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1950-03-31 第7回国会 衆議院 農林委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年三月三十一日(金曜日)     午後一時四十七分開議  出席委員    委員長 小笠原八十美君    理事 野原 正勝君 理事 八木 一郎君   理事 藥師神岩太郎君 理事 山村新治郎君    理事 井上 良二君 理事 吉川 久衛君       青木  正君    足立 篤郎君       遠藤 三郎君    小淵 光平君       河野 謙三君    寺本  齋君       中村  清君    原田 雪松君       平野 三郎君    渕  通義君       守島 伍郎君    石井 繁丸君       高田 富之君    横田甚太郎君       小平  忠君  出席政府委員         農林政務次官  坂本  實君         農林事務官         (畜産局長)  山根 東明君  委員外出席者         農 林 技 官         (畜産局有畜営         農課長)    山本兵三郎君         專  門  員 岩隈  博君         專  門  員 藤井  信君 三月三十一日  委員小淵光平君及び田万廣文辞任につき、そ  の補欠として坪川信三君及び石井繁丸君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員坪川信三辞任につき、その補欠として小  淵光平君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 三月二十九日  牧野法案内閣提出第一三七号) 同月三十日  植物防疫法案内閣提出第一四二号)(予) 同月三十一日  自作農創設特別措慣法の一部を改正する等の法  律案内閣提出第一四五号) の審査を本委員会付託された。 同月二十九日  食糧検査員の増員に関する陳情書  (第六七一  号)  災害耕地排水機維持電力料金全額国庫負担に  関する陳情書(第  六八七号)  開拓事業対策に関する陳情書  (第六九一号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  小委員補欠選任に関する件  牧野法案内閣提出第一三七号)     ―――――――――――――
  2. 小笠原八十美

    小笠原委員長 これより会議を開きます。  議事に入る前に議案が付託になりましたから御報告いたします。去る二十九日内閣提出による牧野法案が、昨日同じく内閣提出による植物防疫法案予備審査のために、また本日内閣提出による自作農創設特別措置法の一部を改正する等の法律案がそれぞれ本委員会付託に相なりました。以上御報告いたします。  次に小委員補欠選任を行います。去る二十七日委員辞任せられました大森玉木君は、林業対策小委員及び畜産に関する小委員でありましたので、これら両小委員補欠選任を行わねばなりませんが、これは先例によりまして委員長に御一任を願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小笠原八十美

    小笠原委員長 御異議なしと認めます。  それでは林業対策小委員及び畜産に関する小委員大森玉木君を指名いたします。     ―――――――――――――
  4. 小笠原八十美

    小笠原委員長 それではまず牧野法案を議題とし、その審査に入ります。  まず政府提案理由説明を求めます。坂本政務次官
  5. 坂本實

    坂本政府委員 ただいま御審議を願います牧野法案提案理由を御説明いたします。  畜産振興の必要は、いまさら申し上げるまでもないことでおりますが、この畜産振興基礎をなす粗飼料資源供給の大宗である牧野は、きわめて重要性を有するものでありまして、農地改革牧野にも拡大されたことは、この重要性の一端を示すものにほかなりません。特に現下飼料事情におきましては、牧野生産性維持、向上をはかり、牧野経営合理化を促進する必要が倍加しているとともに、他面また国土保全上から、牧野緑化促進が要請されているのであります。  わが国牧野改良が識者によつて叫ばれ出したのは明治以後のことでありますが、昭和六年に至り初めて牧野法が施行されるに至り、この法律によつて牧野改良制度化され、国の助成政策によつて改良が促進されたのでありますが、この法律は、牧野用施設に関して改良事業を行うことを目的とした強制設立強制加入制度を伴う牧野組合に関する事項を骨子としたものであり、現下農業協同組合整備等に伴う新情勢に即応しないものとなつたのであります。他方、戰時戰後を通じて行われた過放牧や濫獲によつて牧野中にはようやく荒廃の度を加え、このまま放置することは、いたずらに土壌の侵蝕を受けやすい状態に放置することとなるものも生じ、国土保全上も重要な問題となつておるのであります。  かかる状況にかんがみまして、特に公共的な牧野について、その管理経営を適正にし、その改良を促進するとともに、また国土保全上から支障のある牧野については、その緑化をはかり、あわせて飼料資源をつちかうことが緊急の要務となつたのであります。  次に提出法律案内容を簡單に御説明いたします。  第一は、地方公共団体管理する牧野について、牧野管理を適正にするため、牧野管理規程を作成する事項であります。地方公共団体管理する牧野については、団体性格等にかんがみ、自作農創設特別措置法において、特に牧野買収の対象から除外し、共同利用形態を存続して参つておるのでありますが、一般的には、その利用状態が悪く、買収除外趣旨にも沿つていない現状のものもありますので、その利用価値を高めるため、その管理者に、牧野維持改良に必要な牧野管理規程を定める義務を負わしめたものであり、これによつて牧野利用効率化をはかるわけであります。この点につきましては、現在河川及び堤防で牧野として利用されているものについても、地方公共団体管理するものについては、牧野と同じように管理規程を定めさせることといたしております。  第二は、保護牧野制度に関する事項であります。畜産の用に供する牧野であつて国土保全上重大な障害があるものに対して、その保全及び改良に関し、とるべき必要な措置の指示を行うことができる趣旨のものであります。経済的に技術的に、畜産基地となり得る可能性がある牧野に対する措置でありまして、この点で保安林制度における原野に対する考え方と異るわけであります。  第三は、第一及び第二に述べました措置にかかる牧野保全及び改良事業を行う者に対する奨励措置に関する事項でありまして、資金融通牧野改良に必要な資材供給等について、必要な措置を講ずることを、政府方針として明らかにしたことであります。  第四は、牧野の害虫の駆除を命ずることができる権限、その他必要な報告徴収をする権限に関する事項であります。  第五は、現行法の廃止に関する事項でありまして、改正牧野法の施行とともに、現行法は廃止され、牧野組合は解散することとなることであります。  以上が牧野法案の大要であります。なお最後につけ加えたいと存じますが、土地改良法中に牧野改良を含ませることをも内容といたしまして、別途議員提出として予定されておりまするが、この法案は、牧野が上述のような特殊性があるために、議員案と表裏一体となり、牧野行政の完全を期するために必要なものであります。  何とぞ愼重御審議の上、すみやかに御可決されることをお願いする次第であります。
  6. 小笠原八十美

    小笠原委員長 これにて本案に対する提案理由の御説明は終りました。引続き本案に対する質疑に入ります。野原君。
  7. 野原正勝

    野原委員 牧野法改正に関連いたしましてい二、三政府の御方針をお伺いいたしたいと思います。牧野改良を行い、その生産を高めることの必要は、いまさら申すまでもないのでありますが、御承知通り、戰時中著しい人手不足のために、牧野はほとんど放任されておりまして、原始の状態にだんだんともどつて参りまして、このままにしておくことは、狭隘なる国土活用という面から見ましても、はなはだ遺憾に考えておつたのでありまするがもここに新たに牧野法改正を企図ぜられるということにつきましては、ただいまの政務次官提案趣旨説明によりましても、まことにけつこうと存ずる次第でございます。しかしながら、今回の牧野法改正に関しましても私どもはまだ非常に不満と考える問題が多いのであります、なぜかと申しますと、牧野法改正に対しましては、單に地方公共団体等牧野管理を適当にさせるような法的措置であるとか、あるいはまた保護牧野制度等に関する事項も必要なことでありまするけれども、一番大事なことは、何と申しましても、牧野整理には相当の金がかかるのであります。その金は、従来馬政局時代におきましては、馬産奨励というような見地から、相当に多くの予算をもつて牧野改良をして参つたのでありまするが、今回の牧野法改正におきましては、こうした面において、政府が積極的に予算を支出して牧野改良しようというような意図は、ただいまの提案趣旨説明では、何ら伺うことができないのであります。ただわずかに資金融通であるとか、あるいは牧野改良に必要な資材供給等について必要な措置を講ずるというような、はなはだ微温的かつ消極的な対策のみが用意されておるように伺つておるのでありまして、これではたして牧野法改正いたしまして、真に必要とするようなりつぱな牧野を造成し得るやいなや、私はこの点に対しまして、はなはだ遺憾に感ずるものでありまするが、一体政府は、その点に関していかなる考えを持つておられるか、まずその点からお伺いしたいと思います。
  8. 山根東明

    山根政府委員 御指摘のように、牧野改良には相当な経費がいるのでありまして、これも御承知と思いますが、牧野改良奨励費として、相当多額の事業助成費を計上いたして参つたのでありますが、終戰後今日まで、牧野に対する施設は、政府としましては、遺憾ながら予算的にもまつたくブランク時代が続いて来ておるのであります。私どもは、ただいま提案理由の御説明でも申し上げますように、牧野重要性にかんがみまして、このままの状態であつては、非常に畜産振興上遺憾であるということから、新しく牧野に関する措置として本法案提案いたしたのでありますが、この法案にもも実は御指摘のように、法案自体には何ら助成金、補助金的な点につきましては、触れていないのであります。しかしながら先ほどちよつと御説明もいたしましたように、議員提出として土地改良法提案になるわけでありまして、これによりますと、牧野改良事業土地改良事業として施行することができることになるわけでありますが、そういうことに相なりますと、その面からの経費の支出も、これは国の予算として盛り込まれることになるだろう。ただ遺憾ながら二十五年度予算につきましては、実はこの準備をいたしておりませんでした関係上、具体的に二十五年度におきましては、改良事業に対する助成経費は計上いたしてございません。ただ牧野の問題が長年放置されておりまして、実は現在牧野がどういうふうになつておるかということの基礎調査と申しますか、そういうことも遺憾ながら十分できておりませんような関係で、二十五年度におきましては、これは既定予算の運用によつて、ある程度可能でありますので、まず基礎調査にとりかかつて行きたい。それによつて牧野現状を把握しまして、二十六年度以降の牧野改良事業に対しましては、土地改良事業の一部の事業考えまして、その面からの助成につきましては、御指摘のように相当な経費もいることと思いますので、そういうことで行きたいと思います。さしあたりまして二十五年度は、基礎調査を十分やつて行きたいというふうに考えております。
  9. 野原正勝

    野原委員 畜産局長説明で、形をかえた助成措置を講じ得る将来への希望があるように伺いましてやや安心をしたわけでありますが、しかしながら土地改良と同じような形の牧野改良をいたしましても、これはもつぱら土壘をつくるとか、あるいはまた牧野としてのいろいろな障害物を除去するとか、あるいはまた水のきわを整理するとか、いろいろそうした土木的な、工作物的な方面に置かれると思うのでありまして、牧草の改良であるとか、はぎの幼苗をこしらえてこれを大いに増殖するとか、あるいはまた従来いろいろとり来つたような、いわゆる牧野改良の全般についての行き方から申しますと、土地改良のような性格のことで、はたしてうまく行けるかどうか、実は非常に疑問があるのであります。ある一面は土地改良と同じような性格を持つておりますので、その便法をもつてこれに当てはめることができるといたしましても、牧野全体をよくするという積極的な施策に関しましては、非常に消極的であるといわざるを得ないのでありまして、やはり真に牧野に対する施策が必要である。牧野改良は国家の再建上、大きな国土計画の一環としての重要なる農林政策一つとして、当然やらなければならぬことなのでありますために、この辺を十分に研究されて、今後この施策をもつと積極的にやるような態度をとることが望ましいと思うのでありまして、この点畜産局の今後の積極的な態度を私どもは大いに期待してやまない次第であります。  先般国有牧野開放が、いわゆる自作農特別措置法と同じような線に浩つて、ある程度行われることになりましたが、それによりまして、従来の国有牧野もそれを使用収用しておりました各地方拂下げを受けるような段取りになりましたが、この牧野改良に関しましては、従来の牧野が、もつぱら畜産の上から見れば、馬産を中心とした牧野改良に重点が置かれておつたのでありますが、最近の傾向は、御承知通り農村経営立体化合理化というような観点から、酪農に漸次移行して参つたような形態になつておるのでありまして、その点から見るならば、従来の牧野は比較的村落を離れたような地帯に多いのでありますが、今後の牧野というものは、舎内飼育と関連した、いわゆる採草の最も便利な所、しかもこの採草量を最も効果的に収穫し得るような箇所が、牧野として一番要求されておるのであります。こういう点から見ましても、今後新たに牧野の必要が生じ、またその開放が当然要求されることとなると思うのでありますが、畜産局などは、一昨年来ありました国有牧野のあの開放の行き方をもつて満足しておるかどうか。今後農山村の実態に即応して、畜産酪農等が自然にふえて参つて農村要求が非常に高まつた場合においては、どういう措置をもつてこれらの要求をいれ、畜産奨励をやつて行くようにするか。それに対する畜産局の今後の見通しなり、あるいはまた御見解なりを、一応承つておきたいと思います。
  10. 山根東明

    山根政府委員 最初のわれわれに対する御要望と申しますか、この点について、最初私がお答えしました点が若干不十分でありましたので、補足して御説明をいたしておきます。  二十六年度以降におきまして、私どもはただ單に土地改良経費のみをもつて牧野改良事業をやつて行こうというのではないのでありまして、お話のように、土地改良と完全に同一でないという面もあり、従いまして土地改良関係経費をもつてはまかない得ない事項につきましては、もちろん牧野改良独特の経費として要求いたして行きたい、かような考えをいたしておりますから、御了承願います。  それから将来牧野についてどのような考え方を持つておるかという点でございますが、これは先ほど申しましたように、戰争以来何年間か、まつたく手を染めてないと申しましても過言でないような貧弱な状況で、牧野行政が今日まで来ておるのでありまして、一方におきまして牧野は一時はお話のように強健なる軍馬育成ということを大きな眼目にして動いて来た時代もあつたのでありますが、かりに強健なる軍馬育成という眼目が失われたといたしましても、やはり牧野充実と言いますか、これは畜産振興上の最も大きな基礎をなすものであることに間違いないのでありまして、そいうそ意味から、私どもも長らくブランクになつておりましたこの時代に、ある程度進んで参りました状況が、まつたく元のもくあみになり切つたという実情は、十分認識しておるのでありまして、今後におきましては、これは予算措置等を通じまして、それまで牧野行政に対しましては、畜産行政一つの最も大きな方策一つとして、これを強く取上げたいという気持でおるわけであります。これは予算の面におきましても、そういう考え方を通して行きたいと思いますとともに、国有林等における牧野用地の確保、こういうような面におきましても、あるいは従来消極的でありました面を、さらに積極的に力を注ぐことによりまして、私どもは、一言で申しますれば、牧野行政につきましては、今後十分力を盡して、各面からこれが万全を期して行きたい、かような気持を持つておりますことを、ひとつ御了承願いたいと思います。
  11. 野原正勝

    野原委員 最後に一点だけ伺つておきたいと思いますが、この牧野法による牧野、いわゆる整備された完全なる牧野についての考え方であるのであります。まことにけつこうでありまするが、御承知通り東北地方等におきましては、従来の慣行上、いわゆる林内放牧混牧林業と申しましようか、森林を造成すると同時に、その下草等をして、これをまた畜産の用にも充てしめるというようなことが、現実に非常に行われております。ことに濶葉樹林のごときは、ある程度牛などを林内放牧させるということは、林木林地天然更新を容易ならしめる。そうしてこの林内におけるいろいろな熊笹、根曲り竹、その他たくさんの下草等を牛は非常に好むのでありまして、林内放牧された牛は非常に強靱であり、そうしてまたそれによつて、まるまると太るというふうなことで、林の中に牛を入れるということは、かなり以前から盛んに行われて参つたのでありまするが、ややもすると、牧野というものの観念を非常に消極的に解釈いたしますと、きれいに林を切つてしまつて牧野として木柵などを張りめぐらし、あるいは鉄棒を築いたりして、その中の狭いところへ家畜を追いこむことをもつて放牧とし、あるいは革を刈るところを採草地考えるというような向きもなきにしもあらずでありますが、むしろそうした完全なる牧野を三体とした、いわゆる牧野も必要なことには違いありませんが、混牧林業的な――林として林木の成長に役立たしめる。同時にそれがまた家畜育成のためにも十分にこれが活用されるということは、はたはだ土地利用の上から見ましてけつこうなことと思うのであります。私どもは、常にできるだけ林木のために障害にならざる限り、家畜を入れて、放牧にも役立たしめるような臨機の措置を講じて参つた経験があるのでありまするが、そういうものに対しては、私は大いにこれは奨励すべきものであると思う。従つてそうした林内放牧等を積極的にやつて、この狭い国土からなるべくたくさんの家畜生産し、そうして酪農畜産を盛んならしむるということが必要であろうと思うのであります。そのために土地改良等の方法によつて、限られた牧野地帯を完全に活用するということも、もちろんこれは大いにやつてみなければならぬのであります。同時にまた、普通の林野に対しましてもある程度の防災施設なり、その他の保護施設等を併置いたしまして、そうして活用をはかるというところまで行くならば、わが国畜産の将来はまことに明るいもめがあろうと思うのであります。その点に対しまして一体畜産当局は、混牧林業あるいは林内放牧等に対しましてはどんな措置をとり、どういう方策で進まれるか、この機会に一応お何してみたいと思います。
  12. 山根東明

    山根政府委員 林内放牧につきましては、ただいま御指摘にありましたと同じ考え方を、私どもも従来同様持続けて行きたい、かように考えております。新しい法律に、そういう考え方をある程度実は織り込むことに準備いたしまして、国内的には林野庁等との打合せ、了解も実は完全に練つてつたのでありますけれども、いろいろの事情で、法律案からはこれは消さざるを鶴ないような事情があつたのでありますけれども、そういういきさつでありまして、私ども考え方は、野原委員の御指摘とまつたく同じような考え方を持つて進んで行きたい、かように考えております。でありますから、今後は林内放牧に対するいろいろな施設等充実完備等につきましても、これは予算の面において考慮いたして参りたい、かように考えております。さらにそうした牧野に対しましても、この法案で定めておりますと同じような意味で、同じような形の管理規定等の定めというようなことにつきましても、法案からは直接は出ませんけれども、そういうような措置を実際問題としてはとつて行きたい、かような考えをいたしておりますから、それによつて御了承を願いたいと思います。
  13. 石井繁丸

    石井委員 ただいま牧野法が上程せられまして、政府としては畜産行政を有力に進めるという見地から、この牧野法提案をした、こういうような建前をとつておるのでありますが、日本において畜産行政振興されるということは、非常に重大なことであります。蛋白資源等において非常に不足しておる今日、畜産振興ということは非常に重大なのでありますから、今までの畜産というのは、ただいま質問もありましたが、大体日本における畜産と申しますと、軍馬中心とした畜産行政というような建前をとつてつたのであります。これが大きく転換せられまして、軍馬時代から酪農。あるいは耕畜馬にしましても、今までの競争馬というよりは、実際農村に適したところの役馬、こういう形に持つて行かなければならない、かように思われるのでありますが、こういうふうな大きな転換をすべきときにおきまして、まだ農林省畜産局におけるところの、大きな畜産行政ということに対しまして、確固たる方策が立つておらないというふうな関係で、非常に日本農林省畜産行政は立ち遅れておる。さいわいに戰後農村の人々の奮起その他にまちまして、日本畜産は非常に増加を見たけれども、たちまち価格が暴落するというようなことになりますと、また前途も危ぶまれる。こういうような立場になつておるのでありますが、農林省並びに畜産局におきまして、どういう角度から、またどういうふうな立場において、今後の日本食糧等を、あるいは役畜等立場から、畜産行政を展開しなければならないかという点につきまして、お尋ねしてみたいと思います。
  14. 山根東明

    山根政府委員 畜産わが国農業の上において、非常に重要な地位を占めております点は、農林省としましても、これは十分認識いたしておるのであります。ただ現状畜産行政に対する施策が不十分ではないかという御指摘に対しましては、予算の面、その他において、私どもも率直にそういう実情を認めるのであります。しかしながら今後におけるわが国畜産が、どうしても大きな政策一つとして取上げて行かなければならない事実につきましては、これは私ども局に当つております者の一つの責任として、一般に対するそうした認識を深めて行くこと等につきましても、努力を続けて行きたいと思いますし、そうしたことを具体的に予算の面、その他国の行政組織面等において、これを具現すべく、これは私ども今後においても十分力をいたして行きたいつもりでおります。将来何と申しましても、わが国農業転換にあたりまして、畜産有畜化へ、これが一つ農業経営の筋金になつて行かなければならないというような考え方を、一つの基本に持つておるわけでありまして、そういう意味で、とかく現状におきましては、いろいろな批判を受けておりますけれども、この批判を、私どもは、局に当つております者に対する叱咤、鞭撻として受け取つておるのでありまして、私どもの今後の力は、これを十分畜産振興のために盡して参りたい、かような考え方をいたしております。
  15. 石井繁丸

    石井委員 畜産振興の点について、一応またお尊ねいたしたいと思いますが、この点過日森農林大臣にも申したのでありますが、今まで豚あるいは乳牛が非常に増加して、日本におけるところの蛋白資源、あるいは牛乳等によるところの兒童の栄養を非常にまかなつて来たということは、戰後における農民その他各方面が、文化的な農村をつくる、そのためには食生活の切りかえ、かような点において努力して来た結果であろうと考えられるわけで、あります。しかるに最近において、非常に畜産業者その他に対するところの課税が苛酷でありまして、乳の出ない牛にも二万五千円かけるとか、あるいは卵を産まない鶏も六百円の課税対象にするとか、こういうふうな形になつておりまして、大蔵当同に言わせると、收入あるところ課税あり、これは鉄則だというようなことでやつておりますが、かようなことに対しては、十分にかような立場における畜産に対する課税は考慮してもらわなければ、日本の食生活あるいは蛋白食糧の攝取等はできなくなる、かような性質のものである。こういう角度から、農林省が強くそれらは押えるべきがあたり前だ。もし農林省におけるところの発言権が強く、農林大臣その他農林政務次官等が、強いところの確信をもつて農林行政を遂行し、畜産行政を遂行いたしておれば、かようなばかな課税は現われなかつただろうと、われわれは考える。それらに対して農林当局は一体どんなような措置とつたか。口には畜産振興であるとか、あるいは牧野行政をするとか言いながらも、実際においてはつぷして行く。税の面において、せつかくどんどん畜産振興等をして来たのを、みんなつぶして行くというような形が現われて来ておる。農林省のこれに対する御意見を承つておきたいと思うのであります。
  16. 坂本實

    坂本政府委員 わが国農業におきまする今後のあり方といたしまして、有畜農業奨励しなければならないことは、当然のことであると存じまして、ただいま畜産局長からお答えもいたしました通り、従来の畜産行政をさらに強化して参りたいと考えておるのであります。なお今御指摘のありました税の関係でありまするが、大蔵省に対しまして、今御指摘がありましたような、末端におきまする徴税方針が非常に間違つておりまする点につきましては、十分その妥当でない点を指摘いたしまして、これを改めてもらうように、一層連絡を緊密にいたしまして、是正をしてもらいたい、かように考えておるのであります。さらに御指摘の点につきましては、一層の努力をいたす所存でございます。
  17. 石井繁丸

    石井委員 今度は牧野法内容についてお尋ねいたします。今まで牧野法がありましても、ただ一応土地を牧野として確保しておるというような形でありまして、日本畜産上において努力をするというふうな面が非常に少かつた。ある意味においては、競馬の好きな人間が、自分の家の放牧地にしておくというくらいの牧野も、たくさんあつたような形をとつておつた。さような関係上、農林省方面におきましても、土地の改良あるいは牧草というようなもの等について、努力が拂われなかつたと思われるのでありますが、この牧野法におきましては、さような点につきましても、今度は非常に努力を拂うというふうな点が現われておりまして、非常に喜びにたえないと思うのであります。しかしながら、この牧草ということにつきまして、ひとり牧野における牧草だけでなく、いろいろと農村におけるところの乳牛を飼う人とか、あるいはその他いろいろな関係畜産をする人に対するところの、適当なる牧草指導というものを、強力にいたさなければなるまいと考えられるのであります。たとえて申しますると、八丈島で畜産か勃興しておる。これは八丈島においては、非常に風が強く吹くので、そこであぜ間を小さくして、防風施設をしなければいかぬ。その間において採用されたのが八丈馬草というあのかやでありますが、あれを非常に発達させて、八丈島におけるところの牧畜が発達した。こういうふうな関係で、非常に土地の風土というものとにらみ合せまして、この牧草の指導等をいたしますると、土地の利用度を高めると一緒に、また牧草の採取ができる、こういうふうな形が現われるのであります。こういうふうな点から考慮しまして、ひとり牧野でなく、それ以外の地帶におきましても、適当なる牧草指導ということは必要であろうと思うのでありまして、これらについては、どんなお考えで指導いたして行き、また指導しつつあるか。農林当局の御意見存承りたいと思うのであります。
  18. 山根東明

    山根政府委員 草の改良ということが必要であります点は、私どもも同様に考えております。従来、現行の牧野法にも、御承知のように草生改良事業に対する助成と言いまするか、そういうことが規定としてはうたつてあります。しかしながら従来とかく草生の改良につきましては、あまり具体的な問題としてこれを取上げて来る点において、いささか欠くる点があつたように私どもは思つておるのでありますが、今日におきましては、やはり草を改良しなければ――これはどうしても牧野改良にいたしましても、あるいはその他の自給飼料の確保という見地からも、草の改良ということが非常に必要であるということにかんがみまして、御承知のように、国の予算といたしましても、国営でもつて優良なる牧草の種子を供給するための原種圃を経営する予算が、二、三年前から計上してあるのでありまして、本年度もその計画をある程度実は拡充もいたしたような事情でありまして、一方においては、牧草種子の輸入の話も実は出ておるのでありまして、優良な品種の牧草の種を、ある程度輸入する計画も、計画としては出ておるような事情でありますので、こられを通じまして、御指摘のように、今後におきましては牧野なり、あるいはその他畦畔、堤塘、原野における草の改良ということにつきましては、これは十分力を用いて行きたい、かように考えております。
  19. 石井繁丸

    石井委員 この牧野法におきましては、牧野についてのいろいろな規定があるのでありますが、先ほど野原委員によつて質問があつたのでありますが、今後の放牧というものは、大体農家が牛の子供をとつた、ひとつそれを一箇年間あるいは半年放牧するとか、あるいは農家において雄牛ができた、そこで雄牛をしばらくの間放牧をして、これをある意味において急速に生長せしめる、それを肉にする、こういうような角度からの放牧が、非常に多いだろうと思うのであります。さような場合におきまして、やはり放牧をする人に対する安全感がなければならない。またその放牧料というようなもの等につきましても、いろいろと適当な措置がとられなければ、非常に高くなつたり、安くなつたりするようなことでは、放牧する人も適当に利用することができない。こういうふうに思われるのでありますが。この牧野の料金その他については、いろいろと規定もありまするが、放牧者に対するところの放牧料。こういうものについては、何らの措置も講じないでおいて、今後牧野の安全利用、また牧野が常に有効に利用されなければ、牧野の収支もまかなえないということになりますし、これは完全な管理ができないのでありますが、これらの点についての農林当局の御意見はどうでありますか。それを伺いたい。
  20. 山根東明

    山根政府委員 牧野に対する放牧料金のことにつきましては、この法律で規定いたしております管理規程等には、お話のようにこれを適正に定めることについての規定が、実はないのであります。しかしながら私どもとしましては、今後におきましては、牧野について、最初申し上げましたように、積極的に牧野についての施策を遂行して参りたいというような考え方をとつておるのでありまして、そういう見地から、たとえば都道府県における牧野行政の陣容といいますか、職員等につきましても、これは料金が適正であるかないかというようなこと等について、十分これを監督し、指導して行けるだけに、陣容を拡充いたして行きたいというような考え方を持つておるのでありまして、これらの人たちがほんとうに自分の使命を自覚して、親身になつて牧野の指導育成に努めて行くというようなことを通じまして、御指摘のような牧野業者に対する不安を除去して行くことができるのではないか、かような考え方をいたしておるわけであります。
  21. 石井繁丸

    石井委員 本規定によりますと、前牧野法が廃止となり、効力がなくなりますと、五箇月を経過いたしましたときにおいて、現在の牧野組合は当然に解散するというような形になつております。今後におきましては、これにかわつていかなるものができて、いろいろの放牧業の指導あるいはその活動に当るのであるか、その点についての農林省の御意見を承りたい。
  22. 山根東明

    山根政府委員 従来牧野組合牧野の利用者の団体としてできておつたのでありますが、これがこのたび解散することになりまして、今後におきましては、牧野の利用者は農業協同組合法による協同組合というような形で、牧野の利用改良等の仕事をやつて行くというようなことになるわけであります。
  23. 石井繁丸

    石井委員 今まで大体畜産ということの中心としては、軍馬ということに重点を置き、それともう一つは競馬ということに重点が置かれるような形であつた。競馬というものがまことに人心を荒廃せしめまして、そうして賭博の風潮を増長させるというようなことで、まことにこれは寒心にたえないものがあるのであります。それと一緒に、軍馬ということが今度のような日本の結末を来しておる。これはよほど頭を切りかえないと。日本畜産行政というものは軍馬と競馬というような色あいを濃くするというような憂いがあります。今後におきましては、畜産行政の一般につきまして角度をかえて、ほんとうに日本の農民に役畜を供給する、あるいは日本の国民に優良蛋白質資源を供給する、あるいは乳を国民に普遍的に飲ませる。こういう角度と一緒に農村におけるところの経済を向上せしめる。こういう点について大きな努力がなされなければならないと思うのであります。ただいま聞きますと、それらの点について十分努力をしておるというのでありますが、なお今後ともこの牧野法の制定によつて、これが種馬等であればよろしいのでありますが、競走馬を放牧するための土地か與えられた。あるいはまた自分の管理指導におけるところの土地がふえたというような、旧態依然たる考え方で、今後の新しいところの畜産行政に協力しないというようなことが、多く現われるだろうと思うのでありますが、農林省におけるところの畜産行政のお考えを一変すると一緒に、かような角度から、ひとつ牧野等についても御指導を願いたいということを、最後に希望いたしまして、質問を終る次第であります。
  24. 河野謙三

    ○河野(謙)委員 この機会に二、三お伺いしたいのでありますが、まず私の意見を先に加えましてお伺いいたします。先ほど畜産局長からの御答弁の中にありましたように、日本人の食生活これが従来の澱粉質中心の食生活から、脂肪蛋白中心、すなわち欧米式の食生活にかわるということは、当然今後起つて来る。またさようにしなければならない。いまさら私が申し上げるまでもなく、従来の澱粉質中心日本人の食生活というのは、決して科学的でない。日本の統計と欧米の統計を比較してわかるように、アメリカなりイギリスなりの統計を見ますと、百人中胃腸病で死んだ人はわずかに三人か五人、日本で百人中胃腸病で死んだ人は二十四人ないし二十五人と、少し統計は古いのでありますが、私は承知しております。これも元をただせば食生活のあやまちから来ておる。今後政府は食生活を脂肪蛋白に切りかえるという指導をやるべきだ。こういう観点に立つて将来の食生活の理想を立てて行く以上は、もう少し農林省、特に畜産局において、確信と自信を持つて畜産行政を大きく展開してもらいたい。はなはだ遺憾に思いますのは、最近畜産局の廃止という問題さえも聞いておりますが、私が今申し上げたような理想とこれを比較しますと、非常に遺憾であります。どうぞもう少し確信を持つて畜産行政の大転換、大発展を私はやつてもらいたい。それに関連いたしまして、具体的にお尋ねいたしたいのは、先進国の畜産と、日本のような後進国の畜産と比較しますと、いろいろな面において劣つておりますけれども、とりわけ粗飼料の対策が非常に貧弱だと思う。ここに提案になりましたものは、一つの粗飼料対策として、大いに私は歓迎するものでありますが、これをもつて私は万事が終つておると考えません。少くとも過去において、畜産五箇年計画を立てられました当局におきましては、今後におきまして畜産五箇年計画、十箇年計画と同時に、粗飼料五箇年計画、十箇年計画があるはずだと思う。それにつきまして、具体的に今後いかなる構想を持つておられるか。夢のようなものでけつこうです。とにかく大きな理想を持つていただきたいのですが、その理想を伺いたい。同時に私は、時間の関係上あわせでもう一つお伺いしますが、濃厚飼料の問題も、今作付統制の関係で、非常に有畜農家は飼料に困つております。せめて飼料圃をもつと大きく有畜農家に認めるべきだと思う。去る国会におきましても、たしか全国に二十五万町歩の飼料圃を設定することを、政府は認めるというようなことを要望したはずでありますけれども、その後全国の有畜農家に対する飼料圃に対しては、どの程度までの施策をとつておられるか。飼料圃は来年度におきまして、どの程度までこれを国なり県が認めるという、有畜農家の飼料対策を立てておられるか。これもひとつ伺いたいと思います。
  25. 坂本實

    坂本政府委員 ただいま河野委員からお話のございました食生活の改善という点につきましては、わが国の国情から考えまして、どうしてもこれは一歩を進めまして、十分その実をあげて行かなければならぬ、かように考えております。従つてかような見地からいたしましても、わが国におきます畜産奨励は当然考えなければならないのであります。たまたま今お話のございました、農林省におきます畜産局の廃止等に関連いたしまして、過般行政制度審議会の小委員会におきまして、かような問題が取上げられたと聞いておりますが、さつそく私からも、かような考え方が誤つておることを指摘したのでありまして、どこまでも畜産局というものを今後ますます強化し、拡充すべきものであるという点を、従来申入れをいたしておつたのであります。その他の点につきましては事務当局からお答えを申し上げます。
  26. 山根東明

    山根政府委員 粗飼料対策について、夢物語でもいいから持つておつたら話をしろという点でありますが、私どもはやはり草を中心にして粗飼料の確保をはかつて行くということが、何と申しても根本ではないかという考え方をしておるのであります。先ほどもちよつとお話申し上げましたが、粗飼料に対する原種圃がきわめて貧弱でありますけれども、今日の時勢におきましても、なお逐次計画としても拡充して参つておるのであります。これをさらに進めて行き、あるいは一方においては相当優良な粗飼料の種子を、積極的に海外から輸入して行くということによつて、畦畔、堤塘、あぜ草等に至るまで、これをりつぱな牧草として育てて行くということが、やはり粗飼料対策の今後における大きな中心になつて行くじやないかという考え方を、実は持つておるわけであります。それに対して、具体的に何年計画でどういう計画を持つでおるかということになりますと、はなはだ遺憾ながら、今日なお具体的に年次計画等は持ち合せていないのでありますが、そういう考え方で進んで行きたいと思います。それから飼料圃の問題でありますが、これは畜産界にとりましては多年の問題でありまして、この前の国会の際にも、二十数万町歩の飼料圃の確保のことが御決議になつたようなことも承知いたしておるのであります。それに基きまして、実は中央としては、主要食糧の作付計画とあわせて、二十数万町歩の飼料作付計画を、計画としては立てたのであります。これは私どもの方と農政局、食糧庁等との話合いによつてそういう数字を出して、これに対しては肥料の配給なり、その他いろいろな施策を、実は中央ではとつておるのでありますが、これが末端におりました場合に、特に個々の具体的な畜産農家に対しまして、十分徹底しておるかどうかという点になりますと、これは遺憾ながら、実情ははつきり徹底していない点もあるかと思うのであります。これは私ども立場から申しますれば、非常に遺憾のことでありまして、本省の計画が末端において立消えにならないようにということを、終始地方庁に対しては督励を続けておるのでありますが、現状は今申したようなことかと思います。ただ一方においては、いもの作付の問題もこういうような事態になりますと、今後においては幾分緩和されて来るということは、申し上げることができるのではないかと考えております。
  27. 河野謙三

    ○河野(謙)委員 粗飼料の問題については、御構想の一端は伺いましたが、ここに山本課長もおられますけれども、さようなことで、決して今のんきにしておる時期じやないと思う。もう少し積極的に、具体的に粗飼料対策を立てて、しかもこれを数字の上にただちに反映するように、これは政務次官に特に私はお願いしておきたいと思います。  それから飼料圃の問題でありますけれども、実は各県ごとに非常に困つておる問題であります。国は認めないけれども県は、といつて有畜農業家をかかえて放つておけないということで、県自体が苦しいやりくりをして、飼料圃をむしろないしよのようにして設定を認めておるということをやつておる。これは逆でありまして、国自体が去る議会でわれわれが決議いたしましたように、飼料圃を積極的に認めて設定させるということに、ただちにかえてもらわなければ困ると私は思う。これは次の機会に言いますが、現在各県ごとにどのような実情において設宏されておるか。これを御報告願いたいと思うのであります。私が申し上げるまでもなく、かりに二十五万町歩飼料圃を設定いたしましても、国全体の食糧政策からいつても、主要食糧の数量は減らないのであります。形の上においては減る形になつておりますが、実收の上においては減らないのであります。これは畜産局においてもよく御承知と思います。ですから食料の自給度の問題がありますけれども、この食料の自給度の問題と飽料圃を設定することとは、決して矛盾しない。でありますから積極的にやつていただきたい。同時に先ほど私が申し上げましたように、現在各県ごとに、どのような実情において飼料圃が設定されておるかどうかということも、ひとつ伺いたい。今のようなことをしておりますと、少くとも今後、外国の乳製品と甘木の乳製品の競争の問題があります。聞くところによりますと、現在アメリカあたりの乳製品は日本の乳製品よりも非常に安い。これまた将来におきまして、経済の競争において、日本の有畜農業はその面において立たなくなるのでありますから、粗飼料の問題と、濃厚飼料の問題とに対する対策をすみやかに立てられて、十分外国の畜産と太刀打ちできるような方途をとつていただきたいということを、お願いいたします。
  28. 渕通義

    ○渕委員 牧野問題はまことに重大な問題だと思いますので、基本的の問題について一、二お伺いしてみたいと思います。  地方公共団体牧野管理の点でございますけれども、この牧野と国有林との関係、すなわち国有林野にして牧野に相当し得べき土地というものは、相当量あるとわわれは信じておるのであります。これに対してこれをば牧野として取扱う方面に持つて行く積極的施策を、この中に織り込むように、現在政府考えられておるかということを承りたいと思います。     〔委員長退席、野原委員長代理着席〕
  29. 山根東明

    山根政府委員 お答えいたします。国有林内で相当放牧適地があるものにつきましては、これを積極的に牧野に利用することにつきましては、私どもと林野庁との間において、必ずしも不一致ではないのでありまして、これは了解がついておるのであります。従来の馬産供用限定地につきましては、これは所属が之等の手続をとることにいたしております。  なお全般的に国有林内放牧適地を牧野に供用することにつきましては、林野庁と私どもの協議によりまして、放牧地として適当なもので、これを放牧に供用することの措置をとることにつきましては、これはさしたる支障なく行われ得ると考えております。法律に特にそのことは規定いたしておりませんけれども実情はそういうことでございますから、御了承願いたいと思います。
  30. 渕通義

    ○渕委員 この牧野改良は最も重大な問題であります。従つて今後国有林野の一定量の牧野に対する開放という問題につきましては、相当御努力になつたことを聞きましたが、一歩つき進んで混牧林ということは、御承知通り学問上にもありますけれども、世界のいずれの国に参りましても混牧林を行つております。この混牧林と牧野関係について、どうお考えになつておりますか。すなわち混牧林場というものを指定いたしましても、その混牧林場というものは牧野権限外にあるのか、そのうちに含めておるものであるかという問題を承りたいと思います。
  31. 山根東明

    山根政府委員 混牧林に対する考え方につきましては、先ほど野原委員からも、大体同様の趣旨の御質問があつたのでございます。それに対して私もお答えしたのでありますが、繰返しますと、私どもも山林に家畜放牧することにつきましては、これは林牧両面から何ら支障がないだけでなく、非常にけつこうなことだというふうな考え方をいたしておるのであります。ただ法律に盛ることにつきましては、先ほどもお答えをしましたが、当初林野庁との間においては意見が一致を見て、この法律にそのことの規定を織り込む予定にいたしておつたのでありますが、いろいろな事情法律に載せるわけに参らなくなつたのであります。実際問題としては、林野庁との間に完全に話合がついておりますので、法律には何ら規定はいたしておりませんけれども、御趣旨のように、混牧林の運営については私ども措置をし得るということを考えております。
  32. 渕通義

    ○渕委員 混牧林につきましては、野原委員より質問があつたようでございますが、私はいま少しこれを掘下げて論じてみたいと思います。すなわち混牧林と申しましてもいろいろ体系があります。たとえば純然たる混牧林にひとしい体系、一定の時期だけ、混牧林的な、何と申しますか、そこを利用するというような場合、この二つの場合があるわけであります。特にヨーロッパの例を引いてみますと、その二つの例が非常に顯著に現われております。これをどういうふうに扱われるかという問題を承りたい。
  33. 山根東明

    山根政府委員 常時混牧の用に供するものと、特定の時期にのみ混牧の用に供するものとを、どういうふうに区別して扱うかという御質問でありますが、具体的にこれを区別する必要につきましては、あるいは御質問の前提としてお考えになつておるものと思うのでありますが、私どもとしましては、混牧林に対しまして、これを実情に応じて、混牧林業と言いますか、そういうことにつきましては、将来奨励して参りたいということ、一口に申しますればそういうことでありまして、特に一時のものであるからどうである。あるいは年中混牧であるからこれはどういう扱いをするという、扱い上の区別を特にいたす必要は、ないのではないかというような考え方をいたしおります。
  34. 渕通義

    ○渕委員 実はこの混牧林につきまして、もう一点伺いたいことは、はつきり混牧林とまで行かなくとも、秋田県の営林局で研究しております、山の中に一定の條件を備えまして、そこに動物が多く集まつて来るような一つ施設を施しておいて、秋田県の場合はたしか鹿であつたかと思いますが、こういつた場合は、あなた方の方では混牧林というような考えでこれを実施されますか。それとも普通の野生的な牧畜以外のものとしてお考えになつておるか、これを承りたいと思います。何となれば、これは非常に重大な問題である。将来日本のような非常に山の多いところでは、牧畜というような名前を使わなくとも、野生のものをそこに自然に誘導しまして、そうしてその育成をはかる。そういうことで、あるときはそれを捕獲して肉にするということになると、家畜にも類するようなことにたると思いますが、肉をとつて販売する、そういう具体的な問題が現在研究の途上にありますが、そういうのをどうお考えになつておりますか。
  35. 山根東明

    山根政府委員 野生の鳥獣のことは、実は私どもの方の牧野法の対象としては考えておりません。そういう施設がもしあるといたしますと、これは現在においては、おそらく林野庁の猟政調査関係の仕事の対象になつておると考えております。
  36. 渕通義

    ○渕委員 次に牧野の中に「耕作の目的に供される土地を除く」こう書いてございますが、御承知のように、最近の牧野政策は非常に進んで参りまして、特に牧草の研究は非常に大きな進歩をいたしたのでございます。日本におきましては進歩いたしておりませんけれども、外国において進歩しておるのであります。従いまして、その牧野の中に一種の裁培的な牧草をつくつておる。こういつた場合に、ある程度の耕作ということも考えるのですが、その耕作の目的というものを、どういうふうにお考えになつておりますか。たとえば濠州あたりに参りますと、エレファント・グラスというものを一定の間隔を置いて植えつけて、それを採集して種をとつたり、あるいはまた人間の食糧になる作物をその間に間作しておる場合があるのです。日本も将来そうして行かなければ、今のような單なる野放しの牧野政策ではだめと思うので、そういうことに対する規定も当然考えなければならぬと思いますが、一歩一歩進んでおる今日の科学の考え方におきまして、そういつた牧野改良をして行く問題も、取入れなければならぬと思いますが、これをどう考えておられますか。
  37. 山根東明

    山根政府委員 牧野の経営を旧態依然として置くということは、これは私どもも進歩して行かなければならぬと考えておるのであります。従いまして諸外国の例等は、もちろん十分これを模範にいたしまして、今後の牧野経営改良には力をいたして行きたいという考え方はいたしておるのであります。そういう意味から、私どもの研究の成果が出ましたあかつきには、今日の牧野経営実情が、まつたく面目を新たにするときも、これは当然期待できるわけでありまして、そういうような理想を前提にして、あるいはこの法律は、なお不十分の点があるかとも思うのでありますけれども、私どもの理想は、御指摘のように、科学的な最も理想的な牧野を実現して行きたいということにあることは、これははつきりお答えしておきます。
  38. 渕通義

    ○渕委員 政府牧野をそれだけ重要にお考えになつておりますならば、牧野に対しまして根本的に理想的な体形を整えるために、標準牧野というものを現在設定しておられますか。
  39. 山根東明

    山根政府委員 たびたび申しますように、牧野に関する行政が、ここ数年間ほとんど何にもなかつたような実情であります。従来、戰争が終るまでは、牧野に対していろいろな手を講じたのでありまして、その際におきましては、模範牧野的な考え方をとりまして、これの特別な奨励を実はいたして参りましたし、さらに国が直接、みずからりつぱな牧野を経営して、それを一つのモデルにしたいという考え方で、数箇所の国営牧野も持つてつたのでございますが、これも一両年前に廃止したような実情であります。そういう意味から申しまして、今日におきましては、模範となる牧野を持つておるかということになりますと、遺憾ながら持つておらないとお答えする以外にないような実情でございます。
  40. 渕通義

    ○渕委員 過去におきましては、なるほど日本は林学的におきましても、相当牧野の研究をやつておりましたが、すでに戰争が終つで四年にもなつておりますから、この際思い切つて、模範牧野をまた再び設定しまして、今申したような各種の角度から、これを研究するのが最も必要であると思う。牧野法を制定するよりも、むしろそれが先決問題であると思う。それからさきにも申しましたように、各種の外国の牧草を入れて、それを裁培して、これを各町村の牧野に配給するということは、当然なさなければならぬ問題だと思うのでございます。そのくらいのことをこの法律にうたわなければ死んでしまうのではないか。何となれば、法律の前段を見ますと、一種の義務づけはありますけれども、それに対するところの政府の補助的な立場は、何ら見当りません。最近アメリカが参りまして、補助金政策的なことはなくなつたと言いましても、こういう根本的な政策に対しては、国家的な助成が必要だろうと思いますが、政府の御見解を承りたいと思います。
  41. 山根東明

    山根政府委員 一つのモデルをつくつて、それを模範牧野として経営して行くという考え方につきましては、私どもも今後において研究いたして参りたいと考えます。さらにこの法律奨励と申しますか、そういう面において何ら規定がなく、すべて義務づける規定のみではないかという御指摘でありまして、その点につきましては、実はきわめて簡單な抽象的な規定でございますけれども政府牧野について、これは提案理由説明にもちよつと申しておきましたが、資金のあつせんなりあるいは資材のあつせんなり、さらに今後におきましては、予算が許します限り改良事業助成等も、この法律の規定に基いて実施して行きたいということを、実は法律の二十條でありますか、きわめて抽象的であり、さらに不十分であるという点はあると思いますけれども、そういう規定は一応いたしてあるのであります。
  42. 渕通義

    ○渕委員 それだけ重大な牧野ですから、牧野に一定の害虫あるいは害獣が発生した場合に、この十八條に規定はございますけれども、この規定では何だか物足らないのですが、もつと大きな、これを防ぐ国家的な措置、たとえば植物防疫法というものが出ますが、こういつたものとの関連性をどう思つておりますか、牧野というのは、御承知のように野生の動物が入つて参りますし、その蔓延速度というものは非常に大なるものがあると存じますし、松毛虫のごときものなきにしもあらずですが、その点に対する対策を、政府はどういうふうに考えておられますか。
  43. 山根東明

    山根政府委員 法律案の十八條に、害虫駆除の規定がございますが、これで私どもが予定いたしておりますおもな害虫としましては、だにその他の昆虫類でありますがこれは何と申しましても、放牧家畜の非常な敵でありまして、これの駆除につきましては、十八條の規定を適用することによつて、駆除の措置をとつて行きたいという考えでございます。ただお話のような松毛虫の発生であるとか、あるいは私どもが予定いたしております以外の被害、たとえばいのししの被害であるとかいうようなものにつきましての駆除の方法の規定は、この法律には規定いたしておらないのでありますけれどもそれぞれの関係措置が、それぞれの面でできております。その措置を利用することによつて、それらの被害の防除についての措置をいたして参るというような関係になつておりますことを、御了承願いたいと思います。
  44. 渕通義

    ○渕委員 その場合、政府の負担する負担額、金額は申さなくても、大体何パーセントぐらい害虫駆除に要する費用を政府が負担される予定があるのか、それを聞いておかないと、害虫が参りましても、私ども自己の負担においてやるということは、なかなか今日の経済状態からできないのでありますから、そのパーセンテージを一応承つておきたいとおもいます。
  45. 山根東明

    山根政府委員 害虫の駆除にも相当な経費がいるので、これに対してある程度国がめんどうを見る必要があるのではないかという御意見だと思うのでありますが、国はどの程度の経費考えておるかという御質問に対しましては、最初にもおことわりしましたように、今日におきましては、牧野改良についての経費は、予算としては二十五年度には実は全然盛つていないのであります。二十五年度にはある程度の基本調査をいたし、いろいろな準備作業をいたすことによつて、おそらく年度を経過して、新しい年度から、いろいろな改良施設なり、あるいは助成施設が具現化して行くという順序になろうかというような考え方でおるわけでありますが、従いましてその場合に、害虫の駆除は、地元の関係者の全額負担でもつてしては、とうていこれを負担し切れないという御趣旨に対しましては、予算の編成にあたりまして、そういう御趣旨を十分取入れて、予算の編成を港えて行きたい、かようにただいまとしては考えておるわけであります。
  46. 渕通義

    ○渕委員 そうしますと、現在のところ、ほとんど手放しと言つてもいい状態であるということを確認せざるを得ないのであります。まことに悲しむべき現象でございまして、一体どうしたらば牧野改良がはかれるかということは、そうなつて来ると困難をきわむるのであります。これ以上追究いたしましても、ないそでは振れぬということになりますので、しかたがございませんが、一方私はお伺いいたしたいことは、この牧野法と入会権との関係について、一体どうお考えになつておりますか、御承知のように、各国有林等にも、またあるいは公有林にも、入会権というものが昔から行われておりまして、その入会には、牧草をとる入会、あるいはまたたきぎをとる入会というように、いろいろな権利が錯綜しておりますが、そういつた場合の入会権と、この牧野法との関連性ということであります。具体的に言いますと、法律的に見てどちらが優先するのかという問題であります、たとえば入会権の場合、その牧野管理法というものを、その地方々々の自治体において持つておりますが、牧野法との関係において、牧野法は上に行くのか、あるいは入会権における実体を、お互いの定められた範囲内において律するという問題は、独自に行つていいのか、入会権者は、自由にこの牧野法以外に自分の力を発動していいかという問題です。
  47. 山根東明

    山根政府委員 あるいは御質問の御趣旨と若干食い違いがありますれば、さらに追加してお答えいたしますが、牧野利用者の間における権利関係が、入会の関係その他で非常に複雑である場合もあると思うのでありますが、牧野法ができまして、牧野管理規定を定めることになりました場合に、私どもとしましては、従来の慣行によつて牧野が利用せられておるその方法、その現実を、必ずしもこの牧野法ですべてこれを排除する、押えつけるという考え方はいたさないのでありまして、従来の慣行が牧野維持管理上特に支障がない限りにおきましては、私どもはそうした慣行を尊重して、管理規定等の定めにおきましても、特にそれを排除するという気持は持つておりません。
  48. 原田雪松

    ○原田委員 私はこの牧野法の使命についてお尋ねしたいと思いますが、この法案がなるべく早く出ることを、実は期待しておつたのでありまして、ただいま議題になつていることを見まして、心から喜ぶものであります。趣旨に全面的に賛成をいたすものでありますが、この際一点だけお伺いしておきたい。大体お尋ねしようという要点は、各委員において言い盡されたように考えますが、牧野というものが畜産改良、増殖上きわめて重要なる使命を持つておるということは、申すまでもないことであつて牧野法に対しての政府考え方が、従来のような軍馬涵養時代と全然趣きを異にして、少くも牧野を利用して、内地に貸付する優良種牡畜の涵養をやらなければならぬ重大な問題だと考えるのであります。もちろん終戰後は戰前に立ちかえつたような頭数になつておりますけれども、これは必要に迫られた不純な発育と言いますか、増殖法であつたと思うのであります。きわめて健全な優秀な種牡畜を養成せんとするならば、牧野によつてやらなければならぬ。これは世界各国共通の面であると思うのであります。ところが今までは牧野法のないために、開拓関係、林野関係畜産関係等が錯綜いたしまして、権利争いのような状況のままこれを放任しておつた。これが日本畜産を非常にはばんだということも、一面において言えると私は思う。この際畜産局としましては、種牡畜の大量養成を推進して行くことは、重大使命と考えるのであります。それには、天然資源に惠まれた環境を利用して、完全無欠な動物をつくることが先決問題でなければならぬ。そうしますのには、粗餌料の利用と放牧地の利用ということが、重要なる要件となつて来るのであります。その点を十二分に考えておられると思うのでありますが、そういう方面牧野を高度に利用して、今申し上げたようなところの種畜の涵養をやつて、そこで育成をやつたのを、政府が国としての取扱いとして、これを従来の通りに貸與する意思があるかどうか。この点を一点お伺いして、またお伺いしたいと思います。それを一応お尋ね申し上げます。
  49. 山根東明

    山根政府委員 牧野の持つ使命につきましては、私どもにこれによつて、強健なる家畜をここでつくり上げる。一方においては、飼養費を軽減する、あるいは飼養労力の節減をはかるというような使命を考えておるのでありまして、今後におきましては、そういう線に沿つてどもも運営をいたして行きたいと考えておるわけでありますが、貸付種牡畜等につきましても、あるいは従来即製のうらみがあつたこともあつたであろうと、御指摘のように思いますので、今後におきましては、できるだけ放牧して、強健な体躯を持つたものから、これらの貸付種牡畜にこれを充当して行く。まずそういう優良のものから充当して行くというようなことにつきましては、私どもとしましても何ら支障のないことでありますので、御質問がそういう御趣旨であつたように承りましたが、そうでありますれば、そういうことに今後運営して参ることにつきましては、私どもとしても何ら異存のない点でございます。
  50. 原田雪松

    ○原田委員 ただいま牧野の利用ということには、納得の行く程度のお話を聞いたのでありますが、ただ私が言いますことは、貸付種牡畜は特殊の動物を意味しております。それを牧場において、完全無欠な頑健なる体躯のものをこしらえて、時代に即応した乳肉あるいは卵の増産、あるいは農耕に適するものをこしらえて、それを地方に貸與するということでありますが、これには少くも相当の予算の裏づけがなければ、絶対に不可能であると私は思う。今日畜産局が、予算の操作において必要な裏づけが僅少なるゆえに、廃止問題等がたまたま起るのではないか、そういうことを懸念するのです。だからこの点は、各委員の方も再認識をしていただきますが、もちろんこの畜産というものは、農家の経営上に、しかも農村復興の上に重大使命を帶びておることは、申すまでもないことであります。ただ重大使命を帯びておるということだけを言つて予算の裏づけがなければ、何だか犬の遠ぼえと同様な形になつてしまう。これでは実質的に何らの効果をあげ得るものではない、さように考えるのであります。私はこの際。畜産局はこういう理由を――幸い次官のおられますから、積極的に進言して、少くともこの運営ができるような予算の裏づけを、お願いしなければならない。そうでなければ、ないそでは振られないということで、言いたいことも、やりたいこともできなくなつてしまう。そうすると畜産ということは龍頭蛇尾に結局陷つてしまう。まことに淵委員お話ではないけれども、悲しむべき現象に追い込まれるということになるのであります。私はそういう意味から、この事業は、畜産局として将来積極的にやる気持があるかどうか、これはやらなければならない重大な事業であるかどうか、こういうことを一応聞いておきたいのでありまして、それに対してのお答えを承ります。
  51. 山根東明

    山根政府委員 国が購入いたしまして、これを種牡畜として貸與する場合に、一旦放牧に追い込んで、そこで仕上げた上でこれを貸典する、こういうことが必要ではないかというふうに承つたのでありますが、そういうことにいたしますと、お話のように相当な経費も必要であります。しかしながら私どもは、そういうことによつてでも、さらにりつぱな種牡畜を供給するのが非常に必要であることは同感する次第でありまして、この点につきまして、現在のところ、私ども具体的にこういう計画でもつてそれの予算を計画しておるという段階にまで至つておらないのでありますけれども、御質問、御意見の御趣旨に沿つて、その点はさらに研究をいたし、できるだけそういうことの実現いたしますようにいたしたい、かように考える次第であります。
  52. 原田雪松

    ○原田委員 大体そういう要求をいたしまして、一日も早く実現するように、積極的なお考えに改めてもらうと同時に、濃厚飼料の面は、食糧事情とにらみ合せて漸次好転すると考えるのであります。ところが家畜は動物でありますので、濃厚飼料のみに依序して、少くともいい動物をつくるということは、これは不可能な問題であり、木によつて魚を求めるというようなかつこうになりますので、これには少くも重要なるものは粗飼料の問題であります。牧草の問題である。この牧草をつくるところの牧野を非常に軽視しておるというようなことは、まことに重大なる問題がそこに起つて来ると思うのであります。私はこの際粗飼料の確保ということは、日本の健全畜産のために最も重要なものであるということを再認識していただくと同時に、従来ややもすると林野庁なり、あるいは農業改良局なり、畜産局というものが、三つともにいろいろ仕事をする場合、いつも畜産局が下に敷かれて、何らか権勢を食つて下敷きになつているというような感じを、私は常に持つておるのであります。だからこの問題は、日本畜産の向上のためには、局をあげてそういう方面に全力を傾注して、そうしてその目的達成に邁進してもらいたい。こういうことを最後にお願いして質問を打切りたいと思います。私の申し上げたいことはまだいろいろあるのでありますが、大体しさいにわたりては、各委員から質問があつたようでありますし、時間の関係上、この案に対しては賛成をするものであるということを申し上げまして質問を打切ります。
  53. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 牧野法をめぐる諸問題について非常に適切な意見がありましたが、私はこれに関連して、二つの問題について特に農林当局にお願いをいたしておきたい。特別な御答弁はいらぬのでありますが、お願いをしておきたいと思うのであります。  その一つは、牧野管理経営に関するこの法律案は、まつたくけつこうな法律であります。ただしかし、私どもから見ますと非常に生ぬるいものでありまして、こんなぐらいでは問題は解決しない。従来の牧野の経営をますます集約化して行くということが、今後の情勢においては最も必要なことでありますけれども、その集約化をし、生産力を上げ、土地の改良存して行くというその努力がまだ足りないと思うのであります。その努力は、私はやはり予算問題でありまして、予算問題は特に政務次官の御努力をお願いしたいのでありまして、今のこの資料を見ますと、三百万円か四百万円しか金がないようであります。こんなことでは全国の牧野関係者の要望にこたえることができないと私は思う。予算をもう少し拡大するということに、特段の御努力をお願いしたい。そうして全国の牧野関係者の要望にこたえるように。お願いしたいということを、特に希望する次第であります。他のもう一つの問題は、土地改良の問題あるいは農地改革の問題に関連して、平地牧野がだんだん縮小して参りまして、それにかわるべきものは、奥地に入つた森林と牧野との共存共栄の土地利用、そういう問題が起つておるわけであります。国有林等についても、もう少し林業経営に支障のない範囲において、牧野を提供する余地がたくさんあると思います。この問題についても、農林省の部内で解決できる問題でありますから、政務次官はこの問題について、もう一度事務当局の意見をよく聞かれて、そうしてせばめられた牧野を奥地の牧野においてさらに獲得して行く、そうして土地利用の集約化をはかつて行くという見地から、森林の利用をあわせて検討し、拡大して行く、こういう線に沿つて一層の御努力がお願いしたい、この二つのことをお願いしておく次第であります。先ほど申し上げましたように、別に御答弁はいらぬと思いますがどうかその点を再認識していただきたいということを要望しておく次第であります。
  54. 坂本實

    坂本政府委員 ただいま遠藤委員から御意見を承つたのでありますが、御趣旨に沿いまして、十分努力いたす所存でございます。
  55. 井上良二

    ○井上(良)委員 さきからいろいろ質疑に対する政府側の答弁を聞いておりますと、一番基本的な問題がおろそかにされておるように思うのであります。今ここで質問されました遠藤委員がかつて畜産局長時代、私また農林政務次官当時、遠藤委員の企画によります畜産五箇年計画というものを一応立てまして、わが国畜産の増殖及び奨励に飛躍的な力を農林省としては注ごうということで、政府及び関係団体並びに農民の協力を求めまして出発をいたのであります。非常にすべり出しがうまく参りまして、爾来わが国畜産は飛躍的に増殖されて参つた。ところが最近の経過を見ておりますと、非常に方針がぐらついで来ておるように見えるのです。これは日本農業政策の面からも、あるいはわが国の国民栄養の面からも、畜産というものは、わが国のような国土の狭い、多数の人口を持ち、しかも経済的に非常に貧乏な国といたしましては、畜産を絶対的に奨励しなければならぬという確信を持つておる。そういう面から私は先般皆さんの協力を求めて、畜産奨励のために、競馬から上つて来る三分の一の経費をこれに使えという法律改正をしてあるのに、かんじんの当局がぼんやりしておつて、この法律に規定してある予算さえ大蔵省からようもらわない。そういう弱腰では、はなはだ日本畜産奨励するという政府としての方針が疑われる。今お話を承つておりましても、粗飼料の対策考えておつても、はなはだ抽象的で具体的でない。一体政府はほんとうに畜産奨励しようと思つておられるのか。最近のように畜産品の価格が非常に暴落を始めておりまして、これはかえつてあまり余計なことをせぬがいいと考えておるか、どつちかということ、基本的に私どもがかつてきめましたあの五箇年計画、さらに引続く五箇年計画、つまり十箇年計画でありますが、これは今の政府としては、実行するつもりですか、それとももうその必要はないと考えますか、その基本問題からまず政府の所信を伺いたい。
  56. 坂本實

    坂本政府委員 お答えを申し上げます。ただいま畜産に関します五箇年計画についてのお話が出たのでありますが、これは本委員会にもしばしば資料を提供しましたように、きわめて順調に推移をいたしておるのであります。また畜産物の価格が、いろいろときによつて変動いたすのでありまして、ことに最近の経済事情からいたしまして、著しく下落をいたしましたために、農家にも混乱が来ておるのではないかと思うのでありまするが、これらに関しましては、われわれはいわゆる農家経営といたしまして、利潤本位に考えるということよりも、むしろ農業の基本の問題として、有畜農業奨励考えなければならないと考えておるのでありまして、御趣旨の点につきましては、今後われわれといたしましても、十分もつと積極的に奨励をいたすという所存でございます。
  57. 井上良二

    ○井上(良)委員 非常に心強い決意だけは伺つたのですけれども、しからば具体的に伺いますが、五箇年計画を実行して、畜産を飛躍的に奨励して増殖をはかるということが、わが国農業の基本的な進み行く方向であるという、この線は一応われわれも了承いたしますが、しからば具体的にそういうことが実際行われておるかどうかということを掘り下げて考えますと、たとえば飼料対策にいたしましても、御承知通り、飼料配給公団を本日限り廃止することに政府は腹をきめた。ところが廃止したのちにおいて、その裏づけを一体どうするのか。それについては何ら具体的に末端にも指示されていない。このまま放任しておくつもりか。それとも配給公団にかわる何か民間統制、民間配給機構というものを、その後つくつてやるつもりか。こういうことについても何らの具体的な手が打たれていない。しかも飼料の価格は、統制撤廃とともに、あるものは五割も上るというし、あるものは三倍にも上るだろうという場合も出ておるわけです。かような状態でもつて、はたして畜産の増殖がはかられるかどうか。問題は現実にここに起つて来ておる。政府は一体公団廃止後の飼料対策を、どういうふうにしようと考えておるのですか。これについての考え方を伺いたい。廃止後にべらぼうに価格が値上りする場合に、一体どうその値上りを食いとめようとするのか。そうして有畜農家に対し、そういう不安をなからしめて、政府方針に従うように畜産奨励に協力を願うかという問題についての、具体的の政府の手がなければならぬ。だから一つは公団廃止後の飼料対策はどうするか。飼料価格の暴騰に対してはどういう手を打つかということについての、具体的な御説明を願いたい。  次に畜産奨励の上に大きな一つの問題になつておりますのは、価格政策の問題であります。御承知通り、馬にしても牛にしても、その他の家畜にしましても、ほとんど価格が半分以下に下つておる。これはもちろん有効需要の関係からそうなつておると思いますか、一体こういう状態で、畜産奨励ができるかできぬかということを考えなければならぬ。一体政府はこういうふうに下つていいと考えておるのか。下つて惡いと考えておるのか。正当な価格はどう押さえるべきかということです。これが明らかにされませんと、将来の見通しがつきませんから、これに対する対策考えてみなければならぬと思う。畜産品の価格を一体政府はどう押えて行こうとするか、この点についても明確な方針をひとつ示してもらいたい。  それからいま一つ、私は前からもこれはたびたび政府に要請をいたしておりますが、畜産及び畜産品に対する課税の問題であります。これはまつたく一方的な非常識きわまる課税が行われておるのでありますから、かくのごとき課税がされるために、畜産奨励の上に非常な大きな支障を来しておるのであります。畜産及び畜産品に対する課税に対して、どういう手を政府は打つて来ておるかという、この四つについて具体的に御説明を願いたい。
  58. 山根東明

    山根政府委員 最初に私からお答えいたします。公団廃止後の飼料の扱いの問題につきましては、公団小委員会等に私からも説明をいたしたような線で、お話のように期日は迫つて、きようでもつて廃止になるまぎわまで、正式の決定を見なかつた点は非常に遺憾でありまして、関係者にその点から御迷惑をかけた点もあろうことは、私どもとしては非常に恐縮いたしておるわけでありますが、ようやく方針がきまりまして、正式には昨日地方の主任官を招集いたしまして、指示いたしたのであります。内容はしばしば御説明を申し上げました方向とかわりなく決定いたしたのでありまして、具体的に申しますと、大豆かす、米ぬかの一部につきましては、今後引続いて需給調整規則によつて統制をいたして参りたい。それから一般的に急激な変化でありますので、いろいろな予測し得ない事態が起きる場合、たとえば今一つの御質問でありましたように、価格がかりに非常に急激に暴騰するというような事態がありまして、ある地域なりある家畜に対して、容易にえさが入手できないような事態ができたような場合に、農林大臣の権限に基きまして、出荷命令なりをなし得るという権限を、同じ規則でもつて留保してあるのでありまして、そういうことでこの問題を今後扱つて行くことに昨日決定をいたしたような次第であります。     〔野原委員長代理退席、小笠原委員長着席〕  それから畜産物の価格から非常に値下りいたしました点は、このために畜産奨励上非常に支障を来しておるのではないかという事実に対しましては、あまりにも急激に変動がありましたために、いろいろ混乱も生じ、そのためにせつかく高揚いたして参つておりました畜産に対する関心が、ここで挫折したような事態もあるのでありまして、これに対しましては、実は私どもも非常に苦慮いたしたのであります。ただ従来の畜産物価格は、これはどの程度のものが最も妥当であり、適正であるかということになりますと、これはいろいろ見方もあると思うのでありますけれども、かりに米の値段との比においてこれを見ます場合に、従来の家畜畜産物の価格は、ある程度上まわつてつたのでありまして、急激に今日は下落いたしまして、今日においては対米価比においては逆に下まわつているという実情でありますけれども、従来どちらかといえば割高だつたものが、急に割安になつたということで、その幅が非常に強く現われたのであります。そこで、今日の価格は、対米価の比においてもある程度下まわつておりますので、このことは私ども立場としましても、畜産振興上からも、非常にこれは困つた現実であるというふうに考えているのであります。しかし、一時非常に暴溶いたしました価格も、逐次回復する徴候も見えて参つているのでありまして、行く行くある程度、今日の特殊な事態は解決を見るのではないかという見方もしているのであります。今後において、私ども畜産行政一つの大きな問題として、これはただ單に対米価比がどうであるからどうというようなきわめて單純な結論でなしに、もつと根拠を持つた畜産全体の運営ということを一つ頭に置いた、科学的な見通しを、今後の私どもの行政において立てて行きたいということを、考えているのであります。  課税の問題についてお答えいたします。課税の問題については、先ほども御質問がありましたが、これが非常に過重でありますために、畜産農家が非常に困つている実情は、しばしば私どもも見聞して参つたのであります。これに対しましては、先ほど政務次官からもお答えがありましたように、大蔵省にしばしば折衝いたしまして、末端における徴税の方法の改善といいますか、そういう面で、これは大蔵省に強い申し入れを今日もなお続けているわけであります。このほかに、地方税法の改正に伴いまして畜産に対する附加価値税の問題、さらに地方の独立税と申しますか、そういうような問題の扱いにつきましても、これはこの前に畜産の小委員会でも問題になつて、小委員会の案として御作成になるような話もありましたので、私どもとしましては、小委員の方々とも十分連絡をいたしまして、それらの問題について大蔵省なり、そうした税務当局に対する申入れにつきましては、これは具体的な案をつくりまして、申入れをいたしているというのが現状でございます。
  59. 井上良二

    ○井上(良)委員 今あなたの御説明によりますと、最近畜産品の価格、あるいは畜産物の価格が値上りの傾向を示して来たという御説明でございますが、これは御承知通り、飼料関係から畜産品の価格が値上りを示して来ているように、私ども見ておるのです。だからこれからまたこの夏を過ぎますまでは、相当それらのものが上るだろうと見ております。それからまた秋から逆に、今度もまた非常に下るという見通しも立てられます。これが普通の機械生産、工業生産のようなものでございますならば、そういうこともやむを得ないということが言えるかもしれませんが、御存じの通り家畜の価格がたびたび上つたり下つたりするというようなことは、農家の家畜増殖の上に非常に不安を與え、また国民の重要な食生活の上に大きな打撃を與えるわけでありますから、少くとも畜産の価格というものは、大体対米価に平均しておくということが必要ではないかと考える。そういう点から政府は、将来少くとも食糧関係が御存じの通り相当緩和して参りまして、わが国の小麦と外国の小麦の競争が積極的に展開されようとしておる。そうなつて来ますと、農家としましてはどうしても畜産に全力をあげなければ、農家経済が立たぬというところへ追い込まれて参ります。そうなつて来ますと、畜産の価格が少くとも対米価で維持できるという線を出すということが、必要であろうと思うのです。それを裏づけるのに、どうしても飼料というものを政府があらゆる手を講じて供給する、また増産をはかるということが、この際絶対に打たなければならぬ手ではないかと私は考えております。そういうものについて、つまりそういう私の考え方といいますか、畜産品の価格を一定に支持するという基本的方策が必要であろうと、私は考える。これに対して、一体政府はどうお考えになつていますか。成行きにまかすといいますか、少くとも対米価に一定の価格を支持して行くということにしないといけない。それがためには、少くとも飼料もあらゆる手を打つて供給を潤沢にしてやることが必要でなければならぬ。そして税の面でもめんどうを見てあげるということが、やはり考えられなければいけない。この間うち私ども公団関係の観察にまわりまして、伺つて来たのでありますけれども、たとえば愛知県のように、鶏または卵の非常に大きな生産地でございますが、もう自給飼料以外では鶏は飼えないと言われているのです。卵が五円以下に下つて参りましたのでは、とても購入飼料では鶏を飼うわけには行かない。だから、農家の自給飼料によつて、ほんとうの副業といいますか、小づかいもうけといいますか、そういうことでやるより手がないということを、現にここに二、三日前にそう申されておる。そういう実情は、あなた方が実際考えて、どういう手を打つてそういうものをもつと確保して行くかということですね。これは基本問題ですから、農林省農業政策の今後の方向と、その中心になつて参りますものが、少くともこれからは農産物価格をどう押えて行くかということが一つでございましようし、また一方農家経済が、今申したように、国際経済の一環のあらしの中に巻き込まれて、外国小麦と日本小麦の競争、それを切り抜けようとして、畜産に頭をくつつけようとするのに、畜産の経済が持たぬということでは、農家の立ち行く先がないのです。どうしても畜産が相当農家の経済を安定する大きな部分になるという手を、真劍に考えてやらなければならぬ時代が来ておるのです。これについてのはつきりした見通しと、確信のある方針を伺いたいと思います。
  60. 山根東明

    山根政府委員 畜産物の価格政策につきましては、先ほども申しましたように、今後私どもの意を用いなければならない一つの大きな問題であると考えているわけであります。畜産物をできるだけ安く供給して、国民の消費を高め、それによつてかたがた畜産振興をはかつて行くことが、明らかな線でありますが、そのためにはできるだけ生産費を安くしてやらなければならない。そういう意味から、お話のように、飼料の供給についても、今後いろいろな点で安い飼料を供給してやり、一方には家畜が原則として配給飼料に依存することでなしに、自給飼料に依存して行く、これは家畜の種類なり、畜産の経営形態によりまして、そういうことが必ずしも可能でない場合も、もちろんあると思うのでありますが、とにかく自給面をさらに強化することによつて生産費を低減して行くということにつきましては――飼料について配給統制という私どもの仕事は一応なくなりましたけれども、飼料行政が今後といえども畜産局の大きな行政の一つになるというふうな考えをしております。一つの基本の考え方はそういうところにあるわけであります。
  61. 井上良二

    ○井上(良)委員 次に先ほどどなたか伺つたかわかりませんが、この牧野法改正の第二の、国土保全牧野保全し、改良事業を行う者に対して奨励措置を規定して、資金融通と必要な資材を供給するということがございますが、これの経費としてここへ組んである三百八十一万六千円でありますが……
  62. 山根東明

    山根政府委員 来年度の牧野改良に必要な経費として計上いたしております予算は、お配りしました参考資料の最後にあります三百八十一万六千六百円でございます。
  63. 井上良二

    ○井上(良)委員 これは補助金ですが、別にこの資金融通するわけですか。
  64. 山根東明

    山根政府委員 そうであります。三百八十一万六千六百円は主として大部分が地方にございます指導職員の助成経費であります。若干本省の職員俸給その他があるわけでありまして、これはこの法案の二十條に言う資金融通その他の奨励措置とはそういう意味で直接には関係のない経費でございまして、二十條に言う必要な資金融通ということは、これは予算としては計上はいたしておりません。今後において改良事業の計画が立ちました上において、金融機関等に対する私どもの折衝の部面に、この二十條はなつて参るわけであります。
  65. 井上良二

    ○井上(良)委員 そうすると、この資金の予定します計画というものは、全然ありませんか。  それから牧野改良を予定する面積ですね。たとえば国土保全上どうしてもこれは改良しなければならぬという面積が、ちやんとわかつておらなければならぬと思いますが、そういうものはわかつておりませんか。
  66. 山根東明

    山根政府委員 しばしばお断りしましたように、牧野に関する行政がブランクになつておりまして、そういう意味牧野現状が、実ば遺憾ながら完全に私どもの方で把握されていない現状であります。そういう意味で、具体的にどこの牧野に対してどういう改良事業が、ただちに必要であるかということの具体的な詳細な案は、今日実は持つていないのでありますが、ただ私どもがいろいろな会合で、改良事業に対する所要資金の需要と言いますか、希望等を調査いたしたところによりますと、さしあたり一億前後の資金がほしいという希望が出ておるのでありまして、これに対しまして、これをどこからどういうふうにして融通して行くかということが、今後に残されておる問題になつておるのであります。
  67. 井上良二

    ○井上(良)委員 まだそういう点が全然具体的になつていないものを、正式の法律案として提案して来るのはちよつとおかしいと私は思うのです。具体的にやはりそういうことが調査され、資金計画にしても、あるいは資材供給の重要物資にしても、こういうものはこれだけこういうところにやらなくちやならぬという計画が成つて、また実際必要が現に起つており、そうすることが牧野を確保して行く上に必要だというのでなければならぬと、私は思うのです。資金について全然與える相手もなければ――相手もなければというのはちよつと言い過ぎかもしれませんが、與える対象になる計画が明確でない。そうしてそれに渡します資金計画もはつきりしていない。それを法案に明確に規定しておくということは、おかしいのじやないかと私は思うのですが、そういう点について、もつと具体的に調べてもらつて、たとえばこういうことをやるためにこれだけの金がかかる、それはたとえば見返り資金なら見返り資金、中金なら中金、預金部資金なら預金部資金、またはそれがいけなければ政府から補助するとかいうことが、明らかにされなければいかぬのじやなかかと思いますが、どうですか。
  68. 山根東明

    山根政府委員 私の御説明が少し何と申しますか、強く響き過ぎまして、まつたく私どもが手ぶらであるかというふうな御印象を受けられたかと思うのでありますが、必ずしもそういう意味ではないのでありまして、ただ具体的に改良計画というものが、事こまかにまだできるだけの段階に至つていないということを申し上げたわけでありまして、それぞれの県から、ある程度の具体的な計画に基いて資金の要望等も出ておるのであります。こういう事情において、先に法律を出すことはおかしいではないかという御意見のようでありますが、実は私どもは、牧野法は現在現行法がなお生きておるのであります。従いまして牧野重要性につきましては、国が法制としてこれを認めて来ておる現状でありながら、実は遺憾ながら金融機関もなかなか相手にしてくれない。国の予算も数年来落されて来たというような実情であるのでありまして、実はこういう規定を政府の義務として、資金融通措置を講ずる義務を、こういう法律において課することによつて、そういう面の打開への一つの手段になるのではないかというような考え方、一方におきましては、まつたく手ぶらではないのでありまして、すでにこういう考え方をとつて参りまして、ある程度の準備措置はとつておりますので、法律が通過いたしましたあかつきには、私どもといたしましては、ただちに必要な措置をとつて行きたい、どちらが光でなければいかぬとか、この法律は、そういう措置や具体的な見通しがついた上の方がいいではないかというお考えに対しましては、私どもはそういう考えをいたしておるのであります。
  69. 井上良二

    ○井上(良)委員 最後に私一言希望的に申し上げておきたい点は、さきに渕君もちよつと申しておりましたが、すなわちわが国の食糧行政全般の立場から、大体粗飼料圃と申しますか、飼料作物面積、あるいは牧野等の面積を、一体どの程度に押えるべきかということは、基本的に政府としては検討を加えるべきだと思うのです。その点が明らかになりまして、初めて現在の主要食糧を耕作しております面積の一部を利用するなり、あるいはまた国有林や民有林の一部を活用するなり、そういう新しい対策がそこに生れて参りますから、そういう基本対策というものが一応立てられて、これはさきに申しました畜産奨励の五箇年計画なり、十箇年計画に結びついて来る問題でございますので、そういう基本的な対策を至急にひとつお立て願つてわが国畜産奨励の基本対策を確立していただきたいということを、私は特にこの際お願いしておきたいと思います。
  70. 小笠原八十美

    小笠原委員長 他に御質疑はありませんか――別に質疑もないようでありますから、これにて本案に対する質疑は終局いたしました。  本日はこの程度にとどめます。次は公報をもつてお知らせすることとし、本日これにて散会いたします。     午後四時九分散会