○中村(幸)
委員 ただいま議題と相なりました
不正競争防止法の一部を改正する
法律案につきまして、私は自由党を代表いたしまして、若干の希望を述べまして、賛成の意を表したいと存じます。
元来この
法律案は、昭和九年
法律第十四号をもちまして公布施行せられ、昭和十三年
法律第二号によりまして、若干の修正を見たものでありますが、爾来十有余年の間、各種の統制に関する諸法令のもとにありまして、この
法律が実際にその適用を見たことは、はなはだまれであつたわけであります。しかるに最近各種の経済統制の撤廃ないしは緩和によりまして、個人の自主性と創意とを尊重する自由経済へ移行することになりましたので、この種の法令の強化拡充が必要とな
つて参
つたのであります。ことに終戰以来今日まであらゆる部面におきまして、ある者は事情を知らずして、またある者は不正競争の目的をもちまして、他人の氏名や商号や商標などを濫用、または盜用いたしまして、
経済界における混乱を利用し、利害
関係人に不測の損害をもたらし、さらには善良なる
一般需要者に迷惑を與えて参りましたことは、周知の
通りであります。この不正競争の
関係者並びに
一般需要者に及ぼす害惡が、單に国内問題にとどま
つている場合は、しばらくおくといたしまして、民間
輸出貿易が許可せられました今日、国際市場におきましてわが国の
信用を失墜するということがありましては、まことに寒心の至りにたえない次第であります。この意味におきまして本
法律が、さきに本通産
委員会におきまして、審議可決いたしました
輸出品取締法とともに、唇歯輔車の
関係をも
つて、国際
信用の向上に完璧を期することができますならば、錦上花を添えるものと申さなくてはなりません。現行
不正競争防止法は、国内法制の欠陷を補正するというよりも、工業所有権保護同盟條約のへーグ改正條約に加入する準備として、昭和九年に制定せられたものでありまして、條約に基く最小限度の義務を
規定しているにすぎない
状況でありますが、今回の改正によりまして、不正競争防止の
範囲を拡大いたしますとともに、その行為者に対する制裁を強化し、不正競争防止に万全を期することとなりましたことは、まことに時宜を得たことと思うのであります。しかしながら一面におきまして、あるいは一部相手国との利害均衡の点におきまして、不公平に陷る点なしとしないのでありますが、何分にも占領行政下にある今日、立法の自主性ということについても、おのずから限界のあることを了承しなければならないと同時に、半面相手国の国民が不正競争を行つたからとい
つて、ただちに当方も不正競争をしてよろしいということにはならないのでありまして、この点につきましては、よろしく高い国際倫理観に立脚して、処理する必要があると
考えられるのであります。しかもわが国の国際的
信用を高める上からい
つても、この程度の改正はやむを得ないものと認めるのであります。
次に第五條の罰則でありますが、現行法の一千円と今次改正の罰金二十万円との間には、諸般の社会的経済的
情勢の変遷もあり、また総合物価指数も織り込んだものとも思料せられるのでありますが、三年の体刑とともに、いささか酷に失するのではないかと思うのであります。一罰百戒という趣旨は了といたすのでありますが、今後法の運用によりまして、業者の
企業意欲を萎縮せしめないように、十分あたたかみのある裁量をなされんことを強く希望いたす次第であります。
最後に本
法律案と抵触または重複するのではないかと思われますところの他の法令との
関係、たとえば工業所有権
関係法令、不法行為に関する
規定、商法第十六條の商号に関する
規定、刑法第二百三十三條の
信用及び業務に関する
規定、私的独占禁止法、軽犯罪法、度量衡法、薬事法、こういうような法令との関連につきましては、それぞれ一応納得の行く
政府委員の答弁を得たのでありますが、法は重きに従
つて処断するという刑罰に関する根本法則は時により、人により、場合によ
つてその運用の妙よろしきを期せられるよう重ねて要望いたす次第であります。
本
法律案は僅々五、六條から構成せられておりまして、一見簡潔ではありますが、複雑、難解な解釈に思いをいたすときには、その適用解釈、運用の面において、かなり解決困難の事態に遭遇せられるものと想像いたすのであります。願
わくば本
法律案の施行にあたりましては、すべからく万全を期せられ、これにより内では国内の不正競争が十分に芟除せられ、外にあ
つてはわが国並びにわが民族の国際的
信用をいやが上にも高揚せられますよう希望いたしまして、本案に賛成の意を表する次第であります。