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1950-03-06 第7回国会 衆議院 農林委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年三月六日(月曜日)     午後一時三十五分開議  出席委員    委員長 小笠原八十美君   理事 藥師神岩太郎君 理事 山村新治郎君    理事 小林 運美君       青木  正君    足立 篤郎君       安部 俊吾君    遠藤 三郎君       河野 謙三君    原田 雪松君       平野 三郎君    渕  通義君       村上 清治君    守島 伍郎君       山本 久雄君    足鹿  覺君       坂口 主税君    高田 富之君       寺本  齋君    中垣 國男君       小平  忠君  出席政府委員         農 林 技 官         (農業改良局         長)      磯邊 秀俊君  委員外出席者         農 林 技 官         (農業改良局普         及部長)    三宅 三郎君         專  門  員 岩隈  博君         專  門  員 藤井  信君     ————————————— 三月六日  農業改良助長法の一部を改正する法律案内閣  提出第四五号)(参議院送付) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  農業改良助長法の一部を改正する法律案内閣  提出第四五号)(参議院送付)     —————————————
  2. 小笠原八十美

    ○小笠原委員長 これより会議を開きます。  議事に入ります前に御報告いたします。ただいま本委員会予備審査を行つております農業改良助長法の一部を改正する法律案が本日参議院を通過し、正式に本委員会に付託と相なりました。以上報告いたします。それではただいまより農業改良助長法の一部を改正する法律案を議題とし、その審議を進めます。淵君。
  3. 渕通義

    渕委員 それでは少し内部に触れまして、簡單質問をいたしたいと思います。現在農業助長法が施行されまして一年余になるのでありますが、その間この助長法の大きなねらいであつたものが、おそらく司令部の指令と申しますか、例のPL制度が相当大きな問題として取上げられたものであると信ずるのでありますが、現在この制度がはたしてうまく運営され、相互の連絡がとれているかいないかという点について、一点お伺いしたいのであります。
  4. 磯邊秀俊

    磯邊政府委員 今PL制度、すなわち研究企画官制度につきましての御質問でありますが、御承知のように農林省関係試験研究機関は、従来農事試験場園芸試験場、畜産試験場開拓研究所、それに農業総合研究所というふうにそれぞれ分立いたしておりまして、その間の連絡が十分でありません。一方日本農業を改良するに必要な試験研究は、そういういろいろな専門分野連絡協力によつて推進できることが非常に多いのであります。また他面におきましては、都道府県試験場国立試験場との間に、いろいろ試験研究に重複もありますので、いろいろさような問題を考慮いたしまして、農林省研究企画官をそれぞれ專門別に置きまして、その問の調整をいたしまして、新しい行政要求に沿うような試験研究企画し、遂行して行く、こういう趣旨企画官が設けられたのであります。  その後、今お話のように一年半経過いたしましたが、この間、すでに他の機会にも申し上げたかと思うのでありますが、今申し上げた趣旨に従いまして、今のように分離しております試験研究機関整備統合を進めて参つたのであります。その結果は、この四月一日から、やがて農林省設置法でまた御審議をお願いすると思うのでありますが、農業技術研究所と、各地域におきまする地域農業試験場、この二つ国立で、それに都道府県農業試験場という三本建で行くということになつております。この間のそういう企画をいたしますとともに、また新しい日本農業経済上の変化にかんがみまして、試験研究長期計画というものを立案いたしまして、これも今検討いたしておりますが、かようなことでいろいろな試験研究専門の間の連絡調整努力して参つたのであります。こういう事柄は簡單にそう連絡も行きませんので、まだ十分とは参りませんが、こういう制度ができます前に比べれば、各試験場間の連絡は一段と進んだように思つております。なお今後この方面に一段と努力を拂いたい、かように思います。
  5. 渕通義

    渕委員 なお十分とは言えないかということでございますが、この前いただきました研究資料を見ますと、たとえば秋落ち研究にしましても、かなり複雑した、重なり合つたような研究が行われている事実を、私は発見しているのでございます。そういつたことはすみやかに訂正してもらいたいということを要望いたす次第でございます。同時にまた重大な国家研究でございますが、この重大な国家研究をつかさどるのにおきまして、そのテーマをどこにとるかということが、一番大きな問題と存じます。実は先ほど宅普及部長質問いたしましたときに、日本の今後の研究焦点労働生産性にあるということをお聞きいたしたのございますが、しからばこの農業研究テーマをとる場合、今までのように、各学者間と申しますか、研究担当の間において、研究テーマをとり合うというよりも、一歩突き進んで、研究審議会というような厖大な機関を設けまして、その中にわれわれ民間人も入れ、国会人も入れ、そうして適正な方法を考えて、研究テーマをとるべきではないか、そうすることが最も能率的である。でないとおそらくあなた方自身が体験した通り研究者というものはどうもセクシヨナリズムに流れまして、思い切つた研究に入れない。と同時に非常に片寄つた研究をいたしますので、そういつた国家的見地から研究総合審議会というようなものをつくるのが、最も必要であると考えますが、それに対する改良局長の御見解を承りたいと思います。
  6. 磯邊秀俊

    磯邊政府委員 今秋落ち試験研究が、非常にあちらこちらにばらばらになつておるというお話でありましたが、先ほど申しましたように、一定方針を立てまして、それに従つてどこでこの研究をやつた方がいいかということを勘案しまして、計画を立てておるつもりであります。秋落ちというよう非常にいろいろな観点から研究しなければならぬ問題は、ただ一箇所でやつて成果收めませんで、若干の場所に分離しておるということも、やむを得ないのじやないかということであります。でありますから、この点につきましては先ほども申しましたように、今後もつと連絡をよくしまして、能率が上るようにいたしたい、かように考えております。それから一般の世間のいろいろな御意見を、十分試験研究に取入れるようにというお話でありますが、その点もわれわれまつたく御同感でありまして、試験研究機関が、もしも自分の独断とか、あるいは個人的な好みで試験研究をやるようなことになりますると、これは少い財政をかけてやりまするのに、非常にもつたいない話でありますし、また申訳のない話でありますから、そういつたことに相なりませんように、いろいろな方面の御意見を聞き、ことに日本農業の動いておる実態をよくにらみ合せまして、目下研究に的確に取入れますようにいろいろ考えております。今御指摘の、審議会というようなものを設けてはどうかというお話でありますが、これにつきまして、農業改良審議会という案を一応立案いたしましたが、御承知のように、審議会を整理するという内閣方針でありまして、今あるものを整理するという段階で、新しく設けることが非常に困難になりまして、早急に設けることができなくなりましたが、それにかわるべき方法で、審議会ができますまではそういうことをやつて行きたい。試験研究機関が独善になりませんように、十分考えておるつもりであります。
  7. 渕通義

    渕委員 現在の農業改良局をこしらえました責任は、まことに重大であると考えます。というのは、日本の置かれておる現段階は、農業というものがまことに困難な状況にあるのであります。従いまして、日本農業をどうするかという問題には、おのおの学者の間にも意見がいろいろ対立しております。たとえば、先般参議院におきまして日本の一流の学者と言われるところの近藤、東畑、大内、大槻、こういう四人の学者意見を聽取いたしました場合におきましても、相当かけ離れた意見が出ておるようでございますが、農業改良局長としましては、やはり農業全体の改良発達というような責任のある地位におかれまして、これらの四人の意見をどういうふうにあんばいされ、日本の現在置かれておる農業に、最も的確であるという点をどの点に見出されますか。その点をまず承りたいと思います。
  8. 磯邊秀俊

    磯邊政府委員 今の問題はむずかしい問題でありますが、今お話のように終戦後の日本経済というものが、非常な勢いでかわりつつあります。また日本農業の置かれておる環境というか、ことに世界農業との関連ということも、だんだんむずかしい問題になつております。従つてこれをどう持つて行くかということは、今御指摘通り学者によつて意見が違うということも十分承知いたしております。しかしながら、こういういろいろの意見の違いはありますが、大局的に大きな筋を考えますと、日本農業生産力日本農業実態に即して伸ばして行く、こういうことに盡きるのではないか。ただこういう大きな線を申し上げますだけでは、学者意見としてはともかくといたしまして、研究業績あるいは研究の結果を、農家普及いたしまする行政を担当しております部局といたしましては、そういう抽象的なことでは許されないのであります。改良局といたしましては、こういう大方針を実現いたしますためには、申すまでもなく、農業というようなものはその土地土地の事情に立脚しなければならないのでありまして、ある先生が申されるように、酪農がよいといつても、どこもかしこもよいというわけに行かない。また酪農はだめだと言つても、ある土地によつてはこれによつて救われる土地も少くないのであります。従つて研究しておりますことも、まず私ども日本の各地方におきますところの、農業立地條件というものを十分検討いたしまして、農業地域区分というものを確立しよう。そうして今までの試験研究なり、普及行政が、ややともすると、行政区画を單位として画一的にやられておつたのを、その立地條件を勘案し、あるいは農業地域区分に立脚して、的確にやつて行きたい。かようなことで農業地域区分経済関係で今進めております。あるいは農業生産力を伸ばすと申しましても、どの方向に伸ばすかという問題もあると思いますが、これも稻作生産力を伸ばすということも大切でありますが、それと同時に日本六百万町歩の半分を占めまする畑作生産力を伸ばすということも、むろん大切であろう、また耕地の拡張ということも大切であります。開拓の問題も大切でありまして、それから農業をやる基盤であります土地條件を改める、土地改良という問題も大切であります。いろいろ問題はわかれるのでありますが、大きな線は、日本のその土地々々の立地條件に対応して、農業生産力を伸ばす。そういう線でいろいろの点を調整しておりまして、今までの試験研究は、ややともすると畑作に片寄り過ぎておるのではないか。稻作試験研究と育成ができるように、また他の畜産であるとか、あるいはそういうものを伸ばして行きたい。要するに日本の新しい條件に即応しまして、調整のとれた、つり合いのとれた試験研究をやりたいと、かように考えていろいろな計画を立つておるのであります。
  9. 渕通義

    渕委員 今磯邊さんのお話によりますと、農業生産力を上げるというような一定の問題につきましては、かなり学者意見も歩み寄つているということでございますが、ちよつと私にはぴんと来ない点があるのです。たとえば日本研究焦点労働生産性にあるというような結論テーマとして進められるそうでございますけれども、しからば、日本の現在置かれておる農業過程におきまして、経営方法といたしまして、協同経営として行くのが是かという問題は、相当深刻な問題であると存じます。従いまして近藤康男さんの意見を徴するまでもなく、共同経営化への移行というものは、ある程度相当高く評価さるべき状態に置かれておる。日本農業を推進する意味におきまして、まず農業改良局長とせられまして、何とかこれを推進するとか、あるいはこの方はあまりよくないということくらいは、御発表できるのじやないか。長い間あなたは労働生産性の問題につきましては、斯界のナンバーワンでございますから、その点を少し私に教えてもらいたいのであります。
  10. 磯邊秀俊

    磯邊政府委員 だんだんむずかしい問題になつて参りましたが、先ほど私の言葉が足りなかつたと思います。農業生産力を高めるということにつきましては、いろいろ学者の方も一致しておるというように見受ける、こういうことを申し上げたのであります。しからば農業生産力を高める方法はどうかということになりますと、御承知通り学者によつていろいろ意見の違いがあります。違いますが、先ほど申し上げましたように、研究行政をやりまして、科学的に推進して行くという具体的の問題を考えますと、おのずから結論は明らかである。すなわち、日本農業、この限られた面積で多くの生産をあげて行かなければならぬのでありますから、どうしても少い面積から、多くの生産を上げて行くという増産技術が非常に大切であると思う、だだ増産をやりますだけで、農家労働能率が下りますれば、結局また増産にも非常な支障を来しますし、農家生活の水準の向上にも支障を来すのであります。私どもの願つておることは、そういうように少い面積から多くの生産をあげると同時に、農家労働能率も高まるように、これをどうして両立させるか、これが緊急のむずかしい課題であると思います。  それからその次の協同経営お話でありますが、これはこまかく申せばいろいろ議論になるし、御質疑のあることも当然と思いますが、私はかように考えております。日本零細農業を改良いたしますために、新しい科学技術もいろいろ入れなければならぬし、それにはどうしても何らかの意味協同が必要である。これは協同しなくては十分新しい技術農業改良の目的も達しない。ただ問題はどういう形の協同をやるかということが問題でなかろうかと想う、そういたしますと、その協同には協同作業から水利の協同、あるいは病虫害の駆除をやる協同、いろいろな面の協同がある。だんだん高度化しますと、今御指摘通り協同経営というところまで参ると思います。これを農家協同意識が高まつて来ませんで、ただ形の上で協同経営という非常に進んだものをやりましても、これは必ずしも成果收めないということは、第一次世界大戦後のいろいろな協同経営の歴史が示しておる通りであります、従つて社会の動き、農家協同意識の進展の状態、その他協同経営を推進するに必要なるいろいろな経営技術生産技術の問題も研究いたしまして、実態に即して農家要求に沿う程度でだんだん協同を進めて行きたい。むりに非常に進んだものをやりましても、これは必ずしも農家経営に対する農業改良にはならないものと思います。農業協同を進める方法は、これは一歩一歩現実に即して進めて行きたい。こういう意味で各都道府県協同組合を指導しておるわけであります。
  11. 渕通義

    渕委員 この重大な問題に際して、農林大臣が御出席にならないのはまことに遺憾であります。今の農政が右か左かというキー・ポイントである。あなたはそういう点について、森農相とは御連絡を持つておるかどうか、それが一点。もう一つは、これは大きな問題ですが、現在日本農業に課せられた一番大きな問題と思いますが、日本農業を救う良薬—ペニシリンはないでしようけれども、どんな良薬をもつてどうすれば、日本の現在の農業を最も有利な方向へ持つて行けるか。言葉をかえて申しますれば、現在の農政中心が何であるか。この農政中心を動かすことによつて農業の現在の段階、たとえば農業協同組合が瀕死の状態に追い込まれておる。こういう問題も解決するであろうし、農民ふところぐあいもよくなる。このポイントについて何かあると思いますが、改良局長は明敏な頭で、日本農業を救うポイントはどこにあると考えるか。まずその点を承りたいと思う。
  12. 磯邊秀俊

    磯邊政府委員 第一の点、農林大臣とは十分連絡があるかというお話でありますが、私が申し上げました程度ならば、大臣も十分御了承願つておると思います。決して日本農業経営協同経営にしようということでやつておるのではありません。  それから第二の点でありますが、これはどうも改良局長としてお答えする範囲を越えておるようでありまして、学者として、また研究者としてならいくらでも申し上げますが、この席は適当な場所ではないと思います。ただ私としては、先ほど申し上げましたように、私の考えておることを申し上げますれば、農業生産力を高めるということが、日本農業改良の根本問題だ。まずこの農業生産力を高めますためには、農家において農業生産力を高めなければならぬ。それを妨げておるいろいろな経済的その他の妨げを除く。またこれを積極的に助長するような條件を與えることが、農業経営中心ではないか。かように私は考えております。
  13. 渕通義

    渕委員 つつ込んでもつとやりたいのですが、時間もないので次に移ります。簡單に一点お尋ねいたしますが、重要な農業改良局の職員をいろいろ検討してみますと、どうも兼任がかなりいる。しかも重要ないすにおる方々が兼任では、一体それでもつて健全な農業改良局としての責任が果せるかどうか。責任を果せると言えばそれまでですが、これはつつ込んで良心的な御見解を承りたいのであります。それは予算の上においても御苦心がおありでありましようけれども、あまりに兼任が多い。その点をひとつお伺いいたします。
  14. 磯邊秀俊

    磯邊政府委員 兼任の問題でございますが、私自身現在兼任になつておりまして、私の進退の問題は、これは農林大臣が処置すると思いますが、もし問題がありましたならば、大臣に御質問願いたいと思います。一般的な問題といたしましては、これは二つの理由がある。その点を御了承願いたいと思います。第一は、御承知のように農業改良局が設置されましたのに——こういう席でそういう言葉使つてはどうかと思いますが、御承知のようないきさつもありましたので、新しく定員農林省としてはふやさない、各局から供出してやるということで、定員が非常にきゆうくつでございました。その関係で、大蔵当局なりほかの関係のところに急にお願いしなければならぬという点も出ております。第三の点は、これは積極的な点でありまして、試験研究、ことに先ほどお話企画研究官というものは、試験場と密接な連絡をとる必要がございまして、私どもはある程度兼任した方が、試験研究企画を合理的にやるのに適当である。また優秀な研究者というものは、日本にそうたくさんおりませんので、そういう人たちをむしろ有効に活用するゆえんである。ただ研究機関が全部兼任になりましては、これは御指摘通り、仕事にさしつかえますので、その点は十分勘案いたしまして、あまり兼任がふえないように、必要な限度にとどめる努力はいたしております。
  15. 渕通義

    渕委員 ある特定な人が兼任した方がよろしいという御見解について伺います。人間の能力は限度があるのですから、一つのものを二つにも三つにも使うと、やはり焦点がぼけます。それで私はこういうことを聞いておる。名前を言うわけには行きませんが、あるところの上長がひとつも出て来ない、どうして出て来ないかというと、おれの名前が出ておることによつて大分違うのだというようなことを聞きましたが、ここに問題がある。兼任の思想一的、心理的影響がここにある。私はこれをつかもうとする。そういつた封建制が今なお研究所内にあるということは、決して近代国家においては喜ぶべきことではありません。研究員の態度はかくあるべきかということを、私は反省しなければならぬと思います。そういつた点におきまして、兼任の悪いという点を指摘したい。その点について改良局長はどうお思いになつておりますか。
  16. 磯邊秀俊

    磯邊政府委員 今具体的におあげになつた例の内容をよく存じませんので、そのことにつきましては何とも申し上げかねます。一般的な問題としましては、今私が申し上げましたように、ある程度兼任はやむを得ないし、あつた方がよい。ただ御指摘のような弊害を起す。いわんや日本農業民主化を進めておりますときに、じやまになるようなことがありましたならば、これは断固として排除しなければならぬ。そういう例がありましたならば、どんどん言つていただきたいと思います。
  17. 渕通義

    渕委員 これは重大な問題ですが、普及部長にお願いしたい。改良局長でもよろしいのですが、せつかくあなた方が研究されました実績があがりましても、これをどうして日本農民に指導し、普及させて行くか。これが日本農業の進まない大きながんであります。しかるに先ほどお話があつたように、一般農民は、一生を通じて大体二十五回くらい米をつくつております。従つて一ぺん失敗すると元も子もなくなる、こういう点に農民封建性がある。今日農民には封建性はないと言われるが、実際封建性がある。自分生活を守ろうというので封建的になる。従つて保守党が強いわけです。そういつた封建性の上におきまして、そういう方向にあなた方は研究方向を推し進めてはいかぬのであります。そういう日本国民の古いからを打ち破つて、たたいて開く方法はどうされますか、その点を承りたいと思います。そうしなければ農業は発達いたしません。
  18. 磯邊秀俊

    磯邊政府委員 非常にむずかしい問題でございます。試験研究の結果を農家に御紹介して、これをやつてもらう場合に、御指摘通り農家積極性進歩性ということに欠けておる点があるということも、よく承知しております。私たち普及事業で考えておりますことは、百の講習講話よりも一ぺん実地にやつてみる、これが一番大切であろうということで、農家の庭先で、これを進んでやつてみようという人にやつてもらつて展示する。同じ農家の仲間がやつてうまく行くと、隣りもまたやるだろう、こういうことでやつております。それと同時に講習講話もやることはもちろんであります。ただそういたしましても、今お話のように、農家にそういう積極性が十分でない場合に、一方におきましてわれわれの方でやつておりますことは、若い人で農事に対して積極的に研究をする者の研究会を育成して行く。しかしこれでもどうにも行かぬいろいろの問題がまだありますので、私はまず農業教育、農村の教育を振興させて行かなければならぬと思つております。こういう点は、改良局としても非常に関心を持つておりますが、これは文部省の問題でありますから、こういう委員会で十分御検討になつて農業教育が新しい情勢に合うように御指導願えればありがたいと思います。  それからまた、新しい技術を入れます場合に、農家はやりたくても、資金の点とかいろいろの点で支障があるので、それにはほかの農林行政で、そういう新しいものが入り得るような條件をつくつて行かなければならぬことは、先ほど申し上げた通りであります。
  19. 渕通義

    渕委員 それだけ重要な農業でございますが、最近の各地の学校制度をながめてみますると、私らは農学校ですが、昔の農学校というものがなくなりまして総合教育制度に切りかえられてから、いわゆるほんとうに手足となつて働くところの、下部の農業技術者が不足しておるのを見受けるのでありますが、農業改良局としましては、どういうふうにこれを補充して行かれるおつもりでありますか。これは教育行政にタッチしますが、農業改良行政の大きな問題だと思いますから、お伺いしておきます。
  20. 磯邊秀俊

    磯邊政府委員 いよいよ大きな問題になつて参つたのであります。今お話通り、私は根本は農業教育の問題だと思うのであります。農業改良事業を推進して行きますと、試験研究の面でも、普及員に優秀な者を置く意味におきましても、これを受けまする農家の将来の問題を考えてみましても、農業教育をもつと振興させなければならぬ、かように考えております。これは今お話通り教育行政の問題でありますが、農林省としても関心を持つており、何らかこれを推進したい。かように考えて、とりあえず改良局といたしましては、都道府県農事試験場に従来からあります技術員養成所を、この機会にもつと刷新して農業講習所といたしまして、新しい普及員の養成、すでに配置してありまする普及員の再教育、こういうことに努力いたしますと同時に、従来ありました農民道場——最近は経営伝習農場と呼んでおります。これを昭和二十四年度予算から改良局で引受けまして、新しい改良事業の線に沿うように切りかえまして、農村にあつて改良事業を受けて立つ中核体に育成するよう措置をいたしております。
  21. 渕通義

    渕委員 これはきわめて重要な問題に属しますが、現在あなた方の考えておる農業というものは、土地状態、いわゆる平面的な土地を考えた農業であるが、その上の空間的な農業に対する研究を進められておりますか。
  22. 磯邊秀俊

    磯邊政府委員 空間的ということはどういう意味ですか。
  23. 渕通義

    渕委員 空中の問題です。たとえば土地以外の空中における農業、空中を農業にどういうふうに利用して行くかという物理的な問題です。
  24. 磯邊秀俊

    磯邊政府委員 これはいよいよむずかしい問題です。室中をうまく農業に利用するということでは、すでに空中窒素の固定が尖端を走つております。あるいはそうでなくとも、緑肥作物に利用する——まだ具体的にお話する段階になりませんが、現在田畑として利用している以外に、経済学的に申せば耕作圏外に利用し得る土地が多いので、これを利用すれば肥料資源の開発その他に非常に役立つであろう、いわば高い空中ではありませんが、立体農業と申しますか、そういうことは今いろいろやつております。
  25. 渕通義

    渕委員 農業改良局長としても非常に苦心されているだろうと思いますが、研究ということは、私もタッチしおつたが、なかなかむずかしい問題であります。従いまして、予算を一定に切られますとなかなかできないので、たとえば予算の百分の五は研究のために自由に利用できるなうな使い方を、お考えになる意思ありやいなや、お伺いいたします。
  26. 磯邊秀俊

    磯邊政府委員 われわれ御同情をいただきましてたいへんありがたく存じます。その点は、私どもとして非常に苦慮しておるところであります。試験研究というものは、一定計画を立ててやろうと思つても、三年なら三年できちつと結果が出るものでもありませんし、年度の進行途中において新しい研究も出て参りますし、また先ほど来御質問のありましたように、民間においていろいろの試験研究に着手され、新しい構想でやられて、もう少し資金がほしいというような問題も出て参りますので、こういうことを機に応じやれるようにいろいろ考えておりますが、現在の予算の組み方では、試験項目別に、年度初めに予算を組んでありますので、どうにも動かせなくなつております。これを今申し上げたように、審議会その他一般の議を経まして、多少融通できるようにしますと、試験研究はもつと彈力性を持つと思うのでありますが、予算の組み方の根本の問題に触れますし、また微力でそこまで参らないので、せつかく御援助願いたいと思います。
  27. 渕通義

    渕委員 最後に一点だけお伺いしまして質問を打切ります。  現在日本研究機関が発表しております研究者のレポートをながめてみまするに、どうも研究員名前が発表されていない。外国の書籍を見ますると、研究者名前が大きくクローズアップされまして、研究所名前は小さく書かれている。ところが日本ではその反対で、農林大臣なら農林大臣が何々技術官をして調査せしむ、その報告なりと大きく書いて、研究官は小さく書いてある。ここらに日本技術の進歩しなかつた大きな原因があると思うので、今後印刷物は細大漏らさず、十分御注意を拂つて発表してもらいたい。これだけ開陳しまして質問を打切ります。
  28. 小笠原八十美

    ○小笠原委員長 他に質疑はありませんか。——別にないようであります。これにて質疑は終局いたしました。  引続き本案に対する討論に入ります。この際討論の通告がありませんから、討論を省略し、ただちに本案に対する採決に入ります。本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立〕
  29. 小笠原八十美

    ○小笠原委員長 起立総員。よつて本案は全会一致をもつて原案通り可決いたしました。  なおこの際報告の件についてお諮りいたします。これは先例によりまして委員長に御一任を願いたいと思いますが御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  30. 小笠原八十美

    ○小笠原委員長 一任に御異議なしと認めます。よつてさよう決しました。  本日はこの程度にとどめまして、次会は公報をもつてお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後二時十一分散会