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南坊参考人 経営者側の代表の
南坊平造であります。私のただいまから申し上げることにつきまして、印刷物を準備いたしましたので、お手元に届けてございますが、それをもとにしてお話したいと思います。
三月二十五日に
火薬類取締法案が
衆議院に上程せられまして、われわれ
業界は多年の懸案であつた本
法案の上程に際しまして、
通商産業省当局の払われた努力を謝しまして、かつ
衆議院通商産業委員会の
各位が、連日慎重なる
検討をされることを傍聴いたしまして、
委員諸氏の御配慮に対し敬意を表し、
本案が今国会において一日も早く成立することを希望するものでございます。以下
本案に関する
業界の
関心と、若干の点についてわれらの
所見を披瀝いたしまして、その
趣旨の達成と、
当局の実地に即した
運営を切望する次第であります。
第一に、
火薬類取締法に関する
業界の
関心について申し上げたいと思います。
現行の
銃砲火薬類取締法規は、先刻
委員長よりお話のありましたごとくに、
軍国時代の立法でございまして、
平和国家に不適当な数々の点を包蔵しているのであります。また
明治四十三年
制定以来、すでに四十年を経過しておるのでありまして、
技術面におきましても、
時代の
進展による
産業の発達に応ずる
改正が当然行われべくして行われていないという面が、多々あるのでございます。
内務省の
火薬取締りということから、
通商産業省の
取締りに
移つた、こういう現実の事態が織込まれていない。
取締法、
取締法施行規則、
施行細則という三段構えにな
つておりまして、
條文の書き流し的にしてあるということと、章節の区別がついていないという点から
考えまして、これが理解、活用はわれわれ
業者においても、容易なことではないのでありまして、これらの諸点がその主なる
改正すべき問題の要旨であろうと
考えております。
本法令の
改正は、
昭和八年十一月に
火兵学界が主催いたしました
火薬類法規研究会において、主として
技術的立場に立
つて企図せられまして、ほぼ四年を費して、
昭和十二年九月二十九日、
内務大臣に提出せられたのであります。また
昭和十四年十月二十三日には、
内務省当局にさらにそれを促進すべく書類が提出せられております。
内務省当局も、これに応じて
法案の
改正を企図せられたのでありまするが、
本法令が難解であるために、
事務官の方がこれに精通して
改正に着手されるというまでには相当の日数を要するのでありまして、またこれができまして、
関係官庁との折衝という段階に入りましても、またこれに非常に手間がかかるのでありまして、そのために時期を失しまして、遂に第二次大戦とな
つて、そのままにな
つてしまつたのであります。
昭和二十三年の一月、
火薬懇談会、現在では
日本産業火薬会とな
つておりますが、これが
火薬法令の
全面的改正を企図いたしまして、
官民関係者の
参加を得まして
火薬法規改正案協議会というものを結成してこれに当
つて、
昭和二十三年十月八日、
火薬取締法、同
規則、並びに
技術基準案というものを作成いたしまして、これを
通産大臣に提出した次第であります。
火薬類取締法案は、右の
條文の
趣旨を広く取入れてあるので、われらは
本案自身が一日も早く成立することを望む次第であります。
第二番目に、
火薬類取締法案の
目的、
構成精神ということについて、
所見を申し述べたいと思います。第
一條の
目的に対しましては、
火薬産業の健全なる発展に資するという
意味が与えられると、なおよいと思うておるのでありまして、また両
罰規定ということによりまして、
経営者の
責任がある限度以上に課せられておることにつきましては、われわれ若干の
難点と思われるのであります。たとえば
運搬の証明書忘れて来た人に対して罰則を科する。もしくは
免状の返納を命ぜられた
作業主任者が
免状を返納しないということ、またある程度の報告を、出す日にちを聞違えて期日に出さなかつたというようなこと、並びに帳面を少し
間違つた、いわゆるケアレス・ミステイクに対しても、罰をかけられることにな
つておりますが、それが全部
経営者の面に両
罰規定によ
つて科せられて来るというような点において、われわれは非常に
難点と思うておるのでありますが、一方
取締法、
取締規程という二本立てにな
つて非常にわかりやすい
規則になるということ、
技術基準のごとき、
細目規定は、これを
取締規則の方に譲られたことは、今後の
時代の推移による
改正が、割合につくりやすいような点が、非常によくできておると
考えますので、この
制定及び
改正にあたりましては、
公聴会等は実質的に民意を取入れるような形で、
実施せられることを切望する次第であります。
第三番目に、
製造販売の営業に
関係いたしまして、
意見を申し述べたいと思います。その第一番目には、
製造業者が
帝国臣民に限るという在来の
制限が除かれております。この
帝国臣民に限るということは、
軍国時代におきまして、
火薬工業の
動靜を海外の目の届かないところに置きたいというような
考え、または
外国人に
火薬をつくらせたくないというような
考えでできたものであろうと
考えられるのでありますが、現在われわれが平和的の
火薬をつくるという面におきましては、すべての
外国におきましてやられておるがごとくに、排他的であるべきではないと思います。
外国の
火薬工場におきましても、他の国の者が
株主になるということについての
制限はないように思
つております。こういつた面で、われわれが
外国資本の導入、
外国技術のとり入れというようなことにやぶさかでないということを、
一般工業と同じ水準において、これを法律に示すということにつきましては、
多分の明るさを与えたものと
考える次第であります。
次に
販売業者の
定員制の廃止という問題でございます。これは
時代の流れを見るとき、まことにやむを得ないものであると
考えられますが、
販売業者多年の
経験と穏健着実なるこれら
販売業者の方々が、
保安の
確保という点において示された幾多の実績を
考えるときに、新規
業者の無差別の
許可によりまして
業界の素質が低下するということのないように、運誉上特に
当局の慎電なる
措置を希望する次第であります。
次には、
製造工場並びに
火薬庫の
保安距離について申し上げたいと思いますが、在来の嚴格さを続いて保持されるということも、また
公共の
保安上やむを得ないことであろうと
考えるのでありますが、
火薬工場が設立するというときに、設立の当初においては、完全なる
保安距離を保有しておるにかかわらず、その後その
公共の
保安距離内に学校、工場等の
保安物件が無
制限に建設されることになるといたしますと、
火薬工場は自動的にその
保安距離を減じ、
最後には
火薬工場は移転せざるを得なくなるという現状であります。これらはせつかく
保安物件を置いて、こういう
火薬産業のそこにおける経営を認めるということと、
保安距離をと
つてあつたということと、この両方を
考え合すならば、距離設定の本旨に反するものだあろうと
考えるのでありまして、
現行市街地建築物
施行細則第三條の三及び七の
趣旨をとり人れまして、市街地に限らず
火薬工場及び
火薬庫に適用して、
保安距離が
確保できるよう、建築物法などの
制定の場合に、これを御考慮あらんことを切望する次第であります。
次に、所管官庁の一元化ということについて申し上げたいと思うのでありますが、在来雷管工場などは、その原料爆薬をつくる工場は
通産大臣、雷管をつくる工場は知事というふうに二つに分割監督されておるのでありまして、われわれはこの監督では非常に不便を感ずる場合が多々あつたのでありますが、今回の
改正にあた
つて、これが大臣の監督の一元化ということになろうとしておること、並びに火工品工場の規定が、各府県ごとに在来つくられておつたのを、通産省で一括規定されるような傾向にあるということは、まことにけつこうなことだと賛意を表する次第でありまして、これとともに
製造工場並びに
火薬庫の監督を、大臣または知事までとして、これを委任
條項によりまして、自治体の方に委任されるということになりますと、自然その監督する責にある人の
技術的貧困というようなことから、監督の実態を把握することができないようになることを恐れるので、われわれは自治体に、こういう部分に対しましては委讓されることのないように切望します。
その次に労働
基準法との
関係について申し上げますが、
火薬類製造工場にも、労働
基準法が適用されるという、本
委員会における
当局の御説明があつたように記憶いたしますが、
本法は主として適用されるところの
危険区域内における
火薬類の
製造設備、
製造作業というようなことにつきましては、安全衛生
規則と比べあわせて見るならば、いかに
本法の方が嚴格であり詳しく規律されるかということはわかるのでありまして、そういう点からそういう
作業が、一本的に取締られることを希望するのでありまして同じ仕事に対して労働
基準法のこの
火薬の
製造関係の方が、あまり
火薬のことがわからずに取締られると、両方の
取締りを受けて去就に迷うということのないようにや
つていただきたいと思う次第であります。
次に
技術基準の
制定ということについて申し上げますが、その
技術基準の
制定にあたりましては、現在民間の声は
多分にとり入れられているようでありまして、今後もその
考えを失わないように、また
時代の変化、科学の進歩による絶えざる
改正に努力せられるよう切望します。
四番目に讓り渡し、讓り受け、
輸出、
輸入、
運搬、
消費、こういう
一般的の
取締りについての
所見を申し上げたいと思います。
まず第一にこれらの面におきましては、少量
火薬の讓り渡し、讓り受け、
消費の
許可並びに
運搬の届けというようなものは、在来知事の権限に属しておりましたが、その出先機関として警察署の利用ができたことは、
業者一同非常に便利であつたのでありますが、今回は警察はこの方面に利用されないということの態勢にな
つているようでありますが、その場合におきまして、許し得る限り市町村を利用して、特に
運搬、
消費等の実務にあたられる人が、今
運搬せねばならないのに、知事のところまで一々県庁ヘかけつけるというようなことの不便のないように、よく御考慮を願いたいと思います。非常にこまかいことを申し上げて恐縮でありますが、
運搬許可の手数料につきまして、一件二百円と書いてあると思いますが、この
運搬許可は非常にわずかなものを
運搬する場合がたくさんあ
つて特に
火薬商の人々がこれを負担されることになります。実質的にはこれは利用者が負担されることになるわけでありますが、特にこれが
火薬商の方々の経費負担ということになる場合が多いのでありましてこの負担の煩にたえない、あの額ではとうてい仕事はや
つては行かれないだろう。こう
考えられますので、最高価格でやられるようでありますが、この点を特に
運営の面におきましてお
考えくださいまして、利用者並びにこれを
取扱う者の特別の負担にならないように、
考えていただきたいと思います。
次に
運搬規定の
制定ということにつきまして、これは
省令に讓られておりますが、鉄道におきまして、
火薬を積むと前後に空車を置くという規定にはな
つておりますが、実際に空車を置いたという実例は、最近はないのでありまして、こういう空文があるために、
火薬の運賃が高くなるというようなことのないようにや
つていただきたいとともに、トラツクの輸送等の規定は、諸
外国にも実例があるのでありまして、今実際
通産大臣が
考えておられるような方向に、現状に即して
改正していただくことを切望する次第であります。
次に
輸入の
許可制について申し上げますが、すでに
許可制をと
つているところの
産業火薬類の生産ということと対比したとき、この
許可制をとるということは当然の
措置であろうと
考えますが、他面
輸出の届出ということにつきまして、新旧法規を
対象いたしますと、これの主な面にあたる
製造業者並びに
販売業者というものは、在来の規定においても届出にな
つておりまして、この点におきましては若干の除外例を除いて、何ら規定の変更はないように
考えております。
消費、廃棄等の面における
技術基準が定められたということは、在来とかく放任になりがちであつたこの面が、
鉱山保安法に比べまして、
保安の
確保の上に非常に役立つことが多大であると確信いたします。
五番目に、
作業主任者、
取扱主任者の
内容、規定等について申し上げたいと思います。この
主任者に甲、乙、丙の種別をつけるということでありますが、これはほぼ在来の通りであると思います。今回これを
試験を受けた人に与えるというように思い切つた
改正を行われるということを承りまして、われわれも、また長年これを要望しておつた従業員も相ともにこれを喜んで迎えたいと思います。
次に第三十二條によ
つて作業主任者、
取扱主任者が、
技術基準及び
危害予防規程の
実施の
責任を負わされることを明確にして、従
つて火薬類を
取扱うすべての者は、その指示に従うように規定されております。これは
本法の
目的を達成することであ
つて、これをも
つて労働者の権利を侵害すると解する者があつたとしたならば、その者は
火薬類の
取扱いに従事する資格のない者と断ぜざるを得ないのであります。この規定は在来より
実施されておる
保安上の重要点でありまして、われわれは
作業主任者、
取扱主任者に対する罰則の規定が嚴重であるということに反してその
命令に従わない者に対して罰則の規定がしてないということは遺憾と
考える次第であります。
参考までに労働
基準法の第四十四條におきましては、
危害防止のために必要な
命令事項を守らなかつた
労働者に対しては、罰則の規定があるのでありまして、
火薬の
保安、
製造、
取扱い上の
保安ということは、
労働者もまたこの
保安上の
技術基準を守るということにおいて忠実でなければならぬと
考える次第でございます。
以上、
火薬取締法に対して
意見を具陳する機会を与えられた
委員会の諸賢に対しまして、敬意を表するとともに、
意見の開陳を終ります。