具体的な問題は、今後県の対策協議会というものを早くつくりまして、それによつて県内の事情を明らかにする。県内の各組合の状況を明らかにして、どういうふうになつているかということによつて、それを収集いたしまして、はつきりした数字が出て来ると考えます。そういうふうにはつきりした数字を早くつかみまして、今後さらに適切な処置をとつて行きたいというふうに思つているわけです。
  88. 井上良二

    ○井上(良)委員 農協事業の整理の方針として、購買事業は委託購買制として、農業生産資材を取扱う。販売事業は買取り制から委託販売制に切りかえる。貸付は供出代金を見返りとする生産資金に限り、新規長期貸付けは中止する。こういうことが言われておりますが、そういう方針でございますか。     〔八木委員長代理退席、委員長着席〕  その点を明らかに願いたい。それからいま一つ農協が手持ちしております滞貨、特に報奨物資は別にしまして従来農業生産資材として買上げました手持ち資材、これの在庫額といいますか、それはどのくらいになつておりますか、おわかりになつておりますか、これは一体どう処分さすつもりですか。それによる損害は、どういう方法でこれをめんどうを見てやるつもりですか、その点について伺いたい。
  89. 藤田巖

    藤田政府委員 この事業整備計画を立てますためにも先ほどお話がございましたように、取扱い品目を限定をし、しかも買取りでなく委託の制度に切りかえる。それからまた貸付についても、一つ限定をして行くということは、私どもとしてやらしたいと思つております。しかしこれは先ほど申しましたように、現在債務支拂いに支障を来たしたり、来たすおそれのある組合であつて、問題にしているようなことについて、今度どう立て直るかというようなことを考えます場合に、やはりこの程度のことをやりまして、整備をさせたいという趣旨であります。従つて非常にうまく健全にやつて行き、何ら支障も起らないようなものについて、いたずらに事業内容を更新せしめるというようなことは考えておりません。立て直しをする一つの手段として、やはり内部態勢も整えたい。こういう態勢に切りかえて、しかも計画を立てさして、必要な措置はこちらで講じるというような、表裏一体の関係になるわけでございます。  購連系統の滞貨の問題でございますが、大体これも見積りでございますが、単位農協の現在の在庫が大体百五十億、それから県購連在庫が四十九億、合計いたしまして百九十九億、この程度の在庫であろうというふうに考えております。
  90. 井上良二

    ○井上(良)委員 それの処分と資金……
  91. 藤田巖

    藤田政府委員 これについては、これは全部の在庫でございますが、その中には当然売れて行くものもあるわけでございます。問題はいわゆるデッド・ストックが幾らあるか、つまり不良滞貨といたしまして、何ともならない、売るにも売れないというふうなものがどのくらいあるか、こういうことでございます。私どもの見当といたしましては、そういうものが約五十億見当あるのではないかというふうに思つております。報奨物資はその一部であるわけであります。われわれといたしましては、これはやはり極力滞貨物資の整理をしなければならぬと思います。いつまでも抱いたままで、動きのとれない状態に置いておいても、先の見通しがよければいいのですが、先行きますます悪くなるというものについては、これはある程度の思い切つた整理をしなければならぬ。そしてそういうふうな整理もし、先行きやつて参りまして、どうしても組合自体において、また増資をいたすとか、あるいはそのほか組合自体の責任において解決すべきことを、できるだけやらせまして、そうして計画を立てさせまして、政府のこの程度融資があれば、これによつて再建できるというふうな見通しのつきましたものについて、融資を考えなければならぬというふうな方法で、各組合々々によつて再建計画を立てさせて、めんどうをみて行かなければならぬと思つております。
  92. 井上良二

    ○井上(良)委員 最後に一点。農協の行詰まりの基本問題につきましては、あなたとここで私は議論をいたしません。あとで農林大臣が参るそうでありますから、そのときに伺うことにいたしますが、ただ一点、さきに小平委員とあなたとの質問の間において、指導連の問題でいろいろ議論をされておりましたが、私は大体指導連的な協同組合の運動というものは、今のような状態においては十分効果を発揮することかできない。つまり指導連の指導の限界といいますか、そういうものと政府の農業指導との限界が、非常に競合する点が多いと思うのです。たとえば畜産の関係においても、それぞれいろいろの優良種牡牛なんかの補給、あるいはこれの改良等について、それぞれ政府は莫大な金を投じて試験場を持ち、また種畜場を持つておるわけなんです。また品種の改良等においても、それぞれ農事試験場もあり、それぞれ地方的に講習会も開き、あるいはまた技術改良の指導もやつておるわけです。農業指導の面は、政府が積極的にやるべき問題であつて、これを農民の負担においかぶせておくということは、私は今日の農業協同組合現状から考えて、非常に経済的にむりではないという気がするのです。どこの指導連を見ましても、その運営に非常に困つておる。第一会費が集まらない。また他の指導連からの賦課金というようなものもまつたく集まらない。どこもかしこもやらなければならぬ仕事がたくさんありながら、またこの仕事が、あなたのおつしやるように、非常に重要な仕事であるにかかわらず、それが思うように効果を発揮していない、活動されてないという点、これをどう一体現状の経済関係のもと、特に農家の不況のもとにおいて、農民の負担の立場において、これを運営するかということは非常にむずかしい。私はこの点に関して、政府がいわゆる農民みずからの力において、また農民みずからの民主的な方法において、こういうことをやることは、非常にいいということはわかつておりますが、しかし現実はこれを許さない経済状態にあるのです。だから政府がこれを農民の方の責任において、また民主的な方法において、積極的に推進するという必要性を考えるならば、少くとも指導面における経費は、政府がその八割くらいは負担するというくらいの、大きな援助の手をさしのべてやらなければ、効果を発挿することかできないと私は考えるが、この点どうお考えでありますか。
  93. 藤田巖

    藤田政府委員 私は指導について、やはり国のやるべき指導と、それから農民の組織いたしました自主的団体でやる指導と、それぞれの分界があり、また特色かあると考えております。どちらもやつて行かなければならぬと思つております。やはり農地改良局等によつて、増産に対する技術指導を普及徹底させる、こういうふうなこと、そのほか調査研究をし、それを徹底させて行くというようなことは、国において考えなければならぬと同時に、また農業団体においても、やはり農家の経営内容を改善いたしまして、農家の社会的、経済的地位の増強をはかつて行く。国のやります技術普及浸透の問題と呼応いたしまして、それを受けて、それをほんとうに農家におろすところの段階において、団体が積極的にやつて行く。この二つがお互いにうまく調和がとれて、両方が強力に推進されることによつて、初めて結果が現われるというふうに思うわけであります。従つてこれは三つの問題があると思いますが、われわれといたしましては、もちろん指導連につきましては、あくまでもやはり自主的な団体でありますので、こういうふうに農業団体自体が、自主的に取上げてやつて行かなければならぬ問題については、あくまでも農家からの負担金、その他によつてこれをやつて行くという建前をとるべきだと考えております。しかし国がやるべき仕事についても、それが委託事業の形において、指導連を通じてこれをやるということが適当なものも十分あるわけでありますから、そういうふうな問題については、われわれといたしましても、積極的にそれに必要な予算をとつて、そして強力に展開するように努力いたしたいと思つております。財政の事情からいたしまして、十分には行つておらないのでありますが、今後それに努力をいたしたいと考えております。
  94. 井上良二

    ○井上(良)委員 あなたの今おつしやることくらいなら、今まで農地改良局の方においても、農業普及委員というものが各単位村落に派遣をされて、国の費用で持つておるわけであります。そういう点、またここへ列記してあります品種の改良のための優良種牡牛の貸與とか、優良種苗、新しい生産資材普及並びに初期段階における当該物資の普及とか、病院を除くこれらの問題は、そういう指導連をつくつて農民に大きな経済的負担を持たすことは、今日の農村の実情から考えて、やらなければならぬ、やればいいことはわかつておるのですが、しかし実際の運営がうまく行かなし現状から、これをほんとうに育成助長しようというならば、少くとも事務費の大部分を負担するとか、あるいは旅費なら旅費を負担するとか、そういう面で、国が当然やらなければならぬ農業指導なり、農業生産向上への基礎的教育、そういう面を農民の負担においかぶせて、他の健全な協同組合の経営さえ困難になつて行くというようなことに、しないでおいてもらつたがいいじやないか、やらなければならぬということと、またやれば効果があるということ、またそれを農民にやらすことの意義が深いということなら、政府の方から相当多額な、これの運営に必要な補助を出すという腹を持つてもらわなければ、うまく行かぬじやないか、中途半端なことならやめてもらつた方が、よほど農民の負担は軽くなるし、一方的に政府のいろいろな機関を通し、いろいろの組織を通しての、指導と協力が徹底して行くのですから、中途半端なことが一番末端においては困るのです。そのような点を検討を加えられて、もう少し運営資金政府の方で相当援助して、この面こそ一番農業協同組合では重大な役割を演ずるものでありますから、これに対してもつと積極的な対策を講じてもらうように、これは一つの希望になりますけれども、私は要求をしておきたいと思います。
  95. 小笠原八十美

    小笠原委員長 それでは本日はこの程度にとどめまして、次会は明十一日午前十一時より開会することにいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時四十一分散会