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1950-04-04 第7回国会 衆議院 通商産業委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年四月四日(火曜日)     午前十一時四十分開議  出席委員    委員長代理理事 神田  博君    理事 有田 二郎君 理事 小金 義照君    理事 澁谷雄太郎君 理事 永井 要造君    理事 村上  勇君 理事 有田 喜一君    理事 風早八十二君       阿左美廣治君    岩川 與助君       小西 英雄君    關内 正一君       多武良哲三君    中村 幸八君       前田 正男君    柳原 三郎君       伊藤 憲一君    田代 文久君  出席政府委員         大蔵事務官         (理財局長)  伊原  隆君         大蔵事務官         (理財局見返資         金課長)    大島 寛一君         通商産業政務次         官       宮幡  靖君         通商産業事務官         (通商化学局         長)      長村 貞一君  委員外出席者         專  門  員 谷崎  明君         專  門  員 大石 主計君         專  門  員 越田 清七君 四月一日  委員伊藤憲一辞任につき、その補欠として渡  部義通君が議長指名委員に選任された。 同月四日  委員渡部義通辞任につき、その補欠として伊  藤憲一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 四月一日  商工会議所法案に関する請願井手光治君紹  介)(第二〇三〇号)  電気事業分断反対に関する請願外四件(今澄勇  君紹介)(第二〇五一号)  同外二件(高橋清治郎紹介)(第二〇五二  号)  同(前田榮之助君紹介)(第二〇五三号)  九州地方電力問題に関する請願外二十八件(  村上勇紹介)(第二〇五四号)  電気事業分断及び電気料金値上げ反対に関する  請願岡田春夫君外四名紹介)(第二〇五五  号)  大淀川発電所及び送電線復元請願龍野喜一  郎君紹介)(第二〇八三号)  ゴム産業における人員整理及び工場閉鎖反対に  関する請願赤松勇紹介)(第二一一四号)  舞鶴市に競輪場設置請願大石ヨシエ君紹  介)(第二一一八号)  電気事業再編成の実施延期並びに電気料金軽減  に関する請願吉田吉太郎紹介)(第二一四  〇号)  電気料金値下げ並びに同地域差撤廃請願外二  件(木村榮君外一名紹介)(第二一四一号)  電気事業分断及び電気料金地域差設定反対に関  する請願外十一件(福田喜東紹介)(第二一  四二号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  連合審査会開会に関する件  電気事業会社米国対日援助見返資金等の借入  金の担保に関する法律案内閣提出第一一〇  号)  火薬類取締法案内閣提出第一二九号)  特別鉱害復旧臨時措置法案内閣提出第八号)     —————————————
  2. 神田博

    神田委員長代理 ただいまより電気事業会社米国対日援助見返資金等借入金担保に関する法律案を議題として、審査を進めます。質議を継続いたします。有田喜一君。
  3. 有田喜一

    有田(喜)委員 私は先般の会議に欠席いたしましたので、あるいは他の同僚諸君の御質問と重複することがあるかもしれませんが、若干御質問いたしたいと思います。  第一に電力会社現状についてお伺いしたいのでありますが、私の記憶によりますと、現在電力会社へはいわゆる米債が二千四百万ドル余り、英債すなわちポンドが三百万ポンド見当あると思つておりますが、その記憶に間違いはないか、正確な数字をまずお聞かせ願いたいと思います。
  4. 宮幡靖

    宮幡政府委員 大体有田委員の御指摘のような数字になつております。詳しい数字はただいま事務当局から申し上げます。
  5. 有田喜一

    有田(喜)委員 しからばそれは電力会社へはおそらく特別担保になつていると思います。そうすると、これは全電気事業固定資産の何割くらいになつておりますか、その物上担保のものが……。
  6. 宮幡靖

    宮幡政府委員 この点については御承知のように、戰時中外貨債債務政府が引き受けまして、財団を設定いたしました特別担保についての抵当権抹消になつております。しかしながら財団はそのまま編成されて残つております。直接はただいまのところ国内的に考えまして、抵当権の及んでいる資産はないことになつております。
  7. 有田喜一

    有田(喜)委員 ちよつとわからないのですが、この外債政府肩がわりされているということは私知つておりますが、やはり物上担保はそのまま残つているのじやないかと思いますが……。
  8. 宮幡靖

    宮幡政府委員 昭和十八年と思いますが、特別担保の対象でありました財団に対します抵当権は、抹消される国内法によつて処理されておりました。ただいま国内的には抵当権が、かつて外貨債担保を生じました財団の上に及んでおらないという状況になつております。
  9. 有田喜一

    有田(喜)委員 それは国内的にはとはおつしやいますが、おそらくある外債はインデンチユアによりますと、そういうことはできないと思います。おそらくその国内的の措置は、外国に対しては有効でないと私は考えるのですが、政府の御見解を伺いたいと思います。
  10. 宮幡靖

    宮幡政府委員 外貨債処理問題につきましては、前回委員会におきまして、風早委員伊藤委員からもお尋ねがありまして、戰時中措置によりまして、債務政府が承継いたしまして、財団に対する抵当権抹消行為を行つている。しかしながらこれが現在の国際情勢において、あるいは現在の占領下における日本立場といたしまして有効であるか、無効であるかということは、しばらく議論のあるところであります。かりにそういう処置約款の定めるところによつて、一切さようなものは無効であるということを前提といたしますならば、外貨債工場財団全部に対しての効力があるものである、前回かようにお答えしておきました。しかしながら現在まだ外貨資金の取扱いに対して、外貨送金方法、その他を確保いたします法律の制定もありませんし、それらの経過につきましては、通産省としてはよくわかつておりません。大蔵当局の御出席を煩わしまして、ある程度の御説明を申し上げたいと、前回申し上げておいた次第であります。きようは間もなく、理財局長司令部から帰つて、ここに出席されるそうでありますから、その上で、これは風早委員伊藤委員の御質問とあわせて、現状を報告していただくことにいたしたいと思います。
  11. 有田喜一

    有田(喜)委員 しからばその問題は、大蔵当局が御出席になつてからのことにいたしまして、私がさつき質問いたしました、全国の電気事業固定資産の、かつて外債に対して物上担保になつていたものの割合は、どのくらいになつてつたかということはわかるだろうと思います。念のためにお聞きいたします。
  12. 宮幡靖

    宮幡政府委員 ただいまのお尋ねの、総資産に対しましてどの程度担保権があつたのかということにつきましては、ただいま大体の観念としましては、工場財団の性質から、ほとんど全部に及んでおつたと申し上げていいと思います。その後併合せられたり、いろいろな関係がありますので、詳しいことはただいま資料がないそうでありますから、取調べまして、正確なことをお答え申し上げたいと思います。暫時御猶予をいただきたいと思います。
  13. 有田喜一

    有田(喜)委員 それではそれでけつこうでございますが、その資料を出してくださいますときに、全電気事業財産のいわゆるブツク・ヴアリユーというものと、大体の見当でいいのですが、物価指数をかけたものでもいいのですが、再評価価格というものを、出していただき、大体どの程度になるかということを、資料として御提供くだされば、非常に仕合せだと思います。  なお次に電力外債以外の社債について、特別担保になつているものがあるかどうか、もしあれば、どのくらいそういうものがあるかということを伺いたい。
  14. 宮幡靖

    宮幡政府委員 ただいまのところ、日発関係と申しますか、電気事業の総資産簿価にいたしまして、固定資産が二百二十三億程度であります。これがどの程度評価ができるかということは、しばしば問題になつておりまして、それぞれの企業体において検討されていると思いますが、通産省といたしまして、先般来各基幹産業に対する再評価限度というものを、予想されます。資産評価法に基いて考えて見ますと、どうも自由評価でありますけれども、大きな産業には低いものでは四・三倍程度、最も大きくしましても、十六倍以上越えることは、将来無配当になり、欠損になるという危險を冒せば格別でありますが、企業収益性等考えれば、むずかしいのじやないかと思つております、一般的に言われております再評価価格は、概算三千三百四十億ぐらいになると言われておりますが、この数字に対しましては、必ずそれが適当であるということはただいま申しかねるような状況であります。  それから国内債に対しまする担保関係でありますが、これはただいまきわめて少額のものが残つております。やはり数字はここに持ち合せておらぬそうであります。先刻の資料と合せてお答えをすることにいたしたいと思います。
  15. 有田喜一

    有田(喜)委員 なお資料をいただきますときに、外債なりまた国内社債なりの期限というようなものがおわかりでしようから、そういうものも合せてお聞かせ願いたいと思います。  なお理財局長にお伺いしたいのでありますが、外債期限、これはいろいろな外債がありますから、詳しいことはけつこうでありますが、大体短かいものが何年ぐらいになつておるか。長いものはどのくらいかということを大ざつぱでけつこうでありますが、お聞かせ願いたい。
  16. 伊原隆

    伊原政府委員 外債につきましては、戰時中いろいろな処置をいたしましたことは御存じの通りでありますが、外債の全体について申し上げますが、現在期限の到来しておりますものは、元本につきましてドルに換算しまして六千二百万ドルという計算に相なつております。なお個々外債期限につきましても、手元にございますが、電力外債だけにつきまして申し上げますと、大同七分米貨昭和十九年八月一日、それから大同六分米貨は二十五年七月、東邦七分米貨が三十年三月十五日、信越六分半米貨は二十七年十二月、日電六分半が二十八年一月、東京電燈六分米貨債が二十八年六月、東電六分英貨が二十八年六月、東邦五分英貨が二十年七月十五日、宇治電七分米貨が二十年三月、こういうふうに相なつております。
  17. 有田喜一

    有田(喜)委員 これらの外債にしてすでに期限の到来しておるものがありますが、これらに対して、何か先方から督促のようなことを受けたことがありましようか、その後の状況はどうなつておるか、概略お聞かせ願いたい。
  18. 伊原隆

    伊原政府委員 外債につきましては、ただいまお尋ねのように期限の到来いたしておるものもございまするし、それから利子の未拂いのものが、累計がドルに換算いたしまして、一億五百万という金額に相なつておりますが、終戰後これらをどう処置するかという問題につきましては、昨年秋でありましたか、吉田総理大臣からできるだけ早く支拂いをしたい旨の談話があり、これが政府方針でございますが、具体的にいつから支拂いをするかということは、まだきまつておりません。日本国際収支が多額の米国の援助によつて支持されておることや、外貨債債権者以外にも多くの対外的債権者があること等、具体的問題としては時期、方法などいろいろ検討を要する点がございます。日本といたしましては、今後外債等の発行によりまして、外資導入ということが、ぜひとも必要でございますし、日本戰前までは一度もデフオールトしたことのない債務者として信頼を得ている国でございまするので、できる限り早く、期限の到来したものとか、利子支拂いを開始いたす時期の到来することを切望しておるわけでございます。
  19. 有田喜一

    有田(喜)委員 国内の御方針は決定されてないようでありますけれども、これはやはり相手があるわけですが、相手の方から、何かこの問題につきまして、督促と言いまするか、あるいは注文と言いますか、さような内交渉のようなものでも、今までありましたかどうか。
  20. 伊原隆

    伊原政府委員 個々のケースにつきまして、担保がどういうふうになつておるかとか、いろいろな問合せが参つたことはございまするが、全体といたしまして、外債処理をどうするかということにつきましては、いまだ話合いはいたしたことがございません。
  21. 有田喜一

    有田(喜)委員 あるいは政府はつきりきめておらないし、伊原理財局長に御答弁を求めることも無理であるかもしれませんが、政府としましては、この問題をどう処置しようとされておるか、あるいは理財局長の一人のお考えでもけつこうでありますが、大体方向をお聞かせ願いたいと思います。
  22. 宮幡靖

    宮幡政府委員 外貨債の問題につきましては、ちよつと時期は忘れましたが、たしか昨年の寒いころでありますから十二月の初めころだと覚えておりますが、総理大臣談話といたしまして、きわめて近い時期に順次外債の未拂い利息及び元本償還等の義務を履行して行きたい、これが方針であるということを発表しております通り、ただいま外貨資金の集中に関しまする国内法も順次整備されて参りますし、近くは外資委員会設置法というようなものも、御審議を願う段階になつております。いろいろな意味におきましてこれらの法制が整備いたしましたならば、吉田総理大臣から声明いたしましたような方向に向いまして、日本財政力の許す限度におきましてこれを処理して参りたいというのが、現在政府考えております方針でございます。この反響としまして、ロンドンの市場のいわゆる英貨外債が三ポンド程度値上りしたというようなエピソードもあるようなわけであります。この方針につきましては昨年以来かわつておりませんが、実行の時期等はただいま伊原局長から申しましたように、まだ不明でございます。
  23. 有田喜一

    有田(喜)委員 時期は困難と思いますが、大体近い将来そういうことになるのであるか、あるいは大分遠い将来になるだろうか、そのお見込みだけでもけつこうでありますが、お聞かせ願いたい。
  24. 宮幡靖

    宮幡政府委員 その点につきましてははなはだ恐縮でありますが、有田委員の御判断におまかせいたして、しばらく明確なことは差控えたいと思います。あしからず……。
  25. 有田喜一

    有田(喜)委員 実は私野党で内部のことはよくわからないから御質問しておる。判断ができないから御質問しておるのですから、別に政府に食いさがつてどうのこうのという考えでなくて、法文を議する上の私の心づもりといたしまして、大体の見通しのことをお伺いしておるのですから、政府の御判断を承りたい。
  26. 宮幡靖

    宮幡政府委員 この点に関しましては私が一政務次官として、なかなか申し上げにくいところでありますが、でき得べくんば申し上げない方がよいと思いますが、御意見通り判断に困るのだから、何がしかひとつヒント的なものでも申せ、こういう意味でありますから、大体さしつかえない程度考えておりますことは、この償還方法につきまして、日本の円と適当な為替レートによりまして換算したもので、だんだん送金ができる状況になつて参りました。それだけの外貨日本に蓄積されたと仮定いたしますれば、その方法も選ばれるでありましようが、おおむねの場合においては、一応日本の国際的な信用力が順次築き上げられて参ると申しますか、あるいは戰前状況に回復するという事態におきましては、乗りかえ償還というようなことも考えて参らなければならぬわけであります。乗りかえ償還というようなことを考えますと、それに付帯してただちに一応外資導入——言葉が適当かどうか知りませんが、外資導入というような形を考えなければならぬ。新たなるものを入れて旧債を返すのだ、こういう形もとられるわけでありまして、それについては入つて参りました新外資等に対しまする措置、いつでも自由にその外資を持つて行かれてしまうということでは、日本経済力はたちまち外資支配下に置かれ、再び日本経済の自立を達成することはできないのであります。この導入されました外資が、その用途におきまして最有効の能力を発揮せられるまでの間、少くともこれを日本の内地に滞留させる、こういう措置が必要であろうと存じます。そこで導入されました外資及びそれの利潤送金、これに関しまする法律をただいま検討中であります。これは本日あたりその大綱が閣議審議される予定になつております。先ほどちよつと申し上げました外資委員会設置法と相伴いまして、この外資導入等に関しまする送金の確保に関する法律というようなものにつきまして、御審議を近く煩わす予定であります。しかしこの問題は非常に大きな問題でありますので、各方面との意見がなかなか一致いたしませんで、今日の段階になつております。例えて申しますと、新たに入りました外資につきましては、その利潤部分につきましては、たとえば一〇%に該当いたしまする部分については、その送金を保障してやる。しかもその期限を一年とか二年でなく、十年なら十年くらいは必ず保障してやるというようなことで、外資の入つて来るような道も開きたい、さもなければ入れたら入れつきりで、その利潤さえも、利息さえも送金ができないというような状態では、外資導入も果し得ないだろうし、外債乗りかえも困難であろう、かように考えまして、ただいまそういうことに関連いたします法律をせつかく案を練つております。本日たしか閣議で一応その要網検討されまして、でき得ましたならば今国会の御審議を煩わすことになるだろうと思いますが、これは関係方面でも非常に急いでおりまして、これができますと、ただいまいろいろとお尋ね解決方策も順次緩和されて参ろう、ただいまさような状況になつております。
  27. 有田喜一

    有田(喜)委員 今お話になりましたいわゆる外資導入は、民間外資導入の問題ではなかろうかと思うのでありますが、もし違つておればお教えを願いたいのでありますが、かりに民間外資であつた場合に、この電力外債は、今の日本国内法では政府の負担になつておる。そのときの外債の乘りかえというお話がありましたが、それはどういう関係になつて行くのか、その辺のお見通しもお伺いしたいと思います。
  28. 宮幡靖

    宮幡政府委員 具体的な方法としましては、今考えられておらないのでありますが、ちようど電力事業の再編成されようとする時期でありまして、もし国内法的には消滅いたしております特別担保効果が、かつて財団に及ぶということになりますれば、その責任のみ政府にあつて、その資産所有者にないというようなこともなかろうと思います。いろいろな関係で、ただいま明確には申し上げかねますが、政府が承継しておる債務でありますが、これが純然たる政府債務として処理されるのか、それを、かつて担保といたしましたものを、見合いの上で処理されるのか等、ただいまでは関係方面意向もわかつておりませんので、何とも申し上げかねる状況であります。
  29. 有田喜一

    有田(喜)委員 政務次官は、国内的には電力外債特別担保になつておる点は抹消されておる、登記抹消だと、こういうお話でありましたが、私は、国内法はともかくとして、外債関係はそう簡單には行かないだろうと思うので、大蔵当局の御出席を待つてつたのでありますが、大蔵当局は本件に対してどういう見通しを持つておられるか。この物上担保というもの、特別担保というものは、やはり依然として残つておるとお考えになつておるかどうか。これは国内法律の問題としては消えておるとおつしやるかもしれませんけれども、実際問題としてどうお考えになるか。その御所見を承りたい。
  30. 伊原隆

    伊原政府委員 宮幡政務次官からお答えがございました通り、旧電力外債担保につきましては、外貨債処理法によりまして、国に外債が承継いたされました際に、全部担保が消滅をいたしてしまつたのであります。ただ抵当となつておりました財団は、国内社債担保として引続いて今日まで存続いたしております。従いまして財団はくずさないであるわけであります。政府といたしましては、国内的の処置外国によつて有効と認められることについて、強い関心を持つておるのでありますけれども、何分にもこの外貨債処理法というのは戰争中の行為でありまして、外貨債処理法というもので一方的に担保を消滅さして、かつ債務者政府肩がわりをいたしてしまつたものでありまするので、この点がはたして外国債権者によつて今後認められるかどうかという点につきましては、はつきりいたさないわけであります。従いまして政府といたしましては、財団を現在のままくずさないでおくということにいたした方がいいと、こう考えておるわけでございますが、ただ率直に申しまして、外貨債処理法効果を否認いたしまして、債務者をまた電力会社に移すとか、債務者政府であるが、第三者に対する担保の提供の形で、再び電力の設備を担保にするとかいうふうな問題につきましては、法律的には考えないのでありますけれども、現在予算が安定いたしまして以来というものは、国の方がむしろ支拂い能力が非常に強くなつておる状況もございまして、率直に電力会社というようなものより、国家が債務者である方が、かえつて担保力が強いというふうな意向もあるようであります。この辺ははつきりいたしませんが、日本側といたしましては、日本戰時中法律によつて法律上は担保権は消えましたけれども、財団はくずさないでおきたい。再び設定するのはなかなか手間がかかりますので、財団はくずさないでおきたいと、こういう考えで進んでおるわけであります。
  31. 有田喜一

    有田(喜)委員 少しわかりにくいのですが、工場財団としてはやはり残つて行くと、こういう御見解のようですが、そうなつて来ると、いわゆる約款違反をやつて行きますと、この担保権がまた工場財団へ、今の電気事業において、その影響が来ると、こういう筋になると思いますが、大体そういう場合には、私の考え通りになりましようか。法律関係はどうなつているのか、ちよつとわかりにくいのですが、お教え願いたい。
  32. 伊原隆

    伊原政府委員 私の方の申し上げ方が多少足らなかつたと思いますが、電力外債担保としての担保は、消えておるわけであります。従つて財団は今は国内社債その他の借入金のための財団として、昔の財団が置いてあるというだけでございまして、現在の法律的には、外貨債処理法によつて担保を消してしまいましたから、その財団外貨債担保になつておるというわけでは全然ございません。法律的には切れおる。ただ先ほども申し上げましたように、外貨債処理法戰時中処置でございますので、万一をおもんぱかりまして、財団をくずさないでおいた方がいいだろうということであります。その財団は他の国内債権担保するためにいまなお残してある。こういうかつこうになつております。
  33. 有田喜一

    有田(喜)委員 そういたしますと、今後の折衝によつてどうなるかわからぬ。万一約款によつて特別担保を提供せい——政府債務になつて担保は提供していただきたい、こういう折衝なつた場合の備えとして、工場財団をそのまま残しておく、かように解していいわけですか。
  34. 宮幡靖

    宮幡政府委員 お答え申し上げます。私どもは外債担当者としての立場で申し上げますれば、ただいまたびたび申しましたように、外貨債処理法効力というものが認められることを切に希望いたしており、また国内的には現在何ら担保権は持つておりませんけれども、財団がくずされないでおることが便利であるという考えを持つておるだけでございます。
  35. 有田喜一

    有田(喜)委員 その点がはつきりしないのですが、財団がくずされぬことが便利であるということは、私もさつき指摘いたしましたように、今後の折衝によつてどういうことになるかもしれませんので、やはりそのまま置いておこう、こういうことじやありませんでしようか。もし法律的に言つて国内的に抹消されておるというならば、外債関係はそんなものはくずしてもいいわけなんだが、しかし万一をおもんぱかつて、そういう御考慮になつておるじやないかと思うのですが、間違つておるでしようか。大体そうならそうとおつしやつてくだされば、私はわかつて来るのであります。
  36. 宮幡靖

    宮幡政府委員 これは前回委員会風早さんと伊藤さんのお尋ねのときに、御指摘の点は約款違反で、日本で一方的な法律担保権を消滅せしめても、それは無効じやない。そういうふうに考えられるがどうだということでありまして、そうすると従つて依然として外債担保権というものは残つておるじやないか、こういうお尋ねがありました。お言葉の言いまわしは違いましたが、速記録にそういうふうに載つておると思います。それに対してこちらの考え方は、もし約款違反その他の関係でその担保権を取消したことが無効であるとするならば、その前提の上に立ちますれば、依然として特別担保権があらゆる資産の上に乘つかつておる、こういうことをお答えいたしておるわけでありまして、その約款によりますことが無効であるかどうかということにつきましては、これは無効であるという風早さんと伊藤さんの御見解でありますが、その上に立つて考えればそうだ、こういうふうに申し上げてあるはずであります。
  37. 有田喜一

    有田(喜)委員 私はその答弁のあやをどうのこうのと言うわけじやございませんが、実際政府国内的にはああいう措置をとられておる国内法としてはもう担保は消えておるのだけれども、有効か無効かという勝負をつけるのには相手もあるし、その勝負はまあつけずにおきたい。そこで財団もくずさずにおきたい。こういうふうなんじやないかと思うのですが、率直の考えはそうじやないでしようか。
  38. 宮幡靖

    宮幡政府委員 言いまわしがやはり違うので御判断に苦しむようなことになろうかと思いますが、今度電力再編成法といいうものが、近くこれも御審議を願うわけであります。この場合に、これは大体発表されておりますように、平面的な九分割をいたしまして、大体八十箇所の電源を各地域内にとるということになるわけであります。これを九分割といたしますと、ただいまの関係で、財団がやはり一応いろいろ編成がえをされることになります。その場合財団をどうしたらよいかということにつきまして、関係方面と話をしておるのでありますが、たとい所有権者はかわりましても、そのまま財団は組んでおいて、そのままに承継したらよかろうというような趣旨に、ただいま交渉されております。この経緯につきまして御判断を願いますれば、割合に明瞭になるじやないかと思つております。
  39. 有田喜一

    有田(喜)委員 大体私は想像がつくのですが、これは別の機会にひとつあらためてお伺いしましよう。  それから最近ちよつと政務次官の御答弁で私了解できなかつたのですが、外資導入日本外貨が入つて来る、そのときにとにかく電力会社期限の到来しておるものは、その情勢によつて早く拂うものは拂おう、あるいはこれを切りかえ云々という言葉もあつたようでありますが、その関係がどうなるか、もう少し明瞭に御答弁願いたいと思います。
  40. 宮幡靖

    宮幡政府委員 でき得ベくんば、その点もはつきり申し上げたいのであります。また日本政府としての方針も天下に表明いたしまして、これを御理解いただいた方がよいのでありますが、客観情勢はそれを許さないのであります。むしろ私が申し上げたことも、現下の情勢におきますれば言い過ぎの点もありますが、せつかくのお尋ねでございまして、あまり知らぬ存ぜぬということもどうかと存じまして、個人的な構想として申し上げたわけであります。この問題につきましては、ここで結論や将来の見通しを申し上げる段階になかなかなつておりません。順次電力再編成法等を御審議願う過程におきまして、事態が進行して参りますれば、国会のことでありまするから、別にこれをお示ししないというような考え方は持つておりません。現状のところでは、ただいままで申し上げました程度で、許される最大限あるいは許されない部分にも入つておるかと思いますが、それは宮幡個人の意見で大体こんなものだという構想として申し上げたのでありますから、この点御了承いただきたいと思います。
  41. 有田喜一

    有田(喜)委員 電力再編成の法案が出たならば、やや明らかになるという御話のように伺うのですが、電力再編成の法案は、なんでも十日過ぎに上程されるというふうに伺うのでありますが、一週間たてばそういうことが大体はつきりするが、今は言えない、そういうような情勢なんでしようか。
  42. 宮幡靖

    宮幡政府委員 いや一週間たてばわかるという意味でなく、そういうものにつれまして順次問題が解決されて行きますから、だんだんわかつて来るじやないか、こういう意味でありまして、一週間たつたら、電力百編成法を御審議願うようになれば全部わかる、そういうふうな簡單な事態では実はないのであります。ほんとうを申しますと、関係方面意向もまだはつきりしておらない、そういうふうに私どもは承つておりますので、事態がわかるようになりますれば、その限度におきまして申し上げることを、決して回避するものでない、さような意味でありますので、どうぞ御了解いただきたいと思います。
  43. 有田喜一

    有田(喜)委員 どうもあいまいで困るのですが、しからば私はこういうふうに思います。この電力再編成の問題になれば、相当これは大きな問題で、電力再編成を論ずる際には、今の私のお尋ねしたような問題がはつきりしないと、従つてその法案も云々できないと思います。私はこの電力再編成の法案が出ましたときには、その問題について徹底的にお願いして、そうしてそれが明瞭になる答弁を得られなければ、再編成に対しましてはこの委員会としても云々はできない、こういうふうに考えます。時間がたちますので、外債の問題は私はこの程度でやめますが、それだけ御了承を願つておきます。  それからこれは私の聞き違いであるかもしれませんが、先般伊藤君かだれかの御質問のときに、政務次官が電気抵当法云々というようなことをちよつと言われたのですが、電気抵当法というものは今あるのですか。これはうかつな質問ですが、私はそういうものは今ないように思いますが……。
  44. 宮幡靖

    宮幡政府委員 そのときに工業抵当法とか、工場抵当法とかいう言葉を申しまして、その中に電気事業も工場抵当法の意味で申し上げました。工場財産設定に関しますことにつきましてのお尋ねも、若干ありましたので、その点について工場抵当法の趣旨を申し上げ、御説明を申し上げたのであります。もしその中に電気事業抵当法という言葉があれば、そのときの間違いであると思いますので、これははつきりと取消しておきます。
  45. 有田喜一

    有田(喜)委員 その点は明らかになりましたが、今後この電気事業について、特別担保というものに対する御方針は、どういう御方針か、できるだけこういうものは認めないつもりで、今提案されておるようないわゆる一般事業担保といいますか、総担保といいますか、そういうふうな方式でお考えになつておられるのか、その御方針を承りたいと思います。
  46. 宮幡靖

    宮幡政府委員 今後の方針といたしましては、やはり一般担保、ゼネラルモーゲージで行きたいと思います。特別担保の形式は採用したくない、かような方針で今回の法律案の御審議を願うような考えであります。
  47. 有田喜一

    有田(喜)委員 それは内外債ともにそのような御方針であるか、それらもあわせてお聞きしておきたいと思います。
  48. 宮幡靖

    宮幡政府委員 外債の問題はしばらく別といたしまして、内国債につきましてはさような方針で参りたい。有田委員御承知のように、財団を設定いたしますためには、あらゆる動産も含めて一個の不動産とする効果的な財団目録をつくりましての登記、これらの手続、また一個のものが欠けましても補充しなければならないというような義務、あるいは建物等の変更に対します修正の手続等は、実に複雑で時間と費用を要しますので、今後はゼネラル・モーゲージで参りたい。こういう方針でおります。
  49. 有田喜一

    有田(喜)委員 私最近のアメリカの制度に多少うといのでありますが、アメリカのごときもオープン・モーゲージの方式で進めておるように記憶しておつたのですが、こういう特別担保ということを強く言うのでありましようか。その辺も政府の方がよく御存じだと思いますが、最近の趨勢をお聞かせ願いたいのであります。
  50. 宮幡靖

    宮幡政府委員 外国のことはちよつとここではつきり申し上げてもどうかと思いますが、アメリカの方は大体私どもの知る程度では一般担保、ゼネラル・モーゲージ、それから英国の方においても同様な売買讓渡を禁止するというようなネガテイーヴ・クローズというような方式をとつておるようであります。大体の効果は一般担保と同じようなものだと考えております。
  51. 有田喜一

    有田(喜)委員 せつかく社債権者保護と言いますか、そういうようなことでこういう法案ができておるのですが、私は外資導入に反対するものではありませんが、外資も内債も同一扱いするというのが普通の筋だと思うのです。何も外国のものだけ特別な扱いをする必要はないと思います。先ほどの政府の答弁によりまして、私多少悲観したのでありますが、政府はやはり外資導入はやるにしても、あまり屈辱的と言いますか、何もかも国内のものを犠牲にしてやるというような態度では困るのであります。やはり内外債とも同一の方向で行く、こういうお考えで進んでいただきたいということを、私は強く要望いたします。それから多少事務的のことになりますが、この法律によりまして、従来の社債権者の先取特権の順位はどうなりましようか、その点をお聞かせ願いたい。
  52. 宮幡靖

    宮幡政府委員 その点は先般も申し上げましたように、同順位で先取権があるのであります。
  53. 有田喜一

    有田(喜)委員 現在の電気事業に対する減価償却は、年におよそ何パーセントぐらいになつておりますか。
  54. 宮幡靖

    宮幡政府委員 詳細な数字は、各配電会社、日発等一々ここに持ち合わしておりませんが、大体現在の国内法で——おもに税法でありますが、税法で認められますものには、各種の設備がありますが、大体定率法で考えまして、平均しますと耐用年数が二十箇年ないし三十箇年の線に落ちると思うのであります。そこで現在百十二億くらいの固定資産があると思うのでありますが、これは日発についてもでありますが、そのうち大体十億くらいの償却を行つておるように思いますので、一割弱の償却をやつておるという程度のものであります。これは発電原価の方に織り込むために計算したものでありまして、それがために経営的に見ますと、赤字が出たりしているものもあろうと思います。これが適正なる減価償却であるかということはしばらく別でございますが、ただいまさような状況になつておるわけであります。
  55. 有田喜一

    有田(喜)委員 この厖大なる電気事業固定資産に対しまして、年にわずか十億くらいの減価償却では真の電気事業の財産の保持には私はならないと思います。本法は社債権者の保護と言つております。もちろんそういうことになるでありましよう。しかしながら先ほど言われたような減価償却の状況では、私は真の社債権者の保護にはならないと思うのです。そこへもつて来て今回の税法の改正によりまして、あるいは附加価値税あるいは固定資産税というように、電気事業は非常な大増税である。社債権者保護の見地から言いましても、また財産保持の立場から言いましても、償却はもつとやらなくちやならぬ。そこへもつて来て増税がある。こうなつて来ると、電気料金の原価に非常に響いて来る。そうなつて来ると、電気料金の高低は他の産業に非常に重大なる影響を及ぼすので、電気料金の値上げということも、そう簡單には参らない。その間の調整が非常に私はむずかしいと思いますが、政府はこれに対してどういうような方途をもつて調整をはかろうとされているか、その御見解をつぶさに承りたいと思います。
  56. 宮幡靖

    宮幡政府委員 現状に対します問題につきましては、ただいま概略申し上げたようでありますが、将来にわたりましては、再編成が全うされますると、これは根本的に民有民営の企業になります。その企業意欲と企業努力によりまして、あるいは複成原価をねらいます固定資産の償却法をとりますか、あるいは減耗いたします部分の補充をいたすための資本蓄積のための減価償却をいたしますか、これは経営者の意欲によつて決することであります。しかしながら今回の電気料金の値上げ等につきましても、減価償却の不足分等も考慮せられてやられておるのでありまして、御意見としてはごもつともであります。債権者保護の目的を達成するための減価償却、続いては複成原価を蓄積いたしますところの資本の蓄積というような面から参りますれば、十分なる減価償却をいたして参りたい。その結果といたしまして、先刻もちよつと言及いたしましたように、自由評価の再評価でありますが、なかなか大産業は倍数の大きな評価ができないのであります。どうもわれわれ産業省の立場から見ますると、概略四倍くらい、四・三倍というのは低いので、大きいのでも十六倍くらいしかできないだろう。その線はどこに引きましたかと申しますと、再評価税は、直接の固定資産税、附加価値税、これらを見積りますと、そういう倍数で、それ以上の倍数で、評価いたしますると、欠損になつてしまいまして、せつかくの減価償却という効果も資本の蓄積にならない。資産の複成あるいは維持補修ということも全うできない。かような形になりますので、これは再評価の点におきまして、いろいろと検討いたしまして、御趣旨のような点に合致するような方法を選びたいと思いまして、実は事務当局とも打合せまして、主に事務当局といたしましても、電力局といつて、その担当の事務当局におきましてはむしろ盲でありますので、これは企業方面におきまして、專門的なひとつの検討を加えておるような状況であります。
  57. 有田喜一

    有田(喜)委員 どうも今の御答弁では満足できないのですが、政府はまだ全体を通じた立場の御見解はつきりしていない。たとえば企業努力云々とおつしやいますけれども、今の電気事業企業努力によつて浮いて来る利益というものは微々たるものである。それよりもちよつとひと雨降るという方の利益が多いので、自然に左右される幅がずつと多い。企業努力云々によつて大きな期待はできません。もちろん多少はできますけれども、今私が質問したような大きな問題を解決する要素にはならない。私はこれは非常にむずかしい問題だと思います。ことに今のような償却の状態では、電気事業の財産を保持することはできない。そこで政務次官資産評価税で、現実に今すぐ税金を納めるのは困るから、相当幅があつていいじやないかとおつしやいますけれども、もちろん税金を納めるのが目的でなくて、財産の内容を堅持することが目的なのでありますが、今のような程度では十分な保持ができない。そうなつて来るとやはりそこに料金の原価が高まつて来る。料金が高くなるというと国民生活並びに他の一般産業に対して重大なる影響を及ぼす。そこでやはり電気事業の特殊性にかんがみて、いわゆる施設の合理化といいますか、できた電気を一滴の水といえども、むだにしない、その意味の合理化、もちろん企業努力も必要でありますが、その設備の合理化によつて、同時に資本の合理化、各方面の合理化を積み重ねて企業の堅実化をはかるとともに、料金の値上げをしないように努力しなければならぬと思いますが、どうもそれらに対する御見解がまだ私ははつきりしていない。今の電力再編成、それはそのときに論じますが、真の電気事業の特殊性というものを把握せずに、何か上調子でやつておられるような感じがしてならないのであります。これは脱線になりますから、これ以上は申しませんが、今回のこの法律を通じましても、今申しましたような点をよくお考えくださいまして、電気事業の堅実化とともに、料金値上げに来ないように、その調整方法について十分な御考慮を拂われんことを私は強く要望して、今日の質問は打切ります。
  58. 宮幡靖

    宮幡政府委員 有田さんの御質問は終りのようでありますが、今までの御質問の中で、こちらの言葉が足りなかつたことに原因しますが、十分意思の疏通しない点につきまして、終りに補足させていただきます。  先ほど担保の問題で内外債同じかというお尋ねに対して、外債はしばらく別として考えるということを申しました。それが外債に対しては特別待遇をする意味だ、こういう意味にお聞きとりになつたようでありますが、さような考え方で申したのではないのであります。諸般の事情でまだ申し上げられない段階である、多くを言えない時期であるから、それで外債に対してはしばらく別として、内国債につきましては御意見のようにいたしたい。こういうことを申し上げたのであつて、それが外国債に対して特別の待遇をしようという前提の意味ではないことをひとつ御了承いただきたいと思います。特に今回見返り資金は特別担保をもつてでき上つたものを財産に編成して、担保に入れるということが最初の意味でありました。さような特別担保から一般担保にかえてもいいということが、今度の法律でありまして、私どもはやはり外債が入りましたときでも、ぜひ内国債と同じ待遇をしていただきたい。こういうことを念願しておるものでありまして、今のところ外国債の処理につきましては、何とも申し上げられない時期でありますので、外国債はしばらく別といたしましてという言葉を使つたわけであります。内債に対する特別待遇を意味することに、もしお聞きとりになりましたならば、その点は私の言葉の足りなかつた点でありますから、御了解願いたいと思います。また固定資産の償却が足りない、それでは考え方がまとまつておらぬじやないか。その点も一応御意見としては私は拜承するにやぶさかではありませんが、現在は国家が強力なる経理監督権を持つておりますので、これに対する指示、命令、監督を実行しておるのであります。民有民営の分断の後において、民有民営の企業はその企業者の意欲によつて、いわゆる企業の努力の中に御指摘のように水といえどもむだにしないような企業の合理化等も含めた意味で申し上げたのであります。その民有民営の特質から生れて参ります状況におきまして、適当な減価償却の行われて行くことを期待するものであります。しかし御指摘のように公益事業でありますので、それをただちに料金に及ぼしまして消費者に、あるいは事業家に絶大なる影響を及ぼすということは、もとより遺憾とするところでありますが、今回できました公益事業委員会、この規定によりまして、事業そのものが民有民営でありましても、従来国家が管理して参りましたような一つの公益性の面におきましては、事態を十分公益委員会の操作において、権限によつてできるようにただいま立案いたしておるのであります。御意見の点はまことにごもつともであります。それらの点につきましては、十分公益事業委員会において弊害のないように、是正して行く道を講じて参りたい、かように考えておるわけであります。ただ事業家がかつてに料金を上げる、償却をたくさんするから料金が上つてもしようがないという行き方にさせたくないと考えます。しかしながら御指摘のような資本の蓄積のための減価償却、あるいは株主に対する適正な配当、たとえば八分の配当、かようなものを確保することを妨げて行こうという考えを持つておらないのであります。どうぞ御了承を願います。
  59. 有田喜一

    有田(喜)委員 もう質問はせぬつもりでありましたが、御答弁の中で、また質問ができたので、一言だけ追加させていただきます。内外債につきまして特別の区別はしない、同一歩調で行くということはけつこうであります。そのお考えをただ口先だけではなくして、実行面において実現されんことを強く要望します。  それからあとの合理化の面につきましての政務次官の御答弁もわかります。ところが政府でいろいろな電気事業を監督しておるから、経理も云々とおつしやいますけれども、せつかく政府で監督されておるならば、最近電気事業がまだ配当するということを聞きますが、なるほど本年は多少の利益が出るだろうし、水のかげんもよかつた。ことに先般の料金値上が相当きいたけれども、電気事業をほんとうに考えるならばまだ配当の時期ではない。もつと社内留保をやるべきだ。ただ株価が非常に下つておる。それがいろいろ社債を募集したり、その他資金獲得の面において苦慮していることもわかりますけれども、しかし私は電気事業は、配当があるから株が上るというものではなく、電気事業の内容を堅実化する方が、むしろ株を堅持するゆえんだと思います。せつかく政府が監督されている以上は、あるいは八分配当とかいう声が出ておりますが、その配当のごときも、もう少し今日の段階においてよく監督される必要がある。これは私の希望として強く申し述べておきます。政府の善処方を要望します。
  60. 神田博

    神田委員長代理 次は伊藤憲一君。
  61. 伊藤憲一

    伊藤(憲)委員 大作私の理財局長に対する質問は、有田議員から質問しまして終つたのでありますが、ただ私から一言申し上げたい問題は、外貨債担保について、ただいまの御答弁では私といたしましても、どうも納得が行きかねるので、もう少しはつきりしていただきたいということを申し添えておきます。  それからこれは宮幡政務次官にお伺いいたしますが、一昨日見返り資金の運営につきまして、援助物資が売れない場合に、貿易特別会計からくれるのは百五十億のわくがあるというふうな御答弁があつた記憶するのですが、そうでありませんか。
  62. 宮幡靖

    宮幡政府委員 それは速記録を読んで見ないとよくわかりません。私申し上げましたのは、貿易特別会計の資金繰りによつて借入れができます限度は、現在の記憶では百五十億だと思つておる。こういうことを申し上げたわけであります。貿易特別会計から見返り資金の特別会計へ繰入れます場合に、百五十億の借入れ金までして繰入れることは可能であるけれども、それを越えてはできないのだ、こういう意味で申し上げたと思つております。
  63. 伊藤憲一

    伊藤(憲)委員 その百五十億のわくというものを、どこでおきめになつたのですか。
  64. 宮幡靖

    宮幡政府委員 もちろん国会において御承認をいただいたその限度が、きまつておるわけであります。
  65. 伊藤憲一

    伊藤(憲)委員 私も国会のあらゆるところにみな顔を出しておるわけでないので、記憶がないのでありますが、いつどこでおきめになりましたか。
  66. 宮幡靖

    宮幡政府委員 確たる日時等の記憶はありませんが、第五国会におきまして、大蔵委員会において、この特別会計を審議する場合にきめてあると思います。借入金限度額は、各会計ともきめてあるわけでありますので、そのときにきめたと思つております。
  67. 伊藤憲一

    伊藤(憲)委員 その点私も一昨日不明確な点がありましたので、第五回国会で、宮幡政務次官と一緒に大蔵委員をやつていた風早さんにも聞いたのですが、そういうことはきめてないはずであるということであります。もしそうであるとしますならば、やはこの際この点を明らかにしていただきたい。
  68. 宮幡靖

    宮幡政府委員 議決の年月日、公布された年月日等は調べてお答えいたしますが、たしか第五国会であつたと思います。御質問の点は、援助物資がもし入つて来ても売れなかつたならば、見返り資金の方の積立はどうなるかということの御質問であつたと覚えております。その場合においては見返資金特別会計へ積立てるものは、貿易特別会計のうち、援助物資特別会計から積立てるのであつて、見返資金特別会計は、歳入を計上いたしましても、歳出の部分は必ずしも全部使わなければならないということになつておらないのであります。いわゆる一々解除の承認によつてやるのでありまして、ただこの承認の問題については、風早委員からなかなか痛烈な御質問があつたように覚えております。そういう状況でありまして、見返資金特別会計は借入ができないのでありますが、貿易特別会計は、そのときの記憶では、たしか百五十億を限度として借入ができる。その限度においては積立、繰入れはやつて行けるのだということを申し上げてあつたはずであります。従つて貿易特別会計としては、公団処理に対する見返り資金の売掛け金の回収金が遅れますと、一応資金の上において困難をする。しかしそれは公団の收支損益とは別問題である。こういうふうにお答えしておいたのであります。
  69. 風早八十二

    風早委員 今私の名前が出ましたが、私も宮幡さんと一緒に大蔵委員理事をやつておりまして、その当時の問題は審議に当つたはずでありますが、私としてはこの百五十億ということをどこできめられたか全然記憶がない。宮幡さんは記憶がきわめて明晰な方であるから、間違いはなかろうと思いますが、私は全然記憶はない。そこで伊藤君から聞いておるわけです。この点はやはり一つの問題でありますから、大体どこでどういう根拠できめたか。見返資金特別会計法案審議の際に、そういうふうなことがあつたということは、私は記憶がない。これはあるいは私がまつたく健忘したのかもわかりませんから、あらためてお尋ねしたい。
  70. 宮幡靖

    宮幡政府委員 前々申し上げますように、見返資金特別会計、これに対する借入金はできないのでありまして、貿易特別会計の借入金は前からやつて参りまして、その限度額は毎年度きめてあるように私は覚えております。この間突然の御質問でありましたけれども、私の記憶では百五十億が限度であると思つておる、こういうふうにお答えしたわけであります。これは何日に公布したかということは覚えておりませんが、確かに国会で審議したと記憶しております。なお御疑念がありましたならば、その点を調べまして、特別に委員会で申し上げなくても、ここにこんなものがあつたぞというようなことでいいと思いますので、その点で御了承をいただきたいと思うのであります。
  71. 伊藤憲一

    伊藤(憲)委員 私の質問するのは、この法案と重大な関係があるから、質問をするわけです。私が最近聞いた話では、最近に至りまして援助物資が売れない。売れない場合でも予定された見返り資金を積み立てなければならぬ。これはいろいろ電気事業や何かをやつて行くのであります。そこで売れても売れなくても三月ごとには貿易特別会計から繰入れて積み立てるということになりますと、極端な話は千五十何億に及ぶ見返り資金が貿易特別会計から繰入れられる。その繰入れられた赤字は、われわれの税金で拂うということになりますと、今まで論議されておつたこととは別途に、純然たる日本人の税金になつてしまうのではないか。こういう性質を帶びているのではないか。そういう点で質問をしているわけなんです。そこで対日見返援助資金特別会計には、この百五十億云々というものはないという解釈を、あなた方はとつているわけです。これはおそらく法文に載つていないのではないか。そこで貿易特別会計の方で百五十億を見返り資金とは限らず出すということがきめられたということを、今宮幡さんはおつしやつているのではないでしようか。
  72. 宮幡靖

    宮幡政府委員 初めてはつきりいたしました。私は貿易特別会計の借入金限度額が百五十億だとお答えしておつたので、援助物資特別会計は借入れができない性質のものであります。従つてそれが国民の血税によつて償われるのではないかという御意見は当らないのであると申し上げたので、もしその点に行き違いがありましたならば、私の方で訂正してもよいと思います。援助物資特別会計は貿易会計の一つのわくの中には入つておりますが、特別の扱いでありまして、この百五十億は一般滯貨との見合いの問題であります。援助物資には関連のないことでありますが、その点御了承をいただきたいと思います。
  73. 伊藤憲一

    伊藤(憲)委員 そうしますと、もう一度念を押しますが、援助物資が入つて参りまして、それが民間に拂い下げられて売れない場合に、どうなさるかという質問をしているわけです。
  74. 伊原隆

    伊原政府委員 事務的な問題でございますから、私からお答え申し上げます。ただいま宮幡政務次官の仰せになりましたように、貿易資金の特別会計のうち援助資金に見合う部分は別経理をいたしております。そしてこれは大体船が入りましてから、二箇月ほどたちましてから、金を繰入れる指令が参りますので、金がないのに繰入れの指令が来るということはございません。従いまして見返資金以外の部分、援助物資以外の部分がそのために影響を受けるということはございませんので、援助物資の勘定は別勘定にいたしておりまして、それが売れてから大体二箇月くらいたつてから、月七十億ずつ繰入れの指令が参つております。従いましてその部分については借入れの規定もございませんが、売れてから入りますので、何らの支障がないということに相なります。
  75. 伊藤憲一

    伊藤(憲)委員 それでわかりましたが、とにかくかりに七十億程度を入れて行きますと、これは八百四十億が繰入れられることになるのですが、もし特別会計が赤字になつた場合には、当然一般会計から埋めるようなことになるのですか。そういう点はどうですか。見通しを持つてつておられるのですか。
  76. 伊原隆

    伊原政府委員 見返り資金は、御存じの通り援助物資がつきまして、それが売れました場合に初めて見返りの円ができるのでございますので、予定通りつて来ないというふうなときには、見返り資金の方の特別会計の歳入面が減るだけでございまして、一般会計から繰入れるとか何とかいうようなことは全然ございません。船が着きまして、売れて二箇月ほどたつてから、見返り資金に円を繰入れて行く。こういう操作になつております。
  77. 伊藤憲一

    伊藤(憲)委員 その点はつきりいたしませんが、援助物資で入つて来たものが売れて、初めて積み立てられるんだから、売れない場合をどうするかということを聞いておるのであります。
  78. 神田博

    神田委員長代理 伊藤君のお尋ねですが、今審議しております法案に多小はずれているのではなかろうかと思います。売れなかつた場合はどうするかというようなお尋ねのようですが、売れなかつた場合には、資金の繰入れをしないということを、大蔵省の政府委員はつきりお答えをしておるわけですから、これを通産省政府委員が答弁なさることはけつこうだが、お聞きされて満足が行くか行かぬかということは、別問題じやないかと思います。どうですか。通産関係の御質問は終つて——いろいろ先ほどからお聞きしておるのですが、多少疑問の点があるというので、私は通産関係の方の質問をお許ししておるわけですが、質問の筋は大蔵関係だけというようなことに相なつておるようでありまして、別にりくつを言うわけじやないのですけれども、他の委員会でおやりになる面にも入つておられるように思うのですがね。
  79. 伊藤憲一

    伊藤(憲)委員 しかしこれは法律の名前からしても見返り資金に重大な関係がありますので、そういう点をお伺いしておるわけであります。通産委員会質問が終つたと言いますけれども、御答弁がなくて、これは大蔵省から答弁してもらうというので、きよう有田君が質問いたしましたから、私は大蔵当局に対する質問を簡單にするのですが、もしなかつたなら有田君と同じ程度にこの問題についてやらざるを得なかつた。  もう一つは、見返り資金の現在の日発に対する貸付けの特約條項の資料もきよういただいたのですから、これもこの際、もちろん長いことじやないが、質問は若干あるわけです。そういう点を御了承願いたいと思います。満足行かなければしようがないと言えばそれまでですが、しかし少くとも対日見返り資金の借入金担保に関する法律ですから、対日見返り資金の性質を、これはことし新しく起つて来た状態ですから、その点をお伺いしておるわけで、満足な答弁ができないというならば、それでけつこうです。
  80. 宮幡靖

    宮幡政府委員 別に政府当局お答えを回避いたしません。御質問に応じて即刻御答弁のできないことは、取調べてお答えする用意を持つておるわけであります。しかしながら援助物資が売れなかつたら、積立てができないのでありまして、その点はつきりしておるのであります。伊原局長が答えた通り、七十億なら八百六十億の積立てしかできないということは、算術的にはそうなると思います。しかしながら繰入れて参りますことは、大蔵省の方から話がありまして、司令部からの指令がありまして、順次私のところにまわつて来まして、少いときは十六億とか十七億の積立てを繰入れておつたこともあるのであります。なかなか昨年の前半ば始めたばかりで、積立てがうまく行かなかつた。後半において追いついたというようなことで、七十億と申したのは、毎月平均七十億で行くんだという意味でもなければ、あなたが御指摘になつた滯貨という意味は全体の滯貨で、前回御指摘になつた援助物資の滯貨は今日になつて生れて来たので、援助物資の方は滯貨になつても、それは積み立ててありませんから、それが国民の血税に影響するというようなあなたの考え方には、私どもは答弁ができないのであります。その点御了解いただたきたいのであります。
  81. 伊藤憲一

    伊藤(憲)委員 私は納得行かないのですが、これでやめます。それから特約條項をいただきましたのを読みましたので、二、三の点を御質問したいと思います。これは法文にも書いてありますが、日発に対する貸付金の特約條項のうち、この法律によつて失効するのは物上担保に関してだけでありますか、従つてあとの條項は生きておるということでありますか、伺いたい。
  82. 大島寛一

    ○大島政府委員 お答えいたします。御審議つておりまするこの法律によりまして、失効いたしまする部分は、法律案の附則第三項にございまするように、物上担保を附することを約した契約の條項は失効する。その部分だけでございます。
  83. 風早八十二

    風早委員 今見返り資金の問題が伊藤君からいろいろ出たのでありますが、これは実際この法案の前提として、やはりこの際その性格を明らかにしておかなければならない。この見返り資金の問題で政府は重大なつまづきをやつておるわけであります。これは前会の宮幡政務次官お答えの中にも、はつきりみずからこれを認めておられたようです。その附帶決議でもつて、見返り資金の運用は連合軍最高司令官の承認を事実上要するんだ。それを国会の名においてむしろお願いしてあるんだ、そういう附帶事項をつけたんだ。だからこれを大いばりで向うさんの承認を得るんだというような、先ほど有田委員質問の中にもありましたが、はなはだ屈辱的なる態度を政府が見返り資金の運営についてとられた。これは政府だけではない。要するに国会の多数がとつたのであります。そこから問題が出て来ておつて、そこでこの見返り資金の運営、それの貸付け、こういうものについていろいろな問題が起つて来るというので、私どもはこの際もう一度見返り資金の性格について明らかにしなければならぬというので、そういう問題が出たと思うのです。しかしながら私は少し観点をかえて申し上げますが、この法案の根本のねらいは、むしろ表面に出ておる見返り資金の問題というよりも、特に外債担保権の問題、この点に主眼点を見出しておるわけであります。というのは、今まで日窒であるとか、その他いくらも見返り資金が貸し付けられまして、担保が設定せられておるものがあるわけです。しかるに日発の場合にのみ特に愼重なる法案というものが出ておる、担保権について法案が特に出ておる。そこにこの法案の特徴があるわけです。これは実は見返り資金の担保権というものを保護するための法案ではない。むしろ表面に出ておらない外債担保権というものに優位を與え、これに保護を與えなければならぬというので、この見返り資金の担保権の制限、これをわざわざ一般担保にして行くという問題を出しておるのだと思う。ねらうところは別じやないか、こういう観察を私はしておるわけであります。その点非常にいろいろ問題になるものは、何といつても、先ほど有田委員からも出ました工場財団がくずされないであるという問題であります。このこととこの分断の関係とが密接ではなかろうかと考えるのです。今ぐずさないであるということは、将来あるいは予測されるかもしれないその場合について、もしも外国で、アメリカならアメリカで、この日本の一方的な取消しを認めてくれない場合——われわれは認めてくれないと思つておりますけれども、認めてくれない場合、やはりくずさないでおく方が便利である、こういう問題が出ておるわけです。そこで分断された場合に、工場財団のあり方は、先ほどどなたかの御答弁の中で、これは財団に限つてはそのままにしておくのだ、これが九分断によつてあちこちにわかれることはないというふうなお話があつたと思いますが、これは間違いないでしようか。
  84. 宮幡靖

    宮幡政府委員 大蔵関係のことは太蔵関係お答え申しますが、風早さん前段の御意見は、外債を復活して認めた場合に、特別担保が生きて有利になるように、一般担保制にしたらどうかというようなお尋ねでありますが、かような御想像の御見解に対しては承りおきまして、何ら意見はございません。  それから工場財団を解体するやいなやの問題につきまして、分断の際におきます方針としましては、所有権者がかわりましても、財団というものはくずさずそのまま承継して行くのだ、こういう方針をとるよりしかたがないということを申しましたが、それは何らかの含みをもつて申し上げたわけではないので、特に財団を解体できないのは、たとい金額においては少額でありましても、国内債社債等の担保になつておりますので、これをやはり一般担保にして、財団解除の手続をとつて行かなければできないので、それとにらみ合せて申し上げたのでありまして、そこに何らの含みのないことをはつきりいたしておきます。
  85. 風早八十二

    風早委員 特に電気事業に対して相当巨額の外債がおろされてあるということから、われわれの出しておる問題も、これはきわめて当然の問題として出て来るわけでありまして、今分断との関係については、一応法律的、形式的な御説明はありましたが、それ以上の御説明はどうも聞けそうにないのでありますが、もう一つくずさないである工場財団資産の再評価、この点についてもある程度有田委員の方からも出されておりますが、この資産の再評価については、もちろんこれは工場財団だけでなく、全財団について行われるわけでありますが、どういう見通しを今持つておられるか。これもまた財団に対して、抵当権を持つておるものの社債権者の保護という面から、一応問題になり得るような点であると考えるのでありますが、その見通しをひとつ政府の方で御説明願いたい。
  86. 宮幡靖

    宮幡政府委員 先刻も申しました通り、再評価の問題につきましては、いろいろな数字が出ておりますが、通産省としましては大きな倍率の評価は困難であろうと思つております。かようなことで現在具体的にこうしようと思つておりませんが、少くともその再評価自体によりまして、御指摘の社債権者の利益をそこなう結果にならないものと信じております。
  87. 風早八十二

    風早委員 今社債権者の側からあるいはまた司令部の側から、この担保物件の問題について、まだはつきりした談合がない、指示もないというようなことでありましたが、なぜそういうものが遅れておるのかという点について、政府はどういうふうに考えておられますか。
  88. 宮幡靖

    宮幡政府委員 しばしば申し上げましたように、その点についてはただいま日本政府としてはつきりしたことを申し上げられない段階にあることを、御了承いただきたいのであります。
  89. 風早八十二

    風早委員 はつきりしたことは言えないと言われますが、これは問題のポイントでありまして、そういう点で大体政府はどういう見通しを持つておるかということは、言えるのではないかと思います。見通しというよりも積極的に政府はどういう方針で臨もうとしておられるか。これは先ほど有田委員から質問がありまして、内債、外債について特別な差別をつけてはいないような意向を持つておる、政府としてはそういう希望を持つておるというようなお話でありましたが、そういう点で実際問題として、どういう見通しを持つておられるか。そういうことは今までの政府の対外関係の交渉の実績、その実際の力関係からしまして、実際どういう見通しになるのであるか。われわれは今この法案だけを分断問題と切離して、これの賛否が問題になつておるわけでありますが、分断問題について、これは各委員にも聞いておいてもらいたいのですが、分断問題について皆様方は実際相当反対が強いわけでありますが、もし分断問題について実際に反対であるというならば、どういうポイントで、どういう意味で反対であるのか。私は本法に出ておる外債に対する特別な措置見通し、それはここに出ておりませんけれども、むしろ見返り資金よりも何よりも優位に、社債権者というものを保護しようとする、外債を保護しようとするねらいがある。そういうところからこの再評価の問題も出て来るし、分断の問題も出て来る。つまりこちらの社債権の対象になつておる工場財団の主たる存在地帶が、分断の結果どういうことになつて来るか、この問題につながつておるのであります。これはもう不可分であるとわれわれは考えるのでありますが、この問題の賛否の討論に入る前に、ある程度政府見通しを、もう少し責任を持つて答えてもらいたい。ただ外債、内債できるだけ同じような取扱いにしたいと思つておると言われるだけでは、——いつでもそういうことは思つておられるのであります。またこれは日本人として当然でありますが、実際どういう見通し政府は持つておられるか。どの程度まで確信があるか。これはひいては料金の値上げ、さらに再値上げ、再々値上げということになつて産業に対してさらに甚大な影響を與えざるを得ない緒口を、ここにつくり上げて来る問題でありますから、どうしてもわれわれとしてはもう少しはつきりした政府見通しを伺つて参考にしたいと思います。
  90. 宮幡靖

    宮幡政府委員 現在政府日本産業経済を破壊しようという政策をとつておらないことは、天下周知の事実であります。従いましてそれらに対します御意見は、單なる御意見としてしか承れません。それから見通しにつきましては、有田委員の懇切なる御質問に対しまして、こちらは許される限度において、あるいは言い過ぎになるかもしれないと思うほど申し上げたのであります。それもおそらくその構想は宮幡個人の考え方であるとまで敷衍して答えておる通りであります。現在の見通しは右から左、左から右、縱から横というような具体的なことは申し上げられない段階であることを、重ねて申し上げておきます。
  91. 風早八十二

    風早委員 では、どういうわけで特に日発に対する見返り資金の場合についてのみ、こういう一般担保の設定という法律を、特に法律としてお出しになるのか、その立法理由をこの見地から、もう一ぺん御説明願つておきたいと思います。
  92. 宮幡靖

    宮幡政府委員 電気事業法につきましても同様な規定がありまして、見返り資金は最初特別担保というむずかしい條件がついておりましたが、それを一層簡單なゼネラル・モーゲージの制度に確立すべきである。かように考えましたので、立法措置を講じて御審議をわずらわしておるのであります。
  93. 風早八十二

    風早委員 では日窒その他に対する担保権の設定の場合にも、同じような法律をお出しになるつもりですか。
  94. 大島寛一

    ○大島政府委員 お答えいたします。この法律案の対象となつておりまする電気事業会社は、日発のほかに各配電会社を考えております。その点第一にお断りしておきます。  次に日発等の電気事業会社以外の会社に対する見返り資金の貸付金につきまして、同様の措置を講ずる考えがあるかどうかという点の御質問でございすが、ただいまのところ、このような措置を講ずる考えを持つておりません。敷衍して御説明申し上げますと、なぜこういう法律を特に電気事業会社について提案いたしましたかと申しますと、先刻来宮幡政務次官がるる御答弁になつておりますように、現在の電気事業法におきまして、国内社債についてこれと同様の一般担保の制度があるわけでございます。現行法におきましては、電気事業法以外にはさような場合がないわけであります。片方現在の特約條項等におきましては、見返り資金の対象となつておりまする工事あるいはそれによつてできまする設備を、見返り資金としましては、財源を確保するために必要にしてかつ十分である限度におきまして、特定の担保を徴する約束をして参つたのでございますけれども、このような手続をいたしまするためには、かなりの費用がかかり、日数がかかる。かつまた一般の国内社債等による資金の市中調達との調整に、いろいろな困難を生ずる場合もございまするので、一方におきましてこのような手続と費用を軽減いたしますと同時に、他方において電気事業会社社債等による資金の調達を、一層円滑にするというために、このような法律案を提出したわけでございます。それ以外に何ら他意がないことをはつきり申し上げておきます。
  95. 風早八十二

    風早委員 今の御答弁で、大体この法案の根本の趣旨が、社債権を十分に活用するためである、そういうふうに理解してさしつかえありませんか。
  96. 大島寛一

    ○大島政府委員 この趣旨につきましては、一方において手続と費用を簡素化するという面と、他方において、従来の国内社債等との調整を、より一層円滑にするというわけでございます。
  97. 風早八十二

    風早委員 結局将来の社債発行なり、社債引受けなり、社債の運営というものを一層円滑にするというためには、やはり社債権者に対する特別な保護が必要である。ですから、私が最初からこの法案の根本的な趣旨は、そこにあるのではないかと言つたその点に帰着するのだと考えるのであります。結局その場合に、最後に残るのが、やはり外債国内債との差別の問題でありまして、これは私ども今まで外国法人に対して時別な減税をやつたり、いろいろな措置を常に一貫して講じている現吉田内閣として、現政府当局として——ただ今一ぺんの宮幡政務次官の御答弁で、社債において外債、内債の区別はしたくないと言われるその御趣旨だけでは、さつぱり見通しは立たない。問題の本質は、ようやく大蔵当局の今の御答弁で所在がわかりましたが、結局わかつたらわかつただけに、非常に危険な要素が含まつておる。また外国法人に対する特別な保護がここで法案となつて、その裏に出て来ているのだということを、われわれは指摘せざるを得ない。そういう点で、別に御答弁はもうこれ以上は、おそらく期待できませんが、われわれとしては、あくまでその疑問が濃厚に残つたということを、ここで表明しておきます。
  98. 神田博

    神田委員長代理 本案に対する質疑につきましては、本日社会党の委員が党大会のためお見えになりませんから、社会党の委員の質疑を留保いたしまして、一応打切りたいと思います。  なお本案の討論、採決は、次会に質疑を終了いたしたあとで行いたいと思います。  次に火薬類取締法案を議題として審査を進めますが、暫時休憩いたします。二時半から再開いたします。     午後一時十五分休憩     —————————————     午後二時五十一分開議
  99. 神田博

    神田委員長代理 休憩前に引続き会議を開きます。  この際お諮りいたします。連合審査審査の件でございます。去る三月三十一日に決定いたしましたところの地方行政委員会との地方税制に関する件についての連合審査につきましては、その後立法措置として地方税法案が内閣より提出せられまして、目下地方行政委員会において審議中でありますので、あらためて地方税法案につきまして、同委員会と連合審査会を開くこととしたいと思いますが、このようにとりはからうに御異議ありませんか。
  100. 神田博

    神田委員長代理 御異議なしと認めまして、そのように決定いたします。  なお連合審査会開会の日時等につきましては、地方行政委員会の都合もありますし、また運輸委員会より同委員会に連合審査の申入れをいたしておるそうでありまして、来る六日午前十時より以上三委員会の連合審査会を開くことと相なる了定でありますから、御了承を願つておきます。詳細は公報をもつてお知らせいたします。  次に特別鉱害復旧臨時措置法案を議題といたします。  この際本案の取扱いにつきまして、特別鉱害復旧臨時措置法案に関する小委員長といたしまして、私より同小委員会の中間報告を申し上げたいと存じます。ちよつと速記をやめてください。
  101. 神田博

    神田委員長代理 速記を始めてください。  それではただいまから火薬類取締法案を議題として審議を進めます。質疑に入ります。多武良哲三君。
  102. 多武良哲三

    ○多武良委員 この法案の提出理由にある技術基準の問題でありますが、従来現行法規は、かんじんなところが省令あるいは勅令に委任されておつたのですが、新しい構想では、なるべくそういうことをやめて、新しい法規でやつて行くというように説明されておりますが、かんじんの技術基準の問題では、それがやはり省令に委任されておるのであります。すなわち法案の第七條、第十二條の製造販売、火薬庫の新設その他に関する認可許可、あるいは第十一條、第十九條、第二十三條、第二十七條の貯蔵、運搬、取扱い、廃棄等につきましても、すべて省令で定める技術上の基準に適合することが要求されておるのでありますが、この新基準の制定を、政府はいかようにされるか、御説明を願いたいと思います。
  103. 長村貞一

    ○長村政府委員 ただいまの御質問に対して、お答え申し上げます。ただいま御質問のありましたように、新法の一つの特色といたしまして、でき得る限り法律自身に取締りの内容を盛り込むということを、主眼の一つにいたしておるわけでございます。ただいま御質問のございました技術的基準は、かなり技術上のこまかい事柄にわたりますので、これを一々法律自身に掲げますことは、煩にたえないような状態になりますので、技術的基準を定めるべき事柄につきましては、あるいは第七條でありますとか、第十一條、第十二條その他各條文に根拠を設けまして、その具体的なこまかい内容は、これを命令に讓つたのでございます。しかし命令に讓つたとしましても、その命令を制定いたしますときには、公聽会等を開きまして、十分に審査をいたして、しかる後に省令に掲げるということにいたしたいと思つておるわけでございます。技術的の基準は、各項目と申しますか、たとえば製造施設の構造、位置、設備あるいは製造の方法、貯蔵の方法その他項目によりましてそれぞれ非常に違つておりますし、かなりこまかいことまでも規定しなければならぬと思つておるのでございます。一、二の例を申し上げますれば、たとえば製造施設の構造、位置等につきましては、製造地域であれば危險区域と無危險区域とを明瞭にわけるというようなこと、あるいは製造の施設の中におきます火薬類を一時置いておく場所は、適当な、他の場所に被害を及ぼさぬような所に置く、これらのことにつきまして、それぞれこまかい規定を設ける。あるいは製造方法といたしましても、火薬、爆薬等を製造いたします場合には、その原料の扱いにおきましては、作業に対する最少量でなければ、製造する部屋においてはならぬというようなこと、その他各般のことにわたりまして、ただいま申し上げましたように、公聽会で十分に審査をいたしまして、しかる後に省令できめたい、かように存じております。
  104. 多武良哲三

    ○多武良委員 ただいま御説明がありましたが、技術基準を制定するということは非常にむずかしいことでありまして、單に公聽会を開くということだけでなく、民間あるいは学識経験者の長い間研究しておることでありますので、官庁関係者だけでなく、民間の学識経験者あるいは利害関係者等を含んだ技術委員会と申しますか、そのようなものを設けて、これに諮問する、こういうようなお考えがあるのかどうか、これを承りたいと思います。
  105. 長村貞一

    ○長村政府委員 お話しの通り、非常にこれはむずかしい問題でございますし、これにつきましては、業界その他多年この方面に十分な御経験をお持ちの方も多数あるのでございますが、私どもといたしましては、あらゆる機会に学識経験のおありになる方々の御意見を拜聽いたしたいと思つております。格別委員会というような制度を設ける予定はいたしておりません。法律は公聽会だけを予定しております。格別委員会という制度を新しく予定いたしておりませんが、いろいろな方法で、お話のような学識経験者の御意見は十分に承る機会を得たい、かように存じております。
  106. 多武良哲三

    ○多武良委員 次にやはり提案理由の一つになつておりますが、取締り担当機関の明確化ということをお考えになつておるようでありますが、條文を拜見しますと、通産大臣と都道府県知事との権限がやはり明確になつていないようにも推察されるのです。もう少しここのところをはつきり御説明願いたい。
  107. 長村貞一

    ○長村政府委員 法律の條文自体といたしましては、御指摘のように「通商産業大臣又は都道府県知事」というようになつておりまして、どの事項が大臣であり、どの事項が知事さんであるかというふうには、明確になつておりませんけれども、これらの権限の振りわけは、事項ごとに明確に命令の内容でいたしたいと思います。たとえて申しますれば、製造所の許可のごときは大臣がやる、あるいは火薬庫の許可は地方長官がやるというふうに、事項ごとに明確に命令で定めたいと思つております。
  108. 多武良哲三

    ○多武良委員 それから次に御質問申したいのは、保安距離の問題でありますが、火薬製造工場や火薬庫を新設する際には、その周囲における学校、工場その他保安物件との間隔に関し、法定保安距離を完全に確保するのであります。ところが建設後にこの保安距離内に新たに保安物が新設、侵入して来る、こういうことがありますと、やはり火薬の貯蔵量を制限するとか、あるいはしまいにはそこにいたたまれなくなつてほかに移転する、こういうようなことが起り得るのでありまして、これに対して何らか政府は保護政策を持つておるか。事実現行法規によりましても、山口県あたりでは、新設の侵入保安物件というようなものは、許可しないというようなことになつておるように承つておりますが、これについて承りたいと思います。
  109. 長村貞一

    ○長村政府委員 お尋ねの保安距離の問題は、御承知のように火薬庫その他附近に、ある一定の距離内に人家等ができますと、ものの性質上非常に発火しやすいという点から設けられたものでございますが、取締法の関係から申しますと、保安距離を保つ義務は、火薬庫を設置しておる者その他の方に実はあるわけであります。従いましてただいま御指摘のように、当初は保安距離外にありましても、つまり保安物件と火薬庫との間の距離が、保安距離要件を満たしておりましても、その後保安距離内に他のものが建つという事情によりまして、次第に火薬の量を減らさなければならぬというような、火薬関係の方に困つた事情が起きることも予想されるわけであります。さらばと申しまして、保安距離の中には絶対に他の建築物は立入つてはならぬとかいうことも、これまたいたしかねる状態であります。結局これらの点は、取締法といたしましてはただいま申し上げましたようなことに相なりますけれども、たとえば市街地建築物法の運用その他、他の建築その他の関係法規の運用をも十分考慮いたしまして、でき得る限りその辺の齟齬のないように、運用の面で考慮いたしたい、かように考えております。
  110. 多武良哲三

    ○多武良委員 その次に、本法案と消防機関との関係につきまして御質問申し上げるのであります。本法案第三十九條第二項の届出及び第四十七條の指示に関しまして「都道府県知事、警察官又は警察吏員」、かようになつておりますが、それに消防機関なるものを含めてはいかがかと思いますが、これに対してどういうお考えを持つておりますか。
  111. 長村貞一

    ○長村政府委員 この消防との関係は、火薬の性質等から申しましても、とかく火災その他の災害の原因になりやすいものでございます。全般的に十分なる連絡はいたさなければならぬと思つておるわけでございます。御承知のように消防法には、第七條でございましたか、建築の許可あるいは建造物の使用の許可をいたします場合には、これらの権限を有する当該行政庁から消防関係の方に、それで危險はないかという意味の同意をとるような趣旨の規定もあるわけであります。この辺の運用によりましても、消防との関係は十分連絡がとれると思うのでございます。なお本法自身には特に法律上連絡の規定はございませんけれども、事の性質上今後本法を運用する場合には、適当の方法によりまして十分連絡をとりたい、かように考えております。
  112. 多武良哲三

    ○多武良委員 次に現在の火薬の製造所の所在地、その数とそれから生産量——年間どのくらい生産するか、それからその工場に勤めておる従業員の数、それからついでに生産量のうち、その使途がどういうふうにわけられておるか、これについて御説明願いたいと思います。
  113. 長村貞一

    ○長村政府委員 現在の製造工場の数あるいは生産量は、かなりこまかい数字になりますので、あるいは数字にまとめまして資料で出したいと思います。
  114. 多武良哲三

    ○多武良委員 今度の新法によりますと、外国商社も自由に製造ができ、販売もできる、こういうふうになるようでありますが、来年度あるいは再来年度に無論外国商社も入つて来るということになると、製造量なんかの計画などはどういう形になるか。これをひとつ伺いたい。
  115. 長村貞一

    ○長村政府委員 生産量の点から申しますと、本年つまり昭和二十五年度といたしましては、二万五百トン余のものを予定しております。これはいろいろな種類のものがございますけれども、ひつくるめまして二万五百トン、この中には今御質問外国商社等の数字はまつた予定しておりません。
  116. 多武良哲三

    ○多武良委員 最後に、今外国商社の話を聞きましたが、一部にこの法案に関連して、戰略目的に利用されるかもわからぬ、あるいはまた法案の性質上やむを得ないのでしようが、労働運動の健全なる成長を阻害するというような声もあつたようであります。本案はただいま申し上げました通り、性質上やはり嚴重に取締るべきことは当然でありますが、運用とか計画によろしきを得るようにひとつお願い申し上げて、これで質問を終ります。
  117. 長村貞一

    ○長村政府委員 この法律案は御承知のように火薬によります災害の防止、公共安全の維持を目的といたしておるのでございます。現在あります銃砲火薬類取締法と同じような性格を持つておるのでございまして、その他に何らの目的もないわけでございます。また労働法規等の関係から申しましても、特にこれによりまして労働運動を云々という目的は全然ないわけでございます。この本来の本法自身の目的といたしております災害防止、公共の安全維持という目的の運用に遺憾のないように、これを濫用することのないように、十分気をつけてやりたいと思います。
  118. 小金義照

    ○小金委員長代理 次は田代文久君。
  119. 田代文久

    ○田代委員 小さい技術的な点はあとからにして、政府の火薬政策に対する大きな点を聞きたいのですが、次官は見えないのですか。
  120. 小金義照

    ○小金委員長代理 今すぐ呼びますから、しばらくお待ちください。
  121. 神田博

    神田委員長代理 田代文久君。
  122. 田代文久

    ○田代委員 この火薬取締法案の根本的な性格ですが、第一條並びに提案理由の中に説明してありますように、災害を防止する。それから公共の安全を確保するということがうたわれておりますが、これはなお申しますと、この災害の最も大きな危險にさらされておるのは工場で、火薬を製造しておる従業員、労働者諸君であります。従つてこの法規をつくるという場合には、工場の労働者諸君の意見を聞くことが、決定的な意味を持つのでありますが、この法案をつくられるにつきまして、火薬工場の労働者諸君の意見を十分聞かれてつくられたのかという点を、まず御説明願います。
  123. 宮幡靖

    宮幡政府委員 お尋ねの点ごもつともだと存じます。本法案を立案いたします立場におきまして、化学局においては、火薬労連の意向を非公式の公聽会の形によつて承りまして、それぞれその御意向を参酌いたして、立法いたしたようなわけであります。その詳細につきましては、化学局長からお答えいたさせます。
  124. 長村貞一

    ○長村政府委員 ただいま政務次官から御答弁がございましたように、この法案立案の過程におきまして、火薬労連の方々にお目にもかかり、会合の席上で御意見も承りまして、十分にその点を参酌しながら現在の成文にいたしました。
  125. 田代文久

    ○田代委員 なおこれは後ほど問題にいたしたいのでありますが、奨励とかあるいは取締り規定とかいうようなものがいろいろありまして、委任立法みたいな性格を多分に持つております。そうなりますと、今後なお、これに対しまして私たちは非常に反対でありますが、なお言えば、一時的に工場の従業員の方々の意見を聞かなければならないということを閑却してもらいたくないのであります。それからこの火薬産業に対する考え方ですが、申し上げるまでもなく火薬産業というものは、他の産業とは非常に性格を異にしておりまして、たとえば火薬を製造しておる資本家、会社側が、もうけさえすればいい、利潤のみを確保するというこ とになりますと、そこにいろいろ重要な問題が起つて来るのでありまして、なお申しますと、火薬産業は、平和産業以外には——現在の日本の置かれている立場から申しましても、また世界の人類の平和の問題からいたしましても、これが決定的なことになるのでありますが、日本の火薬産業の持つて行き方、これは平和産業以外には全然これを考えておらないということに、またその立場のもとにこの法案がつくられたかどうかという点の御説明を願います。
  126. 宮幡靖

    宮幡政府委員 第一点の政令、命令にゆだねるところの委任立法という形が濃いではないかという点でありますが、これは今回の取締法を制定するにあたりまして、いわゆる法的体系を整える意味におきまして、従来の規定がともすれば政令、命令等に委任する事項が多かつたのを、でき得る限り省略いたしまして、こまかく法律の中に制定する趣旨をとつたのでありまして、御心配の点はないことと存じます。それからまた労働者の方々の御立場は、これは十分考慮いたしておりますと同時に、この取締法が制定公布され、実施に移されましても、労働法規は依然として併存されておりますので、従来と異なつた労働待遇を受けるというような関係にはなるまいと思います。それから兵器、彈薬、火薬というものに対します製造は、ポ勅によつて禁止されております。彈薬のうち平和的と御指摘がありますものについてのみ、通商産業大臣の許可によつて製造されることになつておりますので、この点も御趣意に沿うようになると考えております。
  127. 田代文久

    ○田代委員 彈薬については、通商産業大臣の許可によつてつくることができるという御説明ですが、これはどういう意味ですか。
  128. 長村貞一

    ○長村政府委員 ただいま政務次官の御答弁にありましたように、彈薬については通商産業大臣云々というのではないのでありまして、彈薬はつくられません。ただ平和的の用途、つまり産業火薬として使われるものだけつくれることになつております。
  129. 田代文久

    ○田代委員 そうすると、先ほどの次官の説明とは少し違いますね。訂正されますか。
  130. 宮幡靖

    宮幡政府委員 違つておりません。兵器彈薬火薬というようなものは、ポ勅によつて禁止されておりますが、平和的な意味に使います産業火薬というものは、通商産業大臣の許可によつてできるという意味を申し上げたのでありまして、申し上げました彈薬火薬などはポ勅によつて製造を禁止されておる品目であることを、明らかにいたしたわけでございます。
  131. 田代文久

    ○田代委員 火薬の生産につきましては、保安確保ということが決定的な問題でありますが、保安確保のための條件と言いますか、どういう政策を考えておられますか。
  132. 長村貞一

    ○長村政府委員 本法の目的は、火薬によります災害を防止して保安を確保する、これがその目的のすべてでありますので、結局この目的のために生産から流通、消費に至る各段階におきまして、法律に書いてございますような各種の取締を励行いたします。そうして災害の発生を未然に防止したい、かように考えております。
  133. 田代文久

    ○田代委員 私が懸念しておつたところを、はつきり御説明なさつておるわけでありまして、なお言いますと、非常に片手落ちになつておるということであります。それから保安確保をただそういう生産から消費、販売というような点にのみ重点を置いておられるところに、工場における労働者諸君の生活條件、これが非常に労働強化になつたり、あるいはまた賃金が安くて、十分食えないというような点、それからたえず首切りの不安にさらされておるというようなことになりますと、そういう危險な物質を製造する場合におきまして、万全を期すことが非常に困難であります。そういう意味から申しまして、火薬産業は、他の産業とは別の意味考えなければならないと主張する点も、そこに強く現われるのでありまして、この点火薬産業に従事する従業員に対しまして労働條件、あるいは生活の確保という点に対しまして、他の産業とは違つた意味においての保障というような点を考えられておるのかどうか。そういう点をお願いします。
  134. 宮幡靖

    宮幡政府委員 先ほども申し上げました通り法律は火薬の製造、消費、貯蔵等に関しまする取締りを規定いたしたのでありまして、この制定、実施によりまして、従来の労働條件に何らの改善を来すこともないことを御了承いただきたいのであります。
  135. 田代文久

    ○田代委員 今の点で大体現在の政府のとつておる火薬行政というものは、非常に片寄つて、これでは十分保安確保ということができないという点が、はつきりいたしたわけでありますが、これに対しましては私は質問はいたしません。  次に生産状況ですが、先ほど政府委員の説明の中で、火薬製造所とかあるいはその生産量あるいは使途、従業員数についての資料は次の機会に知らしていただくそうでありますが、ぜひともそいつはわれわれに提出していただきたい。その上ではつきり御質問申し上げたいのであります。最近におけるものを大ざつぱでいいのですが、この火薬生産状況は非常に増大しつつあるかどうか。あるいはまたそうでないかどうか。増大しつつあるとすれば、それはどういう原因のために、そういうようになつておるかというような点を御説明願います。
  136. 宮幡靖

    宮幡政府委員 火薬の製造数量等につきましては、事務当局から説明していただきますが、この火薬製造についてまず根本的に御承知おきをいただきたいことは、ただいまでは年間生産計画を立てまして、これを関係方面に申出まして、その範囲内において製造いたすのでありまして、みだりに生産増大とか、あるいは無用のものを自由につくれるという立場ではございません。数字的につきましては、ただいま事務当局の方から御説明申し上げます。
  137. 長村貞一

    ○長村政府委員 火薬の生産数量につきましては、先ほど御答弁申し上げましたように、昭和二十五年度におきましては、二万五百四十五トンの計画を持つております。前年度昭和二十四年度においては、二万九百トンあまりでございまして、この数字でおわかりになりますように、本年は若干の減少を示しておるということになつておるのでございます。決してむやみに増大いたしておりません。これはただいま政務次官お話になりましたように、大体需要と見合つて生産するので、現在の火薬というものは、全部産業用でございまして、その大部分のものが石炭山とか、その他の鉱山に使用されるもので、その他あるいは土木用等に若干使われることになつております。これらの需要と見合いまして、ただいま申し上げましたような生産をいたしておるわけでございます。
  138. 田代文久

    ○田代委員 そういたしますと、この火薬の——今申し上げました生産量、それから生産計画、あるいは使途、あるいはストツクというようなものは、これは全部公開されることになつているのですか。
  139. 宮幡靖

    宮幡政府委員 必要がありますれば、数字を申し上げてもさしつかえございません。
  140. 田代文久

    ○田代委員 私が申しますのは、必要とか何とかいうことでなしに、実際に常にこれを公開されるようになつておるかどうかという意味です。
  141. 宮幡靖

    宮幡政府委員 別に公報、あるいは公式の公示方法によりまして、公開することを命ぜられてはおりませんが、これを公表しては惡いということになつておりませんので、必要がありますれば発表申し上げてもさしつかえございません。
  142. 田代文久

    ○田代委員 ほとんど大部分が鉱山用というふうに、御説明していただきましたが、そうでございますね。非常に圧倒的な数量は鉱山用ですね。
  143. 宮幡靖

    宮幡政府委員 そうでございます。
  144. 田代文久

    ○田代委員 現存の火薬の質の変化でありますが、たとえば鉱山用といたしましては、ダイナマイトなんかが以前は比較的使用されておつたのが、現在はカーリツトが非常に生産量がふえておるということを聞いておりますが、このカーリツトがつまり鉱山用には非常に適するのかどうか。それがもし鉱山用に使われてダイナマイトから切りかえられたとするならば、どうしてそういうふうになつたか。その点を御説明願いたい。
  145. 長村貞一

    ○長村政府委員 お話のように近ごろカーリツトの生産は前に比較いたしまして、比較的ふえております。つまりこれに対する需要が、やはり比較的に増大しているということであります。
  146. 神田博

    神田委員長代理 今いろいろ質問されておるようですが、大事なところに触れておられたと思いますが、その表なんか出せないのですか。出せましたら、至急出していただきたいと思います。
  147. 田代文久

    ○田代委員 カーリツトは鉱山用として、むしろ不適当だということを聞いておりますが、どうですか。
  148. 長村貞一

    ○長村政府委員 必ずしも常に不適当だとは思えないのでありますが、価格関係その他からただいま申し上げましたように、この方面の需要が多少ふえる気味になつておるということが言えると思います。
  149. 田代文久

    ○田代委員 次には火薬の輸出入の問題ですが、今年の生産計画には、輸出用とか何とかいうことは全然考えられておらぬそうでありますが、現在これはやはり輸出入があると思うのですが、それの内容を御説明願います。
  150. 長村貞一

    ○長村政府委員 火薬につきましては、輸出、輸入いずれもございません。
  151. 田代文久

    ○田代委員 私が聞きましたところによりますと、昭和二十五年度の輸入計画の中に、火薬の輸入という項目があるというようなことも聞いたように思いますし、それから台湾からの引合いが三百万トンあつたというようなこと、これはたとえば関東電気なんかにカーリツトが千箱引合いがあつたと聞いておりますが、これはどうですか。
  152. 宮幡靖

    宮幡政府委員 火薬の輸出につきましては、ただいま申し上げた通りでありますが、何がどの方面から入ることになつたとか、輸出計画があるとかいう御指摘でございますが、現在の状態におきましては、さようなものは、輸出入ともございません。ただ昭和二十一年におきまして、朝鮮向け、北支、中支向けに爆薬を二百六十トン、二十二年に百十七トン、二十三年に二百九十五トン、こういう数字で出ておりました。その後は二十四年以降輸出入ともなし。もつとも輸出入をいたしますにしても、これは司令部の許可を得なければできません。現在では全然計画はございませんので、御了承願いたいと思います。
  153. 田代文久

    ○田代委員 そうするとこれは平和産業用としての火薬は、日本の貿易の面から申しましても、火薬産業の発展の面から申しましても、ますます発展するのが希望でありますが、これに対しまして政府としましては、この火薬産業の発展のための対策、または貿易というものに対して、どういう御見解を持つておられますか。とにかく今年みたいに輸出入ともに全然シヤツトアウトすることはないと思いますが……。
  154. 宮幡靖

    宮幡政府委員 遠い将来のことはしばらくおくといたしまして、近き将来におきまして、火薬の輸出をいたそうとか、あるいはもつと火薬の生産をあげようとかいうことは、産業の進展につれまして、若干の増減はありましようけれども、特段にこれを助成いたしまして、何かの対策を講じようということは、ただいま構想されておる事実はございません。
  155. 田代文久

    ○田代委員 そうしますと、輸入の問題ですが、第二十四條に、輸出入に対する届出、許可という問題が出ておりますが、輸出する場合には届け出なければならない。ところが輸入の場合には許可を受けるということになつておりますが、これはどうしてこんなふうに、輸出入に別な取扱いをされるようになつたのでございますか。
  156. 長村貞一

    ○長村政府委員 法案では、輸出の場合は届出にとどめ、輸入の場合には許可になつておりまするが、区別いたしましたのは、輸入の場合には国内に入つただけの火薬がふえるわけであります。国内生産によつて火薬がふえるのと同じようなわけでございますので、製造に許可を設けたのと同じ趣旨において許可制度にした。届出については、できるだけ簡單に、手続を省きたいというので、届出で済ませるところは届出で済ました、かような意味であります。
  157. 田代文久

    ○田代委員 輸出の場合には届出制にするということは、つまり許可制にせずに輸出するということは、一面から言いますと輸出がこの條件のもとでは非常にしいいということになります。そうすると、現状はともかくとしまして、将来、たとえばどんどん火薬を輸出するというような場合に、この規定がどんどん物を言つて来るようになるのじやないか。たとえば外国で戰争が起る、また戰争の起る危險がある、あるいはまた国内戰が起つておるというような場合に、これがどんどん生きることによつて日本の平和的にのみ使うということを目標にしながら、実際においては外国の戰争用にこれが使われ、そのために知らず知らずのうちに、わが国が外国の戰争に巻き込まれ、あるいはそれに関係を持つというようなことになり、ひいては、場合によつて日本が、外国からうらまれねばならぬというようなことにもなりましようし、そういうことが考えられますが、そういう点は全然考慮されておらないかどうか。
  158. 長村貞一

    ○長村政府委員 輸出を届出にとどめましたのは、御承知の通り本法は取締法でございまして、届出で足るものは届出にとどめたいという、きわめて淡々たる考え方で、許可にせずに届出にしただけでございます。御承知の通り現在貿易慣例というものがございまして、火薬の輸出には、そちらの系統で許可を受けることになつております。
  159. 田代文久

    ○田代委員 そうしますと、これは製造の場合もその他の場合も、この前の銃砲火薬の取締の場合におきましては、これは大体外国人は関係してはならないということになつておりましたのが、今度はこのわくがはずれておるようでありますが、将来そのために、外国の商社あるいは会社が、日本に非常に進出して来て、そうして日本の火薬産業を圧迫し、またひいてはそういうことと関連して、だんだん戰争の方に巻き込まれるというような危險はないかどうか。つまり外国のそういう製造業者、その他商社が入つて来ることを許すようなことを、なぜしたかという質問であります。
  160. 宮幡靖

    宮幡政府委員 御承知のように現在は、あらゆる産業について、内外人の区別その他、差別を設けないという方針でやつておりますので、特に火薬だけをさような状況に置いたというわけではございません。全産業平等にながめての措置であります。
  161. 田代文久

    ○田代委員 これは申し上げるまでもなく、全産業について、そういうように無制限にするということが、日本の保護されねばならない産業をつぶす結果になりますことは、たえず私どもが主張しているところでありまして、これも次官とけんかしても、この際解決しませんので、この点は打切りたいと思います。  次に、先ほどの御説明によりますと、この規定は、災害防止を目的としているだけで、他意がないのであつて、従つてこの法律ができたことによつて、火薬産業に従事している工場の労務者諸君には、何ら影響はないというふうに説明されましたが、この点、なおはつきり御説明願いたいと思います。
  162. 宮幡靖

    宮幡政府委員 この新法を施行いたましても、従来の労働條件に変化がないと申し上げたわけであります。その点、御了承いただきたいと思います。
  163. 田代文久

    ○田代委員 次に、たとえば二十八條の危害予防規程なんか、今の説明では、労務者に対しては不利な点は全然ないという御説明で、それが非常に強調されておりますが、実際に私たちが、火薬工場の労務者諸君の御意見を承りますと、実際はそうではない。自分たちはこの法案が通過することによつて、非常にきゆうくつになるのだ。今までさえもすでに自分たちは、火薬を生産しているがために、何のかんのと束縛を受けておるのに、これはまたそれが、よりはつきりした形においてされるので困るのだという声が、どこにも起つておるのでありまして、そういう点で、政府考えておられる考え方と、相当の開きがあるという現実を、まず話すわけであります。先ほど申しました省令とか、あるいは危害予防規程に定める——危害予防規程の定め方も、これは製造業者がこれを定めるので、従つてこれは先ほどから申しました工場の労務者諸君が、自分たちの命が危い、一番危險にさらされているのは自分たちだから、かりにそういう危害予防規程などをつくるとすれば、工場の従業員の代表によつてつくらせてくれというのなら、むしろ話がわかりますが、逆に工場の労働者諸君は、危害予防規程をつくることについては、ほとんど関係せしめられないような立場になつている。従つてこういう委任立法的な性格を持つた規程あるいは政令というものが、今後どんどんなされるということになりますと、これは明らかに工場の労働者諸君には不利になります。この点非常に見解が違つているようでありますが、実際何らの制約を受けないのかという点を、なおはつきり御説明を願います。
  164. 宮幡靖

    宮幡政府委員 危害予防規程を制定することは、事業者の方からのお申出によりまして、通産大臣が認可をいたすことになつております。しかしこの規程を草案いたすにあたりまして、通産省は、かつての戰時時代と申しますか、とかくひな型を與えて、それに従属させるという干渉もいたしませんから、御自由にやつていただきたい。もしそういうようなことが、労働條件になるとすれば、これは労資協約によつて、労資間で十分練られまして、御成案を得てお持ちくだされば、本法の精神に反しない限り認可を與えたいと思います。こちらからひな型を與えたりいたしませんので、労資間で十分お話合いの上、災害予防規程というものをおつくりになつたらよろしい、かように考えております。
  165. 田代文久

    ○田代委員 もしその趣旨をはつきり徹底いたさせますると、「製造業者は、災害の発生を防止するため、危害予防規程を定め、ということではなくして、「製造業者並びに火薬産業に従事る従業員は、」ということになぜされなかつたのか。
  166. 宮幡靖

    宮幡政府委員 およそ企業あるいは団体、法人というようなものには、その代表者があるわけでありまして、企業立場から考えますと、一応その事業者は代表という立場になつておりますので、通産省が認可する対象としての団体の代表者を事業者と定めたわけでありまして、別に他意ないわけでありますから、ご了承願います。
  167. 田代文久

    ○田代委員 他意ないとおつしやいますけれども、明らかに実際に危險にさらされているのは、工場の火薬を生産する従業員であります。従つて政府が、製造業者の立場考え、あるいは火薬生産にとりましては、最も決定的な第一義的な立場に立つている従業員の立場考えますならば、いわゆる製造業者が工場の代表者であるということを規定することは、これは明らかに労働者を無視した立場であるということが、はつきり言えると考えられるのでありますが、この点私は今の次官の答弁では納得できないのでありまして、それを納得できるようにもう一度御説明を願います。
  168. 宮幡靖

    宮幡政府委員 ただいまの法制の状況におきますると、その一つの事業に携わる労働者が、その事業を代表して政府と交渉するというような立場に定められたものは、私寡聞にして存じませんが、他になかろうと存じます。要するに労働法規もございまするし、この取締りの励行によつて、何ら変化はないのでありますから、従来の通り経営協議会なり、労働協約の中において、十分達し得られる労資協調の問題であろうと思いまするので、さよう御了承願いたいと思います。
  169. 田代文久

    ○田代委員 それは言葉はそのようにありますけれども、実際上においては、そのようになつておらないのであります。事実こういう法律が出ておるということを前提としまして、すでに火薬製造業者というものは、いろいろの形で労働者に対する圧迫を加えつつあるのであります。その具体的な内容を質問します前に、工場の従業員、労働者は、この法律では直接取締りの対象にはなつていないかという点を御答弁願います。
  170. 長村貞一

    ○長村政府委員 先ほど政務次官の御答弁にありましたように、この法律によりまして各種の義務を負いますものは、製造業者あるいはその他の事業者であります。これが責任を負うことになつております。
  171. 田代文久

    ○田代委員 この二十八條の第四項の中には、「従業者は、危害予防規程を守らなければならない。」という條文がはつきりあるのでありまするが、製造業者が自分の立場を主体的に考えてつくつた規程に、従業員が従わなくてはならないということになりますと、これは明らかに工場の労働者諸君にとりましては、不利な規定があることが予想されます。なお申しますと、この点だけから申しましても、明らかに火薬産業に従事している工場の労働者に対する圧迫あるいは取締りということになつていると思うが、この点どうですか。
  172. 長村貞一

    ○長村政府委員 危害予防規程は、二十八條に明らかにありますように、その製造場におきまする災害の発生を防止するためにつくるわけでありまして、従つて、その危害予防規程には、製造業者も従業者もこれを遵守するのは当然であろうと思うのであります。二十八條の第四項はその当然な事柄を規定した一つなのであります。特に従業者あるいは労働者諸君がこれによつて圧迫されるということは、万々ないと確信する次第であります。
  173. 田代文久

    ○田代委員 すでに私が先ほど申し上げましたように、日本火薬なんかでは、今までなかつたにもかかわらず、工場の従業員が門から出たり入つたりする場合に、その身体を検査することができるとか、あるいはまた、仕事が終つてから三十分以内に工場の外に出て行つてしまわなければならないというようなこと、また労働争議なんかをやつて、労働條件の改善のためにいろいろ要求をするような場合に、あつせん、あるいは調停仲裁というような、官公庁の労働者諸君、あるいは公共企業体の労働者諸君とまつたく同じような形に追い込まれてしまつて、一般の産業のように、端的に自分たちの生活を守るために、首切りを守るために、労働強化を防ぐために立上ることができないというような形に、もうすでに現われているのでありまして、これは労働者諸君に対する圧迫なり、あるいはちようど戰時中に軍需工場においてなされましたように、門から出たり入つたりする場合に、労働者の身体を検査するというような形で明らかに出ておるのであります。従つてこういう形で出て来る事態というものの根源は、こういう法規が現在出されるというところにあると私は思うのですが、この法規が工場の労働者諸君に対しては、何らの影響がないといかに言われても、事実こういう形ですでに出ている。真に労働者の立場考えられるならば、なぜこういう点を考慮されないのか。今後ますますこうい形で出ると思いますが、政府はこれに対してどういう責任をとられるか。たとえば関東電気などにおきましても、組合の專従者は工場の中に入つてはならぬ、あるいは掲示板なんかに対しましても、非常に制限を受けるというような形が、すでに具体的にどんどん火薬工場においては出つつあるのであります。
  174. 宮幡靖

    宮幡政府委員 ただいま田代君の御説のような事実があるかどうかということについて、その一々は存じませんが、いずれにしましても、政府がさような命令を出してやらしているわけではございませんし、およそさような問題は、工場を管理なさいます経営者と労働者の話合いで処理されることであろうと存じておりますので、政府の責任においてそれをやらしておるというきらいのないことを、御了解願いたいのであります。それから危害予防規程は、先ほど申し上げましたように、十分労資間に経営協議会もお設けになつていることだと思いますので、それらでお話合いを願うし、また労働條件その他についてお話合いがつかない場合には労働法規によりまして、それぞれ救済等の機関もあることでありまするから、その面で御解決をいただきたいと思います。こちらから特にかような労働過重となるようなこと、また新憲法を蹂躙するようなことをやることは、いたさないようにいたしております。
  175. 田代文久

    ○田代委員 政府は何らそれに対しては関係しないし、それは工場主と製造業者と、それから労働者の労働協約その他によつて解決すればいいのではないか、だから自分たちは責任がないと、先ほどから御答弁が繰返されておりますが、私はそこに問題があると思う。なぜかと申しますと、こういう法律、たとえて申しますと、今申しましたような危害予防規程とかあるいは省令、こういうものができることがつまり労働者にとつて非常に不利になると思う。これを前提として、いわゆる製造業者は労働者を圧迫するような労働規定、労働協約というようなものを押しつけて来るという結果になつておるのであつて、真に政府が労働者の立場、労働者の危險を守るという公正な立場に立たれまするならば、この規定に根源する、そういう労働者に対する惡影響、この点を十分考慮され、この法律の内容に対しましても、これを訂正あるいは修正、あるいは撤回されるということが考えられなければならないと思いますが、そういう労働者圧迫の根源になるということには、全然ならないというふうにお考えになるかどうか。
  176. 宮幡靖

    宮幡政府委員 危害予防規程が、労働者圧迫の法規になるであろうというような見解については、まつた意見を異にするものであります。労働者保護の目的に、いささか貢献するという期待は持つておりますが、圧迫などということはまつた見解の相違だろうと存じております。ことにこれらを実施いたしますには、従業員に対しまして、事業主、工場主が保安について協議をする義務が與えられておるのであります。それによりまして適格なものを、適格なように働いてもらうために、事業主と労働者の間で御相談してでき上るであろう災害予防規程を、通産省が監督の立場において認可いたすのでありますので、御心配の点はなかろうと思います。
  177. 田代文久

    ○田代委員 非常に心配になるわけであります。そういたしますと、たとえば三十二條の中に出て来る点、その他先ほども自由党の同僚議員が述べられましたが、省令や危害予防規程というようなものもあつて、これは一々内容を示すことは煩にたえないので、こういうふうに大きな網を張つておるわけでありますが、この省令あるいはその規定の全部はもちろん、まだ実際にできていないというような点もありましようが、大体どういうことを考えておられるか。どういうふうな省令、どういうふうな危害予防規程ができそうであるかというような点をお聞きしたい。
  178. 長村貞一

    ○長村政府委員 危害予防規程というお話でありますが、これは先ほど政務次官からの御答弁もございましたように、画一的にどの工場でも同じような危害予防規程というのではございませんで、それぞれの工場で、その工場なり作業場に適した危害予防規程をつくつていただいて、こちらで認可するということになるのであります。省令の問題は先ほども御答弁申し上げましたように、たとえば技術上の基準、これは事こまかに技術の内容について書かなければなりませんから、法律では適当ではありませんので省令にいたしました。省令の内容についての技術的な問題は、先ほど申しましたように製造の方法についての技術上の基準でありますとか、あるいは製造場、作業場、工場その他についての技術上の基準でありますとか、主としてさような技術的な問題が、その内容になるわけであります。
  179. 田代文久

    ○田代委員 なお質問したいのでありますが、先ほどの生産量などの数字資料をいただいた上で質問することにいたしまして、質問を保留して、今日はこれで終ります。
  180. 神田博

    神田委員長代理 ちよつと政府委員に伺います。参考書が来ておるようですが、製造能力、製造数量はここでお答えできませんか。
  181. 長村貞一

    ○長村政府委員 できます。
  182. 神田博

    神田委員長代理 それでは政府委員から、生産数量はどの程度、何十パーセントくらい製造しておるのか説明してください。
  183. 長村貞一

    ○長村政府委員 お手元に能力資料が差上げてあると存じますが、生産の状況につきまして数字的な御説明を申し上げます。  昭和二十二年でございますが、これは歴年一月から十二月までの一年をとりました。生産数量は一万百十六トンでございます。それから二十三年もやはり歴年でございますが、これが一万四千七百九十トンであります。それから昭和二十四年、つまり昨年の一月から十二月までは、一万五千四百五十四トンであります。
  184. 神田博

    神田委員長代理 これは火薬と爆薬と合せた数字ですね。
  185. 長村貞一

    ○長村政府委員 両方でございます。  それから二十五年の計画は、先ほど申し上げましたが、二万五百四十五トンでございます。私が今申しました数字は一月から十二月までの歴年のものでありますから、同じ一年でも多少期間的に違うと思いますが、計画といたしましては、二十四年度は二万九百十五トンでございます。
  186. 田代文久

    ○田代委員 その種類ごとの内訳はどうですか。
  187. 長村貞一

    ○長村政府委員 お手元に差上げてある資料をごらん願いたいのでございますが、おそらくその資料の一番うしろについておると思います。
  188. 田代文久

    ○田代委員 そうするとこれは全部国内で有効需要となつて、年度々々で消費されておるということになりますか。それとも現在幾らそのストツクがあるか。
  189. 長村貞一

    ○長村政府委員 若干のストツクこれは無論普通の生産事業でありますので、ランニング・ストックその他の普通のストックはあります。
  190. 田代文久

    ○田代委員 その実数はどうですか、パーセンテージなり……。
  191. 長村貞一

    ○長村政府委員 大体全部の工場をひつくるめまして、一箇月分程度の在庫があるわけでございます。教字で申し上げますれば、大約千三百トンぐらいの数量ということになります。
  192. 田代文久

    ○田代委員 これは小さいことのようですが、現在警官が非常にたくさんピストルをさげておりますが、あのたまは日本の火薬でつくつておられるのかどうか。
  193. 宮幡靖

    宮幡政府委員 ただいま警察官の持つております拳銃のことにつきましては、これは私の方からお答えする自由を持つておりません。これは警察を処理いたした方の関係方面で申し述べなければならないことであります。しかしながら国内でつくつておる火薬を使つておるか、さようなふうには聞いておらないことだけを申し上げておきます。
  194. 田代文久

    ○田代委員 それから火薬産業の発展の面から——話は別に飛びますが、火薬工業への対日援助見返り資金なんかの貸付というような計画があるかどうか。それからまた外国資本による日本の火薬産業に対する圧迫、こういうことの危險はないかどうか。こういう点についてお伺いしたい。
  195. 宮幡靖

    宮幡政府委員 二十五年度におきましても、当初見返り資金は四百億程度の直接投資を期待しておりましたが、その後二百億程度にだんだん縮小して、おおむね電気その他の継続事業、造船及び鉄道の建設公債というようなことで、火薬事業に対しましては見返り資金の対象に考えたことはありませんし、また計画にも載つておりません。なお外国資本が日本に投下せられまして、火薬事業をやろうという計画等も一向に聞いておりません。
  196. 田代文久

    ○田代委員 これで打切ります。
  197. 神田博

    神田委員長代理 次は風早八十二君。
  198. 風早八十二

    風早委員 私、まず伺つておきたいのですが、今、年間の大体の生産実績及びその計画というふうなものがありましたが、この中で特に爆薬関係が、圧倒的でほとんど全部に近いものであつて、その他のたとえば導火線やいろいろな雷管なんかは、ほとんど問題にならない。この爆薬の中で、特に目立つて生産が上つておるのは、言うまでもなくカーリツトです。このカーリツトについて先ほど聞きませんでしたが、これの用途については、われわれが常識から考えると、カーリツトというものは由来わが日本海軍が水雷に用いた猛烈な爆薬だと了解するわけでありますが、現在でもやはりカーリツトは、そういう方面に一応使われておるわけですか、この点念のために……。
  199. 長村貞一

    ○長村政府委員 先ほども御答弁申し上げたかと存じますが、現在の火薬の用途の大部分は、カーリツトを含めまして山の関係でございます。大体火薬の全種類の九〇%ぐらいのものが山に使われております。カーリツトにつきましても同様でございます。
  200. 風早八十二

    風早委員 火薬工廠の問題がちよちよい耳に入て来るわけでありますが、古い火薬工廠は現在どういうふうになつておりますか。
  201. 宮幡靖

    宮幡政府委員 一々の名称はここに全部記憶いたしませんが、おおむね賠償指定工場になつておりまして、休止の状態にあるわけであります。
  202. 風早八十二

    風早委員 そうしますとこの火薬工廠の再開とか、その拂下げとか、そういつたような問題は全然考える必要はない問題ですか。
  203. 宮幡靖

    宮幡政府委員 ただいま話題に上つておりません。
  204. 風早八十二

    風早委員 今度のこの火薬類の取締法案によりまして、大体今まではこの火薬関係の業務特に火薬商の業務、こういつたようなものの全体をひつくるめまして、日本の法人でなければできないことになつてつたわけであります。この点については、特に今回はその制限を撤廃せられておるというふうに大体了解しておるわけです。もしそうだといたしますと、この点と、それから今宮幡政務次官が、現在としては一向外資が入つてやるという話は聞かない、無論見返り資金もこれに投下せられるという話は、聞かないというお話であります。そうしますと、特にこの新しい法律によりまして外国の商社なり、あるいは外資というものに受入れ態勢をつくるという必要はなかりそうに思うのですが、これは遠い見通しとしては、やはりそういうことも考えておられるわけですか、その点を承りたい。
  205. 宮幡靖

    宮幡政府委員 先ほど申し上げましたように、全産業に対して同じような状況をとつたのでありまして、火薬だけを特に閉鎖いたさなければならぬ理由も認めておらないわけであります。
  206. 風早八十二

    風早委員 これはあるいは質問があつたかもしれませんが、たとえば鉱業権とか、ことに火薬の製造販売とか、こういうふうなものはそのものの性質上、大体独立国としては他の国人あるいはその法人に対して、開放しないというのが建前であつたと思うのであります。これは御承知のように中国におきましても、あの日本の傀儡政権と言われた汪兆銘政権自身でも、日本から例の鞍山やその他の鉱業権の讓渡について交渉した場合に、これをけつて、それはあまりひどい、それではもう国の独立は奪われる。独立した政権ではいと見ておつた汪兆銘政権でも、そういうことをやはり気にしておるわけですが、この点何でもかでも一切産業についてやるのだというような明けつ放し方針というものは、はなはだふに落ちないのです。むろん日本の新憲法の建前として、われわれは戰争ということ、あるいは軍需産業ということを予想できないし、またすべからざるものでありますが、実際問題としてその危險のあることは、どなたも御承知だと思うのです。そういう場合にやはりこの火薬産業に対して外資を入れて来るということになりますと、その道を開くということになりまして、これははなはだ問題じやないかと思うのです。なべて全産業にやるから火薬にもやるんだというようなことでは、新しく出て来る鉱業法もそうでありますが、そういう問題と関連させて、一体政府の御方針は奈辺にあるのか、この際伺つておきたいと思います。
  207. 宮幡靖

    宮幡政府委員 ただいま御心配の点につきましては、通商産業大臣の権限になつております。許可の場合において運用の妙を得たいと思つております。
  208. 風早八十二

    風早委員 通産大臣に対する不信任の決議は否決せられたものの、それははなはだ問題です。また今までの全政策を通じまして、その点がはなはだ問題でありまして、われわれそれも十分に考慮した上で、特に問題の点を出しておるわけであります。そういうふうな余地を與えて、これを通産大臣に一任するということは、それ自身がもう委任的なものになつて来る。そういう点を通産大臣に一任するということな、はなはだ危險じやないかと思う。それはとにかくとしまして、今の通産省方針としては、そこに外資が入つて来て、日本の火薬産業にひとつ投資しよう、あるいはまた火薬商人になろうという場合には、喜んで受けられる方針であろうか、その御方針を承つておきたい。
  209. 宮幡靖

    宮幡政府委員 通商産業大臣が許可権を持つておるわけでありますが、その許可権が当てにならぬという御見解につきましては、御答弁の限りでないのであります。いやしくも御心配のようなことのないように運用したいと、私どもは考えておるのであります。通商産業大臣に一任することは危險だという御意見の底には、さような許可を與える場合に、一々国会の議決を経ろというような意味だろうと思いますが、やはり国会は内閣を通じて行政府を監督するというお立場以外に出られない方が、ほんとうじやないかと思います。許可につきましては愼重を期しまして、御心配のないようにいたしたいと思います。
  210. 風早八十二

    風早委員 それは問題によりけりでありまして、一々われわれ行政の許可の内容にまで立入ろうというのではない。電力料金の値上げのような問題は別でありますが、とにかくそういうようなことじやない。これはいやしくも一国の民族的な独立の一つのかぎである諸権利でありまして、特に火薬産業のごときは、今の御説明ではカーリツトは鉱山用のダイナマイトとしてやつておるというお話ですが、これは何どきだつて、軍需産業に使われないとは、だれも保証できないのです。     〔発言する者多し〕
  211. 神田博

    神田委員長代理 靜粛に願います。
  212. 風早八十二

    風早委員 雑音はちよつと注意してもらいたい——カーリツトの問題をとりましてもそうです。実際にこれはカーリツトだけではない。たとえば潤滑油なんかにしましても、これは今いろいろな雑音が入つておりますが、実際あのスコアレンが日東化学でつくられておる。この零下六十度でも凍らないスコアレンというものは、日本産業には私は寡聞にしてその必要が認められない。しかしそれは超高空飛行機には非常に使われる。そういうものが日東化学で現に製造されて、すぐその足で三沢の飛行場へ行くということを、実際そこでやつている人が言つておるわけです。証人は幾らでも出す。そういうことは、このカーリツトの場合におきましても、私は決して杞憂ではないと思う。今この火薬産業というものを、やすやすと外国の手に渡す道をわざわざ開いて行くということは、この法案の根本的な問題であると考えるわけであります。そういう点であるから、国会が通産大臣の許可権に一任するということは、はなはだ問題じやないかと思う。ですから少くとも政府としては、これに対してそういう方針をとらない、今とりたくないということを政務次官は——宮幡政務次官一個であるかもしれませんが、政府の代弁として言つておられる。そうなれば何も好んで外国人に道を開くような法律をわざわざつくつておく必要がない、そう考えるのでありますが、その点については、政府見解はどうでありますか。
  213. 宮幡靖

    宮幡政府委員 私は通商産業大臣の許可権において十分御心配のような問題は除去することができると信じておるのであります。しかしながら重ね重ねの御発言であつて、もし御心配であるならば、国会の権威において適当なる修正を願いたいと思います。
  214. 風早八十二

    風早委員 この法案の中で、先ほどからいろいろ問題になつておりますが、それにつけ加えて、第四十三條の規定でありますが、そこに「公共の安全の維持のため必要があると認めるときは、その職員に、」通産大臣または都道府県知事が、実際問題としては都道府県知事が、「製造業者、販売業者、消費者又は火薬類を保管する者の製造所、販売所、火薬庫、消費場所又は保管場所に立ち入り、その者の帳簿書類その他必要な物件を検査させ、関係者に質問させ、」等々、こういうような処置を講ぜしめることができるということが規定してあるのでありますが、その職員というものの中には警察官も入りますか、ただ單なる都道府県の職員だけでございますか、これを念のためにお伺いしておきたいと思います。
  215. 長村貞一

    ○長村政府委員 この四十三條第一項の職員の中には、警察官は入りません。
  216. 風早八十二

    風早委員 第二項におきまして警察官というものが出て来るわけです。この場合警察官が入つて来る條件というものが、非常に抽象的に「危害を予防するため」というような形で出て来ておるのでありますが、この「危害を予防するため特に必要がある場合には、」という認定は、大体だれがするのですか、この点について伺いたい。
  217. 長村貞一

    ○長村政府委員 第二項にあります「人の生命、身体又は財産に対する危害を予防するため特に必要がある場合」というこの認定は、そういう場合に立ち入りました者、ここにあります警察官、その他立ち入ろうとする者の認定によるわけであります。
  218. 風早八十二

    風早委員 それはやはり先ほどから田代委員から出ている質問の中にもありますが、この法律が結局保安の名前、あるいは危害予防の名前で、実際は労働者、従業員に対して、不当な取締りをやる余地をつくるのじやないかという点でありますが、実際警察官などが一方的な認定で、危害を予防する必要があるということをかつてに認定いたしまして、どんどん入つて来るという余地が、ここにはつきり出て来ているわけであります。その点がはなはだ問題ではないかと思います。そういう点がやはりどうも労働者側から見ますれば、労働者を取締るのではないかといつたような不安を巻き起させるやはり一つの條項になりはしないか、趣旨になりはしないかと考えるのでありますが、そういう点は、政府としては十分にお考えになつておられるか、その点をお答え願います。
  219. 宮幡靖

    宮幡政府委員 この四十三條の問題は、ただいま化学局長からお答えいたしましたが、最初の職員、これも身分を証する証票を持つて立ち入り、検査をいたします。しかしながらそういう事務的な検査の上に、さらに火薬という危險物を扱うのでありますから、警察官も一応これの取締りの立場にあることは、これはむしろ立法として当然であろうと、私どもは信ずるのであります。しかしながらこの運用については、御意見のように十分行き過ぎのないようにしなければならぬのでありまして、この運用につきましては、本法施行の上におきまして、特に入念な細目にわたります注意をもちまして、あやまちなきよう期したいと思つております。いやしくも第四項に書いてありますように、「犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。」というような條項までも設けてあります。もしそれが行き過ぎになるときには、一般の警察官の処置のように適当なる、判事または検事の令状等を持たなければできないことになるのでありまして、これはあくまでも火薬の危險を防遏するという意味以上の検査以外にはわたらないことを、はつきりこの際申し上げます。
  220. 風早八十二

    風早委員 今の政府の御答弁を、これはむろんこれに対する賛否は別として、とにかく政府の御答弁はこの解釈の有力なる一つの基礎としてよく承つておくわけです。  もう一つ問題になるのは、その次の第四十四條でありまして、やはりストなんかが長引いた場合には、結局一方的な解雇、工場閉鎖ができるような余地を、ここでつくつているというように考えるのでありますが、これは現在の労働法規、労働組合法その他に認められ、擁護せられております労働者の基本的権利との関係で、政府はどういうふうにこれを解釈し、またどういう方針をとつて行かれようとしているか。この点もひとつ伺いたいと思います。
  221. 宮幡靖

    宮幡政府委員 先刻も申し上げましたように、本法と労働法規とは併行的に効力があるわけでありまして、抵触する部分はできないと思います。あくまでも現行労働法規の規定によつて、労働者の基本的人権は尊重されるものと信じております。
  222. 風早八十二

    風早委員 ところが実際問題としてこの第四十四條は、これは当然労働法できめた争議権、そういうものとこれが抵触、矛盾するという場合があり得る余地を與えているわけであります。ことに本文におきましていろいろな條件がつけてありますが、そういう場合に「又は期間を定めてその事業の停止を命ずることができる。」こういうふうなことになつておりまして、結局この業者に対する一つの制限規定の形でもつて、事実上これが一方的な工場閉鎖、解雇というようなことになつている。その一つの原因として、ここにあげられている諸條件の中に、特にこの争議といつたようなことがやはり問題になるのではないかと考えるのでありますが、これは抵触した場合には、今の政府の御解釈では、当然労働者の基本的な権利に関する限りは、労働組合法に準拠して解決さるべきである、そういう御見解であるのか。この点はもう一度念のためにお尋ねしておきたいと思います。
  223. 宮幡靖

    宮幡政府委員 基本的な問題といたしましては、本法案につきましてもそれぞれ法務府の法令を審査いたします機関を通じまして、一読会、二読会、三読会を経て、成案を得たものでありまして、本法と労働法規その他の法令との抵触はない、かような確信を持つているのでございます。しかしながら実際の運用の問題で、もし御心配のような事態になりましても、これは労働法規も制限してございませんので、従来とあまりかわりのない方法で、御解決願えばよろしいと考えます。
  224. 風早八十二

    風早委員 大体きようはこれで私の質問を打切りたいと思います。
  225. 神田博

    神田委員長代理 ほかに質疑はございませんか——本日はこの程度にとどめまして、残余の質疑は、次会にお許しいたします。次会は明五日午後二時より開会いたします。  これにて散会いたします。     午後四時五十五分散会