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田代委員 私は
日本共産党を代表して本
法案に
反対いたします。この
法案は大局的に見まして、私
たちは二点から
反対理由をもつのでありますが、第一点といたしましては、いろいろこれは擬裝されておりますが、
生産に従事しておりまする
労働者に対する体のよい彈圧法的な
性格が
多分に盛られておるということ、第二の重要な問題は、
火薬産業が
外国資本に隸属するというような道が開かれておるということ、それはひいてはこれらと関連いたしまして
憲法で
戰争を放棄し、あくまで世界平和を念願しておりますわれわれが、
戰争に知らず知らずの間に巻き込まれ、
戰争に参加しなければならないような方向に持
つて行かれるという
危險性が
多分にあるという、この二つの大きな
理由によ
つて私
たちは
反対するものであります。その
内容につきまして少しく述べますと、すでに御承知のように、
本案は
災害を
防止し、
公共の安全を
確保するということがねらいでありまして、これにはだれも異存はないのでありますが、実質的にどうであるかと申しますと、
災害を
防止する、また
火薬産業につきまして最も
危險を感ずるものは、申し上げるまでもなく
火薬を出産しておりまする
従業員、
工場労働者であります。この
人たちは、いつ
自分の生命あるいは
身体が、
火薬の
爆発によ
つてけがをするかもしれないという
危險に絶えずさらされておるのであります。
従つて工場における
生産労働者諸君をいかに
災害から守るかという、その点が第一番に取上げられなければならないねらいでありますにもかかわらず、その点が明確にされておらないのでありまして、むしろ
工場労働者の
立場からよりは、
生産者、
企業者の
立場から
法案が作成されておるという点が至るところに見えておるのであります。そういう点でこの
火薬というものは、第一番にそういう
危險物であるということ、それから次にはいつでも
戰争用品としてこれが用いられる。
委員会などで
日本の
火薬産業は非常に質が惡くて、
戰争用などということは、ほとんど考えられないというようなことを、
政府はいろいろ説明されましたけれども、これは非常にあまい
危險な
考え方であるということを、私
たちは確信する次第であります。どんなに質が惡いと言われる
爆薬物でありましても、
戰争は何も
原子爆彈あるいは
水素爆彈によ
つてのみなされるのではないのでありまして、
戰争の
性質もそういう大きな
戰争もあります。あるいは
台湾なんかで現在起
つておるような内乱的の
性質の
戰争もあります。そういうような形の
戰争がありますから、
従つて爆薬自体もいろいろな形に使うことができるのであります。
従つてこれは明らかに
戰争に使われる
危險を持つた物品である。こういう
火薬産業の
性格から申しましても、こういう
生産物に対しましては、
利潤本位にもうけるという
立場に立つことは非常に
危險である。そういう
立場がもしねらわれますならば、
火薬生産者が
戰争を喜んで、
戰争が起ればうんと
自分の方は黒字になる、もうかる、ますます
工場の拡張になるというような
考え方にも
反対するのでありまして、
従つて火薬産業にとりましては、あくまでこれは
平和産業以外には絶対に認められないという点を、
はつきりさせることが必要でありますが、この点も
答弁において、
日本の
火薬産業は
平和産業以外には考えておらないということを言われておりますけれども、この
法文の中には明確にそれがされてないという点も見受けられるのであります。そういう
性格の
火薬産業でありますがゆえに、今申しましたように
災害を
防止し、
公共の安全を
確保するということを、実際上において生かしますためには、その絶対
必須條件としては、まず第一番に、
火薬を
生産される
労務者諸君の
生活條件を、
確保することが決定的に必要と思うのであります。ところが実際においては
火薬産業に従事しておる現在の
労務者諸君は、非常に
労働強化にな
つておる。また、賃金が安いというような
條件下におきましては、非常にからだが疲労しております。こういう
労働作業に従事することは、それ
自体が非常に
危險きわまることであります。
従つて、こういう点の
確保というものが
保障されない限り
災害の
防止あるいは
公共の安全ということを企図いたしましても、それは非常に効果が薄いということが言えるのであります。
第二番目には、
企業者が
十分責任を持たなければならないということ。
設備の点から申しましても、あるいは材料の取扱い方、あるいは
保管というような面におきまして、
経営者が十分その義務を持ち、
責任を持
つてこれらの
設備の
整備を充実するという
保障が、決定的に重要にな
つて来るのであります。この点が非常にぼやけておるということが言えるのであります。
従つて、私
たちはこういう
火薬産業に対しましては、
統制価格の問題におきましても、あるいは
生産の問題におきましても、あくまでも国家的な国民的な
立場がとられない限り、
災害の
防止、あるいは
公共の
安全保障確保というものも、十分期待することはできないということを主張するものであります。なお決定的に申しますならば、こういう問題はあくまでも国家的な保護あるいは
統制管理、それから
国営人民管理ということが十分なされなければ、解決しないというふうに考えております。ところがこの
法案は、これらの諸点において非常に失敗しておることは、今申しましたいろいろの例にも出ておるのでありますが、きわめてその点が重要であると思うのであります。第二の
外国資本の進出という問題。これは
銃砲火薬の
取締法案の前
法律におきましては、明らかに
外国の
業者、
資本家、
法人というものは参加することが拒否されてお
つたのであります。ところが、この
法案におきましては、これが明らかに認められておる。すなわちこの点におきまして、私は本
法案は明らかに改惡されておるということが、結論として言えると思うのであります。初め私
たちが聞いたところによりますと、
火薬業者などもいろいろの
意味で
取締りが強化されるというようなことから、これによ
つて経営者としては
利潤を上げる
可能性が多いということで、幾らか
賛成されておつたような
傾向でありますけれども、
外国資本、
外国のそういう
業者が
日本で
製造するとか、あるいは
販売するとか、
日本の
業者と同様の資格で登場することにな
つて来ると、これは問題だというふうに、だんだんこれに対して困惑をし始めたということも聞いておるのであります。まさしくその通りであり、
日本の現在の
資本構成から申しまして、
外国の
強大資本と太刀打ちできないことは、これは
衆目の見るところでございますし、この
日本の、
平和産業として当然育成し、発展せしめなければならない重要な生命線的な、そういう
産業が
特定国へだんだん依存して来るという
危險性が
多分にあるし、しかもその道がこの
法案によ
つて法のもとにおいて、
はつきり切り開かれたということは、実にこれは重大なる
意味を持
つておるのであります。私はこの点におきましても、徹底的に
反対しなければならないし、また改惡されておるということを断言する次第でございます。
そういうことから結局これは現在の
世界情勢から見まして、この
火薬産業自体の
性格、
火薬そのものの
性格から申しまして、先ほど申しましたように、これが好むと好まざるとにかかわらず、こういう
外国の
資本家が国内における
生産過剩、その
火薬を
利潤本位にして、
外国へさばくという
立場で進出して来ます場合において、知らず知らずのうちに
日本がその
戰争の中に巻き込まれなければならないということになるということも言えますし、私
たちが絶えず主張いたしますように
日本の
軍事基地化、こういう問題もこれと結びつくということになるのであります。たとえばその例といたしまして、これは
委員会で私が質問いたしましたときに、
政府委員は、そういうことは
自分たちはよく知らないというような御
答弁でございましたけれども、昨年の十月に
台湾から三百トン
火薬の
引合いがあつたというようなこと、あるいは
関東電機にカーリツトが千箱
台湾から
引合いがあつた。すでに
外国の
戰争の、現在進行しておりますところの
地域から、そういう
引合いがあり、そうしてこういうところに
輸出をするということになると、われわれ
自体がすでに
戰争に参加することになるのであります。またもう
一つ例を申し上げますと、これは二月二十八日のタス通信によ
つてであります。テレプレスによると、米国の
政府は
日本の
軍需工業に対して、最新型の
軍需品を
注文した。
三菱コンツエルンも多量の大口径の
遠距離砲、対戰車砲、軽兵器の
注文を受けておる。
日本化薬コンツエルンは
火薬爆薬、地雷、
化学製品の
注文を受けておる。石川島
コンツエルンは重軽戰車、裝甲車の
生産に当
つておるというようなことを、
外国の
通信社が報道しておるのであります。これらを考えましても、私
たちが申しました
危險が
多分にあるということが言えるのであります。この
法案に直接
関係しておらないというような甘い考えで、私
たちはこの
火薬を考えることが、いかに
危險であるかということが
はつきり言えるのであります。そこで、第一のこの
労働者に対する彈圧的な
性格を持
つておるという点でございますが、これは各
條項にも出ておるのでありまして、たとえば四十三條、つまり
警察権がこれに参加するというようなこととか、その他至るところにこういう点が出ております。それから先ほどこれはどの
委員からも言われましたように、
省令あるいは
規定というような
委任立法的な
性格から、ひいては、それは
労働者の方に非常に不利にな
つて来るということは、
衆目も認めておるところでありまして、すでにもうたとえば
日本化薬とか
関東電機におきましては、この
法案ができるという見通しから、その
生産に従事しておる
工場労働者に対しては、すでにより以上にきゆう
くつな圧迫が参
つておるのであります。
火薬産業に従事する
労働者諸君は、すでに以前からも
一般労働者よりきゆう
くつな
立場で
作業をしておるのであります。たとえば
日本化薬におきましては、先日も
委員会において発言いたしましたように、
工場の門に入る、あるいは門から出て行く場合に、
身体検査をすることができるというような協約が成立する、また押しつけられたというようなこととか、あるいは
関東電機におきましては、組合の專従者は
工場内に立ち入ることができない。
立ち入り禁止ということにな
つておる。こういういろいろな形がすでにもうできておりますことは、いかに
民主化をとなえ、一方において
労働基準法があるから心配いりませんということを説明されましても、実際上においては、そういうふうにな
つておるのであります。従いまして
公聽会においても
工場の代理者が発言されましたように、これに対しまして大
反対されておるのであります。私どももまつたくその考えを支持するものであります。
要約いたしますと、これは食糧問題なんかとともに、
日本の独立自主、自衛権の根本問題に触れる重要な問題でありまして、
憲法に平和
條文をうた
つておりますけれども、その
憲法の精神とこれは非常に矛盾しているということが言えます。また
法案の作成にあたりまして、私どもが
答弁内容を承
つておりますと、明らかにこの
法案の作成につきましても自主権が十分ないという点を、私は重大な関心を持つのでありまして、この
法案の目的といたしましては、
災害を
防止し、
公共の安全を
確保する、それを
取締ると言いながら、実際上におきましては、われわれ
日本のふところに爆彈を抱いて、いつでも自爆する準備が進められつつある、その道が開かれているということが、結論として言えるのでありまして、そういう
立場から私は、自由党の諸君も各党の諸君も、その真相をよく理解していただきまして、徹底的に
反対されんことを希望しますし、共産党は断固これに
反対する次第であります。