運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1950-03-01 第7回国会 衆議院 農林委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年三月一日(水曜日)     午前十一時五分開議  出席委員    委員長 小笠原八十美君    理事 野原 正勝君 理事 松浦 東介君   理事 八木 一郎君 理事 藥師神岩太郎君    理事 山村新治郎君 理事 井上 良二君    理事 小林 運美君 理事 山口 武秀君    理事 吉川 久衛君       青木  正君    足立 篤郎君       安部 俊吾君    宇野秀次郎君       遠藤 三郎君    河野 謙三君       寺本  齋君    中垣 國男君       中村  清君    原田 雪松君       平野 三郎君    渕  通義君       村上 清治君    守島 伍郎君       足鹿  覺君    石井 繁丸君       大森 玉木君    坂口 主税君       高田 富之君    横田甚太郎君  出席国務大臣         農 林 大 臣 森 幸太郎君  出席政府委員         農林政務次官  坂本  實君         農林事務官         (農政局長)  藤田  巌君  委員外出席者         農林事務官         (農政局農業保         險課長)    庄野五一郎君         專  門  員 岩隈  博君         專  門  員 藤井  信君 二月二十八日  委員大森玉木辞任につき、その補欠として稻  葉修君が議長指名委員に選任された。 三月一日  委員稻葉修辞任につき、その補欠として大森  玉木君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  農業災害補償法の一部を改正する法律案内閣  提出第五六号)  農業災害補償法第十二條第三項の規定適用を  除外する法律の一部を改正する法律案内閣提  出第五七号)  農林行政に関する件     —————————————
  2. 小笠原八十美

    ○小笠原委員長 これより会議を開きます。  前会に引続き、農業災害補償法の一部を改正する法律案、及び農業災害補償法第十三條第三項の規定適用を除外する法律の一部を改正する法律案を一括して議題とし、質疑を継続いたします。山口君。
  3. 山口武秀

    山口(武)委員 農業災害補償制度の問題は、吉田内閣農政のきわめて重大な支柱をなすものである、このように聞いておるわけであります。それで今回この一部が改正になりまして、病虫害及び鳥獣害その他の項目が災害対象として入れられるということは、それ自体におきましてたいへんけつこうではありまするが、災害補償制度というものが、この法の目的のように、農業発展のために、あるいは農地改革後における農業の近代的な発展のためになされるものであるとしまするならば、現在の法律範囲におきましてはきわめて不徹底だと考えなければならない。これは森農林大臣は、日本におきまして現在農業恐慌がないなどというようなことを言つておられまするが、このような観点に立ちますならば問題は別でありますけれども、そういうようなことにはなつていないだろう。現在農村恐慌進行というものはきわめて重大になつて参りまして、これは一々例をあげるまでもなく、農家收入というものはほぼ半減しているというようなことが言われているわけであります。こういうときに、しかも低い米価で押えられている、重税がかかつているようなときに、農家が一旦災害を受けますと、これによつて農業経営が根本的に破壊され、その破壊から立ち直るためには、おそらく農家が一生かかるというようなひどい状状況にあるわけであります。そういたしまするならば、ここで災害補償制度につきましてさらに改正するならば、もつと根本的に問題を考えてみる必要があつたのではないだろうか。こう申しますのは、現在の農村状況におきまして、災害を受けましたときに、その收穫の価額の半額の補償というような状況をもつていたしまして、当初の目的を達成できるような現状にあるのかどうか。これはそうではなくて、おそらく全額負担をしても、なおやりきれないというような状況にありますので、これらの点につきまして、根本的に考える必要があるのではないだろうか。それからなお申し上げまするならば、現在の恐慌進行によりまして、共済金掛金の問題もきわめて大きな農家負担になりつつある。しかも現在の災害と申しますのは、多くは政府の治山、治水の事業、こういうものに対する熱意がないところから起つている。あるいは災害防止策が十分に行き届かないとこるから生じている。そうだとしまするならば、災害補償掛金の問題につきましては、全額国庫負担が当然考えら軌なければならない。これは單に夢ではなく、現在の農村実情から申しますると、やそういうような根本的な改正をしなければならない段階に立至つているのではないだろうか、もしこれを現在のような程度制度をもつてして十分とし、あるいは吉田内閣農政の基本的なものであるとするならば、ごはきわめて農村実情の認識にかけ離れたものがあるというようなことになりますので、この点に対する政府の御意見をお伺いいたしたいと思うわけたのであります。
  4. 坂本實

    坂本政府委員 農家経営を安定いたしまするために、農業災害補償制度もその一つといたしまして運営をいたしておるのでありまするが、ただいま御指摘になりました通り現存におきましてこの制度が必ずしも完全なものでないことは、われわれも承知いたしておるのでありまして、その事態に即席いたしまして、ことに国の財政等ともにらみ合せまして、その都度改正をいたしまして完全なものにいたしたい、かように考えておるのであります。備いまして、まことにどうも法の改正につきましても、徹底を欠くうらみがあるかとも思いまするが、この点いろいろな條件もありまするので、一気に完全なものに仕上げることは非常に困難でありますから、この点はひとつ御了承をいただきたい。われわれといたしましては、できるだけ早く完全なものにいたしまするために、必要な法案小改正はいたして行きたいと考えてお云次第であります。
  5. 山口武秀

    山口(武)委員 坂本政務次官は、現在の災害補償法のきわめて不徹底な占を認められまして、今後完全にして件きたいと言われているのでありますが、そうなりますると、政府の方といたしましては、たとえば減収分全額補償、あるいは災害保険掛金全額国庫負担というような方向に向いまして、なお法の改正案を準備をしておられるのかどうか。そういうふうにも受取れるのですが、そう解釈していいかどうかということを、お聞きしたいと思います。
  6. 坂本實

    坂本政府委員 ただいま農林省といたしましては、いろいろ財政負担関係もございますので、いろいろ研究はいたしておりまするが、ただいま御審議を願つておりまする程度改正を今回はいたしたい、かように考えておるわけであります。
  7. 山口武秀

    山口(武)委員 それでは一言お尋ねして終りたいと思います。と申しまするのは、現在出しておる法でやりたいと言われておりまするが、かようなことでは農業共済の当初の目的は何ら達成されない。農家の転落という問題も防止するに何らの役に立たない。しかもそれが吉田内閣農政の重大な危機をなすものだとするならば、かような農政に対する考え方では、根本的に農民は迷惑をする。これは間違つているということを申し上げて質疑を終りたいと思います。
  8. 足鹿覺

    足鹿委員 ごく簡単に二、三お尋ねを申し上げたいのであります。  この災害補償法改正案とは直接関連はないのでありますが、同じ農林省災害をお認めになつたものが、供出割当の面になりますると、それが必ずしも一致共通しない。また相手大蔵省税務関係の場合は、さらにこの矛盾が著しい。たとえて申し上げますと、私どもがいろいろ農村課税の問題について、地方財務当局懇談等をいたします場合に、国家機関が、大体において本年の災害はこういう災害であつたということで、これに対して共済保険金を交付しておるのであるから、当然課税基準について考える場合には、農業共済関係災害率というものを收入基準から差引くべきである。こういう主張をいたしますと、これを必ずしも財務当局は認めてくれない場合が多いのであります。かりに認めたといたしましても、わずかの共済保険金課税対象にするという実情なのであります。これでは事実において現在の農業災害補償法は、社会保険どころか、收穫保険にも手が届かないきわめて微温的な制度でありまして、私どもはきわめて遺憾に思うのであります。そのわずかな共済保険金まで課税対象にするということは、非常に問題であろうと思うのであります。これは課税基準の問題と関連しまして、健全な、災害補償法の発達のためには、課税上の問題について、関係当局とよく打合せしていたたき、その合理的な解決を私は要望いたしたいのであります。今までさようなことについて、当局はおやりになつたことがあるでありまじようか。まずその点をお伺いいたしたいのであります。
  9. 藤田巌

    藤田政府委員 共済保険金課税対象にする。それについて従来農林省として財務当局交渉したことがあるかということでございまするが、これは従来もその問題が出ておりまして、われわれといたしましては種々折衝したのであります。ただ財務当局意見といたしましては、共済保険金額所得にかわるべきものである。従つて、やはり一応所得としてこれを掲上すべきものであるが、たた災害のありました場合は、もちろん災害による免税の問題は特に別に考えなければならないし、またそれに見合うところの支出の面は、当然これを考えておるわけであるからして、そういたしますれば、災害があります場合は当然プラス・マイナス・ゼロというふうに、支出収入を見合いまして出るという関係で、災害については大した負担にならないではないか、こういう一応の理論があるわけであります。私どもといたしましては、理論としては、やはり共済保険金というものは所得として一応認める。これは理論としては正しいと思うのであります。ただ一応認めたといたしましても、再生産をいたします場合には、災害によつて痛手をこうむりました額の半分にしか達しない保険金で今度は再生産をするということは、非常に支障が出て来るわけであります。そういう意味合いで、別途の社会政策的な考慮をそこに拂うへき必要はないかと考えておるわけであります。従つてそういう点について、現在でもいろいろ交渉をいたしておるわけでありまして、できるだけ御趣旨に沿うように実現したいと考えておるわけであります。
  10. 足鹿覺

    足鹿委員 ぜひこの問題は御善処を願いまして、速急に解決をしていただきたいと存じます。  さらにこの負担金と無事もどしの制度の問題についてでありますが、この共済金を受取る地帶は、全国的にいいましても、大体局部的に範囲が限定されておる、また地方の都道府県の場合におきましても、大体同様なことが言い得ると思うのであります。従つて常時共済金を受取つておる地帶においては、非常にこの制度に対して共鳴もし、喜んでおるに相違ないのでありますが、この制度ができて以来一ぺんも共済金をもらつたことのない地帶——それは災害がなくてけつこうではないかと言つてしまえばそれまででありますが、そこに相当過重な負担金負担しておる農民といたしましては、この共済の真義というものを、ほんとうに心から理解することができない。実際問題として、これは経済上の問題でありまして、ただ局部の人に、同じ日本農民であるがゆえに、災害お互いの力によつてつて行こうという理想論を説き聞かせましても、それだけでは片がつかないと思うのです。どうしても過去の制度にありましたように、無事もどしの制度がやはり考えられなければならぬ。聞くところによりますと、共済組合協会方面でも、強い要望となつて現われておるそうでありますが、このことについて、いわゆる無事もどしが財政上の理由で困難であるならば、そういう局部的な被害地と、さようでない地帶負担金問題等については、検討の余地があるのではないか。何かそこに矛盾があり、具体的に解決して行かなければならぬ問題があるのではないかと思うのでありますが、この点について、当局の現在のお考えを承つておきたいと思います。
  11. 藤田巌

    藤田政府委員 無事もどしも、これは会計のやりくりが許しまするならば、考えられると思うのでありますが、御承知通り、最近は災害続きであります。本年、三十四年におきましても、共済金支拂いますために、相当額の借入れをしなければならぬというような状態でございますので、実際問題といたしまして、無事もどしを行うことはなかなかできない思つております。ただお話のように災害の多い所、それから災害少い所、こういうことがあるわけでありまして、それは県内に序きましても、大体地帶々々によりまして、危険区域というものを大体四ないし十二階級にわけまして、それぞれ災害の多い所には率が多くなつておる。そういうふうにいたしまして、その間の調整をとつておるわけであります。  それからなお今回の改正で、虫害及び鳥獣害というものを入れました関係で、相当危険が分散されると思います。従来は何と申しますか、たとえば水害でありますとか、冷害でありますとか、そういうような関係災害をこうむります地帶と、そうでない所がわかれておつたわけでありますが、今度虫害及び鳥獣害というものを加えました関係で、これは相当各地帶とも予想されるわけでありまして、従来よりも、その点に対する不満の声というものは少くなつて行くのではないかと思うわけであります。結局共済制度というものは、お互いが助け合つて——どういう際に自分の所で災害があるかもわからぬのでありまして、助け合つて、持ちつ持たれつして行く制度でありますので、ある程度はがまんをしていた、だかなければならぬと考えております。
  12. 井上良二

    井上(良)委員 今の足鹿君の質問した点でありますが、御承知通り病虫害の発生する地帶、それから風水害、日干害等が起る地帶は、大体において地理的にほとんど同一地帶が侵されるのであつて、そういう被害を何年目かに受ける地帶と、ほとんど毎年か隔年ごとに受ける地帶とにわかれておるのです。従つてそういう災害をこうむる地帶農民は、この制度は非常にありがたく考えておりましようけれども、数箇年も何ら被害を受けずに、今日の農家経営でもつて共済金をかけなければならぬという農民の実際の苦衷を考えますときには、何かそこに新しい制度を考えて行くべきじやないか。これは單に助け合う制度であるからというような、抽象的なことで農民を納得させることはできません。だからそういう点に対して政府十分検討を加えて見る必要があろうと考えるのであります。  なおこの際承つておきたい点は、新しく法を改正いたしまして、虫害及び鳥獣害をこれに加え、蚕繭共済共済事故範囲を拡大したのでありますが、これによりますところの予算の増加はどのくらいになるか。この点を一通り明らかにしてもらいたい。  それからこの共済補償のために国が莫大な国家負担をしておるのでありますが、これによりましても、災害を受け、被害を受けました農家は満足はいたしておりません。従つて今後この制度が、農民をして安んじて活用させるのには、過去のいろいろな経験から割出しまして、およそどのくらいの運用資金を持てば、完全に農家共済金支拂われるがという、安定せる一つの見通しをこの際明らかにしていただきたい。  それからいま一つは、この共済事故の発生いたしました場合の共済金支拂査定の問題であります。これは非常にあいまいなものでありまして、もちろん人によつてその被害実情が異ることは事実であります。それを大まかに九割から十割までは何ぼ、七割から九割までは何ぼ、五割から七割までは何ぼ、三割から五割まではどう、それから全然收穫不能といいますか、そのような場合はどうというようなことで、共済金支拂がきめられておりますが、この査定は一体どういう方法で、どういう人数で、どういう機関でこれをきめておるのか。このことが明確にされませんと、査定一つのやり方によつて保険金は莫大な金額にかわつて来るのであります。この押え方は、一体どういう権威ある機関で押えておるかということを、明らかにしていただきたいと思います。
  13. 藤田巌

    藤田政府委員 危険地帶と無被害地帶とはそれぞれ立場が違うわけでありまして、その点については、御指摘のような事情もございますので、私どもといたしましても、県内におきましてもまた村内におきましても、それぞれ地帶をわけまして、できる限り保険掛金を区別して、それによつて負担の公平を期するように努力いたしておるわけであります。  それから虫害及び鳥獣害を加えましたために、予算上どのくらい増加しておるかということでありますが、これは虫害及び鳥獣害ともにきわめてわずかでございまして、予算としては特にそのためにプラスがどうということは、きわめて言いにくいのであります。ただ共済事故を拡充いたしました結果、共済掛金率が若干増加いたしております。それは二十四年度は、たとえば水稲についていえば、四・九二八%であつたものが、二十五年度には五・〇五八%で、結局一・〇二六倍というふうになつております。虫害等を加えました関係上、若干共済掛金率を増加いたしたのであります。  それから共済制度を円滑に運用するために、運用資金としてどれくらいのものがあればいいかということであります。御承知のように、掛金長期バランスで考えておりますので、最近は非常に災害が多い関係上、不足金を生じております。私ども見当としては約八十億、ここに八十億見当基金がございますれば、不時の災害が起りましても、それの農家に対する共済金支拂いには、事欠かさずに行けるのではないかと思つております。この基金をできるだけ早く積みたいということで、本年度も予算を計上いたしましたが、実現しなかつたのであります。私どもといたしましては、これを目標として基金を設定するように、今後も努力いたして参りたいと思つております。  それから損害査定をどうするかと心うことでありますが、損害査定は非常に厳正に、また公平にしなければならぬわけでありまして、大体農業調整委員、あるいは作物報告補助員技術員共済組合職員食糧事務所職員、あるいは篤農家というような、二十五名からなるところの損害評価委員というものがありまして、これが現地に立合つて一筆ごとに厳正なる決定をするという仕組になつております。そして組にわかれて班をつくりまして、実地の検査をして行くというふうに考えているわけであります。お話のような点については、私どもも非常にこれを厳正にやらなければならぬということを考えております。今後ともこの点については、十分注意して指導して参りたいと考えております。
  14. 井上良二

    井上(良)委員 今の御説明によりますと、改正案にあります虫害鳥獣害を加えた場合に、そう予算上に大きな変化を生じないという御説明でありますが、鳥獣審は大したことはないと予想されますが、虫害というのは、私は相当予想され得る広範囲の場合があり得るのでありますから、この場合は過去のいろいろな例から、およそ予算的措置はこうなるという具体的なものが計上されて来なければならぬと思いますが、それは今お話通り大したことはないということでありますか。
  15. 藤田巌

    藤田政府委員 これは先ほど申しましたように、共済掛金率が、虫害を入れますために若干増加いたしております。たとえば水稲については一・〇二六、麦につきましては、〇・四九三の倍というふうに、共済掛金率が増加いたしておりますから、その掛金收入というものがそれだけあるわけであります。それによつて予算は増加しております。そして事故がありましたときに、それでまかなえるというふうに考えております。
  16. 井上良二

    井上(良)委員 わかりました。
  17. 渕通義

    渕委員 共済保険の問題につきまして一言質疑をいたしたいと思います。それは共済保險にかかりまして、共済被害を決定されました、それに対しますところの政府の税金の問題で断ります。これは地方におきましては、どうもはつきりしていないようであります。その点政府共済制度で認めた額だけは、はつきり減税の方に向けるかどうか、その点に対する最近までの動き方を伺いたいと思います。
  18. 藤田巌

    藤田政府委員 これは現存地帶によつて区々であります。非常に災害について同情的なところでは、災害についての証明書を添付することによつて、これを免除するというふうな、あるいは減額するというふうな措置をとつてくれるところもございますし、そうでないところもあるわけであります。私どもといたしましては、先ほどお答えいたしましたように、できるだけ農家の再生産のことも考えまして、農家がこの課税の点についても、何らか特典が與えられるようにいたしたいということで、現在は交渉をいたしております。
  19. 渕通義

    渕委員 ただいまの答弁によりますと、地区によつて、あるところは同情的である。これが実は聞きたかつた。それではぼくはきのうも農林大臣とやつたのですが、農林省は一体だれの味方をしているか、その点をはつきりしてもらいたい。大蔵省のための出先機関であるか、そこをはつきりしてもらわなければ、われわれ農民代表として承服できない。あるところは同情的である。ある地区は巌である。こういうことはできた災害に対してあまりにも不公平である。そういう点は農林省農民代表であるという自覚を持つてもらいたい。私は強くこの点を要望したい。現に私ども九州の常時地方においては、せつかく添付書を持つて行きましても、相手にしてくれません、これは同情的でない例である。その点をもう一ぺん坂本政務次官でもよろしゆうございますから、態度をはつきりしていただきたいと思います。今後こういう点に対してどうするかということを……。
  20. 坂本實

    坂本政府委員 淵委員から御指摘になりました点は、まことにわれわれも同感であります。なおその趣旨が徹底いたしますように、大蔵当局とも十分話し合うつもりでございます。
  21. 原田雪松

    原田委員 私も本案に対しては賛成の意を表するものでありますが、ただこの中で二、三点お聞きしておかなければならぬ重要な点があるのであります。その第一は、畜産のことを伺いますが、今回災害補償範囲を広められて、特に牛馬の方は生産共済胎児共済というようなものを含んでもらつているようでありますが、これには専門的な見地から見ると、いろいろな疑点があると思います。これは生れた子供に対する保険金は、生後の経過日数によつてやるということでありますが、一日に対してどうであるとか、一箇月に対してどうであるというような期日があるのでありますか、それを一点お伺いしたいと思います。第三点は災害補償限界の点であります。これは農産物災害にいろいろな累を及ぼしておられるようでありますが、最近では家屋災害も認めているようであります。最近末端に行きますと、現段階共済組合は、あらゆる面を把握しようとしてかかつている傾向が濃厚であります。特に資材、医薬品、機械類、こういうもののそれぞれの立場販売店があり、取扱い機関があるにかかわらず、共済組合が全部把握してやろう、こういうふうな傾向が濃厚であります。少くとも国がやられる災害補償農業共済であるならば、その限界はつきりしておく必要がある、私はさように考えているのであります。第三点は、加入者保険掛金の問題であります。これは一律でないようであります。むしろ地方末端に行きますと、従来の開業医師の薬価より金も保険にかかる方がかえつてよけいのを支拂わなければならぬというような、現実の面があるのです。こういうことは、農民保護のためにできたこの法律が、ややともすると農民負担を重くするような面が二面にある。これはゆゆしい問題であります。今後としては、これに対する大体の基準がどうなつておるか、これをはつきりお示し願いたいと思います。  次に四点は家畜診療所の設置問題であります。これは全戸加入ということになつておりますので、全国的にこれか強制加入の形をとりまして、各県とも全部これには大わらわになつて募集しておりまして、最近の情勢はほとんど加入することになつております。ところがその上に診療所を設置して、そうしてその診療所によつてやろうということになりまして、全国の七千有余の開業獣医師は大脅威をこうむつておる。この限界はつきりいたしません。だから来る三月に日本全国の獣医師大会を、GHQの示唆のもとに大阪に開くことになつておりますが、この問題に対して反対の決議をやろうという気分があるようであります。私は法律をもつて制定されている以上、こういうものには反対しないように、しかもスムーズに育つようにしなければならぬと思うのであるが、片手落ちなやり方をすると、そういう問題がただちに起つて来る。これは本部としてもよほど考えてもらわなければならぬと思うのであります。特に政府は関心を持つてもらわなければならぬ、かように考えます。保険課長が各県に出された通牒を見ますと、全部のものを網羅して、そうして和やかな気分でこの事業の遂行をやれ、こういうふうな通牒を出しております。しかしながら県次第では今もなお摩擦が非常に大きい。そうして、そこには選択主義をとるのかどうかわかりませんが、一部の者を採用して一部の者を採用しない、こういうかつこうにあることは、ますます開業獣医師の領域を侵害することになるというわけで、大きな問題を投げかけています。この点について、当局意見をこの際はつきりお伺いしておきたいと存じます。お尋ね申し上げます。
  22. 庄野五一郎

    ○庄野説明員 初めの生産共済の問題でございますが、胎児が生れましてから一月ごとに逓増するように規定しております。六箇月まで幼児には共済保險がかかることになつております。これは一月ごと金額の百分の十五ずつ逓増することになつております。  それから第三点は聞き落したのですが、第三点の義務加入の問題でございます。これは原田委員のおつしやるように、強制ではないのでありまして、もちろん共済組合で全部の総会で義務加入の制度を認めるかどうかを、十分討議して、納得ずくでやることになつておりまして、現地においてこれが当然加入のような形で指導されているということだとすれば、行き過ぎだろうと思いますので、われわれとしては、そういう点のないように、今後も注意して行きたいと思つております。  それから開業獣医の方と共済組合の診療事業との関係でございますが、これはかねてからわれわれも非常に調整に努力しておるわけでありますが、御承知のように、農政局からも開業獣医を全部嘱託にして、開業獣医の方の全面的な協力のもとに、家畜共済発展をはかるように指導しておるわけであります。現在のところでもそういう趣旨にのつとつて、全部嘱託にして非常にうまく行つている県も多数あるわけでありますが、中には今御指摘のような点がなきにしもあらずと考えられますので、この点については、個々の県についてそういう事例がありましたときに、具体的にそういうことのないように今後とも注意して、開業獣医の方との摩擦のないようにいたしたい、こう考えております。それから家畜診療費の点数制の問題だと存じますが、これは各獣医の方の診療というものが非常に区々でありますので、現在のところ手術あるいは施薬いたしました種類によりまして点数をきめまして、注射ならば同点というふうにいたしまして、その一点の單価を大体県の地方長官において、実情によつて決定していただきまして、注射ならばたとえば十点とすれば、單価三十円として三百円、これは詳しい数字は持ちませんから、たとえでございますが、そういうふうにして診療費の公平を期しておるわけであります。
  23. 原田雪松

    原田委員 私の質問中重要なものが抜けておりますが、診療所の設置見込数はどのくらい考えておられるか。なお診療に要するところの人員をどういうふうにのて持つて行かれるか。その点をお伺いしたい。
  24. 庄野五一郎

    ○庄野説明員 診療所は国から助成いたします分は、二十二年から四箇年計画で二十五年度までということで、大体一千箇所を予定いたしております。その設置場所は、大体無獣医村三箇村単位に一箇所、そういうような程度で、無獣医村に置くということでいたしております。それから診療所の獣医の採用の問題でございますが、これは大体連合会の会長あるいはそれを設置いたします町村の連合会長におまかせレておりますが、できるだけ開業獣医の方とも、あまり摩擦の起らないようにという注意でやらしております。
  25. 原田雪松

    原田委員 専門家であられませんので、答弁にたいへんお困りと思いますので、内容についてはもう私の方では質問いたしません。ただこの際調整をとられるのに私の考え方を申し上げておきます。私の県は、課長の通牒通じに全県下の獣医師を嘱託にいたしております。一応そういう大乗的な気分から包容力をもつてやる。そうしてそのうちでまずいものをだんだん落して行く。そうするといいものが残つて来る。これは確実に実力もあるし、しかもそれに協力する人間が選ばれて来られると思うのであります。どうか一律に各県の獣医師を共済組合の嘱託にして、そうしているうちにやはり経済行為でありますので、必ず技術の優劣はただちにわかつて参ります。そういうものから落して行つて、文句のないようになさることは、おそらく共済組合の前途に非常な光明を見出すのではなかろうか、さように思います。どうかそういう意味をひとつ取入れていただきたい。なおもう一つは、必ず各県には獣医師協会がありますので、この県段階共済組合に獣医師の幹部を理事に入れて、そうして横の連絡をとつて円満な運行をする、こういうことにされることが、一番よろしいだろうと思います。一応最後に専門的の質問を打切りまして、私の県でやつております状態を申し上げて、せつかくりつぱな法案であるし、しかも農村救済の目的に沿うところのこの法律に、国民が全部納得ずくで協力して、しかも農村負担を軽くする目的でありますので、当局にそういう点を御勘案願いたいと思うことを申し上げましで、質問を打切ります。さようにおとりはからい願いたいと存じます。
  26. 井上良二

    井上(良)委員 最後にちよつと伺つておきたいのは、この法案の一番重点であります虫害及び鳥獣の被害、その他関係事故被害を拡大したことに関して、大した予算的措置の増加にはならぬという理由は、掛金がそれだけふえるということになつております。ところが実際この農業共済保険掛金というものは非常に農家は困つておる。虫害及び鳥獣害というものの実際の実情を考えてみますと、これは農民の努力によつて防げない場合が多いのであります。そういう場合に農家負担にこれを着せて、それだけ掛金をよけいに出させるということは、ちよつと苛酷のようにわれわれは考える。かりに鳥獣害の場合を考えてみても、(「違うのだ」と呼ぶ者あり)何が違うのです。失敬なことを言うな。違うとは何ですか。あなたに質問はしておりはせぬ。(「内容を知らないのだ」と呼ぶ者あり)何が内容を知らぬのだ。
  27. 小笠原八十美

    ○小笠原委員長 質疑を継続してください。
  28. 井上良二

    井上(良)委員 それだから質疑をしているのだ。従つて鳥獣審被害の場合を考えてみましても、たとえば農民にその防除のための鉄砲なり、あるいは火薬なりを持たしておいて、十分そういうことができ得る処置が講ぜられるならば問題はないのです。ところがそういう措置は、今日いろいろな手続をしても、なかなか許可が下りない。そういう点からこれらの保険による損害は、当然国家全額負担をしてやるということが必要じやないかと私は思います。そういう点に対して政府はどうお考えになりますか、これを全然その被害のない地帶農民まで均等割で徴收をするという行き方は、先に申しましたような実例から、農民負担が一層重くなつて行きますから、これらの点について、もつと政府としては対策を考慮する必要はないか、こう思うのです。
  29. 藤田巌

    藤田政府委員 虫害鳥獣害を加えます結果、この共済掛金率は若干増加をするわけでありますので、当然農家負担もふえるわけでありますが、これはただ單に農家負担がふえるだけでなく、やはり国の負担もそれに伴つてふえているわけであります。御承知のように、大体国が半分、農家が半分、こういうふうな持ち方であるわけであります。従いまして、国もこれに対してやはり負担をするという建前になつております。なお全般論といたしまして、農家負担軽減の趣旨で、われわれといたしましては、できるだけ国の負担部分を多くしまして、農家農家経営に支障のない程度負担にとどめたい。これが私どもの根本の考え方であります。今後とも財政の許します限り、そういうふうに実現するように努めたいと考えております。
  30. 吉川久衛

    ○吉川委員 ちよつと関連して……。私はこの改正案はたいへんけつこうだと思いますが、井上委員が先ほどおつしやつた、この社会保障の制度矛盾するような誤解を與党の方から受けているようでございましたが、これはその農家負担を軽減するようにという意味であつて、決して社会保障制度矛盾したことをおつしやつていられるのじやないと私はこう考えますから、そういう点は国会を通じて、世間に誤解を招いてはならないと、私もこの点を強調しておきます。  それからこの法案はまことに私はけつこうだと思いますが、昨年のこの委員会において、私は政府当局に対して、うんかの発生に対して、非常な措置をとるようにということを要望いたしましたけれども、その措置がきわめて緩慢でありまして、そのために非常な災害をこうむつているのであります。この災害補償農民に安心を與えて、増産意欲を高揚させることで、まことにけつこうではございますが、その源を断つということに、もう少し政府は熱意を込めていただかなければ、ただ発生した災害補償するというような消極的なことは、これも必要なことではあるけれども、それよりはもつと抜本塞源的な施策を強化するということを、十分その前提としてお考えになつていただくということでなければ、この法案の意味はないと思いますから、どうぞその辺を十分御留意願いたいと思います。大臣がお見えでございますから、この点は特にひとつお考え置きを願いたいと思います。
  31. 山口武秀

    山口(武)委員 井上委員もおつしやつたのでありますが、今回の改正によりまして、農家負担金が、多少ではありますが、増大するという、この問題ですが、問題は現在の災害補償制度がこのままの程度におきましては、現実の農業の破壊せんとする状況に対して、これを守るというような役割を果し得ない段階に立至つておる。これは政府といたしましても、十分お考え願わなければなりませんし、当然そうなりますれば、掛金も国庫で全額負担をする。それから災害補償につきましては、減收分の全体を補償するというような方向に進まれんことを、私は一言希望して置きたいわけであります。
  32. 小笠原八十美

    ○小笠原委員長 他に質疑はありませんか——別に質疑もないようでありますから、これにて質疑は終局いたしました。  引続き両案に対する討論に入ります。討論の通告はありませんから、この際討論を省略し、ただちに両案に対する採決に入ります。両案に対し原案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立〕
  33. 小笠原八十美

    ○小笠原委員長 起立総員。よつて両案は原案通り全会一致をもつて可決いたしました。  この際、報告の件についてお諮りいたします。これは先例によりまして、委員長に御一任を願いたいと思います。が、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  34. 小笠原八十美

    ○小笠原委員長 御異議なしと認めます。それではさよう決しました。     —————————————
  35. 小笠原八十美

    ○小笠原委員長 それでは大臣が参りましたから、農林行政に関する件を議題とし、その質疑を行います。宇野委員
  36. 宇野秀次郎

    ○宇野委員 大臣がお見えになつたので、農林行政一般について大きい問題から小さい問題、数点にわたつて御質問したいと思うのであります。御承知ごとく終戰後の日本農業というものは、やみとインフレ等によりまするところがきわめて多く、従つて農家経済というものは、ある意味において安定をいたしておつたと言えるのであります。しかし最近のインフレの終息及びやみ価格の下落に伴つて、ここに農村恐慌という声が、きわめて大きくわれわれの耳に聞かれるのであります。事実農村に参りますれば、農村の経済というものはまことに逼迫して参つておるのであります。これにはいろいろ大きな点が数えられると思うのでありますが、まず第一に、私は日本農村のあり方が、最近きわめて急激に零細化して来たという事実に対しまして、農林大臣のこれに対する御所信を承りたいと思うのであります。戰争前は一戸当りが大体平均一町歩ということでありましたそうですが、最近は八反四畝といつた平均に下つて来ておる。また一九四八年から九年までの一年間において、実に人口が農村において二百十三万もふえて来ておる。戸数において五十五戸もふえて来ておるという統計が現れておるのであります。なおまた農地改革前におきましての三反未満の農家は、二一%程度であつたということでありまするが、今日においてはもう三〇%に近い状態になつて来ておる。なおこの農家生産の八〇%までを自己消費するという、いわゆる転落農家などという言葉もあるのでありますが、零細農家になりました。すなわち八〇%までを自己消費にしてしまつておるという零細農家が実に四七%余にもなつておる。すなわち日本全体の農家の半数が自己消費の農家という状態に移りかわつて来ておる状態なのであります。この問題は、日本農政を見る上におきましてきわめて重大な問題であつて農林行政を担当せられる大臣としても、きわめて大きな問題であられると思うのでありますが、これに対する今後の日本農村のあり方として、どういつたようなお考えをお持ちになつておるか、まずお聞きしておきたいと思います。
  37. 森幸太郎

    ○森国務大臣 お答えいたします。お説の通り耕地の再分配をいたしまして、零細農家の形になつて来たのであります。お話通り一町歩以上の経営規模におきましては、相当経営も合理化的に行われたのでありますが、平均八反歩となり、ことに三反、四反という小さい規模の農家経営は参その経営が非常に多角経営にならなければ、経営が困難であるという情勢であるのであります。従つてこの農地の再分配の結果、この小さい農家は大きい力によつて経営するということより道がないのでありまして、ここに協同組合の力によつて、そうしてお互い助け合つて行くように指導するということでなければならぬと思うのであります。  人口問題につきましては、当時疎開いたしておつた、あるいは疎開した者が元へ帰れないというような関係から、相当農村の人口も負担が多かつたのでありますが、漸次元の都市に復元するというような情勢になつて参りましたので、人口もやや落ちついたようには考えるのであります。しかしながら、人口の増殖率は都会よりも農村、漁村の方が多いのであります。従つて今後人口の増加率の多い農村が、耕地の拡大せられない事情のもとにおいての生済が、どういうようにして営まれて行くかということは、これは人口問題として大いた考慮をしなければならぬ問題と思うのであります。耕地のこういう状態から申しますれば、今申しましたように、この小さい力の農業者が集まり集まつて、協同組合を組織して経営を合理化なさしめるという一途あるのみでありまして、過去におきましては、相当大きい耕作地あるいは小作者というような経営になつておりましたが、これが農地法によつてほんとうの自作農としての形を現わして来たのであります。自作農の創定の目的は、いわゆる小作階級より解放して、そうしてこの土地は自分のものである。真に自分の真心をその土地にぶち込んで、永遠にこの土地を自分が耕作するんだという精神によつて日本生産率を上げて行くということを目的としてなされたものでありますので、今後この農地の状況は、あくまでも維持して行かなければならぬのであります。そうしますと、従つてごの零細化しておる農業のことでありますから、これが集まり集まつた大きい力によつて、その経営を合理化して行くということが、今後とるべき一つの方途であると考えておるわけであります。
  38. 宇野秀次郎

    ○宇野委員 ただいまの大臣の御答弁では、零細化ということが当然であるかのごとき印象を與えられるのであります。しかも日本農業が零細化をますます続けて行つても、小さいものが集まつて協同組合その他の共同的の力によつて大きく存立し得るというような印象を與えておるのでありますが、しかし大臣御自身も、零細化して来ることに対しては強い防止策を考えなければならぬというお考えを持つておられることと私は認める。これは何人といえども零細化を防いで参らなければ、日本農村は今後あり得ないと私は思うのであります。ただこの零細化して参るということには、低農産物価の供出強行という姿がここに拍車をかけて、今日になつて来ておると思うのでありますが、大臣は低物価ということ、あるいはまた供出強行ということをお認めになりますか。あるいはお認めになりますとすれば、物価の改訂あるいはまた供出に対する別の角度から制度をかえるというようなお考えを持つておられるかどうか、この点をお聞きいたします。
  39. 森幸太郎

    ○森国務大臣 農産物の価格の問題につきましては、常に適正な価格を発見するということに努力いたさねばならぬ、かように考えております。再生産のなし得る価格というものを考慮して、農産物の価格をきめて行かなければならぬと思うのであります。  供出強行というお言葉がありましたが、今日の供出制度をいつまで持続するかという問題であります。二十六年度の三月限り現在の法制は一応その役を終るわけでありますから、今後の食糧事情を勘案いたしまして、食糧の管理については、さらに別の方策を考え得られる時期が来るのであります。現在の供出制度必ずしも私は完全無欠と考えておりません。増産をはばむ理由もそこにいくらか含まれておりますし、またほんとうに心からの協力をなし得ないという事情もそこにあるようにも考えられますので、この供出制度を必ずしも私は理想的とは考えておりません。今後食糧事情の変化等に即応していろいろの方策を考えなければならぬことはもちろんでありますが、現在の供出制度は相当将来において改正して、真に食糧問題に農家が心から協力し得られるような方策を勘案して行かなければならぬ、かように考えておるわけであります。
  40. 宇野秀次郎

    ○宇野委員 供出制度に対して、自然の状況によつてそれぞれ即応されて今に緩和されるであろうというようなお考えでは、私はきわめて心細いと思うのであります。現段階において供出制度の、農民の納得する姿を盛り入れる新方策を考うべきだと思いますが、この点はあとに譲りまして、農村恐慌のもう一つの問題としましては、何といつでも輸入食糧の増加に影響されておる点が多いのであります。私はこの輸入食糧に対しましては、すべからく日本は自治的の考えをもちまして、計画的に物を考えて行くべきであると思うのであります。これに対しまして農林大臣委員会において御失言をなさつたことを私は聞いたのでありますが、今年度の計画されておる輸入食糧はどうであるか、この点をまずお聞きしておきます。
  41. 森幸太郎

    ○森国務大臣 輸入食糧はガリオア物資その他の方法によつて輸入されておるのでありますが、これが本年の七月以後になりまして、この援助物資から食糧がどれだけ入るかということは、将来の問題でありますので、現在日本の外国食糧は三百四十万トンの予定をいたしておりますけれども、これが予定して予定し得られないような情勢にあるのであります。従つて日本の食糧といたしましては、できるだけ自給力を高めまして、そしてなおかつ足らぬ分に対しましては、日本の輸出の力によつて自主的にこれを確保するということに努めて行かなければならぬのであります。従つてそれには輸出の盛んであるということが重大な條件でありますので、これは工業方面とも関連のあることでありますが、日本といたしましては、輸入食糧に依存するということでなしに、できるだけ自給力を高めて行くということが、何をおいてもとるべき政策と、かように考えておるわけであります。
  42. 宇野秀次郎

    ○宇野委員 次に物価庁が先般発表した二十五年度の農家経済、農家家計の表によりますると、非常に楽観的な表を持つておるのであります。すなわち二十五年度においては、家計負担は一・九四%上るけれども、税の減額が見込まれることによつて一五・二二%軽減される。従つて差引一二・〇八%農家経済は楽になるというような表が出て奉るのであります。しかしこれは恐るべき誤りではないかと私は思つておるのであります。農林当局においても、かような計数を出して御安心なすつていらしてはならないと思うのであります。この計数の根拠によりますると、鉄道運賃による日用品等の物価の値上げ、あるいはまた農家收入面における変動、あるいはまた肥料の値上りの問題等も勘案し湧いというような、まことにずさんな計画になつておるのであります。すなわち肥料も昨日の質疑で伺つたのでありまするが、一月において正割上り、三月において一割五分上る。しかも七月においてよ七割上るというような農家にとつてはきわめてきびしい負担になつてつておるのであります。かようなことを考えますると、農家経済というものは、昭和二十五年度においてはこれは恐慌と申しまするか、危機になるのではないかと思うのであります。特に税の問題が、一五・二二%軽くなるということになつておりまするけれども地方税の住民、税その他の増額から考えますると、むしろ私は税金はふえても減らぬのではないかというような考えさえ持つのであります。かように考えて参りますると、農家生産されたものは高くならずに、すべてのものの負担が相当重くなつて来るということから、シェーレ現象は昭和二十五年度においてはさらにひどくなるのではないかと思うのでありますが、農林大臣はこれに対してどうお見通しをなさつておるか。
  43. 森幸太郎

    ○森国務大臣 物価庁の計数も一応の計算でありまして、必ずしもそれが誤つておるとは考えません。物価の変動は需給関係に支配されるのでありまして、今日日用品は予想外に下落の方向をとつておるものもあります。  税制の問題につきましては、国税が安くなつて地方税が相当高率に上るわけでありまするが、大体農家負担といたしましては、前年に比較して二七%くらいの負担が軽減される計数が出ておるのであります。しかし物価というものがどういうように変動いたしますか、今日では低落の一路をたどつておるのでありますから、日常の生活品の価格はやや落ちておるように考えられるのであります。ただ農産物の価格もまた市場の人気に左右されまして、いわゆるやみ価格というものが全然なくなつて来るというような考え方で、いわゆるシェーレ状によらざるを得ぬ、收入にならないようになつて来るのでありますが、これは正しい生活に入つて来るわけでありますので、従つて購入するものに対しましても、このやみのないいわゆる正しい日用品が買い得られるということによつて、経済の常態に復して行くのではないかと思うのであります。従来農村は思わざる金が入つたというので、インフンーシヨン的な状況であつたのでありますが、一応これがおちつきまして、いわゆる金の使い方だけは覚えたが、もう金がなくなつた、こういうような状態で、非常に農村が不景気になつている円いうように考えるのでありますが、私は今日の農村の方々が、よくこの時局に冒覚められまして、そうして経済上のおちつきが現われている。中金などの調査によりましても、各府県における協同組合の状況は、金をあまり出さない。今までは米を売つたら米の代をみなとつてしまう。繭を売つたら繭の金をみな手元に置く、いわゆる金なしの生活ができないどいうように、金を常にふところに入れておきたいという考えであつたものが、漸次改善されまして、資金に対する重要性、金の値打ちを考えられるようになつて来た形勢にあるように伺つておるのであります。今日の不況は決して農村だけでありませんので、中小工業その他あらゆる階級にこういう問題が起つておるのでありますが、私は三十五年度の農家経営は、必ずしもそう悲観したものでないのではないか、かように考えているわけであります。
  44. 宇野秀次郎

    ○宇野委員 農村恐慌の問題に対応いたしまして考えなければならぬ問題は、金融の問題があると思うのであります。農林大臣は、現在の中央金庫法によつて今日の農家の資金需要を満足させ得ないということは、お認めになつておると思うのであります。従つて農林中金法の改正、すなわち増資、債券の発行、あるいはまた長期の融資の道というようなことによつて、中金法を法的に改正すべき時期に達していやしないかと思うのであります。これに対してのお考えを伺いたい。
  45. 森幸太郎

    ○森国務大臣 農村の金融問題については、たびたび御質問がありましたのでお答えいたしておるのでありますが、中金の四億万円の出資を八億万円にいたしまして、さらに見返り資金より二十億万円の融資をいたしまして、三十六億という基金によつて資金の融通をいたしたい。かような計画をもつて農林中央金庫法の改正を今計画いたしておるのであります。ところが中金というものは、御承知の協同組合どいうものが目標になつておりまするので、中金の改正に相伴つて、協同組合の強化ということが最も重要であるのであります。協同組合は御承知の、つくりまして二年目なのでまだ脆弱であります。しかも農業会からの引継ぎ等の関係より、非常に資金面で困つているのであります。現に昨年度の問題から、目下各協同組合におきましては、資金面に非常にきゆうくつな状態にありますので、この協同組合を一日も早く強化するようにいたしまして、せつかく企画いたしておる農林中央金庫の資金の融通が、スムーズに行くようにいたしたいと考えておるのであります。何分まだ協同組合も創設以来二年余りでありますので、その基礎がまだ磐石の強みを持つておりませんために、中金法の改正と相まつて、これらの強化を一層進めて行きたい、かように考えているわけであります。
  46. 宇野秀次郎

    ○宇野委員 時間の制約を受けておりますので、箇條書的になりますが、さらにお尋ねいたしたいと思います。大臣は先般の車中談で、雑穀の統制解除をするというようなことを御発表になつたと、新聞は伝えておるのであります。しかし最近の食糧調整委員会におきまして、雑穀の統制を続けると言明なさつた、これまた新聞で聞いておるのであります。この際委員会を通じまして、雑穀の中でも大豆、とうもろこしを除いたほかの雑穀に対する方針に対して、御説明を願いたい。
  47. 森幸太郎

    ○森国務大臣 これは記者会見のときにおける新聞記者諸君、これは専門的な知識をお持ちになつておりますけれども、私の口不調法か、新聞記者諸君の聞き不調法か、真意が新聞に誤られて伝えられたのは、非常な迷惑をいたしたのであります。実際私はごとしの事前割当において、雑穀の八十万石を割当いたしております。この雑穀を減らせば、米をそれだけ供出してもらわなければならぬのでありますが、雑穀というものは單作地帶、ことに畑作地帶におきましては、相当重要な役割を持つておる農産物でありますので、ことに北海道のごときは、大豆であるとか豆類、そば、燕麦というものは、内地における米と同様の役割を持つた雑穀でありまして、今日の食糧計画では、これらの雑穀を含めた事前割当をいたしておるのであります。しかしこの雑穀の中にはグリーンピースであるとか、あるいはそぼであるとか、あるいは何とかいう、とても主食の代替として配給のできないようなものまで雑穀に包含いたしておるのであります。確か十何種類かあつたと存ずるのであります。今日の食糧事情から申しまして、こういう十何種類も、雑穀として主要食糧なみに取扱うことは必要でない、かように考えておるのでありまして、一日も早く小豆であるとか、グリーンピースであるとか、らつかせいであるとかいうものは、はずしたいという気持は持つておるのであります。ですから私はそういうものはできるだけ早くはずしたい。しかし日本の食糧事情は、もちろん今年の食糧年度は十月まででありますが、二十六米穀年度の食糧事情は、七月まで行かぬとはつきりしないのであります。と申しますのは、御承知通り日本は自主的に全部をやつておるというわけに参りませんので、アメリカの国会が六月に開かれまして、その結果日本に対してどういう食糧対策をとるかという、陸軍の予算が決定して始めてわかるのでありますから、もし七月ごろになつてこの見通しがついた場合においては、今申しましたような雑穀の中から、あるいは幾分のものは除外してもよいのじやないかと考えておるのであります。決して、今割当をしておきながら、その雑穀を途中ではずしてしまうというような暴挙を考えておるわけではないのでありまして、その点が誤まり伝えられて、いろいろ皆さんに御心配をかけたことは、はなはだ恐縮にたえませんが、そういう気持であることを御了承願います。
  48. 宇野秀次郎

    ○宇野委員 次に、木炭の統制は、現段階においては、すみやかに解除すべきものであると思うのであります。これは時期を失しますると、むしろ統制を解除した結果はきわめて悪いことが予想される。現にもう今日の木炭の生産事情は、相当減産になつて来ておるのであります。木炭の統制に対する大臣の御所見を承りたい。
  49. 森幸太郎

    ○森国務大臣 木炭の統制は、実は昨年の八、九月ごろに全部撤廃いたしたいという考えを持つておつたのであります。ところが、御承知通り特別会計の整理の過程にありまして、この際全部これをはずしてしまうということにおきましては、この赤字整理の過程において非常な支障を起すことと、また産地に対する影響も考えまして、できるだけすみやかに統制をはずしたいという気持で、今日までその時期をねらつて参つたのでありますが、もうすでにこれを全部撤廃いたしましてもよい段階に入つておると考えますので、関係方面の了解あり次第、至急にはずす考えをもちまして、目下折衝を続けておるわけであります。近くこれは了解を得られるのではないかと考えておるわけであります。
  50. 宇野秀次郎

    ○宇野委員 私はすみやかにこの際解除せられんことを望んでやまないのであります。  次にいもの買上げを御発表になつておられる。ただしかし、いもに対しましては、今もつてその価格の立て方も公表されておらない。また、ただいま巷間に伝わるところによりますと、価格は自由売りの値段をしんしやくしてきめるであろうというようなことが言われたり、あるいはまた、地域差によつて、全国的にプールではなくて、地方地方によつて別々にするというようなことも言われておる。あるいはまた、早期の分は高くて、最盛期に安くなるということは考えられますが、だんだんしまいに安くなる、要するに初めが高くて、順々に月別に安くするという考え方を持つておる、いろいろ伝わつておるのであります。農民といたしましては、この際いもの割当も受けておる時期に達しておるのでありますが、価格については米価に対比して決定するとか何とかいうこと、あるいは月別にするにしても、月別のやり方はどういう率で行くとか、あるいはまた地域差ということはどういうようなことにするということの御発表も考えて行かなければ、農民に対してきわめて不満の声を大きくするにすぎないと思うのであります。このいも買上げに対する価格の立て方に対して、どういうお考えか、あるいはまた地域差といつたようなことで、地方々々によつて値段もかえるというお考えであるか、月別価格を実施するとすれば、どういつたような仕組でやられるのかということに対してお考えを聞きたい。
  51. 森幸太郎

    ○森国務大臣 いもの一部予約買上げということにつきまして、自然いもの自由価格に左右されることはもちろんであります。しかし政府といたしましては、一定の方針をもつて価格をきめなければならぬのでありますが、一等二等という検査等級だけに限られております。また品種におきましても、ある品種を指定いたしまして、その品種によつて地区的にいろいろ、九州、四国方面にはこういう品種を認める、あるいは関東方面はこういう品種を認めるという、品種も指定いたしたいと考えるのでありますが、価格は米価を基準として考えて行きたいと存じます。今までかんしよは百五十貫、ばれいしよは百八十貫をもつて一石という基準になつているのでありますから、その米換算の価格によつてきめて参りたい、かように考えているわけでおります。地域ということについては、運賃等の関係もありますが、そういう面に対して、どういうふうに運賃のプール価格を持つて行くかということを、まだはづきり発表いたします段階まで入つておりませんが、大体米の価格を基準といたしまして、そうして検査等級、品種というものによつてこれを買つて行きたい、かような考えを持つているわけであります。
  52. 宇野秀次郎

    ○宇野委員 いもの問題については、これはすでにもう食糧の配給辞退という姿が相当出て来ている。いもの一部買上げをして、すなわち四億万の買上げをして、そうして食糧の配給として流すという計画でありますけれども、あるいは七月の米穀年度によつて食糧の見通し等の緩和あるいはまた麦の豊作その他の作柄の状況等によつては一いもの配給辞退、買わないというような姿が相当出て来るのではないかというようなことを、一応予想しなければならぬと思う。もしそういうふうなことになりますと、これは結局食管特別会計の赤字を非常に増すようなことになりはせぬかとも思うのであります。また一般の国民としては、八百屋にある自由物の方が、何か魅力があるような感じで、そつちの方に買いついて、政府の売るものに対して辞退をするというような姿も予想されると私は思う。これらに対する農林大臣の見通しを、この際承つておきたいと思います。
  53. 森幸太郎

    ○森国務大臣 これは宇野君の見方と、またそれを逆にした見方があると思います。二十四年度のいもの供出後の自由販売を認めましたために、いもがどんどん八百屋へ出て来ている。そういうような場合に政府に買つてもらつた方が、マル公の方が高い、こういう場合もあります。また特殊のいもを生産している地帶は、統制をやめたために高く売れる。神奈川県であるとか静岡県であるとか、特殊ないもを生産するところは、今まではマル公では安か  つたが、その土地のいもの特質を認められて、高く売れるようになつたというような地方もあるのであります。これはいもの一部分が自由市場に出たことによつてであります。それでありますから、この二十五年度において、いもの一部買上げをいたしましても、配給辞退ということはおそらくないと考えておるのであります。あるいはむしろ予定したいもよりも、もつと多く買つてくれというような向きができるというようなことも予想されるのであります。もし配給辞退等がありましたならば、これは蔬菜用に自由になし仰る道があるのでありますが、自由市場というものは、その生産状況によつて価格が左右されるのでありますから、必ずしも安くなつて政府は買い上げるのに一定の限度がありますので、それ以上は買わないのでありますから、大体今申しました、現在の米の価格を基準にしていもの価格を定めまして、予定の員数を買い得るところの予算を立てておるのでありますから、決して赤字が出るというようなことはない、かように考えておるのであります。
  54. 小笠原八十美

    ○小笠原委員長 それでは本日はこの程度にとどめまして、次会は明二日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後零時三十二分散会