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1950-04-12 第7回国会 衆議院 通商産業委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年四月十二日(水曜日)     午前十一時開議  出席委員    委員長代理理事 神田  博君    理事 小金 義照君 理事 澁谷雄太郎君    理事 今澄  勇君 理事 有田 喜一君    理事 風早八十二君       岩川 與助君    江田斗米吉君       門脇勝太郎君    關内 正一君       高木吉之助君    中村 幸八君       福田  一君    前田 正男君       加藤 鐐造君    伊藤 憲一君       田代 文久君    河野 金昇君  出席政府委員         通商産業政務次         官       宮幡  靖君         通商産業事務官         (通商化学局         長)      長村 貞一君  委員外出席者         東京大学教授  山本 祐徳君         日本化薬株式会         社火薬部長   南坊 平造君         全国火薬工業労         働組合連合会会         長       島村  矢君         旭化成ダイナマ         イト労働組合組         合長      石本  威君         專  門  員 谷崎  明君         專  門  員 大石 主計君         專  門  員 越田 清七君     ――――――――――――― 四月七日  委員澁谷雄太郎君及び多武良哲三辞任につき、  その補欠として池田正之輔君及び中野武雄君が  議長指名委員に選任された。 同日  委員中野武雄辞任につき、その補欠として多  武良哲三君が議長指名委員に選任された。 同月八日  委員池田正之輔君辞任につき、その補欠として  澁谷雄太郎君が議長指名委員に選任された。 同月十二日  澁谷雄太郎君が理事補欠当選した。     ――――――――――――― 四月七日  東北興業株式会社幹部の異動に関する陳情書  (第七〇四号)  電力分割案反対に関する陳情書  (第七一一号)  電気事業の再編成に関する陳情書  (第七一二号)  度量衡器並び計量取締に関する陳情書  (第七一五号)  電気料金の値上反対陳情書外二件  (第七一七号)  電気事業分断中止陳情書  (第七二三号)  電気事業編成に関する陳情書  (第七二五号)  特別鉱害復旧臨時措置法成立に関する陳情書外  二件  (第七二六  号)  改訂電気料金制度適正化に関する陳情書  (第七三四号)  電力分割案反対に関する陳情書  (第七三九号)  商工組合中央金庫松山出張所を支所に昇格の陳  情書(第七四  〇号)  商工会議所法制定促進陳情書  (第七四九  号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  理事の互選  火薬類取締法案内閣提出第一二九号)     ―――――――――――――
  2. 神田博

    神田委員長代理 これより通商産業委員会を開会いたします。前会に引続き、私が委員長職務を行います。  この際、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。理事でありました澁谷雄太郎君が去る七日に委員辞任されまして、翌八日に再び委員に選任されましたため、同君の理事としての資格が失われておるのでありますが、この際、澁谷君を従前通り理事に選任いたしたいと思いますが、これに御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 神田博

    神田委員長代理 御異議ないと認めます。澁谷雄太郎君は理事に選任されました。     —————————————
  4. 神田博

    神田委員長代理 ただいまより火薬類取締法案を議題として、審査を進めます。本案につきましては、前会の委員会の決議によりまして、本日御出席を煩わしました参考人各位より御意見を承ることといたします。  議事に入ります前に、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。すでに御承知のこととは存じますが、本案火薬類による災害を防止し、公共の安全を確保するために火薬類製造販売貯蔵運搬消費その他の取扱いを規制いたしまして、明治四十三年に制定せられ、その後二、三回にわたつて部分的に改正されました現行銃砲火薬類取締法を全面的に改正して、時運の進展に対処せんとするものであります。改正の要点と目されるものは、第一に、銃砲取締りを除いて火薬類のみの取締りを独立させた点、第二に、新憲法下におきまして、新たな法体系の整備を行つた点、第三に、行政組織の変革に基く取締り担当機関を明確化した点、第四に、最近の技術的進歩に応ずるように、法内容の刷新をはかつた点等に集約することができると存ずるのであります。本委員会といたしましては、本案取扱いに慎重を期し、またその審査の万全を期するため、本日ここに各位の御出席を煩わし、学識経験者として、あるいは経営者または労働組合側のお立場より、それぞれの御意見を承り、もつて委員会本案審査参考といたすことと相なつた次第であります。各位におかれましては、御多用中のところ貴重な時間をさいて御出席くだされ、委員長といたしまして、厚く御礼を申し上げますとともに、それぞれのお立場より忌憚のない御意見を御開陳くださるよう御願いいたしておきます。  次に議事の進め方について念のため申し上げておきます。参考人各位発言順序は、最初山本祐徳君、次に島村矢君、次に南坊平造君、最後石本威君にお願いいたします。発言時間はお一人十五分以内であります。御発言は、その都度委員長より御指名いたします。御発言は、発言台でお願いいたします。御発言の際には、念のため御名前と御職業をお述べ願います。なお参考人全部の御意見の発表の終りました後に、委員諸君より質疑がありますから、あらかじめお含みを願つておきます。山本祐徳君。
  5. 山本祐徳

    山本参考人 銃砲火薬取締法に代るべき火薬類取締法案——法案を通読いたしまして、きわめてさわやかな感じを受けました。それは銃砲火薬類取締法を根幹とする一連の法規命令——旧法令は、嚴密周到な構成でありますが、私ども科学技術者にとりましては、まつたくその難所を嘆ぜざるを得ないからであります。この旧法令は、性格のまるきり異なる銃砲火薬類とを一つにとりまとめたところに苦心もあり、また無理もできたと考えます。精密機械である銃砲化学物質である火薬類とが相関連するのは、ただある種の火薬類弾薬として、銃砲に用いられる点にすぎません。そして弾薬を含めて銃砲への取締りの主眼は、たしかに治安——ピースに置かれるべきでありますが、銃砲から離れた産業用火薬類については、治安でなく保安セーフテイーにあらねばなりませぬ。治安は科学技術的の検討のみで維持することができませぬが、保安事柄はほとんど全面的に科学技術的に確保され得るのであります。ここに新法案では銃砲から離れて、取締りの重点が保安にあることがはつきりいたしました。いま一つ、旧法令には軍用火薬類という本質の不明瞭な語句がありまして、あいまいな、そして不明朗な感を残しております。しかるに新法案では、いわゆる軍用火薬類——少くとも戦用火薬類考えず、もつぱら産業用火薬類対象としていますから、これまたさつぱりといたしました。  新法案には製造施設製造方法貯蔵方法火薬庫消費、廃棄、安定度試験及び不良火薬類措置等については通商産業省令で、運搬については政令で、それぞれ技術上の基準が示されるとあります。かくしてまつたく技術法令性格を帯び、しかもその基準制定には公聴会で広く一般意見を徴するのでありますから、民主的であり、かつ技術家の陥りやすい独善から救うことができます。  次に、作業主任者及び取扱主任者の免許は、旧法令ではやや学歴偏重の傾きがありますが、新法案では試験制度のみがとられ、時勢に即応した進んだ措置と信じます。また製造上の危害予防規程制定や、従業者に対する保安教育実施を自主的に行うように規定せられたこと、及び火薬類輸出の手続が輸人のそれよりも簡易に扱われているのは注目に値します。これはわが国産業用火薬類製造技術が列国に比べて遜色がなく、販売業者や大口の消費者の教養と社会的信用の高いことが認められたものとして、同感を禁じ得ません。  これを、要するに旧法令が立派なものでありながら、内容を多く盛つたため、しろうとになじまれなかつたのを、新法案はまことにさらりと仕上げられた点、官尊民卑の弊が一掃せられて、きわめて民主的に構成されしかも業者に深い信頼が寄せられた点等に対して、私は全面的に好感を抱くことができます。そしてこの新法案関係政令及び省令によつて完璧が期せられますことを切望してやみません。  私の意見はこれで終ります。
  6. 神田博

    神田委員長代理 次は労働組合側島村矢君にお願いいたします。島村君。
  7. 島村矢

    島村参考人 全国火薬工業労働組合連合会会長島村矢であります。火薬労連を代表しまして、火薬法改訂に関する意見を申し上げます。  まず最初現行法改訂を必要と認めた点であります。現行法制定の時期が明治四十三年であり、しかも火薬界の幼稚な時代の産物であり、さらに現行趣旨多分軍事的目的を有しており、それがための取締りと指導を中心としている点から考えまして、終戦後におけるわが国ポツダム宣言並びに新憲法精神から戦争放棄、すなわちいかなる形においても軍事的性格排除及び徹底的な民主化基本的人権擁護に基きまして、わが火薬産業ももちろん平和産業としてのみ、また民主化基本的人権擁護の上に立つて事業維持継続が認められ、さらには向上し得ることが考えられるのであります。それゆえ軍用銃砲、あるいは軍用火薬類の削除は当然であると同時にまた非民主的な、封建的な要素の追放、火薬産業危害予防すなわち保安重要性から、これが確保の最優先的、しかも積極的考慮がなされてのみ事業維持継続が認められるものであります。以上の基本的な点において、われわれは現行法改訂の必要を認めているのであります。  さて改訂にあたりましての逐條的意見の前に、基本的な事項を申し上げます。まず最初にただいま火薬産業の基本的なあり方として大体三つにわけて申し上げましたが、第一の軍事的目的排除、すなわち平和産業としての火薬についてでありますが、明治以来終戦までに果した役割からばかりでなく、今日の客観情勢下において火薬産業は必ずしも平和産業として晏如たり得ないのであります。この際本法においてはもちろんのこと、これが徹底は最も重要でありまして、その限りにおいてのみ火薬産業が認められるのであります。  第二は取締法性格がもたらした警察臭的な、また封建的な要素は、民主化の徹底によつて改められなければならないのであります。  第三の基本的人権擁護の点からはもちろんのこと、火薬産業保安重要性は申すまでもありません。これが確保の上に立つてのみ、事業運営がなされなければ、火薬産業そのものの否定であります。しからば保安確保とはいかなることであるかという点に対してでありますが、まず第一に物すなわち施設機械、原料、半製品製品等の正常なる保持、運営取扱いあるいは検査等の積極的かつ技術的考慮であります。第二は人、すなわちこれとともに働いておる労働者に対する適正な労働條件保障いかんにあるわけであります。これら二つの事柄が並行的に確保実行されて、初めて保安維持というものが考えられるわけであります。しかしながら本法目的は主として私がただいま申し上げました物、すなわち施設製品等の点を対象としているのであつて、第二にあげた人、すなわち労働條件に関する点を助長しようとも、これを妨げたり、あるいはその分野立人危険誘発等名目で、労働行為の干渉、制限あるいは禁止等を要求するようなことは、絶対に相ならぬものであります。これらは明らかに労働法分野であるからであります。また保安は一場の理論や指示、命令などで押しつけるのみでは、絶対に確保されません。職場の事実と慣習の上に立つて制限されなければなりませんし、それゆえ人と物とにむりあるいは強制自決を許容するものであるならば、法にして悪法と言わざるを得ません。  次に、逐條的問題点のみ申し上げます。第一條公共の安全という字が書かれております。字句はけつこうであります。しかし労働者にとつては、他の例において運用上悪用された事実があるだけに、ここにはつきりと、たとえばいかなる名目によつても、労働者の正当なる行為を妨げないという意味の一項を挿入していただきたい。  次に第五條販売業者定員制の廃止について、いささかの意見はありますが、現行銃砲火薬類取締法の第二條に「火薬、爆薬ノ製造ハ帝国臣民ノミヲ社員若ハ株主トスル会社ニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス」とあります。この帝国日本国に改めて、本條の前後に一條挿入すべきであるということであります。現下における外国人あるいは外国資本参加は、わが国火薬産業擁護並びに自主性確立の必要から、明確にしておかなければならないと主張するものであります。第十一條の三項、さらには十四條二項、さらには三十六條二項、これらはすべて任意規定になつております。これはむしろ強行規定として、保安確保責任の履行の完璧を望むものでありまして、昨年の九月の板橋の火薬庫爆発事件の例からも、この点痛感せられるものであります。二十四條、輸出の届出、輸入許可についてであります。ここに許可制をとる、しかもその責任を明確化することを望むものであります。また輸出については、特にその流用化等から、平和産業用として、はつきりしたものについてのみ許可すると同時に、輸入については、国内需要必要理由はつきりした場合だけで、しかもその基準を明記しておくこと。さらには輸出入については、特に公開の義務をはつきり條文に現わすことを、主張するものであります。  第二十八條危害予防規定についてであります。政府のお考えのごとく、労資間で当然きめられるものと考えるというだけではなくて、労働者保護の見地から、本條にその旨を、たとえば鉱山保安法のごとく明記することを要求するものであります。次に二十九條、保安教育についてであります。これについては労働者として、その実施の一層積極的なることを特に望むものであります。三十一條作業取扱主任者試験についてでありますが、従来の学閥あるいは学歴中心主義でなくて、職場経験を十分尊重できるいわゆる民主的制度を切に望むものであります。三十二條、ここで、主任者職務の「誠実」という字句でありますが、本法技術法の建前から、抽象的な、しかも観念的な用語でなくて、誠実なるべき技術的基準に改むべきであるというふうに考えております。同時に本條は、主任者の主観によりまして、惡用されるおそれが多分にありますから、常に正当な労働者行為を妨げるものであつてはならない、この旨の條項を挿入することを主張するものであります。次に三十四條、主任者職務遂行の不適当についてであります。保安上、職務遂行が、不適当であると認められただけでは、主任者解任は、惡用されます。ここで解任基準の不明確は、主任者自身の不安であると思いますから、その点明確にすることを主張します。三十九條、「その他の事情により危険な状態」とは何であるか、それがたとえば、天災地変であるならば、そのように明記してほしいということであります。四十條、「発火し易い物」とは何であるか。また「製造所」の範囲は工場全般であるか、または危険区域内のみであるかを、明確にする必要を認めております。四十三條の二項、本項は意味のある條項とは思われません。またその行為によつては、危害予防に逆効果を与えることを特に恐れておるものであります。四十四條、四十五條行政措置について、これらの措置の動機が、労働行為理由としないことをはつきりさせる意味において、業務上あるいは技術上の基準はつきりしておくことを主張するものであります。次に四十八條條件の付与でありますが、これもできるだけ明確化しておくということ。五十三條の公聴会についてでありますが、公聴会はできるだけ省令一般について行えるようにし、またこのほかに、鉱山保安法のごとく、たとえば火薬審議会というようなものを設けることを望むものであります。その他こまかい点は省略いたします。  最後に、総括的な意見を申し上げて終りたいと思います。まず第一に、労働運動の抑圧に惡用され得るという点であります。今日一応その意図がないと言われても、改訂の当初においても、たとえば旭化成の一昨年の争議におけるごとく、またその後の過程においても、経営者の一部にそのような意見が出されたことなどからしましても、その余地を残すことは、本法趣旨に反するものであります。第二点としまして、外国資本参加の道を開いておる点でありますが、先ほど申し上げましたように、自国産業擁護自主性確立のためにも、火薬産業植民地的條件を拒否しなければなりません。第三点、現行法軍事的内容を一掃するための改訂であるのに対して、本法案は、ポツダム宣言指令第三号の内容、並びに憲法趣旨の明記がなされておらないことが、たとえば今日の火薬軍需用として無関係でないごとく伝えておる外国通信などからしても新火薬法として不十分であり、また不安と動搖をもたらすことを恐れるものでありまして、平和産業としての趣旨を徹底することを、本法において望んでおるものであります。第四点、火薬産業の性質上、保安重要性を十分認めながらも、積極的條項が不十分であります。従つて事業運営上、今日よく言われている金融上の理由などで、保安確保のための、すなわち先ほど申し上げました、物と人との保全保護が、事実は第二義的に取扱われ実質的保安確保がネグレクトされることをおそれるものであります。火薬事業は他にも増しまして事業運営上当然保安のための資金、資材、あるいは技術に対する第一義的施策、実行があつてのみ認められるものであります。この観点から、他事業のごとく、いわゆる資本家的生産様式というものは、火薬産業の場合制限せられる性格を持つものでありまして、保安実質的確保を回避するいかなる理由も、認めるわけには行かないことを特に強調するものであります。 最後に全般的に見まして、技術的基準が不明確である條項が多々あること、並びに文章においても修正を願うべきものを認めるものであります。以上をもつて法案に対する火薬労連を代表しての意見といたしまして、これで終ります。
  8. 神田博

  9. 南坊平造

    南坊参考人 経営者側の代表の南坊平造であります。私のただいまから申し上げることにつきまして、印刷物を準備いたしましたので、お手元に届けてございますが、それをもとにしてお話したいと思います。  三月二十五日に火薬類取締法案衆議院に上程せられまして、われわれ業界は多年の懸案であつた本法案の上程に際しまして、通商産業省当局の払われた努力を謝しまして、かつ衆議院通商産業委員会各位が、連日慎重なる検討をされることを傍聴いたしまして、委員諸氏の御配慮に対し敬意を表し、本案が今国会において一日も早く成立することを希望するものでございます。以下本案に関する業界関心と、若干の点についてわれらの所見を披瀝いたしまして、その趣旨の達成と、当局の実地に即した運営を切望する次第であります。  第一に、火薬類取締法に関する業界関心について申し上げたいと思います。  現行銃砲火薬類取締法規は、先刻委員長よりお話のありましたごとくに、軍国時代の立法でございまして、平和国家に不適当な数々の点を包蔵しているのであります。また明治四十三年制定以来、すでに四十年を経過しておるのでありまして、技術面におきましても、時代進展による産業の発達に応ずる改正が当然行われべくして行われていないという面が、多々あるのでございます。内務省火薬取締りということから、通商産業省取締り移つた、こういう現実の事態が織込まれていない。取締法取締法施行規則施行細則という三段構えになつておりまして、條文の書き流し的にしてあるということと、章節の区別がついていないという点から考えまして、これが理解、活用はわれわれ業者においても、容易なことではないのでありまして、これらの諸点がその主なる改正すべき問題の要旨であろうと考えております。本法令改正は、昭和八年十一月に火兵学界が主催いたしました火薬類法規研究会において、主として技術的立場に立つて企図せられまして、ほぼ四年を費して、昭和十二年九月二十九日、内務大臣に提出せられたのであります。また昭和十四年十月二十三日には、内務省当局にさらにそれを促進すべく書類が提出せられております。内務省当局も、これに応じて法案改正を企図せられたのでありまするが、本法令が難解であるために、事務官の方がこれに精通して改正に着手されるというまでには相当の日数を要するのでありまして、またこれができまして、関係官庁との折衝という段階に入りましても、またこれに非常に手間がかかるのでありまして、そのために時期を失しまして、遂に第二次大戦となつて、そのままになつてしまつたのであります。昭和二十三年の一月、火薬懇談会、現在では日本産業火薬会となつておりますが、これが火薬法令全面的改正を企図いたしまして、官民関係者参加を得まして火薬法規改正案協議会というものを結成してこれに当つて昭和二十三年十月八日、火薬取締法、同規則、並びに技術基準案というものを作成いたしまして、これを通産大臣に提出した次第であります。火薬類取締法案は、右の條文趣旨を広く取入れてあるので、われらは本案自身が一日も早く成立することを望む次第であります。  第二番目に、火薬類取締法案目的構成精神ということについて、所見を申し述べたいと思います。第一條目的に対しましては、火薬産業の健全なる発展に資するという意味が与えられると、なおよいと思うておるのでありまして、また両罰規定ということによりまして、経営者責任がある限度以上に課せられておることにつきましては、われわれ若干の難点と思われるのであります。たとえば運搬の証明書忘れて来た人に対して罰則を科する。もしくは免状の返納を命ぜられた作業主任者免状を返納しないということ、またある程度の報告を、出す日にちを聞違えて期日に出さなかつたというようなこと、並びに帳面を少し間違つた、いわゆるケアレス・ミステイクに対しても、罰をかけられることになつておりますが、それが全部経営者の面に両罰規定によつて科せられて来るというような点において、われわれは非常に難点と思うておるのでありますが、一方取締法取締規程という二本立てになつて非常にわかりやすい規則になるということ、技術基準のごとき、細目規定は、これを取締規則の方に譲られたことは、今後の時代の推移による改正が、割合につくりやすいような点が、非常によくできておると考えますので、この制定及び改正にあたりましては、公聴会等は実質的に民意を取入れるような形で、実施せられることを切望する次第であります。  第三番目に、製造販売の営業に関係いたしまして、意見を申し述べたいと思います。その第一番目には、製造業者帝国臣民に限るという在来の制限が除かれております。この帝国臣民に限るということは、軍国時代におきまして、火薬工業動靜を海外の目の届かないところに置きたいというような考え、または外国人火薬をつくらせたくないというような考えでできたものであろうと考えられるのでありますが、現在われわれが平和的の火薬をつくるという面におきましては、すべての外国におきましてやられておるがごとくに、排他的であるべきではないと思います。外国火薬工場におきましても、他の国の者が株主になるということについての制限はないように思つております。こういつた面で、われわれが外国資本の導入、外国技術のとり入れというようなことにやぶさかでないということを、一般工業と同じ水準において、これを法律に示すということにつきましては、多分の明るさを与えたものと考える次第であります。  次に販売業者定員制の廃止という問題でございます。これは時代の流れを見るとき、まことにやむを得ないものであると考えられますが、販売業者多年の経験と穏健着実なるこれら販売業者の方々が、保安確保という点において示された幾多の実績を考えるときに、新規業者の無差別の許可によりまして業界の素質が低下するということのないように、運誉上特に当局の慎電なる措置を希望する次第であります。  次には、製造工場並びに火薬庫保安距離について申し上げたいと思いますが、在来の嚴格さを続いて保持されるということも、また公共保安上やむを得ないことであろうと考えるのでありますが、火薬工場が設立するというときに、設立の当初においては、完全なる保安距離を保有しておるにかかわらず、その後その公共保安距離内に学校、工場等の保安物件が無制限に建設されることになるといたしますと、火薬工場は自動的にその保安距離を減じ、最後には火薬工場は移転せざるを得なくなるという現状であります。これらはせつかく保安物件を置いて、こういう火薬産業のそこにおける経営を認めるということと、保安距離をとつてあつたということと、この両方を考え合すならば、距離設定の本旨に反するものだあろうと考えるのでありまして、現行市街地建築物施行細則第三條の三及び七の趣旨をとり人れまして、市街地に限らず火薬工場及び火薬庫に適用して、保安距離が確保できるよう、建築物法などの制定の場合に、これを御考慮あらんことを切望する次第であります。  次に、所管官庁の一元化ということについて申し上げたいと思うのでありますが、在来雷管工場などは、その原料爆薬をつくる工場は通産大臣、雷管をつくる工場は知事というふうに二つに分割監督されておるのでありまして、われわれはこの監督では非常に不便を感ずる場合が多々あつたのでありますが、今回の改正にあたつて、これが大臣の監督の一元化ということになろうとしておること、並びに火工品工場の規定が、各府県ごとに在来つくられておつたのを、通産省で一括規定されるような傾向にあるということは、まことにけつこうなことだと賛意を表する次第でありまして、これとともに製造工場並びに火薬庫の監督を、大臣または知事までとして、これを委任條項によりまして、自治体の方に委任されるということになりますと、自然その監督する責にある人の技術的貧困というようなことから、監督の実態を把握することができないようになることを恐れるので、われわれは自治体に、こういう部分に対しましては委讓されることのないように切望します。  その次に労働基準法との関係について申し上げますが、火薬類製造工場にも、労働基準法が適用されるという、本委員会における当局の御説明があつたように記憶いたしますが、本法は主として適用されるところの危険区域内における火薬類製造設備、製造作業というようなことにつきましては、安全衛生規則と比べあわせて見るならば、いかに本法の方が嚴格であり詳しく規律されるかということはわかるのでありまして、そういう点からそういう作業が、一本的に取締られることを希望するのでありまして同じ仕事に対して労働基準法のこの火薬製造関係の方が、あまり火薬のことがわからずに取締られると、両方の取締りを受けて去就に迷うということのないようにやつていただきたいと思う次第であります。  次に技術基準制定ということについて申し上げますが、その技術基準制定にあたりましては、現在民間の声は多分にとり入れられているようでありまして、今後もその考えを失わないように、また時代の変化、科学の進歩による絶えざる改正に努力せられるよう切望します。  四番目に讓り渡し、讓り受け、輸出輸入運搬消費、こういう一般的の取締りについての所見を申し上げたいと思います。  まず第一にこれらの面におきましては、少量火薬の讓り渡し、讓り受け、消費許可並びに運搬の届けというようなものは、在来知事の権限に属しておりましたが、その出先機関として警察署の利用ができたことは、業者一同非常に便利であつたのでありますが、今回は警察はこの方面に利用されないということの態勢になつているようでありますが、その場合におきまして、許し得る限り市町村を利用して、特に運搬消費等の実務にあたられる人が、今運搬せねばならないのに、知事のところまで一々県庁ヘかけつけるというようなことの不便のないように、よく御考慮を願いたいと思います。非常にこまかいことを申し上げて恐縮でありますが、運搬許可の手数料につきまして、一件二百円と書いてあると思いますが、この運搬許可は非常にわずかなものを運搬する場合がたくさんあつて特に火薬商の人々がこれを負担されることになります。実質的にはこれは利用者が負担されることになるわけでありますが、特にこれが火薬商の方々の経費負担ということになる場合が多いのでありましてこの負担の煩にたえない、あの額ではとうてい仕事はやつては行かれないだろう。こう考えられますので、最高価格でやられるようでありますが、この点を特に運営の面におきましてお考えくださいまして、利用者並びにこれを取扱う者の特別の負担にならないように、考えていただきたいと思います。  次に運搬規定の制定ということにつきまして、これは省令に讓られておりますが、鉄道におきまして、火薬を積むと前後に空車を置くという規定にはなつておりますが、実際に空車を置いたという実例は、最近はないのでありまして、こういう空文があるために、火薬の運賃が高くなるというようなことのないようにやつていただきたいとともに、トラツクの輸送等の規定は、諸外国にも実例があるのでありまして、今実際通産大臣考えておられるような方向に、現状に即して改正していただくことを切望する次第であります。  次に輸入許可制について申し上げますが、すでに許可制をとつているところの産業火薬類の生産ということと対比したとき、この許可制をとるということは当然の措置であろうと考えますが、他面輸出の届出ということにつきまして、新旧法規を対象いたしますと、これの主な面にあたる製造業者並びに販売業者というものは、在来の規定においても届出になつておりまして、この点におきましては若干の除外例を除いて、何ら規定の変更はないように考えております。消費、廃棄等の面における技術基準が定められたということは、在来とかく放任になりがちであつたこの面が、鉱山保安法に比べまして、保安確保の上に非常に役立つことが多大であると確信いたします。  五番目に、作業主任者取扱主任者内容、規定等について申し上げたいと思います。この主任者に甲、乙、丙の種別をつけるということでありますが、これはほぼ在来の通りであると思います。今回これを試験を受けた人に与えるというように思い切つた改正を行われるということを承りまして、われわれも、また長年これを要望しておつた従業員も相ともにこれを喜んで迎えたいと思います。  次に第三十二條によつて作業主任者取扱主任者が、技術基準及び危害予防規程実施責任を負わされることを明確にして、従つて火薬類取扱うすべての者は、その指示に従うように規定されております。これは本法目的を達成することであつて、これをもつて労働者の権利を侵害すると解する者があつたとしたならば、その者は火薬類取扱いに従事する資格のない者と断ぜざるを得ないのであります。この規定は在来より実施されておる保安上の重要点でありまして、われわれは作業主任者取扱主任者に対する罰則の規定が嚴重であるということに反してその命令に従わない者に対して罰則の規定がしてないということは遺憾と考える次第であります。参考までに労働基準法の第四十四條におきましては、危害防止のために必要な命令事項を守らなかつた労働者に対しては、罰則の規定があるのでありまして、火薬保安製造取扱い上の保安ということは、労働者もまたこの保安上の技術基準を守るということにおいて忠実でなければならぬと考える次第でございます。  以上、火薬取締法に対して意見を具陳する機会を与えられた委員会の諸賢に対しまして、敬意を表するとともに、意見の開陳を終ります。
  10. 澁谷雄太郎

    澁谷委員長代理 次は石本威君。
  11. 石本威

    石本参考人 旭化成火薬関係労働者を代表して参りました石本威であります。今までたびたび御意見がございましたけれども、そもそも銃砲火薬類取締法という今までの法は、大正に入つてからも改正はありましたけれども、その骨子となるものは明治四十三年にきめられておる。従つて現在の事情においてはいろいろ不備なところ、あるいはおかしいところがあるということについて、それを改正するという趣旨は認めております。さてこの條文につきましていろいろ長い間にわたつて検討が繰返えされておつたようでありますが、その間の詳細ないきさつと、あるいはそういうことをきめるようになつた雰囲気ということに関しましては、宮崎県の延岡におるという非常な地理的な條件に惠まれておりませんので、詳しいことは存じておりません。従いましてこの條文全体にわたりまして、うちの労働組合といたしまして、全面的に悪いというような結論は出ておりません。また火薬作業現場におきまして、直接こういう危険物を取扱つて、絶えずわれわれの生命なり、あるいは身体なりをその危険にさらしているのは、われわれ火薬の現場における労働者であります。従いましてこういう火薬類の、単に技術的な面において、われわれの身体なり生命を守ろうという強い要求から、技術的にこの安全あるいは危害予防するという條項を設けることについては、みな納得しております。ただ技術的な面以外に、これを組合活動という面からながめました場合に、組合活動の圧迫にならないか、あるいはそれを牽制するというような余地が残されているのではないかということに関しまして、労働者としての関心が向けられているわけであります。こういう点につきまして今までの詳しいいきさつというものも、十分わかつておりませんので、明かにしていただくということを意見として申し上げたいと思います。二、三具体的なことを申し上げます。たとえば二十八條危害予防規程ということをあとに設けるというふうになつておりますが、この制定にあたつては組合の意見も、これに十分反映できるように、これをはつきりしていただきたい。あるいは三十條及び三十二條において、作業主任者技術的な面以外のことで、会社側あるいは経営者という立場から、常識的に考えて安全であると思われるような組合活動までも、禁止されるというようなおそれがないだろうか、あるいはまたそういう点で意見の相違を生じた場合に、その判定をだれが行つてくれるかというようなところを明確にしていただきたい。あるいは四十三條の立入り検査ということがありますが、各現場における作業主任者というような人々は、それぞれ自分の工場における作業設備なり、その他詳細のことに関しては、一番よく知つているだろうと思います。そのほかに通産省における保安上の検査ということも行われておりますから、それ以上になお官憲、警察官等の立人り検査ということの必要があるだろうか、どういうところにその必要があるかということを明確にしていただきたい。とかく組合運動をなしている者といたしまして、これは過去の組合運動の歴史から考えまして、そういう第三者の立入りということに関しては、非常に神経をとがらしているという場合が非常に多いのであります。またそれが実情でありますから、そういう場合に、作業している者に不必要な刺激を与えるというようなことのないように、注意していただきたいということであります。それから、その項に「正当な業務又は行為」というような文字が入つたと思いますが、それはもちろん正当な組合活動というものも含むものと解釈しておりますが、その点間違いないでしようか。  それから六十二條の項目につきまして両罰規定ということが設けられております。科学的な技術者といたしまして、法律上の詳しいことはわかりませんけれども、そういつた方面から両罰規定を設けたというその趣旨を明確にしていただきたい。  その他輸出及び輸入のところに、輸出を届出にする、あるいは輸入許可制にしたこのことについては、今までお話がありましたけれども、その点明確に聞いて来てくれというお話がありましたけれども、その点明確に聞いて来てくれという話であります。  最後戦争放棄の問題にからみまして軍需用火薬などというものは、おそらくないだろうということは、われわれも信じておるのでありますが、一部におきましてはそういうおそれがあるというような話も聞いております。それにつきましてはこの條文から具体的にどの規定のために、そういう心配があるかということは、われわれにわかつておりませんので、今までこういう審議を重ねました過程におきまして、はたしてそういうおそれを抱くようなことがあつたのかどうかということを、はつきりしていただきたい。以上申し上げましたようなことが、うちの火薬労働者として心配しておつた点であります。  要約いたしますれば、火薬取締法というものは、労働協約みたいにこれを経営者側、組合側と二つの面から切り離してながめるべきものではないと思います。従いまして先ほど申し上げましたように、絶えずそういう危険な作業に従事しておる者として、単に技術的な面からその安全をはかるということについては、何ら異論はないのでありますが、ただ組合運動にからみまして、それの圧迫なりあるいは干渉になるというようなことについては十分な関心を払つておるものであるということを申し上げておきます。
  12. 澁谷雄太郎

    澁谷委員長代理 これにて参考人各位の御意見の発表は終りました。ただいまより参考人の御発言に対する質疑をお許しいたします。
  13. 田代文久

    ○田代委員 簡単に二、三点御質問いたしますが、まず山本教授にお伺いいたします。学者としての御見解では、この法案に対しまして非常に明るい、いい法案ができたというような結論をお出しになつておるようでありますが、私たちといたしましては、相当これには疑問を持つておりまして、これがセーフテイという立場から確保されなければならないということは、まつたく同感であります。それが徹底的に守られなければならないのでありますが、単に空文に終ることが非常に多いのでありまして、この点が非常に不安であり、また委員会でもんだ点でありますが、その点は別といたしまして、最後の方に業者に深い信頼を寄せられた点に対して私は全面的に好感を抱くことができます、というようにお述べになつておりますが、私たちの理解では業者に深い信頼を寄せるということも大事でありますけれども、実際火薬産業に従事しまして、一番危険な方場に立ちます者は、これを生産されておる従業員諸君であります。そういう従業員諸君の生命の安全ということが確保されることが、私はこの法案の決定的な面ではないかと思う。そういたしますと、業者に深い信頼を寄せることも、この法案に出ておりますように、一般的に業者がいろいろの圧力を従業員の方に加えるという形になつて来る危険が多いのでありまして、明らかに各條項にそういうことが出ております。むしろ逆に、業者に深い信頼も寄せるけれども、より以上に第一義的に従業員の保安、これをいかに確保するか。なお申し上げますと、その確保の決定的な條件は、まず第一番に生活條件、これが安定せなければ不可能であります。非常に苛酷な、つまり労働強化とか、生活條件が非常に悪いということでは、安全を期待することができないのであります。そういう面がむしろ主張されなければならないので、この点に対しまして教授の御見解と私の持つております見解には、相当の開きがあるようでございますが、いかに理解されておりますか。
  14. 山本祐徳

    山本参考人 お答えいたします。ここに業者と書きましたのは、私多少用意をして書きましたのでございますが、それは製造業者それから従業者消費者販売業者もすべて含む、そういう仕事に当る人、こういう気持でございます。と申しますのは、この危害予防規程制定につきましては、当然労働者意見が入ると思うのであります。ものを使います場合にも、これは従業者保安教育を受けてやるわけでありますから、すべての場合そういう労働者経営者、こういうような気持は全然持たずに、みなが同じ対等の気持で、この法の取締りを受けるのだと私は解釈しております。
  15. 田代文久

    ○田代委員 これは意見でございませんから、教授に対する御質問はこれで終りまして、次に南坊さんにお尋ねいたしたいのでありますが、先ほど製造及び販売業については、つまり今度の法案によりますと、外国法人、外国資本が自由に製造なり、その他販売ということに関係して来るということが、はつきりいたしておりまして、この点実際に日本火薬株式会社などでは、むしろこれは非常に明るい美点として取上げて来ておるというような御説明でありますが、私がかりに製造業者立場に立つて日本の火薬産業という立場から考えた場合に、これは日本がアメリカか、あるいはその他の資本主義の発達しまして、生産力の非常に高い條件のもとに置かれた国と、対等の立場にあるというような場合におきましては、あるいはそういうことが言えるかもしれません。しかしそれも非常に問題があるのであります。ましてや日本の火薬産業というものは、非常に貧弱であります。また火薬という製品性格自体から申しましても、これは他の産業とは違つた内容を持つておりますことは、私が申し上げるまでもないのでありまして、なお申しますと、これはいろいろの意味で国家的な社会的な育成、保護、またその使途についても明確な限度というようなものを持たせなければ危険であります。そういう場合におきまして、非常に弱い日本の火薬産業に対して、自由に外国の資本が入つて来るということは、火薬産業家自身としましては、それによつて日本の火薬産業はどんどん伸びる、資金も調達できるというように、お考えになるかもしれませんけれども、事態は非常に危険でありまして、それによつて平和産業として十分日本の火薬産業が伸びねばならない場合におきまして、そういう外国資本がどんどん入つて来ることによりまして、日本の火薬産業がその制圧のもとに置かれる。単にその下に置かれるだけでなくして、外国の非常に生産力の高い、そういう資本が入つて来まして、これを握るということになりますと、当然これは戦争に巻き込まれる危険が多分に出て来るじやないか。日本の憲法といたしましても、またわれわれといたしましても、戦争には絶対に反対である。平和は徹底的に確保しなければなりませんけれども、そういう場合においてこの火薬というものは、平和のために使うという立場をとりましても、それ自体は決定的に戦争に直接すぐ生かすことのできる物質でありますので、そういう場合に他の国々におきまして、戦争をおつ始める。またある一国が戦争を始める。そうするとその国の火薬産業外国が手を出して行くという場合に、その資本が日本に入つて来ましてこれを制圧し、そうしてその心臓部を握るというようなことになりますことは、日本の火薬産業の平和的な発展、またその保護育成という問題、戦争に巻き込まれないというような、いろいろな面から申しまして、私は非常に危険と理解するのでありますが、この点に関しまして、実際に業者を代表しておられまして、その危険をお感じにならないか。これが日本の火薬産業の発展のために、非常に有利であるかどうかという点につきまして御説明願いたいのであります。
  16. 南坊平造

    南坊参考人 ただいま御質問があつたことにつきましてお答えを申し上げますが、日本国憲法に規定されておる線に沿いまして、われわれの生産が左右されておることと思います。従つてたといいかなる事態になつたと仮定いたしましても、平和産業以外のものをつくることにはならないと確信いたしております。  次に外国の資本の入る、入らぬという問題でありますが、別にわれわれも外国資本を好んで入れよということを申し上げた意味ではございません。ただ日本の工業全般が外国資本を入れるという点において、何らの制限も置いていないときに、ひとり火薬産業のみ、これに制限を置くということ自身が、なんのためにやらなければならぬかということを考えるとき、われわれは特別にこの工業のみに制限を置く必要はないと考えまして、他の産業と同列に扱われた方がよい。もう少し具体的に申し上げますと、火薬工業はすべての原料を取扱つて、これをまぜて火薬をつくり上げるという工業でありまして、すべての工業全体が、たとえば外国資本によつて動くというような事態になつたと仮定いたしましたならば、ひとり火薬産業のみがこの線を守つても、何の意味にもならない。またそういうことを好まないと仮定いたしましたならば、それは何の効果もないのでありまして、全体的に申し上げまして、日本の工業全体が同じレベルにあるということが、いいのであるということを申し上げたわけであります。
  17. 田代文久

    ○田代委員 量ねて御質問いたしまして、議論をしようとは思いませんが、もちろん私どもといたしましては、今の御説明のように、これは平和産業用だけにしかつくらないのだから、御心配ありませんということになるといたしましても、それはそういう気持でつくりましても、この物品そのものが非常な危険な戦争用具でありまして、たとえば日本の平和産業に対する有効需要をオーバーしてつくられる。ところが会社側から申しますと、たくさんできればできるほど、もうけが行くということになりまして、利潤ということがここに当然考えられます。そういうことから申しますと、知らず知らずの間に、平和産業だけと考えましても、いつしかそういう戦争に巻き込まれる形が出て来るのではないか。そういう場合に外国資本との関係がある場合においては、それはますます危険になつて来るということを感ずるわけであります。重ねてひとつお答えを願います。
  18. 南坊平造

    南坊参考人 ただいまの御質問に再度お答えいたしますが、宇和産業用のものが、他の目的に他国で使われるということにつきましては、われわれの業界はいかんともいたし方のない問題と考えるのであります。従つてそれと外国資本の導入ということと、直接の関連性は考え得ないと思います。
  19. 伊藤憲一

    ○伊藤(憲)委員 南坊さんにお伺いいたします、多少南坊さんからいただいた文書と違つたというか、この通り読んだわけではないのですが、ここに書いてあることで質問したいと思います。それは第五番目の(口)、「三十二條によつて作業主任者取扱主任者技術基準危害予防規程実施責任を負はされる事を明確にし、従つて火薬類取扱う凡ての者は、その指示に従う様に規定した事は本法目的を達成する事であつて、之を以て労働者の権利を侵害すると解する者があつたとしたならば、その者は火薬類取扱いに従事する資格の無い者と断ぜざるを得ない」というようなきわめて聞き捨てのならないことをここに書いておられるし、おつしやられたのでありますが、私も十四歳のときから労働者をしておりまして、いろいろこういう法規に縛られて生活して参り、また長い間労働運動もやつて参りましたが、事実上こういう圧迫は受けたのであります。極端な例を申し上げますと、私は二期東京都の労働委員をしておりまして、そこへ印刷工の労働組合の組合長が馘首されまして、これが提訴されて来た事件を扱つたのですが、そのとき使用者側はこれはばくちを打つたから解雇した、こういうのであります。ところが印刷工というものは、大体ばくちを打つのでありまして、ここに印刷工の方がおられたら失礼な申し分でありますが、普通打ちます。現に今競輪だとかいろいろばくちをやつておる。だからふざけたことを言うな、私だつてばくちを打つんだということを申し上げたこともありますが、こういう印刷業を経営しておる人が、ばくちを打たないような人を使うことはむりなのであります。それですら労働組合の弾圧をするときにこういうことを言つてやる。今こういう規定を設けてやる。例をあげろと言えば、私は幾らでも例をあげることができますが、この法文にありますように、ただ指示に従わなければならないというようなことによつて、そういうことがずいぶん起き得る。それを従業員は、火薬類取扱いに従事する資格のないものと断ぜざるを得ないという御発言があつたのでありますが、現に火薬労連を代表して島村君が、これはそういうおそれがあるという発言をしておる。従つて火薬労働者の中には相当あると思うのです。この法案実施されたあかつきには、あると断ぜざるを得ない。だから処分でもされるお考えがあるかどうか伺つておきたい。
  20. 南坊平造

    南坊参考人 ただいま申し上げましたのを具体的に申しますと、たとえば十一條の二項の、技術基準のところにある六の「ニトログリセリンが惨出し、又は吸濕液漏出の場合は、内容物を点検し、速かに消費又は廃棄の措置をすにること。」このようなことが技術基準に載つておるわけであります。その載つておることについて守つて行くことが、われわれが火薬を扱う上保安上必要なのでありまして、そういうことを守らなくてもいいのだというように考える人があつたとしたら、そういう人は火薬をつくる資格のない人だ。われわれが常識上考えてみましても、技術上の基準にいたしましても、火薬を扱う上においては当然やらなければならぬ。またそのもの自身はどうしてもそうやらないと——かつて爆発したことがあつて、それに伴つてつくつて行くわけであります。そういうことを守らなくてもいいということを考える人があつたといたしましても、これは労働争議とか、何もそういう問題と関係なくして、常に守つて行かなければ、火薬はいついかなるときに事故が起らぬとも限らぬのでありまして、そういうことについて、よく守るということをやらなければいかぬという意味で申し上げたのであります。
  21. 伊藤憲一

    ○伊藤(憲)委員 この三十二條はそういうものを守らなくてもよいとか、守らなくてはならないという規定ではありません。あるいは民主的な方法によつて守らなくてはならないという規定ではなしに、作業主任者その他の指示に従わなくてはならない。これが労働運動の弾圧に利用せられるということを言つておるのだし、また労働組合側もそういう発言をしておる。そこで私が今質問するのは、そういうことがあるとかどうとかいうことではなしにあなたはこういうことを考えておるものか、おるならば、火薬事業に従事する資格がないと断ぜざるを得ないというのだ。断ずるということを言つておる。ところが火薬労連はこれは労働運動の弾圧に利用せられておると言い、あなたは資格がないと断ずるということを、ちやんと公文書に発表し、議会にまで提出しておる。ですから今日直接問題になるのは島村君の場合でしよう。あなたは従業員でしよう。こういう人は断ずる意思があるのかどうか、ここに文書に書いてあるのだから、それをお伺いしたいのであります。
  22. 南坊平造

    南坊参考人 別に下村さんの場合は何も考えておらないのでありまして、三十二條によつて作業主任者取扱主任者技術基準危害予防規程実施責任を負わされているわけです。お前は技術基準危害予防責任を帯びているんだろうと言われ、その人が帯びたことについて、その範囲内でああせい、こうせいと指図する。そういうことをやつてもらつても、労働者の権利を侵害したと言われるならば、そういうことではやり方がまずいために、そういうことをやつてもらつては危い。これは火薬取扱作業に従事する資格のない人だと思う。それ以外のことで指示するとすれば、それは話は別になりますけれども、技術基準危害予防の二つの指示を受けるときに、それに従わないということは、火薬取扱作業に従事してもらつてはあぶないから困る、こういうわけです。
  23. 風早八十二

    ○風早委員 山本参考人にお伺いします、先ほどから問題になつている点でありますが、専門家としてお伺いいたしたいと思います。それは火薬というものは化学的な性質上、平和産業とか軍需産業とか申しますけれども、今は大体において平和的な用途に使われている。しかしこれは軍事的なものに使おうと思えば、何どきでもそちらの方に転換し得る性質のものであるというふうに、しろうとは考えるわけですが、その点専門家とされましても、別に間違いはないわけですか。
  24. 山本祐徳

    山本参考人 火薬類と申しますのは、これは化学物質でございます。これを軍事的に使えるか使えないかということは、どんな軍事的に使うかということでございます。軍事と申しましてもいろいろございましよう。旧法令にございます軍用火薬類ということが非常にあいまいであつて軍用火薬類という字句が、はなはだ本質の不明瞭なものであつたということを私が申しましたことは、要するに軍というものは一体何ものか。陸軍とか言いましても、戦争しているときだけが陸軍、海軍でなく、平時の陸軍、海軍もあつたわけであります。その陸軍が要塞をつくるとか何とかは別としまして、たとえば陸軍省の建物をつくるために、火薬を使つたら、それは軍用火薬であるか。それは常識で軍用火薬ではないでございましよう。しかしそれを戦用の火薬としましたら、その戦争のやり方によりまして、いろいろ使える思います。たとえば地雷のようなものをつくるために、産業用のものを使おうと思えば使えましよう。しかしそれはただ爆破ということをやるためにやるのでございます。それからまたいろいろ火薬がございます。たとえばカーリツトは爆雷に使える。爆雷というものは、潜水艦をやつつける防禦兵器であります。そうしたならば、これは戦用火薬になるわけでございます。しかし私の見解を申しますと、たとえばダイナマイトを地雷に使う、カーリツトを爆雷にと使うということは、戦争と言えば戦争ですが、非常に幼稚な戦争で、近代的な戦争ではない。少くも戦争で言いますと、そのそばへやつて来なければやつつけられない竹やりと同じものである。竹やりが兵器であるかどうかということと同じであります。従つてこのたびの火薬取締法案では通商産業省でこれを定めるということでございますが、通商産業省は戦争を扱う役所ではありません。ここにあるものは産業用のものでございまして、もしもそれを軍用に使おうとしても、竹やり程度のものと私は解釈いたします。軍用にいたしますためには、相当精度のメカニズムが必要であります。そういうものはここには記載されておりません。かように私は考えております。
  25. 風早八十二

    ○風早委員 たしかにこの問題は掘下げて行けばはなはだはつきりしない問題であります。石油にしても、精製してガソリンにする。ガソリンは何にでも使える。平生われわれのタクシーを運転するにも使えるわけです。しかし同時にまた、精製の度合いにもよりましようが、飛行機に使えるというふうなわけです。またたとえばスコアレンなんかでも潤滑油としては、どこでも使えるわけでありますけれども、特に超高空飛行にも使えるといつたように、そのまま使えるものがあると思います。カーリツトにしても、現在鉱山なり、建設用の爆薬に使つている。しかしこれは、今もお話がありましたように、爆雷にも使える。竹やりにしろ何にしろ、とにかく戦争というものは原子爆彈ばかりで戦争するわけではないでしよう。いろいろ古い兵器も、同時にいろいろな場面で使われないとも限らない。そういう意味ではなはだはつきりしないものだと思います。ただこの火薬産業はその設備の関係からいたしましても、もちろんそのもの自身の性質からいたしましても、ほかの一般工業の製品やその製造過程と違つて、もつと直接的にそういつたような用途に使われる可能性が、あるのではないかということでありますが、この点については、それはあえて否定されるわけではないと思いますが、それははつきりしているわけですか、どうですか。
  26. 山本祐徳

    山本参考人 ただいまの御発言では、火薬工業というものは、ほかの産業よりも非常に早く軍需工業になれるということについては、否定しないだろうとおつしやいましたが、全面的に否定いたします。全然そうではありません。そのことは太平洋戦争におきましてもその通りでございまして、日本の化学工業ほど太平洋戦争に貢献しなかつた工業はないのでございます。ということはおかしい話でございますけれども、ほとんど精密な兵器としての火薬をつくるに適しないようなことをやつておりましたが、戦争がだんだん苛烈になつて参りまして、その技術者を使おうというような程度で、わずかに戦争の終りごろになつて、それに参加するような気運になつて来た。こういう調子であります、世の中の方々は、火薬と申せばすぐ戦争ということを連想されますが、全然そうではございません。
  27. 風早八十二

    ○風早委員 御意見として十分承らせていただきます。  それから南坊さんにお伺いしたいのでありますが、今私も伊藤君と同じような点も気にかかつておりましたが、大体あの点については繰返さないことにいたしまして、御提出くださいました御意見の第二ページでありますけれども、製造及び販売、営業についての問題であります。外資の導入なり、また火薬商に対しても、おそらく今度は外商がそれを経営するということもあり得るわけである。そういうことと関連いたしまして、主としてこの製造工場並びに火薬保安距離について、いろいろ御意見が出ております。これはもちろん距離の問題も大事なことであると思いますけれども、それよりもさらに、工場内部の安全設備の充実、特に安全装置の充実というような点が、やはりそれ以上に必要ではなかろうか。それからもう一つは先ほども田代君から質疑がありましたところでありますが、労働條件の改善ということ、こういうふうな点が結局疲労を軽くする。とにかく過労が何といつてもいろいろのあやまちのもとでありますから、そういう点から申しまして、労働條件を徹底的に改善して行くということが大事ではないかと思います。そういう点については、もちろんお考えになつておられることとは思いますが、これらはいずれも金のかかることであります。とかく日本の今までの産業界の全般の実情を見ますと、これは明治以来ずつと一貫しておりますが、こういつた方面にはあまり金が使われないというところに、一つの特徴があつたわけであります。これらの点について、私どもは非常に遺憾に思つておつたのでありますが、今度特に保安の問題が一つの中心点になつておる。本法案について、それらの点についての御見解を、この際業者の方々の代表として伺つておきたいと思います。
  28. 南坊平造

    南坊参考人 ただいまの御質問に対して御返事いたしますが、設備の充実ということは、御説のごとくに非常に大事なことでございまして、われわれは日夜これに努めておるのでございますが、なおかつ不十分なことが多々ありまして、まことに恐縮に思う次第でございます。事故が一つ起きました節、いろいろ事故の原因等を丹念に検討しておりますときに、今までのわれわれの設備の方針について至らなかつたことがあつたと感ずることが、ときどき起きるのでありまして、そういうことも常に頭に入れまして、設備の不十分なために従業員に死傷者をつくるというようなことは、極力避けねばならぬと思う次第でありまして、この点につきましては、十分なる改善と反省とをいたしたいと思います。なお今回の火薬取締法におきましても、設備は技術基準を守つてつくらなければならぬ、また技術基準を常に維持しなければならぬというようにきめられておりまして、この線に沿いまして、当局の御指示を十分頭に入れて、常により安全な方向に改善して行きたいと思う次第であります。また労働第件の改善ということにつきましても、この取締法とは直接関係がないようには思えますが、しかしながら、お説のごとくに労働條件の改善なくして労働者の生活の安定はないのでありますから、この点につきましては、労働者諸君と常に密接な連絡と十分なる協議をいたしまして、労働條件の改善をいたして行きたいと思う次第でございます。
  29. 風早八十二

    ○風早委員 それからもう一点は、今の点にやはり関係しておりますが、労働基準法と本法との関係であります。この点についての御意見では、これが労働基準法に優先すベきであるというような御意見であるように承りました。この点は今の点とにらみ合せまして、やはりどうも今のお答えでは納得が行かないので、お出し願いました御説明の一番最後のところにも、やはり労働基準法の問題が出ておりますが、労働者並びに業者が直接その取締り対象になつておるのが、労働基準法でありまして、これはやはり今日の労働法規の最も根本的なものの一つでありまして、一般の通念から申しましても、基準法の方がこれらの保護の取締りに関して優先しておるものと、われわれは一応解釈しておるわけであります。ただ特殊法は一般法に優先するということはありますが、実は労働基準法自身がその特殊法であります。特にこの法案には、労働基準法についての規定というものが、ほとんどないと言つてもいいくらいでありまして、主として先ほども問題になりました主任者の指示に従うというきわめて抽象的な形で、その中に、先ほどのお話のありました技術基準、あるいは危害予防規程だけでなく、その他の問題も一切合財含まれる余地のある、何を指示せられてもただ指示に従うという、非常に一方的な形で規定せられておりますところから、こういう非常な懸念が出ることは、きわめて当然だろうと思います。そういう点から考えまして、これらのあらゆる規定に対しまして、少くとも労働者、労働組合に対する関係におきましては、労働基準法が優先すべきものであるというふうに考えるのでありますが、またそれによつて、これらの一切の安全設備、その他のものについても、十分な保障がなされるのではないか。これは業者にとつては、多少とも負担になる点であるかもしれませんが、そういう点はやはり十分に取入れて、この業務をやられるということでなければ、労働組合としても納得が行きかねるのではないかと考えるのですが、その点ちよつと念のために御意見を承つておきたいと思います。
  30. 南坊平造

    南坊参考人 ただいまの御意見に対しまして、私の書いた文章があまり上手にできていないというところから、誤解になつたのだろうと思いますが、先ほどもちよつと申しましたように、たとえば乾燥工場の設備などの点につきまして、労働基準法に乾燥工場はこうでなければならぬと書いてあります。それからこれはまだ出ておりませんが、火薬取締法技術基準ができて来ると、乾燥工場はこうやれということを言われる。それから労働基準局の監督官は、乾燥工場はこういうようにやれと言われる。そのときに両方とも同じことを言つてくだされば、非常に都合いいのですけれども、片一方の火薬取締官の言われる通りにはいと言つて、合格したものをつくらせる。そうすると今度は労働基準局の人が出て来て、これはけしからぬ、いかぬじやないか、こんなものは直せと言われたときに、われわれは一体どつちをとつたらよいか迷うということを言うただけで、それ以外のことは何もないのであります。従つて、それ以外のことにつきましては、もちろん労働基準局があるから、それに従わなければならぬというように考えておりますので、文章のまずかつたことをおわびいたすとともに、その趣旨を明らかにいたしておきます。
  31. 風早八十二

    ○風早委員 もう一点だけお伺いいたします。  いろいろ外国資本が今各方面から入つて参ります。また業界におきましても、これを要望される向きも相当多かつたわけでありますが、実際問題として、日本の火薬産業に外資が人づて来る、また火薬商そのものにも外資が入つて来る。外国商社が入つて来る、こういうような道が一応開かれておるわけであります。そういうことは、今の火薬業界としては全般的なことになりますけれども、全般としてやはり望んでおられますか、それとも別な考え方があるか、今の趨勢上そういうことは予想はされるという程度のことであるか、その邊の積極的な御意見を伺つておきたいと思います。今日業界は外資——見返り資金などは外資とは言われません。これはむろん見返り資金特別会計の金でありますから、日本の金でありますけれども、この外資を借りることはなかなかむずかしい上に、借りる條件というものが相当嚴格になつております。いろいろ問題もあるわけでありますが、一体そういうひもつきの資金というものでもけつこうだ、どこの国のものでもけつこうだというような御見解でありますが、できるならば国内的な金融措置、あるいは財政的な措置でやつて行きたいと思うのですが、これは業界一般を公事に御判断くださつて、あなた御自身の御意見でもけつこうでありますから、一つお聞かせ願いたいと思います。
  32. 南坊平造

    南坊参考人 ただいまのお話についてお答えいたします。業界としては外国技術の取入れということは、非常に熱心に希望いたしております。しかし外国の資本の導入ということについては何も考えておりません。
  33. 風早八十二

    ○風早委員 外国技術の導入でありますが、今特許権の使用みたような形で、青寫真も入つて来るというようなことで、よく機械関係の方ではいろいろそういう実例が出て来ておるわけであります。ああいう形で入つて来るというようなことで、これは三井、三菱その他にも、相当大規模のデイーゼル・エンジンなどもドイツ、アメリカあたりからいろいろの機械の特許権の使用というような形で、技術が入つて来ている。これは一つの特徴ではないか。ああいうことは日本の火薬産業に非常にプラスになると一応お考えでありますか、日本でも十分に特許権を持ち、りつぱな技術ができておるのにそれを採用できない。そこで一つのおしつけ的に外国から特許が入つて来るというようなことであつては困るが、そういうことはないのか、その辺のことをざつくばらんにお話を願いたいと思います。
  34. 南坊平造

    南坊参考人 大体日本の技術水準というものは、十年以上遅れておるように思つておりますので、われわれの実施しなければならぬものがたくさんあるにかかわらず、それをおしのけて外国のものがむりに入つて来るというようなことでなしに今やつておるように全体ではありませんが、ある部分において外国がはるかに優れておるところがあるらしい。たとえば火薬の一人あたりの製造量についてみますと、大体十倍ぐらい開いておるようである。外国の方が非常に不正確である。アメリカの例を申しますと、日本人の考えておるような精密なダイナマイトをつくつておらないだろうと思われるようなところが一つあります。そういうところはどうもあまり感心しないと思うところもあるのであります。またある部分におきましては非常にいい機械をつくつておるらしいと思つておるところ、もあります。そういう面についてはあるいは特許権を一部買つてやるというようなことなども必要が起きるかもしれません。ただ今のところ具体的にそういうものに直面いたしておりません。
  35. 今澄勇

    今澄委員 時間がありませんので、旭化成石本参考人にお聞きしたいのですが、本法に対するところの御見解を先ほど承りましたが、本法島村参考人より具体的ないろいろの修正点が詳しく述べられました。それであなたからはそれらの問題が具体的には述べられませんでしたが、抽象的でけつこうですから、この点と、この点と、この点はぜひ訂正してもらいたいというような個所がございましたならば、この機会に御意見をお聞かせ願いたいと思うのでございます。
  36. 石本威

    石本参考人 その点について先ほどもちよつと申し上げましたけれども、火薬技術に携わつておる者が、そういう法律上のことに関して、文章をこういうふうに書き改めたらどうかということまでの、はつきりした意見というものは実は出ていないわけであります。法律上の文章等に詳しいものは要らないが、実際の現場に携わつておる者の中にはそういうこともありまして、こういう方向としての意見は持つてつてくれというだけでありまして、そういう会は開きましたが、改めてくれというはつきりした具体的な希望というものは出ておりません。
  37. 今澄勇

    今澄委員 概括的な先ほどのお話で、こういう点と、こういう点と、こういう点が問題であるということは大体わかりましたが、全体を通じてあなたの方の組合では、こういうものはない方がいいとか、あるいはこれは概括的には大体よろしいとかいうような空気が、もしおわかりになるならば話してもらいたいと思います。
  38. 石本威

    石本参考人 その点先ほど申し上げましたように、危害予防ということに関する技術的な点に関しては、そういう危険に絶えずさらされておる者として、当然そういうものは必要であるということは認めておるわけであります。それ以外の組合運動の立場から考えて、こういう文章の文字に現われたこと以外に、いろいろの意見がその間の審議過程において、はたしてあつたものかどうかということをはつきり知りたいということですが、今まで何回もこういう検討をなされておることと思いますけれども、そういうことにほおかむりしておつたというわけではありません。しかしいろいろ組合内部の問題もありまして、そういうことにタツチする機会が、ほとんどなかつたわけでありますから、先ほど申し上げましたような意見になりました。その点御了承願います。
  39. 伊藤憲一

    ○伊藤(憲)委員 先ほどの三十二條のことは、委員会の審議の過程において、修正するとか何とかいうようなことも私たちとしては努力いたしたいのでありますが、かりにそれが不幸にして原案通りに通過いたしました場合について南坊さんに質問したいのです。  先ほど労働條件の問題について山本さんから、風早君の質問に対して、そういう問題については労資の間で十分協議して改善して行きたいというようなことを御返答願つたわけでありますが、本法につきましても、政府側は労働関係の法規については、何ら侵害しないのだ。だからいろいろの問題があつた場合には、そういう方面で解決してもらいたい、あるいは経営協議会とか、あるいは団体協約で解決してもらいたいと言つておるのであります。そこで南坊さんの御書面にも、何とか安全法というものもありますけれども、実は私は酸素とかアセチリンを入れるボンベ、アセチリンのガスの発生機などをやつておりましたが、これも高圧液化ガス取締り令というものがありまして、たとえばタンクには必ず一人ずつ熔接師がいなければならぬとか、安全器をとりつければいかぬという規定があるのに、実際にそれを守つておる工場はほとんどなかつたわけです。ことに戦争中のごときは相当の大工場でもそういうことは無視されておつた。そこで先ほど南坊さんがおつしやいますように、私たちはこの火薬産業において仕事をされる上でいろいろな危険を防止されるという、そこに意味があるのではない。問題は、作業規律とかいろいろなものが、それに名をかりて組合を彈圧することに問題があるのですから、そういう危険について、労働組合と協議して、こういうことをお互いに守ろうという形で、それを防止するということになれば、きわめてけつこうだと思います。従つてこの法律がこのまま通過したといたしましても、やはり南坊さんが業界の代表者として、労働條件について協議してやつて行きたいとお考えになつておるように、この問題についても、この規定のいかんにかかわらず、実際上はやはり労働者意見を受入れることに設備の問題などについては労働者の方もみな意見があるし、これが完備された場合には、危険が防止されるという可能性もあると思いますので、そういう御意思があるかどうかという点を、一点だけお聞きしておきたい。
  40. 南坊平造

    南坊参考人 ただいまの御意見にお答え申上げます。そういう点におきましては、労働者の方々の御意見を十分に参酌いたしてやつて行きたいと思つております。
  41. 澁谷雄太郎

    澁谷委員長代理 ほかに御質疑はありませんか——別に質疑がないようでございますから、これにて参考人に関する質疑は終了いたしました。  参考人各位におかれましては、御多忙のところ、遠路委員会の求めに応じて御出席くださいまして、それぞれのお立場より日ごろの御研究と御経験に基く貴重な御意見を御発表くださいまして、本委員会法案の審議の上に、よりよき参考と相なつたものと信じます。長時間たいへん御苦労でございました。  委員会は午後二時から再開いたしまして、政府に対する質疑を継続することといたします。これにて休憩いたします。     午後零時五十二分休憩      ————◇—————    午後二時三十九分分開議
  42. 神田博

    神田委員長代理 休憩前に引続き会議を開きます。  火薬類取締法案を議題として質疑を継続いたします。今澄君。
  43. 今澄勇

    今澄委員 本法案の大局的な大きな問題については、先般質疑をいたしまして、政府考えておるところはあらかたわかりましたが、今日の参考人の供述等とにらみ合せて、なお三、四点政府に質問をいたしたいと思います。  まず第一番に、この前第七條の許可基準について、左の各項に適合するものでなければならぬとあるが、その第三項が全部「通産省令で定める技術上の基準に」云々とか、あるいは「公共の安全の維持又は災害の発生の防止に支障のないもの」というように、きわめてあいまいであるから、これらの資料の提出を要求いたしたのでありますが、質疑をきようで打切るというようなことになりましたので、この際これらについて政府の方でわかつておる限りひとつ詳細にここで御説明をしていただいて、十分考えてみたいと思います。
  44. 長村貞一

    ○長村政府委員 ただいまの御質問の第七條各号にございまするいわゆる技術上の基準内容でございまするけれども、これにつきましては、お手元に資料といたしまして技術基準の骨子という印刷物を差上げてあるはずでございます。これによりまして技術基準の大体のことを御承知願いたいと存じます。「公共の安全の維持又は災害の発生の防止に支障のない」、これにつきましては、それぞれの具体的事情に応じまして判断すべきものでございまして、格別省令によりましてこの内容を規定するという性質のものではないと存じます。
  45. 今澄勇

    今澄委員 どうもただいまの御説明では、はつきりいたしませんが、本法案の中には、「技術上の基準」とか「公共の安全の維持に支障を及ぼす虞があると認めるとき」というような文句が多過ぎまして、このように公共の安全の維持に支障を及ぼすおそれがあるとか、またはないとかいうことを決定するための具体的な基準について、ひとつ御説明を願わないと、どういう場合がそれに該当するかということを判断することができません。また販売許可をする場合とか、あるいは許可の取消しをする場合一方的な解釈によつて決せられる場合が多いと思いますが、政府は公平にこれをやり得る自信があるかどうか。もしそれらの自信があるとすれば、それがどういう観点よりどういうふうな方法で、やり得るものであるかという点についても、具体的な御説明を願いたい。今度の工業法の改正は、まだわれわれの審議るところにはなつておりませんが、工業法についても伝えられる案を調べてみると、非常にあいまいな言葉が多い。こういつたふうなあいまいな表現と不正確な言葉で表わされるものは、ときにそれが運用の面において非常に大きな結果を生ずる、あるいはそのために労働運動が非常に彈圧されるとか、いろいろな問題が生ずるので、本法案についても、この点はぜひこの委員会において明確な御答弁をお願いしたいと思う次第であります。
  46. 長村貞一

    ○長村政府委員 技術的な基準につきましては、先ほどお答え申し上げましたように、その大体の内容をお手元に差上げました印刷物によつて、御了承願いたいと思います。「公共の安全の維持又は災害の発生の防止」という言葉が、たびたび出て参りまして、その内容が抽象的であるではないかというお言葉でございますけれども、これはこの性質上画一的にきめるべきものでなく、またきめられるものではないと思うのであります。結局それぞれの具体的な場合に、健全な社会通念によりまして判断をいたしましてそうしてそれに該当するかどうかということをきめざるを得ないものであろう、かように考えます。  販売許可につきましては、製造許可と同様に第七條によりまして審査をするわけであります。許可基準はやはり第七條でございます。これにつきましても、第七條に明らかでありまするように、第七條一、二、三の各号の基準に適合するかどうかという判断をするわけでございます。一号、二号につきましては、一応技術上の基準の問題になりまして、これが製造許可基準になるわけであります。販売の方は結局第三号によりまして、公共の安全の維持、災害の発生の防止ということが、許可の判断の基準になるわけでございます。この点は本法目的でありまする災害の発生の防止及び公共の安全の維持というこの法律の目的自身ともにらみ合せまして、それぞれの具体的場合に適合するかどうかが、これを健全な常識なり通念によつて、判断いたしたいということに相なつております。
  47. 今澄勇

    今澄委員 それで私どもの方で、公共の安全の維持という言葉を考えてみるのに、これが保安の上から必要がある場合にはということと、これは同じ意味ということであるならば、多少納得もできますが、これらの公共の安全の維持という漠然たる表現は、それらの保安維持する上に必要がある場合というような意味に、これは解釈してさしつかえないかどうか、ひとつ政務次官からこの点を伺いたい。
  48. 宮幡靖

    宮幡政府委員 ただいま御質問は、おおむね今澄委員のお考え通りだと思います。大体ここに公共の安全だとか災害防止とかいう言葉が、並列的に並んでおりますが、公共の安全性と申しますことも、災害防止を対象として考えられていることであります。大体火薬製造所販売所とか、火薬庫とか、これを消費いたしまする場所については、ただいま第七條の規定によりまする許可基準技術的の見地がございまして、これによつて一定の公共の安全というものを、対象とした許可基準をもつてにらみますので、これは主として災害を防止するという観点からのみ、この問題を考えて行けばよろしいわけであります。しかしながら火薬製造から消費に至るまでの過程、相当の流用機関を持つているわけでありまして、これには運ぶ場合もありましようし、あるいは他のいろいろの軽々といたします過程におきましてその事例があろうと思いますが、これらは少くども社会面からながめました公共の安全という面から災害を防止する、これによつて災害が起らないといわゆる公共の安全性を確保するという考え方を持つておりますので、ここに言葉が非常にあいまいであるという御指摘の点も、私ども一応同感の点もございますが、公共の安全とは、すなわち公共の安全を確保し得る災害の防止を対象としての考え方である。かように解釈いたしまして立法せられておる次第であります。何とぞ御了承願います。
  49. 今澄勇

    今澄委員 次はこの危害予防の規定の件でありますが、これらの危害予防規程をもし今どういうふうな規程をつくつて、これにはどういう問題を充てるというような腹案がございますれば、係官の方から御説明を願いたい。これはできれば資料としていただきたいと思つておりましたが、差迫りましたのでこの危害予防規程というものが、どういうふうに具体化するかということが問題なのであつて、これが大体具体化しているかどうか、それはどういうところをねらいにして来ているか、もし詳細おわかりならば、係官の方でもけつこうでございますからお話し願いたい。
  50. 長村貞一

    ○長村政府委員 危害予防規程は、結局それぞれの工場におきまする危害の発生を予防するために、工場ごとにつくるものでありまして、先ほど御質問があり御答弁申上げたように、あるいは製造であるか、あるいは貯蔵その他についての技術上の基準の骨子を、具体的に掲げたものであります。大体技術的の基準の骨子を、それぞれの工場あるいは作業場ごとに適応するように、さらに具体化したもの、かようにお考えいただきたい。
  51. 今澄勇

    今澄委員 今の危害予防規程については、なおそれ以上の具体的な、大体この程度の準則だというようなものがあればお聞きしたいのでありますが、その程度しかおわかりがなければそれでも仕方がありません。次は第二十九條の保安教育と書いてありますが、この保安教育の具体的な説明をこの際聞いておきたいのです。教育のやり方はこれは幾らでもありますが、この保安教育の持つて行き方、これをどういうふうに運用するかということ、これらも労働運動のあり方と関連して、非常に微妙な問題がありますので、これについての御説明をあわせてお伺いしたいと思います。
  52. 長村貞一

    ○長村政府委員 この保安教育は、製造業、その他の作業場における災害の防止のために準備しまして、仕事のやり方、ことに技術的な見地から見ました危險予防のためにとつた各種の事柄、これを具体的にそれぞれの作業場におきまする従業者の方々に教育する、これが主眼でございます。内容的に申しますならば、製造の方法、あるいは火薬類取扱いの方法というような技術的な点を主としまして、危險予防のための教育をする、こういうことがねらいでございます。
  53. 今澄勇

    今澄委員 第三十條の、作業主任者取扱主任者の任務は、きわめて重大でありますが、作業主任者取扱主任者の資格について、一つこの際伺つておきたい。現行法による作業主任者本法が施行された場合には、新たに試験を受けなければならないのかどうかということ、しからばその試験はもし受けるとすれば、一体どういうふうにしてやるかという問題について伺いたい。
  54. 長村貞一

    ○長村政府委員 現行法によりまして、主任者たり得る資格を持つております者は、この法律の規則の第五項によりまして、旧法に基いて交付されました主任者免状も、それぞれこの新法によつて交付されました主任者免状とみなされておりますので、あらためて試験を受けることなく、そのまま資格が継続する、かようなことになつております。それから新法におきまして考えておりまする作業主任者の資格、これは甲種、乙種、丙種、それぞれによつて違うわけであります。大体以下申し上げるような考え方をとつておるわけであります。甲種作業主任者の資格といたしましては、一定の資格試験をいたしまして、この資格試験に合格した後、二年以上火薬類製造の実務に従事した者に、甲種の免状を与えることにいたしたい。乙種の主任者といたしましては大学の工学部の化学に関する学科を卒業して、二年以上火薬類製造経験のある者、及び新しく今度行います資格試験に合格して後二年以上、火薬類製造の実務に従事した者。丙種の主任者としましては高等工業学校あるいはこれと同等以上の学校におきまして、化学に関する学科を專修して卒業した者で、火薬類製造につきまして三年以上の経験を有する者及び今回行いまする資格試験に合格して、三年以上火薬類製造に従事した者、こういう者につきましてそれぞれ、甲種、乙種、丙種の三つにわけた理由ですが、それは一つのものだけではどういうようなところでぐあいが惡いか、それを三つにしたらどういう点でぐあいがいいか。それからその試験制度は国家試験によるか、あるいは年に何回やるかおわかりになればこの際承りたい。
  55. 長村貞一

    ○長村政府委員 私どもの申しました意味試験は、いわゆる国家試験でございます。甲種、乙種、両種にわけましたのは先ほど資格について申し上げましたように甲乙丙、それぞれ資格要件が違つておりまして、段階的に丙乙甲と高くなつておるわけであります。これは大体甲種の作業主任者、あるいは乙種の作業主任者、丙種の作業主任者が配置されます工場の規模、つまり一つは仕事の内容というようなことによりまして、この区別をいたしたわけであります。
  56. 今澄勇

    今澄委員 それで今の作業主任者の任務が、非常に主任者の主観を認めておりますので、これが適当なる人でなかつた場合においては、非常に権限を濫用するというおそれがあるように考えられますが、この点についてはどのような処置をおとりになるおつもりですか。
  57. 長村貞一

    ○長村政府委員 お話のように作業主任者といたしましては、非常に重大な職務を持つておるわけでございます。この法律自身といたしましても、三十二條に「誠実にその職務遂行しなければならない」という一般的の義務遂行のための規定をおいておりまするが、もし作業主任者が適当でないような場合には、三十四條に規定するところによりまして、作業主任者解任もまたなし得るという監督規定を置きまして、適当な作業主任者を常にその職場に置くというようにいたしたいと思つております。
  58. 今澄勇

    今澄委員 それから四十三條の問題になりますが、この條文は一歩誤まれば非常に重大な結果を招くおそれがあるので、この場合の災害の防止の例の文句の認定も第七條、第十七條の文句と同一であつて内容もまた同じであるかどうか。それからその條文中にその職員というふうになつておりますが、これはどこの職員をさすか、それからもう一つは警察官が立入り検査等をする場合には、警察官自身が立入り検査の必要を認めればこれは随時できるのかどうか。もしそういうことになると、火薬の知識のない警察官がそこらあたりを立入りして、それらの保安等その他に影響を与えたり、あるいは事故を誘発するというような原因になる恐れもあるが、そういう場合にはどういう考慮が払われるかというような点について、御答弁をお願いしたいと思います。
  59. 長村貞一

    ○長村政府委員 立入り検査につきましては、四十三條に規定しておるところであります。まず第一に、四十三條に、職員というのは通商産業大臣あるいは都道府県知事の部下でありまして、本法取締り要務に従事しておりまする職員であります。警察官その他はこれに入つておりません。なおこの條文によりまして、いわゆるその職員があるいは警察官等が立入りますときは、この法律の規定に定める條件に従つて入ることになつております。ここにあります、公共の安全、先ほど政務次官もお述べになりましたように、本法目的とするところとまつたく同じでありまして、いわゆる災害の防止に関係のある保安のためにのみ必要な場合に、公共の安全ということがはかられることになつておるわけであります。この警察官その他が立入りますときには、この條文にありまするように、非常に場合を限定いたしまして真に必要がある場合のみに限つて立入りができることになつておりまするが、その場合の認定は、その場その場におきまする具体的事情によつて異なるわけでありまして、警察官その他その場におりまする者の認定によるわけであるのであります。しかしお話のように運用によりましては、本條目的とするところ以外に、逸脱することもあると思うのでありまして、そのために特に本條におきましては、末項にありまするように、かりにこの法律によつて立入るといたましても、「関係者の正当な業務又は行為を妨害するものであつてはならず、且つ、犯罪捜査のために認められた」という特別の注意的な規定を置きまして、その濫用を戒めておるわけでございますけれども、なお運用にあたりましては、十分にその趣旨を徹底いたされまして、いやしくもこれを誤つて用いることのないように、十分な注意を払いたいと考えております。
  60. 今澄勇

    今澄委員 引続いてこれは先般来いろいろ問題になつたところでありますが、きようが最後でありますので、もう一度この点について質問をしたいのであります。現行法では輸出もまた許可制となつておるが、本法では届出制になつておる。しかも輸入許可制でこれまで通りであります。輸出には貿易管理法あるいはその他の法律があるから十分であるという御答弁がございましたが、この問題については輸出輸入を同じようにしなかつたということについて、やはりいま少し詳細な御説明を願わないと、納得ができかねるのでありまして、これらの輸出入の問題について、いま一ぺん御説明を願いたいと思います。
  61. 宮幡靖

    宮幡政府委員 お尋ねの点でありますが、これはただいま関連的に仰せられましたいろいろな理由で、輸出は届出制度にしたわけでありますが、根本的な見方といたしましては、しばらくの間と申しますか、現在の状況から行きますと、火薬輸出——日本の産業火薬というようなものは、国際的に火薬といわれるかどうか、品質等の点におきまして、はなはだ疑問もありますし、ともかく年間生産計画を日本政府が立てまして、司令部の許可を得て生産をいたしますので、当初から輸出向というものを考えて、生産数量に織り込んでおりません。従つて輸出をすること自体は、事実は産業火薬という面から申しますと、わかりやすい言葉で申せば、戦争用の火薬とは、その効力において格段の相違があることと思いますので、これらも顧慮いたしまして輸出の機会は絶無であろう。万一あつた場合においては届出をさせまして、貿易管理法の取締りによつて、規制ができるのではなかろうかと思いまして、その便をはかつて、さようなことにいたしたわけであります。
  62. 今澄勇

    今澄委員 次は四十四條、四十五條の行政処分でありますが、これは場合によると組合のストライキもその理由対象にならぬこともない。このように労働者が労働組合法によつて守られている罷業権等を、行政処分でやるということを考えておられるのかどうか。もしそうでないとすれば、労働争議等の問題は、これらと別ものであろということを明記するわけには行かないものかどうかということを伺いたい。
  63. 宮幡靖

    宮幡政府委員 本法に関しまして、労働法規との関係につきましては、各委員から御質問があつたところでありますが、本法労働法規とはまつたく並行的に存在するものでありまして、いやしくも本法が労働諸法規を圧迫する、あるいは規制するおそれはないのであります。しかし運営の面において、さような事実があるということを御心配になりましたら、この点は通牒等の手続において、いやしくも正常なる労働運動を撹乱することのないような手はずをいたしたいと考えております。
  64. 今澄勇

    今澄委員 もしこの法律を修正して、本法によつてきめられたこの火薬法のあらゆる規定は労働法規には優先しないものであるというような一項が、この中へ挿入されるとすると、政府はこれらの火薬法を施行する上において支障を生じますかどうですか。
  65. 宮幡靖

    宮幡政府委員 それは支障のないものと私どもは想像しております。のみならず国会の御意思でさようなことが必要であるといたしまするならば、それらは尊重いたしたいと考えております。
  66. 今澄勇

    今澄委員 第四十九條の手数料についてでございますが、特に第八の甲種火薬類作業主任者免状以下の納付すべき金額が、まだはつきりきまつていないらしいのですが、はつきりした金額がわかれば、この際発表してもらいたい。こんなものにこの程度の納付金を出させるということは、少し納付金が高過ぎるというふうにも考えられます。これが妥当であるかどうかというあなた方の考えを、お聞かせ願いたいと思います。
  67. 長村貞一

    ○長村政府委員 この四十九條の手数料は、この條文にもございますように、それぞれの欄に書かれておる金額の範囲内できめるわけであります。これが最高限度であるわけであります。今後ここに掲げてある各種の申請、あるいは免状の交付等につきましては、先ほど申しましたような国家試験というようなこともありますし、各種の行政的措置をする関係もございますので、この範囲内においてでき得る限り低い程度の手数料をとりたいと存じておりますが、この程度のものをとることは、あえてさしつかえないかと存じておるわけであります。
  68. 今澄勇

    今澄委員 第五十二條中の「政令で定める区分により、」とありますが、これについての説明をお願いします。
  69. 長村貞一

    ○長村政府委員 これは通産大臣あるいは都道府県知事が、三條、五條以下、この條文に掲げてありまする各種の許可をするわけでありますが、この許可権限はどの許可を大臣がやる、あるいはどの許可を府県知事がやるということは、法律自身には掲げてありません。これは別に政令等によつて、たとえば製造工場については通商産業大臣、あるいは火薬庫については府県知事というふうに、事項ごとにわけるつもりであります。その事項ごとにわけるに従いまして、まただれがどこに通報するかということにわかれるわけであります。こまかいことになりますので、今申しましたようなことを、政令で区分してきめたいと存じております。
  70. 今澄勇

    今澄委員 これらの政令という文句で、漠然とうたつてあるだけで、こまかいことにはなりますが、どういうふうな方向に行くかということが、やはりわれわれとしてはそのあり方について、非常な関心を持つておるわけであります。  そこで最後に四十八條許可條件についてでありますが、第二項の「災害の防止又は公共の安全の維持をはかるため必要な最少限度のものに限り、」と書いてありますが、この具体的なあり方の御説明を聞きたいのであります。大体各條中に、そういうような具体的な問題は、解釈のしようによつては、どうにもなるという問題が多いのですが、特に四十八條許可條件等についても、詳細な御答弁を願いたいと思います。
  71. 長村貞一

    ○長村政府委員 三條あるいは五條許可、たとえば製造許可、これにつきましては特に場合によつて條件をつけることができるという規定が、本條にあるわけであります。この條件というものも、あるいは製造事業、あるいは販売事業、その他の行為に対する制限でありますので、むやみに條件をつけますことは、はなはだおもしろくないと思いますが、災害の防止あるいは公共の安全の維持という本法目的の範囲内で、しかも必要な最少限度に限つて、必要やむを得ないところの條件をつけて、これが許可を受けるのに、不当な義務を課することになつてはならないという條件はつけるけれども、その條件本法目的から見て、真にやむを得ない程度の條件ということにいたしたわけであります。またそれぞれの許可の申請なり何かがありませんと、その申請に応じての條件でありますので、具体的にどうこうということはできないのでありますけれども、あるいはこれは一つの想像にすぎないわけでありますけれども、場合によつては災害の防止等の見地から、その数量等もある程度の範囲を限定するということも、ときに出て来るのではないかと考えておるのであります。  それからまたここに掲げてある條文の中にありますけれども譲り受けの許可というものもこの中にございます。これなどについても讓り受けの期日、いつ讓り受けるか。あるいは讓り受けをします場合には、証明書を渡すことになつております。この讓り受け証明書は使つた後には、返済させるというような條件もつけることがあるかもしれませんが、この程度のことを考えております。
  72. 今澄勇

    今澄委員 大体以上で私の質問の條項別の問題を終ります。  これを通覧して、結論として、どうも本法案は、いろいろ字句のあいまいな点、それから政令その他に讓つた点の具体性を欠く点、いろいろ問題が残つておると思いますが、危害予防、あるいは保安重要性等を認めなければならぬし、実質的には事業主として、いろいろの責任者の問題、その他の問題についての運用面の危惧も残しておりますので、私の質問はこれで打切りますが、その他の問題については、また機会があるならば、われわれの方の意見を修正案なりに出したい、かように考えて、この質問を打切る次第であります。
  73. 神田博

    神田委員長代理 これにて本案に対する質疑は一応打切ることといたしますが、なおやむを得ざる場合には、次会に補充質疑をお許しいたします。  次会の開会日時は、公報をもつてお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時十二分散会