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1950-04-25 第7回国会 衆議院 通商産業委員会 第36号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年四月二十五日(火曜日)     午前十一時五分開議  出席委員    委員長代理理事 有田 二郎君    理事 神田  博君 理事 小金 義照君    理事 澁谷雄太郎君 理事 永井 要造君    理事 村上  勇君 理事 有田 喜一君    理事 今澄  勇君       阿左美廣治君    岩川 與助君       江田斗米吉君    門脇勝太郎君       北澤 直吉君    小西 英雄君       關内 正一君    多武良哲三君       中村 幸八君    福田  一君       藤枝 泉介君    前田 正男君       青野 武一君    加藤 鐐造君       西村 榮一君    伊藤 憲一君       風早八十二君    田代 文久君       河野 金昇君  出席政府委員         通商産業政務次         官       宮幡  靖君         通商産業事務官         (資源庁石炭管         理局長)    中島 征帆君  委員外出席者         專  門  員 谷崎  明君         專  門  員 大石 主計君         專  門  員 越田 清七君 四月二十五日  委員江花靜君、首藤新八君、高塩三郎君、田中  彰治君、玉置信一君、福田篤泰君、宮原幸三郎  君、中崎敏君及び田中堯平君辞任につき、そ  の補欠として井上知治君、佐藤榮作君、高木吉  之助君、藤枝泉介君、圖司安正君、北澤直吉君、  關内正一君、青野武一君及び田代文久君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員佐藤榮作君及び井上知治辞任につき、そ  の補欠として首藤新八君及び田中伊三次君が議  長の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 四月二十四日  産業技能者養成費国庫補助陳情書  (第八四〇号)  特別鉱害復旧臨時措置法成立促進に関する陳情  書(第八五一  号)  木材の輸出許可に関する陳情書  (第八五五号)  商工会議所法制定促進陳情書  (第八五六号)  京都市に中小金融特別店舗設置陳情書  (第八六〇号)     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  臨時石炭鉱業管理法廃止に関する法律案(星  島二郎君外九名提出衆法第一九号)  特別鉱害復旧臨時措置法案内閣提出第八号)     ―――――――――――――
  2. 有田二郎

    有田(二)委員長代理 これより通商産業委員会を開会いたします。前会に引続きまして私が委員長職務を行います。  ただいまより臨時石炭鉱業管理法廃止に関する法律案を議題として審査を進めます。質疑を継続いたします。河野金昇君。
  3. 河野金昇

    河野(金)委員 この重要な法案が、会期の切迫した折に突如として、政府提案でなしに議員提出として出されたところに、いろいろな含みがあるのでないかと思います。この法案が通過したときに、提案者神田君なり、あるいは今委員長代理を勤めておられる有田あたりが、身をもつてこの法案通過阻止に当られた姿が、なまなましく思い出されるのであります。それと同時に、この法案をめぐつていまわしき問題まで惹起したことは、非常に遺憾なのであります。自由党の方々として、このいわくつき法案廃止されたいというお気持はわかるのでありますが、そういう感情にとらわれて、この重要な法案を出されるというようなことが万一あつたとしたならば、これは公私を混同するものであると思うのであります。従つて、この法案をお出しになりました提案者の一人の神田君から、まず前提として、これに対するところのお気持を承りたいと思います。
  4. 神田博

    神田委員 河野委員お尋ねにお答えいたします。この廃止法案が、国会会期が幾ばくもないときに、突如として出して参つた真意なへんにあるのかというようなお含みお尋ねでありましたが、これはこの法案提出いたしまして説明いたしました当日も、今澄委員から十分お尋ねがございまして、河野委員はちようどおいででなかつたようでございますので、(「聞いておつた」と呼ぶ者あり)われわれの心境を十分御了解なさつておらなかつたのではないかと思います。お聞きしておられたとすれば、私が見そこなつてつたと思いますので、それは訂正いたします。そこでもう一度お答えいたしますが、会期迫つた今日出したことは、どうかといお尋ねでございましたが、御承知のように、通産大臣も稻垣君が新春早々池田君にかわり、池田君がまた今の大臣にかわるというようなわけでございまして、主務省との打合せの関係もうまく行かず、また私ども根本的には、法律案はやはりできるだけ議員提出にしたいという念願がございますので、この法案につきましても、さような考えのもとに、たんたんたる気持ちで、いろいろ検討して参つたのでありますが、もはや不用であるとい断定がつきますや、われわれ同僚相誘いまして、議員立法としてこれを廃止しよう、こういう気持でございまして、本法制定当時のいきさつについては、今お述べになられたようなこともございまして、私どもも遺憾な点と考えておる部分もございます。しかし廃止法案をめぐりましては、まことにたんたんたる気持ちであるということを御了承願いまして、すみやかに御賛成願いたいとい考えでございます。よろしくどうぞ……。
  5. 河野金昇

    河野(金)委員 成立当時不愉快なことがあつたから、これを廃止するときは、たんたんたる気持ちでやりたいということは、その通りであります。万一これを廃止するときに妙なことがあつたら、これは天下に醜をさらすものであつて、断じてないことを私も信じますし、このたびはなかろうと思います。しかしこの法案廃止するところ理由が、もはや石炭需要供給関係から余つて来たから、廃止する、この提案理由に書いてある「現下経済事情にかんがみ」ということは、今澄君からしつこく食い下りましたけれども、残念ながら神田提案者からは、満足の行く答弁がなかつたのでありまして、これは神田君としては、見解の相違といつてお逃げになるであろうから、私も追究してみたとて、同じことを繰返すだけですから、繰返しません。しかしとの需要供給関係から、石炭が余つて来た、増産されたから、もう増産目的のためにつくられた法律は必要がないとおつしやるところ理由には、われわれ納得がいかないのであります。たとえば昭和二十四年度の石炭目標は、四千二百万トンであつたと、われわれは聞いております。四千二百万トンの目標であつたにかかわらず、四千万トンぐらいが増産されたときに、すでにもう石炭はいらなくなつて来た。従つて配炭公団とかいろいろなものが廃止をされたのでありますが、それは石炭増産されて必要がなくなつたのじやない。自由党政策と申しますか、池田財政の行き詰まりから、石炭を用いる産業が萎縮した、こういうふうに考えられるのであります。四千二百万トンの目標のもとに日本経済の復興を考え、またあの二十四年度の予算を組まれたのであります。それがわずか四千万トンで、もはや石炭が余つて来たといところに、大きな問題があろうと思うのであります。一体提案者は、増産目的を達したから、この法案は必要がなくなつたとおつしやるのでありますが、ほんとうに腹の底からそういうふうに考えておられるかどうか、この点をはつきりとお伺いしたいと思います。
  6. 神田博

    神田委員 一口に申し上げれば、先日来申し上げておりましたように、増産の一応の目標は達成したということを申し上げることに盡きると思います。しかししさいにこの法案を検討した場合、御承知のように、この法案の内容は協力命令を出すとか、あるいは設備、資材の讓渡命令を出すとか、あるいは設備拡充に関する命令を出そう。そこでそれらの命令については、業者が損害のあつたような場合には補償もしようというように、政府石炭管理に非常に重点的な立法をしておるのでありますが、これを振り返つてみますと、かような命令一度も出されたこともない。このことから考えましても、一体この国管法が、制定当時のねらい通りに通んでおるかどうかということも、まず基本的に考えなければならないのではないか。そこで私どもはこの法案を残すといなとにかかわらず、今日の段階においては、石炭需給状態から考えて必要じやない。むしろ進んで廃した方がいいのじやないか、こういう結論に達した。たとえば河野さんが、こういうことになつたのも、池田財政一つ消極政策から出ている産業萎縮によるところ縮小生産の結果でないか、というようなお尋ねもございましたが、そういうお考え、説のあることも、私も十分承知しております。しかし本法制定当時、石炭が他の産業需要に応ずることができなかつた。そこで強力に石炭増産のために打つた手でありまして、今日の需給状態から考えますと、他の産業との、バランスがとれておる。そういう際に石炭協力命令——政府国家管理をしようというような意図を蔵しておく必要はないじやないか。こういうことが、この法案を廃したい私ども考え方であります。臨時立法でありますので、一年繰上げて廃止しても支障ないではないかというふうに考えております。将来特に需要が喚起せられて、強力にやる必要があるというような事態が生じて参りましたならば、それはおのずから別の立場から考えざるを得ない問題じやないか。一応今日の段階においてはそういう仮定はしておりませんので、廃止するものは廃したい。また必要があれば、必要になつたときに、その必要に応じて制定すべきものではないか。こういう考えで進んでおるわけであります。
  7. 河野金昇

    河野(金)委員 この法律は、業者労働者監督官庁が、三位一体となつて増産目的を果すにあつたのであります。神田君のおつしやつた通りに、そういう法律ができたけれども、一度も強制命令が出なかつたじやないか、法律はあつたけれども、そういう強権発動的なことはやらなかつたから、こういう法律は必要じやないじやないか、こういう御議論のようにも承るのでありますが、法律とか規則というものは、それをつくつただけで私は相当の効果があると思う。その法律があるということによつて業者も労務者も、下手をすれば強制命令が出るといところから、自粛するなり、協力するところは協力するなり、自主的にすることによつて、この法律ができたがために、やはり強権発動的なものはなかつたけれども目的は達したと私たちは考えるのであります。これも意見の相違神田氏は逃げるだろうと思いますが、先ほど来需要供給のことばかり言つておられるようなのであります。とにかく昭和二十四年度が四千二百万トンなければ、日本産業石炭にマツチしない。こういうところから安本が計画を立てて、石炭増産に邁進をしたのであります。それが四千万トンでもはや余つて来たということは、需要供給関係から言えば、その通りであるかもしれぬけれども最初自由党が抱いた、政府が抱いたところ産業の構造と申しますか、産業計画から行くと、石炭一つをとつてみましても、二百万トン少くて、すでにあまつて来た。こういうことは、これは池田財政、ドツジ政策のしからしむるところであつて、このドツジ・ラインというものを打破ることができたならば、石炭は当然もつと必要になつて来るであろうと思います。新聞を見ると、近いうちに何だか池田さんがアメリカに行くそうです。また吉田さんの特使の白洲さんとかいう人も行くそうです。そうして減税をやるとか何とかいうことを言つておるようでありますが、もしも彼らが向う行つて、ドツジと会つたり、シヤウプと会つたりすることによつてドツジ・ラインというようなものが修正されるようなことになつて来たならば、日本産業はもつと息を吹き返すであろうと思います。石炭は当然必要となつて来るであろうと思うのであります。そのときになつて、あわてて増産をしようと思つてみても、できないというようなことがあつたら、たいへんなことであろうと思うのであります。この法律が適用されておらないから——臨時立法で来年これを廃止すればいいのに、もう一年繰上げてやるのだとおつしやるのでありますが、むしろ池田さん、白洲さんというような吉田さんの信頼ある人々が行つて、今の計画を何とかかえようとしている矢先であるのであります。むしろこの際は——期限が来ているやつならばやむを得ないのでありますが期限も来ておらない法律でありまするから、むしろ来年まで見合された方が適当でなかろうかと思います。せつかく池田白洲向うで成功して帰つたあかつきに、この法律なきことによつて困るような事態が起きたならば、親の心子知らずでありまして、神田あたりがまた吉田ワン・マンからおしかりを受けなければならぬことにもなるだろうと思います。来年まで延期されるという御意思があるかないか、これを承りたいと思います。
  8. 神田博

    神田委員 たいへんおもんばかりをいただきました御質問でございまして、恐縮に存じておる次第でございます。四千二百万トン石炭が確保されることは、先般来いろいろ御質問に御答弁申上げた通りでございまして、ただこの際ここで先般来お答えしなかつた点に触れてみたいと思いますのは、いたずらに量だけの石炭は問題でなつのでありまして、質の問題が伴なつていることは、もう河野委員十分御承知考えております。配炭公団時代カロリーの場合と、配炭公団廃止後の質の向上カロリー向上ということを見ますと、非常な質的向上を示しております。トン当りどもの調べたのによりますと、従来の五千五百カロリーというものと、今日の五千五百カロリーというものについては、少くとも一割以上のカロリーが質的に向上しておる。言いかえますれば、配炭公団時代カロリーは、実際のカロリーじやなかつたものを格上げしたカロリー扱つてつた。そこで量だけを急いでおつた二つ文字を合せて石炭というべきものを、石と炭を出しておつた。そこでカロリーをごまかしておつた、量だけに依存したというようなことが言われておるくらいでありまして、配炭公団廃止後の今日においては、カロリーも正常なカロリーとして計算されておる。質的に一割以上、もつと向上しておるということは、これは見のがせない事実でありまして、統制廃止後の競争による一つ効果産業界に與えておる、こういうふうに私ども考えております。石炭は量だけの問題でなく、質の問題である。そこで質の問題が非常に向上しておるということを、十分考えなければならないのじやないかということ。それからもう一つ、今御心配、御注意をいただいたのでありますが、池田君は本日出発したように私も新聞で拜見しております。白洲君も何か総理のお使いとして行つたような記事を見ております。詳しいことは私はまだ承知しておりませんが、新聞の伝えるところによりますと、ただいま河野君のお述べになつたような期待を、吉田首相はかけておらないようであります。道遠く任や重しということは昔のことであつて、君の今日行かれるのは交通が発達してまことに道は近い。またドツヂ・ラインシヤウプ勧告というものもできておるので、あつて、行つたところで、これは変更にならないであろうというならば、その任やまことに軽いと言わなければならない。どうかからだを十分に気をつけて行つて来たまえというようなことであります。河野さんが非常に期待されておるということは——これは新聞でございますから、私は非常に尊重してその通りのことを申し上げますと、そういうふうに書いてございますので、河野さんが、池田白洲の折衝によつて石炭が五千万トンも使つた場合に、この法律がないから非常にしかられるのじやないかというような御注意でありましたが、これは通すことについては吉田さんも賛成者の一人でありまして、その点の十分な連絡もございますので、おしかりを受けるというようなことは、万々ないものと御了承願いたい、こういうふうに考えております。
  9. 河野金昇

    河野(金)委員 神田君の答弁を聞いて非常に失望をするのであります。自分の方の大蔵大臣が行かれる、吉田さんの信任の厚い人が行かれるならば、もつと大きなものを期待されるのが当然であろうのに、われわれ野党期待しておるにかかわらず、與党神田あたり期待されないということは、まことに不可解しごくのものであり、それほど期待もしないような、大した任務もないようなものであるならば、国会開会中に大蔵大臣ともあるべき者を向うに送るべきではないではないか。もつと神田君なり、神田君の子分くらいのものをお送りになるべきであろう。大蔵大臣というような重要な職務にある人を、重要でもない役目を負わしてやるということは、これは一党の幹部として、神田あたりもつと注意を喚起しでいただきたいと思います。おそらくこれは先日の地方税についての中小企業国民大会のときにも述べておきましたが、多分池田さんは向うから減税になるであろう、ドツヂ・ラインも修正になるであろうというような放送をたえずしておいて、選挙を有利に導き、選挙が済んだころに目的をはたさずに残念だと言つてお帰りになるであろうことは、先ほどの神田君の答弁からも伺い知ることであります。これは今度の参議院選挙を通じて、われわれ選挙民に十分伝えるであろうということを、ここで申し添えておきます。  先ほど、いろいろな統制を解いたことによつて石炭品質向上が一割くらい上つたということをおつしやつたのでありますが、その通りであろうと思います。しかしその反面において、自由競争の結果、つぶれて行こうとしておるところ中小炭鉱のあることもわすれてはならないのであり、戰争中の増産命令によつて荒されたところの鉱山を、特別に保護しようというようなことが、この法案に出ておる矢先であります。もちろん高品位のものを出しておるところ炭鉱等は、自由競争の結果非常な利益を得たことであろうと思いますが、中小炭鉱は非常に困つておるのであります。これらも先日来同僚議員質問に対して、何度も神田氏も答えておられて、迷惑だとおつしやられるかもしれませんけれども自由競争の結果、中小炭鉱が滅びつつある。これに対して答弁としては見返り資金をどうするの、預金部資金をどうするのと、いろいろおつしやられておるが、現実にはこれがほとんど出ておらないのでありますけれども一体こういうものに対してただ統制を解く、法律廃止する、そういうだけではなしに、何も大炭鉱なり良質の石炭を出しておる山だけが、日本炭鉱業者ではないのであります。全部を含めた立場から、ものは見て行かなければならぬと思います。この滅びんとしておるところ中小企業炭鉱に対するところ金融の面、その他の面に対して、どういうふうな考慮をめぐらしておられるか。これはくどいとおつしやられるかもしれませんが、今までの神田委員提案説明では、はつきりしたものが得られなかつたのであります。神田氏からはつきりとこの点を承りたい。神田氏でわからなければ、この法律議員が通すだけであつて、あとことの始末をつけるのは政府当局であるというならば、そのうしろあたりにおられる政府当局の連中からでも、承ることができれば仕合せだと思います。
  10. 神田博

    神田委員 中小炭鉱の今日の苦境につきまして、いろいろ御心配なされておられますることは、私どもまことに思いを同じゆうする次第でございまして、これらの中小炭鉱をいかにして今後育成強化して行くか、維持せしむるかということは、これはもう大きな問題でございます。前々からお答え申し上げておりますように、何か一つ打つ手によつて解決を見るというような問題ではない。こういうふうに考えております。ただこの前提となつております、統制解除をした。そこで中小炭鉱値下りを食つて非常に困つておるという面だけをとらえませんで、たとえば日本石炭に依存しております中小産業が、非常な苦境に立つてつた。そこで統制解除後炭価の値下りによつて、これらの中小産業が一応また合理化の線に進んだということも大きな事実であろうと思うのであります。今日の中小炭鉱苦境に落ちておるということを、大炭鉱の犠牲において落ちておるのだというふうに考えておるということも考え過ぎではなかろうか。一体今まで受けておつた中小炭鉱利益を、どつちへ肩がわりしたかという問題だろうと思います。私どもの見るところによりますれば、日本各種産業石炭の非常な値上りによつてつてつたものが、石炭値下りによつて合理化が一歩前進した。そこで肩がわりがそこに行われたということも、これはもちろん全部ではございませんが、一応見のがせない事実であろうと思います。そこで一ぺんもどつて参りまして、中小炭鉱そういつた肩がわりによつて経営の困難になつておるのを、どういうふうにして救済するかということになりますれば、これは先般来いつも議論の点になつたり、あるいは対策の点になつたりして参つておるのでありますが、金融の問題が先決問題であり、また業者の強力な団結によつて共同的な事業を営んで行く。共同の力によつてその利益というものを維持して行くということも、考えられると思います。しかし現下状態におきまして、金融が手放しで満足するほど解決するとは、どなたも考えておらぬだろうと思います。今日の石炭業界、特に中小炭鉱が深刻に悩んでおります点は、他の中小産業におきましても、やはり悩みは同じことでありまして、これらを運の問題として考えて行かなかつたならば、真の打つ手ではないのではないか、こういうふうに考えております。そこでわれわれといたしましても、中小企業の問題といたしましては、総合的な施策を立てなければならない。特に石炭企業だけを抜いて、そうしてここに強力な手を打つために、そこがたとえば、息を吹き返して、そうして十分更生ができたといたしましても、それがまたただちに他の産業にとつて、どういうことになるだろうかということも考えて行かなければならぬ問題でありまして、日本の今日の中小企業が非常な苦境に立つておる。それをどういうふうに打開して行くかということでございまして、打つ手といたしましても、金融の面については、できるだけの面を考えて行く。また今申し上げたような共同施設なり、あるいは共同経営なり、あるいはまた企業合理化なり、販路の開拓、いろいろな点で考慮しなければならぬ問題でありまして、今日の窮状が、何か一つのきめ手でただちに解決がつくというようなことは、河野委員においてもお考えになつてはおらないのであつて各種中小企業は、どうしようかということについて、非常に悩んでおるということが、今日の実態ではないか。これはひとり政府に限らず、また與党に限らず、野党においても、真劍に検討されておることでございまして、何らかここで打開を講じたい。しかしそれをどうするかということになりますと、今申し上げたような非常にむずかしい点が出ていますが、しかしこのむずかしい点を打ち越えて施策を立てなければならない段階であるということだけは、私ども十分承知いたしまして、そうして対策を立てて行きたい、かように考えております。
  11. 中島征帆

    中島政府委員 大体今提案者お話通りでございますが、もう少し具体的に申しますと、ただいまお話のございました通りに、中小炭鉱対策は、これはもつぱら金融問題が中心でありまして、この金融をどう解決するかということが、すなわち中小炭鉱対策になるわけであります。これに対しまして昨年来いろいろな構想をもちまして努力したわけでございますが、結局におきまして、今日の情勢のもとでは、特別の政府資金を設定するとが、あるいは補償制度のごときものを実行するというようなことは、なかなか実施しにくい事情にございまして、ただいままで私どものやつておりますところは、設備資金、ないし営業資金、両方に関しまして、日銀のあつせんによりまして、個々に解決するというような方法をとつております。これにつきましては、従来は石炭鉱業は、ややもすれば一般の温室育ち的なかつこうになつておりまして、非常にイージーな経営をやつておりましたが、こういうことは許されないので、各炭鉱とも、その点につきましては、従来の考えを捨てまして、やはり自分で努力しなければならぬ。こういうふうに考え方をかえつつあります。従いましてそういうケースの上に立つて、個々の炭鉱で十分経営の内容をさらけ出しまして、将来の償還計画等を明確にいたしまして、金融機関と折衝するように、いろいろ今話をしておりますが、その場合に十分将来性のある炭鉱につきましては、金融機関としてもこれに貸すというようなことを言つておりますが、ただ従来あまり金融機関の方と連絡がありませんために、われわれの方でできるだけ各炭鉱の内容を調査いたしまして、個別にこれはこういう内容になつておる。だから十分必要な程度の資金は貸してくれというように、個別に金融機関に紹介をいたしまして解決をはかる、こういうような方法を、設備資金にいたしましても、運転資金にいたしましてもとつておるわけであります。これによつて今までもかなり出ておるわけでありますが、今後一層現地中心で進めるつもりでありますが、こういうふうにして出されます資金の金額というものは、これは結局において炭鉱と市中銀行との折衝になりますので、はたしてこういつたような融資あつせんによつて、どれだけ出たかという数字がはつきり出て参りませんので、あつせんの効果が明確にならないので、何も効果がなかつたように今とられておりますが、事実上はかなりこういう方法をもつて出ておる面があると思います。それからこういう努力は今後も続けますが、これ以外に一層今後も見返り資金なり、あるいは特別の補償制度を設けるというふうな、特別の金融措置を中小炭鉱に対しまして開くように、多少具体的な案も持つて、今各方面と折衝いたしております。
  12. 河野金昇

    河野(金)委員 神田委員、今の政府委員の説明で大体わかつたのであります。大体わかつたということは、何もないということがわかつたのであります。おそらくこの法律がなくなることによつて石炭庁なり石炭局がどうなるかわからぬというようなところから、政府委員においても、あまり熱意がないのではないだろうか。結局今の説明を聞いておると、何も実際はやつておられないということでありまして、よくわかりました。そうして大体この法案を通じてわれわれがうかがい知るところは、結局自由の世の中である。自由競争である。いいやつ、力の強く大きいものが残つて行つて、小さいのはやむを得ないという、自由党の自由放任政策の露骨な現われであるということがよくわかりました。そのために自党の政策に勇敢なる神田委員として、これをお出しになつた気持も、まつた立場は違いますがよくわかりました。従つてその勇気ある行動に対しましては、満腔の敬意をささげます。これ以上立場の違う私が質問をしても、むだでありまするから、結局この石炭に対して、政府並びに今の自由党の方方は何も考えておられない、手放しの自由経済論に徹底しておられるということを了承して、私の質問を打切ります。
  13. 今澄勇

    今澄委員 審議の経過において、本法律案の内容等に非常な矛盾を持つものである。非常に廃止の時期も当を得ておらぬというようなことが明らかになりました。私はただ残つておる問題として、政府当局の方にお伺いしますが、この前の配炭公団の廃止のときに、これもまた転換職員、その他失業問題等、それらの職員の就職先等について、この委員会においていろいろ言明をされましたが、その後の実情は、どうも投げやりで、それらの労働者の保護がなされておらない。私はこの際管理局長として、配炭公団を廃したのちにおける配炭公団の職員の転職、並びに政府の努力によつて、どこに入つておるかということの明細なる御説明を承りたい。  それからもう一つは、この法律を廃しますと、地方石炭局では非常な過剰人員が出ますが、それらの政府職員の配置の問題、失業問題等につこて、どういう見込みを立てておられるかということを承りたい。  もう一つは、この法律案が実施されて、いろいろ機構がかわりますが、あるいは常磐の平市、あるいは山口県の宇部市などは、政府との折衝その他におきましても、今の通産省の機構改正をすると、非常なる不便をこうむると思うが、そういうような政府機関の改廃等による地方への不便を、一体どのようにしてカバーされるつもりであるか、以上の三点について政府委員の説明を願います。
  14. 中島征帆

    中島政府委員 公団の職員の転職につきましては、これは自画自讃でございますけれども、昨年から非常にわれわれ努力いたしまして、本日までに大体残つておりますのが三千五百人ほどございますが、これは九月までそのまま大体持ち越されます。従つて八千人あまりの者が結局失職したわけでございまするが、その大部分は各方面に就職いたしておりまして、現在八百人程度の者が、まだ就職が未決定で残つております。その当時たいへん心配しておりました公団職員の転職に関しましては、就職斡旋委員というものを公団につくつておりまして、そこで常時いろいろ奔走しておるわけでありまするが、その連中も常にわれわれの方にろいろ陳情はしておりますけれども、特別に大きな問題で困つておるというふうな話はいたしておりません。両方で協力いたしまして、今日でもなおやはり各方面に一人、二人づつでもということで、あつせんいたしております。  それから大体どういうところにあつせんしたかという御質問でございますが、一番多いのは炭鉱の方にあつせんいたしております。それ以外は販売業者関係で、いわゆる第二会社をつくりましたもの、それからそれ以外に炭鉱の指定販売店でありますとか、そういつた方面に紹介しております。それがその次の人数であります。そのほかは一般の関連産業等に官庁方面からあつせんいたしましたり、あるいは自営でいろいろ商売をやつておる者もございます。そういうあつせんを要しない者は、すでに就職済みという計算にいたしまして、結局八百人ほどが現存残つておる、こういう状況であります。  それから次に政府職員の問題でございますが、ことしの二十五年度の予算の査定のときに、国管法とは必ずしも関連いたしませんが、統制解除に伴いまして、相当に政府職員も不要になるということで、大蔵省の方で相当きつい査定をされました。ことしの六月末までに約四百人ほどの減員をしなければならぬということになつております。それに対しましては、当時から半年間にわたつていろいろ心がけて参りました結果、現在のところはもうごくわずかの整理で済む、これもあとまだ一、二箇月ございますから、それほど問題を起さないで、転職の見込みがつくと考えております。なおさらに一般の行政整理によつて、あるいは国管法廃止に基いて減員になるということであれば、また第二の問題でございます。これは石炭関係のみならず、通産省全般としてまた別に考えなければならぬと思つておりますが、今までのところ石炭局ないし資源庁の本局におきましても、政府職員の減員に対しまする措置は順調に進んでおります。  それから宇部、平の問題でございますが、これは地元からはやはりあの場所に事務所を置いてもらいたい、石炭局そのものを設置してもらいたいというのが本来の希望でございますけれども、かりに通産局に合体いたしましても、石炭関係については地元だけで解決するようにしてもらいたい、こういう強い希望があることは承知しております。従つて、もしも原案の通りに通産局の石炭というふうに機構が縮小されました場合には、結局宇部、平というものは、東京なり広島なりが、その最高責任者となるわけでありますけれども、実際上の運営といたしましては、宇部ないし平の事務所長に、現在の石炭局長の権限に近い権限を與えまして、大体現場で片づけるというように内部的に措置したい、こういうふうに考えております。
  15. 今澄勇

    今澄委員 配炭公団廃止に伴う失業者の転換についても、八百幾ら残つておるという話でありましたが、現実には非常に不幸な人々が数多くある。しかもこの臨時石炭鉱業管理法廃止によつて石炭関係政府職員の失業についても、これから打合せをしなければならないような状態で、これというまだまとまつた方針はないという率直な御言明でございました。この点から見ても本法律案は、臨時石炭鉱業管理法廃止して、それらの政府職員並びに関係機関の失業問題、転換問題などはてんで顧みられておらないということが、はつきりするのであります。そこで私は、大体臨時石炭鉱業管理法がねらつておりますところの、いわゆる政府経営者並びに労働者三位一体となつて、わが国の石炭の生産高をきめ、そうして労働者の盛り上る意欲によつて石炭増産に邁進して行くというあり方は、すなわち日本の経済民主化の大きな前進であつたと思います。このような、労働者経営における発言権の増大等の将来における大きな曙光は、日本の全労働階級に與えた抱負と希望というものはまことに大きかつた。われわれはさような意味においてて、これまで日本石炭増産がなされたものである。わが国の炭鉱労働者本法によつて石炭増産の上に寄與した功績は、多大なものがあると私は思います。しかるに急にこのような法律廃止するということは、この法案提出者としては、もはや経済民主化は後退してもかまわない——そうしていわゆる石炭自由競争によつて、この石炭産業の利潤が資本家へ集中する。すなわち石炭産業は再び昔のように、大石炭鉱業会社へ巨大資本を集めて行くというような姿になるのであります。さすれば経済の民主化が後退して、石炭産業一つの集中化が行われる。しかもその結果、中小炭鉱の崩壞ということは、もう火を見るよりも明らかである。私は中小炭鉱救済の問題を、このような経済民主化の法律廃止して炭鉱の資本集中化へ持つて行く政府がいろいろ頭を悩ましておるなどということは、子供だましの兒戲にひとしいことであると思う。このような意味において、政府は今後炭鉱資本の集中化と日本の経済民主化の後退に対して、この法律廃止しても何ら影響ないと考えるかどうか、宮幡政務次官にお伺いしたい。  それから神田君からは、そういつたわが国の経済民主化の線は、この法律廃止することによつて後退するが、わが国の今後における経済民主化ということは、どのように考えられておるか。ひとつ大きな立場から提出者を代表して、御見解を承りたい。
  16. 神田博

    神田委員 ただいま今澄委員より、この法律廃止によつて、せつかくうん釀されて参つた石炭界における経営者と労働者との経済の民主化が、この廃止とともにその意義を失つて来て、そうした好ましい方向が挫折するであろうということを、非常に御心配に相なられたようでありますが、これはこの法案の審議の際にも、それらの点に大分疑問の点がございました。私ども考えを率直に申しますれば、労働者の問題につきましては、労働立法に持つて行くべきものでありまして、こういつた臨時立法にそれらのことを恒久的な問題として、取上げて行くというふうには考えておらないのでありまして、もし必要とするならば、労働立法の改正によつて、その目的を達すればよろしいのではないか。この法律のねらつておるとこらは、いろいろなことを書いておりますが、帰するところは、石炭の急速な増産をしようということが、建前なのでありまして、その目的をすでに達成して、今日の段階においてはこれはもうやめた方がむしろよろしいのだ、こういう際に、御心配なされることもごもつともと思いますが、それらのことはもし必要としまするならば、労働立法によつて解決すべきものである。この臨時立法の延長なり、あるいは廃止の際にそれをどうしようということは、必ずしも適当であるとは考えておりません。必要としますことは労働立法の改廃にこれをゆだぬべきものである。ただしかし率直に申しますと、私ども気持といたしましては、経済の民主化なり、あるいは労資の協調というものを労働立法解決して行く段階でありますので、この法律廃止によつて今澄さんの御心配されておるようなことはない、こういうよううに考えておりますことを、率直にお答え申し上げて答弁といたします。
  17. 宮幡靖

    宮幡政府委員 今澄さんの御所論でありますこの国管法廃止いたしました場合に、経済の民主化の後退があるのではなかろうかということ、これは観念論といたしましては、承ること必ずしもいとうものではありませんが、これを廃止することにおきまして、経済の民主化が後退しようなどとは、私は考えておりません。のみならずこれによりまして、全般的産業に対しまする民主化が後退しようなどという重大な影響があるというようなことも、あわせ思わないわけでありまして、昨日も社会党の加藤さん、西村さんの御質問によりましてもお答えしておきましたように、国管法というものが急速なる増産を達成するために功績のあつたことは、われわれは主義主張の点から離れまして、その功績を認めた御答弁を申し上げてあります。従いまして現在は石炭を再統制をして品位およびその他の点におきましても、平常の経済事情においては成立たないものまでも、統制によつて保護育成するまでの必要があるかということは、重大な検討すべき事項であります。従いまして国管法があることによつてどう、ないことによつて非常な影響があるということは、あまり多く考えられない。しかも考えられる面につきましては、不日立法化されまするところの鉱業法——あるいはこの国会の末期に提案いしまして、お叱りを受けるかもしれません鉱業法の中におきまして、十分この問題を解決しよう。同時に鉱業法の施行法におきまして、労働法規にも触れまして、これらの問題の解決に当ろうとしておるわけでありまして、ただいま提案者神田さんからもお話のありましたように、労働者の勤労意欲というのは、戰前の姿に立ち返りつつある。これは私は率直に認めております。この勤労意欲の盛り上つて参りましたことを、良心的に認め得る事業家の育成こそ必要であろう、かように考えておるわけでありまして、労働法規の中に、私どもしろうとよりよく御存じのように、団体協約もありますし、経営協議会もありまして、すべての面におきまして、さような面で労働者と資本家が平等の立場にあるという、ただいまの臨時国管法を御制定なさいました当時の大臣答弁にありますような事態は、これを廃止しましてもなお存続されるものだ、かように考えておる次第であります。
  18. 今澄勇

    今澄委員 政府並びに提案者の御答弁によつて、われわれは日本労働者のいわゆる経営参加並びに労資対等の上における産業の復興というような、日本の民主的労働団体が掲げた日本復興のはなばなしい努力を、これまで盡したのでありますが、今日においては国家公務員法並びに公共企業体労働関係法による政府職員並びに公共企業体の職員の罷業権の断圧、一般民間産業においても労働者のそれらの権益は、かつて労働法で守らるべき方向へは進んでおりません。今日の吉田内閣の労働省の行政は、労働者を保護する立場ではなくて、労働者を監督し、労働者を取締るところの役所にかわりつつあるのであります。このようなときにわれわれは一般民間におけるこれらの経済立法においても、私ども労働者立場が漸次迫害せられつつあることを、現実に身をもつて体験しつつあるから、かくのごとき質問をいたしたのでありまして、本臨時石炭鉱業管理法廃止するそれらのやり方は、これらの労働者のそういう国家産業への自発的協力を、みずから断ち切るものであると、私は断定せざるを得ません。今の御答弁を承りましても、それらの日本産業復興の上における労働力の、いかに貴重であるかということに対する認識の欠如を示す何物でもないのであります。われわれは今後たとえば鉱業法あるいは石炭鉱業の安定法というような法律が先に出てから、この法規が廃止されるということであるならば、なるほどと肯ける点もあるが、ただいまの石炭鉱業に関する基本法、あるいは鉱業法等の改正はあとに譲つて、とりあえずこの法律案廃止するとい提案者の態度は、私どもをして言わしむるならば、これは非常に大きな誤りである。われわれは将来社会党が再び国民輿論の上に支持を得るならば、断じてこのような、本日の御答弁にむくいるためにもりつぱな石炭鉱業管理法を制定して、わが国の石炭鉱業にわれわれは熱意を示すつもりであります。さりながら私ども今日の世界の経済並びに今の日本国内の情勢、あるいはイギリスの国情とわが国の国情との類似点、イギリスの石炭産業とわが国の石炭産業との比較——わが国はもとより水力においてイギリスより惠まれておりますので、それらの熱源としての電力、石炭を比べてみれば、私は日本石炭は将来必ず今のような自由放任の、——しかも大産業への資本集中ということについては、提案者からも答弁がありませんでしたが、このような石炭産業への資本集中、さらにそれらの石炭資本家が、日本の政治の上に大きく発言権を持とうとするこの傾向は、数年を経ずして再び石炭鉱業というものが強力な国家の保護助成と、統制下に置かれなければならぬとい事態が、実現することを確信いたします。提案者はこのような事態が生じ、わが国の石炭の値段が非常に高くて、外国産業との競争に破れ、日本石炭を再び国家が統制しなければならぬとい事態に立ち至つたならば、すなわち配炭公団廃止のときに、関係方面の覚書に、将来石炭を再び統制するというような必要がありますれば、これは統制しなければならぬという一項目がありますが、もし再び石炭に対して国家の強力なる保護助成並びに統制を必要とするような事態が現われましたならば、この法律廃止提案された提案者の皆様並びにその代表者としては、政治家として石炭行政に関する将来の見通しを誤つたものとしての責任をとるところの覚悟があるかどうか、これを私はひとつ伺いたい。
  19. 神田博

    神田委員 この法案を今日廃止する。そこで他日またかような法案を必要とする場合、政治家としての責任をどういうふうに考えるかという仮定のお尋ねでございますが、これは仮定にお答え申し上げるのもどうかと思いますが、しばしば御答弁申し上げております通り法律は必要があるときにつくるべきものであつて、その必要がたくなつた際においてはこれを廃止する。ことに今日の国会は明治憲法下における国会とは違いまして、いわば万年国会と言われるくらいに長期にわたつて開かれておるわけであります。ことに明治憲法下においては勅令等においても、なかなかこれが発布は困難である。省令すらも容易に出し得ないということでありまして、今日国会においては明治憲法において勅令、省令でつくつたもの、それをも法律の内容として出そうというようなふうに、民主的の運営をされておるのでありまして、私ども廃止も淡々たる気持考えており、必要があればまた淡々たる気持でやるべきものであつて、何か一つ前提のもとで考えるべきものではない。必要に応じて法律をつくり、必要がなくなつたならば、これを廃止して行くということを申し上げておるのでありまして、決して逃げるという意味ではありませんが、将来あるだろうということですが、これは非常に妄断であり、独断になるおそれもありますので、それを一度つくつたら、これを置かなければならぬということになりますならば、日本の経済の民主化というか、進歩的の傾向を、むしろ阻害することをおそれるのでありまして、今のお質問はどうも私の最も尊敬しておる人である今澄委員お尋ねとしては、はなはだどうも先をつつ込んだような、むしろ社会党内閣ができたらというような、手形まで出しての御質問でありますが、政治は反対党が強力になつてこそ、初めて切瑳琢磨するわけでございまして、私どもの見解をもつてすれば、この内閣は相当続くと考えておりますが、今澄委員のお考えの内閣ができるだけすみやかにできることでありますれば、また何をか言わんやでありまして、大いに御検討をあそばされんことをお祈りして、答弁にかえる次第であります。
  20. 福田一

    福田(一)委員 本案についての質疑は、大体各党を一巡いたしまして、質疑の要点は一応論じ盡され、これ以上本案の質疑を継続いたしましても、残余の質疑はいたずらに重複する部分があるばかりと認められますので、私はこの際本案の質疑をこれにて打切るべきものと考えます。よつて私はここに質疑打切りの動議を提出いたします。
  21. 有田二郎

    有田(二)委員長代理 ただいま福田君より質疑打切りの動議が提出されましたが、本動議について採決いたします。賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  22. 有田二郎

    有田(二)委員長代理 起立多数。よつて本動議は可決いたしました。これにて本案に対する質疑は打切ることと決しました。  討論、採決は午後一時より行うことといたします。それまで休憩いたします。     午後零時一分休憩      ————◇—————     午後一時五十三分開議
  23. 有田二郎

    有田(二)委員長代理 休憩前に引続き会議を開きます。  ただいまより臨時石炭鉱業管理法廃止に関する法律案を議題として、討論に付します。討論は通告順によつてこれを許します。河野金昇君。
  24. 河野金昇

    河野(金)委員 私は国民協同党を代表いたしまして、本法案に反対の討論をするものであります。この法案は思い起すだに不愉快なる法案であります。多くの同僚の中から懲罰に付される者あり、あるいは業者と結託して囹圄の人となつたりする者があつて、主常にそのできたときにいろいろな問題を投げかけたものであります。提案者の説明を聞きますると、一応需要供給関係から増産目的を達したから、本法案廃止するというのであります。これは自己をごまかすも、はなはだしいものと言わなければなりません。増産目的が達せられたのにあらずして、それは池田財政の失敗による生産の萎縮であるのであります。昭和二十四年度石炭増産目標四千二百万トン、それのわずか四千万トンに達したか達しないときに、すでに石炭が余つたというのであります。余つたにあらずして、産業がこれを吸牧できなかつたのであります。もしも池田財政自由党政策にして誤りがなかつたならば、四千二百万トンは当然いるべきものであつたのであります。むしろこの法律案廃止するにあらずして、池田財政ドツジ・ラインを修正することこそ、日本の経済産業のためになるものであると言わなければならぬのであります。それを單に自由経済の名のもとに、統制を厭うのあまりに、この法案廃止するということは、ただ單に大きな業者を利するのみであつて中小炭鉱、ひいては中小企業者にとつては、何ら恩惠を受けるべきものではないのであります。それをあえて、臨時立法であり、来年までまだ期限があるにもかかわらず、今の段階において廃止しようというのは、結局池田財政、民自党の政策の行き詰まりを、増産の自的達したりというごまかしによつて、糊塗せんとするものでありまして、われわれの断じて賛成すことのできないものであります。いろいろ反対の理由は、同僚諸君からも述べられることでありましようけれども、これは結局ごまかしの法案である、こういう観点から私はこの廃止法案に反対するものであります。
  25. 有田二郎

    有田(二)委員長代理 小金義照君。
  26. 小金義照

    ○小金委員 私は自由党を代表して、本法律案に賛成の意見を表明いたすもめであります。臨時石炭鉱業管理法は、石炭の緊急増産のための臨時立法でありまするが、本法効果につきましは、当初からいろいろ論議せられたものであります。たとえば本法が施行せられた昭和二十三年四月の直前におきましては、前年十月三日の閣議において決定せられました石炭非常増産対策要綱の効果もそろそろ出て参り、かたがた毎月の生産実績はおおむね計画数量を突破していたにもかかわらず、この臨時石炭鉱業管理法の実施直後におきましては、法律実施準備等の関係もあつたこととは思いますが、五箇月間にわたつて、毎月九〇%ないし九七%の目標の達成率を示したにすぎなかつたという数字的な事実が現われておるのであります。ところで一昨年すなわち昭和二十三年十二月、いわゆる経済九原則なるものが実施せられまして以来、急速に増産態勢が積極化するに至りまして、昭和二十四年度におきましては、四千二百万トン、すなわち本法制定の際、政府から提出せられました石炭生産五箇年計画の二十四年度生産目標三千六百万トンを、はるかに上まわりますところの、四千二百万トンの出炭能力が、この国管法とはむしろ没交渉裡に確立され得たという事実が現われて来たのであります。かようにして昨年夏以来、石炭需給状況は急速に緩和せられまして、かえつて貯炭の始末に窮するような状態になりまして、そのために公団方式による買取り統制の必要もなくなりましたので、昨年九月十五日を限り、石炭統制は一部の銘柄炭を除きまして、価格統制、配給統制ともに、全面的に解除せられたのであります。以上の経過に徴しましても、増産特別法としての臨時石炭鉱業管理法の価値は、疑いなきを得ないという批判さえ出て来るような現実に置かれておつたのであります。現にこの増産法の眼目ともいうべき直接増産に必要な命令関係の條文は、協力命令に関する第三十九條を初めとして、第十二條、第三十八條、第四十條等、いずれも今日までいまだ発動せられてはいないというありさまであります。すなわち本法とは直接関係なく、石炭増産の態勢が整備確立せられたという実情であると言い得るのであります。この委員会において、各党各脈からいろいろな御質問がありまして、これらの質疑応答を通じてみましても、この臨時立法を満期まで置かなければならないとい理由を発見することができないのであります。いろいろな意味におきまして四千二百万トンというような数字が問題になりますが、おおむねこの法律の施行せられた前後におきますところの生産目標に関する数字は数量的なものが中心でありまして、石炭の質に及んだものがほとんど取上げられておらないのであります。これでは石炭増産ないしは需給関係を検討する上において、非常な不確実なものでありまして、石炭計画ないしはその配炭をめぐりましては、どうしても石炭の量とともに質の問題が大切になるのであります。それから石炭が余つたの増産の結果ではなくして、自由党内閣の政策の結果によりまして経済の收縮、生産の縮小というような方面から、その需要がなくなつたというような議論が非常に出ておりまするが、これはインフレーシヨンを継続しろとい前提に立つ御議論ならば別でありますが、いやしくもインフレーシヨンを克服して、日本を正常なる経済状態に持つて行かなければならないということを前提といたしますならば、当然石炭の数量のみに根拠を置く議論は、私は成立たないと思うのであります。「ノーノー」このような点をいろいろ勘案いたしますると、どうも私どもの属する以外の各派の御議論は、何かにとりつかれているような御議論が多いのでありまして、私は当委員会において活発な御意見が出たにもかかわらず、何らこの法律を存続すべき理由がない。そうしておおむね提案理由に説明されましたことが事実に近い、これを推し進めた方がよいという結論に到達するのであります。いずれにいたしましても、石炭増権のための臨時立法である臨時石炭鉱業管理法は、すでにその意義を失うに至つたのみならず、この法律に基く複雑な管理組織と、この法律石炭業界に対して要求するところの煩雑きわまりない手続とは、もはや今日の現状におきましては、かえつて企業の自律性及び業界の熱意を阻害するおそれさえ、多分にあると断ずべきものであります。一方今日なお石炭生産行政のために、石炭局のような独立した地方機関を存置することの必要がなくなつたことも、申すまでもないことであります。臨時石炭鉱業管理法廃止と、これに伴う石炭局の廃止は、行政機構の簡素化を実現するものであるし、また国費の節約、ひいては国民負担の軽減に寄與するという見地から見ましても、きわめて必要で、大切なことであります。従つて来年の三月の本法失効の日を待たずして、この際この国管法廃止することは、まことに機宜を得た措置と、私ども考えるのであります。しかしながら、もし他日万一、石炭増殖のために行政措置以外に、特別の法律を必要とするような場合が生じました際におきましては、そのときの情勢に即応いたしまして、真に増産目的を達成し得るような、新しい適切な内容を盛り込んだ法案について、あらためて考慮すべきものであると信ずるのであります。以上簡單でありまするが、本法案に対して賛成の意を表するものであります。
  27. 有田二郎

    有田(二)委員長代理 有田喜一君。
  28. 有田喜一

    有田(喜)委員 私は民主党を代表いたしまして、ただいま上程の臨時石炭鉱業国家管理法の廃止に関する法律案に反対するものであります。その理由はいろいろございまするが、まず第一にあげたいのは、石炭国管法は御承知通り、その第一條にも明記せるごとく、産業の復興と経済の安定に至るまでの緊急措置として、政府経営者、及び従業者がその全力をあげて、石炭増産を達成することを目的として、制定されたものでございまするが、遺憾ながらわが国の現状は、いまだ産業の復興も経済の安定も見るに至らず、石炭国管法制定理由が、まだ解消されておらないのであります。日本経済ドツジ・ラインの強行により、いわゆるインフレは終息いたしましたが、しかしインフレの終息は、すまわち経済の安定そのものではないのであります。急激なるインフレの阻止は、あたかも満員電車が急停車するときの現象に似て、車内を混乱に陥れているのであります。すなわち日本経済は今や深刻なるデフレ、金詰まりによりまして、まさに危機の寸前に追い込まれていることは、皆様御承知通りであります。しかるに吉田内閣とその與党たる自由党は、財政経済政策にまつたくその自主性を欠き、深刻なるわが産業経済の実相に、ことさらに目をおおい、さらにこの二十五年度においても深刻なるデフレ予算、超均衡予算を多数の力をもつて押し通し、ますます不景気に拍車をかけようとしているのであります。そうして本法提案者たる自由党の諸君は、石炭需給状況はきわめて好転して来た。従つてすでに石炭増産を必要としなくなつたから、石炭国管法はこれを廃止するのだ、こう言つておられますが、しかしながらわれわれはこの点に関し、提案者とは根本的に見解を異にするのであります。昨年九月、配炭公団廃止当時における貯炭の山積は、はなはだしくむりな増産と、吉田財政の失敗による不自然なる需要減退とによる、一時的変態にすぎなかつたのであります。すなわち当時政府は実際の需要とは沒交渉に、しかも本法制定当時の出炭五箇年計画の年次出炭目標三千六百万トンを著しく上まわる、四千二百万トンというむりな増産を強要したのであつて、これがために昨年上半期、ことに第二・四半期においては、はなはだしい増産実績を収めたのであります。しかるに一方におきまして政府のいわゆる超均衡予算により、はなはだしき不景気を招来し、産業の行詰まりを生じたために、石炭需要はその予定に比して、はなはだしく減退したのであります。これらの原因が両々相まつて五百万トンという厖大な貯炭を生ずるに至つたのでありまするが、わが国の産業経済が真に復興し、真に安定せる基礎のもとに、石炭需給が緩和されているというのであれば、われわれは欣然として臨時立法である国管法廃止に賛成するものでありますが、政府が財政経済政策を誤つて、金詰まりのために石炭が買えないような状態にしておいて、石炭が余つたから増産の要がないと言われるのは、一体いかなる経済観に基いておられるのであるか。ここにはなはだしき疑問を抱くのであります。有効需要の減退ということ、産業の萎縮から生じているところの一時的の変態現象に基いて、石炭増産の要なしとの結論は、早計もはなはだしいと言わなければならない。わが国の産業経済を今日のごとき状況で推移せしめるならば、産業を萎縮せしめるばかりでなく、とうてい八千万国民を養うことはできないのである。有効需要を喚起して、産業規模の増大と、生産の増強はかることことこそ、われわれに課せられたる焦眉の急務である。はたしてしかりとせば、各種産業の燃料資源、原料資源であるこの重要なる石炭企業の現状をもつて、はたして満足し得るか。わえわわれは一日も早く今日のデフレ経済を打破して、有効需要を喚起し、わが国経済を活況あらしめ、産業の規模を拡大強化して、産業と経済の安定をはからなければならないのであるが、このためにはもつともつと石炭増産を必要とするときが、必ずや近く来ることを確信するものであります。かく考えるとき、われわれは石炭需給が正常状態に復するまで、少くとも国管法の有効期間である来年三月まで、当分その推移を静観し、しかる後これが廃止の是非を考えることが最も至当であると考えるのであります。  反対理由の第二として、指摘したいことは、国管法廃止のしつ放しにして、石炭企業を基礎産業としての使命を全うせしめるための、何らの法的措置を講じていないことであります。言うまでもなく、石炭は電力とともにわが国経済再建のために、これが豊富低廉なる供給をはかることこそは、最も緊切を要するところであります。しかるに現在の石炭価格はあまりにも割高であつて、他の国内物資との比較はもちろんのこと、国際価格水準から見ても、はなはだしく割高である。これがためにわが国鉄鋼業はもとより、セメント、肥料等の化学工業、その他の産業ひとしく炭価の引下げを要望しているのであります。わが国鉄鋼価格の高騰は、船舶価格の割高をもたらし、これがため外国船の建造注文はその跡を絶ち、また国内船舶は船価の割高のため、公正なる国際競争に伍して行くことも至難となり、ひいては海運貿易を萎靡せしめ、国際収支の上にはなはだしき欠陥を生ずるの結果を招来するのである。石炭価格の引下げこそは、日本産業復興の緊喫の要務である。しかして炭価の引下げのためには、炭鉱経営合理化が絶対的要件である。もちろん石炭国管法があるため、経営合理化に必要な設備資金融通に、直接効果があるとは言わないが、これが廃止のため、資材あるいは設備、装置等の融通に関する協力命令廃止されるのほか、提案者自身も憂慮しているごとく、基本法たる石炭国管法廃止のため、石炭鉱業の重要性が軽視され、経営合理化の実施上にも、多大の悪影響を及ぼすことは必至であります。特に私が一言したいのは、鉱区の整理統合についてであります。相隣接する鉱区の境界が、入り組んでいるため、開発、運搬等の集中生産はもとより、通気排水等に至る一切の計画合理化がいかに妨げられ、設備装置の利用がいかに不合理を余儀なくされるかは、言うまでもないところであります。国管法廃止のため、石炭鉱業権等臨時措置法が当然失効せられるについては、使用権の設定、その他鉱区の整理統合に関する法律を、当然準備せらるべきにかかわらず、これらの法律提案さえない現状であります。大よそ法律は時代の進展に伴つて、これに即応する適切な運用をなすべきは当然である。国管法はその有効期間中これを存続せしめておいても、運用よろしきを得れば何らさしつかえないはずであります。かりに一歩譲つて、これを廃止するというなら、少くとも基礎産業としての石炭産業の使命を果し得べき、これにかわる立法制定してからにすべきである。しかるに政府も、與党たる自由党も、石炭需給に対する見通しも、石炭鉱業合理化に対する具体的施策も、何ら持合せなく、これを野放しにすることのみを考えて、この主要なる基礎産業を指導育成する方途も講ぜず、公益的見地よりする監督の方途も、これが増産対策も何一つ講ずることなく、急遽これを廃止しようとするがごときは、実に無謀もはなはだしいといわなければならない。  そもそも吉田内閣及び自由党は、わが国産業経済に対する見通しも、目標も、計画もなく、すべてドツジさんやシヤウプさんにおんぶして、何ら自主性を持たず、しかも一世紀遅れた時代遅れの野放し自由経済を、唯一の一枚看板としているが、かかるのほうずな自由経済は、いわゆる弱肉強食の弊を露呈するのみである。弱き者のおぼれるのを見殺しにするというのが、池田財政の本音であり、自由党の性格であるが、これでは真の政治ではない。われわれはもとより自由経済に賛成であり、資本主義を否定するものではなく、またこれが長所たる競争の原理はこれを尊重するものである。しかしこれに伴う弱肉強食の弊は保障の原理で補正しなければならない。ことに基礎産業たる石炭鉱業を、野放しの自由放任にまかすがごときは、世界の経済の趨勢にも逆行するものであり、またわが国経済の実状にも沿わざること、はなはだしきものである。しかも一時変態的なるところの現在の石炭需給状態のみを見る近視眼的な見地に立ち、かつまた、これが廃止にかわるべき何らの新しき法律準備を持たずして、急遽この石炭国管法廃止するがごときは、私の断じて賛成し得ないところであります。以上をもつて私の反対討論を終ります。
  29. 有田二郎

    有田(二)委員長代理 次は加藤鐐造君。
  30. 加藤鐐造

    ○加藤(鐐)委員 日本社会党を代表して、臨時石炭鉱業管理法廃止に関する法律案に、反対の意思を表明するものであります。石炭は申すまでもなく、あらゆる産業の根幹であります。従つて石炭産業の消長は、すべての産業の盛衰に関係するものであります。日本民族の独立と繁栄が一に日本産業の再建と発展にかかるということを思うとき、われわれは石炭産業の前途に対して、万全の方策を責任を持つて考えなければならないのである。臨時石炭鉱業管理法は、こういう重要な地位にある石炭産業が、戰時中の濫掘によつて荒廃に帰して、日本産業の前途ははなはだ危ぶまれる状態にあつたので、産業再建計画とマッチする石炭増産遂行のために、最も適切なる施策として提案されたものでありまするが、当時炭鉱資本家とその手先におどらされたところの人々の猛烈な反対運動が行われたにもかかわらず、輿論の支持によつて、多少の傷は負うたけれども、遂に実施されたのであります。そのねらうところは、自力では容易に立ち上れない石炭産業に対して、国が力を貸して再建をはかり、あわせて需要に見合う計画的生産を行うにあつて、その必要なる措置として、重要炭鉱を指定して必要なる命令を出し、資材の重点配給を行い、労資の協力体制を整えるという点にあつたのであります。しかるに自由党吉田内閣は、最近石炭生産が比較的順調に進み、需要のバランスがとれるようになつたからというので、昨年九月配炭公団を廃止して、配給と価格の統制を撤廃し、今やもはや炭鉱増産を必要としなくなつたとい理由のもとに、本法廃止して、石炭産業を野放しに追い込もうとしておるのであります。はたして提案者の言うごとく、今後石炭増産を必要としないだろうか。なるほど現在は石炭の生産量は需要を多少オーバーしておるようでもありますが、しかし今日日本産業は回復して、国民の生活ははたして安定しておるでありましようか。決してそうではない。吉田内閣の施策適切を欠いて、極端なデフレ政策の強行のために購買力は減退し、貿易は萎微沈滯して、日本経済はまさに一大危機に立つておるのであります。すなわち有効需要の不当なる減退に原因する生産過剰であり、経済安定から生れて来たものでは決してないのであります。今や急速にデフレ政策の転換をはかつて産業発展と国民生活安定への道を切り開かなければならないということは、全国民の強く要望しておるところであります。石炭増産を必要としないとい提案者の見解は、日本産業はこれ以上は発展する必要はないとする暴論であります。石炭は今後は日本産業再建計画との見合いにおいて、大いに増産計画を立てなければならないのであります。さらに日本石炭産業はあらゆる角度から検討いたしまして、まだ自主経営の時代には入つておらないのであります。能率の点において世界の大多数の国に劣つておる。従つてコスト高であつて、関連産業のコスト高を招来するために、日本産業は国際競争場裡には立ち得ない状況であるのでありまして、従つてその生産の合理化は至上命令と言わなければならない、そのため今後なお幾多の国の援助を必要とすることも当然であります。こういう重要なる基礎物資が、その生産量において、その価格において常に不安定であり、経営者の利潤追求の意慾によつてのみ、生産が行われ、公共の利害と消費者の立場を一切考慮しない完全なる野放し生産のやり方でよいであろうかどうであろうか。今後飛躍的発展を企図しなければならない日本産業再建に、大きな障害となることは言うをまたないのであります。  以上述べたところによつて石炭計画生産は絶対に必要であることが、十分わかるであろうと思うのであります。かりに一歩を譲つて本法が情勢の変化によつて多少の弊害が生じたとしても、それは一挙にこれを廃止する理由とはならないのであります。石炭の野放し生産は、今後の産業計画に大きな支障を来すのみならず、石炭産業自体においても、大炭鉱業の独占的形体は今後ますます強化され、従来増産に重要な役割を果して来た中小企業者を破滅に導き、さらに増産に協力して来た労働者を多数失業せしめるとともに、生産意欲を減退せしむることは明らかであります。しかるにこれらの当然起るべき問題に対して、何ら適切なる処置をすら講ぜずして、突如として本法廃止せんとする自由党並びに吉田内閣の態度は、まつたくわれわれの了解に苦しむところであります。かつて本法の施行に極力反対したのは、大炭鉱業者自由党の諸君であつた。当時業者は莫大な資金を投じて反対運動を行つて国会議員にして彼らに買收されたものすらあつたということでありますが、その結果司直の手が院内にまで延びて、世上を騒然たらしめたことは、われわれの記憶に今なお新しいところであります。自由党の諸君は公約実行の名のもとに、今や参議院選挙を前にして、しかも議会の最終末期に突如として本法廃止案を提出して、しやにむに多数の力をかりて押し通そうとしております。国家百年の大計の根源たる石炭生産を野放しにしてかまはないという態度は、国家の盛衰よりも一党の消長に重きを置くものといわなければならない。かつて本法の施行に猛烈に反対した大炭鉱業者が、今なおその廃止を望んであることも当然でありましよう。自由党の諸君はこれらの大炭鉱業者の歓心を買わんとすることに、汲々としておられる態度はまつたくひんしゆくに価いするものであります。私どもはこうした自由党の諸君の暴挙に対して、あくまでも反対するものであります。
  31. 有田二郎

    有田(二)委員長代理 風早八十二君。
  32. 風早八十二

    ○風早委員 私は日本共産党を代表して、本提案に反対の意見を表明するものであります。そもそも補給金や復金の融資など、これは莫大なものに上りますが、これらの国家財政を食いものにすることによつてのみ維持のできたという、こういう石炭独占資本というものは、もはや存在の意義はないのであります。その存在は有害無益と言つてさしつかえないのであります。神田君が、これは邪道であつたと言われるが、確かに邪道に違いない。しかしそれならば、自由党一体正道であるか。何の対策もなしに炭管法を廃止して、優勝劣敗主義に帰るということが、はたして正道であるか。なるほどこれは資本主義の正道であるかもしれない。しかしながらこれは独占炭鉱資本の正道にすぎないと、われわれは確信せざるを得ないのであります。自由党が事実においてやつておる手放しの優勝劣敗主義によりまして、統制撤廃後わずか半箇年の間に、三井鉱山では増資後の資本金十二億に対して十二億、すなわち一〇〇%、三菱鉱業におきましては、増資後の資本金九億に対して十五億、すなわち一六六%の利潤率を上げておる。年間利潤率にいたしますれば、資本金に対して二〇〇%あるいは三〇〇%以上ということになります。こんなべらぼうな利潤が一体どこに通用するか。他方におきまして中小炭坑はどんどんと休廃止せられておることは、すでに質疑において明らかになつておる。労働者は首を切られつつある。一方におきましては大炭鉱資本に二〇〇%ないし三〇〇%以上の利潤、他方においては中小炭鉱の没落、これが今度の炭管法廃止のねらいである。結局独占資本と自由党にとつての正道なんであります。しかしながら三井鉱山、三菱鉱業などのとほうもない利潤の源泉というのは、そもそも何あるか。これは資本金とその運営の努力のたまものでは断じてないのであります。産出炭の品質、炭種、カロリーなどの優位からもたらされる販売価格が、ただ騰貴したというだけでありまして、この利潤の源泉は三井、三菱における優良鉱区の独占的所有権ないし占有権そのものであります。この利潤の本質というものは、私が質疑のときにも明らかにしたように、鉱山自体にほかならないのであります。優良鉱区の独占的な所有と占有ということこそが、今日石炭の生産力発展に対する基本的の基準になつております。あまつさえこれらの独占的な所有者が、その優秀鉱区を故意に隠匿する、あるいは遊休状態に陥れておる。戰時中におきましても、大炭鉱より以上に最も生産に努力したのは、中小炭鉱であります。戦後において大炭鉱が生産サボタージユをやつておるときにも、中小炭鉱はあらゆる努力を傾注しておりまして、まだ統制撤廃後も石炭カロリーを上げるためには莫大な量を犠牲にして、血みどろな努力をやつております。これらの中小炭鉱並びに労働者諸君が隠匿、遊休鉱区の開放ということを叫び、お前たちが優秀鉱区を独占しながら、むなしく遊ばしておくくらいなら、おれたちにまかせろ、幾らでも掘つてみせるぞと言つておるのは、まことに当然ではありませんか。ドツジ・ラインのいわゆる国家財政緊縮方式、この炭鉱統制の矛盾につきましても、一体補給金制度、復金融資はドツジ、ライによつて、すでに粉砕せられてしまつた。独占的な炭鉱資本というものは、もはや今までのように都合よく国家財政を食いものにして行くことはできなくなつたのであります。従来復金融資が主として設備資金に投下せられましたことを考えるならば、今後これはどうしても見返り資金というものに頼つて行く以外にはないと言われておる。しかるにこの見返り資金の問題をとりましても、これは今までの復金融資の場合より以上に、事実上中小炭鉱には行くものではない。一部のきわめて限られた大炭鉱にのみ與えられるものであります。もつともこの間に麻生鉱業といつたような例外もありますけれども、しかしながらこの見返り資金というものも、大炭鉱といいましても、これはひもつきでありまして、これによつて割高の米国系炭が押しつけ輸入され、また炭鉱機械の押しつけ輸入に道を開くものにほかならないのであります。その結果はどういうことになりますか。日本石炭業もまた外国資本のもとに隷属するに至ることは、きわめて明瞭であります。自由党日本の再建に対して何らの積極政策もありません。どれだけの産業水準が、日本の自主独立のために必要であるかということについても、何の方針もない。たまにこれらが安本から出ようとするときは、これをひつこめてしまう。従つて石炭生産をそれぞれ炭質に応じまして、どれくらい確保しなければならぬかということについても、何らの方針を持つておらないのであります。また価格についても、これはもうたいへんなコスト高で、べらぼうに高い。重油その他の燃料資源との競争ということを考えましても、石炭としてはやつて行かれない。従つてまたこの高い石炭価格によりますれば、石炭法による重要な生産諸部門の発展を妨げることは、はなはだしいのでありまして、ことに石炭と鉄鋼のいたちごつこということは、未だに解決されておらない。これに対しても何らの対策を示しておらないのは、自由党としてはきわめて当然であると思う。自由党から提案されましたところの、今回の手放し自由経済というものは、結局国際独占資本の石炭価格引下げ政策というもの、これに対してもまたどう対処してよろしいか。何らの対策を示しておりません。ただ増産目的は、もう達成したから、やめると言つておる。実は過剰生産恐慌の事実というものを何ら考えておらない。この過剰生産恐慌の事実が、石炭産業においても明白になつたという問題なのであります。これは吉田内閣がドツジ・ラインとローガン貿易方式によりまして、国際独占資本家の恐慌を輸入する、押しつけ輸入というよりも、恐慌そのものを輸入いたしまして、過剰品を輸入する。これによつて日本産業をめちやくちやにつぶす政策をとつて来た当然の結果であります。要するに吉田内閣はこの提案によりまして、いよいよその無為無策を暴露したものであります。その結果、三井、三菱等一部の資本家を肥やして、中小企業をつぶし、労働者の大量首切りに拍車をかけるということになる。のみならず、このコスト切下げの問題一つとりましても、この見返り資金一つをとりましても、この間隙を縫つて、またまた吉田内閣が全般的にとつておりましたところの外国資本の導入というよりも、外国独占資本の支配の道を開くという、この大きな自由党の全体の政策の一環をなすものであと考えられるのであります。われわれはこの立場から本提案に対しては、絶対に反対せざるを得ないものであります。
  33. 有田二郎

    有田(二)委員長代理 これにて討論は終局いたしました。  引続き採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  34. 有田二郎

    有田(二)委員長代理 起立多数、よつて本案は可決いたしました。  この際本案の委員会報告書作成の件についてお諮りいたします。これは前例によりまして、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  35. 有田二郎

    有田(二)委員長代理 御異議なしと認めます。委員長に御一任いただいたものと決します。     —————————————
  36. 有田二郎

    有田(二)委員長代理 ただいまより特別鉱害復旧臨時措置法案を議題として、審査を進めます。  このままの状態で暫時休憩いたします。     午後二時三十六分休憩      ————◇—————     午後二時四十八分開議
  37. 有田二郎

    有田(二)委員長代理 休憩前に引続き会議を開きます。  この際特別鉱害復旧臨時措置法案について、小委員長より報告を求めます。神田博君。速記をとめてください。     〔速記中止〕
  38. 有田二郎

    有田(二)委員長代理 速記を始めてください。  お諮りいたします。ただいま神田委員長より御報告の通り御了承願うこととし、これが成文化その他関係方面との交渉手続等につきましては、神田委員長に一任いたしたいと存じますか、御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  39. 有田二郎

    有田(二)委員長代理 御異議なしと認めまして、そのように決します。  この際暫時休憩いたします。     午後二時五十一分休憩      ————◇—————     〔休憩後は開会に至らなかつた