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1950-03-02 第7回国会 衆議院 農林委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年三月二日(木曜日)     午前十一時二分開議  出席委員    委員長 小笠原八十美君    理事 野原 正勝君 理事 松浦 東介君   理事 八木 一郎君 理事 藥師神岩太郎君    理事 山村新治郎君 理事 井上 良二君    理事 小林 運美君 理事 山口 武秀君    理事 吉川 久衛君       青木  正君    足立 篤郎君       安部 俊吾君    宇野秀次郎君       遠藤 三郎君    河野 謙三君       寺本  齋君    中垣 國男君       中村  清君    原田 雪松君       渕  通義君    村上 清治君       守島 伍郎君    足鹿  覺君       大森 玉木君    坂口 主税君       高田 富之君    横田甚太郎君       小平  忠君  出席国務大臣         農 林 大 臣 森 幸太郎君  委員外出席者         專  門  員 岩隈  博君         專  門  員 藤井  信君     ————————————— 三月一日  農産種苗法の一部を改正する法律案内閣提出  第二一号)(参議院送付)  米穀検査制度改正に関する決議案横田甚太郎  君外四名提出決議第一九号)  老人の、主食配給量増加に関する決議案中山  マサ君外四十一名提出決議第二〇号) 一月十八日  児島湾干拓事業費国庫補助増額請願大村清  一君紹介)(第二一四号) 三月一日  荒川及び駒込川の毒水排除に関する請願(山崎  岩男君紹介)(第一一〇三号)  農地改革打切反対に関する請願井上良二君紹  介)(第一一〇五号)  消費生活協同組合主食配給取扱に関する請願  (八百板正紹介)(第一一〇七号)  蚕業技術員の身分安定に関する請願長野長廣  君紹介)(第一一一四号)  同(内海安吉紹介)(第一二三二号)  繭価安定施策樹立等に関する請願寺本齋君  外二名紹介)(第一一五号)  同(八木一郎紹介)(第一一一六号)  同(玉置實紹介)(第一一一七号)  同(庄司一郎君外一名紹介)(第一一一八号)  同(中村寅太紹介)(第一一一九号)  同(河野謙三紹介)(第一一二〇号)  同(松浦東介君外二名紹介)(第一一二一号)  同(生田和平紹介)(第一一二二号)  同(稻田直道紹介)(第一一二三号)  同外一件(原健三郎紹介)(第一一二四号)  同(松木弘君外二名紹介)(第一一五四号)  同(原田雪松君外二名紹介)(第一二〇八号)  主食配給等に関する請願川上貫一君外一名  紹介)(第一一四六号)  膽澤地方国有林野開放に関する請願小澤佐  重喜君外一名紹介)(第一一六三号)  国有牧野開放に関する請願小笠原八十美君  外一名紹介)(第二六四号)  不忘山林道開設工事費増額請願庄司一郎君  外六名紹介)(第一一七二号)  中の湖、津田内干拓工事促進に関する請願(  河原伊三郎紹介)(第一一八七号)  めん羊購入資金並びに国産羊毛集荷処理資金の  融資に関する請願原田雪松紹介)(第一一  九三号)  三種川左岸普通水利組合幹線水路開設に関する  請願笹山茂太郎紹介)(第一一九九号)  耕地整理地区換地処分事務代理施行並びに同  国庫補助増額請願岡延右エ門君外一名紹  介)(第一二二四号)  農業薬剤貯備費国家補償に関する請願坂田道  太君外二名紹介)(第二一二八号)  農業手形償還期日延長並びに農業融資に関す  る請願原田雪松君外二名紹介)(第一二二九  号) の審査を本委員会付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  小委員補欠選任に関する件  農産種苗法の一部を改正する法律案内閣提出  第二一号)(参議院送付)  農林行政に関する件     —————————————
  2. 小笠原八十美

    小笠原委員長 これより会議を開きます。  議事に入る前に議案が付託になりましたから御報告いたします。昨一日横田甚太郎君外四名提出による、米穀検査制度改正に関する決議案、同じく一日中山マサ君外四十一名提出による、老人主食配給量増加に関する決議案が本委員会付託と相なりました。またた、だいま本委員会予備審査を行つております農産種苗法の一部を改正する法律案が昨日参議院を通過し、本委員会に正式に付託に相なりました。  次に小委員補欠選任を行います。去る二月十五日、委員高田富之君が委員を辞任せられ、その補欠として、同日池田峯雄君が議長において委員に指名され、また二十四日池田峯雄君が委員を辞任し、その補欠として高田富之君が議長において委員に指名されまじた。  なお委員を辞任した高田富之君は林業対策小委員でありますので、その補欠選任を行わねばなりませんが、これは先例によりまして、委員長において指名するに御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小笠原八十美

    小笠原委員長 御異議なしと認めます。それでは高田富之君を林業対策小委員応指名いたします。  次に去る二月二十八日大森玉木君が委員を辞任せられ、同日議長において稻葉修君が委員に指名いたされました。また昨日委員稻葉修君が辞任し、大森玉木君が委員に指名されました。  委員を辞任されました大森玉木君は林業対策小委員及び畜産に関する小委員でありましたので、その補欠選任を行わねばなりませんが、これは先例によりまして委員長において指名するに御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 小笠原八十美

    小笠原委員長 御異議なしと認めます。それでは大森玉木君を林業対策小委員及び畜産に関する小委員に指名いたします。  それでは前会に引続き農林行政に関する件を議題として質疑を継続いたします。なおこの際農林大臣より発言を求められております。これを許します。森農林大臣
  5. 森幸太郎

    森国務大臣 この機会に御了承を得たい問題があるのであります。昨日宇野委員の御質問に対して、雑穀統制撤廃お答えをいたしたのでありますが、きよう新聞二、三に誤解した記事が出おるのであります。先般中央調整委員会代表者が参りまして、雑穀撤廃を四月一日からやるということを断言したについてその真意をただされましたが、私はきのうお答えをいたしたようなことを申し上げておつたのであります。現在雑穀生産割当をいたしております。しかしながらこの雑穀統制をどう考えておるかという宇野委員の御質問でありましたので、私はできるだけ雑穀ようなものは食糧事情がよくなればはずしたいという気持は、終始かわらないのであります。但し今日の食糧事情は、一応六月までは大体輸入食糧等事情がはつきりいたしておるのでありますが、さらに七月以後において日本食糧輸入情勢のかわる場合におきましては、私の理想とする雑穀統制撤廃ということを実現いたしたい。もちろんそういう場合においては調整委員会の意見を聞き、各府県知事に指示するまでに正当な手続はもちろんするのでありますが、きよう新聞を見ますと、何だか私が調整委員会に声明したことと違うよう記事の取扱いがありますので、非常に誤解を生じまして、調整委員の連中がまた問題を起すかと存じますので一応訂正いたしたいので、皆さんの御了承を得たいと思うのであります。何分十三種類にわたる雑穀でありまして、そば、あわ、ひえ、きび、もろこし、らつかせいというような雑多なものを包含して雑穀として取扱つておるのでありますが、今日の食糧事情から見ましてできるだけこういうものをはずしたいということは私の理想であります。しかし今日はこういう雑穀相当量供出を願いまして、そして食糧事情がとにかくおちついておるわけでありますが、さらに食糧事情がよくなつて、七月からアメリカ日本に対する食糧方針がはつきりいたした場合において、事情が許すならば私の考えておりますらつかせいであるとか、あるいはそば、きび、ひえとかいうような、そう重要な位置を持つておらないものは、これをはずしたいという希望を持つておることをお答えいたしたのでありまして、決して中央審議会お答えいたしたこととかわつておらないのであります。それでありますからどうぞひとつこの点を御了承願いたいと存ずるのであります。
  6. 小林運美

    小林(運)委員 私は森農林大臣農業政策一般につきまして所見を質したいと存じます。まず第一に、最近農村におきましては、農村恐慌が来るということを盛んに言われておりますし、またわれわれの見るところでは、すでにさよう状態に入つておるというふうに考えられるので、その点大臣農業恐慌に対するはつきりした所見を伺いたいのであります。
  7. 森幸太郎

    森国務大臣 この問題につきましては、再三お答えいたしたと存ずるのであります。農村状況を取上げてみましたときに、非常に経済上今までとはかわつて参りました。というのは、農村は今まで相当金まわりがよかつたのであります。しかしこの金まわりがよかつたということも、農家全般がよかつたのではなくして、農家のある一部分において金まわりがよかつたのであります。そして農村に金が相当程度ありまして、何だかふところがふくれたよう気持になりまして、現金支出も盛んに行われておつたのは事実であります。ところが金まわりが悪くなつて参りまして、非常にふところがさびしくなつて来たというのが、今日の状況であります。恐慌という言葉を用いていいか悪いか、これは皆さんのお考え次第でありますが、今日はインフレーシヨンからデフレーシヨンにかわる場合におきましては、そこに一つの転換期と申しますか。今までの生活様式ではいけない。そうどんどん現金が入つて来ないということによつて生活を切詰めて行かなければならない。こういうことを考えなければならぬと思うのであります。今農村はそういう状態にありますので、決して楽観はいたしておりません。楽観はいたしておりませんが、この経済界の動きは、ひとり農業者だけではありません。中小工業者ももちろん、大企業家も、資本家も同じ気持に置かれているわけであります。決して農村だけがそういう状態であると私は思いませんが、私は農村におきまして、今まで夢を見ておつたよう状態から、はつきりと農業経営の実態を認識いたしまして、こんなふわふわしておつた気持ちではいけない。隣がやみ売りして金をもうけておるが、自分はやみでもうけておらぬのに、同じようにおどつてつたということに気がつかなければならぬと思うのであります。今日では、農村においてできるだけ現金支出をせないということが、私は一番肝要なことと考えます。農村におきましても、あちらこちらの状況を見ましても、この点について相当目ざめて来たよう考えるのであります。私は農村がこのままほうつておいても行けるというように、決して楽観しておるわけではありません。しかし今までのような不健全な生活ではいけない。がつちりした農業経営というものの姿をつかまえて、そうして、これに合うよう農業生活をして行かなければならない。こういうことを私は農家みずからが自覚して行くべきである。またさように指導せなければならぬ。かよう考えておるわけでありまして、決して農村がこのまま捨てて置いてもいいんだという楽観的な気持は持つておりません。従いまして、農産物価格の問題におきましても、現状を維持し、さらに再生産にさしつかえないよう程度確保するということも考えて行かなければなりませんし、また農家の全所得の上から申しましても、決して二十五年度が二十四年度よりは下つておるとは考えておらないのであります。ただこの場合におきましては、むだを省き、そうして堅実な生活を営むという方面に指導して行くことが必要である。かよう考えておるわけであります。
  8. 小林運美

    小林(運)委員 大臣農業恐慌に対する見解としては、一応さようでよろしいと考えられますが、われわれとしてはまたそういうふうに実際受取つていない。大臣は、農村現金が入れば何でも買うとおつしやいますが、これはうかうか買つておるのではなくて、今まで農村は非常に疲弊しておつた。着るものはぼろぼろのものを着ておつた。また住む家も、畳も五年も十年もかえない。そういうよう状態にあつたものが、多少現金が入れば、再生産に必要なものは、これは当然買うべきである。こういうふうに考えるのです。そういう点についてこれは見解の相違かもしれませんが、大臣としてもつと農村を実際にごらんになることが、私は必要じやないかと考えます。これは議論になりますので差控えますが、しからば今後農産物の再生産に必要な処置を講じたいというよう大臣お話でありますが、米価を見ましても、その他の農産物の現在の状態を見ましても、決して再生産確保するよう政策がとられていないという事実はたくさんあります。最近の農業恐慌というものは、もう現実に来ている。御存じように、米のやみ価格がすでに相当下つて、売渡し価格はもちろん、買入価格をも割つているという事実が方々に起つております。やみの問題をここに取上げて云々するのではありませんが、これは一つ農村恐慌のはつきりした現われと私は考えるのであります。大臣がただ農村恐慌という言葉に対しての答弁としては、その程度でいいかもしれませんが、現実は決してそうでないということを、私は強く申し上げたいのであります。  そこで現実の問題といたしまして二、三触れてみたいと思うのでありますが、米の問題にいたしましても、その他の農産物にいたしましても、農家が再生産をするに必要な価格をどうしても保持して行きたいという考えはみな同じでありますが、最近農林大臣は、各種の農産物統制を解除しております。これはものによつてはけつこうでありますが、もうほとんど無計画にやつておられるよう考える。アメリカにおきましては、すでに長い問いろいろの農業政策の試練を絡まして、現在でもCCCの政府機関がありまして、農産物が安くなれば買い上げて、高くなれば売り出すという方法を講じているのであります。ところが主食以外のほとんどのものはどんどん統制を解除されまして、現在日本農業政策というものは、時代に逆行しているように私は考えるのであります。実例も二、三ありますが、今後農林大臣は、農産物価格の安定ということに対して、どういう基本的な対策を持つているか。それを一応承りたいのであります。
  9. 森幸太郎

    森国務大臣 この問題もかつてお答えいたしたのであります。統制撤廃が無計画であると言うが、決して無計画ではありません。主要食糧が不自由しているために、いろいろの面において統制をいたしておつたわけでありますが、漸次食糧事情が緩和いたして参りますと、統制をできるだけはずして行くということは、これは自然の姿に返すのであつて、これは無計画に何でも統制をはずしたらいいというような、乱暴なことは考えておりません。アメリカのごとく自由な立場におきましては、最低価格を保障して、ある一定価格より下つた場合には買い上げ、上つた場合には売る、いわゆる米穀管理法ようなことをアメリカでやつておりますが、今日日本では、配給なり生産統制いたしております以上は、価格というものは一定されているのであります。この価格が完全であるかないかということについては、たびたび議論がありますが、とにかく一定価格というものを政府責任をもつて維持しているわけでありますから、この際に価格が下落したから買い上げる、上つたから政府の手で売り出すという価格擬作をする必要は、今日起らないのであります。今後食糧というものをほんとうの自由の立場に置きまして、日本生産状況が豊作もあり凶作もあり、また海外食糧宙由に入つて来る、いわゆる日本へダンピングされるというような自由の姿になつた場合において、初めて農産物価格を維持して、農業保護政策考えることは当然であります。しかし今日におきましては、政府責任を持つて価格を維持し、その生産を計画的に進めている以上は、今お話ような、アメリカのやつているよう仕事を今日本でやる時期ではないと考えるのであります。将来におきまして、こういうものがほんとうの自由になつた場合においては、もちろん農業保護政策一環として、そういう処置をとることは当然であると私は考えております。
  10. 小林運美

    小林(運)委員 しからば現存価格安定を非常に必要とするものがございますが、これは大臣もよく御存じ通り、私は蚕糸業の問題をここに一つ取上げまして、大臣見解を承りたいと思うのであります。繭や生糸価格を安定しなければ、蚕糸業はやつて行けない。これは国内的に見ましても、海外事情から考えましても、すでに定評のあることでありますし、大臣も繭糸の価格を安定したいということは、方々においてしばしば言明されております。ところが依然としてこの問題は等閑に付されておると申しましようか、現実の問題として、繭糸価の安定がはかられておらぬ。先ほどの議論から考えまして、繭糸価の安定は現実において非常に必要だ。これは大臣がおやりになろうと思えばできると思う。これをどうしておやりにならぬか、ひとつ見解を承りたいのであります。
  11. 森幸太郎

    森国務大臣 製糸のことに通暁されておる小林委員のお説とは、私受取れないのでありますが、従来統制をやつてつたことは御承知通りであります。統制をやつておりましたから、今の米や農産物価格と同じように、ある一定価格が維持された。政府責任において、繭の価格を維持し、掛値を決定して来たわけでありますが、これを昨年から自由の姿に置いたわけであります。自由の姿に置けば、原料需給関係、あるいは製糸機械能力関係によりまして、原料上つたり下つたり、生産費上つたり下つたりするのは当然であります。これが自由の経済の姿であります。しかしながらここで政府として考えなければならぬことは、これは国内の需要だけの問題ではないのであります。米の問題から考えてみますと、こういう場合において、日本内地で米が需給のつく場合応おいて、たまたま方策であつたから米が下つた凶作であつたから米が上つたという簡単な場合においては、問題は少いのでありますが、世界と直結した場合に、外国から食糧がダンピングされる。そうすると、日本農業が非常な強圧を受けるということになつて、米の価格を維持するということが必要になつて来るのであります。生糸はこれと逆でありまして、日本内地において消費する場合においては、養蚕が盛んになつて来る。繭が余り、製糸能力が不足しておつた場合には、繭は下落して来る。繭が少くして製糸機能は依然としてありますから、繭が高くなる。上つたり、下つたりするのは、国内の自由の姿であります。しかし生糸は米と逆で、生糸外国に売らなければならぬ事情があるのであります。食糧外国からダンピングを受けるのでありますが、蚕糸類外国へ売らなければならぬ。そこに政府としては、自由な姿のみにほうつておけない。ここに何とかして貿易を維持する上においての糸価の安定が必要である。こういうことであります。これを今、農林大臣考えるならば、何でもできるとおつしやいますが、これはアンチ・トラスト関係、またいろいろの事情で、そういう国家の力によつて統制することは許されないことは、御承知と思います。そこで政府には悩みがあるのであります。またアメリカにおいても、日本生糸暴騰、暴落いたしでアメリカ機業界を脅かして顧みない。そういうことがあつては、日本輸出を目的とする生糸が非常に迷惑するから、ここに何とか処置をいたしたい、かように考慮を拂つておるわけであります。これは日本独自の立場考えることはできませんので、目下いろいろとその実現方忙考慮をいたしておるのでありまするが、小林委員のおつしやるように、農林大臣考えればすぐできる。そう簡単なものではないのでありまして、どうかして製糸暴騰、暴落のないようにいたしたい。従つて日本蚕糸業もおちつくというふうな方法考えて、過去において、輸出の大宗と言われました蚕糸業を復興いたしたい。かように目下その方途について研究を進めでおるわけであります。
  12. 小林運美

    小林(運)委員 大臣は、私が先ほど申し上げたことが、少し言葉が足りなかつたので、誤解があるようでございますが、これはお話すればわかると思いますので、あえて抗弁はいたしませんが、繭糸価の安定の問題について、政府がおやりになる意思があるかということについて、私は伺いたいのであります。ただこの問題については、以前から何べんも国会としても意思表示をいたしておる。一昨年の本会議においても、繭糸価の安定の決議案がこの国会を通過しております。その他いろいろの場合に、そういうよう意思表示ができておるのですが、依然として行われないというのは、政府ほんとうにおやりになる気がないのじやないかというふうに、われわれは疑うのであります。国民もそう考えるのであります。ただアンチトラストというふうなことで、これは問題が解決するものではない。政府ほんとうにおやりになる気があるならば、いろいろ方法はあると思う。すでに政府もいろいろの案をお考えになつておる。公社の方式であるとか、あるいは特別会計方法とか、あるいは株式会社の方法によるとか、かつて行われました生産組合のごとき等も、やればできないことはないと思います。そういうよう方法幾つもあるのでありますが、もう一押しの力が政府には足りない。これをどうしておやりにならないかということを、私はお伺いしたいのであります。すでにこういうようなことを何べんも繰返し、政府でも研究されておる。今私が申し上げましたように、三つも四つもあるこの方式のうち、一体どういうことが実現可能の方式であるかということについて、政府のお考えを私は聞きたいのであります。
  13. 森幸太郎

    森国務大臣 お説のよう方法幾つもあります。どの方法を選んだらよいかということは研究を要しますが、政府としては、決してほうつておくわけではありません。一生懸命やつております。しかしこれは製糸家養蚕家もただ政府に依存するという昔のよう気持であつてはいかんと私は思います。製糸機業者自体はみずからの業態を顧みて、原料確保にどういう処置をとつておるか、また原料確保にどういう合理的の処置をとつておるか、各製糸家自身に反省すべき余地があると思います。また養蚕家も、高ければふやし、安ければ飼わないというような、そういう不安定な養蚕業であつてはいけない。養蚕業に不適当な土地もありますが、大体取入れて行く以上は、農業経営一環として副業は養蚕によつてやるという方針によつてつて行く。しかもその繭価生産費をできるだけ切り詰めて行くという、合理的な飼育法考えて行く。養蚕家にもさらに考え直さなければならぬ問題があろうと思いますが、そういう養蚕家製糸家原料生産業者加工業者とが、おのおの業態をよく認識して、これを改善いたして行くということも、一つの大きい仕事であると私は思います。政府としてはこれらと相まつて糸価の安定をはかるべく、今いろいろと研究を進めておるわけでありまして、決して放任しておるわけでもありません。先ほど申しましたように、これは日本政府一方だけで、できる仕事ではないのでありまして、その間の事情小林委員もよく御了承になることと存じます。ただ製糸家が繭が高くなつたから、採算を度外視してべらぼうな値で買う。こういう乱暴なことをやるごと目体が、糸価の不安定を来す原因となつておることも考えなければならぬと思いますから、業者政府相協力いたしまして、蚕糸業を衰退に導かないよう、またアメリカなり諸外国の信用を失わないように、糸価を維持して行きたいという方法を、今せつかく研究をいたしておるわけであります。
  14. 小林運美

    小林(運)委員 大臣お話の中に、繭の処理の問題について、いろいろお話がありましたが、これは私はもつとさかのぼつて、こういうふうになつたのは、一体どうしてこうなつたのかということからお話申し上げたいのですが、これはあとに譲るのであります。ただいま私が御質問いたしました繭糸価の安定は、どうしても政府はおやりになる意思がないと疑うほど、もう延び延びになつておる。これに対して大臣はどうしてもやりたいというお話しでありますから、おやりになるなら、一体どういう方式が現在お考えになつておるベストであるかということを、お聞きしたいと思います。すなわち公社の方式とか、あるいは特別会計とか、あるいは株式会社とか、その他の方法があるでしようが、そのうちのどれが現在の情勢からいつてベストであるか、政府のお考えを承りたいのであります。     〔委員長退席、松浦委員長代理着席〕
  15. 森幸太郎

    森国務大臣 まだどの方式が一番いいと考えているということを、申し上げる段階に入つておりません。
  16. 小林運美

    小林(運)委員 すでに政府関係方面と御折衝になつておるようでありますが、関係方面と御折衝になるには、政府のベストの案でおやりになつておると思うのです。そのベストの案であるかどうかは知りませんが、関係方面と御折衝になつておる案はどういう方法でありますか。お答えを願いたいと思います。
  17. 森幸太郎

    森国務大臣 関係方面と折衝しているということまで御承知でありますから、どういうふうな折衝を続けておるかということも御承知と存じますが、政府といたしましては、それが実現するかどうか、まだはつきりしないのでありまするから、こういう方法によつてやるのだということは、まだ言明を避けます。
  18. 小林運美

    小林(運)委員 これ以上追究しても始まりませんので、その点だけはごの程度でやめまして、先ほどお話にありました、昨年起つた産繭の処理の問題について、大臣は、これは製糸家が悪い、あるいは養蚕家も悪いというふうなお考えでありましたが、私はとんでもない話だと思います。これは政府のやり方が悪いから、ああいうことになつたのでありまして、すでに御存じように、現在の製糸設備というのは、産繭とは非常に離れて過剰の設備を持つております。こういうことについてはざと前から、終戦以来われわれはしばしば言つて参りました。産繭と製糸の設備とバランスがとれていない。終戦後、復興五箇年計画を立てまして製糸設備の方はどんどん進むけれども、養蚕の方の増産ということはそう進んで行かない。それを政府がどんどん製糸の設備を製糸業法によつて許可したことに原因がある。昨年の繭価のああいうような異常の暴騰、あるいは当初における低繭価というようなことは、製糸設備に原因しておる。決して製糸家がむやみに繭を買いあおつたのではなくて、やはり繭がなければ仕事を続けられないという不安の上から、しかたなしに繭を買つたのであります。これは決して製糸家の罪ではない、こういう設備を許した政府責任があると私は考える。この点大臣のお考えとは、現実はまつたく反対でありますから、よくお考えおきを願いたいと思うのであります。  次に、現在生糸の値段が非常に下つて参りまして、フロア・プライスを割つおります一このこと繁れくは、製糸業者の味方とか、あるいは養養家の味方というようなことでなくて、国の経済の上からいつてゆゆしき問題であると思う。当然とり得べきドル資金というものを、こつちの都合で安く売つているということになるのでありますが、この対策は一体どうなさいますか。
  19. 森幸太郎

    森国務大臣 何だか政府責任においてさような蚕糸恐慌を来したようお話でありますが、これは小林委員のよく御承知通り蚕糸業五箇年計画を立てたことは、お話通りであります。これが機械的に設備できまする製糸企業は、計画通りに進捗いたしておりますが、桑園の造成あるいは産繭の増産ということは、食糧事情等の関係があつて、五箇年計画通りに遡行し得なかつたのであります。従つて破行的な五箇年計画が成り上つたわけでありまして、ここに原料と加工設備とのつり合いのとれない形になつたわけであります。もとより五箇年計画でありまするから、原料の点においても、また加工設備の点においてもつり合うような計画を立てるのは当然であります。しかし一応そういう破行的な現象になつた場合に、製糸業者といたしましては、自分の機械設備があるからといつて、フルにこれを動かすということが経済上いいか悪いかということは、おのずから企業体として考えられるべきであろうと私は思う。何か政府がこれを指導したから、その責任政府にあるのだということを、政府にお持ち込みになりましても、政府は困るのであります。それでありますから、製糸葉者においても、自分の設備に対する原料をどこに確保するかという、原料確保については、みずから十分なる努力をしなければなりません。企業体である以上それだけの努力をすることは当然である。かように私は考えておるのであります。  なお生糸価格においても、高く売れるものを好んで安く売るというようなばかげたことは全然やつておりません。これは日本需給関係等もありますし、また絹織物等の市場出まわり等の関係もありまして、人気的に生糸は下つております。しかしこれをアメリカへ高く売れるものを、ことさらに安くして売るというようなことは、毛頭考えるべきでないし、また考えてもおりません。できるだけ高く売りたいということは、政府として努力するのは当然であり、そういうことは論ずるまでもないのでありますが、アメリカの企業者としても、もちろん商人でありまするから、できるだけ原料を安く買いたいということは、彼らの企業の立場としてもつともであります。ただここに需給関係によつて、あまり生糸価格が変動しないということが、アメリカの企業者の最も望むところでありまするから、将来生糸価格の変動をできるだけ防ぐという方法をとるべきである、かように私は考えております。
  20. 小林運美

    小林(運)委員 ただいま大臣お答えの中に、生糸の値段が下つたの政府責任でないというようお話でおりますが、今回の値下りの一番大きな原因は、御存じように、先般公団の手持ちの織物四千五百万ヤールの放出を決定されまして、しかもこれを一部の業者にやつて、現在の市価の四割ないし五割ぐらいの安い値段で放出をいたしております。これが市価を圧迫しておるのであります。これについては大臣は逆に非常に御心配になつておると思う。この市価を下げたというのは、原因はそこにある。これに対して、農林大臣としてどういう処置をおとりになりましたか。またそういう処置をとらなかつたかどうか。その点を特にお伺いしたいのであります。
  21. 森幸太郎

    森国務大臣 放出物資に対しては、関係方面の指示によつたのでありまするが、これはひとり絹織物だけでありません。綿糸、織物等の放出によつて非常に市価に影響を及ぼしておりまするので、政府といたしましては、この放出の方法について、できるだけ市場価格への刺激を少くいたしたい、かよう考えまして、今研究を進めておるわけであります。
  22. 小林運美

    小林(運)委員 その具体的な方法は、どういう方法でございましようか。
  23. 森幸太郎

    森国務大臣 具体的には、まだ結論を得ておりませんから、申しかねます。
  24. 小林運美

    小林(運)委員 次に、先ほど大臣お話になじましたところでは、製糸業者の設備がよけいなんだから、原料が足りなかつたら休めばいいではないかということですが、これはもつともでありますので、製糸業者は、正式な申し合せとは言いませんが、これはとにかく休もうというので、現在相当の工場が休んでおります。しかし休んでおりますと、工場はだんだんと冷たくなつて参りまして、最近には製糸業者のりぶれて行く姿がたくさん見られております。これに対してまた二十五年度の原料の問題もありますし、二十四年度の金融の跡始末もまだできておりません。かような面におきまして、最近関係業者からも、あるいは養蚕家からも、政府に対してこの金融の措置を講じてもらいたいということを、しばしばお願いしておりますが、これに対して金融の措置としてどんなことをお考えになり、また実際おやりになつておられますか、その点をお伺いしたいのであります。
  25. 森幸太郎

    森国務大臣 この問題につきましては、相当の資金を融通する計画を進めております。多分近く実現すると存じます。
  26. 小林運美

    小林(運)委員 その具体的の方法、額等がわかりましたら、大体でよろしゆうございますから、御発表願いたいと思います。
  27. 森幸太郎

    森国務大臣 まだ金額は決定いたしておりません。向うは四億か五億万円の融通を要求いたしておるようでありますが、大体要求額の程度までは融通し得られると考えております。
  28. 小林運美

    小林(運)委員 次に産繭の処理の問題に、一番重要な役割を占めております繭検定の問題であります。この繭検定は第三者の検定でございますが、現在の方法といたしましては、なかなか製糸家からも、養蚕家の方からも非常に異論があるようでありますが、特に場所によりましては、製糸業者の言うなりになる。またある方面では非常に養蚕家の肩を持ち過ぎるという非難が、しばしばあるのでありますが、これらにつきまして、大臣は何らか現在の繭検定に対して、取締りと申しましようか、特別な機関をつくつて、この弊害を取締るというようなお考えがありますかどうか、それを伺いたいのであります。
  29. 森幸太郎

    森国務大臣 検定所の結果の問題についてはいろいろ批判があります。養養家の立場からも不平があり、製糸家立場からも不平があり、なかなか公正なものを見出すことに非常に苦しんで、各検定所においては研究を進めておるのであります。検定所の繰糸状況は御承知通りであります。一定の標準によつてやるのでありますから、その標準以上の合理的な繰糸を製糸業者がやつた場合においては、有利に出て来る場合もあります。従つてこれは一つの標準によつてその繭質を鑑定するのでありますから、これが実際必ずその通りの成績が現われて来るということには、はなはだ困難な事情にあるのであります。しかしながらできるだけその方法研究いたしまして、正鵠に近い数字を出すことに努力をいたしておるのであります。もちろん国家的施設でありますから、これを指導することはもちろんでありますが、そのやり方について監督するというような意味でなしに、ほんとうの繭の価値を見出すということに、あらゆる角度から研究を進めて、正鵠なものを與えたいと考えておるわけであります。
  30. 小林運美

    小林(運)委員 この繭検定の問題につきましては、技術的にいろいろ議論もありますので、ここにおいて大臣とこまかい問題を討論しても始まりませんので、この程度にとどめたいと思います。そこで私は最後に、養糸業ではないのでありますが、政府は本年度の端境期におきまして食糧の蓄積を相当量見込んでおられるようであります。これは今まで戰争前とか、あるいは戰争後とわけてもいいのでありますが、政府は一体端境期の持越しの食糧の量を、平均大体どのくらいが適当とお考えになつておりますか、大体でけつこうでありますからお答え願いたい。
  31. 森幸太郎

    森国務大臣 端境期の保有食糧がどの程度であればよいかという問題でありますが、これは過去の生産状況の悪い場合におきましては、早掘、早出米という督励をいたしまして、やつと十月の端境期を切り越えたわけであります。難いに農家の努力と輸入食糧状況によりまして、非常に緩和して来ておるのであります。しかし今お手元に出ておる端境期の保有量というものは、まだこれは十月までの先のことでありまして、今年の慶の状況も見なければなりませんし、また七月までの予定している輸入食糧状況も見なければならぬのでありますが、大体百万トンぐらいあればよいのでありますが、実際は今年たしか三百万トン以上に保有がなるようになつておると思います。しかしこれも今申しましたような輸入食糧というものは、予定されておる数量であり、また麦の割当もどういうふうにこれが実際に供出されるかということも、考えなければならぬのでありますが、一応この数字をもつて本年の端境期に向うという方針を持つておるわけであります。しかしこれは決して一朝事あつた場合とかいうような、そういうようなことは考えておらないのでありまして、日本ような非常に天災の多い国といたしましては、食糧はできるだけ保有し得られる限り保有しておくということが、食糧を預かつておる立場といたしましては、当然とるべき姿と、かよう考えておるわけであります。
  32. 小林運美

    小林(運)委員 詳細な御準備がなければ何でございますが、大体日本のこの世帯を切七まわして行くのに、端境期に持越しの量というものは大体わかつておるはずである。ところがわれわれの考えるところでは、本年政府の予定しております二百五十万トンというような量は、私はいらないと言うんじやないけれども、現在の日本食糧事情からいつて、少し多過ぎるのじやないか。少しどころじやない、ずいぶん多いように私は考える。先ほど大臣は、何か非常の場合というようなことを言われましたが、その非常の場合というのは、どういうことをお考えになつておるか。災害というようなことは、そう百万トンも二百万トンも一ぺんに必要とするような災害も、われわれは考えられないと思う。こういうふうに非常によけいに持越しを予定されておるのは、何か理由があると思うのですか、その辺をひとつ詳しく御説明を願いたい。
  33. 森幸太郎

    森国務大臣 これは先ほども申しました通り予定数量であります。現実握れるか、握れぬか、まだ予定しておるわけでありますから、これがはたして予定通りできるかわからぬ問題でありますが、大体このくらいな程度は保有する必要があるということは、日本における災害ということは、御承知通り、昨年のごときは、米においても千何百万石も不足というような予想をされたような場合もありますから、これは食糧責任を持つ立場といたしましては、できるだけの確保をいたす必要がある、かよう考えておるわけであります。別段事あつた場合というようなことを考えておるわけではありません。
  34. 小林運美

    小林(運)委員 これは大分押し問答になりますが、先ほど来申し上げましたように、普通であれば、こんなに私は予定する必要はないと考えるのですが、非常に多い。その理由をはつきり大臣お答えにならないのですが、全然ないのですが、あつても言えないのですか、どちらですか。
  35. 森幸太郎

    森国務大臣 幾たびお答えしても同じです。先ほどお答えした通りです。
  36. 大森玉木

    大森委員 関連して今の保有米の問題であります。小林君から再三尋ねましたところ、何だか大分お気にさわつたようでありますが、私はこれは大きな問題としてお尋ねいたしたいと思うのです。端境期の用意で、今まで早場米の奨励金を出しておつた。それは端境期の食いつなぎの用意の米であるというように、われわれは考えるのでありますが、そういうことでありますならば、これはただいまの間にはつきり政府は公表されるべきではないか。もしもそういうことでないのならば、ないということをお聞かせ願いたい。私はこれは大きな問題だと思うのであります。われわれの地方は單作地帶であり、さらにまた早場米地帯であるので、そういう関係からいたしまして、この二千万石近い保有米、いわゆる繰越米を持つたということに対して、私どもは疑念を持つております。この点ひとつ明確に、私は森農政に共鳴しているのですから、おしかりなく御答弁をお願いいたします。
  37. 森幸太郎

    森国務大臣 今端境期に相当の数量が現われておりますから、早場米の奨励に対する不安があるという御質問でありますが、早場米はたびたび申し上げました通り、過去においては相当早場米としての奨励をいたしたのでありますが、漸次その意味がもうろう化されたと申しますか、あまり大きくは言えないのでありますが、一部の特殊地帯に対して早場米を出してもらうという気持にかわつて来たことは、御承知通りであります。單作地帶という問題が常にあげられるのでありますが、環境に恵まれない單作地帯に対しては、何とかして特別なとりはからいをいたしたいと存じまして、寒冷地帯におきましては、折衷苗代等の施設で、二億四千五百万円ばかりの補助金を出しているのであります。こういう事業補助に対しまして何億という金を出すことは、予算の面からなかなか困難でありますが、これが早場米奨励で行きますと約六十億円ばかりの予算を立てられるというよう気持もありますので、食糧事情がどうよくなろうとも、早場米の奨励金は持続いたして行く方針を定めておりますので、三十五年度におきましても、その数量がどういうようになりますか、予算面においてはたしか六十億ほどの予算をもつて、この供出奨励をいたしたいと考えておるわけであります。
  38. 横田甚太郎

    ○横田委員 今森農相が怒られましたが、日本農村にも町にも、農林大臣にかんかんに怒つてもらわなければならないことが相当あるのです。そこで大臣のお越しを待つてつたのです。もちろん農林委員会はときたま開かれております。そこでは肥料の問題が論議されたり、あるいは種苗法が論議されたり、農業の改良のことが論議されておりますが、これらは幾ら論議しましても興味がない。なぜかというと、今日本農業自体の置かれておる立場が不遇でありまして、成り立たないのです。だから農政の中心を承つて、それから具体的の問題をやりたいと思つて、それで大臣のお越しを待つてつたのであります。そこで第一は、日本の現在の農民なるものは、営業をやつておるのかどうか、事実を見ますと、農民は政府がやつておる食糧政策のために、とつたものだけをとられておるような結果になつているのではなかろうかと思うのです。なぜかと申しますと、もし農民が営業を営んでおるとすれば、もう少し農民の得になるようなことをやつてもらいたいのです。農民は一生懸命働きます。そうして麦をつくります。米をつくります。その結果は、いろいろ統計にも出ておりますように、一九四五年は五千三百七十万石であつたものが、四六年には五千五百万石になつておる。また四七年には五千八百万石になつておる。四十八年には六千二百万石になつておるというように、明らかにこれはふえているのであります。これは單に米だけではないのであります。豚にいたしましてもふえている。豚の数の統計を見ますと、一九四五年は八万頭、一九四七年には十万頭、四八年には二十五万五千頭おつたのであります。それが四九年には三十万頭になりまして、これも明らかにふえておるのであります。けれどもこれは何がためにふやしたのやら、何のために米をつくつたのやらわからないことになつておるのであります。一例をあげますと、一九四五年に豚八万頭おりましたときに、その豚が一匹二十五貫といたしまして、全部の豚の目方は二百万貫でございます。これは金額にして一億八千万円であります。これが一九四九年三十万頭の豚になりますと、その目方は七百五十万貫。ところがその金額におきましては、わずかに二億二千五百万円なのであります。目方で三倍ふえたのに、金額ではわずかに四千五百万円しかふえておらないのです。農村の労働力を費し、それにたくさんの飼料を食われて、こういうよう状態では、一体農民は何のために増産し、何のために政府食糧政策に貢献しなければならないのか、わからないことになるのであります。だから政府は農民がつくつた食糧を取上げるのが目的であるのか。食糧をつくつたことに対して、全人口の半ばを占めておる農民を、いかにして満足させようとしておるのか。この点をはつきり御答弁願いたいのであります。
  39. 森幸太郎

    森国務大臣 決して政府はそんな考え農業を見ておりません。御意見はどつちでもつきますが、政府は決してそういうよう考え農業をながめておりません。
  40. 横田甚太郎

    ○横田委員 大臣がどういうような形でながめられようとそれはかつてですが、農民がつくつたものは金に換算されるのであります。商品の生産をやつておるのであります。ところが現在農民は、金が減つて行くのであれば、何がために米をつくり、何がために豚を飼い、何がために牛を飼つているのかわからない。だからこのごろの学者のうちにおきましては、日本には食糧政策があつて農業政策がない、農政がない、これは非常に間違いだということが言われておるのであります。もし大臣が私の言うような見方でなしに、別の見方でながめられておるならば、日本の農民は、こういうふうに損になつて行く現状で満足しておるというなら、その満足さしておるところのからくりを、教えていただきたいのであります。
  41. 森幸太郎

    森国務大臣 そんなからくりはありません。農業所得が年一年増加いたしておることは、お手元に出しておる資料からも御了承願えることと思います。
  42. 横田甚太郎

    ○横田委員 ことしの供米は代金にしたところで別にふえておらないのございます。たとえて申しますと、やみ米にしてもそうなんでありますが、農村においては依然としてやみ米があるのであります。やみ米がないというばかなことはないのであります。現にこういうことがあります。これは千葉県においてもやられておりますし、大阪府の三島郡においてもやられているのですが、そこでは米が百パーセント供出されていないのにすでに米がないのです。そうして強権が発動されておる。ところが一方においては百パーセント供出して、なお米の残つている所があるのであります。これは先日の新聞でありますが、これによりますと、「これは不思議な超過供出」という題でもつて、青森県の例が出ているのであります。今それを読んでみますと、「これは不思議な超過供出——青森県西津軽郡稻垣村の藤田雄一さんという大工、二反足らずの水田を耕して一俵牟の供出割当を受けたが、なんと二百七十三俵を超過供出、「手品師じやあるまいし」と国警西地区署が調べるとこの村では五俵以内の割当で百俵前後の超供はザラの実情、そのタネは実に他人名義の超供、ヤミ米が一升五十円と暴落して大弱りの單作農家では、窮余の一策として事前割当をすませた小農の名前を借りて供出することが流行し、農協幹部まで勧誘していたというわけ、食糧庁に伺いをたてると「超過供出は生産者自身の産米でなければならぬ、青森の場合は代金は特別価格で抑えないし食管法にもとづく命令違反で処罰されるそうな」と書いてあります。これは極端な例でありまして、片方においては非常に妙な農業調整委員会が開かれまして、米を出しておらないにかかわらず米が足りないで、そうして非常にわけのわからない形においておどかされて、去年の麦までとつて行かれた所があるのであります。片一方におきましては、供出米二俵と言われて百俵以上出しておるところがあるのであります。こういうような形において、どうして農村におけるところの農業というものが成り立つて行くか、あるいは公平というものがやられて行くか、こういう方面における政府対策を聞きたいのであります。
  43. 森幸太郎

    森国務大臣 供出制度は、御承知通り法規に基きまして事前割当をいたして、各府県の知事が責任を持つて各府県の生産者に割当てをするのであります。今お話ようなことが、実際あるかどうか存じませんが、すべて知事が責任を持つてやられるのでありまして、それがもし法規にそむいておるというようなことがあれば、これは当然修正すべきことでありますが、政府といたしましては、さようなことは執行の上において毛頭考えておらないのであります。
  44. 横田甚太郎

    ○横田委員 それではごく具体的なことについてお尋ねいたします。日本の国においては、法を国が守つておらない。大臣は法でやつていると言われておるが、私は食糧確保臨時措置法によつてやられておるところの法なるもので、その食糧の集め方がやられておらない。その例をあげますと、こんな事実があるのであります。  これは大阪府三島郡三箇牧村農業調整委員会のことでありまして、二十五年一月三十日に農業調整委員会を開いておるのであります。これは麦の割当ではないのでありまして、去年の米が出ないから出せといつて、今年やつておるのであります。そのときに、こういう問答があります。「皆さん方は、百パーセント完納できますか。完納できない人は、手をあげなさい。」と言うと、手をあげた人はだれもないのであります。また「完納できない人は、手をあげなさい。」と言うのであります。だれもあげない。そうすると農業調整委員は、こう言つております。「わずか三分や五分の間で、質問の意味もわからないので答えられない。一体、それは個人完納でやられるのか、村完納でやられるのですか、その点を明らかにしてもらいたい。」そうすると、その人は、「個人です。いや村です。」言葉がごちやごちやになつおります。そうすると、「農業調整委員として答えることはできません。」と言つている。そうしたらその人は。「できないはずはない。指導者が悪いからできない。指導者ができないと思つているからできない。この村は不作だということはわかつて来たが、助け合えば必ず完遂できるはずだ。いつになつたら完納できるのか。」そうすると、宇津木という村長が、「一応努力するけれども、できないと思う。」ということを言つております。そうするとその方は、「よろしい。」と時計を見て、「イエス、ノーの返事を五分間でしてくれ。」と言つております。そうすると一人の人が立つて、「きよう委員会は半数にも足りないから、即答はできない。」と言つております。すると「各部落の代表が来ているのに、そろわなくとも返事ができるはずだ。」と言つております。「五分間くらいでは返事ができない。」ということを訴えております。そうすると「十分間與える。」ということを申しております。そうして「三箇牧村の者だけ集まつて相談する。」と言つて、その人たちは皆出て行くのであります。出て行くとたんに、村の農業調整委員の人全部が、これはできないという返事をしようというので、ノーという返事をしようときめております。そこで出た人が入つて来る。そうして「どうしてもこの村はできません。」ということを言うのであります。入つて来た人は、ノーということを言うのであります。そうするとその役人と地方事務所の人が、「よろしい。絶対できないはずはない。個別に調査を始める。」そこでカバンをたたいて、「ここには三箇牧村の横流し、隠し田、裏作の実態調査を行つた、そういう書類が相当入つている。未完納の農家に対して特別な調査を行う。そうしてこれを将来継続する。あすから準備にとりかかる。」こういうことを言つておるのであります。そうするとこの食糧確保臨時措置法を守つておるのはだれであつて、守つておらないのはだれであるか。しかも守つておる人が、米を取られて、供出によるところの米がなくなつているのであります。第一ここに出ている食確法の第十四條一十二條、十三條の規定応よりますと、食糧調整委員なるものは、村においては相当の調整委員になる資格がなければならないのであります。資・格がない人が出ておるというのを大臣は違法と認められるのか、違法と認められないのか。その点をまず第一点として聞きたいのであります。
  45. 森幸太郎

    森国務大臣 いろいろお話になりましたが、事実を調査してお答えしましよう
  46. 松浦東介

    松浦委員長代理 午前はこの程度にとどめまして、午後一時甲より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時五分休憩      ————◇—————     午後二時一分開議
  47. 小笠原八十美

    小笠原委員長 これより再開いたします。  農産種苗法の一部を改正する法律案を議題とし、審議に入ります。  質疑及び討論の申出がありませんので、ただちに本案に対する採決に入ります。  本案を原案通り可決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  48. 小笠原八十美

    小笠原委員長 御異議なしと認めます。原案の通り全会一致をもつて可決いたしました。  この際報告書の件についてお諮りいたします。これは先例によりまして、委員長に御一任を願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  49. 小笠原八十美

    小笠原委員長 御異議なしと認めます。それではさよう決しました。     —————————————
  50. 小笠原八十美

    小笠原委員長 それでは農政一般について質疑を継続いたします。横田委員
  51. 横田甚太郎

    ○横田委員 大臣にお伺いいたします。大体供出の割当は公平に行つておらない、私はこう思うのであります。それで供出の公平に行つておらないところに、強権をもつて取上げられるようなことはやめていただきたい。同時にまた強権をもつて取上げられたところえは、適当なる調査をやつていただいて、返していただきたい。その例として、午前中に申しました三島郡三箇牧村三島江における合同検見の結果は、このときに地方事務所の吏員も立ち会つておるのであります。そこで昨年の秋九畝二十九歩の全刈りの調整をやつだのであります。そして小米も全部入れまして十四貫三百匁しかなかつたということは、地方事務所の吏員も皆認めておるのであります。西面におきましてはどうしても供出米が出なかつた。最後においてどんな悪い米が出ておるかということは、本年一月三十一日の供米の結果は、五百五十俵の米が出まして、これで九四%出たのであります。あとに二百五十俵の米が残つてつて、まだ六%未納になつておるのであります。それで五百五十俵の、当時出ました米の検査の結果は、五等が五百三俵であります。四等はわずかに二十四俵で、三等が二十二俵、二等が一俵であります。このうちどうしても検査できないと言つたのが二百俵あつたのであります。その二百俵は検査ができないのだけれども、いいのとチヤンポンすることによつて、やつと五等になつたというのが現状であります。また前の検査の例をとりましても、四百七十俵のうち五等米が四百俵あつたのであります。そうすると、二百五十俵から三百俵ぐらいは、よそから買われております。だからここの町におきましては、米の品質も非常に悪いし、とれておらないということは、数字においても、また官庁の調査においてもわかつておるのであります。ところがこの農村においてなぜ米を出したかと言えば、去年つくつた麦をわずかに持つている。これをとられるように解釈され、おどかされたので出したのであります。どういう言葉でおどかされたかと申しますと、これは本年二月二十二日に三島江へ来た人たちによつて、こういうことが言われております。「きよう中に完納しなさい。供出が完納できないとすればブラックリストに載ります。奈良県畝傍町、桜井町を見て来ればわかります。そんな危険なことをするより、完納した方がいいでしよう。」部落代表の鈴木という人は、「足らない米を買つて来る金もありません。」そうしますとその方は、「お正月用に金を使い過ぎたんでしよう日本の歴史において、日本の農民が今ほど社会的に恵まれたことがない。徳川時代には、生まれた子供を小さいうちに死なさねぱならなかつた。江戸時代にも鎌倉時代、軍時代にも、ただ生きて行けるよう状態に置かれた。過去を顧みて、今日ほどよくなられたことはない。毎日々々駅で何トンという米があげられている。ほかの村が完納できるのに、この村だげできないはずがない。できなければ今後調査のリストに載るだけです。このうちの多少のどなたかが違反であげられて、罰金なり体刑になるかもしれない。それはあなたかもしれない。」と言つて鈴木を指し、「次はあなたかもしれない。」と言つて村長を指しております。そういたしまして、その人が「供出が公平に行つていないのは農調委員が悪いのだ。」と申しますと、村長が見かねて、「私が府の、郡の、村の農業調整委員です。」と申しますと、「あなたは出してくれということ以外には、何も言わなくてよろしい。」こういうことを言うております。そうしてごたごたやられて、その晩に農民は米をとられたのであります。ここにおきまして農民は非常に困りまして、共産党が煽動しなくても、非常な思想の悪化と申しますか、民自党の好まれない状態が起りまして、共産党のすばらしい発展力がここにおいて立証されたわけであります。(笑声)そこにおいて農民は、こういうことを書いている。これは笑いごとではないのであります。ここに童話がありますが、これは共産党員でない人がつくつたのでしよう。それは、孫子末代まで伝えましよう。霜柱をふんで神様の家来が、うさぎのところにやつて来た。命令だ、毛を差出せ。うさぎはびつくりして、それだけは許してください、子供もいますから。毛をとられてしまうと寒くて死ぬばかりです。家来は力の強いことで知れ渡つていました。命令だ、とどなりました。そうしてとうとううさぎは裸になりました。とうとう裸にしてやつた。家来はほくほくし帰つて行きあました。神様も喜びました。神様はうさぎがどんなに困るか知らなかつたのです。知つていて、そんなむちやを命令するはずはありません。ああ、何とかして毛を返してほしいものだ。裸になつたうさぎは思うのでした。お母さん、お腹がぺこぺこだよ。子うさぎにせがまれて食べ物を探しに出かけました。けれども裸ですから草や木にひつかかれて血が流れました。こんなことでは、食べ物を得ようとするたびに血を流してやせてしまろばかりだ。神様にお願いしようとうさぎは思いました。北風がぴゆうぴゆう吹きました。裸のうさぎはとうとう凍え死にました。足跡には血がぽたぽた落ちていました。死んだうさぎはいつの間にか、お月様に運ばれていました。しかしうさぎは死んでも死に切れながつたのでしよう。子うさぎが気になるのです。死んでも神様に訴え続けよう考えたのでしよう。月の出る前にきつと夕焼がします。それは裸のうさぎが血を空一面にふりまいて、苦しみを神様に訴えているのだと言われています。こういうよう状態のもとで共産党の人気がすばらしくあるのであります。そうして政府食糧政策を非常にうらんでいるのであります。     〔委員長退席、山村委員長代理着席〕 そうして農民は、こういうような形において、米がないにかかわらずとられた。今年やつて行けない。こういうところに対しまして、政府といたしましては適当に調査してもらう。同時にこれは法規上から行きましても、先ほど農林大臣が言われた食確法の規定におきましても、この会議は公開され、会議録は残つているはずですから、この会議録を至急にお取寄せ願いまして、もしこれが事実であつたなれば、ここにおいて不当な供出量をとつたものに対して、われわれは返してもらいたいということをお願いしたいのであります。あなたはそれを聞いてくれますか、聞いてくれないか、これに対する処置を承りたいのであります。
  52. 森幸太郎

    森国務大臣 供出の割当につきましては、できるだけの機関を通じて、その公正を期したいと考えています。しかし神様のやる仕事でないのでありますから、そごに幾らかの不公正ができるかもしれません。しかし一応国で割当てたものを知事が承認されて、地方の調整委員諸君がこれを実際によく調査して、そうしてこれを適当に割当てられてあるのでありまするから、われわれは調整委員諸君のお骨折りと、知事が責任を持つた供出の割当に対して信頼をいたしておるのであります。しかし先ほども申しました通り、必ずしも百人ともに公正にできてあるとは考えられませんが、知事が責任を持ち、また地方の調整委員諸君がいろいろと実情によつて割当ててあるのでありますから、それが妥当な供出の割当であると、かよう考えているわけであります。
  53. 横田甚太郎

    ○横田委員 食糧調整委員が承認している。それをまた割りつけたとおつしやいますけれども、この記録にもございますように、村の農業調整委員なるものは承認しておらないのであります。それを承認させられたのであります。出しておらないのを取上げられたのであります。だからその点に対するところの調査をしてもらえるかもらえないか。これを伺つているのであります。
  54. 森幸太郎

    森国務大臣 それを調査する必要はないと考えております。
  55. 横田甚太郎

    ○横田委員 それでは米をとられて、その村において食う米がなくて、ことしの米作に困つても、そうお考えですか。
  56. 森幸太郎

    森国務大臣 昨年は特別な年柄でありましたから、供出の責任免除の方法をとりました。そうして実際に合う調査によつて、やむを得ないものに対しましては、供出の免除をいたしたのであります。
  57. 横田甚太郎

    ○横田委員 免責補正のことでありましようが、この免責補正については、私は食糧庁で聞いたのでございますが、おそらく二百四十五万石の補正ぐらいでは米が出ないだろう。これはだめだ。だかも何とかできないかということを、ごちやごちやもんでいるうちに、六十五万石なら六十五万石、六十七万石なら六十七万石をまけてもらつて、出ないだけは置いておこう、それを免除しよう、こういうお考えであつた、私はそう聞いたのであります。ところがそれが、米が出てしまつたので困つた、これは農民に返さなければならない。そういうふうになつたのが真相でございますか。それを承りたい。
  58. 森幸太郎

    森国務大臣 二百四十五万石の補正をいたしたのでありますが、それは実際の場合において、今お話ような、どうしても割当が出せない、補正をいたしても出せないというものに対しては、各地方の実情によつて委員会の組織によつて免責の方法考えて、これを適当に処覆したのであります。
  59. 横田甚太郎

    ○横田委員 詳しくお尋ねしたいのですが、時間が非常に制限されておりますので、この点についてあつさりともう一点尋ねます。その免責補正でお返しになつたものについて、また農民から集荷料をおとりになる、あるいは保管料をおとりになつたのは事実でございますか。
  60. 森幸太郎

    森国務大臣 免責の場合におきましては、公団の経費は加算いたさぬことにいたしております。
  61. 横田甚太郎

    ○横田委員 公団の経費はおとりにならないけれども、農民がその米を返してもらうについては、金を拂わねばならないのですね。もし拂わねばならないとするならば、どのような名目で、どのくらいとられるかということを、はつきり聞かしていただきたい。
  62. 森幸太郎

    森国務大臣 それは集荷と倉庫の経費だけが加算されたことと存じております。
  63. 横田甚太郎

    ○横田委員 それは一体どれくらいになるのですか。
  64. 森幸太郎

    森国務大臣 金額のことはいずれ事務当局からお答えいたします。
  65. 横田甚太郎

    ○横田委員 免責補正で、農民が出さなくてもよいものを出したのだと思うのですが、お返しになるのに何の因縁をもつて、農民がまた米を受取るのに金を出さなければならないか。そんな道徳というか、商売勘定は、一体いつからはやつたのですか。こんなやり方がいつからはやつたか、それを聞かしていた、だきたい。
  66. 森幸太郎

    森国務大臣 補正割当で、出せたのは一応出せたのであります。しかし大阪等におきましては、免責すべき人が出したというような話もありますが、一応供出のできたものに対しましては、特にそういう処置をとるよりほかないのでありま歩。また免責につきまして、これを出すことがいらなかつた場合におきましては、別段それについては米の拂いもどしということがないのでありますから、それには関係がありません。しかし特別の事情で、免責と同じよう気持でこれを返すという場合におきましては、そういう今申しました、いわゆる公団の経費を含まない経費によつて、たしか支拂いをいたしたことと考えております。
  67. 横田甚太郎

    ○横田委員 まだまだ質問いたさねばならないのですが、農林大臣は農林委員会にあまりお出ましにならない。出て来られる農林省の官僚の方たちは、いつ叱られて首が飛ぶかわからぬ。そんなものに聞いておつてもあかぬので、あなたが来たときに聞かなければならぬ。あなたの首はずいぶん太くて、不信任が出ても切れない首なんですから……。大体食糧政策というものと、農民に対する対策と混同しておられるのじやないかと思うのです。供出米をとるときでもそうです。各府県に妙な番をこ上らえて、米を出すのに自動車を走らせている、富士山をこしらえてそこへ人間を歩かせている。それがちようど行つたらよい、その内容はどうでもよい。こんなやり方があるか。大体六千万石なら六千万石の米がとれまして、そのうちの三千万石が供出と仮定いたしましたならば、この三千万石をつくるところの人間が一体何人いるかということが問題であります。それがしかも日本の全人口の半ぱ以上いるのでありますから、その人たちをどうして食わして、その人たちの思想をどうして守つて行くか、どうしてふところを守つて行くか。これが問題になるのであります。それをお考えにならず、できたところの米だけを集めるようなことをやつておられるようなやり方に対しては、おそらく農林大臣である森さんも不満であろうと思う、だからこの際、不満であるなら不満である、不満でないなら不満でないということを、はつきり聞かしていただきたい。こういうような形において農村から米を集められましたならば、農村には再び身売りが始まるのであります。現に秋田の魁新聞などを見ますと、女の子が一万円の金で北海道の漁場に売られているのであります。今から二、三年前には、豚が一頭三万五千円したのでありますが、その豚の値段より安くなつている。このもとにおいて、憲法においては基本的な人権があつて、そこに解放された農民がいる。そういうようなべらぼうなやり方が一体どこにあるのでありますか。これは一に米をつくる農民自身を大事にせずして、つくつた米だけとりに行く結果、こういうことになるのであります。この供出制度に対する森農相のお考えを承りたいのであります。
  68. 森幸太郎

    森国務大臣 大方御意見でありますので、お答えはどうかと存じますが、今日本食糧事情は御承知通りであります。でありますから、必要な食糧はできるだけ生産をいたして、これを供出のわくに乗せてもらいたい。従つて生産される農業者の方が政府に協力し得られるように、農業立場考えて行く。ここゆ食糧政策農業政策との問題があるのであります。あなたのおつしやるように、むちやくちやな考えをもつて政府はやつておりませんことだけを、御承知願います。
  69. 横田甚太郎

    ○横田委員 大体世界の食糧事情から見て行きまして、ここ二年間は大豊作でございました。食糧が世界的な生産過剰になつているとも言われているのであります。米価は下つております。アメリカの小麦は去年二ドル七十四セントしておつたものが、今年は一ドル九十セントに下落いたしました。日本農村にも恐慌が来るのではなかろうかということを、非常に案ぜられているのであります。農相は頭の中では恐慌はきらいでありましようが、農相が扱つておられる農村の内容に恐慌が来ているのであります。こういうふうな段階におきましては、思想の穏健な人でさえも、消費者保護の今までの農業対策を改めて、これを生産者保護にかえなければならない、こうまで言われているのであります。この点に対して、政府に何らか対策がございましようか。
  70. 森幸太郎

    森国務大臣 農業政策は決して消費者保護の立場考えておりません。生産者の立場を第一義として考えているわけであります。その対策につきましては、午前中小林委員お答えいたした通りであります。
  71. 横田甚太郎

    ○横田委員 大体消費者保護か消費者保護でないかということは、供出者である農民がつくつた米麦を、よけいとり過ぎるかとり過ぎないか。あるいはとつた米が安いか高いかにかかつて来るのであります。今三等米が一石四千二百五十円にきめられている。これはおそらく来年も上らないだろう。世界の過剰になつた米が日本の岸壁まで来ている。われわれの胃の中まで入つているのでありますから、おそらく上り得ないだろうと思います。この点に対する農相のお考えを承りたい。
  72. 森幸太郎

    森国務大臣 来年の食糧価格については、その場において考える問題でありまして、今から安くなるとか高くなるとかいうことは想像しません。
  73. 横田甚太郎

    ○横田委員 あんたはそれでよろしゆうございましようが、農民はことしの秋の米は今から種をまくのであります。そして農民にとつてかわいそうなことは、ことしの春にもとを入れるのでありますが、そのもとである労力は、非常に安く値切られているのであります。労力と並行して一番大事な肥料は七割も上げられているのであります。民自党の議員をもつてしても、農林省は肥料資本の代弁者ではないかと極言されるのであります。この高い肥料、引合わない値段でうんと米をつくらせ、今は値段がきまつていないから、とるときにたたいてやろうという根性が悪いのではないか。こういう考えがあるために、農相は農政を新聞に発表される。その結果として森農相は非常に農民に心配させる。ものを言うたびに、いもをつくつても買わぬとか、雑穀をつくつたつて、そんなことこつちは知らぬぞ。こういうようなことばかり言つておられるのであつて、これから森農相は、議会に来て、もつと農政に対しては外で摩擦を起さないようにやつてもらうところの意思がありますか、ありませんか、それを聞きたい。
  74. 森幸太郎

    森国務大臣 答弁の必要がないと存じます。
  75. 横田甚太郎

    ○横田委員 それでは今までと同じように、常に農民にけんかをふつかけて、相談をされない、こういうような態度を続けられるのですか。それも答弁の限りではないのですか。
  76. 山村新治郎

    ○山村委員長代理 その問題は大臣から答弁ないようです。
  77. 横田甚太郎

    ○横田委員 そうしますと、非常に御機嫌を損じましたので、ほかに問題をかえますが、大体農民というものは非常に気の毒だと思うのです。供出の段階においては、とても米価が引合わない。米価の引合うような供出はありはしない、これは売買になると私は考えるのであります。そういたしましたならば、農民は供出の段階において、米をつくつてつた、再生産しておつたということは、ちやんとやみに流すべき米があつて、それが前提になつて始めて農業が成りたつたと私は思うのであります。ところがこの米が北陸地方に行きますと、六十円を割つておる、東京に行きますとそれが百二十円になつておる。こういうふうに言われておるのであります。そうしたら、農民は非常にこれで困りますし、供出自体といたしましても、秋田県あるいは北陸において六十円、東京において百二十円、こういうふうな條件のものにおいて、供出というようなべらぼうな制度を続けて行かねばならないのでしようか。その点に対する農相のお考えを承りたい。
  78. 森幸太郎

    森国務大臣 政府は超過供出は二倍で買う制度を持つております。
  79. 横田甚太郎

    ○横田委員 どうもとんちんかんになるのですが、大臣がその態度であるならば、何を聞いてもしようがない。まだ時間もあるので二、三伺いますが、大体日本農村に対しては、超過供出をさせておりますが、目くされ金の、ほんのちよつとした金です。ところが南方からお買いになる米、アメリカからお買いになる米が、非常に高いのです。その場合に承りだいのは、南方から来ております米が、一説によれば、大体一トンが七十五ドル、その国の船に積んで百五十ドルになつているように承るのであります。ある人に聞くところによりますと、それは日本の石に換算いたしまして、ビルマの米が生産地において四千五十円、それを船に積むと八千百円になつている。そうしてこのうち、四千五十円なるものは、農民の手に渡るときには半分になつておるんだと、こういうようなことが言われておりますが、これに対して農相は、農林省あるいは外務省、いろいろなものを通じて、調査をされたことがありましようか、それともまた、これは事実でありましようか、その点を承りたい。
  80. 森幸太郎

    森国務大臣 南方の諸国から輸入する米の値段につきましては、ビルマの米、朝鮮の米、いろいろありますが、それはそのとき、そのときの輸入の状況によつて価格が定まるのであります。
  81. 横田甚太郎

    ○横田委員 そういたしますと、そのとき、そのときによつて価格が定まるのでございましようが、その定まつたところの一つに、いわゆる石四千五十円に当るものがあつたのですか、なかつたのですか、これを承りたいのです。
  82. 森幸太郎

    森国務大臣 そういう安い米は、買つておりません。
  83. 横田甚太郎

    ○横田委員 これは生産地の価格でありまして、これが向うの船に積まれたときに、八千百円になつているのであります。これが日本の港に着くともつと上つて、九千円以上になつていると承つているのであります。安い米と言われましたが、向うの産地においては安い、日本に来ますと非常に高くなる。これを指して言つておるのですから、四千五十円の米イコール八千百円であります。それが日本に着いて、九千何ぼになつている。こういう事実があるかないか、これを聞いているのであります。
  84. 森幸太郎

    森国務大臣 今、日本の輸入は、日本の船によつてやることは許されていない点がありますので、その計算がそういうふうになつたのではないかと思います。詳しいことは、今数字を持つておりません。
  85. 横田甚太郎

    ○横田委員 それでは、大体こういう点を伺いたいのです。森農相は、おそらく秋になつてから、米の値段をおきめになつて農家に大損をさせられるのですが、おそらく私の見通しでは、米の値段は上らない、去年と同じになるのじやないか、こう思うのであります。日本の米なるものは、四千二百五十円でつくつても引合うようにしなければならないと思うのであります。そのためには、日本農業改革の内容が問題になつて来ると思います。農地が解放されて、農民が土地を持つた、それが台帳についたというだけであつて生産力が少しも問題になつておらない。生産性も少しも問題になつておらないのであります。こういうようなことで放任されているがために、米価の問題がなおざりになつている。だから供出制度があつてやみがある。こういう矛盾を露呈しておるのだと思うのであります。どうしても四千二百五十円の米にするためには、日本のいわゆる工業生産力の回復率を高めなくちやならないと、私は思うのであります。これを高めることにおいて、初めて日本農業がよくなる。そこに電気を持込む、あるいは機械を持込む、農機具の輸入を持込む、肥料を安くして農具を持込む、こうすべきだと思うのであります。その点に対する森農相のお考えと、今後の行き方を承りたいのであります。
  86. 森幸太郎

    森国務大臣 横田君の御意見として拝聴いたしておきます。二十五年産の米価は、決して生産者の引合わぬような制定はしないつもりであります。
  87. 横田甚太郎

    ○横田委員 生産者が引合わぬような米価の制定はしないとおつしやいますが、現に四千二百五十円で引合つている農民はないのであります。それさえも引合うと思つているのですから、ことしの秋になりましたら、農民は非常に憤激するだろうと言つておるのであります。この点を私が言うのでありまして、いかに日本が占領下でありましても、われわれ農民としてはなお要求しなければならぬ問題だと思うのであります。ここに最近の統計がございますが、日本を占領しておられるところの軍人さんたちの本属におきましても、決して農民はそんなむごい扱いを受けて黙つているのではないのであります。炭鉱労務者だつてむごい扱いを受けるならば石炭を売つてやらぬぞと言つておるのであります。タフト・ハートレー法があつても、そんなものは問題にしないほど元気なんであります。農村においても、非常にこのことには関心を持つております。そこにおきましては、こういうことが言われております。アメリカ農村人口は、過去五十年、非常に減少の一途をたどつておる。ここ三十年の傾向は次のようになつている。一九一〇年には三千二百万七十七人おつた。これがいわゆる農家人口であります。非農家人口は、五千九百万おつたのであります。それから二〇年にはこれが三千百万になつております。こまかい数字は省きます。農家の人口をずつと見ますと、三〇年にはこれが三千万人、一九四〇年には三千万人、それが四九年には二千七百万人になつておるのであります。これに対比いたしまして、一九一〇年には、非農家人口が五千九百万人でありまして、二〇年には七千四百万人、それが三〇年には九千二百万人であります。四〇年には一億一百万人であります。それが四九年には、一億百十九万人であります。そうしてこれらの農村人口は、第一次大戦前に比べますと、四百三十万一千名減少しているのであります。一二・四%減少しているのであります。一九一〇年アメリカの農民一人当りは、約十一人を養うところの食糧と繊維品を生産しておりました。現在はその扶養能力が非常にふえまして、十五人を養うに足るところの食糧と繊維品を生産していると言われています。政府のこれに対する保護も手伝いまして、食糧の所得が増大いたしまして、たとえて申しますと、十年前の農民一人当りの純收入は、平均七百六十一ドルであつたのが、現在は約二千六百ドルになつておると言われておるのであります。だから、いかに占領下であつても、日本の窮状を訴え、もう少し大きく、森農相なんかが動かれましたならば、日本農村はまだ、もう少し何とかなるのじやないか、また何とかしなければいけないのじやないか、こういうことを私は考える。これに対する森農相のお考えは、占領下であるがために、農民は政府食糧収奪の政策に苦しめれるものと、こういうよう考えではないと思いますが、お考えは一体どうでしようか。
  88. 森幸太郎

    森国務大臣 アメリカ事情日本事情は、違つております。日本は決して農業者を、食糧収奪の道具と考えておりません。
  89. 横田甚太郎

    ○横田委員 アメリカ日本事情がかわつておりましても、人権の解放とか、四つの自由とかいうものは、世界のすべてに言われておりまして、黒いやつにはいらない。黄色いやつにはいらない。敵になつたのだから、許さないのだと言われておるのではないのでありまして、すべてが窮乏からの自由とかあらゆる自由が保障されているものだと思うのであります。だから、こういうような現状のもとにおいて、農林省は全機能をあげて、国民運動を展開して、日本農村はうまく行つているんじやないんだ、非常に困つているんだ。こういうことを占領下であるがゆえに、ますます言つていただきたいのであります。こういうような点についての、森農相のお考えは、一体どうでございましようか。
  90. 森幸太郎

    森国務大臣 日本農村に対しましては、現段階において極力保護政策をもつて維持して行きたい、かよう考えております。
  91. 横田甚太郎

    ○横田委員 それでは最後に森農相にはつきり言つていただきたいのですが、この日本の現在の農業生産を高めるためには、どうしても日本の工業が問題となつて来る。工業生産が回復しなくてはならぬと私は思うのであります。この工業生産が回復した結果は、一体どうなるだろうか。日本でこしらえたがたくの機械とか、あまりよくないものが売れない。これは南方のポンド区域に売らなければならない。そこには金がない。金がないからバーター制によつて日本からこの機械を持つて行く、製品を持つて行く。そのかわりに向うから米をとるという形において、日本農業それ自体を再建するためには、日本の工業を発展させなければならない。発展させた結果としては、結局南方から米が入つて来て日本の農民は非常に苦しむ。だから日本農業を発展させるためには、その人たちを養うために供出制度で行くの、だその供出制度というものは、供出の基礎になるところの、農業労働に使われる農民の労働それ自体が非常に問題になつておらない。人権が無視されておる。ほとんどこれは日本農村において苦役をやつておるにひとしいと、私は思うのであります。こういうような点におきまして、森農相は、今後どういうような農政の構想を持つて進んで行かれるか、今までと同じことなんですか。この点を承つておきたい。
  92. 森幸太郎

    森国務大臣 横田君のお考えになつたようなこととは、まつたく反対な考えを持つております。
  93. 横田甚太郎

    ○横田委員 もう一点反対の点を聞きたいのでありまして、それを言つていただきたいのであります。もちろんあなたは民主自由党の領袖であるならば、私たちに言う必要はありません。少くとも日本政府をあずかつておられるから……。共産党ならばただちに問題にされる。徳田球一さんの問題が出て来ておりますが、私のような違つた考えを持つ者が各農村において力を得ましても、民主自由党の政府もお困りにならぬと思います。従つて民主自由党の健全な今までと違つた農政の本質をちよつぴりだけ述べていただきたいと思います。
  94. 山村新治郎

    ○山村委員長代理 横田君、大臣からは答弁はございません。小平君。
  95. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私は政府の農林政策につきまして森国務大臣に最も重要な点を指摘いたしまして、お伺いいたしたいと思うのであります。まず第一点は農地改革の問題であります。政府は本年八月一日以降現存の農地委員会、並びに農業調整委員会を解体して、農業委員会という形において新発足するという計画でありますが、本件については、大臣からもその構想について一応承つております。しかし臓後農民解放の、いわゆる総司令部の指示によりまして、今日ようやくこの農地解放も軌道に乗りつつある。さらにわれわれの考え方といたしましてはもう一歩山林牧野の解放、並びに不耕作地の解放といつたことまで徹底的にやらなければならぬという強い確信を持つております。御承知ように、日本の現状といたしましては、一日も早く食糧の自給、食糧問題を解決して民生の安定を期するということが、非常に重大な問題であります。特に本年は、政府において三百四十万トンという厖大な輸入食糧を計画しておるが、やはり日本自体において徹底的な農業改良、あるいは土地改良といつたような観点に立つならば、輸入食糧を最少限度にとどめるということが現在の政府の最も大きな使命ではないかと思うのであります。特に現在の政府考えておじますところの農地委員会農業調整委員会というものは、まつたく性質を異にいたしておつて、水も油もチヤンポンにするという、俗に言うくそみそというようなことの極端な現れであると思うのでありますが、こういつたことをして、はたして戦後大きな農業の近代化を基盤として立ち上つた農地改革が完途されるかどうか。特にこの問題が表面化されましてから、全国の農地委員会の代表、農民代表が、町会あるいは農林省、あるいは関係当局に陳情を申し上げておる。この現実農林大臣は何とお考えになつておるか。その点について、私はこの農民の点思をまつたく踏みにじつて、あくまでも現有計画しておりますところの方針に沿つて進まれるのかどうかという点について、この機会に大臣見解を承つておきたいと思うわけであります。
  96. 森幸太郎

    森国務大臣 農地改革の問題につきましては、たびたびこの噂も申し上げたと存じておりますが、予定通りの農地改革も大体完了いたしたのでありまして、なお残つておる分もありますが、残つておる部分に対しましては、急速に当初の方針通所進めたいと思つております。しかも今日までできた農地改革を永遠に維持するということが、最も重天な問題でありまして、今後はこれらの農地が能率を上げるために、交換分合等のことなり、あるいは土質の改良等によつて、せつかくの農地改革を維持して行きたいと考えております。食糧増産の画において、耕地の拡張ということが必、要でありますが、干拓等の仕事によつてできるだけ耕地の拡張を考えております。山林あるいは用水林等の必要な林野に対しましては、開墾をする意思は全然ありません。あるいは山林の分割等というようなことが一時流布されておりましたが、山林の経営は、やはり専門的に山林として相当の地域をもつて経営することが合理的でありますから山林の分割であるとか、あるいはこれを耕地に解放するというようなことは、全然考えておりません。なお牧野等につきましては、相当これを解放してもさしつかえない所におきましては、国有牧野であるとを問わず、これらの解放を今後進めて行きたいと考えております。
  97. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私の申し上げた最後の点の明快な御答弁をいただかなかつたのでありますが、ただいまの御説明によりますと、政府は当初計画いたしました農地改革は、通行するのだとおつしやつておるのでありますが、先般大臣のこの問題についての説明を承りますと、現在農地委員会の書記二名を一名に減らす。さらにその予算につきましても半減をする。こういつたような現状で、はたして残された農地改革の完途ができるかという点について、私は非常に疑問を持つておるわけです。同時に先ほど申し上げましたように、この農地委員会農業調整委員会というような、まつたく性質、内容を異にするものを一緒にして、現在の食糧需給関係において、特に外国食糧を輸入しなければならぬという問題、さらに本年は食確法によるところの生産割当を行おうとする政府の意図である場合において、その大きな使命を持つところの農業調整委員会を一応解体して、農業委員会というものに発足する問題について、まつたく納得し得ない。すでに大臣は全国農民代表から、切実な声をお聞きのことと思うのでありますが、その点についてもう一応承りたいと思います。
  98. 森幸太郎

    森国務大臣 農地委員会農業調整委員会一つにして農業委員会にするということは、よく内容を御検討願いたいと思うのであります。これは決して地方にある全部の農業調整委員と農地委員とを一つにするものではないのであります。末端の町村單位のものが二つあるのを一つにするというだけでありまして、それでありますから、決して全部を一つにするというわけではないのであります。農地委員仕事も、今申し上げました通り、大体残つておるものは登記事務でありますし、農業調整委員仕事もずいぶん忙がしい。忙がしいけれどもこれは季節的の問題でありますので、農業調整委員と農地委員とを末端の市町村において——市町村だけでありますが、市町村においてこれを一つにして、農業委員会というものをつくることは、決して今小平委員の御心配になるような、水と油を一つにしている——いわゆる一つの自治体である部落、町村という考え方から見ましても、決してむりなやり方ではない。また現に農業調整委員と農地委員を兼務されておる人もたくさんあるのでありますから、この町村の末端の二つを一つにしようという考え方であることを、御承知願いたいと思います。
  99. 小平忠

    ○小平(忠)委員 時間がありませんので、さらに掘り下げて本件について承りたいのでありますが、一応ただいまのように、大臣の意見を承りまして善処したいと思うのでありますが、特にこの問題については大臣のお考えは、内容を検討すれば決して支障はない、こうおつしやいますけれども、この問題については、近くこれが表面化されて、いかなる事態が起るかということについて十分なる御考慮を、大臣は今のうちからお拂いおき願いたいと思います。次にお伺いいたしたい点は、最近全国の農村において、重大なる問題が発生しておるわけであります。といいますのは、報奨物資の返品問題であります。これは御承知ように、政府が多年にわたりまして、強制供出の裏づけとして現在配給中でありますところの報奨物資でありますが、政府の措置にまつたく重大なる欠陷があるということが、最近暴露されたのであります。といいますのは、現在昭和二十四年度の報奨物資、すなわち米、かんしよの報奨物資でありますが、大体配給予定額にしてみますと、約五十億円になるのでありますが、そのうちの約四割近い返品を現在見ておる。その原因は、大体報奨物資の価格が、一般の市価から見て二割も高いということであります。その理由は、取引高税の四%、それから消費税の一〇%、さらにコストの値下りによるものが六%、合しまして結局二〇%、二割も現在の報奨用の配給物資が高いということであります。さらに返品のもう一つの理由を申し上げますと、品質が非常に悪いということでありますが、それはどういう理由かといいますと、大体現在の配給綿布は、第一四半期の製品でありますから、品質が非常に粗悪である。第三番目の理由は、御承知ような現在の衣料品の値下り、こういつたものが大きく響いておる。さらに現在の農村の金詰まり、こういつたような問題を取上げますれば、大体四つぐらいの理由によりまして、約四割近い返品を見ておるという現状であります。その結果、この報奨物資の配給を担当しておる全国の農業協同組合は、まつたく今や危機に瀕する状態にあるのであります。このことはすでに農林大臣も御承知のことと思うのであります。ただちに何らかの手を打たなければならぬという事態を惹起しておりますが、これに対して農林大臣はいかなる措置をおとりになるお考えであるか、承つてみたいと思います。
  100. 森幸太郎

    森国務大臣 この問題は、御指摘のように昨年の報奨物資が十二月中に配給が終つておりましたならば、問題はないのであります。昨年当委員会においても、農村に還元する品物であるから、ぜひ農協に全部取扱わせろという強い御要求があつたのであります。農林省におきましては、通商産業省と交渉いたしまして、できるだけ農協に取扱わせたいという気持であつたのでありますが、通商産業省の方の商工業者立場等もありまして、各府県に、その割合はまちまちであつたのでありますが、六百万反と記憶するのでありますが、大体それをいわゆる報奨物資として配給いたしたのであります。ところが商工業者の面におきましては、商売人でありまして割に目先が早い、取引高税が廃止になる、あるいは消費税が一割安くなる、そうすると、市価が安くなるから、早く売つてしまわなければならぬというので、大体早く処分をしたのでありますが、農業協同組合はこういう点にうかつであつたのでありましよう、やはり依然として品物を持つてつた。そうして一月から今お話ように、市価がざつと二割ほど安くなつた。今ころそんな高いものは受取らない、こういう情勢が起つたという点も一つあります。またすでに農業者に品物を売り瀕して、その金がどこへまわつておるか、問屋の方へ、もどつて来ない向きもあるのであります。これはひとり農業協同組合だけではありません。この品物を扱いました呉服問屋、商工業者立場といたしましても、非常な問題が起つて来ておるのであります。しかも農業協同組合の発行いたしました手形の割引ができない。これを失効にいたしますれば、協同組合が破産するような面もできておるのであります。協同組合をつぶすか、みずから問屋がつぶれるかというようなせとぎわまで来ておる向きもあるのでありまして、先般来この問題については、金融方面で大蔵省、また責任の面において通商産業省、農林省が、いろいろとこの善後措置に対して協議を重ねておるのであります。しかし今手持ちになつておる品物は、お話ように二割ほど市価よりは高い。この品物をどう処理するか、この取引高税なり消費税なりを免税せよというような要求もあるのでありますが、それは今税法の上からできるかできないかという問題があり、いずれにしましても、金融の道をつけぬことには、問屋をつぶすか、協同組合がつぶれるか、こういう問題になつておるのでありまして、政府はすみやかにその処置を講ぜんと、今三省の間に協議を進めておるわけであります。今その品物がどれだけ協同組合の手に残つておるのか、どれだけ商工業者の手元にあるのか、どれだけのものが処理されて農業者の手に渡つて、その金がどこにどうなつておるのかということを確かめなければ、処理方法がないのであります。農林中央金庫におきましても、協同組合に対しましては、従来からいろいろ取引ができておりますので、あるいは農機具の問題であるとか、あるいはその他のいちいろの債権債務の関係がありますので、こういう問題にただちに農林中金が乗り出すことも、容易ならぬ事情もあるようでありますので、今農林中央金庫、あるいは全購連、全販連等と協議を重ねまして、この問題の処理を一日も早くしたいと思つておるわけであります。
  101. 小平忠

    ○小平(忠)委員 本件につきまして大臣から率直な御答弁を承りましたが、その中で、こういつた引取り不能といつたような根本の原因は、商人は目先がきいて早く売つたとか、農協はそういうことに非常に緩慢だから、配給をさばくのに遅れたということをおつしやつたのですが、これは非常に重大な間違いでありまして、実情を調査いたしますと、一般商人においても引取つてもらいたいという強い希望があるのであります。それは全体的に数字に見ますと、北海道のように九二%は農協が扱つておるというような面においては、商人の扱う数量は少いからそういう面がありましようが、全国的に見ますと、大体半数近いものが商人の方の扱いになつておるという実態を見ますと、これは決して大臣のお考えになつておるようなことではないのであります。さらにただいま大臣に答弁を願つたようなことでは重大な問題になるのでありまして、おそらく農協は崩壊するであろうというような段階にあるのであります。そういう観点から私は二、三の点をお伺いしまして、大臣はすみやかに前後措置を講じていただきたいと思うのであります。  第一点は、大臣が先ほどもおつしやいましたように、今回全廃となりました税の全品目について、織物消費税、取引高税、この差額をただちに私は農民にバツク・ペイすることが至当であると考えるのでありますが、この点について、大臣はいかなる考えをお持ちになりますか。第二点は、現在引取り拒否なつております物資1もちろんこれは過年度分も含めておりますが、これについては、配給可能であるという価格まで値引きをすぐに断行しなければならないということであります。  第三点は、今の税額分を結局農民にバツク・ペイするという問題、さらに配給可能価格まで値引きをするというのでこういつた措置をとりましても、なおかつ引取る希望がないという場合においては、私は政府において、これを即座買上げの措置をすることが妥当であろうと思う。その内容についても、ただいま大臣は、まだその数字がわからぬとおつしやいましたが、関係機関におきまして最近調査いたしました適確な数字を申し上げますと、大体綿織物におきまして十六億七千六百万円、作業ズボンにおいて三億三千万円、自転車において二億二千万円、放出の故衣料でありますが、これが五千十万円、それから放出の皮ぐつでありますが、これが八百一万円、さらに過年度分を推計いたしますと、大体合計いたしまして二十三億九千万円ほどの額になるのでありますが、これを政府においてただちに買上げの措置をするということが、なされなければならぬのではないかというよう考えるのであります。さらに第四点といたしまして、応急の措置といたしまして最後の問題は、この報奨物資を取扱つております機関に対しまして、これを挽回し得る相当額の融資であります。この金融的措置を講じなければならぬのではないか。この四点について、私は政府はただちに処置をとつてもらうということでなければ、この問題を解決することができないと確信するのでありますが、農林大臣は、これに対しましていかなる御見解をお持ちでありますか、承りたいと思います。
  102. 森幸太郎

    森国務大臣 取引高税、織物消費税を返却しろ、取引拒否のものに対しては値引をせよという御意向であります。これは農業団体の方からもそういうふうな御要求がありましたが、はたして政府がそういうことを行う責任があるかどうかということについて、今関係省が研究を進めておるわけであります。今御承知ように、二十三億九千万円のものを全部引取る場合におきましては、最後にお話になりました金融措置などは考える必要はないのでありますが、これらの品物が一体どこへどうなつておるのかという調査を今進めておりますので、政府が金融するにつきましても、相手方がどれだけの品物を持つておるかということがはつきりせぬ場合、処置のしようがないのであります。全購連、全販連に対しましても、この内容について極力調査を進めておつてもらうわけでありますが、そういうものをはつきりいたしました場合に、どういうふうに財政的な措置をとるかということについては、農林省一方だけではきまらぬのでありまして、通商産業省と大蔵省、この三省が協議いたしまして、中央金庫等の考えや全購連等の考えも合せまして、できるだけ業者にも、また協同組合にも損害の少いよう処置をいたしたいと、研究を進めておるわけであります。
  103. 小平忠

    ○小平(忠)委員 ただいま大臣から御答弁を願つたのでありますが、ただいまの御答弁で、非常に窮迫いたしております取扱い機関といたしまして、私はおそらく本年度の報奨物資につきましても、これはゆゆしき問題を惹起するのではないかと思います。この内容を詳しく大臣に申し上げて、何分の再考を願うわけでありますが、時間がございませんから以上にとどめておきます。どうか本件につきましては、全国の農協の代表者も中央に会合いたしまして、この善後処置を講じておりますが、農協それ自体としては、もちろん最善の策を講じ、努力をいたしておるけれども、こういう厖大な額に達するためにいかんとも手のつけようがないという現状でありますので、政府におかれては何分の御配慮をいただきたい、こう思うわけであります。  最後に一点お伺いいたしたい点は、昭和二十五年度の政府の買上げのいも類の問題であります。先般全国都道府県知事会議におきまして、かんしよ二億七千万貫以内、ばれいしよ一億三千万貫以内を買上げの対象としておるという、大体の決定を見ておるのでありますが、この以内という数字に至りましては、これはもう限度がないのでありまして、結局形式的に何百貫あるいは何千貫買つてもいいことになる。こういうような発表を見ましてから、全国のいも類の耕作農民は、はたして本年は一体政府が買つてくれるのかどうかということにも危惧の念を抱いて、まつたく耕作農民は不安の底に陥つておるというような現状なのであります。これは少くとも今日のよう食糧事情におきましては、政府がはつきりと本年度は幾ら買い上げるという方針を、端的に表明すべきである。従いまして、私はこの際ひとつ以内などというぼやけた、でたらめな数字ではなく、これを以上にして、政府がこれをさばく能力があるならば、幾らでも耕作したものは買い上げるという処置をとるべきであろうと思いますが、この点に対しまして、大臣はいかなるお考えを持つておりますか。  さらに関達して申し上げますが、この価格の問題につきましては、当然私は原則といたしまして、生産費を保障するところの価格でなければならぬと思うのでありますが、しかし一応現段階といたしましては、やはり現行対米価比率によつてなすことが妥当と思われます。さらにこの価格をいつごろ決定されるのか。  第三点といたしましては、政府は現在食確法を無視して、いわゆる政府みずからが法違反をなすというような本年度の手段をとつておるわけでありますが、これは厳然とじて食確法があるときにおいては、生産割当をなさなければならぬ。しかしその生産割当をなさずして、ただちに食糧管理法の一部を改正するというような、非常に矛盾をしたやり方をなさるようでありますが、これは一体いかなる根拠によつてそういうことをなさるのか。以上の点について、大臣見解を承りたいと思います。
  104. 森幸太郎

    森国務大臣 いも類の買い上げは、司令部より米換算四十万トンを限りという許容を受けたわけでありまして、四十万トンは予算の上において経理もできるわけでありますから、それを買う予定といたしまして二億七千万貫、一一億三千万貫という数年になつております。これはすでに各府県に、従来の生産状況、供出状況等を勘案いたしまして、これを指示いたしております。それでありますから、各県においては、政府が以内としておりますから一億万貫と言いながらあるいは五千万貫でしまうだろうかというような不安はありません。各府県に指示したものだけは政府責任を持つて買うのでありますから、小平委員の御心配なさるように、政府はああいうことを言つてうそをつくのではないかということは、全然ないと考えております。価格の面におきましては、生産費というようお話もありますが、やはり米換算、米基準によつて価格をきめて行きたい、かよう考えておるわけであります。  なおこれは生産計画をいたさないのでありまして、行政措置といたしましてこういうふうな買い方をいたしたい、かよう考えておるわけであります。
  105. 小平忠

    ○小平(忠)委員 ただいまの御答弁によりまして、本日この委員会において、大臣が明らかにこの四億万貫を買い上げるという言明をなさつたのでありますが、これは大臣は絶対にうそを言わないように、この席上において私はここに確約をいたしておきたいと思うのであります。さらに価格の面にいたしましても、そういう御方針で可及的すみやかに決定を願いたい、こう思うわけであります。最後に、本年度のいも類の買上げに関連いたしまして、種ばれいしよの取扱いに関しまして、まだ政府がどういう方針を持つておるかということを明らかにされていないのでありますが、二十五年度のばれいしよの取扱いについて、従来通りやられるのか、あるいは従来通りやられないでそれを変更なさるお考えでありますか。その点について最後に承つておきたいと思います。
  106. 森幸太郎

    森国務大臣 種ばれいしよは総合用にこれを買うつもりでありまして、種ばれいしよとしましてはこれを買わないという考えを持つておるのであります。
  107. 山村新治郎

    ○山村委員長代理 藥師神岩太郎君。
  108. 藥師神岩太郎

    ○藥師神委員 この際農林大臣に二、三お尋ねしたいと思うのでありますが、今の小平委員質問にありましたいも類の問題がまず第一であります。これは司令部の方から、米換算四十万トンを限度として買えというような指令の問題も、資料によつて見てはおるのでありますけれども、これがそういう、かうになつたということについては、やはり政府の方から交渉をして、そういうふうになつたものとわれわれは推定をしておるわけであります。それはどうしてかというと、食確法の問題等からにらみ合せてみる場合においても、考え得るのでありますが、二十四年度産のいも類については、まず推算十五億万貫、それを政府の買入れが七億四千三百万貫、超過供出の分の買入れが約六千万貫ないし六千五百万貫、それから、ばれいしよが二億七千万貫でありましたか、そういうふうな、大体において十一億万貫に近い買入れの構想になつていだと思うのであります。ところで、今度米換算四十万トンとしてみると、約四億万貫でありますが、そこには無慮七億万貫に近いところの開きができるのであります。それでまずこの問題について各府県の事情を見ますと、いもの統制を早く解いてくれという希望の県のあることを知つておりますし、解いてくれては困るという県の多くあることも知つておるのであります。解いてくれては困るという県は、大体米の主産地と見るのが至当でありますが、政府の方においては——私は時間がありませんから一時に要約してお尋ねするのでありますが、まず生産割当というものは二十五年度に脇いては行うのか行わないのか。  それから推定十五億万貫というのは、二十四年度においては非常に連作であつた。それと供出が完了したものは自由販売をさせるという振れ出しであつたのでありますけれども、まつたく今日に至つても予定の供出量というものは完了していないと私は思う。それはなぜかというと、自由販売にしたために、供出すべき分が自由価格でずつと流れたのす。われわれの方面においてもそういう傾向は顯著であつて、ほしかんしよのごとき、宝しようちゆうなどが、厖大な数量買つたわけです。むしろ政府の買う価格より上に行つたわけです。一方においては、全国的に見て豊作でなかつたということが一つと、一方においては、供出も完了しないのに、ずつと自由価格で流れたということが、現実でありますが、しかしこれを四億万貫の買入れに限定するということになると、一方において十五億万貫の生産がかりにあるとするならば、そこに大きな欄きができて来るわけで、これをいかに消化するかという問題が、たいへんな問題であると思います。私たちの希望としては、生産して、いわゆる農家の余剰になるものは希望買入れにして、農家の方で買つてくれろというものは政府が買う。こういう方針で進んでもらいたかつたのでありますけれども、それができないということであれば、これの消化方法を同時に考えてやらなければならない。また一方においては、作付転換の問題を具体的に取上げなければならぬのでありますが、作付転換に可能なところもありますけれども、関西、特に中国、四国、九州方面の暖かい地方では、ほとんどいもと麦との荷合作になつておりまして、作付を転換しようと思つても、麦の生産割当というものが前年度にもう済んでおる。これが減らない限り、いもの作付転換はできないわけで、これは実にたいへんな問題を起しておるわけです。いもの方が供給過多になつて、過剰を来していけないとするならば、麦にひもがついておるのでありますから、この麦の生産割当というものを減らなければ作付転換はできない。この点をどういうふうに政府の方で処理ざれるお考えであるか。かりに作柄の問題は第二としても、二十四年度に政府の買うという計画を立てた約十億ないし、十一億と三十五年度の四億とを比較して見ると、そとに六億万貫も七億万貫もの開きが吊るのでありますから、同じ作柄であつたならば、それだけの消化ができないわけであります。これはこの問題については、今言つたように、澱粉工業ももうほとんど頂点に達しておる。そこで農林当局としては、これを何割作付を転換するかという問題が一つと、もう一つは大蔵当局との折衝によつて、あるいは酒精原料として、しようちゆうなり何なりを農協なり、大規模なものがいけなければ——われわれも専門家について調べたのでありますが、二、三千万円程度の工場を、集産地において、これは早急に希望があるのでありますから、許さして、そしてそういう面から消化をはかるという問題を考えて、具体的にこれは政府として考えてやらなければならぬ、ただ四億万貫しか買わない、あとはかつてにしろでは、私はほんとう農林行政を担当する者の責任としては、それではいけないと思うのであります。この点を私は具体的に知りたいのでありますが、大臣においては、こまかい数字はわからぬとも考えますけれども、大まかな点について、はたして十五億万貫と推定されているものを、あるいは十億万貫に作付を減らすか、それを何割他のものに作付転換をするかという、この一つの問題、それからその可能な分、いけない分は今言つたように、何らかの方法でこれを消化するということを、十分考えてやらなければならない。私たちは、今日は時間がありませんから申しませんが、こういう段階になつて来て、農産物最低価格設定という問題を痛切に考えております。私はこれだけの責任を持たなくては、今後の農村は立つて行かぬと思つておるのであります。私は希望買入れという問題は、すなわちこれは最低価格設定を意味するものであるのだ。つくれつくれといつて増産させておいて、そうして今になつて、まるで赤ん坊をほうり投げるように、かつてにしろではいかぬと思いますから、この点について大まかな点だけでよろしいのでありますから、大臣の意見を伺つておきたいと思います。
  109. 森幸太郎

    森国務大臣 昨年のいも類買上げと本年度のいも類買上げの程度において、非常な食い違いができておりますが、これは御承知通り、本年度は主要食糧として四億万貫を買い入れるのでありまして、昨年度までは工業用原料としてこれを買い入れておつたのであります。従つて私といたしましては、十五億万貫ぐらいの程度のさつまいもは、ぜひ全国的に生産してもらいたい。やむを得ず他に有利な作物がある場合において、作付転換ということを考えてもらうようにいたしたいと思つておるのであります。麦の問題もお話になりましたが、麦といもとは最も適合する表作、裏作でありますが、麦を減らせば英種をつくるより道がないのであります。現存麦のあとにいもをつくるというこのやり方は、特別な蔬菜をいものかわりにつくり得ない地方においては、やはりいもをつくつてもらう方が、農業経営の上において、せつかくここまで発達したいも類でありますから、これを持続いたしたい、かよう考えるのであります。しからば十五億方貫の予定ができた場合において、四億万貫しか買わないじやないか、あとをほうりぱなしでは無責任ではないか、こういう仰せでありますが、今各府県にどのくらいの生産ができ、またどれだけ自家消費をする、なおかつ県外からどのくらいいもが入つて来る、あるいはどれくらい県外へ出て行くかという、統計を各府県別に調査いたしまして、そうして各府県のいもの需給関係を今調べております。そうしてその需給関係によりまして、その県によつて余ると認められるところのものに対して、これを工業用原料に利用する。従つてその原料量によりまして加工の施設を調査いたしまして、その加工施設とこの過剰のいも類とを結びつけて、そうしてせつかくできたいも類のむだにならないような計画を進める。これは農村工業の面もありますし、また大蔵省等の関係もありますが、あらゆる利用を考えまして、せつかくつくり上げたいもを有利に利用するという計画を、今進めておるわけであります。
  110. 藥師神岩太郎

    ○藥師神委員 この四億万貫の主要食糧としての分だけ買い入れる、これには今小平君の質問に対しても答弁があつたのでありますが、つまり米を基準に置いて価格をきめるかどうかしりませんけれども、この場合もし政府の買い入れる価格よりも、一般工業原料用なんかに行く方が安かつた場合、あるいは反対に工業原料用としての方が政府の買入れするよりも高かつた場合、そういう場合においては、その価格の問題を政府ではどういうふうに見られますか。ただそれは成行きに放任されるお考えですか、あるいはその間にむろんプール計算はできるわけはありませんけれども、そごに政府一定の基準として、最低価格というべきものを設定して、それより以上に売れればけつこうでありますけれども、政府がきめた価格よりも一般の工業用の原料なり何なりが安い場合においては、それを政府で補償でもするというお考えはないのですか。これはたいへんな問題だと思いますから、伺つておきたいと思います。
  111. 森幸太郎

    森国務大臣 これは特別会計の予算の範囲内でやる仕事でありますので、一定の数量を一定価格によつて買い入れてやるということを、予算によつて執行いたしたいと思います。従つてもし政府の買い上げるものよりも市場価格が高い場合がありまして、政府に売つて来ない。そんな安いものであるから売らないという場合が生ずるかもしれませんから、そういう場合においてはしかたがないと思います。しかし逆に政府が買うよりも自由価格が非常に安いというような場合には、しからば政府はその自由市場価格を操作する意味において、どんどんいくらでも政府が買う処置に出たらどうかという御意向でありますが、これは今日の予算をもつてやる場合におきましては、不可能なことと考えるのであります。ことに政府の買い上げますものは、運賃等プールにして考えるのでありますが、何分運賃等のかさむ品物でありますので、地方によつていろいろの価格が出ようと思うのであります。近郊の農家とあるいは僻陬の農家と、その価格においてもおのずからかわつて来るのではないかと思いますが、これは自然の状態におきまして、できるだけこれらの原料が短距離に工業原料として集まるという計画を地区的に進めて行きたい。今各府県の先ほど申し上げました需給状態を調べまして、加工施設をできるだけ短距離に結びつけるということによつて、そういう弊害をいくらかでも薄くしたい。かよう考えているわけであります。
  112. 藥師神岩太郎

    ○藥師神委員 いもの問題は、それくらいにしておきます。午前中にもかれこれ質疑応答があつたのでありますが、食糧の問題について、私は非常に不可解に思う点があるわけであります。というよりも、私はむしろ現在の推移の状態について憂えておるのであります。二十五米穀年度に繰越したものは、大体政府当局の発表によると、穀類に換算して約百七十万トン以上を突破しておるわけであります。これを石に換算して見ると、約千一、二百万石に該当するわけでありますが、これだけのストック食糧を持つたことは、昭和初期のいわゆる農村恐慌時代の事例に匹敵するのであります。大体これは保有農家をのけて、全日本の国民の食糧にして約二箇月弱の食糧に該当する厖大な数字であるのであります。ことに午前中に農林大臣は、外国食糧のダンピングという言葉をたびたび用いられたのでありますが、私はこの点も非常に不可解に思うのであつて、実際外国において、今食糧のダンピングが行われておるかどうかということを、ひとつ伺いたいのであります。二十四年度の食糧需給推算から申しますと、輸入食糧は約百八十二万トン弱であります。それで二合七旬の配給基準というものは確保されて行つたわけなんであります。それが二十五年度において三百四十万トン入つて来るということになると、どういうわけでそういう厖大な数量を輸入しなくちやならぬのか、せれがわれわれのは納得が行かない。食糧庁長官の説明によると、これくらいの食糧を持つておる方が、一口に言えば心丈夫だというような、漠然たる苦しい答弁を私聞いたわけでありますけれども、こんなこまかしは許されないのであつて、実際に国民が納得し得るように、これくらいの米国の援助を受け、火の車でやつて来ておるのであるから、とてもこういう厖大なストックを持つようなことではいけないと思う。いわんやこれから夏期に向いて来る。昭和初期の農村恐慌時代には、御存じように籾共同貯蔵助成法というむずかしい法律までできて、米で囲えば虫がついてしまうから、もみで貯蔵させるという法律までできたのであります。今日大部分の輸入食糧、麦類であるとか、粉類であるとか、厖大なものがつゆを通したならば、一体どういうような問題が起きるかと私たちは思うのであります。穀類なれば消毒の方法もないことはないのでありますけれども、これは現在の配給状態からいえば、四日分とか、五日分、これは需要者の側からいえば、購買資金の問題にも大きく関係するものでありますが、厖大な数量をかかえ込んで行つて、夏期をどうして切り抜けるか、この処置だけでも私は並やたいていのことじやないと思つておる。二十四年度は百八十三万トン弱の輸入食糧ですが、これで十分需給推算の立つていた、それを三百四十万トンも買わなくてはならないという食糧政策が、われわれにはのみ込めないのであります。これは今のダンピングの意見と総合してみると、こつちでは好ましくないけれども持つて来て押しつけられるというようにも解釈できるが、義理立てで買わなければならないという解釈もできるのであります。私は現在の状態においては、日本で全部の人口をまかなえるほどの需要量というものはなかなかとり得ないと思うのでありますが、余るほどの食糧もいらない。そうかといつて、これから後は輸入でき得るかもわからぬし、またできないかもわからぬというのが食糧長官、農林大臣のいつもの御答弁でありますが、将来の問題だからむろんわからぬ。わからぬでしようけれども、二十五米穀年度へ繰越したものが百七十万トンを突破したことだけは、隠れもない現実の問題です。それを一トン六・六石で計算してみますと千百幾十万石という厖大な数量になります。これがずつとそういう状態で進んで行くとすれば、この二、三箇月向うの雨期に入つて来て、この処置たけでもたいへんな問題をかもすと私ども思うのであります。その辺が私たちどうしてものみ込めぬのでありますが、もう少しはつきり御説明願いたいと思うのです。
  113. 森幸太郎

    森国務大臣 この問題は午前中にお答えいたしたと同じことを繰返すわけであります。御説のように、何もよけい持つておらないでもいいじやないかという御意見でありますが、これは今後の輸入がガリオア物資としてのみ入つて来ないという考え方と、これが輸入はこちらのバーター制において獲得しなければならないという立場等々を勘案しまして、できるだけの余裕を見て輸入量を計画いたしておるのであります。考えようによりましては、何もそんなに不必要なものを多く持つて来る必要はないじやないか、こういう御意見も一応ごもつともでありまするが、食糧の問題、ことに日本農産物生産状況から見ますと、ぎりぎりの勘定によつて考えることはどうかと考えますので、大体二十五米穀年度におきましては、余裕を見てこの計画を立てたわけであります。
  114. 藥師神岩太郎

    ○藥師神委員 それからダンピングということをたびたび言われたのであります。私はあまりはつきりと大臣も言えぬかもしれぬと思いますから、ぽかしてもいいのですが、そういうような傾向があります。どうですかこれをひとつつておきたいと思うのです。  それから今のガリオア物資によると、バーター制ということはわかつておりますが、将来輸入する分については、そういうよう一つの杞憂もあるかもわからぬと思いますけれども、まず内地の生産というものが常態にあるとするならば、やはり二十五年度においても、二百万トンそこそこのもので十分需給推算は立つはずなのです。それは配給を増さない限りはそうなります。それが何ゆえ二十五年度において、三百四十万トシという厖大な輸入見込みを食糧庁で立てておるのか。これが入つて来ないかもしれぬし、入つて来るかもしれぬ。入つて来た場合には予定よりも百四十万トンも余分に入つて来る。三十四年度の食糧需給推算でいえば約二百万トン、このうち十万トンを繰越す。なお余分があればみその原料として六、七万トンを消費して、百八十三万トン弱というものが需給推算に入つておる。それの二倍ものものを輸入しなくてはならぬ基礎というものが、われわれにはわからぬ。その点をもう少し明確に御答弁願いたいのであります。むずかしければまた後ほどでもよろしゆうございます。
  115. 森幸太郎

    森国務大臣 ダンピングダンピングとおつしやいますが、それは午前中ちよつとお聞きそこないがあつたと思うのであります。小林委員生糸に対する問題について、糸価をどういうように維持するかというお話があつたのであります。将来において食糧等がダンピングされる場合には、日本の内地の食糧価格を維持しなければならない。ちよう生糸はこれが逆で、アメリカへ行つて売らなければならないから、内地だけの需給関係でなしに、輸出という面から糸価というものの安定をしなければならぬ。こういうことを申し上げたのでありまして、決して今外国から食糧日本にダンピングされておるというようなことは全然ありません。また外国食糧は、南方の米にいたしましても日本より高いのでありますから、決してダンピングされるというような形勢はないことを、御承知を願いたいと存じます。なお端境期における現状から、本年の輸入計画が少し厖大であり、また無謀ではないかという御意見でありますが、これは見方によりますので、藥師神委員のお考えも一応ごもつともでありますが、政府食糧需給の計画からは、大体この計画をも一つて妥当と考えておるわけであります。     〔山村委員長代理退席、藥師神委員長代理着席〕
  116. 井上良二

    井上(良)委員 二点ほど重大な点について伺いたいのです。それは今質疑応答がかわされております主要食糧の持越し、及び滞貨の問題であります。この問題は、私先般本会議大臣に伺つたのでありますが、御承知通り、時間の関係で十分論議ができなかつたので、本日さらに確めておきたいのです。今薬師神君の御質問お答えによりますと、昨年度の需給推算、本年度の需給推算というものをくらべてみますと、ここに莫大な持越量がある。しかもこの持越しの大部分を占めますものは輸入食糧だということが指摘されておるのであります。御承知通り、輸入食糧には莫大な補給金が一般会計から予算に組まれておるのであります。三百四十万トンに約四百億の補給金が組まれておる。従つて一つはこの輸入食糧が大量に入つて来るというところから、国内の農民経済を圧迫するということ。もう一つは、大きな国民負担がこれによつて負わされておるというこの二つの点が重大でございます。そこで全農林大臣お話を伺つておりますと、一つは本年度の需給推算で三百四十万トンを組んでおるというようなことが、将来輸入の見通しが明確でないということと、一つはこういうぐあいに組んでいても、別にさしつかえないではないかという安易な気持と、二つあるようでありますが、しかし昨年の需給推算においても、遅配欠配を起さずにずつとやつて来ておりますし、さらにまた、かりにアメリカ会計年度が決定されます本年下平期において、外国食糧が一粒も入らぬという見通しを立てましても、二合七日の配給を、完全に遅配欠配なしに続け得るという推算が成り立つのであります。これは御承知通りに、二十四年度の繰越しが、政府の発表によりますと、千七百万石を越しておるのであります。これに今日までの国内産の米、雑穀の供出も、今日約九五%以上の供出が完了されておるのでありますから、従つて三千万石近い食糧が供出されたことになつております。かりにこれを合しますと、約五千万石近い食糧が、今日まで確保されております。これに二月までの消費量を押えましても、大体二千万石消費したものと推定されます。それと今後、夏作のいも類あるいは麦作が、平年作で終りまするならば、少くとも私の見る需給推算によりまするならば、下半期に完全に外国食糧が入つて来なくても、この需給推算で今年は乗り切れる。しかも、なおかつ繰越すものが相当出て来るという見通しを私は持つております。それを百歩譲りまして、いろいろな事情もございましようから、かりに外国食糧を、今政府の予算では三千三百万石入れるという予定でありますが、これを半分に削りまして、一千百万石入れるということにいたしまするならば、約三百億円という大金が浮くのであります。しかも私が何ゆえにこれをやかましく取り上げて言つておるかと申しますと、最近全国の配給所の配給状況というものを、われわれが現地において視察しで調べたところによりますと、最近公団の外国食糧及び雑穀配給辞退は、非常にふえておる。おそらく一県一地方、それぞれ何億という滞貨を持つていはしないかと推定しております。  これは先般、経済調査庁の現地さ察により、ましても、食糧庁、配給公団の手持ち滞貨というものが、相当あるということが指摘されておるのであります。このことは、いずれ本委員会の公団小委員会において、調査庁を呼んで調べるつもりでおりますけれども、現に私の手元にある資料によりましても、この十一月に実に三千六百八十五万七千キロという配給辞退が全国に起つております。この配給辞退は、いろいろの操作をやりまして、さらにまた必要な面に配給したものもありましよう。他県に転送したものもありましよう。しかしその中で実際にこれが腐敗したり、あるいはまた目減りをしたり、いろいろな関係から、配給不適格品になつたものが相当量出ておる。この実情を農林大臣は一体どうお考えになりますか。これらの問題について、もつと国民の納得の行く答弁をお願いいたしたいと思うのであります。
  117. 森幸太郎

    森国務大臣 輸入食糧配給辞退につきましては、この間予算委員会でも世耕委員から、御意見が出ておりました。この輸入食糧の検査が、今日までその所管がはつきりしておらなかつた点もありますので、ああいう現実の問題にぶつかりまして、政府は農林省において、責任を持つて今後これを検査するということにいたしまして、今後配給辞退のないように努力いたしたいと考えております。なお、今井上さんのお話ように、輸入食糧がどんどんふえて来ると、国内食糧生産を圧迫するというようお話でありましたが、私はその考え方でなしに、内地の食糧生産がぐんぐん進んで来て、そうして外国から輸入することを、内から圧迫するというふうにいたしたいのであります。しかるに去年の秋の供出の割当をいたしましても、なかなか農家は受け入れないというよう状況であります。しかも日本食糧生産が、いろいろな條件で危険に瀕する分量が多いのでありますから、一層日本食糧生産の上において、不安を持たざるを得ないという立場にあるのであります。私は決して、外国食糧に依存するというよう考えは毛頭持つておりません。でき得べくんば、内地の自給度を高めて、外国からは絶対に入れないのだという態度に、日本食糧増産に携つておられる方が、緊褌一番して、日本でまかなおうじやないかという元気を、実は出していただきたいのであります。しかるにどうかすると、昨年程度の割当をいたしましても、なかなかその割当が末端へとどかない。そんなに供出はできないというようなことを聞きますと、一層前途が暗いよう気持がいたします。しかも天災地変の多い日本といたしましては、よほどここに余裕をみる措置をとることが、食糧をお預りいたしておる立場として、重要な問題と考えておるのであります。この点は、いろいろ需給推算に対しての見方について御議論もあろうと存じますが、もつと私は、日本食糧は、日本で大部分を占めるのだという、国民諸君の御協力を得て、そうして輸入食糧を、何も不必要なものを入れるわけはなし、またただくれるわけでもないのでありますから、できるだけ少ぐいたしたいと考えておるわけでありますから、その辺ひとつ了承を願いたいと思います。
  118. 井上良二

    井上(良)委員 特にいま一度申し上げておきたい点は、大臣も申されております通り、七月からはアメリカの対日援助資金というものが特に食糧の面の資金が、相当大巾に削減されるという見通しでございます。そうしますと、私どもの推定するところによるならば、大体一億ドルくらいが食糧に向けられるのではないかという推定を持つておるのでありますが、あとはほとんど商業勘定によつて、われわれは、食糧を、みずから働いた汗の結晶で買わなければならぬことになるわけです。従つて必要以上のものを滞貨するという行き方は、これは政府としても真剣にひとつ考え願いたい。それといま一つ、全国的に起つております配給辞退の問題に対処しまして、今輿論として起つておりますのは、米とか、小麦その他の雑穀価格の問題が非常にやかましい問題になつております、価格差の問題であります。それから搗精度の問題、このことに関しまして、大臣としては対米価に比較して、これまた雑穀価格をどうおさえて行く考えか、それから搗精度も、もつと改める必要はないかと私は考えますが、そういう点についてのお考えをお持ちでございますか。
  119. 森幸太郎

    森国務大臣 配給米の搗掲精度は、御承知通り十二月から七分づきまで向上させたのであります。中には脚気が起るから、そんなことをしてはいかぬではないかという反対の空気が、一部あるようでありますが、やはり日本の国民としまして、従来の味覚の上から申しましても、過去に配給いたしました、あの半つき米では、どうも経済的ではない。まあ衛生ということを考える前に、経済的でないからさらにつかせるということでありましだが、ある程度向上いたしまして、今七分づきで配給いたしておるのであります。また地方においては精米等での供出をある程度認めておるわけでありますが、小麦粉につきましては、今までは仕方がなかつたのでありますが、三月分からはさらにその質をよくいたしまして、できるだけきれいな粉を配給いたしたいと考えておるわけであります。これも、一面食糧事情のゆるやかになつた関係もあるのであります。雑穀等の価格の問題でありますが、ただいま局部的には雑穀が主としてつくられる地方もありますので、できるだけ雑穀に対しましては、相当の価格を維持させたいという気持を持つているわけであります。そして雑穀の輸入しますものは、豆類、とうもろこし等でありまして、これらは油糧原料とするのでありますが、またみそ等の方面にまわす必要がありますので、内地の価格を相当に上げましても、別段さしつかえがないのではないかと考えておるわけであります。
  120. 井上良二

    井上(良)委員 次に伺つておきたいのは、さきに薬師神君も質問しておりましたいも類の買上げに関する問題でありますが、これは先般も食糧庁長官なり、食糧部長に、いろいろわれわれは伺つたのでありますが、明確にならぬ点が二、三点あります。その二つは、このいも類の買上げ四億万貫が二十四年度の需給推算の中に入つておる。そうしますと、これはさきに小平君も申しておりました通り、食管法の一部を改正して行政的処置で買い上げるという行き方ではなしに、少くとも食確法によるところの農業計画の中に入れないというと、やはりこの四億万貫を完全に買い上げることはできないと考えますが、それはどういうお考えでありましようか。
  121. 森幸太郎

    森国務大臣 二十五年度の需給推算の中に入つておりますのは、三十四年度産のいも類であります。これはすでに供出割当をいたしておりまするものを十一月以後に買い取つたのであります。まだ供出が完了いたしておりません分は、これを買い入れる責任政府にあるわけであります。二十五年度におきましては、この食管法の改正によりまして、行政措置によつてやるのは四億万貫である。こういうよう気持でおるわけであります。昨年十一月一日から本年までに、二十四年度産のいもの買上げは、先に割当をいたしたものは買い上げるということになつておるわけであります。
  122. 井上良二

    井上(良)委員 私の聞いておりますのは、二十四年度の需給推算に、本年度産のかんしよ、ばれいしよが四億万貫入つていると見ておるのですが、これは入れていないのですか。入つていなければややこしいですよ。
  123. 森幸太郎

    森国務大臣 三十五年度のことは今申し上げました四億万貫というものを買い入れる計画になつているわけであります。二十五米穀年度には、百二十四年度に割当てたものを買うというわけです。
  124. 井上良二

    井上(良)委員 二十五年度産のいもは、二十五年度の需給推算には入つておりますね。それを私は聞いておるのです。これは入つていなければぐあいが悪いです。
  125. 森幸太郎

    森国務大臣 それはさきに申し上げましたような、総合用の四億万貫が入つておるわけであります。
  126. 井上良二

    井上(良)委員 それで明らかになつて来ました。そうなりますと、最前薬師神さんも質問しておりました通り、もしこれが需給推算に入つておりまして、四億万貫を、価格その他の関係から政府が買い付けようとしても農民が政府の買付に応じなかつた場合は、一体政府はどうしようというのです。どうして買おうというのですか。
  127. 森幸太郎

    森国務大臣 四億万貫を予定して需給推算に入れておる。それをもし価格等の点で売らないという場合は、需給推算は狂うというお話でありますが、そういうことも考えて、持越米の余裕を見ておるわけであります。しかし各府県の状況から見ましても、大体これだけのものは買つてくれということになつている。ただ価格の問題において、約束しておいてもそんなに安ければ売らぬということになるかもしれません。しかしそれは、先ほど来いろいろ御批判があつたように、この需給推算に余裕を見ておりますから、この問題についてはそういう懸念はないと考えておるわけであります。
  128. 井上良二

    井上(良)委員 逆にお伺いしますが、そうするとこのいもというものは、県側から買うてくれという数字を集計したものであつて、もし売らないというならば買わないでもよいのだ。もう一つ別の言葉で言いますと、あなたの今の御答弁によると、四億万貫のいもを政府に売ろうと売るまいと、農民の自由であると考えてよいのですか。
  129. 森幸太郎

    森国務大臣 極端に言えばそういうふうにとれるかもしれませんが、現実の問題としては、決してそういうようなことはないと考えておるのであります。需給推算といたしましては、政府は、決していもはもう売らないでもよいのだというようなことはありません。極論すればあるいはそういう理論も成り立つと思いますが、決してそんなことはないと考えております。
  130. 井上良二

    井上(良)委員 この点はまことにあいまいでございまから、もう少し政府の方でもはつきりその点を明確にしてもらいたい。この点に関しましては、先般の委員会でも明確に政府の方の答弁を願いたいということが要求されております。なおこの際伺つておきたいのは、このいもの買上げ価格は、対米価の比率で買うという御答弁でありますが、そうしますと、従来のいも作地帶の農民の立場経済を考慮いたしまして、早掘りかんしよとか、または超過供出のかんしよに対して、それぞれ奨励金が出されておりますが、本年度産のいもについては、これを全然考慮しないのでありますか。それともそれらを織り込んで価格をきめようというのでありますか。これらの点について明確に御答弁願いたい。
  131. 森幸太郎

    森国務大臣 従来のように早掘りというようなことは考えていないと思います。しかし御承知ように、いもは早いのとおそいのと、非常に値打が違うのでありますから、時期的に価格を操作して買い取りたいと考えております。
  132. 井上良二

    井上(良)委員 そこは非常にむずかしい問題ですが、かりに原則的に十貫二百円なら二百円ときめておいて、何月までに出したものは三百五十円なら二百五十円で買おうということになりますか、その点をひとつ明らかに願いたい。それからいま一つ重要な問題は、一体政府はそういういもをかりに十貫二百円で買うて、政府の買ういもは、さつまいもでもつて、大体三億万貫弱でありますから、そうするとあと大部分は工業用か、あるいは自由販売にまわつて来るわけであります。そうすると、この自由販売へまわつて来る価格と、政府買上げの価格が、かりに合致します場合は問題はないのです。しかしこれが上まわります場合は、食糧公団は非常な損をしなければなりません。そういうこともやむを得ないとお考えでございますか。この二点について承りたい。
  133. 森幸太郎

    森国務大臣 四億万貫の買上げは、月別に買い上げる計画を立てて、またその月々に価格をきめて行くということを考えておるわけであります。それでありまするから、それをプールして計画を進めておるわけでありますので、特別会計に赤字が出るというようなことはない。かよう考えておるわけであります。
  134. 井上良二

    井上(良)委員 もう一点伺いたいのですが、そうしますと、最近政府はこの食糧配給公団の機構を改革しまして、末端の配給機構を民間にやらす。こういうお話だそうですが、この末端の配給所を民間に切りかえよう考えておる政府の時期——およそいつから民間にこれをやらすつもりでありますか。これが、このいもの価格の取引の上に重大な関係を持つものでありますから、この点を伺つておきたい。
  135. 森幸太郎

    森国務大臣 食糧公団の末端のものは、来年の三月末で切りかえて、民間の企業体に移して行きたい。かよう考えを持つておるのであります。
  136. 井上良二

    井上(良)委員 そうすると大体もう本米穀年度内は末端配給所はこのままで置くわけでございますね。それは間違いないですね。
  137. 森幸太郎

    森国務大臣 公団の廃止につきましてほ、大体の構想といたしましては、本年度は途中できるだけ準備を急ぎまして、できるだけ早くこれを民間企業に移して行く。そうして公団は来年の三月末限り、これを廃止する。こういう計画でございます。
  138. 井上良二

    井上(良)委員 そこで非常に大事でありますから伺いますが、このいもの出盛り時期までに、万が一公団の末端配給所が民間に切りかえられました場合は、どういう現象が起るかと申しますと、御承知通り、いもは腐敗をするものでございますから、末端配給所といたしましては、何と申しますか、消費者に実際喜ばれるものを、優先的に扱うて行くわけであります。それといま一つは、危険性のできるだけ少いものを扱おうとする。そこで産地から配給所へ直接いもを持つて来ましても、それが売れたときでなければ、産地へは金を拂わないでありましようし、また実際品種のいいものだけを扱うということになります。ところが政府の買い上げますものは、もちろん一等二等で品種のいいものを選んで買うでありましようが、政府はこれを末端の配給所に売り渡します場合は、前金でもつて金をとつて拂い下げる。こういうことになると思います。そうしますと、この配給所は、政府のいもを売るよりも、いわゆる農民から直接買う方が、いろいろな点で利益でありますから、末端の配給所は、これを扱わないという現象が起り得るのであります。そうなつた場合は、政府のいもは、非常に安く売るかどうかしなければならぬ現象になると私は想定するのでありますが、そういうことをお考えになつておりませんか、おりますか。これは配給所の切りかえと重大な関係を持つておりますので、私は伺つておるのであります。それでもう時間がありませんから、最後に一言農林大臣に伺つておきたい点は、われわれ農林委員の各位の鰐見を伺つておりましても、本年度需給推算における結論から、明年度に繰越します約千九百万石を突破する持越しに対しましては、どの委員もこれを疑問に思つております。そんなに多く持ち越す必要はないという意見が圧倒的であります。従つてこれを例年のように、たとえば千二、三百万石を持ち越すとか、あるいはもつと切り下げて、八百万石を持ち越すとかいうことにいたしますならば、ここに少くとも二百億くら、の補給金が浮くのであります。この補給金を浮かしてもらつて、これを土地改良であるとか、農業水利であるとか、その他の公共事業費にこれを振り向けるように、(「賛成、賛成」と呼ぶ者あり)もしわれわれが望んだ場合、農林大臣は卒先して、予算の編成がえを大蔵大臣に談判して、農村の要求をひとつ入れるようにお力添えをしていただきたいと思いますが、その御決意のほどを承つておきたいと思います。
  139. 森幸太郎

    森国務大臣 先ほど来申し上げましたように、何もいたずらなるものを輸入するという必要はないのでありますから、井上委員の御説まことにごもつともであります。決していらぬものを輸入する必要はない。ただ現在の輸入が、一つの予定であるということを、ひとつ考えを願いたいと存じます。なお配給公団のいもの問題につきましては、大元締めは、農林省が責任を負つておるわけであります。ただ末端の配給を途中で切りかえて、自由にいたした場合においての、いわゆる代金の問題ついての、いろいろな御意見だろうと思いますが、それについては、十分研究いたしまして、取扱い業者の迷惑にならないよう、また消費者もこの切りかえによつて、さらに迷惑するというようなことがあつては、たいへんでありまするから、十分研究を加えまして、今井上委員の御指摘される点につきましては、十分研究をいたしたい。かよう考えております。
  140. 藥師神岩太郎

    ○藥師神委員長代理 本日はこの程度にとどめまして、次会は明三日午前十時より開会することにいたします。本日はこれにて散会いたします。     午後三時五十八分散会