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1950-04-27 第7回国会 衆議院 通商産業委員会 第38号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年四月二十七日(木曜日)     午前十一時十五分開議  出席委員    委員長代理 理事 神田  博君    理事 小金 義照君 理事 澁谷雄太郎君    理事 永井 要造君 理事 村上  勇君    理事 今澄  勇君       阿左美廣治君    岩川 與助君       江田斗米吉君    門脇勝太郎君       首藤 新八君    關内 正一君       多武良哲三君    中村 幸八君       福田 篤泰君    河野 金昇君       伊藤 憲一君    田代 文久君  出席国務大臣         通商産業大臣  高瀬荘太郎君  出席政府委員         通商産業政務次         官       宮幡  靖君         通商産業事務官         (資源庁電力局         長)      武内 征平君         通商産業事務官         (資源庁電力局         電政課長)   小室 恒夫君  委員外出席者         專  門  員 谷崎  明君         專  門  員 大石 主計君         專  門  員 越田 清七君     ————————————— 四月二十七日  風早八十二君が理事に補欠当選した。 本日の会議に付した事件  理事の互選  公益事業法案内閣提出第一七八号)  電気事業編成法案内閣提出第一七九号)     —————————————
  2. 神田博

    神田委員長代理 これより通商産業委員会を開会いたします。前会に引続き私が委員長の職務を行います。  まず理事補欠選任の件についてお諮りいたします。風早八十二君が一度委員を辞任されまして、再び現在委員に選任されておるのでありますが、同君理事をしての資格が失われておりますので、この際同君従前通り理事に選任いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 神田博

    神田委員長代理 御異議なしと認めます。風早八十二君を理事に選任することに決します。     —————————————
  4. 神田博

    神田委員長代理 ただいまより公益事業法案及び電気事業編成法案一括議題として審査を進めます。質疑を継続いたします。福田一君。
  5. 福田一

    福田(一)委員 昨日は私は九分割になつた場合に建設電源開発が促進されるかどうかということについて、質問をいたしておつたのでありますが、そのことについてきようはさらに質問を継続いたします。  そこで資料の「其の二」の六に水力発電所開発計画というのがありますが、この資料によつて見ますと、発電單価というのが、出ております。この発電單価というのは、いわゆる山元單価であるかどうかということについて、長官の御答弁を願います。
  6. 始関伊平

    始關政府委員 ただいまの單価山元單価でございます。
  7. 福田一

    福田(一)委員 山元單価であるといたしますと、これが消費者にわたつた普通のいわゆる電力費というか、電力値段というものは、大体発電設備に対しまして送電設備は、ほとんど同等の経費がかかるものと私は考える、さらにまた送電をいたしておりますときに、ロスを二割ないし三割見込まなければならないのでありますから、この発電單価消費者にわたるときには、約二倍半くらいに計算すべきものと考えるのでありますが、これに対するお考えはいかがですか。
  8. 始関伊平

    始關政府委員 山元における單価に対しまして、ロス並び経費等といたしまして、四割程度を加えたものが、消費者価格になるというふうに考えております。
  9. 福田一

    福田(一)委員 これはしからばいわゆる発電所自体経費と、送電関係設備というものとは——これはもともと送電線がその地点にあつて、そうしてそとまでひつぱつて来る場合はよいが——いわゆる負荷して行く場合は別ですが、送電線を引くという場合になれば、当然これは二倍くらいの経費になると考えるのですが、今までの数字はどういうふうになつておりますか。
  10. 始関伊平

    始關政府委員 送電線新規に増設いたしました場合におきましても、大差ないと考えております。
  11. 福田一

    福田(一)委員 それではただいまの御答弁を正しいものとして、私は電力建設の問題を論じたいのでありまするが、この開発計画内容を見てみますと、電気事業編成資料の十七によりますと、北海道東北各地電力調整を行わない場合の料金が一キロ当りで出ております。それから調整行つた場合の料金がここに出ておる。この料金と比較いたしまして、各地発電所発電單価に四割のものをかけて採算が合うかどうかという点を考えてみますと、私の計算したところでは、まず北海道の蘭越、下愛別、東北行つて沼沢沼その他ずつと勘定して行きまして、十九箇地点は絶対に採算が合わない。さらにまたその他の九地点はやつて利益がありません。そういうことになると、この発電計画によると、約百九十三万キロの開発を行われる予定であるが、約九十万キロは採算割れになりますが、さように考えて間違いありませんか。
  12. 始関伊平

    始關政府委員 ただいま御指摘資料に出ておりまする電力料金は、いわゆる消費炭における料金でございます今度は前提が違うのでございますが、そういうことになりました場合に、発電地点開発いたしましたあかつきにおいて、採算が合うか、合わないかということでございますが、これにつきましてはいろいろな考え方があろうと思います。現在電力相当不足がちでございます。その不足は結局において火力発電の増強によりまして補うという形になりますので、水力開発いたしまして、それの採算が合うか、どうかということは火力と比較してやつた方が、一應妥当ではなかろうかと考えるのでございます。その点につきましてはきようお配りいたしました資料をごらんいただきたいのでありますが、その第一表におきまして最高、最低平均とございまして、各地区別に出ております。それをさらに第二表、第三表で水力火力と、同じ地点まで持つて参りました場合の料金の比較がそこに対照できるようになつておるのでありますが、これでごらんいただきますように、北海道東北以下全国の各地区のすべてにおきまして、火力発電に比べましては相当に割安になつておりますので、電気がただいまのように不足がちであるという状況のもとにおきましては、なおそれを火力発電によつて補わなければならないという現状のもとにおきましては、ただいま予定いたしておりまする各地点発電所とも、すべて今後採算が成立つはずであるというふうに考えております。
  13. 福田一

    福田(一)委員 ただいまの御答弁では、火力発電と比べた場合の御答弁がありましたが、私は日本産業というものを今後復興させて行くためには、低廉な建設費によるととろの低廉な電力産業に供給して行くということでなければ、私は電力政策というか、電気事業に対する政府政策としては間違つておる、かように考えるのであります。そういう意味から考えてみますと、一応現在の消費地單価というものを見まして、それがある地点において電力開発した場合に、それでもなお利益があるということでなければ、たとい電力が不足いたしましても、九ブロツクなつた場合においては、そういうような高い経費使つてまで、私は電力開発ということはあり得ない。かように考えるのであります。この点については火力をもつてつておるのであるから、それでよいじやないか、火力よりは安いのであるからやれるだろう、こういうような想定をされておるのでありますが、これは電力政策において今後の日本水力を、どういうふうに利用して行くかという面からいつても、私は非常にその考え方を異にしておるということを申し上げておきます。  その次にお伺いしたいことは、今度は賦課金というものをこの再編成によつて課せられるのでありますが、この賦課金というものは一体どういう性質のものであるか。そうして今までにそういう例があるかどうか。電力以外のものでもよろしいが、そういう例があるかどうかということを承りたい。
  14. 始関伊平

    始關政府委員 今度のいわゆる賦課金に比較すべきような前例といたしましては、現在日発が各地区配電会社に対しまして、卸売料金決定いたしておるのでありまして、その際に各地区地域差があまり大きくならないようにということを考慮いたしておりますが、これが実質的にはそういうものの一つの例と申しますか、非常に関係の近い例になつておると思います。形式的に申しまして、今度の場合のような法律上の形その他を備えましたようなものは見当らないかと存じております。
  15. 福田一

    福田(一)委員 今御説明になつたの日発プール計算制を行つておる、これがこの法案の実質的な裏づけになつておることである、かように承知するのでありますが、しかしこのようなものを法律によつてつくるという場合においては、これは従来日発がそういうことを株主の承諾を得て、いわゆる重役がこれをやつておるのでありますからして、これについて云々することは私は必要ないと思いまするけれども、日本憲法には第二十九條によつて財産権を侵してはならないということは書いてあるわけであります。その場合に今後新しい株主が古い株主権利侵害の問題もあるし、今度は九分割された場合の新しい株主権利侵害の問題も出て来るわけであります。この場合においてこういうような税金にひとしいものを、ここでかけることが妥当かどうか、こういう法律論について大臣の御返事を伺いたい。
  16. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 お答えいたします。賦課金という名前はとにかくといたしまして、今度の法案で実行いたしますのは、いわゆる賦課金というのではございませんで、料金調整会社間の協定でやつて行く。できない場合に公益事業委員会から強制的に協定をさせる、こういうことになつておりまして、つまり非常に低原価のところの料金を少し高くして、料金をよけいとらせるわけです。そうしてそのよけいとつた分を、一方の会社から他方の会社調整金という形で渡す協定をする、こういうことになつておるわけであります。
  17. 福田一

    福田(一)委員 今のお話では私はわからないのであります。というのは、私の言つておるのは税金以外のものを法律でもつて、しかも今度は五人委員会というものが、まあ五人の委員でもつてできるのでありますが、こういうことをこれらの人に包括的に権限を與えてしまうということになるわけであります。いわゆる財産権については、この五人の委員権利を與える。なるほど最初協定しろ、協定したらいいじやないか、こう言つてつてつたのであります。協定がいやだ。それはいやに違いありません。何となればほんとうを言えば電力をたくさん持つておるところのものが、たくさん持つておらない会社に対して金をやろうなどということは、独立採算制をとつて、いわゆる民有民営建前でやるものならば、これはいやにきまつておる。決してそんなことは承知するはずはない。そうすればこれはどうしても命令でやらなければならない。つまり元々から命令でやるということを、想定しなければこのことは成り立たない。そうすれば命令でやらなければ成り立たないということであるならば、財産権を当然この五人の人たち侵害する場合も起る。こういうことが私は想定されるのであります。こういうことは憲法の問題と考え合せて違反にならないかどうか、この点をどういうふうにお考えになるかということを、私はお伺いしておるのであります。
  18. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 お答えいたします。会社利害関係から申しますと、先ほど申しましたように料金をそれだけ高くして、高くした分を渡しますから大した影響はないわけであります。法律問題としてそういうことを協定できなかつた場合に、委員会がむりに協定させるということがどうか、こういうことになるかと思いますが、條文にありますように、公共福祉、民生の安定に必要がある場合ということになつておりますから、その点はさしつかえないのじやないか。またそういう協定をする場合におきまして不服、異議があるかもしれません。そういう場合には異議を申し立てて聽問会を開いて、公益事業委員会が適当な処置をするという手続もきめてありますので、私はさしつかえないと思つておる次第であります。
  19. 福田一

    福田(一)委員 ただいまの御説明では、私は自分の望んでおる答弁にはならない。なるほどこれは私有財産憲法二十九條を読んでみますと「財産権内容は、公共福祉に適合するように、法律でこれを定める。私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」こういうふうに出ております。この條文から見て、それに一応よつたようなことになつたといたしましても、しかしその五人の人に包括的にそういうような権限を委讓することがいいかどうか、これができるかどうか、こういう問題を私はお伺いしておる。その憲法解釈論を、私は承りたいというのであります。
  20. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 財産権の問題でありますが、つまり調整金というものを渡す、その調整金の範囲というものは料金の中に織り込んで余分にとつた分についてであります。ですからその点で相当一般財産権侵害という場合とは違うところもあると思います。それからまた公共福祉に必要である場合ということになつておるのと、それからそれを公益事業委員会委員五人だけでもつて勝手にきめてやるということは、これは重大なことでありますからもしそれについて不服がある場合には、聽問会も開いてやるということになつておりますので、私は憲法に抵触はしないと解釈をいたしておるのであります。
  21. 福田一

    福田(一)委員 これはもつと追究して行くべき問題でありますが、まあ一応説明を承つておきます。そこで今度のこの賦課金というものは、水力に対しては大体どのくらいをとるという予定で、この法案をおつくりになつておられますか。
  22. 始関伊平

    始關政府委員 この点は将来における石炭の価格あるいは水力発電につきまして、資産の再評価をやるかどうかというようないろいろな未確定な点がございますし、またただいまお話のように公益事業委員会権限になつておるわけでございますが、一応ただいまの料金地域差大差のない程度に、将来の料金をとどめるというような観点からいたしまして一応の試算をしてみますと、火力に対しましては補給金を一キロワツト当り一円六十五銭やりますとよろしい。従いましてその財源といたしましては、水力賦課金を一キロワツト当りにいたしまして、これを常時電力とその他にわけまして、常時といたしましては二千三百四十円、その他は七百八十円、平均いたしまして千五百円程度のものを一キロワツト当りからとりますと、ただいま申し上げましたように火力に対しまして一キロワツト当り一円六十五銭程度補給金が出せる、こういうような一応の試算に相なつて、おります。
  23. 福田一

    福田(一)委員 その場合において取立ての方は定額でやつております。ところが火力の方は、渇水期増水期とでは、非常に違つてるのであります。渇水期の場合においては一円六十五銭ではとても足りない、従つて料金をうんと上げなければならないという事態起ると思いますが、その場合にどういう方法を講ぜられる予定ですか。
  24. 始関伊平

    始關政府委員 ただいま一応の資産を申し上げたのでありますが、法律にはつきり書いてございますように、取立てます方は、キロワツト当りでもよろしゆうございますし、またキロワツト・アワー当たりでもよろしい。どちらの方法がよいかという点につきましてはただいま御指摘のようにむずかしい点があるのでありますが、これらの点は公益事業委員会において、さらに詳細に検討を加えまして、その際において具体的に規正がきまるものというふうに考えております。
  25. 福田一

    福田(一)委員 それは非常に不安定なものである、料金調整をするという意味においては、かなり不安定な素質を持つておるものであるということが、ここに明瞭になつたと思うのであります。  次に賦課金というものは、日本の今の財政の面から見てみますと、補給金性質を多分に持つておるものとも考えられると思うのでありますが、大体独立採算制をとるために九ブロツクにわけて行くのに、最初から補給金のようなものを支給するということは、現在のドツジ・ラインによつて補給金廃止の方向に向つておる政府政策と相いれないものがあるのではないか、かように考えられるのでありますが、これについて大臣の所見を承りたいと思います。
  26. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 ただいまのお話ドツジ・ラインとの関連等で、補給金廃止の方針というものは、国家産業に対する補助的か意味、援助的な意味において出す補給金、こういうふうに考えられるのであります、今度の賦課金というものは会社同士の間の調整金でありまして、本質においてはむしろプール計算的な性質を持つておるものと、私どもは解釈いたしております。
  27. 福田一

    福田(一)委員 これについてもまだいろいろ議論がありますが、一応承つておくことにいたしまして、次に公益事業法案について承ります。これによりますと、公益事業法案で一番先に問題にしなければならないのは、株主権利の擁護について、非常に私は規定が薄いように見られるのであります。今度九ブロツクにわけました場合には、資料の二十一によつてごらんくださるとわかるのでありますが、どういうふうに株の比率をきめたらよいかということは、こういう方法もあるし、こういう方法もある、しかし結局わからない、今のところではどれがよいのだかわからないというような資料が出ておるのであります。こういうようなわからないことを前提として、ここに十のものを九にわける、こういうことは私は株主権利を擁護する建前ではない。これはこの法案を提出される前に、大体の資産内容その他を検討されまして、このような比率としてわけるべきものであるという資料があつて、初めて出さるべきものだと考えておるのでありますが、これに対する大臣答弁を伺いたいと思います。
  28. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 再編成の場合の新規会社指定会社の間の株の関係、その比率の問題は非常に愼重にこまかい点を十分考慮して、やらなければならない問題であります。従つてそういう問題を法律できめてしまうことは、私は適当でないと思うのであります。実情を十分に調べまして、こまかい点までよく考慮して、公平に愼重決定すべきものであると思うのであります。それも公益事業委員会愼重嚴正にやるということにいたしておく方が適当ではないか、それで比率決定の仕方のいろいろな方法が、参考資料の中に書いてございます。その比率決定の場合の方法といたしましては、御承知のようにいろいろな方法がありまして、どの一つ方法だけによるのが最もいいということは言えないのであります。これはやはり実情に応じましていろいろの方法を調和し、適当な折衷等もいたしまして、決定しなければならない問題だと考えておりますので、これはやはり公益事業委員会において、愼重にやるのが適当だと私は考えます。
  29. 福田一

    福田(一)委員 今のお話ですと、私はこれは非常に不準備法案だと思う。こういうような株主権利に関するようなことを、一応公益事業委員にまかすという考え方でやることは——大体公益事業委員会というものは、新しい制度でありまして、この運用いかんでは非常な專制的な、かえつて惡い面が出て来る可能性が多いのであります。そういう欠陥が非常にあると私は信じておる。そこで大体法案を審議いたします場合においては、この公益事業委員会が今後やるであろう問題については、議会においてできる限りわれわれしさいに検討してみる、できればむしろ命令案なりあるいは政令案なりそういうものがあつて、大体こういうことをするのだということがはつきりした上でやれば、そういう疑問を国民に與えることはありませんけれども、こういうような財産権の処分の問題としましても、あるいは電力調整に関して命令を出す場合におきましても、全部これを委任してしまう、單に公共利益に反しない公共利益に適合するようにやるのであるという、それだけの制限を付して、五人の人にこういう重大な個人の権利並びに社会福祉の問題を委任してしまうということは、非常に危險である。かように私は考えるのでありますが、大臣はどのようにお考えになつておりますか。
  30. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 法案にありますように、この比率の問題も、一応は会社相互間できめて出すということになつております。それができない場合等について、公益事業委員会決定をするわけでありまするが、それに対して不服があり異議があるという場合には、訴訟もできるということになつております。でありますから、むりやりに頭からこうしいろというふうになつているわけではございません。それから公益事業委員会というものは、お話の通り確かに非常に大きな権限を持つ委員会であります。その運用がもしもあやまるということになりますると、重大な欠陥を生じて来るということは事実でありますから、公益事業委員の選定につきましては、十分これを嚴選して、運用を誤らぬようにしなければならぬ。それについては議会の承認を求めて任命をする。こういう愼重規定になつておるわけであります。
  31. 福田篤泰

    福田(篤)委員 これは新しい立法でありまして、アメリカにおいてはずいぶん例があるようでありますが、日本においては類例のない立法でありますから、こういう類例のない立法をやる場合においては、その性格なり、あるいはその権限なりというものは、なるべく明瞭にいたしておくことが必要だと思う。ただいま大臣の仰せられたのでは、そういうことは会社相互間で、いろいろ相談すればいいというけれども、どうせこういう問題については、自分の方の比率がよくなりたいというのは、これは独立採算制企業体の当然の考え方である。そうすれば、ここで意見が出るのは当然である。その意見が出たときに、これを命令できめられるということになつておるのでありますが、大体こういう法案を出す場合には、むしろ政府において一応取調べられて、大体これくらいのものであろうということも、参考資料としては持つておらるべきものだと思う。それができておらない、すべては後にまかすのであるということになつておるのは、私は、法案提出意味から言つても、非常に不準備であると考えておるのである。しからば、電気事業編成法案並びに公益事業法案というものをつくつて電力の再編成を行うのでありますが、この新しい九ブロツク会社は、政府のお考えでは、いつごろから発足させるお考えでありますか。
  32. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 現在われわれの考えておるところによりますと、この法案が成立いたしまして出発をし、大体来年の三月ごろまでに再編成終つて、四月から新しい会社による事業出発ということになるのではないかと推定しております。
  33. 福田篤泰

    福田(篤)委員 この法案提出一つ理由になつておるのでありますが、自家用発電は別として、現在の電気事業は、どういう面において公共利益を阻害しているということがありますか。その点を列挙していただきたい。
  34. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 現在の発送電並びに旧配電会社とも、戰時中に相当軍事的な考慮をも入つて編成されたものであります。ことに発送電においては、全国会社国家管理目的をもつてつくられておるものでありまして、そういう点が、社会公共福祉、あるいはサービスの改善という点から行きまして、今までのやり方等考えてみると、はなはだ不十分である。決して理想的に行つておらない。これをそういう戰時の特殊な目的も入つて編成されたものから、ほんとうに民主的な社会公共利益になるような会社編成しようというのが、今度の目的でありまして、その趣旨から言つて国家管理の形態をやめて、原則として民有民営ということで行くというところに、サービスその他の点で十分改善されるものと考えておるようなわけであります。
  35. 福田篤泰

    福田(篤)委員 それは非常に的はずれの答弁を承つたと私は思つておるのであります。ただいま御答弁なつたことは、集排法を適用する理由にはなつておる。その御答弁にはなつておるが、私が言つているのは、現在のようなやり方をしておつて、どこに公共利益を阻害しておるか。もう一歩裏を返して言いますならば、この場合において公共利益というのは、豊富低廉なる電力を供給することにあると私は考えておる。その豊富低廉なる電力を供給し、サービスを改善するということも、あるいは一項入るかもしれませんが、この三点において、どこが今の形では惡いかということを、お伺いしておるのであります。
  36. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 私のさつきの御答弁では、少し的はずれだというお話でありましたが、私の考えはそうではございませんで、国家管理という意味で現在の会社ができて、そうして発送電については、一会社の独占によつて経営されておりますために、広い意味においては独占の弊害が確かに現われておると私は思つておる。抽象的に考えますと、確かに電源というようなものは一本にして、合理的な計画によつて配給をするのが、最も理想的であるということは、言えるかもしれません。しかし実際にそういう一本の会社をつくつて経営をやつてみた場合にどうなるか。日本における今までの経験から申しますと、必ず経営が放漫に流れ、いろいろの不規律、不合理が現われておることは、事実だと思う。ですから、たとい電源につきましても、会社一本でやらないで、分割してやつた方が、そういう弊害を防ぐ上において効果があり、それが社会のために実際において利益である。こう考えておるからであります。それから配電と発送電を一緒にしたことについては、これは昨日もお答えいたしましたように、発送と配電を一緒にした方が、会社の経営を合理化するという面から申しまして、徹底ができる、その方が有利である。こういうことを考えておるのであります。従つて合理化を徹底するということは、つまり社会公共のためになるものであり、サービスもよくすることができるという考えからであります。
  37. 福田篤泰

    福田(篤)委員 これは私はますますおかしいと思う。大臣からそういう御答弁を承ろうとは思つておらないのであります。現在やつておるのは、なるほど戰時中の立法においてやつたかもしれない。しかし豊富低廉なる電力を供給するという意味合いにおいて、現在やつておるこの制度は、これは過度の経済力の集中があるから、再編成しなければならないというのならば、私は意味はわかりますが、これをここで分割した方がいいという理由になるには、現在やつているのは、たとえば豊富な電力が出ない、低廉にならないという点が、はつきり出て来なければならないと思うのでありますが、その実際の例を示してもらいたい。あなたのおつしやつたのは非常に抽象論である。私は抽象論を聞いておるのではない。学校の講義を聞きにここに来ておるのではありません。私の聞きたいのは、具体的にこういう点とこういう点において弊害があるから、こういうわけでいけないのだという答弁を承りたいのであります。
  38. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 具体的の点は長官からお話申し上げます。しかし公共福祉になるとか、あるいはサービスがよくなるとかいうことは、ただ電源開発だけの問題ではないと思うのでありまして、やはり経営について独占的なやり方をやつたために、だらしなくなり、経費がよけいかかる、自然料金も高くしなければならないということにもなるわけでありますし、また消費者としてこれを利用する場合の便宜という点から考えましても、独占でやるか分割するかによつて、非常な違いができて来ると私は思う。そういう意味で私は申し上げたつもりであります。電源開発ができない、あるいは今までのようなやり方よりはうまく行かないとなれば、また豊富な電力が得られなくなる点で、お話のような欠陥ができるということが考えられるかもしれませんしかし電源開発について、分割された結果どうなるかということは、昨日以来たびたび申し上げておるようなことでありますが、しかし現在のやり方についてどういうふうに具体的に欠陷があるかという点については、こまかいことは長官から申し上げます。
  39. 始関伊平

    始關政府委員 具体的にどういう点に欠陷が現われておるかという問題でございますが、私どもの一番気のついておりまする点の一つといたしましては、たとえば、これは発送電と配電とが分離しておるということの影響と存じますが、雨が非常に降りまして余剩の水力があるという場合におきまして、これはただいまの料金制度では、キロワツト当り三十銭で配給することになつておるわけでありますが、そういうような点が非常に円滑に参りません。これは配電会社の側から申しますと、三十銭で売りましたのではほとんど手数料というべきものが入つて来ないという点があります。これは発送電と配電とが分離されておることの、一つの欠陷であろうと存ずるのであります。それからもう一つのより根本的な点といたしましては、先ほど申し上げましたように、卸売り料金調整という事柄によりまして、発送電会社と九つの配電会社との間にプール計算が行われておるわけでありますので、かりにある配電会社が合理化をやりまして、配給のコストを低めたということになりますと、これは逆に卸売り料金が高くなるという結果を招来いたします。そこで現在九配電会社といたしましては、日発からの卸売り料金を、どうして自分会社に有利なようにするかというところに、主たる努力目標の一つがあるわけでありまして、たとえば今年の一月、二月は非常に雨が降つた。雨が降るともうかるわけでありますが、そのもうけを日発と各配電会社との間に、いかに分配するかというようなことが大問題であります。ちようど労働争議の場合と同じように徹夜でもしないと、話がつかないというような状況と存じます。そういう事柄の一つの現われが、ロスが非常に多いということに現われておると思うのでありまして、百万キロワツトの電力がありましても、これが消費者に届きましたときには、七十万キロワツトにしか通用いたしません。この中には技術的に見て当然やむを得ない部分もございますが、その中の四%あるいは五%は擅用いわゆる盗用でありまして、こういうような点は今度分断によりまして、企業の責任体制が非常にはつきりするということでございますれば、当然改善さるべきものである。もちろんメーターをつけるとか、いろいろの点がございます。資金等の点もございますが、根本的な点として、分断による発送配電一貫の体制によつて、苦情の持つて行きどころがないという体制にすることによりまして、こういう点——これに類似の点が多々あろうと思いますが、そういう点の改善が期待されるであろうということを、私どもは衷心希望いたしておる次第であります。なおまた豊富低廉な電力の供給という点から申しますと、停電などがありましては、非常に困るわけでありますが、そういうような点につきましても、事故があつても、消費者から見ますと、配電側の責任であるのか、日発側の責任であるのかわからない。配電会社の方は日発の方の故障であると言つて、責任を回避するという状況も多々あります。こういうような問題についても、今後におきましては、これは自分の方の責任ではない、日発の責任だというような言いのがれをする條件もまつたくなくなる。先ほど来大臣が一般的にお述べになつたような事柄についての具体的な影響は、方々に現われると思いますが、私どもが気のついております二、三の事柄を申し上げますと、以上のような点が顯著な点であると存じます。
  40. 福田一

    福田(一)委員 先の方を私は聞き落しましたが、たとえば卸賣り値段の問題、調整の問題、あるいはプール計算の問題、あるいはまた盜用を防ぐ問題、あるいは停電の責任の問題というようなことは、たとい現在のような機構がありましても——私は現状維持を主張するものでは断じてありませんが、たとえこのようなものがありましても、公益事業委員会ができて、これに対してそういうことをしないように命令をする、あるいはこれに対して注意を與える、あるいは勧告するということができれば、その弊害は私は除去できるものであると考えるものであります。しかし今時間もありませんから、その問題は私はそのように理解して、一応午前中の質問を打切ります。
  41. 村上勇

    ○村上(勇)委員長代理 午前中の議事はこの程度にとどめまして、午後は正一時より再開いたします。これにて休憩いたします。     午後零時八分休憩      ————◇—————     午後一時三十一分開議
  42. 小金義照

    ○小金委員長代理 これより通商産業委員会を再開いたします。休憩前に引続き質疑を継続いいたします。  その前に一言申し上げておきますが、会期も切迫いたしておりまして、重要法案が山積しております。きようは正一時再開という申合せ、並びに政府への通告をいたしておきましたが、すでにちようど三十分経過いたしております。今後重要な法律の審議に際しては、時間をなるべく嚴守されるように特に御注意申し上げます——福田一君。
  43. 福田一

    福田(一)委員 前々からずつと質問をいたしたのでありますが、その質問の結果、私といたしましては両法案目的といたしております豊富低廉な電気を、需要者に供給するという面において、非常にまだ納得の行かない点があるのであります。すなわち政府答弁によりましても、九ブロックにした場合においては、電力の融通には六%の阻害を来すということが述べられておる、さらにまた企業意欲というものから考えまして、私は将来の電源開発は非常にうまく行かない、非常に停滯をする、こういうふうな観点を持つものであります。さらにまた各種産業に與える影響を考えるときに、また地域別にこれを考えてみますと、この調整料金をとる結果としては、豊富な電力を持つておる産業も、またこれによつて非常な惡影響を受ける、こういうような事情が認められるのでありまして政府考えておられると思われる産業の立地條件というものも阻害しておる、また適地に適業を起すということも妨げております。その他公益事業法案内容を見てみますと、非常に委任立法が多いのでありまして、その委任立法が多いということは、公益事業委員会というものが、非常に権限があるということであり、ひいてはこれが惡い結果を起すのではないか、もう少しこの問題は愼重に研究してみる必要があるのではないかというようなことも考えられるのであります。これを要するに水力の合理的な開発と、豊富低廉な電力の供給ということが、今までの御答弁によつては、私はどうしても納得ができないのでありますが、重ねて大臣にお伺いいたしますが、はたして両法案をやることによつて、ただいま言いましたような電力の融通の阻害がなくなるとか、あるいは建設は必ず進行するというように資料をあげて明瞭な御答弁をお願いいたしたいのであります。
  44. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 私から一般的な御答弁を申し上げますが、それにつきましては、今まで御質問にいただいたのに対して、いろいろと御答弁申し上げておるのであります。しかしながら何にしてもこの電力編成という問題は、非常に重大な困難な問題でありまして、御意見のような故障が起きやすいということは、私も認めておるのであります。従つてこれを実行するという場合におきましては、そういう重大な故障、それがために日本経済に対する惡影響を生ずるというようなことのないように、政府といたしましては万全の考慮を佛い、適切な施策を進めて参るつもりでおります。
  45. 武内征平

    ○武内(征)政府委員 電力融通の問題でございますけれども、融通の問題といたしまして、ただいま福田委員の御指摘になりました融通の一番困難だという電力は、特殊電力でございまして、急に水が出たというような場合における融通は、会社がわかれると現在より困難になるかと思いますけれども、常時電力あるいは期間常時というような種類のものは、すべて融通契約に載つておるのであります。  それから特殊電力でありましても、例年の例によりまして、大体この程度は北陸から関西に融通できるという程度のものは、規約に載せて融通するということにいたしたい。ただ急に予想しない水が出た場合に、いかにするかというような問題になると思いますけれども、この場合は従来日発が一本で持つております場合におきましては、ただちに融通できたのでありますが、御指摘のように融通は困難になると思いますけれども、この際電力の融通を受けております地帶におきましては、大体火力設備を持つておるところでありますから、これをもつて補うということにいたしまして、融通不可能な電力はその地で使われるということになりまして、これはむだになるわけではないのでございます。確かに急にできましたある種の電力につきましては、さしつかえることがございますけれども、大体の予想できる電力につきましては、融通できるというふうに考えておるわけでございます。
  46. 小金義照

    ○小金委員長代理 次は今澄勇君。
  47. 今澄勇

    今澄委員 今日電気事業編成法案を前にして、今の通産省が所管しておる電気事業なり、あるいは鉄鋼業なり、あるいは石炭なり、化学工業なり、これらの動力源である電気あるいは石炭等を含んだ重大問題が山積しておることは、通産大臣も御承知であろうと思うのであります。しかるに吉田内閣では、池田前大臣もこれまた兼務である。しかしてわずかばかりやつて電気事業編成の問題をほとんど自分も了解しないうちに、すぐ辞任してアメリカに行つてしまつた。そのあと高瀬さんが大臣をお引受けになつたのでありますが、私は今の商工行政というものは、いわゆる根本的のネックについてはオンリー資金と言われておるが、大蔵省を中心とする金融機関の操作から、ほとんど通産省としての発言力なり、あるいは行政措置を制約されておる。もう一つは通産省という名前によつて、外務畑から相当の人々が来ておる。商務官その他の関係もありますが、吉田総理大臣が外務省出身の関係上、これまた日本の商工行政に精通しない外務官僚の進出が、相当のものであるということは、日本が復興するに最も重大なわが国の商工行政が、非常に力を弱められておるという結果になります。われわれは少なくともこのようなわが国の商工行政は、担当の專門の大臣が坐つて、しかもそれは腰をすえて乗り出さなければならない仕事である。にもかかわらず池田さんにしても、あなたにしても、ともかくもその就任の際におけるそういつたあり方は、われわれは野党としてながめておつて、まことに日本の商工行政の上に危懼の感なきを得ない次第であります。もとより総理大臣の相談を受けて就任されましたあなたは、決意を持つて就任されたことと思いますが、電気事業法その他かくのごとき重要なる案件を前において、高瀬さんはどのような決意を持つて、わが国の商工行政を復興させようとされたのであるか、まず最初に私はあなたが通産大臣をお受けになつたその心境と、今後の見通しなり決意についてお伺いしたいと思います。
  48. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 私は池田大蔵大臣の兼任のあとを引受けまして、やはり兼任通産大臣を引受けたわけであります。通商産業行政の重要性ということにつきましては、今澄さんの御意見の通りでありまして、私も同感でございまして、専任通産大臣がどうしても必要であるということは、私も確信をいたしておるのであります。従いまして兼任ということはまつたく臨時的なやむを得ざる短期の処置であると信じております必ず間もなく専任通産大臣ができるという見込みでございます。私に兼任の話がありまして、お引受けするにつきましても、兼任でやれるんだというような考えで、お引受けしたわけではございません。ですからなるべく早い機会において私がなりますかだれがなりますか、とにかく専任を置かなければならぬということは、お話をしてお引受をしたわけでありますが、さつき申したような事情で、やむを得ず短期の処置として行われたものと考えております。しかし兼任でお引受けするにいたしましても、その重要性から考えまして、兼任なるがゆえに手を抜いてよいというようなことは、一切考えているわけではございませんで、兼任といえども專任と同じつもりで、私は全力をあげてやるという覚悟でお引受けしたわけであります。しかし何にしましても通商産業行政というものは、非常に間口の広い重要な仕事でありますから、就任早々からすみからすみまで全部を、私がすぐ知つてやるというところまでは、むろん行つておりませんが、私は就任以来日夜勉強いたしまして、できるだけ早く精通をするということに、努力をいたしておるのであります。現在の経済の中における商工業の状況、将来の問題等についてどう考えておるか、こういうような御質問でありますが、私は現在の日本の経済というものは、一つの重大な過渡的転換的な時期に遭遇しておると思うのであります。従いまして非常にむづかしい重要な問題が山積しており、商工業にとつても、それがためにはなはだ困難な事情があると思いますしかしながらこれは敗戰に伴う日本経済の弱体化、その後におけるインフレの高進等から来た日本経済の混乱でありまして、これを脱しまして正常な経済へもどろうとする、一つの転換的な重要な時期というところから生じている困難が最も多いと思うのであります。それについて政府もあらゆる努力を盡して積極的な施策をし、また商工業界もそういう実情をよく認識され努力をしていただき、また商工業者の考えているところへ実情というものを十分に考えまして努力をし、この重大な困難な時期を乗り越えて行く。そうすればわが国経済の新しい意味におけるあり方の、正常な状態に必ずもどれるであろう。そこへ持つて行きたいというつもりで、あらゆる努力をいたして行くつもりであります。
  49. 今澄勇

    今澄委員 大臣の高潔な人格に対しては、われわれは尊敬を拂うものでありまするが、今日の通産行政の複雑性のあるところへ、お引受けになつたということについては、相当の決意があることと思いますが、私どもも今後ともに通産行政のあり方について、峻嚴な批判をいたしたいと考えております。本問題は総理大臣の吉田さんから、どのような意図を持つて通産省においては、かくも兼職大臣が引続き、しかもそれが短期間において交代しておるのかということをただしたいと思い、委員長にもその出席を求めておりますが、いまだに総理大臣の出席はございません。本日は大体一時間程度電力事業編成に関する大わくの問題のみを、大臣に聞いてくれということでありまするので私は通産大臣に聞く前に、日本のそのような産業行政の上におけるわが国の電気事業のあり方ということについての、総理大臣の抱負と総理大臣としての行政全般から見た識見を承りたいのでありますが、総理大臣が御出席でございませんから、この問題については他日伺います。  そこで私は通産大臣にお伺いいたしますが、まず第一点は、いろいろ問題がございますが、占領下の我が国のことでございますから、この電気事業編成法案については、集排法というものから考えなければならぬと思います。昨日の御答弁ですでに日発集排法において、分割をきめられておるというようなお話でございましたが、日発、九配ともに集排法の適用を受けておる。しかるに日発だけが分断されて、九つの配電会社は分割されておらない。逆に発送電分を合せて大規模な会社となるということに、この電気事業法でいうとなるのであります。われわれはこういうことは極東委員会がきめた、この集排法の眞精神から見て、この電気事業の分断法は、はたして合致しておるものかどうかということに疑問を持つておりますが、大臣のこの点についての御見解を、ひとつ承りたいと思います。
  50. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 御説の通り集排法で、日発の九配電も指定を受けておりまして、集排法による処置が実行されなければならないことになつております。従つて今度の九分割案というものは、もとの九配電というものを存続させて、日発のみを分割してくつつけて行く。こういう措置ではございませんで、日発配電とも今までありましたものは、これを解散させて新会社として九配電会社をつくる、こういうことになつているわけであります。そこで集排法というものは、過度の経済力の集中を排除する法案である。しかるに実質的には九つの配電会社が、今までと同じ供給区域を持つてそこへ発送、発電設備をつけ加えるということになると、今までの九配電会社よりも、もつと集中を生するというような結果になつて、集配法指定の精神を無視するという結果にならないかというような御質問ではないかと思います。しかし形式的には、むろんさつき申しましたようなわけで、これは新しい会社でございます。そうしてなぜそんなふうに集排法の精神に触れそうに見えるようなことにするかといいますと、これは昨日も申しましたように、やはり電気事業というものは、一般産業と違いまして、自然的に独占性を持つておる事業でありまして、重複した施設等を同じ区域においてやるべき性質のものでないというところから、一般産業集排法に基く処置とは、おのずから違つたものになるべき性質のものであります。ですから集排法に基く九会社の解体と、再編成ということを行う二つの処置が、この法案で実行されようとしておるのでありまして、九つの配電会社にし、そこへ今まで日発で持つておつた設備を加えて、しかも独占的な事業を配給区域内においてやるということになるわけでありますが、それについての根本のなぜそうなるかということは、まず第一はそれが独占的な性質を持つておるということ、しかしながらまた独占的弊害が非常に起きるということでは、集排法の精神を全然無視するという結果になりますので、その経営等につきましては、公共福祉のために、いろいろの制限が加えられ、公益事業委員会というものができまして、それによつて公共性というものを害しないように、一般の福祉を守つて行けるようにするということになつておるわけであります。
  51. 今澄勇

    今澄委員 ただいまのお話では、私は今度の九分割された電気事業法というものによつて、できる新しい会社が、集排法の精神に反しておるということを反駁する論拠にはならないと思います。少くとも現在の十社が集排法の適用を受けて九社になるということは、考え方から行けばどうしても集排法から行くと、これは妥当なものであるとは思われません。さらに集排法では国または公共団体の営む事業は、その適用を受けないことになつておる。本法案による新九会社は、国家管理という形をはずして、純然たる民営会社目的としておるということは、昨日冒頭に大臣か述べられた集排法において、日発か分割を指定されておるからこういうふうにやつたということは、明らかにこれは歪曲された詭弁である。われわれはこの電気事業というものが公益事業公共事業であつて、これを国家管理的な性格を強めるならば、集排法の対象からはずれ得るものであると思うが、この点に関する大臣の御見解、並びにこのような新らしい分割をして九分断すれば、経済の民主化どころか、私的独占の強化をはかるということになつて来るか、これはいわゆる経済の民主化とどのように関連してお考えになつておるか。私は結論としては電気事業に対しては、單純に集排法を適用しかたいということが、今の大臣の御答弁でわかると思います。單純に適用しがたいところのこの電気事業に対して、集排法というものに縛られて、これを九つに分断したと言われた昨日の大臣答弁は誤りであると思うか、それはほかの目的かあつての分断であるかどうか。以上の点について大臣から重ねて御答弁を願います。
  52. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 御承知のようにすでに集排法か適用されまして、集排法によつて指定されておるのであります。従つてこれに基きまして再編成する。これのみではありませんが、この指定ということと、また電気事業編成ということとで、実行するということになつたのであります。  それからこれが私的独占を強化して行くことになろうというお話でありましたか、先ほども申しましたように電気事業というものは一般産業と違いまして、自然的に独占性を持つておる事業であります。ですから一般産業のように、まつたく自由な放任された意味での競争的な事業として、取扱うわけに行かぬ性質を持つておるわけでありますから、個々の自由競争の場合とは違つた処置が必要になつて来る。しかしそれかために私的独占としての弊害が起きるおそれが、むろん放つておけばあります。けれどもそれが起きないようにするために、公益事業委員会というようなものをつくりまして、そういう弊害の防止をやるというわけでありますので、御心配になるようなことが起きないで済むと、私は考えておるのであります。
  53. 今澄勇

    今澄委員 そういうことならば、何もあらためて九つにわけて民間企業としてやるよりも、私は今のまま日発においてこれを公共企業体化してでもやつた方が、非常にいいという結論に、今の大臣の御答弁からでは到達すると思いますか、一応その点は讓ります。  そこで私はこの日発の分断の問題は、集排法と再建整備法との両法の適用を受けるのか、今のお話から見てもほんとうであろう。そこに持株会社整理委員会というのかあるのであつて、この持株会社整理委員会が、これらの特殊立法としての本法律に、どのような見解を抱いておるか。持株会社整理委員会がみずからやらないで、特殊立法として法律によつて編成を実施しなければならぬというほんとう理由を、さしつかえなければ大臣から承りたい。私は少くとも本問題について集排法の実施機関たる持株会社整理委員会の見解を、政府は聞いたことがあるかどうか。もし聞かれたとすれば持株会社整理委員会の責任者は、何と答えたかという点についても、御答弁が願いたいと思います。
  54. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 今までの経過につきまして担当のものから聞きましたが、持株会社整理委員会とはやはり打合せの上で、こういうものができたということであります。そこでこの公益専業法案は、集排法に対する特別法案というような意味で、できておるのでありまして、持株会社整理委員会としては、近くその機能をやめて行くという方針になつておりまして、この辺につきましてはできるだけ公益事業委員会において、実施してもらいたいというような希望が強かつたそうでありまして、こういうことになりました。
  55. 今澄勇

    今澄委員 そこで私は持株会社整理委員会の代表者と、通産省の責任者としての大臣との間には、このような大きい問題についてのほんとうのしつかりした話合いかなければならぬと思います。ただ單に下僚かこれらの経過はこうだつたということでは、私はそれは非常に怠慢であると思う。  さらに私はもう一点お伺いしたいのは、持株会社整理委員会は近くこれを解散して、公益事業委員会等、アメリカが現在とつておるそういつた構成を持つところの、いろいろな機関で諮るというようなお話でありましたが、集排法というものは、極東委員会の指令に基いてできたもので、これは法理論的に見て、このような電気事業法という特別な立法で、かつてにその集排法かなさんとした立法の根本的な趣旨をゆがめたようなものが許されるかどうか、それらの点について通産大臣の見解を承つておきたいと思います。
  56. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 持株会社整理委員会の方は、決して初めから永久的な委員会ではないものであります。そうして一応重要な処置ができた場合には、今後はそこでやつておりましたような仕事は、一般的には公取の方でやられるということになつておるのであります。今度のこの電気事業の再編成に関連いたしましては、恒久的な制度として公益事業委員会というものができるのでありますから、そういう意味におきまして重要なる事柄につきまして、公益事業委員会の方でもつぱらやつてくれ。こういうような考えを持株会社整理委員会としては持つておるわけであります。持株会社整理委員会との接触につきましては、決して担当事務当局だけが接触しておつたわけではなくて、通産大臣としても接触をして話合いをしておつたわけであります。
  57. 今澄勇

    今澄委員 それでただいまの大臣の御答弁を総合してみると、私は本決が占領下におけるわが国の特殊的な問題、集排法等の上から必至の運命であるかのごとく言われておつた数々の問題については、今の大臣答弁で、決してそのような心配をする必要はないという結論に達しました。われわれはこれらのことから見て、このような電気事業の九分割よりも、むしろこれはやはり現状の一貫した電気事業公共性を強めるということの方が、理論的には正しいものであるという確信を、ますます深めたわけであります。そこで私は直接本法律案についてお伺いをいたしますが、この法律案は、目的が非常に不明でございます。この法律案における目的を私は読みましたが、われわれはこの電気事業の再編成で、一体政府は何をねらつておるのか、経済の民主化をねらつたものか、あるいは電気事業国家管理的な形態を廃して、これを民営会社にするということがねらいであるのか。それとも発送配電を一貫体制につくるということの方かいいというために、この法律を行おうというのか。あるいは電気事業か非常に公共性のものであるから、これの利益を守るために、公共利益増進のために、この法律をつくつたのか、私は本法律案の目的について、ひとつ的確な大臣の御答弁をお願いしたいと思います。
  58. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 今おあげになりましたような目的は、すべてねらつておるつもりでございます。まず民主化という点でございますか、むろん民主化ということにはいろいろの解釈かございましよう。しかしわれわれの解釈から申しまして、今までの国家管理という方式でやられており、あるいは国家統制の目的をもつてできた編成のもとにおきましては、経済民主化の精神に反する点か非常に多い。国家統制、国家管理ということ、つまり官僚統制というようなことになることは経済民主化に反する。これを排除したいということが一つのねらいであります。それから国家管理を廃して民有民営にしよう。これもねらつておるところでありまして、これはやはり国家統制、官僚統制というものの事業に対する悪い影響ということを排除いたしまして、民有民営による創意の活発な発揮、そうして事業の発展を自発的にはかつて行く。この趣旨も入つておるわけであります。それから公共性を発揮させるという点、これもむろん入つておるわけでありまして、抽象的には国家管理の方か公共性を完全に発揮する最も理想的な形態である、こういう考え方もあるかと思います。しかしながら実情について見ますと、今までの状況は決して国家管理かそういう目的を達しておるとは考えられない。官僚統制の弊害のみが著しく現われておると私どもは考えておるので、今回の措置によりまして、やはり公共性も増進され、それから合理化ということも考えておる。合理化はどの点から来るかと申しますと、昨日も申しましたように、経営を合理化しようとする場合に、発送電部門と配電部門か別個になつておるということが、いろいろの障害を来しておるということから、これを一緒にすることが、経営を合理化する上において、能率を向上させる上において適切である。こういうようなねらいを持つておるわけでございます。
  59. 今澄勇

    今澄委員 大体私が想像しておつたいろいろの点が、この法案のねらいであるということかわかりました。しからばわれわれは、経済の民主化は官僚統制ではできないというお話でありましたか、私は経済の民主化という点については、昨日来福田委員から豊富低廉なる供給にあると言われておりましたが、私は少くとも経済の民主化のためには、労働者の経営に対する発言権も大いにこれを認めて、少くとも私企業においても労働者、経営者が大体対等の立場に立つて、これらの経営運営に当つて行くということでなければならない。しかもそれは公益性のものであれば、国家と経営者と労働者の三者が渾然一体となつて努力するという形態がなければならないと思いますが、それらの点についての大臣の所見をひとつ伺いたいと思います。
  60. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 今のお話は、会社が成立いたしまして、経営の面について労働者もまた協議会等を通してタツチすべきである。それか民主化である。こういうような御意見だと思いますが、そこまではこの法律では規定しておらない、また規定する必要もなからうと私は思います。会社ができた上で、会社の経営当局と労働組合の関係において、そういう問題は民主的に解決さるべきものと考えております。
  61. 今澄勇

    今澄委員 少くとも昨日本会議で通りました炭鉱国家管理廃止案に見られるごとく、われわれは労働者の発言権は労働立法のみで、労働者の経営における力を推進するということはできません。これはやはり経済立法においても、労働者の発言権を認め、そうして労働者の経常の意欲を増大せしめるということでなければならぬ。その意味においては炭管法の廃止といい、この電気事業法といい、少くとも経済民主化の目的から逆行しておる。特に電気事業のような公益性のものにおいては、国家と経営者と労働者の三位一体の態勢における運営の妙味を発揮するということが、これまでの大臣の御答弁から見れば、当然の帰結でなければならぬと思いますが、この点については納得ができません。  第二点に民営にするというお話でございましたが、しからば公益事業委員会が問題になるわけであります。民営にするということがねらいであるとするならば、これを民営会社でやつて行くためには、私は民営会社にし得ない数々の要素があると思う。アメリカにおける公益事業委員会をわれわれが見るのに、アメリカの公益事業委員会が持つておるところの調整の権能のほかに、この法律における権能を見ると、供給の規模、あるいは料金変更の命令処分権、あるいは料金地域差調整権、あるいは電力融通命令権、あるいは電気の使用制限権、あるいは工作物の新設の許可権というような、このような権限がこの公益事業委員会に持たされておるということは、現在の国家管理の態勢と何らかわらない。こういうような権限公益事業委員会に持たさなければならぬということは、この電気事業そのものか民営には不向きであるということを証明しておるというように思うが、経済民主化の今の三者一体の態勢と、この公益事業委員会国家管理よりも、さらに激しいこのような数々の権限というものが、民営に適しておるか適しておらぬかということについての、大臣の御見解をひとつ承りたいと思います。
  62. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 公益事業委員会は、いろいろ電気事業会社の運営に関しまして、認許可等の権限を持つておるということは事実であります。しかしながら今までの国家管理のように、経営の内容の細部にわたりまして関與するような権限は持つておりません。今與えられておる認許可の権限等は、自然的な独占の性質事業でありますから、一般企業のように競争性のない、従つて独占性をある程度認めておるわけでございます。従いまして、それから来る私的独占の弊害というものは、どうしても排除しなければならない。そこから今のような公益委員会の監督規定というものが必要になつて来ておる。こう言つていいのではないかと私は考えます。つまり民有民営にする。しかしながら電気事業は特殊的な性質を持つておる。だから民有民営による独占的弊害を排除するために、こういうものをつくつて監督する、こういうことになると思います。
  63. 今澄勇

    今澄委員 今の御答弁民有民営にするがために、特に現われて来た理論の展開であつて前提としてこれをいわゆる国有的な姿において、国有的な姿が持つところの能率の阻害とか、その他の点を改良すればわけもなく、片づくのであつて、これは本末転倒の答弁であると思います。  さらに私は第三点に大臣が述べられました発送配電の一貫体制をつくるのか、目的の中に入つておると言われましたが、われわれは発送配電の一貫体制というものは、この電気事業というようなものについては、他のいろいろの條件を犠牲にしてまで、それをやらなければならないというようなものではないと思います。世界的に見ても電気事業というものは、発電は全国的なものにだんだんその規模を拡げようとしておるが、配電についてはサービスの点から、そう広く拡大しないでこじんまりとまとまりながらサービスが徹底するというような方向へ、世界各国ともに向いておる。それを九ブロックに発送配電を全部一貫してわけるというその理論がわからない。しかも七分断、十分断その他いろいろのものがあつたにもかかわらず、九分断というものをとられた理論的な理由を伺いたい。大臣はその理論的理由事業規模として、これが適当であるということを述べられておるが、事業的規模が何ゆえに九分断であれば適当であるかという点についても御答弁をお願いしたいと思います。
  64. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 発電圏というものか拡大されて行く傾向にあり、配電については区域を小さくして行くというのが世界の時代的な趨勢だ、これに反するのはどういうわけだというような御質問だと思いますが、確かに発電と配電とでは相当事業としての性質の違いがございます。しかしながら経営を合理化して責任態勢をはつきりさせて行く、発電の責任が配電の責任だというようなことのないように、能率を向上し経営を合理化して行く意味から申しますれば、やはりこれを一貫経営にする方が確かに効果が上ると思う。発電圏の拡大というようなことと配電との関係は、電力融通調節等によりまして、合理的な方法を講じてこれを調節して行くということによつて目的が達せられるのじやないかというふうに私は考えておるのであります。
  65. 今澄勇

    今澄委員 今の御答弁では、大臣電気事業の実際について何ら御承知はないのだと思います。あなたは今一貫であれば責任態勢が非常にはつきりすると言われたのでありますけれども、現にこの法律を見ても、先ほど私が申し上げたように、公益事業委員会がこれだけの権限を持つて、このようないろいろの大きな干渉をして、それで一体どこに責任があるかということが明確になると、あなたは思われますか。このような公益事業委員会のために、遂にだめだつたのだという責任のがれの一言をすれば、これは当然成立つものである。そのような意味において責任の明確化というようなことは、このような公益事業委員会権限の強化その他の点から見て、発送配電は一貫しても何らその責任ははつきりしないと、われわれは思いますが、大臣の御見解を伺います。
  66. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 確かに公益事業委員会でもつて、いろいろな制限を加えているという点からいえば、その制限から来る責任であるのか、事業者自体の責任であるのかというような点において、幾分不明確な点が出て来ることは事実であります。全然自由にまかされているという場合に比べて違いがあることは事実でありますが、全然自由にまかすということは、事業性質からしてできないことでありまして、どうしてもある程度独占的形態は残さなければならぬ。そこから来るやむを得ない矛盾といえば矛盾かもしれませんが、それによつて最も合理的な解決がついているものと考えております。
  67. 今澄勇

    今澄委員 そういうことでありますと、結論としては何も好んで民営会社に九つに割る必要がないのではないかという結論になるのであります。私は通産大臣として日本電気事業をこのような分担をしてやる方がよいかどうかということについて、良心的にどのように考えておられるかということを疑うのでありますが、少くとも今までの御答弁から判断すれば、電気事業はそのような苦労をしてまでも、民営会社に割る必要はないのではないかという結論に相なると思うのであります。  そこでもう一点私は伺いますが、しからば一国の電気事業の姿というものは、たとえばこれがアメリカにおいてこういうふうであつたとか、イギリスがこういうふうであつたとかいうような諸外国の例を参考にすることはあつても、その国の独得な産業経済の復興と発展のために、これが考えられるべきであるということは、間違いのないところであろうと思います。私は電気事業というもののあり方は、もとよりこれはその国の経済的な諸條件、地理的な諸條件、社会的な諸條件をも加えて、判断しなければならないものだと思うのでありまして、電気事業は、このような国のあらゆる慕情を十分判断して、そのあり方をきめるというのでなければ、その国の産業は私は重大なる問題に逢着するであろうと思うのであります。電気は空気、水に次ぐ生活の必需品であつて全国民が平等にこれを利用できるということが当然でなければならぬ。この目的のためには先ほど来、私が質問のたびごとに申しておりまする電気事業を国有国営にして、電気料金はできるだけ地域差がなくなるように、大体発電所と需要地の送電損失程度地域差にして、電気以外の立地條件に立脚して、産業の発達と民生の安定をはからなければ、現下の産業はどうしても復興しないと考えるのであります。大体物価は一般に戰前の二百二十三倍と言われておりますが、石炭は今日三百数十倍に上つておる。しかるに電気は九十四倍の数字にとどまつておるということは、少くとも電気に関しては、国家的な管理統制が行われておつたためであると思う。そういう大きな美点があると思う。しかるに石炭は野放しに放任されて、今日戰前の三百倍以上の値上りになつておるのであります。電気事業というものは、どうしてもさつき私が申しましたいろいろな諸條件から、少くとも国有国営的な形態において運営しなければならぬというふうに、われわれはあくまでも考えておるのであります。通産大臣はそのような御意思はないと思いますが、それらのものが電気事業にも行われて、わが国産業発展の上に、もし弊害を與えるとするならば、電気の国有国営形態が、日本産業全体にどのような弊害を與えるものであるか、ひとつ御教示を願いたいと思います。
  68. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 国有国営あるいはその他の方法による国家管理によつて、どんな弊害が認められるのかという御質問でありますが、私は今までの発送電会社の形態における国家管理について考えてみましても、ずいぶん著しい弊害、欠陷が認められると思うのであります。抽象的に言えば、國家管理、あるいは国有国営というものが非常に能率をあけて合理的に行くということも言えるのでありますけれども、実際について見ますると、決してそういう結果にはなつておらない。たとえば経営が官僚化されておるということは事実であります。また能率が非常に下つておる。またサービスがはなはだ悪い。電源開発等についても、必ずしも創意的な活動が十分でない。これらの点は確かに認められると思うのであります。ですから抽象的には合理的だと考えられても実際にやつてみると、はなはだ不合理だというような点が多いのであります。ですからそういうことを廃止いたしまして、民有民営とし民有民営の長所を十分に発揮させまして、今までの欠陷を除くと同時に、他方において事業公共性から考えまして、民有民営から生じやすい弊害というものを、公益事業委員会の監督等によつて押えて行く、こういうのがこの案でありまして、これが適当な方向であろうと考えておるわけであります。
  69. 今澄勇

    今澄委員 大体私の持ち時間はあと少くなりましたが、今の答弁は国有国営、国家管理における弊害は、理論的にはよいけれども、実際やつてみるとだめだというのですが、一体どういう点とどういう点が、実際産業構造の上においてだめだつたのか。今日野放しにされた石炭が動力源として、戰前の三百倍以上になつておるのに、国家管理の形態をとつていた電力が、九十四倍にとどまつておるということは、わが国産業の上に大きなプラスではないか。しかも今後のわが国の熱源としては、電力が唯一のものであろうと思つておるのに、これを民営にして、先ほど私が述べたいろいろの欠陷に比べて、実際に国有国営がどれだけの欠陷があかということを、もう一ぺん具体的に二、三の例をあけて御説明願いたいと思います。
  70. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 欠陷として私が考えておるのは、今あげた通りでありまして、今までの発送電の経営につきまして、今私があげたような経営の非能率、官僚性、サービスの悪いというような点は明らかに認められるところではないかと思つております。
  71. 今澄勇

    今澄委員 それでは一言だけ大臣から確言を得ておきたいのであります。私はこの九分断によつて大臣は、現在九十四倍と言つておる電力料金を、さらにうんと安くして豊富にこれを供給することを約束する、それがもしできないならば、自分は将来政治家としての責任をとるのだというような、はつきりした言葉をお吐き願えるならば、ひとつこの際言つておいていただきたいと思います。
  72. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 この法案によりまして、電気事業の発展、それによる公共福祉ということを実現しようと思つておるのでありまして、私はそれができるという信念を持つてつておるわけでありますから、それがためには、全力を盡して、むろん施策をやつて参るつもりであります。
  73. 今澄勇

    今澄委員 大臣から絶対に大丈夫であるという確言はないけれども、一応それができるという信念のようでありまして、私は見解の相違でありますから、今の大臣の言葉をひとつ将来の参考に覚えておきます。  もう一つは、電源開発のこの電気事業分断法との関係でありますが、将来の電源開発に與える影響について、この電気事業分断法とにらみ合せて、これは簡單でよろしゆうございますが、大臣の御見解を承ります。
  74. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 今度の分断によりまして、電源開発が非常に遅れて行く、思うように行かない、活発にできなくなる。その点に故障が起きるというようなことは、昨日以来の御質問でたびたびお尋ねを受けたわけであります。それに対して私はお答えしたのでありますが、電源開発につきましては、政府といたしましても、長い間の調査があり、また計画もあり、それを積極的に実施しようとする十分の熱意を持つておるわけであります。これが分断されまして、分断されました各区域の配電会社として、当然また開発についての計画を持ち、それの実施についての熱意を持つものと私は信じておるのでありまして、その開発計画の実行について、資金の面、施設の面については、政府はさつき言つたような事情から、あらゆる努力を盡して行く考えでありますので、この分断の結果として、これがために電源開発に重大な支障を来すということはないと信じております。
  75. 今澄勇

    今澄委員 これを分断する結果、電源開発に対してわれわれがおそれることは、独立採算の責任経営体制下においては、資金の調達は一に会社の経済的な能力によつて決定されるものであります。会社の收益は、これは電気料金收入によることは、言をまちません。料金は供給力によつて左右される、その料金には公共事業としておのずから限度があるということを考えなければなりません。ブロック経営の場合には、その地域のいわゆる立地條件に惠まれるものはますます惠まれるに従つて好條件となる。しからざるものについては、漸次じり貧になつて国家的な資金のあつせんも、その会社の能力の限度を越えては、これが私企業である限りはやらないということになれば、これは非常にいいところと悪いところができるという結果になる。概して言えば、利益のあがらないところには、入つて行かないということを考えれば、これは非常に大きな不公平が生ずる。いま一つは公益難業委員会の勧告ということを、昨日大臣は言われておるが、この勧告とても独立採算制が存する限り強制的に行えるものではあるまい。もしこれを強制的に行おうとすれば、そのような強制を公益事業委員会が行えば、先ほど言われた責任者の責任の立場というものは、全然なくなるのであるか。その点についての御見解。さらには開発のための特別企業体開発公社のごときものを考慮しておるということは、日発を解体する目的から言つても、何のために日本発送電が解体しなければならぬかということもこれは了解に苦しむ。さらに火力地区では、水力地区採算限度を引上げる結果、むしろこれは建設を促進するという考え方は、火力地帶の地域差料金をくぎづけにするということを前提にしての考え方であつて、この地域差料金をくぎづけにされたのでは、その地区産業は発展しない。以上のような具体的な問題について、一つ一つ大臣答弁を要求するとともに、私は今電気事業に対して見返り資金から出されておるところの大体金額なり、その将来の御構想なりを、この際あわせて伺いたいと思います。
  76. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 公益事業委員会が、開発についての勧告をすることになつておりまして、建設命令を出すということにはなつておりません。従いましてそれがために開発が遅れるというおそれもあるというお考えがあるのではないかと思いますが、決して命令をするわけではありません。勧告をするだけであります。しかしながら公益事業委員会が勧告する以上は、それに必要な資金なり設備なりについても、できるだけのあつせんをするということが、当然行われるだろうと思います。ですから勧告が行われる場合におきましては、おのずからまた開発が容易にできるという事情になると思いますので、その実施も必ずしもそう困難ではないと思つておるわけであります。それと電源開発につきましては、今度できます新会社が九配電会社のみならず、必要ある場合には、電源開発のみを目的とするような企業体というものも考えられるということが、われわれの考えておるところでありまして、今度の九配電への分割ということは、現在ある発送電及び九配電会社をいかに再編成するかという問題について、この法案が出ておるわけであります。今後の発展につきましては、また別個にそういうことも考えてよいと私は思うのであります。それから料金関係で、企業経営の健全性というものがきまるのである。不利な事情のもとにある新会社に対して、資本の供給というものが困難である。それがために発電計画というものも、困難になろうというお話がありましたが、確かにそういう事情もないことはなかろうと思いますけれども、昨日も申しましたように、新しい会社は供給区域九つにつきましては、それぞれの独占権を持つております。そうして今度は発電設備を持つということになつて、経営としては非常に強固なものであろうと私は思います。ただ地利的な條件等によりまして、その間に優劣の差があることは事実でありますが、最も不利な條件の区域における会社といえども、一般産業に比べましたならば、基礎必ずしも危險なものとは考えられない。そこで資本の吸收につきましては、必ずしも非常な困難が生ずるとは考えられません。しかしながらそれらの事業が一般産業に比べまして、非常に公共性のある、社会公共福祉関係の深いものでありますから、政府といたしましても、資金のあつせん等は、他の産業よりも一段と努力をするわけでありますから、その面から申しましても、決してそう心配をされることはないのではなかろうか。また電源開発というものは、片寄つて有利な方面に特に行われて、他の方面では行われないというようなことが起るかもしれません。しかしながら今後の電源開発につきましては、自己の供給区域以外における発電の計画が、決してできないわけじやありません。また他の区域における電源開発が十分に行われたということになれば、電力融通等によりまして、他の不利な区域における配電会社もまたその恩惠に浴し得ると、私は考えておるのでありまして、御心配になりましたような点は、排除できるのではないかと思つております。  なおこまかい御質問にありました、今までの見返り資金からの融資関係等につきましては、係の方から御説明申し上げたいと思います。
  77. 始関伊平

    始關政府委員 電源開発に対する見返り資金は、二十四年度におきまして大体百億、地点で二十六地点でございます。これが完成いたしますと大体四十五万キロワットの電力を持つことになつております。二十五年度につきましては、ただいま申し上げました工事の継続分といたしまして、大体百五十億見当が一応確定いたしました。なお六十億ばかりの金があるわけでありますが、これを電源開発にどの程度充当し得るかという問題は、今後に残された問題であります。できるだけ多くこちらの方に持つて参りたいと思つております。
  78. 今澄勇

    今澄委員 今の大臣答弁では私ほこの電気事業の分断によつて、新たな電源開発が非常な支障を来すというようないろいろあげた点は、結局何とか努力して、それらの問題を支障が生ぜぬようにやろうというだけのことにすぎません。私もまた大きな支障を與えるということはわかりました。  もう一つちよつと大臣に聞きたいことは、この事業法が国会において通過しなければ電源開発、その他の方に使おれる見返り資金等の供給に、重大な支障を生ずるであろうということが言われておりますが、そういうことは事実であるかどうか。政府はこの法律の通過その他と関係なく、それらの電源開発にこれまで通りの見返り資金を注がれる熱意を持つているのかどうか。われわれは法律の審議と、そのような日本の重大な電源開発の資金の問題との間には、何ら関係がないと思うのですが、いろいろ疑点がありますので、大臣の責任ある言明を当委員会においてされんことを希望いたします。
  79. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 本法案が通過いたしまして、九分割が法案の通り実施されなかつた場合におきまして、見返り資金からの投資の点でどういう影響があるか、こういうような御質問だと思います。私からはつきりしたこれについての言明はむろんできません。ただ本法案は非常に重要なものでありまして、できるだけ早く成立することを希望するということは、関係方面の意見であります。従いまして本法案が成立しなかつたという場合において、関係方面がその点についてどういうお考えを持ちますか、私にはわからないのであります。むろん今後の電源開発につきましては、いかなる場合におきましても、政府はできるだけ資金の供給を豊かにして進めて参りたいという希望を持つておることは事実であります。けれどもこれは見返り資金等による資本の投下というものは、各方面との折衝の結果によつて、いろいろとかわつて行く場合があります。そこでこの法案が通過しなかつた場合に、それに影響がはたして来るかどうかということは、私どもにはむろんわかりませんが、関係方面においていかにお考えになるか、それによるよりほかないと考えております。
  80. 今澄勇

    今澄委員 いやしくも一国の大臣が、わが国の電力行政をあずかる者としてのその信念と決意の上に、ただいまの御答弁ほど私は情けないことな感じたことはありません。われわれは少くともわが国の電気事業に関しては、みずからは大臣をやめるとも、みずからが考えておるところの電源開発なり、その他の問題について邁進するものであるということが、わが国産業行政の責任者としての態度でなければなりません。私はそのような微弱な決意であるからこそ、今日この会期末期になつて、かかる電気事業法をわれわれがむちやくちやに審議をしなければならぬというような状態に相なるのだと思うのであります。われわれはそのようなわが国の電源開発に対する見返り資金の問題や、あるいはその他いろいろな関係方面の言葉で、わが国の実に重要な電源のただ一つ残されたこの電気事業におけるところの、われわれの態度を断じてかえるものではないということを、大臣はひとつ銘記されたいと思います。もう一つ最後に公益事業委員会でありますが、この公益事業委員会権限を行使するこの委員の任免が、国会と総理大臣にあるだけで、消費者すなわち国民全体が重大なる影響を持つところのあらゆる権限の行使に関しましては、国会も政府も何ら介入することができないことになつておる。この電気事業に関するところの、あなたの言われた公益性を守る一つ委員会が民主的な運営をして、あなたの希望するあらゆる措置をとり、いろいろな考えがこれには含まれておることと思いますが、これらの点について大臣は、一体公益事業委員会というものを、どのようにして民主的な正しい運営をされようとするのか、抱負と識見を承りたいと思います。
  81. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 公益事業委員会の運営の合理化及び民主化という問題でありますが、まず任命につきましては政府独断でなく、国会の承認を要するのでありますから、国会の立場からいつて、人材の選考は十分にお考えになつていただけるものと思います。また運営につきましては公益事業委員会決定について、異議がある場合には申立てができ、それについでの聽問会も開けるということになつている点で、委員の独断でのみすべてが決定できるとは考えておりませんので、運営についてもまた民主的な運営ができるだろうと、確信しております。
  82. 今澄勇

    今澄委員 同僚委員質問がありますので、私はなお幾多申し述べたいこと、質問したいことがありますが、この程度で打切ります。結論として、本電気事業法案は、わが国の地理的な、経済的な、社会的な條件から見ても、あるいは日本産業の復興の点から見ても、あるいは事業形態から見ても、諸外国の実例から見ても、あらゆる点から見て、ただいま大臣の御答弁では、わが国の電気事業を民営にするためにわざわざつくるのか、あるいは何かためにするためにつくるとしか、われわれは考えることができなかつた次第であります。そこで私はこれらの電気事業のあり方についての根本的な、ひとつ政府としての腹をきめていただくとともに、われわれはわが国百年の大計の上に立つた電気事業を、この際ひとつ打立てたい、そうして電源開発に関する見返り資金その他の問題、あるいはケネデイ氏から国会の審議に関して與えられた大きな一つの示唆というようなものも、昨日大尉から答弁がありましたが、われわれはそのような、少くともポツダム宣言に規定され、わが国の国会が與えられた権限内において、われわれが国会議員として、みずから協賛してつくり出すところの電力事業法というものについては、かくあるべきものであるということについて、固い信念を持つていることをひとつ大臣に申し上げるのであります。そこで質問を終るにあたつて、もらつた資料によつて今後政府関係係官の方と詳細な質疑應答をするためには、ただいま手元に参つた資料だけでは足りません。そこで私は資料を要求します。それは今手元に参つた資料のほかに、日本発送電の九地区別発電原価と、現九配電会社の残存水力原価及び配電原価を除く配電原価、但し昭和二十三年度分及び二十四年度分各社別実績による総合原価と販売一キロワット・アワー当りの原価をやつてもらいたい。それから現九配電会社の残存水力を除く府県別配電原価と、府県別、需要種別大口小口動力、電燈、電熱別の販売電力量、但しこれは昭和二十三年度及び二十四年度実績による配電原価は総合原価と販売一キロワット・アワー当りの原価。それから現在の府県等公共自治団体が所有する日本発送電及び各配電会社株数及び拂込金、それから本法案により九地区別にわけた場合の水力火力別一キロワツト・アワー発電原価、これは前から要求しておりますが、この資料は至急出していただかないと、われわれは審議ができません。それから日本発送電の本法案による九地区別資産再評価額と、各配電会社資産再評価額一覧表、これは二十四年度上期末の資産についても加えていただきたい。なおただいまの本法案による九地区会社別の総合原価と、一キロワツト当りの販売原価、但しこれは運転維持費等は二十三年度の実情を基準として、再評価額に相当する原価償却及び再評価益に対し、八分配当及び税金相当額を見込んだ場合を資料としてつくつていただきたい。日本発送電及び各配電会社別復金融資の残高、見返り資金借入残高とそれ以外の社債及び資本金額表、これはこの前要求しましたが、ぜひ至急出していただきたい。それから現在行われておるプール計算のやり方とその調査及び結果について、文書をもつて詳細な説明と、これの見通しに関するものをつくつていただきたい。この九分断の会社が出現した場合には、おそらく石炭をたいて、火力の発電が非常にふえると思うが、わが国の石炭生産の目標と、九ブロックに分断されたあとにおける電気事業が使う石炭の消費量を、大体年次別にわけて、今後三年間くらいの計画を立てて、一覧表をつくつて資料として提出していただきたい。以上を政府委員にお願いしておきます。
  83. 小金義照

    ○小金委員長代理 次は伊藤憲一君。
  84. 伊藤憲一

    ○伊藤(憲)委員 まず最初にお聞きしたいのですが、今度出ました電力事業編成法案並びに公益事業法案委員会で審議した結果、だれの目にもこれは日本の人民のためにもならない。日本のためにもならないという点が明瞭になれば、この法案を撤回または修正することができるものかどうか。この点についてお伺いしたいと思う。これは地方税法が本院を通過したことと考えまして、また同じ状態にある西独におきまして、二十三日のフランクフルトからのUP電によりますと、西独の国会が所得税法を通過したのを、高等弁務官会議が拒否した。これに対してアデナウアー首相がキリスト教民主党の大会に臨んで、激烈な調子でこれを非難し、かつUP記者との会談において、高等弁務官が所得税法案に拒否権を発動したので、私は事態を討議するための緊急委員会を開くよう金融專門家に対し招請状を発した。場合によつて政府は総辞職をするかもしれない。こういうことを言つておることを毎日新聞が伝え、ある新聞によりますとすでに総辞職したということも伝えられておるのでありますが、こういうような事情にある西独においては、こういうようなことが起つておるし、わが国においては地方税のような問題が起つておる。そこで私はこれについてこのような自主権があるかどうかということに対する政府の御見解を最初にお伺いしたい。
  85. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 この法案はむろん占領下におきまして、いろいろ折衝等は必要でありますけれども、政府の責任において提案しておるのであります。従つて私どもとしては、現在これを撤回したり、修正したりする考えは持つておりません。ただ修正できるかどうかというような問題は、これは国会として修正をなさる問題でありまして、国会がおやりになる必要があると思えばおやりになる。その場合の手続等はありましようけれども、これは私どもの関係する範囲ではないと思つております。
  86. 伊藤憲一

    ○伊藤(憲)委員 この電気事業の再編成は、大臣の二法案の提案理由説明の中にもありましたように、昭和二十三年の二月に、日発並びに各配電会社集排法の指定を受けてからの懸案であるのでありますが、その間この問題についてあらゆる角度から検討がなされまして、分断再編成に対しては国民各層の反対の起つておることは、これは政府も御承知だろうと思うのであります。また高瀬通産大臣自身も御承知だろうと思う。この反対の規模というものは前代未聞でありまして、たとえば九州のごときは知事はもちろんのこと、本日ここに出席してないかもしれませんが、本委員会理事である村上勇君、あるいは予算委員会理事である上林山榮吉君のような與党の議員までも入りまして、いろいろな人々が反対しておる。また大阪などでもたとえば大阪商工会議所、関西経済連合会、関西産業復興会議、関西経営者協会、大阪工業会、こういうものが反対しておる。また中国においてもこれは同様でありまして、さらに労働組合では電産が反対しております。この電産というのは吉田内閣並びに與党である自由党が育成をしておる民同の諸君が現在執行部をにぎつておる組合だ。二、三日前に倉石君も争ういうことを直接発表しておるのでありますが、そういうものも反対しておる。こういうふうに反対しておるのに、先ほど公益事業委員会のことについて、聽聞会を開くから民主的なんだということを大臣はおつしやつておるけれども、このように與党の内部においてすら反対があるということを御承知の上で、これを今日ここに強行上程されるということについては、どういう御理由からであるかお伺いしたい。
  87. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 私も各方面で反対があり、違つた意見があるということは承知をしております。何うしても電気事業の再編成の問題は非常に重大な問題であり、また利害の衝突のはげしい問題でありますから、意見が完全に一致するということは、なかなかむずかしい問題であります。従いまして違つた意見がありましても、また利害の衝突がありましても、適当な調節を加えまして、これを解決して行くほかないと考えておるのであります。解決が全部に満足を與えるということは、とうていできませんので、どんな解決をいたしましても、やはり反対異論は残されるだろうと思つておるのであります。そういう意味でいろいろの意見反対はありますけれども、現在において私どもが検討した範囲においては、最も妥当なる案としてこれを提案をしておるのであります。
  88. 伊藤憲一

    ○伊藤(憲)委員 全部が一致するなどということは、もちろんあり得ない。あり得ませんが、この反対というものは今日において、国会においては自由党を除く各野党が反対を声明しておることは御承知の通りであります。また與党議員の中にも反対がある。そうして今申し上げましたように、国民各階層の間にも反対がある、つまり反対が四割あつて賛成のものが六割あるというような事態ではありません。孤立しておるのは吉田内閣と配電会社だけだ。そうであるならば、これは一致だとか何とかいう問題でなしに、高瀬通産大臣のお考えになる大衆の意向を聞くという意味の民主的のことから言つても、こういうものを強行するということは、理由がないと思う。そこで私はお伺いしたいと思う。これらの反対にはもちろんそういう点はあります。共産党と社会党の反対の理由や、與党の諸君にもそういう反対の理由はある。しかし分断に対して反対しておるという点においては一致しておる。これは日発の重役とも共産党が一致しております。そこで高瀬通産大樹にお伺いしたいのですが、これらの反対の理由には根拠がないとお考えになつておりますが、すなわち、共産党も、自由党の村上君などの反対理由も、根拠がないとお考えになつて、今日これを強行上程されたのであるが、これをお伺いしたい。
  89. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 今のお話でありますと、発送電一本を分割するということに対して、すべてが一致して反対をしておるというような御意見のようでありましたが、私の知る範囲においては、必ずしもそうでないと思うのであります。分割をするということについては反対はしない、しかしながら、その分割の仕方、分割したあとの問題等について、いろいろの反対や意見がある、それが非常に多いと私は考えておるのであります。反対の理由、またいろいろな違つた意見等は、昨日来の御質問でいろいろと出ておるのでありますが、それに対する私どもの見解は、お答え申した通りでありまして、私どもが今まで考え検討して来た結果としては、これが一番合理的であると考えまするので、ぜひともこの案で通過するように願いたい。こういう考えでおるわけであります。
  90. 伊藤憲一

    ○伊藤(憲)委員 先ほど今澄同僚委員からも話されましたが、この法案はと  にかく日本の全産業及び全人民の生活に影響めあるような重大な法案であります。それが二月の十七日に、元の通産大臣である稻垣さんが、この問題に関連してと、うわさされて辞職された後に、翌日池田大蔵大臣が兼攝されまして、二月足らずの今月の十二日でありますか、高瀬さんにおかわりになつたような事情もあるのでありますが、これは今澄君からも指摘した通りであります。それで私どもも、実は関係当局から、今国会で至急にあげるようにという要望が高瀬さんにあつたということを、きのう宮幡政務次官を通じて伺いましたし、ただいま今澄委員質問に対しても、そういうことが答えられておるのでありますが、本法案を見ますと、施行期日は七月の一日を越えてはならないというふうに書かれてあります。これはそういう点から言いましても、第一番に私は、今国会も残すところ、きようを除きましてあと三日しかありません。きのうを含めましても五日間、つまり一院二日半の審議期間しかないので、とうてい審議はできないと思う。かてて加えて、與党議員の福田君から、数十に及ぶ資料の請求がありましたし、また今澄君から四十幾つかの資料を請求されるようでありますし、昨日政府からいただいた資料を読むだけでも、とても三日や四日では読めないのであります。私どもはもつとこれを愼重に審議する必要があると考えているのですが、これに対して高瀬通産大臣の御見解を承つておきたい。
  91. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 国会への提出の時期がたいへん遅れまして、それがために審議期間がはなはだ不十分であるという御意見につきましては、私どももその点おわびを申し上げておるのであります。できるだけ長い期間を御審議に使つていただくことは、ぜひとも必要だと思うのでありますけれども、昨日も申しましたような事情で、問題が非常に複雑でありましたために、検討すべき点が非常に多く、それがために、成案を得るまでに時日を相当に要して、その結果として実は提出が遅れたわけであります。けれども昨日申しましたように、私どもといたしましては、この問題はできるだけ迅速に解決をして、新しい体制のもとで電気事業出発をし、発展をはかつて行くことが、ぜひとも必要であると考えますために、その期間の短かいということは、はなはだごむりでありますけれども、何とかその点を御了承いただきまして、できるだけ迅速にお進めを願いたいというのが、私どもの希望であります。
  92. 伊藤憲一

    ○伊藤(憲)委員 この問題につきましては、高瀬通産大臣の御見解として承つておきます。ただ私どもは、国会が国権の最高機関であり、唯一の立法機関であるという自覚に立つて、本法案の審議にあたるということを表明して次の質問に移ります。  電力事業の再編成が経済力集中排除法の適用を理由として行われるのでありますが、一体経済力集中排除法は経済民主化のための法律として、独禁法とともに、財閥会社による過度の独占集中を排除して、企業の民主化をはかることを目的とするものであることは、その第一條でうたつている通りであります。しかるにこれらの法律の実際の運用を見ますると、東芝、日鉄、日発等の最も某幹的な部門の分割が不当に強行されて、何ら民主化の遂行とかかわりなく、かえつて外国資本の分割支配を容易ならしめて、その隷属化のための有力な武器になつていると考えるのでありますが、この点大臣の御所見を伺いたいと思います。
  93. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 独禁法並びに集中排除法の適用につきまして、今おあげになりましたような産業について、何か差別的な特殊な扱いがなされておるのではないかという御質問でありますが、私どもの知る範囲におきましては、決してそういうことではないと考えております。
  94. 伊藤憲一

    ○伊藤(憲)委員 この問題につきましては、先ほど今澄委員からも、私どもと別個の立場から、いろいろ民主化の解釈の問題なんかについても、御質問があつたのでありますが、私どもとしては、独占を排除する、あるいは民主化ということは、企業が一つになつているものを分断するとか、あるいは国営であるとか、民営であるとかいうことが、直接の問題ではなしに、これらの企業が実際に国民の多数者である人民の役に立つているか、または人民によつてその経営が人民の利益のために運営されているかどうかということが、問題だろうと考えているのです。そこで昨年の暮れの電気料金の値上げが、労働者、農民はもちろんのこと、中小企業者、またたとえば川鉄、東芝堀川工場等のような大企業でも、相当な混乱を起しまして、全国で猛烈な反対運動が起つた事実は、皆さん御承知の通りであります。しかもその際地域差がつけられ、これによつて地域による差別待遇がはつきりしたのでありますが、その際政府委員は、電力分断と関係がないと、口をそろえておつしやつてつたのであります。そのときもちろん稻垣前通産大臣も、そういうことには関係がない、あるいはただいま電力編成議会で審議中でありますと答えておつたのでありますが、ただ西村安本政務次官だけは、私の質問に答えまして、この分断に対しては、「現在のところは、分割するという意思はないのでありまするけれども、実情は皆さん方の御承知の通りの関係が、春先から進んで参つておりますので、またそういう情勢に向うことは、あり得ると御了承おきを願いたいのであります。政府としては、つとめて分割することには、同意いたさない考えを持つております。」こう政府の御見解を表明されたと、私たちは解釈しておるのであります。これはたしか十二月九日だつたと思いますが、この西村政務次官の御見解の表明からまだ半年たつておりません。そして政府は会期の五日か六日に迫りました今日この法案を出して、先ほど通産大臣からも、一々意見の統一をはかることはできないとか何とかいうことをおつしやつて、おるのでありますが、政府としては一体今までは、少くとも昨年の暮までは西村政務次官の言われるように、分割する意思がなかつたのだが、年が明けてみたらひよつと気持がかわつて、今日はこういう事態でもつて、この分割法案を上程して強硬にお通しになるようなことになつたのか、あるいは西村政務次官がかつてないことを放言したのかということについて、通産大臣の御見解を承つておきたいと思います。
  95. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 今お話のありましたようなことが、西村政務次官からありましたかどうか、私は存じておりません。私の見るところでは、電力編成の問題は昨年十二月以来の問題でなくもつと前からの問題でありまして、長い間の懸案とされておつたのであります。そうしていかにこれを実行するかということについて、ずいぶんいろいろと検討されて来たわけであります。とにかく日発及びかつて配電会社というものは、集配法による指定を受けまして、再編成されなければならないという事態にあつたことは事実で、これは何人も認めるであろう。この集配法の指定に基く再編成等をいかにするかということについて、長い間検討されておりましたから、その間にはまだずいぶん現在とは違つた考えもあつたかもしれませんけれども、審議会があり、あるいはその他の案もあり、いろいろと検討された結果といたしましては、今日のような結論に到達したのでありまして、西村政務次官がどういう御発言をなさつたか、またその当時そういうお考えが一方にありましたといたしましても、これは検討の途中にあつたものと私は考えております。
  96. 伊藤憲一

    ○伊藤(憲)委員 それはとにかくといたしまして、当時政府の大半の人々、西村政務次官や稻垣通産大臣もそうでありますが、政府委員が大体この電力値上げは電力の分割と関係がない。関係があるだろうということは野党はもちろんのこと、與党議員からも質問されたのでありますが、ないということを言われたのでありますが、今日になつてみれば事態はまことに明白でありまして、電気料金の値上けが今度の電力編成の一律化であつたということは、明らかになつております。この値上げも政府のいう三割二分料金、つまり政府のおつしやることの信憑性について私は言うのですが、三割二分の料金値上げが実際には十倍にもなつている。あるいはおしなべて十倍ではありませんけれども、大体において少くとも三倍から五倍になつています。これは中小企業の閉鎖やあるいは農業経営の圧迫、それから病院における手術などを不可能にしている。たとえば懷中電燈で手術をするなどという事態も、大阪の病院では——これは大学の附属病院でありますが、起つておる。もちろん家庭生活を破壞したことは新聞が報じた通りであります。この分断の序の口の手口を見ましても、今度本格的に行われる電力分断がどんなものであるかということは想像されるのであります。すなわち電気料金の値上げだけをもつてしても、これだけの大破綻が起つている。ところが今度本格的に行われた場合には、こういう中小企業その他の平和産業に対して、どれほどの威力をこの分断が発揮するかということは、想像にかたくないと私どもは考えるのであります。しかもこれら中小業者あるいは平和産業電力割当料金値上げで圧迫しながら、火薬産業やセメント化学、繊維、ことに化学部門におきましては昨年度の第四・四半期消費量の割当のごときは、これは一般化学も含めてでありますが、大体私の記憶するところでは二四%の電力割当がなされております。こういうふうに特殊な部門、ことに直接間接軍事的な用途に関係の深い部門に、この消費量の割当がなされて、一般にはなされていない。しかも自家発電装置の返還、その他軍事的な專制的な軍事産業といつたものに、特別な保護が加えられているということは、事実が、証明しているところであります。この傾向が分断によつて決定的なことは、私どもは明らかだと思うのでありますが、この事実をもつてしても、政府はこの分断を平和産業の復活と答弁されるかどうかということについてお伺いいたします。
  97. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 電気料金産業に対しまして重大な影響を與えるものであるということは、まつたく同感であります。従いましてこれについては十分の考慮を拂つて行かなければならない。今度の再編成の結果といたしまして、その電気料金に大きな違いができて来る地域的な差、あるいはまた料金の引上げというようなことで、それがために中小企業等に対して、重大な悪影響を及ぼすというお話でありましたけれども、私どもの考えは昨日来お話しているようなわけでありまして、この再編成直接の結果といたしまして、今まで以上の料金地域差の拡大を生ぜしめない、また料金についての引上げというようなことも、直接結果としては生ぜしめない方針で案をつくつているのでありまして、この点につきましてはもしそうでない、どうしてもそういうことにはならないというお考えでありましたならば、意見の違いになると思いまして、はなはだ遺憾に思います。
  98. 伊藤憲一

    ○伊藤(憲)委員 大臣が遺憾だと思われても、われわれはそういう解釈を持たざるを得ないわけです。これは現実に進行している事態がそうです。そこで電力というものは、石炭とともに一国における重要なエネルギー部門でありまして、かつこれらの近代化とともに、電力の役割は一層決定的になるのです。従つてこの電力を支配するということは全産業を支配する。だから政府も見返り資金の私企業投資の四〇%を電力部門に投入しているのでありまして、今日までの過程におきまして、いろいろ関係当局と政府の間で、この問題について論議があつたようであります。そして最後には公益事業委員会といふものが、総理府の外局ということになりますが、実質上においてはこれは内閣から独立している。私はもう時間がありませんので、この点についてはこまかいことは伺いません。たとえば前の案では五人からなる公益事業委員会委員は、大臣に準ずる待遇をするということを明記されてあつたように覚えております。今回の法案ではこれが消えておりますが、実質上にはこういうことが生かされるのではないかと思う。そうしますと内閣だつて現に大臣が十人内外で構成しているのに、電力行政をつかさどるこの公益事業委員会が、こういう大臣級の五人の人間によつて、一切を牛耳られるようなことになるのでありまして、この電力委員会公益事業委員会が握つて電力及びガスに関するあらゆる問題の決定権を握るということになりますと、これは電力を通じて全産業を軍事的な植民地化の方向へ再編成するというふうに、私たちは考えるのであります。こういうことになりますと、この公益事業委員会のようなものをつくつて、これは何と言いますか第四権的なとでも言いますか、立法権も司法権も行政権も兼ね備えているというようなふうにも考えられている権利を持つような機関が、電力を握るということになりますと、日本電力行政が日本から切り離されるように考えられるのでありますが、通産大臣はこの点についてどういう御所見を持つておるか、お伺いしたいと思います。
  99. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 電力というものが、経済界において非常に重大な力を持つものであるという点は同感であります。従つてそれがお話のありましたような方面に、濫用されてはならないということも同感であります。これが国家管理、国有となつておりましたならば、むしろお話のあつたような濫用が、一層起きやすいのではないかと私は思います。国家管理国家統制というものを引離して、これを民有、民営の立場においてやらせるということは、むしろその弊害を除こうとしておる公益事業委員会が、それに対して相当大きな力を持つというところから、また新しい濫用の危險があるのではないか、こういう御意見のようでありますが、公益事業委員会委員は、政府がかつてに任命できるものでありませんで、国会の承認を経て任命されるものでありますし、また内閣とは比較的に独立した地位において、客観的な立場で政治的な影響あるいは経済的インテレストを離れた立場でやるという組織になつておるわけであります。従つて御心配になるような点は、この公益事業委員会によつて初めて排除されるのではないかと私は考えます。
  100. 伊藤憲一

    ○伊藤(憲)委員 この点につきまして、もつと質問したいのでありますが、大分時間も切迫しておりますので、同僚議員である風早料の質問に私は讓りたいと思います。この電気事業の分断が、私の考えるところでは、東南アジアの急迫した事態の要諦に必要なこととなつて来ておる。これは南方米の輸入と肥料輸出との関係に現われておるように、戰争準備と軍事基地化のために、日本産業を軍事的に再編成する必要から急がれておる。それ以外に理由がないように思うのですが、それに対して大臣の所見を一応伺つておきたい。
  101. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 私はただいまの御意見とは、全然反対の意見を持つておるのであります。そういう意図は毛頭入つておらないと考えております。
  102. 伊藤憲一

    ○伊藤(憲)委員 先般電気事業会社に対する見返り資金の借入金の担保に関する法律ができたのでありますが、そのときにもいろいろ問題になりました工場財団が、本法律案では存続することになつております。かつ資産再評価を禁止しておる條項がこれにはあるのでありますが、今日電気事業に対して、たしか百七十七億に及ぶ主として米英の旧外債がありまして、これは戰争中に政府が承継した云々ということでありますが、このことと工場財団を存続しておくということと、そうして再評価を禁止する。これについては日発株主擁護連盟委員の山中力松という人も書いておりますけれども、資産評価をやるのは、配電会社の連中に日発を抜きとらせるために、やるものだという意見を書いておりますが、これと違つた観点から、資産再評価法の法文の規定にもかかわらず、今度できる法律によつて規定される公益事業については禁止する。禁止しておいて百七十七億の外債が未解決のままになつておる。ところが未解決になつておるが、日本は敗戰国でありますから、日本の意思が通るようなことは、少くとも今までの吉田内閣のやり口では考えられない。そこで百七十七億の金が生きて来て、しかる後に再評価をやることになるということを、私は考えざるを得ない。先ほど来から今澄委員との応答の間でも、高瀬通産大臣は、国有国営は、官僚統制になるとかいろいろなことを言いましたけれども、これと関連しまして、旧外債の有力な投資会社であるデイロン・リードの副社長であるドレーパー氏が——これは前に陸軍次官として日本に来、今度は副社長としてやつて来て、そうして強力に国営ということに反対していたということを、私は日発の重役から直接聞きました。こういうことを考えてみますと、この分断というものはどうしても旧外債に保護を加え、さらに見返り資金によつて、外国資本の日本電力事業の分割支配を容易ならしめ、分割支配のために道を開き、そうしてそれを通じて日本の全産業に対する道を開き、今日の世界情勢からいたしまして、日本産業を軍事的にして行くようにしか考えられないのでありますけれども、この資産評価の問題及び工場財団の存続についで、政府はいかなる見地からこういう規定をなされたのであるか、一応お伺いしたいと思います。
  103. 高瀬荘太郎

    高瀬国務大臣 今度の法案によりまして、今までの工場財団に対する担保権が消滅しないというような規定があります。それは御承知のように、戰時中の特殊な措置が懸案になつておりますために、できておる処置であります。それから再評価との関連で、いろいろのお話がありましたが、再評価をこの再編成の行われる前に禁じてあるということは、再評価がその前に行われて、その再評価の仕方が会社によつてまちまちに行われるということになりますと、分割の場合非常にめんどうな問題が起きます。また不公平も起きて来るわけでありますから、これを分割したあとにまわす。これいう意味でそれ以前の再評価を禁止したわけであります。それから再評価を延ばすことによつて、何らか特殊な利益が一方に生ずるというようなお話もありましたが、それは少し誤解ではないかと思うのでありまして、再評価によりて生じます影響は、先にやりましても、あとでやりましても、所有する財産が同じである場合は、決して違いは生じないのであります。ですからそれらの点を考慮されまして、何らか軍事的な意図その他の特殊な意図があつて、これが行われるのではないか、こういう御議論でありましたが、私は決してそういうことはないと考えております。
  104. 伊藤憲一

    ○伊藤(憲)委員 それでは時聞もよほど過ぎましたから、私は大臣に対するこの問題の質問は、一応終り、後の問題については発言を保留いたしまして打切ります。
  105. 小金義照

    ○小金委員長代理 本日はこの程度で質疑を打切りまして、明日は午前十一時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時二十四分散会